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特表2023-542273AMLを処置するための治療、ならびにRARAアゴニスト、低メチル化剤、およびBCL-2阻害剤の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-06
(54)【発明の名称】AMLを処置するための治療、ならびにRARAアゴニスト、低メチル化剤、およびBCL-2阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20230929BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230929BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230929BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230929BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230929BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20230929BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20230929BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20230929BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230929BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230929BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20230929BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20230929BHJP
【FI】
A61K31/192
A61P35/02
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P7/00
A61K31/706
A61K31/496
A61K31/7068
A61P35/00
G01N33/50 P
G01N33/68
C12Q1/6813 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507624
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(85)【翻訳文提出日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 US2021045087
(87)【国際公開番号】W WO2022032185
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】63/062,350
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/115,541
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/121,760
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517342268
【氏名又は名称】サイロス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】カン-フォルトナー, チン
(72)【発明者】
【氏名】フィオーレ, クリストファー エム.
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA36
4B063QA01
4B063QA19
4B063QR56
4B063QS34
4B063QX01
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA16
4C084MA17
4C084MA23
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA58
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA511
4C084ZA512
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086EA16
4C086EA17
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA51
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA07
4C206GA31
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA51
4C206ZB26
4C206ZB27
4C206ZC75
(57)【要約】
本開示は、特に、急性骨髄単球性白血病(AMLのM4サブタイプ)、急性単球性白血病(AMLのM5サブタイプ)、または骨髄異形成症候群(MDS)と診断された患者を処置する方法を特徴とする。本方法は、患者に治療有効量のレチノイン酸受容体-α(RARA)アゴニストまたはその薬学的に許容され得る塩を投与することを含む。1またはそれを超える実施形態(例えば、MDSの処置)では、RARAアゴニストまたはその薬学的に許容され得る塩の投与は、患者がRARAバイオマーカーを発現しているかどうかを決定する前に、かつ/またはRARAバイオマーカーのステータスを考慮せずに開始される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性骨髄単球性白血病(急性骨髄性白血病(AML)のM4サブタイプ)または急性単球性白血病(AMLのM5サブタイプ)と診断された患者の処置における、治療有効量のタミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩の使用。
【請求項2】
前記タミバロテンまたは前記その薬学的に許容され得る塩が、(a)前記患者から得た生体試料中の白血病細胞がRARAバイオマーカーを発現しているかどうかを決定する前に、かつ/または前記RARAバイオマーカーのステータスを考慮せずに;(b)前記患者から得た生体試料中の白血病細胞が、単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーを発現していると決定した後に、;または(c)前記患者から得た生体試料中の白血病細胞が、RARAバイオマーカー、および単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーを発現していると決定した後に、前記患者に投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
骨髄異形成症候群(MDS)と診断された患者の処置における、治療有効量のタミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩の使用であって、前記タミバロテンまたは前記その薬学的に許容され得る塩が、(a)前記患者から得た生体試料中のMDS細胞が、RARAバイオマーカーを発現しているかどうかを決定する前に、かつ/または前記RARAバイオマーカーのステータスを考慮せずに;(b)前記患者から得た生体試料中のMDS細胞が、単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーを発現していると決定した後に;または(c)前記患者から得た生体試料中のMDS細胞が、RARAバイオマーカー、および単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーを発現していると決定した後に、前記患者に投与される、使用。
【請求項4】
(a)前記RARAバイオマーカーが、(i)RARA一次RNA転写物またはそれから転写されたcDNAの、基準と比較して上昇した発現、または(ii)前記RARA遺伝子に関連するスーパーエンハンサーを含み、(b)単球の表現型を示す前記少なくとも1つのバイオマーカーが、(i)CD14遺伝子、CLEC7A(CD369)遺伝子、CD86遺伝子、CD68遺伝子、LYZ遺伝子、MAFB遺伝子、CD34遺伝子、ITGAM(CD11b)遺伝子、および/またはFCGR1A(CD64)遺伝子からの一次RNA転写物、それから転写されたcDNA、またはそれによってコードされるタンパク質の、基準と比較して上昇した発現、あるいは、(ii)前記CD14遺伝子、前記CLEC7A(CD369)遺伝子、前記CD86遺伝子、前記CD68遺伝子、前記LYZ遺伝子、前記MAFB遺伝子、前記CD34遺伝子、前記ITGAM(CD11b)遺伝子、前記FCGR1A(CD64)遺伝子、KIT(CD117)遺伝子、前記MCL1遺伝子および/または前記BCL2に関連するスーパーエンハンサーを含む、請求項2または請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記タミバロテンまたは前記その薬学的に許容され得る塩が、治療有効量の第2の治療薬または治療有効量の複数の追加の治療薬と組み合わせて投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記第2の治療薬が低メチル化剤である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記低メチル化剤が、アザシチジンまたはデシタビンである、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記第2の治療薬がBCL2阻害剤である、請求項5に記載の使用。
【請求項9】
前記BCL2阻害剤がベネトクラクスである、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記タミバロテンが、低メチル化剤およびBCL2阻害剤と組み合わせて投与される、請求項5に記載の使用。
【請求項11】
前記低メチル化剤がアザシチジンであり、前記BCL2阻害剤がベネトクラクスである、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記患者がベネトクラクスによる処置後に再発したか、前記患者がベネトクラクスによる処置に難治性になったか、または前記患者から得た生体試料内の白血病細胞またはMDS細胞がベネトクラクスに対する抵抗性を示した、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記患者がAMLのM4サブタイプ、AMLのM5サブタイプ、またはMDSと新規診断され、かつ/または標準的な導入化学療法に不適格であると考えられる、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記患者が、フランス・アメリカ・イギリス(FAB)分類系によって、またはAMLのM4サブタイプ、AMLのM5サブタイプ、またはMDSに特徴的な遺伝子またはタンパク質発現プロファイルによって、AMLのM4サブタイプ、AMLのM5サブタイプ、またはMDSと診断された、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
単球の表現型を示す前記少なくとも1つのバイオマーカーが、基準と比較して、ベネトクラクスに対する抵抗性と相関する発現のレベルを有する遺伝子またはタンパク質であり、必要に応じて、単球の表現型を示す前記少なくとも1つのバイオマーカーが、CD14、CLEC7A(CD369)、CD86、CD68、LYZ、MAFB、CD34、ITGAM(CD11b)、FCGR1A(CD64)、またはKIT(CD117)、MCL1、およびBCL2から選択される遺伝子、それから転写されたcDNA、またはそれによってコードされるタンパク質を含む、請求項2または3に記載の使用。
【請求項16】
前記複数の追加の治療薬が、治療有効量のアザシチジンまたはデシタビン、ベネトクラクス、および低用量シタラビンを含む、請求項5に記載の使用。
【請求項17】
前記患者が、AMLのM4サブタイプ、AMLのM5サブタイプ、またはMDSと新規診断された、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記RARAバイオマーカーおよび/または単球の表現型を示す前記少なくとも1つのバイオマーカーが、(a)RARA遺伝子または単球の表現型を示す遺伝子に関連するスーパーエンハンサーであって、前記スーパーエンハンサーが、所定の閾値レベルに等しいかまたはそれを上回る、強度またはその強度もしくは保有率に基づく序列順位を有する、スーパーエンハンサー;および/または(b)所定の閾値レベルに等しいかまたはそれを上回る、前記RARA遺伝子または単球の表現型を示す前記遺伝子からの一次RNA転写物のレベルを、前記患者から得た生体試料中のがん細胞が有するかどうかを決定することによって評価されるか、または評価されている、請求項15に記載の使用。
【請求項19】
前記RARAバイオマーカーおよび単球の表現型を示す前記少なくとも1つのバイオマーカーが、
前記RARA遺伝子または単球の表現型を示すバイオマーカー遺伝子からの一次RNA転写物レベルであって、前記転写物レベルが、タミバロテンに応答する可能性がある患者とタミバロテンに応答しそうにない患者との間の境界線を定義する閾値レベルに対して上昇しており、AMLのM4またはM5サブタイプを表す細胞株、MDSを表す細胞株、AMLのM4またはM5サブタイプを表す異種移植片、MDSを表す異種移植片、AMLのM4またはM5サブタイプに罹患している患者由来の生体試料、またはMDSに罹患している患者由来の生体試料を含む試料の集団における一次RNA転写物レベルの分析によって予め決定されており、
前記集団における試料の数が、前記試料の集団よりも大きいAMLのM4またはM5サブタイプまたはMDSを有する患者群における一次RNA転写物レベルの分布を合理的に反映するのに十分であり;
前記集団における一次RNA転写物レベルの分析が、少なくとも一部の前記試料をタミバロテンに対する応答性について試験し、(i)タミバロテンに応答する前記集団中の試料の最も低い一次RNA転写物レベル、および(ii)タミバロテンに応答しない前記集団中の試料の最も高い一次RNA転写物レベルを確立し、それにより前記最も低いRNA転写物レスポンダーと前記最も高いRNA転写物ノンレスポンダーをそれぞれ定義することを含み;
前記閾値レベルが、(i)前記最も低い一次RNA転写物レスポンダーの前記一次RNA転写物レベルに等しいかまたは最大約5%上回るレベル、(ii)前記最も高い一次RNA転写物ノンレスポンダーの前記一次RNA転写物レベルに等しいかまたは最大約5%上回るレベル、または(iii)前記最も低い一次RNA転写物レスポンダーの前記一次RNA転写物レベルと前記最も高い一次RNA転写物ノンレスポンダーの前記一次RNA転写物レベルとの間の値、に設定されている、
一次RNA転写物レベルであるかまたはこれらを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
急性骨髄性白血病(AML)またはMDSと診断された患者を処置する際の、治療有効量のタミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩、アザシチジンまたはその薬学的に許容され得る塩、およびベネトクラクスまたはその薬学的に許容され得る塩の使用。
【請求項21】
前記タミバロテン、アザシチジン、およびベネトクラクス、または前記それらの塩の1もしくはそれより多くが、前記患者から得た生体試料中の白血病細胞がRARAバイオマーカーを発現しているかどうかを決定する前に、かつ/または前記RARAバイオマーカーのステータスを考慮せずに、前記患者に投与される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記治療有効量のタミバロテン、アザシチジン、およびベネトクラクス、または前記それらの塩の1もしくはそれより多くが、前記患者がRARAバイオマーカーを発現していると決定された後に前記患者に投与される、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
前記RARAバイオマーカーが、RARA一次RNA転写物、前記RARA一次RNA転写物から転写されたcDNA、または前記RARA遺伝子に関連するスーパーエンハンサーの、基準と比較して上昇した発現を含む、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記患者が、AMLまたはMDSと新規診断された、請求項20~23のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
前記使用が、治療有効量の低用量シタラビンの投与をさらに含む、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記患者が、標準的な導入化学療法に不適格であると考えられる、請求項24に記載の使用。
【請求項27】
前記使用が、治療有効量の低用量シタラビンの投与をさらに含む、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記RARAバイオマーカーが、(a)RARA遺伝子に関連するスーパーエンハンサーであって、前記スーパーエンハンサーが、所定の閾値レベルに等しいかまたはそれを上回る、強度またはその強度もしくは保有率に基づく序列順位を有する、スーパーエンハンサー;および/または(b)所定の閾値レベルに等しいかまたはそれを上回る、前記RARA遺伝子からの一次RNA転写物のレベルを、前記患者から得た生体試料中のがん細胞が有するかどうかを決定することによって評価されるか、または評価されている、請求項22に記載の使用。
【請求項29】
前記RARAバイオマーカーが、
前記RARA遺伝子からの一次RNA転写物レベルであって、前記転写物レベルが、タミバロテンに応答する可能性がある患者とタミバロテンに応答しそうにない患者との間の境界線を定義する閾値レベルに対して上昇しており、AMLを表す細胞株、MDSを表す細胞株、AMLを表す異種移植片、MDSを表す異種移植片、AMLに罹患している患者由来の生体試料、またはMDSに罹患している患者由来の生体試料を含む試料の集団における一次RNA転写物レベルの分析によって予め決定されており、
前記集団における試料の数が、前記試料の集団よりも大きいAMLまたはMDSを有する患者群におけるRARA一次RNA転写物レベルの分布を合理的に反映するのに十分であり;
前記集団におけるRARA一次RNA転写物レベルの前記分析が、少なくとも一部の前記試料をタミバロテンに対する応答性について試験し、(i)タミバロテンに応答する前記集団中の試料の最も低い一次RNA転写物レベル、および(ii)タミバロテンに応答しない前記集団中の試料の最も高い一次RNA転写物レベルを確立し、それにより前記最も低いRARA RNA転写物レスポンダーと前記最も高いRARA RNA転写物ノンレスポンダーをそれぞれ定義することを含み;
前記閾値レベルが、(i)前記最も低いRARA RNA転写物レスポンダーの前記RARA RNA転写物レベルに等しいかまたは5%まで高いレベル、(ii)前記最も高いRARA RNA転写物ノンレスポンダーの前記RARA RNA転写物レベルに等しいかまたは5%まで高いレベル、または(iii)前記最も低いRARA RNA転写物レスポンダーの前記RARA RNA転写物レベルと前記最も高いRARA RNA転写物ノンレスポンダーの前記RARA RNA転写物レベルとの間の値、に設定されている、
一次RNA転写物レベルであるかまたはこれらを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
慢性骨髄単球性白血病(CMML)、慢性リンパ性白血病(CLL(例えば、17p欠失を有する))、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、多発性骨髄腫(MM)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、またはマントル細胞リンパ腫(MCL)と診断された患者を処置する際の、治療有効量のタミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩の使用。
【請求項31】
前記タミバロテンまたは前記その薬学的に許容され得る塩が、前記患者から得た生体試料中の白血病、リンパ腫、またはマントル細胞がRARAバイオマーカーを発現しているかどうかを決定する前に、かつ/または前記RARAバイオマーカーのステータスを考慮せずに、前記患者に投与される、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記タミバロテンまたは前記その薬学的に許容され得る塩が、前記患者から得た生体試料中の白血病、リンパ腫、またはマントル細胞がRARAバイオマーカーおよび/または単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーを発現するかどうかを決定した後に、前記患者に投与される、請求項30に記載の使用。
【請求項33】
前記RARAバイオマーカーが、(i)RARA一次RNA転写物またはそれから転写されたcDNAの、基準と比較して上昇した発現、または(ii)前記RARA遺伝子に関連するスーパーエンハンサーを含み、(b)単球の表現型を示す前記少なくとも1つのバイオマーカーが、(i)CD14遺伝子、CLEC7A(CD369)遺伝子、CD86遺伝子、CD68遺伝子、LYZ遺伝子、MAFB遺伝子、CD34遺伝子、ITGAM(CD11b)遺伝子、および/またはFCGR1A(CD64)遺伝子からの一次RNA転写物、それから転写されたcDNA、またはそれによってコードされるタンパク質の、基準と比較して上昇した発現、あるいは、(ii)前記CD14遺伝子、前記CLEC7A(CD369)遺伝子、前記CD86遺伝子、前記CD68遺伝子、前記LYZ遺伝子、前記MAFB遺伝子、前記CD34遺伝子、前記ITGAM(CD11b)遺伝子、前記FCGR1A(CD64)遺伝子、KIT(CD117)遺伝子、前記MCL1遺伝子および/または前記BCL2に関連するスーパーエンハンサーを含む、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記タミバロテンまたは前記その薬学的に許容され得る塩が、治療有効量の第2の治療薬または治療有効量の複数の追加の治療薬と組み合わせて投与される、請求項30~33のいずれか1項に記載の使用。
【請求項35】
前記第2の治療薬が低メチル化剤である、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記低メチル化剤が、アザシチジンまたはデシタビンである、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記第2の治療薬がBCL2阻害剤である、請求項34に記載の使用。
【請求項38】
前記BCL2阻害剤がベネトクラクスである、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
前記タミバロテンが、低メチル化剤およびBCL2阻害剤と組み合わせて投与される、請求項34に記載の使用。
【請求項40】
前記低メチル化剤がアザシチジンであり、前記BCL2阻害剤がベネトクラクスである、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
前記患者がベネトクラクスによる処置後に再発したか、前記患者がベネトクラクスによる処置に難治性になったか、または前記患者から得た生体試料内の白血病細胞、リンパ腫細胞、または骨髄腫細胞がベネトクラクスに対する抵抗性を示した、請求項30~32のいずれか1項に記載の使用。
【請求項42】
単球の表現型を示す前記少なくとも1つのバイオマーカーが、基準と比較して、ベネトクラクスに対する抵抗性と相関する発現のレベルを有する遺伝子またはタンパク質であり、必要に応じて、単球の表現型を示す前記少なくとも1つのバイオマーカーが、CD14、CLEC7A(CD369)、CD86、CD68、LYZ、MAFB、CD34、ITGAM(CD11b)、FCGR1A(CD64)、またはKIT(CD117)、MCL1、およびBCL2から選択される遺伝子、それから転写されたcDNA、またはそれによってコードされるタンパク質を含む、請求項32に記載の使用。
【請求項43】
前記複数の追加の治療薬が、治療有効量のアザシチジンまたはデシタビン、ベネトクラクス、およびオビヌツズマブを含む、請求項34に記載の使用。
【請求項44】
前記患者がCLLまたはSLLと診断された、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
前記複数の追加の治療薬が、治療有効量のアザシチジンまたはデシタビン、ベネトクラクス、およびリツキシマブを含む、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
前記患者がCLLまたはSLLと診断された、請求項45に記載の使用。
【請求項47】
前記RARAバイオマーカーおよび/または単球の表現型を示す前記少なくとも1つのバイオマーカーが、(a)RARA遺伝子または単球の表現型を示す遺伝子に関連するスーパーエンハンサーであって、前記スーパーエンハンサーが、所定の閾値レベルに等しいかまたはそれを上回る、強度またはその強度もしくは保有率に基づく序列順位を有する、スーパーエンハンサー;および/または(b)所定の閾値レベルに等しいかまたはそれを上回る、前記RARA遺伝子または単球の表現型を示す前記遺伝子からの一次RNA転写物のレベルを、前記患者から得た生体試料中のがん細胞が有するかどうかを決定することによって評価されるか、または評価されている、請求項32または33に記載の使用。
【請求項48】
前記RARAバイオマーカーおよび単球の表現型を示す前記少なくとも1つのバイオマーカーが、
前記RARA遺伝子または単球の表現型を示すバイオマーカー遺伝子からの一次RNA転写物レベルであって、前記転写物レベルが、タミバロテンに応答する可能性がある患者とタミバロテンに応答しそうにない患者との間の境界線を定義する閾値レベルに対して上昇しており、AMLのM4またはM5サブタイプを表す細胞株、MDSを表す細胞株、AMLのM4またはM5サブタイプを表す異種移植片、MDSを表す異種移植片、AMLのM4またはM5サブタイプに罹患している患者由来の生体試料、またはMDSに罹患している患者由来の生体試料を含む試料の集団における一次RNA転写物レベルの分析によって予め決定されており、
前記集団における試料の数が、前記試料の集団よりも大きいAMLのM4またはM5サブタイプまたはMDSを有する患者群における一次RNA転写物レベルの分布を合理的に反映するのに十分であり;
前記集団における一次RNA転写物レベルの分析が、少なくとも一部の前記試料をタミバロテンに対する応答性について試験し、(i)タミバロテンに応答する前記集団中の試料の最も低い一次RNA転写物レベル、および(ii)タミバロテンに応答しない前記集団中の試料の最も高い一次RNA転写物レベルを確立し、それにより前記最も低いRNA転写物レスポンダーと前記最も高いRNA転写物ノンレスポンダーをそれぞれ定義することを含み;
前記閾値レベルが、(i)前記最も低い一次RNA転写物レスポンダーの前記一次RNA転写物レベルに等しいかまたは最大約5%上回るレベル、(ii)前記最も高い一次RNA転写物ノンレスポンダーの前記一次RNA転写物レベルに等しいかまたは最大約5%上回るレベル、または(iii)前記最も低い一次RNA転写物レスポンダーの前記一次RNA転写物レベルと前記最も高い一次RNA転写物ノンレスポンダーの前記一次RNA転写物レベルとの間の値、に設定されている、
一次RNA転写物レベルであるかまたはこれらを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記AMLが非APL AMLである、請求項20~23のいずれか1項に記載の使用。
【請求項50】
前記患者がCMMLと診断された、請求項30~33のいずれか1項に記載。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年8月6日出願の米国特許仮出願第63/062,350号、2020年11月18日出願の米国特許仮出願第63/115,541号、および2020年12月4日出願の米国特許仮出願第63/121,760号の出願日の利益を主張する。前述の各仮出願の全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
毎年、米国だけで約200,000人が白血病、リンパ腫、または骨髄腫と診断されている。そのようながんの一つである急性骨髄性白血病(AML)は、骨髄と血液の両方を侵す。これは、以前の治療(例えば、トポイソメラーゼII、アルキル化剤、または放射線への曝露)または根底にある血液疾患(例えば、骨髄異形成症候群(MDS))の結果として生じることがある。しかし、多くの例では、これは以前は健康だった人に突然現れる。AMLの病因は遺伝子レベルでは不均一である。AMLで観察される遺伝子変化には、チロシンキナーゼ遺伝子の内部タンデム重複、白血病誘発に関与する遺伝子の機能を変化させる染色体再配列、転写因子の活性化をもたらす変異などが含まれる。AMLのために開発された処置には、細胞傷害性化学療法、免疫療法、低メチル化剤(HMA)、および標的低分子治療が含まれる。これらの選択肢はすべての患者に利用可能であるわけではない。一部の患者は、その年齢、パフォーマンスステータス、または併存疾患のために不適格とみなされる。他の患者は処置に抵抗性である。その場合は、がんが処置に難治性であるか、または再発が急速に起こる。この再発リスクを減らし、AML、他の白血病、リンパ腫、および骨髄腫の患者の生存を向上させる治療戦略が非常に必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
本発明は、とりわけ、本明細書に記載のがんのタイプまたはサブタイプ(例えば、急性骨髄性白血病(AML;例えば、M4またはM5サブタイプ)、骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、慢性リンパ性白血病(CLL(例えば、17p欠失を有する))、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、多発性骨髄腫(MM)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、およびマントル細胞リンパ腫(MCL)のサブタイプ)と診断された患者(例えば、成人または小児患者)を、患者ががんと新規診断された(ND)場合(この場合、診断には、患者のがんが1またはそれを超えるバイオマーカーを(例えば、本明細書に記載のような単球発現シグネチャー(MES)のバイオマーカー、またはその相関物を単独でまたはRARAバイオマーカーと組み合わせて)発現するという決定が含まれ得る)か、または患者がベネトクラクスによる処置に抵抗性である(例えば、処置に対して再発または難治性(R/R)である)場合に、RARA(レチノイン酸受容体-α)アゴニストまたはその薬学的に許容され得る塩(例えば、タミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩)または本明細書に記載の治療薬の組合せ(例えば、1またはそれを超えるRARAアゴニスト(例えば、RARA選択的アゴニストタミバロテン)と、低メチル化剤(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)と、Bcl-2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)の組合せ)で処置する方法を特徴とする。これらの方法は、本発明の第1の特定の実施形態を構成し、第1の実施形態の方法では、指定されたがんを有する患者は、患者から得た生体試料中のがん細胞がRARAバイオマーカーを発現しているかどうかを決定する前に、指定された1または複数の薬剤で処置することができる(以下および例えば米国特許第9,845,508号(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の通り)。第1の実施形態の方法では、指定されたがんを有する患者は、RARAバイオマーカーのステータスを考慮せずに、指定された1または複数の薬剤で処置することができる。第1の実施形態の方法では、指定されたがんを有する患者は、患者から得た生体試料中のがん細胞が、単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカー(例えば、単球発現シグネチャー(MES))を発現することを決定した後に、指定された1または複数の薬剤で処置することができる。第1の実施形態の方法では、指定されたがんを有する患者は、患者から得た生体試料中のがん細胞がRARAバイオマーカー、および単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカー(例えば、MES)を発現することを決定した後に、指定された1または複数の薬剤で処置することができる。
【0004】
本発明は、とりわけ、乳がん(例えば、エストロゲン受容体陽性かつBcl-2陽性の転移性乳がん)、または肺がん(例えば、非小細胞肺がんまたは小細胞肺がん(例えば、BCL2発現が参照標準と比較して高いもの))と診断された患者(例えば、成人または小児患者)を、患者ががんと新規診断された(ND)場合(この場合、診断には、患者のがんが1またはそれを超えるバイオマーカーを(例えば、本明細書に記載のような単球発現シグネチャー(MES)のバイオマーカー、またはその相関物を単独でまたはRARAバイオマーカーと組み合わせて)発現するという決定が含まれ得る)か、または患者がベネトクラクスによる処置に抵抗性である(例えば、処置に対して再発または難治性(R/R)である)場合に、RARA(レチノイン酸受容体-α)アゴニストまたはその薬学的に許容され得る塩(例えば、タミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩)または本明細書に記載の治療薬の組合せ(例えば、1またはそれを超えるRARAアゴニスト(例えば、RARA選択的アゴニストタミバロテン)と、低メチル化剤(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)と、Bcl-2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)の組合せ)で処置する方法を特徴とする。これらの方法は、第2の実施形態を構成し、第2の実施形態の方法では、指定されたがんを有する患者は、患者から得た生体試料中のがん細胞がRARAバイオマーカーを発現しているかどうかを決定する前に、指定された1または複数の薬剤で処置することができる(以下および例えば米国特許第9,845,508号(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の通り)。第2の実施形態の方法では、指定されたがんを有する患者は、RARAバイオマーカーのステータスを考慮せずに、指定された1または複数の薬剤で処置することができる。第2の実施形態の方法では、指定されたがんを有する患者は、患者から得た生体試料中のがん細胞が、単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカー(例えば、単球発現シグネチャー(MES))を発現することを決定した後に、指定された1または複数の薬剤で処置することができる。第2の実施形態の方法では、指定されたがんを有する患者は、患者から得た生体試料中のがん細胞がRARAバイオマーカー、および単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカー(例えば、MES)を発現することを決定した後に、指定された1または複数の薬剤で処置することができる。読みやすいように、本発明者らは機会があるごとに薬剤とその薬学的に許容され得る塩の両方に言及することはしない。所与薬剤を使用され得る場合、同様に治療活性を示すその薬学的に許容され得る塩も使用され得ることが理解される。
【0005】
一部の実施形態では(例えば、患者がタミバロテン単独、タミ/アザ(tami/aza)またはタミ/アザ/ベン(tami/aza/ven)で処置される場合)、AMLのサブタイプは急性骨髄単球性白血病(AMLのM4サブタイプ)であり、患者は、成人または小児患者であり、新規診断(ND)されていてもよく、標準的な導入治療による処置に対して不適格とみなされていてもよく(不適格)、処置に抵抗性(例えば、処置から再発または処置に対して難治性(R/R))であってよい。他の実施形態では(例えば、患者がタミバロテン単独、タミ/アザまたはタミ/アザ/ベンで処置される場合)、AMLのサブタイプは急性単球性白血病(AMLのM5サブタイプ)であり、患者は、成人または小児患者であり、NDであっても、不適格であっても、処置に抵抗性(例えば、R/R)であってもよい。もう一つの実施形態では、がんの型はMDSであり、患者は成人または小児患者である。他の実施形態では、がんの型はALL、CMML、CLL、SLL、MM、NHL、またはMCLであり、患者は成人または小児患者であり、NDであっても、不適格であっても、処置に抵抗性(例えば、R/R)であってもよい。より具体的には、上記の成人または小児患者は、患者がベネトクラクスによる処置に抵抗性を示した場合(例えば、完全奏効(CR)または部分奏効(CRi)を達成できないことによる)、患者がベネトクラクスによる処置に難治性になった場合、または患者由来の生体試料内のがん細胞がベネトクラクスに対する抵抗性を示した(例えば、エクスビボアッセイで)場合に、本明細書に記載のように処置されてよい。
【0006】
他の実施形態では、がんの型は乳がん(例えば、エストロゲン受容体陽性かつBCL2陽性の転移性乳がん)または肺がん(例えば、小細胞肺がん(例えば、BCL2発現が参照標準と比較して高いもの))である。本方法は、本明細書においてさらに記載されるように、治療有効量のRARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)、またはその薬学的に許容され得る塩を患者に投与することを含む。本発明の方法の任意の実施形態では、処置に抵抗性である(例えば、R/R)患者において、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテンなどのRARA選択的アゴニスト)またはその薬学的に許容され得る塩の投与は、患者がRARAバイオマーカーを発現しているかどうかを決定する前に、かつ/またはRARAバイオマーカーのステータスを考慮せずに開始することができる(例えば、米国特許第9,845,508号に記載の通り、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。RARAバイオマーカーは、RARA RNA遺伝子転写物(例えば、エンハンサーRNA(eRNA)、プレmRNA、または成熟mRNA)またはRARA遺伝子に関連するスーパーエンハンサーの発現上昇を含み得る。指定されるように、患者由来のがん細胞を含む生体試料は、本明細書に記載されるようにRARAに加えて、またはその代わりに、バイオマーカーまたはその組合せについて評価することができる(例えば、その発現がベネトクラクスに対する抵抗性と相関するバイオマーカー;例えば、図2参照)。例えば、バイオマーカーは、MESの一部として本明細書に記載の遺伝子の発現レベル(例えば、1またはそれを超えるCD14、CLEC7A(CD369)、CD86、CD68、LYZ、MAFB、CD34、ITGAM(CD11b)、FCGR1A(CD64)、RARA、およびKIT(CD117)の発現レベル(例えば、KIT、CD64、CD86、およびLYZ)の発現レベル))、またはそれによってコードされるタンパク質、および/またはその相関物(例えば、MCL1の発現上昇および/またはBCL2の発現低下)であり得るか、またはそれを含み得る。例えば、バイオマーカーは、遺伝子CD34、KIT(CD117)、およびBCL2の組合せの発現レベルであり得る。例えば、本明細書に記載の技術によってMESに寄与する遺伝子に関連するエンハンサーまたはスーパーエンハンサーを評価することができる。一部の実施形態では、患者は、MESおよび/またはその相関物を示す別のバイオマーカー(例えば、MCL1および/またはBCL2)に加えて、RARAバイオマーカー(例えば、米国特許第9,845,508号または米国特許第9,868,994号に記載の通り、これらは両方とも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)について試験されていてもよいし、これらを発現すると決定されていてもよい。例えば、本発明の方法の状況において、患者はRARAバイオマーカーおよびMCL1および/またはBCL2バイオマーカーを発現すると決定されていてよい。任意の実施形態では、バイオマーカーを構成する遺伝子がスーパーエンハンサーによって駆動されている場合、遺伝子転写物(例えば、mRNAまたはそれから転写されたcDNA)のレベルに加えて、またはその代わりに、スーパーエンハンサーが評価されることがある(米国特許第9,845,508号および9,868,994号参照)。単球の表現型のバイオマーカーとして本明細書に具体的に記載される10個の遺伝子は、本発明者らの研究で使用された様々な発現データセット(すなわち、TCGA、BEAT AML、および本発明者らの独自の臨床試験データ)間で一致する、一般的に参照される単球および幹細胞分化マーカーであるという理由で選択された。他の単球および幹細胞分化マーカーならびにそれらと発現が相関する遺伝子は、本明細書に具体的に記載されるもののうちの任意の1またはそれを超えるものに加えて、またはそれらの代わりに使用することができる。
【0007】
RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)またはその薬学的に許容され得る塩が投与される本発明の方法の任意の実施形態では、それは単独で、または治療有効量の第2の治療薬または治療有効量の複数の追加の治療薬と組み合わせて投与され得る。第2の治療薬は、低メチル化剤(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)、Bcl-2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)、その組合せであり得る(例えば、RARAアゴニストは、低メチル化剤(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)とBcl-2阻害剤(例えば、ベネトクラクス;例えば、タミ/アザ/ベン)の両方と組み合わせて投与され得る)。他の実施形態では、特に処置レジメンにベネトクラクスが含まれる場合、列挙した1またはそれを超える薬剤は、低用量シタラビン(LDAC;例えば、ND AMLまたは不適格とみなされた患者の処置の場合)、オビヌツズマブ(例えば、CLLまたはSLLの患者の場合)、リツキシマブ(例えば、17p欠失を有するまたは有さないCLLまたはSLLの患者の場合)、または内分泌治療(例えば、タモキシフェン、ER陽性乳がんの患者の場合)とともに投与され得る。
【0008】
本発明の方法の実施形態では、患者は、以下と新規診断され得る:AMLのサブタイプ(例えば、AMLのM4サブタイプ、AMLのM5サブタイプ、または非APL AML)、MDS、CMML、CLL(17p欠失を有するまたは有さない)、ALL、SLL、MM、NHL、MCL、乳がん(例えば、エストロゲン受容体陽性かつBCL2陽性の転移性乳がん)、または小細胞肺がん。患者は、フランス・アメリカ・イギリス(FAB)分類系によって、および/またはAMLのM4サブタイプまたはAMLのM5サブタイプに特徴的な遺伝子またはタンパク質発現プロファイルによって、AMLのM4サブタイプまたはAMLのM5サブタイプ(例えば、本明細書に記載のMESまたはそれと相関するバイオマーカー)と診断されていてもよい(または診断されたことがある)。
【0009】
第1の実施形態の方法を含む、本発明の方法の任意の実施形態では、RARAアゴニストは、図4に示される通りであり得る(例えば、RARAアゴニストは、オールトランスレチノイン酸(ATRA)またはタミバロテンであり得る)。
【0010】
本発明を根底にある特定の作用機序によって患者に利益を提供する治療(すなわち、タミバロテンの投与を含むかまたはそれからなる治療)または併用治療(すなわち、タミバロテンとHMA(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)および/またはベネトクラクスの投与を含むまたはそれからなる治療)に限定するものではないが、本明細書に記載の治療およびタミバロテンの使用は、Bcl-2阻害剤単独で(例えば、ベネトクラクス)またはBcl-2阻害剤とHMA(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)で以前に処置されている患者(例えば、AMLまたはそのサブタイプ(例えば、M5サブタイプ)を有する患者)の転帰を改善することが期待される。例えば、本出願人は、RARAアゴニスト、HMA、およびBcl-2阻害剤(例えば、タミ/アザ/ベン)で処置される本明細書に記載の患者(例えば、AMLの患者)が、HMAおよびBcl-2阻害剤のみで処置される患者よりも良好な転帰を経験することを期待する。より具体的には、本出願人は、タミバロテン、アザシチジン、およびベネトクラクスで処置した患者が、アザシチジンおよびベネトクラクスで処置した患者よりも良好な転帰を経験することを期待する。転帰の改善は、全奏効率、全生存期間、および処置に対する完全奏効または部分奏効(すなわち、それぞれCRまたはCRi)の可能性を含む、臨床的に有意義な尺度によって明示することができる。新規診断されたAML患者の約3分の1は、現在の標準治療であるHMAと併用したベネトクラクスに応答せず(DiNardoら、Blood,133(1):3-4,2019;DiNardoら、N.Engl.J.Med.383:617-629,2020)、単球性AML(M4またはM5サブタイプ)のAML患者は、この疾患のより原始的な形態のAML患者よりもベネトクラクスとアザシチジンによる処置により抵抗性であることが報告されている(FAB-M0/M1/M2;Peiら、Cancer Discovery 10:536-551,2020)。
【0011】
本明細書において、本出願人は、治療方法(すなわち、患者を処置する方法)を記載するが、これらの方法は、投与された1または複数の治療薬の「使用」に関しても表現および特許請求することもでき、その逆もまた同様であることが理解される。例えば、本出願人が患者に治療有効量のタミバロテン、アザシチジン、およびベネトクラクスを投与することによってAMLまたはMDSと診断された患者を処置する方法を記載する場合、本出願人は、急性骨髄性白血病(AML)またはMDSと診断された患者を処置する際の治療有効量のタミバロテン、アザシチジン、およびベネトクラクスの使用についても記載していることが理解される。より具体的には、処置の方法(例えば、特定の組合せの治療薬またはその投与量)の文脈で本明細書に記載の制限は、指定される処置における対応する使用(すなわち、特定の組合せの治療薬またはその投与量の使用)の教示として理解され、その逆もまた同様である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A-1C】図1A~1Cは、TCGAデータセット(図1A)およびBeat AMLデータセット(図1B)から、患者のFABステータス(M0、M1、M2、M4、M5)を定義する、単球性AMLまたは原始的なAMLのバイオマーカーの分析から明らかになるMESの能力を説明し、関係づける。図1Cは、各データセットにおける分析の感度(正確に予測された単球試料とすべての真の単球試料の割合(すなわち、X個の単球試料があり、そのうちY個が本発明者らのMESによって単球性であると予測される場合、感度はY/(X+Y)である))と、各データセットにおける分析の特異度(すなわち、正確に予測された原始的な試料とすべての真の原始的な試料の割合)を要約する表である。
【0013】
図2図2は、以下の実施例に記載されるように、ベネトクラクス感受性と示された発現特徴の相関を示す。
【0014】
図3図3は、ベネトクラクス感受性/抵抗性とすべての遺伝子との相関を示す。CLEC7A、CD14、MAFB、LYZ、CD68、CD86、FCGR1A、RARA、ITGAM、MCL1、CD34、KIT、およびBCL2は、示されるように相関し、これらの遺伝子のいずれか1またはそれより多くは、MDSまたはAMLと診断された患者の遺伝子発現プロファイルを生成する際に評価されて、そのサブタイプ(例えば、M0、M1、M2、M3、M4、またはM5)をさらに診断および特定することができる。疑わしい場合は、必要に応じて、遺伝子発現レベルの評価に代えて、またはそれに加えて、それによってコードされるタンパク質を評価することができる。
【0015】
図4-1】図4は、本明細書に記載の方法で有用なRARAアゴニストの構造を示す表である。
図4-2】図4は、本明細書に記載の方法で有用なRARAアゴニストの構造を示す表である。
図4-3】図4は、本明細書に記載の方法で有用なRARAアゴニストの構造を示す表である。
図4-4】図4は、本明細書に記載の方法で有用なRARAアゴニストの構造を示す表である。
図4-5】図4は、本明細書に記載の方法で有用なRARAアゴニストの構造を示す表である。
【0016】
図5A-5B】図5Aおよび5Bは、単球性および原始的AML患者の試料における、ベネトクラクス単独およびベネトクラクス+アザシチジンに対する用量反応曲線(図5A)およびこれらの同じサブタイプの患者試料におけるRARA発現レベル(図5B)を示すグラフである。白血病幹細胞を単離し、エクスビボでベネトクラクス+または-のアザシチジンで処置し、RNA-seqデータ(GEO GSE132511)を使用してそれらのRARA発現レベルをすべての遺伝子の発現に対して正規化した。
【0017】
図6A-6B】図6Aおよび6Bは、RARAの高発現により、単球遺伝子の高発現が豊富なAML患者集団がTCGAとBeat AMLデータセットの両方で特定されることを示す。(図6A、それぞれ左側および右側のグラフ;図6Bの定量も参照)。
【0018】
図7図7は、初代AML培養において、RARA発現およびMESがベネトクラクスに対する抵抗性に関連していることを示す一対のプロットである。
【0019】
図8図8は、タミバロテンを用いる臨床試験に登録されたRARA陽性およびRARA陰性のND不適格AML患者を、MES、BCL2レベル(低)、およびMCL1レベル(高)に関して評価した、一連のプロットである。左の3つのプロットは登録患者から生成したものであり、右の3つのプロットはタミバロテン+アザシチジンによる処置でCR/CRiを達成した登録患者から生成したものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
以下の定義は、文脈がそうでないことを明らかに示さない限り、本明細書に記載の組成物、方法、および使用に適用される。さらに、これらの定義は、定義された用語の言語的および文法的な変形(例えば、用語の単数形および複数形)に適用され、いくつかの言語的変形は以下で具体的に言及される(例えば、「投与」と「投与すること」)。
【0021】
「約」という用語は、値に関連して使用される場合、記載値のプラスまたはマイナス10%(例えば、記載値のプラスマイナス1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%(両端を含む)以内)の任意の値または値の範囲を示す。例えば、約10mgの用量とは、10mgよりも10%程度低い用量(9mg)、10mgよりも10%程度高い用量(11mg)、およびそれらの間の任意の用量または投与量範囲(例えば、9~11mg;9.1~10.9mg;9.2~10.8mg等)を意味する。記載値を上回ることができない場合(例えば、100%)、「約」は、記載値よりも最大10%まで小さい任意の値または値の範囲を示す(例えば、約100%の純度は、90%~100%純粋であることを意味する(例えば、95%~100%純粋、96%~100%純粋、97%~100%純粋など))。値を測定する機器または技法の誤差の範囲が10%を超える場合、それらが両方ともにその機器または技法の誤差の範囲内にある場合、所与の値は記載値とほぼ同じになる。疑わしい場合には、ある量についての「約」の開示は、その量の開示である(すなわち、「約10mg」は、10mgの開示であり、「少なくとも約1.5倍」の開示は、少なくとも1.5倍の開示である)。
【0022】
「投与」という用語およびその変形、例えば「投与すること」は、本明細書に記載の化合物(例えば、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)、HMA(例えば、アザシチジン)、ベネトクラクスなどのBCL2阻害剤、およびその薬学的に許容され得る塩)あるいは1またはそれを超えるそのような化合物を含有する医薬組成物の、被験体(例えば、ヒト患者)または系(例えば、エクスビボで維持されている細胞または組織に基づく系)への投与を指す。その投与の結果として、化合物またはその化合物を含有する組成物は、被験体(例えば、患者)または系に導入される。医薬有効成分に加えて、陽性対照、陰性対照、およびプラセボとして使用される物品(そのいずれもが化合物となり得るかまたは化合物を含むことができる)も、「投与する」ことができる。当業者であれば、適切な状況で、患者または系への投与に利用することができる多様な経路を承知している。例えば、投与経路は、経口(すなわち、医薬組成物の嚥下による)であってもよいし、非経口であってもよい。より具体的には、投与経路は、気管支(例えば、気管支滴注による)、口による(すなわち、経口)、皮膚(真皮または皮内への局所適用、皮間(interdermal)または経皮投与であるかまたはそれらを含み得る)、胃内または経腸(すなわち、それぞれ胃または腸に直接)、髄内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、くも膜下腔内、腫瘍内、静脈内(または動脈内)、脳室内、特定の器官への適用または注射(例えば、肝内)、粘膜(例えば、頬側、直腸、舌下、または膣)、皮下、気管(例えば、気管内滴注により)、または眼(例えば、局所、結膜下、または硝子体内)であり得る。投与は、断続的な投与(すなわち、様々な時間で分離された投与)および/または定期的な投与(すなわち、共通の期間で分離された投与(例えば、数時間ごと、毎日(例えば、毎日1回の経口投与)、毎週、週に2回など))を含み得る。他の実施形態では、投与は、選択した時間(例えば、約1~2時間)の連続投与(例えば、灌流)を含み得る。治療有効量および投与レジメンは当技術分野で公知であり、本発明者らはそのような量およびレジメンを、特に選択されたRARAアゴニスト、アザシチジン、デシタビン、およびベネトクラクスが採用される場合に、本発明の方法で使用することができると予想している。
【0023】
「生体試料」という用語は、目的の生物学的供給源(例えば、組織または生物(例えば、動物またはヒト患者)または細胞培養物)から得られるかまたはそれに由来する試料を指す。例えば、生体試料は、本開示の方法によって診断および/または処置される疾患(または、動物モデルの場合は、ヒト患者の疾患のシミュレーション)に罹患している個体(例えば、患者または動物モデル)あるいは基準または対照としての役割を果たす(またはその試料が基準または対照集団に寄与する)個体から得た試料であり得る。生体試料は、生体細胞、組織または体液またはそれらの任意の組合せを含み得る。例えば、生体試料は、腹水;血液;血液細胞;体液であり得るか、またはそれらを含み得、そのいずれもが、細胞(例えば、腫瘍細胞(例えば、少なくとも血液またはリンパ管に見出される血中循環腫瘍細胞(CTC)));骨髄またはその成分(例えば、造血細胞、骨髄脂肪組織、または間質細胞);脳脊髄液(CSF);糞便;屈側体液(flexural fluid);浮動性核酸(例えば、循環腫瘍DNA);婦人科体液;毛髪;免疫浸潤物;リンパ液;腹水;血漿;唾液;皮膚またはその構成成分(例えば、毛包);痰;外科的に得た検体;(例えば、鼻、口または膣の)皮膚または粘膜から掻爬またはスワブされた組織;組織または細針生検試料;尿;管洗浄または気管支肺胞洗浄などの洗液または洗浄;またはその他の体液、組織、分泌物、および/または排出物を含んでもよいし含まなくてもよい。生体試料には、脾臓およびリンパ節を含む多くの組織および臓器に見出されるがん細胞または免疫細胞、例えばNK細胞および/またはマクロファージが含まれ得る。体液(例えば、血液、CSF、リンパ液、血漿、または尿)の試料、または上記体液から得た試料には、腫瘍細胞(例えば、CTC)および/または浮動性もしくは無細胞核酸が含まれ得る。試料内の細胞(例えば、がん細胞)は、処置が意図されている個々の患者から得たものであってよい。入手した形態で使用される試料は「一次」試料と呼ばれることがあり、(例えば、試料の1またはそれを超える成分を除去することにより)さらに操作された試料は「二次」または「加工」試料と呼ばれることがある。そのような加工試料は、特定の細胞種、細胞成分(例えば、膜画分)、または細胞材料(例えば、増幅に供され得る1またはそれを超える細胞のタンパク質、DNA、またはRNA(例えば、mRNA))を含んでいてもよいし、それらが富化されていてもよい。
【0024】
「生物学的に活性な」という用語は、(例えば、ヒト、他の動物、または細胞/組織培養またはインビトロで維持される系において)観察可能な生物学的効果を生み出すか、またはその生物学的系もしくはモデルをもたらす薬剤(例えば、本明細書に記載の化合物)を記載する。そのような薬剤の「生物学的活性」は、薬剤と標的(例えば、RARAまたはBCL2)との間の結合により現れ得、生物学的経路、事象または状態(例えば、疾患状態)のモジュレーション(例えば、誘導、増強、または抑制)をもたらすことがある。例えば、薬剤は、細胞活性(例えば、免疫応答の刺激または相同組換え修復の阻害)、細胞周期のある相で費やされた時間(細胞増殖の速度を変え得る)、またはアポトーシスの開始または細胞死をもたらす別の経路の活性化(腫瘍退縮をもたらし得る)をモジュレートすることができる。生物学的活性、および必要に応じてその程度は、活性の任意の所与の直接または下流の産物、あるいは活性に関連する任意の事象(例えば、細胞成長または腫瘍退縮の阻害)を検出する既知の方法を用いて評価することができる。
【0025】
「担体」という用語は、投与のために活性医薬剤(例えば、本開示の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、溶媒和物、立体異性体、互変異性体,または同位体形態)とともに製剤化される希釈剤、アジュバント、賦形剤、または他のビヒクルを指す。担体は、医薬組成物に組み込まれる量および方法において、被験体に対して無毒であり、それとともに製剤化される有効成分(例えば、化合物またはその他の指定された形態)の生物学的活性を破壊しない。担体は、無菌または滅菌可能な液体、例えば、水(例えば、注射用水)または天然もしくは合成の油(例えば、石油系もしくは鉱油、動物油、または植物油(例えば、落花生油、大豆油、ゴマ油、またはカノーラ油))であってよい。また、担体は固体;1またはそれを超える固体成分(例えば、塩、例えば、「生理食塩水」)を含む液体;固体の混合物;または液体の混合物であり得る。
【0026】
「比較可能な」という用語は、互いに同一ではないが、それらの間の比較が可能なほど十分に類似しているので、観察された相違点または類似点に基づいて当業者が合理的に結論を引き出すことができることがわかる、2またはそれを超える項目(例えば、薬剤、実体、状況、状態のセットなど)を指す。一部の実施形態では、状態、状況、個体(例えば、個々の患者または被験体)、または集団の比較可能なセットは、複数の実質的に同一の特徴および1または少数の変化のある特徴によって特徴づけられる。当業者であれば、前後関係から、2またはそれを超える項目を比較可能とみなすために、所与状況においてどの程度の同一性が必要であるかを理解する。例えば、2つの項目は、その項目で得られた結果または観察された現象のどんな相違も、変化のあるそれらの特徴によって引き起こされるかまたはそれらの特徴における変形形態を示すという合理的な結論を保証するのに十分な数および種類の実質的に同一の特徴を共有している場合に互いに比較可能である。一部の実施形態では、比較可能な項目は、「対照」として機能する。例えば、「対照被験体/集団」は、処置中の個体/集団と同じ疾患に罹患している未処置(またはプラセボ処置)個体/集団であり得る。
【0027】
「併用治療」という用語は、単一の疾患(例えば、本明細書に記載のがん)を処置するために、被験体が2またはそれを超える治療レジメン(例えば、2またはそれを超える治療薬(例えば、3種類の薬剤))に曝露されている状況を指す。2またはそれを超えるレジメン/薬剤は、同時にまたは逐次投与されてよい。同時に投与する場合、第1の薬剤の用量と第2の薬剤の用量はほぼ同時に投与され、両方の薬剤は患者に同時に、または、第1の薬剤が第2の薬剤よりも即効性または遅効性である場合には重複する期間中に、効果を発揮する。逐次投与される場合、第1および第2の薬剤の用量は時間的に離れており、それらが患者に同時に効果を及ぼすこともあり、及ぼさないこともある。例えば、第1および第2の薬剤は、同じ時間内または同日中に投与されてよく、その場合、第1の薬剤は、第2の薬剤が投与されるときにまだ活性である可能性があるであろう。あるいは、第2の薬剤が投与されたときに第1の薬剤がもはや活性を持たないように、第1および第2の薬剤の投与の間にはるかに長い時間が経過していてもよい(例えば、難治性がんの処置の際に起こり得るように、任意の用量の第2のレジメンの同じまたは異なる投与経路での投与の前にすべての用量の第1のレジメンが投与される)。明確にするために、併用治療は、個々の薬剤が単一の組成物で一緒にまたは同時に投与されることを必要するものではないが、一部の実施形態では、本開示の化合物および本明細書に記載の第2の薬剤を含む2またはそれを超える薬剤は、同じ期間内に(例えば、同じ時間、日、週または月内に)投与されてよい。
【0028】
「決定する」は、患者から得た生体試料中の細胞(例えば、がん細胞(例えば、白血病細胞))が単球の表現型を示すバイオマーカーまたはRARAバイオマーカーを発現しているかどうかを決定する文脈で使用される場合、その細胞がバイオマーカーを発現しているかどうかを、例えば、アッセイを実施するかまたはそのようなアッセイの結果を獲得することによって知ることを意味する。
【0029】
「剤形」、「製剤」、および「調製物」という用語は、本明細書に記載の化合物(例えば、RARAアゴニスト、HMA、またはBCL2阻害剤)を含有する組成物、または本明細書に記載の使用に適した他の生物学的または治療的に活性な有効成分(例えば、RARAアゴニストと組み合わせたもの)を指す。「単位剤形」という用語は、本明細書に記載の化合物(例えば、RARAアゴニスト)またはその薬学的に許容され得る塩を含有する物理的に別個の単位を指す。1またはそれを超える追加の/第2の薬剤も、本明細書に記載のように単位剤形で製剤化、投与または使用することができる。そのような各単位は、所定の量の活性医薬成分を含むことができる。この量は、単回投与用に処方された量(すなわち、治療または予防レジメンの一部として投与された場合に望ましい結果と相関すると予想される量)またはその部分であってよい(例えば、単位剤形(例えば、錠剤またはカプセル剤)は、単回投与用に処方された量の半分を含んでよく、その場合、患者は2つの単位剤形(すなわち、2錠または2カプセル)を服用することになる)。当業者は、特定の被験体に投与される組成物または薬剤の総量が、1またはそれを超える主治医によって決定され、複数の単位剤形(例えば、本明細書に記載の通り)の投与を伴う場合があることを理解する。
【0030】
「投与レジメン」という用語は、患者に投与されるかまたは患者に処方される1または複数の単位剤形を指し、一般に、期間(例えば、本明細書に記載または当技術分野で公知のとおり)によって分離された複数の用量が含まれる。投与レジメン内で投与される1または複数の剤形は、同じ単位投与量のものであっても異なる量のものであってもよい。例えば、投与レジメンには、第1の投与量の第1の投与と、それに続いて、第1の投与量と同じまたは異なる第2の投与量における1またはそれを超える追加の投与が含まれ得る。
【0031】
「有効量」とは、薬剤(例えば、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩))の量、または、薬剤の投与目的である所望の効果を生じる薬剤の組合せ(例えば、タミ/アザまたはタミ/アザ/ベン)での薬剤の量をさす。一部の実施形態では、この用語は、疾患に罹患しているかまたは疾患に罹患しやすい集団に治療用投与レジメンに従って投与された場合に、疾患を処置するのに十分な量を指す。この場合、有効量は「治療有効量」と呼ばれることもある。当業者であれば、治療有効量が、特定の個体(すなわち、所与の個々の患者において)において処置の成功を達成しない可能性があることを理解する。むしろ、治療有効量は、そのような処置を必要とする患者の集団に投与された場合に、有意な数または特定の予想される数の被験体に望ましい薬理学的応答をもたらす。有効量への言及は、投与された薬剤の量、あるいは投与後の1またはそれを超える特定の組織(例えば、疾患に罹患した組織)または体液(例えば、血液、唾液、尿など)において測定された量への言及であり得る。
【0032】
「不適格高齢者」患者は、標準的な導入治療の候補にならないと医師が判断した少なくとも60歳のヒト患者である。
【0033】
「エンハンサー」は、遺伝子の発現を調節するのを助けるゲノムDNAの領域であり、遺伝子から遠く離れて位置する場合も調節を助けることができる(現在、最大で約1Mbp離れていると理解されている)。エンハンサーは遺伝子コード領域と重複することがあるが、多くの場合、遺伝子コード領域で構成されることはない。エンハンサーは、多くの場合、転写因子によって結合され、特異的なヒストンマークで示される。「エンハンサーRNA」(eRNA)は、エンハンサーのDNAから転写されたRNAを含むRNAである。
【0034】
「改善する」、「増加する」または「減少する/低下する」(および「改善された」または「改善している」などの明らかなその変形)は、基準値に対して値が変化するかまたは変化した様式を特徴づけるために使用される用語である。例えば、処置前の患者(または患者から得た生体試料)から得た測定値は、同じ患者、対照患者、患者集団の平均、または患者から得た1または複数の生体試料において、処置中または処置後に得られた場合の測定値と比較して増加または減少/低下し得る。この値は、いずれの場合にも、増加または低下が好ましい治療成果に関連しているかどうかに応じて改善され得る。
【0035】
「新規診断された」患者は、本明細書に記載のがんのタイプまたはサブタイプ(例えば、AMLまたはMDS)と以前に診断されたことがなく、そのため第1の薬剤(すなわち、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン))または1またはそれを超える第2の薬剤(すなわち、HMA(例えば、アザシチジン)またはBcl-2阻害剤(例えば、ベネトクラクス))に曝露されていない患者であり、この場合、患者は未処置とも定義され得る。
【0036】
「医薬組成物」または「薬学的に許容され得る組成物」は、本発明者らは「医薬製剤」または「薬学的に許容され得る製剤」とも呼ぶこともあるが、活性薬剤(例えば、活性医薬成分(例えば、本明細書に記載のRARAアゴニストまたは第2の薬剤))が1またはそれを超える薬学的に許容され得る担体とともに製剤化されている組成物/製剤である。活性薬剤/有効成分は、関連のある集団に投与された場合に所定の治療効果を達成する統計学的に有意な確率を示す治療レジメンでの投与に適切な単位投与量で存在することができる。医薬組成物は、固体または液体形態での投与のために特別に製剤化されてよく、それには経口または非経口投与用に作製されたかかる形態が含まれる。経口投与の場合、医薬組成物は、例えば、水性または非水性の液剤または懸濁剤として、あるいは錠剤またはカプセル剤として製剤化されることができる。口からの全身吸収の場合、組成物は、頬側投与、舌下投与、または舌へ適用するためのペースト剤として製剤化することができる。非経口投与の場合、組成物は、例えば、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、腫瘍内、または硬膜外注射のための滅菌液剤または懸濁剤として製剤化することができる。活性薬剤/有効成分(例えば、本明細書に記載の化合物またはその特定の形態)を含む医薬組成物は、持続放出製剤として、または局所適用のためのクリーム剤、軟膏剤、制御放出パッチ剤、またはスプレー剤としても製剤化され得る。クリーム剤、軟膏剤、フォーム剤、ジェル剤、およびペースト剤は、鼻、口、膣、および直腸を覆う粘膜に塗布することもできる。本明細書に記載の化合物のいずれか、およびそのような化合物を含有する医薬組成物はいずれも、「医薬品」と呼ばれることもある。
【0037】
本明細書において、「薬学的に許容され得る塩」という用語は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激作用、アレルギー反応などを伴わずに、ヒトおよび下等動物の組織と接触して使用するために適しており、合理的な利益/リスク比に合った塩を指す。薬学的に許容され得る塩は、当技術分野で周知である。例えば、Bergeらは、参照により本明細書に組み込まれるJ.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1-19に薬学的に許容され得る塩を詳細に記載している。本開示の化合物の薬学的に許容され得る塩には、適した無機および有機の酸および塩基に由来するものが含まれる。薬学的に許容され得る無毒の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸と、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸などの有機酸と形成されるか、あるいはイオン交換などの当技術分野で公知の他の方法を使用することによって形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容され得る塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、MALAT1e、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。適切な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびN(C1~4アルキル) 塩が挙げられる。代表的なアルカリもしくはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらなる薬学的に許容され得る塩としては、適切な場合、無毒のアンモニウム、第四級アンモニウム、ならびにハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩、およびアリールスルホン酸塩などの対イオンを使用して形成されたアミンカチオンが挙げられる。
【0038】
本明細書に記載のように投与が企図される「患者」には、限定されるものではないが、ヒトが含まれ、この患者は任意の年齢層の男性、女性、トランスジェンダーまたはその他の性別の人(例えば、小児の被験体(例えば、乳児、子供、青年)または成人の被験体(例えば、若年成人、中年成人、または高齢者))であってよい。本明細書に記載の方法は、小児患者(例えば、AMLのM4またはM5サブタイプまたはMDSを有する小児患者)を含むヒト患者に関する適用および使用を明白に意図しているが、本開示はそれほど限定されず、他の非ヒト動物も処置することができる。つまり、本発明の方法は、獣医学用途を包含する。
【0039】
「集団」という用語は、その集団で測定されている値の分布をより大きな群で合理的に反映するのに十分な項目数(例えば、少なくとも30、40、50、またはそれより多く)を意味する。本発明の文脈では、集団は、データの収集および分析の目的のために、少なくとも1つの共通の特徴によって識別される、不連続な数のヒト、実験動物、細胞株、組織試料、またはそれらの組合せであり得る。細胞株および組織試料は、それ自体で有用であり、細胞株または組織試料の細胞を動物に移植することによって実験動物(例えば、マウス)で成長させた場合、細胞株由来の異種移植片(CDX)または患者由来の異種移植片(PDX)を生じる。「試料の集団」は、より大きい群(例えば、試料または患者のより大きい群)における値(例えば、バイオマーカーの状態に関連した値)の分布を合理的に反映するのに十分に大きい複数の試料を指す。上記のように、集団内の実体が共通の特徴を有することができるため、より大きい群内にあり、同じ共通の特徴を有する患者から得た値を評価することができる閾値レベル(すなわち、本明細書で考察される所定の閾値レベル)または保有率カットオフ(prevalence cutoff)を設定する際に、その集団が有用になる。例えば、共通の特徴として、AMLのM5サブタイプの特徴を有する細胞を含有する試料の集団は、バイオマーカー(例えば、RARAバイオマーカーまたは単球バイオマーカー)の閾値レベルまたは保有率カットオフを設定するために使用することができ、その後AMLのM5サブタイプと診断された患者由来の同等の細胞の試料を評価するために使用することができる。
【0040】
本明細書において規定値(例えば、本明細書に開示されるバイオマーカーに関連するSEの強度)に言及する際に使用される「保有率カットオフ」という用語は、集団の2つのサブセット間の境界線を定義する保有率順位を意味する(例えば、「レスポンダー」のサブセットおよび「ノンレスポンダー」のサブセットは、名前が示すように、治療薬または薬剤に対して有益な応答を経験する可能性がある患者または可能性が低い患者をそれぞれ含む)。したがって、保有率カットオフと等しいか、またはそれよりも高い(例えば、パーセンテージの値がより低い)保有率順位は、集団の1つのサブセットを定義し;保有率カットオフよりも低い(例えば、パーセンテージの値がより高い)保有率順位は、集団のもう1つのサブセットを定義する。
【0041】
本明細書において使用される、規定値(例えば、特定のバイオマーカーのmRNAレベル)に対する「保有率順位」という用語は、特定の値と等しいかまたはそれを超える、集団のパーセンテージを意味する。例えば、試験細胞における特定のバイオマーカーのmRNAの量に対する35%保有率順位とは、集団の35%がそのレベルのバイオマーカーmRNAを有するかまたは試験細胞よりも多いことを意味する。
【0042】
本明細書において使用される「一次RNA転写物」という用語は、遺伝子のコード領域(例えば、少なくとも1つのエクソン)および/または遺伝子の非コード領域(例えば、イントロンまたは遺伝子の調節領域(例えば、遺伝子の発現を調節するエンハンサーまたはスーパーエンハンサー))を含むDNA配列からのRNA転写産物を指す。したがって、一次RNA転写物は、「エンハンサーRNA」または「eRNA」(エンハンサーまたはスーパーエンハンサーから転写されたRNAを含む場合)マイクロRNA、前駆体mRNA(「プレmRNA」)または成熟mRNAであり得る。本発明者らは一次RNA転写物のソース遺伝子を指定することがある。例えば、「RARA一次RNA転写物」は、RARA遺伝子から転写された一次RNA転写物であり、「単球の表現型を示すバイオマーカー一次RNA転写物」は、単球の表現型を示すバイオマーカーをコードする遺伝子から転写された一次RNA転写物である(例えば、遺伝子CD14、CLEC7A(CD369)、CD86、CD68、LYZ、MAFB、CD34、ITGAM(CD11b)、FCGR1A(CD64)、RARA、KIT(CD117);遺伝子MCL1;遺伝子CD34;遺伝子KIT(CD117);および遺伝子BCL2)。一次RNA転写物の発現のレベルを評価する方法では、一次RNA転写物から合成または逆転写されたcDNAを評価することができる。
【0043】
「順位」という用語は、集団内の実体に割り当てられた位置であって、その実体に関連する量に基づいて、その集団内の他の実体の同じ量と比較した、位置を意味する。「順位付け」とは、最も高い値から最も低い値、または最も低い値から最も高い値への値の順位付けを意味する。
【0044】
「RARA遺伝子」という用語は、機能的なレチノイン酸受容体-α(RARA)をコードし、RARA遺伝子の全部または一部を含む遺伝子融合を特に除外するゲノムDNA配列を指す。一部の実施形態では、RARA遺伝子は、ゲノムビルドhg19のchr17:38458152-38516681に位置している。
【0045】
「基準」という用語は、比較が行われる標準または対照を記載する。例えば、目的の薬剤、動物(例えば、被験体(例えば、実験室の研究で使用される動物))、単一の細胞または複数の細胞、個体(例えば、個々の患者)、集団、試料(例えば、生体試料)、配列または値は、基準または対照の薬剤、動物(例えば、被験体(例えば、実験室の研究で使用される動物))、単一の細胞または複数の細胞、個体(例えば、個々の患者)、集団、試料、または配列または値とそれぞれ比較される。一部の実施形態では、基準または対照は、目的の試験または決定と実質的に同時に試験および/または決定される。他の実施形態では、基準または対照は、歴史的な基準または対照であり、必要に応じて有形の媒体に具体化される。一般に、当業者が理解するように、基準または対照は、評価中の条件と比較可能な条件下で決定または特徴づけされ、当業者であれば、特定の可能性のある基準または対照への依拠および/または比較を正当化するのに十分な類似点が存在する場合に正しく評価する。
【0046】
処置に関して「応答」という用語は、処置の結果として生じるか、または処置と相関する患者の状態の有益な変化を指すことがある。このような変化には、状態の安定化(例えば、処置がなければ起こったと思われる悪化の予防(例えば、安定(stable disease)))、状態の症状の回復、および/または状態の治癒の見込みの改善(例えば、腫瘍退縮)などが含まれてよい。応答は、細胞応答(例えば、がん細胞で評価される通り)であってよく、当技術分野で公知の臨床基準および客観的基準を含む多種多様な基準を用いて測定することができる。応答を評価するための技法には、限定されるものではないが、アッセイ評価、臨床検査、陽電子放出断層撮影、X線、CTスキャン、MRI、超音波、内視鏡検査、腹腔鏡検査、被験体から得た試料中の腫瘍マーカーの存在またはレベルの評価、細胞学、および/または組織学が含まれる。腫瘍応答の測定に関しては、処置に対する応答を評価するための方法およびガイドラインが、Therasseら(J.Natl.Cancer Inst.,92(3):205-216,2000)において考察されている。がんおよび/または患者の群を比較する場合、比較される群が、奏効率を決定するための同じまたは比較可能な基準に基づいて評価されるのであれば、正確な応答基準は任意の適切な方法で当業者が選択することができる。
【0047】
本明細書において、「強度」という用語がスーパーエンハンサーのエンハンサーの一部を指すために使用される場合、それは、分析したゲノムDNAセグメントの長さに対してプロットされたH3K27Acまたは他のゲノムマーカー読み取りの数の曲線下面積を意味する。したがって、「強度」は、測定するために選択される領域を定義する塩基対のスパンにわたって所与塩基対のマークを測定することにより得られるシグナルの積分である。
【0048】
本明細書において、「スーパーエンハンサー」または「SE」という用語は、特定の細胞または細胞型において他のエンハンサーと比較して不均衡な割合のヒストンマークおよび/または転写タンパク質を含有するエンハンサーのサブセットを指す。SEによって調節される遺伝子は、細胞の機能に非常に重要であると予測されている。SEは、通常、細胞内のすべてのエンハンサーを強度に基づいて順位付けし、ROSE((bitbucket.org/young_computation/rose)などの利用可能なソフトウェアを使用して、細胞内のエンハンサーの中央値よりも有意に高い強度を持つエンハンサーのサブセットを決定することによって決定される。必要に応じて、当業者は、例えば、細胞種特異的遺伝子(例えば、胚幹細胞の同一性を定義する遺伝子)の発現をモジュレートするSEを同定する方法を記載する米国特許第9,181,580号を参照することができ、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0049】
「タミ/アザ」という用語は、タミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩とアザシチジンまたはその薬学的に許容され得る塩の組合せを指す。
【0050】
「タミ/アザ/ベン」という用語は、タミバロテン(またはその薬学的に許容され得る塩)、アザシチジン(またはその薬学的に許容され得る塩)、およびベネトクラクス(またはその薬学的に許容され得る塩)の組合せを指す。
【0051】
「閾値」および「閾値レベル」という用語は、集団の2つのサブセット(例えば、レスポンダーである可能性がある人とノンレスポンダー)間の境界線を定義するレベルを意味する。閾値または閾値レベルは、保有率カットオフまたはカットオフ値を定義することができ、バイオマーカーの様々な特徴(例えば、バイオマーカー遺伝子から発現された一次RNA転写物のレベル、序列順位(ordinal rank)、または保有率順位、あるいはバイオマーカー遺伝子に関連するスーパーエンハンサーの強度、序列順位、または保有率順位)に関して評価され得る。
【0052】
一実施形態では、本発明は、急性骨髄単球性白血病(急性骨髄性白血病(AML)のM4サブタイプ)または急性単球性白血病(AMLのM5サブタイプ)と診断された患者の処置における、治療有効量のタミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩の処置方法または使用を特徴とする;タミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩は、(a)患者から得た生体試料中の白血病細胞がRARAバイオマーカーを発現しているかどうかを決定する前に、かつ/またはRARAバイオマーカーのステータスを考慮せずに;(b)患者から得た生体試料中の白血病細胞が、単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーを発現していると決定した後に、;または(c)患者から得た生体試料中の白血病細胞が、RARAバイオマーカー、および単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーを発現していると決定した後に、患者に投与され得る。この方法/使用は、本発明の第2の特定の実施形態を構成する。
【0053】
一実施形態では、本発明は、骨髄異形成症候群(MDS)と診断された患者の処置における、治療有効量のタミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩の処置方法または使用であって、タミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩が、(a)患者から得た生体試料中のMDS細胞が、RARAバイオマーカーを発現しているかどうかを決定する前に、かつ/またはRARAバイオマーカーのステータスを考慮せずに;(b)患者から得た生体試料中のMDS細胞が、単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーを発現していると決定した後に;または(c)患者から得た生体試料中のMDS細胞が、RARAバイオマーカー、および単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーを発現していると決定した後に、患者に投与される、処置方法または使用を特徴とする。この方法/使用は、本発明の第3の特定の実施形態を構成する。
【0054】
本発明の第2または第3の特定の実施形態では、(a)RARAバイオマーカーは、(i)RARA一次RNA転写物またはそれから転写されたcDNAの、基準と比較して上昇した発現、または(ii)RARA遺伝子に関連するスーパーエンハンサーを含み、(b)単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーは、(i)CD14遺伝子、CLEC7A(CD369)遺伝子、CD86遺伝子、CD68遺伝子、LYZ遺伝子、MAFB遺伝子、CD34遺伝子、ITGAM(CD11b)遺伝子、および/またはFCGR1A(CD64)遺伝子からの一次RNA転写物、それから転写されたcDNA、またはそれによってコードされるタンパク質の、基準と比較して上昇した発現、あるいは、(ii)CD14遺伝子、CLEC7A(CD369)遺伝子、CD86遺伝子、CD68遺伝子、LYZ遺伝子、MAFB遺伝子、CD34遺伝子、ITGAM(CD11b)遺伝子、FCGR1A(CD64)遺伝子、KIT(CD117)遺伝子、MCL1遺伝子および/またはBCL2に関連するスーパーエンハンサーを含む。タミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩は、治療有効量の第2の治療薬または治療有効量の複数の追加の治療薬と組み合わせて投与され得る。第2の治療薬は低メチル化剤(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)であり得る。第2の治療薬はBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス(venetoclax))であり得る。タミバロテンは、低メチル化剤およびBCL2阻害剤と組み合わせて投与され得、低メチル化剤はアザシチジンであり、BCL2阻害剤はベネトクラクスである。患者は、ベネトクラクスによる処置後に再発したものであってよく、患者は、ベネトクラクスによる処置に難治性になったか、または患者から得た生体試料内の白血病細胞またはMDS細胞がベネトクラクスに対する抵抗性を示すことができるものであり得る。患者は、AMLのM4サブタイプ、AMLのM5サブタイプ、またはMDSと新規診断されてもよく、かつ/または標準的な導入化学療法に不適格であると考えられる。患者は、フランス・アメリカ・イギリス(FAB)分類系によって、またはAMLのM4サブタイプ、AMLのM5サブタイプ、またはMDSに特徴的な遺伝子またはタンパク質発現プロファイルによって、AMLのM4サブタイプ、AMLのM5サブタイプ、またはMDSと診断されたものであり得る。単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーは、基準と比較して、ベネトクラクスに対する抵抗性と相関する発現のレベルを有する遺伝子またはタンパク質であり、必要に応じて、単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーが、CD14、CLEC7A(CD369)、CD86、CD68、LYZ、MAFB、CD34、ITGAM(CD11b)、FCGR1A(CD64)、またはKIT(CD117)、MCL1、およびBCL2から選択される遺伝子、それから転写されたcDNA、またはそれによってコードされるタンパク質を含む。複数の追加の治療薬は、治療有効量のアザシチジンまたはデシタビン、ベネトクラクス、および低用量シタラビンからなってもよく、またはそれらを含み得、この場合、患者は、AMLのM4サブタイプ、AMLのM5サブタイプ、またはMDSと新規診断されたものであり得る。RARAバイオマーカーおよび/または単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーは、(a)RARA遺伝子または単球の表現型を示す遺伝子に関連するスーパーエンハンサーであって、スーパーエンハンサーが、所定の閾値レベルに等しいかまたはそれを上回る、強度またはその強度もしくは保有率に基づく序列順位を有する、スーパーエンハンサー;および/または(b)所定の閾値レベルに等しいかまたはそれを上回る、RARA遺伝子または単球の表現型を示す遺伝子からの一次RNA転写物のレベルを、患者から得た生体試料中のがん細胞が有するかどうかを決定することによって評価され得る。RARAバイオマーカーおよび単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーは、以下からなってもよく、または以下を含み得る:
(a)RARA遺伝子または単球の表現型を示すバイオマーカー遺伝子からの一次RNA転写物レベルであって、転写物レベルが、タミバロテンに応答する可能性がある患者とタミバロテンに応答しそうにない患者との間の境界線を定義する閾値レベルに対して上昇しており、AMLのM4またはM5サブタイプを表す細胞株、MDSを表す細胞株、AMLのM4またはM5サブタイプを表す異種移植片、MDSを表す異種移植片、AMLのM4またはM5サブタイプに罹患している患者由来の生体試料、またはMDSに罹患している患者由来の生体試料を含む試料の集団における一次RNA転写物レベルの分析によって予め決定されており、
集団における試料の数が、試料の集団よりも大きいAMLのM4またはM5サブタイプまたはMDSを有する患者群における一次RNA転写物レベルの分布を合理的に反映するのに十分であり;
集団における一次RNA転写物レベルの分析が、少なくとも一部の試料をタミバロテンに対する応答性について試験し、(i)タミバロテンに応答する集団中の試料の最も低い一次RNA転写物レベル、および(ii)タミバロテンに応答しない集団中の試料の最も高い一次RNA転写物レベルを確立し、それにより最も低いRNA転写物レスポンダーと最も高いRNA転写物ノンレスポンダーをそれぞれ定義することを含み;
閾値レベルが、(i)最も低い一次RNA転写物レスポンダーの一次RNA転写物レベルに等しいかまたは最大約5%上回るレベル、(ii)最も高い一次RNA転写物ノンレスポンダーの一次RNA転写物レベルに等しいかまたは最大約5%上回るレベル、または(iii)最も低い一次RNA転写物レスポンダーの一次RNA転写物レベルと最も高い一次RNA転写物ノンレスポンダーの一次RNA転写物レベルとの間の値、に設定されている、
一次RNA転写物レベル。
【0055】
一実施形態では、本発明は、急性骨髄性白血病(AML)またはMDSと診断された患者を処置する際の、治療有効量のタミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩、アザシチジンまたはその薬学的に許容され得る塩、およびベネトクラクスまたはその薬学的に許容され得る塩(例えば、タミバロテンおよびアザシチジンおよびベネトクラクス)の処置方法または使用を特徴とする。この方法/使用は、本発明の第4の特定の実施形態を構成する。
【0056】
第4の特定の実施形態では、タミバロテン、アザシチジン、およびベネトクラクス、またはそれらの塩の1もしくはそれより多くは、患者から得た生体試料中の白血病細胞がRARAバイオマーカーを発現しているかどうかを決定する前に、かつ/またはRARAバイオマーカーのステータスを考慮せずに、患者に投与される。あるいは、治療有効量のタミバロテン、アザシチジン、およびベネトクラクス、またはそれらの塩の1もしくはそれより多くは、患者がRARAバイオマーカーを発現していると決定された後に患者に投与される。RARAバイオマーカーは、RARA一次RNA転写物、RARA一次RNA転写物から転写されたcDNA、またはRARA遺伝子に関連するスーパーエンハンサーの、基準と比較して上昇した発現であり得る。患者は、AMLまたはMDSと新規診断され得、方法および使用は、治療有効量の低用量シタラビンの投与をさらに含み得る。あるいは、または加えて、患者は、標準的な導入化学療法に不適格であると考えられ得、方法および使用は、治療有効量の低用量シタラビンの投与をさらに含み得る。RARAバイオマーカーは、(a)RARA遺伝子に関連するスーパーエンハンサーであって、スーパーエンハンサーが、所定の閾値レベルに等しいかまたはそれを上回る、強度またはその強度もしくは保有率に基づく序列順位を有する、スーパーエンハンサー;および/または(b)所定の閾値レベルに等しいかまたはそれを上回る、RARA遺伝子からの一次RNA転写物のレベルを、患者から得た生体試料中のがん細胞が有するかどうかを決定することによって評価され得る。RARAバイオマーカーは、以下からなってもよく、または以下を含み得る:
(a)RARA遺伝子からの一次RNA転写物レベルであって、転写物レベルが、タミバロテンに応答する可能性がある患者とタミバロテンに応答しそうにない患者との間の境界線を定義する閾値レベルに対して上昇しており、AMLを表す細胞株、MDSを表す細胞株、AMLを表す異種移植片、MDSを表す異種移植片、AMLに罹患している患者由来の生体試料、またはMDSに罹患している患者由来の生体試料を含む試料の集団における一次RNA転写物レベルの分析によって予め決定されており、
集団における試料の数が、試料の集団よりも大きいAMLまたはMDSを有する患者群におけるRARA一次RNA転写物レベルの分布を合理的に反映するのに十分であり;
集団におけるRARA一次RNA転写物レベルの分析が、少なくとも一部の試料をタミバロテンに対する応答性について試験し、(i)タミバロテンに応答する集団中の試料の最も低い一次RNA転写物レベル、および(ii)タミバロテンに応答しない集団中の試料の最も高い一次RNA転写物レベルを確立し、それにより最も低いRARA RNA転写物レスポンダーと最も高いRARA RNA転写物ノンレスポンダーをそれぞれ定義することを含み;
閾値レベルが、(i)最も低いRARA RNA転写物レスポンダーのRARA RNA転写物レベルに等しいかまたは5%まで高いレベル、(ii)最も高いRARA RNA転写物ノンレスポンダーのRARA RNA転写物レベルに等しいかまたは5%まで高いレベル、または(iii)最も低いRARA RNA転写物レスポンダーのRARA RNA転写物レベルと最も高いRARA RNA転写物ノンレスポンダーのRARA RNA転写物レベルとの間の値、に設定されている、
一次RNA転写物レベル。
【0057】
一実施形態では、本発明は、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、慢性リンパ性白血病(CLL(例えば、17p欠失を有する))、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、多発性骨髄腫(MM)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、またはマントル細胞リンパ腫(MCL)と診断された患者を処置する際の、治療有効量のタミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩の処置方法または使用を特徴とする。この方法/使用は、本発明の第5の特定の実施形態を構成する。
【0058】
第5の特定の実施形態では、タミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩は、患者から得た生体試料中の白血病、リンパ腫、またはマントル細胞がRARAバイオマーカーを発現しているかどうかを決定する前に、かつ/またはRARAバイオマーカーのステータスを考慮せずに、患者に投与される。あるいは、または加えて、タミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩は、患者から得た生体試料中の白血病、リンパ腫、またはマントル細胞がRARAバイオマーカーおよび/または単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーを発現するかどうかを決定した後に、患者に投与される。RARAバイオマーカーは、(i)RARA一次RNA転写物またはそれから転写されたcDNAの、基準と比較して上昇した発現、または(ii)RARA遺伝子に関連するスーパーエンハンサーからなってもよく、またはそれを含み、(b)単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーが、(i)CD14遺伝子、CLEC7A(CD369)遺伝子、CD86遺伝子、CD68遺伝子、LYZ遺伝子、MAFB遺伝子、CD34遺伝子、ITGAM(CD11b)遺伝子、および/またはFCGR1A(CD64)遺伝子からの一次RNA転写物、それから転写されたcDNA、またはそれによってコードされるタンパク質の、基準と比較して上昇した発現、あるいは、(ii)CD14遺伝子、CLEC7A(CD369)遺伝子、CD86遺伝子、CD68遺伝子、LYZ遺伝子、MAFB遺伝子、CD34遺伝子、ITGAM(CD11b)遺伝子、FCGR1A(CD64)遺伝子、KIT(CD117)遺伝子、MCL1遺伝子および/またはBCL2に関連するスーパーエンハンサーを含む。タミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩は、治療有効量の第2の治療薬または治療有効量の複数の追加の治療薬と組み合わせて投与され得る。第2の治療薬は低メチル化剤(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)であり得る。第2の治療薬はBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)であり得る。タミバロテンは、低メチル化剤およびBCL2阻害剤と組み合わせて投与され得る。タミバロテンは、アザシチジンおよびベネトクラクスと組み合わせて投与され得る。患者は、ベネトクラクスによる処置後に再発したものか、またはベネトクラクスによる処置に難治性になったものであり得る。患者から得た生体試料内の白血病細胞、リンパ腫細胞、または骨髄腫細胞は、ベネトクラクスに対する抵抗性を示したかもしれない。単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーは、基準と比較して、ベネトクラクスに対する抵抗性と相関する発現のレベルを有する遺伝子またはタンパク質であり得、必要に応じて、単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーが、CD14、CLEC7A(CD369)、CD86、CD68、LYZ、MAFB、CD34、ITGAM(CD11b)、FCGR1A(CD64)、またはKIT(CD117)、MCL1、およびBCL2から選択される遺伝子、それから転写されたcDNA、またはそれによってコードされるタンパク質を含む。複数の追加の治療薬は、治療有効量のアザシチジンまたはデシタビン、ベネトクラクス、およびオビヌツズマブからなってもよく、またはそれらを含み得、これらは、CLLまたはSLLと診断された患者に投与され得る。複数の追加の治療薬は、治療有効量のアザシチジンまたはデシタビン、ベネトクラクス、およびリツキシマブからなってもよく、またはそれらを含み得、これらは、CLLまたはSLLと診断された患者に投与され得る。RARAバイオマーカーおよび/または単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーは、(a)RARA遺伝子または単球の表現型を示す遺伝子に関連するスーパーエンハンサーであって、スーパーエンハンサーが、所定の閾値レベルに等しいかまたはそれを上回る、強度またはその強度もしくは保有率に基づく序列順位を有する、スーパーエンハンサー;および/または(b)所定の閾値レベルに等しいかまたはそれを上回る、RARA遺伝子または単球の表現型を示す遺伝子からの一次RNA転写物のレベルを、患者から得た生体試料中のがん細胞が有するかどうかを決定することによって評価されるか、または評価されている。
【0059】
RARAバイオマーカーおよび単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーは、以下であり得るかまたは以下を含み得る:
(a)RARA遺伝子または単球の表現型を示すバイオマーカー遺伝子からの一次RNA転写物レベルであって、転写物レベルが、タミバロテンに応答する可能性がある患者とタミバロテンに応答しそうにない患者との間の境界線を定義する閾値レベルに対して上昇しており、AMLのM4またはM5サブタイプを表す細胞株、MDSを表す細胞株、AMLのM4またはM5サブタイプを表す異種移植片、MDSを表す異種移植片、AMLのM4またはM5サブタイプに罹患している患者由来の生体試料、またはMDSに罹患している患者由来の生体試料を含む試料の集団における一次RNA転写物レベルの分析によって予め決定されており、
集団における試料の数が、試料の集団よりも大きいAMLのM4またはM5サブタイプまたはMDSを有する患者群における一次RNA転写物レベルの分布を合理的に反映するのに十分であり;
集団における一次RNA転写物レベルの分析が、少なくとも一部の試料をタミバロテンに対する応答性について試験し、(i)タミバロテンに応答する集団中の試料の最も低い一次RNA転写物レベル、および(ii)タミバロテンに応答しない集団中の試料の最も高い一次RNA転写物レベルを確立し、それにより最も低いRNA転写物レスポンダーと最も高いRNA転写物ノンレスポンダーをそれぞれ定義することを含み;
閾値レベルが、(i)最も低い一次RNA転写物レスポンダーの一次RNA転写物レベルに等しいかまたは最大約5%上回るレベル、(ii)最も高い一次RNA転写物ノンレスポンダーの一次RNA転写物レベルに等しいかまたは最大約5%上回るレベル、または(iii)最も低い一次RNA転写物レスポンダーの一次RNA転写物レベルと最も高い一次RNA転写物ノンレスポンダーの一次RNA転写物レベルとの間の値、に設定されている、
一次RNA転写物レベル。
【0060】
本発明の実施形態、特に第1、第2、第3、または第4の特定の実施形態では、AMLは非APL AMLである。
【0061】
バイオマーカーの発現の評価:本明細書に記載される、バイオマーカーの発現の評価に関する技法および分析は、文脈がそうでないことを示さない限り、1またはそれを超える本明細書に記載の特定のバイオマーカー(例えば、RARAバイオマーカーまたは単球サブタイプのバイオマーカー)に適用することができる。本明細書に記載のバイオマーカー(例えば、RARA、CD14、CLEC7A(CD369)、CD86、CD68、LYZ、MAFB、CD34、ITGAM(CD11b)、FCGR1A(CD64)、またはKIT(CD117)、およびそれに相関するバイオマーカー(例えば、MCL1および/またはBCL2)は、所与のバイオマーカー遺伝子に関連するスーパーエンハンサーを特定し、評価することによって特定することができる。スーパーエンハンサーは、当分野で公知の様々な方法によって特定することができる(Cell 155:934-947、2013およびその内容が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9,181,580号を参照)。スーパーエンハンサーの特定は、患者から得た生体試料(例えば、生検で得た血液または組織の試料)内のがん細胞由来のDNAを含む細胞材料を得ることによって開始することができる。エンハンサーの測定に重要な測定基準は、2つの次元で生じる;スーパーエンハンサーに関連するゲノムマーカー(例えば、H3K27Ac)を連続的に検出することのできるDNAの長さが第1の次元を構成し、そのDNAの長さに沿った各塩基対のゲノムマーカーの集計された出現率が大きさを構成し、第2の次元として機能する。長さおよび大きさ分析の積分から得られる曲線下面積(「AUC」)が、エンハンサーの強度を決定する。RARA遺伝子がスーパーエンハンサーに関連していることは公知であり、単球サブタイプの1またはそれを超えるバイオマーカーに関連するエンハンサーもスーパーエンハンサーとして認定されると予想される。バイオマーカー遺伝子に関連したエンハンサー/スーパーエンハンサーの、対照と比較した強度は、患者が本明細書に記載の治療薬(または治療薬の組合せ)に応答する可能性があるかどうかを示し、スーパーエンハンサーの存在とその相対的な強度は、処置に応答する可能性が高い患者を特定する。当業者が理解するように、ゲノムマーカーを検出するDNAの長さがバイオマーカー遺伝子(例えば、RARA)と対照遺伝子の両方で同じである場合、DNAの長さに沿ったゲノムマーカーの量は、対照内に存在するものと比較して、場合によっては、エンハンサーまたはスーパーエンハンサーの強度を示すことになり、これを単独で使用して、患者が本明細書に記載の治療薬(または治療薬の組合せ)に応答する可能性があるかどうかを決定することができる。
【0062】
本発明者らは、H3K27Ac ChIP-seq法によって、RARA遺伝子に関連するスーパーエンハンサー遺伝子座がchr17:38458152-38516681(ゲノムビルドhg19)にあることを決定した。この遺伝子座はRARA遺伝子座自体と重複しているため、近接/重複のためにその遺伝子に関連しているスーパーエンハンサー遺伝子座とみなされた。したがって、一部の実施形態では、本発明によるRARA遺伝子に関連するスーパーエンハンサーの強度の決定は、ゲノム全体の分析を必要とするのとは対照的に、ゲノムのこの特定の部分の分析のみを必要とする。
【0063】
ChIPシーケンシングは、ChIP-seqとしても公知であり、DNAとのタンパク質相互作用を分析するために使用される。ChIP-seqは、クロマチン免疫沈降(ChIP)と超並列DNAシーケンシングを組み合わせて、DNA関連タンパク質結合部位を特定する。これを使用して、目的のタンパク質の網羅的な結合部位を正確にマッピングすることができる。以前は、ChIPオンチップが、これらのタンパク質とDNAの関係を研究するために利用される最も一般的な手法であった。ChIP-seqの成功は、超音波処理の強度および方法、緩衝液の組成、抗体の品質、および細胞数をはじめとする多くの要因に依存する;例えば、Furey,Nature Reviews Genetics 13,840-852,2012;Metzker,Nature Reviews Genetics 11:31-46,2010;およびPark,Nature Reviews Genetics 10:669-680,2009を参照されたい。ChIP-seqを使用してスーパーエンハンサーを特定するために使用することができるH3K27Ac以外のゲノムマーカーとしては、P300、CBP、BRD2、BRD3、BRD4、およびメディエーター複合体の成分(Lovenら、Cell,153(2):320-334,2013)、ヒストン3リジン4モノメチル化(H3K4me1)、または他の組織特異的エンハンサー結合転写因子(Smith and Shilatifard,Nat.Struct.Mol.Biol.,21(3):210-219,2014;Pott and Lieb,Nature Genetics,47(1):8-12,2015)が挙げられる。細胞株または患者試料の全ゲノムのH3K27Acまたはその他のマーカーのChIP-seqデータのスーパーエンハンサーマップは、場合によってはすでに存在する。もしそうであれば、chr17:38458152-38516681(ゲノムビルドhg19)遺伝子座のそのようなマップのエンハンサーまたはスーパーエンハンサーの強度または序列ランキング(例えば、強度または保有率順位の序列)が、RARAスーパーエンハンサーについての所定の閾値レベルに等しいかまたはそれを上回ったかどうかを決定するだけでよいことになる。
【0064】
場合によって、chr17:38458152-38516681遺伝子座(すなわち、RARA遺伝子座)のエンハンサーまたはスーパーエンハンサーの強度の決定には、この領域と、すべての細胞に同様のレベルで存在するユビキタススーパーエンハンサーまたはエンハンサーを含むことが既知の領域とでChIP-seqの読み取りを比較することが必要である。このようなユビキタススーパーエンハンサー領域の一例は、MALAT1スーパーエンハンサー遺伝子座(chr11:65263724-65266724)である。RARA遺伝子座(または単球の表現型を示すバイオマーカー遺伝子の遺伝子座)のChIP-seqの読み取りをMALAT1遺伝子座のものと比較することにより、RARA遺伝子座のスーパーエンハンサーの強度が所定の閾値レベルに等しいかまたはそれを上回るかどうか、およびその中の細胞がRARAアゴニストに応答するかどうか(または単球の表現型のバイオマーカーに関連するエンハンサーまたはスーパーエンハンサーを有するがん細胞が、単球の表現型(例えば、AMLのM4またはM5サブタイプまたはMDS)を示すがんの患者について本明細書に記載される治療レジメンに応答するかどうか)を決定することができる。
【0065】
一部の実施形態では、所定の閾値レベルは、log10(バイオマーカー遺伝子座(例えば、RARA遺伝子座)のChIP-seqの読み取りのAUC(「R」)/MALAT1スーパーエンハンサー遺伝子座のChIP-seqの読み取りのAUC(「M」)が0.25またはそれを超えるレベルである。したがって、本明細書に記載の治療レジメンのレスポンダー(例えば、タミバロテン、タミ/アザ、またはタミ/アザ/ベンに対するレスポンダー)である可能性のある者を特定するための閾値レベルは、0.3またはそれを超える(例えば、0.35またはそれを超える、または0.4またはそれを超える)log10(R/M)である。
【0066】
一部の実施形態では、所定の閾値レベルは、log10(バイオマーカー遺伝子座(例えば、RARA遺伝子座)のChIP-seqの読み取りのAUC(「R」)/MALAT1スーパーエンハンサー遺伝子座のChIP-seqの読み取りのAUC(「M」)が1.75またはそれを超えるレベルである。したがって、本明細書に記載の治療レジメンのレスポンダー(例えば、タミバロテン、タミ/アザ、またはタミ/アザ/ベンに対するレスポンダー)である可能性のある者を特定するための閾値レベルは、2.0またはそれを超える(例えば、2.25それを超える、または2.75それを超える)log10(R/M)である。
【0067】
示されるように、コントロールエンハンサーまたはスーパーエンハンサー遺伝子座は、MALAT1以外であってよい。一部の実施形態では、上に定義されるRは、MALAT1以外のコントロールエンハンサーまたはスーパーエンハンサー遺伝子座と比較される(この他のコントロールエンハンサーまたはスーパーエンハンサーのChIP-seqの読み取りの数を「C」と呼ぶ)。もう1つのコントロールエンハンサーまたはスーパーエンハンサー遺伝子座であるCを利用する場合、log10(「V」)として表され、Mとの比較について上記で言及される閾値(例えば、0.25を超えるかもしくはそれに等しいlog10(R/M)、0.3を超えるかもしくはそれに等しいlog10(R/M)、0.35を超えるかもしくはそれに等しいlog10(R/M)、または0.4を超えるかもしくはそれに等しいlog10(R/M))は、Mと比較したCの相対強度を説明するために、Cに匹敵する同等の値に調整する必要がある。この「同等に調整された閾値」(「A」)は次のように計算される:A=log10(M/C)+V。
【0068】
限定されない例として、MALAT1スーパーエンハンサー(M)の算出された強度が、比較器として使用されるコントロールエンハンサーまたはスーパーエンハンサー(C)よりも10倍大きく、閾値(V)が0.25である場合、A=log10(10)+0.25=1.25であり、調整した閾値は1.25である。この例では、Cを比較器として使用した場合、1.25に等しいかまたはそれを超えるlog10(R/C)は、Mを比較器として使用した場合に0.25に等しいかまたはそれを超えるlog10(R/M)と同等とみなされる。調整された閾値が、MALAT1または調整された閾値がすでに決定されている任意のその他の比較器のいずれかに対するその相対強度に基づいて、任意の追加の比較器について同様の方法で算出することができることは容易に明らかである。
【0069】
Mと比較した線形値を閾値レベル(例えば、1.75倍を超えるかもしくはそれに等しい倍数、2.0倍を超えるかもしくはそれに等しい倍数、2.25倍を超えるかもしくはそれに等しい倍数、または2.5倍)として使用する場合、上記と同じ調整を行うことができる。この場合、MとCの比を得た後、閾値にその比を乗算すると、RとCを比較するときの適切な閾値が得られる(すなわち、(閾値)=(M/C)(閾値))。
【0070】
RARA、単球の表現型のバイオマーカーとして機能する遺伝子、MALAT1、および他の対照の特定の染色体位置は、様々なゲノムビルドおよび/または様々な細胞種で異なることがある。しかし、当業者であれば、そのような他のゲノムビルドにおいて、ゲノムビルドhg19の遺伝子座に対応する特定の配列を突き止めることにより、そのような異なる位置を決定することができる。
【0071】
スーパーエンハンサーを特定するために使用することができるその他の方法には、クロマチン免疫沈降(Delmoreら、Cell、146(6):904-917、2011)およびチップアレイ(ChIP-チップ)、および、chr17:38458152-38516681(ゲノムビルドhg19)RARA遺伝子座とハイブリダイズする同じ免疫沈降ゲノムマーカーとオリゴヌクレオチド配列を使用する、クロマチン免疫沈降とその後のqPCR(ChIP-qPCR)が含まれる。ChIP-チップの場合、シグナルは、通常、他のアレイに基づく技術と同様に、プローブおよび入力アッセイ試料のハイブリダイゼーションから生じる強度蛍光によって検出される。ChIP-qPCRでは、PCR反応で生成した二本鎖DNAをインターカレートして初めて蛍光を発する色素を用い、鋳型の増幅を測定することができる。
【0072】
一部の実施形態では、必要な閾値レベルを上回るスーパーエンハンサーの強度から明らかなように、細胞がバイオマーカーを発現するかどうかを決定することは、試験細胞(例えば、患者から得た生体試料中のがん細胞)におけるエンハンサーの強度を、RARAに応答しないことが公知の細胞(「対照細胞」)における対応するエンハンサーの強度と比較することによって達成される。好ましくは、対照細胞は、試験細胞(例えば、患者から得た生体試料中のがん細胞)と同じ細胞種である。場合によっては、対照細胞は、HCC1143細胞株のかかる細胞または米国特許第10,697,025号の図3A~3Mに列挙される任意の細胞であり、log10(RARA/MALAT1)は、0.25未満、0.2未満、0.15未満、0.1未満、または0未満である。米国特許第10,697,025号は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0073】
一部の実施形態では、スーパーエンハンサーの存在から明らかなように、患者から得た生体試料中のがん細胞におけるバイオマーカー(例えば、RARAバイオマーカーまたは単球の表現型を示すバイオマーカー)の強度が、対照細胞における対応するエンハンサーまたはスーパーエンハンサーの強度よりも少なくとも約1.5倍大きい(例えば、少なくとも約2.0、2.5、3.0、4.0または5.0倍大きい)場合に、患者はRARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)に対するレスポンダーである可能性があると決定される。これらの実施形態のいずれかにおいても、1または複数の試験細胞(例えば、患者から採取)と1または複数の対照細胞の両方におけるバイオマーカーに関連するスーパーエンハンサーの強度は、比較の前に正規化することができる。正規化には、エンハンサーまたはスーパーエンハンサーの強度を決定する前に、両方の細胞でネイティブであり同等のレベルで存在する別のエンハンサーまたはスーパーエンハンサー(例えば、MALAT1)との比較によるか、または、各々の細胞の試料に意図的に添加された(「スパイクされた」)、固定されたレベルの外来性DNAとの比較によって、スーパーエンハンサーの決定された強度を調整することが含まれる(Orlandoら、Cell Rep.9(3):1163-70,2014;Bonhoureら、Genome Res,24:1157-68,2014)。
【0074】
細胞(例えば、患者から得た生体試料中のがん細胞)が、必要な閾値レベルを上回るスーパーエンハンサー強度を有することにより、バイオマーカー陽性であるかどうかを決定することは、試験細胞(例えば、患者から得た生体試料内のがん細胞)におけるバイオマーカー(例えば、RARAまたは単球の表現型を示すバイオマーカー遺伝子)に関連するエンハンサーまたはスーパーエンハンサーの強度を、試料の集団の対応するエンハンサーまたはスーパーエンハンサーの強度と比較することによって達成することができる。ここで、試料の集団中の各々の試料は、様々な供給源(すなわち、様々な被験体、様々な細胞株、様々な異種移植片)から取得されたものである。試料の集団内の少なくとも一部の試料は、特定の治療薬(例えば、タミバロテンなどのRARAアゴニスト)に対する応答性について、(a)その特定の治療薬(例えば、タミバロテン)に応答する試料の集団内の試料で最も低いエンハンサー強度(「最も低いレスポンダー」)、および、必要に応じて、(b)特定の治療薬(例えば、タミバロテン)に応答しない試料の集団内の試料で最も高いエンハンサー強度(「最も高いノンレスポンダー」)を確立するために試験されているであろう。これらの実施形態では、それを上回れば試験細胞がその特定の治療薬(例えば、タミバロテン)に応答性であるとみなされるエンハンサー強度(例えば、RARA SE強度)の閾値レベルまたは「カットオフ」は、(i)集団内の最も低いレスポンダーにおけるエンハンサー強度に等しいかまたは最大約5%上回る値;または(ii)集団内の最も高いノンレスポンダーのエンハンサー強度に等しいかまたは最大約5%上回る値;または(iii)集団内の最も低いレスポンダーと最も高いノンレスポンダーの間のエンハンサー強度の値に設定される。
【0075】
上記実施形態では、一般に、集団のすべての試料がRARAアゴニストに対する応答性について試験される必要はないが、すべての試料がRARAエンハンサー強度について測定されることを理解されたい。一部の実施形態では、試料はRARAエンハンサー強度に基づいて順位付けされる。カットオフを確立するために上記の3つの方法のどれを使用するかの選択は、集団内の最も低いレスポンダーと最も高いノンレスポンダーとの間のRARAエンハンサー強度の差、および、目標が偽陽性の数を最小化することであるのか、または潜在的に応答性の試料または被験体を見逃す確率を最小化することであるのかによって決まる。最も低いレスポンダーと最も高いノンレスポンダーとの間の差が大きい場合(例えば、RARAエンハンサー強度の順位付けにおいて最も低いレスポンダーと最も高いノンレスポンダーの間に入る応答性について試験されていない試料が多数ある場合)、カットオフは、一般に、集団内の最も低いレスポンダーにおけるRARAエンハンサー強度に等しいかまたは最大5%高く設定される。このカットオフは、潜在的なレスポンダーの数を最大にする。この差が小さい場合(例えば、RARAエンハンサー強度の順位付けで最も低いレスポンダーと最も高いノンレスポンダーの間に入る応答性について試験されていない試料がほとんどまたは全くない場合)、カットオフは一般に最も低いレスポンダーと最も高いノンレスポンダーのRARAエンハンサー強度の間の値に設定される。このカットオフにより、偽陽性の数が最小限に抑えられる。最も高いノンレスポンダーのRARAエンハンサー強度が最も低いレスポンダーよりも大きい場合、カットオフは一般に、集団の最も高いノンレスポンダーにおけるRARAエンハンサー強度に等しいかまたは最大5%高い値に設定される。この方法も、偽陽性の数を最小限に抑える。
【0076】
細胞が必要な閾値レベルを上回るスーパーエンハンサー(例えば、RARA SE)を有するかどうかの決定は、試験細胞におけるエンハンサー強度の序列と、細胞試料の集団内の(同じエンハンサーについての)エンハンサー強度の序列を比較することによって達成することができる。ここで、各々の細胞試料は、様々な供給源(すなわち、様々な被験体、様々な細胞株、様々な異種移植片)から得られる。これらの実施形態では、集団中の少なくとも一部の試料は、特定の治療薬(例えば、タミバロテンなどのRARAアゴニスト)に対する応答性について、(a)その特定の治療薬に応答する集団中の試料で最も低いエンハンサー強度序列(「最も低い序列レスポンダー」);および、必要に応じて、(b)特定の治療薬に応答しない集団中の試料で最も高いエンハンサー強度序列(「最も高い序列ノンレスポンダー」)を確立するために試験されているであろう。これらの実施形態では、それを上回れば試験細胞(例えば、患者から得た生体試料のがん細胞)がその特定の治療薬に応答性であるとみなされるであろうエンハンサー強度序列(例えば、RARA SE強度序列)のカットオフは、(i)集団内の最も低い序列レスポンダーにおけるエンハンサー強度序列に等しいかまたは最大約5%上回る値;または(ii)集団内の最も高い序列ノンレスポンダーにおけるエンハンサー強度序列に等しいかまたは最大約5%上回る値;または(iii)集団内の最も低い序列レスポンダーと最も高い序列ノンレスポンダーの間のエンハンサー強度序列の値に設定される。集団のすべての試料を治療薬(例えば、RARAアゴニスト)に対する応答性について試験する必要はないが、同じ試料中の他のエンハンサーと比較したエンハンサー強度およびエンハンサー強度の序列は、すべての試料、または本質的にすべての試料で測定される。序列は、一般に、細胞内のすべてのまたは本質的にすべての他のエンハンサーの強度を測定し、他のエンハンサー(すなわち、RARA遺伝子以外の遺伝子に関連するエンハンサー、または、分析が示し得るように、単球の表現型を示すバイオマーカー遺伝子)と比較してエンハンサー(例えば、RARAエンハンサー)が強度に関してどの順位(すなわち、序列)であるかを決定することにより得られる。一部の実施形態では、試料は、エンハンサー強度(例えば、RARA SE強度)の序列に基づいて順位付けされる。所定の閾値またはカットオフを確立するために使用する上記の3つの方法((i)~(iii))のいずれを使用するかの選択は、集団内の最も低い序列レスポンダーと最も高い序列ノンレスポンダーの間のエンハンサー強度の強度または序列の差、および、閾値またはカットオフが偽陽性を最小化するように設計されているかまたはレスポンダーの数を最大化するように設計されているかによって決まる。この差が大きい場合(例えば、エンハンサー強度の序列の順位付けにおいて最も低い序列レスポンダーと最も高い序列ノンレスポンダーの間に入る応答性について試験されていない試料が多数ある場合)、カットオフは、一般に、集団の最も低い序列レスポンダーにおけるエンハンサー強度の序列に等しいかまたは最大約5%高く設定される。この差が小さい場合(例えば、エンハンサー強度の序列の順位付けにおいて最も低い序列レスポンダーと最も高い序列ノンレスポンダーの間に入る応答性について試験されていない試料がほとんどまたは全くない場合)、カットオフは、一般に、最も低い序列レスポンダーと最も高い序列ノンレスポンダーにおけるエンハンサー強度の序列の間の値に設定される。最も高い序列ノンレスポンダーにおけるエンハンサー強度の序列が最も低いレスポンダーのそれよりも大きい場合、カットオフは一般に、集団内の最も高い序列ノンレスポンダーにおけるRARAエンハンサー強度の序列に等しいかまたは最大約5%上回る値に設定される。
【0077】
試験細胞(例えば、患者から得た生体試料中のがん細胞)を集団と比較する場合、集団(例えば、RARAエンハンサー強度またはRARAエンハンサー序列)から得た1または複数のカットオフ値は、保有率順位に変換することができ、閾値またはカットオフは、閾値またはカットオフ値またはそれよりも高い値(すなわち、保有率カットオフ)を有する集団のパーセントとして表される。理論に縛られるものではないが、出願人らは、エンハンサー強度を決定するために使用される方法論に関係なく、試験試料の保有率順位は類似していると考えている。したがって、あるパラメータ(例えば、RARAエンハンサー強度序列)について決定された保有率カットオフは移動可能であり、別のパラメータ(例えば、RARA mRNAレベル)に適用してその他のパラメータのカットオフ値を決定することができる。これにより、そのようなパラメータのレベルとRARAアゴニストに対する応答性との間の相関関係を実験によって決定する必要なく、任意のパラメータのカットオフ値を求めることができる。決定する必要があるのは、そのような他のパラメータのどのレベルが、集団における以前に決定された保有率カットオフに対応するかだけである。
【0078】
一次RNA転写物のレベルの決定:RARAをコードするmRNA転写物のレベルは、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)に対する感受性に相関するため、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)およびそれを含む治療レジメン(例えば、タミ/アザおよびタミ/アザ/ベン)に応答する可能性がある細胞(例えば、患者から得た生体試料内のがん細胞)を特定するためにRARA RNA転写物レベルを使用することができることを本発明者らは示した。単球の表現型を持つがん細胞は、RARA遺伝子に関連するスーパーエンハンサーを有し、上昇したレベルのRARA一次RNA転写物を発現すると本発明者らは予想する。したがって、単球の表現型を決定することにより(例えば、問題の細胞がMESを発現するかどうかの決定をはじめとする本明細書に記載される技法による)、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)およびそれを含む治療レジメン(例えば、タミ/アザおよびタミ/アザ/ベン)に応答する可能性がある細胞が特定される。
【0079】
スーパーエンハンサー遺伝子座からの一次RNA転写物レベルは、試料中の一次RNA転写物レベル(例えば、RARA遺伝子または単球の表現型を示すバイオマーカーからの)と、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)に非応答性であることが公知の細胞の集団(例えば、細胞株)における対応する一次RNA転写物レベルを比較する定量的技術を使用して決定することができる。そのような定量的技術としては、RNAを読み取るためのRNAアレイまたはシーケンシングに基づく方法(例えば、エンハンサーリードスルーに関連するeRNA;Hahら、PNAS,112(3):E297-302,2015参照)、RNA qPCR、およびRNA-Seqが含まれる。細胞(例えば、患者から得た生体試料中のがん細胞)において特定の一次RNA転写物を定量するその他の方法は、当技術分野で公知であり、それには、限定されるものではないが、NanoString Technologiesによって提供されるサービスおよび製品で利用されているような蛍光ハイブリダイゼーション、アレイベース技術(Affymetrix)、SYBR(登録商標)Green(Life Technologies)またはTaqMan(登録商標)技術(Life Technologies)による逆転写酵素qPCR、RNAシーケンシング(例えば、RNA-seq)、RNAscope(登録商標)(Advanced Cell Diagnostics)で利用されるRNAハイブリダイゼーションおよびシグナル増幅、またはノーザンブロットが含まれる。
【0080】
所定の閾値レベルは、一次RNA転写物レベル(例えば、RARA遺伝子または単球の表現型を示すバイオマーカー遺伝子からの転写物)が、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)に非応答性の細胞の集団(例えば、細胞株)の対応する一次RNA転写物レベルよりも少なくとも約1.5倍高い(例えば、少なくとも約2.0、2.5、3.0、4.0、または5.0倍高い)閾値レベルに設定することができる。非応答性細胞の集団は、対照集団と呼ばれることがあり、細胞株HCC1143の細胞はその点で有用である。そのようなレベルの一次RNA転写物を発現している試験細胞(例えば、患者から得た生体試料中のがん細胞)は、それらをRARAアゴニストに対するレスポンダーである可能性があると特定する閾値レベルに達しているかまたはそれを超えている。
【0081】
閾値レベルを決定する際には、試料の集団内の少なくとも一部の試料は、(a)その特定の治療薬に応答する集団中の試料において最も低い一次RNA転写物(例えば、mRNA)レベル(「最も低い一次RNA転写物レスポンダー」);および、必要に応じて、(b)その特定の治療薬に応答しない集団中の試料において最も高い一次RNA転写物(例えば、mRNA)レベル(「最も高いmRNAノンレスポンダー」)を確立するために、治療薬(例えば、タミバロテンなどのRARAアゴニスト)に対する応答性について試験されているであろう。次に、試験細胞からのデータを比較することができる閾値レベルまたは「カットオフ」は、(i)集団内の最も低い一次RNA転写物レスポンダーにおける一次RNA転写物レベルに等しいかまたは最大約5%上回る値;または(ii)集団内の最も高い一次RNA転写物ノンレスポンダーにおける一次RNA転写物レベルに等しいかまたは最大約5%上回る値;または(iii)集団内の最も低い一次RNA転写物レスポンダーと最も高い一次RNA転写物ノンレスポンダーの間の一次RNA転写物レベルの値に設定される。RARA遺伝子および単球の表現型を示す任意のバイオマーカー遺伝子は、このようにして評価して、試験細胞からのデータを比較することができる所定の閾値レベルを設定することができる。集団のすべての試料を治療薬(例えば、RARAアゴニスト)に対する応答性について試験する必要はないが、問題の遺伝子(例えば、RARAまたは単球の表現型を示すバイオマーカー遺伝子)の一次RNA転写物レベルは、すべての試料、または本質的にすべての試料で測定される。必要に応じて、評価された一次RNA転写物のレベルに基づいて試料を順位付けるか、または試料中の一次RNA転写物のレベルを順位付けることができる。
【0082】
所定の閾値またはカットオフを確立するために使用する上記の3つの方法((i)~(iii))のいずれを使用するかの選択は、集団内の最も低い一次RNA転写物レスポンダーと最も高い一次RNA転写物ノンレスポンダーの間の一次RNA転写物レベルの差、および、閾値またはカットオフが偽陽性を最小化するように設計されているかまたは潜在的なレスポンダーの数を最大化するように設計されているかによって決まる。この差が大きい場合(例えば、RARA mRNAレベルの順位付けにおいて最も低い一次RNA転写物レスポンダーと最も高い一次RNA転写物ノンレスポンダーの間に入る応答性について試験されていない試料が多数ある場合)、カットオフは、一般に、集団内の最も低い一次RNA転写物レスポンダーにおける一次RNA転写物レベルに等しいかまたは最大約5%上回る値に設定される。この差が小さい場合(例えば、一次RNA転写物レベルの順位付けにおいて最も低い一次RNA転写物レスポンダーと最も高い一次RNA転写物ノンレスポンダーの間に入る応答性について試験されていない試料がほとんどまたは全くない場合)、閾値またはカットオフは、一般に、最も低い一次RNA転写物レスポンダーのレベルと最も高い一次RNA転写物ノンレスポンダーのレベルの間の値に設定される。最も高い一次RNA転写物ノンレスポンダーの一次RNA転写物レベルが最も低い一次RNA転写物レスポンダーよりも高い場合、カットオフは、一般に、集団内の最も高いmRNAノンレスポンダーにおけるRARA mRNAレベルに等しいかまたは最大約5%上回る値に設定される。
【0083】
試料の集団が一次RNA転写物レベルに基づいて順位付けされる実施形態では、各試料中の一次RNA転写物レベルを測定し、細胞内のすべての他の一次RNA転写物の一次RNA転写物レベルと比較して、一次RNA転写物レベルの序列ランキングを得ることができる。次に、一次RNA転写物レベルの序列ランキングに基づく閾値レベルまたはカットオフが、スーパーエンハンサーの強度の序列ランキングに基づく閾値を決定するのに以前に記載したものと同じ方法で、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)に対する応答性について試験された集団における試料に基づいて決定される。次に、決定された一次RNA転写物序列カットオフを直接的または間接的に使用して、保有率カットオフを求め、そのいずれかを使用して、治療薬(例えば、タミバロテンなどのRARAアゴニスト)に対する潜在的な応答性について追加の試料を層別化することができる。
【0084】
一部の実施形態では、一次RNA転写物レベルのカットオフは、上記のように、エンハンサー強度またはエンハンサー強度の序列ランキングに基づいて確立された保有率カットオフを使用して求められる。例えば、集団をmRNAレベルについて測定し、事前に決定された保有率カットオフをその集団に適用してmRNAカットオフレベルを求めることができる。次に、集団のRARA mRNAレベルの順位序列標準曲線を作成し、所定の保有率カットオフをその標準曲線に適用してRARA mRNAカットオフレベルを求めることができる。
【0085】
試験細胞(例えば、患者から得た生体試料中のがん細胞)からのデータを試料の集団からのデータと比較する場合、試料の集団において所定の閾値またはカットオフレベル(例えば、一次RNA転写物のレベルを表す値)であると決定された値は、カットオフ値またはそれ以上を有する試料の集団の割合、すなわち、保有率カットオフを示す保有率順位に変換することができる。本発明を限定するものではないが、スーパーエンハンサーの強度またはバイオマーカー遺伝子からの一次RNA転写物の発現のレベルを決定するために使用される方法論にかかわらず、集団における保有率のカットオフは類似すると本出願人は考える。
【0086】
一部の実施形態では、患者は、RARA遺伝子または単球の表現型を示すバイオマーカー遺伝子からの一次RNA転写物のレベルが、集団内のRARA遺伝子または単球の表現型を示すバイオマーカー遺伝子からの比較可能な一次RNA転写物レベルにより決定される、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、43%、42%、51%、50%、49%、48%、47%、46%、45%、44%、43%、42%、41%、40%、39%、38%、37%、36%、35%、34%、33%、32%、31%、30%、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%または20%の集団における保有率順位に相当する場合、治療薬に対する可能性があるレスポンダー(例えば、RARAアゴニストレスポンダー)として特定される。カットオフ値は、RARAエンハンサー強度について確立された保有率カットオフに基づいて確立することができる。あるいは、カットオフ値は、RARAエンハンサー強度序列について確立された保有率カットオフに基づいて確立される。もう一つの実施形態では、カットオフ値は、RARA一次RNAレベルに基づいて確立される。より具体的な実施形態では、乳がん患者のカットオフ値は、RARAエンハンサー強度序列について決定された保有率カットオフに基づいて確立され、その保有率カットオフ値は、RARA mRNAレベルのカットオフ値を決定するために使用される。これらの実施形態のさらにより具体的な態様では、乳がん患者のカットオフ値は、50%から60%の間の保有率値、例えば、50~55%、55~60%、50~56%、50~57%、51~55%、51~56%、51~57%、52~55%、52~56%、52~57%、53~55%、54~56%、53~56%、または54~55%の保有率値を用いて決定される値である。さらにより具体的な実施形態では、カットオフ値は、55%または56%の保有率値を用いて設定される。AML患者についてのカットオフ値は、RARAエンハンサー強度序列について決定された保有率値に基づいて確立することができ、その保有率値は、RARA mRNAレベルのカットオフ値を決定するために使用される。これらの実施形態のさらにより具体的な態様では、AML患者についてのカットオフ値は、25から45%の間の保有率カットオフ、例えば、25~30%、25~35%、25~40%、30~35%、30~40%、35~45%、35~40%、31~35%、32~35%、33~35%、34~35%、31~36%、32~36%、33~36%、34~36%、または35~36%の間の保有率カットオフを用いて決定される。他のより具体的な実施形態では、AML患者についてのカットオフ値は、約25%、30%、約33%、または約36%の保有率値を用いて決定される。
【0087】
より詳細な分析のために、本明細書に記載されるように分析される集団または試料の集団を3つの群に分け、それにより、可能性のあるレスポンダー、部分的レスポンダーおよびノンレスポンダーを規定することができる。この場合、所定の2つの閾値レベル(例えば、2つのカットオフ値または保有率カットオフ)が設定される。部分的レスポンダー群には、レスポンダーおよびノンレスポンダー、ならびにRARAアゴニストに対する応答がレスポンダー群ほど高くなかった集団メンバーが含まれてよい。これらの実施形態では、2つのカットオフ値または保有率カットオフが決定される。この種類の層別化は、集団において最も高いRARA mRNAノンレスポンダーが、最も低いRARA mRNAレスポンダーよりも高いRARA mRNAレベルを有する場合に特に有用であり得る。このシナリオでは、レスポンダーと部分的レスポンダーとの間のカットオフレベルまたは保有率カットオフは、最も高いRARA mRNAノンレスポンダーにおけるRARA mRNAレベルに等しいかまたは最大5%高くに設定される;そして、部分的レスポンダーとノンレスポンダーとの間のカットオフレベルまたは保有率カットオフは、最も低いRARA mRNAレスポンダーにおけるRARA mRNAレベルに等しいかまたは最大5%低く設定される。部分的レスポンダーにRARAアゴニストを投与するべきであるかどうかの決定は、担当医師の判断および/または規制当局の承認によって決まる。
【0088】
試験細胞と対照細胞の両方、または集団のすべてのメンバーにおける、一次RNA転写物(例えば、成熟mRNA)のレベルは、比較の前に正規化される。正規化には、スーパーエンハンサーの強度を決定する前に、両方の細胞でネイティブであり同等のレベルで存在する別のRNA転写物(例えば、GADPH mRNA、18S RNA)との比較によるか、または、各々の細胞の試料に「スパイクされた」、固定されたレベルの外来性RNAとの比較によって、一次RNA転写物の決定されたレベルを調整することが含まれる(Lovenら、Cell,151(3):476-82,2012;Kannoら、BMC Genomics 7:64,2006;Van de Peppelら、EMBO Rep 4:387-93,2003)。
【0089】
本発明の方法では、本明細書に記載の1またはそれを超える治療薬(例えば、タミバロテン;タミ/アザ;またはタミ/アザ/ベン)の治療量が患者に投与される場合、1または複数の治療薬は、患者から得た生体試料中のがん細胞が単球の表現型を示す少なくとも1つのバイオマーカーおよび/またはRARAバイオマーカーを発現することが判断された後に投与することができる。例えば、タミバロテンは、AMLのM4またはM5サブタイプのがん細胞が単球の表現型を示すバイオマーカーを発現すると決定された後、またはCMML細胞がRARAバイオマーカーを発現すると決定された後に投与することができる。RARAバイオマーカーは、RARA遺伝子に関連するスーパーエンハンサーであってよく、スーパーエンハンサーは、所定の閾値レベルに等しいかまたはそれを上回る、強度またはその強度もしくは保有率に基づく序列順位、または所定の閾値レベルに等しいかまたはそれを上回るRARA遺伝子からの一次RNA転写物のレベルを有する。
【0090】
本明細書に記載の治療方法(例えば、AMLのM4またはM5サブタイプのタミバロテンによる処置、あるいはAMLまたはMDSの任意のサブタイプのタミバロテン、アザシチジン、およびベネトクラクスの組合せによる処置)は、患者から得た生体試料中の罹患(すなわち、がん性)細胞が、(a)(i)RARAアゴニストに非応答性であることが公知のヒト細胞、ヒト組織、またはヒト細胞株におけるRARA遺伝子に関連するエンハンサーまたはスーパーエンハンサー、または(ii)ChIP-seqによって測定されるMALAT1に関連するスーパーエンハンサーの部分であって、該部分が、ゲノムビルドhg19のchr11:65263724-65266724に位置しているか、または別の参照エンハンサーまたはスーパーエンハンサー遺伝子座よりも少なくとも同等量強い部分よりも少なくとも約1.5倍(例えば、少なくとも約1.75倍)強い、RARA遺伝子に関連するスーパーエンハンサー、あるいは(b)RARAアゴニストに非応答性であることが公知のヒト細胞、ヒト組織、またはヒト細胞株におけるRARA一次RNA転写物レベルよりも少なくとも約1.5倍高いRARA一次RNA転写物レベルを有する場合に実施することができる。
【0091】
本明細書に記載の治療方法(例えば、AMLのM4またはM5サブタイプのタミバロテンによる処置、あるいはAMLまたはMDSの任意のサブタイプのタミバロテン、アザシチジン、およびベネトクラクスの組合せによる処置)は、患者から得た生体試料中の罹患(すなわち、がん性)細胞が、(a)(i)試料の集団においてバイオマーカー遺伝子(例えば、RARA遺伝子)の発現を推進するスーパーエンハンサーの強度を分析することによって設定された所定の閾値レベルよりも大きいかまたはそれに等しい強度を有し;(ii)試料の集団においてバイオマーカー遺伝子(例えば、RARA遺伝子)の発現を推進するスーパーエンハンサーの強度を分析しランキングすることによって設定された所定の閾値レベルよりも大きいかまたはそれに等しい序列に対応する強度を有し;かつ/あるいは(iii)試料の集団においてバイオマーカー遺伝子(例えば、RARA遺伝子)の発現を推進するスーパーエンハンサーの強度の保有率を分析しランキングすることによって設定された所定の閾値レベルよりも大きいかまたはそれに等しい保有率レベルに対応する強度を有する、バイオマーカー遺伝子(例えば、RARA遺伝子)に関連するスーパーエンハンサー;ならびに/または(b)試料の集団のバイオマーカー遺伝子(例えば、RARA遺伝子)からの一次RNA転写物のレベルを分析することによって設定された所定の閾値レベルよりも大きいかまたはそれに等しいバイオマーカー遺伝子(例えば、RARA遺伝子)からの一次RNA転写物のレベルを有する場合に実施することができる。スーパーエンハンサーの強度と同様に、一次RNA転写物のレベルに序列を割り当て、試料の集団において転写物のレベルの序列ランキングまたは転写物のレベルの保有率におけるの所定の閾値レベルと比較して評価することができる。試料の集団、および所定の閾値レベルを設定することのできる手段は、本明細書でさらに記載される。
【0092】
所定の閾値レベルはいずれも、最初に、試料の集団におけるバイオマーカー遺伝子(例えば、RARA遺伝子)の発現を推進するスーパーエンハンサーの強度または試料の集団におけるその強度の保有率を順位付けすることによって決定することができ、ここで、少なくとも1つの試料は、治療薬(例えば、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン))の作用に感受性があることが決定されている。あるいは、またはそれに加えて、所定の閾値レベルは、最初に、試料の集団におけるバイオマーカー遺伝子(例えば、RARA遺伝子)からの一次RNA転写物のレベルを順位付けすることによって決定することができ、ここで、少なくとも1つの試料は、治療薬(例えば、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン))の作用に感受性があることが決定されている。レベルは、発現した転写物の量または転写物のレベルの保有率に従ってランク付けすることができる。
【0093】
本発明の方法の各実施形態では、患者から得た試料中のバイオマーカーは、試料の集団で評価されたバイオマーカーと同じであるかまたは同じであってよく、処置する予定の患者が罹患しているがんの種類は、試料の集団内の試料によって表されるがんの種類と同じであるかまたは同じであってよい。
【0094】
本発明の方法の各実施形態では、バイオマーカー(例えば、RARAまたは単球の表現型のバイオマーカー)のステータスの決定は、被験体から得た生体試料内のがん細胞においてバイオマーカー遺伝子の発現を推進するスーパーエンハンサーの強度、序列順位または保有率順位に関する情報を受け取ること、および/または被験体から得た生体試料内のがん細胞においてバイオマーカー遺伝子から発現された一次RNA転写物の発現のレベルに関する情報を受け取ることによって達成することができる。その情報は、供給源から受け取ったものであれ、積極的かつ独立に生成したものであれ、所定の閾値と比較され、患者から得た生体試料内のがん細胞が、(a)バイオマーカー遺伝子の発現を推進し、所定の閾値レベルよりも大きいかまたは等しい強度、序列順位、または保有率順位を有するスーパーエンハンサー、または(b)所定の閾値レベルよりも大きいかまたは等しい、バイオマーカー遺伝子から発現された一次RNA転写物のレベルを含むことをその情報が示す場合に、1またはそれを超える本明細書に記載の治療薬が患者に投与される。一次RNA転写物の発現のレベルに関連する情報は、(a)被験体から得た生体試料から一次RNA転写物を本質的に全部入手すること;(b)一次RNA転写物に、その転写物に自然に付加されておらず、転写物が固相支持体に結合することを可能にする追加のヌクレオチドを付加すること;(c)一次RNA転写物を配列決定すること;および(d)一次RNA転写物のレベルを決定することによって提供または確保することができる。あるいは、情報は、(a)被験体から得た生体試料から一次RNA転写物を本質的に全部入手すること;(b)全一次RNA転写物からcDNAライブラリーを作製すること;および(c)cDNAライブラリーを、目的の一次RNA転写物(例えば、RARA遺伝子または単球の表現型のバイオマーカーによってコードされるもの)に対応するcDNAに選択的に結合する一対のプライマー;DNAポリメラーゼ;および、プライマー対およびDNAポリメラーゼによって許容された合成により生成されたDNA分子を検出するための成分(例えば、染料または放射性標識ヌクレオチド)を組み合わせることによって提供または確保することができる。
【0095】
がんのタイプまたはサブタイプの決定:がんのタイプまたはサブタイプ(例えば、AMLまたはMDS;ALL、CMML、CLL、SLL、MM、NHL、およびMCL)は、当技術分野で公知の技法を用いて、当業者によって決定(すなわち、診断)することができる。例えば、がんのタイプまたはサブタイプは、血液検査結果(例えば、白血球数の上昇について)、遺伝子検査(変異、重複、欠失、染色体再配列など)、生検結果(例えば、血液、骨髄または他の組織試料の顕微鏡による検査)、およびX線および他の画像試験(例えば、心エコー図、マンモグラムなど)を評価することによって決定することができる。がんのサブタイプ(例えば、AMLのM4またはM5サブタイプ)は、本明細書に記載されるように、患者からのがん細胞を含む生体試料において遺伝子またはタンパク質発現プロファイルを評価することにより、および/または、患者の疾患のその他の決定的な特徴、徴候、または症状を評価し、それにより問題のがんタイプを決定することにより、当業者によって決定(すなわち、診断)することができる。本明細書に記載のがんタイプと診断された患者は、本発明の実施形態、特に第1、第2、第3、第4および第5の特定の実施形態に記載の処置に適している。
【0096】
AMLのM4またはM5サブタイプと診断された患者:医師は、信頼できる試験または技法(例えば、標準化され、かつ/またはFDAに承認された試験)を使用してAMLのM4およびM5サブタイプを診断することができる。一般に、血液がんのステージ分類および予後に影響を及ぼすことが公知の要因としては、白血球数、血小板数、患者の年齢および血液疾患の既往歴、変異または他の染色体異常、骨の損傷、および肝臓または脾臓の肥大が含まれる。フランス・アメリカ・イギリス(FAB)および世界保健機関(WHO)分類系を使用して、任意の患者のAMLのサブタイプを決定することができる。FAB系は、白血病を引き起こす細胞の種類と細胞の成熟度に基づいて専門家が考案したものである。この系は、染色した細胞の顕微鏡による検査に依存しており、以下のサブタイプを含む:M0、未分化急性骨髄芽球性白血病としても公知;M1、最小の成熟を伴う急性骨髄芽球性白血病としても公知;M2、成熟を伴う急性骨髄芽球性白血病としても公知;M3、急性前骨髄球性白血病(APL)としても公知;M4、急性骨髄単球性白血病としても公知;M4eos、好酸球増加症を伴う急性骨髄単球性白血病としても公知;M5、急性単球性白血病としても公知;M6、急性赤白血病としても公知;およびM7、急性巨核芽球性白血病としても公知。サブタイプM0~M5は、白血球の未熟な形態で発生する。M6サブタイプは赤血球から発生し、M7サブタイプは、血小板細胞の前駆体から発生する。WHO系には、現在予後に影響を及ぼすことが知られている因子が含まれ、「他に特定されていないAML」と定義される群が含まれる。この群は、上記のFAB分類に類似している。処置後に完全寛解(または完全奏効)が達成される場合、骨髄は5%未満の芽細胞を含み、血球数は正常範囲内であり、白血病による徴候または症状はない。本明細書に記載のがんタイプと診断された患者は、本発明の実施形態、特に第1、第2、および第4の特定の実施形態に記載の処置に適している。
【0097】
MDSと診断された患者:医師は、信頼できる試験または技法(例えば、標準化され、かつ/またはFDAに承認された試験)を使用してMDSを診断することができる。FAB系は、下表に示すように骨髄および末梢血中の芽球の割合に基づいて、MDS細胞を5つのサブタイプに関して記載する。
【表1】
【0098】
WHO分類系は、MDSを血液および骨髄の試験に基づいて8つのサブタイプに分類することにより、FAB系を発展させる。これらの8つのサブタイプには、以下が含まれる。(1)単系統異形成を伴うMDS(MDS-SLD);(2)多系統異形成を伴うMDS(MDS-MLD);(3)環状鉄芽球を伴うMDS(MDS-RS;MDS-RSと多系統異形成(MDS-RS-MLD)およびMDS-RSと単系統異形成(MDS-RS-SLD)を含む);(4)芽球増加を伴うMDS(芽球増加を伴うMDS-1および芽球増加を伴うMDS-2を含む);(5)孤立性del(5q)を伴うMDS;(6)分類不能なMDS(MDS-U);(7)小児期の不応性血球減少症(RCC、暫定的病型);および(8)生殖細胞系列素因を伴う骨髄系腫瘍。本明細書に記載のがんタイプと診断された患者は、本発明の実施形態、特に第1、第3、および第4の特定の実施形態に記載の処置に適している。
【0099】
治療薬:一実施形態では、本発明の方法は、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)を単独で、または「第1の」薬剤として、1またはそれを超える本明細書に記載の「第2の」治療薬と組み合わせて投与することを含む(例えば、タミバロテンなどのRARAアゴニストは、アザシチジンまたはデシタビンなどのHMAと組み合わせて、必要に応じてベネトクラクスをさらに含めて、必要に応じてLDAC、オビヌツズマブ(例えば、CLLまたはSLLの患者の場合)、リツキシマブ(例えば、17p欠失の有無にかかわらずCLLまたはSLLの患者の場合)、または内分泌治療をさらに含めて投与することができる)。例えば、RARAアゴニストのみ(例えば、タミバロテン)、HMA(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)と組み合わせたRARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)、またはHMA(例えば、アザシチジン(azacidine)またはデシタビン)およびベネトクラクスを組み合わせた、必要に応じてLDACをさらに含むRARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)は、AMLを有する患者(例えば、新規診断されたM4またはM5サブタイプAML患者(本明細書に記載のMESによるものを含む、当技術分野で公知の任意の方法によって特定される)で、少なくとも60歳(例えば、60歳、65歳、70歳、または75歳またはそれより年上)であるかまたは集中導入化学療法の使用を妨げる併存疾患を有する患者)に投与することができる。もう一つの実施形態では、本方法は、RARAアゴニストのみ、または上記のような治療薬の組合せを、ベネトクラクスによる処置の後に再発した患者、ベネトクラクスによる処置に難治性になった患者、またはそのがん細胞が(例えば、エクスビボアッセイによって)ベネトクラクスに対する抵抗性を示す患者に投与することを含む。もう一つの実施形態では、本方法は、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)のみ、または、必要に応じてHMA(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)および/またはオビヌツズマブも含む、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)とベネトクラクスの組合せを、CLLまたはSLLを有する患者(例えば、ND患者)に投与することを含む。もう一つの実施形態では、本方法は、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)のみ、または、必要に応じてHMA(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)および/またはリツキシマブ(rituximad)も含む、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)とベネトクラクスの組合せを、CLLまたはSLLを有する患者(例えば、ND患者)に投与することを含む。もう一つの実施形態では、本方法は、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)のみ、または、必要に応じてHMA(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)および/または内分泌治療(例えば、タモキシフェン)も含む、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)とベネトクラクスの組合せを、乳がん(例えば、ER陽性、BCL2陽性乳がん、場合により転移を伴う)を有する患者(例えば、ND患者)に投与することを含む。本明細書に記載の治療薬で処置される患者は、本発明の実施形態、特に第1、第2、第3、第4、および第5の特定の実施形態にさらに記載される処置に適している。
患者がAMLに罹患している、第1および第4の特定の実施形態の方法を含む本明細書に記載の方法の任意の実施形態では、AMLは、非急性前骨髄球性白血病急性骨髄性白血病(すなわち、非APL AML)であり得る。APLは、FAB分類ではAMLのM3サブタイプとしても公知である。したがって、本明細書に記載の方法はいずれも、APLの処置を除外することができるか、またはAMLのM3サブタイプを有するAML患者を除外することができる。
一般に、本明細書に記載されるように使用するための各治療薬(例えば、タミバロテン、アザシチジン、デシタビン、およびベネトクラクス)は、製剤化され、適量に分けられ、良好な医療行為と一致し、関連のある1または複数の薬剤および1または複数の患者に対して適した医薬組成物および投与レジメンを使用して治療有効量で投与される。本明細書に記載のRARAアゴニスト、ベネトクラクス、および他の治療薬は、現在当技術分野で公知の製剤および/または量で経口投与されてよい。
【0100】
RARAアゴニスト:一部の実施形態では、RARAアゴニストは、以下の米国特許のいずれか1つに開示される化合物またはその属に含まれる任意の化合物から選択される:米国特許第4,703,110号、米国特許第5,081,271号、米国特許第5,089,509号、米国特許第5,455,265号、米国特許第5,759,785号、米国特許第5,856,490号、米国特許第5,965,606号、米国特許第6,063,797号、米国特許第6,071,924号、米国特許第6,075,032号、米国特許第6,187,950号、米国特許第6,355,669号、米国特許第6,358,995号、および米国特許第6,387,950号、これらは各々参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。有用なRARAアゴニストは、図4の表にも示されている。
本発明の方法のいずれにおいても(すなわち、正確にどの疾患またはがんのタイプが処置されているかにかかわらず(例えば、AMLのM4またはM5サブタイプまたはMDS)、患者の既往歴にかかわらず(例えば、患者が新規診断されたか、適格であるか、不適格であるか(例えば、高齢であるために)、またはそのがんの再発を経験しているかどうかにかかわらず)、患者が診断された正確な方法にかかわらず(例えば、もしあれば、正確にどのバイオマーカーが検討のために決定または選択されるか)、および/または投与される正確な治療薬または治療薬の組合せにかかわらず)、RARAアゴニストは、受容体のα型に選択的に結合するものであり得る(すなわち、RARAアゴニストは、RAR-βおよびRAR-γに比べて優先的にRARAに結合する)。RARA選択的アゴニストは、RAR-βまたはRAR-γのいずれよりもRARAに対して少なくとも10倍、100倍、1000倍、または10000倍特異的である。オールトランスレチノイン酸(ATRA)および9-シスレチノイン酸などの天然リガンドは、本発明の方法において有用であり得るが、それらが結合するRARのタイプに関して非選択的であるため、全身に多面的な影響を及ぼす可能性があり、投与レジメンにおいて毒性を管理することが困難であることがある。
【0101】
第1の実施形態の方法を含む一部の実施形態では、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)は、本明細書に記載のレジメンに従って投与(または使用)される。レジメンは、約:1mg/mまたは1mg;2mg/mまたは2mg;3mg/mまたは3mg;4mg/mまたは4mg;5mg/mまたは5mg;6mg/mまたは6mg;7mg/mまたは7mg;8mg/mまたは8mg;9mg/mまたは9mg;10mg/mまたは10mg;11mg/mまたは11mg;12mg/mまたは12mg;13mg/mまたは13mg;14mg/mまたは14mg;15mg/mまたは15mg;または16mg/mまたは16mg;または1日1回または2回投与されるこれらの値のいずれか2つの間の用量のうち、少なくとも1回の用量を含む(または正確に1回または2回の用量を含むかまたはそれからなる)ことができる。RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)は、約6mg/mまたは6mg(例えば、約6mg/m/日または6mg/日)、約4mg/mまたは4mg(例えば、約4mg/mまたは4mg、1日1回または2回)、約2mg/mまたは2mg(例えば、約2mg/mまたは2mg、1日1回または2回)または約1mg/mまたは1mg(例えば、約1mg/mまたは1mg、1日1回または2回)の用量で投与することができる。したがって、投与レジメンには複数の用量が含まれてよく、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)が投与される場合、本方法には、本明細書に記載の用量の1日1回または1日2回の投与が含まれてよい。例えば、本明細書に記載の患者は、必要に応じて1日2回の用量に等分された、(体表面積にかかわらず)総用量約6mg/mまたは全体で約6mgのタミバロテンが毎日投与されるように処置されてよい。本明細書に記載の造血がん(すなわち、AMLのサブタイプまたは非APL AML、MDS、ALL、CMML、CLL、SLL、MM、NHL、またはMCL)を有する患者(例えば、成人ヒト)は、28日の処置サイクルの8日目~28日目の各日に6mgの用量で1日2回経口投与されるタミバロテンで処置することができる。用量を1日2回投与する場合、例えば午前8時頃と午後8時頃など、約12時間間隔で投与することができる。第1の一日量および第2の一日量には、等量または不等量のタミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩が含まれてよい。例えば、各用量は、約6mgのタミバロテンを含むことができる。錠剤化に関して、約6mgを単一の錠剤または複数の錠剤に(例えば、各々約3mgの治療薬を含む2つの錠剤、または各々約2mgの治療薬を含む3つの錠剤に)含めることができる。タミバロテンまたはその薬学的に許容され得る塩は、経口投与することができ、患者の体重または体表面積にかかわらず、本発明の任意の態様または実施形態において、固定用量(例えば、総用量12mg、経口で、分割投与で)を投与することができる。本明細書に記載のRARAアゴニストで処置される患者は、本発明の他の実施形態、特に第1、第2、第3、第4および第5の特定の実施形態に記載の処置に適している。
【0102】
RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)が、1またはそれを超える第2の治療薬と組み合わせて投与される場合、RARAアゴニストおよび/または1またはそれを超える第2の治療薬は、個々の使用について承認されている投与レジメンに従って投与することができる。RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)がHMA(例えば、アザシチジン)と、必要に応じて第3の薬剤(例えば、ベネトクラクス)と組み合わせて投与される実施形態では、HMA(例えば、アザシチジン)は、約75mg/mの用量で(例えば、静脈内注入または皮下注射などの非経口投与経路によって)、1日1回または2回投与することができ、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)は、約3~6mg/mの用量で(例えば、経口投与により)、1日1回または2回(例えば、約6mg/m/日または6mg/日)投与することができる。全体としての処置レジメンでは、HMAは、(例えば、AML(例えば、再発または難治性AML)を有する患者に)、例えば、処置レジメンの1~7日目に上記の用量および経路で投与することができ、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)は、例えば、処置レジメン8~28日目に上記の用量および経路で投与することができ、その後、処置は中止されるか、または患者は、数日または数週間の間、処置が一時延期されることになる。
【0103】
HMA:HMAであるアザシチジンおよびデシタビンは、集中化学療法に不適格なAML患者にとって有益な選択肢である(ただし、処置に限定されない)。アザシチジンは、米国ではAMLのすべてのサブタイプの処置についてFDAに承認されており、ヨーロッパでは造血幹細胞移植に不適格な成人がん患者の処置についてEMAに承認されている。承認された出発用量の75mg/m/日を、各28日サイクルの治療の1~7日目に静脈内投与または皮下投与することは、第1の実施形態の方法を含む本明細書に記載の方法に採用することができる。デシタビン(5-アザ-2’-デオキシシチジン)は、MDS患者の処置のために米国でFDAに承認されている。承認された投与計画は2つあり、そのいずれか(または他方)を第1の実施形態の方法を含む、本明細書に記載の方法に採用することができる。1つ目は3日間のレジメンであり、約15mg/mのデシタビンを8時間ごとに3時間にわたって3日連続で静脈内注入する、最低4サイクルの処置が推奨されている。2つ目は、4週間ごとに、約20mg/mのデシタビンを毎日1回、1時間にわたり5日連続で静脈内注入する5日間のレジメンである。本明細書に記載のHMAで処置される患者は、本発明の他の実施形態、特に第1、第2、第3、第4および第5の特定の実施形態に記載の処置に適している。
【0104】
Bcl-2阻害剤:Bcl-2阻害剤は、使用が承認されたものまたは臨床段階の開発中のものを含め、第1の実施形態の方法を含む本明細書に記載の方法に採用することができる。より具体的には、ベネトクラクスが入手可能であり、錠剤の形態で投与され得、各投与単位は、10、50、または100mgの治療薬を含有する。ベネトクラクスを、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)およびHMA(例えば、アザシチジン)と組み合わせて投与して、血液がん(例えば、CLLまたはSLL)を処置する場合、ベネトクラクスは、推奨される400mgの一日量まで、数週間(例えば、5週間)にわたる毎週の増量スケジュールに従って投与することができる。例えば、血液がん(例えば、CLLまたはSLL)の患者は、本明細書に記載の併用治療を受けてよく、これは第1週に20mg、PO、QDのベネトクラクス;第2週に50mg、PO、QDのベネトクラクス;第3週に100mg、PO、QDのベネトクラクス;第4週に200mg、PO、QDのベネトクラクス;および第5週以降に400mg、PO、QDのベネトクラクスを含む。この処置レジメンの修正版は、その後の処置サイクル(例えば、サイクル2、サイクル3~6、およびサイクル7~12)について当技術分野で公知である。ベネトクラクスの投与は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第8,546,399号;8,722,657号;9,174,982号;9,539,251号;10,730,873号;および10,993,942号のうちの1またはそれを超えるものに記載される通りであり得る。あるいは、第2世代のBcl-2阻害剤S65487が投与(例えば、静脈内投与)されてもよく、AML、NHL、MM、およびCLLと診断された患者への投与に特に適している可能性がある。あるいは、選択的Bcl-2阻害剤BGB-11417が投与(例えば、毎日1回経口投与)されてもよく、再発/難治性NHL、CLL、またはSLLと診断された患者への投与に特に適している可能性がある。あるいは、BCL-XL/Bcl-2阻害剤ナビトクラクス(ABT-263)が投与されてもよく(例えば、7~14日間の150mgのリードイン用量の経口錠剤または液剤投与、続いて325mgの毎日1回連続投与による)、NHLまたはCLLと診断された患者に特に適している可能性がある。あるいは、Bcl-2阻害剤であるペルシトクラクス(pelcitoclax)(APG-1252)が投与されてもよく(例えば、28日サイクルで10~400mgの用量範囲で週2回(BIW)または週1回(QW))、NHLと診断された患者に特に適している可能性がある。あるいは、Bcl-2阻害剤であるリサフトクラクス(lisaftoclax)(APG-2575)が投与されてもよく(例えば、20~1,200mgの用量範囲で経口投与)、R/R CLLと診断された患者に特に適している可能性がある。本明細書に記載のBcl-2阻害剤で処置される患者は、本発明の他の実施形態、特に第1、第2、第3、第4および第5の特定の実施形態に記載の処置に適している。
【0105】
投与(経口または非経口投与のいずれか)用に、本明細書に記載の治療薬は、薬剤を当技術分野で周知の1またはそれを超える薬学的に許容され得る担体と組み合わせることによって容易に製剤化することができる。実際、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)、HMA(例えば、アザシチジンおよびデシタビン)、およびBCL2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)の製剤は、当技術分野で公知であり、第1の実施形態の方法を含む、本明細書に記載の方法(または使用)において採用することができる。例えば、ベネトクラクスは錠剤形態で利用可能であり、各投与単位は10、50、または100mgの治療薬を含み、そのような錠剤は、本明細書に記載の方法のいずれかにおいて採用する(または本明細書に記載のように使用する)ことができる。例えば、ベネトクラクスを、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)およびHMA(例えば、アザシチジン)と組み合わせて投与して、血液がん(例えば、CLLまたはSLL)を処置する場合、ベネトクラクスは、推奨される400mgの一日量まで、数週間(例えば、5週間)にわたる毎週の増量スケジュールに従って投与することができる。本明細書に記載の方法(または使用)に、ベネトクラクス、RARAアゴニスト(例えば、タミバロテン)およびHMA(例えば、アザシチジン)に加えてオビヌツズマブの投与が含まれる場合、オビヌツズマブは、ベネトクラクスを用いる増量投与スケジュールの前に、1日目に100mg;2日目に900mg;および8日目と15日目に1,000mgで静脈内投与することができる。この処置レジメンの修正版は、その後の処置サイクル(例えば、サイクル2、サイクル3~6、およびサイクル7~12)について当技術分野で公知である。
【0106】
本発明の第1、第2、第3、第4および第5の特定の実施形態を含む一部の実施形態では、患者から得た生体試料中のがん細胞が必要な閾値レベルを上回るMESを有するかどうかの決定は、最初に各細胞の集団(「試料」)のMESを算出することによって達成される。これは、単球のステータスを予測するモデルを各試料に適用することによって行われる。このモデルは、機械学習アルゴリズム(2つのクラスを区別できるどんな妥当な機械学習アルゴリズムも機能する、例えば、L1正則化ロジスティック回帰、またはロジスティックLassoなど)を、多数の既知の単球試料および多数の既知の原始的な試料(例えば、FAB0、1、および2を原始的に分類し、FAB4および5を単球性に分類する、既知のFABのAML試料の遺伝子発現測定値の収集物)の転写またはエピジェネティック活性(「測定値」;例えば、RNA-seqによる複数遺伝子での遺伝子発現)またはそのサブセット(例えば9遺伝子パネル)の全ゲノム読み出し情報に当てはめることによって学習する。次に、機械学習アルゴリズムは、個々の測定値の各々に割り当てる重みまたはルールを予測する。このモデルは、各試料(「MESスコア」と呼ばれる)の測定値を合わせて1つの数(例えば、0と1の間の確率)にする、重みまたはルールの組合せを表す。このモデルは、原始的または単球性のステータスが不明な試料に適用することができる。どの試料が必要な閾値レベルを上回るスコアを有するかの決定は、試験された試料のスコアを試料の集団における対応するスコアと比較することによって達成される。ここで、各々の試料は、様々な供給源(すなわち、様々な被験体、様々な細胞株、様々な異種移植片)から取得されたものである。これらの実施形態の一部の態様では、被験体由来の原発腫瘍細胞試料のみが閾値レベルの決定に使用される。これらの実施形態の一部の態様では、集団内の少なくとも一部の試料は、特定のRARAアゴニストに対する応答性について、a)その特定のRARAアゴニストに応答する集団中の試料の最も低いMESスコア(「最も低いレスポンダー」);および、必要に応じて、b)その特定のRARAアゴニストに応答しない集団中の試料の最も高いMESスコア(「最も高いノンレスポンダー」)を確立するために試験されているであろう。これらの実施形態では、それを上回れば試験細胞がその特定のRARAアゴニストに応答するとみなされるMESスコアのカットオフは、望ましい感度および特異度の制約を考慮して、試料の集団をレスポンダーとノンレスポンダーに最もよく分離する、最も低いレスポンダーと最も高いノンレスポンダーの間の数に設定される(例えば、特異度を90%に設定して、カットオフを上回る試料が応答する尤度を高くすることができ、感度を90%に設定して、応答する試料がカットオフを上回る尤度を高くすることができる)。
【実施例
【0107】
実施例
以下に記載される研究は、AMLに罹患している患者におけるベネトクラクスに対する非感受性、または抵抗性の特徴を調査するために設計されたものであり、本発明者らは、RARA遺伝子発現が上昇した新規診断された不適格なAML患者は、ベネトクラクスに対する一次抵抗性、およびタミバロテン+アザシチジンに対する臨床応答に関連する特徴が豊富であることを見出した。アザシチジンと組み合わせたベネトクラクスは、多くのAML患者のための標準治療となる見込みである。この処置は良好な効果が認められているが、一部の患者は応答しない。応答しない患者の特徴を明らかにすることは、その患者の疾患を処置でき得る治療を特定するのに役立つ。本明細書に記載のように特定された患者(例えば、AMLのM4またはM5サブタイプと診断された患者またはMDSを有する患者)に投与することが提案されるRARAアゴニストの1つであるタミバロテンは、現在、RARA転写物の発現が上昇しているAML患者に対する臨床試験中である。
【0108】
Beat AMLコンソーシアムは、342名のAML患者のRNA-seqデータを作成した(Tynerら、Nature 562:526-531,2018)。本発明者らは40%未満の芽球(未成熟血液細胞)を含むRNA-seq試料を下流の分析のために取り除いた。RNA-seq分析のために複数の日に試料を採取された患者もあり、その場合は、患者ごとに最も早く採取された試料のみを分析した。さらに、本発明者らは下流分析用にCPM(マッピングされた100万読み取りあたりのカウント数)が1より大きい遺伝子のみを保持した。RNA-seqカウントデータは、DESeq2 R パッケージの関数varianceStabilizingTransformationを使用して正規化された。Cancer Genome Atlas(TCGA)は、200名のAML原発性患者試料を解析しており(プロジェクトコードLAML)、本発明者らはそれら試料のうち145のRNA-seqデータをタンパク質コード遺伝子について解析した。RNA-seqカウントデータは、DESeq2 R パッケージの関数varianceStabilizingTransformationを使用して正規化された。本発明者らは両方のデータセットの正規化された発現データを結合し、分位正規化を使用してそれらを一緒に正規化した。
【0109】
TCGAにおける単球発現シグネチャーの開発:本発明者らは、FAB(フランス・アメリカ・イギリス分類系)ステータスM0、M1、M2、M4、およびM5のTCGA試料の分位正規化された発現データを使用して、単球発現シグネチャー(MES;FAB分類はTCGAデータベースの利点である)を開発した。本発明者らは、単球性または原始的なAMLの細胞運命のマーカーとして公知の遺伝子を10個選択し--CD14、CLEC7A(CD369)、CD86、CD68、LYZ、MAFB、CD34、ITGAM(CD11b)、FCGR1A(CD64)、およびKIT(CD117)--、シグネチャーを開発し、これらの遺伝子の発現を使用して、Rパッケージglmnetを使用してlasso正則化ロジスティック回帰モデルによってTCGAデータセットのFAB M4/M5対M0/M1/M2ステータスを予測した。これは、10倍の交差検証の方法で行われ、最小値から1標準誤差以内の最大λ値を下流予測に使用した。次に、すべての試料について予測を行って、シグネチャーのスコアを生成した。本発明者らは、スコアが0.5を超える試料を単球性と指定し、スコアが0.5を超える試料を原始的と指定した。
【0110】
BeatAMLにおける遺伝子発現特徴の評価:本発明者らは、TCGAデータセットで開発されたロジスティック回帰モデルを使用して行われた分位正規化された発現および予測を使用して、BeatAMLデータセットにおける単球発現シグネチャーを評価した。他のすべての発現特徴は、分散安定化変換によって正規化された発現を使用した。RARA発現が発現の70%パーセンタイルを超える(すなわち、発現の上位30%にある)試料をRARA-高と呼び;他の試料をRARA-低と呼んだ。
【0111】
BeatAMLにおけるベネトクラクス感受性:BeatAMLデータセットには、曲線下面積(AUC)およびIC50によって測定された248のAML試料の増殖アッセイにおける、ベネトクラクスを含む121の阻害剤のパネルのエクスビボでの感受性分析も含まれていた。一部の患者試料のみが各阻害剤について照会された。少なくとも40%の芽球を含む試料のうち、90個をベネトクラクスのエクスビボでの感受性について試験した。遺伝子発現とベネトクラクスAUCの考えられる最良の関係を定義するために、本発明者らは、lasso正則化ロジスティック回帰モデルを実行し、TCGAデータセットで正規化された発現行列の分位数を用いてすべての発現遺伝子の発現からベネトクラクスAUCを予測した。Rパッケージglmnetは、上記の「TCGAにおける単球発現シグネチャーの開発」の項で記載される通りに使用した。
【0112】
ベネトクラクスに感受性のある試料を定義するために、本発明者らは、感受性のある試料と非感受性試料を分離することができるIC50を最初に以下のように特定した。本発明者らは、感受性AML細胞を20~60nMの範囲で定義し、抵抗性AML細胞を1μM前後で定義する2つの参考文献(Bogenbergerら、Oncotarget 8:107206-107222,2017)およびRamseyら、Cancer Discovery 8:1566-1581,2018)を参照し、100nMをこの範囲を分割する閾値として選んだ。次に、本発明者らは、BeatAMLのベネトクラクスエクスビボアッセイから得た100nM IC50値を、感度のより堅牢な定量的尺度であるAUCにマッピングし、それを下回るとすべての試料のIC50が100nM未満となるAUCを選択することにより、130のAUC閾値を導いた。この閾値で、本発明者らは、35のAML試料がベネトクラクスに感受性であり、55のAML試料がベネトクラクスに抵抗性であることを見出した。
【0113】
結果:上記の方法に従って、本発明者らはTCGA AMLデータセットを使用して単球発現シグネチャーを開発し、単球性または原始的なAMLの10個の確立されたマーカーのセットを使用して、FAB M0/1/2からFAB M4/5を予測した。TCGA試料に適用すると、単球発現シグネチャーは、試料が原始的な表現型から単球の表現型まで様々な値を示すことを示した。予想したように、シグネチャーの遺伝子の発現は、その遺伝子が原始的なAML(KIT、CD34)か単球性AML(FCGR1A、LYZ、CD68、ITGAM、CD86、MAFB、CD14、CLEC7A)のマーカーのどちらであったかに応じて、より多くの単球性または原始的な試料に関連していた。さらに、シグネチャースコアはFABステータスと強く関連しており、FABステータスを正確に定義することができることが示された(図1A)。単球発現シグネチャーは、RARAの発現とよく相関しており(スピアマンのrho=0.6)、RARA-高試料はまた、RARA-低試料よりも単球性である可能性が高かった(RARA-高試料の81%が単球性であるのに対し、RARA-低試料では29%)。
【0114】
検証のために、次に本発明者らは、単球発現シグネチャーをBeatAML試料(独立したデータセット)に適用し、予測通りシグネチャーに関連したシグネチャーからの遺伝子の発現および発現シグネチャーが、TCGAデータセットと同レベルの精度でFABを予測した(図1Bおよび1C)、このことは、発現シグネチャーがTCGAデータ以上にデータセットにおける原始的AMLのステータス 対 単球性AMLステータスを正確に予測することができることを示している。シグネチャーは、RARA発現とも相関していた(スピアマンのrho=0.58)。RARA-高試料は、RARA-低試料よりも単球性である可能性が高かった(RARA-高試料の77%が単球性であったのに対し、RARA-低試料は37%)。これは、RARA発現が単球性AMLと関連していることを示し、RARA-高バイオマーカーが単球性AMLを選択していることを示唆する。
【0115】
ベネトクラクスのエクスビボでの感受性データがあるこれらのBeatAML試料について、本発明者らはベネトクラクスの感受性と遺伝子発現特徴との関係を調べた(図2および3)。単球発現シグネチャーならびに単球性AMLの個々の遺伝子マーカー(CLEC7A/CD369、CD14、MAFB、LYZ、CD86、CD68、FCGR1A/CD64、ITGAM/CD11b)はすべて、ベネトクラクスAUCと正の相関があり、単球性AMLのほうがベネトクラクスに対する感受性が低いことを示している。原始的なAMLマーカーCD34およびKIT/CD117は、ベネトクラクスAUCと弱い負の相関がある。RARA発現はベネトクラクスAUCと正の相関があり、RARA-高バイオマーカーが、ベネトクラクスに非感受性のAMLを選択している可能性があることを示唆している。アポトーシス調節因子のうち、BCL2はベネトクラクスAUCと負の相関があり、MCL1はベネトクラクスAUCと正の相関がある。
【0116】
遺伝子発現特徴を2元のベネトクラクス感受性と比較して評価すると、RARA発現と単球性AMLがともにベネトクラクスに対する感受性が低いことが示される(下表参照)。本明細書でベネトクラクス感受性および遺伝子発現について評価される90名のAML患者のうち、35(39%)がベネトクラクスに感受性を示した。21名のRARA-高患者のうち、ベネトクラクスに感受性のある患者はいなかったのに対し、51%のRARA-低患者が感受性を示した。44名の単球性AML患者のうち、5名(11%)がベネトクラクスに感受性があり、原始的な患者の65%が感受性を示した。このことから、RARA発現と単球性の特徴(例えば、MES)の両方が、ベネトクラクス非感受性のバイオマーカーであり得ることが示唆される。しかし、本明細書に記載される処置の方法は、RARAバイオマーカーのステータスを評価することなく開始することができ、完全に実施することができる。
【0117】
【表2】
【0118】
要するに、BeatAMLデータセットにおいて、AML患者試料をベネトクラクスに対するエクスビボでの感受性について評価した。これにより、どの発現特徴がベネトクラクスに対する感受性を最も予測するかを決定することができた。RARA発現と単球発現シグネチャー(MES)は、それら自体が一致するものであり、両者ともベネトクラクスに対する非感受性が高度に富化されている。このことは、単球性AMLはRARA発現が高くベネトクラクスに対して本質的に非感受性であることを意味する。これは、単球性AMLが多いとベネトクラクスに対する感受性が低いことを示す他のグループの研究を支持する;ベネトクラクスに対する一次抵抗性は、AMLの単球性の特徴に関連しており(Zhang,Blood,2018;Peiら、2020,Kuusanmakiら、2020)、診断時に存在する低レベルの単球クローンは、ベネトクラクス+アザシチジンによる処置での再発時に拡大する(Peiら、Cancer Discovery,2018)。
【0119】
上に述べた研究は、次のように患者の処置という文脈でさらに記載し要約することができる。
【0120】
非APL AML患者の芽球におけるスーパーエンハンサー(SE)マッピングにより、RARa(本明細書ではRARAとも言及される)が、RARA遺伝子発現が上昇した約30%の患者における新規な治療標的として特定された。RARA発現が上昇したこの新規患者セグメントのエンハンサープロファイルは、成熟した単球のプロファイルと重複していることが観察された(McKeownら、Cancer Discovery,7(10):1136-1153,2017)。近年、いくつかの報告が、低メチル化剤(HMA)と組み合わせた新規診断(ND)不適格AML患者の処置のための標準治療として登場したBCL2阻害剤である、ベネトクラクス(ベン)に対する抵抗に関連する単球性の特徴を持つAMLを記載した(Zhang,2018;Kuusanmaeki,2019;Pei,2020)。約3分の1の患者は、アザシチジン(アザ)を含むベン+HMAに応答せず(DiNardoら、Blood,133(1):3-4,2019;DiNardoら、N.Engl.J.Med.383:617-629,2020)、ND不適格AMLにおいて継続する重大なまだ対処されていないニーズを強調する。強力かつ選択的なRARaアゴニストであるタミバロテンは、アザシチジンと組み合わせて、非APL AMLを対象に開発中であり、RARA陽性(RARA+)ND不適格AMLにおいて高い率の完全寛解(CR)または深いCRで臨床活性を実証した(DeBotton、2019)。単球性の特徴とRARA遺伝子発現の重複に基づいて、本発明者らはタミバロテン+アザシチジンで処置した患者の臨床試料を評価して、ベネトクラクス抵抗性の特徴をRARAバイオマーカーと相関させ、タミバロテン+アザシチジンに対する臨床応答と相関させた。
【0121】
方法では、非APL AMLにおけるRARA遺伝子発現をTCGAとBeat AMLのRNA-seqデータセットにおいて評価した。細胞生存率曲線のAUCを使用して、Beat AMLデータセットにおいてベネトクラクスを含む化合物に対するエクスビボでの感受性を評価した。単球性MESをTCGAデータセットの単球性および原始的なRNAマーカーの発現を使用して開発し、単球の表現型を解析した。MESでは、lasso正則化ロジスティック回帰モデルを使用して、85%の感度と80%の特異度で10倍の交差検証を用いてFAB M4/5(単球性)とFAB M0/1/2(原始的)を区別した。次に、進行中のタミバロテン+アザシチジン試験(NCT02807558)において、Beat AMLからのRNA-seqデータセットおよびND不適格AML患者由来のAML芽球にMESを適用し、その試験でRARA陽性患者がRT-qPCRベースのバイオマーカー臨床試験アッセイ(CTA)により決定された。MES、RARA発現、およびベネトクラクス抵抗性に関連する特徴を、スピアマンのrho相関を用いて比較した;タミバロテン+アザ処置患者において、MESとRARAバイオマーカーとの関連、およびIWG臨床応答との関連を評価した。
【0122】
上記のように、TCGA非APL AML ptsにおけるRNA-seqの解析は、原始的なAML(FAB M0/M1/M2)よりも単球性AML(FAB M4/M5)で高いRARA発現を実証した(p<10-7、t検定)。TCGAおよびBeat AMLデータセットでも、RARA発現がMES(rho=0.6および0.58)に関連しており、両方のデータベースのRARA-高患者の約80%が高いMESを有することが実証された。
【0123】
さらに述べるように、本発明者らはRARA発現、AML単球性表現型、およびベネトクラクス抵抗性の関係も解明した。一次Beat AML患者試料においてエクスビボで試験された121の阻害剤のうち、ベネトクラクスは、RARA陽性とRARA陰性の試料において最も処置抵抗性に関連する阻害剤であった。さらに、MES(rho=0.58)、RARA(rho=0.48)およびBCL2の発現(rho=-0.49)には、エクスビボでのベネトクラクス抵抗性と同様の大きさの関連があり、RARA陽性試料は、エクスビボでのベネトクラクスに対する感受性がRARA陰性試料よりも非常に低いことが示された(p=3×10-8)。エクスビボでベネトクラクス±アザシチジンで処置した12名のAML患者の試料(Pei、2020)において、RARA発現は、ベン±アザに抵抗性の単球性白血病幹細胞でより高かった(p=0.005)(図5Aおよび5B)。
【0124】
RARA陽性ND不適格AML患者が進行中のタミバロテン+アザシチジン臨床試験においてベネトクラクス抵抗性の単球の表現型が豊富であるかどうかを評価するために、RNA-seqを登録患者のAML芽球で実施した。処置された51名の患者のうち、RARA陽性患者の86%(19/22)およびRARA陰性患者の83%(24/29)がRNA-seq結果を得た。RARA陽性患者は、高いMES(p=7×10-5)、高いMCL1(p=0.001)、および低いBCL2、CD34、およびCD117発現(それぞれp=0.03、8×10-6、2×10-4)によって実証されるように、RARA陰性患者よりも単球性が高かった。CR/CRiのIWG応答が最も良好な患者では、RARA+pts(n=10)は、RARA陰性患者(n=9)よりもMESが高かった(p=1.2×10-5)。
【0125】
MESは、RARA発現が高いAML芽球で高く、RARA発現とMESの両方がエクスビボでのベネトクラクスに対する抵抗性に関連している:図6Aおよび6Bに示されるように、高いRARA発現は、TCGAおよびBeat AMLデータベースにおいて高い単球性遺伝子発現が富化されたAML患者集団を特定する。TCGAおよびBeat AML患者から得たRARA RNA-seqデータをすべての遺伝子の発現に対して正規化し、上位30%の患者をRARA-高と定義した。P値はフィッシャーの正確確率検定による。単球性MES>0.5。
【0126】
初代AML培養では、RARA発現とMESはベネトクラクスに対する抵抗性に関連している(図7;90のAML初代培養(Beat AML)にわたる正規化されたRARA発現(左)またはMES(右)と、ベネトクラクスの応答のスピアマン相関(rho)参照)。
タミバロテン+アザシチジンに対する臨床応答のある患者を含む、RARA陽性ND不適格AML患者は、ベネトクラクスに対する抵抗性に関連する特徴が豊富である:タミバロテンの臨床試験に登録された43名のND、不適格AML患者には、RARAバイオマーカー臨床試験アッセイ(CTA)で分離した芽球のRNA-seqデータがあった。RARA陽性患者の80%(15/19)が、MES(MES>0.5)により単球性に分類され、RARA陰性患者の17%(4/24)が、MES(MES>0.5)により単球性に分類される(図8参照)。
これらの結果は、ND不適格AMLでは、タミバロテン+アザシチジンに対する臨床応答のある患者を含むRARA陽性患者は、ベネトクラクスに対する抵抗性に関連する単球性の特徴が豊富であるという本発明者らの結論を支持する。本発明者らの臨床研究ではRARA陽性ND不適格AML患者の約80%が、低いBCL2発現と高いMCL1発現を含む、ベネトクラクス(venetoclas)に対する抵抗性に関連する単球の表現型を有する。したがって、本発明者らは、ND不適格AMLの処置のための標的レジメンとして、タミバロテンを単独でまたはアザシチジンと組み合わせて提案する。このゲノム的に定義されたAML患者のサブセットは、ベネトクラクスによる事前のSOC治療に抵抗性がある可能性があるため、本明細書に記載の方法は、ベネトクラクス+アザシチジンに応答する可能性が低く、まだ満たされていない高い必要性が残っている患者に処置選択肢を提供する。
図1A-1C】
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5】
図5A-5B】
図6A-6B】
図7
図8
【国際調査報告】