(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】バイオリアクタシステム
(51)【国際特許分類】
C12M 3/04 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
C12M3/04 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513693
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(85)【翻訳文提出日】2023-04-25
(86)【国際出願番号】 US2021047658
(87)【国際公開番号】W WO2022115135
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,グレゴリー ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】タナー,アリソン ジーン
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029AA08
4B029BB11
4B029CC02
4B029CC09
4B029CC13
4B029EA07
4B029EA16
4B029GA08
(57)【要約】
細胞を培養するための少なくとも1つの多層容器と、1つ以上の側壁により包囲された内部キャビティを有するキャビネットとを含む細胞培養システムを提供する。キャビネットは、内部キャビティ内に多層容器を収容するように構成されている。多層容器は、多層容器内に細胞培養空間を含んでいる。キャビネットは、多層容器の向きを、直立した向きから傾倒した向きに変えることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養システムであって、
細胞を培養するように構成された複数の多層容器であって、該多層容器内に細胞培養空間をそれぞれ含んでいて、2D付着性細胞培養フィルムおよび3Dマイクロキャビティフィルムのうちの少なくとも1つをそれぞれ有している多層容器と、
1つ以上の側壁により包囲された内部キャビティを有するキャビネットであって、前記内部キャビティ内に前記多層容器を収容するように構成されたキャビネットと
を含み、
前記キャビネットは、前記多層容器の向きを、直立した向きから傾倒した向きに変えるように構成されている、
細胞培養システム。
【請求項2】
前記細胞培養空間内の特性を検出するように構成された少なくとも1つのセンサをさらに含み、該センサが、集合モニタおよび分析物モニタのうちの少なくとも1つを含む、請求項1記載の細胞培養システム。
【請求項3】
少なくとも1つの前記センサが前記多層容器に組み込まれている、請求項2記載の細胞培養システム。
【請求項4】
少なくとも1つの前記センサが、前記キャビネットに取り付けられていて、前記多層容器が前記キャビネット内に配置された場合に前記細胞培養空間内の前記特性を検出するように配置されている、請求項2記載の細胞培養システム。
【請求項5】
前記キャビネットが、それぞれ少なくとも1つの前記多層容器を支持するように構成された複数の支持面を有しており、複数の多層細胞培養モジュールのうちの少なくともいくつかが、互いに接続されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の細胞培養システム。
【請求項6】
前記多層容器が、入口と出口とを有しており、前記入口は、前記多層容器の下部に配置されていて、前記細胞培養空間に液体培地を供給するように構成されており、前記出口は、前記多層容器の上部に配置されていて、液体またはガスを前記細胞培養空間内に流入させるかまたは前記細胞培養空間から流出させるように構成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の細胞培養システム。
【請求項7】
前記出口が、前記入口から前記多層容器の対角線上で反対の側に配置されている、請求項6記載の細胞培養システム。
【請求項8】
前記出口が、フィルタを有しておりかつガスを前記細胞培養空間から逃がすことができるかまたは前記細胞培養空間内に流入させることができるように構成されたベントポートを有している、請求項6または7記載の細胞培養システム。
【請求項9】
前記多層容器が、少なくとも18,000cm
2の細胞培養表面積を有している、請求項1から8までのいずれか1項記載の細胞培養システム。
【請求項10】
前記傾倒した向きが、前記直立した向きに対して約5°回動させられている、請求項1から9までのいずれか1項記載の細胞培養システム。
【請求項11】
複数の前記多層容器が、複数の前記支持面のそれぞれに配置されており、前記入口は互いに接続されている、請求項5から9までのいずれか1項記載の細胞培養システム。
【請求項12】
前記キャビネットが、少なくとも1つの前記多層容器の前記細胞培養空間に流体接続されかつ前記細胞培養空間に液体培地を供給するように構成された主入口を有しており、前記キャビネットは、前記内部キャビティにガスを供給するように構成されたガスポートを有している、請求項1から11までのいずれか1項記載の細胞培養システム。
【請求項13】
前記内部キャビティの温度を制御するように構成された温度制御システムをさらに含む、請求項1から12までのいずれか1項記載の細胞培養システム。
【請求項14】
前記キャビネットが、前記内部キャビティ内にガス不透過性エンクロージャを有しており、該ガス不透過性エンクロージャは、少なくとも1つの前記多層容器を取り囲むように構成されている、請求項1から13までのいずれか1項記載の細胞培養システム。
【請求項15】
前記多層容器の向きが、前記キャビネットの向きに関して可変である、請求項1から14までのいずれか1項記載の細胞培養システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、米国特許法第119条のもと、2020年8月31日に出願された米国仮特許出願第63/072,517号明細書の優先権の利益を主張し、その内容が依拠され、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示は、細胞を培養するためのシステムおよび方法、特に、複数の細胞培養容器を組み合わせて、容器の所要スペースおよび手動操作を最小限に抑えながら細胞培養生成物の高収率を可能にするシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多種の細胞培養品が、細胞を培養するために積層されたまたは積層可能なユニットを提供するように構成されている。例えばTフラスコは、典型的にはTフラスコの積層を可能にする平らな上面および下面を有するように製造され、スペースの節約をもたらす。いくつかの変更されたTフラスコは、充填・除去に関連する時間と労力とを軽減するために、フラスコ内に複数の平行な培養面を有している。別の培養器は、複数の平行なまたは積層された培養面を有するマルチコンポーネントアセンブリである。このように積層された培養アセンブリのほとんどで、各培養層は、下側の培養層への静水圧を下げるために分離されている。積層される層の数が増えると、静水圧の潜在的な影響が増大する。
【0004】
1つの例示的な細胞培養品が、CorningのHYPERStack(商標)システムである。HYPERStack(商標)システムは、チューブコネクタに接続する可撓性チューブにより相互接続され得る個々のスタック層から形成された複数のモジュールを含む。モジュールは、HYPERStack(商標)システムの充填・除去のために相互接続される。HYPERStack(商標)システムへの流体の流入およびHYPERStack(商標)システムからの流体の流出を制御するためには、弁および他の装置を使用することができる。HYPERStack(商標)36層容器は、第I相および第II相の臨床試験を実施しようとするユーザの参入障壁を低下させた。しかしながら、HYPERStack(商標)を使用するための現行のプロトコルは労力を要することがあり、手動操作を必要とする。例えばHYPERStack(商標)システムの現行の充填・除去プロセスは、より良好な結果を得るためにHYPERStack(商標)システムを様々な段階で傾斜させることを含んでいる。この傾斜は、ユーザによる注意および手動操作を必要とする場合があるだけでなく、プロトコルが一貫して適用されないと、一貫性のない結果につながる可能性もある。より大きな細胞培養ニーズのために複数のHYPERStack(商標)容器を用いる場合、この手動操作は、播種、トランスフェクション、リフィーディング、および採取の最中等の、細胞またはウイルス製造の重要な時点の最中に、ユーザによる労働量の増加を必要とする。その結果、容器を取り扱う各個人がウイルス製造プロセスに差を生ぜしめ、効率を低下させる恐れがある。容器に対する損傷は、これらの操作ステップ中にも生じ得る。
【0005】
加えて、顧客がより大規模な細胞培養(例えば、第III相臨床試験に入るかまたはそれ以上)を必要とする場合、HYPERStack(商標)システムは、大きな設置面積を必要とするように調整可能であり、所要スペースが一部のユーザにとって管理不能になる可能性がある。充填・除去中にHYPERStack(商標)システムの手動操作を用いると、手動操作の使用はしばしば、結果として複数のHYPERStack(商標)ユニット間のスペースの非効率的な使用をもたらすため、スペースの問題を悪化させる恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
必要とされているのは、製造拡大のためにより制御され、手動労力をそれほど必要とせず、スペース効率のよい、細胞培養およびウイルス製造のためのシステムおよび方法である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態によれば、細胞を培養するための少なくとも1つの多層容器であって、多層容器内に細胞培養空間を含む多層容器と、1つ以上の側壁により包囲された内部キャビティを有するキャビネットであって、内部キャビティ内に多層容器を収容することができるキャビネットとを含む細胞培養システムが提供される。キャビネットは、多層容器の向きを、直立した向きから傾倒した向きに変えることができる。
【0008】
いくつかの実施形態の1つの態様として、システムはさらに、細胞培養空間内の特性を検出するための少なくとも1つのセンサを含む。センサは、集合モニタおよび分析物モニタのうちの少なくとも1つを含んでいてよい。センサは、多層容器に組み込まれていてよい。別の態様では、センサはキャビネットに取り付けられており、多層容器がキャビネット内に配置された場合に細胞培養空間内の特性を検出するように配置されている。
【0009】
いくつかの実施形態の1つの別の態様では、多層容器は、少なくとも1つのセンサウィンドウを含み、センサは、センサウィンドウを介して細胞培養空間内の特性を検出するように構成されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、キャビネットは、それぞれ少なくとも1つの多層容器を支持するように構成された支持面を含む。
【0011】
いくつかの実施形態の態様によれば、少なくとも1つの多層容器は、複数の多層細胞培養モジュールを含む。複数の多層細胞培養モジュールのうちの少なくともいくつかは、互いに接続され得る。
【0012】
多層容器は、入口と出口とを含んでいてよく、入口は、細胞培養空間に液体培地を供給するように構成されており、出口は、液体またはガスを細胞培養空間内に流入させるかまたは細胞培養空間から流出させるように構成されている。いくつかの実施形態の1つの態様として、入口は、多層容器の下部に配置されている。出口は、多層容器の上部に配置され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本明細書に図示して説明する1つ以上の実施形態による細胞培養器の斜視図である。
【
図2】本明細書に図示して説明する1つ以上の実施形態による、
図1に示した細胞培養器と共に使用するための複数のスタック層の概略図である。
【
図3】本明細書に図示して説明する1つ以上の実施形態による、
図1に示した細胞培養器を直立構成において支持する多位置支持体の側面図である。
【
図4】本明細書に図示して説明する1つ以上の実施形態による、
図3に示した多位置支持体の斜視図である。
【
図5】本明細書に図示して説明する1つ以上の実施形態による、
図4に示した多位置支持体の平面図である。
【
図6】本明細書に図示して説明する1つ以上の実施形態による、
図3に示した多位置支持体を傾斜構成で示す側面図である。
【
図7】本明細書に図示して説明する1つ以上の実施形態による、
図6に傾斜構成で示した多位置支持体の端面図である。
【
図8】本明細書に図示して説明する1つ以上の実施形態による2D細胞培養モジュールの横断面図である。
【
図9】本明細書に図示して説明する1つ以上の実施形態による3D細胞培養モジュールの横断面図である。
【
図10】本明細書に図示して説明する1つ以上の実施形態による、複数の細胞培養モジュールを有する細胞培養容器である。
【
図11A】本明細書に図示して説明する1つ以上の実施形態による、
図10に示した細胞培養容器の充填動作の初期段階の最中を示す側面図である。
【
図11B】本明細書に図示して説明する1つ以上の実施形態による、
図11Aに示した細胞培養容器の充填動作の途中を示す側面図である。
【
図11C】本明細書に図示して説明する1つ以上の実施形態による、
図11Aおよび
図11Bに示した細胞培養容器の充填動作の完了時を示す側面図である。
【
図12】本明細書に図示して説明する1つ以上の実施形態による、複数の細胞培養容器を収容するキャビネットを含む細胞培養システムの側面図である。
【
図13】本明細書に図示して説明する1つ以上の実施形態による、キャビネットとガス不透過性エンクロージャとを含む細胞培養システムの側面図である。
【
図14A】本明細書に図示して説明する1つ以上の実施形態による、カート上の直立構成の細胞培養システムを示す概略側面図である。
【
図14B】本明細書に図示して説明する1つ以上の実施形態による、カート上の傾斜構成の細胞培養システムを示す概略側面図である。
【0014】
図面は、必ずしも縮尺通りではない。図面に使用された同様の符号は、同様のコンポーネント、ステップ等を指す。しかしながら、所与の図面におけるコンポーネントを指すために符号を使用することは、同じ符号が付された別の図面におけるコンポーネントを限定することを意図してはいないことが理解されるであろう。さらに、コンポーネントを指すために異なる符号を使用することは、異なる符号を付されたコンポーネントが同一または類似のものではあり得ないことを示すということを意図してはいない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成し、装置、システムおよび方法のいくつかの特定の実施形態を図示する添付の図面を参照する。別の実施形態が想定され、本開示の範囲または思想から逸脱することなしに実施され得るということを理解されたい。したがって以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0016】
本明細書において使用される全ての科学用語および技術用語は、特に明記しない限り、当技術分野において一般に使用される意味を有する。本明細書において提供される定義は、本明細書において多用される特定の用語の理解を容易にするためのものであり、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。
【0017】
本明細書および添付の請求項において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、特に明記しない限り、複数の指示対象を有する実施形態を含む。本明細書および添付の請求項において使用される場合、「または」という用語は、特に明記しない限り、通常はその意味に「および/または」を含んで使用される。
【0018】
本明細書において使用される場合、「を有する(have)」、「を有する(having)」、「を含む(include)」、「を含む(including)」、「を含む(comprise)」、「を含む(comprising)」等は、それらの意味を制約されずに使用され、通常、「~を含むが、~に限定されない」ことを意味する。
【0019】
本開示の実施形態を説明する際に使用される、例えば、組成物中の成分の量、濃度、構造寸法、体積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流量、圧力、粘度等の値、およびそれらの範囲を修飾する「約」は、例えば:材料、組成物、複合材、濃縮物または使用配合物を調製するために使用される典型的な測定・操作手順により;これらの手順における偶発的なエラーにより;方法を実施するために使用される出発材料または成分の製造、供給源、または純度の差により;および同様の理由により起こり得る数値量の変動を指す。「約」という用語には、特定の初期濃度または混合物を有する組成物または配合物のエージングに基づきそれぞれ異なる量、および特定の初期濃度または混合物を有する組成物または配合物の混合または処理に基づきそれぞれ異なる量も含まれる。
【0020】
細胞のインビトロ培養は、薬理学、生理学、および毒物学の研究に必要な材料を提供する。薬剤スクリーニング技術の最近の進歩により、製薬会社は、治療ターゲットに対する化合物の膨大なライブラリを迅速にスクリーニングすることが可能になっている。これらの大規模スクリーニング技術は、インビトロで増殖し維持される多数の細胞を必要とする。これらの多数の細胞を維持するには、大量の細胞増殖培地および試薬、ならびに多数かつ多種の実験室用細胞培養容器および実験室用器具が必要である。この作業には労力を要する場合がある。
【0021】
細胞培養容器は、細胞増殖のための表面積を増大させると同時に必要なガス交換手段も提供するように開発されてきた。これらのシステムは、一般的なフラスコ、ローラボトル、細胞培養皿を含む従来の細胞培養容器、および多層フラスコ、多層細胞培養皿、バイオリアクタ、細胞培養バッグ、および増殖密度および分化因子を含む細胞培養パラメータを向上させるように設計された特別な表面を含み得る同様の物品を含む多層細胞増殖容器も使用する。高収率細胞増殖のために特別に開発された閉鎖系細胞培養物品の例には、細胞増殖面を提供し、周囲環境とのガス交換を可能にするガス透過性フィルムを有するHYPERFlask(登録商標)およびHYPERStack(登録商標)製品(Corning, Inc.から入手可能)が含まれる。
【0022】
本開示はとりわけ、従来の多層容器よりも一層制御されかつ/またはコンパクトな方式での細胞および細胞由来の生成物製造のためのシステムおよび方法を説明する。本明細書では、1つ以上の細胞培養容器を用いて足場依存性または付着性の細胞の培養、または三次元(「3D」)細胞培養を実施する、閉鎖型の自動または半自動システムを提供することができる細胞培養システムおよび方法について説明する。このシステムおよび方法は、スペースを節約して、細胞培養生産設備における収率を高める密な細胞培養設置面積を可能にする。
【0023】
本開示の実施形態によれば、細胞培養容器は、1つ以上の細胞培養面と、材料を細胞培養容器内へ流入させ、また、細胞培養容器から流出させることができる少なくとも1つのポートとを含んでいてよい。複数の実施形態において、システムは、1つ以上の細胞培養容器に細胞培地を自動的に充填し、1つ以上の細胞培養容器内で培養された細胞を1つ以上の細胞培養面から剥離させ、かつ1つ以上の細胞培養容器から培養された細胞を除去(例えば採取)するように構成されている。複数の実施形態において、システムは閉鎖型システムである。本明細書で使用する場合、「閉鎖型」のシステムとは、細胞培養容器が、培養プロセス中に外部環境に対して開放されることなしに操作可能である、ということを意味する。複数の実施形態が、所要スペースが最小限に抑えられ(例えば小さな設置面積)、細胞培養条件のばらつきを低下させるために細胞培養容器の操作がより一層制御される、高収率の細胞培養システムおよび方法を提供する。
【0024】
本開示の実施形態は、複数の足場依存性または付着性の細胞を培養するように、または3D細胞培養用に構成され得る1つ以上の細胞培養容器(例えば少なくとも1つの細胞培養容器、1つよりも多くの細胞培養容器、2つ以上の細胞培養容器等)を含むまたは使用する細胞培養システムおよび方法を含む。複数の実施形態において、細胞培養容器は、複数の積層または多層ユニット、区画またはモジュール内に複数の平行な細胞培養面を含む(例えば複数の細胞培養面は互いに平行である)。それにもかかわらず、いくつかの実施形態によれば、ほぼ全ての細胞培養容器を、本明細書に記載のシステムと共に使用するように適合させることができる。例えば、複数の積層された層を有する、または複数の層を形成するために積み重ねることができる任意の細胞培養容器を、本明細書に記載のシステムによる使用に適合させることができる。このような細胞培養容器の例には、Tフラスコ、TRIPLE-FLASK細胞培養容器(Nunc, Intl.)、HYPERFLASK細胞培養容器(Corning, Inc.)、CELLSTACK培養室(Corning, Inc.)、CELLCUBEモジュール(Corning, Inc.)、HYPERSTACK細胞培養容器(Corning, Inc.)、CELLFACTORY培養器(Nunc, Intl.)、および本開示と矛盾しない限りにおいて参照によりその内容全体が本明細書に援用される、2007年2月8日に公開された、「MULTILAYERED CELL CULTURE APPARATUS」と題された国際公開第2007/015770号に記載の細胞培養品/容器が含まれる。もちろん、積層された層を有さない、または一般に積層不能な細胞培養容器が、いくつかの実施形態において使用されてもよい。
【0025】
多層細胞培養容器は、複数の細胞培養モジュールを含んでいてよく、これらの細胞培養モジュールは、細胞培養室内に複数の増殖面または培養面を含んでおり、マニホールドを介して互いに連結されて、細胞培養容器を形成している。細胞培養容器はさらに、マニホールドを介して追加的な細胞培養容器に連結されて、積層型または水平連結型の細胞培養装置を形成することができる。いくつかの実施形態では、マニホールドは、マニホールドの一体部品として形成された一体型のコラム構造を含んでいてよい。コラム構造は、入口ポートを有しており、入口ポートからの流体流路の少なくとも一部を提供しており、流体流路は、細胞培養モジュール内の個々の細胞培養室に流体接続している。マニホールドおよび関連するコラム構造は、細胞培養器の使用中に細胞培養室を環境から分離するためにコラム構造が可撓性チューブに接続され得る閉鎖型システムを提供することができる。
【0026】
細胞培養容器は、マニホールドを介して連結された複数の細胞培養面を含んでいてよい。複数の培養面は、多層構成で積層され得る。マニホールドは、複数の流体接続ポートを含んでいてよく、これらの流体接続ポートは、個々の細胞培養室または細胞培養室群を分離するために用いられる。一般に、細胞または増殖培養面は、細胞培養プロセス中に地面と平行に位置決めされる。細胞培養容器内で例えば細胞培地等の材料を分散させるためには、複数の細胞培養面が地面に対して平行に位置決めされないように細胞培養容器が位置決めされるかまたは移動させられてよく、これにより、材料を全ての室/ユニット内に、かつ複数の細胞培養面全てにわたり均等に分散させることができる。
【0027】
細胞培養容器は複数の細胞培養モジュールを含んでいてよく、各細胞培養モジュールは、細胞培養空間を有しておりかつ/または多層細胞増殖面を含んでいる。別の実施形態では、細胞培養容器同士をまとめることができ、これにより、大規模な細胞増殖ひいてはウイルス、細胞外小胞、細胞、および他の細胞由来の生成物の大規模な生産を可能にする。
【0028】
本明細書で説明するような細胞培養容器またはその部分は、任意の適切な材料から形成され得る。好適には、細胞または培地に接触することを意図した材料が、細胞および培地と適合する。典型的には、細胞培養ユニットは、ポリマー材料から形成される。適切なポリマー材料の例には、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリスチレンコポリマー、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレンブタジエンコポリマー、完全水素化スチレンポリマー、ポリカーボネートPDMSコポリマー、およびポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレンコポリマーおよび環状オレフィンコポリマー等のポリオレフィン等が含まれる。
【0029】
いくつかの実施形態では、培養容器(および/または培養容器内のユニット/区画)は、ガス透過性で液体不透過性のフィルムを有しており、これにより、細胞培養室と、細胞培養アセンブリの外部との間でガスを移動させることができる。このような培養容器は、積層されたユニット間での空気の流動を可能にするために、室の外部でフィルムに隣接して配置されたスペーサまたはスペーサ層を有していてよい。このように積層されたガス透過性の培養ユニットを含む細胞培養器の1つの市販例が、CorningのHYPERFLASK細胞培養器である。このような細胞培養ユニットは、例えば、本開示と矛盾しない限りにおいて参照によりその内容全体が本明細書に援用される、2008年5月30日に出願された、Assembly of Cell Culture Vesselsと題された米国特許出願第61/130421号明細書といった任意の適切な方式で製造され得る。フィルムを形成するために有用な、適切なガス透過性のポリマー材料の例には、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリオレフィン、エチレンビニルアセテート、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、または相溶性フルオロポリマー、シリコーンゴムまたはコポリマー、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、またはこれらの材料の組合せが含まれる。製造および細胞を増殖させるための適合性が許す限り、様々なポリマー材料が利用され得る。好適には、フィルムは、フィルムにわたりガスの効率的な移動を可能にする厚さである。例えば、ポリスチレンフィルムは、約0.003インチ(約75μm)の厚さであってよいが、様々な厚さでも、細胞の増殖が可能である。このように、膜は任意の、好適には約25~250μm、または約25~125μmの厚さであってよい。膜は、アセンブリの室と外部環境との間でガスの自由な交換を可能にし、任意のサイズまたは形状をとることができる。いくつかの実施形態では、ガス透過性フィルムは、酸素を、ガス透過性基材を介して周囲環境から移動させることができるため、酸素供給器の必要性を解消する。好適には、膜は機器の製造、取扱いおよび操作に対して耐久性を有している。
【0030】
本開示の複数の実施形態は、キャビネットの内部キャビティを備えた、1つ以上の細胞培養容器を収容するための単一のハウジングまたはキャビネットを含み、これにより、コンパクトな設置面積を有しかつ容器の手動での取扱いおよび操作を最小限に抑える、最適化された生産システムを形成する。キャビネットは、一度に複数の細胞培養容器を収容するように寸法設定されている。いくつかの実施形態では、複数の細胞培養手段を予め構成してまたは組み合わせて単一のユニットを形成することができ、キャビネットは、これらの組み合わせられたユニットを1つ以上収容するように寸法設定されている。いくつかの実施形態では、キャビネットは持運び可能である。例えば、キャビネットには、取扱いおよび位置決めを容易にするためにホイールが設けられていてよい。持運び可能であることにより、キャビネットを実験室または生産設備を備えた便利な場所に配置することができ、そうすることが都合のよい場合(例えば、ユーザによる手動での干渉が不要な場合)には、複数のキャビネットをコンパクトな配列で配置することができる。
【0031】
細胞培養容器(または組み合わせられたユニット)の手動での取扱いを最小限に抑えるために、キャビネットは、培養プロセス中に必要とされる細胞培養容器の操作(例えば向きの変更または傾斜動作)を行うように設計されている。これらの操作は、半自動化または全自動化されていてよいか、またはユーザによる手動操作を含んでいてもよい。例えばキャビネットは、細胞培養容器を内部キャビティ内に収容した状態で傾斜させるかまたは向きを変えるための(本明細書に記載の)機械的または電気機械的な手段を含んでいてよい。いくつかの実施形態では、キャビネットは、細胞培養容器を収容しているキャビネット全体またはキャビネットの少なくとも一部を傾斜させるためにユーザにより手動操作され得るレバーを含んでいる。この傾斜動作は、例えば充填・除去中に実施され得、これにより、本明細書に記載の多層細胞培養容器に必要とされた場合に、これらの動作を容易にすることができる。
【0032】
例えば細胞培地、バッファ、タンパク質分解酵素等といった材料を細胞培養容器内に分散させるためには、細胞培養容器を、作動中に傾斜するように、または向きを変えられるように構成することができる。1つ以上の異なる位置で容器を配向することにより、容器内の足場依存性または付着性の細胞の培養プロセスを促進することができる。様々な実施形態によれば、容器は、本明細書に記載のキャビネットに収容された状態で容器の向きを変えるかまたは容器を傾けるための機構を備えていてよい。いくつかの実施形態では、キャビネットは、容器の向きを変えるかまたは容器を傾斜させるように構成されている。例えば、キャビネットは、例えばキャビネットの内部キャビティ内に伸長ピストン、ロボットアーム、レバー、係留手段、または傾斜棚等の機械的な持上げ手段を備えて構成され得る。いくつかの実施形態では、キャビネット自体のかなりの部分、大部分または全体が、向きを変えるかまたは傾斜し、ひいてはキャビネット内に保管された1つ以上の容器も、向きを変えるかまたは傾斜する。すなわち、様々な実施形態によれば、容器の傾斜は、キャビネットに対して変化する容器の向きを生ぜしめることができるか、またはキャビネット自体の向きが変更されている場合には、キャビネットに対する容器の相対的な向きを維持することができる。
【0033】
容器の可能な向きは、1つ以上の充填位置、1つ以上の除去位置、1つ以上の培養位置等を含んでいてよい。1つ以上の充填位置は、細胞培養容器に充填する(例えば効果的に充填する)ように動作可能な位置として定義され得、同様に、1つ以上の除去位置は、細胞培養容器を空にする(例えば効果的に空にする)ように動作可能な位置として定義され得る。さらに、充填サイクルの各段階に対してそれぞれ異なる最適な充填位置が存在し得るため、1つ以上の充填位置が存在し得る。例えば、細胞培養容器を効果的に充填するために、細胞培養容器を、充填サイクルの早期段階の間に1つ以上の特定のまたは選択された角度で傾斜させ、次いで充填サイクルの後期段階の間に、早期段階における角度とは異なる1つ以上の特定のまたは選択された角度で傾斜させることができる。さらに、除去サイクルの各段階に対してそれぞれ異なる最適な除去位置が存在し得るため、1つ以上の除去位置も存在し得る。例えば、細胞培養容器を効果的に空にするために、細胞培養容器を、除去サイクルの早期部分の間に1つ以上の特定のまたは選択された角度で傾斜させ、次いで除去サイクルの後期部分の間に、早期段階における角度とは異なる1つ以上の特定のまたは選択された角度で傾斜させることができる。1つ以上の培養位置は、一般に、(例えば効果的な細胞増殖を促進するために)細胞培養または増殖面が地面に対して平行な位置を含んでいてよい。さらに、いくつかの異なる位置について本明細書で説明したが、充填位置、除去位置、およびインキュベーション位置/条件は、使用される特定の細胞培養容器に固有のものであってもよく、したがって、本明細書に記載のシステムは、使用される特定の細胞培養容器に適合するように、それぞれ異なって動作してもよい。換言すると、本明細書に記載の充填位置、除去位置、およびインキュベーション位置/条件は、本明細書に記載のシステムが可能な唯一の位置ではなく、さらに、本明細書に記載のシステムは、任意の特定の細胞培養容器に用いられる複数の位置に適合するように構成され得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、細胞培養容器および/またはキャビネットは、第1の軸線および第2の軸線を中心として細胞培養容器を動かすように構成されており、第1の軸線と第2の軸線とはそれぞれ互いに垂直であり、(キャビネットが配置された)地面に対して平行である。複数の実施形態において、キャビネットは、鉛直方向軸線に沿って細胞培養容器を鉛直方向に移動させるように構成され得、これにより例えば、細胞培養容器を使用するために、システムの他の様々な装置内へのまたは装置上への細胞培養容器の装入および取出しを支援する。いくつかの実施形態では、単一の軸線を中心とした細胞培養容器の単純な傾斜だけが用いられる。
【0035】
細胞培養容器は、少なくとも1つのポートを含んでいてよく、少なくとも1つのポートは、重力送りまたは圧送装置を介して容器の細胞培養空間内に供給され得る流体源に流体接続され得る。細胞培養容器はさらに、細胞培養容器の各細胞培養モジュールまたはユニットを少なくとも1つのポートに流体接続するマニホールドを含んでいてよく、これにより、少なくとも1つのポートを用いて材料を細胞培養容器内へ圧送しかつ細胞培養容器から吐出させることができる。
【0036】
圧送装置は、各細胞培養容器に流体接続され得る。少なくとも1つの実施形態では、圧送装置は、例えば閉鎖型システムの維持、複数の細胞培養容器に対して1つのポンプを使用した場合のクロスコンタミネーションの防止等のために、各細胞培養容器に対して少なくとも1つのポンプを含んでいてよい。換言すると、圧送装置は複数のポンプを含んでいてよい。さらに、圧送装置は複数の弁を含んでいてよく、これらの弁は、1つ以上のリザーバを圧送装置に選択的に接続するかまたは流体接続するために使用され得、これにより、リザーバ内に配置された材料を、細胞培養容器内へ圧送することができ、かつ/または細胞培養容器内に配置された材料を、リザーバ内へ圧送することができる。各リザーバは、材料を保持するように構成された流体密コンテナまたは容器として定義され得る。本明細書で使用する場合、例えば細胞培養容器内へかつ細胞培養容器から圧送される「材料」は、細胞培養プロセスに使用され得る任意の流動可能な材料(例えば液体)として定義され得る。例えば材料は、(例えば培養すべき細胞を含む)細胞培地、廃培地、タンパク質分解酵素、急冷溶液、キレート溶液、バッファ、トランスフェクション剤等を含んでいてよい。
【0037】
圧送装置およびリザーバは、細胞培養システムの操作装置および/または他の任意の部分に結合され得、これにより、圧送装置およびリザーバを、細胞培養システムに一体化させるか、または組み込むことができる。
【0038】
本明細書に記載の細胞培養システムはさらに、温度制御システムを含んでいてよい。複数の実施形態では、温度制御システムは、インキュベーション装置を含む。インキュベーション装置は一般に、細胞培養容器内での細胞のインキュベーションを容易にするために細胞培養容器をインキュベートすることができる任意の装置として説明され得る。例えば、インキュベーション装置は、30℃~約40℃の範囲の熱を細胞培養容器に加えることができる。少なくとも1つの実施形態では、インキュベーション装置は、キャビネットを完全に取り囲んでいてよい。少なくとも1つの別の実施形態では、インキュベーション装置は、キャビネットを内部の細胞培養容器と共にインキュベーションのためにインキュベーション装置内に配置し、かつ/またはインキュベーション後にインキュベーション装置から移動させることができるように、キャビネットから離れていてもよい。いくつかの実施形態では、インキュベーション装置はキャビネットに組み込まれており、これによりキャビネットが、統合された温度制御装置またはインキュベーション装置を介して、内部キャビティ内の温度を制御する。
【0039】
熱制御環境は、周囲温度(すなわちシステムを取り巻く環境の温度)、または中間値および範囲を含む、例えば約15~約50℃、15~約45℃、27~約45℃、30~約40℃、および35~約38℃の、制御された動作を含んでいてよい。
【0040】
細胞培養システムが、キャビネットおよび細胞培養容器が配置されたインキュベータを含む実施形態では、インキュベータは、チューブおよび/またはワイヤ(または電源および/またはセンサ用の別の信号キャリア)の通過を可能にする1つ以上のポートを含んでいてよい。したがって、キャビネットがインキュベータ内に留まっている状態で、細胞培養容器の培養動作(例えば充填および除去)を行うことができる。いくつかの実施形態では、1つ以上のポートにより、コネクタの、容器センサからインキュベータの外部に配置された検出器への通過が可能となり、これにより、これらの検出器をインキュベーション温度および/または湿度に耐えるように製造する必要がなくなる。
【0041】
上述したように、本開示の実施形態は、細胞増殖面を提供するガス透過性フィルムを有する細胞培養容器を含む。一般に、受動的なガス交換により、培養中の細胞の代謝ニーズを満たすための細胞増殖培地中の適切な溶解ガス濃度を確立することができる。細胞培地は、溶解した二酸化炭素と相互作用して細胞培地のpHを調整するために、炭酸/重炭酸バッファ系に依存していてよい。このアプローチは、二酸化炭素ガス環境を制御することが可能なインキュベータ内に配置される容器に対しては十分である。しかしながら、制御されたガス環境を有さないインキュベータ等の、熱的に制御された環境に配置される容器、実験室、工場、および同様の設備に関してpHをうまく管理する方法は、増殖培地の組成を変更することであり、増殖培地の組成が二酸化炭素により調整されることはない。多くの細胞培養者は、増殖培地またはバッファの組成を変更したがらないため、熱的に制御された環境においてガス透過性フィルム容器を使用することに対する偏見が存在し得る。
【0042】
ガス透過性フィルム容器(例えばHYPERStack(登録商標)、HYPERFlask(登録商標))は、代謝に必要な酸素を細胞に供給するための単純で受動的なガス拡散システムをユーザに提供することを意図したものであるが、細胞が炭酸/重炭酸を基礎としたバッファ系を含む培地中で増殖する場合、5%の二酸化炭素ガスを含まない環境では十分に機能しない。高温室等の熱的に制御された環境は、370℃の適切なインキュベーション温度に維持される大空間であるが、典型的なインキュベータの給湿およびガス制御に欠ける。熱的に制御された環境は、典型的には比較的大きな容器、例えば、ガス透過性のHYPERStack-36・120積層容器、またはガス不透過性のCellSTACK-10・40積層容器に使用される。従来のガス不透過性の積層細胞培養容器、例えばCellSTACK-40またはCell Factory-40は、インキュベーション中またはインキュベーション前に二酸化炭素ガスの添加を可能にするヘッドスペースを有しているため、ガス処理後の熱的に制御された室内環境において依然として、炭酸/重炭酸を基礎としたバッファ系を含む培地を使用することができる。
【0043】
従来技術のガス透過性フィルム容器は、従来の容器のような内部の「ヘッドスペース」を有していないため、ガス透過性フィルム容器の全体をガス不透過性エンクロージャ内に封入することにより、容器内の全てのガス透過性フィルムに5%の二酸化炭素環境を提供することができる。このエンクロージャは、ガス不透過性を維持する限り、任意の適切な材料から構成され得る。エンクロージャは例えば、可撓性、例えばポリバッグであってよいか、または不撓性、例えば剛性側面のエンクロージャであってよい。ガス不透過性エンクロージャは、例えば、可撓性シート、シール可能な端部を有する半剛性シート、シール可能な端部を有する剛性シート、および同様の構造、またはこれらの組合せであってよい。
【0044】
当業者は、ガス不透過性エンクロージャを形成するのに適した材料の種類を理解するであろう。例えば、可撓性のバッグ状のエンクロージャ用の、ポリエチレンテレフタレート等の従来の材料は、比較的薄い(例えば4ミル(約0.1016mm))が、ガス不透過性であってよい。ただしポリプロピレン材料は、ポリプロピレンのガス透過性を低下させるために、より大きな厚さ(例えば8ミル(約0.2032mm))を有する必要がある場合がある。積層材料は、例えば耐穿刺性、ヒートシールにおける強度、および優れたガス不透過性等の所定の特性を提供するために使用され得る。可撓性のバッグ状のエンクロージャは、光学的に透明である必要はないが、このことは、オペレータまたはユーザにとって望ましい特徴である場合がある。
【0045】
いくつかの実施形態によれば、ガス不透過性エンクロージャは、本明細書に記載のように、ガス透過性フィルムを有する少なくとも1つの細胞培養容器を含むように寸法設定されている。外部のガス供給源とエンクロージャ内の細胞培養容器との間のガス連通部を提供するために、ガス不透過性エンクロージャを貫通するガス入口ポートが設けられていてよい。いくつかの実施形態では、システムに、排出ポート、または細胞培養容器と外部の排出先との間の通路が設けられていてもよい。ガス不透過性エンクロージャは、封入された細胞培養容器の動作を監視するために、ガス不透過性エンクロージャ内またはガス不透過性エンクロージャ上に配置された少なくとも1つのセンサのためのポートを有していてよい。ポートは、例えば貫通導管を中心として気密に封止可能であってよい、すなわち導管は、例えばガスを運ぶためのチューブ、光学素子を運ぶケーブル、信号を運ぶワイヤ、および同様の機能構造体であってよい。入口ポートは、ガス不透過性エンクロージャバッグの壁に固定され得、これにより、エンクロージャの内外で能動的にガス交換するためのチューブの接続や、例えば様々な光学センサに光ファイバケーブルを配置するための任意の接続を可能にする。
【0046】
容器ポートが、空気および液体取扱いのために突出することを可能にするために、バッグエンクロージャには、開口または開放部が設けられていてもよい(例えば、マニホールド接続部)。開口は、例えばポートの周りに気密シールを形成するために弾性であってよいか、またはバッグエンクロージャが容器を覆うように配置された後にポートに追加され得るチューブまたはOリングによりシールされ得る。エンクロージャバッグは、容器に覆い被せることができ、エンクロージャバッグは、例えば底部において、例えば引き紐、ケーブルタイ、または同様の他の締結手段または方法を用いて締めることができ、これにより、バッグエンクロージャを容器の周りに固定する。択一的に、バッグエンクロージャは、バッグエンクロージャが容器の外側を覆って固定することができるようにするために、例えばジッパー、フックアンドループ構造(例えばVelcro(登録商標))または磁気クロージャを有していてもよい。比較的可撓性の低いガス不透過性エンクロージャも可能であり、例えば、封入される容器を封入するように適切に寸法設定され、組み立てられた部品を固定することができる予備成形部品(例えば成形材、熱成形材、押出成形材等)から構成されてもよい。例えば、気密な本体、ベースプレート、取外し可能な蓋またはキャップ、および上述した連通部および接続ポートおよび開口を含むチューブ構造体である。予備成形されたエンクロージャアセンブリまたはエンクロージャの蓋またはキャップは、上述の可撓性エンクロージャにより要求される上述のガス・検出ポートおよび接続部を含んでいてよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、システムに制御装置が設けられており、ガス供給源、排出ガス通路、および少なくとも1つのセンサのうちの少なくとも1つは、ガス不透過性エンクロージャ内のガス特性(例えばガス組成およびガス濃度)を制御するために、制御装置と通信する。制御装置は、細胞培養容器を封入するガス不透過性エンクロージャの外側かつ/またはキャビネットの外側に配置され得るか、または1つ以上のガス不透過性エンクロージャまたはキャビネットに組み込まれてよい。
【0048】
ガス供給源は、例えば、二酸化炭素(CO2)、二酸化炭素平衡空気、酸素(O2)、水蒸気(湿度)、および同様の物質、またはこれらの組合せのうちの少なくとも1つであってよい。少なくとも1つのセンサは、例えば、二酸化炭素、酸素、pH、湿度、またはこれらの組合せ用の少なくとも1つのセンサであってよい。ガス不透過性エンクロージャ内の二酸化炭素、酸素、湿度、またはこれらの組合せの相対百分率は、例えば、約1~35%の二酸化炭素、約1~50%の酸素、および約1~95%の湿度であってよい。所定の範囲の数値には、例えば、約1~約10%の二酸化炭素;約1~約30%の酸素;約10~約95%の相対湿度;および約4~約9の酸性度(pH)のうちの1つ以上が含まれていてよい。
【0049】
本開示の実施形態には、ガス不透過性エンクロージャを有する細胞培養システムを含む、本明細書に記載の細胞培養システムを使用する方法が含まれる。当該方法には、例えば、細胞培養システムに含まれる細胞培養物を有するガス透過性フィルム容器に供給されるガス、ガス混合物、湿度、酸性度(pH)、またはこれらの組合せのうちの少なくとも1つの濃度または活性を監視すること、およびガス、ガス混合物、湿度、酸性度(pH)、またはこれらの組合せのうちの少なくとも1つを調整することが含まれていてよい。監視が所定の範囲の数値からの逸脱を示した場合には、制御装置がシステムを所定の範囲の数値に戻すために、ガス、ガス混合物、湿度、酸性度(pH)、またはこれらの組合せのうちの少なくとも1つを調整する。
【0050】
本開示の実施形態によれば、高収率細胞培養容器の空間・操作要件は、操作が自動化または半自動化され得る、コンパクトな設置面積の高収率培養システムを提供することにより、低くされている。本開示のシステムおよび方法には、細胞培養装置、エンクロージャ(例えばキャビネットおよび/またはガス不透過性バリアまたはエンクロージャ)、センサ、流体源、接続部および通路(例えばチューブ、フィッティング、マニホールド、ガス・媒体源、排気出口等)、熱制御システムまたは温度制御システム、圧送システムおよび制御システムが含まれていてよい。
【0051】
細胞培養装置は、少なくとも1つの細胞培養容器、キャビネット装置、圧送装置、監視装置および制御装置を含む。少なくとも1つの細胞培養容器は、複数の平行な細胞培養面を用いて細胞を培養するように構成されており、少なくとも1つの細胞培養容器は、材料を少なくとも1つの細胞培養容器に流入させ、そこから流出させることができるように構成された少なくとも1つのポートを含む。キャビネットは、少なくとも1つの細胞培養容器を内部キャビティ内に保持するように構成されている。キャビネットはさらに、少なくとも1つの細胞培養容器を回転させるように構成されている。細胞培養容器の設計、および容器を回転させる培養段階に応じて、回転の形式および程度を変えることができる。いくつかの実施形態では、回転は、単一の軸線を中心とした単純な回転であるが、別の実施形態では、第1の回転軸線および第2の回転軸線を中心とした複雑な回転であってもよい(例えばこの場合、第1の回転軸線は第2の回転軸線に対して垂直であり、第1の回転軸線および第2の回転軸線はそれぞれ、地面に対して平行である)。圧送装置は、少なくとも1つの細胞培養容器の少なくとも1つのポートに流体接続されており、少なくとも1つのポートを介して材料を少なくとも1つの細胞培養容器内へ圧送し、そこから吐出するように構成されている。監視装置は、少なくとも1つの細胞培養容器、キャビネットおよび圧送装置の1つ以上のパラメータを監視するように構成されている。制御装置は、キャビネット、圧送装置、および監視装置に操作可能に接続されていて、少なくとも1つの細胞培養容器の動きを、材料の、圧送装置を使用した少なくとも1つの培養容器内への圧送およびそこからの吐出を伴うキャビネットの回転動作を用いて調整するように構成されている。
【0052】
様々な実施形態において、制御装置はさらに、監視装置を用いて、少なくとも1つの細胞培養容器、キャビネットおよび圧送装置の1つ以上のパラメータを監視し、かつ監視される1つ以上のパラメータに基づき、少なくとも1つの細胞培養容器、キャビネットおよび圧送装置の1つ以上のパラメータを調整するように構成されている。
【0053】
本明細書に記載の細胞培養システムは、監視装置を含んでいてよい。一般に監視装置は、細胞培養システムに関連する任意の1つ以上のパラメータを監視するように構成され得る。例えば監視装置は、細胞培養容器、キャビネット、圧送装置、リザーバ、細胞剥離装置、インキュベーション装置等のうちの1つ以上を監視するように構成され得る。さらに監視装置は、位置センサ、温度センサ、圧力センサ、光センサ、充填位置センサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、pHセンサ、ガス濃度センサ、蛍光イメージングに基づくセンサ、光学センサ、グルコースセンサ、ラクテートセンサ、アンモニウムセンサ、(例えば、細胞培養容器に重みをかけるための)ロードセル、電気インピーダンスセンサ、超音波インピーダンスセンサ、視覚システム、および/または細胞培養システムで使用され得る任意の別のセンサを含んでいてよい。監視装置は、細胞培養システムを監視して、細胞培養システムに関する1つ以上のパラメータを調整するためのフィードバックを提供するために、細胞培養システムの制御装置により使用され得る。本開示の細胞培養容器およびモジュールには、細胞集合を検出しかつ代謝物を監視するためのセンサを組み込むことができる。いくつかの実施形態では、ラマンプローブを使用することができ、ラマンプローブ用のセンサをキャビネットの外部に配置することができる。
【0054】
細胞培養システムの制御装置は、データを処理することができる1つ以上のコンピューティング装置を含んでいてよい。制御装置は、例えばマイクロプロセッサ、プログラマブルロジックアレイ、データストレージ(例えば揮発性または不揮発性メモリおよび/または記憶素子)、入力装置、出力装置等を含んでいてよい。制御装置は、本明細書に記載の方法または方法の一部を実施するようにプログラムされ得、例えば細胞培養システムの各要素に関する1つ以上のパラメータを監視または調整するために、細胞培養システムの各要素に操作可能に接続され得る。例えば、制御装置は細胞培養容器、操作装置、圧送装置、リザーバ、細胞剥離装置、インキュベーション装置、または監視装置に操作可能に接続され得る。
【0055】
本明細書に「操作可能に接続された」と記載する場合には、情報(例えば画像データ、コマンド等)が各物体間で送信され得るように、(例えば有線または無線で)接続されていると定義され得る。
【0056】
複数の実施形態において、監視装置の位置センサは、細胞培養容器の位置および/またはキャビネットまたはキャビネット内の支持面の位置、例えば、地面に平行な第1の軸線を中心とした細胞培養容器の回転、地面に平行な第2の軸線を中心とした細胞培養容器の回転、地面からの細胞培養容器の距離等を監視するように構成され得る。このような位置データは、例えば制御装置により、培養中に細胞培養容器に対して行われた動きを確認するために使用され得る。少なくとも1つの別の実施形態では、監視装置の温度センサは、細胞培養容器および/またはキャビネットの内部または外部の温度、および/またはインキュベータ装置内の温度を監視するように構成され得る。このような温度データは、インキュベータ装置の監視目的および/または調整のために使用され得る。
【0057】
複数の実施形態において、監視装置の圧力センサは、各細胞培養容器またはモジュール、各リザーバ、および/またはインキュベーション装置内の圧力を測定するように構成され得る。少なくとも1つの実施形態では、監視装置の充填レベルセンサまたは位置センサは、細胞培養容器またはリザーバ内の材料の量(例えば充填レベル)を監視するように構成され得る。このような充填レベルデータは、細胞培養容器が満たされているか否かを確定するために使用され得る。少なくとも1つの実施形態では、監視装置の酸素センサは、細胞培養容器、ガス不透過性エンクロージャ、キャビネット、リザーバ、またはインキュベーション装置内の酸素濃度を監視するように構成され得、監視装置の二酸化炭素センサは、細胞培養容器、ガス不透過性エンクロージャ、キャビネット、リザーバ、またはインキュベーション装置内の二酸化炭素濃度を監視するように構成され得る。複数の実施形態において、制御装置は、培養容器の1つ以上の監視パラメータに基づき圧送装置を使用して材料を各培養容器内へ圧送し、そこから吐出する速度を変更するように構成され得る。
【0058】
複数の実施形態において、監視装置の光学センサは、細胞培養容器内の材料を結像させるように(例えば細胞培地等を結像させるように)構成され得、制御装置は、画像をユーザに提供するように構成され得る。さらに、ユーザはシステムから離れていてよく、例えばユーザはシステムのローカルまたは近傍に配置されることなく、細胞培養の画像を見ることができる。換言すると、細胞培養システムは、細胞培養のリモート視覚化手段を提供することができる(例えば、細胞集合の迅速な評価を提供することができる)。さらに、細胞が細胞培養面から剥離された後に、このようなリモート視覚化手段を使用して、細胞を検査することもできる。実際には、監視装置の光学センサは、細胞培養を観察するためのリモート顕微鏡を提供してもよい。
【0059】
本明細書に記載の細胞培養システムは、付着性の細胞の播種、増殖および積層された細胞培養容器からの採取に用いられる1つ以上のプロセスを達成するための半自動化または完全自動化されたソリューションを提供することができる。さらに、本明細書に記載のシステムは、複数の別個のコンポーネントをまとめ、これらを1つの中央コンピュータ制御機械に統合することができ、中央コンピュータ制御機械は、細胞培養者またはユーザにフィードバックを提供するために、1つ以上の検出装置を使用することができる。さらに、本明細書に記載の1つ以上の細胞培養システムは、ユーザが細胞培養のニーズに特有の数値プロセス変数を入力することができるようにするヒューマンマシンインタフェース(HMI)、1つ以上の細胞培養パラメータ、例えば、各細胞培養容器の充填速度、充填圧および充填体積等を制御するためのフルコンピュータまたはプログラマブルロジックコントロール(PLC)、充填/除去段階、平衡化段階および細胞除去段階中のポンプ速度調整と協調する、容器の半自動または全自動位置決め手段、容器内外への媒体の流れを制御するための手動制御式のまたは半自動または全自動の弁、濡れを回避するためのベントフィルタの固有の位置決め手段、容器完全性を保証するための自動圧力試験手段、組み込まれた安全機能、ならびに時間、温度、pH、ガス濃度および代謝物のプロセス監視手段を含んでいてよい。
【0060】
本明細書に記載の細胞培養システムの実施形態は、細胞培養容器に対する流量、充填体積、温度、圧力等を検出するように構成され得る、例えば1つ以上のセンサ等の監視装置を含んでいてよい。少なくとも1つの実施形態では、細胞培養システムは、容器完全性を保証するために、細胞培養容器内に圧力を加えて監視するように構成され得る。さらに、少なくとも1つの実施形態では、細胞培養システムに、細胞培養容器内および/または細胞培養容器の周囲の温度およびガス濃度の制御手段が組み込まれていてよいかまたは含まれていてよい。
【0061】
さらに、様々な実施形態において、本明細書に記載の細胞培養システムは、人間オペレータが自動化されたプロセスを監視しかつ調整すること、ならびにpH、ガス濃度、代謝物、温度等の細胞培養条件を監視することを可能にするように構成され得る1つ以上のヒューマンマシンインタフェースを含んでいてよい。さらに、このようなヒューマンマシンインタフェースは遠隔に配置されていてもよく、これにより、例えばシステムに対するローカルな人間オペレータの物理的な存在が必要とされずに済む。
【0062】
細胞培養システムはさらに、細胞剥離装置を含んでいてよい。一般に、細胞剥離装置は、例えば細胞が培養された後に、細胞培養容器の細胞培養面または増殖面に付着、結合または固着した細胞を剥離させるように操作可能であり得る。少なくとも1つの実施形態では、細胞剥離装置は、約0.1kHz、約0.5kHz、約1kHz以上等および/または約5kHz、約10kHz、約15kHz、約20kHz以下等の周波数で細胞培養容器を振とうさせて、細胞培養容器の細胞培養面に付着した複数の細胞の少なくとも一部を剥離させるように構成された振とう装置を含んでいてよい。少なくとも1つの実施形態では、細胞剥離装置は、約12ミリメートル(mm)~約26mmの振幅で細胞培養容器を振とうさせるように構成された振とう装置を含んでいてよい。さらに揺とう経路は、細胞培養容器の細胞培養面に対して広範囲の角度に方向付けられていてよい。例えば振とう装置は、細胞培養容器12を円形の経路で、鉛直方向に、細胞培養面に対して平行に、かつ直線往復運動で動かすように構成され得る。振とう装置は、本明細書に提示する開示と矛盾しない限りにおいて参照によりその内容全体が本明細書に援用される、2011年8月25日に出願された「METHODS OF RELEASING CELLS ADHERED TO A CELL CULTURE SURFACE」と題された米国仮特許出願第61/527,164号明細書に記載されたようなものであってよい。
【0063】
振とう装置は、キャビネットと一体または別個であってよい。例えば、振とう装置はキャビネットに結合されていてよく、キャビネットの少なくとも一部を振とうさせ、これにより、キャビネットにより保持された細胞培養容器を振とうさせることができるように構成され得る。いくつかの実施形態では、振とう装置はキャビネット内に収容されていてよく、キャビネット全体を振とうさせることなしに、キャビネット内の細胞培養容器を振とうさせるように構成され得る。例えば、支持面または棚が、キャビネットの内部キャビティ内に設けられていてよく、振とう装置には、それらの棚または棚に設けられた機器が含まれてよい。さらに例えば、振とう装置は、キャビネットから離れて、遠くに、または別個に配置されてもよい。この例では、キャビネットまたは振とう装置は、振とう装置と細胞培養容器とを互いに接触させて配置するために、他方に対して移動することができ、これにより、振とう装置は、細胞培養容器を振とうさせ、細胞培養容器の細胞培養面に付着した複数の細胞の少なくとも一部を剥離させることができる。複数の実施形態において、振とう装置は、細胞培養容器の少なくとも一部に接触するかまたは極めて接近し、かつ細胞培養容器を横切ってまたは細胞培養容器に対して相対的に摺動し、これにより、トランスデューサが容器に対して相対的に摺動した場合に、細胞培養容器部分に振とうエネルギを供給するように構成され得る。
【0064】
複数の実施形態において、振とう装置は、細胞培養容器をキャビネット内に配置することができるプラットフォームを含んでいてよい。細胞培養容器がプラットフォームに配置された後に、プラットフォームが振とうし、これにより、細胞培養容器を振とうさせ、細胞培養容器の細胞培養面に付着した複数の細胞の少なくとも一部を剥離させることができる。
【0065】
複数の実施形態において、細胞剥離装置は、約1kHz、約10kHz、約15kHz以上等および約20kHz、約30kHz、約40kHz以下等の周波数で細胞培養容器に超音波エネルギを供給するように構成された超音波トランスデューサ装置を含んでいてよい。さらに超音波トランスデューサ装置は、各細胞培養容器について1回以上、約5秒~約30秒間、細胞培養容器に超音波エネルギを供給するように構成され得る。例えば超音波トランスデューサ装置は、本明細書に提示する開示と矛盾しない限りにおいて参照によりその内容全体が本明細書に援用もされる、2009年5月19日に出願され、2009年12月3日に公開された「METHOD FOR ULTRASONIC CELL REMOVAL」と題された米国特許出願公開第2009/0298153号明細書に記載されたようなものであってよい。さらに、超音波トランスデューサ装置は、細胞培養容器および/またはキャビネットに対して移動可能であり、これにより、細胞培養容器の1つ以上の室、ユニット、モジュール、または区画のうちの少なくとも1つに超音波エネルギを供給することができるように構成され得る。例えば、超音波トランスデューサ装置は、細胞培養容器の少なくとも一部に接触するかまたは極めて接近し、かつ細胞培養容器を横切ってまたは細胞培養容器に対して相対的に摺動し、これにより、トランスデューサが容器に対して相対的に摺動した場合に、細胞培養容器部分に超音波エネルギを供給するように構成され得る。さらに例えば、超音波トランスデューサ装置は指向性であり、これにより、例えばホーンを使用して、細胞培養容器にわたって超音波エネルギを案内するかまたは広げることができるように構成されてもよい。
【0066】
本開示の実施形態は、本明細書に記載の細胞培養システムを使用する方法を含む。当該方法は、1つ以上の細胞培養容器を操作するステップと、操作中または操作後のいずれかに、材料を、1つ以上の細胞培養容器内へまたは1つ以上の細胞培養容器外へ移動させるステップとを含んでいてよい。例えば、細胞培養容器を充填位置へと操作することができ、充填位置へと操作した後に、当該方法は、例えば細胞培地等といった材料の、1つ以上のリザーバから細胞培養容器への移し替えを開始することができる。さらに例えば、細胞培養容器を除去位置へと操作することができ、除去位置へと操作した後に、当該方法は、例えば廃培地、採取された細胞等といった材料の、細胞培養容器から1つ以上のリザーバへの移し替えを開始することができる。
【0067】
本明細書に記載の細胞培養システムと共に使用するための充填・除去方法には、充填・除去方法を容易にする複数の異なる位置が含まれていてよい。したがって、当該方法は、連続的に、周期的に、または必要に応じて、細胞培養容器を(例えば1つ以上の位置へと)操作する一方で、(プロセスからプロセスにループ状に戻る矢印により示されるように)材料を細胞培養容器に/から移し替える。少なくとも1つの実施形態では、細胞培養容器の操作と材料の移し替えとを同時に行うことができる。複数の実施形態において、1つ以上のセンサは、培養容器の充填レベルを検出することができ、これにより、充填・除去プロセス中に容器を適切な位置へ操作する目的で、制御ユニットにフィードバックを提供する。充填または除去プロセス中に容器の充填レベルを検出するためには、任意の適切なセンサが使用され得る。複数の実施形態において、例えば充填レベルを検出する目的で少なくとも1つの細胞培養容器それぞれの質量を測定するために、荷重センサまたは別の質量センサが使用され得る(例えば荷重センサまたは別の質量センサからのデータは、少なくとも1つの細胞培養容器および/またはキャビネットの動きと、圧送装置を使用した、材料の少なくとも1つの培養容器内外への圧送との調整に使用され得る)。複数の実施形態において、1つ以上の光学センサ、赤外線センサ等が、充填レベルを検出するために、培養容器に沿って適切に配置され得る。
【0068】
本開示は、細胞培養容器における液体培地の半自動化または全自動化された充填および/または除去を可能にする細胞培養システムを説明するものである。システムの実施形態には、細胞培養容器;保管キャビネット;細胞培養容器の充填レベルを検出するための充填センサ;充填中に細胞培養容器および/またはキャビネットの向きを変えるためのアクチュエータ;制御装置;圧力センサ;ならびに様々な接続手段、フィッティング、チューブ、およびマニホールドのうちの1つ以上を含む、本明細書に記載の様々なコンポーネントのそれぞれ異なる組合せが含まれていてよい、ということが考慮される。本明細書に記載の実施形態は、容器の充填または除去中に液体培地のレベルを監視するための充填センサを使用し、かつ充填レベルに応じて細胞培養容器の向きを変えるか、または充填速度を調整する。本明細書に開示するシステムおよび方法は、細胞培養容器の半自動化または全自動化された充填および/または除去を可能にすることができる。その結果、細胞培養システムにおける漏れ、汚染およびその他のストレスのリスクを低下させる細胞培養システムおよび方法が提供され、これにより、充填または除去手順の最中に必要とされる、ユーザによる監視や注意の程度が低減される。
【0069】
本開示の実施形態では、1つ以上のセンサが、細胞培養容器またはマニホールド内の充填レベルを測定するために使用され得る。充填速度は、各細胞培養装置にわたって多少変わる場合があるため、ユーザが一度に複数の容器に充填しようとする場合には、各細胞培養装置におけるセンサが、各特定の容器の向きを変えるための、または流体流を変化させるための適切な時間を決定することができる。
【0070】
図1を参照すると、細胞培養器10は3つの細胞培養モジュール12,14および16を有しており、これらはそれぞれ、細胞培養室18の複数の層を有しており、一方が他方の上部に積層されて、多層細胞培養器10を形成している。各細胞培養モジュール12,14および16は、2つのマニホールド20および22を使用する。第1のマニホールド20を介して、液体が細胞培養モジュール12,14および16に流入し、流出することができる。したがって、第1のマニホールド20は、流体マニホールドと呼ばれてもよい。第2のマニホールド22を介して、空気が細胞培養モジュール12,14および16に流入し、流出することができる。したがって、第2のマニホールド22は、空気マニホールドと呼ばれてもよい。
【0071】
細胞培養モジュール12,14および16はそれぞれ、複数のスタック層24を含んでいてよく、これらのスタック層24が互いに積層されると、
図2に示すように、互いの間に導管スペース(空気スペース)25を有する複数の細胞培養室18を形成する。
図2は、積層された細胞培養室18と、ガス透過性で液体不透過性のフィルム28を有する細胞培養面26とを形成するために互いに積層された複数のスタック層24の概略図であり、例えばスタック層24は、細胞培養室18と細胞培養器10の外部との間でのガスの移動を可能にする導管スペース25を含んでいる。再び
図1を参照すると、細胞培養モジュール12,14および16は、スペーサ31,33および35によって互いに隔離され得る。スペーサ31,33および35は、個々の細胞培養モジュール12,14および16のための構造的な支持手段を提供することができる。いくつかの実施形態では、細胞培養室18の総数をより多くするために、スペーサ31および/または33は追加的なスタック層24に置き換えられてよい。さらに、細胞培養室18内に存在する空気ではなく残留空気を捕捉するために、細胞培養モジュール12の上方にライザ容積が設けられてよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、培養モジュールは、ガス透過性で液体不透過性のフィルム28を有しており、これにより、細胞培養室18と、最終的には細胞培養容器の外部との間で気体を移動させることができる。このような培養モジュールは、積層されたユニット間での空気の流動を可能にするために、室の外部でフィルムに隣接して配置されたスペーサまたはスペーサ層を有していてよい。このように積層されたガス透過性の培養ユニットを含む細胞培養器の1つの市販例が、CorningのHYPERStack(商標)細胞培養器である。
【0073】
上述のように、細胞培養モジュール12,14および16は、マニホールド20および22を用いて互いに接続され得る。マニホールド20は、側壁基部構造30と、一体的なマニホールド20を提供する側壁基部構造30の一体部品として形成されたコラム構造32とを有している。コラム構造32は突起構造34を有しており、細胞培養モジュール12,14および16内の個々の細胞培養室18と流体接続している突起構造34からの流体流路の少なくとも一部を提供している。マニホールド20は、細胞培養室18の充填および除去を可能にするように構成され得る。
【0074】
マニホールド22も、側壁基部構造30’と、一体的なマニホールド22を提供する側壁基部構造30’の一体部品として形成されたコラム構造32’とを有している。コラム構造32’は、突起構造34’を有しており、細胞培養モジュール12,14および16内の個々の細胞培養室18から突起構造34’への流体流路の少なくとも一部を提供している。マニホールド22は、細胞培養器10における空気の流出入を可能にすることにより、細胞培養室18の充填および除去を可能にするように構成され得る。いくつかの実施形態では、コラム構造32’への媒体の流入を制御するために、コラム構造32’は、図示の位置からオフセットされていてよい。
【0075】
典型的な充填手順に関して、細胞培養器10は、その左側の側面を下にして、支持面またはトレイに向けて配置され得る。この向きにおいて、マニホールド20および22を備えた細胞培養器10の正面は、充填開始時の第1の充填の向きになるように、下向きに傾けられている(
図3の側面図参照)。次いで、細胞培養容器内への液体培地の流入が開始される。例えば、培地は蠕動ポンプを用いて、突起構造34を介して下側のコラム構造32内へ圧送され得るか、または容器は、重力により生ぜしめられた流れで満たされてよい。細胞培養器10内の液体培地が所定の位置の第1の充填レベルに上昇すると、細胞培養器10(および使用された場合は充填トレイ)は、第2の充填位置に向きを変えられる。この第2の充填の向きでは、液体培地が細胞培養器10内の最終充填レベルに達するまで、充填を続けることができる。最終充填レベルに達すると、媒体の流れは停止され、システムを閉鎖するために、マニホールド20,22からの入口および出口が遮断されるかまたは締められてよい。このとき、細胞培養器10は細胞培養に使用することができる状態である。
【0076】
本開示の実施形態は、上述したように、一種の充填トレイまたは多位置支持体を含む。この多位置支持体は、キャビネットの内部キャビティ内の支持面に組込み可能であることが考えられる。例えば、多位置支持体は、支持面上に配置され得るか、または支持面が多位置支持体の形態をとっていてよい。実施形態が、図示の多位置支持体を使用することに限定されることはない。しかしながら、いくつかの実施形態による細胞培養容器の傾倒操作を例示するために、添付の図面に示す多位置支持体を以下で説明する。多位置支持体のさらなる詳細は、その開示を参照により本明細書に援用する、2020年7月27日に出願された米国仮特許出願第63/056,913号明細書において看取され得る。
【0077】
図3を参照すると、多位置支持体50を使用して、細胞培養器10は、
図3に示すように細胞培養器の側面40を下にして傾けて置くことで、充填・除去され得る。細胞培養器10は側面40において、多位置支持体50を用いて支持部材42または水平面に対して相対的に、予め規定された傾斜角度θ
1(例えば約10度~約12度)で確実に位置決めされ得る。流体マニホールド20に最も近い側面40は、流体マニホールド20が空気マニホールド22より低くなるように、多位置支持体50上に配置されている。以下でより詳細に説明するように、多位置支持体50は、(
図3に示すような)直立構成と、細胞培養器10を水平面に対して相対的に異なる角度に位置決めするための傾斜構成との間で傾けられてよい。
【0078】
図4および
図5を参照すると、多位置支持体50が単独で示されており、底部52と、上部54と、対向する端部56および58と、対向する側部60および62とを有する一体の曲げプレートとして形成されている。側部62において多位置支持体50は、位置決めタブ64および66を有しており、位置決めタブ64および66は、細胞培養器10の下縁部68(
図3)を、多位置支持体50に直立した立位の位置で係合させ、多位置支持体50上の所定の位置に細胞培養器10を保持することを助ける。いくつかの実施形態では、細胞培養器10の下縁部68に、位置決めタブ64および66を受容するように寸法設定されかつ配置された凹設部71および73が設けられていてよい。位置決めタブ64および66は、下縁部68を把持して細胞培養器10が多位置支持体50から側方に移動することを阻止するために使用され得る曲げ部75を有していてよい。
【0079】
多位置支持体50は、主基底部70を有しており、主基底部70は、図示のような直立構成の多位置支持体50では、支持部材(例えばテーブルまたは実験台)に支持される。直立構成において主基底部70から鉛直方向にオフセットされていて、細胞培養器10を支持する主支持面72が設けられている。多位置支持体50はさらに、主基底部70と主支持面72との間に延在する中間面74を有している。中間面74は、多位置支持体50の側部60および62に対して斜角で延びる曲げ部として形成された接続部76において主基底部70に接している。中間面74は、側部60および62に対して斜角で延在する曲げ部として形成された接続部77において主支持面72にも接している。いくつかの実施形態では、接続部76および77の斜角は、側部60および62に対してほぼ同じ(例えば5度以内)であるか、またはそれぞれ異なっていてもよい。
【0080】
多位置支持体50はさらに、直立構成の多位置支持体50では支持部材に支持される副基底部79を有している。直立構成において副基底部79から鉛直方向にオフセットされていて、細胞培養器10を支持する副支持面78が設けられている。副支持面78と主支持面72とは、水平面に対して所定の角度を成しかつ主基底部70および副基底部79に対して傾斜してもいる同一平面に位置している。多位置支持体50はさらに、副基底部79と副支持面78との間に延在する別の中間面80を有している。中間面80は、多位置支持体50の側部60および62に対して垂直に延在する曲げ部として形成された接続部82において、副基底部79に接している。さらに別の中間面84が、主基底部70と副支持面78との間に延びている。中間面84は、側部60および62に対してやはり垂直に延在する曲げ部として形成された接続部86において主基底部70に接している。端部56には把持部88が設けられている。把持部88は、直立構成において副基底部79から鉛直方向にオフセットされておりかつ細胞培養器10を支持する支持フランジ90を有していてもよい。端部58には、主支持面72から鉛直方向外向きに延びかつ細胞培養器10を主支持面72上に保持するために使用される支持フランジ94が設けられている。
【0081】
図3に示す多位置支持体50は、直立構成において細胞培養器10を支持している。直立構成において、細胞培養器10は、水平面に対して角度θ
1(10度~12度)で前部102よりも高くされた後部100を有している。ただし、上下の角度は水平面に対して平行(ゼロ度)である。この直立構成は、細胞培養器10の充填を開始する初期充填位置に細胞培養器10を配置することができ、初期充填位置では、前部102が後部100よりも低くなっており、これにより、より緩やかな充填角度が提供され、流体中の発泡を低減すると共に、空気マニホールドとそれに接続されたフィルタとを介した空気排出を促進することができる。
【0082】
細胞培養器10が、直立構成の多位置支持体50を用いて充填される場合、細胞培養器10内の流体レベルは、空気マニホールド22に向かって、かつ空気マニホールドに接続されたフィルタに向かって上昇する。フィルタが濡れると、細胞培養器10から出る空気流量を減少させることがあり、これにより内部が加圧され、細胞培養器10内に望ましくない環境をもたらす恐れがある。流体がフィルタに到達する可能性を低減するためには、多位置支持体50に、多位置支持体50または細胞培養器10を持ち上げることなく多位置支持体50が細胞培養器10と共に回動させられる傾斜構成が設けられている。細胞培養器10の後部角隅部110に力Fを加えるだけで、多位置支持体50を細胞培養器10と共に手動で傾けることができ、これにより、多位置支持体50と細胞培養器10とは接続部76を中心として回動させられる。接続部76は、多位置支持体50の側部60および62に対して斜角に延びているので、この傾斜により、前部から後部にかけての角度および上部から下部にかけての角度の両方が変化し、これにより、フィルタが接続された空気マニホールドの上部の上昇量が増大する。以下に説明する実施形態によれば、この傾倒操作は、自動化された細胞培養システムにより、手動で力Fを加えることなしに行われてもよい。ただし、図示して説明する同じ多位置支持体50は、手動傾倒および自動傾倒の両方に使用され得る。
【0083】
図6を参照すると、多位置支持体50と細胞培養器10とが傾斜構成で示されており、この場合、前部102がより一層、後部100よりも高くされ、水平面に対して角度θ
2(11度~13度)をもたらしている。看取され得るように、傾斜構成では、細胞培養器10の側面40と後部100との間の角隅部112が、支持部材に支持されている。
図7を参照すると、上部116は、水平面に対して角度θ
3(7度~9度)で、下部114よりも高くされている。これにより、傾斜構成は、多位置支持体50および細胞培養器10に、θ
2(前部から後部)とθ
3(上部から下部)との双方の合成角を提供し、これを最終充填位置と呼ぶことができる。細胞培養器10が充填されると、細胞培養器10が直立した立位の位置に位置するまで、細胞培養器10の上部116に最も近い多位置支持体50の側部60が上方に回動させられてよい。したがって、細胞培養器10は、細胞培養器10を多位置支持体50から持ち上げる必要なしに、充填プロセス全体を通して多位置支持体50だけを用いて操作され得る。細胞培養器10からの除去は、逆の順序で行われてよい。
【0084】
上述した多位置支持体は、充填または除去動作中に細胞培養器を多位置支持体とは別個に取り扱う必要なしに、細胞培養器を操作するために使用することができる。これにより多位置支持体は、処理効率を高めることができると共に、より高い充填・除去速度ならびに簡単で迅速な角度変更手順に基づき、ユーザの時間を節約することができる。多位置支持体はさらに、エラーを低減し、製品の故障および/または損傷の可能性を低減し、多位置支持体を用いた支持法および固定された傾斜角度に起因する角度変化を低減することができる、明確かつ簡潔な制御プロトコルをもたらすことができる。合成傾斜角を有する多位置支持体を提供することにより、空気マニホールドに取り付けられたフィルタの浸潤変化が低減される。いくつかの実施形態では、多位置装置は、耐久性の向上をもたらすことができかつ適正製造基準(GMP)を満たすことができるステンレス鋼から形成することができる。多位置装置は、製造コストを低減するために、メタルブレーキにおいてシート材料から形成することができる。変更は、工具再製作に大きなコストをかけることなしに実施することができる。
【0085】
多位置支持体の向き変えは、いくつかの実施形態では手動で実施され得る。別の実施形態では、多位置支持体の傾倒は、上述した細胞培養システムの制御システムにより自動化されて制御される。
【0086】
図8は、別の実施形態による細胞培養容器200の横断面図である。
図1および
図2に示した実施形態と同様に、容器200は多層細胞培養容器である。
図8では、容器200は、10の細胞培養層202を備えて図示された細胞培養空間201を含む。ただし、複数の実施形態が、より多いまたはより少ない数の層を備えた容器を含んでいてよいと理解される。各層は、足場依存性または付着性の細胞を増殖させるためのポリマー支持面(層202)と、ガス透過性フィルム204とを含む。容器200は、細胞培養プロセス中に使用される液体培地206で満たされた状態で示されている。容器200には、2D細胞培養用の層202上に平面的な表面が設けられていてよい。(灌流細胞培養とは対照的な)静置細胞培養のために使用される場合、容器200には、ベント208を設けることができ、ベント208は例えば、容器200内の培養空間から排出ガスを逃がすことができる。
【0087】
図9には、3D細胞培養に適合させられた、
図8に示した実施形態の1つの変化形が示されている。具体的には、
図9には容器200と同様の構造を有する、ただしガス透過性フィルム204’により形成された細胞増殖面を備える細胞培養容器200’が示されている。ガス透過性フィルム204’は、3D表面を有しており、3D表面には、3D細胞培養用のウェルまたはマイクロキャビティが形成されている。
【0088】
いくつかの実施形態では、
図8および
図9に示す容器200および200’を複数、互いに積み重ねるかまたは結合して、1つのより大きな細胞培養容器を形成することができる。このような場合、容器200および200’はそれぞれ、より大きな容器の個々のモジュールとして働く。
図10には、このような、複数の(200または200’と同様の)細胞培養モジュール212a~212eを含む容器210の一例の正面図が示されている。
図10には5つのモジュール212a~212eが示されているが、複数の実施形態が、容器210内により多数のまたはより少数のモジュール212を有していてもよい、ということが考えられる。下側のモジュール212aには入口214が設けられており、入口214は、下側のモジュール212a内の細胞培養空間に流体接続されている。各モジュール212a~212eは、全てのモジュール212a~212e内の細胞培養空間同士が流体接続するように、隣接するモジュールに接続されている。したがって、入口214を介して容器210の細胞培養空間全体に培地を充填することができる。モジュール212eの出口215にはベント216も設けられており、これにより、ガスを容器210の細胞培養空間から排出することができる。ベント216は、フィルタを備えていてよく、静置細胞培養中に排出ガスを通過させるために使用される。例えばベント216は、容器210を満たす流体により空気が移動させられた場合に、空気を容器210から逃がすことを可能にし、また、静置培養中に流体が入口214を介して容器210から排出された場合に、空気が容器210内に流入することも可能にする。灌流培養では、出口215は、液体を容器210の細胞培養空間から運び出すためのチューブに接続され得る。入口214と出口215とは、容器210の対角線上で互いに反対の側の角隅部に配置されている。すなわち、入口214は、(
図10に見られるように)容器210の正面右下の角隅部に配置されており、出口215は、(
図10に見られるように)容器210の背面左上の角隅部に配置されている。入口214および出口215の相対的な位置決めは、充填・除去プロセスに必要な操作に影響を及ぼす場合がある。
図10に示す、対角線上で互いに反対の側における配置は、1つの好適な実施形態であるが、他の位置も同様に考えられる。
【0089】
容器10の同じ側に入口(32)および出口またはベント(32’)を有する、
図1に示した容器と比較して、対角線上で互いに反対の側の入口214および出口215は、充填・除去時に容器210の操作が大幅に簡単にされていると共に、容器を広げて個別に操作する必要がないという利点を提供する。これにより、ユーザが所望した場合には、灌流の流れも可能になる。
【0090】
任意には、本明細書で説明するように、モジュール212a~212eのうちの1つ以上に、細胞培養のパラメータを測定するためのセンサ218が設けられていてよい。センサ218は、例えば細胞集合を検出するため、または代謝物を監視するために使用され得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、
図10に示す容器210は、7,000cm
2超、14,000cm
2超、18,000cm
2超、36,000cm
2超、または50,000cm
2以上の細胞培養面を提供することができる。例えば、
図10に示す実施形態では、表面積は、約50,000cm
2であり、これは、市販のHYPERStack(登録商標)ユニットにより提供される18,000cm
2の表面積よりも大きい。別の見方をすると、設置面積が50,000cm
2を占める実施形態は、50,000cm
2の表面積に適合するためまたはこれを上回るために必要とされるいくつかのHYPERStack(登録商標)ユニットが占める設置面積よりも小さい。さらに、いくつかの実施形態では、
図10に示す容器210の動作に必要とされる静水頭圧は、約0.5psi(3447.38Pa)だけであってよい。
【0092】
図11A~
図11Cには、容器210の充填プロセスの3つの段階が示されている。容器210は、水平または平坦な面220に配置された状態で示されている(すなわち、面220は地面に対して平行である)。入口214を介して媒体222を充填する間、容器210は、容器210の底面224と支持面220との間の角度により規定される傾斜角度θに傾斜させられる。充填角度θは、
図11A~
図11Cに示すように、培地222のレベルが上昇して空気が出口215を通って排出される場合に、容器210による気泡形成を最小限に抑える一方で、容器210に所定の充填圧力で充填することを可能にする。入口214および出口215の水平方向において互いに反対の側の位置決め(
図10参照)に基づき、単に5°の傾倒角度θが使用され得るか、または1°~10°の角度が使用され得るか、または5°~20°の角度が使用され得るか、または10°~45°の角度が使用され得る。
【0093】
図12には、複数の細胞培養容器210を収容するためのキャビネット302を用いた細胞培養システム300の1つの実施形態が示されている。容器210の形態および構造は、
図10および
図11に示した容器210に相応するが、キャビネット302は、他の種類の容器と共に使用するために同様に適合させることもできる。キャビネット302は内部キャビティ304を含み、1つ以上の細胞培養容器210を支持するように配置された1つ以上の支持面306を含んでいてよい。図示のように、複数の細胞培養容器210は各支持面306上に設けられていてよく、複数の支持面306は、小さな設置面積で高密度の細胞培養システムを可能にする。容器210の入口214は、本例では様々な入口214を接続するチューブ308により、互いに接続されている。したがって、キャビネット302のポート312を介して容器210に接続された主入力ライン310を介して、全ての容器210に培地を供給することができる。
【0094】
動作中、容器210はユーザによりカート302の内部キャビティ304内に装填される。次にユーザは、例えばチューブ308を介して、単一の支持面306上の異なる容器210を接続することができる。これらの、各支持面306上で接続された容器210は、追加的なチューブ308を介して、別の支持面306上で接続された容器に接続され得る。主入力ライン310は、新規の培地か、または再供給の場合には廃棄物容器(図示せず)に接続される。弁またはクランプを使用して流れを制御することができ、これにより、各棚への個別の充填を制限し、静水圧の上昇を回避する。カート302はさらに、例えば容器210の充填または除去中に使用される傾斜能力も有している。カート302はさらに、キャビネット302内のシステムに給電するための電気プラグを含んでいてよい。例えばキャビネット302は、本明細書で説明するように、細胞培養のための加熱された環境を維持するための電気機械的な弁、電気機械的な傾倒機構、またはインキュベーションシステムを含んでいてよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、センサがベントフィルタ216の手前に配置されていて、各容器入口214における弁に無線接続されており、これにより、培地の流れを調整して適切な充填レベルに到達させると共に、過剰な充填を防止する。カート302に設けられた(またはカート302と通信する)ヒューマン/マシンインタフェース(HMI)は、センサおよび弁のプログラミングを可能にすることができ、これにより、手動でクランプを操作することなしに充填および除去が可能になる。
【0096】
図13には、本開示による別の実施形態の細胞培養システム350が示されている。
図12と同様に、システム350には複数の細胞培養容器210を収容するためのキャビネット302が提供されている。上述したものに相応するキャビネット302および容器210のコンポーネントおよび構造を、
図13を参照して繰り返すことはない。図示のように、キャビネット302は、ガス不透過性エンクロージャ352により取り囲まれており、ガス不透過性エンクロージャ352は、キャビネット302の内部キャビティ内のガスを制御するためのポート356を介してチューブを受け入れるように鉛直方向に延在している。ガス不透過性エンクロージャ352は、側面が柔軟または硬質であってよく、カートの一部として、または全体的に別体として形成され得る。ガス不透過性エンクロージャ352を通るポート356または追加的なポートは、センサ接続または任意の別の監視システムまたは制御システムのために利用可能である。ガス不透過性エンクロージャは、カートにより生ぜしめられた熱を保持するように働くことができ、加湿・加熱され得るガスを分散させる。
【0097】
いくつかの実施形態によれば、複数の容器が、構造部材またはレールを介して互いに結合され得、これにより、結合された容器ユニットを形成する。これらの構造部材は、容器の側面および角隅部または縁部に沿ったレールを含んでいてよい。レールは、個々の容器を離間させる効果を有し得る一方で、容器間には構造支持手段および連結手段も設けられる。これらのレールは、輸送または動作中に容器を互いの衝突から保護することもできる一方で、密な設置面積を可能にする。
【0098】
細胞培養中にインキュベーションが必要とされる場合がある。いくつかの実施形態では、キャビネット302に、インキュベーションを可能にする温度制御システムを組み込むことができる。他の実施形態では、移動式であってよいキャビネット302が、キャビネット302全体を収容するインキュベータ内に移動させられてよい。
【0099】
図14Aおよび
図14Bには、細胞培養システムの別の実施形態が示されている。本明細書に記載のように、細胞培養システムは、細胞培養容器を、システムのキャビネット内にある間に傾けることができる。いくつかの実施形態では、このことは、
図14Bに示すようにキャビネット全体を傾けることにより達成される。例えばキャビネット400は、
図14Aに示すように直立構成で支持体またはカート402上に設けられている。カート402は、所望された場合には
図14Bに示すように、キャビネット400全体を傾斜構成へと傾けることもできる。例えば、本明細書に開示されたシステムについては、単に5°の傾斜で十分であり得る。この傾倒は、培養プロセス中に必要とされる唯一の操作であってよく、したがってカート402およびキャビネットは、この傾倒操作を達成するための単純な構造であり得る。カート402は、容器を緊密な高密度のフォーマットで維持することも可能にし、これにより、このことは、既存の細胞培養容器で必要とされるように、流体交換のために容器をインキュベータからテーブルまたはカートを越えて移動させる必要なしに、インキュベータの内部で実施され得る。択一的に、インキュベータが、カートの代わりに傾倒を生ぜしめる機構を含んでいてもよい。任意には、HYPERBioreactorがインキュベートする準備ができていれば、スペースを節約するためにカートハンドルは取り外されてもよい。
【0100】
このように、細胞培養システムおよび関連する方法の実施形態を開示した。当業者は、本明細書に記載の細胞培養システムおよび方法が、開示したもの以外の実施形態で実施され得るということを認識するであろう。開示した実施形態は、限定の目的ではなく例示を目的として提示されている。
【0101】
例示的な実施形態
以下は、開示した対象の実施形態の様々な態様の説明である。各態様は、開示した対象の様々な機構、特徴または利点のうちの1つ以上を含んでいてよい。実施態様は、開示した対象のいくつかの態様を例示することを意図したものであり、全ての可能な実施態様の包括的または網羅的な説明と見なされるべきではない。
【0102】
態様1は、細胞培養システムであって、細胞を培養するように構成された少なくとも1つの多層容器であって、多層容器内に細胞培養空間を含む多層容器と、1つ以上の側壁により包囲された内部キャビティを有するキャビネットであって、内部キャビティ内に多層容器を収容するように構成されたキャビネットとを含み、キャビネットは、多層容器の向きを、直立した向きから傾倒した向きに変えるように構成されている、細胞培養システムに関する。
【0103】
態様2は、細胞培養空間内の特性を検出するように構成された少なくとも1つのセンサをさらに含む、態様1記載の細胞培養システムに関する。
【0104】
態様3は、センサが、集合モニタおよび分析物モニタのうちの少なくとも1つを含む、態様2記載の細胞培養システムに関する。
【0105】
態様4は、センサが多層容器に組み込まれている、態様2または3記載の細胞培養システムに関する。
【0106】
態様5は、センサが、キャビネットに取り付けられていて、多層容器がキャビネット内に配置された場合に細胞培養空間内の特性を検出するように配置されている、態様2または3記載の細胞培養システムに関する。
【0107】
態様6は、多層容器が、少なくとも1つのセンサウィンドウを有しており、センサは、センサウィンドウを介して細胞培養空間内の特性を検出するように構成されている、態様2から5までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0108】
態様7は、キャビネットが、それぞれ少なくとも1つの多層容器を支持するように構成された複数の支持面を有している、態様1から6までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0109】
態様8は、少なくとも1つの多層容器が、複数の多層細胞培養モジュールを有している、態様1から7までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0110】
態様9は、複数の多層細胞培養モジュールのうちの少なくともいくつかが、互いに接続されている、態様8記載の細胞培養システムに関する。
【0111】
態様10は、多層容器が、入口と出口とを有しており、入口は、細胞培養空間に液体培地を供給するように構成されており、出口は、液体またはガスを細胞培養空間内に流入させるかまたは細胞培養空間から流出させるように構成されている、態様1から9までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0112】
態様11は、入口が、多層容器の下部に配置されている、態様10記載の細胞培養システムに関する。
【0113】
態様12は、出口が、多層容器の上部に配置されている、態様10または11記載の細胞培養システムに関する。
【0114】
態様13は、出口が、入口から多層容器の対角線上で反対の側に配置されている、態様12記載の細胞培養システムに関する。
【0115】
態様14は、出口が、ガスを細胞培養空間から逃がすことができるかまたは細胞培養空間内に流入させることができるように構成されたベントポートを有している、態様10から13までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0116】
態様15は、出口がフィルタを有している、態様10から14までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0117】
態様16は、多層容器が、少なくとも18,000cm2の細胞培養表面積を有している、態様1から15までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0118】
態様17は、細胞培養表面積が約50,000cm2である、態様16記載の細胞培養システムに関する。
【0119】
態様18は、傾倒した向きにおいて、多層容器の底部が、水平面に対して約5°の角度を成している、態様1から17までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0120】
態様19は、傾倒した向きが、直立した向きに対して約5°回動させられている、態様1から18までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0121】
態様20は、複数の多層容器が、複数の支持面のそれぞれに配置されている、態様7から19までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0122】
態様21は、複数の支持面のうちの1つに配置された複数の多層容器の入口が互いに接続されている、態様20記載の細胞培養システムに関する。
【0123】
態様22は、複数の支持面に配置された複数の多層容器の入口が互いに接続されている、態様20または21記載の細胞培養システムに関する。
【0124】
態様23は、キャビネットが、少なくとも1つの多層容器の細胞培養空間に流体接続されかつ細胞培養空間に液体培地を供給するように構成された主入口を有している、態様1から22までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0125】
態様24は、主入口が、複数の多層容器に流体接続されている、態様23記載の細胞培養システムに関する。
【0126】
態様25は、キャビネットが、内部キャビティにガスを供給するように構成されたガスポートを有している、態様1から24に記載の細胞培養システムに関する。
【0127】
態様26は、ガスポートに流体接続されたガス供給部をさらに含む、態様25記載の細胞培養システムに関する。
【0128】
態様27は、内部キャビティの温度を制御するように構成された温度制御システムをさらに含む、態様1から26に記載の細胞培養システムに関する。
【0129】
態様28は、温度制御システムが、熱源および冷却システムのうちの少なくとも1つを含む、態様27記載の細胞培養システムに関する。
【0130】
態様29は、キャビネットが、キャビネットの向きを変えることにより多層容器の向きを変えるように構成されている、態様1から28に記載の細胞培養システムに関する。
【0131】
態様30は、多層容器の向きがキャビネットに対して固定されている、態様29記載の細胞培養システムに関する。
【0132】
態様31は、1つ以上の側壁が、内部キャビティへの開口を有しており、開口は、多層容器の挿入または取出しを可能にするように寸法設定されている、態様1から30に記載の細胞培養システムに関する。
【0133】
態様32は、キャビネットが、開口を覆う扉を有しており、扉は、多層容器が内部キャビティ内に配置された場合に、内部キャビティを封止するように構成されている、態様31記載の細胞培養システムに関する。
【0134】
態様33は、キャビネットが、内部キャビティ内にガス不透過性エンクロージャを有しており、ガス不透過性エンクロージャは、少なくとも1つの多層容器を取り囲むように構成されている、態様1から32に記載の細胞培養システムに関する。
【0135】
態様34は、ガスポートが、ガス不透過性エンクロージャの開口に接続されている、態様25から33に記載の細胞培養システムに関する。
【0136】
態様35は、キャビネットを収容するように構成されたインキュベーションエンクロージャをさらに含む、態様1から34に記載の細胞培養システムに関する。
【0137】
態様36は、インキュベーションエンクロージャが、多層容器への液体培地の供給と、細胞培養システムのセンサからの信号の、インキュベーションエンクロージャの外部への伝送のうちの少なくとも一方のために構成された1つ以上のポートを有している、態様35記載の細胞培養システムに関する。
【0138】
態様37は、多層容器の向きが、キャビネットの向きに関して可変である、態様1から28までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0139】
態様38は、多層容器が、細胞培養空間を内部キャビティから隔離するガス透過性基材を有している、態様1から37までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0140】
態様39は、多層容器が、2D付着性細胞培養フィルムおよび3Dマイクロキャビティフィルムのうちの少なくとも1つを有している、態様1から36までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0141】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0142】
実施形態1
細胞培養システムであって、
細胞を培養するように構成された少なくとも1つの多層容器であって、該多層容器内に細胞培養空間を含む多層容器と、
1つ以上の側壁により包囲された内部キャビティを有するキャビネットであって、前記内部キャビティ内に前記多層容器を収容するように構成されたキャビネットと
を含み、
前記キャビネットは、前記多層容器の向きを、直立した向きから傾倒した向きに変えるように構成されている、
細胞培養システム。
【0143】
実施形態2
前記細胞培養空間内の特性を検出するように構成された少なくとも1つのセンサをさらに含む、実施形態1記載の細胞培養システム。
【0144】
実施形態3
前記センサが、集合モニタおよび分析物モニタのうちの少なくとも1つを含む、実施形態2記載の細胞培養システム。
【0145】
実施形態4
前記センサが前記多層容器に組み込まれている、実施形態2または3記載の細胞培養システム。
【0146】
実施形態5
前記センサが、前記キャビネットに取り付けられていて、前記多層容器が前記キャビネット内に配置された場合に前記細胞培養空間内の前記特性を検出するように配置されている、実施形態2または3記載の細胞培養システム。
【0147】
実施形態6
前記多層容器が、少なくとも1つのセンサウィンドウを有しており、前記センサは、前記センサウィンドウを介して前記細胞培養空間内の前記特性を検出するように構成されている、実施形態2から5までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【0148】
実施形態7
前記キャビネットが、それぞれ少なくとも1つの前記多層容器を支持するように構成された複数の支持面を有している、実施形態1から6までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【0149】
実施形態8
少なくとも1つの前記多層容器が、複数の多層細胞培養モジュールを有している、実施形態1から7までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【0150】
実施形態9
複数の前記多層細胞培養モジュールのうちの少なくともいくつかが、互いに接続されている、実施形態8記載の細胞培養システム。
【0151】
実施形態10
前記多層容器が、入口と出口とを有しており、前記入口は、前記細胞培養空間に液体培地を供給するように構成されており、前記出口は、液体またはガスを前記細胞培養空間内に流入させるかまたは前記細胞培養空間から流出させるように構成されている、実施形態1から9までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【0152】
実施形態11
前記入口が、前記多層容器の下部に配置されている、実施形態10記載の細胞培養システム。
【0153】
実施形態12
前記出口が、前記多層容器の上部に配置されている、実施形態10または11記載の細胞培養システム。
【0154】
実施形態13
前記出口が、前記入口から前記多層容器の対角線上で反対の側に配置されている、実施形態12記載の細胞培養システム。
【0155】
実施形態14
前記出口が、ガスを前記細胞培養空間から逃がすことができるかまたは前記細胞培養空間内に流入させることができるように構成されたベントポートを有している、実施形態10から13までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【0156】
実施形態15
前記出口がフィルタを有している、実施形態10から14までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【0157】
実施形態16
前記多層容器が、少なくとも18,000cm2の細胞培養表面積を有している、実施形態1から15までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【0158】
実施形態17
前記細胞培養表面積が約50,000cm2である、実施形態16記載の細胞培養システム。
【0159】
実施形態18
前記傾倒した向きにおいて、前記多層容器の底部が、水平面に対して約5°の角度を成している、実施形態1から17までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【0160】
実施形態19
前記傾倒した向きが、前記直立した向きに対して約5°回動させられている、実施形態1から18までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【0161】
実施形態20
複数の多層容器が、複数の前記支持面のそれぞれに配置されている、実施形態7から19までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【0162】
実施形態21
複数の前記支持面のうちの1つに配置された複数の前記多層容器の前記入口が互いに接続されている、実施形態20記載の細胞培養システム。
【0163】
実施形態22
複数の前記支持面に配置された複数の前記多層容器の前記入口が互いに接続されている、実施形態20または21記載の細胞培養システム。
【0164】
実施形態23
前記キャビネットが、少なくとも1つの前記多層容器の前記細胞培養空間に流体接続されかつ前記細胞培養空間に液体培地を供給するように構成された主入口を有している、実施形態1から22までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【0165】
実施形態24
前記主入口が、複数の多層容器に流体接続されている、実施形態23記載の細胞培養システム。
【0166】
実施形態25
前記キャビネットが、前記内部キャビティにガスを供給するように構成されたガスポートを有している、実施形態1から24までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【0167】
実施形態26
前記ガスポートに流体接続されたガス供給部をさらに含む、実施形態25記載の細胞培養システム。
【0168】
実施形態27
前記内部キャビティの温度を制御するように構成された温度制御システムをさらに含む、実施形態1から26までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【0169】
実施形態28
前記温度制御システムが、熱源および冷却システムのうちの少なくとも1つを含む、実施形態27記載の細胞培養システム。
【0170】
実施形態29
前記キャビネットが、該キャビネットの向きを変えることにより前記多層容器の向きを変えるように構成されている、実施形態1から28までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【0171】
実施形態30
前記多層容器の向きが前記キャビネットに対して固定されている、実施形態29記載の細胞培養システム。
【0172】
実施形態31
1つ以上の前記側壁が、前記内部キャビティへの開口を有しており、該開口は、前記多層容器の挿入または取出しを可能にするように寸法設定されている、実施形態1から30までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【0173】
実施形態32
前記キャビネットが、前記開口を覆う扉を有しており、該扉は、前記多層容器が前記内部キャビティ内に配置された場合に、該内部キャビティを封止するように構成されている、実施形態31記載の細胞培養システム。
【0174】
実施形態33
前記キャビネットが、前記内部キャビティ内にガス不透過性エンクロージャを有しており、該ガス不透過性エンクロージャは、少なくとも1つの前記多層容器を取り囲むように構成されている、実施形態1から32までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【0175】
実施形態34
前記ガスポートが、前記ガス不透過性エンクロージャの開口に接続されている、実施形態25から33までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【0176】
実施形態35
前記キャビネットを収容するように構成されたインキュベーションエンクロージャをさらに含む、実施形態1から34までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【0177】
実施形態36
前記インキュベーションエンクロージャが、前記多層容器への液体培地の供給と、前記細胞培養システムのセンサからの信号の、前記インキュベーションエンクロージャの外部への伝送のうちの少なくとも一方のために構成された1つ以上のポートを有している、実施形態35記載の細胞培養システム。
【0178】
実施形態37
前記多層容器の向きが、前記キャビネットの向きに関して可変である、実施形態1から28までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【0179】
実施形態38
前記多層容器が、前記細胞培養空間を前記内部キャビティから隔離するガス透過性基材を有している、実施形態1から37までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【0180】
実施形態39
前記多層容器が、2D付着性細胞培養フィルムおよび3Dマイクロキャビティフィルムのうちの少なくとも1つを有している、実施形態1から36までのいずれか1つ記載の細胞培養システム。
【国際調査報告】