IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 合肥中科離子医学技術装備有限公司の特許一覧 ▶ 中国科学院合肥物質科学研究院の特許一覧

特表2023-542061サイクロトロン用の超電導マグネットシステム及びそれを有するサイクロトロン
<>
  • 特表-サイクロトロン用の超電導マグネットシステム及びそれを有するサイクロトロン 図1
  • 特表-サイクロトロン用の超電導マグネットシステム及びそれを有するサイクロトロン 図2
  • 特表-サイクロトロン用の超電導マグネットシステム及びそれを有するサイクロトロン 図3
  • 特表-サイクロトロン用の超電導マグネットシステム及びそれを有するサイクロトロン 図4
  • 特表-サイクロトロン用の超電導マグネットシステム及びそれを有するサイクロトロン 図5
  • 特表-サイクロトロン用の超電導マグネットシステム及びそれを有するサイクロトロン 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-05
(54)【発明の名称】サイクロトロン用の超電導マグネットシステム及びそれを有するサイクロトロン
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/04 20060101AFI20230928BHJP
   H01F 6/02 20060101ALI20230928BHJP
   H10N 60/81 20230101ALI20230928BHJP
   H05H 7/04 20060101ALI20230928BHJP
   H05H 13/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01F6/04
H01F6/02
H10N60/81
H05H7/04
H05H13/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555052
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-20
(85)【翻訳文提出日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 CN2021126379
(87)【国際公開番号】W WO2023024238
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202110986505.X
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518316882
【氏名又は名称】合肥中科離子医学技術装備有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】520416233
【氏名又は名称】中国科学院合肥物質科学研究院
【氏名又は名称原語表記】HEFEI INSTITUTES OF PHYSICAL SCIENCE, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
【住所又は居所原語表記】No.350 Shushanhu Road Hefei,Anhui 230031(CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宋 云涛
(72)【発明者】
【氏名】丁 開忠
(72)【発明者】
【氏名】杜 双松
(72)【発明者】
【氏名】陳 永華
(72)【発明者】
【氏名】胡 鋭
(72)【発明者】
【氏名】李 蕾
(72)【発明者】
【氏名】畢 延芳
(72)【発明者】
【氏名】張 華輝
(72)【発明者】
【氏名】鄒 春龍
(72)【発明者】
【氏名】李 俊
【テーマコード(参考)】
2G085
4M114
【Fターム(参考)】
2G085AA11
2G085BC04
2G085BC18
4M114CC03
4M114CC16
4M114DA02
4M114DA04
4M114DA09
4M114DA13
4M114DA26
4M114DA32
4M114DA33
4M114DA35
4M114DA38
(57)【要約】
本発明は、サイクロトロン用の超電導マグネットシステム及びそれを有するサイクロトロンを開示する。超電導マグネットシステムは、低温装置と、超電導装置と、保護モジュールとを含む。低温装置は、冷凍機と、低温容器アセンブリとを含む。低温容器アセンブリは、マグネット容器端と、接続輸送管路と、冷源容器端とを含む。接続輸送管路は、マグネット容器端と冷源容器端との間には接続されて連通する。超電導装置は、超電導コイルを含む。超電導コイルは、マグネット容器端内に設けられ、マグネット容器端の液体冷却媒体又は気体冷却媒体への浸漬に適する。保護モジュールは、超電導コイルに接続され、超電導装置がクエンチしたときに超電導コイルを保護するものである。本発明のサイクロトロン用の超電導マグネットシステムによれば、低温装置のシステム安定性が保証され、冷凍機及び冷源容器端に設けられる様々な電気部品に対する超電導コイルの電磁干渉が低減され、磁気シールドに対する需要が低下し、構造が簡素化され、コストが低減される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温装置と、超電導装置と、保護モジュールとを含むサイクロトロン用の超電導マグネットシステムであって、
前記低温装置は、冷凍機と、低温容器アセンブリとを含み、前記低温容器アセンブリ内には、冷却媒体が充填され、前記低温容器アセンブリは、マグネット容器端と、接続輸送管路と、冷源容器端とを含み、前記冷凍機は、前記冷源容器端に設けられ、前記低温容器アセンブリ内の冷却媒体に冷凍量を提供するものであり、前記接続輸送管路は、前記マグネット容器端と前記冷源容器端との間には接続して連通し、
前記超電導装置は、超電導コイルを含み、前記超電導コイルは、前記マグネット容器端内に設けられ、前記マグネット容器端の液体冷却媒体又は気体冷却媒体に浸漬するのに適しており、
前記保護モジュールは、前記超電導コイルに接続され、前記保護モジュールは、前記超電導装置がクエンチしたときに前記超電導コイルを保護するものである、ことを特徴とする、サイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項2】
前記低温容器アセンブリは、入れ子構造となるように外から内へ順次配置されるとともに互いに間隔を空けて設けられるデュワーと、コールドシールドと、液体ヘリウム容器とを含み、前記デュワーの内面と、前記コールドシールドの外面との間によって第1真空チャンバが形成され、前記コールドシールドの内面と、前記液体ヘリウム容器の外面との間によって第2真空チャンバが形成され、前記液体ヘリウム容器内には前記冷却媒体が充填され、
前記デュワーは、第1デュワー容器部と、第2デュワー容器部と、デュワー接続管とを含み、前記デュワー接続管は、前記第1デュワー容器部と、前記第2デュワー容器部との間には接続され、前記コールドシールドは、第1コールドシールド容器部と、第2コールドシールド容器部と、コールドシールド接続管とを含み、前記コールドシールド接続管は、前記第1コールドシールド容器部と、前記第2コールドシールド容器部との間には接続され、前記液体ヘリウム容器は、第1液体ヘリウム容器部と、第2液体ヘリウム容器部と、液体ヘリウム容器接続管とを含み、前記液体ヘリウム容器接続管は、前記第1液体ヘリウム容器部と、前記第2液体ヘリウム容器部との間には接続され、
前記第1デュワー容器部、前記第1コールドシールド容器部及び前記第1液体ヘリウム容器部は、入れ子構造となるように外から内へ順次配置されるとともに、前記低温容器アセンブリの前記冷源容器端を構成し、前記デュワー接続管、前記コールドシールド接続管及び前記液体ヘリウム容器接続管は、入れ子構造となるように外から内へ順次配置されるとともに、前記低温容器アセンブリの前記接続輸送管路を構成し、前記第2デュワー容器部、前記第2コールドシールド容器部及び前記第2液体ヘリウム容器部は、入れ子構造となるように外から内へ順次配置されるとともに、前記低温容器アセンブリの前記マグネット容器端を構成することを特徴とする、請求項1に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項3】
前記超電導マグネットシステムは、圧力安全アセンブリをさらに含み、前記圧力安全アセンブリは、圧力センサ、圧力計、安全弁及び低温防爆弁のうちの少なくとも1種を含み、前記第1液体ヘリウム容器部には、圧力安全管が接続され、前記圧力安全管は、前記第1コールドシールド容器部及び前記第1デュワー容器部を順に通過して外部に露出し、前記圧力安全アセンブリは、前記圧力安全管に設けられ、前記第1デュワー容器部の外側に位置し、及び/又は
前記超電導マグネットシステムは、真空安全アセンブリをさらに含み、前記真空安全アセンブリは、真空防爆弁及び真空計のうちの少なくとも1種を含み、前記真空安全アセンブリは、前記第1デュワー容器部に設けられることを特徴とする、請求項2に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項4】
前記超電導装置は、電流リード線をさらに含み、前記電流リード線は、前記冷源容器端に設けられ、前記超電導コイルに直列接続され、
前記冷凍機は、第一段コールドヘッドと、第二段コールドヘッドとを含み、前記第一段コールドヘッドは、熱伝導の方式により前記第1コールドシールド容器部及び前記電流リード線のヒートシンクを冷却し、前記第二段コールドヘッドは、前記液体ヘリウム容器内の前記冷却媒体を冷却するためのものであることを特徴とする、請求項2に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項5】
前記冷凍機は、第一段コールドヘッドと、前記第一段コールドヘッドと熱交換する熱交換管とを含み、前記熱交換管内には冷却媒体が充填され、前記熱交換管は、前記コールドシールド接続管及び前記第2コールドシールド容器部の外面に沿って延在して熱交換循環回路を形成し、前記第一段コールドヘッドは、前記熱交換管及び前記熱交換管内の冷却媒体により前記コールドシールド接続管及び前記第2コールドシールド容器部を冷却することを特徴とする、請求項2に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項6】
前記超電導装置は、タイロッドアセンブリをさらに含み、前記タイロッドアセンブリは、前記第2液体ヘリウム容器部に接続され、前記第2液体ヘリウム容器部の位置を調整するためのものであることを特徴とする、請求項2に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項7】
前記タイロッドアセンブリは、複数のタイロッド群を含み、それぞれのタイロッド群は、同一平面内に設けられる複数のタイロッドを含み、複数の前記タイロッド群が位置する平面は互いに垂直であり、前記タイロッドの一端は、前記第2液体ヘリウム容器部に固定され、他端は、前記第2コールドシールド容器部及び前記第2デュワー容器部を通過し、前記タイロッドの前記他端には、調整ナットが設けられ、前記調整ナットは、前記タイロッドを前記第2デュワー容器部に固定し、前記調整ナットは、前記第2液体ヘリウム容器部及び前記第2デュワー容器部の前記タイロッドの軸方向における相対位置を調整するために使用されることを特徴とする、請求項6に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項8】
前記超電導コイルは、径方向の内側及び外側に設けられる第1コイルと第2コイルとを含み、前記第1コイルは、前記第2コイルの径方向の内側に位置し、前記第2コイルの超電導線の銅比は前記第1コイルの超電導線の銅比よりも大きく、前記超電導線の銅比は前記超電導線中の銅と超電導材料との体積比であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項9】
超電導電源をさらに含み、前記超電導電源は、電流リード線を介して前記超電導コイルに接続され、前記超電導コイルの励磁及び消磁に使用されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項10】
前記保護モジュールは、エネルギー移動抵抗を含み、前記エネルギー移動抵抗は、前記超電導電源の両端に並列接続され、前記エネルギー移動抵抗の抵抗値は0.2Ωから3Ωの範囲内であり、
前記超電導マグネットシステムは、コントローラをさらに含み、前記コントローラは、前記超電導コイルがクエンチしたときに、前記超電導コイルと前記エネルギー移動抵抗が直列接続されるように前記超電導コイルと前記超電導電源との接続を切断するように構成されることを特徴とする、請求項9に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項11】
前記コントローラは、前記超電導コイルのセグメント電圧と総電圧との比が所定の閾値を超えたときに、前記超電導コイルがクエンチしたことを判定するように構成されることを特徴とする、請求項10に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項12】
前記超電導コイルは、複数のセグメントコイルを含み、前記保護モジュールは、双方向ダイオードを含み、それぞれの前記セグメントコイルの両端には、前記双方向ダイオードに並列接続されることを特徴とする、請求項1に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステムを含むことを特徴とする、サイクロトロン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導マグネットの技術分野に関し、特にサイクロトロン用の超電導マグネットシステム及びそれを有するサイクロトロンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の放射線治療と比較して、陽子線治療は病変に対して標的治療を行うことができるため、周囲の健康な組織への損傷を減らしながら、腫瘍で最大の放射線量を得ることができる。サイクロトロンは陽子線治療装置のコアコンポーネントであり、粒子を加速して粒子エネルギーを増加させることができる。サイクロトロンでは、超伝導磁石システムが粒子加速のための閉じ込め磁場を提供することができ、超電導マグネットシステムを使用することで、加速器の体積を大幅に減らし、構造をよりコンパクトにすることができ、同じリング半径の条件下で、加速器の抽出エネルギーを数倍に増やすことができます。さらに、超電導マグネットシステムは、消費電力を大幅に削減し、運用コストを削減することもできる。そのため、超電導マグネット技術は常に加速器の分野で研究の焦点となっている。
【0003】
従来技術では、ほとんどの超電導マグネットシステムの冷凍機はマグネットに近い位置に取り付けられるため、冷凍機の性能は、磁界の干渉を受けやすく、磁気シールド構造を増加させる必要がある。そうすると、システムの構造はより複雑となる。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、従来技術に存在する技術的問題の一つを解決することを目的とする。そのため、本発明は、サイクロトロン用の超電導マグネットシステムを提供する。前記超電導マグネットシステムは、構造が簡単で、電磁干渉に対抗することができる。
【0005】
本発明は、前記超電導マグネットシステムを有するサイクロトロンをさらに提供する。
【0006】
本発明の第1態様に係るサイクロトロン用の超電導マグネットシステムは、低温装置と、超電導装置と、保護モジュールとを含み、前記低温装置は、冷凍機と、低温容器アセンブリとを含み、前記低温容器アセンブリ内には、冷却媒体が充填され、前記低温容器アセンブリは、マグネット容器端と、接続輸送管路と、冷源容器端とを含み、前記冷凍機は、前記冷源容器端に設けられ、前記低温容器アセンブリ内の冷却媒体に冷凍量を提供するものであり、前記接続輸送管路は、前記マグネット容器端と前記冷源容器端との間には接続して連通し、
前記超電導装置は、超電導コイルを含み、前記超電導コイルは、前記マグネット容器端内に設けられ、前記マグネット容器端の液体冷却媒体又は気体冷却媒体に浸漬するのに適しており、
前記保護モジュールは、前記超電導コイルに接続され、前記保護モジュールは、前記超電導装置がクエンチしたときに前記超電導コイルを保護するものである。
【0007】
本発明のサイクロトロン用の超電導マグネットシステムによれば、低温装置のシステム安定性が保証され、冷凍機及び冷源容器端に設けられる様々な電気部品に対する超電導コイルの電磁干渉が低減され、磁気シールドに対する需要が低下し、構造が簡素化され、コストが低減される。また、本実施例の超電導マグネットシステムは、マグネットトレーニングのときに低温気体冷却媒体循環の方式により超電導コイルを冷却することができ、ことによって、マグネットが複数回クエンチした後の回復コストを低減することができ、マグネットが正常に動作する際に、液体冷却媒体への浸漬により超電導コイルを冷却することができ、これによって、マグネットのための十分な冷凍量が保証され(つまり、マグネットが十分に冷却される)、動作が安定する。
【0008】
いくつかの実施例において、前記低温容器アセンブリは、入れ子構造となるように外から内へ順次配置されるとともに互いに間隔を空けて設けられるデュワーと、コールドシールドと、液体ヘリウム容器とを含み、前記デュワーの内面と、前記コールドシールドの外面との間によって第1真空チャンバが形成され、前記コールドシールドの内面と、前記液体ヘリウム容器の外面との間によって第2真空チャンバが形成され、前記液体ヘリウム容器内には前記冷却媒体が充填され、前記デュワーは、第1デュワー容器部と、第2デュワー容器部と、デュワー接続管とを含み、前記デュワー接続管は、前記第1デュワー容器部と、前記第2デュワー容器部との間には接続され、前記コールドシールドは、第1コールドシールド容器部と、第2コールドシールド容器部と、コールドシールド接続管とを含み、前記コールドシールド接続管は、前記第1コールドシールド容器部と、第2コールドシールド容器部との間には接続され、前記液体ヘリウム容器は、第1液体ヘリウム容器部と、第2液体ヘリウム容器部と、液体ヘリウム容器接続管とを含み、前記液体ヘリウム容器接続管は、前記第1液体ヘリウム容器部と、前記第2液体ヘリウム容器部との間には接続され、前記第1デュワー容器部、前記第1コールドシールド容器部及び前記第1液体ヘリウム容器部は、入れ子構造となるように外から内へ順次配置されるとともに、前記低温容器アセンブリの前記冷源容器端を構成し、前記デュワー接続管、前記コールドシールド接続管及び前記液体ヘリウム容器接続管は、入れ子構造となるように外から内へ順次配置されるとともに、前記低温容器アセンブリの前記接続輸送管路を構成し、前記第2デュワー容器部、前記第2コールドシールド容器部及び前記第2液体ヘリウム容器部は、入れ子構造となるように外から内へ順次配置されるとともに、前記低温容器アセンブリの前記マグネット容器端を構成する。
【0009】
いくつかの実施例において、前記超電導マグネットシステムは、圧力安全アセンブリをさらに含み、前記圧力安全アセンブリは、圧力センサ、圧力計、安全弁及び低温防爆弁のうちの少なくとも1種を含み、前記第1液体ヘリウム容器部には、圧力安全管が接続され、前記圧力安全管は、前記第1コールドシールド容器部及び前記第1デュワー容器部を順に通過して外部に露出し、前記圧力安全アセンブリは、圧力安全管に設けられ、前記第1デュワー容器部の外側に位置し、及び/又は前記超電導マグネットシステムは、真空安全アセンブリをさらに含み、前記真空安全アセンブリは、真空防爆弁及び真空計のうちの少なくとも1種を含み、前記真空安全アセンブリは、前記第1デュワー容器部に設けられる。
【0010】
いくつかの実施例において、前記超電導装置は、電流リード線をさらに含み、前記電流リード線は、前記冷源容器端に設けられ、前記超電導コイルに直列接続され、前記冷凍機は、第一段コールドヘッドと、第二段コールドヘッドとを含み、前記第一段コールドヘッドは、熱伝導の方式により前記第1コールドシールド容器部及び前記電流リード線のヒートシンクを冷却し、前記第二段コールドヘッドは、前記液体ヘリウム容器内の前記冷却媒体を冷却するためのものである。
【0011】
いくつかの実施例において、前記冷凍機は、第一段コールドヘッドと、前記第一段コールドヘッドと熱交換する熱交換管とを含み、前記熱交換管内には冷却媒体が充填され、前記熱交換管は、前記コールドシールド接続管及び前記第2コールドシールド容器部の外面に沿って延在して熱交換循環回路を形成し、前記第一段コールドヘッドは、前記熱交換管及び前記熱交換管内の冷却媒体により前記コールドシールド接続管及び前記第2コールドシールド容器部を冷却する。
【0012】
いくつかの実施例において、前記超電導装置は、タイロッドアセンブリをさらに含み、前記タイロッドアセンブリは、前記第2液体ヘリウム容器部に接続され、前記第2液体ヘリウム容器部の位置を調整するためのものである。
【0013】
いくつかの実施例において、前記タイロッドアセンブリは、複数のタイロッド群を含み、それぞれのタイロッド群は、同一平面内に設けられる複数のタイロッドを含み、複数の前記タイロッド群が位置する平面は互いに垂直であり、前記タイロッドの一端は、前記第2液体ヘリウム容器部に固定され、他端は、前記第2コールドシールド容器部及び前記第2デュワー容器部を通過し、前記タイロッドの前記他端には、調整ナットが設けられ、前記調整ナットは、前記タイロッドを前記第2デュワー容器部に固定し、前記調整ナットは、前記第2液体ヘリウム容器部及び前記第2デュワー容器部の前記タイロッドの軸方向における相対位置を調整するために使用される。
【0014】
いくつかの実施例において、前記超電導コイルは、径方向の内側及び外側に設けられる第1コイルと第2コイルとを含み、前記第1コイルは、前記第2コイルの径方向の内側に位置し、前記第2コイルの超電導線の銅比は前記第1コイルの超電導線の銅比よりも大きく、前記超電導線の銅比は前記超電導線中の銅と超電導材料との体積比である。
【0015】
いくつかの実施例において、前記サイクロトロン用の超電導マグネットシステムは、超電導電源をさらに含み、前記超電導電源は、電流リード線を介して前記超電導コイルに接続され、前記超電導コイルの励磁及び消磁に使用される。
【0016】
いくつかの実施例において、前記保護モジュールは、エネルギー移動抵抗を含み、前記エネルギー移動抵抗は、前記超電導電源の両端に並列接続され、前記エネルギー移動抵抗の抵抗値は0.2Ωから3Ωの範囲内であり、前記超電導マグネットシステムは、コントローラをさらに含み、前記コントローラは、前記超電導コイルがクエンチしたときに、前記超電導コイルと前記エネルギー移動抵抗が直列接続されるように前記超電導コイルと前記超電導電源との接続を切断するように構成される。
【0017】
いくつかの実施例において、前記コントローラは、前記超電導コイルのセグメント電圧と総電圧との比が所定の閾値を超えたときに、前記超電導コイルがクエンチしたことを判定するように構成される。
【0018】
いくつかの実施例において、前記超電導コイルは、複数のセグメントコイルを含み、前記保護モジュールは、双方向ダイオードを含み、それぞれの前記セグメントコイルの両端には、前記双方向ダイオードに並列接続される。
【0019】
本発明の第2態様に係るサイクロトロンは、本発明の第1態様に係るサイクロトロン用の超電導マグネットシステムを含む。
【0020】
本発明に係るサイクロトロンは、第1態様のサイクロトロン用の超電導マグネットシステムを設けることにより、サイクロトロン全体の性能が向上する。
【0021】
本発明の他の態様及び利点について、以下に説明する。これらの態様及び利点は、以下の説明によりより明確になり、或いは本発明の実施により理解される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例に係るサイクロトロン用の超電導マグネットシステムの模式図である。
図2図1に示される冷凍機及びコールドシールドの模式図である。
図3図1に示される冷源容器端の拡大図である。
図4図1に示されるマグネット容器端の拡大図である。
図5図4に示されるマグネット容器端の局所拡大図である。
図6】本発明の実施例に係る超電導マグネットシステムがクエンチ保護を行うときにフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を詳しく説明する。これらの実施例は図面に示され、同じ又は類似の符号で同じ若しくは類似の素子又は同じ若しくは類似の機能を有する素子を表す。以下、図面により説明される実施例は例示的なものであって本発明を解釈するためのものであり、本発明を制限しない。
【0024】
以下、図1図6により本発明の第1態様の実施例に係るサイクロトロン用の超電導マグネットシステム100を説明する。
【0025】
図1に示すように、本発明の第1態様の実施例に係るサイクロトロン用の超電導マグネットシステム100は、低温装置10と、超電導装置40と、保護モジュールとを含む。
【0026】
具体的には、図1に示すように、低温装置10は、冷凍機20と、低温容器アセンブリ30とを含んでもよい。低温容器アセンブリ30内には冷却媒体が充填される。選択的に、冷却媒体は、液体ヘリウム又は気体ヘリウムであってもよい。例えば、冷却剤の冷却作用下で、低温容器アセンブリ30内の冷却媒体は、液体と気体との間で変換することができる。このようにして、超電導装置40に必要な冷凍量に応じて、冷凍機20の冷凍量を制御することにより冷却媒体の物理状態を制御する。
【0027】
低温容器アセンブリ30は、マグネット容器端IIIと、接続輸送管路IIと、冷源容器端Iとを含む。冷凍機20は、冷源容器端Iに設けられ、低温容器アセンブリ30内の冷却媒体に冷却を提供するものである。接続輸送管路IIは、マグネット容器端IIIと冷源容器端Iとの間に接続され、マグネット容器端IIIと冷源容器端Iとを連通させる。超電導装置40は、超電導コイル41を含む。超電導コイル41は、マグネット容器端III内に設けられるとともに、マグネット容器端IIIの液体冷却媒体又は気体冷却媒体への浸漬に適する。つまり、超電導コイル41は、マグネット容器端IIIの液体冷却媒体又は気体冷却媒体に浸漬されてもよい。
【0028】
例えば、超電導装置40が複数回のクエンチトレーニングを必要とする場合、低温容器アセンブリ30内の冷却媒体は気体冷却媒体であってもよい。この場合、超電導コイル41は、気体冷却媒体に浸漬される。このように気体冷却媒体を使用することにより、冷凍機20の冷凍量が減少し、超電導コイル41が複数回クエンチした後の回復コストが低減され、マグネットトレーニングのコストが顕著に減少され、液体冷却媒体の消耗量が減少する。超電導装置40が正常に動作する場合、低温容器アセンブリ30内の冷却媒体は液体冷却媒体であってもよい。この場合、超電導コイル41は液体冷却媒体、例えば、液体ヘリウムに浸漬される。液体ヘリウムに浸漬することにより、超電導コイル41に十分な冷却が提供され、超電導コイル41の動作の安定が保証される。さらに、保護モジュールは、超電導コイル41に接続される。保護モジュールは、超電導コイル41がクエンチするときに超電導コイル41を保護することで超電導コイル41の作動に安全保障を提供し、超電導マグネットシステム100の安全を保証する。
【0029】
つまり、本実施例において、低温容器アセンブリ30のマグネット容器端IIIと、冷源容器端Iとは間隔を空けて設けられ、かつマグネット容器端IIIと、冷源容器端Iとは、接続輸送管路IIを介して連通して接続される。これによって、冷源容器端Iの冷却媒体は、接続輸送管路IIを介してマグネット容器端IIIに輸送されて超電導コイル41を冷却することができる。一方、マグネット容器端IIIと、冷源容器端Iとが接続輸送管路IIのみにより接続されるため、冷却媒体の入力領域と動作領域とが効果的に分離され、低温装置10のシステム安定性が保証される。また、冷凍機20が冷源容器端Iに設けられ、超電導コイル41がマグネット容器端IIIに設けられるため、冷凍機20に対する超電導コイル41の電磁干渉が低減され、冷源容器端Iに設けられる様々な電気部品が超電導コイル41の電磁干渉を受けることが回避され、磁気シールドに対する需要が低下し、構造か簡素化され、コストが低減される。
【0030】
また、本実施例において、冷凍機20を低温超電導マグネットシステム100の冷源として使用し、液体ヘリウムを冷却媒体として使用し、かつシステム内の「気-液」ゼロ蒸発自己循環が形成されるため、液体ヘリウムの揮発による高動作コスト及び使用上の不便さという従来技術に存在する問題が克服される。
【0031】
本発明の実施例に係るサイクロトロン用の超電導マグネットシステム100によれば、低温装置10のシステム安定性が保証され、冷凍機20及び冷源容器端Iに設けられる様々な電気部品に対する超電導コイル41の電磁干渉が低減され、磁気シールドに対する需要が低下し、構造が簡素化され、コストが低減される。また、本実施例の超電導マグネットシステム100は、マグネットトレーニングのときに低温気体冷却媒体循環の方式により超電導コイル41を冷却することができ、ことによって、マグネットが複数回クエンチした後の回復コストを低減することができ、マグネットが正常に動作する際に、液体冷却媒体への浸漬により超電導コイルを冷却することができ、これによって、マグネットのための十分な冷凍量が保証され、動作が安定する。
【0032】
本発明の一実施例において、図1に示すように、低温容器アセンブリ30は、デュワー31と、コールドシールド32と、液体ヘリウム容器33とを含んでもよい。デュワー31、コールドシールド32及び液体ヘリウム容器33は、入れ子構造となるように外から内へ順に設けられる。デュワー31の内部空間と、コールドシールド32の内部空間と、液体ヘリウム容器33の内部空間とは互いに隔離される。デュワー31の内面とコールドシールド32の外面との間によって第1真空チャンバ301が形成され、コールドシールド32の内面と液体ヘリウム容器33の外面との間によって第2真空チャンバ302が形成され、液体ヘリウム容器33内には冷却媒体が充填される。
【0033】
さらに、図1に示すように、デュワー31は、第1デュワー容器部311と、第2デュワー容器部312と、デュワー接続管313とを含んでもよい。デュワー接続管313は、第1デュワー容器部311と第2デュワー容器部312との間に接続される。コールドシールド32は、第1コールドシールド容器部321と、第2コールドシールド容器部322と、コールドシールド接続管323とを含む。コールドシールド接続管323は、第1コールドシールド容器部321と第2コールドシールド容器部322との間に接続される。液体ヘリウム容器33は、第1液体ヘリウム容器部331と、第2液体ヘリウム容器部332と、液体ヘリウム容器接続管333とを含む。液体ヘリウム容器接続管333は、第1液体ヘリウム容器部331と第2液体ヘリウム容器部332との間には接続される。
【0034】
図1及び図3に示すように、第1デュワー容器部311、第1コールドシールド容器部321及び第1液体ヘリウム容器部331は、入れ子構造となるように外から内へ順に設けられる。第1デュワー容器部311、第1コールドシールド容器部321及び第1液体ヘリウム容器部331は、共同で低温容器アセンブリ30の冷源容器端Iを構成する。
【0035】
図1図3及び図4に示すように、デュワー接続管313、コールドシールド接続管323及び液体ヘリウム容器接続管333は、入れ子構造となるように外から内へ順に設けられる。デュワー接続管313、コールドシールド接続管323及び液体ヘリウム容器接続管333は、共同で低温容器アセンブリ30の接続輸送管路IIを構成する。
【0036】
例えば、図3に示すように、一実施例では、第1デュワー容器部311、第1コールドシールド容器部321及び第1液体ヘリウム容器部331は、いずれも円筒状に形成される。第1デュワー容器部311の底部は、平板状に形成される。第1デュワー容器部311の頂部には、平板状の第1デュワーフランジ3111が密閉接続される。第1コールドシールド容器部321の底部は、下向きに凹んだ球面状に形成される。第1コールドシールド容器部321の頂部には、平板状の第1コールドシールドフランジ3211が密閉接続される。第1液体ヘリウム容器部331の底部は、下向きに凹んだ球面状に形成される。第1液体ヘリウム容器部331の頂部には、平板状の第1液体ヘリウムフランジ3311が密閉接続される。
【0037】
さらに、第1デュワーフランジ3111と第1コールドシールドフランジ3211との間には、第1支持ロッド34が接続される。第1コールドシールド容器部321は、第1支持ロッド34を介して第1デュワー容器部311内に引掛けられる。第1コールドシールド容器部321と第1デュワー容器部311の内壁との間には間隔が空けられる。好ましくは、第1支持ロッド34は、縦方向に沿って延在する。第1支持ロッド34は複数ある。複数の第1支持ロッド34は、前記第1コールドシールドフランジ3211の周方向に沿って間隔を空けて設けられる。好ましくは、第1支持ロッド34はステンレス鋼管である。
【0038】
さらに、第1コールドシールドフランジ3211と第1液体ヘリウムフランジ3311との間には第2支持ロッド35が接続される。第1液体ヘリウム容器部331は、第2支持ロッド35を介して第1コールドシールド容器部321内に引掛けられる。第1液体ヘリウム容器部331と第1コールドシールド容器部321との間には間隔が空けられる。好ましくは、第2支持ロッド35は、縦方向に沿って延在するロッド形状に形成される。第2支持ロッド35は複数あってもよい。複数の第2支持ロッド35は、第1液体ヘリウムフランジ3311の周方向に沿って間隔を空けて設けられる。好ましくは、第2支持ロッド35はステンレス鋼管である。
【0039】
図4及び図5に示すように、第2デュワー容器部312、第2コールドシールド容器部322及び第2液体ヘリウム容器部332は、入れ子構造となるように外から内へ順に設けられる。第2デュワー容器部312、第2コールドシールド容器部322及び第2液体ヘリウム容器部332は、共同で低温容器アセンブリ30のマグネット容器端IIIを構成する。例えば、図4に示すように、一実施例では、第2デュワー容器部312、第2コールドシールド容器部322及び第2液体ヘリウム容器部332は、いずれも中空円柱状に形成される。
【0040】
本発明のいくつかの実施例において、図1及び図3に示すように、超電導マグネットシステム100は、圧力安全アセンブリ50をさらに含んでもよい。圧力安全アセンブリ50は、圧力センサ51、圧力計52、安全弁53及び低温防爆弁54のうちの少なくとも1種を含む。つまり、圧力安全アセンブリ50は、圧力センサ51、圧力計52、安全弁53及び低温防爆弁54のうちの1種を含んでもよく、圧力安全アセンブリ50は、圧力センサ51、圧力計52、安全弁53及び低温防爆弁54のうちのいずれか2種以上の組み合わせを含んでもよい。好ましくは、圧力安全アセンブリ50は、圧力センサ51、圧力計52、安全弁53及び低温防爆弁54を含む。さらに、第1液体ヘリウム容器部331には圧力安全管55が接続される。圧力安全管55は、第1コールドシールド容器部321及び第1デュワー容器部311を順に通過する。圧力センサ51、圧力計52、安全弁53及び低温防爆弁54は、いずれも圧力安全管55に設けられるとともに、第1デュワー容器部311の外側に位置する。
【0041】
本発明のいくつかの実施例において、図1及び図3に示すように、超電導マグネットシステム100は、真空安全アセンブリ60をさらに含む。真空安全アセンブリ60は、真空防爆弁61及び真空計62のうちの少なくとも1種を含む。つまり、真空安全アセンブリ60は、真空防爆弁61及び真空計62のうちの1種を含んでもよく、真空安全アセンブリ60は、真空防爆弁61と真空計62とを同時に含んでもよい。真空安全アセンブリ60は、第1デュワー容器部311に設けられる。
【0042】
さらに、真空安全アセンブリ60は、真空引き口631をさらに含む。例えば、第1デュワー容器部311には、真空管63が接続されてもよい。圧力安全アセンブリ50の真空防爆弁61及び真空計62はいずれも真空管63に設けられてもよい。真空管63の第1デュワー容器部311から離間する端には真空引き口631が形成される。低温容器アセンブリ30を組み立てる際に、真空引き口631の位置に吸引アセンブリを接続することにより、デュワーの内側にある第1真空チャンバ301及び第2真空チャンバ302に対する真空引きが達成される。
【0043】
本発明のいくつかの実施例において、図3に示すように、冷凍機20は、第一段コールドヘッド21を含んでもよい。第一段コールドヘッド21は、第1真空チャンバ301内に設けられてもよい。第一段コールドヘッド21は、熱伝導の方式により第1コールドシールド容器部321を冷却する。具体的には、第一段コールドヘッド21は、第1コールドシールドフランジ3211の上側に設けられ、第一段コールドヘッド21と第1コールドシールド容器部321との間には銅シート211が接続され、即ち、第一段コールドヘッド21と第1コールドシールド容器部321との間では、銅シート211により熱を伝達する。
【0044】
本発明のいくつかの実施例において、図1及び図3に示すように、超電導装置40は、電流リード線42をさらに含んでもよい。電流リード線42は、冷源容器端Iに設けられ、超電導コイル41に直列接続される。電流リード線42は、超電導コイル41と超電導電源とを接続させ、超電導電源により超電導コイル41に対する励磁及び消磁を実現する。
【0045】
さらに、超電導装置40が動作する際に、電流リード線42を電流が流れることで熱が発生するため、電流リード線42にはヒートシンク43が設けられる。さらに、冷凍機20の第一段コールドヘッド21は、熱伝導の方式により電流リード線42のヒートシンク43を冷却する。つまり、冷凍機20の第一段コールドヘッド21は、電流リード線42のヒートシンク43に接続されることにより、ヒートシンク43との熱交換を達成し、ヒートシンク43の温度を低減させ、電流リード線42の降温を実現することができる。選択的に、第一段コールドヘッド21は、平編銅線212を介して電流リード線42のヒートシンク43に接続されてもよい。
【0046】
本発明のいくつかの実施例において、図3に示すように、冷凍機20は、第二段コールドヘッド22をさらに含んでもよい。第二段コールドヘッド22は、第1液体ヘリウム容器部331内に設けられる。第二段コールドヘッド22は、液体ヘリウム容器33内の冷却媒体を冷却するものである。選択的に、冷却媒体は液体ヘリウムである。つまり、冷凍機20の第二段コールドヘッド22は、液体ヘリウム容器33におけるヘリウムガスを冷却して低温ヘリウムガス又は液体ヘリウムを形成し、マグネット容器端IIIに流れ込んで、マグネット容器端IIIの第2液体ヘリウム容器部332の温度を4.5K未満にする。本実施例では、冷凍機20を液体ヘリウム容器33内の液体ヘリウムの冷源として使用することにより、液体ヘリウム容器33内の液体ヘリウムの自己循環の方式により超電導マグネットを冷却することができ、別途液体ヘリウム又はヘリウムガスを補充する必要がなく、液体ヘリウムの揮発による高動作コスト及び使用上の不便さという従来技術の問題が克服され、動作コストが低減される。
【0047】
本発明のいくつかの実施例において、図1及び図2に示すように、冷凍機20は、第一段コールドヘッド21と、第一段コールドヘッド21と熱交換する熱交換管24とをさらに含んでもよい。熱交換管24内に冷却媒体が充填される。熱交換管24は、コールドシールド接続管323及び第2コールドシールド容器部322の外面に沿って延在して熱交換循環回路を形成する。第一段コールドヘッド21は、熱交換管23及び熱交換管23内の冷却媒体によりコールドシールド接続管323及び第2コールドシールド容器部322を冷却する。選択的に、熱交換循環回路を循環して流れる冷却媒体は、窒素ガス、水素ガス又はネオンガスであってもよい。具体的には、熱交換流体は、第一段コールドヘッド21において放熱凝縮して液体になった後、第一段コールドヘッド21から出て熱交換管24に入り、コールドシールド接続管323及びコールドシールド接続管323に接続される第2コールドシールド容器部322を冷却する。この過程において、熱交換流体は、吸熱気化して気体になり、第一段コールドヘッド21に戻り、再度凝縮して液体になることにより、熱交換循環回路内の循環流動が形成され、コールドシールド接続管323及び第2コールドシールド容器部322を迅速で均一に冷却する目的が達成される。
【0048】
其中,好ましくは、熱交換管24は、コールドシールド接続管323及び第2コールドシールド容器部322の外側表面において迂回して延在してもよい。さらに、熱交換管24は、コールドシールド接続管323及び第2コールドシールド容器部322の外側を完全に覆ってもよい。選択的に、熱交換管24と、コールドシールド接続管323及び第2コールドシールド容器部322とは熱伝導部材25により接続される。即ち、熱交換管24は、熱伝導部材25によりコールドシールド接続管323及び第2コールドシールド容器部322との熱交換を実現する。熱伝導部材25は複数あってもよい。複数の熱伝導部材25は、熱交換管24の延在方向に沿って順に間隔を空けて配置される。
【0049】
本発明のいくつかの実施例において、図1図4及び図5に示すように、超電導装置40は、タイロッドアセンブリ44をさらに含んでもよい。タイロッドアセンブリ44は、第2液体ヘリウム容器部332に接続される。タイロッドアセンブリ44は、第2液体ヘリウム容器部332の位置を調整し、第2液体ヘリウム容器部332の内側に設けられる超電導コイル41の位置調整を実現するためのものである。
【0050】
一実施例において、図4及び図5に示すように、タイロッドアセンブリ44は、複数のタイロッド群を含んでもよい。それぞれのタイロッド群は、複数のタイロッド441を含む。同一のタイロッド群における複数のタイロッド441は、同一平面内に設けられる。複数のタイロッド群が位置する平面は互いに垂直である。即ち、各タイロッド群が位置する平面間の夾角は90°である。タイロッド441の一端は、第2液体ヘリウム容器部332に固定され、タイロッド441の他端は、第2コールドシールド容器部322及び第2デュワー容器部312を通過する。タイロッド441の他端には、調整ナット442が設けられる。調整ナット442は、タイロッド441を第2デュワー容器部312に固定する。調整ナット442は、タイロッド441と第2デュワー容器部312とのタイロッド441の軸方向における相対位置を調整することで第2液体ヘリウム容器部332と第2デュワー容器部312とのタイロッド441の軸方向的における相対位置を調整し、これによって、第2液体ヘリウム容器部332内に位置する超電導コイル41に対する位置調整が達成される。ここで、タイロッド441の変位調整量は、6mm範囲以内である。
【0051】
例えば、タイロッドアセンブリ44は、4つのタイロッド群を含んでもよい。それぞれのタイロッド群は、3本のタイロッド441を含む。各群における3本のタイロッド441は同一平面内に位置する。マグネット容器端IIIは、中空円柱形状に形成される。4つのタイロッド群は、それぞれマグネット容器端IIIの上端面、下端面及び側面に分布し、4つのタイロッド群の平面間の夾角は90°である。
【0052】
さらに、図4及び図5に示すように、第2デュワー容器部312には、外へ延在する複数のタイロッドデュワー部314が接続される。タイロッドデュワー部314は、第2デュワー容器部312に連通する。第2コールドシールド容器部322には、外へ延在する複数のタイロッドコールドシールド部324が接続される。タイロッドコールドシールド部324は、第2コールドシールド容器部322に連通する。複数のタイロッドデュワー部314と、複数のタイロッドコールドシールド部324とは、それぞれ対応する。それぞれのタイロッドコールドシールド部324は、対応するタイロッドデュワー部314の内側に内嵌される。さらに、複数のタイロッドコールドシールド部324と、複数のタイロッド441とは、それぞれ対応する。それぞれのタイロッド441は、対応するタイロッドコールドシールド部324の内側に内嵌される。タイロッド441の一端は、タイロッドコールドシールド部324の一端から出て第2コールドシールド容器部322内に入り、第2コールドシールド容器部322内に位置する第2液体ヘリウム容器部332に固定接続される。タイロッド441の他端は、タイロッドコールドシールド部324の他端及びタイロッドデュワー部314の外端面を順に通過してタイロッドデュワー部314の外側に露出する。タイロッド441のタイロッドデュワー部314から露出する端部には、調整ナット442が外嵌される。調整ナット442を回すことによりタイロッド441の位置を調整することができ、これによって、第2液体ヘリウム容器部332及び第2コールドシールド容器部322の位置を調整することができる。
【0053】
本発明のいくつかの実施例において、図4及び図5に示すように、超電導コイル41は、径方向の内外両側に設けられる第1コイル411と第2コイル412とを含む。第1コイル411は、第2コイル412の径方向の内側に位置する。第2コイル412の超電導線の銅比(copper to superconductor [volume] ratio)は、第1コイル411の超電導線の銅比よりも大きい。超電導線の銅比は、超電導線中の銅と超電導材料との体積比である。つまり、径方向の内側に位置する第1コイル411として低銅比の超電導線を使用し、径方向の外側に位置する第2コイル412として高銅比の超電導線を使用する。超電導コイル41において、径方向の内側に位置するコイルが高磁界領域に位置し、径方向の外側に位置するコイルが比較的低い磁界領域に位置するため、本実施例では、内側で低銅比の超電導線を使用し、外側で高銅比の超電導線を使用することにより、異なる磁界強度に応じて銅比が異なる超電導線を合理的に選択することができる。これによって、超電導コイル41の製造コストが顕著に低減される。
【0054】
好ましくは、径方向の内側に位置する第1コイル411の超電導線の銅比は1.3から8の範囲である。例えば、第1コイル411の超電導線の銅比は、1.5、2、2.5、3、3.5、4、5、6又は7などであってもよい。さらに好ましくは、径方向の外側に位置する第2コイル412の超電導線の銅比は8から12の範囲である。例えば、第2コイル412の超電導線の銅比は、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5又は12などであってもよい。これによって、異なる磁界強度に応じて銅比が異なる超電導線を合理的に選択することができ、超電導コイル41の製造コストが顕著に低減される。
【0055】
図4及び図5に示すように、超電導装置40は、第2液体ヘリウム容器部332内に設けられる。超電導コイル41は、コイル骨格45に緊密に巻き付けられる。超電導コイル41は、WIC超電導線(Wire-In-Channel超電導線、即ち、超電導芯を金属又は合金溝内に溶接した超電導線)を採用する。超電導コイル41は、2から4個のサブコイルを含んでもよい。超電導コイル41の超電導線は、張力を加えながら巻き付ける。超電導コイル41の巻き付け張力は10MPa-100MPaである。さらに、超電導コイル41は、高強度アルミ合金線を束縛線47として束縛される。束縛線47は、張力を加えながら巻き付ける。束縛線47の巻き付け張力は10MPa-150MPaである。超電導コイル41を巻き付けた後、真空圧力浸漬を行う。シールプレート46は束縛線47の外側に設けられる。シールプレート46と束縛線47との間の領域には、低温ヘリウムガス又は液体ヘリウムが満たされ、超電導コイル41を冷却する目的を達成する。
【0056】
本発明のいくつかの実施例において、サイクロトロン用の超電導マグネットシステム100は、超電導電源をさらに含んでもよい。超電導電源は、電流リード線42を介して超電導コイル41に接続される。超電導電源は、超電導コイル41を励磁及び消磁するものである。
【0057】
本発明のいくつかの実施例において、図6に示すように、保護モジュールは、エネルギー移動抵抗を含んでもよい。エネルギー移動抵抗は、超電導電源の両端に並列接続される。エネルギー移動抵抗の抵抗値は0.2Ωから3Ωの範囲内である。例えば、エネルギー移動抵抗の抵抗値は、0.5Ω、0.8Ω、1.5Ω、2Ω又は2.5Ωなどであってもよい。超電導マグネットシステム100は、コントローラをさらに含んでもよい。コントローラは、超電導コイル41がクエンチするときに超電導コイル41と超電導電源とを切断して超電導コイル41とエネルギー移動抵抗とを直列接続させるように構成される。このようにして、エネルギー移動抵抗は、超電導コイル41がクエンチするときに超電導コイル41の一部の貯蔵エネルギーを移転することができ、これによって、超電導コイル41の安全が効果的に保護される。
【0058】
本発明のいくつかの実施例において、図6に示すように、コントローラは、超電導コイル41のセグメント電圧と総電圧との比が所定閾値を超えた場合、超電導コイル41がクエンチしたことを判定するように構成されてもよい。具体的には、超電導コイル41は、複数のセグメントコイルを含んでもよい。それぞれのセグメントコイルのセグメント電圧及び超電導コイル41の総電圧をリアルタイムで検出し、セグメントコイルのセグメント電圧と超電導コイル41の総電圧との比を計算する。得られた電圧比が所定の閾値を超えた場合、超電導コイル41がクエンチしたことを判定する。この場合、超電導コイル41がエネルギー移動抵抗に直列接続されるように超電導電源の直流出力スイッチを切断することができ、これによって、超電導コイル41の電磁貯蔵エネルギーが移転され、超電導コイル41の安全が保証され、超電導コイル41のクエンチに対する主動保護が達成される。
【0059】
本発明のいくつかの実施例において、図6に示すように、超電導コイル41は、複数のセグメントコイルを含んでもよく、保護モジュールは、双方向ダイオードを含んでもよい。それぞれのセグメントコイルの両端には、双方向ダイオードが並列接続される。双方向ダイオードは、超電導コイル41がクエンチしたときに超電導コイル41の内部の電圧伝搬を制限し、超電導マグネットシステム100のシステム安全を保護し、超電導マグネットシステム100に対する受動クエンチ保護を達成することができる。
【0060】
以下、図1から図6を参照しながら本発明の一実施例に係るサイクロトロン用の超電導マグネットシステム100を説明する。
【0061】
具体的には、図1に示すように、サイクロトロン用の超電導マグネットシステム100は、低温装置10と、超電導装置40と、超電導電源と、クエンチ保護モジュールとを含む。
【0062】
図1に示すように、低温装置10は、冷凍機20と、低温容器アセンブリ30とを含む。低温容器アセンブリ30は、デュワー31と、コールドシールド32と、液体ヘリウム容器33とを含む。デュワー31の内側及び液体ヘリウム容器33の外側は、真空環境である。低温容器アセンブリ30は、所在位置によって、マグネット容器端III、接続輸送管路II及び冷源容器端Iに分けられる。接続輸送管路IIは、マグネット容器端IIIと冷源容器端Iとを接続させるものである。
【0063】
冷源容器端Iの第1デュワー容器部311、第1コールドシールド容器部321及び第1液体ヘリウム容器部331は、いずれも円筒状であり、入れ子構造となるように外から内へ順に設けられる。第1液体ヘリウム容器部331の底部は下向きに凹んだ形である。第1デュワーフランジ3111と第1コールドシールドフランジ3211との間には、中空ステンレス鋼管を第1支持ロッド34として第1コールドシールド容器部321を支持する。第1コールドシールドフランジ3211と第1液体ヘリウムフランジ3311との間には、下方中空ステンレス鋼管を第2支持ロッド35として第1液体ヘリウム容器部331を支持する。
【0064】
冷源容器端Iには、電流リード線42、航空ソケット48、圧力センサ51、圧力計52、安全弁53、低温防爆弁54、真空防爆弁61、真空計62及び真空引き口631が取り付けられる。
【0065】
冷凍機20は、冷源容器端Iに取り付けられる。冷凍機20の第一段コールドヘッド21は、それぞれ銅シート211を介して接続され、熱伝導の方式により第1コールドシールド容器部321を冷却する。第一段コールドヘッド21は、平編銅線212を介して熱伝導の方式により電流リード線42を冷却するヒートシンク43に接続される。冷凍機20の第二段コールドヘッド22は、液体ヘリウム容器33内のヘリウムガスを冷却して低温ヘリウムガス又は液体ヘリウムを形成し、マグネット容器端IIIに流れ込み、第2液体ヘリウム容器部332の温度を4.5K未満にする。
【0066】
冷凍機20の第一段コールドヘッド21は、熱交換管24によりコールドシールド接続管323及び第2コールドシールド容器部322を冷却する。具体的には、熱交換管24は冷凍機20の第一段コールドヘッド21に連通し、熱交換管24はコールドシールド接続管323及び第2コールドシールド容器部322と熱伝導部材25により良好な熱接触を保持する。熱交換管24内の作動媒体としは、窒素ガス、水素ガス又はネオンガスを使用することができる。熱交換の過程において、冷凍機20の第一段コールドヘッド21に形成される液体作動媒体は、熱交換管24に流れ込み、コールドシールド接続管323及び第2コールドシールド容器部322を冷却し、熱により発生する気体作動媒体は、冷凍機20の第一段コールドヘッド21に戻り、凝縮して液体作動媒体になるこれにより、熱交換循環回路が形成される。これによって、コールドシールド接続管323及び第2コールドシールド容器部322を迅速で均一に冷却する目的が達成される。
【0067】
マグネット容器端IIIの第2デュワー容器部312、第2コールドシールド容器部322及び第2液体ヘリウム容器部332は、中空円柱形であり、入れ子構造となるように外から内へ順に配置される。超電導装置40は、低温容器アセンブリ30のマグネット容器端IIIに設けられる。超電導装置40は、超電導コイル41と、タイロッドアセンブリ44と、コイル骨格45と、シールプレート46と、束縛線47とを含む。タイロッドアセンブリ44は、12本のタイロッド441と、タイロッド441のそれぞれに対応する調整ナット442とを含む。3本ごとのタイロッド441を1つのタイロッド群とし、各群のタイロッドの軸線は同一平面に位置する。各群のタイロッドは、それぞれマグネット容器端IIIの中空円柱の上端面、下端面及び側面に垂直である。各群のタイロッドが位置する平面間の夾角は90°である。タイロッド441は超電導コイル41の位置を調整することができ、変位調整量は0~6mmである。タイロッド441は2トン~20トンの荷重を負荷することができる。
【0068】
第2デュワー容器部312にはタイロッドデュワー部314が設けられる。第2コールドシールド容器部322にはタイロッドコールドシールド部324が設けられる。タイロッドデュワー部314は、第2デュワー容器部312に密閉接続される。タイロッドコールドシールド部324の一端は、タイロッド441に接続され、タイロッドコールドシールド部324の他端は、第2コールドシールド容器部322に接続される。タイロッド441は第2液体ヘリウム容器部332に接続される。タイロッド441は、第2液体ヘリウム容器部332及び第2コールドシールド容器部322を支持することができる。調整ナット442を回転させることにより、タイロッド441の位置を調整することができ、これによって第2コールドシールド容器部322及び第2液体ヘリウム容器部332の位置を調整することができる。
【0069】
超電導コイル41は、マグネット容器端IIIの第2液体ヘリウム容器部332内に位置する。超電導コイル41は、コイル骨格45に緊密に巻き付けられる。超電導コイル41は、WIC超電導線を採用し、2から4個のサブコイルに分けられる。超電導線は、張力を加えながら巻き付ける。巻き付け張力は10MPa~100MPaである。内層の高磁界領域に使用される超電導線の銅比は、外層の低磁界領域に使用される超電導線の銅比よりも小さい。具体的には、内層の高磁界領域では銅比が1.3から8の範囲内の超電導線を使用し、外層の低磁界領域では銅比が8から12の範囲内の超電導線を使用する。超電導コイル41は、電流リード線42に直列接続される。超電導コイル41は、高強度アルミ合金線を束縛線47として束縛する。束縛線47は、張力を加えながら巻き付けられる。巻き付け張力は10~150MPaである。超電導コイル41を巻き付けた後、真空圧力浸漬を行う。シールプレート46は、束縛線47の外側に位置する。シールプレート46と前記束縛線47との間の領域には低温ヘリウムガス又は液体ヘリウムが満たされ、超電導コイル41を冷却する目的を達成する。超電導マグネットシステム100が動作する過程において、低温ヘリウムガス又は液体ヘリウムが吸熱して形成したヘリウムガスは、冷源容器端Iに戻り、冷凍機20の第二段コールドヘッド22で凝縮して低温ヘリウムガス又は液体ヘリウムになり、再度マグネット容器端IIIの第2液体ヘリウム容器部332に流れ込み、ヘリウムガスの気液自己循環を形成することができる。これによって、別途にヘリウムガス又は液体ヘリウムを補充する必要がない。
【0070】
超電導電源は、電流リード線42に接続される。これによって、超電導コイル41を励磁及び消磁することができ、かつ励磁及び消磁の速度は調整可能である。超電導コイル41が定格電流まで励磁された後、約3.5Tの磁界を提供することができ、これによって、240MeVサイクロトロンの磁界要求が満たされ得る。
【0071】
超電導電源はクエンチ検出機能を有し、クエンチを検出した後、電源出力を自動的に切断することができる。超電導電源にはエネルギー移動抵抗が並列接続される。エネルギー移動抵抗の抵抗値は0.2Ωから3Ωである。超電導コイル41がクエンチするときに一部の貯蔵エネルギーを移転することができる。
【0072】
以下、本発明の実施例に係るサイクロトロン用の超電導マグネットシステム100のクエンチ保護過程を説明する。本発明の実施例に係る超電導マグネットシステム100のクエンチ保護は、主動クエンチ保護及び受動クエンチ保護を含む。
【0073】
主動クエンチ保護方式は、以下のとおりである。超電導電源は、超電導コイル41の両端及び中心点の3本の電位線によりセグメント電圧及び総電圧をリアルタイムで監視し、両者の比が所定の閾値を超えた後、クエンチしたと判定する。クエンチしたと判定した後、超電導電源の直流出力スイッチが切断され、超電導コイル41とエネルギー移動抵抗が直列接続されるようになり、コイル電磁貯蔵エネルギーが移転され、これによって、前記超電導コイル41の安全が効果的に保護される。
【0074】
受動クエンチ保護方式は、以下のとおりである。超電導コイル41のそれぞれのセグメントコイルには双方向ダイオードが並列接続され、双方向ダイオードは、クエンチしたときに超電導コイル41内部の電圧伝搬を制限し、システム安全を保護する。
【0075】
本発明の実施例に係るサイクロトロン用の超電導マグネットシステム100によれば、低温作動媒体の自己循環により超電導マグネットを冷却し、液体ヘリウム又はヘリウムガスを別途補充する必要がないため、動作コストを低減することができる。マグネットの異なる作動段階で異なる冷却方式を使用することができる。つまり、マグネットトレーニングでは、低温ヘリウムガス循環の方式により超電導マグネットを冷却し、これによって、マグネットが複数回クエンチした後の回復コストが低減される。マグネットの正常動作では、液体ヘリウムでの浸漬により超電導マグネットを冷却し、これによって、マグネットに対する十分な冷却が保証され、動作が安定する。冷凍機20、測定設備などを超電導コイル41から遠い冷源容器端Iに取り付けることにより、設備が受ける電磁干渉が減少され、磁気シールドに対する要求が低下し、磁気シールドがなくても正常に動作することができ、超電導マグネットシステム100の構造が簡素化される。磁界強度が異なる領域に対して銅比が異なる超電導線を選択することにより、超電導コイル41の製造コストが顕著に低減される。そのクエンチ保護システムは、主動クエンチ保護機能と受動クエンチ保護機能を同時に有するため、マグネットの安全に二重保護を提供する。
【0076】
本発明の第2態様の実施例に係るサイクロトロンは、本発明の第1態様の実施例に係るサイクロトロン用の超電導マグネットシステム100を含む。
【0077】
本発明の実施例に係るサイクロトロンの他の構成及び操作は、当業者にとって既知のものであるため、説明を省略する。
【0078】
本発明の実施例に係るサイクロトロンでは、上記の第1態様の実施例に係るサイクロトロン用の超電導マグネットシステム100を設けることにより、サイクロトロン全体の性能が向上する。
【0079】
本明細書において、「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、 「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」、「軸方向」、「径方向」、「周方向」などの方向又は位置関係を示す用語は、図面に示される方向又は位置関係に基づくものであり、本発明をより容易に説明するためのものであり、示される装置又は素子が必ず特定の方位を有し、特定の方位で構成及び操作されるわけではないため、本発明を制限するものではない。
【0080】
また、「第1」および「第2」という用語は、説明の目的でのみ使用され、相対的な重要性を示したり暗示したり、示された技術的機能の数を暗黙的に示したりするものと解釈されるべきではない。そのため、「第1」および「第2」で区切られた機能には、その機能の1つ以上が明示的または暗黙的に含まれる場合がある。本明細書において、特に定義されていない限り、「複数」は、2つ又は2つ以上を意味する。
【0081】
本発明において、特に定義されていない限り、「取り付け」、「接続」、「連接」、「固定」などの用語は、広い意味で理解されるべきである。例えば、固定接続、取り外し可能な接続、又は一体構成であってもよい。機械的接続、電気的接続、又は通信接続であってもよい。直接接続であってもよく、中間媒介を介する間接接続であってもよい。2つの素子内部の連通又は2つの素子の相互作用関係であってもよい。当業者にとって、本発明における上記の用語の特定の意味は、特定の状況に従って理解することができる。
【0082】
本発明において、「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例示」、「具体的な例示」又は「いくつかの例示」などの用語は、実施例または例示に関連して説明される特定の特徴、構造、材料または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態または例に含まれることを意味する。本明細書では、上記の用語の概略図は、必ずしも同じ実施例または例示に向けられているわけではない。さらに、記載された特定の特徴、構造、材料、または特性は、任意の1つまたは複数の実施例または例示において、任意の適切な方法で組み合わせることができる。さらに、当業者は、本明細書に記載されている異なる実施例または例示、ならびに異なる実施例または例示の特徴を、互いに矛盾することなく組み合わせて組み合わせることができる。
【0083】
本発明の実施例が示され、説明されてきたが、本発明の原理および精神から逸脱することなく、これらの実施例において様々な変更、修正、置換および変更を行うことができることが当業者によって理解されるであろう。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびそれらの同等物によって定義される。
【符号の説明】
【0084】
超電導マグネットシステム100、
低温装置10、
冷凍機20、第一段コールドヘッド21、銅シート211、平編銅線212、
第二段コールドヘッド22、熱交換管24、熱伝導部材25、
低温容器アセンブリ30、冷源容器端I、接続輸送管路II、マグネット容器端III、
第1真空チャンバ301、第2真空チャンバ302、
デュワー31、第1デュワー容器部311、第1デュワーフランジ3111、第2デュワー容器部312、デュワー接続管313、タイロッドデュワー部314、
コールドシールド32、第1コールドシールド容器部321、第1コールドシールドフランジ3211、第2コールドシールド容器部322、コールドシールド接続管323、タイロッドコールドシールド部324、
液体ヘリウム容器33、第1液体ヘリウム容器部331、第1液体ヘリウムフランジ3311、第2液体ヘリウム容器部332、液体ヘリウム容器接続管333、
第1支持ロッド34、第2支持ロッド35、
超電導装置40、超電導コイル41、第1コイル411、第2コイル412、電流リード線42、ヒートシンク43、
タイロッドアセンブリ44、タイロッド441、調整ナット442、骨格45、シールプレート46、束縛線47、航空ソケット48、
圧力安全アセンブリ50、圧力センサ51、圧力計52、安全弁53、低温防爆弁54、圧力安全管55、
真空安全アセンブリ60、真空防爆弁61、真空計62、真空管63、真空引き口631。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温装置と、超電導装置と、保護モジュールとを含むサイクロトロン用の超電導マグネットシステムであって、
前記低温装置は、冷凍機と、低温容器アセンブリとを含み、前記低温容器アセンブリ内には、冷却媒体が充填され、前記低温容器アセンブリは、マグネット容器端と、接続輸送管路と、冷源容器端とを含み、前記冷凍機は、前記冷源容器端に設けられ、前記低温容器アセンブリ内の冷却媒体に冷凍量を提供するものであり、前記接続輸送管路は、前記マグネット容器端と前記冷源容器端との間には接続して連通し、
前記超電導装置は、超電導コイルを含み、前記超電導コイルは、前記マグネット容器端内に設けられ、前記マグネット容器端の液体冷却媒体又は気体冷却媒体に浸漬するのに適しており、
前記保護モジュールは、前記超電導コイルに接続され、前記保護モジュールは、前記超電導装置がクエンチしたときに前記超電導コイルを保護するものであり、
前記低温容器アセンブリは、入れ子構造となるように外から内へ順次配置されるとともに互いに間隔を空けて設けられるデュワーと、コールドシールドと、液体ヘリウム容器とを含み、前記デュワーの内面と、前記コールドシールドの外面との間によって第1真空チャンバが形成され、前記コールドシールドの内面と、前記液体ヘリウム容器の外面との間によって第2真空チャンバが形成され、前記液体ヘリウム容器内には前記冷却媒体が充填され、
前記デュワーは、第1デュワー容器部と、第2デュワー容器部と、デュワー接続管とを含み、前記デュワー接続管は、前記第1デュワー容器部と、前記第2デュワー容器部との間には接続され、前記コールドシールドは、第1コールドシールド容器部と、第2コールドシールド容器部と、コールドシールド接続管とを含み、前記コールドシールド接続管は、前記第1コールドシールド容器部と、前記第2コールドシールド容器部との間には接続され、前記液体ヘリウム容器は、第1液体ヘリウム容器部と、第2液体ヘリウム容器部と、液体ヘリウム容器接続管とを含み、前記液体ヘリウム容器接続管は、前記第1液体ヘリウム容器部と、前記第2液体ヘリウム容器部との間には接続され、
前記第1デュワー容器部、前記第1コールドシールド容器部及び前記第1液体ヘリウム容器部は、入れ子構造となるように外から内へ順次配置されるとともに、前記低温容器アセンブリの前記冷源容器端を構成し、前記デュワー接続管、前記コールドシールド接続管及び前記液体ヘリウム容器接続管は、入れ子構造となるように外から内へ順次配置されるとともに、前記低温容器アセンブリの前記接続輸送管路を構成し、前記第2デュワー容器部、前記第2コールドシールド容器部及び前記第2液体ヘリウム容器部は、入れ子構造となるように外から内へ順次配置されるとともに、前記低温容器アセンブリの前記マグネット容器端を構成し、
前記冷凍機は、第一段コールドヘッドと、前記第一段コールドヘッドと熱交換する熱交換管とを含み、前記熱交換管内には冷却媒体が充填され、前記熱交換管は、前記コールドシールド接続管及び前記第2コールドシールド容器部の外面に沿って延在して熱交換循環回路を形成し、前記第一段コールドヘッドは、前記熱交換管及び前記熱交換管内の冷却媒体により前記コールドシールド接続管及び前記第2コールドシールド容器部を冷却し、
前記超電導コイルは、径方向の内側及び外側に設けられる第1コイルと第2コイルとを含み、前記第1コイルは、前記第2コイルの径方向の内側に位置し、前記第2コイルの超電導線の銅比は前記第1コイルの超電導線の銅比よりも大きく、前記超電導線の銅比は前記超電導線中の銅と超電導材料との体積比であることを特徴とする、サイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項2】
前記超電導マグネットシステムは、圧力安全アセンブリをさらに含み、前記圧力安全アセンブリは、圧力センサ、圧力計、安全弁及び低温防爆弁のうちの少なくとも1種を含み、前記第1液体ヘリウム容器部には、圧力安全管が接続され、前記圧力安全管は、前記第1コールドシールド容器部及び前記第1デュワー容器部を順に通過して外部に露出し、前記圧力安全アセンブリは、前記圧力安全管に設けられ、前記第1デュワー容器部の外側に位置し、及び/又は
前記超電導マグネットシステムは、真空安全アセンブリをさらに含み、前記真空安全アセンブリは、真空防爆弁及び真空計のうちの少なくとも1種を含み、前記真空安全アセンブリは、前記第1デュワー容器部に設けられることを特徴とする、請求項に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項3】
前記超電導装置は、電流リード線をさらに含み、前記電流リード線は、前記冷源容器端に設けられ、前記超電導コイルに直列接続され、
前記冷凍機は、第一段コールドヘッドと、第二段コールドヘッドとを含み、前記第一段コールドヘッドは、熱伝導の方式により前記第1コールドシールド容器部及び前記電流リード線のヒートシンクを冷却し、前記第二段コールドヘッドは、前記液体ヘリウム容器内の前記冷却媒体を冷却するためのものであることを特徴とする、請求項に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項4】
前記超電導装置は、タイロッドアセンブリをさらに含み、前記タイロッドアセンブリは、前記第2液体ヘリウム容器部に接続され、前記第2液体ヘリウム容器部の位置を調整するためのものであることを特徴とする、請求項に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項5】
前記タイロッドアセンブリは、複数のタイロッド群を含み、それぞれのタイロッド群は、同一平面内に設けられる複数のタイロッドを含み、複数の前記タイロッド群が位置する平面は互いに垂直であり、前記タイロッドの一端は、前記第2液体ヘリウム容器部に固定され、他端は、前記第2コールドシールド容器部及び前記第2デュワー容器部を通過し、前記タイロッドの前記他端には、調整ナットが設けられ、前記調整ナットは、前記タイロッドを前記第2デュワー容器部に固定し、前記調整ナットは、前記第2液体ヘリウム容器部及び前記第2デュワー容器部の前記タイロッドの軸方向における相対位置を調整するために使用されることを特徴とする、請求項に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項6】
超電導電源をさらに含み、前記超電導電源は、電流リード線を介して前記超電導コイルに接続され、前記超電導コイルの励磁及び消磁に使用されることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項7】
前記保護モジュールは、エネルギー移動抵抗を含み、前記エネルギー移動抵抗は、前記超電導電源の両端に並列接続され、前記エネルギー移動抵抗の抵抗値は0.2Ωから3Ωの範囲内であり、
前記超電導マグネットシステムは、コントローラをさらに含み、前記コントローラは、前記超電導コイルがクエンチしたときに、前記超電導コイルと前記エネルギー移動抵抗が直列接続されるように前記超電導コイルと前記超電導電源との接続を切断するように構成されることを特徴とする、請求項に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記超電導コイルのセグメント電圧と総電圧との比が所定の閾値を超えたときに、前記超電導コイルがクエンチしたことを判定するように構成されることを特徴とする、請求項に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項9】
前記超電導コイルは、複数のセグメントコイルを含み、前記保護モジュールは、双方向ダイオードを含み、それぞれの前記セグメントコイルの両端には、前記双方向ダイオードに並列接続されることを特徴とする、請求項1に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステム。
【請求項10】
請求項1からのいずれか1項に記載のサイクロトロン用の超電導マグネットシステムを含むことを特徴とする、サイクロトロン。
【国際調査報告】