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特表2023-542267小型で輸送可能な原子力システムのための放射線遮蔽
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-06
(54)【発明の名称】小型で輸送可能な原子力システムのための放射線遮蔽
(51)【国際特許分類】
   G21C 11/02 20060101AFI20230929BHJP
   G21F 3/00 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
G21C11/02 100
G21F3/00 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504575
(86)(22)【出願日】2021-09-18
(85)【翻訳文提出日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 US2021051004
(87)【国際公開番号】W WO2022061195
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】63/080,292
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520271676
【氏名又は名称】ウルトラ セーフ ニュークリア コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】ULTRA SAFE NUCLEAR CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンネリ, パオロ, フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】イーズ, マイケル, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パテル, ヴィシャル
(57)【要約】
本発明の移動式原子炉放射線遮蔽手段は、容器内中性子シールドと、容器内シャドウシールドと、輸送シールドと、モジュールシャドウシールドとを含む。容器内中性子シールドは、構造材料の活性化を低減および防止し、活性化された構造材料からのガンマ放出を遮蔽するための重い遮蔽の必要性を低減する。容器内シャドウシールドは、原子炉とバランスオブプラント(BOP)モジュールおよび制御システムとの間に中性子およびガンマ線遮蔽を提供する。容器内シャドウシールドは、輸送のために原子炉を準備する間放射線作業者を遮蔽するために保護アークを最大にしながらシールドのサイズを最小にするために、アクティブな原子炉コアの近くに置かれる。輸送シールドは、輸送中、生物が原子炉に接近する場合に使用される。モジュールシャドウシールドは、動作中に原子炉制御構成要素およびBOPモジュールを遮蔽する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核熱供給(NHS)モジュールを備える原子炉システムであって、
前記NHSモジュールが、
原子炉キャビティを含む原子炉コンテナと、
前記原子炉コンテナ内の圧力容器であって、内壁を含む、圧力容器と、
前記圧力容器内に配置された原子炉コアであって、複数の燃料要素と、少なくとも1つの減速体要素とを含む原子炉コアと、
前記原子炉コアを取り囲むように前記圧力容器の内壁に配置された容器内中性子シールドと、
前記圧力容器の内側の容器内シャドウシールドと、
第1の減速流体を含むための前記原子炉キャビティ内の輸送シールドチャンバ(TSチャンバ)を含む、前記原子炉コンテナ内および前記圧力容器の外側の輸送シールド(TS)と、
第2の減速流体を含むための前記原子炉キャビティ内のモジュールシャドウシールドチャンバ(MSSチャンバ)を含む、前記原子炉コンテナ内および前記圧力容器の外側のモジュールシャドウシールド(MSS)と
を含む、原子炉システム。
【請求項2】
前記輸送シールドが、前記TSチャンバを実質的に充填する前記第1の減速流体をさらに含み、
前記モジュールシャドウシールドが、前記MSSチャンバを実質的に充填する前記第2の減速流体をさらに含む、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項3】
前記NHSモジュールが、中間熱交換器と、ガス循環器とをさらに含み、
前記熱交換器が、前記原子炉コアに熱的に結合される、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項4】
前記輸送シールドが、前記第1の減速流体をさらに含み、
前記第1の減速流体が、前記TSチャンバを実質的に充填する、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項5】
前記NHSモジュールが、アクティブ状態と非アクティブ状態とを含み、
前記NHSモジュールが不活性状態にある間に前記NHSモジュールによって誘発される前記NHSモジュールの外側のレントゲン当量(rem)が、毎時50rem(rem/hr)未満であり、
前記第1の減速流体が、水(HO)を含む、請求項4に記載の原子炉システム。
【請求項6】
前記NHSモジュールが、アクティブ状態と非アクティブ状態とを含み、
前記NHSモジュールが非アクティブ状態にある間に前記NHSモジュールによって誘発される前記NHSモジュールの外側のレントゲン当量(rem)が、毎時10(rem/hr)未満であり、
前記第1の減速流体が、水(HO)を含み、前記第1の減速流体が、約1.63グラム/立方センチメートル(g/cc)以上のPb(NOの濃度を含む、請求項4に記載の原子炉システム。
【請求項7】
前記NHSモジュールが、アクティブ状態と非アクティブ状態とを有し、
前記NHSモジュールが前記非アクティブ状態にある間に前記NHSモジュールによって誘発される前記NHSモジュールの外側のレントゲン当量(rem)が、毎時0.5(rem/hr)未満であり、
前記第1の減速流体が、水(HO)を含み、前記第1の減速流体が、約5グラム/立方センチメートル(g/cc)以上のZnBrの濃度を含む、請求項4に記載の原子炉システム。
【請求項8】
前記モジュールシャドウシールドが、前記第2の減速流体をさらに含み、
前記第2の減速流体が、前記MSSチャンバを実質的に満たす、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項9】
前記複数の燃料要素が、複数の放射線粒子を放出し、
前記容器内シャドウシールドが、前記複数の放射線粒子の第1の放射線粒子を最初にブロックする、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項10】
前記容器内中性子シールドが、前記容器内シャドウシールドを通過する前記複数の放射線粒子のうちの第2の放射線粒子をブロックする、請求項9に記載の原子炉システム。
【請求項11】
前記輸送シールドが、前記容器内シャドウシールドおよび前記容器内中性子シールドを通過する前記複数の放射線粒子のうちの第3の放射粒子をブロックする、請求項9に記載の原子炉システム。
【請求項12】
前記モジュールシャドウシールドが、前記容器内シャドウシールド、前記容器内中性子シールド、および前記輸送シールドを通過する前記複数の放射線粒子のうちの第4の放射線粒子をブロックする、請求項9に記載の原子炉システム。
【請求項13】
前記NHSモジュールの外側に配置されたバランスオブプラントモジュールをさらに備え、
前記原子炉コンテナが、前記輸送シールド、前記モジュールシャドウシールド、前記圧力容器、前記容器内シャドウシールド、前記原子炉コア、および前記容器内中性子シールドを収容し、
前記バランスオブプラントモジュールが、ターボ機械と、発電機と、原子炉制御システムとを含む、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項14】
前記第1の減速流体が、放射線粒子をブロックして、前記放射線粒子が前記バランスオブプラントモジュールまで進行するのを防止する、請求項13に記載の原子炉システム。
【請求項15】
前記第2の減速流体が、放射線粒子をブロックして、前記放射線粒子が前記バランスオブプラントモジュールまで進行するのを防止する、請求項13に記載の原子炉システム。
【請求項16】
前記容器内シャドウシールド、前記容器内中性子シールド、前記第1の減速流体、および前記第2の減速流体が、1つまたは複数の中性子吸収材料を含む、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項17】
前記容器内中性子シールドが、中性子減速体および特定の同位体または天然同位体組成物が濃縮された中性子吸収材料を有する複合材料または多層材料で形成され、
前記第1の減速流体が、水素濃度の液体を含み、
前記第2の減速流体が、水(HO)を含む、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項18】
前記中性子減速体が、金属水素化物、ポリエチレン、プラスチック、ベリリウム含有化合物、またはそれらの組み合わせを含む、請求項17に記載の原子炉システム。
【請求項19】
前記中性子吸収材料が、ホウ素、炭化ホウ素、金属ホウ化物、ガドリニウム、ユーロピウム、タングステン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項17に記載の原子炉システム。
【請求項20】
前記容器内中性子シールドが、2つ以上の中性子吸収材料で形成され、
前記2つ以上の中性子吸収材料が、黒色に近い中性子吸収材料と灰色中性子吸収材料とを含む、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項21】
第1の減速流体で核熱供給(NHS)モジュールの輸送シールド(TS)チャンバを実質的に充填するステップであって、前記NHSモジュールが原子炉コアを含む、ステップと、
前記NHSモジュールを第1の位置から第2の位置に輸送するステップと、
前記NHSモジュールを前記第2の位置の地面に結合するステップと、
前記原子炉コアの中性子束を臨界レベルまで増加させるステップと
を含む、原子炉展開方法。
【請求項22】
前記NHSモジュールを輸送した後に、第2の減速流体で前記NHSモジュールのモジュールシャドウシールド(MSS)チャンバを実質的に充填するステップをさらに含み
前記原子炉コアの前記中性子束を前記臨界レベルまで増加させる前記ステップが、前記第2の減速流体で前記MSSチャンバを実質的に充填する前記ステップの後に行われる、請求項21に記載の原子炉展開方法。
【請求項23】
第1の減速流体で原子炉システムの核熱供給(NHS)モジュールの輸送シールド(TS)チャンバを実質的に充填するステップであって、前記NHSモジュールが、原子炉コアを含む、ステップと、
前記NHSモジュールを第1の位置から第2の位置に輸送するステップと、
前記TSチャンバから前記第1の減速流体を実質的に排出するステップと
を含む、原子炉遮蔽方法。
【請求項24】
前記NHSモジュールを輸送する前に、前記原子炉コアの中性子束を亜臨界レベルまで減少させるステップと、
前記NHSモジュールを輸送した後に、第2の減速流体でモジュールシャドウシールドのモジュールシャドウシールド(MSS)チャンバを実質的に充填するステップと
をさらに含む、請求項23に記載の原子炉遮蔽方法。
【請求項25】
前記第2の減速流体で前記MSSチャンバを実質的に充填した後、前記原子炉コアの前記中性子束を臨界レベルまで増加させるステップをさらに含む、請求項24に記載の原子炉遮蔽方法。
【請求項26】
前記原子炉コアの前記中性子束を亜臨界レベルまで減少させた後であって、前記NHSモジュールを輸送する前に、前記NHSモジュールからバランスオブプラントモジュールを結合解除するステップと、
前記NHSモジュールを輸送した後であって、前記原子炉コアの前記中性子束を前記臨界レベルまで増加させる前に、前記バランスオブプラントモジュールを前記NHSモジュールに再結合するステップと
をさらに含む、請求項25に記載の原子炉遮蔽方法。
【請求項27】
前記原子炉コアの前記中性子束を前記亜臨界レベルまで減少させた後、前記原子炉コアが非アクティブ状態に達するのを待機するステップをさらに含む、請求項26に記載の原子炉遮蔽方法。
【請求項28】
前記NHSモジュールを前記第1の位置から前記第2の位置に輸送するステップが、陸上車両、航空機、または船舶による第1のトリップで前記NHSモジュールを前記第1の位置から前記第2の位置に輸送する工程を含む、請求項23に記載の原子炉遮蔽方法。
【請求項29】
航空機によるフライト中に前記NHSモジュールを前記第2の位置から第3の位置に空輸するステップと、
前記NHSモジュールを空輸する前に前記TSチャンバから前記第1の減速流体を実質的に排出するステップと、
前記NHSモジュールを空輸した後、前記第1の減速流体で前記TSチャンバを実質的に充填するステップと
をさらに含む、請求項23に記載の原子炉遮蔽方法。
【請求項30】
前記NHSモジュールを前記フライトで前記第2の位置から前記第3の位置に空輸する前に、前記NHSモジュールからバランスオブプラントモジュールを結合解除するステップと、
別のフライトで前記バランスオブプラントモジュールを前記第2の位置から前記第3の位置に空輸するステップと、
前記バランスオブプラントモジュールを前記第2の位置から前記第3の位置に空輸した後、前記バランスオブプラントモジュールを前記NHSモジュールに再結合するステップと
をさらに含む、請求項29に記載の原子炉遮蔽方法。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001]本出願は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Radiation Shielding for Compact and Transportable Nuclear Power Systems」と題する2020年9月18日に出願された米国仮特許出願第63/080,292号明細書の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
[0002]本主題は、原子炉輸送システムおよび輸送可能な原子炉システムなどの原子炉システムの例に関する。本主題はまた、小型で輸送可能な原子力システムのための放射線遮蔽を包含する。
【背景技術】
【0003】
[0003]安全で信頼性のある堅牢な電力は、現代の民間および軍事活動に不可欠である。世界の遠隔地域、未開発地域、または紛争地域で行われる運用は、現代の電力網のネットワーク内で行われる運用と同じか、またはより広範な要件を有することが多い。伝統的に、石油化学発電は、重要なインフラストラクチャに電力を供給するために、北極サークル内または活発な戦争地帯内などの遠隔運用において使用されてきた。しかし、処理された石油化学物質を発電所に供給するための物流供給ラインは、可搬型またはその他の方法では、悪天候、政治的制限のシフト、および劣悪な軍事力による封鎖によって容易に混乱する可能性がある。風力タービンおよびソーラーパネルなどの自然エネルギー源は、国境での保護主義的行動の影響を受けないが、依然として曇天の天候および風胴の影響を受けやすい。10年間以上にわたって一貫して動作するように設計された自己完結型燃料供給を有する原子力展開(nuclear power deployments)は、電力供給を中断する、変わりやすい、または確定的な外力に対する解決手段である。
【0004】
[0004]原子力展開は、従来、本質的に極めて固定されており、大規模なコンクリート工事が注がれ、完成した構造物は定位置に固定される。これらの固定構造物は、動力ニーズの移動式コアによる運用には適していない。従来の発電所から移動採鉱作業または軍事部門に電力を送るには、電線を敷設することを必要とし、他の固定位置電源と同じ問題に悩まされる。さらに、従来の原子力展開は、廃炉および移動に数年を要する可能性がある。多くの遠隔環境では、この長い遅滞期は、一時的な堅牢な電力を提供するには許容できない負担である。
【0005】
[0005]モジュール式の輸送可能な核発電機は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、「Modular Transportable Nuclear Generator」と題する、2019年3月12日に発行された米国特許第10,229,757号明細書に説明されている。残念なことに、原子力発電機の輸送は、通常、生物および公衆への核放射線の放射線量リスクを最小限に抑えるために、輸送前に長時間待機する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
[0006]したがって、原子炉輸送システムおよび輸送可能な原子炉システムにはさらなる改善の余地がある。原子炉107のより迅速な輸送を可能にするために、構造材料の活性化を防止して公衆への放射線量リスクを低減し、輸送のタイムテーブルを加速する移動式原子炉放射線遮蔽手段(mobile reactor radiation shielding solution)が、本明細書に説明される。遮蔽手段は、移動式原子炉107の遮蔽ニーズに対処する。具体的には、遮蔽手段は、動作、運転停止、および輸送中に必要な遮蔽を提供する。動作中の遮蔽は、構造材料の活性化を低減し、オペレータへの放射線量を最小限に抑えるという2つの側面に対処する必要がある。運転停止および輸送中、遮蔽は、原子炉を輸送する人員および輸送中に原子炉に近い可能性がある公衆への放射線量を最小化することに焦点を合わせる。さらに、輸送を可能にするために、遮蔽の質量が最小化される。
【0007】
[0007]本明細書に開示する輸送可能な原子炉技術を実装する原子炉システム100は、原子力システムの可搬性を高める。他の可搬型電力システムまたは他の原子力システムとは対照的に、輸送可能な原子炉技術は、可搬型原子炉107を安全に輸送することを可能にする。例えば、原子炉107は、人口密集地域を安全に通るセミトラックによって輸送することができる。原子炉到着から72時間以内に自力起動を実施し、原子炉の運転停止から7日以内に安全に除去することができる。輸送可能な原子炉技術は、バランスオブプラント(BOP)モジュール170を核熱供給(NHS)モジュール150から分離するプラグアンドプレイ設計を可能にし、BOPモジュール170およびNHSモジュール150が陸上車両501、輸送航空機502、または船舶503によって輸送可能であることを可能にするのに十分に質量効率を改善する。
【0008】
[0008]一例では、原子炉システム100は、核熱供給(NHS)モジュール150を含む。NHSモジュール150は、原子炉コンテナ151を含む。原子炉コンテナ151は、原子炉キャビティ152を含む。NHSモジュール150は、原子炉コンテナ152内に圧力容器160をさらに含む。圧力容器160は、内壁161を含む。NHSモジュール150は、圧力容器160内に配置された原子炉コア101をさらに含む。原子炉コア101は、複数の燃料要素104A~Nと、少なくとも1つの減速体要素103Aとを含む。NHSモジュール150は、原子炉コア101を取り囲むように圧力容器160の内壁161に配置された容器内中性子シールド153をさらに含む。NHSモジュール150は、圧力容器160の内側に容器内シャドウシールド154をさらに含む。NHSモジュール150は、第1の減速流体159Aを含むための原子炉キャビティ152内のTSチャンバ156を含む、原子炉コンテナ151内および圧力容器160の外側の輸送シールド(TS)155をさらに含む。NHSモジュール150は、第2の減速流体159Bを含むための原子炉キャビティ152内のMSSチャンバ158を含む、原子炉コンテナ151内および圧力容器160の外側のモジュールシャドウシールド(MSS)157をさらに含む。
【0009】
[0009]第2の例では、原子炉展開方法400は、原子炉コア101を含む核熱供給(NHS)モジュール150を第1の位置から第2の位置に輸送するステップを含む。原子炉展開方法400は、NHSモジュール150を第2の位置の地面に結合するステップをさらに含む。原子炉展開方法400は、NHSモジュール150を第1の位置から輸送した後、第1の減速流体159Aで輸送シールド(TS)チャンバ156を実質的に充填するステップをさらに含む。原子炉展開方法400は、第1の減速流体159AでTSチャンバ156を実質的に充填した後、原子炉コア101の中性子束を臨界レベルまで増加させるステップをさらに含む。
【0010】
[0010]第3の例では、原子炉遮蔽方法500は、第1の減速流体159Aで原子炉システム100の核熱供給(NHS)モジュール150の輸送シールドチャンバ156を実質的に充填するステップを含む。NHSモジュール150は、原子炉コア101を含む。原子炉遮蔽方法500は、NHSモジュール150を第1の位置から第2の位置に輸送するステップをさらに含む。原子炉遮蔽方法500は、輸送シールドチャンバ156から第1の減速流体159Aを実質的に排出するステップをさらに含む。
【0011】
[0011]例のさらなる目的、利点および新規な特徴は、以下の説明に部分的に記載され、以下および添付の図面を検討することによって当業者に部分的に明らかになるか、または例の製造もしくは動作によって習得され得る。本主題の目的および利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される方法、手段および組み合わせによって実現および達成され得る。
【0012】
[0012]図は、限定ではなく例としてのみ、1つまたは複数の実装形態を示す。図において、同様の参照番号は、同じまたは同様の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】核熱供給モジュールを示し、(1)容器内中性子シールド、(2)容器内シャドウシールド、(3)輸送シールド、および(4)モジュールシャドウシールドを含む遮蔽手段を実施する原子炉システムの断面図である。
図1B図1AのNHSモジュールと、NHSモジュールに接続されたバランスオブプラント(BOP)モジュールの両方を含む図1Aの原子炉システムの等角図である。
図1C】原子炉コア、容器内中性子シールド、輸送シールド、および原子炉コンテナを示す核熱供給モジュールの断面図である。
図1D】原子炉コアによって放出されたときの、容器内シャドウシールド保護アーク、モジュールシャドウシールド保護アーク、ならびに複数の放射線粒子および経路を示す図である。
図2】補助供給モジュールおよび個別の制御モジュールをさらに含む、図1Bの原子炉システムのブロック図である。
図3A】BOPモジュールがNHSモジュールから離れている、展開状態にある図1Bの原子炉システムの等角図である。
図3B】BOPモジュールがNHSモジュールに近接した状態の、パッケージ状態の図1Bの原子炉システムの等角図である。
図4】原子炉展開方法のフローチャートである。
図5A】原子炉システムがパッケージ状態にあり、陸上車両に搭載され、航空機に搭載されるように準備されている原子炉遮蔽方法のステップの概略図である。
図5B】放射線に生物が曝露されるリスクを軽減するための原子炉遮蔽方法のフローチャートである。
図6】原子炉システムの様々な構成要素の予測または推定重量を含む重量の表である。
図7】水のみを使用して輸送シールドチャンバを充填する場合と比較した、硝酸鉛飽和水を使用して輸送シールドチャンバを充填する場合のNHSモジュールの異なる位置で受けた光子線量のヒートマップである。
図8】硝酸鉛飽和が輸送シールドチャンバを充填するために使用される場合にNHSモジュールの異なる位置で受けた光子線量のヒートマップである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0027]以下の詳細な説明では、関連する教示の完全な理解を提供するために、例として多数の具体的な詳細が記載される。しかし、本教示がそのような詳細なしで実施され得ることは、当業者には明らかであるはずである。他の例では、周知の方法、手順、構成要素、および/または回路は、本教示の態様を不必要に不明瞭にすることを避けるために、詳細なしに比較的高レベルで説明されている。
【0015】
[0028]本明細書で使用する「結合された」という用語は、任意の論理的または物理的接続を指す。別段の記載がない限り、結合された要素または装置は、必ずしも互いに直接接続されている必要はなく、中間構成要素、要素などによって分離されてもよい。本明細書で使用される「流体連通」という用語は、液体または気体などの物質が流れることができることを意味する。それぞれの放射線粒子192A~Iに言及するときに本明細書で使用する「ブロック」、「ブロックする」、「ブロックされた」、または「ブロックしている」という用語は、それぞれの放射線粒子192A~Iを吸収、反射、偏向、または減速することを意味する。
【0016】
[0029]本明細書で使用する「実質的に充填している」という用語は、50~100%を占めていることを意味する。本明細書で使用する「実質的に充填する」という用語は、50~100%を占めることを意味する。本明細書で使用する「実質的に充填される」という用語は、50~100%占められることを意味する。本明細書で使用する「実質的に排出する」という用語は、90から100%空にすることを意味する。本明細書で使用する「実質的に排出される」という用語は、90から100%空にされることを意味する。
【0017】
[0030]特に明記しない限り、以下の特許請求の範囲を含む本明細書に記載する任意のおよび全ての測定値、値、定格、位置、大きさ、サイズ、角度、および他の仕様は、近似的であり、正確ではない。そのような量は、それらが関連する機能およびそれらが関連する技術分野で慣用的なものと一致する合理的な範囲を有することが意図されている。例えば、特に明記しない限り、パラメータ値などは、記載された量から±5%程度または±10%程度変動し得る。「およそ」という用語は、パラメータ値などが記載量から±10%まで変動することを意味する。
【0018】
[0031]図のいずれかに示すような、原子炉システム100、原子炉107、原子炉コア101、核熱供給モジュール150、バランスオブプラントモジュール170、関連する構成要素、および/または原子炉コア101、燃料要素104A~N、制御ドラム115A~N、容器内中性子シールド153、容器内シャドウシールド154、輸送シールド155、もしくはモジュールシャドウシールド157を組み込んだ任意の原子炉システム100の向きは、例示および説明の目的のために、例としてのみ与えられている。特定の原子炉システム100の動作において、構成要素は、原子炉システム100の特定の用途に適した任意の他の方向、例えば直立、側方、または任意の他の向きに向けられてもよい。また、本明細書で使用する範囲で、横方向、長手方向、上、下、上側、下側、上部、底部、および側部などの任意の方向を示す用語は、例としてのみ使用され、本明細書で別途説明するように構築された任意の原子炉システム100または原子炉システム100の構成要素の方向または向きに関して限定するものではない。
【0019】
[0032]本明細書で開示する輸送可能な原子炉技術は、原子力システム100の可搬性を実質的に高めて、展開および解体の速度を改善し、発電安定性を改善し、動作中の燃料供給依存性を低減する。原子力システム100の成功の鍵は、放射線遮蔽への新規なアプローチである。従来の遮蔽は、原子炉コア101の周りに重い放射線防護障壁を構築することを中心としているが、原子炉システム100は、構造材料の活性化を最小限に抑え、動作中に遮蔽するために現場材料およびリソースを使用することに焦点を合わせた多層放射線戦略を使用することに焦点を合わせている。その結果、軽量であり、例えば、運転停止後10日未満で移動可能な原子炉システム100が得られる。
【0020】
[0033]具体的には、遮蔽手段は、動作、運転停止、および輸送中に必要な遮蔽を提供する。動作中の遮蔽は、構造材料の活性化を低減し、オペレータへの放射線量を最小限に抑えるという2つの側面に対処する必要がある。運転停止および輸送中、遮蔽は、原子炉を輸送する人員および輸送中に原子炉107に近い可能性がある公衆への放射線量を最小化することに焦点が合わせられる。追加の要件は、輸送を可能にするために遮蔽の質量を最小にしなければならないことである。
【0021】
[0034]移動式原子炉システム100の放射線遮蔽手段は、核熱供給(NHS)モジュール150に統合される4つのシールド、すなわち、(1)容器内中性子シールド153、(2)容器内シャドウシールド154、(3)輸送シールド(TS)155、および(4)モジュールシャドウシールド(MSS)157からなる。容器内中性子シールド153は、原子炉コア101を離れる中性子フルエンスを低減することによって、圧力容器160および周囲の構造物の活性化を低減する。容器内シャドウシールド154は、放射線作業者が定められた線量限界未満のままでありながら、NHSモジュール150の一方の側に接近して輸送の準備をすることを可能にする。輸送シールド155は、NHSモジュール150の原子炉キャビティ152を実質的に充填する第1の減速流体159A、例えばTSチャンバ156を実質的に充填する水素含有液体(水など)を含むことができる。輸送シールド155は、NHSモジュール150が公共エリアを通って陸上で輸送され、公共の線量限界未満のままであることを可能にするために、原子炉107の運転停止後に実装されてもよい。輸送シールド155の第1の減速流体159Aは、NHSモジュール150が輸送のために航空機502に搭載される前に排出することができる。モジュールシャドウシールド157は、原子炉107の入口/出口の反対側のNHSモジュール150内に置いて、バランスオブプラントモジュール170をNHSモジュール150により近接して置き、ベース人員がアクセスすることを可能にすることができる。モジュールシャドウシールド157は、輸送中に空のMSSチャンバ158を含むことができ、そのMSSチャンバは、設置中、水または設置中の他のオンサイト材料などの第2の減速流体159Bで実質的に充填される。水はMSSチャンバ158内の全ての空隙を容易に充填するので、モジュールシャドウシールド157は、水で充填することができる。
【0022】
[0035]NHSモジュール150内に統合された4つのシールドは、4つの要素、すなわち(1)容器内中性子シールド153、(2)容器内シャドウシールド154、(3)輸送シールド(TS)155、および(4)モジュールシャドウシールド(MSS)157からそれ自体が構成される遮蔽手段を備える。本明細書に記載の遮蔽手段は、地上および宇宙の両方の原子炉システム100に適用可能である。原子炉システム100の遮蔽、質量、体積、および動作要件を満たすために、4つの構成要素全てを一緒に、個別に、または異なる組み合わせで適用することができる。この遮蔽手段は、任意の移動式原子炉107のためのベースラインの遮蔽手段であることができる。
【0023】
[0036]輸送可能な原子炉技術は、完全にセラミックマイクロカプセル化された(FCM(商標))TRISOベース燃料、および炭化ケイ素を使用したセラミック導電性の「外装」コアを利用することができる。どちらの場合も、完全密度の構造炭化ケイ素は、高温ガス冷却式原子炉で従来使用されているグラファイトと置き換わることができ、強度、外部の危険に対する耐性、および放射能保持の改善をもたらす。原子炉システム100の展開は、遠隔拠点の迅速な展開を容易にし、一時拠点の移動性を大幅に向上させ、拠点の再供給に関連する潜在的な損傷および他のリスクを劇的に低減する。
【0024】
[0037]ここで、添付の図面に示し、以下で説明する例を詳細に参照する。図1Aは、核熱供給(NHS)モジュール150を示し、遮蔽手段を実施する原子炉システム100の切断図である。遮蔽手段は、(1)容器内中性子シールド153と、(2)容器内シャドウシールド154と、(3)輸送シールド155と、(4)モジュールシャドウシールド157とを含む。NHSモジュール150は、原子炉コンテナ151を含む。この例におけるこの原子炉コンテナ151は、CONEXまたはISOボックスの形式の発送コンテナである。原子炉コンテナ151は、約20フィートの長さであることができ、安全かつ安定した方法で原子炉107を取り付けて収容するように構成される。原子炉コンテナ151内の空隙空間は、原子炉107が内部に存在する原子炉キャビティ152(例えば、内部容積)を形成する。原子炉キャビティ152内には、輸送シールド(TS)チャンバ156(例えば、第1のチャンバ)がある。TSチャンバ156は、原子炉コンテナ151が水密であるため、または原子炉キャビティ152の内部のシーラントまたはエンベロープがTSチャンバ156を水密にするため、第1の減速流体159Aで実質的に充填された後、流体に対して不透過性(例えば、水密)であることができる。原子炉コンテナ151または原子炉コンテナ151のサブチャンバは、第1の減速流体159Aを収容できる必要がある。いくつかの例における原子炉キャビティ152は、原子炉キャビティ152を細分するためのさらなる隔壁または容積が原子炉キャビティ152内に存在しない場合、それ自体がTSチャンバ156であってもよい。
【0025】
[0038]ほとんどの状況では、TSチャンバ156の形状および体積は、原子炉キャビティ152の寸法に適合し、これは、TSチャンバ156が、直角四角柱のような形状であるか、または原子炉コンテナ151がカプセルのような形状である場合には丸みを帯びた形状であり得ることを意味する。しかし、いくつかの実施形態では、TSチャンバ156は、原子炉107の寸法に適合することができ、これは、TSチャンバ156が、原子炉107の直径よりも大きいが、原子炉コンテナ151の幅または高さ以下の直径を有するカプセルのように一般的に成形されることを意味する。
【0026】
[0039]原子炉コンテナ151は、CONEXまたはISOボックスの形式で従来の任意の手段によって輸送または貯蔵コンテナに輸送されるように設計されており、CONEXまたはISOボックスは、典型的には、物品を保管または輸送するために使用される大きな金属製の耐候性コンテナである。原子炉コンテナ151は、セミトレーラトラックもしくは列車のような陸上車両501のトラックベッド、トレーラ、もしくは鉄道車両、Lockheed Hercules(商標)C-100もしくはC-130(商標)などの航空機502上、または船などの船舶503上に置くことができる。原子炉107は、原子炉コンテナ151内に取り付けられ、予想される衝撃、落下、温度変化、圧力変化、湿度、およびCONEXまたはISOボックスの内容物が耐えると予想される任意の他の典型的な環境影響に耐えるように設計される。さらに、軍事環境にある原子炉107は、いかなる商用電力システムよりも高い事故確率を経験し得る。ターゲットとしてのNHSモジュール150の魅力および輸送中の事故の可能性により、原子炉107の弾力性および安全性が最も重要になる。したがって、原子炉107は、大きな材料温度マージン、強い負の反応性フィードバック、およびほぼ完全な核分裂生成物の保持を有する。
【0027】
[0040]原子炉コンテナ151内の原子炉キャビティ152内には、モジュールシャドウシールド(MSS)チャンバ158(例えば、第2のチャンバ)が、原子炉107の近くに取り付けられる。MSSチャンバ158もまた、第2の減速流体159Bで実質的に充填された後、流体に対して不透過性(例えば、水密)であることができる。実質的に充填された後、TSチャンバ156およびMSSチャンバ158の両方は、MSSチャンバ158とTSチャンバ156との間の流体連通を防止して、第1の減速流体159Aおよび第2の減速流体159Bを互いに分離および隔離したままにすることができる。TSチャンバ156およびMSSチャンバ158が実質的に排出されているとき、TSチャンバ156およびMSSチャンバ158は、もはや流体に対して不透過性ではない。
【0028】
[0041]いくつかの例では、MSSチャンバ158は、図1Aに示すように、原子炉コンテナ151の上部、底部、側部、および前部に直接接触する。これらの例では、TSチャンバ156内の第1の減速流体159Aは、MSSチャンバ158の周りを流れることができず、TSチャンバ156とMSSチャンバ158との間の共有壁までしか流れない。しかし、図1Bでは、MSSチャンバ158は、MSSチャンバ158と原子炉コンテナ151との間の全ての面に小さな隙間を有して示されている。これらの例では、図1Bのように、MSSチャンバ158は、技術的にはTSチャンバ156の内側にあってもよく、TSチャンバ156内の第1の減速流体159Aは、MSSチャンバ158の周りを流れてもよい。
【0029】
[0042]TSチャンバ156およびMSSチャンバ158は、減速流体159A~Bを選択的に保持するために水密である。減速流体159A~Bは、中性子束を減速させて、TSチャンバ156およびMSSチャンバ158内の高速中性子を減速させる能力に合わせて選択された流体である。単純な手法における減速流体159A~Bは、水である。減速流体159A~Bとして使用される水は、化学的に純粋な水である必要はなく、現場飲料水または未処理水を減速流体159A~Bとして使用することができる。減速流体159A~Bは、水、高い水素含有量を有する液体有機化合物とすることができ、中性子およびガンマ線遮蔽を増強するための添加剤を含むことができる。図7図8は、水を使用すること、特に硝酸鉛で飽和した水を利用すること、および臭化亜鉛で飽和した水を利用することに対する改善を論じている。減速流体159A~Bは、同じ流体であってもよく、すなわち、両方とも硝酸鉛で飽和した水であってもよい。あるいは、第1の減速流体159Aは、第2の減速流体159Bとは異なる流体、例えば井戸水であってもよく、第2の減速流体159Bは、臭化亜鉛で飽和した水であってもよい。第1の減速流体159Aは、飲料水のようなより利用可能で、あまり効率的でない減速流体であってもよく、第2の減速流体159Bは、金属で飽和した水であってもよく、これは、改善された減速効率と引き換えに、微粒子金属を現場で水と組み合わせるか、または金属で予め飽和した水を現場で持ち込むことを必要とする。様々な減速流体159A~Bは、減速体として様々な効果を有する。水は、原子炉コア101内の核分裂生成物の崩壊中に生成されるガンマ線を遮蔽するのに十分に機能する多数の水素および酸素原子により、良好な減速流体として機能する。水に添加された金属は、高速中性子を吸収するか、または高速中性子を原子炉コンテナ151から離れるように導く。
【0030】
[0043]TSチャンバ156が第1の減速流体159Aで少なくとも実質的に充填されると、TSチャンバ156内の第1の減速流体159Aは、輸送シールド(TS)155を形成する。輸送シールド155は、第1の減速流体159Aを含むため、原子炉107を取り囲み、輸送シールド155内および輸送シールド155の外側の中性子フルエンスを減少させる。輸送シールド155および第1の減速流体159Aは、原子炉107内まで及んでいないことを留意されたい。原子炉107の内部とTSチャンバ156との間に流体連通はなく、第1の減速流体159Aは、原子炉107内の中性子フルエンスを低減させない。
【0031】
[0044]輸送シールド155の目的は、主に、地上輸送中、または人口密集地域を移動するときに、原子炉107を安全に輸送することである。輸送シールド155は、輸送中、生物(例えば、人々)が複数の方向から原子炉107に接近しようとする場合に使用される。輸送シールド155は、TSチャンバ156が減速流体159Aで充填されている間、原子炉107の周りを歩く人間のオペレータ/作業者を安全にするように設計される。第1の減速流体159Aは、動作中に除去することができ、地上輸送中に追加することができ、または人口密集地域を移動するときに追加することができる水素高密度液体であることができる。輸送シールド155の第1の減速流体159Aは、その後、航空輸送のために航空機502に搭載される場合には除去され、地上に戻されると再装填することができる。実施に応じて、TSチャンバ156は、原子炉107を起動するために、必ずしも第1の減速流体159Aを実質的に排出する必要はない。しかし、浸漬型原子炉107は、機器が故障した場合に技術者がアクセスして維持することがより困難であるため、第1の減速流体159Aは、無期限、またはアクティブな使用中に輸送シールド155内に残らないことが好ましい。
【0032】
[0045]MSSチャンバ158が第2の減速流体159Bで実質的に満たされると、MSSチャンバ158内の第2の減速流体159Bは、モジュールシャドウシールド157を形成する。モジュールシャドウシールド157は、さもなければモジュールシャドウシールド保護アーク191Bを通ってモジュールシャドウシールド157を通過するであろう、原子炉コア101からのモジュールシャドウシールド非保護アーク191A内を移動する高速中性子をブロックするように設計されており、動作中に原子炉制御システム175の構成要素およびバランスオブプラントモジュール(BOP)170を遮蔽する役割を果たす。モジュールシャドウシールド157のサイズ、形状、および位置は、モジュールシャドウシールド157が、図1Bでさらに論じるようにBOPモジュール170を保護し、輸送のために原子炉107を準備する間に放射線作業者を遮蔽するように設計されるようなものである。モジュールシャドウシールド157は、モジュールシャドウシールド157のサイズを最小にしながらモジュールシャドウシールド保護アーク191Bを最大にするために、原子炉コア101の近くに置かれる。
【0033】
[0046]通常、モジュールシャドウシールド157は、原子炉107の輸送中は空であり、原子炉運転のために実質的に充填される。モジュールシャドウシールド157を充填するために、現場内の材料または別々に輸送される材料が使用される。いくつかの動作レジームでは、輸送シールド155は、原子炉システム100の構造の中性子活性化を低減するために、動作中に実質的に充填され得る。
【0034】
[0047]原子炉107自体に移ると、原子炉107は、圧力容器160を有する。圧力容器160については、図1Cで論じる。圧力容器160の外部は、減速流体159A~B(例えば、水またはより複雑な流体)に浸漬されたモジュール式原子炉が受ける腐食または酸化をさらに低減するために、コーティングで処理されてもよく、または特定の金属もしくは化学物質で鍛造または製造されてもよい。
【0035】
[0048]圧力容器160は、圧力容器内壁161を有し、その上に容器内中性子シールド153が取り付けられている。容器内中性子シールド153は、構造材料の活性化を低減および防止するという主な目的を果たす。容器内中性子シールド153は、活性化構造材料からのガンマ放出を遮蔽するための重い遮蔽の必要性を大幅に低減する。容器内中性子シールド153は、中性子減速体(金属水素化物、ポリエチレン、プラスチック、ベリリウム含有化合物、またはそれらの組み合わせなど)および特定の同位体または天然同位体組成が濃縮された中性子吸収材料(例えば、ホウ素、炭化ホウ素、ガドリニウム(Gd)、ユーロピウム、タングステン(W)、またはそれらの組み合わせ)を有する複合材料または多層材料であることができる。
【0036】
[0049]容器内中性子シールド153は、圧力容器160の内部圧力容器内壁161上にあり、容器内中性子シールド153は、連続材料、または圧力容器160の内部圧力容器内壁161を被覆するように組み立てられたより小さいモジュール構成要素の集まりのいずれかであることができる。容器内中性子シールド153は、中~高温材料で作られ、摂氏300度を超える温度で動作する。容器内中性子シールド153は、別個の減速層および中性子吸収層を有することができ、中性子吸収材料、バルク材料を有することができ、または容器内中性子シールド153の動作温度を上昇させるために高温マトリックスにさらに埋め込むことができる。容器内中性子シールド153は、原子炉コア101を離れる中性子フルエンスを低減することによって、圧力容器160および原子炉コンテナ151またはBOPモジュール170などの周囲構造の活性化を低減する。容器内中性子シールド153は、国際出願に記載された容器内シールド105のように実装することができる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2021年4月8日に国際公開第2021/067901号として公開された、「Integrated In-Vessel Neutron Shield」と題する、2020年10月4日に出願されたPCT/US2020/054188号。
【0037】
[0050]原子炉コア101とMSSチャンバ158との間の容器内中性子シールド153の内部には、容器内シャドウシールド154がある。容器内シャドウシールド154は、原子炉107とBOPモジュール170および原子炉制御システム175との間に中性子およびガンマ線遮蔽をもたらす。容器内シャドウシールド154は、容器内シャドウシールド保護アーク190Bを最大にしながら容器内シャドウシールド154のサイズを最小にするために、アクティブな原子炉コア101の近くに置かれる。容器内シャドウシールド154の目的は、原子炉107の輸送準備をする間、放射線作業者を遮蔽することである。
【0038】
[0051]容器内シャドウシールド154は、重金属で構成されており、高速中性子を遮断し、原子炉コア101から容器内シャドウシールド非保護アーク190A内を進行するガンマ線からの遮蔽を提供するように設計され、さもなければ、このガンマ線は、容器内シャドウ保護アーク190B内で容器内シャドウシールド154を通過する。容器内シャドウシールド154のサイズ、形状、および位置は、容器内シャドウシールド154が、図1Bでさらに論じるBOPモジュール170を保護するように設計されるようなものである。容器内シャドウシールド154は、容器内シャドウシールド保護アーク190Bを最大にしながら容器内シャドウシールド154のサイズを最小にするために、原子炉コア101の近くの圧力容器160内に置かれる。
【0039】
[0052]輸送シールド155および容器内中性子シールド153は、類似のシールドの対として考えることができ、モジュールシャドウシールド157および容器内シャドウシールド154は、類似のシールドの別の対として考えることができる。輸送シールド155(アクティブであり、第1の減速流体159Aで充填されているとき)および容器内中性子シールド153は、原子炉コア101を完全に囲み、原子炉コア101をあらゆる方向に離れる高速中性子を減衰させようとする。モジュールシャドウシールド157(アクティブであり、第2の減速流体159Bで充填されているとき)および容器内シャドウシールド154は、モジュールシャドウシールド保護アーク191Bを確立し、原子炉コア101から延びる容器内シャドウシールド保護アーク190Bをさらに増強するために、原子炉コア101の同じ端部に、原子炉コア101に可能な限り近くに置かれる。「非保護アーク」は、原子炉コア101とそれぞれのシールド154、157との間の三次元空間を指し、この空間では、放射線はそれぞれのシールド154、157によって遮断されない。「保護アーク」は、その境界がそれぞれのシールド154、157との間にあり、それぞれのシールド154、157を超える三次元空間を指し、この三次元空間では、放射線は、それぞれのシールド154、157によって遮断される。モジュールシャドウシールド157、容器内シャドウシールド154、およびBOPモジュール170は、BOPモジュール170がモジュールシャドウシールド157および容器内シャドウシールド154によって保護された保護アーク190A、191A内にあるように置かれる。
【0040】
[0053]同様に、輸送シールド155およびモジュールシャドウシールド157は、異なるタイプの類似のシールドの対として考えることができ、容器内中性子シールド153および容器内シャドウシールド154は、類似のシールドの別の対として考えることができる。輸送シールド155およびモジュールシャドウシールド157は、それらのそれぞれのチャンバ(TSチャンバ156およびMSSチャンバ158)を減速流体159A~Bで充填することによって選択的に作動される。輸送シールド155およびモジュールシャドウシールド157は、減速流体159A~Bによって減速する:この例では、TSチャンバ156およびMSSチャンバ158は、ステンレス鋼で作られ、TSチャンバ156、MSSチャンバ158は、減速流体159A~Bなしでわずかな減速効果を有する。TSチャンバ156およびMSSチャンバ158の代替金属は、アルミニウム合金、炭素複合材、チタン合金、放射弾性SiC複合材、ニッケル基合金(例えば、Inconel(商標)またはHaynes(商標))、またはそれらの組み合わせを含む。他の例では、TSチャンバ156およびMSSチャンバ158は、固体減速材料で形成することができることに留意されたい。しかし、固体減速材料の重量および厚さの増加の結果、輸送チャンバ158およびMSSチャンバ158自体の減速能力を改善するために許容できないトレードオフをもたらす可能性がある。輸送シールド155およびモジュールシャドウシールド157の流体選択性は、TSチャンバ156またはMSSチャンバ158が減速流体159A~Bを実質的に排出するときにNHSモジュール150が実質的な質量を落とすことを可能にし、TSチャンバ156およびMSSチャンバ158を超える領域における放射能の増加のトレードオフを伴う。
【0041】
[0054]比較すると、容器内中性子シールド153および容器内シャドウシールド154は永続的にアクティブであり、容器内中性子シールド153および容器内シャドウシールド154の容積を通過する、原子炉コア101を超える領域内の中性子束を常に減少させている。容器内中性子シールド153および容器内シャドウシールド154は、流体ではなく金属からなり、選択的に係合することができない。容器内中性子シールド153および容器内シャドウシールド154の質量は、NHSモジュール150内に常に存在する。
【0042】
[0055]図1Bは、核熱供給(NHS)モジュール150およびNHSモジュール150に接続されたバランスオブプラント(BOP)モジュール170の両方を含む図1Aの原子炉システム100の等角図である。ここに示す原子炉システム100は、NHSモジュール150およびBOPモジュール170が分離されているが、ガスコネクタ管路180によって接続されている展開状態にある。原子炉107はここでもアクティブである。原子炉コア101は臨界状態であり、原子炉107は最適に熱を生成している。
【0043】
[0056]BOPモジュール170をNHSモジュール150から分離することにより、BOPモジュール170およびBOPモジュール170の人間のオペレータの放射線被曝を2通りに低減する。第1に、距離の増加により、高速中性子は、原子炉コンテナ151から逃げてBOPモジュール170に向かうときに、減速または吸収されることが可能になる。第2に、容器内シャドウシールド154およびモジュールシャドウシールド157は、原子炉コア101から非保護アーク190B、191B内を進行する高速中性子を減速させる。容器内シャドウシールド154およびモジュールシャドウシールド157からBOPモジュール170までの距離が、容器内シャドウシールド154およびモジュールシャドウシールド157から原子炉コア101までの固定距離に対して増加するにつれて、容器内シャドウシールド154およびモジュールシャドウシールド157によって保護される保護アーク190A、191Aはより大きくなり、BOPモジュール170ならびにBOPモジュール170の近くに立つ人間のオペレータをより良好に保護する。
【0044】
[0057]原子炉107の圧力容器160はまた、原子炉コア101からの熱を1つの媒体から別の媒体(例えば、気体、液体、固体、またはそれらの組み合わせ)に交換する熱交換器171を含むように示されている。この例の熱交換器171は、容器内シャドウシールド154としても作用するが、これらの2つの構成要素は個別であってもよく、熱交換器171は、圧力容器160の、容器内シャドウシールド154と同じ側または部分にある必要はない。
【0045】
[0058]熱交換器171によって加熱されたガス(例えば、He)は、NHSモジュール150のガス循環器171によって、ガスコネクタ管路180を下ってBOPモジュール170に向かって循環される。BOPモジュール170が高温ガスを利用し、それによってガスを冷却すると、ガス循環器172は、ガスをガスコネクタ管路180の残りの部分を通って熱交換器171まで循環させて戻し、熱交換器171によって再加熱し、再循環させる。この再循環は、原子炉107がアクティブである限り起こり、BOPモジュール170は高温ガスを受け入れるように構成される。
【0046】
[0059]BOPモジュール170もまた、原子炉コンテナ151と同様のCONEXまたはISOボックスまたはカプセルの形式の発送コンテナであるBOPコンテナ177内にある。BOPコンテナ177もまた、原子炉コンテナ151のように、CONEXまたはISOボックスの形式の発送コンテナに従来の任意の手段によって輸送されるように設計されている。しかし、この例では、BOPモジュール170が必要とするスペースが少ないため、BOPコンテナ177の長さは、わずか10フィートである。すなわち、この例示的な原子炉システム100がパッケージ状態にあり、NHSモジュール150およびBOPモジュール170が一緒にパッケージされている場合、原子炉システム100は30フィートの長さである。NHSモジュール150は20フィート、BOPモジュール170は10フィートである。
【0047】
[0060]BOPモジュール170は、ガスコネクタ管路180からの高温ガス中の熱を同期電気に変換するように構成される。BOPモジュール170は、以下のようにこれを達成する:ターボ機械173は、熱交換インターフェース176を有し、高温ガスを取り込む。高温ガスは、ターボ機械173の圧縮機タービンに入り、圧縮機タービンは、ターボ機械173のシャフトによって機械的仕事出力を生成する。ターボ機械173のそのシャフトは、発電機174に結合されたギヤまたはベルトによって直接的または間接的に制御される。発電機174は、ターボ機械173の機械的仕事出力を同期交流電気出力に変換する。発電機174のその電気出力は、原子炉システム100が動作する電気出力である。
【0048】
[0061]原子炉107ならびに制御棒115A~N、熱交換器171、ガス循環器172、ターボ機械173、および発電機174などの内部構成要素は、計装器具を備えた原子炉制御システム175によって制御される。この例では、原子炉制御システム175は、BOPコンテナ177内に収容されているが、他の例では、原子炉制御システム175は、BOPコンテナ177から取り外して遠隔で操作することができる。
【0049】
[0062]図1Cは、NHSモジュール150の断面図であり、原子炉コア101、容器内中性子シールド153、および輸送シールド155を示している。原子炉コンテナ151および原子炉107を構成する構成要素の概要も示されている。前述したように、原子炉システム100は、圧力容器160と、圧力容器160内に配置された原子炉コア101とを含む。圧力容器160は、TSチャンバ156を実質的に充填する第1の減速流体159Aを含む輸送シールド155によって囲まれている。TSチャンバ156自体は、原子炉コンテナ151の原子炉キャビティ152内にある。
【0050】
[0063]原子炉コア101は、複数の燃料要素104A~Nと、少なくとも1つの減速体要素103Aとを含む。燃料要素104Aは、自由中性子を放出し、原子炉システム100の原子炉コア101内で熱エネルギーを生成するように設計される。図1Cの例では、減速体要素103Aは、燃料要素104Aと対になっており、原子炉コア101に熱エネルギーを生成させながら高速中性子を減速させるように設計される。原子炉システム100は、圧力容器160内に長手方向に配置され、複数の燃料要素104A~Nおよび少なくとも1つの減速体要素103Aを横方向に囲んで原子炉コア101の反応性を制御する、複数の制御ドラム115A~Nをさらに含む。制御ドラム115A~Nの各々は、外面165の第1の部分166上の反射体材料116と、外面165の第2の部分167上の吸収体材料117とを含む。可燃性毒物は、緊急時に原子炉コア101を運転停止するために、複数の燃料要素104A~Nおよび少なくとも1つの減速体要素103A内に統合することができる。
【0051】
[0064]制御ドラム115A~Nは、他の原子炉システムの制御棒と同様に、原子炉コア101内の中性子集団および原子炉107出力レベルを調節する。原子炉コア101内の中性子束を増減させるために、制御ドラム115A~Nが回転される。一方、制御棒は、原子炉コア101に挿入されるか、または原子炉コアから取り外される。制御ドラム115A~Nは、原子炉コア101の反応性を調整するために、挿入および取り外しの代わりに回転されるので、制御ドラム115A~Nは、恒久的に固定された長手方向位置を有する。すなわち、制御ドラム115A~Nは、原子炉コア101または圧力容器160の内外に移動しない。制御棒は、制御棒孔内の位置ずれまたは閉塞のために原子炉コア101に完全に挿入されないリスクがあり、好適には、制御ドラム115A~Nの利用がそれらのリスクを低減する。それにもかかわらず、制御棒を利用することができる。この例では、図1A図1Bに示すような制御ドラム115A~Nのヘッドは、モジュールシャドウシールド157から離れている。
【0052】
[0065]図1Cに示すように、制御ドラム115Aの外面の第1の部分は、高弾性散乱中性子断面を有する材料で通常形成される反射体材料116を含む。反射体材料116が原子炉コア101に向かって内側に面すると、中性子束が増加し、それによって原子炉コア101の反応性および動作温度が上昇する。制御ドラム115Aの外面の第2の部分は、中性子毒で形成することができる吸収体材料117を含む。中性子毒は、自由中性子を吸収するのに特に適した高吸収中性子断面積を有する同位体または分子である。吸収体材料117が原子炉コア101に向かって内側に面すると、中性子束が減少し、それによって原子炉コア101の反応性および動作温度が低下する。
【0053】
[0066]原子炉システム100は、制御ドラム115Aまたは複数の制御ドラム115A~Nを選択的に回転させて、吸収体材料117を原子炉コア101の方に向けて中性子束および動作温度を低下させるか、または反射体材料116を原子炉コア101の方に向けて中性子束および動作温度を上昇させる。したがって、原子炉システム100は、原子炉コア101の中性子束を選択的に増減させることができる。中性子束を迅速に減少させ、束減少状態を達成するために、原子炉システム100は、制御ドラム115Aを回転させて、制御ドラム115Aの吸収体材料117を原子炉コア101の燃料要素104A~Nに最大限に曝露し、それによってより多くの自由中性子を吸収し、中性子束を減少させることができる。中性子束を迅速に増加させ、束増加状態を達成するために、原子炉システム100は、制御ドラム115Aを回転させて、制御ドラム115Aの反射体材料116を原子炉コア101の燃料要素104A~Nに最大限に曝露し、それによってより多くの自由中性子を反射し、中性子束を増加させることができる。中間調整を行うため、または中性子束の連続レベルを維持するために、原子炉コア100は、制御ドラム115Aを回転させて、制御ドラム115Aの吸収体材料117を原子炉コア101の燃料要素104A~Nに部分的に曝露することができる。
【0054】
[0067]反射体材料116の部分的または完全な露出は、原子炉107を臨界状態に移行させることができ、持続的な臨界状態はアクティブ状態を誘発する。原子炉107がアクティブ状態にあるとき、原子炉107は、BOPモジュール170によって最適な量の熱、したがって電気、ならびに原子炉コア101から逃げ得る高レベルの自由中性子を生成している。この例では、原子炉107は、非アクティブ状態から完全アクティブ状態に達するまでに約3日を要する。
【0055】
[0068]吸収体材料117の部分的もしくは完全な曝露、または燃料要素104A~Nの実質的に完全な消費は、原子炉107を亜臨界状態に移行させる。持続的な亜臨界状態は非アクティブ状態を誘発する。原子炉107が非アクティブ状態にあるとき、原子炉107は最小量の熱を生成しており、BOPモジュール170が非アクティブのNHSモジュール150に結合されている場合は、BOPモジュール170によって電気を生成していない可能性が非常に高い。非アクティブ状態の原子炉107はまた、原子炉コア101から逃げ得る最小量の自由中性子を生成している。この例では、原子炉107は、アクティブ状態から完全に非アクティブ状態に達するまでに約7日を要する。原子炉107、したがってNHSモジュール150が非アクティブ状態に達し、TSチャンバ156が減速体流体159Aで満たされることによって輸送シールド155が展開されると、NHSモジュール150は、輸送の準備が整う。
【0056】
[0069]原子炉コア101内の複数の燃料要素104A~Nは、核燃料タイル104A~Nの核燃料タイルアレイ114として配置される。原子炉コア101は、複数の減速体要素103A~Nを含む。原子炉コア101のそのような実装形態は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2021年4月8日に国際公開第2021/067903号として公開された「Nuclear Reactor Core Architecture with Enhanced Heat Transfer and Safety」と題する、2020年10月4日に出願された国際出願第PCT/US2020/054190号明細書に説明されている。第2の例では、原子炉コア101は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、「Passive Reactivity Control of Nuclear Thermal Propulsion Reactors」と題する、2020年5月5日に発行されたワシントン州シアトル所在のUltra Safe Nuclear Corporationへの米国特許第10,643,754号明細書の図3図4および関連する本文に説明する原子炉コア110のように実装することができる。第2の例では、燃料要素104A~Nは、燃料要素310A~Nと同様に実装することができ、減速体要素103A~Nは、米国特許第10,643,754号明細書の図3図4および関連する本文に説明するタイチューブ320A~Nのように実装することができる。
【0057】
[0070]第3の例では、原子炉コア101は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、「Composite Moderator for Nuclear Reactor Systems」と題する、2020年1月23日に公開された、ワシントン州シアトルのUltra Safe Nuclear Corporationへの米国特許出願公開第2020/0027587号明細書の図2Cおよび関連する本文に説明する原子炉コア101のように実装することができる。第3の例では、燃料要素104A~Nは、燃料要素102A~Nと同様に実装することができ、減速体要素103A~Nは、米国特許出願公開第2020/0027587号明細書の図2Cおよび関連する本文に説明する複合減速体ブロックのように実装することができる。
【0058】
[0071]原子炉107は、圧力容器160の内部に配置された反射体140(例えば、外側反射体領域)を含む。反射体140は、複数の燃料要素104A~Nおよび少なくとも1つの減速体要素103Aを横方向に取り囲む複数の反射体ブロック141A~Nを含む。
【0059】
[0072]原子炉107は、原子炉コア101を含み、原子炉コア内で、制御された核連鎖反応が起こり、エネルギーが放出される。原子炉コア101内の中性子連鎖反応は重要である。それぞれの核分裂核からの単一の中性子が別の核の分裂をもたらす。この連鎖反応は制御されなければならない。制御された核分裂を維持することにより、原子炉システム100は、熱エネルギーを生成する。例示的な実装形態では、原子炉システム100は、ガス冷却式高温原子炉107として実装される。しかし、原子炉システム100は、ヒートパイプ原子炉、溶融塩冷却原子炉、ヘリウム冷却原子炉、黒鉛減速原子炉、塩中燃料原子炉、超臨界CO2原子炉、(開放または閉鎖)ブレイトンサイクル原子炉、またはナトリウム冷却高速原子炉として実施することができる。特に、原子炉システム100は、ガス冷却黒鉛減速原子炉、ガス冷却黒鉛減速原子炉よりも高い熱中性子束を有するフッ化物塩冷却高温原子炉、またはガス冷却黒鉛減速原子炉よりも速い中性子束を有するナトリウム高速原子炉で実施することができる。
【0060】
[0073]核燃料タイル104A~Nとして示す燃料要素104A~Nの各々は、核燃料を含む。核燃料は、高温マトリックスの内部に埋め込まれた三構造等方性(TRISO)燃料粒子などのコーティングされた燃料粒子からなる燃料コンパクトを含む。いくつかの実施態様では、核燃料は、高温マトリックスの内部に埋め込まれた二構造等方性(BISO)燃料粒子からなる燃料コンパクトを含む。さらに別の実施態様では、核燃料は、TRIZO燃料粒子として知られるTRISOの変形形態からなる燃料コンパクトを含む。TRIZO燃料粒子は、TRISO燃料粒子の炭化ケイ素層を炭化ジルコニウム(ZrC)で置き換える。あるいは、TRIZO燃料粒子は、TRISO燃料粒子の典型的なコーティングと、後でTRISO燃料粒子の典型的なコーティングによって囲まれる、燃料核の周りの追加の薄いZrC層コーティングとを含む。高温マトリックスは、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化ニオブ、タングステン、モリブデン、またはそれらの組み合わせを含む。TRISO燃料粒子の各々は、多孔質炭素バッファ層、内側熱分解炭素層、二元炭化物層(例えば、SiCのセラミック層または高融点金属炭化物層)、および外側熱分解炭素層によって囲まれた燃料核を含むことができる。TRISO燃料粒子の高融点金属炭化物層は、炭化チタン(TiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化タンタル、炭化ハフニウム、ZrC-ZrB複合材、ZrC-ZrB-SiC複合材、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むことができる。高温マトリックスは、TRISO燃料粒子の二元炭化物層と同じ材料で形成することができる。
【0061】
[0074]核燃料は、それ自体の中に核分裂生成物を保持し、核廃棄物を処分する緊急のニーズを低減する。コーティングされた燃料粒子はまた、市販の軽水原子炉燃料と比較して増殖リスクを低減する。
【0062】
[0075]円筒形状の核燃料コンパクトを形成するために炭化ケイ素マトリックス中に分散されるTRISO燃料粒子の説明は、ワシントン州シアトルのUltra Safe Nuclear Corporationの次の特許および刊行物に提供されている:「Fully Ceramic Nuclear fuel and Related Methods」と題する2016年3月29日に発行された米国特許第9,299,464号明細書、「Fully Ceramic Micro-encapsulated(FCM)fuel for CANDUs and Other Reactors」と題する、2018年7月24日に発行された米国特許第10,032,528号明細書、「Method for Fabrication of Fully Ceramic Microencapsulation Nuclear Fuel」と題する2018年10月23日に発行された米国特許第10,109,378号明細書、「Dispersion Ceramic Micro-encapsulated(DCM)Nuclear Fuel and Related Methods」と題する、2017年4月11日に発行された米国特許第9,620,248号明細書および2019年11月12日に発行された米国特許第10,475,543号明細書、「Composite Moderator for Nuclear Reactor Systems」と題する2020年1月23日に公開された、米国特許出願公開第2020/0027587号明細書、および「Nuclear Fuel Particle Having a Pressure Vessel Comprising Layers of Pyrolytic Graphite and Silicon Carbide」と題する2020年2月25日に発行された米国特許第10,573,416号明細書。これら文献の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。これらのUltra Safe Nuclear Corporationの特許に説明されているように、核燃料は、円筒形状の核燃料コンパクトを形成するために炭化ケイ素マトリックスの内側に埋め込まれたTRISO燃料粒子からなる円筒形燃料コンパクトまたはペレットを含むことができる。円筒形状の核燃料コンパクトを形成するために炭化ジルコニウムマトリックス中に分散されるTRISO、BISO、またはTRIZO燃料粒子の説明は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、「Processing Ultra High Temperature Zirconium Carbide Microencapsulated Nuclear Fuel」と題する、2021年1月7日に公開された、ワシントン州シアトルのUltra Safe Nuclear Corporationへの米国特許出願公開第2021/0005335号明細書に提供されている。
【0063】
[0076]図示のように、原子炉コア101は、絶縁体要素102A~Nの絶縁体要素アレイ112と、減速体要素103A~Nの減速体要素アレイ113とを含む。絶縁体要素102A~Nは、熱伝導率の低い高温の断熱材料で形成される。高温断熱材料は、低密度炭化物、金属炭化物、金属酸化物、またはそれらの組み合わせを含むことができる。より具体的には、高温断熱材料は、低密度SiC、安定化酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、低密度ZrC、低密度炭素、またはこれらの組み合わせを含む。減速体要素103A~Nは、低温固相減速体で形成される。低温固相減速体は、MgH、YH、ZrH、CaH、ZrO、CaO、BeO、BeC、Be、濃縮炭化ホウ素、11C、CeH、LiH、またはそれらの組み合わせを含む。
【0064】
[0077]この原子炉システム100では、原子炉107は、複数の制御ドラム115A~Nと反射体140とを含むことができる。制御ドラム115A~Nは、絶縁体要素102A~Nの絶縁体要素アレイ112、減速体要素103A~Nの減速体要素アレイ113、および核燃料タイル104A~Nの核燃料タイルアレイ114を横方向に取り囲んで、制御ドラム115A~Nを回転させることによって原子炉コア101の反応性を変化させることができる。図示のように、制御ドラム115A~Nは、圧力容器160の周囲または周辺に存在し、原子炉コア101の絶縁体要素102A~N、減速体要素103A~N、および核燃料タイル104A~Nの周りに円周方向に配置される。制御ドラム115A~Nは、反射体140の領域、例えば、原子炉コア101を直接取り囲む反射体ブロック141A~Nで形成された外側反射体領域内に配置されて、動作中に中性子集団および炉出力レベルを選択的に調節することができる。例えば、制御ドラム115A~Nは、円筒形状であることができ、外面165の第1の部分上の反射体材料116(例えば、ベリリウム(Be)、酸化ベリリウム(BeO)、BeSiC、BeMgO、Alなど)と外面(例えば、外周)の第2の部分上の吸収体材料117の両方で形成することができる。
【0065】
[0078]反射体材料116および吸収体材料117は、制御ドラム115A~Nの円筒形状の対向する両側、例えば外周の部分であることができる。反射体材料116は、円筒形またはその切頭部分として成形された反射体基板を含むことができる。吸収体材料117は、吸収体プレートまたは吸収体コーティングを含むことができる。吸収体プレートまたは吸収体コーティングは、反射体基板上に配置されて、各制御ドラム115A~Nの円筒形状を形成する。例えば、吸収体プレートまたは吸収体コーティングは、反射体材料116で形成された反射体基板を覆い、制御ドラム115A~Nを形成する。反射体材料116が円筒形の切頭部分である場合、吸収体材料117は、切頭部分と相補的な本体形状であり、それによって円筒形状を形成する。
【0066】
[0079]制御ドラム115A~Nは、例えば丸みを帯びた、非球面、または球面などの連続面で形成されて円筒形または他の円錐面を形成して、双曲面、円錐、楕円体、放物面などの二次曲面を形成することができる。代替的または追加的に、制御ドラム115A~Nは、(例えば、直方体または六角柱などの他の多面体を形成するために)複数の不連続面で形成することができる。本明細書で使用するとき、「不連続」とは、集合した面が、制御ドラム115A~Nの丸い(例えば、円形または楕円形の)周囲である連続した外面165を形成しないことを意味する。図1Cでは、図示する外面は、丸みを帯びた連続面である。
【0067】
[0080]図示の円筒形状の制御ドラム115A~Nを回転させると、制御ドラム115A~Nの吸収体材料117(例えば、炭化ホウ素、BC)の原子炉コア101への近接度が変化して、中性子反射量が変化する。反射体材料116が原子炉コア101に向かって内側に面しており、吸収体材料117が外側に面しているとき、中性子は、原子炉コア101内に後方に散乱(反射)されて、原子炉コア101のより多くの分裂を引き起こし、反応性を高める。吸収体材料117が原子炉コア101に向かって内側に面しており、反射体材料116が外側に面しているとき、中性子が吸収され、さらなる分裂が停止されて、原子炉コア101の反応性を低下させる。
【0068】
[0081]例えば、外側反射体領域として示す中性子反射体140は、最も外側の核燃料タイル104A~Nと制御ドラム115A~Nとの間、ならびに制御ドラム115A~Nの周りに配置された充填要素であることができる。反射体140は、最も外側の核燃料タイル104A~Nと任意選択のバレル(例えば、ベリリウムから形成される)との間に配置された減速体で形成することができる。反射体140は、六角形または部分的に六角形の充填材要素を含むことができ、中性子減速体(例えば、酸化ベリリウム、BeO)で形成することができる。必須ではないが、原子炉107は、原子炉コア101の絶縁体要素アレイ112、減速体要素アレイ113、核燃料タイルアレイ114、ならびに反射体140を含む束ねられた集合体を取り囲む任意選択のバレル(図示せず)を含むことができる。図示するように、制御ドラム115A~Nは、圧力容器160の周囲に存在し、例えば、反射体140を形成する充填要素(例えば、反射体ブロック141A~N)のサブセットを囲んで、反射体140内に散在または配置することができる。
【0069】
[0082]圧力容器160は、アルミニウム合金、炭素複合材、チタン合金、放射弾性SiC複合材、ニッケル基合金(例えば、Inconel(商標)またはHaynes(商標))、またはそれらの組み合わせで形成することができる。圧力容器160および原子炉システム100は、減速体冷却剤通路121A~Nを通って流れる減速体冷却剤、および燃料冷却剤通路142A~Nを通って流れる推進剤(例えば、水素ガスまたは液体)などの別個の核燃料冷却剤を移送するシリンダ、配管、および貯蔵タンクを含む他の構成要素からなることができる。減速体冷却剤および核燃料冷却剤は、減速流体159A~Bと流体連通していないガスまたは液体であることができる。
【0070】
[0083]図1Cの例では、原子炉システム100は、減速体冷却剤が減速体冷却剤通路121A~Nを通って流れることを可能にし、別個の核燃料冷却剤が燃料冷却剤通路142A~Nを通って流れることを可能にする。減速体冷却剤通路121A~Nは、例えば、減速体冷却剤が原子炉コア101内を通過して専用の減速体冷却剤ループを介してヒートシンク(図示せず)に入ることを可能にする、チャネルまたは孔などの平坦なリング形状(例えば、O字形)の開口部である。燃料冷却剤通路142A~Nは、BOPモジュール170用のガスを加熱するために、核燃料冷却剤が原子炉コア101内を通って熱交換器171内またはその近くを通過することを可能にするチャネルまたは孔である。
【0071】
[0084]代替的な実施態様では、減速体要素103A~Nと核燃料タイル104A~Nとの間で共有される冷却剤は、減速体冷却剤通路121A~Nおよび燃料冷却剤通路141A~Nの両方を通って流され得る。代替的な実施態様では、複数の燃料要素104A~Nを通って流れる冷却剤は、ヘリウム、フッ化リチウム(LiF)から形成されたFLiBe溶融塩、フッ化ベリリウム(BeF)、ナトリウム、He、HeXe、CO、ネオン、またはHeNを含むことができる。共有冷却剤は、共有冷却剤が核燃料タイル104A~N内で加熱される前に、減速体冷却剤通路121A~Nを通って流れる。これにより、減速体要素103A~Nが低温に保たれる。
【0072】
[0085]図1Dは、原子炉コア101によって放出されたときの、容器内シャドウシールド非保護アーク190A、容器内シャドウシールド保護アーク190B、モジュールシャドウシールド非保護アーク191A、モジュールシャドウシールド保護アーク191B、および複数の放射線粒子192A~I、ならびに経路を示す。容器内シャドウシールド154によって形成される容器内シャドウシールド保護アーク190Bと、モジュールシャドウシールド157によって形成されるモジュールシャドウシールド保護アーク191Bとは完全に重なっていなくてもよい。したがって、原子炉コア101から発する個々の放射線粒子192A~Iは、様々な経路に沿って遮断することができる。容器内中性子シールド153、容器内シャドウシールド154、輸送シールド155、およびモジュールシャドウシールド157は、様々な放射線粒子、特にアルファ、ベータ、およびガンマ粒子を遮断することができる。しかし、他の放射性粒子と比較して減速体を通って容易に進行する能力に起因して、また、減速体が存在する機器および人間の生命に対するリスクに起因して、容器内中性子シールド153、容器内シャドウシールド154、輸送シールド155、およびモジュールシャドウシールド157は、好ましくはガンマ粒子を遮断するように設計することができる。
【0073】
[0086]第1の放射線粒子192Aは、容器内シャドウシールド154に衝突することができ、遮断される。第2の放射線粒子192Bは、容器内シャドウシールド154を通過し、容器内中性子シールド153に衝突することができ、ブロックされる。第3の放射線粒子192Cは、容器内シャドウシールド154および容器内中性子シールド153を通過し、輸送シールド155に衝突することができ、遮断される。第4の放射線粒子192Dは、容器内シャドウシールド154、容器内中性子シールド153、および輸送シールド155を通過し、モジュールシャドウシールド157に衝突することができ、遮断される。
【0074】
[0087]第5の放射線粒子192Eは、容器内中性子シールド153に直接衝突して停止することができる。第6の中性子粒子192Fは、容器内中性子シールド153を通過し、輸送シールド155に衝突することができ、遮断される。第7の放射線粒子192Gは、容器内中性子シールド153および輸送シールド155を通過し、モジュールシャドウシールド157に衝突することができ、遮断される。TSチャンバ156がMSSチャンバ158を取り囲む例では、第8の放射線粒子192Hは、容器内中性子シールド153、輸送シールド155を最初に、およびモジュールシャドウシールド157、輸送シールド155を2回目に衝突することができ、遮断される。TSチャンバ156がMSSチャンバ158を取り囲む別の例では、第9の放射線粒子192Iは、容器内シャドウシールド154、容器内中性子シールド153、輸送シールド155を最初に通過することができ、モジュールシャドウシールド157を通過し、輸送シールド155に2回目に衝突することができ、遮断される。
【0075】
[0088]したがって、図1A図1Dは、核熱供給(NHS)モジュール150を含む原子炉システム100を示す。NHSモジュールは、原子炉コンテナ151を含む。原子炉コンテナ151は、原子炉キャビティ152を含む。NHSモジュール150は、原子炉コンテナ152内に圧力容器160をさらに含む。圧力容器160は、内壁161を含む。NHSモジュール150は、圧力容器160内に配置された原子炉コア101をさらに含む。原子炉コア101は、複数の燃料要素104A~Nと、少なくとも1つの減速体要素103Aとを含む。NHSモジュール150は、原子炉コア101を取り囲むように圧力容器160の内壁161に配置された容器内中性子シールド153をさらに含む。NHSモジュール150は、圧力容器160の内側に容器内シャドウシールド154をさらに含む。NHSモジュール150は、第1の減速流体159Aを含むための原子炉キャビティ152内のTSチャンバ156を含む、原子炉コンテナ151内および圧力容器160の外側の輸送シールド(TS)155をさらに含む。NHSモジュール150は、第2の減速流体159Bを含むための原子炉キャビティ152内のMSSチャンバ158を含む、原子炉コンテナ151内および圧力容器160の外側のモジュールシャドウシールド(MSS)157をさらに含む。
【0076】
[0089]輸送シールド155は、TSチャンバ156を実質的に満たす第1の減速流体159Aをさらに含む。モジュールシャドウシールド157は、MSSチャンバ158を実質的に充填する第2の減速流体159Bをさらに含む。NHSモジュール150は、中間熱交換器171およびガス循環器172をさらに含む。熱交換器171は、原子炉コア101に熱的に結合されている。輸送シールド155は、第1の減速流体159Aをさらに含む。第1の減速流体159Aは、TSチャンバ156を実質的に充填する。
【0077】
[0090]NHSモジュール150は、アクティブ状態と非アクティブ状態とを含む。第1の例では、NHSモジュール150が非アクティブ状態にある間にNHSモジュール150によって誘発されるNHSモジュール150の外側のレントゲン当量(rem)は、毎時50rem(rem/hr)未満である。第1の減速流体は、水(HO)を含む。第2の例では、NHSモジュール150が非アクティブ状態にある間にNHSモジュール150によって誘発されるNHSモジュール150の外部のrem線量は、毎時10rem(rem/hr)未満である。第1の減速流体159Aは、水(HO)を含み、第1の減速流体159Aは、約1.63グラム/立方センチメートル(g/cc)以上の濃度のPb(NO(硝酸鉛)を含む。第3の例では、NHSモジュール150が非アクティブ状態にある間にNHSモジュール150によって誘発されるNHSモジュール150の外側のrem線量は、毎時0.5rem(rem/hr)未満である。第1の減速流体159Aは、水(HO)を含み、第1の減速流体159Aは、約5グラム/立方センチメートル(g/cc)以上の濃度のZnBr(臭化亜鉛)を含む。
【0078】
[0091]モジュールシャドウシールド157は、第2の減速流体159Bをさらに含む。第2の減速流体159Bは、MSSチャンバ158を実質的に充填する。複数の燃料要素104A~Nは、複数の放射線粒子192A~Iを放出する。容器内シャドウシールド154は、複数の放射線粒子192A~Iの第1の放射線粒子192Aを最初に遮断する。容器内シャドウ中性子シールド153は、容器内シャドウシールド154を通過した複数の放射線粒子192A~Iの第2の放射線粒子192Bを遮断する。輸送シールド155は、容器内シャドウシールド154および容器内中性子シールド153を通過した複数の放射線粒子192A~Iの第3の放射線粒子192Cを遮断する。モジュールシャドウシールド157は、容器内シャドウシールド154、容器内中性子シールド153、および輸送シールド155を通過した複数の放射線粒子192A~Iの第4の放射線粒子192Dを遮断する。
【0079】
[0092]原子炉システム100は、NHSモジュール150の外側に配置されたバランスオブプラント(BOP)モジュール170をさらに含む。原子炉コンテナ151は、輸送シールド155、モジュールシャドウシールド157、圧力容器160、容器内シャドウシールド154、原子炉コア101、および容器内中性子シールド153を収容する。BOPモジュール170は、ターボ機械173と、発電機174と、原子炉制御システム175とを含む。第1の減速流体159Aは、放射線粒子192Cを(例えば、放射線粒子192Cを吸収することによって)遮断して、放射線粒子192CがBOPモジュール170まで進行するのを防ぐ。第2の減速流体159Bは、放射線粒子192Dを(例えば、放射線粒子192Dを吸収することによって)遮断して、放射線粒子192DがBOPモジュール170まで進行するのを防ぐ。
【0080】
[0093]容器内シャドウシールド154、容器内中性子シールド153、第1の減速流体159A、および第2の減速流体159Bは、1つまたは複数の中性子吸収材料を含む。容器内中性子シールド153は、中性子減速体および特定の同位体または天然同位体組成が濃縮された中性子吸収材料を有する複合材料または多層材料で形成される。第1の減速流体159Aは、水素密度の高い液体を含む。第2の減速流体159Bは、水(HO)を含む。中性子減速体は、金属水素化物、ポリエチレン、プラスチック、ベリリウム含有化合物、またはそれらの組み合わせを含む。中性子吸収材料は、ホウ素、炭化ホウ素、金属ホウ化物、ガドリニウム、ユーロピウム、タングステン、またはそれらの組み合わせを含む。容器内中性子シールド153は、2つ以上の中性子吸収材料で形成される。2つ以上の中性子吸収材料は、黒色に近い中性子吸収材料と、灰色吸収材料とを含む。
【0081】
[0094]図2は、図1Bの原子炉システム100のブロック図であるが、補助供給モジュール250と個別の制御モジュール275とをさらに含む。NHSモジュール150は、図1A図1Dと同じであり、原子炉コア101が熱を生成し、熱は熱交換器171内で交換され、次いでガス循環器172によってBOPモジュール170まで循環される。BOPモジュール270は、図1A図1DのBOPモジュール170と同様であるが、原子炉制御システム175は、別個の制御モジュール270内に実装される。BOPモジュール270は、依然としてNHSモジュール170から熱を受け取り、動力変換システム内のターボ機械173を使用して高温ガスエネルギーを機械的回転エネルギーに変換し、これにより発電機174を回転させて同期交流電気を生成する。このNHSモジュール150は、動力変換のために熱交換器171を介して二次ループに結合されたヘリウム冷却原子炉107である。
【0082】
[0095]原子炉システム100は、補助供給モジュール250を含む。この補助供給モジュール250は、NHSモジュール150が非アクティブ状態にあるときに稼働する。この補助供給モジュール250は、石油化学製品によって動力供給することができ、大型電池であることができ、または代替エネルギー源を使用することができる。補助供給モジュール250はまた、原子炉コア101からの残留熱を吸収するように設計することができる。補助供給モジュール250は、この残留熱を使用して、電気、機械的エネルギー、またはNHSモジュール150のように高温ガスも生成することができる。あるいは、補助供給モジュール250は、単にNHSモジュール150から熱または自由中性子を放出するのを支援し、所望の場合にNHSモジュール150をアクティブ状態から非アクティブ状態にさらに迅速に移動させることができる。
【0083】
[0096]さらに、原子炉システム100は、上記で論じた制御モジュール275を含む。制御モジュール275は、NHSモジュールおよびBOPモジュールを制御することを目的とした原子炉制御システム175を組み込んでいる。さらに、制御モジュール275は、補助供給モジュール250を制御することができる。
【0084】
[0097]図3Aは、BOPモジュール270がNHSモジュール150から離れている、展開状態の図1Bの原子炉システム100の等角図である。この展開状態では、NHSモジュール150からの距離が増大するため、人員は、BOPモジュール270とより安全に相互作用することができる。加熱ガスは依然として、ガスコネクタ管路180を介してNHSモジュール150からBOPモジュール270に移動することができる。展開状態にある原子炉システム100の描写は全て、NHSモジュール150およびBOPモジュール170、270を、軸方向に水平に、例えば地面に対して平坦または面一に向けて描写する。これらの軸方向水平方向は、物流および展開を改善し、地震の懸念を最小限に抑えることができる。しかし、NHSモジュール150は、任意の方向に向けることができ、地上にまたは地下に埋設することさえできる。地下に部分的にまたは完全に埋設されることにより、NHSモジュール150の近くで経験されるrem線量を低減することができ、それらの人員に対する遮蔽要件または安全要件を低減することができる。埋没は、地中に埋没すること、コンクリートで固めること、および水中に沈むこととして理解されるべきである。NHSモジュール150はまた、建物内、地面上に、地面の上方に、または地下に置くことができる。NHSモジュール150を非常に高く置くこと、または地下の地下室内に置くこともまた、人員に対する遮蔽要件または安全要件を低減することができる。NHSモジュール150はまた、BOPモジュール170、270から任意の妥当な距離にあることができるが、ガスコネクタ管路180が長くなると、ガス循環器172がNHSモジュール150からBOPモジュール170、270に加熱ガスを送るときに、より多くの熱損失をもたらしやすくなる。
【0085】
[0098]図3Bは、BOPモジュール270がNHSモジュール150に近接した状態の、パッケージ状態の図1Bの原子炉システムの等角図である。制御モジュール275は、BOPコンテナ177内で、BOPモジュール270と共にパックされる。このパッケージ状態では、原子炉システム100は、輸送が容易であり、単一のセミトレーラトラックトレーラに収まる。原子炉システム100は、この構成で動作することができる。しかし、これは、BOPモジュール270および原子炉システム100を動作させる人員に過剰な放射線をかけ得る。例えば、容器内シャドウシールド保護アーク190Bおよびモジュールシャドウシールド保護アーク191Bが、BOPモジュール270および人員が立つであろうBOPモジュールの周囲の直近領域を完全には覆わない場合がそうである。
【0086】
[0099]図4は、原子炉システム100のための原子炉展開方法400のフローチャートである。原子炉展開方法400のステップ405、410、415、420および425は任意の順序で実行することができるが、提示された順序は、放射線曝露が懸念される原子炉システム100の構成要素に十分に近い生物またはプラント人員にとって最も安全である可能性が高い。ステップの順序は、NHSモジュール150を取り付けるためにプラント人員を原子炉107の近くで密接して作業させる前に、最初に最も広いシールド(輸送シールド155)を確立し、次に特有のシールド(MSS157)を確立する。
【0087】
[0100]ステップ405で開始して、原子炉展開方法400は、第1の減速流体159Aで核熱供給(NHS)モジュール150の輸送シールド(TS)チャンバ156を実質的に充填するステップを含む。NHSモジュール150は、原子炉コア101を含む。ステップ410に移ると、原子炉展開方法400は、NHSモジュール150を第1の位置から第2位置に輸送するステップをさらに含む。
【0088】
[0101]次にステップ415に進んで、原子炉展開方法400は、NHSモジュールを輸送した後、第2の減速流体159BでNHSモジュール150のモジュールシャドウシールド(MSS)チャンバ158を実質的に充填するステップをさらに含む。ステップ420では、原子炉展開方法400は、NHSモジュール150を第2の位置の地面に結合するステップをさらに含む。NHSモジュール150を地面に結合することは、NHSモジュール150を地面、構造もしくはプラットフォームに固定すること、またはNHSモジュール150を地面に、地下に部分的もしくは完全に埋設することを意味することができる。NHSモジュール150を、地面に直接または間接的にそれ自体が固定または結合されている物体に固定することにより、NHSモジュール150は、地面に固定および結合される。ステップ425で終了すると、原子炉展開方法400は、原子炉コア101の中性子束を臨界レベルまで増加させ、最終的に、バランスオブプラントモジュール170が発電するのに十分な熱を生成するステップをさらに含む。通常、原子炉コア101の中性子束を臨界レベルまで増加させるステップ425は、第2の減速流体159BでMSSチャンバ158を実質的に充填するステップの後に行われる。
【0089】
[0102]図5Aは、原子炉システム100がパッケージ状態にあり、陸上車両501に搭載され、航空機502、または場合によっては船舶503に搭載されるように準備されている原子炉遮蔽方法500のステップの概略図である。これまで論じたように、パッケージした原子炉システム100をセミトレーラトラックトレーラに収めることができる。陸上車両501に載っているとき、原子炉システム100は、非アクティブ状態にあり、輸送シールド155は、第1の減速流体159Aで充填され、減速している。
【0090】
[0103]原子炉システム100はまた、Lockheed Hercules(商標)C-100またはC-130(商標)などの航空機502内に収まることができる。しかし、特定の航空機502(およびいくつかの陸上車両501)のサイズおよび重量要件を満たすために、NHSモジュール150およびBOPモジュール170を別々に分離して輸送する必要があり得る。次いで、それぞれの走行が完了すると、NHSモジュール150およびBOPモジュール170は、それらの走行を継続させるためにパッケージ状態で、または電力供給を開始するために展開状態で再接合することができる。原子炉システム100が、CONEXまたはISOボックスの形式の発送コンテナの容積内に収まることができ、その安全公差を有するとき、原子炉システム100は、コンテナ船のような船舶503によって収容することもできる。
【0091】
[0104]図5Bは、放射線に生物が曝露されるリスクを軽減するための原子炉遮蔽方法500のフローチャートである。原子炉遮蔽方法500のステップは任意の順序で実行することができるが、提示された順序は、放射線曝露が懸念される原子炉システム100の構成要素に十分に近い生物またはプラント人員にとって最も安全である可能性が高い。概して、この原子炉遮蔽方法500は、原子炉システム100の非アクティブ化、トラック、次いで飛行機、次いで再びトラックによる移動、およびアクティブ化を網羅する。ステップ505で開始して、原子炉遮蔽方法500は、核熱供給(NHS)モジュール150を輸送する前に、NHSモジュール150の原子炉コア101の中性子束を亜臨界レベルまで低減するステップを含む。次に、ステップ510では、原子炉遮蔽方法500は、原子炉コアの中性子束を亜臨界レベルまで減少させた後、原子炉コア101が非アクティブ状態に達するのを待機するステップを含む。この例では、7日以内に非アクティブ状態に達する。ステップ510は省略することができるが、輸送されたときにNHSモジュール150は実質的により多くの放射線を放出し、より多くの予防措置を講じる必要がある。次にステップ515では、またはステップ505および510と同時に、原子炉遮蔽方法500は、第1の減速流体159Aで原子炉システム100の核熱供給(NHS)モジュール150の輸送シールド(TS)チャンバ156を実質的に充填するステップを含む。上記で留意したように、原子炉システム100は、原子炉コア101を含む。
【0092】
[0105]ステップ520に移ると、BOPモジュール170の重量によって、原子炉システム100が陸上車両501、航空機502、もしくは船舶503の重量能力限界を超える場合、または安全上もしくは効率的な物流上の理由から、原子炉遮蔽方法500は、原子炉コア101の中性子束を亜臨界レベルまで低減した後、バランスオブプラント(BOP)モジュール170をNHSモジュール150から結合解除するステップを含むことができる。ステップ520では、例えば、陸上車両501の重量容量の問題のために、BOPモジュール170をNHSモジュール150から分離する必要があると仮定する。あるいは、ステップ520は、ステップ525の後ではあるが、NHSモジュール150を第2のトリップで第2の位置から第3の位置に空輸する前に行うことができる。
【0093】
[0106]ステップ525に進んで、原子炉遮蔽方法500は、NHSモジュール150を第1の位置から第2の位置に輸送するステップを含む。NHSモジュール150を第1の位置から第2の位置に輸送するステップ525は、陸上車両501、航空機502、または船舶503による第1のトリップでNHSモジュール150を第1の位置から第2の位置に輸送するステップを含むことができる。例えば、NHSモジュール150および/またはバランスオブプラント(BOP)モジュール170は、陸上車両501、航空機502、または船舶503に搭載することができ、最初のトリップで第1の位置から第2の位置に輸送することができる。ステップ525の前、BOPモジュール170がNHSモジュール150とは別個に輸送されていない限り、原子炉システム100は、パッケージ状態に置かれる。原子炉システム100が陸上または海上を1回だけ移動する例では、ステップ545までスキップすることができる。原子炉システム100が陸上または海上を1回だけ移動し、BOPモジュール170がNHSモジュール150と共に輸送される例では、ステップ545までスキップすることができ、ステップ550は省略することができる。
【0094】
[0107]次に任意選択のステップ530に進んで、第1の減速流体159Aの重量によって原子炉システム100が第2の航空機の重量能力限界を超える場合、原子炉遮蔽方法500は、NHSモジュール150を輸送する(例えば、空輸する)前にTSチャンバ156から第1の減速流体159Aを実質的に排出する工程を含むことができる。ステップ530は任意選択であり、重量容量が問題でない場合、第1の減速流体159Aは、TSチャンバ156から実質的に排出されない。ステップ520は、輸送シールド155がNHSモジュール150をBOPモジュール170から結合解除する人員を保護するので、ステップ530の前に行われることが好ましい。
【0095】
[0108]ステップ535では、原子炉遮蔽方法500は、NHSモジュール150を第2のトリップで第2の位置から第3の位置に輸送するステップを含む。通常、NHSモジュール150をフライト中に第2位置から第3位置に空輸する前に、原子炉遮蔽方法500は、NHSモジュール170からバランスオブプラントモジュール170を結合解除するステップ520を実施する。例えば、ステップ535は、例えば航空機502によるフライトの第2のトリップで、NHSモジュール150を第2の位置から第3の位置に空輸する工程を含むことができる。第2の航空機(第1の航空機、車両501、または船舶503よりも潜在的に低い重量容量を有する)、またはステップ535の前もしくは後に同じ航空機502を使用して、原子炉遮蔽方法500のステップ540は、例えば、航空機502による別のフライトで、BOPモジュール170を第2の位置から第3の位置に輸送する(例えば空輸する)工程を含むことができる。NHSモジュール150フライトが着陸すると、ステップ545を行うことができるが、オプションのステップ530が行われた場合、オプションのステップ541が行われる。
【0096】
[0109]任意選択のステップ541では、原子炉遮蔽方法500は、例えばNHSモジュール150を輸送(例えば、空輸)した後に、第1の減速流体159AでTSチャンバを実質的に充填するステップを含む。ステップ541は任意選択であり、ステップ530が行われる場合にのみ行われてもよい。第1の減速流体159Aのこの第2の実質的な充填は、別のフライトで輸送可能である文字通り同じ流体、または化学的に同等の流体であることができる。第1の減速流体159Aのような強力な中性子減速特性を有する限り、異なる流体を使用することもできる。
【0097】
[0110]NHSモジュール150は、BOPモジュール170が第3の位置に着陸するのを待機することができる。NHSモジュール150が第3の位置に到達すると、ステップ545が行われる。ステップ545では、原子炉遮蔽方法500は、NHSモジュール150を輸送した後に、第2の減速流体159Bでモジュールシャドウシールド157のモジュールシャドウシールド(MSS)158チャンバを実質的に充填するステップを含む。
【0098】
[0111]次にステップ550に移ると、原子炉遮蔽方法500は、NHSモジュール150を輸送した後に、原子炉コア101の中性子束を臨界レベルまで増加させる前に、バランスオブプラントモジュール170をNHSモジュール150に再結合するステップを含む。例えば、ステップ550は、バランスオブプラントモジュール170を第2の位置から第3の位置に空輸した後、バランスオブプラントモジュール170をNHSモジュール150に再結合する工程を含むことができる。このステップは、ステップ520においてBOPモジュール170がNHSモジュール150から結合解除された場合にのみ行われることに留意されたい。この時点で、原子炉システム100は、次いで、展開状態に置かれる。NHSモジュール150が展開された状態で、ステップ555では、原子炉遮蔽方法500は、TSチャンバ156から第1の減速流体159Aを実質的に排出するステップを含む。次にステップ560で終了し、原子炉遮蔽方法500は、第2の減速流体159BでMSSチャンバ158を実質的に充填した後、原子炉コア101の中性子束を臨界レベルまで増加させるステップを含む。その後すぐに、原子炉コア101は、臨界状態に入り、BOPモジュール170は、電気を生成することができる。
【0099】
[0112]状況によっては、ステップをスキップするか、または順序を崩すことができる。特に、ステップ555におけるTSチャンバ156の最終排出は省略されてもよい。MSSチャンバ158は、NHSモジュール150の近くに長期間座る可能性がある乗員を保護するために、陸上車両501または船舶503内で原子炉システム100を運ぶ前に充填されてもよい。同様に、重量制限が許す場合、MSSチャンバ158は、NHSモジュール150の近くに長時間座る可能性がある航空機乗員を保護するために、TSチャンバ156がフライトを行うために排出されたときに充填されてもよい。あるいは、TSチャンバ156は、別個のセクションに区分されてもよく、それによって液体減速体159A~Bの一部のみが航空機輸送中に残って、重量制限内に留まり、航空機乗員を遮蔽することを可能にする。
【0100】
[0113]図6は、原子炉システム100の様々な構成要素の予測または推定重量を含む重量表600である。セミトレーラトラックは一般に80000ポンドを輸送するようにしか定格されておらず、C-130は42、000ポンドを輸送するようにしか定格されておらず、C-100は51、050ポンドを輸送するようにしか定格されていないため、重量表600は重要である。重量表600を見ると、原子炉システム全体の質量615が60、088ポンドになると予測されることが分かる。すなわち、原子炉システム100は、定格80、000ポンドの単一のセミトレーラトラックトレーラに収まることができるが、C-100では重すぎる。しかし、NHSモジュール150の重量であるNHSモジュール小計605は44、217ポンドであり、C-100上に収容することができる。C-130内に収まるように、7、714ポンドの減速流体159A~Bの形態の遮蔽体(すなわち、輸送シールド155およびモジュールシャドウシールド157)を部分的または完全に排出することができる。2、217ポンド、またはそれ以上の減速流体159A~Bの形態の遮蔽155、157が排出されると、NHSモジュール150は、NHSモジュール150の重量が42、000ポンドになるので、C-130によって輸送することができる。減速流体159A~Bの形態の遮蔽155、157の全てが排出されたNHSモジュール150の最小重量は、36、503ポンドである。
【0101】
[0114]BOPモジュール170の重量であるBOPモジュール小計610は、BOPモジュールがC-130またはC-100に収まり、余裕があることを示す。排出された減速流体159A~Bの一部は、潜在的にBOPモジュール170と対にすることができ、減速流体159A~Bは、C-100フライトでBOPモジュール170とパッケージすることができる。次いで、このパッケージされた減速流体159A~Bは、到着時にNHSモジュール150に圧送して戻すことができる。
【0102】
[0115]図7は、水のみが減速流体としてTSチャンバ156を充填するために使用される場合と比較して、硝酸鉛飽和水が減速流体159AとしてTSチャンバ156を充填するために使用される場合に、NHSモジュール150内の異なる位置内に受信された光子線量の硝酸鉛飽和水ヒートマップ700における相対光子線量である。硝酸鉛(Pb(NO)は、水に完全に可溶性であるので、水と共に使用するための良好なドーパントである。硝酸鉛は、水の密度を約50%効果的に増加させ、高Z材料を水に加える。硝酸鉛は、活性化の懸念として新たな材料を加えない。良好な減速流体159A~Bは、高Z材料を含み、活性化の懸念はない。水への硝酸鉛の溶解度は、0℃で376グラム/リットル(g/l)から100℃で1270g/lまでの範囲である。図6および図7は、1000g/lの溶解度を想定しており、その結果、1.63g/ccの水中の硝酸鉛密度をもたらす。臭化亜鉛(ZnBr)は、より低いZ材料であることを犠牲にして、より高いドーパント密度を可能にする別の一般的なドーパントである。温かい原子炉では、5g/ccの水中の臭化亜鉛密度が、達成可能である。
【0103】
[0116]図7では、硝酸鉛飽和水ヒートマップ700における相対光子線量は、4年間にわたってアクティブであり、その後7日間にわたって亜臨界および非アクティブにされ、7日間の減衰を可能にする原子炉107を表す。原子炉コアの外部である線量面は、(0,0)にある。原子炉コアからの垂直方向715の距離の単位はセンチメートルであり、原子炉コアからの水平方向710の距離の単位もセンチメートルである。(0,0)ならびに(0,100)、(200,100)、(200,-100)、および(0,-100)で囲まれた領域では、水705と比較して硝酸鉛飽和水の相対光子線量の改善がないことが分かる。これは、ボックスが原子炉コア101自体を構成するからである。左に移ると、水705と比較した硝酸鉛飽和水の相対光子線量は、最終的には左に400センチメートルにおいて約10-5まで減少することが分かる。さらに、上部では、(100,125)あたりにおいて、水705と比較した硝酸鉛飽和水の相対光子線量は0.2である、または硝酸鉛水線量は水の線量の1/5であることが分かる。代わりに臭化亜鉛を使用する場合、水と比較した臭化亜鉛飽和水の相対線量は0.0006であるか、または水の線量はその距離での臭化亜鉛飽和水の線量の1,667倍大きい。
【0104】
[0117]図8は、硝酸鉛飽和が輸送シールドチャンバ156を充填するために使用されるときにNHSモジュール150内の異なる位置で受けた光子線量の硝酸鉛飽和水ヒートマップ800における絶対光子線量である。図8には、輸送シールドチャンバ156が水で満たされたときに経験される実際の光子線量が示されている。原子炉コンテナ151の外面がほぼそうであろう(-50,0)において、硝酸鉛飽和水は、光子線量を5分の1から約10rem/hr減少させた。5g/ccの臭化亜鉛を使用することにより、光子線量をさらに20分の1減少させることができ、その結果、原子炉コンテナ151の外面で0.5rem/hrの線量が得られる。
【0105】
[0118]保護の範囲は、後続の特許請求の範囲によってのみ限定される。その範囲は、本明細書および後に続く審査履歴に照らして解釈されるときに特許請求の範囲で使用される文言の通常の意味と一致する広さで、全ての構造的および機能的均等物を包含するように意図され、解釈されるべきである。それにもかかわらず、特許請求の範囲のいずれも、特許法第101、102条または103条の要件を満たさない主題を包含することを意図しておらず、そのように解釈されるべきでもない。このような主題の意図しない包含は、本明細書によって放棄される。
【0106】
[0119]本明細書で使用する用語および表現は、特定の意味が本明細書に別途記載されている場合を除いて、それらの対応するそれぞれの調査および研究の分野に関してそのような用語および表現に与えられる通常の意味を有することが理解されよう。第1および第2などの関係用語は、そのようなエンティティまたは動作間の実際のそのような関係または順序を必ずしも必要とせず、または暗示せずに、1つのエンティティまたは動作を別のエンティティまたは動作から区別するためにのみ使用され得る。用語「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」、「含んでいる(containing)」、「含む(contain)」、「含む(contains)」、「有する(with)」、「形成された(formedof)」、またはそれらの任意の他の変形は、非排他的包含を網羅することを意図しており、それにより、要素またはステップのリストを備える、または含むプロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素またはステップのみを含むのではなく、明示的に列挙されていないか、またはそのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素またはステップを含むことができる。「a(1つ)」または「an(1つ)」が先行する要素は、さらなる制約なしに、その要素を含むプロセス、方法、物品、または装置における追加の同一の要素の存在を排除しない。
【0107】
[0120]さらに、上記の詳細な説明では、本開示を簡素化する目的で、様々な特徴が様々な例で一緒にグループ化されていることが分かる。この開示方法は、特許請求する例が各請求項に明示的に記載されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映すると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、保護されるべき主題は、任意の単一の開示された例の全ての特徴よりも少ない特徴にある。したがって、以下の特許請求の範囲は詳細な説明に組み込まれ、各請求項は、別個に特許請求される主題として独立している。
【0108】
[0121]上記は、最良の形態および/または他の例であると考えられるものを説明したが、その中で様々な修正が行われてもよく、本明細書に開示する主題は様々な形態および例で実施されてもよく、それらは多数の用途に適用されてもよく、そのうちのいくつかのみが本明細書に記載されていることが理解される。以下の特許請求の範囲によって、本発明の概念の真の範囲内に入るあらゆる修正および変形を請求することが意図されている。
【符号の説明】
【0109】
100 原子炉システム
101 原子炉コア
102A-N 絶縁体要素
103A-N 減速体要素
104A-N 燃料要素
107 原子炉
112 絶縁体要素アレイ
113 減速体要素アレイ
114 核燃料タイルアレイ
115A-N 制御ドラム
116 反射体材料
117 吸収体材料
140 反射体
141A-N 反射体ブロック
142A-N 燃料冷却剤通路
150 核熱供給(NHS)モジュール
151 原子炉コンテナ
152 原子炉キャビティ
153 容器内中性子シールド
154 容器内シャドウシールド
155 輸送シールド
156 輸送シールド(TS)チャンバ
157 モジュールシャドウシールド(MSS)
158 モジュールシャドウシールド(MSS)チャンバ
159A 第1の減速流体
159B 第2の減速流体
160 圧力容器
161 圧力容器内壁
170 バランスオブプラントモジュール
171 熱交換器
172 ガス循環器
173 ターボ機械
174 発電機
175 原子炉制御システム
176 熱交換器インターフェース
177 バランスオブプラントコンテナ
180 ガスコネクタ管路
190A 容器内シャドウシールド非保護アーク
190B 容器内シャドウシールド保護アーク
191A モジュールシャドウシールド非保護アーク
191B モジュールシャドウシールド保護アーク
192A-I 放射線粒子
250 補助供給モジュール
270 バランスオブプラントモジュール
275 制御モジュール
400 原子炉展開方法
405-425 原子炉展開方法ステップ
500 原子炉遮蔽方法
501 陸上車両
502 航空機
503 船舶
505-560 原子炉遮蔽方法ステップ
600 重量の表
605 NHSモジュール小計
610 BOPモジュール小計
615 原子炉システム全質量
700 硝酸鉛飽和水ヒートマップにおける相対光子線量
705 水と比較した硝酸鉛飽和水の相対光子線量
710 原子炉コアから水平方向の距離
715 リアクタコアから垂直方向の距離
800 硝酸鉛飽和水ヒートマップにおける絶対光子線量
805 硝酸鉛飽和水の絶対光子線量
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
【国際調査報告】