(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 60/139 20210101AFI20230927BHJP
A61M 60/216 20210101ALI20230927BHJP
A61M 60/237 20210101ALI20230927BHJP
A61M 60/419 20210101ALI20230927BHJP
A61M 60/825 20210101ALI20230927BHJP
A61M 60/81 20210101ALI20230927BHJP
A61M 60/806 20210101ALI20230927BHJP
A61M 60/411 20210101ALI20230927BHJP
F04D 7/04 20060101ALI20230927BHJP
F04D 13/08 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
A61M60/139
A61M60/216
A61M60/237
A61M60/419
A61M60/825
A61M60/81
A61M60/806
A61M60/411
F04D7/04 Z
F04D13/08 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518126
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(85)【翻訳文提出日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2021075328
(87)【国際公開番号】W WO2022063650
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラウヴィンケル マリウス
(72)【発明者】
【氏名】ケルクホフス ヴォルフガング
【テーマコード(参考)】
3H130
4C077
【Fターム(参考)】
3H130AA05
3H130AB22
3H130AB42
3H130AB50
3H130AC18
3H130BA66G
3H130BA66H
3H130DA02Z
3H130DD01Z
3H130DF00Z
3H130EC00G
3H130EC00H
4C077AA02
4C077DD10
4C077KK30
(57)【要約】
本発明は、患者の血管内への経皮挿入のための血管内血液ポンプ(1)に関する。血液ポンプ(1)は、血流入口(21)及び血流出口(22)を有するポンプケーシング(2)と、ポンプケーシング(2)内に配列されて回転軸(10)の周りに回転可能であるインペラ(3)と、を備える。インペラ(3)は、血流入口(21)から血流出口(22)まで血液を搬送するための大きさ及び形状のブレード(31)を有する。血液ポンプ(1)は、インペラ(3)を回転させるための駆動ユニット(4)を備え、駆動ユニット(4)は、回転軸(10)の周りに配列された複数の支柱(40)を含む磁気コア(400)と、支柱(40)を接続し、中間領域(59)内で支柱(40)同士の間に延在する背板(50)と、を備える。コイル巻線(44)が、支柱(40)のそれぞれの周りに配列されている。コイル巻線(44)は、回転磁界を生成するように制御可能であり、インペラ(3)は、回転磁界と相互作用してインペラ(3)の回転を生じさせるように配列された磁気構造(32)を含む。支柱(40)の少なくとも1つの少なくとも一部分の材料は、背板(50)の中間領域(59)の材料と一体である。更に、本発明は、磁気コア(400)の製造方法及び血管内血液ポンプ(1)の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管内に経皮的に挿入するための血管内血液ポンプ(1)であって、
血流入口(21)及び血流出口(22)を有するポンプケーシング(2)と、
前記ポンプケーシング(2)内に配列されて回転軸(10)の周りで回転可能であるインペラ(3)であって、前記インペラ(3)は、前記血流入口(21)から前記血流出口(22)まで血液を搬送するための大きさ及び形状のブレード(31)を有する、インペラ(3)と、
前記インペラ(3)を回転させるための駆動ユニット(4)であって、前記駆動ユニット(4)は、前記回転軸(10)の周りに配列された複数の支柱(40)、及び前記支柱(40)を接続し、中間領域(59)内で前記支柱(40)同士の間に延在する背板(50)を含む磁気コア(400)を備える、駆動ユニット(4)と、
前記支柱(40)のそれぞれの周りに配設されたコイル巻線(44)であって、前記コイル巻線(44)は、回転磁界を生成するように制御可能である、コイル巻線(44)と、
を備え、
前記インペラ(3)は、前記回転磁界と相互作用するように配列されて前記インペラ(3)の回転を生じさせる磁気構造(32)を備え、
前記磁気コア(400)は、軟磁性材料がラミネート加工積層シートに横向きの横断面内で導電性に関して不連続であるような前記軟磁性材料の積層シート(85)を備えるか又はそれから構成され、
前記支柱(40)内の前記シート(85)の前記回転軸(10)に対する向きは、全ての支柱(40)について同じである、血管内血液ポンプ(1)。
【請求項2】
前記支柱(40)のうちの少なくとも1つの少なくとも一部分の材料は、前記背板(50)の前記中間領域(59)の材料と一体である、請求項1に記載の血管内血液ポンプ(1)。
【請求項3】
前記支柱(40)のそれぞれ内で、前記軟磁性材料のシート(85)又は前記軟磁性材料のシート(85)のうちの2つの間の中間層のうちの1つは、前記回転軸(10)を含む平面内に配列されている、請求項1又は2に記載の血管内血液ポンプ(1)。
【請求項4】
前記支柱のそれぞれ内で、前記軟磁性材料のシート(85)は、前記回転軸(10)の周りに同心に配列されている、請求項1又は2に記載の血管内血液ポンプ(1)。
【請求項5】
前記軟磁性材料内の導電性に関する不連続部を橋絡する少なくとも1つの溶接部(82、83、86)を備える、請求項1~4のうちのいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの溶接部(82、83、86)のうちの少なくとも1つは、前記支柱(40)の反対側の、前記背板(50)の表面上に配列されている、請求項5に記載の血管内血液ポンプ(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの溶接部のうちの少なくとも1つは、前記背板(50)の反対側の、支柱(40)の端面上に配列されている、請求項5又は6に記載の血管内血液ポンプ(1)。
【請求項8】
血管内血液ポンプ(1)の駆動ユニット(4)のための磁気コア(400)の製造方法であって、前記磁気コア(400)は、回転軸(10)を有し、前記回転軸(10)の周りに配列された複数の支柱(40)、及び前記支柱(40)を接続する背板(50)を含み、前記方法は、
軟磁性材料がラミネート加工シートに横向きの横断面内で導電性に関して不連続であるような前記軟磁性材料の積層シート(85)を含むか又はそれから構成されたモノブロック(9)を提供するステップと、
前記支柱(40)を作成するように前記モノブロック(9)内に溝をカットするステップであって、それにより、前記支柱(40)が前記回転軸(10)の周りに配列され、前記支柱(40)内の前記シート(85)の前記回転軸(10)に対する向きが全ての支柱(40)について同じである、ステップと、
を含む、製造方法。
【請求項9】
前記溝は、前記支柱(40)のそれぞれ内で、前記軟磁性材料のシート(85)又は前記軟磁性材料のシート(85)のうちの2つの間の中間層のうちの1つが、前記回転軸(10)を含む平面内に配列されるようにカットされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溝は、前記支柱(40)のそれぞれ内で、前記軟磁性材料のシート(85)が前記回転軸(10)の周りに同心に配列されるようにカットされている、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記溝を前記モノブロック(9)内にカットする際に、前記背板(50)は、前記背板(50)が前記支柱(40)と1つの一体ピースを形成するように作成される、請求項8~10のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記溝(49)は、放電加工を用いてカットされる、請求項8~11のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記溝は、放電加工によるワイヤカッティングを使用してカットされる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記溝は、電解加工を用いてカットされる、請求項8~11のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
磁気コア(400)を有する駆動ユニット(4)を有している血管内血液ポンプ(1)の製造方法であって、前記磁気コア(400)は、請求項8~14のうちのいずれか1項に従って製造される、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液ポンプ、特に、患者の血管内に経皮的に挿入して患者の血管内の血流を支持するための血管内血液ポンプに関する。血液ポンプは、改善された駆動ユニットを有する。
【背景技術】
【0002】
軸方向血液ポンプ、遠心(すなわち、放射方向)血液ポンプ又は混合型血液ポンプのような異なるタイプの血液ポンプが公知であり、血流は、軸方向力及び放射方向力の両方によって引き起こされる。血管内血液ポンプは、カテーテルによって大動脈のような患者の血管内に挿入される。血液ポンプは、典型的には、流路によって接続された血流入口と血流出口とを有するポンプケーシングを備える。血流入口から血流出口までの流路に沿って血流を生じさせるために、インペラ又はロータが、ポンプケーシング内に回転可能に支持され、併せてインペラは、血液を搬送するためのブレードを備える。
【0003】
血液ポンプは、典型的には、電動モータであり得る駆動ユニットによって駆動される。例えば、特許文献1が、電気モータに磁気的に結合され得るインペラを有する体外血液ポンプを開示する。インペラは、電動モータ内の磁石に隣接して配設されている磁石を含む。インペラ内の磁石とモータ内の磁石との間の誘引力により、モータの回転がインペラに伝達される。回転部品の数を削減するために、回転磁界を利用することが、特許文献1から公知であり、併せて駆動ユニットは、回転軸の周りに配列された複数の静止支柱を有し、それぞれの支柱は、ワイヤコイル巻線を担持して磁気コアとして作用する。制御ユニットが、コイル巻線に連続的に電圧を供給して回転磁界を生成する。十分に強い磁気結合を提供するために、磁力は十分に高くなければならず、これは、駆動ユニットに供給される十分に高い電流によって、又は大きい磁石を提供することによって達成され得るけれども、このことは血液ポンプの大きい全径をもたらす。
【0004】
特許文献2が、血液ポンプ、特に、駆動ユニットとインペラとの間に磁気結合を有する血管内血液ポンプを開示し、血液ポンプは、コンパクトな設計と、特にポンプの大きさに対するポンピングパワーの高い比と、を有し、その結果、血液ポンプを経血管的に、経静脈的に、経皮的に、若しくは経弁的に血管内に挿入することを可能にする十分に小さい外形寸法をもたらすか、又は取り扱い及び利便性の理由で更により小さくなる。
【0005】
より具体的には、特許文献2の血液ポンプは、血流入口及び血流出口を有するポンプケーシングと、インペラと、インペラを回転させるための駆動ユニットと、を備える。回転軸の周りでの及びポンプケーシング内でのインペラの回転によって、血液は、インペラのブレードによって血流入口から血流出口まで搬送され得る。駆動ユニットは、好ましくは6本の複数の支柱と、支柱の後方端部を接続してヨークとして作用する背板と、を備える磁気コアを備える。支柱は、回転軸に垂直である平面内に見られると、回転軸の周りで円状に配列され、支柱のそれぞれは、好ましくはその回転軸に平行である長手方向軸を有する。背板は、貫通開口部を有し、そのそれぞれ内に、それぞれの支柱の後方端部の端面が背板の後方面と同一平面内にあるように形態的にぴったりした態様で支柱の後方端部が受け取られる。このようにして、支柱と背板との間の磁気的接続が、支柱の周囲と背板の開口部の内側輪郭との間に生成される。支柱はそれぞれ、支柱の周りに配設されたコイル巻線を有する。インペラを駆動するための回転磁界を生成するために、コイル巻線がコヒーレントな態様で制御され得る。インペラは、磁石の形式の磁気構造を備え、該磁石は、回転磁界と相互作用してインペラがその回転に追従するように配列されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0238172号明細書
【特許文献2】欧州特許第3222301号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
磁気コア内での磁束を改善することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の血液ポンプは、上記血液ポンプに対応する。したがって、それは、軸方向血液ポンプ又は斜め血液ポンプであってもよく、これらのポンプは、部分的に軸方向及び部分的に放射方向にポンプ圧送する(純性の遠心血液ポンプの直径は、通常、血管内適用には大きすぎる)。しかしながら、本開示の一態様に従うと、磁気コアの少なくとも1つの支柱のうちの少なくとも一部分の材料は、磁気コアの背板の中間領域の材料と一体であり、背板の中間領域は、支柱同士の間に位置する背板の領域である。好ましくは、全ての支柱は、このようにして背板に一体的に接続される。換言すれば、少なくとも1つの支柱及び背板、好ましくは、磁気コア全体は、モノブロックとも以下で呼ばれる単一ブロックの材料から作成され得る。そのような磁気コアの利点は、支柱と背板との間での遷移における磁気抵抗が最小化され、それで磁束が改善されることである。更に、支柱と背板との間での遷移の良好な機械的剛性が達成され得る。
【0009】
支柱のそれぞれは、回転軸に平行であってもよい長手方向軸を有する。好ましくは、磁気コアは、不連続な軟磁性材料を含む。より好ましくは、磁気コアの軟磁性材料は、支柱の長手方向軸に横断方向の、好ましくはそれに垂直である横断面内で不連続である。言い換えると、支柱の軟磁性材料は、支柱内のそれぞれのコイル巻線によって生成される磁束の方向の横断方向に、好ましくは垂直である断面内で不連続である。断面内の軟磁性材料を分割又は中断することによって、支柱内の渦電流が低減又は回避され得て、その結果、発熱及びエネルギ消費が低減され得る。エネルギ消費を低減することは、特に血液ポンプの長期適用に有用であり、この場合、血液ポンプが電池式であることにより患者に易動性を提供することが望ましい。また、長期適用においては、血液ポンプは、浄化せずに作動させられ得て、このことは、発熱が低い場合にのみ可能である。
【0010】
本文書の意味での「不連続である」とは、例えば、支柱の長手方向軸を横断する任意の横断面に見られるような軟磁性材料が、絶縁材料若しくは別の材料又は隙間によって、中断されること、分離されること、交差されること等により、軟磁性材料の厳密に分離された領域、又は中断されているが異なる場所で接続されている領域を形成することを意味する。
【0011】
磁束の方向を横断する横断面に不連続な軟磁性材料を設けることは、渦電流を低減し、それで上述したような発熱及びエネルギ消費を低減する。連続的又は全体的な本体(すなわち、中実)軟磁性材料と比較して磁場を実質的に弱めないために、軟磁性材料の連続領域を最小化にしながら、軟磁性材料の総量が最大化される。これは、例えば、電磁鋼板のような軟磁性材料の複数のシートの形式で軟磁性材料を提供することによって実現され得る。特に、シートは、積層されて、例えば、ラミネート加工されて、シートのスタックを形成してもよい。シートは、好ましくは、例えば、シートのうちの隣接するものの間に接着剤、ラッカー、焼付けエナメル等を設けることによって、互いから電気的に絶縁される。そのような構成は、「溝付き」と呼ばれ得る。全体軟磁性材料と比較して、軟磁性材料の量が僅かだけ低減され、絶縁材料の量が小さく保たれ、その結果、溝付き支柱に起因する磁場は、中実支柱に起因する磁場と実質的に同じである。換言すれば、発熱及びエネルギ消費を大幅に低減し得るとともに、絶縁材料に起因する磁場の損失はほんの僅かである。
【0012】
シートは、好ましくは、それぞれの支柱の長手方向軸に実質的に平行に延在する。換言すれば、シートは、磁束の方向に実質的に平行に延在してもよく、その結果、支柱は、磁束の方向を横断する又はそれに垂直である横断面において不連続である。シートは、軟磁性材料が長手方向軸を横断する横断面において不連続である限り、それぞれの支柱の長手方向軸に対してある角度をなして延在し得ることが理解されよう。シートは、厚さが25μm乃至1mmの範囲にあることが好ましく、50μm乃至約450μmの範囲にあること、例えば200μmであることがより好ましい。
【0013】
特に、軟磁性材料のシートのような特定のタイプの材料の領域が、支柱及び背板の両方に延在し得る。材料は不連続であるが、磁気コアはそのような材料の単一ブロックから作成され得る。特定タイプの材料のそのような領域の延在部は、支柱と背板との間での遷移によって中断されず、支柱から支柱同士の間に位置する背板の中間領域へと一体的に連続している。
【0014】
電磁鋼のような溝付き軟磁性材料を電気モータに提供することにより、渦電流を回避又は低減することが一般に公知である。しかしながら、この技術は、シートが、通常、約500μm以上の範囲の厚さを有する大型デバイスに適用されている。本開示の血液ポンプのような小型の用途では、支柱のうちの1つは、通常、大きさの順に直径を有し、電力入力が比較的低く(例えば、20ワット(W)まで)、渦電流及び関連する問題は予想されなかった。驚くべきことに、支柱の直径が小さいにもかかわらず、渦電流、したがって発熱及びエネルギ消費が溝付き支柱を設けることによって低減され得る。このことは、血液ポンプの動作にとって有利であり、この血液ポンプは、50,000rpm(1分当たりの回転数)までの高速で動作させられ得る。
【0015】
支柱内に不連続な軟磁性材料を提供するために、上述の溝付き配列以外の別の配列が可能であり得ることが理解されよう。例えば、複数のシートの代わりに、複数のワイヤ、繊維、支柱又は別の細長い要素が提供されて、駆動ユニットの支柱のそれぞれを形成し得る。ワイヤ等は、例えば、それぞれのワイヤを囲む被覆又はワイヤが埋め込まれている絶縁マトリクスによって、ワイヤ同士が電気的に互いから絶縁されているワイヤの束の形式に設けられてもよく、そして、環状、円形、長方形、正方形、多角形等の様々な断面形状を有してもよい。同様に、軟磁性材料の粒子、軟磁性材料のワイヤウール、又は別のスポンジ状若しくは多孔質構造が提供され得、この場合、軟磁性材料の領域同士の間の空間は、接着剤、ラッカー、高分子マトリックス等の電気絶縁材料を含む。軟磁性材料の多孔質それで不連続な構造はまた、焼結材料又はプレス材料によって形成され得る。そのような構造では、空気への暴露によって軟磁性材料の酸化から生じる酸化物層によって絶縁層が自動的に形成され得るので、追加の絶縁材料が省略され得る。
【0016】
軟磁性材料のシート又は別の構造が均一に形成され得る、すなわち、複数の支柱又は全ての支柱のうちの1つ内のシートは、同じ厚さを有してもよく、又はワイヤは、同じ直径を有してもよく、その一方で、不均一な配列が提供され得る。例えば、シートは、様々な厚さを有してもよく、又は、ワイヤは、様々な直径を有してもよい。より具体的には、特にシートのスタックに関して、1つ又は複数の中央シートは、より大きい厚さを有してもよく、一方、スタックの端部に向かって隣接するシートは、より小さい厚さを有してもよい、すなわち、シートの厚さは、スタックの中央から端部に向かって、つまりスタックの最も外側のシートに向かって減少する。同様に、ワイヤの束内の1つ又は複数の中央ワイヤが、より大きい直径を有してもよく、一方、支柱の端部のワイヤが、より小さい直径を有し得る、すなわち、ワイヤの直径は、束の中央から端部に向かって、つまり束の最も外側のワイヤに向かって減少し得る。その長手方向軸を横断する横断面に関して支柱の中央に軟磁性材料のより大きい連続領域を、すなわち、中央に比較的厚いシート又はワイヤを提供することが有利であり得る、何故なら、このことは、それぞれの支柱の長手方向軸に沿って中央を通る磁束を増強させ得て、中央の渦電流が、支柱の側面における渦電流よりも小さいからである。換言すれば、そのような構成は、支柱の側面領域内の渦電流がより重要であり、側面領域内の薄いシート又はワイヤによって低減され得るので、有利であることがある。
【0017】
背板の直径は、5mm又は6mm乃至7mmのような3mm乃至9mmの範囲内であってもよい。背板の厚さは、1.5mmのような0.5mm乃至2.5mmの範囲内にあってもよい。血液ポンプの外径は、4mm乃至10mmの範囲内、好ましくは7mmであってもよい。複数の支柱の配列の外径は、4mm乃至7.5mm、好ましくは6.5mmのような3mm乃至8mmの範囲内にあってもよい。
【0018】
上述したように、支柱は、電磁鋼(磁性鋼)のような軟磁性材料で形成されている。支柱と背板とは、同じ材料でできていてもよい。好ましくは、支柱及び背板を含む駆動ユニットは、コバルト鋼でできている。コバルト鋼の使用は、ポンプサイズ、特に直径を減少させることに寄与する。最高の透磁率及び最高の飽和磁束密度について、全ての電磁鋼の中で、コバルト鋼は、使用される同じ量の材料に対して最大の磁束を生成する。
【0019】
支柱の寸法、特に長さ及び断面積は、様々な因子に基づいて変動し、それらに依存し得る。血液ポンプの寸法、例えば、血液ポンプの用途に依存する外径とは対照的に、支柱の寸法は、駆動ユニットの所望の性能を達成するように調整されている電磁特性によって決定される。因子のうちの1つは、支柱の最小断面積によって達成されるべき磁束密度である。断面積が小さいほど、所望の磁束を達成するのに必要な電流が大きくなる。しかしながら、電流が大きいほど、電気抵抗によってコイルのワイヤ内により多くの熱を発生させる。すなわち、「薄型」支柱は、全体サイズを小さくすることに好ましいが、これは大きい電流を必要とし、それで望ましくない熱をもたらす。ワイヤに発生させられる熱はまた、コイル巻線に使用されるワイヤの長さ及び直径に依存する。短いワイヤ長さ及び大きいワイヤ直径が、巻線損失(普通に銅線が使用される場合、「銅損失」又は「銅電力損失」とも呼ばれる)を最小にするのに好ましい。換言すると、ワイヤ径が小さい場合、同じ電流でのより太いワイヤと比較して、より多くの熱が発生させられ、好ましいワイヤ径は、例えば、0.1mmのような0.05mm乃至0.2mmである。駆動ユニットの支柱寸法及び性能に影響を及ぼす更なる因子は、コイルの巻数及び巻線の外径、すなわち、巻線を含む支柱である。多数の巻線が、それぞれの支柱の周りに1つより多くの層に配列されてもよく、例えば、2つ又は3つの層が提供されてもよい。しかし、層数が多いほど、より大きい巻径を有する外層内のワイヤの長さが長くなることにより、より多くの熱が発生させられる。ワイヤの増加した長さは、より短いワイヤに比べて、長いワイヤのより高い抵抗によって、より多くの熱を発生させることがある。それで、小さい巻径を有する1層の巻線が好ましいであろう。順に支柱の長さに依存する典型的な巻線の数は、約50乃至約150、例えば56又は132であってもよい。巻線の数とは無関係に、コイル巻線は、導電性材料、特に銅又は銀のような金属でできている。銀は、銅の電気抵抗よりも約5%だけ小さい電気抵抗を有するので、銅よりも好ましいことがある。
【0020】
好ましくは、磁気コアは、1つ又は複数の溶接部を含む。溶接部は、磁気コアの外面上に配列され得るが、この外面は、例えばレーザ溶接のために特にアクセス可能である。溶接部は、軟磁性材料内の導電性に関する不連続部を架橋し、それで、軟磁性材料の少なくとも2枚のシートを電気的に接続する。溶接部はまた、不連続な軟磁性材料に機械的安定性を付加する。
【0021】
1つ又は複数の溶接部は、支柱の反対側の背板の表面上に配列され得る。それらは、レーザ溶接によって生成され得る。ラミネート加工シートから作成された材料が使用される場合、溶接部は、隣接する軟磁性シートを斜め方向又は横方向に架橋することが好ましい。
【0022】
本開示の更なる態様において、血管内血液ポンプの駆動ユニット用の磁気コアを製造する方法が提案される。磁気コアは、回転軸を有し、そして、回転軸の周りに配列された複数の支柱と、支柱を接続する背板と、を含む。この方法は、導磁性材料のモノブロックを提供するステップと、モノブロック内に溝をカットして、回転軸の周りに配列されるような支柱、及び支柱と一体の部分を形成するような背板の両方を作成するステップと、を含む。上記で指摘されたように、そのような製造の利点は、磁気抵抗が低減された磁気コアを製造することである。
【0023】
少なくとも1つの溝、好ましくは回転軸に対して互いに反対側にある全ての溝は、磁気コアの回転軸を通るカッティングによって生成され得る。それで、回転軸周りでの支柱の一様な分布が、容易に達成され得る。
【0024】
好ましくは、溝は、支柱が全て同じ長さを有するようにカットされる。溝は、背板がその長手方向軸を横断する支柱の最大横断面寸法よりも小さい厚さを有するように、特にカットされる。
【0025】
放電加工、特にワイヤ放電加工、又は電解加工を用いて溝をカットすることが好ましい。これらの方法は、機械加工されるべき材料にわずかな力を加えるだけであり、そのため、不連続材料を機械加工するのに特に有利である。
【0026】
支柱が、ラミネート加工シートのような磁気材料の積層シートを含むか、又はそれらから構成される場合、溝の隣にある支柱内のそれらのシートが非常に薄くなり、したがって放電加工によって発生された熱の下で完全に燃え尽きる可能性がある。結果として得られるモータにおいて、3つのモータ相が、支柱材料の不規則な燃焼に起因してモータパラメータを逸脱することがある。そのため、本開示の第1態様とは別個である、及び蓄積的であり得る本開示の第2態様に従って、回転軸に対する支柱内でのシートの向きは、全ての支柱について同じである。このようにして、シートが薄すぎるというリスクが、低減されるか又は完全に回避され得る。副作用として、支柱内でのシートの向きが全ての支柱について同じであるので、放電加工が、実質的に同じ態様で全ての支柱に影響を及ぼし、結果として生じるモータ内での3つのモータ相は全て同じ態様で同様に影響を受ける。
【0027】
この第2態様の1つの好ましい実施形態では、モノブロックが、少なくとも1つのコイル状シートの形式の1つの変形例において、回転軸の周りに円形に配列されている磁性材料のシートを備える。溝がモノブロックにカットされて支柱を形成すると、結果として得られた支柱はそれぞれ、回転軸の周りに同心円状に配列された軟磁性材料のシートを有する。したがって、回転軸に対する支柱内でのシートの向きは、全ての支柱について同じである。
【0028】
この第2態様の別の好ましい実施形態では、モノブロックは、ケーキのピースように一緒に接続されているいくつかの三角形部分から構成されていることにより、実質的に円柱状のモノブロックを形成する。三角形部分のそれぞれ内で、軟質材料の積層シートが、シートのうちの1つ又はシートのうちの2つの間の中間層が回転軸を含む平面内に配列されるように配列されている。好ましくは、三角形部分は、それが回転軸を含む平面内に配列されている三角形部分の2つの真ん中のシートの間の中間層又は中央シートであるような対称三角形断面を有する。溝が、三角形部分のうちの隣接するものの間の界面に沿ってモノブロック内にカットされて支柱を形成すると、結果として得られた支柱はそれぞれ、回転軸を含む平面内にそれぞれ配列されたシート又はシートのうちの2つの間の中間層のうちの1つを有する。この場合も、回転軸に対する支柱内のシートの向きは、全ての支柱について同じである。
【0029】
本開示の更なる態様において、血液ポンプを製造する方法が提案される。血液ポンプは、磁気コアを有する駆動ユニットを備え、磁気コアは、前述のような態様で製造される。
【0030】
前述の要約、及び好ましい実施形態についての以下の詳細な説明は、添付の図面と関連して読まれるときによりよく理解されるであろう。本開示を説明するために、図面を参照する。しかしながら、本開示の範囲は、以下の図面に開示された特定の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】駆動ユニット-インペラ配列の好ましい実施形態についての断面図である。
【
図3A】
図2に従う駆動ユニット用の一体型磁気コアを製造するステップを示す図である。
【
図3B】
図2に従う駆動ユニット用の一体型磁気コアを製造するステップを示す図である。
【
図3C】
図2に従う駆動ユニット用の一体型磁気コアを製造するステップを示す図である。
【
図4A】
図3A~3Cに従って製造されるような一体型磁気コア上の溶接部を示す図である。
【
図4B】
図3A~3Cに従って製造されるような一体型磁気コア上の溶接部を示す図である。
【
図4C】
図3A~3Cに従って製造されるような一体型磁気コア上の溶接部を示す図である。
【
図5A】様々な実施形態に従う支柱を通る断面を示す図である。
【
図5B】様々な実施形態に従う支柱を通る断面を示す図である。
【
図5C】様々な実施形態に従う支柱を通る断面を示す図である。
【
図5D】様々な実施形態に従う支柱を通る断面を示す図である。
【
図5E】様々な実施形態に従う支柱を通る断面を示す図である。
【
図5F】様々な実施形態に従う支柱を通る断面を示す図である。
【
図5G】様々な実施形態に従う支柱を通る断面を示す図である。
【
図5H】様々な実施形態に従う支柱を通る断面を示す図である。
【
図5I】様々な実施形態に従う支柱を通る断面を示す図である。
【
図5J】様々な実施形態に従う支柱を通る断面を示す図である。
【
図6A】溝にカットを加える前での同心軟磁性シートのモノブロックを示す図である。
【
図6B】溝にカットを加えた後での同心軟磁性シートのモノブロックを示す図である。
【
図7A】溝にカットを加える前後での積層軟磁性シートの三角形ブロックからなるモノブロックを示す図である。
【
図7B】溝にカットを加える前後での積層軟磁性シートの三角形ブロックからなるモノブロックを示す図である。
【
図7C】溝にカットを加える前後での積層軟磁性シートの三角形ブロックからなるモノブロックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1を参照すると、血液ポンプ1の断面図が示されている。血液ポンプ1は、血流入口21と、血流出口22と、を有するポンプケーシング2を備える。血液ポンプ1は、カテーテルポンプとも呼ばれる血管内ポンプとして設計され、カテーテル25によって患者の血管内に配備される。血流入口21は、使用中に、大動脈弁のような心臓弁を通して配置され得る可撓性カニューレ23の端部にある。血流出口22は、ポンプケーシング2の側面内に位置し、大動脈のような心血管内に配置され得る。血液ポンプ1は、以下により詳細に説明されるように、血液ポンプ1に電力を供給するためにカテーテル25を通って延在する電気ライン26と電気的に接続されていることにより、駆動ユニット4によってポンプ1を駆動する。
【0033】
血液ポンプ1が長期用途で、すなわち、血液ポンプ1が数週間又は数ヶ月間も、患者に移植された状況で使用されることが意図されている場合に、電力が、好ましくは電池によって供給される。これにより、患者がケーブルによって基地局に接続されていないので、患者を移動させることが可能になる。電池は、患者によって携帯され得る、例えば無線で血液ポンプ1に電気エネルギを供給し得る。
【0034】
血液は、血流入口21と血流出口22とを接続する通路24(矢印が示す血流)に沿って搬送される。インペラ3が、通路24に沿って血液を搬送するために設けられて、第1軸受11及び第2軸受12によってポンプケーシング2内に回転軸10の周りに回転可能に取り付けられている。回転軸10は、インペラ3の長手方向軸であることが好ましい。両軸受11、12は、本実施形態では、接触型軸受である。しかしながら、軸受11、12のうちの少なくとも1つは、磁気又は流体軸受のような非接触型軸受であってもよい。第1軸受11は、回転運動及び枢動運動をある程度まで可能にする球面軸受面を有するピボット軸受である。ピン15が設けられて、軸受面のうちの1つを形成する。第2軸受12は、支持部材13内に配設されてインペラ3の回転を安定させ、支持部材13は、血流のための少なくとも1つの開口部14を有する。ブレード31がインペラ3上に設けられて、インペラ3が回転すると血液を搬送する。インペラ3の回転は、インペラ3の端部分において磁石32に磁気的に結合される駆動ユニット4によって生じさせられる。図示された血液ポンプ1は、流れの主方向が軸方向である混合型血液ポンプである。血液ポンプ1は、インペラ3、特にブレード31の配列に応じて、純粋に軸方向の血液ポンプであり得ることが理解されるであろう。
【0035】
血液ポンプ1は、インペラ3と、駆動ユニット4と、を備える。駆動ユニット4は、6本の支柱40のような複数の支柱40を備え、そのうちの2本だけが
図1の断面図に見られる。支柱40は、回転軸10に平行に配列されており、より具体的には、支柱40のそれぞれの長手方向軸は、回転軸10に平行である。支柱42の1つの端部は、インペラに隣接して配列されている。コイル巻線44が、支柱40の周りに配列されている。コイル巻線44は、回転磁界を発生させる制御によって連続して制御される。制御ユニットの一部は、電気ライン26に接続されているプリント回路基板6である。インペラは、本実施形態では、複数ピースの磁石として形成された磁石32を有する。磁石32は、駆動ユニット4と対向する、インペラ3の端部に配設されている。磁石32は、回転軸10の周りにインペラ3の回転を生じさせるように回転磁界と相互作用するように配設されている。
【0036】
磁束経路を閉鎖するために、背板50が、支柱40のインペラ側とは反対側の支柱の端部に位置している。支柱40は、磁気コアとして作用し、適切な材料、特に、鋼又は適切な合金、特にコバルト鋼のような軟磁性材料から作成される。同様に、背板50は、コバルト鋼のような適切な軟磁性材料から作成される。背板50は、磁束を強化し、これが、血管内血液ポンプにとって重要である、血液ポンプ1の全径を減少させることを可能にする。同じ目的のために、ヨーク37、すなわち追加のインペラ背板は、駆動ユニット4から離れる方を向いた磁石32の側面にインペラ3内に設けられている。本実施形態のヨーク37は、円錐形状を有することにより、血流をインペラ3に沿って誘導する。ヨーク37はまた、コバルト鋼から作成されてもよい。中央軸受11に向かって延在する1つ又は複数の洗浄チャネルが、ヨーク37又は磁石32内に形成されてもよい。
【0037】
図2は、
図1に従う血液ポンプ用の駆動ユニット-インペラ配列の好ましい実施形態についての断面図である。
図2に見られるように、支柱40のインペラ側端部420は、巻線44上方に放射方向に延在していない。むしろ、支柱40の横断面は、支柱40の長手方向軸LAの方向に一定である。したがって、支柱40が互いに近接することが回避され、このことは、血液ポンプの電動モータの電力低減の結果によって、部分的な磁気短絡を引き起こし得るからである。
【0038】
図2に従う駆動ユニットは、少なくとも2本、少なくとも3本、少なくとも4本、少なくとも5本、好ましくは6本の支柱40を備えてもよい。9本又は12本のようなより大きい数の支柱40が可能であり得る。断面図のため、2本の支柱40のみが見えている。支柱40及び背板50は、10mm未満の直径を有し得る駆動ユニット4の磁気コア400を形成する。
【0039】
磁気コア400は、単一ピース又はモノブロックとして、支柱40及び背板50である駆動ユニット4の磁気構成要素を備える。モノブロックは、導電性に関して不連続である不連続な軟磁性材料から構成されている。不連続な軟磁性材料は、強磁性材料から作成され、互いにラミネート加工される複数のシート85を備える。ラミネート加工方向は、支柱40の長手方向軸LAの方向に配列され、矢印DLによって示されている。示すように、支柱40は、回転軸10に平行に配列されている。
【0040】
コイル巻線44は、支柱40のインペラ側端部420まで延在する。このことは、磁気起動力が支柱40全体に沿って生成され得るという利点を有する。磁気コア400は、支柱40に対して放射方向に突出する支柱40の後方端部450に突出部401を備える。この突出部401は、背板50に向かうコイル巻線44に対する停止部であり得る。一体型磁気コア400は、背板50と支柱40との間に高い剛性を有するので、支柱のインペラ側端部420において支柱40同士の間のスペーサを省略し得る。一体型磁気コア400は、支柱40と背板50との間の最適な磁気接続が達成され得るという利点を提供する。磁気コア400は、10mm未満の直径を有してもよい。
【0041】
図3A~3Cは、
図2に示すような駆動ユニット-インペラ配列の駆動ユニット4用の磁気コア400を製造するステップを示す。
図3Aは、磁気コア400を製造するためのワークピースを形成する立方体形状のモノブロック9を示す斜視図である。モノブロック9は、導電性に関して不連続である不連続軟磁性材料からなる。それは、シート85の主平面に沿って延びるラミレート加工方向DLに向けられたシート85を備える。シート85は、
図3A~3Cに明示的に示されていない非導電性材料の接着層によってそれぞれの隣接シートにそれぞれ接着されている。
【0042】
図3Bは、半製造状態の磁気コア400を示しており、その状態において該磁気コアは、機械加工される、例えば、立方体のモノブロック9から実質的に円筒状の本体94に変えられる。この機械加工ステップでは、突出部401が製造される。磁気コア400の支柱40の周面を形成する、本体94の小径の部分404が、支柱40の最も外側の凸状側面842の外側半径に対応する直径で製造される。
【0043】
次いで、
図3Cに示すように、本体94が更に製造されて磁気コア400を作成し得る。この製造ステップについて、放電加工が用いられ得る。特に、ワイヤカットによる放電加工が適用されて、支柱40を互いから分離させる溝49を作成し得る。溝の内側に、コイル巻線44のための空間が設けられる。溝49の基盤において、一体型背板50の中間領域59が、支柱40の後方端部同士の間に延在する。中間領域は、支柱40と、及び背板50と一体である。このように、磁気コア全体がモノブロック9によって形成される。
【0044】
磁気コア400内でのラミネート方向DLは、回転軸10に平行であるようになっている。ベースプレート50内でのラミネート加工方向DLが、ベースプレート50内での支柱40同士の間の磁気流に対して平行ではないことが許容され得る。非導電性の層によって分離されているコイル状の軟磁性シート材料から磁気コア400を製造することも可能である。それで、ベースプレート50内でのラミネート加工方向DLは、常に周方向であり、ベースプレート50内での磁束内の渦電流を回避するのに有利である。
【0045】
図4A~4Cは、1つ又は複数の溶接部が、
図3A~3Cに従って製造されるような一体型磁気コアの表面上にどのように設けられ得るかを示す。したがって、示された実施形態では、3つの溶接シーム82、83が、立方体モノブロック9の1つの側面上に設けられる。溶接シーム82、83は、互いにある距離を置いて、モノブロック9からカットされるべき本体94の横断面を横切って溶接される。溶接シーム82、83は、シート85のラミネート加工方向DLに対して垂直に延びている。このようにして、不連続な軟磁性材料のシート同士が接続される。3つの溶接シームの代わりに、より多い溶接シーム又は単一の幅広溶接部が設けられてもよい。それに加えて、同様の溶接シームが、モノブロック9(図示せず)の反対側に設けられてもよい。反対側の側面上の溶接部に代替して又はそれに付加して、1つ又は複数の溶接シームが、背板50のレベルにモノブロック9の側面に設けられて、背板50を完全に又は少なくとも部分的に取り囲み得る。シート85は、溶接シーム82、83による互いのより良好な機械的接続を有し、また電気的にも接続される。後者は、電流が、不連続な軟磁性材料の任意の位置から、例えば放電加工に必要とされ得る本体94の電気的接続のそれぞれの位置まで流れ得るという利点を有する。これにより、放電加工が大幅に容易にされる。更に、より高い工程信頼性が、本体部94からの切取りであるべき背板-支柱ユニットが剥離によって脱落し得ないので、達成される。好ましくは、レーザ溶接が適用される。同じ溶接部に2回又はそれ以上も溶接電力を印加することが有利であり得る。
【0046】
図5A~5Jは、断面で見られる支柱の様々な実施形態を示す。
図5A~5Dは、支柱に溝が付けられている、すなわち、絶縁層172によって互いから絶縁された複数のシート171から支柱が形成されている実施形態を示す。絶縁層172は、接着剤、ラッカー、焼付けエナメル等を含み得る。
図5A及び5Bは、シート171の厚さが均一である実施形態を示す。厚さは、25μm乃至450μmの範囲にあってもよい。
図5Aに示すシート171は、
図5Bに示すシート171よりも大きい厚さを有する。
図5Cに示すシートは、様々な厚さを有し、中央シートが最も大きい厚さを有し、最も外側のシートが最も小さい厚さを有する。これは、支柱の側面領域内の渦電流が、重要性がより大きく、薄いシートによって低減され得るので有利であることがある。中央領域内の渦電流は、重要性がより小さく、比較的厚い中央シートが磁束を改善するのを助け得る。シート171の向きは、示された断面内の軟磁性材料、すなわち、磁束の方向を横断する断面内の軟磁性材料が、不連続であるか又は中断される限り、
図5Dに例示的に示されるように異なっていてもよい。
【0047】
図5E及び5Fは、絶縁材料182によって互いから絶縁されているワイヤ181の束によって支柱141が形成されている実施形態を示す。絶縁材料182は、ワイヤ181のそれぞれのコーティングとして存在してもよく、又はワイヤ181が埋め込まれているマトリックスであってもよい。
図5Eの実施形態では、全てのワイヤが同じ直径を有し、それに対して、
図5Fの実施形態では、中央ワイヤは最大の直径を有し、外側ワイヤは、様々な厚さを有するシートを有している
図5Cに示す実施形態と同様に、より小さい直径を有する。
図5Gに示すように、異なる直径のワイヤ181が混合されてもよく、これにより、全てのワイヤが同じ直径を有する実施形態と比較して、軟磁性材料の総断面積を増加させ得る。更にその代替として、ワイヤ183同士の間の絶縁層184を更に最小にするために、ワイヤ183は、長方形、正方形等の多角形断面積を有してもよい。
【0048】
その代替として、支柱141の不連続断面は、
図5Iに示すようにポリマーマトリックス186内に埋め込まれた金属粒子185によって、又は絶縁マトリックスを含浸されたスチールウール又は別の多孔質構造によって生成されてもよい。軟磁性材料の多孔質で、そのため不連続な構造は、また焼結プロセス又は高圧成形プロセスによって製造されてもよく、このプロセスにおいて、絶縁層が空気への暴露による軟磁性材料の酸化によって自動的に形成されるので、絶縁マトリックスが省略されてもよい。更にその代替として、支柱141は、
図5Jに示すように、巻上げシート187の層が絶縁層188によって分離されている軟磁性材料の巻上げシート187から形成されてもよい。このことがまた、支柱141又は支柱40内の渦電流を低減する、本開示が意味する不連続な断面を提供する。
【0049】
支柱が、ラミネート加工シート等の磁性材料の積層シートを含むか、又はそれらから構成される場合、溝の隣にある支柱内のシートが非常に薄くなり得て、それで、放電加工又は代替の製造方法によって発生させられた熱の下で完全に燃え尽き得る。その結果、結果として生じるモータにおける3つのモータ相のモータパラメータが、支柱材料の不規則な燃焼によって逸脱してもよい。そのため、
図6B及び7Cに示す以下の2つの実施形態では、回転軸に対する支柱内のシートの向きは、全ての支柱について同じであり、その向きは、いずれのシートも溝に平行に向けられないように選択される。このようにして、いずれのシートも、非常に薄くならず、それでカットプロセス中に燃え尽きないことがある。また、支柱内のシートの回転軸に対する向きは、全ての支柱について同じであり、そのため、溝を形成するための放電加工は、実質的に同じ態様で全ての支柱に影響を及ぼし、結果として生じるモータ内の3つのモータ相は、同じ態様で全て同様に影響を及ぼされ、それで、互いから逸脱することがない。
【0050】
図6A及び6Bに示す実施形態では、最初に、モノブロック9が、磁性材料のシート85が回転軸の周りに同心円状に配列されているように設けられる(
図6A)。その変形では、シート85は、コイル状シート又は複数のコイル状シートの形式で設けられる。次に、
図6Bに示すように、溝49がモノブロック9内にカットされて支柱40を形成する。わかるように、支柱40はそれぞれ、回転軸の周りに同心状に配列された軟磁性材料のシート85を有する。それで、支柱40内のシート85の回転軸に対する向きは、全ての支柱について同じである。
【0051】
図7A~7Cに示す実施形態では、モノブロック9は、6つの三角形部分9aから構成されている。三角形部分9aは、ラミネート加工鋼板のスタック等の軟磁性材料の積層シート85のスタックからカットアウトされてもよく、次いで、ケーキのピースのように一緒に接続されて、
図7Aに示すようなモノブロック9を形成してもよい。三角形部分9aの横断面は、同じであり、それぞれは等しい長さの辺を有する三角形を形成する。したがって、三角形の横断面は対称形である。特に、三角形部分9aは、中央シート85又は2つの最も中央のシート85の間の中間層のいずれかが、対称三角形横断面の高さを形成するように、積層シート85のスタックからカットアウトされる。次いで、6つの三角形部分9aは、6つの三角形部分9aのそれぞれの中央シート85又は2つの最も中央のシート85の間の中間層が、回転軸を含む平面内に配列されるように、モノブロック9内に配列される。
【0052】
次に、モノブロック9は、
図7Bに示すように、実質的に円柱状の又は実質的に管状の形状に整形される。最後に、溝49が三角形部分9aのうちの隣接するものの間の界面49aに沿ってモノブロック9内にカットされることにより、
図7Cに示すように支柱40を形成する。したがって、結果として得られた支柱40はそれぞれ、回転軸を含む平面内にそれぞれ配列された、そのシート85又はシート85のうちの2つの間の中間層のうちの1つを有する。この場合も、支柱40内でのシート85の回転軸に対する向きは、全ての支柱40について同じである。
【0053】
図6B及び7Cの実施形態において、溝49は、軸方向にモノブロック9全体を通って延在してはいないが、支柱40の長さ及び支柱40と一体である背板50の厚さを画定する特定の深さを有する。代替の実施形態において、溝85は、モノブロック全体を通って延在することにより、支柱40をモノブロックから隔離させてもよい。隔離された支柱40は、別個の背板50のような別の構成要素とモータに組み立てられてもよい。
【国際調査報告】