(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-05
(54)【発明の名称】耐摩耗端子金具
(51)【国際特許分類】
H01R 13/187 20060101AFI20230928BHJP
H01R 13/03 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01R13/187 A
H01R13/03 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517931
(86)(22)【出願日】2021-09-20
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 IB2021058559
(87)【国際公開番号】W WO2022058979
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591043064
【氏名又は名称】モレックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【氏名又は名称】青木 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【氏名又は名称】川合 誠
(72)【発明者】
【氏名】ディーパック パティル
(72)【発明者】
【氏名】イーヴ レポティエ
(57)【要約】
【解決手段】電気コネクタ用の雌型レセプタクル端子(10)が開示される。雌型レセプタクル端子は、雄型ブレード端子(300)を挿入方向(M)に受け入れる開口部(20)を有するレセプタクルを含む。弾性接触ビーム(100)は、レセプタクルの上部から対向する下部に向かって延在する。少なくとも1つの接触面(103、113)が、弾性接触ビーム及び下部の少なくとも一方に設けられ、挿入方向及び幅方向に湾曲して、雄型ブレード端子を直線状の接触界面で係合する接触隆起部(105、115)と、幅方向に垂直な平面内で幅方向に直線状であり、下部に平行であり、点接触界面で雄型ブレード端子に係合するガイド部(101、111)と、を有する。また、雄型ブレード端子、電気コネクタ、及び電気接続を形成する方法が開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気コネクタ用の雌型レセプタクル端子であって、
挿入軸と、該挿入軸に沿った挿入方向に雄型ブレード端子を受け入れるように構成された開口部と、を有するレセプタクルと、
該レセプタクルの上部から前記レセプタクルの対向する下部に向かって延在する弾性接触ビームと、
前記雄型ブレード端子の前記レセプタクルへの挿入中に前記雄型ブレード端子と係合するように構成された少なくとも1つの接触面であって、前記弾性接触ビーム及び前記下部のうちの少なくとも一方に設けられ、
前記レセプタクル内に横方向に突出し、挿入方向及び前記レセプタクルの幅方向の両方に湾曲した外形を有する接触隆起部と、
前記レセプタクル内に横方向に突出し、挿入方向に垂直な平面内で幅方向に直線状で前記下部に平行な外形を有するガイド部であって、前記接触隆起部に隣接して該接触隆起部よりも前記開口部側に位置決めされ、前記雄型ブレード端子の前記レセプタクルへの挿入中、前記接触隆起部よりも先に前記雄型ブレード端子に係合するガイド部と、を含む、少なくとも1つの接触面と、
を備える、雌型レセプタクル端子。
【請求項2】
少なくとも1つの接触面が、前記弾性接触ビーム上の上側接触面を含む、請求項1に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項3】
前記弾性接触ビームが、前記挿入軸に沿って延在し、挿入方向に前記下部に向かって延在する前部と、前記下部から離れるように挿入方向に延在する後部と、前記前部と前記後部との間に位置するビーム頂点と、を含む主形状を有する、請求項1又は2に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項4】
前記接触隆起部が、挿入方向に前記ビーム頂点よりも後方に隆起部頂点を有する、請求項3に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項5】
前記隆起部頂点が、前記ビーム頂点から少なくとも0.1mm後方に、好ましくは前記ビーム頂点から少なくとも0.35mm後方に位置する、請求項4に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項6】
前記ビーム頂点が、前記ガイド部の前縁を画定する、請求項4又は5に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項7】
前記ビーム頂点が、少なくとも0.2mm~2mmの曲率半径を有する部分円筒形の外面形状を有する、請求項3~6のいずれか1項に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項8】
少なくとも1つの接触面が、前記下部上の下側接触面を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項9】
前記下側接触面のガイド部が、前記下部に隣接する前端と、前記下側接触面の前記接触隆起部の隆起部頂点に隣接する後端と、を有する傾斜部を備える、請求項8に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項10】
前記傾斜部の上面が、挿入方向に前記前端から前記後端まで実質的に一定である傾斜角度を画定する、請求項9に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項11】
前記傾斜部の上面が、前記前端で第1の幅を有し、前記後端で第2の幅を有し、前記第1の幅が前記第2の幅より大きい、請求項10に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項12】
前記傾斜部の上面が、前記第1の幅から前記第2の幅まで直線的にテーパ状である、請求項11に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項13】
前記第1の幅が、前記下部の幅の少なくとも40パーセント、好ましくは前記下部の幅の少なくとも50パーセントにわたって延在する、請求項11又は12に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項14】
前記傾斜角度が、前記挿入軸に対して20度以下である、請求項10~13のいずれか1項に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項15】
前記ガイド部が、前記接触隆起部と連続している、請求項1~14のいずれか1項に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項16】
前記ガイド部が、前記接触隆起部が挿入方向に第1の勾配を有し、前記ガイド部が挿入方向に第2の勾配を有する交差境界において前記接触隆起部の前領域と交差し、前記第1の勾配と前記第2の勾配は実質的に同じである、請求項15に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項17】
前記接触隆起部の外形が部分球形である、請求項1~16のいずれか1項に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項18】
導体に結合するための接続セクションと、嵌合雄型ブレード端子に電気接続を提供するための接触セクションと、を有する本体であって、前記接触セクションが前記弾性接触ビームを備える、本体と、
該本体の前記接触セクションを受け入れて、前記雌型レセプタクル端子の前記レセプタクルを画定するカバーと、を備える、請求項1~17のいずれか1項に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項19】
前記本体の前記接触セクションが、挿入方向に延在し、前記弾性接触ビームに対向する固定ビームを更に含み、該固定ビームが、前記レセプタクルの前記下部の少なくとも一部を画定する、請求項18に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項20】
前記下部の前記接触面が、前記固定ビームに設けられている、請求項19に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項21】
少なくとも1つの接触面が、導電性基材と、該導電性基材上に堆積されためっき層と、を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項22】
前記めっき層が、スズめっき層、金めっき層、又は銀めっき層である、請求項21に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項23】
前記めっき層が、2.5ミクロン~4.0ミクロンの厚さを有するスズめっき層である、請求項22に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項24】
前記導電性基材が銅合金である、請求項21~23のいずれか1項に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項25】
少なくとも1つの接触面が、前記導電性基材と前記めっき層との間に中間層を更に含み、該中間層が、ニッケル又はニッケル合金から形成される、請求項22~24のいずれか1項に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項26】
電気コネクタ用の雌型レセプタクル端子であって、
挿入軸と、該挿入軸に沿った挿入方向に雄型ブレード端子を受け入れるように構成された開口部と、を有するレセプタクルと、
該レセプタクルの上部から前記レセプタクルの対向する下部に向かって延在する弾性接触ビームと、
前記雄型ブレード端子の前記レセプタクルへの挿入中に前記雄型ブレード端子と係合するように構成された少なくとも1つの接触面であって、前記弾性接触ビーム及び前記下部のうちの少なくとも一方に設けられ、
前記レセプタクル内に横方向に突出し、前記雄型ブレード端子の挿入中に直線状の接触界面に沿って前記雄型ブレード端子に係合するように構成されたガイド部と、
前記レセプタクル内に横方向に突出し、前記雄型ブレード端子が前記雌型レセプタクル端子と嵌合するときに前記雄型ブレード端子と点接触界面で係合するように構成された接触隆起部と、を含む、少なくとも1つの接触面と、
を備える、雌型レセプタクル端子。
【請求項27】
前記ガイド部が、前記接触隆起部よりも前記開口部の近くに位置決めされて、それにより、前記雄型ブレード端子の前記レセプタクルへの挿入中、前記ガイド部が前記接触隆起部よりも先に前記雄型ブレード端子に係合する、請求項26に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項28】
電気コネクタ用の雌型レセプタクル端子であって、
挿入軸と、該挿入軸に沿った挿入方向に、所定の先端形状を有する雄型ブレード端子を受け入れるように構成された開口部と、を有するレセプタクルと、
該レセプタクルの上部から前記レセプタクルの対向する下部に向かって延在し、前記レセプタクル内に突出する接触隆起部を有する弾性接触ビームと、
前記雄型ブレード端子の前記レセプタクルへの挿入中に前記雄型ブレード端子と係合するように構成された少なくとも1つの接触面と、
を備え、
前記弾性接触ビームが、前記雄型ブレード端子の前記レセプタクルへの挿入中、前記接触隆起部が、前記挿入軸に対して20度以下の角度を有する初期接触界面において前記所定の先端形状に係合するように構成されている、雌型レセプタクル端子。
【請求項29】
電気コネクタ用の雌型レセプタクル端子であって、
挿入軸と、該挿入軸に沿った挿入方向に雄型ブレード端子を受け入れるように構成された開口部と、を有するレセプタクルと、
該レセプタクルの上部から前記レセプタクルの対向する下部に向かって延在する弾性接触ビームと、
前記雄型ブレード端子の前記レセプタクルへの挿入中に前記雄型ブレード端子と係合するように構成された少なくとも1つの接触面であって、前記弾性接触ビーム及び前記下部のうちの少なくとも一方に設けられ、挿入中の前記雄型ブレード端子の摩耗を低減するように構成された、少なくとも1つの接触面と、
を備える、雌型レセプタクル端子。
【請求項30】
前記レセプタクルが、所定の先端形状を有する雄型ブレード端子を受け入れるように構成され、少なくとも1つの接触面が、前記所定の先端形状に係合するように構成されている、請求項1~29のいずれか1項に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項31】
前記所定の先端形状が、平坦な上側接触面及び/又は平坦な下側接触面を有する、請求項30に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項32】
前記所定の先端形状が、1.5mm未満の長さに沿ってテーパ状である、請求項30又は31に記載の雌型レセプタクル端子。
【請求項33】
電気コネクタであって、
請求項1~32のいずれか1項に記載の雌型レセプタクル端子と、
前記レセプタクル内に受け入れられるように構成された雄型ブレード端子と、を備える、電気コネクタ。
【請求項34】
電気接続を形成する方法であって、
雌型レセプタクル端子を提供するステップであって、前記雌型レセプタクル端子が、
挿入軸と、該挿入軸に沿った挿入方向に雄型ブレード端子を受け入れるように構成された開口部と、を有するレセプタクルと、
該レセプタクルの上部から前記レセプタクルの対向する下部に向かって延在する弾性接触ビームと、
前記雄型ブレード端子の前記レセプタクルへの挿入中に前記雄型ブレード端子と係合するように構成された少なくとも1つの接触面であって、前記弾性接触ビーム及び前記下部のうちの少なくとも一方に設けられた少なくとも1つの接触面と、を備える、ステップと、
前記雄型ブレード端子を前記レセプタクルに挿入するステップと、
を含み、
該挿入するステップが、前記雄型ブレード端子を直線状の接触界面に沿って少なくとも1つの接触面と係合させ、その後、前記雄型ブレード端子を点接触界面において少なくとも1つの接触面と係合させることによって実行される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具の分野に関し、特に、電気コネクタに用いられる端子金具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電気コネクタは、典型的には、雌型レセプタクル端子と雄型ブレード端子とを含む接触界面を介して電力及び信号を伝送する。端子は、銅系合金等の導電性基材からなる。基材は、端子システムの少なくとも接触部上に堆積されためっき層を有する。めっき材料としては、金、銀、スズ、及びニッケルが挙げられるが、これらに限定されない。これらの端子システムでは、嵌合及び嵌合解除中に、めっき材料が摩耗したり、削られたりしがちである。この劣化は、挿入力及び電気抵抗を増大させる。
【0003】
耐摩耗性が向上した改良端子システムが必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
電気端子の設計において制御すべき重要な要因は、雌型レセプタクル端子を雄型ブレード端子と嵌合させるのに必要な力である。この要因は、対応する数の雄型ブレード端子と同時に嵌合するように構成された複数の雌型レセプタクル端子を備えるコネクタ構成において特に重要であり、というのは、全体の挿入力が、雄型端子及び雌型端子の単一セットに必要な単一の挿入力の倍数になるからである。別の重要な要因は、いくつかの嵌合及び嵌合解除にわたる、すなわち、いくつかの接続及び切断サイクルにわたる挿入力の再現性である。公知の電気コネクタにおいて、本発明者らは、雄型ブレード端子が雌型レセプタクル端子に挿入されるときにかなりの量の摩耗が生じることを確認した。この摩耗が電気コネクタの使用にわたって悪化するにつれて、挿入力は、経時的に大きくなっていく、及び/又は予測可能でなくなっていく可能性がある。本発明者らは、以下に概説するように、この問題に対する解決策を考案した。
【0005】
一実施形態によれば、電気コネクタ用の雌型レセプタクル端子が提供され、雌型レセプタクル端子は、以下の特徴のうちのいずれか又は全部を備える。挿入軸と、挿入軸に沿った挿入方向に雄型ブレード端子をレセプタクル内に受け入れられるように構成された開口部とを有するレセプタクル;レセプタクルの上部からレセプタクルの対向する下部に向かって延在する弾性接触ビーム;雄型ブレード端子のレセプタクルへの挿入中に雄型ブレード端子と係合するように構成された少なくとも1つの接触面であって、弾性接触ビーム及び下部のうちの少なくとも一方に設けられ、レセプタクル内に横方向に突出し、挿入方向及びレセプタクルの幅方向の両方に湾曲した外形を有する接触隆起部と、横方向にレセプタクル内に突出し、挿入方向に垂直な平面内で幅方向に直線状で下部に平行な外形を有するガイド部であって、接触隆起部に隣接して接触隆起部よりも開口部側に位置決めされ、雄型ブレード端子のレセプタクルへの挿入中、接触隆起部よりも先に雄型ブレード端子に係合するガイド部と、を含む、少なくとも1つの接触面。
【0006】
上記の構成を有する接触面を提供することによって、レセプタクルに挿入される雄型ブレード端子は、その完全挿入位置に向かって移動して接触隆起部に遭遇する前に、最初にガイド部に遭遇する。ガイド部は、挿入方向に垂直な平面内で幅方向に直線状であり、下部と平行である外形を有するように構成することによって、接触面と雄型ブレード端子との界面において線接触を提供することができる。これにより、雄型ブレード端子の幅のかなりの割合にわたって力が分配される。レセプタクルの挿入方向及び幅方向の両方に湾曲した外形を有するように接触隆起部を構成することによって、接触面と雄型ブレード端子との間に点接触界面が提供される。このようにして、雄型ブレード端子がレセプタクルに挿入されるとき、雄型ブレード端子は、点接触界面で接触隆起部に係合する前に、直線状の接触界面に沿ってガイド部に係合する。本発明者らは、これが、嵌合中の著しい摩耗形成を低減しながら、雄型ブレード端子にわたって圧力を有利に分布する一方で、雄型ブレード端子が完全に挿入されると、接触隆起部を介して良好な電気接続を依然として提供することを確認した。全体として、この構成は、挿入力を低減し、端子接触面の摩耗を低減又は排除することによって、組み立てが容易で、より堅牢な電気コネクタを提供する。
【0007】
少なくとも1つの接触面は、弾性接触ビーム上の上側接触面を備え得る。そのような実施形態では、接触隆起部及び接触面のガイド部は両方とも、下向きの横断方向に、すなわちレセプタクルの下部に向かってレセプタクル内に突出する。弾性接触ビームは、挿入軸に沿って延在し得る。弾性接触ビームは、直線状の主形状を有し得る。弾性接触ビームは、挿入方向に下部に向かって延在し得る前部を含む主形状を有し得る。そのような実施形態では、前部は、雄型ブレード端子の挿入を容易にするために開口部に向かって外向きに広がっている。弾性接触ビームは、挿入方向に下部から離れて延在し得る後部を更に備え得る。弾性接触ビームは、前部と後部との間に位置し得るビーム頂点を更に備え得る。これは、ガイド部が弾性接触ビームの屈曲によって提供される有利な構成を提供し得る。代替的に又は追加的に、ガイド部は、弾性接触ビーム上の追加的な表面特徴によって提供され得る。
【0008】
接触ビームは、挿入方向にビーム頂点の後方に隆起部頂点を有し得る。隆起部頂点は、ビーム頂点の少なくとも0.05mm後方に位置し得る。隆起部頂点は、好ましくはビーム頂点の少なくとも0.1mm後方に位置し得る。例えば、隆起部頂点は、挿入方向にビーム頂点の後方に少なくとも0.1mm、少なくとも0.15mm、少なくとも0.2mm、少なくとも0.25mm、少なくとも0.3mm、又は少なくとも0.35mmに位置し得る。このようなオフセットは、ガイド部によって提供される線接触と接触隆起部によって提供される点接触との間の移行が実現される有利な距離を提供することができる。ビーム頂点は、ガイド部の前縁を画定し得る。ビーム頂点は、部分円筒形の外面形状を有し得る。部分円筒形の外面形状の曲率半径は、0.2mm~2mm、好ましくは0.2mm~1.2mmであり得る。
【0009】
少なくとも1つの接触面は、下部に下側接触面を備え得る。ガイド部は、傾斜部を備え得る。傾斜部は、下部に隣接し得る前端を有し得る。傾斜部は、接触隆起部の隆起部頂点に隣接し得る後端を有し得る。ガイド部を傾斜面として設けることによって、雄型ブレード端子と接触面との間の接触界面は、傾斜面の前端での線接触から隆起部頂点での点接触に向かって徐々に移行することができる。傾斜部を設けることにより、下部の接触面をスタンピングなどの簡便な製造プロセスによって形成することも可能になる。
【0010】
傾斜部の上面は、挿入方向に前端から後端まで実質的に一定である傾斜角を画定し得る。傾斜部の上面は、前端から後端に向かって高さが直線的に増加し得る。傾斜部の上面は、前端に第1の幅を有し、後端に第2の幅を有し得る。第1の幅は、第2の幅よりも大きくなり得る。これにより、雄型ブレード端子と下側接触面との間の接触界面が、傾斜部の前端での線接触から傾斜部の後端でのより狭い線接触に徐々に移行することが可能になり、それによって、隆起部頂点における点接触への移行を容易にする。傾斜部の上面は、第1の幅から第2の幅まで直線的にテーパ状であり得る。第1の幅は、下部の幅の少なくとも40%、好ましくは下部の幅の少なくとも50%にわたって延在し得る。傾斜角度は、任意の好適な角度であり得る。特定の実施形態では、傾斜角度は、挿入軸から20度以下である。
【0011】
ガイド部は、接触隆起部から離間され得る。ガイド部は、接触隆起部と連続し得る。ガイド部は、接触隆起部の前領域と交差し得る。ガイド部は、接触隆起部が挿入方向に第1の勾配を有し、ガイド部が挿入方向に第2の勾配を有する交差境界において、前領域と交差し得る。第1の勾配と第2の勾配は実質的に同じであり得る。換言すれば、ガイド部は、交差境界における接触隆起部に対する接線において接触隆起部から延在し得る。これは、ガイド部と接触隆起部との間の滑らかな移行を提供し得る。接触隆起部の外形は、部分球形であり得る。
【0012】
少なくとも1つの接触面は、上述の実施形態のいずれかに従って、下部に設けられた下側接触面の形態の単一の接触面を備え得る。少なくとも1つの接触面は、上述の実施形態のいずれかに従って、弾性接触ビームに設けられた上側接触面の形態の単一の接触面を備え得る。特定の構成では、少なくとも1つの接触面は、上述の実施形態のいずれかに従って下部に設けられた下側接触面と、上述の実施形態のいずれかに従って弾性接触ビームに設けられた上側接触面と、の両方を含む。
【0013】
雌型レセプタクル端子は、接続セクションを有する本体を備え得る。接続セクションは、導体に結合するように構成され得る。本体は、嵌合雄型ブレード端子への電気接続を提供するために構成され得る接触セクションを更に備え得る。接触セクションは、弾性接触ビームを備え得る。雌型レセプタクル端子は、カバーを更に備え得る。本体の接触セクションは、カバー内に受け入れられて、雌型レセプタクル端子のレセプタクルを画定し得る。他の実施形態では、雌型レセプタクル端子は、単一の一体構造を有し得る。
【0014】
本体の接触セクションは、固定ビームを更に備え得る。静止又は固定ビームは、挿入方向に延在してもよく、弾性接触ビームに対向し得る。静止又は固定ビームは、レセプタクルの下部の少なくとも一部を画定し得る。下部の接触面は、固定ビームに設けられ得る。
【0015】
レセプタクルの下部は、レセプタクルの下壁によって少なくとも部分的に画定され得る。雌型レセプタクル端子がカバーを備える場合、レセプタクルの下壁は、カバーの下壁によって画定され得る。下側接触面は、下壁に設けられ得る。
【0016】
レセプタクルの上部は、レセプタクルの上壁によって少なくとも部分的に画定され得る。雌型レセプタクル端子がカバーを備える場合、レセプタクルの上壁は、カバーの上壁によって画定され得る。カバーは、上壁に形成された補強ビームを更に備え得る。補強ビームは、上壁上の一点から片持ち梁状にされ、弾性接触ビームに向かって下方に曲げられ得る。補強ビームは、嵌合中の弾性接触ビームの上方への撓みに対する抵抗を増加させるように構成され得る。補強ビームは、優れた電気接続を提供するために、弾性接触ビームによって提供される法線力を増加させるように構成され得る。カバーは、上壁に形成され、補強ビームの真上に位置する支持ビームを更に備え得る。支持ビームは、上壁上の一点から片持ち梁状にされ、弾性接触ビームに向かって下方に曲げられ得る。支持ビームは、嵌合中の弾性接触ビームの上方への撓みに対する抵抗を更に増加させるように構成され得る。支持ビームは、優れた電気接続を提供するために、弾性接触ビームによって提供される法線力を更に増加させるように構成され得る。
【0017】
少なくとも1つの接触面は、導電性基材を含み、導電性基材上に堆積されためっき層を含み得る。めっき層は、任意の適切な材料から形成され得る。例えば、めっき層は、スズめっき層、銀めっき層、又は金めっき層であり得る。
【0018】
めっき層は、任意の好適な厚さを有し得る。いくつかの構成では、めっき層は、2.5ミクロン~4.0ミクロンの厚さを有するスズめっき層である。
【0019】
導電性基材は、任意の好適な導電性材料から形成され得る。導電性基材は、銅を含み得る。導電性基材は、銅合金を含み得る、又は銅合金のみからなり得る。少なくとも1つの接触面は、導電性基材とめっき層との間に中間層を含み得る。中間層は、任意の適切な材料から形成され得る。中間層は、ニッケルを含み得る。いくつかの構成において、中間層は、ニッケル又はニッケル合金のみからなり得る。
【0020】
別の実施形態によれば、電気コネクタ用の雌型レセプタクル端子が提供され、雌型レセプタクル端子は、以下の特徴のうちのいずれか又は全部を備える。挿入軸と、挿入軸に沿った挿入方向に雄型ブレード端子をレセプタクル内に受け入れられるように構成された開口部とを有するレセプタクル;レセプタクルの上部からレセプタクルの対向する下部に向かって延在する弾性接触ビーム;雄型ブレード端子のレセプタクルへの挿入中に雄型ブレード端子と係合するように構成された少なくとも1つの接触面であって、弾性接触ビーム及び下部のうちの少なくとも一方に設けられ、レセプタクル内に横方向に突出し、雄型ブレード端子の挿入中に雄型ブレード端子と線接触界面に沿って係合するように構成されたガイド部と、横方向にレセプタクル内に突出し、雄型ブレード端子が雌型レセプタクル端子と嵌合されるときに雄型ブレード端子と点接触界面で係合するように構成された接触隆起部と、を備える、少なくとも1つの接触面。
【0021】
ガイド部は、接触隆起部よりも開口部側に位置決めされ得る。このようにして、雄型ブレード端子のレセプタクルへの挿入中、ガイド部は、接触隆起部の前に雄型ブレード端子に係合し得る。これにより、接触面は、点接触界面で雄型ブレード端子に係合する前に、直線状の接触界面で雄型ブレード端子に係合し得る。
【0022】
別の実施形態によれば、電気コネクタ用の雌型レセプタクル端子が提供され、雌型レセプタクル端子は、以下の特徴のうちのいずれか又は全部を備える。挿入軸と、挿入軸に沿った挿入方向に、所定の先端形状を有する雄型ブレード端子をレセプタクル内に受け入れられるように構成された開口部とを有するレセプタクル;レセプタクルの上部からレセプタクルの対向する下部に向かって延在し、レセプタクル内に突出する接触隆起部を有する弾性接触ビーム;雄型ブレード端子のレセプタクルへの挿入中に雄型ブレード端子と係合するように構成された少なくとも1つの接触面。弾性接触ビームは、雄型ブレード端子のレセプタクルへの挿入中に、接触隆起部が挿入軸に対して20度以下の角度を有する初期接触界面において所定の先端形状と係合するように構成されている。
【0023】
特定の実施形態では、接触界面における角度、すなわち「迎え角」は、挿入軸に対して16度以下である。特定の実施形態では、その角度は、挿入軸に対して10度以下である。少なくとも1つの接触面から雄型ブレード端子に作用する所与の法線力に対して、迎え角は、電気コネクタの特定の用途に応じて摩耗を低減又は排除するように最適化することができる。
【0024】
別の実施形態によれば、電気コネクタ用の雌型レセプタクル端子が提供され、雌型レセプタクル端子は、以下の特徴のうちのいずれか又は全部を備える。挿入軸と、挿入軸に沿った挿入方向に雄型ブレード端子をレセプタクル内に受け入れられるように構成された開口部とを有するレセプタクル;レセプタクルの上部からレセプタクルの対向する下部に向かって延在する弾性接触ビーム;雄型ブレード端子のレセプタクルへの挿入中に雄型ブレード端子と係合するように構成された少なくとも1つの接触面であって、弾性接触ビーム及び下部のうちの少なくとも一方に設けられ、挿入中の雄型ブレード端子の摩耗を低減するように構成された、少なくとも1つの接触面。
【0025】
レセプタクルは、所定の先端形状を有する雄型ブレード端子を受け入れるように構成され得る。少なくとも1つの接触面は、所定の先端形状に係合するように構成され得る。所定の先端形状は、平坦な上側接触面及び/又は平坦な下側接触面を有し得る。所定の先端形状の表面は、雄型ブレード端子の幅に沿って湾曲を有さない、すなわち、雄型ブレード端子の長手方向軸に垂直な方向に湾曲を有さないという意味で平坦であり得る。所定の先端形状は、1.5mm以下の長さに沿ってテーパ状であり得る。ある実施形態では、所定の先端形状は、1.2mm以下の長さに沿ってテーパ状であり得る。本明細書で使用される場合、「テーパ状」という用語は、雄型ブレード端子の厚さが、その前端又は先端に向かって高さ方向に徐々に減少することを意味する。テーパが延在する距離は、最先端から雄型ブレード端子の厚さがもはや減少しない点までの挿入方向の寸法として定義される。これは、雄型ブレード端子の上側接触面及び下側接触面の両方が平坦である点であり得る。
【0026】
また、本明細書には、電気コネクタ用の雄型ブレード端子が開示され、雄型ブレード端子は、導電性基材、2.5ミクロン~7ミクロン、好ましくは5ミクロン~7ミクロンの厚さを有するスズめっき層、及び導電性基材とスズめっき層との間の中間層の特徴のうちのいずれか又は全てを備える。
【0027】
雄型ブレード端子は、上述したような所定の先端形状を含み得る。所定の先端形状は、平坦な上側接触面及び/又は平坦な下側接触面を有し得る。所定の先端形状の表面は、雄型ブレード端子の幅に沿って湾曲を有さないという意味で平坦であり得る。所定の先端形状は、1.5mm以下の長さに沿ってテーパ状であり得る。特定の実施形態では、所定の先端形状は、1.2mm以下の長さに沿ってテーパ状であり得る。
【0028】
導電性基材は、任意の好適な導電性材料から形成され得る。導電性基材は、銅を含み得る。導電性基材は銅合金であり得る。中間層は、ニッケルを含み得る。中間層は、ニッケル又はニッケル合金から形成され得る。中間層は、1.0ミクロン~1.8ミクロンの厚さを有し得る。
【0029】
更なる実施形態によれば、上述した実施形態のいずれかによる雌型レセプタクル端子と、レセプタクルに受け入れられるように構成された雄型ブレード端子と、を備える電気コネクタが提供される。
【0030】
別の実施形態によれば、電気接続を形成する方法が提供され、本方法は、以下のステップのうちのいずれか又は全部を含む。雌型レセプタクル端子を提供するステップであって、雌型レセプタクル端子が、挿入軸と、挿入軸に沿った挿入方向に雄型ブレード端子をレセプタクル内に受け入れるように構成された開口部とを有するレセプタクルと、レセプタクルの上部からレセプタクルの対向する下部に向かって延在する弾性接触ビームと、雄型ブレード端子のレセプタクルへの挿入中に雄型ブレード端子と係合するように構成された少なくとも1つの接触面であって、弾性接触ビーム及び下部のうちの少なくとも一方に設けられた少なくとも1つの接触面と、を備える、ステップ;雄型ブレード端子をレセプタクルに挿入するステップであって、該ステップが、雄型ブレード端子を直線状の接触界面に沿って少なくとも1つの接触面と係合させ、その後、雄型ブレード端子を点接触界面において少なくとも1つの接触面と係合させることによって実行されるステップ。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の更なる特徴及び利点は、単に例として提示される本発明の実施形態の以下の説明から、及び図面を参照することによって明らかになるであろう。
【0032】
【
図1】本開示による雌型レセプタクル端子の斜視図である。
【
図6】
図1の端子の固定ビームの上面斜視図である。
【
図8】本開示による雄型ブレード端子の断面図である。
【
図9A】第1の位置で雌型レセプタクル端子に挿入されている雄型ブレード端子の概略断面図である。
【
図9B】第2の位置で雌型レセプタクル端子に挿入されている雄型ブレード端子の概略断面図である。
【
図10A】典型的な電気コネクタの撓みに対する力を示す図である。
【
図10B】本開示による電気コネクタの撓みに対する力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
必要に応じて、本開示の詳細な実施形態が本明細書に提示される。しかしながら、開示される実施形態は、本開示の単なる例示に過ぎず、様々な形態で具現化され得ることを理解されたい。したがって、本明細書に開示される具体的な詳細は、限定として解釈されるべきではなく、単に特許請求の範囲の基礎として、及び本開示を様々に採用するために当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0034】
図1及び
図2は、雌型レセプタクル端子10を示す。雌型レセプタクル端子10は、挿入軸35及び開口部20を有するレセプタクルを備える。開口部20は、雄型ブレード端子(図示せず)を、挿入軸35に沿った嵌合方向又は挿入方向Mでレセプタクル内に受け入れるように構成される。図示された構成では、端子10は、導体に結合されるための端子10の端部に接続セクション84を有する本体80と、雄型ブレード端子に電気的接続を提供するための接触セクション82と、本体80の接触セクション82を囲むカバー30と、を備える。カバー30は、本体80がその中に挿入されるとき、本体80の保持及び補強を提供する。これらの構成要素は分離可能であるように示されているが、その代わりに、本体80及びカバー30は、端子10を提供するために単一の一体構成要素として形成されてもよいことが理解されるであろう。
【0035】
本体80は、軸35に沿って長手方向に形成されている。接続部84の終端は、概して、本体80の後端又は第1の端部に位置決めされ、接触部82は、本体80の前端又は第2の端部に配置される。本体80は、銅又は任意の他の銅ベースの合金又は同等の導電特性を有する同様の材料などの導電性材料の単一片から打ち抜き形成され得る。図示の構成では、接続部84は「U」字形であり、接触部82に隣接して配置された第1の対のウィング88と、第1の対のウィング88に隣接して位置決めされた第2の対のウィング89と、を備える。ウィングの第1の対88は、ケーブル(図示せず)の裸導体部を固定するために使用することができ、ウィングの第2の対89は、ケーブルの絶縁部を固定するために使用することができる。
【0036】
カバー30は、平坦なプレートから打ち抜き形成され、略矩形の外周を含み得る。周辺部は、下側セクション22と、下側セクション22から延在する一対の側壁と、上側セクション24とを含み得る。
図2の構成では、カバー30は、上側セクション24及び下側セクション22を画定する中間壁26を含む。下側セクション22の一端には、相手雄型端子を受け入れるための開口部20を設けることができる。図示の構成では、下側セクション22及び上側セクション24の両方が、挿入軸35に沿って、かつカバー30の長さに沿って延在する。
【0037】
雌型レセプタクル端子10は、レセプタクルの上部からレセプタクルの下部に向かって延在する弾性接触ビーム100を備える。図示の構成では、上部は上側セクション24によって提供され、下部は下側セクション22によって提供される。
図2に最もよく示されるように、弾性接触ビーム100は、本体80から延在し、本体80の接続部82がカバー30に挿入されるときに当該カバーによって摺動可能に受け入れられるように構成され得る。
【0038】
少なくとも1つの接触面が、雄型ブレード端子のレセプタクルへの挿入中に雄型ブレード端子と係合するように設けられている。図示の構成では、接触面103が、弾性接触ビーム100に設けられている。特に、接触面は、レセプタクルの下部に面するように、弾性接触ビーム100の下側に配置される。
【0039】
その代わりに、又はそれに加えて、レセプタクルの下部に別の接触面が設けられ得る。図示の構成では、接触面113は、レセプタクルの下部の上側に、より具体的には、雌型レセプタクル端子10の静止又は固定ビーム110に設けられる。固定ビーム110は、本体80から延在し得、本体80の接続部82がその中に挿入されるとき、カバー30によって摺動可能に受け入れられるように構成され得る。このようにして、接触面103、113は、レセプタクルによって受け入れられる雄型ブレード端子と係合するために、レセプタクルの片側又は両側に設けられ得る。
【0040】
図2に示すように、接触ビーム100及び固定ビーム110は、挿入軸35に沿って延在し、基部83から形成される。固定ビーム110は、基部83から挿入軸35に沿って前方に平坦に延在し、弾性接触ビーム100は、基部の上部から延在し、固定ビーム110に対向する。基部83の側壁は、弾性接触ビーム100の上方に延在し、停止縁部85を含む。停止縁部85は、本体80が挿入軸35に沿ってカバー30内に挿入され得る範囲を制限するために、挿入軸35に垂直な表面を画定する。
【0041】
図1に示すように、本体80は、開口部20の反対側の端部において、カバー30の下側セクション22に摺動可能に収容され得る。挿入されると、固定ビーム110は、カバー30の下側セクション22上に位置決めされ得る。
【0042】
保持ビーム40が、カバー30内に形成され得る。図示の構成では、保持ビーム40は外側方向に延在しており、カバー30の上側セクション24から曲げられて片持ち梁状になっている。カバー30はまた、弾性接触ビーム100に追加の支持を提供するために、中間壁26から形成された補強ビーム50を備え得る。カバー30はまた、弾性接触ビーム100に追加の支持を提供するために、補強ビーム50上に積み重ねられた支持ビーム52を備え得る。これにより、嵌合中の撓みに対する抵抗が増大し、法線力が増大する。引張強度がより高い材料をカバー30に使用することによって、法線力を更に増加させることができる。
【0043】
図3~
図6は、一実施形態による弾性接触ビーム100及び固定ビーム110の更なる詳細を示す。図示の構成では、本体80がカバー30内に挿入されると、固定ビーム110は、カバー30の下側セクション22に隣接するレセプタクルの下部を画定する。また、弾性接触ビーム100は、挿入方向Mにレセプタクルに沿って延在し、前部、後部、及びビーム頂点を含む主形状を有し得る。
【0044】
前部100aは、挿入方向Mに下部に向かって延在する。図示の構成では、前部100aは、片持ち梁状の接触ビーム100の自由端に配置され、挿入方向Mに固定ビーム100に向かって延在する。換言すれば、弾性接触ビーム100は、挿入方向Mに対して固定ビーム110に向かって下方に傾斜する前部100aを有する。
【0045】
後部100bは、レセプタクルの下部から離れて挿入方向Mに延在する。
図3に示される実施形態では、後部100bは、固定ビームから離れて挿入方向Mに延在する。換言すれば、弾性接触ビーム100は、挿入方向Mに対して固定ビーム110から離れて上方に傾斜する前部100bを有する。
【0046】
ビーム頂点100cは、前部100aと後部100bとを接続する。
図3~
図5に示すように、ビーム頂点100cは、接触ビーム100の下方傾斜前部100aと上方傾斜後部100bとの間の滑らかな移行を提供することができる。このようにして、弾性接触ビーム100は、レセプタクルの下部に対して凸形状を有し得る。
【0047】
弾性接触ビーム100の平衡位置において、すなわち、雄型ブレード端子によって変位されていないとき、前部100aは、ビーム頂点100cから開口部20に向かって、挿入軸35に対して任意の適切な角度、例えば5度~70度で上向きに傾斜し得、後部は、ビーム頂点100cから挿入方向Mに任意の適切な角度、例えば2度~30度で上向きに延在し得る。図示の構成では、前部100aは挿入軸35に対して約45度の角度で延在し、後部100bは挿入軸35に対して約10度の角度で延在する。図示の構成では、前部100aは、後部100bよりも開口部20に近い。
【0048】
弾性接触ビーム100の接触面103は、接触隆起部105を含む。接触隆起部105は、レセプタクル内に突出し、挿入方向M及びレセプタクルの幅方向の両方に湾曲した外形を有する。すなわち、接触隆起部は、挿入方向Mと、挿入方向Mに垂直であり、レセプタクルの下部の平面に平行である幅方向との両方において非直線状である。図示の構成では、接触隆起部105は、少なくとも部分的に球状面を有する。他の構成では、表面は少なくとも部分的に楕円形又は卵形であり得る。
【0049】
接触隆起部105は、挿入方向Mにビーム頂点100cの後方に位置する隆起部頂点106を有し得る。隆起部頂点106は、後部100cに対して接触隆起部105上の最外点として設けられ得る。換言すれば、隆起部頂点106は、弾性接触ビーム100の後部100aの外面から最大垂直距離にある接触隆起部105の表面上の点である。隆起部頂点106は、ビーム頂点100cの少なくとも0.25mm後方に位置し得る。隆起部頂点106は、ビーム頂点100cから少なくとも0.35mm後方に位置することが好ましい。
【0050】
接触面103はまた、ガイド部101を備え得る。図示の構成では、ガイド部101は、レセプタクル内に突出し、挿入方向Mに垂直な平面内で幅方向に直線状でレセプタクルの下部に平行な外形を有する。換言すれば、ガイド部101は、幅方向に湾曲を有さず、挿入軸35を中心に傾斜していない。
【0051】
ビーム頂点100cは、ガイド部101の前縁を画定し得る。図示の構成では、ビーム頂点100cは、部分円筒形の外面形状を有する。部分円筒面形状の曲率半径は、好ましくは0.2mm~2mmであり、より好ましくは0.2mm~1.2mmである。ガイド部101は、接触隆起部105よりも開口部20側に位置決めされ得る。このようにして、雄型端子ブレードを開口部20を介してレセプタクルに挿入する間、ガイド部101は、接触隆起部105に係合する前に雄型ブレード端子に係合する。
【0052】
図4及び
図6に最もよく示されるように、レセプタクルの下部の接触面113は、固定ビーム110に設けられ得る。接触面113は、レセプタクル内に突出し、レセプタクルの挿入方向及び幅方向の両方に湾曲した外形を有する接触隆起部115を備え得る。すなわち、接触隆起部は、挿入方向Mと、挿入方向Mに垂直であり、レセプタクルの下部の平面に平行である幅方向との両方において非直線状である。図示の構成では、接触隆起部115は、少なくとも部分的に球状面を有する。他の構成では、表面は少なくとも部分的に楕円形又は卵形であり得る。
【0053】
接触隆起部115は、隆起部頂点116を有し得る。隆起部頂点106は、固定ビーム110の表面に対して接触隆起部115上の最外点として設けられ得る。換言すれば、隆起部頂点116は、固定ビーム110の平面から最大垂直距離にある接触隆起部115の表面上の点である。
【0054】
接触面113はまた、ガイド部111を備え得る。図示の構成では、ガイド部111は、レセプタクル内に突出し、挿入方向Mに垂直な平面内で、幅方向に直線状であり、レセプタクルの下部に平行な外形を有する。換言すれば、ガイド部111は、幅方向に湾曲を有さず、挿入軸35を中心に傾斜していない。
【0055】
図6に最もよく示されているように、図示される構成のガイド部111は、固定ビーム110の前端に隣接する前端111aと、接触隆起部115の隆起部頂点116に隣接する後端111bと、を有する傾斜部を備える。傾斜部の上面は、前端111aから後端111bに向かって高さが直線的に増加する。挿入方向に対する傾斜部の角度は、好ましくは20度未満であり、15度未満又は10度未満であり得る。図示の構成では、傾斜角は約7度である。傾斜部の上面は、前端111aで第1の幅を有し、後端111bで第2の幅を有し、第1の幅は第2の幅よりも大きい。第1及び第2の幅は、挿入方向Mに垂直な幅方向に測定される。傾斜部の上面は、第1の幅から第2の幅まで直線的にテーパ状である。図示の構成では、傾斜部は、実質的に三角形の上面を有する。第1の幅は、下部の幅の少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%にわたって延在し得る。
【0056】
ガイド部111の少なくとも一部は、接触隆起部115の軸方向範囲と重なり得る。特に、ガイド部111の傾斜部は、接触隆起部115と重なり得る。図示の構成では、傾斜部111の後端111bは、挿入方向Mに接触隆起部115の軸方向範囲に沿って少なくとも20%の位置に配置される。他の例では、傾斜部111の後端111bは、挿入方向Mに接触隆起部115の軸方向範囲に沿って少なくとも30%又は少なくとも40%の位置に配置され得る。
図4及び
図6を参照すると、ガイド部111の上面は、接触隆起部115の球面に接している。言い換えれば、接触隆起部115がガイド部111の後端111bに交わる点における球面の勾配は、ガイド部111と接触隆起部115との間の滑らかな移行を提供するために、ガイド部111の上面の勾配と同じであり得る。
【0057】
図3の垂直方向(挿入軸35に対して垂直)において、弾性接触ビーム100の接触隆起部105と固定ビーム110の接触隆起部115との間の最小間隙は、コネクタの所望の用途、対応する雄型ブレード端子のサイズ、及び/又は弾性接触ビーム100の剛性を含むがこれらに限定されないいくつかの要因に応じた任意の好適な距離であり得る。いくつかの構成では、対向する接触隆起部間の最小間隙は、0.1mm~0.3mmの範囲、例えば、0.17mmである。
【0058】
固定ビーム110の隆起部頂点116は、上述の要因に従って任意の適切な距離だけ弾性接触ビーム100の隆起部頂点106から軸方向にオフセット(すなわち、挿入軸35の方向にオフセット)され得る。オフセットは、挿入軸35に沿った挿入方向又は取外し方向であり得る。
図3に示される構成では、弾性接触ビーム100の接触隆起部105の頂点は、固定ビーム110の接触隆起部115の頂点から挿入方向Mに(すなわち、開口部20から遠くに)オフセットされる。他の構成では、固定ビーム110の接触隆起部115の頂点は、弾性接触ビーム100の接触隆起部105の頂点から挿入方向Mにオフセットされる。いくつかの構成では、隆起部頂点106、116は、0mm~1mm、例えば、0mm~0.5mmの距離だけオフセットされ得る。オフセットは約0.2mmであり得る。オフセットが0mmであるとき、隆起部頂点は軸方向に整列されることが理解されるであろう。
【0059】
固定ビーム110の前端、すなわち、開口部20に最も近い端部は、面取りされた縁部90を有し得る。雌型レセプタクル端子10の接触面103、113の少なくとも一方は、導電性基材と、導電性基材上に堆積されためっき層と、を含む。一実施形態では、めっき層はスズを含み、好ましくは2.5ミクロン~4ミクロンの厚さを有する。めっき層は、つや消しめっき処理により形成されることが好ましい。導電性基材が銅又は銅合金からなり、導電性基材とめっき層との間にニッケル中間層が形成され得る。めっき層は潤滑層で被覆されていることが好ましい場合がある。
【0060】
図7は、挿入軸と、雄型ブレード端子(図示せず)を挿入軸に沿った挿入方向Mでレセプタクル内に受け入れるように構成された開口部20とを有するレセプタクルを備える雌型レセプタクル端子の一実施形態を示す。
図7の雌型レセプタクル端子は、
図1~
図6に関連して上述した雌型レセプタクル端子の実施形態と構造及び動作が類似しており、類似の特徴を示すために類似の参照番号が使用されている。
図1~
図6に示す実施形態と同様に、レセプタクルは、レセプタクルの上部からレセプタクルの対向する下部に向かって延在する弾性接触ビーム200を備える。下部は、固定又は静止ビーム210によって画定され得る。図示された構成において、弾性接触ビーム200は、挿入方向Mにてレセプタクルの下部に向かって延在する前部200aと、挿入方向Mに下部から離れる方向に延在する後部200bと、前部200aと後部200bとの間に位置するビーム頂点200cと、を備える。端子は、レセプタクルへの挿入中に雄型ブレード端子と係合するように構成された少なくとも1つの接触面を備える。少なくとも1つの接触面は、弾性接触ビーム200及び下部の少なくとも一方に設けられる。図示の構成では、接触面203が弾性接触ビーム200に設けられ、別の接触面213が固定ビーム210に設けられる。
図3~
図6に関する接触面103、113の説明は、本実施形態に適用可能である。
【0061】
この構成と
図1~
図6の構成との主な違いは、
図7の構成では、弾性接触ビーム200の自由端が、前部200aに対して弾性接触ビーム200の反対側の端部である後部200bの端部に配置されていることである。弾性接触ビーム200は、取付部200dによってレセプタクルの上部に固定される。図示の構成では、取付部200dは、開口部20に近接する前部200aの前端に接続されている。
【0062】
図7はまた、平衡位置にあるとき、すなわち、雄型ブレード端子がレセプタクルに挿入されていないときのレセプタクル構成のいくつかの寸法を示す。弾性接触ビーム200の接触面203と固定ビーム210の接触面213との間の間隙の高さは、ラベルL1によって示される。特に、L1は、接触面203の接触隆起部の頂点206から、対向する接触面213の接触隆起部の頂点216まで、垂直方向(すなわち、挿入方向Mに垂直)に測定された間隙の高さである。間隙L1は、所望の用途に応じて任意の好適な距離であり得る。いくつかの構成では、L1は、0.35mm~0.50mm、又は0.40mm~0.45mmである。L1は約0.43mmであり得る。L1のこの寸法は、
図1~
図6の実施形態に等しく適用し得る。
【0063】
図7において、隆起部頂点206は、ビーム頂点200cの後方に位置する。挿入方向Mのビーム頂点200cから隆起部頂点206までの距離を符号L2で示す。好ましくは、L2は少なくとも0.25mmであり、より好ましくは、L2は少なくとも0.35mmである。すなわち、いくつかの実施形態では、隆起部頂点206は、ビーム頂点200cの少なくとも0.25mm後方、好ましくはビーム頂点200cの少なくとも0.35mm後方に位置し得る。
【0064】
図7に示すように、寸法L3は、レセプタクルの頂部と弾性接触ビーム200の自由端の上面との間の垂直方向(すなわち、挿入方向M及び幅方向に垂直な方向)の隙間を示す。好ましくは、L3は0.06mm~0.25mmであり、より好ましくは、L3は約0.18mmである。以下に説明するように、寸法L3は、弾性接触ビーム200によってその中に挿入される雄型ブレード端子に加えられる法線力を決定する要因である。
【0065】
図8は、雌型レセプタクル端子10と接続するように構成された雄型ブレード端子300の先端302の断面図を概略的に示す。先端302は、所定の先端形状を有し、図示の構成では、その遠位端に切頭端面304を有する滑らかな収束部を含む。先端302の近位には、雄型ブレード端子300の一部があり、雄型ブレード端子の外面は、この一部に沿ってその長手方向軸に平行である。雄型ブレード端子300を雌型レセプタクルに挿入すると、雄型ブレード端子300の長手方向軸は、挿入軸と実質的に平行になることが理解されるであろう。したがって、収束部は、端面304に向かって雄型ブレード端子の長さに沿ってテーパを提供し、それに沿って雄型ブレード端子の厚さ、すなわち垂直方向の最大寸法が減少する。所定の先端形状は、1.5mm未満の長さに沿ってテーパ状であり得る。
【0066】
先端302の外側接触面は、雌型レセプタクル端子の接触面103、113と接触するように構成される。図示されていないが、雄型ブレード端子300は、好ましくは、上面305が雌型レセプタクル端子の第1の接触面103と接触するように構成され、第1の面の反対側の下面306が第2の接触面113と接触するように構成される、長方形又は正方形の断面を有するタイプである。所定の先端形状は、平坦な上側接触面及び/又は平坦な下側接触面を有し得る。所定の先端形状の表面は、雄型ブレード端子の幅に沿って湾曲を有さない、すなわち、雄型ブレード端子の長手方向軸に対して垂直かつ雄型ブレード端子の高さ方向に対して垂直な方向に湾曲を有さないという意味で平坦であり得る。具体的には、上側接触面及び下側接触面は、雄型ブレード端子の長手方向軸に垂直な平面内で幅方向に直線状であり、かつ互いに平行であり得る。
【0067】
表面305、306の最も急な傾斜は、
図8に示される雄型ブレード端子300の先端、すなわち、表面305、306が端面304と交わる点に形成される。先端では、上面305及び下面306はそれぞれ、雄型ブレード端子300の長手方向軸に対して角度をなす。その角度は、好ましくは30度未満又は25度未満である。図示の構成では、この角度は約20度である。表面305、306の勾配は、それらが挿入軸35と平行になるまで端面304から離れるにつれて徐々に減少し、その点で、各表面305及び306の勾配は0である。
【0068】
図示の構成では、雄型ブレード端子300は、銅又は銅合金を含み得る導電性基材310を含む。好ましくはスズを含むめっき層314が、先端302の外面の少なくとも一部に設けられる。雄型ブレード端子300は、好ましくはニッケルを含む中間層312を更に含む。中間層312は、導電性基材310とめっき層314との間に配置される。潤滑層もめっき層上に設けられ得る。
【0069】
図9A及び
図9Bは、雄型ブレード端子300が雌型レセプタクル端子10に挿入されるときの、雄型ブレード端子300の外面305、306と雌型レセプタクル端子10の接触面103、113との間の相互作用を概略的に示す。嵌合相互作用は
図3~
図6の構成を参照して説明されるが、雄型ブレード端子300が
図7の雌型レセプタクル端子と実質的に同じ方法で相互作用することが理解されるであろう。雄型ブレード端子300がレセプタクルの開口部20に挿入されると、その外面305、306が雌型端子の対応する接触面103、113に接触する。
図9A及び
図9Bに明確に示されるように、接触隆起部105、115間の間隙の高さは、ブレード300の全高がそこを通って嵌合できるには小さすぎる。固定ビーム110はレセプタクルの下側セクション22に対して所定位置に固定されたままであるが、ブレード300によって弾性接触ビーム100に及ぼされる法線力は、弾性接触ビーム100をその平衡位置に対して上方に撓ませる。弾性接触ビーム100の撓みは、ブレード300がレセプタクルに挿入されるにつれて徐々に増大する。接触面103、113は、ブレード面305、306に力を加え、この力は、接触面の各対の間の界面に垂直な法線力である。
【0070】
図9Aに示され、上述されたように、雌型レセプタクル端子の1つ又は複数の接触面は、(挿入方向に垂直な平面内で)幅方向に直線状で水平であるガイド部と、幅方向及び挿入方向の両方に湾曲した接触隆起部と、を含むことができる。また、雄型ブレード端子は、傾斜面を有する略矩形状断面を有しており、幅方向に外面がガイド部と相似形状となるようにレセプタクルに挿入することができる。したがって、表面、例えば上面305が接触ビーム100のガイド部101と接触するとき、それらの間の接触界面は、挿入方向に垂直な平面内で幅方向に直線状であり、レセプタクルの下部に平行であるので、直線状である。換言すれば、雄型ブレード端子は、直線状の接触界面に沿って接触面103と係合する。これは、最初に、単一点に力を集中させる代わりに、線に沿って法線力を分散させる。固定ビーム110のガイド部111についても同様である。したがって、図示の構成では、この線接触は、上面305が弾性接触ビーム100のガイド部101と係合し、下面306がレセプタクルの下部に設けられた固定ビーム110のガイド部111と係合するときに確立される。
【0071】
図9Bに示され、上述されたように、接触面103、113の一方又は両方の接触隆起部は、ガイド部の後に雄型ブレード端子に係合する。接触隆起部は、幅方向及び挿入方向の両方において湾曲しており、これにより、レセプタクルに対して凸状の外面形状を提供することができる。したがって、表面、例えば、上面305が弾性接触ビーム100の接触隆起部105と接触するとき、接触隆起部105の湾曲形状と比較して幅方向におけるブレード300の外面305、306の直線形状を考慮すると、それらの間の接触界面は単一点となる。換言すれば、雄型ブレード端子は、接触面103と点接触界面で係合する。同様に、外面306は、固定ビーム110の接触隆起部115と点接触界面で係合する。
【0072】
いくつかの従来の構成では、雄型ブレード端子と雌型レセプタクル端子との間の最初の接触は、雄型ブレード端子の端面の近くの点接触界面、すなわち、表面勾配がより大きい場所で生じる。これは、接触面上のより高い剪断応力を引き起こし、雄型ブレード端子上のめっき材料の堆積の増加につながり、最終的に、摩耗の増加、並びに後続の嵌合動作のための挿入力及び/又は予測不可能な挿入力の関連する増加をもたらす可能性がある。
【0073】
本開示により雌型レセプタクル端子及び雄型ブレード端子を構成することによって、法線力は、第1の接触点において雄型ブレード端子300の表面305、306にわたって分散され、それによって接触面の劣化を低減する。しかしながら、雄型ブレード端子のより浅い又は平坦な部分では(すなわち、
図9A及び
図9Bにおける雄型ブレード端子300の右側に向かって)、点接触界面はめっき層に対してあまり有害ではない。更に、より浅い又は平坦な部分では、雄型ブレード端子のこれらの部分で電気的接続がなされるため、法線力が線ではなく単一の点を介して加えられることが望ましい。接触面305、306に加えられる局所圧力の増大は、電気コネクタの雄型構成要素と雌型構成要素との間の電気接続の改善を容易にする。圧力が高いほど電子が潤滑剤層をより容易に通り抜けることができるので、このことは潤滑剤が使用される場合に特に重要である。しかしながら、法線力が点接触において高すぎる場合、雄型ブレード端子がレセプタクル内へ更に摺動されるにつれて、摩耗の増加につながり得る。
【0074】
図7は、法線力を制御することができる1つの方法を示す。雄型ブレード端子が開口部20に挿入されて、弾性接触ビーム200に接触すると、弾性接触ビーム200は上方に撓む。ブレード端子に加えられる法線力は、取付部200dの剛性によって主に決定される。最終的に、雄型ブレード端子が挿入方向Mに沿って更に挿入されると、弾性接触ビーム200は、その自由端が上部に接触する程度まで上方に撓む。この時点で、弾性接触ビーム200は、両端でレセプタクルの上部と接触しており、更に上方に撓ませるには、弾性接触ビーム200の2つの端部の間でビーム頂点200cを上方に押し下げることを必要とする。このような撓みは、より大きな力を必要とし、それによって雄型ブレード端子に加えられる法線力を増大させることが理解されよう。
図7の寸法L3を調整することによって、増加された力が必要とされる点は、挿入過程にわたって法線力を制御するように適宜変更することができる。
【0075】
図9Bを参照すると、接触界面の摩耗の程度を決定し得る別の要因は、迎え角である。迎え角は、接触界面における接線と挿入軸35との間の角度として定義され得る。
図9Bに示される雄型ブレード端子300の上面において、迎え角AAは、(上面305と対応する接触隆起部105との間の)接触界面における接線Tと挿入軸線35との間の角度である。好ましくは、迎え角AAは、20度以下、好ましくは16度以下の鋭角である。図示の構成では、迎え角AAは約10度である。
【0076】
図10A及び
図10Bは、挿入距離dに対する挿入力Fのグラフを示す。換言すれば、これらのグラフは、雄型ブレード端子が雌型レセプタクル端子内にどれだけ深く挿入されているかの関数として、所与の雄型ブレード端子を雌型レセプタクル端子内に挿入し取り外すのに必要な力の量を示す。
図10Aは、既知の電気コネクタにおける力特性を示し、
図10Bは、実験測定からのデータに基づく、本開示による電気コネクタの力特性を示す。これらのグラフは、大きさを直接比較できるように同じ尺度で描かれている。レセプタクルに挿入された雄型ブレードの長さに関して、各グラフは、所与のコネクタの1回目及び10回目の嵌合/嵌合解除サイクルについて、ブレードを挿入するのに必要な力のプロット(水平軸の上に示される)及びブレードを取り外すのに必要な力のプロット(水平軸の下に示される)を示す。
【0077】
図10Aにおいて、プロットX1は、既知のコネクタの1回目の挿入/取外しサイクルに対する挿入力及び取外し力を示し、プロットX10は、10回目の挿入/取外しサイクルに対する挿入力及び取外し力を示す。
図10Bにおいて、プロットY1は、本開示によるコネクタの1回目の挿入/取外しサイクルの挿入力及び取外し力を示し、プロットY10は、10回目の挿入/取外しサイクルの挿入力及び取外し力を示す。これは、本開示の電気コネクタアセンブリを使用することによって実現される摩耗低減の結果として、挿入力及び取外し力が、初期サイクル及び10回目のサイクルについて既知のコネクタよりも低いことを示している。更に、プロットY1及びY10は、互いに実質的に同じ力プロファイルに従うが、プロットX1及びX10は、挿入及び取外しの両方の間に著しい逸脱があることが分かる。したがって、本明細書に開示される電気コネクタ構成は、挿入力の低減を可能にすることに加えて、より予測可能で、一貫性があり、反復可能な力プロファイルを有する。
【0078】
更なる実施形態を提供するために、上述の実施形態の全てに対して、追加、削除、及び/又は置換のいずれかによる様々な修正を行うことができ、そのいずれか及び/又は全てが、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【国際調査報告】