(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-06
(54)【発明の名称】受容体TAC技術による膜結合タンパク質の下方制御
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230929BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230929BHJP
C12N 9/00 20060101ALI20230929BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20230929BHJP
C07K 14/715 20060101ALI20230929BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20230929BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230929BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230929BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230929BHJP
C12N 15/52 20060101ALI20230929BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230929BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230929BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20230929BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230929BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20230929BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230929BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230929BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230929BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230929BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230929BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C12N9/00
C07K14/705
C07K14/715
C07K14/725
C07K16/28
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/52 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K35/12
A61K35/17
A61K35/15
A61P35/00
A61P43/00 105
A61K48/00
A61K38/16
A61K35/76
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023516810
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(85)【翻訳文提出日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 CN2021117886
(87)【国際公開番号】W WO2022053036
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521442039
【氏名又は名称】山東博安生物技術股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG BOAN BIOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.39, Keji Avenue, High-Tech Zone, Yantai, Shandong, China
(71)【出願人】
【識別番号】523091073
【氏名又は名称】ボーン ボストン エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】周立
(72)【発明者】
【氏名】石峰
(72)【発明者】
【氏名】ハリス, ミッシェル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA27
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA02
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA41
4C084CA53
4C084NA14
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C087AA01
4C087BB37
4C087BB65
4C087BC83
4C087NA14
4C087ZB21
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA51
4H045DA75
4H045DA89
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
新規な融合タンパク質、前記タンパク質をコードする核酸、前記核酸を含むベクター、前記核酸又はベクターを含む組成物、前記核酸、ベクター又は組成物又は薬物組成物を含む宿主細胞を提供する。さらに、細胞における標的膜結合タンパク質(MBP)レベルを低下させる(下方制御する)方法、低下した標的膜結合タンパク質レベルを有する細胞を産生する方法、又は疾患を処置する方法、又は一つ又は複数のCAR T細胞の被験者への投与に関連する、該被験者のGvHDを低下させるか又は予防する方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合タンパク質であって、
膜結合タンパク質(MBP)の分解を媒介する分解タグタンパク質であって、ユビキチンリガーゼ又はその変異体のうちの一つ又は複数、又は分解を媒介する細胞表面受容体の一つ又は複数のサブユニット又はドメインから選択される分解タグタンパク質、及び
膜貫通連結ドメインであって、
1) 第1の膜貫通ドメインと第1のコネキシンとを含む第1の膜貫通連結ドメインであって、
該第1の膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD3、CD28、4-1BB及びIL2R又はその変異体の一つ又は複数のサブユニットもしくはドメインの膜貫通ドメインから選択され、該第1のコネキシンは、該分解対象のMBPの抗体又は抗原結合断片のうちの一つ又は複数から選択され、且つ該第1の膜貫通ドメインと該第1のコネキシンは直接又は間接的に連結され、
好ましくは、上記1) の膜貫通連結ドメインを有する融合タンパク質は第1のシグナルペプチドをさらに含む第1の膜貫通連結ドメイン、又は、
2) 該分解対象のMBP又はその変異体の膜貫通ドメインを含む第2の膜貫通連結ドメインを含む膜貫通連結ドメインを含み、
好ましくは、該MBPは膜結合受容体であり、さらに好ましくは、哺乳動物由来の膜結合受容体であり、最も好ましくは、ヒト膜結合受容体であり、
好ましくは、該ユビキチンリガーゼは、E3ユビキチンリガーゼ又はその変異体の一つ又は複数のサブユニット又はドメインを含み、
好ましくは、分解を媒介するこれらの細胞表面受容体は、インターロイキン受容体又はその変異体の一つ又は複数のサブユニット又はドメインを含み、
好ましくは、上記1) における該分解対象のMBPの抗原結合断片は、該MBP又はその変異体に特異的に結合するscFv、ナノ抗体を含み、
好ましくは、上記2) における該分解対象のMBP又はその変異体の膜貫通ドメインは、CD3ζ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3α、CD3β又はその変異体のうちの一つ又は複数の膜貫通ドメインを含み、
さらに好ましくは、上記2) における第2の膜貫通連結ドメインは、CD3ζ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3α、CD3β又はその変異体のうちの一つ又は複数の細胞外ドメインと膜貫通ドメインを含み、
さらに好ましくは、上記2) における第2の膜貫通連結ドメインは、CD3ζ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3α、CD3β又はその変異体のうちの一つ又は複数の第2のシグナルペプチド、細胞外ドメインと膜貫通ドメインを含む、融合タンパク質。
【請求項2】
該膜結合受容体は、CD3、TCR、CD5、CD7、PD-L1及びCD47又はその変異体の一つ又は複数のサブユニット又はドメインから選択され、
該E3ユビキチンリガーゼは、Hsc70相互作用タンパク質(CHIP)のC末端、CHIP.dTPR、FボックスWD40含有タンパク質7(FBW7)、FBW7.2-293、ヒッペル-リンドウ(VHL)、VHL.152-213、スポット型BTB-POZタンパク質(SPOP)、SPOP.167-374、SOCS2、SOCS2.143-198、ユビキチンタンパク質リガーゼE3A(UBE3A)、マウス二重微小染色体2ホモログ(MDM2)、後期促進複合体(APC)、UBR5、LNX、カシタスB系統リンパ腫形質転換配列様タンパク質1(CBLL1)、HECTドメイン及びアンキリン反復配列含有E3ユビキチンタンパク質リガーゼ1(HACE1)、HECT、C2及びWWドメイン含有E3ユビキチンタンパク質リガーゼ1(HECW1)、HECT、C2及びWWドメイン含有E3ユビキチンタンパク質リガーゼ2(HECW2)、HECT及びRLDドメイン含有E3ユビキチンタンパク質リガーゼ1(HERC1)、HERC2、HERC3、HERC4、HERC5、HERC6、HUWE1、ITCH、神経前駆細胞発現の発生的下方制御タンパク質4(NEDD4)、神経前駆細胞発現の発生的下方制御遺伝子4様タンパク質(NEDD4L)、ペプチジルプロリルイソメラーゼ(サイクロフィリン)様2(PPIL2)、PIAS1、PIAS2、PIAS3、PIAS4、RANBP2、RNF4、RBX1、SMURF1、SMURF2、STUB1、TOPORS、TRIP12、UBE3A、UBE3B、UBE3C、UBE3D、UBE4A、UBE4B、UBOX5、UBR5、WWP1、WWP2、Parkin、MKRN1、GRAIL.IC、RNF133.IC、RNF122. rIC又はRNF152. rICというタンパク質又はその短縮化型から選択され、好ましくは、該E3ユビキチンリガーゼは、CHIP、CHIP. dTPR、FBW7.2-293、VHL.152-213、SPOP.167-374、SOCS2.143-198、GRAIL.IC、RNF133.IC、RNF122. rIC又はRNF152. rICを含み、且つ、さらに好ましくは、該CHIP、CHIP. dTPR、FBW7.2-293、VHL.152-213、SPOP.167-374、SOCS2.143-198、GRAIL.IC、RNF133.IC、RNF122. rIC又はRNF152. rICはそれぞれ、SEQ ID NO. 21-26、62、79、81又は83のいずれか一つに示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
インターロイキン受容体のこれらのサブユニット又はドメインは、IL-2Rのリソソーム標的化モチーフを含み、好ましくは、該IL-2Rのリソソーム標的化モチーフは、L2Rβ jmドメインを含み、さらに好ましくは、該L2Rβ jmドメイン(IL2Rβjm)は、SEQ ID NO. 58に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
上記1)における該第1の膜貫通ドメインは、CD3、CD8α、CD4、又はその変異体の膜貫通ドメインから選択され、好ましくは、CD3ζ膜貫通ドメイン変異体、CD8α膜貫通ドメイン、又はCD4膜貫通ドメインはそれぞれ、SEQ ID NO. 89、18又は15に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
該第1のシグナルペプチドはそれぞれ、SEQ ID NO. 19又は20に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列から選択され、
上記1) における該MBPの該抗体又は抗原結合断片は、CD3、CD5、CD7、PD-L1又はCD47の抗体もしくは抗原結合断片から選択され、好ましくは、CD3の抗原結合断片は、SP34 scFv、OKT3 scFv、UCHT1 scFv、UCHT1.Y177T scFv、L2K scFv、F6A scFv、BMA031 scFv、又はBMA031.H6L12 scFvを含み、CD5の抗原結合断片は、αCD5.14 scFvを含み、CD7の抗原結合断片は、αCD7.TH69 scFvを含み、PD-L1の抗原結合断片は、αPD-L1 scFvを含み、CD47の抗原結合断片は、αCD47 scFvを含み、さらに好ましくは、該SP34 scFv、OKT3 scFv、UCHT1 scFv、UCHT1.Y177T scFv、L2K scFv、F6A scFv、BMA031 scFv、BMA031.H6L12 scFv、αCD5.14 scFv、αCD7.TH69 scFv、αPD-L1 scFv又はαCD47 scFvはそれぞれ、SEQ ID NO. 2-13のいずれか一つに示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
上記2) における第2の膜貫通連結ドメインは、CD3ζ又はCD3εの膜貫通ドメインを含み、好ましくは、CD3ζ又はCD3εの細胞外ドメインと膜貫通ドメインを含み、さらに好ましくは、CD3ζ又はCD3εの第2のシグナルペプチド、細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインを含み、さらに好ましくは、該CD3ζ又はCD3εの膜貫通ドメイン(TM)はそれぞれ、SEQ ID NO. 67、70に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、さらに好ましくは、該CD3ζ又はCD3εの細胞外ドメイン(EM)はそれぞれ、SEQ ID NO. 66、69に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、さらに好ましくは、該CD3ζ又はCD3εの第2のシグナルペプチドはそれぞれ、SEQ ID NO. 65、68に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、さらに好ましくは、該CD3ζ(CD3ζ.ΔIC)の第2のシグナルペプチド、細胞外ドメインと膜貫通ドメイン及び該CD3ε(CD3ε.ΔIC)の第2のシグナルペプチド、細胞外ドメインと膜貫通ドメインはそれぞれ、SEQ ID NO. 61、64に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
該融合タンパク質は、ヒンジ又はP2A-GFPのうちの一つ又は複数をさらに含み、
好ましくは、該ヒンジは、CD8αヒンジ又はCD4ヒンジから選択され、さらに好ましくは、CD8αヒンジ又はCD4ヒンジはそれぞれ、SEQ ID NO. 16又は14に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、さらに好ましくは、該ヒンジは、該第1の膜貫通ドメインのN末端に隣接しており、
好ましくは、P2A-GFPは、SEQ ID NO. 57に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、さらに好ましくは、該P2A-GFP配列は、該融合タンパク質のC末端に位置する、請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
該融合タンパク質は、N末端からC末端まで、
a) 該第1のコネキシン、該分解タグタンパク質、該第1の膜貫通ドメインであって、
好ましくは、該第1のコネキシンは、該分解対象のMBPの抗体又は抗原結合断片を含み、さらに好ましくは、該分解対象のMBPの抗体又は抗原結合断片は、CD3、CD5、CD7、PD-L1又はCD47の抗体もしくは抗原結合断片を含み、さらに好ましくは、CD3の抗原結合断片は、SP34 scFv、OKT3 scFv、UCHT1 scFv、UCHT1.Y177T scFv、L2K scFv、F6A scFv、BMA031 scFv、又はBMA031.H6L12 scFvを含み、CD5の抗原結合断片は、αCD5.14 scFvを含み、CD7の抗原結合断片は、αCD7.TH69 scFvを含み、PD-L1の抗原結合断片は、αPD-L1 scFvを含み、CD47の抗原結合断片は、αCD47 scFvを含み、
好ましくは、該分解タグタンパク質は、該E3ユビキチンリガーゼを含み、さらに好ましくは、該E3ユビキチンリガーゼは、CHIP. dTPR、FBW7.2-293、VHL.152-213、SPOP.167-374、SOCS2.143-198を含み、
好ましくは、該第1の膜貫通ドメインは、CD8α膜貫通ドメインを含むもの、
b) 該第1のコネキシン、該第1の膜貫通ドメイン、該分解タグタンパク質であって、
好ましくは、該第1のコネキシンは、該分解対象のMBPの抗体又は抗原結合断片を含み、さらに好ましくは、該分解対象のMBPの抗体又は抗原結合断片は、CD3の抗体又は抗原結合断片を含み、さらに好ましくは、CD3の抗原結合断片は、SP34 scFvを含み、
好ましくは、該分解タグタンパク質は、該E3ユビキチンリガーゼを含み、さらに好ましくは、E3ユビキチンリガーゼは、GRAIL.ICを含み、
好ましくは、該第1の膜貫通ドメインは、CD3ζ膜貫通ドメイン変異体、CD8α膜貫通ドメイン、及びCD4膜貫通ドメインのうちの一つ又は複数から選択されるもの、
c) 上記2)における該第2の膜貫通連結ドメイン、分解を媒介するこれらの細胞表面受容体であって、
好ましくは、上記2)における該第2の膜貫通連結ドメインは、CD3ζ.ΔIC又はCD3ε.ΔICを含み、
好ましくは、分解を媒介するこれらの細胞表面受容体はIL2Rβjmを含むもの、又は、
d) 上記2)における該第2の膜貫通連結ドメイン、E3ユビキチンリガーゼ又はその変異体のうちの一つ又は複数であって、
好ましくは、上記2)における該第2の膜貫通連結ドメインは、CD3ζ.ΔICを含み、
好ましくは、該E3ユビキチンリガーゼ又はその変異体のうちの一つ又は複数は、GRAIL.IC、CHIP. dTPR、RNF133.IC、RNF122. rIC、RNF152. rICを含むものを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
該融合タンパク質は、N末端からC末端まで、
a):
LG112、SP-OKT3 scFv-CHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG114、SP-OKT3 scFv-FBW7-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG115、SP-OKT3 scFv-VHL-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG116、SP-OKT3 scFv-SPOP-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG117、SP-OKT3 scFv-SOCS2-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG118、SP-SP34 scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG123、SP-UCHT1 scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG124、SP-UCHT1.Y177T scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG125、SP-L2K scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG126、SP-F6A scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG119、SP-BMA031. wt scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG120、SP-BMA031.H6L12 scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG137、SP-αCD5.14 scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG138、SP-αCD7.TH69 scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
MLB052、SP-αPD-L1 scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
MLB053、SP-αCD47 scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
b):
LG222、SP-SP34-CD3ζ.ΔIC-1 -GRAIL.IC-P2A-eGFP、
LG222.1、SP-SP34-CD8αヒンジ/TM -GRAIL.IC-P2A-eGFP、
LG222.2、SP-SP34-CD4ヒンジ/TM -GRAIL.IC-P2A-eGFP、
c):
MLB014、CD3ζ.ΔIC-IL2Rβjm-P2A-eGFP、
MLB046、CD3ε.ΔIC-IL2Rβjm-P2A-eGFP、
d):
LG171、CD3ζ. ΔIC-GRAIL. IC-P2A-eGFP、
LG171p1、CAG-CD3ζ.ΔIC-GRAIL.IC-P2A-eGFP、
LG213、CD3ζ.ΔIC-CHIP. dTPR-P2A-GFP、
LG174、CD3ζ. ΔIC-RNF133. IC-P2A-GFP、
LG180、CD3ζ.ΔIC-RNF122. rIC-P2A-GFP、
LG183、CD3ζ.ΔIC-RNF152. rIC-P2A-GFPを含み、
任意選択的に、該融合タンパク質は、P2A-eGFP及び/又はSPを含まない、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、核酸。
【請求項7】
請求項6に記載の核酸を含むベクターであって、
好ましくは、それは、該融合タンパク質の、CAG又はEF1aを含む発現プロモーターをさらに含み、
さらに好ましくは、該CAG又はEF1aはそれぞれ、SEQ ID NO. 72又は88に示す核酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する核酸配列を含み、
さらに好ましくは、該a) 融合タンパク質の発現プロモーターは、EF1aであり、
さらに好ましくは、該b) 融合タンパク質の発現プロモーターは、EF1aであり、
さらに好ましくは、該c) 融合タンパク質の発現プロモーターは、EF1aであり、
さらに好ましくは、d) 融合タンパク質における該LG171p1の発現プロモーターは、CAGであり、さらに好ましくは、d) 融合タンパク質における他の融合タンパク質の発現プロモーターは、EF1aである、ベクター。
【請求項8】
請求項6に記載の核酸又は請求項7に記載のベクターを含む、組成物。
【請求項9】
第1の核酸と第2の核酸とを含み、又は第1の核酸を有する第1のベクター、及び第2の核酸を有する第2のベクターを含み、又は第1の核酸と第2の核酸を有するベクターを含む組成物であって、
(1) 該第1の核酸は、請求項1~5のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードし、
(2) 該第2の核酸は以下を含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードし、
(a) 所定の抗原に特異的に結合する単鎖可変断片(scFv)を含む細胞外リガンド結合ドメイン、
(b) 膜貫通ドメインであって、好ましくはCD8α、CD28、4-1BB又はIL2R膜貫通ドメインであり、さらに好ましくはCD8α膜貫通ドメインである膜貫通ドメイン、及び
(c) 一つ又は複数のシグナル伝達ドメインを含み、好ましくは、4-1BBシグナル伝達ドメインとCD3ζシグナル伝達ドメインとを含む細胞質セグメント、
好ましくは、該所定の抗原は腫瘍関連抗原であり、さらに好ましくは、該腫瘍関連抗原は、CEA、クローディン18.2、GPC3、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、CD38、CD19、CD20、CD22、BCMA、CAIX、CD446、CD133、EGFR、EGFRvIII、EpCam、GD2、EphA2、Her1、Her2、ICAM-1、IL13Ra2、メソテリン、MUC1、MUC16、NKG2D、PSCA、NY-ESO-1、MART-1、WT1、MAGE-A10、MAGE-A3、MAGE-A4、EBV、NKG2D、PD1、PD-L1、CD25、IL-2又はCD3からなる群から選択され、最も好ましくは、該腫瘍関連抗原はCEAである、組成物。
【請求項10】
請求項6に記載の核酸又は請求項7に記載のベクター又は請求項8又は9に記載の組成物を含む細胞であって、好ましくは、該細胞は、哺乳動物細胞であり、さらに好ましくは、ヒト細胞であり、さらに好ましくは、該細胞は、T細胞又は初代T細胞、γδ T細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ、B細胞、又は非免疫細胞であり、最も好ましくは、該細胞は、同種異体細胞である、細胞。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項6に記載の核酸又は請求項7に記載のベクター又は請求項8又は9に記載の組成物又は請求項10に記載の細胞を含む、薬物組成物。
【請求項12】
細胞における標的膜結合タンパク質レベルを低下させる方法であって、請求項6に記載の核酸、請求項7に記載のベクター、又は請求項8又は9に記載の組成物を細胞に導入することを含み、好ましくは、該細胞は、哺乳動物細胞であり、さらに好ましくは、ヒト細胞であり、さらに好ましくは、該細胞は、T細胞又は初代T細胞、γδ T細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ、B細胞、又は非免疫細胞であり、最も好ましくは、該細胞は、同種異体細胞である、方法。
【請求項13】
疾患を処置する方法であって、それを必要とする被験者に請求項8又は9に記載の組成物を有する同種異体細胞の治療有効量を投与するか、又はそれを必要とする被験者に請求項10に記載の細胞の治療有効量を投与することを含み、好ましくは、該細胞は、T細胞又は初代T細胞、γδ T細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ、B細胞、又は非免疫細胞であり、好ましくは、該被験者は、減少した移植片対宿主病(GvHD)を有する、方法。
【請求項14】
細胞群における膜結合タンパク質(MBP)を下方制御する方法であって、請求項10に記載の細胞を該細胞群に添加することを含み、ここで、該細胞は、前記MBPに特異的に結合するscFvを含む融合タンパク質を発現し、及び/又は該細胞は、膜貫通ドメインを有する該MBPの成分又はその断片を含む融合タンパク質を発現し、好ましくは、該細胞群は、T細胞群であり、好ましくは、ヒト初代T細胞群であり、且つここで、該MBPは、CD3であり、好ましくは、ヒトCD3である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年9月13日に提出された、名称が「受容体TAC技術による膜結合タンパク質の下方制御」の米国仮特許出願第63/077,658号、2021年2月2日に提出された、名称が「受容体TAC技術による膜結合タンパク質の下方制御」の米国仮特許出願第63/144,945号、及び2021年4月11日に提出された、名称が「受容体TAC技術による膜結合タンパク質の下方制御」の米国仮特許出願第63/173,476号の利益を主張し、その内容は全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、山東ボアンバイオテクノロジー株式会社(SHANDONG BOAN BIOTECHNOLOGY CO., LTD.)とボアンボストン有限責任会社(Boan Boston LLC)との共同研究契約に基づいて完成したものである。
【0003】
本出願は、膜結合タンパク質(MBP)の下方制御に関し、且つ特に、受容体TAC技術による膜結合タンパク質の下方制御に関する。本出願は、新規な融合タンパク質、前記タンパク質をコードする核酸、前記核酸を含むベクター、前記核酸又はベクターを含む組成物、前記核酸、ベクター又は組成物又は薬物組成物を含む宿主細胞を提供する。本出願はさらに、細胞における標的膜結合タンパク質(MBP)レベルを低下させる(下方制御する)方法、低下した標的膜結合タンパク質レベルを有する細胞を産生する方法、又は疾患を処置する方法、又は一つ又は複数のCAR T細胞の被験者への投与に関連する、該被験者のGvHDを低下させるか又は予防する方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
血液悪性腫瘍の処置におけるキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法の初期の成功は、免疫療法方策の新たな領域の急成長を示唆している(Seledtsov, V.I., Goncharovら, Human Vaccines and Immunotherapeutics [人類ワクチンと免疫療法] 11, 851-869 (2015))。CARは、デザイナー受容体であり、通常、CD3ζ ITAMモチーフと共刺激ドメインに由来する(例えば、4-1BB又はCD28に由来する)モジュール活性化ドメインを有する(Weinkove, R., George, P.ら, Clin. Transl. Immunol. [臨床と形質転換免疫学] 8, e1049 (2019))。代替法も考案されているが、これらの受容体の標的認識は、通常、CARの細胞外末端上のscFvドメインにより提供される(Kuhn, N.F.ら Cancer Cell [癌細胞] 35, 473-488. e6 (2019))。
【0005】
承認された二つのCD19 CAR-T薬剤(KymriahとYescarta)及びAbecma(BCMA CAR-T)は、いずれも自家由来製品である。それらは、個々の患者の自己T細胞から作製される。自家CD19 CAR-Tは、難治性と再発性癌患者において以前にはない有効性を示したが、実際に将来の重大な課題を表し、それらは複雑な製造を必要とし、患者の違いのために、CAR-T細胞の品質には、通常、有意な差があり、且つこれは、生成物の品質の違い、ひいては生産の失敗(失敗率14%まで)をもたらす(Bersenev, A. Transfusion [輸血] (2017). doi: 10.1111/trf. 14110)、(Dai, X., Meiら, Biotechnology Journal [バイオテクノロジー雑誌] (2019))。しかしながら、生成物の製造に必要なリードタイムが約3~ 4週間であるため、疾患進行によりそれほど待つことができない患者は臨床試験に参加することができず、コストも高すぎて、ほとんどの患者集団は負担できない。Kymriahの場合、患者一人当たりのコストは$475,000であるが、Yescartaの場合、$373,000である。
【0006】
一方、同種異体(既製)CAR-Tは、多くの優位性を提供する。細胞は、バッチで前もって調製し、数千の用量を提供することができ、生成物を凍結し、貯蔵し、且つすぐに使用するために分配し、CAR-T細胞は、より良好な細胞品質を有する健康なドナーから作製され、各バッチの細胞は、均一な品質を有し、これは、患者に対するリードタイムを最小限に抑え、且つ商品のコストが有意に削減することができる(Rafiq, S.ら, Nature Reviews Clinical Oncology [自然総説:臨床腫瘍学] (2020))、(Depil, S.ら, Nature Reviews Drug Discovery [自然総説:薬物発見] (2020))。
【0007】
現在、患者の移植片対宿主病(GvHD)を引き起こさない同種異体生成物を作製する方法がいくつかある:それらは、遺伝子編集技術(例えば、CRISPR(クラスター化された一定間隔の短い回文反復配列)により媒介されたTCRノックダウン)によって作製することができ、又はそれらは、TCRのsiRNA下方制御によって作製することができ、又はそれらは、天然にGvHDを誘発しない細胞(例えば、臍帯血又はPBMCに由来するNK細胞(Li, Y.ら, Cell Stem Cell [細胞性幹細胞] (2018))、NK92細胞株、又はγδ T細胞など)によって作製することができる(Marcus, A.ら, Expert Opinion on Biological Therapy [生物療法専門家の意見] (2014))、(Depil, S.ら, Nature Reviews Drug Discovery [自然総説:薬物発見] (2020))、(Themeli, M., Riviereら, Cell Stem Cell [細胞性幹細胞] (2015))、(Rezvani, K.ら, Molecular Therapy [分子療法] (2017))。
【0008】
遺伝子編集技術による重大な挑戦は、オフターゲット修飾のリスクが常に存在することである。オフターゲット修飾率は、50%まで高くなる可能性があり(Zhang, X.H.ら, Molecular Therapy -Nucleic Acids [分子療法-核酸] (2015))、これは、望ましくない突然変異をもたらす恐れがあり、患者にとって重大なリスクとなる。なお、製造プロセスは、二つの修飾ステップを必要とするため、複雑であり、第1のステップは、CARをT細胞にトランスフェクトすることであり、第2のステップは、CRISPRメカニズムを導入してTCRをノックアウトすることである。
【0009】
一方、NK細胞及びγδ T細胞とインビボでの持続性及び増殖との関連が不良であり、これはその効果に顕著な影響を及ぼす。それらはまた、インビトロでの拡張も困難である(Li, Y.,Cell Stem Cell [細胞性幹細胞] (2018))、(Rezvani, K.,ら, Molecular Therapy [分子療法] (2017))、(Shimasaki, N.ら, Nature Reviews Drug Discovery [自然総説:薬物発見] (2020))。
【0010】
どのようにして、以上で言及した欠陥を回避するとともにT細胞又は他の細胞における膜結合タンパク質(MBP)を下方制御するかは、解決すべき課題である。
【発明の概要】
【0011】
本出願は、新規な融合タンパク質、前記タンパク質をコードする核酸、前記核酸を含むベクター、前記核酸又はベクターを含む組成物、前記核酸、ベクター又は組成物又は薬物組成物を含む細胞(例えば、宿主細胞)を提供する。本出願はさらに、細胞における標的膜結合タンパク質(MBP)レベルを低下させる(下方制御する)方法、低下した標的膜結合タンパク質レベルを有する細胞を産生する方法、又は疾患を処置する方法、又は一つ又は複数のCAR T細胞の被験者への投与に関連する、該被験者のGvHDを低下させるか又は予防する方法を提供する。
【0012】
本出願では、膜結合タンパク質(MBP)の下方制御は、分解タグタンパク質により媒介された分解によって実現され、ここで、該分解タグタンパク質は、分解を媒介する細胞表面受容体のユビキチンリガーゼ及び/又はドメイン(例えば、IL2Rβサブドメイン、L2Rβ jmドメイン)を含む。分解タグタンパク質(例えば、ユビキチンリガーゼ又はIL2Rβ)による分解対象のMBPのタグ特異性又は標的化特異性(又は認識特異性)は、分解対象のMBPの抗体(又は抗原結合断片)によって媒介され(即ち、抗体により媒介された基質認識であり)、又は膜貫通ドメインを有する分解対象の膜結合タンパク質又は複合体のサブユニット又はドメインによって媒介される(即ち、膜貫通ドメインにより媒介された基質認識である)。本出願の技術案は、細胞のタイプに関係なく、細胞表面上の任意の標的に適用することができる。
【0013】
一態様では、本出願の融合タンパク質は、
膜結合タンパク質(MBP)の分解を媒介する分解タグタンパク質であって、ユビキチンリガーゼ又はその変異体のうちの一つ又は複数、又は分解を媒介する細胞表面受容体の一つ又は複数のサブユニット又はドメインから選択される分解タグタンパク質、及び
膜貫通連結ドメインであって、
1) 第1の膜貫通ドメインと第1のコネキシンとを含む第1の膜貫通連結ドメインであって、
該第1の膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD3、CD28、4-1BB又はIL2R又はその変異体の一つ又は複数のサブユニットもしくはドメインの膜貫通ドメインから選択され、該第1のコネキシンは、該分解対象のMBPの抗体又は抗原結合断片のうちの一つ又は複数から選択され、且つ該第1の膜貫通ドメインと該第1のコネキシンは直接又は間接的に連結され、
好ましくは、上記1) の該膜貫通連結ドメインを含む融合タンパク質は第1のシグナルペプチドをさらに含む第1の膜貫通連結ドメイン、又は、
2) 該分解対象のMBP又はその変異体の膜貫通ドメインを含む第2の膜貫通連結ドメインを含む膜貫通連結ドメインを含む。
【0014】
特定の実施例において、好ましくは、MBPは膜結合受容体であり、さらに好ましくは、哺乳動物由来の膜結合受容体であり、最も好ましくは、ヒト膜結合受容体であり、
好ましくは、ユビキチンリガーゼは、E3ユビキチンリガーゼ又はその変異体の一つ又は複数のサブユニット又はドメインを含み、
好ましくは、分解を媒介する細胞表面受容体は、インターロイキン受容体又はその変異体の一つ又は複数のサブユニット又はドメインを含み、
好ましくは、上記1)における分解対象のMBPの抗原結合断片は、該MBP又はその変異体に特異的に結合するscFv又はナノ抗体を含み、
好ましくは、上記2) における分解対象のMBP又はその変異体の膜貫通ドメインは、CD3ζ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3α、CD3β又はその変異体のうちの一つ又は複数の膜貫通ドメインを含み、
さらに好ましくは、上記2) における第2の膜貫通連結ドメインは、CD3ζ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3α、CD3β又はその変異体のうちの一つ又は複数の細胞外ドメインと膜貫通ドメインを含み、
さらに好ましくは、上記2) における第2の膜貫通連結ドメインは、CD3ζ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3α、CD3β又はその変異体のうちの一つ又は複数の第2のシグナルペプチド、細胞外ドメインと膜貫通ドメインを含む。
【0015】
別の特定の実施例において、好ましくは、膜結合受容体は、CD3、TCR、CD5、CD7、PD-L1及びCD47又はその変異体の一つ又は複数のサブユニット又はドメインから選択され、
該E3ユビキチンリガーゼは、Hsc70相互作用タンパク質(CHIP)のC末端、CHIP.dTPR、FボックスWD40含有タンパク質7(FBW7)、FBW7.2-293、ヒッペル-リンドウ(VHL)、VHL.152-213、スポット型BTB-POZタンパク質(SPOP)、SPOP.167-374、SOCS2、SOCS2.143-198、ユビキチンタンパク質リガーゼE3A(UBE3A)、マウス二重微小染色体2ホモログ(MDM2)、後期促進複合体(APC)、UBR5、LNX、カシタスB系統リンパ腫形質転換配列様タンパク質1(CBLL1)、HECTドメイン及びアンキリン反復配列含有E3ユビキチンタンパク質リガーゼ1(HACE1)、HECT、C2及びWWドメイン含有E3ユビキチンタンパク質リガーゼ1(HECW1)、HECT、C2及びWWドメイン含有E3ユビキチンタンパク質リガーゼ2(HECW2)、HECT及びRLDドメイン含有E3ユビキチンタンパク質リガーゼ1(HERC1)、HERC2、HERC3、HERC4、HERC5、HERC6、HUWE1、ITCH、神経前駆細胞発現の発生的下方制御タンパク質4(NEDD4)、神経前駆細胞発現の発生的下方制御遺伝子4様タンパク質(NEDD4L)、ペプチジルプロリルイソメラーゼ(サイクロフィリン)様2(PPIL2)、PIAS1、PIAS2、PIAS3、PIAS4、RANBP2、RNF4、RBX1、SMURF1、SMURF2、STUB1、TOPORS、TRIP12、UBE3A、UBE3B、UBE3C、UBE3D、UBE4A、UBE4B、UBOX5、UBR5、WWP1、WWP2、Parkin、MKRN1、GRAIL.IC、RNF133.IC、RNF122.rIC又はRNF152.rICというタンパク質又はその短縮化型から選択され、、好ましくは、該E3ユビキチンリガーゼは、CHIP、CHIP.dTPR、FBW7.2-293、VHL.152-213、SPOP.167-374、SOCS2.143-198、GRAIL.IC、RNF133.IC、RNF122.rIC又はRNF152.rICを含み、且つ、さらに好ましくは、該CHIP、CHIP.dTPR、FBW7.2-293、VHL.152-213、SPOP.167-374、SOCS2.143-198、GRAIL.IC、RNF133.IC、RNF122.rIC又はRNF152.rICはそれぞれ、SEQ ID NO. 21-26、62、79、81又は83のいずれか一つに示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
インターロイキン受容体のサブユニット又はドメインは、IL-2Rのリソソーム標的化モチーフを含み、好ましくは、該IL-2Rのリソソーム標的化モチーフは、L2Rβ jmドメインを含み、さらに好ましくは、該L2Rβ jmドメイン(IL2Rβjm)は、SEQ ID NO. 58に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
上記1) における該第1の膜貫通ドメインは、CD3、CD8α、CD4、又はその変異体の膜貫通ドメインから選択され、好ましくは、CD3ζ膜貫通ドメイン変異体、CD8α膜貫通ドメイン、又はCD4膜貫通ドメインはそれぞれ、SEQ ID NO. 89、18又は15に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
該第1のシグナルペプチドはそれぞれ、SEQ ID NO. 19又は20に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列から選択され、
上記1) におけるMBPの抗体又は抗原結合断片は、CD3、CD5、CD7、PD-L1又はCD47の抗体もしくは抗原結合断片から選択され、好ましくは、CD3の抗原結合断片は、SP34 scFv、OKT3 scFv、UCHT1 scFv、UCHT1.Y177T scFv、L2K scFv、F6A scFv、BMA031 scFv、又はBMA031.H6L12 scFvを含み、CD5の抗原結合断片は、αCD5.14 scFvを含み、CD7の抗原結合断片は、αCD7.TH69 scFvを含み、PD-L1の抗原結合断片は、αPD-L1 scFvを含み、CD47の抗原結合断片は、αCD47 scFvを含み、さらに好ましくは、該SP34 scFv、OKT3 scFv、UCHT1 scFv、UCHT1.Y177T scFv、L2K scFv、F6A scFv、BMA031 scFv、BMA031.H6L12 scFv、αCD5.14 scFv、αCD7.TH69 scFv、αPD-L1 scFv又はαCD47 scFvはそれぞれ、SEQ ID NO. 2-13のいずれか一つに示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
上記2) における第2の膜貫通連結ドメインは、CD3ζ又はCD3εの膜貫通ドメインを含み、好ましくは、CD3ζ又はCD3εの細胞外ドメインと膜貫通ドメインを含み、さらに好ましくは、CD3ζ又はCD3εの第2のシグナルペプチド、細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインを含み、さらに好ましくは、該CD3ζ又はCD3εの膜貫通ドメイン(TM)はそれぞれ、SEQ ID NO. 67、70に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、さらに好ましくは、該CD3ζ又はCD3εの細胞外ドメイン(EM)はそれぞれ、SEQ ID NO. 66、69に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、さらに好ましくは、該CD3ζ又はCD3εの第2のシグナルペプチドはそれぞれ、SEQ ID NO. 65、68に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、さらに好ましくは、該CD3ζ(CD3ζ. ΔIC)の第2のシグナルペプチド、細胞外ドメインと膜貫通ドメイン及び該CD3ε(CD3ε. ΔIC)の第2のシグナルペプチド、細胞外ドメインと膜貫通ドメインはそれぞれ、SEQ ID NO. 61、64に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0016】
特定の実施例において、融合タンパク質は、ヒンジ又はP2A-GFPのうちの一つ又は複数をさらに含み、
好ましくは、該ヒンジは、CD8αヒンジ又はCD4ヒンジから選択され、さらに好ましくは、CD8αヒンジ又はCD4ヒンジはそれぞれ、SEQ ID NO. 16又は14に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、さらに好ましくは、該ヒンジは、該第1の膜貫通ドメインのN末端に隣接しており、
好ましくは、P2A-GFPは、SEQ ID NO. 57に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、さらに好ましくは、該P2A-GFP配列は、該融合タンパク質のC末端に位置する。
【0017】
別の特定の実施例において、融合タンパク質は、N末端からC末端まで、
a) 第1のコネキシン、分解タグタンパク質、第1の膜貫通ドメインであって、
好ましくは、該第1のコネキシンは、分解対象のMBPの抗体又は抗原結合断片を含み、さらに好ましくは、該分解対象のMBPの抗体又は抗原結合断片は、CD3、CD5、CD7、PD-L1又はCD47の抗体もしくは抗原結合断片を含み、さらに好ましくは、CD3の抗原結合断片は、SP34 scFv、OKT3 scFv、UCHT1 scFv、UCHT1.Y177T scFv、L2K scFv、F6A scFv、BMA031 scFv、又はBMA031.H6L12 scFvを含み、CD5の抗原結合断片は、αCD5.14 scFvを含み、CD7の抗原結合断片は、αCD7.TH69 scFvを含み、PD-L1の抗原結合断片は、αPD-L1 scFvを含み、CD47の抗原結合断片は、αCD47 scFvを含み、
好ましくは、該分解タグタンパク質は、E3ユビキチンリガーゼを含み、さらに好ましくは、該E3ユビキチンリガーゼは、CHIP. dTPR、FBW7.2-293、VHL.152-213、SPOP.167-374、又はSOCS2.143-198を含み、
好ましくは、該第1の膜貫通ドメインは、CD8α膜貫通ドメインを含むもの、
b) 第1のコネキシン、第1の膜貫通ドメイン、分解タグタンパク質であって、
好ましくは、該第1のコネキシンは、該分解対象のMBPの抗体又は抗原結合断片を含み、さらに好ましくは、該分解対象のMBPの抗体又は抗原結合断片は、CD3の抗体又は抗原結合断片を含み、さらに好ましくは、CD3の抗原結合断片は、SP34 scFvを含み、
好ましくは、該分解タグタンパク質は、E3ユビキチンリガーゼを含み、さらに好ましくは、E3ユビキチンリガーゼは、GRAIL.ICを含み、
好ましくは、該第1の膜貫通ドメインは、CD3ζ膜貫通ドメイン変異体、CD8α膜貫通ドメイン、及びCD4膜貫通ドメインのうちの一つ又は複数から選択されるもの、
c) 上記2) における第2の膜貫通連結ドメイン、分解を媒介する細胞表面受容体であって、
好ましくは、上記2) における該第2の膜貫通連結ドメインは、CD3ζ.ΔIC又はCD3ε.ΔICを含み、
好ましくは、分解を媒介するこれらの細胞表面受容体はIL2Rβjmを含むもの、又は、
d) 上記2) における第2の膜貫通連結ドメイン、E3ユビキチンリガーゼ又はその変異体のうちの一つ又は複数、
好ましくは、上記2) における該第2の膜貫通連結ドメインは、CD3ζ.ΔICを含み、
好ましくは、該E3ユビキチンリガーゼ又はその変異体のうちの一つ又は複数は、GRAIL.IC、CHIP. dTPR、RNF133.IC、RNF122.rIC、RNF152.rICを含むものを含む。
【0018】
別の特定の実施例において、融合タンパク質は、N末端からC末端まで、
a):
LG112、SP-OKT3 scFv-CHIP.dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG114、SP-OKT3 scFv-FBW7-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG115、SP-OKT3 scFv-VHL-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG116、SP-OKT3 scFv-SPOP-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG117、SP-OKT3 scFv-SOCS2-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG118、SP-SP34 scFv-hCHIP.dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG123、SP-UCHT1 scFv-hCHIP.dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG124、SP-UCHT1.Y177T scFv-hCHIP.dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG125、SP-L2K scFv-hCHIP.dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG126、SP-F6A scFv-hCHIP.dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG119、SP-BMA031.wt scFv-hCHIP.dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG120、SP-BMA031.H6L12 scFv-hCHIP.dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG137、SP-αCD5.14 scFv-hCHIP.dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG138、SP-αCD7.TH69 scFv-hCHIP.dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
MLB052、SP-αPD-L1 scFv-hCHIP.dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
MLB053、SP-αCD47 scFv-hCHIP.dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
b):
LG222、SP-SP34-CD3ζ.ΔIC-1 -GRAIL.IC-P2A-eGFP、
LG222.1、SP-SP34-CD8αヒンジ/TM -GRAIL.IC-P2A-eGFP、
LG222.2、SP-SP34-CD4ヒンジ/TM -GRAIL.IC-P2A-eGFP、
c):
MLB014、CD3ζ.ΔIC-IL2Rβjm-P2A-eGFP、
MLB046、CD3ε.ΔIC-IL2Rβjm-P2A-eGFP、
d):
LG171、CD3ζ.ΔIC-GRAIL.IC-P2A-eGFP、
LG171p1、CAG-CD3ζ.ΔIC-GRAIL.IC-P2A-eGFP、
LG213、CD3ζ.ΔIC-CHIP. dTPR-P2A-GFP、
LG174、CD3ζ.ΔIC-RNF133.IC-P2A-GFP、
LG180、CD3ζ.ΔIC-RNF122.rIC-P2A-GFP、
LG183、CD3ζ.ΔIC-RNF152.rIC-P2A-GFPを含み、
任意選択的に、該融合タンパク質は、P2A-eGFP(即ち、P2A-GFP)及び/又はSPを含まない。
【0019】
別の態様では、本出願は、本出願の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む核酸を提供する。
【0020】
別の態様では、本出願は、本出願の核酸を含むベクターを提供する。
【0021】
特定の実施例において、好ましくは、融合タンパク質の発現プロモーターは、CAG又はEF1aを含み、
さらに好ましくは、CAG又はEF1aはそれぞれ、SEQ ID NO. 72又は88に示す核酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する核酸配列を含み、
さらに好ましくは、a) 融合タンパク質の発現プロモーターは、EF1aであり、
さらに好ましくは、b) 融合タンパク質の発現プロモーターは、EF1aであり、
さらに好ましくは、c) 融合タンパク質の発現プロモーターは、EF1aであり、
さらに好ましくは、d) 融合タンパク質におけるLG171p1の発現プロモーターは、CAGであり、さらに好ましくは、d) 融合タンパク質における他の融合タンパク質の発現プロモーターは、EF1aである。
【0022】
別の態様では、本出願は、本出願の核酸又はベクターを含む組成物を提供する。
【0023】
別の態様では、組成物は、第1の核酸と第2の核酸を含み、又は第1の核酸を有する第1のベクター、及び第2の核酸を有する第2のベクターを含み、又は第1の核酸と第2の核酸を有するベクターを含み、ここで、
(1) 該第1の核酸は、本出願の融合タンパク質をコードし、
(2) 該第2の核酸は以下を含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードし、
(a) 所定の抗原に特異的に結合する単鎖可変断片(scFv)を含む細胞外リガンド結合ドメイン、
(b) 膜貫通ドメイン、及び
(c) 一つ又は複数のシグナル伝達ドメインを含み、好ましくは、4-1BBシグナル伝達ドメインとCD3ζシグナル伝達ドメインとを含む細胞質セグメント。
【0024】
特定の実施例において、組成物における融合タンパク質は、上記a) -d) 融合タンパク質のうちの一つ又は複数から選択され、該組成物は、第1の核酸と第2の核酸とを含み、又は第1の核酸を有する第1のベクター及び第2の核酸を有する第2のベクターを含み、又は第1の核酸と第2の核酸を有するベクターを含む。
【0025】
特定の実施例において、所定の抗原は、腫瘍関連抗原である。
【0026】
別の特定の実施例において、腫瘍関連抗原は、CEA、クローディン18.2、GPC3、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、CD38、CD19、CD20、CD22、BCMA、CAIX、CD446、CD133、EGFR、EGFRvIII、EpCam、GD2、EphA2、Her1、Her2、ICAM-1、IL13Ra2、メソテリン、MUC1、MUC16、NKG2D、PSCA、NY-ESO-1、MART-1、WT1、MAGE-A10、MAGE-A3、MAGE-A4、EBV、NKG2D、PD1、PD-L1、CD25、IL-2又はCD3からなる群から選択される。
【0027】
別の特定の実施例において、腫瘍関連抗原は、CEAである。
【0028】
別の態様では、本出願は、本出願の核酸又はベクター又は組成物を含む細胞(例えば、宿主細胞)を提供する。
【0029】
特定の実施例において、宿主細胞は、哺乳動物細胞であり、好ましくは、ヒト細胞である。
【0030】
別の特定の実施例において、宿主細胞は、T細胞又は初代T細胞、γδ T細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ、B細胞、又は非免疫細胞である。
【0031】
別の特定の実施例において、宿主細胞は、同種異体細胞である。
【0032】
別の態様では、本出願は、本出願の融合タンパク質、核酸、ベクター、組成物又は細胞を含む薬物組成物を提供する。
【0033】
特定の実施例において、組成物は、一つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0034】
別の態様では、本出願は、細胞における標的膜結合タンパク質レベルを低下させる方法を提供し、該方法は、本出願の核酸、ベクター、又は組成物を細胞に導入することを含む。
【0035】
特定の実施例において、細胞(例えば、宿主細胞)は、哺乳動物細胞であり、好ましくは、ヒト細胞である。
【0036】
別の実施例において、宿主細胞は、T細胞又は初代T細胞、γδ T細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ、B細胞、又は非免疫細胞である。
【0037】
別の実施例において、宿主細胞は、同種異体細胞である。
【0038】
別の態様では、本出願は、低下した標的膜結合タンパク質レベルを有する細胞を産生する方法を提供し、該方法は、本出願の核酸、ベクター、又は組成物を細胞に導入することを含む。好ましくは、細胞は、哺乳動物細胞であり、さらに好ましくは、ヒト細胞であり、さらに好ましくは、細胞は、T細胞又は初代T細胞、γδ T細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ、B細胞、又は非免疫細胞であり、最も好ましくは、細胞は、同種異体細胞である。
【0039】
別の態様では、本出願は、疾患を処置する方法を提供し、該方法は、それを必要とする被験者に本出願の組成物を有する同種異体細胞の治療有効量を投与するか、又はそれを必要とする被験者に本出願の細胞の治療有効量を投与することを含み、ここで、好ましくは、該被験者は、減少した移植片対宿主病(GvHD)を有する。好ましくは、細胞は、哺乳動物細胞であり、さらに好ましくは、ヒト細胞であり、さらに好ましくは、細胞は、T細胞又は初代T細胞、γδ T細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ、B細胞、又は非免疫細胞であり、最も好ましくは、細胞は、同種異体細胞である。
【0040】
別の態様では、本出願は、一つ又は複数のCAR T細胞の被験者への投与に関連する、該被験者のGvHDを低下させるか又は予防する方法を提供し、該方法は、
(1) 本出願の核酸又はベクター又は組成物で一つ又は複数のCAR T細胞をトランスフェクトすること、及び
(2) 該被験者にCAR T細胞を投与することを含む。
【0041】
別の態様では、本出願は、細胞群における膜結合タンパク質(MBP)を下方制御する方法を提供し、該方法は、前記細胞群に本出願の宿主細胞を添加することを含み、ここで、該宿主細胞は、前記MBPに特異的に結合するscFvを含む融合タンパク質を発現し、及び/又は該宿主細胞は、膜貫通ドメインを有するMBPの成分又はその断片を含む融合タンパク質を発現する。
【0042】
別の態様では、宿主細胞群は、T細胞群であり、好ましくは、ヒト初代T細胞群である。
【0043】
別の態様では、MBPは、CD3であり、好ましくは、ヒトCD3である。
【0044】
本出願の利点は以下のとおりである。
1) 本出願の融合タンパク質は、細胞における標的膜結合タンパク質(MBP)レベルを低下させる(下方制御する)ことができ、及び
2) 本出願のCAR T細胞は、被験者のGvHDを低下させるか又は予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本開示の新しい特徴は、添付の特許請求の範囲において特別に説明される。以下の発明を実施するための形態において、本開示の特徴と利点をより良く理解できるように、実施例と例の方式で説明した。
【
図1】受容体組織に対する潜在的なGvHD応答を回避するように同種異体CAR-T宿主細胞を産生する図である。T細胞、ドナーT細胞は、異なる発育/成熟経験により、異なる受容体に注入される場合、外因性抗原(GvHD)に対する強い免疫応答を潜在的に誘発することができ、例えば、細胞毒性、サイトカイン放出症候群及び神経毒性である。ドナー細胞におけるTCR/CD3複合体を分解することによって、このような悪い影響を大幅に排除することができる。
【
図2】TCR/CD3分解構築体と参考構築体の概略図である。TCR/CD3複合体を分解するために、一連のE3リガーゼ又はその変異体(E3リガーゼの機能ドメイン)(例えば、FBW7、VHL、SPOP及びCHIP.dTPR)は、ヒトCD3を対象とするscFvに連結することによって試験された。クローンSP34又はOKT3をscFvの産生に用いた。これらの構築体のうちのいくつかは、CD8αヒンジ/膜貫通ドメインによって細胞膜にさらに固着された。本明細書は、LS008構築体(CD19 CAR)を陰性コントロールとして用いる。細胞質構築体(LG089、LG091、LG092、LG085構築体)は、CD3の抗体又は抗原結合断片をE3リガーゼ/ユビキチンに結合させることによって得られるが、該細胞質構築体は、SP配列とヒンジ/TM配列を有さず、且つ細胞の細胞質に発現される。細胞質又は膜固着構築体(LG021、LG022、LG023、LG024構築体)は、E3リガーゼ/ユビキチン配列を有さず、CD3の抗体又は抗原結合断片のみを有する。CD3の抗体又は抗原結合断片をE3リガーゼ/ユビキチンに結合させることによってTCR/CD3分解構築体(LG112、LG113)を得て、且つ該構築体は、SP配列とヒンジ/TM配列の両方を有する。
【
図3A-3E】細胞質構築体(LG089、LG091、LG092、LG085)によるヒト初代T細胞におけるTCR/CD3複合体への影響である。ヒトIL-2、IL-7及びIL-15の存在下で、ステムセル社(StemCell)のImmunocult-XF/活性化剤を用いて、ヒト単離初代T細胞をインビトロで3日間活性化した。そして、活性化された初代T細胞を収集し、TCR/CD3分解のための細胞質構築体の一つを発現するプラスミドの存在下でエレクトロポレーションを行った。二日後に、細胞を収穫し、CD3(PE)とTCRα/β(APC)の両方を染色した。
図3Aは、システミックコントロールpmaxGFPとLS008が初代T細胞において良好なトランスフェクト効率を有し、且つこの二つの構築体のいずれにおいてもTCRα/βとCD3の下方制御がないことを示した。
図3B-3EのFACS結果により、抗CD3 scFv(例えば、SP34 scFv又はOKT3 scFv)コンジュゲートE3リガーゼ(FBW7(
図3B)、VHL(
図3C)、SPOP(
図3D)及びhCHIP. dTPR(
図3E)を含む)が細胞質に発現される場合、明らかなTCR/CD3複合体分解がないことが示されている。
【
図4A-4D】膜固着OKT3構築体(LG021、LG022、LG023、LG024)は、ヒト初代T細胞におけるTCR/CD3複合体の下方制御を付与する。ヒトIL-2、IL-7及びIL-15の存在下で、ステムセル社のImmunocult-XF/活性化剤を用いて、ヒト単離初代T細胞をインビトロで3日間活性化した。そして、細胞を収集し、且つTCR/CD3分解のための細胞質/膜固着構築体の一つを発現する1 μg DNAプラスミドを用いて、エレクトロポレーションを行った。二日後に、細胞を収穫し、且つCD3(PE)とTCRα/β(APC)の両方を染色した。SP34 scFv(LG021)(
図4A)又はOKT3 scFv(LG023)(
図4C)依存性構築体が細胞質に発現される場合、明らかなTCR/CD3複合体下方制御がない。同様に、膜固着SP34 scFv構築体(LG022)も、いかなる影響も示していない(
図4B)。しかしながら、膜固着の形でOKT3 scFv配列を用いる場合、有意なTCR/CD3複合体下方制御(LG024)が観察された(
図4D)。
【
図5】膜固着OKT3構築体は、Jurkat細胞におけるTCR/CD3複合体の下方制御を付与する。PiggyBacトランスポザーゼmRNA、及び膜固着OKT3構築体(LG024)を発現するトランスポゾンの両方を用いてJurkat細胞をエレクトロポレーションした。Jurkat細胞を57日目まで維持し、且つCD3(PE)とTCRα/β(APC)で染色した後にフローサイトメトリー試験を行い、安定に組み込まれたトランスポゾン(膜固着OKT3構築体(LG024)を発現する)を有する細胞におけるTCR/CD3複合体の有意な分解(GFP陽性)が示された。
【
図6A-6D】E3リガーゼとOKT3 scFv構築体との細胞質連結(LG113)よりも、E3リガーゼとOKT3 scFv構築体との膜外連結(LG112)は、Jurkat細胞株におけるTCR/CD3複合体のより良い下方制御を付与する。PiggyBacトランスポザーゼmRNA、及び異なる膜固着OKT3構築体(LG112、LG113)を発現するトランスポゾンの両方でJurkat細胞をエレクトロポレーションした。3日目にJurkat細胞を収穫し、且つCD3(PE)とTCRα/β(APC)で染色した後にフローサイトメトリー分析を行った。
図6Aは、システミックコントロールpmaxGFPとLS008がJurkat細胞において良好なトランスフェクト効率を有し、且つこの二つの構築体のいずれにおいてもTCRα/βとCD3の下方制御がないことを示した。E3ユビキチンリガーゼのない膜固着OKT3 scFv構築体(LG024)は、Jurkat細胞におけるTCR-CD3複合体の有意な下方制御を示した(
図6B)。hCHIP. dTPRが、細胞質方式(LG113)(
図6D)ではなく、外膜方式(近端連結)(LG112)(
図6C)でOKT3 scFvと連結する場合、より強いTCR/CD3複合体の下方制御を得た。
【
図7A-7D】E3リガーゼとOKT3 scFv構築体との細胞質連結(LG113)よりも、E3リガーゼとOKT3構築体との膜外連結(LG112)は、ヒト初代T細胞におけるTCR/CD3複合体のより良い下方制御を付与する。ヒトIL-2、IL-7及びIL-15の存在下で、ステムセル社のImmunocult-XF/活性化剤を用いて、ヒト単離初代T細胞をインビトロで3日間活性化した。そして、活性化された初代T細胞を収集し、且つPiggyBacトランスポザーゼmRNA、及び異なる膜固着OKT3構築体を発現するトランスポゾンの両方でエレクトロポレーションした。三日後に、初代T細胞を収穫し、且つCD3(PE)とTCRα/β(APC)の両方を染色した。
図7Aは、システミックコントロールpmaxGFPとLS008が初代T細胞において良好なトランスフェクト効率を有し、且つこの二つの構築体のいずれにおいてもTCRα/βとCD3の下方制御がないことを示した。本発明者らがJurkat細胞株で発見したのと似たように、hCHIP.dTPRが、細胞質方式(LG113)(
図7D)ではなく、外膜方式(近端連結)(LG112)(
図7C)でOKT3 scFvと連結する場合、分解はより有意になり得る。E3ユビキチンリガーゼのない膜固着OKT3 scFv構築体(LG024)(
図7B)に比べて、E3ユビキチンリガーゼ(CHIP.dTPR)が構築体全体の細胞質部分(LG113、
図7D)に位置する場合、TCR/CD3分解に有意な変化がないことを発見した。
【
図8A-8E】異なるE3リガーゼを有するTCR/CD3分解構築体である。(
図8A)膜固着OKT3 scFvに連結される異なるE3リガーゼ(FBW7と、VHLと、SPOPと、SOCS2とを含む)を有する一連の構築体を設計し合成した。ヒトIL-2、IL-7及びIL-15の存在下で、ステムセル社のImmunocult-XF/活性化剤を用いて、ヒト単離初代T細胞をインビトロで3日間活性化した。そして、初代T細胞を収集し、且つPiggyBacトランスポザーゼmRNA、及び異なる膜固着OKT3構築体を発現するトランスポゾンの両方でエレクトロポレーションした。三日後に、初代T細胞を収穫し、且つCD3(PE)とTCRα/β(APC)の両方を染色した。FBW7(
図8B)、VHL(
図8C)、SPOP(
図8D)及びSOCS2(
図8E)のTCR/CD3下方制御影響を試験した。
【
図9A-9F】異なるCD3を標的化するscFvを有するTCR/CD3分解構築体である。(
図9A)異なるTCR-CD3を標的化するscFv(SP34と、UCHT1と、UCHT1と. Y177Tと、L2Kと、F6Aとを含む)を有する一連のTCR/CD3分解構築体を設計し合成した。ヒトIL-2、IL-7及びIL-15の存在下で、ステムセル社のImmunocult-XF/活性化剤を用いて、ヒト単離初代T細胞をインビトロで3日間活性化した。そして、初代T細胞を収集し、且つPiggyBacトランスポザーゼmRNAとトランスポゾンDNA構築体の両方でエレクトロポレーションした。三日後に、初代T細胞を収穫し、且つCD3(PE)とTCRα/β(APC)の両方を染色した。SP34(
図9B)、UCHT1(
図9C)、UCHT1. Y177T(
図9D)、L2K(
図9E)及びF6A(
図9F)によるTCR/CD3下方制御影響を試験した。
【
図10A-10E】E3リガーゼ(CHIP. dTPR)は、ヒト初代T細胞におけるTCR/CD3下方制御を最適化するのに必要である。(
図10A)CHIP. dTPRが存在するか又は存在しない場合に、TCRを標的化するscFv(BMA031又はBMA031. H6L12)を有する一連のTCR分解構築体を設計し合成した。ヒトIL-2、IL-7及びIL-15の存在下で、ステムセル社のImmunocult-XF/活性化剤を用いて、ヒト単離初代T細胞をインビトロで3日間活性化した。そして、細胞を収集し、且つPiggyBacトランスポザーゼmRNAとトランスポゾンDNA構築体の両方でエレクトロポレーションした。三日後に、初代T細胞を収穫し、且つCD3(PE)とTCRα/β(APC)の両方を染色した。CHIP. dTPRが存在する(
図10B)(
図10C)か又は存在しない(
図10D)(
図10E)場合に、BMA031(LG119、
図10B)(LG133、
図10D)又はBMA031. H6L12(LG120、
図10C)(LG134、
図10E)によるTCR/CD3下方制御影響を試験した。
【
図11A-11B】CD3下方制御がCD3/CD28/CD2刺激により、低いJurkat細胞活性化を付与することを示した。
図11Aは、ベースラインにおいて、全ての細胞のCD69(T細胞活性化マーカー)発現レベルが低いことを示し、
図11Bは、刺激後4時間で、T細胞LS008によりトランスフェクトされた細胞に比べて、LG024又はLG112によりトランスフェクトされたGFP+細胞におけるCD69発現レベルが有意に低下したことを示した。
【
図12A-12C】CD5又はCD7下方制御構築体と検証である。
図12Aは、一連のCD5又はCD7分解構築体を設計し合成することを示した。
図12Bは、αCD5.14 scFvがCD5への強い下方制御を付与したことを示し、
図12Cは、αCD7. TH69 scFv(CD7を標的化するscFv)が、ヒト初代T細胞においても、有意な下方制御影響を示すことを示した。
【
図13A-13B】E3 CHIP構築体によるPD-L1とCD47の下方制御である。
図13Aは、それぞれPD-L1とCD47に対して特異的であるE3構築体MLB052とMLB053の概略図を示した。各構築体は、標的抗原に特異的なN末端ScFvドメインと、TPRドメインを欠損したE3リガーゼCHIPの短縮化型で構成される。E3分解剤構築体(MLB052又はMLB053)は、可撓性ヒンジと膜貫通固着によって膜を固着する。PD-L1について、1) Jurkat細胞の二つの異なる集団(GFP+とGFP-)の代表的なフローサイトメトリー図(即ち、
図13Bの左列の上小図)を示し、PEコンジュゲート抗PD-L1抗体でJurkat細胞を染色し、2) トランスフェクトされていないJurkat親細胞(即ち、
図13Bの右列の上小図の破線で示される領域)に対して、GFP
+発現においてゲーティングする、E3-CHIPを発現する細胞におけるPD-L1発現のヒストグラム(即ち、
図13Bの右列の上小図の破線で示される領域)である。CD 47について、1) 抗CD47 E3 CHIPでトランスフェクトされたJurkat細胞(GFP+)(即ち、
図13Bの左列の下小図)及びAPCコンジュゲート抗CD47一抗で染色されたJurkat細胞の代表的なフローサイトメトリー図であり、2) トランスフェクトされていない親コントロール細胞(
図13Bの右列の下小図)に対して、GFP
+発現においてゲーティングする、E3 CHIPトランスフェクトされたJurkat細胞のCD47発現のヒストグラムを示した。
【
図14A-14B】E3 CHIPに連結されるCD3標的化構築体(LG024)によるTCR発現のパラクリン下方制御である。
図14Aは、TCR発現のパラクリン下方制御を示すための共培養アッセイのゲーティングポリシーを示した。CellTrace紫色陽性細胞(即ち、LG024トランスフェクトされていないCell Trace
+細胞)とCellTrace紫色陰性細胞(即ち、LG024トランスフェクトCell Trace
-細胞)に対して行われたゲーティングにより、これらの異なる集団の特徴付けが可能になった(
図14Aの左列)。LG024トランスフェクト細胞(即ち、Cell Trace
-細胞)を、E3リガーゼ構築体を発現するGFP陽性集団、及びトランスフェクトされていないGFP陰性集団にさらにゲーティングした(
図14Aの中間列)。PEコンジュゲートαCD3(クローンHit3a)で細胞を染色して、TCR表面発現を評価した(
図14Aの左列)。
図14Bは、LG024でエレクトロポレーションしたJurkat細胞(即ち、LG024トランスフェクトされたCell Trace
-細胞)を、CellTrace紫色で標識した親ストックJurkat細胞(即ち、LG024トランスフェクトされていないCell Trace
+細胞)で連続的に希釈したことを示した。E3リガーゼを発現する細胞部分に対する連続的希釈は、非発現細胞における表面分子の抗原特異的下方制御を示す。CellTrace紫色で標識した親細胞によりLG024トランスフェクトJurkat細胞を連続的に希釈して、E3リガーゼ陽性細胞の総割合を、78%、57%、44%、31%、22%、16%、11%、及び0%にする。親集団(即ち、トランスフェクトされていない集団)は、灰色陰影ヒストグラム(即ち、塗りつぶされた領域)として示されている。トランスフェクトされた集団を、GFP陽性(黒の実線で標識された領域)とGFP陰性(黒の破線で標識された領域)にさらにゲーティングした。PEコンジュゲートCD3抗体(クローンHit3a)を用いて細胞を染色して、TCR表面発現を確定した。
【
図15A-15D】異なるヒンジ/膜貫通ドメインの、CD3を標的化するscFv(即ち、SP34)とGRAIL. ICとの両方により媒介されたJurkatにおけるTCR/CD3下方制御に対する影響である。
図15Aは、LG222、LG222.1及びLG222.2の構築体図を示し、
図15B-Dは、LG222、LG222.1又はLG222.2を発現するPiggyBacベクターとPiggyBacトランスポザーゼmRNAとの組み合わせによるJurkat細胞のエレクトロポレーションを示した。エレクトロポレーション後3日目に、CD3とTCRα/β染色によってTCR表面発現を評価した。
【
図16A-16C】異なるヒンジ/膜貫通ドメインの、CD3を標的化するscFv(即ち、SP34)とGRAIL. ICとの両方によって媒介されたヒト初代T細胞におけるTCR/CD3下方制御に対する影響である。
図16A-16Cは、LG222、LG222.1又はLG222.2を発現するPiggyBacベクターとPiggyBacトランスポザーゼmRNAとの組み合わせで、ヒト初代T細胞を予め活性化しエレクトロポレーションすることを示した。エレクトロポレーション後3日目に、CD3とTCRα/β染色によってTCR表面発現を評価した。
【
図17】受容体エンドサイトーシスの概要である。細胞表面受容体は、グリセリン媒介性エンドサイトーシス又はグリセリン非依存性エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれ、細胞内小胞に内在化された。その内腔内に表面受容体細胞外ドメインが含まれている小胞は、さらなる選別のために、アダプタータンパク質によって初期エンドソームに輸送される。表面受容体は、リサイクリングエンドソームにより、初期エンドソームから細胞表面に輸送されるか、又は多胞体内に凝集することができる。表面又は代替可能な細胞内に選別する経路は、これらの表面受容体の膜貫通ドメインと細胞内ドメインにおけるモチーフに依存している。受容体を多胞体から後期エンドソームにさらに加工し、且つ最終的にリソソームに加工し、ここで、内腔の低いpH、及びリソソームプロテアーゼは、細胞表面受容体及びその関連物質の分解を引き起こす。
【
図18A】CD3ζ. ΔIC-IL2Rβjm(MLB014)と、CD3ε. ΔIC-IL2Rβjm(MLB046)キメラタンパク質(即ち、融合タンパク質)の概略図である。本発明者らの設計は、CD3ζ(MLB014)とCD3ε(MLB046)の細胞外配列と膜貫通配列を、IL2Rβ細胞内ドメイン(即ち、IL2Rβ jm)の前の27個のアミノ酸に直接融合させることに基づくものであり、これらのアミノ酸は、そのリソソーム標的化モチーフを有する。CD3ζとCD3ε膜貫通ドメインを含むことにより、本発明者らの構築体は、マルチサブユニットTCR複合体に組み込まれた。
【
図18B】CD3ζ. ΔIC-IL2RβjmとCD3ε. ΔIC-IL2Rβjmキメラタンパク質(即ち、融合タンパク質)の発現は、Jurkat E6.1 NFATルシフェラーゼレポーター細胞におけるTCR下方制御を引き起こす。CD3融合タンパク質を発現するPiggyBacベクターとPiggyBacトランスポザーゼmRNAでJurkat細胞エレクトロポレーションして、CD3ζ. ΔIC-IL2Rβjm(MLB014)又はCD3ε. ΔIC-IL2Rβjm(MLB046)の発現を誘導した。エレクトロポレーション後5日目に、CD3染色によってTCR表面発現を評価した。TCRが絶対異種複合体であるため、CD3の下方制御は、全体的なTCR下方制御を示した。これらのデータにより、MLB014/(CD3ζ. ΔIC-IL2Rβjm)構築体又はMLB046/(CD3ε. ΔIC-IL2Rβjm)のTCR複合体への組み込みが、複合体全体の内在化の増加を促進することが示されている。
【
図18C】CD3ζ. ΔIC-IL2RβjmとCD3ε. ΔIC-IL2Rβjmキメラタンパク質の発現は、ドナー由来の細胞におけるTCR下方制御を引き起こす。Jurkatレポーター細胞と同様に、PiggyBacベクターとPiggyBacトランスポザーゼmRNAで初代T細胞をエレクトロポレーションして、CD3ζ. ΔIC-IL2Rβjm(MLB014)又はCD3ε. ΔIC-IL2Rβjm(MLB046)の発現を誘導した。エレクトロポレーション後5日目に、CD3(上小図)とTCRα/β(下小図)に対する染色によってTCR発現を評価した。これらのデータにより、初代T細胞とJurkat細胞では同様な潜在的メカニズムが働いているが、初代T細胞ではTCR下方制御の効率が低下したことが示されている。
【
図19】CD3ζ. ΔIC-GRAIL. IC(LG171)の概略図である。本発明者らの設計は、CD3ζ(即ち、CD3ζ. ΔIC又はCD3ζ短縮化)の細胞外配列と膜貫通配列、及び膜固着E3リガーゼGRAIL(GRAIL. IC)の細胞内ドメインに基づくものである。CD3ζ膜貫通ドメインを含むことにより、本発明者らの構築体は、マルチサブユニットTCR複合体に組み込むことができる。
【
図20】LG171キメラタンパク質の発現は、Jurkat細胞におけるTCR/CD3下方制御を引き起こす。CD3融合タンパク質を発現するPiggyBacベクター(即ち、LG171)とPiggyBacトランスポザーゼmRNAでJurkat細胞をエレクトロポレーションして、CD3ζ. ΔIC-GRAIL. IC(LG171)の発現を誘導した。エレクトロポレーション後3日目に、CD3とTCRα/β染色によってTCR表面発現を評価した。
【
図21】LG171キメラタンパク質の発現は、ヒト初代T細胞におけるTCR/CD3下方制御を引き起こす。Jurkatレポーター細胞と同様に、PiggyBacベクターLG171とPiggyBacトランスポザーゼで初代T細胞をエレクトロポレーションして、CD3ζ. ΔIC-GRAIL. IC(LG171)の発現を誘導した。エレクトロポレーション後3日目に、CD3とTCRα/βに対する染色によってTCR発現を評価した。同様に、TCR/CD3発現の下方制御は、GFP+部分において有意である。
【
図22】LG212(E3リガーゼなし)は、ヒト初代T細胞におけるTCR発現を低下させることができない。PiggyBacベクターLG212とPiggyBacトランスポザーゼで初代T細胞をエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後3日目に、CD3とTCRα/βに対する染色によってTCR発現を評価した。ヒト初代T細胞にCD3ζ(即ち、CD3ζ. ΔIC)のみを用いた場合、TCR/CD3の下方制御がないことが見られた。
【
図23A-23C】GRAIL細胞内ドメインにおける突然変異又はドメインスイッチは、LG171において、LG212(CD3ζ. ΔIC)に似ているTCR下方制御を付与する。LG171. ZF(ドメインスイッチを含む)、LG171. H2N2(ポイント突然変異を含む)構築体は、
図23Aに示されている。FACS(
図23B)とウエスタンブロット(
図23C)試験の両方は、GRAILの機能性ジンクフィンガードメインがLG171におけるより良いTCR/CD3下方制御に必要である(
図21)ことを示した。
【
図24】LG171キメラタンパク質の発現は、CD5又はCD7に対する非特異的下方制御を付与することができない。初代T細胞におけるLG171の下方制御作用は、CD5とCD7のいずれも影響を受けないため、TCR/CD3に特異的である。
【
図25A-25C】CAGプロモーターを有するLG171p1は、T細胞におけるTCR/CD3に対する下方制御を付与する。LG171p1融合タンパク質構築体は、
図25Aに示されている。
図25Aは、CAGプロモーターでLG171におけるEF1aプロモーターを置換することによる構築体LG171p1の産生を示し、
図25Bは、CAGプロモーターによる、Jurkat細胞におけるTCR/CD3に対する下方制御の付与を示した。LG171p1融合タンパク質を発現するPiggyBacベクターとPiggyBacトランスポザーゼmRNAでJurkat細胞をエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後3日目に、CD3とTCRα/β染色によってTCR表面発現を評価した。
図25Cは、CAGプロモーターによる、ヒト初代T細胞におけるTCR/CD3に対する持続的な下方制御の付与を示した。Jurkatレポーター細胞と同様に、PiggyBacベクターLG171p1とPiggyBacトランスポザーゼで初代T細胞を予め活性化しエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後3、7及び13日目に、CD3とTCRα/β染色によってTCR表面発現を評価した。
【
図26A-26B】LG213における下方制御は、主にCD3ζ短縮化によって引き起こされる。CHIP. ΔTPRを全長CD3ζ又はCD3ζ. ΔICに連結して新たなキメラ(LG132、LG213)を産生し、TCR標的化に用いる(
図26A)。LG132又はLG213でトランスフェクトされた初代T細胞におけるTCRレベルのFACSデータである。全長CD3ζを有するLG132で影響がないことに比べて、LG213における下方制御は、主にCD3ζ短縮化によって引き起こされる(
図26B)。
【
図27A-27C】CD3ζ短縮化に基づく別のE3キメラ及びTCR下方制御におけるその効果である。
図27Aは、CD3 ζ短縮化に基づく別のE3リガーゼ及びそのキメラ構築体の構築体設計を示した。
図27Bは、E3リガーゼ及びそのキメラ構築体の、TCR下方制御におけるFACSデータである。
図27Cにおいて、ウエスタンブロットデータにより、β-アクチンをマーカーとして用い、CD3ζに基づく別のE3キメラ構築体においてTCRが有意に低下した。
【
図28A-28B】LG171でトランスフェクトされたJurkat細胞における活性化の低下である。
図28Aは、LG171でトランスフェクトされたJurkat細胞における活性化の低下(CD69上方制御の弱化)を示し、
図28Bは、LG171でトランスフェクトされたJurkat細胞における活性化の低下(ppERK上方制御の弱化)を示した。指摘された構築体でトランスフェクトされたJurkat細胞をαCD3/CD28で短時間刺激した。FACSによってCD69(
図28A)とppERK(
図28B)をチエックした。
【
図29A-29C】LG171とLG171p1でトランスフェクトされた初代T細胞における活性化の低下である。指摘された構築体でトランスフェクトされたヒト初代T細胞をOKT3(抗CD3抗体)で刺激し、CD69上方制御とIFN-γサイトカイン分泌に用いる。FACSによってCD69上方制御をチエックした(
図29A)。24時間後に、上清を収集し、且つIFN-γレベルを試験した(
図29B)。ELISAを用いてIFN-γレベルを試験する前に、モックT細胞(処理されていないT細胞)又はLG171p1トランスフェクトT細胞を同種異体mDC細胞と5日間共培養した(
図29C)。
図29Aは、LG171(CD69)でトランスフェクトされた初代T細胞における活性化の低下を示した。
図29Bは、LG171とLG171p1(IFN-γ)でトランスフェクトされた初代T細胞における活性化の低下を示した。
図29Cは、LG171p1(IFN-γ)でトランスフェクトされた初代T細胞における活性化の低下を示した。
【
図30A-30C】LG171. CldnCarの発現と殺傷効率。LG171. CldnCarとCldnCar融合タンパク質構築体は、
図30Aに示されている。
図30Bは、指摘された構築体でトランスフェクトされたT細胞におけるTCR/CAR発現を示した。
図30Cは、親HEK細胞(即ち、HEK)、又はCLDN18.2を過剰発現するHEK細胞(即ち、HEK-CLDN 18.2)でエンジニアリングT細胞を24時間共培養することによる細胞毒性アッセイを示した。
【発明を実施するための形態】
【0046】
特に定義しない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本出願が属する分野で一般に使用されるのと同じ意味を有する。本明細書を説明するために、以下の定義が適用され、適切な場合に、単数形で使用される用語は複数も含み、その逆も同様である。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、文脈が別途明確に指示しない限り、単数形の「一個/種(a/an)」と「該(the)」は、複数形も意味し、例えば、「宿主細胞」を言及する場合、複数のこのような宿主細胞を含む。
【0047】
本明細書で使用されるように、「T細胞受容体(TCR)複合体」(TCR/CD3複合体とも呼ばれる)は、T細胞表面の多量体複合体であり、その活性化がT細胞の活性化を引き起こす。該複合体は、(i) TCR、及び (ii) CD3 T細胞共受容体を含む。以下に示すように、TCRは、α鎖とβ鎖とを含む。CD3 T細胞共受容体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、二本のCD3ε鎖及び二本のζ鎖を補助分子として含む。
【0048】
TCRは、T細胞の抗原特異的活性化を可能にする。各T細胞は、いずれもクローン性TCRを発現し、これらのクローン性TCRは、T細胞と抗原提示細胞APC(MHCクラスIIを介する)又は任意の他の細胞タイプ(MHCクラスIを介する)とが物理的に接触する中に特異性ペプチド/MHC複合体を認識する。TCRは、ジスルフィド結合によって連結された膜固着ホモ二量体タンパク質であり、通常、高可変αとβ鎖で構成される。TCRの各本の鎖は、可変(V)領域と定常(C)領域の二つの細胞外ドメインを含み、両方はいずれも反平行βシートを形成する免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)ドメインである。定常領域は、細胞膜の近位端に位置し、その後に膜貫通領域と短い細胞質尾部が続くが、可変領域は、ペプチド/MHC複合体に結合する。TCR α鎖とTCR β鎖の可変ドメインは、それぞれ三つの超可変領域又は相補性決定領域(CDR)を有し、これは、特定のペプチド/MHC複合体に対するTCRの特異性に寄与する。β鎖の可変領域は、通常抗原に接触しない別の超可変領域(HV4)をさらに有する。
【0049】
「単鎖可変断片(scFv)」は十から約25個のアミノ酸の短鎖リンカーペプチドで接続された抗体の重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)との融合タンパク質である。該リンカーは、通常、グリシン(柔軟性に対する)、及びセリン又はトレオニン(溶解性に対する)に富むものであるとともに、VHのN-末端とVLのC-末端を接続することができ、又はその逆も可能である。定常領域の除去及びリンカーの導入にもかかわらず、該タンパク質は、元の抗体の特異性を依然として保持する。scFv抗体は、例えば、Houston, J.S., Methods in Enzymol. [酵素的方法] 203 (1991) 46-96に記述されている。また、抗体断片は、単鎖ポリペプチドを含み、これらの単鎖ポリペプチドは、VHドメインの特徴を有し、即ち、VLドメインと共に機能性抗原結合部位にアセンブルすることができ、又は、これらの単鎖ポリペプチドは、VLドメインの特徴を有し、即ち、VHドメインと共に機能性抗原結合部位にアセンブルすることによって、全長抗体の抗原結合特性を提供することができる。
【0050】
本明細書で使用されるように、「処置(treatment)」(及びその文法的変異体、例えば、処置すること「treat」又は「treating」)などの)は、処置される個体の自然経過を変更しようとする試みにおける臨床介入を指し、予防のために実施することもでき、臨床病態の経過中に実施することもできる。処置の所望の効果は、疾患の発生または再発の防止、症状の軽減、疾患の、任意の直接的又は間接的な病理学的帰結の縮減、転移の予防、疾患進行の速度の低下、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解または予後の改善を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例では、本出願の分子は、疾患の発展を遅延させるか、又は疾患の進行を遅らせることに用いられる。
【0051】
本明細書で使用されるように、「癌」又は「腫瘍」という用語は、増殖性疾患を指し、例えば、卵巣癌、膵臓癌、結腸癌、結腸直腸癌、リンパ腫、リンパ球性白血病、肺癌、非小細胞肺(NSCL)癌、気管支肺胞上皮癌、骨癌、皮膚癌、頭頸癌、皮膚又は眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域癌、胃部癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、乳癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外膣癌、ホジキン、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌又は尿管癌、腎細胞癌、腎盂癌、中皮腫、肝細胞癌、胆管癌、中枢神経系(CNS)腫瘍、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、多形性膠芽腫、星状細胞腫、神経鞘腫、上衣腫、髓芽細胞腫、髄膜腫、扁平上皮癌、下垂体腺腫及びユーイング肉腫、上記癌のうちのいずれか一つを含む難治性型式、又は上記癌のうちの一つ又は複数の組み合わせである。
【0052】
様々な実施形態を説明する前に、理解すべきこととして、本開示の教示は、説明された特定の実施形態に限定されるものではなく、そのようなものとして、当然、変化し得る。さらに理解すべきこととして、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のものであり、本教示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定することを意図するものではない。
【0053】
本出願は、特定の有利な特徴(例えば、宿主細胞に発現される場合に、膜結合タンパク質(MBP)レベルを低下させる)を有する新規な融合タンパク質を提供する。
【0054】
本出願では、膜結合タンパク質(MBP)の下方制御は、分解タグタンパク質により媒介された分解によって実現され、ここで、該分解タグタンパク質は、分解を媒介する細胞表面受容体のユビキチンリガーゼ及び/又はドメイン(例えば、IL2Rβサブドメイン)を含む。分解タグタンパク質(例えば、ユビキチンリガーゼ又はIL2Rβ)による分解対象のMBPのタグ特異性又は標的化特異性(又は認識特異性)は、分解対象のMBPの抗体(又はその抗原結合断片)によって媒介され(即ち、抗体により媒介された基質認識であり)、又は膜貫通ドメインを有する分解対象の膜結合タンパク質又は複合体のサブユニット又はドメインによって媒介される(即ち、膜貫通ドメインにより媒介された基質認識である)。本出願の技術案は、細胞のタイプに関係なく、細胞表面上の任意の標的に用いることができる。好ましくは、分解対象のMBPは、膜結合受容体又は受容体複合体であってもよく、さらに好ましくは、膜結合受容体は、T細胞受容体(TCR)であってもよい。そのため、好ましくは、本出願は、受容体TAC(受容体を標的化するキメラ)標的化ユビキチンにより媒介される分解によってTCRを下方制御して、同種異体キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)を産生することに関するか、又は融合タンパク質(例えば、分解タグタンパク質と融合する膜貫通ドメイン(例えば、分解を媒介するE3ユビキチンリガーゼ及び/又は細胞表面受容体のドメイン)を有する分解対象膜結合タンパク質成分を含む融合タンパク質又はその断片)の産生に関し、分解タグタンパク質は、TCR複合体形成プロセスにおいて、マルチサブユニットTCR複合体に組み込んで、TCR複合体の下方制御を引き起こすことができる。特に、抗体(例えば、抗CD3抗体)又はその抗原結合断片を、E3ユビキチンリガーゼ(例えば、Hsc70と相互作用するタンパク質のC末端(CHIP))と細胞外で融合させ、その後に、分解を媒介する膜貫通ドメイン、又はE3ユビキチンリガーゼ又は細胞表面受容体を、膜貫通ドメインを有する、分解対象膜結合タンパク質もしくは複合体の成分又はその断片に細胞内で融合させる。宿主細胞(例えば、初代T細胞)に発現される場合、MBP(例えば、TCR複合体)は、有意に下方制御される。これは、タンパク質分解に基づく新しいMBP下方制御技術である。この技術は、治療用途又は研究目的のために、任意のMBP、特に表面受容体に用いることができる。
【0055】
(1) 本出願の融合タンパク質
1. 融合タンパク質a):
本出願は、以下を含む融合タンパク質a)を開示し、第1のコネキシン、分解タグタンパク質、第1の膜貫通ドメイン。
【0056】
いくつかの実施例において、融合タンパク質は、N末端からC末端まで、第1のコネキシンと、分解タグタンパク質と、第1の膜貫通ドメインとを含む。
【0057】
いくつかの実施例において、第1のコネキシンは、分解対象のMBPの抗体又は抗原結合断片を含み、さらに好ましくは、該分解対象のMBPの抗体又は抗原結合断片は、CD3、CD5、CD7、PD-L1又はCD47の抗体もしくは抗原結合断片を含み、さらに好ましくは、CD3の抗原結合断片は、SP34 scFv、OKT3 scFv、UCHT1 scFv、UCHT1.Y177T scFv、L2K scFv、F6A scFv、BMA031 scFv、又はBMA031.H6L12 scFvを含み、CD5の抗原結合断片は、αCD5.14 scFvを含み、CD7の抗原結合断片は、αCD7.TH69 scFvを含み、PD-L1の抗原結合断片は、αPD-L1 scFvを含み、CD47の抗原結合断片は、αCD47 scFvを含む。
【0058】
いくつかの実施例において、分解タグタンパク質は、E3ユビキチンリガーゼを含み、さらに好ましくは、該E3ユビキチンリガーゼは、CHIP. dTPR、FBW7.2-293、VHL.152-213、SPOP.167-374、SOCS2.143-198を含み、
いくつかの実施例において、第1の膜貫通ドメインは、CD8α膜貫通ドメインを含む。
【0059】
いくつかの実施例において、融合タンパク質a) は、第1のシグナルペプチドをさらに含む。
【0060】
任意選択的に、scFvとE3リガーゼとの間のリンカー(例えば、SEQ ID No. 91)であってもよい。
【0061】
任意選択的に、CD8α膜貫通ドメイン(CD8 TM)とE3リガーゼとの間のリンカー(例えば、SEQ ID No. 91)であってもよい。
【0062】
2. 融合タンパク質b):
本出願は、以下を含む融合タンパク質b)を開示し、第1のコネキシン、第1の膜貫通ドメイン、分解タグタンパク質。
【0063】
いくつかの実施例において、融合タンパク質は、N末端からC末端まで、第1のコネキシンと、第1の膜貫通ドメインと、分解タグタンパク質とを含む。
【0064】
いくつかの実施例において、第1のコネキシンは、分解対象のMBPの抗体又は抗原結合断片を含み、さらに好ましくは、該分解対象のMBPの抗体又は抗原結合断片は、CD3の抗体又は抗原結合断片を含み、さらに好ましくは、CD3の抗原結合断片は、SP34 scFvを含み、
いくつかの実施例において、分解タグタンパク質は、E3ユビキチンリガーゼを含み、さらに好ましくは、E3ユビキチンリガーゼは、GRAIL.ICを含み、
いくつかの実施例において、第1の膜貫通ドメインは、CD3ζ膜貫通ドメイン変異体、CD8α膜貫通ドメイン、及びCD4膜貫通ドメインのうちの一つ又は複数から選択される。
【0065】
いくつかの実施例において、融合タンパク質b) は、第1のシグナルペプチドをさらに含む。
【0066】
任意選択的に、融合タンパク質b)(例えば、LG222、LG222.1、LG222.2)のTMドメインのC末端に結合する細胞内ドメイン(例えば、SEQ ID No. 90)であってもよい。
【0067】
3. 融合タンパク質c):
本出願は、以下を含む融合タンパク質c)を開示し、上記2) における第2の膜貫通連結ドメイン、分解を媒介する細胞表面受容体。
【0068】
いくつかの実施例において、融合タンパク質は、N末端からC末端まで、上記2) における第2の膜貫通連結ドメインと、分解を媒介する細胞表面受容体とを含む。
【0069】
いくつかの実施例において、上記2) における第2の膜貫通連結ドメインは、CD3ζ.ΔIC又はCD3ε.ΔICを含み、
いくつかの実施例において、分解を媒介する細胞表面受容体は、IL2Rβjmを含む。
【0070】
4. 融合タンパク質d):
本出願は、以下を含む融合タンパク質d)を開示し、上記2) における第2の膜貫通連結ドメイン、E3ユビキチンリガーゼ又はその変異体のうちの一つ又は複数。
【0071】
いくつかの実施例において、融合タンパク質は、N末端からC末端まで、上記2) における第2の膜貫通連結ドメイン、E3ユビキチンリガーゼ又はその変異体のうちの一つ又は複数を含む。
【0072】
いくつかの実施例において、上記2) における第2の膜貫通連結ドメインは、CD3ζ.ΔICを含む。
【0073】
いくつかの実施例において、E3ユビキチンリガーゼ又はその変異体のうちの一つ又は複数は、GRAIL.IC、CHIP. dTPR、RNF133.IC、RNF122. rIC、RNF152. rICを含む。
【0074】
5. 融合タンパク質に使用される配列
いくつかの実施例において、SP34 scFv、OKT3 scFv、UCHT1 scFv、UCHT1.Y177T scFv、L2K scFv、F6A scFv、BMA031 scFv、BMA031.H6L12 scFv、αCD5.14 scFv、αCD7.TH69 scFv、αPD-L1 scFv又はαCD47 scFvはそれぞれ、SEQ ID NO. 2-13のいずれか一つに示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0075】
いくつかの実施例において、CHIP、CHIP. dTPR、FBW7.2-293、VHL.152-213、SPOP.167-374、SOCS2.143-198、GRAIL.IC、RNF133.IC、RNF122. rIC又はRNF152. rICはそれぞれ、SEQ ID NO. 21-26、62、79、81又は83のいずれか一つに示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0076】
いくつかの実施例において、CD3ζ膜貫通ドメイン変異体、CD8α膜貫通ドメイン、又はCD4膜貫通ドメインはそれぞれ、SEQ ID NO. 89、18又は15に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0077】
いくつかの実施例において、融合タンパク質a) は、第1のシグナルペプチドをさらに含み、好ましくは、第1のシグナルペプチドはそれぞれ、SEQ ID NO. 19又は20に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列から選択される。
【0078】
いくつかの実施例において、融合タンパク質b) は、第1のシグナルペプチドをさらに含み、好ましくは、第1のシグナルペプチドは、SEQ ID NO. 19に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列から選択される。
【0079】
いくつかの実施例において、CD3ζ.ΔICとCD3ε.ΔICはそれぞれ、SEQ ID NO. 61、64に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらに好ましくは、CD3ζ又はCD3εの膜貫通ドメイン(TM)はそれぞれ、SEQ ID NO. 67、70に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、さらに好ましくは、CD3ζ又はCD3εの細胞外ドメイン(EM)はそれぞれ、SEQ ID NO. 66、69に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、さらに好ましくは、CD3ζ又はCD3εの第2のシグナルペプチドはそれぞれ、SEQ ID NO. 65、68に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0080】
いくつかの実施例において、L2Rβ jmドメイン(IL2Rβjm)は、SEQ ID NO. 58に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0081】
非限定的な例において、本出願の融合タンパク質は、ヒンジ又はP2A-GFPのうちの一つ又は複数をさらに含む。
【0082】
いくつかの実施例において、ヒンジは、CD8αヒンジ、又はCD4ヒンジから選択され、さらに好ましくは、CD8αヒンジ又はCD4ヒンジはそれぞれ、SEQ ID NO. 16又は14に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、さらに好ましくは、ヒンジは、第1の膜貫通ドメインのN末端に隣接している。
【0083】
いくつかの実施例において、P2A-GFPは、SEQ ID NO. 57に示すアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、さらに好ましくは、P2A-GFP配列は、融合タンパク質のC末端に位置する。
【0084】
6. 第1の膜貫通連結ドメインは、第1の膜貫通ドメインと第1のコネキシンとを含む
第1のコネキシン:膜結合タンパク質の抗体又はその抗原結合断片(例えば、scFv)
膜結合タンパク質の抗体又はその抗原結合断片(例えば、scFv)は、分解タグタンパク質と膜結合タンパク質との結合(又は特異的結合、特異的認識)を媒介するコネキシン(即ち、抗体媒介の基質認識)として用いることができる。
【0085】
単鎖可変断片
本出願のscFvは、膜結合タンパク質(CD3、CD5、CD7、PD-1、PD-L1又はCD47を含むが、これらに限定されない)と特異的に結合するものであり、好ましくは、それらの膜結合タンパク質の細胞外部分と結合する。好ましくは、scFvは、TCR/CD3複合体の成分(又はサブユニット)と特異的に結合するものである。
【0086】
そのため、いくつかの実施例において、scFvは、CD3と特異的に結合し、例えば、CD3は、哺乳動物に由来するCD3であり、好ましくは、ヒトCD3である。
【0087】
第1の膜貫通ドメイン:
第1の膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD3、CD28、4-1BB及びIL2R又はその変異体の一つ又は複数サブユニットもしくはドメインの膜貫通ドメインから選択される。
【0088】
7. 第2の膜貫通連結ドメインは、分解対象のMBP又はその変異体の膜貫通ドメインを含む
分解対象のMBP又はその変異体(コネキシン2)の膜貫通ドメイン
いくつかの実施例において、膜貫通ドメインを有する分解対象膜結合タンパク質又はその変異体の一つ又は複数サブユニット又はドメイン(又は断片)は、分解タグタンパク質の膜結合タンパク質への組み込みを媒介する(又は組み込みによる特異的認識)、例えば、膜結合タンパク質形成中の分解タグタンパク質の膜結合タンパク質への組み込みを媒介する(即ち、膜貫通ドメインにより媒介される基質認識)ためのコネキシンとして用いることができる。
【0089】
いくつかの実施例において、分解対象膜結合タンパク質は、膜結合受容体である。
【0090】
いくつかの実施例において、膜結合受容体は、CD3であり、好ましくは、哺乳動物に由来するCD3であり、さらに好ましくは、ヒトCD3である。
【0091】
いくつかの実施例において、コネキシン2は、CD3ζ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3α、CD3β又はその変異体のうちの一つ又は複数の膜貫通ドメインを含む。
【0092】
いくつかの実施例において、コネキシン2は、CD3ζ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3α、CD3β又はその変異体のうちの一つ又は複数の細胞外ドメインと膜貫通ドメインを含む。
【0093】
いくつかの実施例において、コネキシン2は、CD3ζ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3α、CD3β又はその変異体における一つ又は複数の第2のシグナルペプチド、細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインを含む。
【0094】
8. 分解タグタンパク質1:E3ユビキチンリガーゼ
「E3ユビキチンリガーゼ」又は「E3リガーゼ」又は「ユビキチンリガーゼ」(UL)は、本明細書では、本出願に基づく二官能化合物におけるユビキチンリガーゼ部分の一つ又は複数の標的酵素結合部位を説明するためのものである。E3 ULは、E2ユビキチン結合酵素と組み合わせてユビキチンを標的タンパク質におけるリジンに結合させるタンパク質であり、E3ユビキチンリガーゼは、プロテアソームによって分解される特定のタンパク質基質を標的化する。そのため、E3ユビキチンリガーゼは、単独で、又はE2ユビキチン結合酵素と複合して、ユビキチンを標的タンパク質に転移させる。一般的には、ユビキチンリガーゼは、第2のユビキチンが第1のユビキチンに結合し、第3のユビキチンが第2のユビキチンに結合するなどのように、ポリユビキチン化に関与する。ポリユビキチン化は、タンパク質を標識してプロテアソームによって分解する。しかしながら、モノユビキチン化に限定されるいくつかのユビキチン化イベントが存在し、ここで、ユビキチンリガーゼは、単一のユビキチンのみを基質分子に添加する。モノユビキチン化タンパク質は、プロテアソームの標的化によって分解するものではなく、例えば、ユビキチンに結合できるドメインを有する他のタンパク質に結合することによって、その細胞位置又は機能を代替可能に変更することができる。より複雑なこととして、ユビキチンにおける異なるリジンは、E3により標的化されて鎖を形成することができる。最も一般的なリジンは、ユビキチン鎖におけるLys48である。これは、ポリユビキチンを製造するためのリジンであり、プロテアソームにより認識される。
【0095】
いくつかの実施例において、E3ユビキチンリガーゼは、以下のタンパク質又はその短縮化型から選択され、GRAIL、Hsc70相互作用タンパク質(CHIP)のC末端、CHIP. dTPR、FボックスWD40含有タンパク質7(FBW7)、FBW7.2-293、ヒッペル-リンドウ(VHL)、VHL.152-213、スポット型BTB-POZタンパク質(SPOP)、SPOP.167-374、ユビキチンタンパク質リガーゼE3A(UBE3A)、マウス二重微小染色体2ホモログ(MDM2)、後期促進複合体(APC)、UBR5、LNX、カシタスB系統リンパ腫形質転換配列様タンパク質1(CBLL1)、HECTドメイン及びアンキリン反復配列含有E3ユビキチンタンパク質リガーゼ1(HACE1)、HECT、C2及びWWドメイン含有E3ユビキチンタンパク質リガーゼ1(HECW1)、HECT、C2及びWWドメイン含有E3ユビキチンタンパク質リガーゼ2(HECW2)、HECT及びRLDドメイン含有E3ユビキチンタンパク質リガーゼ1(HERC1)、HERC2、HERC3、HERC4、HERC5、HERC6、HUWE1、ITCH、神経前駆細胞発現の発育下方制御タンパク質4(NEDD4)、神経前駆細胞発現発生的下方制御遺伝子4様タンパク質(NEDD4L)、ペプチジルプロリルイソメラーゼ(サイクロフィリン)様2(PPIL2)、PIAS1、PIAS2、PIAS3、PIAS4、RANBP2、RNF4、RBX1、SMURF1、SMURF2、STUB1、TOPORS、TRIP12、UBE3A、UBE3B、UBE3C、UBE3D、UBE4A、UBE4B、UBOX5、UBR5、WWP1、WWP2、Parkin、MKRN1、GRAIL.IC、RNF133.IC、RNF122. rIC又はRNF152. rIC。
【0096】
本出願において、E3ユビキチンリガーゼは、分解タグタンパク質として用いられ、且つE3ユビキチンリガーゼにより媒介されるMBP分解も、細胞外及び/又は細胞内で実現することができる。
【0097】
分解タグタンパク質2:分解を媒介する細胞表面受容体の一つ又は複数のサブユニット又はドメイン
分解を媒介する細胞表面受容体の一つ又は複数のサブユニット又はドメイン(即ち、分解タグタンパク質)は、MBP又はその成分の分解(又はエンドサイトーシスと分解、エンドサイトーシス後の分解)を媒介するタンパク質であってもよく、且つ例えば、細胞表面受容体の一つ又は複数のサブユニット又はドメインにより媒介されるMBP又はその成分の分解は、細胞内において、E3ユビキチンリガーゼ、リソソーム又は他の分解経路によって実現することができ、且つMBP又はその成分のエンドサイトーシスの後に実現され得る。
【0098】
膜結合タンパク質(MBP)の形成中に、MBPを形成するためのMBPの成分との融合によって、分解を媒介する細胞表面受容体の一つ又は複数のサブユニット又はドメインを、MBP又はその成分に特異的に組み込む。また、MBPを形成するためのMBPの成分は、MBPの一つ又は複数のドメインであってもよく、任意選択的に、CD3ε又はCD3ζの一つ又は複数のドメインである。
【0099】
細胞表面受容体はMBPに属してもよいが、分解を媒介する細胞表面受容体は、通常、分解対象のMBPとは異なる。
【0100】
いくつかの実施例において、分解を媒介し且つ本出願の分解タグタンパク質として用いられる細胞表面受容体は、インターロイキン受容体、又はそれから派生した変異体を含む。
【0101】
いくつかの実施例において、インターロイキン受容体のサブユニット又はドメインは、IL-2Rのリソソーム標的化モチーフを含み、好ましくは、IL-2Rのリソソーム標的化モチーフは、L2Rβ jmドメインを含む。
【0102】
9. 膜貫通ドメイン
「膜貫通ドメイン」は、質膜を貫通する、約15個のアミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を含む。さらに好ましくは、膜貫通ドメインは、約少なくとも20、25、30、35、40、又は45個のアミノ酸残基を含み、且つ質膜を貫通する。膜貫通ドメインは、疎水性残基に富むものであり、且つ通常、α螺旋構造を有する。好ましい実施例では、膜貫通ドメインの少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%以上のアミノ酸は疎水性であり、例えば、ロイシン、イソロイシン、チロシン又はトリプトファンである。膜貫通ドメインは、例えば、Zagotta, W. N.ら (1996) Annu.Rev. Neurosci. [神経科学年鑑] 19: 235-263に記述されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0103】
融合タンパク質における膜貫通ドメインの機能は、前記融合タンパク質を細胞表面に固着することであり、且つそのため、該機能を実現する任意の膜貫通ドメインは、いずれも本出願に用いることができる。
【0104】
本出願に適用可能な膜貫通ドメインは、CD8α、CD28、4-1BB又はIL2R膜貫通ドメイン、即ち、上記6における第1の膜貫通ドメインから選択され得る。
【0105】
本出願に適用可能な膜貫通ドメインは、コネキシン自身のドメインの膜貫通ドメイン、即ち、上記7における膜貫通ドメインであってもよい。
【0106】
(2) 融合タンパク質、CARをコードする核酸、前記核酸を含むベクター、及び前記核酸又はベクターを含む組成物
本出願は、本明細書に記載の融合タンパク質をコードする核酸を提供する。融合タンパク質をコードする核酸は、一般的な方法によって、特定の融合タンパク質のアミノ酸配列から容易に製造することができる。アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、前述のNCBI RefSeq ID又はGenBankの登録番号から得られてもよく、各ドメインのアミノ酸配列に用いられ、且つ本開示の核酸は、標準的な分子生物学及び/又は化学的なプロセスを用いて製造することができる。例えば、ヌクレオチド配列に基づいて核酸を合成することができ、且つ本開示の核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、cDNAライブラリーから得られたDNA断片を組み合わせることによって製造することができる。
【0107】
本開示の核酸は、適切なプロモーターの制御下で発現されるように別の核酸に連結され得る。プロモーターの例は、薬剤(例えば、テトラサイクリン又はドキソルビシン)などの作用によって、遺伝子又は機能的に連結される構築体の発現を構成的に促進するプロモーターと、遺伝子又は機能的に連結される構築体の発現を誘導するプロモーターとを含む。核酸を有効に転写するために、本開示の核酸はさらに、プロモーター又は転写開始部位と協働する他の調節エレメントと連結してもよく、例えば、エンハンサー配列、又はターミネーター配列を含む核酸である。本開示の核酸に加えて、核酸発現を確認するための標識物となり得る遺伝子(例えば、薬剤耐性遺伝子、レポーター酵素をコードする遺伝子、又は蛍光タンパク質をコードする遺伝子)を組み込んでもよい。
【0108】
実施例では、核酸は、特定の宿主に発現するためのコドン最適化核酸である。
【0109】
本出願は、本明細書に記載の融合タンパク質をコードする核酸を含むベクターを提供する。用語「ベクター」、「発現ベクター」、及び「発現構築体」又は「構築体」は、同義的に使用されてもよく、且ついずれも、細胞におけるタンパク質の発現のために設計されたプラスミド、ウィルス又は他の核酸として定義される。ベクター又は構築体は、遺伝子を宿主細胞に導入するためのものであり、それによって、ベクターは、細胞におけるポリメラーゼと相互作用して、該ベクター/構築体におけるコードされたタンパク質を発現する。発現ベクター及び/又は発現構築体は、染色体の外又は染色体に組み込まれた細胞内に存在し得る。染色体に組み込まれた場合、発現ベクター又は発現構築体を含む核酸は、発現ベクター又は発現構築体となる。
【0110】
本出願は、本明細書に記載の少なくとも一つの核酸又は少なくとも一つのベクターを含む組成物をさらに提供する。
【0111】
本出願は、組成物をさらに提供し、それは、第1の核酸と第2の核酸とを含み、第1の核酸を有する第1のベクター及び第2の核酸を有する第2のベクターを含み、又は第1の核酸と第2の核酸を有するベクターを含み、ここで、
(1) 該第1の核酸は、本明細書に記載の融合タンパク質をコードし、
(2) 該第2の核酸は、以下を含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードし、
(a) 所定の抗原に特異的に結合する単鎖可変断片(scFv)を含む細胞外リガンド結合ドメイン、
(b) 膜貫通ドメイン、及び
(c) 一つ又は複数のシグナル伝達ドメインを含み、好ましくは、4-1BBシグナル伝達ドメインとCD3ζシグナル伝達ドメインとを含む細胞質セグメント。
【0112】
いくつかの実施例において、所定の抗原は、腫瘍関連抗原である。
【0113】
いくつかの実施例において、腫瘍関連抗原は、CEA、クローディン18.2、GPC3、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、CD38、CD19、CD20、CD22、BCMA、CAIX、CD446、CD133、EGFR、EGFRvIII、EpCam、GD2、EphA2、Her1、Her2、ICAM-1、IL13Ra2、メソテリン、MUC1、MUC16、NKG2D、PSCA、NY-ESO-1、MART-1、WT1、MAGE-A10、MAGE-A3、MAGE-A4、EBV、NKG2D、PD1、PD-L1、CD25、IL-2及びCD3からなる群から選択される。
【0114】
いくつかの実施例において、腫瘍関連抗原は、CEAである。
【0115】
(3) 宿主細胞
本出願は、本明細書に記載の核酸又はベクター又は組成物を含む宿主細胞を提供する。そのため、発現する場合、本明細書に記載の融合タンパク質は、細胞療法のための宿主細胞の表面上に発現される。
【0116】
いくつかの実施例において、宿主細胞は、同種異体細胞である。
【0117】
いくつかの実施例において、宿主細胞は、哺乳動物細胞であり、好ましくは、霊長類細胞であり、さらに好ましくは、ヒト細胞である。
【0118】
いくつかの実施例において、宿主細胞は、T細胞、又は初代T細胞、γδ T細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ、B細胞、又は非免疫細胞から選択される。
【0119】
(4) 薬物組成物
本出願の薬物組成物は、融合タンパク質を発現する細胞、好ましくは、融合タンパク質とCARを発現する細胞を含み、本明細書に記載のように、一つ又は複数の薬学的又は生理学的に許容されるキャリア剤、希釈剤又は賦形剤と組み合わせる。このような組成物は、中性緩衝塩水、リン酸塩緩衝塩水などの緩衝液、グルコース、マンノース、ショ糖、デキストラン、又はマンニトールなどの炭水化合物、タンパク質、ポリペプチド又はグリシンのようなアミノ酸、酸化防止剤、EDTA又はグルタチオンなどのキレート剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、及び防腐剤を含んでもよい。一態様では、本出願の組成物は、静脈内投与用に製剤化される。
【0120】
本出願の薬物組成物は、処置(又は予防)される疾患に適切な方式で投与され得る。投与の総量と頻度は、患者の状態及び患者の疾患のタイプと重症度などの要素によって確定されるが、適切な投与量は臨床試験によって確定され得る。
【0121】
適切な薬学的に許容される賦形剤は、当業者によく知られるものである。薬学的に許容される賦形剤の例として、リン酸塩緩衝塩水(例えば、0.01 M リン酸塩、0.138 M NaCl、0.0027 M KCI、pH 7.4)、無機酸塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、又は硫酸塩)を含む水溶液、塩水、エチレングリコール又はエタノール溶液、及び有機酸の塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩又は安息香酸塩)が挙げられる。いくつかの実施例において、湿潤剤又は乳化剤、及びpH緩衝剤などのアジュバントを使用してもよい。いくつかの実施例において、Remington’s Pharmaceutical Sciences [レミントン薬物科学](Mack Pub. Co. [マク出版], ニュージャージー州1991)(全ての目的のために、それは全体として参照により本明細書に組み込まれる)に記述されている薬学的に許容される賦形剤を適切に使用してもよい。本出願の組成物は、非経口投与に適する既知の形態、例えば、注射又は注入に製剤化され得る。いくつかの実施例において、本出願の組成物は、製剤添加剤、例えば、懸濁剤、防腐剤、安定剤及び/又は分散剤、及び保存中に有効期間を延長する保存剤を含んでもよい。
【0122】
(5) 処置方法
本出願は、それを必要とする被験者の疾患を処置する方法を提供し、該方法は、本明細書に記載の薬物組成物の有効量を該被験者に投与することを含む。
【0123】
いくつかの実施例において、疾患は癌である。
【0124】
いくつかの実施例において、癌は、悪性血液疾患又は固形腫瘍である。
【0125】
いくつかの実施例において、癌は、卵巣癌、膵臓癌、結腸癌、結腸直腸癌、リンパ腫、食道癌、肺癌、卵巣癌、肝臓癌、頭頸癌、又は胆嚢癌である。
【0126】
(6) 低下した標的膜結合タンパク質レベルを有する細胞を産生する方法
本出願は、低下した標的膜結合タンパク質レベルを有する細胞を産生する方法を提供し、該方法は、本明細書に記載の核酸、ベクター、又は組成物を細胞に導入することを含む。
【0127】
(7) GvHDを低下させるか又は予防する方法
本出願は、一つ又は複数のCAR T細胞の被験者への投与に関連する、該被験者のGvHDを低下させるか又は予防する方法を提供し、該方法は、
(1) 本明細書に記載の核酸又はベクターで一つ又は複数のCAR T細胞をトランスフェクトすること、及び
(2) 該被験者にCAR T細胞を投与することを含む。
【0128】
(8) 細胞群における膜結合タンパク質(MBP)を下方制御する方法
本出願は、細胞群における膜結合タンパク質(MBP)を下方制御する方法を提供し、該方法は、前記細胞群に本出願の宿主細胞を添加することを含み、ここで、該宿主細胞は、前記MBPに特異的に結合するscFvを含む融合タンパク質を発現し、及び/又は該宿主細胞は、膜貫通ドメインを有するMBPの成分又はその断片を含む融合タンパク質を発現する。
【0129】
好ましくは、宿主細胞群は、T細胞群であり、好ましくは、ヒト初代T細胞群である。
【0130】
好ましくは、MBPは、CD3であり、好ましくは、ヒトCD3である。
【0131】
本開示における例示的な配列
*P2A-GFP(即ち、P2A-eGFP)配列を含まず、**イタリック体は、P2A配列を示す。
【0132】
例1
I. システミックコントロール構築体
LS008、SP-αCD19 scFv-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP(
図2)、CD19 CARであり、即ち、本明細書は、LS008を陰性コントロールとして用いる。
【0133】
II. 例2-3に使用される構築体
例2:
LG089、SP34 scFvのN末端に連結されるE3リガーゼFBW7断片(2-293)(FBW7-SP34 scFv-P2A-eGFP)、
LG091、SP34 scFvのC末端に連結されるE3リガーゼVHL断片(152-213)(SP34 scFv-VHL-P2A-eGFP)、
LG092、SP34 scFvのC末端に連結されるE3リガーゼSPOP断片(167-374)(SP34 scFv-SPOP-P2A-eGFP);
LG085、OKT3 scFvのC末端に連結されるE3リガーゼCHIP断片(128-303、CHIP. dTPR)(OKT3 scFv-hCHIP. dTPR-P2A-eGFP)、
例3:
LG021、SP34 scFv-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG022、膜固着されたシグナルペプチド(SP)-SP34 scFv-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG023、細胞質OKT3 scFv-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG024、SP-OKT3 scFv-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
III. 例4-17に使用される構築体
例4:
LG112、SP-OKT3 scFv-CHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG113、SP-OKT3 scFv-CD8αヒンジ/TM-CHIP. dTPR-P2A-eGFP、
例5:
LG114、SP-OKT3 scFv-FBW7-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG115、SP-OKT3 scFv-VHL-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG116、SP-OKT3 scFv-SPOP-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG117、SP-OKT3 scFv-SOCS2-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
例6:
LG118、SP-SP34 scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG123、SP-UCHT1 scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG124、SP-UCHT1.Y177T scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG125、SP-L2K scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG126、SP-F6A scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
例7:
LG119、SP-BMA031. wt scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG120、SP-BMA031.H6L12 scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP
LG133、SP-BMA031. wt scFv-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP
LG134、SP-BMA031.H6L12 scFv-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP
例9-10:
CD5、CD7、PD-L1、CD47下方制御構築体
LG137、SP-αCD5.14 scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
LG138、SP-αCD7.TH69 scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
MLB052、SP-αPD-L1 scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
MLB053、SP-αCD47 scFv-hCHIP. dTPR-CD8αヒンジ/TM-P2A-eGFP、
任意選択的に、scFvとE3リガーゼとの間のリンカー(例えば、SEQ ID No. 91)であってもよい。
任意選択的に、CD8 TMとE3リガーゼとの間のリンカー(例えば、SEQ ID No. 91)であってもよい。
例12:
LG222、SP-SP34-CD3ζ.ΔIC-1 -GRAIL. IC-P2A-eGFP
LG222.1、SP-SP34-CD8αヒンジ/TM -GRAIL.IC-P2A-eGFP
LG222.2、SP-SP34-CD4ヒンジ/TM -GRAIL. IC-P2A-Egfp
任意選択的に、LG222、LG222.1、LG222.2のTMドメインのC末端に結合する細胞内ドメイン(例えば、SEQ ID No. 90)であってもよい。
例13:
MLB014、CD3ζ.ΔIC-IL2Rβjm-P2A-eGFP、
MLB046、CD3ε.ΔIC-IL2Rβjm-P2A-eGFP、
例14:
LG171、CD3ζ.ΔIC-GRAIL.IC-P2A-eGFP
LG212、CD3ζ. ΔIC-P2A-eGFP
LG171. ZF、CD3ζ.ΔIC-GRAIL.ZF突変異体-P2A-GFP
LG171.H2N2、CD3ζ.ΔIC-GRAIL. IC. H2N2突変異体-P2A-GFP
LG171p1、CAG-CD3ζ.ΔIC-GRAIL.IC-P2A-eGFP
例15:
LG132、CD3ζ-CHIP. DTPR-P2A-GFP
LG213、CD3ζ. ΔIC-CHIP. DTPR-P2A-GFP
RNF133、RNF133-P2A-GFP
LG174、CD3ζ.ΔIC-RNF133. IC-P2A-GFP
RNF122、RNF122-P2A-GFP
LG180、CD3ζ. ΔIC-RNF122. rIC-P2A-GFP
RNF152、RNF152-P2A-GFP
LG183、CD3ζ.ΔIC-RNF152. rIC-P2A-GFP。
【0134】
例2
細胞質構築体(LG089、LG091、LG092、LG085)によるヒト初代T細胞におけるTCR/CD3複合体に対する検証
ヒトIL-2、IL-7及びIL-15の存在下で、ステムセル社のImmunocult-XF/活性化剤(ステムセル テクノロジーズ社(StemCell Technologies))を用いて、ヒト単離初代T細胞をインビトロで3日間活性化した。そして、活性化された初代T細胞を収集し、且つTCR/CD3分解のための細胞質構築体(LG089、LG091、LG092、LG085構築体)の一つを発現するpBluescript II SK(+)-PBドナープラスミドを用いて、エレクトロポレーションを行った。二日後に、初代T細胞を収穫し、且つCD3(PE)とTCRα/β(APC)(Biolegend社(Biolegend))の両方を染色した。pmaxGFP(GFPのみを発現するプラスミド)とLS008の両方は、いずれも初代T細胞での良好なトランスフェクト効率を示し、且つこの二つの構築体のいずれにおいてもTCRα/βとCD3の下方制御がない(
図3A)。しかしながら、SP34 scFvとOKT3 scFvを用いて、TCR/CD3複合体とE3リガーゼ(FBW7(
図3B)、VHL(
図3C)、SPOP(
図3D)及びhCHIP. dTPR(
図3E)を含む)との結合を促進する場合、GFP
+細胞には、依然として、明らかなTCR/CD3複合体の分解がなく、現在のシステムにおける潜在的な誤った標的化の影響を示した。
【0135】
例3
膜固着された構築体(LG021、LG022、LG023、LG024)によるヒト初代T細胞とJurkat細胞株におけるTCR/CD3複合体に対する検証。
【0136】
ヒトIL-2、IL-7及びIL-15の存在下で、ステムセル社のImmunocult-XF/活性化剤を用いて、ヒト単離初代T細胞をインビトロで3日間活性化した。そして、活性化された初代T細胞を収集し、且つTCR/CD3分解のための細胞質/膜固着構築体(LG021、LG022、LG023、LG024)の一つを発現するプラスミドを用いて、エレクトロポレーションを行った。二日後に、初代T細胞を収穫し、且つCD3(PE)とTCRα/β(APC)との両方を染色した。その結果、E3リガーゼ/ユビキチンのないSP34 scFvの使用は、細胞質で発現(LG021)しても(
図4A)、細胞膜で発現(LG022)しても(
図4B)、TCR/CD3のいかなる下方制御も引き起こすことができなかった。OKT3 scFv(LG023)の細胞質発現(
図4C)は、SP34 scFv(LG021)と似ている影響を示すが、発現が細胞膜に固着される場合(LG024)、GFP+細胞におけるTCR/CD3複合体の下方制御を確かに誘発した(
図4D)。
【0137】
PiggyBacトランスポザーゼmRNA、及び膜固着OKT3構築体(LG024)を発現するトランスポゾンの両方を用いてJurkat細胞をエレクトロポレーションした。Jurkat細胞を57日目まで維持し、且つCD3(PE)とTCRα/β(APC)で染色した後にフローサイトメトリー試験を行い、安定に組み込まれたトランスポゾン(膜固着OKT3構築体(LG024)を発現する)を有する細胞におけるTCR/CD3複合体の有意な分解(GFP陽性 > 85%、
図5)が示された。
【0138】
例4
E3ユビキチンリガーゼと膜固着OKT3構築体(LG112、LG113)との連結によるJurkat細胞株とヒト初代T細胞におけるTCR/CD3複合体に対する検証
1. Jurkat細胞を用いて構築体(LG112、LG113)を検証した
PiggyBacトランスポザーゼmRNA、及び、異なる方式でE3ユビキチンリガーゼに連結される、膜固着OKT3構築体(LG112、LG113)を発現するトランスポゾンの両方でJurkat細胞をエレクトロポレーションした。3日目にJurkat細胞を収穫し、且つCD3(PE)とTCRα/β(APC)で染色した後にフローサイトメトリー分析を行った。
図6Aは、システミックコントロールpmaxGFPとLS008がJurkat細胞において良好なトランスフェクト効率を有し、且つこの二つの構築体のいずれにおいてもTCRα/βとCD3の下方制御がないことを示した。
図6Bにより、E3ユビキチンリガーゼのない膜固着OKT3 scFv構築体(LG024)がJurkat細胞におけるTCR-CD3複合体の有意な下方制御を示したことが示された。hCHIP. dTPRが、細胞質方式(LG113)(
図6D)ではなく、外膜方式(近端連結)(LG112)(
図6C)でOKT3 scFvと連結する場合、より強いTCR/CD3複合体の下方制御を得た。
【0139】
2. ヒト単離初代T細胞で構築体(LG112、LG113)を検証した
ヒトIL-2、IL-7及びIL-15の存在下で、ステムセル社のImmunocult-XF/活性化剤を用いて、ヒト単離初代T細胞をインビトロで3日間活性化した。そして、初代T細胞を収集し、且つPiggyBacトランスポザーゼmRNA、及び異なる膜固着OKT3構築体を発現するトランスポゾンの両方でエレクトロポレーションした。三日後に、初代T細胞を収穫し、且つCD3(PE)とTCRα/β(APC)の両方を染色した。
図7Aは、システミックコントロールpmaxGFPとLS008が初代T細胞において良好なトランスフェクト効率を有し、且つこの二つの構築体のいずれにおいてもTCRα/βとCD3の下方制御がないことを示した。本発明者らがJurkat細胞株で発見したのと似たように、hCHIP. dTPRが、非細胞質方式(LG113)(
図7D)ではなく、外膜方式(近端連結)(LG112)(
図7C)でOKT3 scFvと連結する場合、分解はより有意になり得る。E3ユビキチンリガーゼのない膜固着OKT3 scFv構築体(LG024)(
図7B)に比べて、E3ユビキチンリガーゼ(CHIP. dTPR)が構築体全体の細胞質部分(LG113、
図7D)に位置する場合、TCR/CD3分解に有意な変化がないことを発見した。
【0140】
例5ヒト初代T細胞における異なるE3リガーゼと膜固着OKT3構築体との連結によるTCR/CD3複合体下方制御への影響の検証
膜固着OKT3 scFvに連結される、異なるE3リガーゼ(FBW7と、VHLと、SPOPと、SOCS2とを含む)を有する一連の構築体を設計し合成した(
図8A)。ヒトIL-2、IL-7及びIL-15の存在下で、ステムセル社のImmunocult-XF/活性化剤を用いて、ヒト単離初代T細胞をインビトロで3日間活性化した。そして、初代T細胞を収集し、TCR/CD3分解のための膜固着構築体の一つを発現するプラスミドでエレクトロポレーションを行った。三日後に、初代T細胞を収穫し、且つCD3(PE)とTCRα/β(APC)の両方を染色した。結果により、OKT3 scFvを用いる場合、E3リガーゼ(FBW7(
図8B)と、VHL(
図8C)と、SOCS2(
図8E)とを含む)は、TCR/CD3のわずかな下方制御を誘発し得ることが示された。興味深いこととして、SPOPは、ヒト初代T細胞において、TCR/CD3のより強い下方制御を付与することができる(
図8D)。
【0141】
例6異なるCD3を標的化するscFvにより媒介されるTCR/CD3分解の検証
異なるCD3を標的化するscFv(SP34と、UCHT1と、UCHT1と. Y177Tと、L2Kと、F6Aとを含む)を有する一連のTCR/CD3分解構築体を設計し合成した(
図9A)。ヒトIL-2、IL-7及びIL-15の存在下で、ステムセル社のImmunocult-XF/活性化剤を用いて、ヒト単離初代T細胞をインビトロで3日間活性化した。そして、初代T細胞を収集し、且つPiggyBacトランスポザーゼmRNAとトランスポゾンDNA構築体の両方でエレクトロポレーションした。三日後に、初代T細胞を収穫し、且つCD3(PE)とTCRα/β(APC)の両方を染色した。結果により、構築体において外膜方式でCHIP. dTPRに直接連結することによって、SP34 scfv(
図9B)とF6A scfv(
図9F)がTCR/CD3の下方制御を誘発し得ることが示され、しかし、UCHT1 scfv(
図9C)、UCHT1.Y177T scfv(
図9D)、及びL2K scfv(
図9E)は、ヒト初代T細胞において、TCR/CD3のより強い下方制御を付与することができる(
図9B-9F)。
【0142】
例7 E3リガーゼ(CHIP. dTPR)は、ヒト初代T細胞におけるTCR/CD3下方制御を最適化するのに必要である。
【0143】
CHIP. dTPRが存在するか又は存在しない場合に、TCRを標的化するscFv(BMA031又はBMA031. H6L12)を有する一連のTCR分解構築体を設計し合成した(
図10A)。ヒトIL-2、IL-7及びIL-15の存在下で、ステムセル社のImmunocult-XF/活性化剤を用いて、ヒト単離初代T細胞をインビトロで3日間活性化した。そして、細胞を収集し、且つPiggyBacトランスポザーゼmRNAとトランスポゾンDNA構築体の両方でエレクトロポレーションした。三日後に、初代T細胞を収穫し、且つCD3(PE)とTCRα/β(APC)の両方を染色した。結果により、CHIP. dTPRの存在下で、TCRを標的化するscFv(BMA031とBMA031. H6L12)の両方は、いずれも強いトランスフェクトとTCR/CD3複合体の明らかな下方制御を引き起こすことが示された(
図10B-
図10C)。しかしながら、CHIP. dTPRが存在しない場合、初代T細胞は、トランスフェクト中に生存できない可能性があり、この場合に、細胞のごく一部しか目的の遺伝子の発現成功を示しない(
図10D-
図10E)。なお、LG024(E3リガーゼのない別のTCR/CD3下方制御構築体)は、ヒト初代T細胞において、良好なトランスフェクト(
図4D)又はTCR/CD3下方制御(
図7B)を実現することができなかった。そのため、E3リガーゼは、ヒト初代T細胞におけるTCR/CD3下方制御を最適化するのに必要であると考えられる。
【0144】
例8 Jurkat細胞においてCD3/CD28刺激によってCD3下方制御は低い活性化を付与する。
【0145】
PiggyBacトランスポザーゼmRNA、及び異なる膜固着OKT3構築体(LG024、LG112)を発現するトランスポゾン又はコントロールLS008の両方でJurkat-NFAT細胞をエレクトロポレーションした。細胞を14日間維持し、且つCD3/CD28/CD2 Immunocult/活性化剤再刺激前後の活性化状態をチェックした。構築体LG024、LG112の発現は、形質導入されたJurkat細胞(即ち、形質導入されたJurkat細胞)における組み合わせGFP発現(
図11A-11Bにおける右小図の縦座標)から推定された。CD69(
図11A-11Bにおける右小図の横座標)は、T細胞活性化の数時間内に上方制御する活性化マーカーであり、PEコンジュゲート抗CD69一抗(Biolegend社、カリフォルニア州サンディエゴ)を用いてCD69発現を評価した。結果により、ベースラインにおいて、全ての細胞のCD69(T細胞活性化マーカー)発現レベルが低い(
図11A)ことが示された。しかしながら、LS008によりトランスフェクトされた細胞からのT細胞に比べて、LG024又はLG112によりトランスフェクトされたGFP+細胞におけるCD69発現レベルは、刺激後に有意に低下した(
図11B)。この発見は、TCR/CD3下方制御が、CD3/CD28/CD2刺激によってT細胞活性化に対する低い応答性を付与することを示している。
【0146】
例9 CD5又はCD7下方制御構築体と検証。
【0147】
一連のCD5又はCD7分解構築体を設計し合成した(
図12A)。ヒトIL-2、IL-7及びIL-15の存在下で、ステムセル社のImmunocult-XF/活性化剤を用いて、ヒト単離初代T細胞をインビトロで3日間活性化した。そして、初代T細胞を収集し、且つPiggyBacトランスポザーゼmRNAとトランスポゾンDNA構築体の両方でエレクトロポレーションした。四日後に、細胞を収穫し、且つCD5(PE)とCD7(APC)の両方の発現を染色した(
図12B-
図12C)。結果により、αCD5.14 scFvがCD5の強い下方制御を付与したことが示された(
図12B)。CD7について、αCD7.TH69 scFv(CD7を標的化するscFv)も、ヒト初代T細胞において、有意な下方制御影響を示した(
図12C)。
【0148】
例10 E3 CHIP構築体によるPD-L1とCD47の下方制御
トランスポゾンにより媒介されるE3リガーゼ構築体の送達は、Jurkat細胞において、表面分子の発現を修飾するために用いられる(
図13B)。EF1αプロモーターは、抗原特異性ScFv-E3リガーゼキメラ融合タンパク質の発現を駆動するために用いられる。P2A配列は、E3リガーゼシステムを発現する細胞を同定し特徴付けるように、同時GFP発現を駆動するために用いられる(
図13A)。MLB052又はMLB053を発現するPiggyBacベクター及びPiggy BacトランスポザーゼmRNAでJurkat細胞をエレクトロポレーションした。トランスポゾンがJurkat細胞ゲノムに安定的に組み込まれた後、エレクトロポレーション後5日目に、フローサイトメトリーによってPD-L1とCD47の分解を評価した。GFP陽性細胞(即ち、E3リガーゼ構築体を発現するもの)に対するゲーティングは、PD-L1表面発現の限界下方制御を示した(即ち、
図13B右列の上小図における黒線標識領域が少しに左に向かって破線標識領域まで移動する)。標準的な細胞培養条件(5% CO
2、5 mMのHEPESと10% FBSが補充されたRPMI培地において)で、Jurkat細胞は、PD-L1を強く発現しなかった。MLB053を発現するJurkat細胞における同じゲーティングポリシーは、E3リガーゼ構築体を発現するそれらの細胞において、CD47発現の強い下方制御を示した(即ち、
図13B右列の下小図における黒線標識領域が少しに左に向かって破線標識領域まで移動する)。予想されるように、親Jurkat細胞は、CD47の明るい染色を示した(破線標識領域)。
【0149】
例11 E3 CHIPに連結される、CD3を標的化する構築体(LG112)のTCR発現のパラクリン下方制御。
【0150】
E3リガーゼ構築体が抗原特異性方式で隣接する細胞上の表面分子を下方制御し得ることを証明するために、本発明者らは、形質導入によりLG112を発現するJurkat細胞と親ストック細胞との間の共培養試験を設計した。二つの集団を区別するために、CellTrace紫色染料で親Jurkat細胞を標識した。
【0151】
図14Aは、ゲーティングポリシーの概要を提供し、CellTrace紫色陽性親細胞(即ち、LG024トランスフェクトされていないCell Trace
+細胞)とCellTrace紫色陰性E3リガーゼによりトランスフェクトされた細胞(即ち、LG024トランスフェクトされたCell Trace
-細胞)との間の説明を示した。
図14A左列の上小図において、CellTrace紫色陰性集団(即ち、LG024トランスフェクトされたCell Trace
-細胞)は、E3リガーゼ構築体を発現するGFP陽性集団(
図14A中間列の右塗りつぶされた領域)と、E3リガーゼ構築体を発現しないGFP陰性集団(
図14A中間列の左塗りつぶされた領域)にさらに細分化された。E3リガーゼ陽性細胞(即ち、GFP陽性集団、77.8%)とE3リガーゼ陰性細胞(即ち、GFP陰性集団、22.2%)との高い比で、細胞群全体を発現するTCR発現が低く、例えば、CD3染色によって確定された(即ち、
図14A右列的上小図)。
【0152】
図14Bは、E3リガーゼ陽性細胞のパーセントが、親Jurkat細胞による連続的希釈により低下し、約78%陽性から11%陽性まで低下することにより、本発明者らがCellTrace紫色陽性親細胞群におけるTCR表面発現の増加を観察したことを示した。そのため、このシステムにおいて、隣接する細胞におけるTCR発現は、集団においてE3リガーゼを発現する細胞の数と負の相関を示している。これらの結果により、本発明者らのE3リガーゼ構築体が、パラクリン方式によって、非E3リガーゼを発現する細胞における標的分子の抗原特異性下方制御を促進することが示された。注意すべきこととして、E3リガーゼを発現する細胞におけるTCR下方制御の程度は、隣接する細胞の発現プロファイルにも依存し、ここで、E3リガーゼを発現する細胞部分がより高い場合にノックダウンがより完全である。E3リガーゼ陽性細胞の数を希釈することは、該集団におけるTCR陽性細胞の増加に示すように、トランスフェクトされた細胞群におけるCellTrace紫色陰性GFP陰性細胞の表現型をレスキューした。
【0153】
例12ヒンジ/膜貫通ドメイン(TM)の選択は、SP34とGRAIL. ICの両方により媒介されたTCR/CD3複合体の下方制御に影響を与える。
【0154】
CD3とGRAIL. IC(E3機能ドメイン)との間の特異的結合を増強するために、CD3を標的化するscFv、SP34を用い、且つ
図15Aに列挙されるような異なるヒンジ/膜貫通ドメインを介してGRAIL. ICに連結した。Jurkatとヒト初代T細胞の両方において、全ての三つの構築体LG222、LG222.1及びLG222.2を試験した。
【0155】
1. Jurkat細胞において、LG222、LG222.1及びLG222.2を試験した。
【0156】
エレクトロポレーション後3日目に、Jurkat細胞を収穫し、且つαCD3とαTCR α/β抗体を用いて、TCR発現を染色した。融合タンパク質構築体におけるGFP共発現に基づいて、構築体を発現する細胞を同定した。結果により、CD3ζ.ΔIC(LG222)(
図15B)とCD4ヒンジ/TM(LG222.2)(
図15D)の両方が、いずれもCD8aヒンジ/TM(LG222.1)(
図15C)により優れており、後者において、GFP
+細胞のごく一部のみが細胞表面上のTCR/CD3下方制御を示すことが示された(
図15Cの左から右への三番目と四番目の小図における左上領域)。
【0157】
2. ヒト初代T細胞において、LG222、LG222.1及びLG222.2を試験した。
【0158】
エレクトロポレーション後3日目に、LG222、LG222.1又はLG222.2構築体を発現するためにエレクトロポレーションされた予め活性化初代T細胞を収穫し、且つαCD3とαTCRα/β抗体を用いて、TCR/CD3発現を評価した(
図16A-16C)。Jurkat細胞と似ているように、CD3ζ. ΔICドメインを用いた構築体は、TCR/CD3発現の有意な下方制御を実現した(
図16A、LG222)。CD8aヒンジ/TMドメインを用いて、GFP
+細胞のごく一部のみにおいて、TCR/CD3下方制御を付与した(
図16B、LG222.1)。しかしながら、構築体LG222.2の複数の重複が良好なGFP発現を実現しなかったため、TCR/CD3下方制御についての信頼性のある結論を引き出すことができなかった(
図16C、LG222.2)。
【0159】
例13 CD3-IL2Rβ膜近傍融合タンパク質の発現はTCR複合体表面の不安定性を促進する
MLB014/(CD3ζ. ΔIC-IL2Rβjm)構築体とMLB046/(CD3ε. ΔIC-IL2Rβjm)構築体は、
図18Aに示されている。
【0160】
1. MLB014又はMLB046でトランスフェクトされたJurkat細胞
MLB014/(CD3ζ. ΔIC-IL2Rβjm)構築体又はMLB046/(CD3ε. ΔIC-IL2Rβjm)構築体によりエレクトロポレーションした後5日目に、Jurkat細胞を収穫し、且つαCD3抗体(即ち、抗CD3抗体)を用いて、TCR発現を染色した。融合タンパク質構築体におけるGFP共発現に基づいて、構築体を発現する細胞を同定した。GFP陽性集団に対するゲーティングにより、検出可能なTCR表面発現に大きな陰性シフトが存在することが示されている(
図18Bの左から右への二番目と三番目の小図における左上領域)。これらのデータにより、MLB014/(CD3ζ. ΔIC-IL2Rβjm)構築体又はMLB046/(CD3ε. ΔIC-IL2Rβjm)のTCR複合体への組み込みが、複合体全体の内在化の増加を促進することが示されている(
図18B)。
【0161】
2. MLB014又はMLB046でトランスフェクトされた初代T細胞
エレクトロポレーション後5日目に、MLB014/(CD3ζ. ΔIC-IL2Rβjm)構築体又はMLB046/(CD3ε. ΔIC-IL2Rβjm)を発現するためにエレクトロポレーションされた初代T細胞を収穫し、且つαCD3とαTCRα/β抗体を用いて、TCR発現を評価した(
図18C)。ここでは、初代T細胞におけるTCR発現の下方制御が、Jurkat細胞ほど明らかではなかったが、GFP発現とTCR又はCD3発現との間に負の相関が依然として観察された(
図18Cの左から右への二列目と三列目の各小図における左上領域)。これらのデータにより、初代T細胞とJurkat細胞では同様な潜在的メカニズムが働いているが、初代T細胞ではTCR下方制御の効率が低下したことが示されている。
【0162】
例14 LG171/(CD3ζ. ΔIC/GRAIL. IC)融合タンパク質の発現は、Jurkat細胞とヒト初代T細胞の両方におけるTCR/CD3複合体発現の下方制御を促進する
1. LG171でトランスフェクトされたJurkat細胞
LG171/(CD3ζ. ΔIC/GRAIL. IC)融合タンパク質構築体は、
図19に示されている。
【0163】
LG171(即ち、CD3ζ. ΔIC-GRAIL. IC)融合タンパク質構築体によるエレクトロポレーション後3日目に、Jurkat細胞を収穫し、且つαCD3抗体とαTCR α/β抗体を用いて、TCR発現を染色した。融合タンパク質構築体におけるGFP共発現に基づいて、構築体を発現する細胞を同定した。GFP陽性集団に対するゲーティングは、多くのシフトが検出不可能なTCR表面発現であることを示している。これらのデータは、CD3ζ. ΔIC/GRAIL. IC構築体のTCR複合体への組み込みが、複合体全体の不安定性の増加を促進することを示している(
図20)。
【0164】
2. LG171でトランスフェクトされた初代T細胞
エレクトロポレーション後3日目に、LG171(即ち、CD3ζ. ΔIC-GRAIL. IC)構築体を発現するためにエレクトロポレーションされた初代T細胞を収穫し、且つαCD3とαTCRα/β抗体を用いて、TCR/CD3発現を評価した(
図21)。同様に、TCR/CD3発現の下方制御は、GFP+部分において有意である。これらのデータは、CD3ζ. ΔIC-GRAIL. IC融合タンパク質を用いる同様な潜在的メカニズムが、初代T細胞とJurkat細胞の両方において有効であることを示している。
【0165】
3. LG212(E3リガーゼなし)
PiggyBacベクターLG212とPiggyBacトランスポザーゼで初代T細胞をエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後3日目に、CD3とTCRα/βに対する染色によってTCR発現を評価した。ヒト初代T細胞において短縮化されたCD3ζ(即ち、CD3ζ. ΔIC)のみを用いる場合、本発明者らは、いかなるTCR/CD3下方制御も見られなかった(
図22)。
【0166】
4. 構築体LG171. ZF(ドメインスイッチを含む)又はLG171. H2N2(ポイント突然変異を含む)でトランスフェクトされた初代T細胞
CD8αヒンジ(SEQ ID NO. 85)を有するGRAILにおいて、ジンクフィンガードメイン(SEQ ID NO. 84)を切り替えるか、又はポイント突然変異をジンクフィンガードメインに導入することによって、二つ以上の構築体LG171. ZF、LG171. H2N2を産生した(
図23A)。FACS(
図23B)とウエスタンブロット(
図23C)試験の両方は、GRAILの機能性ジンクフィンガードメインがLG171におけるより良いTCR/CD3下方制御に必要である(
図21)ことを示した。
【0167】
5. LG171キメラタンパク質は、CD5又はCD7の非特異的下方制御を付与することができない
Jurkatレポーター細胞と同様に、PiggyBacベクターLG171とPiggyBacトランスポザーゼで初代T細胞をエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後3日目に、フローサイトメトリーによってCD5とCD7発現の両方を評価した。初代T細胞におけるLG171の下方制御作用は、CD5とCD7のいずれも影響を受けないため、TCR/CD3に特異的である(
図24)。
【0168】
6. LG171p1/(CAG/CD3ζ. ΔIC/GRAIL. IC)でトランスフェクトされたT細胞
CAGプロモーターは、Jurkat細胞とヒト初代T細胞の両方において、TCR/CD3複合体に対して、有意で持続的な下方制御を付与する良好な代替物である。
【0169】
他の例において試験したEF1aプロモーターに加えて、さらにLG171に基づいてCAGプロモーターを設計し研究した。この目的を実現するために、Jurkatとヒト初代T細胞の両方において、新たな構築体LG171p1を設計し(
図25A)試験した。
【0170】
6.1 LG171p1でトランスフェクトされたJurkat細胞
LG171p1/(CAG/CD3ζ. ΔIC/GRAIL. IC)融合タンパク質構築体によるエレクトロポレーション後3日目に(
図25B)、Jurkat細胞を収穫し、且つαCD3とαTCR α/β抗体を用いて、TCR発現を染色した。融合タンパク質構築体におけるGFP共発現に基づいて、構築体を発現する細胞を同定した。GFP陽性集団に対するゲーティングは、Jurkatにおける多くのシフトが検出不可能なTCR表面発現であることを示している(
図25Bの左から右へ三番目と四番目の小図における左上領域)。これらのデータは、CAGプロモーターが、Jurkatにおいて、有意な遺伝子発現レベルを付与するEF1aの良好な代替物であり得ることを示している。
【0171】
6.2 LG171p1でトランスフェクトされた初代T細胞
エレクトロポレーション後3日目に、LG171p1構築体を発現するためにエレクトロポレーションされた予め活性化初代T細胞を収穫し、且つαCD3とαTCRα/β抗体を用いて、TCR/CD3発現を評価した(
図25C)。同様に、TCR/CD3発現の下方制御は、GFP+部分において有意である(
図25Cの左から右への三列目と四列目の各小図における左上領域)。これらのデータは、LG171p1融合タンパク質を用いる同様な潜在的メカニズムが、初代T細胞とJurkat細胞の両方において有効であることを示している。さらに顕著なことに、長期フォローアップは、TCR/CD3の下方制御が13日目まで維持されないことを示した。(
図25C)
例15異なるE3リガーゼを有するTCR/CD3分解構築体(GRAIL. IC以外の異なるE3リガーゼを有するCD3ζ. ΔIC)。
【0172】
1. 本発明者らは、さらに、LG171と似ている設計で、TCR下方制御のためのCHIPを試験した(
図26A)。全長CD3ζを有するLG132で影響がないことに比べて、LG213における下方制御は、主にCD3ζ截断(即ち、CD3ζ. ΔIC)によって引き起こされる(
図26B)。
【0173】
2. さらに、LG171と似ている設計で、他のE3リガーゼ(RNF133と、RNF122と、RNF152とを含む)を試験した(
図27A)。FACSとウエスタンブロットの両方は、一致した結果を示し、E3リガーゼ機能ドメインがCD3ζ短縮化と連結した場合、TCRが下方制御された(
図27B-27C)。
【0174】
例16 LG171(CD69、ppERK、IFN-γ)でトランスフェクトされた細胞における活性化低下
1. 指摘された構築体でトランスフェクトされたJurkat細胞におけるCD69、ppERKレベル
活性化の影響をチェックするために、CD3/CD28(抗CD3/CD28抗体)により、指摘された構築体でトランスフェクトされたJurkat細胞を短時間刺激し、且つそして、CD69上方制御と細胞内ERKリン酸化(即ち、ppERK又はERK)レベルを試験した。二つのアッセイは、LG171がCD69の上方制御及びERKリン酸化を有意に弱化したことを示している(
図28A-
図28B)。CD3z短縮化(即ち、CD3ζ. ΔIC)は、GFP、CD3ζ、GRAILよりも短い時間の刺激(20 min、
図28B)においてERKリン酸化を遅延することができるが(塗りつぶされた領域が左に向かって黒線標識領域まで移動する)、細胞が4時間刺激された場合、依然としてCD69上方制御を低下させることができなかった(
図28A)。しかしながら、LG171において、CD69、ppERKの上方制御は両方とも有意に遅延され/抑制され、CD3ζ短縮化(即ち、CD3ζ. ΔIC)とGRAILとの間の相乗効果を示した。
【0175】
2. 指摘された構築体でトランスフェクトされた初代T細胞におけるIFN-γレベル
本発明者らは、ヒト初代T細胞活性化への影響をさらに試験した。予め活性化された初代T細胞を指摘された構築体でトランスフェクトした。数日後、CD69上方制御とIFN-γサイトカイン分泌のために、OKT3(抗CD3抗体)でT細胞を再刺激した。本発明者らがJurkat細胞株で発見したのと似たように、LG171又はLG171p1(CAGプロモーター)でトランスフェクトされたヒト初代T細胞は、有意に低いCD69上方制御(
図29A)とIFN-γ分泌(
図29B)を示した。より強いTCR架橋化学物質PHA-L(
図29B)を用いる場合、GFPコントロールに比べて、LG171とLG171p1も低いIFN-γ分泌を付与し、これは、同種異体T細胞注入中に潜在的GvHD応答を回避する、より安全なポリシーを示した。
【0176】
この発見をさらに証明するために、MLRアッセイを用いた(
図29C)。詳細には、モックT細胞又はLG171p1でトランスフェクトされたT細胞を、インビトロで派生した同種異体成熟DC細胞と5日間共培養した。そして、ELISAによって上清におけるIFN-γレベルを試験した。同様に、二つの異なるドナーからの成熟DCで試験する場合、LG171p1は、IFN-γ分泌を有意に低下させた。
【0177】
例17 LG171. CldnCarの発現と殺傷効率
現在、臨床的使用が承認された全てのCAR T細胞療法は、いずれも自家T細胞エンジニアリングと再移植に依存する。ドナー間療法を標準化しCAR T細胞療法のコストを削減するために、強力な同種異体T細胞技術の開発が必要とされている。
【0178】
1. CldnCarとLG171. CldnCar融合タンパク質構築体は、
図30Aに示されている。本発明者らは、GRAILに基づく受容体TACをコードする第1の核酸(即ち、LG171又はCD3ζ-GRAIL. IC)とCAR(クローディン18.2 CAR)をコードする第2の核酸を単一のトランスポゾンベクターに組み合わせて、LG171. CldnCar(即ち、LG171/クローディン18.2 CAR組み合わせ発現構築体)を産生した。
【0179】
2. αCD3ε(抗CD3抗体、CD3発現に用いられる)によってTCR下方制御を検出し、αF(ab’)
2染色(scFv発現に用いられる)によってCAR発現を検出した。結果は、
図30Bに示されている。
【0180】
受容体TAC/CAR構築体を発現するT細胞はGFP発現でゲーティングを行った(
図30Bの左小図と右小図における上から下への一番目のピーク)。
図30Bの左小図から、CldnCar(上から下へ三番目のピーク)でトランスフェクトされたT細胞に比べて、LG171. CldnCar(最低ピーク)とLG171(上から下への二番目のピーク)でトランスフェクトされたT細胞が、TCR発現を欠損することが分かった。
図30Bの右小図から、LG171でトランスフェクトされたT細胞がscFv発現(上から下への二番目のピーク)を欠損したが、CldnCarでトランスフェクトされたT細胞(上から下への三番目のピーク)に比べて、LG171. CldnCarでトランスフェクトされたT細胞が、正常なscFv発現(最低ピーク)を有することが分かった。
【0181】
3. TCR欠損T細胞におけるCAR機能性を試験するために、本発明者らは、HEK-cldn18.2細胞(これらの細胞は形質導入されてCLDN18.2を過剰発現する)とHEK293T細胞(即ち、親HEK細胞)(これらの細胞はクローディン18.2陰性である)に対するその細胞毒性潜在性を測定し、結果は、
図30Cに示されている。
【0182】
図30Cの左小図から、クローディン18.2陰性親HEK細胞株(即ち、HEK)に対する細胞毒性が検出されなかったことが分かった。
図30Cの右小図から、LG171/クローディン18.2 CAR組み合わせ発現構築体(即ち、LG171. CldnCar)を発現するT細胞が、クローディン18.2 CAR(即ち、CldnCar)コントロールプラスミド(即ち、HEK-CLDN 18.2)を発現する細胞と同様な抗原特異的細胞毒性を示すことが分かった。抗原特異的細胞開裂は、E: T比の増加と共に増加した。LG171を単独で発現するT細胞は、クローディン18.2を発現する標的細胞に対する応答の細胞毒性が最小であることを示し、この影響が確かにCARにより媒介されたことを示している。
【0183】
4. 総合的には、本発明者らは、E3リガーゼ融合タンパク質が、TCR発現を下方制御し、T細胞活性化を防止するために用いることができ、且つこの影響が、TCR特異的であり、且つ共発現システムではCAR効果に影響を与えないことをすでに証明した。そのため、本発明者らは、受容体TACプラットフォームは、タンパク質レベル下で、TCR発現を操作することによって同種異体CAR T細胞を産生する新しい方式を表していると考えられる。
【0184】
他の実施例
理解すべきこととして、発明を実施するための形態を結び付けながら本開示を説明したが、以上の説明は、本開示の範囲を限定するものではなく、説明することを意図しており、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。その他の態様、利点及び修正は以下の請求項の範囲内にある。
【0185】
以上に説明された様々な実施例は、組み合わせて別の実施例を提供することができる。本明細書で言及され及び/又は出願データシートに列記される全ての米国特許、米国特許出願公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許発行物は、いずれも全体として参照により本明細書に組み込まれる。別の実施例を提供するために、種々の特許、出願、及び刊行物の概念を使用する必要があれば、これらの実施例の各態様を修正することができる。
【0186】
これら及び他の変更は上記詳細説明に鑑みて上記実施形態に対しなされ得る。総体的に言えば、以下の請求項では、使用される用語は請求項を本明細書と特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に限定するものと解釈すべきではなく、このような請求項の権利を付与される等価物の全範囲と共にすべての可能な実施形態を含むように解釈すべきである。そのため、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
【配列表】
【国際調査報告】