(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】マルチセグメント斜め飛行翼航空機
(51)【国際特許分類】
B64C 3/10 20060101AFI20230927BHJP
B64C 9/00 20060101ALI20230927BHJP
B64D 29/02 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B64C3/10
B64C9/00
B64D29/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516666
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(85)【翻訳文提出日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 US2021050725
(87)【国際公開番号】W WO2022061021
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520339482
【氏名又は名称】ジョビー エアロ インク
【氏名又は名称原語表記】JOBY AERO, INC.
【住所又は居所原語表記】340 Woodpecker Ridge Santa Cruz,CA,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100207251
【氏名又は名称】矢島 弘文
(72)【発明者】
【氏名】ジョーベン ビバート
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ジョン ブレイエ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴール ベブル ミキッチ
(57)【要約】
【解決手段】2つの外部翼セグメントと中央翼セグメントを含む3つの別個のセグメントを持つマルチセグメント斜め飛行翼航空機。中央セグメントは、垂直方向に対して他より厚く、パイロットと乗客を保持するようになっている場合がある。外部翼セグメントは、翼の中心から外側に進むにつれてかなり薄くなり、先細りになる。マルチセグメント斜め飛行翼航空機は、高速飛行構成へ展開するように適合されるか、または一定の角度で離陸および巡航するように適合され得る。特定の飛行の場合、中央翼セグメントが90度の局所スイープへ回転し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜め飛行翼を備える航空機であって、
前記斜め飛行翼は、中央翼セグメントと、前方翼セグメントと、後方翼セグメントと、を備え、
前記中央翼セグメントは、前縁および後縁を備え、前記前縁および前記後縁は、それらの長さに沿って10度以内で平行であり、
前記前方翼セグメントは、前記中央セグメントの第1の端部に結合されており、かつ、前縁および後縁を備え、かつ、前記中央翼セグメントの四分弦の翼幅方向平均とは異なる角度で、前記前方翼セグメントの四分弦の翼幅方向平均が10°よりも大きくスイープしており、
前記後方翼セグメントは、前記中央セグメントの第2の端部に結合されており、かつ、前縁と後縁とを備え、かつ、前記中央翼セグメントの四分弦の翼幅方向平均とは異なる角度で、前記後翼セグメントの四分弦の翼幅方向平均が10°よりも大きくスイープしている、
ことを特徴とする航空機。
【請求項2】
請求項1に記載の航空機であって、さらに、
前記中央翼セグメントは、前記前方翼セグメントおよび前記後方翼セグメントよりも実質的に厚い、
ことを特徴とする航空機。
【請求項3】
請求項2に記載の航空機であって、さらに、
巡航構成において、前記前方翼セグメントが15度から35度の範囲で前方にスイープし、前記中間翼セグメントが35度から65度の範囲でスイープし、前記後方翼セグメントが25から45度の範囲で後方にスイープしている、
ことを特徴とする航空機。
【請求項4】
請求項2に記載の航空機であって、さらに、
巡航構成において、前記前方翼セグメントが0度から60度の範囲で前方にスイープし、前記中間翼セグメントが25から75度の範囲でスイープし、前記後方翼セグメントが0から60度の範囲で後方にスイープしている、
ことを特徴とする航空機。
【請求項5】
請求項2に記載の航空機であって、さらに、
外部翼セグメントの相対的厚さに対する中央翼セグメントの相対的厚さの比が、1.5から10の範囲にある、
ことを特徴とする航空機。
【請求項6】
請求項3に記載の航空機であって、さらに、
外部翼セグメントの相対的厚さに対する中央翼セグメントの相対的厚さの比が、1.5から10の範囲にある、
ことを特徴とする航空機。
【請求項7】
請求項2に記載の航空機であって、前記航空機はさらに、
前記斜め飛行翼に連結された複数のパイロンと、
前記パイロンに結合された複数の推力要素と、
を備えることを特徴とする航空機。
【請求項8】
請求項6に記載の航空機であって、前記航空機はさらに、
前記斜め飛行翼に連結された複数のパイロンと、
前記パイロンに結合された複数の推力要素と、
を備えることを特徴とする航空機。
【請求項9】
請求項8に記載の航空機であって、さらに、
前記推力要素が離陸位置から巡航位置まで回転できるように、前記推力要素が前記斜め飛行翼に回転可能に結合される、
ことを特徴とする航空機。
【請求項10】
請求項7に記載の航空機であって、さらに、
前記後方翼セグメントは、後方に湾曲し、後方推進パイロンまたは推進ナセルに結合して補助ピッチ操縦翼面を形成する翼端を備える、
ことを特徴とする航空機。
【請求項11】
請求項8に記載の航空機であって、さらに、
前記後方翼セグメントは、後方に湾曲し、後方推進パイロンまたは推進ナセルに結合して補助安定面を形成する翼端を備える、
ことを特徴とする航空機。
【請求項12】
請求項7に記載の航空機であって、さらに、
前記航空機が補助ピッチ操縦翼面または安定化面をさらに備え、前記補助ピッチ操縦翼面が2つ以上の推進パイロンまたは推進ナセルを空力面と接合する、
ことを特徴とする航空機。
【請求項13】
請求項8に記載の航空機であって、さらに、
前記航空機が補助ピッチ操縦翼面または安定化面をさらに備え、前記補助ピッチ操縦翼面が2つ以上の推進パイロンまたは推進ナセルを空力面と接合する、
ことを特徴とする航空機。
【請求項14】
請求項7に記載の航空機であって、さらに、
1以上のパイロンの後縁が、横方向の制御権限を提供するために偏向し得る空力操縦翼面を形成する、
ことを特徴とする航空機。
【請求項15】
請求項8に記載の航空機であって、さらに、
1以上のパイロンの後縁が、横方向の制御権限を提供するために偏向し得る空力操縦翼面を形成する、
ことを特徴とする航空機。
【請求項16】
請求項1に記載の航空機であって、さらに、
前記後方セグメントは、C字形部分を形成する翼端を備える、
ことを特徴とする航空機。
【請求項17】
請求項16に記載の航空機であって、さらに、
前記C字形部分の翼端は空力操縦翼面を含む、
ことを特徴とする航空機。
【請求項18】
請求項2に記載の航空機であって、さらに、
前記後方翼セグメントは、C字形部分を形成する翼端を備える、
ことを特徴とする航空機。
【請求項19】
請求項18に記載の航空機であって、さらに、
前記C字形部分の翼端は空力操縦翼面を含む、
ことを特徴とする航空機。
【請求項20】
請求項3に記載の航空機であって、さらに、
前記後方翼セグメントは、C字形部分を形成する翼端を備える、
ことを特徴とする航空機。
【請求項21】
請求項20に記載の航空機であって、さらに、
前記C字形部分の翼端は空力操縦翼面を含む、
ことを特徴とする航空機。
【請求項22】
斜め飛行翼を備える航空機であって、
前記斜め飛行翼は、中央翼セグメントと、前方翼セグメントと、後方翼セグメントと、を備え、
前記前方翼セグメントは、前記中央セグメントの第1の端部に結合されており、かつ、前縁および後縁を備え、かつ、前記中央翼セグメントの四分弦の翼幅方向平均とは異なる角度で、前記前方翼セグメントの四分弦の翼幅方向平均が10°よりも大きくスイープしており、
前記後方翼セグメントは、前記中央セグメントの第2の端部に結合されており、かつ、前縁と後縁とを備え、かつ、前記中央翼セグメントの四分弦の翼幅方向平均とは異なる角度で、前記後翼セグメントの四分弦の翼幅方向平均が10°よりも大きくスイープしており、
巡航構成にある間、前記中央翼セグメントは、前記前方翼セグメントおよび前記後方翼セグメントよりも実質的に厚く、前記前方翼セグメントは、15度から35度の範囲で前方にスイープし、前記中央翼セグメントは、35度から65度の範囲でスイープしており、前記後翼セグメントは、25度から45度の範囲で後方にスイープしている、
ことを特徴とする航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機に関し、より詳細には、マルチセグメント斜め飛行翼のデザインを有する航空機に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
【0003】
本出願は、2020年9月16日に出願されたべブル・ミキックらによる米国仮特許出願第63/078,903号に対する優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
【背景技術】
【0005】
1958年において、R.T.ジョーンズは、非対称に後退した(斜めの)翼を持つ航空機は、遷音速が高く、超音速が低い場合に多くの利点を提供するだろうと示唆した。斜め全翼の構成には、従来の尾翼による頑固な安定性と制御し易さが欠けているという点で、技術的な課題があった。
【0006】
【発明の概要】
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
求められているのは、高速飛行中の安定性を維持しながら、大量の貨物および乗客積載量をサポートできる斜め飛行翼航空機である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
【0010】
2つの外部翼セグメントおよび中央翼セグメントを含む3つの別個のセグメントを有するマルチセグメント斜め飛行翼航空機を提供する。中央セグメントは、垂直方向により厚く、パイロットと乗客を保持するようになり得る。外部翼セグメントは、翼の中心から外側に進むにつれてかなり薄くなり、先細りになる。マルチセグメント斜め全翼航空機は、高速飛行構成に回転するように適合されるか、または離陸および一定角度で巡航するように適合され得る。特定の飛行の場合、中央翼セグメントが90度の局所スイープへ回転し得る。
【0011】
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】回転可能な翼を有する従来技術の航空機の図である。
【
図2】旋回翼を有する斜め飛行翼航空機の図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態によるマルチセグメント斜め飛行翼航空機の図である。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態によるマルチセグメント斜め飛行翼航空機の図である。
【
図5】本発明のいくつかの実施形態による斜め飛行翼の座標系を示す図である。
【
図6】本発明のいくつかの実施形態による斜め飛行翼の翼設計態様を示す図である。
【
図7】本発明のいくつかの実施形態による、離陸構成の斜め飛行翼の図である。
【
図8】本発明のいくつかの実施形態による高速構成の斜め飛行翼の図である。
【
図9】本発明のいくつかの実施形態による、完全に回転した構成の斜め飛行翼の図である。
【
図10】本発明のいくつかの実施形態による、空気流の方向に垂直な中央セグメントを有する構成の斜め飛行翼の図である。
【
図11A】本発明のいくつかの実施形態による、外側補助操縦翼面を備えた、向きが固定されたマルチセグメント斜め全翼航空機の斜視図である。
【
図11B】本発明のいくつかの実施形態による、機外補助操縦翼面を備えた、向きが固定されたマルチセグメント斜め全翼航空機の上面図である。
【
図11C】本発明のいくつかの実施形態による、外側補助操縦翼面を備えた、向きが固定されたマルチセグメント斜め全翼航空機の側面図である。
【
図11D】本発明のいくつかの実施形態による、機外補助操縦翼面を備えた、向きが固定されたマルチセグメント斜め全翼航空機の背面図である。
【
図12A】本発明のいくつかの実施形態による、機内補助操縦翼面を備えた、向きが固定されたマルチセグメント斜め行翼航空機の斜視図である。
【
図12B】本発明のいくつかの実施形態による、機内補助操縦翼面を備えた固定配向マルチセグメント斜め全翼航空機の上面図である。
【
図12C】本発明のいくつかの実施形態による、機内補助操縦翼面を備えた、向きが固定されたマルチセグメント斜め全翼航空機の上面図である。
【
図12D】本発明のいくつかの実施形態による、機内補助操縦翼面を備えた、向きが固定されたマルチセグメント斜め全翼航空機の背面図である。
【
図13A】本発明のいくつかの実施形態による、ウイングレット補助操縦翼面を有する固定配向マルチセグメント斜め全翼航空機の斜視図である。
【
図13B】本発明のいくつかの実施形態による、ウイングレット補助操縦翼面を有する固定配向マルチセグメント斜め全翼航空機の上面図である。
【
図13C】本発明のいくつかの実施形態による、ウイングレット補助操縦翼面を有する固定配向マルチセグメント斜め全翼航空機の側面図である。
【
図13D】本発明のいくつかの実施形態による、ウイングレット補助操縦翼面を有する固定配向マルチセグメント斜め全翼航空機の背面図である。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【発明を実施するための形態】
【0035】
高速航空機の設計では、特に遷音速および超音速領域における高速飛行を中心とした設計目標と、離着陸および低速飛行の設計要件のバランスを取る必要がある。従来の設計には、従来の、後退翼、航空機、斜め飛行翼の設計が含まれている。斜め飛行翼の配置は、同じ翼幅とスイープの従来の後退翼の約2倍の翼長を超える揚力を配分する。これにより、超音速域での揚力に依存する抗力の波動成分が4分の1に減少する。高アスペクト比の斜め飛行翼のため、超音速体積波動抗力も良好である。斜め飛行翼は、高遷音速領域で非常に効率的な構成であることも証明できる。
【0036】
図1は、従来の胴体と、中心位置で胴体に旋回可能に取り付けられた、主翼と水平尾翼と、を備えた航空機を示している。このタイプの航空機は、従来のスイング翼設計よりも優れていると見なされていた。旋回翼は、航空機の重心に対して揚力中心を変位させない。
図2は、細長い翼と枢動推進ユニットを有する斜め飛行翼を示す。この設計により、翼は離陸のために、気流方向に対して垂直になり、高速で翼を回転させることができる。
【0037】
前述の例とは対照的に、本発明の実施形態によるマルチセグメント斜め飛行翼航空機では、中央セグメントにパイロットおよび乗客を配置することを可能にする、長くて厚い中央セグメントが使用され、高速商用航空機としてのマルチセグメント斜め飛行翼航空機に使用され得る。ある意味では、中央セグメントは、従来の胴体の欠点なしで、従来の胴体の空輸機能を担っている。さらに、高度にスイープした高速飛行中における長い中央翼セグメントよりの外部翼セグメントの分離は、それらのアクションが適切に組み合わされたときは、ピッチ軸とロール軸の両方に影響を与えるのを可能にするように複数の後縁操縦翼面を配置するといった優れた制御力を提供する。外部翼セグメントは、中央の翼セグメントよりも大幅に薄くなっている。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態では、
図3および4に見られるように、マルチセグメント斜め飛行翼航空機100は、中央翼セグメント110、左翼セグメント111、および右翼セグメント112を含む。セグメント110は、Zb方向(これは以下に定義される)にかなり厚く、乗客エリア118内の乗客を可能にするのに十分な厚さである。複数の推力ユニット114、116、118は、異なる前進飛行構成での推力を可能にする枢動パイロン113、115、117を使用し得る。スラスターユニットの回転は、スラスト方向の変化とパイロンのラダー効果の両方により、斜め飛行翼航空機のスイープを変化させる。スイープの変更を支援するトリミングおよびコントロールサーフェスとデバイスがさらに存在し得る。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態では、
図5から
図10に見られるように、マルチセグメント斜め飛行翼航空機200は、中央翼セグメント210、左翼セグメント212、および右翼セグメント211を含む。中央翼セグメント210は、前縁210aおよび後縁210bを有する。それらの長さ方向に沿って多様性があり得るが、中央セグメント210の前縁210aおよび後縁210bは実質的に平行である。中央セグメント210は、他のセグメントよりも実質的に厚くすることができ、航空機のパイロットおよび乗客を収容するように適合させることができる。推進ユニットの図示なしで示されているが、マルチセグメント斜め飛行翼航空機200は、上述の航空機100と同様に動力を供給され得ることが理解される。いくつかの態様では、以下でさらに説明するように、推力ユニットは非回転推力ユニットであり、航空機は一定の翼位置で離陸および巡航するように適合されている。
【0040】
左翼セグメント212は、前縁212aおよび後縁212bを有する。左翼セグメント212は、翼セグメントの翼幅に沿って翼弦長が減少するという点で、中央セグメント210から翼の外側に向かうにつれて先細になる。左翼セグメント212は、中央セグメント210よりも垂直方向Zbにおいて実質的に薄くてもよい。右翼セグメント211は、前縁211aおよび後縁211bを有する。右翼セグメント211は、翼セグメントの翼幅に沿って翼弦長が減少するという点で、中央セグメント210から翼の外側に向かうにつれて先細になる。右翼セグメント211は、中央セグメント210よりも垂直方向Zbにおいて実質的に薄くてもよい。
【0041】
図5は、システムの態様を示す座標系を導く。卓越風座標系230は、XwとYwの合成としての、翼を横切る優勢な気流を含み、Xwは、前方飛行で直接的に風に対応する気流の方向である。本体座標系231は、翼の本体に対して一定のままであるように設定され、Yb軸は、翼の前縁212a、211aの複合平均方向にほぼ平行に設定される。本体座標系のZb軸は、図面垂直方向で手前方向に向かっている。四分弦座標系232は、Y1をその時点で四分弦の接線に平行に設定し、XIをその時点で四分弦に垂直に設定する。本体座標系231は、航空機に関して固定されたままである。卓越風座標系230は環境の産物であり、翼とは無関係であり、四分弦座標系232は翼設計の関数であるが、翼上のどの点が参照されているかに関しては変動的である。
【0042】
このマルチセグメント翼は、基準線220において左翼セグメント212から中央翼セグメント210への移行を有するものとして、また、基準線221において右翼セグメント211から中央翼セグメント210への移行を有するものとして観測され得る。基準線220、221内で、中央セグメント210の前縁210aおよび後縁210bは実質的に平行である。
【0043】
マルチセグメント翼航空機200の一態様は、セグメント210、211、212のそれぞれが、それ自体の臨界マッハ数を有することができるということである。臨界マッハ数は、圧縮効果により抗力が増加する、局所的な風速と音速の比であり、翼の厚さ、部分の揚力、および部分の局所的なスイープ、の関数である。このアプリケーションの属性において、スイープは四分弦のスイープを指す。目標は、すべてのセグメントが、車両の設計マッハ数よりわずかに大きい類似の臨界マッハ数を持つことである。中央翼セグメント210は、外部翼セグメント211、212よりかなり厚く、同じ臨界マッハ数に対してより多くのスイープを必要とする。外部翼セグメント211、212はより薄く、同じ臨界マッハ数に対してより少ないスイープを必要とする。
図7は、翼セグメントの前縁が優勢な気流に対して実質的に垂直である離陸構成を示している。これは、(より)低速の飛行構成でもあり得る。この構成は、この離陸構成の気流に対してほとんど垂直な翼セグメントの翼幅長を最大化する。対照的に、中央のセグメントは気流方向からの角度でスイープされる。
【0044】
高速飛行構成における
図8に見られるように、マルチセグメント翼航空機200は気流方向に対して回転している。この高速飛行構成では、すべてのセグメントが離陸構成と比較してより多くのスイープを有する。中央の翼セグメントは、外側の翼セグメントよりも気流方向に対してよりスイープされている。中央セグメントと翼セグメントとの間のこの非対称なスイープにより、パイロット、乗客、およびその他の貨物を収容するために必要な、より厚い中央部分が可能になる。中央セグメントのより大きいスイープは、中央セグメントの厚さの増加に関連する波動の抗力損失を軽減または排除する。
【0045】
図9は、回転の最も極端な場合を示しており、中央セグメントの四分弦線が気流に平行である。
図10は、中央セグメントの前縁が気流方向に対して実質的に垂直である構成を示している。
【0046】
いくつかの態様では、中央セグメントを、パイロット、乗客、およびその他の体積のある物品の格納庫として使用することにより、斜め飛行翼の利点を保持しながら標準的な機体の不利益なしで、中央部分が航空機の機体として機能することが可能になる。翼セグメントの厚さに比べて中央セグメントが厚いことは、セグメントの厚さに対する翼弦の長さの比として定義される相対的な厚さが、翼セグメントに比べて中央セグメントの方が大きい、という点でも見られる。翼セグメントは、中央セグメントに結合する所でより厚くなり得るが、移行領域を通してスイープを変更する様に、移行領域では翼がはるかに薄くなる。
図6は、本発明のいくつかの実施形態による斜め飛行翼の態様を示す。上述のように、マルチセグメント翼は、基準線220で左翼セグメント212から中央セグメント210への移行を有するものとして、および、基準線221で右翼セグメント211から中央セグメント210への移行を有するものとして見得る。基準線220、221内で、中央セグメント210の前縁210aおよび後縁210bは実質的に平行である。中央セグメント210は、基準線220におけるその第1端と基準線221におけるその第2端との間に延長部分を有し、この部分において、中央セグメントの前縁および後縁は実質的に平行である。中央セグメントの翼弦長とその翼幅との比率は、いくつかの態様では1:4であり得る。いくつかの態様では、中央セグメントの翼弦長とその翼幅の比率は、1:3から1:5の範囲であり得る。いくつかの態様では、中央セグメントの翼弦長とその翼幅との比率は、1:2.5から1:4.5の範囲であり得る。いくつかの態様では、中央セグメントの翼弦長は、中央セグメントの翼幅に沿って10%を超えて変化しない。いくつかの態様では、中央セグメントの翼弦長は、中央セグメントの翼幅に沿って15%を超えて変化しない。いくつかの態様では、中央セグメントの翼弦長は、中央セグメントの翼幅に沿って5%を超えて変化しない。中央セクションの翼弦長の変動を最小限に抑えることで、従来の旅客機機体の均一な断面と同様に、貨物または客室の断面をほぼ均一にすることができる。中央部分の比較的一定した翼断面はまた、流入気流状態における翼幅方向の変動を減らすことにより、推進装置の設計を簡素化する。本航空機の比較的長くて細い構成は、翼セグメントと中央部分が長さと翼弦のアスペクト比がかなり大きいジョイント本体を提供し、超音速領域での航空機の波動の体積抗力を低減する。中央セグメントの厚さと翼弦の比率の増加と組み合わせることで、この範囲の翼弦と翼幅の比率は、空力性能とペイロード容量の間の良好なバランスを提供する。高速飛行構成の
図8に見られるように、中央セグメントは翼セグメントより大幅にスイープが大きく、高速構成でいくぶん小さいスイープを有する翼セグメントに比べて臨界マッハ数が高くなる。中央セグメントと翼セグメント間のスイープの差は、セグメントの有効臨界マッハ数と一致する。
【0047】
中央翼セグメント210の外側には、中央翼セグメント210の前縁ラインが外部翼セグメント211、212の前縁に移行する移行領域が有り得る。中央翼セグメント210の第1の端部で基準線220において、翼は、左翼セグメント212の前縁が実質的に直線になる基準線241まで移行し得る。移行領域内では、左翼セグメントは、前縁の周りで外側の直線位置に曲がり得る。左翼セグメント212はまた、その翼弦長を、その遷移領域内で先細にさせ、その遷移領域の外側および翼端に向かって先細になり続けさせ得る。基準線221における中央セグメント210の第2の端部で、翼は、右翼セグメント211の後縁が実質的に直線になる基準線240まで移行し得る。移行領域内では、右翼セグメントが後縁の周りで外側の直線位置に曲がり得る。右翼セグメント211はまた、その翼弦長を、その遷移領域内で先細にさせ、その遷移領域の外側および翼端に向かって先細になり続けさせ得る。左翼セグメント212および右翼セグメント211の両方は、中央セグメント210よりも実質的に薄い。それらの長さに沿って変動があってもよいが、中央セグメント210の前縁210aおよび後縁210bは、実質的に平行である。中央セグメント210の前縁210aおよび後縁210bもまた、移行領域の外側の翼セグメント211、212の前縁211a、212aよりかなり大きくスイープされる。
【0048】
長くて厚い中央セグメントの使用は、パイロットと乗客を中央セグメントに配置することを可能にし、マルチセグメント斜め飛行翼航空機を高速商用航空機として使用することを可能にする。ある意味では、中央セグメントは、伝統的な胴体の欠点なしで、伝統的な胴体の空輸機能を担っている。さらに、高度にスイープされた高速飛行中の長い中央セグメントよりの翼の分離は、アクションが適切に組み合わされたときは、ピッチ軸とロール軸の両方に影響を与えることを可能にするように複数の後縁操縦翼面を配置といった優れた制御力を提供する。いくつかの態様では、各翼の翼幅に対する中央セグメントの翼幅の比率は、1:1から3:1の範囲である。翼幅に沿った厚さの最適な比率は、航空機の要件や材料の詳細に依存するが、空力抵抗(特に波動抗力)、構造重量、ペイロードまたは燃料要件、のバランスをとるように設計されるべきであり、最適な厚さの比率は、記載された範囲に収まる可能性がある。いくつかの態様において、翼の平均厚さに対する中央セグメントの平均厚さは、1.5:1から20:1の範囲にある。いくつかの態様において、翼の相対厚さに対する中央セグメントの相対厚さの比率は、1.5から10の範囲にある。
【0049】
例示的な実施形態では、航空機の全翼幅(スイープされていない中央セグメントを有する航空機の横方向の寸法)は60mであり、240m2の平面形面積、15の平面形縦横比(翼幅2/面積)を有する。この例示的な実施形態では、翼セグメントの長さは18mであり、それぞれ65m2の面積を有し、中央セグメントの長さは26mである。中央セグメント翼弦は6m、翼セグメント翼根翼弦は6m、翼セグメント先端翼弦は1.2m、翼セグメント平均翼弦は3.6mである。胴体平均翼弦に対する翼平均翼弦の比率は0.6で、翼セグメントのテーパー比は0.2である。翼セグメントの縦横比((2*セグメントの長さ)2/(2*セグメントの面積))は10である。(全翼幅)2/(2×セグメント面積))は28である。この例示的な実施形態では、離陸構成において、前方翼セグメント%翼弦スイープは-5度であり、中央セグメント%翼弦スイープは25度で、後方翼セグメント%翼弦スイープは5度である。
【0050】
いくつかの態様では、全翼幅は5mから200mの範囲にある。いくつかの態様では、航空機の平面面積は1m2から3000m2の範囲にある。いくつかの態様では、航空機の平面縦横比は5から30の範囲にある。いくつかの態様では、翼セグメント長は2mから50mの範囲にある。いくつかの態様では、中央セグメント長は、2mから80mの範囲にある。いくつかの態様では、中央セグメント翼弦は、0.5mから30mの範囲にある。いくつかの態様では、翼セグメント翼根翼弦は、0.5mから30mの範囲にある。いくつかの態様では、翼セグメント先端翼弦は、0.1mから20mの範囲にある。いくつかの態様では、翼セグメントの平均翼弦は、0.3mから25mの範囲にある。いくつかの態様では、中央セグメント平均翼弦に対する翼平均翼弦の比は、0.1から1の範囲である。いくつかの態様では、翼セグメントのテーパー比は、0から1の範囲である。いくつかの態様では、翼セグメント面積は、0.2m2から1000m2の範囲にある。いくつかの態様では、実効寄生振動抗力比は10から50の範囲にある。いくつかの態様では、離陸構成において、前方翼セグメント四分弦スイープは、-20から20度の範囲にあり、中央セグメント四分弦スイープは、10から70度の範囲にあり、前方翼セグメント四分弦スイープは、-20から20度の範囲にある。
【0051】
いくつかの態様では、本発明の実施形態は、操縦翼面レイアウトおよび翼平面設計の詳細に応じて、全翼翼のみよりも多くのピッチ力追加より利益を得ることができる。いくつかの態様では、マルチセグメント斜め飛行翼航空機は、同じスイープ構成/方向で、離陸、着陸、および巡航するように適合されている。
【0052】
本発明の別の実施形態では、
図11AからDに見られるように、同じスイープ構成/方向で離陸、着陸、および巡航するように適合されたマルチセグメント斜翼航空機250は、それぞれの四分弦線257a、257b、257cと共に、左外部翼セグメント258a、中央翼セグメント258b、および右外部翼セグメント258c、を備えた翼258を有する。斜め飛行翼の特徴、およびパラメータの範囲は、上記の前述した実施形態200に関して論じた通りであり得る。離陸後に前翼が回転しない航空機250では、翼セグメントのスイープはさまざまな飛行モードにおいて一定のままである。前外部翼セグメントの前方への傾きは25度であってもよい。いくつかの態様では、前外部翼セグメントの前方へのスイープは、15度から35度の範囲にあり得る。いくつかの態様では、前外部翼セグメントの前方へのスイープは、0度から60度の範囲にあり得る。後外部翼セグメントの後方へのスイープは35度であり得る。いくつかの態様では、後外部翼セグメントの後方へのスイープは、25度から45度の範囲であり得る。いくつかの態様では、後外部翼セグメントの後方へのスイープは、0度から60度の範囲であり得る。中央翼セグメントのスイープは50度であり得る。いくつかの態様では、中央翼セグメントのスイープは、35度から65度の範囲であり得る。いくつかの態様では、中央翼セグメントのスイープは、25度から75度の範囲であり得る。航空機250は、複数の推力要素を有し得、パイロン253a、253b、253c、253dに結合された4つの推力要素ナセル254a、254b、254c、254dを有し得る。右外部翼セグメント258cは、ウイングレット252を有し得、ウイングレット252から(図示されている様な)外側推進ナセル254dまたは外側推進パイロン253dのいずれかに延びる、補助ピッチ操縦翼面251を有する。そのような構成は、複数の構造負荷経路を形成することによって安定化面253dの構造重量を減らし、ピッチ制御入力とロールとの間の空力的結合を減らし、右翼端の失速を遅らせ得る。補助操縦翼面251は、その後縁に沿って制御可能な操縦翼面を含み得る。いくつかの態様では、補助操縦翼面251全体が制御可能な操縦翼面として回転可能であり得る。
【0053】
いくつかの態様では、推進パイロン253a、253b、253c、253dは、補助ピッチ操縦翼面251の四分弦257dのスイープを増加または減少させるために、異なる形状であってもよい。例示的な実施形態では、最も右のパイロン253dは、ピッチ操縦翼面251のスイープを増加させるために延ばし得る。いくつかの態様では、推力要素ナセル254a、254b、254c、254dは、補助ピッチ操縦翼面251によって導入される不均一な流れの状態に対処するために異なる形状を有し得る。
【0054】
本発明の別の実施形態では、
図12AからDに見られるように、同じスイープ構成/方向における離陸、着陸、および巡航に適合されたマルチセグメント斜め飛行翼航空機260は、それぞれの四分弦線267a、267b、267cと共に、左外部翼セグメント268a、中央翼セグメント268b、および右外部翼セグメント268cを備えた、翼268を有する。斜め飛行翼の特徴、およびパラメータの範囲は、上記の前述した実施形態200に関して論じた通りであり得る。離陸後に前翼が回転しない航空機260では、翼セグメントのスイープは、さまざまな飛行モードで一定のままである。前外部翼セグメントの前方へのスイープは25度であり得る。いくつかの態様では、前外部翼セグメントの前方へのスイープは、15度から35度の範囲であり得る。いくつかの態様では、前外部翼セグメントの前方へのスイープは、0度から60度の範囲であり得る。後外部翼セグメントの後方へのスイープは35度であり得る。いくつかの態様では、後外部翼セグメントの後方へのスイープは、25度から45度の範囲であり得る。いくつかの態様では、後外部翼セグメントの後方へのスイープは、0度から60度の範囲であり得る。中央翼セグメントのスイープは50度であり得る。いくつかの態様では、中央翼セグメントのスイープは、35度から65度の範囲であり得る。いくつかの態様では、中央翼セグメントのスイープは、25度から75度の範囲であり得る。航空機260は、複数の推力要素を有し得、パイロン263a、263b、263c、263dに結合された4つの推力要素ナセル264a、264b、264c、264dを有し得る。右外部翼セグメント268cは、ウイングレット262を有し得る。
【0055】
航空機260は、2つ以上の推進パイロン263c、263dまたは(図示されているような)推進ナセル264c、264dによって支持される補助ピッチ操縦翼面261を有する。そのような構成は、既存の推進パイロン構造を使用することによって、補助ピッチ操縦翼面261の支持構造の構造重量を低減する。推進パイロン263a、263b、263c、263dおよび/またはナセル264a、264b、264c、264dは、補助ピッチ操縦翼面を所望に応じて配置するために、例えば、補助ピッチ操縦翼面261の四分弦スイープ267を増加または減少させるために、または不均一な推進流入気流状態をなくすために、異なる形状を有し得る。補助操縦翼面261は、その後縁に沿って制御可能な操縦翼面を含み得る。いくつかの態様では、補助操縦翼面261全体が制御可能な操縦翼面として回転可能であり得る。
【0056】
いくつかの態様では、マルチセグメント斜め飛行翼航空機は、推進パイロン表面上に舵状のヨー制御表面269a、269b、269c、269dを含み得る。推進パイロンが操縦翼面を含むか否かにかかわらず、パイロンは一般に、従来の航空機設計における垂直フィンのように、横方向の安定性を高める機能を果たし得る。
【0057】
本発明の別の実施形態では、
図13EからFに見られるように、同じスイープ構成/方向における離陸、着陸、および巡航に適合されたマルチセグメント斜め飛行翼航空機270は、それぞれの四分弦線277a、277b、277cと共に、外部翼セグメント278a、中央翼セグメント278b、および右外部翼セグメント278cを備えた、翼278を有する。斜め飛行翼の特徴、およびパラメータの範囲は、上記で前述した実施形態200に関して論じた通りであり得る。離陸後に回転しない航空機270では、翼セグメントのスイープは異なる飛行モードで一定のままである。前外部翼セグメントの前方へのスイープは25度であり得る。いくつかの態様では、前外部翼セグメントの前方へスイープは、15度から35度の範囲であり得る。いくつかの態様では、前外部翼セグメントの前方へのスイープは、0度から60度の範囲であり得る。後外部翼セグメントの後方へのスイープは35度であり得る。いくつかの態様では、後外部翼セグメントの後方へのスイープは、25度から45度の範囲であり得る。いくつかの態様では、後外部翼セグメントの後方へのスイープは、0度から60度の範囲であり得る。中央翼セグメントのスイープは50度であり得る。いくつかの態様では、中央翼セグメントのスイープは、35度から65度の範囲であり得る。いくつかの態様では、中央翼セグメントのスイープは、25度から75度の範囲であり得る。航空機270は、複数の推力要素を有し得、パイロン273a、273b、273c、273dに結合された4つの推力要素ナセル274a、274b、274c、274dを有し得る。
【0058】
マルチセグメント斜め飛行翼航空機270は、C字形のウイングレット装置271を有する。ウイングレット装置271は、2つの表面と翼構造との間の適切な空力的混合を備えたほぼ水平な空気力学的表面272に接続されたほぼ垂直な空力的表面273からなる。このようなウイングレット装置は、誘導抗力を減少させ、航空機全体に追加的な縦方向および横方向の安定性を提供し得る。本発明の特定の実施形態は、補助ピッチ制御力を提供するためのアクチュエータを装備した水平面272を含み得、垂直面273は追加的なヨー制御力を提供するために可動後縁構造273aを装備し得る。
【0059】
上記の説明から明らかなように、本明細書の説明から多種多様な実施形態を構成することができ、当業者は追加の利点および変更を容易に想起するであろう。したがって、本発明は、そのより広い態様において、図示および説明された特定の詳細および説明のための例に限定されない。したがって、そのような詳細からの逸脱は、出願人の一般的な発明の精神または範囲から逸脱することなく行うことができる。
【国際調査報告】