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特表2023-542193寿命特性が向上したリチウム二次電池、その駆動方法、それを含む電池モジュールおよび電池モジュールを含む電池パック
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  • 特表-寿命特性が向上したリチウム二次電池、その駆動方法、それを含む電池モジュールおよび電池モジュールを含む電池パック 図1a
  • 特表-寿命特性が向上したリチウム二次電池、その駆動方法、それを含む電池モジュールおよび電池モジュールを含む電池パック 図1b
  • 特表-寿命特性が向上したリチウム二次電池、その駆動方法、それを含む電池モジュールおよび電池モジュールを含む電池パック 図2
  • 特表-寿命特性が向上したリチウム二次電池、その駆動方法、それを含む電池モジュールおよび電池モジュールを含む電池パック 図3
  • 特表-寿命特性が向上したリチウム二次電池、その駆動方法、それを含む電池モジュールおよび電池モジュールを含む電池パック 図4
  • 特表-寿命特性が向上したリチウム二次電池、その駆動方法、それを含む電池モジュールおよび電池モジュールを含む電池パック 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-05
(54)【発明の名称】寿命特性が向上したリチウム二次電池、その駆動方法、それを含む電池モジュールおよび電池モジュールを含む電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20230928BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230928BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230928BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/052
H01M10/44 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518304
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 KR2022004641
(87)【国際公開番号】W WO2023277309
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0085971
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スン・フン・ベ
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ファン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ミ・キュン・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ス・ハン・パク
【テーマコード(参考)】
5H029
5H030
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029AM12
5H029CJ16
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ18
5H029HJ19
5H029HJ20
5H030AA01
5H030AA10
5H030AS01
5H030AS08
5H030AS11
5H030AS14
5H030BB01
5H030BB21
5H030FF43
5H030FF44
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050GA18
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA17
5H050HA18
5H050HA19
(57)【要約】
本発明は、寿命特性が向上したリチウム二次電池、その駆動方法、それを含む電池モジュールおよび電池モジュールを含む電池パックに関するものであって、正極活物質であるリチウムニッケル複合酸化物のプラトー電圧未満での作動電圧を有するリチウム二次電池を提供することによって、上記リチウムニッケル複合酸化物がスピネル型構造に転移することを防止し、サイクル増加による容量劣化を抑制しつつ、寿命特性を改善し得るという利点がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、および前記正極と前記負極との間に配置される分離膜を含むリチウム二次電池であって、
前記正極は正極活物質として下記化学式1で示すリチウムニッケル複合酸化物を含み、かつ前記リチウムニッケル複合酸化物は充放電プロファイルの4.1V~4.5V範囲でプラトー電圧を有し、
前記リチウム二次電池はプラトー電圧未満での作動電圧を有し、
[化学式1]
Li[NiCoMn ]O
はW、Cu、Fe、V、Cr、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、Moからなる群から選ばれる1種以上のドープ元素であり、
x、y、z、w、v、およびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.6≦y<0.95、0.01<z≦0.5、0.01<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である、リチウム二次電池。
【請求項2】
前記リチウムニッケル複合酸化物は充放電プロファイルの平均4.2Vでプラトー電圧を有し、
前記作動電圧は3.0V以上~4.2V未満である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記正極活物質は、Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O、Li(Ni0.7Co0.15Mn0.15)O、Li(Ni0.8Co0.1Mn0.1)O、Li(Ni0.9Co0.05Mn0.05)O、Li(Ni0.6Co0.2Mn0.1Zr0.1)O、Li(Ni0.6Co0.2Mn0.15Zr0.05)OおよびLi(Ni0.7Co0.1Mn0.1Zr0.1)Oからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記MはZrである、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記リチウムニッケル複合酸化物は、ドープ元素Mを300ppm~7,000ppm含有する、請求項4に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記正極活物質が層状構造を有する、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記リチウム二次電池の、25℃の温度で3800サイクル充放電時の容量維持率が90%以上である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記リチウム二次電池の、45℃の温度で3400サイクル充放電時の容量維持率が85%以上である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
前記リチウム二次電池の、25℃の温度で3800サイクル充放電時のDCIR増加率が10%以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
正極、負極、および前記正極と前記負極との間に配置された分離膜を含む電極組立体を含むリチウム二次電池の駆動方法であって、
前記正極は正極活物質として下記化学式1で示すリチウムニッケル複合酸化物を含み、かつ前記リチウムニッケル複合酸化物は充放電プロファイルの4.1V~4.5V範囲でのプラトー電圧を有し、
前記リチウム二次電池をリチウムニッケル複合酸化物のプラトー電圧未満の作動電圧で制御するステップを含み、
[化学式1]
Li[NiCoMn ]O
はW、Cu、Fe、V、Cr、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、Moからなる群から選ばれる1種以上のドープ元素であり、
x、y、z、w、v、およびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.6≦y<0.95、0.01<z≦0.5、0.01<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である、リチウム二次電池の駆動方法。
【請求項11】
前記リチウムニッケル複合酸化物は充放電プロファイルの平均4.2Vでプラトー電圧を有し、
前記作動電圧は3.0V以上~4.2V未満である、請求項10に記載のリチウム二次電池の駆動方法。
【請求項12】
請求項1に記載のリチウム二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項13】
請求項12に記載の電池モジュールを含む、電池パック。
【請求項14】
前記電池パックは中大型デバイスの電源として使用される、請求項13に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寿命特性が向上したリチウム二次電池、その駆動方法、それを含む電池モジュール、および電池モジュールを含む電池パックに関するものである。本出願は、2021年6月30日付の韓国特許出願第10-2021-0085971号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、携帯電話やノートパソコンのような小型機器の主な電力供給源として使用されており、大型機器に対する需要の増加に伴って電気自動車やエネルギー貯蔵装置にその外延が拡大している。
【0003】
しかしながら、現在レベルのエネルギー密度は大型装置に適用するのに適していないので、それを改善しようとして高容量の発現が可能な新規正極素材に対する研究が活発に行われている。
【0004】
高容量を達成するために、Ni含有量が60%以上のLiNiCoMn(0.6<a≦0.9、a+b+c=1)、層状構造のリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として含むリチウム二次電池が注目されている。特に、正極活物質中のニッケル(Ni)の含有量が多くなると、リチウム層に入ることができるリチウムの個数が他の遷移金属を使用したときよりも2倍に達し得るため、リチウム二次電池の容量は増加することになる。
【0005】
しかし、リチウムニッケル複合酸化物中のニッケルの含有量の増加に伴う構造安定性の低下に起因する電池特性の低下、特に高温の環境での電池特性の劣化と熱安定性の減少が深刻に発生することが問題になり、商業化のさまたげとなっている。
【0006】
一方、リチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として用いる場合、正極電位を基準に高電圧(例えば、4.2V以上)で充電時に一定領域でプラトー電圧(plateau voltage)区間を示しながら多量の酸素および二酸化炭素などのガスの発生とともに、250mAh/gを超える大容量を示す(図1参照)。
【0007】
このように、正極電位を基準に高電圧(例えば、4.2V以上)で充電時のリチウムイオンの過剰脱離および酸素などの脱離によって残っている一部のLiおよび遷移金属などが移動(migration)し得て、これにより、スピネル型構造(spinel‐like structure)への相転移が推量される。
【0008】
しかしながら、上記リチウム二次電池を上記プラトー電圧区間またはそれ以上の電圧で充電時に上記のようにスピネル型構造に転移すると、高い出力特性およびサイクル耐久性を確保し得なくなる。
【0009】
そこで、上記のような層状構造のリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として含むリチウム二次電池において、サイクル増加に伴う容量劣化を抑制しつつ、寿命特性を改善し得るリチウム二次電池の開発が求められているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2011-0101332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的は、層状構造のリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として含むリチウム二次電池において、サイクル増加に伴う容量劣化を抑制しつつ、寿命特性が向上したリチウム二次電池を提供することにある。
【0012】
また、上記リチウム二次電池の駆動方法、それを含む電池モジュールおよび電池モジュールを含む電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述された問題を解決するために、本発明は、一実施形態において、
正極、負極、そして上記正極と上記負極との間に配置された分離膜を含む電極組立体を含むリチウム二次電池であり、
上記正極は、正極活物質として下記化学式1で示すリチウムニッケル複合酸化物を含み、かつ上記リチウムニッケル複合酸化物は充放電プロファイルの4.1V~4.5V範囲でプラトー電圧を有し、
上記リチウム二次電池は、リチウムニッケル複合酸化物のプラトー電圧未満で作動電圧を有することを特徴とするリチウム二次電池を提供する。
【0014】
[化学式1]
Li[NiCoMn ]O
はW、Cu、Fe、V、Cr、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、Moからなる群から選ばれる1種以上のドープ元素であり、
x、y、z、w、v、およびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.6≦y<0.95、0.01<z≦0.5、0.01<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である。
【0015】
具体的な例において、リチウムニッケル複合酸化物は、充放電プロファイルの平均4.2Vでプラトー電圧を有することができ、このとき、作動電圧は、3.0V以上~4.2V未満であり得る。
【0016】
一例において、正極活物質は、Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O、Li(Ni0.7Co0.15Mn0.15)O、Li(Ni0.8Co0.1Mn0.1)O、Li(Ni0.9Co0.05Mn0.05)O、Li(Ni0.6Co0.2Mn0.1Zr0.1)O、Li(Ni0.6Co0.2Mn0.15Zr0.05)OおよびLi(Ni0.7Co0.1Mn0.1Zr0.1)Oからなる群から選択される1種以上であり得る。
【0017】
このとき、上記MはZrであり得る。
【0018】
例えば、上記リチウムニッケル複合酸化物は、ドープ元素Mを300ppm~7,000ppm含有し得る。
【0019】
一方、上記正極活物質は、層状構造(Layered)を有するリチウムニッケル複合酸化物であり得る。
【0020】
また、本発明に係るリチウム二次電池は、25℃の温度で3800サイクル充放電時の容量維持率(Capacity retention)が90%以上であってもよく、45℃の温度で3400サイクル充放電時の容量維持率(Capacity retention)が85%以上であってもよい。
【0021】
さらに、本発明に係るリチウム二次電池は、25℃の温度で3800サイクル充放電時のDCIR(Direct Current Internal Resistance)増加率が10%以下であってもよい。
【0022】
また、本発明は、一実施形態において、
正極、負極、そして上記正極と上記負極との間に配置される分離膜を含む電極組立体を含むリチウム二次電池の駆動方法として、
上記正極は、正極活物質として下記化学式1で示すリチウムニッケル複合酸化物を含み、かつ上記リチウムニッケル複合酸化物は充放電プロファイルの4.1V~4.5V範囲でプラトー電圧を有し、
上記リチウム二次電池を、リチウムニッケル複合酸化物のプラトー電圧未満の作動電圧で制御するステップを含むリチウム二次電池の駆動方法を提供する。
【0023】
[化学式1]
Li[NiCoMn ]O
はW、Cu、Fe、V、Cr、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、Moからなる群から選ばれる1種以上のドープ元素であり、
x、y、z、w、v、およびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.6≦y<0.95、0.01<z≦0.5、0.01<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である。
【0024】
具体的な例において、上記リチウムニッケル複合酸化物は充放電プロファイルの平均4.2Vでプラトー電圧を有し、作動電圧は3.0V以上~4.2V未満であり得る。
【0025】
また、本発明は、一実施形態において、上述したリチウム二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0026】
さらに、本発明は、一実施形態において、上記電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る寿命特性が向上したリチウム二次電池、その駆動方法、それを含む電池モジュールおよび電池モジュールを含む電池パックによると、正極活物質であるリチウムニッケル複合酸化物のプラトー電圧未満で作動電圧を有するリチウム二次電池を提供することによって、上記リチウムニッケル複合酸化物がスピネル型構造に転移することを防止してサイクル増加に伴う容量劣化を抑制しつつ、寿命特性を改善し得るという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1a】リチウムニッケル複合酸化物(NCM)をリチウム二次電池の正極活物質として用いる場合、上記リチウムニッケル複合酸化物の組成別充放電プロファイルを示すグラフである。
図1b図1aのプラトー電圧の区間を示すグラフである。
図2】実施例および比較例によるリチウム二次電池のサイクル寿命性能の評価を示すグラフである。
図3】実施例および比較例によるリチウム二次電池の直流内部抵抗の特性を示すグラフである。
図4】実施例および比較例によるリチウム二次電池を25℃の温度条件でサイクル寿命および直流内部抵抗の特性を示すグラフである。
図5】実施例および比較例によるリチウム二次電池を45℃の温度条件でサイクル寿命および直流内部抵抗の特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な実施形態を有することができるので、特定の実施形態を挙げて詳細に説明する。
【0030】
しかし、これは本発明を特定の実施形態に限定しようとすることではなく、本発明の思想および技術の範囲に含まれるすべての変更、均等物や代替物を含むこととして理解されたい。
【0031】
本発明において、「含む」や「有する」などの用語は、本明細書に記載の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはそれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたは複数の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはそれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解されたい。
【0032】
また、本発明において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あると記載された場合、これは他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あると記載されている場合、これは他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるということは、上部のみならず下部に配置される場合も含み得る。
【0033】
本発明において「充放電状態(State of Charge/Discharge)」とは、二次電池における電極活物質の完全充電状態を基準とするとき、充電または放電が可能な残余容量の度合を意味する。
【0034】
また、本発明において「プラトー電圧」とは、充放電プロファイル上で充放電の初期および/または末期を除いて、可逆容量領域のうち電極活物質の電位が一定に維持される領域を意味し、充放電曲線において充放電プロファイルの傾きの絶対値がゼロに近い区間を意味する。
【0035】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0036】
<リチウム二次電池>
本発明は、一実施形態において、
正極、負極、および上記正極と上記負極との間に配置される分離膜を含む電極組立体含むリチウム二次電池であり、
上記正極は、正極活物質として下記化学式1で示すリチウムニッケル複合酸化物を含み、かつ上記リチウムニッケル複合酸化物は充放電プロファイルの4.1V~4.5V範囲でプラトー電圧を有し、
上記リチウム二次電池は、リチウムニッケル複合酸化物のプラトー電圧未満で作動電圧を有することを特徴とする。
【0037】
[化学式1]
Li[NiCoMn ]O
はW、Cu、Fe、V、Cr、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、Moからなる群から選ばれる1種以上のドープ元素であり、
x、y、z、w、v、およびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.6≦y<0.95、0.01<z≦0.5、0.01<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である。
【0038】
本発明に係るリチウム二次電池は、正極活物質であるリチウムニッケル複合酸化物のプラトー電圧未満で作動電圧を有するリチウム二次電池を提供することによって、上記リチウムニッケル複合酸化物がスピネル型構造に転移ることを防止してサイクル増加に伴う容量劣化を抑制しつつ、寿命特性を改善し得るという利点がある。
【0039】
一例において、上記正極活物質は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)を含むリチウム金属複合酸化物を含むことができ、上記リチウム金属複合酸化物は場合によっては他の遷移金属(M)がドープされた形態を有し得る。例えば、上記正極活物質は、可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な正極活物質であって、上記化学式1で表されるリチウム金属複合酸化物を主成分として含むことができる。
【0040】
具体例において、より具体的には、上記正極活物質は、Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O、Li(Ni0.7Co0.15Mn0.15)O、Li(Ni0.8Co0.1Mn0.1)O、Li(Ni0.9Co0.05Mn0.05)O、Li(Ni0.6Co0.2Mn0.1Zr0.1)O、Li(Ni0.6Co0.2Mn0.15Zr0.05)OおよびLi(Ni0.7Co0.1Mn0.1Zr0.1)Oからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0041】
一例において、上記正極活物質は、化学式1で表されるリチウム金属複合酸化物として、Li(Ni0.7Co0.15Mn0.15)O、Li(Ni0.8Co0.1Mn0.1)O、Li(Ni0.9Co0.05Mn0.05)OまたはLi(Ni0.6Co0.2Mn0.1Zr0.1)Oをそれぞれ単独で使用するか、または併用し得る。
【0042】
また、上記正極活物質で表されるリチウムニッケル複合酸化物は、層状構造(Layered)であってもよい。具体的な例において、層状構造のリチウム酸化物は、既存の他の正極活物質とは異なり、正極活物質内の構成成分の酸化数変化によって示す酸化/還元電位以上で一定区間の平坦準位を有している。
【0043】
具体的な例において、上記正極活物質として用いられるリチウムニッケル複合酸化物のプラトー電圧は、4.1V~4.5Vの範囲にあってもよい。具体的には、リチウム金属複合酸化物のプラトー電圧は4.2V~4.4Vの範囲、4.2V~4.3Vの範囲、あるいは平均4.2Vであってもよい。
【0044】
ここで、「プラトー電圧」とは、充放電プロファイル上で充放電の初期および/または末期を除いて、可逆容量領域のうち正極活物質の電位が一定に維持される領域を意味し、充放電曲線における充放電プロファイルの傾きの絶対値がゼロに近い区間を意味する。また、「作動電圧」とは、上記リチウム二次電池の充電時の電圧を意味する。
【0045】
一方、ニッケル含有量が多いリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として用いる場合、正極電位を基準に高電圧(例えば、4.2V以上)で充電時に一定領域でプラトー電圧(plateau voltage)区間を示し、プラトー電圧区間でリチウムイオンの過剰脱離および酸素などの脱離により残っている一部のLiや遷移金属などが移動しながら、層状構造(Layered)のリチウムニッケル複合酸化物はスピネル型構造に転移する。一方、上記リチウムニッケル複合酸化物の構造変化に起因して、高い出力特性およびサイクル寿命が低下するという問題があった。
【0046】
そこで、本発明は、上記化学式1の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物を含むリチウム二次電池の場合、材料の組成および作動電圧を適切に調整することによって、サイクル数の増加に伴う容量劣化を抑制しつつ、電池の寿命を延ばすことができる。具体的に、上記リチウム二次電池は、正極活物質のプラトー電圧区間未満で作動電圧を有し得る。
【0047】
一例において、本発明に係るリチウム二次電池において、リチウムニッケル複合酸化物が充放電プロファイルの平均4.2Vでプラトー電圧を有するとき、上記リチウム二次電池の作動電圧は3.0V以上~4.2V未満であってもよく、3.0V~4.15Vの範囲または3.0V~4.1Vの範囲にあってもよい。上記リチウム二次電池の作動電圧が上記範囲にあるので、エネルギーを維持しながら容量劣化を抑制して寿命特性を改善し得る。
【0048】
具体的な例において、本発明に係るリチウム二次電池は、容量維持率が改善され得る。例えば、上記リチウム二次電池は、25℃の温度で3800サイクル充放電時の容量維持率(Capacity retention)が90%以上であり得る。
【0049】
一方、上記正極活物質のプラトー電圧区間でのリチウム二次電池の場合には、同じ条件で最大に発揮し得る容量維持率は90%未満であったが、本発明に係るリチウム二次電池は90%以上の容量維持率を有することができる。
【0050】
また、本発明に係るリチウム二次電池は、45℃の温度で3800サイクル充放電時の容量維持率(Capacity retention)が85%以上であり得る。一方、上記正極活物質のプラトー電圧区間でのリチウム二次電池の場合には、同じ条件で最大に発揮し得る容量維持率は85%未満、または75%未満であったが、本発明に係るリチウム二次電池は85%以上の容量維持率を有することができる。これは、本発明に係るリチウム二次電池が高温寿命特性に優れることがわかる。
【0051】
さらに、本発明に係るリチウム二次電池は、DCIR(Direct Current InternalResistance)増加率を改善し得る。例えば、上記リチウム二次電池は、25℃の温度で3800サイクル充放電時のDCIR増加率が10%以下であり得る。一方、上記正極活物質のプラトー電圧区間でのリチウム二次電池の場合には、同じ条件でDCIR増加率は20%を超えることができる。
【0052】
すなわち、本発明に係るリチウム二次電池は、従来のリチウム二次電池と比べて、DCIR増加率が著しく減少し、優れた電池特性を発揮することができる。
【0053】
このような事実は、後述の実験例から裏付けられる。
【0054】
また、本発明に係る正極活物質は、上述したように、上記化学式1の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物を含むことができ、このとき、ドープ元素MはZrであってもよい。
【0055】
他の一例において、上記リチウムニッケル複合酸化物は、ドープ元素Mを300ppm~7,000ppm含有することができる。具体的な例において、上記リチウムニッケル複合酸化物を合わせた総重量に対して、上記ドープ元素M含有原料物質を500ppm~7,000ppm、1000ppm~6,500ppm、2,000ppm~6,000ppm、4,000ppm~6,000ppm、5,000ppm~5,500 ppm、または5,000ppmで含むことができる。上記範囲にドープ元素M含有原料物質を含むことによって、表面抵抗を高めることができ、リチウムイオンの脱離速度を遅らせることができ、これを用いて製造された電池の構造安定性向上の効果および寿命向上の効果を達成し得る。
【0056】
上述のように、ドープ元素MはZrであってもよく、上記ドープ元素M含有原料物質はZrOであってもよい。
【0057】
一方、上記正極は、正極集電体上に正極活物質を含む正極スラリーを塗布、乾燥およびプレッシングして製造される正極合材層を含み、上記正極合材層は、必要に応じて導電材、バインダー、添加剤などを選択的にさらに含み得る。
【0058】
上記正極活物質の含有量は、正極合材層100重量部に対して85~95重量部であってもよく、具体的には88~95重量部、90~95重量部、86~90重量部、または92~95重量部であってもよい。
【0059】
また、上記導電材は、正極の電気的性能を向上させるために使用されるものであって、当業界で通常に用いられるものを適用し得る。具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラック、スーパーP、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、グラフェンおよびカーボンナノチューブからなる群から選択される1種以上を含み得る。
【0060】
一例として、上記導電材は、カーボンブラックまたはデンカブラックを単独で使用するか、または併用し得る。
【0061】
また、上記導電材は、正極合材層100重量部に対して0.1~5重量部で含むことができ、具体的には0.1~4重量部、2~4重量部、1.5~5重量部、1~3重量部、0.1~2重量部、または0.1~1重量部で含むことができる。
【0062】
なお、上記バインダーは、正極活物質、正極添加剤および導電材を互いに結着させる役割を果たし、このような機能を有するものであれば、特に限定されずに用いることができる。具体的には、上記バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HFP)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidenefluoride、PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリルレート(polymethylmethacrylate)およびこれらの共重合体からなる群から選択される1種以上の樹脂を含み得る。一例として、上記バインダーはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidenefluoride)を含み得る。
【0063】
また、上記バインダーは、合材層の全体100重量部に対して、1~10重量部で含んでいてもよく、具体的には2~8重量部、または1~5重量部で含んでもよい。
【0064】
なお、上記合材層の平均厚さは特に制限されるものではないが、具体的には50μm~300μmであり、より具体的には100μm~200μm、80μm~150μm、120μm~170μm、150μm~300μm、200μm~300μm、あるいは、150μm~190μmであってもよい。
【0065】
また、上記正極は正極集電体として当該電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものを用いることができる。例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素などを用いることができ、アルミニウムやステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを用いることもできる。また、上記正極集電体は、表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。また、上記集電体の平均厚さは、製造される正極の導電性と総厚さを考えて3~500μmで好適に適用することができる。
【0066】
また、本発明に係るリチウム二次電池の負極は、負極集電体上に負極活物質を塗布、乾燥およびプレッシングすることによって製造され、必要に応じて正極と同じような導電材、有機バインダー高分子、添加剤などが選択的にさらに含まれ得る。
【0067】
また、上記負極活物質は、例えば、炭素物質とシリコン物質を含むことができる。炭素物質は、炭素原子を主成分とする炭素物質を意味し、このような炭素物質としては、天然黒鉛のように層状結晶構造が完全になされたグラファイト、低結晶性層状結晶構造(graphene structure、炭素の六角形ハニカム模様の平面が層状で配列された構造)を有するソフトカーボンおよびこのような構造が非晶質部分と混合されているハードカーボン、人造黒鉛、膨張黒鉛、炭素繊維、難黒鉛化炭素、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、フラーレン、活性炭、グラフェン、カーボンナノチューブなどを含むことができ、好ましくは天然黒鉛、人造黒鉛、グラフェンおよびカーボンナノチューブからなる群から選択される1種以上を含み得る。より好ましくは、上記炭素物質は天然黒鉛および/または人造黒鉛を含み、上記天然黒鉛および/または人造黒鉛と共にグラフェンおよびカーボンナノチューブのうちのいずれか1つ以上を含むことができる。この場合、上記炭素物質は、炭素物質全体100重量部に対して0.1~10重量部のグラフェンおよび/またはカーボンナノチューブを含むことができ、より具体的には炭素物質全体100重量部に対して0.1~5重量部、または0.1~2重量部のグラフェンおよび/またはカーボンナノチューブを含むことができる。
【0068】
また、上記シリコン物質は、金属成分としてケイ素(Si)を主成分として含む粒子であって、ケイ素(Si)粒子および酸化ケイ素(SiO、1≦x≦2)粒子のうちの1種以上を含むことができる。一例として、上記シリコン物質は、ケイ素(Si)粒子、一酸化ケイ素(SiO)粒子、二酸化ケイ素(SiO)粒子、またはこれらの粒子が混合されたものを含むことができる。
【0069】
また、上記シリコン物質は、結晶質粒子と非結晶質粒子とが混合された形態を有することができ、上記非結晶質粒子の割合は、シリコン物質全体100重量部に対して50~100重量部、具体的には50~90重量部、60~80重量部または85~100重量部であり得る。本発明は、シリコン物質に含まれた非結晶質粒子の割合を上記のような範囲に制御することによって、電極の電気的物性を低下させない範囲で熱的安定性と柔軟性を向上させることができる。
【0070】
また、上記シリコン物質は、炭素物質とシリコン物質とを含み、かつ負極合材層100重量部に対して1~20重量部で含まれてもよく、具体的には、負極合材層100重量部に対して5~20重量部、3~10重量部、8~15重量部、13~18重量部、または2~7重量部で含まれてもよい。
【0071】
本発明は、負極活物質に含まれた炭素物質とシリコン物質の含有量を上記のような範囲に調節することによって、電池の初期充放電時のリチウム消耗量と非可逆容量の損失を減らしつつ、単位質量当たりの充電容量を向上させることができる。
【0072】
一例として、上記負極活物質は、負極合材層100重量部に対して黒鉛95±2重量部と、一酸化ケイ素(SiO)粒子および二酸化ケイ素(SiO)粒子が均一に混合された混合物5±2重量部とを含み得る。本発明は、負極活物質に含まれた炭素物質とシリコン物質の含有量を上記のような範囲に調節することによって、電池の初期充放電時のリチウム消耗量と非可逆容量の損失を減らしつつ、単位質量当たりの充電容量を向上させることができる。
【0073】
また、上記負極合材層は、100μm~200μmの平均厚さを有することができ、具体的には、100μm~180μm、100μm~150μm、120μm~200μm、140μm~200μm、または140μm~160μmの平均厚さを有することができる。
【0074】
なお、上記負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば特に制限されない。例えば、銅、ステンレススチール、ニッケル、チタン、焼成炭素などを用いることができ、銅やステンレススチールの場合は、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。また、上記負極集電体は、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質との結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が可能である。また、上記負極集電体の平均厚さは、製造される負極の導電性と総厚さを考えて3~500μmで好適に適用され得る。
【0075】
また、上記分離膜は正極と負極との間に介在され、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄膜が用いられる。分離膜は、当業界で通常に用いられるものであれば特に限定されない。具体的には、耐化学性および疎水性のポリプロピレン、ガラス繊維、またはポリエチレンなどで作られたシートや不織布などを用いることができ、場合によっては、上記シートや不織布のような多孔性高分子基材に無機物粒子/有機物粒子が有機バインダー高分子によってコーティングされた複合分離膜が使用され得る。電解質としてポリマーなどの固体電解質が用いられる場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもあり得る。また、上記分離膜の気孔直径は平均0.01~10μmであり、厚さは平均5~300μmであり得る。
【0076】
一方、上記正極と上記負極はゼリーロール状に巻取されて円筒形電池、角形電池またはパウチ型電池に収容されるか、または折り畳みまたはスタック&折り畳み形態でパウチ型電池に収容され得るが、これに限定されない。
【0077】
また、本発明に係る上記リチウム塩含有電解液は、電解液とリチウム塩からなり得る。そして、上記電解液としては、非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用され得る。
【0078】
上記非水系有機溶媒としては、例えば、N‐メチル‐2‐ピロリジノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ‐ブチロラクトン、1,2‐ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2‐メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3‐ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3‐ジメチル‐2‐イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、ピロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用され得る。
【0079】
上記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエージテーションリジン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使用され得る。
【0080】
上記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNI、LiN‐LiI‐LiOH、LiSiO、LiSiO‐LiI‐LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO‐LiI‐LiOH、LiPO‐LiS‐SiSなどのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用され得る。
【0081】
上記リチウム塩は、非水系電解質に溶解されやすい物質として、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルボロン酸リチウム、イミドなどが使用され得る。
【0082】
また、電解液には充放電特性、難燃性などの改善を目的として、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n‐グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N‐置換オキサゾリジノン、N、N‐置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加され得る。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含むこともでき、高温保存特性を向上させるために二酸化炭素ガスをさらに含むこともでき、FEC(Fluoro‐Ethylene Carbonate,フルオロエチレンカーボネート)、PRS(Propene sultone,プロペンスルトン)などをさらに含むことができる。
【0083】
また、上記正極と上記負極は、ゼリーロール形態に巻取され、円筒形電池、角形電池またはパウチ型電池に収容されるか、または折り畳みもしくはスタック&折り畳み形態でパウチ型に収容される形態であり得る。例えば、本発明に係るリチウム二次電池はパウチ型の電池であり得る。
【0084】
上記のように本発明に係る正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性および容量維持率を安定的に示すため、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器、およびハイブリッド電気自動車(Hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などに有用である。
【0085】
<リチウム二次電池の駆動方法>
本発明は、一実施形態において、
正極、負極、および上記正極と上記負極との間に配置される分離膜を含む電極組立体を含むリチウム二次電池の駆動方法であり、
上記正極は、正極活物質として下記化学式1で示すリチウムニッケル複合酸化物を含み、かつ上記リチウムニッケル複合酸化物は充放電プロファイルで4.2V~4.5Vの範囲のプラトー電圧を有し、
上記リチウム二次電池を、リチウムニッケル複合酸化物のプラトー電圧未満の作動電圧で制御するステップを含む。
【0086】
[化学式1]
Li[NiCoMn ]O
はW、Cu、Fe、V、Cr、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、Moからなる群から選ばれる1種以上のドープ元素であり、
x、y、z、w、v、およびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.6≦y<0.95、0.01<z≦0.5、0.01<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である。
【0087】
本発明に係るリチウム二次電池の駆動方法は、充放電時にリチウムニッケル複合酸化物のプラトー電圧未満の作動電圧で制御するステップを含むことによって、上記リチウムニッケル複合酸化物がスピネル型構造に転移することを防止してサイクル増加による容量劣化を抑制しつつ、寿命特性を改善し得るという利点がある。
【0088】
具体的な例において、上記正極活物質として使用されるリチウムニッケル複合酸化物のプラトー電圧は、4.2V~4.5Vの範囲にあり得る。具体的には、リチウム金属複合酸化物のプラトー電圧は4.2V~4.4Vの範囲、4.2V~4.3Vの範囲、または平均4.2Vであり得る。
【0089】
一例において、本発明に係るリチウム二次電池の作動電圧は、3.0V以上~4.2V未満であってもよく、3.0V~4.15Vの範囲または3.0V~4.1Vの範囲にあってもよい。上記リチウム二次電池の作動電圧が上記範囲にあるため、エネルギーを維持しながら容量劣化を抑制して寿命特性を改善することができる。
【0090】
<電池モジュールおよび電池パック>
本発明は、一実施形態において、上述のリチウム二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0091】
また、本発明は、一実施形態において、上述の電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0092】
具体的な例において、本発明に係るリチウム二次電池は、特に長時間の寿命と優れた耐久性が要求される高出力大容量の電池、またはそのような電池を単位電池として複数個含む電池モジュール、または電池パックに使用され得る。
【0093】
上記電池パックは、高温安定性および長いサイクル特性と高いレート特性などが要求される中大型デバイスの電源として使用することができ、このような中大型デバイスの具体例としては、電気的モータによって動力を受けて動く電動工具(power tool)、電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug‐in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車、電動自転車(E‐bike)、電動スクーター(E‐scooter)を含む電気二輪車、電動ゴルフカート(Electric golf cart)電気トラック、電気商用車または電力貯蔵用システムが挙げられる。
【0094】
このような中大型電池モジュールまたは中大型電池パックの構造および製造方法は当業界に公知であるので、その詳細な説明は省略する。
【0095】
以下、本発明を実施例および実験例により詳細に説明する。
【0096】
ただし、下記実施例および実験例は本発明を例示するためだけのものであり、本発明の内容が下記実施例および実験例に限定されるものではない。
【0097】
<製造例.リチウム二次電池の製造>
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1 96重量部、バインダーとしてPVDF2重量部、導電材としてカーボンブラック2重量部を秤量してN‐メチルピロリドン(NMP)溶媒中で混合して正極合材層用スラリーを製造した。アルミニウム箔に、上記合材層用スラリーを塗布して乾燥させた後、圧延して正極合材層(平均厚さ:130μm)を備える正極を形成した。一方、正極活物質のプラトー電圧は4.2Vであった。
【0098】
それとは別途に、炭素系活物質として天然黒鉛87重量部、シリコン系活物質としてSiO(酸化ケイ素)7重量部、導電材としてカーボンブラック3重量部、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)3重量部をN‐メチルピロリドン溶媒に混合して負極合材層用スラリーを製造し、それを銅箔に塗布して負極合材層(平均厚さ:180μm)を備える負極を製造した。
【0099】
製造された各正極と負極との間に多孔質ポリエチレン(PE)フィルムからなる分離膜(厚さ:約16μm)を介在して積層させて電極組立体を製造した。電極組立体を電池ケースの内部に位置させた後、ケース内部に電解液を注入した後、電解液が十分に含浸されるように常温で3日間放置してリチウム二次電池を製造した。このとき、電解液はエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート(EC/DMC/EMCの混合体積比は3/4/3)からなる有機溶媒に1.0M濃度のリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)を溶解させて製造した。
【0100】
<実施例1~2、比較例1>
上記のように製造されたリチウム二次電池を下記の条件でそれぞれ充電した後、放電して活性化を行った(Cレート=0.1C)。
【0101】
そして、各リチウム二次電池の作動電圧の範囲を下記表1のように設定し、サイクルを行った。
【0102】
【表1】
【0103】
<実験例>
本発明に係るリチウム二次電池の性能を評価するために、以下の実験を行った。
【0104】
イ)サイクル寿命性能の評価
実施例および比較例のリチウム二次電池をそれぞれ0.1Cの放電後に設定された作動電圧の範囲で3800サイクルを行い、各容量を測定した。測定結果を図2に示し、3800サイクルの充放電を行った後に充放電容量維持率を算出した。
【0105】
容量維持率は下記式1で定義され、その結果を表2に示す。
【0106】
[式1]
容量維持率(%)=(n回充放電時の放電容量/1回充放電時の放電容量)×100
【0107】
ロ)直流内部抵抗(DCIR)特性の評価
実施例および比較例のリチウム二次電池に対して直流内部抵抗評価の実験を以下のように行った。
【0108】
それぞれのリチウム二次電池に対して3800サイクルを行い、100サイクル毎にDCIR評価を行った。このとき、DCIRは、例えば、SOC50%状態で0.2Cで10秒間放電後に同じ容量を補充、0.5Cで10秒間放電後に同じ容量を補充、1Cで10秒間放電後に同じ容量を補充する方式で、印加電流量に対する電圧変化量の傾きで測定することができる。DCIRは記載のように放電時のDCIRを測定することもでき、充電時のDCIRを測定することもできるが、図3は放電時のDCIRを図示したものである。SOC50%は、電池全体の充電容量を100%としたとき、50%の充電容量となるように充電した状態を意味する。
【0109】
また、その結果を図3に示し、DCIR増加率を表2に示す。
【0110】
【表2】
【0111】
図2および表2を参照すると、実施例のリチウム二次電池は、比較例のリチウム二次電池に比べてサイクル進行に伴う容量維持率が顕著に高く、サイクル進行に伴うDCIR増加率が10%以下で、顕著に減少したことがわかる。
【0112】
ハ)高温サイクル寿命および直流内部抵抗特性の評価
実施例および比較例のリチウム二次電池に対して、高温(45℃)でのサイクル寿命および直流内部抵抗評価の実験を以下のように行った。
【0113】
各評価条件を以下の表3に示し、評価方法は上述したので省略する。また、その結果を図4図5および表3に示す。
【0114】
【表3】
【0115】
上記図4図5および表3を参照すると、実施例のリチウム二次電池は、比較例のリチウム二次電池に比べて高温での容量維持率が高く、サイクル進行に伴うDCIR増加率が著しく低いことが分かる。
【0116】
このような結果は、実施例のリチウム二次電池が、リチウムニッケル複合酸化物のプラトー電圧未満での作動電圧を有し、上記リチウムニッケル複合酸化物がスピネル型構造に転移することを防止することができ、これにより、サイクル増加に伴う容量劣化を抑制しつつ、寿命特性を改善し得ることがわかる。
【0117】
以上、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野の熟練された当業者または当該技術分野で通常の知識を有する者であれば、後述する特許請求の範囲に記載された本発明の思想および技術領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させることができることが理解され得る。
【0118】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定められるべきである。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】