(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-05
(54)【発明の名称】移相器を備えた外部共振型レーザー
(51)【国際特許分類】
H01S 5/068 20060101AFI20230928BHJP
H01S 5/0239 20210101ALI20230928BHJP
H01S 5/14 20060101ALI20230928BHJP
G01S 7/4911 20200101ALN20230928BHJP
G01S 17/34 20200101ALN20230928BHJP
【FI】
H01S5/068
H01S5/0239
H01S5/14
G01S7/4911
G01S17/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513910
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(85)【翻訳文提出日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 US2021059793
(87)【国際公開番号】W WO2022076953
(87)【国際公開日】2022-04-14
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520437076
【氏名又は名称】シルク テクノロジーズ インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】タヴァリー、アミール アリ
【テーマコード(参考)】
5F173
5J084
【Fターム(参考)】
5F173MA10
5F173MD33
5F173MD34
5F173MD36
5F173MD37
5F173MF02
5F173MF03
5F173MF13
5F173MF25
5F173MF28
5F173MF39
5F173MF40
5F173SE01
5F173SF40
5F173SF53
5J084AA05
5J084AA07
5J084BA03
5J084BA20
5J084BA36
5J084BA48
5J084BB01
5J084BB31
5J084CA08
(57)【要約】
本明細書に記載のシステム及び方法は、稼働可能な移相器を備えた外部共振型レーザー(ECL)等の光学光源に関する。該システムは、稼働可能な移相器に関連付けられた1つまたは複数のパラメーターを制御するための制御回路を含み得る。該移相器は、p-i-n移相器であってもよい。該制御回路は、前記移相器に関連付けられた屈折率を変化させ、それによって前記ECLのレーザー発振周波数を変化させ得る。前記ECLは、周波数変調光信号を産生することに基づいて、光検出及び測距(LIDAR)システム用の光源として動作するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、前記ECLは、増加するチャープ周波数と減少するチャープ周波数の交互の部分を有する出力LIDAR信号を産生し得る。該ECLは、安定性が向上し、周囲の温度変動への依存度が低く、チャープ直線性が改善された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー出力波長をチャープする方法であって、
レーザー駆動電流を計算装置で制御すること、
該レーザー駆動電流に基づいて、移相器要素に関連付けられた初期電圧バイアスを前記計算装置で選択すること、
前記レーザー出力波長に関連付けられたチャープ直線性を前記計算装置で分析すること、及び
該チャープ直線性に基づいて、前記移相器要素に関連付けられた初期電圧バイアスを前記計算装置で変更すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記初期電圧バイアスを変更することが、
前記チャープ直線性に関連付けられた直線性補正係数を測定すること、及び
該直線性補正係数を前記初期電圧バイアスの波形に適用すること
に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザー出力波長に関連付けられたチャープ直線性を定期的に観測すること、
該チャープ直線性が閾値直線性の値を満たしていることを判断すること、
前記閾値直線性の値に基づいて、変更された電圧バイアスの波形を測定すること、及び
該変更された電圧バイアスの波形を前記移相器要素に適用すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記変更された電圧バイアスの波形を前記移相器要素に適用することが、前記レーザーを再直線化する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記移相器要素が、p-i-nベースの移相器である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記チャープ直線性が、前記レーザー出力波長が直線性を経時的に変化させるかどうかの判断に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
レーザー出力を産生するように構成されたレーザー、
該レーザー出力に関連付けられた波長を変更することに基づいて、前記レーザー出力をチャープするように構成された移相器要素、及び
前記レーザーに関連付けられたレーザー駆動電流を制御し、
該レーザー駆動電流に基づいて、前記移相器要素に関連付けられた初期電圧バイアスを選択し、
前記レーザー出力に関連付けられたチャープ直線性を分析し、また、
該チャープ直線性に基づいて、前記移相器要素に関連付けられた初期電圧バイアスを変更するように構成された計算装置
を備える光集積回路(PIC)を少なくとも 1つ含む、システム。
【請求項8】
前記計算装置が、
前記チャープ直線性に関連付けられた直線性補正係数を測定すること;及び
該直線性補正係数を前記初期電圧バイアスの波形に適用すること
に基づいて、初期電圧バイアスを変更するようにさらに構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記計算装置が、
前記レーザー出力波長に関連付けられたチャープ直線性を定期的に観測し、
前記チャープ直線性が閾値直線性の値を満たしていることを判断し、
該閾値直線性の値に基づいて、変更された電圧バイアスの波形を測定し、また、
該変更された電圧バイアスの波形を前記移相器要素に適用するようにさらに構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記変更された電圧バイアスの波形を前記移相器要素に適用することが、前記レーザーを再直線化する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記移相器要素が、p-i-nベースの移相器であり、また、前記初期電圧バイアスが、そのp-i-n領域にわたる電圧の印加に関連付けられる、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記計算装置が、前記レーザー出力に関連付けられた波長が経時的に直線的に変化しているかどうかに基づいて、前記チャープ直線性を測定するようにさらに構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
前記PICが、前記レーザー出力に関連付けられた波長を制御するように構成された回折格子をさらに備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項14】
レーザー出力を産生するように構成された外部共振型レーザー(ECL)及び光集積回路(PIC)を備えるシステムであって、該PICが、
該レーザー出力に関連付けられた波長を変更することに基づいて、前記レーザー出力をチャープするように構成された移相器要素、
前記レーザー出力に関連付けられた波長を制御するように構成された回折格子、及び
前記ECLに関連付けられたレーザー駆動電流を制御し、
該レーザー駆動電流に基づいて、前記移相器要素に関連付けられた初期電圧バイアスを、選択し、
前記レーザー出力に関連付けられたチャープ直線性を分析し、また、
該チャープ直線性に基づいて、前記移相器要素に関連付けられた初期電圧バイアスを変更するように構成された計算装置
を備える、システム。
【請求項15】
前記計算装置が、
前記チャープ直線性に関連付けられた直線性補正係数を測定すること、及び
該直線性補正係数を前記初期電圧バイアスの波形に適用すること
に基づいて、前記初期電圧バイアスを変更するようにさらに構成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記計算装置が、
前記レーザー出力に関連付けられたチャープ直線性を定期的に観測し、
該チャープ直線性が閾値直線性の値を満たしていることを判断し、
該閾値直線性の値に基づいて、変更された電圧バイアスの波形を測定し、また、
該変更された電圧バイアスの波形を前記移相器要素に適用するようにさらに構成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記変更された電圧バイアスの波形を前記移相器要素に適用することが、前記ECLを再直線化する、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記移相器要素が、p-i-nベースの移相器であり、また、前記初期電圧バイアスが、そのp-i-n領域にわたる電圧の印加に関連付けられる、請求項14に記載のシステム。
【請求項19】
前記計算装置が、前記レーザー出力に関連付けられた波長が経時的に直線的に変化しているかどうかに基づいて、前記チャープ直線性を測定するようにさらに構成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項20】
前記ECLが、利得チップを含み、また、その初期電圧バイアスが、前記移相器要素に関連付けられた注入電流を制御する、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2020年9月20日に出願された「移相器を備えた外部共振型レーザー」と題した米国特許出願第17/026,270号の継続出願であり、その全体が組み込まれる。
【分野】
【0002】
本発明は、光学光源及びシステムに関し、特に、遠隔撮像用途のためのレーザー装置に関する。
【背景】
【0003】
自動装置とシステムの出現により、遠隔撮像システムの性能を向上させることに益々注目が集まっている。例えば、光検出及び測距(LIDAR)システム等の遠隔撮像システムは、ミリ単位の精度で数十メートルにわたって標的の特徴を解像できる、益々高度な撮像装置に依存している。このようなLIDARシステムの光源として、レーザーが日常的に使用されている。レーザー性能の向上により、撮像システムの性能が大幅に向上し、多くの場合、撮像システムのコストが削減される。
【0004】
最近、周波数連続変調(FMCW) LIDARシステムは、撮像される全ての標的位置に関連付けられた瞬間速度、深さ、及び標的の材質に特異的な情報等いくつかの固有の利点により、遠隔撮像スペースに大きく進出している。さらに、FMCW LIDAR システムは、共通の視野(FOV)で動作する他のLIDARシステムからの干渉の影響を受けず、周囲照明を必要とせずに画像を取得することができる。
【0005】
FMCW LIDARシステムのレーザー光源を周波数変調する一般的な方法として、レーザー駆動電流の振幅変調が挙げられる。このような振幅変調の変調周波数は、レーザーの利得媒体に関連するキャリア注入及びキャリア枯渇速度に依存するため、数百kHzに制限される傾向がある。キャリアの注入と枯渇は、温度変化と熱放散の問題を引き起こす可能性があり、レーザーの周波数が変化またはチャープされる速度がさらに制限される。これにより、FMCW LIDAR システムの全体的な動作速度が制限され得る。このように、数百kHzの制限された振幅変調周波数は、FMCW LIDARシステムの全体的な動作速度を制限する。
【0006】
レーザー駆動電流の振幅変調のキャリア注入位相と枯渇位相中のレーザー温度の変動は、レーザー チャープ信号に非直線性をさらに生じさせる可能性がある。例えば、レーザーのチャープ周波数は、アップチャープ部分中に直線的に増加しない場合があり、ダウンチャープ部分中に直線的に減少しない場合がある。チャープの非直線性は、信号対ノイズ(SNR)比の低下、誤検知の増加、標的検出確率の低下、動作範囲の縮小、及び/または動作速度の低下を引き起こして、FMCW LiDAR システムの性能に大きな影響を与え得る。従って、改善されたLIDAR性能をサポートするために、FMCWレーザーの高度に線形なチャープ率を有効にすることが益々重要になっている。
【概要】
【0007】
この概要は、本明細書の開示の重要または必須の特徴を特定することを意図したものではなく、特定の特徴及びその変形を単に要約するものである。他の詳細と特徴は、以降の部分でも記載する。
【0008】
本明細書で記載する特徴のいくつかは、支持基盤の上に配置されたレーザーを含む光学システムに関する。該光学システムは、回路、電子機器、メモリ、及び/またはレーザー信号を産生するための処理要素を含み得る。いくつかの実施形態では、該光学システムは、遠隔撮像用途のための光検出及び測距(LIDAR)システムとインターフェースし得る。
【0009】
レーザーは、利得媒体、移相器要素、及び回折格子を含み得る外部共振型レーザー(ECL)等の波長可変なレーザーであってもよい。該移相器要素は、前記ECLの空洞領域内に配置されたp-i-n移相器であってもよい。
【0010】
該p-i-n移相器は、電圧バイアスを印加するための接点(例えば、金属接点)を有する領域を含み得る。該p-i-n移相器からの電流の注入及び枯渇は、前記接点に印加される電圧を変化させることによって制御され得る。該p-i-n移相器からの電流の注入及び枯渇は、対応する屈折率プロファイルを変化させ、それによって、レーザー空洞にサポートされ得るピーク発光波長の変化を引き起こし得る。従って、該p-i-n移相器は、レーザー空洞領域の位相長を乱す屈折率の変化に応じて、ECLを異なる周波数でレーザー発振させることができる。次に、ECLを用いて、良好なチャープ直線性、狭い線幅、及び/または増加したチャープ率を備えたチャープされたレーザー出力を産生することができる。これにより、コストを増加させることなく、高いSNR、高い走査速度、高い精度、及び/または改善された正確さを示す高性能のFMCW LIDARシステムの開発が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
いくつかの特徴は、本明細書の添付図面に限定ではなく例として示される。その中、同様の参照番号は同様の要素を指す。
【0012】
図1は、本明細書に記載の様々な実施形態による遠隔撮像システムを示す。
【0013】
図2は、移相器を備えた波長可変なレーザーを含む遠隔撮像装置の例示的な図を示す。
【0014】
図3は、本明細書に記載の様々な実施形態による撮像装置の光子成分とインターフェースする電子機器、制御部、及び処理回路の例示的な図を示す。
【0015】
図4は、本明細書に記載の様々な実施形態による移相器を有するECLの例示的な図を示す。
【0016】
図5は、
図4の本明細書に記載の様々な実施形態による移相器を有するECLの断面図を示す。
【0017】
図6は、本明細書に記載の様々な実施形態による移相器に関連する注入電流キャリア濃度対位相変化及び光損失のプロットを示す。
【0018】
図7は、本明細書に記載の様々な実施形態による移相器のピーク波長発光対電流のプロットを示す。
【0019】
図8A~8Bは、本明細書に記載の様々な実施形態による例示的なフローチャートを示す。
【詳細な説明】
【0020】
ここで、添付図面を参照して例示的な実施形態をより完全に説明する。多くの代替形態を具現化することができ、例示的な実施形態は、本明細書に記載されたものに限定されると解釈されるべきではない。これらの図面において、同様の参照番号は同様の要素を指す。
【0021】
本明細書で使用される「及び/または」という用語は、1つまたは複数の関連項目の任意及び全ての組み合わせを含む。特に明記しない限り、または議論から明らかなように、「処理する」、「コンピューティングする」、「計算する」、「測定する」、「表示する」等の用語は、計算システムまたは同様の電子計算装置の動作過程を指す。該動作過程では、計算システムのレジスタ内の物理量や電子量として表されるデータが操作及び変換され、計算システムのメモリまたはレジスタ、または他の情報格納、送信、または表示装置内の物理量として同様に表される他のデータに記憶される。
【0022】
以下の説明では、特定のタスクを実行するか、特定の抽象データ型を実装し、電子システム(例えば、画像処理及び表示装置)のハードウェアを使用して実装できる、ルーチン、プログラム、目的、構成要素、データ構造等を含むプログラムモジュールまたは機能プロセスとして実装できる操作の記号的な表現(例えば、フローチャートの形で)を参照して例示的な実施形態を説明する。そのような既存のハードウェアは、1つまたは複数のデジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、現場で書き換え可能な論理回路の多数配列(FPGA)、及び中央処理装置(CPU)等を含み得る。
【0023】
「記憶媒体」、「コンピュータ可読記憶媒体」、または「非一時的コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、データを格納するための1つまたは複数の装置を表し得る。該装置には、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気RAM、磁気ディスク記憶メモリ、光記憶媒体、フラッシュメモリ装置、及び/または情報を記憶するための他の有形の機械可読媒体が含まれる。「コンピュータ可読メモリ」という用語は、ポータブルまたは固定の格納装置、光学格納装置、及び命令及び/またはデータを格納、収容、または運搬することができる様々な他の媒体を含み得るが、これらに限定されない。
【0024】
さらに、例示的な実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語、またはそれらの任意の組み合わせによって実装され得る。ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、またはマイクロコードで実装される場合、必要なタスクを実行するためのプログラム コードまたはコード セグメントは、機械またはコンピュータ可読媒体に格納され得る。ソフトウェアで実装される場合、プロセッサは必要なタスクを実行するようにプログラムされ得る。それによって専用プロセッサまたはコンピュータに変換される。
【0025】
図1は、走査システム106と通信する光集積回路(PIC)101、電子機器102、制御ユニット104、分析ユニット110、及び/または表示ユニット112を含む遠隔撮像システム100の概略図を示す。前記PIC 101は、導波路、分配器、方向性結合器、干渉計(例えば、マッハツェンダー干渉計)等の複数の光子成分とともに、オンチップまたはオフチップの波長可変なレーザー、及び光信号を産生、送信、及び/または受信するための光検出器を含んでもよい。前記PIC 101は、光出力経路に沿って光増幅器を含んでもよい。前記波長可変なレーザーは、p-i-n構造を形成するために、pドープシリコン(p)領域、固有シリコン(i)領域、及びnドープシリコン(n)領域からなる移相器要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記波長可変なレーザーは、ECLであってもよい。いくつかの実施形態では、前記p-i-n移相器要素は、該レーザーから分離されてもよい。
【0026】
走査システム106は、スキャナ等、PICからの光出力を操作するための機構を含んでもよい。スキャナの例には、微小電気機械システム(MEMS)ミラー、アレイ導波路回折格子、及び光フェーズド アレイが含まれる。撮像システム100は、光学部品(例えば、視準器、レンズ等)、及び様々な他の処理要素(例えば、DSP、ASIC、CPU、FPGA、回路、メモリ等)をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記撮像システムは、グラフィカル ユーザー インターフェース(GUI)等の1つまたは複数の通信インターフェースを含んでもよい。
【0027】
前記PIC 101は、様々な処理要素(例えば、電気回路、マイクロプロセッサ、DSP、ASIC、FPGA、CPU)と通信する、上述の非一時的コンピュータ可読記憶媒体等のメモリを含むことができる電子機器102及び制御ユニット104とインターフェースしてもよい。前記電子機器は、単一の場所にある単一の構成要素として示されているが、該電子機器は、互いに独立している、及び/または異なる場所に配置されている複数の異なる構成要素を含んでもよい。さらに、上述のように、開示された電子機器の全部または一部は、例えば、チップと一体化され得る電子機器のように、チップ上に含まれてもよい。
【0028】
撮像システム100は、PIC 101及び/または走査システム106の1つまたは複数の光子成分を制御することに基づいて、標的領域108を走査するように構成されてもよい。例えば、撮像システム100は、速軸に対して50 Hz~数kHzまた遅軸に対して数Hz~数十Hzの概ねの走査速度で、約10度~180度のFOVにわたって、標的領域108を走査するように構成された発信チャープレーザー信号を産生してもよい。前記FOVは、ダイナミックに調整されるパラメーターであってもよい。反射レーザー信号に基づく走査データを制御ユニット104及び分析ユニット110を介して処理し、次いで表示ユニット112(例えば、モニター、ラップトップ、ビデオスクリーン、プロジェクター、AR/VR装置等)を介して表示することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、撮像システム100は、周波数連続変調(FMCW)LIDARシステムを含んでもよく、PIC 101は、LIDARチップの一部であってもよい。前記LIDARシステムは、異なるチャープ持続時間にわたって周波数変調されるLIDAR出力信号等の出力光信号を産生してもよい。例えば、第1チャープ持続時間(t1)にわたって、周波数は直線的に増加し、波長は直線的に減少してもよい。第2チャープ持続時間(t2)にわたって、周波数は直線的に減少し、波長は直線的に増加してもよい。これにより、異なるチャープ持続時間にわたって LIDAR 出力信号の波長を変化させ得る。例えば、LIDAR出力信号の波長は、波長可変なレーザーの動作波長範囲に応じて、1200 nm~1320 nm、1400 nm~1590 nm、及び1900 nm~2100 nmの間で変化し得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の波長可変なレーザーは、1200 nm~1320 nmの範囲、1400 nm~1590 nmの範囲、及び/または1900 nm~2100 nmの範囲に関連する波長を有する複数のLIDAR出力信号を産生するように構成されてもよい。
【0030】
発信LIDAR信号周波数が直線的に増加する第1チャープ持続時間は、アップランプチャープと呼ばれ、該信号周波数が直線的に減少する第2チャープ持続時間は、ダウンランプチャープと呼ばれてもよい。前記LIDARシステムは、少なくとも1つのチャープ持続時間に基づいて目標範囲及び/または速度を推定するように構成されてもよい。
【0031】
制御ユニット104は、発信LIDAR信号の操作に基づいて、走査システム106に異なる標的領域の走査を制御させるように構成されてもよい。前記標的領域は、それぞれ少なくとも1つのデータサイクルに関連付けることができ、及び/または各データサイクルは、標的領域の1つに関連付けることができる。その結果、各 LIDAR データ結果を標的領域の1つに関連付けることができる。異なる標的領域は、いくらか重複し、または互いに異なってもよい。2つのチャープ持続時間を含むデータ サイクルの場合、標的領域の各データ ポイントを2つのチャープ持続時間に関連付けてもよい。3つのチャープ持続時間を含むデータ サイクルの場合、標的領域の各データ ポイントを3つのチャープ持続時間に関連付けてもよい。
【0032】
図2は、光源10(例えば、ECL)及び出力導波路16、入力導波路19、参照導波路27、光結合構成要素28、分配器56と26、及び干渉計58のような複数の光子成分を含むLIDARチップの概略図を示す。
図1に関して先に記載したように、LIDARチップは、PIC 101を含んでもよい。ECL 10は、利得チップ5、該ECLへの波長依存光フィードバックを制御するための1つまたは複数のミラー、回折格子8、及び移相器要素7を含んでもよい。いくつかの実施形態では、移相器要素7は、利得チップ5の一部であってもよい。ECL 10は、別個に製造され、PIC 10上に統合されてもよい。いくつかの実施形態では、回折格子8は、PIC 10と共に、ECL 10の製造とは別に製造されてもよい。
【0033】
前述のように、移相器要素は、適切なバイアス制御を提供するための金属接点を備えた p-i-n構造上の基盤であってもよい。前記p-i-n構造は、pドープシリコン(p)領域、固有シリコン(i)領域、及びnドープシリコン(n)領域から構成されてもよい。
【0034】
制御電子機器62は、LIDARチップから離れて配置され、光利得媒体5に関連するレーザー駆動電流を制御し、及び/または移相器7の動作を測定するために使用されてもよい。例えば、制御電子機器62は、レーザー駆動電流を(例えば、ピークツーピークで1 mAから50 mAに)変化させて、前記光利得媒体への電流注入を制御し、それによって利得媒体5に関連する光利得を変化させてもよい。レーザー駆動電流が光利得媒体内の反転分布に関連する所定の閾値レベルを超えると、ECL 10は、レーザー発振を開始し、狭い線幅スペクトルを産生してもよい。ECL 10のピーク波長発光は、利得媒体への電流注入を制御することに基づいて制御できるレーザー発振波長と呼ぶことができる。このように、ピークレーザー発振波長は、レーザー駆動電流に基づいて選択することができる。例えば、ECL 10は、ピークツーピークで10 mAを超える振幅変調レーザー駆動電流を印加した後、約1500 nmの波長でレーザー発振を開始してもよい。
【0035】
次いで、移相器7の両端の電圧バイアスは、アップチャープ持続時間中のレーザー発振波長の周波数を増加させるか、ダウンチャープ持続時間中のレーザー発振波長の周波数を減少させることによって、レーザー発振波長の周波数変調を制御することができる。移相器7の両端の電圧バイアスは、約0.7 V~1 Vの間で変化し得る。ECL 10発光の周波数変調は、(f≧Δf)で算出でき、ここで、fは、ピークレーザー発振波長λに対応する選択されたピークレーザー発振周波数であり(例えば、1500 nm、1310 nm等)、Δfは、移相器の屈折率の変調に依存できる波長変調Δλに対応し得る。例えば、ECL 10のピークレーザー発振波長は、数ピコメートル~数百ピコメートルの間で変動し得る。いくつかの実施形態では、ECL 10は、約1500 nmの中心レーザー発振波長に対して500 pmまでのΔλを示し得る。いくつかの他の実施形態では、ECL 10は、約1310 nmの中心レーザー発振波長に対して200 pmまでのΔλを示し得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、アダプタ202とインターフェースし得る。これは、LIDAR出力信号と受信LIDAR入力信号をLIDARチップの対応する導波路ファセットに向けるための光学部品を視準及び/または集束することを含む。波長可変なECL 10の出力は、LIDARチップのファセット18で終端する出力導波路16に結合されてもよい。導波路16は、波長可変なECL 10からの結合された光出力をチップファセット18に送信してもよい。例えば、導波路16は、波長可変なECL 10からの結合されたレーザー出力を、チップファセット18を含み得るLIDARチップのエッジに送信してもよい。従って、導波路16は、導波路16に関連する終端ファセットと呼び得るファセット18で終端してもよい。
【0037】
ファセット18から送信された光出力は、LIDARチップから放出された発信LIDAR信号として機能することができる。従って、該発信LIDAR信号は、移相器7に印加される電圧バイアスに応じて波長が変化するECL 10の出力を含み得る。例えば、ECL 10は、約1548 nm~1549 nmの間で変化する波長を有するレーザー出力信号を産生してもよい。別の例として、波長可変なECLは、1549 nm~1550 nmの間で変化する波長を有するレーザー出力信号を産生してもよい。移相器7に印加される対応する電圧バイアスは、0.7 V~1 Vの間で変化し得る。
【0038】
制御電子機器62は、移相器7への電圧バイアスの印加を変化させてもよい(例えば、0.7 V~1 V)。例えば、約0.8 Vの順方向バイアスの印加では、移相器への電流注入は、約1500 nmのレーザー発振波長に対して全体のECL空洞の位相長の変化を引き起こすのに十分に増加し得る。例えば、移相器7の順方向バイアスは、前記レーザー発振波長に関連するπまたは180度にほぼ等しい移相を引き起こし得る。これにより、外部空洞領域によってサポートされる縦レーザー モードが1500 nm~1500.10 nmの間で変化し得る。電流注入は、数mA~50 mAの間で変化し得る。いくつかの実施形態では、順方向バイアス電圧の印加中の移相器への電流注入は、移相器部分の屈折率の対応する変化を引き起こすことができ、それは次に、ECL空洞全体の位相長の変化を引き起こす。
【0039】
注入電流、対応する屈折率の変化、及び ECL空洞の長さのそれぞれの位相変化を正確に観測することにより、ECLの装置シミュレーションは、移相器部分の寸法を最適化するための洞察を提供し得る。ECL及び移相器の寸法に関連するさらなる詳細は、
図5及び6で説明される。
【0040】
ECL 10は、利得媒体部分とは別の位相変化部分に基づいて、様々な面で改善された性能を示し得る。これは、レーザー出力に関連する周波数変調を達成するために利得部分の変調に依存するECLとは対照的であり得る。例えば、いくつかの従来技術のシステムは、レーザー出力の周波数変調を達成するために、レーザー駆動電流の振幅変調を組み込むことができる。このようなシステムは、チャープ率やレーザーの直線性が厳しく制限される可能性があり、安定したモードフリー動作を可能にするために、はるかに高いレーザー駆動電流が必要になる場合がある。本明細書に記載のECL 10は、安定したレーザー発振を達成するために必要なレーザー駆動電流に関して改善を示すことができる。レーザー駆動電流の振幅変調に依存するレーザーシステムに関連するピークツーピークで20 mAを超える高いレーザー駆動電流の代わりに、該ECL 10は、最小のレーザー駆動電流でモードホップのない安定したピークツーピークで1 mA~10 mAの領域内で動作できる。これに示されたように、移相器7の別個の位相変化部分を有するECL 10は、安定性が向上し、レーザー駆動電流の振幅変調を必要とせずに、大幅に低いレーザー駆動電流で動作できる。
【0041】
他の性能改善は、改善されたチャープ直線性、より高いチャープ率、及び改善された信頼性に関連し得る。例えば、ECL 10は、0.1%~0.001%の間のチャープ直線性を達成し得る。別の例として、ECL 10は、500 kHzを超えてから数MHzまでのチャープ率で動作し得る。
【0042】
図2のLIDARチップは、出願番号16/547,522及び16/726,235の関連出願に記載されたLIDARチップと関連し得る。それらの全体が本明細書に開示される。
【0043】
いくつかの実施形態では、LIDARチップは、LIDAR出力信号の出力経路に沿ってファセット18の前に配置された増幅器を含み得る。例えば、出力導波路16は、LIDAR出力信号を増幅器に運び、その後、増幅されたLIDAR出力信号は、ファセット18からLIDARチップを出てもよい。電子機器102は、増幅器の動作を制御し、及び/またはLIDAR出力信号のパワーを制御するように構成されてもよい。増幅器の例には、エルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)、エルビウムドープ導波路増幅器(EDWA)、及び半導体光増幅器(SOA)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、前記増幅器は、チップに取り付けられた個別の構成要素であってもよい。該個別の増幅器は、LIDAR出力信号の経路に沿ったLIDARチップ上の任意の位置に配置してもよい。いくつかの実施形態では、前記増幅器の全部または一部を、LIDARチップとともに、集積オンチップ構成要素として製造してもよい。LIDARチップは、二酸化シリコン、リン化インジウム、及びシリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウェーハを含むがこれらに限定されない様々な基板材料から製造してもよい。分配器56及び26の例には、y接合、光学結合器、及びMMIが含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
いくつかの実施形態では、LIDARアダプタは、LIDARチップと走査モジュール106との間に配置されてもよい。該LIDARアダプタは、レンズ212と214、循環器218、ミラー216、及び増幅器210等の光学部品を含んでもよい。次に、LIDAR出力信号は、ファセット18を通ってLIDARチップを出射し、レンズ212を通過した後、ポート204を通って循環器218に入射してもよい。次いで、循環器218は、LIDAR出力信号を、該循環器のポート206を介して走査モジュール106に誘導してもよい。場合によっては、増幅器が出力導波路16に沿って存在しない場合、LIDAR出力信号を増幅するために、増幅器210をLIDAR出力信号の経路内でレンズ212と循環器218との間に配置してもよい。次いで、レンズ212は、LIDAR出力信号を増幅器210の入口ポートに集束させてもよい。場合によっては、LIDARアダプタの構成要素をサポート基盤に配置してもよい。
【0045】
次に、走査モジュール106は、LIDAR出力信号を標的FOVに誘導し、LIDAR出力信号に関連付けられた戻りLIDAR信号を循環器ポート206に戻すように誘導してもよい。従って、循環器218のポート206は、LIDAR信号を出力し、同時にLIDAR入力信号を受信するように構成されてもよい。場合によっては、循環器218のポート206は、LIDARアダプタと走査モジュール106との間に配置された視準器を介してLIDAR信号を出力及び/または受信するファイバ(例えば、偏光保持光ファイバ)に接続されてもよい。
【0046】
前記戻りLIDAR信号は、標的FOVに位置する 1つまたは複数の物体からの LIDAR出力信号の反射に関連付けてもよい。前記戻りLIDAR信号は、走査モジュール106によって、信号を循環器218のポート206に集束させ得る視準器に再誘導されてもよい。循環器218は、戻りLIDAR信号をLIDAR入力信号としてポート208を介してレンズ214に誘導するように構成されてもよい。次いで、レンズ214は、LIDAR入力信号をLIDARチップの入力導波路19のファセット20上に集束させてもよい。場合によっては、アダプタ202は、LIDAR信号のそれぞれの方向を変更するために、ミラー216等のような1つまたは複数のミラーを含んでもよい。例えば、アダプタ202は、ミラー216を、循環器218のポート208からのLIDAR入力信号を入力導波路19のファセット20に再誘導する方向変更構成要素として含んでもよい。
【0047】
入力導波路19に入射する第1 LIDAR入力信号は、LIDARチップに最も近い位置にある第1物体に関連付け、一方、若干遅れた後に入力導波路19に入射する第2 LIDAR入力信号は、LIDARチップからさらに離れた位置にある第2物体に関連付けてもよい。前記第1 LIDAR入力信号と第2 LIDAR入力信号との間の到着の遅延は、該LIDARチップの位置に対する第1物体と第2物体との間の見通し線距離に比例し得る。
【0048】
場合によっては、LIDARアダプタは、LIDAR信号を誘導するための導波路を含んでもよい。他のいくつかの例では、LIDAR 入力信号と LIDAR 出力信号がLIDARアダプタ上の構成要素間及び/またはLIDARチップとLIDARアダプタ上の構成要素との間を移動する光路は、空白な空間であり得る。
【0049】
入力導波路19は、第1 LIDAR入力信号を、LIDARチップのデータ分岐24の一部であり得る光結合構成要素28(例えば、マルチモード干渉装置(MMI)、断熱分配器、及び/または方向性結合器)に送信してもよい。いくつかの実施形態では、光結合構成要素28は、2x2 MMI装置等のMMI装置であってもよい。図示の光結合構成要素28の機能は、2つ以上の光学構成要素によって実行することができる。
【0050】
データ分岐24は、LIDARチップのための光LIDAR信号を誘導及び/または改変する光子成分を含んでもよい。該データ分岐の光子成分は、分配器26、参照導波路27、光結合構成要素28、第1検出器導波路36、第2検出器導波路38、第1光センサ40、及び第2光センサ42を含んでもよい。
【0051】
分配器26は、発信LIDAR信号の一部をユーティリティ導波路16から参照導波路27に送信してもよい。例示された分配器26は、ユーティリティ導波路16からの光の一部が参照導波路27に結合するように、ユーティリティ導波路16を参照導波路27に十分近くに配置した結果として動作する光結合器であってもよい。しかし、y接合、光学結合器、及びMMI等の他の信号傍受構成要素を使用して、ユーティリティ導波路16からの光信号の一部を参照導波路27に結合することができる。
【0052】
参照導波路27に送信された発信LIDAR信号の部分を参照信号と呼ぶことがある。参照導波路27は、参照信号を光結合構成要素28に運ぶ。
【0053】
いくつかの実施形態では、光結合構成要素28が2x2 MMIである場合、第1 LIDAR入力信号及び参照信号は、それぞれ入力導波路19及び参照導波路27を介して2x2 MMIの2つの入力に結合し得る。次に、該2つの入力光信号は、MMIの2つのアームに沿って移動するときに干渉し得る。これにより、MMIの各出力が、第1 LIDAR入力信号と参照信号の両方の結合部分を搬送する。例えば、MMIの第1アームに関連する出力光信号は、第1 LIDAR入力信号の一部及び参照信号の一部を含んでもよく、MMIの第2アームに関連する出力光信号は、第1 LIDAR入力信号の残りの部分及び参照信号の残りの部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、MMIの第1アームと第2アームの出力光信号の間に位相シフト(例えば、0~π)があってもよい。MMIの2つのアームに関連する出力光信号は、第1複合信号及び第2複合信号と呼ぶことができる。ここで、第1及び第2複合信号は、第1 LIDAR入力信号の部分及び参照信号の部分を含む。第1複合信号は、第1検出器導波路36に結合してもよく、第2複合信号は、第2検出器導波路38に結合してもよい。次に、第1検出器導波路36は、第1複合信号を第1光センサ40に送信してもよく、第2検出器導波路38は、第2複合信号を第2光センサ42に送信してもよい。
【0054】
次いで、第1光センサ40は、第1複合信号を第1電気信号に変換してもよい。第2光センサ42は、第2複合信号を第2電気信号に変換してもよい。例えば、第1光センサ40及び第2光センサ42はそれぞれ、第1複合信号及び第2複合信号を、経時的に変化する光検出器電流に変換する。光センサの例には、フォトダイオード(PD)及びアバランシェフォトダイオード(APD)が含まれる。
【0055】
いくつかの実施形態では、第1光センサ40及び第2光センサ42は、それぞれの光電流に関連する直流(DC)成分を打ち消すために、直列配置の平衡光検出器として構成されてもよい。該平衡光検出器の構成は、ノイズを低減し、及び/または光検出器に関連する検出感度を向上させることができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、光結合構成要素28は、光分割の機能を含む必要はない。その結果、図示の光結合構成要素28は、図示の2x2光結合構成要素ではなく、2x1光結合構成要素とすることができる。また、単一の光センサは、第1光センサ40及び第2光センサ42に置き換えて、単一のデータ信号を出力することができる。例えば、図示された光結合構成要素は、2つの入力アーム及び1つの出力アームを備える2x1 MMI装置であり得る。光結合構成要素が2x1 MMIである場合、チップは、単一の複合信号を2x1 MMIの出力アームから単一の光センサに運ぶ第1及び第2検出器導波路の代わりに、単一の検出器導波路を含むことができる。
【0057】
LIDARチップは、光源10の動作を制御するための制御分岐55を含むことができる。該制御分岐は、発信LIDAR信号の一部をユーティリティ導波路16から制御導波路57に結合できる方向性結合器56を含んでもよい。制御導波路57を介して送信された発信LIDAR信号の結合部分は、傍受された信号として機能する。いくつかの実施形態では、y接合及び/またはMMI等の他の信号傍受光子成分を、
図1に示される方向性結合器56の代わりに使用してもよい。
【0058】
制御導波路57は、傍受された信号を、傍受された信号を分割し、次に、互いに対してそれぞれ位相がずれている傍受された信号の異なる部分を再結合する干渉計58に運ぶことができる。干渉計58は、入力信号の分割部分が端部に向かって再結合(例えば、干渉)する前に移動する2つの等しくないアームを備えるマッハ・ツェンダー干渉計(MZI)であってもよいが、他の干渉計の構成を使用してもよい。干渉計の信号出力は、主に傍受された発信 LIDAR信号の周波数の関数である強度によって特徴付けてもよい。例えば、MZIは、縞模様によって特徴付けられる正弦波信号を出力してもよい。
【0059】
干渉計58からの正弦波信号は、干渉計導波路60に結合することができ、制御光センサ61への入力として機能することができる。制御光センサ61は、正弦波光信号を、電気制御信号として機能できる電気信号に変換してもよい。発信 LIDAR 信号の周波数が変化すると、制御光信号の周波数が変化する。従って、制御光センサ61から出力される電気制御信号の周波数は、発信LIDAR信号の周波数の関数である。他の検出機構は、制御光センサ61の代わりに使用することができる。例えば、制御光センサ61は、第1光センサ40及び第2光センサ42の平衡光検出器配置に関して前述したように、直列に配置された2つの光センサを含む平衡光検出器配置に置き換えることができる。
【0060】
電子機器62は、チップ上の1つまたは複数の構成要素を操作することができる。例えば、電子機器62は、光源10、第1光センサ40、第2光センサ42、及び制御光センサ61と電気通信し、それらの動作を制御することができる。電子機器62はチップの外に示されているが、該電子機器の全部または一部をチップ上に含めることができる。例えば、該チップは、第1光センサ40を第2光センサ42と直列に接続する導電体を含むことができる。いくつかの実施形態では、制御電子機器102は、電子機器62を含んでもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、電子機器は、
図1に関して先に説明したように、発信LIDAR信号のチャープ周波数及び/またはチャープ持続時間を制御し得る。電子機器62は、一連のデータサイクルを通じてLIDARチップを動作させてもよく、ここで、LIDARデータは、データサイクル(LIDARシステムと反射物体との間の視線距離及び/または視線速度)ごとに産生される。各データサイクルの持続時間は、発信LIDAR信号、ひいてはLIDAR出力信号の増加または減少するチャープ周波数のチャープ持続時間に対応し得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、各データサイクルは、1つまたは複数のチャープ持続時間に対応してもよく、それによって、発信LIDAR信号の増加または減少するチャープ周波数にそれぞれ対応する1つまたは複数のデータ期間を含む。例えば、1つのデータサイクルは、アップランプチャープ持続時間とダウンランプチャープ持続時間を効果的に包含する2つのチャープ持続時間に対応し得る。別の例として、1つのデータサイクルは、アップランプ、ダウンランプ、及び別のアップランプチャープ持続時間を効果的に包含する3つのチャープ持続時間に対応し得る。
【0063】
各データ期間中に、電子機器62は、発信LIDAR信号のチャープ周波数を調整してもよい。以下でより詳細に説明するように、電子機器62は、発信LIDAR信号のチャープ周波数を制御するために、制御分岐からの出力を使用することができる。これにより、発信LIDAR信号のチャープ周波数、及びその結果としてのLIDAR出力信号が、時間の関数として電子機器に知られるようになる。場合によっては、データサイクルは、第1チャープ持続時間等の第1データ期間と、第2チャープ持続時間等の第2データ期間とを含む。第1チャープ持続時間中、電子機器62は発信LIDAR信号の周波数を増加させてもよく、第2チャープ持続時間中、電子機器62は発信LIDAR信号の周波数を減少させてもよく、またはその逆でもよい。
【0064】
第1チャープ持続時間中に発信 LIDAR 信号の周波数が増加すると、LIDAR力信号は、 LIDARチップから遠ざかり、視野のサンプル領域に位置する物体は LIDAR出力信号からの光を反射し得る。その後、反射光の少なくとも一部は、前述のように、第1 LIDAR入力信号を介してチップに戻される。LIDAR出力信号及び第1 LIDAR入力信号がチップと反射物体との間を移動している間、発信LIDAR信号の周波数は増加し続けることがある。発信LIDAR信号の一部が参照信号として傍受されるため、参照信号の周波数は増加し続ける。その結果、第1 LIDAR入力信号は、同時に光結合構成要素に入射する参照信号よりも低い周波数で光結合構成要素28に入射する。さらに、反射物体がチップから離れているほど、第1 LIDAR入力信号がチップに戻る前に参照信号の周波数が高くなる。これは、反射物体が遠くにあるほど、LIDAR出力信号としてLIDARチップを出て、第1 LIDAR入力信号として戻る発信 LIDAR 信号に関連する往復遅延が大きくなるためである。従って、第1 LIDAR入力信号の周波数と参照信号の周波数との差が大きいほど、反射物体はチップから遠くなる。結果として、第1 LIDAR入力信号の周波数と参照信号の周波数との間の差は、チップと反射物体との間の距離の関数である。
【0065】
同じ理由で、発信LIDAR信号の周波数が 第2データ期間中に減少すると、第1 LIDAR入力信号は、光合成構成要素に同時に入射する参照信号よりも高い周波数で光合成構成要素に入射する。第2データ期間中の第1 LIDAR入力信号の周波数と参照信号の周波数との差も、LIDARシステムと反射物体との間の距離の関数である。
【0066】
場合によっては、第1 LIDAR入力信号の周波数と参照信号の周波数の差も、ドップラー効果の関数になることがある。これは、LIDARシステムと反射物体の相対運動も、第1 LIDAR入力信号の周波数に影響を与え得るためである。 例えば、LIDARシステムが反射物体に近づいたり遠ざかったり、及び/または反射物体がLIDARシステムに近づいたり遠ざかったりすると、ドップラー効果が第1 LIDAR入力信号の周波数に影響を与え得る。第1 LIDAR入力信号の周波数は、反射物体とLIDARシステムの間の視線速度の関数であるため、第1 LIDAR入力信号の周波数と参照信号の周波数の差も、反射物体とLIDARシステムの間の視線速度の関数である。従って、第1 LIDAR入力信号の周波数と参照信号の周波数との間の差は、LIDARシステムと反射物体との間の距離及び/または視線速度の関数である。
【0067】
複合信号は、光結合構成要素28内で発生し得る第1 LIDAR入力信号と参照信号との間の干渉に基づくことがある。例えば、2x2 MMIは第1 LIDAR入力信号と参照信号を互いに近接した2つの光路に誘導し、これらの信号は異なる周波数を持っているため、第1 LIDAR入力信号と参照信号の間にうなりが発生する。従って、複合信号は、第1 LIDAR入力信号と参照信号との間の周波数差に関連したビート周波数と関連付けることができ、ビート周波数を用いて、第1 LIDAR入力信号と参照信号との間の周波数の差を測定することができる。 複合信号のビート周波数が高いほど、第1 LIDAR入力信号と参照信号の周波数の差が大きいことを示す。その結果、データ信号のビート周波数は、LIDAR システムと反射物体との間の距離及び/または視線速度の関数である。
【0068】
2つ以上のデータ期間またはチャープ持続時間からのビート周波数(fLDP)を組み合わせて、反射物体に関連する周波数領域情報や距離及び/または視線速度情報を包含し得るLIDARデータを産生することができる。例えば、電子機器62が第1データ期間(DP1)から測定する第1ビート周波数を、該電子機器が第2データ期間(DP2)から測定する第2ビート周波数と組み合わせて、反射物体のLIDARシステムからの距離を測定することができ、また、いくつかの実施形態では、反射物体とLIDARシステムとの間の相対速度を測定することができる。
【0069】
以下の方程式は、電子機器62が発信LIDAR信号の周波数を直線的に増加させ得る第1データ期間中に適用することができる:fub=-fd+ατ。ここで、fubは、ビート周波数であり、fdは、ドップラーシフト(fd=2νfc/c)を表す。ここで、fcは、光周波数(fo)を表す。cは、光速を表す。νは、反射物体とLIDARシステムの間の視線速度である。ここで、該反射物体から前記チップに向かう方向は正方向を想定される。次の方程式は、電子機器が発信LIDAR信号の周波数を直線的に減少させる第2データ期間中に適用できる:fdb=-fd+ατ。ここで、fdbは、ビート周波数である。これらの 2つの方程式では、fd及びτは、未知数である。電子機器62は、これら2つの方程式中の2つの未知数を解くことができる。次に、サンプル領域を持つ反射物体の視線速度は、ドップラーシフト(ν= c*fd/(2fc))から測定でき、該サンプル領域内の該反射物体とLIDARチップとの間の分離距離は、c*fd/2から測定できる。
【0070】
LIDARチップと反射物体の間の視線速度がゼロまたは非常に小さい場合、ビート周波数に対するドップラー効果の寄与は、本質的にゼロである。これらの例では、ドップラー効果は、ビート周波数に実質的に寄与しない可能性があり、電子機器62は、第1データ期間を用いてチップと反射物体との間の距離を測定し得る。
【0071】
動作中、電子機器62は、制御光センサ61から出力される電気制御信号に応答して、発信LIDAR信号の周波数を調整することができる。上述のように、制御光センサ61から出力される電気制御信号の大きさは、該発信LIDAR信号の周波数の関数である。従って、電子機器62は、制御の大きさに応答して、発信LIDAR信号の周波数を調整することができる。例えば、データ期間中に発信LIDAR信号の周波数を変更する間、電子機器62は、時間の関数として、電気制御信号の大きさのプリセット値の範囲を有することができる。データ期間中の複数の異なる時点で、電子機器62は、電気制御信号の大きさを、サンプル内の現在の時間に関連するプリセット値の範囲と比較することができる。電気制御信号の大きさが、発信LIDAR信号の周波数が関連する電気制御信号の大きさの範囲外にあることを示す場合、電子機器62は、光源10を動作させて、発信LIDAR信号の周波数を変更し、関連の範囲内に収まるようにすることができる。 電気制御信号の大きさが、発信LIDAR信号の周波数が関連する電気制御信号の大きさの範囲内にあることを示す場合、電子機器62は、発信LIDAR信号の周波数を変更しなくてもよい。
【0072】
図3は、他の電子機器、制御部、及び/または処理回路と通信する
図2のLIDARチップの一部の概略図を示す。例えば、
図2の光結合構成要素28(例えば、2x2 MMI)は、アナログ・デジタル変換器(ADC)306及び制御ユニット104と電気的に接続されている平衡光検出器(BPD)302及び/またはトランスインピーダンス増幅器(TIA)304等の変換器要素とインターフェースし得る。
【0073】
TIA 304は、平衡光検出器302配置の経時的に変化する光電流出力を、
図2を参照して上述したようなビート周波数を有する経時的に変化する電圧信号またはビート信号に変換するように構成され得る。いくつかの実施形態によれば、ビート信号は、大部分が正弦波であってもよく、また、少なくともLIDARチップと反射物体との間の相対速度の関数であってもよい。例えば、LIDAR チップと反射物体が互いに向かって移動している場合、ビート信号の周波数が高くなり、その逆の場合もある。次いで、ビート信号は、所定のサンプリング周波数に基づいてビート信号をサンプリングして、サンプリングされたまたは量子化されたビート信号出力を産生するADC 306への入力として機能することができる。所定のサンプリング周波数は、LIDARシステムの動作の最大範囲に基づいてもよい。場合によっては、所定のサンプリング周波数は、LIDARシステムの動作の最大範囲及び走査対象とLIDARチップとの間の最大相対速度に基づいてもよい。いくつかの実施形態では、前記サンプリング周波数は、100 MHz~400 MHzの間で変化し得る。ビート周波数を推定するために、サンプリングされたADC 306のビート信号出力は、制御ユニット104に電気的に接続されてもよい。
【0074】
前記平衡光検出器は、
図2に関して上記したように直列に配置された光センサ40及び42を備えてもよい。TIA 304は、LIDARチップ上に含まれてもよく、またはLIDARチップと分離されてもよい。ADC 306は、個別の構成要素であってもよく、または制御ユニット104の一部を構成し得る他の処理要素の一部であってもよい。 代替の実施形態では、2x2 MMI 28は、
図2に関して上記したような2x1 MMIに置き換えられてもよい。制御ユニット104は、1つまたは複数のDSP、ASIC、FPGA、CPU等を含んでもよい。
【0075】
図4は、
図1~3に記載されたECL 10の例示的な概略図を示す。ECL 10は、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板416上に製造された利得媒体5、移相器7、及び回折格子8を含み得る。ECL 10の各構成要素の寸法は、必要なレーザー発振波長、チャープ帯域幅、チャープ率、及び/またはチャープ直線性に基づいて測定してもよい。L
phとして示される移相器7の長さは、1 μm~10 mmの間で変化し得る。移相器の幅は、
図5に示されるp-i-n構造の寸法に基づいてもよい。前記利得媒体は、100 μm~100 mmの間で変化する長さL
a及び幅W
a(図示せず)を有してもよい。前記利得媒体は、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)、及び窒化ガリウム(GaN)等の様々な利得媒体から構成されてもよい。前記回折格子は、0.1 mm~10 mmの間で変化する長さL
g及び幅W
g(図示せず)を有してもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、移相器7は、利得媒体5と回折格子8との間に配置してもよい。利得媒体と移相器との間の距離は、Lv
1によって与えられてもよい。例えば、Lv
1は、100 μm~約10 mmの間で変化してもよい。いくつかの実施形態では、移相器7は、利得媒体に隣接して、その間にほぼ間隔をあけずに配置してもよい。
図4でLv
2として示される移相器と回折格子との間の間隔は、約100 μm~10 mmの間で変化してもよい。いくつかの実施形態では、移相器7は、回折格子に隣接して、間にほぼ間隔を空けずに配置してもよい。いくつかの実施形態では、Lv
1 + Lv
2 + Lv
OAのような、利得媒体と回折格子との間の距離は、移相器の長さにほぼ等しくてもよい。いくつかの実施形態では、利得媒体と回折格子との間の距離を移相器の長さに近づけるように減少することは、ECL出力の線幅の増加を引き起こし得るため、望ましくない場合がある。従って、ECL出力に関連する狭い線幅を達成するために、800 μm~12 mmの間で変化する(Lv
1 + Lv
2 + Lv
OA)のように、利得媒体からさらに離れて回折格子を配置することが好ましい場合がある。
【0077】
ECL 10は、SOIウェーハ上に製造されてもよいが、本明細書に記載のp-i-n移相器と同様の動作をする移相器要素を有するECLを製造するために使用できる他の基板等を使用することができる。利得媒体5は、反射されたレーザー光を利得媒体に再誘導するための1つまたは複数の反射面を含んでもよい。いくつかの実施形態では、利得媒体5は、ピークレーザー発振波長の利得媒体への反射を最小限に抑えながら、ピークレーザー発振波長の透過を可能にする1つまたは複数の反射防止面を含んでもよい。いくつかの実施形態では、固有シリコン領域418は、移相器及び/または回折格子の下にあってもよい。他の実施形態では、移相器及び/または回折格子領域は、酸化物基板の真上にあって、重なるシリコン領域が完全にエッチング除去された状態で作製されてもよい。
【0078】
LIDARチップは、利得媒体に電気的に接続される電気接触パッドの第1セットと、ECL 10のp-i-n構造に電気的に接続される電気接触パッドの第2セットとを含んでもよい。該p-i-n構造は、電圧バイアスを提供するための金属接触の対応セットを含んでもよい。例えば、pドープ領域及びnドープ領域はそれぞれ、後述する
図5に示すように、上面に金属接触を含んでもよい。次いで、移相器への電圧バイアスは、p-i-n構造の金属接点に電気的に接続された第2セットの電気接点パッドを介して印加してもよい。オンチップ及び/またはオフチップに配置された電子機器62または他の処理回路は、移相器に印加される電圧バイアスを測定してもよい。同じ電子機器及び/または処理回路が、レーザー駆動電流に関連する振幅変調を制御してもよい。例えば、同じ電子機器及び/または処理回路が、利得媒体の励起及び移相器に印加される電圧バイアスを制御してもよい。他の実施形態では、電子機器62は、レーザー駆動電流を制御してもよく、また、異なる制御電子機器は、移相器の動作を制御してもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、ECL 10は、利得媒体5を含み得るが、移相器7及び回折格子8は、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板416上にPICの他の光子成分とともに製造してもよい。例えば、ECL 10は、別個に製造してもよく、前記導波路、干渉計、回折格子、移相器等の光子成分を含むPICは、別個に製造してもよい。
【0080】
図5は、移相器7の、
図4の450と表記された線に沿った断面図を示す。該p-i-n構造は、移相器のpドープ領域512及びnドープ領域514によっていずれかの側が取り囲まれた固有なシリコンリッジ導波路510を備える。いくつかの実施形態では、前記シリコンウェーハを選択的にエッチングして、固有なリッジ導波路の構造を形成し、続いて選択的にドーピングして、pドープ領域及びnドープ領域を形成してもよい。前記シリコンリッジ領域は、
図5のy軸に沿って、pドープ領域及びnドープ領域の上面の上に、10 nm~100 nm程度に延在してもよい。該シリコンリッジ導波路の幅は、約0.1 μm~10 μmの間で変化してもよい。該シリコンリッジ導波路の寸法は、所望のECL 10のレーザー発振波長及び/または偏光に基づいて測定してもよい。例えば、横電界(TE)方向に分極された約1550 nmを中心とするレーザー波長を産生するために、前記シリコンリッジ導波路は、
図4のz方向に沿った伝搬方向に垂直な平面(
図4のx-y平面)内を伝搬する電界で、約1550 nmの基本導波モードをサポートする必要がある。
【0081】
いくつかの実施形態では、重なるシリコン領域の一部を選択的にエッチングして、固有シリコン領域の下にあるシリコン領域418を残してもよい。いくつかの実施形態では、該シリコン領域418は、pドープ領域及びnドープ領域の下の領域まで延在してもよく、他の例では、前記pドープ領域及びnドープ領域は、その下にある基板領域416まで及び/またはその中まで延在してもよい。シリコン418及び/または基板416へのドーパント拡散の程度は、プロセス条件に応じて変化してもよく、また、ウェーハごとに変化してもよい。pドープ領域及びnドープ領域をそれぞれ接続する金属接触516及び518を使用して、適切な移相器バイアス制御を行うことができる。次に、該移相器バイアスは、分岐点を順方向または逆方向にバイアスすることによって p-i-n 移相器の動作を変更することができる。これにより、キャリアの注入または枯渇を引き起こす。これにより、固有シリコンリッジ導波領域の屈折率が変化し、ECL空洞からのレーザー発光の周波数が変化する。
【0082】
図2に関して前述したように、ECL 10は、それぞれ利得媒体の励起及び移相器のバイアスを介して、レーザー発振波長及びレーザー発振波長に関連する周波数変調またはチャープの別個の制御を可能にすることができる。2つの別個のメカニズムを介したレーザー空洞内の中心レーザー発振波長と位相変化の制御により、レーザーの安定性が向上し、チャープ直線性が向上し、チャープ帯域幅が増加する。例えば、p-i-n 移相器を備えたECLは、800 MHz~数GHzのチャープ帯域幅及び0.1%未満のチャープ直線性で動作することができる。これは、利得媒体がレーザー発振とチャープ変調を行う、約1 GHzの最大チャープ帯域幅を持つECLの性能とは異なる。例えば、利得媒体は、一定のDCバイアス及び励起周波数を変調するための別の別個の電圧バイアスで励起されてもよい。この装置では、変化するバイアス電圧に対する利得媒体の熱応答に依存するため、チャープ率とチャープ帯域幅が制限される。例えば、チャープ率は、数百kHzに制限され得る。
【0083】
図6は、約300 μmに等しい長さの移相器に関連する位相シフト及び光損失対注入電流キャリア濃度のプロットを示す。注入電流が増加すると、固有領域内のキャリア濃度が増加する。これにより、レーザー出力の位相シフトが変化する。p-i-n 移相器に順方向の電圧バイアス(例えば、0.7 V ~ 1 V)を印加すると、電流が流れ始める。これにより、キャリア濃度が、約 10
16 キャリア/cm
3~10
18 キャリア/cm
3に変化する。次に、移相器要素を通過する光が経験する位相シフトは、約0~180°またはπの間で変化し得る。そして、対応するレーザー出力に関連する光パワーの損失は、キャリア濃度が増加するにつれて減少し得る。
【0084】
p-i-n 移相器が逆バイアスされている場合、p-i-n領域にはほとんど電流が流れない。移相器に印加される順方向のバイアス電圧は、移相器の寸法(例えば、長さ、幅、及び深さ)に基づいてもよい。
【0085】
図7は、ピークツーピークで約10 mAのレーザー駆動電流の移相器に関連する、ECLによって発光されたピーク波長対注入電流のプロットを示す。移相器に関連する注入電流が0 mAから25 mAに増加すると、ピークレーザー発振波長は約1548 nm~1547.9 nmの間で変化することが分かる。注入電流を25 mAを超えて増加させると、ECLの動作でモードホップが発生し、ECLによってサポートされるレーザー発振モードが急激に変化することが分かる。これにより、
図7に示すように、ピークレーザー発振波長が約1548.05 nmの別の中心波長に急激にホップする。
図7は、p-i-n 移相器を使用したECL動作がモードホップの影響を受ける可能性があることを示しているが、設計及び/または製造の最適化により、広い波長範囲にわたってモードホップのない動作を顕著に保証することができる。例えば、ECL空洞の長さを調整することで、より広い波長範囲0.1 nm~5 nmにわたって、モードホップのないECL動作は可能となり得る。ECL空洞の長さは、Lv
1 + Lv
2 + L
ph + L
gを含み得る。
【0086】
図8A~8Bは、例示的なECL 10の操作方法のフローチャートを示す。ステップ801~806は、
図8Aに示され、ステップ807~809は、
図8Bに示されている。ステップ801では、LIDARシステムは、様々なパラメーター、例えば、チャープ持続時間、データサイクル、サンプリング周波数、チャープ率、チャープ帯域幅、及びECLレーザー駆動電流、出力パワーレベル、及び/または発信LIDAR信号のレーザー発振周波数の制御に関連するECL直線化パラメーター等を初期化してもよい。前記ECL直線化パラメーターは、あるチャープ持続時間から次のチャープ持続時間まで、または2つ以上のチャープ持続時間の間で変化し得る。いくつかの実施形態では、前記直線化パラメーターは、あるデータサイクルから次のデータサイクルまで変化し得る。前記システムは、LIDARシステムの動作範囲に基づいて、いくつかのパラメーターを初期化してもよい。例えば、一部のパラメーターは、LIDARシステムの短距離(20 m未満)、中距離(50 mまで)、及び長距離(50 m以上)での動作で異なる場合がある。
【0087】
ステップ802では、前記システムは、ステップ801で初期化されたパラメーターに応じて、最適なレーザー駆動電流を選択してもよい。例えば、ECL が近距離撮像用に動作する場合、最適なレーザー駆動電流は、ピークツーピークで約5 mAであってもよい。別の例として、ECLを長距離操作用に操作する場合、最適なレーザー駆動電流は、ピークツーピークで約10 mAであってもよい。これにより、LIDAR出力信号が、より大きなパワーを持ち、より長い距離にわたって画像化することができる。
【0088】
ステップ803では、前記システムは、最適なレーザー駆動電流及び/またはステップ801及びステップ802で初期化されたパラメーターに基づいてECLをオンにしてもよい。次いで、該ECLは、固定されたレーザー発振周波数にわたって、一定のLIDAR出力信号を産生してもよい。ステップ804では、前記システムは、上述の様々なパラメーター、例えば、1つのデータサイクルを構成する所望のチャープ率、チャープ帯域幅、チャープ直線性、及び/またはチャープ持続時間に応じて、移相器のための適切な電圧バイアス制御を選択してもよい。
【0089】
ステップ805では、前記システムは、ECLによって産生されたLIDAR出力信号が、
図1~4に関して前述したアップチャープ持続時間及びダウンチャープ持続時間等の変化するチャープ持続時間にわたってチャープされるように、移相器バイアス電圧を制御してもよい。例えば、前記バイアス電圧を0.7 V~1 Vの間で変化させると、ECLは、ピークツーピークで10 mAのレーザー駆動電流に対して、1549 nm~1550 nmの間で変化するチャープされたLIDAR 出力を産生し得る。別の例として、前記バイアス電圧を0.7 V~1 V の間で変化させると、ECLは、ピークツーピークで10 mAのレーザー駆動電流に対して、1310 nm~1311 nmの間で変化するチャープされたLIDAR 出力を産生し得る。
【0090】
ステップ806では、前記システムは、LIDAR出力信号に関連するチャープ直線性を観測及び/または分析してもよい。いくつかの実施形態では、チャープ直線性が所定の直線性閾値を満たす場合、前記システムは、ステップ807に進んでもよい。例えば、前記システムは、チャープ直線性が閾値の0.1%より大きいと測定した場合、直線性の値は満足できない。これは通常、ECL操作の初期化及び開始時に観察され得る。次いで、前記システムは、ステップ807に進み、直線性補正をECLに適用してもよい。該直線性補正は、ECLの出力信号またはLIDAR出力信号に関連するチャープ直線性を改善するために、バイアス電圧を調整し得る。例えば、該直線性補正は、レーザー出力波長を再直線化する修正された電圧バイアス波形に基づいてもよい。別の例として、該直線性補正は、直線性補正係数及び前記の修正された電圧バイアス波形に基づいてもよい。いくつかの実施形態では、直線性補正の適用は、チャープ直線性を0.1%未満に減少させ得る。
【0091】
ステップ808では、前記システムは、予想されるチャープレーザー信号に関して、ECL出力のチャープ直線性を観測し続けてもよい。チャープ直線性が所定の閾値レベルを超えて(例えば、0.1%を超えて)劣化したとシステムが判断した場合、前記システムは、再直線化が必要であると判断し、ステップ807に進んでもよい。チャープ直線性が所定の閾値レベルを超える程度に劣化していないとシステムが判断した場合、前記システムは、ステップ808に進み、ECL出力信号に関連するチャープ直線性を観測し続けてもよい。
【0092】
図2及び3は、単一のオンチップECL 10に関連付けられた1つの出力導波路及び1つの入力導波路を備えるLIDARシステムを説明しているが、LIDARシステムは、ウォークオフ関連効果を軽減するために、任意の数の入力導波路を含んでもよい。例えば、反射されたLIDAR信号をより遠くから受信する効率を改善するために(そうでなければ、該LIDAR信号が、走査モジュール106の1つまたは複数のミラーの継続的な回転により、LIDARチップの受信ファセットから離れる方向に向けられ得る)、前記LIDARシステムは、1つの出力導波路と該出力導波路の上下に(LIDARチップの同じエッジに沿って)配置された複数の入力導波路を用いて設計してもよい。
【0093】
ECL 10は、LIDARシステムの文脈で開示されているが、ECL 10は、他の応用、例えば、自動車技術、リモートセンシング、マシンビジョン、及び他の新しい撮像応用等で使用することができる。
【0094】
上述の例示的な実施形態を、プログラム命令を含む非一時的なコンピュータ可読媒体に記録して、処理システムによって具現化される様々な動作を実施してもよい。前記媒体は、プログラム命令、データファイル、データ構造等を単独でまたはと組み合わせて含んでもよい。前記媒体に記録されたプログラム命令は、例示的な実施形態のために特別に設計及び構築されたものであってもよく、またはコンピュータソフトウェア技術の当業者にとって周知で利用可能な種類のものであってもよい。前記非一時的なコンピュータ可読媒体の例には、ハードディスク、フロッピーディスク、磁気テープ等の磁気媒体、CD ROMディスクや DVD等の光学媒体、光ディスク等の光磁気媒体、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ等、プログラム命令を格納して実行するように特別に構成されたハードウェア装置が含まれる。前記非一時的なコンピュータ可読媒体は、プログラム命令が分散方式で格納及び実行されるように、分散ネットワークであってもよい。前記プログラム命令は、1つまたは複数のプロセッサまたは計算要素によって実行され得る。前記非一時的なコンピュータ可読媒体はまた、プログラム命令を実行する(プロセッサのように処理する)少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)または現場で書き換え可能な論理回路の多数配列(FPGA)で具現化され得る。プログラム命令の例には、コンパイラによって生成されるようなマシンコード及び上記の例示的な実施形態の動作を実行するために1つまたは複数のソフトウェアモジュールとして機能するように構成され得る高レベルコードを含むファイルの両方、またはその逆が含まれる。
【0095】
例示的な実施形態が示され、説明されてきたが、本開示の原理及び主旨から逸脱することなく、これらの例示的な実施形態に変更を加えることができることを当業者は理解するであろう。その範囲は、特許請求の範囲及びその同等な物によって定義される。
【国際調査報告】