(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-05
(54)【発明の名称】拡張バンドを有する経口薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 31/00 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
A61M31/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517315
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(85)【翻訳文提出日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 US2021050434
(87)【国際公開番号】W WO2022060820
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ハッセンプフルーク,エリック ガスティン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥオン,アンソニー デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ,エリック ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】フォートナー,ブライアン アール
(72)【発明者】
【氏名】フックス,ラリー キース,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ハッカビー,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ペトレル,トレバー アラン
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,サラ ルイーズ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA01
4C066BB05
4C066CC10
4C066LL30
(57)【要約】
本開示は、薬物送達デバイスを提供する。薬物送達デバイスは、患者によって経口摂取され、カプセルは、患者の胃腸(GI)管内で分解する。薬物でコーティングされ、かつカプセル内に位置する拡張バンドは、拡張し、かつGI管の内部と接合し、薬物がGI管を通って拡散することを可能にする。ある期間後、拡張バンドは、分解し、かつGI管を通過する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性カプセルと、
前記生分解性カプセル内に巻かれた拡張バンドであって、
基板、
前記基板上の接合面、及び
前記接合面に塗布された固体薬物を含み、
前記拡張バンドは、前記生分解性カプセルが少なくとも部分的に分解した後に拡張するように構成され、前記接合面が、患者の胃腸管の内部と接合するように構成され、前記拡張バンドが、前記患者の前記胃腸管内で分解するように更に構成されている、拡張バンドと
を備える、経口薬物送達デバイス。
【請求項2】
前記基板が、複数の基板片を含む、請求項1に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項3】
前記複数の基板片が、生分解性接着剤を通して一緒に結合される、請求項2に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項4】
前記複数の基板片が協働して、前記接合面を画定する、請求項2に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項5】
前記基板が、単一の連続片として形成される、請求項1に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項6】
前記基板が、熱可塑性ポリウレタン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、及びポリカプロラクトンのうちの少なくとも1つの材料からなる、請求項1に記載の経口送達デバイス。
【請求項7】
前記基板が、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、及びポリエチレングリコールのうちの2つ以上のブレンドからなる、請求項6に記載の経口送達デバイス。
【請求項8】
前記生分解性カプセルが、前記生分解性カプセルを取り囲む環境でpHの変化が生じた後に分解するように構成されている、請求項1に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項9】
前記基板が、約0.1mm~約0.3mmの厚さを有する、請求項1に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項10】
前記固体薬物が、ドットの反復パターンで、前記接合面に塗布される、請求項1に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項11】
前記接合面が、粘膜接着剤を含む、請求項1に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項12】
前記固体薬物が、ペプチド及びタンパク質のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項13】
腸溶性コーティングと、
前記腸溶性コーティング内の複数の基板片であって、一緒に結合されている、複数の基板片と、
前記複数の基板片にまたがる接合面であって、患者の胃腸管の内部と接合するように構成されている、接合面と、
前記接合面に塗布される薬物であって、前記患者の前記胃腸管の前記内部を通して吸収されるように構成された薬物と
を含む、経口薬物送達デバイス。
【請求項14】
前記複数の基板片が、湾曲又は線形境界を有する、請求項13に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項15】
前記複数の基板片が、接着剤を通して互いに結合される、請求項13に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項16】
前記複数の基板片及び前記接着剤のうちの少なくとも1つが、前記患者の前記胃腸管内で分解し、かつ前記患者の前記胃腸管を通過するように構成されている、請求項15に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項17】
前記複数の基板片及び前記接着剤のうちの少なくとも1つが、ポリメチルメタクリレート、セルロースエステル、又はポリビニル誘導体からなる、請求項15に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項18】
前記複数の基板片が、レーザ切断及びダイ切断のうちの1つから形成される、請求項13に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項19】
分解するように構成されたカプセルと、
前記カプセル内で巻かれ、かつ前記カプセルが分解した後に、少なくとも部分的にほどけて分解するように構成された基板と、
前記基板上の接合面であって、半径方向外側に面し、かつ患者の胃腸管の内部と接合するように構成された接合面と、
前記接合面に塗布され、かつ前記患者の前記胃腸管の前記内部を通って拡散することによって、患者の血流に入るように構成された薬物と
を含む、経口薬物送達デバイス。
【請求項20】
前記基板が、11mm~18mmの幅及び0.1mm~0.3mmの厚さを有する、請求項19に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項21】
前記接合面が、前記患者の前記胃腸管の前記内部を通る前記薬物の拡散を促進するように構成された前記基板上のコーティングを含む、請求項19に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項22】
前記基板が、複数の基板片を含み、前記複数の基板片が、生分解性接着剤を通して一緒に結合される、請求項21に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項23】
前記基板が、単一の連続片として形成される、請求項19に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項24】
前記基板が、熱可塑性ポリウレタン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、及びポリカプロラクトンのうちの少なくとも1つの材料からなる、請求項19に記載の経口送達デバイス。
【請求項25】
ワイヤレス通信デバイスと、ワイヤレス受信機と、を更に備え、前記ワイヤレス通信デバイスが、生物学的情報を前記ワイヤレス受信機に送信するように構成されている、請求項19に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項26】
前記ワイヤレス通信デバイス及び前記ワイヤレス受信機が、RFID、磁気音響、近距離通信、超音波、及びBluetoothのうちの1つを通して通信する、請求項25に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項27】
生分解性カプセルと、
拡張可能なバンドと、
前記拡張可能なバンド上に配設された固体薬物と、を含み、
前記経口薬物送達デバイスは、
前記拡張可能なバンドが前記カプセル内で巻かれる装填構成、
前記拡張可能なバンドが、前記カプセルの分解時に、少なくとも部分的にほどけ、前記固体薬物を患者と接触させる拡張構成、及び
前記拡張可能なバンドが、分解して、前記患者を通過する折り畳み構成を有する、経口薬物送達デバイス。
【請求項28】
前記拡張可能なバンドが、単一の連続片として形成される、請求項27に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項29】
前記拡張可能なバンドが、熱可塑性ポリウレタン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、及びポリカプロラクトンの少なくとも1つの材料からなる、請求項27に記載の経口送達デバイス。
【請求項30】
薬物送達デバイスを通して、患者に薬物を送達するための方法であって、
前記薬物送達デバイスを前記患者に経口投与することであって、前記薬物送達デバイスが、前記カプセル、前記カプセル内で巻かれた拡張可能なバンド、及び前記拡張可能なバンドの接合面上に配設された固体薬物を含む、経口投与することと、
前記患者の小腸内で前記カプセルを分解することと、
前記小腸の壁を前記接合面と係合させて、前記固体薬物を前記小腸と接触させるために、前記拡張可能なバンドをほどくことと、
前記小腸を通して、前記患者に前記固体薬物を送達することと、を含む、方法。
【請求項31】
前記送達するステップに続いて、前記拡張可能なバンドを折り畳むために、前記拡張可能なバンドを分解するステップを更に含む、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、経口薬物送達デバイスに関する。より具体的には、本開示は、薬物でコーティングされ、かつ患者の胃腸管の内部との接触を通して、薬物を送達するように構成された拡張バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
薬物又は他の生物学的に活性な化合物で治療されている患者にとって、多くの場合、化合物を経口受容するのが最も便利である。ただし、いくつかの化合物の性質により、一度摂取するとその活性を維持することを妨げる。例えば、いくつかの化合物は、胃腸(GI)系の環境に置かれると、変性、消化、又は非活性化される。加えて、いくつかの化合物は、通過するときに、GI系から血流への拡散速度が低く、十分な投与量が患者に送達されるのを妨げる可能性がある。これらの特性を有する化合物については、患者は注射を通して化合物を受容することが多く、これは苦痛かつ不便である。したがって、さもなければ経口摂取されたときには効果がない薬物を首尾よく送達できる経口薬物送達デバイスを開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、薬物送達デバイスを提供する。薬物送達デバイスは、患者によって経口摂取され、カプセルは、患者の胃腸(GI)管内で分解する。薬物でコーティングされ、かつカプセル内に位置する拡張バンドは、拡張し、かつGI管の内部と接合し、薬物がGI管を通って拡散することを可能にする。ある期間後、拡張バンドは、分解し、かつGI管を通過する。
【0004】
例示的な実施形態では、生分解性カプセル、並びに、生分解性カプセル内に巻かれた拡張バンドであって、基板、基板上の接合面、及び接合面に塗布された固体薬物を含み、拡張バンドは、生分解性カプセルが少なくとも部分的に分解した後に拡張するように構成され、接合面が、患者の胃腸管の内部と接合するように構成され、拡張バンドが、患者の胃腸管内で分解するように更に構成されている、拡張バンド、を含む、経口薬物送達デバイスが開示されている。
【0005】
別の実施形態では、腸溶性コーティング、腸溶性コーティング内の複数の基板片であって、一緒に結合されている、複数の基板片、複数の基板片にまたがる接合面であって、患者の胃腸管の内部と接合するように構成されている、接合面、及び接合面に塗布される薬物であり、患者の胃腸管の内部を通して吸収されるように構成された薬物を含む、経口薬物送達デバイスが開示されている。
【0006】
更に別の実施形態では、分解するように構成されたカプセル、カプセル内で巻かれ、かつカプセルが分解した後に、少なくとも部分的にほどけて分解するように構成された基板、基板上の接合面であって、半径方向外側に面し、かつ患者の胃腸管の内部と接合するように構成された接合面、及び接合面に塗布され、かつ患者の胃腸管の内部を通って拡散することによって、患者の血流に入るように構成された薬物を含む、経口薬物送達デバイスが開示されている。
【0007】
更に別の実施形態では、生分解性カプセル、拡張可能なバンド、及び拡張可能なバンド上に配設された固体薬物を含み、経口薬物送達デバイスは、拡張可能なバンドがカプセル内で巻かれる装填構成、拡張可能なバンドが、カプセルの分解時に、少なくとも部分的にほどけ、固体薬物を患者と接触させる拡張構成、及び拡張可能なバンドが、分解して、患者を通過する折り畳み構成を有する、経口薬物送達デバイスが開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の実施形態の以下の説明を添付の図面と併せて参照することによって、本開示の上述及び他の特徴及び利点、並びにそれらを達成する様式は、より明らかになり、かつ本発明自体が、よりよく理解される。
【0009】
【
図1】装填構成で示される、本開示による、薬物送達デバイスの斜視図である。
【
図2】拡張構成で示される、
図1の薬物送達デバイスの拡張バンドの斜視図である。
【
図3】胃腸管内で作動する、
図1の薬物送達デバイスの斜視図である。
【
図4】胃腸管内で作動する、
図1の薬物送達デバイスの斜視図である。
【
図5】胃腸管内で作動する、
図1の薬物送達デバイスの斜視図である。
【
図6】胃腸管内で作動する、
図1の薬物送達デバイスの斜視図である。
【
図7】様々な薬物塗布パターンを含む、
図2の拡大バンドの斜視図である。
【
図8】様々な薬物塗布パターンを含む、
図2の拡大バンドの斜視図である。
【
図9】様々な基板の厚さを有する、
図1の薬物送達デバイスの斜視図である。
【
図10】様々な基板の厚さを有する、
図1の薬物送達デバイスの斜視図である。
【
図11】様々な基板片を有する、
図2の拡大バンドの斜視図である。
【
図12】様々な基板片を有する、
図2の拡大バンドの斜視図である。
【
図13】胃腸管において部分的に分解された、
図11の拡大バンドの斜視図である。
【0010】
複数の図面全体を通して、対応する参照符号は、対応する部品を示す。本明細書に記載される例示は、本発明の例示的な実施形態を示し、かかる例示は、いかなる態様でも本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1~2を参照すると、薬物送達デバイス100が開示される。この開示の目的のために、薬物は、患者/ユーザに投与できる任意の生物学的に活性な化合物であると理解される。薬物送達デバイス100は、カプセル200と、拡張バンド300と、を備える。
【0012】
例示的な実施形態では、カプセル200は、生分解性であり、かつ溶解又はさもなければ崩壊するように構成されている。カプセル200は、pH、温度、光、化学物質濃度、電流若しくは電圧、圧力、速度、加速度、又は任意の他の環境要因の変化を含む、カプセル200の環境の変化に応じて分解するように構成されている。図示の例では、カプセル200は、胃などの低いpH環境から、小腸などの比較的高いpH環境に移動するときに分解するように構成されている。したがって、カプセル200は、GI管に沿った様々な点で分解するように構成されてもよい。カプセル200は、拡張バンド300を取り囲む固体ハウジングからなってもよい。カプセル200は、カプセル200の2つの部分を一緒にし、かつ摩擦、溶接、接着剤、又は機械的結合手段によってこれらの部分を結合することによって、構築されてもよい。カプセル200はまた、拡張バンド300を覆うコーティングとして噴霧されるか、又はさもなければ塗布されてもよい。カプセル200は、胃において安定したままであるが、腸のより高いアルカリ性pHで崩壊するように構成された腸溶性コーティングを含むか、又はそれでコーティングされてもよい。例示的な腸溶性コーティングには、ヒドロキシメチルセルロース(及び他のセルロース誘導体)及びポリビニルアルコールが含まれるが、任意の好適な腸溶性コーティングが提供されてもよい。
【0013】
図示の実施形態では、拡張バンド300は、少なくとも基板320、接合面310、及び接合面310上に配設された薬物350を含む材料の複数の層からなる。拡張バンド300は、装填構成でカプセル200内で巻かれ(
図1参照)、カプセル200の溶解又はカプセル200からの除去の後に、拡張構成で拡張し、かつ少なくとも部分的にほどける(
図2参照)ように構成されている。
【0014】
拡張バンド300の基板320は、1つ以上の材料の単一の層、同じ材料の複数の層、又は異なる特性を有する異なる材料の複数の層を備えてもよい。特定の実施形態では、基板320は、形状記憶ポリマーなどの形状記憶材料からなり、かつ水分、pH、光、化学物質濃度、又は他の環境要因の変化に応答して、拡張構成に拡張するか、又はほどけるように構成されている。基板320は、カプセル200によって(又はカプセル200内の溶解性ラッパー又はバンドによって)装填構成に強制されて保持されるが、カプセル200が所定の点を過ぎて分解すると、半径方向外向きに拡張構成に跳ね返る弾性材料(例えば、柔軟かつばね状であるが、剛性でもある)からなってもよい。弾性材料は、GI管壁を通した薬物の送達に続いて溶解又は分解するように適合されている。基板320の例示的なポリマーは、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、又はポリエチレングリコールを含んでもよいそれらのコポリマー及びブレンドなどの少なくとも1つの生体吸収性/生分解性ポリマーを含む。他の実施形態では、基板320は、熱可塑性ポリウレタンからなる。更に他の実施形態では、基板320は、ポリメチルメタクリレート、セルロースエステル、ポリビニル誘導体、又は他の生物学的に不活性/安全な材料からなってもよい。拡張バンド300の基板320は、ダイ切断、レーザ切断、押し出し、鋳造、又は当技術分野で知られている他の標準的なポリマー成形プロセスを通して形成されてもよい。
【0015】
拡張バンド300の接合面310は、半径方向外向きに面し、以下で更に説明するように、患者のGI管と接合する。図示の実施形態では、接合面310は、基板320の外面に位置する。接合面310及び基板320は、同じ片であってもよく、接合面310は基板320の外面である。別の実施形態では、接合面310は、基板320の外面に塗布される別個の層(例えば、コーティング)である。
【0016】
いくつかの実施形態では、膨潤性材料を含む追加の層が、基板320上に配設又はコーティングされる。例えばヒドロゲルを含んでもよい膨潤性材料は、GI管内の流体などの流体との接合時に膨張するように適合されている。層の膨張は、バンド300をほどくことを更に容易にするために、バンド300に追加の展開力を提供する。一実施形態では、膨潤性材料の追加の層は、基板320の内面、すなわち、半径方向内向きに面する基板表面上に配設されている。
【0017】
拡張バンド300の薬物350は、固体形態で、接合面310上に配設されてもよい。例示的な実施形態では、薬物350は、例えばインスリンのようなペプチド又はタンパク質などの、標準的な経口送達及び消化によって摂取されたときに、典型的には有効性が低い化合物である。例示的な実施形態では、薬物350は、インスリン、インスリンリスプロ又はインスリングラルギンなどのインスリン類似体、インスリン誘導体、デュラグルチド又はリラグルチドなどのGLP-1受容体アゴニスト、グルカゴン、グルカゴン類似体、グルカゴン誘導体、胃抑制ポリペプチド(GIP)、GIP類似体、GIP誘導体、チルゼパチドなどの組み合わされたGIP/GLP-1アゴニスト、オキシントモジュリン類似体、オキシントモジュリン誘導体、治療用抗体、及び他の好適な治療薬を指すが、それに限定されない。薬物350はまた、ワクチン又は遺伝子ベースの薬物を含んでもよい。他の実施形態では、薬物350は、患者に投与される任意の生物学的に活性な化合物であってもよい。薬物350は、ディップコーティング、スプレーコーティング、塗装、又は別の好適な塗布技術によって接合面310上に、又は接合面310と共に塗布され、乾燥されて固体形態になる。
【0018】
図3~6を参照すると、図示の実施形態では、薬物送達デバイス100が、患者のGI管400内で作動していることが図示されている。薬物送達デバイス100は、装填構成で患者に経口投与され、次いで薬物送達デバイス100はGI管400内に移動する(
図3)。例示的な実施形態では、カプセル200は、小腸に入った後に分解するように構成され、それによって、拡張バンド300を解放構成で解放する(
図4参照)。解放されると、拡張バンド300は、拡張し、かつ基板320の固有の構造特性(例えば、形状記憶特性)を通して、拡張構成に部分的にほどける。拡張バンド300は、開放中に拡張してGI管400の内部410に接触し、GI微粒子475の通過のための空間を可能にする。この拡張構成では、接合面310は、GI管400の内部410と接合し、薬物350は、GI管400の内部410に押し付けられる(
図5参照)。拡張構成では、薬物350は、GI管400の内部410を通って患者の血流中に拡散することができる。ある期間後、拡張バンド300は、GI管400内で溶解又はさもなければ崩壊することによって、分解する。分解されたバンド300は、構造的完全性を失い、その拡張構成から折り畳み構成に崩壊し、GI管400を通過することができる(
図6)。
【0019】
拡張バンド300の接合面310は、粘膜接着剤でコーティングされて、拡張構成でGI管400の内部410の粘膜層への接合面310の接着を促進してもよい。接着を促進することによって、粘膜接着剤は、接合面310がGI管400の内部410に接着される時間を増加させる。粘膜接着剤はまた、薬物350の腸液への曝露を制限することによって、GI管400の内部410を横切る拡散中に、薬物350を保護してもよい。接着時間の増加及び薬物350の保護の両方によって、より多くの薬物350が投与されることが可能になり得る。更に、接合面310は、GI管400の内部410を横切る薬物350の拡散を促進するために、他の化学添加剤又はコーティングを含んでもよい。
【0020】
図7~8を参照すると、薬物350は、様々なパターンで、接合面310に塗布されてもよい。図示の実施形態では、薬物350は、グリッドドットパターン(
図7)及び線形パターン(FIG.8)で塗布されてもよい。他の実施形態では、薬物350は、接合面310全体又は大部分の固体コーティングであってもよい。更に、薬物350は、標準的なグリッドに従わないドットパターン(例えば、対角線、形状、曲線など)で、又は様々な方向及び様々な曲率の連続線で塗布されてもよい。例示的な実施形態では、薬物350は、拡張バンド300の構造特性を著しく妨げないパターンで塗布される。
【0021】
図2及び9~10に示されるように、基板350は、様々な実施形態において、様々な寸法を含んでもよい。例示的な実施形態では、基板350は、11mm~17mmの間の幅W、及び0.1mm~0.3mmの間の厚さTを有する。
図9及び10は、基板350の厚さTを変更することが、拡張バンド300がカプセル200内にどのように嵌合するかにどのように影響するかを図示している。例示的な実施形態では、基板350は、拡張バンド300がGI管400の内部410の周りにほぼ等しい圧力を加えることができることを保証するために、GI管400の様々な直径に対応するのに十分な長さを有する。
【0022】
図示の実施形態では、
図1~10を参照すると、基板320は、本明細書に記載の材料の1つ以上からなる単一の連続片として形成される。ここで、
図11~13を参照すると、基板320は、代替的に、基板320を形成するために境界365に沿って一緒に結合された複数の基板セグメント又は片370を含んでもよい。接合面310は、基板片370が協働して、接合面310を画定するように、複数の基板片370にわたってまたがるように構成されている。個々の基板片370は各々、様々な形状を含んでもよい。図示の実施形態では、基板片370は、湾曲した非線形境界365を有する湾曲した山形のセグメント(
図11)と、線形境界365を有する矩形セグメント(
図12)と、を含む。他の実施形態では、基板片370は、湾曲又は直線縁を有する任意の形状であってもよく、かつ単一の実施形態において、複数の異なる形状を含んでもよい(例えば、モザイク加工)。例示的な実施形態では、基板片370は、拡張バンド300が巻かれたときに、応力集中を低減するように成形される。図示の実施形態では、基板片370は、境界365に沿って塗布された接着剤360を通して一緒に結合される。接着剤360は、基板片370と同じ材料からなってもよいか、又はエポキシ、樹脂、ゲル、接着剤、若しくは任意の他の結合手段などの異なる材料からなってもよい。例示的な実施形態では、接着剤360は、接着剤360が分解し、基板片370の分離を介して、基板320の分解をもたらしてもよいように、分解性材料からなる。したがって、拡張バンド300は、GI管400をより容易に通過し得る(
図13)。
【0023】
例示的な実施形態では、薬物送達デバイス100は、ワイヤレス受信機(図示せず)との間で信号を送信及び/又は受信するように構成されたワイヤレス通信デバイスを更に備える。ワイヤレス通信デバイスは、薬物送達デバイス100が摂取された後、患者内の生物学的情報を測定又は感知するように構成されてもよい。例えば、ワイヤレス受信機は、拡張バンド300が拡張したとき、又は拡張バンド300が分解したときに、信号を送信するように動作する。更に、ワイヤレス通信デバイスは、化学物質濃度、pH、温度、又は他の生物学的情報などの、GI管内の他の生物学的情報を測定/感知してもよい。ワイヤレス受信機は、治療を受けている患者によって、又は医師若しくは世話人などの別のユーザによって使用されてもよい。ワイヤレス通信デバイス及びワイヤレス受信機は、RFID、磁気音響、近距離通信、超音波、Bluetooth技術、又は他のワイヤレス通信手段を通して通信してもよい。
【0024】
本発明は例示的な設計を有するものとして記載されてきたが、本発明は、本開示の趣旨及び範囲内で更に修正することができる。したがって、本出願は、本発明の一般的原理を用いた本発明の任意の変形、使用、又は適応を網羅することが意図される。更に、本出願は、本発明が関係し、添付の特許請求の範囲の制限内にある、当該技術分野で既知の又は慣習的な実施の範囲内に入るものとして、本開示からのそのような逸脱を網羅することを意図する。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性カプセルと、
前記生分解性カプセル内に巻かれた拡張バンドであって、
基板、
前記基板上の接合面、及び
前記接合面に塗布された固体薬物を含み、
前記拡張バンドは、前記生分解性カプセルが少なくとも部分的に分解した後に拡張するように構成され、前記接合面が、患者の胃腸管の内部と接合するように構成され、前記拡張バンドが、前記患者の前記胃腸管内で分解するように更に構成されている、拡張バンドと
を備える、経口薬物送達デバイス。
【請求項2】
前記基板が、複数の基板片を含む、請求項1に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項3】
前記複数の基板片が、生分解性接着剤を通して一緒に結合される、請求項2に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項4】
前記複数の基板片が協働して、前記接合面を画定する、請求項2に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項5】
前記基板が、単一の連続片として形成される、請求項1に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項6】
前記基板が、熱可塑性ポリウレタン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、及びポリカプロラクトンのうちの少なくとも1つの材料からなる、請求項1に記載の経口送達デバイス。
【請求項7】
前記基板が、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、及びポリエチレングリコールのうちの2つ以上のブレンドからなる、請求項6に記載の経口送達デバイス。
【請求項8】
前記生分解性カプセルが、前記生分解性カプセルを取り囲む環境でpHの変化が生じた後に分解するように構成されている、請求項1に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項9】
前記基板が、約0.1mm~約0.3mmの厚さを有する、請求項1に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項10】
前記固体薬物が、ドットの反復パターンで、前記接合面に塗布される、請求項1に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項11】
前記接合面が、粘膜接着剤を含む、請求項1に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項12】
前記固体薬物が、ペプチド及びタンパク質のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項13】
腸溶性コーティングと、
前記腸溶性コーティング内の複数の基板片であって、一緒に結合されている、複数の基板片と、
前記複数の基板片にまたがる接合面であって、患者の胃腸管の内部と接合するように構成されている、接合面と、
前記接合面に塗布される薬物であって、前記患者の前記胃腸管の前記内部を通して吸収されるように構成された薬物と
を含む、経口薬物送達デバイス。
【請求項14】
前記複数の基板片が、湾曲又は線形境界を有する、請求項13に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項15】
前記複数の基板片が、接着剤を通して互いに結合される、請求項13に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項16】
前記複数の基板片及び前記接着剤のうちの少なくとも1つが、前記患者の前記胃腸管内で分解し、かつ前記患者の前記胃腸管を通過するように構成されている、請求項15に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項17】
前記複数の基板片及び前記接着剤のうちの少なくとも1つが、ポリメチルメタクリレート、セルロースエステル、又はポリビニル誘導体からなる、請求項15に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項18】
前記複数の基板片が、レーザ切断及びダイ切断のうちの1つから形成される、請求項13に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項19】
分解するように構成されたカプセルと、
前記カプセル内で巻かれ、かつ前記カプセルが分解した後に、少なくとも部分的にほどけて分解するように構成された基板と、
前記基板上の接合面であって、半径方向外側に面し、かつ患者の胃腸管の内部と接合するように構成された接合面と、
前記接合面に塗布され、かつ前記患者の前記胃腸管の前記内部を通って拡散することによって、患者の血流に入るように構成された薬物と
を含む、経口薬物送達デバイス。
【請求項20】
前記基板が、11mm~18mmの幅及び0.1mm~0.3mmの厚さを有する、請求項19に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項21】
前記接合面が、前記患者の前記胃腸管の前記内部を通る前記薬物の拡散を促進するように構成された前記基板上のコーティングを含む、請求項19に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項22】
前記基板が、複数の基板片を含み、前記複数の基板片が、生分解性接着剤を通して一緒に結合される、請求項21に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項23】
前記基板が、単一の連続片として形成される、請求項19に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項24】
前記基板が、熱可塑性ポリウレタン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、及びポリカプロラクトンのうちの少なくとも1つの材料からなる、請求項19に記載の経口送達デバイス。
【請求項25】
ワイヤレス通信デバイスと、ワイヤレス受信機と、を更に備え、前記ワイヤレス通信デバイスが、生物学的情報を前記ワイヤレス受信機に送信するように構成されている、請求項19に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項26】
前記ワイヤレス通信デバイス及び前記ワイヤレス受信機が、RFID、磁気音響、近距離通信、超音波、及びBluetoothのうちの1つを通して通信する、請求項25に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項27】
生分解性カプセルと、
拡張可能なバンドと、
前記拡張可能なバンド上に配設された固体薬物と、を含み、
前記経口薬物送達デバイスは、
前記拡張可能なバンドが前記カプセル内で巻かれる装填構成、
前記拡張可能なバンドが、前記カプセルの分解時に、少なくとも部分的にほどけ、前記固体薬物を患者と接触させる拡張構成、及び
前記拡張可能なバンドが、分解して、前記患者を通過する折り畳み構成を有する、経口薬物送達デバイス。
【請求項28】
前記拡張可能なバンドが、単一の連続片として形成される、請求項27に記載の経口薬物送達デバイス。
【請求項29】
前記拡張可能なバンドが、熱可塑性ポリウレタン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、及びポリカプロラクトンの少なくとも1つの材料からなる、請求項27に記載の経口送達デバイス。
【国際調査報告】