(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】タンパク質足場
(51)【国際特許分類】
C12N 15/63 20060101AFI20230927BHJP
C40B 40/10 20060101ALI20230927BHJP
C40B 40/08 20060101ALI20230927BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230927BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230927BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230927BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230927BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20230927BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
C12N15/63 Z
C40B40/10 ZNA
C40B40/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/00 C
C07K14/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580351
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 NZ2021050086
(87)【国際公開番号】W WO2021262012
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522499058
【氏名又は名称】Neko Pharma株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】ロドリー・フィリップ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA08
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA20
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA60
4H045AA10
4H045EA60
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、タンパク質足場並びにタンパク質足場を調製、スクリーニング、人工操作及び使用する方法を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)残基:
(a)16~18(両端を含む);
(b)29~37(両端を含む);
(c)43~47(両端を含む);
(d)60~61(両端を含む);
(e)66~75(両端を含む);
(f)80~84(両端を含む);
(g)92~93(両端を含む);
(h)103~107(両端を含む);
(i)124~125(両端を含む);
(j)135~137(両端を含む);
(k)149~150(両端を含む);
(l)160~162(両端を含む);
(m)173~176(両端を含む);
(n)180~181(両端を含む)
からなる、配列番号1の同族ループ領域に対応し、
(ii)配列番号1の非ループ領域に対応する二次構造エレメントに連結されている14個のループ領域
を含む組換えCheB
cドメインを含む組換えポリペプチド足場を含むポリペプチドディスプレイライブラリーであって、
前記ループ領域の少なくとも1つは、配列番号1の前記同族ループ領域の非天然発生バリアントであり;及び
前記組換えCheB
cドメインは、配列番号1に対して、前記非天然発生バリアントループ領域外で少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する、組換えCheB
cドメインを含む組換えポリペプチド足場を含むポリペプチドディスプレイライブラリー。
【請求項2】
少なくとも2つのループ領域は、配列番号1の前記同族ループ領域の非天然発生バリアントであり、前記非天然発生バリアントループ領域は、2~20個のバリアントアミノ酸位置を含む、請求項1に記載のライブラリー。
【請求項3】
前記足場は、
(i)FR1、FR2、FR3及びFR4と命名される4つのフレームワーク領域であって、FR1について配列番号40、FR2について配列番号41、FR3について配列番号42及びFR4について配列番号43のアミノ酸と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し;
(ii)3つのループ領域によって連結されている4つのフレームワーク領域
を含み;
少なくとも1つのループ領域は、配列番号1の前記同族ループ領域の非天然発生バリアントである、請求項1に記載のライブラリー。
【請求項4】
少なくとも2つのループ領域は、配列番号1の前記同族ループ領域の非天然発生バリアントであり、前記非天然発生バリアントループ領域は、2~20個のバリアントアミノ酸位置を含む、請求項3に記載のライブラリー。
【請求項5】
前記足場は、それぞれが独立して一般式:
G
1X
a1G
2X
a2G
3
(式中、G
1、G
2及びG
3は、独立して、1~3つのグリシンを表し、X
a1及びX
a2は、独立して、1~10残基の任意のアミノ酸を表す)
によって表される3つのループ領域を含む、請求項3に記載のライブラリー。
【請求項6】
前記足場は、L1、L2及びL3と命名される3つのループ領域を有し;
L1は、配列番号44又は配列番号45によって表され、L2は、配列番号44又は配列番号46によって表され、及びL3は、配列番号47によって表され;
前記L1、L2及びL3ループ領域について、各Xaaは、独立して、任意のアミノ酸を表し;
L1は、FR1とFR2との間に連結され、L2は、FR2とFR3との間に連結され、及びL3は、FR3とFR4との間に連結されて、配置FR1-L1-FR2-L2-FR3-L3-FR4を含む連続ポリペプチドを形成する、請求項3に記載のライブラリー。
【請求項7】
L1は、配列番号44によって表され、L2は、配列番号44によって表され、及びL3は、配列番号47によって表され;
前記L1、L2及びL3ループ領域について、各Xaaは、独立して、セリン、アスパラギン酸、アルギニン、アラニン、ロイシン、トレオニン、アスパラギン、トリプトファン、グリシン、グルタミン酸、バリン又はチロシンを表す、請求項6に記載のライブラリー。
【請求項8】
L1は、配列番号45によって表され、L2は、配列番号46によって表され、及びL3は、配列番号47によって表され;
前記L1及びL2ループ領域について、各Xaaは、独立して、任意のアミノ酸を表し;
前記L3ループ領域について、各Xaaは、独立して、セリン、アスパラギン酸、アルギニン、アラニン、ロイシン、トレオニン、アスパラギン、トリプトファン、グリシン、グルタミン酸、バリン又はチロシンを表す、請求項6に記載のライブラリー。
【請求項9】
前記足場は、リボソーム、バクテリオファージ、ウイルス、細菌、酵母又は哺乳類細胞の表面上でディスプレイされる、請求項1に記載のポリペプチドディスプレイライブラリー。
【請求項10】
少なくとも10
6の配列多様性を有する、請求項1に記載のライブラリー。
【請求項11】
請求項1に記載のライブラリーをコードする単離核酸分子のコレクション。
【請求項12】
請求項11に記載の核酸分子に作動可能に連結されている発現ベクター。
【請求項13】
請求項11に記載の核酸分子を発現するように遺伝子人工操作された細胞。
【請求項14】
標的に結合するポリペプチド足場を得る方法であって、(a)標的リガンドを、請求項1に記載のライブラリーと、足場:標的リガンド複合体の形成を可能にする条件下で接触させること、及び(b)前記複合体から、前記標的リガンドに結合する前記足場を得ることを含む方法。
【請求項15】
(a)前記標的リガンドに結合する前記足場をコードする核酸分子を単離すること、(b)前記核酸を発現ベクターに作動可能に連結させること、及び(c)前記発現ベクターに作動可能に連結された前記核酸を細胞中で発現させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、タンパク質足場並びにタンパク質足場を調製、スクリーニング、人工操作及び使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明は、例えば、新規な結合特徴を有する生成物の生成に有用なタンパク質足場に関する。
【0003】
分子、例えばタンパク質とリガンドとの間の相互作用は、生物における複数の機能に必須である。目的標的への結合特性を有するタンパク質分子を得る能力は、生物科学及び医学において重要である。例えば、疾患を診断する能力は、その病状と関連する目的標的の存在を検出する能力により促進することができる。別の例において、体内の分子間の相互作用を調節することで治療効果を有することが知られており、リガンド、受容体、酵素及び治療目的の他の標的に結合する分子を利用して、多くの薬物が開発されている。
【0004】
抗体は、その結合面が比較的大きく複雑であることから、一般に小分子薬物よりも高いその標的に対する特異性を有することが知られており、治療用途において、抗体は、無差別結合から毒性を誘導する確率がより低いことが知られている。しかしながら、抗体の使用は、例えば治療的使用のための全長抗体を得るための哺乳類細胞産生が典型的に必要であることと、一般により小さい分子と比較して全長抗体の組織透過性が低いこととなどの欠点があることが知られている。
【0005】
抗体断片を使用することで、これらの欠点の一部を克服することができるが、抗体断片は、全長抗体と比較して凝集しやすく安定性に欠ける傾向を有する。例えば、scFv分子の不安定性の問題のため、一部の用途について、時間を消費する安定性成熟が必要であり得(Honegger A. et al., 2009)、熱安定性の欠落によりscFv分子がインビボで無効になることがあり得る(Willuda J. et al., 1999)。一部の状況において、scFvの不安定性は、二重特異的及び多重特異的構築物の人工操作におけるその使用の障害であり得る(Miller B. et al. 2010、Xu L. et al., 2013)。このため、これらの欠点の一部を克服するために、非免疫グロブリンタンパク質分子の人工操作に関心が持たれている。
【0006】
タンパク質表面をランダム化して新規な結合タンパク質のライブラリーを生成することにより、非免疫グロブリンタンパク質分子を開発する試みがなされてきた(例えば、Binz H. et al., 2003、Vogt M., Skerra A., 2004)。しかしながら、一部の例において、ランダム化の際に生じる人工操作の困難性により、抗体断片の安定性よりもわずかに良好にすぎない安定性を有する足場ライブラリーメンバーが得られる可能性がある。また、一般に、個々の足場タンパク質の構造の差及び足場結合表面のトポグラフィーは、各足場が効率的に認識するエピトープのタイプの偏りをもたらすことも考えられる(Gilbreth R., Koide S., 2012)。例えば、DARPinのリジッドで窪みを有する結合表面は、この足場により認識され得るエピトープの構造的多様性を限定すると考えられる(Schilling J. et al., 2014、Gilbreth R., Koide S., 2012)。関連する例において、ループDARPin足場は、DARPinの窪みを有する結合表面を、途中で突起を有するものに置き換え、DARPinと異なる形状のエピトープに結合することが予測される(Schilling J. et al., 2014)。他の例において、アンチカリン(anticalin)足場のかご様構造は、結合標的を挟む傾向があり、アフィボディ(affibody)は、その標的における同様に平面表面を認識する傾向がある平面結合部位アーキテクチャを有する(Gilbreth R., Koide S., 2012)。足場結合表面のトポグラフィーは、一般に、高親和性で認識されるエピトープのタイプと相関がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、種々の治療、診断及び工業への応用を目的とした安定で小さな人工抗体様分子を開発することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書における参照文献の引用又は考察は、そのようなものが本発明に対する従来技術であることを認めるものと解釈すべきではない。
【0009】
発明の概要
本発明は、目的化合物への結合活性を得るために使用することができる組換え非天然発生タンパク質足場を提供する。特に、本明細書に記載の足場を使用して、抗体可変領域の相補性決定領域(「CDR」)と類似する規定のループをディスプレイすることができる。これらのループは、ランダム化又は制限進化に供して、種々の標的化合物に結合するために必要な多様性を生み出すことができる。
【0010】
本発明は、組換え非天然発生ポリペプチド足場であって、複数のループ領域によって連結されている複数のアルファヘリックス及びベータストランド並びに310ヘリックス(改変二重巻きα/βサンドイッチフォールド)を含む組換えCheBcドメインを含み、少なくとも1つのループ領域は、同族ループ領域の非天然発生バリアントである、組換え非天然発生ポリペプチド足場を提供する。
【0011】
具体的な実施形態において、組換え足場タンパク質(本明細書において以下で「本発明の足場」として知られる)は、配列番号1に対して、ループ領域外で少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する組換えCheBcドメインを含み、少なくとも1つのループ領域は、配列番号1の同族ループ領域の非天然発生バリアントである。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、複数の本発明の足場を含むポリペプチドディスプレイライブラリーも提供する。本発明のライブラリーは、本発明の標的結合足場の捕捉及び同定に有用である。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、本発明の足場及びライブラリーをコードする単離核酸分子も提供する。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、本発明の足場及びライブラリーを作製、使用、スクリーニング、最適化及び人工操作する方法も提供する。
【0015】
さらに別の実施形態において、本発明は、本発明の足場を含む医薬組成物も提供する。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、治療有効量の、本発明の足場又は本発明の足場を含む医薬組成物を投与することにより、患者における疾患又はその症状を処置、予防、改善、検出、診断又はモニタリングする方法も提供する。
【0017】
図の簡単な説明
本発明を説明する目的のため、図面に本発明のある実施形態が示される。しかしながら、本発明は、図面に示される実施形態の厳密な配置及び手段に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】野生型CheB
cドメイン(PDB ID:3SFT)(配列番号80)を含むポリペプチドの構造の概略的表示。
【
図2】野生型CheB
cドメインと、本発明の足場の一例との構造比較。(A)野生型CheB
cドメイン(PDB ID:3SFT)(配列番号80)を含むポリペプチドの構造の概略的表示。(B)グラフト化された3つの人工ループを有する本発明の足場の試験ループグラフト構築物(配列番号11)のモデルの概略的表示。
【
図3】グラフト化された3つの人工ループを有する本発明の足場の試験ループグラフト構築物のモデルに由来する、人工的に切断された本発明の足場の概略的表示。(A)人工ループ(3つの試験ループグラフトを含む)の構造的表示。図面には、(i)位置1、(ii)位置2、及び(iii)位置3における、それぞれ配列番号85、配列番号86及び配列番号87からなる個々の人工ループが示される。(B)足場の基部の構造的表示。(C)3つの試験ループグラフト及び足場の基部の組み合わせからなり、配列番号11を含む本発明の足場の試験ループグラフト構築物の構造的表示。
【
図4】ループ領域によって連結されたアルファヘリックス、ベータストランド及び3
10ヘリックスを含む二次構造の領域の概略的表示を示す、CheB
cドメイン(配列番号1)のポリペプチド配列の概略的表示(Cho K. et. al, 2011の注釈をベースとする)。ランダム化のための候補ループ領域は、図面中に下線を付したアミノ酸残基を含む。
【
図5】試験ループグラフト化のために選択される位置に下線を付したCheB
cドメイン(配列番号1)のポリペプチド配列の概略的表示。
【
図6】本発明の足場の試験ループグラフト構築物のアラインされたポリペプチド配列の概略的表示。配列同一性は、アラインメントスキーム中のそれらのそれぞれの配列の右側に示される。アラインメントスキームは、試験ループグラフトを含有しないCheB
cドメイン(配列番号1)のポリペプチド配列とアラインされた位置2及び3における試験ループグラフト(配列番号8)、位置1及び2における試験ループグラフト(配列番号9)、位置1及び3における試験ループグラフト(配列番号10)並びに位置1、及び2、及び3における試験ループグラフト(配列番号11)を有する構築物を示す。配列番号11の例の試験ループグラフトの位置に下線が付され、試験ループグラフトの位置1、2及び3をそれぞれ示すために、図面中において(1)、(2)及び(3)と標識される。
【
図7】本発明の足場の精製試験ループグラフト構築物のSDS-PAGE。レーンは、図面の上部において標識される。レーンM:Precision Plus Protein Standard(Bio-Rad);レーン1:CheB
cドメイン(配列番号1);レーン2:位置2及び3における試験ループグラフトを有する構築物(配列番号8);レーン3:位置1及び2における試験ループグラフトを有する構築物(配列番号9);レーン4:位置1及び3における試験ループグラフトを有する構築物(配列番号10);レーン5:位置1、及び2、及び3における試験ループグラフトを有する構築物(配列番号11)。
【
図8】位置1、及び2、及び3における試験ループグラフトを有する本発明の足場の精製試験ループグラフト構築物(配列番号11)のサイズ排除クロマトグラフィープロファイル。図面中の標識矢印は、タンパク質種のSECクロマトグラム由来サイズ推定値及びそれらの相対存在量を示す。(A)22.6kDaのタンパク質ピーク種(単量体分画に対応)が96.4%で存在したことを示す。(B)47.7kDaのタンパク質ピーク種(二量体に対応)が3.6%で存在したことを示す。
【
図9】本発明の足場の精製試験ループグラフト構築物の示差走査蛍光測定(DSF)により得られた蛍光強度の一次微分曲線。(A)位置2及び3における試験ループグラフトを有する構築物(配列番号8)は、89.9℃のTmを有した。(B)位置1及び2における試験ループグラフトを有する構築物(配列番号9)は、92.0℃のTmを有した。(C)位置1及び3における試験ループグラフトを有する構築物(配列番号10)は、91.3℃のTmを有した。(D)位置1、及び2、及び3における試験ループグラフトを有する構築物(配列番号11)は、89.4℃のTmを有した。
【
図10】本発明の足場のランダム化ライブラリーのコード領域を含むアセンブルされたDNA断片を生成するために使用されたプライマー及びDNA断片の概略的表示。図面中の矢印は、個々のDNA断片の増幅及びアセンブルに使用された、表1に列記されるPCRプライマーのアニーリング位置及び方向を表す。図面中の矩形は、DNA断片を表し、矩形内の標識は、それぞれのDNA断片によりコードされるポリペプチド領域を含むフレームワーク及びループの識別名を表す。矩形の重複領域は、PCRによるDNA断片の結合を可能にする重複相補性ヌクレオチド配列を表す。外部プライマーEcoRIF及びAscIRは、EcoRI及びAscIについての制限酵素部位をそれぞれ含有する。
【
図11】本発明の足場のランダム化ライブラリーのフレームワーク及びループ領域をコードする配列を含むDNA断片の重複伸長PCRアセンブリの概略的表示。図面中の矢印は、個々のDNA断片の増幅及びアセンブルに使用された、表1に列記されるPCRプライマーのアニーリング位置及び方向を表す。図面中の矩形は、DNA断片を表し、矩形内の標識は、それぞれのDNA断片によりコードされるポリペプチド領域を含むフレームワーク及びループの識別名を表す。矩形の重複領域は、PCRによるDNA断片の結合を可能にする重複相補性ヌクレオチド配列を表す。外部プライマーEcoRIF及びAscIRは、EcoRI及びAscIについての制限酵素部位をそれぞれ含有する。(A)FR1+L1、FR2+L2及びFR3+L3+FR4のコード領域を含むDNA断片の第1PCRアセンブリの表示。(B)FR1-L1+FR2-L2+FR3-L3-FR4のコード領域を含むDNA断片の後続のアセンブリを示す第2PCRアセンブリの表示。(C)ランダム化足場ライブラリーのコード領域を含む得られたDNA断片を示すアセンブルされた産物の表示。
【
図12A】標的PD-L1に対する選択アウトプットからの個々のクローンのELISAスクリーニング。棒グラフは、PD-L1標的を、(i)5nMの濃度、及び(ii)0.5nMの濃度(それぞれプレート1及びプレート2)において用いて実施された第3ラウンドのファージディスプレイ選択のアウトプットから得られたクローンから得られたELISAシグナルを示す。
【
図12B】標的HER2に対する選択アウトプットからの個々のクローンのELISAスクリーニング。棒グラフは、HER2標的を、(i)5nMの濃度、及び(ii)0.5nMの濃度(それぞれプレート3及びプレート4)において用いて実施された第3ラウンドのファージディスプレイ選択のアウトプットから得られたクローンから得られたELISAシグナルを示す。
【
図13】本発明の足場の選択精製ELISA陽性標的結合タンパク質の変性SDS-PAGE(4~12%)分析。タンパク質を、誘導発現構築物を含有する大腸菌(E. coli)XL1-Blue細胞の溶解物の可溶性分画からコバルトアガロースビーズ上で天然条件下において精製した。各ゲルレーン中でロードされた精製タンパク質の量は、100マイクロリットルの一晩2×YTブロス振盪フラスコ培養物に由来する量と同等である。タンパク質をクマシーブルー染色で可視化した。矢印は、分子量計算に基づく足場タンパク質のおよその予測移動位置を示す。サンプルレーンは、図面の上部において標識される。レーンM:Precision Plus Protein Standard(Bio-Rad);レーン1:1-12D(配列番号52);レーン2:1-12B(配列番号53);レーン3:2-8B(配列番号54);レーン4:1-2A(配列番号55);レーン5:1-3E(配列番号56);レーン6:1-12C(配列番号57);レーン7:1-10B(配列番号58);レーン8:1-1E(配列番号59);レーン9:2-3H(配列番号60);レーン10:2-6D(配列番号61);レーン11:3-1D(配列番号62);レーン12:3-3A(配列番号63);レーン13:3-5A(配列番号64);レーン14:3-7E(配列番号65);レーン15:3-8A(配列番号66);レーン16:3-10H(配列番号67);レーン17:4-3E(配列番号68);レーン18:4-7D(配列番号69);レーン19:4-9B(配列番号70);レーン20:4-12B(配列番号71)。
【
図14】本発明の足場の選択精製ELISA陽性標的結合タンパク質の変性SDS-PAGE(4~12%)分析。タンパク質を、誘導発現構築物を含有する大腸菌(E. coli)XL1-Blue細胞の溶解物の可溶性分画からコバルトアガロースビーズ上で天然条件下において精製した。各ゲルレーン中でロードされた精製タンパク質の量は、100マイクロリットルの一晩2×YTブロス振盪フラスコ培養物に由来する量と同等である。タンパク質をクマシーブルー染色で可視化した。矢印は、分子量計算に基づく足場タンパク質のおよその予測移動位置を示す。サンプルレーンは、図面の上部において標識される。レーンM:Precision Plus Protein Standard(Bio-Rad);レーン1:1-12B(配列番号53);レーン2:1-2A(配列番号55);レーン3:1-3E(配列番号56);レーン4:1-12C(配列番号57);レーン5:1-1E(配列番号59);レーン6:2-3H(配列番号60);レーン7:1-8E(配列番号72);レーン8:1-11C(配列番号73);レーン9:1-1B(配列番号74);レーン10:1-12E(配列番号75);レーン11:1-1F(配列番号76);レーン12:2-5H(配列番号77);レーン13:2-5C(配列番号78);レーン14:2-7B(配列番号79)。
【
図15】本発明の足場の選択精製ELISA陽性標的結合タンパク質及びフェルビドバクテリウム・ペンニボランス(Fervidobacterium pennivorans)の走化性タンパク質CheYに由来する試験ループグラフト構築物(配列番号49)の精製タンパク質の変性SDS-PAGE(4~12%)分析。タンパク質を、誘導発現構築物を含有する大腸菌(E. coli)XL1-Blue細胞の溶解物の可溶性分画からコバルトアガロースビーズ上で天然条件下において精製した。各ゲルレーン中でロードされた精製タンパク質の量は、100マイクロリットルの一晩2×YTブロス振盪フラスコ培養物に由来する量と同等である。タンパク質をクマシーブルー染色で可視化した。矢印は、分子量計算に基づく足場タンパク質のおよその予測移動位置を示す。レーンは、図面の上部において標識される。レーンM:Precision Plus Protein Standard(Bio-Rad);レーン1:3-3A(配列番号63);レーン2:3-7E(配列番号65);レーン3:3-8A(配列番号66);レーン4:4-7D(配列番号69);レーン5:フェルビドバクテリウム・ペンニボランス(Fervidobacterium pennivorans)の走化性タンパク質CheYに由来する試験ループグラフト構築物(配列番号49)。
【
図16A】本発明の足場の選択精製ELISA陽性標的結合タンパク質の示差走査蛍光測定(DSF)により得られた蛍光強度の一次微分曲線。各タンパク質の融解温度は、図面に示され、(i)1-12C:84.5℃;(ii)1-2A:84.6℃;(iii)1-3E:85.6℃である。タンパク質の配列識別名は、それぞれ配列番号57、配列番号55及び配列番号56である。
【
図16B】本発明の足場の選択精製ELISA陽性標的結合タンパク質の示差走査蛍光測定(DSF)により得られた蛍光強度の一次微分曲線。各タンパク質の融解温度は、図面に示され、(i)1-1B:81.3℃;(ii)1-8E:82.8℃;(iii)1-12E:88.0℃である。タンパク質の配列識別名は、それぞれ配列番号74、配列番号72及び配列番号75である。
【
図16C】本発明の足場の選択精製ELISA陽性標的結合タンパク質の示差走査蛍光測定(DSF)により得られた蛍光強度の一次微分曲線。各タンパク質の融解温度は、図面に示され、(i)1-11C:81.0℃;(ii)2-7B:84.3℃である。タンパク質の配列識別名は、それぞれ配列番号73及び配列番号79である。
【
図16D】本発明の足場の選択精製ELISA陽性標的結合タンパク質の示差走査蛍光測定(DSF)により得られた蛍光強度の一次微分曲線。各タンパク質の融解温度は、図面に示され、(i)3-7E:85.9℃;(ii)3-8A:81.9℃である。タンパク質の配列識別名は、それぞれ配列番号65及び配列番号66である。
【
図16E】本発明の足場の選択精製ELISA陽性標的結合タンパク質の示差走査蛍光測定(DSF)により得られた蛍光強度の一次微分曲線。各タンパク質の融解温度は、図面に示され、(i)4-7D:82.4℃;(ii)3-3A:81.6℃である。タンパク質の配列識別名は、それぞれ配列番号69及び配列番号63である。
【
図17A】本発明の足場の選択精製PD-L1結合タンパク質の親和性決定。EC
50をELISAにより決定した。EC
50は、図面上において、(i)1-12E:165nM;(ii)1-1B:108nM;(iii)1-12C:91nMと示される。タンパク質の配列識別名は、それぞれ配列番号75、配列番号74及び配列番号57である。
【
図17B】本発明の足場の選択精製HER2結合タンパク質の親和性決定;EC
50をELISAにより決定した。EC
50は、図面上において、(i)3-8A:4nM;(ii)4-7D:65nM;(iii)3-7E:22nMと示される。タンパク質の配列識別名は、それぞれ配列番号66、配列番号69及び配列番号65である。
【
図18】CheB
cドメイン配列番号1(クエリ)と、フェルビドバクテリウム・ペンニボランス(Fervidobacterium pennivorans)の走化性タンパク質CheY中のオーソロガスドメイン配列番号48(サブジェクト)、GenBank ID:ANE42371.1アミノ酸残基147~337とのポリペプチド配列アラインメントのコンピュータ生成アウトプットの部分の概略的表示。クエリ及びサブジェクトポリペプチドにおける試験ループグラフト化のために選択される位置は、枠で囲まれる。2つのタンパク質の相同性領域間で78%のアミノ酸残基同一性の相同性が観察された。配列アラインメントは、NCBI(米国国立生物工学情報センター)ウェブサイト上のblastpアルゴリズムを用いて実施した。フェルビドバクテリウム属種(Fervidobacterium sp.)由来タンパク質の残基ナンバリングは、GenBank IDナンバリングスキームに対応する。
【
図19】フェルビドバクテリウム・ペンニボランス(Fervidobacterium pennivorans)由来タンパク質ドメインの試験ループグラフト化の概略的表示。(A)試験ループグラフト化のために選択された位置に下線が付された、フェルビドバクテリウム・ペンニボランス(Fervidobacterium pennivorans)の走化性タンパク質CheY GenBank ID:ANE42371.1アミノ酸残基147~337のポリペプチド配列(配列番号48)の概略的表示。図面中の残基ナンバリングは、配列番号48に対応する。(B)人工試験ループグラフトに下線が付された、フェルビドバクテリウム・ペンニボランス(Fervidobacterium pennivorans)の走化性タンパク質CheY GenBank ID:ANE42371.1アミノ酸残基147~337に由来する試験ループグラフト構築物のポリペプチド配列(配列番号49)の概略的表示。図面中の残基ナンバリングは、配列番号49に対応する。
【
図20】フェルビドバクテリウム・ペンニボランス(Fervidobacterium pennivorans)の走化性タンパク質CheYの野生型ポリペプチド配列GenBank ID:ANE42371.1アミノ酸残基147~337(配列番号48)(サブジェクト)と、対応する試験ループグラフト構築物(配列番号49)(クエリ)とのポリペプチド配列アラインメントのコンピュータ生成アウトプットの部分の概略的表示。配列アラインメントは、NCBI(米国国立生物工学情報センター)ウェブサイト上のblastpアルゴリズムを用いて実施した。野生型CheYポリペプチド配列(サブジェクト)の図面中の残基ナンバリングは、GenBank IDナンバリングスキームに対応する一方、試験ループグラフト構築物(クエリ)の図面中の残基ナンバリングは、配列番号49に対応する。
【
図21】フェルビドバクテリウム・ペンニボランス(Fervidobacterium pennivorans)の走化性タンパク質CheYに由来する試験ループグラフト構築物(配列番号49)の精製タンパク質の示差走査蛍光測定(DSF)により得られた蛍光強度の一次微分曲線。タンパク質の融解温度は、78.0℃であった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
表
表の簡単な説明
表1.本発明の足場の足場フレームワークDNA断片、試験ループグラフトDNA断片及びランダム化ループ領域DNA断片の増幅、アセンブリ及びクローニングに使用されたPCRプライマーのヌクレオチド配列。
【0020】
表2.位置2及び3における試験ループグラフト(配列番号8)、位置1及び2における試験ループグラフト(配列番号9)、位置1及び3における試験ループグラフト(配列番号10)並びに位置1、及び2、及び3における試験ループグラフト(配列番号11)を有する本発明の足場の試験ループグラフト構築物の精製収量及び融解温度。タンパク質は、2×YT培地中の50mLの大腸菌(E. coli)振盪フラスコ培養物から精製した。
【0021】
【0022】
【0023】
詳細な説明
本明細書に記載のタンパク質足場は、抗体由来断片及び非抗体ドメインの両方に優れるように設計された。抗体断片に対する本発明の足場の主な利点は、構造的なものである。足場は、広範な原核生物に見出される、構造的に保存された安定的で可溶性のタンパク質ドメインに由来する。その結果、足場は、抗体フラグメントよりも優れた折り畳み及び熱安定特性を示す。抗体フラグメントの作製には、抗体の天然フォールドの一部の除去が含まれる。これにより、無傷(intact)の抗体では疎水性環境に埋もれてしまうアミノ酸残基が露出することが多い。これらの疎水性残基には、可変ドメインと定常ドメインの間の界面が含まれる。このような疎水性残基が溶媒にさらされると、凝集の可能性が高くなる。
【0024】
さらに、本発明の足場は、抗体分子の機能的利点を提供する。特に、本発明の足場は、免疫グロブリンでないという事実にかかわらず、人工操作結合表面は、IgG重鎖の可変領域のものとのいくらかの設計された類似性を有し、抗体CDRと類似する様式で溶媒露出可変ループを含む。この構造のため、本発明の足場は、抗体の抗原結合特性と事実上類似する抗原結合特性を有する。結果として、インビボの親和性成熟過程に類似するループランダム化及びシャフリング戦略をインビトロで用いることができる。
【0025】
本発明の足場は、走化性において重要な役割を担い、したがって多くの原核生物において観察されるCheBメチルエステラーゼC末端触媒ドメイン(CheB
c)の構造に基づく。サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)CheB
cドメインは、熱安定性、可溶性及び産生容易であり、特異的標的に結合し得る本発明の足場のバリアントの多様性コレクションの生成を促進する特性を有していることがわかった。さらに、野生型サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)CheB
cドメイン(
図1)の構造的データの分析により、二次構造エレメント及び連結ループ内のいくつかの露出表面残基の位置が示された。これらの露出表面残基は、構造的バリエーションの導入及び人工結合表面を有する足場分子の多様なプールの生成のための魅力的な候補である。本発明において、これらの残基の一部を試験して、ランダム化に対するそれらの好適性を評価した。
【0026】
本発明において、驚くべきことに、CheB
cドメインは、非構造化及び人工的に長いループ領域(
図2及び3)のグラフト化を含む本発明のランダム化設計に顕著に寛容性であることが見出された。本明細書において報告されるとおり、本発明の足場は、実験的試験ループグラフト化を用いると単量体及び熱安定性であることが見出された(
図8及び9)。一般に、不自然に長い非構造化ループの挿入は、所与のドメインを脱安定化させると予測されるため、これは、驚くべきことである(Schilling J. et al., 2014、Nagi A., Regan L. 1997、Regan L. 1999)。本発明において、実験的試験ループは、安定化ループステム領域(例えば、Schilling J. et al., 2014におけるようなもの)も、他の人工操作ループ安定化特徴も含まなかったため、これは、さらに驚くべきことである。さらに、本発明の足場の熱安定性は、ランダム化設計において評価された組換え試験タンパク質構築物中の種々のグラフト化位置(
図6)における2つ又はさらに3つの非構造化試験ループのグラフト化により非合理的に影響を受けず、それらの全てが同様に安定的であった(
図9)。
【0027】
したがって、本発明において、CheBcドメインは、結合タンパク質の単離のための、本発明の足場の高度にランダム化されたライブラリーの人工操作の目的に有効に活用可能であることが見出された。
【0028】
本明細書において用いられたランダム化設計及びランダムスクリーニングアプローチは、目的標的に対する特異的バインダーを得る容易で効率的な手段を提供することが見出された。したがって、本発明の足場は、例えば、限定されるものではないが、多数の標的に対する種々の治療薬、診断薬及び検出試薬の開発に特に有用であることが予測される。
【0029】
上記の結果として、本発明は、組換え足場タンパク質であって、複数のループ領域によって連結されている複数のアルファヘリックス及びベータストランド並びに3
10ヘリックス(改変二重巻きα/βサンドイッチフォールド)(
図4)を含み、配列番号1に対して、ループ領域外で少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する組換えCheB
cドメインを含み;少なくとも1つのループ領域は、配列番号1の同族ループ領域の非天然発生バリアントである、組換え足場タンパク質に関する。
【0030】
3
10ヘリックスは、数個のみのアミノ酸残基からなり、定型的な実験を使用して容易に挿入するか、置換するか又は欠失させて、3
10ヘリックスを欠く本発明の足場のバリアントを生成できることが当業者に明らかである。したがって、本発明の一実施形態は、3
10ヘリックスを欠く本発明の足場のバリアントを含む。同様に、他の二次構造エレメントの一部、例えばβ9(
図4)も小さく、当業者は、最小の労力及び成功するという合理的な期待をもって、それらの個々の二次構造エレメントの1つ以上を欠く本発明の足場のバリアントを導き出すことができる。
【0031】
別の具体的な実施形態において、本発明の足場は、配列番号1の非ループ領域に対応する二次構造エレメントに連結されている、配列番号1の16~18(両端を含む)、29~37(両端を含む)、43~47(両端を含む)、60~61(両端を含む)、66~75(両端を含む)、80~84(両端を含む)、92~93(両端を含む)、103~107(両端を含む)、124~125(両端を含む)、135~137(両端を含む)、149~150(両端を含む)、160~162(両端を含む)、173~176(両端を含む)及び180~181(両端を含む)のアミノ酸残基位置からなる14個のループ領域を含み;前記ループ領域の少なくとも1つは、配列番号1の同族ループ領域の非天然発生バリアントであり;配列番号1に対して、非天然発生バリアントループ領域外で少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0032】
別の具体的な実施形態において、本発明の足場は、ループ領域によって連結された4つのフレームワーク領域FR1(配列番号40)、FR2(配列番号41)、FR3(配列番号42)及びFR4(配列番号43)の配列であって、フレームワーク領域ポリペプチドは、配列番号1の同族領域と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する、配列を含み;少なくとも1つのループ領域は、配列番号1の同族ループ領域の非天然発生バリアントである。
【0033】
別の実施形態において、本発明は、本発明の足場のランダム化バリアントの個々の集合的なライブラリーメンバーをコードする核酸にも関する。ポリペプチド配列をコードする核酸中のバリエーションを導入する種々の方法、例として、限定されるものではないが、縮重コドン又はカップリングされたトリヌクレオチドの混合物を含むDNA断片の取り込み、エラープローンPCR(error-prone PCR)の使用、DNA断片シャフリング並びに種々の他の方法及び方法の組み合わせが存在し、それらの方法は、周知であり、当業者が容易に用いることができる。
【0034】
具体的な実施形態において、トリヌクレオチド混合物のカップリングは、ランダム化DNA断片中で取り込まれるコドンの相対的頻度及び種類の制御の増加を可能にする周知の方法である。しかしながら、この方法では精度が不完全なため、人工コドンも取り込まれ、トリヌクレオチドのランダムな欠失又は挿入も生じる。これらの事象は、偶発的に、有用な特性を有する追加の足場バリアントの単離を可能にし得る追加のバリエーション源を提供し、したがって、この周知の追加のバリエーション源から生じる足場バリアントは、本発明の一実施形態を構成する。同様に、縮重NNKコドンをコードするオリゴヌクレオチドを用いる方法も種々の周知のアーティファクトをもたらす。したがって、これら2つの方法は、ポリペプチド配列における制御及び偶発的バリエーションの両方をコードする多様なDNA断片の生成を可能にする。上記の結果として、本発明の具体的な実施形態において、本発明の足場のフレームワーク領域ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、トリヌクレオチドカップリング若しくは縮重NNKコドンのいずれか又はそれらの組み合わせによりランダム化されたバリアントループ領域ポリペプチドをコードするオリゴヌクレオチドに連結される。
【0035】
別の具体的な実施形態において、バリアントループ領域ポリペプチドをコードするオリゴヌクレオチドは、種々の縮重コドン、例えば、限定されるものではないが、NNK、NNS、NHK、VNK、NNN又はそれらの組み合わせによりランダム化することができる。他の実施形態において、バリアントループ領域ポリペプチドをコードするオリゴヌクレオチドは、例えば、エラープローンPCRにおいてエラープローンポリメラーゼにより、培養細胞若しくは微生物の突然変異誘発株により又は当業者に公知のランダム若しくは標的化突然変異誘発の種々の他の手段によりランダム化することができる。
【0036】
本発明の具体的な実施形態において、本発明の足場のランダム化ループ領域をコードする配列を含むDNA断片(例えば、配列番号16~20に示されるもの)は、本発明の足場のフレームワーク領域をコードする配列を含むDNA断片(例えば、配列番号81~84に示されるもの)と連結され、フレームワーク領域ポリペプチドは、配列番号1の同族領域と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する。具体的な実施形態において、断片は、重複伸長PCRにより、例えば
図10及び11に示されるスキームに表される手段などにより連結される。当然のことながら、組換えDNA分子を生成する他の好適な方法を代用することができ、それらは、当業者に周知である。さらに、ループ長さ及びコードされるランダム化アミノ酸組成の多数のバリエーションは、当業者が実験的に試験して好適にランダム化された足場バリアントを生成することができる。さらに、異なるコードを用いる多数の考えられる核酸配列を利用して、同じポリペプチドをコードさせ得ることが当業者に周知である。当業者は、例えば、本発明の足場の産生収量を最適化する手段として異なる生物内において変動頻度で利用されることが公知のコドンを選択することができる。したがって、本発明の核酸配列は、本明細書に示される代表例に限定されない。
【0037】
具体的な実施形態において、本発明の足場は、4つのフレームワーク領域FR1(配列番号40)、FR2(配列番号41)、FR3(配列番号42)及びFR4(配列番号43)であって、フレームワーク領域ポリペプチドは、配列番号1の同族領域と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する、4つのフレームワーク領域と;3つのループ領域L1(配列番号44)、L2(配列番号44)及びL3(配列番号47)であって、Xaaは、任意のアミノ酸を表す、3つのループ領域とを含み;L1は、FR1とFR2との間に連結され、L2は、FR2とFR3との間に連結され、及びL3は、FR3とFR4との間に連結されて、配置FR1-L1-FR2-L2-FR3-L3-FR4を含む連続ポリペプチドを形成する。別の具体的な実施形態において、L1、L2及びL3ループ領域において、Xaaは、セリン、アスパラギン酸、アルギニン、アラニン、ロイシン、トレオニン、アスパラギン、トリプトファン、グリシン、グルタミン酸、バリン及びチロシンからなる群から選択されるアミノ酸を表す。一実施形態において、本発明の足場は、例えば、配列番号2によって表されるポリペプチドを含む。別の実施形態において、これは、例えば、配列番号5によって表されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによりコードされる。当業者は、最小の労力で他のポリヌクレオチドを代用して、配列番号2によって表されるポリペプチドのコード領域を含むポリヌクレオチドを得ることができる。
【0038】
別の具体的な実施形態において、本発明の足場は、4つのフレームワーク領域FR1(配列番号40)、FR2(配列番号41)、FR3(配列番号42)及びFR4(配列番号43)であって、フレームワーク領域ポリペプチドは、配列番号1の同族領域と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する、4つのフレームワーク領域と;3つのループ領域L1(配列番号45)、L2(配列番号46)及びL3(配列番号47)であって、Xaaは、任意のアミノ酸を表す、3つのループ領域とを含み;L1は、FR1とFR2との間に連結され、L2は、FR2とFR3との間に連結され、及びL3は、FR3とFR4との間に連結されて、配置FR1-L1-FR2-L2-FR3-L3-FR4を含む連続ポリペプチドを形成する。別の具体的な実施形態において、L1及びL2ループ領域において、Xaaは、任意のアミノ酸を表し;L3ループ領域について、Xaaは、セリン、アスパラギン酸、アルギニン、アラニン、ロイシン、トレオニン、アスパラギン、トリプトファン、グリシン、グルタミン酸、バリン及びチロシンからなる群から選択されるアミノ酸を表す。一実施形態において、本発明の足場は、例えば、配列番号3によって表されるポリペプチドを含む。別の実施形態において、これは、例えば、配列番号6によって表されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドによりコードされる。当業者は、最小の労力で他のポリヌクレオチドを代用して、配列番号3によって表されるポリペプチドのコード領域を含むポリヌクレオチドを得ることができる。
【0039】
一部の実施形態において、本発明の足場は、他の結合分子から得られるループ領域、例えば、限定されるものではないが、抗体のCDR又は公知の結合活性を有する他のポリペプチドから得られるループ領域のグラフト化により標的に結合するように作製することができる。他の実施形態において、公知の活性を有するペプチド、例えば抗菌ペプチド、細胞膜貫通ペプチド、血小板凝集阻害ペプチド、転移阻害ペプチド、免疫調節ペプチド及び公知の活性を有する他のペプチドを足場中にグラフト化することができる。
【0040】
他の実施形態において、親和性成熟を本発明の足場に対して実施して、親クローンよりも強い又は弱い結合親和性又は生物学的活性を有するバインダーを得ることができる。当業者に周知である、親和性成熟目的のために配列バリエーションを導入する多くの方法、例として、限定されるものではないが、ループランダム化、エラープローンPCR、セクシャルPCR及び他の方法が存在する。このような方法を使用して変更された生物物理学的、生理学的又は他の特性を有するバインダーを得ることもできる。
【0041】
他の実施形態において、本発明の足場は、例えば、種々の異なるループ長さ、ループグラフト化位置、ループアミノ酸組成及びグラフト化ループの数でランダム化することができる。CheBcドメインが、非構造化及び人工的に長いループ領域のグラフト化を含む本発明のランダム化設計に顕著に寛容性であるという本明細書における知見を認識して、当業者は、最小の労力で他のグラフト化解決法を容易に見出すこともできると合理的に予想できる。したがって、定型的な試験を使用して成功するという合理的な期待をもって代替ランダム化ループグラフト化スキームを同定することは、当業者に自明な事項である。
【0042】
一部の実施形態において、バリエーションは、本発明の足場の1つ以上の構造領域中にループ領域外で導入することができる。本明細書に開示される知見を認識して、例えば自由に利用可能な構造データを使用することにより、当業者は、単に定型的な試行錯誤により、突然変異及びランダム化に好適な足場の領域を同定し、試験することができる。したがって、一実施形態において、これらの非ループ領域を構造的バリエーションの導入及び人工結合表面を有する足場分子の多様なプールの生成に使用することができる。
【0043】
別の実施形態において、ランダム化法を用いて、ループ領域、非ループ領域のバリアント及びそれらの組み合わせを含む人工結合表面を有する足場分子の多様なプールを生成することができる。
【0044】
一部の実施形態において、バリエーションは、以前にランダム化されていない本発明の足場の領域中に導入して、本発明のさらなるランダム化ライブラリーを生成することができる。このようなバリアントは、例えば、限定されるものではないが、より高い若しくはより低い親和性を有するか、又は変更された生物物理学的、生理学的若しくは他の特性を有する標的に対するバインダーを生成するため、以前にランダム化されていないループ領域又は足場フレームワーク領域のバリアントを含み得る。
【0045】
他の実施形態において、本発明の足場の短縮又は伸長バージョンを容易に生成することができる。例えば、配列番号1の最初の4つのアミノ酸残基は、野生型CheBcドメイン(PDB ID:3SFT)(配列番号80)を含むポリペプチドの結晶構造において解像されないことが公知である。したがって、これらの4つの残基は、本発明の足場の構造に必須ではなく、それらのN末端残基の1、2、3、4つ以上を自由に置換又は欠失させ得ることは、当業者に明らかである。他の実施形態において、本明細書に開示される本発明の足場の高い熱安定性を認識して、定型的実験により、構造及び配列データを利用することにより、成功するという合理的な期待をもって本発明の足場の種々のN末端、C末端又は内部短縮若しくは伸長バージョンを生成することは、当業者に自明な事項である。
【0046】
別の実施形態において、本発明の足場の循環置換バージョンは、足場分子のN末端及びC末端を連結させ、新たな末端を別の位置において導入することにより形成することができる。足場のN末端及びC末端は、互いに近接していることを理解し、足場の安定性を認識して、足場の利用可能な構造データを使用して、代替末端の人工操作に好適な位置を同定し、循環置換された本発明の足場を生成することは、当業者に明らかであり、自明である。このような構築物は、容易に人工操作し、安定性について過度の労力なしで単に定型的な実験を使用して試験することができる。
【0047】
別の実施形態において、末端を有さない本発明の足場の環状化分子は、例えば、インテイン媒介トランススプライシング環状化、ジスルフィド結合形成、イソペプチド結合形成又は当業者に公知の種々の化学若しくは分子生物学的技術を使用して構築することもできる。環状化タンパク質は、一般に、向上した立体構造安定性並びにエキソペプチダーゼ及び熱分解に対する耐性を有することが周知である。
【0048】
別の実施形態において、向上した安定性を有する本発明の足場は、種々の手段、例えば分子内ジスルフィド結合、分子内化学架橋、イソペプチド結合形成の導入及び他の周知の手段などにより生成することができる。別の実施形態において、周知の安定性成熟技術、例えば突然変異足場バリアントのライブラリーの生成を含むもの及び向上した安定性又は産生収量に基づく周知の選択方法を実施することができる。別の実施形態において、向上した安定性バリアントの合理的設計を実施することができる。さらに別の実施形態において、本発明の足場と、高い溶解度又は安定性を有することが公知のタンパク質との融合物を使用して、本発明の足場を含む分子の全体的な溶解度又は安定性を改善することができる。別の実施形態において、凝集に対する耐性、又はタンパク質分解酵素による分解に対する耐性、又は化学分解に対する耐性を上記のもの又は他の周知の安定性向上及び選択技術により改善することができる。
【0049】
CheBcドメインのアミノ酸配列は、非常に多様であるにもかかわらず、多様な種からのCheBcドメイン中で高い構造的保存が存在することが公知である(Cho K., et al., 2011)。したがって、公知の構造的保存を使用して、例えば本発明において報告されるものに対応するオーソロガスループ領域を同定することにより、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)CheBcドメインとオーソロガスなドメインを含むタンパク質からランダム化タンパク質足場を開発することは、当業者に自明である。
【0050】
別の実施形態において、ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列相同性検索を使用して、本発明と同様に活用することができるタンパク質を同定することができる。例えば、定型的なポリペプチド相同性検索により、いくつかのタンパク質、例としてフェルビドバクテリウム・ペンニボランス(Fervidobacterium pennivorans)の走化性タンパク質CheYのドメイン(GenBank ID:ANE42371.1アミノ酸残基147~337)(配列番号48)のものが、CheB
cドメイン(配列番号1)との相同性を示すことを決定することができる(
図18)。したがって、フェルビドバクテリウム属種(Fervidobacterium sp.)タンパク質ドメインを、試験ループグラフト化のための多くの同定された相同性候補のうちの1つの候補として選択した。本発明に開示されるループグラフト位置を使用することにより、ポリペプチド配列アラインメントを容易に使用して、フェルビドバクテリウム属種(Fervidobacterium sp.)タンパク質ドメイン上の候補試験ループグラフトのための挿入点を指示することができる(
図18)。別の実施形態において、上記を認識して、当業者は、構造情報、例えば自由に利用可能な予測構造モデリングソフトウェア(例えば、SWISS-MODEL, University of Baselなど)から入手可能なものをさらに使用して、フェルビドバクテリウム属種(Fervidobacterium sp.)タンパク質ドメイン中の個々の露出ループ残基位置を容易に予測し、候補試験ループグラフトのための挿入点を一層より正確に指示することができる。本発明に開示されるランダム化方針の詳細をさらに使用することにより、人工的に長い試験ループ領域を容易にグラフト化することができる(
図19及び20)。この例において、得られた人工的に試験ループグラフト化されたフェルビドバクテリウム属種(Fervidobacterium sp.)タンパク質(配列番号49)は、3つの不自然に長い非構造化試験ループを有するにもかかわらず、野生型フェルビドバクテリウム属種(Fervidobacterium sp.)タンパク質(配列番号48)とCheB
cドメイン(配列番号1)との配列同一性は、80%未満でありながら、容易に産生され、熱安定性であった(
図21)。さらに、フェルビドバクテリウム属種(Fervidobacterium sp.)タンパク質の個々のループグラフト化バリアントは、本発明の足場との一層低い配列相同性を示すことが予測される。これらの知見を使用することにより、本発明に記載のライブラリー構築及びスクリーニングの結果を認識して、成功するという合理的な期待をもって、例えば上記のフェルビドバクテリウム属種(Fervidobacterium sp.)タンパク質ドメインのランダム化ライブラリーを構築し、目的標的への結合特性を有するタンパク質分子を得ることは、当業者に周知の技術を使用する定型的な作業を要求するにすぎない。したがって、本発明における開示及び教示を認識して、本発明の足場と同様に活用可能な特性を有する他の相同性タンパク質を容易に同定し、使用することは、当業者に基礎的な技能及び定型的実験を要求するにすぎない。
【0051】
本発明のさらなる実施形態は、本発明のランダム化ライブラリーを標的分子への特異的結合についてスクリーニングする手段を対象とする。
【0052】
本発明の一実施形態は、標的に結合するポリペプチド足場を得る方法であって、(a)標的リガンドを、ランダム化ライブラリーと、足場:標的リガンド複合体の形成を可能にする条件下で接触させること、及び(b)複合体から、標的リガンドに結合する足場を得ることを含む方法を含む。
【0053】
全ての選択技術の基本原理は、表現型(すなわちディスプレイされるタンパク質)及び遺伝子型(すなわちディスプレイされるタンパク質をコードする核酸)の物理的会合である。様々な選択技術は、様々な方針を使用してこの会合を達成し、当業者に周知である。したがって、一部の実施形態において、このような技術の例としては、限定されるものではないが、ウイルスディスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ、哺乳類細胞ディスプレイ、mRNAディスプレイ、リボソームディスプレイ、cDNAディスプレイ又はファージディスプレイが挙げられる。例えば、繊維状ファージディスプレイは、極端な選択条件、例えば加熱(Dudgeon K., et al., 2013)及び生きた動物におけるインビボ選択(Du B., et al., 2010)においても生存可能であることが観察されている。
【0054】
本発明の具体的な実施形態において、ファージディスプレイが選択技術として選択される。
【0055】
ほとんどのファージディスプレイ法は、繊維状ファージを使用しているが、ラムドイドファージディスプレイ系、T4ファージディスプレイ系及びT7ファージディスプレイ系も公知である。
【0056】
本発明の具体的な実施形態において、ファージディスプレイは、繊維状M13ファージの全長pIIIタンパク質に融合している本発明の足場を用いて実施される。しかしながら、本発明の足場のファージディスプレイは、この例に限定されない。繊維状ファージディスプレイは、目的タンパク質を全長pIIIマイナーコートタンパク質のN末端又はその短縮誘導体若しくはその組換え誘導体に融合させることにより実施することができ、それらは、当業者が容易に代用できることが当業者に周知である。
【0057】
ファージの表面上の目的タンパク質のディスプレイは、典型的には、細菌ペリプラズムへの目的タンパク質のトランスロケーションに依存的であることが当業者に周知である。一部の実施形態において、ファージコートタンパク質に融合している目的タンパク質を含む融合タンパク質がトランスロケートされる。他の実施形態において、目的タンパク質は、ペリプラズムへのトランスロケーション後、ファージコートタンパク質とのジスルフィド結合の形成が許容される。ペリプラズムへの種々の目的タンパク質のトランスロケーションに好適な種々のシグナル配列が記載されており、当業者に周知である。追加のシグナル配列は、ペリプラズムに効率的に及び豊富に輸送されることが既に公知のタンパク質から容易に同定することができ(Schmidt A. et al., 2015)、これらの明らかな選択シグナル配列を、当業者に公知の確立された技術により目的タンパク質に容易に融合させることができる。周知のアッセイ、例えばELISAなどを容易に用いて、種々のシグナル配列と融合した場合のファージ粒子上の目的タンパク質のディスプレイをモニタリングすることができる(Zhao N. et al., 2016)。したがって、定型的な実験を使用し、過度の実験なしで、成功するという合理的な期待をもって、本発明の足場のファージディスプレイの目的のためにシグナル配列の多様性を活用する種々の好適なファージディスプレイベクターを構築することは、当業者に自明な事項である。
【0058】
本発明の具体的な実施形態において、ライブラリーインサートの制限部位に対応するEcoRI及びAscI制限酵素部位を含む改変pADL-10bファージミドベクター(Antibody Design Labs)を、本発明のライブラリーの構築及び本発明の足場と、ファージ粒子上のディスプレイのためのファージpIIIタンパク質との融合物の生成に使用する。本発明のランダム化足場をコードするDNA断片を、ベクター中にEcoRI及びAscI部位を介してクローニングして、異なるランダム化足場ライブラリーメンバーをコードする多数の異なる組換えファージミドを生成する。多数の他の好適な制限酵素又は組換えDNAを生成する他の好適な方法が当業者に周知であり、それを代用することができる。
【0059】
具体的な実施形態において、次いで、これらの組換えファージミドを大腸菌(E. coli)株XL1-Blue中に形質転換して、本発明の足場の多数の異なるランダム化ライブラリーメンバーを集合的にコードする多数のクローンを生成する。当然のことながら、多くの他の好適な大腸菌(E. coli)株、例えばTG1を容易に代用することができ、それは、当業者に周知である。典型的には、1×1010のメンバーの桁のライブラリー複雑性をこの方法により得ることができる。
【0060】
本発明の具体的な実施形態において、続いて、このライブラリーに、公知の方法に従って液体培養物中でM13-ヘルパーファージ、例えばVCSM13を超感染させる。他のヘルパーファージ株、例えばM13KO7などを容易に代用することができ、それは、当業者に周知である。これらのヘルパーファージ株は、成熟ファージ粒子へのファージミド(本発明の足場をコードする個々のランダム化ライブラリー遺伝子を含有する)のパッケージングを優先する突然変異DNA配列を含有することが多く、したがって足場の個々のファージディスプレイされるランダム化ライブラリーメンバーとそれらをコードする遺伝子との物理的結合を生成する。
【0061】
具体的な実施形態において、この感染後、本発明の足場のランダム化ライブラリーメンバーをディスプレイするファージ粒子の産生のために培養物のインキュベーション温度を低減させる。具体的なインキュベーション温度は、本発明の足場とファージコートタンパク質との融合タンパク質が効率的に産生されることが公知の温度、例えば26℃である。本発明の具体的な実施形態において、本発明の足場とのpIII融合タンパク質の遺伝子の発現を細菌細胞中でファージミドlacプロモーターから、0.5mMまでのIPTGの添加により誘導する。誘導条件は、産生されるファージのかなりの分画が少なくとも1つの本発明のランダム化足場を表すように選択される。当然のことながら、当業者は、単に自明な実験により他の好適な実験条件、例として他のファージミドプロモーター、誘導条件などの使用を容易に選択することができる。
【0062】
別の具体的な実施形態において、得られる組換えファージの混合物を例えば16時間の培養物インキュベーション段階後に単離する。培養物からのファージ混合物の単離の種々の方法、例えば細菌培養物上清からのポリエチレングリコール及びNaClの濃縮溶液を用いる沈殿などが公知である。次いで、本発明の足場の多数のランダム化ライブラリーメンバーをディスプレイする単離ファージ混合物を好適な緩衝液、例えば20%(v/v)グリセロールを有するPBS中で再懸濁させ、-80℃における貯蔵のためにアリコート化する。他の好適な貯蔵緩衝液及び貯蔵条件は、当業者に周知であり、それを代用することができる。典型的には、この方法により得られるファージタイターは、1ミリリットル当たり1013個のファージ粒子の桁のものである。
【0063】
別の実施形態において、それぞれのファージ粒子上でディスプレイされる本発明の多数の個々のランダム化足場を含有するこれらのファージライブラリーストックを、当業者に周知の選択方法により所望の標的に対する高親和性バインダーを得る資源として使用する。標的に対するバインダーを選択するこの方法の多くの考えられるバリエーション、例えば表面上で所望の標的分子を過剰発現する細胞の使用(タンパク質複合体に対するバインダーを得るため)、又は細菌若しくはウイルス粒子に対する選択(感染性物質に対する治療候補を得るため)、又は生存動物におけるインビボ選択(腫瘍若しくは腫瘍特異的バインダーを得るため)、又は上記から得られる構成成分に対する選択が存在する。一部の実施形態において、これらの方法は、標的分子を固体担体に固定化し、ファージライブラリーと所定の時間間隔インキュベートし、未結合ファージライブラリーメンバーを洗浄除去し、溶出緩衝液(例えば、酸性緩衝液、例えば100mMのグリシンpH2.2を含有する緩衝液など)を使用して、所望の標的分子に結合するファージライブラリーメンバーを溶出させることの実施可能性を含む。当業者に周知の多数の他の溶出方法、例えば塩基性pHを有する緩衝液の使用、プロテアーゼ、例えばトリプシン、高塩濃度緩衝液の使用、バインダーを放出させる非標識標的との競合、標的に結合することが公知の他の分子との競合、標的の構造を変更する条件の使用及び容易に用いることができる他の技術が存在する。
【0064】
一実施形態において、溶出されたファージライブラリーメンバーは、次いで、大腸菌(E. coli)の好適な株に感染させ、濃縮ファージライブラリーメンバーの複数コピーを生成し、次いでそれらを後続の選択サイクルに使用して結合クローンのさらなる濃縮物を得るために使用される。
【0065】
本発明の別の実施形態において、濃縮プロセスの種々の段階において得られる選択アウトプットの多様性は、選択アウトプットをバリアントループ領域のコレクションで組み換えて濃縮ライブラリーメンバーのバリアントの集団を生成することによりさらに増加させることができる。他の実施形態において、このようなバリアントは、例えば、ループ領域をランダム化バリアントで置換すること、追加のループ領域をランダム化すること又は足場フレームワークのバリアントを生成することにより導入することができる。一実施形態において、PCRを使用して選択アウトプットから得られたDNAを、バリアントループ領域をコードするDNA断片で組み換えることができ、それらを使用して、濃縮ライブラリーメンバーのバリアントをディスプレイするファージを生成することもできる。これらのタイプの濃縮ライブラリーメンバーバリアントの一部又は全部を用いた選択サイクルをさらに繰り返して、所望の特性、例えば増加した親和性などを有する、より多様な標的結合クローンを得ることができる。したがって、一実施形態において、トリヌクレオチドカップリング又は縮重コドンを使用して生成されたループバリアントの混合物を含み、多数の他の周知の方法により導入されるバリエーションも含むライブラリーメンバーを得ることができる。
【0066】
本発明の具体的な実施形態において、標的をビオチンで標識し、次いでストレプトアビジン、ニュートラアビジン(neutravidin)又は当業者に公知の類似のビオチン結合分子でコーティングされた表面へのビオチン化標的の後続の捕捉を行う。一部の実施形態において、ビオチン結合表面でコーティングされた常磁性ビーズを用いることができる。この方法において、標的分子の濃度は、正確に制御することができ(例えば、500nM~50pM以下)、それは、高親和性結合ライブラリーメンバーの選択を促進する。当然のことながら、周知であり、当業者が用いることができる標的提示及び選択条件における多数のバリエーションが存在する。
【0067】
別の実施形態において、多数の選択サイクル後、所望の標的への結合について濃縮されたファージライブラリークローンの集団が得られる。結合活性を有する本発明の足場のタンパク質をコードする個々のファージミドクローンがこの集団中に含有される。これらのバインダーをコードする遺伝子は、ファージミドのDNA精製若しくはPCR増幅又は当業者に公知の種々の他の方法により得ることができ、ポリペプチド配列は、当業者に周知のDNAシーケンシング技術により容易に得ることができるそれらのDNA配列から推定することができる。別の実施形態において、適切な発現ベクター中へのサブクローニング後、目的の個々の本発明の足場は、当業者に周知の種々の宿主細胞又はインビトロ翻訳系からの種々の精製手順を使用して精製することができる。ELISA及び表面プラズモン共鳴などの技術又は当業者に周知の種々の他の技術を使用して、個々のバインダーの結合親和性及び特異性を特徴付けることができる。
【0068】
本発明のさらなる実施形態は、本発明の足場の結合タンパク質又は融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター並びに前記ポリヌクレオチド及び/又は前記ベクターを含む宿主細胞に関する。ポリヌクレオチドは、DNA、RNA又はそれらの任意の他のアナログであり得る。複数の目的に合わせるために利用することができる、当業者に公知の多くのベクター及び宿主細胞が存在する。このような目的としては、(限定されるものではないが)例えばタンパク質産生若しくは遺伝子療法又は目的タンパク質をディスプレイ若しくはコードするウイルス粒子の産生を挙げることができる。当業者は、多数の周知の見解からポリヌクレオチド、ベクター及び宿主細胞を選択し、それらの好適性を定型的方法により確認することができる。
【0069】
本発明の別の実施形態において、本発明の足場を含むポリペプチドのコード領域を含むポリヌクレオチドは、例えば疾患の処置の目的のための前記ポリヌクレオチドの投与による前記ポリペプチドのインビボ産生に使用することができる。一実施形態において、前記ポリペプチドをコードするヌクレオシド改変RNAをポリマーベース又は脂質ベース配合物中で静脈内投与して、患者の体内で核酸の翻訳及びポリペプチドの産生を可能にすることができる。
【0070】
他の実施形態において、本発明は、本発明の足場及びそれに由来する融合タンパク質の発現及び精製に関する。
【0071】
一実施形態において、これは、(a)標的リガンドに結合する足場をコードする核酸分子を単離すること、(b)核酸を発現ベクターに作動可能に結合させること、及び(c)発現ベクターに作動可能に連結された核酸を細胞中で発現させることを含む。
【0072】
多数の宿主生物、例えば大腸菌(E. coli)及び他の細菌株、酵母及び他の真核生物細胞、例として哺乳類細胞及び昆虫細胞及び多細胞生物並びに無細胞発現系を組換えタンパク質産生に用い得ることが当業者に周知である。さらに、多数の発現ベクターと発現方法との間の選択が考えられる。本発明の足場は、当業者に周知の多数の確立された方法により産生及び精製することができる。方法の好適性は、使用される宿主細胞、用いられる発現ベクター及び発現方針並びに当業者に公知の他の要因に依存する。したがって、一部の実施形態において、組換えタンパク質産生のこれらの周知の方法は、当業者が容易に用いることができる。
【0073】
具体的な実施形態において、本発明の足場の精製は、ある材料への公知の親和性を有する親和性タグペプチド配列の融合により簡易化することができる。例えば、あるタグ、例えばポリヒスチジンタグ、FLAGタグ、Strep tag、グルタチオンS-トランスフェラーゼ及び多数の他のタグが当業者に周知であり、それらを多数の親和性精製スキームにおいて使用することができる。例えば、これらのタグは、目的組換えタンパク質に簡便に融合させ、それを用いて、組換えタンパク質を複合体混合物から樹脂上又はカラム中などに固定化されたそれらのそれぞれの親和性パートナーにより選択的に捕捉することができる。別の実施形態において、本発明の足場自体の結合標的(又は結合標的のバリアント)を当業者が親和性精製スキームにおいて使用することができる。本発明のさらなる具体的な実施形態において、このような親和性タグは、親和性タグと足場との間のプロテアーゼ開裂部位の人工操作により、本発明の足場の組換え結合タンパク質から除去することができる。多数のプロテアーゼ部位、例えばタバコエッチ病ウイルス(TEV)プロテアーゼ、トロンビン、第Xa因子のもの及び多数の他のプロテアーゼ部位が当業者に周知であり、それらを自由に選択することができる。
【0074】
別の実施形態において、得られた本発明の足場は、非改変状態で使用することができるか、又は種々の融合タンパク質、例えば二重特異的若しくは多重特異的結合分子若しくは種々の他の構成成分への融合物の構築によりさらに改変することができる。前記融合物及び以下の実施形態に記載のものは、例えば、限定されるものではないが、二量体化ドメイン、共有イソペプチド結合、化学架橋、ジスルフィド結合、アミノ酸リンカー又は当業者に周知の別の手段により形成することができる。1つの具体的な実施形態において、前記アミノ酸リンカーは、小型及び/又は親水性アミノ酸、例えばグリシン、セリン、アラニン及びトレオニン残基を含む可溶性でフレキシブルなポリペプチドリンカーを含むが、当業者は、多数の他のアミノ酸の組み合わせを用いて、所望の特性を有するリンカーを生成することができる。
【0075】
したがって、別の実施形態において、本発明は、二重特異的又は二価融合分子を生成するために少なくとも2つの本発明の足場を含む融合タンパク質に関する。別の実施形態において、本発明の足場を融合させて多重特異的及び/又は多価融合分子を生成することもできる。
【0076】
別の実施形態において、本発明は、多重特異的及び/又は多価標的結合タンパク質を生成するために追加の結合ドメイン、例えばscFvなど又は結合活性を有する他のドメインに融合している1つ以上の本発明の足場を含む融合タンパク質にも関する。
【0077】
追加の実施形態において、本発明は、共有結合的又は非共有結合的に会合して多タンパク質複合体を形成し、したがって多価及び/又は多重特異的結合活性を有するタンパク質複合体を生成する、本発明の足場と1つ又は複数のタンパク質との融合物に関する。前記融合物は、例えば、限定されるものではないが、二量体化ドメイン、化学架橋、ジスルフィド結合、イソペプチド結合、アミノ酸リンカー又は当業者に周知の別の手段により形成することができる。
【0078】
追加の実施形態において、本発明は、機能Fcドメイン、一部の具体的な実施形態において、ヒトFcドメインに融合している1つ以上の本発明の足場を含む融合タンパク質に関する。これは、N末端若しくはC末端Fc融合物又はFcドメインの内部領域若しくはそれらの組み合わせへの融合物を含み得る。さらに、得られた融合タンパク質は、異なるリガンド標的についての特異性を有する異なる本発明の結合足場を含み得、したがって二重特異的又は多重特異的リガンド結合融合タンパク質を生成する。別の実施形態において、1つ以上の本発明の足場を既存の抗体に融合させて、向上した機能性、例えば多重特異的結合などを生成することもできる。さらに別の実施形態において、Fcドメインを使用して、本発明の結合タンパク質の特異的結合部位に対する生物の免疫応答を標的化又は再指向させることができる。
【0079】
さらなる実施形態において、1つ以上の本発明の足場を用いる一価、二重特異的又は多重特異的構築物を免疫治療用途、例えばCAR-T細胞様療法の開発で使用することができる。他の例としては、(限定されるものではないが)癌細胞周囲の局所的又は全身的のいずれかのT細胞の動員又は免疫チェックポイントの阻害が挙げられる。当業者は、この目的を達成するために有効に活用することができる多数の生物学的標的及び免疫系機序を認識する。
【0080】
別の実施形態において、本発明は、薬学的及び/又は診断的に活性の構成成分に融合している1つ以上の本発明の足場を含む融合タンパク質に関する。本発明の足場の融合タンパク質は、非ポリペプチド構成成分、例えば非ペプチド性リンカー、非ペプチド性リガンド又は治療的若しくは診断的に関連する放射性核種を含み得る。具体的な実施形態において、このような薬学的及び/又は診断的に活性の構成成分は、サイトカイン、毒性化合物、ケモカイン、リガンド、受容体、蛍光色素、光増感剤、凝固促進因子、抗凝固因子、プロドラッグ活性化のための酵素及び放射性核種などの分子を含む群から選択することができる。当業者に公知の多数の他の薬学的及び/又は診断的に活性の構成成分が存在し、本発明は、本明細書に列記される代表例に限定されない。
【0081】
別の実施形態において、本発明は、血清半減期をモジュレートする構成成分、例えば、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、免疫グロブリン及びアルブミン結合ペプチドに融合している1つ以上の本発明の足場を含む融合タンパク質に関する。当業者は、血清半減期の延長目的にも好適な融合パートナーとして好適な追加の巨大分子又は結合ドメインを選択することができる。
【0082】
本発明の具体的な実施形態において、本発明の足場を含む組換えタンパク質は、哺乳類、例えばマウス、ラット、サル又はヒトなどにおいて免疫原性反応を本質的に誘発しない。したがって、本発明の一実施形態は、低減した免疫原性を有する本発明の足場の誘導体の生成に関する。当然のことながら、本発明の足場の誘導体の免疫原性は、足場由来部分だけでなく、融合タンパク質のランダム化領域及び他の部分にも依存する。種々のソフトウェア及びデータベースがMHC分子へのペプチド結合のインシリコ予測に利用可能であり、当業者は、そのようなソフトウェア又はデータベースを補助として使用して、低減した免疫原性リスクを有する本発明の組換え足場の誘導体及びさらに本発明の組換え足場を含む融合構築物を生成することができる。1つの具体的な実施形態において、MHCクラスII分子に結合することが予測されるペプチドの自由に利用可能なデータベースを検索することにより、野生型サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)CheBcドメイン(配列番号80)を含むタンパク質が多数の潜在的T細胞エピトープを含有することが見出された。CheBcドメイン配列バリアントについてのデータベースの問い合わせの繰り返しにより、アミノ酸残基置換Met53Gln及びSer125Gluの取り込みによる配列番号80の改変は、本発明の足場の予測免疫原性の低減を可能にすることが見出された。種々の他のアミノ酸配列バリアントを生成して足場の又は個々の結合分子の免疫原性を低減させることは、当業者に自明なことである。他の実施形態において、標準的技術、例えば哺乳類への目的組換えタンパク質の投与及び免疫応答の適切な分析を使用して個々のバリアントの免疫原性リスクを評価することができ、それらは、当業者に周知である。
【0083】
一部の実施形態において、本発明の足場は、改善された開発可能性を有するポリペプチド配列バリアントを含む。このようなバリアントとしては、例えば、システイン残基を欠くバリアント、予測N-グリコシル化部位を欠くバリアント並びに低減した予測分解リスク、例えば予測脱アミド化、異性化、酸化、断片化及び凝集を有するバリアントを挙げることができる。1つの具体的な実施形態において、アミノ酸残基置換Cys161Serの取り込みによる配列番号80の改変は、システイン不含足場の生成を可能にする。周知の技術を使用することにより、改善された品質を有する追加の足場配列バリアントを生成することは、当業者に自明なことである。
【0084】
他の実施形態において、本発明のライブラリーは、高い特異性及び親和性を有し、それにより治療及び/又は診断用途に特に十分に適する高度に安定的及び可溶性の標的結合候補を生成することが予測される。したがって、本発明の高度に関連する実施形態は、医薬品又は診断ツールを調製するための、本発明の足場又はその融合誘導体の使用に関する。
【0085】
具体的な実施形態において、1つ以上の本発明の足場又はその融合誘導体は、疾患の処置又は診断のための、別の具体的な実施形態において、癌、心血管、感染性又は炎症性疾患の診断又は処置のための医薬品又は診断手段の調製に使用される。
【0086】
1つの具体的な実施形態において、1つ以上の本発明の足場又はその融合誘導体は、例えば、癌又は心血管、感染性若しくは炎症性疾患の診断のための、結合複合体の検出のために表面プラズモン共鳴を利用するデバイスを含む診断手段の調製に使用される。
【0087】
本発明の別の実施形態は、1つ以上の本発明の足場又はその融合誘導体並びに好適な薬学的に許容可能な賦形剤及び/又は担体を含む医薬又は診断組成物に関する。当業者は、豊富な先行技術から好適な賦形剤及び担体を選択することができ、定型的方法を使用してそれらの好適性を決定することができる。
【0088】
別の実施形態において、疾患に罹患していることが疑われる対象における疾患を処置するため又は診断するため、1つ以上の本発明の足場又はその融合誘導体を、化合物を有効量で利用可能にする種々の形態又は方式で投与することができる。多数の投与経路が当業者に周知であり、それとしては、(限定されるものではないが)経口、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮内、脊髄、局所、鼻腔内、眼内経路などが挙げられ、例えばインビボ実験から得られた薬物動態データ、一般的な医療行為及び当業者が広範に利用可能な他の情報源などのものに基づいて最も好適な経路を容易に選択することができる。一部の実施形態において、NMR、PET、CT、蛍光イメージング及び種々の他の周知のインビボイメージング技術を、1つ以上の本発明の足場又はその誘導体を使用する疾患の診断に使用することができる。
【0089】
本発明の別の実施形態は、追加の治療剤、例えばサイトカイン、ステロイド、化学療法剤、抗生物質、放射線又は当技術分野において周知の他の治療剤及び処置との同時投与又は処置に関する。これは、薬物の治療効果を向上させる周知の手段である。追加の治療法の適切な投与量、組み合わせ及びタイミングは、当業者に公知の種々の関連要因に基づいて選択することができる。
【0090】
本発明は、本発明の足場を利用することによって化合物を検出する方法も提供する。ライブラリースクリーニングにより得られた足場の結合特異性に基づき、サンプル中の特異的標的を検出するアッセイにおいて、例えば診断方法のためにそのような足場を使用することが可能である。一実施形態において、化合物を検出する方法は、サンプル中の前記化合物を、本発明の足場と、化合物:足場複合体の形成を可能にする条件下で接触させること、及び前記足場を検出し、それによりサンプル中の前記化合物を検出することを含む。さらなる実施形態において、足場を標識(例えば、放射性標識、蛍光、酵素連結又は比色標識)して、前記化合物の検出を促進する。さらなる実施形態において、本発明の足場又はその誘導体を利用するインビボ移植デバイスの使用を目的化合物の検出に使用することができる。
【0091】
本発明は、本発明の足場を利用して化合物を捕捉する方法も提供する。ライブラリースクリーニングにより得られた足場の結合特異性に基づき、精製方法などのためにサンプル中の特異的標的を捕捉するアッセイにおいてそのような足場を使用することが可能である。一実施形態において、サンプル中の化合物を捕捉する方法は、サンプル中の前記化合物を、本発明の足場と、化合物:足場複合体の形成を可能にする条件下で接触させること、及びサンプルから前記複合体を取り出し、それにより前記サンプル中の前記化合物を捕捉することを含む。さらなる実施形態において、足場を固定化して、化合物:足場複合体の取り出しを促進する。
【0092】
当業者は、単に定型的な実験を使用して、本明細書に記載の本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を認識又は把握することができる。このような均等物は、本明細書に記載の本発明により包含されるものとする。
【0093】
例示的実施形態
1.
(i)残基:
(a)16~18(両端を含む);
(b)29~37(両端を含む);
(c)43~47(両端を含む);
(d)60~61(両端を含む);
(e)66~75(両端を含む);
(f)80~84(両端を含む);
(g)92~93(両端を含む);
(h)103~107(両端を含む);
(i)124~125(両端を含む);
(j)135~137(両端を含む);
(k)149~150(両端を含む);
(l)160~162(両端を含む);
(m)173~176(両端を含む);
(n)180~181(両端を含む)
からなる、配列番号1の同族ループ領域に対応する14個のループ領域
(ii)配列番号1の非ループ領域に対応する二次構造エレメントに連結されている14個のループ領域
を含む組換えCheBcドメインを含む組換えポリペプチド足場であって、
前記ループ領域の少なくとも1つは、配列番号1の同族ループ領域の非天然発生バリアントであり;及び
組換えCheBcドメインは、配列番号1に対して、非天然発生バリアントループ領域外で少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する、組換えCheBcドメインを含む組換えポリペプチド足場。
【0094】
2.ループ領域によって連結された4つのフレームワーク領域FR1(配列番号40)、FR2(配列番号41)、FR3(配列番号42)及びFR4(配列番号43)の直鎖配列であって、フレームワーク領域は、配列番号1の同族領域と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する、直鎖配列を含み;少なくとも1つのループ領域は、配列番号1の同族ループ領域の非天然発生バリアントである、実施形態1の足場。
【0095】
3.4つのフレームワーク領域FR1(配列番号40)、FR2(配列番号41)、FR3(配列番号42)及びFR4(配列番号43)であって、配列番号1の同族領域と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する4つのフレームワーク領域と;3つのループ領域L1(配列番号44)、L2(配列番号44)及びL3(配列番号47)であって、Xaaは、任意のアミノ酸を表す、3つのループ領域とを含み;
L1は、FR1とFR2との間に連結され、L2は、FR2とFR3との間に連結され、及びL3は、FR3とFR4との間に連結されて、配置FR1-L1-FR2-L2-FR3-L3-FR4を含む連続ポリペプチドを形成する、実施形態2の足場。
【0096】
4.4つのフレームワーク領域FR1(配列番号40)、FR2(配列番号41)、FR3(配列番号42)及びFR4(配列番号43)であって、配列番号1の同族領域と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する4つのフレームワーク領域と;3つのループ領域L1(配列番号45)、L2(配列番号46)及びL3(配列番号47)であって、Xaaは、任意のアミノ酸を表す、3つのループ領域とを含み、L1は、FR1とFR2との間に連結され、L2は、FR2とFR3との間に連結され、及びL3は、FR3とFR4との間に連結されて、配置FR1-L1-FR2-L2-FR3-L3-FR4を含む連続ポリペプチドを形成する、実施形態2の足場。
【0097】
5.L1、L2及びL3ループ領域について、Xaaは、セリン、アスパラギン酸、アルギニン、アラニン、ロイシン、トレオニン、アスパラギン、トリプトファン、グリシン、グルタミン酸、バリン及びチロシンを表す、実施形態3の足場。
【0098】
6.L1及びL2ループ領域について、Xaaは、任意のアミノ酸を表し;L3ループ領域について、Xaaは、セリン、アスパラギン酸、アルギニン、アラニン、ロイシン、トレオニン、アスパラギン、トリプトファン、グリシン、グルタミン酸、バリン及びチロシンを表す、実施形態4の足場。
【0099】
7.実施形態1の足場をコードするポリヌクレオチド。
【0100】
8.実施形態7のポリヌクレオチドを発現するように遺伝子人工操作された細胞。
【0101】
9.フルオロフォア、放射性同位体、薬物コンジュゲート、酵素、血清半減期延長ポリペプチド又は標的結合ポリペプチドをさらに含む、実施形態1の足場。
【0102】
10.足場をフルオロフォア、放射性同位体、薬物コンジュゲート、酵素、血清半減期延長ポリペプチド又は標的結合ポリペプチドに連結する1つ以上のグリシン残基を有するリンカーをさらに含む、実施形態9の足場。
【0103】
11.追加の標的結合ポリペプチドによって結合される標的以外の標的に結合し得る、実施形態1の足場。
【0104】
12.標的結合ポリペプチドは、ポリヒスチジンタグである、実施形態11の足場。
【0105】
13.標的結合ポリペプチドは、FLAGタグである、実施形態11の足場。
【0106】
14.実施形態1の足場を含む標的検出デバイス。
【0107】
15.実施形態1の足場及び薬学的に許容可能な担体を含む組成物。
【0108】
16.標的に結合することが決定されている、実施形態1~6のいずれかの足場。
【0109】
17.少なくとも100マイクロMの親和性(KD)で標的に結合することが決定されている、実施形態1~6のいずれかの足場。
【0110】
18.前記標的は、細胞表面抗原、可溶性抗原、固定化抗原、免疫サイレント抗原、細胞内抗原、核内抗原、自己抗原、非自己抗原、癌抗原、細菌抗原又はウイルス抗原である、実施形態17の足場。
【0111】
19.少なくとも40℃の熱融解温度(Tm)を示す、実施形態17の足場。
【0112】
20.異種薬剤にコンジュゲートしており、前記薬剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒト血清アルブミン(HSA)、抗体のFc領域、IgG分子、細胞毒性薬物、造影剤、毒素、ビオチン、核酸又はサイトカインからなる群から選択される、実施形態17の足場。
【0113】
21.実施形態17の足場を含むマルチドメイン構築物であって、エピトープ結合ドメインをさらに含み、前記エピトープ結合ドメインは、追加の実施形態17の足場、実施形態17に無関連の足場、抗体、抗体断片、ダイアボディ、scFv、Fab、Fv又は結合ペプチドからなる群から選択される、マルチドメイン構築物。
【0114】
22.1つのエピトープを認識する、実施形態21のマルチドメイン構築物。
【0115】
23.2つのエピトープを認識する、実施形態21のマルチドメイン構築物。
【0116】
24.3つ以上のエピトープを認識する、実施形態21のマルチドメイン構築物。
【0117】
25.前記足場は、IgG分子若しくはその断片、Fc領域、二量体化ドメイン、ジスルフィド結合又はアミノ酸リンカーによって前記エピトープ結合ドメインに連結されている、実施形態21~24のいずれかのマルチドメイン構築物。
【0118】
26.前記足場は、酵素又は化学反応によって前記エピトープ結合ドメインに共有結合されている、実施形態21~24のいずれかのマルチドメイン構築物。
【0119】
27.フルオロフォア、放射性同位体、薬物コンジュゲート、酵素又は血清半減期延長ポリペプチドをさらに含む、実施形態25~26のいずれかのマルチドメイン構築物。
【0120】
28.実施形態21~25のいずれかのマルチドメイン構築物をコードする単離核酸分子。
【0121】
29.発現ベクターに作動可能に連結されている、実施形態28の核酸。
【0122】
30.実施形態29の構築物を含む宿主細胞。
【0123】
31.複数の実施形態1~6のいずれかのバリアント足場を含むポリペプチドディスプレイライブラリー。
【0124】
32.実施形態31のライブラリーをコードする単離核酸分子のコレクション。
【0125】
33.発現ベクターに作動可能に連結されている、実施形態32の核酸分子。
【0126】
34.標的に結合するポリペプチド足場を得る方法であって、(a)標的リガンドを、実施形態1~6のいずれかのライブラリーと、足場:標的リガンド複合体の形成を可能にする条件下で接触させること、及び(b)複合体から、標的リガンドに結合する足場を得ることを含む方法。
【0127】
35.ステップ(b)の前記足場の少なくとも1つのループ領域をランダム化して、さらなるランダム化足場を生成すること、並びに前記さらなるランダム化足場を使用してステップ(a)及び(b)を繰り返すことをさらに含む、実施形態34の方法。
【0128】
36.ステップ(b)の前記足場の少なくとも1つの非ループ領域をランダム化して、さらなるランダム化足場を生成すること、並びに前記さらなるランダム化足場を使用してステップ(a)及び(b)を繰り返すことをさらに含む、実施形態34の方法。
【0129】
37.サンプル中の化合物を検出する方法であって、前記サンプルを、実施形態16~20のいずれかの足場と、化合物:足場複合体の形成を可能にする条件下で接触させること、及び前記複合体を検出し、それにより前記サンプル中の前記化合物を検出することを含む方法。
【0130】
38.サンプル中の化合物を捕捉する方法であって、前記サンプルを、固定化された実施形態16~20のいずれかの足場と、化合物:足場複合体の形成を可能にする条件下で接触させること、及び前記固定化足場を取り出し、それにより前記サンプル中の前記化合物を捕捉することを含む方法。
【0131】
39.サンプル中の化合物を検出する方法であって、前記サンプルを、実施形態21~27のいずれかのマルチドメイン構築物と、化合物:マルチドメイン構築物複合体の形成を可能にする条件下で接触させること、及び前記複合体を検出し、それにより前記サンプル中の前記化合物を検出することを含む方法。
【0132】
40.サンプル中の化合物を捕捉する方法であって、前記サンプルを、固定化された実施形態21~27のいずれかのマルチドメイン構築物と、化合物:マルチドメイン構築物複合体の形成を可能にする条件下で接触させること、及び前記固定化マルチドメイン構築物を取り出し、それにより前記サンプル中の前記化合物を捕捉することを含む方法。
【0133】
41.任意の実施形態16~20の足場又は任意の実施形態21~27のマルチドメイン構築物を含む無菌パイロジェンフリー組成物。
【0134】
42.実施形態41を含む医薬組成物。
【0135】
43.実施形態41又は42の組成物を用いて患者における疾患を予防、処置、管理又は改善する方法。
【0136】
44.実施形態41又は42の組成物を用いて患者における疾患を診断又はイメージングする方法。
【0137】
45.追加の治療法をさらに含み、前記治療法は、免疫療法、生物療法、化学療法、放射線療法又は小分子薬物療法である、実施形態43の方法。
【0138】
46.前記疾患は、自己免疫疾患、炎症性疾患、増殖性疾患、感染性疾患、呼吸器疾患、心血管疾患、変性疾患又は代謝性疾患である、実施形態43~45のいずれかの方法。
【0139】
47.組換え非天然発生ポリペプチド足場であって、配列番号1に対して、ループ領域外で少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する組換えCheBcドメインを含み;前記ループ領域の少なくとも1つは、配列番号1の対応するループ領域からの少なくとも1つのアミノ酸だけの欠失、置換又は付加により変動する、組換え非天然発生ポリペプチド足場。
【0140】
48.配列番号1の対応するループ領域からの少なくとも1つのアミノ酸だけの欠失、置換又は付加により変動する2つのループ領域配列を含む、実施形態47の足場。
【0141】
49.配列番号1の対応するループ領域からの少なくとも1つのアミノ酸だけの欠失、置換又は付加により変動する3つのループ領域配列を含む、実施形態47の足場。
【0142】
50.配列番号1の対応するループ領域からの少なくとも1つのアミノ酸だけの欠失、置換又は付加により変動する4つのループ領域配列を含む、実施形態47の足場。
【0143】
51.配列番号1の対応するループ領域からの少なくとも1つのアミノ酸だけの欠失、置換又は付加により変動する5つのループ領域配列を含む、実施形態47の足場。
【0144】
52.配列番号1の対応するループ領域からの少なくとも1つのアミノ酸だけの欠失、置換又は付加により変動する6つのループ領域配列を含む、実施形態47の足場。
【0145】
53.配列番号1の対応するループ領域からの少なくとも1つのアミノ酸だけの欠失、置換又は付加により変動する7つのループ領域配列を含む、実施形態47の足場。
【0146】
54.配列番号1の対応するループ領域からの少なくとも1つのアミノ酸だけの欠失、置換又は付加により変動する8つ以上のループ領域配列を含む、実施形態47の足場。
【0147】
55.複数の実施形態47~54のいずれかのバリアント足場を含むポリペプチドディスプレイライブラリー。
【0148】
56.実施形態55のライブラリーをコードする単離核酸分子のコレクション。
【0149】
57.発現ベクターに作動可能に連結されている、実施形態56の核酸分子。
【0150】
58.標的に結合することが決定されている、実施形態47~54のいずれかの足場。
【0151】
59.少なくとも100マイクロMの親和性(KD)で標的に結合することが決定されている、実施形態47~54のいずれかの足場。
【0152】
60.前記標的は、細胞表面抗原、可溶性抗原、固定化抗原、免疫サイレント抗原、細胞内抗原、核内抗原、自己抗原、非自己抗原、癌抗原、細菌抗原又はウイルス抗原である、実施形態59の足場。
【0153】
61.少なくとも40℃の熱融解温度(Tm)を示す、実施形態59の足場。
【0154】
62.異種薬剤にコンジュゲートしており、前記薬剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒト血清アルブミン(HSA)、抗体のFc領域、IgG分子、細胞毒性薬物、造影剤、毒素、ビオチン、核酸又はサイトカインからなる群から選択される、実施形態59の足場。
【0155】
63.実施形態59の足場を含むマルチドメイン構築物であって、エピトープ結合ドメインをさらに含み、前記エピトープ結合ドメインは、追加の実施形態59の足場、実施形態59に無関連の足場、抗体、抗体断片、ダイアボディ、scFv、Fab、Fv又は結合ペプチドからなる群から選択される、マルチドメイン構築物。
【0156】
64.1つのエピトープを認識する、実施形態63のマルチドメイン構築物。
【0157】
65.2つのエピトープを認識する、実施形態63のマルチドメイン構築物。
【0158】
66.3つ以上のエピトープを認識する、実施形態63のマルチドメイン構築物。
【0159】
67.前記足場は、IgG分子若しくはその断片、Fc領域、二量体化ドメイン、ジスルフィド結合又はアミノ酸リンカーによって前記エピトープ結合ドメインに連結されている、実施形態63~66のいずれかのマルチドメイン構築物。
【0160】
68.前記足場は、酵素又は化学反応によって前記エピトープ結合ドメインに共有結合されている、実施形態60~63のいずれかのマルチドメイン構築物。
【0161】
69.フルオロフォア、放射性同位体、薬物コンジュゲート、酵素又は血清半減期延長ポリペプチドをさらに含む、実施形態67~68のいずれかのマルチドメイン構築物。
【0162】
70.実施形態63~67のいずれかのマルチドメイン構築物をコードする単離核酸分子。
【0163】
71.発現ベクターに作動可能に連結されている、実施形態70の核酸。
【0164】
72.実施形態71の構築物を含む宿主細胞。
【0165】
73.サンプル中の化合物を検出する方法であって、前記サンプルを、実施形態58~62のいずれかの足場と、化合物:足場複合体の形成を可能にする条件下で接触させること、及び前記複合体を検出し、それにより前記サンプル中の前記化合物を検出することを含む方法。
【0166】
74.サンプル中の化合物を捕捉する方法であって、前記サンプルを、固定化された実施形態58~62のいずれかの足場と、化合物:足場複合体の形成を可能にする条件下で接触させること、及び前記固定化足場を取り出し、それにより前記サンプル中の前記化合物を捕捉することを含む方法。
【0167】
75.サンプル中の化合物を検出する方法であって、前記サンプルを、実施形態63~69のいずれかのマルチドメイン構築物と、化合物:マルチドメイン構築物複合体の形成を可能にする条件下で接触させること、及び前記複合体を検出し、それにより前記サンプル中の前記化合物を検出することを含む方法。
【0168】
76.サンプル中の化合物を捕捉する方法であって、前記サンプルを、固定化された実施形態63~69のいずれかのマルチドメイン構築物と、化合物:マルチドメイン構築物複合体の形成を可能にする条件下で接触させること、及び前記固定化マルチドメイン構築物を取り出し、それにより前記サンプル中の前記化合物を捕捉することを含む方法。
【0169】
77.任意の実施形態58~62の足場又は任意の実施形態63~69のマルチドメイン構築物を含む無菌パイロジェンフリー組成物。
【0170】
78.実施形態77を含む医薬組成物。
【0171】
79.実施形態77又は78の組成物を用いて患者における疾患を予防、処置、管理又は改善する方法。
【0172】
80.実施形態77又は78の組成物を用いて患者における疾患を診断又はイメージングする方法。
【0173】
81.追加の治療法をさらに含み、前記治療法は、免疫療法、生物療法、化学療法、放射線療法又は小分子薬物療法である、実施形態79の方法。
【0174】
82.前記疾患は、自己免疫疾患、炎症性疾患、増殖性疾患、感染性疾患、呼吸器疾患、心血管疾患、変性疾患又は代謝性疾患である、実施形態79~81のいずれかの方法。
【0175】
本発明を以下の実施例並びに添付の図面及び配列情報によりさらに説明する。
【実施例】
【0176】
実施例
ここで、本発明を、以下の実施例を参照して記載する。これらの実施例は、説明の目的のために提供するにすぎず、本発明は、それらの実施例に限定されると決して解釈すべきでなく、本明細書に提供される教示の結果として生じる任意の及び全てのバリエーションを包含すると解釈すべきである。
【0177】
実施例1
本発明の足場のランダム化設計
本発明の足場のポリペプチド配列の最適化
本発明の足場は、哺乳類、例として、例えばヒトにおいて免疫原性反応を本質的に誘発しないことが望ましい。サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)の野生型CheBcドメイン(PDB ID:3SFT)(配列番号80)を含むタンパク質構造のポリペプチド配列を、MHC-II分子DRB1_0101、DRB1_0301、DRB1_0401、DRB1_0701、DRB1_0802、DRB1_1101、DRB1_1302及びDRB1_1501(Jensen K. et. al, 2018)に結合することが予測されるペプチドのデータベースに対してスクリーニングした。上位5%ランクの結合閾値内のペプチドの同定後、CheBcドメイン配列バリアントについてのデータベースの問い合わせの繰り返しを実施して、低減した予測免疫原性潜在性を有するバリアントを同定した。配列番号80に対するアミノ酸残基置換Met53Gln及びSer125Gluの実施は、MHC-II分子への本発明の足場の予測結合の低減を可能にすることが見出された。追加のCys161Ser置換を上記配列に対して実施して、システイン不含足場の生成を可能にした。これら3つのアミノ酸残基置換の結果をポリペプチド配列番号1中に取り込んだ。
【0178】
本発明の足場の組換え試験ループグラフト構築物の生成
サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)の野生型CheB
cドメイン(PDB ID:3SFT)(配列番号80)(
図1)を含むタンパク質の公開構造データの分析は、種々のループ領域の同定を可能にした。これらのループ領域の3つを試験ループグラフト化のために選択して、ランダム化に対するCheB
cドメインの寛容性を評価した。配列番号1に対する試験ループグラフト化のために選択された位置を
図5に示す。
【0179】
フランキングEcoRI及びAscI制限酵素部位を用いて、配列番号1のコード領域を含むポリヌクレオチドを設計して、対応するポリペプチド配列番号4をコードする合成DNA(配列番号7)を生成した。この合成DNA(配列番号7)をファスマック(日本)から入手し、PCRテンプレートとして使用した。
【0180】
本発明の足場のフレームワーク領域FR1(配列番号81)、FR2(配列番号82)、FR3(配列番号83)及びFR4(配列番号84)をコードするDNA断片を、
図10のスキーム上に示され、表1に列記される適切なフランキングプライマーを使用するPCRによりDNA配列番号7から増幅させた。各フレームワーク断片をコードする増幅させるべきDNAについて、50マイクロリットル反応物当たり100fモルのDNAテンプレートを使用してPCR増幅を実施した。PCR反応は、Pfu Ultra II Fusion HS DNAポリメラーゼ(Agilent)を製造業者の指示書に従って使用して、55℃のアニーリング温度において20サイクル実施した。
【0181】
試験ループグラフト1(配列番号37)、試験ループグラフト2(配列番号38)及び試験ループグラフト3(配列番号39)のコード領域を含む合成オリゴヌクレオチドをファスマック(日本)から入手した。これらを、フレームワーク領域をコードするゲル精製されたDNA断片とアセンブルして、位置2及び3における試験ループグラフト(配列番号12)、位置1及び2における試験ループグラフト(配列番号13)、位置1及び3における試験ループグラフト(配列番号14)並びに位置1、及び2、及び3における試験ループグラフト(配列番号15)を有する本発明の足場の試験ループグラフト構築物をコードするDNA断片を生成した(それぞれのポリペプチド配列アラインメントを
図6に表す)。連続の重複伸長PCR反応ラウンドによる隣接DNA断片のアセンブリを、50マイクロリットル反応物当たり100fモルの各DNA種を使用して実施した。PCR産物を各増幅ステップ間でゲル精製し、全長産物が得られるまで次の重複伸長PCRアセンブリラウンドのためのテンプレートとして使用した。重複伸長PCRの最終ステップは、プライマーEcoRIF及びAscIR(表1)を使用して、EcoRI及びAscI制限部位をアセンブルされた産物に付属させた。PCR産物をゲル精製し、20倍過剰のEcoRI-HF及びAscI(New England Biolabs)で37℃において3時間消化してから、消化DNAをWizard SV gel and PCR Clean-Up System(Promega)でカラム精製した。得られたDNAインサートを、対応するEcoRI及びAscIクローニング部位を含む改変pQE-80Lベクター(QIAGEN)中にクローニングし、大腸菌(E. coli)XL1-Blue(Agilent)中に形質転換した。単離プラスミドクローンをシーケンシングし、位置2及び3における試験ループグラフト(配列番号8)、位置1及び2における試験ループグラフト(配列番号9)、位置1及び3における試験ループグラフト(配列番号10)並びに位置1、及び2、及び3における試験ループグラフト(配列番号11)を有する本発明の足場の組換え試験ループグラフト構築物を含むポリペプチドをコードするクローンを同定した。
【0182】
本発明の足場の組換え試験ループグラフト構築物の発現及び精製
配列確認されたクローンのグリセロールストックを使用して50マイクログラム/mLのカナマイシン及び0.1%のグルコースを含有する2×YT培地の50mLの培養物に植菌し、37℃において激しく振盪させながら、OD
600が0.5に達するまで増殖させた。次いで、培養物を氷上で冷やし、IPTGを0.5mMまで添加し、培養物を27℃において激しく振盪させながら一晩増殖させた。培養物を3000×gにおいて4℃で10分間遠心分離し、細胞ペレットを、300mMのNaClを含有する27mLの氷冷PBS(pH7.4)中で再懸濁させた。次いで、3mLの10×bugbuster試薬(EMD Millipore)を添加し、細胞を氷上で30分間溶解させた。次いで、細胞溶解物を12,000×gにおいて4℃で30分間遠心分離し、細胞溶解物を含有する上清を回収した。次いで、これらを1mLのベッド容量の予備平衡化Talon Cell-thru樹脂(Clontech)に結合させ、製造業者の指示書に従って精製を継続し、5mLの容量で溶出させた。精製タンパク質を、10マイクロリットルのアリコートをNuPAGE 4~12%SDS-PAGEゲル(Invitrogen)上でランさせ、クマシーブルー染色で染色することにより可視化した(
図7)。溶出タンパク質を、製造業者の指示書に従うAmicon Ultra-4 10,000MWCOカラム(Millipore)を介する遠心分離の繰り返しによりPBS(pH7.4)で緩衝液交換し、タンパク質をおよそ1mLの容量で回収した。タンパク質濃度を、DNA配列データから推定されるアミノ酸配列から予測される吸光係数と比較した280nmにおける測定吸光度に基づいて計算した。試験タンパク質についての精製後収量を表2に報告する。
【0183】
本発明の足場の組換え試験ループグラフト構築物の熱安定性
本発明の足場の組換え試験ループグラフト構築物を含む精製タンパク質の熱安定性は、PBS緩衝液(pH7.4)中500マイクログラム/mLのタンパク質を用いて、SYPROオレンジ色素(Merck)を用いるDSF(示差走査蛍光測定)測定により0.5℃/分の走査速度において決定した(
図9)。タンパク質の融解温度を蛍光強度の一次微分曲線の最大値の温度から決定した。タンパク質の融解温度を表2に報告する。評価された本発明の足場の組換え試験ループグラフト構築物の全てについて、約90℃の融解温度が観察され、異なる試験構築物間で熱安定性の数度の差が観察されたにすぎなかった(Tm範囲89.4~92.0℃)。これは、本発明の足場が、本明細書において評価された試験ループグラフト構築物よりも広範な種々の改変を支持し得ることと、当業者が、これらの知見を認識して、定型的に実験により、そのようなバリアントの生成及び利用において成功するという合理的な期待を有し得ることを示唆する。
【0184】
単量体分画の決定
位置1、及び2、及び3における試験ループグラフトを有する本発明の足場の試験ループグラフト構築物(配列番号11)を含む精製タンパク質の単量体分画を、PBS緩衝液(pH7.4)中1mg/mLにおける4℃の2週間の貯蔵、その後の室温の2週間の貯蔵後にサイズ排除クロマトグラフィーにより決定した。SECは、PBS緩衝液(pH7.4)中の500マイクログラムのタンパク質を用いて、Superdex 75 10/300カラム(GE Lifesciences)上で実施した(
図8)。精製タンパク質は、96.4%の単量体であることが見出された。実験的に決定された単量体質量は、22.6kDaであり、それは、およそ24kDaの予測分子量と密接に一致する。
【0185】
実施例2
本発明の足場のランダム化ライブラリーの構築
フレームワーク領域FR1(配列番号40)、FR2(配列番号41)、FR3(配列番号42)及びFR4(配列番号43)をそれぞれコードするDNA断片配列番号81、配列番号82、配列番号83及び配列番号84を、
図10のスキーム上に示され、表1に列記される適切なフランキングプライマーを使用するPCRによりDNA配列番号7から増幅させた。各フレームワーク領域をコードする増幅させるべきDNAについて、50マイクロリットル反応物当たり100fモルのDNAテンプレートを使用して8回の個々のPCR増幅を実施した。PCR反応は、Phusion Hot Start Flex DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)を製造業者の指示書に従って使用して、72℃のアニーリング温度において20サイクル実施した。PCR産物は、Wizard SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を使用してゲル精製した。
【0186】
トリヌクレオチドランダム化ループ領域L1(配列番号44)、L2(配列番号44)及びL3(配列番号47)(
図10)をそれぞれコードするDNA配列を含むトリヌクレオチドカップリングされたオリゴヌクレオチド配列番号16、配列番号17及び配列番号18をELLA Biotech GmbH(Germany)から入手した。これらをTE緩衝液(10mMのTris、5mMのEDTA pH8.0)中で50マイクロMまで溶解させた。
【0187】
フレームワークDNAコード断片へのランダム化ループ領域コードDNA断片のアセンブリの第1段階(第1PCRアセンブリ)を、表1に列記される適切なプライマーを使用する重複伸長PCRにより実施した。3回の別個のPCRアセンブリスキームを実施して、FR1-L1コード断片を生成するためのFR1+L1(プライマーFR1F及びL1Rを使用)のコード領域を含むDNA断片、FR2-L2コード断片を生成するためのFR2+L2(プライマーFR2F及びL2Rを使用)のコード領域を含むDNA断片及びFR3-L3-FR4コード断片を生成するためのFR3+L3+FR4(プライマーFR3F及びFR4Rを使用)のコード領域を含むDNA断片をアセンブルし、
図11に概略的に表示した。合計で5つのレプリケートの100マイクロリットルのPCR反応を各スキームについて実施し、各々は、500fモルのランダム化ループ断片DNAテンプレートを含有した。PCRは、Phusion Hot Start Flex DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)を使用して72℃のアニーリング温度において18サイクル実施した。個々の断片アセンブリを上記のとおりゲル精製した。
【0188】
3つのトリヌクレオチドカップリングされたランダム化ループ領域を含有するFR1-L1-FR2-L2-FR3-L3-FR4のコード領域を含む、全長ランダム化ライブラリーコードDNA断片への上記断片の最終アセンブリ(第2PCRアセンブリ)は、外部プライマーEcoRIF及びAscIR(表1)を使用して、50マイクロリットルPCR反応チューブ当たり125fモルの上記の各断片アセンブリを用いる重複伸長PCRにより実施した。合計で176個のPCR反応チューブを使用して、全長断片アセンブリを72℃のアニーリング温度において20サイクル増幅させた。
【0189】
NNKランダム化コードループ領域を含む、全長ランダム化ライブラリーコードDNA断片の生成を以下のとおり実施した。NNKランダム化ループ領域L1(配列番号45)及びL2(配列番号46)をそれぞれコードするDNA配列を含むオリゴヌクレオチド配列番号19及び配列番号20をファスマック(日本)から入手した。トリヌクレオチドランダム化ループ領域L3(配列番号47)をコードするDNA配列を含むトリヌクレオチドカップリングされたオリゴヌクレオチド配列番号18をELLA Biotech GmbH(Germany)から入手した。
【0190】
フレームワークDNAコード断片へのランダム化ループ領域コードDNA断片のアセンブリを上記のとおり実施したが、但し、全長ランダム化ライブラリーコードDNA断片へ断片の最終アセンブリ(第2PCRアセンブリ)を、外部プライマーEcoRIF及びAscIR(表1)を使用して50マイクロリットルPCR反応チューブ当たり125fモルの各アセンブル断片を用いて重複伸長PCRにより実施した。合計で112個のPCR反応チューブを使用して、全長断片アセンブリを72℃のアニーリング温度において20サイクル増幅させた。
【0191】
3つのトリヌクレオチドカップリングされたランダム化ループ領域を含有する全長ランダム化ライブラリーコードDNA断片及びNNKランダム化ループ領域を含有する全長ランダム化ライブラリーコードDNA断片に対応するPCR産物を上記のとおり個々にゲル精製した。続いて、これらの2つのライブラリーをクローニングし、ファージ上で別個にディスプレイさせた。
【0192】
合計で、3つのトリヌクレオチドカップリングされたランダム化ループコード領域を含有する72マイクログラムのゲル精製された全長ランダム化ライブラリーコードDNA断片を、2.4mL容量で各々の1400UのEcoRI-HF及びAscI(New England Biolabs)で37℃において7時間消化して、ライゲーションのためのライブラリーインサートを生成した。さらに、NNKランダム化ループコード領域を含有する48マイクログラムのゲル精製された全長ランダム化ライブラリーコードDNA断片を、1.6mL容量でそれぞれ960UのEcoRI-HF及びAscI(New England Biolabs)で37℃において7時間消化して、ライゲーションのためのライブラリーインサートを生成した。次いで、Wizard SV gel and PCR Clean-Up System(Promega)を使用して、得られた消化インサートDNAを別個にカラム精製した。
【0193】
EcoRI及びAscI制限酵素部位を含む改変pADL-10bファージミドベクター(Antibody Design Labs)を、ライブラリーの構築及び本発明の足場と、ファージ粒子上のディスプレイのためのファージpIIIタンパク質との融合物の生成に使用した。このベクターの1mgのアリコートを4mL容量でそれぞれ3000UのEcoRI-HF及びAscI(New England Biolabs)で37℃において3時間消化して、ライゲーションのための消化ベクターDNAを生成した。消化ベクターDNAに対応するDNA断片を上記のとおりゲル精製した。
【0194】
個々のライゲーションは、上記の15.5マイクログラムの消化ベクター及び5マイクログラムの消化インサート(インサート:ベクターは、ほぼ2:1のモル比である)で10,000UのT4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)を用いて、2.5mLの容量で16℃において一晩設定した。ライゲーション物を65℃において15分間加熱し、Amicon Ultra 30K MWCOカラム(Millipore)を使用する反復回転及び補水によりライゲーション緩衝液をmilliQ超純水と交換した。
【0195】
エレクトロコンピテント大腸菌(E. coli)株XL1-Blue(Agilent)を、OD600が0.8に達するまでTB培地中で激しく増殖させた1リットルの培養物から調製した。培養物を氷上で急速に冷やし、3000×gにおいて4℃で遠心分離し、細胞ペレットを回収した。細胞ペレットを氷冷milliQ超純水中で繰り返し再懸濁させることにより3回洗浄し、上記のとおり遠心分離により回収し、最後に最終容量9mLの氷冷10%のグリセロール中で再懸濁させた。これを氷上で1.5mL容量にアリコート化し、1960ボルトの指数関数的に減衰するパルスによりショック付与される合計6つのフラットパックチャンバー1.5mL容量エレクトロポレーションキュベット(Harvard Apparatus)を使用して、上記のライゲートDNAのエレクトロポレーションに使用した。得られた形質転換大腸菌(E. coli)を250mLのSOC培地中で37℃において1時間増殖させ、ハーベストされた細胞ペレットを、TB寒天、2%のグルコース及び100マイクログラム/mLのカルベニシリンを含有する合計8つの500cm2選択培地プレート上で広げ、37℃において16時間インキュベートした。得られたクローンを、2%のグルコース、100マイクログラム/mLのカルベニシリンを含有する2×YT培地でそれらをプレートからスクレイピングすることによりハーベストし、グリセロールを15%の最終容量まで添加した。再懸濁させた細胞を1mLアリコートに分割し、ライブラリー大腸菌(E. coli)グリセロールストックとして、さらなる使用まで-80℃において貯蔵した。このライゲーション及び形質転換のプロセスを13回繰り返し、エレクトロポレーション後の培養物アリコートの希釈大腸菌(E. coli)から生じたコロニー数から推定して、3つのトリヌクレオチドカップリングされたランダム化ループ領域をコードするDNA断片について、およそ1.5×1010の複雑性及びNNKランダム化ループ領域をコードするDNA断片について、2.5×109の複雑性のライブラリーをそれぞれ生成した。
【0196】
実施例3
本発明の足場のランダム化ライブラリーのファージディスプレイ
上記の本発明の足場のランダム化ライブラリーの大腸菌(E. coli)グリセロールストックのアリコートを解凍し、合計5リットルの2×YT培地(3つのトリヌクレオチドカップリングされたランダム化ループ領域を含有するライブラリー用)及び1リットルの2×YT培地(NNKランダム化ライブラリーループ領域を含有するライブラリー用)中で希釈して、0.2のOD600を得た。カルベニシリン及びグルコースを100マイクログラム/mLのカルベニシリン及び0.1%(w/v)のグルコースの最終濃度まで添加した。次いで、培養物を37℃において激しく振盪させながら、OD600が0.6に達するまで増殖させてから、1リットル培養物当たり2×1012個のVCSM13ヘルパーファージ(Agilent)を添加することにより大腸菌(E. coli)に感染させた。感染を37℃において1時間進行させてから、培養物を氷上で冷やし、カナマイシンを30マイクログラム/mLまで添加した。IPTGも0.5mMまで添加して、足場-pIII融合遺伝子の発現を誘導した。次いで、培養物を26℃において一晩増殖させた。
【0197】
培養物を8000×gにおいて4℃で20分間遠心分離し、ファージ粒子を含有する上清を慎重に回収した。これらを氷上で冷やし、0.25×容量の20%(w/v)のPEG、2.5MのNaClを添加し、氷上で1時間静置してファージを沈殿させた。沈殿物を8000×gにおいて4℃で30分間遠心分離し、ファージペレットをPBS中で再懸濁させることにより洗浄した。次いで、これらを上述のとおり20%(w/v)のPEG、2.5MのNaClで沈殿させ、ファージペレットをPBS中で再懸濁させることにより再び洗浄した。これらを再び沈殿させ、PBS中で再懸濁させ、グリセロールを20%の最終容量まで添加した。次いで、ファージを0.6mLの容量(3つのトリヌクレオチドカップリングされたランダム化ループ領域を含有するライブラリー用)及び0.09mLの容量(NNKランダム化ループ領域を含有するライブラリー用)にアリコート化し、ファージライブラリーストックとして-80℃において貯蔵した。
【0198】
実施例4
足場ファージディスプレイライブラリーからのバインダーの選択
標的PD-L1及びHER2に対する本発明の足場のライブラリーの第1ラウンドのファージディスプレイ選択
ヒトIgG1 Fcドメインを含むビオチン化ヒトPD-L1抗原及びHER2細胞外ドメインの一部を含むビオチン化ヒトHER2抗原(Acro Biosystems)を、以下のとおりパニング標的として個々に使用した。
【0199】
各標的について、2つのファージライブラリーストック(3つのトリヌクレオチドカップリングされたランダム化ループ領域を含有するもの及びNNKランダム化ループ領域を含有するもの)の各々のアリコートを解凍し、合わせた。ブロッキング試薬(PBS中で3%(w/v)まで添加されたBSA及び0.05%(v/v)まで添加されたTween-20)を添加して、1mLの最終容量を得た。PD-L1標的選択のため、非ビオチン化ヒトIgG1 Fcタンパク質(Acro Biosystems)もブロッキング試薬として1000pMの最終濃度まで添加した。次いで、Dynal M-280 dynabeads懸濁液(Invitrogen)の200マイクロリットルのアリコートを、3%のBSA、0.05%のTween-20を含有するPBS中で2回洗浄し、ブロッキングしたファージを洗浄dynabeadsに添加し、4℃において1時間回転させてビーズに結合しているファージを取り出した。次いで、ビーズをマグネットにより回収し、ファージ上清を新たなチューブに移した。次いで、ビオチン化抗原をファージ上清に50nMの最終濃度まで添加し、混合物を4℃において一晩回転させることによりファージを抗原に結合させた。この後、100マイクロリットルのdynabeads懸濁液をPBS、3%のBSA、0.05%のTween-20中で2回洗浄し、上清を廃棄した。次いで、ファージ及び抗原混合物を、洗浄dynabeadsを含有するチューブに添加し、混合物を4℃において30分間回転させることにより、ビオチン化抗原をdynabeads上で捕捉した。この後、dynabeadsをマグネットにより回収して、dynabeadsの表面上で捕捉されたビオチン化抗原に結合しているファージをプルダウンし、ビーズをPBS、3%のBSA、0.05%のTween-20の1mLの溶液で3回洗浄した。次いで、ビーズを上記のとおりPBS、0.05%のTween-20で3回洗浄し、その後、PBSで3回洗浄した。次いで、ビーズをマグネットにより回収し、上清を廃棄し、ビーズを300マイクロリットルの100mMのグリシン、500mMのNaCl、pH2.2と10分間インキュベートすることにより結合ファージを溶出させた。次いで、ビーズをマグネットにより再び捕捉し、溶出ファージを含有する上清を15mLの容量の2×YT培地中OD600=0.7の大腸菌(E. coli)XL1-Blueに添加した。これを37℃において45分間インキュベートしてファージを大腸菌(E. coli)に感染させ、次いで培養物を3000×gにおいて4℃で10分間遠心分離した。次いで、細胞ペレットを2×YT培地中で再懸濁させ、TB寒天、2%のグルコース及び100マイクログラム/mLのアンピシリンを含有する大型500cm2選択培地プレート上で37℃において16時間広げた。感染アウトプットの希釈アリコートも上記のとおりプレートアウトしてコロニー数を得、それを使用して、選択から得られたクローンの数を推定した。およそ4.8×105個のクローン及び3.1×105個のクローンをPD-L1及びHER2の第1ラウンドのパニングアウトプットからそれぞれ得た。翌日、1%のグルコース、100マイクログラム/mLのアンピシリン及び15%のグリセロールを含有するLB培地でプレートをスクレイピングすることにより、プレートの各々からのコロニーをハーベストし、再懸濁させた細胞を0.5mLのアリコートに分割し、第1ラウンドのパニング選択アウトプットの大腸菌(E. coli)グリセロールストックとして、さらなる使用まで-80℃において貯蔵した。
【0200】
第1ラウンドのライブラリー選択アウトプットのL1及びL3ループのランダム化
各選択アウトプットについてのL1ループ及びL3ループのランダム化を以下のとおり実施した。組換えファージミドDNAのプールを、上記の第1ラウンドのパニング選択アウトプットの大腸菌(E. coli)グリセロールストックのアリコートからFastGene Plasmid Mini Kit(日本ジェネティクス、日本)を使用することにより単離した。L1ループランダム化のため、プライマーFR2F及びAscIR(表1)を使用して、L1ループコード領域を有さない第1ラウンドの選択アウトプットのライブラリーDNA断片のプールを増幅させた。増幅させるべきDNA断片の各プールについて、2つの50マイクロリットル反応物の各々で8fモルのDNAテンプレートを使用してPCR増幅を実施した。PCR増幅は、Phusion Hot Start Flex DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)を製造業者の指示書に従って使用して、72℃のアニーリング温度において18サイクル実施した。PCR産物は、Wizard SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を使用してゲル精製した。ライブラリー構築(実施例2)中に既に生成され、トリヌクレオチドカップリングにより生成されたランダム化ループ1コード領域を含有するFR1-L1(
図11)をコードするDNA断片に、それらの断片をPCRにより結合させた。プライマーEcoRIF及びAscIR(表1)を使用して、125fモルの各テンプレートをそれぞれ含有する各標的についての7つの50マイクロリットルPCR反応物中で断片を72℃のアニーリング温度において12サイクル結合させた。PCR産物を上記のとおりゲル精製した。L3ループランダム化について、プライマーEcoRIF及びL2R(表1)を使用して、L3ループコード領域を有さない第1ラウンドの選択アウトプットのライブラリー足場DNAをPCR増幅させた。増幅させるべきDNA断片の各プールについて、2つの50マイクロリットル反応物の各々で8fモルのDNAテンプレートを使用して、2つの個々のPCR増幅を実施した。PCR増幅は、Phusion Hot Start Flex DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)を製造業者の指示書に従って使用して、72℃のアニーリング温度において18サイクル実施した。PCR産物は、Wizard SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を使用してゲル精製した。ライブラリー構築(実施例2)中に既に生成され、トリヌクレオチドカップリングにより生成されたランダム化ループ3コード領域を含有するFR3-L3-FR4(
図11)をコードするDNA断片にそれらの断片をPCRにより結合させた。プライマーEcoRIF及びAscIR(表1)を使用して、125fモルの各テンプレートをそれぞれ含有する各標的についての7つの50マイクロリットルPCR反応物中で断片を72℃のアニーリング温度において12サイクル結合させた。PCR産物を上記のとおりゲル精製した。得られたループ1及びループ3がランダム化された第1ラウンドのパニング選択アウトプットをコードするDNAプールを含むPCR産物を合わせ、このDNAの5マイクログラムをそれぞれ100UのEcoRI-HF及びAscI(New England Biolabs)で37℃において4時間消化した。次いで、Wizard SV gel and PCR Clean-Up System(Promega)を使用して消化DNAをカラム精製して、ループ1及びループ3がランダム化された第1ラウンドのパニング選択アウトプットのインサートDNAを生成した。7.75マイクログラムの消化ファージミドベクター(実施例2のライブラリー構築において使用されたもの)並びに2.5マイクログラムの上記のループ1及びループ3がランダム化された第1ラウンドのパニング選択アウトプットのインサートDNA(インサート:ベクターは、ほぼ2:1のモル比である)で5,000UのT4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)を用いて、1.25mLの容量でライゲーションを16℃において一晩実施した。ライゲーション物を65℃において10分間加熱し、Amicon Ultra 30K MWCOカラム(Millipore)を使用する反復回転及び補水によりライゲーション緩衝液をmilliQ超純水と交換した。次いで、これらのライゲーション物をエレクトロコンピテント大腸菌(E. coli)株XL1-Blue(Agilent)中にそれぞれ形質転換し、各形質転換培養物をハーベストし、ライブラリー構築プロトコル(実施例2)について記載される手順を使用して、TB寒天、2%のグルコース及び100マイクログラム/mLのアンピシリンを含有する大型500cm
2選択培地プレート上で37℃において16時間プレートアウトした。エレクトロポレーション後の希釈大腸菌(E. coli)培養物アリコートのコロニー数から推定して、PD-L1選択に由来するループ1及びループ3がランダム化された第1ラウンドのパニング選択アウトプットをコードするDNAについておよそ4×10
8の複雑性のライブラリー並びにHER2に由来するループ1及びループ3がランダム化された第1ラウンドのパニング選択アウトプットをコードするDNAについて9×10
7の複雑性のライブラリーを得た。得られたクローンを、2%のグルコース、100マイクログラム/mLのカルベニシリンを含有する2×YT培地でそれらをプレートからスクレイピングすることによりハーベストし、グリセロールを15%の最終容量まで添加した。再懸濁させた細胞を1mLアリコートに分割し、ランダム化された第1ラウンドのパニング選択アウトプットの大腸菌(E. coli)グリセロールストックとして、さらなる使用まで-80℃において貯蔵した。
【0201】
標的PD-L1及びHER2に対する第2及び第3ラウンドのファージディスプレイ選択
ランダム化された第1ラウンドのパニング選択アウトプットの大腸菌(E. coli)グリセロールストックの各々のアリコートを解凍し、500mLの2×YT培地中で希釈して0.2のOD600を得た。さらに、第1ラウンドのパニング選択アウトプットの大腸菌(E. coli)グリセロールストックのアリコートを解凍し、100mLの2×YT培地中で希釈して0.2のOD600を得た。各培養物に、カルベニシリン及びグルコースを100マイクログラム/mLのカルベニシリン、0.1%のグルコースの最終濃度まで添加した。次いで、培養物を37℃において激しく振盪させながら、OD600が0.6に達するまで増殖させてから、100mLの培養物当たり2×1011個のVCSM13ヘルパーファージ(Agilent)を添加することにより大腸菌(E. coli)に感染させた。感染を37℃において1時間進行させてから、培養物を氷上で冷やし、カナマイシンを30マイクログラム/mLまで添加した。IPTGも0.5mMまで添加して、足場-pIII融合遺伝子の発現を誘導した。次いで、培養物を26℃において一晩増殖させた。
【0202】
一晩培養物の各々の50mLのアリコートを8000×gにおいて4℃で20分間遠心分離し、ファージ粒子を含有する上清を慎重に回収し、0.45マイクロメートルフィルタ(Sartorius)に通して濾過した。これらの濾液を氷上で冷やし、0.25×容量の20%(w/v)PEG、2.5MのNaClを添加し、氷上で1時間静置してファージを沈殿させた。沈殿物を8000×gにおいて4℃で30分間遠心分離し、ファージペレットを500マイクロリットルのPBS中で個々に再懸濁させた。各標的について、ランダム化された第1ラウンドのパニング選択アウトプットに由来する62マイクロリットルのファージ及び第1ラウンドのパニング選択アウトプットに由来する438マイクロリットルのファージを合わせて、500マイクロリットル容量の合わせたファージの混合物を得た。
【0203】
次いで、これらの合わせたファージ混合物の各々を使用して、上記のとおりそれらのそれぞれのビオチン化抗原に対して第2ラウンドの選択を実施したが、ビオチン化抗原は10nMの最終濃度までファージ上清に添加した。およそ3.6×105個のクローン及び1.1×105個のクローンがPD-L1及びHER2の第2ラウンドのパニングアウトプットからそれぞれ得られた。翌日、プレートの各々からのコロニーを、1%のグルコース、100マイクログラム/mLのアンピシリン及び15%のグリセロールを含有するLB培地でプレートをスクレイピングすることによりハーベストし、再懸濁させた細胞を0.5mLのアリコートに分割し、第2ラウンドのパニング選択アウトプットの大腸菌(E. coli)グリセロールストックとして、さらなる使用まで-80℃において貯蔵した。
【0204】
上記の第2ラウンドのパニング選択アウトプットの大腸菌(E. coli)グリセロールストックのアリコートを解凍し、100mLの2×YT培地中で希釈して0.2のOD600を得た。各培養物に、カルベニシリン及びグルコースを100マイクログラム/mLのカルベニシリン、0.1%のグルコースの最終濃度まで添加した。次いで、培養物を37℃において激しく振盪させながら、OD600が0.6に達するまで増殖させてから、100mLの培養物当たり2×1011個のVCSM13ヘルパーファージ(Agilent)を添加することにより大腸菌(E. coli)に感染させた。感染を37℃において1時間進行させてから、培養物を氷上で冷やし、カナマイシンを30マイクログラム/mLまで添加した。IPTGも0.5mMまで添加して、足場-pIII融合遺伝子の発現を誘導した。次いで、培養物を26℃において一晩増殖させた。一晩培養物の各々の50mLのアリコートを8000×gにおいて4℃で20分間遠心分離し、ファージ粒子を含有する上清を慎重に回収し、0.45マイクロメートルフィルタ(Sartorius)に通して濾過した。これらの濾液を氷上で冷やし、0.25×容量の20%(w/v)PEG、2.5MのNaClを添加し、氷上で1時間静置してファージを沈殿させた。沈殿物を8000×gにおいて4℃で30分間遠心分離し、各パニングアウトプットから得られたファージペレットを1mLのPBS中で個々に再懸濁させた。これらのファージ調製物の各々を2つの別個のチューブ(1チューブ当たり500マイクロリットルのファージを含有する)に分割し、それを使用して、5nM及び500pMの最終濃度におけるそれらのそれぞれのビオチン化抗原を用いて第3ラウンドのパニングを実施した。パニングは、各サンプルについて上記のとおり実施した。PD-L1の第3ラウンドの選択について、およそ3.3×106個のクローン及び8.2×105個のクローンが5nM及び500pMのパニングアウトプットからそれぞれ得られた。HER2の第3ラウンドの選択について、およそ1.5×106個のクローン及び3.2×105個のクローンが5nM及び500pMのパニングアウトプットからそれぞれ得られた。プレートの各々からのコロニーを、1%のグルコース、100マイクログラム/mLのアンピシリン及び10%のグリセロールを含有するLB培地でプレートをスクレイピングすることによりハーベストし、再懸濁させた細胞を0.5mLのアリコートに分割し、第3ラウンドのパニング選択アウトプットの大腸菌(E. coli)グリセロールストックとして、さらなる使用まで-80℃において貯蔵した。
【0205】
実施例5
ELISAによる本発明の足場の標的結合クローンの同定
組換えファージミドDNAのプールを、FastGene Plasmid Mini Kit(日本ジェネティクス、日本)を使用して上記の第3ラウンドの選択アウトプットからのグリセロールストックの各々のアリコートから単離した。ファージミドDNA(5マイクログラム)をそれぞれ50単位のEcoRI-HF及びAscI(New England Biolabs)で37℃において2時間消化し、インサートDNAを上記のとおりゲル精製した。得られたDNAインサートの100ngのアリコートを、対応するEcoRI及びAscIクローニング部位を含む100ngの改変pQE-80L(QIAGEN)ベクターで400UのT4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)を用いて、20マイクロリットルの容量で16℃において2時間ライゲートした。次いで、ライゲーション混合物を65℃において10分間加熱し、それを使用して、化学的コンピテント大腸菌(E. coli)XL1-Blue(Agilent)を製造業者の指示書に従って形質転換し、2%のグルコース及び50マイクログラム/mLのカナマイシンを含有する2×YT寒天プレート上で37℃において一晩プレートアウトした。翌日、95個の個々のコロニーを各形質転換アウトプットからピックし、0.1%のグルコース及び50マイクログラム/mLのカナマイシンを含有する1ウェル当たり110マイクロリットルの2×YT培地を含有する96ウェルプレート(「発現プレート」)中で37℃において穏やかに振盪させながら4時間増殖させた(各「発現プレート」のプレートウェル12Hに細菌を植菌しなかった)。この後、各ウェルからの10マイクロリットルを、1%のグルコース及び50マイクログラム/mLのカナマイシンを含有する1ウェル当たり100マイクロリットルのTB培地を含有するレプリケート96ウェルプレート(「貯蔵プレート」)に移した。貯蔵プレートを室温において振盪させながら一晩増殖させた。IPTGを発現プレートの各ウェルに0.5mMのIPTGの最終濃度まで添加して個々のクローンの発現を誘導した一方、発現を室温において穏やかに振盪させながら一晩進行させた。翌日、1%のグルコース、50マイクログラム/mLのカナマイシン及び30%のグリセロールを含有するTB培地の100マイクロリットルのアリコートを貯蔵プレートの各ウェルに添加した。次いで、貯蔵プレートを接着アルミニウム箔シートで密封し、-80℃において冷凍させて個々のクローンのグリセロールストックとして提供した。この後、2.5mg/mLのヒトリゾチーム(Merck)及び20U/mLのbenzonase(Merck)を含有する40マイクロリットルの溶解緩衝液(24.7g/lのホウ酸、18.7g/lのNaCl、1.49g/lのEDTA、pH8.0)を発現プレートの各ウェルに添加し、室温において1時間振盪させた。次いで、40マイクロリットルのPBS中12.5%(w/v)のスキムミルク粉末を発現プレートの各ウェルに添加し(最終濃度2.5%(w/v)のスキムミルク)、プレートを室温において30分間振盪させた。個々に発現させたクローンからの本発明の足場を含有するこの得られたブロッキングした細胞溶解物を、標的抗原への結合についてELISAにより以下のとおりスクリーニングした。抗原をPBS中で1マイクログラム/mLまで溶解させ、100マイクロリットルを96ウェルMaxiSorpプレート(Nunc)の各ウェルの表面上に4℃において一晩コーティングした。翌日、MaxiSorpプレートのウェルをPBST緩衝液(0.05%のTween-20を含有するPBS)で洗浄し、ウェルを1ウェル当たり400マイクロリットルのPBST中5%(w/v)のスキムミルク粉末で2時間ブロッキングした。次いで、このブロッキング緩衝液を廃棄し、プレートのウェルをPBSTで洗浄した。次いで、ブロッキングされた細胞溶解物をMaxiSorpプレートに移し、ブロッキングされた固定化抗原に室温において穏やかに振盪させながら2時間結合させた。この後、溶解物を廃棄し、MaxiSorpプレートのウェルをPBSTで4回洗浄した。次いで、2.5%(w/v)のスキムミルクを含有するPBST中の抗FLAG M2 HRPコンジュゲート抗体(Sigma)の100マイクロリットルの1/4000希釈溶液を各ウェルに添加し、1時間結合させた。次いで、これを廃棄し、プレートをPBSTで4回洗浄した。次いで、1ウェル当たり100マイクロリットルのELISA POD Substrate TMB Kit(HYPER)検出試薬(ナカライテスク、日本)を添加し、100マイクロリットルの1Mのリン酸の添加により発色反応を停止させた。各ウェルの吸光度を450nmの波長において読み取った(
図12A及び12B)。陽性結合シグナルを生成したクローンを同定し、上記のグリセロールストック貯蔵プレートの個々のウェルから採取された植菌物から増殖させた。培養物を、1%のグルコース及び50マイクログラム/mLのカナマイシンを含有する2mLのTB培地中で37℃において振盪させながら一晩増殖させた。FastGene Plasmid Mini Kit(日本ジェネティクス、日本)を使用してこれらの培養物からプラスミドを単離し、本発明の足場をコードするDNA領域のシーケンシングをユーロフィンジェノミクス(日本)により実施した。
【0206】
実施例6
標的結合足場のスモールスケールのタンパク質精製及び特徴付け
貯蔵プレート(実施例5に記載)からの配列確認された標的結合クローンの大腸菌(E. coli)グリセロールストックを使用して、50マイクログラム/mLのカナマイシン及び0.1%のグルコースを含有する2×YT培地の50mLの培養物に37℃において激しく振盪させながら、OD
600が0.5に達するまで植菌した。次いで、培養物を氷上で冷やし、IPTGを0.5mMまで添加し、培養物を27℃において激しく振盪させながら一晩増殖させた。培養物を3000×gにおいて4℃で10分間遠心分離し、細胞ペレットを、300mMのNaClを含有する27mLの氷冷PBS(pH7.4)中で再懸濁させた。次いで、3mLの10×bugbuster試薬(EMD Millipore)を添加し、細胞を氷上で30分間溶解させた。次いで、細胞溶解物を12,000×gにおいて4℃で30分間遠心分離し、細胞溶解物を含有する上清を回収した。次いで、これらを1mLのベッド容量の予備平衡化Talon Cell-thru樹脂(Clontech)に結合させ、製造業者の指示書に従って精製を継続し、5mLの容量で溶出させた。10マイクロリットルのアリコートをNuPAGE 4~12%SDS-PAGEゲル(Invitrogen)上でランさせ、クマシーブルー染色で染色することにより精製タンパク質を可視化した(
図13~15)。製造業者の指示書に従うAmicon Ultra-4 10,000MWCOカラム(Millipore)を介する遠心分離の繰り返しにより溶出タンパク質をPBS(pH7.4)で緩衝液交換し、タンパク質をおよそ1mLの容量で回収した。タンパク質濃度を、DNA配列データから推定されるアミノ酸配列から予測される吸光係数と比較した280nmにおける測定吸光度に基づいて計算した。
【0207】
本発明の足場のタンパク質の熱安定性は、PBS緩衝液(pH7.4)中500マイクログラム/mLにおけるタンパク質を用いて、SYPROオレンジ色素(Merck)を用いるDSF測定により0.5℃/分の走査速度において決定した(
図16A~16E)。タンパク質の融解温度は、蛍光強度の一次微分曲線の最大値における温度から決定した。
【0208】
個々の本発明の足場の結合の親和性は、ELISAにより推定した。抗原をPBS中で1マイクログラム/mLまで溶解させ、100マイクロリットルを96ウェルMaxiSorpプレート(Nunc)の各ウェルの表面上に4℃において一晩コーティングした。翌日、MaxiSorpプレートのウェルをPBST緩衝液(0.05%のTween-20を含有するPBS)で洗浄し、ウェルを1ウェル当たり400マイクロリットルのPBST中5%(w/v)のスキムミルク粉末で2時間ブロッキングした。次いで、このブロッキング緩衝液を廃棄し、プレートのウェルをPBSTで洗浄した。本発明の標的結合足場の精製タンパク質を、2.5%(w/v)のスキムミルクを含有するPBS中10.8マイクロM~20pMの範囲の種々の濃度における3倍系列希釈を使用して96ウェルプレート中で希釈した。次いで、希釈された標的結合足場タンパク質を抗原コーティングされたMaxiSorpプレートに移し、ブロッキングされた固定化抗原に室温において穏やかに振盪させながら2時間結合させた。この後、希釈した標的結合足場タンパク質溶液を廃棄し、MaxiSorpプレートのウェルをPBSTで4回洗浄した。次いで、2.5%(w/v)のスキムミルクを含有するPBST中の抗FLAG M2 HRPコンジュゲート抗体(Sigma)の100マイクロリットルの1/4000希釈溶液を各ウェルに添加し、1時間結合させた。次いで、これを廃棄し、プレートをPBSTで4回洗浄した。次いで、1ウェル当たり100マイクロリットルのELISA POD Substrate TMB Kit(HYPER)検出試薬(ナカライテスク、日本)を添加し、100マイクロリットルの1Mのリン酸の添加により発色反応を停止させた。各ウェルの吸光度を450nmの波長において読み取った。結合のEC
50は、測定吸光度値の4パラメータロジスティックプロットから計算した(
図17A~17B)。
【0209】
実施例7
本発明の足場と配列相同性を有するタンパク質のランダム化潜在性の評価
本発明のランダム化スキームが、本発明の足場と配列同一性を有するタンパク質に広く適用可能であるか否かを決定するため、ポリペプチド配列相同性検索を行って相同性候補を同定した。CheB
cドメイン(配列番号1)のポリペプチド配列を使用して、NCBI(米国国立生物工学情報センター)タンパク質配列データベースを相同性ポリペプチドについてblastpアルゴリズムを使用して検索した。こうして、CheB
cドメインと相同性を示すいくつかのタンパク質を同定した。それらの1つ、フェルビドバクテリウム・ペンニボランス(Fervidobacterium pennivorans)の走化性タンパク質CheYのドメイン(GenBank ID:ANE42371.1アミノ酸残基147~337)(配列番号48)は、CheB
cドメイン(配列番号1)と78%の相同性を示し(
図18)、フェルビドバクテリウム属種(Fervidobacterium sp.)ドメインタンパク質の個々のループグラフト化バリアントは、配列番号1と一層低い配列相同性を示すことが予測された。したがって、フェルビドバクテリウム属種(Fervidobacterium sp.)タンパク質ドメインを試験ループグラフト化のための候補として選択した。
【0210】
配列アラインメントから得られた情報を使用して、本発明の足場のランダム化設計を試験するために使用された試験ループグラフトと類似する試験ループグラフトを設計し、システイン不含の試験ループグラフト構築物(配列番号49)を生成する目的のための配列番号48中のCys159Ser置換と一緒にフェルビドバクテリウム属種(Fervidobacterium sp.)タンパク質中に取り込んだ(
図19及び20)。EcoRI及びAscI部位でフランキングされる試験ループグラフト化フェルビドバクテリウム属種(Fervidobacterium sp.)タンパク質構築物のポリペプチド配列(配列番号50)を、ユーロフィンジェノミクス(日本)から入手した合成DNA(配列番号51)によりコードさせ、対応するEcoRI及びAscIクローニング部位を含む改変pQE-80Lベクター(QIAGEN)中にクローニングし、大腸菌(E. coli)XL1-Blue(Agilent)中に形質転換した。配列確認されたクローンのグリセロールストックを使用して、50マイクログラム/mLのカナマイシン及び0.1%のグルコースを含有する2×YT培地の50mLの培養物に植菌し、37℃において激しく振盪させながら、OD
600が0.5に達するまで増殖させた。培養物を氷上で冷やし、IPTGを0.5mMまで添加し、培養物を27℃において激しく振盪させながら一晩増殖させた。培養物を3000×gにおいて4℃で10分間遠心分離し、細胞ペレットを、300mMのNaClを含有する27mLの氷冷PBS(pH7.4)中で再懸濁させた。次いで、3mLの10×bugbuster試薬(EMD Millipore)を添加し、細胞を氷上で30分間溶解させた。次いで、細胞溶解物を12,000×gにおいて4℃で30分間遠心分離し、細胞溶解物を含有する上清を回収した。次いで、これを1mLのベッド容量の予備平衡化Talon Cell-thru樹脂(Clontech)に結合させ、製造業者の指示書に従って精製を継続し、5mLの容量で溶出させた。10マイクロリットルのアリコートをNuPAGE 4~12%SDS-PAGEゲル(Invitrogen)上でランさせ、クマシーブルー染色で染色することにより精製タンパク質を可視化した(
図15)。製造業者の指示書に従うAmicon Ultra-4 10,000MWCOカラム(Millipore)を介する遠心分離の繰り返しにより溶出タンパク質をPBS(pH7.4)で緩衝液交換し、タンパク質をおよそ1mLの容量で回収した。タンパク質濃度を、DNA配列データから推定されるアミノ酸配列から予測される吸光係数と比較した280nmにおける測定吸光度に基づいて計算した。試験ループグラフト化フェルビドバクテリウム属種(Fervidobacterium sp.)タンパク質の耐熱性は、PBS緩衝液(pH7.4)中500マイクログラム/mLにおけるタンパク質を用いて、SYPROオレンジ色素(Merck)を用いるDSF測定により0.5℃/分の走査速度において決定した(
図21)。タンパク質の融解温度(78℃)は、蛍光強度の一次微分曲線の最大値における温度から決定した。
【0211】
上記の本発明を明確性及び理解の目的のためにいくらか詳細に記載してきた一方、本発明の真の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の種々の変更形態がなされ得ることは、本開示の精読から当業者に明らかである。
【0212】
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