(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】生殖細胞構造における位置の特定
(51)【国際特許分類】
G06T 7/70 20170101AFI20230927BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230927BHJP
【FI】
G06T7/70 A
G06T7/00 630
G06T7/00 350C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515551
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(85)【翻訳文提出日】2023-05-06
(86)【国際出願番号】 US2021050050
(87)【国際公開番号】W WO2022056370
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503146324
【氏名又は名称】ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】シャフィー,ハディ
(72)【発明者】
【氏名】ボーマン,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】カナカサバパシー,マノジュ,クマール
(72)【発明者】
【氏名】ティルマラジュ,プラディヴィ
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096BA13
5L096FA69
5L096HA11
5L096KA04
5L096MA07
(57)【要約】
【課題】本発明は、生殖細胞構造内の関心位置を示す臨床パラメータを特定するためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】生殖細胞構造の画像を取得してニューラルネットワークへ提供することで臨床パラメータを生成する。臨床パラメータは、非一時的コンピュータ可読媒体に記憶されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
プロセッサと、
非一時的コンピュータ可読媒体とを含み、
前記非一時的コンピュータ可読媒体には、生殖細胞構造内の関心位置を示す値を割り当てるための機器の実行可能な指令が記憶され、
前記機器の実行可能な指令は、
対応するイメージャーから前記生殖細胞構造の画像を受信するイメージャーインターフェースと、
前記生殖細胞構造内の関心位置を示す臨床パラメータを前記生殖細胞構造の前記画像から特定するニューラルネットワークと、を含み、
前記臨床パラメータは、前記非一時的コンピュータ可読媒体に記憶されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
出力機器を更に含み、
前記機器の実行可能な指令は、前記出力機器において前記臨床パラメータをユーザへ表示するユーザインターフェースを含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記生殖細胞構造は、卵母細胞であり、前記臨床パラメータは、前記卵母細胞内の極体の位置を示すことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記生殖細胞構造は、胚であり、前記臨床パラメータは、透明帯における、健康な卵割球から最も遠い位置を示すことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ニューラルネットワークは、画像セットでトレーニングされ、前記画像セットにおける各画像は、複数のクラスのうちの1つでラベル付けされ、前記複数のクラスのそれぞれは、前記関心位置を含む前記生殖細胞構造の区間を示し、前記臨床パラメータは、前記複数のクラスのうちの1つを示す分類パラメータを含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ニューラルネットワークは、畳み込みニューラルネットワークであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記イメージャーを更に含み、
前記イメージャーは、
白色発光ダイオードと、
相補型金属酸化物半導体(CMOS)画像センサと、
前記CMOS画像センサに接続される対物レンズと、を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記イメージャーを更に含み、
前記イメージャーは、プラスチックハウジングを含み、前記プラスチックハウジングは、アクリルレンズを含み、且つ、前記アクリルレンズがモバイル機器のカメラに位置合わせされるように、前記モバイル機器に固定されるように構成されることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項9】
生殖細胞構造内の関心位置を示す臨床パラメータを特定するための方法であって、
前記生殖細胞構造の画像を取得することと、
前記生殖細胞構造の前記画像をニューラルネットワークへ提供することで前記臨床パラメータを生成することと、
前記臨床パラメータを非一時的コンピュータ可読媒体に記憶することと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記臨床パラメータから特定された位置において前記生殖細胞構造を処理することを更に含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記生殖細胞構造に対する前記処理は、卵細胞質内精子注入法又はレーザーアシステッドハッチングであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記生殖細胞構造は、卵母細胞であり、前記臨床パラメータは、前記卵母細胞内の前記極体の位置を示すことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記生殖細胞構造は、胚であり、前記臨床パラメータは、前記透明帯における、健康な卵割球から最も遠い位置を示すことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記胚の画像を前記ニューラルネットワークへ提供することは、前記胚の画像を敵対的生成ネットワークの一部としてトレーニングされた識別的分類器へ提供することを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記胚の画像を前記ニューラルネットワークへ提供することは、前記胚の画像を再帰型ニューラルネットワークへ提供することを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項16】
補助出産手順を計画するための方法であって、
生殖細胞構造の画像を取得することと、
前記生殖細胞構造の画像をニューラルネットワークへ提供することで、前記生殖細胞構造内の関心位置を示す臨床パラメータを生成することと、
前記臨床パラメータから特定された位置において前記生殖細胞構造を処理することと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記生殖細胞構造は、卵母細胞であり、前記臨床パラメータは、前記卵母細胞内の前記極体の位置を示すことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記臨床パラメータから特定された位置において前記生殖細胞構造を処理することは、前記極体から90度離れた位置において卵細胞質内精子注入法を実行することを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記生殖細胞構造は、胚であり、前記臨床パラメータは、前記透明帯における、健康な卵割球から最も遠い位置を示すことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記臨床パラメータから特定された位置において前記生殖細胞構造を処理することは、前記臨床パラメータで示された位置においてレーザーアシステッドハッチングを行うことを含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2020年9月11日に出願された、「移植前の胚の異数性スクリーニングを支援するための人工知能支援システム」と題された米国仮特許出願第63/077,405号、及び、2020年9月11日に出願された、「卵細胞質内精子注入法(ICSI)とアシステッドハッチング(AH)手順とに用いられる卵母細胞と移植前の胚との位置合わせのための人工知能支援システム」と題された米国仮特許出願第63/077,398号に対して優先権を主張し、その開示の全てがあらゆる目的で引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(政府権利声明)
本発明は、米国国立衛生研究院からの援助番号がR01AI118502、R01AI138800及びR21HD092828のうちの1つ又は複数である政府援助によって完了されたものである。政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【技術分野】
【0003】
本発明は、概して、補助出産分野に関し、より具体的に、生殖細胞構造における位置の特定に関する。
【背景技術】
【0004】
不妊症は軽視された医療・健康管理の問題であり、世界中で4,800万を超えるカップルに影響を及ぼし、苦痛、憂鬱、差別の原因となっている。体外受精(IVF)のような補助生殖技術(ART)は、不妊症の負担をある程度軽減したが、非効率であり、2015年に米国で報告された平均成功率は約26%である。IVFは依然として高価な解決策であり、米国では、ARTサイクルあたり、7000ドルから20,000ドルの費用がかかるが、これは通常保険の対象外である。さらに、多くの患者は、妊娠を達成するために、複数のIVFサイクルを必要とする。胚は、通常、発生における卵割期または胚盤胞期において患者の子宮に移植される。胚は、受精後2、3日で卵割期にあるとされる。胚は、受精後5、6日で胚盤胞期に到達する。胚盤胞は、液体で満たされた空洞を有し、栄養外胚葉と内部細胞塊(ICM)という異なった2種類の細胞タイプを持っている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様によれば、システムを提供する。当該システムは、プロセッサと、非一時的コンピュータ可読媒体とを含み、当該非一時的コンピュータ可読媒体には、生殖細胞構造内の関心位置を示す値を割り当てるための機器の実行可能な指令が記憶されている。前記機器の実行可能な指令は、対応するイメージャーから前記生殖細胞構造の画像を受信するイメージャーインターフェースと、前記生殖細胞構造内の関心位置を示す臨床パラメータを前記生殖細胞構造の前記画像から特定するニューラルネットワークと、を含む。前記臨床パラメータは、前記非一時的コンピュータ可読媒体に記憶されている。
【0006】
本発明の別の態様によれば、生殖細胞構造内の関心位置を示す臨床パラメータを特定するための方法を提供する。当該方法は、前記生殖細胞構造の画像を取得することと、前記生殖細胞構造の前記画像をニューラルネットワークへ提供することで前記臨床パラメータを生成することと、前記臨床パラメータを非一時的コンピュータ可読媒体に記憶することと、を含む。
【0007】
本発明のさらに別の態様によれば、補助出産手順を計画するための方法を提供する。当該方法は、生殖細胞構造の画像を取得することと、前記生殖細胞構造の画像をニューラルネットワークへ提供することで、前記生殖細胞構造内の関心位置を示す臨床パラメータを生成することと、前記臨床パラメータから特定された位置において前記生殖細胞構造を処理することと、を含む。
【0008】
本発明の前述の特徴及び他の特徴は、添付の図面を参照しながら以下の説明を読むことにより、当業者に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】生殖細胞構造における関心位置を特定するためのシステムの一例示を示す。
【
図2】生殖細胞構造における関心位置を特定するためのシステムの別の例示を示す。
【
図3】生殖細胞構造内の関心位置を示す臨床パラメータを特定するための方法を示す。
【
図5】本明細書に開示されたシステム及び方法を実現可能な例示のハードウェア部品の例示的なシステムの模式ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
臨床発生学実験室で行われた応用が最も広くかつ技術的に最も挑戦的な2種の顕微操作処理は、卵細胞質内精子注入法(ICSI)及びアシステッドハッチング(AH)である。これらの2種の処理は、いずれもよく訓練された発生学専門家が手動で完了される。卵細胞質内精子注入法は中期(MII)卵母細胞の配列、精子の選択及び固定と糸分裂紡錘体が干渉しない正確な位置に精子を注射する処理を含む。紡錘体は押出極体近傍に位置し、かつ明視野顕微鏡を用いて可視化することができない。アシステッドハッチングは、胚を透明帯(ZP)から逃がすための処理である。研究によると、AHは、IVFの失敗を繰り返した年齢が大きい女性と冷凍胚移植周期における妊娠機会を増加させることができることが分かる。当該処理は、卵割期胚に広く用いられ、胚移植前の遺伝子検査のための栄養強化外胚葉細胞の検出及び生検を促進する。AHが健康細胞から近すぎる場所で行われると、卵割球を損傷しやすくなる可能性がある。
【0011】
本明細書で使用される「生殖細胞構造」は、哺乳動物個体の補助出産処理に係る単一細胞又は多細胞構造である。生殖細胞構造は、配偶子(例えば、卵母細胞)と、移植前の受精胚とを含んでいてもよい。
【0012】
本明細書で使用される「静的観察」は、生殖細胞構造の発育中の単一の点での生殖細胞構造を代表する画像又は画像群である。静的観察において複数の画像を使用する場合、画像の間に生殖細胞構造の構造及び外観の明らかな変化が発生しない。
【0013】
図1は、生殖細胞構造における関心位置を特定するためのシステム100の一例示を示す。システム100は、プロセッサ102及び非一時的コンピュータ可読媒体110を含み、当該媒体には、生殖細胞構造における関心位置を示す値を割り当てるための機器の実行可能指令が記憶されている。機器の実行可能指令は、イメージャーインターフェース112を含み、当該イメージャーインターフェース112は、対応するイメージャーから生殖細胞構造の画像を受信する。例えば、イメージャーインターフェース112は、バス又はネットワークを介してイメージャーから画像を受信し、かつ画像を調整してニューラルネットワーク114での分析に用いられる。一例において、ニューラルネットワーク114は、クラウドコンピューティングシステムで実現されてもよく、ここで、画像は、ネットワークインターフェース(図示せず)を介してニューラルネットワーク114を含むサーバに伝送される。
【0014】
ニューラルネットワーク114は、生殖細胞構造の画像から生殖細胞構造内の関心位置を示す臨床パラメータを特定する。一実施形態において、分類臨床パラメータの各可能な値は、生殖細胞構造の表現における指定された位置を示す。一例において、当該表現は、略円形であってもよく、かつ、臨床パラメータに用いられる様々な値は、円形の各セクタを表すことができる。一実施形態において、当該表現は、12個の30度のセクタに分割される。別の例において、当該表現は、タイル多角形に分割されたアレイであり、かつアレイ内の各多角形は、臨床パラメータの値の1つで示される。一実施形態において、生殖細胞構造は、卵母細胞であり、かつ臨床パラメータは、卵母細胞内の極体の位置を示す。別の実施形態において、生殖細胞構造は、胚あり、かつ臨床パラメータは、透明帯における、健康な卵割球から最も遠い位置を示す。
【0015】
ニューラルネットワーク114は、互いに接続された複数のノードを有する。複数の入力ノードには、画像からの値(例えば、各画素に対応付けられた輝度および/または色度値)が供給される。各入力ノードは、1つ以上の中間ノードの層にこれらの入力値を提供する。所定の中間ノードは、前のノードから1つ又は複数の出力値を受信する。受信された値は、分類器のトレーニング期間に確立された一連の重みに応じて重み付けされる。中間ノードは、ノードでの活性化関数に基づいて、受信された値を単一の出力に変換する。例えば、中間ノードは、受信された値を加算し、その和に対して以下の操作、即ち、識別関数、ステップ関数、Sigmoid関数、双曲線正接、整流線形ユニット、漏れ整流線形ユニット、パラメータ整流線形ユニット、ガウス誤差線形ユニット、Softplus関数、指数線形ユニット、ズーム指数線形ユニット、ガウス関数、Sigmoid線形ユニット、増加余弦ユニット、Heaviside関数及びmish関数を行ってもよい。ノードの最後の層は、ANNの出力クラスへ信頼度値を提供し、ここで、各ノードは、分類器の関連出力クラスの1つの信頼度を表す相関値を有する。
【0016】
多くのANN分類器は、完全接続とフィードフォワードである。しかしながら、畳み込みニューラルネットワークは、畳み込み層を含み、ここで前の層からのノードは、畳み込み層中のノードのサブセットのみに接続される。再帰型ニューラルネットワークは、ニューラルネットワークであり、ここでノード間の接続は、時系列に沿って有向グラフを形成する。フィードフォワードネットワークとは異なり、再帰型ニューラルネットワークは、前の入力に起因する状態のフィードバックを結合することができ、それにより再帰型ニューラルネットワークが所定の入力に対する出力は、入力された関数だけでなく、1つ又は複数の前に入力された関数であってもよい。例えば、長短期記憶(LSTM)ネットワークは、再帰型ニューラルネットワークの修正バージョンであり、それは、メモリに履歴データをより覚えやすい。
【0017】
適切な生殖細胞構造の複数のラベル付け画像でニューラルネットワーク114を訓練する。「ラベル付け画像」とは、画像における関心位置の位置決めが既知であり、例えば、専門家コメントにより、かつトレーニング過程において、関心位置の位置決めに関連する臨床パラメータが画像と共にニューラルネットワークに提供されることを指す。トレーニング期間において、ニューラルネットワーク114内のノードとの間の相互接続に関連する重みが反復的に変更され、一旦ネットワークが変化すると、新たな、ラベル付けされていない画像が表示されたときに、ネットワークの出力は、新たな画像内の関心位置の測位を示す臨床パラメータを提供する。当該臨床パラメータ又は臨床パラメータの表現は、非一時的コンピュータ可読媒体110に記憶されるか及び/又は関連する出力装置を介してユーザに提供されることができる。
【0018】
図2は、生殖細胞構造における関心位置を特定するためのシステム200の別の例示を示す。具体的には、システム200は、生殖細胞構造上の位置を示す分類臨床パラメータを生成する。システム200は、イメージャー202を含み、当該イメージャー202は、発育の少なくとも一日に生殖細胞構造の画像を取得する。例えば、イメージャー202は、可視光又は赤外線範囲内の画像を生成しかつ適切な光学部品とペアリングして生殖細胞構造の画像を提供することができる1つ又は複数のカメラを含んでもよい。一実施形態において、イメージャー202は、数日発育した胚の画像を遅延胚撮像システムの一部として取得することができる。別の実施形態において、イメージャー202は、生殖細胞構造の静的観察を生成するために用いられ、一組の1つ以上の画像とする。一実施形態において、イメージャー202は、移動装置用の付属装置を含み、それは、移動装置のカメラと共に動作して生殖細胞構造の画像を提供する。付属装置に用いられるハウジングは、サイズが82*34*48 mmのポリ乳酸を用いて3Dプリントを行うことができる。また、ハウジングには、胚の画像を適切に拡大するためのアクリルレンズが含まれていてもよい。
【0019】
別の実施形態において、イメージャー202は、独立して動作するシステムとして実現することができ、当該システムは、ポリ乳酸で3Dプリントされた光学ハウジングと62*92*175 mmの外形サイズを有する。当該ハウジングは、白色発光ダイオード、3ボルト電池及び単極双投スイッチを有する電子回路を含む。胚サンプルは、画像拡大のための10*平面-色消し対物レンズ(n-Achromatic objective lens)及び胚画像データ収集のための相補型金属酸化物半導体(CMOS)イメージセンサにより透過を実現する。CMOSセンサは、単板コンピュータに接続されて撮像画像を処理することができる。イメージャー202は、無線接続(例えば、Wi-Fi(登録商標)、ブルートゥース(登録商標)又は類似する接続)を介してモバイルデバイスに接続され、データ処理及び可視化に用いられる。
【0020】
イメージャー202で取得された1つ又は複数の画像は、分析システム210に提供され、分析システム210は、プロセッサ212、出力装置214及びプロセッサにより実行可能な指令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体220を含む。当該指令は、実行されてイメージャーインターフェース222を提供することができ、当該イメージャーインターフェース222は、生殖細胞構造の単一画像又は複数の画像を受信する。イメージャーインターフェース222は、1種又は複数種のイメージング条件技術(例えば、トリミング及びフィルタリング)を適用することができ、それにより分析用の画像をよりよく準備する。次に、画像をニューラルネットワーク224に提供し、当該ニューラルネットワーク224は、所望の位置を表す分類臨床パラメータを提供する。
【0021】
一実施形態では、ニューラルネットワーク224は、ネットワークの前の層における値に畳み込みを効果的に適用して、画像内の各特徴のセットを強調する畳み込み層を含む、順伝播型人工ニューラルネットワークである畳み込みニューラルネットワークであってもよい。畳み込み層において、ニューロンのそれぞれは、ニューロンの受容野と呼ばれる前の層におけるニューロンの適切なサブセットにのみ接続されている。一例では、畳み込みニューラルネットワークは、Xceptionアーキテクチャにより実装されている。一実施形態では、各ピクセルに関連付けられた少なくとも1つの色度値(例えば、RGBカラーチャンネル、YCrCbカラーチャンネルまたはグレースケール輝度の値)は、畳み込みニューラルネットワークの初期入力として提供される。
【0022】
別の実施形態において、ニューラルネットワーク224は、再帰型ニューラルネットワークとして実現することができる。再帰型ニューラルネットワークでは、ネットワークにおけるノード間の接続を選択してシーケンスに沿って有向グラフを形成し、それが動的な時間挙動を示すことを許可する。別の実施形態において、ニューラルネットワーク224は、敵対的生成モデルにおける識別的ネットワークとして実現されかつ訓練される。ここで、生成的ニューラルネットワーク及び識別的ネットワークが互いにフィードバックを提供することにより、生成的ニューラルネットワークは、ますます複雑なサンプルを生成して識別的ネットワークに分類を試みさせる。ニューラルネットワーク224の構造に関わらず、ニューラルネットワークの幾つか又は全ての層は、他のシステムからのマイグレーションデシジョン学習を介してトレーニングされ得る。ここで、幾つかの層のみが生殖細胞構造の訓練画像にトレーニングされる。ニューラルネットワーク224の最終層は、softmax層として実現することができ、それにより分類結果を提供する。
【0023】
新たな画像に対する応答として、ニューラルネットワーク224は、関心位置の画像を含む部分を表す臨床パラメータを生成する。臨床パラメータは、ユーザインターフェース226を介して出力装置214においてユーザに提供されてもよい。例えば、ユーザインターフェース226は、ニューラルネットワーク224の出力を受信して出力装置214に表示するための適切なソフトウェア指令を含んでもよい。一実施形態において、出力装置214は、分析システム210と無線で通信する移動装置を含んでもよい。一例において、臨床パラメータは、細胞生殖構造の表現としてユーザーに提供されてもよい。ここで、細胞生殖構造の部分は、当該表現内にハイライト表示される。
【0024】
上記構成及び機能特徴に鑑み、
図3及び
図4を参照すると、本発明の様々な態様に係る方法をよりよく理解する。説明の目的を簡略化するために、
図3及び
図4の方法がシーケンスで実行されるものとして示されて説明されるが、理解すべきことは、本発明は、示された順番に限定されるものではない。本発明によれば、幾つかの態様は、本明細書に示された説明と異なる順番で発生し及び/又は他の態様で同時に発生することができるからである。また、本発明の1つの態様に係る方法を実現するために全ての示された特徴が要求されるとは限らない。
【0025】
図3は、生殖細胞構造内の関心位置を示す臨床パラメータを特定するための方法300を示す。一例において、方法300は、卵母細胞内の極体の位置を特定するために用いられる。ここで、臨床パラメータは、卵母細胞の、極体を含む部分を示す。別の例において、当該方法は、透明帯における、健康な卵割球から最も遠い位置を特定するために用いられる。ここで、臨床パラメータは、適切な位置を示す。302において、生殖細胞構造の画像を取得する。例えば、適切なイメージャーで画像をキャプチャし、かつそれをコンピュータシステムに提供して画像処理に用いられる。
【0026】
304において、生殖細胞構造の画像をニューラルネットワークに提供することで臨床パラメータを生成する。臨床パラメータの各可能な値は、生殖細胞構造の表現における指定位置を示し、それにより、臨床パラメータは、画像における関心位置を示す。ニューラルネットワークは、畳み込みニューラルネットワークと、再帰型ニューラルネットワークと、敵対的生成ネットワークの一部としてトレーニングされた識別的分類器とのうちのいずれかとして実現されてもよい。306において、臨床パラメータを非一時的コンピュータ可読媒体に記憶する。
【0027】
図4は、補助出産手順を計画するための方法400を示す。402において、生殖細胞構造の画像を取得する。例えば、適切なイメージャで画像をキャプチャし、かつそれをコンピュータシステムに提供して画像処理に用いられる。404において、生殖細胞構造の画像をニューラルネットワークに提供して生殖細胞構造内の関心位置を示す臨床パラメータを生成する。臨床パラメータの各可能な値は、生殖細胞構造の表現における指定位置を示し、それにより、臨床パラメータは、画像における関心位置を示す。ニューラルネットワークは、畳み込みニューラルネットワークと、再帰型ニューラルネットワークと、敵対的生成ネットワークの一部としてトレーニングされた識別的分類器とのうちのいずれかとして実現されてもよい。
【0028】
406において、臨床パラメータから特定された位置において生殖細胞構造を処理してもよい。一例において、方法400は、卵母細胞内の極体の位置を特定するために用いられてもよい。ここで、臨床パラメータは、卵母細胞の、極体を含む部分を示す。極体の位置は、卵細胞質内精子注入のための適切な位置を特定するために用いられてもよい。例えば、卵細胞質内精子注入は、極体から90度離れた位置において行われてもよい。別の例において、方法400は、透明帯における、健康な卵割球から最も離れる位置を特定するために用いられてもよい。これにより、レーザーアシステッドハッチングの期間に健康な卵割球を損傷することは、回避される。一実施形態において、当該処理は、自動化ロボットシステムにより臨床パラメータで示された位置に基づいて実行されてもよい。
【0029】
図5は、
図1-
図4に示されたシステム及び方法、例えば、
図1及び
図2に示されたシステムを実装できるハードウェア部品の例示的なシステム500を示す模式ブロック図である。システム500は、様々なシステムおよびサブシステムを含むことができる。システム500は、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ワークステーション、コンピュータシステム、電気機器、特定用途向け集積回路(ASIC)、サーバ、サーバブレードセンター、またはサーバファームのいずれかであってもよい。
【0030】
システム500は、システムバス502、処理ユニット504、システムメモリ506、メモリデバイス508、510、通信インターフェース512(例えば、ネットワークインタフェース)、通信リンク514、ディスプレイ516(例えば、ビデオ画面)、及び入力機器518(例えばキーボード及び/またはマウス)を含むことができる。システムバス502は、処理ユニット504及びシステムメモリ506と通信することができる。ハードディスクドライブ、サーバ、スタンドアロンデータベース、またた他の不揮発性メモリなどの追加のメモリデバイス508、510もシステムバス502と通信することができる。システムバス502は、処理ユニット504、メモリデバイス506-510、通信インターフェース512、デスプレイ516、及び入力機器518と相互接続する。いくつかの例では、システムバス502は、追加のポート、例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)ポート(図示せず)と相互接続する。
【0031】
システム500は、コンピューティングクラウドに実装することができる。この場合、処理ユニット504、通信インターフェース512、およびメモリデバイス508、510などのシステム500の機能は、ハードウェアの単一または複数のインスタンスを表すことができ、アプリケーションは、ハードウェア(例えば、コンピューター、ルーター、メモリ、プロセッサ、またはそれらの組み合わせ)の複数のインスタンス(つまり、分配式のもの)で実行される。代わりに、システム500を単一の専用サーバに実装することができる。
【0032】
処理ユニット504は、コンピューティングデバイスとすることができ、特定用途向け集積回路(ASIC)を含むことができる。処理ユニット504は、一組の指令を実行して、本明細書に開示された例の操作を実装する。処理ユニットは、処理コアを含むことができる。
【0033】
追加のメモリデバイス506、508及び510は、テキスト又はコンパイルされた形式のデータ、プログラム、指令、データベースクエリ及びコンピュータを動作させるために必要とされ得る任意の他の情報を格納することができる。メモリ506、508及び510は、メモリカード、ディスクドライブ、コンパクトディスク(CD)、またはネットワークを介してアクセス可能なサーバなどのコンピュータ可読媒体(一体または取り外し可能)として実装され得る。いくつかの例では,メモリ506、508及び510は、テキスト、画像、ビデオ及び/またはオディオを含むことができ、その一部は、人間に理解可能なフォーマットで利用可能である。
【0034】
追加又は代替として、システム500は、システムバス502及び通信リンク514と通信することができる通信インターフェース512を介して、外部データソースまたはクエリソースにアクセスすることができる。
【0035】
動作中、システム500は、本発明の胚評価システムの1つまたは複数の部分を実装するのに使用することができる。いくつかの例では、複合アプリケーション試験システムを実装するためのコンピュータ実行可能論理は、システムメモリ506及びメモリデバイス508、510のうちの1つまたは複数に常在している。処理ユニット504は、システムメモリ506及びメモリデバイス508、510からの1つまたは複数のコンピュータ実行可能指令を実行する。コンピュータ可読媒体は、処理ユニットにそれぞれ動作可能に接続された複数のコンピュータ可読媒体を含むことができることが理解されるだろう。
【0036】
実施形態を完全に理解するために、特定の詳細を上記の説明で提供した。しかしながら、これらの特定の詳細がなくても実施形態を実施することができると理解される。例えば、回路は、不必要な詳細で実施形態を不明瞭にしないために、ブロック図で示されている場合がある。公知の回路、工程、アルゴリズム、構造、及び技術は、実施形態を不明瞭にしないために、不必要な詳細なしで示されている場合がある。
【0037】
上述した技術、ブロック、ステップ、手段は、様々な方法で実装することができる。例えば、これらの技術、ブロック、ステップ、及び手段は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせとして実装できる。ハードウェア実装では、処理ユニットが、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号処理デバイス(DSPD)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、前述の機能を果たすように設計された他の電子ユニット及び/またはそれらの組み合わせ内に実装されてもよい。
【0038】
また、実施形態は、フローチャート、フロー図、データフロー図、構造図、またはブロックとして図示されるプロセスとして説明され得ることに留意されたい。フローチャートは、逐次プロセスとして動作を説明し得るが、動作の多くは、並行または同時に行われることができる。さらに、動作の順序は、並べ替えられても良い。プロセスは、その動作が完了されると終了するが、図に含まれないさらに別のステップを有し得る。プロセスは、方法、関数、プロシージャ、サブルーチン、サブプログラム等に対応し得る。プロセスが関数に対応する場合、その終了は、呼び出し関数またはメイン関数への関数の戻りに対応する。
【0039】
さらに、実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、スクリプト言語、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語、および/またはそれらの任意の組み合わせによって実装することができる。ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、スクリプト言語、および/またはマイクロコードとして実装される場合、必要なタスクを行うプログラムコードまたはコードセグメントが、記憶媒体などの機械可読媒体に格納されてもよい。コードセグメントまたは機器の実行可能な指令は、プロシージャ、関数、サブプログラム、プログラム、ルーチン、サブルーチン、モジュール、ソフトウェアパッケージ、スクリプト、クラス、または指令、データ構造、および/またはプログラムステートメントの任意の組み合わせを表すことができる。コードセグメントは、情報、データ、引数、パラメータ、および/またはメモリコンテンツを伝達及び/又は受信することによって、別のコードセグメントまたはハードウェア回路に結合することができる。情報、引数、パラメータ、データなどは、メモリ共有、メッセージ伝達、チケット伝達、ネットワーク送信などの任意の適切な手段を介して伝達、転送又は送信することができる。
【0040】
ファームウェアおよび/またはソフトウェア実装では、方法は、本明細書に記載する機能を果たすモジュール(例えば、プロシージャ、関数など)を用いて実装することができる。本明細書に記載する方法を実装するには、指令を有形に具現化するいかなる機械可読媒体も使用することができる。例えば、ソフトウェアコードをメモリに格納することができる。メモリは、プロセッサ内、またはプロセッサ外に実装することができる。本明細書で使用する「メモリ」という用語は、任意の種類の長期、短期、揮発性、不揮発性その他の記憶媒体を指し、特定のメモリの種類、メモリの数、メモリが格納される媒体の種類に限定されない。
【0041】
さらに、本明細書で開示されるように、「記憶媒体」という用語は、読取専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気RAM、コアメモリ、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、および/または情報を格納するための他の機械可読媒体を含む、データを格納するための1つまたは複数のメモリを表し得る。「コンピュータ可読媒体」、「機械可読媒体」という用語は、ポータブルまたは固定記憶デバイス、光記憶デバイス、無線チャネル、ならびに/または指令及び/またはデータを格納、含有、または搬送することのできる様々な他の記憶媒体を含むが、これらに限定されない。「コンピュータ可読媒体」、「機械可読媒体」は、処理ユニットにそれぞれ動作可能に接続された複数種類の媒体を含むことができる。このような場合に、データがコンピュータ可読媒体に記憶されていると言うときは、システム内の如何なる互いに接続された媒体を指すことができる。
【0042】
以上、特定の装置および方法を参照して本発明の原理を説明したが、この説明は、本発明の範囲の限定としてではなく例示としてなされているにすぎないことを明確に理解すべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
プロセッサと、
非一時的コンピュータ可読媒体とを含み、
前記非一時的コンピュータ可読媒体には、生殖細胞構造内の関心位置を示す値を割り当てるための機器の実行可能な指令が記憶され、
前記機器の実行可能な指令は、
対応するイメージャーから前記生殖細胞構造の画像を受信するイメージャーインターフェースと、
前記生殖細胞構造内の関心位置を示す臨床パラメータを前記生殖細胞構造の前記画像から特定するニューラルネットワークと、を含み、
前記臨床パラメータは、前記非一時的コンピュータ可読媒体に記憶されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記生殖細胞構造は、卵母細胞であり、前記臨床パラメータは、前記卵母細胞内の極体の位置を示すことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記生殖細胞構造は、胚であり、前記臨床パラメータは、透明帯における、健康な卵割球から最も遠い位置を示すことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ニューラルネットワークは、画像セットでトレーニングされ、前記画像セットにおける各画像は、複数のクラスのうちの1つでラベル付けされ、前記複数のクラスのそれぞれは、前記関心位置を含む前記生殖細胞構造の区間を示し、前記臨床パラメータは、前記複数のクラスのうちの1つを示す分類パラメータを含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記イメージャーを更に含み、
前記イメージャーは、
白色発光ダイオードと、
相補型金属酸化物半導体(CMOS)画像センサと、
前記CMOS画像センサに接続される対物レンズと、を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【国際調査報告】