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特表2023-542188眼鏡レンズの数値的表現を判断するコンピュータ実施方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-05
(54)【発明の名称】眼鏡レンズの数値的表現を判断するコンピュータ実施方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/113 20060101AFI20230928BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20230928BHJP
   A61B 3/107 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A61B3/113
G02C13/00
A61B3/107
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023518156
(86)(22)【出願日】2021-09-23
(85)【翻訳文提出日】2023-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2021076166
(87)【国際公開番号】W WO2022063878
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】20198266.7
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507062222
【氏名又は名称】カール ツァイス ヴィジョン インターナショナル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139491
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 隆慶
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート ヴィートショーク
【テーマコード(参考)】
2H006
4C316
【Fターム(参考)】
2H006DA05
4C316AA03
4C316AA13
4C316AA21
4C316AA24
4C316FA14
4C316FC21
(57)【要約】
眼鏡レンズの数値的表現を判断するコンピュータ実施方法が提供される。本方法では、数値的に表された加工用眼鏡レンズ(17)が、判断される眼鏡レンズの数値的表現を構成する最適化された数値的に表された加工用眼鏡レンズを取得するために眼の様々な視野方向に沿った多くの光線束(27、29)を使用する光線追跡により最適化される。光線束(27、29)の主光線(35、37)はそれぞれ頂点面(19、119)の点を形成する異なる光線通過点(31、33)を通過し、光線束(27、29)の主光線(35、37)は、それぞれの光線通過点(31、33)に関係する視野方向に沿って延びる。光線通過点(31、33)の三次元場所は、眼(1)が回転すると角膜(3)の頂点(5)の場所を表す非球頂点面(11)の表面点と、角膜(3)の頂点(5)が前記表面点に配置されると眼(1)の視野方向に対応する方向のそれぞれの表面点における頂点面(11)へ加えられる固定距離(vd)とにより判断される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズの数値的表現を判断するコンピュータ実施方法であって、
数値的に表された加工用眼鏡レンズ(17)は、判断される前記眼鏡レンズの数値的表現を構成する最適化された数値的に表された加工用眼鏡レンズを取得するために眼(1)の様々な視野方向に沿った多くの光線束(27、29)を使用する最適化過程及び光線追跡により最適化され、
前記光線束(27、29)の主光線(35、37)はそれぞれ頂点面(19、119)の点を形成する異なる光線通過点(31、33)を通過し、
前記光線束(27、29)の前記主光線(35、37)は、前記それぞれの光線通過点(31、33)に関係する視野方向に沿って延びる、コンピュータ実施方法において、
前記光線通過点(31、33)の三次元場所は、前記眼(1)が回転すると角膜(3)の頂点(5)の場所を表す非球頂点面(11、111)の表面点と、前記角膜(3)の前記頂点(5)が前記表面点に配置されると前記眼(1)の前記視野方向に対応する方向の前記それぞれの表面点における前記頂点面(11、111)へ加えられる固定距離(vd)とにより判断される、ことを特徴とするコンピュータ実施方法。
【請求項2】
前記視野方向は前記頂点面(11、111)の前記表面点における前記頂点面(11、111)の法線方向に対する規定アジマス角及び規定極角度により表される、ことを特徴とする請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項3】
前記規定アジマス角は一定アジマス角であり、前記規定極角度は一定極角度である、ことを特徴とする請求項2に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項4】
前記規定極角度は0度~20度に広がる範囲内の角度である、ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項5】
前記頂点面(11、111)は前記眼が第1の回転軸(7)を中心に及び前記第1の回転軸(7)に対し平行でない第2の回転軸(9)を中心に回転すると前記角膜(3)の場所から生じる表面であり、前記第1の回転軸(7)と前記第2の回転軸(9)とは交差しない、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項6】
前記第1の回転軸(7)と前記第2の回転軸(9)との間の距離(d)は0mm超~最大7.5mmの範囲内である、ことを特徴とする請求項5に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項7】
前記頂点面(11、111)は楕円の表面である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項8】
前記頂点面(11、111)は測定の結果である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項9】
前記固定距離は頂点間距離(vd)である、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項10】
眼鏡レンズの数値的表現を判断するためのコンピュータプログラムであって指令を有するプログラムコードを含むコンピュータプログラムにおいて、前記指令は、コンピュータにより実行されると、前記コンピュータに、
数値的に表された加工用眼鏡レンズ(17)を、判断される前記眼鏡レンズの数値的表現を構成する最適化された数値的に表された加工用眼鏡レンズを取得するために眼(1)の様々な視野方向に沿った多くの光線束(27、29)を使用する最適化過程及び光線追跡により最適化させ、
前記光線束(27、29)の主光線(35、37)はそれぞれ頂点面(19、119)の点を形成する異なる光線通過点(31、33)を通過し、
前記光線束(27、29)の前記主光線(35、37)は前記それぞれの光線通過点(31、33)に関係する視野方向に沿って延びる、コンピュータプログラムにおいて、
前記プログラムコードは、前記コンピュータにより実行されると、前記コンピュータに、前記眼(1)が回転する場合に角膜(3)の頂点(5)の場所を表す非球頂点面(11、111)の表面点により前記光線通過点(31、33)の三次元場所を判断することと、前記角膜(3)の前記頂点(5)が前記表面点に配置される場合に固定距離(vd)を前記眼(1)の前記視野方向に対応する方向の前記それぞれの表面点において前記頂点面(11、111)へ加えることとを、させる指令を含む、ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項11】
眼鏡レンズの数値的表現を判断するための指令を含むプログラムコードがその上に格納された不揮発性コンピュータ可読ストレージ媒体であって、前記指令は、コンピュータにより実行されると、前記コンピュータに、
数値的に表された加工用眼鏡レンズ(17)を、判断される前記眼鏡レンズの前記数値的表現を構成する最適化された数値的に表された加工用眼鏡レンズを取得するために眼(1)の様々な視野方向に沿った多くの光線束(27、29)を使用する最適化過程及び光線追跡により最適化させ、
前記光線束(27、29)の前記主光線(35、37)はそれぞれ頂点面(19、119)の点を形成する異なる光線通過点(31、33)を通過し、
前記光線束(27、29)の前記主光線(35、37)は前記それぞれの光線通過点(31、33)に関係する視野方向に沿って延びる、不揮発性コンピュータ可読ストレージ媒体において、
前記プログラムコードは、前記コンピュータにより実行されると、前記コンピュータに、前記眼(1)が回転する場合に角膜(3)の頂点(5)の場所を表す非球頂点面(11、111)の表面点により前記光線通過点(31、33)の三次元場所を判断することと、前記角膜(3)の前記頂点(5)が前記表面点に配置される場合に固定距離(vd)を前記眼(1)の前記視野方向に対応する方向の前記それぞれの表面点において前記頂点面(11、111)へ加えることとをさせる指令を含む、ことを特徴とする不揮発性コンピュータ可読ストレージ媒体。
【請求項12】
眼鏡レンズの数値的表現を判断するためのデータ処理システムであってプロセッサ及び少なくとも1つのメモリを含むデータ処理システムにおいて
前記メモリ内に格納されたコンピュータプログラムの指令により、
前記プロセッサは、数値的に表された加工用眼鏡レンズ(17)を、判断される前記眼鏡レンズの前記数値的表現を構成する最適化された数値的に表された加工用眼鏡レンズを取得するために眼(1)の様々な視野方向に沿った多くの光線束(27、29)を使用する最適化過程及び光線追跡により最適化するように構成され、
前記光線束(27、29)の主光線(35、37)はそれぞれ頂点面(19、119)の点を形成する異なる光線通過点(31、33)を通過し、
前記光線束(27、29)の前記主光線(35、37)は、前記それぞれの光線通過点(31、33)に関係する視野方向に沿って延びる、データ処理システムにおいて、
前記メモリ内に格納された前記コンピュータプログラムの指令により、
前記プロセッサは、前記眼(1)が回転すると角膜(3)の頂点(5)の場所を表す非球頂点面(11、111)の表面点により前記光線通過点(31、33)の三次元場所を判断するように、及び固定距離(vd)を、前記角膜(3)の前記頂点(5)が前記表面点に配置されると前記眼(1)の前記視野方向に対応する方向の前記それぞれの表面点における前記頂点面(11、111)へ加えるように構成される、ことを特徴とするデータ処理システム。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法により取得された眼鏡レンズの数値的表現を有する不揮発性コンピュータ可読ストレージ媒体。
【請求項14】
回転対称を示すことなく水平方向対称軸を中心とする軸対称と垂直方向対称軸を中心とする軸対称とを示すことを特徴とする純粋球面処方箋の単焦点眼鏡レンズ。
【請求項15】
1個の光学材料が、眼鏡レンズの数値的表現により定義された表面を有する眼鏡レンズを形成するように請求項1~9のいずれか一項により判断される前記眼鏡レンズの前記数値的表現に基づき機械加工される眼鏡レンズを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズの数値的表現を判断するコンピュータ実施方法だけでなく、眼鏡レンズの数値的表現を判断するためのデータ処理システム、眼鏡レンズの数値的表現を判断するためのコンピュータプログラム、及び不揮発性コンピュータ可読ストレージ媒体に関する。加えて、本発明は眼鏡レンズを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばカメラ、望遠鏡、顕微鏡などの多くの他の光学デバイスとは異なり、眼鏡レンズは様々な視線方向の明瞭な視界を提供するために設計された個人的光学デバイスであり、このことは、眼鏡レンズの所望度数が眼鏡レンズを様々な方向に通過する光線束に関し達成される必要があるということを意味する。加えて、眼鏡レンズは例えば二焦点レンズ、三焦点レンズ、又は累進加入度レンズ(PAL:progressive addition lens)などの多焦点レンズであり得、このことは、様々な処方箋度数が様々な視線方向において達成される必要があるということを意味する。
【0003】
今日、個人的眼鏡レンズは通常、個人的眼鏡レンズの数値的表現に基づきCNC過程の使用により生成される。眼鏡レンズのこのような数値的表現は数値的最適化過程により判断され、ここでは、数値的に表された加工用眼鏡レンズの少なくとも1つの表面は、処方度数が多くの視線方向に関して達成されるように、そして同時に、標的設計により定義された分布に対応する眼鏡レンズの特性の分布が達せられるように最適化される。特性の分布は例えば球面屈折力の残留誤差の分布又は様々な視線方向の乱視度数の残留誤差の分布であり得る。この残留誤差は、その装着時位置において眼鏡レンズを通し視る際に、所望度数からの最適化眼鏡レンズにより実現されるそれぞれの度数の偏差を表す。代替的に、特性の分布は最適化眼鏡レンズ面の表面度数又は表面非点収差を表し得る。眼鏡レンズを最適化する方法は、例えば米国特許第6,382,789B1号明細書、欧州特許出願公開第1,744,203A1号明細書、欧州特許出願公開第0,857,993A2号明細書、独国特許出願公開第10 2017 178 721A1号明細書、及び独国特許出願公開第10 2017 118 219A1号明細書に記載されている。
【0004】
Jalie,M.は“The role of the eye’s centre of rotation in lens design”,Points de Vue,International Review of Ophthalmic Optics,N69,Autumn 2013において、眼鏡レンズを設計する際の眼鏡レンズに対する眼の回転中心の位置の知識の重要性を説明している。Jalie,M.は次のように推論する:眼が光軸から離れる方向に眼鏡レンズの背後で回転すると角膜の頂点から眼鏡レンズの背面までの距離は増加し、したがって、眼鏡レンズの様々な形式の軸外れ影響を比較することができるために、軸外度数が測定され得る基準面を設定することが必要である。眼の回転中心と同心であるこの基準面は、頂点球面と呼ばれ眼鏡レンズの後頂点だけと接触する。頂点球面は眼の回転中心を中心とする仮想球面であり、その半径は回転中心距離と呼ばれ、角膜の頂点からの回転中心の距離と頂点間距離との和である。Jalieは、眼鏡レンズの設計を改善するために、眼の回転中心の位置を推定する代わりに測定することを示唆する。
【0005】
G,Fry及びW,W,Hillは“The center of rotation of the eye”in American Journal of Optometry and Archives of American Journal of Optometry,Vol,39,No,11,November 1962において、眼が回転すると角膜の極における点により追求される経路を追跡するようにそして主視線の連続位置を見出すように設計されたデバイスについて説明している。
【0006】
加工用眼鏡レンズを最適化する過程で、固定点から延伸する視軸に沿って各光線束が、眼鏡レンズ、瞳、及び眼の旋回点を通る多くの光線束に関して数値最適化が行われ、ここで、各光線束は様々な視野方向に沿って延びる。視野方向は前記光線束の主光線により与えられ、ここで、主光線は球の中心(=眼の旋回点)から球上の一点を通って眼鏡レンズの後面まで走る。したがって、球上の各点は異なる視野方向を表す。球は、眼の旋回点と第一眼位に在る眼の視野方向に沿った眼鏡レンズの後面との間の距離に対応する半径を有する。眼鏡レンズを最適化する対応方法は米国特許第6,382,789B1号明細書に記載されている。このやり方は主方向(すなわち第一眼位における眼の視野方向)の又は主方向に近い視野方向の良い結果を可能にするが、この結果は主方向からの視野方向の偏差の増加と共に悪化する。しかし、主方向からのより大きな偏差が多焦点眼鏡レンズにおいて必要である(例えば累進加入度レンズの近方視区域を通して視る際に)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、例えば米国特許第6,382,789B1号明細書に開示されるような方法に関して、本発明の第1の目的は、眼鏡レンズの数値的表現を判断するコンピュータ実施方法であって主方向からの実際の視野方向の変位の増加と共に改善された結果を示す方法を提供することである。本発明の第2の目的は有利な単焦点眼鏡レンズを提供することであり、本発明の第3の目的は眼鏡レンズを製造する有利な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載の眼鏡レンズの数値的表現を判断するコンピュータ実施方法により、請求項10に記載の眼鏡レンズの数値的表現を判断するためのコンピュータプログラムにより、請求項11に記載の眼鏡レンズの数値的表現を判断するための指令を含むプログラムコードを有する不揮発性コンピュータ可読ストレージ媒体により、請求項12に記載の眼鏡レンズの数値的表現を判断するためのデータ処理システムにより、そして請求項13に記載の眼鏡レンズの数値的表現を有する不揮発性コンピュータ可読ストレージ媒体により達成される。
【0009】
第2の目的は請求項14に記載の単焦点眼鏡レンズにより達成され、そして第3の目的は請求項15に記載の眼鏡レンズを製造する方法により達成される。
【0010】
従属請求項は本発明の有利な発展形態を説明する。
【0011】
本開示全体にわたって、以下の定義が適用される:
【0012】
用語「背面焦点距離」は表面上の光線通過点と主光線に沿った焦点又は焦線との間の距離を指示するために使用される。本明細書では、用語「背面焦点距離」は頂点面の光線通過点と主光線に沿った焦点又は焦線との間の距離を指示するために使用される。
【0013】
用語「度数」は、屈折により入射波面の曲率又は方向を変更するためのレンズ又は光学面の能力を指す(DIN EN ISO 13666:2019、章3.1.10を参照)。
【0014】
用語「屈折度数」は「焦点屈折力」及び「プリズム屈折力」を包含する一般用語であり(DIN EN ISO 13666:2019、章3.10.3を参照)、ここで、用語「焦点屈折力」は眼鏡レンズの「球面頂点屈折力」及び「乱視頂点屈折力」を包含する(DIN EN ISO 13666:2019、章3.10.2)。本明細書では、すべての頂点屈折力は、メートルで測定された近軸背面焦点距離の逆数により与えられる後頂点屈折力である。
【0015】
用語「累進加入度レンズ」は、可変屈折力と焦点屈折力の2つの基準点とを有する眼鏡レンズであって、通常は、老眼の補正と遠方視力から近方視力までの鮮明な視力とを提供するために設計された眼鏡レンズを指す(DIN ISO 13666:2019、章3.7.8を参照)。累進加入度レンズは近方視区域及び遠方視区域を含み、ここで、用語「近方視区域」及び「遠方視区域」は近方視の度数を有する累進加入度レンズの当該部及び遠方視の度数を有する累進加入度レンズの当該部をそれぞれ指す。装着者により経験される近方度数と遠方度数との差は加入度数と呼ばれる。累進加入度レンズでは、近方視区域と遠方視区域間に累進区域が存在し、ここでは、装着者により経験される度数が遠方視の度数から近方視の度数へ連続的に累進し、装着者の視覚は明瞭である。累進区域の長さは累進長と呼ばれる。
【0016】
用語「遠方設計基準点」は、完成眼鏡レンズの前面上又はレンズブランクの仕上げ面上の製造者により規定される点を指し、ここでは遠方視区域の設計仕様が適用される(DIN EN ISO 13666:2019,章3.2.17を参照)。
【0017】
用語「近方設計基準点」は、完成眼鏡レンズの前面上又はレンズブランクの仕上げ面上の製造者により規定される点を指し、ここでは近方視区域の設計仕様が適用される(DIN EN ISO 13666:2019,章3.2.18を参照)。
【0018】
用語「レンズブランク」はレンズの作製のための1つの光学的仕上げ済み表面を有する1個の光学材料を指す(DIN EN ISO 13666:2019、章3.8.1を参照)。
【0019】
用語「処方箋データ」又は「個人的処方箋データ」は、処方箋に従う眼鏡レンズの一組の光学特性(例えば屈折度数、加入度数、屈折率、累進長など)の一般用語として使用される。
【0020】
用語「自由曲面」は、製造過程中に自由に形成され得るとともに軸対称又は回転対称を示す必要が無い表面を指す。特に、自由曲面は表面の異なるセクションにおいて異なる度数を生じ得る。自由曲面の使用は、眼鏡レンズが装着者の個人的処方値だけでなく個人的芯取り及びフレームデータに関し最適化され得るので、装着者により経験される結像品質に関する眼鏡レンズの品質を改善することを可能にする。累進度数レンズの自由曲面はより多くのパラメータ(例えば累進長又は加入度数)を含み、これらのパラメータは単焦点レンズの自由曲面の計算においてよりむしろ表面の計算において考慮され得る。
【0021】
用語「標的設計」は眼鏡レンズの特性及び/又は眼鏡レンズの表面の特性の仕様を指す。特性は、特にであるが非排他的に、眼鏡レンズの度数の分布;眼鏡レンズを通る、瞳孔を通る、及び眼の回転中心を通る光路内の光学収差の分布;及び/又は眼鏡レンズの表面全体にわたる表面特性の分布;及び/又は屈折率分布の標的及び限度;及び/又はレンズ材料の屈折率分布の派生物の標的及び限度を含む。
【0022】
用語「視軸」(英国英語)又は「視線」(米国英語)は、物体空間内の固定点から眼の入射瞳の中心までの光路と、入射瞳の中心から網膜上の固視空間(通常は中心窩である)までの像空間内のその延長とを指す(DIN EN ISO 13666:2019、章3.2.24を参照)。
【0023】
用語「主方向」は視軸の方向(通常は、裸眼視で真っ直ぐ前を見る際の習慣的頭位及び体位により測定された無限遠点における物体に対し水平方向に取られる)を指す(DIN EN ISO 13666:2019、章3.2.25を参照)。
【0024】
用語「第一眼位」は主方向を視る際の眼の位置を指す(DIN EN ISO 13666:2019、章3.2.26を参照)。
【0025】
用語「装着時位置」は、装着中の眼及び顔に対する眼鏡レンズの位置及び配向を指し(DIN EN ISO 13666:2019、章3.2.36を参照)、そして、少なくとも頂点間距離、そり角、及び装着時前傾角の値を含む。
【0026】
用語「頂点間距離」は第一眼位の眼によって測定される眼鏡レンズの後面と角膜の頂部との間の水平方向距離を指す(DIN EN ISO 13666:2019、章3.2.40を参照)。
【0027】
用語「そり角」は、眼鏡前部の面と球型(lens shape)の右面又は左面との角度であり、眼鏡前部の面は左右の球型(boxed lens shape)の垂直中心線を含む面であり、球型の面は、垂直中心線を含む面であり、そして個々のレンズの水平中心線に平行であり、球型はその意図される配向における縁取りレンズ周縁の輪郭である(DIN EN ISO 13666:2019、章3.2.39を参照)。
【0028】
「装着時前傾角」は、水平方向と、フレームの上側及び下側縁内の切欠きの基部を通過しそして主方向を含む垂直面内に在る基準線に対し垂直な線との間に形成される垂直角度を指す(DIN EN ISO 13666:2019、章3.2.37を参照)。
【0029】
用語「光線束」は、光線又は光線の一部を多くの光線により形成される狭い円錐又は円柱として説明するために使用される幾何学的構造を指示するために使用される。光線束の直径は光線束の光出力計算に影響を与える瞳孔径により定義される。
【0030】
用語「主光線」は、前記光線に垂直である前記光線束を通る任意の断面内に前記断面の幾何学的中心を形成する光線束の光線を指示するために光線束の文脈で使用される。
【0031】
用語「光線追跡」は、光線束により遭遇される屈折面及び/又は反射面を考慮することにより光線束の光線の経路を計算する方法を指示するために使用される。
【0032】
用語「眼鏡レンズの数値的表現」は眼鏡レンズを表すコンピュータ可読データセットを指示するために使用される。
【0033】
用語「加工用眼鏡レンズ」は、最適化過程において最適化される少なくとも1つのパラメータ化表面及び/又は最適化過程において最適化されるレンズ材料の少なくとも1つの屈折率分布を有する数値的表現の形式で与えられる眼鏡レンズを指示するために使用される。
【0034】
用語「光線通過点」は光線束の光線により通過される表面の点を指示するために使用される。
【0035】
用語「頂点面」は、眼が回転する際に角膜の頂点が動く表面を指示するために使用される。
【0036】
用語「頂点面」は、頂点面の表面法線に対し規定方向の頂点間距離を頂点面の各点に加えることにより構築される表面を指示するために使用される。この頂点面に基づき、装着者の背面焦点距離は、頂点面を通る光線通過点から主光線に沿った光線束の焦点又は焦線までの距離により主光線の各光線路それぞれに関し、眼の視野方向毎に計算され得る。
【0037】
用語「視野方向」は眼が凝視する方向を指す。視野方向は眼の視軸に沿った方向により与られ得る。
【0038】
用語「円環状」は円環の表面の断面である表面を指示するために表面の文脈で使用される。
【0039】
用語「楕円」は、デカルト座標において次式x/a+y/b+z/c=1を満たす表面を指示するために表面の文脈で使用され、ここで、a,b,c>1であり、a=b=cのケースは除外される。
【0040】
用語「アジマス角」は、表面の法線ベクトルに対し垂直な面内の放射状線と前記平原内の固定半径基準線との角度を指示するために本明細書の全体にわたって使用される。本明細書の全体にわたって、法線ベクトルに対する固定放射状線の配向は一定であるものとする、すなわち、角膜の頂点における法線ベクトルの配向が視野方向の変化に起因して3次元空間内で変化すると固定放射状線の配向は同じやり方で変化し、ここで、法線ベクトルを中心とする固定放射状線の回転は、視野方向が変更されると眼が角膜の頂点において法線ベクトルを中心に回転する量だけ発生する。したがって、固定放射状線の回転は、Listingの法則において説明されるように眼の回転に従って実現され得る。しかし、視野方向の変化を伴う角膜の頂点における法線ベクトルを中心とする眼の回転が小さければ、法線ベクトルを中心とする固定放射状線の回転は無視され得る。
【0041】
用語「極角度」は或る方向と法線方向との角度を指示するために本明細書の全体にわたって使用される。
【0042】
用語「規定角度」は、固定角又は少なくとも1つの変数への関数依存性により判断される角度のいずれかを指示するために本明細書の全体にわたって使用される。この意味で、規定アジマス角及び規定極角度は、固定角であるか又は少なくとも1つの変数へのアジマス角及び極角度の関数依存性により判断されるかのいずれかである。
【0043】
用語「従来の回転中心要件」は眼の光軸が眼の光学的回転中心を通るように眼の前のレンズの位置を定義する:Helmut Goersch,“Woerterbuch der Optometrie”,DOZ-Verlag,3,Edition 2004,Heidelbergを参照。
【0044】
用語「軸対称」は軸を中心とする対称性を表わす。物体は、その外観が軸を中心に回転する場合に不変であれば軸方向に対称である。軸対称は個別的であり得、このことはn重対称性が存在するということを意味する。n=2の場合、物体は軸を中心に180°の回転だけ対称である。
【0045】
眼鏡レンズの数値的表現を判断するコンピュータ実施方法では、数値的に表された加工用眼鏡レンズは、最適化された数値的に表された加工用眼鏡レンズを取得するために、(例えば眼の視軸のそれぞれの様々な方向により与えられる)眼の様々な視野方向に沿った多くの光線束を使用する最適化過程及び光線追跡により最適化される。最適化過程では、加工用眼鏡レンズの少なくとも1つのレンズ面が最適化され得る。加工用眼鏡レンズの少なくとも1つのレンズ面を最適化することに加えて又はその代わりに、加工用眼鏡レンズの屈折率の分布が最適化され得る。次に、最適化された加工用眼鏡レンズは、判断される眼鏡レンズの数値的表現を構成する。光線追跡のために使用される光線束の数は、少なくとも2であり、通常は2より著しく大きく、例えば2桁又は3桁数である。
【0046】
光線束の主光線はそれぞれ、頂点面の点を形成する様々な光線通過点を通過する。各主光線はそれぞれの光線通過点に関係する視野方向に沿って延びる。光線通過点の三次元場所は、眼が回転すると角膜の頂点の場所を表す非球頂点面の表面点と、角膜の頂点が前記表面点に配置されると眼の視野方向に対応する方向のそれぞれの表面点における頂点面へ加えられる固定距離とにより判断される。
【0047】
次に、光線通過点の三次元場所は、本発明よると非球頂点面である頂点面の表現を構成する点群を形成する。したがって、最先端技術とは対照的に、本独創的方法に従って判断される光線通過点の場所は、球頂点面上に在るのではなく、球頂点面より精密な実際の眼球運動の表現を可能にする非球頂点面上に在る。結果として、光線追跡過程は、球頂点面を使用する光線追跡過程より精密な結果を提供し得、その結果、最適化過程から生じる最適化眼鏡レンズは眼により良く適応化される。さらに、球頂点面上の光線通過点を使用する際、主光線が加工用眼鏡レンズの後面に当たる点は、実際の視野方向の視軸が加工用眼鏡レンズの後面に当たる点とは異なる。本発明に従って判断される光線通過点により、主光線が加工用眼鏡レンズの後面に当たる点は、視軸が加工用眼鏡レンズの後面に実際に当たる点とより良く一致するように、球頂点面上の光線通過点と比較してずらされる。これは特に、主方向からのより大きな偏差に当てはまる。このズレは、最適化から生じる眼鏡レンズの光学的特性を改善する。
【0048】
視野方向がベクトルという観点で与えられる場合、眼の対応回転位置は、主光線の方向が視野方向である頂点面上の主光線通過点の座標により最適化過程において表され得る。表面頂点の各点は、眼の回転位置だけを曖昧さ無く判断するのでなく、主光線の進路としたがって例えば主光線が加工用眼鏡レンズの後面に当たる点も曖昧さ無く判断する。
【0049】
視野方向は頂点面の法線方向に対する規定アジマス角及び規定極角度により表され得る。規定アジマス角及び規定極角度は固定角又は規定アジマス角のいずれかであり得、規定極角度は少なくとも1つの変数に対するアジマス角及び極角度の関数依存性により判断され得る。例えば、少なくとも1つの変数が眼の回転位置を表し得る。固定角は光線通過点の三次元場所の判断を単純化する一方で、関数関係はより精密な結果に至り得る。しかし、眼の回転位置によるアジマス角及び極角度の変動は固定角が十分となるように小さいと考えられる。規定極角度は通常、0度~20度(又は0度超~20度)に広がる範囲内に在るか又はこの範囲から選択され得、具体的には、0度~10度(又は0度超~10度)に広がる範囲、又は0度~5度に広がる範囲、又は0度超~20度に広がる範囲内に在るか又はこの範囲から選択され得る。特に、規定極角度は固定距離が頂点面の法線方向に加えられるように0度であり得る。頂点面の法線方向に対する規定アジマス角及び規定極角度は角膜の頂点における角膜の法線方向からの視野方向の偏差を考慮し得る。角膜の法線方向からの視野方向の典型的偏差は上述の範囲内の極角度により考慮され得る。
【0050】
光線通過点の三次元場所を判断するために頂点面の点へ加えられる固定距離は具体的には頂点間距離であり得る。次に、頂点面は、最適化過程のさらなる適応化の必要無く最適化過程において最先端技術の球面を置換し得る。
【0051】
本発明の第1の有利な展開によると、非球頂点面は、眼が第1の回転軸を中心にそして第1の回転軸に対し平行でない第2の回転軸を中心に回転すると角膜の一組の場所から生じる表面であり得、ここで第1の回転軸と第2の回転軸とは交差しない。次に、各光線通過点は、第1の回転軸を中心とする眼の回転を定義する第1の回転角と第2の回転軸を中心とする眼の回転を定義する第2の回転角とを表し得る。特に、第1の回転軸は、眼が垂直視野方向を変更するために回転する水平回転軸であり得る一方で、第2の回転軸は、眼が垂直回転軸を変更するために回転する水平視野方向であり得る。このような頂点面は、第1の回転軸に対し垂直な断面において球面であり且つ第2の回転軸に対し垂直な断面において球面である円環面を表し、ここで、これらの球の半径は第1の回転軸と第2の回転軸との間の距離だけ異なる。第1の回転軸と第2の回転軸との間の距離は0mm超~7.5mmの範囲内であり得る。例えば、値は1~5mmの範囲内又はより具体的には2mm~4mmの範囲であり得る。上記範囲(具体的にはより広い範囲)は水平回転軸と垂直回転軸との間の測定距離のほとんどをカバーする。
【0052】
科学的調査は、眼の水平回転軸と眼の垂直回転軸とが交差しないように角膜の頂点から異なる距離を有し得るということを示した。眼の回転は例えば学位論文:Kai Schreiber,“Erstellung und Optimierung von Algorithmen zur Messung von Augenbewegungen mittels Video-Okulographie-Methoden”,Tuebingen,22,January 1999において説明される。特に、この研究結果は水平回転軸と垂直回転軸との間の平均距離が約3mmであるということを指示する。通常、水平回転軸(すなわち垂直視野方向を変更するために眼が回転する回転軸)は垂直回転軸(すなわち水平視野方向を変更するために眼が回転する回転軸)より角膜の頂点により近い。したがって、互いに離間された2つの軸を中心とする加工用眼鏡レンズ回転を最適化することが考慮されるという事実に起因して、眼の実際の視野方向は、単一旋回点に依存する以前のモデルにより可能であるものより、これらの異なる回転軸を考慮することにより計算される頂点面の点を通過する主光線によりより正確に表され得る。
【0053】
装着者が装着時位置において眼鏡レンズを使用するときに眼鏡レンズの周縁において経験する眼の第1の回転軸と第2の回転軸との間の距離が眼鏡レンズの度数を正しく判断するために重要である。これは、特に多焦点レンズ(例えば累進加入度レンズなど)の近方視区域にとって重要である。何故ならば、眼の単一旋回点だけを考慮することと比較して角膜の頂点からの水平回転軸の低減された距離は、近方視区域を通る光線束の主光線が近方視区域の中をより斜めに走るということを意味し、近方視区域を通して視る場合に残留非点収差誤差の増加に至るからである。加えて、眼の第一眼位における角膜の頂点からの水平回転軸の低減された距離により、角膜の頂点と眼鏡レンズとの間の距離は、眼の単一旋回点だけを考慮することと比較して、下方向の斜め視野に関し増加する。これは延いては、斜め下方を視る場合(例えば累進加入度レンズ又は任意の他の多焦点眼鏡レンズの近方視区域又は累進区域を通して視る場合)に眼鏡レンズにより提供される平均屈折力の増加に至る。したがって、最適化された眼鏡レンズの実際の度数は、装着者が近方視区域又は累進区域を通して下方を視る場合、処方箋内に提供される度数と異なり得る。さらに、眼鏡レンズにより生成される歪みの計算は水平回転軸と垂直回転軸との間の距離によっても影響される。さらに、眼の単一旋回点だけを考慮することと比較して、水平回転軸と垂直回転軸との間の非零距離が、眼鏡レンズの近方視区域及び累進区域を通る主視線方向線(すなわち装着者の直ぐ前に在る物体上を近方区域及び累進区域を通して視る際の累進加入度レンズ又は任意の他の多焦点レンズの前面上の場所)を変更する。すべてのこれらの要素は、単一旋回点を使用することにより眼鏡レンズを最適化する際の最適化過程の結果の光学的品質を低下させることに寄与する。
【0054】
したがって、それを中心に眼が回転する回転軸間の距離を考慮することは、(特に、例えば累進加入度レンズの近方視区域の最適化された眼鏡レンズの周縁の)最適化過程の結果の装着者の光学的品質の向上を可能にする。したがって、眼鏡レンズの数値的表現を判断する本独創的方法により、最適化結果の改善が達成され得る。
【0055】
本発明の第2の有利な展開によると、非球頂点面は楕円の表面であり得る。このような表面により、固定回転軸無しにより複雑な眼回転を考慮することが可能になる。さらに、第1の回転軸と第2の回転軸との間の距離を考慮することだけでなく主方向を視る際の第1の回転軸及び/又は第2の回転軸から網膜の方向における眼の前の視軸の直線延長の距離を考慮することも可能になる。これは、眼球運動のさらに正確なモデリングとしたがって加工用眼鏡レンズのさらに正確な最適化とを可能にする。
【0056】
本発明の第3の有利な展開によると、非球頂点面は測定の結果である。例えば、眼の多くの回転配向における角膜の頂点の場所の三次元座標は立体画像の使用により判断され得る。第1の回転軸及び/又は第2の回転軸から網膜の方向における眼の前の視軸の直線延長の距離は今まで言及された幾何学的形状よりむしろ頂点面の他の幾何学的形状に至り得る。このような幾何学的形状はモデル化するのが困難かもしれない。頂点面を測定することで、幾何学的形状をモデル化する必要性を克服する。加えて、頂点面を測定に基づかせることで、個人的頂点面を提供することとさらにより複雑な眼球運動を考慮することとを可能にする。
【0057】
本発明の第2の態様によると、眼鏡レンズの数値的表現を判断するためのコンピュータプログラムが提供される。本独創的コンピュータプログラムは指令を有するプログラムコードを含む。指令は、コンピュータにより実行されると、最適化された数値的に表された加工用眼鏡レンズを取得するために、コンピュータに、最適化過程により、そして例えば眼の視軸のそれぞれの様々な方向により与えられる眼の様々な視野方向に沿った多くの光線束を使用する光線追跡により、数値的に表された加工用眼鏡レンズを最適化させる。次に、最適化された加工用眼鏡レンズは、判断される眼鏡レンズの数値的表現を構成する。光線束の主光線はそれぞれ、頂点表面の点を形成する様々な光線通過点を通過し、そしてそれぞれの光線通過点に関係する視野方向に沿って延びる。プログラムコードは、コンピュータにより実行されると、コンピュータに、眼が回転する場合に角膜の頂点の場所を表す非球頂点面の表面点により光線通過点の三次元場所を判断することと、角膜の頂点が前記表面点に配置される場合に固定距離を眼の視野方向に対応する方向のそれぞれの表面点において頂点面へ加えることとをさせるコンピュータ指令を含む。
【0058】
本独創的コンピュータプログラムは本独創的コンピュータ実施方法をコンピュータ上に実装することを可能にする。本独創的コンピュータプログラムのさらなる発展形態は、コンピュータにより実行されるとコンピュータに本独創的コンピュータ実施方法の説明されたさらなる発展形態を実行させる指令を有するプログラムコードを含み得る。
【0059】
本発明の第3の態様によると、プログラムコードがその上に格納された不揮発性コンピュータ可読ストレージ媒体が提供される。プログラムコードは眼鏡レンズの数値的表現を判断するための指令を含み、指令は、コンピュータにより実行されると、最適化された加工用眼鏡レンズを取得するために、コンピュータに、最適化過程により、そして例えば眼の視軸のそれぞれの様々な方向により与えられる眼の様々な視野方向に沿った多くの光線束を使用する光線追跡により、数値的に表された加工用眼鏡レンズを最適化させる。次に、最適化された数値的に表された加工用眼鏡レンズは判断される眼鏡レンズの数値的表現を構成する。光線束の主光線はそれぞれ、頂点表面の点を形成する様々な光線通過点を通過し、そしてそれぞれの光線通過点に関係する視野方向に沿って延びる。本発明によると、プログラムコードは、コンピュータにより実行されると、コンピュータに、眼が回転する場合に角膜の頂点の場所を表す非球頂点面の表面点により光線通過点の三次元場所を判断することと、角膜の頂点が前記表面点に配置される場合に固定距離を眼の視野方向に対応する方向のそれぞれの表面点において頂点面へ加えることとをさせるコンピュータ指令を含む。
【0060】
本独創的不揮発性コンピュータ可読ストレージ媒体は、コンピュータ又はデータ処理システムをそれぞれ本独創的コンピュータ実施方法の工程を実行することを可能にする構成にするように、本独創的コンピュータプログラムがコンピュータ又は任意の他のデータ処理システム上にロードされることを可能にする。本独創的不揮発性コンピュータ可動ストレージ媒体のさらなる発展形態は、コンピュータにより実行されるとコンピュータに本独創的コンピュータ実施方法の説明されたさらなる発展形態を実行させる指令を有するプログラムコードを含み得る。
【0061】
本発明の第4の態様によると、眼鏡レンズの数値的表現を判断するためのデータ処理システムが提供される。データ処理システムはプロセッサ及び少なくとも1つのメモリを含み、ここで、メモリ内に格納されたコンピュータプログラムの指令により、プロセッサは、最適化された数値的に表された加工用眼鏡レンズを取得するために、最適化過程により、そして例えば眼の視軸のそれぞれの様々な方向により与えられる眼の様々な視野方向に沿った多くの光線束を使用する光線追跡により、数値的に表された加工用眼鏡レンズを最適化するように構成される。次に、最適化された加工用眼鏡レンズは判断される眼鏡レンズの数値的表現を構成する。光線束の主光線はそれぞれ、頂点表面の点を形成する様々な光線通過点を通過し、そしてそれぞれの光線通過点に関係する視野方向に沿って延びる。本発明によると、メモリ内に格納されたコンピュータプログラムの指令により、プロセッサは、眼が回転すると角膜の頂点の場所を表す非球面頂点表面の表面点により光線通過点の三次元場所を判断するように、そして固定距離を、角膜の頂点が前記表面点に配置されると眼の視野方向に対応する方向のそれぞれの表面点における頂点表面へ加えるように構成される。
【0062】
本独創的データ処理システムは本独創的コンピュータ実施方法を行うことを可能にする。本独創的データ処理システムのさらなる発展形態では、プロセッサは、データ処理システムのメモリ内に格納されたコンピュータプログラムの指令により、本独創的コンピュータ実施方法の説明されたさらなる発展形態を実行するように構成され得る。
【0063】
本発明の第5の態様によると、本独創的コンピュータ実施方法又はそのさらなる発展形により取得された眼鏡レンズの数値的表現を有する不揮発性コンピュータ可読ストレージ媒体が提供される。このような不揮発性コンピュータ可読媒体は、特に眼鏡レンズの周囲部(例えば累進加入度レンズの近方視区域など)を通して視る際に、改善された視認性を呈示する眼鏡レンズの数値的表現を含む。
【0064】
本独創的コンピュータ実施方法はまた、回転対称を示すことなく水平方向対称軸を中心とする軸対称と垂直方向対称軸を中心とする軸対称とを示す純粋球面処方箋の単焦点眼鏡レンズに至り得る。このような眼鏡レンズは、純粋球面処方箋の最先端技術単焦点レンズより著しく低い残留非点収差誤差及び球面誤差を有し得る。これは大きな視角に関し特に当てはまる。
【0065】
また本発明によると、眼鏡レンズを製造する方法が提供される。この方法では、例えばレンズブランクなどの1個の光学材料が、眼鏡レンズの数値的表現により定義された表面を有する眼鏡レンズを形成するように眼鏡レンズの数値的表現を判断する本独創的コンピュータ実施方法により判断された眼鏡レンズの数値的表現に基づき機械加工される。眼鏡レンズを製造する本独創的方法は眼鏡レンズの数値的表現を判断する独創的方法を含み得る。この場合、眼鏡を製造する本方法は、以下の工程を含むだろう:
-眼鏡レンズの数値的表現を判断する独創的方法に従って眼鏡レンズの数値的表現を判断する工程、及び
-眼鏡レンズの判断された数値的表現により定義された表面を有する眼鏡レンズを形成する工程。
【0066】
本発明の別の特徴、特性及び利点は添付図面と併せて例示的実施形態の以下の詳細説明から明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】眼の垂直断面と眼が回転すると角膜の頂点が移動する頂点面とを示す。
図2】加工用眼鏡レンズと、本独創的方法に従って加工用眼鏡レンズを最適化するための最適化過程において使用される頂点面と、最先端技術最適化過程において使用される球頂点面とを示す。
図3】眼の垂直断面と、加工用眼鏡レンズを最適化するための最適化過程において使用され得る代替頂点面とを示す。
図4】眼鏡レンズの数値的表現を判断するために実行される工程を表すフローチャートを示す。
図5】最先端技術過程の使用により最適化された累進加入度レンズ(PAL)の残留非点収差誤差の分布と共に、交差しない水平回転軸及び垂直回転軸を使用して計算された残留非点収差誤差の分布を示す。
図6】水平回転軸と垂直回転軸との間の非零距離を考慮することにより最適化された累進加入度レンズ(PAL)の残留非点収差誤差の分布と共に、単一旋回点だけを考慮して計算された非点収差誤差の分布を示す。
図7】最先端技術過程の使用により最適化された単焦点レンズの残留非点収差誤差を示す。
図8】水平回転軸と垂直回転軸との間の非零距離を考慮することにより最適化された単焦点レンズの残留非点収差誤差分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明の例示的実施形態は図1及び2に関して説明されることになり、ここで、図1は頂点面を示し、図2は最適化過程において使用される結果頂点面を示す。この例示的実施形態では、円環状頂点面は、加工用眼鏡レンズを最適化するための最適化過程において使用される頂点面を構築するために使用され得る。加えて、図2は最先端技術において使用される球頂点面(すなわち単一旋回点だけに基づく頂点面)の形状を示す。
【0069】
次に、頂点面を構築するために使用されることになる頂点面の形状が図1に関して説明される。同図は角膜3を有する眼1と角膜3の頂点5とを概略的に示す。本例示的実施形態では、水平回転軸7及び垂直回転軸9を中心とする回転により眼の運動が記述される眼モデルが使用される。このモデルによると、垂直視野方向が変更されると眼1は水平回転軸7を中心に回転する。他方で、水平視野方向が変更されると眼1は垂直回転軸9を中心に回転する。水平回転軸7と垂直回転軸9は水平回転軸7と垂直回転軸9との間の最小距離を表す距離dだけ互いに離間される。この距離dは平均で約3mmであるということが分かった。しかし、この距離dはまた、約3mmより小さくても大きくてもよく、そして0mm超~最大7.5mmの範囲であり得、距離のほとんどは2mm~4mmの範囲に在る。本例示的実施形態では、眼モデルにおいて使用される距離dは3mmである。
【0070】
眼1が回転すると、角膜3の頂点5(本明細書全体にわたり頂点面と呼ばれる)は表面11に沿って移動する。図1は頂点面11の垂直断面を示し、垂直回転軸9は断面内に在る。図から分かるように、断面は、垂直視野方向が変更される(すなわち水平この回転軸7を中心に回転される)とその上を角膜の頂点5が移動する円を形成する。円の中心は水平回転軸7が断面と交差する点により与えられる。
【0071】
眼1の水平視野方向が変更されると、角膜3の頂点5もまた第2の円に沿って移動する。この第2の円の中心は垂直回転軸9と水平回転軸7が在る水平方向断面との交差により与えられる。しかし、角膜3の頂点5からの垂直回転軸9の距離は角膜3の頂点5からの水平回転軸7の距離より大きいので、水平断面内の円の半径は垂直断面内の円の半径より大きい。
【0072】
3次元における頂点面は、垂直回転軸9を中心とする垂直断面内に存在する円を回転することから生じる又は水平回転軸7を中心とする水平断面内に存在する円を回転することから生じる表面である。このような回転の結果は円環面(すなわち、言及された水平面及び垂直面内に円形断面を有する表面であるがそれぞれの異なる径の円を有する表面)である。換言すれば、水平回転軸7と垂直回転軸9との間の距離に起因して、円環状頂点面11に沿った角膜3の頂点5は眼1が視野方向を変更すると移動する。図1はまた、眼1を単一旋回点15を中心に水平方向及び垂直方向に回転するとして扱うことから生じるだろう頂点面に似た球面13を示す。
【0073】
図1は第一眼位における眼1を示す。図1から分かるように、視野方向が主方向と異なる場合(例えば眼1が垂直方向上方又は下方を見る場合)、本例示的実施形態の円環状頂点面11からの眼1の単一旋回点から生じるだろう球頂点面13の偏差がある。この偏差は視野方向と主方向との角度の増加と共に増加する。結果として、球頂点面13は視野方向と主方向との小さい角度に関して合理的に良い角膜3の頂点5の場所を表す一方で、角膜3の頂点5の実際の位置(円環状頂点面11により与えられる)と球頂点面13により表される位置との相関の少なからぬ欠如がある。これは、例えば近方視区域を通常は含む多焦点眼鏡レンズ(使用される際に垂直下方視野方向を必要とする)の場合に重要である。結果として、このような近方視区域に関して、球頂点面13は角膜3の頂点5の正しい位置を表さない。本発明の文脈では、視野方向は、本例示的実施形態において使用される眼モデルによるとその頂点5において角膜3の表面の法線方向に走ると思われる視軸により表される。
【0074】
図2は眼鏡レンズを最適化するための最適化過程において使用される加工用眼鏡レンズ17を示す。図2はまた、眼1が第一眼位にあるときに視軸が加工用眼鏡レンズ17を通過する点において加工用眼鏡レンズ17の後面21と接触する頂点面19を通る断面を示す。本例示的実施形態では、頂点面19は、頂点面11の各点へ頂点面11の法線方向に頂点間距離vdを加えることにより構築される。換言すれば、頂点間距離vdは、使用される眼モデルに従って眼1の視野方向に対応する方向に頂点面11へ加えられる。実際、頂点面19は、頂点面19の光線通過点31、33により形成される点群により表され得る。これらの光線通過点31、33の三次元場所は、頂点面11の点へ頂点面11の法線方向に頂点間距離vdを加えることにより判断さる。
【0075】
頂点面19の位置は頂点面11の各点において頂点面11の法線方向に頂点間距離vdを加えることにより判断されるので、頂点面19の幾何学的形状は、頂点面11のように頂点面19が本例示的実施形態内の円環面となるように頂点面11の幾何学的形状に対応する。比較のために、図2はまた、球頂点面13(図1に示す)の各点へ法線方向に頂点間距離vdを加えこれにより最先端技術において使用されるような頂点面に至ることから生じる頂点面23を通る断面を示す。
【0076】
加工用眼鏡レンズ17を最適化するために、加工用眼鏡レンズ17は多くのパラメータ化された区分的に定義された関数により数値的に表される。本例示的実施形態では、パラメータ化された区分的に定義された関数は加工用眼鏡レンズ17の後面21を表す。本例示的実施形態の最適化過程は、区分的に定義された関数のパラメータの反復最適化に関与する。本例示的実施形態では、後面21は他のいくつかの実施形態においてパラメータ化された区分的に定義された関数により最適化されしたがって表されるが、眼鏡レンズの前面を最適化することも可能である。この場合、前面25は多くのパラメータ化された区分的に定義された関数により表されるだろう。当然、前面25だけでなく後面21も最適化することにより加工用眼鏡レンズ17を最適化することも可能である。この場合、後面21及び前面25の両方はパラメータ化された区分的に定義された関数により表されるだろう。さらに、パラメータ化された屈折率分布関数のパラメータを最適化するレンズ材料の屈折率の分布を最適化することも、1つ又は複数のレンズ面を最適化することの代わりに又はそれに加えて可能だろう。パラメータ化された区分的に定義された関数は特に、区分的に定義された連続関数、区分的に定義された連続微分可能関数、及び好適に区分的に定義された2回連続微分可能関数であり得る。パラメータ化された区分的に定義された関数の例は、区分的に定義された多項式関数;特に、双三次スプライン又はより高い次数のスプラインのような多項式スプライン、多項式非一様有理Bスプライン(NURBS:non-uniform rational B-spline)等々である。
【0077】
加工用眼鏡レンズ17を最適化することは、本実施形態では、後面21を最適化することが各パラメータ化された区分的に定義された関数のパラメータを繰り返し最適化することにより行われることを意味する。反復の各工程では、レンズに対する所与の物体距離を有する物体から現れそしてそれぞれの区分的に定義された関数により表される後面21の或るエリアを通る光線束の焦点長が計算され、そして区分的に定義された関数のパラメータは、頂点面上の光線通過点に基づく計算焦点長が処方箋内に記載の処方値及び標的設計要求から生じる焦点長に対応するまで繰り返し最適化される。最適化過程では、眼鏡レンズの装着時条件もまた考慮される。累進加入度レンズの場合、物体距離は、視野方向(通常は、第一眼位における長い物体距離から下方を視る際の短い物体距離)と共に変動し、そして様々な視野方向の物体距離は物体モデルにより与えられる。
【0078】
図2は2つの例示的光線束27、29を示し、その1つは主方向(参照符号27)に沿って延び、他方は垂直方向下方を視ることに対応する視野方向(参照符号29)に沿って延びる。光線束27、29の直径は眼1の瞳孔径により与えられる。各光線束27、29はそれぞれの視野方向の視軸に一致する主光線35、37を含む。光線束27、29の主光線35、37は頂点面19の通過点31、33において頂点面19を通過し、そして通過点31、33において頂点面19に対し垂直に(すなわちそれぞれの光線通過点において表面法線に沿って)走る。通過点31、33の場所は、それぞれの点31、33を通過する主光線35、37に対応する視野方向を表すものと考えられ得る。
【0079】
図2から分かるように、下方視野方向を表す光線束29の主光線37は、単一旋回点だけを使用することから生じるだろうように球頂点面23に対し垂直に走るのではなく本例示的実施形態の頂点面19に対し垂直に走る。他方で、球頂点面23を通ってその通過点において球頂点面23に対し垂直に走る主光線は本例示的実施形態の頂点面19に対し垂直に走らなないだろう。しかし、本例示的実施形態の頂点面19上の点の法線は球頂点面の点の法線より良い眼1の視野方向を表す。したがって、本例示的実施形態の頂点面19を使用することにより、最先端技術に従って球頂点面23を使用することによるより、或る視野方向の光線束の焦点長のより精密な計算を可能にする。
【0080】
さらに、焦点長値は、光線束27、29の焦点又は焦線から主光線路に沿った頂点面19を通る主光線35、37のそれぞれの光線通過点31、33までの距離から生じる。図2は、装着者が下方向を見ている場合、頂点面19を通る主光線37の光線通過点33は球頂点面23を通る前記主光線37の光線通過点と異なるということを示す。これは、計算のために頂点面19を使用すること又は球頂点面23を使用することに依存して焦点長値の異なる計算結果に至る。そしてこのことは、加工用レンズ17を使用する装着者の異なる計算球面度数値及び乱視度数値を生じる。最終的に、加工用レンズ17の最適化は異なり、そして頂点面19を使用する際の加工用レンズ17の最適化は、より不正確な度数計算に至る球頂点面を使用する最新技術による最適化より小さな装着者の実際の残留球面誤差及び非点収差誤差を有する眼鏡レンズを生じる。本独創的方法により、レンズの実際の球面度数値及び乱視度数値は、装着者の屈折処方値及び標的設計要求に従って要求度数分布により良くフィッティングする。
【0081】
図2に示す円環状頂点面19の法線方向は最先端技術において使用される球頂点面23の法線方向より正確な視野方向を表すが、精度は、スキュー回転軸だけでなく眼1がその第一眼位に在る場合の水平線に対する視軸の小さい角度も考慮される場合にさらに改善され得る。このような角度は円環面を傾けることにより考慮され得る。さらに、円環面を傾けることはまた、網膜に向かう方向の眼の前の視軸の直線延長が水平回転軸7とも垂直回転軸9とも交差し得ないということを考慮し得る。
【0082】
例示的実施形態では、頂点面は円環状頂点面である。しかし、本発明の他のいくつかの実施形態では、頂点面は図3に示すように楕円111であり得る。このとき頂点面は、それぞれの点の法線方向の頂点間距離を頂点面111の各点において加えることにより楕円頂点面119に達する。
【0083】
さらに、視野方向が、眼の頂点面に対し垂直ではないが、頂点面の法線方向に対する規定アジマス角及び規定非零極角度を眼の主方向に有すれば、光線通過点(したがって頂点面)は、アジマス角及び非零極角度により与えられる方向に頂点間距離vdを加えることにより決定され得る。この措置により、規定アジマス角及び規定非零極角度を有する方向の頂点面の点からの頂点間距離に基づく距離を有する点により形成されるより複雑な頂点面が計算され得る。
【0084】
眼鏡レンズの数値的表現を判断するコンピュータ実施方法の例示的実施形態がフローチャートの形式で図4に示される。本方法は、PC、ノートブック、タブレットなどの多目的データ処理システムにより又は専用データ処理システム上で行われ得る。データ処理システムは、データ処理システム上で実行されるとデータ処理システムに本独創的方法を行わせる指令を有するプログラムコードを含むコンピュータプログラムにより本独創的方法を行うように適応化され得る。コンピュータプログラムは、コンピュータプログラムのプログラムコードがその上に格納された不揮発性コンピュータ可読ストレージ媒体によりデータ処理システム内へロードされ得る、又は例えばインターネットなどのネットワークから又はローカルエリアネットワークからデータ処理システム内へロードされ得る。
【0085】
本方法が工程S1において開始された後、処方箋データが工程S2においてロードされる。処方箋データは、加工用眼鏡レンズを最適化した結果である眼鏡レンズの数値的表現により達成される度数値を指示する。次に、眼鏡レンズの数値的表現は、確立された度数を達成する物理的眼鏡レンズを製造するためのCNC過程において使用され得る。処方箋データにより指示される度数は、眼鏡レンズの球面度数、乱視度数、プリズム又は任意の他の光学的特性を含み得る。
【0086】
次に、眼鏡レンズの数値的表現の標的設計がロードされる(工程S3)。本例示的実施形態では、標的設計は、光学的標的設計であり、そして装着者の光路内の眼鏡レンズ全体にわたる残留誤差(例えば、残留球面誤差、残留非点収差誤差、残留プリズム誤差、歪み誤差、倍率値、高次の残留誤差などのような誤差)の分布又は仕様を定義する。通常、残留誤差は、光線束の主光線が通過する眼鏡レンズの数値的表現の表面上の多くの点に関して定義される。光線束は、背面焦点距離が最適化過程において判断されることになる光線束と同一であり得る。加えて、屈折率又は屈折率分布の標的がロードされ得る。
【0087】
工程S4では、眼鏡レンズの装着時位置に関係するデータがロードされる。装着時位置は装着者の眼及び顔に対する眼鏡レンズの位置及び配向を決定する。装着時位置は、少なくとも後面隔膜頂点間距離、そり角、及び装着時前傾角の値を含んでおり、そして眼の視角に依存し得る物体距離も含み得、そして光線束の光出力の計算のための光線束の直径を定義する眼の瞳サイズをさらに含み得る。加えて、レンズの厚さ要求及びレンズの表面の曲率要求(例えば前面の基本曲線要求)がロードされ得る。
【0088】
処方箋データ、標的設計、及び装着時位置を表すデータのうちの少なくとも1つは不揮発性ストレージ媒体から又はネットワークから(例えばインターネット又はローカルエリアネットワーク(LAN)から)コンピュータ内へロードされ得る。代替的に、処方箋データ、標的設計、及び装着時位置を表すデータのうちの少なくとも1つは人間/機械インターフェース(キーボード、タッチパッド、スピーチ認識システムなど)によりデータ処理システム内へ入力され得る。
【0089】
処方箋データ、標的設計、及び装着時位置を表すデータは本例示的実施形態では特定順序で逐次的にロードされるが任意の他の順序も可能だろう。加えて、処方箋データ、標的設計、及び装着時位置を表すデータのうちの2つ又はすべてを並列にロードすることも可能だろう。
【0090】
処方箋データ、標的設計、及び装着時位置に関係するデータがデータ処理システム内にロードされた後、加工用眼鏡レンズ17の開始数値的表現が工程S5において提供される。加工用眼鏡レンズ17の開始数値的表現を提供するために、コンピュータプログラムは、互いに異なる(例えば、それらの基本曲線、それらが作られる材料、その寸法、その屈折力値などが互いに異なる)加工用眼鏡レンズの多くの異なる開始数値的表現を含むレポジトリから加工用眼鏡レンズの好ましい開始数値的表現を選択し得る。レポジトリから加工用眼鏡レンズの開始数値的表現を取り出すことの代案として、加工用眼鏡レンズの開始数値的表現がストレージ媒体からロードされる又はネットワークを介し受信されるということが可能である。
【0091】
本実施形態では、加工用眼鏡レンズ17の開始数値的表現は、上に説明したような多くのパラメータ化された区分的に定義された連続関数により与えられる後面21を含む。したがって、本例示的実施形態において最適化されることになるのは後面21である。しかし、前面を最適化すること、後面及び前面の両方を最適化すること、又はレンズ材料の屈折率分布を最適化することも可能であろう。したがって、後面に加えて又は後面の代案として前面が多くの区分的に定義された関数により数値的に表されることが可能である。
【0092】
工程S6、S7では、加工用眼鏡レンズ17の開始数値的表現から始まり、加工用眼鏡レンズ17の数値的表現は区分的に定義された関数のパラメータを繰り返し最適化することにより最適化される。その代りに又は追加的に、レンズ材料の屈折率分布関数のパラメータが最適化され得る。最適化は光線追跡過程の使用により工程S6において行われ、ここでは、すべての光線束27、29の実際の背面焦点距離は、加工用眼鏡レンズ17の数値的表現の前面25の曲率に基づき、区分的に定義された関数のパラメータの現在の組により定義された加工用眼鏡レンズ17の数値的表現の後面21の現在の曲率値に基づき、加工用眼鏡レンズ17の数値的表現により表されたガラス材の物理的特性に基づき、そして眼1の視野方向に依存し且つ眼1の前のレンズの装着時位置及び眼1の瞳孔径に基づく標的物体距離に基づき計算される。そうする際、眼1の前の眼鏡レンズの位置と、そして任意選択的に、工程S4においてロードされた装着時位置に基づく眼1の瞳孔径とが考慮される。次に、光線束27、29毎に、標的焦点長値は、処方箋データ及び標的設計データから、そして眼1の視野方向に依存する又は主光線が眼鏡レンズの前面又は後面を通過する点の位置に依存する標的物体距離から計算される。標的焦点長値からの実際の焦点長値の差から、標的設計からの偏差がすべての光線束27、29に関して計算され得る、すなわち、標的設計からの球面偏差、乱視及びプリズム偏差及び歪み、又は倍率偏差が判断され得る。これらの偏差はグローバルメリット関数において重み付けられ合算されることになる。加えて、このメリット関数は標的値からの非光学的偏差(例えば表面の求められる曲率からの偏差又は厚さ要求からの偏差)を含み得る、さらに、メリット関数は、屈折率標的からの偏差及び/又はレンズ材料の屈折率由来標的からの偏差を含み得る。次に、判断された偏差に依存するメリット関数の値が計算される。
【0093】
工程S6においてメリット関数の値が計算された後、この計算値が最小値を表すかどうかが工程S7において照査される。「ノー」の場合、本方法は工程S6へ戻り、ここで、パラメータ化された区分的に定義された関数の少なくとも1つのパラメータ又は屈折率分布関数の少なくとも1つのパラメータが変更され、そして頂点間距離、偏差及びメリット関数の値が再計算される。最小値に到達されたということが工程S7において判断されると、本方法は工程S6に戻るのではなく工程S8に進み、ここで、加工用眼鏡レンズの最適化された数値的表現(すなわち最適化された後面及び/又は最適化された前面及び/又は最適化された屈折率分布を有する数値的表現)が、判断されるべき眼鏡レンズの数値的表現として出力される。眼鏡レンズの最適化された数値的表現を出力することは、例えばネットワーク上で受信者へ送信することにより又は不揮発性コンピュータ可読ストレージ媒体上に格納することにより行われ得る。次に、本方法は終了し(工程S9)、眼鏡レンズの結果数値的表現は、眼鏡レンズの数値的表現により定義された表面を有する眼鏡レンズを形成するように数値的表現に基づきレンズブランクを又は光学材料の任意の他の部分を機械加工するために使用され得る。
【0094】
本独創的方法の本例示的実施形態では、最適化過程の計算及び判断はメリット関数の値が最小値に達するまで反復的に繰り返される。メリット関数の値が最小値に達すると反復を終了する代わりに、反復はメリット関数の値が所与の閾値をもはや越えなくなると終了され得る。
【0095】
最適化過程中、光線通過点31、33における眼1の視野方向は、頂点面11の法線方向(したがって光線通過点31、33における頂点面19の法線方向)により、又は頂点面19の場所(それぞれの光線通過点31、33の三次元場所を判断するために使用された)における頂点面11の法線方向に対する規定アジマス角及び規定非零極角度により与えられる方向により表される。
【0096】
光線通過点31、33の場所は例えば頂点面19上の座標により識別され得る。これらの座標は、例えば光線束27、29の主光線35、37と主方向を含む垂直面内の主方向との間で測定された第1の角度並びに光線束27、29の主光線35、37と主方向を含む水平面内の主方向の間で測定された第2の角度の形式で与られ得る。しかし、頂点面上の他の座標(例えばデカルト座標系に基づく表面点の極座標又は三次元座標の角度)が使用され得る。本例示的実施形態では、光線追跡過程において使用される主光線35、37は頂点面19の光線通過点31、33における法線方向に対応する視野方向を表す。代替的に、主光線35、37は、頂点面11の点(それぞれの光線通過点31、33の三次元場所を判断するために使用された)における頂点面19の法線方向に対する規定アジマス角及び規定非零極角度を有する視野方向を表し得る。これは、前面上の規定最適化点を通る光線路に、又は物体空間内の規定点への光線路に至る。次に、主光線のこれらの経路を有する光線束に関し、レンズの光学特性が最適化される。
【0097】
以下では、本独創的方法に従って最適化された眼鏡レンズの具体例が、最先端技術に従って最適化された眼鏡レンズと比較される。
【0098】
図5は最先端技術方法の使用により最適化された累進加入度レンズの残留非点収差誤差の分布を示す。実線は単一旋回点を有する眼の最適化されたレンズの残留非点収差誤差の分布を示す一方で、点線は残留非点収差誤差の再計算分布を示す。ここで、再計算では、光線追跡は、水平回転軸と垂直回転軸との間の非零距離を考慮して、最適化された眼鏡レンズに関し行われる。
【0099】
図5に示す眼鏡レンズは、4.00ジオプタの球面、0ジオプタの円柱、そして2.50ジオプタの加入度数を有し累進面が後面である累進加入度レンズである。前面は半径77.34mmを有する球面である。眼鏡レンズのガラス材は1.600の屈折率を有する。頂点間距離は9mmであり、そり角は2度であり、そして装着時前傾角は9度である。球型の下端における正接までの取り付け用十字の距離は21.0mmであり、球型の上端における正接までの取り付け用十字の距離は11.5mmであり、球型の鼻端における正接までの取り付け用十字の距離は23.0mmであり、そして球型の側頭端における正接までの取り付け用十字の距離は28.5mmである。処方箋に従って、6.50ジオプタ(4.00ジオプタ+2.50ジオプタ)の平均球面度数が近方基準点において達成されるべきであり、そして標的設計は0.14ジオプタの近方基準点における残留非点収差誤差を規定する。しかし、近方視区域のより大きなエリア全体にわたって6.50ジオプタの平均球面度数を達成するために、近方基準点における若干高い平均球面度数が許容される。したがって、近方基準点における最適化平均球面度数は6.56Dである。最適化のために、眼の単一旋回点から測定される半径12.5mmを有する球頂点面が使用される。9mmの頂点間距離と共に、これは半径21.5mmを有する球頂点面に至る。
【0100】
平均球面度数の再計算と最適化眼鏡レンズの残留非点収差誤差とのために、11mmの角膜の頂点からの水平回転軸の距離が使用される。垂直回転軸9と角膜3の頂点5との間の距離は14mmに設定されることになる。9mmの頂点間距離により、円環状頂点面の垂直方向半径は20mmであり、そして円環状頂点面の水平方向半径は23mmである。水平回転軸7と垂直回転軸9との間の距離は3mmであり、そして球面最先端技術頂点面の旋回点は両方の回転軸の間に在る。
【0101】
最先端技術最適化過程は近方基準点における6.56ジオプタの平均球面度数及び0.14ジオプタの残留非点収差誤差を提供する一方で、最適化眼鏡レンズの平均球面度数及び残留非点収差誤差のより正確な計算は、互いに離間された回転軸を考慮することにより、近方基準点における6.71ジオプタの実際平均球面度数及び0.36ジオプタの残留非点収差誤差を明らかにする。これは、最先端技術に従って最適化された眼鏡レンズの装着者により経験される残留誤差が最先端技術計算及び最適化過程が示唆するだろうものより著しく大きくなり得るということを示す。
【0102】
図6は、前と同じであるが水平回転軸と垂直回転軸との間の距離を考慮することにより最適化された眼鏡レンズの残留非点収差誤差の分布を示す。実線は本独創的最適化過程の結果による残留非点収差誤差を表す一方で、点線は互いに離間された回転軸を考慮して再計算された最先端技術最適化過程の結果による残留非点収差誤差を表す。回転軸間の距離を考慮する本独創的最適化過程によると、近方基準点における平均球面度数は6.57ジオプタであり、残留非点収差誤差は0.14ジオプタである。最先端技術頂点面により最適化されたレンズの取得された残留誤差の再計算は6.71ジオプタの平均球面度数と共に0.36ジオプタの残留非点収差誤差を生じた。
【0103】
図5、6は、水平回転軸と垂直回転軸との間の距離を無視することが、特に近方視野区域における所望残差非点収差誤差分布からの実現された残差非点収差誤差分布のかなりの偏差に至り得るということをそれぞれ示す。同様に、水平回転軸と垂直回転軸との間の距離を無視することは、平均球面度数の所望分布に対する平均球面度数の実現された分布の著しい偏差に到る。
【0104】
図7、8は、最先端技術に従って最適化された単焦点眼鏡レンズ(図7)と本独創的方法に従って最適化された単焦点眼鏡レンズ(図8)との比較を示す。単焦点眼鏡レンズは4.00ジオプタの球面度数及び0.00ジオプタの円柱屈折力を有する。その前面は110.67mmの半径を有する球面であり、そしてその後面は非球面である。眼鏡レンズのガラス材の屈折率は1.664であり、そして60mmの直径を有する円状縁の眼鏡レンズのエッジ厚さは0.8mmである。眼鏡レンズは9.2mmの頂点間距離でもって使用されることになる。眼鏡レンズは、レンズの幾何学的中心にレンズの光軸を有する従来の回転中心要件に従ってフィッティングされる。
【0105】
図7に示す眼鏡レンズでは、眼鏡レンズの非球状後面は最先端技術方法に従って(すなわち単一旋回点を中心とする球頂点面を使用することにより)最適化され、そしてレンズの光軸はこの単一旋回点を経由する。標的設計により与えられる非点収差誤差の標的はレンズ全体にわたって零だった。眼のすべての視野方向に関して0.03ジオプタより小さい残留非点収差誤差分布を有する眼鏡レンズの非球状後面の最先端技術最適化は、眼がただ1つの旋回点を有すれば、達成された。これは、「装着者は眼が単一旋回点を有すればレンズ全体のいかなる部分を介し視る際にも非点収差誤差をほぼ有しない」ということを意味する。換言すれば、単一旋回点を有する眼に関し、非点収差がほぼ無い標的は実現されなかった。最適化では、21.7mmの旋回点と眼鏡レンズの後面の間の距離が使用された。図7から分かるように、残留非点収差誤差の分布は、残留非点収差誤差の分布が水平回転軸と眼の垂直回転軸との間に存在する3mmの距離により、そして眼の水平及び垂直回転軸を通る眼鏡レンズの光軸により、再計算される場合回転対称を示さない。さらに、再計算の残留非点収差誤差は、0.03Dを越え、そして眼鏡レンズの周縁において0.15Dを越える値に達する。換言すれば、残留非点収差誤差は、装着者がレンズの周囲部を通して見る場合に顕著に増加する、しかし、最適化のために、水平回転軸(すなわち眼が垂直視野方向を変更する際に回転する回転軸)と眼鏡レンズの後面との距離が20.2mmへ設定され、そして垂直回転軸(すなわち眼が、その水平視野方向を変更する際に回転する回転軸)と眼鏡レンズの後面との距離は23.2mmへ設定され、そしてレンズの光軸は眼の水平及び垂直軸を経由すれば、対応円環状頂点面を考慮する本独創的最適化後の眼鏡レンズの残留非点収差誤差は図8から分かるように眼鏡レンズの最外周囲部を除いて0.05ジオプタを越えない。さらに、本発明による最適化過程により実現される眼鏡レンズのエリア全体にわたる非点収差誤差の分布は、図7、8の比較から分かるように最先端技術最適化過程により実現される分布より高度な回転対称を示す。したがって、単焦点眼鏡レンズを最適化する際に水平回転軸と垂直回転軸との間の距離を考慮することにより、残留非点収差誤差が低減され得るだけでなく残留非点収差誤差の分布の対称性も改善され得る。
【0106】
残留非点収差誤差は、非球面の代わりに、水平軸及び垂直軸を中心とする軸対称を示す自由曲面が最適化されれば、さらに低減され得る。これは、レンズが眼の水平回転軸と垂直回転軸との間の非零距離を有する眼に関し最適化されれば純粋球面処方箋の単焦点眼鏡レンズが回転対称をもはや示さないだろうということを意味する。その代りに、純粋球面処方箋の単焦点眼鏡レンズは、水平軸を中心とする軸対称と垂直軸を中心とする軸対称とを示すだろう。これは特に、従来の回転中心要件に従ってフィッティングされた純粋球面処方箋の単焦点眼鏡レンズに当てはまる。
【0107】
本発明はその例示的実施形態により例示目的のために説明された。しかし、例示的実施形態からの逸脱が可能である。例えば、図4の工程S7後に工程S6へ戻る前に、反復の最大数に到達したかどうかが照査され得る。「イエス」の場合、本方法は結果無しに終了する。「ノー」の場合、方法は工程S6へ戻る。加えて、水平回転軸と垂直回転軸との間の距離は例示的実施形態では値3mmを有するが、この値は異なる可能性があり、例えば2.8mm、2.5mm、3.2mm、又は3.5mmであり得る。特に、値は0mm超~最大7.5mmの任意の値、例えば1~5mmの範囲の値、又はより具体的には2mm~4mmの範囲の値である可能性がある。さらに、例示的実施形態の頂点面の代案として、測定過程により導出される頂点面が使用され得る。例えば、測定過程は、それぞれの配向において眼により捉えられた立体画像を評価することにより眼の多くの回転配向の角膜の頂点の場所の三次元座標を導出し得る。さらに、頂点間距離は頂点面の法線方向に対する規定角度において加えられ得る。したがって、例示的実施形態は本発明の保護の範囲を制限するように意図されていない。保護の範囲は添付の特許請求の範囲だけにより判断されるものとする。
【0108】
例示的実施形態により示された本発明は球頂点面を使用する最先端技術を越える様々な利点を提供する。球頂点面は、眼の単一旋回点が存在するという仮定に基づく。しかし、これは粗い近似に過ぎない。現実には、眼の単一旋回点は通常は存在しない。はるかに良い近似では、眼が垂直視野方向を変更するために回転する水平回転軸は、水平回転軸と垂直回転軸とが概して交差しないように水平視野方向を変更するために眼が回転する垂直回転軸に対し或る距離を有する。加えて、眼の網膜に向かう方向の眼の前の視軸の直線延長は垂直回転軸に対し及び/又は水平回転軸に対し或る距離を有し得る。結果として、視軸の直線延長は水平回転軸及び/又は垂直回転軸と交差し得ない。さらに、視軸は角膜の表面の頂点の法線方向に対し或る角度で走り得る。これらすべての要素は、球頂点面が最適化過程において使用されるときの最適化過程の結果の光学的品質を低下させることに寄与する。頂点面を構築する本独創的やり方は、これらの要素のいくつか又はすべてを考慮することを可能にし、したがって最適化過程から生じる眼鏡レンズの光学的品質の著しい改善を可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-10-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズの数値的表現を判断するコンピュータ実施方法であって、
数値的に表された加工用眼鏡レンズ(17)は、判断される前記眼鏡レンズの前記数値的表現を構成する最適化された数値的に表された加工用眼鏡レンズを取得するために眼(1)の様々な視野方向に沿った多くの光線束(27、29)とメリット関数とを使用する光線追跡に関与する区分的に定義された関数のパラメータを反復的に最適化する最適化過程により最適化され、
前記光線束(27、29)の主光線(35、37)はそれぞれ頂点面(19、119)の点を形成する異なる光線通過点(31、33)を通過し、
前記光線束(27、29)の前記主光線(35、37)は前記それぞれの光線通過点(31、33)に関係する視野方向に沿って延びる、コンピュータ実施方法において、
前記光線通過点(31、33)の三次元場所は、前記眼(1)が回転すると角膜(3)の頂点(5)の場所を表す非球頂点面(11、111)の表面点と、前記角膜(3)の前記頂点(5)が前記表面点に配置されると前記眼(1)の前記視野方向に対応する方向の前記それぞれの表面点における前記頂点面(11、111)へ加えられる固定距離(vd)とにより判断され、前記視野方向は前記頂点面(11、111)の前記表面点における前記頂点面(11、111)の法線方向に対する規定アジマス角及び規定極角度により表される、ことを特徴とするコンピュータ実施方法。
【請求項2】
前記規定アジマス角は一定アジマス角であり、前記規定極角度は一定極角度である、又は前記規定アジマス角及び前記規定極角度は少なくとも1つの変数への前記アジマス角及び前記極角度の関数依存性により判断される、ことを特徴とする請求項2に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項3】
前記規定極角度は0度~20度に広がる範囲内の角度である、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項4】
前記頂点面(11、111)は前記眼が第1の回転軸(7)を中心に及び前記第1の回転軸(7)に対し平行でない第2の回転軸(9)を中心に回転すると前記角膜(3)の場所から生じる表面であり、前記第1の回転軸(7)と前記第2の回転軸(9)とは交差しない、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項5】
前記第1の回転軸(7)と前記第2の回転軸(9)との間の距離(d)は0mm超~最大7.5mmの範囲内である、ことを特徴とする請求項4に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項6】
前記頂点面(11、111)は楕円の表面である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項7】
前記頂点面(11、111)は測定の結果である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項8】
前記固定距離は頂点間距離(vd)である、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項9】
眼鏡レンズの数値的表現を判断するためのコンピュータプログラムであって指令を有するプログラムコードを含むコンピュータプログラムにおいて、前記指令は、コンピュータにより実行されると前記コンピュータに
判断される前記眼鏡レンズの前記数値的表現を構成する最適化された数値的に表された加工用眼鏡レンズを取得するために眼(1)の様々な視野方向に沿った多くの光線束(27、29)とメリット関数とを使用する光線追跡に関与する区分的に定義された関数のパラメータを反復的に最適化する最適化過程により、数値的に表された加工用眼鏡レンズ(17)を最適化させ、
前記光線束(27、29)の主光線(35、37)はそれぞれ頂点面(19、119)の点を形成する異なる光線通過点(31、33)を通過し、
前記光線束(27、29)の前記主光線(35、37)は前記それぞれの光線通過点(31、33)に関係する視野方向に沿って延びる、コンピュータプログラムにおいて、
前記プログラムコードは、前記コンピュータにより実行されると、前記コンピュータに、前記眼(1)が回転する場合に角膜(3)の頂点(5)の場所を表す非球頂点面(11、111)の表面点により前記光線通過点(31、33)の三次元場所を判断することと、前記角膜(3)の前記頂点(5)が前記表面点に配置される場合に固定距離(vd)を前記眼(1)の前記視野方向に対応する方向の前記それぞれの表面点において前記頂点面(11、111)へ加えることとをさせる指令を含み、前記視野方向は前記頂点面(11、111)の前記表面点における前記頂点面(11、111)の法線方向に対する規定アジマス角及び規定極角度により表される、ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
前記規定アジマス角は一定アジマス角であり、前記規定極角度は一定極角度である、又は前記規定アジマス角及び前記規定極角度は少なくとも1つの変数への前記アジマス角及び前記極角度の関数依存性により判断される、ことを特徴とする請求項9に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項11】
眼鏡レンズの数値的表現を判断するための指令を含むプログラムコードがその上に格納された不揮発性コンピュータ可読ストレージ媒体であって、前記指令は、コンピュータにより実行されると、前記コンピュータに、
判断される前記眼鏡レンズの前記数値的表現を構成する最適化された数値的に表された加工用眼鏡レンズを取得するために眼(1)の様々な視野方向に沿った多くの光線束(27、29)とメリット関数とを使用する光線追跡に関与する区分的に定義された関数のパラメータを反復的に最適化する最適化過程により、数値的に表された加工用眼鏡レンズ(17)を最適化させ、
前記光線束(27、29)の主光線(35、37)はそれぞれ頂点面(19、119)の点を形成する異なる光線通過点(31、33)を通過し、
前記光線束(27、29)の前記主光線(35、37)は前記それぞれの光線通過点(31、33)に関係する視野方向に沿って延びる、不揮発性コンピュータ可読ストレージ媒体において、
前記プログラムコードは、前記コンピュータにより実行されると、前記コンピュータに、前記眼(1)が回転する場合に角膜(3)の頂点(5)の場所を表す非球頂点面(11、111)の表面点により前記光線通過点(31、33)の三次元場所を判断することと、前記角膜(3)の前記頂点(5)が前記表面点に配置される場合に固定距離(vd)を前記眼(1)の前記視野方向に対応する方向の前記それぞれの表面点において前記頂点面(11、111)へ加えることとをさせる指令を含み、前記視野方向は前記頂点面(11、111)の前記表面点における前記頂点面(11、111)の法線方向に対する規定アジマス角及び規定極角度により表される、ことを特徴とする不揮発性コンピュータ可読ストレージ媒体。
【請求項12】
前記規定アジマス角は一定アジマス角であり、前記規定極角度は一定極角度である、又は前記規定アジマス角及び前記規定極角度は少なくとも1つの変数への前記アジマス角及び前記極角度の関数依存性により判断される、ことを特徴とする請求項11に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項13】
眼鏡レンズの数値的表現を判断するためのデータ処理システムであってプロセッサ及び少なくとも1つのメモリを含むデータ処理システムにおいて
前記メモリ内に格納されたコンピュータプログラムの指令により、前記プロセッサは、判断される前記眼鏡レンズの前記数値的表現を構成する最適化された数値的に表された加工用眼鏡レンズを取得するために眼(1)の様々な視野方向に沿った多くの光線束(27、29)とメリット関数とを使用する光線追跡に関与する区分的に定義された関数のパラメータを反復的に最適化する最適化過程により、数値的に表された加工用眼鏡レンズ(17)を最適化するように構成され、
前記光線束(27、29)の主光線(35、37)はそれぞれ頂点面(19、119)の点を形成する異なる光線通過点(31、33)を通過し、前記光線束(27、29)の前記主光線(35、37)は前記それぞれの光線通過点(31、33)に関係する視野方向に沿って延びる、データ処理システムであって、
前記メモリ内に格納された前記コンピュータプログラムの指令により、
前記プロセッサは、前記眼(1)が回転すると角膜(3)の頂点(5)の場所を表す非球頂点面(11、111)の表面点により前記光線通過点(31、33)の三次元場所を判断するように、及び固定距離(vd)を、前記角膜(3)の前記頂点(5)が前記表面点に配置されると前記眼(1)の前記視野方向に対応する方向の前記それぞれの表面点における前記頂点面(11、111)へ加えるように構成され、前記視野方向は前記頂点面(11、111)の前記表面点における前記頂点面(11、111)の法線方向に対する規定アジマス角及び規定極角度により表される、ことを特徴とするデータ処理システム。
【請求項14】
前記規定アジマス角は一定アジマス角であり、前記規定極角度は一定極角度である、又は前記規定アジマス角及び前記規定極角度は少なくとも1つの変数への前記アジマス角及び前記極角度の関数依存性により判断される、ことを特徴とする請求項13に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項15】
前記眼鏡レンズの前記最適化された数値的表現をネットワーク上で受信者へ送信することにより又は不揮発性コンピュータ可読ストレージ媒体上に格納することにより、前記眼鏡レンズの前記最適化された数値的表現を出力する工程を含む、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項16】
眼鏡レンズの数値的表現により定義された表面を有する眼鏡レンズを形成するように前記眼鏡レンズの前記数値的表現に基づき1個の光学材料が機械加工される眼鏡レンズを製造する方法であって、前記方法は請求項1~8のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法に従って前記眼鏡レンズの前記数値的表現を判断することを含む、ことを特徴とする方法。
【国際調査報告】