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特表2023-542339化粧品で使用するためのバイオベースの生分解性複合パウダー
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  • 特表-化粧品で使用するためのバイオベースの生分解性複合パウダー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-06
(54)【発明の名称】化粧品で使用するためのバイオベースの生分解性複合パウダー
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/85 20060101AFI20230929BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230929BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20230929BHJP
   A61K 8/9728 20170101ALI20230929BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20230929BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20230929BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20230929BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230929BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230929BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
A61K8/85
A61K8/02
A61K8/44
A61K8/9728
A61K8/73
A61K8/99
A61Q1/00
A61Q19/00
A61Q17/04
C08L67/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518087
(86)(22)【出願日】2021-09-20
(85)【翻訳文提出日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 US2021051044
(87)【国際公開番号】W WO2022061213
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】63/080,820
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522074833
【氏名又は名称】グラント インダストリーズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レラム,ロナルド ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】クルーム,アンナ ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヴィアナ,タニア
(72)【発明者】
【氏名】パウリーク,アガ
【テーマコード(参考)】
4C083
4J002
【Fターム(参考)】
4C083AA031
4C083AA032
4C083AA082
4C083AA122
4C083AB172
4C083AB212
4C083AB222
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB332
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC092
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC152
4C083AC172
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC312
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC581
4C083AC642
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC842
4C083AD072
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD192
4C083AD202
4C083AD241
4C083AD242
4C083AD352
4C083AD572
4C083AD662
4C083BB24
4C083CC01
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC11
4C083CC12
4C083CC13
4C083CC14
4C083CC19
4C083CC28
4C083DD17
4C083DD22
4C083DD32
4C083EE17
4C083FF01
4C083FF04
4J002CF031
4J002CF181
4J002CF191
4J002EF016
4J002EN096
4J002EP016
4J002FD206
4J002GB00
(57)【要約】
化粧品及びパーソナルケア配合物での使用を意図した有用な化粧品組成物が開示される。化粧品組成物は、ポリヒドロキシブチレート等のポリヒドロキシアルカノエートを含む発酵物及びリジン誘導体であるN6-ラウロイル-L-リジン等のアミノ酸誘導体を微粉化した実質的に均一なパウダー混合物を含む。化粧品用パウダー組成物は、化粧品のテクスチャープロファイルを高める媒介となって、感覚的な改善、及び/又はソフトフォーカス効果、肌の凹凸を埋めることによるシワぼかし効果を提供することにより、肌の欠陥やしわが少なく滑らかに見えるようにすることができる。パウダーベースの組成物は、油分を吸収するその能力により、粘着除去剤及び/又は粘度調整剤として機能することができる。パウダーは、バイオベースの生分解性材料から調製された化粧品及びパーソナルケア配合物のための配合オプションを提供する。パウダー組成物の調製方法、及び当該組成物を含む化粧品も開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パウダー組成物であって、
a.組成物の約50重量%~99.9重量%の量の発酵物;と
b.組成物の約0.1重量%~50重量%の量のアミノ酸誘導体と
の微粉化ブレンドを含み、
発酵物及びアミノ酸誘導体は、摩擦係数が約0.1~約0.25であるパウダー組成物を得る条件下で微粉化されたものである、パウダー組成物。
【請求項2】
発酵物の量が約80~約95重量%であり、アミノ酸誘導体の量が約5~約20重量%である、請求項1に記載のパウダー組成物。
【請求項3】
前記条件が、少なくとも約105℃の温度に達するまで発酵物とアミノ酸誘導体とのブレンドを微粉化し、得られた微粉化パウダーを少なくとも約15分間その温度に保持することを含む、請求項1に記載のパウダー組成物。
【請求項4】
前記条件が、約107℃~約165℃の温度に達するまで発酵物とアミノ酸誘導体とのブレンドを微粉化し、得られた微粉化パウダーを少なくとも約1時間その温度に保持することを含む、請求項1に記載のパウダー組成物。
【請求項5】
保持時間が約1時間~約3時間である、請求項4に記載のパウダー組成物。
【請求項6】
パウダー組成物が、スパチュラ・ラブアウト法(ASTM D281)により実質的に疎水性であり、吸水率がゼロである、請求項1に記載のパウダー組成物。
【請求項7】
パウダー組成物が自由流動性パウダーであり、嵩密度が0.15g/mL~0.25g/mLである、請求項1に記載のパウダー組成物。
【請求項8】
発酵物が、微生物、細菌又は酵母から得られたものである、請求項1に記載のパウダー組成物。
【請求項9】
発酵物及びアミノ酸誘導体粒子の粒子サイズのばらつきが約0.1ミクロン~約120ミクロンである、請求項1に記載のパウダー組成物。
【請求項10】
発酵物及びアミノ酸誘導体粒子の微粉化ブレンドの粒子サイズのばらつきが、約0.1ミクロン~約50ミクロンである、請求項9に記載のパウダー組成物。
【請求項11】
アミノ酸誘導体がリジン誘導体である、請求項1に記載のパウダー組成物。
【請求項12】
リジン誘導体がN-アシル化リジンである、請求項11に記載のパウダー組成物。
【請求項13】
N-アシル化リジンがN6-ラウロイル-L-リジンである、請求項12に記載のパウダー組成物。
【請求項14】
発酵物が酵母起源から単離されたものであり、酵母がサッカロミセス(Saccharomyces)である、請求項1に記載のパウダー組成物。
【請求項15】
発酵物が細菌起源から単離されたものであり、細菌が、カプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)、アルカリゲネス・レータス(Alcaligenes latus)、アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、及びエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromona hydrophila)からなる群より選択される、請求項8に記載のパウダー組成物
【請求項16】
発酵物がポリヒドロキシアルカノエートを含む、請求項1に記載のパウダー組成物。
【請求項17】
ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリヒドロキシブチレート又はその誘導体である、請求項15に記載のパウダー組成物。
【請求項18】
ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、ポリヒドロキシブチレートバレレート(PHBV)、ポリヒドロキシヘキサノエート(PHH)、及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項15に記載のパウダー組成物。
【請求項19】
補助成分をさらに含む、請求項1に記載のパウダー組成物。
【請求項20】
請求項1に記載のパウダー組成物を少なくとも約1重量%含有するソフトフォーカス化粧品組成物。
【請求項21】
パウダー組成物がソフトフォーカス組成物の約1~約30重量%を占める、請求項20に記載のソフトフォーカス化粧品組成物。
【請求項22】
前記化粧品組成物のための化粧品組成物成分を、少なくとも約1重量%の請求項1に記載のパウダー組成物と組み合わせることを含む、化粧品組成物のソフトフォーカス効果を高める方法。
【請求項23】
哺乳類の皮膚表面の皮膚の欠点を目立たなくする方法であって、請求項1に記載のパウダー組成物を少なくとも約1重量%含む化粧品組成物を、哺乳類の皮膚表面の欠点のある領域に塗布することを含む方法。
【請求項24】
請求項1に記載のパウダー組成物を約50~約99重量%及びコーンスターチを約1~50重量%含むボディパウダー組成物。
【請求項25】
パウダー組成物が約70~約99重量%の量で存在し、コーンスターチの量が約1~約30重量%である、請求項24に記載のボディパウダー組成物
【請求項26】
化粧品組成物を、少なくとも1重量%の請求項1に記載のパウダー組成物と組み合わせることを含む、油の懸濁及び収着能力を有するパウダー組成物を利用する配合物を安定化する方法。
【請求項27】
日焼け止め用化粧用品におけるSPF値を高める方法であって、化粧品組成物のための化粧品組成物成分を、少なくとも1重量%の請求項1に記載のパウダー組成物と組み合わせることを含む方法。
【請求項28】
請求項1に記載のパウダー組成物を約0.1重量%~約50重量%含有する外用化粧品組成物。
【請求項29】
請求項1に記載のパウダー組成物から本質的になる化粧品成分。
【請求項30】
発酵物がポリヒドロキシアルカノエートを含み、アミノ酸誘導体がN-アシル化アミノ酸誘導体である、請求項29に記載のパウダー組成物。
【請求項31】
パウダー組成物を調製する方法であって、摩擦係数が約0.1~約0.25である微粉化パウダーブレンド組成物を形成するのに十分な条件下で発酵物とアミノ酸誘導体をブレンド及び微粉化することを含む、方法。
【請求項32】
前記条件が、少なくとも約105℃に達するまで発酵物及びアミノ酸誘導体を混合及び微粉化すること、その後、得られた微粉化パウダーブレンド組成物を少なくとも約15分間保持することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記条件が、約107℃~約165℃に達するまでブレンドを混合及び微粉化すること、そしてその後、得られた微粉化パウダーブレンド組成物を約1時間~約3時間保持すること、を含む、請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月21日に出願された米国仮特許出願番号第63/080,820号に基づいて優先権を主張し、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、身体、顔、髪、及び目の周りに使用するための化粧品組成物において有用なパウダー組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
化粧品配合物に導入されるパウダーは、テクスチャープロファイル(textural profile)を強化し、ソフトフォーカス効果(soft focus effect)を提供し、また配合物中により取り込み易くなったものである。パウダーは、化粧品及びパーソナルケア配合物において、吸油性/マット感を提供し、レオロジーパラメータを修正し、皮膜形成用品に適用でき、日焼け止め用品においてSPF値を引き上げ、全体的な美肌感(aesthetic skin feel)や塗布している時の製品の滑り(glide)を良くすることが知られている。通常、化粧品に使用されるパウダーは、合成起源又は鉱物に由来するものである。合成起源のパウダーは、化石燃料の原料に由来し、必然的に難生分解性である。難生分解性のパウダーは、分解されることはあるが生分解性ではない。バイオベース由来のパウダーは、多くの場合、生分解性であり持続可能な資源であるという特徴を有するが、化石燃料由来のパウダーと比較して、テクスチャーや配合性において同等になることはない。持続可能な資源から化粧品やパーソナルケア製品を開発し、廃棄物として環境に残留することを避けるという目標に向けて、優れた感覚的特性(sensorial properties)をもたらし且つ配合し易い、化粧用及びパーソナルケア用のパウダーを開発することが有益である。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様では、化粧品配合物又は化粧品組成物の製造に有用なパウダー組成物が提供される。パウダー組成物は、組成物の重量に対して約50重量%~99.9重量%の微生物、細菌又は酵母から得られる発酵物(ポリヒドロキシアルカノエート等)と、組成物の重量に対して約0.1重量%~50重量%のN-アシル化アミノ酸(例えばN-アシル化リジン)等のアミノ酸誘導体との微粉化混合物を含む。発酵物及びアミノ酸誘導体は、摩擦係数が約0.1~約0.25であるパウダー組成物が得られる条件下で混合及び微粉化される。得られるパウダー組成物の物理的性質は、2つの成分を単に混合することによって、又はパウダーの成分を室温で微粉化することによって形成されるパウダー組成物とは異なる。
【0005】
幾つかの実施形態では、発酵物の量は約80重量%~約95重量%であり、アミノ酸誘導体の量は約5重量%~約20重量%である。
【0006】
発酵物及びアミノ酸誘導体はそれぞれ粒子状であり、互いに実質的に均一に混合された状態にあり、好ましくは、パウダーの温度が約105℃以上、幾つかの態様では約107℃~約165℃に達するまで成分を混合及び微粉化する工程、並びにその後、所望の特性を得るのに十分な時間、好ましくは混合条件下で微粉化ブレンドを保持する工程を含む条件下で、2つの成分を同時に若しくは実質的に同時に混合及び微細化して微粒子パウダーブレンドにすることによって達成される。例えば、冷却される前の保持時間は少なくとも約15分で十分であると分かったが、別の態様では約1時間が用いられ、幾つかの更なる実施形態では、約1時間~約3時間である。また、結果として得られるパウダー組成物は、好ましくは吸水性を示さず、一般的に疎水性であるとみられる。
【0007】
パウダー組成物は、所望により、化粧品で許容される補助成分を含むこともでき、これらの補助成分は、上記2成分を微粉化する際にその一部として、又は上記2成分を微粉化した後に別個のブレンドの一部として、上記2成分とブレンドすることができる。
【0008】
本発明は、本明細書に記載の条件下で発酵物とアミノ酸とのブレンドを微粉化することにより、望ましい摩擦係数及び/又は疎水性を有するパウダー組成物を調製する工程も含む。
【0009】
パウダー混合物は、化粧品のタイプに応じて、約1重量%未満~約99重量%の量で様々な化粧品に含まれることができる。幾つかの態様では、含まれる量は外用化粧品又は外用薬の少なくとも約1重量%~約50重量%であり、ボディパウダー等の別の実施形態では、本発明のパウダー組成物の量は約50~約99重量%とすることができる。
【0010】
本発明のパウダー組成物は、様々な化粧品においてソフトフォーカス効果を与える又は高めるのに有用である。これは、本明細書に記載のパウダー組成物を少なくとも約1重量%含むことによって達成することができる。或いは、ソフトフォーカス化粧品組成物は、本明細書に記載のパウダー組成物を約1~約30重量%含むものであってもよい。このように、本明細書に記載された本発明のパウダー組成物の少なくとも約1重量%を化粧品組成物と組み合わせることによって、化粧品組成物のソフトフォーカス効果を高める方法が提供される。
【0011】
別の態様では、本発明の組成物は、本明細書に記載の量で化粧品中に存在することにより、皮膚の欠点を隠す又は目立たなくするのを助ける能力を化粧品に与える。従って、本発明は、本明細書に記載されるパウダー組成物を十分な量で(例えば化粧品組成物の少なくとも約1重量%)含む化粧品組成物を、化粧処置(cosmetic treatment)を必要とする皮膚領域に塗布することによって、哺乳類の皮膚表面上の皮膚の欠点を目立たなくする方法を更に含む。
【0012】
本発明の更なる態様では、本明細書に記載のパウダー組成物は、本明細書に記載の量で化粧品配合物に含まれることにより、化粧品配合物を安定化するのに有用である。パウダー組成物は、化粧品配合物に油の懸濁能及び吸収能を与えることによって、最終的な化粧品組成物の粘度を増加させる。そのような実施形態では、本発明のパウダー組成物は、少なくとも約1重量%の量で含まれる。
【0013】
本発明の更に別の態様は、パウダー組成物の調製方法、及びパウダー組成物を含む化粧品も含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】試験例11の配合物11-A~Dに含まれるパウダー複合体の重量%と、光沢計で測定した光沢比%との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明で使用される化粧品組成物、即ち、発酵物とアミノ酸誘導体の微粉化パウダーブレンドを含む化粧品組成物としては、ローション、クリーム、美容液(serum)、ムース、日焼け止め、BBクリーム、ファンデーション、コンシーラー、リキッド若しくはスティックタイプのハイライター、保湿剤、リキッド若しくはスティックタイプの立体感メイク用品(contouring)、スティック若しくはリキッドタイプの口紅等のリップカラー、リップグロス、リップモイスチャライザーやリップバーム等のリップケア、エマルジョン若しくは無水タイプ等全てのタイプの顔用及び身体用ルースパウダー、フェイスプレスパウダー、並びにアイクリームやアイセラム等の目元用スキンケア配合物、マスカラ、アイライナー、アイシャドウ及びアイブロウ用品が挙げられるが、これらに限定されない。新規なパウダー組成物の別の用途としては、シャンプー、洗い流さないタイプ及び洗い流すタイプのコンディショナー、洗い流すタイプ及び洗い流さないタイプのヘアマスク、ヘア美容液、ドライシャンプー、及びルースパウダー又はエアゾル形態の髪用テクスチャー調整配合物(hair texturizing formulation)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明は、配合し易く、配合物の安定性に優れ、手触りや見た目を改善し、及びSPF値を引き上げるパウダーを提供するという利点を示す。化粧品用パウダーには、肌の調子を整える機能、テカリを抑える機能、加齢による皮膚の小さな隙間を埋めることによって小ジワを目立たなくするマット効果、吸着性を持たせる機能、感覚的属性(柔らかさ、潤滑性、滑らかさ等)を高める機能があり、また皮膚に塗布したメイクの均一なカバー力に貢献するだけでなく、様々な化粧品において色及び顔料特性を強化することができる。
【0016】
粒子サイズ及び凝集性は、皮膚の上での滑り心地、付着性(tack)及び皮膜形成能の持続、並びにシワ埋め、ソフトフォーカス、シワぼかし(line-blurring)効果等の光学的属性を含む化粧品組成物のテクスチャープロファイルに相関している。粒子サイズが均一で小さければ、表面領域により広げやすくなるので化粧品を皮膚へ均一に分配しやすくなり、SPF値を引き上げることになる。このように、本発明の更なる態様は、化粧用日焼け止め用品においてSPF値を引き上げるための方法を含む。これらの方法は、少なくとも1重量%の本明細書に記載された微粉化パウダー組成物を、化粧品組成物成分と組み合わせることを含む。
【0017】
幾つかの実施形態では、本発明のパウダーの粒子サイズを約0.1~約120ミクロンとすることができる。更なる実施形態では、パウダー組成物の粒子サイズは約0.1~約50ミクロンである。パウダーの形状は、球状、不規則、又は繊維状であってもよい。パウダーは、離散的な粒子、凝集体(aggregated)、クラスター、又は塊(agglomerate)であってもよい。
【0018】
本発明のパウダー組成物は、反応容器に入れる前にまず、例えば、タンブラー、ミキサー、Vブレンダー等の機械的攪拌を使用して発酵物とアミノ酸誘導体との物理的なブレンドを作ることによって得ることができる。或いは、発酵物とアミノ酸誘導体を反応容器に直接添加し、そこでブレンド及び微粉化することができる。本発明のパウダー組成物は、所望の粒度分布を得るために、サイズリダクション若しくは微粉化するマシン、例えば、ジェットミル、ハンマーミル、ナイフミル、プラネタリーミル(planetary mill)、ローラーミル、ブレンダー等を使用して調製される。
【0019】
例えば、微粉化する前に、発酵物及びアミノ酸誘導体を、2成分系混合物として若しくは任意で他の成分との混合物としてまず合わせ、任意で上述のようなブレンダーを用いてしっかり混ぜ合わせることができる。従って、本明細書に記載の条件下で微粉化した後のパウダー組成物を含む成分(すなわち発酵物及びアミノ酸誘導体)の混合物は、好ましくは、発酵物粒子及びアミノ酸誘導体粒子が互いに満遍なく交じり合って実質的に均一な混合物を形成し、本明細書に記載の条件下で微粉化した後は、摩擦係数が0.1~0.25のパウダー組成物が得られ、好ましくは疎水性及び/又はゼロ吸水を持つ混合物である。当業者であれば、粒の粗い微粒子を除去するために、本発明のパウダー組成物は、篩メッシュの使用を必要とする場合があることが理解できよう。本発明の幾つかの態様では、本発明のパウダー組成物は自由流動性パウダーであり、嵩密度は約0.15g/mL~約0.25g/mLである。別の態様では、嵩密度は約0.19~約0.24g/mlである。
【0020】
所望の摩擦係数を有する最終的なパウダー組成物を得るための、発酵物及びアミノ酸誘導体のブレンドが微粉化される条件は、ブレンドが微粉化プロセスを受ける時間と温度の組合せを含む。一般に、発酵物及びアミノ酸誘導体の混合及び微粉化は、混合物のパウダーの温度が少なくとも約105℃以上、及び幾つかの態様では約107℃~約165℃に達するまで続けられる。所望の温度に達したら、少なくとも約15分間、幾つかの実施形態では約1時間、又は幾つかの態様では約1時間~約3時間、パウダーブレンドを上記温度に保つ。次いで、パウダー組成物を冷却した後に篩にかける。上記の温度及び時間は、処理するパウダーブレンドの量、微粉化するために使用される装置、及び当業者に公知である他の要因に応じて多少変化することを理解されたい。更に、パウダーブレンドを所望の温度に保っている間、温度が所望の範囲内に維持されるようにブレンド又は他の方法でパウダーを攪拌し続けることを理解されたい。しかし、過度の実験を行わなくても、所望の特性を有するパウダー組成物を調製することはできる。例えば、業務用の高変速手動式ブレンダーを使用した加工がある。これは、摩擦によってかなりの量のエネルギーと熱を必要とする混合及び微粉化であると考えられる。プロ用ブレンダーの例は、Oster Versa Proシリーズブレンダーと市販のワーリングブレンダーMX1200型式であった。ブレンダーには、ステンレス製の64オンスジャーと、Type-K熱電対を備えたデジタル温度計が装備されていた。ブレンダーのパワーと温度は、1,500~20,000RPMの可変速コントローラで手動制御した。
【0021】
サイズリダクションは当業者に公知であり、テクスチャーを強化するために望ましいサイズの粒子を得るのに適した条件を決定することができるであろう。テクスチャーが強化されると、ソフトフォーカスやシワぼかし効果だけでなく、柔らかなパウダー感及びスムースな触感、滑らかさ、すべり易さ、及び広がり易さを化粧品配合物に与える。粒子サイズが80ミクロンを超えると、粒が粗く感じられ、ソフトフォーカスが得られないことが当業者には知られている。従って、より粒子サイズの大きな粒子を有するパウダー組成物は、スクラブ及び角質除去化粧品組成物において使用することができる。また、粒子サイズ及び形状だけが、テクスチャーの良さ及びソフトフォーカスのための要因ではないことも、当業者に公知である。本発明が解決しようとする他の属性は、自然で均一なカバー力と絹のような感触を得るためにより広げ易くすること、肌そのものを強くすること、化粧のりや化粧持ちを良くすること、付着性やべたつき感(sticky feel)を低減することによって、よりカバー力が長持ちし色移りしにくくすることである。付着性を低減することにより、化粧品はカバー力がより長持ちし、製品を肌に塗り直す必要がなくなる。従って、皮膚の欠点のポテンシャルを最小限に抑えることができる。
【0022】
本発明のパウダー組成物は、生分解性パウダーであるという利点を有し、それにより、微生物は、嫌気性若しくは好気性の生化学的プロセスいずれかによって、製品を酵素により代謝することができる。生分解性材料は、微生物の助けを借りて、水、二酸化炭素、及びバイオマスに代謝される。このパウダーは、エステルやアミド等の酵素切断可能な結合で成り立つ食物源として役立つ。
【0023】
パウダーを含有する化粧品組成物は、鉱物に由来するものであってもよい。鉱物由来のパウダーの例としては、マイカ、カオリン、アルミノケイ酸塩、窒化ホウ素、二酸化ケイ素、タルク、アパタイト等が挙げられる。
【0024】
パウダーを含有する化粧品組成物は、合成起源であってもよい。合成パウダーは化石燃料由来と定義され、例としては、ポリアミド(ナイロン)、ポリエチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン及びエチレン/アクリレートクロスポポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載のパウダー組成物は、ほとんどの化粧品配合物において、合成起源のパウダーの一部又は全部の代わりに使用することができる。
【0025】
パウダーを含有する化粧品組成物は、天然由来のものであってもよい。天然パウダーとは、植物又は微生物から得られるものと定義され、例えば、セルロース、デンプン、糖タンパク質(例えばシルクタンパク質パウダー等)、ポリ乳酸、ポリエステル(例えばポリブチレンサクシネートやポリヒドロキシアルカノエート等)、及びポリヒドロキシアルカノエートの誘導体が挙げられる。本発明のパウダー組成物は、同様に、これらのタイプの化粧品において、その中のパウダー成分の一部又は全部の代わりに使用することができる。
【0026】
本発明のパウダー組成物は、発酵物及びアミノ酸誘導体の微粉化混合物を含む、それらから本質的になる、又はそれからなる。発酵物はパウダー組成物の約50重量%~99.9重量%の量で存在することができ、アミノ酸誘導体は組成物の約0.1重量%~50重量%の量で存在することができる。本発明の別の態様では、それぞれ、発酵物の量は約80%~約95%であり、アミノ酸誘導体の量は約5%~約20%重量%である。
【0027】
パウダー組成物は、化粧品で許容される1種以上の補助成分(例えば、所望の化粧品組成物に有利に含まれる成分等があるが、これらに限定されない)を含んでいてもよい。例えば、保存料、香料又は消臭剤を、主要成分と一緒に微粉化することによって、又は微粉化した発酵物とアミノ酸誘導体との混合物に後からブレンドされた一部として、のいずれかによって組み込むことができる。ある成分を本発明パウダー組成物に導入して、補助成分を省いた組成物から観察される機能とは異なる機能を得ることもできる。添加することができる補助成分の非限定的な例としては、固体/半固体油、例えば、シリコーン油、ペトロラタム、ラノリン、ミツロウ、キャンデリラロウ、スクワラン、エモリエント、エステル油、水溶性ポリマー、カルボワックス、ポリエチレングリコール、染料、無機及び有機顔料、保存料カクテル、グリセロール、フェネチルアルコール、カプリリルグリコール、安息香酸、フェノキシエタノール、ソルビン酸カリウム、pH調整剤、クエン酸、水酸化ナトリウム、酸化防止剤、香料、消臭剤、シクロデキストリン、紫外線吸収剤、無機・有機日焼け止め、酸化亜鉛、酸化チタン、アボベンゾン、皮膚活性剤、レチノール、ヒドロキシピナコロンレチノアート、レチナアルデヒド等が挙げられる。唯一の条件は、その補助成分がパウダー組成物やそれが含まれる化粧品組成物を損なったり劣化させたりしないことである。
【0028】
本発明の目的では、「発酵物」とは、発酵プロセスによって微生物から得られた当業者に公知の成分を意味すると理解されたい。発酵とは、酵素の作用により有機基質に化学変化を生じさせる代謝プロセスである。発酵プロセスは、微生物の使用を制御することによって起こる。酸素なしの状態での発酵では、糖(例えばグルコースやラクトース等)、ホエー又はプロピオン酸等を、ポリエステルに変換することができる。本発明による発酵のプロセスにより、ポリエステル形態の再生可能で生分解性であるバイオベースのポリマークラスが得られる。そのように得られるポリエステル生成物の1つは、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)と呼ばれ、より具体的にはポリヒドロキシブチレートの誘導体である。この発酵固体ポリエステル抽出物のバイオマス回収には、殺菌、微生物の溶解、微生物断片からのPHAの単離、遠心分離やフィルタープレスによる濃縮、及び水洗を経て精製された粒状のPHAを得た後、乾燥する必要がある。得られた乾燥発酵固体は、好ましくはPHA誘導体であり、本発明で使用される。本発明で得られる発酵物は固体であり、融点は150℃~180℃である。本発明の別の態様では、発酵及び抽出プロセスの結果得られる発酵物又は生成物は、BioMateria社、Bio-on社、Danimer Scientific社、TianAn Biologic社、Tianjin GreenBio社、Metabolix社、Mango Materials社等より市販されているものである。
【0029】
発酵物を提供するのに有用なこのような微生物の1つは、サッカロミセス(Saccharomyces)属に属する酵母の一種である。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のような微生物は、「パン酵母」としても知られ、1万年前からワイン、ビール、パン、ビネガー及び他の商品の生産に使用されてきた。近年では、この発酵プロセスを利用して、元来生分解性であるバイオベースの原料を製造することができるようになった。
【0030】
幾つかの実施形態では、PHAは、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、ポリヒドロキシブチレートバレレート(PHBV)、若しくはポリヒドロキシヘキサノエート(PHH)、又は前記の誘導体及び/若しくはそれらの組合せである。当業者に公知の通り、ポリヒドロキシアルカノエート及び誘導体の発酵に関与する他の微生物としては、細菌起源、例えば、カプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)、アルカリゲネス・レータス(Alcaligenes latus)、アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、及びエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromona hydrophila)が挙げられるが、それらだけに限らない。当技術分野で公知の遺伝子組換え生物もまた、PHAを生成するための供給原料を発酵するために使用することができる。更なる実施形態では、好適な発酵物又はPHAは、以下のポリマー及び/又はコポリマー構造のうちの少なくとも1つを含むものである:ポリ-3-ヒドロキシブチレート(P-3HB)、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート(P-3HB-3HV)、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート(P-3HB-4HB)及びポリ-3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-4-ヒドロキシブチレート(P-3HB-3HV-4HB)。米国特許出願公開第2020/0268637号も参照されたく、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
本発明のパウダー組成物の第2成分は、アミノ酸誘導体である。好ましいアミノ酸誘導体としては、N-アシル化アミノ酸、例えばアシル基がアミド結合と炭素原子数2~15のアルキルを表すN-アシル化リジン誘導体、より具体的にはN6-ラウロイル-L-リジン及びN6-カプリロイル-L-リジン等が挙げられる。N-アシル化アミノ酸は、生分解性であることが知られている。N-アシル化アミノ酸は、天然起源であっても合成起源であってもよい。市販のN-アシル化アミノ酸の非限定的な例としては、N6-ラウロイル-L-リジン(ラウロイルリジン)やN6-カプリロイル-L-リジン、ウンデシレノイルフェニルアラニンやウンデシレノイルグリシン等のN-ウンデシレノイルアミノ酸、パルミトイルアルギニン、パルミトイルグリシン、パルミトイルプロリン、パルミトイルセリン、及びパルミトイルリシルアミノバレロイルリシン等のN-パルミトイルアミノ酸、N-ココイルグルタミン酸等のN-ココイルアミノ酸、カプリロイルグリシンやカプリロイルセリン等のN-カプリロイルアミノ酸、アセチルシステイン、アセチルグルタミン酸、アセチルグルタミン、及びジエチルアセチルアスパラギン酸等のN-アセチルアミノ酸、並びにオレオイルチロシン、ラウロイルアスパラギン酸、ステアロイルグルタミン酸等が挙げられる。
【0032】
N-アシル化リジン及びその誘導体で微粒子パウダーを処理すると、化粧品組成物ののびが良くなり、見た目や肌触りが良くなる。また、N6-ラウロイル-L-リジンでこれらの微粒子パウダーを処理することにより得られるもう一つの利点はその疎水性であり、これはPHAのみを使用した場合では得られない。融合型パウダー複合体は、パウダーが化粧品配合物の水相へと移行するのを防ぐのに役立つ。また、融合型複合体により、化粧品配合物全体の懸濁性が向上し、より均質なものとなる。この配合物の疎水性と均質性により、配合物の親和性が向上し、より安定性があり長持ちするものになる。
【0033】
本発明の重要な特徴は、N-アシル化リジン及び誘導体による組成物の処理により、未処理パウダーの流動挙動を向上させる能力である。本明細書に記載の範囲(特に5~20重量%のとき)のN-アシル化リジン及び誘導体を、発酵物/ポリヒドロキシアルコネートに添加し一緒に微粉化したところ、製造及び加工時の流動性を促進した、即ちケーキング、粘着性及び凝集が無かった。これに対し、発酵物パウダー又はポリヒドロキシアルカノエートパウダー単体のみでは、流動性が悪く、自己凝集するため、化粧品配合物に配合しにくくなる。本発明の組成物は、好ましくは、自由流動性のあるパウダーである。
【0034】
本発明は、配合し易く且つ有益なパウダーの需要に応えるものである。このパウダー混合物若しくは複合体は、クリーミング若しくは沈降(sedimentation)、凝集(flocculation)、合体(coalescence)若しくは分離、スウェッティング(sweatting)、又は望ましくない粘度変化を生じることなく、配合物に組み込むことが容易である。これらの挙動は、配合物が不安定になるときに一般的に観察されるものである。本発明のパウダー組成物は、粒子の変形、溶融、又は相分離が起こることなく、ホットプロセス又はコールドプロセスを介して任意の特定の化粧品配合物に組み込まれる汎用性を有することが判明した。本発明の特に有利な側面は、予備分散を必要とせず、化粧品配合物に後添加できることである。例えば、ある種のパウダーは、配合物に添加すると塊になり易いため、パウダーの取り込みを補助するための追加工程が必要であった。
【0035】
また、本発明におけるパウダー複合体は、皮膚に対して良好な親和性を示し、完成した化粧品配合物を塗布した時のテクスチャーをより好ましいものにする。本発明のパウダー組成物は、より良好な滑らかさや滑り感(slip and glide)を有し、潤滑性が増していることがわかる。本明細書に記載のパウダー混合物又は複合体が約1~約50重量%の量で含まれ得る化粧品又はパーソナルケア組成物において、吸収性はスキンオイル(skin oil)の吸収を可能にし、より滑らかなつけ心地と付着性の低減を証明している。本発明のパウダー複合体は、過度の実験をすることなく、当業者が望むならば、化粧品組成物中に前述の範囲を下回る若しくは上回る量で含まれ得ることが更に考えられる。
【0036】
本発明におけるパウダー複合体は、完成した化粧品配合物を塗布した時に、光沢を抑えマット感を出すといった望ましい光学特性を発揮する。当業者に知られているこの挙動は、ソフトフォーカスと呼ばれる。得られた化粧品は、加齢による皮膚のしわの欠点を目立たなくすることができるので、化粧品配合物中に本発明の混合物が存在することが少なくとも一助となり、皮膚の見た目を若くすることができる。
【0037】
本発明はまた、ボディパウダー組成物にも関するものである。ボディパウダーは、化粧品産業において使用され、吸湿、防臭、冷却感、及び皮膚のひりひり感や発疹からの保護用として、販売されている。卵巣癌とタルカムパウダーとの関連性が指摘されているため、同等の性能を有するタルクフリーのボディパウダーの模索が続けられている。本発明の目的は、ボディパウダー組成物で使用するタルカムパウダーの代替物を提供することである。更に、タルカムパウダーは、配合物中の充填剤及び吸収剤として作用する。タルカムパウダーを含む用品は、製品の絹のような高級感を失わせる原因となる。その他、従来からボディパウダー組成物に配合されている成分として、香料、色素、薬剤、抗菌剤等がある。本発明のこの態様のボディパウダーの例としては、微粉化された発酵物及びアミノ酸誘導体を含有する本明細書に記載のパウダー組成物を約50~約99重量%含むものが挙げられる。残りの成分としては、約1~約50重量%のコーンスターチ、又はコーンスターチと化粧品に許容される他の補助成分との混合物を含むことができる。或いは、幾つかの好適なボディパウダー組成物は、約70~約99重量%の本発明のパウダー組成物及び約1~約30重量%のコーンスターチ又はコーンスターチ混合物を含むことができる。
【0038】
香水成分の例としては、当技術分野で知られている3つの主要なグループのうち1種以上の成分が挙げられるが、それらに限定されない。塗布した時に急速に消散する傾向があるトップノート、つけてから数時間かけて消散するミドルノート、及びつけてから1日かけてゆっくりと消散するベースノートである。トップノートの例としては、レモン、グレープフルーツ、ラベンダーが、ミドルノートの例としては、ゼラニウム、カモミール、シナモンが、ベースノートの例としては、ティーツリー、ユーカリ、バニラ等が、それぞれ挙げられる。本発明のこれらの態様において、香水又はコロンに含まれる本発明の混合物の量は、組成物全体の約0.01~約1.0重量%であり得る。
【0039】
光沢計
光沢を測定するための道具として、光沢計がある。光沢計は、反射光の量を測定するために使用される道具であり、表面に光線を投射し、反対側の等しい角度から光線の強度を測定することによって行われる。この測定値はグロスユニット(GU)で記録され、値が高いほど反射率が高くて光沢のある表面を示し、値が低いほどマットな表面であることを示す。GUを測定できる角度は様々だが、60°の角度に統一した。光沢を測定する手順は、5ミルのドローダウンバーを使用してレネタ紙のシート上に化粧品配合物(cosmetic formula)を塗布することにより行った。迅速かつ安定した動きでドローダウンバーを紙の端に向かって下方に引く際に、配合物が塗布された。2~24時間自然乾燥させた後、光沢計で測定した。測定は3連で行った。
【0040】
摩擦係数
摩擦係数とは、物質が2つの基材の間で受ける抵抗の大きさを示す値である。摩擦係数には、静止摩擦係数と動摩擦係数の2種類がある。静止摩擦は物体の移動を開始するのに必要な力であり、動摩擦はその移動を維持するのに必要な力である。動摩擦係数は、滑走力や潤滑力とみなすこともでき、値が小さいほど物体が滑り易いことを示す。パウダーに適したASTMメソッドがないため、ASTM-D1894「Standard Test Method for Static and Kinetic Coefficients of Friction of Plastic Film and Sheeting」を、パウダーの摩擦係数を測定するように修正した。サンプルの厚み、試験速度、距離、値の計算等、全ての試験パラメータを統一して実施した。摩擦測定には、摩擦係数測定用のスレッド(sled)を取り付けたテクスチャーアナライザー(Texture Analyzer TA.XT Plus)を使用した。簡単に説明すると、イソプロパノールに4重量%のパウダーを入れて調製し、5ミル・ドローダウンバーでレネタ紙に塗布し、迅速かつ安定した動きで下に引いた。フィルムを一晩自然乾燥し、摩擦係数を評価した。本発明の多くの態様では、パウダー組成物の摩擦係数は、約0.1~約0.8、好ましくは約0.1~約0.3である。
【0041】
スパチュラ・ラブアウト法によるパウダーの吸液性
ASTM-D281は、スパチュラ・ラブアウト法によるパウダーの吸液性の測定を扱う方法である。この方法で得られた値は、パウダーをパウダーペーストに使用する場合のパウダーのビヒクル要求量に関する情報を与える。吸液性の値は、複数種のパウダー又は所与のパウダーのバッチを特徴付けるために使用することができる。
【0042】
0.5g又はその倍数に正確に秤量した自然乾燥パウダーを、ガラス板又は大理石板の上に置いた。ピペット及びゴム球と液体入り滴下瓶で0.01gの精度まで秤量する。液体を(ピペットで)一滴ずつ徐々にパウダーに添加する。一滴ずつ加える度に、スパチュラで練り上げてオイルを十分になじませる。十分な量のオイルが顔料と混ざり合い、非常に硬い、パテのようなペースト状の「ボール」ができ、壊れたり分かれたり汚れたりすることがなければ、テストは完了である。ボトル及び液体を0.01gの精度で秤量し、使用したオイルの重量を差で判断する。テストに使用した液体及びパウダーの重量から、パウダー100gあたりの液体の湿重量を正確なグラム単位まで計算する。
【実施例
【0043】
一般的手順
試験例1~5及び試験例7は、この一般的手順に従って行った。PHA発酵物及びN6-ラウロイルリジンを、市販のワーリングブレンダー(Waring Commercial Blender) MX1200型式のような反応容器に添加した。ブレンダーは、64オンスのステンレス容器及びK型熱電対が付いたデジタル温度計を備えていた。ブレンダーのパワーと温度は、可変速コントローラを用いて手動で制御した。混合物を105℃~165℃に達するまで混合し、微粉化した。その温度に達してから、目的の製品を得るために15分~3時間の保持時間が必要であった。パウダーを50Cに冷却し、ステンレス製のNo.200メッシュ(75ミクロン)で篩にかけ、容器に回収した。従って、粒子サイズは名目上80ミクロン未満であった。粒度分布分析では、1~10ミクロン(数)の範囲であると判定された。
【0044】
[試験例1]
PHA発酵物95部及びN6-ラウロイルリジン5部を、市販のワーリングブレンダーMX1200型式に添加した。可変速コントローラを使用。反応器の温度を150Cに到達させ、45分間保持した。パウダーを50℃に冷却し、ステンレス製のNo.200メッシュで篩にかけ、容器に回収した。摩擦係数を測定したところ0.232であり、パウダーは疎水性であった。
【0045】
[試験例2]
PHA発酵物90部及びN6-ラウロイルリジン10部を、市販のワーリングブレンダーMX1200型式に添加した。可変速コントローラを用いて、反応器の温度を150℃に到達させ、60分間保持した。パウダーを50℃に冷却し、ステンレス製のNo.200メッシュで篩にかけ、容器に回収した。摩擦係数を測定したところ0.229であり、パウダーは疎水性であった。
【0046】
[試験例3]
PHA発酵物90部及びN6-ラウロイルリジン10部を、市販のワーリングブレンダーMX1200型式に添加した。可変速コントローラを用いて、反応器の温度を107℃に到達させ、3時間保持した。パウダーを50℃に冷却し、ステンレス製のNo.200メッシュで篩にかけ、容器に回収した。摩擦係数を測定したところ0.226であり、パウダーは疎水性であった。
【0047】
[試験例4]
PHA発酵物85部及びN6-ラウロイルリジン15部を、市販のワーリングブレンダーMX1200型式に添加した。可変速コントローラを用いて、反応器の温度を150℃に到達させ、15分間保持した。パウダーを50℃に冷却し、ステンレス鋼のNo.200メッシュで篩にかけ、容器に回収した。摩擦係数を測定したところ0.231であり、パウダーは疎水性であった。
【0048】
[試験例5]
PHA発酵物80部及びN6-ラウロイルリジン20部を、市販のワーリングブレンダーMX1200型式に添加した。可変速コントローラを用いて、反応器の温度を150℃に到達させ、15分間保持した。パウダーを50℃に冷却し、ステンレス製のNo.200メッシュで篩にかけ、容器に回収した。摩擦係数を測定したところ0.221であり、パウダーは疎水性であった。
【0049】
[試験例6]
PHA発酵物70部及びN6-ラウロイルリジン30部を、市販のワーリングブレンダーMX1200型式に添加した。可変速コントローラを用いて、反応器の温度を150℃に到達させ、60分間保持した。パウダーを50℃に冷却し、ステンレス製のNo.200メッシュで篩にかけ、容器に回収した。摩擦係数を測定したところ、0.193であり、パウダーは疎水性であった。
【0050】
[試験例7](比較例)
サッカロミセス発酵物90部及びN6-ラウロイルリジン10部を、市販のワーリングブレンダーMX1200型式に60分間かけて添加した。混合物を微粉砕し、均質な混合物が得られるまで60℃未満で混合した。ブレンダーのパワー及び温度は、可変速コントローラを用いて手動で制御した。パウダーをステンレス鋼のNo.200メッシュ(75ミクロン)で篩にかけ、容器に回収した。従って、粒子径は名目上80ミクロン未満であった。摩擦係数は0.268で、このパウダーは疎水性ではなかった。このパウダーは自由流動性がなく、化粧品への配合が困難であり、配合安定性が低いことが判明した。
【0051】
[試験例8](比較例)
サッカロミセス発酵物100部を、市販のワーリングブレンダーMX1200型式に添加した。反応器の温度を140Cに到達させ、15分間保持した。パウダーを50℃に冷却したが、篩にかけることができなかった。このパウダーは、この一般的手順では、自由流動性がなく、一緒に溶けてしまっていた。
【0052】
【表1】
【0053】
パウダーの評価
パウダーを200メッシュ(75ミクロン)に通し、望ましくない大きな微粒子を除去した。この実験では、疎水性パウダーは、水に分散しないパウダーとして定義された。ここで、正の符号(+)は疎水性であり、負の符号(-)は水中に分散しない。パウダーの相対的な疎水性は、定性的に決定することができる。これは、1グラムのパウダーを取り、10グラムの水を4オンスの瓶に加えることによって行われた。内容物をスパチュラで攪拌した。水中で分散せず、浮いたままのパウダーは疎水性とラベル付けした。この疎水性は、最終的なパウダーの望ましい特性であった。
【0054】
滑らかさは、皮膚に塗布した時に滑りやすいものとして定義した。ここで、スケールを1~3とした。あまり滑らかでない場合はスケール1とし、非常に滑らかである場合はスケール3とした。滑らかさは、触覚の訓練を受けた人員によって評価された。
【0055】
【表2】
【0056】
比較例が、見分けがつくものであったことがわかる。試験例6の場合、単に物理的にブレンドしたものは、I摩擦係数が低いにもかかわらず、疎水性及び平滑特性が乏しかった、即ち、テクスチャー挙動は強化されなかった。比較例7もまた、パフォーマンス属性は強化されなかった。
【0057】
【0058】
結論として、パウダーに吸水性を殆ど若しくは全く持たせないことが望ましいとされた。このプロセスにより、物理的にブレンドしたものと比較して、摩擦係数が非常に低く、吸水性のないユニークな製品が得られた。
【0059】
配合物の例
天然成分を配合した配合物
現在、化粧品及びパーソナルケアの世界市場では、持続可能な、100%バイオベース且つ生分解性である配合物に対する需要が高まってきている。以下の適用例は、この需要を満たすものであり、試験例8~16の組成物は100%天然由来であった。
【0060】
[試験例8]-フェイスセラム
化粧用品のソフトフォーカス効果やシワぼかし効果の評価。美容液配合物への後添加は、添加し易さ及び質感の向上を見せる。ソフトフォーカス効果は、使用するオイルの選択によって異なり得る。揮発性オイルと不揮発性オイルを同じタイプの用品で評価した。
【0061】
試験例2のパウダー複合体と表2の下記組成からなるフェイスセラムを下記に従って調製した。
【0062】
【表3】
【0063】
表3-試験例2のパウダー入り揮発性エマルジョン(試験例8A)、パウダーなしの揮発性エマルジョン(試験例8B)、試験例2のパウダー入り不揮発性エマルジョン(試験例8C)、及びパウダーなしの不揮発性エマルジョン(試験例8D)の配合物。光沢計で測定したグロスユニット(GU)。
【0064】
A相に記載された成分を合わせ、60~65℃に加熱し、Greercoホモジナイザーを使用して、均質になるまで混合した。B相に記載された成分を別の容器で合わせ、60~65Cに加熱し、均質になるまで混合した。A相の混合中にB相を加え、エマルジョンが均質になるまで混合する。装置をアンカーブレードタイプのミキサーに切り替える。C相をAB相に添加し、均質になるまで混合した。
【0065】
パウダーなしの揮発性エマルジョンのグロスユニットの値が高いことは、皮膜が光沢のあるものであることを示す。パウダー入り揮発性エマルジョンの光沢計の値は、テカリを抑えた即ちマット効果の高い皮膜を示している。この結果は、揮発性エマルジョン中のパウダーがソフトフォーカス粒子として適していたことを示している。パウダーなしの不揮発性エマルジョンのグロスユニットの値が高いことは、皮膜が非常に光沢のあるものであることを実証している。パウダー入り不揮発性エマルジョンの光沢計の値は、テカリを抑えた若しくはマット効果の高い皮膜であることを示している。この結果から、パウダー入り不揮発性エマルジョンのパウダーは、この種の系においてもソフトフォーカス粒子として使用するのに適していたことを示す。
【0066】
[試験例9]フェイスクリーム
試験例2のパウダー複合体と表4の下記組成からなるフェイスクリームを、下記に従って調製した。
【0067】
【表4】
【0068】
A相に記載された成分を合わせ、70~75℃に加熱し、Greercoホモジナイザーを使用して、均質になるまで混合した。B相に記載された成分を別の容器で合わせ、70~75℃に加熱し、均質になるまで混合した。A相の混合中にB相を加え、エマルジョンが均質になるまで混合した。装置をアンカーブレードタイプのミキサーに切り替え、混合しながら室温まで冷ました。
【0069】
[試験例10]SPF30のナチュラル日焼け止めローション
試験例2のパウダー複合体と表5の下記組成物からなるSPF30の日焼け止めローションを下記に従って調製した。
【0070】
【表5】
【0071】
A相に記載された成分を、Greercoホモジナイザーを使用して合わせ、均質になるまで混合した。B相から、ヘクトライトをプロパンジオールと混合してスラリーを調製した。B相に記載された成分を別の容器で合わせ、均質になるまで混合した。ヘクトライトとプロパンジオールのスラリーをB相に加えた。A相を混合している間にB相を加え、エマルジョンが均質になるまで混合した。装置をアンカーブレードタイプのミキサーに切り替え、室温まで冷ました。
【0072】
[試験例11]ムースファンデーション
試験例2のパウダー複合体と表6の下記組成からなるムースファンデーションを下記に従って調製した。
【0073】
【表6】
【0074】
A相に記載された成分を、Greercoホモジナイザーを使用して合わせ、均質になるまで混合した。B相に記載された成分を別の容器で合わせ、色が均質になるまで微粉砕した。C相から、ヘクトライトをグリセリンと混合し、スラリーを調製した。C相に記載された成分を、3本爪のプロペラを使用して別の容器で合わせ、均質になるまで混合した。ヘクトライトとグリセリンのスラリーをC相に加えた。D相に記載された成分を別の容器で混合し、C相に加えた。AB相を混合している間にCD相を加え、エマルジョンが均質になるまで混合した。装置をアンカーブレードタイプのミキサーに切り替え、E相を容器に添加した。試験例11B、11C及び11Dに記載された配合物に対し、アンカーブレードタイプのミキサーでF相を添加した。粘度は、ブルックフィールドDMI+粘度計を用い、25℃、スピンドルT-F、速度0.6RPMで評価した。
【0075】
ムースファンデーションでは、乳化系は、様々なグリセリル脂肪酸エステル(例えば、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3、ジステアリン酸ポリグリセリル-6、ジパルミチン酸ポリグリセリル-10、ベヘン酸ポリグリセリル-3等があるがこれらに限定されない)も含み得る。
【0076】
表6に見られるように、パウダーの割合が増加するにつれて、粘度も増加し、より安定した配合物となる。配合物の粘度が増加するにつれて、マットな外観、カバー力、及び色強度が同等に段階的に向上した。更に、色移りしにくく化粧崩れしにくいだけでなく、塗布した後の滑り感、ソフト感、パウダリー感等にみられるような質感が目に見えるように改善された。
【0077】
光沢計を使用して、各用品の光沢比%(Relative Shine)について評価した。試験例2のパウダー複合体の重量%が増加するにつれて、光沢比の低下が見られた。結果を図1に示した。
【0078】
[試験例12]アイシャドウ
試験例1のパウダー組成物と表7の下記組成からなるアイシャドウを下記に従って調製した。
【0079】
【表7】
【0080】
A相に記載された成分を合わせ、70~75℃に加熱し、Greercoホモジナイザーを使用して、均質になるまで混合した。B相に記載された成分を別の容器で合わせ、70~75℃に加熱し、均質になるまで混合した。A相を混合している間にB相を加え、エマルジョンが均質になるまで混合した。C相に記載されている成分をAB相に順次添加した。装置をアンカーブレードタイプのミキサーに切り替え、混合しながら室温まで冷ました。
【0081】
表6のアイシャドウ配合組成ベースを用いて、C相の顔料を、他の鉱物由来の顔料に単純に置き換えることによって、ハイライターも作った。これらは、ジェムトーン(Gemtone)Tan Opal(BASF社)及びチミロンスーパーシルバー(Timiron Super Silver)(メルクパフォーマンスマテリアルズ合同EM会社)及び十分な量の水であった。表6の組成は、樹脂ポリマーの不在下でも、長持ちし且つ色移りしにくい配合物の別の例であった。
【0082】
[試験例13]プライマー
試験例2のパウダー複合体と表8の下記組成からなるプライマーを下記に従って調製した。
【0083】
【表8】
【0084】
A相に記載された成分を、3本爪のプロペラ付きミキサーを用いて合わせ、均質になるまで混合した。
【0085】
表7の配合は、シリコーンの優れた感触を模倣した例である。エラストマー又はパウダー形態のシリコーンは、皮膚上でシルクのような、クッション性のある滑らかなパウダリー感を示す。このプライマーは、100%天然由来でありながら、肌に塗布した時に同じ特性を示す。
【0086】
[試験例14]アイライナー
試験例2のパウダー組成物と表9の下記組成からなるアイライナーを以下に従って調製した。
【0087】
【表9】
【0088】
A相に記載された成分を合わせ、70~75℃に加熱し、Greercoホモジナイザーを使用して、均質になるまで混合した。B相に記載された成分を別の容器で合わせ、70~75℃に加熱し、均質になるまで混合した。A相を混合している間にB相を加え、エマルジョンが均質になるまで混合する。C相に記載されている成分をAB相に順次添加した。装置をアンカーブレードタイプのミキサーに切り替え、混合しながら室温まで冷ました。
【0089】
また、表9のアイライナー配合組成物ベースを使用してマスカラを作り、ここでマスカラの要件を達成するために適切な割合で酸化鉄(CI 77499)をカーボンブラックに置き換えた。ここでは、カーボンブラックに限らず、さまざまな種類の天然由来の鉱物を利用した系で、より優れた複合パウダーが見られた。この配合物の時間経過を観察すると、長時間崩れにくく且つ色移りしにくくなっていた。
【0090】
[試験例15]リップスティック
試験例2のパウダー複合体及び以下の表10の組成からなるリップスティックを以下のように調製した。
【0091】
【表10】
【0092】
A相に記載された成分を合わせ、3本爪のプロペラ付きミキサーを用いて90~95Cに加熱し、均質になるまで混合した。サンプルを70~75Cのリップスティック成分に注いだ。
【0093】
表9のリップスティック配合物に試験例2の新規複合パウダーを添加すると、蜜蝋、キャンデリラ及びカルナウバワックス等の天然由来のワックス並びにスイートアーモンド及びココナッツオイル等の天然由来の植物油を含むこれらのタイプの無水系においてより高い親和性を示す。パウダーは、懸濁性が高いので配合し易いため、スウェッティングが無く、配合物がより安定する。唇に塗ると、よりマットでクッション性のある仕上がりになった。
【0094】
合成組成物及び天然組成物を用いた配合物
[試験例16] SPF26の油中水型日焼け止め液
【0095】
【表11】
【0096】
表11- 試験例2のパウダーを含まない油中水型日焼け止め(試験例16A)、及び試験例2のパウダーを含む油中水型日焼け止め(試験例16B)の配合。Labsphere 2000で測定したSPF in-vitro。
【0097】
B相に記載された成分を合わせ、Greercoホモジナイザーを用いて80~85℃に加熱し、均質になるまで混合した。A相に記載された成分を合わせ、別の容器でプロペラを使用して70~75℃に加熱し、均質になるまで混合した。B相の混合中にA相を加え、エマルジョンが均質になるまで混合した。AB相を混合している間にC相を加え、均質になるまで混合した。装置をサイドスイープタイプのミキサーに切り替え、室温まで冷ました。
【0098】
日焼け止めのSPF値は、ミネラルであってもオーガニックであっても、日焼け止め有効成分が他の成分とどのように相互作用するか、また、これらの成分が配合物(formula)中のUVA及びUVBの遮断にどのように寄与できたかに大きく依存する。酸化亜鉛を含有する油中水型日焼け止めに試験例2のパウダーを添加すると、SPFの数値が2高くなった。
【0099】
[試験例17]ウォーターインシリコン日焼け止めクリームSPF30
試験例2のパウダー複合体及び表12の下記組成からなるSPF30の日焼け止めクリームを下記に従って調製した。
【0100】
【表12】
【0101】
表12- 試験例2のパウダーを含まないウォーターインシリコン日焼け止め(試験例17A)、及び試験例2のパウダーパウダーを含むウォーターインシリコン日焼け止め(試験例17B)の配合。Labsphere 2000で測定したSPF in-vitro。
【0102】
A相に記載された成分を、Greercoホモジナイザーを使用して合わせ、均質になるまで混合した。B相に記載された成分を、別の容器で3本爪のプロペラを使用して合わせ、均質になるまで混合した。A相を混合している間にB相を加え、エマルジョンが均質になるまで混合した。
【0103】
チタンと酸化亜鉛を含有するウォーターインシリコン日焼け止めに試験例2のパウダーを添加すると、SPFの数値が4高くなった。
【0104】
[試験例18]ボディパウダー
試験例3のパウダー複合体をボディパウダー組成物に使用した。試験例3を50部及びコーンスターチ50部を、タンブラーを用いて混合し、香料0.1部をボディパウダー組成物に添加してタンブラーで混合した。評価の結果、試験例16の組成物は、コーンスターチ100部と比較して、のびが良く、より滑らかであった。
図1
【国際調査報告】