(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-06
(54)【発明の名称】ポリエーテルアミン塩並びにそれらの腐食抑制剤及び摩擦低減剤としての使用
(51)【国際特許分類】
C10L 1/222 20060101AFI20230929BHJP
C10L 10/08 20060101ALI20230929BHJP
C10L 10/04 20060101ALI20230929BHJP
C10L 1/06 20060101ALI20230929BHJP
C10L 1/188 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
C10L1/222
C10L10/08
C10L10/04
C10L1/06
C10L1/188
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517667
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(85)【翻訳文提出日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 US2021047847
(87)【国際公開番号】W WO2022060554
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505318547
【氏名又は名称】ハンツマン ペトロケミカル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Huntsman Petrochemical LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,ハイボ
【テーマコード(参考)】
4H013
4H015
【Fターム(参考)】
4H013CE02
4H015AA22
4H015AA23
(57)【要約】
本開示は、概して、内燃エンジン又はその燃料構成部品における腐食及び摩耗の低減に使用するための燃料添加剤組成物に関する。燃料添加剤組成物は、(a)ポリオキシアルキレンモノアミンとジカルボン酸又はトリカルボン酸の少なくとも1種とを混合することにより、あるいは(b)ポリオキシアルキレンポリアミンと、モノカルボン酸、ジカルボン酸、又はトリカルボン酸の少なくとも1種とを混合することにより、のいずれかで得られるポリエーテルアミン塩を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料系構成部品又は内燃エンジンと接触する炭化水素系組成物において腐食を低減し及び潤滑性を上昇させるための燃料添加剤組成物であって、(a)ポリオキシアルキレンモノアミンとジカルボン酸又はトリカルボン酸の少なくとも1種とを混合することにより、あるいは(b)ポリオキシアルキレンポリアミンと、モノカルボン酸、ジカルボン酸、又はトリカルボン酸の少なくとも1種とを混合することにより、のいずれかで得られるポリエーテルアミン塩を含む、前記燃料添加剤組成物。
【請求項2】
前記ポリオキシアルキレンモノアミンは、以下の一般式を有する化合物であり、
【化1】
式中、Zは、C
1-C
40アルキル基又はC
1-C
40アルキルフェノール基であり;各Z’は、独立して、水素、メチル、又はエチルであり;及びeは、約1~約50の整数である、
請求項1に記載の燃料添加剤組成物。
【請求項3】
前記ポリオキシアルキレン第一級ジアミン化合物は、以下の式を有し、
【化2】
式中、mは、2~約100の整数であり、及び各R
2は、独立して、水素、メチル、又はエチルである、
請求項1に記載の燃料添加剤組成物。
【請求項4】
各R
2は、独立して、水素又はメチルであり、及びmは、2~約70の整数である、請求項3に記載の燃料添加剤組成物。
【請求項5】
前記ポリオキシアルキレントリアミンは、以下の式を有する化合物であり
【化3】
式中、各R
3は、独立して、水素、メチル、又はエチルであり、R
4は、水素、メチル、又はエチルであり、tは、0又は1であり、並びにh、i、及びjは、独立して、約1~約100の整数である、
請求項1に記載の燃料添加剤組成物。
【請求項6】
前記モノカルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロパン酸、イソプロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ネオペンタン酸、ヘキサン酸、イソヘキサン酸、2-エチルブタン酸、ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、イソヘプタン酸、ネオヘプタン酸、オクタン酸、イソオクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、イソノナン酸、3,5,5,-トリメチルヘキサン酸、デカン酸、イソデカン酸、ネオデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸、ステアリン酸、マンデル酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ノナデカン酸、エルカ酸、ベヘン酸、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の燃料添加剤組成物。
【請求項7】
前記ジカルボン酸は、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸、二量体酸、並びにそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の燃料添加剤組成物。
【請求項8】
前記ポリエーテルアミン塩は、ポリオキシアルキレンモノアミンとジカルボン酸を混合することにより得られる、請求項1に記載の燃料添加剤組成物。
【請求項9】
前記ポリエーテルアミン塩は、ポリオキシアルキレンジアミンとジカルボン酸を混合することにより得られる、請求項1に記載の燃料添加剤組成物。
【請求項10】
さらに、1種又は複数の性能向上用添加剤を含む、請求項1に記載の燃料添加剤組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の燃料添加剤組成物と、炭化水素系組成物と、を含む、燃料組成物。
【請求項12】
前記炭化水素系組成物は、ガソリンを含む、請求項11に記載の燃料組成物。
【請求項13】
さらに、含酸素添加剤を含む、請求項12に記載の燃料組成物。
【請求項14】
前記含酸素添加剤は、エタノール含む、請求項13に記載の燃料組成物。
【請求項15】
前記燃料組成物は、前記燃料組成物の合計重量に基づき、エタノールを、5体積%~30体積%の量で含む、請求項14に記載の燃料組成物。
【請求項16】
燃料系構成要素又は内燃エンジンの金属、プラスチック、若しくは合成部品又は表面の腐食及び摩耗減少を予防する方法であって、有効量の前記燃料添加剤組成物を炭化水素系組成物と組み合わせて燃料組成物を形成させ、前記エンジンの稼働中、前記金属、プラスチック、若しくは合成部品又は表面と前記燃料組成物を接触させることを含む、前記方法。
【請求項17】
前記内燃エンジンは、直接噴射式ガソリンエンジンである、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願第63/079,155号、2020年9月16日出願、の優先権を主張する。上記出願(複数可)は、本明細書中参照として援用される。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究又は開発に関する記述
該当なし。
【0003】
分野
本開示は、概して、(a)ポリオキシアルキレンモノアミンとジカルボン酸又はトリカルボン酸の少なくとも1種とを混合することにより、あるいは(b)ポリオキシアルキレンポリアミンと、モノカルボン酸、ジカルボン酸、又はトリカルボン酸の少なくとも1種とを混合することにより、のいずれかで得られるポリエーテルアミン塩を含む、燃料添加剤組成物に関する。燃料添加剤組成物は、炭化水素系組成物を含有する燃料組成物において腐食抑制剤及び摩擦調整剤として有用である可能性がある。
【背景技術】
【0004】
多くの国で、規制当局により、燃料中の硫黄レベルを低下させることにより自動車排ガスを削減しようとする動きが強力に進められてきた。そのようなレベルを低下させる過程の間に、燃料の潤滑性を上昇させ、その結果、燃料ポンプ及びインジェクタの摩耗を低減するように燃料に添加されていた芳香族分子及び極性分子の多くもまた除去されている。したがって、こうした分子の存在なしでは、燃料ポンプ及びインジェクタの耐久性は、大幅に低下する。そのうえ、直接噴射式ガソリン(GDI)エンジンは、近年、ポータブル燃料噴射式(PFI)エンジンに置き換わってきており、そのような燃料送達系で遭遇するより高い圧及び温度は、エンジン摩耗問題をさらに悪化させる可能性がある。
【0005】
また、貯蔵タンク、パイプライン、及びエンジンの腐食を防止するために、腐食抑制剤も燃料に添加することが多い。貯蔵タンク及びパイプライン系の腐食は、通常、燃料に混入した水に起因する。ガソリン-含酸素添加剤ブレンドの場合、腐食問題は、含酸素添加剤に見られる酸性不純物にも起因する可能性がある。こうした抑制剤は、腐食の低減には有効であるものの、概して、上記に記載した問題を弱めるほどの摩擦低下特性をほとんど示さない。
【0006】
最先端の腐食抑制剤及び摩耗低減剤は、特定の用途には適している場合があるものの、腐食抑制及び摩擦低減の両方を提供することができ、低濃度で燃料に添加した場合、それらが使用される燃料系及びエンジンに望ましくない副作用を導入しない、代替化合物を開発する必要が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、概して、燃料系構成部品又は内燃エンジンと接触する炭化水素系組成物の腐食を低減し及び潤滑性を上昇させる、燃料添加剤組成物を提供し、本組成物は、(a)ポリオキシアルキレンモノアミンとジカルボン酸又はトリカルボン酸の少なくとも1種とを混合することにより、あるいは(b)ポリオキシアルキレンポリアミンと、モノカルボン酸、ジカルボン酸、又はトリカルボン酸の少なくとも1種とを混合することにより、のいずれかで得られるポリエーテルアミン塩を含む。
【0008】
さらに別の実施形態において、提供されるのは、本開示の燃料添加剤組成物と、炭化水素系組成物と、を含む、腐食及び摩擦抑制燃料組成物である。
【0009】
さらに別の実施形態において、提供されるのは、燃料系構成要素又は内燃エンジンの、金属、プラスチック、若しくは合成の、部品又は表面の腐食及び摩耗減少を防止する方法であり、本方法は、有効量の燃料添加剤組成物を炭化水素系組成物と組み合わせることにより燃料組成物を形成すること、及びエンジンの稼働中に、金属、プラスチック、若しくは合成の、部品又は表面と燃料組成物を接触させること、によるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の発明燃料添加剤組成物の抗腐食特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、概して、(a)ポリオキシアルキレンモノアミンとジカルボン酸又はトリカルボン酸の少なくとも1種とを混合することにより、あるいは(b)ポリオキシアルキレンポリアミンと、モノカルボン酸、ジカルボン酸、又はトリカルボン酸の少なくとも1種とを混合することにより、のいずれかで得られるポリエーテルアミン塩を含む、燃料添加剤組成物に関する。本開示の燃料添加剤組成物は、炭化水素系組成物に添加した場合、驚くべきことに、炭化水素系組成物と接触する表面に形成される腐食を防止する又はその量を顕著に低減することができるということがわかった。さらに、燃料添加剤組成物は、炭化水素系組成物に添加した場合、驚くべきことに、炭化水素系組成物の潤滑性を上昇させ、したがって、炭化水素系組成物と接触する又は接触していた内燃エンジン表面又は燃料系構成要素の摩耗を大きく低減することができるということがわかった。本開示による燃料添加剤組成物は、自身の多機能性により、実施形態によっては、どのような追加の最先端の腐食抑制剤又は摩擦調整剤も実質的に存在させずに、使用することを可能にする。
【0012】
すなわち、内燃エンジンの稼働中、炭化水素系組成物に燃料添加剤組成物を使用することで、燃料系構成要素における及び燃焼エンジンのピストン壁周囲での、腐食及び摩耗の顕著な低減がもたらされる可能性がある。摩擦の低減は、さらに、燃費の改善をもたらすはずである。燃料系構成要素及び燃焼エンジンの摩耗及び腐食は、それらの耐用寿命を限定し、及びそれらの製造に費用がかかることを考えると、高コストなものにする可能性がある。さらに、そのような腐食及び摩耗は、ダウンタイム、安全性の低下、及び信頼性の低下をもたらす可能性があり、燃料添加剤組成物の使用は、そのような腐食及び摩耗を低減することによって、こうした構成要素及びエンジンの寿命を伸ばす可能性がある。
【0013】
以下の用語は、以下の意味を有するものとする。
【0014】
「含む(comprising)」という用語及びその派生語は、任意の追加の構成要素、工程、又は手順について、それらが本明細書中開示されているか否かに関わらず、その存在を排除することを意図しない。どのような誤解も避ける目的で、含む(comprising)」という用語の使用を通じて本明細書中特許請求される全ての組成物は、反対する記述がない限り、任意の追加の添加剤、アジュバント、又は化合物を含むことができる。対照的に、「~から本質的になる(consisting essentially of」という用語は、本明細書中登場する場合、任意の他の構成要素、工程、又は手順について、それらが操作性に必須ではない場合を除いて、それらをどのような後続の列挙範囲からも排除し、「~からなる(consisting of)」という用語は、使用される場合には、具体的に描写又は列挙されていない任意の構成要素、工程、又は手順を排除する。「又は」という用語は、特に記載がない限り、列挙される要員を個別に指すとともに、任意の組み合わせでも指す。
【0015】
冠詞の「a」及び「an」は、本明細書中、その冠詞の文法上の目的語が、1つ又は1つより多いこと(すなわち、少なくとも1つであること)を指すのに使用される。例として、「ポリエーテルアミン(a polyetheramine)」は、1つのポリエーテルアミン又は1つより多いポリエーテルアミンを意味する。「1つの実施形態において」、「1つの実施形態に従って」、等の語句は、一般に、その語句に続く特定の特長、構造、又は特徴が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれており、及び本開示の実施形態の1つより多くにも含まれている可能性があることを意味する。重要なことは、そのような語句が、必ずしも同一態様を指してはないことである。本明細書中、ある構成要素若しくは特長が、含まれている又はある特徴を有することを記述するのに「may」、「can」、「could」、又は「might」が使用される場合、その特定の構成要素若しくは特長は、含まれている又はある特徴を有することを必須としない。
【0016】
「約」という用語は、本明細書中使用される場合、値又は範囲にある度合いの変動性を許容することを可能にし、例えば、その度合いは、表示される値の又は表示される範囲限度の、10%以内、5%以内、又は1%以内が可能である。
【0017】
範囲形式で表現される値は、範囲の限度として明記される数値を含むだけでなく、その範囲内に包含される全ての個別の数値又はサブ範囲も、各数値及びサブ範囲が明記されているかのように含まれるとして、柔軟な様式で解釈されなければならない。例えば、1~6等の範囲は、1~3、2~4、3~6等のサブ範囲、並びにその範囲内に含まれる個別の数字、例えば、1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示していると見なされなければならない。これは、範囲の幅に関わらず当てはまる。
【0018】
「好適である」及び「好ましくは」という用語は、ある特定の状況下で、ある特定の利益をもたらす可能性がある実施形態を指す。しかしながら、他の実施形態もまた、同じ又は異なる状況下で、好適である可能性がある。そのうえさらに、1つ又は複数の好適な実施形態という記述は、他の実施形態が有用ではないことを暗示するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図しない。
【0019】
「炭化水素系組成物」という用語は、石油(原油)、又は液体燃料、例えば、ガソリン、ディーゼル、バイオディーゼル、灯油、ナフサ、水エマルジョン燃料、エタノール系燃料、及びエーテル系燃料等を指す。
【0020】
「燃料系構成要素」という用語は、本明細書中使用される場合、内燃エンジン(エンジン)の燃料系に挿入及び接続された全ての付属物を意味し、そのような構成要素として、例えば、キャニスター、燃料フィルター、燃料ポンプ等が挙げられる。
【0021】
「腐食」という用語は、炭化水素系組成物との接触又は炭化水素系組成物の燃焼を理由とする、任意の表面の任意の劣化、錆生成、弱化、悪化、又は軟化を指し、表面には、貯蔵タンク、パイプライン、エンジン表面、又は燃料系構成要素が含まれる。
【0022】
「腐食抑制」又は「腐食を低減する」という用語は、腐食の最小化、減少、排除、又は防止における任意の改善を指す。
【0023】
「摩擦低減」又は「摩擦を低減する」という用語は、炭化水素系組成物との接触又は炭化水素系組成物の燃焼を理由とする、炭化水素系組成物と、貯蔵タンク、パイプライン、エンジン表面、又は燃料系構成要素との間の摩擦による摩擦損失の、減少を指す。
【0024】
「アルキル」という用語は、1~24個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、(1-メチルエチル
)、ブチル、tert-ブチル(1,1-ジメチルエチル)等を含む。
【0025】
「アルケニル」という用語は、2~24個の炭素原子を有する不飽和脂肪族炭化水素鎖、例えば、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-メチル-1-プロペニル等を含む。
【0026】
上記のアルキル又はアルケニルは、末端をヘテロ原子、例えば、窒素原子、硫黄原子、又は酸素原子で置換することができ、置換によりアミノアルキル、オキシアルキル、又はチオアルキル、例えば、アミノメチル、チオエチル、オキシプロピル等が形成される。同様に、上記のアルキル又はアルケニルは鎖中にヘテロ原子を挿入することができ、挿入により、アルキルアミノアルキル、アルキルチオアルキル、アルコキシアルキル、例えば、メチルアミノエチル、エチルチオプロピル、メトキシメチル等が形成される。
【0027】
「脂環式」という用語は、3~8個の炭素原子を有する任意の環状ヒドロカルビルを含む。適切な脂環式基の例として、シクロプロパニル、シクロブタニル、シクロペンチル等が挙げられる。
【0028】
「複素環式」という用語は、3~8個の炭素原子を有する任意の環状ヒドロカルビルにヘテロ原子、例えば、窒素原子、硫黄原子、又は酸素原子が挿入されたものを含む。複素環基の例として、テトラヒドロフラン、フラン、チオフェン、ピロリジン、ピペリジン、ピリジン、ピロール、ピコリン、及びクマリンに由来する基が挙げられる。
【0029】
アルキル、アルケニル、脂環式基、及び複素環基は、無置換であることも置換されていることも可能であり、置換は、例えば、アリール、ヘテロアリール、C1-C4アルキル、C1-C4アルケニル、C1-C4アルコキシ、アミノ、カルボキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、-SOH、ホスホノ、又はヒドロキシによるものである。アルキル、アルケニル、脂環式基、又は複素環基が置換される場合、好ましくは、置換は、C1-C4アルキル、ハロ、ニトロ、アミド、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホ、又はオロホスホノ(orphosphono)置換である。
【0030】
「アリール」という用語は、縮合芳香環を含む芳香族ヒドロカルビルを含み、アリールとして、例えば、フェニル及びナフチル等が挙げられる。
【0031】
「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1個のヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、リン、又は硫黄を有する複素環芳香族誘導体を含み、ヘテロアリールとして、例えば、フリル、ピロリル、チエニル、オキサゾリル、ピリジル、イミダゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、及びイソチアゾリル(isothiaxolyl)が挙げられる。
【0032】
「ヘテロアリール」という用語は、縮合環も含み、この縮合環中、少なくとも1つの環は芳香族であり、ヘテロアリールとして、例えば、インドリル、プリニル、及びベンゾフリルが挙げられる。
【0033】
アリール基及びヘテロアリール基は、環が無置換であることも置換されていることも可能であり、置換は、例えば、アリール、ヘテロアリール、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アミノ、カルボキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、-SOH、ホスホノ、又はヒドロキシによるものである。アリール、アラルキル、又はヘテロアリールが置換される場合、好ましくは、置換は、C1-C4アルキル、ハロ、ニトロ、アミド、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホ、又はオロホスホノ(orphosphono)置換である。
【0034】
置換基がそれらの通常の化学式で指定され、左から右に向かって書かれている場合、そのような置換基は、その構造を右から左に向かって書くことで得ることができる化学的に同一の置換基も等しく包含し、例えば、-CH2O-は、-OCH2-と等価である。
【0035】
「任意選択の」又は「任意選択で」という用語は、続いて記載される事象又は状況が生じる場合もあれば生じない場合もあること、並びにその記載には、当該事象又は状況が生じる場合及び生じない場合が含まれること、を意味する。
【0036】
1つの実施形態に従って、燃料添加剤組成物のポリエーテルアミン塩は、(a)ポリオキシアルキレンモノアミンとジカルボン酸又はトリカルボン酸の少なくとも1種とを混合することにより、あるいは(b)ポリオキシアルキレンポリアミンと、モノカルボン酸、ジカルボン酸、又はトリカルボン酸の少なくとも1種とを混合することにより、のいずれかで得ることができる。
【0037】
1つの実施形態において、ポリオキシアルキレンモノアミンは、ポリエーテル骨格の末端に結合した1つのアミノ基を有する化合物である。アミノ基は、第一級(-NH2)アミノ基でも第二級(-NH-)アミノ基でもよい。1つの実施形態において、アミノ基は、第一級アミノ基である。以下でさらに説明するとおり、ポリエーテル骨格は、アルキレンオキシド基、例えば、プロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)、ブチレンオキシド(BO)、及びそれらの混合物に基づくものである、すなわちそれらにより規定される。混合構造において、混合比は、任意の所望の比であることが可能であり、ブロックで(例えば、繰り返し又は交互)配置されていてもランダム分散していてもよい。1つの限定ではない例において、混合EO/PO構造では、EO:POの比は、約1:1~約1:50の範囲が可能であり、その逆もまた然りである。そのため、ポリオキシアルキレンモノアミンは、実質的に、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及び/又はポリブチレンオキシドを規定することができる。ポリオキシアルキレンモノアミンの分子量は、変更可能であり、分子量約6,000までの範囲に及ぶことができる。
【0038】
ポリオキシアルキレンモノアミンは、一般に、一価水素開始剤、例えば、アルコールと、エチレン及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドとの反応により調製することができる。この反応に続いて、得られる末端ヒドロキシル基をアミンに変換し、それにより、プロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)、ブチレンオキシド(BO)、又はそれらの混合物と、末端アミノ基、例えば、末端第一級アミノ基又は末端第二級アミノ基、好ましくは第一級アミノ基と、を有するポリエーテル骨格を得る。1つの実施形態に従って、アルコールは、1~35個の炭素原子を有する脂肪族アルコールでも6~35個の炭素原子を有する芳香族アルコールでもよく、これらは両方とも、アルキル、アリール、アリールアルキル、及びアルカリール置換基等の部分でさらに置換されていてもよい。別の実施形態において、アルコールは、1~18個の炭素原子、又は1~10個の炭素原子を有するアルカノール、例えば低級アルキル由来アルカノールであり、そのようなアルカノールとして、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、sec-ブタノール等が挙げられる。別の実施形態において、アルコールは、アルキル置換基が1~24個の炭素原子、例えば4~16個の炭素原子の直鎖又は分岐鎖アルキルであるアルキルフェノールでも、モノ、ジ、及びトリフェニルフェノールをはじめとするアリール置換フェノールでも、アルカリールフェノールでも、トリスチリルフェノール等のアリールアルキルフェノールでも、ナフトールでも、アルキル置換ナフトールでもよい。
【0039】
1つの特定の実施形態に従って、ポリオキシアルキレンモノアミンは、以下の一般式を有する化合物であり:
【化1】
式中、Zは、C
1-C
40アルキル基又はC
1-C
40アルキルフェノール基であり;各Z’は、独立して、水素、メチル、又はエチルであり;及びeは、約1~約50の整数である。特定の例として、以下の式を有する化合物が挙げられるが、これらに限定されない:
【化2】
【化3】
及び
【化4】
式中、Meはメチルであり、Etはエチルであり;fは、約13~約14の整数であり;及びeは約2~約3の整数である。上記の式に含まれるそのようなポリオキシアルキレンモノアミンとして、JEFFAMINE(登録商標)M-600、M-1000、M-2005、M-2070、FL-1000(fが14でありMe又はEtがメチルである場合)、C-300(eが約2.5の場合);XTJ-435アミン及びXTJ-436アミンが挙げられる。
【0040】
別の実施形態に従って、ポリオキシアルキレンポリアミンは、ポリオキシアルキレンジアミンである。ポリオキシアルキレンジアミンの作製手順は、例えば、米国特許第3,654,370号に記載されており、米国特許第3,654,370号の内容は、本明細書中参照として援用される。1つの特定の実施形態において、ポリオキシアルキレンジアミンは、アミン末端ポリオキシアルキレンジオールである。そのようなポリオキシアルキレ
ンジオールのポリエーテル骨格は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、又はそれらの混合物を含むことができ、したがって、ポリオキシアルキレン第一級ジアミンは、以下の一般式を有することができ
【化5】
式中、mは、2~約100の整数であり、及び各R
2は、独立して、水素、メチル、又はエチルである。実施形態によっては、各R
2は、独立して、水素又はメチルであり、mは、2~約70、又は2~約35、又は2~約7の整数である。他の実施形態において、各R
2は、独立して、水素又はメチルであり、及びmは、6~約70又は約6~約35の整数である。なおさらなる実施形態において、各R
2は、メチルであり、及びmは、2~約70の整数である。こうした化合物の例として、Huntsman Petrochemical LLCから入手可能なJEFFAMINE(登録商標)Dシリーズのアミン、例えば、R
2がメチルでありmが約2.6であるJEFFAMINE(登録商標)D-230アミン、及びR
2がメチルでありmが約6.1であるJEFFAMINE(登録商標)D400アミン等、並びに他の企業が提供する、ポリオキシアルキレン第一級ジアミンを有する類似化合物が挙げられる。
【0041】
別の実施形態、実施形態において、ポリオキシアルキレンジアミンは、以下の一般式を有し
【化6】
式中、n及びpは、それぞれ独立して、約1~約10の整数であり、及びoは、約2~約40の整数である。実施形態によっては、oは、約2~約40、又は約2~約13、又は約2~約10の整数である。別の実施形態において、oは、約9~約40、又は約12~約40、又は約15~約40、又はさらには約25~約40の整数である。他の実施形態において、n+pは、約1~約6の範囲内、又は約1~約4の範囲内、又は約1~約3の範囲内の整数である。さらなる実施形態において、n+pは、約2~約6の範囲内、又は約3~約6の範囲内の整数である。こうした化合物の例として、Huntsman Petrochemical LLCから入手可能なJEFFAMINE(登録商標)EDシリーズのアミン、並びに他の企業が提供する、ポリオキシアルキレン第一級ジアミンを有する類似化合物が挙げられる。
【0042】
さらに別の実施形態、別の実施形態において、ポリオキシアルキレンジアミンは、以下の式を有することができ
【化7】
式中、gは、約2~約3の整数である。こうした化合物の例として、Huntsman Petrochemical LLCから入手可能なJEFFAMINE(登録商標)EDRシリーズのアミン、並びに他の企業が提供する、ポリオキシアルキレン第一級ジアミンを有する類似化合物が挙げられる。
【0043】
さらに別の実施形態、別の実施形態において、ポリオキシアルキレンポリアミンは、ポリオキシアルキレントリアミンである。ポリオキシアルキレントリアミンも同様に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、又はブチレンオキシド、並びにそれらの混合物に基づくものが可能であり、そのようなオキシドと、トリオール開始剤(例えば、グリセリン又はトリメチロールプロパン)との反応、続いて末端ヒドロキシル基のアミノ化により調製することができる。1つの実施形態において、ポリオキシアルキレントリアミンは、以下の式を有することができ
【化8】
式中、各R
3は、独立して、水素、メチル、又はエチルであり、R
4は、水素、メチル、又はエチルであり、tは、0又は1であり、並びにh、i、及びjは、独立して、約1~約100の整数である。1つの実施形態において、R
4は、水素又はエチルである。別の実施形態において、各R
3は、独立して、水素又はメチルであり、実施形態によっては、各R
3は、メチルである。さらに別の実施形態において、h+i+jは、約1~約100の範囲内、又は約5~約85の範囲内の整数である。こうした化合物の例として、Huntsman Petrochemical LLCから入手可能なJJEFFAMINE(登録商標)Tシリーズのアミン、例えば、R
3がメチルであり、R
4が水素であり、tが0であり、及びh+i+jが50であるJEFFAMINE(登録商標)T3000、並びに他の企業が提供する、ポリオキシアルキレン第一級トリアミンを有する類似化合物が挙げられる。
【0044】
本開示のポリエーテルアミン塩は、周囲条件下又は高温下、穏やかに撹拌しながら、ポリオキシアルキレンモノアミン又はポリアミンと、カルボン酸を、塩化の完全比で混合することにより、調製することができる。カルボン酸は、飽和であっても不飽和であってもよく、直鎖及び/又は分岐鎖を持つ。カルボン酸は、天然でも合成でもよく、脂肪族でも芳香族でもよい。カルボン酸には、式R-(COOH)nの任意の化合物が含まれ、式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル、脂環式基、アリール、ヘテロアリール、又は複素環基が可能であり、及びnは、1、2、又は3である。
【0045】
1つの実施形態において、カルボン酸は、モノカルボン酸である。好ましくは、モノカルボン酸は、C1-C24アルキル基を有する。モノカルボン酸の例として、ギ酸、酢酸、プロパン酸、イソプロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ネオペンタン酸、ヘキサン酸、イソヘキサン酸、2-エチルブタン酸、ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、イソヘプタン酸、ネオヘプタン酸、オクタン酸、イソオクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、イソノナン酸、3,5,5,-トリメチルヘキサン酸、デカン酸、イ
ソデカン酸、ネオデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸、ステアリン酸、マンデル酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ノナデカン酸、エルカ酸、ベヘン酸、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
別の実施形態に従って、カルボン酸は、ジカルボン酸である。ジカルボン酸の例として、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸、不飽和脂肪酸の重合から得られ一般に平均約18~約44個の炭素原子を有する二量体酸、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
さらに別の実施形態において、カルボン酸は、トリカルボン酸である。トリカルボン酸の例として、トリメリト酸、クエン酸、イソクエン酸、及びアガイシン酸(agaicic acid)、不飽和脂肪酸の三量体化から得られ一般に平均約18~約30個の炭素原子を有する三量体酸、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
上記で検討したポリエーテルアミン塩に加え、燃料添加剤組成物は、さらに、1種又は複数の追加の性能向上用添加剤を含有することができる。こうした追加の性能向上用添加剤は、複数の要因に基づくものが可能であり、要因としては、例えば、内燃エンジンの種類及びそのエンジンで使用される炭化水素系組成物の種類、炭化水素系組成物の品質、並びにエンジンが稼働される運転条件がある。追加の性能向上用添加剤として、有機溶媒、抗酸化剤、例えば、ヒンダードフェノール若しくはその誘導体及び/又はジアリールアミン若しくはその誘導体、異なる腐食抑制剤、例えばPIBコハク酸をはじめとするアルケニルコハク酸、及び/又は、界面活性剤/分散剤添加剤、例えばマンニッヒ塩基分散剤を挙げることができ、マンニッヒ塩基分散剤には以下が含まれる:ヒドロカルビル置換フェノールと、アルデヒドと、アミン又はアンモニアとの反応生成物;ポリイソブチレンアミン:又はグリオキシル酸化合物。
【0049】
さらなる添加剤として、色素、静菌剤及び殺生物剤、ガム阻害剤、マーキング剤、及び解乳化剤、例えば、ポリアルコキシ化アルコール等を挙げることができる。他の添加剤として、追加の潤滑剤、例えば、脂肪カルボン酸、金属不活化剤、例えば、芳香族トリアゾール又はその誘導体、及びバルブシートリセッション添加剤、例えば、アルカリ金属スルホコハク酸塩を挙げることができる。追加の添加剤として、帯電防止剤、解氷剤、燃焼改良剤、例えば、オクタン価又はセタン価向上剤、及び流動化剤、例えば、鉱物油及び/又はポリ(アルファ-オレフィン)及び/又はポリエーテル等を挙げることができる。
【0050】
ポリエーテルアミン塩は、燃料添加剤組成物中、燃料添加剤組成物の合計重量に基づいて、少なくとも0.5重量%、又は少なくとも1重量%、又は少なくとも10重量%、又は少なくとも20重量%、又は少なくとも30重量%、又は少なくとも40重量%、又は少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%、又はさらには少なくとも99重量%の量で存在することができる。
【0051】
別の実施形態において、1種又は複数の追加の性能向上用添加剤は、燃料添加剤組成物中、燃料添加剤組成物の合計重量に基づいて、90重量%未満、又は50重量%未満、又は20重量%未満、又は10重量%未満、又は1重量%未満の量で存在することができる。
【0052】
燃料添加剤組成物の例を、以下の表に示す。
【表1】
【0053】
別の実施形態に従って、提供されるのは、a)少なくとも出口を有する容器と、b)燃料添加剤組成物と、を含むパッケージ化製品である。
【0054】
1つの実施形態に従って、本開示のパッケージ化製品は、容器を密閉するための閉鎖手段、例えば、蓋、カバー、キャップ、又は栓を有する容器を含む。別の実施形態において、密閉容器は、ノズル又は注ぎ口も有する。密閉容器は、円柱、楕円、円形、長方形、キャニスター、タブ、正方形、又はジャグの形状を有することができ、及び本開示の燃料添加剤組成物を含む。
【0055】
さらに別の実施形態において、容器は、任意の材料製であることができ、任意の材料としては、例えば、鋼鉄、ガラス、アルミニウム、ボール紙、ブリキ、プラスチック等があり、プラスチックとして、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、配向ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレン(PE)、又はポリアミドが挙げられるがこれらに限定されず、並びに任意の材料には、これら材料の混合物、積層体、又は他の組み合わせが含まれる。
【0056】
別の実施形態に従って、提供されるのは、燃料添加剤組成物と、炭化水素系組成物と、を含む、燃料組成物である。
【0057】
さらなる実施形態において、燃料添加剤組成物は、燃料組成物中、燃料組成物の合計重量に基づいて、ポリエーテルアミン塩が少なくとも10ppm、12ppm、25ppm、50ppm、100ppm、150ppm、200ppm、又は300ppmの量で存在するような量で存在することができる。他の実施形態において、燃料添加剤は、燃料組成物の合計重量に基づいて、ポリエーテルアミン塩が5000ppm、2500ppm、2000ppm、1500ppm、1000ppm、750ppm、又は500ppm未満の量で存在するような量で、燃料組成物に添加することができる。
【0058】
別の実施形態において、炭化水素系組成物は、室温で液体であり、エンジンに燃料供給するのに有用である。炭化水素系組成物は、ASTM仕様D4814に定義されるとおりにガソリンを含む石油留分であることができ、他の実施形態において、炭化水素系組成物は、有鉛ガソリン又は無鉛ガソリンである。燃料組成物は、さらに、含酸素添加剤、例えば、アルコール、エーテル、ケトン、カルボン酸エステル、ニトロアルカン、又はそれら
の混合物を含むことができる。例えば、燃料組成物は、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、メチルt-ブチルエーテル、メチルエチルケトンを含むことができる。1つの実施形態において、燃料組成物は、燃料組成物の合計体積に基づいて、0.1体積%~100体積%の含酸素添加剤を含むことができる。さらに別の実施形態において、燃料組成物は、燃料組成物の合計体積に基づいて、0.1体積%~100体積%の炭化水素系組成物、例えばガソリンを含むことができる。さらに別の実施形態において、含酸素添加剤は、エタノールが可能である。他の実施形態において、燃料組成物は、燃料組成物の合計体積に基づいて、ガソリンと、5体積%~30体積%のエタノールと、を含むことができる。
【0059】
燃料組成物は、炭化水素系組成物を車両に入れる前に、炭化水素系組成物、燃料添加剤組成物、及び含酸素添加剤を混合することにより、調製することができる。例えば、燃料添加剤組成物を、燃料組成物の合計重量に基づいて、ポリエーテルアミン塩が少なくとも10ppm、又は少なくとも20ppm、又は少なくとも50ppm、又は少なくとも100ppmの濃度で存在するように、炭化水素系組成物に加えてこれと一緒に混合することができる。次いで、含添加剤(additized)燃料組成物を、燃料タンクにポンプで入れることができる。他の実施形態において、燃料組成物を、車両の燃料タンクに加えることができ、ポリエーテルアミン塩を含む燃料添加剤組成物を、車両の別個の添加タンクに加えることができる。次いで、この燃料添加剤組成物を、車両が稼働する際に、少なくとも10ppmの濃度で燃料組成物に添加することができる。これは、「オンボード添加(onboard dosing)」として知られる。
【0060】
1つの実施形態において、上記に記載した燃料組成物は、液体燃料エンジン及び/又は火花点火エンジンに有用であり、ハイブリッド車用エンジン及び固定エンジンを含むことができる。エンジンの種類は、過度に限定されることはなく、Vエンジン、直列エンジン、対向型エンジン、及びロータリーエンジンが挙げられるが、これらに限定されない。エンジンは、自然吸気エンジン、過給エンジン、E過給エンジン、スーパーチャージ型エンジン、又はターボチャージ型エンジンが可能である。エンジンは、キャブレター付又は燃料噴射式ガソリンエンジンが可能である。そのため、エンジンは、キャブレター又はインジェクター(ピエゾ式インジェクターを含む)を有することができる。
【0061】
1つの実施形態において、エンジンは、直接噴射式ガソリンエンジン(「GDI」)エンジン(噴射式若しくはウォールガイド式、又はそれらの組み合わせ)、ポート燃料噴射式(「PFI」)エンジン、予混合圧縮着火(「HCCI」)エンジン、化学量論的燃焼若しくはリーンバーンエンジン、火花点火制御圧縮着火(「SPCCI」)エンジン、可変圧縮比エンジン、ミラーサイクルエンジン、又はアトキンソンサイクルエンジン、あるいはそれらの組み合わせ、例えば、同一エンジン中にGDIインジェクター及びPFIインジェクターの両方を有するエンジン等が可能である。適切なGDI/PFIエンジンとして、ガソリン、混合ガソリン/アルコール、又は上記セクションで記載される燃料組成物のいずれかを燃料とする、2ストローク又は4ストロークエンジンが挙げられる。燃料組成物は、エンジン、例えば、GDI又はGDI/PFIエンジンの、腐食、摩耗を低減する、及び/又は燃費を改善することができる。さらに他の実施形態において、燃料組成物は、GDIエンジン、PFIエンジン、又はそれらの組み合わせ用オンボード添加システムを使用して調製することができる。
【0062】
他の実施形態において、上記エンジンのいずれも、排ガス処理用、例えば、NOx削減用の触媒又は装置を備えることができる。他の実施形態において、エンジンは、1種類より多い燃料、典型的には、ガソリン及びエタノール又はガソリン及びメタノールで稼働することができる、フレックス燃料エンジンが可能である。さらに他の実施形態において、上記のエンジン種類のいずれも、ハイブリッド車にあることができ、このハイブリッド車
は電気モーターも有する。
【0063】
すなわち、別の実施形態において、提供されるのは、燃料系構成要素又は内燃エンジンの金属、プラスチック、若しくは合成部品又は表面の腐食及び摩耗減少を予防する方法であり、この方法は、有効量の燃料添加剤組成物を炭化水素系組成物と組み合わせて燃料組成物を形成させ、エンジンの稼働中、金属、プラスチック、若しくは合成部品又は表面と燃料組成物を接触させることによるものである。
【0064】
一般に、燃料添加剤組成物は、少量で、すなわち、ガソリンに腐食低減及び摩擦低減をもたらすのに有効な量で、炭化水素系組成物又はガソリンに添加することができる。燃料添加剤組成物は、ガソリンの合計重量に基づいて、約0.0002~0.2重量%の範囲の量で有効である可能性がある。実施形態によっては、ガソリンの合計重量に基づいて、約0.001~0.01重量%の範囲の量が好適である場合があり、後者の量は、それぞれ約3PTB及び30PTB(炭化水素燃料又はガソリン1000バレルあたりの添加剤のポンド)に相当する。
【0065】
さらに別の実施形態において、提供されるのは、燃料系構成要素又は内燃エンジンの金属、プラスチック、若しくは合成部品又は表面の腐食及び摩耗減少を予防する方法であり、この方法は、有効量の燃料添加剤組成物を炭化水素系組成物と組み合わせて燃料組成物を形成させ、エンジンの稼働中、金属、プラスチック、若しくは合成部品又は表面と燃料組成物を接触させることによるものである。
【0066】
燃焼前、ある種の燃料添加剤は、シリンダー壁を覆う潤滑剤の薄膜に到達する可能性があり、経時的に、エンジンオイル中に蓄積する可能性があることは、知られている。したがって、1つの実施形態において、燃料添加剤組成物のポリエーテルアミン塩がエンジンオイルに蓄積することが、想定されている。すなわち、1つの実施形態において、本開示は、エンジンオイルと、本明細書中定義されるとおりの燃料添加剤組成物のポリエーテルアミン塩と、を含むオイル組成物を提供する。
【0067】
本開示を、ここで、以下の限定ではない実施例を参照することでさらに説明する。
【実施例】
【0068】
高周波往復リグ(HFRR)を使用して、ガソリンにおける本開示の燃料添加剤組成物の摩擦低減を試験した。HFRRは、PCSグループ製であった。ガソリンは、Haltermann Solutions(HF0437、Tier II EEE)から購入した。液体の載荷体積は、約15mlであった。ガソリンでのHFRR試験を、以下の条件下で行った。
期間 75分間
温度 25°C
周波数 50Hz
ストローク1mm
載荷 200g
検体 鋼鉄AISI E-52100
【0069】
腐食抑制剤性能を特定するため、炭素鋼クーポンを使用前に研磨紙でサンディングし、次いで、以下にさらに記載するとおり、クーポンの半分を液体燃料組成物に浸漬して、5時間約30°Cの温度で撹拌下に維持した。
【0070】
燃料添加剤組成物の合成
ポリオキシアルキレンモノアミン又はポリアミンと、カルボン酸とを、アミン数対酸数
の比を約1:1として、周辺温度で60分間混合した。カルボン酸には、オレイン酸、イソステアリン酸、及び二量体酸が含まれた。ポリオキシアルキレンモノアミン及びポリアミンには、JEFFAMINE(登録商標)C-300、M-600、FL-1000、D-230、D-400、及びT-3000アミンが含まれた。燃料添加剤の組成を、以下の表にまとめる。
【表2】
【0071】
ガソリンにおける0.15%(1500ppm)塩添加レベルでの燃料添加剤組成物のHFRRによる評価。
実施例1及び2を、添加剤不含ガソリン(HF0437)と、ポリエーテルアミン塩添加レベル1500ppmでブレンドした。各実施例について、ASTM D6709に従って摩耗痕を測定した。結果を以下に示す。
【表3】
【0072】
ガソリンにおける0.30%(300ppm)塩添加レベルでの燃料添加剤組成物のHFRRによる評価。
実施例1、3、4、5、6、及び8を、添加剤不含ガソリン(HF0437)と、ポリエーテルアミン塩添加レベル300ppmでブレンドした。各実施例について、に従って摩耗痕を測定した。結果を以下に示す。
【表4】
【0073】
ガソリンにおける0.15%(150ppm)塩添加レベルでの燃料添加剤組成物のHFRRによる評価。
実施例1、3、4、5、6、及び7を、添加剤不含ガソリン(HF0437)と、ポリエーテルアミン塩添加レベル150ppmでブレンドした。各実施例について、摩耗痕を測定した。結果を以下に示す。
【表5】
【0074】
上記で実証したとおり、本開示による燃料添加剤組成物は、ポリエーテルアミン塩添加レベルが非常に低くても、摩耗を大幅に低減することができる。
【0075】
ガソリン/塩水混合物における0.10%(100ppm)塩添加レベルでの燃料添加剤組成物の防錆性能の評価。
HF0437を150gと海水15gとをブレンドしてから、以下に示すとおりの実施例を添加した。腐食抑制剤性能を特定するため、炭素鋼クーポンを使用前に研磨紙でサンディングし、次いで、金属クーポンの半分を液体燃料添加剤に浸漬して、5時間約30°Cの温度で撹拌下に維持した。
【表6】
【0076】
図1に示す結果に基づき、本開示による燃料添加剤組成物は、ガソリン/海水混合物に防錆性能をもたらし、特に、本発明の燃料添加剤組成物は、比較の燃料添加剤組成物C1及びC2よりも顕著に良好な防錆性能をもたらした。
【0077】
本発明のさまざまな実施形態の作製及び使用について上記で詳細に記載してきたものの、当然のことながら、本発明は、多種多様な具体的状況で具現化可能な多くの応用可能な本発明の概念を提供している。本明細書中検討される具体的実施形態は、本発明を作製及び使用する具体的やり方の例示にすぎず、本発明の範囲を定めるものではない。
【国際調査報告】