(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-06
(54)【発明の名称】多管式反応器におけるエタノールの脱水素方法
(51)【国際特許分類】
C07C 45/00 20060101AFI20230929BHJP
C07C 47/06 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
C07C45/00
C07C47/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518758
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2021075135
(87)【国際公開番号】W WO2022063620
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】ガベル ジャン-クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】クパール ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】ダスティルン レジャーヌ
(72)【発明者】
【氏名】メジャン ミカエル
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC12
4H006BA05
4H006BA60
4H006BA71
4H006BA82
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H006BD81
4H006BQ10
(57)【要約】
本発明は、エタノールを含んでいる供給原料の脱水素のための方法であって、少なくとも1個の多管式反応器を用い、該反応器は、有利には、少なくとも1種の脱水素触媒を含んでいる複数個の菅およびカレンダを含み、前記供給原料を、菅にガスの形態で導入し、その際の入口温度は、240℃以上であり、圧力は、0.1~1.0MPaであり、WWHは、2~15h-1であり、伝熱流体が前記カレンダ中に流通する際の流量を、前記伝熱流体の、前記供給原料に相対する重量比が1.0以上になるものとし、かつ、前記伝熱流体を前記カレンダにガスの形態で導入する際の入口温度は、260℃以上であり、その際の入口圧力は、0.10MPa以上かつ1.10MPa以下であるようにし、少なくとも部分的に液体の形態でカレンダを出る、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセトアルデヒドを与えるエタノールの脱水素のための方法であって、エタノールを含んでいる供給原料の脱水素の段階を含み、前記脱水素段階は、反応セクションを使用し、該反応セクションは、少なくとも1個の多管式反応器を含んでおり、該多管式反応器は、1個または複数個の管と、シェルとを含み、
前記管(1個または複数個)は、それぞれ、少なくとも1種の脱水素触媒の少なくとも1個の固定床を含んでおり、
前記供給原料を前記管(1個または複数個)にガスの形態で給送し、その際の前記供給原料の入口温度は、240℃以上であり、その際の前記供給原料の入口圧力は、0.1~1.0MPaであり、入口における供給原料の重量毎時空間速度(WWH)は、2~15h
-1であり、
伝熱流体を前記シェル中に流通させて、前記伝熱流体を、ガスの形態で前記シェルに導入し、シェルの出口のところで、少なくとも部分的に液体の形態にあり、
前記伝熱流体をシェルに導入する際の流量は、シェル入口における前記伝熱流体の重量流量の、管(1個または複数個)の入口における前記供給原料の重量流量に対する比が1.0以上になるようなものとし、
前記伝熱流体をシェルに導入する際の伝熱流体の入口温度は、260℃以上かつ400℃以下であり、その際の伝熱流体の入口圧力は、0.10MPa以上かつ1.10MPa以下であり;
前記方法は、アセトアルデヒド、水素および未転化エタノールを少なくとも含んでいる脱水素流出物を生じさせる
方法。
【請求項2】
伝熱流体は、有機化合物の共融混合物を含んでいる油であり、所与の温度での該油の有機化合物の飽和蒸気圧間の差が50Pa以下、好ましくは20Pa以下、好適には10Pa以下になるような飽和蒸気圧を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
供給原料は、最低50重量%のエタノール、優先的には最低70重量%のエタノール、好適には最低80重量%のエタノールを含み、場合によっては、水を、供給原料の全重量に対する水の重量で好ましくは50重量%未満、優先的には30重量%未満、好適には20重量%未満の含有率で含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1個の多管式反応器は、シェル内に複数個の菅、好ましくは少なくとも100個の菅、優先的には少なくとも1000個の菅、好適には少なくとも2000個の菅、かつ、好ましくは20000個未満の菅、好適には10000個未満の菅、例えば、5000~6000個の菅を含む、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
多管式反応器の菅(1個または複数個)が有する長さは、1~6m、好適には2~3mである、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
多管式反応器の菅(1個または複数個)が示す内径は、30.0~60.0mm、優先的には40.0~50.0mmであり、管の壁厚は、好ましくは1.5~5.0mm、優先的には2.0~4.0mm、好適には2.2~3.2mmである、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
脱水素触媒は、無機担体、好ましくはシリカ上に元素銅をを少なくとも含む、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
脱水素触媒は、粒子の形態にあり、それが有する平均等価径は、0.5~10.0mm、好ましくは1.0~5.0mmである、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
菅(1個または複数個)中の前記供給原料の入口温度は、240℃~350℃、優先的には250℃~300℃、好適には260℃~290℃である、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
菅(1個または複数個)中の前記供給原料の入口圧力は、0.2~0.5MPa、優先的には0.3~0.4MPaである、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
反応器の入口のところの供給原料の重量毎時空間速度(WWH)は、2~10h
-1である、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
伝熱流体を多管式反応器のシェルに導入する際の流量を、シェル入口のところでの前記伝熱流体の重量流量の、菅(1個または複数個)の入口のところでの前記供給原料の重量流量に対する比が、1.5以上、かつ、有利には10.0以下、好ましくは5.0以下、好適には2.0以下となるようにする、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記伝熱流体を前記多管式反応器のシェルに導入する際の入口温度は、260℃以上、好ましくは270℃以上、好適には290℃以上、かつ、400℃以下、好ましくは380℃以下であり、その際の伝熱流体の入口圧力は、0.10MPa以上、好ましくは0.13MPa以上、好適には0.20MPa以上、かつ1.10MPa以下、好適には0.85MPa以下である、請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
伝熱流体のコンディショニングの段階を含み、該段階は、脱水素段階の多管式反応器のシェル出口における液体伝熱流体の回収のサブ段階と、伝熱流体の圧縮および/または加熱の段階とを含んでおり、脱水素段階のシェルにおける伝熱流体の入口の温度および圧力でガスの形態にある伝熱流体を得る、請求項1~13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
最低80重量%のエタノールを含んでいるエタノール供給原料からのブタジエンの生産のための方法であって、少なくとも以下を含む方法:
A) 請求項1~14のいずれか1つに記載のエタノールの脱水素のための方法を使用するエタノールのアセトアルデヒドへの転化の段階;多管式反応器の菅に給送する前記供給原料は、少なくとも部分的に、段階E1)から有利に得られたエタノールに富む流出物の一部であり、脱水素流出物を生じさせる、
場合によっては、分離セクションを使用し、脱水素流出物を処理し、ガスの形態にある水素流出物と、液体の形態にあるエタノール/アセトアルデヒド流出物とを少なくとも分離する;
B) ブタジエンへの転化のための段階;反応セクションBを少なくとも含んでおり、該反応セクションBに、段階A)から得られた前記脱水素流出物の一部または全部、または段階A)の任意の分離セクションから得られた任意のエタノール/アセトアルデヒド流出物を少なくとも、段階C1)から有利に得られたエタノールに富む液体流出物を任意に、段階E1)から有利に得られたアセトアルデヒドに富む流出物の一部または全部を給送し、触媒の存在中で操作し、該触媒は、好ましくは、元素タンタルと、無機担体とを含んでおり、該無機担体は、好ましくはシリカを含み、操作の際の温度は、300℃~400℃、であり、その際の圧力は、0.1~1.0MPaであり、給送流量を、エタノールの、アセトアルデヒドに対するモル比が、前記反応セクションの入口のところで、1~5になるように調節し、分離セクションを使用して、前記反応セクションBからの流出物を処理し、ガス流出物と、液体流出物とを少なくとも分離する;
C1) 場合による、水素の処理の段階;段階A)から得られた前記水素流出物を、0.1~1.0MPaの圧力に圧縮する圧縮セクションと、気-液スクラブ洗浄セクションとを少なくとも含み、該気-液スクラブ洗浄セクションに、15℃~-30℃の温度で、段階E1)から有利に得られた前記エタノールに富む流出物の一部および段階A)から得られた前記エタノール/アセトアルデヒド流出物の一部を給送し、25℃~60℃の温度で、前記圧縮済み水素流出物を給送し、エタノールに富む液体流出物および精製済み水素流出物を少なくとも生じさせる;
D1) ブタジエンの抽出の段階:少なくとも以下を含む;
(i)圧縮セクション;段階B)から得られた前記ガス流出物を、0.1~1.0MPaの圧力に圧縮し、場合によっては、段階B)から得られた前記圧縮されたガス流出物を、続いて、25℃~60℃の温度に冷却する、
(ii)気-液スクラブ洗浄セクション;スクラブ洗浄カラムを含んでおり、該スクラブ洗浄カラムに、頂部のところに、20~-20℃の温度で、本方法のエタノール供給原料と、場合による、段階E1)から有利に得られたエタノールに富む流出物の一部とからなるエタノール流を、底部のところに、圧縮されかつ任意に冷却された段階B)から得られた前記ガス状流出物を給送し、液体スクラブ洗浄流出物およびガス状副生流出物を少なくとも生じさせる、および
(iii)蒸留セクション;0.1~1MPaの圧力で操作し、前記段階B)から得られた液体流出物と、前記気-液スクラブ洗浄セクションからの液体流出物とを少なくとも給送し、粗製ブタジエン流出物およびエタノール/アセトアルデヒド/水の流出物を少なくとも生じさせる;
D2) ブタジエンの第1の精製の段階;気-液スクラブ洗浄セクションを少なくとも含み、該気-液スクラブ洗浄セクションに、底部のところにおいて、D1)から得られた粗製ブタジエン流出物を、頂部のところにおいて、ブタジエンの生産のための前記方法に対して外部の起源の水の流れである水の流れおよび/または段階E1)から有利に得られた水性流出物の一部を給送し、前記気-液スクラブ洗浄セクションは、頂部における予備精製されたブタジエン流出物と、底部における廃水流出物とを生じさせる;
D3) ブタジエンの精製の続きの段階;前記段階D2)から得られた前記予備精製済みブタジエン流出物を少なくとも給送し、精製済みブタジエンを少なくとも生じさせる;
E2) 不純物および褐色油の除去の段階;段階D1)から得られたエタノール/アセトアルデヒド/水の流出物と、段階E1)から有利に得られた水に富む流出物の少なくとも一部とを少なくとも給送し、水/エタノール/アセトアルデヒドのラフィネート、軽質褐色油流出物および重質褐色油流出物を少なくとも生じさせる、
E1) 流出物の処理の段階;段階E2)から有利に得られた水/エタノール/アセトアルデヒドのラフィネートを少なくとも給送し、エタノールに富む流出物、アセトアルデヒドに富む流出物および水に富む流出物を少なくとも生じさせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エタノールの接触脱水素のための方法、特に、伝熱流体の凝縮を有している少なくとも1個の多管式反応器を使用する方法に関する。本発明は、エタノールからのブタジエンの生産のための方法にも関し、これは、第1の反応段階として、伝熱流体の凝縮を有している多管式反応器においてエタノールの接触脱水素を行って、アセトアルデヒドを生じさせるためのプロセスと、次にエタノールおよびアセトアルデヒドの混合物からブタジエンを生じさせる第2の反応段階とを含む。
【背景技術】
【0002】
アセトアルデヒドを与えるエタノールの脱水素の反応は、いくつかの方法、例えば、オストロミスレンスキー(Ostromislensky)法の名称の下に特に知られており、レベデフ(Lebedev)法に関連するエタノールのブタジエンへの転化のための方法における第1の反応段階であり得る。エタノール脱水素反応は、平衡反応であり、これが示すエタノール転化率は、通常、30%前後である。それは、高度に吸熱性の反応である(ΔH反応=72.4kJ/mol)。適当な熱補償を可能にする反応器技術がこのため必要である。
【0003】
より一般的には、工業的な脱水素方法にはいくつかの技術が存在する:ABBのCatofin(登録商標)法、UOPのOleflex(登録商標)法、ティッセンクルップ(ThyssenKrupp)のStar Process(登録商標)法およびリンデ(Linde)のPDH法。全てのこれらの工業的な方法は、オレフィンを与える軽質アルカンの脱水素、特に、それぞれプロピレンおよびブテンを与えるプロパンおよびブタンの脱水素という目的を有する。より具体的には、Catofin(登録商標)およびOleflex(登録商標)の方法は、一連の並列断熱反応器を採用し、それぞれ、固定触媒床および移動触媒床を有する。PDH法は、その一部について、燃料によって外的に加熱される固定床を有している反応器を用いる。Star Process(登録商標)法は、炉内に配置された管において水蒸気により希釈された供給原料の反応を実行する。反応器技術の選択は、少なくとも部分的に、行なわれるアルカンの脱水素に用いられる触媒に依存するようである。
【0004】
多管式反応器は、反応器-交換器とも呼ばれ、方法が等温的なまたは擬等温的な条件下に運転することを可能にするために用いられ得る。例えば、これは三井石油化学工業株式会社の特許の特許文献1に記載されているイソプロパノールの脱水の方法に当てはまる。この特許では、アルミナの存在中、290℃~320℃で、0.5mの長さおよび25.4mmの内径を有する垂直管式反応器において、イソプロパノールが脱水されてプロピレンを与え、イソプロパノールの転化度:最低85%およびプロピレンについての選択性79%以上を得る。
【0005】
特許出願(特許文献2)には、その一部について、ブテンを与えるイソブタノールの脱水のための方法が記載され、同時の脱水および異性化の段階を含み、多管式反応器において、等温的なまたは擬等温的な条件下に、FERゼオライトを含んでいる触媒の存在中、300℃または350℃の温度で、行なわれる。この方法によって得られるイソブタノールの転化度は、およそ100%であり、ブテンについての選択性は、最低97%である。
【0006】
最後に、出願(特許文献3)には、多管式反応器における、ZSM-5ゼオライトの存在中、管中の供給原料の入口温度420~430℃での、エチレンを与えるエタノールの脱水のための方法が記載されている。温度を維持するために、470℃で溶融する塩が伝熱流体として用いられる。これらの条件下に、達成されるエタノールの転化度は99%超であり、エチレンについての選択性は最低98%である。
【0007】
しかしながら、これらの文献のいずれも、アセトアルデヒドを与えるエタノールの脱水素のための反応に対処していない。それ故、本発明の目的は、エタノールの満足な転化およびアセトアルデヒドについての満足な選択性を達成することを可能にする、アセトアルデヒドを与えるエタノールの脱水素のための方法を提供しながら、触媒の早期失活を回避し、ユーティリティ、例えば、水蒸気の大量消費を制限し、資本および運転のコストを最小にすることにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5227563号明細書
【特許文献2】国際公開第2018/046515号
【特許文献3】仏国特許出願公開第3089973号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の概要)
本発明は、アセトアルデヒドを与えるエタノールの脱水素のための方法であって、エタノールを含んでいる供給原料の脱水素の段階を含み、前記脱水素段階は、反応セクションを採用し、該反応セクションは、少なくとも1個の多管式反応器を含んでおり、該多管式反応器は、1個または複数個の管と、シェルとを含み、
前記管(1個または複数個)は、それぞれ、少なくとも1種の脱水素触媒の少なくとも1個の固定床を含んでおり、
前記供給原料を、ガスの形態で、前記供給原料の入口温度240℃以上、前記供給原料の入口圧力0.1~1.0MPa、入口における供給原料の重量毎時空間速度(WWH)2~15h-1で前記管(1個または複数個)に給送し、
伝熱流体を前記シェル中に流通させて、前記伝熱流体を、ガスの形態で前記シェルに導入し、シェルの出口のところで、少なくとも部分的に液体の形態にあり、
前記伝熱流体をシェルに、シェル入口における前記伝熱流体の重量流量の、管(1または複数)の入口における前記供給原料の重量流量に対する比が1.0以上になるような流量で導入し、
前記伝熱流体をシェルに導入する際の伝熱流体の入口温度は、260℃以上かつ400℃以下であり、その際の伝熱流体の入口圧力は、0.10MPa以上かつ1.10MPa以下である;
前記方法は、少なくともアセトアルデヒド、水素および未転化エタノールを含んでいる脱水素流出物を生じさせる
方法に関する。
【0010】
本発明は、反応媒体の温度を、脱水素反応に適した温度の範囲、特に230℃以上、好ましくは240℃以上、好適には250℃以上の値に維持することによって、エタノール脱水素反応の吸熱性(ΔH反応=72.4kJ/mol)を補償する利点を示す。本発明は、反応器-交換器タイプの伝熱流体の凝縮の特定の形態に従う反応器を使用する。伝熱流体の相変化エンタルピーは、このように、エタノール脱水素反応のエネルギー要件に必要な熱を提供するために用いられ得る。本発明により、内側で反応が行なわれる管の外壁上に均一な温度を有することも可能となる。
【0011】
それ故に、本発明により、エタノールの満足な転化度およびアセトアルデヒドについての高い選択性、特に、25%以上、好ましくはおよそ35%のエタノールの転化度および90%超のアセトアルデヒドについての選択性を達成することが可能となる。
【0012】
本発明の別の利点は、断熱反応器が用いられる場合に特に、その顕熱を反応に伝えることによって、反応の吸熱性によって誘発される温度降下を「熱的に緩衝する」ために必要に思われる希釈剤の供給原料への添加なしに熱補償が得られるという事実にある。「熱的緩衝剤」として従来から用いられている希釈剤は、水蒸気である。実際に、供給原料の全重量に対する、反応器中の高すぎる含水率、例えば、20重量%超の含水率は、脱水素触媒にとって有害であり得、その早期失活を引き起こし得る。それ故に、本発明のエタノール脱水素方法は、希釈剤の添加を必要とせず、そのため、脱水素触媒の早期失活のリスクを制限することが可能となる。
【0013】
本発明は、非常に多様な組成および起源のエタノール供給原料(例えばエタノールとの混合物として水を含むことができる)を脱水素することができるという利点も提供する。これは、本発明が、「バイオエタノール」としばしば呼ばれるバイオマスに由来する再生可能な供給源から生じさせられたエタノール供給原料に特に適用され得るからである。それは、エタノールに富む流出物、例えば、エタノールのブタジエンへの転化に特に由来し、かつ有利には反応セクションにリサイクルされる反応流出物の処理の後に得られたものにも適用され得、前記反応セクションは、特に、特許FR 3 026 100に記載されたようなエタノールの脱水素の段階を含んでいる。より特定的には、本発明により、特許FR 3 026 100の段階E1)において得られかつ例えば最高18重量%の水を含み得るエタノールに富む流出物の脱水素が可能となる。
【0014】
さらに、供給原料への希釈剤の添加を回避するという事実により、有利には、水蒸気による希釈を要するエタノール脱水素方法に特に対して、設備のアイテムのサイズおよびその後の分離段階の数を制限することと、結果として方法の資本および運転のコストを最小にすることとが可能となる。
【0015】
本発明は、さらに別の利点を示す:必要な触媒床の数の増加を回避するというものである。これは、断熱反応器の技術では、反応の吸熱性を補償し、およそ30%のエタノール転化率を達成するために、熱交換器を挿入した一連の触媒固定床が必要であるからである。逆に、適切な伝熱流体の凝縮の特定の形態と対になった多管式反応器を用いることを提唱する本発明により、目標とする転化度(25%~35%、実にさらには30%~35%)とアセトアルデヒドについての高い選択性(90%以上)とを達成しながら、方法の資本および運転のコストを制限することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本発明の形態の説明)
本発明によると、表現「...と...との間の(of between ... and ...)」および「...と...との間(between ... and ...)」は、同等であり、その間隔の両限界値は、値の記載された範囲に包含されるということを意味する。そうでなかった場合、および両限界値が記載された範囲に含まれていなかった場合、そのような情報は本発明によって明らかにされることになる。
【0017】
本発明の意味の範囲内で、所与の段階についてのパラメータの種々の範囲、例えば圧力範囲および温度範囲は、単独でまたは組み合わせで用いられ得る。例えば、本発明の意味の範囲内で、好適な圧力値の範囲が、より好適な温度値の範囲と組み合わされ得る。
【0018】
続いて、本発明の特定のかつ/または好適な実施形態が記載され得る。それらは、別々に使用され得るか、またはこれが技術的に実現可能である場合に組み合わせの制限なしに一緒に組み合わせられ得る。
【0019】
それ故に、本発明は、アセトアルデヒドを与えるエタノールの脱水素のための方法であって、エタノール、好ましくは最低50重量%のエタノール、優先的には最低70重量%のエタノール、好適には最低80重量%のエタノールと場合による水とを含んでいる供給原料の脱水素の段階を含み、好ましくはそれからなり、
ここで:
- 前記脱水素段階は、少なくとも1個の多管式反応器を含んでいる反応セクションを使用し、該多管式反応器は、1個または複数個の管、好ましくは複数個の管と、シェルとを含んでおり、
前記管(1個または複数個)は、大いに有利には、あらゆるタイプの鋼から作製され、好ましくはアロイ鋼から作製され、好適にはステンレス鋼から作製され、好ましくは、1.0~6.0m、好適には2.0~3.0mの長さを有し、内径は、好ましくは、30.0~60.0mm、優先的には40.0~50.0mmであり、管の壁厚は、好ましくは1.5~5,0mm、優先的には2.0~4.0mm、好適には2.2~3.2mmであり、
- 各管は、少なくとも1種の脱水素触媒を含んでいる少なくとも1個の固定床を含み、前記脱水素触媒は、好ましくは、無機担体、好ましくはシリカ上に少なくとも銅元素を含み、前記触媒は、大いに有利には、0.5~10.0mm、好ましくは1.0~5.0mmの平均等価径を有する粒子の形態にある、
- 前記供給原料は、前記菅(1個または複数個)に、ガス状の形態で給送し、その際の菅(1個または複数個)への前記供給原料の入口温度は、240℃以上、好ましくは240℃~350℃、優先的には250℃~300℃、好適には260℃~290℃であり、その際の菅(1個または複数個)への前記供給原料の入口圧力は、0.1~1.0MPa、好ましくは0.2~0.5MPa、優先的には0.3~0.4MPaであり、その際の多管式反応器の入口のところの供給原料の毎時空間速度(WWH)は、2~15h-1、好ましくは2~10h-1であり、
- 伝熱流体は、前記シェル中に、好ましくは菅(1個または複数個)中の供給原料に対して並流で流通し、前記伝熱流体は、前記シェルにガス状で導入され、シェル出口のところで、少なくとも部分的に液体状の形態にあり、
- 前記伝熱流体は、前記多管式反応器のシェルに、シェル入口のところでの前記伝熱流体の重量流量の、前記菅の入口のところでの前記供給原料の重量流量に対する比が、1.0以上、好ましくは1.5以上、かつ、有利には10.0以下、好ましくは5.0以下、好適には2.0以下になるような流量で導入され、
- 前記伝熱流体が前記多管式反応器のシェルに導入される際の伝熱流体の入口温度は、260℃以上、好ましくは270℃以上、好適には290℃以上、かつ、400℃以下、好ましくは380℃以下であり、その際の伝熱流体の入口圧力は、0.10MPa以上、好ましくは0.13MPa以上、好適には0.20MPa以上、かつ1.10MPa以下、好適には0.85MPa以下である、
アセトアルデヒド、水素および未転化のエタノールを含んでいる脱水素流出物を少なくとも生じさせる、方法に関する。
【0020】
(供給原料)
本発明によると、本脱水素方法において処理される供給原料は、エタノールを含んでいる供給原料である。好ましくは、前記供給原料は、最低50重量%のエタノール、優先的には最低70重量%のエタノール、好適には最低80重量%のエタノールを含む。
【0021】
脱水素方法の供給原料は、さらに場合によっては、水を、供給原料の全重量に対する水の重量で好ましくは50重量%未満、優先的には30重量%未満、好適には20重量%未満、例えば1重量%~20重量%の含有率で含む場合がある。
【0022】
供給原料(特に50重量%未満のエタノールを含む)は、本発明の方法に先行して、当業者に知られているあらゆる手段によって、例えば、蒸留、吸収、パーベーパレーション、または溶媒による抽出によって濃縮され得る。
【0023】
前記供給原料は、水に加えて、不純物、例えば、ブタノールを、前記供給原料の全重量に対して、好ましくは10重量%以下、優先的には5重量%以下、好適には2重量%以下の含有率で含む場合がある。
【0024】
本発明による方法において処理される供給原料は、場合によっては、化石資源から出発する、例えば、石炭、天然ガスまたは炭素をベースとする廃棄物等から出発するアルコールの合成のための方法によって得られる。
【0025】
好ましくは、供給原料は、有利には、非化石資源に由来する。それは、「バイオエタノール」としばしば呼ばれるバイオマスから生じる再生可能資源から得られ得る。バイオエタノールは、生物学的に、好ましくは、糖(例えば、糖産生植物作物、例えば、サトウキビ(サッカロース、グルコース、フルクトースおよびスクロース)、ビート根、あるいはまたデンプン質植物(デンプン)から得られる)またはリグノセルロースバイオマスまたは加水分解セルロース(グルコース(主)およびキシロース、ガラクトース)の発酵によって生じる供給原料であり、種々の量の水を含有している。従来の発酵方法のより完全な説明のために、言及がなされてよいのは、刊行物 "Les Biocarburants, Etat des lieux, perspectives et enjeux du developpement [バイオ燃料、現状、見通しおよび開発の課題]"、Daniel Ballerini、出版元Technip、2006に対してである。
【0026】
前記供給原料は、有利には、合成ガスからも得られ得る。
【0027】
前記供給原料は、有利には、対応する酸またはエステルの水素化によっても得られ得る。この場合、酢酸または酢酸エステルが有利には水素を用いて水素化されてエタノールを与える。酢酸は、有利には、メタノールのカルボニル化によってまたは炭水化物の発酵によって得られ得る。
【0028】
前記供給原料は、エタノールのブタジエンへの転化のための方法から生じる流出物の処理の後に(特に、分離および精製の段階の後に)得られるエタノール流出物でもあり得る。より具体的には、脱水素方法の供給原料は、エタノールを主として含んでいる、つまり最低50重量%、好ましくは最低70重量%、優先的には最低80重量%のエタノールを含んでおり、かつエタノールのブタジエンへの転化から生じる反応流出物の処理の後に得られるエタノール流出物であり得、前記エタノール流出物は、有利には、エタノールの脱水素の段階を特に含む反応セクションにリサイクルされる。本発明の非常に特定的な実施形態によると、エタノールを含んでいる供給原料は、エタノールに富む流出物であり、有利にはエタノールのブタジエンへの転化のための方法からの流出物の処理の段階の終結の際に得られるものであり、例えば、特許FR 3 026 100に記載されている方法の段階E1)の終結の際に有利に得られるエタノールに富む流出物である。このエタノールに富む流出物は、最高18重量%の水を特に含み得る。
【0029】
(脱水素段階)
本発明によると、本脱水素方法は、エタノールを含んでいる前記供給原料の脱水素の段階を少なくとも含み、アセトアルデヒド、水素および従来の未転化エタノールを少なくとも有利に含んでいる脱水素流出物を生じさせる。得られた前記脱水素流出物は、特に供給原料自体が水を含んでいる場合に、水も含み得る。それは、不純物(特に供給原料中に既に存在するもの)、および/または脱水素反応の間に特に生じる共生成物も含み得る。
【0030】
前記脱水素段階は、少なくとも1個の多管式反応器を含んでいる反応セクションを使用し、この多管式反応器において脱水素反応が起こる。反応セクションは、少なくとも2個の多管式反応器、かつ、好ましくは10個未満の多管式反応器を含み得る。好ましくは、反応セクションは、2個の多管式反応器を含み、一方が運転中にあり、つまり供給原料を給送されかつ脱水素反応を実行し、他方が、再生-取り替えのモードにある。表現「再生-取り替えのモード」は、多管式反応器は、エタノールを含んでいる供給原料を給送されず、触媒が再生または充填の過程にあるか、あるいはまた、再生されかつ/または充填され、運転する用意ができている(つまり運転を待っている)ことを意味する。
【0031】
有利には、各多管式反応器は、1個または複数個の菅と、シェルとを含む。脱水素反応は、有利には、多管式反応器(1個または複数個)の菅(1個または複数個)において、有利には運転中に起こる。開示の続きにおいて、多管式反応器(1個または複数個)の菅(1個または複数個)は、反応菅(1個または複数個)とも呼ばれ得る。シェルは、反応器のケーシング(典型的には円筒形)であり、それの内側に菅(1個または複数個)が位置し、好ましくは、いくつかの菅がある場合に互いに平行でありかつシェルの壁と平行であり、かつそれの中を伝熱流体が流通する。シェルは、1個以上のバッフルまたは任意の他のシステムも含み得、好ましくはシェル内に均一に分布しており、伝熱流体の良好な拡散および均一化、それ故に、熱の良好な分布を可能にしている。シェルおよび菅は、伝熱流体の凝縮および/または排出を促進することを可能にする特定の設計または特定のテクスチャを有し得る。
【0032】
本発明によると、各菅は、少なくとも1種の脱水素触媒を含んでいる少なくとも1個の固定床を含む。好ましくは、各菅は、脱水素触媒の固定床を含有する。好ましくは、前記脱水素触媒は、少なくとも銅元素、および場合によるクロム元素を、無機担体、好ましくはシリカ上に含む。大いに有利には、脱水素触媒は、粒子の形態にあり、それが有する平均等価径は、0.5~10.0mm、好ましくは1.0~5.0mmである。本発明によると、平均等価径は、表面における平均等価径を定義し、有利には、レーザー回折法によって決定され、粒子の平均等価径は、有利には、前記粒子と同じ比表面積を有する球体の平均径に対応する。例えば、脱水素触媒は、Evonikによって販売されるOctolyst(登録商標)2001またはOctolyst(登録商標)2009触媒であり得る。
【0033】
好ましくは、多管式反応器(1個または複数個)は、シェル内に複数個の菅、好ましくは少なくとも100個の菅、優先的には少なくとも1000個の菅、好適には少なくとも2000個の菅を含む。一般的に、多管式反応器は、最高20000個の菅、好ましくは最高10000個の菅を含む。例えば、各多管式反応器は、5000~6000個の菅を含有し得る。
【0034】
有利には、反応菅(1個または複数個)は、好ましくは1.0~6.0m、好適には2.0~3.0mの長さを有する。多管式反応器が複数個の菅を含む場合、前記多管式反応器の全ての菅は、有利には、管の製造および機械加工に特に起因する精度の範囲内で同一の長さを示す。各反応菅の内径は、好ましくは30.0~60.0mm、優先的には40.0~50.0mmである。有利には、反応菅(1個または複数個)は、好ましくは1.5~5.0mm、優先的には2.0~4.0mm、好適には2.2~3.2mmの壁厚を示す。それ故に、菅の公称直径、または外径は、33mmと70mmとの間で、好ましくは44mmと56mmとの間で変動し得る。反応菅(1個または複数個)の特定の寸法取り、特に長さ、内径および壁厚は、有利には、菅側(つまり、菅(1個または複数個)の内側)およびシェル側(つまり、菅(1個または複数個)の外側)に加えられる圧力に適合させられる一方で、有利には、菅(1個または複数個)の内側の圧力の降下を制限すること、それ故に脱水素反応の性能品質上の圧力の低下の悪影響を回避すること、特にエタノールの転化率の降下を回避することを可能にする。
【0035】
脱水素段階c)の多管式反応器のサイズ、例えばシェルの直径は、菅の数、それらの長さおよびそれらの直径に特に応じて、一般的な知識に従って当業者によって適合させられ得る。
【0036】
多管式反応器、特に工業的なもの、およびとりわけ前記反応器の菅は、反応に対して不活性である材料から従来から作製され、典型的には鋼またはニッケルから作製される。脱水素方法における多管式反応器(1個または複数個)の菅(1個または複数個)は、好ましくは、あらゆるタイプの鋼から作製され、優先的にはアロイ鋼から作製され、好適にはステンレス鋼から作製される。大いに有利には、多管式反応器(1個または複数個)のシェル、並びにシェル内に任意に存在するあらゆるバッフルは、反応菅と同じ材料であり、好ましくはあらゆるタイプの鋼から作製され、優先的にはアロイ鋼から作製され、好適にはステンレス鋼から作製される。
【0037】
本発明によると、供給原料は、ガスの形態で、各多管式反応器の前記菅(1個または複数個)に、有利には運転中に、好ましくは前記反応菅(1個または複数個)の端部の一方のところに、好適には多管式反応器が複数個の菅を含有する場合には多管式反応器の反応菅の全てに同時に導入される。供給原料を反応菅(1または複数)に給送する際の前記供給原料の入口温度は、240℃以上、好ましくは240℃~350℃、優先的には250℃~300℃、好適には260℃~290℃であり、その際の前記供給原料の入口圧力は、0.1~1.0MPa、好ましくは0.2~0.5MPa、優先的には0.3~0.4MPaであり、その際の多管式反応器の入口における供給原料の重量空間速度(WWH)は、2~15h-1、好ましくは2~10h-1、特に3~7h-1、例えば5h-1である。それ故に、多管式反応器(例えば4000kg~30000kg、好ましくは14000kg~17000kgの脱水素触媒を含む)の入口における供給原料の流量は、20000kg/hと150000kg/hとの間で、優先的には50000kg/hと100000kg/hとの間で、好適には70000kg/hと85000kg/hとの間で変動し得る。本発明によると、重量空間速度(WWH)は、多管式反応器に入る全供給原料の重量流量対前記多管式反応器の反応菅の全てに包含される脱水素触媒の重量の比として定義され得る。
【0038】
多管式反応器(1個または複数個)への前記供給原料の入口温度は、有利には徐々に上げられ得る一方で、脱水素触媒の失活を少なくとも部分的に補償するように、有利には上記の入口温度の範囲内のままとされる。
【0039】
本発明による方法の脱水素段階は、場合によっては、反応セクションの上流で、供給原料を加熱するためのセクションを使用し得る。任意の加熱セクションにおける供給原料の加熱は、当業者に知られているあらゆる方法によって、例えば、非常に特定的にはシェルの中に流通する伝熱流体であり得る流体との熱交換によって行なわれ得る。
【0040】
供給原料の流れは、各菅において、上昇または下降の様式であり得、好ましくは下降様式である。
【0041】
本発明によると、伝熱流体は、多管式反応器(1個または複数個)のシェル中に、有利には運転中に、特に前記反応菅の間で、有利には、反応菅の内側に流通する流れに対して並流または向流で、好適には並流で流通する。伝熱流体は、多管式反応器(1個または複数個)のシェルにガスの形態で導入され、シェル出口において、少なくとも部分的に液体の形態にある(つまり、液体の形態にあるかまたは気ー液の混合物として)。換言すると、伝熱流体は、有利には、シェルに飽和蒸気の形態で(つまり、バブルポイントにある蒸気相で)導入され、内側で吸熱反応である脱水素反応が起こる菅との接触の際に部分的(または少なくとも部分的)に凝縮する。菅(1個または複数個)内の温度を脱水素反応と適合できる温度の範囲に、特に230℃に少なくとも等しく、好ましくは240℃以上に、大いに好ましくは250℃以上に維持するのに必要な熱の寄与は、このように、非常に有利には、用いられる伝熱流体の相変化エンタルピー、特に凝縮のエンタルピーによって保証される。
【0042】
伝熱流体は、上記の運転条件下に熱的に安定であるように選ばれる。伝熱流体のチョイスは、他の制約によっても案内され得る:好ましくは、伝熱流体は、脱水素反応の反応物および生成物に対して不活性である;好ましくは、伝熱流体は、設備のアイテム、例えば、多管式反応器または導管の腐食を誘発しない。大いに有利には、伝熱流体は、所与の圧力で単一の沸点を示す。それは、特に有利には、それが脱水素反応と適合できる沸点もしくは飽和蒸気温度の範囲(これは蒸気圧に依存する)を示すようにおよび/または気体状態から液体状態への相における変化のそれのエンタルピーが脱水素反応のエネルギー要件をカバーするように選ばれる。好ましくは、伝熱流体は油であり、好ましくは、有機化合物の、好ましくは2種の有機化合物の共融混合物を含み、大いに有利には近い沸点を有し、好ましくは、所与の温度での油の有機化合物の飽和蒸気圧の間の差が50Pa以下、好ましくは20Pa以下、好適には10Pa以下になるような飽和蒸気圧を有している。より具体的には、伝熱流体は、ビフェニルおよびジフェニルオキシドの混合物を含み、好ましくはそれからなる。例えば、伝熱流体は、名称DOWTHERM(登録商標)A下にDowによって販売されている油である。
【0043】
有利には、伝熱流体が多管式反応器のシェルに、有利には運転中に導入される際の伝熱流体の入口温度は、260℃以上、好ましくは270℃以上、好適には290℃以上、かつ400℃以下、好ましくは380℃以下であり、その際の伝熱流体の入口圧力は、0.10MPa以上、好ましくは0.13MPa以上、好適には0.20MPa以上、かつ1.10MPa以下、好ましくは1.06MPa以下、好適には0.85MPa以下である。より具体的には、伝熱流体は、シェルに、有利には飽和蒸気の形態で導入され、その際の温度は、好ましくは260℃以上であり、その際の圧力は、0.10MPa以上であり、好ましくは、温度は270℃以上であり、圧力は、0.13MPa以上であり、好ましくは温度は290℃以上であり、圧力は0.20MPa以上であり、好ましくは温度は400℃以下であり、圧力は1.10MPa以下であり、好適には、温度は380℃以下であり、圧力は、0.85MPa以下である。
【0044】
シェルにおける伝熱流体の入口の温度および/または圧力は、有利には上記の入口の温度および圧力の範囲内において、徐々に増大させられ得て、脱水素触媒の失活を少なくとも部分的に補償する。
【0045】
シェルにおける前記伝熱流体の重量流量は、有利には、シェルにおける前記伝熱流体の重量流量の、菅(1個または複数個)に導入される供給原料の重量流量に対する比が1.0以上、好ましくは1.5以上、かつ有利には10.0以下、好ましくは5.0以下、好適には2.0以下になるように調節される。
【0046】
これらの条件下に、シェル側上(つまり凝縮側上)の伝達係数は、菅内の伝達係数よりもはるかに高いので、温度は、有利には、反応器の菅のそれぞれに沿って一定でかつ伝熱流体の凝縮温度に等しく留まる。それ故に、温度は、全ての菅について均一であり、シェルの温度に非常に近く、これは反応器の設計の観点から有利である。なぜなら、温度は、反応器中にわたって均一であり、運転中に、反応器の材料の膨張は、菅の間および菅とシェルとの間で同じであり、設備のアイテムのコストにおける低減に至るであろうからである。
【0047】
有利には、本脱水素方法は、脱水素段階の多管式反応器のシェル出口における伝熱流体の回収の相と、次の、伝熱流体の圧縮および/または加熱の相とを含んでいる伝熱流体のコンディショニングの段階を含み得て、脱水素段階のシェルにおける伝熱流体の入口の温度および圧力でガスの形態にある伝熱流体を得る。
【0048】
このような反応器において、本発明による方法の特定の操作条件により、特に、特定の温度および圧力でかつ反応菅における供給原料のものに対して調節された流量でシェルに導入される伝熱流体の凝縮のエンタルピーを用いることによって、アセトアルデヒドを与えるエタノールの脱水素のための反応は、有利には、等温的なまたは擬等温的な条件下に、つまり、反応器出口のところの反応媒体(つまり、反応器出口のところの脱水素流出物)の温度が供給原料の入口温度に類似であるかまたは反応器入口における供給原料の温度に対して30℃未満、好ましくは15℃未満の差を示すように起こる。有利には、このような条件下に、多管式反応器の終結の際に得られた脱水素流出物は、有利には、操作中に、好ましくは230℃以上、優先的には240℃以上、好適には250℃以上、好適には260℃以上、かつ好ましくは350℃以下、優先的には300℃以下、好適には290℃以下の温度、および例えば0.1~0.5MPa、好ましくは0.2~0.4MPaの反応器出口における圧力を示す。
【0049】
それ故に、本発明による方法の特定の条件により、所望の性能品質を達成することが可能となる。特に、本発明の特定の操作条件下に反応器-交換器を使用することにより、大いに有利には、エタノールの転化度:最低25%、好ましくは最低30%、実にさらにはエタノールの転化率35%、およびアセトアルデヒドについての高い選択性、特に最低90重量%を得ることが可能となる。そして、これらの性能品質は、脱水素触媒の活性について有害な結果を有する場合がある熱的希釈剤の添加なしに、かつ、触媒床および/または反応器の数を増加させることなしに、断熱反応器の配列を含んでいる方法におけるように達成され、それ故に、資本および操作のコストを制限することが可能となる。本発明によって提供される熱を与える方法により、触媒の変化および考えられる失活に操作条件を容易に適合させることも可能となる。
【0050】
本発明によると、エタノール供給原料の転化率は、重量百分率として、次式によって定義される:
[1-(出口におけるエタノールの時間当たりの重量/入口におけるエタノールの時間当たりの重量)]×100
入口または出口におけるエタノールの時間当たりの重量は、多管式反応器の入口または出口における重量流量に対応し、従来通りに、例えばガスクロマトグラフィーによって決定され得る。
【0051】
脱水素段階中に、供給原料の転換は、脱水素触媒の失活を伴う場合があり、例えば、コーキング、阻害性化合物の吸着、および/または焼結によるものがある。それ故に、脱水素触媒は、有利には、定期的に再生または交換に付され得る。それ故に、本発明の特定の実施形態において、本方法は、再生-交換の段階を含む。この特定の実施形態において、反応セクションは、好ましくは、少なくとも2個の多管式反応器を含む。好ましくは、多管式反応器は、スイング様式とも呼ばれる交互様式で用いられ、反応(または運転)の相と、前記脱水素触媒の再生および/または交換の相とを交互に行う。再生の目的は、前記脱水素触媒の表面のところおよび内部に含まれる、有機堆積物、ならびに窒素および硫黄を含有している実体を焼却することにある。交換により、使用済み触媒、つまり少なくとも1回の脱水素段階の間に用いられた触媒を、フレッシュな脱水素触媒、つまりまだ用いられていない触媒と交換することが可能となる。
【0052】
脱水素触媒の再生は、有利には、空気の流れ下または空気/窒素の混合物下にコークおよび阻害性化合物を酸化することによって、例えば、酸素を希釈するおよび再生の発熱をコントロールするための水を伴うかまたは伴わない燃焼空気の再循環を用いることによって行なわれ得る。この場合、酸素含有率は、有利には、反応器の入口において空気の寄与によって調節される。再生は、好ましくは、大気圧と反応圧力との間の圧力で起こる。
【0053】
本発明の非常に特定的な実施形態によると、再生-交換の段階は、以下を含む:
- 脱水素触媒の交換、特に、使用済み触媒の、フレッシュな触媒との交換;触媒は、好ましくは少なくとも元素銅を無機担体、優先的にはシリカ上に含む;または
- 脱水素触媒の再生;好ましくは、少なくとも3相を含む;少なくとも第1の相は、窒素によりフラッシュし、その際の温度は、好ましくは200~350℃、好ましくは250~300℃であり、少なくとも第2の相は、酸素を含んでおり、好ましくは、窒素および酸素を含んでいるガスにより、有利には、コークの完全な燃焼のサインである、もはや酸素の消費がなくなるまでフラッシュし、その際の温度は、300~650℃、好ましくは350℃~600℃であり、少なくとも第3の相は、窒素によりフラッシュし、その際の温度は、好ましくは200~350℃である。再生は、場合によっては、さらに、再分散の相を含み得、好ましくは、少なくとも元素銅と、場合による元素クロムを無機担体、好ましくはシリカ上に含む。
【0054】
大いに有利には、脱水素段階の反応セクションの終結の際に得られた脱水素流出物は、アセトアルデヒド、水素、場合による水および未転化エタノールを少なくとも含み、このものは、分離セクションに送られ、少なくとも部分的に脱水素反応の間に生じた水素を任意に分離し得る。
【0055】
反応セクションの終結の際に得られた脱水素流出物、または分離セクションの終結の際に得られた流出物は、直接的または間接的にかのどちらかで、未転化エタノールを含んでいる流れを分離するための処理にも供され得、前記未転化エタノールの流れは、反応セクションにリサイクルされ、多管式反応器(1個または複数個)に、場合によっては供給原料との混合物として給送することが可能である。
【0056】
有利には、本発明による脱水素方法は、反応段階としてエタノールの転化のためのより一般的な方法に統合され得る。特に、本発明による脱水素方法は、エタノールのアセトアルデヒドへの転化のための第1の反応段階として、エタノールからのブタジエンの生産のための方法に統合され得、有利には、エタノール-アセトアルデヒド混合物のブタジエンへの転化の第2の反応段階によって後続される。2回の反応段階における、エタノールからのブタジエンの生産のためのこのような方法は、例えば、特許FR 3 026 100に記載されている方法であり得る。より具体的には、特許FR 3 026 100に記載されている方法の段階A)は、本明細書において上記された脱水素方法によって取り替えられ、特許FR 3 026 100に記載されている方法の段階B)、C1)、D1)、D2)、D3)、E1)、E2)、および任意の段階C2)、D2bis)、F)は、同一に留まる。
【0057】
それ故に、本発明は、最低80重量%のエタノールを含んでいるエタノール供給原料からのブタジエンの生産のための方法にさらに関し、少なくとも以下を含む:
A) 上記のエタノールの脱水素のための方法を使用するエタノールのアセトアルデヒドへの転化の段階であって、多管式反応器の菅に給送する前記供給原料は、少なくとも部分的に、段階E1)から有利に得られるエタノールに富む流出物の一部であり、脱水素流出物を生じさせる段階、
場合によっては、分離セクションを使用し、脱水素流出物を処理し、ガスの形態にある水素流出物と、液体の形態にあるエタノール/アセトアルデヒド流出物とを少なくとも分離する;
B) ブタジエンへの転化のための段階であって、反応セクションBを少なくとも含んでおり、該反応セクションBに、段階A)から得られた前記脱水素流出物の一部または全部、または段階A)の任意の分離セクションから得られた任意のエタノール/アセトアルデヒド流出物を少なくとも、任意の段階C1)から有利に得られたエタノールに富む液体流出物を任意に、段階E1)から有利に得られたアセトアルデヒドに富む流出物の一部または全部を給送し、触媒の存在中で操作し、該触媒は、好ましくは、元素タンタルと、無機担体とを含んでおり、該無機担体は、好ましくはシリカを含み、操作の際の温度は、300℃~400℃、好ましくは320℃~370℃であり、その際の圧力は、0.1~1.0MPa、好ましくは0.1~0.5MPa、好適には0.1~0.3MPaであり、給送流量を、エタノールの、アセトアルデヒドに対するモル比が、前記反応セクションの入口のところで、1~5、好ましくは1~3.5、好適には2~3、大いに好適には2.4~2.7になるように調節し、分離セクションを使用して、前記反応セクションBからの流出物を処理し、ガス流出物と、液体流出物とを少なくとも分離する;
C1) 場合による、水素の処理の段階であって、段階A)から得られた前記水素流出物を、0.1~1.0MPa、有利には0.1~0.7MPa、好適には0.4~0.68MPaの圧力に圧縮する少なくとも1つの圧縮セクションと、気-液スクラブ洗浄セクションとを含み、該気-液スクラブ洗浄セクションに、15℃~-30℃、好ましくは0℃~-15℃の温度で、段階E1)から有利に得られる前記エタノールに富む流出物の一部および段階A)から得られる前記エタノール/アセトアルデヒド流出物の一部を給送し、25℃~60℃、優先的には30℃~40℃の温度で、前記圧縮済み水素流出物を給送し、エタノールに富む液体流出物および精製済み水素流出物を少なくとも生じさせる;
D1) ブタジエンの抽出の段階:少なくとも以下を含む;
(i)圧縮セクション;段階B)から得られた前記ガス流出物を、0.1~1.0MPa、好ましくは0.1~0.7MPa、好適には0,2~0.5MPaの圧力に圧縮し、場合によっては、段階B)から得られた前記圧縮されたガス流出物を、続いて、25℃~60℃、優先的には30℃~40℃の温度に冷却する、
(ii)気-液スクラブ洗浄セクション;スクラブ洗浄カラムを含んでおり、該スクラブ洗浄カラムに、頂部のところに、20~-20℃、優先的には15℃~5℃の温度で、本方法のエタノール供給原料と、場合による、段階E1)から有利に得られるエタノールに富む流出物の一部とからなるエタノール流れを、底部のところに、セクション(i)において圧縮されかつ任意に冷却された段階B)から得られた前記ガス状流出物を給送し、液体スクラブ洗浄流出物およびガス状副生流出物を少なくとも生じさせる、および
(iii)蒸留セクション;0.1~1MPa、好適には0.2~0.5MPaの圧力で操作し、前記段階B)から得られた液体流出物と、前記気-液スクラブ洗浄セクションからの液体流出物とを少なくとも給送し、粗製ブタジエン流出物およびエタノール/アセトアルデヒド/水の流出物を少なくとも生じさせる;
D2) ブタジエンの第1の精製の段階;気-液スクラブ洗浄セクションを少なくとも含み、該気-液スクラブ洗浄セクションに、底部のところにおいて、D1)から得られた粗製ブタジエン流出物を、頂部のとおころにおいて、ブタジエンの生産のための前記方法に対して外部の起源の水の流れであり得る水の流れおよび/または段階E1)から有利に得られた水性流出物の一部を給送し、前記水流れを、好ましくは気-液スクラブ洗浄セクションに先行して25℃未満、好ましくは20℃未満の温度に冷却し、前記気-液スクラブ洗浄セクションを、有利には0.1~1MPaの圧力で操作し、前記気-液スクラブ洗浄セクションは、頂部のところで予備精製されたブタジエン流出物および底部のところで廃水流出物を生じさせる;
D3) ブタジエンの精製の続きの段階;前記段階D2)から得られた前記予備精製済みブタジエン流出物を少なくとも給送し、精製済みブタジエンを少なくとも生じさせ、前記続きの精製段階は、有利には、前記段階D2)から得られた前記予備精製済みブタジエン流出物を乾燥させるためのセクションを、好ましくは、少なくとも1種の吸着剤の存在中で使用し、次いで、少なくとも極低温蒸留セクションまたは少なくとも蒸留および抽出蒸留のセクションを使用する;
E2) 不純物および褐色油の除去の段階;段階D1)から得られたエタノール/アセトアルデヒド/水の流出物と、段階E1)から有利に得られた水に富む流出物の少なくとも一部とを少なくとも給送し、水/エタノール/アセトアルデヒドのラフィネート、軽質褐色油流出物および重質褐色油流出物を少なくとも生じさせ、
不純物および褐色油の除去の前記段階は、好ましくは、少なくとも以下を使用する:
E2i) スクラブ洗浄/バックスクラブ洗浄セクション;0.1~0.5MPa、優先的には0.2~0.4MPaの圧力で操作し、段階D1)から得られたエタノール/アセトアルデヒド/水の流出物を、優先的には、底部のところで炭化水素流出物を、頂部のところで段階E1)から有利に得られた水に富む流出物の少なくとも一部を給送し、前記炭化水素および水に富む流出物は、好ましくは10~70℃、優先的には45~55℃の温度にあり、前記水/エタノール/アセトアルデヒドのラフィネートおよび炭化水素抽出物を生じさせる、
E2ii) 軽質褐色油の蒸留のためのセクション;炭化水素抽出物を給送し、前記軽質褐色油流出物および炭化水素残渣を生じさせる、ならびに
E2iii) 重質褐色油の蒸留のためのセクション;炭化水素残渣を給送し、前記重質褐色油流出物および炭化水素蒸留物を生じさせ、これは、有利には、少なくとも部分的に、スクラブ洗浄/バックスクラブ洗浄セクションからの炭化水素流出物を組成する;
E1) 流出物の処理の段階;段階E2)から有利に得られる水/エタノール/アセトアルデヒドのラフィネートを少なくとも給送し、好ましくは、少なくとも2個の蒸留セクション、特に、少なくともアセトアルデヒドの蒸留のためのセクションと、少なくとも水およびエタノールの蒸留のためのセクションとを使用し、流出物の処理の前記段階は、エタノールに富む流出物、好ましくは、最低80重量%のエタノールを含んでいる流出物と、アセトアルデヒドに富む流出物、好ましくは、最低80重量%のアセトアルデヒドを含んでいる流出物と、水に富む流出物、好ましくは、最低80重量%の水を含んでいる流出物とを少なくとも生じさせる。
【0058】
本発明のこの特定の実施形態において、段階E1において得られ、エタノールの脱水素が行なわれる段階A)の供給原料としてリサイクルされるエタノールに富む流出物は、最高18重量%の水を従来通り含み得る。
【0059】
それ故に、本発明による脱水素方法は、脱水素反応セクションに給送する、通常最高18重量%の水を含んでいるエタノールに富む流出物が、脱水素触媒の早期失活なしに熱希釈剤としての水蒸気の、脱水素段階の供給原料への添加を想定することを可能にしない限りにおいて、このブタジエン製造方法において特に有利であると思われ、その性能品質が一般的に低下するのは、供給原料が20重量%以上の水を含む場合である。
【0060】
以下の実施例は、本発明を例証するが、本発明の範囲を制限するものではない。
【0061】
(実施例)
(実施例1:本発明に合致する)
実施例1は、本発明に合致する脱水素方法を例証する。
【0062】
処理されるべき供給原料は、82重量%のエタノールおよび18重量%の水を含む。
【0063】
脱水素反応を、アロイ鋼から作製された多管式反応器において行い、それの菅は、Evonikによって販売されるOctolyst(登録商標)2001触媒の固定床を含む。供給原料を、菅にガスの形態で同時に導入する。用いられる伝熱流体は、DowからのDowtherm(登録商標)A油であり、シェルにガスの形態で、特に飽和蒸気の形態で導入する。
【0064】
用いられる反応器および操作条件のパラメータの全てを表1にまとめる。
【0065】
【0066】
脱水素流出物の回収を、反応器出口において、78346kg/hの流量、およそ277℃の温度、およびおよそ0.29MPaの圧力(すなわち、およそ0.6bar、つまりおよそ0.06MPaの圧力降下)で行う。シェル出口のところで、ガス-Dowtherm(登録商標)A油液の混合物を、290℃で回収する。
【0067】
得られた脱水素流出物を、ガスクロマトグラフィーによって分析する。それは、以下の組成を示す:
57重量%のエタノール、
22重量%のアセトアルデヒド、
18重量%の水、
2重量%の他の化合物、特に:酢酸エチル、酢酸およびブタノール、
およそ1重量%の水素。
【0068】
得られた本方法の性能品質は満足である。本方法により、転化率:エタノール35重量%をアセトアルデヒドについての選択性92%と共に達成することが可能となるからである。
【0069】
(実施例2:本発明に合致しない)
実施例2は、断熱反応器において脱水素反応を実施する方法を例証する。
【0070】
実施例1の供給原料と同一の供給原料を、実施例2の方法によって処理する:それは、18重量%の水および82重量%のエタノールを含む。
【0071】
Evonikからの同一のOctolyst(登録商標)2001触媒を脱水素触媒として用いる。
【0072】
脱水素反応を、直列の一連の11個の軸方向断熱反応器によって行い、それぞれは、脱水素触媒(Octolyst(登録商標)2001)の固定床を含み、それらの間に熱交換器を挿入しており、各床間の液体流れを加熱する。それ故に、反応ユニットは、直列の11個の断熱反応器と、10個の熱交換器とを含む。
【0073】
82重量%のエタノールおよび18重量%の水を含む供給原料を第1の反応器に導入する。その際の入口温度は、275℃であり、その際の入口圧力は、0.57MPaであり、その際の流量は、78346kg/hであり、これは、エタノールに対してWWH2h-1に対応する。
【0074】
軸方向固定床を有する断熱反応器のパラメータ、操作条件および得られたエタノールの転化度を表2に提示する。第11の反応器の出口圧力は、0.25MPaである。
【0075】
【0076】
反応ユニットの出口のところで、エタノールの転化率34%が達成され、アセトアルデヒドについての選択性は、92%である。
【0077】
(実施例3:本発明に合致しない)
実施例3は、熱的希釈剤の存在中、断熱反応器における脱水素反応を実施する方法を例証する。
【0078】
実施例1および実施例2に記載された方法において用いられたのと同一のEvonikからのOctolyst(登録商標)2001触媒を脱水素触媒として用いる。
【0079】
実施例3の方法によって処理される供給原料を、その一部について、水蒸気により希釈し、水60重量%/エタノール40重量%の希釈とする。この供給原料を、直列のラジアル断熱反応器に導入する。ラジアル断熱反応器は、それぞれ、脱水素触媒の固定床を含み、それらの間に熱交換器を挿入し、各床の間の液体流れを加熱する。40重量%のエタノールおよび60重量%の水を含む供給原料を第1の反応器に導入する際の入口温度は、275℃であり、その際の入口圧力は、0.37MPaであり、その際の流量は、78346kg/hである。
【0080】
ラジアル固定床を有する断熱反応器のパラメータ、操作条件および得られたエタノールの転化度を表3に提示する。反応器No.4の出口圧力は、0.20MPaである。
【0081】
【0082】
水蒸気によるエタノールの希釈60重量%により、4個のみの断熱反応器の後にエタノールの転化率35%を達成することが可能となる。
【0083】
しかしながら、実施例3の方法の条件下に、特に水60重量%に希釈されたエタノール供給原料により、実施例2の方法におけるよりも速い脱水素触媒の失活が観察される。
【国際調査報告】