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特表2023-542047画像ベースの教師なしセルクラスタリング及びソーティングのためのフレームワーク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】画像ベースの教師なしセルクラスタリング及びソーティングのためのフレームワーク
(51)【国際特許分類】
   G06N 3/088 20230101AFI20230927BHJP
   G06F 18/231 20230101ALI20230927BHJP
【FI】
G06N3/088
G06F18/231
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518446
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(85)【翻訳文提出日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 IB2021060727
(87)【国際公開番号】W WO2022107052
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】63/116,065
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/222,131
(32)【優先日】2021-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504257564
【氏名又は名称】ソニー コーポレイション オブ アメリカ
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】チャン スー-フイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ ミン-チャン
(57)【要約】
本明細書では、特徴抽出器とクラスタリングのためのクラスタ成分とを含むフレームワークを説明する。フレームワークは、(1)時間のかかる手動ゲーティングに取って代わるオフラインの画像ベースの教師なしクラスタリング、(2)オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングをサポートする。訓練中に、グラウンドトゥルースを含む又は含まない1又は複数の細胞画像データセットを使用して、特徴抽出器を訓練する。特徴抽出器は、いくつかの畳み込み層を含むニューラルネットワークに基づく。特徴抽出器が訓練されると、特徴抽出器を使用して、教師なしセルクラスタリング及びソーティングのために細胞画像の特徴を抽出する。また、特徴抽出器が訓練された後に、追加のデータセットを使用して、特徴抽出器を更に精細化することができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
オフラインの初期画像ベースの教師なしクラスタリングを実行するステップと、
オンラインの画像ベースのシングルセルソーティング(single cell sorting)を実行するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
グラウンドトゥルース情報を含む又は含まない1又は2以上の細胞画像データセットを受け取って、特徴抽出器を訓練するステップを含む訓練を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記特徴抽出器は、いくつかの畳み込み層を含むニューラルネットワークに基づくことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
細胞画像のセットに対してオフライン初期クラスタリングを実行するステップは、前記特徴抽出器を使用して、前記細胞画像の特徴を抽出するステップと、所与の前記細胞画像の小さいサブセットを使用して、クラスタ成分(cluster component)を訓練するステップと、前記クラスタ成分を使用して、教師なしの方法で前記所与の細胞画像のクラスタを識別するステップと、を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングを実行するステップは、前記特徴抽出器を利用して、細胞画像の特徴を抽出するステップと、教師なしセルソーティングのために前記クラスタ成分を使用するステップと、を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記特徴抽出器が訓練された後に、追加のデータセットを使用して、前記特徴抽出器を精細化するステップを更に含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
クラスタリングは、階層密度ベースの空間クラスタリングを利用するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
クラスタリングは、各クラスタの定義を含む前記抽出された特徴に基づいて、異なるタイプの細胞を分離してグループ化することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
装置であって、
オフラインの初期画像ベースの教師なしクラスタリングを実行し、
オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングを実行する、
ためのアプリケーションを記憶するための非一時的メモリと、
前記アプリケーションを処理するように構成される複数の処理ユニットであって、少なくとも1つの中央処理ユニットと、少なくとも1つのグラフィックス処理ユニットとを含む複数の処理ユニットと、
を含むことを特徴とする装置。
【請求項10】
前記アプリケーションは、更に、グラウンドトゥルース情報を含む又は含まない1又は2以上の細胞画像データセットを受け取って、特徴抽出器を訓練することを含む訓練のためのものであることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記特徴抽出器は、いくつかの畳み込み層を含むニューラルネットワークに基づくことを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
細胞画像のセットに対してオフライン初期クラスタリングを実行することは、前記特徴抽出器を使用して、前記細胞画像の特徴を抽出することと、所与の前記細胞画像の小さいサブセットを使用して、クラスタ成分を訓練することと、前記クラスタ成分を使用して、教師なしの方法で前記所与の細胞画像のクラスタを識別することと、を含むことを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングを実行することは、前記特徴抽出器を利用して、細胞画像の特徴を抽出することと、教師なしセルソーティングのために前記クラスタ成分を使用することと、を含むことを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記アプリケーションは、更に、前記特徴抽出器が訓練された後に、追加のデータセットを使用して、前記特徴抽出器を精細化するためのものであることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
クラスタリングは、階層密度ベースの空間クラスタリングを利用することを含むことを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項16】
クラスタリングは、各クラスタの定義を含む前記抽出された特徴に基づいて、異なるタイプの細胞を分離してグループ化することを特徴とする、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
システムであって、
オフラインの画像ベースの教師なしクラスタリングを実行し、
前記オフラインの画像ベースの教師なしクラスタリングに基づいて、オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングを実行する、
ように構成される第1のコンピュータ装置と、
前記第1のコンピュータ装置に1又は2以上の画像を送信するように構成される第2のコンピュータ装置と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項18】
前記第1のコンピュータ装置は、グラウンドトゥルース情報を含む又は含まない1又は2以上の細胞画像データセットを受け取って、特徴抽出器を訓練することを含む訓練のために構成されることを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記特徴抽出器は、いくつかの畳み込み層を含むニューラルネットワークに基づくことを特徴とする、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
細胞画像のセットに対してオフライン初期クラスタリングを実行することは、前記特徴抽出器を使用して、前記細胞画像の特徴を抽出することと、所与の前記細胞画像の小さいサブセットを使用して、クラスタ成分を訓練することと、前記クラスタ成分を使用して、教師なしの方法で前記所与の細胞画像のクラスタを識別することと、を含むことを特徴とする、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングを実行することは、前記特徴抽出器を利用して、細胞画像の特徴を抽出することと、教師なしセルソーティングのために前記クラスタ成分を使用することと、を含むことを特徴とする、請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
前記第1のコンピュータ装置は、前記特徴抽出器が訓練された後に、追加のデータセットを使用して、前記特徴抽出器を精細化するように更に構成されることを特徴とする、請求項18に記載のシステム。
【請求項23】
クラスタリングは、階層密度ベースの空間クラスタリングを利用することを含むことを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項24】
クラスタリングは、各クラスタの定義を含む前記抽出された特徴に基づいて、異なるタイプの細胞を分離してグループ化することを特徴とする、請求項23に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2020年11月19日出願の米国仮特許出願第63/116,065号「画像ベースのシングルセルソーティングのための教師なし学習フレームワーク(UNSUPERVISED LEARNING FRAMEWORK FOR IMAGE BASED SINGLE CELL SORTING)」の優先権を主張するものであり、その開示内容全体は、全ての目的に対して引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、セルソーティングに関する。より具体的には、本発明は、画像ベースのセルソーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
従来の蛍光活性化セルソーティングは、細胞を蛍光マーカで標識することに依拠し、細胞の形態学的情報が非常に限定されている。しかしながら、いくつかのアプリケーションは、細胞を正確に分取するために細胞の形態学的情報を必要とし、一方、いくつかのアプリケーションは、蛍光マーカを使用するのに適していない。また、従来の蛍光活性化セルソーティング(FACS)は、手動ゲーティングを使用して、蛍光マーカに基づいてソーティング基準を確立する。しかしながら、手動ゲーティングは、時間がかかり、偏りがある場合がある。
【0004】
いくつかの研究は、深層ニューラルネットワーク又は手作りの特徴に基づいて教師あり学習を使用する画像ベースのセルソーティングを提案した。研究は、訓練のためのグラウンドトゥルースを含む細胞画像を仮定したが、グラウンドトゥルースを利用できない場合がある。ゲーティングプロセスを助ける何らかのソフトウェアは、蛍光マーカの特定の手作りの特徴に依拠するが、このような特徴は、いくつかのアプリケーションにとって十分な形態学的情報を有さない場合があるか、又は他のいくつかのアプリケーションに適していない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書では、特徴抽出器とクラスタリングのためのクラスタ成分とを含むフレームワークを説明する。フレームワークは、(1)時間のかかる手動ゲーティングに取って代わるオフラインの画像ベースの教師なしクラスタリング、(2)オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングをサポートする。訓練中に、グラウンドトゥルースを含む又は含まない1又は複数の細胞画像データセットを使用して、特徴抽出器を訓練する。特徴抽出器は、いくつかの畳み込み層を含むニューラルネットワークに基づく。特徴抽出器が訓練されると、特徴抽出器を使用して、教師なしセルクラスタリング及びソーティングのために細胞画像の特徴を抽出する。また、特徴抽出器が訓練された後に、追加のデータセットを使用して、特徴抽出器を更に精細化することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、方法は、オフラインの初期画像ベースの教師なしクラスタリングを実行するステップと、オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングを実行するステップと、を含む。前記方法は、グラウンドトゥルース情報を含む又は含まない1又は2以上の細胞画像データセットを受け取って、特徴抽出器を訓練するステップを含む訓練を更に含む。前記特徴抽出器は、いくつかの畳み込み層を含むニューラルネットワークに基づく。細胞画像のセットに対してオフライン初期クラスタリングを実行するステップは、前記特徴抽出器を使用して、前記細胞画像の特徴を抽出するステップと、所与の前記細胞画像の小さいサブセットを使用して、クラスタ成分を訓練するステップと、前記クラスタ成分を使用して、教師なしの方法で前記所与の細胞画像のクラスタを識別するステップと、を含む。オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングを実行するステップは、前記特徴抽出器を利用して、細胞画像の特徴を抽出するステップと、教師なしセルソーティングのために前記クラスタ成分を使用するステップと、を含む。前記方法は、前記特徴抽出器が訓練された後に、追加のデータセットを使用して、前記特徴抽出器を精細化するステップを更に含む。クラスタリングは、階層密度ベースの空間クラスタリング又は他のクラスタリングアルゴリズムを利用することができる。クラスタリングは、各クラスタの定義を含む前記抽出された特徴に基づいて、異なるタイプの細胞を分離してグループ化する。
【0007】
別の態様では、装置は、オフラインの初期画像ベースの教師なしクラスタリングを実行し、オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングを実行するためのアプリケーションを記憶するための非一時的メモリと、前記アプリケーションを処理するように構成される複数の処理ユニットであって、少なくとも1つの中央処理ユニットと少なくとも1つのグラフィックス処理ユニットとを含む複数の処理ユニットと、を含む。前記アプリケーションは、更に、グラウンドトゥルース情報を含む又は含まない1又は2以上の細胞画像データセットを受け取って、特徴抽出器を訓練することを含む訓練のためのものである。前記特徴抽出器は、いくつかの畳み込み層を含むニューラルネットワークに基づく。細胞画像のセットに対してオフライン初期クラスタリングを実行することは、前記特徴抽出器を使用して、前記細胞画像の特徴を抽出することと、所与の前記細胞画像の小さいサブセットを使用して、クラスタ成分を訓練することと、前記クラスタ成分を使用して、教師なしの方法で前記所与の細胞画像のクラスタを識別することと、を含む。オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングを実行することは、前記特徴抽出器を利用して、細胞画像の特徴を抽出することと、教師なしセルソーティングのために前記クラスタ成分を使用することと、を含む。前記アプリケーションは、更に、前記特徴抽出器が訓練された後に、追加のデータセットを使用して、前記特徴抽出器を精細化するためのものである。クラスタリングは、階層密度ベースの空間クラスタリング又は他のクラスタリングアルゴリズムを利用することができる。クラスタリングは、各クラスタの定義を含む前記抽出された特徴に基づいて、異なるタイプの細胞を分離してグループ化する。
【0008】
別の態様では、システムは、オフラインの画像ベースの教師なしクラスタリングを実行し、前記オフラインの画像ベースの教師なしクラスタリングに基づいて、オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングを実行するように構成される第1のコンピュータ装置と、前記第1のコンピュータ装置に1又は2以上の画像を送信するように構成される第2のコンピュータ装置と、を含む。前記第1のコンピュータ装置は、グラウンドトゥルース情報を含む又は含まない1又は2以上の細胞画像データセットを受け取って、特徴抽出器を訓練することを含む訓練のために構成される。前記特徴抽出器は、いくつかの畳み込み層を含むニューラルネットワークに基づく。細胞画像のセットに対してオフライン初期クラスタリングを実行することは、前記特徴抽出器を使用して、前記細胞画像の特徴を抽出することと、所与の前記細胞画像の小さいサブセットを使用して、クラスタ成分を訓練することと、前記クラスタ成分を使用して、教師なしの方法で前記所与の細胞画像のクラスタを識別することと、を含む。オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングを実行することは、前記特徴抽出器を利用して、細胞画像の特徴を抽出することと、教師なしセルソーティングのために前記クラスタ成分を使用することと、を含む。前記第1のコンピュータ装置は、前記特徴抽出器が訓練された後に、追加のデータセットを使用して、前記特徴抽出器を精細化するように更に構成される。クラスタリングは、階層密度ベースの空間クラスタリング又は他のクラスタリングアルゴリズムを利用することができる。クラスタリングは、各クラスタの定義を含む前記抽出された特徴に基づいて、異なるタイプの細胞を分離してグループ化する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】いくつかの実施形態による、特徴抽出器を訓練する方法のフローチャートである。
図2】いくつかの実施形態による、細胞画像のセットに対してクラスタ成分を訓練する方法のフローチャートである。
図3】いくつかの実施形態による、細胞画像のセットに対するオフライン初期クラスタリングの方法のフローチャートである。
図4】いくつかの実施形態による、オンラインシングルセルソーティングの方法のフローチャートである。
図5】いくつかの実施形態による、教師なしの画像ベースのセルクラスタリング及びソーティングフレームワークを実装するように構成される例示的なコンピュータ装置のブロック図である。
図6】いくつかの実施形態による、生体サンプル分析器の全体構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で説明する方法及びシステムは、(1)時間のかかる手動ゲーティングに取って代わるオフラインの画像ベースの教師なしクラスタリングと、(2)オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングとをサポートする学習フレームワークを含む。このフレームワークは、特徴抽出と、クラスタリングとを含む。訓練中に、グラウンドトゥルースを含む又は含まない1又は複数の細胞画像データセットを使用して、特徴抽出器を訓練する。特徴抽出器は、いくつかの畳み込み層を含むニューラルネットワークに基づく。特徴抽出器が訓練されると、特徴抽出器を使用して、教師なしセルクラスタリング及びソーティングのために細胞画像の特徴を抽出する。また、特徴抽出器が訓練された後に、追加のデータセットを使用して、特徴抽出器を更に精細化することができる。本明細書で説明する方法及びシステムは、画像ベースのオフラインセルクラスタリング及びオンラインシングルセルソーティングのための教師なし学習フレームワークにおいて、ニューラルネットワークベースの特徴抽出と、クラスタリングとを初めて組み合わせたものである。これは、オフライン初期クラスタリングのためのツールとして、従来のFACSワークフローにおいて、時間のかかる手動ゲーティングに取って代わる。これは、オンラインシングルセルソーティングのためのツールとして、細胞の形態学的情報なしでは正確に行うことができないアプリケーションを改善する又は可能にする。
【0011】
従来の蛍光活性化セルソーティング(FACS)は、細胞を蛍光マーカで標識することに依拠し、これは、細胞の形態学的情報が非常に限定されている。しかしながら、いくつかのアプリケーションは、細胞を正確に分取するために細胞の形態学的情報を必要とし、一方、いくつかのアプリケーションは、蛍光マーカに適していない。本明細書で説明する方法及びシステムは、蛍光マーカを含む又は含まない細胞画像に基づいて細胞をクラスタ化して分取するためのアプリケーションを可能にするフレームワークを実装する。いくつかの研究は、深層ニューラルネットワーク又は手作りの特徴に基づいて教師あり学習を使用する画像ベースのセルソーティングを提案した。研究は、訓練のためのグラウンドトゥルースを含む細胞画像を仮定したが、それを利用できない場合がある。本明細書で説明する方法及びシステムは、グラウンドトゥルースを含む又は含まない訓練を可能にするフレームワークを実装する。
【0012】
従来のFACSにおける手動ゲーティングは、時間がかかり、偏りがある場合がある。プロセスを助けるが、特定の手作りの特徴に依拠するソフトウェアが存在するが、このような特徴は、画像自体として十分な情報を提供しない場合がある。本明細書で説明する方法及びシステムは、より良好な性能のための画像及び深層学習を利用する。
【0013】
本明細書では、特徴抽出器とクラスタリングのためのクラスタ成分とを含むフレームワークを説明する。フレームワークは、時間のかかる手動ゲーティングに取って代わるオフラインの画像ベースの教師なしクラスタリングと、オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングとをサポートする。
【0014】
図1に、いくつかの実施形態による、特徴抽出器を訓練する方法のフローチャートを示す。ステップ100において、細胞画像データセットを受け取る。いくつかの実施形態では、グラウンドトゥルース情報を含む又は含まないデータセットを受け取る。いくつかの実施形態では、データセットは、画像及び/又はビデオを含む。データセットは、特定の撮像システム(例えば、1又は2以上のカメラ)を使用して取得され、1又は2以上の画像/ビデオ処理アルゴリズムを使用して処理される情報を含むことができる。いくつかの実施形態では、撮像システムは、フローサイトメータ又は細胞の画像を表示して取り込むための他のビューワの一部である。データセットをサーバに送信して記憶し、次に、訓練方法を実装するコンピュータ装置において受け取る(例えば、ダウンロードする)ことができる。訓練を教師なしで実行することができる。
【0015】
ステップ102において、特徴抽出器を実装する。特徴抽出器を使用して、画像から特徴を抽出する。特徴抽出器は、ニューラルネットワークに基づく。いくつかの実施形態では、特徴抽出器は、いくつかの畳み込み層を使用し、その後にプーリング層が続く。特徴抽出器を訓練するために、例示的な手法は、各サンプルと陽性及び陰性サンプルのセットを対照させて、ロスを計算することを含むcontrastive lossを使用することである。特徴抽出器が訓練された後に、追加のデータセットを使用して、特徴抽出器を更に精細化することができる。
【0016】
ステップ104において、クラスタリングからのフィードバックを実行する。いくつかの実施形態では、フィードバッククラスタリングは任意選択である。いくつかの実施形態では、クラスタは、任意選択的に、特徴抽出器を訓練するためのフィードバックを提供する。クラスタリングは、階層密度ベースのクラスタリング又は他のクラスタリングアルゴリズムを利用することができる。クラスタリングは、抽出された特徴に基づいて、異なるタイプの細胞を分離してグループ化する。階層密度ベースの空間クラスタリング(HDBSCAN)は、未知数のクラスを扱うことができる例示的なクラスタリングアルゴリズムである。HDBSCANは、イプシロン値にわたってノイズを含む密度ベースのクラスタリングを実行し、結果を統合して安定したクラスタリングを見つける。何らかの空間内のポイントのセットが与えられると、HDBSCANは、一緒に密に詰まったポイント(例えば、多くの近隣の隣接ポイントを有するポイント)を一緒にグループ化する。本明細書では、HDBSCANを説明するが、任意のクラスタリングアルゴリズムを利用することができる。
【0017】
図2に、いくつかの実施形態による、細胞画像のセットに対してクラスタ成分を訓練する方法のフローチャートを示す。いくつかの実施形態では、フェーズIIがクラスタ成分を訓練した後に、オフライン初期クラスタリング(フェーズIII)又はオンラインシングルセルソーティング(フェーズIV)において、クラスタ成分を使用することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、フェーズIIIを使用して、オフライン初期クラスタリングの一部として、クラスタ成分を訓練することもできる。このような場合、フェーズIIを使用せず、フェーズIIIにおいて訓練されたクラスタ成分を、オンラインシングルセルソーティング(フェーズIV)のために使用する。この例を更に進めて、オフライン初期クラスタリングを実行し、同時にクラスタ成分を訓練する。ユーザは、更なる分析のためのクラスタのサブセットを選び出すことができ、次に、フェーズIVにおいてオンラインシングルセルソーティングのために、訓練されたクラスタ成分を使用することができる。
【0019】
ステップ200において、グラウンドトゥルース情報を含まない細胞画像の小さいセットを取得する。いくつかの実施形態では、細胞画像のセットは、画像及び/又はビデオを含む。細胞画像のセットは、撮像システムを使用して取得され、1又は2以上の画像/ビデオ処理アルゴリズムを使用して処理される情報を含むことができる。いくつかの実施形態では、撮像システムは、フローサイトメータ又は細胞の画像を表示して取り込むための他のビューワの一部である。
【0020】
ステップ202において、ステップ102において訓練された特徴抽出器を使用して、細胞画像の小さいセットから細胞特徴を抽出する。
【0021】
ステップ204において、細胞画像の所与のセットを使用して、クラスタ成分を訓練する。クラスタのための例示的なアルゴリズムは、HDBSCAN(ノイズを含むアプリケーションの階層密度ベースの空間クラスタリング(Hierarchical Density-Based Spatial Clustering of Applications with Noise))であり、これは、未知数のクラスタを扱うという利点を有し、入力においてノイズを可能にする。
【0022】
図3に、いくつかの実施形態による、細胞画像のセットに対するオフライン初期クラスタリングの方法のフローチャートを示す。これを使用して、従来のFACSにおいて時間のかかる手動ゲーティングに取って代わることができる。ステップ300、302及び304は、それぞれ、ステップ200、202及び204に相当する。ステップ306において、ステップ204において訓練されたクラスタが、全ての細胞に対してクラスタを識別する。ステップ308において、ユーザは、更なる分析のための関心クラスタのサブセットを選び出すことができる。
【0023】
図4に、いくつかの実施形態による、オンラインシングルセルソーティングの方法のフローチャートを示す。ステップ400は、フローサイトメータを示す。フローサイトメータは、細胞又は粒子の集団の物理的及び化学的特性を検出及び測定するために使用される技術である。次に、プロセスにおいて、細胞又は粒子を含むサンプルを流体中に懸濁させ、フローサイトメータ機器に注入する。
【0024】
ステップ402において、訓練された特徴抽出器(例えば、ステップ102において訓練されたもの)が、各細胞画像から細胞特徴を抽出し、これは、画像の1又は複数のチャネル(例えば、明視野、暗視野など)を含むことができる。
【0025】
ステップ404において、ステップ204において訓練されたクラスタ成分を使用して、ステップ406において各細胞の細胞特徴を細胞クラスに分類することによってオンラインソーティングを行うようにする。オンラインセルソーティングのために、実装は未知数のクラスタに対して作動しノイズを可能にし、グラウンドトゥルースを利用できない時でも作動する。
【0026】
セルソーティングは、生物から細胞を採取し、それらのタイプに従って細胞を分離することを含む。画像ベースのセルソーティングでは、細胞画像の抽出された特徴に基づいて、細胞を分離することができる。リアルタイムソーティングは、クラスタの定義を利用することができる。例えば、システムは、細胞の特徴/成分を比較して、細胞がどのクラスタに最もぴったり一致するかを判断する。
【0027】
本明細書では、フェーズI~フェーズIVを説明するが、いくつかの実施形態では、フェーズIIをフェーズIIIと組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、ステップの順序、例えば、他の任意のステップの前にフェーズIを実行すること、又はフェーズI~IIIの後でのみフェーズIVを実行することは重要である。
【0028】
図5に、いくつかの実施形態による、教師なしの画像ベースのセルクラスタリング及びソーティングフレームワークを実装するように構成される例示的なコンピュータ装置のブロック図を示す。コンピュータ装置500を使用して、画像及びビデオなどの情報を取得、記憶、計算、処理、通信及び/又は表示することができる。コンピュータ装置500は、教師なしの画像ベースのセルクラスタリング及びソーティングフレームワークの態様のいずれかを実装することができる。一般に、コンピュータ装置500を実装するのに適したハードウェア構造は、ネットワークインターフェイス502、メモリ504、プロセッサ506、I/Oデバイス508、バス510、及び記憶装置512を含む。プロセッサの選択は、十分な速度を有する好適なプロセッサが選ばれる限り重要ではない。プロセッサ506は、複数の中央処理ユニット(CPU)を含むことができる。プロセッサ506及び/又はハードウェア520は、ニューラルネットワークに基づく効率的な特徴抽出のための1又は2以上のグラフィックス処理ユニット(GPU)を含むことができる。各GPUは、特徴抽出を実行するのに十分なGPUメモリを備えるべきである。メモリ504は、当該技術分野で公知の任意の従来のコンピュータメモリとすることができる。記憶装置512は、ハードドライブ、CDROM、CDRW、DVD、DVDRW、高精細ディスク/ドライブ、超高精細ドライブ、フラッシュメモリカード又は他の任意の記憶装置を含むことができる。コンピュータ装置500は、1又は2以上のネットワークインターフェイス502を含むことができる。ネットワークインターフェイスの例は、イーサネット又は他のタイプのLANに接続されるネットワークカードを含む。I/Oデバイス508は、以下のもの、すなわち、キーボード、マウス、モニタ、スクリーン、プリンタ、モデム、タッチスクリーン、ボタンインターフェイス及び他のデバイスのうちの1又は2以上を含むことができる。フレームワークを実装するのに使用される教師なしの画像ベースのセルクラスタリング及びソーティングフレームワークアプリケーション530は、記憶装置512及びメモリ504に記憶されて、アプリケーションが通常処理されるように処理される可能性が高い。コンピュータ装置500は、図5に示すより多い又は少ない構成要素を含むことができる。いくつかの実施形態では、教師なしの画像ベースのセルクラスタリング及びソーティングフレームワークハードウェア520が含まれる。図5のコンピュータ装置500は、教師なしの画像ベースのセルクラスタリング及びソーティングフレームワークのためのアプリケーション530及びハードウェア520を含むが、教師なしの画像ベースのセルクラスタリング及びソーティングフレームワークは、コンピュータ装置に、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はそれらの任意の組み合わせとして実装することができる。例えば、いくつかの実施形態では、教師なしの画像ベースのセルクラスタリング及びソーティングフレームワークアプリケーション530は、メモリにプログラムされて、プロセッサを使用して実行される。別の例では、いくつかの実施形態では、教師なしの画像ベースのセルクラスタリング及びソーティングフレームワークハードウェア520は、教師なしの画像ベースのセルクラスタリング及びソーティングフレームワークを実装するように専用に設計されるゲートを含む、プログラムされたハードウェアロジックである。
【0029】
いくつかの実施形態では、教師なしの画像ベースのセルクラスタリング及びソーティングフレームワークアプリケーション530は、いくつかのアプリケーション及び/又はモジュールを含む。いくつかの実施形態では、モジュールは、1又は2以上のサブモジュールも含む。いくつかの実施形態では、より少ない又は追加のモジュールを含むことができる。
【0030】
好適なコンピュータ装置の例は、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、コンピュータワークステーション、サーバ、メインフレームコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータ、携帯情報端末、セルラ電話/携帯電話、スマート家電、ゲーム機、デジタルカメラ、デジタルカムコーダ、カメラ付き携帯電話、スマートフォン、携帯音楽プレーヤー、タブレットコンピュータ、移動体デバイス、ビデオプレーヤー、ビデオディスクライター/プレーヤー(例えば、DVDライター/プレーヤー、高精細ディスクライター/プレーヤー、超高精細ディスクライター/プレーヤー)、テレビジョン、家庭用娯楽システム、拡張現実デバイス、仮想現実デバイス、スマートジュエリー(例えば、スマートウォッチ)、車両(例えば、自動運転車両)又は他の任意の好適なコンピュータ装置を含む。
【0031】
図6に、いくつかの実施形態による、生体サンプル分析器の全体構成を概略的に示す図を示す。
【0032】
図6は、本開示の生体サンプル分析器の例示的な構成を示す。図6に示す生体サンプル分析器6100は、流路C内を流れる生体サンプルSに光を照射する光照射ユニット6101と、生体サンプルSに照射することによって発生する光を検出する検出ユニット6102と、検出ユニットによって検出される光についての情報を処理する情報処理ユニット6103と、を含む。生体サンプル分析器6100は、例えば、フローサイトメータ又はイメージングサイトメータである。生体サンプル分析器6100は、生体サンプル中の特定の生体粒子Pを選別するソーティングユニット6104を含むことができる。ソーティングユニットを含む生体サンプル分析器6100は、例えば、セルソータである。
【0033】
(生体サンプル)
生体サンプルSは、生体粒子を含む液体サンプルとすることができる。生体粒子は、例えば、細胞又は非細胞生体粒子である。細胞は、生きた細胞とすることができ、そのより具体的な例は、赤血球及び白血球などの血液細胞、及び精子及び受精卵などの生殖細胞を含む。また、細胞は、全血などのサンプルから直接収集されるものとすることができるか、又は培養の後に取得される培養細胞とすることができる。非細胞生体粒子は、細胞外小胞、特に、例えば、エクソソーム及びマイクロベシクルである。1又は2以上の標識物質(例えば、色素(特に蛍光色素)、及び蛍光色素で標識された抗体)を用いて、生体粒子を標識することができる。本開示の生体サンプル分析器によって、生体粒子以外の粒子を分析することができ、較正等のためにビーズ等を分析することができることに留意されたい。
【0034】
(流路)
流路Cは、生体サンプルSの流れが形成されるように設計される。特に、生体サンプルに含まれる生体粒子が実質的に1列に配列されている流れが形成されるように、流路Cを設計することができる。流路Cを含む流路構造は、層流が形成されるように設計することができる。特に、生体サンプルの流れ(サンプル流)がシース液の流れによって取り囲まれる層流が形成されるように、流路構造を設計する。流路構造の設計は、当業者によって適宜選択することができるか、又は公知の構造を採用することもできる。流路Cは、マイクロチップ(マイクロメートルのオーダーの流路を有するチップ)又はフローセルなどの流路構造に形成することができる。流路Cの幅は、1mm以下であり、特に、10μm以上1mm以下とすることができる。流路C及び流路Cを含む流路構造は、プラスチック又はガラスなどの材料で形成することができる。
【0035】
本開示の生体サンプル分析器は、流路C内を流れる生体サンプル、特に、生体サンプル中の生体粒子に、光照射ユニット6101からの光が照射されるように設計される。本開示の生体サンプル分析器は、生体サンプル上の光の照射点が、流路Cが形成される流路構造内に位置するように設計することができるか、又は照射点が流路構造の外側に位置するように設計することができる。前者の場合の例は、マイクロチップ又はフローセル内の流路C上に光が発せられる構造とすることができる。後者の場合、流路構造(特に、そのノズル部分)を出た後の生体粒子に光を照射することができ、例えば、ジェットインエアータイプのフローサイトメータを採用することができる。
【0036】
(光照射ユニット)
光照射ユニット6101は、光を発する光源ユニットと、照射点に光を導く導光光学システムとを含む。光源ユニットは、1又は2以上の光源を含む。光源のタイプは、例えば、レーザ光源又はLEDである。各光源から発せられるべき光の波長は、紫外線光、可視光、及び赤外線光の任意の波長とすることができる。導光光学システムは、例えば、ビームスプリッタ、ミラー、又は光ファイバなどの光学部品を含む。導光光学システムは、光を集光するためのレンズ群を含むこともでき、例えば、対物レンズを含む。生体サンプル及び光が交差する1又は2以上の照射点が存在することができる。光照射ユニット6101は、1つの光源又は異なる光源から1つの照射点上に発せられる光を収集するように設計することができる。
【0037】
(検出ユニット)
検出ユニット6102は、生体粒子上に光を発することによって発生する光を検出する少なくとも1つの光検出器を含む。検出すべき光は、例えば、蛍光又は散乱光(前方散乱光、後方散乱光、及び側方散乱光のうちの1又は2以上など)とすることができる。各光検出器は、1又は2以上の受光素子を含み、例えば、受光素子アレイを有する。各光検出器は、受光素子として、1又は2以上の光電子増倍管(PMT)及び/又はAPD及びMPPCなどのフォトダイオードを含むことができる。光検出器は、例えば、複数のPMTが1次元方向に配置されるPMTアレイを含む。検出ユニット6102は、CCD又はCMOSなどのイメージセンサを含むこともできる。イメージセンサを用いて、検出ユニット6102は、生体粒子の画像(例えば、明視野画像、暗視野画像、又は蛍光画像など)を取得することができる。
【0038】
検出ユニット6102は、所定の検出波長の光を対応する光検出器に到達させる検出光学システムを含む。検出光学システムは、プリズム又は回折格子などの分光ユニット、又はダイクロイックミラー又は光フィルタなどの波長分離ユニットを含む。検出光学システムは、例えば、生体粒子への光照射によって発生する光を分散させて、生体粒子の標識に用いられる蛍光色素の数よりも多い数の光検出器を用いて分散光を検出するように設計される。このような検出光学システムを含むフローサイトメータは、スペクトルフローサイトメータと呼ばれる。更に、検出光学システムは、例えば、生体粒子への光照射によって発生する光からの特定の蛍光色素の蛍光波長帯域に対応する光を分離して、対応する光検出器に分離光を検出させるように設計される。
【0039】
検出ユニット6102は、光検出器によって取得される電気信号をデジタル信号に変換する信号処理ユニットを含むこともできる。信号処理ユニットは、変換を実行する装置としてA/Dコンバータを含むことができる。信号処理ユニットによって実行される変換によって取得されるデジタル信号を、情報処理ユニット6103に送信することができる。デジタル信号は、情報処理ユニット6103によって、光に関連するデータ(以下「光データ」とも呼ばれる)として扱うことができる。光データは、例えば、蛍光データを含む光データとすることができる。より具体的には、光データは、光強度のデータとすることができ、光強度は、蛍光を含む光の光強度データとすることができる(光強度データは、面積、高さ、及び幅などの特徴量を含むことができる)。
【0040】
(情報処理ユニット)
情報処理ユニット6103は、様々な種類のデータ(例えば、光データ)の処理を実行する処理ユニットと、例えば、様々な種類のデータを記憶する記憶ユニットとを含む。処理ユニットが、検出ユニット6102からの蛍光色素に対応する光データを取得する場合、処理ユニットは、光強度データに対して蛍光漏れ込み補正(コンペンセーションプロセス)を実行することができる。スペクトルフローサイトメータの場合、処理ユニットは、また、光データに対して蛍光分離プロセスを実行して、蛍光色素に対応する光強度データを取得する。蛍光分離プロセスは、例えば、特開2011-232259号公報に開示されるアンミキシング(unmixing)方法によって実行することができる。検出ユニット6102がイメージセンサを含む場合、処理ユニットは、イメージセンサによって取得される画像に基づいて、生体粒子についての形態学的情報を取得することができる。記憶ユニットは、取得された光データを記憶できるように設計することができる。記憶ユニットは、アンミキシングプロセスで使用すべきスペクトル参照データを更に記憶できるように設計することができる。
【0041】
生体サンプル分析器6100が後述するソーティングユニット6104を含む場合、情報処理ユニット6103は、光データ及び/又は形態学的情報に基づいて、生体粒子を分取すべきかどうかを判断することができる。次に、情報処理ユニット6103は、判断の結果に基づいてソーティングユニット6104を制御し、ソーティングユニット6104によって生体粒子を分取することができる。
【0042】
情報処理ユニット6103は、様々な種類のデータ(例えば、光データ及び画像など)を出力できるように設計することができる。例えば、情報処理ユニット6103は、光データに基づいて生成される様々な種類のデータ(例えば、2次元プロット又はスペクトルプロットなど)を出力することができる。情報処理ユニット6103は、様々な種類のデータの入力を受け入れることができるように設計することもでき、例えば、ユーザによるプロット上のゲーティングプロセスを受け入れる。情報処理ユニット6103は、出力ユニット(例えば、ディスプレイなど)又は入力ユニット(例えば、キーボードなど)を含み、出力又は入力を実行することができる。
【0043】
情報処理ユニット6103は、汎用コンピュータとして設計することができ、例えば、CPU、RAM、及びROMを含む情報処理装置として設計することができる。情報処理ユニット6103は、光照射ユニット6101及び検出ユニット6102が含まれるハウジング内に含まれることができるか、又はハウジングの外側に位置することができる。更に、情報処理ユニット6103によって実行すべき様々なプロセス又は機能は、ネットワークを介して接続されるサーバコンピュータ又はクラウドによって実現することができる。
【0044】
(ソーティングユニット)
ソーティングユニット6104は、情報処理ユニット6103によって実行される判断の結果に従って、生体粒子のソーティングを実行する。ソーティング方法は、振動によって生体粒子を含む液滴が生成され、分取すべき液滴に電荷が加えられ、電極によって液滴の移動方向が制御される方法とすることができる。ソーティング方法は、流路構造内の生体粒子の移動方向を制御することによって分取する方法とすることができる。流路構造は、例えば、圧力(注入又は吸引)又は電荷に基づく制御機構を有する。流路構造の例は、流路Cが下流側で回収流路と廃液流路とに分岐して、特定の生体粒子が回収流路内に収集される流路構造を有するチップ(例えば、特開2020-076736号公報に開示されるチップ)とすることができる。
【0045】
本明細書で説明する教師なしの画像ベースのセルクラスタリング及びソーティングフレームワークを利用するために、カメラを含むフローサイトメータなどの装置を使用して、コンテンツを取得し、装置は、取得したコンテンツを処理することができる。教師なしの画像ベースのセルクラスタリング及びソーティングフレームワークは、ユーザの援助によって又はユーザが関与することなく自動的に実装することができる。
【0046】
動作時、グラウンドトゥルースを利用できない場合でも、教師なしの画像ベースのセルクラスタリング及びソーティングフレームワークを使用することができ、非常に少ないニューラルネットワーク層に基づく特徴抽出は、リアルタイムアプリケーションのための抽出の速度を向上させる。更に、教師なしの画像ベースのセルクラスタリング及びソーティングフレームワークは、アプリケーションが、蛍光マーカを含む又は含まない細胞画像に基づいて細胞を分取できるようにする。
【0047】
画像ベースの教師なしセルクラスタリング及びソーティングのためのフレームワークのいくつかの実施形態
1.方法であって、
オフラインの初期画像ベースの教師なしクラスタリングを実行するステップと、
オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングを実行するステップと、
を含む方法。
【0048】
2.グラウンドトゥルース情報を含む又は含まない1又は2以上の細胞画像データセットを受け取って、特徴抽出器を訓練するステップを含む訓練を更に含む、第1項に記載の方法。
【0049】
3.前記特徴抽出器は、いくつかの畳み込み層を含むニューラルネットワークに基づく、第2項に記載の方法。
【0050】
4.細胞画像のセットに対してオフライン初期クラスタリングを実行するステップは、前記特徴抽出器を使用して、前記細胞画像の特徴を抽出するステップと、所与の前記細胞画像の小さいサブセットを使用して、クラスタ成分を訓練するステップと、前記クラスタ成分を使用して、教師なしの方法で前記所与の細胞画像のクラスタを識別するステップと、を含む、第2項に記載の方法。
【0051】
5.オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングを実行するステップは、前記特徴抽出器を利用して、細胞画像の特徴を抽出するステップと、教師なしセルソーティングのために前記クラスタ成分を使用するステップと、を含む、第2項に記載の方法。
【0052】
6.前記特徴抽出器が訓練された後に、追加のデータセットを使用して、前記特徴抽出器を精細化するステップを更に含む、第2項に記載の方法。
【0053】
7.クラスタリングは、階層密度ベースの空間クラスタリングを利用するステップを含む、第1項に記載の方法。
【0054】
8.クラスタリングは、各クラスタの定義を含む前記抽出された特徴に基づいて、異なるタイプの細胞を分離してグループ化する、第7項に記載の方法。
【0055】
9.装置であって、
オフラインの初期画像ベースの教師なしクラスタリングを実行し、
オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングを実行する、
ためのアプリケーションを記憶するための非一時的メモリと、
前記アプリケーションを処理するように構成される複数の処理ユニットであって、少なくとも1つの中央処理ユニットと、少なくとも1つのグラフィックス処理ユニットとを含む複数の処理ユニットと、
を含む装置。
【0056】
10.前記アプリケーションは、更に、グラウンドトゥルース情報を含む又は含まない1又は2以上の細胞画像データセットを受け取って、特徴抽出器を訓練することを含む訓練のためのものである、第9項に記載の装置。
【0057】
11.前記特徴抽出器は、いくつかの畳み込み層を含むニューラルネットワークに基づく、第10項に記載の装置。
【0058】
12.細胞画像のセットに対してオフライン初期クラスタリングを実行することは、前記特徴抽出器を使用して、前記細胞画像の特徴を抽出することと、所与の前記細胞画像の小さいサブセットを使用して、クラスタ成分を訓練することと、前記クラスタ成分を使用して、教師なしの方法で前記所与の細胞画像のクラスタを識別することと、を含むことを特徴とする、第10項に記載の装置。
【0059】
13.オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングを実行することは、前記特徴抽出器を利用して、細胞画像の特徴を抽出することと、教師なしセルソーティングのために前記クラスタ成分を使用することと、を含む、第10項に記載の装置。
【0060】
14.前記アプリケーションは、更に、前記特徴抽出器が訓練された後に、追加のデータセットを使用して、前記特徴抽出器を精細化するためのものである、第10項に記載の装置。
【0061】
15.クラスタリングは、階層密度ベースの空間クラスタリングを利用することを含む、第9項に記載の装置。
【0062】
16.クラスタリングは、各クラスタの定義を含む前記抽出された特徴に基づいて、異なるタイプの細胞を分離してグループ化する、第15項に記載の装置。
【0063】
17.システムであって、
オフラインの画像ベースの教師なしクラスタリングを実行し、
前記オフラインの画像ベースの教師なしクラスタリングに基づいて、オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングを実行する、
ように構成される第1のコンピュータ装置と、
前記第1のコンピュータ装置に1又は2以上の画像を送信するように構成される第2のコンピュータ装置と、
を含むシステム。
【0064】
18.前記第1のコンピュータ装置は、グラウンドトゥルース情報を含む又は含まない1又は2以上の細胞画像データセットを受け取って、特徴抽出器を訓練することを含む訓練のために構成される、第17項に記載のシステム。
【0065】
19.前記特徴抽出器は、いくつかの畳み込み層を含むニューラルネットワークに基づく、第18項に記載のシステム。
【0066】
20.細胞画像のセットに対してオフライン初期クラスタリングを実行することは、前記特徴抽出器を使用して、前記細胞画像の特徴を抽出することと、所与の前記細胞画像の小さいサブセットを使用して、クラスタ成分を訓練することと、前記クラスタ成分を使用して、教師なしの方法で前記所与の細胞画像のクラスタを識別することと、を含む、第18項に記載のシステム。
【0067】
21.オンラインの画像ベースのシングルセルソーティングを実行することは、前記特徴抽出器を利用して、細胞画像の特徴を抽出することと、教師なしセルソーティングのために前記クラスタ成分を使用することと、を含む、第18項に記載のシステム。
【0068】
22.前記第1のコンピュータ装置は、前記特徴抽出器が訓練された後に、追加のデータセットを使用して、前記特徴抽出器を精細化するように更に構成される、第18項に記載のシステム。
【0069】
23.クラスタリングは、階層密度ベースの空間クラスタリングを利用することを含む、第17項に記載のシステム。
【0070】
24.クラスタリングは、各クラスタの定義を含む前記抽出された特徴に基づいて、異なるタイプの細胞を分離してグループ化する、第23項に記載のシステム。
【0071】
本発明の構成及び動作の原理の理解を容易にするために、詳細内容を組み込んだ特定の実施形態に関して本発明を説明してきた。このような本明細書における特定の実施形態及びその詳細内容への言及は、本明細書に添付される特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。特許請求の範囲によって規定される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、例示のために選択された実施形態に、他の様々な修正を行うことができることは、当業者に容易に理解されるであろう。
【符号の説明】
【0072】
100 細胞画像データセットを受け取る
102 特徴抽出器を実装
104 クラスタリングからのフィードバックを実行
200 グラウンドトゥルース情報を含まない細胞画像のセットを取得
202 細胞特徴を抽出
204 クラスタ成分を訓練
300 グラウンドトゥルース情報を含まない細胞画像のセットを取得
302 細胞特徴を抽出
304 クラスタ成分を訓練
306 訓練されたクラスタがクラスタを識別
308 ユーザがクラスタのサブセットを選び出す
400 フローサイトメータ
402 訓練された特徴抽出器が細胞特徴を抽出
500 コンピュータ装置
502 ネットワークインターフェイス
504 メモリ
506 プロセッサ
508 I/Oデバイス
510 バス
512 記憶装置
520 教師なしの画像ベースのセルクラスタリング及びソーティングフレームワークハードウェア
530 教師なしの画像ベースのセルクラスタリング及びソーティングフレームワークアプリケーション
6101 光照射ユニット
6102 検出ユニット
6103 情報処理ユニット
6104 ソーティングユニット
C 流路
P 生体粒子
S 生体サンプル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】