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特表2023-542002焼結カソード活物質要素およびその方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】焼結カソード活物質要素およびその方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20230927BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20230927BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20230927BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230927BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20230927BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/131
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/139
H01M4/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517945
(86)(22)【出願日】2021-09-20
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 US2021051128
(87)【国際公開番号】W WO2022066584
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】63/081,470
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510192916
【氏名又は名称】テスラ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コールドウェル,ターナー ボリス
(72)【発明者】
【氏名】サーストン,アンソニー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,アレクサンダー トーマス
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050DA02
5H050DA11
5H050EA23
5H050EA24
5H050FA10
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA03
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA14
(57)【要約】
カソード活物質を含む自立した焼成要素(例えば、レンガおよびタイル)ならびにその調製方法が開示される。本プロセスは、試薬を金属前駆体と混合して前駆体混合物を形成することと、前駆体混合物を圧縮して自立した前駆体要素(例えば、レンガおよびタイル)にすることと、自立した前駆体要素(例えば、レンガおよびタイル)を加熱してカソード活物質を含む自立した焼成要素(例えば、レンガおよびタイル)を形成することとを含む。
【選択図】図3C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約95重量%の量のカソード活物質を含む、自立した焼成要素。
【請求項2】
前記カソード活物質が結晶性カソード活物質粒子を含む、請求項1に記載の自立した焼成要素。
【請求項3】
前記カソード活物質が、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウムリン酸鉄(LFP)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、チタン酸リチウム(LTO)、リチウムニッケルマンガン酸化物(LNMO)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、ニッケルマンガンアルミニウム酸化物(NMA)、ニッケルコバルトマンガンアルミニウム酸化物(NMCA)、LiNiO2、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の自立した焼成要素。
【請求項4】
前記自立した焼成要素が最大で約1重量%の残留リチウムを含む、請求項1に記載の自立した焼成要素。
【請求項5】
前記自立した焼成要素がバインダーを実質的に含まない、請求項1に記載の自立した焼成要素。
【請求項6】
前記自立した焼成要素が複数の貫通孔を含む、請求項1に記載の自立した焼成要素。
【請求項7】
前記自立した焼成要素が2~50の貫通孔を含む、請求項6に記載の自立した焼成要素。
【請求項8】
前記複数の貫通孔の各々が直径約10~30mmである、請求項6に記載の自立した焼成要素。
【請求項9】
前記自立した焼成要素が、全要素体積の約0.1~30%で前記複数の貫通孔を含む、請求項6に記載の自立した焼成要素。
【請求項10】
前記自立した焼成要素が、隣接する要素間に少なくとも1つのチャネルを形成するように構成された表面パターンを含む、請求項1に記載の自立した焼成要素。
【請求項11】
前記自立した焼成要素がレンガまたはタイルの形状である、請求項1に記載の自立した焼成要素。
【請求項12】
前記自立した焼成要素が約1.7~1.8g/cm3の密度を含む、請求項1に記載の自立した焼成要素。
【請求項13】
カソード活物質を調製するプロセスであって、
試薬を金属前駆体と混合して前駆体混合物を形成するステップと、
前記前駆体混合物を圧縮して自立した前駆体要素にするステップと、
前記自立した前駆体要素を加熱してカソード活物質を含む自立した焼成要素を形成するステップとを含む、プロセス。
【請求項14】
前記試薬がリチウム試薬である、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記リチウム試薬が、水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、炭酸リチウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記金属前駆体が、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項17】
前記金属前駆体が、Ni、Mn、Co、Al、Mg、Fe、Ti、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項18】
前記前駆体混合物が溶媒をさらに含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項19】
前記溶媒が水である、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記前駆体混合物が約0.1~20重量%の溶媒を含む、請求項18に記載のプロセス。
【請求項21】
前記前駆体混合物がバインダーをさらに含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項22】
前記バインダーが、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、CMC塩、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記前駆体混合物が約0.025~1重量%のバインダーを含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項24】
前記自立した前駆体要素が複数の貫通孔を含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項25】
複数の前記自立した前駆体要素を積み重ねて要素スタックを形成するステップをさらに含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項26】
前記要素スタックが、隣接する自立した前駆体要素の間に少なくとも1つのチャネルを含む、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記自立した前駆体要素が、約1.9~2.3g/cm3の密度を含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項28】
前記自立した前駆体要素が、加熱されながら基材によって支持される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項29】
前記自立した前駆体要素が、加熱されると高温トンネルキルンを通って搬送される、請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
加熱が、酸化性雰囲気、不活性雰囲気、および還元性雰囲気からなる群から選択される雰囲気中で行われる、請求項13に記載のプロセス。
【請求項31】
加熱が約650~850℃の温度で行われる、請求項13に記載のプロセス。
【請求項32】
前記プロセスが、前記自立した前駆体要素を予熱するステップを含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項33】
前記プロセスが、前記カソード活物質の追加の加熱ステップを含まない、請求項13に記載のプロセス。
【請求項34】
前記自立した焼成要素を破壊して焼成要素粉末を形成することをさらに含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項35】
破壊が、破砕、粉砕、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるステップを含む、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記カソード活物質を処理することをさらに含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項37】
処理が、篩分け、洗浄、濾過、乾燥、コーティング、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるステップを含む、請求項36に記載のプロセス。
【請求項38】
カソード電極を形成するためのプロセスであって、
請求項13に記載のカソード活物質を電極フィルムに組み込むステップと、
前記電極膜を集電体上に配置するステップと、を含む、プロセス。
【請求項39】
エネルギー貯蔵装置を形成するプロセスであって、セパレータ、アノード電極および請求項38に記載のカソード電極をハウジング内に配置するステップを含み、
前記セパレータは、前記アノード電極と前記カソード電極との間に配置される、プロセス。
【請求項40】
前記エネルギー貯蔵装置が電池である、請求項39に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願と共に提出された出願データシートまたは請求書において外国または国内の優先権主張が特定されているあらゆる出願が、2020年9月22日に提出された米国仮出願第63/081,470号など、37 CFR 1.57、ならびに規則4.18および20.6の下で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、電極活物質およびその形成プロセスに関する。より具体的には、本開示は、リチウムイオン電池用の金属酸化物カソード材料の形成に関する。
【背景技術】
【0003】
金属酸化物カソード活物質の焼成は、典型的には、大型のローラハースキルンを通して高温で粉末形態の材料をベーキングして目標の材料特性を得ることを含む。この高温プロセスは、リチウム化合物と金属前駆体との混合物から始まって粉末混合物を形成する。粉末は、典型的には、サヤ(すなわち、大型のセラミック坩堝)で運ばれ、次いで、これは12時間を超える総滞留時間にわたって長い高温キルンに供給される。カソード前駆体粉末を保持するサヤの例示的な概略図が、約80mmのカソード粉末高さおよび約0.9kg/m3の嵩密度で図1に示されている。その後、反応した材料は、サヤから除去され、目標粒径に粉砕され、電極製造プロセスに供給される前に任意選択的に表面処理プロセスを受ける。
【0004】
しかしながら、焼成プロセスは、通常使用されるローラハースキルン(RHK)の最も高い資本コスト、最も高いエネルギー消費量および長い滞留時間のために、すべてのプロセスの中で製造コストの最も高い部分を占める。結果として、これらのキルンの処理能力を最大化することは、カソード製造の資本および運転コストを削減するために重要である。
【0005】
さらに、サヤ自体が焼成プロセスに非効率性をもたらす。RHK用のサヤの標準寸法は100mm×330mm×330mm(H×W×L)であり、使用可能な高さは≦80mmであり、サヤ当たり総重量は5kgを超える。粉末混合物の典型的な嵩密度は、約0.9g/cm3である。通常、各サヤには約4.5kgの混合材料しか充填することができず、高負荷はガス拡散および熱分布に影響を及ぼし、品質問題を引き起こす可能性がある。生産性の向上は、サヤを互いに積み重ねる(ここで、一般的な工業用キルン構成では、2段に並列に積み重ねられた4つのサヤの列を収容することができる)ことによって達成することができるが、そのような生産性戦略はスケーラブルではない。
【0006】
このように、サヤは、以下を含む多くの固有の非効率性を有する:1)粉末が坩堝内に停滞する結果として、熱および物質移動係数が低く、キルン内の必要な滞留時間がさらに増加する;2)キルンの出口での冷却時間が、サヤ亀裂を防止し、サヤ寿命を延ばすために通常延長される;3)通常1~2週間の使用後にサヤを交換する必要があるため、消耗品コストが高い;4)サヤの取扱いおよび検査システムは、資本集約度が高く、頻繁なダウンタイムの原因となり得る。
【0007】
さらに、焼成は、活物質の結晶化度を向上させるために、更なる処理を含み得る。活物質の結晶化度の向上は、典型的には、エネルギー貯蔵デバイス性能の向上と相関するが、結晶化度を向上させるための更なる処理は、製造プロセスに更なる非効率性をもたらす。
【発明の概要】
【0008】
本開示および従来技術を超えて達成される利点を要約する目的で、本開示の特定の目的および利点が本明細書に記載される。そのような目的または利点のすべてが、任意の特定の実施形態において達成され得るわけではない。したがって、例えば、当業者は、本発明が、本明細書で教示または示唆され得るような他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示されるような1つの利点または利点群を達成または最適化するように具体化または実施され得ることを認識するであろう。
【0009】
これらの実施形態はすべて、本明細書に開示される発明の範囲内にあることが意図されている。これらおよび他の実施形態は、添付の図面を参照して好ましい実施形態の以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかになり、本発明は開示された任意の特定の好ましい実施形態に限定されない。
【0010】
一態様では、自立した焼成要素が記載される。自立した焼成要素は、少なくとも約95重量%の量のカソード活物質を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、カソード活物質は、結晶性カソード活物質粒子を含む。いくつかの実施形態では、カソード活物質は、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウムリン酸鉄(LFP)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、チタン酸リチウム(LTO)、リチウムニッケルマンガン酸化物(LNMO)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、ニッケルマンガンアルミニウム酸化物(NMA)、ニッケルコバルトマンガンアルミニウム酸化物(NMCA)、LiNiO2、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、最大で約1重量%の残留リチウムを含む。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、約0.1~1重量%のバインダーを含む。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、バインダーを実質的に含まない。
【0012】
いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、複数の貫通孔を含む。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、2~50個の貫通孔を含む。いくつかの実施形態では、複数の貫通孔の各々は、直径約10~30mmである。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、全要素体積の約0.1~30%で複数の貫通孔を含む。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、隣接する要素間に少なくとも1つのチャネルを形成するように構成された表面パターンを含む。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、レンガまたはタイルの形状である。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、約1.9~2.3g/cm3の密度を含む。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、約1.7~1.8g/cm3の密度を含む。
【0013】
別の態様では、カソード活物質を調製するためのプロセスが記載される。このプロセスは、試薬を金属前駆体と混合して前駆体混合物を形成することと、前駆体混合物を圧縮して自立した前駆体要素にすることと、自立した前駆体要素を加熱してカソード活物質を含む自立した焼成要素を形成することとを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、試薬はリチウム試薬である。いくつかの実施形態では、リチウム試薬は、水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、炭酸リチウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、金属前駆体は、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、金属前駆体は、Ni、Mn、Co、Al、Mg、Fe、Ti、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、前駆体混合物は溶媒をさらに含む。いくつかの実施形態では、溶媒は水である。いくつかの実施形態では、前駆体混合物は、約0.1~20重量%の溶媒を含む。いくつかの実施形態では、前駆体混合物は、バインダーをさらに含む。いくつかの実施形態では、バインダーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、CMC塩、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前駆体混合物は、約0.1~1重量%のバインダーを含む。いくつかの実施形態では、前駆体混合物は、約0.025~1重量%のバインダーを含む。いくつかの実施形態では、自立した前駆体要素は、複数の貫通孔を含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、複数の自立した前駆体要素を積み重ねて要素スタックを形成することをさらに含む。いくつかの実施形態では、要素スタックは、隣接する自立した前駆体要素の間に少なくとも1つのチャネルを含む。いくつかの実施形態では、自立した前駆体要素は、約1.9~2.3g/cm3の密度を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、自立した前駆体要素は、加熱されながら基材によって支持される。いくつかの実施形態では、自立した前駆体要素は、加熱されると高温トンネルキルンを通って搬送される。いくつかの実施形態では、加熱は、酸化性雰囲気、不活性雰囲気、および還元性雰囲気からなる群から選択される雰囲気中で行われる。いくつかの実施形態では、加熱は、酸素を含む雰囲気中で行われる。いくつかの実施形態では、加熱は約650~850℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、プロセスは、自立した前駆体要素を予熱することを含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、カソード活物質の追加の加熱ステップを含まない。
【0017】
いくつかの実施形態では、プロセスは、自立した焼成要素を破壊して焼成要素粉末を形成することをさらに含む。いくつかの実施形態では、破壊は、破砕、粉砕、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるステップを含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、カソード活物質を処理することをさらに含む。いくつかの実施形態では、処理は、篩分け、洗浄、濾過、乾燥、コーティング、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるステップを含む。
【0018】
別の態様では、カソード電極を形成するためのプロセスが記載される。このプロセスは、本明細書に記載のカソード活物質を電極膜に組み込むことと、電極膜を集電体上に配置することとを含む。
【0019】
別の態様では、エネルギー貯蔵装置を形成するためのプロセスが記載される。このプロセスは、セパレータ、アノード電極および本明細書に記載のカソード電極をハウジング内に配置することを含み、セパレータは、アノード電極とカソード電極との間に配置される。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は電池である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】サヤに保持された従来技術のカソード前駆体粉末の概略図である。
【0021】
図2A】いくつかの実施形態による形成された乾燥レンガの画像を示す。
【0022】
図2B】いくつかの実施形態によるベーキング後に崩壊した図2Aの乾燥レンガの画像を示す。
【0023】
図2C】いくつかの実施形態による水およびバインダーを含む形成された自立レンガの画像を示す。
【0024】
図2D】いくつかの実施形態によるベーキング後の図2Cの自立レンガの画像を示す。
【0025】
図3A】いくつかの実施形態による複数の貫通孔を有する自立した前駆体レンガの概略図である。
【0026】
図3B】いくつかの実施形態による図3Aの自立した前駆体レンガのスタックの概略図である。
【0027】
図3C】いくつかの実施形態による自立した前駆体タイルの概略図である。
【0028】
図3D】いくつかの実施形態による図3Cの自立した前駆体タイルのスタックの概略図である。
【0029】
図4】いくつかの実施形態による形成プロセスを通してカソード材料を形成するプロセスを示すフローチャートである。
【0030】
図5A】いくつかの実施形態によるプレス形成された前駆体レンガの画像を示す。
【0031】
図5B】いくつかの実施形態によるプリベークレンガの画像を示す。
【0032】
図5C】いくつかの実施形態による焼成プロセスを通してその形態を保持した焼成レンガの画像を示す。
【0033】
図5D】いくつかの実施形態による焼成プロセスを通してその形態を保持していない焼成レンガの画像を示す。
【0034】
図6A】いくつかの実施形態による焼成プロセスを通してその形態を保持した焼成タイルの画像を示す。
【0035】
図6B】いくつかの実施形態による焼成プロセスを通してその形態を保持していない焼成タイルの画像を示す。
【発明の詳細な説明】
【0036】
結晶化度が向上したカソード活物質を調製する様々な実施形態が本明細書で提供される。特定の実施形態では、自立した前駆体要素(例えば、レンガおよびタイル)が形成され、加熱されて、カソード活物質を含む自立した焼成要素(例えば、レンガおよびタイル)を生成し、カソード活物質は結晶化度の向上を示す。例えば、いくつかの実施形態では、リチウムと金属粉末との混合物は、自立したまたは自立できる要素(例えば、レンガおよびタイル)に形成され、その後、高温炉を通って搬送される。いくつかの実施形態では、要素(例えば、前駆体、プリベーク要素および/または焼成要素)は、レンガおよび/またはタイルなどの自立している任意の幾何学的形状または形態であってもよい。
【0037】
自立した要素(例えば、レンガおよびタイル)の使用は、製造プロセスからのサヤの除去を可能にし、以下のような製造における多くの改善をもたらす:1)焼結プロセスの体積効率の増加;2)一般的な工業用キルンの処理量が増加する;3)各サイクルで加熱および冷却する必要がある熱質量の減少;4)炉に供給される粉末混合物の熱伝導率の増加;5)熱均一性が増加する;6)必要なプロセス滞留時間の短縮;7)支持体の幾何学的形状(例えば、サヤ対プレート)を単純化することによる消耗品コストの削減。
前駆体混合物
【0038】
要素の形成の前に、一実施形態では、試薬および金属前駆体を含む前駆体混合物が形成される。いくつかの実施形態では、試薬はリチウム試薬である。いくつかの実施形態では、リチウム試薬は、水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、炭酸リチウム、およびそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、金属前駆体は、金属酸化物(Mxn)、金属水酸化物(Mx(OH)n)、金属炭酸塩(Mx(CO3n)、およびそれらの組み合わせから選択され、「M」は金属を表し、「x」および「n」は電荷的に中性な金属前駆体を作り出す値である。いくつかの実施形態では、金属前駆体は、Ni、Mn、Co、Al、Mg、Fe、Ti、およびそれらの組み合わせから選択される金属(「M」)を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、前駆体混合物は、溶媒をさらに含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、焼成プロセスを通して前駆体混合物から形成された要素の形状を維持するのに役立ち得る。いくつかの実施形態では、溶媒は水である。いくつかの実施形態では、前駆体混合物は、0.1重量%、0.5重量%、1重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%もしくは30重量%の溶媒、または約0.1重量%、0.5重量%、1重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%もしくは30重量%の溶媒、またはそれらの間の任意の範囲の値を含む。いくつかの実施形態では、前駆体混合物は、溶媒もしくは添加された溶媒を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態では、前駆体混合物は、水もしくは添加された水を含まないか、または実質的に含まない。例えば、いくつかの実施形態では、水または添加された水を実質的に含まない前駆体混合物は、大気水分から吸収される水を含み得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、前駆体混合物は、バインダーをさらに含む。いくつかの実施形態では、バインダーは、焼成プロセスを通して前駆体混合物から形成された要素の形状を維持するのに役立ち得る。いくつかの実施形態では、バインダーはポリマー材料を含む。いくつかの実施形態では、バインダーは水溶性ポリマー材料を含む。いくつかの実施形態では、バインダーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびそれらの塩(例えば、ナトリウムCMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ならびにそれらの組み合わせから選択されるポリマー材料を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー材料は、20000、25000、28000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000、110000、1200000、1300000、1400000、1600000もしくは2000000、または約20000、25000、28000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000、110000、1200000、1300000、1400000、1600000もしくは2000000、またはそれらの間の任意の範囲の値の重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、前駆体混合物は、0.01重量、0.02重量%、0.025重量%、0.3重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.07重量%、0.08重量%、0.09重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、1重量%、1.2重量%、1.5重量%もしくは2重量%、または約0.01重量、0.02重量%、0.025重量%、0.3重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.07重量%、0.08重量%、0.09重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、1重量%、1.2重量%、1.5重量%もしくは2重量%、またはそれらの間の任意の範囲の値のバインダーを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、前駆体混合物は添加剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、添加剤は、Fe、Ti、およびそれらの組み合わせから選択される元素を含む。
前駆体および焼成要素
【0042】
前駆体混合物から、前駆体または未加工要素が形成され、要素は自立しているかまたは自立できる。いくつかの実施形態では、自立した前駆体レンガは、プリベーキングまたは予熱ステップで加熱されて自立したプリベーク要素を形成する。さらに、次いで、自立した前駆体またはプリベーク要素を加熱して、試薬と金属前駆体とを反応させ、自立した焼成要素を形成することができ、焼成要素はカソード活物質を含む。前駆体要素は、それが形成される前駆体混合物と同じまたは実質的に同じ組成を含む。自立したまたは自立できる要素は、自重でその形状および構造を保持する要素として理解される。
【0043】
図2Aおよび図2Bは、いくつかの実施形態による水およびバインダーを含まないレンガの写真画像であり、図2Cおよび図2Dは、いくつかの実施形態による水およびバインダーを含むレンガの画像である。図2Aでは、水およびバインダーを含まない混合物から形成された乾燥レンガは、自立した前駆体レンガに形成される。この実施形態では、前駆体レンガは1.7g/cm3の密度を有することが分かった。しかしながら、図2Aの乾燥レンガは、形成されたレンガ構造を維持せず、図2Bに示すように経時的に崩壊した。対照的に、図2Cは、約1.8g/cm3の密度で形成された水およびバインダーを含むレンガを示す。このレンガは、図2Dに示すように、経時的にその構造を実質的に維持することが分かった。図2Cおよび図2Dに示すレンガは、本明細書で説明するように自立していると考えることができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、自立した前駆体要素は、複数の貫通孔を含む。図3Aは、いくつかの実施形態による複数の貫通孔を含む自立した前駆体レンガの概略図である。図3Bは、複数の貫通孔を含むそのような自立した前駆体レンガを順に積み重ねた状態で示す概略図である。いくつかの実施形態では、自立した前駆体要素は、要素が積み重ねられると、隣接する要素の間に少なくとも1つのチャネルが形成されるような表面パターンを含む。
【0045】
図4Aは、いくつかの実施形態による波面パターンを有する自立した前駆体タイルの概略図である。図4Bは、タイルが積み重ねられると、隣接する積み重ねられたタイルの間に複数のチャネルが形成されるような波面パターンを有するそのような自立した前駆体タイルの概略図である。
【0046】
前駆体要素(または任意の形態、例えば、前駆体、プリベーク、焼成、または開示されるプロセスの任意の他のステップの間)は、積み重ねられると少なくとも1つのチャネルの形成を可能にする少なくとも1つの貫通孔および/または表面パターンを含んでいてよい。積み重ねられたレンガまたはタイルの間のそのような貫通孔および/またはチャネルは、要素への大気(例えば、酸化性雰囲気(例えば、酸素を含む)、不活性雰囲気、または還元性雰囲気)拡散および要素からの水分放出を助けることができる。例えば、前駆体要素への酸素拡散は、カソード活物質を形成する反応の一部として酸素消費を助けることができ、貫通孔および/またはチャネルは、O2が要素内および/または要素の中心で試薬にアクセスすることを可能にし得、一方、要素の残りの部分が高い充填密度を維持することを可能にする。さらに、カソード活物質を形成する反応の一部としてH2Oが生成されるので、貫通孔および/またはチャネルは、水分が要素の内部および/または中心から漏れ出ることを可能にし得、それによって加熱後の要素の最終的な材料特性をもたらす。例えば、いくつかの実施形態では、貫通孔および/またはチャネルは、ベーキング後の要素の亀裂を防止することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、自立した前駆体要素は、2、4、6、8、10、12、15、20、25、30もしくは50の貫通孔、または約、2、4、6、8、10、12、15、20、25、30もしくは50の貫通孔、またはそれらの間の任意の範囲の値の貫通孔を含む。いくつかの実施形態では、複数の貫通孔の各々は、直径が1mm、5mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、40mm、50mm、75mmもしくは100mm、または約1mm、5mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、40mm、50mm、75mmもしくは100mm、またはそれらの間の任意の範囲の値である。いくつかの実施形態では、複数の貫通孔の各々は、他の貫通孔から、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、17mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、60mm、65mm、70mm、75mm、80mm、85mm、90mm、95mm、100mm、120mm、150mmもしくは200mm、または約10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、17mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、60mm、65mm、70mm、75mm、80mm、85mm、90mm、95mm、100mm、120mm、150mmもしくは200mm、またはそれらの間の任意の範囲の値だけ離間している。いくつかの実施形態では、貫通孔は、要素の少なくとも1つの表面上で要素を通して均一に分布しているか、または実質的に均一に分布している。いくつかの実施形態では、要素は、全要素体積の、0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、4%、5%、6%、8%、10%、15%、20%、25%、30%もしくは40%、約0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、4%、5%、6%、8%、10%、15%、20%、25%、30%もしくは40%、少なくとも0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、4%、5%、6%、8%、10%、15%、20%、25%、30%もしくは40%、または少なくとも約0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、4%、5%、6%、8%、10%、15%、20%、25%、30%もしくは40%、またはそれらの間の任意の範囲の値の貫通孔を含む。いくつかの実施形態では、自立した要素は貫通孔を含まない。
【0048】
いくつかの実施形態では、隣接する一対の自立した前駆体要素は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30もしくは50のチャネル、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30もしくは50のチャネル、またはそれらの間の任意の範囲の値のチャネルを含む。いくつかの実施形態では、複数のチャネルの各々は、要素スタックの外側から見たときの特性寸法(例えば、長さ、幅、直径)が1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、17mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、60mm、70mm、75mmもしくは100mm、または約1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、17mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、60mm、70mm、75mmもしくは100mm、またはそれらの間の任意の範囲の値である。いくつかの実施形態では、複数のチャネルの各々は、別のチャネルから、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、17mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、60mm、65mm、70mm、75mm、80mm、85mm、90mm、95mm、100mm、120mm、150mmもしくは200mm、または約10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、17mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、60mm、65mm、70mm、75mm、80mm、85mm、90mm、95mm、100mm、120mm、150mmもしくは200mm、またはそれらの間の任意の範囲の値だけ離間している。いくつかの実施形態では、複数のチャネルのうちの少なくとも1つは、隣接する一対の自立した要素の長さを延長する。いくつかの実施形態では、複数のチャネルの各々は、隣接する一対の自立した要素の長さにわたって延在する。いくつかの実施形態では、自立した前駆体要素は貫通孔を含まない。
【0049】
いくつかの実施形態では、自立した前駆体要素は、0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、8mm、10mm、20mm、40mm、60mmもしくは100mm、約0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、8mm、10mm、20mm、40mm、60mmもしくは100mm、最大で0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、8mm、10mm、20mm、40mm、60mmもしくは100mm、または最大で約0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、8mm、10mm、20mm、40mm、60mmもしくは100mm、またはそれらの間の任意の範囲の値の厚さを有する。
【0050】
いくつかの実施形態では、自立した前駆体要素は、1g/cm3、1.2g/cm3、1.3g/cm3、1.4g/cm3、1.5g/cm3、1.6g/cm3、1.7g/cm3、1.8g/cm3、1.9g/cm3、2g/cm3、2.2g/cm3、2.3g/cm3、2.4g/cm3、2.6g/cm3、2.8g/cm3、3g/cm3、3.5g/cm3、4g/cm3、4.5g/cm3もしくは5g/cm3、または約1g/cm3、1.2g/cm3、1.3g/cm3、1.4g/cm3、1.5g/cm3、1.6g/cm3、1.7g/cm3、1.8g/cm3、1.9g/cm3、2g/cm3、2.2g/cm3、2.3g/cm3、2.4g/cm3、2.6g/cm3、2.8g/cm3、3g/cm3、3.5g/cm3、4g/cm3、4.5g/cm3もしくは5g/cm3、またはそれらの間の任意の範囲の値の密度を含む。いくつかの実施形態では、要素の密度は、貫通孔を除く要素の材料の密度である。
【0051】
いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%、99.2重量%、99.5重量%、99.8重量%、99.9重量%もしくは100重量%のカソード活物質、約90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%、99.2重量%、99.5重量%、99.8重量%、99.9重量%もしくは100重量%のカソード活物質、少なくとも90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%、99.2重量%、99.5重量%、99.8重量%、99.9重量%もしくは100重量%のカソード活物質、または少なくとも約90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%、99.2重量%、99.5重量%、99.8重量%、99.9重量%もしくは100重量%のカソード活物質、またはそれらの間の任意の範囲の値のカソード活物質を含む。いくつかの実施形態では、カソード活物質は、結晶性カソード活物質粒子を含む。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、98重量%、99重量%もしくは100重量%の結晶性カソード活物質粒子、約50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、98重量%、99重量%もしくは100重量%の結晶性カソード活物質粒子、少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、98重量%、99重量%もしくは100重量%の結晶性カソード活物質粒子、または少なくとも約50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、98重量%、99重量%もしくは100重量%の結晶性カソード活物質粒子、またはそれらの間の任意の範囲の値の結晶性カソード活物質粒子を含む。いくつかの実施形態では、カソード活物質は、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウムリン酸鉄(LFP)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、チタン酸リチウム(LTO)、リチウムニッケルマンガン酸化物(LNMO)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、ニッケルマンガンアルミニウム酸化物(NMA)、ニッケルコバルトマンガンアルミニウム酸化物(NMCA)、LiNiO2、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0052】
いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、1重量%、0.5重量%もしくは0.1重量%のリチウム試薬、約5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、1重量%、0.5重量%もしくは0.1重量%のリチウム試薬、最大で5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、1重量%、0.5重量%もしくは0.1重量%のリチウム試薬、または最大で約5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、1重量%、0.5重量%もしくは0.1重量%のリチウム試薬、またはそれらの間の任意の範囲の値のリチウム試薬を含む。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、1重量%、0.5重量%もしくは0.1重量%の金属前駆体、約5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、1重量%、0.5重量%もしくは0.1重量%の金属前駆体、最大で5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、1重量%、0.5重量%もしくは0.1重量%の金属前駆体、または最大で約5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、1重量%、0.5重量%もしくは0.1重量%の金属前駆体、またはそれらの間の任意の範囲の値の金属前駆体を含む。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、水を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、1重量%、0.5重量%、0.1重量%もしくは0.01重量%の水、約1重量%、0.5重量%、0.1重量%もしくは0.01重量%の水、最大で1重量%、0.5重量%、0.1重量%もしくは0.01重量%の水、または最大で約1重量%、0.5重量%、0.1重量%もしくは0.01重量%の水、もしくはそれらの間の任意の範囲の値の水を含む。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、1.2重量%、1.5重量%もしくは2重量%のバインダー、約0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、1.2重量%、1.5重量%もしくは2重量%のバインダー、最大で0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、1.2重量%、1.5重量%もしくは2重量%のバインダー、または最大で約0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、1.2重量%、1.5重量%もしくは2重量%のバインダー、またはそれらの間の任意の範囲の値のバインダーを含む。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、バインダーを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、分解されたバインダー残渣を含む。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、分解されたバインダー残渣を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、10重量%、9重量%、8重量%、7重量%、6重量%、5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、1重量%、0.5重量%もしくは0.1重量%の残留リチウム、約10重量%、9重量%、8重量%、7重量%、6重量%、5重量%、4重量%、3重量%、2重量%もしくは1重量%の残留リチウム、最大で10重量%、9重量%、8重量%、7重量%、6重量%、5重量%、4重量%、3重量%、2重量%もしくは1重量%の残留リチウム、または最大で約10重量%、9重量%、8重量%、7重量%、6重量%、5重量%、4重量%、3重量%、2重量%もしくは1重量%の残留リチウム、またはそれらの間の任意の範囲の値の残留リチウムを含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、複数の貫通孔を含む。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、要素が積み重ねられると、隣接する要素の間に少なくとも1つのチャネルが形成されるような表面パターンを含む。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素の複数の貫通孔および/またはチャネルは、自立した前駆体要素から保持されるか、または実質的に保持される。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、2、4、6、8、10、12、15、20、25、30もしくは50の貫通孔、または約、2、4、6、8、10、12、15、20、25、30もしくは50の貫通孔、またはそれらの間の任意の範囲の値の貫通孔を含む。いくつかの実施形態では、複数の貫通孔の各々は、直径が1mm、5mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、40mm、50mm、75mmもしくは100mm、または約1mm、5mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、40mm、50mm、75mmもしくは100mm、またはそれらの間の任意の範囲の値である。いくつかの実施形態では、複数の貫通孔の各々は、他の貫通孔から、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、17mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、60mm、65mm、70mm、75mm、80mm、85mm、90mm、95mm、100mm、120mm、150mmもしくは200mm、または約10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、17mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、60mm、65mm、70mm、75mm、80mm、85mm、90mm、95mm、100mm、120mm、150mmもしくは200mm、またはそれらの間の任意の範囲の値だけ離間している。いくつかの実施形態では、貫通孔は、要素の少なくとも1つの表面上で要素を通して均一に分布しているか、または実質的に均一に分布している。いくつかの実施形態では、要素は、全要素体積の、0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、4%、5%、6%、8%、10%、15%、20%、25%もしくは30%の貫通孔、約0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、4%、5%、6%、8%、10%、15%、20%、25%もしくは30%の貫通孔、少なくとも0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、4%、5%、6%、8%、10%、15%、20%、25%もしくは30%の貫通孔、または少なくとも約0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、4%、5%、6%、8%、10%、15%、20%、25%もしくは30%の貫通孔、またはそれらの間の任意の範囲の値の貫通孔を含む。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は貫通孔を含まない。
【0054】
いくつかの実施形態では、隣接する一対の自立した焼成要素は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30もしくは50のチャネル、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30もしくは50のチャネル、またはそれらの間の任意の範囲の値のチャネルを含む。いくつかの実施形態では、複数のチャネルの各々は、要素スタックの外側から見たときの特性寸法(例えば、長さ、幅、直径)が1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、17mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、60mm、70mm、75mmもしくは100mm、または約1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、17mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、60mm、70mm、75mmもしくは100mm、またはそれらの間の任意の範囲の値である。いくつかの実施形態では、複数のチャネルの各々は、別のチャネルから、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、17mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、60mm、65mm、70mm、75mm、80mm、85mm、90mm、95mm、100mm、120mm、150mmもしくは200mm、または約10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、17mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、60mm、65mm、70mm、75mm、80mm、85mm、90mm、95mm、100mm、120mm、150mmもしくは200mm、またはそれらの間の任意の範囲の値だけ離間している。いくつかの実施形態では、複数のチャネルのうちの少なくとも1つは、隣接する一対の自立した要素の長さを延長する。いくつかの実施形態では、複数のチャネルの各々は、隣接する一対の自立した要素の長さにわたって延在する。いくつかの実施形態では、自立した前駆体要素は貫通孔を含まない。
【0055】
いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、8mm、10mm、20mm、40mm、60mmもしくは100mm、約0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、8mm、10mm、20mm、40mm、60mmもしくは100mm、最大で0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、8mm、10mm、20mm、40mm、60mmもしくは100mm、または最大で約0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、8mm、10mm、20mm、40mm、60mmもしくは100mm、またはそれらの間の任意の範囲の値の厚さを有する。
【0056】
いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、0.8g/cm3、0.9g/cm3、1g/cm3、1.2g/cm3、1.3g/cm3、1.4g/cm3、1.5g/cm3、1.6g/cm3、1.7g/cm3、1.75g/cm3、1.8g/cm3、1.9g/cm3、2g/cm3、2.2g/cm3、2.3g/cm3、2.4g/cm3、2.6g/cm3、2.8g/cm3、3g/cm3、3.5g/cm3、4g/cm3、4.5g/cm3、5g/cm3、5.5g/cm3もしくは6g/cm3、または約0.8g/cm3、0.9g/cm3、1g/cm3、1.2g/cm3、1.3g/cm3、1.4g/cm3、1.5g/cm3、1.6g/cm3、1.7g/cm3、1.75g/cm3、1.8g/cm3、1.9g/cm3、2g/cm3、2.2g/cm3、2.3g/cm3、2.4g/cm3、2.6g/cm3、2.8g/cm3、3g/cm3、3.5g/cm3、4g/cm3、4.5g/cm3、5g/cm3、5.5g/cm3もしくは6g/cm3、またはそれらの間の任意の範囲の値の密度を含む。いくつかの実施形態では、自立した焼成要素は、亀裂を含まないか、または実質的に含まない。
【0057】
いくつかの実施形態では、自立した前駆体要素は、自立したプリベーク要素を形成する前に加熱され、その後加熱されて自立した焼成要素を形成することができる。要素の予熱は、前駆体が予備酸化されていない場合、自由水の脱水、LiOH・H2OのLiOHへの分解、および/または金属水酸化物前駆体(例えば、Ni0.83Mn0.06Co0.11(OH)2)の金属酸化物前駆体(例えば、Ni0.83Mn0.06Co0.11O)への分解を助けることができる。いくつかの実施形態では、自立したプリベーク要素は、前駆体および/または焼成要素に関して説明したように、積み重ねられたときに少なくとも1つのチャネルを可能にする貫通孔および表面パターンを含むことができる。いくつかの実施形態では、自立したプリベーク要素は、前駆体および/または焼成要素に関して説明したものと同様または同じ他の特性(例えば、寸法、密度および/または化学組成)を含むことができる。
要素およびカソード活物質形成ステップ
【0058】
図4は、いくつかの実施形態による形成プロセスを通してカソード材料の形成の一例を示す400フローチャートである。試薬402および前駆体404が提供され、混合406して混合物が形成される。試薬402の例としては、LiCO3、LiOH、およびLiOH・H2O等が挙げられ、前駆体の例としては、金属酸化物(MOn)、金属水酸化物(M(OH)n)、および金属炭酸塩(M(CO3n)が挙げられる。混合ステップ406において混合物が形成された後、この混合物を使用して、要素作製および積重ねステップ408においてプレートまたは基材上に装填された前駆体要素が形成される。次いで、要素を焼成ステップ410で加熱して、焼成要素を形成する。焼成要素は、基材から除去され、破壊されて、プレートフリップおよびサイズ低下ステップ412において焼成要素粉末を形成し、基材は、検査され、プレートリターンおよび検査ステップ414において要素作製および積重ねステップ408に戻される。焼成要素粉末は、表面処理ステップ416において表面処理され、カソード活物質LiMeO2418を形成する。
【0059】
いくつかの実施形態では、プロセスは、試薬を金属前駆体と混合して前駆体混合物を形成することを含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、前駆体混合物を圧縮して前駆体要素にすることを含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、前駆体要素を加熱して、カソード活物質を含む焼成要素を形成することを含む。いくつかの実施形態では、前駆体要素および/または焼成要素は自立した要素である。
【0060】
いくつかの実施形態では、プロセスは、貫通孔を含むように前駆体要素を修飾することを含む。いくつかの実施形態では、前駆体要素は、加熱されながら基材によって支持される。
【0061】
いくつかの実施形態では、前駆体要素は、トンネルキルン(例えば、低温および/または高温トンネルキルン)を通って搬送される。いくつかの実施形態では、前駆体またはプリベーク要素は、高温トンネルキルン内で加熱される。いくつかの実施形態では、低温および高温キルンは、異なる温度に設定された同じキルンである。いくつかの実施形態では、低温キルンと高温キルンとは異なるキルンである。いくつかの実施形態では、加熱は、酸化性雰囲気(例えば、酸素を含む雰囲気、例えば空気または酸素に富む雰囲気(すなわち、21体積%超、23.5体積%超または25体積%超の酸素))、不活性雰囲気(例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、および/または窒素を含む雰囲気)または還元性雰囲気(例えば、水素、一酸化炭素、および/または硫化水素を含む雰囲気)中で行われる。例えば、いくつかの実施形態では、リン酸鉄リチウム(LFP)の形成は、不活性雰囲気または還元雰囲気中での加熱(例えば焼成)によって行われる。いくつかの実施形態では、要素のプリベークおよび/または焼成加熱中に、ガスが貫通孔および/またはチャネルを通過する。いくつかの実施形態では、ガスは、酸化ガス(例えば、空気または酸素に富む雰囲気などの酸素を含む)、不活性ガス、または還元ガスを含む。いくつかの実施形態では、加熱は、700℃、725℃、750℃、760℃、780℃、800℃、820℃、840℃、850℃、860℃、880℃、900℃、950℃もしくは1000℃、約700℃、725℃、750℃、760℃、780℃、800℃、820℃、840℃、850℃、860℃、880℃、900℃、950℃もしくは1000℃、少なくとも700℃、725℃、750℃、760℃、780℃、800℃、820℃、840℃、850℃、860℃、880℃、900℃、950℃もしくは1000℃、または少なくとも約700℃、725℃、750℃、760℃、780℃、800℃、820℃、840℃、850℃、860℃、880℃、900℃、950℃もしくは1000℃、もしくはそれらの間の任意の範囲の値の温度で行われる。いくつかの実施形態では、プロセスは、自立した前駆体要素を予熱することを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、前駆体要素は、プリベーキングまたは予熱ステップ中に低温トンネルキルン内で加熱されて、プリベーク要素(例えば、レンガおよびタイル)を形成する。いくつかの実施形態では、プリベーキングステップは、要素の焼成加熱の前に行われる。いくつかの実施形態では、要素の焼成加熱は、プリベーキングステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、予熱は、焼成加熱温度より低い温度で行われる。いくつかの実施形態では、加熱は、80℃、100℃、120℃、140℃、160℃、180℃、200℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、280℃、300℃、320℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃もしくは750℃、約80℃、100℃、120℃、140℃、160℃、180℃、200℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、280℃、300℃、320℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃もしくは750℃、少なくとも80℃、100℃、120℃、140℃、160℃、180℃、200℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、280℃、300℃、320℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃もしくは750℃、少なくとも約80℃、100℃、120℃、140℃、160℃、180℃、200℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、280℃、300℃、320℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃もしくは750℃、もしくはそれらの間の任意の範囲の値の温度で行われる。いくつかの実施形態では、プロセスは、カソード活物質の追加の加熱ステップを含まない。いくつかの実施形態では、要素のプリベークおよび/または焼成加熱中に、ガスが貫通孔および/またはチャネルを通過する。いくつかの実施形態では、ガスは酸素(例えば空気)を含む。いくつかの実施形態では、自立したプリベークおよび/または焼成要素は、亀裂を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態では、加熱(例えば、プリベーキングおよび/または焼成)は、前駆体要素および/またはプリベーク要素中のバインダーを分解(例えば、燃焼および/または炭化)する。いくつかの実施形態では、分解されたバインダー残渣は、プリベーク要素および/または焼成要素から気化される。いくつかの実施形態では、分解されたバインダー残渣の少なくとも一部(例えば、測定可能な量)は、プリベーク要素および/または焼成要素に残る。いくつかの実施形態では、プリベーク要素および/または焼成要素は、分解されたバインダー残渣を含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態では、加熱は要素の密度を低下させる。
【0063】
いくつかの実施形態では、プロセスは、自立した焼成要素を破壊して焼成要素粉末を形成することを含む。いくつかの実施形態では、破壊は、破砕、粉砕、およびそれらの組み合わせから選択されるステップを含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、カソード活物質を処理することを含む。いくつかの実施形態では、処理は、篩分け、洗浄、濾過、乾燥、コーティング、およびそれらの組み合わせから選択されるステップを含む。いくつかの実施形態では、コーティングは、カソード活物質をTiO2、Al23、およびそれらの組み合わせから選択されるコーティング化合物でコーティングすることを含む。いくつかの実施形態では、コーティングは、スプレーコーティング、機械的融合、およびそれらの組み合わせから選択される方法によって行われる。
【0064】
図5A図5Dは、いくつかの実施形態による形成プロセスの様々な段階における貫通孔を有する様々なレンガの画像を示す。図5Aはプレス形成された前駆体レンガを示し、図5Bはプリベークレンガを示す。図5Cは、焼成プロセスを通してその形態を保持した焼成レンガを示し、図5Dは、焼成プロセスを通してその形態を保持せず、亀裂および裂け目が見られる焼成レンガを示す。図6Aおよび図6Bはそれぞれ、焼成プロセスを通してその形態を保持した積み重ねられた焼成タイルと、焼成プロセスを通してその形態を保持しなかった積み重ねられたタイルの画像を示す。
エネルギー貯蔵装置
【0065】
カソード活物質が単離されると、エネルギー貯蔵装置用の電極を調製するために使用することができる。いくつかの実施形態では、電極膜は、本明細書に記載のカソード活物質を含む。いくつかの実施形態では、カソード活物質は電極膜に組み込まれる。いくつかの実施形態では、電極フィルムはバインダーをさらに含む。いくつかの実施形態では、電極は、集電体と、本明細書に記載の電極膜とを含む。いくつかの実施形態では、電極膜は、カソード電極を形成するために集電体上に配置される。
【0066】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、本明細書に記載のカソード活物質を利用する。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、セパレータ、アノード電極、本明細書に記載のカソード電極、およびハウジングを含み、セパレータ、アノード電極およびカソード電極はハウジング内に配置され、セパレータはアノード電極とカソード電極との間に配置される。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、セパレータ、アノード電極および本明細書に記載のカソード電極をハウジング内に配置することによって形成され、セパレータはアノード電極とカソード電極との間に配置される。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は電池である。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置はリチウムイオン電池である。
【実施例
【0067】
プロセス、材料および/または結果として生じる生成物を含む本開示の例示的な実施形態は、以下の実施例に記載される。
実施例1
【0068】
ミクロンサイズの粉末の炭酸リチウムと電解二酸化マンガン(EMD)とをモル比Li/Mn=1.05で混合し、次いで100mm(H)×150mm(W)×300mm(L)の寸法で1.8g/cm3の密度を有する自立した未加工レンガに圧縮した。次いで、未加工レンガをセラミックプレート上に積み重ね、キルンに投入して、空気中で850℃で18時間焼成した。冷却後、自立した焼成レンガを破砕し、粉末に粉砕し、次いでその後400メッシュで篩い分けして、リチウムイオン電池用のカソード材料としてスピネルLiMn24(LMO)の最終生成物を得た。
実施例2
【0069】
Ni0.5Mn0.3Co0.3(OH)2球状粉末を500℃で2時間プリベークしてNi0.5Mn0.3Co0.3O(脱水前駆体)を得た後、Li/Mn=1.08のモル比で炭酸リチウムと混合した。レンガの完全性を高めるために、15重量%の水を混合ステップの最後に混合物に添加した。次いで、混合物を、100mm(H)×150mm(W)×300mm(L)の寸法で2.5g/cm3の密度を有する自立した未加工レンガに圧縮した。次いで、未加工レンガをセラミックプレート上に積み重ね、キルンに投入して、空気を流しながら880℃で12時間焼成した。冷却後、自立した焼成レンガを破砕し、粉末に粉砕し、次いで400メッシュで篩い分けして、リチウムイオン電池用の層状NMC532カソード材料の最終生成物を得た。
実施例3
【0070】
炭酸リチウムとNi0.6Mn0.2Co0.2CO3とをモル比Li/Mn=1.06で混合した。混合ステップの最後に、2重量%の水を混合物に添加した。次いで、混合物を、300mm(L)×50mm(W)×150mm(H)の寸法で2.2g/cm3の密度を有する自立した未加工レンガに圧縮した。次いで、未加工レンガをセラミックプレート上に積み重ね、キルンに投入して、乾燥空気を流しながら850℃で12時間焼成した。冷却後、自立した焼成レンガを破砕し、粉末に粉砕し、次いで400メッシュで篩い分けして、リチウムイオン電池用の層状NMC622カソード材料の最終生成物を得た。
実施例4
【0071】
水酸化リチウム一水和物およびNi0.6Mn0.6Co0.2(OH)2をLi/Mn=1.06のモル比で一緒に混合し、4重量%の水溶液を混合ステップの最後に混合物に添加し、ここで、水溶液は5重量%のポリビニルアルコール(PAV)を含む。次いで、混合物を、100mm(H)×150mm(W)×300mm(L)の寸法で2.0g/cm3の密度を有する自立した未加工レンガに圧縮し、レンガの内部には12の円筒形貫通孔(直径=20mm)を長さ方向に沿って均一に分布させた。次いで、未加工レンガをセラミックプレート上に積み重ね、キルンに投入して、乾燥空気を流しながら850℃で12時間焼成した。冷却後、自立した焼成レンガを破砕し、粉末に粉砕し、次いで400メッシュで篩い分けして、リチウムイオン電池用の層状NMC622カソード材料の最終生成物を得た。
実施例5
【0072】
水酸化リチウム一水和物およびNi0.8Mn0.1Co0.1(OH)2をLi/Mn=1.02のモル比で一緒に混合し、4重量%の水溶液を混合ステップの最後までに混合物に添加し、ここで、水溶液は、2重量%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を含む。次いで、混合物を、100mm(H)×150mm(W)×300mm(L)の寸法で2.5g/cm3の自立した未加工レンガに圧縮し、レンガの内部には12の正方形の貫通孔(辺長=20mm)を長さの方向に沿って均一に分布させた。次いで、未加工レンガをセラミックプレート上に積み重ね、キルンに投入して、酸素を流しながら780℃で12時間焼成した。冷却後、自立した焼成レンガを破砕し、粉末に粉砕し、次いで400メッシュで篩い分けし、次いで洗浄、濾過、乾燥を含む表面処理プロセスに供し、その後、機械的融合機に通して0.5重量%のナノサイズTiO2でコーティングした。
実施例6
【0073】
水酸化リチウムとNi0.8Co0.1Al0.1(OH)2とをモル比Li/Mn=1.02で混合した。次いで、粉末を、100mm(H)×150mm(W)×300mm(L)の寸法で1.8g/cm3の自立した未加工レンガに圧縮した。次いで、未加工レンガをセラミックプレート上に積み重ね、キルンに投入して、酸素を流しながら760℃で12時間焼成した。冷却後、レンガを破砕し、粉末に粉砕し、次いで400メッシュで篩い分けし、次いで洗浄、濾過、乾燥を含む表面処理プロセスに供し、その後、機械的融合機に通して0.3重量%のナノサイズAl23でコーティングした。
実施例7
【0074】
LiOH・H2O、Ni0.83Mn0.06Co0.11(OH)2、バインダー添加剤としてのナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC)、および水の混合物を調製し、タイルに圧縮した。LiOH・H2OとNi0.83Mn0.06Co0.11(OH)2とのモル比は1.055であった。CMC添加剤の重量は、LiOH・H2OとNi0.83Mn0.06Co0.11(OH)2との総重量の0.25%であり、水の重量はLiOH・H2OとNi0.83Mn0.06Co0.11(OH)2との総重量の7.0%であった。
【0075】
タイルを調製するために、LiOH・H2O、Ni0.83Mn0.06Co0.11(OH)2およびCMCの混合物を乾式混合し、次いで混合中に水を添加した。湿った混合物を金型に充填し、次いでデザインされた幾何学的形状を有するタイルにプレスした。プレス時のタイルの厚さは10~50mmであり、嵩密度は2.20g/cm3であった。
【0076】
このような前駆体タイルは自立しており、6枚の前駆体タイルを積み重ねて250℃の熱風を流しながらキルンに投入して、プリベーキングを行った。プリベーキング後、自立したプリベークタイルを、制御された雰囲気でローラハースキルン(RHK)に投入して焼成を行った。次いで、自立した焼成タイルを破砕し、粉砕し、濾過し、洗浄し、乾燥させ、活物質を単離した。
【0077】
そのような混合物は、積み重ねられ、プリベークされ、焼成されたときに自立したままである自立した前駆体タイルを達成することが実証された。
比較例
【0078】
LiOH・H2O、Ni0.83Mn0.06Co0.11(OH)2、バインダー添加剤としてのナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC)、および水の混合物を調製し、タイルに圧縮した。LiOH・H2OとNi0.83Mn0.06Co0.11(OH)2とのモル比は1.030であった。CMC添加剤の重量は、LiOH・H2OとNi0.83Mn0.06Co0.11(OH)2との総重量の0.05%であり、水の重量はLiOH・H2OとNi0.83Mn0.06Co0.11(OH)2との総重量の3.0%であった。
【0079】
タイルを調製するために、LiOH・H2O、Ni0.83Mn0.06Co0.11(OH)2およびCMCの混合物を乾式混合し、次いで混合中に水を添加した。湿った混合物を金型に充填し、次いでデザインされた幾何学的形状を有するタイルにプレスした。プレス時のタイルの厚さは10~50mmであり、嵩密度は1.90g/cm3である。
【0080】
そのような混合物は、積み重ねられ、プリベークされ、焼成されたときに自立したままではない前駆体タイルを達成することが実証された。
【0081】
特定の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、本開示の範囲を限定することは意図していない。実際、本明細書に記載の新規な方法およびシステムは、様々な他の形態で具体化され得る。さらに、本開示の精神を逸脱しない範囲で、本明細書に記載のシステムおよび方法における様々な省略、置換および変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物は、本開示の範囲および精神に含まれるような形態または修正を包含することを意図している。
【0082】
特定の態様、実施形態、または実施例に関連して記載された特徴、材料、特性、またはグループは、それと互換性がない限り、本項または本明細書の他の箇所に記載された任意の他の態様、実施形態、または実施例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)に開示された特徴のすべて、および/またはそのように開示された任意の方法もしくはプロセスのステップのすべては、そのような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。保護は、任意の前述の実施形態の詳細に限定されない。保護は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規なもの、もしくは任意の新規な組み合わせ、またはそのように開示された任意の方法もしくはプロセスのステップの任意の新規なもの、もしくは任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0083】
さらに、別個の実装形態の文脈で本開示に記載されている特定の特徴は、単一の実装形態において組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実装形態の文脈で説明されている様々な特徴は、複数の実装形態において別々に、または任意の適切な部分的組み合わせで実装することもできる。さらに、特徴は特定の組み合わせで作用するものとして上述され得るが、特許請求される組み合わせからの1つもしくは複数の特徴は、場合によっては、組み合わせから削除することができ、この組み合わせは、部分的組み合わせまたは部分的組み合わせの変形として特許請求され得る。
【0084】
さらに、動作は、特定の順序で図面に示され、または本明細書に記載され得るが、そのような動作は、望ましい結果を達成するために、示された特定の順序で、または連続した順序で実行される必要はなく、またはすべての動作が実行される必要はない。図示または説明されていない他の動作は、例示的な方法およびプロセスに組み込むことができる。例えば、記載された動作のいずれかの前、後、同時に、または間に、1つもしくは複数の追加の動作を実行することができる。さらに、動作は、他の実装形態では配置を変更したり、順序を変更したりすることができる。いくつかの実施形態では、図示および/または開示されたプロセスで行われる実際のステップは、図に示されたものとは異なり得ることが当業者には理解されよう。実施形態に応じて、上述したステップのうちの特定のステップを削除してもよく、他のステップを追加してもよい。さらに、上記で開示された特定の実施形態の特徴および属性は、追加の実施形態を形成するために異なる方法で組み合わせることができ、そのすべてが本開示の範囲内に含まれる。また、上記の実装形態における様々なシステム構成要素の分離は、すべての実装形態においてそのような分離を必要とすると理解されるべきではなく、記載された構成要素およびシステムは、一般に、単一の製品に一緒に統合されるか、または複数の製品にパッケージ化され得ることを理解されたい。例えば、本明細書に記載のエネルギー貯蔵システムの構成要素のいずれかは、エネルギー貯蔵システムを形成するために、別個に提供されてもよく、または統合されてもよい(例えば、一緒にパッケージ化されるか、または一緒に取り付けられる)。
【0085】
本開示の目的のために、特定の態様、利点、および新規な特徴が本明細書に記載されている。必ずしもそのような利点のすべてが、任意の特定の実施形態に従って達成され得るわけではない。したがって、例えば、当業者は、本開示が、本明細書で教示または示唆され得るような他の利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示されるような1つの利点または利点群を達成するように具体化または実施され得ることを認識するであろう。
【0086】
「can」、「could」、「might」、または「may」などの条件付き言語は、特に明記しない限り、または使用される文脈内で他の意味で理解されない限り、一般に、特定の実施形態が特定の特徴、要素、および/またはステップを含むが、他の実施形態は含まないことを伝えることを意図している。したがって、そのような条件付き言語は、一般に、特徴、要素、および/またはステップが1つもしくは複数の実施形態に何らかの形で必要とされること、または1つもしくは複数の実施形態が、ユーザ入力またはプロンプトの有無にかかわらず、これらの特徴、要素、および/またはステップが任意の特定の実施形態に含まれるか、または実行されるべきかを決定するための論理を必然的に含むことを意味するものではない。
【0087】
句「X、YおよびZのうちの少なくとも1つ」という言い回しなどの接続詞は、特に明記しない限り、項目、用語などがX、Y、またはZのいずれかであり得ることを伝えるために一般に使用される文脈で理解される。したがって、そのような接続詞は、一般に、特定の実施形態がXの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ、およびZの少なくとも1つの存在を必要とすることを意味することを意図していない。
【0088】
本明細書で使用される「およそ」、「約」、「一般に」、および「実質的に」などの本明細書で使用される程度の言語は、依然として所望の機能を実行するか、または所望の結果を達成する、記載された値、量、または特性に近い値、量、または特性を表す。
【0089】
本開示の範囲は、本項または本明細書の他の場所における実施形態の特定の開示によって限定されることを意図するものではなく、本項または本明細書の他の場所に提示されるように、または将来提示されるように、特許請求の範囲によって定義され得る。特許請求の範囲の文言は、特許請求の範囲で使用される文言に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書に記載された例または本願の実行中に限定されず、これらの例は非排他的であると解釈されるべきである。
【0090】
特定の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、本開示の範囲を限定することは意図していない。実際、本明細書に記載の新規な方法およびシステムは、様々な他の形態で具体化され得る。さらに、本開示の精神を逸脱しない範囲で、本明細書に記載のシステムおよび方法における様々な省略、置換および変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物は、本開示の範囲および精神に含まれるような形態または修正を包含することを意図している。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ定義される。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
【国際調査報告】