(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-05
(54)【発明の名称】光学デバイスの不適合を検出する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G02C 13/00 20060101AFI20230928BHJP
A61B 3/113 20060101ALI20230928BHJP
A61B 3/11 20060101ALI20230928BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G02C13/00
A61B3/113
A61B3/11
A61B5/11
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517370
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(85)【翻訳文提出日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2021073837
(87)【国際公開番号】W WO2022058142
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オレリー・ル・カイン
(72)【発明者】
【氏名】コノガン・バラントン
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・フリッカー
【テーマコード(参考)】
2H006
4C038
4C316
【Fターム(参考)】
2H006DA05
4C038VA04
4C038VB02
4C038VB03
4C038VB04
4C038VC05
4C038VC20
4C316AA15
4C316AA21
4C316AA28
4C316FA19
4C316FA20
4C316FC14
4C316FC21
4C316FY05
(57)【要約】
装着者への光学デバイスの不適合を検出するための装置であって、
-光学デバイスを装着して使用する際に、装着者の頭部に関連する頭部データを経時的に受信して記憶し、
-前記光学デバイスの装着者に対する光学デバイスの既知の不適合に関連付けられた頭部データパターンに基づいて頭部データを処理し、
-受信及び記憶された頭部データを、不適合に関連付けられた頭部データパターンと照合することにより、装着者に対する光学デバイスの不適合を検出するように構成された処理回路を備える、装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者への光学デバイスの不適合を検出するための装置であって、
-前記光学デバイスを装着して使用する際に、前記装着者の頭部に関連する頭部データを経時的に受信して記憶し、
-前記光学デバイスの前記装着者に対する光学デバイスの既知の不適合に関連付けられた頭部データパターンに基づいて頭部データを処理し、
-前記受信及び記憶された頭部データを、不適合に関連付けられた頭部データパターンと照合することにより、前記装着者に対する前記光学デバイスの不適合を検出する
ように構成された処理回路を備える、装置。
【請求項2】
前記頭部データが、頭部姿勢及び運動データ、注視方向、開瞼、瞳孔サイズ、EEGデータ、顔の表情のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光学デバイスが眼科機能を有し、前記処理回路は、前記装着者の眼科処方箋を受信し、前記受信及び記憶された頭部データを頭部データパターンと比較する際に前記眼科処方箋を考慮するように更に構成されている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記処理回路が、受信された異なるセットの記憶された頭部データを、不適合の原因に関連付けられた頭部分布パターンと比較することによって、前記光学デバイスの前記不適合の原因を決定するように更に構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記光学デバイスが累進的な追加度数を有し、前記頭部データは、前記光学デバイスを使用する際の前記装着者の頭部下降角度の分布に関連している、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
装置の処理回路によって実行される方法であって、
-光学デバイスを装着して使用する際に、装着者の頭部に関連する頭部データを経時的に受信して記憶することと、
-前記光学デバイスの前記装着者に対する光学デバイスの既知の不適合に関連付けられた頭部データパターンに基づいて前記頭部データを処理することと、
-前記受信及び記憶された頭部データを、不適合に関連付けられた頭部データパターンと照合することにより、前記装着者に対する前記光学デバイスの不適合を検出することと、
を含む、方法。
【請求項7】
前記頭部データが、頭部姿勢及び運動データ、注視方向、開瞼、瞳孔サイズ、EEGデータ、顔の表情のうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記光学デバイスが眼科機能を有し、前記方法は、前記装着者の眼科処方箋を受信することと、前記受信及び記憶された頭部データを頭部データパターンと比較する際に前記眼科処方箋を考慮することと、を更に含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、前記受信及び記憶された頭部データを頭部データパターンと比較することによって、前記光学デバイスの前記不適合の原因を決定することを更に含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記光学デバイスが累進的な追加度数を有し、前記頭部データは、前記光学デバイスを使用する際の前記装着者の頭部下降角度の分布に関連している、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
不適合を検出することが、頭部下降角度の分布におけるモードの数を決定することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
頭部パターンを決定する方法であって、
-光学デバイスの装着者に関連する装着者データを受信して記憶することと、
-各装着者に関連付けられた前記光学デバイスに関連する光学デバイスデータを受信して記憶することと、
-前記関連付けられた光学デバイスを着用して使用する際に、各装着者の頭部に関連する経時的な頭部データを受信して記憶することと、
-各装着者に関連付けられた前記光学デバイスの適合に関連する適合データを受信して記憶することと、
-頭部データと不適合の間の相関関係を見つけるための機械学習モデルを使用して、光学デバイスの不適合に関連付けられた少なくとも1つの頭部パターンを決定するために、多数の装着者にわたって前記受信及び記憶されたデータを処理することと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記頭部データが、頭部姿勢データ、注視方向、開瞼、瞳孔サイズ、EEGデータ、顔の表情のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
コンピュータ実行可能な命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令がコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに請求項6~11のいずれか一項に記載の方法を実行させる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
コンピュータ実行可能な命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令がコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに請求項12又は13に記載の方法を実行させる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、装着者に提供される眼用レンズの不適合を検出するための装置及び関連する方法に関する。
【0002】
更に、本開示は、プロセッサがアクセスできる記憶された命令シーケンスの1つ以上を含むコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0003】
装着者によっては、提供された眼用レンズが不適合である場合があることが知られている。この不適合は、時間の経過とともに発生するか、眼用レンズを装用した直後に発生する可能性がある。例えば、累進レンズに適合するには、通常、装着者が頭と目の配位を変更して、レンズの視覚ゾーンを適切に使用する必要がある。不適合の原因の1つは、特定の装着者が累進レンズを装用しているときに、累進レンズの視覚ゾーンを適切に使用していないことである。
【0004】
各装着者は、読書などの特定のタスクを実行するために、特定の体の姿勢を取っていく。装着者の前の机の上に置かれた文書を座っている装着者が読むことを考えると、文書を読むために異なる装着者によって異なった頭の傾斜が行われる。
【0005】
アイトラッカーとモーションキャプチャは、実験室で装着者の頭と目の配位を評価するために使用される。例えば、読書やその他のタスクを実行するなど、1日のいつでも装着者の下降の傾斜を測定するスマートフレームがある。
【0006】
装着者は、特定の環境でタスクを進めて眼用レンズの不適合を決定するために、光学試験所に行かなければならない。このため、不適合の検出が遅すぎるか、まったく検出されず、装着者が不快感を覚えたり、眼科機器の使用を放棄したりする可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、装着者の日常生活環境における眼用レンズへの不適合を、装着者の身体姿勢を考慮して検出する必要がある。
【0008】
また、眼用レンズに適合しない装着者への対応も必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本開示は、装着者への光学デバイスの不適合を検出するための装置を提案し、この装置は、
-光学デバイスを装着して使用する際に、装着者の頭部に関連する頭部データを経時的に受信して記憶し、
-前記光学デバイスの装着者に対する光学デバイスの既知の不適合に関連付けられた頭部データパターンに基づいて頭部データを処理し、
-受信及び記憶された頭部データを、不適合に関連付けられた頭部データパターンと照合することにより、装着者に対する光学デバイスの不適合を検出する
ように構成された処理回路を備える。
【0010】
有利なことに、この装置は、頭部データに基づいて光学デバイスの不適合を自己検出することを可能にする。この装置は、眼科専門家の知識を必要とせずに、光学デバイスの不適合を自己検出することができる。
【0011】
更に、この装置は、頭の動きや頭の姿勢などの頭部データパラメータに基づいて、装着者の不適合を検出することを可能にする。頭の動きの例は、頭を下げることである。記録された頭部データが、既知の不適合に関連付けられた異常な頭部データパターンに対応する可能性がある場合、装置は光学的不適合を検出する。
【0012】
単独又は組み合わせとして考え得る更なる実施形態によれば、
-頭部データは、頭部姿勢及び運動データ、注視方向、開瞼、瞳孔サイズ、EEGデータ、顔の表情のうちの少なくとも1つを含む。及び/又は、
-頭部データを処理する際、装着者の活動の指標は、受信したデータと記憶された頭部データを、不適合に関連付けられた頭部データパターンと照合することであると見なされる。及び/又は、
-光学デバイスは眼科機能を有し、処理回路は、装着者の眼科処方箋を受信し、受信及び記憶された頭部データを頭部データパターンと比較する際に前記眼科処方箋を考慮するように更に構成される。及び/又は、
-処理回路は、光学デバイスの不適合が検出されたことを装着者又は眼科専門家に警告するように更に構成される。及び/又は、
-不適合の原因は、光学デバイスの光学機能、光学デバイスの取り付けパラメータ、装着者による光学デバイスの使用、装着者の眼科処方箋、光学デバイスの完全性、からなるリストから選択される。及び/又は、
-光学デバイスは累進的な追加度数を有し、頭部データは、光学デバイスを使用する際の装着者の頭部下降角度の分布に関連している。
【0013】
本開示は更に、装置の処理回路によって実行される方法に関し、この方法は、
-光学デバイスを装着して使用する際に、装着者の頭部に関連する頭部データを経時的に受信して記憶することと、
-前記光学デバイスの装着者に対する光学デバイスの既知の不適合に関連付けられた頭部データパターンに基づいて頭部データを処理することと、
-受信及び記憶された頭部データを、不適合に関連付けられた頭部データパターンと照合することにより、装着者に対する光学デバイスの不適合を検出することと、
を含む。
【0014】
有利なことに、受信及び記憶された頭部データを不適合に関連付けられた頭部データパターンと照合することによって、装着者への光学デバイスの不適合を検出することで、不適合の原因を決定することが可能になる。不適合の原因に応じて、光学デバイスへの適合を改善するための特定のトレーニングや、異なる光学設計を提供することによるなどの、専用のソリューションが装着者に提供され得る。
【0015】
この方法は、装着者の光学デバイスへの不適合を自己検出することを可能にする。装着者は、光学試験所に行って、光学デバイスが適合しているかどうかを決定するために特定のタスクを実行する必要はない。頭部データと既知の不適合頭部データパターンに基づいて、装置はそれ自体で光学デバイスの不適合を検出できる。
【0016】
単独又は組み合わせとして考え得る更なる実施形態によれば、
-頭部データは、頭部姿勢及び運動データ、注視方向、開瞼、瞳孔サイズ、EEGデータ、顔の表情のうちの少なくとも1つを含む。及び/又は、
-頭部データを処理する際、装着者の活動の指標は、受信したデータと記憶された頭部データを、不適合に関連付けられた頭部データパターンと照合することであると見なされる。及び/又は、
-光学デバイスは眼科機能を有し、方法は、装着者の眼科処方箋を受信することと、受信及び記憶された頭部データを頭部データパターンと比較する際に前記眼科処方箋を考慮することとを更に含む。及び/又は、
-方法は、光学デバイスの不適合が検出されたことを装着者又は眼科専門家に警告することを更に含む。及び/又は、
-方法は、受信及び記憶された頭部データを頭部データパターンと比較することによって、光学デバイスの不適合の原因を決定することを更に含む。及び/又は
-不適合の原因は、光学デバイスの光学機能、光学デバイスの取り付けパラメータ、装着者による光学デバイスの使用、装着者の眼科処方箋、からなるリストから選択される。及び/又は、
-光学デバイスは累進的な追加度数を有し、頭部データは、光学デバイスを使用する際の装着者の頭部下降角度の分布に関連している。及び/又は、
-不適合を検出することは、頭部下降角度の分布におけるモードの数を決定することを含む。
【0017】
本開示は更に、頭部パターンを決定する方法に関し、この方法は、
-光学デバイスの装着者に関連する装着者データを受信して記憶することと、
-各装着者に関連付けられた光学デバイスに関連する光学デバイスデータを受信して記憶することと、
-関連付けられた光学デバイスを着用して使用する際に、各装着者の頭部に関連する経時的な頭部データを受信して記憶することと、
-各装着者に関連付けられた光学デバイスの適合に関連する適合データを受信して記憶することと、
-頭部データ(及びその他のオプションデータ)と不適合の間の相関関係を見つけるための機械学習モデルを使用して、光学デバイスの不適合に関連付けられた少なくとも1つの頭部パターンを決定するために、多数の装着者にわたって受信及び記憶されたデータを処理することであって、
○いくつかの時系列のフレーム測定値からなり得る頭部データを取得することと、
○各時系列の記述統計量を計算することと、
○記述統計量をデータベクトルにグループ化し、頭部データを要約することと、
○各装着者に関連付けられた光学デバイスの適合に関連するデータを、1(不適合)から10(完全な適合)までの適合度を表す単一の数値にグループ化することと、
○入力データが各装着者のデータベクトルであり、予測するデータが適合度を表す数値である、機械学習モデルを開始することと、
○機械学習モデルを使用して、光学デバイスの不適合に関連付けられた頭部データパターンを定義することと、
を含む、処理することと、
を含む。
【0018】
単独又は組み合わせとして考え得る更なる実施形態によれば、
-頭部データは、頭部姿勢データ、注視方向、開瞼、瞳孔サイズのうちの少なくとも1つを含む。及び/又は、
-装着者データは、装着者の眼科処方箋を含み、光学デバイスは眼科機能を有する。及び/又は、
-光学デバイスデータは、光学デバイスの光学機能及び/又は光学デバイスの取り付けパラメータ及び/又は装着者による光学デバイスの使用及び/又は装着者の眼科処方箋に関連するデータを含む。
【0019】
本開示は更に、コンピュータ実行可能命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、命令は、コンピュータによって実行されると、コンピュータに、本開示による装置の処理回路によって実行される方法を実行させる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0020】
本開示は更に、コンピュータ実行可能命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、命令は、コンピュータによって実行されると、コンピュータに、頭部パターンを決定する方法を実行させる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0021】
ここで本開示の実施形態について、ほんの一例として以下の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】装着者への光学デバイスの不適合を検出するための装置の処理回路によって実行されるステップのフローチャートを示す。
【
図2a】眼及び眼用レンズの光学システムを略図で示す。
【
図2b】眼及び眼用レンズの光学システムを略図で示す。
【
図3】装着者への光学デバイスの不適合を検出するための方法のステップのフローチャートを示す。
【
図4】月曜日から金曜日までの期間の装着者の頭部下降角度のヒストグラムを示す。
【
図5】土曜と日曜の期間の装着者の頭部下降角度のヒストグラムを示す。
【
図6】単峰性の頭部下降角度のヒストグラムを示す。
【
図7】二峰性の頭部下降角度のヒストグラムを示す。
【
図8】頭部パターンを決定するためのステップのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面内の要素は、簡潔化及び明示化のために示されており、必ずしも正確な縮尺で描かれていない。例えば、本開示の実施形態に対する理解を深めるべく、図面内のいくつかの要素の大きさが他の要素に対して誇張されている場合がある。
【0024】
本開示は、装着者への光学デバイスの不適合を検出するための装置に関する。
【0025】
本開示の第1の態様は、装着者への光学デバイスの不適合を検出するための装置に関し、この装置は、
-光学デバイスを装着して使用する際に、装着者の頭部に関連する頭部データを経時的に受信して記憶し、
-前記光学デバイスの装着者に対する光学デバイスの既知の不適合に関連付けられた頭部データパターンに基づいて頭部データを処理し、
-受信及び記憶された頭部データを、不適合に関連付けられた頭部データパターンと照合することにより、装着者に対する光学デバイスの不適合を検出する
ように構成された処理回路を備える。
【0026】
図1は、装置の処理回路によって実現される多様なステップを示すフローチャートである。
【0027】
処理回路を備える装置は、受信ステップS10を実行し、処理回路は、少なくとも1つの頭部データセンサによって測定された装着者の頭部データの受信に進む。処理回路は、測定された頭部データをデータ記憶媒体に記憶する。
【0028】
更に、処理回路を備える装置は、処理ステップS12を実行し、処理回路は、測定された装着者の頭部データと、装着者への光学デバイスの不適合の原因に関連付けられた所定の頭部データパターンとの比較に進む。
【0029】
最後に、処理回路を備える装置は、検出ステップS14を実行し、処理回路は、装着者に対する光学デバイスの不適合の検出に進む。前記検出は、受信及び記憶された頭部データを不適合に関連付けられた頭部データパターンと照合することによって行われる。
【0030】
本開示の文脈において、不適合という用語は、装着者への光学デバイスの不適合に関連する。前記不適合は、眼用レンズの設計が装着者の身体の挙動及び身体の姿勢を考慮していないという事実によって引き起こされる可能性がある。身体の挙動と姿勢の例としては、装着者が所与の活動やタスクを行うときの頭の位置がある。
【0031】
本開示によれば、光学デバイスという用語は、光学レンズ、より具体的には眼用レンズに関連し得る。光学デバイスは、単焦点レンズ、二焦点レンズ、三焦点レンズ、累進レンズ、フィルターレンズ、又は装着者が視力を改善できる他の種類の光学デバイスであってもよい。
【0032】
頭部データという用語は、装着者の頭部に関して経時的に測定可能な任意のデータを指す。例えば、頭部データは、胴体に対する装着者の頭部の位置又は向きに関連し得る。
【0033】
このようにして、頭部データは、例えば、水平軸に沿った頭部の傾斜又は頭部の回転に関連し得る。頭部の傾きに関連する頭部データは、角度パラメータの形で記憶することができる。そのような角度パラメータは下降角度に対応し得る。
【0034】
頭部データは、スマートフレームを使用して取得することができる。スマートフレームは、装着者の頭部の動きを検出する頭部データセンサを含むフレームに相当する。考慮される頭部データが頭部変位に対応する場合、スマートフレームは、例えば、IMU(慣性測定ユニット)を有するような頭部データセンサを備えることができる。この例では、IMUなどの頭部データセンサが、装着者の頭部の傾斜又は回転など、装着者の頭部の変位に関連する情報を検出し、装置に送信する。
【0035】
本開示による装置は、装着者が光学デバイスを装着しているときに、装着者の頭部のあらゆる変位を受信及び記憶するように構成される。
【0036】
装置は、装着者の頭部データを経時的に記憶する。装着者の頭部データが装置に記憶されると、前記装着者の頭部データは、光学デバイスの不適合に関連付けられた以前に取得された頭部データパターンと比較される。前記比較を行うと、装置は、測定された装着者の頭部データと光学デバイスの不適合頭部データパターンとの間の類似度を検出することができる。所与の類似度閾値を超えると、装置は、光学デバイスが装着者に適合していないと決定する。
【0037】
類似度は、ヒストグラムを使用して決定することができる。例えば、時間の経過に伴う装着者の頭部データに基づいて、各データ値の頻度を表すヒストグラムが計算される。このヒストグラムは、以前に取得したデータのヒストグラムと比較される。最も類似したヒストグラムは、全体的な形状が計算されたものに最も近いものとして決定される。
【0038】
類似度は、機械学習アルゴリズムを使用して更に決定することができる。例えば、以前に取得したデータに基づいて機械学習モデルが構築され、これにより頭部データに基づいて装着者への光学デバイスの不適合状態が決定される。モデルは、取得したデータを使用してトレーニングされる。例えば、モデルは、決定木、ランダムフォレスト、状態ベクトルマシン、ニューラルネットワーク、深層学習アルゴリズムなどであり得る。装着者のデータは機械学習モデルに送られ、装着者の不適合状態又は類似度が決定される。
【0039】
累進レンズの不適合の場合、装着者は頭の動きによって累進レンズの特定の領域を通して見ることができないという事実を補うことができる。光学デバイスの特定の領域は、例えば、近視覚ゾーンに対応し得る。次いで、特定の領域を通して見ることができないことを補う不自然な頭の姿勢に対応する装着者の頭部データが、光学デバイスの不適合頭部データパターンと比較される。前記比較及び光学デバイスの不適合頭部データパターンとの更なる類似性に基づいて、装置は、光学デバイスが装着者に適合していないと決定することができる。
【0040】
累進レンズの不適合は、装着者が頭の姿勢を見つけて累進レンズを通して注視する、遠近を問わず良好な視力を与える頻度に基づいて決定することもできる。適合していない装着者は、同じ典型的な通常の姿勢をとる傾向がある。
【0041】
頭部データは、頭部姿勢及び運動データ、注視方向、開瞼、瞳孔サイズ、EEG(脳波記録)データ、顔の表情の間で異なるパラメータを含むことができる。
【0042】
頭部姿勢という用語は、特定のタスクを実行する際の日常生活における、胴体に対する特定の装着者の頭の位置、又は基準位置に対応する。
【0043】
頭部運動データという用語は、頭部の変位に対して測定されたデータに対応する。
【0044】
注視方向という用語は、右眼又は左眼の回転中心を中心とする直接正規直交基底に関して測定された2つの角度によって定義される。
【0045】
図2a及び
図2bは、眼及びレンズの光学系の模式図であり、したがって、本明細書で使用される定義を示す。より正確には、
図2aは、注視方向を定義するために使用されるパラメータα、βを示す、そのようなシステムの斜視図を表す。
図2bは、パラメータβが0に等しい場合に、装着者の頭部の前後軸と平行であって眼の回転中心を通過する垂直面を示す。
【0046】
眼の回転中心はQ’とラベル付けされている。
図2bに一点鎖線で示す軸Q’F’は、眼の回転中心を通過して装着者の前方へ延びる水平軸、すなわち主要注視ビューに対応する軸Q’F’である。この軸は、検眼士によるレンズのフレームでの位置合わせを可能にすべくレンズに存在するフィッティングクロスと呼ばれる点で、例えばレンズであってもよい光学デバイスの前面を切断する。レンズの裏面と軸Q’F’の交点がOである。Oは、背面に位置する場合はフィッティングクロスであり得る。中心がQ’、半径がq’の上面球面は水平軸の一点でレンズの背面に接する。例として、半径q’の値25.5mmは通常値に対応し、レンズを装着する際に満足すべき結果を与える。
【0047】
図2aの実線により示される所与の注視方向は、Q’の回りの回転方向での眼の位置、及び頂点球面の一点Jに対応し、角度βは、軸Q’F’と、軸Q’F’を含む水平面上への、直線Q’Jの射影との間で形成される角度であり、この角度は
図2bのスキームに現れている。角度αは、軸Q’Jと、軸Q’F’を含む水平面上への、直線Q’Jの射影との間で形成される角度であり、この角度は
図2bのスキームに現れている。したがって、所与の注視ビューは、頂点球面の一点J、又はペア(α、β)に対応する。下向き注視角度の値が正方向に大きいほど注視は下向きになり、値が負方向に大きいほど注視は上向きになる。
【0048】
開瞼という用語は、上まぶたが引っ込められたときの下まぶたと上まぶたの間のスペースに対応する。装着者は開瞼が異なる場合がある。開瞼が小さいため、提供された光学デバイスが装着者に適合しないことを考慮して、適切なデバイスを装着者に提供する必要がある。
【0049】
本開示の更なる態様では、装置は、日常生活における装着者の頭部の挙動及び姿勢以外の、装着者の他の身体の挙動又は姿勢を考慮することができる。
【0050】
光学デバイスは眼科機能を有することができ、処理回路は、装着者の眼科処方箋を受信し、受信及び記憶された頭部データを頭部データパターンと比較する際に前記眼科処方箋を考慮するように更に構成される。
【0051】
処理回路という用語は、マイクロコントローラなどの任意の電子制御ユニットであってもよい。
【0052】
「眼科処方箋」という用語は、装着者が光学デバイスを装着した後、装着者の機能障害を矯正するために眼科担当者によって光学デバイスに提供される処方箋に対応する。眼科機能は、光学デバイスによって実行される矯正機能である。
【0053】
光学デバイスの眼科機能と監視される頭部データによっては、光学デバイスが装着者によって適切に使用されていないように見える場合や、光学デバイスが読書などの特定の活動を行う際に装着者に適合していないように見える場合がある。
【0054】
処理回路は、光学デバイスの不適合が検出されたことを装着者又は眼科専門家に警告するように更に構成される。
【0055】
光学デバイスには警告デバイスを設けることができる。警告は、機械的振動、音など、多様な形式であり得る。警告信号は、光学デバイスの不適合の兆候を装着者に知らせることを可能にする。
【0056】
したがって、警告システムは、装着者が新しい眼用レンズのペアを試すときに、光学デバイスが装着者に適していないことを装着者及び/又は眼科専門家に迅速に知らせることができる。
【0057】
本開示の別の実施形態は、装着者に提供された光学デバイスが装着者の現在の視覚障害に対応しておらず、装着者が視覚障害を矯正し続けるために新しい眼科機能を備えた新しい光学デバイスが必要であることを、装着者及び/又は眼科専門家に知らせることである。
【0058】
処理回路は更に、受信した頭部データを、不適合の原因に関連付けられた頭部分布パターンを有する記憶された頭部データの異なるセットと比較することによって、光学デバイスの不適合の原因を決定するように構成され得る。
【0059】
光学デバイスには、データ記憶媒体を設けることができる。データ記憶媒体は、不適合の原因に関連する記憶された頭部データパターンの異なるセットを含む。処理回路は、データ記憶媒体にまた記憶され得る、装着者の監視された頭部データを比較する。
【0060】
比較中、処理回路は、装着者が監視する頭部データパターンと不適合の原因に関連付けられた頭部データパターンとの比較について、所与の閾値を超える尤度があるかどうかを制御する。尤度は、測定された頭部データと不適合の原因に関連付けられた記憶された頭部データパターンとの間の類似度のパーセンテージに対応し得ることが理解されなければならない。前記閾値を超えると、処理回路は、光学デバイスの不適合の原因が、不適合の原因に関連する類似の記憶された頭部データパターンの不適合の原因に対応すると決定する。
【0061】
不適合の原因は、以前に取得したデータを使用して以前に構築された機械学習モデルを使用して決定することもできる。
【0062】
不適合の原因は、光学デバイスの光学機能、光学デバイスの取り付けパラメータ、装着者による光学デバイスの使用、装着者の眼科処方箋、光学デバイスの完全性、からなるリストから選択することができる。
【0063】
本開示の意味において、光学機能は、各注視方向に対して、光学レンズを通過する光線に対する光学レンズの効果を提供する機能に対応する。
【0064】
光学機能は、屈折機能、光吸収、スペクトル機能、回折機能、散乱特性、偏光能力、コントラストの強化又は減少、又は任意の他の関連パラメータを含むことができる。
【0065】
屈折機能は、注視方向の機能として、光学レンズの屈折力(平均屈折力、非点収差、等)に対応する。
【0066】
表現「光学設計」は、眼用レンズの屈折関数を定義することを可能にするパラメータのセットを指定するよう眼科分野の当業者から公知の広く用いられる表現であり、各眼用レンズ設計者は、特に累進眼用レンズに対してその独自の設計を有している。一例として、累進眼用レンズの「設計」は、老眼の人があらゆる距離を明瞭に見る能力を回復するだけでなく、中心窩視、中心窩外視、両眼視等のあらゆる生理学的視覚機能を最適に尊重し、望ましくない非点収差を最小限に抑えるように、累進面の最適化の結果として生じる。例えば、累進レンズ設計は、
-日常生活の活動中にレンズ装着者によって用いられる主注視方向(経線)に沿った屈折力プロファイルと、
-レンズの側面上の、つまり、主注視方向から離れた屈折力(平均屈折力、非点プリズム、...)の分布と、
を含む。
【0067】
これらの光学特性は、眼用レンズ設計者によって定義され、計算される「設計」の一部であり、累進レンズによって提供される。
【0068】
累進レンズの「光学設計」は、商品化される前に厳しい試験を経てテストされる。
【0069】
取り付けパラメータという用語は、フレーム内の2つの光学レンズの位置を指す。
【0070】
装着者が新しい光学デバイスを購入した場合、フレームの眼鏡の機械的態様が装着者の頭に合わない場合がある。
【0071】
本開示の別の実施形態は、眼鏡フレームの機械的態様に関する。装着者の頭部の形態は、時間の経過とともに成長する可能性がある。装着者の頭の形の変化、又は皮膚特性の変化は、光学要素の位置の変位を誘発する可能性がある。眼鏡フレームの機械的構造はまた、例えば摩耗、不適切な使用又は保管により経時的に変化し、装着者の顔における眼鏡フレームの位置が変化する可能性がある。
【0072】
装着者による光学デバイスの使用は、装着者が光学デバイスを使用できる方法に対応する。多焦点レンズ又は累進レンズの場合、装着者は光学レンズの領域の単一の部分を使用することがある。装着者は、例えば、装着が注視方向を下げない場合、近方視力の状況であっても累進レンズの遠方視部分を通して常に見る可能性がある。次に、装着者は、頭を更に下げることによって、注視方向のこの不十分な低下を補う。光学デバイスの使用中に監視された頭部データに基づいて、処理回路は、光学デバイスの使用時に異常な頭部データを決定することができる。
【0073】
不適合の別の原因は、光学レンズ間のブリッジのテンプルのねじれなど、光学デバイスの完全性である可能性がある。光学デバイスのいかなる変形も、光学デバイスによって提供される変更された光学機能をもたらす可能性があり、前記機能は、装着者の視覚障害にもはや適合されない可能性がある。
【0074】
光学デバイスは累進的な追加度数を有し、頭部データは、光学デバイスを使用する際の装着者の頭部下降角度の分布に関連している。前述のように、眼の注視方向の下降が不十分な装着者は、光学要素、例えば近方視の累進レンズを使用しながら頭を更に下げることによって、この不十分さを補うことができる。装着者の頭部の更なる下降に関連する異常な頭部データは、装着者に対する光学デバイスの不適合を決定することを可能にするデータである。
【0075】
不適合を検出するための装置は、頭部データセンサ又は複数の頭部データセンサ、処理回路、及びデータ記憶媒体を備えることができる。装置は、光学デバイスの一部、例えばテンプルに取り外し可能に取り付けることができる。
【0076】
代替的な実施形態では、不適合を検出するための装置を眼鏡フレーム内に組み込むことができる。計算は、光学デバイスの外部で、頭部データが送信されたスマートフォンアプリケーション、又はコンピュータ、又はクラウドサーバーにおいて実行することもできる。
【0077】
本開示の第2の態様は、装置の処理回路によって実行される方法に関し、この方法は、
-光学デバイスを装着して使用する際に、装着者の頭部に関連する頭部データを経時的に受信して記憶することと、
-前記光学デバイスの装着者に対する光学デバイスの既知の不適合に関連付けられた頭部データパターンに基づいて頭部データを処理することと、
-受信及び記憶された頭部データを、不適合に関連付けられた頭部データパターンと照合することにより、装着者に対する光学デバイスの不適合を検出することと、
を含む。
【0078】
図3は、処理回路によって実行される方法に対応する多様なステップを示すフローチャートである。
【0079】
この方法は、受信ステップS20を含み、処理回路は、少なくとも1つの頭部データセンサによって測定された装着者の頭部データの受信に進む。処理回路は、測定された頭部データをデータ記憶媒体に記憶する。
【0080】
更に、この方法は、処理ステップS22を含み、処理回路は、測定された装着者頭部データと、装着者への光学デバイスの不適合の原因に関連付けられた所定の頭部データパターンとの比較に進む。
【0081】
最後に、この方法は、検出ステップS24を含み、処理回路は、装着者に対する光学デバイスの不適合の検出に進む。前記検出は、受信及び記憶された頭部データを不適合に関連付けられた頭部データパターンと照合することによって行われる。
【0082】
「照合する」という用語は、装着者が監視した頭部データと不適合の原因に関連付けられた頭部データパターンとの間に所与の閾値を超える尤度があるかのように理解されるべきである。尤度は、測定された頭部データと不適合の原因に関連付けられた記憶された頭部データパターンとの間の類似度のパーセンテージに対応し得ることが理解されなければならない。そのような照合は、機械学習法を使用して決定することができる。
【0083】
閾値は、例えば所与のパーセンテージを超える、測定された頭部データパターンと所定の頭部データパターンとの類似性に対応し得る。好ましくは、入力された頭部データに基づいて、最も可能性の高いステータス(例えば、適合/不適合)を自動的に決定する機械学習方法を使用して決定される。
【0084】
この方法は、追加の警告ステップを含むことができ、その間、眼科専門家及び/又は装着者は、日常生活活動において、光学デバイスの不適合があることを警告される。前記警告は、光学デバイスが装着者に適していないことをアイケア専門家に知らせることもできる。その後、眼科専門家は、処方された瞳孔間距離、処方箋、フレームの形状、レンズの設計、又は光学デバイスに関連するその他のパラメータをチェックすることができる。
【0085】
警告は、装着者の姿勢が時間とともに適合姿勢に近づいているかどうかをチェックするために使用され得る。これが、装着者の日常生活の環境に対応しない可能性のある安定した環境ではなく、装着者による光学デバイスの使用を時間の経過とともに、日常生活の環境で監視する必要がある理由である。
【0086】
この方法は、光学デバイスを使用する際の装着者の頭部下降角度の分布におけるモードの数を考慮に入れることができる。
【0087】
頭部データセンサは、フレームの向き又は頭部下降角度を経時的に記録する。データ取得の時間は事前に定義することができる。記録されたフレームの向き又は頭部下降角度は、次に処理のために送信される。
【0088】
以下のいくつかの理由により、測定データの一部がプロセスの前に削除される場合がある。
-測定データが外れ値と見なされる場合、
-測定データが特定の時間外に取得された場合、例えば勤務時間に対応しない場合、
-特定の活動の完了に対応しない測定データの場合、及び、
-装着者が光学デバイスを正しく着用していなかった瞬間に対応する測定データの場合。
【0089】
測定データを削除するために、他のパラメータが考慮される場合がある。
【0090】
仕事中に光学デバイスを使用することを考慮した装着者の例を考えることができる。
図4は、月曜日から金曜日までの頭部下降角度のヒストグラムに対応している。
図5は、土曜日と日曜日の頭部下降角度のヒストグラムに対応している。次の例では、装着者は月曜日から金曜日の午前9時から午後6時まで働き、週末は働かないと見なされる。このようにして、
図5に対応する測定データが削除され、
図4で考慮される期間は、午前9時から午後6時までに測定された頭部下降角度に関連するデータに対応する。
【0091】
モードは、コンピュータの前で作業するなど、特定の活動を達成する間に、頭部下降角度の発生がより重要なピークに対応する。
【0092】
頭部下降角度の分布がガウス分布に似た曲線をたどり得る場合、ヒストグラムは単峰性である。ヒストグラムが単峰性である場合、光学デバイスは装着者に適合している。
図6は、光学デバイスを装着している間の装着者の頭部下降角度に対応する単峰性ヒストグラムを開示している。
【0093】
頭部下降角度の分布は、複数のピークを含むことがある。この分布は、多峰性ヒストグラムと見なされる。
図7は、光学デバイスを装着している間の装着者の頭部下降角度に対応する二峰性ヒストグラムを開示している。
図7は、頭部下降角度の特定の範囲が1つではなく、2つの範囲があることを示している。
【0094】
二峰性ヒストグラムは、装着者が光学デバイスに適合できていないことを示す。多焦点レンズ又は累進レンズを有する装着者は、頭部角度を更に下げることによって、注視方向を下げることができないことを補おうとする場合がある。
【0095】
このように、示されている2つのピークのうちの1つは、上記の例で述べた更なる頭部下降角度などの異常な頭部データに対応し得る。特に、累進レンズを装備し、二峰性ヒストグラムを有する装着者は、自分に適合しない光学デバイスを有している。
【0096】
累進レンズを適切に使用するために、累進レンズの装着者は、中間視及び近方視タスクを行う際に、自然に視線を下げるよりも更に目を下げることを学ばなければならない。同時に、装着者は、これらのタスクを実行するときに、頭を自然に下げるよりも少なく頭を下げる必要がある。
【0097】
ヒストグラムが二峰性タイプの装着者は、累進レンズに必要な視覚戦略をまだ採用していない。これらの累進レンズ装着者は、遠視覚ゾーンを通して近距離及び中距離の物体を見る傾向があり、タスクに必要な適切な追加度数を経験しない。これは、不適合と装着者の不快感をもたらす。
【0098】
オプションの警告信号に続いて、累進レンズに適合しない累進レンズ装着者は、累進レンズを使用するための特定の視覚トレーニングを実現するように推奨されてもよい。
【0099】
本開示の第3の態様は、頭部パターンを決定する方法に関し、この方法は、
-光学デバイスの装着者に関連する装着者データを受信して記憶することと、
-各装着者に関連付けられた光学デバイスに関連する光学デバイスデータを受信して記憶することと、
-関連付けられた光学デバイスを着用して使用する際に、各装着者の頭部に関連する経時的な頭部データを受信して記憶することと、
-各装着者に関連付けられた光学デバイスの適合に関連する適合データを受信して記憶することと、
-多数の装着者について受信及び記憶されたデータを処理して、光学デバイスの不適合に関連付けられた少なくとも1つの頭部パターンを決定することと、
を含む。
【0100】
図8は、頭部パターンを決定する方法の多様なステップであるフローチャートを示している。
【0101】
この方法は、第1の受信ステップS30を含み、光学デバイスの装着者に関連する装着者データが受信及び記憶される。
【0102】
この方法は、第2の受信ステップS32を含み、各装着者に関連付けられた光学デバイスに関連する光学デバイスデータが受信及び記憶される。
【0103】
この方法は、第3の受信ステップS34を含み、関連する光学デバイスを装着して使用するときの各装着者の頭部に関連する頭部データが経時的に受信及び記憶される。
【0104】
更に、この方法は、第4の受信ステップS36を含み、各装着者に関連付けられた光学デバイスの適合に関連する適合データが受信及び記憶される。
【0105】
最後に、この方法は、処理ステップS38を含み、受信及び記憶されたデータが処理されて、光学デバイスの不適合に関連付けられた少なくとも1つの頭部パターンを決定する。
【0106】
本開示の第3の態様による頭部データは、頭部姿勢データ、注視方向、開瞼、瞳孔サイズを含むことができる。
【0107】
装着者データは、装着者の眼科処方箋を含むことができ、光学デバイスは眼科機能を有する。
【0108】
光学デバイスデータは、光学デバイスの光学機能及び/又は光学デバイスの取り付けパラメータ及び/又は装着者による光学デバイスの使用及び/又は装着者の眼科処方箋に関連するデータを含み得る。
【0109】
光学デバイスの不適合に関連付けられた少なくとも1つの頭部パターンを決定する別の方法は、監視された頭部データを装着者のフィードバックと相関させることである。
【0110】
装着者は、装着者への光学デバイスの不適合を検出するための装置を備えた着用した光学デバイスに関するフィードバックを提供することができる。フィードバックは、光学デバイスの快適さ、及び/又は日常生活の活動における装着者の光学デバイスへの適合に関連するアンケートに記入することによって実行され得る。フィードバックの他のソース、例えばスマートフォンアプリケーションの使用も可能である。装着者は、アプリケーションを使用して、光学デバイスを使用する際の不快感又は不適合の原因を通知することができる。
【0111】
装着者への光学デバイスの適合レベルと相関する姿勢データパターンを決定するために、装着者によって提供されるフィードバック、及び少なくとも1つの頭部データセンサによって取得された監視データに従って、新たな不適合姿勢パターンを決定することができる。姿勢データパターンは、例えば頭部データ姿勢パターンであってもよい。
【0112】
一実施形態によれば、姿勢データパターンは、頭部データ(及び他のオプションデータ)と不適合との間の相関関係を見つけるために使用される機械学習モデルを使用して決定される。
【0113】
頭部データは、次の測定値の複数の時系列から構成され得る。
-フレームに埋め込まれたIMUによって測定される、フレームのピッチ角、
-フレームに埋め込まれたIMUによって測定される、フレームのヨー角の時間導関数。
これらの2つの時系列は、多数のn人の装着者(例えば、i=1~10000)について取得される。
【0114】
時系列ごとに、
-経時的な測定値の平均値、
-経時的な測定値の標準偏差、
-経時的な測定値の振幅(最大-最小)、
を含む記述統計量のセットが計算される。
【0115】
一実施形態によれば、測定値のヒストグラムを更に構築することができ、そこから主ピークの中心値及び主ピークの幅を推定することができる。
【0116】
記述統計量はデータベクトルにグループ化され、頭部データを要約する。装着者ごとにそのようなベクトルが1つある。そのようなベクトルは、x_iで示される。
【0117】
各装着者に関連付けられた光学デバイスの適合に関連するデータは、1(不適合)から10(完全な適合)までの適合度を表す単一の数字からなる。装着者ごとに1つの値がある。そのような値は、v_iで示される。
【0118】
入力データが各装着者のデータベクトルであり、予測するデータが適合度を表す数値である、機械学習モデルが開始される。機械学習アルゴリズムは、多重線形回帰、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、又はその他の関連するアルゴリズムにすることができる。
【0119】
モデルは{x_i}と{v_i}のデータセットを使用してトレーニング及びテストされ、ベクトル{x_i}を適合値{y_i}に関連付ける:
モデル M(x_i)→v_i
【0120】
トレーニングされたモデルが良好な予測を提供する場合、それを使用して、光学デバイスの不適合に関連付けられた頭部データパターンを定義できる。
【0121】
閾値Tは適合度に基づいて定義される。次の場合、装着者は適合していないと見なされ得る:
v_i≦T
【0122】
頭部パターンx_non-adaptは、この頭部データについて、モデルが下記閾値を下回る値を予測する場合、不適合に関連付けられる:
M(x_non-adapt)=v_non-adapt≦T
【0123】
この例では、装着者のデータ又は光学デバイスのデータは使用しない。それらのデータは、データベクトルx_iに簡単に追加できる。
【0124】
例えば、頭部データが監視されるときに装着者によって実行される活動など、他のデータが監視され、頭部データに関連付けられてもよい。実際、頭部パターンは、装着者が所与の活動を行っているときは不適合に関連付けられ、別の活動を行っているときは不適合に関連付けられないか、又は別の不適合に関連付けられている可能性がある。例えば、姿勢パターンは、装着者が歩いているときに不適合に関連している可能性があるが、装着者がデスクで働いているときは関連していない。装着者によって実行される活動は、装着者の位置、例えばGPS位置に基づいて、又は装着者からの入力に直接基づいて決定され得る。
【0125】
新しい不適合姿勢データパターンを取得することにより、経時的に不適合を検出するための装置を改善することができる。装着者のフィードバックにより、不適合の新たな原因を決定することができる。
【0126】
異なるヒストグラム及び/又はフィードバックに従って、装着者は、着用する光学レンズのタイプに応じて所与のタスクを実行する能力、及び/又は特定のタスクを実行しながら光学デバイスを使用する、例えば、コンピュータの前で読んだり作業したりする適合可能性など、様々なグループにセグメント化される。光学デバイスは、単焦点レンズ、ワイド累進レンズ、及びナロー累進レンズであってもよい。好ましい実施形態では、セグメンテーションは機械学習法を使用して実行され、装着者が属するセグメントを決定するためにモデルがトレーニングされ、セグメントは、頭部データ及び他のオプションのデータに基づいて、不適合の原因によって定義され得る。
【0127】
装着者のセグメンテーションのおかげで、不適合検出方法は、累進レンズへの不適合を予測することができる。
【0128】
本開示の第4の態様は、光学デバイスへの不適合を検出するための代替方法に関する。
【0129】
本開示の第5の態様は、非一時的コンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0130】
非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ実行可能命令を含むことができ、命令は、コンピュータ又は処理回路によって実行されると、コンピュータ又は処理回路に、不適合を検出するための方法及び/又は不適合に関連付けられた頭部パターンを決定するための方法を実行させる。
【0131】
この方法は、第1の受信ステップS40を含み、装着者に関連するデータ、例えば処方箋、性別及び/又は年齢が受信され、データベースに記憶される。
【0132】
この方法は、第2の受信ステップS42を含み、光学デバイスに関連するデータが受信され、データベースに記憶される。光学デバイスに関連するデータは、光学レンズ設計、ARコーティング、防汚、及び/又は光学デバイスに関連する他の任意のパラメータを含むことができる。
【0133】
この方法は、第3の受信ステップS44を含み、少なくとも1つの頭部データセンサによって測定されたデータがデータベースに記憶される。測定データは、頭の動き、姿勢及び下降角度、光強度、対象物までの距離、及び/又は装着者が経時的に光学デバイスを装着しているかどうかを含み得る。
【0134】
この方法は、第4の受信ステップS46を含み、不適合に関連するフィードバックが受信され、データベースに記憶される。フィードバックは、スマートフォンアプリケーション又はオンライン調査によって提供された可能性がある。
【0135】
この方法は、第5の最終受信ステップS48を含むことができ、不適合の原因が受信され、データベースに記憶される。
【0136】
データベースに関連するデータは、スマートフォンアプリケーションを介した、又は眼科専門家を介した調査及び/又はフィードバックを通じて、実際の装着者によって提供され得る。
【0137】
データベースに関連するデータは、誤った処方箋、不適切に装着された光学デバイスを有するアバターを使用してシミュレートされた仮想装着者に基づいて提供され、様々な視覚的タスクに対する頭部姿勢及び/又は頭部データを計算することもできる。
【0138】
データベースは、実際の装着者及び仮想装着者に関連するデータの組み合わせを含むことができる。
【0139】
この方法は、第1の分析ステップS50を含み、データベースに記憶されたデータを分析して、所与の不適合のケースに特有の頭部データパターンを決定する。
【0140】
この方法は、モデル作成ステップS52を更に含み、モデルを作成して、データベースに基づいて潜在的な不適合及び不適合の原因を予測する。モードの作成は、例えばニューラルネットワークを使用する機械学習によって達成され得る。
【0141】
機械学習の学習フェーズでは、装着者からフィードバックを得ることで、潜在的な不適合及び不適合の原因への収束を改善することができる。改善は、強化学習法を使用して提供することができる。
【0142】
この方法は、第2の分析ステップS54を含み、本開示による不適合を検出するための装置を有する光学デバイスを装着した新しい装着者について、頭部データセンサによって提供されるデータが分析される。
【0143】
この方法は警告ステップS56を含み、頭部データセンサによって測定されたデータが不適合のパターンに対応する場合、本開示による装置の警告デバイスが装着者又は眼科専門家に警告する。
【0144】
頭部データパターンから不適合の原因を特定できる場合は、その情報をデータベースに追加することができる。
【0145】
この方法は、光学デバイス提供ステップS58を含み、テストされた光学デバイスが装着者に適合しない場合、不適合の原因及びデータベースに記憶されたデータを考慮して、新しい光学デバイスが装着者に提案される。
【0146】
或いは、この方法は、不適合の原因に基づいて、テストされた光学デバイスの再調整又は視覚トレーニングを提案することができる。
【0147】
光学デバイスの再調整は、光学レンズ又は光学デバイスのフレームの別の設計のための変更に関連し得る。
【0148】
トレーニングは、例えば累進レンズなどの特定の光学デバイスへの装着者の適合を改善するための特定のトレーニングであってもよい。
【0149】
この方法は、処理回路によって実行されてもよいし、例えばクラウドネットワークにおいて、本開示による装置の外部のデバイスによって処理されてもよい。
【0150】
データベースは、例えば検眼テストによって得られた追加のデータを含むことができる。追加のデータは、実際の及び/又は仮想の装着者の少なくとも一部によって提供される収束不全、適応遅延、個視ずれ、より長い頭部姿勢又は注視の安定化などであり得る。
【0151】
頭部データセンサは、IMUとは別のタイプのセンサ、例えば注視方向を測定するアイトラッカーであってもよい。アイトラッカーは、光学デバイスのフレームに一体化されてもよい。
【0152】
頭部データセンサは、瞳孔サイズ又は、例えば眉の位置を含む顔の表情を測定することができる。瞳孔サイズ又は顔の表情を測定する頭部データセンサは、一体型カメラであってもよい。
【0153】
頭部データセンサは、EEG(脳波記録)データを測定することができる。
【0154】
頭部データセンサを使用して、光学デバイスの装着時間及び光学デバイスが装着されていない時間を決定することができ、オプションとして装着者が実行するタスクのタイプを決定することができる。このパラメータのおかげで、不適合が検出され得る。装着者は、一度装着したときの光学デバイスの形状に起因する不快感のために、光学デバイスを頻繁には装着しないことがある。形状の問題は、テンプルレベルでのフレームのサイズ、又はノーズパッドの形状及び/又はサイズが原因である可能性がある。これらのデータに基づいて、眼科専門家は、光学デバイスの再調整が必要であることを警告されてもよい。
【0155】
本開示は頭部データに関する。しかしながら、頭部データは、装着者の身体に関連する他のタイプのデータに置き換えられてもよい。データは、例えば、頭部ではない装着者の体の一部の姿勢又は動きに関連し得る。
【0156】
上記の例示的な実施形態を参照することで当業者には多くの更なる変更及び変形が明らかになるが、これらは例示目的で提供されるにすぎず、添付の請求項によってのみ決定される本開示の範囲を限定することを意図していない。特に、本開示はアクティブレンズに適用することができ、アクティブレンズの光学設計は、装着者の適合を改善するように変更することができる。本開示は更に、装着者の快適さを考慮して光透過機能を適合させることができるアクティブフィルタに適用することができる。
【0157】
請求項において、単語「含む」は他の構成要素又はステップを除外せず、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は複数を除外しない。互いに異なる従属請求項で異なる特徴が引用されていたとしても、これらの特徴の組み合わせが有利に使用できないことを意味しない。請求項におけるいかなる参照符号も本開示の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【国際調査報告】