(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ポリアミドイミドを含有するワイヤエナメル組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 179/08 20060101AFI20230928BHJP
C08G 18/34 20060101ALI20230928BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230928BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20230928BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230928BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20230928BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20230928BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230928BHJP
B05D 7/20 20060101ALI20230928BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20230928BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C09D179/08 B
C08G18/34 030
C08K3/04
C08L79/08 C
C08K3/013
C08G73/10
C09D7/20
C09D7/61
B05D7/20
B05D7/14 P
B05D7/24 302X
B05D7/24 303A
B05D7/24 302T
B05D7/24 303E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518244
(86)(22)【出願日】2021-09-20
(85)【翻訳文提出日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 EP2021075752
(87)【国際公開番号】W WO2022063715
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520222287
【氏名又は名称】エランタス ヨーロッパ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア セチ
(72)【発明者】
【氏名】ジョバンニ ロッジ
(72)【発明者】
【氏名】ジョバンナ ビオンディ
【テーマコード(参考)】
4D075
4J002
4J034
4J038
4J043
【Fターム(参考)】
4D075BB26Z
4D075CA03
4D075CA44
4D075CA47
4D075CA48
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4J002DJ006
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4J043UA591
4J043UB401
4J043ZA31
4J043ZB47
4J043ZB48
(57)【要約】
【課題】溶媒としてNMPを含有するワイヤエナメル組成物の真の代替物としての資格を有するためのすべての要件を満たす組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、ワイヤの一次絶縁として用いることに特に適しているポリアミドイミド組成物に関する。この組成物は、55~65pbwのN-n-ブチルピロリドン、25~40pbwのポリアミドイミド樹脂、0~20pbwの他の成分を含有し、ポリアミドイミド樹脂が、10000~40000g/mol(ダルトン)のMw及び1.1~2のMw/Mn比を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)55~65pbwのN-n-ブチルピロリドン
(b)25~40pbwのポリアミドイミド樹脂、
(c)0~20pbwの他の成分
を含有する組成物であって、
前記ポリアミドイミド樹脂が、10000~40000g/mol(ダルトン)のMw、及び1.1~2のMw/Mn比を有することを特徴とする、
組成物。
【請求項2】
1nm~300nmの範囲内の平均直径を有するナノ粒子をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
隣接位に2つのカルボキシル基を有するトリカルボン酸又はその無水物、ジイソシアネート、調整剤化合物、及びN-n-ブチルピロリドンを含有する混合物を80℃~120℃の範囲内の温度で反応させることによって得ることができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ポリアミドイミド樹脂を調製する方法であって、
隣接位に2つのカルボキシル基を有するトリカルボン酸又はその無水物、ジイソシアネート、調整剤化合物、及びN-n-ブチルピロリドンを含有する混合物を、10000~40000g/mol(ダルトン)のMw及び1.1~2のMw/Mn比を有するポリアミドイミド樹脂が得られるまで、80℃~120℃の範囲内の温度で反応させる、
方法。
【請求項5】
前記調整剤が、低分子量モノカルボン酸である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記低分子量モノカルボン酸が、ギ酸、酢酸、及びプロピオン酸からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物が、1nm~300nmの範囲内の平均直径を有するナノ粒子も含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
金属ワイヤをコーティングするための方法であって、前記ワイヤを、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物でコーティングする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドイミドを含有するワイヤエナメル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器、発電機、及び電気モータにおいて、銅又はアルミニウムのワイヤを保護する電気絶縁材料は、高性能ポリマーの薄コーティングである。このコーティングは、一次電気絶縁又はワイヤエナメルとして言及され、可能な限り薄いことによって、それぞれのスロットスペースにおける最大限のターン数が得られる。十分な熱的、機械的、及び電気的な特性が維持される必要がある。一次電気絶縁として用いられるそのようなポリマーの1つは、ポリ(アミド‐イミド)樹脂又はポリアミドイミド樹脂である。顕著な特性としては、高い熱性能、耐薬品性及び摩耗耐性、並びに低摩擦係数が挙げられる。
【0003】
ポリアミドイミドコーティング組成物は、柔軟かつ耐性のあるフィルムを形成し、特に、ワイヤエナメル、ワニス、積層体のための接着剤、非接着性コーティング、ポリアミドイミド体などとして有用である。これらの組成物は、特に、それらの長い期間にわたる高温性能(=220℃(430F))に関して特筆すべきである。
【0004】
公報GB570858には、トリメリット酸無水物及び芳香族ジアミンを反応させることによる芳香族ポリアミドイミド樹脂の調製が開示されている。通常は、これらの反応は、非プロトン性溶媒中で、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はジメチルホルムアミド(DMF)中で行われる。
【0005】
US3541038には、トリメリット酸無水物、及びポリイソシアネート、好ましくはジイソシアネート、を用いる芳香族ポリアミドイミド樹脂の調製が記載されている。この反応は、好ましくは、N-メチルピロリドン(NMP)を溶媒として用いて行われる。代替的には、NMPと芳香族炭化水素との混合物を、溶媒として用いることができる。
【0006】
いくらか前に、NMPに曝露された人に関する潜在的な健康への影響がありうることが見いだされた。代替的な溶媒、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、ガンマブチルラクトン(GBL)、又はジメチルスルホキシド(DMSO)が知られているが、これらは、欠点を有しており、例えば、反応溶媒として用いるためには低すぎる沸点、低いポリマー樹脂溶解性、又は貧弱な保存安定性を有しており、これは、それが用いられる用途において、ポリマーの性能を変えることがある。
【0007】
NMPは、適切な様式で取り扱われ、かつ十分な安全及び健康上の注意が払われるときには、安全に用いられるが、代替的な溶媒に関する種々の文献が公開されており、例えば、US2013/0217812、WO2013/090933、WO2013/107822、US2015/0299393、及びWO2015/144663で公開されている。
【0008】
US2015/0299393には、代替的な比較的低毒性の溶媒中での、例えばN-ホルミルモルホリン(NFM)及びN-アセチルモルホリン(NAM)中での、ポリアミドイミドの調製が開示されている。これらの比較的低毒性の溶媒(主溶媒)は、共溶媒(又は第2溶媒)と組み合わせて用いることができ、共溶媒の量は、主溶媒の量よりも低い。多数の潜在的な共溶媒が、この文献で言及されている。このようにして調製されるポリアミドイミド樹脂はワイヤコーティングのためのコーティング組成物として用いることができるとされているが、この組成物に基づく市販のワイヤコーティングシステムは、知られていない。
【0009】
WO2013/107822には、ポリアミドイミド樹脂を含有するワイヤエナメル組成物においてNMPに代わる代替的な溶媒として用いることができる種々の溶媒を開示している。WO2013/107822には、銅ワイヤをエナメル処理するために用いることに適しているワイヤエナメル組成物の例が示されている。本願の発明者らは、WO2013/107822の実験を繰り返し、この代替的な溶媒を用いてエナメル処理された銅ワイヤの特性のいくつかはNMP溶媒を用いることによって得られる結果と同等であるが、全体としては、代替的な溶媒を用いてエナメル処理された銅ワイヤの特性は、NMPに基づく組成物の代替物としてこの組成物を用いるためには不十分であった。特には、切断抵抗性、エタノール抵抗性、柔軟性、及びtanδが、ワイヤエナメル用途のためのNMP系ポリアミドイミド樹脂組成物に関する市販の仕様を満たさなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、溶媒としてNMPを含有するワイヤエナメル組成物の真の代替物としての資格を有するためのすべての要件を満たす組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る組成物は:
a. 55~65pbwのN-n-ブチルピロリドン(NBP)
b. 25~40pbwのポリアミドイミド樹脂
c. 0~20pbwの他の成分
を含有し、
ポリアミドイミド樹脂が、10000~40000g/mol(ダルトン)のMw、及び、1.1~2のMw/Mn比を有する。
【0012】
本発明は、さらに、この組成物の、銅又はアルミニウム電導性材料のための絶縁材料としての使用にも関する。
【0013】
本発明は、さらに、ポリアミドイミド樹脂の調製にも関し、N-n-ブチルピロリドンを溶媒として用い、調整剤化合物の存在下で、80~120℃の範囲内の温度で、無水物をジイソシアネートと反応させる。
【0014】
本発明は、さらに、本発明に係る組成物で、金属ワイヤをエナメル処理する方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明で用いられるポリアミドイミド樹脂は、2つのカルボキシル基が隣接位にありかつ少なくとも1つのさらなる官能基を有する必要のあるポリカルボン酸又はその無水物に由来してよく、イミド環を形成できる少なくとも1つの第1級アミノ基を有するポリアミンに由来してよく、又は、少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物に由来してよい。ポリアミドイミドは、ポリアミド、少なくとも2つのNCO基を含有するポリイソシアネート、及び、少なくとも1つのさらなる基を有する環状ジカルボン酸無水物を反応させることによって得ることもでき、これらは、縮合又は付加による反応に供してよい。
【0016】
さらに、ポリアミドイミドを、ジイソシアネート又はジアミン及びジカルボン酸から調製することもでき、ただし、これらの成分のうちの1つが既にイミド基を含有することを条件とする。例えば、特に、まず、トリカルボン酸無水物をジ第1級ジアミンと反応させて、対応するジイミドカルボン酸を生成し、そして、これを、ジイソシアネートと反応させてポリアミドイミドを形成することができる。
【0017】
ポリアミドイミドの調製のためには、2つのカルボキシル基が隣接位にあるトリカルボン酸又はその無水物の利用が好ましい。好ましいものは、対応する芳香族トリカルボン酸無水物、例えば、トリメリット酸無水物、ナフタレントリカルボン酸無水物、ビスフェニルトリカルボン酸無水物、及び、その他の、分子中に2つのベンゼン環及び2つの隣接するカルボキシル基を有しているトリカルボン酸であり、例えば、DE-A1956512で示されているものである。非常に特に好ましいものは、トリメリット酸無水物の使用である。アミン成分として、ポリアミドカルボン酸との関連で既に記載したジ第1級ジアミンを用いることができる。さらには、チアジアゾール環を有する芳香族ジアミン、例えば、2,5-ビス(4-アミノフェニル)-1,3,4-チアジアゾール、2,5-ビス(3-アミノフェニル)-3,3,4-チアジアゾール、2-(4-アミノフェニル)-5-(3-アミノフェニル)-1,3,4-チアジアゾールを用いることもでき、さらには、種々の異性体の混合物を用いることもできる。
【0018】
ポリアミドイミドの調製に適しているジイソシアネートは、下記である:脂肪族ジイソシアネート、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート及びトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;脂環式ジイソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネート、ω,ω´-ジイソシアナート-1,4-ジメチルシクロヘキサン、シクロヘキサン1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン2,4-ジイソシアネート、及びジシクロヘキシル-メタン4,4´-ジイソシアネート;芳香族ジイソシアネート、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、及びキシリレンジイソシアネート、並びに、置換された芳香族系、例えば、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルスルフィドジイソシアネート、ジフェニルスルフォンジイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネート;混合された、芳香族-脂肪族ジイソシアネート及び芳香族-ヒドロ芳香族ジイソシアネート、例えば、4-イソシアネートメチルフェニルイソシアネート、テトラヒドロナフチレン1,5-ジイソシアネート、及びヘキサヒドロベンジジン4,4´-ジイソシアネート。好ましいものは、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-及び2,6-トリレンジイソシアネート、並びにヘキサメチレンジイソシアネートを用いることである。
【0019】
ワイヤエナメルとしての資格を有するために必要な有利な特性を示すNBP中に溶解したポリアミドイミド樹脂は、ポリアミドイミド樹脂を明確に規定された反応条件下においてNBP中で調製したときにのみ得ることができることが見いだされた。反応温度は、過度に高くてはならず、好ましくは、80℃から130℃の範囲内、より好ましくは80℃から120℃の範囲内であることが見いだされた。反応温度が130℃超である場合には、反応が過度に速く、制御不能であり、少なくとも10000g/molのMw及び1.1~2のMw/Mn比を有するポリアミドイミド樹脂を得ることができない。反応温度が80℃未満である場合には、反応が起こったとしても、非常に遅く、ポリアミドイミド樹脂の製造のためには実際上用いることができない。
【0020】
反応混合物中に少量の調整剤化合物を有することが有用であることがさらに見いだされ、例えば、低分子量のモノ無水物又はモノカルボン酸を有することが有用であることがさらに見いだされた。適切な低分子量モノカルボン酸の例としては、(C1~C10)モノカルボン酸又はC4~C6の分岐モノカルボン酸が挙げられ、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、及びその他が挙げられ、適切な無水物の例としては、無水フタル酸が挙げられる。反応混合物中における低分子量のモノ無水物又はモノカルボン酸の量は、反応で形成されるポリアミドイミドの量に基づいて、4~8mol%である必要がある。
【0021】
本発明は、主溶媒としてのN-n-ブチルピロリドン及び21重量%超の量でのポリアミドイミド樹脂を含有している溶液であって、ポリアミドイミド樹脂が10000~40000g/mol(ダルトン)のMwを有しており1.1~2のMw/Mn比を有する溶液を調整することを、可能にする。
【0022】
この溶液は、他の溶媒を含有することができるが、これらの他の溶媒の量は、N-n-ブチルピロリドンの量よりもはるかに低い。
【0023】
本発明は、また、本発明の組成物を用いることによるエナメル処理されたワイヤの製造にも関する。
【0024】
本発明に係る組成物のコーティング及び硬化は、何らの特定の又は特別な手順を必要とせず、慣用的な適用方法を用いることができる。ワイヤは、典型的には、0.005mm~6mmの直径を有する。適切なワイヤとしては、慣用的な金属のワイヤが挙げられ、好ましくは、銅、アルミニウム、又はこれらの合金である。ワイヤ形状に関する制限はなく、特に、円形のワイヤ又は矩形のワイヤを用いることができる。本発明の組成物は、単層コーティング、二重コーティング、又は複層コーティングとして適用できる。
【0025】
組成物は、慣用的な層厚で適用してよく、乾燥層厚は、薄いワイヤ及び厚いワイヤに関する標準的な値に従う。本発明の組成物は、ワイヤ上に適用され、水平炉又は鉛直炉で硬化される。ワイヤは、1回から連続的な数回にわたって、コーティングし硬化してよい。硬化温度としては、適切な範囲は、エナメルに関して用いられる慣用的なパラメータ及びコーティングされるワイヤの性質に従って、300℃~800℃の種々の温度であってよい。エナメル処理の条件、例えば、通過回数、エナメル処理速度、炉温度は、コーティングされるワイヤの性質に依存する。
【0026】
本発明の組成物でコーティングされたワイヤの切断耐性を向上させるために、本発明に係る組成物中にナノ粒子を含有させてもよい。
【0027】
本発明に係る組成物中で用いることができるナノ粒子は、その平均半径が、1~300nmの範囲内、好ましくは2~100nmの範囲内、特に好ましくは5~65nmの範囲内、である粒子である。好ましいナノ粒子の例は、ナノ酸化物、ナノ金属酸化物、コロイド酸化物、コロイド金属酸化物、金属酸化物、又は水酸化物であり、アルミニウム、錫、ホウ素、ゲルマニウム、ガリウム、鉛、遷移金属及びランタノイド及びアクチノイドの、特には、アルミニウム、ケイ素、チタン、亜鉛、イットリウム、バナジウム、ジルコニウム、及び/又はニッケルの、好ましくは、アルミニウム、ケイ素、チタン、及び/又はジルコニウムの、ナノ酸化物、ナノ金属酸化物、コロイド酸化物、コロイド金属酸化物、金属酸化物、又は水酸化物であり、これらは、分散相中でナノサイズであり、1種で、又は組み合わせて用いることができる。ナノ金属酸化物のうち、ナノアルミナが最も好ましい。ナノアルミナの例は、BYK Chemie社のBYK-LP X 20693及びNanoBYK3610、Nycol nano Technologies社のNycol Al20OSD、Sasol Germany社のDispal X-25 SR及びSRL、Disperal P2、P3、OS1及びOS2である。ナノアルミナのうちで、極性溶媒中に事前分散されたアルミニウム酸化物のセラミック粒子、例えばBYK-Chemie社のBYK-LP X 20693及びNanoBYK3610が好ましい。ナノ粒子は、カップリング剤とともに用いることができる。カップリング剤としては、任意の慣用的な公知の官能性のアルコキシシラン又はアリルオキシシランを用いることができる。官能性シランのうち、(イソシアネートアルキル)-トリアルコキシシラン、(アミノアルキル)-トリアルコキシシラン、(トリアルコキシシリル)-アルキル無水物、オリゴマー性ジアミノシラン系が好ましい。1~6の炭素原子、より好ましくは1~4の炭素原子を有する、官能性シランのアルキルラジカル及びアルコキシ基。上記のアルキル基及びアルコキシ基は、さらに、それへの置換基を有してよい。カップリング剤として有用なものとしては、また、チタネート及び/又はジルコネートがある。任意の慣用的なオルト-チタン酸又はジルコン酸のエステルを用いてよく、例えば、テトライソプロピル、テトラブチル、アセチルアセトン、アセト酢酸のエステル、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、クレシルのチタネート又はジルコネートが挙げられる。
【0028】
ポリマー溶液マトリックス中におけるナノ粒子の分散を向上するために、カップリング剤、例えば、官能性シラン、チタネート又はジルコネートを、ナノ粒子分散体に直接に添加してよく、かつ、そこで、ポリマー樹脂溶液に添加される前に混合されてよく、又は、ナノ粒子分散体を添加する前のポリマー溶液に直接に添加してよい。代替的には、カップリング剤は、無機部分の有機部分への比較的良好な結合のために、ナノ粒子分散体添加に先立って、ポリマー溶液に混合してよい。ポリマー溶液とカップリング剤との混合物を室温又は比較的低温で数時間にわたって攪拌してよく、そして、ナノ金属酸化物溶液を添加する。
【0029】
作製されたエナメル処理されたワイヤは、IEC60851に従って試験された。
【0030】
<測定方法>
Mwは、DIN55672-2に従って計測した。
Mnは、DIN55672-2に従って計測した。
粘度は、ASTM D 3288に従って計測した。
マンドレル試験は、IEC60851-パート3に従って計測を行った。
エタノール抵抗性は、IEC60851-パート4に従って計測した。
切断試験は、IEC60851-パート6に従って計測を行った。
Tanδは、IEC60851-パート5に従って計測した。
ジャーク試験(Jerk Test)は、IEC60851-パート3に従って計測を行った。
【0031】
<例>
例1(比較)
WO2013/107822からの例1を、正確に同じ条件の下で繰り返して、N-n-ブチルピロリドン(NBP)中のポリアミドイミド溶液を調製した。ポリアミドイミド溶液は、平均分子量7136g/moleで得られた(サンプル1)
【0032】
例2
18.08重量部(pbw)のトリメリット酸無水物、23.5pbwの4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート、0.12pbwのギ酸、及び58.29pbwのNBPを、反応容器中に加え、85℃にまで加熱した。混合物を、85℃で2時間にわたって保持し、そして、ゆっくりと100℃にまで加熱した。反応容器中の温度は、数時間にわたってこの温度に保持された。
【0033】
100℃に到達した1時間後に、10.9pbwのサンプルを反応容器から取り出し、分子量は、9665g/moleと計測された(サンプル2)。
【0034】
反応を継続し、さらなる1時間の後に、10.9pbwのさらなるサンプルを反応容器から取り出し、分子量は、15593g/moleと計測された(サンプル3)。
【0035】
反応を継続し、さらなる1時間の後に、10.9pbwのさらなるサンプルを反応容器から取り出し、分子量は、16771g/moleと計測された(サンプル4)。
【0036】
反応を継続し、100℃での合計の反応時間7時間の後に、さらなるサンプル10.9pbwを反応容器から取り出し、分子量は、24583g/moleと計測された。このサンプルを、ベンジルアルコールでさらに希釈して、23℃で13000mPasの粘度にした(サンプル5)。
【0037】
例3
例1及び2で回収されたすべてのサンプルを典型的なワイヤエナメル試験に供した。この比較では、市販のポリアミドイミド樹脂のNMP溶液(サンプル6)も用いた。これらの試験の結果を、表1に示す。
【0038】
【国際調査報告】