(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】不織布基材を含む喫煙製品または電子タバコ製品用フィルタ
(51)【国際特許分類】
A24D 3/08 20060101AFI20230927BHJP
A24D 3/14 20060101ALI20230927BHJP
A24D 3/17 20200101ALI20230927BHJP
【FI】
A24D3/08
A24D3/14
A24D3/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515765
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(85)【翻訳文提出日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2021074948
(87)【国際公開番号】W WO2022053621
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521190440
【氏名又は名称】エスダブリュエム ルクセンブルク
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェルカス、オクサナ
(72)【発明者】
【氏名】ラヴァディ-ランバート、ダイアン
【テーマコード(参考)】
4B045
【Fターム(参考)】
4B045BA02
4B045BB05
4B045BB10
(57)【要約】
本発明は、密度が低く、かつ天然繊維及びバインダを含む不織布基材を含むフィルタに関するものである。このフィルタは、喫煙製品または電子タバコ製品のフィルタに用いることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維及びバインダを含む不織布基材を含むフィルタであって、
前記天然繊維が前記不織布基材の固形分の70%~99%の重量を有し、
前記バインダが前記不織布基材の固形分の1%~30%の重量を有し、
前記不織布基材が10mg/cm
3~60mg/cm
3の密度を有するフィルタ。
【請求項2】
前記不織布基材が700μm~4000μmの厚さを有する、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記天然繊維の長さが1mm~10mmであるように構成される、請求項1または請求項2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記天然繊維が、木質繊維、葉繊維、果実繊維、種子繊維、靭皮繊維、茎繊維、葦繊維、及びそれらの混合物から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記天然繊維が広葉樹パルプ、漂白広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、漂白針葉樹パルプ、針葉樹フラッフパルプ、リヨセル繊維、ビスコース繊維、及びそれらの混合物から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項6】
前記バインダが水溶性バインダであるように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項7】
前記バインダが、多糖類、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール及びそれらの混合物から選択される、請求項6に記載のフィルタ。
【請求項8】
喫煙製品または電子タバコ製品のための、請求項1~7のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のフィルタを備える喫煙製品。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載のフィルタを備える電子タバコ製品。
【請求項11】
不織布基材を含む喫煙製品もしくは電子タバコ製品のためのフィルタの製造方法であって、
a)前記不織布基材から前記不織布基材のロッドを形成するステップと、
b)前記不織布基材の前記ロッドをプラグラップ紙の前記シートで包むステップと、
c)前記プラグラップ紙の前記シートを互いに接合してフィルタ材のロッドを得るべく、接着剤ラインを付着させるステップと、
d)前記フィルタを製造するべく、前記フィルタ材の前記ロッドを切断するステップであって、
前記不織布基材を請求項1から7のいずれか一項に記載のものとするか、または、
i)エアレイド法によって天然繊維からウェブを製造するステップ、
ii)前記バインダを前記ウェブに導入するステップ、及び、
iii)前記不織布基材を得るべく、前記ステップii)において得られた前記ウェブを乾燥させるステップを含む方法によって得られるものであるように構成される方法。
【請求項12】
前記ステップiii)の後かつ前記ステップa)の前に、前記不織布基材をボビン状に圧縮し、スプーリング法によりロール状に形成し、またはフェストゥーンプロセスにより板紙状に堆積させる、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、低密度であり、天然繊維及びバインダ(binder)を含む不織布基材を含むフィルタである。この不織布基材は、エアレイド法によって得ることができる。このフィルタは、喫煙製品または電子タバコ製品(vaping article)のフィルタとして用いられる。
【背景技術】
【0002】
喫煙製品または電子タバコ製品のフィルタは、真円筒形状を有し、通常、プラグラップ紙からなる外包体と、外包体内に配置された基材とを含む。喫煙製品または電子タバコ製品のフィルタは、基材により、ユーザがタバコ粒子を吸入すること防止し、煙またはエアロゾルに含まれるタールなどの有害な粒子状物質を内部に捕捉することを可能にするものである。
【0003】
フィルタは、一般的に、セルロースアセテートから作製されている。このセルロースアセテートフィルタは、ろ過された煙に対してユーザが知覚的に満足できるようなニコチン捕捉性能を有する。さらに、このフィルタは、良好な知覚特性を有するろ過された煙を生成する。その一方で、このセルロースアセテートの基材は、分解が非常に遅く、水にも分散しない。この性質は、フィルタが喫煙製品/電子タバコ製品の喫煙/吸引中に消耗せず、環境中に恒久的に残存することになってしまうため、特に有害である。このように、セルロースアセテート基材は環境に重大な影響を及ぼす。
【0004】
従来のフィルタの環境負荷を抑えるために、セルロースアセテートを紙に置き換えることが提案されている。紙基材は生分解性であるため、急速に劣化する。一方で、紙基材から作製されるフィルタのニコチン捕捉性能では、ユーザがろ過された煙を満足に知覚できない恐れがある。また、紙基材から作製されるフィルタによってろ過された煙は、ユーザにとって好ましくない乾燥味を有する場合がある。したがって、これらの紙基材がもたらすユーザ体験は、セルロースアセテートと比較した場合、あまり満足感を得られるものではない。
【0005】
(技術的な課題)
したがって、セルロースアセテート基材から構成されるフィルタと同程度のニコチン捕捉性能を有し、満足感を得られるユーザ体験を提供し、迅速に分解でき、加えて、水に分散可能なフィルタが求められている。
【0006】
それゆえ、本発明者らは、不織布基材によってこのニーズに応えることが可能であることを見出した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
天然繊維及びバインダを含む不織布基材を含むフィルタであって、天然繊維は不織布基材の固形分の70%~99%、特に80%~98%、より具体的には85%~98%の重量を有し、バインダは不織布基材の固形分の1%~30%、特に2%~20%、より具体的には2%~15%の重量を有し、不織布基材は10mg/cm3~60mg/cm3、特に15mg/cm3~55mg/cm3、より具体的には20mg/cm3~45mg/cm3の密度を有することを特徴とする。
【0008】
有利なことに、本発明のフィルタは、セルロースアセテート基材を含むフィルタの捕捉性能と同程度のニコチン捕捉性能を有する。その結果、ユーザは、本発明のフィルタによってろ過された煙に対して知覚的な満足感を得ることになる。
【0009】
本発明のフィルタの不織布基材はまた、環境中で非常に急速に分解する可能性があり、水に分散可能である。これは、フィルタの環境への負荷が非常に小さいため、特に有利である。
【0010】
さらに、本発明のフィルタによってろ過された煙は、使用者にとって満足感が得られる官能特性を有する。
【0011】
本発明のフィルタの不織布基材はまた、紙基材の場合とは異なり、事前に成形するステップを含むことなく、フィルタの製造を可能にする。したがって、本発明のフィルタを製造する方法は簡略化される。
【0012】
他の態様によれば、不織布基材を含む本発明のフィルタを製造するための方法が提案される。この方法は、a)不織布基材から不織布基材のロッドを形成するステップと、b)不織布基材のロッドをプラグラップ紙のシートで包むステップと、c)プラグラップ紙のシートを互いに接合してフィルタ材のロッドを得るべく、接着剤ラインを付着させるステップと、d)フィルタを製造するべく、フィルタ材のロッドを切断するステップであって、不織布基材を上記のものとするか、または、i)エアレイド法によって天然繊維からウェブを製造するステップ、ii)バインダをウェブに導入するステップ、及び、iii)不織布基材を得るべく、ステップii)において得られたウェブを乾燥させるステップを含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
天然繊維及びバインダを含む不織布基材を含むフィルタが提案される。天然繊維は不織布基材の固形分の70%~99%、特に80%~98%、より具体的には85%~98%の重量を有する。バインダは、不織布基材の固形分の1%~30%、特に2%~20%、より具体的には2%~15%の重量を有する。不織布基材は、10mg/cm3~60mg/cm3、特に15mg/cm3~50mg/cm3、より具体的には20mg/cm3~45mg/cm3の密度を有することを特徴とする。
【0014】
従来の紙基材の300mg/cm3を超える密度と比較して、不織布基材の密度は非常に小さい。
【0015】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、この低密度によって、本発明のフィルタの不織布基材のフィルタ充填力が紙基材の充填力よりも高いと考えている。このより高い充填力により、本発明のフィルタがセルロースアセテート基材を含むフィルタの捕捉性能と同程度のニコチン捕捉性能を有するように、フィルタの不織布基材の量を低減することが可能となる。
【0016】
本願において、「不織布基材(nonwoven substrate)」(「不織布基材(non-woven substrate)」ともいう)は、摩擦、結束(cohesion)及び/もしくは接着(adhesion)によって互いに結合され、かつ規則的もしくはランダムに配向された繊維のウェブまたはプライ(ply)から構成されるシート製品を指す。
【0017】
一般に、不織布基材の密度は、その坪量をその厚さで割ることによって計算される。
【0018】
規格ISO 536:2012に従って、不織布基材の坪量を決定することができる。基材は、測定前に23℃、相対湿度50%で少なくとも16時間調整する。
【0019】
不織布基材の厚さを測定するために、2つの平板状の平行かつ円形の圧力面を有する25cm2の測定ヘッドを備える自重マイクロメータを用いることが可能である。測定中、不織布基材を2つの圧力面の間に10秒間配置する。厚み測定時の圧力面間の圧力は0.5kPaである。基材は、測定前に23℃、相対湿度50%で少なくとも16時間調整する。
【0020】
本発明のフィルタの不織布基材の坪量は、例えば、25g/m2~65g/m2、特に30g/m2~60g/m2、より具体的には35g/m2~55g/m2であってもよい。
【0021】
本発明のフィルタの不織布基材の厚さは、例えば、700μm~4000μm、特に900μm~3000μm、より具体的には1200μm~2500μmであってもよい。
【0022】
ある実施形態によれば、不織布基材は、20mg/cm3~45mg/cm3の密度及び1200μm~2500μmの厚さを有していてもよい。
【0023】
当業者であれば、所望の密度を得るために、不織布基材の坪量及び厚さをどのように適合させるかを知ることができるであろう。
【0024】
本願において、「天然繊維」という語は、その物理的特性を改善するために、任意に化学的処理、物理的処理、またはその両方によって処理された天然由来の繊維を指す。
【0025】
例えば、天然繊維は、木質繊維、葉繊維、果実繊維、種子繊維、靭皮繊維、茎繊維、葦繊維、及びそれらの混合物から選択されてもよく、特に木質繊維、葉繊維、種子繊維、靭皮繊維、及びそれらの混合物から選択されてもよく、より具体的には木質繊維及びそれらの混合物から選択されてもよい。本発明のフィルタの不織布基材に含まれてもよい木質繊維の例としては、広葉樹パルプ、漂白広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、漂白針葉樹パルプ、針葉樹フラッフパルプ、リヨセル繊維(長さ及び単位長さ当たりの質量が較正された可変形状の断面(円形、楕円形、十字形、円、ラメラ断面)を有する繊維を得る目的で、N-メチルモルホリンN-オキシド一水和物に粉砕及び溶解したセルロース繊維で、当業者がその必要に応じて選択可能である)、ビスコース繊維(二硫化炭素(CS2)による水酸基の修飾によってセルロースを溶解し、硫酸(H2SO4)の存在下で沈殿させて得られる繊維で、長さ及び単位長さ当たりの質量が較正された可変形状の断面(円形、楕円形、十字型、円、ラメラ断面)の断面を有する繊維を得る目的で、当業者がその必要に応じて選択可能である)、並びにそれらの混合物、特に広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、針葉樹フラッフパルプ、リヨセル繊維、ビスコース繊維、及びそれらの混合物、より具体的には針葉樹パルプ、針葉樹フラッフパルプ、リヨセル繊維、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0026】
本願において、「靱皮繊維」は、植物の靱皮に含まれる植物繊維を指す。
【0027】
靱皮繊維としては、麻繊維、インド麻繊維、ジュート繊維、ケナフ繊維、葛繊維、コインバイン繊維、亜麻繊維、オクラ繊維、イラクサ繊維、パピルス繊維、ラミー繊維、サイザル繊維、エスパルト繊維並びにこれらの混合物、特に麻繊維、亜麻繊維及びこれらの混合物、より具体的には亜麻繊維が挙げられる。
【0028】
通常、靱皮繊維は事前の処理を実施してもよい。したがって、靱皮繊維としては、綿化(cottonizing)靱皮繊維、個別化(individualized)靱皮繊維、リッティングを受けた靱皮繊維、漂白された靱皮繊維、並びにこれらの混合物であってもよく、特に綿化靱皮繊維、個別化靱皮繊維及びこれらの混合物が挙げられる。
【0029】
本願において、「種子繊維」という語は、植物の種子から得られる繊維を指す。種子繊維の例としては、綿繊維、カポック繊維、ヘチマ繊維、トウワタ繊維、及びそれらの混合物、特にカポック繊維であってもよい。
【0030】
ある実施形態によれば、天然繊維は、針葉樹パルプ、針葉樹フラッフパルプ、特に針葉樹フラッフパルプから選択される。
【0031】
本発明によれば、天然繊維は、1mm~10mm、特に1.5mm~8mm、より具体的には2mm~5mmの長さを有する。
【0032】
エアレイド法は、これらの大きさの天然繊維に特に適している。したがって、本発明のフィルタの不織布基材は、エアレイド法によって得ることが可能である。
【0033】
天然繊維の長さは、投影型顕微鏡を用いて、所望の倍率で顕微鏡により測定することができる。
【0034】
天然繊維は、上述した範囲内の長さを有するように切断されてもよい。用いることができる従来の切断技術としては、天然繊維のギロチン切断や、エアサイクロン式またはスクリーン式の過度に短い(長い)繊維の除去システムを伴う(伴わない)天然繊維の粉砕等である。
【0035】
本願において、「バインダ(binder)」は、不織布基材の結合(consolidation)を可能にする特性を有する化合物を意味する。有利なことに、水溶性バインダが選択される。水溶性とは、バインダが、調整された温度及び攪拌によって水に溶解し、周囲温度において、懸濁液ではなく均質な溶液を形成する性質を指すと理解されたい。バインダは水溶性であるため、このバインダを用いた基材を乾燥させた後、基材は分散可能となる。有利なことに、不織布基材は、室温において60秒未満で水に分散可能である。分散に必要な時間を測定するために、実施例4の実験条件を使用することができる。
【0036】
例えば、バインダは、多糖類、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール(PVOH)及びそれらの混合物から選択することができる。
【0037】
バインダとして用いられる多糖類は、多糖類または多糖誘導体であってもよい。例えば、デンプン、デキストリン、アラビアガム、及びそれらの混合物、特にデンプンをバインダとして用いることができる。
【0038】
例えば、セルロース誘導体は、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、及びそれらの混合物、特にカルボキシメチルセルロースから選択することができる。0.4を超える置換度を有するカルボキシメチルセルロースが特に有利である。通常、置換度は0.6~0.9である。
【0039】
カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属としては、カリウム、ナトリウム、マグネシウムが挙げられる。
【0040】
ポリビニルアルコール、特に加水分解度が99%未満、95%未満、または90%未満のポリビニルアルコールもバインダとして用いることができる。
【0041】
ある具体的な実施形態によれば、不織布基材は、針葉樹フラッフパルプと、デンプン、カルボキシメチルセルロース、またはポリビニルアルコールから選択されるバインダとを含み、針葉樹フラッフパルプは、不織布基材の固形分の85%~95%の重量を有し、バインダは、不織布基材の固形分の5%~15%の重量を有し、20mg/cm3~45mg/cm3の密度を有する。
【0042】
この特に具体的な実施形態の不織布基材は、エアレイド法によって得ることができる。
【0043】
有利なことに、エアレイド法によって得られる本発明のフィルタの不織布基材は、周囲温度において非常に迅速に水中に分散可能である。
【0044】
本発明のフィルタは、上記において定義された本発明の不織布基材を含む喫煙製品または電子タバコ製品のフィルタであってもよい。
【0045】
本願において、「喫煙製品」とは、タバコ及び/または喫煙されることが意図された任意の他の植物を含む製品を指す。例えば、喫煙製品は、機械製造のタバコ、手巻きタバコ(a roll-your-own cigarette)、または自作タバコであってもよい。
【0046】
通常、喫煙製品用のフィルタは、真円筒形状を有し、喫煙製品、特に紙巻タバコ(cigarette)用のプラグラップ紙からなる外包体と、外包体内に配置され、かつ上記において定義した本発明のフィルタの不織布基材とを有する。
【0047】
本願において、「電子タバコ用製品」は、吸引されることを意図したタバコ及び/または任意の他の植物を含む物品であって、当該タバコ/植物を燃焼することなく加熱する装置に挿入されることを意図しており、エアロゾルをユーザに送達することを可能にするものを表す。例えば、電子タバコ用製品は、タバコスティックであってもよい。
【0048】
通常、電子タバコ製品用のフィルタは真円筒形状を有し、電子タバコ製品、特にタバコスティック用のプラグラップ紙からなる外包体と、外包体内に配置され、かつ上記において定義した本発明のフィルタの不織布基材とを有する。
【0049】
本発明のフィルタは、100mg/cm3~200mg/cm3、特に110mg/cm3~175mg/cm3、より具体的には120mg/cm3~160mg/cm3の密度を有していてもよい。
【0050】
通常、フィルタの密度は、フィルタの製造後に、フィルタの質量をその体積で割ることによって測定される。真円筒形状のフィルタの場合、フィルタの体積(Vfilter)は次の式で計算される。Vfilter=π*L*r2。ここで、rはフィルタの半径を表し、Lはフィルタの長さを表す。
【0051】
本発明のフィルタの不織布基材は、フィルタ内で成形されなくてもよい。特に、本発明のフィルタの不織布基材は、フィルタ内でV字形に折り畳まれたり、及び/または圧着されたりしなくてもよい。これは、基材を成形するステップなしでフィルタを製造することを可能にする。したがって、フィルタの製造の簡素化を可能にするため、非常に有利である。
【0052】
他の態様によれば、本発明はまた、上記において定義したフィルタを備える喫煙製品に関する。
【0053】
別の態様によれば、本発明はまた、上記において定義したフィルタを備える電子タバコ用製品にも関する。
【0054】
本発明はまた、フィルタ、特に喫煙製品用のフィルタ、または電子タバコ製品用のフィルタへの、上記において定義した不織布基材の使用に関する。
【0055】
本発明はまた、不織布基材を含む本発明のフィルタを製造するための方法に関し、該方法は、a)不織布基材から不織布基材のロッドを形成するステップと、b)不織布基材のロッドをプラグラップ紙で包むステップと、c)プラグラップ紙のシートを互いに接合して、フィルタ材のロッドを得るべく、接着剤ラインを付着させるステップと、d)フィルタを製造するべく、フィルタ材のロッドを切断するステップであって、不織布基材が上述したものであるか、または、i)エアレイド法によって天然繊維からウェブを製造するステップ、ii)バインダをウェブに導入するステップ、及び、iii)不織布基材を得るべく、ステップii)において得られたウェブを乾燥させるステップを含む方法によって得られるものであるように構成される。
【0056】
不織布基材、天然繊維、及びバインダは、不織布基材に関して上述した通りである。
【0057】
したがって、本発明のフィルタの不織布基材は、エアレイド法によって得ることができる。
【0058】
エアレイド法及びドライレイド法は、ウェブを製造する当業者に既知の2つの異なる従来の方法である。当業者であれば、本発明のフィルタの不織布基材を製造するために、エアレイド法のパラメータをどのように適合させるかを知ることができるであろう。
【0059】
本発明の方法は、製造するステップi)の前に、上述した範囲内の長さを有する天然繊維を得るべく、天然繊維を切断するステップi1)を含んでいてもよい。
【0060】
切断するステップi1)は、天然繊維のギロチン切断や、エアサイクロン式またはスクリーン式の過度に短い(長い)繊維の除去システムを伴う(伴わない)天然繊維の粉砕等の従来の技術により実施することができる。
【0061】
導入するステップii)の間に、バインダの水性分散液がウェブに導入される。この導入は、例えば、サイズプレスによる含浸、スプレーによる噴霧、コーティングまたは印刷による表面の塗布、特に、スプレーを使用した噴霧によって実施されてもよい。有利なことに、噴霧はウェブの両面について行われる。
【0062】
バインダの水性分散液は、当業者に既知の任意の技術によって得ることができる。当業者であれば、本発明の不織布基材のバインダの所望の含有量を得るために、水性分散液中のバインダの濃度をどのように適合させるかを知ることができるであろう。
【0063】
乾燥するステップiii)は、例えば、空気が通過するトンネルまたは赤外線ランプなどの乾燥装置によって実施することができる。
【0064】
この乾燥するステップiii)は、75℃~220℃、特に90℃~200℃、より具体的には、100℃~190℃の温度で実施することができる。これらの範囲内の温度は、有利なことに、この乾燥するステップiii)の時間の最短化を可能にする同時に、不織布基材の天然繊維の劣化を最小限に留めることにより、本発明のプロセスを最適化する。
【0065】
有利なことに、導入するステップii)及び乾燥するステップiii)の組み合わせは、天然繊維の結合を改善することにより、本発明の不織布基材の構造を強化することを可能にする。
【0066】
製造するステップi)で用いられる天然繊維は、天然繊維の混合物であってもよい。この天然繊維の混合物は、製造するステップi)の前に得られていてもよい。
【0067】
このプロセスはまた、製造するステップi)及び導入するステップii)との間に、圧縮ウェブを得るべく、ii1)ウェブを圧縮するステップを含んでいてもよく、この圧縮ウェブは、次いで、ii)導入するステップを受ける。
【0068】
この圧縮するステップii1)は、不織布基材の密度を制御するために、ウェブの厚さを減少させることができる。
【0069】
ある特定の実施形態によれば、該方法は、i)エアレイド法により針葉樹フラッフパルプからウェブを製造するステップと、ii)デンプン、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルアルコールから選択されるバインダの水性分散液を噴霧することにより、該バインダをウェブに導入するステップと、iii)20mg/cm3~45mg/cm3の密度を有し、針葉樹フラッフパルプが不織布基材の固形分の85%~95%の重量を有し、かつデンプンが不織布基材の固形分の5%~15%の重量を有するような不織布基材を得るべく、ステップii)において得られたウェブを乾燥させるステップを含んでいてもよい。
【0070】
必要に応じて、ステップiii)で得られた不織布基材をカレンダー加工してもよい。
【0071】
ステップiii)の後かつステップa)の前に、不織布基材をボビン状に圧縮し、スプーリング法によりロール状に形成し、またはフェストゥーンプロセスにより板紙(paperboard)状に堆積させてもよい。
【0072】
実施例1 不織布基材の製造
【0073】
実施例において、通気度は、「FX3300 Lab Air IV」通気度試験器を用いて測定する。測定では、試験対象のウェブを測定ヘッドの下に配置して、20cm2の領域で200Paの圧力降下でウェブを通過する空気の流れを測定した。通気度は[cm3/cm2/sec]で測定した。各サンプルついて3回測定し、通気度の平均値を表示した。
【0074】
実施例1.1
【0075】
固形分の重量の92%が針葉樹フラッフパルプ、及び固形分の重量の8%がデンプンから構成される不織布基材を、エアレイド法により作製した。
【0076】
針葉樹フラッフパルプを粉砕し、エアレイド法によって形成した布上に堆積させることにより、ウェブを得た。デンプン(Avebe社製、Perfectafilm X115)の固形分0.7%を含む溶液を、ウェブの両面に噴霧する。次いで、噴霧済みのウェブを、180℃~190℃の温度で赤外線及び熱風オーブンによって乾燥する。
【0077】
密度30mg/cm3、厚さ1530μm、坪量46g/m2、及び通気度440cm3,cm-2,秒-1の不織布基材を得た。
【0078】
実施例1.2
【0079】
固形分の重量の85%が針葉樹フラッフパルプ、及び固形分の重量の15%がデンプンから構成される不織布基材を、エアレイド法により作製した。
【0080】
実施例1.1に記載の方法により、37g/m2の不織布基材が得られる。デンプンの固形分1.27%を含む溶液を噴霧する前に、ウェブを1バールの圧力で圧縮した。乾燥後のウェブのバインダ含有量は15%であった。
【0081】
密度41mg/cm3、厚さ900μm、坪量37g/m2、通気度345cm3・cm-2・sec-1の不織布基材を得た。
【0082】
実施例1.3
【0083】
固形分の重量の95%が針葉樹フラッフパルプ、5%がカルボキシメチルセルロースから構成される不織布基材を、エアレイド法により作製した。
【0084】
実施例1.1に記載の方法により、不織布基材を得た。カルボキシメチルセルロース(Ashland社製、Blanose 7LCF、置換度0.65~0.9)の固形分0.7%を含む溶液をウェブの両面に噴霧する。乾燥後のウェブのバインダ含有量は5%であった。
【0085】
密度21mg/cm3、厚さ2340gm、坪量51g/m2、及び通気度407cm3,cm-2,sec-1の不織布基材を得た。
【0086】
実施例1.4
【0087】
固形分の重量の92%が針葉樹フラッフパルプ、8%が高度に加水分解されたポリビニルアルコールから構成される不織布基材を、エアレイド法により作製した。
【0088】
実施例1.1に記載の方法により、不織布基材を得た。ポリビニルアルコール(クラレ社製、加水分解度99.5%のエルバノール71-30)の固形分0.8%を含む溶液をウェブの両面に噴霧する。乾燥後のウェブのバインダ含有量は8%であった。
【0089】
密度21mg/cm3、厚さ1900μm、坪量40g/m2、及び通気度403cm3,cm-2,sec-1の不織布基材を得た。
【0090】
実施例1.5
【0091】
固形分の重量の92%が針葉樹フラッフパルプ、8%が部分的に加水分解されたポリビニルアルコールから構成される不織布基材を、エアレイド法により作製した。
【0092】
実施例1.1に記載の方法により、不織布基材を得た。ポリビニルアルコール(クラレ社製、加水分解度88%のポバール6-88)の固形分0.87%を含む溶液をウェブの両面に噴霧する。乾燥後のウェブのバインダ含有量は8%であった。
【0093】
密度が24mg/cm3、厚さが1690μm、坪量が41g/m2、通気度が480cm3,cm-2,sec-1の不織布基材を得た。
【0094】
実施例2 喫煙製品用フィルタの製造及び特性評価
【0095】
実施例1.1~1.4の基材を用いて、圧着機を用いない標準的なフィルタ製造方法により喫煙製品用フィルタを製造した。不織布フィルタ材のロッドを包むために、非多孔性のプラグラップ紙を使用した。
【0096】
本発明のフィルタを紙フィルタ及び市販のセルロースアセテートフィルタと比較した。紙フィルタは、36g/m2及び100μmの厚さの基材CF36を圧着することにより、フィルタを製造するための標準的な方法を用いて製造した。各タームで得られたフィルタを21mmのスティック状にカットした。
【0097】
フィルタの特性を以下の表1に示す。
【0098】
【0099】
実施例3 紙巻タバコ(cigarettes)の製造及び特性評価
【0100】
実施例2に記載したフィルタを用いて紙巻タバコを作製した。紙巻タバコを形成するために、チップペーパーを用いてフィルタを巻き合わせ、タバコのロッドを組み立てた。紙巻タバコのロッドを形成するために、市販の「アメリカンブレンド」タバコを用いた。紙巻タバコは、市販の紙巻タバコと同様の圧力降下で作製した。紙巻タバコの通気は遮断した。
【0101】
作製したタバコを、規格ISO 3308:2000に従ってBorgwaldt RM20喫煙機で吸引した。圧力損失(表2のPD)は、規格ISO 6565:2002に準拠して測定されたものである。煙中のニコチン含有量は、規格ISO 10315:2000に準拠して測定した。喫煙結果を、以下の表2に示す。
【0102】
【0103】
表2は、同等の圧力降下で、本発明によるフィルタを備えた紙巻タバコ及び市販のセルロースアセテートフィルタを備えた紙巻タバコは、煙中のニコチン含有量が同程度であることを示している。圧着紙で作製したものは、煙中のニコチン含有量がはるかに少ない。
【0104】
したがって、この実施例3は、本発明によるフィルタを備える紙巻タバコによってもたらされるユーザ体験が、市販のセルロースアセテートフィルタを備える紙巻タバコによるものと同程度に満足できるものであることを示している。
【0105】
実施例4 周囲温度の水中でのフィルタの分散性
【0106】
プラグラップ紙を備えない実施例1の基材を含むフィルタ、プラグラップ紙を備えない市販のセルロースアセテートフィルタ、及びプラグラップ紙を備えない紙フィルタをそれぞれ別個に22℃の水道水100mlに入れ、4時間ごとに60rpmで30秒間、手動で撹拌し、水中への分散を確認した。繊維が互いに分離するのに必要な時間を記録した。この時間を、表3に示した。
【0107】
【0108】
実施例1.1、1.2、1.3、及び1.5のフィルタの繊維は、20秒後に分散することが判明した。圧着紙を使用したフィルタの木質繊維は、8時間後に分散し始めた。したがって、ペーパーフィルタは、実施例1.1、1.2、1.3及び1.5の基材を含むフィルタよりも、水への分散性が低いことがわかる。24時間後、セルロースアセテートフィルタと実施例1.4の本発明のフィルタには変化がなかった。セルロースアセテートフィルタ及び実施例1.4のフィルタは水に分散しない。
【国際調査報告】