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特表2023-542048コヒーレント波で対象を撮像する方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】コヒーレント波で対象を撮像する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537720
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(85)【翻訳文提出日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2021074028
(87)【国際公開番号】W WO2022043584
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】2008821
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523072108
【氏名又は名称】バルピレク
【氏名又は名称原語表記】VALPIREC
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】モーリス、フランソワ
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE15
4C601GB03
4C601HH29
4C601JB24
4C601JC20
4C601LL26
(57)【要約】
本発明は以下のステップを含む撮像方法に関する:-送信機/受信機の励起周波数範囲に含まれる別個の第1及び第2の周波数帯域における第1及び第2の電気励起信号の連続印加に応答して、第1及び第2の波動をそれぞれ連続して送信するステップ、第1及び第2の音波エコー又は電磁エコーを受信して、第1及び第2の電気受信信号に変換するステップ、-第1及び第2の電気受信信号をデジタル化するステップ(100)、-異なる復調周波数で第1及び第2のデジタル信号を混合するステップ(200)、-第1及び第2の復調信号を濾波するステップ(300)、-第1及び第2の濾波信号をデシメートするステップ(400)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機によって記録された音波信号又は電磁信号を処理する方法であって、
前記音波信号又は前記電磁信号は、観察対象を明らかにするために送信機によって送信された前記音波又は電磁波の前記対象からの反射の後、前記観察対象によって反射された前記音波又は電磁波を表示し、
前記送信機の励起周波数範囲に含まれる第1及び第2の別個の周波数帯域における第1及び第2の電気励起信号を前記送信機に連続印加したことに応答して、前記送信機により前記第1及び第2の波動を連続して送信し、前記第1及び第2の電気励起信号の各々前記周波数帯域は、-6dBの帯域幅に基づいて測定され、前記送信機の前記周波数範囲の1/4未満であるステップと、
前記受信機により、前記観察対象に含まれる対象物の境界面における前記第1及び第2の波動の各反射に起因した第1及び第2の音波又は電磁エコーを受信し、前記第1及び第2の音波又は電磁エコーをそれぞれ第1及び第2の電気受信信号に変換するステップと、
前記第1及び第2の電気受信信号を前処理して、前処理済み信号を取得するステップと、を含み、
前記前処理は、
・前記第1及び第2の電気受信信号をデジタル化(100)し、第1及び第2のデジタル信号を取得すること、
・前記第1及び第2のデジタル信号を少なくとも1回混合(200)することで、第1及び第2の混合信号を取得し、前記第1のデジタル信号の前記混合周波数は、前記第2のデジタル信号の前記混合周波数と異なること、
・前記第1及び第2の混合信号を少なくとも1回低域濾波(300)し、第1及び第2の濾波信号を取得し、低域フィルタの破断周波数は、-6dB帯域幅に基づいて測定され、前記送信機の前記周波数範囲の1/8未満であること、
・前記第1及び第2の濾波信号を少なくとも1回デシメート(400)することで、前記送信機の前記周波数範囲の半分未満である、復調されデシメートされた複素試料のデータ流量であることを有することを特徴とする第1及び第2のデシメート信号を取得する方法。
【請求項2】
前記第1及び第2のデジタル信号を復調するステップにおいて、
前記第1のデジタル信号の各混合周波数は、
・前記第1の周波数帯域の中心周波数、
・前記第1の周波数帯域の高調波、又は
・前記第1の周波数帯域の低調波
と等しくなるように選択され、
前記第2のデジタル信号の各混合周波数は、
・前記第2の周波数帯域の中心周波数、
・前記第2の周波数帯域の高調波、又は
・前記第2の周波数帯域の低調波
と等しくなるように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の電気励起信号は、各々、一時的にアポダイズされたタイプの電気信号である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記送信機は、異なる伝播方向に沿って波動を送信するのに適し、前記第1及び第2の波動を連続して送信するステップは、
第1の方向に沿って前記第1の波動のみを送信し、
前記第1の方向と異なる第2の方向に沿って前記第2の波動のみを送信するサブステップを含む、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記送信機は、線形に延在するトランスデューサのセットを含み、前記第1及び第2の波動を送信するステップは、
前記トランスデューサのセットのトランスデューサの第1の群から前記第1の波動を送信し、
前記トランスデューサのセットのトランスデューサの第2の群から前記第2の波動を送信し、前記トランスデューサの第2の群は前記トランスデューサの第1の群と異なるサブステップを含む、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記受信機により、前記前処理された信号をリモート処理デバイスに向けて送信するステップを更に含む請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記送信ステップは、前記送信機の前記周波数範囲に含まれるN個の別個の周波数帯域内のN個の電気励起信号を連続して印加したことに応答して、N個の波動を送信することを含み、Nは3以上の整数であり、
前記受信するステップは、N個の音波又は電磁エコーを受信し、それらをN個の各電気受信信号に変換することを含み、
前記前処理ステップは、
・N個の前記電気受信信号をデジタル化することで、N個のデジタル信号を取得すること、
・各デジタル信号を混合することで、混合信号を取得し、各デジタル信号の前記混合周波数は、関連する励起信号の前記周波数帯域の中心周波数、高調波、又は低調波に等しくすること、
・各混合信号を低域濾波することで、濾波信号を取得し、低域濾波とすること、
・各濾波信号をデシメートすることで、デシメート信号を取得すること、
を含み、
前記方法は、前記観察対象の画像を取得する処理ステップを更に含み、前記処理ステップは、
各デシメート信号に基づく基本画像を形成するサブステップであって、前記基本画像の形成するステップは、前記デシメート信号に含まれる情報を使用して、2Dサーフェス又は3Dボリュームにわたり延在するポイントの計算を含み、
形成された各基本画像を共通基準周波数に伝える混変調のサブステップと、
前記観察対象の最終画像を取得するために、前記混変調された基本画像の合算サブステップと、
を含む、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
受信機によって記録された音波信号又は電磁信号を処理するシステムであって、
前記音波信号又は電磁信号は、観察対象を明らかにするために送信機によって送信された前記音波又は電磁波の前記対象からの反射の後の前記観察対象によって反射された前記音波又は電磁波を表す、システムであって、
コントローラは、
・前記送信機の励起周波数範囲に含まれる第1及び第2の別個の周波数帯域における第1及び第2の電気励起信号を前記送信機に連続印加したことに応答して、前記第1及び第2の波動を連続して送信するステップであって、前記第1及び第2の電気励起信号の各々の前記周波数帯域は、-6dBの帯域幅に基づいて測定され、前記送信機の前記周波数範囲の1/4未満であるステップと、
・前記受信機により、前記観察対象に含まれる対象物の境界面における前記第1及び第2の波動の各反射に起因した第1及び第2の音波又は電磁エコーを受信し、前記第1及び第2の音波又は電磁エコーをそれぞれ第1及び第2の電気受信信号に変換するステップと、
を制御し、
前記第1及び第2の電気受信信号を前処理して、前処理済み信号を取得する取得ユニットであって、前記前処理は、
・前記第1及び第2の電気受信信号をデジタル化し、第1及び第2のデジタル信号を取得すること、
・前記第1及び第2のデジタル信号を混合することで、第1及び第2の混合信号を取得し、前記第1のデジタル信号の前記混合周波数は、前記第2のデジタル信号の前記混合周波数と異なること、
・前記第1及び第2の混合信号を低域濾波し、第1及び第2の濾波信号を取得し、低域フィルタの破断周波数は、-6dB帯域幅に基づいて測定され、前記送信機の前記周波数範囲の1/8未満であること、
・前記第1及び第2の濾波信号をデシメートすることで、第1及び第2のデシメート信号を取得し、前記送信機の前記周波数範囲の半分未満である、復調されデシメートされた複素試料のデータ流量であることを特徴とするシステム。
【請求項9】
コンピュータで実行されると、請求項1~7の何れか一項に記載の方法のステップを実行することが意図されるプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定可能な位相の波動、特に音波若しくは超音波又は電磁波を送信することにより撮像する一般的な技術分野に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、生物学的な人間又は動物の組織等の対象物又は拡散媒体を撮像するデバイス及び方法に関する。
【0003】
本文章の残りの部分で、超音波医療撮像を参照して本発明について説明するが、本明細書に記載される教示が、制御可能な振幅、周波数、及び位相の波動(即ちコヒーレント波)を使用して他のタイプの用途(非医療超音波、ソナー、レーダー等)でも使用可能なことが理解される。
【背景技術】
【0004】
1.従来の撮像システム及びウルトラポータブル撮像システム
超音波撮像は、その非侵襲性、比較的低コストなこと、及び有害な電離放射線に患者を暴露しないことに起因して、多くの診断手順で使用されている。
【0005】
図1を参照すると、従来使用される超音波撮像システムは、
-複数のトランスデューサを含む音波プローブ1と、
-制御・処理コンソール2であって、特に、
・プローブにより取得された信号を処理する処理手段21、
・撮像システムを構成する入力手段22、及び
・超音波像及び/又は例えば音信号又は光信号の送信等の対象物(標的物体)に関連する他の情報を表示するディスプレイ手段23
を含む制御・処理コンソール2と、
を備える。
【0006】
プローブ1は、プローブ1に電力を供給し、プローブ1とコンソール2との間でデータを伝送する有線通信手段11-導電線等-によりコンソール2に接続される。
【0007】
プローブ1は圧電トランスデューサのアレイを含み、圧電トランスデューサのアレイは、
-送信フェーズにおいて、電気パルスを受信し、対象物に向けて1つ又は複数の所与の方向に、異なるトランスデューサに印加される電圧の位相シフト又は遅延の関数としての1つ又は複数の可変入射角に従って励起超音波(集束波又は非集束波)を送信し、
-受信フェーズにおいて、異なる音波インピーダンスの領域(対象物の境界面における密度の異なる領域であることができる)間の境界面での各入射超音波の反射に起因した音波エコーを受信する。
【0008】
次いで、トランスデューサにより受信された音波エコーは電気信号に変換され、処理されて、画像の各ポイントのエコーの値及びその位置を計算する(例えば超音波の送信と音波エコーの受信との間の経過時間を測定することにより)。
【0009】
そのような従来の撮像システムには、相当な計算力が配置され、コンソール2は有線通信手段11により接続されるため、プローブ1とコンソール2との間で伝送することができるデータ量に制限がないという利点がある。
【0010】
しかしながら、これらの従来の撮像システムの主な欠点は、嵩張ること、特にプローブとコンソールとの間の有線接続の嵩張りの管理に関する。ハードウェア能力(メモリ、計算力等)が製造時に決まるため、別の欠点はそのようなシステムの更新の難しさに関する。
【0011】
この15年間で、ウルトラポータブル超音波撮像システムが出現した。そのようなウルトラポータブル撮像システム-スマートフォンと実質的に同等のサイズ-は、非常に容易に輸送することができる。ウルトラポータブル撮像システム(又は「ウルトラポータブルプローブ」)は特に、超音波信号を取得するトランスデューサのアレイと、通信手段と、メモリと、コンピュータとを備える。
【0012】
従来技術による既知のウルトラポータブル撮像システムは、ウルトラポータブルプローブ内部での画像形成を準備するアーキテクチャを有する。
【0013】
これには多くの欠点がある。実際に、ウルトラポータブルプローブで画像形成処理を実行すると、プローブを加熱させ、この加熱は超音波検査画像の形成速度を遅らせる恐れがあり、低速化は望ましくない。さらに特定の場合、撮像技法を実施するには、ウルトラポータブルプローブのコンピュータの能力を超える処理リソースが必要であり得る。
【0014】
これらの欠点を是正するために、本発明は、超音波検査画像がプローブに含まれない計算ユニットによって生成されるウルトラポータブル撮像システムの開発を提案する。
【0015】
その場合、超音波検査画像を生成するために、プローブによって取得(且つ/又は前処理)されたデータをリモート計算ユニットに送信する必要がある。
【0016】
このデータ送信が有線通信手段を使用して実施されるか、それとも無線通信手段を使用して実施されるかを問わず、アクセス可能なデータ転送速度は典型的には従来の撮像システムのデータ転送速度の1/100未満である。したがって、従来の超音波撮像システムから得られた超音波検査画像量と等しい(又は高い)品質の超音波検査画像の取得を可能にしながら、ウルトラポータブルプローブとリモート計算ユニットとの間で伝送されるデータ量を最小に抑えることが好ましい。空間解像度に加えて、対象物の超音波検査画像の品質は2つのパラメータにも依存する:
-信号対雑音比、及び
-コントラスト解像度。
【0017】
2.超音波検査画像の品質を改善するための既知の解決策
2.1.集束画像作成
対象物の超音波検査画像の品質を改善するために、トランスデューサ12により送信される超音波を対象点3に集束することを構成とする第1の技法が既知である。
【0018】
より正確には、図2を参照すると、トランスデューサ12に印加される励起電圧の遅延(又は位相)及び振幅を選択することにより、トランスデューサ12は、超音波を結合して、その結果、良好な空間解像度で対象点3に集束する超音波13を形成するように制御し得る。
【0019】
したがって、各ショット(即ち全てのトランスデューサによる送信/受信)により、対象焦点3に関する情報を取得することが可能になり、この動作を異なる対象点で繰り返して、対象物の完全な超音波検査画像を取得する必要がある。例示として、集束ショットから生成された完全な超音波検査画像は64~256のショット(又はそれを超える数のショット)を必要とし得る。
【0020】
各ショットで、往復点の拡散関数は、送信の拡散関数と受信の拡散関数との積であり、それにより、コントラストを改善することが可能になる。実際に、送信及び受信は両方とも狭いエリアに集中するため、低エコー(hypoechogenic)エリアは、近隣の低エコーエリア(「クラッター」)からの干渉信号を受信する機会がより低く、コントラストを実際の値近くに維持するのに寄与する。
【0021】
信号対雑音比は、集束エリア(線に沿った超音波エネルギーの集中)で高く、まず、励起電圧を上げ(安全規制又はハードウェアにより許される限度内で)、次いで、同じパラメータを有するショットを累積する(温度限度がない場合)ことにより更に最適化することができる。累積信号は、同様のショットの数に伴って増大し、雑音-ランダムであると仮定される-は、ショット数の平方根に伴って増大する。したがって、信号対雑音比の強度も、ショット数の平方根として増大する。
【0022】
この技法の一欠点は、対象物の完全な超音波検査画像を形成するために必要なショットが多数である(対象物の完全な画像を形成するには、典型的には64~256のショットが必要である)ことに関連する。
【0023】
したがって、取得プローブとリモート計算ユニットとの間で伝送する必要があるデータ量が大きすぎるため、この技法はリモート計算手段を有するウルトラポータブル撮像システムの場合に適さない。
【0024】
2.2.合成画像作成
送受信数を潜在的に低減するのに使用される別の既知の撮像技法は、合成画像作成であり、合成画像作成は、1つ又は複数の平面(又は球面若しくは発散、又は時空間コードによって指定され、又は集束の微細度がより低いビームを可能にするように深い焦点を有する)超音波を対象物に向けて送信することを構成要素とする。軸方向解像度を最大にするために、各トランスデューサに印加される励起信号は一般に、持続時間が短く、帯域幅が広い信号である。
【0025】
集束画像作成と異なり、合成画像作成では、最初のショットが対象(媒体)全体を明らかにするする励起である場合、このショットから完全な超音波検査画像を取得することができる。
【0026】
対象物の超音波検査画像の品質を改善するために、幾つかの平面(又は球面又は発散)超音波を異なる角度に沿って対象物に送信することが既に提供されている。
【0027】
より正確には、図3を参照すると、トランスデューサ12に印加される励起電圧の位相及び振幅の関数として、超音波を結合し、その結果、撮像する組織を通して所望の方向15に沿って伝播する平面超音波14を形成するようにトランスデューサ12を制御することが可能である。結果として生成されるこの平面超音波14は異なる角度(即ち異なる方向)に送信されて、側方解像度を改善するとともに(送信における合成により)、コントラスト及び信号対雑音比を改善する。
【0028】
実際に、結果として生成された超音波14は集束しないため、往復点の拡散関数(PSF又は点拡散関数)は、この集束しないことから送信において悪影響を受け、1つのショットから得られた各画像のコントラストは、セクション2で説明した従来の集束画像形成技法よりも低い。同様に、集束しないことに起因して、受信信号の強度値も低く、それにより、信号対雑音比も、ポイント2で説明した従来の集束画像作成技法よりも低い。
【0029】
信号対雑音比及びコントラストの両方を改善するために、ビーム形成により再構築された基本画像をコヒーレントに合算することが既知の実施であり、各基本画像は、結果として生成された各配向波14、即ち各方向(即ち各角度)に沿って送信される波動から取得される。換言すれば、各配向ショット(即ち全てのトランスデューサ12による送信/受信)で、基本画像がビーム形成により再構築される。これらの異なる基本画像を合算することにより、対象物の最終超音波検査画像を取得することが可能になる。
【0030】
この合成画像形成技法を用いる場合、信号は基本画像数(又は角度数)に実質的に比例し、一方、雑音は基本画像数(又は角度数)の平方根に比例し、したがって、信号対雑音比及びコントラストも基本画像数(又は角度数)の二乗として増大する。
【0031】
合成画像形成技法では、対象画像の最終超音波検査画像を形成するために必要なショット数を制限しながら(合成画像形成では典型的に10~40のショットが必要であり、一方、集束画像形成では典型的に64~256のショットが必要である)、集束画像形成技法と実質的に等しい(又は全画像にわたり全体的に良好な)信号対雑音比及びコントラストを取得することができる。
【0032】
しかしながら、集束画像形成技法との比較による合成画像形成技法の大きな欠点は、ビーム形成により基本画像を再構築する動作(及関連する計算数)もショット数(10~40)で乗算されることである。
【0033】
したがって、各々が広帯域パルス信号によって励起されるトランスデューサ12のアレイに基づく上記合成画像形成技法は、計算力が限られるウルトラポータブル撮像システムの何れにも適さない。
【0034】
3.狭帯域超音波検査画像形成
対象物の超音波検査画像の品質を改善するために、集束画像形成において、1つの広帯域パルス信号ではなく幾つかの狭帯域励起信号を使用することが既に提供されている。
【0035】
特に米国特許第5,891,038号明細書という文献では、複数のトランスデューサを含む超音波撮像システムの感度を改善できるようにする超音波信号を処理する方法が提供されている。
【0036】
この方法は、
-第1の時間間隔中、撮像システムの送信機トランスデューサを励起させることにより、第1の周波数を中心とした第1の周波数帯域を有する第1の集束超音波を送信すること、
-第2の時間間隔中、撮像システムの送信機トランスデューサを励起させることにより、第1の周波数と異なる第2の周波数を中心とした第2の周波数帯域を有する第2の集束超音波を送信すること、
-撮像システムの受信機トランスデューサにより受信された第1のエコー信号に基づいて第1の対の複素信号を形成することであって、受信される第1のエコー信号は、受信機トランスデューサに向けて後方散乱した第1の超音波の部分を表すこと、
-撮像システムの受信機トランスデューサにより受信された第2のエコー信号に基づいて第2の対の複素信号を形成することであって、受信される第2の信号は、受信機トランスデューサに向けて後方散乱した第2の超音波の部分を表すこと、
-第1及び第2の対の複素信号を濾波すること、
-濾波された第1及び第2の対の複素信号を合算し、第1及び第2の対の複素信号の各成分の和を表す成分を有する結果複素信号を形成すること、
を含む。
【0037】
この技法は、同じトランスデューサを用いて狭帯域信号を連続送信し、そのエコー応答をコヒーレントに合算することを含む。にあるこの技法により、
-各送信成分よりも広帯域であるが、当然ながらトランスデューサの帯域内部にある全体帯域であり、
-同じ振幅の広帯域励起信号を直接使用することにより得られるよりも良好な信号対雑音比の結果信号を得ることが可能である。
【0038】
しかしながら、この技法により超音波撮像デバイスの信号対雑音比及び軸方向解像度を改善することができる場合であっても、取得プローブとリモート計算ユニットとの間で伝送する必要があるデータ量が十分に小さくないため、リモート計算手段を有するウルトラポータブル撮像システムの状況では最適ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
4.発明の目的
本発明の一目的は、上記欠点の少なくとも1つの是正を可能にする超音波撮像の方法及びシステムを提供することである。より正確には、本発明の目的は、信号対雑音比及び透過性並びにコントラストに関して良好な画質を維持しながら、リモート処理デバイスに向けて取得プローブによって送信されるデータ量を制限可能にする方法及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0040】
このために、本発明は、受信機によって記録された音波信号又は電磁信号(光信号、マイクロ波信号等)を処理する方法を提供し、上記音波信号又は電磁信号は、観察対象(研究すべき媒体)を明らかにするように送信機によって送信された音波又は電磁波が上記観察対象(媒体)からの反射の後の観察対象によって反射された音波又は電磁波を表し、特に、本方法は、
-送信機の励起周波数範囲に含まれる第1及び第2の別個の周波数帯域における第1及び第2の電気励起信号を送信機に連続印加したことに応答して、送信機により第1及び第2の波動を連続して送信するステップであって、第1及び第2の電気励起信号の各々の周波数帯域は、-6dBの帯域幅に基づいて測定され、送信機の周波数範囲の1/4未満であるステップと、
-受信機により、観察対象に含まれる対象物(標的物体)の境界面における第1及び第2の波動の各反射に起因した第1及び第2の音波又は電磁エコーを受信し、第1及び第2の音波又は電磁エコーをそれぞれ第1及び第2の電気受信信号に変換するステップと、
-第1及び第2の電気受信信号を前処理して、前処理済み信号を取得するステップと、
を含み、
前処理は、
・第1及び第2の電気受信信号をデジタル化し、第1及び第2のデジタル信号を取得すること、
・第1及び第2のデジタル信号を少なくとも1回混合し、第1及び第2の混合信号を取得し、第1のデジタル信号の混合周波数は、第2のデジタル信号の混合周波数と異なること、
・第1及び第2の混合信号を少なくとも1回低域濾波することであって、それにより、第1及び第2の濾波信号を取得し、低域フィルタの破断周波数は、-6dB帯域幅に基づいて測定され、送信機の周波数範囲の1/8未満である、低域濾波することと、
・第1及び第2の濾波信号を少なくとも1回デシメートすることであって、それにより、第1及び第2のデシメート信号を取得し、送信機の周波数範囲の半分未満である、復調されデシメートされた複素試料(複合サンプル)のデータ流量を特徴とする、デシメートすることと、を含む。
【0041】
特定の変形実施形態では、送信機及び受信機が、2つの別個の実体(各実体は1つ又は複数のハードウェア要素を含むことが可能である)を有することを読み手は理解する:
-実体の一方は、音波(1つ若しくは複数のトラック搭載振動器若しくは1つ若しくは複数のソナー等)又は電磁波(1つ若しくは複数のレーダー受信機等)の送信を可能にし、
-他方は音波(受振器若しくは水中聴音器等)又は電磁波(1つ若しくは複数のレーダー受信機等)の受信を可能にする。
【0042】
他の変形実施形態では、送信機及び受信機は、音波の送信及び受信の両方を可能にする単一の実体(1つ又は複数の圧電トランスデューサ等)を有する。
【0043】
本発明に関して、「別個の周波数帯域」という用語は、全体的に重複しないが、それにもかかわらず部分的に重複可能な周波数帯域を意味することが理解されるべきである。
【0044】
本発明による方法の好ましいが非限定的な態様は以下である。
-有利なことには、第1及び第2のデジタル信号を復調するステップについて、
-第1のデジタル信号の各混合周波数は、
・第1の周波数帯域の中心周波数、
・第1の周波数帯域の高調波、又は
・第1の周波数帯域の低調波
と等しくなるように選択され、、
-第2のデジタル信号の各混合周波数は、
・第2の周波数帯域の中心周波数、
・第2の周波数帯域の高調波、又は
・第2の周波数帯域の低調波
と等しくなるように選択され、
-第1及び第2の電気励起信号は各々、一時的にアポダイズされたタイプの電気信号となり、
-送信機は、異なる伝播方向に沿って波動を送信するのに適することができ、第1及び第2の波動を連続して送信するステップは、
・第1の方向に沿って第1の波動のみを送信し、
・第1の方向と異なる第2の方向に沿って第2の波動のみを送信する、サブステップを含む。
【0045】
当然ながら、第1及び第2の波動は、平面、球面、又は任意の遅延法則(トランスデューサに印加される励起信号のトリガー時間のプロファイル)に基づいて生成でき、一般に連続する。上記の場合、遅延法則は異なる(本発明の他の変形において、これらの遅延法則は第1及び第2の波動で同一であり得ることを読み手は理解する)。
-送信機は、線形に延在するトランスデューサのセットを含み得、第1及び第2の波動を送信するステップは、
・トランスデューサのセットのトランスデューサの第1の群から第1の波動を送信し、
・トランスデューサのセットのトランスデューサの第2の群から第2の波動を送信し、トランスデューサの第2の群はトランスデューサの第1の群と異なる、第2の波動を送信するサブステップを含み、
-本方法は、受信機により、前処理された信号をリモート処理デバイスに向けて送信するステップを更に含むことができ、
-有利なことには、
・送信ステップは、送信機の周波数範囲に含まれるN個の別個の周波数帯域内のN個の電気励起信号を連続して印加したことに応答して、N個の波動を送信することを含むことができ、Nは3以上の整数であり、
・受信するステップは、N個の又音波は電磁エコーを受信し、それらをN個の各電気受信信号に変換することを含むことができ、
・前処理ステップは、
・N個の電気受信信号をデジタル化することで、N個のデジタル信号を取得すること、
・各デジタル信号を混合することで、混合信号を取得し、各デジタル信号の混合周波数は、関連する励起信号の周波数帯域の中心周波数、高調波、又は低調波に等しいこと、
・各混合信号を低域濾波することで、濾波信号を取得すること、
・各濾波信号をデシメートすることで、デシメート信号を取得すること、
を含むことができ、
本方法は、処理するステップであって、それにより、観察対象の画像を取得する、処理するステップを更に含むことができ、上記処理するステップは、
・各デシメート信号に基づいて基本画像を形成するサブステップであって、デシメート信号に含まれる情報を使用して、2Dサーフェス又は3Dボリュームにわたり延在するポイントの計算を含むサブステップと、
・形成された各基本画像を共通基準周波数に転送することにある混変調するサブステップと、
・観察対象の最終画像を取得するために、前記混変調された基本画像を合算するサブステップと、
を含む。
【0046】
本発明は、受信機によって記録された音波信号又は電磁信号を処理するシステムにも関し、上記音波信号又は電磁信号は、観察対象を明らかにするように送信機によって送信された音波又は電磁波が上記対象(媒体)から反射された後の観察対象によって反射された音波又は電磁波を表し、特に、本システムは、
-コントローラは、
・送信機の励起周波数範囲に含まれる第1及び第2の別個の周波数帯域における第1及び第2の電気励起信号を送信機に連続印加したことに応答して、第1及び第2の波動を連続して送信するステップであって、第1及び第2の電気励起信号の各々の周波数帯域は、-6dBの帯域幅に基づいて測定され、送信機の周波数範囲の1/4未満であるステップと、
・受信機により、観察対象に含まれる対象物(標的物体)の境界面における第1及び第2の波動の各反射に起因した第1及び第2の音波又は電磁エコーを受信し、第1及び第2の音波又は電磁エコーをそれぞれ第1及び第2の電気受信信号に変換するステップと、
を制御し、
-第1及び第2の電気受信信号を前処理して、前処理済み信号を取得する取得ユニットであって、前処理は、
・第1及び第2の電気受信信号をデジタル化し、第1及び第2のデジタル信号を取得する、デジタル化すること、
・第1及び第2のデジタル信号を混合することで、第1及び第2の混合信号を取得し、第1のデジタル信号の混合周波数は、第2のデジタル信号の混合周波数と異なること、
・第1及び第2の混合信号を低域濾波し、第1及び第2の濾波信号を取得し、低域フィルタの破断周波数は、-6dB帯域幅に基づいて測定され、送信機の周波数範囲の1/8未満であること、
・第1及び第2の濾波信号をデシメートすることで、第1及び第2のデシメート信号を取得し、送信機の周波数範囲の半分未満である、復調されデシメートされた複素試料のデータ流量であることを特徴とする取得ユニットと、
を備える。
【0047】
本発明は、プログラムがコンピュータで実行されると、上記方法のステップを実行することが意図されるプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品にも関する。
【0048】
本発明による方法及びプローブの他の利点及び特徴は、添付図面に基づいて非限定的な例として与えられる幾つかの異なる実施形態の以下の説明からより明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】プローブ及び処理コンソールを組み込んだ従来技術の超音波撮像システムの模式表現である。
図2】集束画像形成原理の模式表現である。
図3】合成画像形成原理の模式表現である。
図4】取得プローブと、1つ又は複数のリモート計算ユニットと、1つ又は複数のリモートディスプレイユニットとを含む超音波撮像システムの模式表現である。
図5】取得プローブの送信ステージ及び受信ステージの模式表現である。
図6】取得プローブのトランスデューサに印加可能な狭周波数帯域の複数の励起信号の模式表現である。
図7図6に示される励起信号のエネルギースペクトルの模式表現である。
図8】デジタル化ステップの模式表現である。
図9】混合ステップの模式表現である。
図10】濾波ステップの模式表現である。
図11】デシメートステップの模式表現である。
図12】異なるタイプの励起信号に適用される処理の模式表現である。
図13】混合ステップ、濾波ステップ、及びデシメートステップの模式表現である。
図14】ビーム形成により形成されたビームに対応する基本画像の模式表現である。
図15】基本画像に適用される混変調ステップの模式表現である。
図16】取得されたエコー信号の前処理ステップの模式表現である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
これより、図を参照して本発明によるプローブ及び方法の例をより詳細に説明する。これらの種々の図では、均等な要素は同じ参照番号で示されている。
【0051】
1.超音波撮像システム
1.1.全般
図4は、本発明による超音波撮像システムの一例を示す。このシステムは、
-ウルトラポータブル撮像デバイスを形成するデータ取得プローブ4と
-プローブ4により送信されたデータを処理する外部計算ユニット5と、
-対象物(標的物体)の超音波検査画像及び/又は撮像された物体に関連する情報を表示するディスプレイユニット6と、
を備える。
【0052】
プローブ4と外部計算ユニット5との間でのデータ交換は、有線又は無線通信手段を使用して行い得る。外部計算ユニット5とディスプレイユニット6との間でのデータ交換は、有線又は無線通信手段を使用して行い得る。
【0053】
特定の実施形態では、ディスプレイユニット6は外部計算ユニット5に組み込まれ得る。例えば、ディスプレイユニット6は、スマートフォンの画面で構成することができ、外部計算ユニット5は、スマートフォンの中央ユニット51(プロセッサ、メモリ等)で構成することができる。
【0054】
一変形では、外部計算ユニット5は全体的に、ディスプレイユニット6から切り離すことができる。例えば、外部計算ユニット5は、ネットワーク52-インターネット等-の1つ又は複数のコンピュータネットワークで構成でき、ディスプレイユニット6はスマートフォンの画面で構成し得る。クラウド計算の使用により、特に、スマートフォンよりも大きな計算力を有するハードウェアリソースを使用する必要がある信号処理アルゴリズムを実施するために、非常に大量の計算力へのアクセスが可能になる。
【0055】
別の変形では、外部計算ユニット5は部分的にディスプレイユニット6から切り離すことができる。例えば、計算ユニット5は、
-まず、例えば必要とする計算力が低く、ユーザがディスプレイユニット6にリアルタイムで表示することができる結果にアクセスしたいプロセス(Bモード撮像等)を実施するためのスマートフォンの中央ユニット51(プロセッサ、メモリ等)、
-次いで、大量の計算力を必要とし、ユーザが任意の表示可能な結果にリアルタイムでアクセスしたくないプロセス(エラストグラフィ等)を実施するためのネットワーク52の1つ又は複数のコンピュータサーバで構成することができる。
【0056】
したがって、超音波撮像システムは、全ての取得電子回路をホストし、ビーム形成又は別の画像再構築技法により基本画像を再構築し、対象物の最終超音波検査像を生成するために、取得データ(該当する場合には前処理された)を計算ユニット5(リモートコンピュータ、タブレット、及び/又はスマートフォン等)に送信する超音波プローブ4で構成される。ビーム形成による再構築はプローブ4で実施されないため、内部処理手段を組み込んだウルトラポータブル撮像システムよりも消費エネルギーが低く、よりよい性能を提供する。
【0057】
1.2.プローブ
図5を参照すると、プローブ4は、
-「n」個の超音波トランスデューサのセット41(「n」は整数であり、例えば、線形プローブ又は湾曲プローブの場合、1~1024であるが、数千個のトランスデューサを有するマトリックスプローブに適用することも可能である)と、
-取得ユニット42であって、
・送信ステージ421、
・受信ステージ422
を含む取得ユニット42と、
-通信ユニット43(有線又は無線)であって、
・該当する場合、受信ステージ422からのデータを圧縮する(当業者に既知の任意の圧縮法を使用して)ことと、
・データ(圧縮されている又は圧縮されていない)を外部処理手段に送信することと、
を行う通信ユニット43(有線又は無線)と、
を備える。
【0058】
トランスデューサのセット41は、対象(媒体)への励起超音波を調べるため、対象(臓器、生体組織等)に向けて送信し、音波エコー(即ち調べる対象の異なる境界面により反射された超音波)を受信するのに使用される。各トランスデューサは、例えば、前面及び後面に電極が被覆された圧電材料の矩形板を有する。そのようなトランスデューサは当業者に既知であり、本文章の残りの部分でこれ以上詳述しない。
【0059】
図5に示す変形実施形態では、セット41の全てのトランスデューサは、送信及び受信の両方に使用される。他の実施形態では、別個のトランスデューサを送信及び受信に使用することができる。例えば、セットの奇数ランク(1、3、5等)の全てのトランスデューサは専ら送信に使用することができ、一方、セットの偶数ランク(2、4、6等)の全てのトランスデューサは専ら受信に使用される。
【0060】
取得ユニット42は超音波トランスデューサのセット41に接続される。これは、セット41のトランスデューサの駆動及びセット41のトランスデューサによって取得されたデータの処理に使用される。より正確には、取得ユニット42の送信ステージ421は、調べる媒体に向けた超音波の送信を制御できるようにする。その一方で、取得ユニット42の受信ステージ422は、本文章の残りの部分でより詳細に説明するように、トランスデューサによって取得された信号を受信して処理するのに使用される。送信ステージ421と受信ステージ422との間にインタフェース回路を提供して、これらのステージの一方又は他方をトランスデューサのセット41に選択的に接続し、特に、送信ステージ421による受信ステージ422の目くらまし(blinding)を防ぐようにすることができる。
【0061】
送信ステージ421は、例えば、トランスデューサ41のセットの平面に関して斜めに超音波を向けるように、各トランスデューサと関連付けられた励起信号のトリガー時間を決める1つ又は複数の遅延に接続された、励起信号の1つ又は複数の生成器を含む。
【0062】
受信ステージ422は、セット41のトランスデューサにより受信される超音波エコーに対応する電気信号を受信する増幅器を含む。
【0063】
1.3.撮像システムに関連する問題
セクション1で説明した撮像システムに選ばれたアーキテクチャは特定の制限を課す。
-プローブにより送信されるデータ量は可能な限り小さくなければならない(実際に、現行の無線通信手段は、取得ユニットと図1に示されるような従来の撮像システムの、取得ユニットの近くの周辺機器-グラフィックスカード等-との間で実際に達成可能なデータ流量よりもはるかに低い(特に1/100未満の)データ送信速度を有する)。
-外部計算ユニットによって実行される計算数は、第1に、例えばスマートフォンの場合、必要な計算力(ひいては消費電力)を制限し、第2に結果を取得するために必要な時間を短縮するために、可能な限り小さくなければならない。
-超音波検査画像の品質(ひいてはコントラスト及び信号対雑音比)は可能な限り高くなければならない。
【0064】
これらの種々の制限に鑑みて、画像の各行に沿って集束画像形成する技法は、対象物の完全な超音波検査画像を形成するために必要なショット数が多すぎるため、実施することができない。したがって、合成画像形成技法の改良に基づく解決策を採用しなければならない。この技法は、集束の微細度がより低い波動(平面波又は発散波)を送信するのみならず、画像フィールド全体はカバーしない「太いビーム(fat beam)」の均等物を明らかにすることによっても使用することができる。
【0065】
まず外部処理手段に転送されるデータ量を低減し、次いでビーム形成により基本画像の再構築に必要な動作数を低減するために、従来の合成画像形成技法(集束画像と同等の品質の最終超音波検査画像を形成するために10~40のショットが必要である)と比較してショット数を制限しなければならない(典型的には異なる角度での5つのショット)。
【0066】
最後に、撮像システムの性能を許容可能にするために、最終超音波検査画像の品質への少数のショットの影響は制限されなければならない。
【0067】
これらの種々の制限を考慮に入れて、本発明者は、本文章の残りの部分で説明され、プローブの送信ステージ421及び受信ステージ422で実施される解決策を開発した。この解決策は、狭帯域画像形成技法の改良に基づく。
【0068】
2.狭いサブバンドに基づく合成超音波
本文章の残りの部分に記載される解決策の目的は、
-プローブ4から計算ユニット5に向けて転送すべきデータ量
-及びビーム形成により基本超音波形成画像を生成するために計算ユニット5によって実行される計算数を制限するとともに、
-ディスプレイユニット6に表示することができる良質な最終超音波検査画像を取得するのに適切な信号対雑音比を保ちながら、異なる角度で取得された基本超音波検査画像から最終超音波検査画像を取得できるようにすることである。
【0069】
このために、本文章の残りの部分に記載される解決策は、以下の異なるステップの実施を含む:
i)トランスデューサの励起周波数範囲に含まれる少なくとも第1及び第2の狭帯域の別個の周波数帯域における第1及び第2の電気励起信号の連続印加に応答して、プローブにより(少なくとも)第1及び第2の超音波を連続して送信するステップ、
ii)各トランスデューサにより、対象物の境界面における第1及び第2の超音波の各反射に起因した(少なくとも)第1及び第2の音波エコーを受信し、第1及び第2の音波エコーをそれぞれ第1及び第2の電気受信信号に変換するステップ、
iii)各トランスデューサで第1及び第2の電気受信信号を前処理するステップであって、前処理は、
a.第1及び第2の電気受信信号をデジタル化し、第1及び第2のデジタル信号を取得すること、
b.第1のデジタル信号及び少なくとも第2のデジタル信号の各々を混合することで第1及び第2の混合信号を取得すること、
c.第1及び第2の混合信号の各々を低域濾波し、第1及び第2の濾波信号を取得すること、
d.第1及び第2の濾波信号の各々をデシメートすることで、第1及び第2のデシメート信号を取得すること、を有する。
【0070】
これらの全てのステップはプローブにおいて実施される:
-ステップ「i」は、プローブ4の送信ステージ421において実施され、
-ステップ「ii」及び「iii」は、プローブ4の受信ステージ422において実施される。
【0071】
2.1.狭帯域励起信号に基づく送信ステップi)
プローブは、複数のトランスデューサで構成され、複数の超音波(平面又は発散(特に球面))を順次送信することが可能であり、各超音波は、複数のうちの他の超音波を生成するための他の励起信号と関連するエネルギースペクトルの中心周波数と異なる中心周波数を中心としたエネルギースペクトルを有する各励起信号の印加に応答して送信される。
【0072】
例えば図6及び図7を参照すると、各トランスデューサは、各々がそれ自体の狭帯域E1、E2、E3、E4(図7参照)にエネルギースペクトルを有する4つの励起信号S1、S2、S3、S4(図6参照)の連続印加に応答して、4つの超音波を連続して送信するように構成することができる。
【0073】
換言すれば、各励起信号S1~S4について、エネルギースペクトルの狭帯域E1~E4は、その他の励起信号と関連するエネルギースペクトルの狭帯域と異なり(即ちE1≠E2≠E3≠E4)、それ自体の狭帯域E1~E4におけるこのエネルギースペクトルは、その他のスペクトルの中心周波数と異なる中心周波数を有する。図7に示されるように、各電気励起信号S1~S4のエネルギースペクトルE1~E4は、トランスデューサの利用可能な帯域幅BGlobalに含まれる。さらに、2つの別個の励起信号S1/S2、S2/S3、S3/S4の隣接するエネルギースペクトルE1/E2、E2/E3、E3/E4は部分的に重複し得る。全ての場合で、異なる励起信号と関連するエネルギースペクトルの中心周波数は異なる。
【0074】
一実施形態では、狭帯域での超音波は、対象物に向けて全く同一の方向で送信し得る。各ショットでのこの場合、プローブの全てのトランスデューサは、所与の方向及び角度に沿って狭帯域の超音波を連続して送信する。動作は異なる角度(5~10)に沿って繰り返される。
【0075】
一変形では、狭帯域超音波は異なる方向に沿って送信し得る。各ショットでのこの場合、トランスデューサは、所与の方向(角度又は位置)当たりその狭帯域で1つのみの超音波を送信する。例えば、トランスデューサが別個の狭帯域で8つの超音波を送信することになっている場合、別個の方向に沿った8つのショットが行われ、各狭帯域において1つの超音波が各ショットのトランスデューサによって送信される。
【0076】
狭帯域における超音波が異なる方向に沿って送信されると、各超音波は、関連する励起信号の中心周波数の入念に選ばれた関数に従って各方向に隣接することができる。特に、中心周波数が高周波領域(即ちf≧3MHz)に属する励起信号から得られた各超音波は、トランスデューサのセット41への法線に対して0~15°の角度を有する方向に隣接することができる(より低い中心周波数の励起信号と関連する超音波は、トランスデューサのセット41への法線に関して15°よりも大きい角度をなす方向に隣接する)。これにより、高周波数におけるアレイローブの形成に関連する情報損失を制限することができる。
【0077】
狭帯域中の周波数スペクトルにおける励起信号から取得される超音波の使用により、従来技術で説明されたように取得される超音波検査画像の信号対雑音比を改善することができる:各狭帯域の受信信号が、合算前に使用される帯域のマスクに従って濾波される場合、和の信号対雑音比は、サブバンドkの数に等しい係数の同じ励起を有する広帯域で取得されるものよりも大きい。これは、和信号が広帯域信号よりも概ねk倍密であり、一方、濾波サブバンドの総合雑音が広帯域信号の雑音以下になることに起因する。
【0078】
2.2.音波エコーを受信し、電気信号に変換するステップii)
先に示したように、トランスデューサのエネルギースペクトルBGlobalの周波数帯域は複数の狭いサブバンドに分割され、これらのサブバンドの各々に対応するエネルギースペクトルを有するトランスデューサの励起信号は、取得ユニット42の送信機ステージ421によりトランスデューサのセット41に連続して印加される。
【0079】
セットの各トランスデューサについて、励起信号を連続して印加すると、上記トランスデューサは複数の超音波を連続して送信し、送信される各超音波はそれぞれの狭帯域内のエネルギースペクトル励起信号と関連する。
【0080】
送信された各入射超音波-例えば平面、発散、若しくは球面(等)波又は最悪事例シナリオでは波集束波さえも-は、撮像すべき対象を通って伝播し、次いでセット41のトランスデューサによって検出された生信号は受信機ステージ422によって記録される。
【0081】
各生信号は、入射波からの対象の拡散体(diffuser)によって反響した反射超音波-即ち音波エコー-へのセット41のトランスデューサによる変換に対応する。
【0082】
音波エコーを受信し、電気信号(以下「エコー信号」と呼ぶ)に変換するそのようなステップは当業者に既知であるため、ここでこれ以上詳述しない。しかしながら、そうして得られた(セット41のトランスデューサによって検出された音波エコーを表す)エコー信号がアナログ信号であることを読み手は理解する。
【0083】
2.3.エコー信号の前処理
2.3.1.デジタル化
デジタル化ステップ100は、各トランスデューサからのアナログエコー信号をデジタル信号に変換する。
【0084】
デジタル化ステップは、プローブの受信ステージに統合されたアナログ/デジタル変換器によって実施される。アナログ/デジタル変換器の数は、プローブの各要素からの全ての信号を処理するように選ばれ、理想的には例えば、トランスデューサのセットのトランスデューサ数と等しい。
【0085】
各アナログ/デジタル変換器は、所定のサンプリング周波数Fで関連するトランスデューサの各アナログエコー信号をサンプリングし、アナログエコー信号をデジタル信号に変換する。
【0086】
サンプリング周波数Fは好ましくは全てのショットで同じであるが、これは必須ではなく、検討中のアナログエコー信号に存在する最大周波数の2倍よりも大きいように選ばれる。これにより、検討中のアナログ電気受信信号の複製スペクトル間のいかなる干渉(即ち混合)も回避することができる(ナイキスト-シャノンの定理)。典型的には、プローブの中心周波数Fの4倍の近傍にあるサンプリング周波数Fが選ばれ得る。単一サンプリング周波数の利点は、これもまた単一であるアナログアンチエイリアスフィルタの簡易化である。
【0087】
図8は、以下のトランスデューサの場合でのデジタル化ステップを模式的に示す。トランスデューサは、
-分離され、トランスデューサの励起周波数範囲に含まれる各中心周波数FC1、FC2、FC3の3つの励起信号S1、S2、S3の連続印加に応答して、3つの超音波を連続して送信しており、
-それに応答して、トランスデューサによって連続して受信された3つの音波エコーを表す3つのアナログエコー信号を取得している。
【0088】
各アナログエコー信号は、周期1/Fのディラックコムで乗算され、ここで、Fはサンプリング周波数であり、周波数スペクトルD(これは単に、Fの多周波数における別のディラックコムである)は図8に示されている。より正確には、各エコー信号の周波数スペクトルR1、R2、R3は、フーリエ空間における周波数スペクトルDで畳み込まれる。
【0089】
これは、トランスデューサに対応する各アナログエコー信号にスペクトルN1、N2、N3のデジタル信号を与え、各デジタル信号のスペクトルN1、N2、N3は、周波数スペクトルDの各線の前後の各エコー信号の周波数スペクトルR1、R2、R3の複製に対応する。
【0090】
図8から、複製スペクトルの混合を回避するために、サンプリング周波数は検討中の電気受信信号の最大周波数の2倍よりも大きい必要がある(ナイキスト)(F>2×1.5Fであり、式中、Fはプローブの中心周波数であり、プローブの総通過帯域は中心周波数以下である(100%未満の帯域幅))ことを読み手は理解する。
【0091】
「プローブの中心周波数」という用語は、トランスデューサの動作周波数の中心周波数を意味するものと理解されるべきである(この帯域に含まれない周波数の電気信号が適用される場合、トランスデューサはいかなる超音波も生成しないため)。
【0092】
図8に示される例では、サンプリング周波数は、デジタル化する各エコー信号に選ばれる定数である。より正確には、サンプリング周波数は、トランスデューサの動作周波数(即ちトランスデューサが超音波を送信又は受信することが可能な周波数)の中心周波数の4倍に等しく選ばれる。:
=4×F
式中、Fは、トランスデューサの動作周波数帯域(トランスデューサの励起周波数範囲)の中心周波数である。
【0093】
スペクトルR1、R2、及びR3の幾つかがつながっていない場合、対応する信号を生成する放射は間を置かずに次々と又は同時に送信することができ、その結果生成されるエコーは一時的に重複し、したがって、単一の動作でサンプリングされてデジタル化されることが可能なことを読み手は理解する。次いで、この結果として、各エコー信号を表す情報を含むデジタル化された「単一記録」が生成され、続けて、各サブバンドに固有の復調動作をこのデジタル化された「単一記録」(単一デジタル化信号と同等)に対して行うことができる。したがって、特許請求の範囲における表現「第1及び第2の電気受信信号をデジタル化し、第1及び第2のデジタル信号を取得すること」の使用は、
-各エコー信号と関連する別個の電気信号をデジタル化する場合及び
-各エコー信号を表す情報を含む単一電気信号をデジタル化する場合
の両方を網羅することが理解される。
【0094】
一変形では、サンプリング周波数は、アナログアンチエイリアスフィルタもスペクトルエイリアシングを回避するように構成することができるという条件で、サンプリングされた各帯域に向けて構成することができる。
【0095】
したがって、デジタル化ステップにより、各トランスデューサで、最大数「k」のデジタル信号を取得することが可能になり、ここで、「k」は、トランスデューサに適用される狭帯域中の励起信号の数を表す。
【0096】
プローブのトランスデューサのセット41は「X」個のトランスデューサ(128、256等)で構成され、デジタル化が「n」ビットで実施されると仮定すると、デジタル化データの総流量Dtotは、
tot=X×4×F×n
である。
【0097】
10MHzの中心周波数で動作する128個のトランスデューサ及び14ビットでのデジタル化の場合、これは略72Gb/秒を与え、即ち非常に高いデータ流量を与える。
【0098】
続く復調動作により、システムが限られた通過帯域を有することを利用して、このデータ流量を低減することが可能である。
【0099】
より正確には、復調により、デジタル化ステップ後に取得された各デジタル信号に含まれる情報を抽出できるようになる。特に、復調により、各デジタル信号のスペクトルN1、N2、N3の中心をゼロ周波数前後にすることが可能になる。
【0100】
このいわゆる「I-Q」復調は、デジタル化ステップから生じた各デジタル信号と復調周波数Fにおける局所発振器との間での位相(I)及び直交(Q)での2つの周波数混合動作によって実行される。
【0101】
図16に示すように、復調動作は混合ステップ200及び濾波ステップ300を含む。
【0102】
2.3.2.混合
図9は、中心周波数FC1、FC2、FC3の3つの励起信号S1、S2、S3の連続印加に応答して、3つの超音波を連続して送信したトランスデューサの場合、デジタル化ステップ後に取得されたスペクトルN1、N2、N3のデジタル信号を混合するステップを示す。
【0103】
有利なことに、各デジタル信号の混合に使用される混合周波数Fは、励起信号の中心周波数FC1、FC2、FC3と等しく選ばれ、それにより、検討中のデジタル信号に対応する音波エコーを取得できるようになる。言い換えれば、各デジタル信号は、関連する励起信号の中心周波数と混合される。したがって、図9に示されるように、いわゆる混合ステップでは、
-スペクトルR1と関連する電気受信信号のデジタル化に対応するスペクトルN1のデジタル信号の場合、混合周波数Fd1はFC1と等しく選ばれ、ここで、FC1は電気励起信号S1の中心周波数であり、
-スペクトルR2と関連する電気受信信号のデジタル化に対応するスペクトルN2のデジタル信号の場合、混合周波数Fd2はFC2(電気励起信号S2の中心周波数)と等しく選ばれ、FC2はFC1よりも大きく、
-スペクトルR3と関連する電気受信信号のデジタル化に対応するスペクトルN3のデジタル信号の場合、混合周波数Fd3はFC3(電気励起信号S3の中心周波数)と等しく選ばれ、FC3>FC2>FC1である。
【0104】
より正確には、復調の混合ステップ200は、検討中の各デジタル信号について、以下の形態を含む:
cos(2π t)-isin(2π t)
の複素信号によって上記デジタル信号を乗算することにあり、式中、Fは混合周波数に対応し、上記混合周波数は、検討中のデジタル信号N1(N2、N3のそれぞれ)と関連する電機励起信号S1(S2、S3のそれぞれ)の中心周波数FC1(FC2、FC3のそれぞれ)と等しく選ばれる。
【0105】
周波数領域において、図9に示されるように、混合は、周波数Fd1=FC1(Fd2=FC2、Fd3=FC3のそれぞれ)を有する複素欠落信号のスペクトルC1(C2、C3のそれぞれ)でデジタル信号のスペクトルN1(N2、N3のそれぞれ)を畳み込むことを有する。これは、スペクトルMix(Mix、Mixのそれぞれ)が図9に示される混合信号を与える。
【0106】
各デジタル信号の混合が異なる混合周波数-特にデジタル信号と関連する励起信号の周波数帯域の中心周波数に等しい混合周波数-で実施されることにより、プローブ4から外部計算ユニット5に送信されるデータ数を最適に低減するために、続くデシメーションを最大化することが可能である。
【0107】
方法が、幾つかの異なる周波数における各デジタル信号の幾つかの混合ステップを含み得ることを読み手は理解する。例えば:
-各信号を励起信号の中心周波数(FC1、FC2、FC3等)と混合する第1のステップ及び
-励起信号のこの中心周波数の倍数(例えば励起信号の中心周波数の1/2、2倍、及び/又は3倍)と混合する第2のステップ等。
【0108】
これにより、続く処理ステップ(例えば、画像の形成又は対象領域を表すデータの抽出)で、検討中のデジタル信号における基本帯域及び高調波帯域に含まれる情報を考慮することが可能になる。
【0109】
2.3.3.濾波
濾波ステップ300は、混合後、信号周波数と混合周波数の和に等しい周波数に存在する信号、即ちこの場合、混合周波数の2倍前後に存在する信号をなくせるようにする。
【0110】
より正確には、濾波ステップは、低域濾波を各混合信号に適用することを有し、これらの2倍周波数成分をなくすことにある。
【0111】
図10は、スペクトルMix、Mix、Mixの混合信号を濾波するステップを示す。濾波ステップは、検討中の混合信号と関連する励起信号S1、S2、S3の周波数帯域に等しい幅の低域フィルタのスペクトルFiltBasで各スペクトルMix、Mix、Mixで乗算することを有する。これは、各々が各電気励起信号S1、S2、S3と関連する、スペクトルDF1、DF2、DF3の濾波信号を与える。
【0112】
濾波ステップにより、サンプリング周波数の倍数にあるスペクトルの部分のみを保持することができる。したがって、信号のスペクトルは、サンプリング周波数の種々の倍数におけるスペクトルの連続発生間で「クリーニング」される。
【0113】
これにより、続くデシメートステップを視野に入れて、信号スペクトルを浄化(purify)することができる。より正確には、低域濾波を使用して、混合周波数の2倍の信号成分を抑制する。これは、続くデシメートステップ中、信号重複リスクを回避する。
【0114】
混合ステップ及び濾波ステップ(混合+濾波=復調)の各デジタル信号への適用により、復調信号を取得することができる。
【0115】
2.3.4.デシメーション
デシメートステップ400は、「α」個のサンプルを周期的に除去して、プローブからリモート処理デバイスに送信されるデータ量を低減することを有する。例えば、デシメーション係数は4であり得る:その場合、デシメートステップは、各サブバンドの復調信号の4つのうちから3つのサンプルを除去することを有する。「サンプル」という用語は復調IQ対を指す。
【0116】
図11は、デシメートステップの一例を示す。各濾波信号は周期4/Fのディラックコムで乗算され、ここで、Fはサンプリング周波数であり、周波数スペクトルSDec(これは単に、F/4の倍数である周波数を有するディラックコムである)は図11に示される。より正確には、各濾波信号の周波数スペクトルDF1、DF2、DF3はフーリエ空間において周波数スペクトルSDecで畳み込まれる。これは、各復調信号にスペクトルDecim1、Decim2、Decim3のデシメート信号を与え、各復調信号のスペクトルDecim1、Decim2、Decim3は、周波数スペクトルSDecの各ライン前後の各復調信号の周波数スペクトルDF1、DF2、DF3の複製に対応する。
【0117】
したがって、復調-デシメート動作により、プローブとリモート処理デバイスとの間で送信されるデータ数を低減することができる。
【0118】
次いで、プローブによって前処理されたデータは、異なる処理アルゴリズムを適用するためにリモート処理デバイスに送信することができる。超音波検査画像を生成するには、例えばビーム形成によって生信号を処理する必要があるため、前処理されたデータは超音波検査画像ではないことを読み手は理解する。当然ながら、当業者に既知の他の技法を使用して、
-超音波検査画像を再構築し得、又は
-生データから直接、中間画像を再構築せずに、対象領域を表す情報を計算し得る(ニューラルネットワーク解決策等を使用するエラストグラフィ)。
【0119】
3.発明に関連する理論
本発明に関連する種々の理論的要素についてこれより紹介して、当業者が上述した解決策と関連する利点をよりよく理解できるようにする。
【0120】
3.1.信号対雑音比の改善
3.1.1.各励起信号の周波数帯域
上述したように、本発明の特徴の1つは、理想的なディラックに近づきつつある、非常に高い振幅の非常に短い励起をトランスデューサの動作周波数帯域にわたって等間隔で分布し、半持続時間で全て同じ位相、例えばゼロ位相(最大)を有する(図6参照)、選ばれた異なる周波数で生成される幾つかの励起列S1、S2、S3、S4のコヒーレント和で置き換えることを有している。狭帯域における周波数スペクトルの幾つかの励起信号のコヒーレント和により、信号の特性が適宜選ばれる(同一位相、帯域の適切な重複)場合、広帯域に周波数スペクトルを有する結果信号を取得することができ、この信号は、広帯域周波数スペクトル励起信号と比較して改善された信号対雑音比を有する。異なる励起信号の周波数スペクトルの狭帯域-以下「サブバンド」と呼ぶ-は、小さな重複で互いに隣接し、総帯域の幅及び形状は、トランスデューサの動作周波数帯域の幅及び形状と同等である。
【0121】
換言すれば、広帯域励起信号のスペクトルは「N」個のサブバンドに「分割」され、これらの「N」個のサブバンドに対応する「N」個の励起信号スペクトルが計算される。これにより、信号対雑音比を「N」に近い係数で改善することができる。
【0122】
しかしながら、本発明のこの特徴により信号対雑音比を係数「N」で改善することができる場合、それには、プローブとリモート処理デバイスとの間で伝送されるデータ量の計数「N」による乗算も伴う(「N」個のサブバンドから超音波検査画像を形成するには「N」個のショットが必要である)。
【0123】
したがって、伝送されるデータ量を制限するために、上記解決策は、他の特徴、特に以下を含む。
-各トランスデューサで受信した信号をデジタル化すること、
-各デジタル化信号を検討中のデジタル化信号と関連するサブバンドの中心周波数と混合すること、
-混合された各信号を低域フィルタによって低域濾波することであって、検討中の混合信号と関連するサブバンドの周波数幅の半分の周波数におけるその減衰は、2dB~10dBである。
-サブバンド数「N」に伴って増大する係数「G」により各濾波信号をデシメートすること、
-合成画像形成に関して角度により異なる周波数を使用して、空間解像度及びコントラストを改善すること。
【0124】
3.1.2.励起信号の形状
図6の4つの狭帯域信号の追加により、短縮された持続時間の広帯域信号が与えられ、これらの4つの狭帯域信号は、
-送信励起、
-プローブのインパルス応答、及び
-受信データが復調されるシステムのみがこの文章で考慮されているため、実際には復調低域通過である狭帯域受信フィルタの応答の畳み込みである。
【0125】
これらの畳み込みの最終結果は、結果デジタル信号であり、そのスペクトルE、E、E、E図7参照)は、最小持続時間のインパルス応答で全体帯域BGlobalを可能な限り良好に合成するように互いに接続される。したがって例えば、各サブバンドに位相歪みがない場合、2つの隣接する帯域のスペクトルE-E、E-E、E-Eは、合成したい全体帯域BGlobalにおいて-6dBで交わり得る。当然ながら、非定位相との他のタイプの接続を使用してもよい(マルチチャネルハイファイラウドスピーカの分野で提案されているように)。
【0126】
プローブの技術的特徴(トランスデューサ等)は固定されるため、プローブとリモート処理デバイスとの間で伝送されるデータ量の低減を目的として、復調動作中、各励起信号の形状及び低域フィルタのマスクを変更することが可能である。特に、トランスデューサによって取得されるデータのデジタル化により、アナログ解決策の場合よりもはるかに高精度で復調フィルタのマスクを調整することが可能になる。
【0127】
したがって、異なる形態の励起信号を使用し得る。例として、図12は、前処理後、同じ最終狭帯域信号に到達可能にする励起信号の2つの例Scarre、Sapoを示す。
【0128】
第1の変形実施形態では、各トランスデューサにより超音波を生成するための励起信号Scarreは、正方形とする(即ち複数の定電圧サイクルで構成される)ことができる。その場合、各トランスデューサによって受信されるエコー信号(トランスデューサに向けて後方散乱した超音波の部分を表す)は、最終的に所望の周波数サブバンドを越える形状sin(x)/xの周波数スペクトルEcarreを有する。したがって、続く混合/濾波/デシメートステップでは、周波数の所望のサブバンドの幅の実質的に近傍の幅の低域フィルタFcarreを使用することが好ましい。デシメートステップ(図示せず)後、所望のスペクトルRcarreの最終的な狭帯域信号が取得される。この最初の解決策(即ち正方形励起信号)には、実施が容易であるという利点があり、検討中のサブバンド外の雑音Bを効率的に削除できるようにする。
【0129】
第2の変形実施形態では、励起信号Sapoはアポダイズ形であり得る(即ち、可変幅であり、所与の時間期間にわたり軸方向対称を有する複数の定電圧狭間(fixed-voltage crenellation)で構成される)。アポダイズ形のそのような励起信号Sapoは、「PWM(パルス幅変調)」タイプのパルス生成器を使用して取得することができる。その場合、各トランスデューサによって受信されるエコー信号は、問題となっているサブバンドに最終的に望ましい幅の近傍の幅の周波数スペクトルEapoを有する。続く混合/濾波/デシメートステップ中、低域フィルタ(Fapo)-この場合、問題となっている周波数幅よりも大きい幅の-が適用される。デシメートステップ(図示せず)後、スペクトルRapoの最終的な狭帯域信号が取得される。この第2の解決策(即ちアポダイズ形の励起信号)は、実施がより複雑であるが、最初の変形よりもエネルギー効率的であるという利点がある(これは、最初の変形では、エコー信号の部分が励起信号のサブバンド外に延びるためであり、これは、エコー信号のこれらの部分の取得を可能にした、送信されたエネルギーの部分が、濾波ステップ中に低域フィルタによって濾波されるため、純粋な損失として送信されることを意味する)。
【0130】
3.2.混合/濾波/デシメート
先に示したように、音波エコーの受信に応答してトランスデューサにより生成されたエコー信号は、混合、濾波、及びデシメートステップの実施前にデジタル化される。このデジタル化ステップについては本文章の残りの部分では、これ以上詳述しない。
【0131】
しかしながら、トランスデューサからのアナログエコー信号のデジタル化により、
-第1に、続く混合、濾波、及びデシメートステップの実施を簡易化し、
-第2に、プローブとリモート処理デバイスとの間で転送されるデータ量を可能な限り低減するために、続く混合、濾波、及びデシメートステップの効率を最大化する
ことが可能になることに読み手は留意する。
【0132】
混合/濾波/デシメートステップにおいて処理される信号はデジタル化されるため、システムの限られた帯域幅を利用し、上述したようにデシメートに続くために、各サブバンドを復調(即ち混合+濾波)することが可能である。デシメート係数が最大であることができるように、異なる復調周波数が各サブバンドに選ばれる。より正確には、各サブバンドで、デジタル化エコー信号の混合に選ばれる混合周波数は、そのサブバンドの中心周波数(又はそのサブバンドの中心周波数の倍数)に等しい。
【0133】
図13は、サブバンドの中心周波数がfC2であるデジタル化エコー信号のスペクトルA10の混合/濾波/デシメートステップを示す。エコー信号は、関連する励起信号のサブバンドの中心周波数fC2と混合され、サブバンドの幅の半分に等しい遮断周波数を有する低域フィルタを使用して濾波される。これにより、図13に示されるスペクトルA20を有する混合濾波信号が与えられる。この混合濾波信号は次いでデシメートされる。スペクトルA30のそうして取得されたデシメート信号は次いで、プローブによりリモート処理デバイスに送信することができる。
【0134】
トランスデューサの動作帯域が「N」個のサブバンドに分割される場合、「N」個のサブバンドの混合/濾波/デシメート信号を送信する必要がある:したがって、広帯域信号と比較して、「N」倍の混合/濾波/デシメート信号をプローブとリモート処理デバイスとの間で伝送しなければならない。しかしながら、各サブバンドは総広帯域の「N」分の1であるため、各サブバンドで、デシメート係数は広帯域信号(トランスデューサの動作帯域に対応する)のデシメートの場合よりも「N」倍大きいことができる。
【0135】
したがって、サブバンドで「N」倍の混合/濾波/デシメート信号を送信しなければならないが、サブバンドにおける各混合/濾波/デシメート信号は、混合/濾波/デシメート広帯域信号の「N」分の1のデータ量を含む。
【0136】
したがって、上述した技法により、単一の広帯域励起信号(即ち広帯域はトランスデューサの動作周波数帯域に等しい)から得られるエコー信号の場合よりも大きな量のデータを送信する必要なく、係数「N」の信号対雑音比を得ることができる。
【0137】
先に示されたように、サンプリング周波数は、各トランスデューサの動作周波数帯域の中心周波数の「K」倍(典型的にはK=4)に等しいように選ばれ得る:F=K(100%の帯域幅の場合、K≧3)。したがって、デシメート係数は「KN」に等しいように選ばれ得、ここで「K」は、デジタル化ステップで使用されるサンプリング周波数と各トランスデューサの動作周波数の中心周波数との比率に等しい。実際には、デシメート係数は
【数1】
の整数部に等しいように選ばれる。これにより、
-各サブバンドの結果信号の形状及び
-最終レンダリングの品質
をよりよく保持することができる。
【0138】
3.3.ビーム形成による基本画像の再構築
次いで、プローブによって転送されたデータは、リモート処理デバイスによって処理することができる。リモート処理デバイスは異なるステップを実施する。
【0139】
これらのステップの1つは、本発明に関してこれより説明するいわゆるビーム形成技法により基本画像を再構築することを有する。本発明と関連する利点をよりよく理解するために、複数の狭帯域信号に基づくビーム形成技法を説明し、広帯域信号に基づくビーム形成の場合と比較する。
【0140】
ナイキスト定理により制限される中心周波数Fの復調された広帯域信号の場合、ビーム形成ステップにおいて、受信信号のサイクル当たり1つの複素点を計算する必要がある。したがって、隣接すると計算された2点間の軸方向ピッチは、
【数2】
に等しい(超音波の外向きの帰路により、2点
【数3】
の隔たりは、1サイクルの隔たりとしてRF信号で見られる)。
【0141】
「N」個の狭帯域信号(広帯域を「N」個のサブバンドに分割したもの)の場合、各サブバンド信号のビーム形成ステップでは、広帯域の「N/2」分の1の点の計算だけでよい。実際に、「N」個のサブバンド信号の場合、「N/2」分の1のグリッド点でナイキスト定理が満たされるため、計算グリッドは、広帯域よりも「N/2」倍の軸方向ピッチを有することになる。
【0142】
したがって、図14に示されるように(N=4の場合)、「N」個のサブバンドで計算される点の軸方向密度Pは、1つの広帯域で計算される点の軸方向密度Pの「N/2」分の1である。側方密度(プローブの2つの隣接するトランスデューサ間の隔たりdに等しい)は、1つのサブバンド信号の場合と1つの広帯域信号の場合で同じである。
【0143】
したがって、「N」個のサブバンド信号のビーム形成では、1つの広帯域信号のビーム形成での計算の2倍だけでよい。これは、サブバンドの数が何であれ当てはまる。
【0144】
さらに、励起信号の広帯域を「N」個のサブバンドに分割することの追加の利点は、ビーム形成ステップ中、使用される再構築アパーチャを最適に適合させることができる。
【0145】
実際には、ビーム形成ステップ中、点を再構築するために、この点に寄与する各トランスデューサのエコー信号の部分が求められる。しかしながら、所与の点を再構築するために、プローブのトランスデューサのセットのうちの特定のトランスデューサのエコー信号は、この点を表すいかなる情報も含まない。これは特に、高周波で、
-トランスデューサの中心を通る法線と
-トランスデューサの中心を通るとともに、再構築する点を通る直線
の間の角度が、周波数が増大するにつれて低減する値よりも大きいトランスデューサのエコー信号の場合に当てはまる(トランスデューサは指向性であり、特定の角度を超えるといかなる信号も受信せず、周波数が大きいほど、この角度は小さくなる)。
【0146】
したがって、本発明に関して、検討中のサブバンドの周波数の関数に応じて再構築アパーチャ(即ち検討中の点を再構築するとき、エコー信号を考慮に入れなければならないトランスデューサの数)を変更することが可能である。サブバンドの周波数が低いほど、再構築アパーチャは大きく(検討中の点を再構築するときに考慮に入れる情報量を最大化するために)、サブバンドの周波数が大きいほど、再構築アパーチャは小さい(検討中の点の再構築に情報のない雑音が含まれるのを防ぐため)。
【0147】
3.4.結合
最終超音波検査画像を取得する別のステップは、ビーム形成ステップ中に形成された超音波検査画像の結合に関する。
【0148】
したがって、各部分基本画像がそれぞれ1つのサブバンドで取得されるため、それらを合算して最終超音波検査画像に到達できるようにするために、同じ空間及び周波数基準系にそれらを配置する必要がある。
【0149】
全く同一の基準系へのこの配置では、変換ステップを実施する必要があり、変換ステップは、形成される各基本画像で以下のサブステップを含む:
-検討中の基本画像の点をオーバーサンプリングして(図15を参照すると、ビーム形成により再構築される2点P間のゼロ値の(N/2-1)点Pを含む)、オーバーサンプリング基本画像を取得するサブステップ、
-各オーバーサンプリング基本画像の点を綿密に低域濾波して、オーバーサンプリング基本画像の点の値を補間するサブステップであって、濾波により濾波基本画像を取得することが可能である、補間するサブステップ、
-各濾波基本画像の点の位相を線形回転させて、トランスデューサの中心周波数Fcの回りで混変調することにより混変調するサブステップ。
【0150】
混変調ステップが実行されると、変換された基本画像を合算して、最終超音波検査画像を取得し得る。
【0151】
4.結論
上述したシステム及び方法は、
-音波検査器であって、
・データを取得するプローブ及び
・取得データを処理するリモート処理デバイス
を含む音波検査器から取得される画像の信号対雑音比を、
-プローブからリモート処理デバイスに転送されるデータ量を制限しながら、改善すること
を可能にする。
【0152】
より正確には、「N」個の狭帯域エコー信号から広帯域信号(プローブの各トランスデューサの動作帯域)を合成構築することにより、広帯域エコー信号から得られる超音波検査画像の「N」倍の信号対雑音比を有する超音波検査画像を取得することができる。
【0153】
さらに、
-トランスデューサによって記録される信号は、
・各狭帯域の平均周波数で復調され、復調は、正弦波を直交(正弦及び余弦)で混合し、各I及びQ成分で低域濾波することによって実行され、次いで
・1秒当たり(αB)復調IQ対のみが残るまでデシメートされ、ここで、Bは1/秒での狭帯域の幅であり、αは、1~3、理想的には2前後で選ばれる(α=1の場合、ナイキスト限界で動作しており、この限界が考慮される場合、小量のマージンを残すことが好ましい)無次元実数であることにより、プローブからリモート処理デバイスに向けて送信されるデータ量を低減することが可能になる。
【0154】
本明細書に記載される新たな教示及び利点から大きく逸脱せずに、上述した本発明に多くの変更を行うことができることを読み手は理解する。
【0155】
特に、本発明は、音波検査器等の超音波撮像等の他の技術分野に適用することも可能である。特に、ソナー(音波による航行と測距)の分野に適用可能であり、ソナーは、
-水中で音波を送信し(アンテナにより)、
-音波が直面した障害物からの音波パルスの反響に対応するエコー波を受信し(アンテナにより)、
-エコー波を電気受信信号(又はエコー信号)に変換し(アンテナにより)、
-エコー信号(アンテナによりリモート計算ユニットに送信される)を処理して(リモート計算ユニットにより)、ソナー像を取得する
ことを有する。
【0156】
このソナー分野では、
-広い周波数帯域を有する一時的に短いパルス信号を、狭い周波数帯域を有する複数の励起信号で置き換えることができ、
-これらの狭帯域励起信号の各々で取得されたエコー信号は、上述した異なるステップに従って前処理(デジタル化、検討中の狭帯域励起信号の中心周波数との混合、低域濾波、及びデシメーション)することができ、それから前処理済みデータをリモート計算ユニットに転送することができる。
【0157】
この技法は、音波又は超音波の代わりに電磁パルスを処理するレーダーの分野に適合することもできるが、既知で管理可能な位相のコヒーレント波の送受信という同じ技術知識コーパス内に留まる。
【0158】
さらに、上記説明は、
-データ取得プローブ4、
-プローブによって送信されたデータから画像を再構築する外部計算ユニット5、
-再構築された画像を表示するディスプレイユニット6
を備えた撮像システムの文脈で本発明を説明する場合であっても、本発明が、計算ユニットがプローブに統合される撮像システム等の他のタイプの撮像システムと併用することも可能なことが当業者には明らかである。この場合、上述した前処理ステップは、画像を再構築するために消費される(プローブにより)電力を制限することが可能である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】