(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】脂肪肝疾患を治療する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20230927BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20230927BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230927BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20230927BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20230927BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20230927BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/713
A61P1/16
A61K31/7125
A61P3/06
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518138
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(85)【翻訳文提出日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 EP2021075952
(87)【国際公開番号】W WO2022063782
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(71)【出願人】
【識別番号】593073230
【氏名又は名称】アイオニス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IONIS PHARMACEUTICALS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(72)【発明者】
【氏名】リンデン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】リー,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ブイ,フィン-ホア
(72)【発明者】
【氏名】ロメオ,ステファノ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA91X
4B065AA91Y
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065BA01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZC33
(57)【要約】
本開示は、対象において脂肪肝疾患を治療若しくは予防し、且つ/又はコレステロール及びLDLコレステロールレベルを低下させる方法を提供する。本開示は、対象におけるプレクストリン及びSec7ドメイン含有3(PSD3)の発現を低下させる方法を更に提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪肝疾患の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、プレクストリン及びSec7ドメイン含有3(PSD3)の発現を低下させるのに有効な化合物を前記対象に投与することを含み、前記化合物は、ポリヌクレオチドを含む、方法。
【請求項2】
細胞におけるPSD3の発現又は活性を阻害する方法であって、前記細胞を、PSD3発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物と接触させ、それにより前記細胞におけるPSD3の発現又は活性を阻害することを含む方法。
【請求項3】
対象におけるADP-リボシル化因子6(ARF6)の活性化を低下させる方法であって、前記対象におけるPSD3発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することを含み、より低いPSD3発現は、ARF6の低下した活性化をもたらす、方法。
【請求項4】
対象の肝細胞の細胞内脂肪含有量を低下させる方法であって、前記対象におけるPSD3発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む方法。
【請求項5】
対象のコレステロールを低下させる方法であって、前記対象におけるPSD3発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む方法。
【請求項6】
PSD3減少療法が適切な治療である、脂肪肝疾患を有する対象の亜集団を同定する方法であって、
a.対象が脂肪肝疾患を有するかどうかを診断すること、
b.前記対象がPSD3タンパク質の186T対立遺伝子変異体又はPSD3タンパク質の186L対立遺伝子変異体を有するかどうかを判定すること
を含み、
前記対象がPSD3タンパク質の前記186L対立遺伝子変異体を有する場合、前記対象は、PSD3減少療法が適切な治療である、脂肪肝疾患を有する対象の前記亜集団に含まれ、
前記対象がPSD3タンパク質の前記186T対立遺伝子変異体を有する場合、前記対象は、PSD3減少療法が適切な治療である、肝疾患を有する対象の前記亜集団に含まれない、方法。
【請求項7】
脂肪肝疾患を有する対象を治療する方法であって、
a.前記対象がPSD3タンパク質の186T対立遺伝子変異体又はPSD3タンパク質の186L対立遺伝子変異体を有するかどうかを判定することと、
b.前記対象がPSD3タンパク質の前記186L対立遺伝子変異体を有する場合にのみ、PSD3発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することと
を含む方法。
【請求項8】
前記化合物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA及びssRNAiから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物は、17~30個の連結されたヌクレオシドからなるアンチセンスRNAiポリヌクレオチドを含み、前記アンチセンスRNAiポリヌクレオチドの核酸塩基配列は、PSD3 RNAの等しい部分に相補的な少なくとも15個の連続する核酸塩基を含む標的化領域を含み、前記アンチセンスRNAiポリヌクレオチドは、配列番号2~18のいずれかの等しい部分に少なくとも90%、少なくとも95%又は100%相補的である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリヌクレオチドは、
連結されたデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント、
連結されたヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント、
連結されたヌクレオシドからなる3’ウイングセグメント
を有し、前記ギャップセグメントは、前記5’ウイングセグメント及び前記3’ウイングセグメントに直接隣接して且つそれらの間に位置し、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは、修飾糖を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
脂肪肝疾患を治療するための医薬品の製造又は調製のための、プレクストリン及びSec7ドメイン含有3(PSD3)の発現を低下させるのに有効な化合物の使用であって、前記化合物は、ポリヌクレオチドを含む、使用。
【請求項12】
脂肪肝疾患の治療のための、プレクストリン及びSec7ドメイン含有3(PSD3)の発現を低下させるのに有効な化合物の使用であって、前記化合物は、ポリヌクレオチドを含む、使用。
【請求項13】
脂肪肝疾患を治療するための医薬品を製造又は調製するための、ADP-リボシル化因子6(ARF6)の活性化を低下させるのに有効な化合物の使用であって、前記化合物は、ポリヌクレオチドを含む、使用。
【請求項14】
脂肪肝疾患の治療のための、ADP-リボシル化因子6(ARF6)の活性化を低下させるのに有効な化合物の使用であって、前記化合物は、ポリヌクレオチドを含む、使用。
【請求項15】
脂肪肝疾患を治療するための医薬品の製造又は調製のための、対象の肝細胞の細胞内脂肪含有量を低下させるのに有効な化合物の使用であって、前記化合物は、ポリヌクレオチドを含む、使用。
【請求項16】
脂肪肝疾患の治療のための、対象の肝細胞の細胞内脂肪含有量を低下させるのに有効な化合物の使用であって、前記化合物は、ポリヌクレオチドを含む、使用。
【請求項17】
脂肪肝疾患を治療するための医薬品の製造又は調製のための、対象のコレステロールを低下させるのに有効な化合物の使用であって、前記化合物は、ポリヌクレオチドを含む、使用。
【請求項18】
脂肪肝疾患の治療のための、対象のコレステロールを低下させるのに有効な化合物の使用であって、前記化合物は、ポリヌクレオチドを含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象において脂肪肝疾患を治療若しくは予防し、且つ/又はコレステロール及びLDLコレステロールレベルを低下させる方法を提供する。本開示は、対象におけるプレクストリン及びSec7ドメイン含有3(Pleckstrin and Sec7 Domain Containing 3)(PSD3)タンパク質の発現を低下させる方法を提供する。PSD3の発現を低下させるのに適した化合物も本明細書で提供される。
【背景技術】
【0002】
脂肪肝疾患(FLD)は、過剰なアルコール摂取の有無に関わらず、5%を超える肝臓脂質含有量として定義される。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、あらゆる年齢層で発生するが、特に肥満及び2型糖尿病等の高リスク因子のために心疾患のリスクが高い40歳代及び50歳代の人々に発症する。脂肪肝疾患は、腹部脂肪の増加、ホルモンインスリンの使用能力の低下、高血圧及び高血中トリグリセリド濃度を含む異常の一群であるメタボリックシンドロームにも密接に関連している。NAFLDは、世界中で一層一般的になっており、米国では慢性肝疾患の最も一般的な形態であり、推定8千~1億人が罹患している(非特許文献1)。世界的には、NAFLDは、世界人口の約25%に影響を及ぼしている。NAFLDには、非アルコール性脂肪肝(NAFL)及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が含まれる。NAFLがNASHに進行する患者は、全体的及び肝臓特異的死亡率が増加しており、肝硬変、肝不全及び肝細胞癌(HCC)のリスクが増加している。NASHは、急速に慢性肝疾患の主因となりつつあり、米国では肝移植の主因としてC型肝炎を追い越す見込みである。NAFLを有する人々における脂肪肝は、肝細胞内の脂肪滴の実質的な蓄積を特徴とする。NASHへの進行は、肝生検の組織学的検査において、肝線維症の有無に関わらず、肝炎症及び肝細胞傷害によって特徴付けられる。進行性線維症は、対応のある生検研究のメタ分析によると、肝臓関連の臨床転帰の悪化をもたらし、NASH患者の35%~41%に発症する。
【0003】
現在の治療選択肢には、体重減少及びアルコール性脂肪肝疾患の場合にはアルコール摂取の減少又は中止が含まれる。現在、非アルコール性脂肪性肝疾患又はアルコール性脂肪性肝疾患を治療するための医薬品は、承認されていない。機構的に、炎症、肝細胞傷害及び線維症を含む肝損傷は、非アルコール性脂肪性肝疾患及びアルコール性脂肪性肝疾患において同様の経路を伴う。したがって、非アルコール性脂肪性肝疾患のために開発された医薬品は、アルコール性脂肪性肝疾患でも作用する可能性が高い。更に、肝臓に含まれる異所性脂質蓄積は、2型糖尿病につながる肝臓インスリン抵抗性につながるインスリンシグナル伝達を損なう経路を引き起こす。したがって、肝臓脂質レベルを低下させる療法は、2型糖尿病の根本原因の1つを逆転させる(非特許文献2)。
【0004】
開発中の現在の脂肪肝疾患医薬品は、患者のコレステロールレベルを増加させるという更なる課題に直面する可能性があり、これは、心疾患、肥満及び2型糖尿病のリスクが既に高い患者の健康に対する負担を増加させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Mayo Clinic,Nonalcoholic Fatty Liver Disease
【非特許文献2】J.Clin.Invest.126(1):12-22(2016)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、脂肪肝疾患の治療又は予防を、それを必要とする対象において行う方法であって、対象におけるプレクストリン及びSec7ドメイン含有3(PSD3)の発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む方法に関する。
【0007】
いくつかの実施形態では、脂肪肝疾患は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)(肝硬変及び非肝硬変NASH)、脂質異常症、混合型脂質異常症、高コレステロール血症、糖尿病、肝線維症、肝細胞癌(HCC)、アルコール性脂肪肝疾患(AFLD)又はアルコール性脂肪性肝炎(ASH)(肝硬変及び非肝硬変ASH)である。特定の実施形態において、高コレステロール血症は、家族性高コレステロール血症である。いくつかの実施形態では、脂肪肝疾患は、糖尿病である。いくつかの実施形態では、脂肪肝疾患は、2型糖尿病である。
【0008】
いくつかの実施形態において、対象は、心血管疾患を有する。特定の実施形態において、疾患は、脂質異常症である。特定の実施形態において、疾患は、混合型脂質異常症である。特定の実施形態において、疾患は、高コレステロール血症である。特定の実施形態において、疾患は、家族性高コレステロール血症である。
【0009】
いくつかの実施形態では、化合物の投与を、それを必要とする対象において行う方法は、対象の細胞内肝脂肪含有量、肝臓重量、肝臓トリグリセリド含有量、血漿循環アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、肝臓コラーゲン1a1及び脂質含有量の1つ以上を減少させる。
【0010】
いくつかの実施形態では、方法は、対象の肝損傷、脂肪症、肝線維症、肝臓の炎症、肝臓の瘢痕化又は肝硬変、肝不全を軽減する。
【0011】
特定の実施形態は、細胞におけるPSD3の発現又は活性を阻害する方法であって、細胞を、PSD3発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物と接触させ、それにより細胞におけるPSD3の発現又は活性を阻害することを含む方法に関する。特定の実施形態において、細胞は、肝細胞である。特定の実施形態では、細胞は、対象中にある。特定の実施形態では、対象は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)(肝硬変及び非肝硬変)、脂質異常症、混合型脂質異常症、高コレステロール血症、糖尿病、肝線維症、肝細胞癌(HCC)、アルコール性脂肪性肝疾患(AFLD)若しくはアルコール性脂肪性肝炎(ASH)(肝硬変及び非肝硬変ASH)又は2型糖尿病を有するか又はそれらのリスクがある。
【0012】
いくつかの実施形態において、本開示は、ADP-リボシル化因子6(ARF6)の活性化を低下させる方法を提供し、方法は、対象におけるプレクストリン及びSec7ドメイン含有3(PSD3)の発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む、対象におけるPSD3発現を低下させることを含み、より低いPSD3発現は、ARF6の低下した活性化をもたらす。
【0013】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象の肝細胞における細胞内脂肪含有量を低下させる方法を提供し、方法は、対象におけるプレクストリン及びSec7ドメイン含有3(PSD3)の発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象のコレステロールを低下させる方法を提供し、方法は、対象におけるプレクストリン及びSec7ドメイン含有3(PSD3)の発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む。いくつかの実施形態において、LDLコレステロールは、対象において低下される。
【0015】
いくつかの実施形態では、本開示は、PSD3減少療法に適している、脂肪肝疾患を有する対象の亜集団を同定する方法を提供し、方法は、(i)対象が脂肪性肝疾患を有するかどうかを診断すること、(ii)対象がPSD3の186T対立遺伝子変異体又はPSD3の186L対立遺伝子変異体を有するかどうかを判定することを含み、対象がPSD3の186L対立遺伝子変異体を有する場合、適切な治療は、PSD3の発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することを含み、対象がPSD3の186T対立遺伝子変異体を有する場合、治療は、適切ではないPSD3の発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することを含まない。いくつかの実施形態では、工程(ii)は、186L対立遺伝子変異体の遺伝子型決定又は186L対立遺伝子変異体との強い連鎖不平衡にある遺伝子変異体の遺伝子型決定からの推論によって決定され得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、本開示は、脂肪肝疾患を有する対象を治療する方法を提供し、方法は、(i)対象がPSD3の186T対立遺伝子変異体又はPSD3の186L対立遺伝子変異体を有するかどうかを判定することと、(ii)対象がPSD3の186L対立遺伝子変異体を有する場合にのみ、PSD3の発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することとを含む。いくつかの実施形態では、工程(i)は、186L対立遺伝子変異体の遺伝子型決定又は186L対立遺伝子変異体との強い連鎖不平衡にある遺伝子変異体の遺伝子型決定からの推論によって決定され得る。いくつかの実施形態において、対象は、PSD3の186T対立遺伝子変異体を有さない。先の実施形態のいずれかにおいて、対象は、ヒトである。
【0017】
いくつかの実施形態では、化合物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、siRNA又はssRNAiから選択される。いくつかの実施形態では、化合物は、配列番号2~18のいずれか1つの等しい長さの部分に相補的なポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、一本鎖である。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、第2のポリヌクレオチドと対になって二重鎖を形成する。特定の実施形態では、化合物は、siRNA化合物である。
【0018】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、8~50個の連結されたヌクレオシドからなり、且つPSD3をコードする核酸の等しい長さの部分に少なくとも90%相補的な核酸塩基配列を有する。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、長さが12~30個の連結されたヌクレオシドからなる。
【0019】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2~18の全て又はいずれか1つの等しい長さの部分に少なくとも90%相補的な核酸塩基配列を有する。
【0020】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾されたヌクレオシド間連結、少なくとも1つの修飾糖部分及び少なくとも1つの修飾された核酸塩基から選択される少なくとも1つの修飾を含む。
【0021】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドのヌクレオシドの少なくとも1つは、修飾糖部分を含む。特定の実施形態では、修飾糖は、二環式糖又は2’-O-メトキシエチルである。特定の実施形態において、修飾糖は、4’-CH(CH3)-O-2’架橋又は4’-(CH2)n-O-2’架橋を含み、ここで、nは、1又は2である。
【0022】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドのヌクレオシドの少なくとも1つは、修飾核酸塩基を含む。特定の実施形態において、修飾核酸塩基は、5-メチルシトシンである。
【0023】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオシド間連結は、修飾されたヌクレオシド間連結である。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である。
【0024】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、
連結されたデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント、
連結されたヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント、
連結されたヌクレオシドからなる3’ウイングセグメント
を有し、ギャップセグメントは、5’ウイングセグメント及び3’ウイングセグメントに直接隣接して且つそれらの間に位置し、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは、修飾糖を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、化合物は、コンジュゲート基を含む。特定の実施形態では、コンジュゲート基は、ポリヌクレオチドの5’末端又は3’末端に結合している。一定の実施形態では、コンジュゲート基は、1~5個のGalNAc部分を含む。いくつかの実施形態において、化合物は、対象の肝細胞に送達される。
【0026】
特定の実施形態では、化合物は、非経口投与される。いくつかの実施形態において、非経口投与は、皮下投与又は静脈内投与である。いくつかの実施形態において、方法は、化合物及び少なくとも1つの更なる治療を同時投与することを含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、本開示は、8~50個の連結されたヌクレオシドからなり、且つ配列番号2~18の等しい長さの部分に少なくとも90%配列相補的な核酸塩基配列を有するポリヌクレオチドを含む化合物を提供する。
【0028】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、10~30個の連結されたヌクレオシドからなる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、12~20個の連結されたヌクレオシドからなる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、16個の連結されたヌクレオシドからなる。
【0029】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドのヌクレオシドの少なくとも1つは、修飾糖部分を含む。いくつかの実施形態では、修飾糖は、二環式糖又は2’-O-メトキシエチルである。特定の実施形態において、修飾糖は、4’-CH(CH3)-O-2’架橋又は4’-(CH2)n-O-2’架橋を含み、ここで、nは、1又は2である。
【0030】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドのヌクレオシドの少なくとも1つは、修飾核酸塩基を含む。いくつかの実施形態において、修飾核酸塩基は、5-メチルシトシンである。
【0031】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドのヌクレオシド間連結の少なくとも1つは、修飾されたヌクレオシド間連結である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である。
【0032】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、
連結されたデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント、
連結されたヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント、
連結されたヌクレオシドからなる3’ウイングセグメント
を有し、ギャップセグメントは、5’ウイングセグメント及び3’ウイングセグメントに直接隣接して且つそれらの間に位置し、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは、修飾糖を含む。
【0033】
特定の実施形態では、化合物は、1~5個のGalNAc部分を含む。特定の実施形態では、GalNAc部分は、ポリヌクレオチドの5’末端又は3’末端に結合している。
【0034】
いくつかの実施形態において、本開示は、アンチセンスオリゴヌクレオチドに関し、ここで、アンチセンスオリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、配列番号1の配列である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】実施例1に記載されているように、ヨーロッパ系の子孫の個体におけるトリグリセリドに影響を及ぼす32個の遺伝子座の表を示す(Teslovich et al.,Nature 466,707-713,2010)。略語:TG、トリグリセリド;TC、総コレステロール;LDL、低密度リポタンパク質;HDL、高密度リポタンパク質。
【
図2】実施例1に記載されるように、Dallas Heart Studyにおける肝臓トリグリセリド含有量に関連するミスセンス変異体の表を示す。循環トリグリセリドレベルに関する以前のゲノムワイド研究によって同定された32の遺伝子座のうち、5%を超えるヨーロッパ系のMAFを有する合計3つのミスセンス変異体は、DHSコホートの肝臓トリグリセリド含有量と名目上関連していた。これらの変異体のうち、1つは、肝脂肪含有量の減少に関連し(rs71519934、ベータ=-0.02)、2つは、肝脂肪含有量の増加に関連していた(rs1260326、ベータ=0.03及びrs58542926、ベータ=0.12)。関連性を、年齢、性別及び祖先の上位4つの主成分について調整した線形回帰分析によって試験した。略語:Chr、染色体;rsID、参照一塩基多型同定;N0、主要対立遺伝子についてホモ接合性の個体の数;N1、ヘテロ接合性の個体数;N2、マイナー対立遺伝子についてホモ接合性の個体数;MAF、マイナー対立遺伝子頻度。^MAFは、DHSコホート全体におけるマイナー対立遺伝子頻度を指す。DHSでは、rs71519934は、rs71519934と完全な連鎖不平衡(D’=1、r2=1)にあるrs7003060として見出された。^^MAF EURは、dbSNPでは入手できないため、UK Biobank 50,000エクソームシーケンシングデータから英国系白人参加者の頻度を推定したrs71519934を除いて、単一ヌクレオチド多型のデータベース(dbSNP、Current Build 154、2020年4月21日リリース)に報告されている1000ゲノムデータを指す。*GCKRの遺伝子型決定は、2人の個体では決定されなかった。
【
図3】肝臓生検コホート(LBC)及び独立複製EUコホート(「中央ヨーロッパコホート」)の連続的及びカテゴリ的形質を示す。連続形質は、平均及び標準偏差(正規分布形質)又は中央値及び四分位範囲(非正規分布形質)として示されている。カテゴリ的形質は、数及び割合として示されている。*n=1,805について入手可能なデータ。
【
図4】年齢、性別、BMI、採用センター及びPNPLA3変異対立遺伝子の数によって調整された付加的遺伝モデル下でのバイナリーロジスティック回帰分析を使用することにより、脂肪肝、線維症、炎症及び風船様変性のより低い有病率によって測定される、肝生検コホート(LBC、N組織学的データ=1,951)における肝疾患のより低い有病率と関連するPSD3 rs71519934マイナー対立遺伝子の表を示す。脂肪症、線維症、炎症又は風船様変性の存在を相対的な程度>0と定義した。*n=1,805について入手可能なデータ。
【
図5】[
図5A-C]PSD3マイナー対立遺伝子が、肝臓生検コホート(LBC)における組織学的肝損傷の重症度の増強から保護し、その遺伝子発現がFLDを有する肝臓においてより高いことを示す。
図5Aは、肝生検コホート(LBC)におけるPSD3遺伝子型によって層別化された組織学的肝損傷を示す。バーは、特定の疾患の程度を示し、白色から黒色への色の濃淡は、疾患重症度の増加を示す。組織学的損傷をFLD活性スコア(NAS)及び肝線維症段階の異なる成分に従って評価した。PSD3 rs71519934 186Tマイナー対立遺伝子のキャリアは、重症度の低い肝疾患を有し、脂肪症、炎症、風船様変性及び線維症の程度がより低かった。関連性を、年齢、性別、BMI、採用センター及びPNPLA3 I148M変異対立遺伝子の数について調整した順序回帰分析によって試験した。
図5Bは、健康な肝臓及びFLD肝臓によって層別化された総PSD3 mRNA発現を示す。肝臓PSD3発現レベルは、健常対照と比較してFLD対象においてより高かった。P値は、マン・ホイットニーのノンパラメトリック検定によって計算した。
図5Cは、健康な肝臓及びFLD肝臓によって層別化された総NAT2 mRNA発現を示す。FLDの存在に基づくNAT2発現レベルに差はなかった。P値は、マン・ホイットニーのノンパラメトリック検定によって計算した。略語:Ctr、健康な対照肝臓(n=10);FLD、脂肪肝疾患を有する肝臓(n=67);PSD3、プレクストリン及びSec7ドメイン含有3;NAT2、N-アセチルトランスフェラーゼ2。
【
図6】PSD3 rs71519934マイナー対立遺伝子が、独立複製EUコホートにおける肝疾患のより低い有病率及びより低い重症度と関連することを示す(N組織学的データ=674)。関連性を、年齢、性別、BMI、採用センター及びPNPLA3変異対立遺伝子の数によって調整された付加的遺伝モデル下でバイナリーロジスティック(疾患の存在)又は順序回帰(疾患の重篤度)分析によって試験した。順序回帰のオッズ比(OR)を係数推定値及びその信頼区間(CI)の指数関数として計算した。脂肪症、線維症、炎症又は風船様変性の存在を相対的な程度>0と定義されている。
【
図7】PSD3 rs71519934によって層別化された、肝臓生検コホート(LBC)及び独立複製EUコホート(「中央ヨーロッパコホート」)からの複製コホートの連続的及びカテゴリ的形質を示す。連続形質は、平均及び標準偏差(正規分布形質)又は中央値及び四分位範囲(非正規分布形質)として示されている。カテゴリ的形質は、数及び割合として示されている。連続形質については、年齢、性別及び採用センター(BMI)について調整されていないか(年齢)又は調整されている付加的遺伝モデル下で線形回帰又は年齢、性別、BMI及び採用センターによってP値を計算した。モデルに入る前に、非正規分布形質を対数変換した。カテゴリ的形質については、カイ二乗検定(性別)又は年齢、性別、BMI及び採用センター(糖尿病)について調整した二項ロジスティック回帰によってP値を計算した。
【
図8】[
図8A-B]肝生検コホート(LBC)及び独立複製EUコホートにおけるPSD3 rs71519934と肝臓組織学的形質との間の関連のメタ分析を要約する表を示す。2つの研究の逆分散メタ分析を、Rバージョン3.6.1の固定効果モデル及びランダム効果モデルを有するパッケージ「メタ」を使用して行った。
図8Aは、脂肪症重症度、線維症重症度、炎症重症度及び風船様変性重症度についての結果を示す。
図8Bは、脂肪症の存在、線維症の存在、炎症の存在及び風船様変性の存在についての結果を示す。
【
図9】[
図9A-C]PSD3 mRNAアイソフォーム001が、実施例1に記載されるように、ヒト肝臓組織において最も高い発現を有することを示す。
図9Aは、ヒト肝臓組織における異なるPSD3 mRNAアイソフォームの発現レベルを示す。肝臓生検コホート(LBC)のミラノのサブグループからの77人の個体のサブセットの肝臓生検からのトランスクリプトーム。アイソフォーム001(EnsemblによってENST00000327040として又はNCBIによってNP_056125[アイソフォーム-a]として識別、1047aa)が最も高いレベルで発現し、次いでアイソフォーム008(EnsemblによってENST00000521841として識別され、非符号化)が発現した。
図9Bは、rs71519934遺伝子型によって層別化された全PSD3 mRNA発現を示す。遺伝子型によって層別化した場合、PSD3 mRNA発現レベルに差は見られなかった。P値は、未調整の線形回帰によって計算した。値は、モデルに入る前に対数変換した。
図9Cは、PSD3 rs71519934遺伝子型間で総NAT2 mRNA発現レベルが異ならなかったことを示す。P値は、未調整の線形回帰によって計算した。値は、モデルに入る前に対数変換した。略語:FPKM、マッピングされた100万リード当たりのエクソンモデル1キロベース当たりのフラグメント;186L:L対立遺伝子についてのホモ接合体(n=42);L186T:ヘテロ接合体(n=29);186T:T対立遺伝子についてのホモ接合体(n=6)。
【
図10】[
図10A-D]McA-RH7777細胞においてsiRNAを使用することによるインビトロでのPSD3の下方制御が、スクランブル(Scr)siRNAによりトランスフェクションされた細胞と比較して、実施例2に記載されるように、ベータ酸化(
図10D)における差異を伴うことなく、より低い細胞内中性脂肪含有量(
図10A)をもたらしたことを示す。細胞内中性脂肪含有量をORO染色によって可視化し(上のパネル)、Biopixによって定量した。デノボトリグリセリド合成を、TLCによって分離された放射性標識された新たに合成されたトリグリセリドとして測定し、5μCi/ml
3H-グリセロール+50μMオレイン酸とのインキュベーションの15、30、60分後にシンチレーション計数によって定量し;Apo-b分泌をSDS-PAGE及びその定量によって可視化した。細胞を0.05mCi/mL
35S Met/Cys+50μM OAで2時間パルスした。過剰のL-メチオニン及びL-システインを含むChase培地を5、15、30又は60分間インキュベートした。Apo-bを培地から免疫沈降させ、SDS-PAGEでの分離後にホスホイメージャによって可視化した。β酸化は、沈殿した放射性標識パルミテートとして測定した。細胞を8.5μCi/mL 3H-パルミテート+55μmol/Lパルミチン酸と2時間インキュベートし、その後、パルミテートをBSA及び過塩素酸で沈殿させ、シンチレーション計数によって定量した。データは、報告された独立した実験の平均±SDとして示されている。各図パネルについて、PSD3下方制御効率の平均は、2
-ΔΔCt法によって分析したリアルタイム定量PCRによって評価されるように約80%であった。P値は、Scr siRNA対PSD3 siRNAを比較するマン・ホイットニーのノンパラメトリック検定によって計算した。略語:AU:任意単位;RU:相対単位;dpm:毎分の分解。
【
図11】ラットMcA-RH7777肝細胞におけるsiRNAを使用することによるPSD3の下方制御が、脂質生成に関与する遺伝子の発現低下をもたらしたことを示す。データを6回の独立した実験の平均及びSDとして示す。P値は、Scr siRNA対PSD3 siRNAを比較するマン・ホイットニーのノンパラメトリック検定によって計算した。
【
図12】[
図12A-B]ヒト不死化Huh7肝細胞におけるsiRNAの使用によるPSD3の下方制御の効果を示す。
図12Aは、スクランブルsiRNAでトランスフェクトした細胞と比較した細胞内中性脂肪含有量に対する効果を示す。細胞内脂肪含有量をORO染色によって可視化し(上のパネル)、OROの面積をBiopixによって定量した。PSD3 mRNA下方制御の効率は、2-ΔΔCt法によって分析したリアルタイム定量PCRによって評価したところ、約65%であった。細胞を三連で播種し、播種の24時間後、それらをスクランブル又はPSD3-siRNAでトランスフェクトし、FBS+25μMのOAを含まない通常の培地で48時間増殖させた。
図12Bは、5μCi/mlの3H-グリセロール+50μMオレイン酸とのインキュベーションの15、30、60分後にTLCによって分離され、シンチレーションカウンティングによって定量化された新たに合成されたトリグリセリドによって測定されたデノボトリグリセリド合成に対する効果を示す。データを、報告された独立した実験の平均及びSDとして示す。P値は、Scr siRNA対PSD3 siRNAを比較するマン・ホイットニーのノンパラメトリック検定によって計算した。
【
図13】[
図13A-G]実施例3に記載されるように、脂肪症、炎症及びNAFLD活性スコア(NAS)の重症度に対する、NASH誘導食を合計50週間与えたC57BL/6雄マウスにおける肝臓PSD3の下方制御の効果を示す。最後の16週間にわたり、マウス群に生理食塩水、対照GalNAc-ASO(5mg/kg/週)又はPSD3 GalNAc-ASO(5mg/kg/週)を週1回の皮下注射によって投与した。PSD3 GalNAc-ASOは、肝臓PSD3 mRNA発現レベルを減少させ(
図13A)、肝臓重量の減少(
図13B)、総肝臓トリグリセリド含有量(
図13C)、血漿ALTレベル(
図13D)、肝臓コラーゲン1a1タンパク質レベル(
図13E)及び肝臓脂肪滴数(
図13F)と関連していた。PSD3 GalNAc-ASO処置は、脂肪症及び炎症の重症度及びNAFLD活性スコアも低下させたが、肝線維症スコアに有意な変化はなかった(
図13G)。データを平均及びSDとして示す。P値は、一元配置ANOVA Kruskal-Wallisノンパラメトリック検定、続いて多重比較のためのDunnの補正によって計算した。各群の平均を対照群(CtrGalNAc-ASO)の平均と比較して多重比較を行った。肝疾患の重症度スコアを順序回帰分析で分析した。
【
図14】[
図14A-H]実施例3に記載されるように、NASH誘導食を合計50週間与えたC57BL/6雄マウスにおける肝臓PSD3の下方制御の効果を示す。最後の16週間にわたり、マウス群に生理食塩水、対照GalNAc-ASO(5mg/kg/週)又はPSD3 GalNAc-ASO(5mg/kg/週)を週1回の皮下注射によって投与した。PSD3 GalNAc-ASOは、体重増加に有意に影響しなかった(
図14A)が、肝臓コレステロール(
図14B)及びコレステリルエステルレベル(
図14C)並びに血漿AST(
図14D)、コレステロール(
図14E)及びLDLコレステロールレベル(
図14F)を低下させた。血漿トリグリセリド(
図14G)又はHDLコレステロールレベル(
図14H)に有意な効果はなかった。データを平均±SDとして示す。P値は、Kruskal-Wallisノンパラメトリック検定、続いてDunnの多重比較検定によって計算した。多重比較を、各群を対照群(Ctr GalNAc-ASO)と比較することによって行った。
【
図15】実施例3に記載されるように、NASH誘導食を合計50週間与えたC57BL/6雄マウスにおける肝臓PSD3の下方制御の効果を示す。最後の16週間にわたり、マウス群に生理食塩水、対照GalNAc-ASO(5mg/kg/週)又はPSD3 GalNAc-ASO(5mg/kg/週)を週1回の皮下注射によって投与した。肝mRNAをデジタル遺伝子発現プロファイリングによって定量し、100万当たりの転写物(transcripts per million:TPM)として表す。PSD3 GalNAc ASO処置は、肝臓Acc1、Fasn及びScd1 mRNA発現を有意に減少させた。データを平均及びSDとして示す。P値を、一元配置ANOVA Kruskal-Wallisノンパラメトリック検定によって計算した。
【
図16】PSD3マイナー対立遺伝子が、遺伝的リスク因子の調整後の肝臓生検コホート(LBC)における肝疾患のより低い有病率と関連することを示す。関連性を、年齢、性別、BMI、採用センター、PNPLA3 I148M変異対立遺伝子の数(n=1,950)について調整し、更に他の主要な遺伝的リスク因子(TM6SF2rs58542926[E167K](n=1,943)、MBOAT7 rs641738(n=1,938)及びGCKR rs1260326[L446P](n=1,863)及び糖尿病の存在)について調整した順序回帰分析によって試験した。*n=1,805について入手可能なデータ。
【
図17】PSD3 L186T遺伝子型によって層別化された、実施例1に記載のDallas Heart Studyの参加者の表を示す。P値は、必要に応じて年齢、性別及びBMIについて調整し、自己報告民族性について調整又は層別化した線形回帰によって計算した。
【
図18】全体及び4つのBMS層内のUK Biobankからの英国系白人参加者におけるプロトン密度脂肪分率(PDFF)とPSD3 rs7003060との関連を示す。年齢、性別、BMI、祖先及び配列型の最初の10個の主成分を調整した線形回帰を用いて分析を行った。
【
図19】[
図19A-C]186T対立遺伝子についてホモ接合性であるドナー由来の初代ヒト肝細胞と、186L対立遺伝子についてホモ接合性であるドナー由来の初代ヒト肝細胞とを2Dで比較したときのPSD3タンパク質及び細胞内脂質レベルに対する影響を示す。
図19Aは、オイルレッドO(ORO)染色によって可視化され、Biopixによって定量化された細胞内中性脂肪含有量を示す。データは、報告された独立した実験の平均及び標準偏差として示されている。P値は、マン・ホイットニーのノンパラメトリック検定によって計算した。
図19Bは、2%FBS、10μMのOA又は25μMのOAを補充した無血清通常培地中で48時間培養した細胞の画像を示す。全細胞溶解物を用いて免疫ブロット法を行い、カスタム抗体を用いてPSD3(NCBI:NP_056125、1047aa)を検出した。棒グラフは、PSD3/カルネキシンとして計算された相対PSD3を示す。
図19Cは、示差的に発現された脂質代謝に関与する重要な遺伝子がRNA-Seqを用いて得られたことを示す。データを発現のLog2倍数変化及びp値の-log10として示す。略語:RU:相対単位、CNX:カルネキシン。
【
図20】[
図20A-C]PSD3下方制御が、より低いレベルの活性化されたARF6(ARF-GTP)をもたらしたことを示す。
図20Aは、沈殿後、キットによって提供される抗ARF6抗体を使用する免疫ブロット法によって活性ARF6-GTPが検出されたことを示す。
図20Bは、ノックダウン効率が、2
-ΔΔCt法によって分析されるリアルタイム定量PCRによって評価されるように、PSD3について約60%の減少及びARF6について約75%の減少を示したことを示す。
図20Cは、GTP-ARF6/カルネキシンとして計算された相対的なARF6-GTP(活性)を示す。データは、報告された独立した実験の平均±SDとして示されている。P値は、マン・ホイットニーのノンパラメトリック検定によって計算した。略語:RU:相対単位、CNX:カルネキシン。
【
図21】[
図21A-D]PSD3の下方制御が、2Dで培養した場合、いずれかの対立遺伝子を有する肝細胞における細胞内中性脂質含有量を減少させることを示す。P値は、SCR siRNA対PSD3 siRNAを比較するマン・ホイットニーのノンパラメトリック検定によって計算した。略語:RU:相対単位、CNX:カルネキシン。
【発明を実施するための形態】
【0036】
定義
「2’-デオキシフラノシル糖部分」又は「2’-デオキシフラノシル糖」は、2’-位置に2つの水素を有するフラノシル糖部分を意味する。2’-デオキシフラノシル糖部分は、非修飾又は修飾であり得、且つ2’-位置以外の位置で置換されていても又は置換されていなくてもよい。オリゴヌクレオチドに関連して、β-D-2’-デオキシリボシル糖部分は、非置換非修飾2’-デオキシフラノシルであり、天然に存在するデオキシリボ核酸(DNA)中に見出される。
【0037】
「2’-デオキシヌクレオシド」は、天然に存在するデオキシリボ核酸(DNA)中に見出される、2’-H(H)フラノシル糖部分を含むヌクレオシドを意味する。特定の実施形態において、2’-デオキシヌクレオシドは、修飾核酸塩基を含み得るか、又はRNA核酸塩基(ウラシル)を含み得る。
【0038】
「2’-O-メトキシエチル」(2’-MOEでもある)は、リボシル環の2’-OH基の代わりに2’-O(CH2)2-OCH3)を指す。2’-O-メトキシエチル修飾糖は、修飾糖である。
【0039】
「2’-MOEヌクレオシド」(2’-O-メトキシエチルヌクレオシドとも称される)は、2’-MOE修飾糖部分を含むヌクレオシドを意味する。
【0040】
「2’-置換ヌクレオシド」又は「2-修飾ヌクレオシド」は、2’-置換糖部分又は2’-修飾糖部分を含むヌクレオシドを意味する。本明細書で使用される、糖部分に関する「2’-置換」又は「2-修飾」は、H又はOH以外の少なくとも1つの2’-置換基を含む糖部分を意味する。
【0041】
「5-メチルシトシン」は、5位に付着しているメチル基を有するシトシンを意味する。5-メチルシトシンは修飾核酸塩基である。
【0042】
本出願全体にわたり、用語「約」は、値が、その値を決定するために用いられている方法/装置についての誤差の固有の変動又は試験対象間で存在する変動を含むことを示すために使用される。典型的には、用語「約」は、状況に応じておよそ又は1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%又は20%未満の変動性を包含することを意味する。
【0043】
特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、代替物のみを指すと明示されない限り又はその代替物が相互に排他的でない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみ及び「及び/又は」を指す定義を支持する。
【0044】
「アンチセンスオリゴヌクレオチド」又は「ASO」は、標的核酸又はその領域若しくはセグメントに相補的な核酸塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを意味する。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的核酸又はその領域若しくはセグメントに特異的にハイブリダイズ可能であり、そのハイブリダイゼーションは、標的核酸のRNase H媒介性切断をもたらす。
【0045】
「二環式糖」又は「二環式糖部分」は、2つの環を含む修飾糖部分(第2の環が、第1の環中の原子の2つを連結する架橋を介して形成されており、それにより二環構造を形成している)を意味する。特定の実施形態において、二環式糖部分の第1の環は、フラノシル部分である。「二環式ヌクレオシド」は、二環式糖部分を含むヌクレオシドを意味する。
【0046】
「コンジュゲート基」は、ポリヌクレオチドに直接結合している原子の群を意味する。特定の実施形態では、コンジュゲート基は、コンジュゲート部分と、コンジュゲート部分をポリヌクレオチドに結合するコンジュゲートリンカーとを含む。
【0047】
「拘束エチル」又は「cEt」又は「cEt修飾糖部分」は、二環式糖の第2の環がβ-Dリボシル糖部分の4’-炭素と2’-炭素とを接続する架橋を介して形成され、架橋が式4’-CH(CH3)-O-2’を有する二環式β-Dリボシル糖部分を意味する。「cEtヌクレオシド」は、cEt糖部分を含むヌクレオシドを意味する。
【0048】
オリゴヌクレオチドに関連して、「連続する」は、互いに直接隣接するヌクレオシド、核酸塩基、糖部分又はヌクレオシド間連結を指す。例えば、「連続核酸塩基」は、配列中で互いに直接隣接する核酸塩基を意味する。
【0049】
「ギャップマー」は、1つ以上のヌクレオシドを有する外部領域の間に位置するRNase H切断を支持する複数のヌクレオシドを有する内部領域を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを意味し、内部領域を含むヌクレオシドは、外部領域を含む1つ以上のヌクレオシドと化学的に異なる。内部領域は、「ギャップ」と称することができ、外部領域は、「ウイング」と称することができる。特定の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ギャップマーである。
【0050】
「ヌクレオシド間連結」は、ポリヌクレオチド中の隣接するヌクレオシド間の共有結合である。本明細書で使用される場合、「修飾されたヌクレオシド間連結」は、ホスホジエステルヌクレオシド間連結以外の任意のヌクレオシド間連結を意味する。「ホスホロチオエートヌクレオシド間連結」は、ホスホジエステルヌクレオシド間連結の非架橋酸素原子の1つが硫黄原子で置き換えられた修飾ヌクレオシド間連結である。
【0051】
「連鎖不平衡」は、所与の集団における異なる遺伝子座での対立遺伝子の非ランダムな会合を意味すると理解される。正の連鎖不平衡の対立遺伝子は、それらがランダムに会合した場合に予想されるよりもはるかに高い頻度で一緒に現れるが、負の連鎖不平衡の対立遺伝子は、それらがランダムに会合した場合に予想されるよりもはるかに低い頻度で一緒に現れる。
【0052】
「結合ヌクレオシド」は、ヌクレオシド間連結によって一緒に結合された隣接ヌクレオシドを意味する。
【0053】
「ミスマッチ」又は「非相補的」は、第1及び第2のポリヌクレオチドがアラインメントされたときに、第2のポリヌクレオチド又は標的核酸の対応する核酸塩基に相補的でない第1のポリヌクレオチドの核酸塩基を意味する。例えば、限定されるものではないが、ユニバーサル核酸塩基、イノシン及びヒポキサンチンが挙げられる核酸塩基は、少なくとも1つの核酸塩基とハイブリダイズすることができるが、ハイブリダイズした核酸塩基に対して依然としてミスマッチであるか又は非相補的である。別の例として、第1及び第2のポリヌクレオチドがアラインメントされたときに第2のポリヌクレオチド又は標的核酸の対応する核酸塩基にハイブリダイズすることができない第1のポリヌクレオチドの核酸塩基は、ミスマッチ又は非相補的核酸塩基である。
【0054】
「オーバーハングヌクレオシド」とは、アンチセンスRNAiオリゴヌクレオチドとセンスRNAiオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによって形成される二重鎖の一方又は両方の末端の不対ヌクレオチドを指す。
【0055】
核酸塩基は、天然に存在し得るか又は合成であり得る。核酸塩基及び糖塩基は、それぞれ独立して、修飾又は非修飾であり得る。「修飾ヌクレオシド」は、修飾核酸塩基及び/又は修飾糖部分を含むヌクレオシドを意味する。修飾ヌクレオシドとしては、核酸塩基を欠く脱塩基ヌクレオシドが挙げられる。
【0056】
「ホスホロチオエート結合」は、非架橋酸素原子の1つが硫黄原子で置き換えられた修飾ホスフェート結合を意味する。ホスホロチオエートヌクレオシド間連結は、修飾ヌクレオシド間連結である。
【0057】
「部分」は、核酸の規定数の連続(すなわち結合)核酸塩基を意味する。特定の実施形態において、部分は、標的核酸の規定数の連続核酸塩基である。特定の実施形態において、部分は、規定数のオリゴマー化合物の連続核酸塩基である。
【0058】
「ポリヌクレオチド」は、結合ヌクレオシドのポリマーを意味し、各結合ヌクレオシドは、互いに独立して、修飾又は非修飾であり得る。別途指示しない限り、ポリヌクレオチドは、8~80個の結合ヌクレオシドからなる。「修飾ポリヌクレオチド」は、少なくとも1つの糖、核酸塩基又はヌクレオシド間連結が修飾されているポリヌクレオチドを意味する。「非修飾ポリヌクレオチド」は、糖、核酸塩基又はヌクレオシド間修飾を含まないポリヌクレオチドを意味する。
【0059】
「遺伝子」は、ポリペプチドをコードするヌクレオチドの集合体を指し、それにはcDNA及びゲノムDNA核酸分子が含まれる。いくつかの実施形態では、「遺伝子」は、コード配列の前(すなわち5’)及び後(すなわち3’)の調節配列として作用することができる非コード核酸断片も指す。
【0060】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNA分子等の核酸分子は、目的の配列、例えばDNA配列又はRNA配列にハイブリダイズすることができる。核酸分子は、別の核酸分子、例えばcDNA、ゲノムDNA又はRNAに、温度及びイオン強度溶液の適切な条件下で核酸分子の一本鎖形態がその別の核酸分子にアニールし得る場合、「ハイブリダイズ可能である」又は「ハイブリダイズされる」。特定の機構に限定するものではないが、ハイブリダイゼーションの最も一般的な機構は、相補的な核酸塩基間のワトソン・クリック、フーグスティーン又は逆フーグスティーン水素結合であり得る水素結合を含む。一部の実施形態において、相補的核酸分子として、以下に限定されないが、アンチセンス化合物及び核酸標的が挙げられる。一部の実施形態において、相補的核酸分子として、以下に限定されないが、ポリヌクレオチド及び標的核酸が挙げられる。
【0061】
「特異的にハイブリダイズ可能」とは、ポリヌクレオチドと標的核酸との間に、所望の効果を誘導するのに十分な程度の相補性を有するが、非標的核酸に対する効果が最小限であるか又は全くないポリヌクレオチドを指す。特定の実施形態において、特異的ハイブリダイゼーションは、生理学的条件下で起こる。
【0062】
用語「相補的な」は、互いにハイブリダイズすることができるヌクレオチド塩基及び/又はポリヌクレオチドの関係を説明するのに用いられ、例えば、そのようなポリヌクレオチド又はその1つ以上の領域のヌクレオチド配列は、別のポリヌクレオチド又はその1つ以上の領域のヌクレオチド配列に、2つのヌクレオチド配列が逆方向にアラインメントされた場合にマッチする。本明細書に記載される核酸塩基マッチ又は相補的核酸塩基として、以下の対が挙げられる:アデニン(A)とチミン(T)、アデニン(A)とウラシル(U)、シトシン(C)とグアニン(G)及び5-メチルシトシン(mC)とグアニン(G)。相補的ポリヌクレオチド及び/又は核酸は、各ヌクレオシドに核酸塩基相補性を有する必要はなく、1つ以上の核酸塩基ミスマッチを含み得る。したがって、本開示は、本明細書で開示又は使用される配列に相補的な単離ポリヌクレオチド及びその実質的に類似する核酸配列も含む。2つのポリヌクレオチドが、マッチする核酸塩基を有する程度は、「相補性パーセント」又は「相補的パーセント」に換算して表すことができる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、本明細書に提供される別のポリヌクレオチド又は標的核酸との70%、少なくとも70%、75%、少なくとも75%、80%、少なくとも80%、85%、少なくとも85%、90%、少なくとも90%、95%、少なくとも95%、97%、少なくとも97%、98%、少なくとも98%、99%若しくは少なくとも99%又は100%の相補性を有する。2つのポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド及び標的核酸が「完全に相補的」又は「100%相補的」である実施形態では、そのようなポリヌクレオチドは、いかなる核酸塩基ミスマッチも伴わずに各ヌクレオシドにおいて核酸塩基マッチを有する。別段示されない限り、相補性パーセントは、より長い配列に相補的であるより短い配列の核酸塩基の百分率である。
【0063】
DNA「コード配列」は、適切な調節配列の制御下に置かれた場合にインビトロ又はインビボで細胞内において転写され、ポリペプチドに翻訳される二本鎖DNA配列の鎖の1つである。「調節配列」は、コード配列の上流(すなわち5’)、内部又は下流(すなわち3’)に位置し、関連するコード配列の転写、RNAプロセシング若しくは安定性又は翻訳に影響を及ぼす非コードポリヌクレオチド配列を指す。調節配列としては、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位及びステムループ構造を挙げることができる。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端における開始コドン及び3’(カルボキシル)末端における翻訳終止コドンにより決定される。コード配列は、細菌及び古細菌ポリヌクレオチド、mRNAからのcDNA、ゲノムDNAポリヌクレオチド及び合成DNAポリヌクレオチドを含むことができるが、これらに限定されない。コード配列が真核細胞における発現を意図する場合、ポリアデニル化シグナル及び転写終結配列は、典型的にはコード配列の3’に位置する。
【0064】
「PSD3」は、遺伝子、プレクストリン及びSec7ドメイン含有3の任意の核酸又はタンパク質を意味する。「PSD3核酸」は、PSD3をコードする任意の核酸を意味する。例えば、特定の実施形態において、PSD3核酸には、PSD3をコードするDNA配列、PSD3をコードするDNA(イントロン及びエクソンを含むゲノムDNAを含む)から転写されたRNA配列及びPSD3をコードするmRNA配列が含まれる。「PSD3 mRNA」とは、PSD3タンパク質をコードするmRNAを意味する。標的は、大文字又は小文字のいずれかで称され得る。
【0065】
本明細書において使用される用語「配列類似性」又は「%類似性」は、核酸配列間又はアミノ酸配列間の同一性又は対応性の程度を指す。ポリヌクレオチドに関連して、「配列類似性」は、1つ以上のヌクレオチド塩基の変化が1つ以上のアミノ酸の置換をもたらすが、ポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の機能的特性に影響しない核酸配列を指す。また、「配列類似性」は、結果として生じる転写産物の機能的特性に実質的に影響しないポリヌクレオチドの修飾、例えば、1つ以上のヌクレオチド塩基の欠失又は挿入を指し得る。したがって、本開示は、特定の例示的な配列よりも多くのものを包含することが理解される。ヌクレオチド塩基の置換を形成する方法は、コードされるポリペプチドの生物活性の保持を判定する方法と同様に、既知である。
【0066】
配列類似性は、当技術分野で公知の方法、例えばBLAST、MUSCLE、Clustal(ClustalW及びClustalXを含む)及びT-Coffee(例えば、M-Coffee、R-Coffee及びExpresso等の変形例を含む)を用いた配列アラインメントによって決定することができる。いくつかの実施形態において、2つ又はそれを超えるポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列の特定の部分のみが、配列同一性を決定するためにアラインメントされる。いくつかの実施形態では、2つ以上の配列の特定のドメインのみをアラインメントして配列類似性が判定される。比較ウィンドウは、配列をアラインメントして比較することができる少なくとも10~1000個超の残基、少なくとも20~約1000個の残基又は少なくとも50~500個の残基のセグメントであり得る。配列同一性の判定のためのアラインメント方法は周知であり、公的に利用可能なデータベース、例えばBLASTを使用して実行することができる。例えば、一部の実施形態において、2つのヌクレオチド配列の「同一性パーセント」は、Karlin and Altschul,Proc Nat Acad Sci USA 90:5873-5877(1993)の通り修正されたKarlin and Altschul,Proc Nat Acad Sci USA 87:2264-2268(1990)のアルゴリズムを用いて求められる。そのようなアルゴリズムは、BLASTプログラム、例えばAltschul et al.,J Mol Biol,215:403-410(1990)に記載されるBLAST+又はNBLAST及びXBLASTプログラム中に組み込まれている。BLASTタンパク質検索は、プログラム、例えば、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長さ=3により実行されて、本開示のタンパク質分子と相同であるアミノ酸配列を得ることができる。2つの配列間にギャップが存在する場合、Gapped BLASTを、Altschul et al.,Nucleic Acids Res 25(17):3389-3402(1997)に記載の通り利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。
【0067】
方法
いくつかの実施形態において、本開示は、脂肪肝疾患の治療又は予防を、それを必要とする対象において行う方法を提供し、対象におけるプレクストリン及びSec7ドメイン含有3(PSD3)の発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与し、それにより、対象において脂肪肝疾患を治療又は予防することを含む。
【0068】
肝細胞癌関連抗原であるPSD3は、ADP-リボシル化因子6(ARF6)を活性化するグアニン交換因子である。例えば、Wang et al.,J Immunol 169,1102-1109(2002)、Donaldson et al.,Nat Rev Mol Cell Biol 12,362-375(2011)及びFranco et al.,EMBO J 18,1480-1491(1999)を参照されたい。PSD3は、18の注釈付きアイソフォームを有するタンパク質であり(Ensemblリリース75)、最も一般的なのはアイソフォーム-a(NP_056125、1047aa)及びアイソフォーム-b(NP_996792、513aa)である。肝臓では、アイソフォーム-aがアイソフォーム-bよりも高レベルで発現されることが発見された。いくつかの実施形態では、本明細書で言及される「PSD3」は、PSD3のアイソフォーム-aである。いくつかの実施形態では、本明細書で言及される「PSD3」は、PSD3のアイソフォーム-bである。いくつかの実施形態では、本明細書で言及される「PSD3」は、特定のアイソフォームに限定されず、PSD3の任意のアイソフォームを指し得る。
【0069】
本明細書に開示される研究は、ゲノムワイド関連研究を使用して、肝疾患の全範囲に対する保護を潜在的に与えるアミノ酸位置186でのロイシンからトレオニンへの置換を有するPSD3変異体(本明細書では「PSD3 L186T」、「L186T」又は「186T対立遺伝子変異体」と略記する)を同定した。具体的には、このPSD3変異体は、脂肪症、炎症、風船様変性及び線維症のより低い有病率に関連していた。肝疾患を有し、PSD3 L186T変異体を有する対象について、肝疾患重症度は全範囲にわたってより低かった。PSD3 L186T変異体のキャリアは、より低い血漿総コレステロール及びLDLコレステロールを有していた。
【0070】
驚くべきことに、L186T置換は、そのグアニン交換因子活性に関してPSD3の機能喪失及びそのARF6-GDP不活性形態からARF6-GTP活性形態へのADP-リボシル化因子6(ARF6)の触媒作用をもたらすことが発見された。具体的には、野生型PSD3(186L)は、ARF6を活性化したが、変異PSD3 L186Tは、活性化されたARF6を減少させた。
【0071】
肝疾患を有する対象におけるPSD3の下方制御は、機能喪失変異体PSD3と同じ保護をもたらすと考えられた。したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、対象の細胞におけるプレクストリン及びSec7ドメイン含有3(PSD3)発現を低下させる方法を提供し、方法は、対象におけるPSD3の発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む。いくつかの実施形態において、対象は、脂肪肝疾患を有するか又は有するリスクがある。
【0072】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象のコレステロールを低下させる方法を提供し、方法は、対象におけるプレクストリン及びSec7ドメイン含有3(PSD3)の発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む。いくつかの実施形態において、LDLコレステロールは、対象において低下する。いくつかの実施形態において、対象は、脂肪肝疾患を有するか又は有するリスクがある。
【0073】
いくつかの実施形態において、本開示は、ADP-リボシル化因子6(ARF6)の活性化を低下させる方法を提供し、方法は、対象におけるプレクストリン及びSec7ドメイン含有3(PSD3)の発現を低下させることを含み、方法は、対象におけるPSD3の発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することを含み、より低いPSD3発現は、ARF6の低下した活性化をもたらす。
【0074】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象の肝細胞における細胞内脂肪含有量を低下させる方法を提供し、方法は、対象におけるプレクストリン及びSec7ドメイン含有3(PSD3)の発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む。いくつかの実施形態において、対象は、脂肪肝疾患を有するか又は有するリスクがある。
【0075】
特定の実施形態では、化合物は、標的核酸に相補的な領域を含むポリヌクレオチドを含むか又はそれからなり、標的核酸は、PSD3 RNAである。上記の各実施形態において、化合物はPSD3 RNAを標的とし得る。特定の実施形態では、PSD3 RNAは、配列番号20(GENBANKアクセッション番号:NM_015310.3)に示される配列を有する。特定の実施形態では、細胞を、配列番号20に相補的なポリヌクレオチドを含む化合物と接触させると、PSD3 RNAの量が減少し、特定の実施形態では、PSD3タンパク質の量が減少する。特定の実施形態では、化合物は修飾オリゴヌクレオチドからなる。特定の実施形態では、細胞は、それを必要とする対象内にある。特定の実施形態では、配列番号20に相補的なポリヌクレオチドを含む化合物を対象に投与すると、対象の肝損傷、脂肪症、肝線維症、肝臓の炎症、肝瘢痕又は肝硬変、肝不全が減少する。特定の実施形態において、対象は、ヒトである。特定の実施形態では、化合物は修飾オリゴヌクレオチドからなる。特定の実施形態では、化合物は、修飾オリゴヌクレオチド及びコンジュゲート基からなる。特定の実施形態では、化合物はRNAi化合物である。
【0076】
化合物
いくつかの実施形態では、化合物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA及びssRNAiから選択される。特定の実施形態では、化合物はリボザイムである。
【0077】
いくつかの実施形態において、化合物は一本鎖ポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、一本鎖ポリヌクレオチドは、相補的ポリヌクレオチドに結合して二本鎖二重鎖を形成することができる。いくつかの実施形態において、一本鎖ポリヌクレオチドは自己相補的配列を含む。「自己相補的」は、ポリヌクレオチドがそれ自体に少なくとも部分的にハイブリダイズすることができることを意味する。いくつかの実施形態において、一本鎖ポリヌクレオチドはRNAポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、一本鎖ポリヌクレオチドは、ssRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。
【0078】
いくつかの実施形態では、化合物は二本鎖である。そのような二本鎖化合物は、標的核酸に相補的な領域を有する第1のポリヌクレオチド(及びアンチセンスRNAiポリヌクレオチド)並びに第1のポリヌクレオチドに相補的な領域を有する第2のポリヌクレオチド(センスRNAiポリヌクレオチド)を含む。いくつかの実施形態では、二本鎖化合物はDNAポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、化合物はRNAポリヌクレオチドを含む。そのような実施形態では、ポリヌクレオチド中のチミン核酸塩基は、ウラシル核酸塩基によって置き換えられる。二本鎖化合物のポリヌクレオチドは、非相補的なオーバーハングヌクレオシドを含み得る。特定の実施形態では、化合物は、糖の2’位がハロゲン(フッ素基等;2’-F)を含有するか、又はアルコキシ基(例えばメトキシ基等;2’-OMe)を含有する1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む。特定の実施形態において、化合物は、少なくとも1つの2’-F糖修飾及び少なくとも1つの2’-OMe糖修飾を含む。特定の実施形態において、少なくとも1つの2’-F糖修飾及び少なくとも1つの2’-OMe糖修飾は、化合物の鎖に沿って少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個又は20個の連続核酸塩基について、交互のパターンで配置されている。特定の実施形態では、化合物は、天然に存在するホスホジエステル結合以外の隣接するヌクレオシド間に1つ以上の結合を含む。そのような結合の例としては、ホスホルアミド結合、ホスホロチオエート結合及びホスホロジチオエート結合が挙げられる。化合物は、米国特許第6,673,661号明細書に教示されているような化学的に修飾された核酸分子でもあり得る。別の実施形態において、化合物は、例えば、2000年4月19日出願の国際公開第00/63364号パンフレットにより開示されているような1つ又は2つのキャップされた鎖を含む。二本鎖化合物の例はsiRNAである。
【0079】
特定の実施形態において、本明細書に記載される化合物は、干渉RNA化合物(RNAi)であり、二本鎖RNA化合物(小分子干渉RNA又はsiRNAとも称される)及び一本鎖RNAi化合物(又はssRNA)が挙げられる。そのような化合物は、少なくとも部分的にRISC経路を介して機能し、標的核酸を分解及び/又は捕捉する(したがってマイクロRNA/マイクロRNA模倣化合物が含まれる)。本明細書で使用される場合、「siRNA」という用語は、配列特異的RNAiを媒介することができる核酸分子を説明するために使用される他の用語、例えば、短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、短鎖干渉ポリヌクレオチド、短鎖干渉核酸、短鎖干渉修飾ポリヌクレオチド、化学修飾siRNA、転写後遺伝子サイレンシングRNA(ptgsRNA)等と同等であることを意味する。また、本明細書で用いられる用語「RNAi」は、配列特異的RNA干渉、例えば転写後遺伝子サイレンシング、翻訳阻害又はエピジェネティクスを説明するのに用いられる他の用語に等しいことを意味する。
【0080】
特定のアンチセンス活性において、標的核酸への本明細書に記載される化合物のハイブリダイゼーションは、標的核酸を開裂させるタンパク質のリクルートメントをもたらす。例えば、本明細書に記載される特定の化合物は、標的核酸のRNアーゼH媒介開裂をもたらす。RNase Hは、RNA:DNA二重鎖のRNA鎖を開裂させる細胞エンドヌクレアーゼである。そのようなRNA:DNA二重鎖におけるDNAは、非修飾DNAである必要はない。特定の実施形態において、本明細書に記載される化合物は、RNアーゼH活性を誘発するのに十分に「DNA様」である。更に、特定の実施形態において、ギャップマーのギャップ内に、1つ以上の非DNA様ヌクレオシドが許容される。
【0081】
特定のアンチセンス活性において、本明細書に記載される化合物又は化合物の一部が、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)中にロードされて、最終的に標的核酸の開裂をもたらす。例えば、本明細書に記載される特定の化合物は、アルゴノートによる標的核酸の開裂をもたらす。RISCにロードされる化合物は、RNAi化合物である。RNAi化合物は、二本鎖(siRNA)又は一本鎖(ssRNA)であり得る。
【0082】
RNAi化合物
RNAi化合物は、アンチセンスRNAiポリヌクレオチド及び場合によりセンスRNAiポリヌクレオチドを含む。RNAi化合物は、アンチセンスRNAiポリヌクレオチド又はセンスRNAiポリヌクレオチド(存在する場合)に結合し得る末端基及び/又はコンジュゲート基も含み得る。
【0083】
アンチセンスRNAiポリヌクレオチド及びセンスRNAiポリヌクレオチドを含むRNAi化合物は、センスRNAiポリヌクレオチドがアンチセンスRNAiポリヌクレオチドに相補的なアンチセンスハイブリダイズ領域を含むため、二重鎖を形成し得る。特定の実施形態では、アンチセンスRNAiポリヌクレオチド及びセンスRNAiポリヌクレオチドの各核酸塩基は、互いに相補的である。特定の実施形態では、2つのRNAiポリヌクレオチドは、互いに対して少なくとも1つのミスマッチを有する。
【0084】
特定の実施形態では、アンチセンスハイブリダイズ領域は、センスRNAiポリヌクレオチド及びアンチセンスRNAiポリヌクレオチドの全長を構成する。特定の実施形態において、アンチセンスRNAiポリヌクレオチド及びセンスRNAiポリヌクレオチドの一方又は両方は、ハイブリダイズしない付加的なヌクレオシド(オーバーハングヌクレオシド)を一方又は両方の末端に含む。特定の実施形態では、オーバーハングヌクレオシドはDNAである。特定の実施形態では、オーバーハングヌクレオシドは、互いに(2つ以上が存在する場合)及びホスホロチオエート結合を有する第1の非オーバーハングヌクレオシドに結合している。
【0085】
ポリヌクレオチド
いくつかの実施形態において、本開示は、8~50個の連結されたヌクレオシドからなり、且つPSD3をコードする核酸の等しい長さの部分に対して少なくとも90%の配列相補性を有するポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、10~30個の連結されたヌクレオシドからなり、且つPSD3をコードする核酸の等しい長さの部分の少なくとも90%の配列相補性を有する。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、12~20個の連結されたヌクレオシドからなり、且つPSD3をコードする核酸の等しい長さの部分に対して少なくとも90%の配列相補性を有する。
【0086】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、8~80個の連結されたヌクレオシドからなる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、8~50個の連結されたヌクレオシドからなる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、10~30個の連結されたヌクレオシドからなる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、12~30個の連結されたヌクレオシドからなる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、12~22個の連結されたヌクレオシドからなる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、14~30個の連結されたヌクレオシドからなる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、15~30個の連結されたヌクレオシドからなる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、16~30個の連結されたヌクレオシドからなる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、17~30個の連結されたヌクレオシドからなる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、12~20個の連結されたヌクレオシドからなる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、15~20個の連結されたヌクレオシドからなる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、16~20個の連結されたヌクレオシドからなる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、51個、52個、53個、54個、55個、56個、57個、58個、59個、60個、61個、62個、63個、64個、65個、66個、67個、68個、69個、70個、71個、72個、73個、74個、75個、76個、77個、78個、79個又は80個の連結されたヌクレオシドからなる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、約8個、約9個、約10個、約11個、約12個、約13個、約14個、約15個、約16個、約17個、約18個、約19個又は約20個の連結されたヌクレオシドからなる。
【0087】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、PSD3をコードする核酸(配列番号2~18)の等しい長さの部分と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は約100%相補的な核酸塩基配列を有する。
【0088】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、PSD3をコードする核酸の等しい長さの部分とハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、PSD3をコードする核酸は、配列番号2~18を含む。いくつかの実施形態では、核酸はRNAである。
【0089】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、PSD3タンパク質をコードするmRNAの転写開始部位、翻訳開始部位、5’非翻訳配列、3’非翻訳配列、コード配列、プレmRNA配列及び/又はイントロン/エクソン接合部の等しい長さの部分に少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は約100%相補的な核酸塩基配列を有する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、PSD3タンパク質をコードするmRNAの転写開始部位、翻訳開始部位、5’非翻訳配列、3’非翻訳配列、コード配列、プレmRNA配列及び/又はイントロン/エクソン接合部の等しい長さの部分に少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は約100%相補的な核酸塩基配列を有する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、PSD3タンパク質をコードするmRNAの転写開始部位、翻訳開始部位、5’非翻訳配列、3’非翻訳配列、コード配列、プレmRNA配列及び/又はイントロン/エクソン接合部の等しい長さの部分又は全てとハイブリダイズすることができる核酸塩基配列を有する。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号2~18のいずれか1つの等しい長さの部分に対して少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は約100%相補的な核酸塩基配列を有する。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号2~18のいずれか1つの等しい長さの部分に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は約100%相補的な核酸塩基配列を有する。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号2~18のいずれか1つの等しい長さの部分とハイブリダイズすることができる核酸塩基配列を有する。
【0090】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾されたヌクレオシド間連結、少なくとも1つの修飾糖部分及び少なくとも1つの修飾された核酸塩基から選択される少なくとも1つの修飾を含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾されたヌクレオシド間連結を含む。RNA及びDNAの天然に存在するヌクレオシド間連結は、3’-5’ホスホジエステル結合である。いくつかの実施形態では、1つ以上の修飾された、すなわち天然に存在しないヌクレオシド間連結を有する本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、例えば、細胞取込みの増強、標的核酸に対する親和性の増強及びヌクレアーゼの存在下での安定性の増加等の望ましい特性のために、天然に存在するヌクレオシド間連結を有するポリヌクレオチドよりも選択されることが多い。
【0092】
いくつかの実施形態において、修飾ポリヌクレオチドのヌクレオシドは、任意のヌクレオシド間連結を用いて共に結合され得る。ヌクレオシド間連結基の2つの主な分類は、リン原子の有無によって定義される。代表的なリン含有ヌクレオシド間連結として、限定されるものではないが、ホスホジエステル結合(「P=O」)を含有するホスフェート(非修飾結合又は天然に存在する結合とも称される)、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、ホスホラミダート、及びホスホロチオエート(「P=S」)、及びホスホロジチオエート(「HS-P=S」)が挙げられる。代表的な非リン含有ヌクレオシド間連結基として、限定されるものではないが、メチレンメチルイミノ(-CH2-N(CH3)-O-CH2-)、チオジエステル、チオノカルバメート(-O-C(=O)(NH)-S-);シロキサン(-O-SiH2-O-);及びN,N’-ジメチルヒドラジン(-CH2-N(CH3)-N(CH3)-)が挙げられる。天然に存在するホスフェート結合と比較して、修飾ヌクレオシド間連結は、ポリヌクレオチドのヌクレアーゼ耐性を変更するのに、典型的には増大させるのに用いることができる。いくつかの実施形態において、キラル原子を有するヌクレオシド間連結は、ラセミ混合物又は別個のエナンチオマーとして調製される。リン含有及び非リン含有ヌクレオシド間連結を調製する方法は、当業者に知られている。
【0093】
代表的なキラルヌクレオシド間連結として、限定されるものではないが、アルキルホスホネート及びホスホロチオエートが挙げられる。キラル中心を有するヌクレオシド間連結を含む本明細書に開示される修飾ポリヌクレオチドは、立体的に無作為なヌクレオシド間連結を含むポリヌクレオチドの集団又はホスホロチオエート結合、特に立体化学的配置を含むポリヌクレオチドの集団として調製することができる。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドの集団は、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含み、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結は全てステレオランダムである。そのようなポリヌクレオチドは、各ホスホロチオエート結合の立体化学的配置にランダムな選択をもたらす合成方法を使用して生成することができる。それにも関わらず各個々のoポリヌクレオチド分子の個々のホスホロチオエートは、定義された立体配置を有する。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドの集団は、特定の独立して選択される立体化学的配置の1つ以上の特定のホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含むポリヌクレオチドについて濃縮される。特定の実施形態において、特定のホスホロチオエート結合の特定の立体配置は、集団中の分子の少なくとも65%に存在する。特定の実施形態において、特定のホスホロチオエート結合の特定の立体配置は、集団中の分子の少なくとも70%に存在する。特定の実施形態において、特定のホスホロチオエート結合の特定の立体配置は、集団中の分子の少なくとも80%に存在する。特定の実施形態において、特定のホスホロチオエート結合の特定の立体配置は、集団中の分子の少なくとも90%に存在する。特定の実施形態において、特定のホスホロチオエート結合の特定の立体配置は、集団中の分子の少なくとも99%に存在する。ポリヌクレオチドのこのようなキラル濃縮された集団は、当技術分野において公知の合成方法、例えば、Oka et al.,JACS 125,8307(2003)、Wan et al.Nuc.Acid.Res.42,13456(2014)及び国際公開第2017/015555号パンフレットに記載の方法を使用して生成することができる。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドの集団は、(Sp)配置の少なくとも1つの示されたホスホロチオエートを有するポリヌクレオチドについて濃縮される。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドの集団は、(Rp)配置の少なくとも1つのホスホロチオエートを有するポリヌクレオチドについて濃縮される。特定の実施形態において、(Rp)及び/又は(Sp)ホスホロチオエートを含むポリヌクレオチドは、それぞれ以下の式の1つ以上を含み、式中、「B」は、核酸塩基を示す。
【化1】
【0094】
別途指示しない限り、本明細書に記載されるRNAiポリヌクレオチドのキラルヌクレオシド間連結は、ステレオランダムであり得るか又は特定の立体化学的配置であり得る。リン含有及び非リン含有ヌクレオシド間連結を調製する方法は、当業者に知られている。
【0095】
中性ヌクレオシド間連結としては、限定されるものではないが、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、MMI(3’-CH2-N(CH3)-O-5’)、アミド-3(3’-CH2-C(=O)-N(H)-5’)、アミド-4(3’-CH2-N(H)-C(=O)-5’)、ホルムアセタール(3’-O-CH2-O-5’)、メトキシプロピル及びチオホルムアセタール(3’-S-CH2-O-5’)が挙げられる。更なる中性ヌクレオシド間連結には、シロキサン(ジアルキルシロキサン)、カルボン酸エステル、カルボキサミド、スルフィド、スルホン酸エステル及びアミドを含む非イオン性結合が含まれる(例えば、Carbohydrate Modifications in Antisense Research;Y.S.Sanghvi and P.D.Cook,Eds.,ACS Symposium Series 580;Chapters 3 and 4,40-65を参照されたい)。更なる中性ヌクレオシド間連結としては、混合N、O、S及びCH2構成成分部分を含む非イオン結合が挙げられる。
【0096】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチド(例えば、アンチセンスRNAiポリヌクレオチド及び/又はセンスRNAiポリヌクレオチド)は、以下に示されるように、1つ以上の反転ヌクレオシドを含み、
【化2】
式中、各Bxは独立して任意の核酸塩基を表す。
【0097】
特定の実施形態において、反転ヌクレオシドは末端にあり(すなわちオリゴヌクレオチドの一端の最後のヌクレオシド)、そのため、上に示される1つのヌクレオシド間連結のみが存在するであろう。特定のこのような実施形態において、付加的な特徴(例えば、コンジュゲート基)が反転ヌクレオシドに結合され得る。そのような末端反転ヌクレオシドは、ポリヌクレオチドの一方又は両方の末端に結合することができる。
【0098】
特定の実施形態では、そのような基は核酸塩基を欠き、本明細書では逆糖部分と呼ばれる。特定の実施形態において、逆性糖部分は末端にあり(すなわちポリヌクレオチドの一端の最後のヌクレオシドに結合している)、したがって、上記のヌクレオシド間連結は、1つのみ存在するであろう。特定のこのような実施形態において、付加的な特徴(例えば、コンジュゲート基)が逆方向糖部分に結合され得る。そのような末端逆位糖部分は、ポリヌクレオチドの一方又は両方の末端に結合することができる。
【0099】
特定の実施形態において、核酸は、標準的な3’-5’連結ではなく、2’-5’連結され得る。そのような連結を以下に示す。
【化3】
式中、各Bxは任意の核酸塩基を表す。
【0100】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド又はその領域に沿って配置された修飾ヌクレオシド間連結を、規定されたパターン又は修飾ヌクレオシド間連結モチーフ内に含む。いくつかの実施形態において、ヌクレオシド間連結は、ギャップモチーフ内に配置される。そのような実施形態において、2つのウイング領域のそれぞれにおけるヌクレオシド間連結は、ギャップ領域内のヌクレオシド間連結と異なる。いくつかの実施形態において、ウイング内のヌクレオシド間連結はホスホジエステル結合であり、ギャップ内のヌクレオシド間連結はホスホロチオエート結合である。ヌクレオシドモチーフは独立して選択されるため、ギャップヌクレオシド間連結モチーフを有するそのようなポリヌクレオチドは、ギャップヌクレオシドモチーフを有していても又は有していなくてもよく、ギャップヌクレオシドモチーフを有する場合、ウイング長及びギャップ長は、同一であっても又はなくてもよい。
【0101】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、交互にヌクレオシド間連結モチーフを有する領域を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、均一に修飾されたヌクレオシド間連結の領域を含む。そのような実施形態において、ポリヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結によって一様に結合された領域を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、ホスホロチオエートにより一様に結合されている。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドの各ヌクレオシド間連結は、ホスホジエステル及びホスホロチオエートから選択される。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドの各ヌクレオシド間連結は、ホスホジエステル及びホスホロチオエートから選択され、少なくとも1つのヌクレオシド間連結はホスホロチオエートである。
【0102】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、少なくとも6個のホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、少なくとも8個のホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、少なくとも10個のホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、少なくとも6個の連続したホスホロチオエートヌクレオシド間連結の少なくとも1個のブロックを含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、少なくとも8個の連続したホスホロチオエートヌクレオシド間連結の少なくとも1個のブロックを含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、少なくとも10個の連続したホスホロチオエートヌクレオシド間連結の少なくとも1個のブロックを含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、少なくとも12個の連続したホスホロチオエートヌクレオシド間連結の少なくとも1個のブロックを含む。いくつかのそのような実施形態では、少なくとも1個のそのようなブロックがポリヌクレオチドの3’末端に位置する。いくつかのそのような実施形態において、少なくとも1個のそのようなブロックは、ポリヌクレオチドの3’末端の3つのヌクレオシド内に位置する。
【0103】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、1つ以上のメチルホスホネート結合を含む。いくつかの実施形態において、ギャップマーヌクレオシドモチーフを有するポリヌクレオチドは、1つ又は2つのメチルホスホネート結合を除き、全てホスホロチオエート結合を含む結合モチーフを含む。いくつかの実施形態において、1つのメチルホスホネート結合は、ギャップマーヌクレオシドモチーフを有するポリヌクレオチドの中央のギャップ内に存在する。
【0104】
いくつかの実施形態において、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結及びホスホジエステルヌクレオシド間連結の数は、ヌクレアーゼ耐性を維持するように配置することが望ましい。いくつかの実施形態において、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結の数及び位置並びにホスホジエステルヌクレオシド間連結の数及び位置は、ヌクレアーゼ耐性を維持するように配置することが望ましい。いくつかの実施形態において、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結の数を減らすことができるか、又はホスホジエステルヌクレオシド間連結の数を増やすことができる。いくつかの実施形態において、ヌクレアーゼ耐性を依然として維持したまま、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結の数を減らし、且つホスホジエステルヌクレオシド間連結の数を増やすことができる。いくつかの実施形態において、ヌクレアーゼ耐性を保持したまま、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結の数を減らすことが望ましい。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ耐性を維持しながら、ホスホジエステルヌクレオシド間連結の数を増加させることが望ましい。
【0105】
いくつかの実施形態では、標的核酸、例えばPSD3タンパク質をコードする配列を標的とするポリヌクレオチドは、1つ以上の修飾されたヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、修飾ポリヌクレオチドの少なくとも1つの修飾されたヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドの各ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である。
【0106】
いくつかの実施形態において、修飾ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾糖部分を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの修飾糖は、二環式糖、2’-O-メトキシエチル、2’-F又は2’-O-メチルである。
【0107】
いくつかの実施形態において、糖部分は、非二環式修飾糖部分である。いくつかの実施形態において、修飾糖部分は、二環式糖部分又は三環式糖部分である。いくつかの実施形態において、修飾糖部分は、糖代替物である。そのような糖代替物は、他の種類の修飾糖部分の置換に対応する1つ以上の置換を含み得る。いくつかの実施形態において、修飾糖部分は、1つ以上の非環式置換基(限定されるものではないが、2’、3’、4’及び/又は5’位の置換基が挙げられる)を有するフラノシル環を含む非二環式修飾糖部分である。いくつかの実施形態において、非二環式修飾糖部分の1つ以上の非環式置換基は、分枝鎖である。
【0108】
修飾糖部分、例えば、非二環式修飾糖部分を含むヌクレオシドは、ヌクレオシドの糖部分における置換の位置に従って称される。例えば、2’-置換又は2-修飾糖部分を含むヌクレオシドは、2’-置換ヌクレオシド又は2-修飾ヌクレオシドと称される。非二環式修飾糖部分に適した2’-置換基の例として、以下に限定されないが:2’-F,2’-OCH3(「OMe」又は「O-メチル」)及び2’-O(CH2)2OCH3(「MOE」)が挙げられる。いくつかの実施形態において、2’-置換基は、ハロ、アリル、アミノ、アジド、SH、CN、OCN、CF3、OCF3、O-C1~C10アルコキシ、O-C1~C10置換アルコキシ、O-C1~C10アルキル、O-C1~C10置換アルキル、S-アルキル、N(Rm)-アルキル、O-アルケニル、S-アルケニル、N(Rm)-アルケニル、O-アルキニル、S-アルキニル、N(Rm)-アルキニル、O-アルキレニル-O-アルキル、アルキニル、アルカリール、アラルキル、O-アルカリール、O-アラルキル、O(CH2)2SCH3、O(CH2)2ON(Rm)(Rn)又はOCH2C(=O)-N(Rm)(Rn)(式中、各Rm及びRnは、独立して、H、アミノ保護基又は置換若しくは非置換C1~C10アルキルである)、-O(CH2)2ON(CH3)2(「DMAOE」)、2’-OCH2OCH2N(CH2)2(「DMAEOE」)並びにCookらの米国特許第6,531,584号明細書;Cookらの米国特許第5,859,221号明細書;及びCookらの米国特許第6,005,087号明細書に記載の2’-置換基から選択される。これらの2’-置換基のいくつかの実施形態は、以下から独立して選択される1つ以上の置換基で更に置換され得る:ヒドロキシル、アミノ、アルコキシ、カルボキシ、ベンジル、フェニル、ニトロ(NO2)、チオール、チオアルコキシ、チオアルキル、ハロゲン、アルキル、アリール、アルケニル及びアルキニル。いくつかの実施形態において、2’-置換ヌクレオシド又は2’-非二環式修飾ヌクレオシドは、以下から選択される直鎖状の2’-置換基を含む糖部分を含む:F、NH2、N3、OCF3、OCH3、O(CH2)3NH2、CH2CH=CH2、OCH2CH=CH2、OCH2CH2OCH3、O(CH2)2SCH3、O(CH2)2ON(Rm)(Rn)、O(CH2)2O(CH2)2N(CH3)2及びN-置換アセトアミド(OCH2C(=O)-N(Rm)(Rn))(式中、各Rm及びRnは、独立して、H、アミノ保護基又は置換若しくは非置換C1~C10アルキルである)。
【0109】
いくつかの実施形態において、2’-置換ヌクレオシド又は2’-非二環式修飾ヌクレオシドは、以下から選択される直鎖状の2’-置換基を含む糖部分を含む:F、OCF3、OCH3、OCH2CH2OCH3、O(CH2)2SCH3、O(CH2)2ON(CH3)2、O(CH2)2O(CH2)2N(CH3)2及びOCH2C(=O)-N(H)CH3(「NMA」)。いくつかの実施形態において、2’-置換ヌクレオシド又は2’-非二環式修飾ヌクレオシドは、以下から選択される直鎖状の2’-置換基を含む糖部分を含む:F、OCH3及びOCH2CH2OCH3。
【0110】
特定の実施形態では、非二環式修飾糖部分は、4’位に置換基を含む。適切な4’-置換基の例としては、アルコキシ(例えば、メトキシ)、アルキル及びManoharanらの国際公開第2015/106128号パンフレットに記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、非二環式修飾糖部分は、3’位に置換基を含む。修飾糖部分の3’位に適した置換基の例としては、アルコキシ(例えば、メトキシ)、アルキル(例えば、メチル、エチル)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、非二環式修飾糖部分は、5’位に置換基を含む。修飾糖部分の5’位に適した置換基の例としては、限定されないが、以下が挙げられる:アルキル(例えば、メチル(R又はS)、ビニル及び5’-アルコキシ(例えば、メトキシ)。いくつかの実施形態において、非二環式修飾糖は、2つ以上の非架橋糖置換基、例えば、2’-F-5’-メチル糖部分並びにMigawaらの国際公開第2008/101157号パンフレット及びRajeevらの米国特許出願公開第2013/0203836号明細書に記載される修飾糖部分及び修飾ヌクレオシドを含む。
【0111】
天然に存在する核酸では、糖は互いに3’~5’に結合している。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、代替位置、例えば2’又は逆位5’から3’に連結された1つ以上のヌクレオシド又は糖部分を含む。例えば、連結が2’位にある場合、2’-置換基は、代わりに、3’位にあり得る。
【0112】
特定の修飾糖部分は、第2の環を形成して二環式糖部分をもたらす架橋糖置換基を含む。そのような二環式糖部分を含むヌクレオシドは、二環式ヌクレオシド(BNA)、ロックドヌクレオシド又は配座的に制限されたヌクレオシド(CRN)と呼ばれている。特定のこのような化合物は、米国特許出願公開第2013/0190383号明細書;及び国際公開第2013/036868号パンフレットに記載されている。いくつかのそのような実施形態において、二環式糖部分は、4’フラノース環原子と2’フラノース環原子間の架橋を含む。特定のそのような実施形態において、フラノース環は、リボース環である。そのような4’~2’架橋糖置換基の例として、以下が挙げられるが、これらに限定されない:4’-CH2-2’、4’-(CH2)2-2’、4’-(CH2)3-2’、4’-CH2-O-2’(「LNA」)、4’-CH2-S-2’、4’-(CH2)2-O-2’(「ENA」)、4’-CH(CH3)-O-2’(S立体配置である場合、「拘束エチル」又は「cEt」と称される)、4’-CH2-O-CH2-2’、4’-CH2-N(R)-2’、4’-CH(CH2OCH3)-O-2’(「拘束MOE」又は「cMOE」)及びそれらの類似体(例えば、Sethらの米国特許第7,399,845号明細書、Bhatらの米国特許第7,569,686号明細書、Swayzeらの米国特許第7,741,457号明細書及びSwayzeらの米国特許第8,022,193号明細書を参照されたい)、4’-C(CH3)(CH3)-O-2’及びそれらの類似体(例えば、Sethらの米国特許第8,278,283号明細書を参照されたい)、4’-CH2-N(OCH3)-2’及びそれらの類似体(例えば、Prakashらの米国特許第8,278,425号明細書を参照されたい)、4’-CH2-O-N(CH3)-2’(例えば、Allersonらの米国特許第7,696,345号明細書及びAllersonらの米国特許第8,124,745号明細書を参照されたい)、4’-CH2
-C(H)(CH3)-2’(例えば、Zhou,et al.,J.Org.Chem.,2009,74,118-134を参照されたい)、4’-CH2-C(=CH2)-2’及びそれらの類似体(例えば、Sethらの米国特許第8,278,426号明細書を参照されたい)、4’-C(RaRb)-N(R)-O-2’、4’-C(RaRb)-O-N(R)-2’、4’-CH2-O-N(R)-2’及び4’-CH2-N(R)-O-2’(式中、各R、Ra及びRbは、独立して、H、保護基又はC1~C12アルキルである)(例えば、Imanishiらの米国特許第7,427,672号明細書を参照されたい)。
【0113】
いくつかの実施形態では、そのような4’~2’架橋は、独立して、以下から独立して選択される1~4個の連結基を含む:-[C(Ra)(Rb)]n-、-[C(Ra)(Rb)]n-O-、-C(Ra)=C(Rb)-、-C(Ra)=N-、-C(=NRa)-、-C(=O)-、-C(=S)-、-O-、-Si(Ra)2-、-S(=O)x-及び-N(Ra)-(式中、xは、0、1又は2であり、nは、1、2、3又は4であり、Ra及びRbは、それぞれ独立して、H、保護基、ヒドロキシル、C1~C12アルキル、置換C1~C12アルキル、C2~C12アルケニル、置換C2~C12アルケニル、C2~C12アルキニル、置換C2~C12アルキニル、C5~C20アリール、置換C5~C20アリール、複素環式ラジカル、置換複素環式ラジカル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C5~C7脂環式ラジカル、置換C5~C7脂環式ラジカル、ハロゲン、OJ1、NJ1J2、SJ1、N3、COOJ1、アシル(C(=O)-H)、置換アシル、CN、スルホニル(S(=O)2-J1)又はスルホキシル(S(=O)-J1)であり;並びにJ1及びJ2は、それぞれ独立して、H、C1~C12アルキル、置換C1~C12アルキル、C2~C12アルケニル、置換C2~C12アルケニル、C2~C12アルキニル、置換C2~C12アルキニル、C5~C20アリール、置換C5~C20アリール、アシル(C(=O)-H)、置換アシル、複素環式ラジカル、置換複素環式ラジカル、C1~C12アミノアルキル、置換C1~C12アミノアルキル又は保護基である)。
【0114】
更なる二環式糖部分が、当技術分野において公知であり、例えば、以下を参照されたい:Freier et al.,Nucleic Acids Research,1997,25(22),4429-4443、Albaek et al.,J.Org.Chem.,2006,71,7731-7740、Singh et al.,Chem.Commun.,1998,4,455-456;Koshkin et al.,Tetrahedron,1998,54,3607-3630;Wahlestedt et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,2000,97,5633-5638;Kumar et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,1998,8,2219-2222;Singh et al.,J.Org.Chem.,1998,63,10035-10039;Srivastava et al.,J.Am.Chem.Soc.,20017,129,8362-8379;Elayadi et al.,Curr.Opinion Invens.Drugs,2001,2,558-561;Braasch et al.,Chem.Biol.,2001,8,1-7;Orum 10 et al.,Curr.Opinion Mol.Ther.,2001,3,239-243;Wengelらの米国特許第7,053,207号明細書;Imanishiらの米国特許第6,268,490号明細書;Imanishiらの米国特許第6,770,748号明細書;Imanishiらの米国特許第RE44,779号明細書;Wengelらの米国特許第6,794,499号明細書;Wengelらの米国特許第6,670,461号明細書;Wengelらの米国特許第7,034,133号明細書;Wengelらの米国特許第8,080,644号明細書;Wengelらの米国特許第8,034,909号明細書;Wengelらの米国特許第8,153,365号明細書;Wengelらの米国特許第7,572,582号明細書;及びRamasamyらの米国特許第6,525,191号明細書;Torstenらの国際公開第2004/106356号パンフレット;Wengelらの国際公開第91999/014226号パンフレット;Sethらの国際公開第2007/134181号パンフレット;Sethらの米国特許第7,547,684号明細書;Sethらの米国特許第7,666,854号明細書;Sethらの米国特許第8,088,746号明細書;Sethらの米国特許第7,750,131号明細書;Sethらの米国特許第8,030,467号明細書;Sethらの米国特許第8,268,980号明細書;Sethらの米国特許第8,546,556号明細書;Sethらの米国特許第8,530,640号明細書;Migawaらの米国特許第9,012,421号明細書;Sethらの米国特許第8,501,805号明細書;及び米国特許出願公開であるAllersonらの米国特許出願公開第2008/0039618号明細書及びMigawaらの米国特許出願公開第2015/0191727号明細書。
【0115】
いくつかの実施形態において、二環式糖部分及びそのような二環式糖部分を組み込んだヌクレオシドは更に、異性体立体配置によって定義される。例えば、LNAヌクレオシド(本明細書に記載される)は、α-L立体配置又はβ-D立体配置であり得る。
【化4】
α-L-メチレンオキシ(4’-CH
2-O-2’)又はα-L-LNA二環式ヌクレオシドは、アンチセンス活性を示すポリヌクレオチドに組み込まれている(Frieden et al.,Nucleic Acids Research,2003,21,6365-6372)。siRNAへのロック核酸の付加は、血清中のsiRNA安定性を増加させ、オフターゲット効果を減少させることが示されている(Elmen,J.et al.,(2005)Nucleic Acids Research 33(1):439-447;Mook,OR.et al.,(2007)Mal Cane Ther 6(3):833-843;Grunweller,A.et al.,(2003)Nucleic Acids Research 31(12):3185-3193)。本明細書において、二環式ヌクレオシドの一般的な説明には、両方の異性体立体配置が含まれる。本明細書の例示的な実施形態において、特定の二環式ヌクレオシド(例えば、LNA又はcEt)の配置が特定される場合、それらの配置は、別途明記しない限りβ-D立体配置である。
【0116】
いくつかの実施形態において、修飾糖部分は、1つ以上の非架橋糖置換基及び1つ以上の架橋糖置換基(例えば、5’-置換及び4’-2’架橋糖)を含む。いくつかの実施形態において、修飾糖部分は、糖代替物である。いくつかのそのような実施形態において、糖部分の酸素原子は、例えば、硫黄原子、炭素原子又は窒素原子で置換されている。いくつかのそのような実施形態において、そのような修飾糖部分は、本明細書に記載されるような架橋及び/又は非架橋置換基も含む。例えば、特定の糖代替物は、4’硫黄原子並びに2’位(例えば、Bhatらの米国特許第7,875,733号明細書及びBhatらの米国特許第7,939,677号明細書を参照されたい)及び/又は5’位における置換を含む。
【0117】
いくつかの実施形態において、糖代替物は、5原子以外の環を含む。例えば、いくつかの実施形態において、糖代替物は、6員テトラヒドロピラン(「THP」)を含む。そのようなテトラヒドロピランは、更に修飾又は置換され得る。そのような修飾テトラヒドロピランを含むヌクレオシドとしては、限定されないが、ヘキシトール核酸(「HNA」)、アニトール核酸(「ANA」)、マンニトール核酸(「MNA」)(例えば、Leumann,CJ.Bioorg.&Med.Chem.2002,10,841-854を参照されたい)、フルオロHNA:
【化5】
(「F-HNA」、例えばSwayzeらの米国特許第8,088,904号明細書;Swayzeらの米国特許第8,440,803号明細書;Swayzeらの米国特許;及びSwayzeらの米国特許第9,005,906号明細書を参照されたい。F-HNAは、F-THP又は3’-フルオロテトラヒドロピランとも称され得る)及び次式を有する追加の修飾THPを含むヌクレオシド:
【化6】
(式中、独立して、前記修飾THPヌクレオシドのそれぞれについて:Bxは、核酸塩基部分であり、T
3及びT
4は、それぞれ独立して、修飾THPヌクレオシドをポリヌクレオチドの残部に結合させるヌクレオシド間連結基であるか、又はT
3及びT
4の一方は、修飾THPヌクレオシドをポリヌクレオチドの残部に結合させるヌクレオシド間連結基であり、且つT
3及びT
4の他方は、H、ヒドロキシル保護基、結合コンジュゲート基又は5’若しくは3’末端基であり;q
1、q
2、q
3、q
4、q
5、q
6及びq
7は、それぞれ独立して、H、C
1~C
6アルキル、置換C
1~C
6アルキル、C
2~C
6アルケニル、置換C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル又は置換C
2~C
6アルキニルであり;並びにR
1及びR
2のそれぞれは、独立して、以下:水素、ハロゲン、置換又は非置換アルコキシ、NJ
1J
2、SJ
1、N
3、OC(=X)J
1、OC(=X)NJ
1J
2、NJ
3C(=X)NJ
1J
2及びCNから選択され、式中、Xは、O、S又はNJ
1であり、J
1、J
2及びJ
3は、それぞれ独立して、H又はC
1~C
6アルキルである)が挙げられる。
【0118】
いくつかの実施形態において、修飾THPヌクレオシドが提供され、q1、q2、q3、q4、q5、q6及びq7は、それぞれHである。いくつかの実施形態において、q1、q2、q3、q4、q5、q6及びq7の少なくとも1つはH以外である。いくつかの実施形態において、q1、q2、q3、q4、q5、q6及びq7の少なくとも1つはメチルである。いくつかの実施形態において、修飾THPヌクレオシドが提供され、R1及びR2の一方はFである。いくつかの実施形態において、R1はFであり、且つR2はHである、いくつかの実施形態において、R1はメトキシであり、且つR2はHである。いくつかのの実施形態において、R1はメトキシエトキシであり、且つR2はHである。
【0119】
いくつかの実施形態において、糖代替物は、6つ以上の原子及び2つ以上のヘテロ原子を有する環を含む。例えば、モルホリノ糖部分を含むヌクレオシド及びポリヌクレオチドにおけるそれらの使用が報告されている(例えば、Braasch et al.,Biochemistry,2002,41,4503-4510及びSummertonらの米国特許第5,698,685号明細書;Summertonらの米国特許第5,166,315号明細書;Summertonらの米国特許第5,185,444号明細書;及びSummertonらの米国特許第5,034,506号明細書を参照されたい)。本明細書において使用される用語「モルホリノ」は、以下の構造を有する糖代替物を意味する。
【化7】
【0120】
いくつかの実施形態において、モルホリノは、例えば、種々の置換基を上記のモルホリノ構造に付加するか、又は上記のモルホリノ構造から変更することによって修飾され得る。そのような糖代替物は、本明細書において、「修飾モルホリノ」と称される。
【0121】
いくつかの実施形態において、糖代替物は、非環式部分を含む。そのような非環式糖代用物を含むヌクレオシド及びポリヌクレオチド、例えばポリヌクレオチドの例には、それに限らないが、以下が含まれる:ペプチド核酸(「PNA」)、非環式ブチル核酸(例えば、Kumar et al.,Org.Biomol.Chem.,2013,11,5853-5865を参照されたい)並びにManoharanらの国際公開第2011/133876号パンフレットに記載されているヌクレオシド及びポリヌクレオチド。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許には、それに限らないが、米国特許第5,539,082号明細書、米国特許第5,714,331号明細書及び米国特許第5,719,262号明細書が含まれる。本明細書に適した追加のPNA化合物は、例えばNielsen et al.,Science,1991,254,1497-1500に記載されている。
【0122】
特定の実施形態では、糖代用物は、UNA(ロックされていない核酸)ヌクレオシドの「ロックされていない」糖構造である。UNAは、ロックされていない非環式核酸であり、糖の結合のいずれかが除去され、ロックされていない糖代用物を形成する。UNAの調製を教示する代表的な米国公開公報には、参照によりそれぞれの全内容が本明細書に組み込まれる、米国特許第8,314,227号明細書及び米国特許出願公開第2013/0096289号明細書;米国特許出願公開第2013/0011922号明細書;及び米国特許出願公開第2011/0313020号明細書が含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
特定の実施形態では、糖代用物は、以下に示すGNA(グリコール核酸)ヌクレオシドに見られるグリセロールであり、
【化8】
式中、Bxは任意の核酸塩基を表す。
【0124】
修飾ヌクレオシドに使用することができる多くの他の二環式糖及び三環式糖並びに糖代替物環系は、当技術分野において公知である。
【0125】
修飾核酸塩基
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾核酸塩基を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの修飾核酸塩基は、5-メチルシトシンである。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、1つ以上のイノシンヌクレオシド(すなわちヒポキサンチン核酸塩基を含むヌクレオシド)を含む。核酸塩基(又は塩基)の修飾又は置換は、天然に存在する核酸塩基又は合成非修飾核酸塩基と構造的に識別可能であるが、天然に存在する核酸塩基又は合成非修飾核酸塩基と機能的に交換可能である。天然核酸塩基及び修飾核酸塩基は両方とも、水素結合に関与することができる。そのような核酸塩基修飾は、ヌクレアーゼ安定性、結合親和性又は他の何らかの有益な生物学的特性をアンチセンス化合物に付与し得る。
【0126】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、修飾、すなわち修飾ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、修飾ポリヌクレオチドは、未修飾核酸塩基を含む1つ以上のヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、修飾ポリヌクレオチドは、修飾核酸塩基を含む1つ以上のヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、修飾ポリヌクレオチドは、脱塩基ヌクレオシドと称される、核酸塩基を含まない1つ以上のヌクレオシドを含む。
【0127】
いくつかの実施形態において、修飾核酸塩基は、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、アルキル又はアルキニル置換ピリミジン、アルキル置換プリン並びにN-2、N-6及びO-6置換プリンから選択される。いくつかの実施形態において、修飾核酸塩基は、2-アミノプロピルアデニン、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-メチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、6-N-メチルグアニン、6-N-メチルアデニン、2-プロピルアデニン、2-チオウラシル、2-チオチミン及び2-チオシトシン、5-プロピニル(C≡C-CH3)ウラシル、5-プロピニルシトシン、6-アゾウラシル、6-アゾシトシン、6-アゾチミン、5-リボシルウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル、8-アザ並びに他の8-置換プリン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチル、5-ハロウラシル及び5-ハロシトシン、7-メチルグアニン、7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノアデニン、7-デアザグアニン、7-デアザアデニン、3-デアザグアニン、3-デアザアデニン、6-N-ベンゾイルアデニン、2-N-イソブチリルグアニン、4-N-ベンゾイルシトシン、4-N-ベンゾイルウラシル、5-メチル4-N-ベンゾイルシトシン、5-メチル4-N-ベンゾイルウラシル、ユニバーサル塩基、疎水性塩基、広域塩基、サイズ拡張塩基及びフッ素化塩基から選択される。更なる修飾核酸塩基として、三環式ピリミジン、例えば、1,3-ジアザフェノキサジン-2-オン、1,3-ジアザフェノチアジン-2-オン及び9-(2-アミノエトキシ)-1,3-ジアザフェノキサジン-2-オン(G-クランプ)が挙げられる。また、修飾核酸塩基としては、プリン塩基又はピリミジン塩基が他の複素環で置換されているもの、例えば、7-デアザ-アデニン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジン及び2-ピリドンを挙げることもできる。更なる核酸塩基としては、Meriganらの米国特許第3,687,808号明細書に開示されているもの、The Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,Kroschwitz,J.I.,Ed.,John Wiley&Sons,1990,858-859;Englisch et al.,Angewandte Chemie,International Edition,1991,30,613;Sanghvi,Y.S.,Chapter 15,Antisense Research and Applications,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,Eds.,CRC Press,1993,273-288に開示されているもの;及びChapters 6 and 15,Antisense Drug Technology,Crooke S.T.,Ed.,CRC Press,2008,163-166 and 442-443に開示されているものが挙げられる。
【0128】
上記の修飾核酸塩基の特定のもの及び他の修飾核酸塩基の調製を記載する刊行物としては、限定されるものではないが、Manoharanらの米国特許出願公開第2003/0158403号明細書、Manoharanらの米国特許出願公開第2003/0175906号明細書;Dinhらの米国特許第4,845,205号明細書;Spielvogelらの米国特許第5,130,302号明細書;Rogersらの米国特許第5,134,066号明細書;Bischofbergerらの米国特許第5,175,273号明細書;Urdeaらの米国特許第5,367,066号明細書;Bennerらの米国特許第5,432,272号明細書;Matteucciらの米国特許第5,434,257号明細書;Gmeinerらの米国特許第5,457,187号明細書;Cookらの米国特許第5,459,255号明細書;Froehlerらの米国特許第5,484,908号明細書;Matteucciらの米国特許第5,502,177号明細書;Hawkinsらの米国特許第5,525,711号明細書;Haralambidisらの米国特許第5,552,540号明細書;Cookらの米国特許第5,587,469号明細書;Froehlerらの米国特許第5,594,121号明細書;Switzerらの米国特許第5,596,091号明細書;Cookらの米国特許第5,614,617号明細書;Froehlerらの米国特許第5,645,985号明細書;Cookらの米国特許第5,681,941号明細書;Cookらの米国特許第5,811,534号明細書;Cookらの米国特許第5,750,692号明細書;Cookらの米国特許第5,948,903号明細書;Cookらの米国特許第5,587,470号明細書;Cookらの米国特許第5,457,191号明細書;Matteucciらの米国特許第5,763,588号明細書;Froehlerらの米国特許第5,830,653号明細書;Cookらの米国特許第5,808,027号明細書;Cookらの米国特許第6,166,199号明細書;及びMatteucciらの米国特許第6,005,096号明細書が挙げられる。
【0129】
いくつかの実施形態では、標的核酸、例えばPSD3タンパク質をコードする配列を標的とするポリヌクレオチドは、1つ以上の修飾核酸塩基を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドの修飾核酸塩基は5-メチルシトシンである。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドの各シトシンは、5-メチルシトシンである。
【0130】
糖モチーフ
いくつかの実施形態において、本明細書において提供されるポリヌクレオチドは、定義されたパターン又は糖モチーフでポリヌクレオチド又はその領域に沿って配置された1つ以上のタイプの修飾糖及び/又は修飾されていない糖部分を含む。いくつかの実施形態では、そのような糖モチーフは、本明細書で論じられる糖修飾のいずれかを含むが、これらに限定されない。
【0131】
いくつかの実施形態において、修飾ポリヌクレオチドは、2つの外部領域、すなわち「ウイング」と、中央又は内部領域、すなわち「ギャップ」とを含むギャップマーモチーフを有する領域を含むか又はそれからなる。ギャップマーモチーフの3つの領域(5’-ウイング、ギャップ及び3’-ウイング)は、ウイングのそれぞれのヌクレオシドの糖部分の少なくとも一部が、ギャップのヌクレオシドの糖部分の少なくとも一部と異なるヌクレオシドの連続配列を形成する。具体的には、ギャップに最も近い各ウイングのヌクレオシド(5’-ウイングの最も3’側のヌクレオシド及び3’-ウイングの最も5’側のヌクレオシド)の少なくとも糖部分は、隣接するギャップヌクレオシドの糖部分と異なるため、ウイングとギャップとの間の境界(すなわちウイング/ギャップ接合部)を定義する。いくつかの実施形態において、ギャップ内の糖部分は、互いに同一である。いくつかの実施形態において、ギャップは、1つ以上のヌクレオシドを含むが、そのヌクレオシドは、ギャップの1つ以上の他のヌクレオシドの糖部分と異なる糖部分を有する。いくつかの実施形態において、2つのウイングの糖モチーフは、互いに同一である(対称ギャップマー)。いくつかの実施形態において、5’-ウイングの糖モチーフは、3’-ウイングの糖モチーフと異なる(非対称ギャップマー)。
【0132】
いくつかの実施形態において、ギャップマーのウイングは、1~5個のヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、ギャップマーのウイングは、2~5個のヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、ギャップマーのウイングは、3~5個のヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、ギャップマーのヌクレオシドは、全て修飾ヌクレオシドである。
【0133】
いくつかの実施形態では、ギャップマーのギャップは、7~12個のヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、ギャップマーのギャップは、7~10個のヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、ギャップマーのギャップは、8~10個のヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、ギャップマーのギャップは、10個のヌクレオシドを含む。特定の実施形態において、ギャップマーのギャップの各ヌクレオシドは、非修飾2’-デオキシヌクレオシドである。
【0134】
いくつかの実施形態では、ギャップマーはデオキシギャップマーである。そのような実施形態において、各ウイング/ギャップ接合部のギャップ側のヌクレオシドは、非修飾2’-デオキシヌクレオシドであり、及び各ウイング/ギャップ接合部のウイング側のヌクレオシドは、修飾ヌクレオシドである。いくつかのそのような実施形態において、ギャップの各ヌクレオシドは、非修飾2’-デオキシヌクレオシドである。いくつかのそのような実施形態において、各ウイングの各ヌクレオシドは、修飾ヌクレオシドである。
【0135】
いくつかの実施形態において、修飾ポリヌクレオチドは、完全に修飾糖モチーフを有し、修飾ポリヌクレオチドの各ヌクレオシドは、修飾糖部分を含む。いくつかの実施形態において、修飾ポリヌクレオチドは、完全に修飾糖モチーフを有する領域を含むか又はそれからなり、その領域の各ヌクレオシドは、修飾糖部分を含む。いくつかの実施形態において、修飾ポリヌクレオチドは、完全に修飾糖モチーフを有する領域を含むか又はそれからなり、完全に修飾された領域内の各ヌクレオシドは、本明細書では一様に修飾糖モチーフと称される、同一の修飾糖部分を含む。いくつかの実施形態において、完全に修飾されたポリヌクレオチドは、一様に修飾されたポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、均一に修飾されたポリヌクレオチドの各ヌクレオシドは、同じ2’-修飾を含む。
【0136】
ヌクレオシドモチーフ
核酸塩基(又は塩基)の修飾又は置換は、天然に存在する核酸塩基又は合成非修飾核酸塩基と構造的に識別可能であるが、天然に存在する核酸塩基又は合成非修飾核酸塩基と機能的に交換可能である。天然核酸塩基及び修飾核酸塩基は両方とも、水素結合に関与することができる。そのような核酸塩基修飾は、例えば、本明細書で提供されるポリヌクレオチド、例えば本開示のポリヌクレオチドにヌクレアーゼ安定性、結合親和性又は何らかの他の有益な生物学的特性を付与することができる。
【0137】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供されるポリヌクレオチドは、定義されたパターン又はモチーフでポリヌクレオチド又はその領域に沿って配置された修飾及び/又は非修飾核酸塩基を含む。いくつかの実施形態において、各核酸塩基は、修飾されている。いくつかの実施形態において、核酸塩基はいずれも修飾されていない。いくつかの実施形態において、各プリン又は各ピリミジンが修飾されている。いくつかの実施形態において、各アデニンが修飾されている。いくつかの実施形態において、各グアニンが修飾されている。いくつかの実施形態では、各チミンが修飾されている。いくつかの実施形態において、各ウラシルが修飾されている。いくつかの実施形態において、各シトシンが修飾されている。いくつかの実施形態において、修飾ポリヌクレオチドのシトシン核酸塩基の一部又は全てが5-メチルシトシンである。いくつかの実施形態において、修飾ポリヌクレオチドは、修飾核酸塩基のブロックを含む。いくつかのそのような実施形態において、ブロックは、ポリヌクレオチドの3’末端に存在する。いくつかの実施形態において、ブロックは、ポリヌクレオチドの3’末端の3ヌクレオシド以内に存在する。いくつかのそのような実施形態において、ブロックは、ポリヌクレオチドの5’末端に存在する。いくつかの実施形態において、ブロックは、ポリヌクレオチドの5’末端の3ヌクレオシド以内に存在する。
【0138】
いくつかの実施形態において、ギャップマーモチーフを有するポリヌクレオチドは、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、修飾核酸塩基を含む1個のヌクレオシドは、ギャップマーモチーフを有するポリヌクレオチドの中央のギャップ内に存在する。いくつかのそのような実施形態において、前記ヌクレオシドの糖部分は、2’-デオキシリボシル部分である。いくつかの実施形態において、修飾核酸塩基は、2-チオピリミジン及び5-プロピンピリミジンから選択される。
【0139】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供されるポリヌクレオチドは、定義されたパターン又はモチーフでポリヌクレオチド又はその領域に沿って配置された修飾及び/又は非修飾ヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、それぞれのヌクレオシド間連結基は、本質的にリン酸ヌクレオシド間連結(P=O)である。いくつかの実施形態において、修飾ポリヌクレオチドの各ヌクレオシド間連結基は、ホスホロチオエート(P=S)である。いくつかの実施形態において、修飾ポリヌクレオチドの各ヌクレオシド間連結基は、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結及びホスフェートヌクレオシド間連結から独立して選択される。いくつかの実施形態において、修飾ポリヌクレオチドの糖モチーフはギャップマーであり、ギャップ内のヌクレオシド間連結は全て修飾されている。いくつかのそのような実施形態において、ウイング内のヌクレオシド間連結の一部又は全てが、非修飾ホスフェート結合である。いくつかの実施形態において、末端のヌクレオシド間連結が修飾されている。
【0140】
修飾ポリヌクレオチド
いくつかの実施形態において、上記修飾(例えば、糖、核酸塩基、ヌクレオシド間連結)の1つ以上が、修飾ポリヌクレオチドに組み込まれる。いくつかの実施形態において、修飾ポリヌクレオチドは、その修飾、モチーフ及び全長によって特性決定される。いくつかの実施形態において、そのようなパラメータは、それぞれ互いに独立している。したがって、別途指示しない限り、ギャップマー糖モチーフを有するポリヌクレオチドの各ヌクレオシド間連結は、修飾又は非修飾であり得、糖修飾のギャップマー修飾パターンに従っても又は従わなくてもよい。例えば、糖ギャップマーのウイング領域内のヌクレオシド間連結は、互いに同じであるか又は異なり得、糖モチーフのギャップ領域のヌクレオシド間連結と同じであるか又は異なり得る。同様に、そのようなギャップマーポリヌクレオチドは、糖修飾のギャップマーパターンから独立した1つ以上の修飾核酸塩基を含み得る。更に、特定の場合、ポリヌクレオチドは、全長又は範囲及び2つ以上の領域(例えば、特定の糖修飾を有するヌクレオシドの領域)の長さ又は長さ範囲によって記載される。そのような実施形態において、特定の範囲外となる全長のポリヌクレオチドをもたらす数を、各範囲に選択することが可能であり得る。そのような実施形態において、両方の要素が満たされる必要がある。例えば、いくつかの実施形態において、修飾ポリヌクレオチドが15~20個の結合ヌクレオシドからなり、3つの領域A、B及びCからなる糖モチーフを有し、領域Aは、特定の糖モチーフを有する2~6個の結合ヌクレオシドからなり、領域Bは、特定の糖モチーフを有する6~10個の結合ヌクレオシドからなり、及び領域Cは、特定の糖モチーフを有する2~6個の結合ヌクレオシドからなる。
【0141】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される化合物は、ポリヌクレオチド(修飾又は非修飾)並びに場合により1つ以上のコンジュゲート基及び/又は末端基を含むか又はそれらからなる。コンジュゲート基は、1つ以上のコンジュゲート部分及びコンジュゲート部分をポリヌクレオチドに結合するコンジュゲートリンカーからなる。コンジュゲート基は、ポリヌクレオチドのいずれか若しくは両方の末端及び/又は任意の内部位置に結合され得る。いくつかの実施形態において、コンジュゲート基は、修飾ポリヌクレオチドのヌクレオシドの2’位に結合している。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドの一方又は両方の末端に結合しているコンジュゲート基は、末端基である。特定のそのような実施形態において、コンジュゲート基又は末端基は、ポリヌクレオチドの3’末端及び/又は5’末端に結合している。特定のこのような実施形態では、コンジュゲート基(又は末端基)は、ポリヌクレオチドの3’末端に結合している。いくつかの実施形態において、コンジュゲート基は、ポリヌクレオチドの3’末端付近に結合している。いくつかの実施形態において、コンジュゲート基(又は末端基)は、ポリヌクレオチドの5’末端に結合している。いくつかの実施形態において、コンジュゲート基は、ポリヌクレオチドの5’末端付近に結合している。
【0142】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドのコンジュゲート/末端基は、キャッピング基、リン酸部分、保護基及び修飾又は非修飾ヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、コンジュゲート/末端基には、インターカレーター、レポーター、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物(例えば、GalNAc)、ビタミン、ポリエチレングリコール、チオエーテル、ポリエーテル、ホレート、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、フェナントリジン、アントラキノン、アダマンタン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、フルオロフォア及び色素が含まれる。
【0143】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドのコンジュゲート/末端基は、標的化部分を含む。いくつかの実施形態において、標的化部分は、ポリヌクレオチドの5’末端にある。いくつかの実施形態において、標的化部分は、ポリヌクレオチドの3’末端にある。いくつかの実施形態では、標的化部分は、ポリヌクレオチドを特定の細胞内位置及び/又は特定の細胞若しくは組織型に標的化する。いくつかの実施形態では、標的化部分は、受容体に対するリガンドを含む。いくつかの実施形態では、受容体は細胞及び/又は組織の種類に特異的である。いくつかの実施形態では、受容体による標的化部分(例えば、リガンド)の認識は、標的化部分にコンジュゲートされたポリヌクレオチドのエンドサイトーシスを媒介する。
【0144】
いくつかの実施形態では、標的化部分は、肝臓細胞(本明細書では肝細胞とも呼ばれる)を標的とする。いくつかの実施形態において、肝細胞はヒト肝細胞である。いくつかの実施形態では、肝細胞は、その細胞表面にアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPr)を発現する。いくつかの実施形態では、標的化部分は、ASGPrのリガンドである。いくつかの実施形態では、標的化部分は、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分を含む。いくつかの実施形態において、標的化部分は、1~5個のGalNAc部分を含む。いくつかの実施形態において、標的化部分は、1、2、3、4又は5個のGalNAc部分を含む。いくつかの実施形態において、標的化部分は、3個のGalNAc部分を含む。いくつかの実施形態において、標的化部分は、3アンテナ配置の3個のGalNAc部分を含む(3アンテナGalNAc)。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドの5’に3アンテナGalNAcを含む。
【0145】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、5’末端に安定化リン酸基を含む。特定のこのような実施形態では、化合物は、ssRNAi化合物であるか、又は化合物は、siRNAであり、安定化リン酸基を含むポリヌクレオチドは、siRNA化合物のアンチセンス鎖である。5’末端リン含有基は、5’末端ホスフェート(5’-P)、5’末端ホスホロチオエート(5’-PS)、5’末端ホスホロジチオエート(5’-PS2)、5’末端ビニルホスホネート(5’-VP)、5’末端メチルホスホネート(MePhos)又は5’-デオキシ-5’-C-マロニルであり得る。5’末端リン含有基が5’末端ビニルホスホネートである場合、5’VPは、5’-E-VP異性体(すなわちトランス-ビニルホスフェート)、5’-Z-VP異性体(すなわちシス-ビニルホスフェート)又はそれらの混合物のいずれかであり得る。そのようなリン酸基は、アンチセンスRNAiポリヌクレオチド又はアンチセンスRNAiポリヌクレオチドのいずれかに結合することができるが、特定のRNAi化合物の活性を改善することが示されているように、典型的にはアンチセンスRNAiポリヌクレオチドに結合する。例えば、Prakash et al.,Nucleic Acids Res.,43(6):2993-3011,2015;Elkayam,et al.,Nucleic Acids Res.,45(6):3528-3536,2017;Parmar,et al.ChemBioChem,17(11)985-989;2016;Harastzi,et al.,Nucleic Acids Res.,45(13):7581-7592,2017を参照されたい。特定の実施形態において、リン酸塩安定化基は、5’-シクロプロピルホスホネートである。例えば、国際公開第2018/027106号パンフレットを参照されたい。
【0146】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの全長にわたって標的核酸に相補的である。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、標的核酸に対して99%、95%、90%、85%又は80%相補的である。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの全長にわたって標的核酸に少なくとも80%相補的であり、標的核酸に100%又は完全に相補的な領域を含む。特定の実施形態において、完全な相補性の領域は、6~20個、10~18個又は18~20個の核酸塩基長である。
【0147】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、標的核酸に相補的な標的化領域を含む。特定の実施形態において、標的化領域は、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも25個又は少なくとも25個の連続するヌクレオチドを含むか又はそれらからなる。特定の実施形態において、標的化領域は、ポリヌクレオチドのヌクレオシドの70%、80%、85%、90%、95%を構成する。特定の実施形態において、標的化領域は、ポリヌクレオチドのヌクレオシドの全てを構成する。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドの標的化領域は、標的核酸に対して少なくとも99%、95%、90%、85%又は80%相補的である。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドの標的化領域は標的核酸に100%相補的である。
【0148】
特定の実施形態において、RNAi化合物は、センスRNAiポリヌクレオチドを含む。そのような実施形態では、センスRNAiポリヌクレオチドは、アンチセンスRNAiポリヌクレオチドに相補的なアンチセンスハイブリダイズ領域を含む。特定の実施形態において、アンチセンスハイブリダイズ領域は、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも25個又は少なくとも25個の連続するヌクレオチドを含むか又はそれらからなる。特定の実施形態では、アンチセンスハイブリダイズ領域は、センスRNAiポリヌクレオチドのヌクレオシドの70%、80%、85%、90%、95%を構成する。特定の実施形態において、アンチセンスハイブリダイズ領域は、センスRNAiポリヌクレオチドのヌクレオシドの全てを構成する。特定の実施形態では、センスRNAiポリヌクレオチドのアンチセンスハイブリダイズ領域は、アンチセンスRNAiポリヌクレオチドに少なくとも99%、95%、90%、85%又は80%相補的である。特定の実施形態では、センスRNAiオリゴヌクレオチドのアンチセンスハイブリダイズ領域は、アンチセンスRNAiポリヌクレオチドに100%相補的である。
【0149】
センスRNAiポリヌクレオチドのハイブリダイズ領域は、アンチセンスRNAiポリヌクレオチドとハイブリダイズして二重鎖領域を形成する。特定の実施形態において、そのような二重鎖領域は、7個のハイブリダイズしたヌクレオシド対からなる(各対の一方はアンチセンスRNAiポリヌクレオチド上にあり、各対の他方はセンスRNAiポリヌクレオチド上にある)。特定の実施形態において、二重鎖領域は、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも25個又は少なくとも25個のハイブリダイズした対を含む。特定の実施形態では、アンチセンスRNAiポリヌクレオチドの各ヌクレオシドは、二重鎖領域で対になる(すなわち、アンチセンスRNAiポリヌクレオチドは、オーバーハングヌクレオシドを有さない)。特定の実施形態では、アンチセンスRNAiポリヌクレオチドは、3’末端及び/又は5’末端に不対ヌクレオシド(オーバーハングヌクレオシド)を含む。特定の実施形態では、センスRNAiポリヌクレオチドの各ヌクレオシドは、二重鎖領域で対になる(すなわち、センスRNAiポリヌクレオチドは、オーバーハングヌクレオシドを有さない)。特定の実施形態では、センスRNAiポリヌクレオチドは、3’末端及び/又は5’末端に不対ヌクレオシド(オーバーハングヌクレオシド)を含む。特定の実施形態では、アンチセンスRNAiポリヌクレオチド及びセンスRNAiポリヌクレオチドによって形成される二重鎖は、一方又は両方の末端にオーバーハングを含まない。オーバーハングのないそのような端部は、平滑と呼ばれる。アンチセンスRNAiポリヌクレオチドがオーバーハングヌクレオシドを有する特定の実施形態では、それらのオーバーハングヌクレオシドの1つ以上が標的核酸に相補的である。アンチセンスRNAiポリヌクレオチドがオーバーハングヌクレオシドを有する特定の実施形態では、それらのオーバーハングヌクレオシドの1つ以上が標的核酸に相補的ではない。
【0150】
追加の化合物
いくつかの実施形態では、脂肪肝疾患の治療若しくは予防を、それを必要とする対象において行うための又はPSD3発現の低下のための本開示の化合物は、siRNAを含む。「低分子干渉RNA(short-interfering RNA)」、「低分子干渉RNA(small-interfering RNA)」、「サイレンシングRNA」又は「siRNA」は、それぞれが約15~約30個の連結したヌクレオシドを含む、互いにハイブリダイズした相補的RNAポリヌクレオチドを含む化合物のクラスである。siRNAは、RNA干渉(RNAi)経路内においてインビボで作用し、RISC又はAgo2を介して少なくとも部分的に作用して、転写後にmRNAを分解することによって相補的ヌクレオチド配列を有する特定の遺伝子の発現を妨害し、それによって翻訳を妨げる。例えば、Dana et al.,Int J Biomed Sci 13(2),48-57(2017)、Whitehead et al.,Ann Rev Chem Biomol Eng 2,77-96(2011)、Filipowicz et al.,Curr Opin Struct Biol 15,331-341,(2005)を参照されたい。
【0151】
いくつかの実施形態では、化合物は、PSD3タンパク質をコードする核酸とハイブリダイズすることができ、PSD3タンパク質の発現を阻害することができる、siRNAである。いくつかの実施形態では、siRNAは、PSD3タンパク質をコードする核酸配列の等しい長さの部分に少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は約100%相補的なヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、PSD3タンパク質をコードする配列の等しい長さの部分に少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は約100%相補的なヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号2~18のいずれか1つの等しい長さの部分に少なくとも少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は約100%相補的なヌクレオチド配列を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、脂肪肝疾患の治療若しくは予防を、それを必要とする対象において行うための又はPSD3発現の低下のための本開示の化合物は、miRNAを含む。「マイクロRNA」又は「miRNA」は、RNAサイレンシング及び遺伝子発現の転写後調節においてインビボで機能する約15~約30ヌクレオチド長の一本鎖RNAポリヌクレオチドである。miRNAは、mRNAとの相補的配列との塩基対形成を介して機能する。miRNAの塩基対合の結果として、mRNAは、以下のプロセスの1つ以上によって「サイレンシング」される:(1)mRNA鎖の2つの断片への切断;(2)ポリ(A)尾部の短縮によるmRNAの不安定化;及び(3)mRNAの低い翻訳効率。miRNAは、本明細書に記載されるsiRNAに類似するが、ただし、miRNAは、一般に、それ自体で折り返されてヘアピン構造を形成するRNAの領域に由来し、一方、siRNAは、二本鎖RNAのより長い領域に由来する。例えば、Filipowicz et al.,Curr Opin Struct Biol 15,331-341,(2005)、van Rooij et al.,J Clin Invest 117,2369-2376(2007)及びMacFarlane et al.,Curr Genomics 11(7),537-561(2010)を参照されたい。
【0153】
いくつかの実施形態では、化合物は、PSD3タンパク質をコードする核酸とハイブリダイズすることができ、PSD3タンパク質の発現を阻害することができる、miRNAである。いくつかの実施形態では、miRNAは、PSD3タンパク質をコードする核酸配列の等しい長さの部分に少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は約100%相補的なヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、miRNAは、PSD3タンパク質をコードする配列の等しい長さの部分に少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は約100%相補的なヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、miRNAは、配列番号2~18のいずれか1つの等しい長さの部分に少なくとも少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は約100%相補的なヌクレオチド配列を含む。
【0154】
細胞及び対象
いくつかの実施形態において、本開示の化合物は、対象に投与される。いくつかの実施形態において、本開示の化合物は、細胞及び/又は組織に投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、インビトロで、例えば細胞又は組織培養プレート中で細胞及び/又は組織に投与される。いくつかの実施形態では、細胞は肝臓細胞、すなわち肝細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒト肝細胞、動物肝細胞又は非実質細胞である。
【0155】
いくつかの実施形態において、化合物は、インビボにおいて、例えば対象において、細胞及び/又は組織に投与される。いくつかの実施形態において、対象は、ヒト対象である。いくつかの実施形態では、対象は動物対象である。いくつかの実施形態では、動物は、動物モデル、例えば疾患モデルである。例えば、対象は、ヒト、ラット、イヌ、マウス、サル、ネコ又はウサギであり得る。
【0156】
疾患及び状態
いくつかの実施形態では、対象は、脂肪肝疾患のリスクがあるか又は脂肪肝疾患を有する。NAFLDは、著しいアルコール摂取、脂肪合成薬物療法(steatogenic medication)又は遺伝性疾患がない状態で、肝臓に5重量%超の脂肪が蓄積されるものとして定義されている(Kotronen et al,Arterioscler Thromb.Vasc.Biol.2008,28:27-38)。NAFLDは、脂肪症から非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び肝硬変に至る多様な肝疾患を包含する。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、炎症及び肝障害の徴候があるNAFLDである。NASHは、大滴性脂肪症、肝細胞の風船様変性及び小葉の炎症性浸潤によって組織学的に定義されている(Sanyal,Hepatol.Res.2011.41:670-4)。NASHは、一般的な集団の2~3%に影響を及ぼすものと推定されている。肥満症又は糖尿病等の他の症状がある場合、推定罹患率はそれぞれ7%及び62%に増大する(Hashimoto et al,J.Gastroenterol.2011.46(1):63-69)。
【0157】
脂肪肝疾患は、細胞内脂肪含有量、肝臓重量、肝臓トリグリセリド含有量、血漿循環アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、肝臓コラーゲン1a1及び脂質含有量の1つ以上の増加を含み得る。脂肪肝疾患の治療は、臨床開発中の脂肪肝疾患薬、例えば抗NASH薬により更に複雑化され、心血管疾患の既知の危険因子であるコレステロール、特にLDLコレステロールの増加を引き起こす可能性がある。
【0158】
いくつかの実施形態では、本開示は、脂肪肝疾患の治療又は予防を、それを必要とする対象において行う方法を提供し、方法は、対象におけるPSD3の発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチド、例えば、本明細書で提供されるポリヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、脂肪肝疾患の治療又は予防を必要とする本開示の対象は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)(肝硬変及び非肝硬変NASH)、肝細胞癌(HCC)及び/又は肝線維症の1つ以上を有する。いくつかの実施形態では、脂肪肝疾患の治療又は予防を必要とする本開示の対象は、アルコール性脂肪肝疾患(AFLD)又はアルコール性脂肪性肝炎(ASH)(肝硬変及び非肝硬変ASH)を有する。いくつかの実施形態では、脂肪肝疾患の治療又は予防を必要とする本開示の対象は、対象における肝損傷、脂肪症、肝線維症、肝臓の炎症、肝臓の瘢痕化又は肝硬変、肝不全を有する。
【0159】
いくつかの実施形態において、方法は、対象における細胞内脂肪含有量、肝臓重量、肝臓トリグリセリド含有量、血漿循環アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、肝臓コラーゲン1a1及び脂質含有量の1つ以上を減少させる。いくつかの実施形態では、対象のコレステロール及び/又はLDLの量は、化合物の投与後に減少する。いくつかの実施形態では、脂肪肝疾患の治療又は予防を必要とする本開示の対象は、脂質異常症等の心血管疾患を有する。特定の実施形態において、疾患は、混合型脂質異常症である。特定の実施形態において、疾患は、高コレステロール血症である。特定の実施形態において、疾患は、家族性高コレステロール血症である。
【0160】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象の肝細胞における細胞内脂肪含有量を低下させる方法を提供し、方法は、対象におけるPSD3の発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む。いくつかの実施形態において、化合物は、本明細書に提供されるポリヌクレオチドである。
【0161】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象のコレステロールを低下させる方法を提供し、方法は、対象において、PSD3の発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む。いくつかの実施形態において、化合物は、本明細書に提供されるポリヌクレオチドである。
【0162】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、PSD3と脂肪肝疾患との間の相関は、ADP-リボシル化因子6(ARF6)のPSD3活性化に関連し得る。PSD3は、ARF6-GDPのARF-GTPへの変換を触媒することによってARF6と相互作用し、これを活性化すると考えられている。ARF6は、細胞内小胞輸送に関与し、脂肪滴形成に関与するARF1と相同性を共有し、したがって、ARF6は、脂肪滴輸送及び形成に影響を及ぼすことによって肝脂肪含有量に寄与している可能性がある。したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、ADP-リボシル化因子6(ARF6)の活性化を低下させる方法を提供し、方法は、対象におけるPSD3発現を低下させることを含み、対象におけるPSD3の発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することを含み、より低いPSD3発現は、ARF6の低下した活性化をもたらす。
【0163】
亜集団の同定及び治療
いくつかの実施形態では、脂肪肝疾患の治療を受ける本開示の対象は、PSD3タンパク質の186T対立遺伝子変異体を有さない。本明細書に記載されるように、PSD3は、脂肪肝疾患の発生率の低下並びにコレステロール及びLDLコレステロールのレベルの低下をもたらした特定の個体におけるPSD3 L186T変異体の新規な同定により、脂肪肝疾患の治療又は予防のための潜在的な標的として発見された。本明細書に記載の結果は、この遺伝的変異体が、PSD3タンパク質のグアニン交換活性を低下させる機能喪失変異であることを実証している。本明細書に記載される結果は、186L対立遺伝子の存在が肝疾患を引き起こすことも実証する。したがって、本明細書に記載されるデータは、PSD3下方制御がNAFLDに対する保護を付与し得ることを示唆する。
【0164】
PSD3対立遺伝子変異体(すなわち186T及び186L)は、PSD3減少療法に適している、脂肪肝疾患を有する対象の亜集団を区別するための有用な方法を提供し得る。いくつかの実施形態では、本開示は、PSD3減少療法に適している、脂肪肝疾患を有する対象の亜集団を同定する方法を提供し、方法は、(a)対象が脂肪肝疾患を有するかどうかを診断することと、(b)対象がPSD3タンパク質の186T対立遺伝子変異体又はPSD3タンパク質の186L対立遺伝子変異体を有するかどうかを判定することとを含み、対象がPSD3タンパク質の186L対立遺伝子変異体を有する場合、適切な治療は、PSD3の発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することを含み、対象がPSD3の186T対立遺伝子変異体を有する場合、治療は、適切ではないPSD3の発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することを含まない。いくつかの実施形態では、工程(b)は、186L対立遺伝子変異体の遺伝子型決定又は186L対立遺伝子変異体との強い連鎖不平衡にある遺伝子変異体の遺伝子型決定からの推論によって決定され得る。
【0165】
いくつかの実施形態では、本開示は、脂肪肝疾患を有する対象を治療する方法を提供し、方法は、(a)対象がPSD3タンパク質の186T対立遺伝子変異体又はPSD3タンパク質の186L対立遺伝子変異体を有するかどうかを判定することと、(b)対象がPSD3の186L対立遺伝子変異体を有する場合にのみ、PSD3の発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することとを含む。いくつかの実施形態では、工程(a)は、186L対立遺伝子変異体の遺伝子型決定又は186L対立遺伝子変異体との強い連鎖不平衡にある遺伝子変異体の遺伝子型決定からの推論によって決定され得る。
【0166】
予防
いくつかの実施形態では、本開示は、脂肪肝疾患の予防を、それを必要とする対象において行う方法を提供し、対象におけるプレクストリン及びSec7ドメイン含有3(PSD3)の発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む。本明細書で使用される「予防すること」又は「予防する」という用語は、脂肪肝疾患を発症するリスクがより高い対象の可能性を統計的に改善することである。したがって、PSD3発現を低下させるのに有効な化合物の投与を、脂肪肝疾患の発症前に対象に提供することができる。いくつかの実施形態では、脂肪肝疾患を発症するリスクがより高い対象は、PSD3タンパク質の186L対立遺伝子変異体を有する。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、PSD3発現を低下させるのに有効なポリヌクレオチドを含む化合物を対象に投与することを含む、PSD3の186L対立遺伝子変異体を有する対象における脂肪肝疾患を予防することに関する。
【0167】
本明細書に引用される全ての参考文献、例えば特許、特許出願、論文、教科書等及びこれらに引用される参考文献は、それらが既に引用されていない限り、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0168】
非限定的な開示及び参照による組込み
本明細書に記載される特定の化合物、組成物及び方法を、特定の実施形態に従って特性と共に説明してきたが、以下の実施例は、本明細書に記載される化合物を説明する役割を果たすものに過ぎず、これを限定することを意図するものではない。本出願に記載される参考文献、GenBankアクセッション番号等の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0169】
本出願に付随する配列表は、必要に応じて、「RNA」又は「DNA」のいずれかとして各配列を特定するが、実際には、これらの配列は、化学修飾のあらゆる組合せにより修飾され得る。当業者であれば、修飾オリゴヌクレオチドを記述する「RNA」又は「DNA」のような指定が、場合によっては、恣意的であることを容易に認識するであろう。例えば、2’-OH糖部分及びチミン塩基を含むヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、修飾糖を有するDNA(DNAの1つの2’-Hの代わりに2’-OH)又は修飾塩基を有するRNA(RNAのウラシルの代わりにチミン(メチル化ウラシル))として記述され得る。したがって、限定されるものではないが、配列表に含まれるものが挙げられる、本明細書で提供される核酸配列は、天然の又は修飾されたRNA及び/又はDNAのあらゆる組合せを含有する、限定されるものではないが、修飾核酸塩基を有するような核酸が挙げられる核酸を包含することが意図される。更なる例としては、限定されるものではないが、核酸塩基配列「ATCGATCG」を有するポリヌクレオチドは、修飾されているか非修飾であるかに関わらず、そのような核酸塩基配列を有するあらゆる化合物を包含し、限定されるものではないが、RNA塩基を含むそのような化合物、例えば、配列「AUCGAUCG」を有するもの、いくつかのDNA塩基及びいくつかのRNA塩基、例えば「AUCGATCG」を有するもの並びに他の修飾核酸塩基、例えば「ATmCGAUCG」(mCは、5位にメチル基を含むシトシン塩基を示す)を有する化合物が挙げられる。
【0170】
本明細書に記載される特定の化合物(例えば、修飾オリゴヌクレオチド)は、1つ以上の不斉中心を有し、これにより絶対立体化学の点から(R)若しくは(S)、例えば糖アノマー等ではα若しくはβとして又はアミノ酸等では(D)若しくは(L)等として定義され得るエナンチオマー、ジアステレオマー及び他の立体異性配置が生じる。特定の立体異性配置を有するものとして描写又は記載される、本明細書で提供される化合物は、指示された化合物のみを含む。立体化学が定義されずに描写又は記載される、本明細書で提供される化合物は、特に明記されない限り、そのステレオランダムな形態及び光学的に純粋な形態を含む、そのような考えられる異性体の全てを含む。同様に、本明細書における化合物の互変異性型も別段示されない限り含まれる。別段示されない限り、本明細書に記載される化合物は、対応する塩形態を含むことが意図される。
【0171】
本明細書に記載される化合物は、1つ以上の原子が、示される元素の非放射性同位体又は放射性同位体で置換されているバリエーションを含む。例えば、水素原子を含む本明細書における化合物は、1H水素原子の各々に対して、考えられる全ての重水素置換を包含する。本明細書における化合物によって包含される同位体置換として、限定されないが、1Hの代わりに2H又は3H、12Cの代わりに13C又は14C、14Nの代わりに15N、16Oの代わりに17O又は18O及び32Sの代わりに33S、34S、35S又は36Sが挙げられる。特定の実施形態において、非放射性同位体置換は、治療又は研究ツールとしての使用に有益なオリゴマー化合物に対して、新たな特性を付与し得る。特定の実施形態において、放射性同位体置換は、化合物を、研究又は診断目的、例えばイメージングに適したものとし得る。
【実施例】
【0172】
実施例1 - PSD3配列変異及びFLDとの会合
発見段階では、ゲノム全体で有意なレベルで主にトリグリセリド(n=24)又は二次形質(n=8)として以前に関連していた32の遺伝子タグ付け一塩基多型(SNP)を選択した(Teslovich et al.,Nature 466,707-713,2010)(
図1)。次に、Illumina HumanExome Beadチップ(入手可能な場合にはタグ付けSNPを含む)上にある選択された遺伝子座の50kb以内の全てのミスセンス変異体及びナンセンス変異体を、Dallas Heart Study(DHS)において肝脂肪含有量との関連性について試験した(
図2)。タグ付けSNPが遺伝子間である場合、タグ付けSNPに隣接する両方の遺伝子上の変異体を分析した。
【0173】
試験コホート
Dallas Heart Study(DHS)-Dallas Heart Study(DHS)は、ダラス郡の住民の多民族集団ベースのサンプルである。研究デザイン及び採用手順は、Victor,R.G.,et al.に以前に記載されている。Dallas Heart Study:心血管の健康状態における民族差の集学的研究のための集団ベースの確率サンプル(Am J Cardiol 93,1473-1480(2004))。手短に言えば、元のコホートを2000~2002年の間に登録し、全ての参加者及びその配偶者又は重要な他者を2007~2009年の反復評価(DHS-2)のために招待した。登録時に、全ての参加者が詳細な調査を完了し、血圧の測定、人体測定、血液及び尿サンプル採取並びにイメージング検査を含む臨床検査を受けた。民族性は自己報告された。Browning,J.D.,et al.,Hepatology 40,1387-1395(2004)及びSzczepaniak,L.S.,et al.,Am J Physiol 276,E977-989(1999)に以前記載されたように、n=2736名の参加者においてプロトン磁気共鳴分光法(1H-MRS)を用いて肝トリグリセリド含有量を測定した。本研究では、全ての分析は横断的データに基づいた。大量飲酒の有病率が低い(>30g/日)ことを考慮すると、アルコール摂取に基づいて対象を除外しなかった。この研究は、the Institutional Review Board of University of Texas Southwestern Medical Centerによって承認され、全ての個人が書面によるインフォームドコンセントを提供した。
【0174】
肝生検コホート(LBC) - 肝生検コホート(LBC)は、NASH又は重度の肥満の疑いで肝生検を受け、3つの欧州センターに連続して登録されている欧州家系の個体の横断的研究である。この研究は、Dongiovanni,P.,et al.,Hepatology 61,506-514(2015)及びMancina,R.M.,et al.,Gastroenterology(2016)に以前に記載されている。本研究では、PSD3遺伝子型及び肝臓組織学の両方について利用可能な完全なデータを有する個体のみを含めた。これらには、4番目の独立したフィンランドセンターからの合計323人の個体が含まれている。本研究では、4つの異なる欧州センターからの1951人の個体が含まれている:1,022名(52%)がミラノ(the Metabolic Liver Diseases outpatient service and from the Fondazione IRCCS Ca’Granda Ospedale Policlinico Milano,Milan,Italy)(Valenti,L.,et al.,J Hepatol 55,1409-1414(2011)を参照されたい)からであり、374名(19%)がイタリアのパレルモのGastrointestinal&Liver Unit of the Palermo University Hospital(Petta,S.,et al.,PLoS One 9,e87523(2014)を参照されたい)からであり、410名(21%)がフィンランドのクオピオにあるNorthern Savo Hospital District(Simonen,M.,et al.,Hepatology 58,976-982(2013)を参照されたい)からであり、145名(7%)がフィンランドのヘルシンキとウシマーの病院地区(Simonen,M.et al.,J Hepatol 64,1167-1175(2016)を参照されたい)からであった。アルコール摂取の増加(男性、>30g/日;女性、>20g/日)、ウイルス性及び自己免疫性の肝炎又は肝疾患の他の原因を有する個体を除外した。NASHの診断は、小葉壊死-炎症及び風船様変性又は線維症を伴う脂肪症の存在に基づいた。疾患活動性を、NAFLD活動性スコア(NAS)に従って評価した。Kleiner,D.E.,et al.Design and validation of a histological scoring system for nonalcoholic fatty liver disease.Hepatology 41,1313-1321(2005)に記載のNAFLD臨床調査ネットワークの推奨に従って、線維症を分類した。肝臓生検のスコアリングは、患者の状態及び遺伝子型を知らない独立した病理学者が行った。この試験は、Fondazione IRCCS Ca’Granda(ミラノ)、Palermo University Hospital(パレルモ)及びNorthern Savo Hospital District in Kuopio(フィンランド)並びにHospital District of Helsinki and Uusimaa(フィンランド)の倫理委員会によって承認された。
【0175】
UK Biobankコホート - UK Biobankは、2006~2014年に英国全体で22の採用センターを訪問した500,000人を超える成人(採用時年齢40~69歳)を含む大規模コホート研究である。本研究で使用した表現型データ及び遺伝子型データの両方は、申請番号37142でUK Biobankから得た。分析は、ヨーロッパ系のUK Biobank参加者のサブセットに限定された(最初の2つの遺伝的主成分に基づいて外れ値を除去した後、「英国人」、「アイルランド人」又は「白人」として自己報告によって定義される)。(1)過度の血縁者(10人を超える推定上の第三級血縁者);(2)自己報告された性別と遺伝的に推測された性別との間の不一致;又は(3)推定上の性染色体異数性及び(4)Canela-Xandri et al(Nature genetics 50,1593-1599(2018))及びCrawford et al(J.Med.Genet.56,131-138(2019))のヘテロ接合性及びミスシングリネスに基づいて、UK Biobankによって外れ値として同定された者を有する個体を除外した。2つの非常に類似したUK BiLEVE又はUK Biobank Axiomアレイ(>95%の重複)を使用して、UK Biobank参加者の遺伝子型を特定した。次いで、1000 Genomes Phase 3、UK 10Kハプロタイプ及びHaplotype Reference Consortium(HRC)の参照パネル(C.Bycroft et al.,The UK Biobank resource with deep phenotyping and genomic data.Nature 562,203-209(2018)を参照されたい)に基づいて、遺伝子型データを帰属した。rs71519934ジヌクレオチド変化の遺伝子型データは、UK Biobankでは入手できなかった;rs7003060(rs71519934の最初のヌクレオチド変化を同定する)は、直接遺伝子型決定された変異体の中にあり、代わりに使用された。肝臓磁気共鳴画像法(MRI)由来のプロトン密度脂肪分率(PDFF)データ(データフィールド22436)を使用し、6分間のデュアルエコーDixon Vibeプロトコルを使用してSiemens MAGNETOM Aera 1.5-T MRIスキャナで参加者をスキャンし、単一のマルチエコースライスを更に取得して肝臓PDFFを分析した。UK Biobank研究は、National Research Ethics Service Committee North West Multi-Centre Haydock(reference 16/NW/0274)から倫理的承認を受けた。
【0176】
独立した複製EUコホート - 経皮的又は外科的肝生検を受けた、オーストリア(n=83)、ドイツ(n=559)及びスイス(n=32)の三次照会センターからのBMI≧30Kg/m2の合計674人の成人コーカサス人NAFLD個体(平均年齢45±12歳)が含まれた(V.R.Thangapandi et al.,Gut,(2020)を参照されたい)。NASHは、NAFLD活動性スコア(NAS)によって定義した。線維症の存在をクライナー分類(D.E.Kleiner et al.,Hepatology 41,1313-1321(2005))に従って組織学的に評価した。全ての患者において、慢性肝疾患の感染性(例えば、ウイルス性肝炎、HIV)、免疫学的、薬物誘発性脂肪肝(例えば、アミオダロン、メトトレキサート、ステロイド、バルプロ酸等)又は遺伝的原因(遺伝性ヘモクロマトーシス、ウィルソン病)は、許容される手段によって除外された。自己報告によって評価されるように、平均アルコール摂取量が30g/日(男性)又は20g/日(女性)を超える対象は含まなかった。肝臓生検を、2人の経験豊富な組織病理学者が盲検様式で読み取った。全ての患者は、肝生検及び遺伝子検査のために書面によるインフォームドコンセントを提出した。
【0177】
統計分析 - DHSについて、年齢、性別及び祖先の4つの主要主成分について調整した線形回帰分析を使用して、肝脂肪含有量と標的変異体との間の関連のP値を計算した。全ての分析において、付加的遺伝モデルを使用した。LBC及び独立複製EUコホートについては、PSD3 rs71519934変異体と肝疾患との間の関連性を、年齢、性別、肥満度指数(BMI)、採用センター及びPNPLA3 I148M変異対立遺伝子の数について調整したバイナリーロジスティック(肝疾患の有病率)又は順序回帰(肝臓組織学的特徴)分析による付加的遺伝モデル下で評価した。UK Biobankの場合、肝臓PDFFを最初にランクベースの逆正規変換し、次いで、年齢、性別、BMI、最初の10のゲノム主成分及び付加的遺伝モデルのもとでのアレイタイプについて調整された線形回帰を使用して、PSD3 rs7003060との関連を調べた。記述統計学のために、データは、必要に応じて平均及び標準偏差又は中央値及び四分位範囲として示される。カテゴリ的形質は、数及び割合として示されている。連続形質については、年齢、性別及びBMIについて調整されていないか又は調整された付加的遺伝モデル下で線形回帰によってP値を計算した。モデルに入る前に、非正規分布形質を対数変換した。カテゴリ的形質については、カイ二乗検定又は年齢、性別及びBMIについて調整した二項ロジスティック回帰によってP値を計算した。ヒト組織における発現レベルの差を、マン・ホイットニーのノンパラメトリック検定(健康な個体とFLDを有する個体との比較のため)又は線形回帰分析(遺伝子型間の比較のため)によって評価した。組織学的コホートのメタ分析のために、2つの研究(肝生検コホート及び中央ヨーロッパ複製コホート)の逆分散メタ分析を、Rバージョン3.6.1の固定効果モデル及びランダム効果モデルを有するパッケージ「メタ」を使用して行った。インビボ及びインビトロ研究については、データを平均及び標準偏差として示す。P値は、マン・ホイットニーのノンパラメトリック検定(インビトロ)又は多重比較のためのダンの補正を用いた一元配置ANOVA Kruskal-Wallisノンパラメトリック検定(インビボ)によって計算した。
【0178】
遺伝子型決定及び検証
遺伝子型決定 - DHSからの全ての参加者は、J.Kozlitina et al.,Nature genetics 46,352-356(2014)及びS.Romeo et al.,Nature genetics 40,1461-1465(2008)に記載されているように、Illumina Infinium HumanExome BeadChipを使用して変異体について以前に遺伝子型決定された。LBC及び独立複製EUコホートからの参加者を、TaqMan 5’ヌクレアーゼアッセイ(Life Technologies,Carlsbad,CA)によって遺伝子型決定した。PSD3 rs71519934に対する対立遺伝子識別プローブは市販されていなかった。この変異体のカスタムアッセイを以下のように設計した。
コンテキスト配列:
【化9】
フォワードプライマー:CGTTGTTACTTCAGCTGAAAGAGGTA(配列番号22)
リバースプライマー:TGGACCAAGATGCTGTTTCTAGTTT(配列番号23)
レポーター1(VIC)配列:
【化10】
レポーター2(FAM)配列:
【化11】
【0179】
ヒト肝臓生検における遺伝子発現分析 - ヒト肝臓生検について、FLD対非FLDにおける異なるPSD3アイソフォーム並びにPSD3及びNAT2のmRNA発現を、LBCのMilanサブセットからの77名の参加者において測定した。Illumina HiSeq 4000プラットフォーム(Novogene,Hong Kong,China)を用いてRNA配列決定を行い、RNAリードをヒトゲノムに対してマッピングし、RSEMソフトウェアを用いて遺伝子リード数(Ensemblヒト転写物参照アセンブリ、バージョン75)を決定した。遺伝子発現を定量するために、遺伝子カウント当たりのRSEMデータを、DESeq2パッケージを使用して正規化した。各患者からインフォームドコンセントを得、試験プロトコルをFondazione IRCCS Ca’Granda,Milanの倫理委員会によって承認し、1975年ヘルシンキ宣言の倫理ガイドラインに準拠させた。
【0180】
不死化細胞における遺伝子発現分析 - RNAをRNeasy Plusミニキット(Qiagen)で抽出し、高容量cDNA逆転写キット(Thermo Fisher Scientific)を製造者の説明書に従って使用して逆転写した。遺伝子発現を、TaqManプローブ及びマスターミックス(Life Technologies)を製造者のプロトコルに従って使用するリアルタイムqPCRによって評価した。全ての反応を3連で行った。2-ΔΔCt法を用いてデータを分析した。
【0181】
マウスにおける遺伝子発現 - 肝臓RNAを、RNeasyキット(Qiagen,Hilden,Germany)を使用して精製し、定量的PCR分析に供した。リアルタイム蛍光RT-PCR検出(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を使用するApplied Biosystems StepOne Plus RT-PCRシステムを使用して、RNA発現を定量した。プライマープローブセットMm01351099_m1(Thermo Fisher Scientific Waltham,MA)を用いてPSD3 mRNAを定量した。RNA転写物レベルを、Quant-iT RiboGreen RNA試薬(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を使用して総RNAレベルに対して正規化した。脂質生成遺伝子発現のために、RNAeasyキット(Qiagen,Hilden,Germany)を用いてマウス肝臓から全RNAを単離した。各サンプルについて100ngの総RNAを使用して、Quantseq Kit 3’mRNAキット(Lexogen,Vienna,Austria)を使用して3’末端RNAseqライブラリーを作製した。これらのライブラリーをプールし、NextSeq500配列決定装置(Illumina,San Diego,CA)で、サンプル当たり50bpのリード長及び3~500万リードの深さまで配列決定した。擬似マッピングに基づく定量化モード及び自動化されたリブタイプ検出(Patro,R.,Duggal,G.,Love,M.I.,Irizarry,R.A.,&Kingsford,C.Nat Methods 14,417-419(2017))を使用して、Salmon(バージョン0.7.1)を使用して、リードを遺伝子モデルにマッピングした。Salmon(バージョン0.7.1)は、転写物発現の迅速でバイアスを認識した定量化を提供し、遺伝子関連リードをサンプル当たりの全マッピングされたリードで正規化することにより、100万当たりの転写物(TPM)として遺伝子存在量が報告された。
【0182】
細胞培養 - 基礎条件では、ラット肝細胞癌McArdle(McA)-RH7777細胞(ヒトNP_056125.3とラットXP_017455908.1とのアラインメントによるヒトPSD3の186Tに対応する180Tのホモ接合体)をATCCから購入し、10%ウシ胎児血清(FBS)を含有するDMEM中で培養し、ヒト肝細胞Huh7(PSD3 L186L)を日本のJCRB細胞バンクから購入し、10%FBSを含有するDMEM(低グルコース)中で培養した。実験条件では、播種後24時間で、細胞をスクランブル又はPSD3 siRNA(それぞれMcA-RH7777及びHuh7細胞のラット又はヒト遺伝子に対して)でトランスフェクトし、FBSを含まない通常培地+異なる補助培地で増殖させた。3つのヒトsiRNA(Thermo Fisher;カタログ番号4392420)の混合物を使用した。ヒトPSD3 siRNAを以下の表1に更に記載する。
【0183】
【0184】
ラットsiRNAの場合、3 siRNAの混合物(Thermo Fisher;カタログ番号4390771)を使用した。ラットPSD3 siRNAを以下の表2に更に記載する。
【0185】
【0186】
細胞内脂肪含有量の定量化 - 細胞内中性脂肪含有量をオイルレッドO(ORO)染色によって可視化した。画像は、Axio KS 400Imaging System及びAxioVision 4.8ソフトウェア(Zeiss)を使用して100倍の倍率で取得した。ORO染色領域は、例えば、P.Pingitore et al.,Hum.Mol.Genet.25,5212-5222(2016)に以前に記載されたように、BioPixによって定量化した。染色前に、McA-RH7777及びHuh7細胞をスクランブル又はPSD3 siRNA(それぞれラット又はヒトRNAに対して)でトランスフェクトし、50μM(McA-RH7777)及び25μM(Huh7)オレイン酸(OA)を補充したFBS非含有通常培地中で48時間増殖させた。
【0187】
デノボトリグリセリド合成 - McA-RH7777及びHuh7細胞を6ウェルプレートに三重に播種した。播種の24時間後、細胞を、10%FBSを含むDMEM中で48時間、PSD3 siRNA又はスクランブル(Scr)siRNAでトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞を、FBSなし+5μCi/ml 3H-グリセロール(Perkin Elmer,MA,USA)+50μMオレイン酸(及びHuh7について25μMオレイン酸)を含むDMEMと共に15、30又は60分間インキュベートした。細胞溶解物を回収し、脂質をクロロホルム:メタノール(2:1)で、フォルチ抽出手順によって抽出した。有機相を乾燥させ、メタノール中で再可溶化し、スズ層クロマトグラフィー(TLC)によって分離した。トリグリセリドに対応するスポットをヨウ素蒸気で可視化し、シンチレーション流体を含むバイアルに添加した。放射活性を、シンチレーションカウンターにより、崩壊/分(DPM)として測定した。
【0188】
アポリポタンパク質b分泌 - McA-RH7777細胞をT-25フラスコ中で成長させ、10%FBSを含むDMEM中のPSD3 siRNA又はScr siRNAでトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞をメチオニン及びシステインを含まないDMEMと共に2時間インキュベートし、続いて0.05mCi/mL 35S Met/Cys(Perkin Elmer,MA,USA)+50μM OAで更に2時間処理した。次いで、細胞を、過剰の冷L-メチオニン及びL-システイン(最終濃度10mM、Sigma Aldrich,MO,USA)を含むDMEMから構成される追跡培地と共に5、15、30又は60分間インキュベートし、その後、培地及び溶解物を回収した。次いで、Apo-bを、Apo-b抗体により被覆されるアガロースビーズ(Dako,Denmark)を使用して免疫沈降させた。サンプルを、ベータメルカプトエタノールを含有する60μl SDS PAGEサンプル緩衝液中で5分間沸騰させることによってビーズから溶出し、続いて3~8%勾配SDS-PAGEで分離した。次いで、ゲルを乾燥させ、一晩BAS-MSフィルム上に曝露し、ホスホイメージャ(Fujifilm FLA-3000、東京、日本)で可視化した。
【0189】
β酸化 - McA-RH7777細胞を6ウェルプレートにおいて3連で増殖させ、PSD3 siRNA又はScr siRNAでトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞を、FBSを含まないDMEM中の8.5μCi 3H-パルミチン酸+55μmol/Lパルミチン酸と共に2時間インキュベートした。次いで、培地500μlを回収し、標識パルミテートを、50μlの20%BSA及び27μlの70%過塩素酸を添加することによって沈殿させた。12,000rpmで5分間遠心分離した後、上清を回収し、20%BSAの第2の一定分量を添加した。これを合計3回繰り返した。次いで、最終上清を、シンチレーション液を含むバイアルに添加した。放射活性を、シンチレーションカウンターにより、崩壊/分(DPM)として測定した。
【0190】
結果 - 年齢、性別及び祖先の上位4つの主要成分について調整した付加的遺伝モデル下で線形回帰分析を使用することにより、3つの遺伝子の合計3つのミスセンス変異体がヨーロッパ系(マイナー対立遺伝子頻度(MAF)>5%、1000ゲノムプロジェクトより、dbSNP Current Build 154、2020年4月21日公開)で同定され、DHSの肝脂肪含有量と名目上関連していた(P<0.050)(
図2)。これらの変異体の中で、TM6SF2(rs58542926;P=5.7×10
-8)及びGCKR(rs1260326;P=0.007)は、脂肪肝疾患に関連し、DHSの肝脂肪含有量の増加に関連する循環トリグリセリドに関連する2つの周知の遺伝的変異体である(例えば、E.K.Speliotes et al.,PLoS Genet.7,e1001324(2011)を参照されたい)。PSD3遺伝子の変異体であるrs71519934もより低い肝脂肪含有量に関連することが見出された(P=0.049)。臨床的、人体測定的、リポタンパク質及び肝脂肪含有量の差も、ヨーロッパ系アメリカ人においてPSD3 rs71519934遺伝子型について循環総コレステロールレベルの減少が観察された民族群(
図17)によって層別化した。
【0191】
変異体PSD3 rs71519934をLBC(利用可能な肝生検でFLDのリスクが高いn=1,951のヨーロッパ系を含む)で調べて、FLDに対する保護との関連性を同定した(
図3)。LBCでは、PSD3 rs71519934マイナー対立遺伝子(186T)は、年齢、性別、BMI、採用センター及びPNPLA3 rs738409について調整した付加的遺伝モデル下でバイナリーロジスティック回帰分析を使用することにより、脂肪肝(P=5.9×10
-6)、線維症(P=0.006)、炎症(P=9.9×10
-7)及び風船様変性(P=0.002)(
図4)のより低い有病率と関連していた。
【0192】
更に、186Tマイナー対立遺伝子のキャリアを、付加的遺伝モデルのもとでの順序回帰分析を使用することにより、より重篤な脂肪肝(P=3.3×10
-7)、炎症(P=1.6×10
-7)、風船様変性(P=0.001)及び線維症(P=0.001)(
図5A)から保護し、年齢、性別、BMI、採用センター及びPNPLA3 rs738409について調整した。これらの結果は、FLDに影響を及ぼす他の遺伝的変数(TM6SF2 rs58542926[E167K]、MBOAT7 rs641738及びGCKR rs1260326[L446P])及び環境的変数(糖尿病及びコレステロール治療の存在)について更に調整した場合、実質的に同一であった(
図16)。更に、PSD3 186Tマイナー対立遺伝子のキャリアは、より低い総循環及び低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)レベルを有していた(それぞれP=1.4×10
-6及びP=0.001)(
図7)。FLDに対する保護をもたらすHSD17B13の遺伝的変異体は、PNPLA3変異体と相互作用することが示され、PNPLA3有害対立遺伝子のキャリアは、HSD17B13保護変異体の保有からより多くの利益を得る(例えば、H.Gellert-Kristensen et al.,Hepatology,(2020)を参照されたい)。したがって、LBCにおけるPSD3変異体とPNPLA3変異体との間の相互作用を試験したが、肝疾患におけるこれらの2つの遺伝的変異体の間で相互作用は同定されなかった。
【0193】
磁気共鳴画像法由来のプロトン密度脂肪分率(PDFF)による肝脂肪含有量の測定を用いたUK Biobankの英国系白人参加者(n=10,970)におけるPSD3変異体の効果を、肝脂肪含有量とのPSD3変異体の関連を理解するために行った。rs71519934ジヌクレオチド置換に関する遺伝データは入手できなかったため、rs7003060を分析した(ヨーロッパ系においてrs71519934と完全な連鎖不平衡(D’=1、r
2=1)にある)。UK Biobankでは、PSD3マイナー対立遺伝子と肝脂肪含有量の低下との間に関連性は見られなかった。しかしながら、FLDに影響を及ぼす遺伝的変異は、それらの効果を増幅する過剰な体重との強い遺伝子-環境相互作用を有するため(例えば、S.Stender et al.,Nat Genet 49,842-847(2017)を参照されたい)、年齢、性別、BMI、最初の10のゲノム主成分に対して調整された線形回帰分析にBMI×rs7003060相互作用項を含めることにより、(PDFFによって測定された)肝脂肪含有量に対するPSD3 rs7003060とBMIとの間の相互作用をUK Biobankで分析した。この変異体はBMIと相互作用し(P=0.046)、より高いBMIが、脂肪肝に対するrs7003060変異体の保護効果を明らかにすることが見出された。BMIによって測定された過体重/肥満の重症度について層別化した後のPSD3 rs7003060遺伝子型間の肝脂肪含有量の差は、PSD3マイナー対立遺伝子の重度肥満(BMI>35)キャリアがより低い肝脂肪含有量(β=-0.175、P=0.02)を有することを示した(
図18)。
【0194】
LBCにおけるPSD3遺伝子型とBMIとの間の相互作用を、独立複製EUコホートにおいて個体におけるPSD3変異体と肝疾患に対する保護との間の関連性を試験することによって更に検証した。PSD3マイナー対立遺伝子は、脂肪肝(P=0.024)、線維症(P=0.049)及び風船様変性(P=0.047)のより低い有病率と関連し、より重症でない線維症及び風船様変性(それぞれP=0.040及びP=0.048と関連することが分かった(
図6)。PSD3遺伝子型によって層別化されたこのコホートでは、臨床的又は代謝的形質の差は検出されなかった(
図7)。肝生検が利用可能な2つのコホート、すなわちLBC及び独立複製EUコホートのメタ分析を行った。固定効果モデル及びランダム効果モデルの両方において、遺伝的関連は、関連がランダム効果モデルを使用することによって減弱された炎症の存在及び重症度を除いて、試験した全ての形質についてより強かった(
図8A~
図8B)。
【0195】
ヒト肝臓及びFLDにおけるPSD3発現 - PSD3タンパク質は、18のアノテーションされたアイソフォームを有する(Ensemblリリース75)。LBCからの個体のサブセット(n=77)からの肝臓生検のトランスクリプトームを検討することにより、アイソフォーム-a(NCBIではNP_056125、Ensemblでは001 ENST00000327040と注釈付けされている)が肝臓で最も高い発現レベルを有することが決定された(
図9A)。総肝臓PSD3 mRNAレベルは、FLDを有する肝臓では有さない肝臓よりも高かったが(
図5B)、NAT2 mRNAレベルの差は観察されず(
図5C)、これは、NAT2ではなくPSD3がFLDに関与していることを示唆している。PSD3遺伝子型に基づいて個体を層別化した場合、PSD3又はNAT2のいずれかのmRNA発現レベルに差は同定されなかった(
図9B及び
図9C)。
【0196】
186L及び186Tアミノ酸のホモ接合性の変化を有するドナー由来の初代ヒト肝細胞を比較して、rs71519934マイナー対立遺伝子と肝脂肪含有量の低下との間の関連の根底にある機序を解明した。遺伝的関連と一致して、2Dで培養した186T対立遺伝子についてホモ接合性のヒト初代肝細胞は、ホモ接合性186L肝細胞と比較して、オイルレッドO染色によって測定した中性脂肪含有量が低かった(p=0.007)(
図19A)。2つの異なる遺伝子型におけるPSD3レベルを調べるために、本発明者らは、ヒトPSD3に特異的な抗体を作製した(ウサギにおける免疫後に組換えPSD3に対するポリクローナル抗体を作製し、リード抗体を、ウエスタンブロット分析においてシグナルを省いたヒトヘパトーマHepaRG細胞におけるPSD3のsiRNAサイレンシングによって検証した)。細胞を異なる量のオレイン酸(OA)(0、10及び25μM)と共にインキュベートし、初代肝細胞における2つの遺伝子型間のタンパク質レベルを調べた。全体として、PSD3の量は、オレイン酸の量の増加と共に増加した(
図19B)。しかしながら、各オレイン酸濃度について、PSD3タンパク質発現は、186T対立遺伝子についてホモ接合体の細胞においてより低かった。RNA-Seqによる脂質ホメオスタシスに関与する示差的に発現された遺伝子(DEG)は、トリグリセリド合成及び分泌並びにコレステロール生合成に関与する遺伝子の堅固な減少を示したが、ミトコンドリア生合成に関与するPGC-1αの発現は増加した(
図19C)。
【0197】
実施例2 - FLDに対するSiRNA供与体保護を介したPSD3下方制御
実験1の結果 - ラット肝細胞におけるPSD3下方制御
PSD3の下方制御が細胞内脂肪含有量の減少をもたらすであろうという仮説を、ヒトPSD3における186Tに対応する180Tについて、ラット(ラット肝癌McArdle細胞[McA-RH7777])不死化肝細胞ホモ接合体におけるsiRNAを使用することによって試験した。これらの細胞では、PSD3下方制御は、ORO染色によって測定した場合、細胞内脂質含有量の減少をもたらした(
図10A)。更に、McA-RH7777細胞におけるPSD3下方制御は、デノボトリグリセリド合成として測定される場合(
図10B)及びトリグリセリド合成に関与する遺伝子のmRNA発現として測定される場合(
図11)、より低いトリグリセリド産生をもたらした。更に、アポリポタンパク質-b分泌として測定された超低密度リポタンパク質分泌(
図10C)もスクランブル対照siRNAトランスフェクト細胞と比較して低かった。ベータ酸化として測定された細胞内脂質利用に差は検出されなかった(
図10D)。細胞内脂質蓄積(
図12A)及びトリグリセリド合成を複製して、PSD3下方制御(
図12B)後にPSD3 L186L対立遺伝子変異体を保有するヒト肝癌細胞、Huh7細胞において放射性標識トレーサーを使用することによってデータを確認し、実質的に同一の結果を得た。したがって、内因的に発現されたPSD3トレオニン及びPSD3ロイシンの両方の下方制御は、細胞内脂質レベルの低下をもたらした。
【0198】
PSD3の下方制御がARF6活性化の変化をもたらすかどうかを試験するために、PSD3をHuh7細胞において下方制御し、活性化されたARF6のレベルを、GGA3タンパク質結合ドメイン(PBD)プルダウンアッセイを使用して測定した。ヒト肝癌Huh7細胞に、陰性対照SCR siRNA(AM4611,Thermo Fisher Scientific)、PSD3 siRNA(上記のThermo Fisher Scientificのs23653、s23654及びs23655の混合物)又はARF6 siRNA(s1565、s1566及びs1567の混合物、Thermo Fisher Scientific)を一過性にトランスフェクトした。ヒトARF6 siRNAを以下の表3に更に記載する。
【0199】
【0200】
トランスフェクションの48時間後、細胞溶解物を、内因性活性ARF6(ARF6-GTP)を選択的に単離し、プルダウンするGGA3 PBDアガロースビーズと共にインキュベートした。沈殿後、キットによって提供される抗ARF6抗体を使用する免疫ブロット法によって活性ARF6-GTPが検出された(
図20A)。ARF6 siRNAをトランスフェクトした細胞を陽性対照として使用した。ノックダウン効率が、2
-ΔΔCt法によって分析されるリアルタイム定量PCRによって評価されるように、PSD3について約60%の減少及びARF6について約75%の減少を示した(
図20B)。棒グラフは、GTP-ARF6/カルネキシン(
図20C)として計算された相対的なARF6-GTP(活性)を示す。
【0201】
実験2の結果 - ヒト初代肝細胞におけるPSD3下方制御
この仮説を、FLDを有する個体から得られた肝臓におけるヒト初代肝細胞に対するsiRNA(上と同じ)を使用することによっても試験した。ヒト初代肝細胞を、186L又は186T対立遺伝子のいずれかについてホモ接合性であるドナーから採取し、2D及び3Dで培養した。2D培養のために、コラーゲンコーティングしたプレートに細胞を付着させた後、細胞を、10μMオレイン酸を補充した通常の増殖培地と共にインキュベートし、陰性対照スクランブル(SCR)siRNA又はPSD3 siRNAで48時間トランスフェクトした。
【0202】
細胞内中性脂肪含有量をオイルレッドO(ORO)染色によって可視化し、186L対立遺伝子を有する初代ヒト肝細胞(
図21A)及び186T対立遺伝子を有する初代ヒト肝細胞(
図21B)においてBiopixによって定量した。PSD3下方制御効率の平均は、両方のドナータイプについて2
-ΔΔCt法及びウェスタンブロッティングによって分析したリアルタイム定量PCRによって評価した場合、約80%であった。初代ヒト肝細胞の3D培養のために、スフェロイドを、合計100μLの培地中のトランスフェクションミックスと共に、2000細胞/ウェルを96ウェル丸底フラスコに播種することによって作製した。186T対立遺伝子スフェロイドの生成のために、5nMのFMK-Z-VADを加えてスフェロイド形成を支援した。24時間後、更なる増殖培地を添加して、200μL/ウェルの総体積を達成した。全培地の50%に新鮮培地を48時間毎に補充した。形成の7日後、スフェロイドを回収し、8μM切片をORO染色に供して、細胞内中性脂肪含有量を可視化した。核をDAPIで染色し、ORO染色を、186L対立遺伝子を有する初代ヒト肝細胞スフェロイド(
図21C)及び186T対立遺伝子を有する初代ヒト肝細胞スフェロイド(
図21D)の核の数に対して正規化したImage Jによって定量した。遺伝子ノックダウン効率の平均は、両方のドナータイプについて2-ΔΔCt法によって分析されるリアルタイム定量PCRによって評価した場合、約50~60%であった。細胞生存率の尺度としての細胞ATPレベルは、陰性対照スクランブル群とPSD3 siRNA群との間で安定したままであった。
【0203】
実施例3 - ASOを介したPSD3下方制御によるFLDに対する保護
アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)合成 - 1~3位及び14~16位に2’,4’-拘束された2’-O-エチル(cEt)及びASOの5’末端に結合した3アンテナガラクトサミン(GalNAc)を含有するキメラ16量体ホスホロチオエートASOは、ostergaard et al.(Bioconjug.Chem.26,1451-1455(2015))によって以前に記載されたように、Ionis Pharmaceuticals(Carlsbad,CA)で合成された。一方は、マウスPSD3、PSD3 ASOを標的とする塩基対配列(5’-GTATTAATACTCTCTC-3’;配列番号1)を、及び他方は、既知のマウス遺伝子を標的としない対照ASO(5’-GGCCAATACGCCGTCA-3’’;配列番号19)の2つのASOをこの研究で使用した。
【0204】
動物及びASO処置 - マウス研究のための全ての手順及びプロトコルは、施設内動物管理使用委員会によって承認された。全てのマウスをJackson Laboratory(Bar Harbor,ME)から入手し、12時間/12時間の明/暗サイクルでケージに収容し、試験期間中自由に摂食させた。6週齢の雄C57BL/6マウス(ヒトNP_056125.3及びマウスXP_017168192.1のアラインメントによるヒトPSD3の186Tに対応する147Tのホモ接合体)に、NASH誘導食(D16010101、研究食)を34週間与えた。次いで、マウスから採血し、体重及び血漿ALTレベルに基づいて試験群に無作為化した(n=9~10/群)。マウスをNASH食で維持し、生理食塩水、対照GalNAc ASO(5mg/kg/週)又はPSD3 GalNAc ASO(5mg/kg/週)のいずれかで毎週の皮下注射によって16週間処置した。ASO処置期間中、体重を毎週モニタリングした。最終ASO用量の72時間後、マウスを麻酔し、心臓穿刺によって血液を採取し、組織を採取し、組織学的分析のために液体窒素中で急速凍結するか又はホルマリン中で固定した。血液を3,000×gで遠心分離し、血漿を回収した。血漿及び急速凍結組織を-80℃で保存した。
【0205】
血漿及び肝臓の生化学 - 血漿トランスアミナーゼ(AST、ALT)、総血漿コレステロール、血漿トリグリセリド、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール(LDL-C)及び高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール(HDL-C)を、Olympus臨床分析装置(Beckman Coulter,Brea,CA)を使用して定量した。肝臓トリグリセリド、遊離コレステロール及びコレステリルエステルを、T.P.Carr,C.J.Andresen,L.L.Rudel,Enzymatic determination of triglyceride,free cholesterol,and total cholesterol in tissue lipid extracts.Clin.Biochem.26,39-42(1993)に記載されているように定量した。
【0206】
組織病理学及び画像分析 - ホルマリン固定、脱水及びパラフィン包埋の後、標準的な手順に従って、4μm切片をヘマトキシリン及びエオシン(HE)並びにピクロサイラスレッド(PSR)で染色した。連続切片を、自動化されたVentana Ultraシステム(Ventana Medical Systems,Inc.,Roche Group,USA)においてコラーゲン1a1について免疫組織化学的に染色した(Col1a1,LS-C343921,BioSite,USA)。画像分析は、Visiopharm Integrator Systemソフトウェア(バージョン2018.09、Visiopharm,Horsholm,Denmark)を使用してデジタル画像で行った。HE染色スライド上の非染色領域(脂質)を定量化し、総断面積に関連させた。Kleiner et al(Hepatology 41,1313-1321(2005)によって報告された方法に従って、HE及びPRS染色肝臓切片において脂肪肝、炎症、FLD活性スコア及び線維症段階を評価した。全ての組織学的評価は、ボード認定獣医病理学者が盲検様式で行った。
【0207】
マウスにおける遺伝子発現 - 肝臓RNAを、RNeasyキット(Qiagen,Hilden,Germany)を使用して精製し、定量的PCR分析に供した。リアルタイム蛍光RT-PCR検出(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を使用するApplied Biosystems StepOne Plus RT-PCRシステムを使用して、RNA発現を定量した。プライマープローブセットMm01351099_m1(Thermo Fisher Scientific Waltham,MA)を用いてPSD3 mRNAを定量した。RNA転写物レベルを、Quant-iT RiboGreen RNA試薬(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を使用して総RNAレベルに対して正規化した。
【0208】
脂質生成遺伝子発現のために、RNAeasyキット(Qiagen,Hilden,Germany)を用いてマウス肝臓から全RNAを単離した。各サンプルについて100ngの総RNAを使用して、Quantseq Kit 3’mRNAキット(Lexogen,Vienna,Austria)を使用して3’末端RNAseqライブラリーを作製した。これらのライブラリーをプールし、NextSeq500配列決定装置(Illumina,San Diego,CA)で、サンプル当たり50bpのリード長及び3~500万リードの深さまで配列決定した。擬似マッピングに基づく定量化モード及び自動化されたリブタイプ検出を使用して、Salmon(バージョン0.7.1)を使用して、リードを遺伝子モデルにマッピングした。Salmon(バージョン0.7.1)は、転写物発現の迅速でバイアスを認識した定量化を提供し、遺伝子関連リードをサンプル当たりの全マッピングされたリードで正規化することにより、100万当たりの転写物(TPM)として遺伝子存在量が報告された。
【0209】
結果 - 肝臓PSD3は、3アンテナN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)コンジュゲートアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を投与することによってマウスにおいて下方制御された。C57BL/6マウスに、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)誘発食を合計50週間与え、最後の16週間にわたり、マウスの群をPSD3 ASO、対照ASO又は生理食塩水で処置した。PSD3 ASO処理は、肝臓PSD3 mRNA発現レベルを著しく低下させ(-98%)(
図13A)、肝臓重量、総肝臓トリグリセリド含有量及び血漿ALTレベルを低下させた(
図13B~
図13D)。PSD3 ASO処理はマウスの体重に影響を及ぼさなかった(
図14A)。更に、PSD3 ASO処理は、総肝臓遊離コレステロール、肝臓コレステリルエステル、血漿アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、総コレステロール及び総LDL-Cレベルを低下させたが、血漿トリグリセリド又は高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール(HDL-C)レベルを変化させなかった(
図14B~
図14H)。組織学的に、PSD3 ASO処理は、肝臓コラーゲン1a1(Col1a1)タンパク質及び肝臓脂肪滴レベルを低下させた(
図13E~
図13F)。
【0210】
肝疾患の重症度を順序回帰分析によって評価し、PSD3 ASO処理が脂肪症及び炎症の重症度及びFLD活性スコア(NAS)を減少させたが、肝線維症スコアは有意に変化しなかった(
図13G)ことを見出した。トリグリセリド合成に関与する遺伝子の発現レベルを評価し、McA-RH7777肝細胞におけるインビトロ実験と一致することが見出され(
図11)、NASH誘導食を与えたマウスにおけるPSD3下方制御は、デノボ脂質生成に関与する遺伝子の発現を減少させた(
図15)。
【0211】
本明細書に引用される全ての参考文献、例えば特許、特許出願、論文、教科書等及びこれらに引用される参考文献は、それらが既に引用されていない限り、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】