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特表2023-541890植物タンパク質ベースのマイクロカプセル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】植物タンパク質ベースのマイクロカプセル
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20230927BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230927BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 31/4415 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20230927BHJP
   A23L 33/15 20160101ALI20230927BHJP
   A23L 33/16 20160101ALI20230927BHJP
   B01J 13/04 20060101ALI20230927BHJP
   B01J 13/12 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
A23L5/00 C
A61K47/42 ZBP
A61K45/00
A61K31/4415
A61K9/14
A61K8/64
A61K8/11
A61K8/67
A23L33/15
A23L33/16
B01J13/04
B01J13/12
A61K9/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516111
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2021074794
(87)【国際公開番号】W WO2022053553
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】20195386.6
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523085142
【氏名又は名称】ザンプラ・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】501484851
【氏名又は名称】ケンブリッジ・エンタープライズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE ENTERPRISE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ロドリゲス・ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】トゥオマス・ペルッティ・ジョナサン・ノウルズ
(72)【発明者】
【氏名】ジャック・ヘンリー・ジェレミー・コードリー
(72)【発明者】
【氏名】イオアナ-アリナ・ドゥミトル
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4C076
4C083
4C084
4C086
4G005
【Fターム(参考)】
4B018MD01
4B018MD04
4B018MD20
4B018MD23
4B018MD34
4B018MD35
4B018MD36
4B018MD37
4B018MD38
4B018ME14
4B018MF08
4B018MF14
4B035LC16
4B035LE20
4B035LG01
4B035LG02
4B035LG15
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4B035LG25
4B035LG26
4B035LG27
4B035LG28
4B035LG54
4B035LK13
4B035LK17
4B035LP01
4B035LP21
4B035LP24
4B035LP36
4B035LP59
4C076AA29
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4C076BB01
4C076CC24
4C076CC40
4C076EE41
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4C076FF43
4C076GG05
4C083AA111
4C083AD411
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4C083DD14
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4C084AA17
4C084MA38
4C084MA43
4C084NA03
4C084NA14
4C084ZC24
4C086AA01
4C086AA10
4C086BC18
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA38
4C086NA03
4C086NA14
4C086ZC24
4G005AA01
4G005AB02
4G005BA12
4G005BA14
4G005BB20
4G005DB05Z
4G005DB22X
4G005DB23X
4G005DB25X
4G005DC26X
4G005EA01
4G005EA02
4G005EA03
4G005EA07
(57)【要約】
本発明は、水溶性原料の効率的なカプセル化及び保持、並びに水溶性原料及び水不溶性原料の効率的な共カプセル化のための、植物ベースのマイクロカプセルに関する。本発明はまた、マイクロカプセルを含む組成物、マイクロカプセル及び組成物を作製する方法、並びにマイクロカプセル及び組成物の使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水溶性原料を含む親水性相;
(b)親油性相;及び
(c)植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェル
を含むマイクロカプセル。
【請求項2】
親水性相が水を含む、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項3】
水溶性原料が、1つ又は複数のビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、パンテノール、α-ヒドロキシ酸、水溶性ミネラル塩、水溶性植物抽出物及び酵母、酵素、抗生物質、オリゴペプチド、タンパク質及びタンパク質加水分解物から選択される、請求項1又は2に記載のマイクロカプセル。
【請求項4】
植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェル中の植物ベースのタンパク質が、ダイズ、エンドウ、コメ、ジャガイモ、コムギ、トウモロコシゼイン又はモロコシから得られ;植物タンパク質が、ダイズタンパク質、エンドウタンパク質、ジャガイモタンパク質、ナタネタンパク質及び/又はコメタンパク質から選択されることが好ましい、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項5】
植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが、自己組織化される植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルである、請求項1から4のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項6】
植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが、少なくとも40%の分子間β-シート、少なくとも50%の分子間β-シート、少なくとも60%の分子間β-シート、少なくとも70%の分子間β-シート、少なくとも80%の分子間β-シート、若しくは少なくとも90%の分子間β-シートを有するタンパク質二次構造を有する植物ベースのタンパク質を含み;
及び/又は
植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが、10rad/秒において500Pa超、1000Pa超、2500Pa超、3000Pa超、4000Pa超の貯蔵弾性率(G')を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項7】
植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが、50~500nmの間の平均長さ中央値若しくは50~500nmの間の平均長さ平均値を有するタンパク質凝集体を含むか;若しくは80%の凝集体が、50~500nmの間の平均長さを有し;
及び/又は、凝集体が、5~50nmの間の高さ中央値を有しうるか;若しくは凝集体が、5~50nmの間の平均高さ平均値を有しうるか;若しくは80%の凝集体が、5~50nmの間の平均高さを有し;
凝集体が、50~500nmの間の平均長さ中央値及び/若しくは5~50nmの間の平均高さ中央値を有することが好ましい、請求項1から6のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項8】
親水性相が、親油性相中に分散している、請求項1から7のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項9】
親水性相及び親油性相が、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルによってカプセル化されている、請求項1から8のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項10】
親水性相及び親油性相が、油中水型エマルジョンを形成している、請求項9に記載のマイクロカプセル。
【請求項11】
複数コア形態構造を有する、請求項10に記載のマイクロカプセル。
【請求項12】
単一コア形態構造を有する、請求項10に記載のマイクロカプセル。
【請求項13】
植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが、10nm~50,000μmの範囲、好ましくは10μm~100μmの範囲の厚さを有する、請求項1から12のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項14】
植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルのタンパク質含有量が、5~20g/100gである、請求項1から13のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項15】
植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルのボイセンタンパク質消化率が、ボイセンプロトコルに準拠して測定して、80~100%である、請求項1から14のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項16】
植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルのO2消費量に基づく生分解パーセントが、ISO-14851に準拠して28日後に測定して、70~100%である、請求項1から15のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項17】
植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルのCO2生成量に基づく生分解パーセントが、ISO-14851に準拠して28日後に測定して、70~100%である、請求項1から16のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項18】
少なくとも1つのビタミン又はミネラルをカプセル化している、請求項1又は2に記載のマイクロカプセル。
【請求項19】
少なくとも1つのビタミン又はミネラルが、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、亜鉛、鉄、カルシウム、ヨウ素及びリン、又はこれらの混合物から選択される、請求項18に記載のマイクロカプセル。
【請求項20】
20℃の水中での10日間のインキュベーション後、HPLCによって決定して、最初にカプセル化された少なくとも1つのビタミン又はミネラルの少なくとも25%、より好ましくは少なくとも40%、より一層好ましくは少なくとも50%、より一層好ましくは少なくとも60%が、マイクロカプセルの内側に存在したままである、請求項18又は19に記載のマイクロカプセル。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載の少なくとも1つのマイクロカプセル及び外部相を含む組成物。
【請求項22】
少なくとも1つのマイクロカプセルが、外部相中に分散している、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1から20のいずれか一項に記載のマイクロカプセルを調製する方法であって:
(a)水溶性原料を含む親水性相を、第1の親油性相中で乳化させて、一次エマルジョンを得る工程と;
(b)前記一次エマルジョンを、1つ又は複数の植物ベースのタンパク質を含む植物ベースのタンパク質溶液中で再乳化させて、二重エマルジョンを得る工程であり、ここで前記植物ベースのタンパク質溶液は、植物ベースのタンパク質溶液のゾル-ゲル転移温度より高い温度である、工程と;
(c)前記二重エマルジョンを、第2の親油性相中で再乳化させて、三重エマルジョンを得る工程と;
(d)溶液中の植物ベースのタンパク質を誘導してゾル-ゲル転移を起こして、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルを形成する工程であり、ここで前記植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが前記一次エマルジョンをカプセル化して、第2の親油性相である外部相中で懸濁するマイクロカプセルを形成する、工程と;
(e)マイクロカプセルを洗浄して、第2の親油性相を除去する工程と、
を含む方法。
【請求項24】
植物ベースのタンパク質溶液が、溶媒系中に1つ又は複数の植物ベースのタンパク質を含み、溶媒系は混和性共溶媒を含み;第1の共溶媒は、植物ベースのタンパク質の溶解度を増加させ、第2の共溶媒は、植物ベースのタンパク質の溶解度を減少させる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
第1の共溶媒が、有機酸;好ましくは酢酸及び/又はα-ヒドロキシ酸であり;α-ヒドロキシ酸が、好ましくは、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸及び/又は酒石酸から選択されてよく;特に好ましい有機酸は、酢酸及び/又は乳酸である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第2の共溶媒が、水性緩衝液であり、好ましくは、水、エタノール、メタノール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、2-プロパノール、1-ブタノール、1-プロパノール、ヘキサノール、t-ブタノール、酢酸エチル、ヘキサフルオロイソプロパノールから選択され、より好ましくは水及び/又はエタノール、特に好ましくは水である、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
工程(d)において、タンパク質溶液が、1つ又は複数の植物ベースのタンパク質のゾル-ゲル温度より高い第1の温度に加熱され、次に、1つ又は複数の植物ベースのタンパク質のゾル-ゲル温度より低い第2の温度まで低下されて、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルを形成する、請求項23から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
マイクロカプセルを乾燥して、乾燥粉末を形成する工程を更に含む、請求項23から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
請求項23から28のいずれか一項に記載の方法により調製された、マイクロカプセル。
【請求項30】
請求項21又は22に記載の組成物を調製する方法であって:
(a)水溶性原料を含む親水性相を、第1の親油性相中で乳化させて、一次エマルジョンを得る工程と;
(b)前記一次エマルジョンを、1つ又は複数の植物ベースのタンパク質を含む植物ベースのタンパク質溶液中で再乳化させて、二重エマルジョンを得る工程であり、ここで前記植物ベースのタンパク質溶液は、植物ベースのタンパク質のゾル-ゲル転移温度より高い温度である、工程と;
(c)前記二重エマルジョンを、第2の親油性相中で再乳化させて、三重エマルジョンを得る工程と;
(d)溶液中の植物ベースのタンパク質を誘導してゾル-ゲル転移を起こして、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルを形成する工程であり、ここで前記植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが前記一次エマルジョンをカプセル化して、第2の親油性相である外部相中で懸濁するマイクロカプセルを形成する、工程と、
を含む、方法。
【請求項31】
(e)マイクロカプセルを洗浄して、第2の親油性相を除去する工程と;
(f)マイクロカプセルを外部水性相中で再懸濁させる工程と、
を更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記外部水性相に懸濁化剤を添加する工程を更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記懸濁化剤が、アカシアガム、アルギン酸、ペクチン、キサンタンガム、ゲランガム、カルボマー、デキストリン、ゼラチン、グアーガム、水素添加植物油カテゴリー1、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、マルトデキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、デンプン、ゼイン、架橋セルロース、架橋デンプン、架橋CMC、架橋カルボキシメチルデンプン、架橋ポリアクリレート及び架橋ポリビニルピロリドン等の水不溶性架橋ポリマー、並びにベントナイト及びラポナイト等の膨張性クレイから選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
請求項30から33のいずれか一項に記載の方法により調製された、組成物。
【請求項35】
請求項1から20のいずれか一項に記載のマイクロカプセル又は請求項21若しくは22に記載の組成物を組み込んでいる、食品、飲料、化粧料、ホームケア製品、パーソナルケア製品、医薬品、医療用具、生体材料又は農業化学品。
【請求項36】
食品、飲料、化粧料、ホームケア製品、パーソナルケア製品、医薬品、医療用具、生体材料又は農業化学品を製造するための、請求項1から20のいずれか一項に記載のマイクロカプセル、又は請求項21又22に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性原料の効率的なカプセル化及び保持、並びに水溶性原料及び水不溶性原料の効率的な共カプセル化のための、植物ベースのマイクロカプセルに関する。本発明はまた、マイクロカプセルを含む組成物、マイクロカプセル及び組成物を作製する方法、並びにマイクロカプセル及び組成物の使用にも関する。なお、本出願に至るプロジェクトは、欧州連合のホライズン2020研究及び革新プログラムのもと、欧州研究会議(ERC)から資金を受けた(贈与契約番号825803)。
【背景技術】
【0002】
生体適合性材料の発展は、近年、多くの注目を集めてきた。機能的特徴を有する生体適合性材料に対する需要は、そのような材料が、化粧料、食品及び医薬品を含む、人体と接触する用途において特に著しい。しかしながら、広範囲の活性化合物の安定性及び機能性は、分解及び機能損失が急速に起こるバルク溶液中では限定的である。この文脈において、カプセル化の主要な利点は、反応しやすいか又は不安定な化合物を、化学物質、空気及び光への曝露等の悪条件下で分解から保護すること、並びにカプセル化された化合物の生体到達度(bio-accessibility)及び生物学的利用能の制御を可能にすることである。いくつかのカプセル化技術が現在利用可能であるが、これらは、一般に合成ポリマーの使用に依存しており、該ポリマーは、医薬品及び食品の用途において担体として好適ではない場合があるか、又は化粧料用途では、許可された曝露レベルが制限されている場合がある。更に、合成ポリマーシェル材料は、環境に不利益をもたらすマイクロプラスチックの形成につながる恐れがある。
【0003】
或いは、キトサン又はゼラチン等の天然由来のポリマーがカプセル化技術に使用されうるが、そのような天然由来のシェル材料の安定性は、最終製品の製造プロセス中に通常存在する加工条件(高温及び高剪断条件への曝露等)によって、又は食品若しくは医薬製品組成物(pH、キレート剤の存在、他の原料との交差相互作用等)によって大きく影響される場合がある。これを克服するために、共有架橋戦略が利用されることが多く、これは、最終製品における有害な未反応の架橋剤の存在につながる可能性がある。加えて、キトサン又はゼラチン等の動物由来のポリマーの使用は、最終製品が菜食主義者/絶対菜食主義者に好適ではないことを意味する。
【0004】
更に、油脂又は油溶性原料のカプセル化は、標準的カプセル化手法を使用して達成されうるが、天然由来のポリマーから調製されたマイクロカプセルの固有のシェル透過性により、特に水性環境において、水溶性が小さい化合物の効率的なカプセル化及びマイクロカプセル内でのその保持は可能ではない。したがって、カプセル安定性を損なうことなく、水溶性の小さい原料を効率的にカプセル化し、また標準的な産業製造加工条件にも耐えうる、天然由来のポリマーからのマイクロカプセル化システムを生み出すことが依然として課題である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Animal Feed Science and Technology、51、29~43頁(1995)
【非特許文献2】Biomacromolecules 2017年、18、11、3642~3651頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様から見て、本発明は:
(a)水溶性原料を含む親水性相;
(b)親油性相;及び
(c)植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェル
を含むマイクロカプセルを提供する。
【0007】
更なる態様から見て、本発明は、先に記載した少なくとも1つのマイクロカプセル及び外部相を含む組成物を提供する。
【0008】
更なる態様から見て、本発明は、先に記載したマイクロカプセルを調製する方法であって:
(a)水溶性原料を含む親水性相を、第1の親油性相中で乳化させて、一次エマルジョンを得る工程と;
(b)前記一次エマルジョンを、1つ又は複数の植物ベースのタンパク質を含む植物ベースのタンパク質溶液中で再乳化させて、二重エマルジョンを得る工程であり、ここで前記植物ベースのタンパク質溶液は、植物ベースのタンパク質溶液のゾル-ゲル転移温度より高い温度である、工程と;
(c)前記二重エマルジョンを、第2の親油性相中で再乳化させて、三重エマルジョンを得る工程と;
(d)溶液中の植物ベースのタンパク質を誘導してゾル-ゲル転移を起こして、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルを形成する工程であり、ここで前記植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが前記一次エマルジョンをカプセル化して、第2の親油性相である外部相中で懸濁するマイクロカプセルを形成する、工程と;
(e)マイクロカプセルを洗浄して、第2の親油性相を除去する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0009】
更なる態様から見て、本発明は、先に記載した方法により調製されたマイクロカプセルを提供する。
【0010】
更なる態様から見て、本発明は、先に記載した組成物を調製する方法であって:
(a)水溶性原料を含む親水性相を、第1の親油性相中で乳化させて、一次エマルジョンを得る工程と;
(b)前記一次エマルジョンを、1つ又は複数の植物ベースのタンパク質を含む植物ベースのタンパク質溶液中で再乳化させて、二重エマルジョンを得る工程であり、ここで前記植物ベースのタンパク質溶液は、植物ベースのタンパク質のゾル-ゲル転移温度より高い温度である、工程と;
(c)前記二重エマルジョンを、第2の親油性相中で再乳化させて、三重エマルジョンを得る工程と;
(d)溶液中の植物ベースのタンパク質を誘導してゾル-ゲル転移を起こして、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルを形成する工程であり、ここで前記植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが前記一次エマルジョンをカプセル化して、第2の親油性相である外部相中で懸濁するマイクロカプセルを形成する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0011】
更なる態様から見て、本発明は、先に記載した方法により調製された組成物を提供する。
【0012】
更なる態様から見て、本発明は、先に記載したマイクロカプセル又は組成物を組み込んでいる、食品、飲料、化粧料、ホームケア製品、パーソナルケア製品、医薬品、医療用具、生体材料又は農業化学品を提供する。
【0013】
更なる態様から見て、本発明は、食品、飲料、化粧料、ホームケア製品、パーソナルケア製品、医薬品、医療用具、生体材料又は農業化学品を製造するための、先に記載したマイクロカプセル又は先に記載した組成物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のマイクロカプセルの実施形態の図形表現を示す。
図2】本発明の実施例1のマイクロカプセルを含む組成物の写真である。
図3】本発明の実施例2のマイクロカプセルを含む組成物の写真である。
図4】セルロース参照試料と比較した、O2消費量に基づく、実施例5のマイクロカプセルの経時的な生分解パーセントを示すプロットである。
図5】セルロース参照試料と比較した、CO2生成量に基づく、実施例5のマイクロカプセルの経時的な生分解パーセントを示すプロットである。
図6】実施例5のマイクロカプセルのシェルのタンパク質二次構造解析を示すグラフである。図6aは、乾燥マイクロカプセルのFTIRスペクトルである。図6bは、FTIRスペクトルにおけるアミドI帯から算出された、これらの二次導関数のグラフである。図6cは、FTIRスペクトルにおけるアミドI帯から算出された、二次構造含有量の定量化を提供する棒グラフである。示されたエラーバーは、3つの異なるスペクトルの平均の標準偏差であり、それぞれ、128回のスキャンの共平均(co-average)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本明細書で使用される場合、用語「水溶性」は、室温(例えば25℃±2℃)及び大気圧(例えば1013mbar)で測定して、少なくとも1グラム/リットル(g/L)に等しい、水中での溶解度を有する物質を指す。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「親水性相」は、水溶性原料が溶解することができる相を指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「油溶性」は、室温(例えば25℃±2℃)及び大気圧(例えば1013mbar)で測定して、少なくとも1グラム/リットル(g/L)に等しい、油脂又は有機溶媒中での溶解度を有する物質を指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「親油性相」は、油溶性原料が溶解することができる相を指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「一次エマルジョン」は、親水性相が非混和性の親油性相中で分散している系を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「二重エマルジョン」は、更なる非混和性の相、例えば植物ベースのタンパク質溶液中で、それ自体が分散している一次エマルジョンを指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「三重エマルジョン」は、更なる非混和性の相、例えば親油性相中で、それ自体が分散している二重エマルジョンを指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「油溶性界面活性剤」は、親油性相の表面張力を低減させることができる化合物を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「複数コア形態構造」は、非混和性の中間相中で分散しているいくつかの内部液滴から構成され、中間相自体が外部相中で分散している、複合エマルジョンを説明するために使用される。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「単一コア形態構造」は、第2の非混和性の液体から構成されるシェルにより包囲されている単一の内部滴から構成され、第2の非混和性の液体自体が外部相中で分散している、二重エマルジョンを説明するために使用される。
【0025】
本明細書で使用される場合、略語「W/O」は、「油中水型」を表す。
【0026】
本明細書で使用される場合、略語「W/O/W/O」は、「油中水型中の油中水型」を表す。
【0027】
本発明は:
(a)水溶性原料を含む親水性相;
(b)親油性相;及び
(c)植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェル
を含むマイクロカプセルを提供する。
【0028】
本発明のマイクロカプセルは、多様な物質をカプセル化するために使用され、化粧料、食品使用、家庭用品使用、農業化学品使用及び医薬品使用を含む様々な産業上の用途を見出すことができる。
【0029】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、親水性相は水を含む。
【0030】
本発明のマイクロカプセルは、水溶性原料を含む。本発明のマイクロカプセルにおける使用に好適な水溶性原料を以下に説明する。親水性相中の水溶性原料の濃度は、利用される特定の水溶性原料の溶解度に応じて及び/又は最終マイクロカプセル製品に所望される水溶性原料の量に応じて変化する。
【0031】
好適な水溶性原料には、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、パンテノール、α-ヒドロキシ酸、水溶性ミネラル塩、水溶性植物抽出物及び酵母、酵素、抗生物質、オリゴペプチド、タンパク質及びタンパク質加水分解物が含まれる。
【0032】
好適な水溶性原料には、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、パンテノール、α-ヒドロキシ酸、β-ヒドロキシ酸、ポリフェノール、多糖、水溶性ミネラル塩、水溶性植物抽出物及び酵母、酵素、抗生物質、オリゴペプチド、タンパク質及びタンパク質加水分解物が含まれる。
【0033】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、親水性相は、親水性相を安定化させるように作用するレオロジー改質剤(例えば親水コロイド)を更に含む。レオロジー改質剤は、アカシアガム、アルギン酸、ペクチン、キサンタンガム、ゲランガム、カルボマー、デキストリン、ゼラチン、グアーガム、水素添加植物油カテゴリー1、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、マルトデキストリン、カルボキシメチルセルロース、マイクロフィブリル化セルロース、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、デンプン、ゼイン、架橋セルロース、架橋デンプン、架橋CMC、架橋カルボキシメチルデンプン、架橋ポリアクリレート、及び架橋ポリビニルピロリドン等の水不溶性架橋ポリマー、タルク、シリカ、並びにベントナイト及びラポナイト等の膨張性クレイから選択されることが好ましい。
【0034】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、親油性相は油脂を含む。油脂は、植物ベースの油脂(例えば植物油)及び合成油脂から選択されることが好ましい。
【0035】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、親油性相は、油溶性界面活性剤を更に含む。油溶性界面活性剤は、スクロースステアリン酸エステル、スクロースパルミチン酸エステル、スクロースオレイン酸エステル、スクロースラウリン酸エステル、スクロースベヘン酸エステル、及びスクロースエルカ酸エステル等のスクロース脂肪酸エステル;モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、及びセスキオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル;モノステアリン酸グリセロール及びモノオレイン酸グリセロール等のグリセリル脂肪酸エステル;並びにテトライソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、モノイソステアリン酸ジグリセリル、及びポリリシノール酸ポリグリセロール等のポリグリセリル脂肪酸エステルから選択されることが好ましい。特に好ましい油溶性界面活性剤は、ポリリシノール酸ポリグリセロールである。
【0036】
理論に束縛されることは望まないが、本発明のマイクロカプセルにおける油溶性界面活性剤の存在により、油溶性界面活性剤が親油性相の表面張力を低減させることができるため、より安定な一次エマルジョンの形成が可能になると考えられる。
【0037】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、親油性相中の油溶性界面活性剤の濃度は、0.01%w/w~10%w/wの範囲、好ましくは0.1%w/w~5%w/wの範囲、より好ましくは0.5%w/w~2%w/wの範囲である。
【0038】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、親油性相は、油溶性原料を更に含む。本発明のマイクロカプセルにおける使用に好適な油溶性原料は、以下に記載される。
【0039】
更なる油溶性原料には、脂肪酸;トリグルセリド又はその混合物;α-リノレン酸(18:3n3)、オクタデカテトラエン酸(18:4n3)、エイコサペンタエン酸(20:5n3)(EPA)及びドコサヘキサエン酸(22:6n3)(DHA)等のオメガ-3脂肪酸、並びにこれらの誘導体及びこれらの混合物;ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE及びビタミンK等の脂溶性ビタミン;トコフェリル及びアスコルビル誘導体等の抗酸化剤;レチノイド又はレチノール;精油;バイオフラボノイド、テルペノイド;バイオフラボノイド及びテルペノイド等の合成物が含まれる。
【0040】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルは、自己組織化される植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルである。
【0041】
本発明のマイクロカプセルにおいてシェルとして利用される植物ベースのタンパク質ヒドロゲルは:
a)溶媒系中に1つ又は複数の植物ベースのタンパク質を含む溶液を形成する工程であり、ここで溶媒系は混和性共溶媒を含み;第1の共溶媒は、植物ベースのタンパク質の溶解度を増加させ、第2の共溶媒は、植物ベースのタンパク質の溶解度を減少させる、工程と;
b)溶液中のタンパク質を誘導してゾル-ゲル転移を起こして、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルを形成する工程と、
を含む方法によって好ましくは作製される。
【0042】
任意の好適な植物ベースのタンパク質が使用されてよい。好適な植物源には、ダイズ、エンドウ、コメ、ジャガイモ、コムギ、トウモロコシゼイン、モロコシ等が含まれる。特に好ましい植物タンパク質には、ダイズタンパク質、エンドウタンパク質、ジャガイモタンパク質、ナタネタンパク質及び/又はコメタンパク質、より好ましくはダイズタンパク質及び/又はエンドウタンパク質が含まれる。
【0043】
好適な植物ベースのタンパク質には:
- アブラナ科:ブラッシカ・バレアリカ(Brassica balearica):マヨルカキャベツ、ブラッシカ・カリナタ(Brassica carinata):アビシニアマスタード又はアビシニアキャベツ、ブラッシカ・エロンガタ(Brassica elongata):伸長マスタード(elongated mustard)、ブラッシカ・フルチキュロサ(Brassica fruticulosa):地中海キャベツ、ブラッシカ・ヒラリオニス(Brassica hilarionis):セントヒラリオンキャベツ、カラシナ(Brassica juncea):インドマスタード、ブラウン及びリーフマスタード、サレプタマスタード、セイヨウアブラナ(Brassica napus):ナタネ、キャノーラ、カブカンラン、ブラッシカ・ナリノサ(Brassica narinosa):ブロードビークドマスタード、ブラッシカ・ニグラ(Brassica nigra):ブラックマスタード、ブラッシカ・オレラセア(Brassica oleracea):ケール、キャベツ、コラードグリーン、ブロッコリ、カリフラワー、カイラン、芽キャベツ、コールラビ、ブラッシカ・ペルビリディス(Brassica perviridis):テンダーグリーン、マスタードスピニッチ、ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)(B.カンペストリス(B.campestris)と同義):ハクサイ、カブ、ラピニ、コマツナ、ブラッシカ・ルペストリス(Brassica rupestris):ブラウンマスタード、ブラッシカ・トウルネフォルチ(Brassica tournefortii):アジアマスタードを含む
- ナス科:トマト、ジャガイモ、ナス、ピーマン及びチリペッパーを含む;
- 穀類:トウモロコシ、コメ、コムギ、オオムギ、モロコシ、アワ、オートムギ、ライムギ、トリチカレ、フォニオを含む
- 擬似穀類:アマランス(ラブライズブリーディング、レッドアマランス、プリンス-オブ-ウェールズ-フェザー)、パンナッツ、ソバ、チア、ケイトウ(クエイルグラス又はソコとも呼ばれる)、ピットシードグースフット、カニワ、キノア及び、ワトルシード(アカシアシードとも呼ばれる)を含む;
- マメ科(Legume):アカシア・アラタ(acacia alata)(ウイングドワトル)、アカシア・デシピエンス(Acacia decipiens)、アカシア・サリグナ(Acacia saligna)(クージョン(coojong)、ゴールデンリースワトル、オレンジワトル、ブルーリーフドワトルを含む様々な名称で一般的に知られる)、ラッカセイ(Arachis hypogaea)(ピーナッツ)、アストラガルス・ガレギフォルミス(Astragalus galegiformis)、シチスス・ラブルヌム(Cytisus laburnum)(一般的にラブルヌム(laburnum)、キングサリ又はゴールデンレイン)、シチスス・スピヌス(Cytisus supinus)、ドリチオス・ラブラブ(Dolichios lablab)(一般名称はフジマメ、ラブラブマメボナビストマメ/エンドウ、ドリコスマメ、セイムマメ、ラブラブマメ、エジプトキドニーマメ、インドマメ、バタウ(bataw)及びオーストラリアエンドウを含む)、エルブム・レンズ(Ervum lens)(レンズマメ)、ゲニスタ・チンクトリアル(Genista tinctorial)(一般名称はダイヤーズウィン、ワクセンウォード及びワクセンウッドを含む)、グリシン・マックス(Glycine max)(ダイズ)、ラシルス・クリメヌム(Lathyrus clymenum)(ピーバイン又はレンリソウ)、ラシルス・オドラツス(Lathyrus odoratus)(ピーバイン又はレンリソウ)、ラシルス・スタイブス(Lathyrus staivus) (ピーバイン又はレンリソウ)、ラシルス・シルベトリス(Lathyrus Silvetris)(ピーバイン又はレンリソウ)、シカクマメ(Lotus tetragonolobus)(アスパラガス-エンドウ又はハイミヤコグサ)、シロバナハウチワマメ(Lupinus albus)(ルピン)、ルピヌス・アングスチホリウス(Lupinus angustifolius)(ルピン)、キバナハウチワマメ(Lupinus luteus)(ルピン)、ルピヌス・ポリフィルス(Lupinus polyphyllus)(ルピン)、ムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa)(アルファルファ)、ファセオルス・アウレウス(Phaseolus aureus)(ヤエナリ)、ファセオルス・コシネウス(Phaseolus coccineus)(ランナーマメ)、ファセオルス・ナヌス(Phaseolus nanus)(グリーンマメ/フランスマメ)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)(グリーンマメ/フランスマメ)、ピスム・サチブム(Pisum sativum)(エンドウ)、トリホリウム・ハイブリドゥム(Trifolium hybridum)(ツメクサ)、トリホリウム・プレテンス(Trifolium pretense)(アカツメクサ)、ビシア・ファバ(Vicia faba)(ソラマメ)、ビシア・サチバ(Vicia sativa)(ヤハズエンドウ)、ビグナ・ウングイクラテ(Vigna unguiculate)(ササゲ)を含む
- 非マメ科(Non-Legume):アカンショシサイオス・ホリダ(Acanshosicyos horrida)(アカンショシサイオス・ホリダ)、アエスクルス・ヒッポカスタヌム(Aesculus hyppocastanum)(コンカーツリー/セイヨウトチノキ)、カシューナットノキ(Anacardium occidentale)(カシューツリー)、バラニテス・アエジプチカ(Balanites aegyptica)、ベルソレチア・エクセルス(Bertholletia excels)(ブラジルナッツ)、テーブルビート(Beta vulgaris)(サトウダイコン)、Brassica napus (ナタネ)、セイヨウアブラナ(ブラウンマスタード)、ブラッシカ・ニグラ(ブラックマスタード)、シトガラシ(Brassica hirta)(ユーラシアマスタード)、カンナビス・サチバ(Cannabis sativa)(マリファナ)、シトルルス・バルガリス(Citrullus vulgaris)(スイカの一種)、シトルス・アウランチアカ(Citrus aurantiaca)(柑橘類)、クリカボチャ(Cucurbita maxima)(カボチャ)、ソバ(Fagopyrum esculentum)(タデ)、ゴシピウム・バーバデンセ(Gossypium barbadense)(超長綿)、ヘイアンスス・アヌウス(Heianthus annuus)(ヒマワリ)、ニコチアナ種(Nicotiana sp.)(タバコ植物)、セイヨウミザクラ(Prunus avium)(サクランボ)、スミミザクラ(Prunus cerasus)(サワーチェリー)、セイヨウスモモ(Prunus domestica)(プラム)、プルヌス・アミグダルス(Prunus amygdalus)(アーモンド)、トウゴマ(Rricinus communis)(トウゴマ/ヒマシ油植物)、ササムム・インディクム(Sasamum indicum)(ゴマ)、シロガラシ(Sinapis alba)(ホワイトマスタード)、テルルファルレア・ペダタ(Terlfalrea pedata)(オイスターナッツ)を含む
が更に含まれる。
【0044】
疑問を避けるために、本発明の植物ベースのマイクロカプセルは、天然状態の植物を包含せず、例えば、天然に形成された植物細胞、細胞小器官又は小胞は、本発明の植物ベースのマイクロカプセルではない。
【0045】
上述の方法では、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルは、植物ベースのタンパク質を溶媒系に添加することによって形成され、溶媒系は、本明細書で定義される2つ以上の混和性共溶媒を含む。
【0046】
第1の共溶媒は、植物ベースのタンパク質の溶解度を増加させる。第1の共溶媒は、可溶化共溶媒と考えてよい。1つ又は複数の可溶化共溶媒でありえて、可溶化共溶媒は、植物ベースのタンパク質を完全に又は部分的に可溶化することができる。
【0047】
可溶化共溶媒の例は、有機酸である。有機酸は、酸性の特性を有する有機化合物である。好適な有機酸は、酢酸又はα-ヒドロキシ酸を含む。好適な有機酸には、酢酸、α-ヒドロキシ酸、又はβ-ヒドロキシ酸が含まれる。好適なα-ヒドロキシ酸には、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸及び酒石酸が含まれる。好適なβ-ヒドロキシ酸には、β-ヒドロキシプロピオン酸、β-ヒドロキシ酪酸、β-ヒドロキシβ-メチル酪酸、2-ヒドロキシ安息香酸及びカルニチンが含まれる。好ましい有機酸は、酢酸及び乳酸である。有機酸を使用することにより、植物タンパク質の可溶化が可能となり、またタンパク質の穏やかな加水分解も可能になる。例えば、理論に束縛されることは望まないが、有機酸への植物ベースのタンパク質の溶解性は:i)タンパク質のプロトン化、及びii)疎水性相互作用の低下の一因となるアニオン溶媒和層の存在に起因しうる。最初に有機酸に溶解すると、植物ベースのタンパク質のプロトン化が、その非溶媒、例えば水中で、それらを安定化させる助けとなりうる。
【0048】
第1の共溶媒は有機酸であることが好ましい。
【0049】
第2の共溶媒は、第1の共溶媒と比較すると、植物ベースのタンパク質の溶解度を減少させる。第2の共溶媒は、非可溶化共溶媒と考えてよい。1つ又は複数の非可溶化共溶媒でありうる。
【0050】
非可溶化第2の共溶媒の例は、水性緩衝液である。更なる実施形態では、第2の共溶媒は、水、エタノール、メタノール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、2-プロパノール、1-ブタノール、1-プロパノール、ヘキサノール、t-ブタノール、酢酸エチル又はヘキサフルオロイソプロパノールでありうる。特に好ましい実施形態では、第2の共溶媒は、水及びエタノールである。更に特に好ましい実施形態では、第2の共溶媒は、水である。
【0051】
溶媒系は、約20~80%v/v、好ましくは約20~60%v/v、約25~55%v/v、約30~50%v/v、約20%、約30%、約40%、約50%又は約60%v/v、最も好ましくは約30~50%v/vの共溶媒比を備えることが好ましい。
【0052】
溶媒系中の植物ベースのタンパク質の濃度は、25~200mg/ml、より好ましくは50~150mg/mlであることが好ましい。有機酸の比は、タンパク質濃度に応じて変化してよく、例えば、タンパク質濃度が増加するほど、より高い有機酸比を使用してよい。
【0053】
タンパク質の加水分解度を制御して、得られるヒドロゲルの特性を改変することが好ましい。例えば、形成中に存在する酸濃度の増加により、タンパク質の加水分解度が増加する。タンパク質の加水分解度が高いほど、剛性がより小さいヒドロゲルの形成をもたらす。
【0054】
1つ又は複数の植物ベースのタンパク質を含む溶液を形成するために、タンパク質/溶媒系混合物に物理的刺激を与えて、タンパク質の溶解を可能にすることが必要でありうる。好適な物理的刺激には、加熱、超音波処理、撹拌、高剪断混合又は他の物理的技術が含まれる。好ましい技術は加熱であり、場合によりそれに続く超音波処理を伴う。
【0055】
タンパク質/溶媒系混合物には、加熱である物理的刺激が施され、溶液は、約70℃又はそれ以上に加熱されることが好ましい。タンパク質/溶媒系混合物は、約75℃若しくはそれ以上、約80℃若しくはそれ以上、約85℃若しくはそれ以上、又は約90℃に加熱されることがより好ましい。タンパク質/溶媒系混合物は、85℃に加熱されることが更により好ましい。
【0056】
タンパク質/溶媒系混合物は、約5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、30分間、又は30分間を超えて加熱される物理的刺激が施されることが好ましい。好ましい加熱期間は、約30分間である。加熱されたタンパク質/溶媒系混合物は、場合により、それに続く超音波処理(例えば60分間まで、より好ましくは10分間までの期間)が施される。
【0057】
タンパク質溶液は、次に、液体溶液がタンパク質に関するゾル-ゲル転移より高く維持されるように加熱される。溶媒系を改変することによって(例えば、有機酸の選択、有機酸の更なる溶媒に対する比を通して、又は更なる手段を通して)、タンパク質に関するゾル-ゲル転移温度を改変することが可能である。条件の適切な選択を通して、タンパク質のゾル-ゲル転移を注意深く制御し、それによって、ヒドロゲルの形成を制御することが可能である。
【0058】
タンパク質溶液は、約70℃又はそれ以上に加熱されることが好ましい。タンパク質は、約75℃若しくはそれ以上、約80℃若しくはそれ以上、約85℃若しくはそれ以上、又は約90℃に加熱されることがより好ましい。タンパク質は、85℃に加熱されることが更により好ましい。
【0059】
タンパク質溶液は、約5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、30分間、45分間又は1時間の期間、昇温状態に維持されうる。好ましい期間は、タンパク質を完全に可溶化できるように、少なくとも30分間である。タンパク質溶液を、より長期間、昇温状態に維持することが可能である。これは、タンパク質溶液をより長期間、液体形態に保持することが必要である商業的バッチプロセス又は流体処理工程における使用に有用でありうる。
【0060】
タンパク質溶液を、タンパク質溶液のゾル-ゲル転移温度より高く加熱した後、タンパク質溶液の温度を、ゾル-ゲル転移温度より低い第2の温度まで低下され、ヒドロゲルの形成を促進することができる。第2の温度は、室温であってよい。タンパク質溶液は、約5分間、10分間、15分間、20分間、25分間又は30分間の期間、低下した温度で維持されうる。特に低下した期間は約5分間である。しかしながら、上述の方法により、タンパク質が、溶液中に長期間残存することが可能となる。したがって、必要に応じて、タンパク質溶液は、タンパク質を液体形態に保持するために必要とされる限り、ゾル-ゲル転移温度より高く保たれうる。これは、数時間、数日又はそれ以上であってよいが、好ましくは数分間又は数時間の次元である。また、反応は可逆的であるため、溶液は、例えば、ヒドロゲルが形成する、より低い温度(例えば室温)で保たれてよいが、その後、ゾル-ゲル転移温度より高く加熱されて、更なる加工のために溶液を液体状態に戻す。タンパク質ヒドロゲルは、ヒドロゲルが長期間安定のままであるため、このようにして、数時間、数日、数週間、数か月又は数年間保存されうる。
【0061】
特定の温度は、タンパク質源の特性、使用される溶媒の状態、及びしたがってゾル-ゲル転移温度に依存する。或いは、上昇及び低下した温度は、相対的に固定されえて(例えば約85℃、次に約室温)、共溶媒混合条件は、選択された植物ベースのタンパク質に好適なゾル-ゲル転移温度を確実にするように調整される。
【0062】
理論に束縛されることは望まないが、植物タンパク質が溶媒系に添加された場合、植物タンパク質は、不溶性のコロイド状タンパク質凝集体の高粘性分散体を形成すると考えられる。
【0063】
更に、機械的撹拌、例えば超音波処理の適用により、大きいコロイド状タンパク質凝集体がより小さいものに破壊され、またタンパク質分子間相互作用も妨害すると考えられる。この手法を使用すると、タンパク質凝集体の大きさは、ゲル化前に、100nm未満の粒径まで著しく低下されうる。上述の方法は、200nm未満、好ましくは150nm未満、125nm未満、100nm未満、90nm未満、80nm未満、70nm未満、60nm未満、50nm未満、40nm未満、又は30nm未満の平均の大きさを有するタンパク質凝集体を含むことが好ましい。
【0064】
凝集体の大きさは、動的光散乱法(DLS)によって測定されうる。凝集体の大きさを測定するのに好適な装置は、ゼータサイザーS(Malvern社)である。
【0065】
更に、共溶媒系の存在下で、タンパク質溶液をゾル-ゲル温度より高く加熱すると、植物タンパク質が部分的にアンフォールドし、タンパク質の元の構造内に最初は埋め込まれていた疎水性のアミノ酸の露出がもたらされると考えられる。部分的にアンフォールドされると、共溶媒が、アンフォールドされたタンパク質分子と相互作用することができる。例えば、有機酸が、アミノ酸残基をプロトン化する、より大きな機会があり、また疎水性相互作用を安定化させるアニオン塩橋の形成も可能にする。また、昇温加熱時に、タンパク質-タンパク質の非共有分子間接触が破壊される。更に、タンパク質溶液をゾル-ゲル温度未満に冷却すると、タンパク質-タンパク質の非共有分子間接触が可能となり、したがって、植物タンパク質分子の、超分子凝集体のネットワークへの自己凝集を強化すると考えられる。
【0066】
ゲル化後、凝集体は、微細な鎖状でありうる。凝集体は、50~500nmの間の平均長さ中央値(median average length)を有しうる。凝集体は、50~500nmの間の平均長さ平均値(mean average length)を有しうる。80%の凝集体は、50~500nmの間の平均長さを有しうる。凝集体は、5~50nmの間の高さ中央値(median average height)を有しうる。凝集体は、5~50nmの間の平均高さ平均値(mean average height)を有しうる。80%の凝集体は、5~50nmの間の平均高さを有しうる。好ましい実施形態では、凝集体は、50~500nmの間の平均長さ中央値及び/又は5~50nmの間の平均高さ中央値を有する。
【0067】
理論に束縛されることは望まないが、上述の方法により、植物タンパク質が、特にβ鎖間で、分子間水素結合相互作用によって維持される超分子構造に凝集することが可能になると考えられる。したがって、好ましくは、本発明のマイクロカプセルにおいてシェルとして利用されるヒドロゲルは、高レベルのβ-シート分子間相互作用を有する。
【0068】
本発明のマイクロカプセルにおいてシェルとして利用されるヒドロゲルは、少なくとも40%の分子間β-シート、少なくとも50%の分子間β-シート、少なくとも60%の分子間β-シート、少なくとも70%の分子間β-シート、少なくとも80%の分子間β-シート、又は少なくとも90%の分子間β-シートを有するタンパク質二次構造を有することが好ましい。%分子間β-シート含有量は、FTIRによって測定されることが好ましい。植物ベースのタンパク質源から作製されたこれまでのゲルは、二次構造においてより低量の分子間β-シートを有し、先行技術の不利な特性をもたらしうると考えられる。
【0069】
本発明のマイクロカプセルにおいてシェルとして利用される植物ベースのタンパク質ヒドロゲルは、有利な機械的特性を有する。例えば、温度変化時に、ゲルから液体へと可逆的に変化する能力が、有利な製造能力を可能とする。
【0070】
本発明のマイクロカプセルにおいてシェルとして利用されるヒドロゲルは、10rad/秒において500Pa超、1000Pa超、2500Pa超、3000Pa超、4000Pa超の貯蔵弾性率(G')を有することが好ましい。
【0071】
本発明のマイクロカプセルにおいてシェルとして利用されるヒドロゲルは、剪断速度が増加すると粘度が減少する剪断減粘性挙動を示すことが好ましい。
【0072】
本発明のマイクロカプセルにおいてシェルとして利用されるヒドロゲルは、最終製品製造プロセス中に通常存在する、例えば高温(例えば>95℃)及び/又は高剪断条件への曝露のような加工条件によって悪影響を受けることはないことが好ましい。本発明のマイクロカプセルにおいてシェルとして利用されるヒドロゲルは、そのような加工条件に対して、化学的及び/又は機械的に安定であることがより好ましい。
【0073】
本発明のマイクロカプセルにおいてシェルとして利用されるヒドロゲルは、低pH条件下で安定であることが好ましい。本発明のマイクロカプセルにおいてシェルとして利用されるヒドロゲルは、3未満のpH(例えば2未満のpH)で安定であることがより好ましい。これは、マイクロカプセルが食品、飲料又は医薬製品で利用される場合、特に有利である。本発明のマイクロカプセルにおいてシェルとして利用されるヒドロゲルは、独自の熱可逆性ゲル化挙動を示すことが好ましい。昇温加熱時及び/又は機械的撹拌の適用によって、タンパク質ゲルは、液体形態に戻る。これは、加熱時に完全に液体状態に戻らなかった先行するヒドロゲルには見られなかった独自の特性である。対照的に、本発明のマイクロカプセルにおいてシェルとして利用されるヒドロゲルは、戻ることができる。昇温加熱時及び/又は機械的撹拌の適用によって、タンパク質溶液は、250Pa未満、100Pa未満、50Pa未満、10Pa未満の貯蔵弾性率を有しうることが好ましい。これは、本発明のマイクロカプセルが、独自の製造能力を有することを可能とする。
【0074】
同様に、所望ならば、溶媒系を除去することによって、熱可逆性を取り除くことができる。本発明の植物ベースのマイクロカプセルが形成されると、溶媒系は洗い流され、マイクロカプセルの熱可逆特性を停止することができる。したがって、マイクロカプセルは、その後加熱された場合に、安定なままであり再溶融しない。これにより、例えば、本発明によるマイクロカプセルが高温プロセスを施され、依然として非損傷及び安定のままであることが可能となる。
【0075】
したがって、本発明のマイクロカプセルにおいてシェルとして利用されるヒドロゲルは、先行する植物ベースのヒドロゲルには見られない独自の特性を有する。これらには、市販の供給源から高濃度(すなわち5%~15%w/w)で植物ベースのタンパク質からヒドロゲルを形成する能力、及び熱変性時にそのような高濃度のタンパク質溶液を溶液状態に保つ能力が含まれ、これにより、詳細に定義された目的物に成形することが可能となる。
【0076】
本発明のマイクロカプセルにおいてシェルとして利用されるヒドロゲルの特色は、植物タンパク質がヒドロゲルを自己形成するため、架橋剤を提供する必要がないことである。したがって、本発明のマイクロカプセルにおいてシェルとして利用されるヒドロゲルは、架橋剤を含有しないか、又は実質的に含有しないことが好ましい。
【0077】
しかしながら、代替的な実施形態では、本発明のマイクロカプセルにおいてシェルとして利用されるヒドロゲルは、架橋剤を含んでよい。好適な架橋剤には、微生物トランスグルタミナーゼ、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、グリオキサール、フェノール化合物、エポキシ化合物、ゲニピン又はジアルデヒドデンプンが含まれる。或いは、架橋剤はトリポリリン酸ナトリウムである。
【0078】
ヒドロゲルの多孔質ネットワークに起因して、ヒドロゲル内の溶媒混合物は、ヒドロゲルの機械的安定性を損なうことなく、別の溶媒混合物と交換することができる。溶媒交換プロセスを実施し、ヒドロゲル多孔質ネットワークから有機酸を除去することができる。
【0079】
本発明のマイクロカプセルにおいてシェルとして利用されるヒドロゲルは、1つ又は複数の可塑剤を組み込みうることが好ましい。可能な可塑剤には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、脂肪酸、グルコース、マンノース、フルクトース、スクロース、エタノールアミン、尿素、トリエタノールアミン;植物油、レシチン、ワックス及びアミノ酸が含まれる。
【0080】
ヒドロゲルが、約1%の可塑剤、約2%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%又はそれ以上を含みうることが好ましい。或いは、ヒドロゲルは、約5~50%の間の可塑剤、約10~50%、約20~40%、約15~35%又は約20%の可塑剤を含んでよい。
【0081】
可塑剤を添加することにより、材料の機械的特性に影響を与えることができる。典型的には、可塑剤を添加することにより、材料の弾性を増加させるが、これは、典型的には逆に、得られた材料の強度を低下させる。
【0082】
本発明のマイクロカプセルにおけるシェルとしての植物ベースのヒドロゲルの使用は、これまで使用された動物又は石油化学源のものを超える多数の利点を有する。第一に、植物源は再生可能であり、環境的に効率的な手法で効率的に得ることができる。第二に、植物源は生分解性であり、したがって、他のプラスチックに対する環境的に健全な代替物である。第三に、動物由来のタンパク質とは対照的に、植物ベースのタンパク質は、動物由来のタンパク質をヒトに導入しないという著しい利点を有する。これは、動物源の材料は、不利な要素が存在しないことを確認するために、厳しい点検及びプロセス(例えばプリオンを除去する等)を経なければならないという薬理学的と薬学的な両方の展望から;また製品は、菜食主義者/絶対菜食主義者に好適であるため、肯定的な影響を与える。
【0083】
植物ベースのタンパク質は、ヒト(又は他の動物)の食事に自然に存在するため、本発明のマイクロカプセルにおいてシェルとして利用される植物ベースのヒドロゲルは、多糖(例えば、アルギネート又はキトサン)等の他の生体高分子と比較して、高度の消化率を示す。このため、植物ベースのタンパク質は、医薬品、食品及び/又は化粧料の使用に特に好適となる。
【0084】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルのタンパク質含有量は、5~20g/100g、より好ましくは5~15g/100g、より一層好ましくは5~12.5g/100gである。
【0085】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、ボイセン(Boisen)プロトコル(詳細はAnimal Feed Science and Technology、51、29~43頁(1995))に準拠して測定した、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルのボイセンタンパク質消化率は、80~100%、より好ましくは90~100%、より一層好ましくは95~100%である。
【0086】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルのO2消費量に基づく生分解パーセントは、ISO-14851に準拠して28日後に測定して、70~100%、より好ましくは80~100%、より一層好ましくは85~100%である。
【0087】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルのCO2生成量に基づく生分解パーセントは、ISO-14851に準拠して28日後に測定して、70~100%、より好ましくは75~100%、より一層好ましくは80~100%である。
【0088】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、親水性相は、親油性相中に分散している。
【0089】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、親水性相及び親油性相は、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルによってカプセル化される。
【0090】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、親水性相及び親油性相は、油中水型エマルジョンを形成する。
【0091】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、油中水型エマルジョンは、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルによってカプセル化される。そのような実施形態は、図1に示される。
【0092】
本発明の好ましいマイクロカプセルは、複数コア形態構造を有する。そのような実施形態は、図1の右側の画像で示される。複数コア形態構造を有するマイクロカプセルは、例えばビタミン含有マイクロカプセルのような、カプセル化された材料のより低速の放出が必要とされる場合、及び/又はカプセル化された材料のより低い担持が必要とされる場合に有利である。複数コア形態構造を有するマイクロカプセルはまた、一般に、より高いシェル対コア比に起因して、単一コアを有するマイクロカプセルに対して、強度が増加する。
【0093】
本発明の代替の好ましいマイクロカプセルは、単一コア形態構造を有する。そのような実施形態は、図1の左側の画像で示される。単一コア形態構造を有するマイクロカプセルは、例えば香料含有のマイクロカプセルのような、カプセル化された材料のより高速の放出が必要とされる場合、及び/又はカプセル化された材料のより高い担持が必要とされる場合に有利である。
【0094】
本発明のマイクロカプセルは、水溶性原料をカプセル化する。本発明のマイクロカプセルはまた、場合により油溶性原料もカプセル化する。
【0095】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルは、ビタミン、必須脂肪酸、抗酸化剤、小分子、親水性小分子、疎水性小分子、タンパク質、抗体、抗体-薬物複合体、香料及び他の大分子を含む、任意の栄養補助食品、化粧料、薬学的又は農業化学的に好適な活性剤をカプセル化することができる。
【0096】
好適なカプセル化された薬剤には:エラストマー配合物、ゴム配合物、塗料配合物、コーティング配合物、接着剤配合物又はシール材配合物の重合用の、架橋-リンカー、硬化剤、有機触媒及び金属系の触媒(例えば、白金、パラジウム、チタン、モリブデン、銅、又は亜鉛の有機錯体及び無機錯体);
インク、パーソナルケア製品、エラストマー配合物、ゴム配合物、塗料配合物、コーティング配合物、接着剤配合物、シール材配合物又は紙配合物用の、染料、着色剤、顔料;
洗剤、ハウスクリーニング製品、パーソナルケア製品、布地(いわゆるスマート布地)、コーティング配合物用の香料から選択される1つ又は複数の薬剤が含まれる。本発明に有用な香料は、国際香料工業会(International Fragrance Association)(IFRA)によって出版及び改訂されている基準リストに属する任意の化合物;
飼料及び食料品用の香り、香味、ビタミン、アミノ酸、タンパク質、必須の脂質、生菌、抗酸化剤、防腐剤;
洗剤及びパーソナルケア製品用の布帛柔軟剤及びコンディショナー;
パーソナルケア製品、布地(いわゆるスマート布地)用の、酵素、ビタミン、タンパク質、野菜抽出物、保湿剤、殺菌剤、抗菌剤、日焼け防止剤、薬物等の生物活性化合物である。これらの化合物には、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、パラアミノ安息香酸、アルファヒドロキシ酸、ショウノウ、セラミド、エラグ酸、グリセリン、グリシン、グリコール酸、ヒアルロン酸、ヒドロキノン、イソプロピル、イソステアレート、パルミチン酸イソプロピル、オキシベンゾン、パンテノール、プロリン、レチノール、パルミチン酸レチニル、サリチル酸、ソルビン酸、ソルビトール、トリクロサン、チロシン;並びに
農業化学用の肥料、除草剤、殺虫剤、病虫害防除剤、消毒薬、忌避剤及び殺菌剤が含まれるが、これらに限定されない。上記リストのカプセル化剤のうち、本発明の目的上、いずれが水溶性原料であり、いずれが油溶性原料であるか、当業者は理解する。
【0097】
本発明の特に好ましいマイクロカプセルでは、植物ベースのヒドロゲルシェルは、少なくとも1つのビタミン又はミネラルをカプセル化する。そのようなマイクロカプセルは、食品及び飲料製品において、例えば食品若しくは飲料の強化のため、又は医薬製品、例えば有効成分の送達のための有用な用途を有する。
【0098】
少なくとも1つのビタミン又はミネラルは、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、亜鉛、鉄、カルシウム、ヨウ素及びリン、又はこれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0099】
当業者に理解されるように、少なくとも1つのビタミンは、使用中に、例えばヒト又は動物の消化器系の条件下で、活性ビタミンに分解するプロ-ビタミンとして、マイクロカプセル中に存在しうる。
【0100】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルは、10nm~50,000μmの範囲、好ましくは10μm~100μmの範囲、より好ましくは10μm~50μmの範囲、最も好ましくは1μm~10μmの範囲の厚さを有する。
【0101】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルは、約100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、16μm、17μm、18μm、19μm、20μm、25μm、30μm、30μm、35μm、40μm、又は50μmの厚さを有する。
【0102】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、マイクロカプセルは、最大寸法で1mm未満、900μm未満、800μm未満、700μm未満、600μm未満、500μm未満、400μm未満、300μm未満、200μm未満、又は100μm未満の大きさを有する。
【0103】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、マイクロカプセルは、マイクロカプセルへの圧力の印可時に、水溶性原料及び/又は油溶性原料を表面に放出する(例えば、圧力の印可が植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルを破壊する)。表面は生体表面であることが好ましい。生体表面は、毛髪、皮膚及び歯から選択されることがより好ましい。或いは、表面は布地である。植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルの多孔性質により、マイクロカプセルからの水溶性原料及び/又は油溶性原料の制御放出が可能となる。
【0104】
本発明の好ましいマイクロカプセルでは、マイクロカプセルは、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルの酵素的分解の結果として、水溶性原料及び/又は油溶性原料を放出する。前記酵素的分解は、ヒト又は動物の消化器系で起きることが好ましい。或いは、前記酵素的分解は、ヒト又は動物の皮膚における酵素により引き起こされる。
【0105】
本発明はまた、先に記載した少なくとも1つのマイクロカプセル及び外部相を含む組成物も提供する。
【0106】
本発明の好ましい組成物では、少なくとも1つのマイクロカプセルは、外部相中に分散している。
【0107】
本発明の好ましい組成物では、外部相は、外部水性相(例えば水性塩溶液)である。外部水性相は、連続的な外部水性相であることが好ましい。本発明の代替的な好ましい組成物では、外部相は、外部親油性相である。
【0108】
理論に束縛されることは望まないが、マイクロカプセルの内側及び外側の相対的イオン電位の制御により、マイクロカプセルにわたる浸透圧の調整が可能となりうると考えられる。次に、これにより、マイクロカプセルからの原料の放出特性にわたって制御が可能となりうる(例えばマイクロカプセルからの水溶性原料の制御放出又は遅延放出)。
【0109】
本発明のマイクロカプセルのこの構造は、カプセル化された一次エマルジョンが経時的/保存時に安定が保たれ、例えばカプセル化された一次エマルジョンが、酸化、光による分解、外部環境との反応及び/又は蒸発等から保護されうることを意味する。例えば、本発明のビタミン含有マイクロカプセルは、それらが組み込まれうる食品/飲料中で経時的に安定のままであるが、消費されると、次に消化管内にビタミンの制御放出をもたらすことができる。
【0110】
本発明の好ましいマイクロカプセルは、少なくとも1つのビタミン又はミネラルをカプセル化し、HPLCによって決定して、水中で20℃における10日間のインキュベーション後、最初にカプセル化された少なくとも1つのビタミン又はミネラルの少なくとも25%、より好ましくは少なくとも40%、より一層好ましくは少なくとも50%、より一層好ましくは少なくとも60%が、マイクロカプセルの内側に存在したままである。
【0111】
少なくとも1つのビタミン又はミネラルは、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、亜鉛、鉄、カルシウム、ヨウ素及びリン、又はこれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0112】
当業者に理解されるように、少なくとも1つのビタミンは、使用中に、例えばヒト又は動物の消化器系の条件下で、活性ビタミンに分解するプロ-ビタミンとして、マイクロカプセル中に存在しうる。
【0113】
本発明はまた、先に記載したマイクロカプセルを調製する方法であって:
(a)水溶性原料を含む親水性相を、第1の親油性相中で乳化させて、一次エマルジョンを得る工程と;
(b)前記一次エマルジョンを、1つ又は複数の植物ベースのタンパク質を含む植物ベースのタンパク質溶液中で再乳化させて、二重エマルジョンを得る工程であり、ここで前記植物ベースのタンパク質溶液は、植物ベースのタンパク質のゾル-ゲル転移温度より高い温度である、工程と;
(c)前記二重エマルジョンを、第2の親油性相中で再乳化させて、三重エマルジョンを得る工程と;
(d)溶液中の植物ベースのタンパク質を誘導してゾル-ゲル転移を起こして、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルを形成する工程であり、ここで前記植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが前記一次エマルジョンをカプセル化して、第2の親油性相である外部相中で懸濁するマイクロカプセルを形成する、工程と;
(e)マイクロカプセルを洗浄して、第2の親油性相を除去する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0114】
本発明の好ましい方法では、前記植物ベースのタンパク質溶液は、溶媒系中に1つ又は複数の植物ベースのタンパク質を含み、溶媒系は混和性共溶媒を含み;第1の共溶媒は、植物ベースのタンパク質の溶解度を増加させ、第2の共溶媒は、植物ベースのタンパク質の溶解度を減少させる。植物ベースのタンパク質、第1の共溶媒及び第2の共溶媒の好ましい特色は、上で論じてある。
【0115】
本発明の好ましい方法では、一次エマルジョンは、5μm以下、好ましくは4μm以下、より好ましくは3μm以下、より一層好ましくは2μm以下、最も好ましくは1μm以下の直径を有する。
【0116】
本発明の好ましい方法では、二重エマルジョンは、100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下の直径を有する。
【0117】
本発明の好ましい方法では、三重エマルジョンは、200μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下の直径を有する。
【0118】
本発明の好ましい方法では、第1及び第2の親油性相は同じである(例えばそれらは同じ種類の油脂である)。
【0119】
本発明の代替の好ましい方法では、第1及び第2の親油性相は異なる(例えばそれらは異なる種類の油脂である)。
【0120】
本発明の好ましい方法では、第1及び/又は第2の親油性相は、油溶性界面活性剤を更に含む。油溶性界面活性剤は、スクロースステアリン酸エステル、スクロースパルミチン酸エステル、スクロースオレイン酸エステル、スクロースラウリン酸エステル、スクロースベヘン酸エステル、及びスクロースエルカ酸エステル等のスクロース脂肪酸エステル;モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、及びセスキオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル;モノステアリン酸グリセロール及びモノオレイン酸グリセロール等のグリセリル脂肪酸エステル;並びにテトライソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、モノイソステアリン酸ジグリセリル、及びポリリシノール酸ポリグリセロール等のポリグリセリル脂肪酸エステルから選択されることが好ましい。特に好ましい油溶性界面活性剤は、ポリリシノール酸ポリグリセロールである。
【0121】
本発明の好ましい方法では、第1及び第2の親油性相中の油溶性界面活性剤は、同じである。
【0122】
本発明の代替の好ましい方法では、第1及び第2の親油性相中の油溶性界面活性剤は異なる。
【0123】
本発明の好ましい方法では、前記マイクロカプセルは、マイクロ流体機器を使用して形成される。
【0124】
本発明の好ましい方法は、マイクロカプセルを乾燥して、乾燥粉末を形成する工程を更に含む。前記乾燥は、噴霧乾燥、流動層乾燥及び/又はトレイ乾燥から選択されることが好ましい。乾燥工程により、例えば最終マイクロカプセルを大量の水中で移送する必要を回避することによって、マイクロカプセルを容易に取り扱うことが可能となる。
【0125】
本発明はまた、先に記載した方法により調製されたマイクロカプセルも提供する。
【0126】
先に記載したマイクロカプセルを調製する代替的な方法は:
(a)水溶性原料を含む親水性相を、第1の親油性相中で乳化させて、一次エマルジョンを得る工程と;
(b)前記一次エマルジョンを、1つ又は複数の植物ベースのタンパク質を含む植物ベースのタンパク質溶液中で再乳化させて、二重エマルジョンを得る工程であり、ここで前記植物ベースのタンパク質溶液は、植物ベースのタンパク質溶液のゾル-ゲル転移温度より高い温度である、工程と;
(c)前記二重エマルジョンの植物ベースのタンパク質溶液に、水性相分離工程又はコアセルベーション工程を施す工程と;
(d)溶液中の植物ベースのタンパク質を誘導してゾル-ゲル転移を起こして、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルを形成する工程であり、ここで前記植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが前記一次エマルジョンをカプセル化して、外部相中で懸濁するマイクロカプセルを形成する、工程と;
(e)マイクロカプセルを洗浄して、外部相を除去する工程と、
を含む。
【0127】
本発明はまた、先に記載した組成物を調製する方法であって:
(a)水溶性原料を含む親水性相を、第1の親油性相中で乳化させて、一次エマルジョンを得る工程と;
(b)前記一次エマルジョンを、1つ又は複数の植物ベースのタンパク質を含む植物ベースのタンパク質溶液中で再乳化させて、二重エマルジョンを得る工程であり、ここで前記植物ベースのタンパク質溶液は、植物ベースのタンパク質のゾル-ゲル転移温度より高い温度である、工程と;
(c)前記二重エマルジョンを、第2の親油性相中で再乳化させて、三重エマルジョンを得る工程と;
(d)溶液中の植物ベースのタンパク質を誘導してゾル-ゲル転移を起こして、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルを形成する工程であり、ここで前記植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが前記一次エマルジョンをカプセル化して、第2の親油性相である外部相中で懸濁するマイクロカプセルを形成する、工程と、
を含む、方法を提供する。
【0128】
本発明の好ましい方法は:
(e)マイクロカプセルを洗浄して、第2の親油性相を除去する工程と;
(f)マイクロカプセルを外部水性相中で再懸濁させる工程と、
を更に含む。
【0129】
本発明の好ましい方法では、前記植物ベースのタンパク質溶液は、溶媒系中に1つ又は複数の植物ベースのタンパク質を含み、溶媒系は混和性共溶媒を含み;第1の共溶媒は、植物ベースのタンパク質の溶解度を増加させ、第2の共溶媒は、植物ベースのタンパク質の溶解度を減少させる。植物ベースのタンパク質、第1の共溶媒及び第2の共溶媒の好ましい特色は、上で論じてある。
【0130】
本発明の好ましい方法では、一次エマルジョンは、5μm以下、好ましくは4μm以下、より好ましくは3μm以下、より一層好ましくは2μm以下、最も好ましくは1μm以下の直径を有する。
【0131】
本発明の好ましい方法では、二重エマルジョンは、100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下の直径を有する。
【0132】
本発明の好ましい方法では、三重エマルジョンは、200μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下の直径を有する。
【0133】
本発明の好ましい方法では、第2の親油性相は、油脂を含む。油脂は、植物ベースの油脂(例えば植物油)及び合成油脂から選択されることが好ましい。
【0134】
本発明の好ましい方法では、第1及び第2の親油性相は同じである(例えばそれらは同じ種類の油脂である)。
【0135】
本発明の代替の好ましい方法では、第1及び第2の親油性相は異なる(例えばそれらは異なる種類の油脂である)。
【0136】
本発明の好ましい方法では、第1及び/又は第2の親油性相は、油溶性界面活性剤を更に含む。油溶性界面活性剤は、スクロースステアリン酸エステル、スクロースパルミチン酸エステル、スクロースオレイン酸エステル、スクロースラウリン酸エステル、スクロースベヘン酸エステル、及びスクロースエルカ酸エステル等のスクロース脂肪酸エステル;モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、及びセスキオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル;モノステアリン酸グリセロール及びモノオレイン酸グリセロール等のグリセリル脂肪酸エステル;並びにテトライソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、モノイソステアリン酸ジグリセリル、及びポリリシノール酸ポリグリセロール等のポリグリセリル脂肪酸エステルから選択されることが好ましい。特に好ましい油溶性界面活性剤は、ポリリシノール酸ポリグリセロールである。
【0137】
本発明の好ましい方法では、第1及び第2の親油性相中の油溶性界面活性剤は、同じである。
【0138】
本発明の代替の好ましい方法では、第1及び第2の親油性相中の油溶性界面活性剤は異なる。
【0139】
本発明の好ましい方法は、前記外部水性相に、懸濁化剤を添加する工程を更に含む。前記懸濁化剤は、アカシアガム、アルギン酸、ペクチン、キサンタンガム、ゲランガム、カルボマー、デキストリン、ゼラチン、グアーガム、水素添加植物油カテゴリー1、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、マルトデキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、デンプン、ゼイン、架橋セルロース、架橋デンプン、架橋CMC、架橋カルボキシメチルデンプン、架橋ポリアクリレート、及び架橋ポリビニルピロリドン等の水不溶性架橋ポリマー、並びにベントナイト及びラポナイト等の膨張性クレイから選択されることが好ましい。
【0140】
本発明の好ましい方法では、前記マイクロカプセルは、マイクロ流体機器を使用して形成される。
【0141】
本発明はまた、先に記載した方法により調製された組成物も提供する。
【0142】
先に記載した組成物を調製する代替的な方法は:
(a)水溶性原料を含む親水性相を、第1の親油性相中で乳化させて、一次エマルジョンを得る工程と;
(b)前記一次エマルジョンを、1つ又は複数の植物ベースのタンパク質を含む植物ベースのタンパク質溶液中で再乳化させて、二重エマルジョンを得る工程であり、ここで前記植物ベースのタンパク質溶液は、植物ベースのタンパク質溶液のゾル-ゲル転移温度より高い温度である、工程と;
(c)前記二重エマルジョンの植物ベースのタンパク質溶液に、水性相分離工程又はコアセルベーション工程を施す工程と;
(d)溶液中の植物ベースのタンパク質を誘導してゾル-ゲル転移を起こして、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルを形成する工程であり、ここで前記植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが前記一次エマルジョンをカプセル化して、外部相中で懸濁するマイクロカプセルを形成する、工程と、
を含む。
【0143】
代替的な方法は:
(e)マイクロカプセルを洗浄して、外部相を除去する工程と;
(f)マイクロカプセルを外部水性相中で再懸濁させる工程と、
を更に含むことが好ましい。
【0144】
本発明はまた、先に記載したマイクロカプセル又は先に記載した組成物を組み込んでいる、食品、飲料、化粧料、医薬品、医療用具、生体材料又は農業化学品も提供する。
【0145】
本発明はまた、先に記載したマイクロカプセル又は先に記載した組成物を組み込んでいる、食品、飲料、化粧料、ホームケア製品、パーソナルケア製品、医薬品、医療用具、生体材料又は農業化学品も提供する。
【0146】
本発明はまた、食品、飲料、化粧料、ホームケア製品、パーソナルケア製品、医薬品、医療用具、生体材料又は農業化学品を製造するための、先に記載したマイクロカプセル又は先に記載した組成物の使用も提供する。
【実施例
【0147】
材料
- エンドウタンパク質単離物(PPI)(80%タンパク質)及び乳酸(80%)は、Cambridge Commodities社から購入した。
- 塩化カルシウム二水和物は、Fisher Scientific社から購入した。
- ミグリオール840及びポリリシノール酸ポリグリセロール(PGPR)は、IOI Oleo社から購入した。
- (1H,1H,2H,2H-ペルフルオロ-1-オクタノール)は、Sigma Aldrich社から購入した。
- HFE-7500 3M(商標)Novec(商標)工学流体は、Fluorochem社から購入した。
- 008-フッ素系界面活性剤は、RAN Biotechnologies社から購入した。
- 乳酸(85%、FG)、ピリドキシン塩酸塩(≧98%、HPLC)(ビタミンB6)及びポリソルベート80(FG)は、Sigma-Aldrich社から購入した。
- トリポリリン酸ナトリウムAlfa Aesar(商標)、炭酸水素ナトリウム Ph.Eur.、塩化カリウム Ph.Eur.及び硫酸マグネシウムは、Fisher Scientific社から購入した。
- ゲランガム高アシルLT100は、Special Ingredients社から購入した。
- ミグリオール812、ミグリオール829及びミグリオール840は、IOI Oleochemical社から購入した。
- ポリリシノール酸ポリグリセロール(PGPR)は、Danisco社から購入した。
- 硫酸カルシウム二水和物は、Honeywell社から購入した。
【0148】
(実施例1)
マイクロカプセルの調製
・ 内部相の調製:
4%(w/w)PGPRを含有する800μlのミグリオール840中で、200μlの0.25MのCaCl2溶液を、30秒間の超音波処理により乳化させることによって、油中水型エマルジョンを生成した。
【0149】
・ 中間相の調製:
エンドウタンパク質単離物を、35%(v/v)の乳酸の水性溶液に、125mg/mlの最終タンパク質濃度で添加した。不溶性タンパク質の分散体を得た。タンパク質の可溶化のために、混合物を超音波処理に30分間曝した(Bandelin Sonopuls HD 4200超音波ホモジナイザーを以下のパラメータ下で操作して使用した:高周波電力出力=200W、周波数=20KHz、振幅=20%)。このプロセス中、試料温度を85℃~90℃に保った。30分後、完全に半透明の液体溶液を得た。分散した液体PPI相(35%v/v酢酸中の125mg/mlのPPI、85℃で保たれた)を15ml管に入れ、85℃の加熱ブロック上に迅速に置いた。マイクロ流体機器への移送中のPPI溶液のゲル化を防止するために、1/32インチのIDステンレス鋼管を備える特別注文のシリコーンヒーター(Holroyd Components社)を使用して、PPIリザーバとマイクロ流体機器の注入口を接続するPTFE管の温度を維持した。シリコンヒーター温度を、特別注文の温度制御器によって制御した。
【0150】
・ 外部油脂相の調製:
008-フッ素系界面活性剤を、HFE-7500 3M(商標)Novec(商標)に、2%(w/w)の最終濃度まで溶解した。
【0151】
・ マイクロカプセルの調製:
非平面マイクロ流体機器(液滴発生器)を、Biomacromolecules 2017年、18、11、3642~3651頁に記載のように、ネガマスタ型フォトレジスト(SU8 3050)を用いて、標準ソフトリソグラフィー技術を使用して製作した。三重エマルジョンの製作は、タンデム乳化手法に従った。第1の非平面液滴発生機器は、内部チャネル(50×50μm)及び外部チャネル(100×100μm)から構成され、500秒間及び80Wで酸素プラズマに曝露することによって親水性とした。第2の非平面液滴発生器マイクロ流体機器は、内部チャネル(200×200μm)及び外部チャネル(300×300μm)から構成され、全チャネルをDuxback(登録商標)の溶液でフラッシュすることによって疎水性とした。両方の機器を、1/32インチの小OD PTFE管を介して接続した。
【0152】
内部相及び中間相を、圧力駆動システム(Elveflow OB1)により、親水性機器にポンプで送ることによって、約50μm直径の液滴を最初に生成し、こうして二重エマルジョンを得た。生成された液滴を疎水性機器に移送し、外部相によって再び乳化させ、こうして三重エマルジョンを得た。
【0153】
マイクロ液滴の単分散集団の均一且つ連続的な生成が達成されるまで、異なる圧力率を試験した。最終圧力率は、内部相に対して350mbar、中間タンパク質相に対して500mbar、外部油脂相に対して180mbarであった。生成された液滴をガラスバイアルに収集し、10℃で12時間保って、ゲル化プロセスを確実に完了させた。
【0154】
次に、形成されたマイクロカプセルを、標準的な脱乳化手順によって洗浄し:バイアルから、フッ素系界面活性剤を含有する連続油脂相を最初に除去した。500μlのマイクロカプセルに対して、HFE-7500 3M(商標)Novec(商標)中の等体積の10%PFO溶液を添加し、30秒間十分に混合した。次に、HFE-7500 3M(商標)Novec(商標)中の10%のPFO溶液を除去し、それに続き、等体積の純粋HFE-7500 3M(商標)Novec(商標)を添加することによって油脂洗浄を2回実施した。最後に、2500μlの0.1MのCaCl2溶液をバイアルに添加し、油脂相から水性相へマイクロカプセルを移行させた。マイクロカプセル懸濁液を含有する上澄み液を、別のバイアルに移した。図2は、実施例1のマイクロカプセル組成物の写真である。
【0155】
(実施例2)
ビタミンB6を含有するマイクロカプセルの調製
・ 内部相の調製:
油中水型(W/O)エマルジョンを、プローブ超音波処理によって生成した。1MのビタミンB6溶液を伴う0.03%のゲランガムを、4wt%のPGPRを伴うミグリオール829油脂中で、水性1部対油性4部の体積比で乳化させた。
【0156】
・ 中間相の調製:
35%(v/v)の乳酸溶液中の10%(w/v)のエンドウタンパク質の単離物からなる、500mlの混合物を調製した。混合物を超音波処理し、大きいコロイド状凝集体を破壊して(Hielscher UIP1000hdT(1000W、20kHz))、その後、透明溶液を得た。エネルギー印可は、90分間にわたって500kJであった。
【0157】
・ 連続油脂相の調製:
外部連続油脂相は、2wt%のPGPRを含有するミグリオール840を含んだ。
【0158】
・ マイクロカプセルの調製:
内部相を、膜乳化機器(AXF-1、Micropore社)を使用することによって、中間相内で乳化させた。生じた液滴の大きさは、およそ40μmである。得られたエマルジョンを、55℃において、連続油脂相を含有するガラスジャケット付き反応器に連続的にポンプで送って、三枚羽根マリンプロップインペラを備えるHeidolph Hei-TORQUE Coreオーバーヘッド撹拌器によって剪断を施し、W/O/W/O三重エマルジョンを生成した。Micropore機器からの二重エマルジョンの、バルク乳化油脂に対する比は、1:4であった。
【0159】
連続油脂相を800rpmで5分間撹拌しながら、55℃の温度に維持し、その後、反応器を氷水ジャケットで冷却して、完了した三重エマルジョンの温度を20℃未満に低下させた。
【0160】
形成されたマイクロカプセルは、連続油脂相をデカントする前に、3℃で3~4時間完全に沈降させた。次に、4wt%のポリソルベート80と共に0.1Mのトリポリリン酸ナトリウム溶液を、マイクロカプセルスラリーに添加した。この混合物を穏やかな混合を伴い18時間放置した(オーバーヘッド撹拌器を使用して150rpm)。次に、連続相油脂を確実にマイクロカプセルの表面から完全に除去するために、カプセルを硬水溶液(NaHCO3を192mg/L、CaSO4.2H2Oを120ml/L、MgSO4を120mg/L、KClを8mg/Lで含有)で3回洗浄した。
【0161】
次に、最終マイクロカプセルをデカントし、50vol%スラリーとした洗浄溶液中で冷蔵庫(3℃)に保存した。図3は、実施例2のマイクロカプセル組成物の写真である。
【0162】
・ 制御放出実験:
HPLC分析を使用して、カプセル化されなかったピリドキシン塩酸塩の濃度を定量化することによって、マイクロカプセル中のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の保持を10日間にわたり追跡した。
【0163】
硬水(NaHCO3を192mg/L、CaSO4.2H2Oを120ml/L、MgSO4を120mg/L、KClを8mg/Lで含有)中50vol%スラリー中の洗浄したマイクロカプセルの200μlアリコートを、800μlの硬水に添加した(溶液A)。試料中のピリドキシン塩酸塩の総量(すなわち、カプセル化されたもの及びカプセル化されなかったもの)を定量化するため、対照試料の溶液Aを、全てのマイクロカプセルを破壊するために超音波ホモジナイザー(Bandelin、HD4200)を30秒間50%振幅で使用して超音波処理に曝した。次に、試料を14000rpmで15分間遠心分離にかけ、HPLC分析用に上澄み液から200μlのアリコートを取り出し、1mlの試料中のピリドキシン塩酸塩の総量を定量化した。
【0164】
溶液A中の最初にカプセル化されなかったピリドキシン塩酸塩を定量化するために、HPLC分析用に上澄み液から200μlのアリコートを取り出した。次に、存在するピリドキシン塩酸塩の測定された最初の総量から、カプセル化されなかったピリドキシン塩酸塩の測定量を減算することによって、溶液A中のカプセル化されたピリドキシン塩酸塩の量を決定することができた。
【0165】
マイクロカプセル中のピリドキシン塩酸塩の保持を定量化するために、溶液Aの1mlの試料を、20℃で10日間インキュベートしておき、その後、HPLC分析用に200μlの上澄み液を取り出した。これは、マイクロカプセルから漏出し、もはやカプセル化されていないピリドキシン塩酸塩の測定値を提供する。次に、この値を、最初の総ピリドキシン塩酸塩量から減算し、特定の期間後にカプセル化された量を得る。これは、最初にカプセル化されたピリドキシン塩酸塩量のパーセントとして算出することができる。
【0166】
HPLC定量化により、10日後に、マイクロカプセルの内側に、60%を超えるピリドキシン塩酸塩の保持が確認された。結果をTable 1(表1)に示す。
【0167】
【表1】
【0168】
(実施例4)
タンパク質消化率試験
本発明のマイクロカプセルの消化率を評価するために、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルに消化率試験を施した。
【0169】
・ 試料調製:
植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルのみを有する空のマイクロカプセルを、以下のように調製した:
【0170】
35%(v/v)の乳酸溶液中の12.5%(w/v)のエンドウタンパク質の単離物からなる、400mlの混合物を調製した。混合物を超音波処理し、大きいコロイド状凝集体を破壊し(Hielscher UIP500hdT(500W、20kHz))、その後、透明溶液を得た。エネルギー印可は、15分間にわたって100kJであった。
【0171】
2L容器中の、1Lの85℃のミグリオール840油脂(2wt%のPGPRを有する)に、オーバーヘッド撹拌器を用いて1100rpmでミグリオールを撹拌しながら、この溶液を注入した。1100rpmにおける1分間の撹拌後、撹拌速度を500rpmに低下し、容器を氷水で包囲することによって、混合物を20℃まで冷却した。
【0172】
冷却後、撹拌を終了し、混合物を3℃で18時間保存し、乳化プロセスによって形成された球体を沈降させた。次に、上澄み油脂を流し出した。次に、球体を一連の水性溶液で洗浄した:0.5wt%のポリソルベート80を加えた0.1MのCaCl2;0.1MのCaCl2;0.1Mのクエン酸Na及び20mMのクエン酸ナトリウム緩衝液。洗浄工程により残留油脂を除去し、pHを5.4まで上げた。プロセスにより、83マイクロメートルの平均直径を有する球体を得た。
【0173】
・ 試験方法及び結果:
Animal Feed Science and Technology、51、29~43頁(1995)に詳述されるボイセンプロトコルに従うことによって、タンパク質消化率を測定した。測定したボイセンタンパク質消化率は、100.8±2.0%であった。対照試料(市販のエンドウタンパク質単離物、ProEarth、Cambridge Commodities社から)は、99.7±2.0%のボイセンタンパク質消化率を有した。
【0174】
したがって、この結果は、本発明のマイクロカプセルの植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルは、純粋なエンドウタンパク質と同等の消化率を有することを示す。したがって、本発明のマイクロカプセルは、食品及び飲料製品における有用な用途を有する。
【0175】
(実施例5)
生分解性試験
本発明のマイクロカプセルの生分解性を評価するために、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルに生分解性試験を施した。
【0176】
・ 試料調製:
植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルのみを有する空のマイクロカプセルを、実施例4に記載のように調製した。この調製に続いて、マイクロカプセルスラリーをトレイに注入し、乾燥材料が0.5の水分活性に到達するまで、85℃における炉中で3~4時間乾燥させた。
【0177】
・ 試験方法:
次に、乾燥タンパク質マイクロカプセルに、参照標準としてセルロースを使用して、ISO-14851標準に準拠して、淡水中で水系好気的生分解性試験を施した。
【0178】
・ 結果:
O2消費量に基づく生分解量は、使用した試験材料の生化学的酸素要求量(BOD、対照に対して補正)の、理論的酸素要求量(ThOD)に対する比で表される。
【0179】
Table 2(表2)は、参照試験及び試験したマイクロカプセルのThOD(理論的酸素要求量)、正味のO2消費量及び生分解パーセントを示す。2つの異なる材料の生分解パーセント(O2消費量に基づく)の推移の概要を図4に示す。酸素消費量に関して、硝化作用による中間補正は行わない。
【0180】
28日後、O2消費量により測定して、参照試料セルロースは、82.4%の生分解パーセントに到達した。試験したマイクロカプセルの生分解は更に進行し、87.5%の絶対的生分解が測定された。
【0181】
【表2】
【0182】
CO2生成量に基づく生分解は、CO2に変換された試験材料の固体炭素のパーセントとして算出される。
【0183】
発生したCO2を、滴定により決定した。Table 3(表3)は、参照試験及び試験したマイクロカプセルのTOC(全有機炭素含有量)、正味のCO2生成量及び生分解パーセントを示す。2つの異なる材料の生分解パーセント(CO2生成量に基づく)の推移の概要を図5に示す。
【0184】
28日後、CO2生成量により測定して、参照試料セルロースは、84.2%の生分解パーセントに到達した。試験したマイクロカプセルの生分解は進行し、82.4%の平均絶対的生分解が測定された。相対的にセルロースと比較して、試験したマイクロカプセルに関して98.0%の生分解が算出された。したがって、ISO-14851標準に規定された90%の生分解要件は満足された。
【0185】
【表3】
【0186】
結果は、本発明のマイクロカプセルの植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが、ISO-14851によって規定されたマイクロプラスチック用の淡水条件下での生分解要件を容易に達成することを示す。したがって、本発明のマイクロカプセルは、マイクロカプセルが最終的には水路/海洋に行き着いて、それらが短期間で十分に生分解し終わるかのような、環境を配慮したカプセル化技術を示し、ホームケア及びホームケアの用途における使用に特に適する。
【0187】
・ カプセルシェルFTIR分析:
乾燥された空のマイクロカプセルに関して、構造分析もまた実施した。構造分析を、FTIR-Equinox 55分光計(Bruker社)を使用して実施した。試料を更なる前処理を伴うことなく使用し、FTIRホルダー内に置いた。大気補正スペクトルを元のFTIRスペクトルから差し引き、更なる分析に二次導関数を適用した。各FTIR測定を、3回繰り返した。装置の感度は、5%であると検出された。エンドウタンパク質単離物の本来の構造の超分子凝集体への転換を解明するために、タンパク質二次構造と厳密に相関するアミドIにおける振動的変化を追跡した。
【0188】
結果を図6に示す。カプセルシェルのFTIR分析により、46%の分子間βシートが示された。この高レベルのβ-シートは、シェルが高温において安定であり、最終製品への加工中に、特に、例えば低温殺菌法のような高温加工が必要とされる場合に、そこにカプセル化された任意のビタミンが分解から保護されることが可能となることを意味する。
付記
1. (a)水溶性原料を含む親水性相;
(b)親油性相;及び
(c)植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェル
を含むマイクロカプセル。
2. 親水性相が水を含む、付記1に記載のマイクロカプセル。
3. 水溶性原料が、1つ又は複数のビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、パンテノール、α-ヒドロキシ酸、水溶性ミネラル塩、水溶性植物抽出物及び酵母、酵素、抗生物質、オリゴペプチド、タンパク質及びタンパク質加水分解物から選択される、付記1又は付記2に記載のマイクロカプセル。
4. 親油性相が、油脂を含む、付記1から付記3のいずれか一つに記載のマイクロカプセル。
5. 親油性相が、油溶性界面活性剤を更に含む、付記1から付記4のいずれか一つに記載のマイクロカプセル。
6. 油溶性界面活性剤が、スクロースステアリン酸エステル、スクロースパルミチン酸エステル、スクロースオレイン酸エステル、スクロースラウリン酸エステル、スクロースベヘン酸エステル、及びスクロースエルカ酸エステル等のスクロース脂肪酸エステル;モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、及びセスキオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル;モノステアリン酸グリセロール及びモノオレイン酸グリセロール等のグリセリル脂肪酸エステル;並びにテトライソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、及びモノイソステアリン酸ジグリセリル等のポリグリセリル脂肪酸エステルから選択される、付記5に記載のマイクロカプセル。
7. 親油性相中の油溶性界面活性剤の濃度が、0.01%w/w~10%w/wの範囲である、付記5又は付記6に記載のマイクロカプセル。
8. 親油性相が、油溶性原料を更に含む、付記1から付記7のいずれか一つに記載のマイクロカプセル。
9. 油溶性原料が、1つ又は複数の:脂肪酸;トリグルセリド又はその混合物;α-リノレン酸(18:3n3)、オクタデカテトラエン酸(18:4n3)、エイコサペンタエン酸(20:5n3)(EPA)及びドコサヘキサエン酸(22:6n3)(DHA)等のオメガ-3脂肪酸、並びにこれらの誘導体及びこれらの混合物;ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE及びビタミンK等の脂溶性ビタミン;トコフェリル及びアスコルビル誘導体等の抗酸化剤;レチノイド又はレチノール;精油;バイオフラボノイド、テルペノイド;バイオフラボノイド及びテルペノイド等の合成物から選択される、付記8に記載のマイクロカプセル。
10. 植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェル中の植物ベースのタンパク質が、ダイズ、エンドウ、コメ、ジャガイモ、コムギ、トウモロコシゼイン又はモロコシから得られ;植物タンパク質が、ダイズタンパク質、エンドウタンパク質、ジャガイモタンパク質、ナタネタンパク質及び/又はコメタンパク質から選択されることが好ましい、付記1から付記9のいずれか一つに記載のマイクロカプセル。
11. 植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが、自己組織化される植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルである、付記1から付記10のいずれか一つに記載のマイクロカプセル。
12. 植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが、少なくとも40%の分子間β-シート、少なくとも50%の分子間β-シート、少なくとも60%の分子間β-シート、少なくとも70%の分子間β-シート、少なくとも80%の分子間β-シート、又は少なくとも90%の分子間β-シートを有するタンパク質二次構造を有する植物ベースのタンパク質を含む、付記1から付記11のいずれか一つに記載のマイクロカプセル。
13. 植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが、10rad/秒において500Pa超、1000Pa超、2500Pa超、3000Pa超、4000Pa超の貯蔵弾性率(G')を有する、付記1から付記12のいずれか一つに記載のマイクロカプセル。
14. 植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが、50~500nmの間の平均長さ中央値若しくは50~500nmの間の平均長さ平均値を有するタンパク質凝集体を含むか;若しくは80%の凝集体が、50~500nmの間の平均長さを有し;
及び/又は、凝集体が、5~50nmの間の高さ中央値を有しうるか;若しくは凝集体が、5~50nmの間の平均高さ平均値を有しうるか;若しくは80%の凝集体が、5~50nmの間の平均高さを有し;
凝集体が、50~500nmの間の平均長さ中央値及び/若しくは5~50nmの間の平均高さ中央値を有することが好ましい、付記1から付記13のいずれか一つに記載のマイクロカプセル。
15. 親水性相が、親油性相中に分散している、付記1から付記14のいずれか一つに記載のマイクロカプセル。
16. 親水性相及び親油性相が、油中水型エマルジョンを形成する、付記1から付記15のいずれか一つに記載のマイクロカプセル。
17. 親水性相及び親油性相が、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルによってカプセル化される、付記1から付記15のいずれか一つに記載のマイクロカプセル。
18. 油中水型エマルジョンが、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルによってカプセル化されている、付記16に記載のマイクロカプセル。
19. 植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが、10nm~50,000μmの範囲、好ましくは10μm~100μmの範囲の厚さを有する、付記1から付記18のいずれか一つに記載のマイクロカプセル。
20. 最大寸法で1mm未満、好ましくは900μm未満の大きさを有する、付記1から付記19のいずれか一つに記載のマイクロカプセル。
21. マイクロカプセルへの圧力の印可時に、水溶性原料及び/又は油溶性原料を表面に放出する、付記1から付記20のいずれか一つに記載のマイクロカプセル。
22. 前記表面が生体表面である、付記21に記載のマイクロカプセル。
23. 前記生体表面が、毛髪、皮膚及び歯から選択される、付記22に記載のマイクロカプセル。
24. 前記表面が布地である、付記21に記載のマイクロカプセル。
25. 植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルの酵素的分解の結果として、水溶性原料及び/又は油溶性原料を放出する、付記1から付記20のいずれか一つに記載のマイクロカプセル。
26. 前記酵素的分解が、ヒト又は動物の消化器系で起きる、付記25に記載のマイクロカプセル。
27. 付記1から付記26のいずれか一つに記載の少なくとも1つのマイクロカプセル及び外部相を含む組成物。
28. 少なくとも1つのマイクロカプセルが、外部相中に分散している、付記27に記載の組成物。
29. 外部相が、外部水性相である、付記27又は付記28に記載の組成物。
30. 外部水性相が、水性塩溶液である、付記29に記載の組成物。
31. 外部水性相が、連続的な外部水性相である、付記29又は付記30に記載の組成物。
32. 外部相が、外部親油性相である、付記27又は付記28に記載の組成物。
33. 付記1から付記26のいずれか一つに記載のマイクロカプセルを調製する方法であって:
(a)水溶性原料を含む親水性相を、第1の親油性相中で乳化させて、一次エマルジョンを得る工程と;
(b)前記一次エマルジョンを、1つ又は複数の植物ベースのタンパク質を含む植物ベースのタンパク質溶液中で再乳化させて、二重エマルジョンを得る工程であり、ここで、前記植物ベースのタンパク質溶液は、植物ベースのタンパク質溶液のゾル-ゲル転移温度より高い温度である、工程と;
(c)前記二重エマルジョンを、第2の親油性相中で再乳化させて、三重エマルジョンを得る工程と;
(d)溶液中の植物ベースのタンパク質を誘導してゾル-ゲル転移を起こして、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルを形成する工程であり、ここで前記植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが前記一次エマルジョンをカプセル化して、第2の親油性相である外部相中で懸濁するマイクロカプセルを形成する、工程と;
(e)マイクロカプセルを洗浄して、第2の親油性相を除去する工程と、
を含む方法。
34. 一次エマルジョンが、5μm以下の直径を有する、付記33に記載の方法。
35. 二重エマルジョンが、100μm以下の直径を有する、付記33又は付記34に記載の方法。
36. 三重エマルジョンが、200μm以下の直径を有する、付記33から付記35のいずれか一つに記載の方法。
37. 第1及び第2の親油性相が、同じであるか又は異なる、付記33から付記36のいずれか一つに記載の方法。
38. 第1及び/又は第2の親油性相が、油溶性界面活性剤を更に含む、付記33から付記37のいずれか一つに記載の方法。
39. 第1及び第2の親油性相中の油溶性界面活性剤が、同じであるか又は異なる、付記38に記載の方法。
40. 植物ベースのタンパク質溶液が、溶媒系中に1つ又は複数の植物ベースのタンパク質を含み、溶媒系は混和性共溶媒を含み;第1の共溶媒は、植物ベースのタンパク質の溶解度を増加させ、第2の共溶媒は、植物ベースのタンパク質の溶解度を減少させる、付記33から付記39のいずれか一つに記載の方法。
41. 第1の共溶媒が、有機酸;好ましくは酢酸及び/又はα-ヒドロキシ酸であり;α-ヒドロキシ酸が、好ましくはグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸及び/又は酒石酸から選択されてよく;特に好ましい有機酸は、酢酸及び/又は乳酸である、付記40に記載の方法。
42. 第2の共溶媒が、水性緩衝液であり、好ましくは水、エタノール、メタノール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、2-プロパノール、1-ブタノール、1-プロパノール、ヘキサノール、t-ブタノール、酢酸エチル、ヘキサフルオロイソプロパノールから選択され、より好ましくは水及び/又はエタノール、特に好ましくは水である、付記40又は付記41に記載の方法。
43. 前記溶媒系が、約20~80%v/v、好ましくは約20~60%v/v、約25~55%v/v、約30~50%v/v、約20%、約30%、約40%、約50%又は約60%v/v、最も好ましくは約30~50%v/vの共溶媒比を含む、付記40から付記42のいずれか一つに記載の方法。
44. 工程(d)において、タンパク質溶液が、1つ又は複数の植物ベースのタンパク質のゾル-ゲル転移温度より高い第1の温度に加熱され、次に、1つ又は複数の植物ベースのタンパク質のゾル-ゲル温度より低い第2の温度まで低下されて、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルを形成する、付記33から付記43のいずれか一つに記載の方法。
45. 前記マイクロカプセルが、マイクロ流体機器を使用して形成される、付記33から付記44のいずれか一つに記載の方法。
46. マイクロカプセルを乾燥して、乾燥粉末を形成する工程を更に含む、付記33から付記45のいずれか一つに記載の方法。
47. 前記乾燥が、噴霧乾燥、流動層乾燥及び/又はトレイ乾燥から選択される、付記46に記載の方法。
48. 付記33から付記47のいずれか一つに記載の方法により調製される、マイクロカプセル。
49. 付記27から付記32のいずれか一つに記載の組成物を調製する方法であって:
(a)水溶性原料を含む親水性相を、第1の親油性相中で乳化させて、一次エマルジョンを得る工程と;
(b)前記一次エマルジョンを、1つ又は複数の植物ベースのタンパク質を含む植物ベースのタンパク質溶液中で再乳化させて、二重エマルジョンを得る工程であり、ここで前記植物ベースのタンパク質溶液は、植物ベースのタンパク質のゾル-ゲル転移温度より高い温度である、工程と;
(c)前記二重エマルジョンを、第2の親油性相中で再乳化させて、三重エマルジョンを得る工程と;
(d)溶液中の植物ベースのタンパク質を誘導してゾル-ゲル転移を起こして、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルを形成する工程であり、ここで前記植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルが前記一次エマルジョンをカプセル化して、第2の親油性相である外部相中で懸濁するマイクロカプセルを形成する、工程と、
を含む方法。
50. 一次エマルジョンが、5μm以下の直径を有する、付記49に記載の方法。
51. 二重エマルジョンが、100μm以下の直径を有する、付記49又は付記50に記載の方法。
52. 三重エマルジョンが、200μm以下の直径を有する、付記49から付記51のいずれか一つに記載の方法。
53 .第1及び第2の親油性相が、同じであるか又は異なる、付記49から付記52のいずれか一つに記載の方法。
54. 第1及び/又は第2の親油性相が、油溶性界面活性剤を更に含む、付記49から付記53のいずれか一つに記載の方法。
55. 第1及び第2の親油性相中の油溶性界面活性剤が、同じであるか又は異なる、付記54に記載の方法。
56. (e)マイクロカプセルを洗浄して、第2の親油性相を除去する工程と;
(f)マイクロカプセルを外部水性相中で再懸濁させる工程と、
を更に含む、付記49から付記55のいずれか一つに記載の方法。
57. 前記外部水性相に、懸濁化剤を添加する工程を更に含む、付記56に記載の方法。
58. 前記懸濁化剤が、アカシアガム、アルギン酸、ペクチン、キサンタンガム、ゲランガム、カルボマー、デキストリン、ゼラチン、グアーガム、水素添加植物油カテゴリー1、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、マルトデキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、デンプン、ゼイン、架橋セルロース、架橋デンプン、架橋CMC、架橋カルボキシメチルデンプン、架橋ポリアクリレート及び架橋ポリビニルピロリドン等の水不溶性架橋ポリマー、並びにベントナイト及びラポナイト等の膨張性クレイから選択される、付記57に記載の方法。
59. 植物ベースのタンパク質溶液が、溶媒系中に1つ又は複数の植物ベースのタンパク質を含み、溶媒系は混和性共溶媒を含み;第1の共溶媒は、植物ベースのタンパク質の溶解度を増加させ、第2の共溶媒は、植物ベースのタンパク質の溶解度を減少させる、付記49から付記58のいずれか一つに記載の方法。
60. 第1の共溶媒が、有機酸;好ましくは酢酸及び/又はα-ヒドロキシ酸であり;α-ヒドロキシ酸が、好ましくはグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸及び/又は酒石酸から選択されてよく;特に好ましい有機酸は、酢酸及び/又は乳酸である、付記59に記載の方法。
61. 第2の共溶媒が、水性緩衝液であり、好ましくは水、エタノール、メタノール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、2-プロパノール、1-ブタノール、1-プロパノール、ヘキサノール、t-ブタノール、酢酸エチル、ヘキサフルオロイソプロパノールから選択され、より好ましくは水及び/又はエタノール、特に好ましくは水である、付記59又は付記60に記載の方法。
62. 前記溶媒系が、約20~80%v/v、好ましくは約20~60%v/v、約25~55%v/v、約30~50%v/v、約20%、約30%、約40%、約50%又は約60%v/v、最も好ましくは約30~50%v/vの共溶媒比を含む、付記59から付記61のいずれか一つに記載の方法。
63. 工程(d)において、タンパク質溶液が、1つ又は複数の植物ベースのタンパク質のゾル-ゲル温度より高い第1の温度に加熱され、次に、1つ又は複数の植物ベースのタンパク質のゾル-ゲル温度より低い第2の温度まで低下されて、植物ベースのタンパク質ヒドロゲルシェルを形成する、付記49から付記62のいずれか一つに記載の方法。
64. 前記マイクロカプセルが、マイクロ流体機器を使用して形成される、付記49から付記63のいずれか一つに記載の方法。
65. 付記49から付記64のいずれか一つに記載の方法により調製される、組成物。
66.付記1から付記26のいずれか一つに記載のマイクロカプセル又は付記27から付記32のいずれか一つに記載の組成物を組み込んでいる、食品、飲料、化粧料、医薬品、医療用具、生体材料又は農業化学品。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】