(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-06
(54)【発明の名称】がんの処置に有用なSN38のペプチド性コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
A61K 47/64 20170101AFI20230929BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230929BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20230929BHJP
C07K 7/00 20060101ALI20230929BHJP
A61K 31/4745 20060101ALN20230929BHJP
【FI】
A61K47/64
A61P35/00
A61K47/65
C07K7/00 ZNA
A61K31/4745
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518802
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(85)【翻訳文提出日】2023-05-22
(86)【国際出願番号】 EP2021076546
(87)【国際公開番号】W WO2022064052
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515000214
【氏名又は名称】フンダシオ インスティトゥ デ レセルカ バイオメディカ (イーエレベー バルセロナ)
(71)【出願人】
【識別番号】514267962
【氏名又は名称】ウニベルシタ デ バルセローナ
(71)【出願人】
【識別番号】519397781
【氏名又は名称】オスピタル サン ジュアン ダ デウ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス ナヴァロ,マカレナ
(72)【発明者】
【氏名】テイクスィド トゥラ,メリチェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジェネ オラシレギ,ナゴレ
(72)【発明者】
【氏名】ジラルト ジェド,アーネスト
(72)【発明者】
【氏名】モンテロ カルカボソ,アンヘル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA13
4C086ZB26
4H045AA10
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA72
4H045EA20
4H045FA20
(57)【要約】
SN38のペプチド性コンジュゲート、その調製方法、それらを含む医薬組成物、および抗がん剤としてのそれらの治療適応症。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩
(Z)-(L)-P-(W)s-(Y)
(I)
式中、
Zは、医薬活性成分SN38またはその薬学的に許容される塩の基であり、前記医薬活性成分SN38は式(II)を有し、Zは、前記医薬活性成分の2つのヒドロキシル基(a)または(b)の1つのみによって独立してリンカーLに結合しており;
【化1】
Lは、2~8個のビラジカルL´から構成されるビラジカルであり、式:
-L´
a-(L´
b)
n-L´
c-
を有するリンカーであり;
L
a´は、-C(=O)-(CH
2)
r-C(=O)-;-C(=O)-(CH
2)
r-NH-;-C(=O)-(CH
2)
r-S-;-C(=O)-(CH
2)
r-O-;-C(=O)-NH-(CH
2)
r-C(=O)-;-C(=O)-NH-(CH
2)
r-NH-;-C(=O)-NH-(CH
2)
r-S-;-C(=O)-NH-(CH
2)r-O-;-(CH
2)r-C(=O)-;-(CH
2)r-NH-;-(CH
2)r-S-;-(CH
2)
r-O-;-Si(R
1)(R
2)-(CH
2)
r-NH-;-Si(R
1)(R
2)-(CH
2)
r-C(=O)-;-Si(R
1)(R
2)-(CH
2)
r-O-;-Si(R
1)(R
2)-(CH
2)
r-S-;-SO
2-(CH
2)
r-NH-;-SO
2-(CH
2)
r-C(=O)-;-SO
2-(CH
2)
r-O-;-SO
2-(CH
2)
r-S-;-P(=O)(OR
1)-O-(CH
2)
r-NH-;-P(=O)(OR
1)-O-(CH
2)
r-C(=O)-;-P(=O)(OR
1)-O-(CH
2)
r-O-;-P(=O)(OR
1)-O-(CH
2)
r-S-;-CH(OH)-(CH
2)
r-NH-;-CH(OH)-(CH
2)
r-C(=O)-;-CH(OH)-(CH
2)
r-O-;-CH(OH)-(CH
2)
r-S-;
【化2】
からなる群から選択されるビラジカルであり、L
8~L
11のいずれかにおける置換基は、環の任意の位置にあり得;
【化3】
L
b´は、独立して、-NH-(CH
2)
r-C(=O)-;-C(=O)-(CH
2)
r-C(=O)-;-S-(CH
2)
r-C(=O)-;-O-(CH
2)
r-C(=O)-;-NH-(CH
2)
r-;-C(=O)-(CH
2)
r-;-S-(CH
2)
r-;-O-(CH
2)
r-;-NH-CH-((CH
2)
rNH
2)-C(=O)-;-S-CH
2-CH(NH
2)-C(=O)-;-(CH
2)
r-C(=O)-;-(CH
2)
r-O-;-(CH
2)
r-NH-;-(CH
2)
r-S-;-C(=O)-(CH
2)
r-NH-;-C(=O)-(CH
2)
r-O-;-C(=O)-(CH
2)
r-S-;-NH-(CH
2)
r-O-;-NH-(CH
2)
r-NH-;-NH-(CH
2)
r-S-;およびそれらの組合せ;
【化4】
からなる群から選択されるビラジカルであり;
L
c´は、-NH-(CH
2)
r-C(=O)-;-NH-CH-((CH
2)
rNH
2)-C(=O)-;-C(=O)-(CH
2)
r-C(=O)-;-S-(CH
2)
r-C(=O)-;-S-CH
2-CH(NH
2)-C(=O)-;-O-(CH
2)
r-C(=O)-、-(CH
2)
r-C(=O)-;
【化5】
からなる群から選択されるビラジカルであり、
Pは、
(a)アミド結合であるX
1とX
2との間のペプチド内結合を有するアミノ酸配列X
1KAPETALX
2を含むペプチドであって、X
1は、DapおよびDabからなる群から選択され、X
2は、D(アスパラギン酸)およびE(グルタミン酸)からなる群から選択されるペプチド;すなわち
【化6】
(b)ジスルフィド結合またはジセレニド結合であり、X
3KAPETALX
4AAAであるアミノ酸配列を含むペプチド内結合を少なくとも有する12~20アミノ酸残基長のペプチドであって;X
3とX
4との間に少なくともペプチド内ジスルフィド結合またはジセレニド結合を有し、X
3とX
4とが等しく、C(システイン)、Sec(セレノシステイン)、およびPen(ペニシラミン)からなる群から選択されるペプチド;
【化7】
(c)ジスルフィド結合又はジセレニド結合であり、X
5とX
6との間に少なくともペプチド内ジスルフィド結合またはジセレニド結合を有するX
5KAPETALX
6;X
5KAPETALX
6A;およびX
5KAPETALX
6AAからなる群から選択されるアミノ酸配列からなるペプチド内結合を少なくとも有する9~11アミノ酸残基長のペプチドであって、X
5とX
6とが等しく、C(システイン)、Sec(セレノシステイン)およびPen(ペニシラミン)からなる群から選択されるペプチド、すなわち
【化8】
(d)16アミノ酸残基を有し、アミノ酸配列X
7NX
8KAPETALX
9AAAX
10Hを含み、X
7とX
9との間およびX
8とX
10との間にペプチド内ジスルフィド結合またはジセレニド結合を有するペプチドであって、X
7~X
10は、独立して、C(システイン)、Sec(セレノシステイン)およびPen(ペニシラミン)からなる群から選択され;但し、X
7とX
9とは等しく、X
8-X
10は等しいペプチド、すなわち
【化9】
ならびに(e)アミノ酸配列X
1KAPETALX
2を含むペプチドであって、X
1は、DapおよびDabからなる群から選択され、X
2は、D(アスパラギン酸)およびE(グルタミン酸)からなる群から選択される、ペプチド(配列番号7)
からなる群から選択されるペプチドのビラジカルであり;
Wは、-NH-(CH
2)
r-C(=O)-および-NH-CH((CH
2)
rNH
2)-C(=O)-からなる群から選択されるビラジカルであり;
Yは、-NH
2、-OH、-OR
3、および-NHR
3からなる群から選択される基であり、;
sは、独立して0~1から選択される整数であり;
nは、0~6の整数であり;
rは、独立して1~5から選択される整数であり;
kは、5~8の整数であり;
R
1およびR
2は、独立して、(C
1~C
6)-アルキルから選択され;
R
3は、(C
1~C
6)-アルキルからなる群から選択される基であり;
L
a´は、エステル、エーテル、ウレタン、シリルエーテル、スルホネート、ホスフェート、ケタール、ヘミケタール、カーボネートおよびカルバメート結合からなる群から選択される結合を介して基Zに結合し、該結合は、L
a´式の描画の左側のC=O、SO
2、Si、P、CHまたはCH
2基とSN38のヒドロキシル基の1つとの間に形成され;
n=0の場合、L
a´は、アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、エステル、およびチオエステルからなる群から選択される化学的に実現可能な結合を介してラジカルL
c´に結合し、該結合は、L
a´式の描画の右側の官能基とL
c´式の左側の官能基との間に形成され;
n=1の場合、L
a´は、アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、ジスルフィドエステル、およびチオエステルからなる群から選択される化学的に実現可能な結合を介してラジカルL
b´に結合し、該結合は、L
a´式の描画の右側の官能基とL
b´式の左側の官能基との間に形成され;L
b´は、アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、エステル、およびチオエステルからなる群から選択される化学的に実現可能な結合を介してラジカルL
c´に結合し、該結合は、L
b´式の描画の右側の官能基とL
c´式の描画の左側の官能基との間に形成され;
nが1より大きい場合、L
b´は、等しいかまたは異なり、アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、エステルおよびチオエステルからなる群から選択される化学的に実現可能な結合を介してそれらの間で結合し;一方のL
b´末端は、アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、エステル、およびチオエステルからなる群から選択される化学的に実現可能な結合を介してL
a´に結合し、該結合は、L
a´式の描画の右側の官能基とL
b´式の描画の左側の官能基との間に形成され;もう一方のL
b´末端は、アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、エステル、およびチオエステルからなる群から選択される化学的に実現可能な結合を介してL
c´に結合し、該結合は、L
b´式の描画の右側の官能基とL
c´式の描画の左側の官能基との間に形成され;
L
c´は、L
c´式の描画の右側のカルボニル基およびペプチド配列Pの第1のアミノ酸のアミノ基とで形成されたアミド結合を介してビラジカルPに結合し;
s=0の場合、Pは、アミド、カルボン酸またはエステル結合を介してYに直接結合し、該結合は、配列Pの最後のアミノ酸のC末端のC=Oと、-NH
2、-OH、-OR
3または-NHR
3である基Yとの間に形成され;
s=1の場合、Pは、配列Pの最後のアミノ酸のC末端のC=Oと形成されるアミド結合を介して基Wに結合し、該結合は、W式の描画の左側の官能基と、描画の配列の右側の配列Pの最後のアミノ酸のC末端の官能基(C=O)との間に形成され、Wは、-C(=O)-NH-(CH
2)
r-C(=O)-Y、または-C(=O)-NH-CH((CH
2)
rNH
2)-C(=O)-YのようにYに結合している)。
【請求項2】
Zが、医薬有効成分のヒドロキシル基(b)によってリンカーLに結合している、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
Zが、医薬有効成分のヒドロキシル基(a)によってリンカーLに結合している、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
Pが、
(a)DapとDとの間にアミド結合であるペプチド内結合を有するアミノ酸配列DapKAPETALDを含むペプチド、すなわち
【化10】
(b)ジスルフィド結合であり、システイン1と9との間に少なくともペプチド内ジスルフィド結合を有するCKAPETALCAAAであるアミノ酸配列を含む、ペプチド内結合を少なくとも有する9~20アミノ酸残基長のペプチド、すなわち
【化11】
(c)ジスルフィド結合であり、システイン1と9との間に少なくともペプチド内ジスルフィド結合を有するCKAPETALC;CKAPETALCA;およびCKAPETALCAAからなる群より選択されるアミノ酸配列からなるペプチド内結合を少なくとも有する9~11アミノ酸残基長のペプチド、すなわち、
【化12】
(d)16アミノ酸残基を有し、アミノ酸配列CNCKAPETALCAAACHを含み、システイン1および11である第1および第3のシステインの間、並びにシステイン3および15である第2および第4のシステインの間にペプチド内ジスルフィド結合を有するペプチド、すなわち、
【化13】
(e)アミノ酸配列DapKAPETALD(配列番号14)を含むペプチド
からなる群から選択されるペプチドのビラジカルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
Pが、
(a)アミノ酸配列DapKAPETALDを有するペプチドであって、DapとDとの間にアミド結合であるペプチド内結合を有するペプチド(配列番号7);
(b)1位および9位のシステイン間に少なくともペプチド内ジスルフィド結合を有するアミノ酸配列CKAPETALCを有するペプチド(配列番号10);
(c)アミノ酸配列DapKAPETALDを有するペプチド(配列番号14)
からなる群から選択されるペプチドのビラジカルである、請求項4に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
Pが、DapとDとの間にアミド結合であるペプチド内結合を有するペプチドDapKAPETALD(配列番号7)のビラジカルである、請求項5に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
L
a´が、-C(=O)-(CH
2)
r-C(=O)-、-C(=O)-(CH
2)
r-NH-、-C(=O)-(CH
2)
r-S-;-C(=O)-(CH
2)
r-O-;-C(=O)-NH-(CH
2)
r-C(=O)-;L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6、L
7およびL
12からなる群から選択されるビラジカルである、請求項1から6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
Lが、3~8個のビラジカルから構成されるビラジカルであるリンカーであり、nが1~6の整数である、請求項1~7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
L
a´が、下記式のL
3であり、L
c´が、-C(=O)-(CH
2)
r-C(=O)-である、請求項8に記載の化合物。
【化14】
【請求項10】
L
b´が、-NH-(CH
2)
r-O-、-(CH
2)
r-O-;および-(CH
2)
r-NH-、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
Lが、2つのビラジカルから構成されるビラジカルであるリンカーであり、n=0であり、L
a´がL
12であり、L
c´がL
13である、請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項12】
Lが、2つのビラジカルから構成されるビラジカルであるリンカーであり、n=0であり、L
a´が-C(=O)-NH-(CH
2)
r-C(=O)-であり、L
c´がL
15である、請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項13】
式(Ia)を有する、請求項1に記載の化合物。
【化15】
【請求項14】
式(Ib)を有する、請求項1に記載の化合物。
【化16】
【請求項15】
式(Ic)を有する、請求項1に記載の化合物。
【化17】
【請求項16】
式(Id)を有する、請求項1に記載の化合物。
【化18】
【請求項17】
式(Ie)を有する、請求項1に記載の化合物。
【化19】
【請求項18】
治療有効量の請求項1~17のいずれかに記載の化合物を、適切な量の薬学的に許容される担体または賦形剤と共に含む医薬組成物。
【請求項19】
医薬品として使用するための、請求項1~17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
ヒトを含む哺乳動物のがんの処置に使用するための、請求項1~17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
前記がん処置が、頭蓋外固形腫瘍、眼腫瘍およびCNS腫瘍からなる群から選択される腫瘍の処置を含む、請求項20に記載の使用のための化合物。
【請求項22】
前記がんが、成人神経膠腫、小児神経膠腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、DIPG、神経芽腫および横紋筋肉腫からなる群から選択される、請求項20または21に記載の使用のための化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月28日に出願された欧州特許出願EP20382854.6の利益を主張する。
【0002】
本発明は、抗がん剤であるSN38の送達系、それらの調製方法、およびそれらの治療適応症の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
がんは、動物およびヒトの両方の死を引き起こし得る腫瘍細胞の蓄積を特徴とする不均一な疾患である。がんまた、小児および青年の間の主要な疾患による死因の1つである。過去50年間にわたって、いくつかの種類のがん、特に小児がんの処置においてかなりの進歩があったが、他の種類に対する進歩は限られている。小児における腫瘍の年間発生率は、100万人当たり100~160症例である。15歳未満の子供500人に1人の年間リスクがある。この発生率は、先進国ではわずかに低い。脳および脊髄腫瘍は、全新生物の25%を占める(全小児固形腫瘍の40~50%)。進歩にもかかわらず、これらの患者の生存データは依然として低く、約55%である。これは、白血病または頭蓋外腫瘍に罹患した患者等の他のタイプの患者に見られる近年の実質的な生存の増加と対照的である。
【0004】
がんを処置する従来の方法には、外科的処置、化学療法剤の投与、および最近では、治療部分にコンジュゲートされ得る抗体または抗体フラグメントの投与を含む免疫応答に基づく治療が含まれる。しかしながら、今日まで、そのような処置の成功は限られている。
【0005】
植物由来の抗がん性化合物の4つの主要な構造分類の1つであるカンプトテシンは、ピロール(3,4β)キノリン部分を含有する五環式環構造、S配置ラクトン形態およびカルボキシレート形態からなる細胞傷害性アルカロイドである。イリノテカンは、中国の観賞木カンプトテカ・アクミナタ(Camptotheca acuminata)に見出される天然カンプトテシンから作製される。いくつかの種類のがんは、ある時点でイリノテカンで処置されており、そのうち、成人の場合は多形性神経膠芽細胞腫(GBM)、小児の場合はびまん性内在性橋神経膠腫(DIPG)、小児神経膠芽腫(pGBM)、神経芽腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫および網膜芽細胞腫である。
【0006】
神経膠腫は、脳または脊椎のグリア細胞で発生する腫瘍群であり、全脳腫瘍および中枢神経系腫瘍の約30%、ならびに全悪性脳腫瘍の80%を構成する。多くの場合、脳神経膠腫の処置は、手術、放射線療法および化学療法を用いた併用アプローチである。DIPGは主に小児、通常は5~7歳の小児に発症する。残念なことに、これは、60~70%を構成する脳幹腫瘍の大部分であり、すべての中で最も悪い予後を有するものである。有効な処置は示されておらず、平均生存期間は9ヶ月である。放射線照射およびステロイドの投与は、緩和効果を有し、非常に控え目に生存率を高める唯一の処置である。これまでのところ、有用な化学療法はなく、複数の臨床試験が試験されており、好ましい結果は得られていない。小児神経膠芽腫は、半球腫瘍の1/3を構成する別の腫瘍群である。これは、8年および12年にピーク発生率を有する。神経膠芽腫は成人患者にも影響を及ぼし、100.000人の集団あたり約2~3例である。
【0007】
ユーイング肉腫は、小児および青年における悪性骨腫瘍の第2の原因である。年間発生率は、人口100万人当たり0.6人である。5歳まではまれであり、ピーク発生率は10歳から15歳の間であり、女性よりも男性に多く影響を及ぼすが、性別におけるこの関係は年齢範囲によって異なる。開始するための最も一般的な場所は、骨盤(股関節)骨、胸壁(肋骨もしくは肩甲骨等)、または脚の骨の中央である。ユーイング肉腫はまた、骨損傷の非存在下で骨格外病変として存在し得る。この変異型では、リンパ拡散のリスクが高く、処置は通常横紋筋肉腫と同様である。
【0008】
軟部組織肉腫は横紋筋肉腫と非横紋筋肉腫とに分けられる。横紋筋肉腫は、小児の全軟部組織肉腫の50%を占める。これは、頻度が神経芽腫およびウィルムス腫瘍に続く第3の固形頭蓋外腫瘍である。年齢ピークは二峰性であり、最初のピークは2~5歳の間であり、2番目のピークは15~19歳の間の青年期である。成人の肉腫は主に四肢に発生するが、小児では骨格筋および軟部組織の両方で、体内の任意の位置に発生し得る。小児における最も影響を受ける領域は、頭頸部および泌尿生殖路である。四肢は患者の20%において影響を受ける。腫瘍を完全に切除することができる位置に腫瘍が見られる場合を除いて、全生存期間は不良であり、四肢切断または排尿を必要とすることがある。生存率は、場所によって7~70%と異なる。
【0009】
神経芽腫は、小児の最も一般的な頭蓋外固形腫瘍である。その胚起源のために、神経芽腫は実質的に交感神経系の任意の部分に見出すことができるが、局所領域疾患の最も一般的な局在は副腎上にある(44%)。診断時の年齢が1.5歳~6歳の小児は依然として従来の処置で治癒することができるが、転移性疾患(ステージ4神経芽腫)と診断された場合、生存確率が低下する。新たに診断された患者の約50%は、骨への転移(60%)、骨髄への転移(50%)、リンパ節への転移(42%)および/または肝臓への転移(15%)を既に示し、集中的な化学療法処置、外科手術および放射線療法を必要とするが、それらの生存率は依然として低く、過去数十年にわたって進歩はほとんどない。
【0010】
最後に、網膜芽細胞腫は、小児における眼腫瘍の最も一般的な原因であり、全世界的な発生率は出生20,000人に1人である。これは、典型的には、生後2年以内に起こる。30~40%は両側性であり、これらの場合、常に陽性の家族歴がある。片側のうち10%が、13番染色体に位置するRb遺伝子の生殖系列突然変異を有する。早期に検出された場合、それらは95%の生存率を有する。世界のある特定の地域では、診断が遅れると、生存率は20%未満まで劇的に低下する。処置は、達成される腫瘍制御に依存する。腫瘍退縮が化学療法および近接照射療法によって制御されない場合、摘出が推奨される。摘出が行われたとしても、場合によっては、視神経への腫瘍浸潤があり、これにより追加の化学療法処置が強制される。
【0011】
イリノテカンの有効性は、低い変換率、高い患者間変動性および用量制限的胃腸毒性をもたらすその肝臓活性化によって制限されることが証明されている。
SN38は、イリノテカンの活性代謝産物であり、肝臓カルボキシルエステラーゼによるイリノテカンの加水分解を介して形成され、UGT1A1によるグルクロン酸化を介して代謝される。これは以下の式を有する。
【化1】
【0012】
その発見以来、その強力な抗新生物効果のためにあらゆる科学者の注目を集めている。SN38は、イリノテカン自体よりも1000倍高い活性を有し、イリノテカンよりも同じ種類のがんを処置するために使用することができる。インビトロ細胞傷害性アッセイは、イリノテカンに対するSN38の効力が2倍~2000倍変動することを示す。それでも、SN38は、化学的、薬理学的および毒性レベルにおいても有意な制限を有する。化学的レベルでは、水に可溶性であるイリノテカンとは異なり、SN38は水、ならびにほとんどの溶媒および油に実質的に不溶性であり、したがってSN38を患者に投与することは実行不可能である。多くの溶媒が試験されており、ジメチルスルホキシド、ギ酸およびTranscutol(登録商標)HP、ならびにNaOH 0.1MでSN38を0.5%で可溶化することしかできないが、このNaOH 0.1M水溶液の塩基性pHはSN38を不活性化する。高い親油性特性および薬物の水溶液中でのその不安定性は、極性非プロトン性溶媒で投与することを必要とし、これに伴う全ての不都合が生じる。さらに、第2の問題は、末端ラクトン環の存在であり、これが水溶液中で不安定にし、非酵素的かつpH依存的な加水分解を生じて、トポイソメラーゼの阻害に強力ではないヒドロカルボン酸環を形成する。したがって、中性または塩基性pHでは、バランスはより活性の低い種にシフトし、より酸性のpHでは、ラクトンの形成が有利であり。阻害力がより大きい。薬物はまた、位置20に不斉炭素を含有し、S型は薬理学的に活性な立体配置である。
【0013】
薬物の好ましくない特徴を考慮し、いくつかの研究は、不溶性の問題を解決し、したがって強力な作用機構を利用するために、プロドラッグとしてのSN38の製剤へとつながった。プロドラッグの使用の代わりに薬物を放出するために、いくつかのコンジュゲート戦略がSN38に適用されている。
【0014】
それらのいくつかは、可溶性コンジュゲートからのSN38の遅い放出に基づいており、例えば、特許文献1は、溶解性を改善するためのポリ(エチレングリコール)と多アームPEGとのコンジュゲーションを提案しており、これはエステル加水分解によりSN38を放出する。しかしながら、これらのコンジュゲートは、有効であるためには高レベルで投与されなければならない。
【0015】
特許文献2は、低用量および長期曝露レジームを可能にするために、低速でβ脱離機構を介してポリエチレングリコールからSN38を放出するいくつかのコンジュゲートを開示している。
【0016】
F.Koizumiらは、非特許文献1において、前臨床試験においてイリノテカンを凌駕した自己集合ナノ粒子(NP)からのSN38に化学的にコンジュゲートさせたポリ(エチレングリコール)-ポリ(グルタミン酸)ブロックコポリマーを開示している。
【0017】
他のコンジュゲート戦略は、例えば、肝臓活性化を迂回し、イリノテカンと比較して胃腸毒性および患者間変動性を低減するためのペプチド性コンジュゲートの使用に基づいている。
【0018】
したがって、F Meyer-Losicらは、非特許文献2において、エステラーゼ切断可能リンカーを介してカチオン性ペプチド(Vectocell)にSN38をコンジュゲートさせて、イリノテカンの関連する毒性なしに、イリノテカンよりも有意に高いレベルのSN38を送達し、前臨床モデルにおいてDTS-108の治療域を増加させることを提案している。
【0019】
特許文献3は、ヒトHCT-116細胞株に対して有意な抗腫瘍活性を有することが示されているコンジュゲートDPV1047-MIC-SN38(DPV-1047はペプチドVKRGLKLRHVRPRVTRMDVであり;MICは6-マレイミドヘキサン酸残基であり;SN38は7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンである)等のチオエーテル結合によるリンカーを介したカンプトテシン細胞透過性ペプチドコンジュゲートの調製を開示している。
【0020】
最後に、特許文献4は、腫瘍-血管標的化抗腫瘍剤、IF7-SN38の合成を開示しており、抗腫瘍剤は、リンカー4-{4-[(N-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキサミド]メチル}シクロヘキサン-1-カルボン酸を介して抗がん剤(SN38)にコンジュゲートした配列IFLLWQR(IF7)を有するアネキシン-1結合ペプチドを含む。
【0021】
この化合物は、脳腫瘍を標的とし、受動的トランスサイトーシス機構によって血液脳関門を克服する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第8299089号明細書
【特許文献2】国際公開第2015/051307号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2007/113687号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2018/064683号パンフレット
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】“Novel SN38-incorporating polymeric micelles,NK012,eradicate vascular endothelial growth factor-secreting bulky tumors”,Cancer Res 2006,vol.66(20)pp.10048-56
【非特許文献2】“DTS-108,A novel Peptidic prodrug of SN38:In vivo Efficacy and Toxicokinetic Studies”,Clinical Cancer Research 2008,vol.14,issue 7,pp.2145-2153
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
がんの処置のためのSN38の適切な投与およびバイオアベイラビリティを可能にするためのSN38のコンジュゲートを提供する努力にもかかわらず、SN38を効率的に投与するための改善されたシステムを見出すという、満たされていない医学的必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者らは、SN38と、特定の種類のリンカーを介してSN38に結合し、SN38と同様に脳がんおよび頭蓋外がん由来のいくつかの細胞株に対して抗腫瘍活性を維持するペプチドの特定の群とのコンジュゲートを開発した。SN38の新たなコンジュゲートは水への高い溶解度を示し、実質的に不溶性であるSN38とは異なり、そのような溶解度のために患者に投与することができた。SN38の新たなコンジュゲートの活性は、インビトロでのイリノテカンの活性よりもはるかに高い。有利には、それらはインビトロで、ヒト血清中で良好な安定性を示す。
【0026】
コンジュゲートの一部を形成するペプチドは公知であり、WO2015/001015A1において以前に説明された。この文献は、これらのペプチドが血液脳関門(BBB)を通過する能力を有し、それ自体ではBBBを通過することができないカーゴ、特にタンパク質および抗体等の大きなカーゴを輸送する能力を有することを開示している。それらは、BBBを横断するために能動輸送機構を使用する。B.Ollerらは、´´MiniAp-4:A Venom-Inspired Peptidomimetic for Brain Delivery´´,Angew Chem Int Ed 2016,vol.55,pp.572-575において、ペプチドDapKAPETALDに焦点を当て、それがプロテアーゼに耐性であり、ヒト細胞ベースのモデルにおいて、およびインビボでも血液脳関門を横切って多様なカーゴを効率的に送達することができることを開示した。
【0027】
本発明者らは、SN38の場合、WO2015/001015A1に開示されているもののある特定のペプチドおよび上記文献に開示されているリンカーよりも大きい特定のサイズのリンカーとのコンジュゲーションによって、抗腫瘍活性の良好な結果が得られることを見出した。これらのコンジュゲートは、SN38と同様の抗腫瘍活性を維持することができ、イリノテカンのインビトロ活性よりも最大100倍優れているため、他のコンジュゲートに対して有利である。
【0028】
実験の項で提供される比較データは、SN38が同じリンカーを介して別のペプチド(THRre)にコンジュゲートされた場合、抗腫瘍活性の一部/全部が失われ(本発明の実施例7および比較例1)、本発明のリンカーとは異なるリンカーも使用された場合(比較例2)、結果はさらに悪いことを示している。
【0029】
したがって、本発明の第1の態様は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩に関し、
(Z)-(L)-P-(W)
s-(Y)
(I)
式中、Zは、医薬活性成分SN38またはその薬学的に許容される塩の基であり、医薬活性成分SN38は式(II)を有し、Zは、医薬活性成分の2つのヒドロキシル基(a)または(b)の1つのみによって独立してリンカーLに結合しており;
【化2】
Lは、2~8個のビラジカルL´から構成されるビラジカルであり、式:
-L´
a-(L´
b)
n-L´
c;
を有するリンカーであり;
L
a´は、-C(=O)-(CH
2)
r-C(=O)-;-C(=O)-(CH
2)
r-NH-;-C(=O)-(CH
2)
r-S-;-C(=O)-(CH
2)
r-O-;-C(=O)-NH-(CH
2)
r-C(=O)-;-C(=O)-NH-(CH
2)
r-NH-;-C(=O)-NH-(CH
2)
r-S-;-C(=O)-NH-(CH
2)r-O-;-(CH
2)r-C(=O)-;-(CH
2)r-NH-;-(CH
2)r-S-;-(CH
2)
r-O-;-Si(R
1)(R
2)-(CH
2)
r-NH-;-Si(R
1)(R
2)-(CH
2)
r-C(=O)-;-Si(R
1)(R
2)-(CH
2)
r-O-;-Si(R
1)(R
2)-(CH
2)
r-S-;-SO
2-(CH
2)
r-NH-;-SO
2-(CH
2)
r-C(=O)-;-SO
2-(CH
2)
r-O-;-SO
2-(CH
2)
r-S-;-P(=O)(OR
1)-O-(CH
2)
r-NH-;-P(=O)(OR
1)-O-(CH
2)
r-C(=O)-;-P(=O)(OR
1)-O-(CH
2)
r-O-;-P(=O)(OR
1)-O-(CH
2)
r-S-;-CH(OH)-(CH
2)
r-NH-;-CH(OH)-(CH
2)
r-C(=O)-;-CH(OH)-(CH
2)
r-O-;-CH(OH)-(CH
2)
r-S-;
【化3】
からなる群から選択されるビラジカルであり、L
8~L
11のいずれかにおける置換基は、環の任意の位置にあり;
【化4】
L
b´は、独立して、-NH-(CH
2)
r-C(=O)-;-C(=O)-(CH
2)
r-C(=O)-;-S-(CH
2)
r-C(=O)-;-O-(CH
2)
r-C(=O)-;-NH-(CH
2)
r-;-C(=O)-(CH
2)
r-;-S-(CH
2)
r-;-O-(CH
2)
r-;-NH-CH-((CH
2)
rNH
2)-C(=O)-;-S-CH
2-CH(NH
2)-C(=O)-;-(CH
2)
r-C(=O)-;-(CH
2)
r-O-;-(CH
2)
r-NH-;-(CH
2)
r-S-;-C(=O)-(CH
2)
r-NH-;-C(=O)-(CH
2)
r-O-;-C(=O)-(CH
2)
r-S-;-NH-(CH
2)
r-O-;-NH-(CH
2)
r-NH-;-NH-(CH
2)
r-S-;L
1;L
2;L
3;L
4;およびそれらの組合せ;
からなる群から選択されるビラジカルであり;
L
c´は、-NH-(CH
2)
r-C(=O)-;-NH-CH-((CH
2)
rNH
2)-C(=O)-;-C(=O)-(CH
2)
r-C(=O)-;-S-(CH
2)
r-C(=O)-;-S-CH
2-CH(NH
2)-C(=O)-;-O-(CH
2)
r-C(=O)-;-(CH
2)
r-C(=O)-;L
1、L
2;L
3;L
4;
【化5】
からなる群から選択されるビラジカルであり;
Pは、(a)アミド結合であるX
1とX
2との間のペプチド内結合を有するアミノ酸配列X
1KAPETALX
2を含むペプチドであって、X
1は、Dap(2,3-ジアミノプロピオン酸)およびDab(2,4-ジアミノブタン酸)からなる群から選択され、X
2は、D(アスパラギン酸)およびE(グルタミン酸)からなる群から選択されるペプチド;すなわち
【化6】
(アミノ酸Dapについては、コードDapおよびDprが本明細書において等しく使用される);
(b)ジスルフィド結合またはジセレニド結合であり、X
3KAPETALX
4AAAであるアミノ酸配列を含むペプチド内結合を少なくとも有する12~20アミノ酸残基長のペプチドであって;X
3とX
4との間に少なくともペプチド内ジスルフィド結合またはジセレニド結合を有し、X
3とX
4とが等しく、C(システイン)、Sec(セレノシステイン)、およびPen(ペニシラミン)からなる群から選択されるペプチド;すなわち
【化7】
(c)ジスルフィド結合又はジセレニド結合であり、X
5とX
6との間に少なくともペプチド内ジスルフィド結合またはジセレニド結合を有するX
5KAPETALX
6;X
5KAPETALX
6A;およびX
5KAPETALX
6AAからなる群から選択されるアミノ酸配列からなるペプチド内結合を少なくとも有する9~11アミノ酸残基長のペプチドであって、X
5とX
6とが等しく、C(システイン)、Sec(セレノシステイン)およびPen(ペニシラミン)からなる群から選択されるペプチド、すなわち
【化8】
(d)16アミノ酸残基を有し、アミノ酸配列X
7NX
8KAPETALX
9AAAX
10Hを含み、X
7とX
9との間およびX
8とX
10との間にペプチド内ジスルフィド結合またはジセレニド結合を有するペプチドであって、X
7~X
10は、独立して、C(システイン)、Sec(セレノシステイン)およびPen(ペニシラミン)からなる群から選択され;但し、X
7とX
9とは等しく、X
8-X
10は等しいペプチド;すなわち
【化9】
ならびに(e)アミノ酸配列X
1KAPETALX
2を含むペプチドであって、X
1は、DapおよびDabからなる群から選択され、X
2は、D(アスパラギン酸)およびE(グルタミン酸)からなる群から選択される、ペプチド(配列番号7)、すなわち直鎖ペプチド
からなる群から選択されるペプチドのビラジカルであり;
Wは、-NH-(CH
2)
r-C(=O)-および-NH-CH((CH
2)
rNH
2)-C(=O)-からなる群から選択されるビラジカルであり、;Yは、-NH
2、-OH、-OR
3、および-NHR
3からなる群から選択される基であり;
sは、独立して0~1から選択される整数であり;nは、0~6の整数であり;rは、独立して1~5から選択される整数であり;kは、5~8の整数であり;R
1およびR
2は、独立して、(C
1~C
6)-アルキルから選択され;R
3は、(C
1~C
6)-アルキルからなる群から選択される基であり;
L
a´は、エステル、エーテル、ウレタン、シリルエーテル、スルホネート、ホスフェート、ケタール、ヘミケタール、カーボネートおよびカルバメート結合からなる群から選択される結合を介して基Zに結合し、結合は、L
a´式の描画の左側のC=O、SO
2、Si、P、CHまたはCH
2基とSN38のヒドロキシル基の1つとの間に形成され;
n=0の場合、L
a´は、アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、エステル、およびチオエステルからなる群から選択される化学的に実現可能な結合を介してラジカルL
c´に結合し、結合は、L
a´式の描画の右側の官能基とL
c´式の左側の官能基との間に形成され;
n=1の場合、L
a´は、アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、エステル、およびチオエステルからなる群から選択される化学的に実現可能な結合を介してラジカルL
b´に結合し、結合は、L
a´式の描画の右側の官能基とL
b´式の左側の官能基との間に形成され;L
b´は、アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、エステル、およびチオエステルからなる群から選択される化学的に実現可能な結合を介してラジカルL
c´に結合し、結合は、L
b´式の描画の右側の官能基とL
c´式の描画の左側の官能基との間に形成され;
nが1より大きい場合、L
b´は、等しいかまたは異なり、アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、エステルおよびチオエステルからなる群から選択される化学的に実現可能な結合を介してそれらの間で結合し;1つのL
b´末端は、アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、エステル、およびチオエステルからなる群から選択される化学的に実現可能な結合を介してL
a´に結合し、結合は、L
a´式の描画の右側の官能基とL
b´式の描画の左側の官能基との間に形成され;別のL
b´末端は、アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、エステル、およびチオエステルからなる群から選択される化学的に実現可能な結合を介してL
c´に結合し、結合は、L
b´式の描画の右側の官能基とL
c´式の描画の左側の官能基との間に形成され;
L
c´は、L
c´式の描画の右側のカルボニル基およびペプチド配列Pの第1のアミノ酸のアミノ基と形成されたアミド結合を介してビラジカルPに結合し;
s=0の場合、Pは、アミド、カルボン酸またはエステル結合を介してYに直接結合し、結合は、配列Pの最後のアミノ酸のC末端のC=Oと、-NH
2、-OH、-OR
3または-NHR
3である基Yとの間に形成され;
s=1の場合、Pは、配列Pの最後のアミノ酸のC末端のC=Oと形成されるアミド結合を介して基Wに結合し、結合は、W式の描画の左側の官能基と、描画の配列の右側の配列Pの最後のアミノ酸のC末端の官能基(C=O)との間に形成され、Wは、-C(=O)-NH-(CH
2)
r-C(=O)-Y、または-C(=O)-NH-CH((CH
2)
rNH
2)-C(=O)-YのようにYに結合している。
【0030】
上記または下記の配列の2つのアミノ酸間の線は、2つのアミノ酸の側鎖間のペプチド内結合を表す。特定の実施形態において、上記または下記の配列の2つのアミノ酸間の線は、2つのアミノ酸の側鎖間のペプチド内結合を表す。
【0031】
本発明の第2の態様は、治療有効量の上記に定義される化合物を、適切な量の薬学的に許容される担体または賦形剤と共に含む医薬組成物に関する。
【0032】
本発明の第3の態様は、医薬品として使用するための上記に定義される化合物に関する。
【0033】
本発明の第4の態様は、ヒトを含む哺乳動物のがんの処置に使用するための上記化合物に関する。
【0034】
本発明の第5の態様は、がんの処置に使用するための式(I)の化合物に関し、式(I)の化合物は、化学療法剤との併用療法および/またはカルボキシルエステラーゼ阻害剤との併用で使用するためのものである。
【0035】
化合物(Ia)は、G2B-001またはSN38-リンカーA-MiniAp4とも呼ばれる。これらの名称は、本明細書では等しく使用される。化合物(Ib)は、G2B-001直系とも呼ばれる。化合物(Ic)は、G2B-003とも呼ばれる。化合物(Id)は、G2B-004とも呼ばれる。化合物(Ie)は、G2B-005とも呼ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】成人神経膠腫U87のがん細胞株に対する、本明細書においてG2B-001またはSN38-リンカーA-MiniAp4とも呼ばれる化合物(Ia)(実施例7)ならびに関連化合物SN38およびイリノテカンの比較抗増殖活性を示す図である。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での3~6回の反復からの平均およびSDを表す。MiniAp4は、DapとDとの間にアミドのペプチド内結合を有するDapKAPETALDである。
【
図2】成人神経膠腫U373のがん細胞株に対する、SN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)ならびに関連化合物SN38およびイリノテカンの比較抗増殖活性を示す図である。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での3~6回の反復からの平均およびSDを表す。
【
図3】DIPG細胞モデルHSJD-DIPG-007に対する、SN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)ならびに関連化合物SN38およびイリノテカンの比較抗増殖活性を示す図である。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での3~6回の反復からの平均およびSDを表す。
【
図4】DIPGモデルHSJD-DIPG-011に対する、SN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)ならびに関連化合物SN38およびイリノテカンの比較抗増殖活性を示す図である。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での3~6回の反復からの平均およびSDを表す。
【
図5】小児高悪性度神経膠腫モデルHSJD-GBM-001に対する、SN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)ならびに関連化合物SN38およびイリノテカンの比較抗増殖活性を示す図である。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での3~6回の反復からの平均およびSDを表す。
【
図6】網膜芽細胞腫細胞モデルHSJD-RBT-5に対する、SN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)ならびに関連化合物SN38およびイリノテカンの比較抗増殖活性を示す図である。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での3~6回の反復からの平均およびSDを表す。
【
図7】網膜芽細胞腫細胞モデルHSJD-RBT-7に対する、SN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)ならびに関連化合物SN38およびイリノテカンの比較抗増殖活性を示す図である。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での3~6回の反復からの平均およびSDを表す。
【
図8】網膜芽細胞腫細胞モデルHSJD-RBT-14に対する、SN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)ならびに関連化合物SN38およびイリノテカンの比較抗増殖活性を示す図である。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での3~6回の反復からの平均およびSDを表す。
【
図9】ユーイング肉腫細胞株A673に対する、SN38リンカーA-MiniAp 4(Ia)ならびに関連化合物SN38およびイリノテカンの比較抗増殖活性を示す図である。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での3~6回の反復からの平均およびSDを表す。
【
図10】横紋筋肉腫細胞株Rdに対する、SN38リンカーA-MiniAp4(Ia)ならびに関連化合物SN38およびイリノテカンの比較抗増殖活性を示す図である。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での3~6回の反復からの平均およびSDを表す。
【
図11】横紋筋肉腫細胞株RH4に対する、SN38リンカーA-MiniAp4(Ia)ならびに関連化合物SN38およびイリノテカンの比較抗増殖活性を示す図である。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での3~6回の反復からの平均およびSDを表す。
【
図12】神経芽腫細胞株LAN-1に対する、SN38リンカーA-MiniAp4(Ia)ならびに関連化合物SN38およびイリノテカンの比較抗増殖活性を示す図である。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での3~6回の反復からの平均およびSDを表す。
【
図13】神経芽腫細胞株Sk-N-JDに対する、SN38リンカーA-MiniAp4(Ia)ならびに関連化合物SN38およびイリノテカンの比較抗増殖活性を示す図である。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での3~6回の反復からの平均およびSDを表す。
【
図14】神経芽腫細胞モデルHSJD-NB-004に対する、SN38リンカーA-MiniAp4(Ia)ならびに関連化合物SN38およびイリノテカンの比較抗増殖活性を示す図である。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での3~6回の反復からの平均およびSDを表す。
【
図15】神経芽腫細胞モデルHSJD-NB-005に対する、SN38リンカーA-MiniAp4(Ia)ならびに関連化合物SN38およびイリノテカンの比較抗増殖活性を示す図である。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での3~6回の反復からの平均およびSDを表す。
【
図16】神経芽腫細胞モデルHSJD-NB-016に対する、SN38リンカーA-MiniAp4(Ia)ならびに関連化合物SN38およびイリノテカンの比較抗増殖活性を示す図である。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での3~6回の反復からの平均およびSDを表す。
【
図17】腫瘍細胞増殖の50%を阻害するSN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)薬物濃度(IC50値)の培養物間の比較を示す図である。個々のデータ(点)が示されている。統計:反復測定(対応あり)2元配置ANOVA、Tukey多重比較検定。
【
図18】0日目に1回の静脈内注射により200mg/kgのMTDでSN38-リンカーA-MiniAp4化合物(Ia)で処置された3匹のマウス(処置)、および0日目に生理食塩水を静脈内注射された2匹の対照マウス(対照)の個々の体重曲線を示す図である。
【
図19】実施例10に詳述されているように、イリノテカン、SN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)または生理食塩水(対照)で処置されたマウスの、最大個体体重からの体重減少%として表される平均体重変動を示す図である。平均データ(点)およびSD(バー)が示されている。
【
図20】細胞株HSJD-DIPG-007に対するSN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)および比較例2(SN38-リンカーB-THRre)の比較抗増殖活性を示す図である。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での6回の反復からの平均およびSDを表す。
【
図21】細胞株HSJD-GBM-001に対するSN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)および比較例2(SN38-リンカーB-THRre)の比較抗増殖活性を示す図である。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での6回の反復からの平均およびSDを表す。
【
図22】細胞株HSJD-DIPG-007に対するSN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)、比較例1(SN38-リンカーA-THRre)および比較例2(SN38-リンカーB-THRre)の比較抗増殖活性を示す図である。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での6回の反復からの平均およびSDを表す。
【
図23】細胞株HSJD-GBM-001に対するSN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)、比較例1(SN38-リンカーA-THRre)および比較例2(SN38-リンカーB-THRre)の比較抗増殖活性を示す図である。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での6回の反復からの平均およびSDを表す。
【
図24】時間に対するインビトロでの37℃でのヒト血清中のSN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)の安定性を示す図である。
【
図25】時間に対するインビトロでの37℃でのラット、マウス、イヌおよびヒト血漿中のSN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)の安定性を示す図である。
【
図26】時間に対するインビトロでの37℃でのヒト血清中のG2B-001直系(Ib)の安定性を示す図である。
【
図27】DIPG細胞モデルHSJD-DIPG-007に対する、G2B-001直系(Ib)、G2B-001(Ia)および関連化合物SN38の比較抗増殖活性を示す。値は、100%とみなされる対照未処理細胞のMTSシグナルの%として表される。点の値は、化合物濃度での3~6回の反復からの平均およびSDを表す。
【
図28】イリノテカン(黒点)、G2B-003(Ic)(実線)または生理食塩水対照(破線)のいずれかで処置された3匹のマウスにおける皮下神経芽腫腫瘍体積(2つの腫瘍の平均およびSD)を示す図である。腫瘍モデルは、HSJD-NB-013と命名された患者由来異種移植片であった。
【発明の詳細な説明】
【0037】
特に明記しない限り、本明細書で引用されるアミノ酸は、L-アミノ酸である。1文字コードおよび3文字コードは、区別なく使用されている。以下のアミノ酸について、以下の略語が使用されている:ジアミノプロピオン酸(Dap)、ジアミノ酪酸(Dab)、セレノシステイン(Sec)およびペニシラミン(Pen)。本発明の文脈において、ペニシラミンは、D-ペニシラミンのみを包含する。
【0038】
上述の本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形態であってもよい。本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、無機または有機の酸または塩基を含む薬学的に許容される非毒性の酸または塩基から形成される任意の塩を包含する。治療目的で使用される場合、薬学的に許容されなければならないことを除いて、塩に関する制限はない。
【0039】
式(I)の化合物のいくつかは塩基性化合物であるため、塩は、無機酸および有機酸を含む薬学的に許容される非毒性の酸から調製され得る。そのような酸には、例えば、塩化水素酸、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸などが含まれる。
【0040】
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、Zが医薬有効成分のヒドロキシル基(b)によってリンカーLに結合している化合物である。
【0041】
別の実施形態において、式(I)の化合物は、Zが医薬有効成分のヒドロキシル基(a)によってリンカーLに結合している化合物である。
【0042】
別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、Pが以下からなる群から選択されるペプチドのビラジカルである化合物である:(a)アミド結合であるDapとDとの間のペプチド内結合を有するアミノ酸配列DapKAPETALDを含むペプチド、すなわち
【化10】
(b)ジスルフィド結合であり、システイン1と9との間に少なくともペプチド内ジスルフィド結合を有するCKAPETALCAAAであるアミノ酸配列を含むペプチド内結合を少なくとも有する9~20アミノ酸残基長のペプチド、すなわち、
【化11】
(c)ジスルフィド結合であり、システイン1と9との間に少なくともペプチド内ジスルフィド結合を有するCKAPETALC;CKAPETALCA;およびCKAPETALCAAからなる群より選択されるアミノ酸配列からなるペプチド内結合を少なくとも有する9~11アミノ酸残基長のペプチド、すなわち、
【化12】
(d)16アミノ酸残基を有し、アミノ酸配列CNCKAPETALCAAACHを含み、システイン1および11である第1および第3のシステインの間、並びにシステイン3および15である第2および第4のシステインの間にペプチド内ジスルフィド結合を有するペプチド、すなわち、
【化13】
【0043】
X1~X10について特定のアミノ酸が選択された配列番号8~配列番号13では、特定のペプチド内結合がその配列に描かれている。
【0044】
別の特定の実施形態において、本発明のペプチドにおける少なくとも1つのペプチド内結合は、1つのペプチド内結合である。別の特定の実施形態において、本発明のペプチドにおける少なくとも1つのペプチド内結合は、2つのペプチド内結合を指す。
【0045】
別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、PがペプチドDapKAPETALD(配列番号14)、すなわち直鎖ペプチドのビラジカルである化合物である。
【0046】
特定の実施形態において、上記または下記の特定の実施形態のいずれかと組み合わせて、式(I)の化合物は、Pが、(a)アミノ酸配列DapKAPETALDを含むペプチドであって、DapとDとの間にアミド結合であるペプチド内結合(MiniAp4とも呼ばれる)を有するペプチド(配列番号8)、ならびに(b)1位および9位のシステイン間に少なくともペプチド内ジスルフィド結合を有するCKAPETALC(配列番号10)からなる群から選択されるペプチドのビラジカルである化合物である。
【0047】
別の特定の実施形態において、上記または下記の特定の実施形態のいずれかと組み合わせて、式(I)の化合物は、Pが、アミド結合であるDapとDとの間のペプチド内結合を有するペプチドDapKAPETALD(配列番号8)のビラジカルである化合物である。
【0048】
別の特定の実施形態において、上記または下記の特定の実施形態のいずれかと組み合せて、式(I)の化合物は、La´が、-C(=O)-(CH2)r-C(=O)-、-C(=O)-(CH2)r-NH-、-C(=O)-(CH2)r-S-;-C(=O)-(CH2)r-O-;-C(=O)-NH-(CH2)r-C(=O)-;L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7およびL12からなる群から選択されるビラジカルである化合物である。
【0049】
別の特定の実施形態において、上記または下記の特定の実施形態のいずれかと組み合せて、式(I)の化合物は、La´が、-C(=O)-(CH2)r-C(=O)-、-C(=O)-(CH2)r-NH-、-C(=O)-(CH2)r-S-;-C(=O)-(CH2)r-O-;L1、L2、L3、L4、L5、L6、およびL7からなる群から選択されるビラジカルである化合物である。
【0050】
別の特定の実施形態において、上記または下記の特定の実施形態のいずれかと組み合わせて、式(I)の化合物は、Lが、3~8個のビラジカルから構成されるビラジカルであるリンカーであり、nが1~6の整数である化合物である。別の特定の実施形態において、上記または下記の特定の実施形態のいずれかと組み合わせて、式(I)の化合物は、Lが5~8個のビラジカルから構成されるビラジカルであるリンカーである化合物である。別の特定の実施形態において、上記または下記の特定の実施形態のいずれかと組み合わせて、式(I)の化合物は、Lが、6~8個のビラジカルから構成されるビラジカルであるリンカーである化合物である。別の特定の実施形態において、上記または下記の特定の実施形態のいずれかと組み合わせて、式(I)の化合物は、Lが、6~7個のビラジカルから構成されるビラジカルであるリンカーである化合物である。
【0051】
別の特定の実施形態において、上記または下記の特定の実施形態のいずれかと組み合わせて、式(I)の化合物は、Lが、6個のビラジカルから構成されるビラジカルであるリンカーである化合物である。
【0052】
別の特定の実施形態において、上記または下記の特定の実施形態のいずれかと組み合わせて、式(I)の化合物は、La´がL3であり、Lc´が-C(=O)-(CH2)r-C(=O)-である化合物である。別のより特定の実施形態において、式(I)の化合物は、La´がL3であり、Lb´が、-NH-(CH2)r-O-、-(CH2)r-O-;および-(CH2)r-NH-ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され;Lc´が-C(=O)-(CH2)r-C(=O)-である化合物である。
【0053】
別の特定の実施形態において、上記または下記の特定の実施形態のいずれかと組み合わせて、式(I)の化合物は、Lが、2個のビラジカルから構成されるビラジカルであるリンカーであり、n=0である化合物である。
【0054】
別の特定の実施形態において、上記または下記の特定の実施形態のいずれかと組み合わせて、式(I)の化合物は、La´がL12であり、Lc´がL13である化合物である。
【0055】
別の特定の実施形態において、上記または下記の特定の実施形態のいずれかと組み合わせて、式(I)の化合物は、La´が-C(=O)-NH-(CH2)r-C(=O)-であり、Lc´がL15である化合物である。
【0056】
別の特定の実施形態において、上記または下記の特定の実施形態のいずれかと組み合わせて、式(I)の化合物は、La´が、La´式の描画の左側のC=O基と形成されたエステル結合である結合を介して基Zに、および式の描画の右側の官能基と形成されたアミン、アミド、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、エステル、およびチオエステルからなる群から選択される化学的に実行可能な結合を介して基Lb´に結合している化合物である。
【0057】
別の特定の実施形態において、上記または下記の特定の実施形態のいずれかと組み合わせて、式(I)の化合物は、La´が、La´式の描画の左側のC=O基と形成されたエステル結合である結合を介して基Zに、および式の描画の右側の官能基と形成されたアミド結合である化学的に実行可能な結合を介して基Lb´に結合している化合物である。
【0058】
別の特定の実施形態において、上記または下記の特定の実施形態のいずれかと組み合わせて、式(I)の化合物は、La´が、La´式の描画の左側のC=O基と形成されたカーボネートまたはカルバメート結合である結合を介して基Zに、および式の描画の右側の官能基と形成されたアミド結合(NH-COまたはCO-NH)である化学的に実行可能な結合を介して基Lb´に結合している化合物である。
【0059】
別の特定の実施形態において、上記または下記の特定の実施形態のいずれかと組み合わせて、式(I)の化合物は、Lb´が、描かれたLb´式の左側の官能基と共にラジカルLa´と化学的に実行可能な結合を形成する化合物であり;Lb´は、描かれたLb´式の右側の官能基と形成されたアミン、アミド、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、エステル、およびチオエステルからなる群から選択される化学的に実行可能な結合を介してラジカルLc´に結合し;nが1より大きい場合、Lb´は等しいかまたは異なり、アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、ジスルフィドエステルおよびチオエステルからなる群から選択される化学的に実現可能な結合を介してそれらの間で結合し;一方のLb´末端はLa´に結合し、他方のLb´末端はLc´に結合している。
【0060】
別の特定の実施形態において、上記または下記の特定の実施形態のいずれかと組み合わせて、式(I)の化合物は、Lc´が、描かれたLc´式の右側のカルボニル基、およびペプチド配列Pの第1のアミノ酸のアミノ基と形成されたアミド結合を介してビラジカルPに、および式の描画の左側の官能基と形成されたアミン、アミド、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、エステル、およびチオエステルからなる群から選択される化学的に実行可能な結合を介して基Lb´に結合している化合物である。
【0061】
別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、以下の式(Ia)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式(I)中、Pは、DapとDとの間のペプチド内結合を有するMiniAp4=DapKAPETALDであり、Y=CONH
2、W=0であり、リンカーは、以下のリンカーAであり、SN38は、ヒドロキシル(b)によってリンカーに結合している。
【化14】
【0062】
この化合物は、SN38-リンカーA-MiniAp4とも呼ばれる。
【0063】
別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、以下の式(Ib)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式(I)中、Pは、DapとDとの間のペプチド内結合を有さないMiniAp4=DapKAPETALD直系であり、Y=CONH
2、W=0であり、リンカーは、以下のリンカーAであり、SN38は、ヒドロキシル(b)によってリンカーに結合している。
【化15】
【0064】
この化合物は、本明細書においてG2B-001直系とも呼ばれる。
【0065】
別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、以下の式(Ic)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式(I)中、Pは、DapとDとの間のペプチド内結合を有するMiniAp4=DapKAPETALDであり、Y=CONH
2、W=0であり、リンカーは、以下のリンカーAであり、SN38は、ヒドロキシル(a)によってリンカーに結合している。
【化16】
【0066】
この化合物は、本明細書においてG2B-003直系とも呼ばれる。
【0067】
リンカーAは、以下によって形成される。
La´:右がr=4、左がr=3であるL
3:
【化17】
Lb´:1単位のビラジカル-NH-(CH
2)
3-O-、2単位のビラジカル-(CH
2)
2-O-および1単位のビラジカル-(CH
2)
3-NH-;ならびにLc´:-C(=O)-(CH
2)
2-C(=O)-;ビラジカルは、以下の図のように連結され、リンカーAに対応する。
【化18】
【0068】
別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、以下の式(Id)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式(I)中、Pは、DapとDとの間のペプチド内結合を有するMiniAp4=DapKAPETALDであり、Y=CONH
2、W=0であり、リンカーは、以下のリンカーCであり、SN38は、ヒドロキシル(a)によってリンカーに結合している。
【化19】
【0069】
この化合物は、本明細書においてG2B-004直系とも呼ばれる。リンカーCは、以下によって形成される。La´:L12およびLc´:L13、およびn=0。
【0070】
別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、以下の式(Ie)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式(I)中、Pは、DapとDとの間のペプチド内結合を有するMiniAp4=DapKAPETALDであり、Y=CONH
2、W=0であり、リンカーは、以下のリンカーDであり、SN38は、ヒドロキシル(a)によってリンカーに結合している。
【化20】
【0071】
この化合物は、本明細書においてG2B-005直系とも呼ばれる。リンカーDは、以下によって形成される。La´:r=1である-C(=O)-NH-(CH2)r-C(=O)-、Lb´:L15およびn=0。
【0072】
式(I)の化合物は、化学合成によって全体的または部分的に生成することができる。式(I)の化合物の調製に必要なアミノ酸は市販されている。式(I)の化合物は、例えば液相での合成によって、または好ましくは固相ペプチド合成によって容易に調製することができ、それに関していくつかの手順が公開されている(M.Amblard,et al.,´´Methods and protocols of modern solid-phase peptide synthesis.Molecular Biotechnology 2006,Vol.33,p.239-254を参照されたい)。式(I)の化合物はまた、液相合成および/または固相合成の任意の組み合わせによって調製することもできる。例えば、固相合成によってペプチドPの本体を合成し、続いて溶液中の保護基を除去することによって調性することができるSN-38のリンカーLおよびペプチドPへの結合は、固相または溶液中で行うことができる。リンカーLの構造はまた、液相合成および/または固相合成の任意の組み合わせによって調製することもできる。
【0073】
本発明のペプチドはまた、DNA鋳型の作製および発現ベクターへのサブクローニングによっても得ることができる(J.H.Lee et al.Eur.J.30 Biochem.2001.Vol.268.Pp.2004-2012を参照されたい)。
【0074】
式(Ia)の化合物SN38-リンカーA-MiniAp4は、式(III)の化合物を上記の式(IV)の化合物と反応させて式(Ia)の化合物を得ることを含むプロセスにより調製することができる。
【化21】
【0075】
式(I)の化合物の薬学的に許容される塩の調製は、当技術分野において公知の方法によって行うことができる。例えば、それらは、従来の化学的方法によって、塩基性または酸性部分を含む親化合物から調製することができる。一般に、そのような塩は、例えば、水中または有機溶媒中またはそれらの混合物中で、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を化学量論量的量の適切な薬学的に許容される塩基または酸と反応させることによって調製される。
【0076】
治療有効量の上記に定義される式(I)の化合物を、適切な量の薬学的に許容される担体または賦形剤と共に含む医薬組成物もまた、本発明の一部である。本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、投与された場合に、対処される疾患の1つまたは複数の症状の発症を予防するか、またはある程度緩和するのに十分な化合物の量を指す。当然ながら、本発明に従って投与される化合物の特定の用量は、投与される化合物、経由する投与、処置される特定の状態、および同様の考慮事項を含む、症例を取り巻く特定の状況によって決定される。
【0077】
「医薬組成物」という用語は、本明細書に記載の化合物と、希釈剤または担体等の他の化学成分との混合物を指す。医薬組成物は、生物への化合物の投与を容易にする。「薬学的に許容される賦形剤または担体」という用語は、薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを指す。各成分は、医薬組成物の他の成分と適合性であるという意味で薬学的に許容されなければならない。これはまた、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、または利益/リスク比に見合った他の問題もしくは合併症なしに、人間および動物の組織または器官と接触する使用に適切でなければならない。
【0078】
本発明の組成物は、体内への注射、注入または移植に適した非経口形態で投与され得る。
【0079】
本発明の化合物の重要な特徴は、試験した腫瘍細胞株の細胞増殖を阻害するそれらの生物活性である。実施例に例示されるように、本発明の化合物は、いくつかのがん細胞株において抗腫瘍特性を示す。
【0080】
すでに説明されたように、実験の項で提供される比較データは、SN38が同じリンカー(リンカーA)を介して以下の式の別のペプチド(THRre)にコンジュゲートされた場合、抗腫瘍活性の一部/全部が失われ、本発明のリンカーとは異なるリンカーも使用された場合(リンカーB)、結果はさらに悪いことを示している。リンカーBは、-C(=O)-(CH2)2-C(=O)-である。THRreは、以下の式を有する:H-D-Pro-D-Trp-D-Val-D-Pro-D-Ser-D-Trp-D-Met-D-Pro-D-Pro-D-Arg-D-His-D-Thr-CONH2。しかしながら、本発明の例示された化合物は、予想外にも、SN38と同様に、脳がんおよび頭蓋外がん由来のいくつかの細胞株に対する抗腫瘍活性を維持し、イリノテカンよりもはるかに高く、インビトロで、ヒト血清中で良好な安定性を有する。
【0081】
したがって、医薬として使用するための、上で定義した式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、本発明の一部である。
【0082】
試験された全ての種類のがんにおいて活性であるため、ヒトを含む哺乳動物のがんの処置に使用するための上で定義された式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩もまた、本発明の一部である。この態様はまた、ヒトを含む哺乳動物のがんを処置および/または予防するための医薬品を調製するための上で定義された式(I)の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の使用として説明することができる。本発明はまた、がんに罹患しているまたはがんに罹患しやすいヒトを含む哺乳動物の処置方法であって、治療有効量の式(I)の化合物または上で定義されたそれらの薬学的に許容される塩を薬学的に許容される賦形剤または担体と共に上記患者に投与することを含む方法に関する。
【0083】
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、上で定義された使用のための化合物であり、がん処置は、頭蓋外固形腫瘍、眼腫瘍およびCNS腫瘍からなる群から選択される腫瘍の処置を含む。別の特定の実施形態において、化合物は、上で定義された使用のための化合物であり、がんは、成人神経膠腫、小児神経膠腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、DIPG、神経芽腫および横紋筋肉腫からなる群から選択される。別の特定の実施形態において、化合物は、上で定義された使用のための化合物であり、小児神経膠腫は、びまん性内在性橋神経膠腫(DIPG)および小児高悪性度神経膠腫からなる群から選択される。別の特定の実施形態において、化合物は、上で定義された使用のための化合物であり、がんは、びまん性内在性橋神経膠腫である。別の特定の実施形態において、化合物は、上で定義された使用のための化合物であり、がんは、網膜芽細胞腫である。別の特定の実施形態において、化合物は、上で定義された使用のための化合物であり、がんは、ユーイング肉腫である。別の特定の実施形態において、化合物は、上で定義された使用のための化合物であり、がんは、神経芽腫である。別の特定の実施形態において、化合物は、上で定義された使用のための化合物であり、がんは、横紋筋肉腫である。別の特定の実施形態において、化合物は、上で定義された使用のための化合物であり、がんは、成人神経膠腫である。
【0084】
別の特定の実施形態において、化合物は、上で定義された使用のための化合物、化合物は、A673、HSJD-DIPG-007、HSJD-DIPG-011、HSJD-GBM-001、Rd、RH4、HSJD-RBT-5、HSJD-RBT-7、HSJD-RBT-14、U373、U87、LAN-1、SK-N-JD、HSJD-NB-004、HSJD-NB-005、HSJD-NB-013およびHSJD-NB-016からなる群から選択されるがん細胞株に対して活性である。
【0085】
別の特定の実施形態において、化合物は、上で定義された使用のための化合物であり、式(I)の化合物は、静脈内ボーラスおよび/または静脈内注入によって投与される。
【0086】
本発明の化合物は、他の公知の化学療法剤と同じ様式で、すなわち、処置される状態に応じて、同時にまたは逐次的に、他の処置と組み合わせて使用することができる。それらは、単独で、または他の適切な生物活性化合物と組み合わせて使用され得る。したがって、本発明の式(I)の化合物は、化学療法剤との併用療法におけるヒトを含む哺乳動物のがんの処置に使用するための化合物である。また、本発明の式(I)の化合物は、エステル安定剤と組み合わせてヒトを含む哺乳動物のがんの処置に使用するための化合物である。適切なエステル安定剤は、カルボキシルエステラーゼ阻害剤である。カルボキシルエステラーゼ阻害剤の例は、M.J.Hatfield and P.M.Potter,Exp.Opin.Ther.Pat.2011,vol.21(8),pp.1159-1171に見出すことができる。
【0087】
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、カルボキシルエステラーゼ阻害剤と組み合わせて投与される。別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、カルボキシルエステラーゼ阻害剤と同時に投与される。別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、治療有効間隔内で、任意の順序で別個に投与される。
【0088】
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、別の化学療法剤と組み合わせて投与される。別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、別の化学療法剤と同時に投与される。別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、治療有効間隔内で、任意の順序で別個に投与される。
【0089】
別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、別の化学療法剤およびカルボキシルエステラーゼ阻害剤と組み合わせて投与される。別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、別の化学療法剤およびカルボキシルエステラーゼ阻害剤と同時に投与される。別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、別の化学療法剤およびカルボキシルエステラーゼ阻害剤と、治療有効間隔内で、任意の順序で別個に投与される。
【0090】
本明細書および特許請求の範囲全体を通して、「含む」という単語およびその単語の変化形は、他の技術的特徴、添加剤、成分、またはステップを除外することを意図するものではない。さらに、「含む」という言葉は、「からなる」の場合を包含する。本発明の追加の目的、利点、および特徴は、本明細書を検討することで当業者に明らかになるか、または本発明の実践によって学ぶことができる。以下の実施例および図面は、例示として提供されており、本発明を限定することを意図するものではない。図面に関連し、特許請求の範囲において括弧内に配置された参照符号は、単に特許請求の範囲の明瞭性を高めることを試みるためのものであり、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。さらに、本発明は、本明細書に記載の具体的な好ましい実施形態の全ての可能な組み合わせを包含する。
【実施例】
【0091】
保護されたアミノ酸、ハンドルおよび樹脂は、Luxembourg Industries(テルアビブ、イスラエル)、Neosystem(ストラスブール、フランス)、CalbiochemNovabiochem AG(レウフェルフィンゲン、スイス)、Bachem AG(ブーベンドルフ、スイス)またはIris Biotech(マルクトレドヴィッツ、ドイツ)から供給された。使用された他の試薬および溶媒を表1に要約する。
【0092】
【0093】
手動合成に関する一般的な考慮点:固相ペプチド伸長および他の固相操作は、ポリエチレン多孔性ディスクを取り付けたポリプロピレンシリンジ内で、手動で行った。溶媒および可溶性試薬を吸引によって除去した。異なる合成ステップ間の洗浄は、毎回10mLの溶媒/樹脂gを使用して、ジメチルホルムアミド(DMF)(5×30秒)およびジクロロメタン(DCM)(5×30秒)で行った。
【0094】
マイクロ波支援合成に関する一般的な考慮点:マイクロ波支援固相ペプチド合成は、Liberty Blue Automated Microwave Peptide Synthesizerにおいて、H-リンクアミドプロチド樹脂(投入量:0.56mmol/g)を用いて行った。直鎖ペプチドを、樹脂に対して5過剰のFmoc-アミノ酸(0.2M)を使用して、0.5mmol規模で合成した。
【0095】
同定試験:同定および合成の制御に使用した試験は以下の通りであった:A)固相結合第一級アミンの検出にはKaiser比色アッセイ(E.Kaiser et al.,Anal.Biochem.1970,vol.34,pp.595-598);B)固相に結合した第二級アミンにはp-ニトロフェニルエステル試験(A.Madder et al.,Eur.J.Org.Chem.1999,pp.2787-2791)。
【0096】
化合物の手動合成中に使用したプロトコル:以下の方法およびプロトコルを使用して、化合物を100μmolスケールで合成した:手動合成用の樹脂は、基Yに応じて選択した:YがOHである場合、末端はCOOHであり、利用可能なものの中でも2-クロロトリチルクロリド樹脂が選択される。YがNH2である場合、末端はCONH2であり、利用可能なものの中でもリンクアミドMBHA樹脂が選択される。
【0097】
樹脂の初期調整:樹脂を、MeOH(5×30秒)、DMF(5×30秒)、DCM(5×30秒)、DCM中1%TFA(1×30秒および2×10分)、DCM(5×30秒)、DMF(5×30秒)、DCM(5×30秒)、DCM中5%DIEA(1×30秒、2×10分)、DCM(5×30秒)、DMF(5×30秒)で洗浄することによって調整した。
【0098】
Fmoc基の除去:9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)保護基の除去を、DMF中20%(v/v)ピペリジンを用いて、30秒の処理、続いてそれぞれ10分の2回の処理を用いて行った。DBU、トルエン、ピペリジン、DMF(5%、5%、20%、70%)による2回のさらなる処理(2×5分)を行い、第二級アミン(プロリン)からのFmoc基の除去を確実にした。
【0099】
100μmolスケールについて説明されるカップリング方法:
【0100】
カップリング方法1:DMF(1~3mL/g樹脂)に溶解した保護されたアミノ酸(4当量、400μmol)、TBTU(4当量、400μmol、128mg)を樹脂に順次添加し、続いてDIEAを添加した(8当量、800μmol、136μl)。混合物を断続的に手動で撹拌しながら1時間反応させた。溶媒を吸引により除去し、樹脂をDMF(5×30秒)およびDCM(5×30秒)で洗浄した。カップリングの程度をKaiser比色アッセイによって確認した。Fmoc基を、30秒処理および10分の2回処理を用い、DMF中のピペリジンの20%溶液(v/v)で除去した。脱保護すべきアミノ酸がプロリンである場合、DBU、トルエン、ピペリジン、DMF(5%、5%、20%、70%)を用いたさらなる処理(2×5分)を適用して、Fmoc基の除去を確実にした。
【0101】
カップリング方法2:DMF(1~3mL/g樹脂)に溶解した保護されたアミノ酸(4当量、400μmol)、PyBOP(4当量、400μmol、208mg)、HOAt(12当量、1.2mmol、163mg)を樹脂に順次添加し、続いてDIEAを添加した(12当量、1.2mmol、204μL)。混合物を断続的に手動で撹拌しながら1時間反応させた。溶媒を吸引により除去し、樹脂をDMF(5×30秒)およびDCM(5×30秒)で洗浄した。カップリング反応を同じ条件で2回行った。カップリングの程度をKaiser比色アッセイによって確認した。Fmoc基を、30秒処理および10分の2回処理を用い、DMF中のピペリジンの20%溶液(v/v)で除去した。脱保護すべきアミノ酸がプロリンである場合、DBU、トルエン、ピペリジン、DMF(5%、5%、20%、70%)を用いたさらなる処理(2×5分)を適用して、Fmoc基の除去を確実にした。
【0102】
カップリング方法3:DMF(1~3mL/g樹脂)に溶解した保護されたアミノ酸(4当量、400μmol)、PyBOP(4当量、400μmol、208mg)、HOBt(12当量、1.2mmol、162mg)を樹脂に順次添加し、続いてDIEAを添加した(12当量、1.2mmol、204μL)。混合物を断続的に手動で撹拌しながら1時間反応させた。溶媒を吸引により除去し、樹脂をDMF(5×30秒)およびDCM(5×30秒)で洗浄した。カップリング反応を同じ条件で2回行った。カップリングの程度をKaiser比色アッセイによって確認した。Fmoc基を、30秒処理および10分の2回処理を用い、DMF中のピペリジンの20%溶液(v/v)で除去した。脱保護すべきアミノ酸がプロリンである場合、DBU、トルエン、ピペリジン、DMF(5%、5%、20%、70%)を用いたさらなる処理(2×5分)を適用して、Fmoc基の除去を確実にした。
【0103】
カップリング方法4、スケール100μmol:DCM/DMF(1:1)中の保護されたアミノ酸(3当量、300μmol)、DIC(3当量、300μmol、46μL)およびOxyma(3当量、300μmol、43mg)。混合物を断続的に手動で撹拌しながら45分間反応させた。溶媒を吸引により除去し、樹脂をDMF(5×30秒)およびDCM(5×30秒)で洗浄した。カップリングの程度をKaiser比色アッセイによって確認した。Fmoc基を、30秒処理および10分の2回処理を用い、DMF中のピペリジンの20%溶液(v/v)で除去した。脱保護すべきアミノ酸がプロリンである場合、DBU、トルエン、ピペリジン、DMF(5%、5%、20%、70%)を用いたさらなる処理(2×5分)を適用して、Fmoc基の除去を確実にした。
【0104】
カップリング方法5、スケール100μmol:DCM/DMF(1:1)中の保護されたアミノ酸(3当量、300μmol)、DIC(3当量、300μmol、46μL)およびHOBt(3当量、300μmol、41mg)。混合物を断続的に手動で撹拌しながら45分間反応させた。溶媒を吸引により除去し、樹脂をDMF(5×30秒)およびDCM(5×30秒)で洗浄した。カップリングの程度をKaiser比色アッセイによって確認した。Fmoc基を、30秒処理および10分の2回処理を用い、DMF中のピペリジンの20%溶液(v/v)で除去した。脱保護すべきアミノ酸がプロリンである場合、DBU、トルエン、ピペリジン、DMF(5%、5%、20%、70%)を用いたさらなる処理(2×5分)を適用して、Fmoc基の除去を確実にした。
【0105】
マイクロ波支援自動合成中に使用したプロトコル:以下の方法およびプロトコルを使用して、化合物を500μmolスケールで合成した:マイクロ波支援自動合成用の樹脂は、基Yに応じて選択した:YがOHである場合、末端はCOOHであり、利用可能なものの中でもCl-TCP(Cl)ProTide樹脂が選択される。YがNH2である場合、末端はCONH2であり、利用可能なものの中でもリンクアミドProTide樹脂が選択される。
【0106】
樹脂の初期調整:樹脂を、MeOH(5×30秒)、DMF(5×30秒)、DCM(5×30秒)、DCM中1%TFA(1×30秒および2×10分)、DCM(5×30秒)、DMF(5×30秒)、DCM(5×30秒)、DCM中5%DIEA(1×30秒、2×10分)、DCM(5×30秒)、DMF(5×30秒)で洗浄することによって調整した。
【0107】
マイクロ波支援自動ペプチド合成のためのカップリングおよび脱保護条件:
【0108】
【0109】
【0110】
ペプチド配列Pの環化のための方法:
【0111】
環化方法1:ジスルフィド又はジセレニド結合:樹脂からの開裂後に溶液中で、またはCys、SecもしくはPen残基の選択的脱保護後に樹脂上で環化を行った。ペプチドを、100μMの濃度で、水性重炭酸アンモニウム緩衝液10mMおよびpH8.0に溶解した。溶液を室温で24時間激しく撹拌した。その後、生成物をTFAでpH2~3に酸性化し、凍結し、凍結乾燥した。
【0112】
環化方法2:アミド結合:樹脂上で環化を行った。Fmoc基を、30秒処理および10分の2回処理を用い、DMF中のピペリジンの20%溶液(v/v)で除去した。Boc2O(3当量、1000μmol、56mg)およびDIEA(30当量、3000μmol、240μL)を用いて、N末端アミンをBoc保護基で保護した。最初に、DCM中のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.1当量、10μM、12mg)、フェニルシラン(10当量、1000μmol、123mg)の添加によってOAl基およびAlloc基を脱保護した(3×15分)。樹脂をDCM中0.02Mジエチルカルバミン酸ナトリウムで洗浄した(3×5分)。次いで、PyBOP(4当量、400μmol、208mg)、HOAt(12当量、1.2mmol、163mg)、DMF(1~3mL/g樹脂)およびDIEA(12当量、1.2mmol、204μL)を添加することによって、Dapのアミノ基とアスパラギン酸のカルボキシレート基とのカップリングを達成した。カップリングを1.5時間放置し、一晩繰り返した。
【0113】
環化方法3:アミド結合:樹脂上で環化を行った。Fmoc基を、30秒処理および10分の2回処理を用い、DMF中のピペリジンの20%溶液(v/v)で除去した。Boc2O(3当量、1000μmol、56mg)およびDIEA(30当量、3000μmol、240μL)を用いて、N末端アミンをBoc保護基で保護した。最初に、DCM中のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.1当量、10μM、12mg)、フェニルシラン(10当量、1000μmol、123mg)の添加によってOAl基およびAlloc基を脱保護した(3×15分)。樹脂をDCM中0.02Mジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムで洗浄した(3×5分)。次いで、30分の4当量のOxyma(400μmol、57mg)および4のN,N´-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)(400μmol、61μL)の2サイクルによって、Dapのアミノ基とアスパラギン酸のカルボキシレート基とのカップリングを達成した。
【0114】
環化方法4:アミド結合:樹脂上で環化を行った。Fmoc基を、30秒処理および10分の2回処理を用い、DMF中のピペリジンの20%溶液(v/v)で除去した。Boc2O(3当量、1000μmol、56mg)およびDIEA(30当量、3000μmol、240μL)を用いて、N末端アミンをBoc保護基で保護した。最初に、DCM中のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.1当量、10μM、12mg)、フェニルシラン(10当量、1000μmol、123mg)の添加によってOAl基およびAlloc基を脱保護した(3×15分)。樹脂をDCM中0.02Mジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムで洗浄した(3×5分)。次いで、1時間の4当量のDIC(400μmol、61μL)および4のHOBt(400μmol、54mg)の2サイクルによって、Dapのアミノ基とアスパラギン酸のカルボキシレート基とのカップリングを達成した。
【0115】
リンカーLを構築するための一般的な方法:
【0116】
ジスルフィドを形成するための一般的な方法:ジスルフィド結合は、2つのチオールの反応によって達成することができる。チオールを100μMの濃度で10mMおよびpH8.0の重炭酸アンモニウム緩衝水溶液に溶解し、溶液を室温で24時間激しく撹拌する。その後、溶液をTFAでpH2~3に酸性化し、凍結し、凍結乾燥した。
【0117】
チオエーテルを形成するための一般的な方法:チオエーテル結合は、P.L.Barker et al.J.Med.Chem.1992.Vol 35.Pp.2040-2048に記載されているように、N末端ブロモアセチル基とシステインチオールとの反応により達成される。
【0118】
エーテルを形成するための一般的な方法:エーテル形成は、好ましくはGreene´s Protective Groups in Organic Synthesis,Fifth Edition.Peter G.M.Wuts.2014 John Wiley&Sons,Inc.pages 26-29に記載されている塩基性条件下で、ヒドロキシル基とハロアルキル化合物との反応によって達成することができる。
【0119】
エステルを形成するための一般的な方法:エステル形成は、Greene´s Protective Groups in Organic Synthesis,Fifth Edition.Peter G.M.Wuts.2014 John Wiley&Sons,Inc.pages 271-279に記載されているように、酸触媒の存在下でのフィッシャーエステル化等の典型的なエステル化条件を使用したヒドロキシル基とカルボン酸との反応によって、または代替としてヒドロキシル基と対応する酸塩化物との反応により達成することができる。
【0120】
チオエステルを形成するための一般的な方法:チオエステル結合は、M.Kazemi et al.,Journal of Sulfur Chemistry,2015,vol.36:6,pp.613-623に記載されているように、チオールとカルボン酸との反応によって達成される。
【0121】
ウレタンを形成するための一般的な方法:ヒドロキシル基とイソシアネートとの反応は、M.T.Nguyen et al.,J.Org.Chem.1998,63,vol.20,pp.6878-6885に記載されているように、対応するウレタンを生成し得る。
【0122】
シリルエーテルを形成するための一般的な方法:ヒドロキシル基とハロトリアルキルシリルとの反応により、対応するシリルエーテルが得られる。Greene´s Protective Groups in Organic Synthesis,Fifth Edition.Peter G.M.Wuts.2014 John Wiley&Sons,Inc.pages 456-463に記載されているように、酸捕捉剤が通常必要である。
【0123】
スルホネートを形成するための一般的な方法:F.David et al.,Org.Process Res.Dev.2010,14,4,999-1007に記載されているように、ヒドロキシル基とアルキルまたはアリールスルホニルハライドとの反応は、対応するスルホネートエステルを生成する。
【0124】
ホスフェートを形成するための一般的な方法:脱水条件下または光延反応条件を使用したヒドロキシル基と1個のヒドロキシ基を有するジアルキルまたはジアリールリン酸エステルとの反応は、置換基の1つがヒドロキシル基に結合した鎖である対応するリン酸エステルを形成することができる。
【0125】
ケタールを形成するための一般的な方法:ケタールは、Greene´s Protective Groups in Organic Synthesis,Fifth Edition.Peter G.M.Wuts.2014 John Wiley&Sons,Inc.pages 69-77に記載されているように、ヒドロキシル基とハロメチレンオキシアルキル化合物との反応によって、または酸性条件下で置換ジヒドロピランもしくはジヒドロフランにヒドロキシル基を付加することによって形成することができる。
【0126】
ヘミケタールを形成するための一般的な方法:ヒドロキシル基とアルデヒドとの接触は、https://www.cliffsnotes.com/study-guides/chemistry/organic-chemistry-ii/aldehydes-and-ketones/reactions-of-aldehydes-and-ketonesに記載されているように、対応するヘミケタールの形成をもたらし得る。
【0127】
カルバメートを形成するための一般的な方法:カルバメートは、Greene´s Protective Groups in Organic Synthesis,Fifth Edition.Peter G.M.Wuts.2014 John Wiley&Sons,Inc..pages 371-374に記載されているように、ヒドロキシル基とハロホルメートまたはイソシアネートとの反応によって形成することができる。
【0128】
カーボネートを形成するための一般的な方法:カーボネートは、Eur J Pharm Biopharm,2017,vol.115,pp.149-158に記載されているようにSN38とPNPCとの、またはJ.Med.Chem.2008,vol.51,pp.6916-6926に記載されているようにトリホスゲンとの反応によって形成することができる。
【0129】
Fmoc-TTDS-OHのカップリング:Fmoc-TTDS-OH(2当量)のカップリングは、30分のDMF中の4当量のオキシマおよび4のN,N´-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、またはDCM中の4当量のDICおよび4のHOBtの2サイクルのいずれかによって2時間で達成された。続いて、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)保護基の除去を、DMF中20%(v/v)ピペリジンを用いて、30秒の処理、続いてそれぞれ10分の2回の処理を用いて行った。
【0130】
5-ヘキシン酸のカップリング:5-ヘキシン酸(2当量、200μmol、23mg)のカップリングは、30分のDMF:DCM(1:1)中の4当量のOxyma(400μmol、57mg)および4のN,N´-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)(400μmol、61μL)、もしくはDMF:DCM 1:1中の4当量のDIC(400μmol、61μL)および4のHOBt(400μmol、54mg)のDCM中の2サイクルで4時間、またはDMF:DCM 1:1中の2当量のPyBOP(400μmol、208mg)、6当量のHOAt(600μmol、81.5mg)および6当量のDIEA(600μmol、102μL)でDMF中1.5時間のいずれかによって達成された。溶媒を吸引により除去し、樹脂をDMF(5×30秒)およびDCM(5×30秒)で洗浄した。同じ条件下でカップリングを繰り返した。カップリングの程度を、Kaiser比色アッセイを用いて監視した。
【0131】
ジグリコール酸無水物のカップリング:ジグリコール酸無水物(10当量、1000μmol、116mg)のカップリングは、DMF中10当量のDIEA(1000μmol、174μL)の60分の2サイクルにより達成された。溶媒を吸引により除去し、樹脂をDMF(5×30秒)およびDCM(5×30秒)で洗浄した。同じ条件下でカップリングを繰り返した。カップリングの程度を、Kaiser比色アッセイを用いて監視した。
【0132】
樹脂から切断するための一般的な方法:樹脂の最終的な切断および側鎖脱保護:これは、樹脂をTFA(95%)、H2O(2.5%)およびTIS(2.5%)で処理することによって行った(2時間)。得られた生成物にtert-ブチルメチルエーテルを添加し、混合物を遠心分離した(3×8分)。上清を捨て、ペレットをH2O、MeCNおよびTFAの混合物(1000:1000:1)に再懸濁した。生成物を濾別し、凍結した。
【0133】
化合物の特性評価のための一般的な方法:化合物を、UPLC(Acquityハイクラスシステム(PDA検出器、サンプルマネージャFNTおよび四級溶媒マネージャ、Acquity BEH C18(50×2mm×1.7μm)カラム、0.61mL/分、MeCN(0.036%TFA)およびH2O(0.045%TFA)を溶媒として使用した。すべての場合において、2分間の線形勾配を使用した)およびUPLC-MS分光法(エレクトロスプレーイオン源ESI-MS Micromass ZQに連結され、MassLynx 4.1ソフトウェア(Waters、ミルフォード、マサチューセッツ州)を使用したWatersハイクラス(PDA検出器、サンプルマネージャFNTおよび四級溶媒マネージャ))によって特性評価した。BEH C18カラム(50×2.1mm×1.7μm、Waters)を使用する。流速は0.6mL/分とし、溶媒としてMeCN(0.07%ギ酸)およびH2O(0.1%ギ酸)を用いた。試料を正イオン化で分析した:イオン噴霧電圧は30Vであり、キャピラリ温度は1kVであった。正確な質量を、質量分析計によって得た:直接注入(自動ナノエレクトロスプレー)での試料導入を伴うLTQ-FT Ultra(Thermo Scientific)。NanoMate(Advion BioSciences、イタカ、ニューヨーク州、米国)は、使い捨ての導電性ピペットチップを備えた384ウェルプレート(タンパク質Lobind)から試料を吸引し、質量分析計に向けてnanoESIチップ(20×20アレイの400個のノズルからなる)を通して試料を注入した。スプレー電圧は1.70kVであり、送達圧力は0.50psiであった。イオン化はNanoESI正イオン化であった。
【0134】
NMR実験は、TCIクライオプローブを備えたBruker Avance III 600MHz分光計で行った。3~4mMの90%H2O/10%D2Oに化合物を溶解することによって試料を調製し、pHを2~3に調整した。化学シフトは、内部のナトリウム-3-(トリメチルシリル)プロパンスルホネート(DSS)を基準とした。水シグナルの抑制は、励起スカルプティングによって達成された。残基特異的帰属が2D全相関分光法(TOCSY)および相関分光法(COSY)実験から得られたが、2D核Overhauser効果分光法(NOESY)は配列特異的帰属を可能にした。2D 1H13C HSQCスペクトルから、13C共鳴が帰属された。278Kで取得されたNOESYスペクトルを除いて、全ての実験は298Kで行われた。278~308Kで取得された一連の一次元スペクトルから、アミドプロトン温度係数が決定された。TOCSYおよびNOESY混合時間は、それぞれ70および250msであった。
【0135】
実施例1:(S)-tert-ブチル(4,11-ジエチル-4-ヒドロキシ-3,14ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3´,4´:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-9-イル)カーボネートの調製
【0136】
250mlフラスコで、1.5gの7-エチル-10-ヒドロキシ-カンプトテシン(SN38)、1.3当量のジ-tert-ブチルジカーボネート(1.15mL)および過剰の乾燥ピリジン(9mL)を、150mlの乾燥DCMに添加した。混合物を室温で一晩撹拌した。その後、反応混合物をHCl(0,5N)×3、飽和NaHCO3×1およびブラインで洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥させ、溶媒を真空下で除去した。さらなる精製は行わなかった。逆相UPLC-PDA:Acquity BEH C18(50×2mm×1.7μm)カラムを使用した2分でH2O中0~100%MeCNの直線勾配、0.61mL/分、MeCN(0.036%TFA)およびH2O(0.045%TFA)を溶媒として使用;保持時間:1.89分。収率:96%、[M+H]exp
+:493.5Da。1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ7.81(d、J=9.2Hz、1H)、7.45(d、J=2.5Hz、1H)、7.25-7.20(m、1H)、6.91-6.85(m、1H)、5.32(d、J=16.3、1H)、4.86(d、J=1Hz、6H)、3.85(s、1H)、2.73(q、J=7.7Hz、2H)、1.60(s、1H)、1.57-1.41(m、3H)、1,21(s、10H)、0.99(t、J=7.7Hz、3H)、0.61(t、J=7.3Hz、3H)。
【0137】
実施例2:(S)-9-((tert-ブトキシカルボニル)オキシ)-4,11-ジエチル-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3´、4´:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-4-イル5-アジドペンタノエートの調製
【0138】
丸底フラスコ中で、400mgの(S)-tert-ブチル(4,11ジエチル-4-ヒドロキシ-3,14ジオキソ-3,4,12,14テトラヒドロ-1 H-ピラノ[3´、4´:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-9-イル)カーボネート(実施例1)、1.6当量の5-アジド-ペンタン酸(193mg)をN2でパージした後、乾燥DCMに溶解した。混合物を0℃で冷却した。次いで、1.4当量のN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N´-エチルカルボジイミド塩酸塩(218mg)を添加し、混合物を0℃で1時間および室温で一晩撹拌した。混合物を飽和NaHCO3×3、HCl(0,1N)×2およびブラインで洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥させ、真空下で除去した。化合物をさらに精製することなく使用した。[M+H]exp
+:618.36Da。
【0139】
実施例3:(S)-4,11-ジエチル-9-ヒドロキシ-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3´,4´:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-4-イル5-アジドペンタノエートの調製(実施例1~3の結果としてのアジドによるSN38の修飾)
【0140】
丸底フラスコ中で、1.5gの(S)-9-((tert-ブトキシカルボニル)オキシ)-4,11-ジエチル-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3´,4´:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-4-イル5-アジドペンタノエート(実施例2)を、50mlのHCl(ジオキサン中の4N)中、室温で2時間撹拌した。その後、溶媒を真空下で除去し、粗混合物を、95%を超える純度で(DCM/MeOH(10%))を用いてシリカで精製した。実施例1からの総収率:8%、[M+H]+:518,58Da。逆相UPLC-PDA:Acquity BEH C18(50×2mm×1.7μm)カラムを使用した2分でH2O中0~100%MeCNの直線勾配、0.61mL/分、MeCN(0.036%TFA)およびH2O(0.045%TFA)を溶媒として使用;保持時間:1.819分。[M+H]exp
+:518.58Da。1H-NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ1.00(t、3H)、1.38(t、3H)、1.65(m、2H)、1.69(m、2H)、2.20(m、2H)、2.56(m、2H)、3.13(q、3H)、3.27(td、2H)、5.20(s、2H)、5.39-5.72(dd、2H)、7.42(d、1H)、7.48(s、1H)、7.62(dd、1H)、8.45(d、1H)。
【0141】
実施例4:(S)-9-((tert-ブトキシカルボニル)オキシ)-4,11-ジエチル-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3´、4´:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-4-イルtert-ブチルスクシネートの調製
【0142】
1mmolの実施例1からの(S)-tert-ブチル(4,11ジエチル-4-ヒドロキシ-3,14ジオキソ-3,4,12,14テトラヒドロ-1H-ピラノ[3´、4´:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-9-イル)および1.5当量のモノ-tert-ブチルスクシネートを丸底フラスコに添加し、N2でパージした。試薬を20mlの乾燥DCMに溶解し、0℃で冷却した。次いで、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N´-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)を添加し、混合物を0℃で1時間および室温で一晩撹拌した。反応混合物を飽和NaHCO3×3、HCl(0,1N)×2およびブラインで洗浄した。次いで、これをMgSO4で乾燥させ、揮発性物質を蒸発させ、乾燥させた。化合物をさらに精製することなく使用した。収率72%。1H-NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ0.92(t、3H)、1.30(s、9H)、1.33(m、3H)、1.38(q、2H)、1.42(s、2H)、1.55(s、9H)、2.14(ddq、2H)、2.49(td、2H)、2.69(m、2H)、2.86(dd、2H)、3.09(m、2H)、5.20(s、2H)、5.32(d、2H)、5.61(d、2H)。
【0143】
実施例5:(S)-4-((4,11ジエチル-9-ヒドロキシ-3,14ジオキソ-3,4,12,14テトラヒドロ-1H-ピラノ[3´,4´:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-4-イル)オキシ)-4-オキソブタン酸の調製(実施例4および5の結果としてのコハク酸によるSN38の修飾)
【0144】
丸底フラスコ中で、(S)-9-((tert-ブトキシカルボニル)オキシ)-4,11-ジエチル-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3´,4´:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-4-イルtert-ブチルスクシネート(実施例4)を、20mlのHCl(ジオキサン中4N)中、室温で2時間撹拌した。その後、溶媒を蒸発させ、粗混合物をTeledyne-ISCO、勾配0~50で精製した。収率32%および95%を超える純度で所望の化合物が得られた。収率32%。逆相UPLC-PDA:Acquity BEH C18(50×2mm×1.7μm)カラムを使用した2分でH2O中0~100%MeCNの直線勾配、0.61mL/分、MeCN(0.036%TFA)およびH2O(0.045%TFA)を溶媒として使用;保持時間:1.498分。[M+H]exp
+:491.27Da。1H-NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ1.02(t、3H)、1.39(t、3H)、2.22(m、2H)、2.61(t、2H)、2.84(m、2H)、3.16(q、2H)、5.27(s、2H)、5.45(d、2H)、5.60(d、2H)、7.33(s、1H)、7.42(dq、1H)、8.03(d、1H)。
【0145】
アルキン-アジド環化付加のための方法:アルキン-アジド環化付加(クリック反応)カップリングを、S.F.M.van Dongen et al.;Bioconjugate Chem.2009,vol.20,pp.20-23に記載されているプロトコルを使用して溶液中で行った。
【0146】
この反応は、lumiprobe(https://www.lumiprobe.com/protocols/click-chemistry-dna-labeling)に記載されている手順に従ってマイクロ波なしで行ったが、この反応は完了するのに約2日を要した。CuをリガンドTHTPAと共に使用した。SN38-N3はH2Oに溶けなかったため、また水にも混合物(水/DMSO)にも溶けないことから、緩衝液およびDMSOの代わりにDMFのみを使用して反応を行った。
【0147】
代替として、アルキン-TTDS-DapKAPETALDとSN38-N3とのアルキン-アジド付加環化(クリック反応)は、マイクロ波を使用して行った:10mlのSN38-N3(1.5当量)のマイクロ波バイアルに、アルキン-TTDS-DapKAPETALD(1当量)、CuTHTPA(0.15当量)およびアスコルビン酸ナトリウム(0.3当量)を添加し、3mlのDMFに溶解した。全ての反応中、30℃で、MW(discover SP MW)で支援して混合物を2~4時間撹拌した。粗混合物をHPLC半分取(C18)で精製した。
【0148】
アルキン-アジド環化付加(クリック化学)のための試薬の調製:55%DMSO中100mM銅(II)-THPTAストック:50mgの硫酸銅(II)五水和物を1mLの蒸留水に溶解し、116mgのトリス(3-ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミン(THPTA)リガンドを1.1mLのDMSOに溶解した。次いで、2つの溶液を混合した。
【0149】
5mMアスコルビン酸ストック:18mgのアスコルビン酸を20mLの蒸留水に溶解した。
【0150】
生成物の精製および特性評価のための一般的な方法:化合物を、半分取スケールでRP-HPLCにより精製し、UPLC(Acquityハイクラスシステム(PDA検出器、サンプルマネージャFNTおよび四級溶媒マネージャ、Acquity BEH C18(50×2mm×1.7μm)カラム、0.61mL/分、MeCN(0.036%TFA)およびH2O(0.045%TFA)を溶媒として使用した。すべての場合において、2分間の線形勾配を使用した)およびUPLC-MS分光法(エレクトロスプレーイオン源ESI-MS Micromass ZQに連結され、MassLynx 4.1ソフトウェア(Waters、ミルフォード、マサチューセッツ州)を使用したWatersハイクラス(PDA検出器、サンプルマネージャFNTおよび四級溶媒マネージャ))によって特性評価した。BEH C18カラム(50×2.1mm×1.7μm、Waters)を使用する。流速は0.6mL/分とし、溶媒としてMeCN(0.07%ギ酸)およびH2O(0.1%ギ酸)を用いた。試料を正イオン化で分析した:イオン噴霧電圧は30Vであり、キャピラリ温度は1kVであった。正確な質量を、質量分析計によって得た:直接注入(自動ナノエレクトロスプレー)での試料導入を伴うLTQ-FT Ultra(Thermo Scientific)。NanoMate(Advion BioSciences、イタカ、ニューヨーク州、米国)は、使い捨ての導電性ピペットチップを備えた384ウェルプレート(タンパク質Lobind)から試料を吸引し、質量分析計に向けてnanoESIチップ(20×20アレイの400個のノズルからなる)を通して試料を注入した。スプレー電圧は1.70kVであり、送達圧力は0.50psiであった。イオン化はNanoESI正イオン化であった。全てのペプチドが95%を超える純度で得られた。
【0151】
実施例6:Dap側鎖アミノ基とAsp側鎖カルボン酸との間にアミド結合を有するヘキシン酸-TTDS-Dap-Lys-Ala-Pro-Glu-Thr-Ala-Leu-Asp-NH2(ヘキシン酸-TTDS-配列番号7)の調製。
【0152】
第1の保護アミノ酸の樹脂への手動カップリングには、Fmoc-Asp(OAl)-OH(118.5mg)を用いてカップリング法4を適用した。その後のアミノ酸を、カップリング方法4を使用して以下のように順次カップリングした:
【0153】
【0154】
DMF/DCM(1:1)中の46μLのDICおよび43mgのOxymaを使用する。混合物を断続的に手動で撹拌しながら45分間反応させた。各カップリング後、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)保護基の除去を、DMF中20%(v/v)ピペリジンを用いて、30秒の処理、続いてそれぞれ10分の2回の処理を用いて行った。DBU、トルエン、ピペリジン、DMF(5%、5%、20%、70%)による2回のさらなる処理(2×5分)を行い、第二級アミン(プロリン)からのFmoc基の除去を確実にした。環化方法2に従い、樹脂上で環化を行った:Fmoc基を、30秒処理および10分の2回処理を用い、DMF中のピペリジンの20%溶液(v/v)で除去した。Boc2O(3当量、1000μmol、56mg)およびDIEA(30当量、3000μmol、240μL)を用いて、N末端アミンをBoc保護基で保護した。最初に、DCM中のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.1当量、10μM、12mg)、フェニルシラン(10当量、1000μmol、123mg)の添加によってOAl基およびAlloc基を脱保護した(3×15分)。樹脂をDCM中0.02Mジエチルカルバミン酸ナトリウムで洗浄した(3×5分)。次いで、PyBOP(4当量、400μmol、208mg)、HOAt(12当量、1.2mmol、163mg)、DMF(1~3mL/g樹脂)およびDIEA(12当量、1.2mmol、204μL)を添加することによって、Dapのアミノ基とアスパラギン酸のカルボキシレート基とのカップリングを達成した。カップリングを1.5時間放置し、一晩繰り返した。
【0155】
Fmoc-TTDS-OHのカップリング:Fmoc-TTDS-OH(2当量、200μmol、108.53mg)のカップリングを、DCM中4当量のDIC(400μmol、61μL)および4のHOBt(400μmol、54mg)によって2時間で達成した。続いて、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)保護基の除去を、DMF中20%(v/v)ピペリジンを用いて、30秒の処理、続いてそれぞれ10分の2回の処理を用いて行った。
【0156】
5-ヘキシン酸のカップリング:樹脂上に固定されたペプチドへの5-ヘキシン酸のカップリングには、以下のプロトコルを使用した:DMF(1~3mL/g樹脂)中のヘキシン酸(4当量、400μmol、45mg)、PyBOP(4当量、400μmol、208mg)およびHOAt(12当量、1.2mmol、163mg)を樹脂に順次添加し、続いて12当量のDIEA(1.2mmol、204μL)を添加した。混合物を断続的に手動で撹拌しながら1.5時間反応させた。溶媒を吸引により除去し、樹脂をDMF(5×30秒)およびDCM(5×30秒)で洗浄した。同じ条件下でカップリングを繰り返した。カップリングの程度を、Kaiser比色アッセイを用いて監視した。
【0157】
次いでペプチドを切断し、凍結乾燥した。生成物の特性評価逆相UPLC:Acquity BEH C18(50×2mm×1.7μm)カラムを使用した2分でH2O中20~60%MeCNの直線勾配、0.61mL/分、MeCN(0.036%TFA)およびH2O(0.045%TFA)を溶媒として使用;保持時間:0.939分。UPLC-MS[M+H]exp
+:1308.15Da;収率(合成および精製):7.5%。
【0158】
実施例7:式(Ia)の化合物、SN38-リンカーA-MiniAp4の調製
【0159】
実施例6のように調製したヘキシン酸-TTDS-MiniAp4から出発し、実施例3のように調製したSN38-N3を用いて、以下のプロトコルに従いSN38-リンカーA-MiniAp4とも呼ばれる式(Ia)の化合物を達成した:
【0160】
マイクロ波バイアルに、10mlの1.5当量の(S)-4,11-ジエチル-9-ヒドロキシ-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3´,4´:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-4-イル5-アジドペンタノエート、1当量のアルキン-TTDS-DapKAPETALD、0.15当量のCuTHPTAおよび0.3当量のアスコルビン酸ナトリウムを添加し、3mlのDMFに溶解した。全ての反応中、30℃で、MW(CEM discover SP MW)で支援して混合物を2~4時間撹拌した。粗生成物を半分取スケールでRP-HPLCによって精製した。95%を超える純度で化合物が得られた。生成物の特性評価:逆相UPLC-PDA:Acquity BEH C18(50×2mm×1.7μm)カラムを使用した2分でH2O中0~100%MeCNの直線勾配、0.61mL/分、MeCN(0.036%TFA)およびH2O(0.045%TFA)を溶媒として使用;保持時間:1.462分。UPLC-MS[M+H]exp
+:1824.76Da;収率(合成および精製):30%。
【0161】
比較例1:SN38リンカーA-THRre
【0162】
この比較例では、使用されるアミノ酸は全てD-アミノ酸である。第1の保護アミノ酸の樹脂への手動カップリングには、Fmoc-D-Thr(tBu)-OH(159mg)を用いてカップリング法4を適用した。その後のアミノ酸を、カップリング方法4を使用して以下のように順次カップリングした:
【数4】
【0163】
DMF/DCM(1:1)中の46μLのDICおよび43mgのOxymaを使用する。混合物を断続的に手動で撹拌しながら45分間反応させた。各カップリング後、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)保護基の除去を、DMF中20%(v/v)ピペリジンを用いて、30秒の処理、続いてそれぞれ10分の2回の処理を用いて行った。DBU、トルエン、ピペリジン、DMF(5%、5%、20%、70%)による2回のさらなる処理(2×5分)を行い、第二級アミン(プロリン)からのFmoc基の除去を確実にした。
【0164】
Fmoc-TTDS-OHのカップリング:Fmoc-TTDS-OH(2当量、200μmol、108.53mg)のカップリングを、DCM中4当量のDIC(400μmol、61μL)および4のHOBt(400μmol、54mg)によって2時間で達成した。続いて、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)保護基の除去を、DMF中20%(v/v)ピペリジンを用いて、30秒の処理、続いてそれぞれ10分の2回の処理を用いて行った。
【0165】
5-ヘキシン酸のカップリング:樹脂上に固定されたペプチドへの5-ヘキシン酸のカップリングには、以下のプロトコルを使用した:DMF(1~3mL/g樹脂)中のヘキシン酸(4当量、400μmol、45mg)、PyBOP(4当量、400μmol、208mg)およびHOAt(12当量、1.2mmol、163mg)を樹脂に順次添加し、続いて12当量のDIEA(1.2mmol、204μL)を添加した。混合物を断続的に手動で撹拌しながら1.5時間反応させた。溶媒を吸引により除去し、樹脂をDMF(5×30秒)およびDCM(5×30秒)で洗浄した。同じ条件下でカップリングを繰り返した。カップリングの程度を、Kaiser比色アッセイを用いて監視した。次いでペプチドを切断し、凍結乾燥した。
【0166】
このヘキシン酸-TTDS-THRreにより、実施例3のように調製したSN38-N3を使用して、以下のプロトコルに従いSN38-リンカーA-THRreを達成した:10mlの1.5当量の(S)-4,11-ジエチル-9-ヒドロキシ-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3´,4´:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-4-イル5-アジドペンタノエート、1当量のアルキン-TTDS-THRre、0,15当量のCuTHPTAおよび0,3当量のアスコルビン酸ナトリウムを添加し、3mlのDMFに溶解した。全ての反応中、30℃で、MW(CEM discover SP MW)で支援して混合物を2~4時間撹拌した。粗生成物を半分取スケールでRP-HPLCによって精製した。95%を超える純度で化合物が得られた。生成物の特性評価:逆相UPLC-PDA:Acquity BEH C18(50×2mm×1.7μm)カラムを使用した2分でH2O中0~100%MeCNの直線勾配、0.61mL/分、MeCN(0.036%TFA)およびH2O(0.045%TFA)を溶媒として使用;保持時間:1.597分。UPLC-MS[M+H]exp
+:2403.86Da。
【0167】
比較例2:SN38-リンカーB-THRre
【0168】
この比較例では、使用されるアミノ酸は全てD-アミノ酸である。第1の保護アミノ酸の樹脂への手動カップリングには、Fmoc-D-Thr(tBu)-OH(159mg)を用いてカップリング法4を適用した。その後のアミノ酸を、カップリング方法4を使用して以下のように順次カップリングした:
【数5】
【0169】
DMF/DCM(1:1)中の46μLのDICおよび43mgのOxymaを使用する。混合物を断続的に手動で撹拌しながら45分間反応させた。各カップリング後、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)保護基の除去を、DMF中20%(v/v)ピペリジンを用いて、30秒の処理、続いてそれぞれ10分の2回の処理を用いて行った。DBU、トルエン、ピペリジン、DMF(5%、5%、20%、70%)による2回のさらなる処理(2×5分)を行い、第二級アミン(プロリン)からのFmoc基の除去を確実にした。
【0170】
次いでペプチドを切断し、凍結乾燥した。このTHRreにより、実施例5のように調製したSN38-コハク酸を使用して、以下のプロトコルに従いSN38-リンカーB-THRreを達成した:丸底フラスコに、1.5当量の(S)-4-((4,11-ジエチル-9-ヒドロキシ-3,14-ジオキソ-3,4,12,14テトラヒドロ-1H-ピラノ[3´,4´:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-4-イル)オキシ)-4-オキソブタン酸、1.2当量のN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N´-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)および1.2当量のN-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)を、N2雰囲気下および0℃で添加し、次いで乾燥DMFを添加し、10分間撹拌した。その後、THRreを添加し、室温で反応させた。粗生成物を半分取スケールでRP-HPLCによって精製した。95%を超える純度で化合物が得られた。生成物の特性評価:逆相UPLC-PDA:Acquity BEH C18(50×2mm×1.7μm)カラムを使用した2分でH2O中0~100%MeCNの直線勾配、0.61mL/分、MeCN(0.036%TFA)およびH2O(0.045%TFA)を溶媒として使用;保持時間:1.543分。UPLC-MS[M+2H]exp
+2:982.32Da。
【0171】
実施例8a:水への溶解度の評価。
【0172】
25mgのSN38-リンカーA-MiniAp4をH2Oに溶解すると、完全に透明な溶液を示した。これは、SN38-リンカーA-MiniAp4が、SN38について説明された水への溶解度(Mol.Pharmaceutics,2016,13,379-390)の400倍を超える5mg/mL超の水への溶解度を有することを意味する。
【0173】
G2B-001直系(Ib)、G2B-003(Ic)、G2B-004(Id)およびG2B-005(Ie)は、1mg/mLの水への良好な溶解度を示す。
【0174】
実施例8b:SN38-リンカーA-MiniAp4の濁度測定溶解度の評価。
【0175】
SN38-リンカーA-MiniAp4化合物(DMSO中10mM)を段階希釈して、DMSO中0.1、0.3、1および3mMの溶液を得た。次いで、最終DMSO濃度が1%になり、最終試験化合物濃度が1、3、10、30および100μMになるように、各試験化合物濃度を緩衝液(0.01Mリン酸緩衝生理食塩水pH7.4)中で100分の1にさらに希釈した。実験を37℃で行い、各濃度を7つの反復ウェルでインキュベートした。プレートを37℃で2時間インキュベートした後、吸光度を620nmで測定した。ニカルジピンおよびピレンを対照化合物として含めた。ニカルジピンの溶解度はpH依存性であるが、ピレンの溶解度はpH非依存性である。溶解度は、ビヒクル対照(緩衝液中1%DMSO)を上回る吸光度の増加をもたらす試験化合物の濃度から推定した。表2を参照されたい。
【0176】
【0177】
予想通り、100マイクロモルまでG2B-001の溶解度の問題は見られなかった。
【0178】
実施例9:化合物(Ia)の抗腫瘍活性:がん細胞株:びまん性内在性橋神経膠腫、成人神経膠腫および小児固形腫瘍網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫および神経芽腫に対するSN38-リンカーA-MiniAp4(G2B-001とも呼ばれる)。
【0179】
本発明者らは、新規化合物(Ia)SN38-リンカーA-MIniAp4(G2B-001とも呼ばれる)の活性を、密接に関連する薬物の1つであるSN38およびイリノテカンと比較した。
【0180】
がん細胞株は、Hospital Sant Joan de Deu(バルセロナ、スペイン)で維持される貯蔵所から得た。これらの実験で使用されたがん細胞株には、成人神経膠腫(U373およびU87細胞株)、びまん性内在性橋神経膠腫を含む小児神経膠腫(HSJD-DIPG-007、HSJD-DIPG-011)、および小児高悪性度神経膠腫(HSJD-GBM-001)、網膜芽細胞腫(HSJD-RBT-5、HSJD-RBT-7およびHSJD-RBT-14)、ユーイング肉腫(A673)、横紋筋肉腫(RdおよびRH4)および神経芽腫(LAN-1およびSK-N-JD細胞株ならびにHSJD-NB-004、HSJD-NB-005およびHSJD-NB-016患者由来細胞モデル)のがん型が含まれた。簡単に説明すると、3000~30,000個のがん細胞を96ウェルプレート内で培養し、24時間後に細胞を化合物SN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)(濃度範囲1~0.00000001μM)、SN38(濃度範囲1~0.00000001μM)またはイリノテカン(濃度範囲100~0.000001μM)に曝露した。培養中の細胞に薬物を添加するために、SN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)およびイリノテカンを、水中1mg/mLの濃度のストック溶液から培養培地中で調製した。SN38は、DMSO中1mg/mLの濃度のストック溶液から培養培地中で調製した。テトラゾリウム化合物[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム](MTSアッセイ;Promega、フィッチブルク、ウィスコンシン州)を使用して、薬物との72時間のインキュベーション後に細胞生存率を決定した。細胞増殖の50%の低減を引き起こすのに必要な薬物の濃度(IC50および95%信頼区間)を、Graphpad Prism 8ソフトウェア(ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)を用いて計算した。成人神経膠腫細胞株U87(
図1)およびU373(
図2)、DIPGモデルHSJD-DIPG-007(
図3)およびHSJD-DIPG-011(
図4)を含む小児神経膠腫、ならびに小児高悪性度神経膠腫モデルHSJD-GBM-001(
図5)、網膜芽細胞腫モデルHSJD-RBT-5(
図6)、HSJD-RBT-7(
図7)およびHSJD-RBT-14(
図8)、ユーイング肉腫細胞株A673(
図9)、横紋筋肉腫細胞株Rd(
図10)およびRH4(
図11)、神経芽腫細胞株LAN-1(
図12)およびSK-N-JD(
図13)、ならびに神経芽腫患者由来細胞モデルHSJD-NB-004(
図14)、HSJD-NB-005(
図15)およびHSJD-NB-016(
図16)について、活性曲線を構築した。
【0181】
確立されたIC50値を表3に示す。
【0182】
【0183】
図17に示すように、SN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)について得られたIC50の値は、薬物イリノテカン(P<0.0001;対応ありANOVA検定)よりも有意に低かった。
【0184】
実施例10:単回および反復静脈内注射におけるSN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)のインビボ忍容性。
【0185】
無胸腺ヌードマウス(10週齢;群あたり8匹のマウス)におけるイリノテカンおよびSN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)(G2B-001とも呼ばれる)の毒性を評価するために、最初に、SN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)の最大耐量(MTD)を静脈内注射によって試験した。3匹のマウスに200、500および1000mg/kgの用量レベルで注射し、その後14日間の死亡または体重減少を含む症状を観察した。MTDは200mg/kgに確立された。この用量レベルでは、未処置対照動物と比較して、マウスは生存し、その後14日間苦痛の即時的症状または有意な体重減少を示さなかった(
図18)。
【0186】
単回i.v.でのSN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)のMTDの確立時に、本発明者らは、臨床的に関連する複数回投与レジメンでイリノテカンで処置したマウスおよび等モル投与量でのSN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)で処置したマウスの平均体重を比較した。簡単に説明すると、腹腔内(i.p.)経路によるイリノテカン10mg/kg(1~5、8~12および29~33日目の15回の投与)、または静脈内(i.v.)へのSN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)30mg/kg(1、3、5、8、10、12、29、31、33日目の9回の投与)でマウスを処置した。このレジメンは、マウスにおける最大可能数のi.v.注射と考えられた。1~5日目、8~12日目および29~33日目に、対照マウスを生理食塩水でi.p.で処置した。
【0187】
マウス体重を40日目まで測定し、平均値およびSD値を各群について
図19に表す。マウスは、SN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)処置の結果、対照と比較して有意な体重減少を示さなかった。SN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)(Ia)処置マウスの体重は、臨床的に関連する用量のイリノテカンで処置したマウスの体重と同様であった。
【0188】
実施例11:SN38のコンジュゲート、SN38とMiniAp4(SN38-リンカーA-MiniAp4、実施例7)およびSN38-リンカーB-THRr(比較例2)の比較活性。
【0189】
本発明者らは、MiniAp4(SN38-linkerA-MiniAp4、実施例7、G2B-001とも呼ばれる)およびSN38リンカーB-THRre(比較例2)とコンジュゲートした新規化合物SN38の活性を比較した。元の化合物SN38を参照として使用した。これらの実験で使用したがん細胞株は、びまん性内在性橋神経膠腫HSJD-DIPG-007を含む小児神経膠腫、および小児高悪性度神経膠腫HSJD-GBM-001であった。簡単に説明すると、3000個のがん細胞を96ウェルプレート内で培養し、24時間後に細胞を化合物化合物(Ia)(濃度範囲1~0.00000001μM)、SN38-リンカーB-THRre(濃度範囲1~0.00000001μM)およびSN38(濃度範囲1~0.00000001μM)に曝露した。培養中の細胞に薬物を添加するために、SN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)およびSN38-リンカーB-THRreを、水中1mg/mLの濃度のストック溶液から培養培地中で調製した。SN38は、DMSO中1mg/mLの濃度のストック溶液から培養培地中で調製した。MTSアッセイを使用して、薬物との72時間のインキュベーション後の細胞生存率を決定した。細胞増殖の50%の低減を引き起こすのに必要な薬物の濃度(IC50および95%信頼区間)を、Graphpad Prism 8ソフトウェア(ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)を用いて計算した。細胞HSJD-DIPG-007(
図20)およびHSJD-GBM-001(
図21)について活性曲線を構築した。確立されたIC50値を表4に示す。観察され得るように、THRreへのSN38コンジュゲーションは、MiniAp4へのコンジュゲーションよりも低い活性をもたらした。
【0190】
【0191】
実施例12.化合物SN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)、比較例1(SN38-リンカーA-THRre)および比較例2(SN38-リンカーB-THRre)の比較活性(ペプチドならびにペプチドおよびリンカーの両方の効果)。
【0192】
前の実施例11では、化合物(Ia)および比較例2(SN38-リンカーB-THRre)は異なるサイズのリンカーで構成されていたため、本発明者らは、両方の化合物の活性を、化合物(Ia)を有する比較例1(SN38-リンカーA-THRre)および同じリンカーを有する比較例1のうちの1つと比較した。
【0193】
これらの実験で使用したがん細胞株は、びまん性内在性橋神経膠腫HSJD-DIPG-007を含む小児神経膠腫、および小児高悪性度神経膠腫HSJD-GBM-001であった。簡単に説明すると、3000個のがん細胞を96ウェルプレート内で培養し、24時間後に細胞を化合物(Ia)、比較例1および比較例2(それぞれの濃度範囲1~0.001μM)に曝露した。すべての化合物を、1mg/mLの濃度の水溶液のストック溶液から培養培地中で調製した。MTSアッセイを使用して、薬物との72時間のインキュベーション後の細胞生存率を決定した。細胞増殖の50%の低減を引き起こすのに必要な薬物の濃度(IC50および95%信頼区間)を、Graphpad Prism 8ソフトウェア(ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)を用いて計算した。細胞HSJD-DIPG-007(
図22)およびHSJD-GBM-001(
図23)について活性曲線を構築した。比較例1(SN38-リンカーA-THRre)および比較実施例2(SN38-リンカーB-THRre)は、化合物(Ia)よりも低い活性を示した。したがって、化合物(Ia)の驚くべき活性は、比較例1および比較例2と比較して、ペプチドMiniAp4によるものだけでなく、空間リンカーによるものであった。確立されたIC50値を表5に示す。
【0194】
【0195】
実施例13:時間に対するインビトロでの37℃でのヒト血清中のSN38-リンカーA-MiniAp4の安定性。
【0196】
ヒト血清中のSN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)(実施例7)の安定性について、緩衝液HBSS中、90%ヒト血清の存在下、37℃で200μMの濃度でインキュベートした。一定の時間範囲で、100μLのアリコートを収集し、血清タンパク質を沈殿させるためにこれに400μLの冷メタノールを添加した。試料を3000rpm、4℃で30分間遠心分離し、濾過し、UPLC-PDAおよびUPLC-MSによって分析して、SN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)の分解度を決定した。24時間で有意な分解は観察されず、これは半減期がこの時間枠よりも長いことを意味する(
図24)。
【0197】
実施例14:時間に対するインビトロでの37℃でのラット、マウス、イヌおよびヒト血漿中のSN38-リンカーA-MiniAp4(G2B-001)(Ia)の安定性。
【0198】
37℃でのヒト、マウス、イヌおよびラット血漿中のSN38-リンカーA-MiniAp4(Ia)(実施例7)の安定性を評価するために、化合物を、各種について各時点(0時間、1時間、4時間、8時間および24時間)で三連で血漿試料中200μMで調製した。インキュベーションが完了したら、冷メタノール(比4:1、メタノール:血漿)を添加することによって血漿タンパク質を直ちに沈殿させ、チューブを数秒振盪した(ボルテックス)。試料を4℃で30分間、3,000rpmで遠心分離し、上清を回収し、インジェクションプレートに移し、LC-MSシステムに注入した。
【0199】
化合物回収率は、分析物を添加して処理した生物学的試料中の分析物応答と、分析物を添加して処理したメタノール試料中の応答とを比較することによって決定した。
【0200】
血漿安定性アッセイを、未処置のボランティア/動物由来のブランク血漿を使用して行った。K2-EDTAを抗凝固剤として使用した。使用したヒトブランク血漿はHospital Sant Pauから入手し、使用したマウスブランク血漿はJanvierから入手し、使用したイヌブランク血漿はIsoquimenから入手し、使用したラットブランク血漿はDraconis Pharmaから入手した。
【0201】
ヒト、マウス、イヌおよびラット血漿中の200μMでのG2B-001の半減期は、半減期が8~24時間であったマウスおよびイヌの血漿中の化合物G2B-001を除いて、24時間を超えていた(
図25)。
【0202】
【0203】
実施例15:Dap側鎖アミノ基とAsp側鎖カルボン酸との間にアミド結合を有さないヘキシン酸-TTDS-Dap-Lys-Ala-Pro-Glu-Thr-Ala-Leu-Asp-NH2(ヘキシン酸-TTDS-配列番号14)直系の調製。DapKAPETALD(配列番号14)、すなわち線状ペプチド。
【0204】
第1の保護アミノ酸の樹脂への手動カップリングには、Fmoc-Asp(OAl)-OH(118.5mg)を用いてカップリング法4を適用した。その後のアミノ酸を、カップリング方法4を使用して以下のように順次カップリングした:
【数6】
【0205】
DMF/DCM(1:1)中の46μLのDICおよび43mgのOxymaを使用する。混合物を断続的に手動で撹拌しながら45分間反応させた。各カップリング後、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)保護基の除去を、DMF中20%(v/v)ピペリジンを用いて、30秒の処理、続いてそれぞれ10分の2回の処理を用いて行った。DBU、トルエン、ピペリジン、DMF(5%、5%、20%、70%)による2回のさらなる処理(2×5分)を行い、第二級アミン(プロリン)からのFmoc基の除去を確実にした。
【0206】
Fmoc-TTDS-OHのカップリング:Fmoc-TTDS-OH(2当量、200μmol、108.53mg)のカップリングを、DCM中4当量のDIC(400μmol、61μL)および4のHOBt(400μmol、54mg)によって2時間で達成した。続いて、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)保護基の除去を、DMF中20%(v/v)ピペリジンを用いて、30秒の処理、続いてそれぞれ10分の2回の処理を用いて行った。
【0207】
5-ヘキシン酸のカップリング:樹脂上に固定されたペプチドへの5-ヘキシン酸のカップリングには、以下のプロトコルを使用した:DMF(1~3mL/g樹脂)中のヘキシン酸(4当量、400μmol、45mg)、PyBOP(4当量、400μmol、208mg)およびHOAt(12当量、1.2mmol、163mg)を樹脂に順次添加し、続いて12当量のDIEA(1.2mmol、204μL)を添加した。混合物を断続的に手動で撹拌しながら1.5時間反応させた。溶媒を吸引により除去し、樹脂をDMF(5×30秒)およびDCM(5×30秒)で洗浄した。同じ条件下でカップリングを繰り返した。カップリングの程度をKaiser比色アッセイを用いて監視した。
【0208】
DCM中のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.1当量、10μM、12mg)、フェニルシラン(10当量、1000μmol、123mg)の添加によってOAl基およびAlloc基を脱保護した(3×15分)。樹脂をDCM中0.02Mジエチルカルバミン酸ナトリウムで洗浄した(3×5分)。
【0209】
次いでペプチドを切断し、凍結乾燥した。生成物の特性評価逆相HPLC:Xbridge 25cm 3.5μmカラムを使用した30分でH2O中10~60%MeCNの直線勾配、1mL/分、MeCN(0.1%TFA)およびH2O(0.1%TFA)を溶媒として使用;保持時間:11.526分。収率(合成および精製):9%。
【0210】
実施例16:Dap側鎖アミノ基とAsp側鎖カルボン酸との間にアミド結合を有さない式(Ib)、G2B-001直系の化合物の調製。
【0211】
実施例15のように調製したヘキシン酸-TTDS-MiniAp4直系から出発し、実施例3のように調製したSN38-N3を用いて、以下のプロトコルに従いG2B-001直系とも呼ばれる式(Ib)の化合物を達成した:
【0212】
マイクロ波バイアルに、10mlの1.5当量の(S)-4,11-ジエチル-9-ヒドロキシ-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3´,4´:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-4-イル5-アジドペンタノエート、1当量のアルキン-TTDS-DapKAPETALD直系、0.15当量のCuTHPTAおよび0.3当量のアスコルビン酸ナトリウムを添加し、3mlのDMFに溶解した。全ての反応中30℃でMW(CEM discover SP MW)で支援して混合物を2~4時間撹拌した。粗生成物を半分取スケールでRP-HPLCによって精製した。95%を超える純度で化合物が得られた。生成物の特性評価:逆相HPLC-MS:Luna 3μm C18(2)100A 50×2.1mmカラムを使用した7分でH2O中0~80%MeCNの直線勾配、0.85mL/分、MeCN(0.1%ギ酸)およびH2O(0.1%ギ酸)を溶媒として使用;保持時間:5.08分。UPLC-MS[M+H]exp
+:1845.10Da;収率(合成および精製):22%。
【0213】
実施例17:N3-Pen-SN38の調製
【0214】
二口丸底フラスコ内に、1当量のSN-38(600mg)を添加し、1グラム当たり100mlの乾燥DCM(60ml)に溶解した。濁った溶液が観察された。この反応混合物を0~2℃に冷却し、6当量のDIEA(2ml)を添加し、15分間撹拌した。15分後、3当量のN3-Pen-Cl(700mg)を少量ずつ添加した[500uLの乾燥DCMに溶解]。これを15分間冷却し、次いで室温で撹拌を続けた。反応の進行をHPLCによって確認した。出発材料が3%未満になったら、反応物を後処理に供した。
【0215】
反応混合物の初期体積約45mlを、乾燥DCMを用いてさらに300mlに調整した。
【0216】
これを蒸留水(反応混合物の最終体積の20%体積)3×3分×60mlで3回抽出した。硫酸ナトリウム(Na2SO4)を用いてDCM層を30分間乾燥させ、ロータリーエバポレータで蒸発させた。得られた固体を80:20 Hex:エーテルで2回処理し、デシケータ内で乾燥させるために保存した。後処理後の収量、730mg。生成物の特性評価逆相HPLC:クロマトグラフィー用C-18シリカゲルR(5μm)を充填したSSカラム250×4.6mmを使用した、30分でH2O中10~90%MeCNの直線勾配、1mL/分、MeCN(0.1%TFA)およびH2O(0.1%TFA)を溶媒として使用、19.730分。観察された質量=518.20Da、計算された質量=517.19Da。
【0217】
【0218】
実施例18:式(Ic)の化合物、G2B-003の調製
【0219】
実施例6のように調製したヘキシン酸-TTDS-MiniAp4直系から出発し、実施例17のように調製したN3-Pen-SN38を用いて、以下のプロトコルに従いG2B-003とも呼ばれる式(Ic)の化合物を達成した。
【0220】
10mlのバイアルに、1.5当量のN3-Pen-SN38、1当量のヘキシン酸-TTDS-MiniAp4、0.15当量CuTHPTAおよび0.3当量のアスコルビン酸ナトリウムを添加し、3mlのDMFに溶解した。
【0221】
全ての反応中30℃でマイクロ波(CEM discover SP MW)で支援して混合物を2~4時間撹拌した。粗生成物を半分取スケールでRP-HPLCによって精製した。95%を超える純度で化合物が得られた。生成物の特性評価:逆相HPLC:Xbridge 25cm 3.5μmカラムを使用した30分でH2O中20~70%MeCNの直線勾配、1mL/分、MeCN(0.1%TFA)およびH2O(0.1%TFA)を溶媒として使用;保持時間:12.00分。UPLC-MS[M+H]exp
+:1826.15Da;収率(合成および精製):17%。
【0222】
実施例19:SN38-O-CO-NH-Gly-COOHの調製
【0223】
乾燥DCM(15mL)中のグリシン-COOBut(1当量)およびDMAP(2当量)の溶液を、乾燥DCM(15mL)中のビス(4-ニトロフェニル)カーボネート(1.3当量)の溶液に滴下により添加し、得られた溶液を50℃で一晩撹拌した。次いで、反応混合物をDCM(150mL)中に希釈し、0.5N HCl(100mL)で洗浄した。水層をDCM(5×100mL)で洗浄し、すべての有機画分を回収し、MgSO4で乾燥させ、濾過した。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:DCM:Et2O;5:4:1)によって精製した。
【0224】
得られたPNP-Gly-COOBut(1当量)を、乾燥DCM中、DMAP(2当量)の存在下でSN38(1.2当量)と反応させた。反応物を50℃で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0225】
SN38-O-CO-NH-Gly-COOButをTFA:DCM:TIS(40:40:20)で6時間処理することによってt-ブチルエステル基を除去した。その後、溶媒を蒸発させた。トルエンを2回添加して微量のTFAを除去した。さらなる精製は行わなかった。
【0226】
実施例20:Boc-Val-Cit-PAB-SN38の調製
【0227】
丸底フラスコ内で、1当量の7-エチル-10-ヒドロキシ-カンプトテシン(SN38)、1当量のBoc-Val-Cit-PAB-PNP(iris biotech製)、2当量のDIEAおよび触媒性DMAPを、乾燥DMF中、室温で16時間撹拌した。その後、反応混合物をAcOEtで希釈し、HCl(0.5M)(×3)およびブライン(×4)で洗浄した。次いで、これをMgSO4で乾燥させ、揮発性物質を蒸発させ、粗混合物をシリカクロマトグラフィー(AcOEt:MeOH;20:1;15:1:9:1)によって精製した。52%の収率および90%を超える純度で所望の化合物が得られた。収率52%。逆相UPLC-PDA:Acquity BEH C18(50×2mm×1.7μm)カラムを使用した2分でH2O中0~100%MeCNの直線勾配、0.61mL/分、MeCN(0.036%TFA)およびH2O(0.045%TFA)を溶媒として使用;保持時間:1.42分。[M+H]exp
+:898.4Da。
【0228】
実施例21:H2N-Val-Cit.PAB-SN38の調製
【0229】
丸底フラスコ中で、実施例20のように調製した1当量のBoc-Val-Cit-PAB-SN38を、DCM:TFA:H2O(44.75:49.75:0.5)の混合物中で5分間撹拌した。その後、溶媒を蒸発させた。トルエンを2回添加して微量のTFAを除去した。さらなる精製は行わなかった。
【0230】
実施例22:G2B-004(Id)の調製
【0231】
ジグリコール-MiniAp4(上述の標準的方法、カップリング方法4を用いて調製)および2当量のH2N-Val-Cit-PAB-SN38(実施例21のように調製)から出発し、PyBOP(4当量)、DMF(1~3mL/g樹脂)に溶解したHOAt(12当量)を用い、続いてDIEA(12当量)を添加して、G2B-004を調製した。混合物を断続的に手動で撹拌しながら1時間反応させた。溶媒を吸引により除去し、樹脂をDMF(5×30秒)およびDCM(5×30秒)で洗浄した。カップリング反応を2回行った(1時間および一晩)。
【0232】
次いでG2B-004を切断し、凍結乾燥した。生成物の特性評価逆相UPLC:Acquity BEH C18(50×2mm×1.7μm)カラムを使用した2分でH2O中0~100%MeCNの直線勾配、0.61mL/分、MeCN(0.036%TFA)およびH2O(0.045%TFA)を溶媒として使用;保持時間:1.17分。UPLC-MS[M+H]exp
+:1807.84Da;収率(合成および精製):21%。
【0233】
実施例23:G2B-005(Ie)の調製
【0234】
Nval-Pro-Gly-MiniAp4を、上述の標準的方法(カップリング方法4)を用いて調製した。
【0235】
Nval-Pro-Gly-MiniAp4および実施例19のように調製した2当量のSN38-O-CO-NH-Gly-OHから出発し、DMF(1~3mL/g樹脂)に溶解したPyBOP(4当量)、HOAt(12当量)を用い、続いてDIEA(12当量)を添加して、G2B-005を調製した。混合物を断続的に手動で撹拌しながら1時間反応させた。溶媒を吸引により除去し、樹脂をDMF(5×30秒)およびDCM(5×30秒)で洗浄した。カップリング反応を2回行った(1時間および一晩)。
【0236】
次いでG2B-005を切断し、凍結乾燥した。生成物の特性評価逆相UPLC:Acquity BEH C18(50×2mm×1.7μm)カラムを使用した2分でH2O中0~100%MeCNの直線勾配、0.61mL/分、MeCN(0.036%TFA)およびH2O(0.045%TFA)を溶媒として使用;保持時間:1.51分。UPLC-MS[M+H]exp
+:1640.77Da;収率(合成および精製):18%。
【0237】
実施例24:時間に対するインビトロでの37℃でのヒト血漿中のG2B-001直系(Ib)の安定性。
【0238】
37℃でのヒト血漿中のG2B-001直系(Ib)(実施例16)の安定性を評価するために、化合物を、各時点(0時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間および24時間)で三連で血漿試料中200μMで調製した。インキュベーションが完了したら、冷メタノール(比4:1、メタノール:血漿)を添加することによって血漿タンパク質を直ちに沈殿させ、チューブを数秒振盪した(ボルテックス)。試料を4℃で30分間、3,000rpmで遠心分離し、上清を回収し、インジェクションプレートに移し、LC-MSシステムに注入した。化合物回収率は、分析物を添加して処理した生物学的試料中の分析物応答と、分析物を添加して処理したメタノール試料中の応答とを比較することによって決定した。
【0239】
血漿安定性アッセイを、未処置のボランティア由来のブランク血漿を使用して行った。K2-EDTAを抗凝固剤として使用した。使用したヒトブランク血漿は、Hospital Sant Pauから得た。
【0240】
ヒトにおける200μMでのG2B-001直系(Ib)の半減期は24時間を超えていた(
図26)。
【0241】
【0242】
実施例25:がん細胞株に対するG2B-001直系と呼ばれる新規化合物(Ib)の抗腫瘍活性:びまん性内在性橋神経膠腫
【0243】
本発明者らは、新規化合物(Ib)G2B-001直系(実施例16)の活性を、密接に関連する薬物の1つであるG2B-001(Ia)およびSN38と比較した。
【0244】
これらの実験で使用したがん細胞株は、HSJD-DIPG-007であった。簡単に説明すると、3000個のがん細胞を96ウェルプレート内で培養し、24時間後に細胞を化合物G2B-001(Ia)、化合物G2B-001直系(Ib)、およびSN-38(それぞれの濃度範囲1~0.001μM)に曝露した。MTSアッセイを使用して、薬物との72時間のインキュベーション後の細胞生存率を決定した。G2B-001(Ia)およびG2B-001直系(Ib)は、同様の活性を示した(
図27)。したがって、化合物G2B-001(Ia)のインビトロ活性は、化合物G2B-001(Ib)への化学修飾後に維持された。実験の内部基準として、SN-38は、実施例9で報告された活性と同様の活性を示した。確立されたIC50値を表8に示す。
【0245】
【0246】
実施例26:神経芽腫の患者由来異種移植片におけるG2B-003(Ic)およびイリノテカンの比較抗腫瘍活性。腫瘍モデルは、HSJD-NB-013であった。
【0247】
本発明者らは、3匹の無胸腺ヌードマウスの両脇腹に皮下的に新たに切除した腫瘍(1匹のマウスから得た)を挿入した。生着したら(100~500mm
3の範囲の腫瘍体積)、マウスをイリノテカン、G2B-003(Ib)または生理食塩水(対照)で、すべて静脈内で処置した。1、2、3、4、5、8、9、10、11および12日目に、1匹のマウスに10mg/kgのイリノテカンを10回投薬した。1、2、3、4、5および8日目に、1匹のマウスに100mg/kgのG2B-003(Ib)を6回投薬した。1匹のマウスにイリノテカンと同じレジメンを使用して生理食塩水を投与した。腫瘍体積を44日目まで、または1500mm
3を超える体積まで測定した。イリノテカンおよびG2B-003の処置は、測定可能で長期持続性の抗腫瘍応答を達成した(
図28)が、対照腫瘍はより速く増殖した。したがって、イリノテカンおよびG2B-003(Ic)のインビボ活性は、この腫瘍モデルにおいて類似していた。
【0248】
引用文献リスト
特許文献
US8299089B2
WO2015/051307A1
WO2017/113687A2
WO2018/064683A1
WO2015/001015A1
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