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特表2023-541858慢性リンパ球性白血病を治療するためのCD3及びCD20に対する二重特異性抗体
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  • 特表-慢性リンパ球性白血病を治療するためのCD3及びCD20に対する二重特異性抗体 図1A
  • 特表-慢性リンパ球性白血病を治療するためのCD3及びCD20に対する二重特異性抗体 図1B
  • 特表-慢性リンパ球性白血病を治療するためのCD3及びCD20に対する二重特異性抗体 図1C
  • 特表-慢性リンパ球性白血病を治療するためのCD3及びCD20に対する二重特異性抗体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】慢性リンパ球性白血病を治療するためのCD3及びCD20に対する二重特異性抗体
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230927BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230927BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230927BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20230927BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P35/02
A61P43/00 111
C07K16/46 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515672
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(85)【翻訳文提出日】2023-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2021075015
(87)【国際公開番号】W WO2022053653
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】63/076,733
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507316398
【氏名又は名称】ジェンマブ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】エリオット,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジェニー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】アフマディ,タハムタン
(72)【発明者】
【氏名】チウ,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ブレイジ,エステル・シー・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ヒエムストラ,アイダ
(72)【発明者】
【氏名】ジュレ・クンケル,マリア・エヌ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB36
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
CD3及びCD20に結合する二重特異性抗体を使用する、ヒト対象における慢性リンパ芽球性白血病(CLL)の臨床治療の方法が提供される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象における慢性リンパ性白血病(CLL)を治療する方法であって、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、可変重鎖(VH)領域及び可変軽鎖(VL)領域を含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、前記VH領域は、配列番号6の前記VH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、前記VL領域は、配列番号7の前記VL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、VH領域及びVL領域を含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、前記VH領域が、配列番号13の前記VH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、前記VL領域が、配列番号14の前記VL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第2の結合アームと、を含む二重特異性抗体を前記対象に投与することを含み、
前記二重特異性抗体が、28日間のサイクルで12~60mgの範囲の用量で投与される、
方法。
【請求項2】
前記二重特異性抗体を24mgの用量で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二重特異性抗体を48mgの用量で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記二重特異性抗体を週に1回投与する(毎週の投与)、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記毎週の投与が、2.5回の28日サイクルにわたって行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記毎週の投与の後、前記二重特異性抗体を2週間に1回投与する(隔週の投与)、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記隔週の投与が6回の28日サイクルで行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記隔週の投与の後、前記二重特異性抗体を4週間に1回投与する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
12~60mgの前記第1の毎週用量を投与する前に、前記二重特異性抗体のプライミング用量を前記28日サイクルのサイクル1で投与する、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記プライミング用量が、12~60mgの前記第1の毎週用量を投与する2週間前に投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記プライミング用量が0.05~0.35mgの範囲である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記プライミング用量が0.16mg又は約0.16mgである、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記プライミング用量を投与した後、12~60mgの前記第1の毎週用量を投与する前に、前記二重特異性抗体の中間用量を投与する、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記プライミング用量を1日目に投与し、前記中間用量を8日目に投与した後、サイクル1の15及び22日目に12~60mgの前記第1の毎週用量を投与する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記中間用量が0.6~1.2mgの範囲である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記中間用量が0.8mg又は約0.8mgである、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記二重特異性抗体を28日間のサイクルで投与し、
a)サイクル1では、1日目にプライミング用量を投与し、8日目に中間用量を投与し、15及び22日目に12~60mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に12~60mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に12~60mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に12~60mgの全用量を投与する、
請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記全用量が24mg又は約24mgである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記全用量が48mg又は約48mgである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記二重特異性抗体が皮下投与される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記CLLが再発性及び/又は難治性CLLである、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象がBTK阻害剤に不耐性である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が抗新生物療法の少なくとも2つの先行ラインを受けたことがある、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも2つの事前の抗新生物療法のうちの少なくとも1つがBTK阻害剤による治療を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記CLLがBTK阻害剤に対して難治性である、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記CLLが、BTK阻害剤による治療中に再発した、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記対象が、前記2つの事前の抗新生物療法を受けた後に難治性及び/又は再発性CLLを有する、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
(i)前記第1の抗原結合領域が、それぞれ配列番号1、2及び3に示されるアミノ酸配列を含むVHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3と、それぞれ配列番号4、配列GTN及び配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むVLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3とを含み、
(ii)前記第2の抗原結合領域が、それぞれ配列番号8、9及び10に示されるアミノ酸配列を含むVHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3と、それぞれ配列番号11、配列DAS、及び配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むVLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3とを含む、
請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
(i)前記第1の抗原結合領域が、配列番号6のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号7のアミノ酸配列を含む前記VL領域とを含み、
(ii)前記第2の抗原結合領域が、配列番号13のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号14のアミノ酸配列を含む前記VL領域とを含む、
請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記二重特異性抗体の前記第1の結合アームがヒト化抗体に由来し、好ましくは完全長IgG1、λ(ラムダ)抗体に由来する、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記二重特異性抗体の前記第1の結合アームが、配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むλ軽鎖定常領域を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記二重特異性抗体の前記第2の結合アームがヒト抗体に由来し、好ましくは完全長IgG1、κ(カッパ)抗体に由来する、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記第2の結合アームが、配列番号23に示されるアミノ酸配列を含むκ軽鎖定常領域を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記二重特異性抗体が、ヒトIgG1定常領域を有する完全長抗体である、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記二重特異性抗体が不活性Fc領域を含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記二重特異性抗体が第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、前記第1の重鎖及び前記第2の重鎖の両方において、配列番号15の前記ヒトIgG1重鎖定常領域のL234、L235及びD265位に対応する位置のアミノ酸がそれぞれF、E及びAである、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記二重特異性抗体が第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、前記第1の重鎖において、配列番号15の前記ヒトIgG1重鎖定常領域のF405に対応する位置のアミノ酸がLであり、前記第2の重鎖において、配列番号15の前記ヒトIgG1重鎖定常領域のK409に対応する位置のアミノ酸がRであるか、又はその逆である、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記二重特異性抗体が第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、
(i)前記第1及び第2の重鎖の両方において、配列番号15の前記ヒトIgG1重鎖定常領域のL234、L235及びD265位に対応する位置のアミノ酸がそれぞれF、E及びAであり、
(ii)前記第1の重鎖において、配列番号15の前記ヒトIgG1重鎖定常領域のF405に対応する位置のアミノ酸がLであり、前記第2の重鎖において、配列番号15の前記ヒトIgG1重鎖定常領域のK409に対応する位置のアミノ酸がRであるか、又はその逆である、
請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記二重特異性抗体が、配列番号19及び20のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記二重特異性抗体が、それぞれ配列番号24及び25に示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び軽鎖と、それぞれ配列番号26及び27に示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び軽鎖とを含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記二重特異性抗体が、それぞれ配列番号24及び25のアミノ酸配列からなる重鎖及び軽鎖と、それぞれ配列番号26及び27のアミノ酸配列からなる重鎖及び軽鎖とを含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記二重特異性抗体がエプコリタマブ又はそのバイオシミラーである、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD3及びCD20の両方を標的とする二重特異性抗体、並びに慢性リンパ性白血病(CLL)の治療におけるそのような抗体の使用に関する。有利な治療レジメンも提供される。
【背景技術】
【0002】
慢性リンパ性白血病(CLL)は、骨髄における未成熟リンパ球の制御されない増殖に由来し、血液中の循環腫瘍細胞を伴うB細胞悪性腫瘍である。CLLは、骨髄、血液、並びにリンパ節及び脾臓等のリンパ器官におけるクローンCD5+CD19+CD20+CD23+B細胞の蓄積を特徴とする(Zenz et al.,Nat Rev Cancer 2010;10:37-50)。CLLは、増殖の遅い癌であることが多い。CLLは主に高齢者の疾患であり、診断時の年齢の中央値は70歳である。CLLは、西洋諸国の成人において最も一般的な白血病であり、米国における全白血病の約25%~30%を占め、推定20,720例の新規症例及び3,930例の死亡がある(Siegel et al.,CA Cancer J Clin 2019;69:7-34)。世界中で、年間約105,000例の症例があり、そのうち35,000例が死亡している(Global Burden of Disease Cancer,Fitzmaurice et al.,JAMA Oncol 2018;4:1553-68)。
【0003】
対照的に、リンパ腫は、骨髄の外側の器官におけるリンパ球の制御されない増殖に由来する。いくつかのリンパ腫ではあるが、骨髄は腫瘍細胞浸潤も有し得る。リンパ腫細胞は通常、末梢血には現れない。CD20の発現は、CLLでは、正常な末梢B細胞又は他の悪性NHLよりも低いことが観察された(Almasri et al.,Am J Hematol 1992:40:259-63;Pedersen et al.,Blood 2002;99:1314-9;Prevodnik et al.,Diagn Pathol 2011;6:33;Olejniczak et al.,Immunol Invest 2006;35:93-114;Ginaldi et al.,J Clin Pathol 1998;51:364-9;D’Arena et al.,Am J Hematol 2000;64:275-81)。
【0004】
新たに診断されたCLLを有するほとんどの患者は無症候性疾患を呈し、治療なしで監視することができる。症候性又は高リスク疾患の場合、標準治療には、抗CD20モノクローナル抗体(すなわち、リツキシマブ又はオビヌツズマブ)と組み合わせた細胞傷害性化学療法(すなわち、フルダラビン、シクロホスファミド、ベンダムスチン又はクロラムブシル)が含まれる(Goede et al.,N Engl J Med 2014;370-1101-10;Hallek et al.,Lancet 2010;376:1164-74)。CLLの治療は、これらの化学免疫療法によって革命的になってきたが、低毒性プロファイルを有する新規な薬剤は、これらの高毒性で集中的なレジメンの代替として特に重要である。
【0005】
近年、化学療法を用いないレジメン、例えばイブルチニブ+リツキシマブ(Seymour et al.,N Engl J Med 2018;378:1107-20)、ベネトクラックス+リツキシマブ(Seymour et al.,N Engl J Med 2018;378:1107-20)、ベネトクラックス+オビヌツズマブ(Fisher et al.N Engl J Med;2019;380(23):2225-36))、イブルチニブ+ベネトクラックス(Niemann et al.,Blood 2019;134:4292;Tam et al.,2019 ASH Annual Meeting;December 7 to 10,2019;Orlando,FL.Abstract 35.bit.ly/2RvawBV)、及びアカラブルチ二ブ単独又はオビヌツズマブと組み合わせたもの(Khan et al.,Future Oncol;2019;15(6):579-89))は、新たに診断されたCLL及び再発/難治性CLLの両方において有望な結果を示している。これらの利点にもかかわらず、CLLは、幹細胞移植を伴う積極的治療以外では依然として不治の疾患である。特に、イブルチニブとベネトクラックスとの組み合わせから早期に再発した患者、又は標的療法に不耐性であった患者は、重大な満たされていない医学的必要性を提起する。全体として、CLL患者、特にイブルチニブ又はベネトキサックス治療中に早期に再発した患者、又は標的療法に不耐性である患者は、非常に限られた選択肢しかない。
【0006】
CLL患者、例えば、現在利用可能な治療後に再発したか、又は現在利用可能な治療に不耐性である患者の治療選択肢に関して満たされていないニーズが残っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Zenz et al.,Nat Rev Cancer 2010;10:37-50
【非特許文献2】Siegel et al.,CA Cancer J Clin 2019;69:7-34
【非特許文献3】Global Burden of Disease Cancer,Fitzmaurice et al.,JAMA Oncol 2018;4:1553-68
【非特許文献4】Almasri et al.,Am J Hematol 1992:40:259-63
【非特許文献5】Pedersen et al.,Blood 2002;99:1314-9
【非特許文献6】Prevodnik et al.,Diagn Pathol 2011;6:33
【非特許文献7】Olejniczak et al.,Immunol Invest 2006;35:93-114
【非特許文献8】Ginaldi et al.,J Clin Pathol 1998;51:364-9
【非特許文献9】D’Arena et al.,Am J Hematol 2000;64:275-81
【非特許文献10】Goede et al.,N Engl J Med 2014;370-1101-10
【非特許文献11】Hallek et al.,Lancet 2010;376:1164-74
【非特許文献12】Burger et al.,Ann Intern Med 2015;163:461-4
【非特許文献13】Seymour et al.,N Engl J Med 2018;378:1107-20
【非特許文献14】Fisher et al.N Engl J Med;2019;380(23):2225-36)
【非特許文献15】Niemann et al.,Blood 2019;134:4292
【非特許文献16】Tam et al.,2019 ASH Annual Meeting;December 7 to 10,2019;Orlando,FL.Abstract 35.bit.ly/2RvawBV
【非特許文献17】Khan et al.,Future Oncol;2019;15(6):579-89)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
CD3及びCD20に結合する二重特異性抗体、特に有利な臨床治療レジメンを投与することによって、CLLを有するヒト対象を治療する方法が本明細書で提供される。
【0009】
一態様では、CLL、例えば、再発性及び/又は難治性CLLをヒト対象において治療する方法であって、有効量の
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、可変重鎖(VH)領域及び可変軽鎖(VL)領域を含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、VH領域は、配列番号6のVH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、VL領域は、配列番号7のVL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、VH領域及びVL領域を含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、VH領域は、配列番号13のVH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、VL領域は、配列番号14のVL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第2の結合アームと、を含む二重特異性抗体(例えば、エプコリタマブ)を対象に(例えば、皮下)投与することを含み、
二重特異性抗体が、28日間のサイクルで12~60mgの範囲の用量で投与される、方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、12mg、24mg、48mg又は60mgの用量(又はおよその用量)で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、12mgの用量(又はおよその用量)で投与される。
【0010】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、24mgの用量(又はおよその用量)で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、48mgの用量(又はおよその用量)で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、60mgの用量(又はおよその用量)で投与される。
【0011】
いくつかの実施形態では、上記二重特異性抗体は、1週間に1回、例えば、2.5回の28日間のサイクル(すなわち、サイクル1の15及び22日目、並びにサイクル2~3の1、8、15、及び22日目)で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、毎週の投与の後、2週間ごとに1回、例えば、28日間のサイクルで6回投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、隔週の投与後、4週間ごとに1回投与される。更なる実施形態では、二重特異性抗体のプライミング用量(例えば、0.05~0.35mg、例えば、0.16mg又は約0.16mg)を、24mg又は48mgの毎週用量を投与する2週間前に投与する。更なる実施形態では、プライミング用量は、中間用量の1週間前に投与され、中間用量は、24mg又は48mgの第1の毎週用量の1週間前に投与される。
【0012】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、28日間のサイクルで投与され、
a)サイクル1では、1日目にプライミング用量(例えば、0.05~0.35mg、例えば、0.16mg又は約0.16mg)を投与し、8日目に中間用量(例えば、0.6~1.2mg、例えば、0.8mg又は約0.8mg)を投与し、15及び22日目に12~60mg(例えば、12mg、24mg、48mg又は60mg)の全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に12~60mg(例えば、12mg、24mg、48mg又は60mg)の全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に12~60mg(例えば、12mg、24mg、48mg又は60mg)の全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に12~60mg(例えば、12mg、24mg、48mg又は60mg)の全用量を投与する。
【0013】
いくつかの実施形態では、対象は、BTK阻害剤に不耐性である。いくつかの実施形態では、対象は、抗新生物療法の少なくとも2つの先行ラインを受けたことがあり、例えば、抗新生物療法の2つの先行ラインのうちの少なくとも1つは、BTK阻害剤(例えば、イブルチニブ等)による治療を含む。いくつかの実施形態では、対象のCLLは、BTK阻害剤(例えば、イブルチニブ又はアカラブルチ二ブ)に対して難治性である。更なる実施形態では、対象のCLLは、BTK阻害剤(イブルチニブ)による治療中に再発した。
【0014】
更なる実施形態では、対象は、2つの事前の抗新生物療法を受けた後に難治性及び/又は再発性CLLを有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、対象は、サイトカイン放出症候群(CRS)の予防法で治療される。いくつかの実施形態では、予防法は、例えば、二重特異性抗体と同日にコルチコステロイド(例えば、経口用量を含む、例えば100mg又はそれと等価な用量のプレドニゾロン)を投与することを含む。いくつかの実施形態では、コルチコステロイドは、二重特異性抗体を投与した後の2日目、3日目及び4日目に更に投与される。
【0016】
いくつかの実施形態では、対象には、注射に対する反応を低下させるために、抗ヒスタミン薬(例えば、ジフェンヒドラミン、静脈内又は経口、例えば、50mgそれと等価な用量)及び/又は解熱薬(例えば、560~1000mgの用量のアセトアミノフェン)等の前投薬が投与される。いくつかの実施形態では、前投薬は、二重特異性抗体と同じ日に投与される。
【0017】
いくつかの実施形態では、予防法及び前投薬はサイクル1の間に投与される。いくつかの実施形態では、予防法は、対象がサイクル1における二重特異性抗体の最後の投与後にグレード1を超えるCRSを経験するサイクル2の間に投与される。いくつかの実施形態では、予防法は、前のサイクルの二重特異性抗体の最後の投与において対象がグレード1を超えるCRSを経験するとき、後続のサイクルにおいて継続される。更なる実施形態では、前投薬はサイクル2の間に投与される。更なる実施形態では、前投薬は後続のサイクル中に投与される。
【0018】
いくつかの実施形態では、対象がグレード1のCRSを発症する場合、対象は解熱剤及び水分補給で治療される。いくつかの実施形態では、対象がグレード2のCRSを発症する場合、対象はトシリズマブ、及び/又はデキサメタゾン若しくはそれと等価なメチルプレドニゾロンで治療される。いくつかの実施形態では、対象がグレード3のCRSを発症する場合、対象はトシリズマブ及びデキサメタゾンで治療される(例えば、10~20mgの用量又はそれと等価なメチルプレドニゾロンで、例えば、6時間ごとに1回投与される)。更なる実施形態では、対象がグレード4のCRSを発症する場合、対象はトシリズマブ及びメチルプレドニゾロン(例えば、1000mg/日の用量で)で治療される。更なる実施形態では、対象がトシリズマブに応答しない場合、トシリズマブはシルツキシマブに切り替えられる。
【0019】
いくつかの実施形態では、対象には、腫瘍崩壊症候群(TLS)の予防法が投与される。いくつかの実施形態では、TLSの予防法は、二重特異性抗体の投与前に1つ以上の尿酸還元剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、アロプリノール及びラスブリカーゼが尿酸還元剤として投与される。更なる実施形態では、アロプリノールは、二重特異性抗体の投与の少なくとも72時間前に投与される。更なる実施形態では、ラスブリカーゼは、アロプリノールを投与した後、かつ二重特異性抗体を投与する前に投与される。
【0020】
いくつかの実施形態では、対象がTLSの徴候を示す場合、ラスブリカーゼ及び/又はアロプリノール等の支持療法を使用することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法で治療される対象は、例えばiwCLL応答基準によって定義されるような完全奏効、部分奏効、又は安定疾患を達成する。
【0022】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体の第1の抗原結合領域は、それぞれ配列番号1、2及び3に示されるアミノ酸配列を含むVHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3と、それぞれ配列番号4、配列GTN及び配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むVLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3とを含み、第2の抗原結合領域は、それぞれ配列番号8、9及び10に示されるアミノ酸配列を含むVHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3と、それぞれ配列番号11、配列DAS及び配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むVLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3とを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体の第1の抗原結合領域は、配列番号6のアミノ酸配列を含むVH領域と配列番号7のアミノ酸配列を含むVL領域とを含み、第2の抗原結合領域は、配列番号13のアミノ酸配列を含むVH領域と配列番号14のアミノ酸配列を含むVL領域とを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体の第1の結合アームは、ヒト化抗体、好ましくは完全長IgG1、λ(ラムダ)抗体に由来する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体の第2の結合アームはヒト抗体に由来し、好ましくは完全長IgG1、κ(カッパ)抗体に由来する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、ヒトIgG1定常領域を有する完全長抗体である。
【0025】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、不活性Fc領域、例えば、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のL234、L235及びD265位に対応する位置のアミノ酸がそれぞれF、E及びAであるFc領域を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、二重特異性抗体の形成を促進する置換を含み、例えば、第1の重鎖において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のF405に対応する位置のアミノ酸はLであり、第2の重鎖において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のK409に対応する位置のアミノ酸はRであり、又はその逆である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、不活性Fc領域(例えば、L234、L235及びD265における置換(例えば、L234F、L235E、及びD265A))及び二重特異性抗体形成を促進する置換(例えば、F405L及びK409R)の両方を有する。更なる実施形態では、二重特異性抗体は、配列番号19及び20のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、それぞれ配列番号24及び25に示されるアミノ酸配列を含む(又はそれらからなる)第1の重鎖及び第1の軽鎖と、それぞれ配列番号26及び27に示されるアミノ酸配列を含む(又はそれらからなる)第2の重鎖及び第2の軽鎖とを含む。いくつかの実施形態では、上記二重特異性抗体は、エプコリタマブ又はそのバイオシミラーである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A】CLL患者(左パネル)及び健常ドナー(右パネル)から得られたPBMCにおけるCD4+T細胞活性化に対するエプコリタマブの効果を示す一連のグラフである。示されているデータは、試験した3人のドナーのうちの1人の代表的なドナーからの二連のウェルのパーセンテージ±SDである。左側のパネルは、CLL患者由来のPBMC(CFSE陰性)についての結果を示し、右側のパネルは健常ドナーPBMC(CFSE陽性)についての結果を示す。黒丸はエプコリタマブを表し、白抜きの四角はCD3特異的アーム及び対照(非結合)アームを含む対照二重特異性抗体を表し、白抜きの三角はCD20特異的アーム及び対照(非結合)アームを含む対照二重特異性抗体を表す。
図1B】CLL患者(左パネル)及び健常ドナー(右パネル)から得られたPBMCにおけるCD8+T細胞活性化に対するエプコリタマブの効果を示す一連のグラフである。示されているデータは、試験した3人のドナーのうちの1人の代表的なドナーからの二連のウェルのパーセンテージ±SDである。左側のパネルは、CLL患者由来のPBMC(CFSE陰性)についての結果を示し、右側のパネルは健常ドナーPBMC(CFSE陽性)についての結果を示す。黒丸はエプコリタマブを表し、白抜きの四角はCD3特異的アーム及び対照(非結合)アームを含む対照二重特異性抗体を表し、白抜きの三角はCD20特異的アーム及び対照(非結合)アームを含む対照二重特異性抗体を表す。
図1C】CLL患者(左パネル)及び健常ドナー(右パネル)から得られたPBMCにおけるB細胞生存率に対するエプコリタマブの効果を示す一連のグラフである。示されているデータは、試験した3人のドナーのうちの1人の代表的なドナーからの二連のウェルのパーセンテージ±SDである。左側のパネルは、CLL患者由来のPBMC(CFSE陰性)についての結果を示し、右側のパネルは健常ドナーPBMC(CFSE陽性)についての結果を示す。黒丸はエプコリタマブを表し、白抜きの四角はCD3特異的アーム及び対照(非結合)アームを含む対照二重特異性抗体を表し、白抜きの三角はCD20特異的アーム及び対照(非結合)アームを含む対照二重特異性抗体を表す。
図2】臨床試験設計の概略図である。*追加の用量レベル(より高い又はより低い)を調べることができる。MTD:最大耐用量、RP2D:R/R CLL対象における推奨第2相用量。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義
本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン」という用語は、2対のポリペプチド鎖、1対の軽(L)低分子量鎖及び1対の重(H)鎖からなる構造的に関連する糖タンパク質のクラスを指し、4つ全てがジスルフィド結合によって相互接続されている。免疫グロブリンの構造は十分に特徴付けられている(例えば、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989)を参照)。簡潔には、各重鎖は、典型的には、重鎖可変領域(本明細書ではVH又はVと略す)及び重鎖定常領域(本明細書ではCH又はCと略す)からなる。重鎖定常領域は、典型的には、3つのドメイン、CH1、CH2、及びCH3から構成される。ヒンジ領域は、重鎖のCH1ドメインとCH2ドメインとの間の領域であり、非常に柔軟である。ヒンジ領域内のジスルフィド結合は、IgG分子内の2つの重鎖間の相互作用の一部である。各軽鎖は、典型的には、軽鎖可変領域(本明細書ではVL又はVと略す)及び軽鎖定常領域(本明細書ではCL又はCと略す)から構成される。軽鎖定常領域は、典型的には、1つのドメインCLで構成される。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変領域(又は構造的に定義されたループの配列及び/又は形態で超可変であり得る超可変領域)に更に細分することができる。各VH及びVLは、典型的には、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序で配置された3つのCDR及び4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(Chothia and Lesk J Mol Biol 1987;196:90117を参照)。特に明記しない限り、又は文脈と矛盾しない限り、本明細書のCDR配列は、IMGT規則(Brochet X.,Nucl Acids Res 2008;36:W503-508;Lefranc MP.,Nucl Acids Res 1999;27:209-12;www.imgt.org/)に従って同定される。特に明記しない限り、又は文脈と矛盾しない限り、定常領域内のアミノ酸位置への言及は、EUナンバリング(Edelman et al.,PNAS.1969;63:78-85;Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition.1991 NIH Publication No.91-3242)に従う。例えば、配列番号15は、IgG1重鎖定常領域の、EUナンバリングで118~447位のアミノ酸を示す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「位置...に対応するアミノ酸」という用語は、ヒトIgG1重鎖のアミノ酸位置の番号を指す。他の免疫グロブリン中の対応するアミノ酸位置は、ヒトIgG1とのアラインメントによって見出され得る。したがって、別の配列中のアミノ酸又はセグメント「に対応する」1つの配列中のアミノ酸又はセグメントは、典型的にはデフォルト設定で、ALIGN、ClustalW又は同様の標準的な配列アラインメントプログラムを使用して他のアミノ酸又はセグメントとアライメントするものであり、ヒトIgG1重鎖に対して少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の同一性を有する。配列中の配列又はセグメントを整列させ、それによって本発明によるアミノ酸位置に対する配列中の対応する位置を決定することは、当業者の能力の範囲内である。
【0030】
本発明に関連して本明細書で使用される場合、「抗体」(Ab)という用語は、典型的な生理学的条件下で、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間以上、約48時間以上、約3、4、5、6、7日間以上等、又は任意の他の関連する機能的に定義された期間(例えば、抗原への抗体結合に関連する生理学的応答を誘導、促進、増強及び/又は調節するのに十分な時間、及び/又は抗体がエフェクター活性を動員するのに十分な時間)の半減期で抗原に特異的に結合する能力を有する免疫グロブリン分子を指す。免疫グロブリン分子の重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体という用語は、特に明記しない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、抗体様ポリペプチド、キメラ抗体及びヒト化抗体も包含する。生成された抗体は、任意のアイソタイプを有し得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、「抗体フラグメント」又は「抗原結合フラグメント」という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持し、酵素切断、ペプチド合成、及び組換え技術等の任意の公知の技術によって生成することができる免疫グロブリン分子のフラグメントを指す。抗体フラグメントの例としては、(i)Fab’若しくはFabフラグメント、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価フラグメント、又は国際公開第2007059782号(Genmab)に記載されている一価抗体;(ii)F(ab’)フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VHドメイン及びCH1ドメインから本質的になるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインから本質的になるFvフラグメント、(v)VHドメインから本質的になり、ドメイン抗体(Holt et al;Trends Biotechnol 2003;21:484-90)とも呼ばれるdAbフラグメント(Ward et al.,Nature 1989;341:54446);(vi)Camelid又はナノボディ(Revets et al;Expert Opin Biol Ther 2005;5:111-24)及び(vii)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VL及びVHは別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え法を使用して、VL及びVH領域が対合して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖としてそれらを作製することを可能にする合成リンカーによって連結され得る(一本鎖抗体又は一本鎖Fv(scFv)として公知であり、例えばBird et al.,Science 1988;242:42326 and Huston et al.,PNAS 1988;85:587983を参照)。そのような一本鎖抗体は、特に明記されない限り、又は文脈によって明確に示されない限り、抗体フラグメントという用語に包含される。
【0032】
本明細書で使用される場合、「抗体結合領域」又は「抗原結合領域」という用語は、抗原と相互作用し、VH領域とVL領域の両方を含む領域を指す。抗体という用語は、本明細書で使用される場合、単一特異性抗体だけでなく、複数、例えば2つ以上、例えば3つ以上の異なる抗原結合領域を含む多重特異性抗体も指す。抗原結合領域という用語は、特に明記しない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、抗原結合フラグメントであり、すなわち抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体のフラグメントを含む。
【0033】
本明細書で使用される場合、「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE又はIgM)のことを指す。特定のアイソタイプ、例えばIgG1が言及される場合、この用語は、特定のアイソタイプ配列、例えば特定のIgG1配列に限定されないが、抗体が他のアイソタイプよりもそのアイソタイプ、例えばIgG1に配列が近いことを示すために使用される。したがって、例えば、IgG1抗体は、定常領域の変異を含み得る天然に存在するIgG1抗体の配列変異体であり得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「二重特異性抗体」又は「bs」又は「bsAb」という用語は、異なる抗体配列によって定義される2つの異なる抗原結合領域を有する抗体を指す。二重特異性抗体は、任意の形式のものであり得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、「半分子」、「Fabアーム」、及び「アーム」という用語は、1つの重鎖-軽鎖対を指す。
【0036】
二重特異性抗体が、第1の親抗体「に由来する」半分子抗体及び第2の親抗体「に由来する」半分子抗体を含むと記載される場合、「に由来する」という用語は、任意の公知の方法によって、当該第1及び第2の親抗体のそれぞれからの当該半分子を、得られた二重特異性抗体に組換えることによって、二重特異性抗体が生成されたことを示す。これに関連して、「組換え(recombining)」は、どのような特定の組換え方法によっても限定されることが意図されず、したがって、例えば、半分子交換(「制御されたFabアーム交換」としても知られる)による組換え、同様にまた、核酸レベルでの、及び/又は同じ細胞における2つの半分子の共発現による組換えを含めて、本明細書に記載される二重特異性抗体を作製するための方法の全てが含まれる。
【0037】
抗体に関連して本明細書で使用される場合、「完全長」という用語は、抗体がフラグメントではないが、天然のそのアイソタイプに通常見られる特定のアイソタイプのドメイン、例えばIgG1抗体のVH、CH1、CH2、CH3、ヒンジ、VL及びCLドメインの全てを含むことを示す。全長抗体を操作することができる。「完全長」抗体の例は、エプコリタマブである。
【0038】
本明細書で使用される場合、「Fc領域」という用語は、免疫グロブリンの2つの重鎖のFc配列からなる抗体領域を指し、当該Fc配列は、少なくともヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む。
【0039】
本明細書で使用される場合、「第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用」という用語は、第1のCH3/第2のCH3ヘテロ二量体タンパク質における第1のCH3領域と第2のCH3領域との間の相互作用を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「第1及び第2のCH3領域のホモ二量体相互作用」という用語は、第1のCH3/第1のCH3ホモ二量体タンパク質中の第1のCH3領域と別の第1のCH3領域との間の相互作用、及び第2のCH3/第2のCH3ホモ二量体タンパク質における第2のCH3領域と別の第2のCH3領域との間の相互作用を指す。
【0041】
所定の抗原への抗体の結合に関連して本明細書で使用される場合、「結合」という用語は、典型的には、リガンドとして抗体及び被検物質として抗原を使用するOctet HTX機器における例えばバイオレイヤー干渉法(BLI)技術によって決定される場合、約10-6M以下、例えば10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下、約10-10M以下、又は約10-11M以下のKに対応する親和性で結合することを指し、抗体は、所定の抗原又は所定の抗原と密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合のKよりも少なくとも10倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例えば少なくとも1,000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例えば少なくとも100,000万倍低いKに対応する親和性で所定の抗原に結合する。結合のKがより低い量は抗体のKに依存するため、抗体のKが非常に低い場合、抗原への結合のKが非特異的抗原への結合のKよりも低い量は、少なくとも10,000倍であり得る(すなわち、抗体は高度に特異的である)。
【0042】
本明細書で使用される場合、「K」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。本明細書で使用される場合、親和性とKは逆の関係にあり、すなわち、より高い親和性はより低いKを指すことを意図し、より低い親和性はより高いKを指すことを意図する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「単離抗体」という用語は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す。好ましい実施形態では、CD20及びCD3に特異的に結合する単離された二重特異性抗体は更に、CD20又はCD3に特異的に結合する単一特異性抗体を実質的に含まない。
【0044】
本明細書で使用される場合、「CD3」という用語は、T細胞共受容体タンパク質複合体の一部であり、4つの異なる鎖で構成されるヒト分化抗原群3タンパク質を指す。CD3は他の種にも見られるため、「CD3」という用語は、文脈と矛盾しない限り、ヒトCD3に限定されない。哺乳動物では、複合体は、CD3γ(ガンマ)鎖(ヒトCD3γ鎖UniProtKB/Swiss-Prot No P09693、又はカニクイザルCD3γ UniProtKB/Swiss-Prot No Q95LI7)、CD3δ(デルタ)鎖(ヒトCD3δ UniProtKB/Swiss-Prot No P04234、又はカニクイザルCD3δ UniProtKB/Swiss-Prot No Q95LI8)、2つのCD3ε(イプシロン)鎖(ヒト CD3ε UniProtKB/Swiss-Prot No P07766、配列番号28);カニクイザルCD3ε UniProtKB/Swiss-Prot No Q95LI5;又はアカゲザルCD3ε UniProtKB/Swiss-Prot No G7NCB9)、及びCD3ζ鎖(ゼータ)鎖(ヒトCD3ζ UniProtKB/Swiss-Prot No P20963、カニクイザルCD3ζ UniProtKB/Swiss-Prot No Q09TK0)を含む。これらの鎖は、T細胞受容体(TCR)として知られる分子と会合し、Tリンパ球において活性化シグナルを生成する。TCR及びCD3分子は共にTCR複合体を含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、「CD3抗体」又は「抗CD3抗体」という用語は、抗原CD3、特にヒトCD3ε(イプシロン)に特異的に結合する抗体を指す。
【0046】
「ヒトCD20」又は「CD20」という用語は、ヒトCD20(UniProtKB/Swiss-Prot No P11836、配列番号29)を指し、腫瘍細胞を含む細胞によって天然に発現される、又はCD20遺伝子若しくはcDNAでトランスフェクトされた細胞上で発現されるCD20の任意の変異体、アイソフォーム、及び種ホモログを含む。種ホモログには、アカゲザルCD20(アカゲザル(macaca mulatta);UniProtKB/Swiss-Prot No H9YXP 1)及びカニクイザルCD20(カニクイザル;UniProtKB No G7PQ03)が含まれる。
【0047】
本明細書で使用される場合、「CD20抗体」又は「抗CD20抗体」という用語は、抗原CD20、特にヒトCD20に特異的に結合する抗体を指す。
【0048】
本明細書で使用される場合、「CD3xCD20抗体」、「抗CD3xCD20抗体」、「CD20xCD3抗体」又は「抗CD20xCD3抗体」という用語は、2つの異なる抗原結合領域を含む二重特異性抗体を指し、その1つは抗原CD20に特異的に結合し、その1つはCD3に特異的に結合する。
【0049】
本明細書で使用される場合、「DuoBody-CD3xCD20」という用語は、それぞれ配列番号24及び配列番号25で定義される第1の重鎖及び軽鎖対を含み、配列番号26及び配列番号27で定義される第2の重鎖及び軽鎖対を含むIgG1二重特異性CD3xCD20抗体を指す。第1の重鎖及び軽鎖の対は、ヒトCD3ε(イプシロン)に結合する領域を含み、第2の重鎖及び軽鎖の対は、ヒトCD20に結合する領域を含む。
【0050】
第1の結合領域は、配列番号6及び7によって定義されるVH及びVL配列を含み、第2の結合領域は、配列番号13及び14によって定義されるVH及びVL配列を含む。この二重特異性抗体は、国際公開第2016/110576号に記載されているように調製することができる。
【0051】
本明細書で同様に提供される実施例の抗体の重鎖、軽鎖、VL領域、VH領域、又は1つ以上のCDRの機能的変異体を含む抗体。抗体との関連で使用される重鎖、軽鎖、VL、VH、又はCDRの機能的変異体は、依然として、抗体が、CD20及び/又はCD3の特定のエピトープに対する親和性及び/又は特異性/選択性、Fc不活性、並びに半減期、Tmax、Cmax等のPKパラメータを含む、「参照」及び/又は「親」抗体の機能的特徴の少なくともかなりの割合(少なくとも約90%、95%以上)を保持することを可能にする。そのような機能的変異体は、典型的には、親抗体と有意な配列同一性を保持し、及び/又は実質的に同様の長さの重鎖及び軽鎖を有する。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一の位置の数(すなわち、相同性%=同一位置の数/位置の総数×100)の関数である。2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の同一性パーセントは、例えば、E.Meyers and W.Miller,Comput.Appl.Biosci 4,11-17(1988)のアルゴリズムを使用して決定され得、PAM120重量残基表、ギャップ長ペナルティ12及びギャップペナルティ4を使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれた。さらに、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48,444-453(1970)のアルゴリズムを用いて決定され得る。例示的な変異体には、主に保存的置換によって親抗体配列の重鎖及び/又は軽鎖、VH及び/又はVL、及び/又はCDR領域とは異なるものが含まれ、例えば、変異体における置換のうちの10個、例えば9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個又は1個は、保存的アミノ酸残基置換であり得る。
【0052】
保存的置換は、以下の表に反映されるアミノ酸のクラス内の置換によって定義され得る。
【表1】
【0053】
別段の指示がない限り、以下の命名法が突然変異を記載するために使用される:i)所与の位置におけるアミノ酸の置換は、例えば、K409Rと書かれ、これは、アルギニンによる位置409におけるリジンの置換を意味し、ii)具体的な変異体については、任意のアミノ酸残基を示すためのコードXaa及びXを含む、具体的なの3文字又は1文字コードが使用される。したがって、409位のアルギニンによるリジンの置換は:K409Rと命名され、409位の任意のアミノ酸残基によるリジンの置換はK409Xと命名される。位置409におけるリジンの欠失の場合、それはK409*によって示される。
【0054】
本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体定常ドメインと、ヒト可変ドメインに対して高レベルの配列相同性を含むように修飾された非ヒト可変ドメインとを含む、遺伝子操作された非ヒト抗体を指す。これは、共に抗原結合部位を形成する6つの非ヒト抗体CDRを、相同ヒトアクセプターフレームワーク領域(FR)にグラフトすることによって達成することができる(国際公開第92/22653号及び欧州特許第0629240号を参照)。親抗体の結合親和性及び結合特異性を完全に再構成するために、親抗体(すなわち、非ヒト抗体)からヒトフレームワーク領域へのフレームワーク残基の置換(復帰突然変異)が必要とされ得る。構造相同性モデリングは、抗体の結合特性に重要なフレームワーク領域内のアミノ酸残基を同定するのに役立ち得る。したがって、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、主に、非ヒトアミノ酸配列に対する1つ以上のアミノ酸復帰変異を含んでもよいヒトフレームワーク領域、及び完全ヒト定常領域を含む。
【0055】
DuoBody-CD3xCD20において本明細書で使用されるCD3アームのVH及びVLは、ヒト化抗原結合領域を表す。必ずしも復帰突然変異ではない更なるアミノ酸修飾を適用して、親和性及び生化学的特性等の好ましい特徴を有するヒト化抗体を得てもよい。
【0056】
本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を指す。ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダム若しくは部位特異的突然変異誘発又はin vivoでの体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含み得る。しかしながら、「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、マウス等の別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むことを意図しない。DuoBody-CD3xCD20で使用されるCD20アームのVH及びVLは、ヒト抗原結合領域を表す。本発明のヒトモノクローナル抗体は、従来のモノクローナル抗体方法論、例えばKohler and Milstein,Nature 256:495(1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を含む様々な技術によって産生され得る。体細胞ハイブリダイゼーション手順が原則として好ましいが、モノクローナル抗体を産生するための他の技術、例えば、Bリンパ球のウイルス若しくは発癌性形質転換又はヒト抗体遺伝子のライブラリーを使用するファージディスプレイ技術を使用することができる。ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製するための適切な動物系は、マウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ産生は、非常によく確立された手順である。融合のために免疫化脾細胞を単離するための免疫化プロトコル及び技術は、当技術分野で公知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)及び融合手順も公知である。したがって、ヒトモノクローナル抗体は、例えば、マウス系又はラット系ではなくヒト免疫系の一部を保有するトランスジェニック又はトランスクロモソーマルマウス又はラットを用いて作製することができる。したがって、一実施形態では、ヒト抗体は、動物免疫グロブリン配列の代わりにヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列を有するトランスジェニック動物(例えば、マウス又はラット)から得られる。そのような実施形態では、抗体は、動物に導入されたヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来するが、最終抗体配列は、内因性動物抗体機構(例えば、Mendez et al.Nat Genet 1997;15:146-56を参照)による体細胞高頻度変異及び親和性成熟によって当該ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列が更に修飾された結果である。DuoBody-CD3xCD20で使用されるCD20アームのVH及びVL領域は、ヒト抗原結合領域を表す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「バイオシミラー」(例えば、承認された参照製品/生物学的薬物)という用語は、(a)臨床的に不活性な成分のわずかな違いにもかかわらず、生物学的製品が参照製品と非常に類似していることを示す分析研究;(b)動物研究(毒性の評定を含む);及び/又は(c)参照製品が承認され、使用が意図され、承認が求められている1つ以上の適切な使用条件における安全性、純度及び効力(例えば、生物学的産物と参照製品との間に、産物の安全性、純度及び効力の点で臨床的に意味のある違いがないこと)を実証するのに十分な1つ以上の臨床試験(免疫原性、及び薬物動態又は薬力学の評定を含む)からのデータに基づいて、参照製品と類似している生物学的産物を指す。いくつかの実施形態では、バイオシミラー生物学的製品及び参照製品は、提案された標識化において処方され、推奨され、又は示唆される(1又は複数の)使用条件について同じ(1又は複数の)作用機序を利用するが、(1又は複数の)作用機序が参照製品について知られている程度にすぎない。いくつかの実施形態では、生物学的製品について提案される標識化において規定され、推奨され、又は示唆された条件又は使用条件は、参照製品について以前に承認されている。いくつかの実施形態では、生物学的製品の投与経路、剤形及び/又は強度は、参照製品のものと同じである。バイオシミラーは、例えば、市販の抗体と同じ一次アミノ酸配列を有する現在知られている抗体であり得るが、異なる細胞型で、又は異なる産生、精製若しくは製剤化方法によって作製され得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、「還元条件」又は「還元環境」という用語は、基質、ここでは抗体のヒンジ領域内のシステイン残基が酸化されるよりも還元される可能性が高い状態又は環境を指す。
【0059】
本明細書で使用される場合、「組換え宿主細胞」(又は単に「宿主細胞」)という用語は、発現ベクター、例えば本明細書に記載の抗体をコードする発現ベクターが導入された細胞を指すことを意図している。組換え宿主細胞としては、例えば、トランスフェクトーマ、例えばCHO、CHO-S、HEK、HEK293、HEK-293F、Expi293F、PER.C6又はNS0細胞、及びリンパ球性細胞が挙げられる。
【0060】
本明細書で使用される場合、「慢性リンパ性白血病」又は「CLL」は、形態学的に成熟しているが免疫学的にあまり成熟していないリンパ球の障害を指し、血液、骨髄、及びリンパ組織におけるこれらの細胞の進行性蓄積によって現れる。CLLは、参照により本明細書に含まれるWHO分類に基づいて診断及び分類することができる(Swerdlow SH,Campo E,Harris NL,et al.WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues(Revised ed.4th).Lyon,France:IARC Press(2017);Swerdlow SH,Campo E,Harris NL,et al.WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues(ed.4th).Lyon,France:IARC Press(2008))。CLLは骨髄中のリンパ球から始まり、最も一般的には50歳を超える人に発生する。これは、最終的にモノクローナルB細胞リンパ球増加症(Uhm,Blood Res 2020;55:S72-82に概説される)をもたらす成熟Bリンパ球のクローン増殖及び蓄積を特徴とする。CLLにおいてモノクローナルB細胞は、CD5、CD19、CD20及びCD23を含む成熟活性化Bリンパ球に特徴的ないくつかのマーカーを発現し、またIgGM、IgGD及びCD79bの発現を低下させる(Chiorazzi et al.,N Engl J Med 2005;352-804-15)。IGHV遺伝子の変異、TP53の変異、del(17p)及びdel(11q)を含むいくつかの予後マーカーがこの疾患について報告されている(Wierda et al.,J Clin Oncol 2011;29:4088-95;Rossi et al.,Blood 2013-121:1403-12;CLL-IPI,Lancet Oncol 2016;17:779-90)。CLLの治療には、例えば、化学療法、BCL2阻害剤、BTK阻害剤、PI3Kδ阻害剤が単独で又は抗CD20抗体と組み合わせて含まれる(Uhm,2020、前出)。
【0061】
「治療」という用語は、CLL等の症状又は病状を緩和、改善、停止又は根絶(治癒)する目的での有効量の本明細書に記載の治療活性抗体の投与を指す。治療は、例えば、表2に示されるように、iwCLL応答基準によって定義されるように、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)又は安定疾患(SD)をもたらし得る。治療は、例えば、疾患進行(PD)又は許容できない毒性まで継続され得る。
【0062】
本明細書で使用される場合、「投与する」又は「投与」という用語は、当業者に公知の様々な方法及び送達系のいずれかを使用した、治療薬を含む組成物(又は製剤)の対象への物理的導入を指す。本明細書に記載される抗体に対する好ましい投与経路には、例えば注射又は注入による静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、脊髄又は他の非経口投与経路が含まれる。「非経口投与」という語句は、本明細書で使用される場合、通常は注射による経腸及び局所投与以外の投与様式を意味し、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内の注射及び注入、並びにin vivo電気穿孔を含むが、これらに限定されない。あるいは、本明細書に記載の治療薬は、非経口経路、例えば局所、表皮又は粘膜投与経路、例えば鼻腔内、経口、膣内、直腸、舌下又は局所的に投与することができる。投与は、例えば、1回、複数回、及び/又は1つ以上の長期間にわたって行うこともできる。本明細書に記載の方法では、二重特異性抗体(例えば、エプコリタマブ)を皮下投与する。サイトカイン放出症候群予防又は腫瘍崩壊症候群(TLS)予防等のために二重特異性抗体と組み合わせて使用される他の薬剤は、静脈内又は経口等の他の経路を介して投与され得る。
【0063】
「有効量」又は「治療有効量」という用語は、所望の治療結果を達成するために、必要な投与量及び期間で有効な量を指す。例えば、皮下投与される12mg~60mgの範囲の二重特異性抗体(例えば、エプコリタマブ)について本明細書で定義される投与量は、そのような「有効量」又は「治療有効量」として定義され得る。抗体の治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別及び体重、並びに個体において所望の応答を誘発する抗体の能力等の因子に応じて変動し得る。治療有効量はまた、抗体又は抗体部分の任意の毒性又は有害作用を治療的に有益な作用が上回る量である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で治療された患者は、ECOGパフォーマンスステータスの改善を示す。薬物の治療有効量又は投与量は、「予防有効量」又は「予防有効投与量」を含み、これは、疾患若しくは障害(例えば、サイトカイン放出症候群)を発症するリスクがあるか、又は疾患の再発に罹患するリスクがある対象に単独で又は別の治療薬と組み合わせて投与された場合に、疾患の発症又は再発を阻害する薬物の任意の量である。
【0064】
本明細書で使用される場合、腫瘍の「成長を阻害する」という用語は、腫瘍の成長の任意の測定可能な減少、例えば少なくとも約10%、例えば少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約99%、又は100%の腫瘍の成長の阻害を含む。
【0065】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒト患者、例えばCLLを有するヒト患者を指す。「対象」及び「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0066】
本明細書で使用される場合、「緩衝液」という用語は、薬学的に許容され得る緩衝液を表す。「緩衝液」という用語は、溶液のpH値を例えば許容範囲内に維持する薬剤を包含し、限定するものではないが、酢酸塩、ヒスチジン、TRIS(登録商標)(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、クエン酸塩、コハク酸塩、グリコール酸塩等を含む。
【0067】
一般に、本明細書で使用される場合、「緩衝液」は、約5~約6、好ましくは約5.5のpH範囲に適したpKa及び緩衝能力を有する。
【0068】
本明細書で使用される場合、「疾患進行」又は「PD」は、CLLの1つ以上の指数が、治療にもかかわらず疾患が進行していることを示す状況を指す。いくつかの実施形態では、疾患進行は、表2に示されるように、iwCLL応答基準に基づいて定義される。
【0069】
本明細書で使用される場合、「界面活性剤」は、表面への薬物吸着及び/又は凝集を防ぐために医薬製剤に典型的に使用される化合物である。さらに、界面活性剤は、2つの液体間又は液体と固体との間の表面張力(又は界面張力)を低下させる。例えば、例示的な界面活性剤は、非常に低い濃度(例えば、5%w/v以下、例えば3%w/v以下、例えば1%w/v以下、例えば0.4%w/v以下、例えば0.1%w/v未満、例えば0.04%w/v)で存在する場合、表面張力を著しく低下させることができる。界面活性剤は両親媒性であり、これは、界面活性剤が通常、親水性基と疎水性基又は親油性基の両方から構成され、したがって水溶液中でミセル又は同様の自己集合構造を形成することができることを意味する。薬学的に使用するための公知の界面活性剤としては、グリセロールモノオレエート、塩化ベンゼトニウム、ドキュセートナトリウム、リン脂質、ポリエチレンアルキルエーテル、ラウリル硫酸ナトリウム及びトリカプリリン(アニオン性界面活性剤);塩化ベンザルコニウム、シトリミド、塩化セチルピリジニウム及びリン脂質(カチオン性界面活性剤);並びにアルファトコフェロール、グリセロールモノオレエート、ミリスチルアルコール、リン脂質、ポロキサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビンタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステアレート(polyoxyethylene sterarates)、ポリオキシルヒドロキシステアレート、ポリオキシルグリセリド、ポリソルベート、例えばポリソルベート20又はポリソルベート80、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールモノラウレート、ソルビタンエステルスクロースパルミテート、スクロースステアレート、トリカプリリン及びTPGS(非イオン性及び両性イオン性界面活性剤)が挙げられる。
【0070】
本明細書で使用される場合、「希釈剤」は、薬学的に許容され得る(ヒトへの投与に安全かつ非毒性)、医薬組成物又は医薬製剤の希釈物の調製に有用なものである(「組成物」及び「製剤」という用語は本明細書では互換的に使用される)。好ましくは、組成物のそのような希釈は、抗体濃度のみを希釈し、緩衝液及び安定剤を希釈しない。したがって、一実施形態では、希釈剤は、本発明の医薬組成物中に存在するのと同じ濃度の緩衝液及び安定剤を含有する。更なる例示的な希釈剤には、滅菌水、静菌性注射用水(BWFI)、好ましくは酢酸緩衝液であるpH緩衝液、滅菌生理食塩水、リンゲル液又はデキストロース溶液が含まれる。一実施形態では、希釈剤は、酢酸緩衝液及びソルビトールを含むか、又はそれらから本質的になる。
【0071】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、指定された値の±10%を指す。
【0072】
CLL治療レジメン
CD3及びCD20に結合する二重特異性抗体(「抗CD3xCD20抗体」)、例えば、ヒトCD3及びヒトCD20に結合する単離された抗CD3xCD20抗体を使用して、ヒト対象においてCLLを治療する方法が本明細書で提供される。本方法はまた、再発性又は難治性CLL(R/R CLL)を治療するために有用である。本明細書に記載のCD3及びCD20の両方に結合する二重特異性抗体でCLLを治療する方法は、ヒト対象においてCLLを治療するための二重特異性抗体の対応する使用も包含することが理解される。
【0073】
したがって、一態様では、CLLをヒト対象において治療する方法であって、有効量の (i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、可変重鎖(VH)領域及び可変軽鎖(VL)領域を含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、VH領域は、配列番号6のVH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、VL領域は、配列番号7のVL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、VH領域及びVL領域を含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、VH領域は、配列番号13のVH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、VL領域は、配列番号14のVL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第2の結合アームと、を含む二重特異性抗体を対象に(例えば、皮下)投与することを含み、
二重特異性抗体が、28日間のサイクルで12~60mgの範囲の用量で投与される、方法が本明細書に提供される。
【0074】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は完全長抗体である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、不活性Fc領域を有する抗体である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、不活性Fc領域を有する完全長抗体である。
【0075】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、12mgの用量(又はおよその用量)で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、24mgの用量(又はおよその用量)で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、48mgの用量(又はおよその用量)で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、60mgの用量(又はおよその用量)で投与される。
【0076】
投与される二重特異性抗体の12~60mgの用量又は任意の他の特定の用量に関して、この量は、完全長抗体を表す二重特異性抗体、例えば実施例のセクションで定義されるエプコリタマブの量を指すと理解される。したがって、24mgの用量の二重特異性抗体を、本明細書に記載される二重特異性抗体の用量の投与として投与することを指し得、その用量は、24mgの用量のエプコリタマブに対応する。当業者は、例えば、使用される抗体の分子量がエプコリタマブ等の全長抗体の分子量と実質的に異なる場合、投与される抗体の量を容易に決定することができる。例えば、抗体の量は、抗体の分子量をエプコリタマブ等の全長抗体の重量で除し、その結果に本明細書に記載の特定の用量を乗じることによって計算することができる。二重特異性抗体(例えば、DuoBody-CD3xCD20の機能的変異体)が、血漿半減期、Fc不活性、及び/又はCD3及びCD20に対する結合特性に関して、すなわちCDR及びエピトープ結合の特徴に関して、DuoBody-CD3xCD20と非常に類似した特徴を有する限り、そのような抗体は、エプコリタマブ等の全長抗体について記載される用量で本明細書に提供される方法における使用に適している。
【0077】
一実施形態では、二重特異性抗CD3xCD20抗体は、12mg~60mgの範囲の用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、12mg又は約12mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、24mg又は約24mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、48mg又は約48mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、60mg又は約60mgの用量で投与される。
【0078】
いくつかの実施形態では、上記二重特異性抗体の用量は、28日サイクルで週に1回 投与される(毎週の投与)。いくつかの実施形態では、毎週の投与は、2.5回の28日間のサイクル(すなわち、10回)で行われる。一実施形態では、用量は2.5回の28日間のサイクル(すなわち、10回;サイクル1の15及び22日目、並びにサイクル2及び3の1、8、15及び22日目)で投与される。いくつかの実施形態では、当該毎週の投与の後、二重特異性抗体を2週間に1回の投与に投与する(隔週の投与)間隔を短縮することができる。いくつかの実施形態では、そのような隔週の投与を、6回の28日間のサイクル(すなわち、12回)で行うことができる。いくつかの実施形態では、当該隔週の投与の後、二重特異性抗体を投与する間隔を4週間に1回に更に短縮することができる。1つの実施形態では、4週間に1回の投与を、長期間にわたって、例えば、28日サイクルの少なくとも1サイクル、少なくとも2サイクル、少なくとも3サイクル、少なくとも4サイクル、少なくとも5サイクル、少なくとも6サイクル、少なくとも7サイクル、少なくとも8サイクル、少なくとも9サイクル、少なくとも10サイクル、少なくとも11サイクル、少なくとも12サイクル、少なくとも13サイクル、少なくとも14サイクル、少なくとも15サイクル、少なくとも16サイクル、少なくとも17サイクル、又は1~20サイクルの間、1~19サイクル、1~18サイクル、1~17サイクル、1~16サイクル、1~15サイクル、1~14サイクル、1~13サイクル、1~12サイクル、1~10サイクル、1~5サイクル、5~20サイクル、5~15サイクル、若しくは5~10サイクルにわたって行うことができる。いくつかの実施形態では、エプコリタマブは、疾患進行(例えば、表2に示すように、iwCLL応答基準によって定義される)又は許容できない毒性まで4週間に1回投与される。一実施形態では、毎週用量をサイクル1~3(以下に記載されるように、プライミング及び中間用量を含み得る)で投与し、隔週用量をサイクル4~9で投与し、4週間に1回の用量をサイクル10以降で投与する。
【0079】
本明細書で言及される用量は、例えば、毎週用量、隔週用量、及び/又は4週間ごとの用量が同じレベルで投与される上記のシナリオでは、全用量又は固定用量とも呼ばれ得ることが理解される。したがって、48mgの用量が選択される場合、好ましくは、各毎週の投与、各隔週の投与、及び4週間ごとの各投与において、48mgの同じ用量が投与される。用量を投与する前に、プライミング又はプライミング及びその後の中間(第2のプライミング)用量を投与することができる。これは、本明細書に記載の二重特異性抗CD3xCD20抗体による治療中に起こり得る副作用であるサイトカイン放出症候群(CRS)のリスク及び重症度を軽減するのに役立ち得るため有利であり得る。そのようなプライミング用量、又はプライミング用量及び中間用量は、固定用量又は全用量と比較してより低い用量である。
【0080】
したがって、いくつかの実施形態では、12~60mgの毎週用量を投与する前に、二重特異性抗体のプライミング用量を投与してもよい。一実施形態では、12~60mgの第1の毎週用量をサイクル1で投与する2週間前に、プライミング用量を投与する。プライミング用量は、20~2000μg(0.02mg~2mg)の範囲、例えば50~1000μg(0.05mg~1mg)の範囲又は70~350μg(0.07mg~0.35mg)の範囲であり得る。プライミング用量は、例えば、80、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、350、400、450、500、600、700、800、900、若しくは1000μg、又は約80、約100、約120、約140、約160、約180、約200、約220、約240、約260、約280、約300、約320、約350、約400、約450、約500、約600、約700、約800、約900、若しくは約1000μgであり得る。好ましい実施形態では、プライミング用量は、50μg~350μg(それぞれ0.05及び0.35mg)の範囲である。より好ましい実施形態では、プライミング用量は、160μg(0.16mg)又は約160μg(約0.16mg)である。最も好ましい実施形態では、プライミング用量は、160μg(0.16mg)又は約160μg(約0.16mg)の完全長二重特異性抗体である。
【0081】
いくつかの実施形態では、プライミング用量を投与した後で、12~60mgの第1の毎週用量を投与する前に、当該二重特異性抗体の中間用量が投与される。一実施形態では、サイクル1の1日目にプライミング用量を投与し、中間用量を、15及び22日目の12mg~60mgの第1の毎週用量の前の8日目に投与し、すなわち、プライミング用量を、中間用量の1週間前に投与し(すなわち、サイクル1の1日目)、中間用量を、12mg~60mgの第1の毎週用量の1週間前に投与する(サイクル1の8日目)。中間用量は、プライミング用量と、固定用量又は全用量との間の範囲から選択される。例えば、中間用量は、200~8000μg(0.2~8mg)の範囲、例えば400~4000μg(0.4~4mg)又は600~2000μg(0.6~2mg)の範囲であり得る。中間用量は、例えば、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、若しくは1600μg、又は約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1000、約1100、約1200、約1300、約1400、約1500、若しくは約1600μg.であり得る。好ましい実施形態では、中間用量は、600及び1200μg(それぞれ0.6及び1.2mg)の範囲である。より好ましい実施形態では、中間用量は、800μg(0.8mg)又は約800μg(0.8mg)である。最も好ましい実施形態では、中間用量は、800μg又は約800μg(0.8mg)の全長二重特異性抗体である。
【0082】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体を28日間のサイクルで(例えば、皮下)投与し、
a)サイクル1では、1日目にプライミング用量を投与し、8日目に中間用量を投与し、15及び22日目に12~60mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に12~60mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に12~60mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に12~60mgの全用量を投与する。
【0083】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体を28日間のサイクルで(例えば、皮下)投与し
a)サイクル1では、1日目に0.05~0.35の範囲のプライミング用量を投与し、8日目に0.6~12mgの範囲の中間用量を投与し、15及び22日目に12~60mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に12~60mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に12~60mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に12~60mgの全用量を投与する。
【0084】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体を28日間のサイクルで(例えば、皮下)投与し、
a)サイクル1では、1日目に160μgのプライミング用量を投与し、8日目に800μgの中間用量を投与し、15及び22日目に12~60mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に12~60mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に12~60mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に12~60mgの全用量を投与する。
【0085】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、28日間のサイクルで(例えば、皮下)投与され、
a)サイクル1では、1日目にプライミング用量を投与し、8日目に中間用量を投与し、15及び22日目に12mg又は約12mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に12mg又は約12mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に12mg又は約12mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に12mg又は約12mgの全用量を投与する。
【0086】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体を28日間のサイクルで(例えば、皮下)投与し
a)サイクル1では、1日目に0.05~0.35の範囲のプライミング用量を投与し、8日目に0.6~1.2mgの範囲の中間用量を投与し、15及び22日目に12mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に12mgの全用量を投与し、 c)サイクル4~9では、1及び15日目に12mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に12mgの全用量を投与する。
【0087】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、28日間のサイクルで(例えば、皮下)投与され、
a)サイクル1では、1日目に160μgプライミング用量を投与し、8日目に800μgの中間用量を投与し、15及び22日目に12mg又は約12mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に12mg又は約12mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に12mg又は約12mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に12mg又は約12mgの全用量を投与する。
【0088】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、28日間のサイクルで(例えば、皮下)投与され、
a)サイクル1では、1日目にプライミング用量を投与し、8日目に中間用量を投与し、15及び22日目に24mg又は約24mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に24mg又は約24mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に24mg又は約24mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に24mg又は約24mgの全用量を投与する。
【0089】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体を28日間のサイクルで(例えば、皮下)投与し
a)サイクル1では、1日目に0.05及び0.35の範囲のプライミング用量を投与し、8日目に0.6及び1.2mgの範囲の中間用量を投与し、15及び22日目に24mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に24mgの全用量を投与し、 c)サイクル4~9では、1及び15日目に24mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に24mgの全用量を投与する。
【0090】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、28日間のサイクルで(例えば、皮下)投与され、
a)サイクル1では、1日目に160μgプライミング用量を投与し、8日目に800μgの中間用量を投与し、15及び22日目に24mg又は約24mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に24mg又は約24mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に24mg又は約24mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に24mg又は約24mgの全用量を投与する。
【0091】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、28日間のサイクルで(例えば、皮下)投与され、
a)サイクル1では、1日目にプライミング用量を投与し、8日目に中間用量を投与し、15及び22日目に48mg又は約48mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に48mg又は約48mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に48mg又は約48mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に48mg又は約48mgの全用量を投与する。
【0092】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体を28日間のサイクルで(例えば、皮下)投与し
a)サイクル1では、1日目に0.05~0.35の範囲のプライミング用量を投与し、8日目に0.6~1.2mgの範囲の中間用量を投与し、15及び22日目に48mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に48mgの全用量を投与し、 c)サイクル4~9では、1及び15日目に48mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に48mgの全用量を投与する。
【0093】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、28日間のサイクルで(例えば、皮下)投与され、
a)サイクル1では、1日目に160μgプライミング用量を投与し、8日目に800μgの中間用量を投与し、15及び22日目に48mg又は約48mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に48mg又は約48mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に48mg又は約48mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に48mg又は約48mgの全用量を投与する。
【0094】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、28日間のサイクルで(例えば、皮下)投与され、
a)サイクル1では、1日目にプライミング用量を投与し、8日目に中間用量を投与し、15及び22日目に60mg又は約60mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に60mg又は約60mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に60mg又は約60mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に60mg又は約60mgの全用量を投与する。
【0095】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体を28日間のサイクルで(例えば、皮下)投与し
a)サイクル1では、1日目に0.05~0.35の範囲のプライミング用量を投与し、8日目に0.6~1.2mgの範囲の中間用量を投与し、15及び22日目に60mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に60mgの全用量を投与し、 c)サイクル4~9では、1及び15日目に60mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に60mgの全用量を投与する。
【0096】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、28日間のサイクルで(例えば、皮下)投与され、
a)サイクル1では、1日目に160μgプライミング用量を投与し、8日目に800μgの中間用量を投与し、15及び22日目に60mg又は約60mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に60mg又は約60mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に60mg又は約60mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に60mg又は約60mgの全用量を投与する。
【0097】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体エプコリタマブであり、これは28日間のサイクルで皮下投与され、
a)サイクル1では、1日目にプライミング用量を投与し、8日目に中間用量を投与し、15及び22日目に12~60mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に12~60mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に12~60mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に12~60mgの全用量を投与する。
【0098】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体はエプコリタマブであり、これは、28日間のサイクルで(例えば、皮下)投与され、
a)サイクル1では、1日目に0.05~0.35の範囲のプライミング用量を投与し、8日目に0.6~1.2mgの範囲の中間用量を投与し、15及び22日目に12~60mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に12~60mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に12~60mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に12~60mgの全用量を投与する。
【0099】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体はエプコリタマブであり、これは、28日間のサイクルで皮下投与され、
a)サイクル1では、1日目に160μgのプライミング用量を投与し、8日目に800μgの中間用量を投与し、15及び22日目に12~60mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に12~60mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に12~60mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に12~60mgの全用量を投与する。
【0100】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体はエプコリタマブであり、これは、28日間のサイクルで皮下投与され、
a)サイクル1では、1日目にプライミング用量を投与し、8日目に中間用量を投与し、15及び22日目に12mg又は約12mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に12mg又は約12mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に12mg又は約12mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に12mg又は約12mgの全用量を投与する。
【0101】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体はエプコリタマブであり、これは、28日間のサイクルで(例えば、皮下)投与され、
a)サイクル1では、1日目に0.05~0.35の範囲のプライミング用量を投与し、8日目に0.6~1.2mgの範囲の中間用量を投与し、15及び22日目に12mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に12mgの全用量を投与し、 c)サイクル4~9では、1及び15日目に12mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に12mgの全用量を投与する。
【0102】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体はエプコリタマブであり、これは、28日間のサイクルで皮下投与され、
a)サイクル1では、1日目に160μgのプライミング用量を投与し、8日目に800μgの中間用量を投与し、15及び22日目に12mg又は約12mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に12mg又は約12mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に12mg又は約12mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に12mg又は約12mgの全用量を投与する。
【0103】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体はエプコリタマブであり、これは、28日間のサイクルで皮下投与され、
a)サイクル1では、1日目にプライミング用量を投与し、8日目に中間用量を投与し、15及び22日目に24mg又は約24mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に24mg又は約24mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に24mg又は約24mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に24mg又は約24mgの全用量を投与する。
【0104】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体はエプコリタマブであり、これは、28日間のサイクルで(例えば、皮下)投与され、
a)サイクル1では、1日目に0.05~0.35の範囲のプライミング用量を投与し、8日目に0.6~1.2mgの範囲の中間用量を投与し、15及び22日目に24mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に24mgの全用量を投与し、 c)サイクル4~9では、1及び15日目に24mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に24mgの全用量を投与する。
【0105】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体はエプコリタマブであり、これは、28日間のサイクルで皮下投与され、
a)サイクル1では、1日目に160μgのプライミング用量を投与し、8日目に800μgの中間用量を投与し、15及び22日目に24mg又は約24mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に24mg又は約24mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に24mg又は約24mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に24mg又は約24mgの全用量を投与する。
【0106】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体はエプコリタマブであり、これは、28日間のサイクルで皮下投与され、
a)サイクル1では、1日目にプライミング用量を投与し、8日目に中間用量を投与し、15及び22日目に48mg又は約48mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に48mg又は約48mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に48mg又は約48mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に48mg又は約48mgの全用量を投与する。
【0107】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体はエプコリタマブであり、これは、28日間のサイクルで(例えば、皮下)投与され、
a)サイクル1では、1日目に0.05~0.35の範囲のプライミング用量を投与し、8日目に0.6~1.2mgの範囲の中間用量を投与し、15及び22日目に48mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に48mgの全用量を投与し、 c)サイクル4~9では、1及び15日目に48mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に48mgの全用量を投与する。
【0108】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体はエプコリタマブであり、これは、28日間のサイクルで皮下投与され、
a)サイクル1では、1日目に160μgのプライミング用量を投与し、8日目に800μgの中間用量を投与し、15及び22日目に48mg又は約48mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に48mg又は約48mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に48mg又は約48mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に48mg又は約48mgの全用量を投与する。
【0109】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体はエプコリタマブであり、これは、28日間のサイクルで皮下投与され、
a)サイクル1では、1日目にプライミング用量を投与し、8日目に中間用量を投与し、15及び22日目に60mg又は約60mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に60mg又は約60mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に60mg又は約60mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に60mg又は約60mgの全用量を投与する。
【0110】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体はエプコリタマブであり、これは、28日間のサイクルで(例えば、皮下)投与され、
a)サイクル1では、1日目に0.05~0.35の範囲のプライミング用量を投与し、8日目に0.6~1.2mgの範囲の中間用量を投与し、15及び22日目に60mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に60mgの全用量を投与し、 c)サイクル4~9では、1及び15日目に60mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に60mgの全用量を投与する。
【0111】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体はエプコリタマブであり、これは、28日間のサイクルで皮下投与され、
a)サイクル1では、1日目に160μgのプライミング用量を投与し、8日目に800μgの中間用量を投与し、15及び22日目に60mg又は約60mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に60mg又は約60mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に60mg又は約60mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に60mg又は約60mgの全用量を投与する。
【0112】
一実施形態では、第1のサイクルの1日目及び8日目に、それぞれ80μgのプライミング用量及び800μgの中間用量が選択される。いくつかの実施形態では、第1のサイクルの第1日及び第8日に、それぞれ80μgのプライミング用量及び1200μgの中間用量が選択される。いくつかの実施形態では、第1のサイクルの第1日及び第8日に、それぞれ80μgのプライミング用量及び1600μgの中間用量が選択される。いくつかの実施形態では、第1のサイクルの第1日及び第8日に、それぞれ160μgのプライミング用量及び1200μgの中間用量が選択される。いくつかの実施形態では、第1のサイクルの第1日及び第8日に、それぞれ160μgのプライミング用量及び1600μgの中間用量が選択される。
【0113】
一実施形態では、ヒト対象は、以下の基準の少なくとも1つを満たす、治療を必要とする活動性CLL疾患を有する:(1)貧血及び/又は血小板減少症の発症又は悪化によって明らかになる進行性骨髄不全の証拠;(2)広範な(すなわち、左の肋骨縁の下6cm以上)又は進行性若しくは症候性の脾腫;(3)広範なリンパ節(Massivenodes)(すなわち、最長直径が10cm以上)又は進行性若しくは症候性のリンパ節腫大;(4)2ヶ月の期間にわたって50%以上の増加を伴う進行性リンパ球増加症、又はリンパ球倍加時間(LDT)が6ヶ月未満;(5)コルチコステロイドに反応しにくい貧血又は血小板減少症を含む自己免疫合併症;(6)症候性又は機能性のリンパ節外性病変(例えば、皮膚、腎臓、肺、脊椎);及び/又は(7)以下のいずれかによって定義される疾患関連症状:過去6ヶ月以内の意図しない10%以上の体重減少、著しい疲労、感染の証拠がない2週間以上にわたる38.0℃(100.5°F)以上の発熱、及び感染の証拠がない1ヶ月以上の寝汗。いくつかの実施形態では、CLL疾患は、再発性及び/又は難治性CLLである。いくつかの実施形態では、CLLはBTK阻害剤に対して難治性である。いくつかの実施形態では、CLLはBTK阻害剤による治療中に再発した。
【0114】
いくつかの実施形態では、ヒト対象は、本明細書に記載される方法で治療される前に、少なくとも1つの治療ラインを受けたことがある。例えば、一実施形態では、対象は1つの先行治療ラインを受けたことがある。いくつかの実施形態では、対象は、2つの先行治療ラインを受けたことがある。いくつかの実施形態では、対象は、2つの全身抗新生物療法の先行ラインを受けたことがある。いくつかの実施形態では、対象は、2つの全身性抗腫瘍療法の先行ラインを受けたことがあり、少なくとも2つの先行する抗腫瘍療法の少なくとも1つは、BTK阻害剤(例えば、イブルチニブ)による治療を含む(又はそれに不耐性である)。いくつかの実施形態では、対象は、2つの事前の抗新生物療法を受けた後に難治性及び/又は再発性CLLを有する。再発は、少なくとも6ヶ月にわたってCR又はPRを以前に達成した対象における疾患進行の証拠として定義され得る。難治性疾患は、治療失敗(CR又はPRを達成しない)、又は治療の最後の用量から6ヶ月以内の進行として定義され得る。いくつかの実施形態では、対象は、3つの先行治療ラインを受けたことがある。いくつかの実施形態では、対象は、3つを超える先行治療ラインを受けたことがある。いくつかの実施形態では、対象は、1、2、3又はそれを超える先行治療ラインを受けている。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも2つの先行治療ラインを受けたことがある。一実施形態では、先行治療ラインは、全身性抗腫瘍療法を含む。一実施形態では、全身性抗新生物療法は、BTK阻害剤、例えばイブルチニブによる治療を含む。いくつかの実施形態では、対象は、BTK阻害剤(例えば、イブルチニブ)に対して不耐性である。他の実施形態では、先行ラインの治療法は、BCL2阻害剤、例えばベネトクラックスによる治療を含む。なお更なる実施形態では、先行ラインの治療法は、BTK阻害剤とBCL2阻害剤(例えば、イブルチニブ及びベネトクラックス)との組み合わせによる治療を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、ヒト対象は、(a)末梢血における5×10/L(5,000/μL)以上のBリンパ球、並びに(b)測定可能なリンパ節症及び/又は臓器腫大の存在のうちの少なくとも1つを満たす測定可能な疾患を有する。
【0116】
いくつかの実施形態では、ヒト対象は、0又は1のECOGパフォーマンスステータススコアを有する。ECOGパフォーマンスステータススコアに関する情報は、例えば、Oken et al,Am J Clin Oncol 1982 Dec;5(6):649-55)に見ることができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、ヒト対象は、(1)クレアチンクリアランス又は血清クレアチン(Cockcroft-Gault式を使用して45mL/分超、又は血清クレアチニンが正常値の上限(xULN)の1.5倍以下)、(2)血清アラニントランスアミナーゼ(≦2.5×ULN)、(3)血清アスパラギン酸トランスアミナーゼ(≦2.5×ULN)、(4)ジルベール症候群に起因しないビリルビン(≦1.5×ULN)、(5)ヘモグロビン(貧血がCLLの骨髄病変に起因する場合を除き、≧9.0g/dL)、(6)好中球減少症がCLLの骨髄病変に起因する場合を除き、絶対好中球数(≧1.0×10/L(1000/μL))、血小板数(≧30×10/L(30,000/μL))、及び凝固状態(PT/INR/aPTT≦1.5×ULN)について許容され得る臨床検査パラメータを有する。
【0118】
本明細書に記載される治療を受けるヒト対象は、実施例2に記載される1つ以上の選択基準を有するか、又は実施例2に記載される1つ以上の除外基準を有さない患者であり得る。
【0119】
CLLを有するヒト対象は、CD20陽性癌を有すると分類される。したがって、そのようなヒト対象が受けたかもしれない以前の癌治療には、抗CD20モノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ)が含まれる。そのような治療又は任意の他の治療中、CLLは、難治性であり得るか、又は当該治療に対して再発し得る。したがって、一実施形態では、対象は、二重特異性抗体による治療の前に、抗CD20モノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ又はオビヌツズマブ等)による治療を受けたことがある。いくつかの実施形態では、抗CD20抗体又は抗CD20モノクローナル抗体と1つの治療剤、例えばベネトクラックス(Bcl2阻害剤)との組み合わせによる当該事前の治療中に、CLLが再発したか、又は治療に対して難治性であった。
【0120】
本明細書に記載の方法は、難治性又は再発性CLL等のCLLを治療するのに有利である。治療は、例えば上記の治療レジメンを使用して継続的に維持される。しかしながら、進行性疾患が発症するか又は許容できない毒性が生じると、治療を終了することができる。
【0121】
本明細書に記載の方法に対するCLLを有する対象の応答は、表2(出典:Hallek et al.,Lancet 2018;391:1524-1537)に示すように、iwCLL応答基準に従って評定することができる。
【表2】
【0122】
本明細書に記載の方法に従って治療された対象は、好ましくは、CLLの少なくとも1つの徴候の改善を経験する。一実施形態では、改善は、循環リンパ球の数の減少によって測定される。いくつかの実施形態では、改善は、測定可能な腫瘍病変の量及び/又はサイズの減少によって測定される。いくつかの実施形態では、病変は、CT又はMRIフィルムで測定することができる。いくつかの実施形態では、細胞学又は組織学を使用して、治療に対する応答性を評価することができる。いくつかの実施形態では、骨髄穿刺及び骨髄生検が、治療に対する応答を評価するために使用され得る。
【0123】
一実施形態では、治療される対象は、iwCLL応答基準(例えば、表2を参照)によって定義されるように、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)又は安定疾患(SD)を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、別の療法又はプラセボと比較すると、長期生存(例えば、無増悪生存又は全生存)から選択される少なくとも1つの治療効果をもたらす。いくつかの実施形態では、対象は、疾患進行(PD)又は許容できない毒性になるまで、本明細書に記載の方法で治療される。
【0124】
サイトカイン放出症候群(CRS)は、CD3を係合すること等による免疫エフェクター細胞の活性化によって機能する免疫細胞及び二重特異性抗体に基づくアプローチを利用する方法がヒト対象において使用される場合に起こり得る(Lee et al.,Biol Blood Marrow Transplant 2019;25:625-38、これは参照により本明細書に組み込まれる)。したがって、いくつかの実施形態では、CRS緩和は、本明細書に記載の方法と共に実施される。CRS緩和の一部として、プライミング用量及び/又は中間用量の選択は、本明細書に記載されるように、全用量(例えば、12~60mg)を投与する前に行われる。CRSは、標準的な慣行に従って分類することができる(例えば、Lee et al.,Biol Blood Marrow Transplant.2019 Apr;25(4):625-638に概説される(これは参照により本明細書に組み込まれる))。CRSは、発熱、悪心、嘔吐及び悪寒等の有害作用をもたらし得るサイトカイン、例えば炎症促進性サイトカイン、例えばIL-6、TNF-α又はIL-8の過剰放出を含み得る。したがって、エプコリタマブ等の二重特異性抗体の独特の抗腫瘍活性にもかかわらず、それらの免疫学的作用様式は、望ましくない「副」作用、すなわち望ましくない炎症反応の誘導を誘発し得る。したがって、患者は、起こり得るCRS症状を緩和するために、例えば鎮痛薬、解熱薬、及び/又は抗炎症薬による同時治療、予防法、及び/又は前投薬に更に供され得る。
【0125】
したがって、一実施形態では、本明細書に記載される方法におけるヒト対象は、CRSに対する予防法によって治療される。好ましい実施形態では、予防法は、対象へのコルチコステロイドの投与を含む。一実施形態では、予防法(例えば、コルチコステロイド)は、二重特異性抗体と同じ日に投与される。予防法(例えば、コルチコステロイド)もまた、その後の日に投与することができる。いくつかの実施形態では、プロフィラキシクス(例えば、コルチコステロイド)は、その後の2、3、及び4日目に更に投与される。予防法等の更なる薬物療法に関連する場合、2日目、3日目及び4日目は、1日目に投与される二重特異性抗体の投与に関連することが理解される。例えば、あるサイクルにおいて抗体を15日目に投与し、予防法も投与する場合、2、3及び4日目に対応する予防法は、そのサイクルの16、17及び18日目である。いくつかの実施形態では、予防法は、二重特異性抗体が投与される日及びその後の2~4日目に投与される。当該予防法が二重特異性抗体と同じ日に投与される場合、予防法は、好ましくは二重特異性抗体の当該投与の30~120分前に投与される。本明細書に記載される方法及び使用における使用に適した例示的なコルチコステロイドは、プレドニゾロンである。いくつかの実施形態では、コルチコステロイドはプレドニゾロンである。いくつかの実施形態では、プレドニゾロンは、経口用量を含めて100mg又はそれと等価な静脈内用量で投与される。CRS予防法に使用することができるプレドニゾロンの例示的なコルチコステロイド相当量を、投与相当量と共に表6に示す。
【0126】
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法におけるヒト対象は、注射に対する反応を低減させるために前投薬で治療される。一実施形態では、前投薬は抗ヒスタミン薬の投与を含む。いくつかの実施形態では、前投薬は、解熱薬の投与を含む。更なる実施形態では、前投薬は、抗ヒスタミン薬及び解熱薬の全身投与を含む。
【0127】
前投薬における使用に適した例示的な抗ヒスタミン剤は、ジフェンヒドラミンである。
【0128】
いくつかの実施形態では、抗ヒスタミン剤はジフェンヒドラミンである。一実施形態では、ジフェンヒドラミンは、50mg又はその等価物の静脈内又は経口用量で投与される。
【0129】
前投薬における使用に適した例示的な解熱薬は、アセトアミノフェンである。いくつかの実施形態では、解熱剤はアセトアミノフェンである。1つの実施形態では、アセトアミノフェンは、560~1000mg、例えば、650~1000mg又はその等価物の経口用量で投与される。いくつかの実施形態では、前投薬は、二重特異性抗体と同じ日に投与される。いくつかの実施形態では、前投薬は、二重特異性抗体による注射の前に、例えば、二重特異性抗体の投与の30~120分前に、二重特異性抗体と同じ日に投与される。
【0130】
前投薬及び/又は予防法は、少なくとも治療の初期段階で投与することができる。いくつかの実施形態では、前投薬及び/又は予防法は、二重特異性抗体の最初の4回の投与の間に投与される。例えば、前投薬及び/又は予防法は、二重特異性抗体投与の第1の28日間のサイクルの間に、本明細書に記載されるように投与され得る。いくつかの実施形態では、前投薬はサイクル1の間に投与される。いくつかの実施形態では、予防法はサイクル1中に投与される。
【0131】
通常、初期治療中の反応のリスクは、数回の投与後、例えば最初の4回の投与後(第1のサイクル)に低下する。したがって、ヒト対象がCRSを経験していない場合、CRSの予防法を中止することができる。しかしながら、ヒト対象がグレード1を超えるCRSを経験する場合、CRS予防法を継続し得る。同様に、前投薬も継続してもよい。CRSのグレード分類は、表7及び表8に記載のように行うことができる。
【0132】
更なる実施形態では、本明細書に記載される方法では、ヒト対照が、サイクル1での二重特異性抗体の4回目の投与後、すなわち最後の投与後にグレード1を超えるCRSを経験する場合、予防法を第2の28日サイクル、すなわちサイクル2の間に投与する。さらに、前のサイクルの二重特異性抗体の最後の投与において、ヒト対象がグレード1を超えるCRSを経験する場合、その後のサイクル中に予防法を継続することができる。前投薬が、第2のサイクルの間に任意に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、前投薬はサイクル2の間に投与される。更なる前投薬は、必要に応じて、後続のサイクル中に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、前投薬は、その後のサイクル中(サイクル2の後)に投与される。
【0133】
一実施形態では、CRSの前投薬及び予防法が投与され、前投薬は、ジフェンヒドラミン(例えば、静脈内若しくは経口用量50mg、又はその等価物)等の抗ヒスタミン剤を含み、予防法は、アセトアミノフェン(例えば、650~1000mgの経口用量、又はその等価物)等の解熱剤及びプレドニゾロン(例えば、100mg又はその等価物の静脈内用量で)等のコルチコステロイドを含む。いくつかの実施形態では、前投薬及び予防法は、二重特異性抗体の投与の30~120分前に投与される。その後の2日目、3日目及び4日目に、プレドニゾロン(例えば、100mg又はその等価物の静脈内用量で)等のコルチコステロイドの全身投与を含む更なる予防法が投与されてもよい。いくつかの実施形態では、前投薬スケジュール及び予防法スケジュールは、好ましくは、二重特異性抗体の最初の4回の投与の間、例えば、本明細書に記載される二重特異性抗体投与の第1の28日間のサイクルの間に投与される。さらに、後続のサイクルは、例えば、前のサイクルの最後の投与中に発生するグレード1を超えるCRSの場合、同じ投与スケジュールを含むことができ、投与スケジュールの一部としての前投薬は任意である。
【0134】
本明細書に記載の用量及び治療レジメンを使用したCLLによるヒト対象の治療中、CRSは十分に管理され、同時にCLLを効果的に制御及び/又は治療することができる。
【0135】
実施例に記載されるように、本明細書に記載される方法で治療される対象は、管理可能なCRSを経験し得る。場合によっては、本明細書に記載される治療を受けている対象は、標準的な慣例に従って定義されるグレード1のCRSを発症し得る。他の場合では、対象は、標準的な慣例に従って定義されるグレード2の管理可能なCRSを発症し得る。したがって、本明細書に記載の治療を受けている対象は、標準的な慣例に従って定義されるように、グレード1又はグレード2の管理可能なCRSを有し得る。CRSの標準的な分類によれば、グレード1のCRSには、少なくとも38℃までの発熱、低血圧なし、低酸素症なしが含まれ、グレード2のCRSには、少なくとも38℃までの発熱に加えて、昇圧剤を必要としない低血圧及び/又は低流量鼻カニューレ若しくはブローバイによる酸素を必要とする低酸素症が含まれる。そのような管理可能なCRSは、サイクル1中に起こり得る。本明細書に記載の治療を受けているヒト対象はまた、標準的な慣例に従って定義される治療中にグレード2を超えるCRSを有し得る。したがって、本明細書に記載される治療を受けるヒト対象はまた、標準的な慣例に従って定義されるように、当該治療の期間中にグレード3のCRSを有し得る。そのような管理可能なCRSは、サイクル1及び後続のサイクル中に更に発生し得る。
【0136】
本明細書に記載される方法に従って治療されるヒト対象はまた、発熱、疲労及び注射部位反応を経験し得る。それらはまた、神経毒性、部分発作、CRSに関連する失書症、又はCRSに関連する錯乱状態を経験し得る。
【0137】
上述のように、対象は、CRS予防法を受けたにもかかわらず、本明細書に記載の方法による治療中にCRSを発症し得る。CRSグレード分類基準を表7及び8に記載する。
【0138】
一実施形態では、対象がグレード1のCRSを発症する場合、対象は抗生物質を投与され、すなわち、グレード1のCRSを発症する対象は、感染症を呈する場合、抗生物質で治療される。いくつかの実施形態では、抗生物質は、好中球減少症(存在する場合)が解消するまで継続される。いくつかの実施形態では、全身症状を示すグレード1のCRSを有する対象をNSAIDで治療する。
【0139】
一実施形態では、グレード2のCRSを発症する対象を、静脈内輸液ボーラス及び/又は酸素補給で治療する。いくつかの実施形態では、グレード2のCRSを発症する対象を、昇圧剤で治療する。いくつかの実施形態では、併存疾患があるグレード2のCRSを有する対象は、トシリズマブ(例えばACTEMRA(登録商標)として市販されているIL-6受容体に対するヒト化抗体)及び/又はステロイド(例えば、デキサメタゾン又はその等価なメチルプレドニゾロン)で治療される。更なる実施形態では、同時ICANSを呈する対象にデキサメタゾンを投与する。なお更なる実施形態では、対象が例えば6時間以内にCRS症状の改善を示さない場合、又は対象が初期改善後に悪化し始めた場合、トシリズマブの第2の用量がコルチコステロイドの用量と一緒に投与される。いくつかの実施形態では、対象が3回の投与後にトシリズマブに対して難治性である場合、追加のサイトカイン療法、例えば抗IL-6抗体(例えば、シルツキシマブ)又はIL-1Rアンタゴニスト(例えば、アナキンラ)が対象に投与される。
【0140】
一実施形態では、グレード3のCRSを発症する対象は、昇圧剤(例えば、ノルエピネフリン)支持及び/又は酸素補給で治療される。いくつかの実施形態では、グレード3のCRSを有する対象は、トシリズマブ、又はステロイドと組み合わせたトシリズマブ(例えば、デキサメタゾン又はその等価なメチルプレドニゾロン)で治療される。いくつかの実施形態では、同時ICANSを呈する対象にデキサメタゾンを投与する。更なる実施形態では、対象が3回の投与後にトシリズマブに対して難治性である場合、追加のサイトカイン療法、例えば抗IL-6抗体(例えば、シルツキシマブ)又はIL-1Rアンタゴニスト(例えば、アナキンラ)が対象に投与される。
【0141】
一実施形態では、グレード4のCRSを発症する対象は、昇圧剤支持及び/又は酸素補給で(例えば、陽圧換気、例えばCPAP、BiPAP、挿管、又は機械的人工呼吸を介して)治療される。いくつかの実施形態では、対象がグレード4のCRSを発症する場合、対象は少なくとも2つの昇圧剤を投与される。いくつかの実施形態では、対象はステロイドを更に投与され、すなわち対象はトシリズマブ及びステロイドを投与される。いくつかの実施形態では、ステロイドはデキサメタゾンである。いくつかの実施形態では、ステロイドはメチルプレドニゾロンである。更なる実施形態では、同時ICANSを呈する対象にデキサメタゾンを投与する。更なる実施形態では、対象が3回の投与後にトシリズマブに対して難治性である場合、追加のサイトカイン療法、例えば抗IL-6抗体(例えば、シルツキシマブ)又はIL-1Rアンタゴニスト(例えば、アナキンラ)が対象に投与される。いくつかの実施形態では、対象がトシリズマブに対して難治性である場合、トシリズマブの投与は抗IL-6抗体(例えば、シルツキシマブ)の投与に切り替えられる。
【0142】
いくつかの実施形態では、対象がトシリズマブに対して難治性である場合、トシリズマブはIL-1Rアンタゴニスト(例えば、アナキンラ)に切り替えられる。
【0143】
いくつかの実施形態では、ヒト対象は、腫瘍崩壊症候群(TLS)の予防的処置を受け、すなわち対象は、腫瘍崩壊症候群(TLS)の予防法で治療される。腫瘍崩壊症候群の分類及びグレード分類は、当技術分野で公知の方法、例えば、Howard et al.N Engl J Med 2011;364:1844-54、及びCoiffier et al.,J Clin Oncol 2008;26:2767-78。いくつかの実施形態では、TLSの予防的処置は、二重特異性抗体を投与する前に1つ以上の尿酸還元剤を投与することを含み、すなわち、TLSの予防法は、二重特異性抗体を投与する前に1つ以上の尿酸還元剤を投与することを含む。例示的な尿酸還元剤としては、アロプリノール及びラスブリカーゼが挙げられる。したがって、一実施形態では、TLSの予防的処置は、アロプリノール及び/又はラスブリカーゼを投与することを含む。いくつかの実施形態では、TLSの予防的処置は、二重特異性抗体を投与する前にアロプリノール及び/又はラスブリカーゼを投与することを含む。一実施形態では、アロプリノールは、二重特異性抗体の72時間前に投与される。いくつかの実施形態では、ラスブリカーゼは、アロプリノールを投与した後であるが、二重特異性抗体を投与する前に開始される。
【0144】
対象のTLSリスクカテゴリの再評定は、二重特異性抗体のその後の投与の前に行うことができる。測定可能な全てのリンパ節が5cm未満の最大直径及び25×10/L未満のALCを有する場合、対象はTLSのリスクが低いと見なされる。任意の測定可能なリンパ節が5cm以上10cm未満の最大直径を有するか、又はALCが25×10/L以上である場合、対象はTLSのリスクが中程度であると考えられる。対象は、(a)任意の測定可能なリンパ節が10cm以上の最大直径を有するか、又は(b)ALCが25×10/L以上及び任意の測定可能なリンパ節が5cm以上であるが10cm未満の最大直径を有する場合、TLSのリスクが高いと見なされる。リンパ球数が100×10/Lを超える対象は、高リスクと見なされる。いくつかの実施形態では、対象がTLSの徴候を示す場合、ラスブリカーゼ及び/又はアロプリノール等の支持療法を使用することができる。
【0145】
一実施形態では、本明細書に記載される方法において使用される二重特異性抗体は皮下投与され、したがって、皮下(s.c.)投与に適合性である、すなわち、本明細書に記載される用量で、薬学的に許容され得るs.c.投与を可能にする可能にする配合及び/又は濃度を有するように医薬組成物に製剤化される。いくつかの実施形態では、皮下投与は、注射によって行われる。例えば、皮下製剤と適合性であり、本明細書に記載される方法において使用され得るDuoBody-CD3xCD20のための製剤は、以前に記載されている(例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2019155008号を参照)。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、酢酸ナトリウム三水和物、酢酸、水酸化ナトリウム、ソルビトール、ポリソルベート80及び注射用水を用いて製剤化され得、5.5又は約5.5のpHを有し得る。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、5mg/mL又は60mg/mLの濃縮物として提供される。他の実施形態では、二重特異性抗体の所望の用量は、皮下注射のために約1mLの量に再構成される。
【0146】
一実施形態では、二重特異性抗体に適した医薬組成物は、二重特異性抗体、20~40mM酢酸塩、140~160mMソルビトール、及び界面活性剤、例えばポリソルベート80を含み得、pHは5.3~5.6である。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、5~100mg/mL、例えば48又は60mg/mLの二重特異性抗体、30mM酢酸塩、150mMソルビトール、0.04%w/vポリソルベート80の範囲の抗体濃度を含み得、5.5のpHを有し得る。そのような製剤は、適切な投薬及び皮下投与を可能にするために、例えば製剤緩衝液で希釈され得る。
【0147】
医薬組成物の量は、抗体の皮下投与を可能にするように適切に選択される。例えば、投与される量は、約0.3mL~約3mL、例えば0.3mL~3mLの範囲である。投与される量は、0.5mL、0.8mL、1mL、1.2mL、1.5mL、1.7mL、2mL若しくは2.5mL、又は約0.5mL、約0.8mL、約1mL、約1.2mL、約1.5mL、約1.7mL、約2mL若しくは約2.5mLであり得る。したがって、いくつかの実施形態では、投与される量は、0.5mL又は約0.5mLである。いくつかの実施形態では、投与される量は、0.8mL又は約0.8mLである。いくつかの実施形態では、投与される量は、1mL又は約1mLである。いくつかの実施形態では、投与される量は、1.2mL又は約1.2mLである。いくつかの実施形態では、投与される量は、1.5mL又は約1.5mLである。いくつかの実施形態では、投与される量は、1.7mL又は約1.7mLである。いくつかの実施形態では、投与される量は、2mL又は約2mLである。いくつかの実施形態では、投与される量は、2.5mL又は約2.5mLである。
【0148】
本明細書に記載の方法(又はCD3xCD20抗体の使用)は、CLLを有するヒト患者の治療のためのものである。本明細書に記載の方法は、そのような患者に提供される第1の治療又は第1の治療の一部であり得ることが理解される。しかしながら、患者は、CLLに対して以前の治療を受けたことがあってもよい。以前の治療には、化学療法、免疫療法、及び標的療法、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上が含まれ得るが、これらに限定されない。最も一般的には、標準治療は、細胞傷害性化学療法と抗CD20モノクローナル抗体との組み合わせによる治療を含む。本明細書に記載される方法はまた、他の治療と組み合わせて使用され得ることが理解される。
【0149】
一実施形態では、本明細書に記載される方法において使用される二重特異性抗体は、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、可変重鎖(VH)領域及び可変軽鎖(VL)領域を含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、VH領域は、配列番号6のアミノ酸配列内のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、VL領域は、配列番号7のアミノ酸配列内のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、VH領域及びVL領域を含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、VH領域は、配列番号13のアミノ酸配列内のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、VL領域は、配列番号14のアミノ酸配列内のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第2の結合アームとを含む。
【0150】
CDR1、CDR2及びCDR3領域は、当技術分野で公知の方法を使用して可変重鎖及び軽鎖領域から同定することができる。当該可変重鎖領域及び可変軽鎖領域からのCDR領域は、IMG(Lefranc et al.,Nucleic Acids Research 1999;27:209-12及びBrochet.Nucl Acids Res 2008;36:W503-8を参照)に従って注釈を付けることができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、それぞれ配列番号1、2、及び3に示されるアミノ酸配列VHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3と、それぞれ配列番号4、配列番号GTN、及び5に示されるアミノ酸配列を含むVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3とを含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、それぞれ配列番号8、9及び10に示されるアミノ酸配列を含むVHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3と、それぞれ配列番号11、配列番号DAS及び12に示されるアミノ酸配列を含むVLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3とを含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームとを含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、配列番号6のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号7のアミノ酸配列を含むVL領域とを含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、配列番号13のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号14のアミノ酸配列を含むVL領域とを含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームとを含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は完全長抗体である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は不活性Fc領域を含む。一実施形態では、二重特異性抗体は完全長抗体であり、不活性Fc領域を有する。いくつかの実施形態では、CD3に対する第1の結合アームは、ヒト化抗体、例えば参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2015001085号に記載されているH1L1等の完全長IgG1、λ(ラムダ)抗体に由来し、及び/又はCD20に対する第2の結合アームは、ヒト抗体、例えば参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2004035607号に記載されているクローン7D8等の完全長IgG1、κ(カッパ)抗体に由来する。二重特異性抗体は、二種類の半分子抗体から産生することができ、二種類の半分子抗体の各々は、例えば、配列番号24及び25、並びに配列番号26及び27に示されるそれぞれの第1及び第2の結合アームを含む。半抗体は、CHO細胞において産生され得、二重特異性抗体は、例えばFabアーム交換によって生成され得る。一実施形態では、二重特異性抗体は、DuoBody-CD3xCD20の機能的変異体である。
【0154】
したがって、いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、配列番号6と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含むVH領域、又は配列番号6のアミノ酸配列を含むが1、2若しくは3個の変異(例えば、アミノ酸置換)を有するVH領域と、配列番号7と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含むVL領域、又は配列番号7のアミノ酸配列を含むが1、2若しくは3個の変異(例えば、アミノ酸置換)を有するVL領域とを含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、配列番号13と少なくとも85%、90%、95%、98%、若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含むVH領域、又は配列番号13のアミノ酸配列を含むが1、2、若しくは3個の変異(例えば、アミノ酸置換)を有するVH領域と、配列番号14と少なくとも85%、90%、95%、98%、若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含むVL領域、又は配列番号14のアミノ酸配列を含むが1、2、若しくは3個の変異(例えば、アミノ酸置換)を有するVL領域とを含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームと、を含む。
【0155】
一実施形態では、二重特異性抗体は、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号25のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、配列番号26のアミノ酸配列を含むVH領域及び配列番号27のアミノ酸配列を含むVL領域を含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームと、を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、配列番号24と少なくとも85%、90%、95%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖、又は配列番号24のアミノ酸配列を含むが1、2若しくは3個の変異(例えば、アミノ酸置換)を有する重鎖と、配列番号25と少なくとも85%、90%、95%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、又は配列番号25のアミノ酸配列を含むが1、2若しくは3個の変異(例えば、アミノ酸置換)を有する軽鎖領域とを含む、第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、配列番号26と少なくとも85%、90%、95%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖、又は配列番号26のアミノ酸配列を含むが1、2若しくは3個の変異(例えば、アミノ酸置換)を有する重鎖と、配列番号27と少なくとも85%、90%、95%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖、又は配列番号27のアミノ酸配列を含むが1、2若しくは3個の変異(例えば、アミノ酸置換)を有する軽鎖とを含む、第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームと、を含む。
【0157】
二重特異性抗体には、様々な定常領域又はその変異体が使用され得る。一実施形態では、抗体は、IgG定常領域、例えばヒトIgG1定常領域、例えば配列番号15で定義されるヒトIgG1定常領域、又は任意の他の適切なIgG1アロタイプを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、ヒトIgG1定常領域を有する完全長抗体である。
【0158】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体の第1の結合アームは、ヒト化抗体、好ましくは完全長IgG1、λ(ラムダ)抗体に由来する。一実施形態では、二重特異性抗体の第1の結合アームは、ヒト化抗体、例えば完全長IgG1、λ(ラムダ)抗体に由来し、したがってλ軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、第1の結合アームは、配列番号22に定義されるλ軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体の第2の結合アームはヒト抗体に由来し、好ましくは完全長IgG1、κ(カッパ)抗体に由来する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体の第2の結合アームは、ヒト抗体、好ましくは完全長IgG1、κ(カッパ)抗体に由来し、したがってκ軽鎖定常領域を含み得る。いくつかの実施形態では、第2の結合アームは、配列番号23に定義されるκ軽鎖定常領域を含む。好ましい実施形態では、第1の結合アームは、配列番号22に定義されるλ軽鎖定常領域を含み、第2の結合アームは、配列番号23に定義されるκ軽鎖定常領域を含む。
【0159】
二重特異性抗体の定常領域部分は、二重特異性抗体の効率的な形成/産生を可能にする及び/又は不活性Fc領域を提供する修飾を含み得ることが理解される。そのような修飾は当技術分野で周知である。
【0160】
二重特異性抗体の異なるフォーマットが当技術分野で公知である(Kontermann,Drug Discov Today 2015;20:838-47;MAbs,2012;4:182-97による総説)。したがって、本明細書に記載される方法及び使用において使用される二重特異性抗体は、いかなる特定の二重特異性フォーマット又はその作製方法にも限定されない。例えば、二重特異性抗体には、ヘテロ二量体化を強制する相補的CH3ドメインを有する二重特異性抗体、ノブ-イントゥ・ホール分子(Genentech、国際公開第9850431号)、CrossMAb(Roche、国際公開第2011117329号)、又は静電的にマッチさせた分子(Amgen、欧州特許第1870459号及び国際公開第2009089004号;Chugai、米国特許出願公開第201000155133号;Oncomed、国際公開第2010129304号)が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0161】
好ましくは、二重特異性抗体は、第1のCH3領域を含む第1のFc配列を有する第1の重鎖と、第2のCH3領域を含む第2のFc配列を有する第2の重鎖とを含むFc領域を含み、第1及び第2のCH3領域の配列は異なり、当該第1及び第2のCH3領域間のヘテロ二量体相互作用が当該第1及び第2のCH3領域のホモ二量体相互作用のそれぞれよりも強いものである。これらの相互作用及びそれらがどのようにして達成され得るかに関する更なる詳細は、例えば、国際公開第2011131746号及び国際公開第2013060867号(Genmab)に提供されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態では、二重特異性抗体は、第1の重鎖において(i)配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のF405に対応する位置にアミノ酸Lを含み、第2の重鎖において配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のK409に対応する位置にアミノ酸Rを含み、又はその逆も含む。
【0162】
二重特異性抗体は、Fc領域を不活性又は非活性化にするためのFc領域中の修飾を含み得る。したがって、本明細書に開示される二重特異性抗体において、一方又は両方の重鎖は、抗体がFc媒介エフェクター機能を、修飾を有さない二重特異性抗体と比較してより少ない程度で誘導するように修飾され得る。Fc媒介エフェクター機能は、T細胞上のFc媒介性CD69発現(すなわち、CD3抗体媒介Fcγ受容体依存性CD3架橋の結果としてのCD69発現)を決定することによって、Fcγ受容体に結合することによって、C1qに結合することによって、又はFcγRのFc媒介性架橋の誘導によって測定することができる。特に、重鎖定常領域配列は、Fc媒介CD69発現が、野生型(非修飾)抗体と比較した場合、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%又は100%低下するように修飾されていてもよく、当該Fc媒介CD69発現は、例えば国際公開第2015001085号の実施例3に記載されているようなPBMCベースの機能アッセイで決定される。重鎖定常領域配列及び軽鎖定常領域配列の改変はまた、当該抗体へのC1qの結合の減少をもたらし得る。未修飾抗体と比較して、減少は、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は100%であり得、C1q結合は、例えばELISAによって決定され得る。さらに、抗体が未修飾抗体と比較して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%又は100%低下したFc媒介性T細胞増殖を媒介するように修飾され得るFc領域であって、当該T細胞増殖はPBMCベースの機能アッセイで測定される、Fc領域。例えばIgG1アイソタイプ抗体において修飾され得るアミノ酸位置の例としては、位置L234及びL235が挙げられる。したがって、一実施形態では、二重特異性抗体は、第1の重鎖及び第2の重鎖を含み得、第1の重鎖及び第2の重鎖の両方において、EuナンバリングによるヒトIgG1重鎖の位置L234及びL235に対応する位置のアミノ酸残基は、それぞれF及びEである。さらに、D265Aアミノ酸置換は、全てのFcγ受容体への結合を減少させ、ADCCを防ぐことができる(Shields et al.,JBC 2001;276:6591-604)。したがって、二重特異性抗体は、第1の重鎖及び第2の重鎖を含み得、第1の重鎖及び第2の重鎖の両方において、EuナンバリングによるヒトIgG1重鎖の位置D265に対応する位置のアミノ酸残基はAである。
【0163】
一実施形態では、二重特異性抗体の第1の重鎖及び第2の重鎖において、ヒトIgG1重鎖のL234、L235及びD265位に相当する位置のアミノ酸は、それぞれF、E及びAである。これらのアミノ酸をこれらの位置に有する抗体は、不活性なFc領域又は非活性なFc領域を有する抗体の一例である。
【0164】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、第1の重鎖及び第2の重鎖の両方において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のL234、L235及びD265位に対応する位置のアミノ酸はそれぞれF、E及びAである。
【0165】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、第1の重鎖において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のF405に対応する位置のアミノ酸はLであり、第2の重鎖において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のK409に対応する位置のアミノ酸はRであるか、又はその逆である。好ましい実施形態では、二重特異性抗体は第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、(i)第1及び第2の重鎖の両方において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のL234、L235及びD265位に対応する位置のアミノ酸はそれぞれF、E及びAであり、(ii)第1の重鎖において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のF405に対応する位置のアミノ酸はLであり、第2の重鎖において、配列番号15のヒトIgG1重鎖定常領域のK409に対応する位置のアミノ酸はRであるか、又はその逆である。
【0166】
本明細書に記載される二重特異性抗体に関して、3つのアミノ酸置換L234F、L235E及びD265Aの組み合わせを有し、加えて、上記で記載されるようなK409R又はF405L変異を有するものは、それぞれ接尾辞「FEAR」又は「FEAL」で示される場合がある。
【0167】
野生型IgG1重鎖定常領域のアミノ酸配列は、本明細書では配列番号15として同定され得る。上に開示される実施形態と一致して、二重特異性抗体は、F405L置換を担持するIgG1重鎖定常領域を含み得、配列番号17に示されるアミノ酸配列及び/又はK409R置換を担持するIgG1重鎖定常領域を有し得、配列番号18に示されるアミノ酸配列を有し得、Fc領域を不活性又は非活性化にする更なる置換を有し得る。したがって、一実施形態では、二重特異性抗体は、IgG1重鎖定常領域と、L234F、L235E、D265A及びF405L置換を有するIgG1重鎖定常領域の一方のアミノ酸配列(例えば、配列番号19に示す)、並びにL234F、L235E、D265A及びK409R置換を有する他方のIgG1重鎖定常領域のアミノ酸配列(例えば、配列番号20に示す)との組み合わせを含む。したがって、いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、配列番号19及び20のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0168】
好ましい実施形態では、本明細書に記載される方法及び使用において使用される二重特異性抗体は、それぞれ配列番号24及び25で定義される重鎖及び軽鎖を含む第1の結合アームと、それぞれ配列番号26及び27で定義される重鎖及び軽鎖を含む第2の結合アームとを含む。そのような抗体は、本明細書ではDuoBody-CD3xCD20とも呼ばれ得る。また、そのような抗体の変異体は、本明細書に記載の方法及び使用における使用が企図される。いくつかの実施形態では、上記二重特異性抗体は、それぞれ配列番号24及び25に示されるアミノ酸配列からなる重鎖及び軽鎖と、それぞれ配列番号26及び27に示されるアミノ酸配列からなる重鎖及び軽鎖とを含む。いくつかの実施形態では、上記二重特異性抗体は、エプコリタマブ(CAS2134641-34-0)又はそのバイオシミラーである。
【0169】
キット
DuoBody-CD3xCD20又はエプコリタマブ等の本発明によるCD3及びCD20に結合する二重特異性抗体と、薬学的に許容され得る担体とを含む医薬組成物を、本明細書に記載の方法での使用に適合した治療有効量で含むキットも本明細書で提供される。キットはまた、施術者(例えば、医師、看護師、又は患者)がCLLを有する患者に組成物を投与するためにその中に含まれる組成物を投与することを可能にするための、例えば投与スケジュールを含む説明書を含んでもよい。キットはまた、シリンジを含むことができる。
【0170】
キットは、本明細書に記載される方法に従って、それぞれが単回投与のための有効量の二重特異性抗体を含有する単回用量(例えば、12~60mg、例えば12mg、24mg、36mg、48mg又は60mgの用量)の医薬組成物の複数のパッケージを含んでもよい。(1又は複数の)医薬組成物を投与するために必要な器具又は装置もキットに含まれ得る。例えば、キットは、ある量の二重特異性抗体を含む1つ以上のプレフィルドシリンジを提供し得る。
【0171】
更なる実施形態
1.二重特異性抗体であって、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、可変重鎖(VH)領域及び可変軽鎖(VL)領域を含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、前記VH領域は、配列番号6のVH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、前記VL領域は、配列番号7のVL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、VH領域及びVL領域を含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、前記VH領域は、配列番号13のVH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、前記VL領域は、配列番号14のVL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第2の結合アームと、を含み、 前記ヒト対象における慢性リンパ性白血病(CLL)の治療に使用するためのものであり、前記治療が、ヒト対象に二重特異性抗体を12~60mgの範囲の用量で28日サイクルで投与することを含む、方法。
【0172】
2.二重特異性抗体が24mgの用量で投与される、実施形態1に記載の二重特異性抗体。
【0173】
3.二重特異性抗体が48mgの用量で投与される、実施形態1に記載の二重特異性抗体。
【0174】
4.二重特異性抗体を週に1回投与する(毎週の投与)、実施形態1~3のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0175】
5.前記毎週の投与が2.5回の28日サイクルにわたって行われる、実施形態4に記載の二重特異性抗体。
【0176】
6.前記毎週の投与の後、前記二重特異性抗体を2週間に1回投与する(隔週の投与)、実施形態4又は5に記載の二重特異性抗体。
【0177】
7.前記隔週の投与が6回の28日サイクルで行われる、実施形態6に記載の二重特異性抗体。
【0178】
8.前記隔週の投与の後、前記二重特性抗体を4週間に1回投与する、実施形態6又は7記載の二重特異性抗体。
【0179】
9.12~60mgの第1の毎週用量を投与する前に、前記二重特異性抗体のプライミング用量を前記28日サイクルのサイクル1で投与する、実施形態4~8のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0180】
10.前記プライミング用量が、12~60mgの前記第1の毎週用量を投与する2週間前に投与される、実施形態9に記載の二重特異性抗体。
【0181】
11.前記プライミング用量が0.05~0.35mgの範囲である、実施形態9又は10記載の二重特異性抗体。
【0182】
12.前記プライミング用量が0.16mg又は約0.16mgである、実施形態9~11のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0183】
13.前記プライミング用量を投与した後、12~60mgの前記第1の毎週用量を投与する前に、前記二重特異性抗体の中間用量を投与する、実施形態9~12のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0184】
14.前記プライミング用量を1日目に投与し、前記中間用量を8日目に投与した後、サイクル1の15及び22日目に12~60mgの前記第1の毎週用量を投与する、実施形態13に記載の二重特異性抗体。
【0185】
15.前記中間用量が0.6~1.2mgの範囲である、実施形態13又は14に記載の二重特異性抗体。
【0186】
16.前記中間用量が0.8mg又は約0.8mgである、実施形態13~15のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0187】
17.前記二重特異性抗体を28日間のサイクルで投与し、
a)サイクル1では、1日目にプライミング用量を投与し、8日目に中間用量を投与し、15及び22日目に12~60mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に12~60mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に12~60mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に12~60mgの全用量を投与する、実施形態13~16のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0188】
18.前記全用量が24mg又は約24mgである、実施形態17に記載の二重特異性抗体。
【0189】
19.前記全用量が48mg又は約48mgである、実施形態17に記載の二重特異性抗体。
【0190】
20.前記二重特異性抗体が皮下投与される、実施形態1~19のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0191】
21.前記CLLが再発性及び/又は難治性CLLである、実施形態1~20のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0192】
22.前記対象がBTK阻害剤に不耐性である、実施形態1~21のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0193】
23.前記対象が抗新生物療法の少なくとも2つの先行ラインを受けたことがある、実施形態1~22のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0194】
24.前記少なくとも2つの事前の抗新生物療法のうちの少なくとも1つがBTK阻害剤による治療を含む、実施形態23に記載の二重特異性抗体。
【0195】
25.前記CLLがBTK阻害剤に対して難治性である、実施形態1~24のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0196】
26.前記CLLがBTK阻害剤による治療の期間中に再発した、実施形態1~25のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0197】
27.前記対象が、前記2つの事前の抗新生物療法を受けた後に難治性及び/又は再発性CLLを有する、実施形態21~26のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0198】
28.前記対象がサイトカイン放出症候群(CRS)の予防法により治療される、実施形態1~27のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0199】
29.前記予防法がコルチコステロイドを前記対象に投与することを含む、実施形態28に記載の二重特異性抗体。
【0200】
30.前記コルチコステロイドが二重特異性抗体と同日に投与される、実施形態28又は29のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0201】
31.前記コルチコステロイドが、二重特異性抗体の投与後2日目、3日目及び4日目に更に投与される、実施形態30に記載の二重特異性抗体。
【0202】
32.前記コルチコステロイドがプレドニゾロンである、実施形態29~31のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0203】
33.前記プレドニゾロンが、経口用量を含む100mg又はその等価物の静脈内用量で投与される、実施形態32に記載の二重特異性抗体。
【0204】
34.前記対象に、注射に対する反応を低下させるための前投薬を投与する、実施形態1~33のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0205】
35.前記前投薬が抗ヒスタミン薬を含む、実施形態34に記載の二重特異性抗体。
【0206】
36.前抗ヒスタミン薬がジフェンヒドラミンである、実施形態35に記載の二重特異性抗体。
【0207】
37.前記ジフェンヒドラミンが、50mg又はその等価物の静脈内又は経口用量で投与される、実施形態36に記載の二重特異性抗体。
【0208】
38.前記前投薬が解熱剤を含む、実施形態34~37のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0209】
39.前記解熱剤がアセトアミノフェンである、実施形態38に記載の二重特異性抗体。
【0210】
40.前記アセトアミノフェンが560mg~1000mg又はその等価物の経口用量で投与される、実施形態39に記載の二重特異性抗体。
【0211】
41.前記前投薬が二重特異性抗体と同日に投与される、実施形態34~40のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0212】
42.前記予防法がサイクル1の間に投与される、実施形態28~41のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0213】
43.前記前投薬がサイクル1の間に投与される、実施形態34~42のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0214】
44.前記予防法が、前記対象がサイクル1での二重特異性抗体の最後の投与後にグレード1を超えるCRSを経験するとき、サイクル2の間に投与される、実施形態42又は43に記載の二重特異性抗体。
【0215】
45.前記予防法が、前のサイクルの二重特異性抗体の最後の投与において前記対象がグレード1を超えるCRSを経験するとき、後続のサイクルにおいて継続される、実施形態44に記載の二重特異性抗体。
【0216】
46.前記前投薬がサイクル2の間に投与される、実施形態34~45のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0217】
47.前記前投薬が、その後のサイクルの間に投与される、実施形態46に記載の二重特異性抗体。
【0218】
48.前記対象がグレード1のCRSを発症する場合、前記対象に抗生物質が投与される、実施形態1~47のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0219】
49.前記対象がグレード2又はグレード3のCRSを発症する場合、前記対象に昇圧剤が投与される、実施形態1~47のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0220】
50.前記対象がグレード4のCRSを発症する場合、前記対象に少なくとも2つの昇圧剤が投与される、実施形態1~47のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0221】
51.前記対象がグレード2、グレード3又はグレード4のCRSを発症する場合、前記対象にトシリズマブが投与される、実施形態1~50のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0222】
52.前記対象にステロイドが更に投与される、実施形態51に記載の二重特異性抗体。
【0223】
53.前記ステロイドがデキサメタゾンである、実施形態52に記載の二重特異性抗体。
【0224】
54.前記ステロイドがメチルプレドニゾロンである、実施形態52に記載の二重特異性抗体。
【0225】
55.前記対象がトシリズマブに対して難治性である場合、トシリズマブが抗IL-6抗体(例えば、シルツキシマブ)に切り替えられる、実施形態51~54のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0226】
56.前記対象がトシリズマブに対して難治性である場合、トシリズマブがIL-1Rアンタゴニスト(例えば、アナキンラ)に切り替えられる、実施形態51~54のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0227】
57.前記対象が腫瘍崩壊症候群(TLS)の予防法によって治療される、実施形態1~56のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0228】
58.前記TLSの予防法が、前記二重特異性抗体の投与前に1つ以上の尿酸還元剤を投与することを含む、実施形態57に記載の二重特異性抗体。
【0229】
59.前記1つ以上の尿酸還元剤が、ラスブリカーゼ及び/又はアロプリノールを含む、実施形態58に記載の二重特異性抗体。
【0230】
60.前記対象が完全奏効、部分奏効、又は安定疾患を達成する、実施形態1~59のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0231】
61.(i)前記第1の抗原結合領域が、それぞれ配列番号1、2及び3に示されるアミノ酸配列を含むVHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3と、それぞれ配列番号4、配列GTN及び配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むVLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3とを含み、
(ii)前記第2の抗原結合領域が、それぞれ配列番号8、9及び10に示されるアミノ酸配列を含むVHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3と、それぞれ配列番号11、配列DAS、及び配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むVLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3とを含む、
実施形態1~60のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0232】
62.(i)前記第1の抗原結合領域が、配列番号6のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号7のアミノ酸配列を含む前記VL領域とを含み、
(ii)前記第2の抗原結合領域が、配列番号13のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号14のアミノ酸配列を含む前記VL領域とを含む、
実施形態1~61のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0233】
63.前記二重特異性抗体の前記第1の結合アームがヒト化抗体に由来し、好ましくは完全長IgG1、λ(ラムダ)抗体に由来する、実施形態1~62のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0234】
64.前記二重特異性抗体の前記第1の結合アームが、配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むλ軽鎖定常領域を含む、実施形態63に記載の二重特異性抗体。
【0235】
65.前記二重特異性抗体の前記第2の結合アームがヒト抗体に由来し、好ましくは完全長IgG1、κ(κ)抗体に由来する、実施形態1~64のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0236】
66.前記第2の結合アームが、配列番号23に示されるアミノ酸配列を含むκ軽鎖定常領域を含む、実施形態65に記載の二重特異性抗体。
【0237】
67.前記二重特異性抗体が、ヒトIgG1定常領域を有する完全長抗体である、実施形態1~66のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0238】
68.前記二重特異性抗体が、不活性Fc領域を含む、実施形態1~67のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0239】
69.前記二重特異性抗体が第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、前記第1の重鎖及び前記第2の重鎖の両方において、配列番号15の前記ヒトIgG1重鎖定常領域のL234、L235及びD265位に対応する位置のアミノ酸がそれぞれF、E及びAである、実施形態1~68のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0240】
70.前記二重特異性抗体が第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、前記第1の重鎖において、配列番号15の前記ヒトIgG1重鎖定常領域のF405に対応する位置のアミノ酸がLであり、前記第2の重鎖において、配列番号15の前記ヒトIgG1重鎖定常領域のK409に対応する位置のアミノ酸がRであるか、又はその逆である、実施形態1~69のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0241】
71.前記二重特異性抗体が第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、
(i)前記第1及び第2の重鎖の両方において、配列番号15の前記ヒトIgG1重鎖定常領域のL234、L235及びD265位に対応する位置のアミノ酸がそれぞれF、E及びAであり、
(ii)前記第1の重鎖において、配列番号15の前記ヒトIgG1重鎖定常領域のF405に対応する位置のアミノ酸がLであり、前記第2の重鎖において、配列番号15の前記ヒトIgG1重鎖定常領域のK409に対応する位置のアミノ酸がRであるか、又はその逆である、
実施形態1~70のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0242】
72.前記二重特異性抗体が、配列番号19及び20のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、実施形態71に記載の二重特異性抗体。
【0243】
73.前記二重特異性抗体が、それぞれ配列番号24及び25に示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び軽鎖と、それぞれ配列番号26及び27に示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び軽鎖とを含む、実施形態1~72のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0244】
74.前記二重特異性抗体が、それぞれ配列番号24及び25のアミノ酸配列からなる重鎖及び軽鎖と、それぞれ配列番号26及び27のアミノ酸配列からなる重鎖及び軽鎖とを含む、実施形態1~73のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0245】
75.前記二重特異性抗体がエプコリタマブ又はそのバイオシミラーである、実施形態1~74のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0246】
本開示は、以下の実施例によって更に説明されるが、これは更なる限定として解釈されるべきではない。本出願を通して引用される全ての図及び全ての参考文献、Genbank配列、特許及び公開特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0247】
1a.ヒト対象における慢性リンパ性白血病(CLL)を治療する方法であって、
(i)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合し、可変重鎖(VH)領域及び可変軽鎖(VL)領域を含む第1の抗原結合領域を含む第1の結合アームであって、前記VH領域は、配列番号6の前記VH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、前記VL領域は、配列番号7の前記VL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第1の結合アームと、
(ii)ヒトCD20に結合し、VH領域及びVL領域を含む第2の抗原結合領域を含む第2の結合アームであって、前記VH領域が、配列番号13の前記VH領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、前記VL領域が、配列番号14の前記VL領域配列中にあるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、第2の結合アームと、を含む二重特異性抗体を前記対象に投与することを含み、
前記二重特異性抗体が、28日間のサイクルで12~60mgの範囲の用量で投与される、方法。
【0248】
2a.前記二重特異性抗体を24mgの用量で投与する、実施形態1aに記載の方法。
【0249】
3a.前記二重特異性抗体を48mgの用量で投与する、実施形態1aに記載の方法。
【0250】
4a.前記二重特異性抗体を週に1回投与する(毎週の投与)、実施形態1a~3aのいずれか1つに記載の方法。
【0251】
5a.前記毎週の投与が、2.5回の28日サイクルにわたって行われる、実施形態4aに記載の方法。
【0252】
6a.前記毎週の投与の後、前記二重特異性抗体を2週間に1回投与する(隔週の投与)、実施形態4a又は5aに記載の方法。
【0253】
7a.前記隔週の投与が6回の28日サイクルで行われる、実施形態6aに記載の方法。
【0254】
8a.前記隔週の投与の後、前記二重特異性抗体を4週間に1回投与する、実施形態6a又は7aに記載の方法。
【0255】
9a.12~60mgの前記第1の毎週用量を投与する前に、前記二重特異性抗体のプライミング用量を前記28日サイクルのサイクル1で投与する、実施形態4a~8aのいずれか1つに記載の方法。
【0256】
10a.前記プライミング用量が、12~60mgの前記第1の毎週用量を投与する2週間前に投与される、実施形態9aに記載の方法。
【0257】
11a.前記プライミング用量が0.05~0.35mgの範囲である、実施形態9a又は10aに記載の方法。
【0258】
12 a.前記プライミング用量が0.16mg又は約0.16mgである、実施形態9a~11aのいずれか1つに記載の方法。
【0259】
13a.前記プライミング用量を投与した後、12~60mgの前記第1の毎週用量を投与する前に、前記二重特異性抗体の中間用量を投与する、実施形態9a~12aのいずれか1つに記載の方法。
【0260】
14a.前記プライミング用量を1日目に投与し、前記中間用量を8日目に投与した後、サイクル1の15及び22日目に12~60mgの前記第1の毎週用量を投与する、実施形態13aに記載の方法。
【0261】
15a.前記中間用量が0.6~1.2mgの範囲である、実施形態13a又は14aに記載の方法。
【0262】
16a.前記中間用量が0.8mg又は約0.8mgである、実施形態13a~15aのいずれか1つに記載の方法。
【0263】
17a.前記二重特異性抗体を28日間のサイクルで投与し、
a)サイクル1では、1日目にプライミング用量を投与し、8日目に中間用量を投与し、15及び22日目に12~60mgの全用量を投与し、
b)サイクル2~3では、1、8、15、及び22日目に12~60mgの全用量を投与し、
c)サイクル4~9では、1及び15日目に12~60mgの全用量を投与し、
d)サイクル10及びその後のサイクルでは、1日目に12~60mgの全用量を投与する、実施形態13a~16aのいずれか1つに記載の方法。
【0264】
18a.前記全用量が24mg又は約24mgである、実施形態17aに記載の方法。
【0265】
19a.前記全用量が48mg又は約48mgである、実施形態17aに記載の方法。
【0266】
20a.前記二重特異性抗体が皮下投与される、実施形態1a~19aのいずれか1つに記載の方法。
【0267】
21a.前記CLLが再発性及び/又は難治性CLLである、実施形態1a~20aのいずれか1つに記載の方法。
【0268】
22a.前記対象がBTK阻害剤に不耐性である、実施形態1~21aのいずれか1つに記載の方法。
【0269】
23a.前記対象が抗新生物療法の少なくとも2つの先行ラインを受けたことがある、実施形態1a~22aのいずれか1つに記載の方法。
【0270】
24a.前記少なくとも2つの事前の抗新生物療法のうちの少なくとも1つがBTK阻害剤による治療を含む、実施形態23aに記載の方法。
【0271】
25a.前記CLLがBTK阻害剤に対して難治性である、実施形態1a~24aのいずれか1つに記載の方法。
【0272】
26a.前記CLLがBTK阻害剤による治療中に再発した、実施形態1a~25aのいずれか1つに記載の方法。
【0273】
27a.前記対象が、前記2つの事前の抗新生物療法を受けた後に難治性及び/又は再発性CLLを有する、実施形態21a~26aのいずれか1つに記載の方法。
【0274】
28a.前記対象がサイトカイン放出症候群(CRS)の予防法により治療される、実施形態1a~27aのいずれか1つに記載の方法。
【0275】
29a.前記予防法がコルチコステロイドを前記対象に投与することを含む、実施形態28aに記載の方法。
【0276】
30a.前記コルチコステロイドが二重特異性抗体と同日に投与される、実施形態28a又は29aに記載の方法。
【0277】
31a.前記コルチコステロイドが、二重特異性抗体の投与後2日目、3日目及び4日目に更に投与される、実施形態30aに記載の方法。
【0278】
32a.前記コルチコステロイドがプレドニゾロンである、実施形態29a~31aのいずれか1つに記載の方法。
【0279】
33a.前記プレドニゾロンが、経口用量を含む100mg又はその等価物の静脈内用量で投与される、実施形態32aに記載の方法。
【0280】
34a.前記対象に、注射に対する反応を低下させるための前投薬を投与する、実施形態1a~33aのいずれか1つに記載の方法。
【0281】
35a.前記前投薬が抗ヒスタミン剤を含む、実施形態34aに記載の方法。
【0282】
36a.前記抗ヒスタミン剤がジフェンヒドラミンである、実施形態35aに記載の方法。
【0283】
37a.前記ジフェンヒドラミンが、50mg又はその等価物の静脈内又は経口用量で投与される、実施形態36aに記載の方法。
【0284】
38a.前記前投薬が解熱剤を含む、実施形態34a~37aのいずれか1つに記載の方法。
【0285】
39a.前記解熱薬がアセトアミノフェンである、実施形態38に記載の方法。
【0286】
40a.前記アセトアミノフェンが560mg~1000mg又はその等価物の経口用量で投与される、実施形態39に記載の方法。
【0287】
41a.前記前投薬が二重特異性抗体と同日に投与される、実施形態34a~40aのいずれか1つに記載の方法。
【0288】
42a前記予防法がサイクル1の間に投与される、実施形態28a~41aいずれか1つに記載の方法。
【0289】
43a.前記前投薬がサイクル1の間に投与される、実施形態34a~42aのいずれか1つに記載の方法。
【0290】
44a.前記予防法が、前記対象がサイクル1での二重特異性抗体の最後の投与後にグレード1を超えるCRSを経験するとき、サイクル2の間に投与される、実施形態42a又は43aに記載の方法。
【0291】
45a.前記予防法が、前のサイクルの二重特異性抗体の最後の投与において前記対象がグレード1を超えるCRSを経験するとき、後続のサイクルにおいて継続される、実施形態44aに記載の方法。
【0292】
46a.前記前投薬がサイクル2の間に投与される、実施形態34a~45aのいずれか1つに記載の方法。
【0293】
47a.前記前投薬が、その後のサイクルの間に投与される、実施形態46aに記載の方法。
【0294】
48a.前記対象がグレード1のCRSを発症する場合、前記対象に抗生物質が投与される、実施形態1a~47aのいずれか1つに記載の方法。
【0295】
49a.前記対象がグレード2又はグレード3のCRSを発症する場合、前記対象に昇圧剤が投与される、実施形態1a~47aのいずれか1つに記載の方法。
【0296】
50a.前記対象がグレード4のCRSを発症する場合、前記対象に少なくとも2つの昇圧剤が投与される、実施形態1a~47aのいずれか1つに記載の方法。
【0297】
51a.前記対象がグレード2、グレード3又はグレード4のCRSを発症する場合、前記対象にトシリズマブが投与される、実施形態1a~50aのいずれか1つに記載の方法。
【0298】
52a.前記対象にステロイドが更に投与される、実施形態51aに記載の方法。
【0299】
53a.前記ステロイドがデキサメタゾンである、実施形態52aに記載の方法。
【0300】
54a.前記ステロイドがメチルプレドニゾロンである、実施形態52aに記載の方法。
【0301】
55a.前記対象がトシリズマブに対して難治性である場合、トシリズマブが抗IL-6抗体(例えば、シルツキシマブ)に切り替えられる、実施形態51a~54aのいずれか1つに記載の方法。
【0302】
56a.前記対象がトシリズマブに対して難治性である場合、トシリズマブがIL-1Rアンタゴニスト(例えば、アナキンラ)に切り替えられる、実施形態51a~54aのいずれか1つに記載の方法。
【0303】
57a.前記対象が腫瘍崩壊症候群(TLS)の予防法によって治療される、実施形態1a~56aのいずれか1つに記載の方法。
【0304】
58a.前記TLSの予防法が、前記二重特異性抗体の投与前に1つ以上の尿酸還元剤を投与することを含む、実施形態57aに記載の方法。
【0305】
59a.前記1つ以上の尿酸還元剤が、ラスブリカーゼ及び/又はアロプリノールを含む、実施形態58aに記載の方法。
【0306】
60a.前記対象が完全奏効、部分奏効、又は安定疾患を達成する、実施形態1a~59aのいずれか1つに記載の方法。
【0307】
61a.(i)前記第1の抗原結合領域が、それぞれ配列番号1、2及び3に示されるアミノ酸配列を含むVHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3と、それぞれ配列番号4、配列GTN及び配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むVLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3とを含み、
(ii)前記第2の抗原結合領域が、それぞれ配列番号8、9及び10に示されるアミノ酸配列を含むVHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3と、それぞれ配列番号11、配列DAS、及び配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むVLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3とを含む、
実施形態1a~60aのいずれか1つに記載の方法。
【0308】
62a.(i)前記第1の抗原結合領域が、配列番号6のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号7のアミノ酸配列を含む前記VL領域とを含み、
(ii)前記第2の抗原結合領域が、配列番号13のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号14のアミノ酸配列を含む前記VL領域とを含む、
実施形態1a~61aのいずれか1つに記載の方法。
【0309】
63a.前記二重特異性抗体の前記第1の結合アームがヒト化抗体に由来し、好ましくは完全長IgG1、λ(ラムダ)抗体に由来する、実施形態1a~62aのいずれか1つに記載の方法。
【0310】
64a.前記二重特異性抗体の前記第1の結合アームが、配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むλ軽鎖定常領域を含む、実施形態63aに記載の方法。
【0311】
65a.前記二重特異性抗体の前記第2の結合アームがヒト抗体に由来し、好ましくは完全長IgG1、κ(カッパ)抗体に由来する、実施形態1a~64aのいずれか1つに記載の方法。
【0312】
66a.前記第2の結合アームが、配列番号23に示されるアミノ酸配列を含むκ軽鎖定常領域を含む、実施形態65aに記載の方法。
【0313】
67a.前記二重特異性抗体が、ヒトIgG1定常領域を有する完全長抗体である、実施形態1a~66aのいずれか1つに記載の方法。
【0314】
68a.前記二重特異性抗体が不活性Fc領域を含む、実施形態1a~67aのいずれか1つに記載の方法。
【0315】
69a.前記二重特異性抗体が第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、前記第1の重鎖及び前記第2の重鎖の両方において、配列番号15の前記ヒトIgG1重鎖定常領域のL234、L235及びD265位に対応する位置のアミノ酸がそれぞれF、E及びAである、実施形態1a~68aのいずれか1つに記載の方法。
【0316】
70a.前記二重特異性抗体が第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、前記第1の重鎖において、配列番号15の前記ヒトIgG1重鎖定常領域のF405に対応する位置のアミノ酸がLであり、前記第2の重鎖において、配列番号15の前記ヒトIgG1重鎖定常領域のK409に対応する位置のアミノ酸がRであるか、又はその逆である、実施形態1a~69aのいずれか1つに記載の方法。
【0317】
71a.前記二重特異性抗体が第1の重鎖及び第2の重鎖を含み、
(i)前記第1及び第2の重鎖の両方において、配列番号15の前記ヒトIgG1重鎖定常領域のL234、L235及びD265位に対応する位置のアミノ酸がそれぞれF、E及びAであり、
(ii)前記第1の重鎖において、配列番号15の前記ヒトIgG1重鎖定常領域のF405に対応する位置のアミノ酸がLであり、前記第2の重鎖において、配列番号15の前記ヒトIgG1重鎖定常領域のK409に対応する位置のアミノ酸がRであるか、又はその逆である、
実施形態1a~70aのいずれか1つに記載の方法。
【0318】
72a.前記二重特異性抗体が、配列番号19及び20のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む、実施形態71aに記載の方法。
【0319】
73a.前記二重特異性抗体が、それぞれ配列番号24及び25に示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び軽鎖と、それぞれ配列番号26及び27に示されるアミノ酸配列を含む重鎖及び軽鎖とを含む、実施形態1a~72aのいずれか1つに記載の方法。
【0320】
74a.前記二重特異性抗体が、それぞれ配列番号24及び25のアミノ酸配列からなる重鎖及び軽鎖と、それぞれ配列番号26及び27のアミノ酸配列からなる重鎖及び軽鎖とを含む、実施形態1a~73aのいずれか1つに記載の方法。
【0321】
75a.前記二重特異性抗体がエプコリタマブ又はそのバイオシミラーである、実施形態1a~74aのいずれか1つに記載の方法。
【0322】
[実施例]
DuoBody-CD3xCD20
DuoBody-CD3xCD20は、T細胞抗原CD3及びB細胞抗原CD20を認識するbsAbである。DuoBody-CD3xCD20は、CD20発現細胞の強力なT細胞媒介殺傷を引き起こす。DuoBody-CD3xCD20は、規則的なIgG1構造を有する。
【0323】
2つの親抗体、IgG1-CD3-FEAL、それぞれ配列番号24及び25に記載の重鎖及び軽鎖配列を有するヒト化IgG1λ、CD3ε特異的抗体、並びにそれぞれ配列番号26及び27に記載の重鎖及び軽鎖配列を有するヒトIgG1κCD20特異的抗体7D8に由来するIgG1-CD20-FEARを、別々の生物学的中間体として製造した。各親抗体は、DuoBody分子の生成に必要なCH3ドメイン中の相補的突然変異の1つを含有する(それぞれF405L及びK409R)。親抗体は、Fc領域に3つの更なる変異を含んでいた(L234F、L235E及びD265A;FEA)。標準的な浮遊細胞培養及び精製技術を使用して、哺乳動物チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株において親抗体を産生した。その後、DuoBody-CD3xCD20を、制御されたFabアーム交換(cFAE)プロセスによって製造した(Labrijn et al.2013,Labrijn et al.2014,Gramer et al.2013)。親抗体を混合し、制御された還元条件に供する。これは、再酸化下で再集合する親抗体の分離をもたらす。このようにして、DuoBody-CD3xCD20の高純度調製物(約93~95%)を得た。更にポリッシュ(polishing)/精製した後、純度100%に近い最終生成物を得た。DuoBody-CD3xCD20濃度を、理論吸光係数ε=1.597mL・mg-1cm-1を使用して、280nmでの吸光度によって測定した。本製品は、エプコリタマブ(epcoritamab)の国際商標名を受けている。
【0324】
エプコリタマブは、皮下(SC)注射用溶液の濃縮物として供給される、無色~わずかに黄色の滅菌透明溶液として調製される(5mg/mL又は60mg/mL)。エプコリタマブは、緩衝液及び等張化剤を含有する。製剤化された製品中の全ての賦形剤及びその量は、皮下注射製品について薬学的に許容され得る。適切な用量は、皮下注射に対して約1mLの体積に再構成される。
【0325】
[実施例1]
CLL患者から得られたCD4+及びCD8+T細胞のエプコリタマブ誘発活性化並びにB細胞の細胞傷害性
CLL患者は、エプコリタマブの抗腫瘍活性に潜在的に影響を及ぼし得る内因性T細胞免疫機能障害を有することが多い。この実験は、エプコリタマブがCLL患者由来のT細胞を活性化し、B細胞に対する細胞傷害性を誘導することができるかどうかを決定するために行われた。
【0326】
簡潔には、市販のCLL患者PBMCを、健常ドナー(HD)PBMC(患者:健常ドナー細胞1:5の比)及びエプコリタマブと、又はCD3アーム若しくはCD20アームのいずれか及び非結合対照アーム(それぞれbsIgG1-CD3xctrl及びbsIgG1-ctrlxCD20(すなわち、不活性Fcを有する)を含む二重特異性抗体と24時間共培養した。HD PBMCを添加して、CLL患者由来PBMCの生存率を改善し、CLL患者由来PBMCと区別できるようにCFSEで標識した。CD69発現を使用して、(A)CD4+及び(B)CD8+T細胞活性化を評価した。エプコリタマブによって誘導された細胞傷害性の尺度として、B細胞生存率(%CD4-CD8-CD22+細胞が残る)を分析した。
【0327】
図1に示されるように、エプコリタマブは、CLL及びHD CD4+及びCD8+T細胞の両方の活性化を誘導した(パネルA及びBを参照)。CD4+T細胞の場合、HD T細胞はCLL T細胞よりも効率的に活性化された(パネルA:左のグラフと右のグラフとを比較して参照されたい。エプコリタマブは、CLL患者由来PBMCと比較して、健常ドナー由来PBMCにおいてCD69のより高い%までCD4+T細胞活性化を誘導した)。エプコリタマブは、CLL及びHDD CD8+T細胞の両方を同程度に活性化した(パネルBを参照されたい。両方のグラフの上の線は、エプコリタマブを表す)。
【0328】
エプコリタマブは、CLL及びHD B細胞の両方のT細胞媒介性細胞傷害を誘導し、CLL B細胞がT細胞媒介性細胞傷害に感受性であることを示した(パネルCを参照されたい。エプコリタマブは、用量応答曲線に従ってB細胞の生存率を低下させた)。これらのデータは、エプコリタマブがCD4+及びCD8+T細胞の両方を活性化し、CLL患者からのB細胞の死滅を誘導することを実証している。
【0329】
[実施例2]
再発性/難治性慢性リンパ性白血病におけるエプコリタマブのフェーズ1b/2非盲検安全性及び有効性試験
再発性及び/又は難治性(R/R)慢性リンパ性白血病(CLL)を有する18歳以上の対象における単剤エプコリタマブの安全性、忍容性、PK、薬力学、免疫原性及び予備的有効性を評価するために、非盲検2パート(用量漸増及び拡大)多施設試験を行う。
【0330】
エプコリタマブを用いた進行中の臨床試験の概要
エプコリタマブは現在、R/R B-NHLの治療のための臨床試験中である(ClinicalTrials.gov識別番号:NCT03625037)。予備的データは、R/R B-NHL患者において60mgを含む少なくとも48mgまでの用量で薬物が忍容され、好ましい安全性プロファイルを有し、用量制限毒性は報告されていないことを示唆している。
【0331】
目的
用量漸増
用量漸増パートの主な目的は、R/R CLLを有する対象におけるエプコリタマブの推奨されるフェーズ2用量(RP2D)及び最大耐用量(MTD)(エンドポイント:用量制限毒性(DLT)の出現)を特定し、安全性及び忍容性(エンドポイント:有害事象(AE)、重篤な有害事象(SAE)、CRS、ICAN、及びTLSの出現及び重症度、並びに用量中断、用量遅延、及び用量強度の出現)を評価することである。
【0332】
用量漸増パートの副次的な目的には、エプコリタマブのPK特性を特徴付けること(エンドポイント:クリアランス、分布容積及びAUC0-last及びAUC0-x、Cmax、Tmax、投与前値、並びに半減期を含むPKパラメータ)、エプコリタマブの有効性及び作用機序に関連する薬力学マーカーを評価すること(エンドポイント:血液試料中の薬力学マーカー)、エプコリタマブの免疫原性を評価すること(エンドポイント:エプコリタマブに対する抗薬物抗体(ADA)の出現)、及びエプコリタマブの予備的抗腫瘍活性を評定すること(エンドポイント:全奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、奏効に至るまでの期間(TTR)、無増悪生存期間(PFS)及び全生存期間(OS))が含まれる。
【0333】
用量漸増パートの探索目的には、エプコリタマブに対する臨床応答を予測するバイオマーカーを評価すること(エンドポイント:CD20発現、免疫集団、表現型及び機能並びに血液の評価)、並びに末梢血及び骨髄における微小残存病変(MRD)状態を評定すること(エンドポイント:検出不能なMRDの出現)が含まれる。
【0334】
拡大
拡大パートの主な目的は、エプコリタマブの予備的有効性を評定することである(エンドポイント:ORR)。
【0335】
拡大パートの副次的目的には、エプコリタマブの予備的有効性の評価(エンドポイント:DOR、TTR、PFS、及びOS)、末梢血及び骨髄におけるMRD状態の評定(エンドポイント:検出不能なMRDの発生)、エプコリタマブの安全性及び忍容性の評価(エンドポイント:エンドポイント:AE、SAE、CRS、ICAN、及びTLSの発生及び重症度、並びに用量中断、用量遅延、及び用量強度の出現)、エプコリタマブのPKプロフィール及び薬力学プロフィールの確立(エンドポイント:PKパラメータ及び薬力学パラメータ)、並びにエプコリタマブの免疫原性の評価(エンドポイント:エプコリタマブに対するADAの出現)が含まれる。
【0336】
拡大パートの探索目的には、エプコリタマブに対する臨床応答を予測するバイオマーカーの評価が含まれる(エンドポイント:CD20の発現並びに免疫集団、表現型及び機能、並びに血液の評価)。
【0337】
研究計画の概要
試験は、用量漸増(パート1)及び拡大(パート2)の2つのパートで行われる。全体的な試験計画の概略図を図2に示す。両パートは、スクリーニング期間(第1のサイクル1日目の前の最大21日間)、治療期間(第1のサイクル1日目からエプコリタマブの中止まで)、安全性追跡調査(エプコリタマブの最後の投与後60日間)及び生存状態の追跡調査からなる。
【0338】
パート1及びパート2の両方において、エプコリタマブは、以下に示されるように、1つ以上の中止基準が満たされるまで、4週間サイクル(すなわち、28日間)で皮下(SC)注射として投与される。
【0339】
・サイクル1~3:1、8、15及び22日目(QW)
・サイクル4~9:1日目及び15日目(Q2W)
・サイクル10以降:1日目(Q4W)
CRSの可能性を軽減するために、ステップアップ投薬法(step-up dosing method)を使用する:サイクル1の1日目にプライミング用量、続いてサイクル1の8日目に中間用量、次いでサイクル1の15及び22日目に全用量、そしてその後のサイクルでの全用量。
【0340】
パート1(用量漸増)では、改変3+3計画を用いて、R/R CLLを有する対象においてエプコリタマブを試験する。DLTを第1の治療サイクル中(すなわち、28日間)に評価する。RP2Dを同定した後、単剤エプコリタマブの予備的有効性を、安全性、忍容性、薬物動態(PK)、薬力学、及びパート2(拡大)におけるバイオマーカーと共に評定する。
【0341】
用量漸増(パート1)
用量漸増パートは、変更された3+3計画を実施する。エプコリタマブは、24mg及び48mgの2つの全用量レベルで調査される。ステップアップ投薬レジメンを適用する:0.16mg/0.8mg/24mg及び0.16mg/0.8mg/48mg(プライミング/中間/全用量)。新たなデータに基づいて、中間用量及び投薬レジメンを含む追加の用量を検討してもよい。各用量レベルで、3人の対象を最初に治療する。表3に従って指定された漸増規則に基づいて、現在の用量レベルで3人の追加の対象が必要とされ得るか、又は3人の対象が異なる用量レベルで治療される。少なくとも6人の対象がパート1に登録される。対象を第1の治療サイクル中にDLTについてモニターする(すなわち、28日間)。
【表3】
【0342】
DLT評価可能ではない対象を交換することができ、用量レベルがRP2Dとして特定されるためには少なくとも6人の対象が必要である。24mg未満(例えば、12mg)又は48mg超(例えば、60mg)のいずれかの更なる全用量レベルを調べることができる。
【0343】
用量レベルの全ての対象がDLTモニタリング期間を完了した後(すなわち、サイクル1;28日間)、次の用量レベルを知らせるために、利用可能な全てのデータが評価される(安全性、PK、薬力学、及び免疫原性データを含むが、これらに限定されない)。
【0344】
用量漸増は、以下の場合に停止する:
・調査すべき最低用量レベルにおいて、決定は、漸増規則に従って、却下するか、漸減するか、又は同じ用量レベルを維持する
・調査すべき最高用量レベルにおいて、決定は、漸増規則に従って漸増するか、又は同じ用量レベルを維持する
・現在の用量レベルでは、決定は、漸増規則に従って漸増することになるが、用量の漸減につながるより高い用量レベルが評価されているか、又は決定は、漸増規則に従って漸減することになるが、用量の漸増につながるより低い用量レベルが評価されている
MTDは、最大でも対象の1/3において観察されるDLTを伴う調査された最高用量レベルとして定義される。R/R CLLのRP2Dは、用量レベルが安全かつ忍容性であることが判明した場合、48mgに設定される。安全性(例えば、有害事象(AE)及び安全性検査値、並びにDLT評価期間の終了後に行われた観察)、薬物動態、薬力学、及び予備的有効性を含むデータ全体が、拡大のための更なる開発の指針となる。
【0345】
拡大(パートII)
RP2Dが確立されると、拡大パートが始まる。拡大パートは、BTK阻害剤(例えば、イブルチニブ)を含む以前の2つ先行ラインの全身抗新生物療法で以前に治療されたか、又はBTK阻害剤に不耐性のR/R CLLを有する約20人の対象を登録する。R/R CLL対象は、パート1で特定されたRP2Dで治療される。拡大パートの主要な有効性エンドポイントは、iwCLL 2018基準を用いて評定されるORRである(表2)。ORRは、R/R CLLを有する対象の有効性を評価するための広く受け入れられている応答エンドポイントである。副次的有効性エンドポイントには、DOR、TTR、PFS及びOSが含まれる。MRD陰性状態の出現も、副次的有効性エンドポイントとして評価する。MRD評定は、治療が実施されている間又は治療が実施された後のいずれかに寛解状態にある対象に、いくつの癌細胞が依然として残っているかを示す。拡大パートの安全性エンドポイントには、AE/SAEの発生率及び重症度、腫瘍崩壊症候群(TLS)、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)及びCRSの出現及び重症度、並びに治療中断及び遅延の発生が含まれる。
【0346】
選択基準
1.対象は少なくとも18歳でなければならない。
【0347】
2.以下の基準の少なくとも1つを満たす治療を必要とする活動性CLL疾患:
a.貧血及び/又は血小板減少症の発症又は悪化によって明らかにされる進行性骨髄不全の証拠
b.広範囲(すなわち、左の肋骨縁の下6cm以上)又は進行性若しくは症候性の脾腫 c.広範なリンパ節(すなわち、最長直径が10cm以上)又は進行性若しくは症候性のリンパ節腫脹
d.2ヶ月の期間にわたって50%以上の増加を伴う進行性リンパ球増加症、又はリンパ球倍加時間(LDT)が6ヶ月未満
e.コルチコステロイドにあまり応答しない貧血又は血小板減少症を含む自己免疫合併症
f.症候性又は機能性のリンパ節外病変(例えば、皮膚、腎臓、肺、脊椎)
g.以下のいずれかによって定義される疾患関連症状:
〇過去6ヶ月以内の10%以上の意図しない体重減少
〇著しい疲労
〇感染の証拠のない2週間以上の38.0℃以上(100.5°F)の発熱。
【0348】
〇感染の証拠がない1ヶ月以上の寝汗
3.BTK阻害剤(例えば、イブルチニブ)による治療(又はそれに不耐性である)を含む、全身性抗腫瘍療法の少なくとも2つの先行ラインを受けた後のR/R CLL。再発は、6ヶ月以上にわたってCR又はPRを以前に達成した対象における疾患進行の証拠として定義される。難治性疾患は、治療失敗(CR又はPRを達成しない)、又は治療の最後の用量から6ヶ月以内の進行として定義される。
【0349】
4.以下の基準の少なくとも1つを有する測定可能な疾患:
a.5×10/L(5,000個/μL)以上の末梢血中Bリンパ球
b.測定可能なリンパ節症及び/又は器官肥大の存在
5.ECOGパフォーマンスステータススコア0又は1
6.CD20陽性のスクリーニングフローサイトメトリーの証拠
7.以下の許容可能な実験パラメータを有する:
【表4】
【0350】
8.エプコリタマブの初回投与前の2週間以内に、プレドニゾン250mgに等価な量未満のコルチコステロイドの累積投与を受けた
9.対象は、スクリーニング時に新鮮な骨髄材料が利用可能でなければならない。
10.CRS/TLSに対する予防法を行わなければならない。
11.対象は、プロトコルに規定された禁止事項及び制限を遵守する意思及び能力を有していなければならない。
【0351】
除外基準
1.CLLの侵襲性非ホジキンリンパ腫への形質転換
2.対象はCD3×CD20二重特異性抗体による事前治療を受けた
3.対象は、任意の事前の同種HSCT又は固形臓器移植を受けた
4.対象は、エプコリタマブの初回用量の前に、抗CD20療法、放射性コンジュゲート若しくは毒素コンジュゲート抗体、又はCAR T細胞療法を含む抗癌生物製剤による治療を4週間以内又は5半減期以内のいずれか短い方で受けた。
【0352】
5.対象は、エプコリタマブの初回用量から2週間以内に化学療法又は放射線療法を受けた。
【0353】
6.対象は、エプコリタマブの初回用量の前に、4週間以内又は5半減期のいずれか短い方の期間内に治験薬又は侵襲的治験医療機器による治療を受けた。
【0354】
7.対象は、自己免疫疾患、又は永続的若しくは高用量の免疫抑制療法を必要とする他の疾患を有する
8.対象は、限定されないが、以下を含む、制御されない併発疾患を有する:
a.登録時又はエプコリタマブの初回用量前の2週間以内に静脈内抗生物質治療を必要とする進行中の感染又は活動性感染。
【0355】
b.症候性鬱血性心不全(ニューヨーク心臓病学会によって分類されるグレードIII又はIV)、不安定狭心症又は心不整脈
c.過去6ヶ月以内の心筋梗塞、頭蓋内出血、又は脳卒中
9.フリデリシア(Fridericia)の式(QTcF)>480ミリ秒によって補正されたスクリーニング時のベースラインQT間隔を有する
10.対象は、エプコリタマブの初回投与の28日前以内に生ワクチンによるワクチン接種を受けた
11.対象は、脱毛症及び末梢神経障害を除いてベースラインレベル又はグレード1以下に解消していない以前の抗がん療法からの毒性を有する
12.対象はスクリーニングで既知のCNS関与を有する
13.対象は、以下を除いて、包括診断以外の既知の過去又は現在の悪性腫瘍を有する:
a.ステージ1B以下の子宮頸癌
b.非浸潤性基底細胞又は扁平上皮皮膚癌
c.非浸潤性表在性膀胱癌
d.現在のPSAレベルが0.1ng/mL未満の前立腺癌
e.CRの持続期間が2年を超える任意の治癒可能な癌
14.対象は、エプコリタマブ又はその賦形剤に対するアレルギー、過敏症又は不耐性が疑われる
15.対象は尿酸還元薬に耐えることができない
16.対象がスクリーニング前3週間以内に大手術を受けた(例えば、全身麻酔を必要とする)か、又は手術から完全に回復していないか、又は対象が試験に参加すると予想される期間中に大手術が計画されている(又はエプコリタマブの最後の投与後4週間以内);注:予定された外科的処置を局所麻酔下で行う対象は参加してもよい。
【0356】
17.対象は、B型肝炎について既知の病歴/陽性血清学を有する(ワクチン接種による免疫若しくは自然感染の解消、又は免疫グロブリン療法による受動免疫でない限り): a.B型肝炎コア抗原に対する抗体(抗HBc)の陽性試験
b.B型肝炎表面抗原に対する抗体(抗HBs)についての陰性試験。
【0357】
18.治癒していない既知の病歴又は進行中のC型肝炎感染症。
【0358】
19.スクリーニングでHIVについて陽性の対象検査。
【0359】
20.対象は、妊娠中若しくは授乳中の女性、又はこの試験に登録されている間若しくはエプコリタマブの最後の投与後12ヶ月以内に妊娠する予定の女性である。
【0360】
21.対象は、この試験に登録されている間又はエプコリタマブの最後の投与後12ヶ月以内に父親になる予定の男性である。
【0361】
22.対象は、参加が対象にとって最良の利益にならない(例えば、健康な状態を損なう)、又はプロトコルで指定された評定を妨げる、制限する、若しくは混乱させる可能性がある任意の状態を有する。
【0362】
前投薬及びCRS予防法
コルチコステロイド、抗ヒスタミン剤及び解熱剤の4日間の投与は、1サイクル目のエプコリタマブの各用量について潜在的なCRSからの症状の重症度を軽減/予防するために行われる。2サイクル目以降のエプコリタマブの投与については、コルチコステロイドによるCRS予防法は任意である。コルチコステロイド投与は、推奨される用量又は等価な用量で静脈内又は経口経路のいずれかであり得る。
【表5】
【表6】
【0363】
サイトカイン放出症候群の支持療法
CRSは、CRSのASTCT分類に従ってグレード分類され(表7及び8)、CRSの治療については、対象は支持療法を受けるべきである。支持療法としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる。
【0364】
・生理食塩水の注入
・全身性糖質コルチコステロイド、抗ヒスタミン剤、解熱剤
・血圧サポート(バソプレシン、昇圧剤)
・低流量及び高流量の酸素及び陽圧換気のサポート
・IL-6Rに対するモノクローナル抗体、例えばトシリズマブのIV投与
・反復トシリズマブに応答しない場合、IL-6に対するモノクローナル抗体、例えばIVシルツキシマブ。
【表7】
【表8】
【0365】
腫瘍崩壊症候群の予防及び管理
腫瘍崩壊症候群の予防的処置のために、対象は、エプコリタマブの投与前に尿酸還元剤を投与され、アロプリノールは、エプコリタマブの初回用量の少なくとも72時間前に投与され、ラスブリカーゼは、エプコリタマブの開始前に開始される。増加した経口水分補給は、最初の投薬の前に受けるべきであり、投薬中維持される。対象のTLSリスクカテゴリの再評定は、その後の投薬の前に行われる。
【0366】
研究評定
骨髄評定
新鮮な骨髄穿刺液は、スクリーニング時(すなわち、サイクル1の1日目の前の21日間以内)及び完全奏効(CR)時に、又は臨床的に適応がある場合に得られる。新鮮な骨髄生検は、スクリーニング時及びCR若しくは結節性部分奏効(PR)(nPR)時又は臨床的に適応がある場合に得られる。骨髄評価には、形態学的検査及びフローサイトメトリー又は免疫組織化学のいずれかが含まれる。吸引物を含む骨髄生検を得て、(a)iwCLLガイドライン(Hallek et al,Lancet 2018;391:1524-37)による身体検査所見、検査室評価及び放射線学的評価によって支持されるCR又はnPRを確認し、(b)進行が1つのパラメータでのみ示される場合、細胞減少性の進行(すなわち、好中球減少症、貧血及び/又は血小板減少症、並びに自己免疫性及び治療関連の血球減少症と区別する)を確認する。
【0367】
放射線評定
頸部、胸部、腹部及び骨盤の画像化スキャンをスクリーニング(すなわち、エプコリタマブの初回投与前3週間以内)及びその後の応答評定で行う。コントラストを伴うCTスキャンが推奨される撮像モダリティである。MRIは、造影剤を用いたCTが医学的に禁忌である場合、又はCTスキャンの頻度が局所標準を超える場合にのみ使用され得る。MRI検査は、必要な頸部、胸部、腹部、及び骨盤のCTスキャンに取って代わるものではない。必要に応じて、対象の有効性評価を支援するために、追加の画像評定を行ってもよい。
【0368】
骨髄評定
新鮮な骨髄穿刺液は、スクリーニング時(すなわち、サイクル1の1日目の前の21日間以内)及びCR時に、又は臨床的に示されるように得られる。新鮮な骨髄生検は、スクリーニング時及びCR若しくは結節性PR(nPR)時に、又は臨床的に示されるように得られる。骨髄評価には、形態学的検査及びフローサイトメトリー又は免疫組織化学のいずれかが含まれる。吸引物を用いた骨髄生検を得て、(a)理学的検査所見、検査室評価及びX線検査評価によって支持されるiwCLLガイドライン(Hallek et al.、前出)に従ってCR又はnPRを確認し、(b)進行が1つのパラメータでのみ示される場合、細胞減少性の進行(すなわち、好中球減少症、貧血及び/又は血小板減少症、並びに自己免疫性及び治療関連の血球減少症との区別)を確認する。
【0369】
微小残存病変(MRD)評定
MRDを、フローサイトメトリー及び次世代シーケンシングによって血液中で評定する。治療開始後、一定の時点及びCRの時点で血液試料を要求する。探索的分析として、対象がCRに達すると、CRを確認するために収集された吸引物の一部がMRDを評定するために使用される。
【0370】
疾患応答及び進行性疾患の評定
画像評定による腫瘍応答は、治療の継続に関する決定を知らせるために行われる。応答評定は、表2に記載されているように、診断、治療のための適応症、応答評定及びCLLの支持的管理についての改訂iwCLLガイドラインに従って完了する。エンドポイントの定義は以下の通りである:
全奏効率(ORR)は、その後の療法の開始前にPR又はCRの奏効を達成した対象の割合として定義される。
【0371】
奏効に至るまでの期間(TTR)は、エプコリタマブの初回用量とPR又はCRの最初の記録との間の時間として、奏効者の間で定義される。
【0372】
奏効期間(DOR)は、奏効者の間では、PR又はCRの最初の記録から疾患進行又は死亡のいずれか早い方の日付までの時間として定義される。
【0373】
無増悪生存期間(PFS)は、エプコリタマブの第1の投薬日及び疾患の進行又は死亡の日のいずれか早い方からの時間と定義される。
【0374】
全生存期間(OS)は、エプコリタマブの第1の投薬日及び死亡日からの時間として定義される。
【0375】
MRD陰性率は、後続の治療の開始前に、特定の閾値に従って少なくとも1つの検出不能なMRD結果を有する対象の割合として定義される。
【0376】
臨床安全性評定
安全性は、有害事象、臨床検査結果、ECG、バイタルサイン測定値、身体検査所見、及びECOGパフォーマンスステータスを測定することによって評定される。免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(例えば、Lee et al.,Biol Blood Marrow Transplant 2019;25:625-638)、全身症状(B症状)、腫瘍フレア反応、及び生存も評定する。
【0377】
免疫表現型分析
絶対B及びT細胞数を、エプコリタマブ治療に関連する変化をモニターするためにフローサイトメトリーを使用して新鮮な全血で測定する。T細胞の活性化及び疲弊の表現型を、フローサイトメトリー及びマーカーを使用して評価し、そのようなマーカーと、エプコリタマブの薬物標的関与、治療有効性及び/又は安全性との関連を評価する。循環免疫細胞(例えば、T細胞機能を抑制し得る調節性T細胞のレベル)の更なる免疫表現型を、そのようなマーカーとT細胞活性化/疲弊表現型、対象応答、及びエプコリタマブのMOAとの関連を評価するために、フローサイトメトリーを使用して新鮮な全血で決定する。
【0378】
サイトカイン及び内皮活性化マーカーの分析
最初のエプコリタマブ投与後のT細胞活性化は、CRSを引き起こすサイトカイン放出をもたらし得ることから、サイトカインレベルを厳密にモニターする。IL-2、IL15、IL-6、IL-8、IL-10、IFNγ及び/又はTNFα等のサイトカインのレベルを、アレイベースのリガンド結合アッセイを使用して血漿試料中で測定する。そのようなマーカーと治療下で発現したAEとの関連及びエプコリタマブに対するアウトカムを評価するため、更なるサイトカインを決定することもできる。
【0379】
予備的結果:
最初の患者は2020年11月30日に登録された。2021年7月1日現在、R/R CLL患者7名に、エプコリタマブを2つの全用量レベル:24(n=3)及び48mg(n=4)で皮下投与した。6人の患者が用量制限毒性(DLT)評価期間を完了し、5人の患者が応答評定を受けた。患者は、中央値4ラインの事前治療(範囲、2~5)を受けたことがある。7名の患者のうち6名は、del(17p)、TP53変異、又はその両方の低リスク特徴を有していた。7名の患者のうち3名が巨大病変を有していた。24又は48mgではDLTは発生しなかった。最も一般的な治療下で発現したAE(>30%)は、サイトカイン放出症候群(CRS)(100%)、疲労(71%)、注射部位反応(43%)及び悪心(43%)であった。全ての患者が第1のサイクルでCRSを経験したが、CRS事象はグレード2より高くなかった。免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)の症例は観察されなかった。循環腫瘍細胞の存在にもかかわらず、腫瘍崩壊症候群(TLS)は観察されなかった。抗白血病活性が両方の用量レベルで観察されており、5人中3人の患者で部分奏効が認められた。
【0380】
2021年9月8日現在、合計11人のR/R CLL患者が、24mg(N=3)及び48mg(N=8)のエプコリタマブを投与されている。
【0381】
エプコリタマブは、24mg及び48mgの両方で忍容性が高く、最も一般的な治療下で発現する有害事象は、CRS、疲労及び注射部位反応であった。免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)はなかった。高リスクの細胞遺伝学を有するこれらの重度に前処置された患者におけるエプコリタマブの予備的活性が観察されている。6人の反応評価可能な対象の中で、24mgで1人の未確認部分奏効(nPR)及び48mgで2人の部分奏効(PR)があった。これらのデータは予備的であり、検証されておらず、不明確なデータであり、応答データは現場によって完全に入力されたものではなかった。
【0382】
結論:
これらの予備データは、エプコリタマブが、48mgまでの用量レベルでR/R CLLを有する患者において十分に忍容され、高リスク疾患を有する患者において有望な臨床活性を有することを示唆している。
【表9】
【0383】
太字及び下線はFEであり;A;それぞれ、234及び235位;265位;405及び409位に対応するL及びRであり、当該位置はEUナンバリングに従う。可変領域では、IMGT定義に従って注釈付けされた上記CDR領域に下線が引かれている。
図1A
図1B
図1C
図2
【配列表】
2023541858000001.app
【国際調査報告】