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特表2023-542239ARシステムにおける色補正された後方反射
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ARシステムにおける色補正された後方反射
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/26 20060101AFI20230928BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20230928BHJP
   G02C 11/00 20060101ALN20230928BHJP
【FI】
G02B5/26
G02B27/02 Z
G02C11/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521432
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 IL2021051326
(87)【国際公開番号】W WO2022097153
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】63/111,148
(32)【優先日】2020-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518105275
【氏名又は名称】ルーマス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Lumus Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エイタン・ロネン
(72)【発明者】
【氏名】エラド・シャーリン
【テーマコード(参考)】
2H006
2H148
2H199
【Fターム(参考)】
2H006CA00
2H148FA01
2H148FA09
2H148FA15
2H148FA22
2H199CA02
2H199CA12
2H199CA45
2H199CA49
2H199CA53
2H199CA66
2H199CA67
(57)【要約】
ユーザがこれを通して環境を見る眼鏡のレンズに含まれる構成要素によって環境に反射し戻される環境内の周囲光の色度を調節する方法であって、構成要表面によって反射された周囲光を特徴付ける第1の三刺激値のセットを、反射角の有界スパンにおける反射角Θの関数として決定することと、角度の有界スパンにおける角度についての第2の三刺激値のセットを決定することであって、それによって、構成要素によって反射された光と組み合わされた第2の三刺激値のセットによって特徴付けられる光が、実質的に白色光として知覚される、決定することと、環境からの周囲光を反射する光学コーティングを提供することであって、それによって、反射された光が第2の三刺激値のセットによって実質的に特徴付けられる、提供することと、を含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡のユーザがこれを通して環境を見る前記眼鏡のレンズに含まれる構成要素によって前記環境に反射し戻される前記環境内の周囲光の色度を調節する方法であって、
前記構成要表面によって反射された周囲光を特徴付ける第1の三刺激値のセットを、反射角の有界スパンにおける反射角θの関数として決定することと、
前記角度の有界スパンにおける角度についての第2の三刺激値のセットを決定することであって、それによって、前記構成要素によって反射された光と組み合わされた前記第2の三刺激値のセットによって特徴付けられる光が、実質的に白色光として知覚される、決定することと、
前記環境からの周囲光を反射する光学コーティングを提供することであって、それによって、前記反射光が前記第2の三刺激値のセットによって実質的に特徴付けられる、提供することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の三刺激値のセットを決定することが、前記反射された周囲光のS及びP偏光にわたって平均化された前記三刺激値を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の三刺激値のセットを決定することが、前記第1の三刺激値のセットの各々の平均値を、前記角度の有界スパンにおける反射角θにわたって決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記平均値の最大平均値を選択することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の三刺激値のセットの各々と前記最大平均値との間の差を決定することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記差の各々に、最小値を有するオフセット定数を追加することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記光学コーティングを提供することが、
a)反射率を反射角θの関数として決定することであって、前記反射率によって決定されるθにわたる各三刺激値の平均が、前記第2の三刺激値のセットにおける対応する三刺激値に等しい、決定することと、
b)前記反射率を使用して、前記決定された反射率を示すコーティング及び前記構成要素を反射した周囲光を特徴付ける第3の三刺激値のセットを、反射角θの関数として決定することと、
c)前記第3の三刺激値のセットによって特徴付けられる光が白色光として知覚されるかどうかを判定することと、
d)前記光が実質的に白色光として知覚されない場合、前記オフセット定数の値を変更し、かつa)~d)を繰り返すことと、を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記オフセット定数を変更することが、前記定数を増加させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の三刺激値のセットを決定することが、前記値を、前記角度の有界スパン内の反射角θの関数として決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記角度における前記三刺激値の最大値に等しい各角度θについての値を有する最大三刺激関数を決定することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
三刺激値の差を決定することであって、各差が、前記最大三刺激関数から前記三刺激値のセットにおける前記三刺激値のうちの異なる値を差し引いたものに等しい、決定することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
各三刺激値差に、θの関数として三刺激オフセットを追加することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記光学コーティングを提供することが、
a)反射率を反射角θの関数として決定することであって、前記反射率によって決定される各三刺激値が、前記第2の三刺激値のセットにおける対応する三刺激値に等しい、決定することと、
b)前記反射率を使用して、前記決定された反射率を示すコーティング及び前記構成要素によって反射された周囲光を特徴付ける第3の三刺激値のセットを、反射角θの関数として決定することと、
c)前記第3の三刺激値のセットによって特徴付けられる光が白色光として知覚されるかどうかを判定することと、
d)前記光が実質的に白色光として知覚されない場合、前記オフセット定数を変更し、かつa)~d)を繰り返すことと、を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記オフセット関数を変更することが、前記関数を増加させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記オフセット関数を増加させることが、前記オフセット関数に、定数を追加することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記環境内の周囲光が、実質的に白色光である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記レンズが、拡張現実(AR)眼鏡のレンズであり、前記レンズが、画像送達システムを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記構成要素が、前記画像送達システムの構成要素である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記構成要素が、導光光学素子LOEであり、前記構成要素によって反射された前記光が、前記LOEの外部表面によって反射される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記構成要素が、前記画像送達システムのLOE内の構成要素である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
三刺激値が、
CIE(国際照明委員会)、HSL(色相、彩度、輝度)、HSV(色相、彩度、明度)、又はRGB(赤、青、緑)色空間の三刺激値である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
LOEと、請求項1に従って提供されるコーティングと、を備える、拡張現実システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年11月9日に出願された米国仮出願第63/111,148号の35U.S.C.119(e)に基づく利益を主張し、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示の実施形態は、以下、包括的にARシステムと称される、拡張現実(AR)及び混合現実(MR)ディスプレイシステムを提供することに関する。
【背景技術】
【0003】
ARディスプレイシステムは、ユーザが自身の視野(FOV)において見るユーザの実際の周囲環境内のシーンの「実際の画像」にARシステムが重ね合わせる「仮想画像」をユーザの目に送達する。システムは、液晶オンシリコン(LCOS)又は有機発光ダイオード(OLED)などのディスプレイエンジンと、画像送達システムと、を備える。コントローラが、ディスプレイエンジンを制御して、表示される仮想画像の小さいコピーを生成し、これを、ユーザの目で見るために、画像送達システムがアイモーションボックス(EMB)に伝播する。画像送達システムは、少なくとも1つの導光光学素子(LOE)を備え、これは、ディスプレイエンジンがLOEの相対的に小さい入力開口部で生成する仮想画像を受け取る。LOE入力開口部及び仮想画像は、通常、約5mm以下の特徴的な寸法を有している。LOEは、仮想画像をユーザの目の近くのLOEの出力開口部に伝播し、これを通して、仮想画像がLOEを出て、EMB内に方向付けられる。少なくとも1つのLOEは、ユーザがユーザ周囲環境を見ることを可能にするために、周囲光を少なくとも部分的に透過させる。
【0004】
LOEは、通常、ディスプレイエンジンから仮想画像を受け取り、アイボックスに伝播及び送達するための様々な反射、送信、及び/又は回折光学構成要素を備える。ARシステムの多くの構成の場合、構成要素は、ユーザ周囲環境からLOE構成要素に入射する光の一部を環境内に反射し戻す。入射周囲光は、一般的に白色光であるが、後方反射光は、ユーザと相互作用する人々にとって、強く色彩的であり、かつ妨げとなる可能性があり、多くの場合にそうである。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一実施形態の一態様は、ユーザ周囲環境からの後方反射された光が実質的に白色に見えるARシステムを提供することに関する。
【0006】
一実施形態では、ARシステムは、光を、白色光として知覚されない光としてユーザ周囲環境内に反射する、LOEの、「後方反射構成要素」とも称される少なくとも1つの構成要素の色度補正コーティング(CCC又は3C)として機能する、LOEの外部表面上の少なくとも1つの光学コーティングを備える。CCCは、少なくとも1つの後方反射構成要素の反射率を補完する、環境からCCCに入射する周囲光に対する反射率を有し、CCC及び後方反射構成要素の両方の反射率の関数である、ARシステムの補正された反射率を提供するように設計されている。CCCによって提供される補正された反射率の結果として、ARシステムは、LOEの法線に対する角度の、補正スパンと称されるスパンにおいて反射角に対して実質的に白色光であるように見える光として、入射周囲光を環境内に反射し戻す。任意選択的に、CCCは、CCCが形成される表面上の空間的範囲を有し、これは、表面上の後方反射構成要素の投影の空間的範囲と実質的に一致する。色彩的な後方反射光がLOEを出てユーザの周囲環境に入るLOEの外部表面の領域は、「色度ブレミッシュ」と称され得る。
【0007】
本概要は、詳細な説明において以下で更に説明される概念のセレクションを簡略化された形で紹介するために提供されている。本概要は、特許請求の範囲の主題の主要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図せず、特許請求の範囲の主題の範囲を限定するために使用されることも意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の実施形態の非限定的な例が、この段落の後に列挙される添付の図面を参照して以下に記載される。2つ以上の図面に現れる同一の特徴は、それらが現れる複数の図面において同一の符号を用いて表記され得る。図面における本開示の一実施形態の所与の特徴を表すアイコンを表記する符号は、所与の特徴を参照するために使用され得る。図面に示される特徴の寸法は、提示の便宜及び明確さのために選択され、必ずしも正確な縮尺で示されるわけではない。
【0009】
図1A】色度ブレミッシュを示さない眼鏡の正面図を概略的に示す。
図1B】眼鏡のレンズの全ての表面積を実質的に覆い、眼鏡の画像送達システム内に含まれるLOEのTIR表面からの色反射率によって特徴付けられる色ブレミッシュを示す、従来技術のAR眼鏡の正面図を概略的に示す。
図1C】AR眼鏡の画像送達システムに含まれる相対的に小さい後方反射構成要素からの色反射率を特徴とする、眼鏡のレンズの各々の相対的に狭い色ブレミッシュを示す、従来技術のAR眼鏡の正面図を概略的に示す。
図1D図1Cに示されるAR眼鏡の斜視図と、眼鏡のARレンズ上のブレミッシュの角度の補正スパンと、を概略的に示す。
図2A】本開示の実施形態による、色後方反射率を生成する後方反射構成要素と、後方反射率の色度を調節するように動作するCCCと、を備える、画像送達システムのLOEを概略的に示す。
図2B】本開示の実施形態による、色後方反射率を生成する後方反射構成要素と、後方反射率の色度を調節するように動作するCCCと、を備える、画像送達システムのLOEを概略的に示す。
図2C】本開示の実施形態による、色後方反射率を生成する後方反射構成要素と、後方反射率の色度を調節するように動作するCCCと、を備える、画像送達システムのLOEを概略的に示す。
図3A】本開示の一実施形態による、色後方反射率を調節するようにCCCを構成するための手順の流れ図を示す。
図3B】本開示の一実施形態による、色後方反射率を調節するようにCCCを構成するための手順の流れ図を示す。
図4A】本開示の一実施形態による、色後方反射率を調節するようにCCCを構成するための別の手順の流れ図を示す。
図4B】本開示の一実施形態による、色後方反射率を調節するようにCCCを構成するための別の手順の流れ図を示す。
図5A】本開示の一実施形態による、CCCを実際に構成及び生成する際に出現するデータのグラフを示す。
図5B】本開示の一実施形態による、CCCを実際に構成及び生成する際に出現するデータのグラフを示す。
図5C】本開示の一実施形態による、CCCを実際に構成及び生成する際に出現するデータのグラフを示す。
図5D】本開示の一実施形態による、CCCを実際に構成及び生成する際に出現するデータのグラフを示す。
図5E】本開示の一実施形態による、CCCを実際に構成及び生成する際に出現するデータのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本考察において、別段の記載がない限り、本開示の一実施形態の特徴の条件又は関係特性を修飾する「実質的に」及び「約」などの形容詞は、その条件又は特性が、それが意図される用途のための実施形態の動作に対して許容可能な許容範囲内に定義されることを意味すると理解される。本開示における一般的な用語が、例示的な事例又は例示的な事例のリストを参照することによって例解される場合は常に、参照される事例は、一般的な用語の非限定的な例示的な事例であり、一般的な用語は、参照される特定の例示的な事例に限定されることを意図しない。別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲における単語「又は」は、排他的な「又は」ではなく包括的な「又は」であるとみなされ、それが結合する項目のうちの少なくとも1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせを示す。
【0011】
以下の説明では、図1Aは、色度ブレミッシュを示さない眼鏡の正面図を概略的に示し、図1B~1Dは、後方反射率に関して色度ブレミッシュが眼鏡に含まれるLOEの構成要素によって生成されるAR眼鏡を示す。図2A~2Cは、図1B~1Dに示される色度ブレミッシュを生成することに関与し得る後方反射構成要素を備える、LOEの断面を概略的に示す。図3A~3B及び4A~4Bは、本開示の一実施形態による、AR眼鏡内に色度ブレミッシュを生成する望ましくない後方反射率の色度を調節するようにCCCを構成するために有利に実施され得る方法の流れ図を示す。
【0012】
図1Aは、透明に見えるレンズ22を有する一対の任意選択的に通常の光学眼鏡20の正面図を概略的に示す。眼鏡を装着しているユーザの周囲環境からの、レンズに入射して環境に反射し戻される周囲光は、他の人を妨げる色度を示さない。図1Bは、ユーザ環境からの周囲光を反射して、レンズの実質的に全ての表面を覆う斑点33によって表される相対的に大きい色度ブレミッシュを生成する相対的に大きい後方反射構成要素を有するLOE(図1Bには示さず)を備える、レンズ32を有する、一対のAR眼鏡30を概略的に示す。図1Cは、眼鏡のレンズ42内のLOEの相対的に小さい後方反射構成要素によって生成され得る、空間的に制限された、任意選択的に帯状の色度ブレミッシュ43を示すAR眼鏡40を概略的に示す。図1Dは、図1Cに示されるAR眼鏡40の斜視図を概略的に例解し、レンズ上の色度ブレミッシュ43の領域について各レンズ42に対する法線44を示す。円錐形半角Θ及び法線44と一致する円錐軸を有する円錐形46が、ブレミッシュの角度の補正スパンを表す。レンズ42に入射する周囲光線、及びブレミッシュ43を生成するLOEの後方反射構成要素によって、入射する周囲光線から後方反射された光線は、円錐形46内にある方向に沿って伝播し、0°≦θ≦Θを満たす法線44に対する角度θを作る。数値的な例として、AR眼鏡に色度補正コーティングCCCを提供することが有利であり得る角度の補正スパンは、レンズの材料内の約20°~30°の角度Θ及び空気中の約32°~40°の対応する角度によって特徴付けられ得る。
【0013】
図2Aは、図1B及び図1Cに示されるブレミッシュ33及び43のような、LOEを含むAR眼鏡のレンズ上の色度ブレミッシュを生成し得る後方反射構成要素を備える、LOE50を概略的に示す。
【0014】
LOE50は、画像エンジン(図示せず)によって提供される画像からの破線矢印線70によって表される光を受け取るための入力プリズム52と、入力プリズムに光学的に結合された導波路54と、を備える。導波路54は、それぞれ全内部反射(TIR)前表面55及び後表面56間の、繰り返しの前後の反射により、入力プリズムによって受け取った光を、導波路の長さに沿って伝播し、出力ファセット58に到達及び入射させる。出力ファセット58は、出力ファセットに伝播された光を、導波路から、AR眼鏡のアイモーションボックス(図示せず)内に反射させる。前部TIR表面55は、眼鏡を装着しているユーザ(図示せず)の周囲環境に向かって面していると仮定され、後部TIR表面56は、ユーザに面していると仮定される。周囲環境の位置は、下線が付された「環境」という語によって図に示されている。LOE50はまた、導波路54の長さに沿って相対的に短い距離を延在する埋め込まれたミキサ60を備え得る。ミキサは、ミキサに入射する入力プリズム52から受け取った光線を分割して、TIR表面55及び56によって、かつTIR表面55及び56間で、繰り返し前後に反射されて導波路に沿って伝播するビームの数を増加させる。増加した数のビームは、ファセット58がアイモーションボックスに方向付ける仮想画像における隙間を防止するのに役立つように動作する。
【0015】
図1Dに示される補正スパン46などの角度の補正スパンにおいてLOE50に入射する環境からの周囲光は、太字のブロック矢印80によって概略的に表される。前部及び後部TIR表面55及び56並びにミキサ60は、入射光線80内の光の一部を、それぞれ光線81、82、及び83によって表される後方反射光として、環境内に反射し戻し、これは、LOE50を備えるARレンズ(図示せず)上に色度ブレミッシュを生成することに寄与する。
【0016】
前部及び後部TIR表面55及び56は、相対的に大きい表面であり、表面によって反射された光81及び82は、眼鏡30(図1B)のARレンズ32上のブレミッシュ33などの相対的に大きい色度ブレミッシュを、LOE50を備えるARレンズ上に生成することに寄与する。本開示の一実施形態によれば、少なくとも1つのCCCが、LOE50を備えるARレンズに、相対的に大きい色度ブレミッシュを生成するTIR表面55及び56によって反射された光81及び82の色度を調節するように構成及び提供され得る。一実施形態では、少なくとも1つのCCCは、TIR表面55及び54の反射率を補完する、周囲光80に対する反射率を有して構成され、それによって、少なくとも1つのCCC、前部TIR表面55、及び後部TIR表面56によって反射された周囲光からの光の合計が、実質的に白色光として知覚される。
【0017】
一実施形態では、少なくとも1つのCCCは、LOE50のTIR表面55、56のうちの少なくとも1つ若しくは2つ以上の任意の組み合わせ、又はLOEを備えるARレンズの外部表面上に形成され得る。例として、図2Aに示されるように、CCCは、前部TIR表面55上に形成された相対的に大きいCCC101を備え得る。矢印91は、TIR表面55、56によって反射し戻された光によって生成される色度ブレミッシュの色度を調節するCCC101によって周囲光から環境内に反射された光を表す。
【0018】
一方、ミキサ60は、比較的小さく、入射光線80からミキサによって後方反射された光線83によって表される光は、LOEを備えるARレンズ上に、AR眼鏡40(図1C及び1D)のレンズ42に示されるブレミッシュ43に任意選択的に類似する、相対的に小さい色度ブレミッシュを生成する。一実施形態によれば、ミキサ60によって反射された光と実質的に空間的に重複する光を環境内に反射し戻す少なくとも1つの相対的に小さいCCCが、ミキサによって生成される色度ブレミッシュに寄与する光83の色度を調節するように形成され得る。少なくとも1つのCCCは、前部TIR表面55上、CCC101の一部に若しくはその一部として、又はLOE50を備えるARレンズ上に形成され得る。
【0019】
例として、図2Aにおいて、少なくとも1つのCCCは、CCC101と隣接して、任意選択的にCCC101の後側に形成されるCCCを備える。図2Aの矢印91は、提示の便宜上、ミキサ60によって反射された光線83の色度を調節するCCC102によって反射された光を表すとともに、CCC101によって反射された光を表すと理解される。
【0020】
図2Bは、図2Aに示されるLOE50の導波路54に含まれる出力ファセット58の代わりに、導波路内で伝播する光を導波路からアイモーションボックス内に方向付けるための、後部TIR表面56上に形成された回折格子158が用いられる、LOE150を概略的に示す。回折格子158は、周囲入射光線80からの、反射光線84によって概略的に表された光をユーザ環境に反射し戻し、LOE150を備えるレンズ上に色度ブレミッシュを生成し得る。本開示の一実施形態によるブレミッシュを調節するように構成されたCCC103が、前部TIR表面55の領域と重複して形成され得、これを通して、色度ブレミッシュを生成することに寄与する格子158からの反射し戻された光が、導波路54を出る。CCC103は、格子158によって反射された光の色度を調節するように構成されていると説明されているが、一実施形態では、CCCは、加えて、前部及び後部TIR表面55及び56によって反射し戻された光の色度を同時に調節するように構成され売る。図2Bの矢印92は、格子158によって反射された光線84の色度、並びに任意選択的に、光線81及び82(図2A)によって表される前部及び後部TIR表面55及び56によって反射された光の色度を調節するCCC103によって反射された光を表す。
【0021】
図2Cは、導波路内を伝播する光を導波路からアイモーションボックス内に方向付けるための内部ホログラフィック格子172を備える別のLOE170を概略的に示す。ホログラフィック格子172は、格子を備えるARレンズ(図示せず)上の色度ブレミッシュ43などの色度ブレミッシュに寄与する、格子上に入射した周囲光80からの光線85によって表される光を反射し得る。本発明の一実施形態によれば、ブレミッシュを調節するCCC104が、前部TIR表面55上に形成され、後方反射光85の色度を調節する光、並びに任意選択的に、光線81及び82によって表される前部及び後部TIR表面55及び56によって後方反射された光を反射し得る。
【0022】
図3A~3Cは、本開示の一実施形態による、所与の対のAR眼鏡に含まれるLOEの後方反射構成要素によって生成される色度ブレミッシュの色度を調節するようにCCCを構成するために実行され得る手順200を例解する。CCCに関連付けられた以下の考察における値及び関数は、下付き文字「3C」によって示され得、後方反射構成要素は、「BR」と称され得、下付き文字「br」は、BRに関連付けられた関数及び値を示すために使用され得る。
【0023】
ブロック202において、手順200は、任意選択的にCIE XYZの、BRによって生成された色度ブレミッシュに関する三刺激値X(θ)br、Y(θ)br、Z(θ)brの値を、角度の補正スパンにおける反射角θの関数として決定する。任意選択的に、ブロック204において、θの所与の値に関して、M(θ)brが、X(θ)br、Y(θ)br、及びZ(θ)brの最大値に等しいように、θの関数として最大値M(θ)brを決定し、
M(θ)br=MAX[X(θ)br,Y(θ)br,Z(θ)br] (1)
ブロック206において、手順は、任意選択的に、CIE三刺激値の差を、θの関数として決定する。
ΔX(θ)=M(θ)br-X(θ)br、ΔY(θ)=M(θ)br-Y(θ)br、及びΔZ(θ)=M(θ)br-Z(θ)br (2)
任意選択的に、ブロック208において、CCCの三刺激値X3C、Y3C、3Cの式のセットが、以下のように定義される。
X(C(θ),θ)3C=C(θ)+ΔX(θ);Y(C(θ),θ)3C=C(θ)+ΔY(θ);Z(C(θ),θ)3C=C(θ)+ΔZ(θ) (3)
式(3)中、C(θ)は、本開示の一実施形態によれば、以下に考察されるように、任意選択的に反復プロセスによって決定され、後方反射構成要素の三刺激値X(θ)br、Y(θ)br、Z(θ)brと組み合わせ可能なCCCの三刺激値を提供し、色度ブレミッシュの色度を調節する補正された後方反射に関する有利な三刺激値X(θ)cr、Y(θ)cr、及びZ(θ)crを提供する、任意のオフセット関数である。
【0024】
任意選択的に、ブロック210において、補正された後方反射に関する三刺激値X(θ)cr、Y(θ)cr、及びZ(θ)crの式が、以下のように定義される。
【数1】
式中、演算子
【数2】
は、演算子が結合する2つの三刺激値を組み合わせるための式を表す。
【0025】
一実施形態に従って
【数3】
を決定するために、AR眼鏡における後方反射構成要素BR、及びBRが生成するブレミッシュの色度を調節するように形成されるCCCが、この場合は図2Aに示されるCCC102及びBR60について概略的に示されるように、CCCが周囲環境に前方に面する状態で縦に並んでいると仮定する。R(λ,θ)3C及びR(λ,θ)brは、それぞれCCC及びBRの反射率を波長λ及び角度θの関数として表す。波長λ及び角度θの関数としての対CCC及びBRに関する全後方反射率TBR(λ、θ)は、CCC及びBRにおける吸収を無視して、以下のように記述することができる。
TBR(λ,θ)=[(R3C+Rbr+R3Cbr(R3C-2)] (4)
ユーザ環境におけるAR眼鏡の周囲照明が白色であると仮定すると、補正された後方反射に関する式(4)で与えられたCIE三刺激値X(θ)crY(θ)cr及びZ(θ)crは、以下の式によって与えられ得る。
【数4】
式中、
【数5】
はCIEマッチング関数である。
【0026】
反射率R(λ,θ)3C及びR(λ,θ)brが相対的に小さい場合、(5)で与えられたX(θ)cr、Y(θ)cr、及びZ(θ)crに関する式中の積分は無視され得、式は、以下のように変わることに留意されたい。
【数6】
【0027】
任意選択的に、ブロック212において、色度オフセット関数C(θ)は、最小値、任意選択的にはゼロに設定され、ブロック214(図3B)において、C(θ)に関する設定値を有するCCCの反射率R(λ,θ)3Cは、制約を受けて、以下のように計算される。
【数7】
【0028】
また任意選択的に、ブロック216において、補正された三刺激値が、ブロック214で決定されたCCC反射率R(λ,θ)3Cについて決定される。
【数8】
【0029】
ブロック218において、実質的に白色と知覚される色度ブレミッシュの領域から反射された光を提供する、補正された三刺激値X(θ)cr、Y(θ)cr、Z(θ)crに関して、制約のセットが決定され得る。白色度の知覚を提供するために、制約は、以下を必要とし得る。
(0.33-ΔLB)≦x(θ)cr,y(θ)cr,z(θ)cr≦(0.33+ΔUB)(9)
式(9)において、x、y、及びzは、[X(θ)cr+Y(θ)cr+Z(θ)cr]に正規化されたX(θ)cr、Y(θ)cr、Z(θ)crに対応するCIE色空間値であり、ΔLB及びΔUBは、CIE色空間内のCIE-Eなどの白色点を定義する0.33の公称値からの下限及び上限偏差である。数値的な例として、一実施形態では、ΔLBは、0.05未満であり得、ΔUBは、0.02未満であり得る。一実施形態では、制約は、反射光を特徴付ける最大補正三刺激値と最小補正三刺激値との比が上限UL未満であることを必要とする制約を含む。記号では、以下のようになる。
MaxX(θ)cr/MinX(θ)cr;MaxY(θ)cr/MinY(θ)cr;及びMaxZ(θ)cr/MinZ(θ)cr≦UL (10)
例として、一実施形態では、ULは、約1.2、1.1、又は1.05以下であり得る。
【0030】
決定ブロック220において、手順は、三刺激値X(θ)cr、Y(θ)cr、及びZ(θ)crが制約を満たすかどうかを判定する。三刺激値が制約を満たす場合、ブロック214において決定されたCCCの反射率R(λ,θ)3Cは、眼鏡内でBRによって生成される色度ブレミッシュの色度を調節するためのCCCを有するAR眼鏡を製造し、提供するために許容可能であるとみなすことができ、手順はブロック220において終了する。一方、ブロック220において、三刺激値が制約を満たさない場合、手順はブロック224に進み、C(θ)の値を増加させる。増加に続いて、手順は、ブロック214に戻り、ブロック214~218における動作を繰り返し、増加したC(θ)反射率R(λ,θ)3Cが、制約を満たし、許容可能なCCCを提供する三刺激値を提供するかどうかを判定する。
【0031】
図4A及び4Bは、角度の補正スパン内の入射角に関して、色度ブレミッシュを生成するBRの反射率である周囲光からCCCによって反射された光のCIE三刺激値を、角度θと実質的に無関係であると仮定し得ると仮定して、所与の対のAR眼鏡のCCCを決定するための手順300を説明する。
【0032】
ブロック302において、手順300は、ブレミッシュの角度の補正スパンにおける反射角θの関数として、S&P偏光にわたって平均化された、三刺激値X(θ)br、Y(θ)br、Z(θ)brを任意選択的に決定する。ブロック304において、手順は、任意選択的に、X(θ)br、Y(θ)br、Z(θ)brの角度θにわたる平均値μXbr、μYbr、μZbrを決定する。また、ブロック306において、任意選択的に、平均値の最大値MMbrを決定し、MMbr=Max[μXbr,μYbr,μZbr]。任意選択的に、一実施形態によれば、手順は、ブロック308において、三刺激差分値ΔX=MMbr-μXbr、ΔY=MMbr-μYbr、ΔZ=MMbr-μZbrを決定することができ、ブロック312において、色度オフセット値を最小限に、任意選択的にゼロに等しく設定し得る。ブロック312において、手順は、CCCについての平均三刺激値μX3C、μY3C、μZ3Cを計算する:μX3C=C+ΔX、μY3C=C+ΔY、μZ3C=C+ΔZ。
【0033】
ブロック314(図4B)において、C(θ)に関する設定値を有するCCCの反射率R(λ,θ)3Cは、制約を受けて、以下のように計算される。
【数9】
手順300は、任意選択的に、ブロック316に進む。ブロック316において、反射率R(λ,θ)3Cに関して、手順は、
【数10】
を決定し計算する。
【0034】
ブロック318において、手順は、制約(0.33-ΔLB)≦x(θ)cr,y(θ)cr,z(θ)cr≦(0.33+ΔUB)を含む制約のセットを決定し、任意選択的に、MaxX(θ)cr/MinX(θ)cr、MaxY(θ)cr/MinY(θ)cr、及びMaxZ(θ)cr/MinZ(θ)cr≦ULを制約する。
【0035】
決定ブロック320において、手順は、三刺激値X(θ)cr、Y(θ)cr、及びZ(θ)crが制約を満たすかどうかを判定する。三刺激値が制約を満たす場合、ブロック314においてCCCに関して決定された反射率R(λ,θ)3Cは、眼鏡内でBRによって生成される色度ブレミッシュの色度を調節するためのCCCを有するAR眼鏡を製造し、提供するために許容可能であるとみなすことができ、手順はブロック320において終了する。一方、ブロック320において、三刺激値が制約を満たさない場合、手順はブロック324に進み、Cの値を増加させる。増加に続いて、手順は、ブロック312に戻り、ブロック312~318における動作を繰り返し、増加したC反射率R(λ,θ)3Cが、制約を満たし、許容可能なCCCを提供する三刺激値を提供するかどうかを判定する。
【0036】
図5A~5Eは、後方反射構成要素BRから生じる色度ブレミッシュによって角度の補正スパン内に示される色度を補正するように動作する色度補正コーティングCCCを提供する、手順300と同様の一実施形態による手順の実際の実施から生じるデータを示す。図5A及び5Bは、それぞれ、BR及びCCCに関する角度の補正スパンにおける波長及び反射角のセレクションの関数としての、S及びP偏光にわたって平均化された反射率Raについてのグラフを示す。図5Cは、実質的に白色として知覚される角度の補正スパンにおける反射光を提供するために、BRの反射率を補完するCCCによって提供される反射率から生じる補正された反射率を示す。図5Dは、様々な後方反射構成要素BR、本開示の一実施形態による色度補正コーティングから反射された光、並びに共同で作用するBR及びCCCによって反射された実質的に白色光を特徴付ける色座標x及びyを示す。図5Eは、それぞれ図5B及び5Aに示されるグラフによって特徴付けられるBRのCCCを生成する際に出現する数値を提供する。
【0037】
上記の説明では、CIE色空間の三刺激値は、BR及びCCCによって反射された光の色度を説明し、BRによって後方反射された光を修正するようにCCCを構成するために使用されるが、本開示の実施形態の実践は、CIE色空間の使用に限定されないことに留意されたい。例として、HSL(色相、彩度、輝度)、HSV(色相、彩度、明度)、又はRGB(赤、青、緑)色空間などの様々な他の色空間のいずれかを使用して、BR及びCCCからの光を特徴付け、CCCを構成し得る。
【0038】
本出願の説明及び特許請求の範囲では、「備える(comprise)」、「含む(include)」、及び「有する(have)」という動詞、並びにそれらの変化形の各々は、動詞の対象が、必ずしも、動詞の主題の構成要素、要素又は部分の完全な一覧ではないことを示すように使用される。
【0039】
本出願における本開示の実施形態の説明は、例として提供され、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。記載される実施形態は、異なる特徴を含み、その全てが全ての実施形態で必要とされるわけではない。いくつかの実施形態は、特徴又は特徴の可能な組み合わせの一部のみを利用する。記載された本開示の実施形態、及び記載された実施形態で言及された特徴の異なる組み合わせを含む実施形態の変化形が、当業者には想起されるであろう。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
【国際調査報告】