(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】流体試料を識別するためのセンサ、およびそのようなセンサに対して認定試験を適用するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/41 20060101AFI20230927BHJP
G01N 21/45 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
G01N21/41 101
G01N21/45 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516259
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(85)【翻訳文提出日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 EP2021075123
(87)【国際公開番号】W WO2022053690
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522276459
【氏名又は名称】アリバル
【氏名又は名称原語表記】ARYBALLE
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】ヤニス、カリトゥ
(72)【発明者】
【氏名】ダビド、ハービーン
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB12
2G059EE04
2G059EE09
2G059FF04
2G059KK03
2G059MM05
(57)【要約】
このセンサ(10)は、流体試料を入力するように構成されているとともに、流体試料を特徴付ける電気信号(S)から得られる対応した署名を出力するように構成されているものであって、また、少なくとも1つの反応サイト(18)を含むものであり、さらに、少なくとも1つの反応サイト(18)に対しての流体試料の相互作用によって誘起された少なくとも1つの物理的特性の変化を測定するように構成されているとともに、電気信号(S)を出力するように構成されている、少なくとも1つの変換器(20)をさらに含むものである。さらに、センサは、メトリクスが、複数の対照流体試料に関して、複数の対照流体試料に関するそれぞれ対応する署名についてのクラスタ化品質スコアを含むものである場合に、そのようなメトリクスを計算することを含む認定試験に対して、少なくとも1つの事前規定された認定基準に対してメトリクスが一致していることを確認することによって、合格したことが認証される(44)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体試料を入力するように構成されているとともに、前記流体試料を特徴付ける電気信号(S)から得られる対応した署名を出力するように構成されている、センサ(10)であって、前記センサは、
- 少なくとも1つの反応サイト(18)と、
- 前記少なくとも1つの反応サイト(18)に対しての前記流体試料の相互作用によって誘起された少なくとも1つの物理的特性の変化を測定するように構成されているとともに、前記電気信号(18)を出力するように構成されている、少なくとも1つの変換器(20)と、
を含み、
前記センサ(10)は、メトリクスを計算することを含む認定試験を、少なくとも1つの事前規定された認定基準に前記メトリクスが一致していることを確認することによって、合格したことが認証され(44)、前記メトリクスが、複数の対照流体試料に関して、前記複数の対照流体試料に関するそれぞれ対応する署名についてのクラスタ化品質スコア(CQS)を含むことを特徴とする、センサ(10)。
【請求項2】
前記クラスタ化品質スコア(CQS)は、前記複数の対照流体試料に関するそれぞれ対応する前記署名の、一部または全部のそれぞれに関して計算された、クラスタ内距離およびクラスタ外距離を組み合わせた有効性インデックスに基づいて計算される、請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項3】
前記メトリクスは、信号対雑音比(SNR)、検出限界(LOD)、反復性インデックス(RTY)、および再現性インデックス(RDY)、の1つまたは複数をさらに含む、請求項1または2に記載のセンサ(10)。
【請求項4】
前記流体試料に関する前記署名を、それぞれ対応する対照流体試料に関する対照署名からなるデータベースに対して接続された分類器へと、入力するようにさらに構成されており、これにより、前記流体試料に関する前記署名を、前記対照署名の1つに対して関連付けさせることができ、前記メトリクスは、分類性能(CM)インデックスをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のセンサ(10)。
【請求項5】
前記分類性能インデックス(CM)は、前記対照署名の混同行列に基づくものである、請求項4に記載のセンサ(10)。
【請求項6】
前記複数の対照流体試料のそれぞれは、揮発性有機化合物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のセンサ(10)。
【請求項7】
複数の反応サイト(18)を含み、前記反応サイトのそれぞれは、基板上に固定化されたペプチドなどの、または面上にコーティングされたポリマーなどの、揮発性有機化合物に対する吸着性を有した化学化合物を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のセンサ(10)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの変換器(20)は、
- プラズモン効果に基づいて屈折率変化を測定するように構成された表面プラズモン共鳴撮像システム、または、
- 屈折率変化による位相シフトを測定するように構成されたマッハツェンダー干渉計、または、
- 振動膜の共振周波数の変化を測定するように構成された、ナノ電気機械システムもしくはマイクロ電気機械システム、
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のセンサ(10)。
【請求項9】
少なくとも1つのセンサ(10)に対して認定試験を実施するための方法(200)であって、
前記少なくとも1つのセンサは、流体試料を入力するように構成されているとともに、前記流体試料を特徴付ける電気信号(S)から得られる対応した署名を出力するように構成されており、
前記センサ(10)は、
- 少なくとも1つの反応サイト(18)と、
- 前記少なくとも1つの反応サイト(18)に対しての前記流体試料の相互作用によって誘起された少なくとも1つの物理的特性の変化を測定するように構成されているとともに、前記電気信号(S)を出力するように構成されている、少なくとも1つの変換器(20)と、
を含み、
前記方法(200)は、複数の対照流体試料に関して、前記複数の対照流体試料に関するそれぞれ対応する署名についてのクラスタ化品質スコア(CQS)を含むメトリクスを計算することを含む、方法(200)。
【請求項10】
前記メトリクスを計算することは、
a)複数の対照分析物を選択すること(202)と、
b)前記複数の対照分析物の濃度が事前規定レベルを超えるように、前記複数の対照流体試料内で、前記複数の対照分析物を調整すること(204)と、
c)複数の測定サイクルにわたって、前記複数の対照流体試料に関する前記対応する署名を出力すること(206)と、
d)前記複数の対照流体試料に関する前記対応する署名に対して、クラスタ化に関する真の対照分析物ラベルを注釈付けすること(208)と、
e)各対照流体試料S
iに関して、そのクラスタ内の前記対応する署名についての、クラスタ内距離の組合せa
iを計算すること(210)と、
f)各対照流体試料S
iに関して、そのクラスタとは異なる1つまたは複数のクラスタ内の前記署名に対しての、前記対応する署名についての、クラスタ外距離の少なくとも1つの組合せb
i,jを計算すること(210)と、
g)前記対照流体試料の、一部または全部のそれぞれに関して、前記クラスタ内距離と前記クラスタ外距離とを組み合わせた有効性インデックスを計算すること(210)と、
を含む、請求項9に記載の方法(200)。
【請求項11】
前記クラスタ化品質スコア(CQS)を、前記ステップg)で計算された1つまたは複数の有効性インデックスに基づくものとする(212)、請求項10に記載の方法(200)。
【請求項12】
同じセンサに関する複数の測定実施であるとともに各実施が事前規定間隔程度の分だけ時間的に離間したものとされた複数の測定実施について、少なくとも前記ステップa)~前記ステップc)を繰り返すこと(202、204、206)をさらに含み、例えば前記ステップa)~前記ステップd)を繰り返すことをさらに含み、前記メトリクスを、
- 前記複数の測定実施にわたって計算されたクラスタ化品質スコアと、
- 前記複数の測定実施に関する前記流体試料の前記署名の強度における分散インデックスと、
- 前記複数の測定実施に関する前記流体試料のそれぞれ対応する強度によって正規化された前記署名の分散インデックスと、
の少なくとも1つに関する複合体として計算される反復性インデックス(RTY)をさらに含むものとする、請求項10または11に記載の方法(200)。
【請求項13】
複数のセンサに関して、少なくとも前記ステップa)~前記ステップc)を繰り返すこと(202、204、206)をさらに含み、例えば前記ステップa)~前記ステップd)を繰り返すことをさらに含み、前記メトリクスを、
- 前記複数のセンサにわたって計算されたクラスタ化品質スコアと、
- 前記複数のセンサに関する前記流体試料の前記署名の強度における分散インデックスと、
- 前記複数のセンサに関する前記流体試料のそれぞれ対応する強度によって正規化された前記署名の分散インデックスと、
の少なくとも1つに関する複合体として計算される再現性インデックス(RDY)をさらに含むものとする、請求項10または11に記載の方法(200)。
【請求項14】
複数の測定実施であるとともに各実施が事前規定間隔程度の分だけ時間的に離間したものとされた複数の測定実施について、少なくとも前記ステップa)~前記ステップc)を繰り返すこと(202、204、206)をさらに含み、例えば前記ステップa)~前記ステップd)を繰り返すことをさらに含み、さらに、各測定実施と複数のセンサとに関して、少なくとも前記ステップa)~前記ステップc)を繰り返すこと(202、204、206)をさらに含み、例えば前記ステップa)~前記ステップd)を繰り返すことをさらに含み、前記メトリクスを、
- 前記複数の測定実施と前記複数のセンサとにわたって計算されたクラスタ化品質スコアと、
- 前記複数の測定実施と前記複数のセンサとに関する前記流体試料の前記署名の強度における分散インデックスと、
- 前記複数の測定実施と前記複数のセンサとに関する前記流体試料のそれぞれ対応する強度によって正規化された前記署名の分散インデックスと、
の少なくとも1つに関する複合体として計算される、反復性インデックス(RTY)および再現性インデックス(RDY)をさらに含むものとする、請求項12または13に記載の方法(200)。
【請求項15】
認証されたセンサ(10)を製造するための方法(300)であって、
- 流体試料を入力するように構成されているとともに、前記流体試料を特徴付ける電気信号(S)から得られる対応した署名を出力するように構成されている、センサ(10)であり、また、少なくとも1つの反応サイト(18)を含む前記センサ(10)であり、さらに、前記少なくとも1つの反応サイトに対しての前記流体試料の相互作用によって誘起された少なくとも1つの物理的特性の変化を測定するように構成されているとともに、前記電気信号(S)を出力するように構成されている、少なくとも1つの変換器(20)をさらに含む前記センサ(10)を、提供すること(302)と、
- 認定試験を実施するための請求項9~14のいずれか一項に記載の前記方法(200)を、前記センサ(10)に対して適用すること(304)と、
- 少なくとも1つの事前規定された認定基準に対して、前記認定試験を実施すること(200)によって計算された前記メトリクスが一致していることを、確認すること(306)と、
- 前記少なくとも1つの事前規定された認定基準に対して前記メトリクスが一致している限りにおいては、前記センサ(10)を認証すること(308)と、
を含む、方法(300)。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、流体試料を入力するように構成されているとともに、流体試料を特徴付ける電気信号から得られる対応した署名を出力するように構成されている、センサに関する。本発明は、また、そのようなセンサに対して認定試験を実施するための方法に関し、さらに、認証されたセンサを製造するための方法に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、
- 少なくとも1つの反応サイトと、
- 少なくとも1つの反応サイトに対しての流体試料の相互作用によって誘起された少なくとも1つの物理的特性の変化を測定するように構成されているとともに、その電気信号を出力するように構成されている、少なくとも1つの変換器と、
を含むセンサに関する。
【0003】
上記の電気信号から得られる署名が、
- 電気信号を出力する前に電気信号に対して何らの特定の処理も行われなかった時の、電気信号そのもの、あるいは、
- 例えば、増幅、サンプリング、正規化、特徴抽出、(統計的)データ分析、または同種のもの、を含めた、変換器の出力段階で提供される信号に関する特定の処理による結果、
であり得ることに留意しなければならない。
【背景技術】
【0004】
そのようなセンサは、電子ノーズの場合には、例えば、流体試料中の揮発性有機化合物を検出して識別して特定するために、使用される。そのようなセンサは、様々な産業分野で使用することができ、
- 例えば、純粋な嗅覚性化合物を、または嗅覚性化合物どうしの混合物を、測定して同定して比較することで、研究したり設計したりするために、フレグランス産業で、
- 特に、嗅覚的な汚染に関して、または程度差は別として閉鎖的な環境の監視における品質に関して、環境保護で、
- 潜在的に危険なまたは潜在的に悪臭を有した揮発性物質によって汚染されている可能性のある製造現場の監視で、
- 無嗅覚症に罹患した人々に対して嗅覚の代替を提供するために、または揮発性生物マーカの検出するために、健康分野で、
- 例えば、食品製造および/または流通チェーン内で汚染を検出するために、食品産業で、
- あらゆる臭気製品の制御が有用であり得るあらゆる産業分野で、
などにおいて、使用することができる。
【0005】
一例は、特許出願である国際公開第2019/053366(A1)号パンフレットにより、公知である。この例は、NeOse Pro(登録商標)と称され、2018年からAryballe Technologies社によって市販されている。これは、変換器が提供する各電気信号から、N個の構成要素からなるデジタル署名を出力し得るプロセッサを含み、その署名は、検出された各臭気に固有のものである。一般に、整数Nは、反応サイトの数と比較して、それ以下の数である。様々な流体試料に関して様々な条件下で学習することにより、このセンサは、潜在的に、すべての臭気を識別することができる。
【0006】
しかしながら、臭気を検出して識別して特定することは、一般に、非常に主観的であると考えられる。結果的に、そのようなセンサを認定することは、困難であって、通常、偏りがあると考えられる。また、異なるセンサどうしを比較することも困難であり、それらセンサのいくつかは、異なる技術から形成された反応サイトおよび変換器を有している可能性がある。特に、反応サイトをなすバイオセンサは、一般に、ナノスケールで基板上に堆積またはグラフト化されており、認定方法が改良されて正確なものとされない限りは、そのような堆積またはグラフト化の品質を、正確に評価することが困難である。
【発明の概要】
【0007】
よって、上記の問題点および上記の制約の少なくともいくつかを克服し得るセンサを設計することが、望ましいことであり得る。
【0008】
したがって、本発明の一態様では、流体試料を入力するように構成されているとともに、流体試料を特徴付ける電気信号から得られる対応した署名を出力するように構成されている、センサが提案され、このセンサは、
- 少なくとも1つの反応サイトと、
- 少なくとも1つの反応サイトに対しての流体試料の相互作用によって誘起された少なくとも1つの物理的特性の変化を測定するように構成されているとともに、電気信号を出力するように構成されている、少なくとも1つの変換器と、
を含み、
センサは、メトリクスを計算することを含む認定試験を、少なくとも1つの事前規定された認定基準に対してメトリクスが一致していることを確認することによって、合格したことが認証され、ここで、メトリクスは、複数の対照流体試料に関して、複数の対照流体試料に関するそれぞれ対応する署名についてのクラスタ化品質スコアを含むものである。
【0009】
よって、複数の対照流体試料から得られた複数の署名に関するクラスタ化品質スコアに基づくメトリクスに基づいて、センサを、認定試験に合格したと認定することができ、これにより、センサを、他のものと公平に技術的に比較することができる、または特定の客観的な品質レベルを保証することができる。
【0010】
任意選択的に、クラスタ化品質スコアは、複数の対照流体試料に関するそれぞれ対応する署名の、一部または全部のそれぞれに関して計算された、クラスタ内距離およびクラスタ外距離を組み合わせた有効性インデックスに基づいて計算される。
【0011】
任意選択的に、また、メトリクスは、信号対雑音比、検出限界、反復性インデックス、および再現性インデックス、の1つまたは複数をさらに含む。
【0012】
任意選択的に、また、本発明によるセンサは、流体試料に関する署名を、それぞれ対応する対照流体試料に関する対照署名からなるデータベースに対して接続された分類器へと、入力するようにさらに構成されてもよく、これにより、流体試料に関する署名を、対照署名の1つに対して関連付けさせることができ、メトリクスは、分類性能インデックスをさらに含む。
【0013】
任意選択的に、また、分類性能インデックスは、対照署名の混同行列に基づくものである。
【0014】
任意選択的に、また、複数の対照流体試料のそれぞれは、揮発性有機化合物を含む。
【0015】
任意選択的に、また、本発明によるセンサは、複数の反応サイトを含んでもよく、反応サイトのそれぞれは、基板上に固定化されたペプチドなどの、または面上にコーティングされたポリマーなどの、揮発性有機化合物に対する吸着性を有した化学化合物を含む。
【0016】
任意選択的に、また、少なくとも1つの変換器は、
- プラズモン効果に基づいて屈折率変化を測定するように構成された表面プラズモン共鳴撮像システム、または、
- 屈折率変化による位相シフトを測定するように構成されたマッハツェンダー干渉計、または、
- 振動膜の共振周波数の変化を測定するように構成された、ナノ電気機械システムもしくはマイクロ電気機械システム、
を含む。
【0017】
少なくとも1つのセンサに対して認定試験を実施するための方法であって、少なくとも1つのセンサは、流体試料を入力するように構成されているとともに、流体試料を特徴付ける電気信号から得られる対応した署名を出力するように構成されている、方法がさらに提案され、センサは、
- 少なくとも1つの反応サイトと、
- 少なくとも1つの反応サイトに対しての流体試料の相互作用によって誘起された少なくとも1つの物理的特性の変化を測定するように構成されているとともに、電気信号を出力するように構成されている、少なくとも1つの変換器と、
を含み、
方法は、複数の対照流体試料に関して、複数の対照流体試料に関するそれぞれ対応する署名についてのクラスタ化品質スコアを含むメトリクスを計算することを含む。
【0018】
任意選択的に、メトリクスを計算することは、
a)複数の対照分析物を選択することと、
b)複数の対照分析物の濃度が事前規定レベルを超えるように、複数の対照流体試料内で、複数の対照分析物を調整することと、
c)複数の測定サイクルにわたって、複数の対照流体試料に関する対応する署名を出力することと、
d)複数の対照流体試料に関する対応する署名に対して、クラスタ化に関する真の対照分析物ラベルを注釈付けすることと、
e)各対照流体試料Siに関して、そのクラスタ内の対応する署名についての、クラスタ内距離の組合せaiを計算することと、
f)各対照流体試料Siに関して、そのクラスタとは異なる1つまたは複数のクラスタ内の署名に対しての、対応する署名についての、クラスタ外距離の少なくとも1つの組合せbi,jを計算することと、
g)対照流体試料の、一部または全部のそれぞれに関して、クラスタ内距離とクラスタ外距離とを組み合わせた有効性インデックスを計算することと、
を含む。
【0019】
任意選択的に、クラスタ化品質スコアは、ステップg)で計算された1つまたは複数の有効性インデックスに基づくものとされる。
【0020】
任意選択的に、また、本発明による方法は、同じセンサに関する複数の測定実施であるとともに各実施が事前規定間隔程度の分だけ時間的に離間したものとされた複数の測定実施について、少なくともステップa)~ステップc)を繰り返すことをさらに含んでもよく、例えばステップa)~ステップd)を繰り返すことをさらに含んでもよく、メトリクスを、
- 複数の測定実施にわたって計算されたクラスタ化品質スコアと、
- 複数の測定実施に関する流体試料の署名の強度における分散インデックスと、
- 複数の測定実施に関する流体試料のそれぞれ対応する強度によって正規化された署名の分散インデックスと、
の少なくとも1つに関する複合体として計算される反復性インデックスをさらに含むものとする。
【0021】
任意選択的に、また、本発明による方法は、複数のセンサに関して、少なくともステップa)~ステップc)を繰り返すことをさらに含んでもよく、例えばステップa)~ステップd)を繰り返すことをさらに含んでもよく、メトリクスを、
- 複数のセンサにわたって計算されたクラスタ化品質スコアと、
- 複数のセンサに関する流体試料の署名の強度における分散インデックスと、
- 複数のセンサに関する流体試料のそれぞれ対応する強度によって正規化された署名の分散インデックスと、
の少なくとも1つに関する複合体として計算される再現性インデックスをさらに含むものとする。
【0022】
任意選択的に、また、本発明による方法は、複数の測定実施であるとともに各実施が事前規定間隔程度の分だけ時間的に離間したものとされた複数の測定実施について、少なくともステップa)~ステップc)を繰り返すことをさらに含んでもよく、例えばステップa)~ステップd)を繰り返すことをさらに含んでもよく、さらに、各測定実施と複数のセンサとに関して、少なくともステップa)~ステップc)を繰り返すことをさらに含んでもよく、例えばステップa)~ステップd)を繰り返すことをさらに含んでもよく、メトリクスを、
- 複数の測定実施と複数のセンサとにわたって計算されたクラスタ化品質スコアと、
- 複数の測定実施と複数のセンサとに関する流体試料の署名の強度における分散インデックスと、
- 複数の測定実施と複数のセンサとに関する流体試料のそれぞれ対応する強度によって正規化された署名の分散インデックスと、
の少なくとも1つに関する複合体として計算される、反復性インデックスおよび再現性インデックスをさらに含むものとする。
【0023】
認証されたセンサを製造するための方法が、さらに提案され、この方法は、
- 流体試料を入力するように構成されているとともに、流体試料を特徴付ける電気信号から得られる対応した署名を出力するように構成されている、センサであり、また、少なくとも1つの反応サイトを含むセンサであり、さらに、少なくとも1つの反応サイトに対しての流体試料の相互作用によって誘起された少なくとも1つの物理的特性の変化を測定するように構成されているとともに、電気信号を出力するように構成されている、少なくとも1つの変換器をさらに含むセンサを、提供することと、
- 認定試験を実施するための上記の方法を、センサに対して適用することと、
- 少なくとも1つの事前規定された認定基準に対して、認定試験を実施することによって計算されたメトリクスが一致していることを、確認することと、
- 少なくとも1つの事前規定された認定基準に対してメトリクスが一致している限りにおいては、センサを認証することと、
を含む。
【0024】
本発明は、添付図面を参照しつつ純粋に一例として与えられた以下の説明を参照することにより、より良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による、流体試料を入力するように構成されているとともに対応する署名を出力するように構成されているセンサの一般的な構造を、概略的に表している。
【
図2】
図2は、
図1のセンサの変換器が生成する画像に関する典型的な一例を示しており、その変換器が表面プラズモン共鳴撮像システムまたはマッハツェンダー干渉計を含む場合には、像上に、センサの反応サイトを見ることができる。
【
図3】
図3は、例えば
図2の画像などの画像から得た、応答信号どうしの、またはセンサグラムどうしの、重畳された時間図を示す。
【
図4】
図4は、
図3の反射率信号の処理から得た嗅覚署名を示す。
【
図5】
図5は、
図1のセンサを使用して流体試料の嗅覚署名を得るための方法に関する、連続したステップを示す。
【
図6】
図6は、
図1のセンサに対して認定試験を実施するための方法に関する、連続したステップを示す。
【
図7】
図7は、
図1のセンサを製造するための方法に関する、連続したステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に概略的に示す電子センサデバイス10は、非限定的な用途のための、すなわち臭気識別のための、本発明によるセンサの非限定的な一例である。電子センサデバイス10は、例えば気体試料などの流体試料を入力するように設計されたチャンバ12を含む。これを行うために、電子センサデバイス10は、チャンバ12の外側から流体試料を吸引するとともに流体試料を内部へと導入するように設計された吸引デバイス14を有してもよい。また、出口16を有してもよく、この出口16は、流体試料をチャンバ12内に保持するために選択的に閉塞することができる、あるいは、吸引デバイス14の起動によって、流体試料をチャンバ12から除去し得るよう、さらに、別の流体試料と交換し得るよう、開放することができる。吸引デバイス14と出口16との両方は、任意選択的なものであり、本発明による電子センサデバイスでは、容易に省略することができる。
【0027】
センサデバイス10のチャンバ12内に、センサデバイス10は、それぞれ対応する反応サイト18上に、いくつかの、例えば約60個の、嗅覚センサを含み、嗅覚センサは、チャンバ12内に保持された流体試料中に存在する可能性がある揮発性有機化合物に対して、これら化合物の放出によって、相互作用するように設計されている。各嗅覚センサは、例えば、揮発性有機化合物の特定のファミリに対して相互作用するように設計されたバイオセンサである。実際には、各反応サイト18上の各嗅覚センサは、基板上に固定化されたペプチドなどの、または面上にコーティングされたポリマーなどの、その嗅覚センサと関連したファミリの揮発性有機化合物に対して相補的な分子を含んでもよい。説明した例では、反応サイト18は、位置決めグリッド上にマトリクス状で配置されている、すなわち、反応サイト18は、このグリッドのセルの中心に、それぞれ配置されている。
【0028】
反応サイト18は、少なくとも1つの変換器20と関連しており、変換器20は、反応サイト18に対しての流体試料の相互作用によって誘起された少なくとも1つの物理的特性の変化を測定するように、配置されて構成されている。変換器20は、チャンバ12内で嗅覚センサが相互作用し得る揮発性有機化合物の代理であるため、流体試料を特徴付ける電気信号Sを出力する。
【0029】
より正確には、変換器20は、プラズモン効果に基づく任意の反応サイトに対しての流体試料の相互作用による屈折率のあらゆる変化を測定するように構成された表面プラズモン共鳴(SPR)撮像システムであってもよい。そのような変換器は、発光器と、光学プリズムと、カメラと、を含み、反応サイト18のグレースケール画像シーケンスをなす電気信号Sを出力する。
【0030】
図2は、そのようなSPR撮像システムが生成する典型的なグレースケール画像に関する概略的な一例を示しており、像上に、センサデバイス10の反応サイト18を、それらが相互作用し得る揮発性有機化合物を特徴付ける輝度値を有した状態で、見ることができる。説明する例では、反応サイト18が円形であることに、留意されたい。しかしながら、反応サイト18の位置決めグリッドに対しての、カメラの傾斜に起因して、グレースケール画像シーケンスS内でそれらが占める領域は、楕円となっている。
【0031】
一変形例では、変換器20は、干渉計の基準アームと、任意の反応サイトが上部に配置される感知アームと、の間における検出可能な位相シフトに基づいて、任意の反応サイトに対しての流体試料の相互作用に起因したあらゆる屈折率変化を測定するように構成されたマッハツェンダー干渉計システムであってもよい。そのような変換器は、反応サイト18の位相シフト画像シーケンスをなす電気信号Sを出力する。
【0032】
別の変形例では、変換器20は、反応サイトが上面上に配置された振動膜の共振周波数の変化を測定するように構成された、ナノ電気機械システム(NEMS)またはマイクロ電気機械システム(MEMS)であってもよい。反応サイト18は、例えば、反応サイト18の共振周波数シフト信号シーケンスをなす電気信号Sを出力するために、NEMSまたはMEMS振動膜のマトリクス上に配置されている。
【0033】
変換器20がどのようなものであっても、一般的な着想が、嗅覚センサ(すなわち、バイオセンサ、ポリマー、カーボンナノチューブ、等)を使用して揮発性有機化合物を弁別的な態様で吸着および脱着するようにして反応サイトを機能化することにより、反応サイトから弁別された分子相互作用応答を得ること、さらに、物理的変換デバイスを使用して、その応答を、電気信号Sの形態で増幅することは、不変である。
【0034】
特定の場合には、センサデバイス10は、反応サイト18と変換器20とを有したチャンバ12を含み、その場合、出力段階での電気信号Sは、それがアナログ形式であるかまたはデジタル形式であるかに関係なく、チャンバ12内の流体試料の署名を構成する。
【0035】
しかしながら、
図1に戻ると、センサデバイス10は、一般に、後述するようないくつかの機能モジュールをさらに含む。説明する例では、これらの機能モジュールは、ソフトウェアである。例えば、センサデバイス10は、コンピュータ22を含み、コンピュータ22は、中央処理装置24と、いくつかのコンピュータプログラムまたは同じコンピュータプログラムのいくつかの機能が内部に格納される関連メモリ領域26と、を有している。これらのコンピュータプログラムは、ソフトウェアモジュールの機能を行うために、中央処理装置24によって実行される命令を含有している。これらのコンピュータプログラムは、別個のものとして提示されているけれども、この区別は、純粋に機能的なものである。これらのコンピュータプログラムは、また、任意の可能な組合せに従って、1つまたは複数のコンピュータプログラムへと、グループ化され得る。これらのコンピュータプログラムの機能は、また、少なくとも部分的に、デジタル回路などの専用集積回路内において、マイクロプログラムすることができる、またはマイクロ配線することができる。よって、一変形例として、コンピュータ22は、同じ動作を行うためのデジタル回路のみで構成された電子デバイス(コンピュータプログラムなし)へと、置き換えることもできる。上記の機能は、また、例えば、クラウドセンシングの観点などから、クラウドコンピューティング環境内で、遠隔的に分散することができる。
【0036】
よって、センサデバイス10は、まず、吸引デバイス14(該当する場合)、空気出口16(これも該当する場合)、および変換器20を制御するための、処理装置24によって実行されることとなる、ソフトウェアモジュール28を含む。
【0037】
センサデバイス10は、反応サイト18の中で、揮発性有機化合物の選択に際して敏感な部位からなる部分集合を選択するための、処理装置24によって実行されることとなる、任意選択的ではあるが有利なソフトウェアモジュール30を、さらに含む。これらの揮発性有機化合物は、流体試料ごとに相違してもよく、これにより、ソフトウェアモジュール30が行う反応サイト18の選択も、また、変化することができてパラメータ化することができる。選択された部分集合は、例えばN≧1個の反応サイトを包含し、または有利には、いくつかの反応サイト(N≧2)を包含する。
【0038】
変換器20がSPR撮像システムである場合には、センサデバイス10は、処理装置24によって実行されることとなるソフトウェアモジュール32を、さらに含み、このソフトウェアモジュール32は、SPR撮像システムのカメラが提供する画像シーケンスS内におけるこれらのN個の選択された反応サイト18に固有の輝度値の中から、対象をなす揮発性有機化合物に対しての、N個の選択された反応サイト18の相互作用をそれぞれ代理するN個の反射率信号を抽出する。これらの反射率信号は、例えば、N個の選択された反応サイト18のそれぞれに関して、横偏光した光によって得られた輝度値の、90度に偏光した同じ光によって得られた輝度値に対しての、比率に応じたパーセントとして、表される。
【0039】
図3は、事前規定された測定プロトコルに従って流体試料に関して得られたN=19個の反射率信号について、重畳した時間図を示しており、ここで、
- 反応サイト18は、第1の対照フェーズPH1の間には、流体試料なしで、乾燥空気環境に対して曝され、
- 反応サイト18は、次に、第2の、吸着が起こる分析フェーズPH2の間には、流体試料に対して曝され、
- 反応サイト18は、最後に、第3の、脱着が起こる最終フェーズPH3の間には、流体試料なしで、乾燥空気環境に対して再び曝される。
【0040】
乾燥環境とは、水蒸気の質量分率が低い周囲空気として規定される、すなわち、500ppm(parts-per-million)未満、または100ppm未満、好ましくは、4℃での相対湿度が0.1%未満に相当するような、10ppm未満、の周囲空気として規定される。そのような乾燥空気は、例えば、シリカゲルを使用することによって、または凍結環境から空気を抽出することによって、得ることができる。
【0041】
センサデバイス10は、研究中の流体試料を代理する嗅覚署名のN個の構成要素を抽出するために、N個の反射率信号の分析に関する時間ウィンドウを選択するための、処理装置24によって実行されることとなる、ソフトウェアモジュール34をさらに含む。
【0042】
センサデバイス10は、N個の反射率信号の中から、上記の嗅覚署名におけるN個の構成要素を取得するための、処理装置24によって実行されることとなる、ソフトウェアモジュール36をさらに含む。この取得は、選択された時間ウィンドウ内で抽出されたN個の反射率信号の補正を含んでもよい。この補正については、
図5を参照して詳細に後述する。この補正は、主に、2つの構成要素から構成される、すなわち、周知であるので詳述を省略するような、反応サイト18内の嗅覚センサのドリフトに関する補正と、事前規定された測定プロトコルに依存する基準値からの減算による補正と、から構成される。これにより、N個の補正済み反射率信号を、得ることができる。嗅覚信号におけるN個の構成要素のそれぞれは、例えば、選択された時間ウィンドウ内におけるN個の補正済み反射率信号のそれぞれ対応する1つを代理する統計値の計算に基づいて、直接的にまたは間接的に、得られる。これは、単純に、この時間ウィンドウ内におけるスカラー平均値とすることができる。それは、また、より複雑なスカラー統計値またはベクトル統計値とすることもできる。
【0043】
円グラフで表されている、N=19個の構成要素からなる嗅覚署名に関する一例が、
図4に示されており、これは、例えばソフトウェアモジュール28~36の順次的実行に基づいて、すなわち
図3における反射率信号などの反射率信号に基づいて、得られる。
【0044】
特に、順次的実行は、数回にわたって繰り返すことができ、これにより、同じ流体試料に関するいくつかの連続した嗅覚署名を得ることができ、その後、いくつかの連続した嗅覚署名を、例えば平均化によってまたは他の手法によって統計的に処理することで、改良された嗅覚署名を得ることができる。この目的のために、センサデバイス10は、任意選択的ではあるが有利には、N個の構成要素からなるいくつかの嗅覚署名を統計的に処理するための、処理装置24によって実行されることを意図した、ソフトウェアモジュール38を含む。特に、これは、重心的な嗅覚署名を得るための、嗅覚署名の構成要素に関する単純な平均化とすることができる。
【0045】
変換器20がマッハツェンダー干渉計システムである場合には、ソフトウェアモジュール32は、それ自体が公知の態様で適用され、これにより、N個の反射率信号に代えて、N個の位相シフト信号が抽出される。これらの位相シフト信号は、例えば、ラジアンで表される。ソフトウェアモジュール34および36は、また、位相シフト信号に対して単純に適用され、これにより、適切な時間ウィンドウが選択されるとともに、嗅覚署名が得られる。
【0046】
変換器20がNEMSまたはMEMSである場合には、ソフトウェアモジュール32は、それ自体が公知の態様で適用され、これにより、N個の反射率信号に代えて、N個の周波数シフト信号が抽出される。これらの基準シフト信号は、例えば、Hzで表される。ソフトウェアモジュール34および36は、また、基準シフト信号に対して単純に適用され、これにより、適切な時間ウィンドウが選択されるとともに、嗅覚署名が得られる。
【0047】
また、ソフトウェア処理によって電気信号Sから得られる各嗅覚署名が、
- 生の署名であってもよいこと、すなわち、そのベクトルのN個の構成要素が、流体試料に対しての、N個の選択された反応サイトの応答強度を代理している、ベクトルであってもよいこと、
- 正規化済み署名であってもよいこと、すなわち、そのベクトルのN個の構成要素が、生の署名の構成要素であるものの、例えばL2正規化などを使用して正規化されたベクトルであってもよいこと、
- 生の署名または正規化済み署名の主要構成要素分析から得られた単純化済み署名であってもよいこと、すなわち、そのベクトルの、n≦Nである場合に、n個の構成要素が、n個の第1主要軸が規定する直交座標系内における生の署名または正規化済み署名の投影であるとともに、その投影が、事前規定されたしきい値を超えている、単純化済みベクトルであってもよいこと、
に留意されたい。
【0048】
より一般的には、単純化済み署名は、次元減少の結果である。主要構成要素分析は、よって、特異値分解、多次元スケーリング、または任意の他の適切な次元減少アルゴリズム、へと置き換えてもよい。
【0049】
嗅覚署名が、正規化を含む処理から得られたものである場合には、その嗅覚署名が、正規化済み署名であるか、または正規化済み署名に基づく単純化済み署名であるか、に関係なく、署名の元々の強度は、すなわち、署名のノルムは、得られた嗅覚署名に関連する追加情報として維持することができる。
【0050】
センサデバイス10は、得られた各嗅覚署名を格納するためのメモリ領域40をさらに含む。
【0051】
ここで、流体試料から嗅覚署名を出力するためのセンサデバイス10の使用に関して、
図5を参照しながら詳述する。
【0052】
流体試料から嗅覚署名を出力するための方法100における第1ステップ102では、そのような方法は、測定サイクルに対応するものであって、センサデバイス10は、センサデバイス10の反応サイト18の嗅覚センサが流体試料に対して露出され得るようにして、配置される。よって、処理装置24は、ソフトウェアモジュール28を実行することにより、吸引デバイス14と、空気出口16と、変換器20と、を制御する。より正確には、このステップは、上述したような、第1の対照フェーズと、第2の分析吸着フェーズと、第3の最終的脱着フェーズと、を含んでもよい。これら3つの露出フェーズ時には、変換器20は、流体試料を特徴付ける電気信号Sを出力するとともに、その電気信号Sを、コンピュータ22に対して送信する。
【0053】
続くステップ104では、変換器がSPR撮像システムである場合には、電気信号Sは、画像シーケンスの形態で、コンピュータ22によって受信される。その後、処理装置24は、ソフトウェアモジュール30および32を実行することにより、N個の選択された反応サイトのそれぞれに関して、画像シーケンスSを代理するN個の反射率信号を得る。上記で規定した3つの露出フェーズは、
図3において、非常に明瞭に理解することができる、すなわち、x軸上で0~約20までにわたって延びる第1の対照フェーズPH1(半秒単位で表されている、すなわち、例えば2Hzでサンプリングにされた時間に従って表されている)と、約20~約80までにわたって延びる第2の分析吸着フェーズと、約80で開始する第3の最終的脱着フェーズとを、非常に明瞭に理解することができる。
【0054】
続くステップ106では、処理装置24は、反射率信号の分析のために時間ウィンドウを選択するためのソフトウェアモジュール34を実行する。特に、2つの時間ウィンドウがこのタイプの3つの露出フェーズに対して特に関連していることが、実験されている。第1の関連する時間ウィンドウは、
図3における分析吸着フェーズPH2に関しての、最後の部分を、例えば61~80における最後の20個の試料を、カバーする。第2の関連する時間ウィンドウは、
図3における最終的脱離フェーズPH3に関しての、最初の部分を、例えば81~100における最初の20個の試料を、カバーする。したがって、これら2つの時間ウィンドウの一方が、有利には、このステップで選択される。代替的には、このステップで、いくつかの時間ウィンドウを選択することができ、これにより、特に上述した2つの時間ウィンドウの組合せで、ベクトル構成要素を有したより複雑な嗅覚署名を得ることができる。より一般的には、他の特徴点を抽出し得ることとなる機械学習システムによって、利用可能な測定時間ウィンドウの全体が、考慮され得る。
【0055】
続くステップ108では、処理装置24は、ソフトウェアモジュール36を実行することにより、N個の構成要素からなる嗅覚署名を得る。特に、反応サイト18の嗅覚センサに関しての上述した3つの露出フェーズを考慮して、基準値の減算による上記の補正は、分析フェーズPH2におけるこれら信号のそれぞれ対応する値から、第1の対照フェーズPH1における各反射率信号の観察されたシフトを、減算することから構成することができる。各反射率信号に関して、このシフトは、例えば、対照フェーズPH1における信号値の平均である。
【0056】
ステップ102~108は、ステップ104および106で行った選択を変更することなく、所望の回数にわたって繰り返すことができ、これにより、N個の構成要素からなる複数の嗅覚署名を得ることができる。
【0057】
ステップ102~108が複数回にわたって実行され終わった場合の、後続のステップ110では、処理装置24は、得られた嗅覚署名に関する統計的処理を行うとともに例えば平均化済み署名などの署名を得るためのソフトウェアモジュール38を実行し、さらに、その署名を、最終ステップ112で、メモリ40内に格納する。
【0058】
本発明によれば、センサデバイス10は、メトリクスが、複数の対照流体試料に関して、複数の対照流体試料に関するそれぞれ対応する署名についてのクラスタ化品質スコアを含む場合に、そのようなメトリクスを計算することを含む認定試験に対して、少なくとも1つの事前規定された認定基準に対してメトリクスが一致していることを確認することによって、合格したことが認証される。
【0059】
この目的のために、
図1に戻ると、方法100は、複数の対照流体試料のそれぞれに関して少なくとも1回にわたって測定サイクルとして実行され、これにより、いくつかのそれぞれ対応する嗅覚署名が得られ、それら嗅覚署名は、メモリ40内に格納された後にコンピュータ42に対して送信される、あるいは、コンピュータ42に対して直接的に送信される。各対照流体試料とは、例えば、対応する反応サイトによって検出されるべき識別済み揮発性有機化合物を含むものであって、いくつかの事前規定されたクラスタの1つへと先験的にクラスタ化されており、これにより、測定サイクル100の実行によって得られる署名も、また、相応して先験的にクラスタ化される。
【0060】
次に、センサデバイス10に対して認定試験を実施するとともにセンサデバイス10を認証するための方法が、コンピュータ42によって実行される。認定試験を実施することは、少なくとも、先験的クラスタ化済み署名に関するクラスタ化品質スコアを有したメトリクスを計算することを含む。センサデバイス10を認証することは、少なくとも、クラスタ化品質スコアが認定基準に対して一致していることを確認することを含む、例えば、しきい値が下限である場合には、クラスタ化品質スコアが、事前規定されたしきい値に対して一致していることをまたはそのしきい値を超えていることを、確認することを含む、あるいは、しきい値が上限である場合には、クラスタ化品質スコアが、事前規定されたしきい値に対して一致していることをまたはそのしきい値未満を維持していることを、確認することを含む。しきい値は、またはより一般的には認定基準は、センサデバイス10の用途に関する仕様に基づいて、規定されてもよい。センサデバイス10が認定試験に合格した時には、すなわち、認定基準が一致した時には、証明書44を、得ることができるとともに、センサデバイス10の内部に格納することによって、またはセンサデバイス10上に提示することによって、またはセンサデバイス10に対して関連した文書内に含めることによって、のいずれかで、証明書44を、センサデバイス10に対して関連付けることができる。
【0061】
図6に示すように、センサデバイス10に対して認定試験を実施するための詳細な方法200は、ステップ202で、それぞれがクラスタを規定する複数の対照分析物を選択することにより、開始されてもよい。各対照分析物は、1つまたは複数の分子から構成されている。好ましい実施形態では、シス-3-ヘキセン-1-オール、シトロネロール、およびフェニルエチルアルコール(PEA)、などの少なくとも3つの対照揮発性有機化合物を含めた、少なくとも3つの対照分析物が選択される。
【0062】
続くステップ204では、これらの対照分析物が、事前規定レベルを超えた濃度で、対照流体試料内で調整される。よって、対照流体試料は、相応してクラスタ化される。
【0063】
その後、ステップ206では、いくつかの測定サイクル100が実行される、例えば、好ましい実施形態では、各対照分析物に関して少なくとも30回の測定サイクルが実行される。また、好ましい実施形態によれば、少なくとも90個の嗅覚署名が、対照流体試料に対応して出力されるとともに、メモリ40内に格納される。
【0064】
続くステップ208では、クラスタ化およびスコア化のために、格納された嗅覚署名に対して、それぞれ対応する真の対照分析物ラベルによって注釈付けされる。
【0065】
その後、ステップ210では、対照流体試料の一部または全部のそれぞれに関して、すなわち、対応して格納された嗅覚署名の一部または全部のそれぞれに関して、有効性インデックスが計算される。有効性インデックスは、有利には、嗅覚署名どうしの間のクラスタ内距離およびクラスタ外距離に基づくものである。結果的に、ステップ206で選択された反応サイトが少ない場合には、例えば2つまたは3つである場合には、計算は、単純なものであり得る。その場合、生の嗅覚署名が、または正規化済み嗅覚署名が、使用されてもよい。しかしながら、より多数の反応サイトが選択された場合には、計算の複雑さを避けるために、次元減少(主要構成要素分析、特異値分解、多次元スケーリング、または同等のもの)から得られる単純化済み署名を使用することが、望ましいことがあり得る。その上、例えば主要構成要素分析から得られた単純化済み署名に関して計算される距離が、一般的には、より重要である。
【0066】
例えば、各対照流体試料Siに関して、対応する嗅覚署名と、同じクラスタにおけるすべての他の嗅覚署名と、の間で計算されたクラスタ内距離の組合せaiが計算される。そのような組合せは、平均であってもよい。各対照流体試料Siに関して、対応する嗅覚署名と、別のクラスタにおけるすべての嗅覚署名と、の間で計算されたクラスタ間距離の組合せbi,jが、他の各クラスタ(ここで、添字jは、他のクラスタを特定する)に関して計算される。そのような組合せは、平均であってもよい。その後、最小値bi=Min(bi,j)が選択される。その後、各対照流体試料Siに関する結果として得られる有効性インデックスCQSiは、次式のようにして計算されてもよい。
【0067】
【0068】
一変形例では、aiおよびbiに関する非現実的な値に基づく外れ値を、削除することができ、これにより、結果的に得られる有効性インデックスCQSiは、いくつかの対照流体試料のそれぞれに関してだけ計算される。有効性インデックスCQSiが、また、対照流体試料Siに関するクラスタ化品質スコアも表していると、考えることができる。有効性インデックスは、パーセントとして表すことができる。
【0069】
続くステップ212では、グローバルクラスタ化品質スコアCQSを、ステップ210で計算されたすべての有効性インデックスCQSiに基づくメトリクスとして、例えば、これらの有効性インデックスの平均として、計算することができる。グローバルクラスタ化品質スコアは、パーセントとして表し得るとともに、センサデバイス10が複数の揮発性有機化合物を識別し得る手法の品質を表している。一変形例では、中間クラスタ化品質スコアCQSjを、それが含む対照流体試料Siに関して計算された有効性インデックスCQSiに基づいて、例えばこれらの有効性インデックスCQSiの平均として、すべてのクラスタCjに関して、それぞれ計算することができ、その後、グローバルクラスタ化品質スコアCQSを、中間クラスタ化品質スコアCQSjに基づいて、例えばこれらの中間クラスタ化品質スコアCQSjの平均として、計算することができる。
【0070】
一選択肢として、提案するメトリクスは、反復性インデックスRTYを、さらに含んでもよい。この目的のために、ステップ202~206を、センサデバイス10に関する複数の測定実施にわたって、例えば10回以上にわたって、好ましくは20回~30回にわたって、繰り返すことができる。各実施は、例えば24時間などの事前規定間隔程度の分だけ、時間的に離間したものである。しかしながら、この事前規定間隔は、対照試料の調整の安定性、各測定後にセンサデバイス10が定常状態へと復帰するのに必要な時間、環境の安定性、等の、多くの要因に依存し得る。
【0071】
ステップ202~206が、生の署名をなす嗅覚署名を、または単純化済み署名ではあるけれども生の署名の主要構成要素分析から得られる嗅覚署名を、計算して格納するために実行される場合には、反復性インデックスRTYの計算は、有利には、複数の測定実施に関して格納された嗅覚署名の強度と、同じ複数の測定実施に関するそれぞれの強度によって正規化したその正規化済み署名と、を別々に計算するステップ214を含む。
【0072】
その後、ステップ216では、反復性インデックスRTYは、
- パーセントとして表される、複数の測定実施に関する各対照試料の平均強度まわりの相対分散であり得る、以前に計算された強度の分散インデックスとして、および/または、
- 同じくパーセントとして表される、複数の測定実施に関する各対照試料に関しての平均正規化済み署名まわりの相対分散であり得る、以前に計算された正規化済み署名の分散インデックスとして、
計算されてもよい。
【0073】
有利には、反復性インデックスRTYは、複数の測定実施にわたって計算されたクラスタ化品質スコアCQS-RTYを含んでもよく、これは、複数の測定実施に関するすべての注釈付き格納済み署名から計算されたグローバルクラスタ化品質スコアであり得る。その場合、ステップ202~208を、センサデバイス10に関する複数の測定実施に関して繰り返されなければならず、その後、ステップ210および212が、ステップ202~208のその繰り返しから得られるすべての注釈付き格納済み署名を使用して、実行される。
【0074】
各分散インデックスに関して、いくつかの他の実施形態が想定され得ることに、留意されたい。それは、分散、標準偏差、平均によって正規化された分散、平均によって正規化された標準偏差、等とすることができる。
【0075】
より一般的には、反復性インデックスRTYは、以前に計算された強度の上記分散インデックス、以前に計算された正規化済み署名の分散インデックス、および、複数の測定実施にわたって計算されたクラスタ化品質スコアCQS-RTY、の少なくとも1つに関する複合体として計算されてもよい。
【0076】
一選択肢として、提案するメトリクスは、再現性インデックスRDYを、さらに含んでもよい。この目的のために、ステップ202~206を、複数のセンサデバイスに関して、例えば5個以上のセンサデバイスに関して、好ましくは20個~30個のセンサデバイスに関して、繰り返すことができる。
【0077】
ステップ202~206が、生の署名をなす嗅覚署名を、または単純化済み署名ではあるけれども生の署名の主要構成要素分析から得られる嗅覚署名を、計算して格納するために実行される場合には、再現性インデックスRDYの計算は、有利には、複数のセンサデバイスに関して格納された嗅覚署名の強度と、同じ複数のセンサデバイスに関するそれぞれの強度によって正規化したその正規化済み署名と、を別々に計算するステップ218を含む。
【0078】
その後、ステップ220では、再現性インデックスRDYは、
- パーセントとして表される、複数のセンサデバイスに関する各対照試料の平均強度まわりの相対分散であり得る、以前に計算された強度の分散インデックスとして、および/または、
- 同じくパーセントとして表される、複数のセンサデバイスに関する各対照試料に関しての平均正規化済み署名まわりの相対分散であり得る、以前に計算された正規化済み署名の分散インデックスとして、
計算されてもよい。
【0079】
有利には、再現性インデックスRDYは、複数のセンサデバイスにわたって計算されたクラスタ化品質スコアCQS-RDYを含んでもよく、これは、複数のセンサデバイスに関するすべての注釈付き格納済み署名から計算されたグローバルクラスタ化品質スコアであり得る。その場合、ステップ202~208を、複数のセンサデバイスに関して繰り返されなければならず、その後、ステップ210および212が、ステップ202~208のその繰り返しから得られるすべての注釈付き格納済み署名を使用して、実行される。
【0080】
反復性インデックスRTYに関しては、いくつかの他の実施形態を、再現性インデックスRDYにおける各分散インデックスに関して、想定することができる。
【0081】
より一般的には、再現性インデックスRDYは、以前に計算された強度の上記分散インデックス、以前に計算された正規化済み署名の分散インデックス、および、複数のセンサデバイスにわたって計算されたクラスタ化品質スコアCQS-RDY、の少なくとも1つに関する複合体として計算されてもよい。
【0082】
提案するメトリクスが、反復性インデックスRTYおよび再現性インデックスRDYの両方を含む場合には、ステップ202~206を、またはステップ202~208を、各測定実施が事前規定間隔程度の分だけ時間的に離間したものとされた複数の測定実施に関して、ならびに、各測定実施に関して、および、複数のセンサデバイスに関して、繰り返すことができる。結果的に得られる反復性インデックスRTYおよび再現性インデックスRDYは、また、
- 複数の測定実施に関しての、および複数のセンサデバイスに関しての、各対照試料の平均強度まわりの相対分散であり得る、以前に計算された強度の分散インデックス、
- 複数の測定実施に関しての、および複数のセンサデバイスに関しての、各対照試料の平均正規化済み署名まわりの相対分散であり得る、以前に計算された正規化済み署名の分散インデックス、
- 複数の測定実施にわたっておよび複数のセンサデバイスにわたって計算されたグローバルクラスタ化品質スコア、
の少なくとも1つに関する複合体として計算されてもよい。
【0083】
より一般的には、反復性インデックスRTYおよび再現性インデックスRDYの両方を計算する時には、いくつかのスコアを、各測定実施でかつ各センサデバイスに関して、計算することができる。これらのスコアは、2次元的な図または表で表すことができ、1つの次元は、連続する複数の測定実施に関するものであり、他の次元は、各センサデバイスに関するものである。この表現から、強度、正規化済み署名、および/またはグローバルクラスタ化品質スコア、に基づいて任意の反復性インデックスおよび/または再現性インデックスを抽出するために、各次元内でまたは両方の次元内で、様々な統計量を計算することができる。特に、反復性に関するいくつかのグローバルクラスタ化品質スコアCQS-RTYを、複数のセンサデバイスに関して計算することができ、その後、反復性に関する平均化グローバルクラスタ化品質スコア<CQS-RTY>内へと組み合わせることができる。したがって、再現性に関するいくつかのグローバルクラスタ化品質スコアCQS-RDYを、いくつかの測定実施に関して計算することができ、その後、再現性に関する平均化グローバルクラスタ化品質スコア<CQS-RDY>内へと組み合わせることができる。
【0084】
一選択肢として、提案するメトリクスは、例えば対照流体試料の対照署名の混同行列に基づいて、分類性能インデックスをさらに含んでもよい。この目的のために、認定試験を実施するための方法200は、ステップ202および204と同等のステップ222を含み、このステップ222では、それぞれがクラスタを規定するいくつかの対照分析物が、事前規定レベルを超えた濃度で、対照流体試料内で調整される。
【0085】
続くステップ224では、分類器が、いくつかの測定サイクル100を実行することによって、例えば各対照分析物に関して少なくとも30回の測定サイクルを実行することによって、または好ましい実施形態では、50回以上の測定サイクルさえをも実行することによって、対照流体試料を使用して訓練される。対照流体試料に対応して、それぞれ対応する対照嗅覚署名が出力されるとともに、例えばメモリ40内における、対照署名データベース内に格納される。
【0086】
続くステップ226では、分類器は、いくつかの測定サイクル100を実行することによって、例えば少なくとも30回にわたって実行することによって、それぞれが対照流体試料の1つに対応している、スコア化のために注釈付けされた試験流体試料を使用して、試験される。試験流体試料に対応して、それぞれ対応する試験嗅覚署名が出力されるとともに、対照署名の1つに対しての関連付けによって、すなわち、対照流体試料の1つに対しての関連付けによって、分類される。
【0087】
続くステップ228では、分類ステップ226の結果を使用して、混同行列CMを完成させる。周知のように、混同行列の各列は、例えば、予測されたクラス(または、クラスタ)内の実例を表しており、各行は、実際のクラス(または、クラスタ)内の実例を表している。したがって、CM(i,j)は、クラス/クラスタCiに属するものとして注釈付けされた試験試料の、クラス/クラスタCjに分類された数を表している。
【0088】
分類性能の複合インデックスとして、分類をスコア化するために、いくつかのインデックスを、混同行列CMから抽出することができる、すなわち、
- パーセントとして表すことができ、第1対角係数の合計と、すべての係数の合計と、の間の比率に対応した、第1の一般的精度インデックス、
- パーセントとして表すことができ、クラス/クラスタCiに関して,CM(i,i)と、i番目の行係数の合計と、の間の比率に対応した、第2のクラス依存の感度インデックス、
- パーセントとして表すことができ、クラス/クラスタCiに関して、kおよびiが等しくなくかつlおよびiが等しくない場合の、すべての係数CM(k,l)の和と、kおよびiが等しくない場合の、すべての係数CM(k,l)の和と、の間の比率に対応した、第3のクラス依存の特異性インデックス、ならびに、
- パーセントとして表すことができ、クラス/クラスタCiに関して、CM(i,i)と、i番目の列係数の合計と、の間の比率に対応した、第4のクラス依存の精度インデックス。
【0089】
これらのインデックスは、すべてのクラス/クラスタCiに関して計算された上記の中間クラスタ化品質スコアと一緒に、表内へと出力することができる。
【0090】
一選択肢として、提案するメトリクスは、信号対雑音比をさらに含んでもよい。この比率は、センサデバイス10の1つまたは複数の構成要素上で、特に変換器20上で、測定されてもよい。この目的のために、認定試験を実施するための方法200は、例えば、変換器上に再現可能な刺激を印加するステップ230を含む。非限定的な好ましい実施形態では、この刺激は、例えば100mBarなどの、再現可能な圧力降下である。変換器20が出力する信号は、刺激の最中と、刺激前または刺激後と、に測定される。
【0091】
続くステップ232では、刺激前または刺激後に変換器20が出力した信号を、例えば、処理することにより、安定したベースライン上の雑音分散と見なされる分散値Nを抽出する。同じステップの際に、刺激の最中に変換器20が出力した信号を、例えば、処理することにより、刺激最中の平均パワーと見なされる平均値Sを抽出する。その後、信号対雑音比を計算することができ、SNR=10.log(S/N)として、dBで表すことができる。
【0092】
したがって、異なる技術からのセンサデバイスどうしで、SNRを比較することができる。
【0093】
一選択肢として、提案するメトリクスは、検出限界インデックスをさらに含んでもよい。そのようなインデックスは、複合体であり、各構成要素は、所与の分析物に対して固有である。分析物の検出限界とは、例えば事前規定濃度のセット内で、試料中におけるその不在からセンサデバイス10が識別し得る、この分析物に関しての最低濃度である。この目的のために、認定試験を実施するための方法200は、いくつかの対照分析物を選択するとともに、これらの対照分析物を、異なる濃度でもってまたは異なる希釈でもって、対照流体試料内で調整するステップ234を含む。好ましい実施形態では、シス-3-ヘキセン-1-オール、シトロネロール、およびPEAなどの少なくとも3つの対照揮発性有機化合物を含めた、少なくとも3つの対照分析物が選択される。どの希釈手法を採用するかに依存して、単位は、ppmV(百万分の一容積)または液体希釈率(溶媒質量と化合物質量との間の質量比)のいずれであってもよい。フレーバーおよびフレグランスの用途では、液体希釈が好まれ、環境用途では、ppmVが主に使用されることとなる。液体希釈が選択された場合には、特定の中性溶媒内へと、各分析物を、10倍比率(1、10-1、10-2、10-3、...、0)で連続希釈したものが、流体試料として調製されてもよい。
【0094】
その後、ステップ236では、いくつかの測定サイクル100が実行される、例えば、好ましい実施形態では、各分析物の各希釈流体試料に関して、少なくとも70回の測定サイクルが実行される。測定サイクルは、有利には、希釈試料中の分析物の存在量が増加するにつれて統計的に増加するスカラー値である検出インデックスを推定することを含む。その規定およびアルゴリズムによる推定は、当業者から公知であり、センサデバイス10の技術に大きく依存するものであって、また用途に依存するため、詳細な説明を省略する。各分析物希釈流体試料に関して実行される測定サイクルの各セットは、検出インデックスのスケール内での値の分布を出力する。
【0095】
続くステップ238では、決定のためのしきい値Tが、各分析物に関する決定インデックススケール内で決定される。分析物を含有していない希釈流体試料に関して出力された分布が与えられた時には、Tは、その出力された分布に関しての、事前規定割合を下回る検出インデックス値であり、例えば95%を下回る検出インデックス値である。これは、このしきい値Tが、分析物を含有していない希釈流体試料に関して、5%の誤警報確率を得るために規定されていることを、意味している。
【0096】
続くステップ240では、検出限界LODが、各分析物に関して、出力された分布がしきい値Tよりも事前規定割合を上回るような例えば95%を上回るような、その分析物の最低希釈液試料として、決定される。これは、LODが、95%超という適正検出確率を出力する、分析物の最小希釈試料であることを、意味している。
【0097】
ここで、センサデバイス10を製造するための方法300に関して、
図7を参照して詳述する。
【0098】
第1ステップ302では、センサデバイス10が準備されるものの、認証はされない。センサデバイス10は、流体試料を入力するように構成されているとともに、流体試料を特徴付ける電気信号から得られる対応した署名を、出力するように構成されている。センサデバイス10は、少なくとも1つの反応サイトを、好ましくは複数の反応サイトを、さらに含み、また、少なくとも1つの反応サイトに対しての任意の流体試料の相互作用によって誘起された少なくとも1つの物理的特性の変化を測定するように構成されているとともに、電気信号を出力するように構成されている、少なくとも1つの変換器を、さらに含む。
【0099】
その後、ステップ304では、認定試験を実施するための方法200が、センサデバイス10に対して適用される。認定試験を実施することにより計算されるメトリクスは、少なくとも、グローバルクラスタ化品質スコアCQSを含む。メトリクスは、他のインデックスRTY、RDY、CM、SNR、およびLOD、の少なくとも1つをさらに含んでもよい。これらすべてのスコアおよびインデックスは、例えばそれらのスカラー結合など、1つのグローバルスコアへと、さらに組み合わされてもよい。その場合、すべてのスコアおよびインデックスを、事前に、均質に表しておくことが、例えばパーセントとして表しておくことが、有利であり得る。
【0100】
ステップ306では、計算したメトリクスを、少なくとも1つの事前規定された認定基準であるとともに単純な場合には1つまたは複数のしきい値であり得る認定基準に対して、比較する。
【0101】
最後に、ステップ308では、計算したメトリクスが、少なくとも1つの事前規定された認定基準に対して一致している限りにおいては、例えば、事前規定されたしきい値が下限である場合には、計算したメトリクスが、しきい値に対して一致しているまたはそのしきい値を限りにおいては、あるいは例えば、事前規定されたしきい値が上限である場合には、計算したメトリクスが、しきい値に対して一致しているまたはそのしきい値未満を維持している限りにおいては、センサデバイス10を認証する。
【0102】
上記で説明したものなどの、センサデバイスにより、およびセンサデバイスに対して認定試験を実施するための方法により、センサデバイスの認定が通常は非常に主観的であると考えられる技術分野において、異なる技術どうしをまたは異なる製造プロセスどうしを、公平に比較し得ることは、あるいは、特定の客観的レベルの品質を保証し得ることは、明らかに明瞭である。
【0103】
その上、本発明が、上記で説明した実施形態に限定されるものではないことに、留意されたい。当業者には、上記で説明した実施形態に対して開示した教示に照らせば、上記で説明した実施形態に対して様々な改変を行い得ることは、明らかであろう。上記における本発明の提示では、使用される用語は、本発明を本明細書で開示する実施形態へと限定するものとして、解釈されてはならず、かつ、投影に対して当業者の一般的知識を適用することによって当業者に対して開示した教示を実装させるすべての同等物を内部に包含するように、解釈されなければならない。
【国際調査報告】