(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】固相により推進される放射性化合物の反応
(51)【国際特許分類】
C07D 207/46 20060101AFI20230927BHJP
C07K 1/13 20060101ALI20230927BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230927BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20230927BHJP
C07K 16/30 20060101ALN20230927BHJP
【FI】
C07D207/46
C07K1/13
C12M1/00 Z
C07K16/00 ZNA
C07K16/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516121
(86)(22)【出願日】2021-09-07
(85)【翻訳文提出日】2023-05-01
(86)【国際出願番号】 EP2021074579
(87)【国際公開番号】W WO2022053459
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523085533
【氏名又は名称】プレシリックス・ナームローゼ・ベンノートシヤープ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ローラン,ナバロ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルブルージュ,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ドゥホイヴェッター,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】フリーベ,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】タディーノ,ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】メインドロン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ジョヤード,ヨアン
【テーマコード(参考)】
4B029
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB17
4B029CC03
4B029DG08
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、放射性化合物の化学反応を実施するための方法、並びに化学反応のための改良された加熱のためのデバイス、システム、及び方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合物の中に含まれる放射性化合物の化学反応を実施するための方法であって、
前記方法が、
(a)前記混合物を固相と接触させるステップ、それに続けて、
(b)前記混合物を、30℃から最高150℃までの範囲で選択される温度にまで加熱するステップ、
を含み:
ステップ(a)及び(b)には、前記固相を、アルカリ性の溶液と接触させることが含まれず、
前記化学反応が、結果として、前記放射性化合物の中に含まれる放射性核種の上に、新しい結合を形成させず、前記放射性化合物にはフッ素-18が含まれない、
方法。
【請求項2】
(a)前記混合物を前記固相と接触させると、前記固相に対する前記放射性化合物の付着が起こり、前記方法が、前記固相を溶離液と接触させることによって、前記固相から前記放射性化合物を脱離させる、ステップ(c)をさらに含み、前記溶離液が、水溶液、有機溶媒、又はそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、前記有機溶媒が水とエタノールとの混合物であり、最も好ましくは、前記有機溶媒がエタノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化学反応が、前記放射性化合物の加水分解を含み、前記加水分解が、前記加熱の間に起こり、前記加水分解が、酸加水分解であり、好ましくは、前記酸加水分解が、リン酸、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、及びそれらの水性混合物からなる群より、より好ましくはリン酸、塩酸、硫酸、及びそれらの水性混合物からなる群から選択される酸の使用を含み、最も好ましくは、前記酸が、80重量%のリン酸である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記加水分解が、前記放射性化合物からの保護基の除去を含み、好ましくは、前記除去により、脱保護された放射性化合物が得られ、より好ましくは、前記保護基が、tert-ブチルカルバメート(t-Boc又はBoc)、tert-ブチルエステル(OtBu)、ベンジルエステル(BzO)、ベンジリデン、テトラヒドロピラニルエーテル(THP)、アセタール、トリチル(Trt)、及びメトキシメチルエーテル(MOM)からなる群から選択され、最も好ましくは、前記保護基が、tert-ブチルカルバメート(t-Boc又はBoc)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記温度が、30℃から最高70℃までの範囲、好ましくは30℃から最高55℃までの範囲で選択され、より好ましくは、前記温度が、30℃から最高70℃までの範囲で選択され、前記加熱時間が、1分から最高15分までの範囲で選択され、最も好ましくは、前記温度が、30℃から最高55℃までの範囲で選択され、前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、
(d)好ましくは請求項2において定義されるステップ(c)の終了時に得られた、前記脱保護された放射性化合物に、生物学的残基を付着させるステップ
を含み、前記付着が、放射標識された生物学的残基を与え、好ましくは、前記生物学的残基がアミノ酸のポリマーである、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記生物学的残基が、抗体又はその断片であり、好ましくは、前記抗体又はその断片が、診断用及び/又は治療用の化合物であり、より好ましくは、前記診断用及び/又は治療用の化合物が、細胞において、最も好ましくは腫瘍細胞において発現される抗原を目標とし、より好ましくは、前記抗原がHER2である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体又はその断片が、重鎖抗体(V
HH)由来の重鎖可変ドメイン、又はそれらの断片であり、好ましくは、前記重鎖抗体(V
HH)又はそれらの断片が、少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するか、又はアミノ酸配列番号7又は配列番号8を有している、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記放射性化合物が、α-放射体及びβ-放射体からなる群から選択される、好ましくは水素-3、アスタチン-211、炭素-11、炭素-14、臭素-76、ヨウ素-123、ヨウ素-124、ヨウ素-125、ヨウ素-131、リン-32、及び硫黄-35からなるリストから選択される放射性核種を含み、最も好ましくは、前記放射性核種が、アスタチン-211、ヨウ素-123、ヨウ素-124、及びヨウ素-131からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記放射性化合物が、N-スクシンイミジル-4-(1,2-ビス(tert-ブトキシカルボニル)グアニジノ)メチル-3-[(131)I]ヨードベンゾエート(Boc
2-[
131I]SGMIB)であり、好ましくは、N-スクシンイミジル-4-(1,2-ビス(tert-ブトキシカルボニル)グアニジノ)メチル-3-[(131)I]ヨードベンゾエート(Boc
2-[
131I]SGMIB)が、加熱の間に、定量HPLCで測定して、少なくとも30%の収率でN-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[(131)I]ヨードベンゾエート([
131I]SGMIB)に転化され、前記加熱時間が、1分~10分の範囲、より好ましくは1分から最高5分までの範囲から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、請求項12~17のいずれか1項に記載のデバイス、又は請求項18~20のいずれか1項に記載のシステムの使用を含み、前記方法の際の(b)前記混合物の前記加熱が、前記デバイス又は前記システムに含まれる加熱手段の加電によって達成される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
混合物を含む化学反応容器(3)を収容し加熱するためのデバイス(1)であって、前記デバイス(1)は、加熱手段(5)及び前記化学反応容器(3)を収容するように構成された開口部(2)を含み、前記加熱手段(5)が、少なくとも部分的に前記開口部を囲んでおり;
前記加熱手段(5)が:
- 断熱材用ポリマー(9)、
- 前記断熱材用ポリマーの中に包埋された抵抗導体(8)
を含み;
前記デバイス(1)が、前記混合物を含む前記化学反応容器(3)が前記開口部(2)の中に存在している場合に、前記加熱手段(5)に加電することによって、予め決められた温度要件に従って、前記化学反応容器の中に存在している前記混合物を加熱するように構成されており、
好ましくは、前記デバイス(1)が、筒状のスリーブであり、前記開口部が、前記デバイス(1)で囲まれた内腔である、
デバイス(1)。
【請求項13】
前記断熱材用ポリマー(9)が、シリコーン又はポリイミドであり、好ましくは、前記断熱材用ポリマー(9)の融解温度が、150℃よりも高い、好ましくは200℃よりも高い、請求項12に記載のデバイス(1)。
【請求項14】
前記抵抗導体(8)が、エッチドフォイル加熱要素、又は巻線加熱要素である、請求項12又は13に記載のデバイス(1)。
【請求項15】
前記加熱手段(5)が、フレキシブルシートであり、
- 好ましくは、前記フレキシブルシートが、長方形の形状を有し;及び/又は
- 好ましくは、前記フレキシブルシートの厚みが、0.5mmから最高1.5mmまで、より好ましくは0.5mmから最高1.0mmまでであり、
- 好ましくは、前記フレキシブルシートが、前記フレキシブルシートの片面を被覆する補強層を含み、より好ましくは、前記補強層が、ガラス及び/又はガラス繊維からなっている、請求項12~14のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項16】
前記デバイスが、前記加熱手段と前記開口部の間に置かれ、前記開口部を取り囲む金属スリーブ(4)を含み、前記金属が、好ましくは、銅である、請求項12~15のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項17】
前記デバイス(1)が、制御ユニットを含み、好ましくはさらに温度センサーを含み、前記制御ユニットが、前記温度センサーによる測定に基づいて前記加熱手段に供給する電力を制御することによって、30℃~150℃、好ましくは30℃~80℃、より好ましくは30℃~50℃の範囲に含まれる予め決められたサブレンジになるような、前記混合物の温度に関連して前記予め決められた温度要件を維持するように構成され、好ましくは前記制御が、前記温度センサーによる測定に基づいている、請求項12~16のいずれか1項に記載のデバイス(1)。
【請求項18】
混合物中で化学反応を実施するためのシステム(10)であって、
- 請求項12~16のいずれか1項に記載のデバイス(1);
- デバイス(1)の開口部(2)の中に置かれた化学反応容器(3)であって、前記化学反応容器(3)は、チャンバー(30)、入口(31)、及び好ましくは前記化学反応中のファシリテーターとして機能させるのに適した固相を含む、化学反応容器(3)
を含み、
前記システム(10)が、前記混合物が前記入口(31)を通して前記チャンバー(30)の中に挿入されると、前記加熱手段(5)に加電することによって、予め決められた温度要件に従って、前記化学反応容器(3)の中に存在している前記混合物を加熱して、それにより、前記チャンバー(30)の中で、前記化学反応を起こさせるように構成されている、
システム(10)。
【請求項19】
前記化学反応容器(3)が、出口(32)をさらに含み、好ましくは、前記化学反応容器が、SPEカートリッジである、請求項18に記載のシステム(10)。
【請求項20】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法、又は請求項12~17のいずれか1項に記載のデバイス、又は請求項18~20のいずれか1項に記載のシステムであって、前記方法のステップ(a)で使用される前記固相、又は前記デバイス若しくは前記方法に含まれる前記固相が、シリカ、好ましくは、Sep-Pak tC18、Step-Pak C18、Oasis HLB、Oasis MCX、Oasis MAX、Sephadex LH-20、及びそれらの組合せからなる群から選択されるシリカ、より好ましくはSep-Pak tC18である、方法、又はデバイス、又はシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固相により推進される放射性化合物の反応の技術分野、並びにそのような反応を実施するための加熱デバイス及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射性反応生成物の合成には、典型的には、前駆物質と呼ばれる放射性化合物を形成させるための、非放射性化合物の標識化反応、それに続けての、放射性反応生成物を形成させるための、前記前駆物質のポスト-標識化(post-labeling)反応が含まれる。多くのポスト-標識化反応、限定される訳ではないが、特には保護基の加水分解的除去は、高い活性化障壁を特徴としている。それにも関わらず、そのような反応は、典型的には、室温又はやや高い温度たとえば、20℃~30℃で実施されるが、その理由は、温度がもっと高いと、放射線分解及び/又は望ましくない副反応の増大がもたらされる可能性があるからである。したがって、高い活性化障壁を有するそれらのポスト-標識化反応は、当技術分野では、長い反応時間及び/又は過酷な反応条件下で実施される。たとえば、Mosdzianowskiら(2002)[1]は、60℃の温度を使用すると、強塩基(12NのNaOH)触媒による加水分解の際に、たとえ固相が使用されていても、望ましくない異性化反応生成物が得られるということを示している。
【0003】
したがって、短い反応時間で、顕著な放射線分解を起こすことなく、そして良好な収率で、放射性化合物のポスト-標識化反応、具体的には加水分解を実施する方法のための必要性が未解決のまま当業界で存在している。
【0004】
さらには、そのようなポスト-標識化反応が制御された加熱を必要としているが、それらは、典型的には、使い捨ての反応容器の中で実施されている。したがって、使い捨ての容器も含めて各種の容器を用いるのに適した制御された加熱が必要とされている。
【0005】
米国特許第8476063B2号明細書[2]には、備え付けの形で含まれる加熱要素の手段により加熱されるチャンバーを含むデバイス及び方法が開示されている。しかしながら、米国特許第8476063B2号明細書による加熱は、正確さと温度制御が欠けており、そして過度に複雑である。
【0006】
米国特許出願公開第20020183660A1号明細書[3]、米国特許第9408257B2号明細書[4]、及び韓国特許第101320762B1号明細書[5]では、加熱手段が提供されているが、それらのいずれもが、化学反応容器を用いて使用するのに適してはいない。さらには、それらのデバイスは、過度に複雑であり、及び/又は十分な温度制御ができない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ポスト-標識化化学反応を実施するための方法
一般的な態様
第一の態様においては、本発明は、混合物の中に含まれる放射性化合物の化学反応を実施するための方法を提供するが、ここで、前記方法には、(a)前記混合物を固相と接触させるステップ、それに続けての、(b)前記混合物を、30℃から最高150℃までの範囲で選択される温度にまで加熱するステップが含まれ、ここで、ステップ(a)及び(b)には、前記固相を、アルカリ性の溶液と接触させることが含まれず、そしてここで、前記化学反応が、結果として、前記放射性化合物の中に含まれる放射性核種の上に、新しい結合を形成させない。そのような方法を、本出願では、本発明による方法又は本発明の方法と呼ぶ。本出願の文脈においては、前記放射性化合物には、フッ素-18は含まれない。本発明による(化学)反応又は本発明の(化学)反応は、本発明による方法を適用することにより実施することが可能な化学反応である。
【0008】
実施例1及び2には、固相(tC18)及び高温(40~75℃)を使用することにより、放射性化合物(Boc2-[131I]-SGMIB)の反応を誘発することが可能となるということが例示的に示されている。
【0009】
化合物の化学反応とは、前記化合物の反応生成物への転化と、定義されるが、ここで、前記転化には、前記化合物の中の(化学)結合の1つ又は複数が、形成されたり及び/又は破断されたりすることが含まれる。さらには、前記化合物と反応生成物とが、同一の数の化学結合及び/又は同一のタイプの化学結合を有していてもよい。たとえば、化合物の化学反応が、前記化合物のラセミ化又は異性化であってもよい。しかしながら、配座異性体の相互転化は、共有結合の回転のみが含まれていて、いかなる結合の破断/形成も含まれない限りにおいて、化学反応とは見做されない。本出願の文脈においては、「化学反応」及び「反応」という用語は、相互に置き換え可能に使用される。化学反応の反応生成物は、本明細書においては、前記化学反応の際に形成される各種の化合物と定義される。
【0010】
化学結合(本出願の文脈においては、結合とも呼ばれる)は、当業熟練者に公知の各種のタイプの化学結合、非限定的に挙げれば、たとえば共有結合、イオン結合、極性結合、又は水素結合などであってよい。(化学)結合が、共有結合を指しているのが好ましい。この好ましい定義に従えば、本発明による方法の結果には、共有結合の形成及び/又は破断が含まれる。
【0011】
化学反応には、2種以上の、上で定義されたような化学反応が含まれていてもよい。たとえば、抗体の断片の放射標識された化合物への抱合には、前記放射標識された化合物から保護基を加水分解して脱保護された化合物とするステップ、それ続けての、前記脱保護された化合物と前記抗体の断片とを縮合させるステップが含まれていてよい。本発明の文脈においては、化学反応には、いくつかの反応ステップが含まれていてよいと言われている。所定の反応の反応ステップは、前記所定の反応に含まれる、各種の反応と定義される。それゆえに、反応を実施するための方法には、定義により前記反応の中に含まれる、それぞれの反応ステップを実施するための方法が含まれる。
【0012】
放射性化合物の化学反応を実施するための方法は、前記化学反応を起こさせることを意味している。これは、1つ又は複数の環境因子たとえば温度を制御し、そして前記反応に必要な化合物、たとえば前記放射性化合物、並びに場合によっては他の反応物、溶媒、及び/又は触媒を共に参加させることにより、実施することができる。この場合においては、1つ又は複数の環境因子を制御すること、又は反応に必要な化合物を共に参加させることが、前記化学反応が、ワンポット反応として進行することを意味していると解釈してはならない(この場合、全部の反応物、溶媒、及び触媒が、同時に接触される)。化学反応を実施するための方法の反応生成物は、本明細書においては、前記化学反応の反応生成物として定義される。
【0013】
本発明による方法に含まれる加熱ステップには、前記混合物を加熱して、30℃から最高150℃までの範囲で選択される温度にすることが含まれる。
【0014】
好ましくは、前記加熱時間が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60分である。より好ましくは、前記加熱時間が、以下の範囲から選択される:1分から、最高240分まで、最高210分まで、最高180分まで、最高150分まで、最高120分まで、最高110分まで、最高100分まで、最高90分まで、最高80分まで、最高70分まで、最高60分まで、最高50分まで、最高40分まで、最高30分まで、最高20分まで、最高19分まで、最高18分まで、最高17分まで、最高16分まで、最高15分まで、最高14分まで、最高13分まで、最高12分まで、最高11分まで、最高10分まで、最高9分まで、最高8分まで、最高7分まで、最高6分まで、最高5分まで。
【0015】
好ましくは、前記混合物の前記加熱が、以下の範囲から選択される温度である:30℃から、最高35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、又は150℃まで。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、以下の範囲から選択される温度である:30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、又は65℃から、最高70℃まで。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、以下の範囲から選択される温度である:30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、又は145℃から、最高150℃まで。
【0016】
好ましくは、前記混合物の前記加熱が、以下の範囲から選択される温度である:35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、又は145℃の、それぞれ±10℃の範囲。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、以下の範囲から選択される温度である:40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、又は140℃の、それぞれ±20℃の範囲。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、以下の範囲から選択される温度である:45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、又は135℃の、それぞれ±30℃の範囲。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、以下の範囲から選択される温度である:50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、又は130℃の、それぞれ±40℃の範囲。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、以下の範囲から選択される温度である:55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、又は125℃の、それぞれ±50℃の範囲。
【0017】
好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高70℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高15分までの範囲で選択されるか、又は、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高15分までの範囲で選択されるか、又は、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高70℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択されるか、又は、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択されるか、又は、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高70℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高5分までの範囲で選択されるか、又は、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高5分までの範囲で選択される。
【0018】
本発明による方法の文脈においては、前記混合物を所定の温度で所定の時間加熱するということは、熱を、前記方法において使用される前記固相及び前記混合物に前記所定の時間与えて、前記混合物を、平衡到達時間の後に、前記所定の温度に到達させること、並びに、前記混合物の温度を、前記時間の残りの間、前記所定の温度とすることを意味している。ここで、前記平衡到達時間が、前記所定の時間よりも短いということは理解されたい。前記混合物の(空間的に)平均した温度が、前記所定の温度から、1℃以下、好ましくは0.5℃以下、より好ましくは0.2℃以下しかずれていないのなら、混合物が所定の温度に達した、或いは混合物の温度が所定の温度である。(空間的に)平均した温度は、前記混合物と熱的に平衡状態にある流体の中に浸漬させた簡単な温度計を使用して測定することができる。
【0019】
好ましくは、前記平衡到達時間が、180秒、又は170秒、又は160秒、又は150秒、又は140秒、又は130秒、又は120秒、又は110秒、又は100秒、又は90秒、又は80秒、又は70秒、又は60秒、又は50秒、又は40秒、又は30秒、又は20秒、又は10秒から、最低1秒まで、より好ましくは、前記平衡到達時間が、60秒から最低1秒までである。
【0020】
均質な温度分布を有する混合物は、以下のような混合物である:空間的にどこのポイントの温度も、赤外温度センサーで測定して、前記混合物の温度の空間的な平均値から、1℃以下、好ましくは0.5℃以下、より好ましくは0.2℃以下しかずれていない。本明細書におけるすべての実施形態において、所定の温度を有する混合物は、好ましくは、均質な温度分布を有する混合物である。
【0021】
放射性化合物の化学反応の反応生成物の収率は、前記反応の際に形成された前記反応生成物の分子の数の、前記反応の開始時の前記放射性化合物の分子の合計数に対する比率と定義される。この定義の文脈においては、前記合計数には、前記放射性化合物として考えられ、そして前記化学反応において反応することが可能であったが、それにも関わらず前記化学反応の際に前記反応生成物に至っていないような分子も含まれているということは、理解されたい。たとえば、加水分解反応の収率は、未反応の放射性化合物のため及び/又は他の反応生成物となる副反応のために、100%未満にしかならない。収率は、当業熟練者には公知のように、定量HPLCを介して測定するのが好ましい。
【0022】
反応生成物の収率(yield of product)すなわち反応生成物収率(product yield)に言及する場合、前記反応生成物は、本発明における化学反応の反応生成物であり、そして先に定義されたものである。さらには、特に断らない限り、本出願においては、前記反応の開始時における放射性化合物の濃度は、化学量論的に限定的であるということが、暗黙的に想定されている。さらには、その収率は、パラメーター、たとえば加熱の温度及び時間も含めて、化学反応が実施される条件で定義される。
【0023】
化学反応の収率は、前記化学反応の所望される反応生成物の収率として定義されるが、ここで、前記所望される反応生成物は、特定されたり、又は文脈から明らかであったりする。たとえば、下記の定義と直結して、加水分解的脱保護の収率は、好ましくは、特に断らない限り、完全に脱保護された反応生成物の収率を指している。
【0024】
それに相応して、本発明による方法に含まれる、ステップ(b)の終わり又はステップ(c)の終わりでの反応生成物の収率は、前記ステップ(b)又は(c)の終わりに得られた前記反応生成物の分子の数の、前記反応の開始時の前記放射性化合物の分子の合計数に対する比率と定義される。
【0025】
好ましくは、本発明における反応、又はその中に含まれる反応ステップの収率(所望される反応生成物の収率)は、少なくとも、25%、27.5%、30%、32.5%、35%、37.5%、40%、42.5%、45%、47.5%、50%、52.5%、55%、57.5%、60%、62.5%、65%、67.5%、70%、72.5%、75%、77.5%、80%、82.5%、85%、87.5%、90%、90.5%、91%、91.5%、92%、92.5%、93%、93.5%、94%、94.5%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、又は99.5%である。好ましくは、条件を特定することなく、反応若しくは反応ステップ、又はそれらの反応生成物の収率に言及する場合、前記反応又は反応ステップが実施される前記収率は、加熱の5分後又は10分後での収率を指している。より好ましくは、条件を特定することなく、反応若しくは反応ステップ、又はそれらの反応生成物の収率に言及する場合、前記反応又は反応ステップが実施される前記収率は、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、又は55℃で加熱して、5分後での収率を指している。
【0026】
反応生成物の混合物は、前記反応の所望される反応生成物を回収する目的で、放射性化合物の反応が終わったところで単離された組成物として定義されるが、ここで、前記組成物には、前記所望される反応生成物が含まれ、ここで、前記単離には、当業熟練者には公知の1種又は複数の精製方法、たとえば、親和性精製法(affinity purification)、濾過法、遠心分離法、蒸発法、液液抽出法、晶出法、再結晶法、吸着法、クロマトグラフィー法、蒸留法、分画法、電気分解法、又は昇華法などの使用が含まれていてよい。
【0027】
放射性化合物の化学反応の反応生成物の純度は、反応生成物の混合物の中の前記反応生成物の濃度として定義される。好ましくは、その純度は、前記反応生成物の混合物の中に含まれる前記反応生成物の質量の、前記反応生成物の混合物の合計質量に対する比率である。その純度は、収率と同様の方法を使用して、すなわち、当業熟練者には公知のように、定量HPLC又はTLCにより、所望される反応生成物の濃度を測定することによって測定される。反応生成物の純度(purity of a product)すなわち反応生成物純度(product purity)に言及する場合、前記反応生成物は、本発明における化学反応の反応生成物であり、そして先に定義されたものである。
【0028】
好ましくは、本発明における反応、又はその中に含まれる反応ステップの所望される反応生成物の純度は、少なくとも、25%、27.5%、30%、32.5%、35%、37.5%、40%、42.5%、45%、47.5%、50%、52.5%、55%、57.5%、60%、62.5%、65%、67.5%、70%、72.5%、75%、77.5%、80%、82.5%、85%、87.5%、90%、90.5%、91%、91.5%、92%、92.5%、93%、93.5%、94%、94.5%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、又は99.5%である。
【0029】
化学反応、特に放射性化合物の化学反応は、多くの場合、高い活性化障壁を特徴としている。高い活性化障壁を有する化学反応は、少なくとも50%の所望される反応生成物の収率を得るためには、触媒又はファシリテーター(facilitator)の不在下、好ましくは前記化学反応の際のファシリテーターとして機能することが可能な固相の不在下では、下記の条件で実施しなければならない化学反応として定義される:50℃で30分、若しくは60℃で30分、若しくは70℃で30分、若しくは80℃で30分、若しくは90℃で30分、若しくは100℃で30分、若しくは110℃で30分、若しくは120℃で30分、若しくは130℃で30分、若しくは140℃で30分、若しくは150℃で30分、又は50℃で60分、若しくは60℃で60分、若しくは70℃で60分、若しくは80℃で60分、若しくは90℃で60分、若しくは100℃で60分、若しくは110℃で60分、若しくは120℃で60分、若しくは130℃で60分、若しくは140℃で60分、若しくは150℃で60分、又は50℃で90分、若しくは60℃で90分、若しくは70℃で90分、若しくは80℃で90分、若しくは90℃で90分、若しくは100℃で90分、若しくは110℃で90分、若しくは120℃で90分、若しくは130℃で90分、若しくは140℃で90分、若しくは150℃で90分、又は50℃で120分、若しくは60℃で120分、若しくは70℃で120分、若しくは80℃で120分、若しくは90℃で120分、若しくは100℃で120分、若しくは110℃で120分、若しくは120℃で120分、若しくは130℃で120分、若しくは140℃で120分、若しくは150℃で120分、又は50℃で150分、若しくは60℃で150分、若しくは70℃で150分、若しくは80℃で150分、若しくは90℃で150分、若しくは100℃で150分、若しくは110℃で150分、若しくは120℃で150分、若しくは130℃で150分、若しくは140℃で150分、若しくは150℃で150分、又は50℃で180分、若しくは60℃で180分、若しくは70℃で180分、若しくは80℃で180分、若しくは90℃で180分、若しくは100℃で180分、若しくは110℃で180分、若しくは120℃で180分、若しくは130℃で180分、若しくは140℃で180分、若しくは150℃で180分、又は50℃で210分、若しくは60℃で210分、若しくは70℃で210分、若しくは80℃で210分、若しくは90℃で210分、若しくは100℃で210分、若しくは110℃で210分、若しくは120℃で210分、若しくは130℃で210分、若しくは140℃で210分、若しくは150℃で210分、又は50℃で240分、若しくは60℃で240分、若しくは70℃で240分、若しくは80℃で240分、若しくは90℃で240分、若しくは100℃で240分、若しくは110℃で240分、若しくは120℃で240分、若しくは130℃で240分、若しくは140℃で240分、若しくは150℃で240分。1つの好ましい実施形態においては、前記化学反応が高い活性化障壁を有している本発明による方法が提供される。
【0030】
本出願の文脈においては、触媒は、本発明における反応の反応速度を高める化合物であるが、ここで、前記触媒は、本発明における前記反応において、その反応物の1つ又は複数と、配位結合又は等価結合、好ましくは共有結合を形成する。本出願の文脈においては、ファシリテーターは、本発明における反応の反応速度を高める化合物であるが、ここで、前記ファシリテーターは、本発明における前記反応の際に、反応物との共有結合は形成しない。好ましくは、触媒又はファシリテーターは、同一の反応生成物の収率を得ることを目的とした、前記触媒又は前記ファシリテーターの不在下での、同一の時間、同一の反応に比較して、本発明における反応を実施するのに必要とされる温度を低下させる化合物と定義されるが、ここで、その同一の反応とは、同一の反応物を、実質的には同一の量で使用することを意味している。前記温度を、少なくとも5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、又は100℃下げられれば、好ましい。この定義においては、前記本発明における化学反応が、好ましくは、高い活性化障壁を有する化学反応である。当業熟練者が理解するところであるが、上で定義されたような触媒又はファシリテーターは、同一の反応物を使用して、同一の反応生成物の収率を得るための反応を実施するのに必要とされる、温度を低下させ、及び/又は反応時間を短縮させるのに使用することができる。
【0031】
さらには、当業熟練者の理解するところであるが、触媒又はファシリテーターが、異なったメカニズムで作用してもよい。本発明による方法において使用される前記固相が、前記放射性化合物の前記化学反応のためのファシリテーターであるのが好ましいが、ここで、前記ファシリテーターが、前記放射性化合物及び/又は他の反応物、反応生成物、又は前記反応の中に含まれる他の化合物の局所濃度を増大させることによって、前記反応の反応速度を高める。
【0032】
本発明による方法においては、前記放射性化合物が、混合物の中に含まれている。前記混合物は、前記放射性化合物を含む溶液又はコロイドである。好ましくは、前記混合物が、水溶液又は水性コロイドである。より好ましくは、前記混合物が、14、13.5、13、12.5、12、11.5、11、10.5、10、9.5、9、8.5、8、7.5、7、6.5、6、5.5、5、4.5、又は4よりも低いpHを有する水溶液である。好ましくは、前記混合物が、前記化学反応を実施するためのファシリテーターを含み、より好ましくは、前記ファシリテーターが、本明細書において定義される固相である。
【0033】
本発明による方法において使用される固相は、上で定義されたような反応の際に、放射性化合物を含む前記混合物と接触させるのに適した、固体状態にある、いかなる化合物であってもよい。この文脈で適したということは、前記固相が、所望される又は特定の反応条件下で、前記反応を起こさせることを可能とするべきであることを意味している。たとえば、放射性化合物の反応を、所定の溶媒中、所定の温度で起こさせようとするのならば、前記固相が前記溶媒中、前記温度で劣化してはならず、そして好ましくは、前記固相が、ファシリテーターとして機能して、前記温度で前記反応を起こさせるべきである。
【0034】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記固相が、前記放射性化合物の前記化学反応のためのファシリテーターであり、好ましくは、前記化学反応が、高い活性化障壁を有している。一般的にそして具体的には、この好ましい実施形態の文脈においては、反応が複数の触媒及び/又はファシリテーターを有していてよいことは、理解されるであろう。それゆえに、前記化学反応のためのファシリテーターである前記固相が、前記反応の際、又は前記混合物の中での他の触媒及び/又はファシリテーターの存在を排除しないし、暗示することもない。
【0035】
アルカリ性の溶液は、強塩基の溶媒中の溶液と定義される。好ましくは、前記強塩基が強有機塩基たとえば、トリエチルアミン、又は強無機塩基、より好ましくは、アルカリ金属たとえば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、又はフランシウム(Fr)の水酸化物塩、又はアルカリ土類金属たとえば、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)又はラジウム(Ra)の水酸化物塩である。好ましくは、前記溶媒が、水又は有機塩基たとえば、炭酸テトラブチルアンモニウム(TBAC)である。
【0036】
より好ましくは、アルカリ性の溶液が、少なくとも8、8.2、8.4、8.6、8.8、9、9.2、9.4、9.6、9.8、10、10.2、10.4、10.6、10.8、11、11.2、11.4、11.6、11.8、12、12.2、12.4、12.6、12.8、13、13.2、13.4、13.6、13.8、又は14のpHを有する水溶液である。この好ましい定義に従えば、本発明による方法のステップ(a)及び(b)には、前記固相を、14、13.8、13.6、13.4、13.2、13、12.8、12.6、12.4、12.2、12、11.8、11.6、11.4、11.2、11、10.8、10.6、10.4、10.2、10、9.8、9.6、9.4、9.2、9、8.8、8.6、8.4、8.2、又は8よりも高いpHを有する水溶液と接触させることは含まれない。
【0037】
本出願の文脈においては、本発明による方法に関連して表明される、「ここでステップ(a)及び(b)には、前記固相をアルカリ性の溶液と接触させることが含まれない」という表現は、「ここで、ステップ(a)及び(b)の際に、前記固相と接触されるいかなる溶液も、中性又は酸性の溶液である」という表現に置き換えることができる。それゆえに、本発明による方法は、したがって、次のように表明することが可能である:混合物中に含まれる放射性化合物の化学反応を実施するための方法であり、ここで、前記方法には、(a)前記混合物を固相と接触させるステップ、それに続けての、(b)前記混合物を、30℃から最高150℃までの範囲で選択される温度にまで加熱するステップが含まれ、ここで、ステップ(a)及び(b)の際に、前記固相を接触する溶液はすべて、中性又は酸性溶液であり、ここで、前記化学反応が、結果として、前記放射性化合物の中に含まれる放射性核種の上に、新しい結合を形成させず、ここで、前記放射性化合物には、フッ素-18が含まれない。
【0038】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供される:ステップ(b)の際に、前記固相が、前記放射性化合物を含む前記混合物と接触状態にある。それゆえに、この実施形態においては、前記放射性化合物を含む前記混合物は、アルカリ性の溶液ではない。別の言い方をすれば、この実施形態においては、前記放射性化合物を含む前記混合物は、中性又は酸性の溶液である。
【0039】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供される:溶液を前記固相と接触させることを含むいかなる加熱(ステップ)にも、前記固相をアルカリ性の溶液と接触させることは含まれない。別の言い方をすれば、この実施形態においては、加熱(ステップ)の際に前記固相と接触されるいかなる溶液も、中性又は酸性の溶液である。
【0040】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応には、反応ステップが含まれず、ここで、アルカリ性の溶液が使用されるか、及び/又は前記固相をアルカリ性の溶液と接触させることが含まれない。好ましくは、アルカリ性の溶液が、本実施形態の文脈においては、少なくとも8、8.2、8.4、8.6、8.8、9、9.2、9.4、9.6、9.8、10、10.2、10.4、10.6、10.8、11、11.2、11.4、11.6、11.8、12、12.2、12.4、12.6、12.8、13、13.2、13.4、13.6、13.8、又は14のpHを有する水溶液である。
【0041】
化学反応、反応ステップ、又はその一部が、所定の化合物、組成物、又はそれらの混合物を含まないか、又はそれらの使用を含まないと言われる場合は常に、前記化合物、組成物、又はそれらの前記混合物が、前記反応、反応ステップ、又はその一部の際の反応媒体の中に、存在しないか、又は0.1重量%、0.01重量%、0.001重量%、又は0.0001重量%未満の濃度でしか存在しないか、又は定量HPLCを使用しても検出できず、そして前記反応の反応物及び/又は反応生成物、反応ステップ、又はその一部と接触しないか、又は直接的な接触状態にはないということを意味している。たとえば、アルカリ性の溶液を含まない混合物の中に含まれる放射性化合物の反応は、溶解された強塩基の存在下では、起き得ない。それにも関わらず、アルカリ性の溶液は、それが前記混合物と直接的な接触状態にならない限りにおいては、使用することが可能である。
【0042】
放射性化合物(radioactive compound)は、放射性核種を含む化合物である。放射性核種は、熱力学的に不安定な核であり、自然現象として、放射線粒子を発生することによる内部転換を介して、安定な核へと転換する。前記放射性核種の安定な核への転化は、放射性崩壊と呼ばれ、ガンマ線(γ)及び/又は亜原子粒子たとえばアルファ(α)粒子若しくはベータ(β)粒子が放出される。ベータ(β)粒子は、電子(β-)又は陽電子(β+)であってよい。それらの放出は、電離放射線を構成する。本出願においては、放射性核種(radionuclide)、放射性核種(radioactive nuclide)、放射性同位元素(radioisotope)、及び放射性同位元素(radioactive isotope)という用語は、相互に置き換え可能に使用される。さらには、放射性核種はさらに、前記放射性核種を含む原子も指している。たとえば、放射性核種の上又はそれとの結合、又は放射性核種の塩も、この意味合いで定義される。放射性化合物が、1つ以下の放射性核種を含んでいるのが好ましい。
【0043】
放射性化合物の中に含まれている放射性核種の損失(loss of a radionuclide)は、前記放射性化合物の放射線分解(radiolysis)又は放射線分解(radiolytic degradation)とも呼ばれ、前記放射性核種と、前記放射性化合物の中に含まれる他の原子との間の結合の破断、又は放射性核種の線エネルギー付与で起きる前記放射性化合物の他の原子の間の結合の破断と定義され、その後では、前記放射性核種が、もはや前記化合物の一部ではなくなるか、又は前記放射性化合物の断片のみに結合される。好ましい場合においては、放射性化合物がただ1つの放射性核種のみを含み、2つ以上は含まないような、放射性核種の損失は、非放射性化合物及び放出された放射性核種、又はその放射性核種を含む放射性化合物の画分をもたらす。この定義の観点からは、当業熟練者の理解するところであるが、前記放射性化合物の前記画分は、望ましくない、すなわち副反応生成物と考えられる。たとえば、(保護された)放射性化合物の脱保護反応の場合においては、その脱保護された反応生成物は、前記放射性化合物の1つの画分とはみなされない。
【0044】
放射性化合物の化学反応の際の放射線分解度(degree of radiolysis)は、前記化学反応の際に放射性核種の損失を受けた前記放射性化合物の分子の数の、前記化学反応の開始時における前記放射性化合物の分子の合計数に対する比率と定義される。
【0045】
それに相応して、放射線分解度は、本発明における反応に含まれる各種の反応ステップの際、又は本発明における反応において、又は本発明による方法において含まれる各種のステップ又は時間間隔の際に、定義することもできる。一例として、本発明による方法に含まれる加熱(b)の際の放射線分解度は、前記加熱の際に放射性核種の損失が生じた前記放射性化合物の分子の数と、前記加熱の開始時での前記放射性化合物の分子の合計数との間の比率として定義される。
【0046】
好ましくは、本発明における反応の際には、前記放射性化合物が転化されて放射性反応生成物となる、すなわち、反応生成物が放射性核種を含んでいる。より好ましくは、前記放射性化合物と前記放射性反応生成物とが、同じ放射性核種を含んでいる。別の言い方をすれば、前記放射性化合物の放射性核種の損失は、本発明における反応においては、望ましくない副反応と考えることができる。
【0047】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応の際の放射線分解度が、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、又は0.1%よりも低い。
【0048】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応には、前記放射性化合物の中に含まれる放射性核種の損失は含まれない。
【0049】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記加熱(b)の際の放射線分解度が、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、又は0.1%よりも低い。好ましくは、前記放射線分解度は、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、又は55℃での加熱の、加熱の5分又は10分後での収率、より好ましくは加熱の5分後での放射線分解度を指している。
【0050】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記加熱(b)には、前記化合物の放射性崩壊及び/又は前記放射性化合物に含まれる放射性核種の損失は含まれない。
【0051】
さらには、放射性化合物は放射性崩壊を受けやすいが、これは、前記放射性化合物の中に含まれる放射性核種の少なくとも1種の放射性崩壊、好ましくは前記放射性化合物の中に含まれる全部の放射性核種の放射性崩壊と定義される。前記化合物が、α粒子、β粒子、若しくはγ線、又はオージェ(Auger)-電子をそれぞれ放射することにより、放射性崩壊を起こす可能性がある放射性核種を含んでいる場合には、放射性化合物は、α-放射体、β-放射体、若しくはγ-放射体、又はオージェ-放射体と呼ばれる。この場合、放射性化合物が、2つ以上のタイプの粒子又は放射線を放射する可能性があるということは理解されたい。
【0052】
放射性化合物が、放射線分解及び放射性崩壊の両方を起こしやすいので、すべての反応物の接触時間は、最小限に少なくするべきである。
【0053】
放射性化合物のポスト-標識化(化学)反応は、前記放射性化合物の中に含まれる放射性核種の上で、新しい結合を形成するような結果を与えない、前記放射性化合物の化学反応と定義される。たとえば、求核置換を介しての2つの化合物の間での放射性核種の移行は、ポスト-標識化反応と考えることができないであろうが、それに対して、放射性化合物の中に含まれているまた別の残基の求核置換は、ポスト-標識化反応と考えてよい。この理論にとらわれることなく言えば、関心対象の放射性化合物の調製には、典型的には、標識化反応が含まれるが、ここで、放射性核種が、非放射性化合物に結合されて放射性中間体を形成し、前記放射性中間体の1種又は複数のポスト-標識化反応が、それに続き、ここで、前記ポスト-標識化反応が、当業熟練者が理解しているように、前記放射性核種の前記中間体への結合の特性を変化させることはない。
【0054】
本発明における反応は、ポスト-標識化反応である。本出願の文脈においては、本発明による方法に関連して規定される「前記放射性化合物の中に含まれる放射性核種の上に新しい結合の生成をもたらさない」と表現は、「ここで、前記化学反応がポスト-標識化反応である」という表現に置き換えることができる。言い換えれば、本発明による方法は、次のように表明することが可能である:混合物中に含まれる放射性化合物の化学反応を実施するための方法であり、ここで、前記方法には、(a)前記混合物を固相と接触させるステップ、それに続けての、(b)前記混合物を、30℃から最高150℃までの範囲で選択される温度にまで加熱するステップ、が含まれ、ここで、ステップ(a)及び(b)には、前記固相を、アルカリ性の溶液と接触させることが含まれず、ここで、前記化学反応が、ポスト-標識化反応であり、ここで、前記放射性化合物には、フッ素-18が含まれない。
【0055】
上記に鑑みて、本発明による方法は、次のように表明することが可能である:混合物中に含まれる放射性化合物の化学反応を実施するための方法であり、ここで、前記方法には、(a)前記混合物を固相と接触させるステップ、それに続けての、(b)前記混合物を、30℃から最高150℃までの範囲で選択される温度にまで加熱するステップ、が含まれ、ここで、ステップ(a)及び(b)の際に、前記固相を接触する溶液はすべて、中性又は酸性溶液であり、ここで、前記化学反応が、ポスト-標識化反応であり、ここで、前記放射性化合物には、フッ素-18が含まれない。
【0056】
当業熟練者には周知のことであるが、放射性化合物には、ステレオジェン中心、すなわち非対称的に置換された原子が含まれていてよいが、ここで、前記非対称置換は、平面偏光回転、又は酵素による立体特異的若しくは立体選択的触媒作用のような、キラル的性質を与える。ステレオジェン中心が、非対称置換された四価の炭素原子であるのが好ましい。前記放射性化合物の中に含まれるそれぞれのステレオジェン中心が、2つの(立体)配置の内の1つとして存在していてよいが、ここで、前記立体配置は、前記放射性化合物の中に含まれる原子の間の結合のタイプと量での違いはない。放射性化合物の中に含まれるステレオジェン中心の異性化は、前記ステレオジェン中心の1つの立体配置の、他の立体配置への転化と定義される。放射性化合物の鏡像体化は、前記放射性化合物の中の全部のステレオジェン中心の異性化と定義される。放射性化合物のジアステレオ異性化は、前記放射性化合物の中の、少なくとも1つではあるが全部ではない、ステレオジェン中心の異性化と定義される。
【0057】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応には、前記放射性化合物の異性化、又はジアステレオ異性化、又は鏡像体化が含まれない。
【0058】
1つのより好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記(a)固相との接触及び/又は(b)前記加熱には、前記放射性化合物の異性化、又はジアステレオ異性化、又は鏡像体化が含まれない。
【0059】
また別のより好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記(a)固相との接触及び/又は(b)前記加熱の中に含まれる、すなわちその際に起きる各種の異性化反応が、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、又は0.1%より低い収率を有している。
【0060】
反応のタイプ
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物の加溶媒分解を含み、好ましくは、ここで、前記加溶媒分解が、前記加熱の間に起こる。前記放射性化合物の加溶媒分解は、前記放射性化合物と溶媒との間の反応であるが、ここで、前記反応には、前記放射性化合物の中の結合の破断が含まれ、好ましくは、ここで、前記反応には、前記溶媒の中に含まれている原子と、前記放射性化合物の中に含まれている原子との間での、結合の形成が含まれる。加溶媒分解の例としては、溶媒、脱水、及び加水分解による、脱離基のエステル交換反応、変位、又は置換が含まれる。
【0061】
加溶媒分解は、好ましくは、求核性溶媒と前記放射性化合物との間の反応を意味しているが、ここで、前記放射性化合物の中に含まれる原子と前記求核性溶媒の中に含まれる原子との間で結合が形成され、ここで、前記反応を、前記放射性化合物の求核置換反応又は脱離反応として表すことが可能であり、好ましくは、ここで、前記求核性溶媒が、水及びアルコールからなる群から選択され、最も好ましくは、前記求核性溶媒が水である。前記加溶媒分解が、アルカリ性の溶液の使用を含んでいないのが好ましい。
【0062】
1つのより好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物の加溶媒分解を含み、ここで、前記加溶媒分解が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記加溶媒分解が、高い活性化障壁を有し、好ましくは、ここで、前記固相が、前記加溶媒分解のためのファシリテーターである。
【0063】
上の好ましい実施形態においては、前記加溶媒分解の際の放射線分解度が、好ましくは、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、又は0.1%よりも低い。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0064】
当業熟練者には周知のように、加溶媒分解により、加溶媒分解の反応生成物が得られる。上の好ましい実施形態においては、前記加溶媒分解の反応生成物の収率は、少なくとも20%、22.5%、25%、27.5%、30%、32.5%、35%、37.5%、40%、42.5%、45%、47.5%、50%、52.5%、55%、57.5%、60%、62.5%、65%、67.5%、70%、72.5%、75%、77.5%、80%、82.5%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%、又は97.5%である。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0065】
1つの最も好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物の加溶媒分解を含み、ここで、前記加溶媒分解が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記加溶媒分解の際の放射線分解度が、5%よりも低く、そしてここで、前記加溶媒分解の反応生成物の収率が、少なくとも20%、22.5%、25%、27.5%、30%、32.5%、35%、37.5%、40%、42.5%、45%、47.5%、50%、52.5%、55%、57.5%、60%、62.5%、65%、67.5%、70%、72.5%、75%、77.5%、80%、82.5%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%、又は97.5%であり、好ましくは、ここで、前記加溶媒分解の際の放射線分解度が、3%よりも低く、そしてここで、前記加溶媒分解の反応生成物の収率が、少なくとも20%、22.5%、25%、27.5%、30%、32.5%、35%、37.5%、40%、42.5%、45%、47.5%、50%、52.5%、55%、57.5%、60%、62.5%、65%、67.5%、70%、72.5%、75%、77.5%、80%、82.5%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%、又は97.5%である。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0066】
1つのより好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物の加水分解を含み、好ましくは、ここで、前記加水分解が、前記加熱の間に起こる。好ましくは、前記加水分解が、7、6.8、6.6、6.4、6.2、6、5.8、5.6、5.4、5.2、又は5より低いpHでの水溶液の中で起きる。より好ましくは、前記加水分解が、14、13.8、13.6、13.4、13.2、13、12.8、12.6、12.4、12.2、12、11.8、11.6、11.4、11.2、11、10.8、10.6、10.4、10.2、10、9.8、9.6、9.4、9.2、9、8.8、8.6、8.4、8.2、8、7.8、7.6、7.4、7.2、7、6.8、6.6、6.4、6.2、6、5.8、5.6、5.4、5.2、又は5から、最低1までのpHでの水溶液の中で起きる。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0067】
1つのさらにより好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物の加水分解を含み、好ましくは、ここで、前記加水分解が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記加水分解が、酸加水分解であり、好ましくは、ここで、前記酸加水分解が、リン酸、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、及びそれらの水性混合物からなる群から選択される酸の使用を含み、より好ましくは、ここで、前記酸が、リン酸、塩酸、硫酸、及びそれらの水性混合物からなる群から選択され、好ましくは、ここで、前記酸が、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%のリン酸であり、より好ましくは、ここで、前記酸が、80重量%のリン酸である。好ましくは、前記加水分解が、7、6.8、6.6、6.4、6.2、6、5.8、5.6、5.4、5.2、又は5より低いpHでの水溶液の中で起きる。より好ましくは、前記加水分解が、14、13.8、13.6、13.4、13.2、13、12.8、12.6、12.4、12.2、12、11.8、11.6、11.4、11.2、11、10.8、10.6、10.4、10.2、10、9.8、9.6、9.4、9.2、9、8.8、8.6、8.4、8.2、8、7.8、7.6、7.4、7.2、7、6.8、6.6、6.4、6.2、6、5.8、5.6、5.4、5.2、又は5から、最低1までのpHでの水溶液の中で起きる。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0068】
1つのより好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物の加水分解を含み、ここで、前記加水分解が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記加水分解が、高い活性化障壁を有し、好ましくは、ここで、前記固相が、前記加水分解のためのファシリテーターである。前記加水分解の速度が、好ましくはリン酸、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、及びそれらの水性混合物からなる群から選択される酸、より好ましくはリン酸、塩酸、硫酸、及びそれらの水性混合物からなる群から選択される酸を使用することによりさらに加速され、好ましくは、ここで、前記酸が、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%のリン酸であり、より好ましくは、ここで、前記酸が、80重量%のリン酸である。好ましくは、前記加水分解が、14、13.8、13.6、13.4、13.2、13、12.8、12.6、12.4、12.2、12、11.8、11.6、11.4、11.2、11、10.8、10.6、10.4、10.2、10、9.8、9.6、9.4、9.2、9、8.8、8.6、8.4、8.2、8、7.8、7.6、7.4、7.2、7、6.8、6.6、6.4、6.2、6、5.8、5.6、5.4、5.2、又は5よりも低いpHでの水溶液の中で起きる。より好ましくは、前記加水分解が、14、13.8、13.6、13.4、13.2、13、12.8、12.6、12.4、12.2、12、11.8、11.6、11.4、11.2、11、10.8、10.6、10.4、10.2、10、9.8、9.6、9.4、9.2、9、8.8、8.6、8.4、8.2、8、7.8、7.6、7.4、7.2、7、6.8、6.6、6.4、6.2、6、5.8、5.6、5.4、5.2、又は5から、最低1までのpHでの水溶液の中で起きる。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0069】
上の好ましい実施形態においては、前記加水分解の際の放射線分解度が、好ましくは、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、又は0.1%よりも低い。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0070】
上の好ましい実施形態においては、前記加水分解の際の放射線分解度が、好ましくは、5%未満であり、ここで、前記加水分解が、加熱の間に起こり、ここで、前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲、より好ましくは1分から最高5分までの範囲であり、そして前記混合物の前記加熱が、以下の範囲から選択される温度である:30℃から、最高35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、又は150℃まで。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲、より好ましくは1分から最高5分までの範囲であり、そして前記混合物の前記加熱が、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、又は75℃から、最高70℃までの範囲から選択される温度までである。
【0071】
当業熟練者には周知のように、加水分解により、加水分解の反応生成物が得られる。そのような反応生成物は、たとえば、加水分解的に脱保護された放射性化合物、又はアミド基又はエステル基の加水分解により生じた、カルボン酸、又はそれらの塩若しくはイオンであってよい。上の好ましい実施形態においては、前記加水分解の反応生成物の収率は、少なくとも20%、22.5%、25%、27.5%、30%、32.5%、35%、37.5%、40%、42.5%、45%、47.5%、50%、52.5%、55%、57.5%、60%、62.5%、65%、67.5%、70%、72.5%、75%、77.5%、80%、82.5%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%、又は97.5%である。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0072】
1つのさらにより好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物の加水分解を含み、ここで、前記加水分解が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記加水分解の際の放射線分解度が、5%よりも低く、そしてここで、前記加水分解の反応生成物の収率が、少なくとも20%、22.5%、25%、27.5%、30%、32.5%、35%、37.5%、40%、42.5%、45%、47.5%、50%、52.5%、55%、57.5%、60%、62.5%、65%、67.5%、70%、72.5%、75%、77.5%、80%、82.5%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%、又は97.5%であり、好ましくは、ここで、前記加水分解の際の放射線分解度が、3%よりも低く、そしてここで、前記加水分解の反応生成物の収率が、少なくとも20%、22.5%、25%、27.5%、30%、32.5%、35%、37.5%、40%、42.5%、45%、47.5%、50%、52.5%、55%、57.5%、60%、62.5%、65%、67.5%、70%、72.5%、75%、77.5%、80%、82.5%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%、又は97.5%である。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0073】
1つの最も好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物の加水分解を含み、ここで、前記加水分解が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記加水分解の際の放射線分解度が、5%よりも低く、そしてここで、前記加水分解反応生成物の収率が、少なくとも30%であり、好ましくは、ここで、前記加水分解の際の放射線分解度が、3%よりも低く、そしてここで、前記加水分解反応生成物の収率が、少なくとも35%であり、ここで、前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲、より好ましくは1分から最高5分までの範囲であり、そして前記混合物の前記加熱が、以下の範囲から選択される温度である:30℃から、最高35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、又は150℃まで。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲から選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲から選択されるか、又は前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲から選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高5分までの範囲から選択される。最も好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0074】
また別な好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物の加水分解を含み、ここで、前記加水分解が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記加水分解の際の放射線分解度が、5%よりも低く、そしてここで、前記加水分解反応生成物の収率が、少なくとも30%であり、好ましくは、ここで、前記加水分解の際の放射線分解度が、3%よりも低く、そしてここで、前記加水分解反応生成物の収率が、少なくとも35%であり、ここで、前記加水分解が、14、13.8、13.6、13.4、13.2、13、12.8、12.6、12.4、12.2、12、11.8、11.6、11.4、11.2、11、10.8、10.6、10.4、10.2、10、9.8、9.6、9.4、9.2、9、8.8、8.6、8.4、8.2、8、7.8、7.6、7.4、7.2、7、6.8、6.6、6.4、6.2、6、5.8、5.6、5.4、5.2、又は5よりも低いpHでの水溶液の中で起きる。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0075】
また別のより好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物の加水分解を含み、ここで、前記加水分解が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記加水分解の際の放射線分解度が、5%よりも低く、そしてここで、前記加水分解反応生成物の収率が、少なくとも30%であり、好ましくは、ここで、前記加水分解の際の放射線分解度が、3%よりも低く、そしてここで、前記加水分解反応生成物の収率が、少なくとも35%であり、ここで、前記加水分解が、水溶液中、7より低いpHで起こり、ここで、前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲、より好ましくは1分から最高5分までの範囲であり、そして前記混合物の前記加熱が、以下の範囲から選択される温度である:30℃から、最高35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、又は150℃まで。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲から選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲から選択されるか、又は前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲から選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高5分までの範囲から選択される。最も好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0076】
1つの最も好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物の加水分解を含み、ここで、前記加水分解が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記加水分解反応生成物の収率が、少なくとも30%であり、好ましくは、ここで、前記加水分解反応生成物の収率が、少なくとも35%であり、ここで、前記加水分解が、水溶液中、7より低いpHで起こり、ここで、前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲、より好ましくは1分から最高5分までの範囲であり、そして前記混合物の前記加熱が、以下の範囲から選択される温度である:30℃から、最高35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、又は150℃まで。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲から選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲から選択されるか、又は前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲から選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高5分までの範囲から選択される。最も好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0077】
本発明による方法において使用される前記放射性化合物には、1種又は複数の保護基が含まれていてよい。当業熟練者には周知のように、保護基は、前記放射性化合物に共有結合的に結合された官能基であり、前記化学反応の化学的選択性すなわち、所望される最終製品を所定の収率で得ることを目指す目的に役立つが、ここで、前記官能基は、前記所望される最終反応生成物には、共有結合的に結合されてはいない。
【0078】
好ましくは、保護基は、以下のものからなる群から選択される:tert-ブチルカルバメート(t-Boc)、tert-ブチルエステル(OtBu)、ベンジルエステル(BzO)、ベンジリデン、テトラヒドロピラニルエーテル(THP)、アセタール、トリチル(Trt)、及びメトキシメチルエーテル(MOM)。保護基が、tert-ブチルカルバメート(t-Boc)であれば、最も好ましい。
【0079】
(放射性化合物からの)保護基の除去は、前記放射性化合物の化学反応として定義されるが、ここで、前記保護基と、前記放射性化合物の中に含まれる他の原子との間の共有結合が切断される。そのような除去での反応生成物は、脱保護された放射性化合物と呼ばれる。保護基の除去は、脱保護とも呼ばれる。上で定義されたような加溶媒分解及び加水分解には、好ましくは、放射性化合物からの保護基の除去が含まれる。
【0080】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物の加溶媒分解を含み、ここで、前記加溶媒分解が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記加溶媒分解には、前記放射性化合物からの保護基の除去が含まれ、好ましくは、ここで前記保護基が、tert-ブチルカルバメート(t-Boc)、tert-ブチルエステル(OtBu)、ベンジルエステル(BzO)、ベンジリデン、テトラヒドロピラニルエーテル(THP)、アセタール、トリチル(Trt)、及びメトキシメチルエーテル(MOM)からなる群から選択され、最も好ましくは、ここで、前記保護基が、tert-ブチルカルバメート(t-Boc)である。
【0081】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物の加水分解を含み、ここで、前記加水分解が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記加水分解には、前記放射性化合物からの保護基の除去が含まれ、好ましくは、ここで前記保護基が、tert-ブチルカルバメート(t-Boc)、tert-ブチルエステル(OtBu)、ベンジルエステル(BzO)、ベンジリデン、テトラヒドロピラニルエーテル(THP)、アセタール、トリチル(Trt)、及びメトキシメチルエーテル(MOM)からなる群から選択され、最も好ましくは、ここで、前記保護基が、tert-ブチルカルバメート(t-Boc)である。
【0082】
上で説明したように、放射性化合物には、2個以上の保護基が含まれているのがよい。1つの実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記放射性化合物が、正確に1個、又は2個、又は3個、又は4個の保護基、そして前記数以下のものを含んでいる。また別の実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記放射性化合物が、2個以上の保護基を含んでいる。後者の好ましい方法において使用される放射性化合物は、複数の保護基を有する放射性化合物と呼ばれる。
【0083】
放射性化合物から保護基を完全に除去することは、完全脱保護又は全脱保護とも呼ばれ、複数の保護基を有する前記放射性化合物の中に含まれる全部の保護基の除去と定義される。前記完全除去の反応生成物は、完全に脱保護された放射性化合物と呼ばれる。それに相応して、放射性化合物からの保護基の不完全な除去(不完全脱保護又は不完全脱保護とも呼ばれる)は、複数の保護基を有する前記放射性化合物の中に含まれる、少なくとも1つの保護基が除去されるが、全部の保護基は除去されていないことと定義される。前記不完全除去の反応生成物は、部分的に脱保護された放射性化合物と呼ばれる。
【0084】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物の加水分解を含み、ここで、前記加水分解が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記加水分解には、前記放射性化合物からの保護基の除去が含まれ、ここで、前記放射性化合物が、独立して、tert-ブチルカルバメート(t-Boc)、tert-ブチルエステル(OtBu)、ベンジルエステル(BzO)、ベンジリデン、テトラヒドロピラニルエーテル(THP)、アセタール、トリチル(Trt)、及びメトキシメチルエーテル(MOM)からなる群から選択される複数の保護基を有し、好ましくは、ここで、それぞれの保護基が、tert-ブチルカルバメート(t-Boc)である。好ましくは、相当する完全に脱保護された放射性化合物の収率が、少なくとも20%、22.5%、25%、27.5%、30%、32.5%、35%、37.5%、40%、42.5%、45%、47.5%、50%、52.5%、55%、57.5%、60%、62.5%、65%、67.5%、70%、72.5%、75%、77.5%、80%、82.5%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%、又は97.5%である。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0085】
1つのより好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物の加水分解を含み、ここで、前記加水分解が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記加水分解には、前記放射性化合物からの保護基の除去が含まれ、
- ここで、前記加水分解の際の放射線分解度が、5%未満、好ましくは3%未満であり;及び/又は
- ここで、相当する完全に脱保護された放射性化合物の収率が、少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%であり;及び/又は
- ここで、前記加水分解が、水溶液の中で、7未満、好ましくは6未満のpHで起こり;及び/又は
- ここで、前記混合物が、リン酸を含み;及び/又は
- ここで、前記放射性化合物が、独立して、tert-ブチルカルバメート(t-Boc)、tert-ブチルエステル(OtBu)、ベンジルエステル(BzO)、ベンジリデン、テトラヒドロピラニルエーテル(THP)、アセタール、トリチル(Trt)、及びメトキシメチルエーテル(MOM)からなる群から選択される複数の保護基を有し、好ましくは、ここで、それぞれの保護基が、tert-ブチルカルバメート(t-Boc)であり;及び/又は
- ここで、前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲、より好ましくは1分から最高5分までの範囲であり;及び/又は
- ここで、前記混合物の前記加熱が、以下の範囲から選択される温度である:30℃から、最高35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、又は150℃まで。
【0086】
放射性化合物から保護基を除去する際の副反応は、副反応生成物をもたらす、前記放射性化合物の化学反応と定義されるが、ここで、前記副反応生成物が、前記放射性化合物、前記除去に相当する部分的に脱保護された放射性化合物、又は前記除去に相当する完全に脱保護された放射性化合物ではない。たとえば、異性化は、保護基の除去の副反応と考えてよい。本明細書において、「前記除去に相当する」とは、副反応が、また別のタイプの保護基の除去であってもよいということを意味していると理解されたい。たとえば、テトラヒドロピラニルエーテル(THP)保護基の除去は、tert-ブチルカルバメート(t-Boc)保護基の除去の副反応として考えてもよい。上記の定義と直結して、放射性化合物から保護基を除去する際の副反応生成物は、前記除去の副反応の際に生成する化合物と定義されるが、ここで、前記副反応生成物が、前記放射性化合物、前記除去に相当する部分的に脱保護された放射性化合物、又は前記除去に相当する完全に脱保護された放射性化合物ではない。
【0087】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物の加水分解を含み、ここで、前記加水分解が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記加水分解には、前記放射性化合物からの保護基の除去が含まれ、ここで、保護基の前記除去の各種副反応生成物の収率が、15%、14.5%、14%、13.5%、13%、12.5%、12%、11.5%、11%、10.5%、10%、9.5%、9%、8.5%、8%、7.5%、7%、6.5%、6%、5.5%、5%、4.8%、4.6%、4.4%、4.2%、4%、3.8%、3.6%、3.4%、3.2%、3%、2.8%、2.6%、2.4%、2.2%、2%、1.8%、1.6%、1.4%、1.2%、1%、0.8%、0.6%、0.4%、0.2%、0.1%未満である。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0088】
脱保護の文脈においては、明示的にそうではないと定義されない限り、「脱保護収率」及び「脱保護反応収率」は、完全に脱保護された放射性化合物の数の、保護された、及び部分的に脱保護された放射性化合物の数に対する比率を指しているが、それに対して、「完全に脱保護された放射性化合物の収率」は、上で定義されたような、全完全に脱保護された放射性化合物の収率を指している。別の言い方をすれば、「脱保護」が、「収率」の名詞修飾語として使用されているのなら、副反応は考慮に入れない。「脱保護」が、名詞修飾語として使用されていないのなら、上で定義されたような収率を参照する。
【0089】
実施例1及び2においては、本発明による方法は以下のものである:前記化学反応が、前記加熱の際の、Boc2-[131I]SGMIBの脱保護、すなわちBoc保護基の除去を含んでいる。そこで記述されている条件下では、ほとんど完全な脱保護が得られたが(相当する完全に脱保護された放射性化合物の収率が、90%よりも高い)、それに対して、副反応生成物は、わずか3~12%の範囲の収率で形成されていた。これらの知見は、例外的であり、当業界で開示されている脱保護のための方法とは対照的であるが、その理由は、典型的に報告されているのは、完全に脱保護された反応生成物の収率が約30%であるからである。それに加えて、当業界で報告されている、脱保護のための方法における副反応生成物のレベルは、約25%である。
【0090】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物のアルキル化を含み、好ましくは、ここで、前記アルキル化が、前記加熱の間に起こる。アルキル化は、好ましくは、求核置換反応又は付加反応を意味しているが、ここで、前記放射性化合物が、求核試薬として又は求電子試薬としてのいずれでも作用して、前記放射性化合物の上に、アルキル基の正味の付加が得られる。前記アルキル基は、好ましくは、分岐状、非分岐状、及び環状のC1~C8アルキル基、より好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、c-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、iso-ブチル、及びc-ブチルからなる群から選択される。前記アルキルは、場合によっては、置換されている。前記放射性化合物のアルキル化による反応生成物は、アルキル化放射性化合物と呼ばれる。前記アルキル化が、アルカリ性の溶液の使用を含んでいないのが好ましい。
【0091】
1つのより好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物のアルキル化を含み、ここで、前記アルキル化が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記アルキル化が、高い活性化障壁を有し、好ましくは、ここで、前記固相が、前記アルキル化のためのファシリテーターである。
【0092】
上の好ましい実施形態においては、前記アルキル化の際の放射線分解度が、好ましくは、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、又は0.1%よりも低い。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0093】
上の好ましい実施形態においては、前記アルキル化された放射性化合物の収率は、少なくとも20%、22.5%、25%、27.5%、30%、32.5%、35%、37.5%、40%、42.5%、45%、47.5%、50%、52.5%、55%、57.5%、60%、62.5%、65%、67.5%、70%、72.5%、75%、77.5%、80%、82.5%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%、又は97.5%である。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0094】
1つの最も好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物のアルキル化を含み、ここで、前記アルキル化が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記アルキル化の際の放射線分解度が、5%よりも低く、そしてここで、前記アルキル化された放射性化合物の収率が、少なくとも20%、22.5%、25%、27.5%、30%、32.5%、35%、37.5%、40%、42.5%、45%、47.5%、50%、52.5%、55%、57.5%、60%、62.5%、65%、67.5%、70%、72.5%、75%、77.5%、80%、82.5%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%、又は97.5%であり、好ましくは、ここで、前記アルキル化の際の放射線分解度が、3%よりも低く、そしてここで、前記アルキル化された放射性化合物の収率が、少なくとも20%、22.5%、25%、27.5%、30%、32.5%、35%、37.5%、40%、42.5%、45%、47.5%、50%、52.5%、55%、57.5%、60%、62.5%、65%、67.5%、70%、72.5%、75%、77.5%、80%、82.5%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%、又は97.5%である。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0095】
1つの最も好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物のアルキル化を含み、ここで、前記アルキル化が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記アルキル化の際の放射線分解度が、5%よりも低く、そしてここで、前記アルキル化反応生成物の収率が、少なくとも30%であり、好ましくは、ここで、前記アルキル化の際の放射線分解度が、3%よりも低く、そしてここで、前記アルキル化反応生成物の収率が、少なくとも35%であり、ここで、前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲、より好ましくは1分から最高5分までの範囲であり、そして前記混合物の前記加熱が、以下の範囲から選択される温度である:30℃から、最高35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、又は150℃まで。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲から選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲から選択されるか、又は前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲から選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高5分までの範囲から選択される。最も好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0096】
1つの最も好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物のアルキル化を含み、ここで、前記アルキル化が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記アルキル化反応生成物の収率が、少なくとも30%であり、好ましくは、ここで、前記アルキル化反応生成物の収率が、少なくとも35%であり、ここで、前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲、より好ましくは1分から最高5分までの範囲であり、そして前記混合物の前記加熱が、以下の範囲から選択される温度である:30℃から、最高35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、又は150℃まで。好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲から選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲から選択されるか、又は前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲から選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高5分までの範囲から選択される。最も好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0097】
固相への付着(attachment)
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記混合物を前記固相と接触させても、前記固相に対する前記放射性化合物の付着が起きる訳ではない。別の言い方をすれば、前記接触の結果として、前記放射性化合物と前記固相との間で、化学吸着、物理吸着のいずれも起きない。この実施形態においては、前記放射性化合物が、前記混合物のバルクの中で反応する、すなわち、前記固相との結合が生成しない。好ましくは、前記固相が、ファシリテーターである。
【0098】
また別な好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記混合物を前記固相と接触させると、前記固相に対する前記放射性化合物の付着が起きる。前記放射性化合物が、ステップ(b)の際に前記固相に付着するのが好ましい。この実施形態の文脈においては、前記付着が、好ましくは、前記放射性化合物が前記固相へ吸着することによる、非共有結合を生じる。別の言い方をすれば、この好ましい実施形態においては、放射性化合物の前記化学反応の速度を向上させる場合においては、前記固相が、ステップ(b)の際の触媒に代わる、ファシリテーターとして機能している。
【0099】
1つのさらにより好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、(a)前記混合物を前記固相と接触させると、前記固相に対する前記放射性化合物の付着が起こり、ここで、ステップ(b)の終了時には、前記放射性化合物が、前記固相に付着したまま残っている。
【0100】
上述の実施形態による方法における放射性化合物の前記固相に対する付着は、放射性化合物が付着したその固相がさらに反応することが可能で、複数の反応ステップの間での精製の必要性が最小化されるという利点を有している。たとえば、実施例1及び2に記述されたような本発明による方法を介してのBoc2-[131I]SGMIBの脱保護により、標準SPEカートリッジの中に含まれるSep-Pak tC18の上に、完全に脱保護されたSGMIBが付着される。このカートリッジを、さらなる反応のために使用してもよい。
【0101】
この観点で、1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、(a)前記混合物を前記固相と接触させると、前記固相に対する前記放射性化合物の付着が起こり、ここで、ステップ(b)の終了時には、前記放射性化合物が、前記固相に付着したまま残っており、ここで、前記方法には、ステップ(b)の終了時に、前記放射性化合物のさらなる化学反応を実施するステップ(b’)が含まれる。当業熟練者が理解しているように、本発明による方法に含まれるステップ(b)とステップ(b’)との間で精製ステップが不要であるのが好ましい。ステップ(b’)の終了時に、前記放射性化合物が、前記固相に付着したまま残っているのが好ましい。この文脈においては、さらなる化学反応は、ステップ(b)の後に起きた化学反応と解釈すべきであるが、ここで、前記さらなる化学反応を実施することは、本発明における化学反応を実施するための方法に含まれている。これは、本発明の方法によってもたらされる利点であるが、その理由は、そのようにして得られた、固相にまだ付着されている放射性化合物に対して、さらなる反応を直接的に実施することが可能となり、そのため、このさらなる反応を実施する目的で、この化合物を精製する必要がないからである。
【0102】
本発明による方法の途中又は終了時に、固相に付着させた前記放射性化合物を脱離させることが可能であるようにするべきである。たとえば、このことは、前記放射性化合物を前記固相に付着させたままでは実施することが不可能な、さらなる化学反応を実施するには、必要となるであろう。
【0103】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、(a)前記混合物を前記固相と接触させると、前記固相に対する前記放射性化合物の付着が起こり、ここで、前記方法には、前記固相から前記放射性化合物を脱離させる、ステップ(c)がさらに含まれる。好ましくは、ステップ(b)の後でステップ(c)を実施する。より好ましくは、ステップ(b’)の後でステップ(c)を実施する。
【0104】
本出願の文脈においては、前記放射性化合物の付着及び脱離を、狭く解釈するべきではない。前記混合物を前記固相と接触させることによって、前記放射性化合物の前記固相への付着が起こり、そして前記化合物が、ステップ(b)の終了時及び/又はステップ(b’)の終了時に前記固相に付着したままであると規定されるとすると、このことには、各種の(所望される)放射性中間体も含めた、前記放射性化合物の各種の(所望される)放射性反応生成物が、前記固相に付着されたまま残っているということが包含されていると理解するべきである。たとえば、前記混合物を加熱するステップ(b)で、前記放射性化合物の脱保護が起き、そしてステップ(b)の終了時に、前記放射性化合物が、前記固相に付着したままで残っているとすると、それに相当する脱保護された放射性化合物が、前記固相に付着したまま残っていると、理解するべきである。同様にして、前記放射性化合物の脱離には、(a)前記固相との前記接触、及び/又は(b)前記混合物の前記加熱、及び/又は(b’)さらなる化学反応の前記実施の際に起きた、化学反応の各種所望される反応生成物の脱離、又はそれらのステップが包含される。前記所望される反応生成物が放射性化合物であるのが、好ましい。
【0105】
上述の実施形態の文脈においては、溶離液は、ステップ(c)において前記固相から前記混合物を分離するために使用される液体と定義される。1つのより好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、(a)前記混合物を前記固相と接触させると、前記固相に対する前記放射性化合物の付着が起こり、ここで、前記方法には、前記固相を溶離液と接触させることによって、前記固相から前記放射性化合物を脱離させる、ステップ(c)が含まれ、ここで、前記溶離液が、水溶液、有機溶媒、又はそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、ここで、前記有機溶媒が水とエタノールとの混合物であり、より好ましくは、ここで、前記有機溶媒がエタノールである。好ましくは、ステップ(b)の後でステップ(c)を実施する。より好ましくは、ステップ(b’)の後でステップ(c)を実施する。
【0106】
水とエタノールとの混合物は、好ましくは、水中のエタノールが、以下の割合からなる群から選択される:0.5重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、40重量%、41重量%、42重量%、43重量%、44重量%、45重量%、46重量%、47重量%、48重量%、49重量%、50重量%、51重量%、52重量%、53重量%、54重量%、55重量%、56重量%、57重量%、58重量%、59重量%、60重量%、61重量%、62重量%、63重量%、64重量%、65重量%、66重量%、67重量%、68重量%、69重量%、70重量%、71重量%、72重量%、73重量%、74重量%、75重量%、76重量%、77重量%、78重量%、79重量%、80重量%、81重量%、82重量%、83重量%、84重量%、85重量%、86重量%、87重量%、88重量%、89重量%、90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%、又は99.5重量%。
【0107】
放射性化合物
本発明による方法においては、前記放射性化合物には、フッ素-18は含まれない。
【0108】
1つのより好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記放射性化合物には、α-放射体及びβ-放射体からなる群から選択される放射性核種が含まれ、好ましくは、ここで、前記放射性核種が、水素-3、アスタチン-211、炭素-11、炭素-14、臭素-76、ヨウ素-123、ヨウ素-124、ヨウ素-125、ヨウ素-131、リン-32、及び硫黄-35からなる群から選択され、最も好ましくは、ここで、前記放射性核種が、アスタチン-211、ヨウ素-123、ヨウ素-124、及びヨウ素-131からなる群から選択される。使用される放射性核種は、フッ素-18ではない。
【0109】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記放射性化合物が、β-放射体及びγ-放射体の両方である放射性核種を含み、好ましくは、ここで、前記放射性核種がヨウ素-131である。
【0110】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記放射性化合物が、1つであり、2つ以上ではない放射性核種を含み、好ましくは、ここで、前記放射性核種がヨウ素-131である。
【0111】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記放射性化合物の中に含まれる放射性核種が、11から最高118まで、好ましくは19から最高118まで、より好ましくは37から最高118までの原子番号を有している。
【0112】
1つの好ましい実施形態においては、「ここで、前記放射性化合物が、フッ素-18を含まない」という表現は、次の表現に置き換えられる:「ここで、前記放射性化合物の中に含まれる各種の放射性核種が、水素-3、アスタチン-211、炭素-11、炭素-14、臭素-76、ヨウ素-123、ヨウ素-124、ヨウ素-125、ヨウ素-131、リン-32、及び硫黄-35からなる群から選択される」。言い換えれば、この好ましい実施形態における方法は、次のように表明することが可能である:混合物中に含まれる放射性化合物の化学反応を実施するための方法であり、ここで、前記方法には、(a)前記混合物を固相と接触させるステップ、それに続けての、(b)前記混合物を、30℃から最高150℃までの範囲で選択される温度にまで加熱するステップ、が含まれ、ここで、ステップ(a)及び(b)には、前記固相を、アルカリ性の溶液と接触させることが含まれず、ここで、前記化学反応が、結果として、前記放射性化合物の中に含まれる放射性核種の上に、新しい結合を形成させず、ここで、前記放射性化合物の中に含まれる各種の放射性核種が、水素-3、アスタチン-211、炭素-11、炭素-14、臭素-76、ヨウ素-123、ヨウ素-124、ヨウ素-125、ヨウ素-131、リン-32、及び硫黄-35からなる群から選択される。
【0113】
上記に鑑みて、前述の実施形態による方法は、したがって、次のように表明することが可能である:混合物中に含まれる放射性化合物の化学反応を実施するための方法であり、ここで、前記方法には、(a)前記混合物を固相と接触させるステップ、それに続けての、(b)前記混合物を、30℃から最高150℃までの範囲で選択される温度にまで加熱するステップ、が含まれ、ここで、ステップ(a)及び(b)の際に、前記固相を接触する溶液はすべて、中性又は酸性溶液であり、ここで、前記化学反応が、結果として、前記放射性化合物の中に含まれる放射性核種の上に、新しい結合を形成させず、ここで、前記放射性化合物の中に含まれる各種の放射性核種が、水素-3、アスタチン-211、炭素-11、炭素-14、臭素-76、ヨウ素-123、ヨウ素-124、ヨウ素-125、ヨウ素-131、リン-32、及び硫黄-35からなる群から選択される。
【0114】
上記に鑑みて、前述の実施形態による方法は、したがって、次のように表明することが可能である:混合物中に含まれる放射性化合物の化学反応を実施するための方法であり、ここで、前記方法には、(a)前記混合物を固相と接触させるステップ、それに続けての、(b)前記混合物を、30℃から最高150℃までの範囲で選択される温度にまで加熱するステップ、が含まれ、ここで、ステップ(a)及び(b)には、前記固相を、アルカリ性の溶液と接触させることが含まれず、ここで、前記化学反応が、ポスト-標識化反応であり、ここで、前記放射性化合物の中に含まれる各種の放射性核種が、水素-3、アスタチン-211、炭素-11、炭素-14、臭素-76、ヨウ素-123、ヨウ素-124、ヨウ素-125、ヨウ素-131、リン-32、及び硫黄-35からなる群から選択される。
【0115】
上記に鑑みて、前述の実施形態による方法は、したがって、次のように表明することが可能である:混合物中に含まれる放射性化合物の化学反応を実施するための方法であり、ここで、前記方法には、(a)前記混合物を固相と接触させるステップ、それに続けての、(b)前記混合物を、30℃から最高150℃までの範囲で選択される温度にまで加熱するステップ、が含まれ、ここで、ステップ(a)及び(b)の際に、前記固相を接触する溶液はすべて、中性又は酸性溶液であり、ここで、前記化学反応が、ポスト-標識化反応であり、ここで、前記放射性化合物の中に含まれる各種の放射性核種が、水素-3、アスタチン-211、炭素-11、炭素-14、臭素-76、ヨウ素-123、ヨウ素-124、ヨウ素-125、ヨウ素-131、リン-32、及び硫黄-35からなる群から選択される。
【0116】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記放射性化合物が、次のものからなる群から選択される:N-スクシンイミジル-4-(1,2-ビス(tert-ブトキシカルボニル)グアニジノ)メチル-3-[131I]ヨードベンゾエート(Boc2-[131I]SGMIB)、N-スクシンイミジル-4-(1-tert-ブトキシカルボニルグアニジノ)メチル-3-[131I]ヨードベンゾエート(Boc-[131I]SGMIB)、N-スクシンイミジル-3-(1,2-ビス(tert-ブトキシカルボニル)グアニジノ)メチル-3-[131I]ヨードベンゾエート(iso-Boc2-[131I]SGMIB)、N-スクシンイミジル-3-(1-tert-ブトキシカルボニルグアニジノメチル-3-[131I]ヨードベンゾエート(iso-Boc-[131I]SGMIB))、N,N’-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-3-[123I]ヨードベンジルグアニジン(Boc2-[131I]MIBG)、N-tert-ブトキシカルボニル-3-[123I]ヨードベンジルグアニジン(Boc-[131I]MIBG)、(2R,3S)-2-[(2-[123I]ヨードフェノキシ)フェニルメチル]-N-tert-ブトキシカルボニル-モルホリン(Boc-[123I]I-NKJ64)、及び(S)-2-N-tert-ブトキシカルボニル-3-(4-[125I]ヨードフェニル)プロパノエート(Boc-[125I]I-Phe)。好ましくは、ここで、前記放射性化合物が、N-スクシンイミジル-4-(1,2-ビス(tert-ブトキシカルボニル)グアニジノ)メチル-3-[131I]ヨードベンゾエート(Boc2-[131I]SGMIB)である。
【0117】
当業熟練者に明らかなことであるが、Boc2-[131I]SGMIBの中に含まれている、2個のtert-ブトキシカルボニル(Boc、又はtert-Boc)基は、保護基である。上で定義された脱保護反応の文脈においては、Boc2-[131I]SGMIBを完全に脱保護することによって、N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[131I]ヨードベンゾエート([131I]SGMIB)が得られる。Boc2-[131I]SGMIBの脱保護が不完全、すなわち部分的であると、N-スクシンイミジル-4-(1-tert-ブトキシカルボニルグアニジノ)メチル-3-[131I]ヨードベンゾエート(1’-Boc-[131I]SGMIB)、又はN-スクシンイミジル-4-(2-tert-ブトキシカルボニルグアニジノ)メチル-3-[131I]ヨードベンゾエート(2’-Boc-[131I]SGMIB)が得られるが、これらはいずれも、Boc-[131I]SGMIBとして表すことができる。
【0118】
1つのより好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物の加水分解を含み、ここで、前記加水分解が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記加水分解には、前記放射性化合物からの保護基の除去が含まれ、ここで、前記放射性化合物が、N-スクシンイミジル-4-(1,2-ビス(tert-ブトキシカルボニル)グアニジノ)メチル-3-[131I]ヨードベンゾエート(Boc2-[131I]SGMIB)であり、
- ここで、前記加水分解の際の放射線分解度が、5%未満、好ましくは3%未満であり;及び/又は
- ここで、前記加水分解が、水溶液の中で、7未満、好ましくは6未満のpHで起こり、好ましくは、ここで、前記水溶液がリン酸を含み;及び/又は
- ここで、N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[131I]ヨードベンゾエート([131I]SGMIB)の収率が、少なくとも20%、22.5%、25%、27.5%、30%、32.5%、35%、37.5%、40%、42.5%、45%、47.5%、50%、52.5%、55%、57.5%、60%、62.5%、65%、67.5%、70%、72.5%、75%、77.5%、80%、82.5%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%、又は97.5%であり;及び/又は
- ここで、前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分までの範囲で選択される。
【0119】
1つの最も好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物の加水分解を含み、ここで、前記加水分解が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記加水分解には、前記放射性化合物からの保護基の除去が含まれ、ここで、前記放射性化合物が、N-スクシンイミジル-4-(1,2-ビス(tert-ブトキシカルボニル)グアニジノ)メチル-3-[131I]ヨードベンゾエート(Boc2-[131I]SGMIB)であり、
- ここで、前記加水分解の際の放射線分解度が、5%未満、好ましくは3%未満であり;及び/又は
- ここで、前記加水分解が、水溶液の中で、7未満、好ましくは6未満のpHで起こり、好ましくは、ここで、前記水溶液がリン酸を含み;及び/又は
- ここで、N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[131I]ヨードベンゾエート([131I]SGMIB)の収率が、少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%であり;及び/又は
- ここで、前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲、より好ましくは1分から最高5分までの範囲であり;及び/又は
- ここで、前記混合物の前記加熱が、以下の範囲から選択される温度である:30℃から、最高35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、又は150℃まで。好ましくは、ここで、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。
【0120】
1つのさらにより好ましい実施形態においては、以下のような前述の実施形態による方法が提供されるが、ここで、前記混合物を前記固相と接触させると、前記固相に対する前記放射性化合物の付着が起こり、及び、ここで、前記方法には、溶離液を使用して前記固相から前記放射性化合物を脱離させる、ステップ(c)がさらに含まれ、ここで、前記溶離液が、水溶液、有機溶媒、又はそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、ここで、前記溶媒が水とエタノールとの混合物であり、より好ましくは、ここで、前記溶媒がエタノールである。これらの好ましい実施形態においては、前記固相が、ファシリテーターであるのが好ましい。
【0121】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物の加水分解を含み、ここで、前記加水分解が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記加水分解には、前記放射性化合物からの保護基の除去が含まれ、ここで、前記放射性化合物が、N-スクシンイミジル-4-(1,2-ビス(tert-ブトキシカルボニル)グアニジノ)メチル-3-[131I]ヨードベンゾエート(Boc2-[131I]SGMIB)であり、ここで、N-スクシンイミジル-4-(1,2-ビス(tert-ブトキシカルボニル)グアニジノ)メチル-3-[(131)I]ヨードベンゾエート(Boc2-[131I]SGMIB)が、加熱の間に、定量HPLCで測定して、少なくとも30%の収率でN-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[(131)I]ヨードベンゾエート([131I]SGMIB)に転化され、ここで、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲の中で選択される温度までである。好ましくは、前記加熱時間が、1分から最高5分又は10分までの範囲で選択される。より好ましくは、前記混合物の前記加熱が、30℃から最高55℃までの範囲で選択される温度であり、そして前記加熱時間が、1分から最高10分までの範囲で選択される。
【0122】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記放射性化合物の放射能強度が、0.1キュリーから最高100キュリーまで、0.5キュリーから最高100キュリーまで、1キュリーから最高100キュリーまで、2キュリーから最高100キュリーまで、3キュリーから最高100キュリーまで、4キュリーから最高100キュリーまで、5キュリーから最高100キュリーまで、10キュリーから最高100キュリーまでである。前記放射性化合物の前記放射能強度は、本発明による方法に含まれるステップ(b)の終了時に測定するのが好ましい。
【0123】
固相及び構成
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記固相が、シリカ又はポリマー系の固相、好ましくはSep-Pak tC18、Step-Pak C18、Oasis HLB、Oasis MCX、Oasis MAX、及びSephadex LH-20からなる群から選択され、好ましくは、ここで、前記固相が、Sep-Pak tC18である。
【0124】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記固相が、シリカ又はポリマー系の固相であり、ここで、前記固相が、前記反応のためのファシリテーターである。
【0125】
固相がファシリテーターとして機能する(化学)反応は、本出願の文脈においては、前記固相によってファシリテートされた(化学)反応と呼ばれる。
【0126】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記固相及び前記混合物が、カートリッジ、好ましくは固相抽出(SPE)カートリッジの中に組み込まれている。当業熟練者には周知のことであるが、上で特定された固相を含むSPEカートリッジは、市場で入手可能である。
【0127】
1つのより好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記固相及び前記混合物が、カートリッジ、好ましくは固相抽出(SPE)カートリッジの中に組み込まれており、ここで、前記カートリッジが、使い捨てタイプ(discardable)であり、好ましくはここで、前記カートリッジが、1回限りの使用(single-use)である。使い捨てタイプのカートリッジは、本発明による方法で、限定された反復回数でのみ使用可能なカートリッジと定義されるが、ここで、前記限定回数は、好ましくは、100、50、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1回である。この理論にとらわれることなく言えば、使い捨てタイプカートリッジを、より多くの反復回数で使用すると、本発明における前記化学反応で所望される反応生成物の収率が低下する可能性がある。
【0128】
1つのさらにより好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記固相及び前記混合物が、カートリッジ、好ましくは固相抽出(SPE)カートリッジの中に組み込まれており、ここで、前記カートリッジが、1回限りの使用である。1回限りの使用のカートリッジは、先に説明したような本発明による方法で、単回反復でのみ使用することが可能なカートリッジと定義される。
【0129】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記方法が自動化されている。本発明の文脈においては、以下のような条件であれば、化学反応を実施するための方法が自動化されている:(a)前記固相との前記接触、及び/又は(b)前記混合物の前記加熱、及び/又は(c)前記放射性化合物の前記脱離、及び/又は(d)生物学的残基の前記付着が、人間のオペレーターによる直接的な操作を必要としない。好ましくは、直接的な操作(direct manipulation)は、前記放射性化合物を含む混合物を含む受容器を操作又は保持すること、及び/又は前記(a)及び/又は(b)及び/又は(c)及び/又は(d)の際の反応条件、たとえば温度を手動で調節することを意味している。
【0130】
本発明による方法には、好ましくは、以下で定義されるような、本発明におけるデバイス又はシステムの使用が含まれるが、ここで、前記方法の際の(b)前記混合物の前記加熱が、前記デバイス又は前記システムに含まれる前記加熱手段の前記加電(powering)によって達成される。本発明による方法が、本発明の第五の態様の文脈において定義されるような、本発明におけるシステムを用いて実施される方法であるのが好ましい。
【0131】
当業熟練者にとっては明白なことであるが、本発明におけるデバイス又は本発明におけるシステムが、本明細書又は本出願の文脈における他の開示の中に記述されるようにして、本発明による方法において使用される場合は常に:
- 本発明におけるデバイス又はシステムの文脈で記述される前記混合物は、本発明による前記方法の文脈において記述された、放射性化合物を含む前記混合物であり;
- 前記方法の際の(b)前記混合物の前記加熱が、前記デバイス又は前記システムに含まれる前記加熱手段の前記注力によって達成され;
- 好ましくは、本発明による方法の文脈において定義されたような、前記化学反応が、前記ステムの中に含まれている前記化学反応容器の中で実施され;
- 好ましくは、前記方法のステップ(a)の中の前記固相が、前記システムの中に含まれている前記固相である。
【0132】
この観点で、本発明による方法の文脈において開示されるすべての選択及び実施形態は、必要に応じて変更を加えて、本発明におけるデバイス又はシステムに適用することが可能である。さらには、本発明におけるデバイス又は本発明におけるシステムに関連するすべての好ましい実施形態及び定義は、そのようなデバイス又はシステムの使用も含め、本発明による方法に関連する好ましい実施形態及び定義と解釈すべきである。
【0133】
具体的には、一例として、1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記方法には、本発明におけるシステム又はデバイスの使用が含まれ、ここで、前記システムの中に含まれる化学反応容器が、SPEカートリッジである。
【0134】
生物学的残基(biological moiety)
1つの好ましい実施形態においては、以下のような本発明による方法が提供されるが、ここで、前記混合物を前記固相と接触させると、前記固相に対する前記放射性化合物の付着が起こり、ここで、前記化学反応が、前記放射性化合物の加水分解を含み、ここで、前記加水分解が、前記加熱の間に起こり、ここで、前記加水分解には、前記放射性化合物からの保護基の除去が含まれ、ここで、前記方法には、前記固相から前記放射性化合物を脱離させる、ステップ(c)がさらに含まれ、ここで、前記方法には、ステップ(c)の終了時に得られた脱保護された放射性化合物に生物学的残基を付着させるステップ(d)が含まれ、ここで、前記付着が、放射標識された生物学的残基を与える。本出願の文脈においては、この実施形態に従う方法は、本発明において、生物学的残基を付着させる方法と呼ばれる。生物学的残基は、好ましくは、脂質、単糖類のポリマー、又はアミノ酸のポリマー、より好ましくはアミノ酸のポリマーである。
【0135】
1つの好ましい実施形態においては、本発明において、生物学的残基を付着させるための方法が提供されるが、ここで、前記生物学的残基が、ペプチド、タンパク質の骨格、又は抗体若しくはその断片であり、好ましくは、ここで、前記生物学的残基が、診断用及び/又は治療用の化合物である。
【0136】
本出願の文脈における生物学的残基として使用可能な好ましいペプチドは、次のものからなる群から選択される:FAPI、PSMA-617、PSMA-11、サブスタンスP、ソマトスタチン類似体、ガストリン放出ペプチドレセプターリガンド、及びECL1i。
【0137】
本出願の文脈における生物学的残基として使用可能な、好適なタンパク質の骨格は、次のものからなる群から選択される:Affibody(ZHER2:342及びABY-025を含む)、Affitin、ノッチン(knottin)、及びDarpin。
【0138】
1つの好ましい実施形態においては、本発明において、生物学的残基を付着させるための方法が提供されるが、ここで、前記生物学的残基が、抗体若しくはその断片であり、好ましくは、ここで、前記抗体又はその断片が、診断用及び/又は治療用の化合物である。
【0139】
抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、それらの断片たとえば、Fab、F(ab)2、Fv、Fab、F(ab)2、scFv、ミニボディ(minibody)、二重特異性抗体(biabody)、scFv-Fc、及び親抗体の抗原結合機能を残しているその他の断片を指している。そうして、抗体が、免疫グロブリン若しくは糖タンパク質若しくはそれらの断片若しくは一部、又は変成された免疫グロブリン様フレームワークの内部に含まれる抗原結合部分を含む構築物、又は非免疫グロブリン様フレームワーク又は骨格を含む構築物の内部に含まれる抗原結合部分を指していることもあり得る。
【0140】
本出願の文脈における生物学的残基として使用することが可能な、好ましい抗体又はその断片は次のものからなる群から選択される:FF-21101、h11B6、CYT-500、キメラ体のG250、B-B4、Mu11-1F4、BC-8、トラスツズマブ、ペルツズマブ、セツキシマブ、イブリツモバブ、トシツモマブ、リツキシマブ、ギレンツキシマブ、リンツズマブ、F16SIP、huA33、J591、81C6、CC49-deltaCH2、VRC01、Hu3S193、A33、MN-14、B3、BW250/183、Lym-1、TNT-1/B、8H9、Diabody T84.66、huLL2、キメラ体のT84.66、MAB-145、huM195、CC49、ダクリズマブ、hPAM4、BU-12、3F8、アマツキシマブ、アテゾリズマブ、オンブルタマブ、IAB22M2X CD8 minibody、FPI-1434、BC8-B10、F(ab)2 MX35、9.2.27、エプラツツマブ、BAY 861903、及びBAY 2315158。
【0141】
モノクローナル抗体は、均質な抗体集団を有する抗体組成物を指している。この用語は、抗体の種又は起源関連に限定される訳ではなく、またそれが生成した方式に限定される訳でもない。この用語には、全体免疫グロブリン、さらにはその抗体の抗原結合機能を保持している断片及びその他のものが包含される。ポリクローナル抗体は、不均質な抗体集団を有する抗体組成物を指している。
【0142】
治療用化合物は、疾患又は病状を治療、寛解、予防、及び/又は遅延させるための化合物である。診断用化合物は、個体における疾患又は病状を検出するための化合物である。この文脈においては、前記抗体又はその断片は、疾患又は病状に関連する抗原と結合することが可能である。前記抗原が、前記疾患又は病状に関連する細胞において発現されるのが好ましい。
【0143】
前記疾患が、好ましくは癌、より好ましくは充実性腫瘍であり、最も好ましくは、充実性腫瘍が、乳癌、卵巣癌、胃癌、多発性骨髄腫、及びリンパ腫からなる群から選択される。それらとは別に、前記癌が血液学的な癌であってもよい。
【0144】
1つの好ましい実施形態においては、本発明において、生物学的残基を付着させるための方法が提供されるが、ここで、前記生物学的残基が、抗体若しくはその断片であり、ここで、前記抗体又はその断片が、診断用及び/又は治療用の化合物であり、ここで、前記診断用及び/又は治療用の化合物は、細胞において発現されるか、及び/又は細胞の表面上に存在する抗原を目標としている。
【0145】
腫瘍細胞の中で発現される抗原は、特異的に生成するか、又は腫瘍細胞又は癌細胞それぞれの表面の中又は上に特異的及び/又は大量に生成される腫瘍特異的抗原又は癌細胞特異的抗原であるが、それらは、好ましくは、通常の健康な細胞の表面の中又は上には、まったく存在しないか、又は相対的に低い濃度又は密度でしか発現されない。これらの腫瘍特異的又は癌細胞特異的な抗原が、本発明における生物学的残基を付着させるための方法において生物学的残基として使用される、抗原又はVHH又はそれらの断片と結合されると、その上に抗原が発現された、相当する腫瘍又は癌細胞が、放射性毒性のメカニズムを介して、死滅されるか、又はそれらの成長が少なくとも阻止されるか、阻害されるか、若しくは低滅されるか、又は、その上に抗原が発現された、相当する腫瘍又は癌細胞が、その上に抗原が発現された、相当する腫瘍又は癌細胞放射標識されることも可能である。
【0146】
適切な腫瘍特異的又は癌細胞特異的な目標分子は、当業熟練者のための、既存の文献又は特許データベースから容易に入手することが可能であり、そして、限定されことなく、ras及びp53遺伝子の異常生成物も含めた、突然変異が原因の異常構造を有する腫瘍細胞で生成される各種のタンパク質、組織分化抗原、変異タンパク質抗原、発癌ウイルス抗原、癌・精巣抗原、腫瘍胎児性抗原、及び血管若しくは間質特異的抗原が含まれる。特異的腫瘍抗原の例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:CTAG1B、MAGEA1、酵素チロシナーゼ、アルファフェトタンパク質(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、EBV及びHPV、異常構造の細胞表面糖脂質及び糖タンパク質、HER2、EGFR、PSMA、FAP、CD33、CD45、テナシン-C、IGF-1R、SSR2、並びにそれらの変異体。
【0147】
それゆえに、本発明における生物学的残基を付着させるための方法が、腫瘍細胞に対する放射標識された診断用及び/又は治療用の化合物を得るための方法を提供するが、ここで、前記生物学的残基が、抗体若しくはその断片であり、ここで、前記抗体又はその断片が、診断用及び/又は治療用の化合物であり、ここで、前記診断用及び/又は治療用の化合物は、腫瘍細胞の中で発現された抗原を目標としているか、及び/又は腫瘍細胞の表面の上に存在している。
【0148】
上述の実施形態においては、好ましくは前記抗原がHER2であり、したがって前記腫瘍細胞は、HER2陽性の腫瘍細胞である。
【0149】
別の言い方をすれば、いくつかの実施形態においては、本発明における生物学的残基を付着させるための方法の反応生成物が、抗原を発現する腫瘍細胞又は癌細胞を死滅させることが可能であるが、それらに対して、抗体、VHH、又はそれらの断片が、前記方法における生物学的残基として使用されるか、又はそのような腫瘍細胞又は癌細胞の成長及び/又は増殖を低減又は遅らせることができる。
【0150】
いくつかの実施形態においては、本発明における生物学的残基を付着させるための方法の中で生物学的残基として使用される抗体、VHH、又はそれらの断片が、一価である。本明細書において、一価は、前記抗体、VHH、又はそれらの断片が、上で定義されたような与えられた抗原のための、ひとつだけの結合部位を有しているということを意味している。
【0151】
腫瘍細胞の中で発現される抗原が、HER2であるのが好ましい。したがって、いくつかの実施形態においては、本発明における生物学的残基を付着させるための方法で使用される抗体、VHH、又はそれらの断片が、HER2に特異的に結合する。
【0152】
1つの好ましい実施形態においては、以下のような前述の実施形態による方法が提供されるが、ここで、前記抗体又はその断片が、重鎖抗体(VHH)由来の重鎖可変ドメイン、又はそれらの断片であり、好ましくは、ここで、前記重鎖抗体(VHH)又はそれらの断片が、少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するか、又はアミノ酸配列の配列番号7又は配列番号8を有している。
【0153】
抗体の断片が、抗体若しくはその断片の重鎖可変ドメインであってもよい。抗体の重鎖可変ドメイン又はその断片は、本明細書で使用するとき、以下の意味を有している:(i)本来的に軽鎖を有さない、重鎖抗体の重鎖の可変ドメイン(本明細書において、VHHと表示される)、非限定的に挙げれば、たとえばラクダ科の動物又はサメの重鎖抗体の重鎖の可変ドメイン、又は(ii)従来型の4本鎖抗体又は各種のそれらの断片の重鎖の可変ドメイン、非限定的に挙げれば、たとえばアミノ酸残基の1つ又は複数のストレッチ(すなわち、小ペプチド);それらは腫瘍抗原又は癌細胞の上に存在している抗原に結合するのに特に好適であり、そして本明細書に開示されているようなVHHの中に存在しているか、及び/又は組み込まれていてもよい(本明細書に開示されているようなVHHのCDR配列をベースとするか、及び/又はそれらに由来していてもよい)。抗体の重鎖可変ドメイン又はその断片が、VHH又はそれらの断片であれば、好ましい。
【0154】
抗体の重鎖可変ドメインのアミノ酸配列及び構造は、(しかしながら、それらに限定される訳ではないが)、4つのフレームワーク領域すなわちPRからなると考えることが可能であり、それらは、当業界及び以下の本明細書においては、それぞれ、「フレームワーク領域(framework region)1」すなわち「FR1」;「フレームワーク領域2」すなわち「FR2」;「フレームワーク領域3」すなわち「FR3」;及び「フレームワーク領域4」すなわち「FR4」と呼ばれ、そのフレームワーク領域は、3つの相補性決定領域すなわち「CDR」で中断されているが、それらはそれぞれ、当業界では、「相補性決定領域(complementarity determining region)1」すなわち「CDR1」;「相補性決定領域2」すなわち「CDR2」;及び「相補性決定領域3」すなわち「CDR3」と呼ばれている。
【0155】
本明細書で使用するとき、抗体の文脈の内部における「相補性決定領域」すなわち「CDR」という用語は、H(重)鎖又はL(軽)鎖いずれかの可変領域(それぞれVH及びVLとも略される)を指しており、抗原ターゲットに特異的に結合することが可能なアミノ酸配列を含んでいる。これらのCDR領域は、特定の抗原決定基構造についての、抗体の基本的特異性を担持している。そのような領域は、「超可変領域」とも呼ばれる。CDRは、可変領域の内部の不連続のアミノ酸のストレッチを表すが、可変重鎖及び軽鎖領域の内部でのこれらの重要なアミノ酸配列の位置は、種とは無関係に、可変鎖のアミノ酸配列の内部での位置と同様であることが見出された。すべての正準抗体の可変重鎖及び軽鎖は、それぞれ、軽鎖(L)及び重鎖(H)それぞれについて、(L1、L2、L3、H1、H2、H3と命名された)互いに不連続な3つのCDR領域を有している。
【0156】
いくつかの実施形態においては、以下においてさらに説明されるように、抗体の重鎖可変ドメイン(VHHを含む)の中のアミノ酸残基の合計数を、110~130の範囲、好ましくは112~115の範囲、最も好ましくは113とすることができる。しかしながら、次のことには注意されたい:抗体の重鎖可変ドメインの部分、断片、又はアナログが、そのような部分、断片、又はアナログが機能的活性(の少なくとも一部分)を保持するか、及び/又はそれから、それらの部分、断片、又はアナログが由来する、元々の抗体の重鎖可変ドメインの結合特異性(の少なくとも一部分)を保持する限りにおいては、それらの長さ及び/又はサイズについての特別に制限される訳ではない。それらの部分、断片、又はアナログがそれから由来する元々の抗体の重鎖可変ドメインの、機能的活性(の少なくとも一部分)を保持するか、及び/又は結合特異性(の少なくとも一部分)を保持する部分、断片、又はアナログもまた、本明細書において、重鎖可変ドメインの「機能的断片」とも呼ばれる。重鎖可変ドメインの断片又はVHHの断片が、それぞれ、前記重鎖可変ドメインの機能的断片、又は前記VHH機能的断片であれば、好ましい。
【0157】
本開示は、腫瘍抗原又は癌細胞抗原、非限定的に挙げれば、たとえばHER2に結合させるのに特に適した、多数のアミノ酸残基のストレッチを提供する。これらのアミノ酸残基のストレッチは、本発明における生物学的残基を付着させるための方法において生物学的残基として使用されるVHHの中に、特には、それらが、そのVHHの抗原結合部位(の一部)を形成するようにして、存在していてもよいし、及び/又はその中に組み込まれていてもよい。これらのアミノ酸残基のストレッチは、最初に、抗体のCDR配列として形成されていた(或いは、そのようなCDR配列をベースとするか、及び/又はそれらに由来していてもよい)ので、それらは、本明細書において、一般的に、「CDR配列」(たとえば、それぞれ、CDR1配列、CDR2配列、及びCDR3配列)とも呼ばれるであろう。
【0158】
したがって、具体的ではあるが、非限定的な実施形態においては、本発明における生物学的残基を付着させるための方法における生物学的残基として使用されるVHHには、本明細書において記述されたCDR1配列、CDR2配列、及びCDR3配列からなる群から選択される、少なくとも1つのアミノ酸配列が含まれる。いくつかの実施形態においては、前記VHHに、少なくとも1つの抗原結合部位が含まれていてもよいが、ここで、前記抗原結合部位には、本明細書において記述されたCDR1配列、CDR2配列、及びCDR3配列の少なくとも1つの組合せが含まれる。
【0159】
これらのCDR配列の組合せの1つを有する、本発明における生物学的残基を付着させるための方法における生物学的残基を使用するVHH又はそれらの断片は、好ましくは、腫瘍特異的抗原及び/又は癌細胞特異的抗原に対して、(本明細書において定義されるようにして)特異的に結合することができる。いくつかの実施形態においては、前記VHH又はそれらの断片が、腫瘍特異的抗原及び/又は癌細胞特異的抗原に、溶液中での前記可変ドメインの10-8M以下の解離定数(KD)で特異的に結合する。特定の実施形態においては、前記VHH又はそれらの断片が、HER2に、5nM未満、たとえば1から最高5nMまで、好ましくは2から最高3nMまでの解離定数(KD)で、特異的に結合できるようになっている。
【0160】
VHHの腫瘍抗原又は癌細胞抗原に対する特異的結合は、各種適切な方法で測定することが可能であるが、そのような測定法としては、たとえば以下のものが挙げられる:バイオパニング法、スキャッチャード解析法、及び/又は競合的結合アッセイ、たとえばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫アッセイ(EIA)及びサンドイッチ競合アッセイ、並びに当業界で公知のそれらの各種変法。
【0161】
さらなる特定の実施形態においては、本発明における生物学的残基を付着させるための方法において生物学的残基として使用されるVHH又はそれらの断片には、以下のものを含む群から選択されるCDR配列の少なくとも1つの組合せが含まれる:
- 配列番号1を有するCDR1領域、配列番号2を有するCDR2領域、及び配列番号3を有するCDR3領域、及び/又は
- 配列番号4を有するCDR1領域、配列番号5を有するCDR2領域、及び配列番号6を有するCDR3領域。
【0162】
配列番号7及び8は、HER2に対して惹起された、例示的な重鎖可変ドメインのアミノ酸配列を与える。
【0163】
いくつかの実施形態においては、本発明による方法における生物学的残基として使用されるVHHが、腫瘍特異的又は癌細胞特異的なターゲット抗原を指向し、そして配列番号7若しくは8、又はそれらの断片の重鎖可変ドメインの少なくとも1つと、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有している。いくつかの実施形態においては、腫瘍特異的又は癌細胞特異的なターゲット抗原を指向する前記VHH又はそれらの断片が、そのような重鎖可変ドメイン又はそれらの断片をエンコードする核酸配列と、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する核酸によってエンコードされている。
【0164】
いくつかの実施形態においては、本明細書において開示されたような重鎖可変ドメイン配列が、HER2と結合するか、及び/又はそれを指向することが可能であり、そしてそれらは、配列番号7又は8の重鎖可変ドメインの少なくとも1つと少なくとも90%のアミノ酸同一性を有している(そこでは、アミノ酸の同一性の度合いを測定する目的では、CDR配列を形成するアミノ酸残基は無視される)。
【0165】
いくつかの実施形態においては、本発明による方法における生物学的残基として使用されるVHHは、腫瘍特異的又は癌細胞特異的なターゲット抗原を指向しているが、ここで、前記VHHには、配列番号9~13から選択されるアミノ酸配列が含まれる。
【0166】
いくつかの実施形態においては、本発明による方法における生物学的残基として使用されるVHHが、腫瘍特異的又は癌細胞特異的なターゲット抗原を指向し、そして配列番号9~13、又はそれらの断片の重鎖可変ドメインの少なくとも1つと、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有している。いくつかの実施形態においては、腫瘍特異的又は癌細胞特異的なターゲット抗原を指向する前記VHH又はそれらの断片が、そのような重鎖可変ドメイン又はそれらの断片をエンコードする核酸配列と、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する核酸によってエンコードされている。
【0167】
いくつかの実施形態においては、本明細書において開示されたような重鎖可変ドメイン配列が、HER2と結合するか、及び/又はそれを指向することが可能であり、そしてそれらは、配列番号9~13の重鎖可変ドメインの少なくとも1つと少なくとも90%のアミノ酸同一性を有している(そこでは、アミノ酸の同一性の度合いを測定する目的では、CDR配列を形成するアミノ酸残基は無視される)。
【0168】
いくつかの実施形態においては、本発明における生物学的残基を付着させるための方法において生物学的残基として使用される放射標識されたVHHドメイン又はそれらの断片が、場合によっては、1種又は複数のリンカーを介して、1個又は複数のさらなる基、部分、又は残基に連結されていてもよい。それらの1個又は複数のさらなる基、部分、又は残基は、関心対象の他のターゲットに結合させるのに役立つ。そのようなさらなる基、残基、部分、及び/又は結合部位が、本明細書に開示されているような重鎖可変ドメインに対してさらなる機能性を与え得るか、又は与えないか、そして本明細書に開示されているような重鎖可変ドメインの性質を変化させ得るか、又は変化させないかについては、明らかにするべきである。そのような基、残基、部分、又は結合単位はさらに、たとえば、生物学的に機能することが可能な、化学基であってもよい。
【0169】
それらの基、部分、又は残基は、いくつかの実施形態においては、重鎖可変ドメインに対して、N-末端的又はC-末端的に連結、特にはC末端的に連結されている。
【0170】
いくつかの実施形態においては、本発明における生物学的残基を付着させるための方法において生物学的残基として使用されるVHHドメイン又はそれらの断片が、化学的に変成されていてもよい。たとえば、そのような変成には、重鎖可変ドメインの中又は上に、1種又は複数の官能基、残基、又は部分を導入するか又は連結させることが含まれていてよい。それらの基、残基、又は部分が、その重鎖可変ドメインに、1種又は複数の、所望される性質又は機能性を付与するのがよい。そのような官能基の例は、当業熟練者には明らかであろう。
【0171】
たとえば、重鎖可変ドメインに対してそのような官能基を導入又は連結させると、その重鎖可変ドメインの溶解性及び/又は安定性が増大したり、その重鎖可変ドメインの毒性が減少したり、或いは、その重鎖可変ドメインの各種の望ましくない副作用が消失又は減衰したり、及び/又は他の有利な特性が得られたりする。
【0172】
特定の実施形態においては、その1種又は複数の基、残基、部分が、1種又は複数の適切なリンカー又はスペーサーを介して、その重鎖可変ドメインに連結される。
【0173】
いくつかの実施形態においては、1種又は複数の基、残基、又は部分が、本明細書において開示されたような放射標識されたVHH又はそれらの断片に、延長した半減期を付与することはない。したがって、いくつかの実施形態においては、本発明における生物学的残基を付着させるための方法において生物学的残基として使用される放射標識されたVHH又はそれらの断片が、寿命延長されていない。
【0174】
本発明における生物学的残基を付着させるための方法において生物学的残基として使用される腫瘍特異的抗原及び/又は癌細胞特異的抗原に対して特異的に結合している放射標識されたVHHドメインが、一般的に単量体的形態にあるのに対して、特定の代替えの実施形態においては、上で記述されたような放射標識されたVHH又はそれらの断片の2種以上が、互いに連結されたり、又は相互結合されたりしていてよい。特定の実施形態においては、2種以上のVHH又はそれらの断片が、1種又は複数の適切なリンカー又はスペーサーを介して、互いに連結されている。異なったVHHをカップリングさせる事に使用するのに適切なスペーサー又はリンカーは、当業熟練者には明らかであろうし、一般的に、当業界で、ペプチド及び/又はタンパク質を連結するのに使用される、いかなるリンカー又はスペーサーであってもよい。
【0175】
いくつかの例示的な適切なリンカー又はスペーサーとしては、以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:ポリペプチドリンカーたとえば、グリシンリンカー、セリンリンカー、混合グリシン/セリンリンカー、グリシンリッチ及びセリンリッチのリンカー、又はほとんど極性のポリペプチド断片で構成されているリンカー、又はホモ-若しくはヘテロ-2官能性化学架橋化合物たとえば、グルタルアルデヒド、又は場合によってはPEGで間隔をあけた、マレイミド又はNHSエステル。
【0176】
化学反応を実施するための方法
上で説明したように、本発明における反応は、放射性化合物のポスト-標識化反応である。定義により、前記化学反応が、結果として、前記放射性化合物の中に含まれる放射性核種の上に、新しい結合を形成させない。それにも関わらず、本発明における反応が、より広い化学反応からなっていてもよく、ここで、前記放射性化合物が、中間体として形成され、そしてここで、前記より広い反応が、放射性核種の上に新規な結合が形成される反応を含む。
【0177】
したがって、第二の態様においては、本発明は、放射性反応生成物を得るための方法を提供するが、ここで前記方法には、次のステップ:
(i)混合物の形態で構成される放射性化合物を生成させるステップ;それに続けての、
(ii)前記混合物の形態で構成される前記放射性化合物のポスト-標識化化学反応を実施するステップが含まれ、ここで、本発明による方法を使用して、前記ポスト-標識化化学反応を実施し、ここで、前記放射性反応生成物が、前記ポスト-標識化化学反応の反応生成物である。
【0178】
本発明のこの第二の態様の文脈においては、特に断らない限り、本発明の第一の態様の文脈において上で定義されたのと同じ定義及び説明が適用される。さらには、上で開示されたような、本発明による方法のすべての好ましい実施形態及び特徴が、必要に応じて変更を加えて、この第二の態様による方法のステップ(ii)にも適用される。
【0179】
1つの好ましい実施形態においては、以下のようなこの第二の態様による方法が提供されるが、ここで、ステップ(i)が、前駆物質と放射性成分との間の化学反応を実施し、ここで、前記前駆物質が、放射性核種を含まない。
【0180】
好ましくは、前駆物質が、有機化合物であり、より好ましくは、ここで、前記前駆物質が、N-スクシンイミジル-4-[1,2-ビス(tert-ブチルオキシカルボニル)グアニジノメチル]-3-(トリメチル-スタンニル)ベンゾエート(Boc2-SGMTB)、又はN-スクシンイミジル-3-[1,2-ビス(tert-ブチルオキシカルボニル)グアニジノメチル]-5-(トリメチル-スタンニル)ベンゾエート(iso-Boc2-SGMTB)であり、最も好ましくは、前記前駆物質が、N-スクシンイミジル-4-[1,2-ビス(tert-ブチルオキシカルボニル)グアニジノメチル]-3-(トリメチル-スタンニル)ベンゾエート(Boc2-SGMTB)である。
【0181】
放射性成分が、好ましくは放射性核種を含む無機化合物、より好ましくは放射性核種の無機塩又は放射性核種の二元酸、さらにより好ましくはナトリウム塩又は二元酸であり、最も好ましくは前記放射性成分がNa131Iである。
【0182】
1つの好ましい実施形態においては、以下のようなこの第二の態様による方法が提供されるが、ここで、前記方法が自動化されている。
【0183】
加熱デバイス
第三の態様においては、本発明は、混合物を含む化学反応容器(3)を収容しそして加熱するためのデバイス(1)を提供するが、前記デバイス(1)には、加熱手段(5)及び前記化学反応容器(3)を収容するように構成された開口部(2)が含まれ、前記加熱手段(5)が、少なくとも部分的に前記開口部を囲んでおり;ここで、前記加熱手段には、以下のものが含まれ:
- 断熱材用ポリマー(9)、
- 前記断熱材用ポリマーの中に包埋された抵抗導体(8);
ここで、前記デバイス(1)は、前記混合物を含む前記化学反応容器(3)が前記開口部(2)の中に存在している場合に、前記加熱手段(5)に加電することによって、予め決められた温度要件に従って、前記化学反応容器(3)の中に存在している混合物を加熱するように構成されており;好ましくは、ここで、前記デバイス(1)が、筒状のスリーブであり、そして前記開口部が、前記デバイス(1)で囲まれた内腔(lumen)である。本発明のこの第三の態様に従ったデバイスは、本出願においては、本発明におけるデバイスと呼ばれる。
【0184】
本発明による方法が、本発明におけるデバイスの使用を含むか、又は前記デバイス上で実施されるのが好ましい。ここで、本発明におけるデバイスの文脈で記述される前記混合物は、本発明による方法の文脈において記述された、放射性化合物を含む前記混合物であり、ここで、前記放射性化合物にはフッ素-18を含まず、前記混合物の加熱は、30℃から最高150℃までの範囲で選択される温度であり;そして、前記方法の際の前記混合物を加熱する前記ステップ(b)は、前記デバイスの中に含まれる前記加熱手段への前記加電により達成される。前記化学反応は、本発明による方法の文脈において定義されるように、前記化学反応容器の中で実施されるのが好ましい。この観点で、本発明による方法の文脈において開示されるすべての実施形態及び好ましい実施形態は、必要に応じて変更を加えて、本発明におけるデバイスに適用することが可能である。
【0185】
本発明におけるデバイスは、表面加熱を与えるが、このことは、加熱プロセスの最適な制御を可能としながらも、押しつけがましくない(non-intrusive)という点で、有利である。それによって、デリケートな物質やクリティカルな最大温度に気を配る必要が、効果的に排除される。それによって、ホット-スポットや局所過熱に伴う問題を回避される。それに加えて、それが、押しつけがましくないので、押しつけがましい加熱デバイスの導入及び洗浄の現実性が回避される。それに加えて、ポリマー断熱材を使用した表面加熱及び特には、フレキシブルなシリコーンを用いた実施形態なので、軽量且つコンパクトなデバイスとなり、そして決められた化学反応容器及び/又は決められた化学反応のためだけに作成することができるという利点もある。それに加えて、ポリマー断熱材を使用した表面加熱によって、低い熱質量(thermal mass)、有利な電気絶縁性能、及び堅牢な構造が得られ、高い出力密度が可能となり、そして温度制御に対する応答が早くなる。さらには、本発明における加熱デバイスは、シンプルであり、そのため、予め決められた温度要件を遵守させることが容易に可能である。
【0186】
第四の態様においては、本発明は、混合物の中での化学反応を実施するためのシステム(10)を提供するが、それには、以下のものが含まれ:
- 本発明によるデバイス(1);
- 前記デバイス(1)の開口部(2)の中に置かれた化学反応容器(3)であって、前記化学反応容器(3)は、反応器チャンバー(30)、入口(31)、ハウジング、及び好ましくは前記化学反応のファシリテーターとして機能させるのに適した固相を含む、化学反応容器(3)、
ここで、前記システム(10)は、前記混合物が、前記入口(31)を通して反応器チャンバー(30)の中に挿入されると、前記加熱手段(5)に加電することによって、予め決められた温度要件に従って、前記化学反応容器(3)の中に存在している混合物を加熱して、それにより、前記反応チャンバー(30)の中で、前記化学反応を起こさせるように構成されている。本発明のこの第四の態様に従ったシステムは、本出願においては、本発明におけるシステムと呼ばれる。
【0187】
当業熟練者には明白なことであるが、本発明におけるデバイスと、そのシステムにおけるシステムとの間の主たる違いは、化学反応容器が入っているか否かである。それゆえに、本発明におけるデバイスは、前記デバイスの開口部の内部に置かれた化学反応容器を抜きにした、本発明におけるシステムとしてイメージすることができる。
【0188】
好ましくは、本発明による方法には、本発明におけるシステムの使用が含まれる。ここで、本発明におけるシステムの文脈で記述される前記混合物は、本発明による方法の文脈において記述された、放射性化合物を含む前記混合物であり、ここで、前記放射性化合物にはフッ素-18を含まず;そして前記混合物の加熱が、30℃から最高150℃までの範囲で選択される温度までであり;前記化学反応容器の中に含まれる前記固相が、本発明による前記方法のステップ(a)における前記固相であり;そして、前記(b)前記方法の際の前記混合物の加熱が、前記デバイス又は前記システムに含まれる前記加熱手段の前記加電によって達成される。別の言い方をすれば、この好ましい実施形態においては、前記化学反応が、本発明における化学反応である。この観点で、本発明による方法の文脈において開示されるすべての実施形態及び好ましい実施形態は、必要に応じて変更を加えて、本発明におけるシステムに適用することが可能である。
【0189】
第五の態様においては、本発明は、混合物中で化学反応を実施するための方法を提供するが、前記方法には、以下のステップが含まれる:
- 混合物の中での化学反応を実施するためのシステムを備えるステップであって、前記システムには、以下のものが含まれる、備えるステップ:
・ 混合物を含む化学反応容器(3)を収容しそして加熱するためのデバイス(1)[前記デバイス(1)には、加熱手段(5)及び前記反応容器(3)を収容するように構成された開口部(2)が含まれ、前記加熱手段(5)が、少なくとも部分的に前記開口部を囲んでいる];
・ 前記開口部(2)の中に置かれた化学反応容器(3)[前記化学反応容器(3)には、反応器チャンバー(30)、入口(31)、ハウジング(33)、及び(好ましくは前記化学反応におけるファシリテーターとして機能させるのに適した)固相が含まれる];
- 前記入口(31)を介して、その混合物を、前記反応器チャンバー(3)の中に装入するステップ;
- 化学反応容器(3)の中に存在している混合物を、前記加熱手段(5)に加電することによって、予め決められた温度要件に従って加熱し、それによって前記反応チャンバー(30)の内部で、前記化学反応を起こさせるステップ。
【0190】
前述の実施形態に従って、混合物の中の化学反応を実施するための前記システムが、本発明におけるシステムであるのが好ましい。本出願の文脈においては、この好ましい定義に従う方法は、本発明におけるシステムを用いて実施される方法と呼ばれる。本発明におけるシステムを用いて実施される方法が、本発明による方法であるのが、より好ましい。別の言い方をすれば、本発明におけるシステムが、より好ましくは、本発明における化学反応を実施するために使用される。
【0191】
以下における実施形態及び好ましい実施形態は、本発明におけるデバイス、本発明におけるシステム、及び/又は本発明におけるシステムを用いて実施される方法に関連する。
【0192】
本発明の文脈においては、予め決められた温度要件は、化学反応容器及びその内容物の熱的条件を規定するパラメーターの各種組合せに関連させるのがよい。具体的には、その予め決められた温度要件には、以下のものが含まれていてよい:最高温度、及び/又はその間に最低温度と最高温度との間の温度が保持される時間ウィンドウ、及び/又は加熱を実施するための最大時間、及び/又は化学反応を起こさせるための最小時間又は最大時間。
【0193】
例示的実施形態においては、その予め決められた温度要件は、好ましくは、たとえば、30℃又は40℃又は50℃又は60℃又は70℃である初期温度から出発して、5秒~1時間の間の各種時間、たとえば3分で、30℃から最高250℃まで、30℃から最高250℃まで、30℃から最高240℃まで、30℃から最高230℃まで、30℃から最高220℃まで、30℃から最高210℃まで、30℃から最高200℃まで、30℃から最高190℃まで、30℃から最高180℃まで、30℃から最高170℃まで、30℃から最高160℃まで、30℃から最高150℃まで、30℃から最高140℃まで、30℃から最高130℃まで、30℃から最高120℃まで、30℃から最高110℃まで、30℃から最高100℃まで、30℃から最高90℃まで、30℃から最高80℃まで、30℃から最高70℃まで、30℃から最高60℃まで、30℃から最高50℃までの範囲にある各種温度の前記混合物の目標温度が要求されることに関連していてよい。その予め決められた温度要件がさらに、初期温度から目標温度までの移行に関連する1つ又は複数のパラメーター、たとえば、移行にかかる最大時間、及び/又は行き過ぎ量が5℃未満、好ましくは1℃未満であるといった要件を規定してもよい。
【0194】
好ましくは、前記混合物の前記目標温度が、以下の範囲から選択される:30℃から、最高35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、又は150℃まで。好ましくは、前記混合物の前記目標温度が、以下の範囲から選択される:30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、又は65℃から、最高70℃まで。好ましくは、前記混合物の前記目標温度が、以下の範囲から選択される:30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、又は145℃から、最高150℃まで。
【0195】
好ましくは、前記混合物の前記目標温度が、以下の範囲から選択される:35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、又は145℃の、それぞれ±10℃の範囲。好ましくは、前記混合物の前記目標温度が、以下の範囲から選択される:40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、又は140℃の、それぞれ±20℃の範囲。好ましくは、前記混合物の前記目標温度が、以下の範囲から選択される:45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、又は135℃の、それぞれ±30℃の範囲。好ましくは、前記混合物の前記目標温度が、以下の範囲から選択される:50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、又は130℃の、それぞれ±40℃の範囲。好ましくは、前記混合物の前記目標温度が、以下の範囲から選択される:55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、又は125℃の、それぞれ±50℃の範囲。
【0196】
好ましくは、前記予め決められた温度要件が、前記混合物の、1分から最高15分までの範囲で選択された時間で、30℃から最高70℃までの範囲で選択された目標温度、又は1分から最高15分までの範囲で選択された時間で、30℃から最高55℃までの範囲で選択された目標温度、又は1分から最高10分までの範囲で選択された時間で、30℃から最高70℃までの範囲で選択された目標温度、又は1分から最高10分までの範囲で選択された時間で、30℃から最高55℃までの範囲で選択された目標温度、又は1分から最高5分までの範囲で選択された時間で、30℃から最高70℃までの範囲で選択された目標温度、又は1分から最高5分までの範囲で選択された時間で、30℃から最高55℃までの範囲で選択された目標温度が要求されることを意味している。
【0197】
本発明におけるデバイスでは、各種慣用される寸法の化学反応容器を使用してよいが、本明細書において開示された実施形態には、当業熟練者には公知のような、SPEカートリッジで使用するのに適した寸法を有するデバイスの実施形態がすべて含まれる。そのデバイスが金属スリーブを含むような実施形態においては、その金属スリーブが、異なった断面積の最大寸法を有する化学反応容器、たとえば、異なった直径を有する異なった筒状の化学反応容器に対して、デバイスを適合させることを容易としてもよい。金属スリーブでの寸法の例は、以下のように示される:長さが10mmから最高100mmまで、たとえば25mm、及び/又は内径が2mmから最高30mmまで、たとえば11mm、及び/又は外径が3mmから最高35mmまで、たとえば15.9mm又は16mm。実施形態においては、その抵抗導体の、長さ及び/又は抵抗値及び/又は最大出力が、そのデバイスで使用するために選択された化学反応容器の寸法及び/又は要件、及び/又は予め決められた温度要件の関数として、適応させられる。
【0198】
実施形態においては、その抵抗導体の最大出力(電力定格とも呼ばれる)が、150W、140W、130W、120W、110W、100W、90W、80W、70W、60W、50W、40W、30W、20W、10W、又は5Wである。
【0199】
実施形態においては、その加熱手段又は加熱パッドの断熱材用ポリマーには、シリコーン又はシリコーンゴムが含まれる。そのような物質の利点としては、それが、頑丈で(rugged)、耐水性及び/又は耐薬品性であり得るデバイス及び加熱パッドを与えるということが挙げられる。さらには、そのような加熱パッドは、そのデバイスの他のパーツと連結させて、効果的に熱伝達させることが、容易に可能となる。シリコーンゴムは、有利なことには、極端に高い温度にも、劣化することなく耐えることができる。さらには、シリコーンゴムの遮断により、十分な防水性を有する接続が可能となる。実施形態においては、シリコーンを含む断熱材用ポリマー、及び/又はシリコーンを含む断熱材用ポリマーを含むデバイスは、50℃より高い、好ましくは100℃より高い、より好ましくは200℃より高い、最も好ましくは250℃より高い温度でも適している。好ましい実施形態においては、シリコーンを含む断熱材用ポリマー、及び/又はシリコーンを含む断熱材用ポリマーを含むデバイスは、50℃から、又は100℃から、又は200℃から、最高300℃までの温度に適している。好ましい実施形態においては、前記断熱材用ポリマーの融解温度は、150℃よりも高く、好ましくは200℃よりも高い。
【0200】
実施形態においては、その加熱手段の断熱材用ポリマーに、ポリイミドが含まれる。そのような物質の利点は、それが薄くて軽量な透明物質であり、薄くて軽量なデバイスを与えるという点にある。実施形態においては、そのポリイミドを含む断熱材用ポリマー及び/又はポリイミドを含む断熱材用ポリマーを含むデバイスが、以下の温度に適している:
- 50℃超、好ましくは100℃超、より好ましくは150℃超、最も好ましくは200℃、及び/又は
- 400℃未満、好ましくは350℃未満、より好ましくは300℃未満、及び/又は
- 50℃~400℃の範囲内、好ましくは50℃~350℃の範囲内、より好ましくは50℃~300℃。
【0201】
実施形態においては、その加熱手段に、ポリマー断熱材の中に包埋された、又は同義語で、埋め込まれた、巻線要素が含まれる。そのような巻線要素の利点としては、物理的な強度と可撓性が挙げられるが、ここで、ヒーターをくり返して折り曲げても、その性能に有害な影響は出ない。また別の利点は、小半径の曲げも含めて、曲がった表面に容易に沿わせられることに関連し、スリムなデバイス及び/又は小直径を有するデバイスを可能とする。また別の利点は、そのヒーターが、取り付け及び取り外しの際にくり返して曲げることが可能で、内部での損傷が起きず、そのため生産が容易となるということである。
【0202】
実施形態においては、その加熱手段の抵抗導体が、100kΩより大、好ましくは1MΩより大、好ましくは少なくとも10MΩの絶縁抵抗を有している。
【0203】
実施形態においては、その加熱手段に、ポリマー断熱材の中に包埋された、又は同義語で、埋め込まれた、エッチドフォイル(etched foil)要素が含まれる。そのようなエッジドフォイル要素の利点としては、良好な回路パターンの再現性及び優れた熱伝達性が挙げられ、それにより、その要素の適用範囲が拡がる。その他の利点は、増大した熱及び/又は増大したワット密度及び/又は増大したヒーター寿命の送り出しに関連する。また別の利点は、複雑な熱分布パターン及び/又は複数のゾーニングパターンを作り出す性能に関する。
【0204】
実施形態においては、その加熱手段が、フレキシブルシートであるが、
- ここで、好ましくは、前記フレキシブルシートが、長方形の形状を有し;及び/又は
- ここで、好ましくは、前記フレキシブルシートの厚みが、0.5mmから最高1.5mmまで、より好ましくは0.5mmから最高1.0mmまでである。
【0205】
実施形態においては、その加熱手段が、フレキシブルシートであるが、ここで、前記フレキシブルシートが、長方形の形状を有し、ここで、前記長方形の形状が、幅20mmから最高200mmまでそして長さ20mmから最高200mmまで、又は幅20mmから最高150mmまでそして長さ20mmから最高150mmまで、又は幅20mmから最高100mmまでそして長さ20mmから最高100mmまでを有し、好ましくは、ここで、前記フレキシブルシートの厚みが、0.5mmから最高1.5mmまで、より好ましくは0.5mmから最高1.0mmまでである。
【0206】
実施形態においては、その加熱手段が、フレキシブルシートであるが、ここで、前記フレキシブルシートが、長方形の形状を有し、ここで:
- 前記長方形の形状が、幅20mmから最高30mmまでそして長さ45mmから最高55mmまで、好ましくは幅25mmそして長さ50mmを有し、好ましくは、ここで、その抵抗導体の最大出力が5Wであるか;又は、
- 前記長方形の形状が、幅45mmから最高55mmまでそして長さ45mmから最高55mmまで、好ましくは幅50mmそして長さ50mmを有し、好ましくは、ここで、その抵抗導体の最大出力が10Wであるか;又は、
- 前記長方形の形状が、幅45mmから最高55mmまでそして長さ70mmから最高80mmまで、好ましくは幅50mmそして長さ75mmを有し、好ましくは、ここで、その抵抗導体の最大出力が15Wであるか;又は、
- 前記長方形の形状が、幅45mmから最高55mmまでそして長さ95mmから最高105mmまで、好ましくは幅50mmそして長さ100mmを有し、好ましくは、ここで、その抵抗導体の最大出力が20Wであるか;又は、
- 前記長方形の形状が、幅45mmから最高55mmまでそして長さ145mmから最高155mmまで、好ましくは幅50mmそして長さ150mmを有し、好ましくは、ここで、その抵抗導体の最大出力が30Wであるか;又は、
- 前記長方形の形状が、幅70mmから最高80mmまでそして長さ95mmから最高1052mmまで、好ましくは幅75mmそして長さ100mmを有し、好ましくは、ここで、その抵抗導体の最大出力が30Wであるか;又は、
- 前記長方形の形状が、幅95mmから最高105mmまでそして長さ95mmから最高105mmまで、好ましくは幅100mmそして長さ100mmを有し、好ましくは、ここで、その抵抗導体の最大出力が40Wであるか;又は、
- 前記長方形の形状が、幅95mmから最高105mmまでそして長さ145mmから最高155mmまで、好ましくは幅100mmそして長さ150mmを有し、好ましくは、ここで、その抵抗導体の最大出力が60Wであるか;又は、
- 前記長方形の形状が、幅70mmから最高80mmまでそして長さ195mmから最高205mmまで、好ましくは幅75mmそして長さ200mmを有し、好ましくは、ここで、その抵抗導体の最大出力が60Wであるか;又は、
- 前記長方形の形状が、幅145mmから最高155mmまでそして長さ195mmから最高205mmまで、好ましくは幅150mmそして長さ200mmを有し、好ましくは、ここで、その抵抗導体の最大出力が120Wであり;
好ましくはここで、前記フレキシブルシートの厚みが、0.5mmから最高1.5mmまでである。
【0207】
実施形態においては、前記フレキシブルシートが、前記フレキシブルシートの片面を被覆する補強層を含み、好ましくは、ここで、前記補強層が、ガラス及び/又はガラス繊維からなっている。これは、高い構造的完全性を与えるという利点を有している。
【0208】
実施形態においては、その本発明におけるデバイスが、化学反応容器と加熱手段との間に置かれそして化学反応容器を取り巻く金属スリーブを含むが、その金属が、好ましくは銅である。実施形態においては、その金属スリーブが、複数の金属スリーブから取りだした、置き換え可能又は交換可能な金属スリーブに関連していてもよく、ここで、その複数が、少なくとも2つの異なった厚み、及び/又は少なくとも2つの異なった内径若しくは外径を特徴としている。それによって、金属スリーブが存在することにより、そのデバイスを、異なった断面積の最大寸法を有する化学反応容器、たとえば異なった直径を有する、異なった筒状の化学反応容器に適合させることが容易となる。
【0209】
実施形態においては、その本発明におけるデバイスが、化学反応容器と加熱手段との間に置かれそして化学反応容器を取り巻く金属スリーブを含むが、その金属が、好ましくは銅であり、ここで、その金属スリーブの質量が、10gから最高550gまで、好ましくは20gから最高550gまでである。
【0210】
実施形態においては、その本発明におけるデバイスが、化学反応容器と加熱手段との間に置かれそして化学反応容器を取り巻く金属スリーブを含むが、その金属が、好ましくは銅であり、ここで、その抵抗導体の最大出力と、前記金属スリーブの質量との間の比率が、0.5W/g、0.45W/g、0.4W/g、0.35W/g、0.3W/g、0.25W/g、0.2W/g、0.15W/g、又は0.1W/gである。
【0211】
実施形態においては、その本発明におけるデバイスが、化学反応容器と加熱手段との間に置かれそして化学反応容器を取り巻く金属スリーブを含むが、その金属が、好ましくは銅であり、ここで、その金属スリーブの質量が、10gから最高550gまでであり、ここで、その抵抗導体の最大出力と、前記金属スリーブの質量との間の比率が、0.5W/g、0.45W/g、0.4W/g、0.35W/g、0.3W/g、0.25W/g、0.2W/g、0.15W/g、又は0.1W/gである。
【0212】
実施形態においては、その本発明におけるデバイスが、カバーをさらに含んでいる。そのカバーは、好都合なことには、そのデバイスを一体で保つことができる。そのカバーには、たとえば、その加熱手段に対して電力を供給するための、1個又は複数の孔が含まれていてよく、それがその加熱手段の電気的接続に、裂け目の危険性を低減させ、より高い頑健性を与えることができる。
【0213】
実施形態においては、その加熱手段には、前記加熱手段を前記本発明におけるデバイスのさらなる部分に付着させるため、好ましくは前記加熱手段を前記金属スリーブ又は前記加熱手段を取り囲むカバーに付着させるための接着層が含まれる。このことは、より容易な、そのデバイスの取り付け、及び/又は改良された、そのデバイスの構造的完全性、及び/又は改良された、加熱手段から金属スリーブへの熱の伝播のための熱伝導率といった利点を有している。
【0214】
実施形態においては、本発明におけるデバイスには、制御ユニットが含まれ、ここで、前記制御ユニットが、前記加熱手段に供給される電力を制御することによって、前記混合物の温度に関連する、前記予め決められた温度要件を、30℃から最高250℃まで、30℃から最高250℃まで、30℃から最高240℃まで、30℃から最高230℃まで、30℃から最高220℃まで、30℃から最高210℃まで、30℃から最高200℃まで、30℃から最高190℃まで、30℃から最高180℃まで、30℃から最高170℃まで、30℃から最高160℃まで、30℃から最高150℃まで、30℃から最高140℃まで、30℃から最高130℃まで、30℃から最高120℃まで、30℃から最高110℃まで、30℃から最高100℃まで、30℃から最高90℃まで、30℃から最高80℃まで、30℃から最高70℃まで、30℃から最高60℃まで、30℃から最高50℃までの範囲に含まれる、予め決められたサブレンジにあるように維持するように構成されている。制御ユニットは、電源から加熱手段への電気エネルギーの電流を制御するという特長を有している。実施形態においては、その制御ユニットにはリレーが含まれていて、熱の供給を制御する単純且つ信頼のおける手段を与えている。実施形態においては、その制御ユニットが、好ましくは、絶縁されたリード線、好ましくはPTFEで絶縁されたリード線を介して加熱手段に接続された、プログラム可能なロジカルコントローラーからなっている。実施形態においては、そのデバイスにはさらに、温度センサーが含まれており、前記制御が、前記温度センサーによる測定に基づいている。このことにより、化学反応容器に与えられる熱の制御が向上するという利点が得られる。このことは、たとえば、行き過ぎ量を予防したり、及び/又は迅速且つ短い平衡時間の後に安定な温度に到達したりすることにより、予め決められた温度要件に、より正確に、及び/又はより迅速に適合することに関連させることができる。実施形態においては、1種又は複数のセンサー要素により構成されていてよい温度センサーを、加熱手段の一部に位置させるか、並びに/又は加熱手段と金属スリーブ(存在すれば)の間、及び/若しくは加熱手段と化学反応容器との間、及び/若しくは化学反応容器のさらなる位置(たとえば、入口又は出口の側の位置)に置く。
【0215】
実施形態においては、前記予め決められた温度要件が、プログラム可能なロジカルコントローラー(PLC)である制御ユニットの手段により満たされる。好ましくは、温度は、PLCの熱電対ボードを含む温度センサーの手段により測定される。その制御ユニットが、PID制御に従って温度が制御されるように構成されているのが好ましい。このことは、温度の行き過ぎを避けるように構成された、特定のパラメーターに関連する。
【0216】
実施形態においては、本発明におけるデバイスが筒状のスリーブであり、そして前記開口部が、前記デバイスによって囲まれた内腔である。
【0217】
実施形態においては、本発明におけるシステムに含まれる、その化学反応容器には、出口(32)がさらに含まれる。実施形態においては、その化学反応容器が、SPEカートリッジである。
【0218】
実施形態においては、本発明におけるシステムの中に組み込まれた化学反応容器は、以下の高さを有している:5mmから最高500mmまで、又は5mmから最高450mmまで、又は5mmから最高400mmまで、又は5mmから最高350mmまで、又は5mmから最高300mmまで、又は5mmから最高250mmまで、又は5mmから最高200mmまで、又は5mmから最高150mmまで、又は5mmから最高100mmまで。
【0219】
実施形態においては、本発明におけるシステムの中に組み込まれた化学反応容器は、以下の直径を有している:1mmから最高200mmまで、又は1mmから最高190mmまで、又は1mmから最高180mmまで、又は1mmから最高170mmまで、又は1mmから最高160mmまで、又は1mmから最高150mmまで、又は1mmから最高140mmまで、又は1mmから最高130mmまで、又は1mmから最高120mmまで、又は1mmから最高110mmまで、又は1mmから最高100mmまで、又は1mmから最高90mmまで、又は1mmから最高80mmまで、又は1mmから最高70mmまで、又は1mmから最高60mmまで、又は1mmから最高50mmまで。
【0220】
実施形態においては、本発明におけるシステムの中に組み込まれた化学反応容器は、11mmから最高12mmまでの直径、及び10.5mmから最高11.5mmまでの高さを有している。好ましくは、前記直径が11.5mmであり、そして前記高さが11mmである。
【0221】
実施形態においては、本発明におけるシステムの中に組み込まれた化学反応容器は、11mmから最高12mmまでの直径、及び19.5mmから最高20.5mmまでの高さを有している。好ましくは、前記直径が11.5mmであり、そして前記高さが20mmである。
【0222】
実施形態においては、本発明におけるシステムの中に組み込まれた化学反応容器で囲まれている容積が、100μm~1mL、好ましくは200μLから最高800μLまで、より好ましくは300μLから最高700μLまでである。
【0223】
実施形態においては、本発明におけるシステムの中に組み込まれた化学反応容器のハウジングが、金属及び/又は金属合金及び/又はガラス及び/又はガラス繊維及び/又は有機ポリマーで構成されている。実施形態においては、前記ハウジングが、1種又は複数の有機ポリマーからなっている。
【0224】
実施形態においては、本発明におけるシステムの化学反応容器の中に含まれる前記固相が、シリカであり、好ましくは、前記固相が、Sep-Pak tC18、Step-Pak C18、Oasis HLB、Oasis MCX、Oasis MAX、及びSephadex LH-20の1種又は複数を含み、好ましくは前記固相がSep-Pak tC18である。
【0225】
実施形態においては、本発明におけるシステムの化学反応容器の中に含まれる前記固相の質量が、1mgから最高1gまでである。
【0226】
定義
本明細書において提示されるそれぞれの実施形態は、特に断らない限り、互いに組み合わせてもよい。本明細書で引用されるすべての特許及び文献資料は、参照することによりそれらのすべてを本明細書に取り入れたものとする。
【0227】
本明細書において、及びその特許請求項において、動詞の「含む(comprise)」及びその活用形は、その非限定的な感覚で使用され、その語に続く項目が含まれているが、具体的に言及されていない項目は排除されるということを意味している。それに加えて、動詞の「からなる(consist)」は、「から実質的になる(consist essentially of)」という言い方に置き換えてもよく、本明細書において定義される方法が、具体的には言及されたものを越えて、追加のステップ又は成分を含んでいてもよく、前記追加の成分が、本発明のユニークな特性を変化させることはないということを意味している。それに加えて、不定冠詞の「1つの(a)」又は「1つの(an)」を用いた要素の言及では、その文脈が明白に、1つ、そしてただ1つの要素が存在していると主張している場合以外では、2つ以上の要素が存在している可能性を排除するものではない。したがって、不定冠詞の「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、通常、「少なくとも1つ」を意味している。
【0228】
本発明の文脈においては、評価されるパラメーターの増大又は減少は、そのパラメーターに相当する値の、少なくとも5%の変化を意味している。より好ましくは、数値における増大又は減少は、少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、又は100%の変化を意味している。この後者の場合においては、そのパラメーターに関連して、検出可能な数値がもはや存在しないという場合とすることができる。
【0229】
「少なくともX、Y、又はZ」及び「X%、Y%、Z%未満」のように一連の数値が与えられた場合には、そのような記述は、それぞれ、「少なくともX、又は少なくともY、又は少なくともZ」、及び「X%未満、又はY%未満、又はZ%未満」と解釈するべきである。
【0230】
本明細書に記述されているような物質を医薬品として使用するということは、前記物質を、医薬品の生産において使用するということとも解釈することができる。同様にして、ある物質を治療のため又は医薬品として使用するのなら、治療のための医薬品の生産のためにそれを使用することができる。
【0231】
数値に関連して「約(about)」又は「約(approximately)」という用語(たとえば、約10)は、好ましくは、その数値が、与えられた数値(この場合10)プラスマイナス0.1%の間の値であってよいということを意味している。
【0232】
整数に関連して「の間(between)」という表現は、記述された境界値も含めた範囲を指している。たとえば、nが、1から3までの間の数値であるならば、nは、1、2又は3であってよい。別の言い方をすれば、「XとYの間(between X and Y)」は、「Xから最高Yまで」と同義である。
【0233】
本発明の文脈においては、「構造Xにより表される(represented by structure X)」、「構造Xの(of structure X)」、及び「構造Xを用いて(with structure X)」は、相互に置き換え可能に使用される。
【0234】
「親和性(affinity)」という用語は、本明細書で使用するとき、ポリペプチド、特には、免疫グロブリンたとえば、抗体、又は免疫グロブリン断片たとえばVHHが、抗原と結合して、抗原とポリペプチドとの平衡を、それらの結合により形成される複合体の存在の方向へシフトさせる程度を指している。したがって、たとえば、抗原と抗体(たとえば、抗体の断片)が、相対的に等しい濃度で結合された場合、高い親和性の抗体(たとえば、抗体の断片)は、利用可能な抗原と結合して、その平衡を、そのようにして得られる複合体の濃度が高い方へとシフトさせるであろう。タンパク結合ドメインと抗原ターゲットとの間の親和性を記述するのに、解離定数(KD)が一般的に使用される。典型的には、その解離定数は、10-5M未満である。いくつかの実施形態においては、本発明における生物学的残基を付着させるための方法において使用される抗原と生物学的残基との間の解離定数が、10-6M未満、より好ましくは、10-7M未満、最も好ましくは10-8M未満、たとえば10-9M未満である。
【0235】
「特異的に結合する(specifically bind)」及び「特異的結合(specific binding)」という用語は、本明細書で使用するとき、一般的に、本発明における生物学的残基を付着させるための方法における生物学的残基として使用し得る、ポリペプチド、特には免疫グロブリンたとえば抗体、又は免疫グロブリンの断片たとえばVHH又はそれらの断片が、異なった抗原の均質な混合物の中に存在している、特定の抗原に対して、優先的に結合する性能を指している。ある種の実施形態においては、特異的結合の相互作用が、試料の中の望ましい抗原と望ましくない抗原との間を、いくつかの実施形態においては、約10~100倍以上(たとえば、約1000倍又は10,000倍超)で識別するであろう。
【0236】
したがって、アミノ酸配列、特には抗体の断片、たとえば本発明における生物学的残基を付着させるための方法において使用される生物学的残基として本明細書において開示されたようなVHH又はそれらの断片は、そのアミノ酸配列が、親和性を有するか、特異性を有するか、及び/又はそのターゲット(又は、それらの断片の少なくとも一部)を特異的に指向する場合、特定のターゲットに「特異的に結合する」と言われる。
【0237】
アミノ酸配列、特には、本発明における生物学的残基を付着させるための方法において生物学的残基として使用されることが可能な、抗体の断片、たとえばVHH又はそれらの断片の「特異性(specificity)」は、親和性及び/又は結合活性(avidity)に基づいて、求めることができる。本発明における生物学的残基を付着させるための方法において使用される生物学的残基の中に含まれる、アミノ酸配列の「親和性」は、アミノ酸配列の解離のための平衡定数により表されるが、それらは、本発明における生物学的残基を付着させるための方法において使用される生物学的残基であり得るし、及びそれが結合している、関心対象の標的タンパク質であってよい。KD値が低いほど、本発明における生物学的残基を付着させるための方法において使用される生物学的残基、及びそれが結合している、関心対象の標的タンパク質に含まれている、アミノ酸配列の間の結合強度が強くなる。別な方法として、親和性は、親和性定数(KA)によって表すことも可能であるが、これは、1/KDに相当する。本発明における生物学的残基を付着させるための方法において使用される生物学的残基の中に含まれている可能性がある、アミノ酸配列の結合親和性は、関心対象の特異的標的タンパク質に応じて、当業熟練者公知の方式で求めることができる。本発明における生物学的残基を付着させるための方法において使用される生物学的残基の中に含まれている可能性がある、アミノ酸配列の「結合活性」は、前記アミノ酸配列と関心対象の関連の標的タンパク質との間の結合強度の尺度である。結合活性は、関心対象の標的タンパク質上の結合部位とアミノ酸配列上の結合部位との間の親和性、並びにそのアミノ酸配列の上に存在している関連の結合部位の数の両方に関連する。いくつかの実施形態においては、本発明における生物学的残基を付着させるための方法において使用される生物学的残基の中に含まれるアミノ酸配列が、約1マイクロモル(1μM)未満、好ましくは約1ナノモル(1nM)未満の解離定数(KD)を有する関心対象の標的タンパク質と結合するであろう[すなわち、会合定数(KA)が、約1,000,000/モル(106M-1、1E6/M)以上、好ましくは約1,000,000,000/モル(109M-1、1E9/M)以上]。約1ミリモルよりも高いKD値は、一般的に、非結合又は非特異的結合を示唆していると考えられる。当業界では一般的に公知なことであるが、KDは、複合体の解離速度定数[k0ff(単位、秒-1又はs-1)で表される]の、その会合の速度定数[k0n(単位、モル-1秒-1又はM-1s-1)で表される]に対する比率として表すこともできる。いくつかの実施形態においては、本発明における生物学的残基を付着させるための方法において使用される生物学的残基の中に含まれる、アミノ酸配列が、0.1~0.0001s-1の間の範囲のkoff、及び/又は1,000~1,000,000M-1s-1の間の範囲のk0nを有する関心対象の標的タンパク質と結合するであろう。結合親和性、k0ff、及びk0nの比率は、当業者には公知の手段又は方法、たとえば、ELISA法、等温滴定熱量測定法、表面プラズモン共鳴法、蛍光活性化セルソート分析法などによって求めることができる。
【0238】
本発明における生物学的残基を付着させるための方法において生物学的残基として使用されることが可能な、アミノ酸配列、特に抗体の断片、たとえばVHH又はそれらの断片に関しては、本発明における生物学的残基を付着させるための方法において使用される生物学的残基の中に含まれていてもよい、アミノ酸配列の上に存在する「結合領域(binding region)」、「結合部位(binding site)」又は「相互作用部位(interaction site)」という用語は、本明細書においては、目標分子に対する結合を受け持つ、そのアミノ酸配列の中に存在するアミノ酸残基の特定のサイト、部分、ドメイン、又はストレッチという意味合いを有しているべきである。いくつかの実施形態においては、そのような結合領域は、実質的に、目標分子と接触状態にあるアミノ酸配列からの特異的アミノ酸残基からなっている。
【0239】
本発明における生物学的残基を付着させるための方法において使用される生物学的残基であり得る、アミノ酸配列、特に抗体の断片、たとえばVHH又はそれらの断片の2つ以上の結合部位の全部が、関心対象のターゲットのアミノ酸残基の、同一のサイト、決定基、部分、ドメイン、又はストレッチを指向したり、又は特異的に結合したりする場合においては、そのアミノ酸配列は、「二価」(アミノ酸配列の上の2つの結合部位の場合)又は多価(アミノ酸配列の上の3つ以上の結合部位の場合)、たとえば三価と言われる。
【0240】
本明細書で使用するとき、抗体の断片、たとえばVHH又はそれらの断片に関連して、「一価の」という用語は、単量体的形態にある抗体の断片を表している。一価の抗体の断片には、ただ1つだけの結合部位が含まれる。この文脈においては、抗体の断片、たとえばVHH又はそれらの断片の結合部位には、関心対象のターゲットのアミノ酸残基の特定のサイト、決定基、部分、ドメイン、又はストレッチを指向するか、又は特異的に結合する抗体の断片の、1つ又は複数の「相補性決定領域」すなわち「CDR」が包含される。
【0241】
本明細書で使用するとき、「タグ付加されていない(untagged)」という用語は、抗体の断片、たとえばVHH又はそれらの断片に関連した場合、外来性のポリペプチド配列を含まない抗体の断片を意味している。外来性のポリペプチド配列の例としては、以下のものが挙げられる:カルボキシ-末端ポリペプチドタグ、たとえば、His-タグ、システイン含有タグ(たとえば、GGC-タグ)、及び/又はMyc-タグ。
【0242】
「二重特異性(bi-specific)」という用語は、本発明における生物学的残基を付着させるための方法において使用される生物学的残基であり得る、アミノ酸配列、特に抗体の断片、たとえばVHHに関連する場合、次のいずれかを意味している:a)アミノ酸配列の2つ以上の結合部位が、同一の関心対象のターゲットを指向するか又はそれと特異的に結合するが、そのターゲットのアミノ酸残基の同一のサイト、決定基、部分、ドメイン、又はストレッチには結合しない(すなわち、異なるものと結合する)[そのアミノ酸配列は、「二重特異性」(アミノ酸配列の上の2つの結合部位の場合)又は多重特異性(アミノ酸配列の上の3つ以上の結合部位の場合)と呼ばれる];又はb)アミノ酸配列の2つ以上の結合部位が、異なった関心対象の目標分子を指向するか又はそれと特異的に結合する。「多重特異性」という用語は、そのアミノ酸配列の上に3つ以上の結合部位が存在する場合に使用される。
【0243】
いくつかの実施形態においては、本発明における生物学的残基を付着させるための方法において使用される生物学的残基であり得る、「二重特異性」アミノ酸配列若しくは抗体の断片、たとえば「二重特異性」VHH、又は「多重特異性」アミノ酸配列若しくは抗体の断片、たとえば「多重特異性」VHHは、それぞれ2つ又は少なくとも2つの結合部位を含む、本発明における生物学的残基を付着させるための方法において使用される生物学的残基であり得る、アミノ酸配列、特に抗体の断片、たとえばVHHを意味しているべきであるが、ここで、それら2つ以上の結合部位が、異なった結合特異性を有している。いくつかの実施形態においては、本発明における生物学的残基を付着させるための方法において使用される生物学的残基であり得る、アミノ酸配列、特に抗体の断片、たとえばVHHが、それぞれ2つ又は3つ以上の異なった結合領域が、同一のモノマー性アミノ酸配列の中に存在しているならば、「二重特異性」又は「多重特異性」と考えられる。
【0244】
本発明における生物学的残基を付着させるための方法において使用される生物学的残基であり得る、アミノ酸配列、特に抗体の断片、たとえばVHH又はそれらの断片の「半減期」は、一般的に、アミノ酸配列のインビボ血清濃度が、50%に低滅されるのに要する時間と定義することができる。アミノ酸配列のインビボ半減期は、当業者には公知の各種の方法、たとえば薬物動態学的な分析によって求めることができる。当業熟練者に明らかなように、半減期はtl/2-アルファ、tl/2-ベータ、及び曲線下面積(AUC)のようなパラメーターを使用して表すことができる。インビボにおける半減期の増大は、一般的に、パラメーターのtl/2-アルファ、tl/2-ベータ、及び曲線下面積(AUC)の、1つ又は複数、好ましくは3つ全部における増大を特長としている。
【0245】
「寿命の延長(lifetime extended)」という用語は、本発明における生物学的残基を付着させるための方法において使用される生物学的残基であり得る、抗体の断片、たとえばVHH又はそれらの断片に関連した場合、その抗体の断片が、変成されて、その抗体の断片の半減期が延長されたということを意味するのに使用される。抗体及び抗体の断片の半減期を延長させるための戦略は、当業界では周知であり、たとえば以下のような、半減期を延長する1種又は複数の基又は部分に(化学的又はその他の方法で)結合させることが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:ポリエチレングリコール(PEG)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、抗体Fc断片、又は、血清タンパク質たとえば血清アルブミンを目標とする、抗原結合性抗体の断片。
【0246】
所定の数値を中心にして前後に所定の幅を有する範囲は、前記所定値マイナス前記幅の半分から最高は前記所定値プラス前記所定幅の半分までの閉区間である。たとえば、温度が、35℃を中心に前後10℃の範囲で選択されるのなら、前記温度が、35℃(35℃-10℃/2)から、最高40℃(35℃+10℃/2)までを意味している。
【図面の簡単な説明】
【0247】
【
図1】[
131I-SGMIBの合成の概要である。
【
図2】tC18 Sep-Pakカートリッジの脱保護手順の模式図である。
【
図3】加熱温度の関数としての、完全に脱保護された反応生成物の収率の変化を示す図である(ここで前記加熱は20分間である)。
【
図4】加熱温度の関数としての、完全に脱保護された反応生成物の収率の変化を示す図である(ここで前記加熱は5分間である)。
【
図5】Boc
2-保護された[
*I]I-SGMIBの加熱脱保護を自動化するために使用されるカセットの例である。
【
図6】本発明におけるデバイス及びシステムの例示的実施形態の各種の図である。
図1aは、第一の破断図を示す。
図1bは、斜視図を示す。
図1cは、第二の破断図を示す。
【
図7】本発明におけるシステムに組み込まれた加熱要素の例示的実施形態である。
図2aは、巻線加熱要素を含む加熱パッドの一例を示す。
図2bは、エッチドフォイル加熱要素を含む加熱パッドの一例を示す。
【
図8】本発明におけるデバイス(SolidWorks)の例示的実施形態に含まれる加熱手段の電力の模擬効果(simulated effect)を示すグラフである。
図3aは、前記デバイスの熱分布を示す。
図3bは、前記加熱手段の加電時間の関数としての、前記デバイスの温度を示す。
【
図9】本発明におけるシステム(SolidWorks)の例示的実施形態に含まれる加熱手段の電力の模擬効果を示すグラフである。
図4aは、前記システムの熱分布を示す。
図4bは、前記加熱手段の加電時間の関数としての、前記システムの温度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0248】
参考文献
[1]MOSDZIANOWSKI,C.,et al.Epimerization study on[18F]FDG produced by an alkaline hydrolysis on solid support under stringent conditons.Applied radiation and isotopes,2002,56.6:871-875.
[2]米国特許第8476063B2号明細書
[3]米国特許出願公開第20020183660A1号明細書
[4]米国特許第9408257B2号明細書
[5]KR101320762B1号明細書
【実施例】
【0249】
以下の実施例は、説明のためだけに提供するものであって、いかなる点においても、本発明の範囲を限定するものではない。
【0250】
実施例1:手動反応
手動プロセスの説明
本明細書において記述された一連の実験は、脱保護ステップの際に加熱されたカートリッジを使用する、SGMIBリンカーの「コールド」合成で得られた予備的な結果を再現することが目的であった(=ORAによって実施されたコールド実験)。この第一の概念実証に従って、加熱されたカートリッジを使用する一連の手動「ホット」合成を実施したが(=Camel-IDSによって実施された放射性実験)、これについては、以下で詳しく説明する。
【0251】
以下で詳述する実施例では、Boc2-N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[(
*)I]ヨードベンゾエート([
*I]SGMIB-Boc
2)、目標化合物を放射能標識化するために使用される放射能ハロゲン化剤の脱保護についての新規な方法の実施を記述する。[
*I]SGMIBは、
図1に記載の合成手順によって得られる。tC18 Sep-Pak カートリッジの脱保護手順の詳しい説明が、
図2に示されている。
【0252】
提示された一連の実験を用いて、加熱されたカートリッジを使用する、本発明による方法を介しての脱保護の能力を、反応温度を変えて評価し、反応時間及び使用した酸のタイプ(及びその濃度)の関数として評価するであろう。
【0253】
プロセス測定において、脱保護の性能及び放射性化合物の品質を、グラジエントRP-HPLC分析により評価する。完全自動化手順の評価でも、同一のクロマトグラフィー条件を使用する。
【0254】
原料及び方法
すべての反応剤(N-クロロスクシンイミド(NCS)、スズ-前駆物質(SGMTB-Boc2)、ヨウ化ナトリウム(Na127I)、85%リン酸(H3PO4)、酢酸(HOAc))、及び溶媒類(アセトニトリル(ACN)、エタノール(EtOH))は、Merk-Sigmaから商業的に入手し、さらなる精製をすることなく使用した。脱保護のための、Sep-Pak C18 Plus Short/Lightカートリッジは、Watersから商業的に入手した。
【0255】
Na[131I]Iは、800μCi/μL(29.6MBq/μL)の体積放射能強度を有する0.05MのNaOH溶液の形で、GE Healthcareから商業的に入手した。UV/Radio-HPLC分析は、C-18カラム(X-Select、CSH、C18、3.5μ、100×4.6mm)を備えた、Shimadzu LC-20AT液体クロマトグラフィーシステム上で、1.50mL/分の流量設定、次のグラジエントを用いて、実施した:t=0:90%A、10%B;t=15分:100%B(ここで、A=H2O+0.05%TFA、B=ACN+0.05%TFA)。
【0256】
一般的な実験プロトコル
a)Na131の調製
10mLバイアルに対して:
1.20μLのH2O(WFI)を添加。
2.所望量のコールドヨウ素(Na127I)を添加。
3.5μLの10倍希釈PBS溶液を添加。
4.所望の放射能強度の放射性ヨウ素(Na131I)を添加。
→45℃で蒸発させて、乾固。
b)標識化ステップ
乾固させたNa131Iに対して(10mLバイアル):
1.所望量の酸化剤溶液(NCS)を添加。
2.所望量のスズ前駆物質溶液(SGMTB-Boc2)を添加。
→標識化時間:5分/23℃
3.QC HPLC:90μLのH2O+0.05%TFA中、10μLの標識化溶液(Vinj:100μL)。
c)濃縮及び脱保護ステップ(SGMIB-Boc2)
標識化溶液に対して(10mLバイアル):
1.所望される体積のH2O(WFI)を用いて希釈。
2.所望されるtC18カートリッジの上へ、希釈した標識化溶液を担持。
3.所望される体積のH2O(WFI)を用いた、tC18カートリッジのすすぎ洗い。
4.大気を用いてtC18カートリッジを乾燥。
5.tC18カートリッジへの、所望される体積の85%リン酸(H3PO4)の添加。
6.2つの栓で密閉した後で、tC18カートリッジを水浴に添加。
→脱保護時間:20分/所望される温度。
d)最終製品の溶離ステップ(SGMIB)
tC18カートリッジ(Sep-Pak)に対して:
7.所望される体積のH2O(WFI)を用いて洗浄。
8.大気を用いて乾燥。
9.所望される体積のEtOH/H2O(70/30)+1%HOAcを用いて、最終製品(131I-SGMIB)を溶離。
10.QC HPLC:90μLのH2O+0.05%TFA中、10μLの溶離溶液(Vinj:100μL)。
【0257】
実験条件(手動)+結果の表
上で述べたように、提示された一連の実験を用いて、加熱されたカートリッジを使用する脱保護の性能を、23℃から最高75℃までの範囲で反応温度を変えて評価する。それに相当する結果(脱保護収率(Deprotection yield))は、以下で示す表に見出すことができる。関連するRP-HPLCクロマトグラムについては、パート3で記述する。
【0258】
第一の結果は、23℃~75℃の温度範囲内では、20分の脱保護時間で、脱保護反応収率の測定値が、75%より大であるということを示している。32℃~75℃の範囲内では、脱保護収率が、92%より大にまで増大するが、その一方で、40℃~75℃の間では、99%を超える測定値となる。
【0259】
5分の脱保護時間及び23℃~55℃の温度範囲では、脱保護反応収率は30%を超える想定値となる。40℃~75℃の範囲内では、収率が、73%より大にまで増大するが、その一方で、55℃~75℃の間では、99%を超える測定値となる。
【0260】
ここで重要なことは、EtOH/HOAc又はACN/HOAcのいずれかからなる反応混合物の中で放射ヨウ素化された[*I]SGMIBについて、効率的な加熱されたカートリッジ脱保護が立証されたことである。これらの実験により、観察された脱保護効率が、放射ヨウ素化反応混合物(これは、脱保護の前に実施される)の構成とは独立しているということが示唆された。
【0261】
表1には、実験の段取りが記載されており、それに対して、表2には、これら実験のそれぞれにおいて得られた結果が列記されている。
【0262】
それに加えて、RP-HPLCの結果は、脱保護反応を75℃で実施した場合、不純物の[*I]SGMIBに対する割合が、3~12%の範囲であることが観察されるということを示している。40℃での脱保護反応では、この不純物が生じない(1%未満)。
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
【0267】
【0268】
【0269】
加熱(20分)での脱保護収率の進展は、
図3に見ることができる。加熱(20分)での脱保護収率の進展は、
図4に見ることができる。
【0270】
いくつかの反応パラメーターが脱保護収率に影響することが認められる。
【0271】
パラメーター1.温度:
・ 脱保護時間:20分
23℃~75℃の温度範囲内では、脱保護反応収率の測定値:75%より大。
32℃~75℃の温度範囲内では、脱保護反応収率の測定値:92%より大。
40℃~75℃の温度範囲内では、脱保護反応収率の測定値:99%より大。
・ 脱保護時間:5分
23℃~55℃の温度範囲内では、脱保護反応収率の測定値:30%より大。
40℃~75℃の温度範囲内では、脱保護反応収率の測定値:73%より大。
55℃~75℃の温度範囲内では、脱保護反応収率の測定値:99%より大。
【0272】
副反応生成物対(131I)SGMIB:
75℃、20分での脱保護反応:副反応生成物対(131I)SGMIB 3~12%の範囲
30~40℃、20分での脱保護反応:副反応生成物対(131I)SGMIB 1%未満。
【0273】
実施例2:自動化反応
記載されている実験例は、ORA Neptisシンセサイザーを使用し、統合されたカートリッジヒーターを用いた完全自動化手順により得たものである。それらの実験は、手動合成により得られた結果を反復試験することを目的としていた。
【0274】
異なった温度及び反応時間での脱保護の有効性評価を、得られた反応生成物のHPLC分析を、手動合成の場合と同じクロマトグラフィー条件を使用して実施することにより、実施した。
【0275】
以下で詳述する実施例では、Boc2-N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[(*)I]ヨードベンゾエート([*I]I-SGMIB-Boc2)、目標化合物を放射能標識化するために使用される放射能ハロゲン化剤の脱保護についての新規な方法の実施を記述する。
【0276】
原料及び方法
手動合成を、ORA Neptisシンセサイザー上で使用が可能なようなシーケンスに移し替えた。放射性医薬品のためのこの特殊なシンセサイザーでは、それぞれの実験の前に調製しておいた「カセット」と呼ばれる使い捨て器具を使用し、そして予め決めておいた複数の「ステップ」のシーケンスにより、自動化モードで、手動合成の再現を可能とする。適切なカセット及び複数のステップのシーケンスを設計することにより、再現し得る放射化学合成が可能となる。以下において詳述する実験例で使用するためのカセットのレイアウトは、
図5に見出すことができる。
【0277】
そのカセットは、単回使用の3方バルブを含むマニホールドのアンサンブルからなっており、その上に、各種の消耗品たとえば、非消耗的な、反応剤を充填したバイアル、固相抽出(SPE)若しくはアニオン交換カートリッジ、又は注射筒などが備えられている。それぞれのステップが、一連の設定点(中でも、たとえば、バルブの位置、注射筒の位置、適用される窒素の圧力及び流量、オーブンの温度、又は真空ポンプの始動)からなっており、それらが、予め定められた時間の間で適用される。
【0278】
以下のパラグラフにおいて、完全「テンプレート」シーケンスについて記述する。実験例の間で変動する特異的パラメーターは、表3においてさらに詳しく述べる。各種の実験例の結果を、表5に示す。
【0279】
異なったステップを記述する完全自動化シーケンス:
A.放射合成の前に、放射性同位元素が含まれる溶液を、反応器の中に入れる(ポジション13)。
B.その溶液を、窒素気流を使用し、反応器を加熱することにより乾燥させる。
C.次いで、その反応器の中に、前駆物質及び酸化剤を移す(ポジション15)。
D.その反応器の中で、放射能標識化反応を起こさせる。
E.その反応混合物を、水を用い(ポジション12)、10mL注射筒を使用して(ポジション7)希釈し、次いで、そのようにして得られた希釈された溶液を、tC18カートリッジに担持させる(ポジション8)。tC18カートリッジの担持から得られた溶離液を、廃棄物に送る。
F.その反応器及びtC18カートリッジを、水を用い(ポジション12)、10mL注射筒を使用して(ポジション7)すすぎ洗いする。
G.10mLの注射筒を使用して(ポジション7)、tC18カートリッジに、酸を担持させる(ポジション6)。tC18カートリッジが酸で飽和されたら、ポジション9にあるバルブを閉止して、酸が、脱保護の間、そのtC18カートリッジの上に留まっているようにする。
H.そのカートリッジを、予め決められている時間加熱して、tC18カートリッジ上での脱保護を可能とする。
I.水を用い(ポジション12)、10mLの注射筒を使用して(ポジション7)、そのtC18カートリッジをすすぎ洗いし、それにより、残存している酸及び溶離液を、廃棄物に強制的に送れるようにする。
J.10mLの注射筒を使用して(ポジション7)、tC18カートリッジに、捕集のための溶離液を担持させる(ポジション10)。その溶離液を、試料採取バイアルの中に捕集する(ポジション5)。
【0280】
【0281】
【0282】
上述の完全自動化シーケンスによって、次いで、EtOH/水(70/30)プラス1%AcOHで構成された、純粋な[
*I]I-SGMIBを、抱合緩衝剤の中に適切な量の目標化合物を含む抱合バイアル(conjugation vial)の中に溶離させることが可能となる。抱合の後で、[
*I]I-SGMIB-標識された目標化合物を、カートリッジを使用して精製し、そして最終用途ですぐに使用可能な、配合物緩衝液の中に溶離させる。このプロセスのその部分は、最近では、合成シーケンスの中に移行されている。Boc
2-保護された[
*I]I-SGMIBの加熱脱保護を自動化するのに使用されるカセットの一例を、
図5に見ることができる。
【0283】
クロマトグラフィー条件
UV/Radio-HPLC分析は、C-18カラム(X-Select、CSH、C18、3.5μ、100×4.6mm)を備えた、Shimadzu LC-20AT液体クロマトグラフィーシステム上で、1.50mL/分の流量設定、次のグラジエントを用いて、実施した:t=0:90%A、10%B;t=15分:100%B(ここで、A=H2O+0.05%TFA、B=ACN+0.05%TFA)。
【0284】
HPLCの特徴の詳細:
・ HPLC:Shimadzu LC-20AT-Prominence 液体クロマトグラフィー
→グラジエント及び溶媒
・ UV検出器:Shimadzu SPD-20A-Prominence UV/VIS検出器
→二重検出:220nm/254nm
・ 放射線検出器:Elysia RAYTEST Sockel 3”GABI Nova 1.0
→RA-検出:5μLループ
・ HPLCカラム:X-Select、CSH、C18、3.5μ、100×4.6mm
・ Rheodyneインゼクター:100μL PEEK-ループ
・ ソフトウェア:GINA Xステーション、Gabi Nova 31038。
【0285】
それぞれの試料を、初期HPLC運転条件への、同一の溶媒混合物の中に注入した。
H2O/ACN+0.05%TFA(90/10)
反応剤/コールド資料(references)反応生成物:UVクロマトグラム(220~254nm)。
【0286】
【0287】
結果
実験結果を表5に示す。
【0288】
【0289】
これらの第一の結果は、75℃及び60℃いずれの反応の後でも、そしてわずか20分のインキュベーションの後で、99%を超える脱保護反応収率が得られたということを示している。
【0290】
この新規な発明を用いると、EtOH/HOAc又はACN/HOAcのいずれかからなる反応混合物の中で放射ヨウ素化された[*I]SGMIBについて、効率的な加熱されたカートリッジ脱保護が立証された。これらの実験により、観察された脱保護効率が、放射ヨウ素化反応混合物(これは、脱保護の前に実施される)の構成とは独立しているということが示唆された。それに加えて、RP-HPLCの結果は、脱保護反応を75℃で実施した場合、不純物の[*I]SGMIBに対する割合が、3~12%の範囲であることが観察されるということを示している。40℃での脱保護反応では、この不純物が生じない(1%未満)。
【0291】
これらの知見は、例を見ないものであり、脱保護のための従来からの方法(この場合、EtOH/HOAc中で放射ヨウ素化させた後、わずか約30%に相当する脱保護された[*I]I-SGMIBである)とは対照的である。それに加えて、後者の場合においては、不純物のレベルがはるかに高く、本発明による方法の場合の1%未満とは対照的に、約25%の範囲である。
【0292】
実施例3:本発明による例示的デバイス
図6に、本発明におけるデバイス1及びシステム10の例示的実施形態の各種の図を示している。
図6aは、第一の破断図である。
図6bは、斜視図である。
図6cは、第二の破断図である。
【0293】
デバイス1は、混合物(図示せず)を含む化学反応容器3を収容し、加熱できるようになっている。
図6に示されているように、システム10には、デバイス1及び化学反応容器3が含まれ、それらは相互に、デバイス1が化学反応容器3を取り囲むように直径及び長さが合わせてあり、デバイス1の中に含まれる加熱手段5の内部で発生させた熱が、化学反応容器3に伝わることができるようになっている。この目的のために、デバイス1には、前記反応容器3を受け入れるように構成された開口部2、及び前記開口部を少なくとも部分的に取り囲む加熱手段5が含まれている。この図に示された実施形態では、その化学反応容器3がカートリッジである。実施形態においては、そのカートリッジが、SPEカートリッジである。化学反応容器3には、反応器チャンバー30、入口31、ハウジング33、及び出口32が含まれている。
【0294】
加熱手段5(これは、たとえば、実施例2及び
図7に従った加熱手段の実施形態であってもよい)には、断熱材用ポリマー9、及び前記断熱材用ポリマー9の中に包埋された抵抗導体8が含まれている。
【0295】
デバイス1は、混合物を含む化学反応容器3が前記開口部2の中に存在している場合に、前記加熱手段5に加電することによって、予め決められた温度要件に従って、前記化学反応容器の中に存在している混合物を加熱するように構成されている。
【0296】
デバイス1には、化学反応容器3と加熱手段5との間に置かれ、化学反応容器を取り囲むようにした、金属スリーブ4が含まれる。実施形態においては、その金属が銅である。
【0297】
銅の金属スリーブの使用が、
図8及び9に示されていて、それらは、加電加熱手段(power the heating means)の模擬効果を示している。
【0298】
その加熱手段5には、前記加熱手段5を金属スリーブ4に付着させるための接着層が含まれている。このことは、より容易な、そのデバイスの取り付け、及び/又は改良された、そのデバイスの構造的完全性、及び/又は改良された、加熱手段から金属スリーブへの熱の伝播のための熱伝導率といった利点を有している。デバイス1にはさらに、カバー6も含まれている。カバー6は、デバイスをまとめるのに都合がよい。この例による実施形態においては、加熱パッド3への電力供給のための、1個又は複数の孔60が含まれている。
【0299】
実施形態においては、デバイス1には、制御ユニット及び温度センサーが含まれているが、ここで、前記制御ユニットは、前記温度センサーによる測定に基づいて前記加熱手段5に供給する電力を制御することによって、30℃~150℃、好ましくは30℃~80℃、より好ましくは30℃~50℃の範囲に含まれる予め決められたサブレンジになるような、前記混合物の温度に関連して前記予め決められた温度要件を維持するように構成されている。好ましい実施形態においては、前記予め決められた温度要件は、迅速且つ短い平衡時間の後に、好ましくはいかなる行き過ぎもなく、安定した温度に達することに関する。
【0300】
図6に示したような実施形態においては、デバイス1は、筒状のスリーブであり、そして開口部2は、前記デバイスにより取り囲まれ、そして画定される内腔である。実施形態においては、その加熱手段が、10mmから最高200mmまで、好ましくは20mmから最高100mmまでの最大寸法を有している。それにより、その抵抗導体の、長さ及び/又は抵抗値及び/又は最大出力が、そのデバイスで使用するために選択された化学反応容器の寸法及び/又は要件、及び/又は予め決められた温度要件の関数として、適応させられる。
【0301】
化学反応容器3にはさらに、その化学反応においてファシリテーターとして作用するのに適した固相(図示せず)も含まれる。実施形態においては、その化学反応容器3には、金属、及び/又は金属合金及び/又はガラス及び/又はガラス繊維及び/又は有機ポリマーが含まれる。この例における好ましい実施形態においては、その化学反応容器3が、1種又は複数の有機ポリマーからなっている。実施形態においては、その固相が、シリカ、好ましくは、Sep-Pak tC18、Step-Pak C18、Oasis HLB、Oasis MCX、Oasis MAX、及びSephadex LH-20の1種又は複数である。この例における好ましい実施形態においては、その固相が、Sep-Pak tC18である。
【0302】
実施形態においては、混合物を、前記入口31を介して導入し、加熱手段5に電力を供給することによって前記反応チャンバー30の内部で、固相により容易とされる化学反応を起こさせ、その後で、その混合物を、出口32を介して抜き出す。実施形態においては、その混合物に、放射性化合物が含まれるが、ここで前記化学反応は、固相により容易とされる放射性化合物の化学反応である。
【0303】
予め決められた温度要件は、たとえば、30℃又は40℃又は50℃又は60℃又は70℃である初期温度から始めながらも、3分の時間で化学反応容器の中を50℃の目標温度とすることを必要とすることに関し得る。その予め決められた温度要件はさらに、60℃から50℃へ移行させるための最大時間が3分で、行き過ぎが1℃未満に留まるという要件も規定する。
【0304】
この例においては、その温度要件が、24Vの電力供給を含む、プログラム可能なロジカルコントローラー(PLC)である制御ユニットの手段により、満たされる。この例においては、加熱手段の電力が低いために、コントローラーによって、熱が直接供給される。温度は、PLCの熱電対ボードを含む温度センサーの手段により測定される。その制御ユニットは、PID制御に従って温度が制御されるように構成されている。このことは、温度の行き過ぎを避けるように構成された、特定のパラメーターに関連する。
【0305】
実施例4:本発明における加熱手段例
図7に、本発明における加熱要素としての、加熱パッド5の例示的実施形態を示す。
図7aは、巻線加熱要素を含む加熱パッドの第一の実施形態を示している。
図7bは、エッチドフォイル加熱要素を含む、加熱パッドの第二の実施形態を示している。いずれの実施形態も、たとえば、加熱手段であるとして実施例1と、或いは実施例1のデバイス1の加熱手段の1つと組み合わせることができる。
【0306】
いずれの実施形態も、断熱材用ポリマー9及び抵抗導体8を含む加熱パッド5に関連する。この場合、その第一の実施形態が、巻線加熱要素を含む抵抗導体8を与えるのに対して、第二の実施形態は、エッチドフォイル抵抗導体を含む抵抗導体8を与える。本発明における第三の実施形態(図示せず)においては、その抵抗導体8に、1種又は複数の巻線加熱要素と、1種又は複数のエッチドフォイル抵抗導体との両方が含まれる。実施形態においては、その抵抗導体が、100kΩより大、好ましくは1MΩより大、好ましくは少なくとも10MΩの絶縁抵抗を有している。実施形態においては、その電力定格が、0.1Wから最高10Wまで、好ましくは0.5Wから最高4Wまで、より好ましくは約1W又は1.25W又は1.50W又は1.75W又は2Wである。
【0307】
実施形態においては、その断熱材用ポリマー9に、シリコーン及び/又はポリイミドが含まれる。
図7bの第二の実施形態の断熱材用ポリマー9が、
図7aの第一の実施形態のそれとは異なっていてもよいが、同一であってもよい。実施形態においては、その断熱材用ポリマー9に、シリコーン及びポリイミドの両方が含まれる。断熱材用ポリマー9が、シリコーン又はポリイミドからなっているのが好ましい。実施形態においては、その断熱材用ポリマーの融解温度は、150℃よりも高く、好ましくは200℃よりも高い。
【0308】
例示的実施形態においては、その加熱パッド5が、長方形の形状を有するフレキシブルシートである。そのフレキシブルシートの厚みは、0.5mmから最高1.5mmまで、いくつかの例では、0.5mmから最高1.0mmまでである。例示的実施形態においては、その厚みが0.7mmである。そのフレキシブルシートには、前記フレキシブルシートの片面をカバーする補強層が含まれる。その補強層が、ガラス及び/又はガラス繊維からなっているのが好ましい。
【0309】
例示的実施形態においては、その加熱パッドに、加熱パッドをデバイスのさらなる位置に付着させるための接着層が含まれる。実施例1のデバイスの場合では、これが、加熱手段を取り囲む金属スリーブ4又はカバー6であってよい。
【0310】
図7aに、断熱材用ポリマー9及び巻線加熱要素8を含む、加熱パッド5の実施形態を示している。そのような要素8は、たとえば、ガラス繊維コードの周りに抵抗線を巻き付け、次いで、断熱材用ポリマー9の上に予め決められたパターンで要素8を配置することにより、作成することができる。しかしながら、当業熟練者には公知のように、そのような要素を作成する別な方法も考えられる。例示的実施形態においては、そのパターンは、断熱材用ポリマー9の各部の上に展開させた1種又は複数のスパイラルに関連する。
【0311】
図7bに、断熱材用ポリマー98及びエッチドフォイル要素6を含む加熱パッド5の実施形態を示している。そのような実施形態においては、その要素を、ニッケル合金の耐食フォイルにパターンをエッチングすることにより作成するのが好ましく、そのパターンが回路である。しかしながら、当業熟練者には公知のように、そのような要素を作成する別な方法も考えられる。例示的実施形態においては、そのパターンが、多数の屈曲、たとえば10回以上の屈曲を含む、曲がり道又は螺旋に関わる。
【0312】
実施形態においては、そのパターンが、以下のようになっている:その抵抗導体の全長さの最大値が、加熱手段の最大寸法の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは約10倍を超える。例示的実施形態においては、その加熱手段が、50mmの最大寸法、たとえば、10mm×50mm又は25mm×50mm又は40mm×50mmのサイズを有する。他の例示的実施形態においては、その加熱手段が、30mmの最大寸法、たとえば、5mm×30mm又は15mm×30mm又は20mm×30mmのサイズを有する。実施形態においては、その加熱手段が、10mmから最高200mmまで、好ましくは20mmから最高100mmまでの最大寸法を有している。実施形態においては、その抵抗導体の全長さの最大値が、その加熱手段の最大寸法の、少なくとも2倍を超えて、たとえば、50mm又は100mm又は200mm又は300mm又は500mm又は800mmを超える長さである。実施形態においては、最小寸法、すなわち加熱手段の厚みは、0.1mmから最高3.0mmまで、好ましくは0.5mmから最高1mmまで、好ましくは約0.6mm又は0.7mm又は0.8mm又は0.9mmである。
【0313】
この例の第一及び第二の実施形態を含めた、例示的実施形態においては、前記パターンの凸型の外殻構造(convex hull)が、断熱材用ポリマー9の表面の少なくとも50%、より好ましくは断熱材用ポリマー9の表面の少なくとも80%をカバーする。実施形態においては、その1種又は複数のそれぞれの螺旋又は曲がり道、数で、好ましくは1つ、2つ、2つ以上、4つ、又は5つ以上が、それらそれぞれの表面の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%が、折り重なっていない、断熱材用ポリマー9のそれぞれの部分の上に展開されている。
【0314】
カバー6にある孔を介して加熱パッド5に取り付けられた導線を介して加熱パッドに電力を供給して、加熱パッドを加熱させる。加熱パッドを、実施例1のようなデバイス及び/又はシステムで使用する場合、伝導を介して、熱を化学反応容器に移行させる。加熱パッド5に電力を供給することによる化学反応容器の加熱は、制御ユニット及び温度センサーの手段により制御される。
【配列表】
【国際調査報告】