(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-06
(54)【発明の名称】風力タービン監視装置、風力タービンシステム、及び風力タービン監視方法
(51)【国際特許分類】
F03D 80/30 20160101AFI20230929BHJP
F03D 17/00 20160101ALI20230929BHJP
【FI】
F03D80/30
F03D17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518785
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(85)【翻訳文提出日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 DK2021050283
(87)【国際公開番号】W WO2022063370
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514130633
【氏名又は名称】ヴェスタス ウィンド システムズ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【氏名又は名称】川内 英主
(74)【代理人】
【識別番号】100202119
【氏名又は名称】岩附 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 秀康
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB43
3H178BB59
3H178DD12Z
3H178DD52X
3H178DD54X
3H178EE08
3H178EE32
(57)【要約】
風力タービンブレードへの落雷を検知するための雷センサを含む風力タービンを監視するための風力タービン監視装置は、雷センサの出力に基づいて少なくとも一つの雷パラメータを取得するように構成された雷パラメータ取得部と、雷パラメータ取得部によって取得された少なくとも一つの雷パラメータに基づいて落雷のレベルを判定するように構成された雷レベル判定部と、雷レベル判定部によって判定された落雷のレベルに応じて、風力タービンブレードを検査するための少なくとも一つの検査ユニットにより風力タービンブレードを自動的に検査する必要があるか否かを判断する検査制御部とを含む。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービンブレードへの落雷を検知するための雷センサを含む風力タービンを監視するための風力タービン監視装置であって、
前記雷センサの出力に基づいて少なくとも一つの雷パラメータを取得するように構成された雷パラメータ取得部と、
前記雷パラメータ取得部により取得された前記少なくとも一つの雷パラメータに基づいて前記落雷のレベルを判定するように構成された雷レベル判定部と、
前記雷レベル判定部によって判定された前記落雷の前記レベルに応じて、前記風力タービンブレードを検査するための少なくとも一つの検査ユニットによって前記風力タービンブレードを自動的に検査する必要があるか否かを判断するように構成された検査制御部と、を備える風力タービン監視装置。
【請求項2】
前記少なくとも一つの雷パラメータは、前記風力タービンブレードへの前記落雷による電流、エネルギー、電荷、又は前記電流、前記エネルギー又は前記電荷のうちの少なくとも一つに由来する少なくとも一つのパラメータを含む、請求項1に記載の風力タービン監視装置。
【請求項3】
前記検査制御部は、
前記落雷の前記レベルが第1のレベルの場合、前記少なくとも一つの検査ユニットによって前記風力タービンブレードを自動的に検査する必要がないと判断し、
前記落雷の前記レベルが、前記第1のレベルよりも激度の高い第2のレベルである場合、前記少なくとも一つの検査ユニットによって前記風力タービンブレードの自動検査を実行するように構成されている、請求項1又は2に記載の風力タービン監視装置。
【請求項4】
前記検査制御部は、前記雷センサが前記風力タービンブレードへの落雷を検知した場合、前記落雷の前記レベルにかかわらず前記風力タービンの運転を停止させるように構成されている、請求項3に記載の風力タービン監視装置。
【請求項5】
前記検査制御部は、前記落雷の前記レベルが前記第1のレベルの場合、前記少なくとも一つの検査ユニットによって前記風力タービンブレードの自動的な検査をすることなく、前記風力タービンの運転を再開させるように構成されている、請求項4に記載の風力タービン監視装置。
【請求項6】
前記検査制御部は、前記雷センサが前記風力タービンブレードへの落雷を検知した場合、前記落雷の前記レベルが前記第1のレベルの場合には、前記風力タービンの運転を停止せずに運転を継続させ、前記落雷の前記レベルが前記第1のレベルよりも激度が高い場合には、前記風力タービンの運転を停止させるように構成されている、請求項3に記載の風力タービン監視装置。
【請求項7】
前記検査制御部は、前記落雷の前記レベルが前記第2のレベルである場合、前記風力タービンの運転停止後に、前記少なくとも一つの検査ユニットによって前記風力タービンブレードの自動検査を行い、前記少なくとも一つの検査ユニットによって前記風力タービンブレードの前記自動検査の結果に基づいて、前記風力タービンの運転を再開させるか否かを判断するように構成されている、請求項3から6のいずれか一項に記載の風力タービン監視装置。
【請求項8】
前記検査制御部は、前記落雷の前記レベルが前記第2のレベルよりも激度の高い第3のレベルである場合、前記少なくとも一つの検査ユニットとは異なる種類の検査ユニットによる前記風力タービンブレードの検査を指示するように構成されている、請求項3から7のいずれか一項に記載の風力タービン監視装置。
【請求項9】
前記少なくとも一つの検査ユニットは、撮像装置、マイクロホン、又は前記少なくとも一つの雷パラメータに基づいて前記風力タービンブレードの損傷量を評価するように構成された評価部のうち少なくとも一つを含み、
前記少なくとも一つの検査ユニットとは異なる種類の前記検査ユニットは、負荷センサ、ドローン、前記風力タービンの出力に基づいて前記風力タービンブレードの損傷状態を評価するように構成された評価部、電気抵抗センサ、加速度センサ、光学センサ、撓みセンサ、又は圧力センサのうちの少なくとも一つを含む、請求項8に記載の風力タービン監視装置。
【請求項10】
前記検査制御部は、前記落雷の前記レベルが前記第3のレベルよりも激度の高い第4のレベルである場合、前記風力タービンの運転を再開することなく、前記風力タービンブレードを手動で検査する必要があることを示す情報を送信するように構成されている、請求項8又は9に記載の風力タービン監視装置。
【請求項11】
風力タービンシステムであって、
請求項1から10のいずれか一項に記載の前記風力タービン監視装置と、
前記風力タービンと、を備える風力タービンシステム。
【請求項12】
前記雷センサは、前記風力タービンブレードを流れる電流を検知するための電流センサである、請求項11に記載の風力タービンシステム。
【請求項13】
風力タービンブレードへの落雷を検知するための雷センサを含む風力タービンを監視するための風力タービン監視方法であって、
前記雷センサの出力に基づいて少なくとも一つの雷パラメータを取得することと、
前記少なくとも一つの雷パラメータに基づいて前記落雷のレベルを判定することと、
前記落雷の前記レベルに応じて、前記風力タービンブレードを検査するための少なくとも一つの検査ユニットによって前記風力タービンブレードを自動的に検査することが必要か否かの判断をすることと、を含む風力タービン監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風力タービン監視装置、風力タービンシステム、及び風力タービン監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、落雷による風力タービンブレードの損傷状態を精度よく推定するための風力タービン発電装置の状態監視システムが開示されている。この状態監視システムでは、落雷の激度を示す雷パラメータに基づいて風力タービンブレードの損傷状態を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
風力タービン発電機の風力タービンブレードに落雷した場合、風力タービンブレードを検査することにより風力タービンブレードの損傷状態を確認することができる。しかし、落雷の損傷リスクの大きさに関わらず、検査のために人を派遣することは、労力と費用の面で好ましくない。落雷の損傷リスクの大きさに応じて、風力タービンブレードの自動検査を行うことが望ましい。この点に関し、特許文献1には、風力タービンブレードの損傷リスクの大きさに応じて風力タービンブレードの自動検査の必要性を判断するための構成が開示されていない。
【0005】
上記の観点から、本開示の目的は、風力タービンブレードの損傷リスクの大きさに応じて、風力タービンブレードを自動的に検査する必要があるか否かを判断することが可能な風力タービン監視装置、風力タービンシステム、及び風力タービン監視方法を提供することである。
【0006】
上記目的を達成するために、風力タービンブレードへの落雷を検知するための雷センサを含む風力タービンを監視するための本開示による風力タービン監視装置は、雷センサの出力に基づいて少なくとも一つの雷パラメータを取得するように構成された雷パラメータ取得部と、雷パラメータ取得部によって取得された少なくとも一つの雷パラメータに基づいて落雷のレベルを判定するように構成された雷レベル判定部と、雷レベル判定部によって判定された落雷のレベルに応じて、風力タービンブレードを検査する少なくとも一つの検査ユニットによって風力タービンブレードを自動的に検査する必要があるか否かを判断するように構成された検査制御部と、を含む。
【0007】
さらに、上記目的を達成するために、風力タービンブレードへの落雷を検知するための雷センサを含む風力タービンを監視するための本開示による風力タービン監視方法は、雷センサの出力に基づいて少なくとも一つの雷パラメータを取得することと、少なくとも一つの雷パラメータに基づいて落雷のレベルを判定することと、落雷のレベルに応じて、風力タービンブレードを検査するための少なくとも一つの検査ユニットによって風力タービンブレードを自動的に検査する必要があるか否かを判断することと、を含む。
【0008】
本開示によれば、風力タービンブレードの損傷リスクの大きさに応じて風力タービンブレードを自動的に検査する必要があるか否かを判断することが可能な風力タービン監視装置、風力タービンシステム、及び風力タービン監視方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による風力タービン監視装置によって監視される風力タービン10の概略側面図である。
【
図2】ロータ18の周囲の構造を概略的に示す図である。
【
図3】風力タービン10を監視する風力タービン監視装置100のハードウェア構成を示す図である。
【
図4】風力タービン監視装置100の機能構成を説明するためのブロック図である。
【
図7】タワー14に固定された撮像装置40aを説明するための概略図である。
【
図8】異なる色の複数の層からなる外殻を説明するための概略図である。
【
図9】風力タービン監視装置100による風力タービン10の監視方法の一例を示すフローチャートである。
【
図10】風力タービン監視装置100による風力タービン10の監視方法の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。ただし、特に指定しない限り、実施形態に記載された構成要素の寸法、材料、形状、相対位置などは、例示的なものとしてのみ解釈され、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行に」、「直交に」、「中心に」、「同心円の」、「同軸の」等の相対的な又は絶対的な配置の表現は、厳密な文字通りの意味での配置のみを示すものと解釈するのではなく、同じ機能を達成することが可能な公差、又は、角度若しくは距離によってその配置が相対的に変位する状態を含むものとする。
例えば、「同じ」、「等しい」、「一様」などの等しい状態の表現は、その特徴が厳密に等しい状態のみを示すものと解釈せず、同じ機能を達成することができる公差又は差が存在する状態を含むものとする。
また、例えば、直方体や円筒形などの形状の表現は、幾何学的に厳密な形状のみと解釈するのではなく、同様の効果が得られる範囲で凹凸や面取りされた角を有する形状を含むものとする。
一方、「成る」、「含む」、「有する」、「包含する」及び「構成する」のような表現は、他の構成要素を排除することを意図しない。
【0011】
図1は、一実施形態による風力タービン監視装置によって監視される風力タービン10の概略側面図である。
風力タービン10は、基礎12上に設置されたタワー14と、タワー14の上方端に配置されたナセル16と、ロータ18と、ロータ18によって駆動される発電機19とを含む。ロータ18は、ナセル16に回転可能に取り付けられたロータヘッド(ハブ)20と、ロータヘッド20に取り付けられた少なくとも一つの風力タービンブレード(ブレード)21とを含む。一実施形態において、風力タービン10は、3つの風力タービンブレード21を有する。
【0012】
風力によってロータ18が回転すると、発電機19が電力を発生させ、その電力は発電機19に接続された電力網に供給される。風力タービン10は、陸上及び海上のいずれにも設置することができる。
【0013】
図2は、ロータ18の周囲の構造を概略的に示す図である。
いくつかの実施態様において、風力タービン10の各風力タービンブレード21は、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で構成された中空ブレード本体22と、ブレード本体22の表面に形成されたコイル又は(メッシュ)金属層23とを含む。他の場合には、風力タービンブレード21は、中空ブレード本体22と、ブレード本体22の内部に設けられた導体とを含む。本図は前者を示している。金属層23は、各風力タービンブレード21のブレード先端からブレード根元まで延在しており、ブレード根元に取り付けられた導電性放電部材24に電気的に接続されている。
【0014】
ナセル16から放射状に延在するスポーク状の導電材料26を介してナセル16に配置された受電部29に放電部材24は電気的に接続され、及び放電部材24はナセル16に電気的に接続されている。ナセル16の導電部分は、タワー14の導電部分に電気的に接続される。導電材料26の一端は、風力タービンブレード21がピッチ角をA方向に変化させたときに、放電部材24の外周面に摺動可能な接点44を形成する。導電材料26の他端は、ロータ18がB方向に回転したときに、受電部29に摺動可能な接点46を形成している。したがって、金属層23、放電部材24、ナセル16、及びタワー14は、風力タービンブレード21の先端からタワー14の下端まで延在する電流経路(接地線)28(
図4参照)を構成し、金属層23は、引き下げ導体として機能する。各風力タービンブレード21は、引き下げ導体として風力タービンブレード21の内部に延在する導電線を有してもよい。電流経路28は、風力タービンブレード21の雷保護システム(LPS)を構成する。
【0015】
図3は、風力タービン10を監視するための風力タービン監視装置100のハードウェア構成を示す図である。
中央演算処理装置(CPU)72、ランダムアクセスメモリ(RAM)74、リードオンリーメモリ(ROM)76、ハードディスクドライブ(HDD)78、入力I/F80、及び出力I/F82を含み、これらが母線84を介して接続されるコンピュータによって風力タービン監視装置100が提供される。風力タービン監視装置100のハードウェア構成はこれに限定されるが、制御回路と記憶装置とを組み合わせて構成することもできる。風力タービン監視装置100の各機能をコンピュータによって実現するプログラムを実行することによって、風力タービン監視装置100は提供される。以下に説明する風力タービン監視装置100の各部の機能は、例えば、ROM76に格納されたプログラムをRAM74にロードしてCPU72により実行し、RAM74又はROM76においてデータを読み書きすることにより実現される。さらに、画像処理装置(GPU)などの画像処理専用の演算装置を用いることで、画像データをより効率的に処理することができる。
【0016】
図4は、風力タービン監視装置100の機能構成を説明するためのブロック図である。風力タービン監視装置100は、例えば、ナセル16の内部に配置され、風力タービン10及び風力タービン監視装置100は、風力タービンシステムを構成する。
図4に示すように、風力タービンブレード21への落雷を検知するための雷センサとして、例えば放電部材24とナセル16との間の電流経路28の一部に、電流センサ30が取り付けられる。一実施形態では、3つの電流センサ30が、3つの風力タービンブレード21のそれぞれの電流経路28の平行な3つの部分に取り付けられる。より具体的には、3つの導電材料26の各々に一つの電流センサ30が取り付けられる。すなわち、電流センサ30は、各風力タービンブレード21に配置され、風力タービンブレード21を流れる雷電流を検知する。電流センサ30は、例えば、ロゴスキー(Rogowski)コイル又は電流変換器である。
【0017】
風力タービン監視装置100は、雷パラメータ取得部32と、雷レベル判定部33と、検査制御部34とを備える。
雷パラメータ取得部32は、電流センサ30の出力に基づいて複数の雷パラメータを取得するように構成される。本実施形態では、電流センサ30の出力に基づいて、例えば、落雷により風力タービンブレード21を流れる雷電流のピーク値、雷電流の二乗を落雷の継続時間で積分して得られる落雷の比エネルギー、及び/又は雷電流を落雷の継続時間で積分して得られる落雷の電荷、を含む複数の雷パラメータを、雷パラメータ取得部32は取得する。以下、「電流のピーク値」とは、雷パラメータ取得部32により取得される雷電流のピーク値(雷電流の最大値)を意味し、「比エネルギー」とは、雷パラメータ取得部32により取得される落雷の比エネルギーを意味し、「電荷」とは、雷パラメータ取得部32により取得される落雷の電荷を意味する。
【0018】
雷パラメータ取得部32により取得された複数の雷パラメータ(雷電流のピーク値、比エネルギー、電荷)に基づいて、雷レベル判定部33は、電流センサ30により検知された落雷のレベルを複数の雷レベルQ1~Q4から判定する。
【0019】
本実施形態では、複数の雷レベルは、激度順に、Q1(第1のレベル)、Q2(第2のレベル)、Q3(第3のレベル)及びQ4(第4のレベル)の4つのレベルを含む。具体的には、Q1~Q4の4つの雷レベルのうち、Q1が最も低い激度であり、Q2がQ1よりも激度が高く、Q3がQ2よりも激度が高く、Q4がQ3よりも激度が高く、最も高い激度である。本発明の他の実施形態は、より少ないレベル又はより多いレベルを有することができる。
【0020】
これから雷レベル判定部33による落雷のレベルの判定方法の一例について説明する。まず、雷レベル判定部33は、電流センサ30により検知された落雷のレベルがQ1であるか否かを判定する。具体的には、以下の条件1、2及び3の全てが満たされた場合、落雷のレベルはQ1であると判定される。
条件1:雷電流のピーク値が0より大きく、かつ閾値I1と等しい又は閾値I1より小さい。
条件2:比エネルギーが0より大きく、かつ閾値E1と等しい又は閾値E1より小さい。
条件3:電荷が0より大きく、かつ閾値C1と等しい又は閾値C1より小さい。
閾値I1、E1及びC1は、それぞれ、例えば、100(kA)、2.5(MJ/Ω)及び150(C)であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0021】
落雷のレベルがQ1でない場合、雷レベル判定部33は落雷のレベルがQ4であるか否かを判定する。具体的には、以下の条件4、5、6のうち少なくとも一つが満たされた場合、落雷のレベルをQ4と判定する。
条件4:雷電流のピーク値が閾値I3より大きい。
条件5:比エネルギーが閾値E3より大きい。
条件6:電荷が閾値C3より大きい。
閾値I3、E3及びC3は、それぞれ閾値I1、E1、及びC1よりも大きい。閾値I3、E3及びC3は、それぞれ、例えば、200(kA)、10(MJ/Ω)及び300(C)であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0022】
落雷のレベルがQ1でもQ4でもなく、かつ以下の条件7、8、9の少なくとも一つが満たされると、雷レベル判定部33は落雷のレベルをQ3と判定する。
条件7:雷電流のピーク値が閾値I2より大きい。
条件8:比エネルギーが閾値E2より大きい。
条件9:電荷が閾値C2より大きい。
閾値I2、E2、及びC2は、それぞれ閾値I1、E1、及びC1よりも大きい。さらに、閾値I2、E2及びC2は、それぞれ閾値I3、E3、C3よりも小さい。閾値I2、E2及びC2は、それぞれ、例えば、150(kA)、5.6(MJ/Ω)、及び225(C)であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0023】
落雷のレベルがQ1、Q3、Q4のいずれでもない場合、以下の条件10、11、12のうち少なくとも一つが満たされているため、落雷のレベルはQ2であると判定される。
条件10:雷電流のピーク値が閾値I1より大きい。
条件11:比エネルギーが閾値E1より大きい。
条件12:電荷が閾値C1より大きい。
【0024】
検査制御部34は、雷レベル判定部33により判定された落雷のレベルQ1~Q4に応じて、風力タービンブレード21の損傷状態を自動的に検査するための少なくとも一つの検査ユニット40により風力タービンブレード21を自動的に検査する必要があるか否かを判断するように構成されている。また、検査制御部34は、雷レベル判定部33により判定された落雷のレベルQ1~Q4に応じて、風力タービンブレード21の損傷状態を検査するための少なくとも一つの検査ユニット41により風力タービンブレード21を検査する必要があるか否かを判断するように構成されている。検査ユニット40と検査ユニット41とは、風力タービンブレード21の検査方法が異なる。ここで、「自動検査」とは、検査ユニット40が手動操作によらずに自動的に風力タービンブレード21を検査することをいう。
【0025】
少なくとも一つの検査ユニット40は、風力タービンブレード21の簡易な自動検査を可能にする検査ユニットであり、
図5に示すような、撮像装置40a、マイクロホン40b、又は評価部40cのうち少なくとも一つを含む。少なくとも一つの検査ユニット41は、風力タービン10に人を派遣することなく風力タービンブレード21の遠隔検査を可能とする検査ユニットであり、負荷センサ41a、ドローン41b、評価部41c、電気抵抗センサ41d、加速度センサ41e、光学センサ41f、撓みセンサ41g又は圧力センサ41hのうちの少なくとも一つを含む。
【0026】
図5に示す撮像装置40aは、例えば
図7に示すように、タワー14の外壁に設けられた孔39に固定され、風力タービンブレード21の画像を撮像するように構成されたカメラであってもよい。
図7に示す例では、少なくとも一つの検査ユニット40は、複数の撮像装置40aを含む。撮像装置40aは、タワー14の外壁に、タワーの高さ方向に沿って配置されたそれぞれの孔39に固定されたカメラである。撮像装置40aは、代替的に、例えばタワーに沿う又はタワーの周囲におけるレールを移動することができるようにしてもよい。改善された撮像を可能にするために、ランプなどの一つ以上の照明装置も提供され得る。
【0027】
また、
図8に示すように、風力タービンブレード21の外殻が異なる色を有する複数の層を含む場合、撮像装置40aによって撮像された風力タービンブレード21の外殻の色に基づいて、風力タービンブレード21の損傷状態を検査し得る。
【0028】
図5に示すマイクロホン40bは、例えば、風力タービンブレード21の内部に固定されていてもよい。風力タービンブレード21は、複数の構造部品を接合して形成されているため、落雷によって構造部品の接合状態が悪化すると、接合部において音が発生する。このように、風力タービンブレード21の内部に固定されたマイクロホン40bで音を検知することにより、風力タービンブレード21の損傷状態を検査することができる。
【0029】
評価部40cは、複数の雷パラメータ(雷電流のピーク値、比エネルギー、電荷)と風力タービンブレード21の損傷量との関係を示す相関情報を読み取り、この相関情報と複数の雷パラメータとに基づいて風力タービンブレード21の損傷量を評価することにより風力タービンブレード21を検査する。相関情報は、予め実施された避雷システムの試験結果に基づいて生成されて記憶部42に記憶されてもよいし、実際の風力タービン10によって取得された落雷のデータから生成されて記憶部42に記憶されてもよい。
【0030】
負荷センサ41aは、風力タービンブレード21に固定されている。風力タービンブレード21が割れや欠けなどの損傷を受けた場合、風力タービンブレードの正常な状態に比べて負荷が増加する。したがって、負荷センサ41aで風力タービンブレード21の負荷を検知することにより、風力タービンブレード21の損傷状態を検査することができる。負荷センサは、例えば、光ファイバセンサ又は歪みゲージであってもよい。
【0031】
ドローン41bを用いる場合、ドローン41bを風力タービンブレード21の任意の部分に近づけることにより、風力タービンブレード21を所望の検査方法で検査することができる。
【0032】
風速と風力タービン10の出力(発電機19の発電量)との関係を示す出力曲線を記憶部42から読み出し、風力タービンブレード21に落雷した後の風力タービン10の出力とその出力曲線とを比較して風力タービンブレード21の損傷状態を評価することにより、評価部41cは風力タービンブレード21を検査する。例えば、落雷した風力タービン10の出力が電力曲線で示される出力よりも低い場合、風力タービンブレード21が損傷していると判断することができる。
【0033】
風力タービンブレード21の導体部分(
図2に示す例では、金属層23と導電材料26とで構成される部分)の電気抵抗を検知することにより、電気抵抗センサ41dは風力タービンブレード21の損傷状態を検査する。例えばドローン41b(
図1参照)を用いて、風力タービンブレード21のブレード先端とブレード根元との間に電流を流し、電気抵抗センサ41dは電気抵抗を検知することができる。
【0034】
加速度センサ41eは、風力タービンブレード21に固定されている。加速度センサ41eは、風力タービンのブレードの振動を測定し、その振動を高速フーリエ変換(FFT)によりスペクトルに変換し、ピーク偏差及び振幅偏差、3つの風力タービンブレード21の比較、信号強度に基づくパターン認識、及び/又は、同じブレードの過去のパターンとの比較により、ブレードの損傷状態を検査する。
【0035】
光学センサ41fは、風力タービンブレード21又はタワー14の内部に配置されたレーザ及び反射器によって、風力タービンブレード21に加えられた負荷及び風力タービンブレード21の撓みを検知することにより、風力タービンブレード21の損傷状態を検査する。
【0036】
撓みセンサ41gは、ピッチ制御用に風力タービンブレード21の内部に配置されたカメラ及び反射器によって、風力タービンブレード21に加わる負荷及び風力タービンブレード21の撓みを検知することにより、風力タービンブレード21の損傷状態を検査する。
【0037】
圧力センサ41hは、風力タービンブレード21の内圧を検知することにより、風力タービンブレード21の損傷状態を検査する。風力タービンブレード21に落雷すると、風力タービンブレード21の内圧が上昇し、風力タービンブレード21を構成する構造部品の接合状態が悪化する。その結果、風力タービンブレード21の先端に設けられた受容体(不図示)の保持力が低下し、受容体が剥離する可能性がある。したがって、風力タービンブレード21の内圧及び/又は経時的な内圧の展開は、風力タービンブレード21の損傷状態の指標として使用することができる。
【0038】
以下、風力タービン監視装置100による風力タービン10の監視方法の一例について説明する。
図9は、風力タービン監視装置100による風力タービン10の監視方法の一例を示すフローチャートである。
【0039】
まず、S101において、電流センサ30の出力に基づいて、電流センサ30が風力タービンブレード21への落雷を検知したか否かを、雷レベル判定部33が判定する。
【0040】
S101において、電流センサ30が落雷を検知しない場合、すなわち、電流センサ30が電流を検知しない場合(上記のように、電流センサ30が各風力タービンブレード21に配置されている場合において、いずれの電流センサ30も電流を検知しない場合)、S102において、風力タービン10の運転が継続される。なお、「風力タービン10の運転が継続される」とは、ロータ18が回転しており、発電機19による発電が継続されることを意味する。
【0041】
S101において、電流センサ30が落雷を検知した場合、すなわち、電流センサ30が電流を検知した場合(上記のように、電流センサ30が各風力タービンブレード21に配置されている場合において、いずれかの電流センサ30が電流を検知した場合)、S103において、検査制御部34は、落雷のレベルにかかわらず風力タービン10の運転を停止させる。なお、「風力タービン10の運転を停止させる」とは、ロータ18を停止させ、発電機19による発電を停止させることを意味する。
【0042】
S104において、雷パラメータ取得部32は、電流センサ30の出力に基づいて、落雷により風力タービンブレード21を流れる雷電流のピーク値と、雷電流の二乗を落雷の継続時間で積分した落雷の比エネルギーと、雷電流を落雷の継続時間で積分した落雷の電荷とを、雷パラメータとして、取得する。そして、雷レベル判定部33は、雷パラメータ取得部32により取得された3つの雷パラメータに基づいて、電流センサ30により検知された落雷のレベルがQ1であるか否かを、判定する。上述した条件1、2、3の全てが満たされる場合、雷レベル判定部33は、落雷のレベルがQ1であると判定する。
【0043】
S104において、落雷のレベルがQ1であると判定された場合、S105において、検査制御部34は、検査ユニット40による風力タービンブレード21の検査及び検査ユニット41による風力タービンブレード21の検査のいずれも不要であると判断し、風力タービンブレード21の検査を行うことなく、風力タービン10の運転を再開させる。
【0044】
S104において、落雷のレベルがQ1でないと判定された場合、S106において、雷レベル判定部33は、落雷のレベルがQ4であるか否かを判定する。上述した条件4、5、6のうち少なくとも一つが満たされる場合、雷レベル判定部33は、落雷のレベルがQ4であると判定する。
【0045】
S106において、落雷のレベルがQ4であると判定された場合、S107において、風力タービン10の運転を再開することなく、人による風力タービンブレード21の検査(目視等の詳細な検査)を行い、迅速に風力タービンブレード21を修理する必要があることを示す情報を、検査制御部34は風力タービン10の保守会社等に送信する。
【0046】
S106において、落雷のレベルがQ4でないと判定された場合、S108において、落雷のレベルがQ3であるか否かを判定する。落雷のレベルがQ1でもQ4でもなく、かつ、上述した条件7、8、9のうち少なくとも一つが満たされる場合、雷レベル判定部33は、落雷のレベルをQ3であると判定する。
【0047】
S108において、落雷のレベルがQ3であると判定された場合、S109において、少なくとも一つの検査ユニット41による風力タービンブレード21の遠隔検査が指示される。例えば、少なくとも一つの検査ユニット41による風力タービンブレード21の遠隔検査を行う必要があることを示す情報が、風力タービン10の保守業者へ送信される。また、S110において、少なくとも一つの検査ユニット41による風力タービンブレード21の遠隔検査の結果に基づいて、風力タービン10の運転を再開するか否かが判断される。さらに、S108において、落雷のレベルがQ3であると判定された場合、所定の期間内(例えば、3ヶ月以内)に人を派遣して、風力タービンブレード21の詳細な検査又は修理を行うことができる。
【0048】
S108において、落雷のレベルがQ3でないと判定された場合、上述の条件10、11、12のうち少なくとも一つが満たされるため、落雷のレベルがQ2であると判定される。この場合、S111において、少なくとも一つの検査ユニット40により検査制御部34は、風力タービンブレード21の自動検査を行う。S112において、S111における自動検査の結果に基づいて、検査制御部34は風力タービンの運転を再開するか否かを判断する。さらに、S108において、落雷のレベルがQ2であると判定された場合、所定期間よりも長い期間内(例えば、6ヶ月以内)に人を派遣して、風力タービンブレード21の詳細な検査や修理を行うことができる。
【0049】
次に、風力タービン監視装置100による風力タービン10の監視方法の他の例について説明する。
図10は、風力タービン監視装置100による風力タービン10の監視方法の他の例を示すフローチャートである。
【0050】
まず、S201において、電流センサ30の出力に基づいて、雷レベル判定部33は、電流センサ30が風力タービンブレード21への落雷を検知したか否かを判定する。
【0051】
S201において、電流センサ30が落雷を検知していない場合、すなわち、電流センサ30が電流を検知していない場合(上記のように、電流センサ30が各風力タービンブレード21に配置されている場合において、いずれの電流センサ30も電流を検知していない場合)、S202において、風力タービン10の運転が継続される。
【0052】
S201において、電流センサ30が落雷を検知した場合、すなわち、電流センサ30が電流を検知した場合(上記のように、電流センサ30が各風力タービンブレード21に配置されている場合において、いずれかの電流センサ30が電流を検知した場合)、S203において、雷パラメータ取得部32は、電流センサ30の出力に基づいて、落雷による風力タービンブレード21を流れる雷電流のピーク値と、雷電流の二乗を落雷の継続時間で積分した落雷の比エネルギー、及び雷電流を落雷の継続時間で積分した落雷の電荷とを、雷パラメータとして、取得する。そして、雷レベル判定部33は、雷パラメータ取得部32により取得された3つの雷パラメータに基づいて、電流センサ30により検知された落雷のレベルがQ1であるか否かを判定する。上述した条件1、2、3の全てが満たされる場合、雷レベル判定部33は、落雷のレベルがQ1であると判定する。
【0053】
S203において、落雷のレベルがQ1であると判定された場合、S204において、検査制御部34は、検査ユニット40による風力タービンブレード21の検査及び検査ユニット41による風力タービンブレード21の検査はいずれも不要であると判断し、風力タービンブレード21を検査することなく風力タービン10の運転を継続させる。
【0054】
S203において、落雷のレベルがQ1でないと判定された場合(落雷のレベルがQ1よりも激度が高い場合)、S205において、検査制御部34は、風力タービン10の運転を停止させる。
【0055】
その後のステップS206~S212は、
図9を参照して説明したS106~S112と同様であるので、その説明を省略する。
【0056】
本開示は、上述した実施形態に限定されるものではなく、上述した実施形態に対する変更を加えたもの、及びそれらの実施形態の組み合わせで構成された実施形態を含む。
【0057】
例えば、落雷のレベルがQ4である場合、検査制御部34は、人による風力タービンブレード21の目視検査だけでなく、検査ユニット40による風力タービンブレード21の自動検査や、検査ユニット41による風力タービンブレードの遠隔検査を行ってもよい。
【0058】
さらに、落雷のレベルがQ3である場合、検査制御部34は、検査ユニット41による風力タービンブレードの遠隔検査だけでなく、検査ユニット40による風力タービンブレード21の自動検査も行うことができる。
【0059】
上記実施形態では、雷パラメータ取得部32は、電流センサ30の出力に基づいて、落雷により風力タービンブレード21を流れる雷電流のピーク値と、雷電流の二乗を落雷の継続時間で積分して得られた落雷の比エネルギーと、雷電流を落雷の継続時間で積分して得られた落雷の電荷とを、雷パラメータとして、取得する。しかし、雷パラメータ取得部32が取得する雷パラメータは、3つのパラメータに限定されるものではなく、風力タービンブレード21への落雷による電流、エネルギー、電荷、又は、該電流、該エネルギー、該電荷のうちの少なくとも一つに由来する少なくとも一つのパラメータを含むことができる。
【0060】
上記実施形態では、ナセル16の内部に配置された風力タービン監視装置100について説明したが、風力タービン監視装置100は、風力タービン10から離れた遠隔の場所に配置されてもよく、風力タービン10との通信により風力タービン10を監視するように構成されてもよい。この場合も同様に、風力タービン10及び風力タービン監視装置100は、風力タービンシステムを構成する。
【0061】
上記実施形態で説明した内容は、例えば、以下のように理解されるであろう。
【0062】
(1)本開示に係る風力タービン監視装置(例えば、上述の風力タービン監視装置100)は、風力タービンブレード(例えば、上述の風力タービンブレード21)への落雷を検知するための雷センサ(例えば、上述の電流センサ30)を含む風力タービン(例えば、上述の風力タービン10)を監視するための風力タービン監視装置であって、雷センサの出力に基づいて少なくとも一つの雷パラメータを取得するように構成された雷パラメータ取得部(例えば、上述した雷パラメータ取得部32)と、雷パラメータ取得部により取得された少なくとも一つの雷パラメータに基づいて落雷のレベルを判定する雷レベル判定部(例えば、上述した雷レベル判定部33)と、雷レベル判定部により判定された落雷のレベルに応じて、風力タービンブレードを検査するための少なくとも一つの検査ユニット(例えば、上述の検査ユニット40)により風力タービンブレードを自動的に検査する必要があるか否かを判断するように構成された検査制御部(例えば、上述した検査制御部34)とを含む。
【0063】
上記(1)の風力タービン監視装置によれば、雷レベル判定部は、雷センサの出力に基づく雷パラメータを用いて落雷のレベルを判定するので、風力タービンブレードの損傷リスクの大きさに対応した落雷のレベルを判定することが可能となる。
さらに、検査制御部は、雷レベル判定部により判定された落雷のレベルに応じて、風力タービンブレードを検査するための少なくとも一つの検査ユニットにより風力タービンブレードを自動的に検査する必要があるか否かを判断するので、風力タービンブレードの損傷リスクの大きさに応じて風力タービンブレードを自動的に検査する必要があるか否かを適切に判断することが可能である。
【0064】
(2)いくつかの実施形態では、上記(1)に記載の風力タービン監視装置において、少なくとも一つの雷パラメータは、風力タービンブレードへの落雷による電流、エネルギー、電荷、又は該電流、該エネルギー又は該電荷のうち少なくとも一つから得られる少なくとも一つのパラメータを含む。
【0065】
上記(2)に記載の風力タービン監視装置によれば、落雷による電流、エネルギー、電荷、又は該電流、該エネルギー、該電荷のうち少なくとも一つに由来する少なくとも一つのパラメータに基づいて判定される落雷のレベルに応じて、風力タービンブレードを自動的に検査する必要があるかどうかを適切に判断することが可能である。
【0066】
(3)いくつかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の風力タービン監視装置において、検査制御部は、落雷のレベルが第1のレベル(例えば、上述のQ1)である場合には、少なくとも一つの検査ユニットによって風力タービンブレードを自動的に検査する必要がないと判断し、落雷のレベルが第1のレベルよりも激度が高い第2のレベル(例えば、上述のQ2)である場合には、少なくとも一つの検査ユニットによる風力タービンブレードの自動検査を行うように構成されている。
【0067】
上記(3)に記載の風力タービン監視装置によれば、風力タービンブレードへの落雷のレベルが激度の低い第1のレベルである場合には、検査ユニットによる風力タービンブレードの自動検査を行わず、落雷のレベルが第1のレベルよりも激度の高い第2のレベルである場合には、検査ユニットによる風力タービンブレードの自動検査を行う。このように、過度に検査を行うことなく、落雷のレベルに応じて検査ユニットによる自動検査を適切に行うことができる。
【0068】
(4)いくつかの実施形態では、上記(3)に記載の風力タービン監視装置において、雷センサが風力タービンブレードへの落雷を検知した場合、検査制御部は、落雷のレベルにかかわらず風力タービンの運転を停止させるように構成されている。
【0069】
上記(4)に記載の風力タービン監視装置によれば、落雷を受けた風力タービンの運転を継続することに伴うリスクを回避することが可能である。上記(4)に記載の風力タービン監視装置は、風力タービンに落雷があった場合に、雷のレベルにかかわらず風力タービンの運転を停止することが義務付けられている場所である国や地域などに設置された風力タービンを監視する風力タービン監視装置に適用することができる。
【0070】
(5)いくつかの実施形態では、上記(4)に記載の風力タービン監視装置において、落雷のレベルが第1のレベルである場合、検査制御部は、少なくとも一つの検査ユニットによって風力タービンブレードを自動的に検査することなく風力タービンの運転を再開させるように構成される。
【0071】
上記(5)に記載の風力タービン監視装置によれば、落雷のレベルが風力タービンへの影響が無視できる第1のレベルである場合、風力タービンブレードを自動的に検査することなく、速やかに風力タービンを再起動する。このように、風力タービンの稼働率の低下を抑制しつつ、落雷した風力タービンの運転に伴うリスクの増加を抑制することができる。
【0072】
(6)いくつかの実施形態では、上記(3)に記載の風力タービン監視装置において、検査制御部は、雷センサが風力タービンブレードへの落雷を検知した場合、落雷のレベルが第1のレベルであれば、風力タービンの運転を停止させずに運転を継続させ、落雷のレベルが第1のレベルよりも激度が高ければ、風力タービンの運転を停止させるように構成されている。
【0073】
上記(6)に記載の風力タービン監視装置によれば、落雷のレベルが風力タービンへの影響が無視できる第1のレベルである場合、風力タービンの運転を停止せずに継続し、落雷のレベルが第1のレベルよりも激度が高い場合、風力タービンの運転を停止する。このように、風力タービンの稼働率の低下を抑制しつつ、落雷を受けた風力タービンの運転に伴うリスクの増加を抑制することが可能である。上記(6)に記載の風力タービン監視装置は、風力タービンに落雷があった場合に、雷のレベルにかかわらず風力タービンの運転を停止する義務がない国や地域等に設置された風力タービンを監視する風力タービン監視装置に適用することができる。
【0074】
(7)いくつかの実施形態では、上記(3)~(6)のいずれか一つに記載の風力タービン監視装置において、検査制御部は、落雷のレベルが第2のレベルである場合、風力タービンの運転を停止した後に、少なくとも一つの検査ユニットによる風力タービンブレードの自動検査を行い、少なくとも一つの検査ユニットによる風力タービンブレードの自動検査の結果に基づいて風力タービンの運転を再開するか否かを判断するように、構成されている。
【0075】
(7)に記載の風力タービン監視装置によれば、落雷のレベルが第1のレベルよりも激度の高い第2のレベルである場合、検査ユニットによる風力タービンブレードの自動検査の結果に基づいて風力タービンの運転を再開するか否かが判断される。このように、落雷による風力タービンブレードの損傷状態を考慮して、風力タービンの運転を再開するか否かを適切に判断することができる。
【0076】
(8)いくつかの実施形態では、上記(3)~(7)のいずれか一つに記載の風力タービン監視装置において、検査制御部は、落雷のレベルが第2のレベルよりも激度の高い第3のレベル(例えば、上記のQ3)である場合、少なくとも一つの検査ユニットとは異なる種類の検査ユニット(例えば、上記の検査ユニット41)による風力タービンブレードの検査を指示するように構成される。
【0077】
上記(8)に記載の風力タービン監視装置によれば、風力タービンブレードが第2のレベルよりも激度の高い第3のレベルの落雷を受けた場合、該少なくとも一つの検査ユニットよりも詳細な検査を行うことができる検査ユニットによる風力タービンブレードの検査が促される。このように、落雷のレベルに応じた適切な検査ユニットで風力タービンブレードを検査することが可能となる。
【0078】
(9)いくつかの実施形態では、上記(8)に記載の風力タービン監視装置において、少なくとも一つの検査ユニットは、撮像装置(例えば、上述の撮像装置40a)、マイクロホン(例えば、上述のマイクロホン40b)、又は、少なくとも一つの雷パラメータに基づいて風力タービンブレードの損傷量を評価するように構成された評価部(例えば、上述の評価部40c)の少なくとも一つを含む。少なくとも一つの検査ユニットとは異なる種類の検査ユニットは、負荷センサ(例えば、上述の負荷センサ41a)、ドローン(例えば、上述のドローン41b)、風力タービンの出力に基づいて風力タービンブレードの損傷状態を評価するように構成された評価部(例えば、上述の評価部41c)、電気抵抗センサ(例えば、上述の電気抵抗センサ41d)、加速度センサ(例えば、上述の加速度センサ41e)、光学センサ(例えば、上述の光学センサ41f)、撓みセンサ(例えば、上述の撓みセンサ41g)、又は圧力センサ(例えば、上述の圧力センサ41h)の少なくとも一つを含む。
【0079】
上記(9)に記載の風力タービン監視装置によれば、落雷のレベルが第1のレベルであれば、簡易な点検を迅速に行うことができ、落雷のレベルが第1のレベルよりも激度の高い第2のレベルであれば、より詳細な検査を行うことができる。
【0080】
(10)いくつかの実施形態では、上記(8)又は(9)に記載の風力タービン監視装置において、検査制御部は、落雷のレベルが第3のレベルよりも激度の高い第4のレベル(例えば、上記のQ4)である場合、風力タービンの運転を再開せずに風力タービンブレードを手動で検査する必要があることを示す情報を送信するように構成されている。
【0081】
(10)に記載した風力タービン監視装置によれば、落雷のレベルが第3のレベルよりも激度の高い第4のレベルの場合、風力タービンブレードの損傷リスクが高いことを考慮して、風力タービンの運転を再開せずに、人による風力タービンブレードの詳細な検査を促す。風力タービンブレードを詳細に検査し、必要に応じて修理した後、風力タービンブレードの運転を再開することができる。
【0082】
(11)本開示による風力タービンシステムは、上記(1)~(10)のいずれか一つに記載の風力タービン監視装置と風力タービンとを含む。
【0083】
上記(11)に記載の風力タービンシステムによれば、風力タービンブレードへの落雷のレベルに応じて、風力タービンブレードを自動的に点検する必要があるか否かを適切に判断することが可能である。
【0084】
(12)いくつかの実施形態では、上記(11)に記載の風力タービンシステムにおいて、雷センサは、風力タービンブレードを流れる電流を検知するための電流センサ(例えば、上述の電流センサ30)である。
【0085】
上記(12)に記載の風力タービンシステムによれば、風力タービンブレードに流れる電流に基づく雷パラメータを用いて落雷のレベルを判定することにより、少なくとも一つの検査ユニットによる風力タービンブレードの自動的な検査をする必要があるか否かを適切に判断することが可能となる。
【0086】
(13)本開示による風力タービン監視方法は、風力タービンブレード(例えば、上述の風力タービンブレード21)への落雷を検知するための雷センサ(例えば、上述の電流センサ30)を含む風力タービン(例えば、上述の風力タービン10)を監視するための方法であって、雷センサの出力に基づいて少なくとも一つの雷パラメータを取得することと、少なくとも一つの雷パラメータに基づいて判定される落雷のレベルに応じて、風力タービンブレードを検査するための少なくとも一つの検査ユニット(例えば、上述の検査ユニット40)によって風力タービンブレードを自動的に検査する必要があるか否かを判断することと、を含む。
【0087】
上記(13)に記載の風力タービン監視方法によれば、落雷のレベルは、雷センサの出力に基づく雷パラメータを用いて判定され、その落雷のレベルに応じて少なくとも一つの検査ユニットによって風力タービンブレードを自動的に検査する必要があるか否かが判断されるので、風力タービンブレードへの落雷のレベルに応じて風力タービンブレードの自動的な検査の必要性を適切に判断することが可能となる。
【国際調査報告】