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特表2023-542343エピレグリンおよびアンフィレグリンを用いた上皮増殖因子受容体指向性療法に対する応答の予測
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  • 特表-エピレグリンおよびアンフィレグリンを用いた上皮増殖因子受容体指向性療法に対する応答の予測 図1
  • 特表-エピレグリンおよびアンフィレグリンを用いた上皮増殖因子受容体指向性療法に対する応答の予測 図2A
  • 特表-エピレグリンおよびアンフィレグリンを用いた上皮増殖因子受容体指向性療法に対する応答の予測 図2B
  • 特表-エピレグリンおよびアンフィレグリンを用いた上皮増殖因子受容体指向性療法に対する応答の予測 図2C
  • 特表-エピレグリンおよびアンフィレグリンを用いた上皮増殖因子受容体指向性療法に対する応答の予測 図2D
  • 特表-エピレグリンおよびアンフィレグリンを用いた上皮増殖因子受容体指向性療法に対する応答の予測 図3
  • 特表-エピレグリンおよびアンフィレグリンを用いた上皮増殖因子受容体指向性療法に対する応答の予測 図4A
  • 特表-エピレグリンおよびアンフィレグリンを用いた上皮増殖因子受容体指向性療法に対する応答の予測 図4B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-06
(54)【発明の名称】エピレグリンおよびアンフィレグリンを用いた上皮増殖因子受容体指向性療法に対する応答の予測
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/574 20060101AFI20230929BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230929BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230929BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230929BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230929BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20230929BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230929BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230929BHJP
【FI】
G01N33/574 A
A61P35/00
A61K45/00
A61K39/395 T
A61P43/00 121
A61K31/4745
G01N33/53 Y
G01N33/574 D
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518111
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(85)【翻訳文提出日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 US2021050777
(87)【国際公開番号】W WO2022066512
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】62/706,988
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511286517
【氏名又は名称】ヴェンタナ メディカル システムズ, インク.
(71)【出願人】
【識別番号】514302621
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・リーズ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF LEEDS
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バイ, アイザック ユーユー
(72)【発明者】
【氏名】バレット, ジェニファー ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】エリオット, ファイユ
(72)【発明者】
【氏名】リュー, ウェン-ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】クワーク, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】リッチマン, スーザン ダイアン
(72)【発明者】
【氏名】セリグマン, ジェニファー フランセス
(72)【発明者】
【氏名】シーモア, マシュー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シャンムガム, カンダウェル
(72)【発明者】
【氏名】シン, シャリーニ
(72)【発明者】
【氏名】ウェスト, ニコラス ポール
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ, クリストファー ジェームズ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】チャン, リーピン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084AA20
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC412
4C084ZC511
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC51
4C086ZC75
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
抗EGFR療法に対する応答の予測を可能にする方法であって、アンフィレグリン(AREG)またはエピレグリン(EREG)を染色するための組織化学的または細胞化学的染色方法を含む方法が提供される。EREGおよびAREGのそれぞれについて腫瘍細胞陽性パーセントを決定し、決定された陽性パーセントを所定のカットオフと比較することを含み得るが、これらに限定されないスコアリングアルゴリズムが提供される。所定のカットオフは、陽性カットオフ(パーセンテージがカットオフ以上である場合、患者はEGFR指向性療法で処置される)、陰性カットオフ(パーセンテージがカットオフ未満である場合、患者はEGFR指向性療法で処置されない)、または陽性および陰性の両方のカットオフのいずれかであり得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍を有する患者を処置する方法であって、前記方法は、前記腫瘍がAREG HIGHまたはEREG HIGHのいずれかである場合、EGFR指向性治療剤を含む治療コースを前記患者に投与することであって、前記腫瘍が、第1の所定のカットオフ以上のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、前記腫瘍はAREG HIGHとみなされ、前記腫瘍が、第2の所定のカットオフ以上のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、前記腫瘍はEREG HIGHとみなされる、投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記第1の所定のカットオフが20%~50%の範囲内であり、前記第2の所定のカットオフが20%~50%の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の所定のカットオフが20%であり、前記第2の所定のカットオフが20%であるか、または、前記第1の所定のカットオフが25%であり、前記第2の所定のカットオフが25%であるか、または、前記第1の所定のカットオフが20%であり、前記第2の所定のカットオフが30%であるか、または、前記第1の所定のカットオフが25%であり、前記第2の所定のカットオフが33.3%であるか、または、前記第1の所定のカットオフが20%であり、前記第2の所定のカットオフが40%であるか、または、前記第1の所定のカットオフが25%であり、前記第2の所定のカットオフが50%である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記腫瘍が結腸直腸腫瘍である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記結腸直腸腫瘍が左側腫瘍である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記結腸直腸腫瘍が右側腫瘍である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記EGFR指向性治療剤が抗EGFRモノクローナル抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗EGFRモノクローナル抗体が、セツキシマブまたはパニツムマブである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記治療コースが、前記患者に化学療法を投与することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記化学療法がイリノテカンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記腫瘍が、EGFRモノクローナル抗体療法に対する抵抗性を付与する検出可能な量の突然変異を含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記腫瘍がRAS野生型(RAS-wt)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記腫瘍の試料がホルマリン固定パラフィン包埋組織切片である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
EREGを発現する腫瘍細胞のパーセンテージおよびAREGを発現する腫瘍細胞のパーセンテージが、自動化された方法によって定量される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
腫瘍を有する患者を処置する方法であって、前記方法は、前記腫瘍がAREG LOWおよびEREG LOWの両方である場合、EGFR指向性治療剤を含まない治療コースを前記患者に投与することであって、前記腫瘍が、第1の所定のカットオフ未満のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、前記腫瘍はAREG LOWであり、前記腫瘍が、第2の所定のカットオフ未満のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、前記腫瘍はEREG LOWとみなされる、投与することを含む、方法。
【請求項16】
前記第1の所定のカットオフが20%~50%の範囲内であり、前記第2の所定のカットオフが20%~50%の範囲内である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の所定のカットオフが20%であり、前記第2の所定のカットオフが20%であるか、または、前記第1の所定のカットオフが25%であり、前記第2の所定のカットオフが25%であるか、または、前記第1の所定のカットオフが20%であり、前記第2の所定のカットオフが30%であるか、または、前記第1の所定のカットオフが25%であり、前記第2の所定のカットオフが33.3%であるか、または、前記第1の所定のカットオフが20%であり、前記第2の所定のカットオフが40%であるか、または、前記第1の所定のカットオフが25%であり、前記第2の所定のカットオフが50%である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記腫瘍が結腸直腸腫瘍である、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記結腸直腸腫瘍が左側腫瘍である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記結腸直腸腫瘍が右側腫瘍である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記EGFR指向性治療剤が抗EGFRモノクローナル抗体である、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗EGFRモノクローナル抗体が、セツキシマブまたはパニツムマブである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記治療コースが、前記患者に化学療法を投与することを含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記化学療法がイリノテカンを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記腫瘍が、EGFRモノクローナル抗体療法に対する抵抗性を付与する検出可能な量の突然変異を含まない、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記腫瘍がRAS野生型(RAS-wt)である、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記腫瘍の試料がホルマリン固定パラフィン包埋組織切片である、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
EREGを発現する腫瘍細胞のパーセンテージおよびAREGを発現する腫瘍細胞のパーセンテージが、自動化された方法によって定量される、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
EGFR指向性治療剤を含む治療コースを受ける、腫瘍を有する患者を選択する方法であって、前記方法は、
(a)ヒトAREGタンパク質について前記腫瘍の試料を組織化学的または細胞化学的に染色することと、
(b)ヒトEREGタンパク質について前記腫瘍の試料を組織化学的または細胞化学的に染色することと、
(c)前記腫瘍の前記試料中のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを定量し、前記パーセンテージを第1の所定のカットオフと比較することと、
(d)前記腫瘍の前記試料中のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを定量し、前記パーセンテージを第2の所定のカットオフと比較することと、
を含み、
前記患者は、AREG+腫瘍細胞の前記パーセンテージが前記第1の所定のカットオフ以上であるか、またはEREG+腫瘍細胞の前記パーセンテージが前記第2の所定のカットオフ以上である場合、前記EGFR指向性治療剤を含む前記治療コースを受けるように選択される、方法。
【請求項30】
前記第1の所定のカットオフが20%~50%の範囲内であり、前記第2の所定のカットオフが20%~50%の範囲内である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の所定のカットオフが20%であり、前記第2の所定のカットオフが20%であるか、または、前記第1の所定のカットオフが25%であり、前記第2の所定のカットオフが25%であるか、または、前記第1の所定のカットオフが20%であり、前記第2の所定のカットオフが30%であるか、または、前記第1の所定のカットオフが25%であり、前記第2の所定のカットオフが33.3%であるか、または、前記第1の所定のカットオフが20%であり、前記第2の所定のカットオフが40%であるか、または、前記第1の所定のカットオフが25%であり、前記第2の所定のカットオフが50%である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記腫瘍が結腸直腸腫瘍である、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記結腸直腸腫瘍が左側腫瘍である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記結腸直腸腫瘍が右側腫瘍である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記EGFR指向性治療剤が抗EGFRモノクローナル抗体である、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記抗EGFRモノクローナル抗体が、セツキシマブまたはパニツムマブである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記治療コースが、前記患者に化学療法を投与することを含む、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記化学療法がイリノテカンを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記腫瘍が、EGFRモノクローナル抗体療法に対する抵抗性を付与する検出可能な量の突然変異を含まない、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記腫瘍がRAS野生型(RAS-wt)である、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記腫瘍の前記試料がホルマリン固定パラフィン包埋組織切片である、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
EREGを発現する腫瘍細胞のパーセンテージおよびAREGを発現する腫瘍細胞のパーセンテージが、自動化された方法によって定量される、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
EGFR指向性治療剤を含まない療法を受ける、腫瘍を有する患者を選択する方法が提供され、前記方法は、
(a)ヒトAREGタンパク質について前記腫瘍の試料を組織化学的または細胞化学的に染色することと、
(b)ヒトEREGタンパク質について前記腫瘍の試料を組織化学的または細胞化学的に染色することと、
(c)前記腫瘍の前記試料中のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを定量し、前記パーセンテージを第1の所定のカットオフと比較することと、
(d)前記腫瘍の前記試料中のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを定量し、前記パーセンテージを第2の所定のカットオフと比較することと、
を含み、
前記患者は、AREG+腫瘍細胞の前記パーセンテージが前記第1の所定のカットオフ未満であり、EREG+腫瘍細胞の前記パーセンテージが前記第2の所定のカットオフ未満である場合、前記EGFR指向性治療剤を受けるように選択される、方法。
【請求項44】
前記第1の所定のカットオフが20%~50%の範囲内であり、前記第2の所定のカットオフが20%~50%の範囲内である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記第1の所定のカットオフが20%であり、前記第2の所定のカットオフが20%であるか、または、前記第1の所定のカットオフが25%であり、前記第2の所定のカットオフが25%であるか、または、前記第1の所定のカットオフが20%であり、前記第2の所定のカットオフが30%であるか、または、前記第1の所定のカットオフが25%であり、前記第2の所定のカットオフが33.3%であるか、または、前記第1の所定のカットオフが20%であり、前記第2の所定のカットオフが40%であるか、または、前記第1の所定のカットオフが25%であり、前記第2の所定のカットオフが50%である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記腫瘍が結腸直腸腫瘍である、請求項43~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記結腸直腸腫瘍が左側腫瘍である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記結腸直腸腫瘍が右側腫瘍である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記EGFR指向性治療剤が抗EGFRモノクローナル抗体である、請求項43~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記抗EGFRモノクローナル抗体が、セツキシマブまたはパニツムマブである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
処置コースが、前記患者に化学療法を投与することを含む、請求項43~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記化学療法がイリノテカンを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記腫瘍が、EGFRモノクローナル抗体療法に対する抵抗性を付与する検出可能な量の突然変異を含まない、請求項43~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記腫瘍がRAS野生型(RAS-wt)である、請求項43~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記腫瘍の前記試料がホルマリン固定パラフィン包埋組織切片である、請求項43~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
EREGを発現する腫瘍細胞のパーセンテージおよびAREGを発現する腫瘍細胞のパーセンテージが、自動化された方法によって定量される、請求項43~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
腫瘍を有する患者を処置する方法であって、前記方法は、
(a)前記腫瘍がAREG HIGHまたはEREG HIGHのいずれかである場合、EGFR指向性治療剤を前記患者に投与することであって、前記腫瘍が、第1の所定の陽性カットオフ以上のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、前記腫瘍はAREG HIGHとみなされ、前記腫瘍が、第2の所定の陽性カットオフ以上のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、前記腫瘍はEREG HIGHとみなされる、投与することと、
(b)前記腫瘍がAREG LOWおよびEREG LOWの両方である場合、EGFR指向性治療剤を含まない療法コースを前記患者に投与することであって、前記腫瘍が、第1の所定の陰性カットオフ未満のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、前記腫瘍はAREG LOWとみなされ、前記腫瘍が、第2の所定の陰性カットオフ未満のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、前記腫瘍はEREG LOWとみなされる、投与することと、
を含む、方法。
【請求項58】
前記第1の所定の陽性カットオフが30%~50%の範囲内であり、前記第1の所定の陰性カットオフが20%~30%の範囲内である、および/または前記第2の所定の陽性カットオフが30%~50%の範囲内であり、前記第2の所定の陰性カットオフが20%~30%の範囲内である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記第1の所定の陽性カットオフが50%であり、前記第1の所定の陰性カットオフが20%であり、前記第2の所定の陽性カットオフが50%であり、前記第2の所定の陰性カットオフが20%である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記腫瘍が結腸直腸腫瘍である、請求項57~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記結腸直腸腫瘍が左側腫瘍である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記結腸直腸腫瘍が右側腫瘍である、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記EGFR指向性治療剤が抗EGFRモノクローナル抗体である、請求項57~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記抗EGFRモノクローナル抗体が、セツキシマブまたはパニツムマブである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記療法コースが、前記患者に化学療法を投与することを含む、請求項57~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記化学療法がイリノテカンを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記腫瘍が、EGFRモノクローナル抗体療法に対する抵抗性を付与する検出可能な量の突然変異を含まない、請求項57~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記腫瘍がRAS野生型(RAS-wt)である、請求項57~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記腫瘍の試料がホルマリン固定パラフィン包埋組織切片である、請求項57~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
EREGを発現する腫瘍細胞のパーセンテージおよびAREGを発現する腫瘍細胞のパーセンテージが、自動化された方法によって定量される、請求項57~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
腫瘍を有する患者の処置を選択する方法であって、前記方法は、
(a)ヒトAREGタンパク質について前記腫瘍の試料を組織化学的または細胞化学的に染色することと、
(b)ヒトEREGタンパク質について前記腫瘍の試料を組織化学的または細胞化学的に染色することと、
(c)前記腫瘍の前記試料中のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを定量し、前記パーセンテージを第1の所定の陽性カットオフおよび第1の所定の陰性カットオフと比較することと、
(d)前記腫瘍の前記試料中のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを定量し、前記パーセンテージを第2の所定の陽性カットオフおよび第2の所定の陰性カットオフと比較することと、
(e)前記腫瘍がAREG HIGHまたはEREG HIGHのいずれかである場合、EGFR指向性治療剤を含む処置コースを受けるように前記患者を選択することであって、AREG+腫瘍細胞の前記パーセンテージが前記第1の所定の陽性カットオフ以上である場合、前記腫瘍はAREG HIGHとみなされ、EREG+腫瘍細胞の前記パーセンテージが前記第2の所定の陽性カットオフ以上である場合、前記腫瘍はEREG HIGHとみなされる、選択することと、
(f)前記腫瘍がAREG LOWおよびEREG LOWの両方である場合、EGFR指向性治療剤を含まない処置コースを受けるように前記患者を選択することであって、AREG+腫瘍細胞の前記パーセンテージが前記第1の所定の陰性カットオフ未満である場合、前記腫瘍はAREG LOWとみなされ、EREG+腫瘍細胞の前記パーセンテージが前記第2の所定の陰性カットオフ未満である場合、前記腫瘍はEREG LOWとみなされる、選択することと、
を含む、方法。
【請求項72】
前記第1の所定の陽性カットオフが30%~50%の範囲内であり、前記第1の所定の陰性カットオフが20%~30%の範囲内である、および/または前記第2の所定の陽性カットオフが30%~50%の範囲内であり、前記第2の所定の陰性カットオフが20%~30%の範囲内である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記第1の所定の陽性カットオフが50%であり、前記第1の所定の陰性カットオフが20%であり、前記第2の所定の陽性カットオフが50%であり、前記第2の所定の陰性カットオフが20%である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記腫瘍が結腸直腸腫瘍である、請求項71~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記結腸直腸腫瘍が左側腫瘍である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記結腸直腸腫瘍が右側腫瘍である、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記EGFR指向性治療剤が抗EGFRモノクローナル抗体である、請求項71~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記抗EGFRモノクローナル抗体が、セツキシマブまたはパニツムマブである、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記処置コースが、前記患者に化学療法を投与することを含む、請求項71~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記化学療法がイリノテカンを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記腫瘍が、EGFRモノクローナル抗体療法に対する抵抗性を付与する検出可能な量の突然変異を含まない、請求項71~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記腫瘍がRAS野生型(RAS-wt)である、請求項71~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記腫瘍の前記試料がホルマリン固定パラフィン包埋組織切片である、請求項71~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
EREGを発現する腫瘍細胞のパーセンテージおよびAREGを発現する腫瘍細胞のパーセンテージが、自動化された方法によって定量される、請求項71~73のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月22日に出願された米国仮特許出願第62/706,988号の出願日の利益を主張し、その開示は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、上皮増殖因子受容体(EGFR)指向性療法に対する応答を予測するための組織化学的または細胞化学的方法、システムおよび組成物に関する。本開示はまた、EREG指向性治療剤に対する応答を予測するために組織学または細胞学標本を解析する方法に関する。より詳細には、本開示は、アンフィレグリン(AREG)に対して陽性の腫瘍の試料中の腫瘍細胞のパーセンテージおよびEREGに対して陽性の腫瘍の試料中の腫瘍細胞のパーセンテージの両方に基づく、EGFR指向性治療剤に対する応答の予測に使用するためのスコアリング方法に関する。
共同研究契約の参照
【0003】
本出願は、Ventana Medical Systems,Inc.とUniversity of Leedsとの間の共同研究契約の1または複数の当事者によってまたはそれらを代表して行われた。
【背景技術】
【0004】
結腸癌患者の約20%は、転移性結腸直腸癌(mCRC)を呈する。これらの患者の半数超(50~60%)はやがて不治の進行疾患を発症し、その5年生存率はおよそ12.5%である。mCRCにおいては、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)経路および上皮増殖因子受容体(EGFR)経路という2つのシグナル伝達経路が、治療薬開発の焦点となっている。現在、mCRC患者の大多数は、EGFR標的療法またはVEGF標的療法のいずれかと組み合わせた細胞傷害性化学療法を受ける。EGFRは、CRC症例の約70%において過剰発現され、アウトカム不良と関連付けられている。セツキシマブまたはパニツムマブなどのモノクローナル抗体によるEGFRを標的とした阻害は、mCRC患者を処置するために2004年および2006年にFDAによって承認された。両方の薬物は、10~15%の奏効率で非常に類似した有効性を有する。
【0005】
EGFR指向性療法に対する応答性に関する信頼性ある正の予測因子は、長らく存在していない。
【0006】
臨床試験では、EGFR阻害剤が、RAS経路突然変異を欠いている患者において最も有効であることが示されている。KRAS、NRAS、およびBRAFなどのRASシグナル伝達経路のメンバーにおける点突然変異は、EGFRが薬理的に不活性化したかどうかにかかわらず、下流RAS-MAPKシグナル伝達の持続的活性化をもたらす。RASおよびBRAFの突然変異に加えて、cMETまたはEGFRの増幅などの他の代替的機構が、セツキシマブまたはパニツムマブに対する抵抗性に関与する。PI3KまたはPTEN喪失の突然変異(RASまたはBRAFの突然変異と共に起こることが多い)も、応答の欠如に関連する可能性がある。実際、RAS、BRAF、およびPI3Kの突然変異は、EGFRを標的とするモノクローナル抗体に対するde novo抵抗性を示すmCRC患者の60%超を占める。KRAS、NRAS、BRAFおよびPI3K野生型腫瘍を有する患者(四重野生型患者)の40%のうち、これらの患者のおよそ半数(15%のみ)が抗EGFR療法の利益を受け、20%超はノンレスポンダーである。Perkinsらを参照のこと。
【0007】
リガンドのエピレグリン(EREG)およびアンフィレグリン(AREG)を含むEGFRリガンドの過剰発現は、抗EGFR療法の予測因子として示唆されている。mCRC患者の一試験では、抗EGFR療法の追加は、最良の支持療法単独と比較して、高いEREG発現レベルを有する患者の生存を5.1ヶ月から9.8ヶ月に増加させた。この結果は、EGFRリガンドの発現が、EGFR阻害剤療法のためのmCRC患者をスクリーニングするのに臨床的に有用なバイオマーカーとなり得ることを示唆している。しかしながら、PCRベースの検出系は、リガンドを発現する細胞の分布および相対的存在量などの空間的文脈を欠いている。
【0008】
EGFRリガンドの免疫組織化学的解析は様々な結果を有している。例えば、Khelwattyらは、野生型EGFRおよび少なくとも1つのそのリガンドの共発現(EGFR陽性腫瘍細胞>5%およびリガンド染色強度2+のカットオフにおいて)が、より短い無増悪生存、ひいてはEGFR指向性治療剤に対するより低い奏効率と有意に相関することを示した。しかしながら、同著者らの試料において、EGFR染色は主に細胞質に認められ、そのため同著者らは、EGFRの内部移行により、EGFR療法が抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を及ぼすことが不可能になるとの理論を立てた。同著者らはさらに、試験における患者の最大40%が以前にセツキシマブ療法を受けていた可能性があり、これが表面からのEGFRの下方制御に寄与した可能性があることに注目した。したがって、Khelwattyは、EGFRおよびEGFRリガンドの発現パターンとEGFR指向性治療薬への応答との間の明確な相関性について記述していない。一方、Yoshidaら(Journal of Cancer Research and Clinical Oncology、2013年3月、第139巻、第3号、367~378ページ)は、7つのうち4つのリガンド(AREG、HB-EGF、TGFα、およびEREG)とEGFR療法への臨床応答との間に良好な相関性があることを見出し、HIGHカテゴリでスコアリングするために少なくとも2つのリガンドを必要とするスコアリングアルゴリズムを示唆している。しかしながら、Yoshidaのアプローチは、EGFRリガンドの1つのみを過剰発現するが高レベルであり得る欠損患者のリスクをもたらす。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、一般に、AREGに対して陽性の腫瘍の試料中の腫瘍細胞のパーセンテージおよびEREGに対して陽性の腫瘍の試料中の腫瘍細胞のパーセンテージの両方に基づく、EGFR指向性治療剤に対する応答の予測に使用するためのスコアリング方法に関する。
【0010】
一実施形態では、腫瘍を有する患者を処置する方法が提供され、本方法は、腫瘍がAREG HIGHまたはEREG HIGHのいずれかである場合、EGFR指向性治療剤を患者に投与することであって、腫瘍が、第1の所定のカットオフ以上のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、腫瘍はAREG HIGHとみなされ、腫瘍が、第2の所定のカットオフ以上のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、腫瘍はEREG HIGHとみなされる、投与することを含む。
【0011】
別の実施形態では、腫瘍を有する患者を処置する方法が提供され、本方法は、腫瘍がAREG LOWおよびEREG LOWの両方である場合、EGFR指向性治療剤を含まない処置を患者に投与することであって、腫瘍が、第1の所定のカットオフ未満のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、腫瘍はAREG LOWであり、腫瘍が、第2の所定のカットオフ未満のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、腫瘍はEREG LOWとみなされる、投与することを含む。
【0012】
別の実施形態では、EGFR指向性治療剤を受けるように腫瘍を有する患者を選択する方法が提供され、本方法は、(a)ヒトAREGタンパク質についての腫瘍の試料を組織化学的または細胞化学的に染色することと、(b)ヒトEREGタンパク質についての腫瘍の試料を組織化学的または細胞化学的に染色することと、(c)腫瘍の試料中のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを定量し、該パーセンテージを第1の所定のカットオフと比較することと、(d)腫瘍の試料中のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを定量し、該パーセンテージを第2の所定のカットオフと比較することと、を含み、患者は、AREG+腫瘍細胞のパーセンテージが第1の所定のカットオフ以上であるか、またはEREG+腫瘍細胞のパーセンテージが第2の所定のカットオフ以上である場合、EGFR指向性治療剤を受けるように選択される。
【0013】
別の実施形態では、EGFR指向性治療剤を含まない療法を受ける、腫瘍を有する患者を選択する方法が提供され、本方法は、(a)ヒトAREGタンパク質についての腫瘍の試料を組織化学的または細胞化学的に染色することと、(b)ヒトEREGタンパク質についての腫瘍の試料を組織化学的または細胞化学的に染色することと、(c)腫瘍の試料中のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを定量し、該パーセンテージを第1の所定のカットオフと比較することと、(d)腫瘍の試料中のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを定量し、該パーセンテージを第2の所定のカットオフと比較することと、を含み、患者は、AREG+腫瘍細胞のパーセンテージが第1の所定のカットオフ未満であり、EREG+腫瘍細胞のパーセンテージが第2の所定のカットオフ未満である場合、EGFR指向性治療剤を受けるように選択される。
【0014】
いくつかの実施形態では、前述の方法の第1の所定のカットオフは、20%~50%の範囲内、例えば20%、25%、30%、約33.3%、40%、および50%である。
【0015】
いくつかの実施形態では、前述の方法の第2の所定のカットオフは、20%~50%の範囲内、例えば20%、25%、30%、約33.3%、40%、および50%である。
【0016】
いくつかの実施形態では、前述の方法の第1の所定のカットオフは20%であり、前述の方法の第2の所定のカットオフは20%である。
【0017】
いくつかの実施形態では、前述の方法の第1の所定のカットオフは25%であり、前述の方法の第2の所定のカットオフは25%である。
【0018】
いくつかの実施形態では、前述の方法の第1の所定のカットオフは30%であり、前述の方法の第2の所定のカットオフは30%である。
【0019】
いくつかの実施形態では、前述の方法の第1の所定のカットオフは33.3%であり、前述の方法の第2の所定のカットオフは33.3%である。
【0020】
いくつかの実施形態では、前述の方法の第1の所定のカットオフは40%であり、前述の方法の第2の所定のカットオフは40%である。
【0021】
いくつかの実施形態では、前述の方法の第1の所定のカットオフは50%であり、前述の方法の第2の所定のカットオフは50%である。
【0022】
一実施形態では、腫瘍を有する患者を処置する方法が提供され、本方法は、(a)腫瘍がAREG HIGHまたはEREG HIGHのいずれかである場合、EGFR指向性治療剤を患者に投与することであって、腫瘍が、第1の所定の陽性カットオフ以上のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、腫瘍はAREG HIGHとみなされ、腫瘍が、第2の所定の陽性カットオフ以上のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、腫瘍はEREG HIGHとみなされる、投与することと、(b)腫瘍がAREG LOWおよびEREG LOWの両方である場合、EGFR指向性治療剤を含まない療法コースを患者に投与することであって、腫瘍が、第1の所定の陰性カットオフ未満のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、腫瘍はAREG LOWとみなされ、腫瘍が、第2の所定の陰性カットオフ未満のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、腫瘍はEREG LOWとみなされる、投与することと、を含む。
【0023】
一実施形態では、腫瘍を有する患者の処置を選択する方法が提供され、本方法は、(a)ヒトAREGタンパク質についての腫瘍の試料を組織化学的または細胞化学的に染色することと、(b)ヒトEREGタンパク質についての腫瘍の試料を組織化学的または細胞化学的に染色することと、(c)腫瘍の試料中のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを定量し、該パーセンテージを第1の所定の陽性カットオフおよび第1の所定の陰性カットオフと比較することと、(d)腫瘍の試料中のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを定量し、該パーセンテージを第2の所定の陽性カットオフおよび第2の所定の陰性カットオフと比較することと、(e)腫瘍がAREG HIGHまたはEREG HIGHのいずれかである場合、EGFR指向性治療剤を含む処置コースを受けるように患者を選択することであって、AREG+腫瘍細胞のパーセンテージが第1の所定の陽性カットオフ以上である場合、腫瘍はAREG HIGHとみなされ、EREG+腫瘍細胞のパーセンテージが第2の所定の陽性カットオフ以上である場合、腫瘍はEREG HIGHとみなされる、選択することと、(f)腫瘍がAREG LOWおよびEREG LOWの両方である場合、EGFR指向性治療剤を含まない処置コースを受けるように患者を選択することであって、AREG+腫瘍細胞のパーセンテージが第1の所定の陰性カットオフ未満である場合、腫瘍はAREG LOWとみなされ、EREG+腫瘍細胞のパーセンテージが第2の所定の陽性カットオフ未満である場合、腫瘍はEREG LOWとみなされる、選択することと、を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1の所定の陽性カットオフは、30%~50%の範囲内、例えば30%、約33.3%、40%、および50%であり、第1の所定の陰性カットオフは、20%~30%の範囲内、例えば20%、25%、および30%である。
【0025】
1つの特定の実施形態では、第1の所定の陽性カットオフは50%であり、第1の所定の陰性カットオフは20%である。
【0026】
いくつかの実施形態では、第2の所定の陽性カットオフは、30%~50%の範囲内、例えば30%、約33.3%、40%、および50%であり、第2の所定の陰性カットオフは、20%~30%の範囲内、例えば20%、25%、および30%である。
【0027】
1つの特定の実施形態では、第2の所定の陽性カットオフは50%であり、第2の所定の陰性カットオフは20%である。
【0028】
1つの特定の実施形態では、第1および第2の所定の陽性カットオフは50%であり、第1および第2の所定の陰性カットオフは20%である。
【0029】
いくつかの実施形態では、前述の方法の腫瘍は結腸直腸腫瘍である。
【0030】
いくつかの実施形態では、前述の方法のEGFR指向性治療剤は、抗EGFRモノクローナル抗体、例えばセツキシマブおよび/またはパニツムマブである。
【0031】
いくつかの実施形態では、前述の方法の療法は、患者に化学療法、例えばイリノテカンを含む化学療法を投与することをさらに含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、EGFR指向性治療剤を含まない前述の方法の療法は、患者に化学療法、例えばイリノテカンを含む化学療法を投与することを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、前述の方法の腫瘍は、EGFRモノクローナル抗体療法に対する抵抗性を付与する突然変異を有する検出可能な量のRASタンパク質を含まない。
【0034】
いくつかの実施形態では、前述の方法の腫瘍はRAS野生型(RAS-wt)である。
【0035】
いくつかの実施形態では、前述の方法の結腸直腸腫瘍は左側腫瘍である。
【0036】
いくつかの実施形態では、前述の方法の結腸直腸腫瘍は右側腫瘍である。
【0037】
前述の方法のいくつかの実施形態では、試料は結腸直腸腫瘍の切除物に由来する。
【0038】
前述の方法のいくつかの実施形態では、試料は結腸直腸腫瘍の生検試料である。
【0039】
いくつかの実施形態では、前述の方法の腫瘍の試料はホルマリン固定パラフィン包埋組織切片である。
【0040】
前述の方法のいくつかの実施形態では、EREGを発現する細胞のパーセンテージおよびAREGを発現する細胞のパーセンテージは、自動化された方法によって定量される。
参照による配列表の組込み
【0041】
参照により本明細書に援用されるのは、2020年9月20日に作成された「P36405US_SEQ_LIST_ST25」(14,484バイトのサイズ)のファイル名を有する、コンピュータ可読形式で本明細書と共に提出された配列表である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公開の写しは、請求に応じて、必要な手数料を支払うことにより、特許庁によって提供されることになる。
【0043】
図1】試験サンプルの内訳を示すフロー図。
【0044】
図2】30個のPICCOLO検証FOVに関するアルゴリズムとコンセンサス病理学者のスコアとの間の一致-AREG総腫瘍数(A);AREG陽性率(B);EREG総腫瘍数(C);EREG陽性率(D)。
【0045】
図3】AREG対EREG IHC陽性率の散布図。50%カットポイントに基づく4つの象限がラベル付けされている:(A)AREG LOW/EREG HIGH;(B)AREG HIGH/EREG HIGH;(C)AREG LOW/EREG LOW;(D)AREG HIGH/EREG LOW。高リガンドエクスプレッサー(青色ドット;象限A、B、およびD)は、50%を超えるAREGおよび/またはEREG陽性率として定義される;低リガンドエクスプレッサー(赤色ドット;象限C)は、両方とも50%未満のAREGおよびEREG陽性率として定義される。50%カットポイントは点線で示されている。
【0046】
図4】(A)低リガンドエクスプレッサー群および(B)高リガンドエクスプレッサー群におけるRAS-wt患者についてのPFSカプラン・マイヤー曲線。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本開示は、概して、EGFRおよびEGFRリガンドの発現についての結腸直腸腫瘍試料の組織化学的染色および評価のための方法、システム、および組成物に関する。開示される方法、システム、および組成物は、とりわけ、腫瘍がEGFR指向性治療剤に応答する尤度に従って結腸直腸癌患者を階層化するために有用である。
I.用語
【0048】
別途説明されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語はすべて、開示される開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに別途の指示がない限り、複数形の参照対象を含む。
【0049】
本開示の実施形態の実践および/または試験に好適な方法および材料を以下に記述する。このような方法および材料は単なる例であり、限定を意図するものではない。本明細書に記述されるものと同様または均等の他の方法および材料を使用してもよい。
【0050】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体があらゆる目的で参照により援用される。矛盾がある場合には、本明細書が用語の説明を含めて優先するものとする。
【0051】
本開示の様々な実施形態の確認を容易にするために、以下の特定の用語の説明を提供する。
【0052】
投与:薬剤、例えば組成物、薬物などを任意の有効な経路によって対象に提供または供与すること。例示的な投与経路としては、経口、注射(皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、および静脈内など)、舌下、直腸、経皮(例えば、局所)、鼻腔内、経膣、および吸入の各経路が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
抗体:少なくとも軽鎖または重鎖免疫グロブリン可変領域を含み、抗原のエピトープと特異的に結合するペプチド(例えば、ポリペプチド)。文脈によって特に指示されない限り、「抗体」という用語は、抗体断片を明示的に含むと解釈されるものとする。いくつかの実施形態では、抗体は、2つの軽鎖および2つの重鎖を含み、軽鎖および重鎖は、互いにカップリング(例えば、共有結合)され得る。
【0054】
抗体断片:インタクトな抗体が結合する抗原と結合する、インタクトな抗体の一部分を含む、インタクトな抗体以外の分子。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えばscFv);および抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
バイオマーカー:本明細書で使用される場合、「バイオマーカー」という用語は、試料中に見出され、試料または試料の取得元である対象を特徴づけるために使用され得る、任意の分子または分子群を指すものとする。例えば、バイオマーカーは、その存在、非存在、または相対的存在量が、特定の病状に特徴的である;疾患の重篤度、または尤度、または疾患進行もしくは後退を示す;かつ/または病理学的症状が特定の処置に応答することを予測する、分子または分子群であり得る。
【0056】
バイオマーカー特異的試薬:細胞試料または組織試料中の1つまたは複数のバイオマーカーに直接、特異的に結合することができる特異的結合剤。「[標的]バイオマーカー特異的試薬」という語句は、挙げられた標的バイオマーカーに特異的に結合することができるバイオマーカー特異的試薬を指すものとする。
【0057】
対比染色:組織切片の全体の「様相」を見ることができるようにし、組織標的の検出のために使用される主な色の基準となる色素による、組織切片の染色。このような色素は、細胞核、細胞膜、または細胞全体を染色することができる。色素の例としては、核DNAに結合して強い青色光を発するDAPI;核DNAに結合して強い青色光を発するヘキストの青色染色剤;および核DNAに結合して強い赤色光を発するヨウ化プロピジウムが挙げられる。細胞内細胞骨格ネットワークの対比染色は、蛍光性色素にコンジュゲートしているファロイジンを使用して行うことができる。ファロイジンは、細胞の細胞質内のアクチン線維に密に結合することで、これを顕微鏡下で明らかに視認できるようにする毒素である。
【0058】
検出可能な部分:試料に付着した検出可能な部分または標識の存在および/または濃度を示す検出可能なシグナル(例えば視覚的、電気的、または他のシグナル)を生じさせることができる分子または材料。検出可能なシグナルは、光子(高周波周波数、マイクロ波周波数、赤外周波数、可視周波数および紫外周波数の光子を含む)の吸収、放出および/または散乱を含む、いかなる既知または未発見の機構によって生成されてもよい。例示的な検出可能な部分としては、色素原性、蛍光性、リン光性、および発光性の分子および材料、ある物質を別の物質に変換して検出可能な差をもたらす(例えば、無色の物質を有色の物質に、もしくはその逆に変換させることによる、または沈殿物を生じさせること、もしくは試料の混濁度を増加させることによる)触媒(例えば酵素)が挙げられる(ただし、これらに限定されるものではない)。いくつかの例では、検出可能な部分は、クマリン、フルオレセイン(またはフルオレセイン誘導体およびアナログ)、ローダミン、レゾルフィン、ルミノフォア、およびシアニンを含むいくつかの一般的な化学物質クラスに属するフルオロフォアである。蛍光分子の追加例は、Molecular Probes Handbook-A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies,Molecular Probes,Eugene,OR,ThermoFisher Scientific,第11版に見出すことができる。他の実施形態では、検出可能な部分は、ジアミノベンジジン(DAB)、4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼン-4’-スルホンアミド(DABSYL)、テトラメチルローダミン(DISCOVERYパープル)、N,N’-ビスカルボキシペンチル-5,5’-ジスルホナト-インド-ジカルボシアニン(Cy5)、およびローダミン110(ローダミン)を含む色素のような、明視野顕微鏡法を介して検出可能な分子である。
【0059】
検出試薬:細胞試料中のバイオマーカーに結合したバイオマーカー特異的試薬の近傍に検出可能な部分を付着させ、それによって試料を染色するために使用される任意の試薬。非限定的な例としては、二次検出試薬(例えば、一次抗体に結合することができる二次抗体、ビオチンまたはアビジンと特異的に結合するあらゆるもの)、三次検出試薬(例えば、二次抗体に結合することができる三次抗体)、特異的結合剤と直接的または間接的に会合した酵素、そのような酵素との反応性があり蛍光性または色素原性の染色剤の付着をもたらす化学物質、染色工程と染色工程との間に使用される洗浄試薬などが挙げられる。
【0060】
モノクローナル抗体:実質的に均一な抗体の集団を有する抗体調製物、すなわち、集団を構成する個々の抗体が同一である、かつ/または同じエピトープと結合するが、可能性のある変異体抗体、例えば、天然に存在する突然変異を含むもの、またはモノクローナル抗体調製物の生産中に生じるものは除き、このような変異体は通常微量で存在する。ポリクローナル抗体とは異なり、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするように解釈すべきではない。
【0061】
ポリクローナル抗体:異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含む抗体調製物。
【0062】
試料:診断目的で対象から取得され、特異的結合剤を使用して材料中のバイオマーカーの存在もしくは非存在および/または量を試験することと適合性である様式で処理される任意の材料。診断目的の例としては、対象における疾患の診断もしくは予後判定を行うこと、および/または特定の治療レジメンに対する疾患の応答を予測すること、および/または治療レジメンに対する対象の応答をモニタリングすること、および/または疾患の進行もしくは再発についてモニタリングすることが挙げられる。
(a)細胞試料:インタクトな細胞を含む試料、例えば、細胞培養物、細胞を含む血液または他の体液試料、細胞塗抹標本(例えば、Pap塗抹標本および子宮頸部単層)、細針吸引物(FNA)、液体ベースの細胞学試料、および病理学的、組織学的、または細胞学的な解釈のために採取された手術標本。
(b)組織試料:試料の取得元となった対象に存在していた際の細胞間の断面的な空間的関係を維持する細胞試料。「組織試料」は、一次組織試料(すなわち、対象によって産生された細胞および組織)と異種移植片(すなわち、対象に植え込まれた外来細胞試料)との両方を包含するものとする。
【0063】
切片:名詞として使用される場合は、通常はミクロトームを使用して切断される、顕微鏡的解析に好適な組織試料の薄片。動詞として使用される場合は、通常はミクロトームを使用して、組織試料の切片を作ること。
【0064】
連続切片:組織試料から順に切断された一連の切片のうちのいずれか1つ。2つの切片が互いの「連続切片」とみなされるためには、それらが組織からの連続した切片である必要は必ずしもないが、通常は、組織学的染色後に構造を互いと照合することができるように、同じ断面的関係にある同じ組織構造を含むべきである。
【0065】
特異的結合:本明細書で使用される場合、「特異的結合」、「に特異的に結合する」、または「に対して特異的な」という語句は、生物学的分子を含む分子の不均一集団の存在下における標的の存在を決定する、標的と特異的結合剤との間の結合のような、測定可能で再現性のある相互作用を指す。例えば、標的に特異的に結合する結合性実体は、他の標的に結合するのと比べてより高い親和性で、より高いアビディティで、より容易に、かつ/またはより長い持続期間で標的と結合する抗体であり得る。
【0066】
特異的結合剤:細胞試料または組織試料に関連する標的化学構造(例えば、試料によって発現されるバイオマーカー、または試料に結合したバイオマーカー特異的試薬)に特異的に結合することができる物質の任意の組成物。例としては、特定のヌクレオチド配列に対して特異的な核酸プローブ;抗体およびその抗原結合性断片;ならびにADNECTIN(10番目のFN3フィブロネクチンに基づく足場;Bristol-Myers-Squibb Co.)、AFFIBODY(黄色ブドウ球菌(S.aureus)由来のプロテインAのZドメインに基づく足場;Affibody AB、Solna、Sweden)、AVIMER(ドメインA/LDL受容体に基づく足場;Amgen、Thousand Oaks、CA)、dAb(VHまたはVL抗体ドメインに基づく足場;GlaxoSmithKline PLC、Cambridge、UK)、DARPin(アンキリンリピートタンパク質に基づく足場;Molecular Partners AG、Zurich、CH)、ANTICALIN(リポカリンに基づく足場;Pieris AG、Freising、DE)、NANOBODY(VHH(ラクダ科のIg)に基づく足場;Ablynx N/V、Ghent、BE)、TRANS-BODY(トランスフェリンに基づく足場;Pfizer Inc.、New York、NY)、SMIP(Emergent Biosolutions,Inc.、Rockville、MD)、およびTETRANECTIN(C型レクチンドメイン(CTLD)、テトラネクチンに基づく足場;Borean Pharma A/S、Aarhus、DK)を含む工学操作された特異的結合性構造体が挙げられるが、これらに限定されない。そのような工学操作された特異的結合性構造体の説明は、Wurchら、Development of Novel Protein Scaffolds as Alternatives to Whole Antibodies for Imaging and Therapy:Status on DISCOVERY Research and Clinical Validation,Current Pharmaceutical Biotechnology、第9巻、502~509ページ(2008年)に概説されており、その内容は参照により援用される。
【0067】
染色:名詞として使用される場合、「染色剤」という用語は、明視野顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、電子顕微鏡法などを含む顕微鏡的解析のための細胞試料中の特定の分子または構造を可視化するために使用され得る任意の物質を指すものとする。動詞として使用される場合、「染色」という用語は、細胞試料への染色剤の付着をもたらす任意のプロセスを指すものとする。
【0068】
対象:試料の取得元または由来となった哺乳動物。哺乳動物としては、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌおよびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えば、サル)、ウサギおよびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、対象はヒトである。
II.EGFRリガンドについての組織化学的または細胞化学的標識試料
【0069】
本発明の方法は、ヒトEREGタンパク質およびヒトAREGタンパク質についての組織化学的または細胞化学的染色腫瘍試料に基づく。
【0070】
A.試料および試料調製
【0071】
本発明の方法は、例えば、腫瘍生検試料、切除試料、細胞塗抹標本、細針吸引物(FNA)、液体ベースの細胞学試料などを含む、腫瘍から得られた組織試料または組織試料の細胞学的調製物に対して行われる。
【0072】
一実施形態では、試料は、固定組織試料である。組織試料の固定は、可能な限り生きた状態に近い状態で細胞および組織の構成成分を保存し、それらが大きな変化なしに調製用手順を受けることを可能にする。細胞死の際に始まる自己融解および細菌性分解のプロセスが停止され、試料中の細胞および組織の構成成分が安定化されることで、後の組織処理段階に耐えられるようになる。固定剤は、架橋結合剤(アルデヒドなど、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、およびグルタルアルデヒド、ならびに非アルデヒド架橋結合剤)、酸化剤(例えば、四酸化オスミウムおよびクロム酸などの金属イオンおよび錯体)、タンパク質変性剤(例えば、酢酸、メタノール、およびエタノール)、未知の機構の固定剤(例えば、塩化第二水銀、アセトン、およびピクリン酸)、組合せ試薬(例えば、Carnoy固定剤、メタカーン(methacarn)、Bouin液、B5固定剤、Rossman液、およびGendre液)、マイクロ波、およびその他の固定剤(例えば、排除体積固定および蒸気固定)に分類することができる。バッファー、界面活性剤、タンニン酸、フェノール、金属塩(例えば塩化亜鉛、硫酸亜鉛、およびリチウム塩)、およびランタンなどの添加剤が固定剤に含まれていてもよい。試料の調製において最も一般的に使用されている固定剤はホルムアルデヒドであり、通常はホルマリン溶液(水性(典型的には緩衝)溶液中のホルムアルデヒド)の形態である。一実施形態では、本発明の方法で使用される試料は、ホルマリンベースの固定剤における固定を含む方法によって固定される。一例では、固定剤は10%中性緩衝ホルマリンである。これらの例にかかわらず、組織は、使用されるバイオマーカー特異的試薬および特異的検出試薬と適合性である任意の固定媒体を使用したプロセスによって固定することができる。
【0073】
いくつかの例では、固定組織試料は、包埋媒体に包埋される。包埋媒体は、組織および/または細胞を将来解析するために保存するのに役立つように組織および/または細胞が包埋される不活性材料である。包埋はまた、組織試料を薄い切片にスライスすることを可能にする。包埋媒体としては、パラフィン、セロイジン、OCT(商標)化合物、寒天、プラスチック、またはアクリルが挙げられる。一実施形態では、試料は、ホルマリンで固定され、パラフィンに包埋されて、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ブロックを形成する。典型的な包埋プロセス(例えばFFPEブロックのために使用されるもの)では、試料を固定した後、典型的には約70%から約100%の範囲の漸増するアルコール濃度を使用する一連のアルコール浸漬に供して、試料を脱水する。アルコールは、一般的にはアルカノール、特にメタノールおよび/またはエタノールである。特定の作業実施形態では、これらの連続脱水工程で70%、95%、および100%のエタノールを使用した。最後のアルコール処理工程の後、試料は次に、一般的に清澄化液と呼ばれる別の有機溶媒に浸漬される。清澄化液は、(1)残留するアルコールを除去し、(2)後のワックス処理工程のために試料の疎水性を高める。
清澄化溶媒は通常、キシレンなどの芳香族有機溶媒である。清澄化した試料に包埋材料を適用することによってブロックが形成され、ここから組織切片を(例えばミクロトームを使用することによって)切断することができる。
【0074】
これらの例にかかわらず、取得される組織試料または細胞学試料が、関心対象のバイオマーカーについての試料の染色、ならびにこの染色およびEREGもしくはAREGを発現する細胞の数を定量するための後の顕微鏡的評価またはデジタル画像法に使用される試薬と適合性である限り、本開示は特定の処理工程を必要としない。
【0075】
B.試料の選択
【0076】
B1.腫瘍ステージ
【0077】
一実施形態では、試料の由来となる腫瘍は、EREGタンパク質および/またはAREGタンパク質について染色される前にステージ分類される。ステージ0結腸直腸癌は、結腸の内層を越えて成長していない癌である。ステージI結腸直腸癌は、結腸壁自体の外側または付近のリンパ節内に拡散していない癌である。ステージII結腸直腸癌は、結腸壁を通過し、場合によっては付近の組織内まで成長しているが、リンパ節へは拡散していない癌である。ステージIII結腸直腸癌は、付近のリンパ節まで拡散しているが、身体の他の部分へは拡散していない癌である。ステージIV結腸直腸癌は、結腸から遠位の臓器および組織まで拡散している癌である。一実施形態では、試料は、ステージIIIまたはステージIV結腸直腸癌である場合に染色のために選択される。別の実施形態では、試料は、ステージIV結腸直腸癌である場合に染色のために選択される。
【0078】
B2.EGFR抵抗性突然変異
【0079】
腫瘍は、EGFR指向性治療剤に対する抵抗性を付与する突然変異の存在についてスクリーニングされ得る。そのような突然変異の例としては、RAS癌遺伝子(例えば、Prior、Waring、Vale、Kaprapetis、Douillard、およびVan Cutsemを参照されたい)およびBRAF遺伝子(例えば、Bokemeyerを参照されたい)における活性化突然変異が挙げられる。いくつかの実施形態では、試料または対象は、EGFRリガンドについての染色が実施される前にRAS野生型と決定されたものである。本明細書で使用される場合、「野生型RAS」は、試料または対象が、少なくとも、EGFRモノクローナル抗体療法に対する抵抗性を付与するNRASおよびKRASにおける突然変異(現在知られているか今後発見されるかを問わない)に関するRAS突然変異スクリーニングアッセイで陰性の試験結果を示していることを意味するものとする。一実施形態では、RAS突然変異スクリーニングアッセイは、NRASの少なくともコドン12および13ならびにKRASのコドン12および13における活性化突然変異の存在または非存在を決定することを含み、試料または対象がNRASのコドン12および13ならびにKRASのコドン12および13の各々の活性化突然変異を含んでいなければ、試料は「RAS野生型」とみなされる。別の実施形態では、RAS突然変異スクリーニングアッセイは、NRASの少なくともコドン12、13、59、61、117、および146ならびにKRASのコドン12、13、59、61、117、および146における活性化突然変異の存在または非存在を決定することを含み、試料または対象がNRASのコドン12、13、59、61、117、および146ならびにKRASのコドン12、13、59、61、117、および146の各々の活性化突然変異を含んでおらず、野生型RASステータスを有すると決定されれば、試料は「RAS野生型」とみなされる。Ras突然変異ステータスについてのスクリーニングは、組織試料の取得元となった対象と同じ対象の腫瘍および血液試料に由来する組織試料を含め、対象由来の種々の異なるタイプの試料に対して実施され得る。Ras突然変異ステータスについてスクリーニングするための多くの異なる方法が知られており、これには、配列決定、パイロシークエンシング、リアルタイムPCR、対立遺伝子特異的リアルタイムPCR、配列決定を伴う制限断片長多型(RFLP)解析、対立遺伝子特異的増幅変異検出系(ARMS:amplification refractory mutation systems)、または配列決定を伴うCOLD-PCR(低変性温度PCRでの共増幅:coamplification at lower denaturation temperature PCR)に基づく方法が含まれる。Ras突然変異についてスクリーニングする例示的な方法の他の特定のものとしては、次のものが挙げられるが、これらに限定されない:循環腫瘍DNA(ctDNA)に依存する血液ベースのスクリーニング方法(例えば、Schmiegelら、Mol.Oncol.、第11巻、第2号、208~19ページ(2017年2月)を参照されたい(KRASおよびNRASのエクソン2、3、および4に関するエマルションデジタルPCRベースのアッセイを循環セルフリーDNAアッセイに適用することによる突然変異についてのスクリーニング))、ならびに、サンガー配列決定、超並列配列決定(パイロシークエンシング、循環可逆的終結、半導体配列決定、またはホスホ結合蛍光性ヌクレオチド技術に基づく配列決定方法論を含む)、またはPCRベースのアッセイ(定量的PCRおよびデジタルPCRを含む)を使用した、腫瘍組織試料中のKRASおよびNRASのエクソン2、3、および4における突然変異についてのスクリーニングのような、組織ベースの方法。本開示は、Ras突然変異ステータスについてのスクリーニングに関して、いずれか特定の方法に限定されるものではない。
【0080】
B3.側性
【0081】
いくつかの実施形態では、結腸直腸腫瘍の側性が染色の前に決定される。結腸直腸腫瘍は、右側腫瘍(盲腸から脾弯曲部に生じる腫瘍)と左側腫瘍(脾弯曲部から直腸に生じる腫瘍)とに分けることができる。実施例に示されるように、本スコアリング方法は、左側腫瘍および右側腫瘍の両方において有用である。腫瘍の右側性は、典型的には、EGFR指向性治療剤に対する応答の負の予測因子であることに留意すべきである(例えば、Tejparを参照されたい)。しかしながら、本実施例に示されるように、本スコアリング方法は、左側腫瘍および右側腫瘍の両方における応答を予測するのに有用である。
【0082】
B4.EGFRステータス
【0083】
いくつかの実施形態では、腫瘍のEGFRステータスが決定される。EGFRステータスを決定する任意の方法(現在知られているか将来開発されるかを問わない)が使用され得る。特定例では、EGFRステータスは、免疫組織化学(IHC)または免疫細胞化学(ICC)によって決定される。完全長ヒトEGFRのカノニカルなアミノ酸配列を配列番号1に示す。当業者には理解されるように、正確なアミノ酸配列は対象ごとに異なり得る。一実施形態では、IHCアッセイまたはICCアッセイは、配列番号1を含むポリペプチドに特異的に結合することができる抗体を用いて行われる。EGFR特異的モノクローナル抗体の非限定的な例を表1に記載する。
【表1】
一実施形態では、EGFRバイオマーカー特異的試薬は、EGFRの細胞内ドメインに対するモノクローナル抗体である。別の実施形態では、EGFRバイオマーカー特異的試薬は、EGFRの細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体である。別の実施形態では、EGFRバイオマーカー特異的試薬は、完全長EGFRとEGFRvIII突然変異体との両方を認識するモノクローナル抗体である。
【0084】
C.AREGおよびEREG組織化学的および細胞化学的染色
【0085】
EREGおよびAREGの標識は、標的バイオマーカーとバイオマーカー特異的試薬との間の特異的結合を容易にする条件下で組織切片または細胞学的調製物をバイオマーカー特異的試薬と接触させることによって達成され得る。次に、この試料を、バイオマーカー特異的試薬と相互作用する検出試薬のセットと接触させて、試料における標的バイオマーカーの近傍での検出可能な部分の付着を容易にし、それによって標的バイオマーカーに局在化した検出可能なシグナルを生成する。任意に、バイオマーカー染色試料を造影剤(ヘマトキシリン染色剤など)で更に染色して、高分子構造を可視化してもよい。
【0086】
本明細書で開示される組織化学的および細胞化学的染色法は、バイオマーカー特異的試薬と、試料によって発現されるバイオマーカーとの間の特異的結合を支持する条件下で、結腸直腸腫瘍の組織切片または細胞学的調製物を、ヒトEREGタンパク質およびヒトAREGタンパク質のための1つまたは複数のバイオマーカー特異的試薬と接触させることを含む。EREGおよびAREGは、まずプロペプチドとして発現され、これは細胞表面で切断されて活性シグナル伝達ドメインを遊離させる。ヒトEREGおよびAREG(およびそれらのプロペプチド)のカノニカルなアミノ酸配列を、表2に記載する。当業者には理解されるように、正確なアミノ酸配列は対象ごとに異なり得る。
【表2】
【0087】
一実施形態では、ヒトEREGタンパク質に対するバイオマーカー特異的試薬は、配列番号2を含むポリペプチドに特異的に結合することができるバイオマーカー特異的試薬である。一実施形態では、ヒトAREGタンパク質に対するバイオマーカー特異的試薬は、配列番号3を含むポリペプチドに特異的に結合することができるバイオマーカー特異的試薬である。
【0088】
一実施形態では、EREGバイオマーカー特異的試薬は抗体である。EREG特異的抗体の非限定的な例を表3に記載する。
【表3】
【0089】
一実施形態では、EREGバイオマーカー特異的試薬は、表3から選択されるモノクローナル抗体である。
【0090】
一実施形態では、AREGバイオマーカー特異的試薬は抗体である。AREG特異的抗体の非限定的な例を表4に記載する。
【表4】
【0091】
一実施形態では、AREGバイオマーカー特異的試薬は、表4から選択される。
【0092】
試料に結合した後、検出試薬のセットを用いてバイオマーカー特異的試薬を可視化する。いくつかの実施形態では、検出試薬は、顕微鏡法、例えば明視野顕微鏡法と適合性である染色剤(または検出可能な部分)を付着させる。
【0093】
いくつかの実施形態では、発色団または検出可能な部分の共有結合的付着は、チラミドシグナル増幅(TSA)を用いて達成され、これは触媒レポーター付着(CARD)とも呼ばれている。開示が参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第5,583,001号は、検出可能な標識シグナルを増幅するために触媒レポーター付着に依存する分析物依存性酵素活性化システムを使用して分析物を検出および/または定量する方法を開示している。CARD法またはTSA法における酵素の触媒作用は、標識フェノール分子を酵素と反応させることによって増強される。TSAを利用する現代の方法は、有意なバックグラウンドシグナル増幅をもたらさずに、IHCアッセイおよびISHアッセイから得られるシグナルを効果的に増加させる(例えば、チラミド増幅試薬に関する開示についてその全体が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2012/0171668号を参照されたい)。これらの増幅アプローチのための試薬は、以前は達成できなかった堅牢な診断能力を提供するために臨床的に重要な標的に適用されている(VENTANA OptiView Amplification Kit、Ventana Medical Systems、Tucson AZ、カタログ番号760-099)。
【0094】
他の実施形態では、発色団または検出可能な部分の共有結合的付着は、キノンメチド化学を用いて行われる。2019年1月1日に交付された「Quinone Methide Analog Signal Amplification」と題する米国特許第10,168,336号は、TSAのように、バックグラウンドシグナルを有意に増加させることなくシグナル増幅を増加させるために使用され得る技術(「QMSA」)を記載している。特に、開示が参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第10,168,336号は、新規なキノンメチドアナログ前駆体、およびキノンメチドアナログ前駆体を使用して生体試料中の1つまたは複数の標的を検出する方法を記載している。特定の実施形態では、検出方法は、試料を検出抗体またはプローブと接触させること、次いで試料を、アルカリホスファターゼ(AP)酵素および結合部分を含む標識コンジュゲートと接触させることを含み、結合部分は抗体またはプローブを認識する(例えば、ハプテンもしくは種特異的抗体エピトープ、またはそれらの組合せに結合することによって)。標識コンジュゲートのアルカリホスファターゼ酵素は、検出可能な部分を含むキノンメチドアナログ前駆体と相互作用し、それによって反応性キノンメチドアナログを形成し、これは標的の近位にまたは直接的に生体試料に共有結合する。次いで、検出可能な標識は、視覚的にまたは画像化技術などによって検出される。
【0095】
検出可能な部分を付着させるための別の技術は、「クリック」ケミストリーを用いて、試料中の検出可能な部分と形態学的マーカーまたはバイオマーカーとの間に共有結合を形成する。「クリックケミストリー」は、SharplessおよびMeldalのグループによって独自に定義された化学哲学であり、小さなユニットを結合することによって物質を迅速かつ確実に生成するように調整された化学を説明する。「クリックケミストリー」は、信頼性が高く自律的な有機反応のコレクションに適用されている(Kolb,H.C.;Finn,M.G.;Sharpless,K.B.Angew.Chem.Int.Ed.2001,40,2004-2021)。検出可能な標識を生体試料上に共有結合的に付着させる文脈において、クリックケミストリー技術は米国特許出願公開第2019/0204330号に記載されており、その全体が参照により本明細書に援用される。この技術では、上記のチラミド付着または同じく上記のキノンメチド付着のいずれかを使用して、クリックケミストリー反応に関与することができる第1の反応基を生体試料に共有結合的に固定する。次いで、クリックケミストリー反応に関与することができる対応する第2の反応基を有する検出系の第2の成分を第1の反応基と反応させて、第2の成分を生体試料に共有結合させる。特定の実施形態では、記載される技術は、生体試料を第1の標的に特異的な第1の検出プローブと接触させることを含む。第1の検出プローブは、一次抗体または核酸プローブであり得る。続いて、試料を、第1の酵素を含む第1の標識コンジュゲートと接触させる。いくつかの実施形態では、第1の標識コンジュゲートは、一次抗体(抗体の取得元となった種など)または核酸プローブにコンジュゲートされた標識(ハプテンなど)のいずれかに特異的な二次抗体である。次に、生体試料をクリックコンジュゲートのペアの第1のメンバーと接触させる。第1の酵素は、チラミドまたはキノンメチド前駆体を有するクリックコンジュゲートのペアの第1のメンバーを切断し、それにより、第1のメンバーを、第1の標的の近位にまたは直接的に生体試料に共有結合する反応性中間体に変換する。次に、クリックコンジュゲートのペアの第2のメンバーを生体試料と接触させ、クリックコンジュゲートのペアの第2のメンバーは、第1のレポーター部分(例えば発色団)および第2の反応性官能基を含み、クリックコンジュゲートの第1のペアの第2のメンバーの第2の反応性官能基は、クリックコンジュゲートのペアの第1のメンバーの第1の反応性官能基と反応することができる。最後に、第1のレポーター部分からのシグナルが検出される。
【0096】
本発明の方法において有用な検出試薬を含む市販の検出試薬またはキットの非限定的な例として、以下が挙げられる:各々Ventana Medical Systems,Inc.(Tucson、Arizona)から入手可能である、VENTANA ultraView検出系(HRPおよびAPを含む酵素にコンジュゲートしている二次抗体);VENTANA iVIEW検出系(ビオチン化抗種二次抗体およびストレプトアビジン-コンジュゲート酵素);OptiView検出系(ハプテンにコンジュゲートしている抗種二次抗体および酵素多量体にコンジュゲートしている抗ハプテン三次抗体);VENTANA増幅キット(一次抗体結合部位に付着する酵素の数を増幅させるために前述のVENTANA検出系のいずれでも使用することができる非コンジュゲート二次抗体);VENTANA OptiView増幅系(ハプテンにコンジュゲートしている抗種二次抗体、酵素多量体にコンジュゲートしている抗ハプテン三次抗体、および同じハプテンにコンジュゲートしているチラミド);VENTANA DISCOVERY(例えばDISCOVERYイエローキット、DISCOVERYパープルキット、DISCOVERYシルバーキット、DISCOVERYレッドキット、DISCOVERYローダミンキットなど)DISCOVERY OmniMap、DISCOVERY UltraMap抗ハプテン抗体、二次抗体、色素原、フルオロフォア、および色素キット;PowerVisionおよびPowerVision+IHC検出系(二次抗体がHRPまたはAPと直接重合して、抗体に対して高い比率の酵素を有する緻密なポリマーになったもの);ならびにDAKO EnVision(商標)+System(二次抗体にコンジュゲートしている酵素標識ポリマー)。
【0097】
本明細書における組織化学的または細胞化学的方法は、自動化染色機(または他のスライド処理機)で実施されてもよく、手作業で実施されてもよく、または自動化工程と手作業工程との組合せを特徴としてもよい。一実施形態では、本明細書に記載される組織化学的および細胞化学的染色法は、自動化IHC染色デバイスで実施される。自動化IHC染色デバイスの特定例としては、次のものが挙げられる:intelliPATH(Biocare Medical)、WAVE(Celerus Diagnostics)、DAKO OMNISおよびDAKO AUTOSTAINER LINK 48(Agilent Technologies)、BENCHMARK XT(Ventana Medical Systems,Inc.)、BENCHMARK Special Stains(Ventana Medical Systems,Inc.)、BENCHMARK ULTRA(Ventana Medical Systems,Inc.)、BENCHMARK GX(Ventana Medical Systems,Inc.)、DISCOVERY XT(Ventana Medical Systems,Inc.)、DISCOVERY ULTRA(Ventana Medical Systems,Inc.)、Leica BOND、ならびにLab Vision Autostainer(Thermo Scientific)。自動化IHC染色デバイスは、全体が参照により本明細書に援用されるPrichard、Overview of Automated Immunohistochemistry、Arch Pathol Lab Med.、第138巻、1578~1582ページ(2014年)にも記載されている。更に、Ventana Medical Systems,Inc.は、米国特許第5,650,327号、同第5,654,200号、同第6,296,809号、同第6,352,861号、同第6,827,901号、および同第6,943,029号、ならびに米国公開特許出願第20030211630号および同第20040052685号を含め、自動化された解析を実施するためのシステムおよび方法を開示するいくつかの米国特許の譲受人であり、これらは各々、その全体が参照により本明細書に援用される。本開示の方法は、任意の適切な自動化IHC染色デバイスで実施されるように適合され得る。
【0098】
本開示は、自動化システムの使用に限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組織化学的標識方法は、手作業で適用される。または、特定の工程を手作業で実施し、他の工程を自動化システムで実施してもよい。
【0099】
所望であれば、形態学的に関連性のあるエリアの識別を補助するため、かつ/または関心領域(ROI)を識別するために、バイオマーカー染色スライドを対比染色してもよい。対比染色剤の例としては、色素原性核対比染色剤、例えば、ヘマトキシリン(青色から紫色に染色する)、メチレンブルー(青色に染色する)、トルイジンブルー(核を濃青色に、多糖類をピンク色から赤色に染色する)、核ファストレッド(ケルンエヒトロート色素とも呼ばれ、赤色に染色する)、およびメチルグリーン(緑色に染色する);非核色素原性染色剤、例えばエオシン(ピンク色に染色する);4’,6-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI、青色に染色する)、ヨウ化プロピジウム(赤色に染色する)、ヘキスト染色剤(青色に染色する)、核グリーンDCS1(緑色に染色する)、核イエロー(ヘキストS769121は、中性pH下では黄色に染色し、酸性pH下では青色に染色する)、DRAQ5(赤色に染色する)、DRAQ7(赤色に染色する)を含む蛍光性核染色剤;蛍光性非核染色剤、例えばフルオロフォア標識ファロイジン(線維状アクチンを染色する、色はコンジュゲートフルオロフォアに依存する);ワンギーソン(ワンギーソン染色剤は、コラーゲンと他の結合組織、例えば筋組織との間の相違を強調するために使用される染色剤である);アルシアンブルー(アルシアンブルーは、グリコサミノグリカンおよび酸性ムチンなどの物質に特異性を与え(水中でアルシアンブルー8G吸光度最大615nm)、酸性ムチンおよび粘膜物質を青色に、対比染色剤ニュートラルレッドを使用する場合は核を赤みがかったピンク色にさせるフタロシアニン色素である);ワイゲルトのレゾルシンフクシン(ワイゲルトの弾性)(このタイプの染色剤は、弾性繊維を着色するために使用される。これにより、それらは青黒色に染色され、核は薄青黒色になり、コラーゲンはピンク色または赤色になり、他の組織は黄色になる)が挙げられる。
【0100】
いくつかの実施形態では、対比染色剤は、以下から選択される:酸フクシン(C.I.42685;吸光度最大546nm)、アルシアンブルー8GX(C.I.74240;吸光度最大615nm)、アリザリンレッドS(C.I.58005;吸光度最大556および596nm)、オーラミンO(C.I.41000;吸光度最大370および432nm)、アゾカルミンB(C.I.50090;吸光度最大516nm)、アゾカルミンG(C.I.50085;吸光度最大511nm)、アズールA(C.I.52005;アズールBと同様の吸光度)、アズールB(C.I.52010;吸光度最大639nm)、塩基性フクシン(C.I.42510;吸光度最大547~552nm)、ビスマルクブラウンY(C.I.21000;吸光度最大643nm)、ブリリアントクレシルブルー(C.I.51010;吸光度最大622nm)、カルミン(C.I.75470;吸光度最大プロトン化490~495、塩基中および金属塩と組み合わせた場合に増加)、クロラゾールブラックE(C.I.30235;吸光度最大500~504nmおよび574~602nm)、コンゴーレッド(C.I.22120;吸光度最大497nm)、クレシルバイオレット(吸光度最大596~601nm)、クリスタルバイオレット(C.I.42555;吸光度最大590nm)、ダローレッド(吸光度最大502nm)、エチルグリーン(C.I.42590;吸光度最大635nm420nm)、ファストグリーンFCF(C.I.42053;吸光度最大624nm、pH依存性)、ギムザ染色剤(不純なアズールB、メチレンブルーおよびエオシンYの混合物)、インジゴカルミン(C.I.73015;吸光度最大608nm)、ヤヌスグリーンB(C.I.11050;吸光度最大630nm)、ジェンナー染色剤1899、ライトグリーンSF(C.I.42095;吸光度最大422および630nm)、マラカイトグリーン(C.I.42000;吸光度最大614および425nm)、マルチウスイエロー(C.I.10315;吸光度最大420~432nm)、メチルオレンジ(C.I.13025;吸光度最大507nm)、メチルバイオレット2B(C.I.42535;吸光度最大583~587nm)、メチレンブルー(C.I.52015;吸光度最大656~661nm)、メチレンバイオレット(ベルントゼン)、(C.I.52041;吸光度最大580~601nm)、ニュートラルレッド(C.I.50040;pHおよび溶媒に応じた吸光度最大454、529、541nm)、ニグロシン(C.I.50420;吸光度最大570~580nm)、ナイルブルーA(C.I.51180;吸光度最大633~660nm)、核ファストレッド(C.I.60760;吸光度最大535および505nm)、オイルレッドO(C.I.26125;吸光度最大518および359nm)、オレンジG(C.I.16230;吸光度最大475nm)、オレンジII(C.I.15510;吸光度最大483nm)、オルセイン(吸光度最大575~590pH依存性、パラローズアニリン(C.I.42500;吸光度最大545nm)、フロキシンB(C.I.45410;吸光度最大548および510nm)、ピロニンB(C.I.45010;ピロニンYと密接に関連)、ピロニンY(C.I.45005;吸光度最大546~549nm)、レサズリン(吸光度最大水中で598nm、メタノール中で478)、ローズベンガル(C.I.45435;吸光度最大546nm)、サフラニンO(C.I.50240;吸光度最大530nm)、ズダンブラックB(C.I.26150;吸光度最大598nmおよび415nm)、ズダンIII(C.I.26100;吸光度最大503~507および503nm)、ズダンIV(C.I.26105;吸光度最大520nm)、テトラクローム染色(MacNeal)、チオニン(C.I.52000;吸光度最大598~602nm)、トルイジンブルー(C.I.52040;吸光度最大626~630nm)、ワイゲルトのレゾルシンフクシン(最大吸光度508nm)、ライト染色、およびそれらの任意の組合せ。これらの例の各々において、「C.I.」は、Color Index(商標)を指す。Color Index(商標)は、その認識されている使用クラス、その色相およびシリアル番号(関連する着色剤タイプがColor Indexに登録されている時系列を単に反映している)によって市販品を記述する。この定義により、特定の製品を、必須の着色剤が同じ化学構成であり、その必須の着色剤が単一の化学反応または一連の反応から生じる他の製品と共に分類することが可能になる。
【0101】
ある特定の実施形態では、バイオマーカー染色切片の連続切片(またはバイオマーカー染色切片自体)が形態学的に染色され得る。基本的な形態学的染色技法は、多くの場合、第1の色素で核構造を染色し、第2の染色剤で細胞質構造を染色することに依存する。ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色剤ならびにLee染色剤(メチレンブルーおよび塩基性フクシン)を含むがこれらに限定されない、多くの形態学的染色剤が知られている。市販のH&Eステイナーの例としては、RocheによるVENTANA SYMPHONY(個別スライドステイナー)およびVENTANA HE 600(個別スライドステイナー)のH&Eステイナー;Agilent TechnologiesによるDako CoverStainer(バッチステイナー);Leica Biosystems Nussloch GmbHによるLeica ST4020 Small Linear Stainer(バッチステイナー)、Leica ST5020 Multistainer(バッチステイナー)、およびLeica ST5010 Autostainer XLシリーズ(バッチステイナー)のH&Eステイナーが挙げられる。
III.細胞定量
【0102】
本スコアリングアルゴリズムは、EREG染色細胞(EREG+腫瘍細胞)およびAREG染色細胞(AREG+腫瘍細胞)の両方のパーセンテージの定量に基づく。陽性染色された細胞のパーセンテージは、手動でまたは自動化された方法によって決定され得る。
【0103】
手動の方法では、熟練したユーザ(病理学者など)は、染色された試料の拡大画像を観察し、それぞれのマーカーについて陽性に染色する視野内の細胞のパーセンテージを推定する。試料が組織切片である場合、当業者は、解析のために視野(FOV)内の関心領域(ROI)を識別してもよく(腫瘍辺縁を識別し、腫瘍辺縁内の細胞のみを評価するなど)、または単にFOV内のすべての細胞を評価してもよい。
【0104】
一実施形態では、自動化された定量化がデジタル病理システムで行われる。デジタル病理システムには、以下の2つの基本的な構成要素がある:(1)染色された試料のデジタル画像を生成するためのスキャニングシステム、および(2)画像内の特定の特徴を識別および定量化するための画像解析システム。本発明の方法の例示的なデジタル病理ワークフローでは、染色された試料は、染色プラットフォーム上でデジタル化され、次いで、画像解析システムによって解析されて、細胞の総数およびバイオマーカー染色細胞の総数に対応する画像内の特徴を識別および定量化する。次いで、それぞれのマーカーについて陽性に染色する細胞のパーセンテージを、これらの2つの値から導き出してもよい。これは、いくつかの異なる形態をとることができる。例えば、システムは、「細胞」に対応する画像内のオブジェクトを識別し、次いで、陽性バイオマーカー染色を示す適切な染色パターンを含む細胞の数を識別し得る。あるいは、システムは、画像の領域および陽性バイオマーカー染色と相関するその領域のパーセンテージを計算することができる。さらに別の実施形態では、システムは、細胞膜に対応する画像のすべての領域を識別し、陽性バイオマーカー染色に対応するその領域のパーセンテージを計算することができる。多くの他の構成を想像または使用することができる。手動および自動の両方の方法のアウトプットは、EREG+腫瘍細胞のパーセンテージおよびAREG+腫瘍細胞のパーセンテージである。
【0105】
デジタル病理用途のための様々なスキャナ(蛍光および明視野の両方)の詳細な概要は、Farahaniら、Whole slide imaging in pathology:advantages,limitations,and emerging perspectives,Pathology and Laboratory Medicine Int’l、第7巻、23~33ページ(2015年6月)に見出すことができ、その内容は参照によりその全体が援用される。市販のスライドスキャナの例としては、次のものが挙げられる:3DHistech PANNORAMIC SCAN II;DigiPath PATHSCOPE;Hamamatsu NANOZOOMER RS、HT、およびXR;Huron TISSUESCOPE 4000、4000XT、およびHS;Leica SCANSCOPE AT、AT2、CS、FL、およびSCN400;Mikroscan D2;Olympus VS120-SL;Omnyx VL4、およびVL120;PerkinElmer LAMINA;Philips ULTRA-FAST SCANNER;Sakura Finetek VISIONTEK;Unic PRECICE 500、およびPRECICE 600x;VENTANA ISCAN COREOおよびISCAN HT;ならびにZeiss AXIO SCAN.Z1。他の例示的なシステムおよび特徴は、例えば、WO2011-049608、または、2011年9月9日に出願され、IMAGING SYSTEMS,CASSETTES,AND METHODS OF USING THE SAMEと題する米国特許出願第61/533,114号に見出すことができ、これらの内容は、その全体が参照により援用される。
【0106】
本明細書で開示される自動化された方法を実施するのに有用である例示的な市販の画像解析ソフトウェアパッケージとしては、VENTANA VIRTUOSOソフトウェアスイート(Ventana Medical Systems,Inc.);TISSUE STUDIO、DEVELOPER XD、およびIMAGE MINERソフトウェアスイート(Definiens);BIOTOPIX、ONCOTOPIX、およびSTEREOTOPIXソフトウェアスイート(Visiopharm);ならびにHALOプラットフォーム(Indica Labs,Inc.)が挙げられる。
IV.処置選択
【0107】
処置レジメンは、EREG染色細胞(EREG+腫瘍細胞)およびAREG染色細胞(AREG+腫瘍細胞)の両方のパーセンテージを所定のカットオフと比較することによって選択される。
【0108】
使用される所定のカットオフは、患者がEGFR指向性療法に対して陽性の応答を有する尤度を示し得るか、または患者がEGFR指向性療法に対して陰性の応答を有する尤度を示すカットオフであり得る。本明細書で使用される場合、「EGFR指向性療法に対する陽性の応答」は、カットオフが、EGFR指向性療法による処置後の少なくとも1つの全生存および無増悪生存の改善に関連することを意味する。本明細書で使用される場合、「EGFR指向性療法に対する陰性の応答」は、カットオフが、EGFR指向性療法による処置後の少なくとも1つの全生存および無増悪生存の悪化に関連することを意味する。
【0109】
一実施形態では、EGFR指向性治療剤に対する陽性の応答に関連するカットオフが使用される。EREGおよびAREGについて別々のカットオフを開発し、EREG+腫瘍細胞のパーセンテージをEREG特異的カットオフと比較し、AREG+腫瘍細胞のパーセンテージをAREG特異的カットオフと比較する。患者は、EREG+腫瘍細胞のパーセンテージがEREGについての所定のカットオフを超えるか、またはAREG+腫瘍細胞のパーセンテージがAREGについての所定のカットオフを超えるかのいずれかである場合、EGFR指向性療法を受けるように選択される。
【0110】
一実施形態では、EGFR指向性治療剤に対する陰性の応答に関連するカットオフが使用される。EREGおよびAREGについて別々のカットオフを開発し、EREG+腫瘍細胞のパーセンテージをEREG特異的カットオフと比較し、AREG+腫瘍細胞のパーセンテージをAREG特異的カットオフと比較する。患者は、EREG+腫瘍細胞のパーセンテージがEREGについての所定のカットオフを超えるか、またはAREG+腫瘍細胞のパーセンテージがAREGについての所定のカットオフを超えるかのいずれかである場合、EGFR指向性療法を受けるように選択される。EREG+腫瘍細胞のパーセンテージおよびAREG+腫瘍細胞のパーセンテージの両方がそれぞれの所定のカットオフを下回る場合、EGFR指向性治療剤を含まない治療コースが患者に選択される。
【0111】
別の実施形態では、各マーカーに対して以下の2つのカットオフが使用される:(a)EGFR指向性治療剤に対する陽性の応答に関連するカットオフ(「陽性カットオフ」)、および(b)EGFR指向性治療剤に対する陰性の応答に関連するカットオフ(「陰性カットオフ」)。EREGおよびAREGについて別々のカットオフを開発し、EREG+腫瘍細胞のパーセンテージを陽性EREG特異的カットオフおよび陰性EREG特異的カットオフの両方と比較し、AREG+腫瘍細胞のパーセンテージを陽性AREG特異的カットオフおよび陰性AREG特異的カットオフの両方と比較する。処置選択は表5に示す通りである。
【表5】
例示的な他の因子としては、ミスマッチ修復欠損腫瘍に対する免疫療法、右側原発を有する患者に対する血管新生阻害剤、ならびにBRAF突然変異腫瘍に対するBRAFおよびMEK阻害剤の利用可能性および有効性が挙げられる。
【0112】
一実施形態では、抗EGFR治療剤はEGFR抗体である。これらの療法は、典型的には、EGFRの細胞外ドメインに結合する抗体または抗体断片に依存する。一実施形態では、EGFR抗体ベースの療法は、セツキシマブおよび/またはパニツムマブを含む。
【0113】
一実施形態では、EGFR指向性治療剤は、ステージIII結腸直腸腫瘍を有するRAS野生型対象のための処置レジメンに組み込まれる。このステージでは、腫瘍の外科的除去または部分的な結腸切除(付近のリンパ節の除去を含む)に続いてアジュバント化学療法および/または放射線療法が実施されるのが一般的だが、ある特定の患者に対しては手術なしで化学療法が(任意に放射線療法と組み合わせて)使用され得る。このステージで使用される非限定的な併用療法には、FOLFOX(5-FU、ロイコボリン、およびオキサリプラチン)またはCapeOx(カペシタビンおよびオキサリプラチン)が含まれる。1つの特定の非限定的な実施形態では、ステージIII結腸直腸癌を処置する方法は、以下を含み得る:
・EGFR指向性治療剤を受けるように選択された患者に対して:EGFR抗体ベースの療法を、任意に、フルオロピリミジンベースの化学療法またはフルオロピリミジンベースの併用化学療法(FOLFOXまたはCapeOxなど)と組み合わせて投与すること、または
・EGFR指向性治療剤を受けないように選択された患者に対して:EGFR抗体ベースのものを含まない療法コースを投与すること。
【0114】
別の実施形態では、EGFR指向性治療剤は、ステージIV結腸直腸腫瘍を有するRAS野生型対象のための処置レジメンに組み込まれる。ステージIV結腸直腸腫瘍のための治療レジメンは、典型的には、腫瘍の外科的除去または部分的な結腸切除(付近のリンパ節の除去を含む)および転移(可能な場合)ならびにアジュバントもしくはネオアジュバント化学療法および/または放射線療法を含む。腫瘍の外科的除去または部分的な結腸切除(付近のリンパ節の除去を含む)および転移(可能な場合)、ならびに化学療法および/または放射線療法は、典型的にはこのステージで実施される。一般的な化学療法には、ロイコボリンならびに/または他の化学療法および/もしくは標的療法と任意に組み合わせたフルオロピリミジンベースの化学療法が含まれる。このステージで使用される非限定的な併用療法としては、次のものが挙げられる:
・FOLFOX:ロイコボリン、5-FU、およびオキサリプラチン(ELOXATIN);
・FOLFIRI:ロイコボリン、5-FU、およびイリノテカン(CAMPTOSAR);
・CapeOX:カペシタビン(ゼローダ)およびオキサリプラチン;
・FOLFOXIRI:ロイコボリン、5-FU、オキサリプラチン、およびイリノテカン;
・上記の組合せのうちの1つに加え、VEGFを標的とする薬物(ベバシズマブ[アバスチン]、ziv-アフリベルセプト[ZALTRAP]、またはラムシルマブ[CYRAMZA]など)、またはEGFRを標的とする薬物(セツキシマブ[Erbitux]またはパニツムマブ[VECTIBIX]など)のいずれか;
・標的薬物の有無を問わず、5-FUおよびロイコボリン;
・標的薬物の有無を問わず、カペシタビン;
・標的薬物の有無を問わず、イリノテカン;
・セツキシマブ単独;
・パニツムマブ単独;
・レゴラフェニブ(STIVARGA)単独;ならびに
・トリフルリジンおよびチピラシル(LONSURF)。
・1つの特定の非限定的な実施形態では、ステージIV結腸直腸癌を処置する方法は、以下を含み得る:
・EGFR指向性治療剤を受けるように選択された対象に対して、EGFR抗体ベースの療法を、任意に、FOLFOX、FOLFIRI、CapeOX、FOLFOXIRI、5-FUおよびロイコボリン、カペシタビン、イリノテカン、ならびにVEGFを標的とする薬物(例えば、ベバシズマブ、ziv-アフリベルセプト、およびラムシルマブなど)からなる群から選択される1つまたは複数の追加の療法と組み合わせて投与すること、または
・EGFR指向性治療剤の投与を受けないように選択された対象に対して、EGFR指向性治療剤を含まない療法コース(例えば、VEGFを標的とする薬物、FOLFOX(VEGFを標的とする薬物と任意に組み合わせられる)、FOLFIRI(VEGFを標的とする薬物と任意に組み合わせられる)、CapeOX(VEGFを標的とする薬物と任意に組み合わせられる)、FOLFOXIRI(VEGFを標的とする薬物と任意に組み合わせられる)、5-FUおよびロイコボリン(VEGFを標的とする薬物と任意に組み合わせられる)、カペシタビン(VEGFを標的とする薬物と任意に組み合わせられる)、イリノテカン(VEGFを標的とする薬物と任意に組み合わせられる)、レゴラフェニブ、またはトリフルリジンおよびチピラシル(VEGFを標的とする薬物と任意に組み合わせられる))を投与すること。
V.実施例
【0115】
A.患者、材料、および方法
【0116】
460例のKRASc.12、13、59~61-wt患者を以前に第二選択のイリノテカン(Ir)対(vs)パニツムマブと併用したイリノテカン(IrPan)に無作為化した。SeymourらおよびMiddletonらを参照されたい。現在の試験は、AREGおよびEREGに対するIHCが成功した(n=313)適切に保存された病理学的材料(460例中326例[70.9%]の患者)(試験参加時に採取された組織)を有するすべての同意患者を含む。IHCが失敗し、反復解析に利用可能な腫瘍組織が不十分であった13例が存在した。KRASc.146、NRASc.12、13、59~61、BRAFc.1799T>Aについてのさらなる突然変異解析を以前に行った。一次解析は、KRASc.12、13、59~61、146およびNRASc.12、13、59~61wt(「RAS-wt」)であった患者で行った。
【0117】
各FFPEブロックからの3つの厚さ4μmの組織切片を、別個のSuperfrost Plusスライド(VWR、Lutterworth、UK)上に切り出した。VENTANA BenchMark ULTRA自動ステイナー(Ventana Medical Systems,Inc.、Tucson、AZ、USA)および予めプログラムされたプロトコルを使用して、1つの切片を抗AREG(SP272)(Ventana Medical Systems,Inc.、Tucson、AZ、USA)で染色し、別の切片を抗EREG(SP326)(Ventana Medical Systems,Inc.、Tucson、AZ、USA)ウサギモノクローナル抗体で染色した。第3の切片を、青味試薬としてマイヤーのヘマトキシリンおよびスコットの水道水代替物を使用して、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。スライドのデジタル画像を、VENTANA DP200スキャナを用いて200倍の倍率で生成した。研究者らは、患者の処置割当て、突然変異プロファイル、および臨床アウトカムを知らされていなかった。
【0118】
AREGおよびEREGに対して陽性に染色された腫瘍細胞のパーセンテージを評価するためのAIアルゴリズムは、Ventana Medical Systems,Inc.(Santa Clara、CA、USA;Tucson、AZ、USA)によって開発された。アルゴリズムを検証するために、AREGおよびEREGに対して染色した結腸直腸癌標本の社内開発コホートを使用して生成した30枚のデジタルスライド画像から、腫瘍領域内の30視野(FOV)を最初にランダムに選択した。2名の病理学者が独立して、AREGおよびEREGのそれぞれに対して陽性または陰性としてFOV内のすべての腫瘍細胞に注釈を付けた。4つの染色パターン:膜状、細胞質状、細胞膜状および点状が観察された。いずれか1つのこれらの染色パターンが見られた場合、腫瘍細胞を陽性とみなした。一致相関係数(CCC)を使用して、病理学者間の一致およびアルゴリズム生成結果と病理学者生成結果との間の一致を評価した。全スライド画像を解析するために使用される場合のアルゴリズムを検証するために、AIアルゴリズムIHCの読出しを、PICCOLOコホートからの腫瘍領域内のqRT-PCR結果と相関させた。
【0119】
腫瘍領域に病理学者が注釈を付け、開発されたAIアルゴリズムをスライド全体に適用し、次いで腫瘍領域からデータを抽出した。AIアルゴリズムは、AREGおよびEREGのそれぞれについてIHC陽性腫瘍細胞のパーセンテージを決定した。サンプルを、IHC陽性率によってHigh(AREG highまたはEREG Highのいずれか)およびlow(AREG lowおよびEREG lowの両方)エクスプレッサーに二分した。Seligmannらによって感度および特異度の計算の基礎として報告された以前のmRNA二分化を参照して、AREGおよびEREG IHCカットポイント(各1%~100%、したがって1002=1万の組合せ)のすべての可能な組合せについて受信者動作特性(ROC)曲線を作成した。最大ヨーデン指標(Max[感度+特異度-1]、すなわち、感度と特異度の合計は、それぞれに等しい重み付けがされたときに最大であった)を計算して、mRNAアッセイのものと最もよく整合したIHCカットポイントを識別した。Youdenを参照されたい。これを、一次解析における検討のためのIHCカットポイントを定義するために採用した。
【0120】
主要評価項目は無増悪生存(PFS)であった。副次的評価項目は、全生存(OS)および固形腫瘍における応答評価基準(RECIST)奏効率(RR)であった。PFSおよびRRデータは、一次PICCOLO試験解析から変化しなかったが、更新された2年OSデータをこの解析で使用した。
【0121】
すべての統計解析にはStataを使用した(Stata Statistical Software、Release 16[2019];StataCorp)。ベースライン患者特性を、両側t検定、ウィルコクソン順位和検定(非正規分布度数分布を有する変数について)、およびピアソンχ検定(カテゴリ変数について)を用いて、処置群間(IrPan対Ir)で比較した。患者特性を、同じ検定を使用して全試験集団と比較した。箱ひげ図およびウィルコクソン順位和検定を使用して、BRAF-wt症例と突然変異症例との間の連続AREGおよびEREG IHC陽性率の分布、左(脾弯曲部から直腸)対右PTL、および最後に腹膜転移の存在対非存在を比較した。
【0122】
リガンド発現(すなわち、IHC陽性率)を、最初に、Cox比例ハザードモデルにおいて、二分分類子(高対低)および各リガンドを連続変数として別々に使用して、Ir単独で処置したすべての患者において予後マーカーとして評価した。AREGおよびEREGを連続変数として評価した場合、リガンド陽性率を10倍に縮小して、ハザード比(HR)の解釈可能性を高めた。解析を最初に調整せずに実施し、次いで、世界保健機関のパフォーマンスステータス[WHO PS]、以前の療法に対する応答、および以前の化学療法(あり対なし)について調整した。以前の療法に対する応答は30例の患者では不明であり、これらの30例の患者の値を補完するために多重補完を使用した。多重ロジスティック回帰を、20の補完データセットに基づいて、以前の応答の予測因子として「以前のオキサリプラチン療法」および「以前の化学療法」を使用して行った。
【0123】
次いで、リガンド発現を、IHCリガンドステータス(AREGまたはEREGのいずれか高い対AREGおよびEREGの両方低い)によって層別化し、処置効果(IrPan対Ir)を評価し、尤度比検定を使用してリガンド-処置相互作用について検定する未調整Cox比例ハザードモデルにおいて、PFSおよびOSに対するパニツムマブ療法の利益の予測マーカーとして評価した。次いで、これらのモデルを、BRAF突然変異、PTLおよび腹膜転移の存在について別々に調整して繰り返し、リガンド-処置相互作用がこれらの可能性のある交絡因子についての調整後も持続したかどうかを決定した。未調整モデルをRASおよびBRAF-wt群でも繰り返し、二分AREGおよび二分EREGも別々に考慮した(50%カットポイント)。カプラン・マイヤー(KM)曲線をプロットした。一致確率は、ハレルのC指標を用いて評価した。
【0124】
RRに対するIrPan対Irの効果に対する未調整リスク比を、二分リガンドIHCによって層別化された一般化線形モデル(対数リンク付き)から推定した。次いで、リガンド-処置相互作用の尤度比検定を行った。
【0125】
B.結果
【0126】
このバイオマーカー試験の患者コホートと主試験集団との間に特性の有意差はなかった(データは示さず)。合計313例の患者のうち274例(88%)がRAS-wtであり、そのうち49例(18%)がBRAF突然変異を有していた(図1)。242例(88%)のRAS-wt患者が疾患進行事象を有し、248例(91%)が死亡した。
【0127】
B1.アルゴリズム開発
【0128】
解析した30個のFOVのそれぞれにおける総腫瘍細胞数ならびにAREGおよびEREG IHC陽性率を評価することについて、2名の独立した病理学者の間で強い一致があった。各病理学者のスコアはまた、AIアルゴリズムの評価と高度に相関していた(図2)。
【0129】
B2.リガンド発現
【0130】
AREGおよびEREG IHC陽性率は強く相関していた(スピアマン相関係数0.77、P<0.0005)。IHCおよびmRNAの両方のデータが利用可能であった患者のサブセットの中で(313例の患者のうち186例[59%])、2つの測定値はリガンドのそれぞれについて正の相関があった(スピアマン相関係数:AREG0.64、P<0.0001;EREG0.80、P<0.0001)。
【0131】
一次解析のために、AREGおよびEREG IHC陽性率を、臨床適用への経路を助けるために、二分マーカー(いずれかのリガンドの高発現対両方の低発現)として事前に評価した。IHCおよびmRNAの両方のデータが利用可能であった場合、最大ヨーデン指標は0.581であり、これにより、AREGについては47%のIHC陽性およびEREGについては52%の「高」カットポイント対「低」カットポイントが決定された。これらのカットポイントでの感度および特異度は、それぞれ0.716および0.865であった。これらのカットポイントの使用によって、試験サンプル(n=313)が159例(50.8%)の高症例および154例(49.2%)の低症例に分けられた。将来の実地臨床における手動のAREGおよびEREG解釈を容易にするために、今後の解析における両方のマーカーについて最適なカットポイントを50%に丸めた。EREG IHC陽性率対AREG IHC陽性率の散布図を、50%カットポイントを示す点線と共に図3に示す。高リガンド群および低リガンド群は、各処置群において患者の均一な分布を有していた。右側PTL、BRAF突然変異ステータスおよび腹膜転移を有する患者は、高リガンド群よりも低リガンド群の方が有意に多かった(表6)。
【表6】
【0132】
B3.複合二分バイオマーカーとしてのAREG/EREGパフォーマンスス
【0133】
Ir単独で処置された患者または調整された解析において、PFS(未調整HR、1.22[95%CI、0.86~1.75];P=0.27)またはOS(未調整HR、1.01[95%CI、0.71~1.43];P=0.98)に対するIHCリガンドステータス(高対低)の予後効果の証拠はなかった(表7)。
【表7】
【0134】
一次仮説は、高リガンドIHCスコアがRAS-wt患者におけるパニツムマブのPFS利益を予測するであろうということであった。この仮説は、表8および図4に示すように、データによって支持された。
【表8】
【0135】
高リガンドIHC陽性を有するRAS-wt患者において、IrPanによるPFSの中央値は、Ir単独での3.2ヶ月と比較して、8.0ヶ月であった(HR、0.54[95%CI、0.37~0.79];P=0.001)。逆に、低リガンドIHC陽性を有する患者では、パニツムマブ療法からの利益はなかった(IrPan対IrのPFSの中央値:3.4対4.4ヶ月;HR、1.05[95%CI、0.74~1.49];p=0.78)(表8、図4)。リガンド-処置相互作用は、未調整(p=0.02)であろうと調整(p=0.02)であろうと有意であった。OSについての結果はさほど顕著ではなく(相互作用p=0.19)、おそらく試験全体でパニツムマブのOS効果が欠如していたためであった。RAS-wt亜集団およびBRAF-wt亜集団内では、効果サイズは類似していたが、サンプルサイズがより小さいために有意性は低かった(PFS相互作用p=0.21)(表8)。
【0136】
高リガンドIHC陽性を有するRAS-wt患者では、RRがイリノテカンへのパニツムマブの追加によって有意に改善され(IrPan対Ir:48%対6%;リスク比、7.8[95%CI、2.90~20.69];p<0.0001)、一方、低リガンドIHC陽性を有する患者では、RRは2つの処置群間で有意差を示さなかった(IrPan対Ir:25%対14%;リスク比、1.8[95%CI、0.89~3.65];p=0.10)(表9)。
【表9】
【0137】
B4.別々のバイオマーカーとしてのAREGおよびEREG
【0138】
二次解析として、AREGおよびEREG IHC陽性率を連続変数として別々に調べた。複合二分分類子の一次解析と同様に、AREGもEREGも、連続変数としてのPFSまたはOSの予後を示すものではなかった(表10)。EREGは、パニツムマブによるPFSの利益を予測するものであった(相互作用p=0.01)。AREGについて同じ知見に向かう傾向が見られたが、リガンド-処置相互作用は有意性に達しなかった(相互作用p=0.06)。AREGもEREGも、パニツムマブ療法のOS利益を予測するものではなかった(表11)。
【表10】
【表11】
【0139】
B5.可能性のある交絡因子の効果
【0140】
BRAF突然変異、右側PTLおよび腹膜転移の存在が低リガンドIHC陽性と関連していたことを考慮して、RAS-wt患者においてPFSについて見られるリガンドレベルによる異なる処置効果が代わりにこれらの因子によって引き起こされるかどうかを検討した(表12)。二分分類子は、BRAF(相互作用P=0.02)、PTL(相互作用P=0.01)および腹膜転移(相互作用P=0.01)について調整した後も、パニツムマブ療法の利益の有意な予測因子のままであった。各リガンドを連続変数として別々に調べた場合、同様の結果が見られた。したがって、リガンド処置効果は、これらの潜在的な交絡因子とは無関係であると思われる。
【表12】
【0141】
結腸の右側(盲腸から脾弯曲部)に由来する腺癌は、より頻繁に、BRAF、PTENおよびPIK3CA突然変異、ならびにミスマッチ修復酵素欠損に関連する。CRYSTAL(FOLFIRI+/-セツキシマブ)およびPRIME(FOLFOX+/-パニツムマブ)試験のレトロスペクティブ解析により、左側PTLを有するが右側PTLを有さないRAS-wt患者における抗EGFR剤からのOS利益を実証して、腫瘍側性-そのような分子特性の代理としての-と抗EGFR療法との間の関係が広く調べられている。これらのデータは、全国の処置ガイドラインに情報を提供するために使用されており、NCCNは、右側PTL患者に第一選択の状況で抗EGFR剤を提供すべきではないと推奨している。ここで、AREGおよびEREGタンパク質の発現は、右側PTLよりも左側PTLの方が高かった。しかしながら、本発明者らの二分分類子は、この因子の調整後もパニツムマブの利益の有意な予測因子のままであり、処置コースの初期に抗EGFR療法を適切に提供され得る右PTL患者を識別することにおけるその潜在的な臨床的有用性を示している。
【0142】
B6.複合AREG/EREGモデルの検討-代替カットポイント
【0143】
50%IHC陽性カットポイントは、以前に検証されたmRNA発現ベースのアッセイで開発された中央/上部の三分位カットポイントと密接に整合しているため、選択した。調査目的のために、異なるカットポイントを使用したPFSに対するパニツムマブの利益を調べた(表13)。カットポイントを20%に低下させることにより、実際にはパニツムマブの追加によりPFSが有意に劣っており(HR、1.73[95%CI、1.02~2.95];p=0.04)、おそらくこの処置によって害された低リガンドIHC陽性率を有する患者が識別された。高リガンド群では、PFSに対するIrPan対IrについてのHRは、20%から50%カットポイントまでの約0.55のHRで顕著な利益を示した。リガンド-処置相互作用はこの範囲全体にわたって有意なままであり、異なる臨床シナリオで異なるカットポイントを使用する可能性を示している。さらに、カットポイントが20%に低下したとき、化学療法へのパニツムマブの追加によって害されたと思われる非常に低いリガンドエクスプレッサーの群が識別された。
【表13】
【0144】
B7.生検と切除の比較
【0145】
試験サンプル内で、190(61%)個の腫瘍標本を切除物から採取し、123(39.3%)個の腫瘍標本を生検から採取した。本発明者らの二分モデルが、調べた腫瘍標本型に関係なく信頼性が高いままであることを確実にするために、本発明者らはまた、これらのサブグループを別々に解析した(表14)。PFSに対する処置(IrPan対Ir)の効果についてのHRは、切除を受けた患者ではパニツムマブの追加を支持したが(HR、0.62[95%CI、0.44~0.86];p=0.005)、生検のみを受けた患者では支持しなかった(HR、1.06[95%CI、0.70~1.62];p=0.78)。これはおそらく、これらの患者が、ルーチンの術後サーベイランス中に検出される疾患の再発ではなく、広く転移性の疾患を呈する可能性が高かったためである。とは言え、生検のみを受けた患者の中では、イリノテカンへのパニツムマブの追加が、低リガンドエクスプレッサーではなく高リガンドエクスプレッサーに利益をもたらし得ることを示唆する傾向が残っていた。リガンド-処置相互作用は、どちらの標本型についても有意性に達しなかったが、これはおそらく、このサブグループ解析におけるサンプルサイズがより小さいためである。
【表14】
参考文献
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追加の実施形態
追加の実施形態1。腫瘍を有する患者を処置する方法であって、本方法は、腫瘍がAREG HIGHまたはEREG HIGHのいずれかである場合、EGFR指向性治療剤を含む治療コースを患者に投与することであって、腫瘍が、第1の所定のカットオフ以上のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、腫瘍はAREG HIGHとみなされ、腫瘍が、第2の所定のカットオフ以上のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、腫瘍はEREG HIGHとみなされる、投与することを含む、方法。
追加の実施形態2。腫瘍を有する患者を処置する方法であって、本方法は、腫瘍がAREG LOWおよびEREG LOWの両方である場合、EGFR指向性治療剤を含まない治療コースを患者に処置投与することであって、腫瘍が、第1の所定のカットオフ未満のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、腫瘍はAREG LOWであり、腫瘍が、第2の所定のカットオフ未満のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、腫瘍はEREG LOWとみなされる、投与することを含む、方法。
追加の実施形態3。EGFR指向性治療剤を含む治療コースを受ける、腫瘍を有する患者を選択する方法であって、本方法は、
(a)ヒトAREGタンパク質についての腫瘍の試料を組織化学的または細胞化学的に染色することと、
(b)ヒトEREGタンパク質についての腫瘍の試料を組織化学的または細胞化学的に染色することと、
(c)腫瘍の試料中のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを定量し、該パーセンテージを第1の所定のカットオフと比較することと、
(d)腫瘍の試料中のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを定量し、該パーセンテージを第2の所定のカットオフと比較することと、を含み、
患者は、AREG+腫瘍細胞のパーセンテージが第1の所定のカットオフ以上であるか、またはEREG+腫瘍細胞のパーセンテージが第2の所定のカットオフ以上である場合、EGFR指向性治療剤を含む治療コースを受けるように選択される、方法。
追加の実施形態4。EGFR指向性治療剤を含まない療法を受ける、腫瘍を有する患者を選択する方法が提供され、本方法は、
(a)ヒトAREGタンパク質についての腫瘍の試料を組織化学的または細胞化学的に染色することと、
(b)ヒトEREGタンパク質についての腫瘍の試料を組織化学的または細胞化学的に染色することと、
(c)腫瘍の試料中のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを定量し、該パーセンテージを第1の所定のカットオフと比較することと、
(d)腫瘍の試料中のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを定量し、該パーセンテージを第2の所定のカットオフと比較することと、を含み、
患者は、AREG+腫瘍細胞のパーセンテージが第1の所定のカットオフ未満であり、EREG+腫瘍細胞のパーセンテージが第2の所定のカットオフ未満である場合、EGFR指向性治療剤を受けるように選択される。
追加の実施形態5。第1の所定のカットオフが20%~50%の範囲内であり、第2の所定のカットオフが20%~50%の範囲内である、追加の実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
追加の実施形態6。
第1の所定のカットオフが20%であり、第2の所定のカットオフが20%であるか、または
第1の所定のカットオフが25%であり、第2の所定のカットオフが25%であるか、または
第1の所定のカットオフが20%であり、第2の所定のカットオフが30%であるか、または
第1の所定のカットオフが25%であり、第2の所定のカットオフが33.3%であるか、または
第1の所定のカットオフが20%であり、第2の所定のカットオフが40%であるか、または
第1の所定のカットオフが25%であり、第2の所定のカットオフが50%である、追加の実施形態5に記載の方法。
追加の実施形態7。腫瘍を有する患者を処置する方法であって、本方法は、
(a)腫瘍がAREG HIGHまたはEREG HIGHのいずれかである場合、EGFR指向性治療剤を患者に投与することであって、腫瘍が、第1の所定の陽性カットオフ以上のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、腫瘍はAREG HIGHとみなされ、腫瘍が、第2の所定の陽性カットオフ以上のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、腫瘍はEREG HIGHとみなされる、投与することと、
(b)腫瘍がAREG LOWおよびEREG LOWの両方である場合、EGFR指向性治療剤を含まない療法コースを患者に投与することであって、腫瘍が、第1の所定の陰性カットオフ未満のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、腫瘍はAREG LOWとみなされ、腫瘍が、第2の所定の陰性カットオフ未満のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを有すると組織化学的または細胞化学的に決定された場合、腫瘍はEREG LOWとみなされる、投与することと、を含む、方法。
追加の実施形態8。腫瘍を有する患者の処置を選択する方法であって、本方法は、
(a)ヒトAREGタンパク質についての腫瘍の試料を組織化学的または細胞化学的に染色することと、
(b)ヒトEREGタンパク質についての腫瘍の試料を組織化学的または細胞化学的に染色することと、
(c)腫瘍の試料中のAREG+腫瘍細胞のパーセンテージを定量し、該パーセンテージを第1の所定の陽性カットオフおよび第1の所定の陰性カットオフと比較することと、
(d)腫瘍の試料中のEREG+腫瘍細胞のパーセンテージを定量し、該パーセンテージを第2の所定の陽性カットオフおよび第2の所定の陰性カットオフと比較することと、
(e)腫瘍がAREG HIGHまたはEREG HIGHのいずれかである場合、EGFR指向性治療剤を含む処置コースを受けるように患者を選択することであって、AREG+腫瘍細胞のパーセンテージが第1の所定の陽性カットオフ以上である場合、腫瘍はAREG HIGHとみなされ、EREG+腫瘍細胞のパーセンテージが第2の所定の陽性カットオフ以上である場合、腫瘍はEREG HIGHとみなされる、選択することと、
(f)腫瘍がAREG LOWおよびEREG LOWの両方である場合、EGFR指向性治療剤を含まない処置コースを受けるように患者を選択することであって、AREG+腫瘍細胞のパーセンテージが第1の所定の陰性カットオフ未満である場合、腫瘍はAREG LOWとみなされ、EREG+腫瘍細胞のパーセンテージが第2の所定の陰性カットオフ未満である場合、腫瘍はEREG LOWとみなされる、選択することと、を含む、方法。
追加の実施形態9。
第1の所定の陽性カットオフが30%~50%の範囲内であり、第1の所定の陰性カットオフが20%~30%の範囲内である、および/または
第2の所定の陽性カットオフが30%~50%の範囲内であり、第2の所定の陰性カットオフが20%~30%の範囲内である、追加の実施形態7または追加の実施形態8に記載の方法。
追加の実施形態10。
第1の所定の陽性カットオフが50%であり、
第1の所定の陰性カットオフが20%であり、
第2の所定の陽性カットオフが50%であり、
第2の所定の陰性カットオフが20%である、追加の実施形態9に記載の方法。
追加の実施形態11。腫瘍が結腸直腸腫瘍である、追加の実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
追加の実施形態12。結腸直腸腫瘍が左側腫瘍である、追加の実施形態11に記載の方法。
追加の実施形態13。結腸直腸腫瘍が右側腫瘍である、追加の実施形態11に記載の方法。
追加の実施形態14。試料が結腸直腸腫瘍の切除物に由来する、追加の実施形態11~13のいずれか1つに記載の方法。
追加の実施形態15。試料が結腸直腸腫瘍の生検試料である、追加の実施形態11~13のいずれか1つに記載の方法。
追加の実施形態16。追加の実施形態1~15に記載の方法のEGFR指向性治療剤が抗EGFRモノクローナル抗体である、追加の実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
追加の実施形態17。抗EGFRモノクローナル抗体が、セツキシマブまたはパニツムマブである、追加の実施形態16に記載の方法。
追加の実施形態18。処置コースが、患者に化学療法を投与することを含む、追加の実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
追加の実施形態19。化学療法がイリノテカンを含む、追加の実施形態18に記載の方法。
追加の実施形態20。腫瘍が、EGFRモノクローナル抗体療法に対する抵抗性を付与する検出可能な量の突然変異を含まない、追加の実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
追加の実施形態21。腫瘍がRAS野生型(RAS-wt)である、追加の実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
追加の実施形態22。腫瘍の試料がホルマリン固定パラフィン包埋組織切片である、追加の実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
追加の実施形態23。EREGを発現する腫瘍細胞のパーセンテージおよびAREGを発現する腫瘍細胞のパーセンテージが、自動化された方法によって定量される、追加の実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
【配列表】
2023542343000001.app
【国際調査報告】