(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-06
(54)【発明の名称】鎮痛・鎮痒医薬組成物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/427 20060101AFI20230929BHJP
A61K 31/4174 20060101ALI20230929BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230929BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20230929BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20230929BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20230929BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230929BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230929BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230929BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20230929BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230929BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20230929BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
A61K31/427
A61K31/4174
A61P29/00
A61P25/04
A61P25/06
A61P1/02
A61P1/00
A61P17/02
A61P19/02
A61P19/00
A61P15/00
A61P25/02
A61P43/00 121
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023511574
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(85)【翻訳文提出日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 CN2021072071
(87)【国際公開番号】W WO2022037006
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】202010845095.2
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523049786
【氏名又は名称】上海瑞虎康医薬合▲フゥオ▼企業(有限合▲フゥオ▼)
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RUIHUKANG PHARMACEUTICAL PARTNERSHIP (LIMITED PARTNERSHIP)
【住所又は居所原語表記】Building C,No. 888, Huanhu West 2nd Road, Lingang New Area, China (Shanghai) Pilot Free Trade Zone Shanghai 200120 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】彭長庚
(72)【発明者】
【氏名】孫立▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】夏瑞龍
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086BC82
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA57
4C086MA58
4C086MA59
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZA08
4C086ZA20
4C086ZA66
4C086ZA67
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
鎮痛・鎮痒医薬組成物及びその使用方法に関し、医薬化学技術分野に属する。研究により、Na
v1.7又はNa
v1.8の活性を単独で阻害することによる鎮痛効果は末梢神経損傷の時間経過とともに低下し、Na
v1.7低分子阻害剤に対する応答が良くない神経障害性疼痛マウスは、Na
v1.8の低分子阻害剤に対して良好な応答を有することが見出された。これに基づいて、本発明者らは異なるNa
v1.7阻害剤とNa
v1.8阻害剤との併用による鎮痛効果を研究した結果、適切な用量のNa
v1.7阻害剤PF-05089771とNa
v1.8阻害剤PF-04885614とを併用投与することにより鎮痛効果を顕著に向上できるとともに応答率を100%まで向上できることを見出した。したがって、PF-05089771とPF-04885614との併用は、Na
v1.7又はNa
v1.8の活性が高すぎることによる疾患(難治性の痛みや痒みが含まれるが、これらに限定されない)を治療することができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PF-05089771とPF-04885614を含む鎮痛・鎮痒医薬組成物であって、
Na
v1.7とNa
v1.8の両方に関連する疾患の治療に使用されることを特徴とする、医薬組成物。
【請求項2】
前記疾患は、痒みと痛みを含み、痛みは、炎症性疼痛及び/又は神経障害性疼痛を含み、片頭痛、歯痛、三叉神経痛、がん関連疼痛、手術後及び外傷後疼痛、関節痛を含む筋骨格痛、月経痛、内臓痛、糖尿病性末梢神経障害による痛みから選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記PF-05089771とPF-04885614の質量比は、100:1から1:100であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記質量比は、50:1から1:1であることを特徴とする、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記質量比は、20:1から30:1であることを特徴とする、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物の投与経路は、経口、口腔内、注射、経気道、経皮、経眼、経鼻粘膜、経直腸、経膣、経耳、透析を含むことを特徴とする、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物は、具体的に使用される際に、薬学的に許容される担体をさらに含み、
前記担体は、任意の溶媒、賦形剤、分散媒体、コーティング剤、等張剤及び/又は吸収遅延剤を含むことを特徴とする、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記担体は、澱粉、微結晶セルロース、乳糖、ショ糖、マンニトール、無機塩類、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、寒天、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カーボポール、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、キトサン、蜜蝋及びステアリン酸から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記無機塩類は、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム二水和物のうちの少なくとも1種であることを特徴とする、請求項8に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬化学分野に関し、具体的には、Nav1.7及びNav1.8の活性が高すぎることによる疾患の治療におけるナトリウムイオンチャネルNav1.7及びNav1.8阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
神経障害性疼痛は難治性疼痛の一種であり、現在の臨床第一選択薬であるガバペンチン及びプレガバリンは、神経障害性疼痛患者の40%~60%しか緩和できず、鎮静の副作用(眠気、疲労感、めまいなど)がある。したがって、患者を助けるために、慢性疼痛の治療のためのより効果的な薬が必要である。電位依存性ナトリウムイオンチャネル(Voltage-gated sodium channel,Nav)Nav1.7及びNav1.8は、体性感覚神経細胞中で高発現され、痒みや痛みの伝達に重要な役割を果たし、1つのαサブユニットと複数のβサブユニットからなる膜貫通糖タンパク質複合体の一種である。例えば、Nav1.7のαサブユニットをコードするSCN9Aの機能獲得型変異は、遺伝性赤筋痛及び特発性小繊維性神経障害性疼痛(SFN)を引き起こす一方、Nav1.7の欠失は、ヒトの先天性疼痛不感受性を引き起こし、Nav1.7ノックアウトマウスは痛み(炎症性疼痛及び神経障害性疼痛を含む)に不感受である。Nav1.8のαサブユニットをコードするSCN10Aの機能獲得変異は、SFN、神経障害性疼痛、及び糖尿病性末梢神経障害性疼痛に関連している。SCN10Aの機能喪失変異は、ヒトの機械的疼痛感受性の低下をもたらし、SCN10Aノックアウトマウスは有害な機械的及び熱的刺激に対してより高い閾値を有する(A.Kanellopoulos et al.,Voltage-gated sodium channels and pain-related disorders.Clin Sci (Lond).2016 Dec 1;130(24):2257-2265)。遺伝子ノックアウト実験により、Nav1.7とNav1.8も痒み伝達に必要であることが確認されており、これは、痒みの治療の標的であることを示している(H.Kuhn et al.,Complementary roles of murine Nav1.7,Nav1.8 and Nav1.9 in acute itch signalling.Sci Rep.2020 Feb 11;10(1):2326.)。最近、Nav1.7とNav1.8が後根神経節の一部の感覚ニューロンで共発現され、感覚ニューロンのこの部分の活動電位発火を阻害するには、Nav1.7とNav1.8の活性を同時に阻害する必要がある(D.Jurcakova et al.,Voltage-Gated Sodium Channels Regulating Action Potential Generation in Itch-,Nociceptive-,and Low-Threshold Mechanosensitive Cutaneous C-Fibers.Mol Pharmacol.2018 94,1047-1056)。したがって、特定の痛みの治療において十分な効果を得るには、Nav1.7とNav1.8の機能を同時に阻害する必要があると推測されている。
【0003】
多くのNa
v1.7選択的低分子阻害剤と多くのNa
v1.8選択的低分子阻害剤が報告されているが、いずれも臨床応用に向けて開発されていない。そのうち2つのNa
v1.7選択的阻害剤PF-05089771、GNE-0439及び2つのNa
v1.8選択的阻害剤PF-04885614、PF-04531083の構造は、以下の通りである。
PF-05089771:
【化1】
GNE-0439:
【化2】
PF-04885614:
【化3】
PF-04531083:
【化4】
【0004】
のヒトNav1.7を阻害するPF-05089771のIC50値は11nMであるが、糖尿病性神経障害性疼痛の治療に関する臨床試験では効果が乏しかったため、失敗した(A.McDonnell.,Efficacy of the Nav1.7 blocker PF-05089771 in a randomised,placebo-controlled,double-blind clinical study in subjects with painful diabetic peripheral neuropathy.Pain.2018 Aug;159(8):1465-1476.)、生体内での鎮痛効果が低い理由は不明である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の研究では、Nav1.7又はNav1.8の活性を単独で阻害することによる鎮痛効果は末梢神経損傷の時間経過とともに低下し、Nav1.7低分子阻害剤に対する応答が良くない神経障害性疼痛マウスは、Nav1.8の低分子阻害剤に対して良好な応答を有することが見出された。これに基づいて、本発明者らは異なるNav1.7阻害剤とNav1.8阻害剤との併用による鎮痛効果を研究した結果、適切な用量のNav1.7阻害剤PF-05089771とNav1.8阻害剤PF-04885614とを併用投与することにより鎮痛効果を顕著に向上できるとともに個体応答率を100%まで向上できることを見出した。したがって、PF-05089771とPF-04885614との併用は、Nav1.7及びNav1.8活性に関する疾患(難治性の痛みや痒みが含まれるが、これらに限定されない)を治療することができる。
【0006】
本発明の技術的手段は、以下の通りである。
【0007】
PF-05089771とPF-04885614を含む鎮痛・鎮痒医薬組成物であって、Nav1.7とNav1.8の両方に関連する疾患の治療に使用されることを特徴とする、医薬組成物。
【0008】
前記疾患は、痒みと痛みを含み、痛みは、炎症性疼痛及び/又は神経障害性疼痛を含み、片頭痛、歯痛、三叉神経痛、がん関連疼痛、手術後及び外傷後疼痛、関節痛を含む筋骨格痛、月経痛、内臓痛、糖尿病性末梢神経障害による痛みから選択される少なくとも1種である。
【0009】
前記PF-05089771とPF-04885614の質量比は、100:1から1:100である。
【0010】
前記質量比は、好ましくは50:1から1:1である。
【0011】
前記質量比は、より好ましくは20:1から30:1である。
【0012】
前記医薬組成物の投与経路は、経口、口腔内、注射、経気道、経皮、経眼、経鼻粘膜、経直腸、経膣、経耳、透析を含むが、これらに限定されない。
【0013】
さらに、前記医薬組成物は、具体的に使用される際に、薬学的に許容される担体をさらに含む。前記担体は、任意の溶媒、賦形剤、分散媒体、コーティング剤、等張剤及び/又は吸収遅延剤などを含む。例えば、澱粉、微結晶セルロース、乳糖、ショ糖、マンニトール、無機塩類(例えば、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム二水和物など)、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、寒天、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カーボポール、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、キトサン、蜜蝋及びステアリン酸から選択される少なくとも1種である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1において、SNI手術前のベース値と比較して、手術後のマウス手術後の2週目、4週目、6週目のマウスの機械的痛覚閾値は顕著に減少した。n=20-28、****P<0.0001(マン・ホイットニー検定)。
【
図2】実施例1において、用量2mg/kgのPF-05089771(Na
v1.7阻害剤)の腹腔内注射によるSNIマウスに対する鎮痛効果(△PWT)は、手術後の2週目から6週目まで徐々に低下した。n=20-28、*P<0.05、****P<0.0001(マン・ホイットニー検定)。
【
図3】実施例1において、用量45μg/kgのPF-04885614(Na
v1.8阻害剤)の腹腔内注射によるSNIマウスに対する鎮痛効果は、手術後の2週目から6週目まで徐々に低下した。n=17-21、*P<0.05、***P<0.001、****P<0.0001(マン・ホイットニー検定)。
【
図4】実施例2において、溶媒群と比較して、2mg/kgのPF-05089771及び45μg/kgのPF-04885614の腹腔内注射は、SNI手術後6週目のマウスの機械的疼痛を顕著に抑制することができ、鎮痛効果は、単剤群よりも高かった。n=12、*P<0.05、***P<0.001(マン・ホイットニー検定)。
【
図5】実施例2において、溶媒群と比較して、2mg/kgのPF-05089771及び90μg/kgのPF-04885614の腹腔内注射は、SNI手術後6週目のマウスの機械的疼痛を顕著に抑制することができ、鎮痛効果は、単剤群よりも高かった。n=12、*P<0.05、***P<0.001、****P<0.0001(マン・ホイットニー検定)。
【
図6】実施例2において、溶媒群相比と比較して、100mg/kg的ガバペンチンの腹腔内注射は、SNI手術後6週目のマウスの機械的疼痛を顕著に抑制することができた。n=12、****P<0.0001(マン・ホイットニー検定)。
【
図7】実施例2において、溶媒群と比較して、1mg/kgのPF-05089771及び45μg/kgのPF-04885614の腹腔内注射は、SNI手術後6週目のマウスの機械的疼痛を顕著に抑制することができ、鎮痛効果は、単剤群よりも高かった。n=12、*P<0.05(マン・ホイットニー検定)。
【
図8】実施例2において、溶媒群と比較して、1mg/kgのPF-05089771及び45μg/kgのPF-04885614(低用量併用)を腹腔内注射する投与群は、SNI手術後6週目のマウスの機械的疼痛を顕著に抑制することができ、2mg/kgのPF-05089771及び90μg/kgのPF-04885614(高用量併用)の鎮痛効果は、低用量併用群よりも顕著に高かった。n=11-12,****P<0.0001(マン・ホイットニー検定)。
【
図9】実施例3において、20μg/kgのGNE-0439単独、90μg/kgのPF-04885614単独、又は20μg/kgのGNE-0439と90μg/kgのPF-04885614との組み合わせの腹腔内注射によるSNI手術後6週目のマウスに対する鎮痛効果を示す。n=12、*P<0.05、***P<0.001(マン・ホイットニー検定)。
【
図10】実施例3において、2mg/kgのPF-05089771単独、10mg/kgのPF-04531083、又は2mg/kgのPF-05089771と10mg/kgのPF-04531083との組み合わせの腹腔内注射によるSNI手術後6週目のマウスに対する鎮痛効果を示す。n=12、***P<0.001、****P<0.0001(マン・ホイットニー検定)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
当該技術分野で知られているように、電位依存性ナトリウムイオンチャネルは、痒みや痛みの伝達において重要な役割を果たしている。ナトリウムイオンチャネル1.7(Nav1.7)及び1.8(Nav1.8)は、生理学的及び病理学的条件下での痛みの伝導に関与する。
【0016】
本発明者らは、マウスの末梢損傷によって誘導される神経障害性疼痛におけるNav1.7及びNav1.8の寄与を研究する際に、Nav1.7の阻害剤PF-05089771及びNav1.8阻害剤PF-04885614の神経障害性疼痛に対する鎮痛効果が疾患の時間経過に伴って顕著に低下するとともに、個体応答率も疾患の時間経過に伴って顕著に低下することを見出した。さらに、PF-05089771に対する応答が良くない個体がPF-04885614に対する応答が良好であることを見出した。これを鑑みて慢性神経障害性疼痛に対するNav1.7とNav1.8阻害剤の併用の治療効果を研究した結果、異なる割合のPF-05089771とPF-04885614が慢性神経障害性疼痛に対して相加的な鎮痛効果を有し、動物個体に対する応答率を向上でき、最適な用量のPF-05089771とPF-04885614との組み合わせが顕著な鎮痛効果を有するだけでなく、応答率が100%にも達することを見出した。さらに、GNE-0439とPF-04885614の併用は、相加的な鎮痛効果を有せず、PF-05089771とPF-04531083の併用が相加的な鎮痛効果を有するが、この有効量のPF-04531083は鎮静と体重減少の重大な副作用を有することが観察された。これに対し、本発明では、PF-05089771とPF-04885614との併用は、神経障害性疼痛を効果的に緩和することができ、PF-05089771又はPF-04885614の単独使用よりも効果が優れ、最適用量での鎮痛効果が臨床薬物ガバペンチンの効果に相当するが、同等用量のガバペンチンに起因する鎮静副作用が観察されなかった。
【0017】
以下、図面及び実施例により本発明の技術的手段をさらに説明する。
【0018】
実施例1
単剤投与の効果実施例
Na
v1.7及びNa
v1.8阻害剤が異なる時点で末梢神経損傷により誘発される神経障害性疼痛を緩和する効果を試験するために、週齢5-6週のC57/BJ6マウス(上海斯莱克実験動物有限責任公司)を購入し、6ヶ月飼育した後、マウスを鉄ラック上の透明プレキシガラスカバー内に置き、30分間後、Von Frey(DanMic Global,CA,USA)を用いてマウスのベース機械的閾値(足引っ込め閾値;Paw withdrawal threshold,PWT)を測定した。マウスの平均閾値は1.54g±0.07gであった(
図1)。参考文献に基づいて温存神経損傷(Spared nerve injury(SNI))の神経障害性疼痛C57/BJ6マウスモデルを構築し、手術後の2週目、4週目、6週目に同様にVon Freyを用いてマウスの機械的痛覚閾値を測定した結果、閾値は手術前の閾値よりも顕著に低く、平均閾値はそれぞれ0.14g±0.02g、0.06g±0.01g、0.12g±0.02gであった(
図1)。その後、SNI手術後の2週目、4週目、6週目のマウスに対する2mg/kgのPF-05089771(Na
v1.7阻害剤,Bio-Techne)又は45μg/kgのPF-04885614(Na
v1.8阻害剤,Bio-Techne)の腹腔内注射の鎮痛効果を検出した。
【0019】
薬物注射の1時間後にマウスの機械的痛覚閾値を検出した結果、2mg/kgのPF-05089771の注射は、SNI手術後2週目のマウスの神経性疼痛を顕著に緩和し、マウスの機械的痛覚閾値(0.77g±0.10g)を向上させることができ(△PWT=投与後閾値-投与前閾値)、そのうち応答が比較的悪い(△PWT≦0.2g)マウスは10%(2/20)を占めた。2mg/kgのPF-05089771の効果は、手術後の時間経過に伴って低下し、SNI手術後の4週目にマウスの機械的痛覚閾値を0.39g±0.07gしか向上できず、そのうち応答が比較的悪い(△PWT≦0.2g)マウスは41.7%(10/24)を占めた。SNI手術後の6週目にマウスの機械的痛覚閾値をわずか0.17g±0.03gしか向上できず、そのうち応答が比較的悪い(△PWT≦0.2g)マウスは57.1%(16/28)を占めた(
図2)。
【0020】
PF-05089771と同様に、45μg/kgのPF-04885614の注射は、SNI手術後2週目のマウスの神経障害性疼痛を顕著に緩和し、向上した機械的痛覚閾値は0.86g±0.14gであり、そのうち応答が比較的悪い(△PWT≦0.2g)マウスは11.1%(2/18)を占めた。しかし、45μg/kgのPF-04885614の効果は、手術後の時間経過に伴って急激に低下し、SNI手術後の4週目にマウスの機械的痛覚閾値をわずか0.21g±0.04gしか向上できず、対照群と比較して統計的有意差がなく、そのうち応答が比較的悪い(△PWT≦0.2g)マウスは52.6%(10/19)を占めた。SNI手術後の6週目に平均鎮痛効果は0.10g±0.04gに低下し、そのうち応答が比較的悪い(△PWT≦0.2g)マウスは76.5%(13/17)を占めた(
図3)。
【0021】
実施例2
併用効果実施例
実施例1をもとに、本発明者らは、さらなる研究によりSNI手術後の6週目に2mg/kgのPF-05089771に対する応答が良くない(△PWT≦0.2g)マウスは、総数の2/3(8/12;表1)を占め、そのうちの半分は90μg/kgのPF-04885614に対して比較的良い応答を有し(表1の強調表示をご参照)、これは、PF-05089771とPF-04885614との併用が鎮痛効果を向上させる可能性があることを示している。本発明者らが試験した結果、2mg/kgのPF-05089771と45μg/kg又は90μg/kgのPF-04885614との組み合わせの腹腔内注射は、確かにSNI手術後の6週目のマウスの神経障害性疼痛を効果的に緩和でき、鎮痛効果が単剤投与群の効果よりも顕著に高かった(
図4及び
図5)。100%(12/12)のマウスは、2mg/kgのPF-05089771と90μg/kgのPF-04885614との併用に対する応答が良好であった(各マウスの向上した閾値△PWT>0.5g)(表1)。この効果は、100mg/kgのガバペンチンを注射した効果(
図6)に相当するが、ガバペンチンのような鎮静副作用を有しなかった。その後、2つの化合物の低用量での併用の鎮痛効果を試験した。結果として、1mg/kgのPF-05089771と45μg/kgのPF-04885614の腹腔内注射も機械的痛覚閾値を0.45g顕著に向上でき、単剤投与群の効果よりも顕著に高かった(
図7)。比較分析により、高用量併用投与(2mg/kgのPF-05089771と90μg/kgのPF-04885614)の鎮痛効果は、低用量併用投与(1mg/kgのPF-05089771と45μg/kgのPF-04885614)の鎮痛効果よりも顕著に優れた。そのため、PF-05089771とPF-04885614の併用投与による鎮痛効果は、用量効果を有する(
図8)。
【0022】
表1:PF-05089771及びPF-04885614SNIに対する手術後6週目のマウスの応答効果
【表1】
【0023】
実施例3
鎮痛効果が最適なNa
v1.7とNa
v1.8阻害剤の組み合わせを確定するために、他のNa
v1.7阻害剤GNE-0439とPF-04885614の併用の鎮痛効果を試験した。SNI手術後6週目のマウスに20μg/kgのGNE-0439と90μg/kgのPF-04885614を腹腔内注射し、1時間後にVon Freyを用いてマウスの機械的閾値を測定した結果、GNE-0439とPF-04885614の併用投与は、GNE-0439の単独投与よりも顕著に優れた鎮痛効果がなく(△PWT=0.77g±0.14g;
図9)、2mg/kgのPF-05089771と90μg/kgのPF-04885614との併用投与による鎮痛効果のほどではなかった(△PWT=1.38g±0.15g)。その後、別のNa
v1.8阻害剤PF-04531083とPF-05089771との併用による鎮痛効果を試験した。2mg/kgのPF-05089771及び10mg/kgのPF-04531083をSNI手術後6週目のマウスに腹腔内注射し、1時間後にVon Freyを用いてマウスの機会的閾値を測定した結果、PF-05089771とPF-04531083の併用による鎮痛効果はPF-05089771又はPF-04885614の単独投与よりも高いが(
図10)、10mg/kgのPF-04531083では、顕著な鎮静及び体重減少の副作用を有することが観察された。
【国際調査報告】