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特表2023-541819キャピラリー等電点集束法に使用される中性キャピラリーのための高速かつ効果的なコンディショニング溶液
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】キャピラリー等電点集束法に使用される中性キャピラリーのための高速かつ効果的なコンディショニング溶液
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/447 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
G01N27/447 315F
G01N27/447 315K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514734
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(85)【翻訳文提出日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 IB2021057798
(87)【国際公開番号】W WO2022049458
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】63/074,233
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クルザード-パーク, イングリッド
(57)【要約】
本願の記載されている技術は、約1.0%(w/v)のポリマーおよび約4%(v/v)のカルボン酸を含む酸性高分子組成物に関する。この酸性高分子組成物は、中性キャピラリー保存またはコンディショニング溶液として、あるいはキャピラリー等電点集束法(cIEF)の頑健性または性能を改善する方法において使用され得る。本技術はまた、酸性高分子組成物、少なくとも1つの安定剤、アノード液、およびカソード液を含むキットにも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約1.0%(w/v)のポリマーおよび約4%(v/v)のカルボン酸を含む酸性高分子組成物。
【請求項2】
前記ポリマーが、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、またはポリオキシエチレン(POE)を含む、請求項1に記載の酸性高分子組成物。
【請求項3】
前記カルボン酸が、酢酸、乳酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、尿酸、リンゴ酸、および酒石酸からなる群より選択される、請求項1または請求項2に記載の酸性高分子組成物。
【請求項4】
前記ポリマーが少なくとも約900,000ダルトンの分子量を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の酸性高分子組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の酸性高分子組成物を含有する中性キャピラリー保存またはコンディショニング溶液。
【請求項6】
キャピラリー等電点集束法(cIEF)の頑健性または性能を改善させる方法であって、請求項1~4のいずれか1項に記載の酸性高分子組成物を用いて中性キャピラリーを調製することを含む、方法。
【請求項7】
約1.0%(w/v)のポリエチレンオキシド(PEO)および約4%(v/v)の酢酸(HAc)を含む酸性高分子組成物。
【請求項8】
前記PEOが少なくとも約900,000ダルトンの分子量を有する、請求項7に記載の酸性高分子組成物。
【請求項9】
酸性高分子組成物を含む中性キャピラリー保存またはコンディショニング溶液であって、前記酸性高分子組成物が、約1.0%(w/v)のポリエチレンオキシド(PEO)および約4%(v/v)の酢酸(HAc)を含む、中性キャピラリー保存またはコンディショニング溶液。
【請求項10】
前記PEOが少なくとも約900,000ダルトンの分子量を有する、請求項9に記載の中性キャピラリー保存またはコンディショニング溶液。
【請求項11】
キャピラリー等電点集束法(cIEF)の頑健性または性能を改善する方法であって、酸性高分子組成物を用いて中性キャピラリーを調製することを含み、前記酸性高分子組成物が、約1.0%(w/v)のポリエチレンオキシド(PEO)および約4%(v/v)の酢酸(HAc)を含む、方法。
【請求項12】
前記PEOが少なくとも約900,000ダルトンの分子量を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記改善された頑健性または性能が、カラムコンディショニング時間の短縮、より速いキャピラリー吸収、ロット間およびロット内のキャピラリー間のcIEF性能変動の最小化、反復分離間の検出時間変動の最小化、アッセイ頑健性の改善、検出時間再現性の増加、ならびに前記キャピラリーのコーティング寿命および/または均一性の増加からなる群より選択される、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記中性キャピラリーの調製が、保存ステップ、コンディショニングステップ、リンスイン分離ステップ、休止ステップ、洗浄ステップ、コーティング再生ステップ、および再コーティングステップからなる群より選択されるステップを含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が室温で実施される、請求項11~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記コンディショニングステップが、前記中性キャピラリーを前記酸性高分子組成物で50psiで1~30分間リンスすることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記リンスイン分離ステップが、前記中性キャピラリーを前記酸性高分子組成物、ホルムアミド、および水で少なくとも1回リンスすることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記コーティング再生ステップおよび/または再コーティングステップが、20回のcIEF分離の終了後に実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記中性キャピラリーのコーティングが24時間未満で再生される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記中性キャピラリーのコーティングが1時間以内に再生される、請求項18または請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記洗浄ステップが、前記中性キャピラリーを前記酸性高分子組成物、酢酸、および水で少なくとも1回リンスすることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つの安定剤、アノード液、カソード液、および請求項1~4または請求項7~8のいずれか1項に記載の酸性高分子組成物を含むキット。
【請求項23】
前記キットが、アノード安定剤およびカソード安定剤を含む、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記キットが、cIEFゲル、化学可動化剤、CEグレードの水、カルボン酸アミド、および/または尿素もしくはカルバミドをさらに含む、請求項22または請求項23に記載のキット。
【請求項25】
前記カルボン酸アミドがホルムアミドである、請求項24に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本特許出願は、2020年9月3日に出願された米国仮特許出願第63/074,233号に関連し、その優先権の利益を主張し、その内容は、参照によりその全体が本開示に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
キャピラリー等電点収束法(cIEF)は、荷電分子の等電点を利用した高分解能分析分離技術である。cIEFで使用される中性キャピラリーは、使用前にコンディショニング液でコンディショニングされなければならない。このコンディショニング手順は、キャピラリーの表面を完全かつ均一にコーティングすることを確実にするために重要である。また、分析対象物がキャピラリー壁に付着しないように、中性キャピラリーの再生が必要な場合もある。一般的なコンディショニングおよび再生技術は、かなりの時間および特定の条件を必要とし得、このことは、キャピラリーおよびcIEF装置の使用を妨げ得、そして/または効率に影響を与え得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
要旨
本発明者らは、cIEFの頑健性を改善させることができるcIEFコンディショニング溶液の必要性を認識している。特に、少なくとも、キャピラリー間、ロット間およびロット内のcIEF性能変動を最小にし、反復分離間の検出時間変動を最小にすることができるcIEFコンディショニング溶液が必要である。
【0004】
本開示の1つの態様は、ポリマーおよび有機酸を含む酸性高分子組成物に関する。いくつかの態様において、ポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、またはポリオキシエチレン(POE)を含む。いくつかの態様において、有機酸は、カルボン酸を含む。別の態様では、カルボン酸は、酢酸、乳酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、尿酸、リンゴ酸、および酒石酸からなる群より選択され得る。さらに別の態様では、この酸性高分子組成物は、約1.0%(w/v)のポリマーおよび約4%(v/v)のカルボン酸を含む。さらに別の態様では、この酸性高分子組成物は、約1.0%(w/v)のポリエチレンオキシド(PEO)および約4%(v/v)の酢酸(HAc)を含む。いくつかの態様において、この酸性高分子組成物は、他のcIEFコンディショニング溶液よりも速くキャピラリーに吸収され得る。いくつかの態様において、ポリマーは、少なくとも約900,000ダルトンの分子量を有する。いくつかの態様において、PEOは、少なくとも約900,000ダルトンの分子量を有する。
【0005】
本開示の1つの態様は、酸性高分子組成物を含む中性キャピラリー保存またはコンディショニング溶液である。いくつかの態様において、酸性高分子組成物は、約1.0%(w/v)のポリマーおよび約4%(v/v)のカルボン酸を含む。別の態様では、酸性高分子組成物は、約1.0%(w/v)のポリエチレンオキシド(PEO)および約4%(v/v)の酢酸(HAc)を含む。
【0006】
本開示の一態様は、キャピラリー等電点集束法(cIEF)の頑健性または性能を改善する方法であって、酸性高分子組成物を用いて中性キャピラリーを調製することを含む方法である。いくつかの態様において、酸性高分子組成物は、約1.0%(w/v)のポリマーおよび約4%(v/v)のカルボン酸を含む。別の態様では、酸性高分子組成物は、約1.0%(w/v)のポリエチレンオキシド(PEO)および約4%(v/v)の酢酸(HAc)を含む。別の態様において、改善された頑健性または性能は、カラムコンディショニング時間の短縮、より速いキャピラリー吸収、キャピラリー間、ロット間およびロット内のcIEF性能変動の最小化、反復分離間の検出時間変動の最小化、アッセイ頑健性の改善、検出時間再現性の増加、ならびにキャピラリーコーティングのコーティング寿命および/または均一性の増加からなる群より選択されてもよい。さらなる態様において、中性キャピラリーの調製は、保存ステップ、コンディショニングステップ、リンスイン分離ステップ、休止ステップ、洗浄ステップ、コーティング再生ステップ、および再コーティングステップからなる群より選択されるステップを含んでいてもよい。さらに別の態様において、中性キャピラリーを調製することは、室温で実施されてもよい。別の態様において、コンディショニングステップは、中性キャピラリーを酸性高分子組成物で50psiで1~30分間リンスすることを含んでいてもよい。さらに別の態様では、リンスイン分離ステップは、酸性高分子組成物、ホルムアミド、および水で中性キャピラリーを少なくとも1回リンスすることを含んでもよい。別の態様において、コーティング再生ステップおよび/または再コーティングステップは、20回のcIEF分離の終了後に実施されてもよい。さらなる態様において、中性キャピラリーのコーティングは、24時間未満で再生される。さらにさらなる態様において、中性キャピラリーのコーティングは、1時間以内に再生される。別の態様では、洗浄ステップは、酸性高分子組成物、酢酸、および水で中性キャピラリーを少なくとも1回リンスすることを含む。
【0007】
本開示の一態様は、少なくとも1つの安定剤、アノード液、カソード液、および酸性高分子組成物を含むキットである。一態様では、キットは、アノード安定剤およびカソード安定剤を含む。別の態様において、キットは、cIEFゲル、化学可動化剤、CEグレードの水、カルボン酸アミド、および/または尿素もしくはカルバミドをさらに含む。さらなる態様において、カルボン酸アミドは、ホルムアミドである
【0008】
本開示の他の態様および特徴は、添付の図と併せて本開示の特定の実施形態の以下の説明を検討することにより、当業者にとって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示の実施形態は、次に、添付の図を参照しながら、例としてのみ説明される。
【0010】
図1図1は、中性キャピラリーの断面を示す。
【0011】
図2図2Aおよび図2Bは、本開示の一実施形態によるコンディショニング方法を示す。
【0012】
図3図3Aおよび3Bは、本開示の一実施形態によるコンディショニング方法を示す。
【0013】
図4図4は、本開示の一実施形態による分離方法を示す。
【0014】
図5図5は、本開示の一実施形態によるcIEF分離方法を示す。
【0015】
図6図6Aは、コンディショニングされていない中性キャピラリーにおけるIgG標準を用いたペプチドpIマーカーの検出時間を示す。図6Bは、本開示の実施形態による酸性高分子組成物による中性キャピラリーのコンディショニング後の、同じペプチドpIマーカーの検出時間を示す。
【0016】
図7図7図8図9図10、および図11は、本開示の実施形態によるcIEF分離の再現性を示す。
図8図7図8図9図10、および図11は、本開示の実施形態によるcIEF分離の再現性を示す。
図9図7図8図9図10、および図11は、本開示の実施形態によるcIEF分離の再現性を示す。
図10図7図8図9図10、および図11は、本開示の実施形態によるcIEF分離の再現性を示す。
図11図7図8図9図10、および図11は、本開示の実施形態によるcIEF分離の再現性を示す。
【0017】
図12図12は、本開示の実施形態による、pI 10.0、9.5、および5.5のマーカーを含むIgG参照標準の検出時間を示す。
【0018】
図13図13は、本開示の実施形態によるIgG参照標準の補正ピーク面積パーセントの結果を示す。
【0019】
図14A図14Aは、本開示の実施形態による、pI 10.0、9.5、5.5、および4.1のマーカーを含むIgG参照標準の検出時間を示す。図14Bは、pI 10.0、9.5、5.5、および4.1マーカーの等電点を例示する。図14Cは、pI 10.0のマーカーの検出時間の違いを示す。
図14B図14Aは、本開示の実施形態による、pI 10.0、9.5、5.5、および4.1のマーカーを含むIgG参照標準の検出時間を示す。図14Bは、pI 10.0、9.5、5.5、および4.1マーカーの等電点を例示する。図14Cは、pI 10.0のマーカーの検出時間の違いを示す。
図14C図14Aは、本開示の実施形態による、pI 10.0、9.5、5.5、および4.1のマーカーを含むIgG参照標準の検出時間を示す。図14Bは、pI 10.0、9.5、5.5、および4.1マーカーの等電点を例示する。図14Cは、pI 10.0のマーカーの検出時間の違いを示す。
【0020】
図15図15は、本開示の一実施形態によるシャットダウン方法を示す。
【0021】
図16図16Aおよび16Bは、本開示の一実施形態によるシャットダウン方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
本開示は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、および試薬に限定されず、したがって変化し得ることが理解されよう。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけであり、本開示または添付の特許請求の範囲の範囲を限定することを意図しておらず、この範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることを理解されたい。
【0023】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の指示対象を含む。
【0024】
用語「約」は、本明細書および特許請求の範囲を通じて数値に関連して使用され、当業者に知られており許容できる精度の区間を示す。一般に、そのような精度の区間は、+/-10%である。
【0025】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0026】
実施形態において、酸性高分子組成物は、当該技術分野で公知である任意の適切な手段によって調製され、ポリマーおよび有機酸を含む。好適なポリマーとしては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、またはポリオキシエチレン(POE)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な有機酸としては、カルボン酸、例えば、酢酸、乳酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、尿酸、リンゴ酸、および酒石酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。酸性高分子組成物のpHは、約6未満、好ましくは約5未満、好ましくは約4未満、好ましくは約3未満、好ましくは約2.5未満である。
【0027】
実施形態において、酸性高分子組成物は、約1.0%(w/v)のポリエチレンオキシド(PEO)および約4%(v/v)の酢酸(HAc)を含む。酢酸の濃度を考慮すると、酸性高分子組成物は酸性のpHを有することになることは理解されよう。さらなる実施形態において、ポリエチレンオキシドは、少なくとも約900,000ダルトンの分子量を有する。
【0028】
実施形態において、酸性高分子組成物は、cIEFコンディショニング溶液として使用される。低いpHに起因して、酸性高分子組成物は、他のcIEFコンディショニング溶液よりも速くキャピラリーに吸収され得る。cIEF用途に適用される場合、酸性高分子組成物は、cIEFの頑健性または性能を改善させる方法に使用することができる。実施形態において、酸性高分子組成物は、カラムコンディショニング時間の短縮、キャピラリー吸収の増加、ロット間およびロット内のキャピラリー間のcIEF性能変動の最小化、反復分離間の検出時間変動の最小化、アッセイ頑健性の改善、検出時間再現性の増加、ならびにキャピラリーコーティングのコーティング寿命および/または均一性の増加という1以上の結果を提供または達成できる方法に使用することができる。cIEF用途は、様々な圧力で実施されることが理解されるであろう。適切な圧力は、約20psi~約100psi、または約25psi~約75psi、または約25psi、または約50psi、または約70psiの範囲である。
【0029】
本明細書に記載されるいくつかの例示的な実施形態によって例示されるような様々なコンディショニング手順が、キャピラリーに関して実施され得る。図1は、本開示の一態様による中性キャピラリーの断面である。開示の範囲を限定しないことによって説明することを意図している操作例において、図2A、2B、3A、および3Bは、新しい中性キャピラリーカートリッジのためのコンディショニング方法を示す。これらのコンディショニング方法は、実験室自動化システムに組み入れられ得る。図2Aおよび2Bは、中性キャピラリーを70psiで10分間、水で2回リンスし、その後、70psiで20分間、酸性高分子組成物(例えば、Neu.Cond.Sol.)で実施するコンディショニング方法を示す。図3Aおよび3Bは、中性キャピラリーを酸性高分子組成物(例えば、Neu.Cond.Sol.)で5分間、70psiでリンスするコンディショニング方法を示す。
【0030】
酸性高分子組成物を用いて、様々な分離方法を実施することができる。本開示の範囲を限定するものではなく、例示することを意図した操作例において、図4および5は、コンディショニングされた中性キャピラリーカートリッジについての分離方法を示す。図4および5は、中性キャピラリーを50psiで2分間、水でリンスし、目的のサンプルを中性キャピラリーに注入し、1回目の分離(25kVで15分)および2回目の分離(30kVで30分)を行うことを示す。方法終了ステップの前に、中性キャピラリーは4回リンスされる。この例では、1回目のリンスは、50psiで2分間、ホルムアミドを用いて行い、キャピラリー壁に残っている可能性のあるサンプルを除去する。2回目と3回目のリンスは、それぞれのリンスについて50psiで2分間、水を用いて行い、4回目のリンスは、酸性高分子組成物を用いて70psiで2分間行い、中性キャピラリーをコンディショニングする。
【0031】
図6は、コンディショニングされていない中性キャピラリー(図6A)および酸性高分子組成物でコンディショニングされた中性キャピラリー(図6B)でのIgG泳動によるペプチドpIマーカーの検出時間の比較を示す。デルタ値は、最初の(泳動#1)分離と最後の(泳動#20)分離の間の検出時間の差である。示されるように、コンディショニングされた中性キャピラリーは、コンディショニングされていない中性キャピラリーと比較して、泳動間の変動がより少ないことを示す。図7~9は、中性キャピラリーを55℃で6日間加熱し、50psiで30分間、酸性高分子組成物でリンスした後のcIEF分離の再現性を示す。cIEFは、20回の泳動ごとに24時間休止させた。
【0032】
テストミックスとしてペプチドpIマーカーを用いた場合、pI測定における標準偏差は0.05未満(n=12)であり、pIの測定値と理論値との差は±0.1であり、アッセイの直線性は0.98より大きく、2つのpIマーカーのピーク面積%におけるRSDは5%未満(n=12)であると判断された。図10および図11は、異なるcIEFテストミックスを用いた中性キャピラリーにおけるcIEF分離の再現性を示す。図10は、複数の中性キャピラリーを用いたペプチドpIマーカーおよびIgGサンプルのcIEF分離を示す。レプリケート73と106の間に新しいcIEFサンプルを調製した。ピペッティングの再現性がないため、新しいサンプルを調製した場合、検出時間に若干の変動が生じる可能性がある。
【0033】
図11は、x軸を検出時間(分)から等電点(pI)に変換したこと以外は図10と同じデータを示す。このx軸の変換を行っても、分離性能は同じであることが示されている。また、図6および図7はともに、酸性高分子溶液を使用することで、このサンプルを用いた100回を超えるcIEF分離において、中性キャピラリーの泳動寿命が延長されることを実証する。
【0034】
図12は、55℃で6日間加熱され、50psiで30分間、酸性高分子組成物でリンスされた中性キャピラリーの80回のcIEF泳動における、pI 10.0、9.5、5.5のマーカーを含むIgG参照標準の検出時間を示す。さらに図13に示すように、pI 10.0、9.5、および5.5のマーカーを含むIgG参照標準を用いる場合、タンパク質分解能は0.03pI単位と等しいかそれ未満であり、測定pI値の標準偏差は、少なくとも100回の泳動にわたり0.2pI単位未満であり、正規化ピーク面積の信頼性は、主要アイソフォームであるIgGの領域について、少なくとも100回の泳動における最初の20回の泳動と最後の20回の泳動について3%RSD未満であり、cIEFアッセイのpI測定の直線性は、pI範囲4~10で二乗(R)>0.98であることが分かる。
【0035】
図14Aは、カートリッジあたり12回のcIEF分離を行う8本のキャピラリーカートリッジを用いた、pI 10.0、9.5、5.5、および4.1のマーカーを含むIgG参照標準の検出時間を示す。図14Bは、X軸を移動時間から等電点へ変換した後の同じデータを示す。図14Cに示すように、pI 10.0のマーカーの最高検出時間(23.295分)と最低検出時間(22.486分)との時間差は0.809分、すなわち48.5秒である。
【0036】
一貫した検出時間および泳動再現性を達成するために、酸性高分子組成物を用いて、様々なcIEF標準を用いて、どのように同様の研究を行うことができるかは、当業者には理解されるであろう。
【0037】
酸性高分子組成物を用いて、様々なシャットダウン方法を実施することができる。実施形態において、酸性高分子組成物の使用は、従来のcIEF洗浄およびcIEF休止を1つのシャットダウンステップに合わせることを可能にする。本開示の範囲を限定するものではなく、例示することを意図した操作例において、図15は、中性キャピラリーが50psiで3分間、化学可動化剤で最初にリンスされる36分間のシャットダウン方法を示す。酢酸のような様々な化学可動化剤を使用することができる。2回目のリンスは、50psiで2分間、水を用いて行われ、3回目のリンスは、70psiで10分間、酸性高分子組成物を用いて行われる。図16Aおよび16Bは、中性キャピラリーを酸性高分子組成物で70psiで5分間リンスする15分間のシャットダウンを示す。
【0038】
実施形態において、酸性高分子組成物は、キット、特にcIEFキットの一部である。キットは、少なくとも1つの安定剤、アノード液、カソード液、および本明細書に記載される酸性高分子組成物を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、このキットは、アノード安定剤およびカソード安定剤を含む。このキットは、cIEFゲル、化学可動化剤、CEグレードの水、カルボン酸アミド、および/または尿素もしくはカルバミドをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、カルボン酸アミドは、ホルムアミドである。
【0039】
本開示は、特定の実施形態を参照して説明されてきたが、本開示または添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされ、均等物が代わりに用いられ得ることは、当業者には理解されよう。さらに、特定の状況または材料を本開示の教示に適合させるために、その範囲から逸脱することなく、多くの変更がなされ得る。したがって、本開示が開示された特定の実施形態に限定されるのではなく、本開示が添付の特許請求の範囲の範囲内に入るすべての態様を含むことが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15
図16
【国際調査報告】