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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】改善された生検装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/02 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
A61B10/02 110J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518128
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(85)【翻訳文提出日】2023-05-18
(86)【国際出願番号】 EP2021075680
(87)【国際公開番号】W WO2022063704
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】20197672.7
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519047196
【氏名又は名称】サガ サージカル アーベー
【氏名又は名称原語表記】SAGA SURGICAL AB
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】フォルスバール,アンドレアス
(57)【要約】
生検針装置(20)は、針装置が閉状態を獲得したときにシースに対して針の先端部分(23)をロックするように構成された、針シース(22)および針(21)を備える。シース開口縁部および近位先端縁部の構成によって獲得される針の先端部分とシースとの間のロックは第3の方向Zにおいてであり、かつ先端が第1の方向Xによって画定される長手方向軸を中心に回転することができないという点で回転の意味においてである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生検針装置(20)であって、前記生検針装置(20)は、
針シース(22)と、
針(21)と、を備え、
前記針シース(22)が、近位端部(201)および遠位端部(202)を有し、
前記針シース(22)が、前記針シース(22)の前記遠位端部(202)にシース開口(203)を有する、第1の方向(X)に沿って細長い中空管をなし、
前記シース開口(203)が、第1の平面(151)を画定する第1のシース開口縁部(51)と、第2の平面(152)を画定する第2のシース開口縁部(52)と、によって境界を定められており、前記第1の平面(151)と前記第2の平面(152)とが、第1の交線(153)に沿って角度(A)で互いに交差し、
前記針(21)が、近位端部(211)および遠位端部(212)を有し、
前記針(21)が、前記針シース(22)の内側に嵌合し前記針シース(22)に対して摺動するように構成された、前記第1の方向(X)に沿って細長い、シャフト部分(213)と、前記シャフト部分(213)に連結され、前記針(21)の前記遠位端部(212)に位置付けられた先端部分(23)と、前記シャフト部分(213)によって形成され、前記第1の方向(X)、前記第1の方向(X)に対して垂直な第2の方向(Y)、ならびに前記第1の方向(X)および前記第2の方向(Y)に対して垂直な第3の方向(Z)に延在する空洞(30)と、を備え、
前記先端部分(23)が、遠位先端(24)と、第3の平面(161)を画定する第1の近位先端縁部(61)と、第4の平面(162)を画定する第2の近位先端縁部(62)と、を有し、前記第3の平面(161)と前記第4の平面(162)とが、第2の交線(163)に沿って前記角度(A)で互いに交差しており、
前記生検針装置(20)が、前記第1のシース開口縁部(51)が前記第1の近位先端縁部(61)に当接し、前記第2のシース開口縁部(52)が前記第2の近位先端縁部(62)に当接し、前記第1の交線(153)が前記第2の交線(163)と一致する閉状態になるように構成されている、生検針装置(20)。
【請求項2】
前記シース開口(203)が、前記第1のシース開口縁部(51)を備える第1のシース開口表面(53)によって境界を定められており、
前記シース開口(203)が、前記第2のシース開口縁部(52)を備える第2のシース開口表面(54)によって境界を定められている、
請求項1に記載の生検針装置(20)。
【請求項3】
前記先端部分(23)が、前記第1の近位先端縁部(61)を備える第1の近位先端表面(63)を備え、
前記先端部分(23)が、前記第2の近位先端縁部(62)を備える第2の近位先端表面(64)を備える、
請求項1または2に記載の生検針装置(20)。
【請求項4】
前記第1のシース開口縁部(51)および前記第2のシース開口縁部(52)が、前記シャフト部分(213)と前記針シース(22)との間の相対的な摺動の間、前記第1の方向(X)に沿った前記第1の交線(153)のすべての位置において前記第1の交線(153)が前記空洞(30)を通過するのを避けるように構成されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の生検針装置(20)。
【請求項5】
前記針(21)の内部の前記空洞(30)が、少なくとも、前記第3の方向(Z)での最低底面を有する空洞下部(222)によって境界を定められており、
前記第1の交線(153)が、前記シャフト部分(213)と前記針シース(22)との間の相対的な摺動の間、前記第3の方向(Z)において前記空洞下部(222)の前記最低底面の下方を通過する、
請求項4に記載の生検針装置(20)。
【請求項6】
前記第1の交線(153)および前記第2の交線(163)が前記第2の方向(Y)に対して平行である、請求項1から5のいずれか1項に記載の生検針装置(20)。
【請求項7】
前記第2のシース開口表面(54)が、前記第2の方向(Y)における空洞下部(222)の延在部と等しいかまたはそれより短い前記第2の方向(Y)における前記延在部を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の生検針装置(20)。
【請求項8】
前記シャフト部分(213)が、前記空洞(30)と前記先端部分(23)との間に中間部分(214)を備え、前記中間部分(214)が、前記閉状態では前記針シース(22)の内側に位置決めされ、前記針シース(22)に形状が合致する、請求項1から7のいずれか1項に記載の生検針装置(20)。
【請求項9】
前記針(21)の内部の前記空洞(30)が、少なくとも遠位空洞壁(220)および近位空洞壁(221)によって境界を定められており、前記遠位空洞壁(220)が、前記第1の方向(X)に対する遠位空洞壁角度(230)で構成されており、
前記第1のシース開口縁部(51)が、前記遠位空洞壁角度(230)と等しいかまたはそれより小さい、前記第1の方向(X)に対する第1のシース開口縁部角度(154)で構成されている、
請求項1から8のいずれか1項に記載の生検針装置(20)。
【請求項10】
前記第2のシース開口縁部(52)が、ゼロより大きい、または、区間0°~150°である、または、区間90°~150°である、前記第1の方向(X)に対する第2のシース開口縁部角度(155)で構成されている、
請求項1から9のいずれか1項に記載の生検針装置(20)。
【請求項11】
前記針シース(22)の前記中空管、および前記シース開口(203)が、前記第2の方向(Y)および前記第3の方向(Z)によって画定される平面において円形の断面を有し、
前記針(21)の前記シャフト部分(213)が、前記第2の方向(Y)および前記第3の方向(Z)によって画定される前記平面において円形の断面を備え、
前記針(21)の前記先端部分(23)が、前記第2の方向(Y)および前記第3の方向(Z)によって画定される前記平面において円形の断面を備える、
請求項1から10のいずれか1項に記載の生検針装置(20)。
【請求項12】
前記先端部分(23)が、前記第2の方向(Y)および前記第3の方向(Z)によって画定される平面において延在部(DT)を有し、前記延在部(DT)は、前記第2の方向(Y)および前記第3の方向(Z)によって画定される前記平面における前記シース開口(203)の横方向延在部(DS)より大きいかまたは等しい、請求項1から11のいずれか1項に記載の生検針装置(20)。
【請求項13】
前記先端部分(23)が、第1の面(251)、第2の面(252)、および第3の面(253)を備え、それぞれの面(251、252、253)は、前記遠位先端(24)に向かって収束するように構成されており、生検手技での使用中、前記第1の方向(X)、前記第2の方向(Y)、および前記第3の方向(Z)の左手配向において、前記第1の面(251)が前記第3の方向(Z)とは逆に、または逆らって前記先端部分(23)を押すように構成され、前記第2の面(252)が前記第2の方向(Y)に、または前記第2の方向(Y)に沿って、かつ前記第3の方向(Z)に前記先端部分(23)を押すように構成され、前記第3の面(253)が前記第2の方向(Y)とは逆に、または逆らって、かつ前記第3の方向(Z)に、または前記第3の方向(Z)に沿って前記先端部分(23)を押すように構成されるように構成されている、
請求項1から12のいずれか1項に記載の生検針装置(20)。
【請求項14】
前記先端部分(23)が、前記遠位先端(24)で終了する遠位円錐部(25)を備え、前記遠位円錐部(25)は、前記遠位先端(24)が前記第1の方向(X)に沿って、前記第3の方向(Z)において中心軸(L)に対してオフセットするように構成され、したがって、生検手技での使用中、前記第1の方向(X)の左手配向において、前記遠位円錐部(25)が前記第3の方向(Z)とは逆に、または逆らって前記先端部分(23)を押す、
請求項1から12のいずれか1項に記載の生検針装置(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の実施形態は、軟部組織生検を実施するための針装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医学分野では、種々の目的のための針装置、たとえば生検試料を取得するための針装置が存在する。生検試料採取装置は、通常は針装置に加えて、操作者が生検針を組織に押し込み組織の生検試料を切り取ることを容易にする何らかの種類のアクチュエータデバイスも含む。当然、生検試料採取を実施するときに重要な課題は、偶発的な傷害から患者を保護し、感染のリスクを最小限に抑えることである。
【0003】
(通常は「トゥルーカット(tru cut)」針装置と呼ばれる)従来技術の生検針装置は、患者の体内の、実際の生検組織試料を獲得すべき標的部位へのその道筋において大量の組織を捕集するという点で、欠点を有する。挿入中、生検針装置は細菌が存在する部位にしばしば遭遇することになり、こうした細菌は感染を生じさせる危険を冒すことになる部位まで運ばれることが多い。
【0004】
こうした問題は、通常は抗生物質を使用することによって対処されてきた。しかし、抗生物質への耐性が増すと共に、問題に対処するこうした化学的なやり方はあまり効率的でなくなってきており、異なる技術的解決策が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のことに鑑みて、本開示の一目的は、従来技術の生検針装置に関する欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、こうした目的は、生検針装置であって、
- 近位端部および遠位端部を有する針シースであって、針シースが、針シースの遠位端部にシース開口を有する、第1の方向Xに沿って細長い中空管をなし、
- シース開口が、第1の平面を画定する第1のシース開口縁部と、第2の平面を画定する第2のシース開口縁部とによって境界を定められ、第1の平面と第2の平面とが、第1の交線に沿って角度Aで互いに交差する、針シースと、
- 近位端部および遠位端部を有する針であって、針が、針シースの内側に嵌合し針シースに対して摺動するように構成された、第1の方向Xに沿って細長いシャフト部分と、シャフト部分に連結され、針の遠位端部に位置付けられた先端部分と、シャフト部分によって形成され、第1の方向X、第1の方向Xに対して垂直な第2の方向Y、ならびに第1の方向Xおよび第2の方向Yに対して垂直な第3の方向Zに延在する空洞とを備え、
- 先端部分が、遠位先端と、第3の平面を画定する第1の近位先端縁部と、第4の平面を画定する第2の近位先端縁部とを有し、第3の平面と第4の平面とが、第2の交線に沿って角度Aで互いに交差している、針と
を備え、
- 針装置が、第1のシース開口縁部が第1の近位先端縁部に当接し、第2のシース開口縁部が第2の近位先端縁部に当接し、第1の交線が第2の交線と一致する閉状態になるように構成される、生検針装置によって達成される。
【0007】
こうした生検針装置は、少なくとも、針装置が閉状態を獲得したときにシースに対して針の先端部分をロックするように構成されているという点で、従来技術の生検針装置とは異なるので有利である。針の先端部分とシースとの間のロックは第3の方向Zにおいて、かつ先端が第1の方向Xによって画定される長手方向軸を中心に回転することができないという点で回転の意味において獲得される。ロックにより、シース開口の縁部が遠位方向(ここでは第1の方向X)に動かされて空洞に収容される組織試料を切り取ったときに先端部分の近位端部とシース開口との間に間隙が存在しないことが確実となる。本開示の針装置は、先端部分の近位端部とシース開口との間の間隙を回避することにより、上に議論したような生検手技中の細菌の捕集を最小限に抑える。ロック機能により、針装置の最適な閉止が維持された状態での複数回の生検も可能になる。
【0008】
シース開口縁部は、針シャフト部分とシースとの間の相対的な摺動の間、第1の方向Xに沿った第1の交線のすべての位置において第1の交線が空洞を通過するのを避けるように構成され得る。さらに、針内の空洞は、少なくとも、第3の方向での最低底面を有する空洞下部によって境界を定められてもよく、第1の交線は、針シャフト部分とシースとの間の相対的な摺動の間、第3の方向において空洞下部の最低底面の下方を通過する。さらに、第2のシース開口表面は、第2の方向Yにおける空洞下部の延在部と等しいかまたはそれより短い第2の方向Yにおける延在部を有することができる。
【0009】
つまり、生検手技が行われているときに針およびシースが第1の方向Xに沿って運動している間、こうした構成により第3の方向Zにおけるいかなる望ましくない運動も最小限に抑えられるという点で、こうした構成は安定的である。これにより、前方への運動中に生検組織が第2のシース開口縁部によって空洞の外へと持ち上げられるリスクが回避される。第2のシース開口縁部が空洞の底面の下方にある状態では、生検組織は第1のシース開口縁部によって空洞へと押圧され、そこにとどまる。第2のシース開口縁部が空洞の底面に対してより高い面に構成されている場合、第2のシース開口縁部は、生検組織を上方に持ち上げるリスクを増加させるはずの上方に向いた力を提供することになる。上方に向いた力と下方に向いた力との組合せは前方へと押す力になるはずであり、これにより空洞の充填が不十分になることになるので、このことにより、生検品質が不十分になることになる。第1の方向Xおよび第2の方向Yによって画定される平面における、針と同じ横方向の制限すなわち幅を有する、第3の方向に沿って見たサイズ、すなわち上からのサイズで第2のシース開口縁部を構成することにより、空洞内の生検組織に作用する持ち上げる力が解消され、したがって生検品質への負の影響を有しないことが分かっている。
【0010】
針内の空洞は、少なくとも遠位空洞壁および近位空洞壁によって境界を定められてもよく、遠位空洞壁は、第1の方向に対する遠位空洞壁角度で構成され、第1のシース開口縁部は、遠位空洞壁角度と等しいかまたはそれより小さい第1の方向Xに対する第1のシース開口縁部角度で構成され得る。
【0011】
こうした構成により、生検手技中にシースが第1の方向Xに遠位方向に動いたときに空洞に埋め込まれる組織を効率的に切り取ることが可能になる。こうした角度関係により、生検手技中の第1の方向Xに沿った運動の際にシースの第1の開口縁部が遠位空洞壁を通過するときのすっぱりとした切り取りがなされることが確実となる。
【0012】
第2のシース開口縁部は、ゼロより大きい、第1の方向Xに対する第2のシース開口縁部角度で構成されてもよい。たとえば、区間90°~150°の角度で第2のシース開口縁部を構成することにより、空洞内の生検組織に作用する持ち上げる力が解消され、したがって生検品質への負の影響を有しないことが分かっている。
【0013】
シースの中空管およびシース開口は、第2の方向Yおよび第3の方向Zによって画定される平面において円形の断面を有してもよく、針のシャフト部分は第2の方向Yおよび第3の方向Zによって画定される平面において円形の断面を備えてもよく、針の先端部分は第2の方向Yおよび第3の方向Zによって画定される平面において円形の断面を備えてもよい。
【0014】
つまり、Y方向およびZ方向によって画定される平面における生検針装置の全体的な、または概して円形の断面は、製造が容易であるという点で有利である。
【0015】
先端部分は第1の面、第2の面、および第3の面を備えることができ、それぞれの面は、遠位先端に向かって収束するように構成されており、生検手技での使用中、第1の方向X、第2の方向Y、および第3の方向Zの左手配向において、第1の面が第3の方向Zとは逆に、または逆らって先端部分を押すように構成され、第2の面が第2の方向に、または第2の方向に沿って、かつ第3の方向Zに先端部分を押すように構成され、第3の面が第2の方向Yとは逆に、または逆らって、かつ第3の方向Zに、または第3の方向Zに沿って先端部分を押すように構成されるように構成されている。
【0016】
言い換えれば、こうした実施形態では、先端部分は「鋤(plough)」構成を有していると理解され得る。こうした構成は、従来技術の生検針装置に鑑みて有利である。
【0017】
従来技術の針装置の多くは生検手技中に「潜る」、すなわち針が前方へと運動している間に針の先端が組織内へと下方に押される。シースが前方へと動かされるときに空洞下部が上方へと押圧され、同時にシースの遠位端部が組織を下方に押圧するので、これは獲得される生検組織の量の観点からは有益である場合がある。しかし、生検針が生検の標的を逃すことがあり、したがって獲得された組織が標的の下方の箇所から生じるので、これは重大な欠点を有するということが認識されている。
【0018】
先端部分の第1の面、第2の面、および第3の面を形成する「鋤」により、先端に作用する力をより均衡させて分散した状態では、第1の方向における前方への針の運動は直線的な特徴を有することになり、したがって生検の標的により良く命中することになる。こうした構成では獲得される組織の量がわずかに少なくなる場合があるが、第1の面が第3の方向において上方を向き、したがって針が前方に動いているときに第3の方向において上方に組織を追いやり、それによって空洞を組織で埋めるという点での最適化がなされることにより、三面構成によって針は第3の方向Zに対して下方にごく短い距離を動かされる。
【0019】
他の実施形態では、先端部分は遠位先端で終了する遠位円錐部を備えてもよく、遠位円錐部は、遠位先端が第1の方向Xに沿って、第3の方向Zにおいて中心軸Lに対してオフセットするように構成され、したがって、生検手技での使用中、第1の方向Xの左手配向において、遠位円錐部は第3の方向Zとは逆に、または逆らって先端部分を押す。
【0020】
先端部分の円錐構成により、「鋤構成」を有する実施形態に関連して上に略述したものと同じ有利な運動が提供される。さらに、円錐先端構成には刃先がなく、これにより前方への運動を始動させる前に針を位置決めしたときに、神経を(すなわち横方向に)押しのけることが可能になり、神経組織を切り取るリスクが最小限に抑えられるので、円錐先端構成は、針先端部分が前方への運動中に外傷のより少ない形で神経組織を通過することを可能にするという点で有利な効果を有する。たとえば、円錐先端を有する生検針装置は、有利には脊髄への、つまり少なくとも極めて重要な神経組織を含む生検手技で使用することができる。円錐先端構成は、空洞の充填を改善しわずかに下方に運動する「鋤」構成に関連して上に議論した利点を得るのと同時にこの利点を得る。たとえば、遠位先端を第1の方向Xに沿って、第3の方向Zに逆らって中心軸Lの下方に適当な距離だけオフセットするように構成することにより、第1の方向Xに針が運動している間、すなわちストローク中に、第3の方向における遠位先端の偏位を所望の小さい偏位に制御することができる。さらに、先端は、身体へと挿入する第1のステップの間、また次いで生検試料採取の対象となるべき組織を迅速に通ったときに組織を切り取っている間にたとえば神経組織を非外傷的に通ることができるように、十分に鋭く構成されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1aは開状態における生検針装置の概略的に示された側面図である。図1bは閉状態における生検針装置の概略的に示された側面図である。図1cは生検針装置の遠位端部の概略的に示された側面図である。図1dは生検針装置の遠位端部の概略的に示された側面図である。
図2図2aは生検針装置の先端部分の概略的に示された側面図である。図2bは生検針装置の先端部分の概略的に示された上面図である。図2cは生検針装置の先端部分の概略的に示された斜視図である。図2dは生検針装置の先端部分の概略的に示された側面図である。図2eは生検針装置の先端部分の概略的に示された斜視図である。
図3図3aは生検針装置の針シースの概略的に示された側面図である。図3bは生検針装置の針シースの概略的に示された下面図である。図3cは生検針装置の針シースの概略的に示された斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図1a~図1d、図2a~図2c、および図3a~図3cを参照して生検針装置20を例示する。個々の特徴が参照され、それらのどの特徴も、参照されている図の全体を通して同じ1つの参照符号を有する。
【0023】
生検針装置20は、近位端部201および遠位端部202を有する針シース22を備える。針シース22は、針シース22の遠位端部202にシース開口203を有する、第1の方向Xに沿って細長い中空管をなす。シース開口203は、第1の平面151を画定する第1のシース開口縁部51と、第2の平面152を画定する第2のシース開口縁部52とによって境界を定められている。第1の平面151と第2の平面152とは、第1の交線153に沿って角度Aで互いに交差する。
【0024】
生検針装置20は、近位端部211および遠位端部212を有する針21をさらに備える。針21は、針シース22の内側に嵌合し針シース22に対して摺動するように構成された、第1の方向Xに沿って細長いシャフト部分213を備える。先端部分23はシャフト部分213に連結され、針21の遠位端部212に位置付けられる。シャフト部分213によって空洞30が形成され、第1の方向X、第1の方向Xに対して垂直な第2の方向Y、ならびに第1の方向Xおよび第2の方向Yに対して垂直な第3の方向Zに延在する。
【0025】
先端部分23は、遠位先端24、ならびに第3の平面161を画定する第1の近位先端縁部61および第4の平面162を画定する第2の近位先端縁部62を有する。第3の平面161と第4の平面162とは、第2の交線163に沿って角度Aで互いに交差する。
【0026】
針装置20は、第1のシース開口縁部51が第1の近位先端縁部61に当接し、第2のシース開口縁部52が第2の近位先端縁部62に当接し、第1の交線153が第2の交線163と一致する閉状態になるように構成される。
【0027】
本明細書に記載の生検針装置20を使用する生検手技は、針21および針シース22を互いに対して、また生検手技の対象になるべき身体、たとえばヒトまたは動物の身体に対して動かす一続きのステップを含む。針21および針シース22の実際の運動は、任意の適したアクチュエータ装置によって作動されてもよい。こうしたアクチュエータ装置についてのいかなる詳細な説明も本開示の範囲外であることに留意されたい。
【0028】
最初、生検針装置20は、図1bに例示されている閉状態である。第1の運動ステップでは、生検針装置20が生検手技の対象になるべき身体に挿入される。第2の運動ステップでは、針21が第1の方向Xに沿って前方に動き、生検の対象となるべき組織を貫通する。針21の前方への運動は組織内への所望の距離で止まり、この地点で、生検針装置20は図1aに例示されている開状態になる。この地点で、空洞30は組織で埋められるようになる。第3の運動ステップでは、第1のシース開口縁部51が第1の近位先端縁部61に当接し、第2のシース開口縁部52が第2の近位先端縁部62に当接し、第1の交線153が第2の交線163と一致する閉状態を生検針装置20が再び獲得するまで、針シース22が第1の方向Xに沿って前方に動く。この第3の運動ステップの間、針シース22は、組織が空洞30の内側に収容されるようになるように切り取る動作を行う。次いで、第4の運動ステップは、第1の方向Xに沿って後方に生検針装置20を後退させ、それによって従来技術の生検装置に関連付けられる欠点なしに生検手技を完了することを含む。
【0029】
図1bに示されているように、針21は、針シース22の長さLSよりも長い長さLNを有する。第1の交線153は第1の方向Xに対して横方向、または垂直でもよい。第1のシース開口縁部51は第1の近位先端縁部61に向き合うかまたは形状が合致することができる。第2のシース開口縁部52は、閉状態において第2の近位先端縁部62に向き合うかまたは形状が合致することができる。
【0030】
角度Aは180°未満でもよく、かつ/または120°~180°、100°~120°、80°~100°、もしくは60°~80°の範囲でもよい。針先端24を中央に位置決めすることに関しては80°~100°の範囲が有利であり、たとえばフライス加工または切削加工によって角度Aを作り出す製造手順を簡略化する点では90°の角度が有利であることが分かっている。言い換えれば、角度Aは直角でもよく、または鈍角でもよい。直角は閉止時に中央に位置決めする能力とロック能力との間の良好なバランスを提供し、鈍角はより強力なロック能力を提供する。さらに、第1の平面151と第2の平面152とは角度Aで互いに交差することが指定されている。この文脈において、明示的に定義された角度または角度の区間は概算的なものであると考えられるべきである。
【0031】
上に定義した空洞30の延在部は、空洞30が第1の方向Xに長さを有し、第2の方向Yに幅を有し、第3の方向Zに高さを有するような延在部でもよい。
【0032】
図に例示されているように、シース開口203は、第1のシース開口縁部51を備える第1のシース開口表面53によって境界を定められ、第2のシース開口縁部52を備える第2のシース開口表面54によって境界を定められている。表面53、54は、シース22の中空管の壁の厚みに関連する延在部を有することができる。しかし、表面53、54の延在部は、縁部51、52が鋭い縁部になるように、製造中に鋭利化ステップによって可能な限り小さくされてもよい。
【0033】
図に例示されているように、先端部分23は第1の近位先端縁部61を備える第1の近位先端表面63と、第2の近位先端縁部62を備える第2の近位先端表面64とを備える。
【0034】
シース開口縁部51、52は、針シャフト部分213とシース22との間の相対的な摺動の間、第1の方向Xに沿った第1の交線153のすべての位置において第1の交線153が空洞30を通過するのを避けるように構成される。
【0035】
言い換えれば、第1の交線153が空洞30を通過するのを避けるようにシース開口縁部51、52が構成されているということは、第1の交線153と空洞30とが、閉状態において第1の方向Xに対して横方向に隔てられ、間隔を開けて配置され、または離隔距離を形成することを包含していると理解される。
【0036】
示されているように、針21内の空洞30は少なくとも、第3の方向Zでの最低底面を有する空洞下部222によって境界を定められている。この場合、第1の交線153は、針シャフト部分213とシース22との間の相対的な摺動の間、第3の方向Zにおいて空洞下部222の最低底面の下方を通過する。
【0037】
言い換えれば、第1の交線153が第3の方向Zにおいて空洞下部222の最低底面の下を通過するということは、第1の交線153と空洞30、または空洞下部222の最低底面とが、閉状態では第3の方向Zに隔てられ、間隔を開けて配置され、または離隔距離を形成することを包含していると理解される。さらに、ここで例示されているように、有利な実施形態は、第2の方向Yにおける第2のシース開口表面54の幅または延在部が第2の方向Yにおける空洞下部222の幅または延在部と等しいかまたはそれより短い実施形態である。こうした構成により、生検手技時の針装置の運動中の持ち上げる力、すなわち第3の方向Zにおいて上方に作用する力が最小限に抑えられる。
【0038】
例示されているように、交線153、163は第2の方向Yに対して平行である。こうした場合、第1の平面151、第2の平面152、第3の平面161、および第4の平面162は、以下のように第1の方向Xに対する各配向または角度を有することができる。第1の平面151および第3の平面161は第1の方向Xに対して区間10°~45°の角度154を有してもよく、第2の平面152および第4の平面162は第1の方向Xに対して区間90°~150°の角度155を有してもよい。さらに、上で議論したように交差角度Aの有利な値は90°であるので、このことは、所与の角度154、155についてのこれらの区間が与えられた場合、第1の方向Xに対する平面151、152、161、162の角度154、155についても、対応するいくつかの有利な値が存在することを意味する。たとえば以下の表には、3組のこうした有利な角度が提示してある。
【0039】
【表1】
【0040】
図1cに示されているように、シャフト部分213は空洞30と先端部分23との間に中間部分214を備え、中間部分214は、閉状態では針シース22の内側に位置決めされ、それに形状が合致する。こうした中間部分は、空洞30内に組織試料を切り取る前方への動きの間にシース開口縁部51、52が空洞30内に組織をすっぱりと切り取ることを可能にするために、第1の方向における延在部を有する。空洞30から組織を取り出すことが、こうした中間部分214の存在によって容易にされ得る。しかし、針装置20の代替的な構成にはこうした中間部分214がなくてもよく、それにより、空洞30は近位先端縁部61と同一平面で終了する。
【0041】
針21内の空洞30は、少なくとも遠位空洞壁220および近位空洞壁221によって境界を定められている。遠位空洞壁220は第1の方向Xに対する遠位空洞壁角度230で構成され、第1のシース開口縁部51は、遠位空洞壁角度230と等しいかまたはそれより小さい、第1の方向Xに対する第1のシース開口縁部角度154で構成される。遠位空洞壁220の角度230と第1のシース開口縁部角度154との間のこうした構成により、空洞30内に組織試料を切り取る前方への動きの間にシース開口縁部51、52が空洞30内に組織をすっぱりと切り取ることが可能になる。
【0042】
(区間45°~60°の角度も有利な場合があるが)遠位空洞壁220の角度230についての有利な限度は45°であり、これは第1のシース開口縁部角度154とはおおよそ無関係であることが分かっている。こうした角度により、シース22が前方に運動している間の第1のシース開口縁部51と遠位空洞壁220との間の偶発的な衝突のいかなる影響も緩和される。
【0043】
第2のシース開口縁部52は、ゼロより大きい、第1の方向Xに対する第2のシース開口縁部角度155で構成される。第2のシース開口縁部角度155についての有利な値は上に例示してある。
【0044】
図に例示されているように、シース22の中空管およびシース開口203は、第2の方向Yおよび第3の方向Zによって画定される平面において円形の断面を有し、針21のシャフト部分213は、第2の方向Yおよび第3の方向Zによって画定される平面において円形の断面を備え、針21の先端部分23は、第2の方向Yおよび第3の方向Zによって画定される平面において円形の断面を備える。しかし、他のY/Z断面、たとえば楕円形の断面は除外されない。
【0045】
先端部分23は、第2の方向Yおよび第3の方向Zによって画定される平面において延在部DTを有し、これは、第2の方向Yおよび第3の方向Zによって画定される平面におけるシース開口203の横方向延在部DSより大きいかまたは等しい。
【0046】
追加的にまたは別法として、閉状態において第1のシース開口縁部51が第1の近位先端縁部61に当接するそれぞれの箇所において、先端部分23はシース開口203の対応する延在部より大きいかまたは等しい半径方向延在部を有することができる。同様に、閉状態において第2のシース開口縁部52が第2の近位先端縁部62に当接するそれぞれの箇所において、先端部分23はシース開口203の対応する延在部より大きいかまたは等しい半径方向延在部を有することができる。ここでは、半径方向延在部は第1の方向Xに対するもの、または第2の方向Yおよび第3の方向Zによって画定される平面にあるものであると理解される。
【0047】
言い換えれば、生検針装置20の外側は可能な限り平滑であるべきであり、これは関連する部品(シース22および先端部分23)が有利には同じ直径を有するべきであることを意味する。しかし、製造の観点からは、部品の延在部に関する許容差は、先端部分23の延在部がより大きくなるような許容差であるべきである。この理由は、シース22が先端部分23の延在部よりも大きい延在部を有する構成とは対照的に、こうした関係により、(上述のような)生検手技の第1のステップの間に細菌などの異物を捕集するリスクが減少し、通過が繰り返されている間に細菌を捕集するリスクも減少するからである。しかし、理想的には、部品間が同じ直径でありかつ完璧に嵌合することが望ましい。部品は、閉状態では、また部品が互いに押圧されたときには理想的に嵌合するべきである。
【0048】
図1a~図1d、および図2a~図2cに示されているように、先端部分23は第1の面251、第2の面252、および第3の面253を備える。それぞれの面251、252、253は、遠位先端24に向かって収束するように構成され、生検手技での使用中、第1の方向X、第2の方向Y、および第3の方向Zの左手配向において、第1の面251が第3の方向Zとは逆に、または逆らって先端部分23を押すように構成され、第2の面252が第2の方向Yに、または第2の方向Yに沿って、かつ第3の方向Zに先端部分23を押すように構成され、第3の面253が第2の方向Yとは逆に、または逆らって、かつ第3の方向Zに、または第3の方向Zに沿って先端部分23を押すように構成される。
【0049】
こうした構成により、先端部分23に作用する力をより均衡させて分散する切り開く特徴(ploughing character)が生検針装置20に提供され、先端部分23の第1の面251、第2の面252、および第3の面253によって形成される「鋤」により、第1の方向Xにおける前方への針21の運動は直線的な特徴を有することになり、したがって生検の標的により良く命中することになる。こうした構成では獲得される組織の量がわずかに少なくなる場合があるが、第1の面251が第3の方向Zにおいて上方を向いて第1の方向Xに対する鋭角261を形成し、したがって針先端部分23が第1の方向Xに前方に動いているときに第3の方向Zにおいて上方に組織を追いやり、それによって空洞30を組織で埋めるという点での最適化がなされることにより、三面構成によって針21は直線的に動かされるか、または第3の方向Zに対して下方にごく短い距離を動かされる。
【0050】
図1a~図1dおよび図2a~図2cの例の変形形態は、より多くの数の面を有する先端部分、たとえば第1の面251に類似した1つの面と、第2の面252および第3の面253と同様の方式で「鋤」形状を形成する3つかまたはそれより多い面とを有する先端構成でもよい。
【0051】
先端部分23の別の代替的な構成が図2dおよび図2eに例示されている。言い換えれば、生検針装置20は、遠位先端24で終了する遠位円錐部25を備える先端部分23を備えることができる。こうした遠位円錐部25は、遠位先端24が第1の方向Xに沿って、第3の方向Zにおいて中心軸Lに対してオフセットするように構成されてもよく、したがって、生検手技での使用中、第1の方向Xの左手配向において、遠位円錐部25は第3の方向Zとは逆に、または逆らって先端部分23を押す。
【0052】
こうした構成により、上述の「鋤」構成に類似した切り開く特徴が生検針装置20に提供される。たとえば、遠位先端を第1の方向Xに沿って、第3の方向Zに逆らって中心軸Lの下方に適当な距離ODだけオフセットするように構成することにより、第1の方向Xに針が運動している間、すなわちたとえば2cmのストロークの間に、遠位先端の偏位は1mm未満になる場合があり、これは通常の許容可能なまたは所望の偏位である。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3a
図3b
図3c
【国際調査報告】