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特表2023-541790湿潤接着力に優れた電極用絶縁組成物、およびその製造方法
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  • 特表-湿潤接着力に優れた電極用絶縁組成物、およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】湿潤接着力に優れた電極用絶縁組成物、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/591 20210101AFI20230927BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20230927BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20230927BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
H01M50/591 101
H01M50/586
H01M4/139
H01M4/04 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509437
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 KR2022011197
(87)【国際公開番号】W WO2023008952
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0100879
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0090835
(32)【優先日】2022-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】サン・ア・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・クン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】スン・チュル・パク
(72)【発明者】
【氏名】スン・ソ・ユン
【テーマコード(参考)】
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5H043AA04
5H043BA19
5H043GA22
5H043GA25
5H043KA11E
5H043KA13E
5H043KA22E
5H043KA24E
5H043KA25E
5H043KA26E
5H043KA29E
5H043KA30E
5H043KA45E
5H043LA03E
5H043LA14E
5H043LA42E
5H050AA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB20
5H050EA01
5H050EA12
5H050EA23
5H050EA24
5H050EA25
5H050FA17
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA10
(57)【要約】
本発明は、湿潤接着力に優れた絶縁組成物およびその製造方法に関するものであって、上記絶縁コーティング層が電解液内で湿潤接着力に優れていて、電極のオーバーレイ領域のリチウムイオンの移動を阻止して、容量発現などを抑制できるという利点がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水系有機溶媒で置換された水系バインダーと、無機粒子と、を含み、
前記無機粒子と前記水系バインダーの重量比は、1:99~95:5の範囲内にある、電極用絶縁組成物。
【請求項2】
前記無機粒子と前記水系バインダーの重量比は、45:55~90:10の範囲内にある、請求項1に記載の電極用絶縁組成物。
【請求項3】
前記非水系有機溶媒は、N‐メチル‐ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、アセトニトリル(Acetonitrile)、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、ガンマブチロラクトン、メチルアルコール、エチルアルコール、およびイソプロピルアルコールからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の電極用絶縁組成物。
【請求項4】
前記無機粒子は、AlOOH、Al、 Al(OH)、Mg(OH)、Ti(OH)、MgO、CaO、Cr、MnO、Fe、Co、NiO、ZrO、BaTiO、SnO、CeO、Y、SiO、シリコンカーバイド(SiC)およびボロンニトリド(BN)からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の電極用絶縁組成物。
【請求項5】
前記水系バインダーは、スチレン‐ブタジエンゴム、アクリレートスチレン‐ブタジエンゴム、アクリロニトリル‐ブタジエンゴム、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびジアセチルセルロースからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の電極用絶縁組成物。
【請求項6】
前記非水系有機溶媒は、N‐メチル‐ピロリドン(NMP)であり、
前記水系バインダーは、スチレン‐ブタジエンゴムである、請求項1に記載の電極用絶縁組成物。
【請求項7】
前記無機粒子の平均粒径は、0.01μm~100μmの範囲内にある、請求項1に記載の電極用絶縁組成物。
【請求項8】
前記電極用絶縁組成物は、粒径バランスが互いに異なる第1無機粒子および第2無機粒子を含み、かつ、バイモーダル粒度分布を有する、請求項7に記載の電極用絶縁組成物。
【請求項9】
前記電極用絶縁組成物の25℃での粘度が50cP~50,000cPである、請求項1に記載の電極用絶縁組成物。
【請求項10】
前記電極用絶縁組成物は、二次電池の正極に適用される、請求項1に記載の電極用絶縁組成物。
【請求項11】
水に分散した水系バインダーと非水系有機溶媒を混合する段階と、
熱処理を通じて含有した水を除去しながら溶媒置換する段階と、を含む、電極用絶縁組成物の製造方法。
【請求項12】
前記溶媒置換する段階の後に、無機粒子を含ませる段階をさらに含む、請求項11に記載の電極用絶縁組成物の製造方法。
【請求項13】
前記無機粒子と前記水系バインダーの重量比は、1:99~95:5の範囲内にある、請求項12に記載の電極用絶縁組成物の製造方法。
【請求項14】
前記溶媒置換する段階で、前記熱処理は、80~150℃の範囲内で行われる、請求項11に記載の電極用絶縁組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年7月30日付の韓国特許出願第10-2021-0100879号および2022年7月22日付の韓国特許出願第10-2022-0090835号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、湿潤接着力に優れた電極用絶縁組成物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術開発と需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池に対する需要が急激に増加しており、これによって、多様なニーズに応えることができる電池について多くの研究が行われている。
【0004】
代表的に、電池の形状の観点から、薄い厚さで携帯電話などのような製品に適用できる角型電池とパウチ型電池に対する需要が高く、また、材料の観点から、エネルギー密度、放電電圧、安全性に優れたリチウムコバルトポリマー電池のようなリチウム二次電池に対する需要が高い。
【0005】
このような二次電池において主な研究課題の1つは、安全性を向上させることである。電池の安全性関連事故の主要な原因は、正極と負極の間の短絡による異常高温状態の到達に起因する。すなわち、正常な状況では、正極と負極との間に分離膜が位置し、電気的絶縁を維持しているが、電池が過充電または過放電を起こしたり、電極材料の樹枝状成長(dendritic growth)または異物による内部短絡を起こしたり、釘、ねじなどの鋭い物体が電池を貫通したり、外力により電池に無理な変形が加えられるなどの異常な状況では、従来の分離膜だけでは限界を示すこととなる。
【0006】
一般的に、分離膜は、ポリオレフィン樹脂からなる微細多孔膜が主に用いられているが、その耐熱温度が120℃~160℃程度であり、耐熱性が不十分である。したがって、内部短絡が発生すると、短絡反応熱により分離膜が収縮して、短絡部が拡大し、より多くの反応熱が発生する熱暴走(thermal runaway)状態に至るという問題があった。このような現象は、電極を積層するとき、電極活物質がコーティングされた電極集電体の電極活物質塗布の端部で主に発生するところ、外部衝撃または高温下で電極の短絡の可能性を低減するために多様な方法が試みられてきた。
【0007】
具体的には、電池の内部短絡を解決するために、電極の無地部と活物質層の一部に絶縁テープを付着したり、絶縁液をコーティングして絶縁コーティング層を形成したりする方法が提案されてきた。例えば、正極の無地部と活物質層の一部に絶縁目的のバインダーを塗布したり、上記バインダーと無機粒子の混合物を溶媒に分散させた絶縁液をコーティングして絶縁コーティング層を形成したりする方法がある。
【0008】
一方、実際二次電池内における電極は、電解液に含浸した状態で存在するが、従来の絶縁コーティング層は、電解液に含浸した状態での接着力(以下、湿潤接着力という)が低下して、電極のオーバーレイ(overlay)領域にリチウムイオンが移動することを阻止することができず、容量が発現する問題があった(図1参照)。特に、容量発現時に電極のオーバーレイ領域でリチウムイオンが析出することがあり、これは、電池セルの安全性低下を引き起こし得る。
【0009】
したがって、湿潤接着力に優れた絶縁組成物の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、湿潤接着力に優れた電極用絶縁組成物、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述のような問題を解決するために、本発明は、一実施形態において、非水系有機溶媒で置換された水系バインダーと、無機粒子と、を含む電極用絶縁組成物を提供する。一実施形態において、上記無機粒子と水系バインダーの重量比は、1:99~95:5の範囲内にある。
【0012】
具体的な実施形態において、上記無機粒子と水系バインダーの重量比は、45:55~90:10の範囲内にある。
【0013】
具体的な例において、上記非水系有機溶媒は、N‐メチル‐ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、アセトニトリル(Acetonitrile)、ジメトキシエタン(Dimethoxyethane)、テトラヒドロフラン(THF)、ガンマブチロラクトン(γ‐butyrolactone)、メチルアルコール(methyl alcohol)、エチルアルコール(ethyl alcohol)、およびイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)からなる群から選ばれる1種以上である。
【0014】
別の例において、上記無機粒子は、AlOOH、Al、γ‐AlOOH、Al(OH)、Mg(OH)、Ti(OH)、MgO、CaO、Cr、MnO、Fe、Co、NiO、ZrO、BaTiO、SnO、CeO、Y、SiO、シリコンカーバイド(SiC)およびボロンニトリド(BN)からなる群から選ばれる1種以上である。
【0015】
別の例において、上記水系バインダーは、スチレン‐ブタジエンゴム、アクリレートスチレン‐ブタジエンゴム、アクリロニトリル‐ブタジエンゴム、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびジアセチルセルロースからなる群から選ばれる1種以上である。
【0016】
例えば、本発明による電極用絶縁組成物において、非水系有機溶媒は、N‐メチル‐ピロリドン(NMP)であり、水系バインダーは、スチレン‐ブタジエンゴムである。
【0017】
一実施形態において、上記無機粒子の平均粒径は、0.01μm~100μmの範囲内にある。
【0018】
より具体的な一実施形態において、本発明による絶縁組成物は、粒径バランスが互いに異なる第1および第2無機粒子を含み、かつ、バイモーダル粒度分布を有する。
【0019】
例えば、上記絶縁組成物は、25℃での粘度が50cP~50,000cPの範囲にある。
【0020】
一実施形態において、本発明による絶縁組成物は、二次電池の正極に適用される。
【0021】
また、本発明は、上記で説明した電極用絶縁組成物を製造する方法を提供する。一実施形態において、本発明による電極用絶縁組成物の製造方法は、水に分散した水系バインダーと非水系有機溶媒を混合する段階と、熱処理を通じて含有した水を除去しながら、溶媒置換する段階と、を含む。
【0022】
一実施形態において、上記溶媒置換する段階後に、無機粒子を含ませる段階をさらに含む。
【0023】
具体的な実施形態において、無機粒子と水系バインダーの重量比は、1:99~95:5の範囲内にある。
【0024】
別の一実施形態において、溶媒置換する段階で、上記熱処理は、80~150℃の範囲で行う。
【発明の効果】
【0025】
本発明による湿潤接着力に優れた電極用絶縁組成物、およびこれを製造する方法を提供し、上記絶縁組成物は、電解液内で湿潤接着力に優れていて、電極のオーバーレイ領域のリチウムイオンの移動を阻止して、容量発現などを抑制できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】電極のオーバーレイ領域でリチウムイオンの移動を模式的に示す図である。
図2】実施例および比較例において絶縁組成物で形成されたコーティング層の湿潤接着力を測定した結果を示す図である。
図3】実施例5~7の電池セルの容量発現を評価するために放電容量を測定したグラフである(常温放電特性)。
図4】実施例5~7の電池セルの容量発現を評価するために放電容量を測定したグラフである(高温放電特性)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な実施形態を有していてもよいところ、特定の実施例を詳細な説明に詳細に説明しようとする。
【0028】
しかしながら、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものでは、なく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解すべきである。
【0029】
本発明において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解すべきである。
【0030】
また、本発明において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真上に」ある場合だけでなく、その中間に別の部分がある場合も含む。反対に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真下に」ある場合だけでなく、その中間に別の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるというのは、上部だけでなく、下部に配置される場合も含んでもよい。
【0031】
本発明において、「絶縁コーティング層」とは、電極集電体の無地部のうち少なくとも一部から電極活物質層の少なくとも一部まで塗布および乾燥して形成される絶縁部材を意味する。
【0032】
本発明において、「湿潤接着力」とは、電解液に含浸した状態で測定した絶縁コーティング層の接着力を意味する。より具体的に、上記湿潤接着力は、絶縁コーティング層が形成された金属試験片を電解液に含浸させ、超音波を印加した後、上記絶縁コーティング層のスウェリングまたは脱離の有無を確認することによって測定することができる。
【0033】
本発明において、「金属試験片」というのは、絶縁コーティング層が形成される空間であり、電極の製造時に使用される金属集電体を意味し、所定の幅と所定の長さを有するように打ち抜いた金属集電体であってもよい。例えば、上記金属試験片は、アルミニウム、銅またはアルミニウム合金であってもよい。
【0034】
本発明において、「オーバーレイ領域」というのは、電極において絶縁コーティング層が形成される領域を意味する。より具体的に、上記絶縁コーティング層は、活物質層が形成された電極において無地部のうち少なくとも一部から上記活物質層の少なくとも一部までカバーするが、上記活物質層において絶縁コーティング層が形成された領域をオーバーレイ領域といえる。
【0035】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0036】
<絶縁組成物>
本発明は、一実施形態において、非水系有機溶媒で置換された水系バインダーと、無機粒子と、を含む。具体的には、上記無機粒子と水系バインダーの重量比は、1:99~95:5の範囲内にある。
【0037】
本発明による電極用絶縁組成物は、電解液内で湿潤接着力に優れていて、電極のオーバーレイ領域でリチウムイオンの移動を阻止して、容量発現などを抑制できるという利点がある。
【0038】
一般的に、二次電池内における電極は、電解液に含浸した状態で存在するが、従来の絶縁コーティング層は、電解液に含浸した状態での湿潤接着力が低下して、電極のオーバーレイ領域にリチウムイオンが移動することを阻止することができず、容量が発現する問題があった。特に、容量発現時に電極のオーバーレイ領域でリチウムイオンが析出することがあり、これは、電池セルの安定性低下を引き起こし得る。
【0039】
本発明では、電極スラリーの溶媒として使用される非水系有機溶媒置換された水系バインダーと、ここに分散した無機粒子と、を含む電極用絶縁組成物を提供することによって、電解液内で湿潤接着力を向上させることができる。すなわち、上記絶縁組成物は、電極に適用時に湿潤接着力を向上させて、電極のオーバーレイ領域でリチウムイオンの移動を抑制させることができ、リチウムイオンが析出するのを防止することができる。これによって、上記絶縁組成物は、二次電池の電極に適用時に二次電池の安定性を向上させることができる。
【0040】
具体的な例において、本発明による電極用絶縁組成物は、無機粒子と水系バインダーが1:99~95:5の範囲内で混合された組成である。上記電極用絶縁組成物で絶縁コーティング層を形成することによって、湿潤接着力に優れている。
【0041】
一方、絶縁コーティング層の湿潤接着力の測定は、絶縁コーティング層が形成された金属試験片を電解液に含浸させ、超音波を印加した後、上記金属試験片に形成された絶縁コーティング層のスウェリングまたは脱離の有無を確認することによって測定することができる。
【0042】
上記湿潤接着力の測定時に使用される電解液は、有機溶媒および電解質塩を含んでもよいし、上記電解質塩は、リチウム塩であってもよい。上記リチウム塩は、リチウム二次電池用非水電解液に通常使用されるものを制限なく使用できる。例えば、上記リチウム塩のアニオンとしては、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、PF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CFSO 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、CF(CFSO 、CFCO 、CHCO 、SCNおよび(CFCFSOからなる群から選ばれるいずれか1つまたはこれらのうち2種以上を含んでもよい。
【0043】
前述した電解液に含まれる有機溶媒としては、リチウム二次電池用電解液に通常使用されるものを制限なく使用でき、例えば、エーテル、エステル、アミド、線状カーボネートまたは環状カーボネートなどをそれぞれ単独でまたは2種以上混合して使用することができる。その中、代表的には、環状カーボネート、線状カーボネート、またはこれらの混合物であるカーボネート化合物を含んでもよい。
【0044】
さらに、本発明による電極用絶縁組成物は、正極に適用されるものであり、上記非水系有機溶媒は、N‐メチル‐ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、アセトニトリル(Acetonitrile)、ジメトキシエタン(Dimethoxyethane)、テトラヒドロフラン(THF)、ガンマブチロラクトン(γ‐butyrolactone)、メチルアルコール(methyl alcohol)、エチルアルコール(ethyl alcohol)、およびイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)からなる群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0045】
具体的な例において、上記非水系有機溶媒は、N‐メチル‐ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)およびジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群から選ばれる1種以上であってもよく、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルアセトアミド(DMAC)からなる群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0046】
例えば、上記非水系有機溶媒は、アミド系有機溶媒であってもよく、正極スラリーの製造時に使用される溶媒と同じ溶媒を使用でき、上記非水系有機溶媒は、N‐メチル‐ピロリドン(NMP)であってもよい。
【0047】
具体的な例において、本発明による絶縁組成物は、正極の絶縁コーティング層に適用するとき、正極活物質層のコーティングと同時コートし、乾燥する工程に導入可能である。この際、上記絶縁組成物の溶媒を上記正極スラリーの溶媒と同じ溶媒を使用する場合、乾燥速度などの差異を低減して、絶縁コーティング層と正極活物質層との境界部に発生するクラックなどを防止することができる。特に、上記NMP溶媒は、置換溶媒として使用され、上記水系バインダーは、NMPで置換されたバインダーとして存在することができる。
【0048】
また、上記水系バインダーは、スチレン‐ブタジエンゴム、アクリレートスチレン‐ブタジエンゴム、アクリロニトリル‐ブタジエンゴム、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびジアセチルセルロースからなる群から選ばれる1種以上であってもよい。具体的な例において、上記水系バインダーは、スチレン‐ブタジエンゴム、アクリレートスチレン‐ブタジエンゴム、アクリロニトリル‐ブタジエンゴムおよびアクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレンゴムからなる群から選ばれる1種以上であってもよい。例えば、水系バインダーは、スチレン‐ブタジエンゴムであってもよい。
【0049】
従来、正極の絶縁コーティング層バインダーとしてポリビニリデンフルオライド(以下、PVDFという)を使用したが、これは、電解液に含浸しているとき、湿潤接着力が低下する問題があった。これによって、本発明では、バインダー高分子としてSBRを使用できる。一方、上記高分子バインダーとしてSBRを使用する場合、溶媒として水を使用できるが、このような場合、絶縁組成物を正極スラリーと同時コートの塗布時に、上記絶縁組成物と正極スラリーとの間に正極のバインダーとして使用する有機系バインダーであるPVDFのゲル化(gelation)が発生することがある。これによって、上記電極用絶縁組成物と正極スラリーとの境界部にクラック(crack)が発生することがある。
【0050】
さらに、上記絶縁組成物は、無機粒子を含み、電池の安全性を向上させることができ、絶縁コーティング層の強度をも向上させることができる。上記無機粒子の含有量は、絶縁組成物の粘度、熱抵抗、絶縁性、充填効果、分散性または安定性などを考慮して適切に調節することができる。一般的に、無機粒子のサイズが大きくなるほどこれを含む組成物の粘度が高くなり、絶縁組成物で沈降する可能性が高くなる。また、サイズが小さくなるほど熱抵抗が高くなる傾向がある。したがって、上記のような点を考慮して、適正の種類およびサイズの無機粒子を選択でき、必要に応じて2種以上の無機粒子を共に使用できる。
【0051】
具体的な例において、上記無機粒子は、AlOOH、Al、γ‐AlOOH、Al(OH)、Mg(OH)、Ti(OH)、MgO、CaO、Cr、MnO、Fe、Co、NiO、ZrO、BaTiO、SnO、CeO、Y、SiO、シリコンカーバイド(SiC)およびボロンニトリド(BN)からなる群から選ばれる1つ以上であってもよく、AlOOH、Al、γ‐AlOOHおよびAl(OH)からなる群から選ばれる1つ以上であってもよい。例えば、無機粒子は、AlOOHであってもよい。
【0052】
上記無機粒子と水系バインダーの重量比は、1:99~95:5の範囲内であってもよく、具体的には、45:55~90:10の範囲内、または50:50~90:10の範囲内であってもよい。例えば、絶縁組成物内で無機粒子と水系バインダーの重量比は、50:50であってもよい。一方、上記水系バインダーの含有量が少なすぎる場合には、本発明において目的とする絶縁効果を示すことが困難であり、電極との接着力が弱まり得る。さらに、上記水系バインダーの含有量が多すぎる場合、電極のコート時に、オーバーレイ領域に絶縁組成物が流れて、電池セルの安全性の低下を引き起こし得る。
【0053】
上記無機粒子の平均粒径は、0.1μm~100μmであってもよく、0.5μm~80μmであってもよく、1μm~50μm、2μm~30μm、3μm~20μmまたは5μm~10μmであってもよい。上記無機物粒子のサイズが上記範囲内である場合、上記電極に均一にコートすることができず、リチウムイオンの抵抗を最小化して、リチウム二次電池の性能を確保することができる
【0054】
他の一例において、上記絶縁組成物は、粒径バランスが互いに異なる第1および第2無機粒子を含み、かつ、バイモーダル粒度分布を有していてもよい。これは、上記無機粒子が小粒子と大粒子が混合される場合を意味し、大粒子の第1無機粒子間の空いた空間を小粒子の第2無機粒子で充填することができる、適切な量の無機粒子の分散が可能になり得る。ただし、これに限定されるものではない。
【0055】
一方、本発明による電極用絶縁組成物において無機粒子およびSBRは、NMP溶媒100重量部に対して1~50重量部、または5~40重量部、または10~40重量部で含んでもよい。
【0056】
上記絶縁組成物は、25℃での粘度が50cP~50,000cP、100cP~45,000cP、1,000cP~40,000cP、2,000cP~35,000cP、3,000cP~30,000cP、4,000cP~20,000cP、5,000cP~10,000cPであってもよく、上記範囲にあるとき、電極活物質層との密着力を向上させることができ、コーティング性、工程性などを向上させることができる。
【0057】
一例において、本発明による電極用絶縁組成物は、水に分散した水系バインダーと非水系有機溶媒を混合する段階と、熱処理を通じて含有した水を除去しながら溶媒置換する段階を経て製造可能である。本発明では、非水系有機溶媒で置換された水系バインダーを形成することによって、水分に脆弱な正極に水系バインダーを含有する絶縁コーティング層を適用することができる。
【0058】
別の一例において、溶媒置換する段階後に、無機粒子を含ませる段階をさらに含む。具体的に、無機粒子と水系バインダーの重量比は、1:99~95:5の範囲内にある。無機粒子および水系バインダーの混合比は、上記で説明した通りである。
【0059】
一例において、上記溶媒置換する段階で、上記熱処理は、80~150℃の範囲内で行う。上記熱処理は、水系バインダーに含有した水の成分を蒸発させて除去するためのものである。上記熱処理過程は、大気圧(1atm)下で行うことが可能であり、迅速な水の蒸発のために、真空ないし減圧の条件(0.1atm以上および1atm未満)で行うことも可能である。上記熱処理は、水を効果的に蒸発させるためのものであり、80~150℃の範囲内、または100~130℃の範囲内で行うことが可能である。
【0060】
<二次電池用電極>
本発明は、一実施形態において、
金属集電体と、
上記金属集電体上に位置する活物質層と、
上記金属集電体は上記活物質層が位置しない無地部と、を含み、
上記無地部のうち少なくとも一部から上記活物質層の少なくとも一部までカバーする絶縁コーティング層が形成される構造であり、
絶縁コーティング層は、無機粒子および非水系有機溶媒で置換された水系バインダーを含むことを特徴とする二次電池用電極を提供する。
【0061】
本発明による二次電池用電極は、湿潤接着力に優れた絶縁コーティング層を含み、電極のオーバーレイ領域でリチウムイオンの移動を阻止して、容量発現などを抑制できるという利点がある。
【0062】
具体的な例において、上記絶縁コーティング層の無機粒子は、AlOOH、Al、γ‐AlOOH、Al(OH)、Mg(OH)、Ti(OH)、MgO、CaO、Cr、MnO、Fe、Co、NiO、ZrO、BaTiO、SnO、CeO、Y、SiO、シリコンカーバイド(SiC)およびボロンニトリド(BN)からなる群から選ばれる1つ以上であってもよく、AlOOH、Al、γ‐AlOOHおよびAl(OH)からなる群から選ばれる1つ以上であってもよい。例えば、無機粒子は、AlOOHであってもよい。
【0063】
さらに、上記水系バインダーは、スチレン‐ブタジエンゴム、アクリレートスチレン‐ブタジエンゴム、アクリロニトリル‐ブタジエンゴム、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびジアセチルセルロースからなる群から選ばれる1種以上であってもよい。具体的な例において、上記水系バインダーは、スチレン‐ブタジエンゴム、アクリレートスチレン‐ブタジエンゴム、アクリロニトリル‐ブタジエンゴムおよびアクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレンゴムからなる群から選ばれる1種以上であってもよい。例えば、水系バインダーは、スチレン‐ブタジエンゴムであってもよい。
【0064】
具体的な例において、上記水系バインダーは、非水系有機溶媒で置換された水系バインダーであってもよく、またはアミド系溶媒で置換されたスチレン‐ブタジエンゴムであってもよく、例えば、NMP溶媒で置換されたスチレン‐ブタジエンゴムであってもよい。より詳細には、上記で説明した二次電池電極用絶縁組成物を無地部のうち少なくとも一部から上記活物質層の少なくとも一部までカバーするように塗布した後、約50~300℃の温度で乾燥する過程を通じて絶縁コーティング層を形成することができる。この際、上記絶縁コーティング層は、上記乾燥する過程で溶媒は除去され、上記溶媒に分散していたスチレン-ブタジエンゴムが上記NMPで置換されたスチレン-ブタジエンゴムで存在することができる。
【0065】
一例において、上記絶縁コーティング層の厚さは、0.2μm~100μmの範囲内で定められ、詳細には、1μm~50μmであってもよく、より一層詳細には、1μm~30μm、2μm~30μm、3μm~20μm、または5μm~15μmであってもよい。上記コーティング部の厚さが薄すぎる場合には、絶縁コーティング層の塗布によって安全性を向上させるための効果を期待することが困難である。
【0066】
さらに、上記二次電池用電極は、正極であってもよい。
【0067】
さらに、上記活物質層は、正極活物質を含んでもよい。具体的な例において、正極活物質は、通常使用される正極活物質が全て使用可能であり、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物またはこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物などを使用できるが、これに限定されない。
【0068】
また、上記正極活物質の含有量は、活物質層100重量部に対して85~95重量部であってもよく、具体的には、88~95重量部、90~95重量部、86~90重量部または92~95重量部であってもよい。
【0069】
この際、上記導電材は、正極の電気伝導性などの性能を向上させるために使用でき、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよび炭素繊維からなる群から選ばれる1種以上を使用できる。例えば、上記導電材は、アセチレンブラックを含んでもよい。
【0070】
また、上記導電材は、活物質層100重量部に対して1~10重量部で含んでもよいし、具体的には、2~8重量部、または2~6重量部で含んでもよい。
【0071】
さらに、上記バインダーは、ポリビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)およびこれらの共重合体からなる群から選ばれる1種以上の樹脂を含んでもよい。一例として、上記バインダーは、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride)を含んでもよい。
【0072】
また、上記バインダーは、活物質層の全体100重量部に対して、1~10重量部で含んでもよいし、具体的には、2~8重量部、または2~6重量部で含んでもよい。
【0073】
さらに、上記活物質層の平均厚さは、特に限定されるものではないが、具体的には、0.1μm~20μmであってもよく、より具体的には、0.1μm~15μm、0.1μm~10μm、2μm~10μm、4μm~10μm、または5μm~9μmであってもよい。
【0074】
一方、本発明によるリチウム二次電池用正極は、集電体として当該電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものを使用できる。例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素などを使用でき、アルミニウムやステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。また、上記集電体は、表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。さらに、上記集電体の平均厚さは、製造される正極の導電性と総厚さを考慮して3~500μmで適切に適用可能である。
【0075】
<リチウム二次電池>
また、本発明は、一実施形態において、上述した本発明による二次電池用電極を含むリチウム二次電池を提供する。
【0076】
上記で説明したように、本発明による二次電池用電極は、リチウム二次電池において正極として使用できる。
【0077】
本発明によるリチウム二次電池は、上述した本発明の正極と、負極と、上記正極と負極の間に位置する分離膜と、を含んでもよい。
【0078】
特に、本発明によるリチウム二次電池は、上記絶縁コーティング層が電解液内で湿潤接着力に優れていて、電極のオーバーレイ領域のリチウムイオンの移動を阻止して、容量発現などを抑制できるという利点がある。これによって、本発明によるリチウム二次電池は、安定性を向上させることができる。
【0079】
ここで、上記負極は、負極集電体と、該負極集電体上に位置し、負極活物質を含有する負極活物質層と、を含んでもよい。具体的に、上記負極は、負極集電体上に負極活物質を塗布、乾燥およびプレスして製造され、必要に応じて上記のような導電材、有機バインダー高分子、充填剤などを選択的にさらに含んでもよい。
【0080】
また、上記負極活物質は、例えば、天然黒鉛のように完全な層状結晶構造を有するグラファイト、低結晶性層状結晶構造(graphene structure;炭素の6角型ハニカム形状平面が層状に配列された構造)を有するソフトカーボンおよびこのような構造が非結晶性部分と混合されているハードカーボン、人造黒鉛、膨張黒鉛、炭素繊維、難黒鉛化炭素、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、活性炭などの炭素および黒鉛材料や;LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’、Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、BiおよびBiなどの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li‐Co‐Ni系材料;チタン酸化物;リチウムチタン酸化物などを使用できる。
【0081】
一例として、上記負極活物質は、黒鉛とケイ素(Si)含有粒子を共に含んでもよいし、上記黒鉛としては、層状結晶構造を有する天然黒鉛と等方形構造を有する人造黒鉛のうちいずれか1つ以上を含んでもよいし、上記ケイ素(Si)含有粒子としては、金属成分としてケイ素(Si)を主成分として含む粒子であり、ケイ素(Si)粒子、酸化ケイ素(SiO)粒子、または上記ケイ素(Si)粒子と酸化ケイ素(SiO)粒子が混合されたものを含んでもよい。
【0082】
この場合、上記負極活物質は、全体100重量部に対して黒鉛80~95重量部、およびケイ素(Si)含有粒子1~20重量部で含んでもよい。本発明は、負極活物質に含まれた黒鉛とケイ素(Si)含有粒子の含有量を上記のような範囲に調節することによって、電池の初期充放電時にリチウム消耗量と非可逆容量損失を低減し、単位質量当たりの充電容量を向上させることができる。
【0083】
また、上記負極活物質層は、100μm~200μmの平均厚さを有していてもよく、具体的には、100μm~180μm、100μm~150μm、120μm~200μm、140μm~200μmまたは140μm~160μmの平均厚さを有していてもよい。
【0084】
さらに、上記負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、ニッケル、チタン、焼成炭素などを使用でき、銅やステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。
【0085】
また、上記負極集電体は、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質との結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。さらに、上記負極集電体の平均厚さは、製造される負極の導電性と総厚さを考慮して3~500μmで適切に適用可能である。
【0086】
また、上記分離膜は、正極と負極の間に介在され、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄膜が使用される。分離膜は、当業界において通常使用されるものであれば、特に限定されないが、具体的には、耐化学性および疎水性のポリプロピレン;ガラス繊維;またはポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが使用でき、場合によっては、上記シートや不織布のような多孔性高分子基材に無機物粒子/有機物粒子が有機バインダー高分子によりコートされた複合分離膜が使用されることもできる。電解質としてポリマーなどの固体電解質が使用される場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。さらに、上記分離膜の気孔直径は、平均0.01~10μmであり、厚さは、平均5~300μmであってもよい。
【0087】
一方、上記正極と負極は、ゼリーロール形態で巻き取られて、円筒型電池、角型電池またはパウチ型電池に収納されるか、またはフォールディングまたはスタックアンドフォールディング形態でパウチ型電池に収納されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0088】
また、本発明による上記リチウム塩含有電解液は、電解液とリチウム塩からなってもよく、上記電解液としては、非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用できる。
【0089】
上記非水系有機溶媒としては、例えば、N‐メチル‐2‐ピロリジノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ‐ブチロラクトン、1,2‐ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2‐メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3‐ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3‐ジメチル‐2‐イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用できる。
【0090】
上記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合剤などが使用できる。
【0091】
上記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNi、LiN‐LiI‐LiOH、LiSiO、LiSiO‐LiI‐LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO‐LiI‐LiOH、LiPO‐LiS‐SiSなどのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用できる。
【0092】
上記リチウム塩は、非水系電解質に溶解しやすい物質であり、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4-フェニルボロン酸リチウム、イミドなどが使用できる。
【0093】
また、電解液には、充放電特性、難燃性などの改善を目的に、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n‐グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N‐置換オキサゾリジノン、N,N‐置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されてもよい。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含んでもよいし、高温保存特性を向上させるために、二酸化炭素ガスをさらに含んでもよいし、FEC(Fluoro-Ethylene Carbonate、フルオロエチレンカーボネート)、PRS(Propene sultone、プロペンスルトン)などをさらに含んでもよい。
【0094】
一方、本発明は、一実施形態において、上述した二次電池を単位電池として含む電池モジュールを提供し、上記電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0095】
上記電池パックは、高温安定性および長いサイクル特性と高いレート特性などが要求される中大型デバイスの電源として使用でき、このような中大型デバイスの具体的な例としては、電気モーターにより動力を受けて動く電動工具(power tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug‐in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E‐bike)、電気スクーター(E‐scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどが挙げられ、より具体的には、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0096】
さらに、上記正極と負極は、ゼリーロール形態で巻き取られて、円筒型電池、角型電池またはパウチ型電池に収納されるか、またはフォールディングまたはスタックアンドフォールディング形態でパウチ型に収納される形態であってもよい。例えば、本発明によるリチウム二次電池は、パウチ型の電池であってもよい。
【0097】
上記のように、本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、単位電池として多数個含む電池モジュール、または電池パックに使用できる。具体的に、携帯電話、ノートブックコンピュータ、デジタルカメラなどの携帯用機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などに有用である。
【0098】
以下、本発明を実施例および実験例に基づいてより詳細に説明する。
【0099】
ただし、下記実施例および実験例は、ただ本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例および実験例に限定されるものではない。
【0100】
<実施例1>
スチレン‐ブタジエンゴム(以下、SBRという)(ZEON社、BM451B製品)バインダーが溶媒である水に60:40の割合(重量部)で分散した状態100gに対して、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)溶媒500gを添加および撹拌した。次に、撹拌した混合物を100~120℃の条件で2時間の間加熱しながら、含有した水を完全に蒸発させて、NMP置換されたSBRバインダーを製造した。次に、NMP置換されたSBRバインダーと無機粒子を50:50の重量比で混合および撹拌して、絶縁組成物を製造した。製造した絶縁組成物の粘度は、5,000cPである。
【0101】
<実施例2~4、比較例1~2>
絶縁組成物の製造時に、無機粒子およびバインダーの含有量を変更したことを除いて、実施例1と同じ方法で絶縁コーティング液を収得した。
【0102】
実施例1~4および比較例1~2の具体的な組成は、下記の表1に示した。
【0103】
【表1】
【0104】
<実験例1.絶縁コーティング層の湿潤接着力の測定>
本発明による絶縁コーティング層の接着力を評価するために、下記のような実験を行った。
【0105】
(絶縁コーティング層が形成された金属試験片)
実施例1~4および比較例1~2で製造した絶縁組成物をアルミニウム金属箔にコートし、乾燥させて、厚さ約10μmの絶縁コーティング層が形成された金属試験片を準備した。上記絶縁コーティング層が形成された金属試験片は、接着力測定用打抜機を使用して2cm×2cmのサイズに打ち抜いた。
【0106】
(超音波印加)
250mlのビーカーに電解液EC/EMC=3/7(vol.%)200gを投入し、上記電解液に絶縁層が形成された金属試験片を含浸させた。上記金属試験片の動きを制御するために、上記金属試験片をジグで固定した。
【0107】
また、上記金属試験片が含浸した電解液に超音波分散機(BANDELIN社、4200)を用いて超音波を印加した。この際、超音波印加の条件は、下記の通りである。
‐ 周波数:20kHz
‐ チップ直径(Tip diameter):13mm(TS‐113)
‐ 振幅(Amplitude):100%
(13mmのチップの使用時のピーク・ツー・ピーク間隔(Peak‐to‐peak)132μm)
【0108】
また、その結果を下記表2と図2に示した。
【0109】
【表2】
【0110】
図2は、実施例1、4および比較例1、2の絶縁コーティング層の湿潤接着力を測定した結果を示す図である。表2と図2を見ると、実施例1の電極試験片は、絶縁コーティング層にスウェリング(swelling)や脱離の発生がなかった。ただし、実施例1の場合、超音波印加による電解液の温度増加によってEMCの沸点が107.5℃であり、溶媒が蒸発して測定環境が変化して109℃到達時に測定を中止した。
【0111】
さらに、実施例2、3の場合、写真には示されていないが、電極試験片も、実施例1と同様に、絶縁コーティング層にスウェリングや脱離が発生しなかった。ただし、EMCの沸点が107.5℃であり、溶媒が蒸発して測定環境が変化して109℃到達時に測定を中止した。
【0112】
実施例4の場合、電解液に超音波を印加してから15分間には電極試験片にスウェリングまたは脱離が発生しなかった。ただし、図示してはいないが、続いた超音波印加による電解液の温度増加によって108℃に到達したとき、電極試験片のスウェリングと脱離が発生した。
【0113】
さらに、比較例1、2の場合、電解液に超音波を印加してから5分で上記電極試験片にスウェリングおよび脱離が発生した。
【0114】
これを通じて、実施例の絶縁コーティング層が、比較例1~2の絶縁コーティング層に比べて、湿潤接着力に優れていることを確認することができた。
【0115】
<実験例2.電池セルの容量発現の評価>
本発明による絶縁コーティング層を含む正極の性能を評価するために、ハーフセルを製造した後、容量発現を評価した。
【0116】
(ハーフセルの製造)
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.196重量部、バインダーとしてPVDF2重量部、導電材としてカーボンブラック2重量部を秤量し、N‐メチルピロリドン(NMP)溶媒中で混合して、正極活物質用スラリーを製造した。アルミ箔に、上記活物質層用スラリーを塗布し、乾燥させた後、圧延して、正極活物質層(平均厚さ:130μm)を具備する正極を製造した。
【0117】
また、上記正極に実施例1~3で収得した絶縁コーティング液をディップコートした後、コンベクションオーブン(130℃)で乾燥して、正極に厚さが10μmの絶縁コーティング層を形成した。負極としては、リチウムホイルを使用し、EC:DMC:DEC=1:2:1の溶媒に1MのLiPFが入っている電解液を使用して、コイン型ハーフセルを製造した。
【0118】
【表3】
【0119】
(放電容量の測定)
実施例5~7の電池について、下記のような条件で放電特性を評価した。また、上記放電特性は、常温(25℃)および高温(45℃)でそれぞれ測定した。
-放電:0.1C、0.33C、0.5C、1.0C、2.5Vカットオフ
【0120】
一方、各電池の容量発現の有無を比較するために、絶縁コーティング層が形成されていない電極を含む電池セルを比較例3とした。また、その結果を表4と図3、表5と図4に示した。
【0121】
【表4】
【0122】
【表5】
【0123】
上記表4、5と図3図4を参照すると、高温放電(45℃)で、実施例7の場合、0.1C放電時に容量の一部が発現することを確認できたが、実施例5~6の電池は、常温放電(25℃)で容量発現がほとんど生じない。
【0124】
このような結果は、上記絶縁コーティング層が電解液内で湿潤接着力に優れていて、電極のオーバーレイ領域のリチウムイオンの移動を阻止して、放電時の容量発現などを抑制すると見られる。これによって、本発明によるリチウム二次電池は、サイクル増加による容量退化を抑制しつつ、安全性などを改善できると見られる。
【0125】
以上では、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野における熟練した当業者または当該技術分野における通常の知識を有する者なら、後述する特許請求の範囲に記載された本発明の思想および技術領域を逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させることができることが理解できる。
【0126】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定められるべきである。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】