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特表2023-542036IgE介在性炎症性障害を治療するためのIgEフラグメントを含む免疫原性産物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】IgE介在性炎症性障害を治療するためのIgEフラグメントを含む免疫原性産物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20230927BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230927BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230927BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230927BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20230927BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230927BHJP
   C07K 14/34 20060101ALN20230927BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20230927BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61P29/00 ZNA
A61P37/08
A61P11/06
C07K16/00
C12N15/13
C07K14/34
C12N15/31
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518159
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(85)【翻訳文提出日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2021075732
(87)【国際公開番号】W WO2022058571
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】20306047.0
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】63/079,686
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.プルロニック
3.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】513140880
【氏名又は名称】ネオヴァクス
(71)【出願人】
【識別番号】511074305
【氏名又は名称】インセルム(インスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ リシェルシェ メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】523098278
【氏名又は名称】インスティチュート パスツール
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】リーバー,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ブルーンス,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】コンデ ガルシア,エヴァ
(72)【発明者】
【氏名】バツコヴィッチ,マリヤ
(72)【発明者】
【氏名】セラ,ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】グラウアード-フォーゲル,ジェラルディン
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラン,ロマン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085BB11
4C085CC21
4C085DD56
4C085EE01
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4H045BA10
4H045BA72
4H045CA11
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA83
4H045EA20
4H045FA50
(57)【要約】
本発明は、担体タンパク質とコンジュゲートされた少なくとも1つの免疫グロブリンまたはそのフラグメントを含む免疫原性産物に関し、少なくとも1つの免疫グロブリンは、IgEであり、好ましくはIgEフラグメントは、IgE Cε3ドメインを含み、担体タンパク質は、好ましくはCRM197である。本発明はさらに、炎症性障害、特にアレルギー性障害を治療するための上記免疫原性産物の使用に関する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体タンパク質とコンジュゲートされた少なくとも1つの免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントを含む、免疫原性産物であって、前記少なくとも1つの免疫グロブリンが、IgE、好ましくはヒトIgEであり、前記IgEフラグメントが、IgE Cε3ドメインを含み、前記担体タンパク質が、好ましくはCRM197である、免疫原性産物。
【請求項2】
前記免疫グロブリンフラグメントが、前記IgECε3ドメインおよびCε4ドメインの一部または全体を含む、請求項1に記載の免疫原性産物。
【請求項3】
前記免疫グロブリンフラグメントが、IgE Cε2ドメイン、Cε3ドメインおよびCε4ドメインの一部または全部を含む、請求項1または請求項2に記載の免疫原性産物。
【請求項4】
前記IgEまたはそのフラグメントが、G335C変異を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性産物。
【請求項5】
前記IgEフラグメントが、配列番号7を含むかまたは配列番号7からなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の免疫原性産物。
【請求項6】
前記IgEフラグメントが、少なくとも1つのグリコシル化を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の免疫原性産物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫原性産物を含む、組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫原性産物と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫原性産物と少なくとも1つのアジュバントとを含む、ワクチン組成物。
【請求項10】
エマルジョンである、請求項7~9のいずれか一項に記載の組成物、医薬組成物またはワクチン組成物。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫原性産物を生産するための方法であって、
a)NHS-エステル、好ましくはN-[γ-マレイミドブチリルオキシ]-スクシンイミドエステル(sGMBS)を含むヘテロ二官能性架橋剤と前記免疫グロブリンまたはそのフラグメントを接触させ、それによりNHS-エステルを含むヘテロ二官能性架橋剤と前記免疫グロブリンまたはそのフラグメントの間の複合体、好ましくはsGMBS-免疫グロブリンまたはそのフラグメント複合体を得るステップと;
b)NHS-エステルを含む前記ヘテロ二官能性架橋剤と前記担体の間の複合体、好ましくは担体-SATA複合体を生成するためにNHS-エステル、好ましくはN-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート(SATA)を含むヘテロ二官能性架橋剤と前記担体タンパク質を接触させるステップと;
c)ステップ(b)で得られたNHS-エステルを含む前記ヘテロ二官能性架橋剤と前記担体の間の前記複合体、好ましくは前記担体-SATA複合体とステップ(a)で得られたNHS-エステルを含むヘテロ二官能性架橋剤と前記免疫グロブリンまたはそのフラグメントの間の前記複合体、好ましくは前記sGMBS-免疫グロブリンまたはそのフラグメント複合体を接触させるステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
医薬品としての使用のための請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫原性産物。
【請求項13】
炎症性障害を治療するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫原性産物または請求項7~10のいずれか一項に記載の組成物、医薬組成物もしくはワクチン組成物であって、好ましくは前記炎症性障害が、異常なIgE発現または活性に関連する、請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫原性産物または請求項7~10のいずれか一項に記載の組成物、医薬組成物もしくはワクチン組成物。
【請求項14】
前記炎症性障害が、喘息、アレルギー状態(例えば、食物アレルギー、毒物アレルギー、動物に対するアレルギー、薬物アレルギー、高IgE症候群、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎およびアレルギー性腸胃炎など)、アナフィラキシー、アトピー性疾患(例えば、蕁麻疹(慢性特発性蕁麻疹および慢性自発性蕁麻疹を含む)、湿疹など)、水疱性類天疱瘡、呼吸器疾患(喘息、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、アレルギー性気管支肺真菌症など)、鼻ポリープ症および気道炎症を伴う他の状態(例えば、好酸球増加症、線維症、および嚢胞性線維症などの過剰な粘液産生、全身性硬化症(SSc)など);炎症性および/または自己免疫障害または状態、胃腸障害または状態(例えば、炎症性腸疾患(IBD)、および好酸球性食道炎(EE)、および好酸球媒介性胃腸疾患、潰瘍性大腸炎、およびクローン病など);全身性エリテマトーデス;マスト細胞症およびマスト細胞活性化症候群(MCAS)からなる群から選択される、請求項13に記載の使用のための免疫原性産物または組成物。
【請求項15】
前記炎症性障害が、アレルギー、アナフィラキシー、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、鼻ポリープ症から選択され、好ましくは前記炎症性障害が、食物アレルギーまたは毒物アレルギーである、請求項13または請求項14に記載の使用のための免疫原性産物または組成物。
【請求項16】
特定の抗原に対してアレルギーのある対象の脱感作を誘導するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫原性産物または請求項7~10のいずれか一項に記載の組成物、医薬組成物もしくはワクチン組成物であって、前記免疫原性産物または組成物および前記特定の抗原が、前記アレルギー対象に投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫原性産物または請求項7~10のいずれか一項に記載の組成物、医薬組成物もしくはワクチン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫原性産物、および異常なIgEの発現または活性に関連する障害、特に、食物アレルギー、毒アレルギー、およびアナフィラキシーなどのIgE介在性アレルギーを治療するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー疾患の有病率は、過去数年間で劇的に増加しており、特に先進国では、30%を超える小児がアレルギーに罹患している。アレルギーの最も劇的な臨床症状は、致死に至り得る急性全身反応である、アナフィラキシーである。免疫グロブリンE(IgE)は、アレルギー反応およびアナフィラキシーの媒介において中心的な役割を果たす。アレルゲンへの曝露時に、そのようなアレルゲンは、組織マスト細胞および血液好塩基球の表面のそれらの高親和性受容体FcεRIに結合されたアレルゲン特異的IgEによって認識され、それは、これらの細胞の脱顆粒、およびヒスタミンを含む、以前に形成されたメディエーターおよび新たに合成されたメディエーターの両方の放出を促進する。このため、アレルギーの臨床診断は主に、アレルゲン特異的IgEの測定結果に基づく。
【0003】
アレルギーのほとんどの治療法は、対症療法(主に抗ヒスタミンおよびコルチコステロイド)である。しかし近年、いくつかの組換えモノクローナル抗体(mAb)が、アレルギーの治療用に開発されている。ヒト化抗IgEmAbであるオマリズマブは、アレルギー性喘息および慢性自然蕁麻疹の治療に臨床的利益を示す。利用可能な臨床データは、このmAbが、食物アレルギーを含む他のタイプのアレルギーの治療にも利益を有し得ることを示唆している。しかし、オマリズマブ(または任意の他のmAb)の使用はまず第一に、高コストおよび繰り返し注射を行う必要により、およびまた抗薬物抗体(ADA)または他の副作用の出現の潜在的なリスクにより制限される。主な医学的制限は、オマリズマブで治療された場合にアナフィラキシーのリスクがあり得る、IgEレベルが700IU/mlを超える患者である。オマリズマブよりもIgEに対する親和性が顕著に高くかつおそらく低減された副作用を有する、次世代抗IgE mAbであるリゲリズマブが開発されたが、重度の喘息患者においてオマリズマブを上回る有効性の改善を示さなかった(NCT02075008)。オマリズマブおよびリゲリズマブは、IgE上でそれらが結合するエピトープ、およびFcεRI結合IgEまたはIgEの産生を妨害するそれらの能力について異なる。
【0004】
したがって、IgEはアレルギーおよびアナフィラキシーの治療の有望な治療標的ではあるが、長期的な治療効果を得るために、IgEを遮断するための現在の戦略を改善する必要があることは明らかである。
【0005】
キノイドと呼ばれる治療用コンジュゲートワクチンは、異常に高度に産生された標的に対する中和抗体を誘導して、標的レベルをベースラインに戻すまたはそれより低下させるために、能動免疫戦略において使用される。
【0006】
免疫原性担体に連結されたIgEの抗原性ペプチドを含む免疫原の生成を含む、このような治療用コンジュゲートをベースにしたいくつかのアプローチが、IgE関連障害の予防および治療のために開発されている(WO2011/154878,WO2010/067286,WO99/67293,Peng et al.,2007,Spiegelberg et al.,1987)。しかし、これまでのところ、これらのコンジュゲート(IgEの小さなペプチドのみを含む)はいずれも、治療的妥当性が立証されていない。特に、第I相臨床試験中に得られた実験結果は、IgEに由来しかつ担体に連結されたペプチドが、対象の大多数において血清IgEの顕著な低下をもたらさなかったことを示した。したがって、それを必要とする患者において、IgEに対する中和抗体の誘導に有効な化合物が依然として必要とされている。
【0007】
本発明において、出願人は、ジフテリア毒素の非毒性変異体CRM197に連結されたヒトIgEのCε3ドメインを含む抗ヒトIgEキノイドを生成した。このワクチンは、IgEおよびFcεRIの両方についてヒト化したマウス(IgE/FcεRIヒト化マウス)において、いかなる悪影響も与えることなく、長期にわたる抗ヒトIgE中和抗体応答を誘導した。抗IgEワクチン接種は、循環IgEレベルと、血中好塩基球表面で高親和性受容体FcεRIに結合されたIgEレベルの両方を低下させ、IgE/FcεRIヒト化マウスにおいて、IgE介在性アナフィラキシーを完全に防いだ。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、担体タンパク質とコンジュゲートされた少なくとも1つの免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントを含む免疫原性産物に関し、少なくとも1つの免疫グロブリンは、IgE、好ましくはヒトIgEであり、IgEフラグメントは、IgE Cε3ドメインを含み、担体タンパク質は好ましくは、CRM197である。
【0009】
一実施形態では、免疫グロブリンフラグメントは、IgE Cε3およびCε4ドメインの一部または全体を含む。
【0010】
一実施形態では、免疫グロブリンフラグメントは、IgE Cε2、Cε3およびCε4ドメインの一部または全体を含む。
【0011】
一実施形態では、IgEまたはそのフラグメントは、G335C変異を含む。
【0012】
一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号7を含むかまたは配列番号7からなる。
【0013】
一実施形態では、IgEフラグメントは、少なくとも1つのグリコシル化を含む。
【0014】
本発明の別の目的は、上記の免疫原性産物を含む組成物である。
【0015】
本発明の別の目的は、上記の免疫原性産物および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物である。
【0016】
本発明の別の目的は、上記の免疫原性産物および少なくとも1つのアジュバントを含むワクチン組成物である。
【0017】
一実施形態では、上記の組成物、医薬組成物またはワクチン組成物は、エマルジョンである。
【0018】
本発明はさらに、上記の免疫原性産物を産生するための方法に関し、本方法は、
a)免疫グロブリンまたはそのフラグメントを、NHS-エステル、好ましくはN-[γ-マレイミドブチリルオキシ]-スクシンイミドエステル(sGMBS)を含むヘテロ二官能性架橋剤と接触させ、それによりNHS-エステルを含むヘテロ二官能性架橋剤と免疫グロブリンまたはそのフラグメント、好ましくはsGMBS-免疫グロブリンまたはそのフラグメント複合体の間の複合体を得るステップと;
b)担体タンパク質を、NHS-エステル、好ましくはN-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート(SATA)を含むヘテロ二官能性架橋剤と接触させて、NHS-エステルを含むヘテロ二官能性架橋剤と担体の間の複合体、好ましくは担体-SATA複合体を生成するステップと;
c)ステップ(a)で得られたNHS-エステルを含むヘテロ二官能性架橋剤と免疫グロブリンまたはそのフラグメント、好ましくはsGMBS-免疫グロブリンまたはそのフラグメントの間の複合体を、ステップ(b)で得られたNHS-エステルを含むヘテロ二官能性架橋剤と担体の間の複合体、好ましくは、担体-SATA複合体と接触させるステップ、
を含む。
【0019】
本発明の別の目的は、医薬品としての使用のための本明細書に記載の免疫原性産物である。
【0020】
本発明はさらに、炎症性障害を治療するための、本明細書に記載の免疫原性産物または組成物、医薬組成物またはワクチン組成物に関し、好ましくは炎症性障害は、異常なIgEの発現または活性に関連する。
【0021】
一実施形態では、炎症性障害は、喘息、アレルギー状態(例えば、食物アレルギー、毒物アレルギー、動物に対するアレルギー、薬物アレルギー、高IgE症候群、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎およびアレルギー性腸胃炎など)、アナフィラキシー、アトピー性疾患(例えば、蕁麻疹(慢性特発性蕁麻疹および慢性自発性蕁麻疹を含む)、湿疹など)、水疱性類天疱瘡、呼吸器疾患(喘息、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、アレルギー性気管支肺真菌症など)、鼻ポリープ症および気道炎症を伴う他の状態(例えば、好酸球増加症、線維症、および嚢胞性線維症を含む過剰な粘液産生、全身性硬化症(SSc)など);炎症性および/または自己免疫障害または状態、胃腸障害または状態(例えば、炎症性腸疾患(IBD)、および好酸球性食道炎(EE)、および好酸球媒介性胃腸疾患、潰瘍性大腸炎、およびクローン病など);全身性エリテマトーデス;マスト細胞症およびマスト細胞活性化症候群(MCAS)からなる群から選択される。
【0022】
一実施形態では、炎症性障害は、アレルギー、アナフィラキシー、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、鼻ポリープ症から選択され、好ましくは上記炎症性障害は、食物アレルギーまたは毒物アレルギーである。
【0023】
本発明はさらに、特定の抗原に対してアレルギーのある対象の脱感作を誘導するための、上記の免疫原性産物または組成物、医薬組成物またはワクチン組成物に関し、上記免疫原性産物または組成物および上記特定の抗原は、アレルギーの対象に投与される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
本発明において、以下の用語は、以下の意味を有する:
本明細書で使用されるとき、「約」という用語は、量、時間的持続時間などの測定可能な値を指す場合、そのような変動が開示された方法を実施するために適切であるように、指定された値から±20%、場合によっては±10%、または場合によっては±5%、または場合によっては、±1%、または場合によっては±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0025】
本明細書において使用される場合、「アジュバント」は、本発明の免疫原性産物の免疫原性を増強する物質である。アジュバントは多くの場合、免疫応答を高めるために与えられ、当業者に周知である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「担体タンパク質分子」という用語は、対象(例えば、ヒト、ネコ、イヌ、またはウマ)に注射される場合に免疫原性である、少なくとも15、30、または50アミノ酸長のタンパク質またはペプチドを指し、これは、ヘテロ複合体を形成するために、少なくとも1つのIgEまたはそのフラグメント(好ましくはIgEフラグメントは、IgECε3ドメインを含む)に部分的に共有結合により会合されると、少なくとも1つのIgEまたはそのフラグメントの多数の抗原がBリンパ球に提示されることを可能にし、かつIgEまたはそのフラグメントに対して向けられた抗体のその後の産生を可能にする。
【0027】
本明細書で使用される「免疫応答」という用語は、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、および上記細胞または肝臓によって産生される巨大分子(抗体、サイトカインおよび補体を含む)の作用を指す。
【0028】
本明細書で使用される「免疫原性産物」という用語は、上記免疫原性産物が投与される、対象、好ましくは哺乳動物において、体液性免疫応答を含む免疫応答、すなわち、例えば、内因性IgEの生物学的活性などの特性を中和する抗体の産生、を誘導する、担体タンパク質に連結された少なくとも1つのIgEまたはそのフラグメントを指す。
【0029】
本明細書で使用される「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトに投与されたときに有害反応、アレルギー反応または他の不都合な反応を生じない、賦形剤を指す。賦形剤としては、任意のあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。薬学的に許容される担体または賦形剤はしたがって、非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、封入材料、または任意のタイプの製剤補助剤を指し得る。ヒト投与の場合、調製物は、FDAまたはEMAなどの規制当局が要求する滅菌性、発熱性、一般的な安全性および純度の基準を満たす必要がある。
【0030】
本明細書で使用される「組換えタンパク質」という用語は、組換えDNA技術を使用して生成されるタンパク質(例えば、IgEまたはそのフラグメントまたは担体タンパク質)、例えば、原核細胞中で(バクテリオファージまたはプラスミド発現系を使用して)または真核細胞中で(例えば、酵母、昆虫または哺乳動物発現系など)発現されるタンパク質を指す。この用語はまた、タンパク質(例えば、IgEもしくはそのフラグメントまたは担体タンパク質)をコードするDNA分子の合成によって生成されるタンパク質(例えば、IgEもしくはそのフラグメントまたは担体タンパク質)を意味すると解釈されるものとし、DNA分子は、タンパク質(例えば、IgEもしくはそのフラグメントまたは担体タンパク質)、またはタンパク質(例えば、IgEもしくはそのフラグメントまたは担体タンパク質)を特定するアミノ酸配列を発現し、DNAまたはアミノ酸配列は、当技術分野で利用可能で周知の組換えDNAまたはアミノ酸配列技術を使用して得られる。
【0031】
本明細書で使用する「対象」という用語は、その中で免疫応答が誘発され得る生物(例えば、哺乳動物、特にヒト、霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジなど)を含むことを意図する。好ましくは、対象は、ヒトである。一実施形態では、対象は、「患者」、すなわち、医療を受けることを待っているもしくは医療を受けている、または医療処置の対象であった、もしくは対象である、もしくは対象となる、例えば、炎症性障害などの標的とされる疾患または状態の発症について監視される、温血動物、好ましくはヒトであり得る。一実施形態では、対象は、成人(例えば、18歳を超える対象)である。別の実施形態では、対象は、小児(例えば、18歳未満の対象)である。一実施形態では、対象は、雄である。別の実施形態では、対象は、雌である。一実施形態では、対象は、炎症性障害に罹患している、炎症性障害を有すると好ましくは診断されている。一実施形態では、対象は、炎症性障害を発症するリスクがある。危険因子の例としては、これらに限定されないが、遺伝的素因、または炎症性障害の家族歴が挙げられる。
【0032】
本明細書で使用される「治療的有効量」という用語は、特定の生物学的結果を達成するのに有効な本明細書に記載の免疫原性産物の量を指す。したがって、「治療的有効量」という用語は、標的に重大な負または有害な副作用を引き起こすことなく、以下を目的とする免疫原性産物のレベルまたは量を意味する;
(1)標的とされる疾患または状態の発症を遅延させるまたは予防する;(2)標的とされる疾患または状態の1つ以上の症状の進行、重大化、または悪化を遅らせる、または停止させる;(3)標的とされる疾患または状態の症状の改善をもたらす;(4)標的とされる疾患もしくは状態の重症度もしくは発生率を低下させる;または(5)標的とされる疾患または状態を治癒させる。治療的有効量は、予防的または防止的作用のために、標的とされる疾患または状態の発症の前に投与され得る。あるいはまたはさらに、治療的有効量は、治療作用のために、標的とされる疾患または状態の開始後に投与され得る。
【0033】
本明細書で使用されるとき「治療」または「治療すること」とは、治療的治療および予防的または防止的措置の両方を指し、目的は、標的とされる疾患または状態を防止するかまたは減速させる(軽減する)ことである。治療を必要とするものは、すでにその状態を有するもの、その状態を有する傾向にあるもの、またはその状態が予防される必要があるものを含む。対象は、本明細書に記載の免疫原性産物の治療的量を受けた後、対象が以下の1つ以上において観察可能なおよび/または測定可能な改善を示す場合、疾患または状態について、うまく「治療され」る:病原性細胞の数の減少;病原性である全細胞の割合の低下;特定の状態に関連する症状の1つ以上のある程度の軽減;罹患率および死亡率の低下;ならびに/または生活の質の問題の改善。治療の奏功および状態の改善を評価するための上記のパラメータは、医師によく知られているルーチン手順によって容易に測定可能である。
【0034】
詳細な説明
本発明は、少なくとも1つの担体タンパク質とコンジュゲートされた少なくとも1つの免疫グロブリンまたは免疫グロブリンフラグメントを含む免疫原性産物に関し、少なくとも1つの免疫グロブリンは、IgEである。
【0035】
出願人は、本発明の免疫原性産物の投与が動物モデルにおいて抗IgE中和抗体を誘導し、それによりIgE介在性炎症性障害を治療することを実証した。
【0036】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、出願人は、本発明の免疫原性産物が、当技術分野で記載される担体タンパク質にコンジュゲートされたペプチドと比較して、ポリクローナル抗IgE中和抗体(すなわち、IgE配列上の異なるエピトープに向けられた抗体)を誘導する利点を示すことを示唆する。
【0037】
一実施形態では、IgEフラグメントは、IgE Cε3ドメインを含むか、またはIgE Cε3ドメインからなる。
【0038】
担体タンパク質の例としては、これらに限定されないが、CRM197、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)、オボアルブミン、ウシ血清アルブミン(BSA)、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、コレラトキソイド、外膜小胞中の髄膜炎菌外膜タンパク質、無莢膜型ヘモフィルスインフルエンザ外膜タンパク質、シュードモナスエルギノーザ毒素A、およびウイルス様粒子(VLP)が挙げられる。
【0039】
一実施形態では、担体タンパク質は、CRM197である。
【0040】
CRM197は、配列番号1の配列を有するジフテリア毒素の非毒性変異体であり、一塩基置換(52位におけるグリシンからグルタミン酸塩への変異)により毒性活性を有しない。
【0041】
配列番号1
GADDVVDSSKSFVMENFSSYHGTKPGYVDSIQKGIQKPKSGTQGNYDDDWKEFYSTDNKYDAAGYSVDNENPLSGKAGGVVKVTYPGLTKVLALKVDNAETIKKELGLSLTEPLMEQVGTEEFIKRFGDGASRVVLSLPFAEGSSSVEYINNWEQAKALSVELEINFETRGKRGQDAMYEYMAQACAGNRVRRSVGSSLSCINLDWDVIRDKTKTKIESLKEHGPIKNKMSESPNKTVSEEKAKQYLEEFHQTALEHPELSELKTVTGTNPVFAGANYAAWAVNVAQVIDSETADNLEKTTAALSILPGIGSVMGIADGAVHHNTEEIVAQSIALSSLMVAQAIPLVGELVDIGFAAYNFVESIINLFQVVHNSYNRPAYSPGHKTQPFLHDGYAVSWNTVEDSIIRTGFQGESGHDIKITAENTPLPIAGVLLPTIPGKLDVNKSKTHISVNGRKIRMRCRAIDGDVTFCRPKSPVYVGNGVHANLHVAFHRSSSEKIHSNEISSDSIGVLGYQKTVDHTKVNSKLSLFFEIKS
【0042】
一実施形態では、CRM197は、2018年にHickeyによって記載されたとおり(Hickey et al.,2018)、自家系(C.diphtheriae)または異種系(大腸菌およびP. fluorescens)において当技術分野で公知の従来の方法によって得られ得る。例えば、組換えCRM197は、CRM197をコードする核酸配列(例えば、遺伝子)を含む発現ベクターを含む細胞を培養すること、封入体を採取すること、およびCRM197を精製することによって得ることができる。CRM197はまた、ATCCで購入した細菌株(ATCC39255)由来のジフテリア菌の培養物から抽出できる。一実施形態では、CRM197は市販されており、例えばReagent Proteins(San Diego,CA,US)から購入できる。
【0043】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物は、CRM197のバリアントを含み、バリアントは、配列番号1と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%のまたはそれより大きい同一性を示す。一実施形態では、CRM197の上記バリアントは、CRM197の52位でのグリシンからグルタミン酸塩への変異であり、したがって非毒性である。
【0044】
「同一性」または「同一である」とは、2つ以上の核酸配列または2つ以上のポリペプチドの配列間の関係で使用される場合、それぞれ、2つ以上の核酸残基またはアミノ酸残基のストリング間の一致の数によって決定される核酸配列またはポリペプチド間の配列関連性の程度を指す。「同一性」は、特定の数学的モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によって指定されるギャップを有するアライメント(存在する場合)によるより小さい2つ以上の配列の間の同一の一致の割合(パーセント)を測定する。関連する核酸配列またはポリペプチドの同一性は、既知の方法によって容易に計算できる。このような方法としては、これらに限定されないが、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M.Stockton Press,New York,1991;およびCarillo et al.,SIAM J.Applied Math.48,1073(1988)に記載のものが挙げられる。同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間で最大の一致を与えるように設計される。同一性を決定する方法は、公開されているコンピュータプログラムに記述されている。2つの配列間の同一性を決定するための好ましいコンピュータプログラム方法としては、ClustalO(SieversF.,etal.,2011)、GCGプログラムパッケージ、例えば、GAP(Devereux et al.,Nucl.Acid.Res.\2,387(1984);Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,Wis.)、BLASTP、BLASTNおよびFASTA(Altschul et al.,J.MoI.Biol.215,403-410(1990))などが挙げられる。BLASTXプログラムは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)および他の供給源(BLAST Manual,Altschul et al.NCB/NLM/NIH Bethesda,Md.20894;Altschul et al.,上記)から公的に入手可能である。周知のSmith Watermanアルゴリズムを使用して、同一性を決定することもできる。
【0045】
一実施形態では、CRM197は、完全長CRM197である。
【0046】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物は、例えば、配列番号1由来の少なくとも約50、100、150、200、250、300、350、400、450、または500個のアミノ酸(好ましくは連続アミノ酸)を含むフラグメントなどの、CRM197のフラグメントを含む。
【0047】
IgEは、1つの可変ドメインならびにCε1、Cε2、Cε3、およびCε4と名付けられた4つの定常ドメインを含む免疫グロブリンである。IgEは、異なるドメイン間にリンカーをさらに含む。
【0048】
一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEの少なくとも1つ(例えば、1、2、3または4つ)の定常ドメインを含む。一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEの可変ドメインを含まない。一実施形態では、IgEまたはそのフラグメントは、完全長IgEを含まないか、またはそれからならない。
【0049】
一実施形態では、IgEフラグメントは、完全長IgE定常領域である(すなわち、それは、Cε1、Cε2、Cε3およびCε4ドメインならびにすべてのリンカー領域を含む)。
【0050】
一実施形態では、IgEフラグメントは、例えば、それが由来するIgEの少なくとも約100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、または425個のアミノ酸(好ましくは、連続アミノ酸)を含むIgE定常領域のフラグメントなどの、IgE定常領域のフラグメントである。
【0051】
一実施形態では、このフラグメントは、IgE定常領域の少なくとも1つの特異的エピトープを含む。
【0052】
一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε3ドメインを含むか、またはそれからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε3ドメインの少なくとも一部を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、フラグメントは、IgE Cε3ドメインの少なくとも1つの特異的エピトープを含む。
【0053】
一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε2ドメインおよびCε3ドメインを含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε2ドメインおよびCε3ドメインの少なくとも一部を含むか、またはそれらからなる。
【0054】
一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε2ドメインおよびCε3ドメイン、ならびにCε2とCε3の間のリンカー領域を含むかまたはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε2ドメインおよびCε3ドメインの少なくとも一部、およびCε2とCε3の間のリンカー領域を含むか、またはそれらからなる。
【0055】
一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε2ドメインおよびCε3ドメイン、ならびにCε2とCε3の間のリンカー領域、Cε1とCε2の間のリンカー領域、およびCε3とCε4の間のリンカー領域の少なくとも1つを含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε2ドメインおよびCε3ドメイン、ならびにCε2とCε3の間のリンカー領域、Cε1とCε2の間のリンカー領域、およびCε3とCε4の間のリンカー領域を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε2ドメインおよびCε3ドメインの少なくとも一部と、Cε2とCε3の間のリンカー領域、Cε1とCε2の間のリンカー領域、およびCε3とCε4の間のリンカー領域の少なくとも1つを含むか、またはそれらからなる。
【0056】
一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε3ドメインおよびCε4ドメインを含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε3ドメインおよびCε4ドメインの少なくとも一部を含むか、またはそれらからなる。
【0057】
一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε3ドメインおよびCε4ドメイン、ならびにCε3とCε4の間のリンカー領域を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε3ドメインおよびCε4ドメインの少なくとも一部、およびCε3とCε4の間のリンカー領域を含むか、またはそれらからなる。
【0058】
一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε3ドメインおよびCε4ドメイン、およびCε2とCε3の間のリンカー領域、Cε3とCε4の間のリンカー領域、およびCε4後のリンカー領域の少なくとも1つを含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε3ドメインおよびCε4ドメイン、Cε2とCε3の間のリンカー領域、Cε3とCε4の間のリンカー領域、およびCε4後のリンカー領域を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε3ドメインおよびCε4ドメインの少なくとも一部、Cε2とCε3の間のリンカー領域、Cε3とCε4の間のリンカー領域、およびCε4後のリンカー領域の少なくとも1つを含むか、またはそれらからなる。
【0059】
一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε2ドメイン、Cε3ドメインおよびCε4ドメインを含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε2ドメイン、Cε3ドメインおよびCε4ドメインの少なくとも一部を含むか、またはそれらからなる。
【0060】
一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε2ドメイン、Cε3ドメインおよびCε4ドメイン、ならびにCε2とCε3の間およびCε3とCε4の間のリンカー領域を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε2ドメイン、Cε3ドメインおよびCε4ドメインの少なくとも一部と、Cε2とCε3の間およびCε3とCε4の間のリンカー領域を含むか、またはそれらからなる。
【0061】
一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε2ドメイン、Cε3ドメインおよびCε4ドメイン、ならびにCε1とCε2の間のリンカー領域、Cε2とCε3との間のリンカー領域、Cε3とCε4の間のリンカー領域の少なくとも1つおよびCε4後のリンカー領域を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε2ドメイン、Cε3ドメインおよびCε4ドメイン、ならびにCε1とCε2の間のリンカー領域、Cε2とCε3の間のリンカー領域、Cε3とCε4の間のリンカー領域およびCε4後のリンカー領域を含むか、またはそれらからなる。
【0062】
一実施形態では、IgEフラグメントは、IgEのCε2ドメイン、Cε3ドメインおよびCε4ドメインの少なくとも一部、ならびにCε1とCε2の間のリンカー領域、Cε2とCε3の間のリンカー領域、Cε3とCε4の間のリンカー領域の少なくとも1つおよびCε4後のリンカー領域を含むか、またはそれらからなる。
【0063】
一実施形態では、IgEまたはIgEフラグメントは、組換え体である。組換えIgEまたはそのフラグメントは、IgEまたはそのフラグメントをコードする核酸配列を使用する当技術分野で知られる従来の方法により得ることができる。
【0064】
例えば、組換えIgEは、IgEをコードする核酸配列(例えば、遺伝子)を含む発現ベクターを含む細胞を培養すること、封入体を採取すること、およびIgEを精製することによって得ることができる。したがって、組換えIgEフラグメントは、IgEフラグメントをコードする核酸配列を含む発現ベクターを含む細胞を培養すること、封入体を採取すること、およびIgEフラグメントを精製することによって得ることができる。
【0065】
一実施形態では、組換えIgEが得られ、この組換えIgEのフラグメントは、例えばタンパク質分解により回収される。
【0066】
本発明の一実施形態では、IgEまたはそのフラグメントは、哺乳動物に由来する。
【0067】
一実施形態では、IgEまたはそのフラグメントは、哺乳動物IgEまたはそのフラグメントのバリアントであり、バリアントは、哺乳動物IgEまたはそれに由来するフラグメントと少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%のまたはそれより大きい同一性を示す。
【0068】
IgEは、グリコシル化の部位を含む免疫グロブリンである。一実施形態では、本発明の免疫原性産物に含まれるIgEまたはそのフラグメントは、グリコシル化される。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、出願人は、グリコシル化IgE(またはそのフラグメント)を含む免疫原性産物の投与が、ネイティブ免疫グロブリンに対応する、IgEのグリコシル化形態に特異的な抗IgE抗体の産生を誘導し得ることを示唆する。
【0069】
さらに、IgEは、シアリル化され得る。hIgEのシアリル化は、例えば、IgEエフェクター機能に関与し得る。一実施形態では、本発明の免疫原性産物に含まれるIgEまたはそのフラグメントは、少なくとも1つのシアル酸残基を含む。別の実施形態では、本発明の免疫原性産物に含まれるIgEまたはそのフラグメントは、いかなるシアル酸残基も含まない。
【0070】
一実施形態では、IgEは、ヒトIgE、好ましくは組換えヒトIgEである。ヒトIgE定常領域は、配列番号2(UniProt ID:P01854)の配列を有し、ここで、6位~103位、112位~210位、214位~318位、および324位~423位由来のアミノ酸は、それぞれドメインCε1、Cε2、Cε3およびCε4に対応する。1~5、104~111、211~213、319~323および424~428由来のアミノ酸は、それぞれ、Cε1の前、Cε1とCε2、Cε2とCε3、Cε3とCε4の間、およびCε4の後のリンカー領域に対応する。
【0071】
配列番号2
ASTQSPSVFPLTRCCKNIPSNATSVTLGCLATGYFPEPVMVTWDTGSLNGTTMTLPATTLTLSGHYATISLLTVSGAWAKQMFTCRVAHTPSSTDWVDNKTFSVCSRDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCADSNPRGVSAYLSRPSPFDLFIRKSPTITCLVVDLAPSKGTVNLTWSRASGKPVNHSTRKEEKQRNGTLTVTSTLPVGTRDWIEGETYQCRVTHPHLPRALMRSTTKTSGPRAAPEVYAFATPEWPGSRDKRTLACLIQNFMPEDISVQWLHNEVQLPDARHSTTQPRKTKGSGFFVFSRLEVTRAEWEQKDEFICRAVHEAASPSQTVQRAVSVNPGK
【0072】
一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号2のフラグメントであり、フラグメントは、配列番号2の少なくとも約100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、または425個のアミノ酸(好ましくは連続アミノ酸)を含む。
【0073】
一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号2のバリアントであり、バリアントは、配列番号2と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%のまたはそれより大きい同一性を示す。
【0074】
一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgE定常ドメイン、好ましくはヒトIgE Cε3ドメインの少なくとも1つの特異的エピトープを含む。
【0075】
一実施形態では、IgEフラグメントは、完全長ヒトIgE定常領域である。
【0076】
一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε3ドメインを含むか、またはそれからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε3ドメインの少なくとも一部を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、フラグメントは、ヒトIgECε3ドメインの少なくとも1つの特異的エピトープを含む。
【0077】
一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε2ドメインおよびCε3ドメインを含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε2およびCε3ドメインの少なくとも一部を含むか、またはそれらからなる。
【0078】
一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε2ドメインおよびCε3ドメイン、ならびにCε2とCε3の間のリンカー領域を含むかまたはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε2ドメインおよびCε3ドメインの少なくとも一部、およびCε2とCε3の間のリンカー領域を含むか、またはそれらからなる。
【0079】
一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε2ドメインおよびCε3ドメイン、ならびにCε2とCε3の間のリンカー領域、Cε1とCε2の間のリンカー領域、およびCε3とCε4の間のリンカー領域の少なくとも1つを含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε2ドメインおよびCε3ドメイン、ならびにCε2とCε3の間のリンカー領域、Cε1とCε2の間のリンカー領域、およびCε3とCε4の間のリンカー領域を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε2ドメインおよびCε3ドメインの少なくとも一部と、Cε2とCε3の間のリンカー領域、Cε1とCε2の間のリンカー領域、およびCε3とCε4の間のリンカー領域の少なくとも1つとを含むか、またはそれらからなる。
【0080】
一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε3ドメインおよびCε4ドメインを含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε3ドメインおよびCε4ドメインの少なくとも一部を含むか、またはそれらからなる。
【0081】
一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε3ドメインおよびCε4ドメイン、ならびにCε3とCε4の間のリンカー領域を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε3ドメインおよびCε4ドメインの少なくとも一部、およびCε3とCε4の間のリンカー領域を含むか、またはそれらからなる。
【0082】
一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε3ドメインおよびCε4ドメイン、およびCε2とCε3の間のリンカー領域、Cε3とCε4の間のリンカー領域、およびCε4後のリンカー領域の少なくとも1つを含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε3ドメインおよびCε4ドメイン、Cε2とCε3の間のリンカー領域、Cε3とCε4の間のリンカー領域、およびCε4後のリンカー領域を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε3ドメインおよびCε4ドメインの少なくとも一部、Cε2とCε3の間のリンカー領域、Cε3とCε4の間のリンカー領域、およびCε4後のリンカー領域の少なくとも1つを含むか、またはそれらからなる。
【0083】
一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε2ドメイン、Cε3ドメインおよびCε4ドメインを含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε2ドメイン、Cε3ドメインおよびCε4ドメインの少なくとも一部を含むか、またはそれらからなる。
【0084】
一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε2ドメイン、Cε3ドメインおよびCε4ドメイン、ならびにCε2とCε3の間およびCε3とCε4の間のリンカー領域を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε2ドメイン、Cε3ドメインおよびCε4ドメインの少なくとも一部と、Cε2とCε3の間およびCε3とCε4の間のリンカー領域を含むか、またはそれらからなる。
【0085】
一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε2ドメイン、Cε3ドメインおよびCε4ドメイン、ならびにCε1とCε2の間のリンカー領域、Cε2とCε3の間のリンカー領域、Cε3とCε4の間のリンカー領域の少なくとも1つおよびCε4後のリンカー領域を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε2ドメイン、Cε3ドメインおよびCε4ドメイン、ならびにCε1とCε2の間のリンカー領域、Cε2とCε3の間のリンカー領域、Cε3とCε4の間のリンカー領域およびCε4後のリンカー領域を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、IgEフラグメントは、ヒトIgEのCε2ドメイン、Cε3ドメインおよびCε4ドメインの少なくとも一部、ならびにCε1とCε2の間のリンカー領域、Cε2とCε3の間のリンカー領域、Cε3とCε4の間のリンカー領域の少なくとも1つおよびCε4後のリンカー領域を含むか、またはそれらからなる。
【0086】
一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号3の配列を有するヒトIgEのCε3定常ドメインを含むか、またはそれからなる。
【0087】
配列番号3
PRGVSAYLSRPSPFDLFIRKSPTITCLVVDLAPSKGTVNLTWSRASGKPVNHSTRKEEKQRNGTLTVTSTLPVGTRDWIEGETYQCRVTHPHLPRALMRSTTKTS
【0088】
一実施形態では、IgEフラグメントは、例えば、配列番号3の少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100個のアミノ酸(好ましくは、連続アミノ酸)を含むヒトIgEのフラグメントなどの、ヒトIgE Cε3ドメインのフラグメントである。
【0089】
一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号3のバリアントであり、上記バリアントは、配列番号3と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%のまたはそれより大きい同一性を示す。
【0090】
一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号3中の3位に変異(グリシン残基のシステイン残基による置換)を含むヒトIgEのCε3定常ドメインを含むか、またはそれからなる。この変異は、変異G335Cと呼ばれ得る(Wurzburg et al.,2012)。したがって、一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号8を含むかまたは配列番号8からなる。
【0091】
配列番号8
PRCVSAYLSRPSPFDLFIRKSPTITCLVVDLAPSKGTVNLTWSRASGKPVNHSTRKEEKQRNGTLTVTSTLPVGTRDWIEGETYQCRVTHPHLPRALMRSTTKTS
【0092】
一実施形態では、IgEフラグメントは、例えば、配列番号8の少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100個のアミノ酸(好ましくは、連続アミノ酸)を含むヒトIgEのフラグメントなどの、配列番号8のフラグメントである。
【0093】
一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号8のバリアントであり、上記バリアントは、配列番号8と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%のまたはそれより大きい同一性を示す。
【0094】
一実施形態では、IgEフラグメントは、Cε3およびCε4定常ドメイン、ならびに任意によりCε3とCε4の間のリンカー領域を含むヒトIgEのフラグメントを含むか、またはそれからなる。Cε3およびCε4定常ドメインならびにCε3とCε4の間のリンカー領域を含むヒトIgEのフラグメントの例は、配列番号4の配列を有する。
【0095】
配列番号4
PRGVSAYLSRPSPFDLFIRKSPTITCLVVDLAPSKGTVNLTWSRASGKPVNHSTRKEEKQRNGTLTVTSTLPVGTRDWIEGETYQCRVTHPHLPRALMRSTTKTSGPRAAPEVYAFATPEWPGSRDKRTLACLIQNFMPEDISVQWLHNEVQLPDARHSTTQPRKTKGSGFFVFSRLEVTRAEWEQKDEFICRAVHEAASPSQTVQRAVS
【0096】
一実施形態では、IgEフラグメントは、例えば、配列番号4の少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200または205個のアミノ酸(好ましくは、連続アミノ酸)を含むヒトIgEのフラグメントなどの、配列番号4のフラグメントである。
【0097】
一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号4のバリアントであり、上記バリアントは、配列番号4と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%のまたはそれより大きい同一性を示す。
【0098】
一実施形態では、IgEフラグメントは、Cε3およびCε4定常ドメインおよび任意により配列番号4中の3位に変異(システイン残基を有するグリシン残基の置換)をさらに含むCε3とCε4の間のリンカー領域を含むヒトIgEのフラグメントを含むか、またはそのフラグメントからなる。Cε3およびCε4定常ドメインならびにCε3とCε4の間のリンカー領域を含むそのようなIgEフラグメントの例は、配列番号9を含むまたは配列番号9からなるIgEフラグメントを含む。
【0099】
配列番号9
PRCVSAYLSRPSPFDLFIRKSPTITCLVVDLAPSKGTVNLTWSRASGKPVNHSTRKEEKQRNGTLTVTSTLPVGTRDWIEGETYQCRVTHPHLPRALMRSTTKTSGPRAAPEVYAFATPEWPGSRDKRTLACLIQNFMPEDISVQWLHNEVQLPDARHSTTQPRKTKGSGFFVFSRLEVTRAEWEQKDEFICRAVHEAASPSQTVQRAVS
【0100】
一実施形態では、IgEフラグメントは、例えば、配列番号9の少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200または205個のアミノ酸(好ましくは、連続アミノ酸)を含むヒトIgEのフラグメントなどの、配列番号9のフラグメントである。
【0101】
一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号9のバリアントであり、上記バリアントは、配列番号9と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%のまたはそれより大きい同一性を示す。
【0102】
一実施形態では、IgEフラグメントは、Cε2およびCε3定常ドメイン、ならびに任意によりCε2とCε3の間のリンカー領域を含むヒトIgEのフラグメントを含むか、またはそれからなる。Cε2およびCε3定常ドメインならびにCε2とCε3の間のリンカー領域を含むヒトIgEのフラグメントの例は、配列番号5の配列を有する。
【0103】
配列番号5
PTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCADSNPRGVSAYLSRPSPFDLFIRKSPTITCLVVDLAPSKGTVNLTWSRASGKPVNHSTRKEEKQRNGTLTVTSTLPVGTRDWIEGETYQCRVTHPHLPRALMRSTTKTS
【0104】
一実施形態では、IgEフラグメントは、例えば、配列番号5の少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200または205個のアミノ酸(好ましくは、連続アミノ酸)を含むヒトIgEのフラグメントなどの、配列番号5のフラグメントである。
【0105】
一実施形態では、免疫原性産物は、配列番号5のバリアントであり、上記バリアントは、配列番号5と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%のまたはそれより大きい同一性を示す。
【0106】
一実施形態では、IgEフラグメントは、Cε2およびCε3定常ドメインおよび配列番号5中の105位に変異(システイン残基を有するグリシン残基の置換)をさらに含むCε2とCε3の間のリンカー領域を含むヒトIgEのフラグメントを含むか、またはそのフラグメントからなる。Cε2およびCε3定常ドメインならびにCε2とCε3の間のリンカー領域を含むそのようなIgEフラグメントの例は、配列番号10を含むまたは配列番号10からなるIgEフラグメントを含まれる。
【0107】
配列番号10
PTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCADSNPRCVSAYLSRPSPFDLFIRKSPTITCLVVDLAPSKGTVNLTWSRASGKPVNHSTRKEEKQRNGTLTVTSTLPVGTRDWIEGETYQCRVTHPHLPRALMRSTTKTS
【0108】
一実施形態では、IgEフラグメントは、例えば、配列番号10の少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200または205個のアミノ酸(好ましくは、連続アミノ酸)を含むヒトIgEのフラグメントなどの、配列番号10のフラグメントである。
【0109】
一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号10のバリアントであり、上記バリアントは、配列番号10と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%のまたはそれより大きい同一性を示す。
【0110】
一実施形態では、IgEフラグメントは、Cε2、Cε3およびCε4定常ドメイン、ならびに任意によりCε2とCε3の間、およびCε3とCε4の間のリンカー領域を含むヒトIgEのフラグメントを含むか、またはそのフラグメントからなる。Cε2、Cε3およびCε4定常ドメインならびにCε2とCε3の間、およびCε3とCε4の間のリンカー領域を含むヒトIgEのフラグメントの例は、配列番号6の配列を有する。
【0111】
配列番号6
PTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCADSNPRGVSAYLSRPSPFDLFIRKSPTITCLVVDLAPSKGTVNLTWSRASGKPVNHSTRKEEKQRNGTLTVTSTLPVGTRDWIEGETYQCRVTHPHLPRALMRSTTKTSGPRAAPEVYAFATPEWPGSRDKRTLACLIQNFMPEDISVQWLHNEVQLPDARHSTTQPRKTKGSGFFVFSRLEVTRAEWEQKDEFICRAVHEAASPSQTVQRAVS
【0112】
一実施形態では、IgEフラグメントは、例えば、配列番号6の少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、270、275、280、285、290、295、300、305または310個のアミノ酸(好ましくは、連続アミノ酸)を含むヒトIgEのフラグメントなどの、配列番号6のフラグメントである。
【0113】
一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号6のバリアントであり、上記バリアントは、配列番号6と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%のまたはそれより大きい同一性を示す。
【0114】
一実施形態では、IgEフラグメントは、Cε2、Cε3およびCε4定常ドメインならびにCε2とCε3の間、およびCε3とCε4の間のリンカー領域を含み、配列番号6中の105位に変異(システイン残基によるグリシン残基の置換)をさらに含む、ヒトIgEのフラグメントを含むか、またはそれからなる。
【0115】
Cε2、Cε3およびCε4定常ドメインならびにCε2とCε3の間およびCε3とCε4の間のリンカー領域を含むこのようなIgEフラグメントの例としては、配列番号11を含むまたは配列番号11からなるフラグメントが挙げられる。
【0116】
配列番号11
PTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCADSNPRCVSAYLSRPSPFDLFIRKSPTITCLVVDLAPSKGTVNLTWSRASGKPVNHSTRKEEKQRNGTLTVTSTLPVGTRDWIEGETYQCRVTHPHLPRALMRSTTKTSGPRAAPEVYAFATPEWPGSRDKRTLACLIQNFMPEDISVQWLHNEVQLPDARHSTTQPRKTKGSGFFVFSRLEVTRAEWEQKDEFICRAVHEAASPSQTVQRAVS
【0117】
一実施形態では、IgEフラグメントは、例えば、配列番号11の少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、270、275、280、285、290、295、300、305または310個のアミノ酸(好ましくは、連続アミノ酸)を含むヒトIgEのフラグメントなどの、配列番号11のフラグメントである。
【0118】
一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号11のバリアントであり、上記バリアントは、配列番号11と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%のまたはそれより大きい同一性を示す。
【0119】
一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号12を含むかまたは配列番号12からなる。
【0120】
配列番号12
ADSNPRGVSAYLSRPSPFDLFIRKSPTITCLVVDLAPSKGTVNLTWSRASGKPVNHSTRKEEKQRNGTLTVTSTLPVGTRDWIEGETYQCRVTHPHLPRALMRSTTKTSGPRAAPEVYAFATPEWPGSRDKRTLACLIQNFMPEDISVQWLHNEVQLPDARHSTTQPRKTKGSGFFVFSRLEVTRAEWEQKDEFICRAVHEAASPSQTVQRAVSVNPGK
【0121】
一実施形態では、免疫原性産物は、配列番号12のバリアントであり、上記バリアントは、配列番号12と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%のまたはそれより大きい同一性を示す。
【0122】
一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号7を含むかまたは配列番号7からなる。
【0123】
配列番号7
ADSNPRCVSAYLSRPSPFDLFIRKSPTITCLVVDLAPSKGTVNLTWSRASGKPVNHSTRKEEKQRNGTLTVTSTLPVGTRDWIEGETYQCRVTHPHLPRALMRSTTKTSGPRAAPEVYAFATPEWPGSRDKRTLACLIQNFMPEDISVQWLHNEVQLPDARHSTTQPRKTKGSGFFVFSRLEVTRAEWEQKDEFICRAVHEAASPSQTVQRAVSVNPGK
【0124】
一実施形態では、免疫原性産物は、配列番号7のバリアントであり、上記バリアントは、配列番号7と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%のまたはそれより大きい同一性を示す。
【0125】
ヒトIgEは、iCε1ドメイン中の3つのグリコシル化の部位(N140、N168、およびN218)、Cε2ドメイン中の1つのグリコシル化の部位(N265)およびCε3ドメイン中の3つのグリコシル化の部位(N371、N383、およびN394)を含む、7つのグリコシル化の部位を含む免疫グロブリンである。当技術分野において、N394残基上のグリコシル化は、タンパク質の折り畳み、FcεRIとの安定なIgE相互作用、およびアナフィラキシーの開始にとって重要であり得ることが示唆された。
【0126】
一実施形態では、グリコシル化の7つの部位は、配列番号2のhIgEの定常領域の配列中において、それぞれ、残基N21、N49、N99(Cε1ドメイン中)、N146(Cε2ドメイン中)、およびN252、N264、N275(Cε3ドメイン中)に対応する。
【0127】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物に含まれるhIgEまたはそのフラグメントは、少なくとも1つのグリコシル化を含む。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、出願人は、そのような免疫原性産物の投与がネイティブグリコシル化hIgEに対する抗IgE抗体を誘導し得ることを示唆する。
【0128】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物に含まれるhIgEまたはそのフラグメントは、少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6または7つ)のグリコシル化を含む。
【0129】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物に含まれるhIgEまたはそのフラグメントは、N394グリコシル化を含む。一実施形態では、本発明の免疫原性産物に含まれるhIgEまたはそのフラグメントは、N275グリコシル化を含む(アミノ酸が配列番号2でのように番号付けされる場合)。
【0130】
さらに、hIgEのシアリル化は、IgEエフェクター機能に関与し得る。
【0131】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物に含まれるhIgEまたはそのフラグメントは、少なくとも1つのシアル酸残基を含む。一実施形態では、本発明の免疫原性産物に含まれるhIgEまたはそのフラグメントは、いかなるシアル酸残基も含まない。
【0132】
本発明の一実施形態では、IgEは、ウマIgE、好ましくは組換えウマIgEである。ウマIgE定常領域は、配列番号13の配列を有し、ここで1~93位、94~200位、201~307位および308~419位のアミノ酸は、それぞれドメインCε1、Cε2、Cε3およびCε4に対応する。
【0133】
配列番号13
VSKQAPLIFPLAACCKDTKTTNITLGCLVKGYFPGAWDAGPLNPSTMTFPAVFDQTSGLYTTISRVVASGKWAKQKFTCGVVHSQETFNKTFNACIVTFTPPTVKLFHSSCDPGGDSHTTIQLLCLISDYTPGDIDIVWLIEGQKVDEQFPTQASMKQEGSWPPTHSELNINQGQWASENTYTCQVTYKDMIFNQARKCTESDPPGVSVYLSPPSPLDLYVSKTPKITCLVVDLANVQGLSLNWSRESGEPLQKHTLATSEQFNKTFSVTSTLPVDTTDWIEGETYKCTVSHPDLPREVVRSIAKAPGKRLSPEVYVFLPPEEDQSSKDKVTLTCLIQNFFPADISVQWRRNNVLIQTDQQATTRPQKANGPDPAFFVFSRLEVSRAEWEQKNKFACKVVHEALSQRTLQKEVSKDPGK
【0134】
一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号13のフラグメントであり、上記フラグメントは、配列番号13の少なくとも約100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、または415個のアミノ酸(好ましくは連続アミノ酸)を含む。
【0135】
一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号13のバリアントであり、上記バリアントは、配列番号13と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%のまたはそれより大きい同一性を示す。
【0136】
本発明の一実施形態では、IgEは、イヌIgE、好ましくは組換えイヌIgEである。イヌIgE定常領域は、配列番号14の配列を有する。
【0137】
配列番号14
TSQDLSVFPLASCCKDNIASTSVTLGCLVTGYLPMSTTVTWDTGSLNKNVTTFPTTFHETYGLHSIVSQVTASGKWAKQRFTCSVAHAESTAINKTFSACALNFIPPTVKLFHSSCNPVGDTHTTIQLLCLISGYVPGDMEVIWLVDGQKATNIFPYTAPGTKEGNVTSTHSELNITQGEWVSQKTYTCQVTYQGFTFKDEARKCSESDPRGVTSYLSPPSPLDLYVHKAPKITCLVVDLATMEGMNLTWYRESKEPVNPGPLNKKDHFNGTITVTSTLPVNTNDWIEGETYYCRVTHPHLPKDIVRSIAKAPGKRAPPDVYLFLPPEEEQGTKDRVTLTCLIQNFFPADISVQWLRNDSPIQTDQYTTTGPHKVSGSRPAFFIFSRLEVSRVDWEQKNKFTCQVVHEALSGSRILQKWVSKTPGK
【0138】
一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号14のフラグメントであり、上記フラグメントは、配列番号14の少なくとも約100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、または425個のアミノ酸(好ましくは連続アミノ酸)を含む。
【0139】
一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号14のバリアントであり、上記バリアントは、配列番号14と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%のまたはそれより大きい同一性を示す。
【0140】
本発明の一実施形態では、IgEは、ネコIgE、好ましくは組換えネコIgEである。ネコIgE定常領域は、配列番号15の配列を有する。
【0141】
配列番号15
AYISSGGNTDYADSVKGRFSISRDNAKNTLYLQMTSLKTEDTATYYCARGTGVIPDYWGQGALVTVSSTSIQAPLVFPLATCCKGTIATAPSVTLGCLVTGYFPMPVTVTWDARSLNKSVVTLPATLQENSGLYTTTSHVTVSGEWAKQKFTCSVAHAESPTINKTVSACTMNFIPPTVKLFHSSCNPLGDTGSTIQLLCLISGYVPGDMEVTWLVDGQKATNIFPYTAPGKQEGKVTSTHSELNITQGEWVSQKTYTCQVTYQGFTFEDHARKCTESDPRGVSTYLSPPSPLDLYVHKSPKITCLVVDLANTDGMILTWSRENGESVHPDPMVKKTQYNGTITVTSTLPVDATDWVEGETYQCKVTHPDLPKDIVRSIAKAPGRRFPPEVYVFLPPEGEPKTKDKVTLTCLIQNFFPPDISVQWLHNDSPVRTEQQATTWPHKATGPSPAFFVFSRLEVSRADWEQRDVFTCQVVHEALPGFRTLKKSVSKNPGK
【0142】
一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号15のフラグメントであり、上記フラグメントは、配列番号15の少なくとも約100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475または490個のアミノ酸(好ましくは連続アミノ酸)を含む。
【0143】
一実施形態では、IgEフラグメントは、配列番号15のバリアントであり、上記バリアントは、配列番号15と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%のまたはそれより大きい同一性を示す。
【0144】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物は、約16:1~約1:4、好ましくは約8:1~約1:2の範囲の、より好ましくは約1:1のIgE(またはそのフラグメント):CRM197のモル比で、担体タンパク質、好ましくはCRM197に連結されたIgEまたはそのフラグメントを含む。
【0145】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物は、担体タンパク質、好ましくはCRM197に連結され、かつ抗IgE抗体により認識されるIgEまたはIgEフラグメントを含む。
【0146】
免疫原性産物が、担体タンパク質、好ましくはCRM197に連結され、かつ抗IgE抗体により認識されるIgEまたはIgEフラグメントを含むことは、当技術分野において公知である従来の方法により検証され得る。そのような方法の例は、例えばビオチンで標識された検出抗体、ストレプトアビジンHRP増幅システムおよびo-フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)基質溶液を使用する、サンドイッチELISA抗IgEまたはそのフラグメント/担体タンパク質である。
【0147】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物は、担体タンパク質、好ましくはCRM197に連結されたIgEまたはそのフラグメントを含み、かつ免疫原性であり、これは、免疫原性産物が、試験Aの条件でのin vivoにおいて抗IgE抗体を誘導できることを意味する。一実施形態において、本発明の免疫原性産物は、例えば、試験Aの条件において、in vivoでポリクローナル抗IgE抗体を誘導できる。
【0148】
試験Aは、以下の方法に従って実施される:
免疫原性産物の全タンパク質の特定量(例えば、Bradfordタンパク質アッセイにより決定される)を、マウス(3週齢以上)に28日間に3回注射する。一実施形態では、試験Aは、約10~30μgの範囲の用量の全タンパク質を投与することを含む。血清サンプルを、免疫化前(免疫前血清サンプル)および免疫化後(試験血清サンプル)に得る。ELISA抗IgEを、以下に説明するように実施する。
【0149】
簡潔に言えば、ヒトIgEまたはCRM197を、コーティング緩衝液(炭酸塩/重炭酸塩緩衝液pH9.6)中にてそれぞれ5または1μg/mLで、4℃でコートし、一晩インキュベートする。各ステップ後、プレートを、0.005%のPBSTween20で3回洗浄する。BSA1%PBSでブロッキング後、血清サンプルを、添加し、2倍連続希釈を、2000dil-1で開始して行った(PBS、BSA1%中で希釈される)。37℃で90分間インキュベーション後、結合した抗体を、1/10000にてHRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgG(Bethyl Laboratories)で検出し、プレートを、OPD基質を使用して明らかにする。反応を、1M HSOで停止し、吸光度をその後、490nmで記録する。サンプルを、希釈2000dil-1で始めて1024000dil-1まで分析する。
【0150】
一実施形態では、試験血清サンプルを含むウェルの光学密度(490nm)が、免疫前血清サンプルを含むウェルの光学密度よりも少なくとも約2倍、好ましくは少なくとも約5倍高い場合、免疫原性産物は、免疫原性と見なされ、これは、それがin vivoにおいて抗IgE抗体を誘導したことを意味する。
【0151】
この試験では、力価は、アッセイにおいてODmaxの50%から対応する免疫前サンプルのODを差し引いた値に達する、血清の希釈として定義され得る。この計算モードは、よく知られているセロコンバージョン力価を見るよりもはるかに厳密であり得るが、より堅牢な分析およびより少ない偽陽性を提供し得る。力価は、血清希釈係数(dil-1)として表され得る。
【0152】
一実施形態では、試験Aにおいて、≧1000dil-1、好ましくは≧2000dil-1の力価値は、本発明の免疫原性産物が、IgEに対する結合抗体の産生を可能にすることを示す。
【0153】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物は、CRM197に連結されたIgEまたはそのフラグメントを含み、かつ以下に引用する試験Bの条件でIgE活性を中和できる。本発明により、試験Bを、免疫原性産物で免疫されたマウスから得た血清の中和能力を評価するために実施する。
【0154】
試験Bは、次の方法に従って実施される:
hFcεRIを発現する骨髄由来培養マスト細胞(BMCMC)を、6週間IL-3(10ng/ml)含有培地中でIgE/FcεRIヒト化マウスからの骨髄細胞を培養することにより得る、その時点で細胞は>95% c-KithFcεRIαであった。本発明の免疫原性産物でのワクチン接種時に産生される抗hIgE抗体の中和能力を評価するために、BMCMCを、本発明の免疫原性産物またはCRM197単独でワクチン接種されたマウスからの血漿の希釈物とインキュベートする。次に、FITC標識hIgEを加え、BCMMC上のhFcεRIに対するFITC-hIgEの結合を、フローサイトメトリーにより評価する。
【0155】
結果は、IgE-FITC陽性BMCMC(hIgE結合の読み取りとして使用される)のパーセンテージとして表され得る。NC50を、横座標軸上で50%のIgE-FITC結合をもたらす血漿希釈を内挿することにより、この試験で決定できる。
【0156】
一実施形態では、試験Bにおいて、100dil-1以上、好ましくは200dil-1以上のNC50値は、本発明の免疫原性産物が、IgEに対する中和抗体の産生を可能にすることを示す。一実施形態では、本発明の免疫原性産物の投与により誘導されるIgEに対する中和抗体は、ポリクローナルである。
【0157】
本発明はさらに、担体タンパク質、好ましくはCRM197と連結された少なくとも1つのIgEまたはそのフラグメントを含む免疫原性産物を産生するための方法に関し、好ましくはIgEフラグメントは、IgECε3ドメインを含み、本方法は、以下のステップ:
a)少なくとも1つのIgEまたはそのフラグメントを、NHS-エステル、好ましくはN-[γ-マレイミドブチリルオキシ]-スクシンイミドエステル(sGMBS)を含むヘテロ二官能性架橋剤と接触させ、それによりNHS-エステルを含むヘテロ二官能性架橋剤と免疫グロブリンまたはそのフラグメント、好ましくはsGMBS-免疫グロブリンまたはそのフラグメント複合体の間の複合体を得るステップと;
b)NHS-エステル、好ましくはN-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート(SATA)を含むヘテロ二官能性架橋剤と担体タンパク質を接触させて、NHS-エステルを含むヘテロ二官能性架橋剤と担体との間の複合体、好ましくは担体-SATA複合体を生成するステップと;
c)ステップ(a)で得られたNHS-エステルを含むヘテロ二官能性架橋剤と免疫グロブリンまたはそのフラグメントの間の複合体、好ましくはsGMBS-IgE複合体を、ステップ(b)で得られたNHS-エステルを含むヘテロ二官能性架橋剤と担体の間の複合体、好ましくは、担体-SATA複合体と接触させるステップ、
を含む。
【0158】
一実施形態では、ステップa)において、反応緩衝液は、液体、好ましくは水溶液である。
【0159】
一実施形態では、ステップa)において、反応緩衝液は、約6~約8の範囲、好ましくは約6.5~約7.5の範囲、より好ましくは約pH7.2のpHである。
【0160】
一実施形態では、ステップa)において、IgEまたはそのフラグメントは、約0.1~約10mg/mL、好ましくは約0.5~約5mg/mLの範囲、より好ましくは約1mg/mLの濃度で溶液中に存在する。
【0161】
一実施形態では、ステップa)において、NHS-エステル、好ましくはsGMBSを含有するヘテロ二官能性架橋剤は、1mM~100mM、好ましくは5mM~50mMの範囲、より好ましくは10mMの濃度にて反応緩衝液中で調製される。
【0162】
一実施形態では、ステップa)において、IgEまたはそのフラグメントと、NHS-エステル、好ましくはsGMBSを含むヘテロ二官能性架橋剤を、約1:120~約1:1、好ましくは約1:50~約1:10、より好ましくは約1:40~約1:20の範囲のIgE(またはそのフラグメント):NHS-エステル、好ましくはsGMBSを含むヘテロ二官能性架橋剤のモル比で混合する。
【0163】
一実施形態では、ステップa)において、少なくとも1つのIgEまたはそのフラグメントを、約30分~約120分、好ましくは約45分~約90分間、より好ましくは少なくとも60分間、NHS-エステル、好ましくはsGMBSを含むヘテロ二官能性架橋剤とインキュベートする。
【0164】
一実施形態では、ステップa)において、少なくとも1つのIgEまたはそのフラグメントと、NHS-エステル、好ましくはsGMBSを含むヘテロ二官能性架橋剤の接触ステップは、約15℃~約35℃の範囲、好ましくは約18℃~約27℃の温度で実施される。
【0165】
一実施形態では、ステップa)に続き、反応混合物中に存在する約10kDa未満、約5kDa未満、または約3kDa未満の分子量を有する小化合物を、除去する。これらの小化合物は主に、NHS-エステル(およびNHS-エステル加水分解関連の副生成物)、好ましくはsGMBSを含む過剰なヘテロ二官能性架橋剤、および反応しなかった過剰な分子を含む。そのような除去は、当技術分野で周知の方法によって行われてよい(そのような方法の例については、実施例の部分を参照)。
【0166】
一実施形態では、ステップa)の最後に、タンパク質含有量を、Bradfordアッセイまたは当技術分野で周知の任意の方法により決定する。
【0167】
一実施形態では、ステップb)において、反応緩衝液は、液体、好ましくは水溶液である。
【0168】
一実施形態では、ステップb)において、反応緩衝液は、約6~約8の範囲、好ましくは約6.5~約7.5の範囲、より好ましくはpH約7.2である。
【0169】
一実施形態では、ステップb)において、担体タンパク質、好ましくはCRM197は、約0.2~約20mg/mL、好ましくは約1~約10mg/mL、より好ましくは約2mg/mLの範囲の濃度で溶液中に存在する。
【0170】
一実施形態では、ステップb)において、NHS-エステル、好ましくはSATAを含有するヘテロ二官能性架橋剤は、好ましくはDMSO中、20mM~約500mM、好ましくは約50mM~約200mMの範囲の濃度、より好ましくは約100mMの濃度で溶液中に存在する。
【0171】
一実施形態では、ステップb)において、担体タンパク質、好ましくはCRM197、およびNHS-エステル、好ましくはSATAを含むヘテロ二官能性架橋剤を、約1:320~約1:10、好ましくは約1:160~約1:40の範囲の担体:NHS-エステル、好ましくはSATAを含むヘテロ二官能性架橋剤のモル比で混合する。
【0172】
一実施形態では、ステップb)において、担体タンパク質、好ましくはCRM197を、約10分~約60分、好ましくは約15分~約45分の範囲の時間、より好ましくは30分の間、NHS-エステル、好ましくはSATAを含むヘテロ二官能性架橋剤とインキュベートする。
【0173】
一実施形態では、接触ステップb)は、約15℃~約35℃、好ましくは約18℃~約27℃の範囲の温度で実施される。
【0174】
一実施形態では、ステップb)に続き、反応混合物中に存在する約10kDa未満、約5kDa未満、または約3kDa未満の分子量を有する小化合物を、除去する。これらの小化合物は主に、NHS-エステル(およびNHS-エステル加水分解関連の副生成物)、好ましくはSATA、DMSOを含む過剰なヘテロ二官能性架橋剤、および反応しなかった過剰な分子を含む。このような除去は、当技術分野で周知の方法により行われてよい。
【0175】
一実施形態では、ステップb)の後、担体タンパク質、好ましくはCRM197と、NHS-エステル、好ましくはSATAを含むヘテロ二官能性架橋剤の複合体を、脱保護して、保護基(NHS-エステル、好ましくはSATAを含むヘテロ二官能性架橋剤)を官能基に変換させる。一実施形態では、上記脱保護ステップは、反応混合物中に存在する約10kDa未満、約5kDa未満、または約3kDa未満の分子量を有する小化合物を除去するステップの後に実施される。
【0176】
分子を脱保護するための方法の例は、当技術分野で周知であり、これらに限定されないが、ヒドロキシルアミンの使用、メトキシルアミンの使用、または塩基(例えば、NaOH、KOH、KCO、MeONa、NHを含むメタノール)の使用を含む。
【0177】
一実施形態では、脱保護ステップは、好ましくは約10mM~約500mM、好ましくは約20mM~約100mMの範囲、より好ましくは約50mMの最終濃度での、反応混合物へのヒドロキシルアミン溶液の添加を含む。
【0178】
一実施形態では、ヒドロキシルアミン溶液を、約60分~約180分、好ましくは約90分~約150分の範囲の時間、より好ましくは120分間反応混合物とインキュベートする。
【0179】
一実施形態では、ヒドロキシルアミン溶液を、120分間50mMで添加する。
【0180】
一実施形態では、反応混合物とのヒドロキシルアミン溶液のインキュベーションは、約15℃~約35℃、好ましくは約18℃~約27℃の範囲の温度で実施される。
【0181】
一実施形態では、脱保護ステップに続き、反応混合物中に存在する約10kDa未満、5kDaまたは3kDaの分子量を有する小化合物を、除去する。これらの小化合物は、主に過剰なヒドロキシルアミンと、前のステップからの潜在的な残留SATAを含む。このような除去は、当技術分野で周知の方法により行われてよい。
【0182】
一実施形態では、ステップb)の最後に、タンパク質含有量を、Bradfordアッセイによりまたは当技術分野で周知の任意の方法により決定する。
【0183】
次いで、本発明の方法のステップc)において、ステップa)の最終生成物を、ステップb)の最終生成物と接触させ、それにより本発明の免疫原性産物を生成する。
【0184】
一実施形態では、ステップc)において、IgEまたはIgEフラグメントを含むステップa)の最終生成物と、担体タンパク質、好ましくはCRM197を含むステップb)の最終生成物を、、約8:1~約1:8、好ましくは約4:1~約1:4の範囲の、より好ましくは約1:1のIgEまたはそのフラグメント:担体タンパク質、好ましくはCRM197のモル比で接触させる。
【0185】
一実施形態では、ステップc)において、IgEまたはIgEフラグメントを含むステップa)の最終生成物と、担体タンパク質、好ましくはCRM197を含むステップb)の最終生成物を、約0.01~約5mg/mL、好ましくは約0.1~約1mg/mLの範囲、より好ましくは約0.4mg/mLの最終タンパク質濃度で接触させる。
【0186】
一実施形態では、ステップc)において、反応緩衝液は、液体、好ましくは水溶液である。
【0187】
一実施形態では、ステップc)において、反応緩衝液は、約6~約8の範囲の、好ましくは約6.5~約7.5の範囲のpH、より好ましくはpH約7.2である。
【0188】
ステップc)の一実施形態では、接触ステップは、約2時間~約26時間、好ましくは約10~18時間、より好ましくは約12~約18時間の範囲の時間の間実施される。
【0189】
一実施形態では、インキュベーションステップc)は、約2℃~10℃、好ましくは約3℃~約7℃、より好ましくは約4℃の範囲の温度で実施される。
【0190】
一実施形態では、ステップb)に続き、反応混合物中に存在する約100kDa未満、約50kDa未満、約25kDa未満、約10kDa未満、約5kDa未満または約3kDa未満の分子量を有する小化合物を、除去する。これらの小化合物は主に、反応しなかった過剰な分子を含む。このような除去は、当技術分野で周知の方法により行われてよい。
【0191】
一実施形態では、ステップc)で得られた免疫原性産物を、濃縮する。免疫原性産物の濃縮は、当技術分野で知られている任意の技術、例えば、滅菌濾過と任意に組み合わされてよい遠心限外濾過法などによって、当業者により行われてよい。
【0192】
一実施形態では、ステップc)で得られ、任意に濃縮された免疫原性産物は、凍結乾燥される。
【0193】
本発明はさらに、本発明の方法により得られ得る免疫原性産物に関する。
【0194】
本発明はさらに、上記の少なくとも1つの免疫原性産物を含む、上記の少なくとも1つの免疫原性産物から本質的になる、または上記の少なくとも1つの免疫原性産物からなる組成物に関する。一実施形態では、上記組成物は、免疫原性組成物と呼ばれることがある。
【0195】
本発明はさらに、上記の少なくとも1つの免疫原性産物、および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む、それらから本質的になる、またはそれらからなる医薬組成物に関する。
【0196】
本発明の医薬組成物に使用され得る薬学的に許容される賦形剤としては、これらに限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリエチレングリコール、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
【0197】
本発明はさらに、上記の少なくとも1つの免疫原性産物を含む、上記の少なくとも1つの免疫原性産物から本質的になる、または上記の少なくとも1つの免疫原性産物からなる医薬品に関する。
【0198】
本明細書で使用される場合、「本質的にからなる」という用語は、組成物、医薬組成物または医薬品に関して、本発明の少なくとも1つの免疫原性産物が、上記の組成物、医薬組成物または医薬品内で生物学的活性を有する唯一の治療剤または剤であることを意味する。
【0199】
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物または医薬品は、担体タンパク質、好ましくはCRM197と連結されたIgEまたはIgEフラグメントを含む免疫原性産物を含むか、または本質的にそれらからなる。
【0200】
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物、または医薬品は、ワクチン組成物である。本発明の一実施形態では、本発明のワクチン組成物は、少なくとも1種のアジュバントを含む。
【0201】
本発明はさらに、本発明の組成物、医薬組成物、医薬品またはワクチンの製剤に関し、組成物、医薬組成物、医薬品またはワクチンは、アジュバント添加される。
【0202】
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物、医薬品またはワクチンはしたがって、1種以上のアジュバントを含む。
【0203】
本発明において使用され得る好適なアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
(1)アルミニウム塩(ミョウバン)、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなど;
(2)水中油型エマルジョン製剤(他の特異的免疫刺激剤、例えばムラミルペプチド(以下に定義)または細菌細胞壁成分の有無にかかわらず)、例えば、スクアレン系エマルジョンなど(例えば、スクアレンベースの水中油型エマルジョン)またはスクワランベースのエマルジョン、例えば、
(a)モデル110Yマイクロフルイダイザー(Microfluidics,Newton,Mass)などのマイクロフルイダイザーを用いてサブミクロン粒子に製剤化される5%スクアレン、0.5%Tween80、および0.5%のspan85(任意により、様々な量のMTP-PEを含有する(下記参照、必須ではないが))を含有する、MF59(PCT公開第90/14837号に記載のスクアレン系水中油型アジュバント)
(b)SWE01(水中油型スクアレンベースのアジュバント)、
(c)サブミクロンエマルジョンへとマイクロ流体化される、またはボルテックスしてより大きい粒子サイズのエマルジョンを生成する、10%スクアレン、0.4%Tween80、5%プルロニックブロックポリマーL121、およびthr-MDP(下記参照)を含有する、SAF
(d)2%スクアレン、0.2%Tween80、および米国特許第4,912,094号に記載の3-O-脱アイル化モノホスホリリピドA(MPL(商標)(Corixa)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPL+CWS(Detox(商標)からなる群からの1種以上の細菌細胞壁成分を含むRibi(商標)アジュバント系(RAS)、(Corixa,Hamilton,Mont.);
(e)クエン酸緩衝液中に分散される、限定されないが、以下の組成:スクワラン3.9W/V%、トリオレイン酸ソルビタン(0.47W/V%)、およびポリオキシエチレン(80)ソルビタンモノオレエート(0.47W/V%)を含むスクワラン系アジュバント;
(3)例えば、ISA-51またはスクアレン系油中水型アジュバント(例えば、ISA-720)などの、油中水型エマルジョン製剤;油中水型エマルジョン中での使用に好適な油アジュバントは、鉱油および/または代謝性油を含み得る。鉱油は、Bayol(登録商標)、Marcol(登録商標)、およびDrakeol、例えば、Drakeo(登録商標)6VR(SEPPIC,France)から選択できる。代謝可能な油は、SP油(以下に記載)、Emulsigen(MPV Laboratories,Ralston,NZ)、Montanide264、266、26(Seppic SA,Paris,France)、ならびに植物油、動物油、例えば、魚油スクワランおよびスクワレン、ならびにトコフェロールおよびその誘導体から選択され得る。
(4)Quil AまたはSTIMULON(商標)QS-21(Antigenics,Framingham,Mass.)(米国特許第5,057,540号)などの、サポニンアジュバントが使われてよく、またはISCOM(免疫刺激複合体)などの、それらから生成される粒子;
(5)細菌性リポ多糖類、アミノアルキルグルコサミンリン酸化合物(AGP)などの合成脂質A類似体、またはそれらの誘導体もしくは類似体(これらは、Corixaから入手可能であり、かつ米国特許第6,113,918号に記載される;そのようなAGPの1つは、2-[(R)-3-テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]エチル2-デオキシ-4-O-ホスホノ-3-Oi[(R)-3テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]-2-[(R)-3-テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-b-Dグルコピラノシドであり、それは、529としても知られており(以前はRC529として知られていた)、水性形態または安定なエマルジョンとして製剤化される)、CpGモチーフ(複数可)を含むオリゴヌクレオチドなどの合成ポリヌデオチド(米国特許第6,207,646号);
(6)インターロイキン類(例えば、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18など)、インターフェロン(例えば、ガンマインターフェロンなど)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、共刺激分子B7-1およびB7-2などの、サイトカイン;
(7)例えば、国際公開第00/18434号(WO02/098368およびWO02/098369も参照されたい)に準拠して、アミノ酸29位のグルタミン酸が別のアミノ酸、好ましくはヒスチジンに置換される、野生型または変異型のいずれかのコレラ毒素(CT)などの細菌ADPリボシル毒素の無毒化変異体、百日咳毒素(PT)、または大腸菌熱不安定性毒素(LT)、特にLT-K63、LT-R72、CT-S109、PT-K9/G129(例えば、WO93/13302およびWO92/19265を参照されたい)の無毒化変異体;および
(8)組成物の有効性を向上させる免疫刺激剤として作用する他の物質。ムラミルペプチドとしては、これらに限定されないが、N-アセチルムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチルノルムラミル-L-アラニン-2-(1’-2’ジパルミトイル-sn-グリセロ-3ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(MTP-PE)などが挙げられる。
【0204】
使用されるアジュバントは、部分的には、レシピエント生物に依存し得る。さらに、投与するアジュバントの量は、動物の種類および大きさに依存するであろう。
【0205】
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物、医薬品またはワクチン組成物は、1つ以上の界面活性剤、および任意により上記の少なくとも1つのアジュバントをさらに含むエマルジョンである(または含む)。一実施形態では、エマルジョンは、油中水型エマルジョンまたは水中油型エマルジョンである。
【0206】
本発明で使用され得る界面活性剤の例は、当技術分野で周知であり、これらに限定されないが、Arlacel(SEPPIC、France)により市販されるMontanide(登録商標)80、Tween20、Tween80、span85、トリトンX100などのマンニドモノオレエートを含む。
【0207】
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物、医薬品、ワクチン組成物は、本発明の少なくとも1つの免疫原性産物の治療的有効量を含む。
【0208】
一実施形態では、保存目的で、本発明の免疫原性産物または組成物、医薬組成物、医薬品、またはワクチン組成物は、凍結乾燥される。
【0209】
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物、医薬品、またはワクチン組成物はしたがって、フリーズドライ(凍結乾燥)形態で提示され得る。本実施形態によれば、本発明の免疫原性産物は、1つ以上の凍結乾燥補助物質と組み合わされる。様々な凍結乾燥補助物質が当業者に周知であり、これらに限定されないが、ラクトースおよびマンニトールのような糖類を含む。
【0210】
一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物、医薬品、またはワクチン組成物は、例えば、分解しやすいタンパク質が分解されるのを防ぐため、免疫原性産物の貯蔵寿命を延長させるため、またはフリーズドライ効率を改善するために、安定剤と混合されてよい。有用な安定剤としては、これらに限定されないが、SPGA、炭水化物(例えば、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、デンプン、スクロース、デキストランまたはグルコース)、タンパク質(例えば、アルブミンまたはカゼインまたはそれらの分解生成物)、アミノ酸、例えばリジンまたはグリシン、および緩衝剤、例えばアルカリ金属リン酸塩が挙げられる。
【0211】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、またはワクチン組成物は、注射により、局所的に(例えば、経皮送達によるなどの)、直腸に、鼻に、または膣により投与され得る。
【0212】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、医薬品、またはワクチン組成物は、注射に適合された形態である。したがって、一実施形態では、本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、医薬品、またはワクチン組成物は、筋肉内、腹腔内、または皮下注射により対象に注射される(または注射用である)。
【0213】
注射用途に好適な形態の例としては、これらに限定されないが、注入可能な滅菌溶液または滅菌分散液を即時調製するための滅菌水溶液または滅菌分散液および滅菌粉末が挙げられる。微生物による汚染に対する防止は、組成物中に防腐剤、例えば、例えば、様々な抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど)を添加することによってもたらされ得る。一実施形態では、注射中の痛みを軽減するために、例えば糖または塩化ナトリウムなどの等張化剤を含めることが好ましい場合がある。一実施形態では、注射用組成物の吸収の延長は、吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物中での使用によりもたらされ得る。
【0214】
一実施形態では、本発明の凍結乾燥ワクチン組成物を、注射用水に溶解し、穏やかに混合する。次に、上記の免疫アジュバントを加える。混合物を、穏やかに混合し、好適なシリンジに充填する。本発明はしたがってまた、本発明のワクチン組成物が充填されるかまたはあらかじめ充填されたシリンジを含む、医療デバイスにも関する。
【0215】
一実施形態では、本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、医薬品、またはワクチン組成物は、局所投与に適合された形態である。局所投与に適合された形態の例としては、これらに限定されないが、ポリマーパッチ、または制御放出パッチなどが挙げられる。
【0216】
別の実施形態では、本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、医薬品、またはワクチン組成物は、直腸投与に適合された形態である。直腸投与に適合された形態の例としては、これらに限定されないが、坐剤、マイクロ浣腸剤、浣腸剤、ゲル、腸フォーム剤、クリーム、軟膏などが挙げられる。
【0217】
本発明はまた、本発明の組成物、医薬組成物、医薬品、またはワクチン組成物が充填されるかまたはあらかじめ充填されたシリンジである医療デバイスにも関する。
【0218】
一実施形態では、シリンジは、デュアルチャンバーシリンジであり、一方のチャンバーは、本発明の免疫原性産物を含む溶液を含み、他方のチャンバーは、アジュバントを含む。
【0219】
本発明はまた、本発明の免疫原性産物、または本発明の組成物、医薬組成物、医薬品、またはワクチン組成物があらかじめ充填されたバイアルを含む医療デバイスに関する。
【0220】
本発明はさらに、医薬品としてまたは薬物としての使用のための、本発明の免疫原性産物に関する。
【0221】
本発明はさらに、対象における炎症性障害を治療するための、本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、医薬品、またはワクチン組成物に関する。
【0222】
本発明はさらに、対象における炎症性障害を治療するための医薬品の製造のための本発明の免疫原性産物の使用に関する。
【0223】
本発明はしたがってさらに、本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、医薬品、またはワクチン組成物を対象に投与することを含む、対象における炎症性障害を治療するための方法に関する。
【0224】
本発明はさらに、本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、医薬品、またはワクチン組成物を対象に投与することを含む、対象においてIgEに対する免疫応答を誘導するための方法に関する。
【0225】
本発明はさらに、本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、医薬品、またはワクチン組成物を対象に投与することを含む、IgEの生物学的活性を阻害するかまたは生物学的活性を中和する抗体の産生を対象において誘導するための方法に関する。一実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体である。
【0226】
一実施形態では、対象は、炎症性障害、特に異常な全IgE発現もしくは活性および/またはアレルゲン特異的IgEの発現に関連する炎症性障害に罹患している、好ましくはこれらであると診断されている。
【0227】
一実施形態では、対象は、ヒトである。好ましくは、この実施形態によれば、本発明の免疫原性産物に含まれる少なくとも1つのIgEまたはそのフラグメントは、ヒトである。
【0228】
一実施形態では、対象は、非ヒト哺乳動物(例えば、ペットなど)である。好ましくは、この実施形態によれば、本発明の免疫原性産物に含まれる少なくとも1つのIgEまたはそのフラグメントは、非ヒト哺乳動物に由来する。
【0229】
一実施形態では、対象は、ウマ、イヌ、またはネコである。好ましくは、この実施形態によれば、本発明の免疫原性産物に含まれる少なくとも1つのIgEまたはそのフラグメントは、それぞれウマ、イヌ科、またはネコ科である。
【0230】
一実施形態では、炎症性障害は、異常なIgEの発現または活性に関連する障害である。
【0231】
炎症性障害の例としては、これらに限定されないが、喘息、アレルギー状態(例えば、食物アレルギー、毒物アレルギー、ネコアレルギー、薬物アレルギー、高IgE症候群、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎およびアレルギー性腸胃炎など)、アナフィラキシー、アトピー性疾患(例えば、蕁麻疹(慢性特発性蕁麻疹および慢性自発性蕁麻疹など)、湿疹など)、水疱性類天疱瘡、呼吸器疾患(喘息、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、アレルギー性気管支肺真菌症など)、鼻ポリープ症および気道炎症を伴う他の状態(例えば、好酸球増加症、線維症、および嚢胞性線維症および肺線維症などの過剰な粘液産生、全身性硬化症(SSc)など);炎症性および/または自己免疫障害または状態、胃腸障害または状態(例えば、炎症性腸疾患(IBD)、および好酸球媒介性胃腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病および全身性エリテマトーデスなど);全身性エリテマトーデス;マスト細胞症およびマスト細胞活性化症候群(MCAS)が挙げられる。
【0232】
一実施形態では、炎症性障害は、喘息(例えば、アレルギー性喘息)、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー(例えば、食物または毒物アレルギー)、アナフィラキシー、および鼻ポリープ症を含む群から選択される。
【0233】
一実施形態では、炎症性障害は、喘息(例えば、アレルギー性喘息)、アレルギー(例えば、食物または毒物アレルギー)およびアナフィラキシーを含む群から選択される。
【0234】
一実施形態では、炎症性障害は、アレルギー、アナフィラキシー、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、鼻ポリープ症から選択され、好ましくは上記炎症性障害は、食物アレルギーまたは毒物アレルギーである。
【0235】
一実施形態では、炎症性障害は、アレルギー性喘息である。
【0236】
本発明はさらに、特定の抗原に対してアレルギーのある対象の脱感作を誘導するための方法に関し、本方法は、本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、医薬品、またはワクチン組成物およびアレルゲンを対象に投与することを含む。
【0237】
本明細書で使用される「脱感作」という用語は、アレルゲン免疫療法、脱感作または低感作またはアレルギーワクチン接種としても知られ、アレルギー性喘息などの環境アレルギーに対する医学的処置を指す。このような処置は、アレルゲンの存在下での免疫系の応答を低下させる試みにおいて、さらに多くの量のアレルゲンにヒトを曝露することを伴う。
【0238】
アレルゲンの例としては、これらに限定されないが、吸入アレルゲン、摂取アレルゲンおよび接触アレルゲンが挙げられる。
【0239】
吸入アレルゲンの例としては、これらに限定されないが、Astigmata(例えば、Acarus siro(ストレージダニ、Aca s 13)、Blomia tropicalis(ダニ、Blo t)、Dermatophagoides farinae(アメリカハウスダストダニ、Der f)、Dermatophagoides microceras(ハウスダストダニ、Der m)、Dermatophagoides pteronyssinus(ヨーロッパハウスダストダニ、Der p)、Euroglyphus maynei(ハウスダストダニ、Eur m)、Glycyphagus domesticus(ストレージダニ、Gly d 2)、Lepidoglyphus destructor(ストレージダニ、Lep d)、Tyrophagus putrescentiae(ストレージダニ、Tyr p));Blattaria(例えば、Blattella germanica(チャバネゴキブリ、Bla g)、Periplaneta americana(ワモンゴキブリ、Per a));Coleoptera(例えば、Harmonia axyridis(ナミテントウ、Har a))、Diptera(例えば、Aedes aegypti(ネッタイシマカ、Aed a)、Chironomus kiiensis(小昆虫、Chi k)、Chironomus thummi thummi(小昆虫、Chi t)、Forcipomyia taiwana(ヌカカ(Biting midge)、For t)、Glossina morsitans(Savannah Tsetse fly、Glo m)、Hemidiptera:Triatoma protracta(California kissing bug、Tria p))、膜翅目(例えば、Apis cerana(Eastern hive bee、Api c)、Apis dorsata(オオミツバチ、Api d)、Apis mellifera(ミツバチ、Api m)、Bombus pennsylvanicus(マルハナバチ、Bom p)、Bombus terrestris(マルハナバチ、Bom t)、Dolichovespula arenaria(キイロスズメバチ、Dol a)、Dolichovespula maculata(White face hornet、Dol m)、Myrmecia pilosula(Australian jumper ant、Myr p)、Polistes annularis(ワスプ、Pol a)、Polistes dominulus(地中海アシナガバチ、Pol d)、Polistes exclamans(ワスプ、Pol e)、Polistes fuscatus(ワスプ、Pol f)、Polistes gallicus(ワスプ、Pol g)、Polistes metricus(ワスプ、Pol m)、Polybia paulista(ワスプ、Pol p)、Polybia scutellaris(ワスプ、Pol s)、Solenopsis geminata(アカカミアリ、Sol g)、Solenopsis invicta(ヒアリ、Sol i)、Solenopsis richteri(クロヒアリ、Sol r)、Solenopsis saevissima(Brazilian fire ant、Sol s)、Vespa crabro(モンスズメバチ、Vesp c)、Vespa mandarinia(Giant asian hornet、Vesp m)、Vespula fiavopilosa(イエロージャケット、Vesp f)、Vespula germanica(イエロージャケット、Vesp g)、Vespula maculifrons(イエロージャケット、Vesp m)、Vespula pensylvanica(イエロージャケット、Vesp p)、Vespula squamosa(イエロージャケット、Vesp s)、Vespula vidua(ワスプ、Vesp vi)、Vespula vulgaris(イエロージャケット、Vesp v))、Ixodida(例えば、Argas reflexus(Pigeon tick、Arg r))、鱗翅目(例えば、Bombyx niori(Silk moth、Bomb n)、ノシメマダラメイガ(Indianmeal moth、Plo i)、Thaumetopoea pityocampa(Pine processionary moth、Tha p))、シミ目(例えば、セイヨウシミ(Silverfish、Lep s))、隠翅目(例えば、Ctenocephalides felis felis(Cat flea、Cte f))、食肉目(例えば、イエイヌ(イヌ、Can f)、Felis domesticus(ネコ、Fel d));ウサギ目(例えば、アナウサギ(ウサギ、Ory c)、奇蹄類:ウマ(domestic horse、Equ c))、Pleuronectiformes(例えば、Lepidorhombus whiffiagonis(Megrim、Whiff、Gallo、Lep w))、げっ歯類(例えば、モルモット(guinea pig、Cav p)、ハツカネズミ(マウス、Mus m)、ドブネズミ(ラット、Rat n));球果植物目:ヒノキ(Japanese cypress、Cha o)、アリゾナイトスギ(イトスギ、Cup a)、Cryptomeria japonica(スギ、Cry j)、Cupressus sempervirens(Common cypress、Cup s)、Juniperus ashei(Mountain cedar、Jun a)、ケードネズ(Prickly juniper、Jun o)、Juniperus sabinoides(Mountain cedar、Jun s)、エンピツビャクシン(Eastern red cedar、Jun v));Gentianales(例えば、Catharanthus roseus(Rosy periwinkle、Cat r));
イネ目(例えば、Anthoxanthum odoratum(Sweet vernal grass、Ant o 1)、Cynodon dactylon(ギョウギシバ、Cyn d 1、Cyn d 7、Cyn d 12、Cyn d 15、Cyn d 22w、Cyn d 23、Cyn d 24)、Dactylis glomerata(カモガヤ、Dae g 1、Dae g 2、Dae g 3、Dae g 4、Dae g 5)、Festuca pratensis(Meadow fescue、Fes p 4))、Holcus lanatus(シラゲガヤ、Hol l 1、Hol l 5)、Hordeum vulgare(オオムギ、Hor v 1、Hor v 5、Hor v 12、Hor v 15、Hor v 16、Hor v 17、Hor v 21)、Lolium perenne(Rye grass、Lol p 1、Lol p 2、Lol p 3、Lol p 4、Lol p 5、Lol p 11)、イネ(コメ、Ory s 1、Ory s 12)、Paspalum notarum(Bahia grass、Pas n 1)、Phalaris aquatica(Canary grass、Pha a 1、Pha a 5)、オオアワガエリ(Timothy、Phl p 1、Phl p 2、Phl p 4、Phl p 5、Phl p 6、Phl p 7、Phl p 11、Phl p 12、Phl p 13)、ナガハグサ(Kentucky blue grass、Poa p 1、Poa p 5)、ライムギ(Rye、Sec c 1、Sec c 20)、セイバンモロコシ(Johnson grass、Sor h 1)、コムギ(Wheat、Tri a 12、Tri a 14、Tri a 185、Tri a 19、Tri a 25、Tri a 26、Tri a 27、Tri a 28、Tri a 29、Tri a 30)、トウモロコシ(Maize、Zea m 1 、Zea m 12、Zea m 14、Zea m 25)、Fagales:Alnus glutinosa(Alder、Aln g 1、Aln g 4)、Betula verrucosa(Birch、Bet v 1、Bet v 2、Bet v 3、Bet v 4、Bet v 5、Bet v 6、Bet v 7)、セイヨウシデ(Hornbeam、Car b 1));シソ目(例えば、セイヨウトネリコ(Ash、Fra e l)、ヨウシュイボタ(Privet、Lig v)、ライラック(Lilac、Syr v));キントラノオ目(例えば、パラゴムノキ(para rubber tree(latex)、Hev b 1、Hev b 2、Hev b 3、Hev b 4、Hev b 5、Hev b 6、Hev b 7、Hev b 8、Hev b 9、Hev b 10、Hev b 11、Hev b 12、Hev b 13));ヤマモガシ目(例えば、Platanus acerifolia(London plane tree、Pla a 1、Pla a 2、Pla a 3)、Platanus orientalis(Oriental plane、Pla or 1、Pla or 2、Pla or 3))が挙げられる。
【0240】
一実施形態では、吸入アレルゲンは、Acarus siro(ストレージダニ、Aca s 13)、Dermatophagoides farinae(アメリカハウスダストダニ、Der f)、Dermatophagoides microceras(ハウスダストダニ、Der m)、Dermatophagoides pteronyssinus(ヨーロッパハウスダストダニ、Der p)、Euroglyphus maynei(ハウスダストダニ、Eur m)、Glycyphagus domesticus(ストレージダニ、Gly d 2)、Polistes annularis(ワスプ、Pol a)、Polistes dominulus(地中海アシナガバチ、Pol d)、Polistes exclamans(ワスプ、Pol e)、Polistes fuscatus(ワスプ、Pol f)、Polistes gallicus(ワスプ、Pol g)、Polistes metricus(ワスプ、Pol m)、Polybia paulista(ワスプ、Pol p)、Polybia scutellaris(ワスプ、Pol s)、Felis domesticus(ネコ、Fel d)、Poales and Betula verrucose(Birch、Bet v 1、Bet v 2、Bet v 3、Bet v 4、Bet v 5、Bet v 6、Bet v 7)を含むまたはこれらからなる群から選択される。
【0241】
摂取アレルゲンの例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる;例えば、Fungi Ascomycota由来のアレルゲン、例えば、Dothideales(例えば、Alternaria alternata(Alternaria rot fungus、Alt a)、Cladosporium cladosporioides(Cla c)、Cladosporium herbarum(Cla h)、Curvularia lunata(Cur l)、-ユーロチウム目:Aspergillus flavus(Asp fl)、Aspergillus fumigatus(Asp f)、Aspergillus niger(Asp n)、Aspergillus oryzae(Asp o)、Penicillium brevicompactum(Pen b)、Penicillium chrysogenum(Pen ch)、Penicillium citrinum(Pen c)、Penicillium oxalicum(Pen o))、ボタンタケ目(例えば、Fusarium culmorum(Fus c));ホネタケ目(例えば、Trichophyton rubrum(Tri r)、Trichophyton tonsurans(Tri t)、サッカロミケス目:Candida albicans(酵母、Cand a)、Candida boidinii(酵母、Cand b));Tuberculariales(例えば、Epicoccum purpurascens(Epi p))、Fungi Basidiomycota由来のアレルゲン、例えば、帽菌類(例えば、Coprinus comatus(ササクレヒトヨタケ、Cop c)、Psilocybe cubensis(マジックマッシュルーム、Psi c)、サビキン綱(例えば、Rhodotorula mucilaginosa(酵母、Rho m));黒穂菌(例えば、Malassezia furfur(Pityriasis versicolor infect.Agent、Mala f)、Malasseziasympodialis(Malas));抗生物質(例えば、ペニシリン、セファロスポリン、アミノシド、キノロン、マクロライド、テトラサイクリン、スルファミド);薬物(例えば、アセチルサリチル酸、ワクチン、モルヒネおよび誘導体);ビタミン、例えば、ビタミンK1;および食物アレルギー(例えば、牛乳、卵、落花生、木の実(くるみ、カシューなど)、魚、貝、大豆、小麦、およびニンジン、リンゴ、梨、アボカド、アプリコット、桃)由来のアレルゲン。
【0242】
一実施形態では、摂取アレルゲンは、食物アレルゲンである。
【0243】
一実施形態では、食物アレルゲンは、ミルク、卵、ピーナッツ、木の実(クルミ、カシューなど)、魚、甲殻類、大豆、小麦、およびニンジン、リンゴ、ナシ、アボカド、アプリコット、ピーチ由来のアレルゲンを含むまたはこれらからなる群から選択される。
【0244】
接触アレルゲンの例としては、これらに限定されないが、重金属(例えば、ニッケル、クロム、金など)、ラテックス、ハプテン、例えば、ハロタン、ヒドララジンなどが挙げられる。
【0245】
一実施形態では、アレルゲンは、以下を含むまたは以下からなる群から選択される;Acarus siro(ストレージダニ、Acas13)、Dermatophagoides farinae(アメリカハウスダストダニ、Der f)、Dermatophagoides microceras(ハウスダストダニ、Der m)、Dermatophagoides pteronyssinus(ヨーロッパハウスダストダニ、Der p)、Euroglyphus maynei(ハウスダストダニ、Eur m)、Glycyphagus domesticus(ストレージダニ、Gly d 2)、Polistes annularis(ワスプ、Pol a)、Polistes dominulus(地中海アシナガバチ、Pol d)、Polistes exclamans(ワスプ、Pol e)、Polistes fuscatus(ワスプ、Pol f)、Polistes gallicus(ワスプ、Pol g)、Polistes metricus(ワスプ、Pol m)、Polybia paulista(ワスプ、Pol p)、Polybia scutellaris(ワスプ、Pol s)、Felis domesticus(ネコ、Fel d)、Poales and Betula verrucosa(カバノキ属、Bet v1、Bet v2、Bet v3、Bet v4、Bet v5、Bet v6、Bet v7)および食物アレルゲン。
【0246】
本発明はまたさらに、特定のアレルゲンに対してアレルギーのある対象の効力を増大させるためのおよび/または脱感作の期間を短縮するための方法に関し、対象は、脱感作により処置され、本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、医薬品、またはワクチン組成物をさらに投与される。
【0247】
一実施形態では、本発明の方法において、対象は、最初に本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、医薬品、またはワクチン組成物を投与され、次にアレルゲンを投与される。
【0248】
一実施形態では、本発明の方法において、対象は、最初にアレルゲンを投与され、次に本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、医薬品、またはワクチン組成物を投与される。
【0249】
別の実施形態では、本発明の方法において、対象は、本発明の免疫原性産物、組成物、医薬組成物、医薬品、またはワクチン組成物、およびアレルゲンの組み合わされた投与を受ける。
【0250】
本発明はさらに、上記の組成物、医薬組成物、医薬品またはワクチンに関し、上記組成物、医薬組成物、医薬品またはワクチンは、少なくとも1つのアレルゲンをさらに含む。
【0251】
一実施形態では、本発明の少なくとも1つの免疫原性産物の治療的有効量が、対象に投与されているか、または投与される。一実施形態では、治療的有効量は、当技術分野で周知のBradfordタンパク質アッセイを使用して決定される総タンパク質の量に対応する。
【0252】
一実施形態では、対象に投与される免疫原性産物の量は、顕著な副作用なしに免疫防御応答を誘導する。
【0253】
一実施形態では、対象に投与される免疫原性産物の量は、顕著な副作用なしにアレルゲン脱感作を誘導する。
【0254】
本発明の免疫原性産物の構成成分の最適量は、対象における適切な免疫応答の観察を含む標準的研究により確認できる。初回ワクチン接種に続き、対象は、適切な間隔をあけて1回または数回の追加免疫を受けることができる。
【0255】
一実施形態では、治療は、ある期間にわたる単回投与または複数回投与からなる。
【0256】
本発明の一実施形態では、治療される対象は、上記のように免疫原性産物の治療的有効量を月に少なくとも2回投与される。
【0257】
本発明の別の実施形態では、治療される対象は、本発明の免疫原性産物の治療的有効量を1ヶ月に2回投与される。この実施形態では、対象は、0日目に1度、7日目~28日目に2回目の投与を受け得る。一実施形態では、対象は、0日目に1度、28日目に2回目の投与を受ける。
【0258】
本発明の別の実施形態では、治療される対象は、本発明の免疫原性産物の治療的有効量を1ヶ月に3回投与される。この実施形態では、治療される対象は、0日目に1度、7日目~14日目に2回目、21日目~28日目に3回目の投与を受け得る。一実施形態では、対象は、0日目に1度、7日目に2回目、28日目に3回目の投与を受ける。
【0259】
本発明の別の実施形態では、治療される対象は、本発明の免疫原性産物の治療的有効量を3ヶ月ごとに1度さらに投与され得る。
【0260】
本発明の一実施形態では、治療される対象は、上記のように1ヶ月に3回投与され、次いで本発明の免疫原性産物の治療的有効量を3ヶ月ごとに1度さらに投与される。
【0261】
本発明の別の実施形態では、治療される対象は、IgEに対する抗体の量が対象から得られた血清試料中で検出できない場合、上記のように免疫原性産物の治療的有効量をさらに投与されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0262】
図1-1】図1は、hIgEキノイド(hIgE-K)の生成を示す。(A)チオールマレイミドコンジュゲートを用いるhIgE-Kの合成。(B)CRM197へのIgECε3-Cε4フラグメントのコンジュゲートによる高分子量キノイドの生成を、SDS-PAGEを使用して確認した。(C)IgECε3-Cε4フラグメントのCRM197へのコンジュゲートによる高分子量キノイドの生成を、HPLCを使用して確認した。
図1-2】同上。
図2図2は、hIgE-キノイドによる抗hIgE抗体の中和を示す。(A)筋肉内ワクチン接種プロトコールの概要。hIgEKIマウス(マウスIgEの代わりにヒトIgEを発現する)に、アジュバントの水中スクアレンエマルジョン(SWE)で乳化された、hIgE-K(または対照としてCRM197のみ)をワクチン接種した。キノイドの初回注射後5、9、21、30および39週での血清中の(B)抗hIgEおよび(C)抗CRM197抗体の力価。結果は、中央値を示すバーを有して個々のマウスからの値を示す。(D)5週目に収集された血清中の抗hIgE中和能。hIgE受容体FcεRIを発現する骨髄由来の培養マスト細胞(BMCMC)は、FcεRIについてヒト化されたマウスに由来した。BMCMCを、示された希釈度でhIgE-Kをワクチン接種されたマウスからの血清(ワクチンの初回注射の39日後に収集された)とプレインキュベートした。直後に、蛍光標識(FITC)hIgEを、30分間添加した。細胞を洗浄し、BMCMC上のFITC蛍光レベルを、フローサイトメトリーで定量化した。(E)5、9、21、30、および39週目に収集された血清中の総hIgEのレベル。結果は、平均±SEMを示すバーを有して個々のマウスからの値を示す。(B~E)データは、グループごとにn=8のマウスを使用した単一の実験からのものであり、2つの独立した実験の代表である。***、P<0.001(マンホイットニーのU検定)。
図3-1】図3は、hIgE-Kによるワクチン接種が、IgE介在性全身性アナフィラキシーを予防することを示す。(A)プロトコールの概要。IgE/FcεRIヒト化マウス(ヒトIgEおよびヒトIgE受容体FcεRIを発現する)に、アジュバントSWEで乳化された、hIgE-K(または対照としてCRM197単独)をワクチン接種(筋肉内、i.m)した。9週目に、示されるように、マウスを、hIgE抗ニトロフェニル(NP)で感作させ、両方の静脈内でBSAに連結されたNP(ニトロフェニル)を1日後に負荷した。(B)キノイドの初回注射の5週間後の血清中の抗体力価。結果は、中央値±SEMを示すバーを有して個々のマウスからの値を示す。(C)IgE-KまたはCRM197をマウスに注射後0、1および3週目の体温の変化(Δ°T、平均±SEM)。データを、合計n=7~9匹/群のマウスを用いた2回の独立実験からプールする。(D)10μg抗NPhIgEの静脈内注射後の体温の変化(これは、マウスにおけるアナフィラキシーの主な読み取り値として使用される)(Δ°T、平均±SEM)。データを、合計n=7~9匹/群のマウスを用いた2回の独立実験からプールする。(E)NP-BSA500μgの静脈内注射後の体温の変化(Δ°T、平均±SEM)。データを、合計n=7~9匹/群のマウスを用いた2回の独立実験からプールする。*、**または***P<0.05、0.01、または0.001(マンホイットニーのU検定)。
図3-2】同上。
図4図4は、遺伝的素因のあるアレルギーマウスモデルにおいて、hIgE-Kによるワクチン接種がIgE介在性全身性アナフィラキシーを予防することを示す。(A)プロトコールの概要。F709IL4Ra変異(同等の変異が、ヒトにおけるアトピーに関連づけられており、この変異は、マウスにおけるIgE介在性アナフィラキシーに対する感受性を高めることが知られている)を保有するIgE/FcεRIヒト化マウスに、アジュバントSWEで乳化された、hIgE-K(または対照としてCRM197単独で)をワクチン接種した。6週目に、マウスに、250μgの抗hIgEをi.v.注射した。(B)250μgの抗hIgEAbの静脈内注射後の体温(これは、アナフィラキシーの主な読み取り値として使用される)の変化(Δ°T、平均±SEM)。(C)250μgの抗hIgEの静脈内注射後の生存曲線。データを、合計n=9マウス/群の2つの独立実験からプールする。**または***、P<0.01、または0.001(マンホイットニーのU検定)。
【実施例
【0263】
本発明を、以下の実施例によってさらに説明する。
本発明は、担体タンパク質としてCRM197を使用する免疫原性産物に関する。本発明の免疫原性産物の特性は、以下の実施例によって説明される。
【0264】
CRM197は、その毒素ドメイン中の、52位でのグリシンからグルタミン酸塩への単一塩基置換により毒性活性のない、ジフテリア毒素の非毒性形態である((Uchida et al.,1973 J Biol Chem)。
【0265】
チオールマレイミドコンジュゲートを、IgEベースの免疫原性産物の調製に使用する。スルフヒドリル部分を、SATAおよび、その後のヒドロキシルアミン脱保護により担体タンパク質CRM197に導入し、一方でIgEまたはIgEのフラグメントを、マレイミド含有剤であるsGMBSにより誘導体化した。SATAおよびsGMBSの両方は、NHS-エステルを含むヘテロ二官能性架橋剤であり、それは、第一級アミン(リジン残基のε-アミノ基およびタンパク質N末端など)と反応する。
【0266】
実施例1:抗IgEワクチン接種は、ヒト化マウスにおいてヒトIgE介在性重度アレルギー反応を予防する。
材料および方法
マウス
hIgEKIマウスを、マウス染色体12(Chr12:113、147、778)にヒトIgE配列(1080塩基対、ヒト染色体14:106、064、224-106、068、065にある)を挿入して得た。IgE/FcεRIヒト化マウスを、hIgEKIおよびmFcεRI-/-hFcεRITgマウスの交配によって作製した(Dombrowicz D et al.,Anaphylaxis mediated through a humanized high affinity IgE receptor.Journal of immunology(Baltimore,Md:1950).1996;157(4):1645-51)。F709 IL4Ra変異を有するgE/FcεRIヒト化マウスを、IgE/FcεRIヒト化マウスとF709 IL4Raマウスとの交配によって生成した(Tachdjian R et al.,In vivo regulation of the allergic response by the IL-4 receptor alpha chain immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif.J Allergy Clin Immunol.2010;125(5):1128-36.e8)。マウスを、Institut Pasteurにて特定の病原体のない施設で維持した。マウスは、Institut Pasteurで飼育され、正常な発育および繁殖パターンを示した。すべての動物の世話および実験を、#170043で登録された動物倫理委員会CETEA(Institut Pasteur,Paris,France)のガイドラインおよび特定の承認に準拠して、French Ministry of Researchにより行った。
【0267】
IgEフラグメントの産生
組換えhIgE Cε3-4フラグメント(G335C変異を含み、C末端にStrepTwinタグを有し、配列番号7のアミノ酸配列を含む)を、合成し、指数関数的に成長するExpi-293細胞に一時的にトランスフェクトした。これらの細胞を、110rpmで回転するシェーカープラットフォーム上にて加湿5%CO2インキュベーター中で、37℃で懸濁してExpi293(商標)Expression Medium(Life Technologies)中で培養した。トランスフェクションの24時間前に、細胞を、採取し、2x10細胞/mlの密度でExpi293(商標)Expression Mediumに再懸濁し、上に記載される同じ条件で一晩培養した。24時間後、500μgの発現プラスミドと1350μLのExpifectamineを、Opti-MEM(Life Technologies)培地中で5分間プレインキュベートし、一緒に混合した。20分間のインキュベーション後、混合物を、2.9x10細胞/mLの密度でExpi-293細胞に添加した。トランスフェクションの20時間後、25mLおよび2.5mLのトランスフェクションエンハンサー1および2(ThermoFisher)を、それぞれ添加した。細胞を、トランスフェクション後5日間培養し、上清を、採取し、4200rpmで30分間遠心分離し、濾過した(0.2μm)。タンパク質を、AKTA pure FPLC装置(GE Healthcare)およびStrep-Tactin(登録商標)カラム(IBA Lifescience)を使用するアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。
【0268】
hIgEキノイドの合成と特徴付け
hIgE Cε3~4を、第一級アミンと反応するマレイミド含有剤であるN-γ-マレイミドブチリル-オキシスクシンイミドエステル(sGMBS;ThermoFisher)により修飾した。hIgE Cε3~4の緩衝液を、1mg/mLにて修飾緩衝液(70mMリン酸緩衝液、150mMNaCl、5mMEDTA、pH=7.2)と交換した。10mMのsGMBSの溶液を、調製し、1:30の比率でhIgE Cε3~4に添加し、室温で60分間インキュベートした(光から保護した)。過剰なsGMBSを、除去し、緩衝液を、Zeba脱塩スピンカラム(Thermo Fisher)を使用して、修飾緩衝液と交換した。CRM197を、Pfenex(USA)から購入した。スルフヒドリル部分を、SATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート)により担体タンパク質CRM197に導入した。CRM197を、2mg/mLにて修飾緩衝液中で希釈し、新たに調製した100mMSATA(DMSO中に溶解された)の溶液を、モル比1:80で添加し、室温で30分インキュベートした(光から保護した)。過剰なSATAを除去し、緩衝液を、Zeba脱塩スピンカラムを使用して修飾緩衝液と交換した。SATA修飾CRM197を、光から保護して室温で120分間、最終濃度50mMでヒドロキシルアミンの溶液とインキュベートした。過剰なヒドロキシルアミンを除去し、緩衝液を、Zeba脱塩スピンカラムを使用して修飾緩衝液と交換した。CRM197およびhIgE Cε3~4官能化の後、各調製物のタンパク質含有量を、製造業者の指示に従い、Bradford(ThermoFisher)アッセイにより決定した。
【0269】
官能化CRM197を、モル比1:1および最終濃度0.4mg/mLで官能化hIgE Cε3~4に添加した。混合物を、4℃で16時間インキュベートし、光から保護し、その後緩衝液を、Zeba脱塩スピンカラムを使用して、修飾緩衝液に対して交換した。タンパク質含有量を、Bradfordアッセイにより決定した。得られたhIgEキノイド(hIgE-K)を次いで、0.22μm滅菌濾過し、4℃で保存した。
【0270】
hIgE-Kを、様々なin vitro法を使用して特徴づけた。得られたキノイドのプロファイルを分析するために、SDS-PAGEおよびウエスタンブロットを、hIgECε3-4フラグメント(Strep-TACTIN HRPコンジュゲート(IBA Lifescience))に対して実施した。Bio SEC-5カラム(2000A、5μm、7.8*300mm、Agilent)およびBio SEC-3カラム(300A、3μm、7.8*300mm、Agilent)を使用するサイズ排除(SE)-HPLCも、使用した。SE-HPLC分析を、カラム温度25℃にて1mL/分のアイソクラティックモードで実施した。濾過(0.22μmカットオフ)後、サンプルを、100μLで注射し、280nmで分析した。合計実施時間は、35分であった。
【0271】
ヒトIgE抗体の産生
抗ニトロフェニルhIgEを、これまでに記載されているとおり生成し、精製した(Balbino B et al.,The anti-IgE mAb omalizumab induces adverse reactions by engaging Fcgamma receptors.J Clin Invest.2020)。JW8/5/13(ECACC87080706)細胞を、Sigma-Aldrichから得た。この細胞株は、ハプテン4-ヒドロキシ-3-ニトロフェナセチル(NP)に対して向けられるキメラヒトIgE抗体を産生し、ヒトFcε鎖およびマウス抗NP可変鎖から構成される。JW8/5/13細胞を、9x10細胞/mlにて2mMグルタミン(Thermo Fisher Scientific)および10%ウシ胎児血清(FBS)(Thermo Fisher Scientific)を含む完全ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco)中で培養した。15日後、上清を、採取し、4200rpmで30分間遠心分離し、濾過した(0.2μm)。アフィニティークロマトグラフィーによりIgE抗体を精製した。簡潔に説明すると、CNBr活性化Sepharose 4 Fast Flow Beads(GE Healthcare)を、ビーズ1グラムあたりタンパク質2.5mgの比率を使用して、WT抗IgEと連結した。ビーズを、秤量し、15倍量の冷1m MHClで洗浄し、2500rpmで5分間遠心分離した。WT抗IgEを、カップリング溶液(0.5M NaClを含む0.1 M NaHCO3 pH8.3)中に再懸濁し、撹拌しながら4℃で一晩ビーズと混合した。ビーズを、カップリング緩衝液で洗浄し、未反応基を、0.1M Tris-HCl緩衝液pH8.0でブロックした。WT抗IgE連結ビーズを次に、低い(0.1M酢酸緩衝液pH3)および高い(0.1M Tris-HCl pH8)pH溶液を交互に使用して洗浄し、使用まで4℃でホウ酸緩衝液(100mMホウ酸、150mM NaCl pH8.0)中にて保存した。IgEの精製のために、WT抗IgE連結したセファロースビーズを、XK16/20カラム(GEHealthcare)に充填し、アフィニティークロマトグラフィーを、AKTA pure FPLC装置(GE Healthcare)を使用して実施した。精製後、IgE抗体を、HiTrap Desalting Column(GE Healthcare)で脱塩し、使用まで4℃で保存した。
【0272】
hIgEキノイドによるワクチン接種
マウスを、30μgの2回の初期用量とそれに続く10μgの追加免疫により0日目、7日目および28日目に、PBS中のSWE、水中スクアレンエマルジョンアジュバント(Vaccine Formulation Laboratory,University of Lausanne,Switzerland)と1:1(v:v)で組み合わせたhIgE-Kを用いて筋肉内免疫した。対照として、マウス群に、SWEと組み合わせて、15μgの2回の初期用量とそれに続く5μgの追加免疫(これらの用量は、CRM197の重量比に基づき定義された)により、同じスケジュールに従いCRM197を注射した。
【0273】
ワクチン接種マウス由来の血清中のヒトIgEおよびCRM197に対するIgGの定量
キノイドの免疫原性を、ワクチン接種後の異なる時点で収集された血清中のヒトIgEおよびCRM197に対する抗体を評価することによって判定した。ヒトIgEまたはCRM197を、コーティング緩衝液(炭酸塩/重炭酸塩緩衝液pH9.6)中にて、それぞれ5または1μg/mLで、4℃でコートし、一晩インキュベートした。各ステップ後、プレートを、0.005%のPBSTween20で3回洗浄した。BSA1%PBSでブロッキング後、血清サンプルを添加し、2倍連続希釈を、2000dil-1(PBSで希釈、BSA1%)で開始して行った。37℃でのインキュベーションの90分後に、結合された抗体を、1/10000にてHRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgG(Bethyl Laboratories)で検出し、プレートを、OPD基質を使用して明らかにした。反応を、1MHSOで停止し、吸光度をその後、490nmで記録した。サンプルを、希釈2000dil-1で始めて1024000dil-1まで分析した。力価を、最大ODの50%である血清の希釈率として定義した。力価を、血清希釈係数(dil-1)として表した。力価の定量化の限界は、アッセイで試験された最低希釈である:2000dil-1
【0274】
hIgE-Kでのワクチン接種時に産生される抗hIgE抗体の中和能力の評価
hFcεRIを発現する骨髄由来培養マスト細胞(BMCMC)を、IgE/FcεRIヒト化マウスからの骨髄細胞をIL-3(10ng/ml)含有培地で6週間培養することにより得、その時点で細胞は、>95% c-KithFcεRIαであった(データは示さず)。hIgE-Kでのワクチン接種で産生された抗hIgE抗体の中和能力を評価するために、BMCMCを、hIgE-KまたはCRM197のみ(対照として)をワクチン接種したマウスの血漿の希釈液とインキュベートした。次に、FITC標識hIgE(以前にBalbino B et al.,The anti-IgE mAb omalizumab induces adverse reactions by engaging Fcgamma receptors.J Clin Invest.2020に記載されたとおりに産生された)を、添加し、フローサイトメトリーによってBCMMC上のhFcεRIへのFITC-hIgEの結合を評価した。
【0275】
好塩基球およびマスト細胞の表面におけるIgEの定量化
血液を、ヘパリンを用いて収集した。腹腔洗浄液(PLF)については、腹膜の外皮を、静かに取り除いた。次に3mLの冷PBSを、27gニードルを使用して腹腔に注射した。腹膜を軽くマッサージ後、切開を、腹膜の内皮で行い、鉗子で皮膚を押さえながらPLFを回収した。
【0276】
赤血球溶解を、赤血球を除去するために行った。
【0277】
血液由来の細胞を、抗CD49b-BV421(クローンDX5、eBioscience)、抗CD131-PE(クローンREA193、Miltenyi)、および抗ヒトIgE-ビオチン(クローンMHE-18、Biolegend)および抗ビオチン-APC(クローンREA746、Miltenyi)または抗ヒトFcεRI-APC(クローンAER-37(CRA-1)、BioLegend)で染色した。PLF由来の細胞を、抗cKIT-APC(クローン2B8、eBioscience)および抗ヒトIgEビオチン(クローンMHE-18、BioLegend)および抗ビオチン-APC(クローンREA746、Miltenyi)または抗ヒトFcεRI-APC(クローンAER-37(CRA-1)、BioLegend)で染色した。好塩基球を、CD49bCD131としてゲートし、マスト細胞を、cKITIgEまたはFcεRIとしてゲートした。ヒトFcεRIおよびIgEの表面発現を、評価し、平均蛍光強度(MFI)により表した。
【0278】
ヒトおよびマウスの総IgE定量
総ヒトIgEレベルを、ELISAによって定量した。抗Cε2ヒトIgE抗体(クローン8E/5D4、Aviva Systems Biology)を、コートし、カップリング緩衝液(炭酸/重炭酸緩衝液H=9.6)中5μg/mLにて、4℃で一晩インキュベートした。各ステップの後、プレートを、0.005%のPBS Tween20で3回洗浄した。室温で1時間30分PBS中のBSA1%でのブロッキング後に、血清サンプルを、1/10最終希釈(PBS、BSA1%10%FBSで希釈)で添加し、室温で90分間インキュベートした。次いで、抗ヒトIgE抗体(A80-108P、Bethyl Laboratories)を、室温で90分間1:10,000で添加した。プレートを、OPD基質を使用して明らかにした。反応を2MHSOで停止させ、吸光度をその後、490nmで記録した。総マウスIgEレベルを、製造業者の指示に従って、市販のELISAキット(E90-115;Bethyl Laboratories)を使用するELISAにより定量した。
【0279】
受動全身性アナフィラキシー
IgE/FcεRIヒト化マウスにおいて、精製マウスIgE抗NP抗体を、100μLのPBS中10μgの用量で静脈内(i.v.)投与した。24時間後に、マウスを、PBS中の500μgのNP(21-31)-BSA(Santa Cruz Biotechnology)を、静脈内負荷した。体温の直腸測定を、負荷直前(時間0)、および負荷後1時間までの様々な時点で実施した。IgE/FcεRIヒト化;F709 IL4Raマウスにおいて、ウサギ抗hIgE抗体(Bethyl Laboratories)を、250μgの用量でi.v.投与した。体温の直腸測定を、注射直前(時間0)、および注射後1時間までの様々な時点で実施した。
【0280】
統計分析
統計的有意性を、対応のないスチューデントのt検定(対応のないマンホイットニー検定)を使用して決定した。P≦0.05を、統計的に有意と見なした。計算を、Prism7.0ソフトウェアプログラム(GraphPad Software)を使用して実行した。
【0281】
結果
hIgEキノイドによるワクチン接種は、IgEヒト化マウスにおいて強力な抗IgE中和抗体を誘導する
IgEキノイド(hIgE-K)を、チオール-マレイミドコンジュゲートを使用して、ヒトIgECε3-4ドメインをジフテリア「交差反応性物質197」(多数の承認されたコンジュゲートワクチンにおいて、担体タンパク質として使用されるジフテリア毒素の非毒性変異体である、CRM197)と連結することにより生成した(図1A)。335位の天然のグリシン残基を、Cε3-4へとシステイン残基で置き換えた。その結果、鎖間ジスルフィド結合が形成され、それはFcεRIではなく、オマリズマブへの高親和性結合を保持する「閉じた」コンフォメーションにIgEフラグメントをロックする。このG335C変異を含むIgEコンジュゲートワクチンが、FcεRIへのおそらく有害な結合を回避しながら、「オマリズマブ様の」中和抗体の生成を優先すると仮定した。SDS-PAGEおよびHPLC分析は、hIgECε3-4G335CのCRM197へのコンジュゲート時の高分子種の形成を示し、hIgE-Kの効率的な合成を確認した(図1Bおよび1C)。
【0282】
スクアレン水中油型エマルジョンアジュバントであるSWE中のhIgE-KによるhIgEKIマウス(マウスIgEの代わりにヒトIgEを発現する)の免疫化は、高い抗hIgE抗体価を誘導し、それは初回免疫5週間後にすでに検出可能であり、39週間後(これまでに評価された最新の時点)を超えて依然として検出できた(図2A~B)。予想どおり、CRM197単独またはhIgE-Kに曝露されたすべてのマウスは、抗CRM197抗体を発現した(図2C)。重要なことに、キノイドによるワクチン接種時に生成された抗hIgE抗体は、一次免疫の5週間後に始まる、すべてのマウスにおける強力な中和能力を示した(図2D)。CRM197で免疫化された対照マウスの血液中で、hIgEを検出できたが、hIgE-Kでワクチン接種されたhIgEKIマウスでは検出されず、ワクチン接種時に生成された抗体の中和能力を確認された(図2E)。まとめると、これらのデータは、hIgEの効果的な長期中和が、hIgEKIマウスにおいてhIgE-Kをワクチン接種することにより達成され得ることを示す。
【0283】
hIgE介在性アナフィラキシーのモデルにおける抗hIgEワクチンの有効性
ヒトIgEおよびヒトFcεRIの両方を発現するマウス(IgE/FcεRIヒト化マウス)におけるhIgE-Kの注射後の潜在的な有害事象を、評価した。IgE-Kワクチン(または対照としてCRM197のみ)の各注射の後でマウスを注意深く監視し(図3A)、IgE/FcεRIヒト化マウスにおいて何らかの検出可能な悪影響を認めず:またIgE/FcεRIヒト化マウスでの各ワクチン注射後1時間にわたり、マウスのアナフィラキシーショックを追跡するために用いたパラメータである、低体温症(図3C)、あるいは下痢、苦痛、または活力の欠如も認めなかった。こうした副作用がないことは、ワクチンが、マスト細胞および好塩基球の表面のIgEの凝集を介してFcεRI活性化を引き起こさないことを示唆する。hIgE-Kによるワクチン接種は、IgE/FcεRIヒト化マウス中で高力価の抗hIgE抗体を誘導し、それは、hIgEKIマウスでのそれらの出現(図2E)と同様に、キノイドの初回注射の5週間後にすでに検出可能であった(図3B)。
【0284】
hIgEワクチンの安全性および有効性をさらに評価するために、上記と同じ免疫化スケジュール(図3A)に従って、hIgE-Kまたは対照としてCRM197のみでワクチン接種したIgE/FcεRIヒト化マウスに、高用量(10μg)の抗ニトロフェニル(NP)hIgEを注射した。再び、抗NP-hIgEの注射後1時間にわたり、低体温、下痢、苦痛、または活力の欠如のいずれも観察せず、ワクチン接種が、非常に高レベルの循環hIgEの存在下でも、検出可能な副作用を誘導しないことを確認した(図3D)。重要なことに、hIgE-Kをワクチン接種されたマウスは、hIgE介在性アナフィラキシーから保護されたのに対し、抗NPhIgEを注射され、NP抗原を負荷されたCRM197ワクチン接種マウスは、深刻な低体温症に陥り、7匹中1匹のマウスが死亡した(図3E)。
【0285】
遺伝的に素因のあるアレルギーマウスモデルにおける抗hIgEワクチンの有効性
IgE/FcεRIヒト化マウスは低レベルの循環hIgEを示したが、アレルギー患者は中程度~高レベルの循環IgEを示し、マウスモデルを、抗IgEワクチン接種後のIgE誘導イベントから保護することをおそらく容易にする。この矛盾を解決するために、IgE/FcεRIヒト化マウスを、インターロイキン4(IL-4)およびIL-13受容体サブユニットIL-4Raをコードする遺伝子に機能獲得型Y709F変異を保有するマウスと交配して、hIgE;hFcεRITg;F709 IL4Raマウスを生成した(図4A)。Y709F変異は、IL4Raの免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)を破壊し、それによりIL-4およびIL-13に応答して受容体シグナル伝達を強化し、IgEレベルおよびIgE介在性アナフィラキシーを増幅する。hIgEKI;hFcεRITg;F709IL4Raマウスを使用して、アナフィラキシーが内因性hIgEにより引き起こされるモデルにおけるhIgEワクチンの有効性を評価した。そのために、hIgEKI;hFcεRITg;F709IL4Raマウスに高用量のポリクローナル抗hIgEAbを注射して、FcεRI結合hIgEの架橋を介して肥満細胞の活性化を引き起こした。対照として使用したCRM197免疫化マウスは、重度の低体温症(図4B)を発症し、抗hIgE注射後30分以内に死亡率100%であり(図4C)、IgE/FcεRIヒト化F709IL4Raマウスが、hFcεRIに結合された十分なレベルの内因性hIgEを有して、hIgE介在性アナフィラキシーを引き起こすことを確認した。非常に対照的に、抗hIgE注射後に、IgE-Kワクチン接種マウスは、一時的な軽度の低体温のみを示し、死亡はなかった(図4B~C)。
【0286】
まとめると、これらの結果は、ヒトIgECε3-4ドメインに対するワクチンを、標準的工業方法を使用して産生できること、およびこのワクチンは、hIgEの長期的な中和をもたらし、循環中、検出不能なIgEレベルをもたらし、かつFcεRI結合hIgEを減少させ得ることを示す。hIgE-Kワクチン接種は、繰り返される注射の後でも、IgEおよびFcεRIについてヒト化されたマウスにおいて何らかの検出可能な悪影響を誘導しない。IgE-Kワクチン接種は、遺伝的に素因のあるアレルギーマウスモデルにおいてでさえ、重度のIgE介在性アレルギー反応からの保護をもたらす。これらの結果は、hIgE介在性アレルギー障害に対する効果的な長期ワクチンの臨床開発への道を開く。

図1-1】
図1-2】
図2
図3-1】
図3-2】
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-06-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023542036000001.app
【国際調査報告】