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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(54)【発明の名称】性質が改善された触媒反応器
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/44 20060101AFI20230927BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20230927BHJP
   B01J 37/12 20060101ALI20230927BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20230927BHJP
   B01J 23/745 20060101ALI20230927BHJP
   B01J 8/02 20060101ALI20230927BHJP
   B01J 8/04 20060101ALI20230927BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B01J23/44 A
B01J35/04 301A
B01J37/12
B01J23/46 311A
B01J23/745 A
B01J8/02 E ZAB
B01J8/04 311
B01D53/86 150
B01D53/86 217
B01D53/86 210
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538654
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(85)【翻訳文提出日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 NL2021050526
(87)【国際公開番号】W WO2022045891
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】2026371
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523073149
【氏名又は名称】キャットアイピー・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ヴィルヘルム・ヘウス
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコブス・フークストラ
(72)【発明者】
【氏名】マリヌス・フランシスクス・ヨハヌス・エバーズ
【テーマコード(参考)】
4D148
4G070
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA01
4D148AA03
4D148AA08
4D148AA17
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4G070CA25
4G070CB02
4G070CB17
4G070CB19
4G070CC01
4G070DA23
4G169AA01
4G169AA03
4G169AA11
4G169BA01A
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4G169BA04A
4G169BA04B
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4G169BA06A
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4G169BA17
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4G169EA27
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4G169EB14Y
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4G169FB14
4G169FB30
4G169FB36
4G169FB39
4G169FB43
4G169FB57
(57)【要約】
本発明は、触媒作用の分野に関する。特に、本発明は、触媒反応器本体、触媒反応器本体を製造する方法、及び触媒反応器本体の使用を対象とする。本発明は、反応器入口と反応器出口の間で反応器本体の主流体流方向に延び、それによって流体を導くための流路を形成する反応器周壁と、流路内に配置され、反応器周壁と一体的に形成された反応器床とを含む触媒反応器本体であって、反応器床が、流体を反応器入口から反応器出口に誘導するための複数の副流路を形成し、各副流路が、反応器入口と反応器出口の間の所定の流体経路を画定し、主流方向を少なくとも部分的に横断する方向に流体を向けるように構成されている、触媒反応器本体を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器入口と反応器出口の間で反応器本体の主流体流方向に延び、それによって流体を導くための流路を形成する反応器周壁と、前記流路内に配置され、前記反応器周壁と一体的に形成された反応器床とを含む触媒反応器本体であって、前記反応器床が、流体を前記反応器入口から前記反応器出口に誘導するための複数の副流路を形成し、副流路のそれぞれが、前記反応器入口と前記反応器出口の間の所定の流体経路を画定し、主流方向を少なくとも部分的に横断する方向に流体を向けるように構成されている、触媒反応器本体。
【請求項2】
好ましくは鋼、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、ジルコニウム及びそれらの合金からなる群から選択される、金属を含むか又はそれらからなる、請求項1に記載の触媒反応器本体。
【請求項3】
セラミック材料、好ましくは二酸化ケイ素及び/又は二酸化チタンの層で被覆された内部金属表面を含む、請求項2に記載の触媒反応器本体。
【請求項4】
好ましくは、コランダム、アルミニウム-マグネシウムスピネル及びジルコニアからなる群から選択される、セラミック材料を含むか又はそれらからなる、請求項1に記載の触媒反応器本体。
【請求項5】
触媒粒子が、触媒反応器本体の内部表面に堆積している、請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒反応器本体。
【請求項6】
積層造形によって作製される、請求項1から5のいずれか一項に記載の触媒反応器本体。
【請求項7】
前記副流路が、前記主流方向に対して20~70度の角度で配向された区画を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の触媒反応器本体。
【請求項8】
第2の流体を収容するように配置された1つ又は複数の第2の副流路を更に含み、前記第2の流体が、好ましくは熱伝達流体である、請求項1から7のいずれか一項に記載の触媒反応器本体。
【請求項9】
整列器を受け入れるための1つ又は複数の孔を更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の触媒反応器本体。
【請求項10】
0.5~50cmの主流体流の方向の長さを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の触媒反応器本体。
【請求項11】
主流体流の方向を横断する触媒反応器本体の幅と、主流体流の方向における触媒反応器本体の長さとの比が、1以上であり、好ましくは1~20の範囲であり、より好ましくは1.5~15の範囲である、請求項1から10のいずれか一項に記載の触媒反応器本体。
【請求項12】
前記副流路が、1.1以上、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上の屈曲度を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の触媒反応器本体。
【請求項13】
前記副流路の直径が、1mm以上であり、好ましくは1.3mm以上、更により好ましくは1.5mm又は2mm以上である、請求項1から12のいずれか一項に記載の触媒反応器本体。
【請求項14】
反応器本体の内部表面積が、0.5以上のSdrパラメータを有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の触媒反応器本体。
【請求項15】
触媒反応器本体の総体積に対する固体材料の体積が、1cmあたり0.7cm以下であり、好ましくは1cmあたり0.5cm以下、より好ましくは1cmあたり0.4cm以下である、請求項1から14のいずれか一項に記載の触媒反応器本体。
【請求項16】
主流体流の方向で測定され、0.11m/秒の空塔気体速度、及び293Kの温度の気流を使用して測定される場合、反応器本体の1メートルあたり0.5バール以下、好ましくは1メートルあたり0.4バール以下、より好ましくは1メートルあたり0.3バール以下の圧力損失を有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の触媒反応器本体。
【請求項17】
直列に接続された、請求項1から16のいずれか一項に記載の触媒反応器本体の2つ以上を含むスタック。
【請求項18】
反応器本体が、整列器によって整列されている、請求項17に記載のスタック。
【請求項19】
請求項1から16のいずれか一項に記載の触媒反応器本体を製造する方法であって、
-複数の副流路を含む本体を積層造形する工程
を含む、方法。
【請求項20】
積層造形する工程が、熱溶解積層法、選択的レーザー焼結、選択的レーザー溶融、及び/又は金属流体の材料噴射を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
積層造形する工程が、
-金属及び/又はセラミック材料を含むポリマー材料を使用して、本体を熱溶解積層する工程と、
-ポリマー材料を除去し、金属及び/又はセラミック材料を焼結するように本体を処理する工程と
を含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
-計算流体力学を使用して最適な副流路構造を設計する工程
が先行する、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
-シリコーンゴムを含む溶液を反応器本体の内部表面に含浸させる工程、及び
-含浸させた反応器本体を酸化させ、それによって反応器本体の内部表面を被覆するシリカ層を得る、工程
が後続する、請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
-触媒活性成分を反応器本体の内部表面に堆積させる工程
を更に含む、請求項19から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
触媒活性成分を反応器本体の内部表面に堆積させる工程が、電気化学交換を使用することによって、及び/又は1種又は複数の触媒前駆体を含む溶液を含浸させた後、乾燥及び焼成することによって実施される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
触媒反応器本体が、金属で形成されており、方法が、
-反応器本体の金属内部表面の制御された酸化の工程
を更に含む、請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
-金属内部表面又は触媒活性金属内部表面を酸化させる工程及び還元する工程であり、それによって表面積を増加させる、工程
を更に含む、請求項19から22又は26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
請求項1から16のいずれか一項に記載の触媒反応器本体、又は請求項17若しくは18に記載のスタックの、化学反応を触媒するための使用。
【請求項29】
触媒反応器本体又はスタックが、水和酸化鉄粒子を含み、化学反応が、ガス流からの硫化水素及び/又はメルカプタンの酸化である、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
触媒反応器本体又はスタックが、燃焼プロセスにおける排気管、好ましくは薪ストーブのストーブパイプ及び/又は煙突に存在する、請求項28に記載の使用。
【請求項31】
触媒反応器本体又はスタックが、好ましくはメタン水蒸気改質及び二酸化炭素改質から選択される方法を使用して、炭化水素から合成ガスを製造するために使用される、請求項28に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒作用の分野に関する。特に、本発明は、触媒反応器本体、触媒反応器本体を製造する方法、及び触媒反応器本体の使用を対象とする。
【背景技術】
【0002】
活性及び選択性は、触媒方法の効率に影響を与える重要な要因である。活性及び選択性は、多くの要因から影響を受ける可能性がある。これらの要因の1つは、反応が起こる温度である。例えば、エチレン及び酸素からエチレンオキシドを生成する場合等、高すぎる温度で触媒反応を実施すると、選択性が失われる可能性がある。触媒反応器の選択性の変化は、硫化水素から元素硫黄への選択的酸化によっても例示される。高温では、ガス状硫黄の酸化により二酸化硫黄が生じるが、これは望ましくない。また、反応温度が高すぎると、アンモニア及びメタノールの合成の場合等、熱力学的平衡が好ましくない方向に移動する可能性がある。高すぎる反応温度で触媒反応を行うリスクは、主に反応中に熱が生じる発熱反応で発生する。これを防止する典型的な解決策は、反応器1回通過あたりの変換率を制限し、反応器の各通過後に、反応器から出る流れを冷却することによって所望の反応生成物を分離することである。次いで、新たな供給原料を添加した後、未反応ガス流を再循環させる。反応生成物を流れから容易に分離できない場合は、第1の反応器の背後に熱交換器を設置しなければならず、流れは第2の反応器を通過する。一例は、硫酸の生成に伴う二酸化硫黄の三酸化硫黄への酸化である。
【0003】
一方、吸熱反応の場合に典型的に起こる低すぎる反応温度で触媒反応を行うことも、例えば低すぎる活性につながり得るという理由で、望ましくない場合がある。したがって、吸熱反応では、反応帯への流れの再循環が必要な場合も往々にしてある。
【0004】
典型的な固定式触媒床の熱伝導率は、かなり低い。その理由の1つは、従来の固定式触媒床は、典型的には、個々の触媒粒子の充填床からなり、そこを通る熱伝達があまり効率的ではないためである。このような固体触媒の充填床は、例えばガス状反応物と共に採用され、技術的に望ましい単位体積あたりの高い変換率を達成するには、単位体積あたりの大きい活性表面積を気相に曝さなければならない。しかしながら、大きい表面積は小粒子を使用することを意味し、小粒子をスタッキングした触媒床にガス流を通すと、高い圧力損失につながるので、これは望ましくない。更に、この高い圧力損失により、触媒体が反応器から吹き出すか、又はガス状の反応物が触媒床を「チャネリング」する可能性がある。チャネリングが発生した場合、触媒床における小体積内の触媒体は固定せずに流動化され、大半のガス流は、触媒体が流動化された小体積の区画を通過する。
【0005】
圧力損失を制限しつつ、大きい表面積を有する触媒床を実現するために当技術分野で使用される手法は、大きい触媒活性表面積を反応物に曝すために、高多孔性である少なくとも5mmの触媒体を使用することである。しかしながら、これらの多孔性触媒体は、触媒の細孔内の定常ガスの熱伝導率が低いため、低い熱伝導率を示す。したがって、従来の充填触媒床を用いて実施される発熱反応では、反応物の変換率が上昇した場合に反応器の壁を冷却することによって反応器内の温度の上昇を制限することは不可能である。
【0006】
発熱反応及び吸熱反応による熱伝導率を向上させる可能性は、冷却コイル又は加熱コイルへの熱エネルギーの輸送をより容易に実施することができる流動床反応器を採用することにある。流動触媒床は、例えば流動接触分解法で、1つの反応器から別の反応器に触媒を連続的に輸送しなければならない場合に採用されるが、すべての触媒方法に使用できるわけではない。流動床内の触媒体の大きさは100μm程度なので、反応物及び反応生成物の輸送は比較的速い。しかしながら、気泡が流動床を通過するため、一般的には変換が完了しない。更に、利用可能な十分な耐摩耗性を備えた触媒を有する必要がある。
【0007】
液相に関与する触媒反応では、通常、気体よりも液体による熱伝達の方がはるかに良好であるため、反応器の高熱伝導率の必要性は、気相反応の場合よりも明白ではない可能性がある。しかしながら、液相反応の問題は、液相内の分子輸送が気相に比べてはるかにゆっくりと進行することである。不均一系触媒作用では、触媒反応は、典型的には、固体触媒の表面で起こる。ただし、高多孔性触媒体の細孔では、液体が停滞するため、細孔を通過して固体触媒の表面に出入りする分子輸送が特に遅い場合がある。したがって、チャネリング及び/又はバイパスを防止するために、より高多孔性である触媒体の触媒床を使用する場合、触媒体の外縁のみが触媒反応に寄与する。はるかに小さな触媒体を液体スラリーに採用することができるが、これには、触媒を反応生成物から分離するための追加のろ過又は遠心分離工程が必要である。
【0008】
ガス状反応物と液体又は溶解した反応物の間の反応が実施される触媒反応には、しばしば特別な問題が存在する。気相の分子体積は、液相又は溶解相の分子体積よりもはるかに大きいため、ガス状反応物を十分に迅速に送達するには特別な対策が必要である。液体中のガス状反応物の溶解度が限定されている場合、液体中のガス状反応物の分子の濃度が低いと、選択性の問題が発生する可能性がある。固体懸濁触媒による液体中で実施される接触水素化の多くは、低い選択性を示す。
【0009】
充填触媒床の別の問題は、触媒体が反応器の壁に良好に収まらないことである。これにより、反応器壁と触媒体の間の熱伝達が低下するだけでなく、反応物が反応せずに反応器の壁に沿って大幅にバイパスするか、又はスリップする可能性がある。したがって、所望の変換率を達成するには、触媒床の長さを比較的長くしなければならない。したがって、これらの反応器は大型に製造しなければならず、それゆえ比較的重い。
【0010】
熱伝導率が改善された触媒反応器を開発する試みがなされてきたが、高い熱伝導率、並びに他の好ましい特性、例えば、高分子輸送及び低圧力損失を併せ持つ触媒反応器を提供することは依然として困難である。更に、このような触媒反応器は、多くの場合、重く、複雑であり製造が困難である。
【0011】
触媒反応器の熱伝導率を向上させる1つの手法は、金属体を焼結して触媒床を作製することである。このような反応器は、例えばEP-A-2 228 340に記載されている。反応器は、熱を発生させながら、反応器の一部でメタノールと空気中の酸素を二酸化炭素及び水に触媒変換するために使用される。反応器の別の部分では、メタノールが水素及び一酸化炭素に触媒変換され、続いて一酸化炭素と水が水素及び二酸化炭素に変換される。反応器の第1の部分で発生した熱は、反応器の第2の部分に必要な高温を生成するのに使用される。両方の反応の触媒床は、熱エネルギーを迅速に輸送するために熱交換関係にある焼結金属粒子で作製されている。
【0012】
US-A-2018/0 333 703では、金属モノリスについて説明されている。この金属モノリスは、メタン水蒸気改質用の逆流反応器に使用されている。メタンを酸素で酸化させることによって生成される高温流が、モノリスを加熱する。反応器が十分に高温を有すると、メタン及び水蒸気の流れが反対方向に反応器を通過し、反応速度が低すぎるレベルに温度が低下して、次の加熱サイクルが開始されるまで、水素及び一酸化炭素への吸熱反応が進行する。US-A-2018/0 333 703の金属モノリスは、バイパスを防止するためにアルミナ布で包まれ、石英管に配置されているが、これは、反応器の外側から触媒活性表面への熱の伝導が最適ではないことを意味する。
【0013】
WO-A-2019/228795は、抵抗加熱を使用して加熱される構造化触媒を開示している。構造化触媒それ自体が、反応器の外側の熱源を使用して加熱されるのではなく、抵抗加熱を使用して加熱されるため、構造化触媒と反応器壁の間の熱の伝導が良好である必要はない。
【0014】
US-A-2003/0 012 711では、反応容器内に配置されたモノリス形状の触媒材料を含有する反応容器が開示されている。
【0015】
しかしながら、焼結金属体で作製された触媒床を備えた反応器は、いくつかの不利な点を有する。不利な点の1つは、このような反応器の重量である。焼結触媒床の重量は、アルミニウム等の軽い金属体を使用することで軽量化できる。ただし、アルミニウムの融点が比較的低いため、この材料は触媒反応器に理想的なものとはならない。
【0016】
焼結金属体で作製された触媒反応器の別の不利な点は、流動特性は制御するのが難しいことである。焼結触媒床の細孔構造は、主に焼結前の金属体の充填に依存しており、ある程度までの設計又はカスタマイズしかできない。そのため、多くの場合、特定の変換を達成するのに必要な反応器の長さ、圧力損失、及び/又は反応器の重量の間でトレードオフが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2228340号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0333703号明細書
【特許文献3】国際公開第2019/228795号
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0012711号明細書
【特許文献5】米国特許第5472927号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、熱伝導率の高い触媒反応器を提供することである。
【0019】
別の目的は、触媒床に沿った反応物のスリップ又はバイパスを低減する触媒反応器を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、当技術分野で公知の触媒反応器に関連する問題のうちの1つ又は複数に対処する触媒反応器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明によれば、反応器入口と反応器出口の間で反応器本体の主流体流方向に延び、それによって流体を導くための流路を形成する反応器周壁と、流路内に配置され、反応器周壁と一体的に形成された反応器床とを含む触媒反応器本体であって、反応器床が、流体を反応器入口から反応器出口に誘導するための複数の副流路を形成し、各副流路が、反応器入口と反応器出口の間の所定の流体経路を画定し、主流方向を少なくとも部分的に横断する方向に流体を向けるように構成されている、触媒反応器本体が提供される。
【0022】
本発明の別の態様では、本明細書に記載の触媒反応器本体を製造する方法であって、複数の副流路を含む本体を積層造形する工程を含む、方法が提供される。
【0023】
本発明の別の態様では、化学反応を触媒するための、本明細書に記載の触媒反応器本体の使用が提供される。
【0024】
本明細書に記載の触媒反応器本体は、高い熱伝導率を有し、流体流と反応器本体の内部表面との接触を促進する。所定の流体経路の寸法及び形状は、反応器本体が圧力損失及び重量に関して良好な特性を有するように最適化できる。副流路の形態は、流体流中の分子と触媒表面の間の衝突が達成されるように選択できる。これは、比較的小型の反応器でも高い活性が得られ、軽量の触媒反応器を製造できるということを意味する。
【0025】
触媒反応器本体の周壁は、高温及び高圧に耐えることができ、したがって、反応器本体周壁が、反応器壁として機能することができる。
【0026】
反応器床は、反応器周壁と一体的に形成されているため、反応器床のさまざまな領域間だけでなく、反応器床と反応器の外側の間でも熱伝達が良好である。そのため、触媒反応器の温度は、反応器壁を加熱又は冷却することによって効率的に調節できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】トルエンをCO及びHOに接触燃焼させるためのガラス触媒反応器に導入された、種々の量の触媒材料(0.5質量%のPd/SiO)を示す写真である。
図2】ジグザグ副流路を有する構造1の設計を示す図(図2a及び図2b)、この構造(寸法:直径4.4cm、長さ2cm)を有し、(選択的レーザー焼結を使用して)ステンレス鋼3D印刷された反応器ディスクを示す写真(図2c)、及びシリコーンゴム被覆を施した後の反応器ディスク(reactor disk)(図2d)を示す写真である。図2b、図2c、及び図2dでは、第2の流体を収容するか、又は熱電対で温度を監視するために配置された1つの第2の副流路、並びに整列器(alignment organ)を受け入れるための3つの孔が見られる。
図3図2に示す反応器ディスクを使用したトルエンの触媒変換を示すグラフである。
図4】ステンレス鋼反応器ディスク上にガルバニック交換法を使用して調製された、Pd/Pt触媒のSEM-BSE(後方散乱電子)を示す画像である(スケールバー3μm)。
図5】ガルバニック交換によって調製されたPd/Pt燃焼触媒を備えたステンレス鋼反応器ディスクを用いたトルエンの触媒変換を示すグラフである。
図6】オズボーン・レイノルズ装置における反応器ディスクを示す写真である。着色された溶液を、ディスクの中央から導入する。反応器ディスク内の水の流れ及び乱流と混合するため、均一に着色された溶液が反応器ディスクから出る。
図7】無電解めっきにより調製したPd触媒を備えたTi-6Al-4V反応器ディスクを使用したトルエンの触媒変換を示すグラフである。
図8】矢板状(sheet-pile)副流路を有する構造2の設計を示す図、この構造(寸法:直径4.4cm、長さ2cm)を有する(選択的レーザー焼結を使用して)ステンレス鋼3D印刷された反応器ディスクの写真、及びステンレス鋼粉末を高度に充填したポリオキソメチレンポリマーを使用して熱溶解積層法(fused deposition modelling)によって製造されたステンレス鋼反応器ディスクを示す写真である。図8a、図8b、図8c、及び図8dでは、第2の流体を収容するか、又は熱電対で温度を監視するために配置された1つの第2の副流路、並びに整列器を受け入れるための3つの孔が見られる。
図9】本発明による触媒反応器本体及び市販のモノリス車両用触媒コンバーターでのトルエンの変換率を示すグラフである。
図10図10aは、それぞれ狭い副流路を有する触媒反応器本体、及びより広い副流路を有する触媒反応器本体でのトルエンの変換率を示すグラフである。図10b及び図10cは、狭い副流路を有する触媒反応器本体(図10b)、及びより広い副流路を有する触媒反応器本体(図10c)を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明によれば、反応器入口と反応器出口の間で反応器本体の主流体流方向に延び、それによって流体を導くための流路を形成する反応器周壁と、流路内に配置され、反応器周壁と一体的に形成された反応器床とを含む触媒反応器本体であって、反応器床が、流体を反応器入口から反応器出口に誘導するための複数の副流路を形成し、各副流路が、反応器入口と反応器出口の間の所定の流体経路を画定し、主流方向を少なくとも部分的に横断する方向に流体を向けるように構成されている、触媒反応器本体が提供される。
【0029】
本明細書では、「内部表面」という語句は、周壁の内側とともに複数の副流路の壁を指す。
【0030】
「反応器周壁」とは、反応器床の周囲に延びる壁を指す。反応器周壁の断面は円形である場合があり、その結果、反応器周壁は円筒形状を有するが、他の形状も可能である。例えば、反応器周壁の断面が正方形であり、その結果、直方体の形状であるか、又は角が丸い正方形であるか、又は別の形状であることも可能である。
【0031】
本明細書では、反応器床が反応器周壁と一体的に形成されていることとは、反応器床及び反応器周壁がともに1つの部品を形成し、切断等の破壊的な方法を使用しなければ互いに分離することはできないことを意味する。例えば、これは反応器床及び反応器周壁を単一の部品として、例えば積層造形を使用して製造することによって実現できる。ただし、反応器床が反応器周壁と一体的に形成されていることは、原理的には、反応器周壁及び反応器床を別々に設け、例えば溶接を使用してそれらを接合することによって実現することもできる。それでもなお、部品の熱伝導率は、溶接部等の接合部の存在によって悪影響を受ける可能性がある。したがって、反応器床及び反応器周壁は、例えば積層造形を使用して、単一の部品として製造することが好ましい。また、反応器床と反応器周壁の間に接合部又は溶接部がないことが好ましい。
【0032】
驚くべきことに、本発明による反応器本体の場合、本発明による反応器本体の所定の変換率を達成するために必要な触媒反応器本体の大きさは、従来の固定床触媒反応器の大きさよりもはるかに小型であり得る。したがって、反応器の重量を著しく低下させることができる。
【0033】
理論に拘束されることは望むものではないが、流路内に配置された反応器床が反応器周壁と一体的に形成されていると、反応器本体の熱伝導率を大幅に増加させると考えられる。
【0034】
本発明による反応器本体の更なる利点は、反応器床のスリップ又はバイパスが防止されることである。通常の固定床反応器では、触媒体が反応器の壁に良好に収まらないため、反応物が反応せずに反応器の壁に沿って大幅にスリップすることにつながる。したがって、所望の変換率を達成するには、触媒床の長さは比較的長くなければならない。焼結固体反応器では、反応器の壁に沿ったバイパスが進行し得ないため、本発明による反応器本体の所定の変換率を達成するために必要な触媒反応器本体の大きさは、従来の固定床触媒反応器の大きさよりもはるかに小型であり得る。したがって、反応器の重量も相当低下させることができる。
【0035】
文献を鑑みると、反応器を通過する流れを効率的に混合すること、及びしたがって触媒活性表面と集中的に接触させることは、主流方向を少なくとも部分的に横断する方向に流体を向けるように構成された副流路を設けることによって、比較的短い反応器で実現できるという発見は、驚くべきことである。
【0036】
別の利点は、反応器の熱伝導率が高いことである。熱エネルギーを反応器内外に効率的に輸送することで、反応器を通過する流れをさほど再循環させずに、且つ反応器を通過した結果として生じる反応生成物を除去することなく、必要な変換を容易に達成することができる。別の大きな利点は、触媒床の温度を、変換率がより高く、触媒反応の選択性がより好ましいレベル内により容易に維持できることである。
【0037】
反応器床は、反応器周壁と一体的に形成されているため、反応器床のさまざまな領域間の熱伝達、すなわち軸方向の熱伝導だけでなく、反応器床と反応器の外側の間でも良好な熱伝達、すなわち径方向の熱伝導が得られる。そのため、触媒反応器の温度は、反応器壁を加熱又は冷却することによって効率的に調節できる。
【0038】
典型的には、触媒反応器本体の周壁は、高温及び高圧に耐えることができ、したがって、触媒反応器本体の周壁が、反応器壁として機能することができる。機械的強度のために、反応器本体を熱伝導率に悪影響を及ぼす管又は他の囲いの中に配置する必要はない。
【0039】
別の利点は、反応器本体の所定の流路を最適化できることである。現在の最新技術による焼結金属体を含有する反応器の場合、焼結体の構造を通過する反応物の輸送は最適ではない。反応器内に金属体をスタッキングしても、触媒活性表面への輸送を促進する反応物のフローパターンは得られない。反応器内でともに焼結する前に、固体のスタッキングを制御できる可能性は限定されている。焼結体の空隙率は、反応物を反応器に通過させる間に圧力損失が大きくなるのを防止するために、比較的高くなければならない。乱流である構造を通過する反応物の流れの割合は限定されているため、触媒活性表面への分子輸送はまた、比較的遅い。
【0040】
焼結金属反応器の主な欠点の1つである反応器の重量は、本発明の反応器本体によって回避されるが、これは、画定された経路を持つ副流路により、反応器の構築に必要な材料が少なくなるためである。このように、本発明による触媒反応器本体は、低圧力損失及び触媒表面積の最大化を併せ持つ。
【0041】
好ましくは、触媒反応器本体は、積層造形によって作製される。積層造形は、3Dプリンティングとも称される場合がある。
【0042】
積層造形を使用することによって、金属体の大きさ及び形状、並びに金属体間の空隙の大きさ及び形状を、はるかに広範囲で正確に制御できる。コンピュータープログラム及びシミュレーションを採用して、特定の触媒反応に最適な構造を実現することができる。したがって、積層造形を使用することによって、流体流と触媒表面との接触が改善されるように副流路を設計することができ、反応器の長さが比較的短くても、技術的に必要な変換を実現するのには十分であるようになる。副流路の設計により、同時に、圧力損失等の他の流れ特性も最適化できる。
【0043】
触媒反応器本体は、多種多様な材料で作製することができる。実施形態では、反応器の熱伝導率を更に向上させるために、反応器本体は、高い熱伝導率を有する金属又は金属合金で構成されている。また、金属又は金属合金は、典型的には、高い熱伝導率及び良好な機械的強度を併せ持つ。
【0044】
好ましくは、触媒反応器本体は、鋼、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、ジルコニウム、及びこれらの金属を含む合金からなる群から選択される材料を含むか、又はそれらからなる。使用できる合金の例としては、熱、圧力、及び腐食に対して良好な耐性を有するInconel(登録商標)ニッケル合金が挙げられる。
【0045】
触媒反応器本体を作製する材料は、それ自体で触媒活性を提供することができるか、又は触媒活性材料の担体材料として機能するか、又はその両方である。
【0046】
実施形態では、金属反応器本体の内部金属表面は、好ましくは二酸化ケイ素、二酸化チタン、及び/又は二酸化ジルコニウムを含むセラミック材料の層で覆われている。金属反応器本体を酸化物層で覆うことができ、その上に触媒活性材料を堆積させることができる。このような酸化物層は、高多孔性である酸化物、すなわち比表面積の大きい酸化物を1種又は複数含んでもよい。このような酸化物層は、触媒反応器本体の内部金属表面の酸化によって得ることができる。例えば、チタン、又はジルコニウム、又はそのような金属の合金を酸化させ、それによってチタニア及び/又はジルコニアを含む酸化物層を形成することができる。この酸化物層は、多孔性であり得る。
【0047】
特にチタン触媒反応器本体の場合、触媒反応器本体の内部表面を、有利には酸化させることができ、二酸化チタンの表面層がもたらされ、その上に触媒粒子を堆積させることができる。二酸化チタンは還元性酸化物であり、触媒粒子の担体として使用する場合、触媒反応中の炭素堆積物、すなわちコークスの形成を防止するのに寄与することができる。例えば、二酸化チタン担体上のNi触媒粒子をメタン水蒸気改質に使用する場合、他の担体材料よりもコークスの形成が少なくなることが観察され得る。
【0048】
実施形態では、例えば、触媒反応器が高温又は化学的に攻撃的な雰囲気に耐えることができなければならない場合、反応器は、コランダム、(アルミニウム-マグネシウム)スピネル、又はジルコニア等の好適なセラミック材料を含むか、又はそれらからなる。セラミックの非多孔性固体の熱伝導率は、それでも相当高い。
【0049】
触媒活性材料は、触媒反応器本体の内部表面、例えば反応器がそれらから作製されている金属若しくはセラミック材料上、又はセラミック材料の層上に堆積させることができる。触媒活性材料は、薄層として適用してもよく、又は個別の粒子として適用してもよい。
【0050】
触媒活性材料の内部表面への堆積は、例えば触媒が貴金属である場合に行うことができるが、その場合、反応器本体全体又はこの貴金属からなる大部分を製造するには費用がかかりすぎる。触媒活性材料の堆積が有用であり得る他の事例は、触媒活性が2つの材料間の界面、例えば反応器本体の内部表面とそこに堆積した材料の間の界面に依存する場合である。また、反応器本体の内部表面に個別の粒子を堆積させると、内部表面全体が触媒活性材料で作製される場合よりも活性表面積が大きくなる可能性がある。当技術分野で公知の手順を使用して、触媒活性成分を、多孔性酸化物層であり得る酸化物層の内側又はその上に適用することができる。例えば、金属上の酸化物層が静電電荷を帯びている場合、触媒活性材料の前駆体は、反対の静電電荷の(錯)イオンを持つ水を含浸させることによって適用できる。また、例えばクエン酸塩溶液を使用する場合のように、溶媒の蒸発中にその粘度が増加する活性前駆体を含む溶液を含浸させるのと同様に、堆積沈殿法を採用することもできる。触媒活性材料を堆積させるために、ウォッシュコーティング等の他の方法を適用することもできる。
【0051】
また、電気化学交換によって反応器の金属に触媒活性金属を適用すると、驚くべきことに、高触媒活性である構造が得られることが立証されている。チタン、鉄、又はニッケル合金表面への銅の適用は、例えばメタノールの合成及び分解の場合にも非常に興味深い。有毒ガス又は悪臭ガスの酸化に非常に活性な組成物が、プラチナ又はパラジウムを電気化学交換することにより生成された。
【0052】
実施形態では、反応器本体の内部表面が別の1種の元素又は複数の元素との電気化学交換により触媒活性されたことは、本発明の特別な実施形態である。
【0053】
触媒活性粒子を金属触媒反応器本体に堆積させることは、必ずしも必要ではない。驚くべきことに、本発明者らは、本発明による反応器を触媒活性である金属から構築すると、工業的に重要な反応を実施するのに十分な触媒活性が得られる可能性があることを発見した。したがって、実施形態では、本発明による反応器本体は、触媒活性金属又は合金で作製されている。例えば、金属銅から製造された反応器本体は、優れた熱伝導特性を提供するが、銅触媒を汚染する成分(硫黄含有化合物等)が、例えば酸化亜鉛によって事前に除去されていれば、銅はまた、同時にメタノールの合成及び分解のための触媒活性を提供できる。
【0054】
理論に拘束されることは望むものではないが、本発明者らは、本発明による触媒反応器本体を使用して実現できる顕著な触媒活性及び/又は変換は、副流路が、主流方向を少なくとも部分的に横断する方向に流体を向けるように構成されていることに起因すると考えている。主流方向を少なくとも部分的に横断する方向に流体を向けることにより、流体流中の分子と反応器本体の内部表面の間の衝突回数が増加すると考えられる。不均一系触媒作用では、反応は、典型的には、固体触媒床と流体流中の分子の間の界面で起こるため、流体流分子と反応器本体の内部表面の間の衝突回数が増加することにより、変換率が高くなる。換言すれば、流体分子が、触媒活性表面と衝突しないか、又は触媒活性表面で反応できずに特定の長さの反応器本体を通って移動し得る可能性が低くなる。したがって、流体流の特定の分子が、触媒活性部位で変換される可能性が高くなる。本発明者らは、副流路が、主流方向を少なくとも部分的に横断する方向に流体を向けるように構成される結果として、流体流と反応器本体の間の熱伝達も改善されると考えている。
【0055】
副流路が、主流方向を少なくとも部分的に横断する方向に流体を向けるように構成されているため、本明細書で各副流路の長さを反応器入口と反応器出口の間の最短の長さで割ったものとして定義される屈曲度(tortuosity)は、1より大きい。好ましくは、屈曲度は1.1以上であり、より好ましくは1.3以上、更により好ましくは1.5以上である。例えば、副流路の屈曲度は、1.1~5、又は1.2~3である。
【0056】
流体流分子と触媒反応器本体の内部表面の間の衝突回数にとって重要な要素は、流れの乱れである。層流とは異なり、乱流が多いほど、流体流分子と触媒反応器本体の内部表面の間の衝突が増加するため、触媒性能が向上する。主流方向を少なくとも部分的に横断する方向に流体を向けることにより、流れの乱れが増加する。流れの乱れに影響する別の要因は、副流路の直径である。副流路が非常に狭い場合、副流路を通過する流れの乱れが悪影響を受ける。したがって、副流路の直径は、好ましくは、1mm以上であり、より好ましくは1.3mm以上、更により好ましくは1.5mm又は2mm以上である。副流路の断面が円形ではなく、伸長方向及び幅方向を有する場合、例えば、楕円形又は長方形の断面を有する副流路の場合、上記の好ましい副流路の直径は、断面の幅方向における副流路の直径に関する。一例として、長方形の断面を有する副流路の場合、前記長方形の断面は1×4mm、又は2×6mm(幅×長さ)の寸法を有してもよく、つまり、幅方向の副流路の直径は、それぞれ1mm又は2mmである。
【0057】
触媒反応器本体の副流路は、主流方向を少なくとも部分的に横断する方向に流体を向けるように構成されている限り、多種多様な構成を有することができる。例えば、副流路は、主流方向に対してある角度で配置された直線流路であってもよい。他のオプションとしては、例えば、湾曲流路が挙げられる。
【0058】
1つのオプションは、副流路がジグザグパターンに沿って、主流方向に対してある角度で配向された区画を含むことである。図2a及び図2bは、ジグザグパターンに沿う副流路を含む、本発明の一実施形態による触媒反応器本体の概略図を示す。
【0059】
別の可能なパターンは、反応器周壁の反対側間に延びる複数の波形矢板状壁の横方向の交互スタックによって形成されたかのような形状の流路として説明され得る。図8a及び図8bは、そのような横方向の交互矢板状パターンに沿う副流路を含む、本発明の一実施形態による触媒反応器本体の概略図を示す。
【0060】
実施形態では、触媒反応器本体の副流路は、主流方向に対して20~70度の角度で配向された1つ又は複数の区画を含む。
【0061】
触媒反応器本体は、第2の流体を収容するように配置された1つ又は複数の第2の副流路を更に含んでもよく、第2の流体は、好ましくは熱伝達流体である。このようにして、触媒反応器本体の温度を更に良好に制御することができ、反応の活性及び選択性等の要因に良い影響を与えることができる。熱エネルギーの輸送を改善するために、熱輸送のための流路は、好ましくは、熱エネルギーの反応器内外への輸送を促進するための金属構造として製造される。また、触媒反応器本体内部の温度を監視するために、熱電対を第2の副流路のうちの1つ又は複数に挿入することができる。
【0062】
本発明の触媒反応器本体を使用すると、短い反応器のみを使用して高い変換率を得ることができる。有利には、短い触媒反応器本体は、典型的には、長い反応器本体よりも軽量である。好ましくは、触媒反応器本体は、主流体流の方向において0.5~50cmの長さを有する。より好ましくは、触媒反応器本体は、主流体流の方向において0.5~30cm、例えば1~10cm、又は1~5cmの長さを有する。
【0063】
より大きい活性表面積が所望される場合は、反応器本体の内部表面積を粗くすることができる。触媒反応器本体が積層造形を使用して作製される場合、触媒反応器本体は、典型的には、積層造形法に起因するある程度の粗さを有する。更に、金属反応器本体の場合、内部表面積の酸化及びそれに続く還元により、驚くべきことに、反応器本体の内部表面が更に粗くなり、それによって触媒活性表面積が増加する可能性がある。表面粗さの量は、展開界面面積率(developed interfacial area ratio)としても公知のSdrパラメータで表すことができる。このパラメータは、完全に滑らかな表面と比較して、表面粗さによって生じる追加的な表面積の値である。このSdrパラメータは、ISO 25178で下記式によって定義されている。
【0064】
【数1】
【0065】
式中、Aは定義領域である。例えば、完全に滑らかな表面のSdrパラメータは0であるが、表面粗さにより、完全に滑らかな表面の2倍の表面積を有する同一表面のSdrパラメータは、1である。好ましくは、触媒反応器本体の内部表面のSdrパラメータは、0.5以上、より好ましくは0.7以上、又は0.8以上である。実施形態では、Sdrパラメータは1以上でさえあってもよく、例えば1.5以上であってもよい。
【0066】
反応器の壁に沿った反応物のバイパス又はスリップが、反応器床が反応器周壁と一体的に形成されていることにより防止されるという事実によって、比較的短い反応器でも所望の変換率が得られる可能性がある。
【0067】
触媒反応器本体は、軽量であることが可能であり、すなわち、所望の変換率を達成するのに必要な反応器の長さに悪影響を及ぼすことなく、単位体積あたりに存在する固体材料の量を少なく抑えることができる。好ましくは、単位体積あたりに存在する固体材料の量は、反応器本体の1cmあたり0.7cm以下であり、より好ましくは、1cmあたり0.5cm以下、例えば、1cmあたり0.4cm以下、又は1cmあたり0.3cm以下でさえある。典型的には、単位体積あたりに存在する固体材料の量は、1cmあたり0.1cmより大きい。
【0068】
流路の形状及び寸法は最適化できるため、触媒反応器本体の圧力損失は、典型的には低い。実施形態では、反応器本体は、主流体流の方向で測定され、0.11m/秒の空塔気体速度、及び293Kの温度の気流を使用して測定される場合、反応器本体の1メートルあたり0.5バール以下の圧力損失を有する。好ましくは、圧力損失は、1メートルあたり0.4バール以下であり、より好ましくは1メートルあたり0.3バール以下である。
【0069】
反応器本体の主流方向を少なくとも部分的に横断する方向に流体を向けることにより、反応器本体を通過する流体流の乱流が増加する。流体流中の反応物と反応器本体の触媒活性内部表面積の間の接触が増加するため、これは有益である。
【0070】
反応器本体によって流体流に乱流が加えられている程度は、レイノルズの古典的な実験によって評価することができ、この実験では、着色された溶液を細い管を通して無色の液体である流体流に導入する。次いで、着色された溶液を含むこの流体流は、反応器本体を通過する。乱流の割合を分析するために、反応器から流出する溶液の均一性を目視で検査して、反応器本体によって加えられた乱流の量を確認できる。均一に着色された溶液が反応器から流出した場合、その流れは反応器本体を通過した100%の乱流とみなされる。
【0071】
同様に、反応器本体からガス流に導入された乱流は、ガスクロマトグラフィーによってガス流と区別できる成分をガス流に局所的に導入することにより測定できる。流体流が反応器本体から出た後に、流体流からサンプルを採取し、導入された成分の濃度を分析することにより、乱流の量を求めることができる。導入された成分の濃度が経時的に変動しない場合、反応器を通過した流れは、100%の乱流である。導入された成分の濃度の経時的変動が、最高測定値に対して10%であれば、90%の乱流等に対応する。好ましくは、本発明による触媒反応器本体は、流体流方向に沿った長さが2cmである反応器本体では、流体流に50%以上の乱流を発生させ、好ましくは70%以上の乱流、より好ましくは90%以上の乱流を発生させる。
【0072】
また、流体が主流方向を少なくとも部分的に横断する方向に向けられている範囲は、例えば主流方向に可視光のビームを照射することによって可視化することができる。このような可視光のビームは、本明細書に記載の、主流方向に沿った長さが6mm以上、好ましくは4mm以上、更により好ましくは2mm以上である反応器本体を直線的に通過することはできない。
【0073】
実施形態では、本発明の触媒反応器本体は、ディスクとして提供することができる。ディスクは積層造形によって製造することができ、反応物の流れ及び熱エネルギーの輸送を処理する反応器構造内に容易に挿入することができる。本発明による触媒反応器本体では、短い反応器を使用して高い変換率を実現することができる。したがって、ディスクは比較的薄くてもよく、すなわち、主流方向の長さがディスクの横方向の直径に対して短くてもよい。好ましくは、主流方向に沿ったディスクの長さは、ディスクの横方向に沿った直径よりも短い。実施形態では、触媒反応器本体の幅/長さの比(すなわち、主流方向に対する触媒反応器本体の横方向の直径を、主流方向に沿ったディスクの長さで割ったもの)は、1以上であり、より好ましくは2以上である。例えば、触媒反応器本体の幅/長さの比は、1~20の範囲であり得、好ましくは1.5~15の範囲、より好ましくは2~10の範囲であり得る。短いディスクの形態の触媒反応器本体が不活性化された場合、新しい触媒ディスクと容易に交換するか、又は置き換えることができる。これらの短いディスクの別の利点は、さほど多くの空間を利用できない箇所、例えば、薪ストーブのストーブパイプ等の民生用機器に設置できることである。
【0074】
本発明の別の態様は、2つ以上の直列に接続された触媒反応器本体を含むスタックである。反応器本体を直列にスタッキングすることにより、触媒反応器の長さは、例えば必要な変換率に応じて容易に変更できる。特に反応器本体が大きい幅/長さの比を有する場合は、反応器全体の長さを少ない工程で非常に正確に制御でき、触媒反応器本体の多くのさまざまな組み合わせを作製できる。
【0075】
別の利点は、不活性化されたディスクの交換を非常に容易に実施できることである。このようなディスクのスタックのうち、わずか数枚のディスクのみが不活性化された場合は、これらのディスクは、触媒床全体を置き換えるか、又は再生する必要なく、新しいディスクと交換することができる。また、2つ以上の触媒反応器本体を含むスタックが部分的に不活性化された場合、反応器床全体を置き換えるか、又は再生しなければならない代わりに、所望の変換率を達成するために、更なるディスクを1つ又は複数追加することができる。
【0076】
さまざまな特性、例えば、さまざまな種類の触媒粒子、さまざまな触媒負荷、さまざまな副流路形状等を持つ複数の触媒反応器本体を組み合わせることにより、特注の触媒反応器を簡便な方法で提供することが可能である。これらの反応器は、例えばディスクのスタックの形態で提供することができ、また、1つ又は複数の触媒反応器本体を追加、除外、又は再配置することによって容易に調整することができる。例えば、反応物の流れは、最初に触媒活性種の負荷が低いディスクを通過でき、反応する分子の濃度が低い次のディスクで、この流れは、活性種の負荷がより大きいディスクを通過できる。特に、比較的大きい幅/長さの比を有する触媒反応器本体、例えば薄いディスクを使用する場合、さまざまな特性を持つ反応器本体を組み合わせることによる反応器のカスタマイズは、更により正確に制御できる。
【0077】
好ましくは、本明細書に記載の触媒反応器本体は、整列器を受け入れるための1つ又は複数の孔を更に備える。このようにして、2つ以上の触媒反応器本体を含むスタック内の、例えばディスクの形態のそれぞれの反応器本体は、2つ以上の直列に接続された触媒反応器本体を含むスタックを通過する流れを最適化するために、容易に整列させることができる。
【0078】
実施形態では、触媒反応器本体は、1つ又は複数の流体入口及び/又は出口を更に含む。有利には、これらの流体入口及び/又は出口を使用することで、反応物及び生成物を、触媒反応器本体の触媒活性内面に取り込み、且つそこから除去することができる。流体入口及び出口は、流体ライン、例えばガスラインを接続できるコネクタの形態で設けられてもよい。ディスクのスタックの場合、ディスクのスタックの最初及び最後の触媒反応器本体のそれぞれに、流体入口及び出口が設けられてもよい。触媒反応器本体に流体入口及び/又は出口を設けることにより、流体ラインを触媒反応器本体に直接接続できるため、実験設備又は工業設備に1つ又は複数の触媒反応器本体を組み込むことが簡便となる。特に、触媒反応器本体を、積層造形を使用して作製する場合、1つ又は複数の流体入口及び/又は出口を既に取り付けた触媒反応器本体を製造することは非常に簡便であり、なぜなら入口及び/又は出口を設置する追加の工程を必要とせずに、反応器本体自体を作製するのと同一の積層造形プロセス中に、入口を製造できるためである。
【0079】
本発明の一態様は、本明細書に記載の触媒反応器本体を製造する方法であり、この方法は、複数の副流路を含む本体を積層造形する工程を含む。
【0080】
触媒反応器の積層造形により、焼結金属粒子の初期反応器の使用に伴う問題を回避できる。積層造形により、他の方法、例えば金属粒子の焼結、射出成形、又は押出成形では典型的には達成できない、最適化されたパターンの流路を有する反応器本体を製造することが可能になる。例えば、積層造形を使用して、交互方向の短い区画を含む流路を製造できる。
【0081】
好ましくは、複数の副流路のパターンは、計算流体力学を使用して設計される。計算流体力学を扱うコンピュータープログラムを使用することにより、細孔幅及びフローパターンを、重要なことに、最適化できる。その結果、反応器全体の圧力損失を小さく抑えることができ、一方で反応器本体は依然として大きな内部表面積だけでなく、流体流への乱流を提供する。
【0082】
使用できる積層技術には、熱溶解積層法(FDM)、選択的レーザー焼結(SLS)、選択的レーザー溶融(SLM)、及び金属流体の材料噴射が含まれる。他のバリアンスパワーフュージョン金属印刷法(variance power fusion metal printing process)も使用できる。
【0083】
熱溶解積層法は、例えば直接ノズル堆積(direct nozzle deposition)、又は静的混合ノズルのように材料入口を組み合わせた多材料ノズル堆積(multi-material nozzle deposition)で実施することができる。
【0084】
高充填ポリマーを用いた積層造形の最近の発展は、本発明による触媒反応器本体の製造に非常に良く適している。高充填ポリマーを採用すると、材料及び層状構造の印刷において大いに柔軟性を高めることが可能となる。金属粒子を充填したポリマーで印刷する場合、有機材料を除去した後の金属構造の単位質量あたりの表面積が大きくなる可能性がある。比較的大きい表面積に1種又は複数の活性成分が堆積すると、活性触媒がもたらされる。更に、アルミナ、ジルコニア、又はチタニア等の金属及び酸化物材料の混合物を、金属又は合金とともに印刷することもできる。金属又は合金の成分は、ポリマーの酸化後に熱処理によって焼結され得るが、酸化材料は大きい表面積を維持しているため、触媒活性成分の堆積後も高い触媒活性を提供する。したがって、高充填ポリマーを用いた積層造形によって製造される触媒反応器は、本発明の重要な実施形態である。
【0085】
したがって、実施形態では、積層造形の工程は、
- 金属及び/又はセラミック材料を含むポリマー材料を使用して、本体を熱溶解積層する工程と、
- ポリマー材料を除去し、金属及び/又はセラミック材料を焼結するように本体を処理する工程と
を含む。
【0086】
本体を処理してポリマー材料を除去し、金属及び/又はセラミック材料を焼結させることは、例えば、ポリマー材料が燃焼又は分解し、金属及び/又はセラミック材料が焼結する温度まで、本体を加熱することを含む。
【0087】
積層造形を使用して複雑な構造を作製できるため、副流路構造を高度に最適化及びカスタマイズして設計できる。好ましくは、積層造形工程の前に、計算流体力学を使用して最適な副流路構造を設計する。
【0088】
この方法は、内部表面に酸化物層を適用することを更に含んでもよい。これは、例えば、反応器本体の内部表面にシリコーンゴムを含む溶液を含浸させ、含浸させた反応器本体を酸化させ、それによって反応器本体の内部表面を被覆するシリカ層を得ることによって行うことができる。シリコーンゴムの酸化によって生成されるシリカが流路を塞ぐのを防止するために、シリコーンゴムの高希釈溶液を複数回含浸させることができる。金属構造上の二酸化ケイ素層は、大半の金属及び合金の場合のように、アルカリ性溶液で処理することにより容易に除去でき、これは不活性化後に触媒を活性化させるのに魅力的である。
【0089】
この方法はまた、触媒活性成分を反応器本体の内部表面に堆積させる工程を含んでもよい。この触媒活性成分は、例えば薄層として適用してもよく、又は個別の粒子として適用してもよい。
【0090】
触媒活性成分を反応器本体の内部表面に堆積させる工程は、例えば、電気化学交換を使用することによって、又は1種又は複数の触媒前駆体を含む溶液を含浸させた後、乾燥及び焼成することによって実施されてもよい。
【0091】
触媒活性成分は、酸化物層に適用することができるが、電気化学交換によって触媒活性金属を反応器本体の金属表面に適用すると、驚くべきことに、高触媒活性である構造が得られることが立証されている。チタン、鉄、又はニッケル合金表面への銅の適用は、例えばメタノールの合成及び分解の場合にも非常に興味深い。プラチナ又はパラジウムを電気化学交換することにより、有毒ガス又は悪臭ガス、特に硫黄含有化合物(例えば、メルカプタン)の酸化に非常に活性な組成物が生成された。
【0092】
触媒反応器本体が金属で形成されている場合、反応器本体を製造する方法は、反応器本体の金属内部表面の制御された酸化の工程を更に含んでもよい。この酸化により、表面積が増大した酸化物層が生成され、下にある金属と密接に結合する。この酸化物層は、触媒活性であってもよく、且つ/又は、触媒活性材料を堆積させるための担体として機能することができる。このような酸化物層は、例えば、チタン、ジルコニウム及び/又はそれらの合金の酸化によって得ることができる。
【0093】
反応器又は反応器内部が金属又は合金から製造され、酸素で酸化されると、金属に強力に付着する比表面積の大きい酸化物層が生成される場合、触媒活性成分を、この高多孔性酸化物層上に適用することができる。活性成分の適用は、当技術分野で公知の手順に従って達成することができる。
【0094】
実施形態では、この方法は、金属内部表面を酸化させる工程及び還元する工程であり、それによって金属内部表面の表面積を増加させる、工程を更に含む。
【0095】
本発明の別の態様は、化学反応を触媒するための、本明細書に記載の触媒反応器本体の使用である。本発明による反応器本体は、吸熱反応と発熱反応の両方を含む広範囲の触媒反応に使用することができる。所望の用途に応じて、反応器本体を製造するさまざまな材料及びさまざまな方法を選択できる。
【0096】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の触媒反応器本体内で化学反応を触媒する方法である。
【0097】
一実施形態によれば、触媒反応器本体は、水和酸化鉄粒子を含み、ガス流からの硫化水素及び/又はメルカプタンの酸化に使用される。
【0098】
本発明による触媒反応器本体の重要な用途は、ガス流中に低濃度で存在する悪臭ガス分子又は他の望ましくないガス状不純物の酸化である。概して、大気中に放出されるガス流が関係している。通常、除去すべきガス分子の含有量は小さすぎるため、反応器の温度をほぼ完全な酸化に必要なレベルに保つのに十分な熱を供給できない。精製プロセスで大量の熱エネルギーを使用することを避けるには、燃焼後のガス流に存在する熱エネルギーを採用して、反応器へのガス流の温度を上昇させる必要がある。したがって、本発明による触媒反応器本体を、触媒反応器本体と熱接触している別の本体、好ましくは金属体に接続することができる。反応器へのガス流は、もう一方の本体で予熱できる。このもう一方の本体は、例えば、本明細書に記載の反応器本体であってもよいが、触媒活性な水和酸化鉄粒子は含まない。
【0099】
例えば、養豚場からの有機質肥料を処理する工場からのガス流は、酸性溶液で処理することによりアンモニアを除去した後、典型的には、1~200ppm/vの硫化水素を含む。
【0100】
触媒反応器本体はまた、アンモニアを触媒的に窒素及び水に変換する方法であるアンモニアの部分接触燃焼に使用できる。例えば、養豚場からの有機質肥料を処理する工場の上記の場合、又は家畜の臭気を低減すべき他の場所の場合、本発明による触媒反応器本体は、アンモニアだけでなく、硫化水素及び/又はメルカプタン等の他の悪臭ガスの両方の除去に使用できることを意味する。必要に応じて、異なる触媒粒子を含有する複数の触媒反応器本体を直列に、例えばディスクのスタックに配置することができる。
【0101】
別の重要な用途は、硫化水素含有量が徐々に増加する堆積物からの天然ガスの精製である。これらの場合では、硫化水素及び/又はメルカプタンの含有量は、典型的には、アルカノールアミンの通常の吸収を採用するには少なすぎる。したがって、硫黄化合物は、液体又は固体の吸収剤によって除去され、飽和後に廃棄物として廃棄される。いくつかの液体有機アミンの他に、概して水和酸化鉄が利用される。硫黄化合物は、水和酸化鉄と反応して硫化物を生成し、室温で酸素に曝すことによって水和酸化鉄及び元素硫黄に再生できる。精製すべきガス流に酸素をいくらか添加することによって、同時再生を容易に実施することができる。水和酸化鉄を採用する方法は、石炭から都市ガスが生成された19世紀にさかのぼる。問題は、酸素による再生中に固体吸収剤中に形成された硫黄が吸収剤に残り、吸収床全体の圧力損失を増大させることである。使用済みの吸収剤を反応器から除去するには大きな労力を要し、硫黄で飽和した吸収剤の廃棄も困難である。
【0102】
本発明による触媒反応器本体の特別な特性により、硫化水素等の不純物を完全に除去するには、比較的短い反応器で十分となる。反応器本体の(内部)表面に適用された水和酸化鉄の小粒子は、硫化水素及びメルカプタンと急速に反応し、酸素による酸化が円滑に進行する。酸化によって生じる硫黄は、触媒反応器本体の表面に残る。反応器の圧力損失が低いため、圧力損失が高くなりすぎる前に大量の硫黄を収容することができる。吸収剤の再生は、窒素等の不活性ガス流を反応器に通過させる間に反応器を加熱することによって実施することができる。硫黄が凝縮した後、硫黄ミストを含有する残りのガス流を可燃性ガスの流れに取り込み、バーナーに供給し、そこで残りの硫黄が二酸化硫黄に酸化される。酸化鉄の小粒子は、反応器の表面との強い相互作用により熱処理中に焼結せず、再水和後に硫化水素及びメルカプタンの取り込み並びに硫化物の酸化において再び活性化する。
【0103】
本発明による触媒反応器本体を使用できる別の触媒方法は、メタン及び水蒸気を合成ガスに変換する方法である、メタン水蒸気改質である。メタン水蒸気改質は、非常に吸熱的な方法である。本発明による触媒反応器本体の優れた熱伝導性は、例えば外部ヒーターを使用して触媒を効果的に加熱できることを意味する。メタン水蒸気改質に使用する場合、セラミック材料の層が二酸化チタンを含むことが好ましく、なぜなら、担体材料としての二酸化チタン触媒は、メタン水蒸気改質中のコークスの形成を抑制するのに効果的であり得るからである。上記に説明したように、このような層は、反応器がチタンで作製されている場合、反応器本体の金属内部表面の制御された酸化によって調製できる。また、より高温を必要とする二酸化炭素改質を実施することができ、コークスの形成が抑制される。
【0104】
本発明による触媒反応器本体は、例えば揮発性有機化合物を酸化させることにより、薪ストーブ内での木材燃焼等の燃焼プロセスからの排気を浄化するためにも使用することができる。このようにして、例えば住宅街で大気質を改善することができる。有利には、それらの圧力損失が低いため、触媒反応器本体は、ガス流をあまり制限することなく、ストーブパイプ又は煙突に設置できる。
【0105】
本発明による触媒反応器本体は、キッチンフードで収集されたガスを浄化するためにも使用できる。ストーブパイプ又は煙突での使用と同様に、触媒反応器本体は、例えば通気管又はキッチンフード自体に設置できる。
【実施例
【0106】
(例1)
この比較例では、シリカ球20gに0.5質量%のPdを装填した。この目的を達成するために、アンモニア水溶液を使用してpH=9にした脱塩水溶液100mlにシリカ球を浸漬した。続いて、2.8mlの10質量%テトラアンミンパラジウム(II)硝酸塩水溶液を、この溶液に滴加した。溶液をpH=9に24時間保持した後、含浸させたシリカ球をろ過によって溶液から分離し、周囲条件下で2時間乾燥させた。300℃で3時間焼成を実施し、担持酸化パラジウム触媒を得た。
【0107】
調製した酸化触媒によるトルエンの接触酸化を、それぞれ3g、5g、10g、及び触媒材料20gを含むガラス固定床反応器で実施した。図1は、さまざまな量の触媒材料を充填した固定床反応器の写真を示す。大きな立方体を追加して、反応器へのガス流の温度を実験のレベルまで上昇させた。トルエンの接触酸化は、300ppmのガス状トルエンを含有する400l/時の流れを触媒床に通過させることによって実施した。すべての場合において、275℃の温度で最大変換率を達成した。図1では、ガラス反応器に配置された触媒の量及び275℃で達成された最大変換率がわかる。
【0108】
使用する触媒材料の量が増加するにつれ、最大変換率が増加していること、すなわち57.7%、81.9%、94.2%、及び99.3%と増加していることから、固定床反応器では100%に近い所望の変換率を達成するには、比較的大量の触媒材料が必要であることが明らかである。より少量の触媒材料を使用すると、触媒体が反応器の壁に良好に収まらないため、結果として反応物が反応せずに反応器の壁に沿って大幅にスリップする。その結果として、所望の変換率を達成するには、触媒床の長さは比較的長くなければならない。
【0109】
(例2)
2つの副流路構造を設計し、これらの副流路構造を有する触媒反応器本体を、直径4.4cm、及び主流方向に沿った長さ2cmのディスクとして製造した。2つの設計の特徴を、Table 1(表1)に列挙する。構造1は図2に示されており、構造2は図8に示されている。
【0110】
更に、ディスク構造2と同一の矢板状設計であるが、ディスクの直径及び厚さが異なるディスクを更に2つ製造した。これらの特徴も、Table 1(表1)に列挙する。
【0111】
【表1】
【0112】
(例3)
3D印刷された、ディスクをジグザグに通る反応器流路を含むステンレス鋼反応器ディスクに、薄いシリコーンゴム被覆を施した。この目的を達成するために、市販のシリコーンゴム(Elastosil N10)をジエチルエーテルで(質量基準で)8倍に希釈した。反応器ディスクを溶液に5秒間浸漬被覆した後、シリコーンゴムを周囲条件下で4時間加硫した。図2a及び図2bは、反応器ディスクの流路設計を示す。図2cは、3D印刷されたディスクの写真であり、図2dは、シリコーンゴム被覆を加硫した後のディスクを示す。続いて、ディスクを550℃(3時間)で焼成して、シリコーンゴムを薄い多孔性シリカ層に変換した。このシリカ層に、例1に記載した手順と同様にパラジウム触媒を適用した。シリカで被覆した反応器ディスクを、水酸化アンモニウム溶液でpH=9にした水溶液に浸漬した後、0.7mlの10質量%硝酸テトラアンミンパラジウム(II)溶液をこの溶液に滴加した。溶液をpH=9に24時間保持した後、ディスクを溶液から取り出し、周囲条件下で2時間乾燥させた。続いて、ディスクを300℃で3時間焼成した。上澄み液をストリッピングボルタンメトリーで分析して反応器ディスクのパラジウム負荷を決定し、5mgであることがわかった。この反応器ディスクを使用したトルエンの触媒変換は、300ppmのトルエンを使用して400l/時で実施した。変換曲線は、図3に示されている。使用したパラジウムの量が比較例1よりも20倍少ないが、変換曲線からトルエンは275℃の温度で98%まで変換されることがわかる。変換率の向上は、副流路の設計、及び反応器ディスクの設計により、反応器の壁に沿ったトルエンの短絡が発生し得ないという事実に起因すると考えられる。
【0113】
(例4)
チタン合金Ti-6Al-4Vから3D印刷された、図2に示すのと同一構造の反応器ディスクを熱酸化させて、内面を被覆するチタン支持層を導入した。反応器ディスクの内側流路に、下にあるTi-6Al-4V合金に強力に付着する、μmサイズのTiO表面層を設けるには、600から700℃の間の温度で十分であることが示された。元素分析により、700℃で酸化されたサンプルの68質量%まで表面に酸素が濃縮されていることが示された。800℃を超える温度では、表面の酸化物層がもろくなり、亀裂の形成が観察された。当技術分野で公知の方法を使用して、酸化された表面層上に酸化触媒を調製することができる(例えば、析出沈殿、(クエン酸塩)含浸、イオン交換)。
【0114】
構造1の3D印刷されたTi-6Al-4V合金ディスクを、5℃/分の加熱及び冷却速度で、700℃で3時間熱酸化させた。続いて、ディスクを100mlの14%HCl溶液に15分間入れ、続いて脱イオン水ですすぎ、室温で1時間乾燥させた。続いて、酸化ディスクを、pH1の塩酸溶液(100ml)中に塩化スズ(II)0.1g及び塩化パラジウム(II)0.03gを含む溶液に配置した。その後、ディスクを塩化アンモニウム2.6g、塩化パラジウム(II)0.033g、次亜リン酸ナトリウム1g及び9.2mlの14%HClを含有する100mlの脱イオン水溶液に移した。溶液のpHを、水酸化アンモニウム溶液を添加することにより、pH10より大きくした。酸化チタンディスクをこの浴に1時間浸漬し、その間に浴温度を75℃に設定して連続的に撹拌した。続いて、ディスクを室温で(1時間)乾燥させた後、110℃で(一晩)乾燥手順を実行した。続いて、450℃で3時間焼成を実施した。トルエンの触媒変換を実施し(400ppmのトルエン、400l/時)、結果は図7に示されている。
【0115】
(例5)
図2に示すステンレス鋼反応器ディスクを、1Mの塩酸溶液に1時間浸漬して、Crの表面酸化物層を部分的に除去した。この酸処理の後、反応器ディスクを、塩化白金(II)及び塩化パラジウム(II)を1対5の比で含有する1MのHCl溶液に直接移した。反応器ディスクをこの溶液中で5分間処理し、ガルバニック交換プロセスを起こさせた。最初の酸処理によって露出したステンレス鋼基板の鉄は酸化され、パラジウム及びプラチナ種は、鉄と比較してそれらの還元電位がより高いため、ステンレス鋼の表面に還元された。脱塩水で洗浄して乾燥させた後、調製したディスクをトルエンの接触燃焼に使用した。図4は、後方散乱電子(BSE)検出器で撮影した走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示しており、Pd/Pt触媒が明るい点として映し出されている。このディスクを使用した触媒変換曲線は図5に示されており、約336℃で94%の変換率に達する。
【0116】
(例6)
ディスク構造2(図8)は、代替の3Dプリンティング技術を使用して3D印刷した。図2のディスク構造は、粉末ステンレス鋼の床を、選択的レーザー焼結手順を使用して印刷したが、この例は、金属粒子を含有するポリマーを使用した熱溶解積層法を使用して同一の構造を製造できることを示す。ステンレス鋼ビーズ(約80~90質量%のステンレス鋼、商品名BASF Ultrafuse 316L)を高度に充填したポリオキシメチレンポリマーを前駆体として使用した。充填されたポリマーを、加熱された押出ノズル(230℃)を介して図8の矢板状構造に印刷した。脱バインダ(120℃のガス状硝酸による処理)及び焼結(1380℃の水素ガス)の手順の後、図8dに示すディスクを得たが、これは、これらの触媒反応器が、熱溶解積層法による手法からも製造できることを示している。SLSで得られた同一の構造を、図8cに比較のため示す。
【0117】
(例7)
触媒反応器ディスクを、オズボーン・レイノルズ装置における垂直方向の水流に挿入した。管の直径は4.6cmであり、そこに反応器ディスクを取り付け、水が管の壁と反応器ディスクの間に漏れないようにした。水は、1.2l/分の流量でディスクを通って流れた。管の中心を通して、青色に着色された溶液を水流に導入した(図6を参照)。反応器ディスクによって生成された乱流により、均一に青色に着色された溶液が反応器ディスクから出た(図6の下部を参照)。
【0118】
(例8)
チタン(Ti-6Al-4V)製の反応器を、US-A-5 472 927に記載されている方法に従って、シリコーンゴムの酢酸エチル希釈溶液を含浸させ、溶液を除去した後、乾燥及び焼成することによりシリカ層で被覆する。反応器の細孔を塞がずにシリカ層の厚さを増大させるために、含浸及び乾燥を2回繰り返す。続いて、反応器に塩化鉄(II)及び尿素の希釈溶液を充填し、その後、温度を75℃にするが、この温度では、尿素の加水分解により溶液のpHが上昇し、鉄(II)がシリカ上に堆積沈殿する。残った溶液の除去、乾燥及び焼成の後、反応器に硫黄を入れる準備が整った状態となる。空気中で200ppm/vの硫化水素の流れを、反応器に通過させる。酢酸鉛を浸み込ませた紙により、硫化水素が完全に取り込まれたことが確認された。流れを16時間継続した後、圧力損失は依然として小さかった。
【0119】
ガス流を窒素に変えた後、反応器の温度を250℃に上げ、排気管を冷却することにより、発生する硫黄を凝縮し、残りのガス流をメタン・空気バーナーに通した。
【0120】
冷却後、反応器を80℃に保持し、水蒸気の流れを反応器に通過させると、室温に保持された吸収剤が、再び硫化水素と反応した。
【0121】
(例9)
本発明の一実施形態による(矢板状設計のディスクの形態の)触媒反応器本体でのトルエンの変換を、モノリス車両用触媒コンバーターでのトルエンの変換と比較した。Table 2(表2)では、さまざまな触媒の特徴を示す。使用した車両用触媒コンバーターは、プラチナ、パラジウム、及びロジウムを触媒活性材料として含有する、1平方インチあたり400流路の正方形の直線流路を含む市販の触媒であった。
【0122】
本発明によるディスクは、ステンレス鋼から3D印刷され、薄いシリコーンゴム被覆が施されている。この目的を達成するために、市販のシリコーンゴム(Elastosil E43)をジエチルエーテルで(質量基準で)8倍に希釈した。反応器ディスクを溶液に5秒間浸漬被覆した後、シリコーンゴムを周囲条件下で2時間加硫した。この手順を3回繰り返した。続いて、ディスクを550℃で3時間焼成して、シリコーンゴムを薄い多孔性シリカ触媒担体層に変換した。このシリカ担体上に、プラチナ/パラジウムの二金属触媒を堆積させた。シリカで被覆した反応器ディスクを、水酸化アンモニウム溶液を使用してpH10.5にした水溶液に浸漬した後、硝酸テトラアンミンプラチナ(II)13mg及び10質量%のテトラアンミンパラジウム(II)硝酸水溶液325mgを添加した。溶液をpH=10.5に24時間保持した。その後、ディスクを溶液から取り出し、周囲条件下で2時間乾燥させた。続いて、ディスクを300℃で3時間焼成した。冷却後、2回目の触媒適用を実施して、触媒負荷を増加させた。1ディスクあたり36.3mgの触媒負荷を達成した。
【0123】
【表2】
【0124】
トルエン(100ppm)の触媒変換を種々の体積流量で測定し、車両用触媒コンバーターを本発明によるさまざまな枚数の触媒ディスクのスタック(1~4枚のディスク)と比較した。結果を図9に示す。本発明による4枚のディスクのスタックのトルエンの変換率は、車両用触媒コンバーターを使用した場合よりも高かったことがわかるが、車両用触媒コンバーターは、4枚のディスクのスタックよりも反応器の体積が大きく、内部表面積が大きく、触媒負荷がはるかに大きいにもかかわらずである。車両用触媒コンバーターと比較して向上したディスクの性能は、副流路の設計、例えば副流路の構造、屈曲度、及び副流路の直径に起因すると考えられ、その結果、反応物と触媒表面との接触が改善される。
【0125】
(例10)
トルエンの変換率を、同一の副流路設計(矢板状)であるが、壁の厚さ及び副流路の直径が異なる2つのステンレス鋼触媒反応器本体について比較した。異なるディスクの写真を図10b(狭い副流路)及び図10c(広い副流路)に示す。ディスク間の主な相違は、副流路の壁の厚さ(0.1mmに対して0.8mm)、細孔径(長方形断面の細孔0.33mm×2mmに対して2mm×6mm)及び内部表面積(1578.6に対して378.8cm)である。両方のディスクに、例9に記載したのと同一の方法でPd/Pt触媒を備えた。続いて、トルエンの触媒変換は、300ppmのガス状トルエンを含有する400l/時の流れをさまざまな触媒ディスクに通過させることによって実施した。結果を図10aに示す。副流路の直径が広い触媒ディスクを使用すると、300℃で93%の変換率に達した。驚くべきことに、副流路が狭い触媒ディスクの場合、内部表面積が大きく、触媒負荷が大きいにもかかわらず、達した全体の変換率はより低く、最大変換率は76%であった。理論に拘束されることは望むものではないが、副流路の幅が狭いディスクでは、流路の寸法が小さいため、層流が発生する可能性がより高いと考えられる。したがって、活性表面積との衝突が少なくなり、全体的な変換率が低下する。
【0126】
(例11)
例9と同一の方法で調製したPd/Pt触媒を含有するステンレス鋼の触媒ディスクを、薪の火が燃えている火炎ストーブの上に配置した。触媒ディスクを通過するガスの組成は、光イオン化検出器を使用して監視した。触媒ディスクの温度が300℃に達した場合、触媒ディスクを通過した後の空気の揮発性有機物の総含有量は、以前より約67%低かった(60ppmに対して20ppm)ことは、不完全燃焼した木材を更に酸化させることにより、触媒ディスクを木材火炎からの排気の浄化に使用できる可能性を示す。
【0127】
(例12)
二金属Pd/Pt触媒を含有する本発明の一実施形態によるステンレス鋼触媒ディスク(直径4.4cm、長さ2cm)を、アンモニアの窒素及び水への部分接触燃焼に使用した。300ppmのアンモニアを含有する400l/時の流れを、触媒ディスクに導入した。316℃の温度で、92%の窒素及び水への変換率に達した。
図1a)】
図1b)】
図1c)】
図1d)】
図2a)】
図2b)】
図2c)】
図2d)】
図3
図4
図5
図6
図7
図8a)】
図8b)】
図8c)】
図8d)】
図9
図10
【国際調査報告】