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特表2023-542232データを処理するための、方法、データ処理モジュール、およびデータ処理ネットワーク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-05
(54)【発明の名称】データを処理するための、方法、データ処理モジュール、およびデータ処理ネットワーク
(51)【国際特許分類】
   G06F 9/48 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
G06F9/48 300Z
G06F9/48 370
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518748
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(85)【翻訳文提出日】2023-05-22
(86)【国際出願番号】 EP2021075423
(87)【国際公開番号】W WO2022063663
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】102020212035.8
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】ペーンル,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ディツィオル,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】エゲンター,シュテファン
(57)【要約】
それぞれが少なくとも1つのデータ処理要素(6)を含む複数のデータ処理モジュール(5)を含むデータ処理ネットワーク(4)を用いてデータを処理する方法であって、各データ処理要素(6)は、データ(2)を処理するために定められたデータ処理タスクに適合しており、各データ処理モジュール(5)は、データ源(13)からのデータ(2)および/または別のデータ処理モジュール(5)の出力データ(8)を入力データ(7)として取得して、データ処理ネットワーク(4)のネットワーク出力データ(14)および/または別のデータ処理モジュール(5)の入力データ(7)である出力データ(8)を生成し、この方法では、少なくとも1つのデータ処理モジュール(5)について、a)データ処理タスクを実行するための入力データ(7)のセットを受信するステップと、b)少なくとも1つのデータ処理要素(6)を起動するための刺激(9)を受信するステップと、c)各入力データ(7)を用いてデータ処理タスクを実行することによって出力データ(8)を生成するステップと、d)出力データ(8)を供給するステップとが実施される、方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ処理方法、特に、それぞれが少なくとも1つのデータ処理要素(6)を含む複数のデータ処理モジュール(5)を含むデータ処理ネットワーク(4)を備えた車両(1)においてセンサーデータ(3)を処理するための方法であって、
各前記データ処理要素(6)が前記データ(2)を処理するために定められたデータ処理タスクに適合しており、
各前記データ処理モジュール(5)が、データ源(13)からのデータ(2)および/または別のデータ処理モジュール(5)の出力データ(8)を入力データ(7)として取得して、前記データ処理ネットワーク(4)のネットワーク出力データ(14)および/または別のデータ処理モジュール(5)の入力データ(7)である出力データ(8)を生成し、
該方法において、少なくとも1つのデータ処理モジュール(5)について、
a)各前記データ処理モジュール(5)の前記少なくとも1つのデータ処理要素(6)において前記データ処理タスクを実行するための入力データ(7)のセットを受信するステップと、
b)前記データ処理モジュール(5)の前記少なくとも1つのデータ処理要素(6)を起動するための刺激(9)を受信するステップと、
c)ステップa)で前記入力データ(7)のセットが受信され、ステップb)で前記刺激(9)が受信されたときに、前記データ処理モジュール(5)の前記少なくとも1つのデータ処理要素(6)を起動させ、各前記入力データ(7)を用いて前記データ処理要素(6)が適合する前記データ処理タスクを実行することによって出力データ(8)を生成するステップと、
d)前記出力データ(8)を、さらなるデータ処理のために、および/またはネットワーク出力データ(14)として供給するステップとが実施される、方法。
【請求項2】
ステップd)の後にさらに、
e)前記少なくとも1つのデータ処理要素(6)を用いた前記少なくとも1つのデータ処理タスクの実行を検証するために、前記入力データ(7)のセット、前記刺激(9)、および/または前記出力データ(8)からなる検証データセットを供給するステップ
が実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検証データセットは、追加的に、前記刺激(9)の時点が起こり得る少なくとも1つの時間情報、および/または、前記少なくとも1つのデータ処理タスクの処理に関する時間情報を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップb)で使用される前記刺激(9)を生成するために少なくとも1つのタイマー(10)が使用され、前記タイマー(10)が、前記データ処理要素(6)を用いた前記データ処理タスクの実行を規則的に繰り返すための時間パターン(11)を定める、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ステップb)で使用される前記刺激(9)を生成するために、前記データ(2)の利用可能性を示す少なくとも1つの利用可信号(12)が使用される、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)が、前記データ処理モジュール(5)の入力データ受信モジュール(15)を用いて実施され、前記入力データ受信モジュール(15)が、まだ完全ではない入力データ(7)を一時的に保存するための入力記憶装置(16)を有し、前記入力データ(7)のセットの完全性検査を実行する、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップd)が出力データ供給モジュール(17)を用いて実施され、前記出力データ供給モジュール(17)が、まだ完全ではない出力データ(8)の一時的な保存が行われる出力記憶装置(18)を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ステップd)で供給される出力データ(8)が、同一のデータ処理モジュール(5)を用いて方法ステップa)からd)を再度実施するための入力データ(7)として少なくとも部分的に使用される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップd)で供給される出力データ(8)が部分的なデータ量(19)を含み、前記部分的なデータ量(19)が、前記データ処理タスクの実行の際に前記データ処理モジュール(5)の複数の異なるデータ処理要素(6)によって生成され、
ステップd)での前記出力データ(8)の供給が、前記出力データ(8)を構成する全ての前記部分的なデータ量(19)が利用可能になって初めて行われる、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップd)で追加的に利用可信号(12)が生成され、前記利用可信号(12)に基づいて、前記出力データ(8)がさらなる処理のために供給されたことが認識可能である、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
該方法の実施中に、後のさらなる処理のために、
・ステップa)で受信される入力データ(7)のセット、
・ステップb)で受信される刺激(9)、
・ステップd)で供給される出力データ(8)、
・ステップd)で供給される利用可信号(12)、
の情報のうちの少なくとも1つの永続的な記録が行われる、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記記録の際に、追加的に時間情報の格納が行われ、前記時間情報は、タイムライン(24)に対する方法の実施の時間的な割り当てを可能にする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の方法を実施するためのデータ処理ネットワーク(4)用のデータ処理モジュール(5)であって、
入力記憶装置(16)が割り当てられている入力データ受信モジュール(15)と、
出力記憶装置(18)が割り当てられている出力データ供給モジュール(17)と
を含み、
さらに、前記入力記憶装置(16)内の前記入力データ(7)に基づいてデータ処理タスクを実行するための、および、前記出力記憶装置(18)内に格納される出力データ(8)を生成するための少なくとも1つのデータ処理要素(6)を含む、データ処理モジュール(5)。
【請求項14】
請求項13に記載のデータ処理モジュール(5)を複数含むデータ処理ネットワーク(4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
運転者支援または自動運転のためのシステムは、通例はデータフローに関してグラフで表すことができる多くの個々のソフトウェアユニットからなる。これらのソフトウェアユニット(しばしば、ランナブル、ノード、またはデータ処理要素とも呼ばれる)は、ある量の入力データが処理され、そこからある量の出力データが生成されることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
前述のシステムでは、レーダーまたはビデオデバイスのようなセンサーの入力データが、データ処理要素のグラフで処理されて、静的な視野におけるデータフローが視覚化される。
【0003】
様々なソフトウェアユニットは、センサーデータを処理するために用いられる複雑なデータ処理ネットワークを規則的に構築することによって、センサーデータに基づいてアクションを行う。そのようなアクションとして、例えば車両の自律運転操作の状況における制御タスクが挙げられる。データ処理ネットワークにおけるデータ処理は通常、データ処理要素を用いて実行される複数の、互いに基づくデータ処理ステップまたはデータ処理タスクを含む。
【0004】
このようなデータ処理ネットワークでは、データ処理タスクの実行は、対応する条件次第である。この条件には時間ステップまたはデータの到来のような刺激が含まれ得る。データ処理要素の実行を定める制御フローは、通例はデータフローから導出される。
【0005】
データ処理要素の実行がデータフローに対応するデータ駆動型手法がある。さらに、データ処理要素の時間駆動型の実行を用いる手法がある。この手法は近年、最悪状況実行時間(考えられる最長の実行時間)の概念によって強化された。
【0006】
厳密なデータ駆動型の手法では、データ処理要素の実行がデータパケットの到来によって引き起こされる。データ処理要素の実行におけるデータパケットの送付は、対応するグラフの場合に、それに依存するデータ処理要素の即時の実行につながり得る。あるデータ処理要素がまだ実行されている間に新たなデータパケットが到来した場合には、データ処理要素の複数回の並行した実行さえ考えられる。このようなシステムは待ち時間が少ないが、可能な状態の数が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の背景に鑑みて、ここでデータ処理の再現性とともに高い性能で実現することを目的とするデータ処理方法について説明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここで、データ処理方法、特に、それぞれが少なくとも1つのデータ処理要素を含む複数のデータ処理モジュールを含むデータ処理ネットワークを備えた車両においてセンサーデータを処理するための方法について説明する。この方法は、各データ処理要素は、データを処理するために定められたデータ処理タスクに適合しており、各データ処理モジュールは、データ源からのデータおよび/または別のデータ処理モジュールの出力データを入力データとして取得して、データ処理ネットワークのネットワーク出力データおよび/または別のデータ処理モジュールの入力データである出力データを生成するものであり、該方法において、少なくとも1つのデータ処理モジュールについて、a)各データ処理モジュールの少なくとも1つのデータ処理要素においてデータ処理タスクを実行するための入力データのセットを受信するステップと、b)データ処理モジュールの少なくとも1つのデータ処理要素を起動するための刺激を受信するステップと、c)ステップa)で入力データのセットが受信され、ステップb)で刺激が受信されたときに、データ処理モジュールの少なくとも1つのデータ処理要素を起動させ、各入力データを用いてデータ処理要素が適合するデータ処理タスクを実行することによって出力データを生成するステップと、d)出力データを、さらなるデータ処理のために、および/またはネットワーク出力データとして供給するステップとが実施される。
【0009】
この方法によって、特に、従来の手法では予測可能性および再現性を実現することが非常に困難であるという問題が解決される。このことは、例えば同じSWが2つのマイクロプロセッサ上で同時に実行されるSWロックステップのような安全対策の実施を困難にする。また、他のランタイム挙動、したがって場合によっては他の結果を考慮に入れなければならないので、記録された運転状況を可能な限り忠実に計算し直すこと(再計算)も困難である。
【0010】
ここで説明する方法の基礎は、データ処理ネットワークの多数のデータ処理要素がそれぞれいわゆるデータ処理モジュールに集約され、それによってデータ処理ネットワークの追加的な上位の構成が形成されることである。この構成レベルにおいて、モジュール内の個々のデータ処理要素のそれぞれの入力データおよび出力データが集約され、データフローがデータ処理ネットワークによってこのレベルで制御あるいは監視される。
【0011】
制御技術の割合が高い自動車部門では、タイムスライスでの実行がこれまで常に優勢であった(例えば、10ミリ秒、20ミリ秒、100ミリ秒のタスク)。特に、このようなデータ処理ネットワークを用いてデータ処理を実行するためのハードウェアとしてマルチコアシステムが使用される場合、さらなる問題が生じる。特にマルチコアシステムではデータ処理ネットワークのデータ処理要素のランタイムの変動が生じる。このようなランタイムの変動によって、データ処理要素の出力データを別のデータ処理要素の入力データとして割り当てることが困難になる、あるいは、もはや予測不可能になる。この予測可能性は、例えば考えられる最長の実行時間/処理時間の概念を用いて、再び改善することができる場合がある。しかし、このような概念は(マルチコアシステムの)ハードウェア能力を最大限利用する可能性を低下させる。ハードウェアは寸法がかなり大きくなければならない。
【0012】
特に、高度に複雑な運転者支援を使用することによって、あるいは自動運転を使用する場合に、処理すべきセンサーのデータの量が大幅に増加する。しかし、このようなシステムに要求される反応時間は、従来の運転者支援の用途の場合のものと同等か、より短くさえある。つまり、より多くの、より計算負荷の高い計算を、より長い処理の連鎖において同等の時間で実行しなければならない。その結果、連鎖全体における個々のタイムスライス間の遷移による追加的な待ち時間が加算されるので、既存の時間駆動型の手法では許容できない待ち時間が生じる。
【0013】
提示している方法によって、データ駆動型の実行に基づく手法をデータ処理要素の時間駆動型の実行の成果と組み合わせることが可能になる。それによって、純粋な時間駆動型のシステムの場合よりも生じる待ち時間が短くなり(性能が向上し)、厳密なデータ駆動型のシステムの場合よりも再現性が向上するように、データ処理ネットワークを動作させることが可能になる。その結果、自動運転用のシステムにおいて待ち時間に関する高い要求を満たすことができ、同時に、SWロックステップにおける実行および再計算における正確な再現性を可能にするシステムを得ることができる。ステップb)については、ステップc)におけるデータ処理の実行を決定する適切な刺激を定めることができる。そのときに、ステップa)で受信される入力データを利用することができる。次に、ステップd)によって出力データが後続の処理ステップのために供給される。そのときのデータ処理モジュールがデータ処理ネットワークにおける最後のデータ処理モジュールである場合、データをネットワーク出力データまたはシステム出力データとも称することができる。その場合、このデータは例えば同時に制御部の入力データであり、制御部はこのデータを処理する、あるいはある用途のために考慮する。
【0014】
説明する方法によって、データ処理タスクの時間駆動型およびデータ駆動型の両方の実行が可能になる。データ処理の本来の開始は、ステップb)にて刺激が受信されたときに行われる。データは、刺激の到来とともにデータ処理要素にとってある程度は確認できるようになる。したがって、時間的に一致するデータ構造は、共にデータ処理モジュール間を伝送される。データ処理要素用のデータの供給は、上位の構成で与えられるデータ処理モジュールを用いて行われる。上位のデータ処理モジュールの構成、および、この構成レベルでデータが供給されるという事実によって、データ処理ネットワーク全体のシステムの状態数が著しく減少する。
【0015】
特に好ましくは、ステップd)の後にさらに、
e)少なくとも1つのデータ処理要素を用いた少なくとも1つのデータ処理タスクの実行を検証するために、入力データのセット、刺激および/または出力データからなる検証データセットを供給するステップ、が実施される。
【0016】
好ましくは、検証データセットは、追加的に、刺激の時点が起こり得る少なくとも1つの時間情報、および/または、少なくとも1つのデータ処理タスクの処理に関する時間情報を含む。
【0017】
このような時間情報は、例えばデータ処理タスクの実行の開始および完了の記録によって得ることができる。したがって、処理された入力データおよび生成された出力データを共通の論理的なタイムライン上に表すことができ、説明する方法の検証のための計算が可能になる。
【0018】
別のデータ処理モジュールの出力データを入力データとして処理するあるデータ処理モジュールは、刺激が起動要因として生じたときに処理を開始することが可能である。このように、時間駆動型の手法と比較して、最悪状況実行時間に起因する、受信するデータ処理モジュールのタイムスライスの開始までの追加の待ち時間を回避することができる。
【0019】
ここで、説明する方法によって、その時々に処理される入力データに関する情報が再現可能であるので、個々のデータ処理タスクの実行の再現性が確保される。
【0020】
提示している方法では、データ処理モジュールは、実行中(ステップcの実施中)、世界あるいは処理される入力データに対して常に視野を固定している。方法の実行中、入力データは変化しない。これは、ステップa)で到来する入力データが収集されることによって達成される。データは制御されて論理的時間で自動的に順送りすることができる。データ処理モジュールの出力データをその実行に関して一貫して他のデータ処理モジュールによって処理するために、出力データが好ましくは同様に収集される。
【0021】
好ましくは、ステップb)で使用される刺激を生成するために少なくとも1つのタイマーが使用され、タイマーが、データ処理要素を用いたデータ処理タスクの実行を規則的に繰り返すための時間パターンを定める。
【0022】
このタイマーは、例えば、データ処理ネットワークが動作するハードウェア上の対応する構成要素であって、各データ処理モジュールに対して一定の間隔でタイマー信号を発し、これが刺激を形成するとともに方法の実施を引き起こすものであってもよい。
【0023】
その他、好ましくは、ステップb)で使用される刺激を生成するために、データの利用可能性を示す少なくとも1つの利用可信号が使用される。この利用可信号は、例えば、他のデータ処理モジュールにおける説明する方法の以前の実行によって生成されたものであってもよい。
【0024】
特に好ましくは、刺激が、タイマーと利用可信号とからなる組み合わせによって構成される。新たなデータが利用可信号を介して提示されると、データ処理モジュールは、必ずタイマーに反応する準備ができた状態にされる。タイマーおよび(少なくとも1つの)利用可信号の両方がデータ処理を開始すべきことを示す場合にのみ、そのデータ処理モジュールのデータ処理要素におけるデータ処理が行われる(ステップc))。
【0025】
特に好ましくは、ステップa)が、データ処理モジュールの入力データ受信モジュールを用いて実施され、入力データ受信モジュールが、まだ完全ではない入力データを一時的に保存するための入力記憶装置を有し、入力データのセットの完全性検査を実行する。
【0026】
その他、好ましくは、ステップd)が出力データ供給モジュールを用いて実施され、出力データ供給モジュールは、まだ完全ではない出力データの一時的な保存が行われる出力記憶装置を有する。
【0027】
したがって、好ましくは、データ処理モジュールはデータ処理タスクを実行するために特別なゲート(入力データ受信モジュール=入力ゲート、出力データ供給モジュール=出力ゲート)を有する。
【0028】
制御部は、これらのゲートを通して、データ処理モジュール間のデータフローを制御することができる。制御部は、データ処理モジュールの実行の開始および完了を、ゲートを介したデータの受け渡しと同期させれば、どのデータ処理モジュールにいつどのデータを用いて実行させるかを制御することができる。データ処理モジュールの開始について決定するために、前述の刺激が利用される。
【0029】
実行の変形例では、ステップd)で供給される出力データは、同一のデータ処理モジュールを用いて方法ステップa)からd)(場合によってはステップe)も)を再度実施するための入力データとして少なくとも部分的に使用される。
【0030】
これによって、データ処理モジュールがデータ処理モジュールの以前の実行に基づく過去のデータを処理することを可能にする一種のフィードバックが説明される。このようなフィードバックによって、データ処理ネットワークにおいてある種の記憶能力が実現される。
【0031】
データ処理モジュールの計算ステップ内にフィードバックがあれば、このデータ経路は、データ処理モジュールのその時の入力データ受信モジュールおよびその時の出力データ受信モジュールを介して実現されるように構成される。
【0032】
好ましくは、ステップd)で供給される出力データが部分的なデータ量を含み、当該部分的なデータ量が、データ処理タスクの実行の際にデータ処理モジュールの複数の異なるデータ処理要素によって生成され、ステップd)での出力データの供給が、出力データを構成する全ての部分的なデータ量が利用可能になって初めて行われる。
【0033】
部分的なデータ量が生じるのは、例えば、データ処理モジュール内の異なるデータ処理要素のデータ処理タスクの処理時間の長さが異なるからである。出力データが完全に利用可能になるまで部分的なデータ量を収集することによって、および全ての部分的なデータ量を同時に供給することによって、いつどのデータがデータ処理ネットワークを用いたデータ処理の間に利用可能であったかを追跡することがかなり容易になる。
【0034】
また、好ましくは、ステップd)で追加的に利用可信号が生成され、利用可信号に基づいて、出力データがさらなる処理のために供給されたことが認識可能である。
【0035】
先に既述したように、このような利用可信号は、説明する方法のさらなる実行のための刺激として使用することができる。
【0036】
その他、好ましくは、方法の実施中に、後のさらなる処理のために、
・ステップa)で受信される入力データのセット、
・ステップb)で受信される刺激、
・ステップd)で供給される出力データ、
・ステップd)で供給される利用可信号、
の情報のうちの少なくとも1つの永続的な記録が行われる。
【0037】
特に好ましくは、その記録の際に、追加的に時間情報の格納が行われ、その時間情報は、タイムラインに対する方法の実施の時間的な割り当てを可能にする。
【0038】
このような記録は、例えば、場合によっては個々のデータ処理要素における不具合を検査することが可能なデバッグタスクを事後的に行うために、追加的なデバッグデータ記憶装置において行うことができる。このような記録を、完成された使用中のシステムにおいて利用することもできる。それによって、特に、データ処理タスクの実行におけるハードウェアに起因した不具合を事後の検証を通して認識し、それに基づいて修正タスクを実行することができるようになる。
【0039】
ここで、説明する方法を実施するためのデータ処理ネットワーク用のデータ処理モジュールについても説明する。このデータ処理モジュールは、入力記憶装置が割り当てられている入力データ受信モジュールと、出力記憶装置が割り当てられている出力データ供給モジュールとを含み、さらに、入力記憶装置内の入力データに基づいてデータ処理タスクを実行するための、および、出力記憶装置内に格納される出力データを生成するための少なくとも1つのデータ処理要素を有する。
【0040】
さらに、このようなデータ処理モジュールを複数含むデータ処理ネットワークについて説明する。
【0041】
方法に関する上述の説明は、データ処理モジュールおよびデータ処理ネットワークにも転用可能および適用可能である。
【0042】
以下では方法を図面に基づいてより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】説明するデータ処理ネットワークが使用され、説明する方法が適用される車両の図である。
図2】説明する方法を実施するためのデータ処理モジュールの図である。
図3】説明する方法を実施するためのデータ処理モジュールの別の実施例の図である。
図4】タイムライン上に表された、説明する方法を用いたデータ処理の形式の図である。
図5】タイムライン上に表された、説明する方法を用いたデータ処理の別の形式の図である。
図6】タイムライン上に表された、説明する方法を用いたデータ処理のさらに別の形式の図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1には、車両1が概略的に表されている。車両1は、特に道路車両、例えば乗用自動車または貨物自動車である。車両1は、例えば車両1の周囲からの周囲データのような情報を取得するためのセンサー23を有しており、様々な運転者支援システムによって利用され得る。このようなシステムは、例えば能動的または受動的な安全性のシステムであってよく、自律的(または一部自律的)な運転操作のためのシステムであってもよい。このようなシステムは、図1では制御部20として表されている。
【0045】
制御部20がセンサー23のデータを処理できるように、このデータが準備されなければならない。この目的のために、車両1はデータ処理ネットワーク4を有する。センサー23は、このデータ処理ネットワーク4にセンサーデータ3を供給するデータ処理ネットワーク4用のデータ源13を構成する。制御部20は、データ処理ネットワーク4用の出力データ受信器21を構成し、出力データ受信器21はこのデータ処理ネットワーク4のネットワーク出力データ14を受信する。
【0046】
データ処理ネットワーク4は、それぞれが(1つまたは複数の)データ処理要素6からなる複数のデータ処理モジュール5からなる。データ処理モジュール5およびデータ処理要素6を備えたデータ処理ネットワーク4は、好ましくは、特にデータ処理ネットワーク4がデータ2を格納することができるデータ記憶装置27を有するハードウェア25であって、さらにデータ処理ネットワーク4のための他の様々なハードウェア機能、例えばタイマー10を提供し得るハードウェア25で実現される。
【0047】
図2および図3には、説明するデータ処理ネットワーク4用のデータ処理モジュール5の異なる実施例が表されている。説明する方法は、その都度それぞれの個々のデータ処理モジュール5レベルで実施される。各データ処理モジュール5は、入力データ7を受信するための入力記憶装置16を有する入力データ受信モジュール15と、出力データ8を供給するための出力記憶装置18を有する出力データ供給モジュール17と、入力データ7から出力データ8までのデータ処理を行うためのデータ処理要素6を有するデータ処理要素構成26とを備えている。入力データ受信モジュール15は、データ処理要素6を用いたデータ処理を開始させることができる刺激9を受信するためのインターフェースを備えることができる。出力データ供給モジュール17は、データ処理要素6を用いたデータ処理が完了して出力データ8が利用可となったときに利用可信号12を出力するためのインターフェースを有し得る。
【0048】
説明する方法の方法ステップa)およびb)は、入力データ7の受信に関し、主に入力データ受信モジュール15を用いて実行される。説明する方法の方法ステップd)およびe)は、出力データ8の供給に関し、主に出力データ供給モジュール17によって実行される。本来のデータ処理はステップc)において、その時のデータ処理モジュール5のデータ処理要素構成26を構成するデータ処理要素6において行われる。
【0049】
図3によるデータ処理モジュール5の実施例は、特別な特徴としてフィードバック22を有する。図1は例示的にデータ処理ネットワーク4を示し、データ源13からのデータを最終的に直接的、決定論的に、フィードバックなしに、データ源13(ここではセンサー23)から出力データ受信器21(制御部20)まで処理する。多くの用途の場合にはこれで十分である。しかし、図3に表されたフィードバック22によって、間接的に決定論的なデータ処理が、このように構成されたデータ処理ネットワーク4において実現可能であること、すなわちこのようなフィードバック22によって実現可能であることも示されている。出力データ8を、このようなフィードバック22を介して同一のデータ処理モジュール5の入力データ受信モジュール15に帰還させることによって、データ処理モジュール5のデータ処理要素6を用いた後続のデータ処理の際に当該データを処理することができる。このように、データ処理ネットワーク4にデータの記憶能力を与えることができる。図3による実施例では、さらに別の特別な特徴として、出力データ8が部分的なデータ量19からなり、これらの部分的なデータ量19がデータ処理要素6を用いたデータ処理中に複数の異なる時点で利用可となる。出力データ供給モジュール17は、出力データ8(部分的なデータ量19)全体についての利用可信号12を1つの信号として出力するように適合させることができる。
【0050】
図4図5、および図6は、説明するデータ処理ネットワーク4あるいは説明する方法を用いて実施され得る、異なる種類のデータ処理を示す。
【0051】
これらの図示には、それぞれ異なるデータ処理モジュール5,1、5.2、および/または5.3が示されており、それぞれデータ処理モジュール5に属するデータ処理要素6を用いたデータ処理の実行の継続時間がタイムライン24上にバーとして示されている。それぞれ上方には概略的にデータ源13(ここではそれぞれセンサー23)が表されており、このデータ源13によってデータ2(ここではセンサーデータ3)がデータ処理ネットワーク4に導入され得る。
【0052】
個々のデータ処理モジュール5.1、5.2、および/または5.3は、タイムライン24に亘って連続して複数回示されている。これによって、個々のデータ処理モジュール5.1、5.2、および/または5.3が、その都度複数回繰り返し実行され、その度に他の入力データを利用することが表されている。データ処理モジュール5.1、5.2、および/または5.3のうちの1つの実行の開始は、刺激9が存在するときにその都度行われる。
【0053】
図4図5、および図6は、ここで使用することができるそれぞれ異なる種類の刺激9を示す。
【0054】
図4は、データ処理モジュール5.1、5.2、および/または5.3を用いた特定のデータ処理タスクを実行するためのデータが利用可であることを示す利用可信号12のみが刺激9として使用されることを示す。図4に示される方法は、データ技術的にかなり無制御に進行する。新たなデータが利用可となるとすぐに、それぞれのデータ処理モジュール5.1、5.2、および/または5.3の実行が開始される。これによって、高い処理速度が実現される。ただし、どのデータがそれぞれのデータ処理モジュール5.1、5.2、および/または5.3によって処理されたかの追跡可能性が非常に低い。これは特に、データ処理モジュール5.1、5.2、および/または5.3を用いたデータ処理の継続時間を正確に予測することができず、したがってどのデータ処理モジュール5.1、5.2、および/または5.3がどの入力データに反応したのかの再現性が皆無である、あるいは低いからである。「再現性」は、ここではデータ処理ネットワーク4を用いたデータ処理の再現性を指す。これに関連して、低い再現性とは、個々のデータ処理モジュール5.1、5.2、および/または5.3を用いたデータ処理を追跡するために、例えばデバッグタスク、または冗長システムにおいてデータ処理の正確性を確保するためのタスクに必要とされるような、非常に多くの労力がかかるという意味である。
【0055】
図5は、固定された時間パターン11に従うタイマー10の信号がその都度刺激9として使用されることを示す。データ処理モジュール5.1、5.2、および/または5.3を用いたデータ処理を生じさせるそのような刺激9によって、データ処理モジュール5.1、5.2、および/または5.3を用いたデータ処理がどの入力データを用いて開始するかを常に正確に知ることが可能になる。これによって、上述の意味での高い再現性が達成されるが、同時に、データ処理ネットワーク4の性能が大幅に低下する。データ処理ネットワーク4の性能は、ここでは可能な限り少ないハードウェア資源を用いて動作可能であるデータ処理ネットワーク4の能力を指す。第1のデータ処理モジュールの出力データ8を入力データとして処理する別のデータ処理モジュール(例えば、データ処理モジュール5.2)の開始が行われる前に、データ処理モジュール(例えば、データ処理モジュール5.1)を用いたデータ処理が完了していることを、その都度保証しなければならないからである。データ処理モジュール5.1、5.2、および/または5.3を用いたデータ処理の継続時間を正確に予測できないので、考えられる最長の実行時間に基づいて時間パターンの十分な設計を行わなければならない。
【0056】
図6による実施例は、図4および図5による実施例の態様を組み合わせることによって、一方では高い再現性を、他方では良好な性能を達成する。データ処理ネットワーク4では、タスクに応じて利用可信号12またはタイマー10を刺激9として用いた処理が行われる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】