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  • 特表-脱酸陽極を含む固体電解キャパシタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-05
(54)【発明の名称】脱酸陽極を含む固体電解キャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/052 20060101AFI20230928BHJP
   H01G 9/032 20060101ALI20230928BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20230928BHJP
   H01G 9/042 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01G9/052 505
H01G9/032
H01G9/15
H01G9/042
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512311
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 US2021051491
(87)【国際公開番号】W WO2022066722
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】63/082,071
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500047848
【氏名又は名称】キョーセラ・エイブイエックス・コンポーネンツ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】若月 政幸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 晋平
(57)【要約】
キャパシタ素子を含むキャパシタを提供する。キャパシタ素子は、約35,000μF・V/g以上の比電荷を有する粉末から形成された、脱酸及び焼結した陽極体を含む。更に、誘電体は陽極体の上に配され、固体電解質は誘電体の上に配されている。キャパシタはまた、約0.1%以下の正規化エージドリーク電流を示す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャパシタ素子を含む固体電解キャパシタであって、前記キャパシタ素子が、約35,000μF・V/g以上の比電荷を有する粉末から形成された、脱酸及び焼結した陽極体、前記陽極体の上に配されている誘電体、並びに前記誘電体の上に配されている固体電解質を含み、前記キャパシタが、下記の式:
正規化エージドリーク電流=100×(エージドDCL/CV)
(式中、
エージドDCLは、前記キャパシタに85℃の温度及び定格電圧で120時間の寿命試験を行い、次に約23℃の温度で60分かけて回復させた後に、約23℃の温度及び定格電圧で約60秒間測定されるリーク電流であり、
Cは、約23℃の温度及び120Hzの動作周波数で求められる初期キャパシタンス(ファラド)であり、
Vは定格電圧(ボルト)である)
に従って求められる、約0.1%以下の正規化エージドリーク電流を示す、前記固体電解キャパシタ。
【請求項2】
前記エージドDCLが約0.5μA以下である、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項3】
前記エージドDCLが約0.25μA以下である、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項4】
前記正規化エージドリーク電流が約0.0075%以下である、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項5】
前記陽極体がタンタルを含み、前記誘電体が五酸化タンタルを含む、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項6】
前記固体が二酸化マンガンを含む、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項7】
前記陽極体と電気的に接続している陽極終端;
前記固体電解質と電気的に接続している陰極終端;並びに
前記キャパシタ素子を収容し前記陽極終端及び前記陰極終端の少なくとも一部を露出させたままにするハウジング
を更に含む、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項8】
前記ハウジングが前記キャパシタ素子を封入する樹脂性材料から形成されている、請求項7に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項9】
前記粉末が約100,000~約300,000μF・V/gの比電荷を有する、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項10】
固体電解キャパシタを形成する方法であって、
約35,000μF・V/g以上の比電荷を有する粉末を圧縮して多孔質陽極体とするステップ、前記多孔質陽極体に脱酸プロセスを施して脱酸陽極体を形成するステップ、及び前記脱酸陽極体を焼結するステップを含むプロセスにより陽極を形成するステップと;
脱酸及び焼結した前記陽極体を陽極酸化して前記陽極体の上に配されている誘電体を形成するステップと;
前記誘電体の上に配されている固体電解質を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項11】
陽極リード線が前記多孔質陽極体に接続されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記脱酸プロセスが、前記多孔質陽極体をゲッター材料の入った筐体内に挿入することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記筐体の雰囲気を約700℃~約1,200℃の温度に加熱するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
焼結するステップが約700℃~約1,600℃の温度で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記脱酸プロセスの前に前記多孔質陽極体を予備焼結するステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記粉末がタンタルを含み、前記誘電体が五酸化タンタルを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記キャパシタが、下記の式:
正規化エージドリーク電流=100×(エージドDCL/CV)
(式中、
エージドDCLは、前記キャパシタに85℃の温度及び定格電圧で120時間の寿命試験を行い、次に約23℃の温度で60分かけて回復させた後に、約23℃の温度及び定格電圧で約60秒間測定されるリーク電流であり、
Cは、約23℃の温度及び120Hzの動作周波数で求められる初期キャパシタンス(ファラド)であり、
Vは定格電圧(ボルト)である)
に従って求められる、約0.1%以下の正規化エージドリーク電流を示す、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記エージドDCLが約0.5μA以下である、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記エージドDCLが約0.25μA以下である、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記正規化エージドリーク電流が約0.0075%以下である、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
前記粉末が約100,000~約300,000μF・V/gの比電荷を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項22】
前記固体電解質が二酸化マンガンを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年9月23日の出願日を有する米国仮特許出願第63/082,071号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の出願の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
固体電解キャパシタ(例えばタンタルキャパシタ)は、通常は、金属粉(例えばタンタル)を金属リード線の周囲にプレスし、プレスした部品を焼結し、焼結した陽極を陽極酸化し、その後、固体電解質を施すことによって製造される。残念ながら、多くの固体電解キャパシタに関連する1つの問題は、高い比電荷(「CV/g」)を有する粉末が使用される場合に、焼結した陽極が比較的低い程度の圧縮強度を有する傾向があることである。このことは陽極体においてマイクロクラックが形成されることを引き起こすおそれがあり、これは高温及び/又は高い湿度レベルなどの極端な条件下でキャパシタにおいて潜在的な故障部位を作り得る。高比電荷粉末が一般に非常に小さい寸法及び広い表面積を有する粒子から形成され、これは誘電体及び固体電解質溶液による含浸が困難である粒子間の小孔の形成をもたらすという点で、これらの問題は複雑である。かかる小孔の含浸における困難は、誘電体被覆に良く接着せず良好な表面被覆を達成する可能性が低い固体電解質の形成につながり、これはキャパシタの不十分な電気的性能につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、改善された性能を有する固体電解キャパシタに対する必要性が現在存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態によれば、キャパシタ素子を含むキャパシタが開示される。キャパシタ素子は、約35,000μF・V/g以上の比電荷を有する粉末から形成された、脱酸(deoxidize)及び焼結した陽極体を含む。更に、誘電体は陽極体の上に配され、固体電解質は誘電体の上に配されている。キャパシタはまた、下記の式:
正規化エージド(aged)リーク電流=100×(エージドDCL/CV)
(式中、
エージドDCLは、キャパシタに85℃の温度及び定格電圧で120時間の寿命試験を行い、次に約23℃の温度で60分かけて回復させた後に、約23℃の温度及び定格電圧で約60秒間測定されるリーク電流であり、
Cは、約23℃の温度及び120Hzの動作周波数で求められる初期キャパシタンス(ファラド)であり、
Vは定格電圧(ボルト)である)
に従って求められる、約0.1%以下の正規化エージドリーク電流を示す。
【0005】
本発明の別の実施形態によれば、固体電解キャパシタを形成する方法が開示される。この方法は、約35,000μF・V/g以上の比電荷を有する粉末を圧縮して多孔質陽極体とするステップ、多孔質陽極体に脱酸(deoxidation)プロセスを施して脱酸陽極体を形成するステップ、及び脱酸陽極体を焼結するステップを含むプロセスにより陽極を形成するステップを含む。更に、脱酸及び焼結した陽極体を陽極酸化して陽極体の上に配されている誘電体を形成し、誘電体の上に配されている固体電解質が形成される。
【0006】
本発明の他の特徴及び態様を以下においてより詳細に示す。
【0007】
当業者に向けられた、本発明のベストモードを含む本発明の完全且つ実施可能な開示を、添付の図面を参照しながら本明細書の残りでより詳しく示す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明のキャパシタの一実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本議論は代表的な態様のみの説明であり、本発明のより広い形態を限定することは意図しておらず、より広い形態は代表的な構成の中で具現化されることが当業者によって理解される。
【0010】
一般的に言えば、本発明は、広範囲の異なる条件下で良好な電気特性を示すことが可能であるキャパシタに向けられている。より詳しくは、本キャパシタは、焼結多孔質陽極体及び陽極体の上に配されている誘電体を含むキャパシタ素子を含む。陽極体は、バルブメタル(すなわち、酸化することができる金属)又はバルブメタル系化合物、例えば、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ハフニウム、チタン、それらの合金、それらの酸化物、それらの窒化物などを含む粉末から形成される。粉末は、約35,000μF・V/g以上、幾つかの実施形態においては約50,000μF・V/g以上、幾つかの実施形態においては約70,000~約350,000μF・V/g、幾つかの実施形態においては約80,000~約325,000μF・V/g、幾つかの実施形態においては約100,000~約300,000μF・V/gのような、比較的高い比電荷を有する。当該技術において公知なように、比電荷は、キャパシタンスに使用した陽極酸化電圧をかけ、次にこの積を陽極酸化電極体の重量で割ることによって求めることができる。
【0011】
キャパシタの形成の際、陽極体を圧縮し、その後、脱酸して陽極体の内部にある酸素の存在を最小にする。得られる陽極体はしたがって比較的低い酸素含量を有し得る。例えば、陽極体は約5,500ppm以下の酸素、幾つかの実施形態においては約5,000ppm以下の酸素、幾つかの実施形態においては約500~約4,500ppmの酸素を有し得る。酸素含量はLECO Oxygen Analyzerにより測定することができ、タンタル表面上の自然酸化膜中の酸素及びタンタル粒子中のバルク酸素を含む。バルク酸素含量はタンタルの結晶格子の周期により制御され、これは溶解限度に達するまでタンタル中の酸素含量の増加と共に直線的に増加する。この方法は「Critical Oxygen Content In Porous Anodes Of Solid Tantalum Capacitors」、Pozdeev-Freemanら、Journal of Materials Science:Materials In Electronics 9、(1998)309~311に記載され、ここではタンタルの結晶格子の周期を測定するのにX線回折分析(XRDA)が使用された。焼結タンタル陽極中の酸素は薄い自然表面酸化膜に限定することができ、一方タンタルのバルクは事実上酸素を含まない。
【0012】
本発明者らは、脱酸プロセスの特定の態様に対する選択的な制御によって、得られるキャパシタが多くの独自の有益な特性を有し得ることを見出した。例えば、焼結陽極体は、約1重量キログラム(「kg」)以上、幾つかの実施形態においては約5kg以上、幾つかの実施形態においては約10~約100kgのような高度の圧縮強度を示し得る。とりわけ、高度の圧縮強度は陽極体におけるマイクロクラックの形成を制限するのを助けることが可能であり、このことは高い温度及び/又は湿度レベルのような広範囲の極端な条件下でより良好なキャパシタの電気的性能をもたらす。本明細書に記載の特定の脱酸プロセスを使用して酸素含量を最小にすることは、誘電体及び固体電解質の浸透の程度も高めることも可能であり、それにより電気的性能を更に改善する。
【0013】
本キャパシタは、例えば、種々の条件下で低いリーク電流(「DCL」)を示し得る。より詳しくは、本キャパシタは、約5秒~約500秒、幾つかの実施形態においては20秒~約400秒(例えば、60秒又は300秒)の間、印加電圧(例えば、定格電圧、又は1.1×定格電圧のような定格電圧の倍数)にかけた後に、約23℃の温度でわずか約20マイクロアンペア(「μA」)以下、幾つかの実施形態においては約10μA以下、幾つかの実施形態においては約5μA以下、幾つかの実施形態においては約1μA以下、幾つかの実施形態においては約0.5μA以下、幾つかの実施形態においては約0.01~約0.3μAのDCLを示すことができる。勿論、DCLの絶対値は、粉末の比電荷、キャパシタ素子の寸法などを含むキャパシタの特定の態様に依存し得る。この点に関し、正規化DCLは下記の式:
正規化DCL=100×(DCL/CV)
(式中、Cは初期キャパシタンス(ファラド)であり、Vは定格電圧(ボルト)である)
によって公称の電荷のパーセントとして求めることができる。
【0014】
本発明のキャパシタは例えば、約5秒~約500秒、幾つかの実施形態においては20秒~約400秒(例えば、60秒又は300秒)の間、印加電圧(例えば、定格電圧、又は1.1×定格電圧のような定格電圧の倍数)にかけた後に、約23℃の温度で求められる、約0.5%以下、幾つかの実施形態においては約0.2%以下、幾つかの実施形態においては約0.1%以下、幾つかの実施形態においては約0.09%以下、幾つかの実施形態においては約0.08%以下、幾つかの実施形態においては約0.01%~約0.07%の正規化DCLを示すことができる。
【0015】
特に、低いDCL値は高温であってもやはり安定したままであり得る。例えば、本キャパシタは、約80℃以上、幾つかの実施形態においては約85℃~約150℃(例えば、約85℃、105℃、125℃、又は150℃)の温度で、約50時間以上、幾つかの実施形態においては約100時間~約3,000時間、幾つかの実施形態においては約120時間~約2,500時間(例えば、120、250、500、750、又は1,000時間)のような相当な時間の寿命試験が行われた後でも、上記の範囲内の「エージド(aged)」DCL値を示し得る。一実施形態においては、例えば、高温(例えば、約85℃)で120時間の寿命試験を行い室温(例えば、約23℃)で60分かけて回復させた後のキャパシタのエージドDCLは、約0.5μA以下、幾つかの実施形態においては約0.3μA以下、幾つかの実施形態においては約0.25μA以下、幾つかの実施形態においては約0.2μA以下、幾つかの実施形態においては約0.01~約0.1μAとなり得る。更に、高温(例えば、約85℃)に120時間曝露し室温(例えば、約23℃)で60分かけて回復させた後のキャパシタのエージドDCLの、キャパシタの初期DCL(例えば、約23℃における)に対する比は、約5以下、幾つかの実施形態においては約3以下、幾つかの実施形態においては約2以下、幾つかの実施形態においては約1.5以下、幾つかの実施形態においては、約0.6~約1.2となり得る。更に、キャパシタの正規化エージドDCLは、下記の式:
正規化エージドDCL=100×(エージドDCL/CV)
(式中、エージドDCLは85℃で120時間の寿命試験を行い室温(約23℃)で60分かけて回復させた後のリーク電流であり、Cは初期キャパシタンス(ファラド)でありVは定格電圧(ボルト)である)
によって公称の電荷のパーセントとして求めることができる。
【0016】
正規化エージドDCLは、約0.1%以下、幾つかの実施形態においては約0.075%以下、幾つかの実施形態においては約0.07%以下、幾つかの実施形態においては約0.065%以下、幾つかの実施形態においては約0.06%以下、幾つかの実施形態においては約0.001~約0.006%となり得る。更に、高温(例えば、約85℃)に120時間曝露し60分かけて回復させた後のキャパシタの正規化エージドDCLの、キャパシタの初期正規化エージドDCL(例えば、約23℃における)に対する比もまた、約5以下、幾つかの実施形態においては約3以下、幾つかの実施形態においては約2以下、幾つかの実施形態においては約1.5以下、幾つかの実施形態においては約0.6~約1.2となり得る。
【0017】
本キャパシタの他の電気特性も、様々な条件下で良好であり安定のままであり得る。例えば、キャパシタは100kHzの動作周波数及び23℃の温度で測定して、約200ミリオーム、幾つかの実施形態においては約150ミリオーム未満、幾つかの実施形態においては約0.01~約125ミリオーム、幾つかの実施形態においては約0.1~約100ミリオームのような比較的低い等価直列抵抗(ESR)も示し得る。本キャパシタはまた、約80℃以上、幾つかの実施形態においては約100℃~約150℃、幾つかの実施形態においては約105℃~約130℃(例えば、105℃又は125℃)の温度に、約100時間以上、幾つかの実施形態においては約150時間~約3,000時間(例えば、3,000時間)のような相当な時間曝露した後でも、かかるESR値を示し得る。一実施形態において、例えば、高温(例えば、105℃)に3,000時間曝露した後のキャパシタのESRの、キャパシタの初期ESR値(例えば、23℃における)に対する比は、約2.0以下、幾つかの実施形態においては約1.5以下、幾つかの実施形態においては約1.0~約1.3である。更に、サージ電圧の繰り返しサイクルを与えた後のキャパシタンス(「充放電キャパシタンス」)の、かかる試験前の初期キャパシタンス値に対する比は、約0.7~1、幾つかの実施形態においては約0.8~1、幾つかの実施形態においては約0.9~1、幾つかの実施形態においては0.91~0.99となり得る。サージ電圧は、4,000~16,000サイクル(例えば、4,000、8,000、12,000、又は16,000サイクル)で印加することができる。更に、キャパシタンスはまた、約80℃以上、幾つかの実施形態においては約100℃~約150℃、幾つかの実施形態においては約105℃~約130℃(例えば、105℃又は125℃)のような高温に、約100時間以上、幾つかの実施形態においては約150時間~約3,000時間(例えば、3,000時間)のような相当な時間曝露した後でも安定のままであり得る。一実施形態において、例えば、高温(例えば、105℃)に3,000時間曝露した後のキャパシタンスの、初期キャパシタンス値(例えば、23℃における)に対する比は、約0.7~1、幾つかの実施形態においては約0.8~1、幾つかの実施形態においては約0.9~1、幾つかの実施形態においては0.91~0.99である。実際のキャパシタンス値(乾燥)は変動し得るが、120Hzの周波数で測定して、通常は約1ミリファラド/平方センチメートル(「mF/cm」)以上、幾つかの実施形態においては約2mF/cm以上、幾つかの実施形態においては約5~約50mF/cm、幾つかの実施形態においては約8~約20mF/cmである。
【0018】
本キャパシタはまた、その湿潤キャパシタンスの高いパーセントを示すことができ、これにより大気湿度の存在下で小さなキャパシタンスの損失及び/又は変動のみを有することが可能になる。この性能特性は、式:
湿潤対乾燥キャパシタンス=(乾燥キャパシタンス/湿潤キャパシタンス)×100
によって求められる「湿潤対乾燥キャパシタンスパーセント」によって定量化される。
【0019】
本キャパシタは、約50%以上、幾つかの実施形態においては約60%以上、幾つかの実施形態においては約70%以上、幾つかの実施形態においては約80%~100%の湿潤対乾燥キャパシタンスパーセントを示し得る。
【0020】
また、キャパシタの損失係数(dissipation factor)を比較的低いレベルに維持することができるとも考えられる。損失係数は、一般にキャパシタ内で生じる損失を指し、通常は理想的なキャパシタ性能のパーセントとして表される。例えば、本キャパシタの損失係数は、通常は、120Hzの周波数において求めて約250%以下、幾つかの実施形態においては約200%以下、幾つかの実施形態においては約1%~約180%である。本キャパシタはまた、約35ボルト以上、幾つかの実施形態においては約50ボルト以上、幾つかの実施形態においては約60ボルト~約200ボルトの定格電圧のような、高電圧用途において使用されることも可能である。本キャパシタは、例えば、約60ボルト以上、幾つかの実施形態においては約70ボルト以上、幾つかの実施形態においては約80ボルト以上、幾つかの実施形態においては、約100ボルト~約300ボルトのような、比較的高い「ブレークダウン電圧」(キャパシタが故障する電圧)を示し得る。更に、本キャパシタはまた、高電圧用途においても一般的である比較的高いサージ電流に耐えることができる。ピークサージ電流は、例えば、約100アンペア以上、幾つかの実施形態においては約200アンペア以上、幾つかの実施形態においては約300アンペア~約800アンペアであってよい。
【0021】
ここで、本発明の様々な実施形態をより詳細に説明する。
【0022】
I.キャパシタ素子
A.陽極体
上記のように、陽極体はバルブメタル又はバルブメタル系化合物を含む粉末から形成される。一実施形態において、例えば、粉末はタンタルから形成される。所望の場合には、タンタル塩(例えば、フルオロタンタル酸カリウム(KTaF)、フルオロタンタル酸ナトリウム(NaTaF)、五塩化タンタル(TaCl)など)を還元剤と反応させる還元プロセスを使用してもよい。還元剤は、液体、気体(例えば水素)、又は固体、例えば金属(例えばナトリウム)、金属合金、又は金属塩の形態で提供することができる。例えば一実施形態においては、タンタル塩(例えばTaCl)を約900℃~約2,000℃、幾つかの実施形態においては約1,000℃~約1,800℃、幾つかの実施形態においては約1,100℃~約1,600℃の温度で加熱して蒸気を形成することができ、それを気体還元剤(例えば水素)の存在下で還元することができる。かかる還元反応の更なる詳細は、MaeshimaらのWO-2014/199480に記載されている。還元後、生成物を冷却、粉砕、及び洗浄して粉末を形成することができる。
【0023】
粉末は、一次粒子を含む自由流動性の微細粉末であってよい。粉末の一次粒子は、一般的に、場合によっては粒子を70秒間の超音波振動にかけた後に、例えばBECKMAN COULTER Corporation製のレーザー粒径分布分析装置(例えばLS-230)を使用して求めて、約5~約250ナノメートル、幾つかの実施形態においては約10~約200ナノメートル、幾つかの実施形態においては約20~約150ナノメートルのメジアン径(D50)を有する。一次粒子は、通常は三次元の粒子形状(例えば球状又は角状)を有する。かかる粒子は、通常は比較的低い「アスペクト比」、すなわち粒子の平均直径又は幅を平均厚さで割った値(D/T)を有する。例えば、粒子のアスペクト比は、約4以下、幾つかの実施形態においては約3以下、幾つかの実施形態においては約1~約2であってよい。一次粒子に加えて、粉末は、一次粒子の凝集(又は凝塊化)によって形成される二次粒子のような他のタイプの粒子を含んでいてもよい。かかる二次粒子は、約1~約500マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約10~約250マイクロメートルのメジアン径(D50)を有していてよい。
【0024】
粒子の凝集は、粒子を加熱することによるか、及び/又はバインダーを使用することによって行うことができる。例えば、凝集は、約0℃~約40℃、幾つかの態様においては約5℃~約35℃、幾つかの態様においては約15℃~約30℃の温度で行うことができる。また好適なバインダーとしては、例えば、ポリ(ビニルブチラール);ポリ(酢酸ビニル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(ビニルピロリドン);セルロースポリマー、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びメチルヒドロキシエチルセルロース;アタクチックポリプロピレン、ポリエチレン;ポリエチレングリコール(例えば、Dow Chemical Co.製のCarbowax);ポリスチレン、ポリ(ブタジエン/スチレン);ポリアミド、ポリイミド、及びポリアクリルアミド、高分子量ポリエーテル;エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー;フルオロポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド、及びフルオロオレフィンコポリマー;アクリルポリマー、例えばナトリウムポリアクリレート、ポリ(低級アルキルアクリレート)、ポリ(低級アルキルメタクリレート)、及び低級アルキルアクリレートとメタクリレートのコポリマー;並びに脂肪酸及びワックス、例えばステアリン酸及び他の石鹸脂肪酸、植物性ワックス、マイクロワックス(精製パラフィン)などを挙げることができる。所望の場合には、粉末には水性酸(例えば、リン酸)のようなドーパントの存在下で焼結抑制剤をドープすることもできる。添加されるドーパントの量は部分的には粉末の表面積に依存するが、通常は約200ppm(百万分率)以下の量で存在する。ドーパントは凝集の前、凝集の間、及び/又は凝集の後に添加してもよい。粉末はまた、1回又は複数回の脱酸処理が行われてもよい。例えば、粉末を米国特許第4,960,471号に記載されているようなゲッター材料(例えば、マグネシウム)に曝露してもよい。粉末の脱酸が行われる温度は様々であってもよいが、通常は、約700℃~約1,600℃、幾つかの実施形態においては約750℃~約1,200℃、幾つかの実施形態においては約800℃~約1,000℃の範囲である。脱酸処理の合計時間は約20分~約3時間の範囲であってもよい。
【0025】
得られる粉末は、キャパシタ陽極となる能力を高める一定の特性を有する。例えば、粉末は通常は約0.5~約10.0m/g、幾つかの実施形態においては約0.7~約5.0m/g、幾つかの実施形態においては約2.0~約4.0m/gの比表面積を有する。更に、粉末の嵩密度は、約0.1~約0.8グラム/立方センチメートル(g/cm)、幾つかの実施形態においては約0.2~約0.6g/cm、幾つかの実施形態においては約0.4~約0.6g/cmとなり得る。
【0026】
粉末が形成されたら、次に一般には任意の従来の粉末プレス装置を使用してこれを圧縮又はプレスしてペレットを形成する。例えば、ダイと1つ又は複数のパンチを含むシングルステーション式圧縮プレス機であるプレス成形機を使用することができる。或いは、ダイと単一の下方パンチのみを使用するアンビルタイプの圧縮プレス成形機を使用することができる。シングルステーション式圧縮プレス成形機は、シングルアクション、ダブルアクション、浮動ダイ、可動式プラテン、対向ラム、スクリュー、インパクト、ホットプレス、圧印加工、又はサイジングのような種々の能力を有するカムプレス、トグル/ナックルプレス、及び偏心/クランクプレスのような幾つかの基本的タイプで入手可能である。粉末は通常は、約0.5~約20g/cm、幾つかの実施形態においては約1~約15g/cm、幾つかの実施形態においては約2~約10g/cmの密度にプレスされる。粉末は、ワイヤ、シートなどの形態であってよい陽極リードの周囲に圧縮することができる。或いは、陽極体が形成された後にリードを陽極体の表面に単に接続することができる。リードは、陽極体から長手方向に伸長させることができ、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ハフニウム、チタンなど、並びにそれらの導電性酸化物及び/又は窒化物のような任意の導電性材料から形成することができる。リードの接続はまた、他の公知の技術を使用して、例えば、リードを陽極体に溶接するか、或いは形成中(例えば圧縮及び/又は焼結の前)に陽極体内部にそれを埋め込むことによって達成することもできる。バインダーは、プレス後にペレットを真空下で一定の温度(例えば約150℃~約500℃)において数分間加熱することによって除去することができる。或いは、バインダーは、ペレットを、Bishopらの米国特許第6,197,252号に記載されているような水溶液と接触させることによって除去することもできる。
【0027】
バインダーの除去後、陽極体に脱酸プロセスを施すことができる。一実施形態において、例えば、脱酸プロセスは、化学反応、吸着などにより酸素を陽極体から除去することが可能であるゲッター材料(例えば、マグネシウム、チタンなど)に陽極体を曝露することを含む。より詳しくは、陽極体を最初に、やはりゲッター材料の入った筐体(例えば、タンタルの箱)に挿入する。筐体内の雰囲気は通常は不活性雰囲気(例えば、アルゴンガス)である。脱酸を開始するために、ゲッター材料を溶融及び/又は気化させ陽極体を脱酸するのに十分である温度に筐体内の雰囲気を加熱する。温度は陽極粉末の比電荷に応じて変化してもよいが、通常は約700℃~約1,200℃、幾つかの実施形態においては約750℃~約1,100℃、幾つかの実施形態においては約800℃~約1,000℃の範囲である。脱酸の合計時間は約20分~約3時間の範囲であってもよい。これは1つ又は複数のステップで行うことができる。脱酸が完了すると、ゲッター材料は通常は気化し筐体の壁に析出物を形成する。ゲッター材料の除去を確実にするために、硝酸、フッ化水素酸、過酸化水素、硫酸の溶液、水など、又はそれらの組合せなどにより、陽極体に1回又は複数回の酸浸出ステップを施すこともできる。
【0028】
脱酸後、陽極体を焼結して多孔質の一体塊状物を形成することができる。陽極体は、通常は約700℃~約1,600℃、幾つかの実施形態においては約800℃~約1,500℃、幾つかの実施形態においては約900℃~約1,200℃の温度で、約5分~約100分、幾つかの実施形態においては約8分~約15分焼結する。これは1つ又は複数のステップで行うことができる。所望の場合には、焼結は、酸素原子の陽極体への移動を制限する雰囲気中で行うことができる。例えば、焼結は、真空中、不活性ガス中、水素中などの還元又は不活性雰囲気中で行うことができる。還元雰囲気は、約10Torr~約2000Torr、幾つかの実施形態においては約100Torr~約1000Torr、幾つかの実施形態においては約100Torr~約930Torrの圧力であってよい。水素と他のガス(例えば、アルゴン又は窒素)の混合物も使用することもできる。上記のように、陽極体の焼結は一般に脱酸後に行われる。しかしながら、酸化前に陽極体に1回又は複数回の予備焼結ステップを施して脱酸プロセスにおいて所望の程度の圧粉体強度を実現するのを助けることもできることを理解すべきである。かかる予備焼結ステップは、脱酸後に行われる焼結プロセスと同じ又は異なる条件下で行うことができる。例えば、予備焼結は、約700℃~約1,600℃、幾つかの実施形態においては約800℃~約1,500℃、幾つかの実施形態においては約900℃~約1,200℃の温度で、約5分~約100分、幾つかの実施形態においては約8分~約15分、1つ又は複数のステップで行うことができる。予備焼結は、上記のような真空中、不活性ガス中、水素中などの還元雰囲気中で行うこともできる。
【0029】
B.誘電体
陽極体は誘電体で被覆されている。誘電体は、誘電体層が陽極体上及び/又は陽極体内に形成されるように、焼結陽極体を陽極酸化することによって形成することができる。例えば、タンタル(Ta)陽極を五酸化タンタル(Ta)に陽極酸化することができる。通常は、陽極酸化は、最初に溶液を陽極に適用することによって、例えば陽極を電解質中に浸漬することによって行われる。水(例えば脱イオン水)などの溶媒が一般に使用される。イオン伝導度を高めるために、溶媒中で解離してイオンを形成することができる化合物を使用することができる。かかる化合物の例としては、例えば、電解質に関して下記に記載されるような酸が挙げられる。例えば、酸(例えばリン酸)は、陽極酸化溶液の約0.01重量%~約5重量%、幾つかの実施形態においては約0.05重量%~約0.8重量%、幾つかの実施形態においては約0.1重量%~約0.5重量%を構成し得る。所望の場合には、酸のブレンドを使用することもできる。
【0030】
電流を陽極酸化溶液に通して誘電体層を形成させることができる。化成電圧の値によって誘電体層の厚さが制御される。例えば、電源は、まず、必要な電圧に到達するまで定電流モードに設定することができる。その後、電源を定電位モードに切り替え、所望の誘電体厚さが陽極の表面全体上に確実に形成されるようにすることができる。勿論、パルス又はステップ定電位法などの他の公知の方法も使用することができる。陽極酸化の際に使用される形成電圧は、約10℃以上、幾つかの実施形態においては約20℃~約200℃、幾つかの実施形態においては約30℃~約100℃の範囲の温度で、一般に約20ボルト以上、幾つかの実施形態においては約30ボルト以上、幾つかの実施形態においては約35ボルト以上、幾つかの実施形態においては約35~約70ボルトである。得られる誘電体層は陽極の表面上及びその細孔内に形成することができる。
【0031】
陽極体が形成される特定の方法を選択的に制御することにより、本発明者らは、得られるキャパシタが、キャパシタンス安定性を改善できる高度な絶縁耐力を示すことができることを見出した。「絶縁耐力」は一般に、キャパシタの「ブレークダウン電圧」(キャパシタが故障する電圧、ボルト「V」)の、誘電体の厚さ(ナノメートル、「nm」)に対する比を指す。本キャパシタは通常は、約0.4V/nm以上、幾つかの実施形態においては約0.45V/nm以上、幾つかの実施形態においては約0.5V/nm以上、幾つかの実施形態においては約0.55~約1V/nm、幾つかの実施形態においては約0.6~約0.9V/nmの絶縁耐力を示す。本キャパシタは、例えば、リーク電流が1mAに達するまで3ボルトきざみで印加電圧を増加させることにより求められるような、約30ボルト以上、幾つかの実施形態においては約35ボルト以上、幾つかの実施形態においては約50ボルト以上、幾つかの実施形態においては約65ボルト以上、幾つかの実施形態においては約85ボルト以上、幾つかの実施形態においては約90ボルト以上、幾つかの実施形態においては約95ボルト以上、幾つかの実施形態においては約100ボルト~約300ボルトのような比較的高いブレークダウン電圧を示し得る。その厚さは一般に陽極体の特定の場所に応じて変化し得るが、絶縁耐力を求める目的のための「誘電体厚さ」は一般には、通常は約50~約500nm、幾つかの実施形態においては約80~約350nm、幾つかの実施形態においては約100~約300nmの範囲である誘電体の最大厚さと考えられる。誘電体厚さはZeiss Sigma FESEMを使用して20,000×~50,000×の倍率で測定することができ、試料は完成した部品の最長寸法と垂直な面で完成した部品を切断することにより調製され、厚さは誘電体層を垂直に通って切断される場所で測定される。
【0032】
C.固体電解質
固体電解質は誘電体の上に配されている。通常は固体電解質の全厚さは約1~約50μm、幾つかの実施形態においては約5~約20μmである。固体電解質は、導電性無機酸化物(例えば、二酸化マンガン)、導電性ポリマー(例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどのようなポリ複素環、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン、ポリフェノレートなど)などの1つ又は複数の層を含むことができる。一実施形態において、例えば、固体電解質は二酸化マンガンを含んでいてもよい。当該技術において公知なように、二酸化マンガンは、Sturmerらの米国特許第4,945,452号に記載されているような硝酸マンガン(Mn(NO)の熱分解により形成することができる。加熱は、例えば、約150℃~約300℃、幾つかの実施形態においては約180℃~約290℃、幾つかの実施形態においては約190℃~約260℃の温度の炉で行われてもよい。加熱は湿潤又は乾燥雰囲気中で行われてもよい。転化のための時間は炉の温度、熱伝達率、及び雰囲気によって決まるが、一般には約3~約5分である。熱分解後、リーク電流は場合により、二酸化マンガンの析出の際に誘電体フィルムが受ける損傷のために増加することがある。このリークを更に低減するのを助けるために、キャパシタは当該技術において公知のような陽極酸化浴中で再形成させることができる。例えば、キャパシタを上記のような電解質中に浸漬し、次にDC電流をかけることができる。
【0033】
D.水分バリヤ層
所望の場合には、固体電解質の上に配されている水分バリヤ層を使用してもよい。水分バリヤ層は、疎水性エラストマー、例えば、シリコーン、フルオロポリマーなどのような種々の異なる材料から形成することができる。シリコーンポリマーは、本発明の水分バリヤ層での使用に特に好適である。かかるエラストマーは、通常は、下記の一般式:
【0034】
【化1】
(式中、
xは1を超える整数であり;
、R、R、R、R、R、R、及びRは、独立して、通常は1~約20個の炭素原子を含む一価の基、例えばアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、オクタデシルなど);アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシなど);カルボキシアルキル基(例えば、アセチル);シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル);アルケニル基(例えば、ビニル、アリル、ブテニル、ヘキセニルなど);アリール基(例えば、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル、2-フェニルエチルなど);及びハロゲン化炭化水素基(例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル、3-クロロプロピル、ジクロロフェニルなど)である)
を有するもののようなポリオルガノシロキサンに由来する。かかるポリオルガノシロキサンの例としては、例えば、ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)、ポリオメチル水素シロキサン、ジメチルジフェニルポリシロキサン、ジメチル/メチルフェニルポリシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、メチルフェニル/ジメチルシロキサン、ビニルジメチル末端ポリジメチルシロキサン、ビニルメチル/ジメチルポリシロキサン、ビニルジメチル末端ビニルメチル/ジメチルポリシロキサン、ジビニルメチル末端ポリジメチルシロキサン、ビニルフェニルメチル末端ポリジメチルシロキサン、ジメチルヒドロ末端ポリジメチルシロキサン、メチルヒドロ/ジメチルポリシロキサン、メチルヒドロ末端メチルオクチルポリシロキサン、メチルヒドロ/フェニルメチルポリシロキサン、フッ素修飾ポリシロキサンなどを挙げることができる。エラストマーを形成するために、ポリオルガノシロキサンは、任意の種々の公知の技術を使用して、触媒硬化(例えば、白金触媒)、室温加硫、湿気硬化などにより架橋させることができる。式Si-OR(式中RはH、アルキル(例えば、メチル)、アルケニル、カルボキシルアルキル(例えば、アセチル)などである)を有するアルコキシシランのような架橋剤を使用することができる。
【0035】
疎水性であることに加えて、水分バリヤ層を形成するのに使用される材料は比較的低い弾性率及び一定の程度の可撓性を有することが一般に望ましく、これはケーシングの膨張により生じる熱応力の一部を吸収するのを助け圧縮力を受けることを可能にすることもできる。材料の可撓性は、約25℃の温度で測定して、約5,000キロパスカル(「kPa」)以下、幾つかの実施形態においては約1~約2,000kPa、幾つかの実施形態においては約2~約500kPaのような対応する低い弾性係数(「ヤング率」)により特徴づけることができる。材料は通常は、圧縮力を受けたときであってもその形状を保持することを可能にする一定の程度の強度も有する。例えば、材料は、約25℃の温度で測定して、約1~約5,000kPa、幾つかの実施形態においては約10~約2,000kPa、幾つかの実施形態においては約50~約1,000kPaの引張強度を有し得る。上記の条件により、疎水性エラストマーは、キャパシタが極端な条件下で機能する能力を更に一層高めることができる。
【0036】
所望の可撓性及び強度特性の達成を助けるために、非導電性フィラーを水分バリヤ層において使用してもよい。使用する場合、かかる添加剤は通常は水分バリヤ層の約0.5重量%~約30重量%、幾つかの実施形態においては約1重量%~約25重量%、幾つかの実施形態においては約2重量%~約20重量%を構成する。シリコーンエラストマーは、水分バリヤ層の約70重量%~約99.5重量%、幾つかの実施形態においては約75重量%~約99重量%、幾つかの実施形態においては約80重量%~約98重量%を構成し得る。かかるフィラーの1つの特定の例としては、例えばシリカが挙げられる。シリカの大部分の形態はシラノール基(Si-OH)の存在のために比較的親水性の表面を含むが、シリカはその表面が(CH-Si-基(式中、nは1~3の整数である)を含むように場合によって表面処理することができ、これは水分バリヤ層の疎水性を更に高める。表面処理剤は、例えば、加水分解性基又はその部分加水分解物を有する有機ケイ素化合物モノマーであってもよい。かかる化合物の例としては、オルガノシラザン、上記のようなシランカップリング剤などを挙げることができる。
【0037】
水分バリヤ層をキャパシタの任意の表面に施して所望の特性を実現することができる。例えば、水分バリヤ層は、キャパシタの上面、下面、及び/又は側面に配置されてよい。水分バリヤ層は更に、キャパシタの前面及び/又は後面に配置されてよい。水分バリヤ層は、それが施される表面の全面積又は一部の面積のみを被覆してよい。一実施形態において、例えば、水分バリヤ層は、それが施されるキャパシタの表面の約30%以上、幾つかの実施形態においては約40%以上、幾つかの実施形態においては約50%以上を被覆する。
【0038】
例えば図1を参照すると、一般に長方形の形状を有し前面36、後面38、上面37、下面39、第1の側面32、及び第2の側面(図示せず)を含むキャパシタ素子33を含む、キャパシタ30の一実施形態が示されている。示されている実施形態においては、陽極リード16は陽極体40の中に埋め込まれ、キャパシタ素子33の前面36から長手方向に伸長している。或いは、陽極リード16はキャパシタ素子33の前面36に単に接続(例えば、溶接)されてよい。キャパシタ素子33は、陽極体40の上に配されている誘電体(図示せず)、誘電体の上に配されている固体電解質44、及び固体電解質44の上に配されている陰極被覆46を含む。示されるように、固体電解質44及び陰極被覆46は通常は、前面36を除いたキャパシタ30の各表面に存在する。勿論、かかる層はキャパシタの任意の表面に施されてよく、示される方法で施される必要はないことを理解すべきである。
【0039】
キャパシタ素子33はまた、疎水性材料を含む随意的な水分バリヤ層63も含む。この特定の実施形態においては、水分バリヤ層63は、後面38、上面37、並びに側面(図示せず)において固体電解質44の上に配される。水分バリヤ層63はまた、前面36にも存在するが、上記のようにこの表面において必ずしも固体電解質の上に配されていなくてよい。勿論、図1に示すように水分バリヤ層63はキャパシタ素子33の表面に配置される必要はないことを理解すべきである。別の実施形態において、例えば、水分バリヤ層は、キャパシタ素子33の側面にのみ配置されてよい。どこに配置されるかにかかわらず、水分バリヤ層は表面の任意の所望の部分を被覆することができる。例えば、水分バリヤ層は、それらが配置される表面の実質的にすべて、例えば約90%以上、幾つかの実施形態においては約95%以上などを被覆することができる。しかし改めて、これは単に随意的であり、この層は表面のそのような相当部分を被覆する必要はない。
【0040】
E.他の随意的部材
所望の場合には、当該技術において公知の他の層をキャパシタ素子に含ませることもできる。例えば、接着剤層が場合によって誘電体と固体電解質の間に形成されてよい。接着剤層は通常は、比較的絶縁性の樹脂性材料(天然又は合成)から形成される。かかる材料は、約10Ω・cmを超える、幾つかの実施形態においては約100を超える、幾つかの実施形態においては約1,000Ω・cmを超える、幾つかの実施形態においては約1×10Ω・cmを超える、幾つかの実施形態においては約1×1010Ω・cmを超える比抵抗を有し得る。本発明において利用することができるいくつかの樹脂性材料としては、限定はされないが、ポリウレタン、ポリスチレン、不飽和又は飽和脂肪酸のエステル(例えば、グリセリド)などが挙げられる。例えば、好適な脂肪酸のエステルとしては、限定はされないが、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エレオステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アロイリット酸、シェロール酸(shellolic acid)などのエステルが挙げられる。脂肪酸のこれらのエステルは、比較的複雑な組合せで使用されて「乾性油」を形成する場合に特に有用であることが分かっており、これは得られる膜が急速に重合して安定な層となることを可能にする。かかる乾性油としては、エステル化されている1個、2個、及び3個の脂肪アシル残基をそれぞれ有するグリセロール骨格を有する、モノ-、ジ-、及び/又はトリ-グリセリドを挙げることができる。例えば、使用することができるいくつかの好適な乾性油としては、限定はされないが、オリーブ油、亜麻仁油、ヒマシ油、桐油、大豆油、及びシェラックが挙げられる。これら及び他の接着剤層材料は、Fifeらの米国特許第6,674,635号により詳細に記載されている。
【0041】
所望の場合には、部品には炭素層(例えば、グラファイト)及び銀層をそれぞれ施すこともできる。銀被覆は、例えば、キャパシタにおけるはんだ付け可能な導電体、接触層、及び/又は集電体として作用することができ、炭素被覆は銀被覆が固体電解質と接触するのを制限し得る。かかる被覆は固体電解質の一部又は全体を覆ってもよい。
【0042】
II.終端(termination)
形成されたら、特に表面実装用途において使用する場合にはキャパシタ素子に終端を与えることができる。例えば、それにキャパシタ素子の陽極リードが電気的に接続される陽極終端、及びそれにキャパシタ素子の陰極が電気的に接続される陰極終端をキャパシタに含ませることができる。導電性金属(例えば、銅、ニッケル、銀、ニッケル、亜鉛、スズ、パラジウム、鉛、銅、アルミニウム、モリブデン、チタン、鉄、ジルコニウム、マグネシウム、及びこれらの合金)のような任意の導電性材料を使用して終端を形成することができる。特に好適な導電性金属としては、例えば、銅、銅合金(例えば、銅-ジルコニウム、銅-マグネシウム、銅-亜鉛、又は銅-鉄)、ニッケル、及びニッケル合金(例えばニッケル-鉄)が挙げられる。終端の厚さは、一般的にキャパシタの厚さを最小にするように選択される。例えば、終端の厚さは、約0.05~約1ミリメートル、幾つかの態様においては約0.05~約0.5ミリメートル、及び約0.07~約0.2ミリメートルの範囲であってよい。1つの代表的な導電性材料は、Wieland(ドイツ)から入手できる銅-鉄合金の金属プレートである。所望の場合には、終端の表面は、当該技術において公知なように、最終部品を回路基板へ実装することができるのを確実にするために、ニッケル、銀、金、スズなどで電気めっきすることができる。1つの特定の態様においては、終端の両方の表面をそれぞれニッケル及び銀フラッシュでめっきし、一方で、実装面もスズはんだ層でめっきする。
【0043】
終端は、当該技術において公知の任意の技術を使用してキャパシタ素子に接続することができる。例えば一実施形態においては、陰極終端と陽極終端を画定するリードフレームを与えることができる。電解キャパシタ素子をリードフレームに取り付けるためには、まず導電性接着剤を陰極終端の表面に施すことができる。導電性接着剤には、例えば、樹脂組成物に含まれる導電性金属粒子を含ませることができる。金属粒子は、銀、銅、金、白金、ニッケル、亜鉛、ビスマスなどであってよい。樹脂組成物には、熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)、硬化剤(例えば酸無水物)、及び化合物(例えばシラン化合物)を含ませることができる。好適な導電性接着剤は、Osakoらの米国特許出願公開第2006/0038304号に記載されている。任意の種々の技術を使用して、導電性接着剤を陰極終端に施すことができる。例えば、それらの実用上及びコスト節約上の利益のために印刷技術を使用することができる。陽極リードも、機械的溶接、レーザー溶接、導電性接着剤などのような当該技術において公知の任意の技術を使用して陽極終端に電気的に接続することができる。陽極リードを陽極終端に電気的に接続したら、次に導電性接着剤を硬化させ、電解キャパシタ素子が陰極終端へ適切に接着することを確実にすることができる。
【0044】
例えば再び図1を参照すると、キャパシタ素子33と電気的に接続している陽極終端62及び陰極終端72を含むものとして電解キャパシタ30が示される。電解キャパシタ30をキャパシタ素子33の表面のいずれかと電気的に接触させることができるが、示される実施形態における陰極終端72は導電性接着剤90を介して下面39と電気的に接触している。より具体的には、陰極終端72は、キャパシタ素子33の下面39と電気的に接触しており下面39と概して平行である第1の部品73を含む。陽極終端62は同様に、第2の部品64と実質的に垂直に配置された第1の部品63を含む。第1の部品63は、キャパシタ素子33の下面39と電気的に接触しており下面39と概して平行である。第2の部品64は、陽極リード16を保持する領域51を含む。図1には図示されないが、領域51は、リード16の表面接触及び機械的安定性を更に増大させるための「U字形」を有することができる。
【0045】
終端は、当該技術において公知の任意の技術を使用してキャパシタ素子に接続することができる。例えば一実施形態においては、陰極終端72と陽極終端62を画定するリードフレームを与えることができる。電解キャパシタ素子33をリードフレームに取り付けるためには、まず導電性接着剤90を陰極終端72の表面に施すことができる。導電性接着剤90は、例えば、樹脂組成物に含まれる導電性金属粒子を含ませることができる。金属粒子は、銀、銅、金、白金、ニッケル、亜鉛、ビスマスなどであってよい。樹脂組成物には、熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)、硬化剤(例えば酸無水物)、及びカップリング剤(例えばシランカップリング剤)を含ませることができる。好適な導電性接着剤は、Osakoらの米国特許公開第2006/0038304号に記載されている。任意の種々の技術を使用して導電性接着剤を陰極終端72に施すことができる。例えば、それらの実用上及びコスト節約上の利益のために印刷技術を使用することができる。
【0046】
終端をキャパシタへ取り付けるのに種々の方法が一般に使用され得る。一実施形態においては、例えば、陽極終端62の第2の部品64を最初に図1に示される位置まで上方に曲げる。その後、下面39が接着剤90と接触し陽極リード16が領域51に受け入れられるように、キャパシタ素子33を陰極終端72の上に配置する。所望の場合には、陽極及び陰極終端を電気的に絶縁させるために、プラスチックパッド又はテープのような絶縁材料(図示せず)をキャパシタ素子33の下面39と陽極終端62の第1の部品63との間に配置してよい。
【0047】
次に陽極リード16を、機械的溶接、レーザー溶接、導電性接着剤などのような当該技術において公知の任意の技術を使用して領域51に電気的に接続させる。例えば、レーザーを使用して陽極リード16を陽極終端62に溶接することができる。レーザーは一般に、誘導放出とレーザー媒質の元素を励起させるエネルギー源とによって光子を放出することが可能なレーザー媒質を含む、共振器を含む。1つの種類の好適なレーザーは、レーザー媒質がネオジム(Nd)をドープしたアルミニウム及びイットリウムガーネット(YAG)から成るものである。励起される粒子はネオジムイオンNd3+である。エネルギー源は、連続レーザービームを発光するレーザー媒質又はパルスレーザービームを発光するエネルギー放出へ連続エネルギーを供給することができる。陽極リード16を陽極終端62に電気的に接続したら、次に導電性接着剤を硬化させてよい。例えば、接着剤により電解キャパシタ素子33が陰極終端72へ適切に接着することを確実にするために、熱プレスを使用して熱及び圧力を加えることができる。
【0048】
III.ケーシング
陽極及び陰極終端の少なくとも一部が回路基板上に実装するために露出されるように、キャパシタ素子は一般にケーシング内に封入される。図1に示すように、例えば、キャパシタ素子33は、陽極終端62の一部及び陰極終端72の一部が露出されるように、ケーシング92内に封入される。ケーシングは通常は熱硬化性樹脂から形成される。かかる樹脂の例としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂が特に好適である。光開始剤、粘度調整剤、懸濁補助剤、顔料、応力低減剤、非導電性フィラー、安定剤などのような、更に他の添加剤も使用することができる。例えば、非導電性フィラーとしては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化銅、ゼオライト、ケイ酸塩、粘土(例えば、スメクタイト粘土)などのような無機酸化物粒子、並びに複合材料(例えば、アルミナ被覆シリカ粒子)、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【実施例
【0049】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより良く理解することができる。
【0050】
試験手順
ブレークダウン電圧
ブレークダウン電圧を、Keithley 2400 SourceMeterを使用して23℃+2℃の温度で測定した。個々のキャパシタに式:
電流(A)=公称のキャパシタンス(F)×dU/dt
により求められる定電流を流し、ここでdU/dtは通常は10V/sに設定される電圧勾配を表す。電圧は充電中に測定され、印加電圧が10%を超えて低下したときに、最大の到達する電圧値がブレークダウン電圧として記録される。
【0051】
等価直列抵抗(ESR)
等価直列抵抗は、Kelvinリードを備えたHP4284A LCRメーターを用い、0ボルトのDCバイアス及び10mVAC信号を用いて測定することができる。動作周波数は100kHzであり、温度は23℃+2℃であった。
【0052】
損失係数
損失係数は、Kelvinリードを備えたLCZHP4284A LCRメーターを用い、0ボルトのDCバイアス及び10mVAC信号を用いて測定することができる。動作周波数は120Hzであってよく、温度は23℃±2℃であってよい。
【0053】
キャパシタンス
2.2ボルトのDCバイアス及び0.5ボルトのピーク・ツー・ピーク正弦波信号を使用し、Kelvinリードを備えたKeithley 3330精密LCZメーターを使用してキャパシタンスを測定した。動作周波数は120Hzとし、温度は23℃±2℃であってよい。
【0054】
リーク電流
リーク電流は、最小で60秒(例えば、60秒又は300秒)後に、充電電流を制限するための1キロオームの抵抗器を用い、定格電圧において、23℃±2℃の温度でリーク試験計(YHP4140B)を使用して測定することができる。
【0055】
寿命試験
寿命試験は、85℃の温度及び1.0×定格電圧の倍数において500時間行うことができる。試験群の寸法は通常は12試料である。寿命試験中及び寿命試験後、エージングされた(aged)試料を室温で約60分かけて回復させることができる。「回復後」DCLを次に23℃+2℃の温度で定格電圧において約60秒間測定することができる。中間の「回復後」DCLの測定の時間は通常は120時間である。
【0056】
実施例1
100,000μFV/gのタンタル粉末を使用して、陽極試料を形成した。それぞれの陽極試料を6.0g/cmの密度にプレスし、1275℃で焼結した。焼結に続いて、860℃での脱酸プロセス、リード線の溶接、及び1275℃で行われる第2の焼結プロセスを行った。得られるペレットは1.19×1.68×0.95mmの寸法を有していた。ペレットを、85℃の温度において7.3mSの導電率を有する水/硝酸電解質中で36.8ボルトに陽極酸化して、誘電体層を形成した。次に陽極を硝酸マンガン(II)の水溶液(1190kg/m)中に180秒浸漬し、次に250℃で分解した。このステップを9回繰り返した。その後、陽極を硝酸マンガン(II)の水溶液(1300kg/m)中に浸漬し、次に250℃で分解してMnO陰極を得た。最後に、次に陽極をグラファイト分散液及び銀分散液中に順次浸漬し、乾燥させた。完成したキャパシタ素子を従来の組立技術により仕上げた。このようにして22μF/16Vキャパシタの多数の部品(500)を作製した。
【0057】
実施例2
第1の焼結プロセスを飛ばし脱酸プロセス温度を960℃としたことを除いて、実施例1に記載した方法でキャパシタを形成した。このようにして22μF/16Vキャパシタの多数の部品(500)を作製した。
【0058】
実施例3
150,000μFV/gのタンタル粉末を使用したことを除いて、実施例2に記載した方法でキャパシタを形成した。ペレットを40ボルトに陽極酸化した。このようにして22μF/16Vキャパシタの多数の部品(500)を作製した。
【0059】
実施例4
200,000μFV/gのタンタル粉末を使用し、陽極を1225℃で焼結したことを除いて、実施例2に記載した方法でキャパシタを形成した。ペレットを40ボルトに陽極酸化した。このようにして22μF/16Vキャパシタの多数の部品(500)を作製した。
【0060】
完成したキャパシタ及び寿命試験後の平均リーク電流特性を測定した。結果を下記に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
本発明のこれら及び他の修正及び変更は、当業者によって、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者によって実施することができる。更に、種々の実施形態の複数の態様は、全体的又は部分的の両方で交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、上記の記載はほんの一例にすぎず、添付の特許請求の範囲において更に記載される発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。
図1
【手続補正書】
【提出日】2022-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャパシタ素子を含む固体電解キャパシタであって、前記キャパシタ素子が、約35,000μF・V/g以上の比電荷を有する粉末から形成された、脱酸及び焼結した陽極体、前記陽極体の上に配されている誘電体、並びに前記誘電体の上に配されている固体電解質を含み、前記キャパシタが、下記の式:
正規化エージドリーク電流=100×(エージドDCL/CV)
(式中、
エージドDCLは、前記キャパシタに85℃の温度及び定格電圧で120時間の寿命試験を行い、次に約23℃の温度で60分かけて回復させた後に、約23℃の温度及び定格電圧で約60秒間測定されるリーク電流であり、
Cは、約23℃の温度及び120Hzの動作周波数で求められる初期キャパシタンス(ファラド)であり、
Vは定格電圧(ボルト)である)
に従って求められる、約0.1%以下の正規化エージドリーク電流を示す、前記固体電解キャパシタ。
【請求項2】
前記エージドDCLが約0.5μA以下である、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項3】
前記エージドDCLが約0.25μA以下である、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項4】
前記正規化エージドリーク電流が約0.0075%以下である、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項5】
前記陽極体がタンタルを含み、前記誘電体が五酸化タンタルを含む、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項6】
前記固体が二酸化マンガンを含む、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項7】
前記陽極体と電気的に接続している陽極終端;
前記固体電解質と電気的に接続している陰極終端;並びに
前記キャパシタ素子を収容し前記陽極終端及び前記陰極終端の少なくとも一部を露出させたままにするハウジング
を更に含む、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項8】
前記ハウジングが前記キャパシタ素子を封入する樹脂性材料から形成されている、請求項7に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項9】
前記粉末が約100,000~約300,000μF・V/gの比電荷を有する、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項10】
固体電解キャパシタを形成する方法であって、
約35,000μF・V/g以上の比電荷を有する粉末を圧縮して多孔質陽極体とするステップ、前記多孔質陽極体に脱酸プロセスを施して脱酸陽極体を形成するステップ、及び前記脱酸陽極体を焼結するステップを含むプロセスにより陽極を形成するステップと;
脱酸及び焼結した前記陽極体を陽極酸化して前記陽極体の上に配されている誘電体を形成するステップと;
前記誘電体の上に配されている固体電解質を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項11】
陽極リード線が前記多孔質陽極体に接続されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記脱酸プロセスが、前記多孔質陽極体をゲッター材料の入った筐体内に挿入することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記筐体の雰囲気を約700℃~約1,200℃の温度に加熱するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
焼結するステップが約700℃~約1,600℃の温度で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記脱酸プロセスの前に前記多孔質陽極体を予備焼結するステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記粉末がタンタルを含み、前記誘電体が五酸化タンタルを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記キャパシタが、下記の式:
正規化エージドリーク電流=100×(エージドDCL/CV)
(式中、
エージドDCLは、前記キャパシタに85℃の温度及び定格電圧で120時間の寿命試験を行い、次に約23℃の温度で60分かけて回復させた後に、約23℃の温度及び定格電圧で約60秒間測定されるリーク電流であり、
Cは、約23℃の温度及び120Hzの動作周波数で求められる初期キャパシタンス(ファラド)であり、
Vは定格電圧(ボルト)である)
に従って求められる、約0.1%以下の正規化エージドリーク電流を示す、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記エージドDCLが約0.5μA以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記エージドDCLが約0.25μA以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記正規化エージドリーク電流が約0.0075%以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記粉末が約100,000~約300,000μF・V/gの比電荷を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項22】
前記固体電解質が二酸化マンガンを含む、請求項10に記載の方法。
【国際調査報告】