(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-05
(54)【発明の名称】高度に充填された熱硬化性材料からバイポーラプレートなどの成形部品を製造するための多段加圧プロセス
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0213 20160101AFI20230928BHJP
B30B 11/02 20060101ALI20230928BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230928BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20230928BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230928BHJP
B29C 43/02 20060101ALI20230928BHJP
B29C 43/14 20060101ALI20230928BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230928BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20230928BHJP
【FI】
H01M8/0213
B30B11/02 A
C08K3/013
C08K5/3445
C08L101/00
B29C43/02
B29C43/14
C08K3/04
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512784
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2020078489
(87)【国際公開番号】W WO2022037799
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】102020121997.0
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523060943
【氏名又は名称】シュンク コーレンシュトッフテクニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】リン, グンター
(72)【発明者】
【氏名】フーアマン, ハウケ
(72)【発明者】
【氏名】バウマン, スーレン
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥンタス, メズート
【テーマコード(参考)】
4F204
4J002
5H126
【Fターム(参考)】
4F204AA36
4F204AB18
4F204AH33
4F204AR06
4F204AR15
4F204FA01
4F204FA18
4F204FB01
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
4J002AA021
4J002AE033
4J002CC032
4J002CD061
4J002DA026
4J002EU117
4J002FD016
4J002FD142
4J002FD163
4J002FD207
4J002GM00
4J002GQ02
5H126AA12
5H126BB06
5H126GG06
5H126GG17
5H126HH01
5H126HH02
5H126JJ05
5H126JJ08
5H126JJ10
(57)【要約】
高度に充填された熱硬化性出発材料(106)から成形部品(110)を製造するプロセスが説明され、プロセスは次のステップ、すなわち、出発材料(106)を予備加圧ツール(102)に導入するステップと、出発材料(106)からプリフォーム(104)を製造するステップであって、出発材料(106)が、予備加圧ツール(102)によって予備加圧温度にされ、予備加圧力で圧縮されてプリフォーム(104)を形成する、ステップと、予備加圧ツール(102)からプリフォーム(104)を取り外し、プリフォーム(104)を仕上げ加圧ツール(108)に導入するステップと、プリフォーム(104)から完成部品(110)を製造するステップであって、プリフォーム(104)が、仕上げ加圧ツール(108)によって仕上げ加圧温度にされ、仕上げ加圧力で圧縮されて完成部品(110)を形成する、ステップと、を含む。ここで、予備加圧温度は、仕上げ加圧温度より低く、仕上げ加圧温度は、出発材料(106)の硬化反応の開始温度と少なくとも同じくらい高い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高度に充填された熱硬化性出発材料(106)から成形部品(110)を製造するプロセスであって、
前記出発材料(106)を予備加圧ツール(102)に導入するステップと、
前記出発材料(106)からプリフォーム(104)を製造するステップであって、前記出発材料(106)が、前記予備加圧ツール(102)によって予備加圧温度にされ、予備加圧力で圧縮されて前記プリフォーム(104)を形成する、ステップと、
前記予備加圧ツール(102)から前記プリフォーム(104)を取り外し、前記プリフォーム(104)を仕上げ加圧ツール(108)に導入するステップと、
前記プリフォーム(104)から完成部品(110)を製造するステップであって、前記プリフォーム(104)が、前記仕上げ加圧ツール(108)によって仕上げ加圧温度にされ、仕上げ加圧力で圧縮されて前記完成部品(110)を形成する、ステップと、を含み、
前記予備加圧温度は、前記仕上げ加圧温度より低く、
前記仕上げ加圧温度は、前記出発材料(106)の硬化反応の開始温度と少なくとも同じくらい高い、プロセス。
【請求項2】
前記予備加圧温度が、前記開始温度より低い、
請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記仕上げ加圧温度が、少なくとも170℃、好ましくは少なくとも190℃である、
請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記予備加圧温度が、最大でも150℃、好ましくは最大でも120℃である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記プリフォーム(104)が、最大でも10秒間、好ましくは最大でも5秒間、前記仕上げ加圧力を受ける、
請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記出発材料(106)が、充填剤としてグラファイトを含有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記出発材料(106)が、結合剤と、前記結合剤の硬化触媒としてのアルキルイミダゾールとを含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記出発材料(106)が、ドクタリングによって前記予備加圧ツール(102)に導入される、
請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記プリフォーム(104)の密度が、前記完成部品(110)の密度の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%である、
請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記出発材料(106)が、前記プリフォーム(104)を製造するために繰り返し圧縮および脱気される、
請求項1から9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記予備加圧力が、前記プリフォーム(104)の製造中に変化する、
請求項1から10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記仕上げ加圧力が、前記完成部品(110)の製造中に変化する、
請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセスで高度に充填された熱硬化性出発材料(106)から成形部品(110)を製造するための加圧装置(100)であって、
前記出発材料(106)から前記プリフォーム(104)を製造するための予備加圧ツール(102)であって、前記予備加圧ツール(102)が、前記出発材料(106)を前記予備加圧温度にし、それを前記予備加圧力で圧縮して前記プリフォーム(104)を形成するように構成された予備加圧ツール(102)と、
前記プリフォーム(104)から前記完成部品(110)を製造するための仕上げ加圧ツール(108)であって、前記仕上げ加圧ツール(108)が、前記プリフォーム(104)を前記仕上げ加圧温度にし、それを前記仕上げ加圧力で圧縮して前記完成部品(110)を形成するように構成された、仕上げ加圧ツール(108)と、を備える、加圧装置(100)。
【請求項14】
前記予備加圧ツール(102)から前記プリフォーム(104)を取り外し、それを前記仕上げ加圧ツール(108)に挿入するように構成された加熱可能な把持装置(112)をさらに備える、
請求項13に記載の加圧装置(100)。
【請求項15】
前記予備加圧ツール(102)および前記仕上げ加圧ツール(108)が、異なるツール形状を有する、
請求項13または14に記載の加圧装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度に充填された熱硬化性出発材料から成形部品を製造するプロセスに関する。例えば、このプロセスを使用して、燃料電池に使用されるようなグラファイト充填バイポーラプレートを製造することができる。本発明はさらに、プロセスを実行するのに適した対応する加圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性材料から作られた成形部品は、プラスチック技術で使用される典型的な成形プロセスを使用して製造することができ、このプロセスでは、材料が溶融状態になり、加熱された金型に導入され、次いで圧力および温度下で硬化する。
【0003】
成形化合物が充填度が高いために流動性が低いだけである場合、射出成形、トランスファー成形または射出スタンピングなどの一般的な成形プロセスを使用することができなくなる可能性がある。これは、典型的には、その特性が、良好な導電率を有する摺動材料、摩擦ライニング、研削ディスクまたはポリマー結合材料などの充填剤の種類および体積分率によって大きく規定される材料に適用される。
【0004】
これらの用途のために、充填剤、熱硬化性ポリマー、および粉末もしくは粒状形態における他の添加剤の混合物は、通常、加熱された圧縮金型に直接計量供給され、金型は閉じられ、材料は予備圧縮され、脱気され、最終的に圧縮され、硬化される。このプロセスで使用される加圧プログラムの具体的な配合物、金型温度、および力-変位-時間プロファイルは、サイクル時間だけではなく、材料特性も大きく規定する。
【0005】
高度に充填された熱硬化性材料の特別な形態は、高分子膜燃料電池用のバイポーラプレートの製造に使用される。グラファイト充填ポリマーは、酸性、高温および湿潤条件下での耐食性のために、これらの用途において金属材料よりも優れている。しかしながら、必要な導電率は、80~90質量%の非常に高い充填材含有量でのみ達成され、これは配合物成分および加圧条件の正確な調整によってのみ可能である。
【0006】
典型的な配合物およびプロセスの説明は、20年以上にわたって科学刊行物および特許文献に公開されている。典型的な例は、欧州特許出願公開第3528326号明細書に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3528326号明細書
【発明の概要】
【0008】
高度に充填された熱硬化性成形化合物から比較的短いサイクル時間で成形部品、特にグラファイトバイポーラプレートを経済的に(大量に)製造することを可能にする、高度に充填された熱硬化性出発材料から成形部品を製造するためのプロセスが必要とされ得る。また、このようなプロセスを行うために加圧装置が必要となる場合がある。
【0009】
そのような必要性は、独立請求項の主題によって満たされ得る。有利な実施形態は、従属請求項および以下の説明において定義される。
【0010】
本発明の第1の態様は、高度に充填された熱硬化性出発材料から成形部品を製造するプロセスに関する。このプロセスは、好ましくは指定された順序で実行され得る次のステップ、すなわち、予備加圧ツールに出発材料を導入するステップと、出発材料からプリフォームを製造するステップであって、出発材料が、予備加圧ツールによって予備加圧温度にされ、プリフォームを形成するために予備加圧力で圧縮される、ステップと、プリフォームを予備加圧ツールから取り外し、プリフォームを仕上げ加圧ツールに導入するステップと、プリフォームから完成部品を製造するステップであって、プリフォームが、仕上げ加圧ツールによって仕上げ加圧温度にされ、仕上げ加圧力で圧縮されて完成部品を形成する、ステップと、を含む。ここで、予備加圧温度は、仕上げ加圧温度より低く、仕上げ加圧温度は、出発材料の硬化反応の開始温度と少なくとも同じくらい高い。より具体的には、仕上げ加圧温度は、出発材料中の結合剤の硬化反応の開始温度と少なくとも同じくらい高くてもよい。
【0011】
出発材料は、粉末および/または粒状のプレ材料であってもよい。出発材料は、例えば、充填剤としてグラファイトまたは他の主に炭素含有化合物を含有してもよい。しかしながら、他の種類の充填剤を含む出発材料も可能である。これに関連して、「高度に充填された」は、例えば、少なくとも70質量%の充填剤含有量を意味すると理解され得る。特に、出発材料は、少なくとも80質量%またはさらには少なくとも90質量%の充填剤含有量を有し得る。充填剤に加えて、出発材料は、例えばエポキシ化クレゾール-ノボラック型のエポキシ樹脂、例えばノボラックフェノール樹脂の硬化剤、および例えばアリールイミダゾールまたはアルキルイミダゾールの群からの硬化触媒、および例えばワックスの離型剤、からなる結合剤系を含有してもよい。
【0012】
例えば、典型的な配合物は、例えば、約84%のグラファイト、樹脂として10%のエポキシ化クレゾールノボラック、硬化剤として5%のノボラックフェノール樹脂、離型剤として1%のワックス、および硬化触媒として0.1%の2-メチルイミダゾールを含み得る。
【0013】
組成物に応じて、出発材料は、出発材料の化学架橋が始まる、すなわち硬化反応が開始される特定の開始温度を有し得る。開始温度は、特に、出発材料に含有される任意の硬化触媒に依存し得る。開始温度は、例えば、示差走査熱量測定によって実験的に決定されていてもよい。
【0014】
予備加圧ツールまたは仕上げ加圧ツールは、一般に、圧力および熱の作用下で成形部品を製造するための加熱可能な2部品または複数部品の圧縮金型を意味すると理解することができる。予備加圧ツールおよび仕上げ加圧ツールは、異なる製造ステーションに配置されてもよく、すなわち互いに局所的に分離されてもよい。また、予備加圧ツールおよび仕上げ加圧ツールは、それらの金型容積および/またはダイの形状が異なっていてもよい(以下を参照)。
【0015】
予備加圧ツールを使用して、出発材料をプリフォームに形成することができる。予備加圧温度は、プリフォームの良好な圧縮を達成するために、結合剤の軟化範囲内でなければならない。好ましくは、全表面真空グリッパは、プリフォームを仕上げ加圧ツールに移送するために使用されてもよく、これは、例えば、移送中の冷却を防止するために、またはプリフォームの温度をさらに上昇させるために加熱可能であってもよい。予備加圧温度に応じて、プリフォームの製造中に出発材料の化学架橋が既に開始している可能性がある。しかしながら、予備加圧温度は、予備圧縮中の化学架橋が少なくとも大部分防止され、および/または大幅に減速されるように選択されるべきである。次いで、プリフォームの結合は、主に物理的結合力によって影響を受ける。
【0016】
予備加圧ツールへの出発材料の導入は、手動、部分的に自動化、または完全に自動化することができる。同様に、予備加圧ツールからのプリフォームの取り外しおよび/または仕上げ加圧ツールへのプリフォームの挿入は、手動、部分的に自動化、または完全に自動化することができる(以下を参照)。
【0017】
予備加圧温度または予備加圧力などの予備圧縮パラメータと、仕上げ加圧温度または仕上げ加圧力などの最終圧縮パラメータとは、少なくとも部分的に互いに著しく異なっていてもよい。特に、仕上げ加圧温度は、仕上げ中の可能な限り速い硬化を達成するために、予備加圧温度より著しく高くなければならない。同時に、上記の理由から、予備加圧温度を高くしすぎてはならない。同様に、予備加圧力と仕上げ加圧力とが異なっていてもよい。例えば、プリフォームを製造するとき、完成部品を製造するときとは異なる加圧プログラムを使用することができる。加圧プログラムは、例えば、力-変位-時間プロファイルに関して互いに異なっていてもよい。
【0018】
成形は、例えば、185℃、加圧力37MPa、保持時間10秒以下で加圧することで行うことができる。この加圧時間の後、プレートなどの完成部品は、変形することなくダイから取り外され得る。次いで、最終硬化は、例えば、残留反応性および温度に適合した期間にわたり150℃~200℃で後硬化することによって達成され得る。成形プロセスの後に、例えばバリ取りおよび/または開口部の開放、接触抵抗の低減および/または濡れ角度の低減のための追加の後処理ステップを行うことができる。
【0019】
粉末または粒状の予備材料から熱硬化性材料を形成する場合、予備加熱、予備圧縮および脱気のステップには一定の時間が必要である。同時に、サイクル時間は、経済的な製造、特に大量の部品の製造のために、可能な限り短くすべきである。
【0020】
例えば150℃の温度、または一般に硬化開始温度よりわずかに高い温度での成形は、良好な脱気および圧縮を可能にする。しかしながら、必要な加圧時間は、数分の範囲内であり得る。
【0021】
硬化温度が上昇すると、予備加熱、予備圧縮および脱気のための時間窓(time window)がそれに応じて狭くなり得る。したがって、これは、特定の品質要件が満たされないリスクを増加させ得る。例えば、不十分な脱気に起因して気泡または収縮キャビティが形成され得るか、または自発的に開始される硬化反応に起因して不十分な圧縮が起こり得る。
【0022】
上述の欧州特許出願公開第3528326号明細書には、10秒未満の加圧時間は、いくつかのパラメータを組み合わせることによってのみ可能であることが記載されている。グラファイトを加圧乾燥する際に、中央値d50粒径が30μm~100μmであり、スプリングバック特性が20%~70%のグラファイトをこの目的のために使用することが記載されている。ここで、より高いスプリングバックは、不十分に圧縮されたプレートをもたらし、より低いスプリングバックは、低い曲げ強度を有する材料をもたらすと述べられている。また、硬化触媒としては、アリールイミダゾールが想定される。はるかに反応性の高いアルキルイミダゾール、特に2-メチルイミダゾールの使用は、均一な圧縮がもはや不可能であるため、この文脈では明示的に除外される。
【0023】
したがって、本明細書に提示される本発明の1つの目的は、比較的短いサイクル時間で、高度に充填された熱硬化性成形化合物からの成形部品、特にグラファイトバイポーラプレートの経済的な(大量の)製造を可能にすることである。本明細書に提示される本発明の別の目的は、原材料の選択に関して前述の制限なしにそのような製造を可能にすることである。
【0024】
本発明によれば、これらの目的は、以下でより詳細に説明するように、複数のキャビティ内で成形部品を製造することによって達成される。
【0025】
高度に充填された熱硬化性材料からの成形部品、特に燃料電池用のグラファイトバイポーラプレートの合理的な製造のための本明細書に記載のプロセスの実施形態によって提供される利点の1つは、例えば、出発材料の予備加熱、予備圧縮および脱気のステップが、硬化ステップから少なくとも大きく切り離され得ることである。換言すれば、予備加熱、予備圧縮および脱気のための時間窓がそれに応じて狭くなることなく、硬化温度を上昇させることができる。したがって、これは、特定の品質要件が満たされないリスクを低減し得る。例えば、これは、不十分な脱気に起因する気泡または収縮キャビティの形成、または自発的に開始される硬化反応に起因する不十分な圧縮を防止することができる。さらに、このようなプロセスは、原材料の選択に関して上述した制限なしに、高度に充填された熱硬化性材料から成形部品を製造することを可能にする。特に、これにより、硬化中の圧力保持時間を10秒以下に短縮することができる。
【0026】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様による実施形態によるプロセスにおいて、高度に充填された熱硬化性出発材料から成形部品を製造するための加圧装置に関する。加圧装置は、出発材料からプリフォームを製造するための予備加圧ツールを備える。予備加圧ツールは、出発材料を予備加圧温度にし、それを予備加圧力で圧縮してプリフォームを形成するように設計される。加圧装置は、プリフォームから完成部品を製造するための仕上げ加圧ツールをさらに備える。仕上げ加圧ツールは、プリフォームを仕上げ加圧温度にし、それを仕上げ加圧力で圧縮して完成部品を形成するように構成される。
【0027】
このような加圧装置により、燃料電池用バイポーラプレートなどの成形部品を効率よく大量生産することができる。同時に、非常に高い生産品質が、このような加圧装置によって達成され得る。
【0028】
本発明の範囲を決して限定するものではないが、本発明の実施形態に関する考えおよび可能な特徴は、とりわけ、以下に記載される考えおよび知見に基づいていると考えられ得る。
【0029】
一実施形態によれば、予備加圧温度は開始温度より低い。例えば、予備加圧温度は、開始温度より少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃、またはさらには少なくとも20℃低くてもよい。これにより、出発材料の化学架橋を開始することなく出発材料を圧縮することができる。したがって、例えば、出発材料の予備加熱、予備圧縮および脱気のステップは、出発材料を硬化させるステップとは無関係に行われ得る。
【0030】
一実施形態によれば、仕上げ加圧温度は、少なくとも170℃、好ましくは少なくとも190℃である。換言すれば、仕上げ加圧温度は、開始温度より著しく高くてもよい。これは、品質を損なうことなく完成部品の硬化を大幅にスピードアップする効果を有する。したがって、例えば、10秒未満の圧力保持時間を達成することができる。
【0031】
一実施形態によれば、予備加圧温度は、最大でも150℃、好ましくは最大でも120℃である。これは、予備加熱、予備圧縮および脱気中の硬化を大幅に減速させるか、または完全に防止することさえできる。したがって、サイクル時間を不釣り合いに延長することなく、良好な予備圧縮および良好な脱気を確実にすることができる。仕上げ加圧温度によっては、従来の加圧プロセスと比較してサイクル時間が短縮さえされ得る。
【0032】
一実施形態によれば、プリフォームは、最大でも10秒間、好ましくは最大でも5秒間仕上げ加圧力を受ける。これにより、比較的短いサイクル時間を達成することができる。
【0033】
一実施形態によれば、出発材料は、充填剤としてグラファイトを含有する。これは、このプロセスが、例えば、バイポーラプレートなどの効率的な(大量の)製造のために使用され得ることを意味する。
【0034】
一実施形態によれば、出発材料は、結合剤と、結合剤の硬化触媒としてアルキルイミダゾールとを含有する。結合剤は、例えば、エポキシ結合剤であってもよい。これは、アルキルイミダゾールを含まない出発材料、例えば2-フェニルイミダゾールなどのアリールイミダゾールを結合剤として含有する出発材料と比較して、硬化を有意に促進し得る。
【0035】
一実施形態によれば、出発材料は、硬化触媒として2-メチルイミダゾールを含有する。これは、2-メチルイミダゾールを含まない出発材料、例えばアリールイミダゾールまたは他のアルキルイミダゾールを結合剤として含有する出発材料と比較して、硬化を有意に促進し得る。特に、完成部品が仕上げ加圧ツールから取り外される前に硬化が既に完了するように、硬化を促進速することができる。これにより、完成部品の熱による後処理の必要がなくなる。
【0036】
一実施形態によれば、出発材料は、ドクタリングによって予備加圧ツールに導入される。注入または他の挿入方法と比較して、これは、予備加圧ツール内の出発材料のより均一な分布を達成することができる。
【0037】
例えば、予備加圧ツールは、上部ダイおよび下部ダイを含むことができ、これらはそれぞれ、縁部、シール、流れ分配器およびチャネル領域などの異なる副表面上の充填量がこれらの副表面上のそれぞれの材料要件に対応するように小さなオフセットで構成される。これは、プリフォーム上でも均一な予備圧縮が達成され得ることを意味する。これは、例えばバイポーラプレートの形態の完成部品の望ましくない密度および/または厚さの変動を回避することができることを意味する。さらに、完成部品の製造中に必要な加圧力を低減することができる。
【0038】
一実施形態によれば、プリフォームの密度は、完成部品の密度の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%である。このようにプリフォームを予備加圧することは、それに応じてより高い仕上げ加圧温度を選択することができることを意味する。換言すれば、仕上げ加圧ツールにおける硬化は、それに応じてより高い硬化温度で、したがってそれに応じてより速く行われ得る。
【0039】
一実施形態によれば、出発材料は、プリフォームを製造するために繰り返し圧縮および脱気される。この目的のために、例えば、予備加圧ツールの上部加圧ダイを一定の力または増加する力でプリフォーム上に配置し、次いで再びわずかに持ち上げることができる。
【0040】
一実施形態によれば、予備加圧力は、プリフォームの製造中に変化する。例えば、予備加圧力は、所定の予備加圧力-変位-時間プロファイルに従って変化させることができる。
【0041】
一実施形態によれば、仕上げ加圧力は、完成部品の製造中に変化する。例えば、仕上げ加圧力は、所定の仕上げ加圧力-変位-時間プロファイルに従って変化させることができる。好ましくは、仕上げ加圧力は、成形化合物またはプリフォームの塑性流動を達成するために、最初に非常に迅速に最大値まで増大されてもよい。わずか1秒~2秒後、または結合剤の硬化反応が始まるとすぐに、加圧力を再び著しく減少させることができる。
【0042】
一実施形態によれば、加圧装置は、予備加圧ツールからプリフォームを取り外し、それを仕上げ加圧ツールに挿入するように構成された加熱可能な把持装置を備える。把持装置は、例えば、把持ロボット、把持アームなどであってもよい。把持装置は、プリフォームを半自動または完全自動で移送するために使用されてもよい。この種の自動移送は、予備加圧と仕上げ加圧との間に比較的短い時間しか経過しないという利点を有し、その結果、サイクル時間を全体的に可能な限り短く保つことができる。適切な把持装置の助けを借りて、移送の持続時間を例えば2秒以下に短縮することができる。
【0043】
一実施形態によれば、予備加圧ツールおよび仕上げ加圧ツールは、異なるツール形状を有する。例えば、仕上げ加圧ツールは、完成部品の最終的な形状を複製するツール形状を有することができ、一方、予備加圧ツールは、この最終的な形状から多かれ少なかれ逸脱するツール形状を有することができる。例えば、最終的な形状は、チャネル構造などの比較的繊細な構造を複製することができる。対照的に、予備加圧ツールは、一般に、はるかに近似した、例えばより平坦な形状であってもよい。換言すれば、プリフォームおよび完成部品は、異なる寸法を有することができる。プリフォームおよび完成部品はまた、それらの密度に関しても異なり得る。
【0044】
本発明の実施形態の可能な特徴および利点は、高度に充填された熱硬化性出発材料から成形部品を製造するためのプロセスを参照して部分的に説明され、そのようなプロセスを実行することができる加圧装置を参照して部分的に説明されることが指摘される。当業者であれば、個々の実施形態について記載された特徴は、本発明のさらなる実施形態および場合によっては相乗効果に到達するために、他の実施形態に類似かつ適切な方法で移送、適合および/または交換され得ることを認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明の有利な実施形態は、添付の図面を参照して以下でさらに説明され、図面も説明も決して本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【
図1】本発明の一実施形態による加圧装置の概略図を示す。
【
図2】
図1の加圧装置の予備加圧ツールの開状態の概略図を示す。
【
図3】
図2の予備加圧ツールの閉状態の概略図を示す。
【
図4】
図1の加圧装置の仕上げ加圧ツールの、プリフォームが挿入された開状態の概略図を示す。
【
図5】
図4の仕上げ加圧ツールの、プリフォームからの完成部品の製造中の閉状態の概略図を示す。
【
図6】
図4の仕上げ加圧ツールの、完成部品を取り外す準備ができた開状態の概略図を示す。
【
図7】本発明の一実施形態による加圧プロセスのフローチャートを示す。 図面は単に概略的なものであり、縮尺通りではない。同一の参照番号は、様々な図面において同一または同一に作用する特徴を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、高度に充填された熱硬化性材料から成形部品を製造するための加圧装置100の概略図を示す。第一に、加圧装置100は、出発材料106からプリフォーム104を製造するための予備加圧ツール102を備える。予備加圧ツール102は、出発材料106を予備加圧温度にし、それを予備加圧力で圧縮してプリフォーム104を形成するように構成される。第二に、加圧装置100は、プリフォーム104から完成部品110を製造するための仕上げ加圧ツール108を備える。仕上げ加圧ツール108は、プリフォーム104を仕上げ加圧温度にし、それを仕上げ加圧力で圧縮して完成部品110を形成するように構成される。このプロセスにおいて、予備加圧温度は、仕上げ加圧温度より低い。さらに、仕上げ加圧温度は、出発材料106の硬化反応、より具体的には出発材料106中の結合剤の硬化反応の開始温度と少なくとも同じくらい高い。
【0047】
プリフォーム104の移送は、任意選択的に、開いた予備加圧ツール102からプリフォーム104を取り外し、それを開いた仕上げ加圧ツール108に挿入する把持装置112の助けを借りて実行されてもよい。
【0048】
図2は、開状態の予備加圧ツール102を示す。ここで、予備加圧ツール102は、成形型枠200と、予備加圧下部ダイ202と、予備加圧下部ダイ202に対向して配置された予備加圧上部ダイ204とを備える。開いたら、予備加圧上部ダイ204は成形型枠200から離される。成形型枠200および予備加圧下部ダイ202は、出発材料106または加圧材料106が粒状物の形態で充填される容器を画定する。
【0049】
図3は、例えば100℃での予備加圧中の閉状態の予備加圧ツール102を示す。このプロセスの間、容器は予備加圧上部ダイ204によって閉じられ、出発材料106は、適切な予備加圧力で成形型枠200、予備加圧下部ダイ202、および予備加圧上部ダイ204の間で圧縮されて、予備加圧されたプレートの形態のプリフォーム104を形成する。出発材料106を予備加圧温度にするために、予備加圧下部ダイ202および予備加圧上部ダイ204は加熱可能であってもよい。また、成形型枠200は加熱可能であってもよい。
【0050】
図2および
図3に示すように、予備加圧下部ダイ202および予備加圧上部ダイ204はそれぞれ、適切な外形の加圧面を有することができる。例えば、予備加圧下部ダイ202が隆起部300を有し、予備加圧上部ダイ204が凹部302を有してもよい。この点に関して、隆起部300の外側輪郭は、凹部302の内側輪郭に対応するように構成されてもよい。
【0051】
仕上げ加圧ツール108は、
図4から
図6により詳細に示されている。例えば、プリフォーム104は、加熱可能であってもよい把持装置112(
図1参照)によって、開いた予備加圧ツール102から自動的に取り外され、開いた仕上げ加圧ツール108に挿入されてもよい。
【0052】
予備加圧ツール102と同様に、仕上げ加圧ツール108は、別の成形型枠400と、仕上げ加圧ツール下部ダイ402と、仕上げ加圧ツール上部ダイ500とを備える(
図5参照)。例えば、仕上げ加圧ツール下部ダイ402および仕上げ加圧ツール上部ダイ500はそれぞれ、
図5に例として示されるように、溝状または溝付き加圧面などの特別に成形された加圧面を有することもできる。仕上げ加圧ツール下部ダイ402および仕上げ加圧ツール上部ダイ500のそれぞれの加圧面は、例えば、互いに相補的に成形されてもよい。
【0053】
予備加圧ツール102および仕上げ加圧ツール108は、異なるツール形状を有することが可能である。この例では、予備加圧ツール102と仕上げ加圧ツール108とは、それぞれの加圧面の構成が異なる。
【0054】
プリフォーム104を仕上げ加圧温度にするために、仕上げ加圧ツール下部ダイ402および仕上げ加圧ツール上部ダイ500は加熱可能であってもよい。追加の成形型枠400もまた、加熱可能であってもよい。
【0055】
図4は、プリフォーム104が挿入された開状態の仕上げ加圧ツール108を示す。
【0056】
図5は、完成部品110の製造中の閉状態の仕上げ加圧ツール108を示す。このプロセスは、例えば180℃の仕上げ加圧温度で、対応する仕上げ加圧力でプリフォーム104を圧縮して、完成部品110を形成することを含む。
【0057】
加圧面および選択された出発材料106の輪郭に沿って、完成部品110は、例えば、両側および周縁にチャネル構造を有するバイポーラプレートであってもよい。
【0058】
最後に、
図6に示すように、完成部品110が仕上げ加圧ツール108から排出される。
【0059】
図7は、
図1から
図6に示す加圧装置100によって実行され得るような加圧プロセスのフロー図を示す。
【0060】
ステップS10では、出発材料106が予備加圧ツール102に導入される。
【0061】
ステップS20では、出発材料106からプリフォーム104が製造される。これは、予備加圧ツール102によって、出発材料106を仕上げ加圧温度より低い予備加圧温度まで上昇させ、それを予備加圧力で圧縮してプリフォーム104を形成することを含む。
【0062】
ステップS30では、プリフォーム104は、予備加圧ツール102から取り外され、仕上げ加圧ツール108内に配置される。
【0063】
ステップS40では、プリフォーム104から完成部品110が製造される。このプロセスは、プリフォーム104を、仕上げ加圧ツール108によって出発材料106中の結合剤の硬化反応の開始温度と少なくとも同じ高さである仕上げ加圧温度まで上昇させ、それを仕上げ加圧力で圧縮して完成部品110を形成することを含む。
【0064】
本発明による解決策の鍵は、成形部品を加圧するための加圧プロセスを、連結された2ステーションプレスで2つのサブプロセスに分割することである。
【0065】
本発明は、燃料電池用のグラファイトバイポーラプレートなどのプレートの製造の例を使用して、
図1から
図6を参照して異なる用語で以下に再度説明される。しかしながら、本発明はまた、非プレートタイプの部品を製造するために使用されてもよい。
【0066】
一実施形態によれば、充填剤、結合剤成分、および添加剤を含むことができる粉末または粒状混合物の形態の出発材料106は、最初に予備加圧ステーション内の予備加圧ツール102に装填される。予備加圧ツール102は、出発材料106の硬化反応の開始温度より低い予備加圧温度に加熱されてもよい。これは、例えば2-メチルイミダゾールをエポキシ結合剤の硬化触媒として使用するような高反応性成形化合物であっても、硬化反応を開始することなく、良好な予備加熱、良好な脱気および良好な予備圧縮を達成することができることを意味する。しかしながら、出発材料の硬化が比較的遅いことが確実である限り、予備加圧温度が開始温度とほぼ同じであるか、または開始温度よりさらに高いことも可能である。
【0067】
一実施形態によれば、出発材料106は、開いた予備加圧ツール102にドクタリングされる。これは、厚さおよび密度の変動を低減する、予備加圧ツール内の特に均一な材料分布を確実にするのに役立つ。例えば、予備加圧ツール102は、オフセットを有する下部ツーリングプレートおよび上部ツーリングプレートを備えることができる(
図2および
図3の隆起部300および凹部302を参照)。ツーリングプレートを一緒にすることによって、出発材料106は、プリフォーム104内に形成され得る、すなわち予備圧縮され得る。これらのオフセットは、均一な予備圧縮の達成を可能にしながら、異なる表面関連材料の要件を考慮に入れることができるように設計することができる。
【0068】
あるいは、出発材料106を予備加圧ツール102に注入することも可能である。例えば、出発材料106は、予備加圧ツール102の異なる領域に注入されてもよい。予備加圧ツール102は、例えば、出発材料106を最終圧縮の約90%まで圧縮するために使用することができる。
【0069】
予備加熱、予備圧縮および/または脱気のステップは、予備加圧中に複数回繰り返されてもよい。換言すれば、予備加圧は、予備加圧の圧力を増加させながら2つまたは3つ以上の連続するサブステップで実行されてもよく、サブステップの各々は、予備加熱、予備圧縮および/または脱気のステップを含んでもよい(上記参照)。例えば、100℃の予備加圧温度では、2MPa、10MPa、30MPaの3段階で予備加圧の圧力を上昇させることができる。
【0070】
例えば、予備加圧温度は、70℃から140℃の間、好ましくは90℃から120℃の間であってもよい。
【0071】
予備加圧は、出発材料106の塑性圧縮が、いかなる競合する硬化反応もなく、またはせいぜい非常に遅い硬化反応のみで行われることを確実にすることができる。このようにして、粉末または粒状粒子間の良好に形成された粒界を達成することが可能であり、これは、完成した加圧成形プレートの形態の完成部品110の良好な機械的特性および低いガス透過性のための前提条件である。
【0072】
予備加圧の後、予備加圧ツール102とは別の仕上げ加圧ツール108を用いて、仕上げ加圧ステーションで仕上げ加圧が行われる。この目的のために、プリフォーム104、すなわち予備加圧され予備加熱されたプレートは、例えば加熱された把持装置112によって、予備加圧ステーションから仕上げ加圧ツールステーション、より正確には仕上げ加圧ツール108に移送される。
【0073】
例えば、把持装置112は、予備加圧温度および/または開始温度および/または仕上げ加圧ツール108の温度と同様の温度に加熱されてもよく、これは、把持装置112の把持面が、引用された温度プラス/マイナス、例えば20℃またはプラス/マイナス10℃のいずれかに調整され得ることを意味する。移送は比較的迅速に行われるべきである。特に、移送にかかる時間は2秒未満でなければならない。
【0074】
仕上げ加圧ツール108は、完成部品110の最終的な形状を製造する。仕上げ加圧ツール108および予備加圧ツール102は異なる形状であってもよい。例えば、予備加圧ツール102は、完成部品110の最終的な形状の近似バージョンを複製するのみでよい。
【0075】
仕上げ加圧ツール108は、非常に速い硬化反応を生じる仕上げ加圧温度まで、例えば少なくとも170℃まで、好ましくは少なくとも190℃まで加熱される。200℃以上の仕上げ加圧温度も考えられる。一般に、仕上げ加圧温度は、硬化温度を上昇させるとそれに応じて硬化時間が短縮されるので、出発材料106の硬化反応の開始温度より著しく高くなければならない。
【0076】
プリフォーム104の高い予備圧縮により、仕上げ加圧ツール108を比較的迅速に閉じることができ、それに応じて圧力を迅速に上昇させることができる。
【0077】
例えば、エポキシ樹脂の硬化触媒として2-メチルイミダゾールを使用し、170℃の仕上げ加圧温度を使用する場合、離型はわずか8秒から10秒の圧力保持時間の後に行われ得る。例えば、約190℃の仕上げ加圧温度では、5秒未満の圧力保持時間を達成することが可能である。
【0078】
予備加圧と同様に、仕上げ加圧温度、仕上げ加圧力、または圧力保持時間などの仕上げ加圧のパラメータは、仕上げ加圧中に変化させることができる。
【0079】
仕上げ加圧の後、仕上げ加圧ツール108を開いてもよく、完成した加圧成形プレートの形態の完成部品110を仕上げ加圧ツール108から取り外してもよい。これもまた、把持装置112によって、別の適切な把持装置によって、または手動で行うことができる。
【0080】
これに続いて、追加の熱処理を行ってもよい。使用される結合剤系の反応性に応じて、そのような後硬化は、本明細書に記載のプロセスで大幅に短縮され得る。非常に高い反応性の場合、例えば2-メチルイミダゾールが使用される場合、この場合、硬化は最終加圧後に既にほぼ完了しているので、後硬化は完全に省略されてもよい。
【0081】
この2段階加圧プロセスを使用して、例えば、高い曲げ強度および短いサイクル時間を有する気密セパレータプレートを製造するための原材料の選択に関して上述した従来技術を参照して上述した制限を排除または克服することが可能である。特に、20%未満または70%を超えるスプリングバックを有するグラファイトを使用する場合、60MPaを超える曲げ強度が達成され得る。さらに、本明細書に記載のプロセスは、完成部品の特性に悪影響を及ぼすことなく、硬化触媒として2-メチルイミダゾールを使用して実施することもできる。結果として生じる極めて迅速な硬化反応は、非常に短いプロセス時間でさえ良好な架橋度をもたらす。
【0082】
サイクル時間の大幅な短縮の可能性は、様々な自動プレス上で平坦で構造化された試験ダイを用いて実証された。ここでは、連結された製造プロセスの代わりに、レディ・トゥ・プレス粒状物のシートを別々の作業工程で予備加圧し、予備加圧されたシートを高い金型温度で仕上げ加圧した。加圧されたプレートは、従来のプロセスと比較して、著しく良好な機械的特性およびより均一な圧縮を示した。
【0083】
最後に、「備える(comprising)」、「含む(including)」などの用語は、他の要素またはステップを排除するものではなく、「1つの(one)」または「不定冠詞(a)」などの用語は、複数を排除するものではないことに留意されたい。上記の実施形態のいずれかを参照して説明された特徴またはステップはまた、上記の他の実施形態の他の特徴またはステップと組み合わせて使用されてもよいことにさらに留意されたい。特許請求の範囲における参照番号は、限定と見なされるべきではない。
【符号の説明】
【0084】
100 加圧装置
102 予備加圧ツール
104 プリフォーム
106 出発材料
108 仕上げ加圧ツール
110 完成部品または成形部品
112 把持装置
200 成形型枠
202 予備加圧下部ダイ
204 予備加圧上部ダイ
300 隆起部
302 凹部
400 追加の成形型枠
402 仕上げ加圧ツール下部ダイ
500 仕上げ加圧ツール上部ダイ
【手続補正書】
【提出日】2023-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高度に充填された熱硬化性出発材料(106)から
燃料電池用のバイポーラプレートを形成する成形部品(110)を製造するプロセスであって、
前記高度に充填された熱硬化性出発材料は、充填剤としてグラファイト及び他の主に炭素含有化合物の少なくとも1つを、少なくとも70質量%の充填剤含有量を有する前記出発材料に含み、
前記出発材料(106)を予備加圧ツール(102)に導入するステップと、
前記出発材料(106)からプリフォーム(104)を製造するステップであって、前記出発材料(106)が、前記予備加圧ツール(102)によって予備加圧温度にされ、予備加圧力で圧縮されて前記プリフォーム(104)を形成する、ステップと、
前記予備加圧ツール(102)から前記プリフォーム(104)を取り外し、前記プリフォーム(104)を仕上げ加圧ツール(108)に導入するステップと、
前記プリフォーム(104)から完成部品(110)を製造するステップであって、前記プリフォーム(104)が、前記仕上げ加圧ツール(108)によって仕上げ加圧温度にされ、仕上げ加圧力で圧縮されて前記完成部品(110)を形成する、ステップと、を含み、
前記予備加圧温度は、前記仕上げ加圧温度より低く、
前記仕上げ加圧温度は、前記出発材料(106)の硬化反応の開始温度と少なくとも同じくらい高い、プロセス。
【請求項2】
前記予備加圧温度が、前記開始温度より低い、
請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記仕上げ加圧温度が、少なくとも170℃、好ましくは少なくとも190℃である、
請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記予備加圧温度が、最大でも150℃、好ましくは最大でも120℃である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記プリフォーム(104)が、最大でも10秒間、好ましくは最大でも5秒間、前記仕上げ加圧力を受ける、
請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記出発材料(106)が、充填剤としてグラファイトを含有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記出発材料(106)が、結合剤と、前記結合剤の硬化触媒としてのアルキルイミダゾールとを含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記出発材料(106)が、ドクタリングによって前記予備加圧ツール(102)に導入される、
請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記プリフォーム(104)の密度が、前記完成部品(110)の密度の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%である、
請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記出発材料(106)が、前記プリフォーム(104)を製造するために繰り返し圧縮および脱気される、
請求項1から9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記予備加圧力が、前記プリフォーム(104)の製造中に変化する、
請求項1から10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記仕上げ加圧力が、前記完成部品(110)の製造中に変化する、
請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセスで高度に充填された熱硬化性出発材料(106)から
燃料電池用のバイポーラプレートを形成する成形部品(110)を製造するための加圧装置(100)であって、
前記出発材料(106)から前記プリフォーム(104)を製造するための予備加圧ツール(102)であって、前記予備加圧ツール(102)が、前記出発材料(106)を前記予備加圧温度にし、それを前記予備加圧力で圧縮して前記プリフォーム(104)を形成するように構成された予備加圧ツール(102)と、
前記プリフォーム(104)から前記完成部品(110)を製造するための仕上げ加圧ツール(108)であって、前記仕上げ加圧ツール(108)が、前記プリフォーム(104)を前記仕上げ加圧温度にし、それを前記仕上げ加圧力で圧縮して前記完成部品(110)を形成するように構成された、仕上げ加圧ツール(108)と、を備
え、
前記仕上げ加圧ツール(108)は、チャネル構造を有する前記完成部品の最終的な形状を複製するツール形状を有する、
加圧装置(100)。
【請求項14】
前記予備加圧ツール(102)から前記プリフォーム(104)を取り外し、それを前記仕上げ加圧ツール(108)に挿入するように構成された加熱可能な把持装置(112)をさらに備える、
請求項13に記載の加圧装置(100)。
【請求項15】
前記予備加圧ツール(102)および前記仕上げ加圧ツール(108)が、異なるツール形状を有する、
請求項13または14に記載の加圧装置(100)。
【国際調査報告】