(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-05
(54)【発明の名称】車両表面分析システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20230928BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G01N21/27 A
G01B11/30 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516542
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(85)【翻訳文提出日】2023-05-02
(86)【国際出願番号】 DE2021000127
(87)【国際公開番号】W WO2022053089
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】102020005611.3
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】202020003891.1
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520375066
【氏名又は名称】ツインナー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブゴビクス、ヨーゼ
(72)【発明者】
【氏名】ゾルト、デュダツ
(72)【発明者】
【氏名】シュルター、ハンス
【テーマコード(参考)】
2F065
2G059
【Fターム(参考)】
2F065AA49
2F065CC11
2F065FF01
2F065FF61
2F065GG07
2F065GG23
2F065HH02
2F065HH12
2F065HH14
2F065JJ03
2F065JJ05
2F065JJ08
2F065JJ26
2F065PP13
2F065QQ03
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ41
2F065RR06
2F065RR08
2F065SS13
2G059AA05
2G059BB08
2G059CC20
2G059EE02
2G059EE13
2G059GG02
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM09
2G059MM10
(57)【要約】
本発明は、車両位置決めユニットと、光学画像取得ユニットと、評価ユニットとを備える車両表面分析システムに関する。車両位置決めユニットは、特に、車両を支持するための回転可能なプラットフォームを備える。画像取得ユニットは、異なる波長ワークスペクトル及び放射エネルギーレベルで動作し、多数の記録された画像を生成する複数の個別の画像取得ユニットを備える。評価ユニットは、差分値生成モジュールと、差分値評価モジュールと、総合評価モジュールと、生成モジュールとを備え、車両のデジタル表面状態画像を提供するように設計される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両表面分析システムであって、
車両位置決めユニット(1)と、光学画像取得ユニット(2)と、評価ユニット(3)とを備え、
前記車両位置決めユニットがプラットフォーム(11)及びプラットフォーム位置検出ユニット(12)を備え、前記プラットフォーム(11)がその上に車両(4)を支持するように設計されており、前記プラットフォーム(11)が前記配置された車両(4)の垂直軸の周りで回転可能であり、前記プラットフォーム位置検出ユニット(12)がプラットフォーム位置データを記録し、それらを送信可能な形態で前記評価ユニット(3)に提供するように設計されており、
前記光学画像取得ユニット(2)がいくつかの個別の画像取得ユニット(21)と、位置決めユニット(23)とを備え、
前記個別の画像取得ユニット(21)のそれぞれが光源(211)と画像カメラ(212)とを備え、
前記個別の画像取得ユニット(21)のそれぞれが画像取得範囲(22)を有し、前記画像取得範囲(22)が少なくとも部分的に前記車両(4)の表面をカバーし、
前記個別の画像取得ユニット(21)のそれぞれが前記個別の画像取得ユニット(21)の別の1つの波長ワークスペクトルとは異なる波長ワークスペクトルを有し、
前記個別の画像取得ユニット(21)のそれぞれの前記光源(221)が複数の異なる放射エネルギーレベルを提供するように設計され、
前記位置決めユニット(23)が前記個別の光学画像取得ユニット(21)の互いに対する、及び前記車両位置決めユニット(1)に対する位置関係を判定し、
前記個別の画像取得ユニット(21)が前記車両(4)のオブジェクトポイントの画像取得の画素データを取得し、それを前記評価ユニット(3)に送信可能な形態で提供するように設計され、
前記画素データが波長関連及び放射エネルギーレベル関連の光強度値データと、前記オブジェクトポイントの座標データとを含み、
前記評価ユニット(3)が差分値生成モジュール(31)と、差分値評価モジュール(32)と、総合評価モジュール(33)と、生成モジュール(34)とを備え、
前記差分値生成モジュール(31)が前記関連する座標データを用いたオブジェクトポイントの前記画像取得の前記光強度値データを、同じオブジェクトポイントの少なくとも1つの更なる画像取得の前記光強度値データにマッピングし、光強度値データ比較で前記光強度値データを比較し、そこから差分値データを生成し、並びに前記差分値データを前記差分値評価モジュール(32)に提供するように設計され、
前記差分値評価モジュール(32)が前記評価に基づいて前記差分値データの品質の評価を実行し、前記差分値品質の調整可能な品質値に達したときに使用可能な差分値データに、及び前記品質値に達しなかったときに使用不可能な差分値データに分類し、使用可能な差分値データを送信可能な形態で前記総合評価モジュール(33)に提供するように設計され、
前記総合評価モジュール(32)が前記オブジェクトポイントの前記座標データを使用して、前記光強度値データ比較からの前記使用可能な差分値データを、更なる光強度値データ比較からの更なる使用可能な差分値データにマッピングし、前記光強度値データ比較からの前記使用可能な差分値データの前記品質値と、前記更なる光強度値データ比較からの前記更なる使用可能な差分値データの前記品質値との比較を行い、重み付き差分値データとして前記品質値に応じて前記使用可能な差分値データの重み付けを行うように設計され、
前記生成モジュール(33)が前記プラットフォーム位置データを含むことによって前記画素データからの前記座標データを一様空間座標系にマッピングし、前記一様空間座標系における前記車両(4)のデジタル表面輪郭画像を生成し、前記座標データに基づいて前記重み付き差分値データを加算することによって前記車両(4)の前記デジタル表面輪郭画像を補完して前記車両のデジタル表面品質画像を作成し、前記デジタル表面品質画像を表示可能に提供するように設計される、車両表面分析システム。
【請求項2】
前記車両記録システムがハウジング(5)を備え、前記車両位置決めユニット(1)が前記ハウジング(5)内に配置される
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両表面分析システム。
【請求項3】
前記車両記録システムが比較モジュール(35)を備え、前記比較モジュール(35)が基準デジタル表面状態画像に関するデータを有するデータベースを含み、前記比較モジュール(35)が前記デジタル表面状態画像と前記基準表面状態画像との間の比較を実行し、デジタル差分画像を生成するように設計される
ことを特徴とする、請求項1又は2のいずれか一項に記載の車両表面分析システム。
【請求項4】
前記車両記録システムが修理計算モジュール(36)を備え、前記修理計算モジュール(36)が修理データを有するデータベースを備え、前記修理データがスペアパーツ、修理作業時間、及び修理費用に関するデータを含み、前記修理計算モジュール(36)が前記デジタル差分画像及び前記修理データに基づいて修理評価を生成するように設計され、前記修理評価が修理に必要なスペアパーツ、使用される修理作業時間、及び修理費用を含む
ことを特徴とする、請求項3に記載の車両表面分析システム。
【請求項5】
前記車両表面システムが査定モジュール(37)を備え、前記査定モジュール(37)が車両価格データを有するデータベースを備え、前記査定モジュール(37)が前記車両価格データ、前記デジタル差分画像、及び前記修理データに基づいて車両査定を生成するように設計される
ことを特徴とする、請求項3又は4のいずれか一項に記載の車両表面分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録すべき車両の表面状態、特に、塗装表面をデジタル的に記録し、評価し、表面状態をデジタル画像として提供するための車両分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両表面、特に、車両塗装の状態をチェックすることは、従来技術から基本的に知られている。例えば、磁気誘導法を用いて塗膜の厚さ測定を実行することが知られている。これの欠点は、非磁性車両領域に対して実行できないことである。更に、渦電流法を用いた塗膜測定装置が従来から知られている。この装置は、アルミニウムなどの非磁性表面下にも使用することができる。プラスチックバンパーなどの非金属表面下の測定が不可能であるという欠点が依然として存在する。更に、最新技術から知られているこのような測定装置は、塗料の厚さに関する情報のみを提供し、状態の評価に関連し得る他のパラメータに関する情報を提供してくれない。別の欠点は、判定が選択的かつ手動でのみ実行され、非接触型の技術ではないことである。
【発明の概要】
【0003】
本発明の課題は、主観的な評価に依存せず、様々なタイプの車両表面を可能な限り少ない時間と人員で記録することができる、車両表面の状態を記録し評価するための耐タンパー性で使いやすいソリューションを提供することである。
【0004】
この課題は、請求項1に示す特徴を有する車両表面分析システムによって解決される。好ましい実施形態は、更に、従属請求項から生じる。
【0005】
本発明による車両表面分析システムは、その主要な構成要素として、車両位置決めユニット、光学画像取得ユニット、及び評価ユニットを備える。
【0006】
本発明によれば、車両位置決めユニットは、分析対象の車両を支持し、本発明によるシステムの更なる構成要素に対してその空間的位置を定義することを意図している。この目的のために、プラットフォーム及びプラットフォーム位置検出ユニットを備える。
【0007】
プラットフォームは、車両を載せることができるように、サイズや耐荷重能力に関して設計される。車両自体は、本発明によるシステムの一部ではない。この意味での車両は、陸上車両、特に、乗用車であると理解される。プラットフォームは、回転可能ユニットとして設計される。プラットフォームの回転軸は、プラットフォームが実質的に水平に配置されるように、プラットフォーム上に載せられた車両の垂直軸に対応する。したがって、プラットフォームは、好ましくは、回転プレートの設計に対応する。
【0008】
プラットフォーム位置検出ユニットは、プラットフォーム位置データを収集するために使用することができるように設計される。プラットフォーム位置データは、回転可能なプラットフォームの角度位置を記述し、したがって、その上に載せられた車両の角度位置を間接的に記述する。検出プロセス中にプラットフォームを回転させると、異なる角度位置の異なる空間座標を有する車両のオブジェクトポイント同士をマッピングすることができる。プラットフォーム位置データを評価ユニットへ送信できるようにする。車両位置決めユニットと評価ユニットは、プラットフォーム位置データの送信のために互いにデータ接続されている。
【0009】
光学画像取得ユニットは、車両の表面のいくつかの、好ましくは多数の記録画像を提供するように設計されており、第一に車両の表面全体を取り込むことが好ましく、第二に1つの同じ表面部分がいくつかの画像取得によって同時に取り込まれる。
【0010】
この目的のために、光学画像取得ユニットは、いくつかの個別の画像取得ユニットを有する。本発明によれば、いくつかの個別の画像取得ユニットは、少なくとも2つの個別の画像取得ユニットがあることを意味する。しかしながら、好ましくは、少なくとも3つ以上の数の個別の画像取得ユニットが存在する。
【0011】
個別の画像取得ユニットはそれぞれ、光源と画像カメラとを備える。光源と画像カメラは、互いに一致する波長ワークスペクトルを有する。これは、光源の発光スペクトルと画像カメラの取得スペクトルとが少なくとも部分的に重なることを意味する。しかしながら、いくつかの個別の画像取得ユニットの波長ワークスペクトルは互いに異なる。
【0012】
好ましくは、光学画像取得ユニットは、赤外波長域(以下、IRとも略す)の画像取得ユニット、可視波長域の個別の画像取得ユニット、及び紫外波長域(以下、UVとも略す)の画像取得ユニットを有する。しかしながら、他の波長域の更なる画像取得ユニットを設けてもよい。可視光は、380nm~780nmの波長域であると理解される。IRは780nm超の波長範囲であり、UVは380nm未満の波長域である。
【0013】
光源は、好ましくはLEDであり得、このLEDは、好適には、正確に決定可能な狭帯域発光スペクトルを有する。車両表面によって反射されるスペクトルは、車両表面の特性と光源によって適用されるスペクトルとの両方に依存する。正確に定義可能な発光スペクトルを使用することにより、得られる反射スペクトルから車両表面の特性に関する高い分析品質を実現することができる。
【0014】
反射スペクトルは、関連する画像カメラによって画像として記録され、関連する画像カメラのワーキングスペクトルは、光源の発光スペクトルに適合される。
【0015】
本発明によれば、いくつかの個別の画像取得ユニットの波長ワークスペクトルは互いに異なる。これは、個別の画像取得ユニットの光源それぞれが異なる発光スペクトルを有し、画像カメラも異なるワークスペクトルを有することを意味し、各画像カメラのワークスペクトルは、対応してマッピングされた光源に適合される。
【0016】
異なる波長ワークスペクトルに起因して、車両表面の1つの同じオブジェクトポイントから異なる反射スペクトルが得られ、対応する画像取得において分析に利用可能である。
【0017】
本発明によれば、個別の画像取得ユニットのそれぞれは、更に、光源のいくつかの異なる放射エネルギーレベルを有するように設計される。いくつかの異なる放射エネルギーレベルは、好ましくは、少なくとも2つの異なる放射エネルギーレベルを意味すると理解される。この文脈では、本発明は、光源が異なる電力で供給され、したがって異なる光束で照明するということ、及び、例えば、光源が複数のLEDを有し、設定される放射エネルギーレベルに応じて異なる数のLEDがスイッチオンされるということも同様に取り扱う。また、導光装置も含まれ、例えば、レンズ又は開口部によって実現される。記録されるそれぞれの車両表面領域に印加される放射エネルギーレベルの違いが決定的である。
【0018】
特に好ましくは、それぞれの放射エネルギーレベルは、評価ユニットによって決定される。本発明のこの態様を考慮して、光源はこの目的のために評価ユニットから制御信号を受信し、制御信号は個別の接続を介して、又は場合により、それぞれの個別の画像取得ユニットと評価ユニットとの間の既存のデータ接続を介して送信することができる。
【0019】
全ての個別の画像取得ユニットは、プラットフォーム位置データを含むことによって間接的に、車両表面上のオブジェクトポイントの表面座標及び空間座標データを直接的に提供する。全ての光学画像取得ユニットの個別の画像取得ユニットの空間座標データは、1つの同じ空間座標系に関連している。この目的のために、個別の画像取得ユニットは、同じ空間座標系内で較正される。以下、これを一様空間座標系ともいう。
【0020】
個別の画像取得ユニットのそれぞれは、画像取得範囲を有する。画像取得範囲は、車両の表面の少なくとも一部を含む。個別の画像取得ユニットの画像取得範囲は重複しており、共通の画像取得範囲を形成する。プラットフォームは、プラットフォームの上に載せられる車両が少なくとも部分的に共通画像取得範囲内に位置するように配置される。
【0021】
車両は、車両位置決めユニットによって回転される。この回転の間、取得プロセスは順次実行され、プラットフォーム、ひいては車両の複数の異なる角度位置が記録されるが、この角度位置を、以下、取得角度とも言う。
【0022】
各画像取得は、個別の取得を表す。このように、異なる個別の取得は、特定のオブジェクトポイントに関連して、第一に異なる個別の画像取得ユニットによって、したがって異なる波長ワークスペクトルにおいて、第二に1つの同じ個別の画像取得ユニットによって異なる放射エネルギーレベルを用いて、第三に異なる取得角度を用いて実行される。
【0023】
これは、波長ワークスペクトル、放射エネルギーレベル、及び個別の取得が配置される取得角度の三次元空間にまたがる。
【0024】
更に、画像取得ユニットは、位置決めユニットを有する。位置決めユニットは、個別の画像取得ユニット間に、及び個別の画像取得ユニットと車両位置決めユニットとの間に、固定された位置関係を確立する。それは、好ましくはフレーム又はスタンドである。位置決めユニットはまた、ハウジングとして設計されてもよい。
【0025】
好ましくは、マーキングも共通の画像取得範囲内に配置され、個別の画像取得ユニットを同じ一様空間座標系に較正できるようにする。好ましくは、マーキングは、ハウジングの内側にあるべきである。
【0026】
本発明によれば、個別の画像取得ユニットのそれぞれは、更に、車両のオブジェクトポイントの画像ポイントデータを画像取得で取得し、評価ユニットに送信できるように提供できることを特徴とする。画像取得ユニットは、画像取得によって得られた画像ポイントデータが、一方ではオブジェクトポイントの座標データを有し、他方では波長関連及び放射エネルギーレベル関連の光強度データを有するように設計されている。オブジェクトポイントの画像ポイントデータは、好ましくは、データタプル(x、y、g)として結合され、更に処理される。
【0027】
座標データは、二次元座標データ(x、y)として利用可能である。次いで、それらは、評価ユニットによって共通空間座標系の空間座標にマッピングすることができる。
【0028】
本発明の意味での波長関連光強度データは、異なる個別の画像取得ユニットの画像カメラの記録画像の光強度データが、それぞれの波長ワークスペクトルによって決定されるように理解されるべきである。したがって、異なる個別の画像取得ユニットからの光強度データは、1つの同じオブジェクトポイントに対して異なる可能性がある。
【0029】
本発明の目的のために、放射エネルギーレベルに関連する光強度データは、同じ個別の画像取得ユニットの画像カメラの記録画像の光強度データが、適用される放射エネルギーレベルによって決定されることを意味すると理解される。しかしながら、1つの同じオブジェクトポイントに対して同じ個別の画像取得ユニットによって記録された異なる画像からの光強度データは、予想通り、放射エネルギーレベルが異なれば異なる。
【0030】
しかしながら、意外なことに、放射エネルギーレベルに起因する違いは、放射エネルギーレベルの違い及び波長ワークスペクトルの違いによって異なる相関を示し、この異なる相関によってより正確な車両表面の分析が可能になることが判明した。
【0031】
本発明によれば、評価ユニットは、差分値生成モジュールと、差分値評価モジュールと、総合評価モジュールと、生成モジュールとを備える。物理的には、評価ユニットは、コンピュータプログラムを有するコンピュータとして設計されるのが好ましい。
【0032】
評価ユニットは、光学画像取得ユニットからの画素データと車両位置決めユニットからのプラットフォーム位置データとを受信する。
【0033】
差分値生成モジュールは、異なる光強度データから差分値データを生成する。
【0034】
この目的のために、差分値モジュールは、あるオブジェクトポイントについての記録画像の光強度データを、関連する座標データによって、同じオブジェクトポイントについての少なくとも1つの他の記録画像の光強度データにマッピングするように設計される。したがって、例えば、第1の記録画像のデータタプル(x、y、g1)及び第2の記録画像のデータタプル(x、y、g2)は、データタプル(x、y、g1、g2)に結合される。
【0035】
マッピングは、特に、同じ放射エネルギーレベルで取り込まれた、異なる個別の画像取得ユニットからのこのような画像に関連し得る。この場合、記録画像は、異なる波長ワークスペクトルに基づく。
【0036】
更に、異なる放射エネルギーレベルで捕捉された1つの同じ個別の画像取得ユニットからの画像をマッピングすることができる。
【0037】
しかしながら、異なる波長ワークスペクトル及び異なる放射エネルギーレベルの両方に基づく画像取得をマッピングすることも可能である。
【0038】
更に、同じ波長ワークスペクトルや同じ放射エネルギーレベルに基づいていながら、取得角度が異なる画像取得をマッピングすることが可能である。
【0039】
最終的に、波長ワークスペクトル、放射エネルギーレベル、及び取得角度の全ての組合せにおいてマッピングが可能である。
【0040】
更に、例えば、第1のマッピングにおいて、第1の画像取得が同じ個別の画像取得ユニットからの更なる画像取得にマッピングされるが、異なる放射エネルギーレベルであり、次いで、第2のマッピングにおいて、同じ第1の画像取得が異なる個別の画像取得ユニットからの更なる画像取得にマッピングされるという意味では、多重マッピングを行うことが可能である。
【0041】
更に、マッピングが完了した後、差分値生成モジュールは、光強度データ比較において光強度データを比較し、この比較から差分値データを生成するとともに、差分値評価モジュールに差分値データを提供するように設計される。したがって、各マッピングから差分値データを提供することができる。
【0042】
特に、多重マッピングの場合、多数の差分値データを提供することができる。
【0043】
差分値評価モジュールは、差分値データのデータ品質の評価を実施するように設計される。評価に基づいて、この差分値データは、調整可能な品質値を使用して分類される。差分値データがデータ品質の調整可能な品質値に達した場合、使用可能な差分値データとして分類される。差分値データが品質値を下回る場合、使用不可の差分値データに分類される。調整可能品質値は、例えば、隣接するオブジェクトポイントからの差分値の許容偏差に基づいて定義することができる。
【0044】
差分値の生成及び差分値の評価は、使用される各オブジェクトポイントに関して、及び異なる個別の画像取得ユニットの各画像取得に対して実行される。
【0045】
差分値生成モジュール及び差分値評価モジュールは、複数の差分値評価を実施する。差分値生成モジュール及び差分値評価モジュールはそれぞれ、複数の設計を有することが可能である。差分値生成モジュール要素と差分値評価モジュール要素は、画像取得からの画像ポイントデータを並行して処理することが可能であり、1つの同じモジュール又はモジュール要素によって、その後の一時保存を伴う逐次処理を実行することも可能である。
【0046】
特に、1つの同じ個別の画像取得ユニットからの異なる放射エネルギーレベルを有する画像取得がマッピングされる場合、好適には、1つのこのような差分値生成モジュール要素又は1つの差分値評価モジュール要素を1つの個別の画像取得ユニットにマッピングすることが可能である。
【0047】
特定のオブジェクトポイントに関する前述の取得、差分値生成、及びその後の差分値評価による使用可能な差分値データは、総合評価モジュールに送信され、このオブジェクトポイントに関する全ての使用可能な差分値データからの総合評価の基礎を形成する。
【0048】
総合評価モジュールは、オブジェクトポイントの座標データを使用して、差分値評価モジュールから、したがって個別の画像取得ユニットからの使用可能な差分値データを互いにマッピングする。
【0049】
総合評価モジュールは、ある差分値生成の使用可能な差分値データの品質値と、更なる差分値生成の使用可能な差分値データの品質値との比較を実行できるように設計される。これに基づいて、差分値生成の使用可能な差分値データを品質値の関数として、例えば、ランク付け分類の形式で、オブジェクトポイント関連の重み付けを実行することができる。例えば、ランク付け分類に応じて、重み係数を差分値データにマッピングすることができる。例えば、あるオブジェクトポイントの差分値データのうち、品質値が最も高いものに最も高い重み係数を与える。品質値が低いこの特定のオブジェクトポイントの差分値データには、低い重み係数しか与えられない。重み係数は、その後の処理に使用することができ、特に、異なる重み付き差分値データが1つの同じオブジェクトポイントにどのように関連しているかの判定に関与することができる。重み付き差分値データは、変換可能な形式で生成モジュールに提供される。
【0050】
したがって、重み付けは、品質値を用いた差分値データの品質評価に基づいている。品質評価は、差分値データの記録されたデータ品質に対する絶対評価でも、相対評価でもよい。離散的なアルゴリズムに加えて、品質評価に「n対n」関係を含むアルゴリズムを使用することも可能である。このように、例えば、1つの取得角度からの個別の取得に基づく差分値生成からの差分値データの品質が低い場合、複数の取得角度からの個別の取得に基づく差分値生成からの差分値データを用いることで、又は、1つの放射エネルギーレベルでの個別の取得に基づく差分値生成からの差分値データの品質が低い場合、常に1つの同じオブジェクトポイントに関連する複数の異なる放射エネルギーレベルでの差分値生成からの差分値データを用いることで、結果として得られる分析の品質を高めることが可能である。
【0051】
更に、総合評価モジュールによって妥当性チェックを実行することができる。少なくとも3つの重み付き差分値データが1つの同じオブジェクトポイントについて利用可能である場合、総合評価モジュールは、特定のオブジェクトポイントについて利用可能な重み付き差分値データの比較をすることができ、第1の重み付き差分値データの第2及び第3の重み付き差分値データからの偏差の調整可能度から、第1の重み付き差分値データを破棄し、生成モジュールへ更に転送しないように設計することができる。
【0052】
生成モジュールは、個別の画像取得ユニットの重み付き差分値データからの座標データを、プラットフォームの位置データを考慮して一様空間座標系にマッピングするように設計される。プラットフォームの異なる角度位置に対して、車両の1つの同じオブジェクトポイントの重み付き差分値データの異なる座標データが提供される。それでもなお、プラットフォーム座標データも評価ユニットに知られているので、1つの同じオブジェクトポイントに関連する全ての重み付き差分値データをこのオブジェクトポイントに一義的にマッピングすることができる。
【0053】
これに基づいて、第一に、一様空間座標系で車両のデジタル表面輪郭画像を生成する。
【0054】
最初、このようにして生成されたデジタル表面輪郭画像は、座標データのみに基づく。
【0055】
次いで、生成モジュールは、座標データに基づいて、重み付き差分値データから更にデータを追加することによって、車両のデジタル表面輪郭画像を補完し、結果として車両のデジタル表面状態画像を作成する。更なる重み付き差分データには、データタプルから座標データ以外のデータ、即ち、特に、光強度値の差分に関するデータ、重み付けに関するデータ、波長及び放射エネルギーレベルに関するデータなどがある。
【0056】
デジタル表面状態画像は、表示可能な形態で提供される。
【0057】
特に有益な点として、デジタル表面状態画像は、車両表面の全体的な状態、損傷、並びに以前の手直しや修理に関する包括的な情報を提供する。
【0058】
特に、車両表面の以下の特性に関する情報を提供する。
-塗装表面の塗料の相対的な年齢の判定
-クリアコート仕上げの厚さの判定
-塗装表面の欠陥及び凹凸の可視化
-塗装表面及び下にある層の傷又は損傷の検出
-ガラス表面のUV透過率の判定
-プラスチック表面の経年劣化の評価
-プラスチック表面の割れやひび割れの検出
-塗装表面の色差の検出
-塗装表面の光沢度、平滑度、及び表面性状の判定。
【0059】
更なる有益な点は、妨害や改ざんの可能性がある影響は全て排除することができる条件下で、非接触で特性を判定することができることである。
【0060】
特に有益な点として、車両表面分析システムは、いくつかの異なる個別の画像取得ユニットに基づいて車両の一様なデジタル表面状態画像の生成を可能にする。
【0061】
1つの同じオブジェクトポイントに対して、異なる個別の画像取得ユニットによって実行された個別の取得から画像ポイントデータが提供される。
【0062】
専門家は、大量のデータベースを集積することで分析結果の情報価値を高める傾向があるが、逆に、意外にも、集積したデータベースから差分値を決定することで、したがってデータベースを初期に削減することで分析結果の質を向上させることができることが分かっている。
【0063】
更に、以下の事実は、特に、有益である。
【0064】
第一に、個別の画像取得ユニットは、互いに効果的にサポートすることができる。例えば、ある波長域での画像取得は、車両表面のある部分については高い情報品質を提供できるが、他の部分については提供できないが、反対に、異なる波長域での画像取得は、この他の部分についてのみ特に高い情報品質を提供することができる。
【0065】
第二に、車両表面分析システムは、異なる画像取得からの画素データの品質、したがってその使用に対する適合性を自動的に識別し、デジタル表面状態画像のより高い品質を提供する画素データを常に使用することは、有益である。
【0066】
第三に、画素データは、好適には、差分値の生成によって、減法マッピングの方法で最初に割り当てられる。続いて、分析結果の質を更に向上させるために、差分値の累積マッピングが実行される。
【0067】
更に利点として、デジタル表面状態画像により、更に、様々なビューで、例えば、ドアが閉じた状態や開いた状態で、また、様々な視点で、例えば、360°ビューで、車両を表示することができる。
【0068】
特に、以下の2つの重要な用途のために、十分なデータベースを有する車両のデジタル画像を得ることができるという利点がある。
【0069】
第一に、デジタル表面状態画像は、車両の損傷を記録し、これから必要な修理手段を自動的に判定し、必要なスペアパーツと必要な作業工程を特定し、そこから発生する修理費用を特定するのに適しており、全てをデジタル形式で実現可能である。本明細書では、重ね塗りに起因する損傷を検出して表示することができることが、特に、有益である。
【0070】
第二に、デジタル画像を更に処理することで、車両評価を自動的に実行することができ、例えば、中古車の遠隔販売をサポートすることができる。車両評価では、車両年齢、走行距離、前所有者数、及び他の価値決定要因などの追加のデータを、車両価値の自動計算に含めることができる。
【0071】
改ざんに対するセキュリティと、車両損傷登録や車両査定の確実な文書化は、特に、有益である。
【0072】
別の有益な点は、車両表面記録システムのモジュール方式である。要件に応じて、即ち、品質仕様に応じて、又は塗装面、ガラス面又はプラスチック部品面などの分析すべき車両表面のタイプに応じて、車両表面分析システムは、異なる個別の画像取得ユニットを装備することができ、又は特定の画像取得ユニットのみを画像取得に使用することもできる。
【0073】
本発明による車両表面分析システムは、特に、全ての個別の画像取得ユニット、したがって全ての画像取得が1つの同じ座標系に合わせて較正されるという事実に基づいている。画像ポイントデータは、画像取得ユニットの異なる設計に起因して、またプラットフォーム上の車両の回転の結果として異なる角度位置で取得を実行できるという事実に起因して、複数回取得される。1回の取得で得た不確かな情報であっても、更に1回又は複数回の個別の取得で得た他の不確かな情報を追加して使用することができるため、取得した画素データの品質は向上する。
【0074】
デジタル表面状態画像は、有益には複数の層として表現することができ、これが多層情報とも呼ばれ理由である。例えば、ある層では表面の損傷に関する情報を、別の層では以前の損傷の隠れた修理に関する情報をというように、各層には異なる種類の情報が含まれる。このようにして、視聴者又は、例えば、車両評価者は、車両の表面を単に絵で表現するよりも多くの情報を取得する。
【0075】
デジタル表面状態画像が記録された車両表面のデジタルツインを表現するように設計され、車両表面の記録結果は、複数のタイプの情報を有するデジタル表面状態画像として提供される。
【0076】
デジタルツインとしてのデジタル表面品質画像により、そこに集約された情報を、更に自動的に処理することで、例えば、修理計算を行うことも可能である。
【0077】
有益な更なる展開によれば、車両表面分析システムはハウジングを備え、車両位置決めユニットはハウジングの内部に配置される。ハウジングは、記録プロセス中に可視スペクトル及び非可視スペクトルの両方で定義された光条件を達成することができ、特に、干渉光源が遮蔽されるという、特に、有益な効果がある。したがって、好適には 記録されたオブジェクトデータの精度を高めることができる。同時に、環境及び特に人員は、個別の画像取得ユニットの光源から保護され、これは、特に、高い放射エネルギーレベルを有するUV光源に関連する。好ましくは、ハウジングは、同時に、光学画像取得ユニットの位置決めユニットを完全に又は部分的に形成し、個別の画像取得ユニットの位置関係を決定することができる。この目的のために、光学画像取得ユニットもハウジング内に配置することが好ましい。
【0078】
別の更なる展開によれば、車両記録システムは比較モジュールを備える。比較モジュールは、基準デジタル画像に関するデータを有するデータベースを含む。データベースは、内部データベース又は外部データベースであり得る。追加の有益な点として、外部データベースによりデータの一元管理も可能である。基準デジタル画像は、製造されたままの状態の同じタイプの車両を説明するものである。
【0079】
比較モジュールは、デジタル表面状態画像と基準表面状態画像との間の比較を実施してデジタル差分画像を生成するように設計される。デジタル差分画像は、車両状態が記録されている車両の状態が、車両表面の製造時の状態からどの程度乖離しているかを説明するものである。したがって、デジタル差分画像は、特に、表面の経年劣化、損傷、及び修理の程度、即ち、特に、塗装の手直しや表面下の損傷の上塗りの程度を示す。したがって、例えば、状態報告書の形式で出力することができる。この車両状態報告書は、必要な修理、特に、塗装修理や当該車両の価値に関する記述の根拠であり得る。
【0080】
更なる展開では、車両記録システムが修理計算モジュールを備える。修理計算モジュールは、修理データを有するデータベースを備え、修理データは、修理作業時間及び修理費用、並びに場合によっては車両表面のプラスチック部品などのスペアパーツに関するデータも含む。このデータベースは、内部データベース又は外部データベースとして存在することもできる。
【0081】
スペアパーツに関するデータは、どの損傷の場合にどのスペアパーツが修理に必要であるかを示す。修理作業時間データは、修理を実行するために必要な、通常は労働価値と呼ばれる修理時間を含む。修理費用データは、スペアパーツが入手可能な価格と修理作業が可能な費用を示す。したがって、修理費用は、標準価格としてデータベースに保存されることが好ましい。
【0082】
修理計算モジュールは、デジタル差分画像と修理データに基づいて修理評価を作成するように設計されており、修理評価には、修理に必要なスペアパーツ、使用される修理作業時間、及び修理費用が含まれる。
【0083】
この更なる展開により、好適には、必要な修理とその費用に関して、自動的かつ改ざん防止された明細書を得ることが可能である。したがって、費用見積りを自動的に生成することができる。利点として、人件費を大幅に削減できることがある。
【0084】
更なる有益な展開では、修理評価に基づいて、スペアパーツの注文を自動的に行うことも可能である。
【0085】
更なる展開によれば、車両記録システムは査定モジュールを含む。査定モジュールは、車両価格データを有するデータベースを含む。やはり、このデータベースは、内部データベース又は外部データベースであり得る。
【0086】
車両価格データは、例えば、車両構成に応じた定価、車両年齢、走行距離、前所有者数に応じた価格表、及び任意の追加価格データであると理解される。
【0087】
査定モジュールは、デジタル表面状態画像、デジタル差分画像及び修理データの車両価格データに基づいて査定額を生成するように設計される。この査定額は、好ましくは、車両の表面状態が車両の年齢を考慮した比較車両の平均以上又は以下の程度を表す、表面状態に基づく減価額又は価値額であり得る。この更なる展開によれば、車両の商業的価値の判定を支援し、自動化され、したがってほとんど作業を必要とせず、改ざん防止され、信頼性高く文書化することができる解決策が好適に利用可能である。
【0088】
例示的な実施形態を使用することにより、本発明は、添付の図面に基づいてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図2】取得プロセスからの画像取得の概略図である。
【
図3】修理計算モジュールと査定モジュールによるブロック図である。
【0090】
図1は、車両表面分析システムの第1の実施形態の概略図である。
【0091】
車両4は、車両位置決めユニットによって光学画像取得ユニット2に対する位置関係を固定することができる。この目的のために、車両位置決めユニット1は、回転可能なプラットフォーム11を備える。目的通り、車両4をこのプラットフォーム上に駆動することができる。矢印は、プラットフォーム11の回転可能性を示す。車両位置決めユニット1の更なる要素は、プラットフォーム位置検出ユニット12である。それは、プラットフォーム11の回転位置、したがって角度位置を記録し、それを有線データ接続を介して評価ユニット3に送信する。
【0092】
図1には、光学画像取得ユニット2も示されている。これは、例示的な実施形態では、3つの個別の画像取得ユニット21を備える。個別の画像取得ユニットのそれぞれは、光源211及び画像カメラ212を有する。
【0093】
本実施形態では、3つの個別の画像取得ユニット21のうちの1つ目は、赤外光源と赤外画像カメラとを有し、3つの個別の画像取得ユニット21のうちの2つ目は、可視光波長域の光源と画像カメラとを有し、3つの個別の画像取得ユニット21のうちの3つ目は、紫外波長域の光源とカメラとを有する。
【0094】
個別の画像取得ユニット21の画像取得範囲22は、プラットフォーム11上に配置された車両4をカバーするように向けられる。本実施形態では、画像取得範囲22は重複している。
【0095】
例示的な実施形態では、位置決めユニット23はフレームとして設計されている。個別の画像取得ユニット21は、その上に堅固に取り付けられ、したがって、互い及びプラットフォーム11に対する位置関係で固定される。この設計は、較正を行った後、個別の画像取得ユニット21が車両のオブジェクトポイントに取り込んだ全ての画像ポイントデータを、一様空間座標系にマッピングすることを可能にする。
【0096】
図1による例示的な実施形態では、車両表面分析システムは、3つの個別の画像取得ユニット全ての波長範囲に対して不透明なハウジング2を有する。特に、車両位置決めユニット1と光学画像取得ユニット2は、ハウジング5の内部に配置される。ハウジング5には、閉鎖可能な開口部(
図1には示されていない)が設けられており、これを通って車両4をプラットフォーム11上の内部に移動させ、記録完了後に再び外部に移動させることができる。
【0097】
図1はまた、評価ユニット3を示し、この例ではソフトウェアを有するコンピュータからなるコンピュータシステムである。
【0098】
評価ユニット3は、データ接続を介して3つの個別の画像取得ユニット21に接続され、そこから、個別の取得とも呼ばれる画像取得から車両4の車両表面のオブジェクトポイントの画像ポイントデータを受信する。(個別の画像取得ユニット21及びプラットフォーム位置検出ユニット12からの評価ユニット3へのデータ接続は、参照数字を付与せずに示されている)。
【0099】
図1によれば、評価ユニット3は、差分値生成モジュール31と、差分値評価モジュール32と、総合評価モジュール33と、生成モジュール34とを有する。
【0100】
差分値生成モジュール31は、個別の画像取得をマッピングするために使用される。本例示的実施形態では、個別の画像取得ユニット21からいくつかの画像取得が利用可能であり、それぞれの画像取得は異なる放射エネルギーレベルで記録されている。第1の例示的な実施形態によれば、差分値生成モジュール31は、異なる個別の画像取得ユニット21の画像取得のマッピング、即ち、波長ワークスペクトルは異なるがいずれの場合も同じ放射エネルギーレベルを有するマッピングが行われ、それぞれのマッピングから光強度値の差を判定して差分値として提供するように設計される。
【0101】
差分値評価モジュール32は、差分値生成モジュール31から差分値を受け取り、差分値のデータ品質の評価を実施するように構成される。受信した各差分値は、それが妥当な差分値であるかどうかについて、隣接するオブジェクトポイントに対する差分値との比較に基づいて評価される。この基準を満たす差分値は、本実施形態で使用可能であると分類され、使用可能な差分値として総合評価モジュール33に転送される。そうでない場合、差分値は使用不可能として分類され、したがって破棄され、転送されない。受信した全ての差分値は、差分値評価モジュール32によって、このようにして連続的に処理される。
【0102】
したがって、差分値評価モジュール32は、後に作成される車両の表面状態画像に十分に信頼できるデータのみが含まれるため、表面状態画像も高い信頼性を有するという特徴を備える。
【0103】
総合評価モジュール33において、差分値評価モジュール32から得た使用可能な差分値データは、オブジェクトポイントの座標データに基づいて互いにマッピングされ、互いに関連して評価される。
【0104】
使用可能な差分値データを同一のオブジェクトポイントに属するものとしてマッピングすることは、評価ユニット3が、位置決めユニット23による位置固定に基づく個別の画像取得ユニット21の定められた位置と、プラットフォーム位置検出ユニット12を介して知られるプラットフォーム11の角度位置、したがって支持車両4の角度位置とに起因して、全ての個別の画像取得ユニット21に対して一様空間座標系へのマッピングを行うことができるという事実に基づく。
【0105】
マッピングが完了すると、総合評価モジュール33は、この例示的な実施形態において使用可能な差分値データの品質値を比較する。比較の結果、比較された使用可能な差分値データは、例えば、品質値のランクに従って順序付けられ、重み係数がそれらにマッピングされる。最も高い品質値を有する使用可能な差分値データは、最も高い重み係数を受け取り、その逆も同様である。重み係数は品質値に対応する。記録されたオブジェクトポイントごとの使用可能な差分値データは、重み係数と共に生成モジュール34に提供される。
【0106】
プラットフォーム位置データを含めることにより、生成モジュール34は、使用可能な差分値データからの座標データを、一様空間座標系にマッピングする。
【0107】
座標データに基づいて、第一に、一様空間座標系で車両4のデジタル表面輪郭画像を生成する。デジタル表面輪郭画像は、車両表面の幾何学的形状に対応する点群によって形成される。
【0108】
続いて、車両4のデジタル表面輪郭画像に、座標データに基づいて、重み付き差分データから更にデータが追加され、車両4のデジタル表面状態画像が生成される。
【0109】
次いで、このデジタル表面状態画像が表示可能な形態で提供される。例示的な実施形態では、デジタル画像はファイルとして送信される。デジタル表面状態画像は、データ出力装置として機能するモニタで可視化することもできる。しかしながら、デジタル表面状態画像は、単なる視覚化に留まらない。特に、例示的な実施形態では、塗膜厚、塗膜年齢、又は被覆腐食斑などの特定の分析基準に従って、可視化を調整することが可能である。分析基準に応じて、視覚的な印象から逸脱し、分析基準の段階的な形成を色で強調するように可視化を設定できる。
【0110】
図2は、例示的な実施形態における、取得プロセスからの画像取得の可能な分類を示す。x座標は波長λを表し、y座標は放射エネルギーレベルEを表す。この実施形態では、3つの個別の画像取得ユニット21によって画像取得が行われ、第1の個別の画像取得ユニット21はUV域の波長ワークスペクトルλ1で動作し、第2の個別の画像取得ユニット21は可視光域の波長ワークスペクトルλ2で動作し、第3の個別の画像取得ユニット21はIR域の波長ワークスペクトルλ3で動作する。各画像取得ユニットは、異なる放射エネルギーレベルE1、E2及びE3を有する3つの画像を生成する。
【0111】
画像取得λ1E1~λ3E3は、評価ユニットに送信される。例示的な実施形態では、最初に、1つの波長ワークスペクトル内でマッピングが行われ、例えば、差分値生成モジュールによって画像取得λ1E1及びλ1E2から差分値が生成されるとともに、画像取得λ1E2及びλ1E3から更に差分値が生成される。同様に、画像取得λ2E1及びλ2E2、並びにλ2E2及びλ2E3などから、同様に差分値が対応して生成される。更に、例えば、画像取得λ1E1及びλ2E1などから、波長ワークスペクトルは異なるが放射エネルギーレベルは同じである画像取得の間で、更に差分値が生成される。しかしながら、λ1E2及びλ3E3などの任意の「n対n」マッピングからの差分値も可能である。
【0112】
図3は、ブロック図として表現した更なる例示的な実施形態を示しており、ここでは、修理評価と査定の両方を追加的に実行することができる。
【0113】
図1及び
図2による例示的な実施形態の説明は、光学画像取得ユニット2の個別の画像取得ユニット21、差分値生成モジュール31、差分値評価モジュール32、総合評価モジュール33、及び生成モジュール34に対応して当てはまる。
【0114】
デジタル表面状態画像が生成モジュール34によって生成された後、それは
図3による例示的な実施形態における比較モジュール35に転送される。比較モジュール35には、設計の異なる多数の車両モデルの基準デジタル表面状態画像に関するデータを有するデータバンクとしてのデータベース351が含まれており、ここには、記録車両4の基準表面状態画像も含まれる。このデータバンクは、新しく発売された車両モデルを定期的に更新している。比較モジュール35は、デジタル表面状態画像に基づいて記録車両4の車両モデルを特定し、生成モジュール34から受信した記録車両4のデジタル表面状態画像と、データベース351から取得した対応する車両モデルの基準表面状態画像とを比較し、デジタル差分画像を生成する。デジタル差分画像は、記録車両4が当初製造された車両からの偏差に関する情報を含んでいるので、特に隠れた損傷を検出することができる。
【0115】
デジタル差分画像は、修理計算モジュール36と、査定モジュール37の両方で、並行して利用可能にされる。
【0116】
修理計算モジュール36は、修理データを有するデータベース361を備える。修理データは、スペアパーツ、修理作業時間、及び修理費用に関する車両モデル関連データであり、修理費用は標準価格として記憶される。修理計算モジュールは、デジタル基準画像及び修理データに基づいて、修理に必要なスペアパーツと、使用される修理作業時間と、保存されている標準価格に従って発生する修理費用とを判定し、これを修理評価として出力する。
【0117】
累積的又は代替的に、記録車両4の商業価値は、評価決定モジュール37によって判定することができる。
【0118】
この目的のために、査定モジュール37は、車両価格データを有するデータベース371を備える。車両価格データは、特に、多くの車両モデルのリスト価格並びに年齢や走行距離に依存した市場価格に関するデータが含まれており、記録車両4のモデルに関するデータも含まれる。車両価格データ、デジタル差分画像及び修理データに基づいて、査定モジュール37は車両査定額を生成する。オプションとして、以前の所有者の数などの補足的な車両データも、デジタル画像及びデジタル差分画像を介して手動で入力することができ、車両査定額を生成する際に査定モジュール37によって考慮される。
【符号の説明】
【0119】
1 車両位置決めユニット
11 プラットフォーム
12 プラットフォーム位置検出ユニット
2 光学画像取得ユニット
21 個別の画像取得ユニット
211 光源
212 画像カメラ
22 画像取得範囲
23 位置決めユニット
3 評価ユニット
31 差分値生成モジュール
32 差分値評価モジュール
33 総合評価モジュール
34 生成モジュール
35 比較モジュール
351 比較モジュールのデータベース
36 修理計算モジュール
361 修理計算モジュールのデータベース
37 査定モジュール
371 査定モジュールのデータベース
4 車両
5 ハウジング
【国際調査報告】