(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-06
(54)【発明の名称】ヒトIL-33に結合する抗体、その調製方法および用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230929BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20230929BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230929BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230929BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230929BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230929BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230929BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230929BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20230929BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230929BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230929BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20230929BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20230929BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230929BHJP
A61K 47/55 20170101ALI20230929BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230929BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230929BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230929BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20230929BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230929BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230929BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230929BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230929BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230929BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230929BHJP
A61P 27/04 20060101ALI20230929BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230929BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/24 ZNA
C12P21/08
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K14/54
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61K45/00
A61K51/10 100
A61K49/00
A61K47/68
A61K47/55
A61P1/04
A61P1/16
A61P11/00
A61P11/02
A61P11/06
A61P13/12
A61P17/06
A61P17/00
A61P25/00
A61P27/02
A61P27/04
A61P35/00
A61P43/00 105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518831
(86)(22)【出願日】2021-09-26
(85)【翻訳文提出日】2023-03-31
(86)【国際出願番号】 CN2021120785
(87)【国際公開番号】W WO2022063281
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】202011023301.8
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523029928
【氏名又は名称】サンシャイン・グオジアン・ファーマシューティカル(シャンハイ)カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】グオ,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,シュエサイ
(72)【発明者】
【氏名】シュー,フィティン
(72)【発明者】
【氏名】リー,チンロウ
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,リー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジャンヒ
(72)【発明者】
【氏名】フアン,ハオミン
(72)【発明者】
【氏名】ズー,ジェンピン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
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4B065CA25
4B065CA44
4C076CC01
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4C084ZC712
4C085AA14
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4C085AA27
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4C085CC23
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4C085LL18
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、高親和性方式でヒトIL-33に結合し、ST2とIL-33との結合をブロックし、IL-33高発現疾患(例えば、喘息、アトピー性/アレルギー性皮膚炎、慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)等)を治療するための薬物の調製に適用され、良好な臨床適用の見通しを有する、ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、
ヒトIL-33に対する当該抗体またはその抗原結合断片の結合親和性EC50は、1nM未満であることを特徴とする、前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体の軽鎖は、SEQ ID No:22に示されるL-CDR2を有し、以下に示す特徴を有する、請求項1に記載のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片:
(t1)IL-33の受容体ST2への結合をブロックし、
(t2)IL-33によって誘導されるHUVEC細胞のIL-6分泌を阻害し、
(t3)IL-33タンパク質の阻害は、ヒトPBMCのIFNγ分泌を誘導し、
(t4)IL-33の阻害は、NK細胞のIFNγ分泌を誘導し、ならびに
(t5)IL-33の阻害は、KU812細胞のIL-5およびIL13の分泌を誘導すること。
【請求項3】
(a)アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:15、16および17に示されるか、またはそれぞれSEQ ID NO:18、19および20に示されるか、またはそれぞれSEQ ID NO:18、24および25に示されるような重鎖の相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、ならびに
(b)アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:21、22および23に示されるか、またはそれぞれSEQ ID NO:26、22および27に示されるか、またはそれぞれSEQ ID NO:26、22および28に示されるような軽鎖の相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3とを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体は、マウス抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体であることを特徴とする、請求項1または2に記載のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗原結合断片は、Fab断片、F(ab’)2断片、Fv断片を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:6に示されたとおりであるか、またはそれぞれSEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:6に示されたとおりであるか、またはそれぞれSEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:10に示されたとおりであるか、またはそれぞれSEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:12に示されたとおりであることを特徴とする、請求項3に記載のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:32に示されたとおりであり、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:29、30、31、33、34または35に示されたとおりであることを特徴とする、請求項3に記載のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:40に示されたとおりであり、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:37、38または39に示されたとおりであることを特徴とする、請求項3に記載のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:36に示されたとおりであり、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:33、34または35に示されたとおりであることを特徴とする、請求項3に記載のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗体の重鎖定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4の重鎖定常領域から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片の重鎖定常領域および軽鎖定常領域のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:13およびSEQ ID NO:14に示されたとおりであることを特徴とする、請求項10に記載のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片とIL-33タンパク質との結合エピトープは、SEQ ID NO:55に対応する、
45位のリジン(K45)、49位のバリン(V49)、65位のアスパラギン酸(D65)、50位のロイシン(L50)、60位のセリン(S60)、52位のセリン(S52)、48位のリジン(K48)、51位のロイシン(L51)、53位のチロシン(Y53)、55位のグルタミン酸(E55)からなる群から選択される部位を含むことを特徴とする、請求項10に記載のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
請求項1-12のいずれか1項に記載のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片をコードすることを特徴とする、ヌクレオチド分子。
【請求項14】
重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードする前記ヌクレオチド分子のヌクレオチド配列は、それぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5に示されたとおりであるか、またはそれぞれSEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:5に示されたとおりであるか、またはそれぞれSEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:9に示されたとおりであるか、またはそれぞれSEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:11に示されたとおりであることを特徴とする、請求項13に記載のヌクレオチド分子。
【請求項15】
重鎖可変領域をコードする前記ヌクレオチド分子のヌクレオチド配列は、それぞれSEQ ID NO:41、42、43、45、46または47に示されたとおりであり、軽鎖可変領域をコードする前記ヌクレオチド分子のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:44に示されたとおりであることを特徴とする、請求項13に記載のヌクレオチド分子。
【請求項16】
重鎖可変領域をコードする前記ヌクレオチド分子のヌクレオチド配列は、それぞれSEQ ID NO:49、50または51に示されたとおりであり、軽鎖可変領域をコードする前記ヌクレオチド分子のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:52に示されたとおりであることを特徴とする、請求項13に記載のヌクレオチド分子。
【請求項17】
重鎖可変領域をコードする前記ヌクレオチド分子のヌクレオチド配列は、それぞれSEQ ID NO:45、46または47に示されたとおりであり、軽鎖可変領域をコードする前記ヌクレオチド分子のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:48に示されたとおりであることを特徴とする、請求項13に記載のヌクレオチド分子。
【請求項18】
請求項13-17のいずれか1項に記載のヌクレオチド分子を含むことを特徴とする、発現担体。
【請求項19】
請求項18に記載の発現担体を含むことを特徴とする、宿主細胞。
【請求項20】
請求項1-12のいずれか1項に記載のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片を調製する方法であって、
a)発現条件下で、請求項19に記載の宿主細胞を培養することにより、前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片を発現する段階と、
b)a)に記載のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片を分離および精製する段階とを含む、方法。
【請求項21】
請求項1-12のいずれか1項に記載のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項22】
抗体薬物コンジュゲートであって、
(a)請求項1-12のいずれか1項に記載のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む抗体部分と、および
(b)検出可能な標識、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、またはその組み合わせからなる群から選択される前記抗体部分とカップリングするカップリング部分とを含むことを特徴とする、前記抗体薬物コンジュゲート。
【請求項23】
喘息、関節炎、アトピー性/アレルギー性皮膚炎、慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、全身性硬化症、肝線維症、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、多発性硬化症、糖尿病性腎疾患、炎症性腸疾患、乾癬、好酸球性食道炎、糖尿病性黄斑浮腫、加齢黄斑変性、ドライアイ、腫瘍を治療するための薬物の調製における、請求項1-12のいずれか1項に記載のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片または請求項21に記載の組成物、請求項22に記載の抗体薬物コンジュゲートの使用。
【請求項24】
喘息、関節炎、アトピー性/アレルギー性皮膚炎、慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、全身性硬化症、肝線維症、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、多発性硬化症、糖尿病性腎疾患、炎症性腸疾患、乾癬、好酸球性食道炎、糖尿病性黄斑浮腫、加齢黄斑変性、ドライアイ、腫瘍を治療する方法であって、
必要とする対象に請求項1-12のいずれか1項に記載のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片、請求項21に記載の組成物または請求項22に記載の薬物コンジュゲート、またはその組み合わせを投与する段階を含むことを特徴とする、方法。
【請求項25】
IL-33タンパク質の突然変異体であって、
野生型ヒトIL-33タンパク質のアミノ酸配列に対応して、前記突然変異体は、SEQ ID NO:55に対応する、
(Z1)45位のリジン(K45)、
(Z2)49位のバリン(V49)、
(Z3)65位のアスパラギン酸(D65)、
(Z4)50位のロイシン(L50)、
(Z5)60位のセリン(S60)、
(Z6)52位のセリン(S52)、
(Z7)48位のリジン(K48)、
(Z8)51位のロイシン(L51)、
(Z9)53位のチロシン(Y53)、
(Z10)55位のグルタミン酸(E55)からなる群から選択される一つまたは複数の部位で発生する突然変異を含むことを特徴とする、前記IL-33タンパク質の突然変異体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に属し、ヒトIL-33に結合する抗体、その調製方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン33(IL-33)は、多機能サイトカインであり、IL-1ファミリーの新しいメンバーである。IL-33遺伝子によってコードされ、平滑筋細胞、上皮細胞および内皮細胞等の構造細胞で構造的に発現し、マクロファージおよび樹状細胞において、IL-33は、炎症性因子の誘導によって発現される。研究によると、IL-33は、二機能性タンパク質であることが分かる。一方、IL-33は、細胞核に局在し、転写因子の役割を発揮し、もう一方、IL-33は、細胞外に分泌され、その受容体であるST2と相互作用することでサイトカインの役割を発揮する。サイトカインとして、IL-33は、TH-2型サイトカインであり、アラーミン(Alarmin)と考えられ、ST2と結合することにより、TH-2細胞がIL-4、IL-5およびIL-13等のTH-2型サイトカインを分泌するように誘導する。さらに、IL-33は、マスト細胞、好塩基球性細胞にIL-1β、IL-6、IL-8、TNFα等の炎症性サイトカインおよびケモカインを分泌させ、NK細胞およびNKT細胞にIFNγ等のTH-1型サイトカインを分泌させる。
【0003】
喘息は、気管支喘息とも呼ばれる。気管支喘息は、様々な細胞および細胞成分が関与する慢性気道炎症である。喘息は、CD4+Th-2細胞によって引き起こされる気道炎症とずっと考えられてきた。しかしながら、抗CD4抗体は、CD4+細胞をほぼ完全に枯渇させるが、喘息マウスの肺におけるIL-4、IL-5またはIL-13の産生を完全に減少させず、これは、これらのTh-2サイトカインの他の細胞源が必ず存在することを示唆する。IL-33は、ST2を発現するILC2sからIL-5およびIL-13を産生することができ、これは、Th-2細胞が存在しなくても、IL-5によって誘導される好酸球増多症およびIL-13によって誘導される粘液産生が誘導されることを示唆する。さらに、喘息患者の肺におけるIL-33の発現レベルは、健常者の肺よりも高く、重症喘息患者の肺組織におけるIL-33の発現は、特に顕著である。IL-33は、重症喘息の小児の喘息線維芽細胞におけるコラーゲン合成を促進し、これは、IL-33が重症喘息に特徴的な気道リモデリングの発生および発展に一定な役割を果たすことを示唆する。アレルギー性気道炎症は、抗IL-33抗体治療によって軽減されることができる。IL-33は、ST2を発現するTh-2細胞を活性化することができるため、Th-2細胞およびILC2細胞によって産生されるIL-5およびIL-13は、喘息の発病過程に関与する。これらの発見は、IL-33が自然免疫と獲得免疫との間の橋渡しを調整して、重度の喘息表現型を発症できることを示唆する。喘息に加えて、IL-33経路は、アトピー性/アレルギー性皮膚炎、関節炎、慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、全身性硬化症、肝線維症、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、多発性硬化症、糖尿病性腎疾患、炎症性腸疾患、乾癬、好酸球性食道炎、糖尿病性黄斑浮腫、加齢黄斑変性、ドライアイ、腫瘍等の様々な病症の治療にも関与する。本発明は、高親和性方式でIL-33に結合し、且つIL-33活性を効果的に中和するIL-33阻害剤を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の発明者らは、抗原免疫、ハイブリドーマスクリーニング、抗体発現および精製から生物活性同定まで、多数の試験を行い、スクリーニングしてヒトIL-33に特異的に結合するマウス抗体を獲得し、これに基づいて、さらに構築してそのキメラ抗体およびヒト化抗体を獲得する。
【0005】
従って、本発明の目的は、ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片を提供し、前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片をコードするヌクレオチド分子を提供し、前記ヌクレオチド分子を含む発現担体を提供し、前記発現担体の宿主細胞を提供し、前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片の調製方法を提供し、前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物を提供し、薬物の調製における前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片の適用を提供する。
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、次のような技術的解決策を採用する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片を提供し、ここで、ヒトIL-33に対する当該抗体またはその抗原結合断片の結合親和性EC50は、1nM未満である。
【0008】
別の好ましい例において、前記抗体の軽鎖は、SEQ ID No:22に示されるL-CDR2を有し、次のような特徴を有し、
(t1)IL-33の受容体ST2への結合をブロックし、
(t2)IL-33によって誘導されるHUVEC細胞のIL-6分泌を阻害し、
(t3)IL-33タンパク質の阻害は、ヒトPBMCのIFNγ分泌を誘導し、
(t4)IL-33の阻害は、NK細胞のIFNγ分泌を誘導し、ならびに
(t5)IL-33の阻害は、KU812細胞のIL-5およびIL13の分泌を誘導する。
【0009】
別の好ましい例において、ヒトIL33に対する前記抗体のKd値は、マウスIL33に対するKd値よりもはるかに小さい(20倍またはそれ以上の差)。
【0010】
別の好ましい例において、前記抗体は、
(a)重鎖の相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、前記H-CDR1は、SEQ ID NO:18に示されたとおりであるか、またはSEQ ID NO:18において最大2個のアミノ酸が突然変異した突然変異体を置き換え、H-CDR2は、SEQ ID NO:19に示されたとおりであるか、またはSEQ ID NO:19において最大4個のアミノ酸が突然変異した突然変異体を置き換え、H-CDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:20に示されたとおりであるか、またはSEQ ID NO:20において7個のアミノ酸が突然変異した突然変異体を置き換え、ならびに
(b)軽鎖の相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3とを含み、前記L-CDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:21に示されたとおりであるか、またはSEQ ID NO:21において最大2個のアミノ酸が突然変異した突然変異体を置き換え、前記L-CDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:22に示され、前記L-CDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:23に示されたとおりであるか、またはSEQ ID NO:23において最大3個のアミノ酸が突然変異した突然変異体を置き換える。
【0011】
好ましい解決策として、前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
(a)アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:15、16および17示されるか、またはそれぞれSEQ ID NO:18、19および20に示されるか、またはそれぞれSEQ ID NO:18、24および25に示されるような重鎖の相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、ならびに
(b)アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:21、22および23に示されるか、またはそれぞれSEQ ID NO:26、22および27に示されるか、またはそれぞれSEQ ID NO:26、22および28に示されるような軽鎖の相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3とを含む。
【0012】
別の好ましい例において、前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
(a1)アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:15、16および17に示されるような重鎖の相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、ならびに (b1)アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:21、22および23に示されるような軽鎖の相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3と、または
(a2)アミノ酸配列がそれぞれ18、19および20に示されるような重鎖の相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、ならびに
(b2)アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:21、22および23に示されるような軽鎖の相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3と、または
(a3)アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:18、24および25に示されるような重鎖の相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、ならびに (b3)アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:26、22および27に示されるような軽鎖の相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3と、または
(a4)アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:18、19および20に示されるような重鎖の相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、ならびに (b4)アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:26、22および28に示されるような軽鎖の相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3とを含む。
【0013】
別の好ましい例において、前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
(a2)アミノ酸配列がそれぞれ18、19および20に示されるような重鎖の相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、ならびに
(b2)アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:21、22および23に示されるような軽鎖の相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3と、または
(a3)アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:18、24および25に示されるような重鎖の相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、ならびに (b3)アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:26、22および27に示されるような軽鎖の相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3とを含む。
【0014】
別の好ましい例において、上記のCDRのいずれかのアミノ酸配列は、1、2、3、4、5、6または7個のアミノ酸の付加、欠失、修飾および/または置換を受けた誘導CDR配列を含み、また、前記誘導CDR配列を含むVHおよびVLで構成される誘導抗体は、IL-33に対する結合親和性を保持することができる。
【0015】
本発明の「抗体(Ab)」は、二つの同一の軽鎖(L)および二つの同一の重鎖(H)からなる、約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、一つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に連結され、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間のジスルフィド結合の数は異なる。各重鎖および軽鎖には、規則的に間隔された鎖内ジスルフィド結合もある。各重鎖の一端には可変領域(VH)があり、その後には定常領域である。各軽鎖の一端には、可変領域(VL)があり、他端には、定常領域があり、軽鎖の定常領域は、重鎖の最初の定常領域と対向し、軽鎖の可変領域は、重鎖の可変領域と対向する。本発明の抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも二つの抗体で形成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)等を含む。
【0016】
本発明の「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な集団から得られる抗体を指し、即ち、当該集団に含まれる個々の抗体は、少数の可能性のある自然に発生する突然変異を除いて、同じである。モノクローナル抗体は、単一の抗原部位に対して非常に特異的である。さらに、従来のポリクローナル抗体製剤(通常、異なる決定基に対する異なる抗体を使用する)とは異なり、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に向けられる。
【0017】
それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体の利点は、それらがハイブリドーマ培養によって合成され、他の免疫グロブリンによって汚染されないことである。「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均一な集団から得られる抗体の特性を示し、これは、抗体を産生するための特定の方法を必要とすると解釈されるべきではない。
【0018】
本発明の「抗原結合断片」とは、ヒトIL-33に特異的に結合できる抗体の断片を指す。本発明の抗原結合断片の例としては、Fab断片、F(ab’)2断片、Fv断片等を含む。Fab断片は、パパインで抗体を消化することによって産生される断片である。
【0019】
F(ab’)2断片は、ペプシンで抗体を消化することによって産生される断片である。
【0020】
Fv断片は、抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を非共有結合で緊密に結合する二量体構成である。
【0021】
好ましい解決策として、前記抗体は、マウス抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体である。
【0022】
本発明の「マウス抗体」とは、ラットまたはマウス、好ましくはマウス由来の抗体を指す。本発明のマウス抗体は、ヒトIL-33を抗原としてマウスを免疫し、且つハイブリドーマ細胞をスクリーニングすることにより得られる。
【0023】
本発明の「キメラ抗体」とは、ある種に由来する重鎖および軽鎖可変領域配列と、ならびに別の種に由来する定常領域配列とを含む抗体、例えば、ヒト定常領域に連結されたマウス重鎖および軽鎖可変領域を有する抗体を指す。好ましくは、本発明のキメラ抗体は、マウス抗体864F3、874F7、871G1重鎖可変領域および突然変異を含むヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4重鎖定常領域から組み替えられ、軽鎖可変領域は、ヒトkappa鎖の定常領域から組み替えられる。
【0024】
本発明の「ヒト化抗体」とは、そのCDRが非ヒト種(好ましくはマウス)の抗体に由来し、抗体分子中の残りの部分(フレームワーク領域および定常領域を含む)がヒト抗体に由来することを指す。さらに、フレームワーク領域の残基が変更されて、結合親和性を維持することができる。好ましくは、本発明のヒト化抗体は、マウス抗体864F3、874F7、871G1のCDR領域およびヒト抗体の非CDR領域から組み替えられ、重鎖可変領域は、突然変異を含むヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4重鎖定常領域と組み替えられ、軽鎖可変領域は、ヒトkappa鎖の定常領域と組み替えられ、重要な影響を与える一部の残基に対して、突然変異して得られる。
【0025】
好ましい解決策として、前記抗原結合断片は、Fab断片、F(ab’)2断片、Fv断片を含む。
【0026】
好ましい解決策として、前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:6に示されたとおりであるか、またはそれぞれSEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:6に示されたとおりであるか、またはそれぞれSEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:10に示されたとおりであるか、またはそれぞれSEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:12に示されたとおりである。
【0027】
好ましい解決策として、前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:32に示されたとおりであり、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:29、30、31、33、34または35に示されたとおりである。
【0028】
好ましい解決策として、前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:40に示されたとおりであり、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:37、38または39に示されたとおりである。
【0029】
好ましい解決策として、前記抗体の重鎖定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4の重鎖定常領域から選択される。
【0030】
好ましい解決策として、前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:36に示されたとおりであり、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:33、34または35に示されたとおりである。
【0031】
別の好ましい例において、前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:32に示されたとおりであり、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:34に示されたとおりであるか、または前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:40に示されたとおりであり、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:38に示されたとおりである。別の好ましい例において、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列リストのSEQ ID NO:32、40または36に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性または配列相同性を有する。
【0032】
別の好ましい例において、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列リストのSEQ ID NO:29、30、31、33、34、35、37、38または39に示されるようなアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性または配列相同性を有する。
【0033】
好ましい解決策として、前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片の重鎖定常領域および軽鎖定常領域のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:13およびSEQ ID NO:14に示されたとおりである。
【0034】
別の好ましい例において、前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片とIL-33タンパク質との結合エピトープは、SEQ ID NO:55に対応する、 45位のリジン(K45)、49位のバリン(V49)、65位のアスパラギン酸(D65)、50位のロイシン(L50)、60位のセリン(S60)、52位のセリン(S52)、48位のリジン(K48)、51位のロイシン(L51)、53位のチロシン(Y53)、55位のグルタミン酸(E55)からなる群から選択される部位を含み、
より好ましくは、45位のリジン(K45)、49位のバリン(V49)、65位のアスパラギン酸(D65)、50位のロイシン(L50)からなる群から選択される部位を含む。
【0035】
別の好ましい例において、前記部位は野生型ヒトIL-33タンパク質のアミノ酸配列に対応して、前記アミノ酸配列は、NCBI:NP_254274.1の112位のSer至270位のThrである。
【0036】
本発明の別の態様は、ヌクレオチド分子を提供し、前記ヌクレオチド分子は、上記のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片をコードする。
【0037】
好ましい解決策として、重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードする前記ヌクレオチド分子のヌクレオチド配列は、それぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5に示されたとおりであるか、またはそれぞれSEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:5に示されたとおりであるか、またはそれぞれSEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:9に示されたとおりであるか、またはそれぞれSEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:11に示されたとおりである。
【0038】
好ましい解決策として、重鎖可変領域をコードする前記ヌクレオチド分子のヌクレオチド配列は、それぞれSEQ ID NO:41、42、43、45、46または47に示されたとおりであり、軽鎖可変領域をコードする前記ヌクレオチド分子のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:44に示されたとおりである。
【0039】
好ましい解決策として、重鎖可変領域をコードする前記ヌクレオチド分子のヌクレオチド配列は、それぞれSEQ ID NO:49、50または51に示されたとおりであり、軽鎖可変領域をコードする前記ヌクレオチド分子のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:52に示されたとおりである。
【0040】
好ましい解決策として、重鎖可変領域をコードする前記ヌクレオチド分子のヌクレオチド配列は、それぞれSEQ ID NO:45、46または47に示されたとおりであり、軽鎖可変領域をコードする前記ヌクレオチド分子のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:48に示されたとおりである。
【0041】
本発明に記載のヌクレオチド分子の調製方法は、当技術分野における従来の調製方法であり、好ましくは、PCR法等の遺伝子クローニング技術によって、上記のモノクローナル抗体をコードするヌクレオチド分子を取得するか、または人工的な全配列合成の方法によって上記のモノクローナル抗体をコードするヌクレオチド分子を取得する段階等の調製方法を含む。
【0042】
当業者は、上記のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列が、置き換え、欠失、変更、挿入または増加を適切に導入することによって、ポリヌクレオチド相同体を提供できることを分かる。本発明のポリヌクレオチドの相同体は、当該ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片遺伝子をコードする一つまたは複数の塩基に対して、抗体の活性が維持される範囲内で置き換え、欠失または増加を実施することによって調製される。
【0043】
本発明の別の態様は、発現担体を提供し、前記発現担体は、上記のヌクレオチド分子を含む。
【0044】
ここで、前記発現担体は、当技術分野の従来の発現担体であり、例えば、プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および/または配列、ならびに他の適切な配列の発現担体等の適切な調節配列を含むことを指す。前記発現担体は、適切なファージまたはファージミド等のウイルスまたはプラスミドであり得、より多くの技術的な詳細については、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第二版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989を参照しない。核酸操作のための多くの既知の技術およびプロトコルは、Ausubelらによって編集されたCurrent Protocols in Molecular Biology、第二版を参照する。本発明に記載の発現担体は、好ましくは、pDR1、pcDNA3.1(+)、pcDNA3.1/ZEO(+)、pDHFR、pcDNA4、pDHFF、pGM-CSFまたはpCHO 1.0である。
【0045】
本発明は、宿主細胞をさらに提供し、前記宿主細胞は、上記の発現担体を含む。
【0046】
本発明に記載の宿主細胞は、上記の組換え発現担体がそれ自体で安定的に複製できる限り、当技術分野における従来の様々な宿主細胞であり、携帯される前記ヌクレオチドは、効果的に発現されることができる。ここで、前記宿主細胞は、原核発現細胞および真核発現細胞を含み、前記宿主細胞は、好ましくは、COS、CHO(チャイニーズハムスター卵巣、Chinese H amster Ovary)、NS0、sf9、sf21、DH5α、BL21(DE3)またはTG1、より好ましくはE.coli TG1、BL21(DE3)細胞(一本鎖抗体またはFab抗体を発現する)またはCHO-K1細胞(完全長IgG抗体を発現する)を含む。前述の発現担体を宿主細胞に形質転換することによって、本発明の好ましい組換え発現形質転換体を得ることができる。ここで、前記形質転換方法は、当技術分野における従来の形質転換法であり、好ましくは化学的形質転換法、熱ショック法またはエレクトロポレーションである。
【0047】
本発明の別の態様は、上記のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片を調製する方法を提供し、前記方法は、次のような段階を含み、
a)発現条件下で、上記の宿主細胞を培養することにより、前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片を発現する段階と、
b)a)に記載のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片を分離および精製する段階とを含む。
【0048】
本発明に記載の宿主細胞の培養方法、前記抗体の分離および精製の方法は、当技術分野における従来の方法であり、具体的な操作方法については、対応する細胞培養技術マニュアルおよび抗体分離・精製技術マニュアルを参照する。本発明に開示されるヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片の調製方法は、発現条件下で、上記の宿主細胞を培養することにより、前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片を発現する段階と、前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片を分離および精製段階とを含む。上記の方法を用いて、組換えタンパク質を、SDS-PAGE電気泳動上で単一のバンドのような実質的に均一な物質に精製することができる。
【0049】
アフィニティークロマトグラフィー法を使用して、本発明で開示される前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片を分離および精製することができ、使用するアフィニティーカラム的の特性に応じて、高塩緩衝液、pH変更等の従来の方法を使用して、アフィニティーカラム上に結合した前記ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片を溶出することができる。本発明の発明者らは、得られたヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片について検出実験を行い、実験結果は、当該ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片が、高い親和性で抗原に結合し、より高い親和性を有することを示す。
【0050】
本発明の別の態様は、組成物を提供し、前記組成物は、上記のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容される担体を含む。
【0051】
本発明によって提供されるヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片は、薬学的に許容される担体と医薬製剤である組成物を構成することにより、より安定的に治療効果を発揮し、これらの製剤は、本発明で開示されるヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片の立体構造の完全性を確保することができ、同時にタンパク質の多官能基を保護して、その分解を防ぐ(縮合、脱アミノ化または酸化を含むが、これらに限定されない)。一般に、液体製剤の場合、通常、2℃-8℃条件下で少なくとも1年間安定的に保存でき、凍結乾燥製剤の場合、30℃条件下で少なくとも6が月間安定的に保存する。前記二重特異性抗体製剤は、懸濁、水性注射、凍結乾燥等の製薬分野で一般的に使用される製剤であり得る。
【0052】
本発明で開示されるヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片の水性注射または凍結乾燥製剤については、薬学的に許容される担体は、好ましくは、界面活性剤、溶液安定剤、等張調節剤および緩衝液の一つまたはその組み合わせを含むが、これらに限定されない。ここで、界面活性剤は、好ましくは、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(tween20または80)等の非イオン性界面活性剤、poloxamer(例えば、poloxamer 188)、Triton、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル、リノレイルまたはステアリルサルコシン、Pluronics、MONAQUATTM等を含むが、これらに限定されず、その加えた量は、ヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片の粒子か傾向が最小限であるべきである。溶液安定剤は、好ましくは、等の一つまたはその組み合わせを含むが、これらに限定されず、還元性糖および非還元性糖等の糖類、グルタミン酸ナトリウムまたはヒスチジン等のアミノ酸類、三価アルコール、高級糖アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のアルコール類を含むが、これ限定されず、溶液安定剤の加えた量は、最後で形成される製剤が当業者によって安定であると考えられる期間内で、安定したままであるような量で添加される。等張調節剤は、好ましくは、塩化ナトリウム、マンニトールの一つまたはその組み合わせを含むが、これらに限定されない。緩衝液は、好ましくは、Tris、ヒスチジン緩衝液、リン酸塩緩衝液の一つまたはその組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0053】
本発明の別の態様は、抗体薬物コンジュゲートを提供し、前記抗体薬物コンジュゲートは、
(a)上記のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む抗体部分と、および
(b)検出可能な標識、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、またはその組み合わせからなる群から選択される前記抗体部分とカップリングするカップリング部分とを含む。
【0054】
本発明の別の態様は、喘息、関節炎、アトピー性/アレルギー性皮膚炎、慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、全身性硬化症、肝線維症、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、多発性硬化症、糖尿病性腎疾患、炎症性腸疾患、乾癬、好酸球性食道炎、糖尿病性黄斑浮腫、加齢黄斑変性、ドライアイ、腫瘍を治療するための薬物の調製における上記のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片または医薬組成物、抗体薬物コンジュゲートの適用を提供する。前記関節炎は、関節リウマチ、変形性関節症、強直性脊椎炎、痛風性関節炎、反応性関節炎、感染性関節炎、外傷性関節炎、乾癬性関節炎、腸疾患性関節炎などを含む。
【0055】
本発明のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片およびその組成物をヒトを含む動物に投与する場合、投与量は、患者の年齢と体重、疾患の性質と重症度、および投与経路によって異なるが、動物実験の結果および様々な状況を参照して、総量が一定の範囲を超えることはできない。具体的には、静脈内注射の投与量は、1-1800mg/日である。
【0056】
本発明の別の態様は、必要とする対象に上記のヒトIL-33に結合する抗体またはその抗原結合断片または医薬組成物、抗体薬物コンジュゲート、またはその組み合わせを投与する段階を含むことを特徴とする、喘息、関節炎、アトピー性/アレルギー性皮膚炎、慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、全身性硬化症、肝線維症、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、多発性硬化症、糖尿病性腎疾患、炎症性腸疾患、乾癬、好酸球性食道炎、糖尿病性黄斑浮腫、加齢黄斑変性、ドライアイ、腫瘍を治療する方法を提供する。
【0057】
本発明の別の態様は、IL-33タンパク質の突然変異体を提供し、野生型ヒトIL-33タンパク質のアミノ酸配列に対応して、前記突然変異体は、
(Z1)45位のリジン(K45)、
(Z2)49位のバリン(V49)、
(Z3)65位のアスパラギン酸(D65)、
(Z4)50位のロイシン(L50)、
(Z5)60位のセリン(S60)、
(Z6)52位のセリン(S52)、
(Z7)48位のリジン(K48)、
(Z8)51位のロイシン(L51)、
(Z9)53位のチロシン(Y53)、
(Z10)55位のグルタミン酸(E55)からなる群から選択される一つまたは複数の部位で発生する突然変異を含む。
【0058】
別の好ましい例において、前記野生型ヒトIL-33タンパク質の配列は、SEQ ID NO:55に示されたとおりである。
【0059】
別の好ましい例において、前記突然変異体は、
(Z1)45位のリジン(K45)、
(Z2)49位のバリン(V49)、
(Z3)65位のアスパラギン酸(D65)、
(Z4)50位のロイシン(L50)からなる群から選択される一つまたは複数の部位で発生する突然変異を含み、および/または
前記突然変異体は、
(Z5)60位のセリン(S60)、
(Z6)52位のセリン(S52)からなる群から選択される一つまたは複数の部位で発生する突然変異を含み、および/または
前記突然変異体は、
(Z7)48位のリジン(K48)、
(Z8)51位のロイシン(L51)、
(Z9)53位のチロシン(Y53)、
(Z10)55位のグルタミン酸(E55)からなる群から選択される一つまたは複数の部位で発生する突然変異を含む。
【0060】
別の好ましい例において、ヒトIL-33に結合する抗体に対する野生型IL-33タンパク質の親和性と比較して、ヒトIL-33に結合する抗体に対する前記IL-33タンパク質の突然変異体の親和性は、1倍減少し、好ましくは5倍減少し、より好ましくは10倍減少し、より好ましくは25倍減少し、最も好ましくは50倍減少する。
【0061】
別の好ましい例において、前記突然変異体は、
(Z11)41位のリジン(K41)、
(Z12)42位のリジン(K42)、
(Z13)43位のアスパラギン酸(D43)、
(Z14)44位のグルタミン酸(E44)、
(Z15)46位のリジン(K46)、
(Z16)47位のアスパラギン酸(D47)、
(Z17)54位のチロシン(Y54)、
(Z18)56位のセリン(S56)、
(Z19)57位のグルタミン(Q57)、
(Z20)58位のヒスチジン(H58)、
(Z21)59位のプロリン(P59)、
(Z22)61位のアスパラギン(N61)、
(Z23)62位のグルタミン酸(E62)、
(Z24)63位のセリン(S63)、
(Z25)67位のバリン(V67)、
(Z26)68位のアスパラギン酸(D68)、
(Z27)70位のリジン(K70)からなる群から選択される一つまたは複数の部位で発生する突然変異をさらに含む。
【0062】
別の好ましい例において、前記IL-33タンパク質の突然変異体は、(Z1)-(Z27)の一つまたは複数のアミノ酸をアラニン(A)またはグリシン(G)に突然変異させることを含む。
【0063】
別の好ましい例において、前記IL-33タンパク質の突然変異体における突然変異は、
K45A、V49A、D65A、L50A、S60A、S52A、K48A、L51A、Y53A、E55A、K41A、K42A、D43A、E44A、K46A、D47A、Y54A、S56A、Q57A、H58A、P59A、N61A、E62A、S63A、V67A、D68A、K70A、またはその組み合わせからなる群から選択され、
好ましくは、K45A、V49A、D65A、L50A、S60A、S52A、K48A、L51A、Y53A、E55Aからなる群から選択される一つまたは複数であり、より好ましくは、K45A、V49A、D65A、L50A、S60A、S52Aからなる群から選択される一つまたは複数であり、最も好ましくはK45A、V49A、D65A、L50Aからなる群から選択される一つまたは複数である。
【0064】
別の好ましい例において、前記IL-33タンパク質の突然変異体は、
SEQ ID NO:55に示されるアミノ酸配列を一つまたは複数、好ましくは1-20個、より好ましくは1-15個、より好ましくは1-10個、より好ましくは1-8個、より好ましくは1-3個、最も好ましくは1個のアミノ酸残基の置換、欠失または付加によって形成される、IL-33抗体結合機能を有する誘導されるポリペプチドからなる群から選択される。
【0065】
別の好ましい例において、前記IL-33タンパク質の突然変異体的アミノ酸配列は、SEQ ID NO:55と比較して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、より好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、99%以上の配列相同性を有する。
【0066】
本発明の別の態様は、抗ヒトIL-33抗体結合エピトープを評価するための方法を提供し、
(S1)抗ヒトIL-33抗体を提供する段階と、
(S2)野生型IL-33タンパク質に結合する親和性A2と比較して、IL-33突然変異体に対する前記抗ヒトIL-33抗体の親和性A1を検出する段階とを含み、ここで、前記IL-33突然変異体は、K45A、V49A、L50A、D65A、S60AまたはS52Aの一つまたは複数の種の部位突然変異を含み、親和性低下率がA1/A2≧2.5倍、好ましくは≧10倍である場合、前記抗ヒトIL-33抗体結合野生型IL-33タンパク質の線形および/または空間エピトープは、K45、V49、L50、D65、S60AまたはS52A部位の一つまたは複数の種を含むことを示し、ここで、前記抗ヒトIL-33抗体は、
アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:18、24および25示されるような重鎖の相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と、ならびに
アミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:26、22および27に示されるような軽鎖の相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3とを含む。
【0067】
当技術分野の常識に適用することに基づいて、上記の各好ましい条件は、任意に組み合わせ、即ち、本発明の各好ましい例を得ることができる。
【0068】
本発明で使用される試薬および原材料は、すべて市販されている。
【発明の効果】
【0069】
本発明の肯定的かつ進歩的な効果は、現在臨床上でIL-33が強く発現する疾患に対する新規、特異的で、効果的な治療薬を急務に開発して、このような疾患に苦しむ人々の生活の質を向上させ、患者により効果的な治療アプローチを提供することである。本発明の抗体は、ヒトIL-33に対して良好な親和性を有し、IL-33とその受容体ST2との結合をブロックすることができ、様々な疾患の治療に使用されることができ、良好な臨床適用の見通しを有する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1A】ヒトIL-33に対するマウス抗体の結合活性。
【
図1B】ヒトIL-33に対するマウス抗体の結合活性。
【
図2A】IL-33に対するST2の結合をブロックするマウス抗体の活性。
【
図2B】IL-33に対するST2の結合をブロックするマウス抗体の活性。
【
図3A】HUVEC細胞におけるIL-33誘導性IL-6発現に対するマウス抗体の阻害効果。
【
図3B】HUVEC細胞におけるIL-33誘導性IL-6発現に対するマウス抗体の阻害効果。
【
図3C】HUVEC細胞におけるIL-33誘導性IL-6発現に対するマウス抗体の阻害効果。
【
図4】HUVEC細胞におけるIL-33誘導性IL-8発現に対するマウス抗体の阻害効果。
【
図5】蟹食猿IL-33抗原に対するマウス抗体の交差活性。
【
図6】マウス抗体のインビボでの中和活性を評価するための脾臓重量実験。
【
図7】ヒトIL-33に対するキメラ抗体の結合活性。
【
図8】IL-33に対するST2の結合をブロックするキメラ抗体の活性。
【
図9A】ヒトIL-33に対する各ヒト化抗体の結合活性。
【
図9B】ヒトIL-33に対する各ヒト化抗体の結合活性。
【
図9C】ヒトIL-33に対する各ヒト化抗体の結合活性。
【
図9D】ヒトIL-33に対する各ヒト化抗体の結合活性。
【
図10】IL-33に対するST2の結合をブロックするヒト化抗体の活性。
【
図11】HUVEC細胞におけるIL-33誘導性IL-6発現に対するヒト化抗体の阻害効果。
【
図12】IL-33誘導性PBMCからのIFNγ分泌に対するヒト化抗体の阻害効果。
【
図13】IL-33誘導性NK細胞からのIFNγ分泌に対するヒト化抗体の阻害効果。
【
図14】ヒト化抗体864F3-Hu4および874F7-Hu1は、IL-33誘導性KU812細胞からのIL-5分泌を効果的に阻害することができる。
【
図15】ヒト化抗体864F3-Hu4および874F7-Hu1は、IL-33誘導性KU812細胞からのIL-13分泌を効果的に阻害することができる。
【
図16】ヒト化抗体のインビボでの薬力学的活性を評価するための脾臓重量実験。
【
図17】ヒト化抗体864F3-Hu4および874F7-Hu1のインビボでの薬力学的活性を評価するための脾臓重量実験。
【
図18】ヒト化抗体864F3-Hu4および874F7-Hu1は、マウスの末梢血IL-5分泌を効果的に阻害することができる。
【
図19】ヒト化抗体864F3-Hu4および874F7-Hu1は、マウスの末梢血においてヒトIL-33の刺激によって引き起こされる好酸球の増加を効果的に減少させることができる。
【
図20】874F7-Hu1に対するIL-33突然変異体タンパク質(E44A、K45A、K46A、Q57A、H58A、P59A、S60A)の親和性。
【
図21】874F7-Hu1に対するIL-33突然変異体タンパク質(K48A、V49A、L51A、S52A、Y53A、E55A)の親和性。
【
図22】874F7-Hu1に対するIL-33突然変異体タンパク質(N61A、E62A、S63A、D65A、V67A、D68A、K70A)の親和性。
【
図23】874F7-Hu1に対するIL-33突然変異体タンパク質(L50A)の親和性。
【
図24】IL-33結晶化の3D構造図における874F7-Hu1の結合に影響を与える重要なアミノ酸部位の位置。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明者らは、広範囲かつ綿密な研究、大量のスクリーニングの後、優れた親和性を有する一連の抗IL-33ヒト化抗体を得た。具体的には、本発明のヒト化抗体は、IL-33とその受容体ST2との結合をブロックし、IL-33によって誘導されるPBMCおよびNK細胞からのIFNγ分泌を阻害し、IL-33を阻害して好塩基性白血病細胞KU812を誘導してIL-5およびIL-13を分泌させることができる。本発明のヒト化抗体は、生体内で明らかな中和活性を有する。マウス動物実験において、本発明のヒト化抗体を投与して単回治療すると、マウスの末梢血におけるヒトIL-33の刺激によって引き起こされる好酸球の増加を効果的に減少させることができる。本発明の抗体は、様々なIL-33関連病症の治療に使用されることが期待される。これに基づいて、本発明を完成させた。
【0072】
用語
本発明において、「抗体(Antibody、略してAb)」または「免疫グロブリン(Immunoglobulin G、略してIgG)」という用語は、二つの同一の軽鎖(L)および二つの同一の重鎖(H)で構成される、同じ構造的特徴を有するヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、一つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に結合し、異なる免疫グロブリンアイソタイプ(isotype)の重鎖間でのジスルフィド結合の数は、異なる。各重鎖および軽鎖には、規則的な間隔で配置された鎖内ジスルフィド結合もある。各重鎖の一端には、可変領域(VH)があり、その後には定常領域であり、重鎖定常領域は、CH1、CH2、およびCH3の三つのドメインで構成される。各軽鎖の一端には、可変領域(VL)があり、他端には、定常領域があり、軽鎖定常領域は、一つのドメインCLを含み、軽鎖の定常領域は、重鎖の定常領域のCH1ドメインと対になり、軽鎖の可変領域は、重鎖の可変領域と対になる。定常領域は、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、抗体依存性細胞媒介性細胞特性効果(ADCC,antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)等に関与するなど、様々なエフェクター機能を示す。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4サブタイプを含み、軽鎖定常領域は、κ(Kappa)またはλ(Lambda)を含む。抗体の重鎖と軽鎖とは、重鎖のCH1ドメインと軽鎖のCLドメインとの間のジスルフィド結合によって共有結合され、抗体の二つの重鎖は、ヒンジ領域間に形成されるポリペプチド間ジスルフィド結合によって共有結合される。
【0073】
本発明において、「Fab」および「Fc」という用語は、パパインが抗体を二つの完全に同一のFabセグメントおよび一つのFcセグメントに分解することができることを指す。Fabセグメントは、抗体の重鎖のVHおよびCH1ならびに軽鎖のVLおよびCLドメインで構成される。Fcセグメントは、抗体のCH2およびCH3ドメインで構成される、結晶化可能な断片(fragment crystallizable、Fc)である。Fcセグメントは、抗原結合活性を有さず、抗体とエフェクター分子または細胞と相互作用する部位である。
【0074】
本発明において、「scFv」という用語は、抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域が通常15~25個のアミノ酸のリンカー(linker)を介して連結されることによって形成される、一本鎖抗体(single chain antibody fragment、scFv)である。
【0075】
本発明において、「可変」という用語は、抗体の可変領域の特定の部分の配列が異なることを表し、それは、特定の抗原に対する様々な特定の抗体の結合および特異性を形成する。しかしながら、可変性は、抗体可変ドメイン全体に均等に分されていない。それは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域の相補性決定領域(complementarity-determining region、CDR)または超可変領域と呼ばれる三つの断片に集中する。可変領域のより保存的な部分は、フレームワーク領域(frame region、FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変領域は、それぞれ、四つのFR領域を含み、それらは、接続環を形成する三つのCDRによって接続された大抵β-フォールディング構成にあり、場合によっては部分的なβフォールディング構造を形成することができる。各鎖のCDRは、FR領域によって緊密に近接され、かつ別の鎖のCDRとともに抗体の抗原結合部位を形成する(Kabatら、NIH Publ.No.91-3242、巻I、647~669ページ(1991)を参照する)。
【0076】
本明細書で使用されるように、「フレームワーク領域」(FR)という用語は、CDR間に挿入されたアミノ酸配列、即ち、単一種の異なる免疫グロブリン間で比較的保存される免疫グロブリンの軽鎖および重鎖可変領域のそれらの部分を指す。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖は、それぞれ、FR1-L、FR2-L、FR3-L、FR4-LおよびFR1-H、FR2-H、FR3-H、FR4-Hと呼ばれる四つのFRを有する。対応的に、軽鎖可変ドメインは、(FR1-L)-(CDR1-L)-(FR2-L)-(CDR2-L)-(FR3-L)-(CDR3-L)-(FR4-L)と呼ばれることができ、且つ重鎖可変ドメインは、(FR1-H)-(CDR1-H)-(FR2-H)-(CDR2-H)-(FR3-H)-(CDR3-H)-(FR4-H)として表されることができる。好ましくは、本発明のFRは、ヒト抗体FRまたはその誘導体であり、前記ヒト抗体FRの誘導体は、天然に存在するヒト抗体FRと実質的に同一であり、即ち、配列同一性は、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%に達する。
【0077】
CDRのアミノ酸配列を知ると、当業者は、フレームワーク領域FR1-L、FR2-L、FR3-L、FR4-Lおよび/またはFR1-H、FR2-H、FR3-H、FR4-Hを容易に決定することができる。
【0078】
本明細書で使用されるように、「ヒトフレームワーク領域」という用語は、天然に存在するヒト抗体のフレームワーク領域と実質的に同一(約85%またはそれ以上、具体的には、90%、95%、97%、99%または100%である)であるフレームワーク領域である。
【0079】
本明細書で使用されるように、「リンカー」という用語は、軽鎖および重鎖のドメインが交換された二重可変領域免疫グロブリンにフォールディングするのに十分な可動性を提供するために、免疫グロブリンドメインに挿入された一つまたは複数のアミノ酸残基を指す。本発明において、好ましいリンカーとは、リンカーLinker1およびLinker2を指し、ここで、Linker1は、一本鎖抗体(scFv)のVHおよびVLと接続し、Linker2は、scFvを別の抗体の重鎖と接続するために使用される。
【0080】
適切なリンカーの例としては、モノグリシン(Gly)、またはセリン(Ser)残基を含み、リンカーのアミノ酸残基のマーカーおよび配列は、リンカーで達成する必要がある二次構造要素のタイプによって異なる。
【0081】
本発明において、本発明の抗体は、その保存的突然変異体をさらに含み、これは、本発明の二重特異性抗体のアミノ酸配列と比較して、最大10個、好ましくは最大8個、より好ましくは最大5個、最も好ましくは最愛3個のアミノ酸が性質の類似または近似のアミノ酸によって置き換えられてポリペプチドを形成することを指す。これらの保存的突然変異ポリペプチドは、好ましくは、表Aに従ってアミノ酸を置き換えることによって産生される。
【表1】
【0082】
本発明において、「抗」、「結合」、「特異的結合」という用語は、抗体とその抗原との間の反応等、二つの分子間のランダムでない結合反応を指す。通常、抗体は、約10-7M未満、例えば、約10-8M未満、10-9M未満、10-10M未満、10-11M未満またはそれ以下の平衡解離定数(KD)で当該抗原に結合する。本発明において、「KD」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指し、抗体と抗原との間の結合親和性を説明するために使用される。平衡解離定数が小さいほど、抗体-抗原の結合が強くなり、抗体と抗原との間の親和性が高くなる。例えば、BIACORE機器で表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance、略してSPR)を使用して抗体と抗原との結合親和性を測定するか、またはELISAを使用して抗体と抗原との結合の相対的親和性を測定する。
【0083】
本発明において、「エピトープ」という用語は、抗体に特異的に結合するポリペプチド決定基を指す。本発明のエピトープは、抗体が結合する抗原の領域である。
【0084】
本発明は、前記抗体またはそのフラグメントまたはその融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド分子をさらに提供する。本発明のポリヌクレオチドは、DNA形態またはRNA形態であり得る。DNA形態は、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAを含む。DNAは、一本鎖または二本鎖であり得る。DNAは、コード鎖または非コード鎖であり得る。
【0085】
関連する配列を得られたら、組換え法を使用して、関連する配列を大量に得ることができる。通常、これは、それを担体にクローニングし、次に細胞に形質転換し、次に従来の方法によって増殖した宿主細胞から関連する配列を単離することによって得られる。
【0086】
本発明は、前記適切なDNA配列および適切なプロモーターまたは制御配列を含む担体にさらに関する。これらの担体は、タンパク質を発現できるように適切な宿主細胞に形質転換するために使用されることができる。
【0087】
医薬組成物および適用
本発明は、組成物をさらに提供する。好ましくは、前記組成物は、上記の抗体またはその活性断片またはその融合タンパク質、ならびに薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物である。通常、これらの物質を、毒性がなく、不活性で、薬学的に許容される水性担体媒体で処方することができ、ここで、pHは、通常、約5~8、好ましくは、約6~8であり、pH値は、処方される物質の性質および治療される病症によって異なる。処方された医薬組成物は、従来の経路で投与されることができ、ここで、静脈内注射、静脈内点滴、皮下注射、局所注射、筋肉内注射、腫瘍内注射、腹腔内注射(腹膜内等)、頭蓋内注射、または腔内注射をふくむ(これらに限定されない)。本発明において、「医薬組成物」という用語は、本発明の二重特異性抗体を薬学的に許容される担体と組み合わせて医薬製剤組成物を形成することにより、より安定的に治療効果を発揮することができ、これらの製剤は、本発明で開示される二重特異性抗体のアミノ酸コア配列のコンフォメーションの完全性を確保し、同時にタンパク質の多官能基を分解(縮合、脱アミノ化または酸化を含むがこれらに限定されない)から保護することができる。本発明の医薬組成物は、安全かつ有効な量(例えば、0.001~99wt%、好ましくは、0.01~90wt%、より好ましくは、0.1~80wt%)の本発明の上記の二重特異性抗体(またはそのコンジュゲート)および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。このような担体は、生理食塩水、緩衝液、グルコース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。薬物製剤は、投与方法と一致する必要がある。
【0088】
本発明の医薬組成物は、例えば、生理食塩水またはグルコースと他のアジュバントとを含む水溶液を使用して、従来の方法によって注射の形態で調製することができる。注射剤および溶液等の医薬組成物は、無菌条件下で調製する必要がある。有効成分の投与量は、治療有效量であり、例えば、毎日の約10μg/kg体重~約50mg/kg体重である。さら
に、本発明の二重特異性抗体は、他の治療剤とともに使用することもできる。
【0089】
医薬組成物を使用する場合、安全かつ有効な量の二重特異性抗体またはその免疫コンジュゲートを哺乳動物に投与し、ここで、当該安全かつ有効な量は、通常、少なくとも約10μg/kg体重であり、ほとんどの場合、約50mg/kg体重を超えなく、好ましくは、
当該投与量は、約10μg/kg体重~約10mg/kg体重である。もちろん,具体的な投
与量は、投与経路および患者の健康状態等の要因を考慮する必要があり、これらは、すべて熟練した医師のスキル範囲内にある。
【0090】
抗体-薬物コンジュゲート(ADC)
本発明は、本発明の抗体に基づく抗体薬物コンジュゲート(antibody-drug conjugate、ADC)をさらに提供する。
【0091】
典型的には、前記抗体薬物コンジュゲートは、前記抗体、およびエフェクター分子を含み、前記抗体は、前記エフェクター分子にカップリングし、好ましくは、化学カップリングである。ここで、前記エフェクター分子は、好ましくは治療活性を有する薬物である。
【0092】
さらに、前記エフェクター分子は、毒性タンパク質、化学療法薬、小分子薬または放射性核種のうちの一つまたは複数の種であり得る。
【0093】
本発明の抗体は、カップリング剤を介して前記エフェクター分子にカップリングされることができる。前記カップリング剤の例としては、非選択的カップリング剤、カルボキシル基を用いたカップリング剤、ペプチド鎖、ジスルフィド結合を用いたカップリング剤のうちの任意の一つまたは複数の種であり得る。前記非選択的カップリング剤は、エフェクター分子と抗体とを共有結合させる化合物、例えば、グルタルアルデヒドなどを指す。前記カルボキシル基を用いたカップリング剤は、シスアコニット酸無水物カップリング剤(例えば、シスアコニット酸無水物)、アシルヒドラゾンカップリング剤(カップリング部位は、アシルヒドラゾンである)のうちの任意の一つまたは複数の種であり得る。
【0094】
抗体上の特定の残基(例えば、CysまたはLys等)は、様々な官能基と結合するために使用され、ここで、イメージング試薬(例えば、発色団および蛍光団)、診断試薬(例えば、MRI造影剤および放射性同位体)、安定剤(例えば、グリコールポリマー)ならびに治療剤を含む。抗体は、機能剤にカップリングされて、抗体-機能剤のコンジュゲートを形成することができる。機能剤(例えば、薬物、検出試薬、安定剤)は、抗体にカップリング(共有結合)される。機能剤は、抗体に直接、またはリンカーを介して間接的に結合することができる。
【0095】
抗体は、薬物にカップリングされることにより、抗体薬物コンジュゲート(ADCs)を形成することができる。典型的に、ADCは、薬物と抗体との間に位置するリンカーを含む。リンカーは、分解性または非分解性リンカーであり得る。分解性リンカーは、通常、細胞内環境、例えば、リンカーを分解する目的の部位で分解を受けやすく、それによって抗体から薬物を放出する。適切な分解性リンカーは、例えば、細胞内プロテアーゼ(例えば、リソソームプロテアーゼまたはエンドソームプロテアーゼ)によって分解可能なペプチジル含有リンカーを含む酵素的に分解可能なリンカー、またはグルクロニダーゼによって分解可能なグルクロニド含有リンカー等の糖リンカーを含む。ペプチジルリンカーは、例えば、バリン-シトルリン,フェニルアラニン-リジンまたはバリン-アラニンなどの二ペプチドを含むことができる。他の適切な分解性リンカーは、例えば、pH感受性リンカー(例えば、5.5未満のpHで加水分解するリンカー、例えば、ヒドラゾンリンカー)および還元条件下で分解できるリンカー(例えば、ジスルフィド結合リンカー)を含む。非分解性リンカーは、通常、抗体がプロテアーゼによって加水分解される条件下で薬物を放出する。
【0096】
抗体に結合される前に、リンカーは、特定のアミノ酸残基と反応できる活性な反応基を有し、結合は、活性な反応基を介して実現される。スルフヒドリル特異的活性な反応基が好ましく、マレイミド化合物、ハロゲン化アミド(例えば、ヨード、臭化または塩素化)、ハロエステル(例えば、ヨード、臭化または塩素化)、ハロメチルケトン(例えば、ヨード、臭化または塩素化)、ハロゲン化ベンジル(例えば、ヨード、臭化または塩素化)、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、対イオンが酢酸塩、塩素イオンまたは硝酸塩である3,6-ビス-(水銀メチル)ジオキサン等の水銀誘導体、ならびにポリメチレンジメチルスルフィドチオスルホネートを含む。リンカーは、例えば、チオスクシンイミドを介して抗体に結合したマレイミドを含むことができる。
【0097】
薬物は、任意の細胞毒性、細胞成長阻害性または免疫阻害性の薬物であり得る。実施形態において、リンカーは、抗体および薬物と結合し、薬物は、リンカーと結合を形成できる官能基を有する。例えば、薬物は、リンカーと結合を形成できるアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、またはケト基を有することができる。薬物がリンカーに直接結合される場合、薬物は、抗体に結合される前に、反応性活性基を有する。
【0098】
有用な薬物のクラスは、例えば、抗チューブリン薬、DNA副溝結合試薬、DNA複製阻害剤、アルキル化試薬、抗生物質、葉酸拮抗薬、代謝拮抗薬、化学増感剤、トポイソメラーゼ阻害剤、ビン化アルカロイド等を含む。本発明において、薬物-リンカーは、一つの簡単安段階でADCを形成することができる。他の実施形態において、二官能性リンカー化合物は、2段階または多段階方法でADCを形成するために使用されることができる。例えば、システイン残基は、最初の段階でリンカーの反応活性部分と反応され、また、その後の段階で、リンカー上の官能基が薬物と反応されることにより、ADCを形成する。
【0099】
通常、リンカー上の官能基は、薬物部分上の適切な反応活性基との特定の反応を促進するために選択される。非限定的な例としては、アジドベースの部分を使用して、薬物部分の反応性アルキニル基と特異的に反応させることができる。薬物は、アジドとアルキニル基との間の1,3-双極性環状付加を介してリンカーに共有結合される。他の有用な官能基は、例えば、ケトンおよびアルデヒド(ヒドラジドおよびアルコキシアミンとの反応に適する)、ホスフィン(アジドとの反応に適する)、イソシアネートおよびイソチオシアネート、ならびにN-ヒドロキシスクシンイミジルエステルなどの活性化されるエステル(アミンおよびアルコールとの反応に適する)を含む。「Bioconjugation Techniques」、第二版(Elsevier)に記載されるような、これらおよび他の結合策略は、当業者に周知である。当業者は、薬物部分およびリンカーの選択的反応については、反応性官能基の相補対が選択される場合、当該相補対の各メンバーは、リンカーおよび薬物の両方に使用されることができることを理解されたい。
【0100】
本発明は、抗体コンジュゲート(ADC)を形成するのに十分な条件下で、抗体を薬物-リンカー化合物と結合させる段階をさらに含むことができる、ADCを調製するための方法を提供する。
【0101】
特定の実施形態において、本発明の方法は、抗体-リンカーコンジュゲートを形成するのに十分な条件下で、抗体を二官能性リンカー化合物と結合させる段階を含む。これらの実施形態において、本発明の方法は、リンカーを介して薬物部分を抗体に結合させるのに十分な条件下で、抗体リンカーコンジュゲートを薬物部分に結合させる段階をさらに含む。
【0102】
いくつかの実施形態において、抗体薬物コンジュゲートADCは、次のような分子式を有し、
【化1】
【0103】
ここで、
Abは、抗体であり、
LUは、リンカーであり、
Dは、薬物であり、
下付きpは、1~8の値から選択される。
【0104】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するためのものであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。実施例は、担体やプラスミドの構築、タンパク質をコードする遺伝子の担体やプラスミドへの挿入、プラスミドの宿主細胞への導入等の、従来の方法の詳細な説明を含まないこのような方法は、当業者に周知であり、また、Sambrook、J.、Fritsch、E.F. and Maniais、T.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、2nd edition、Cold spring Harbor Laboratory Pressを含む多数の刊行物に記載されている.
以下の実施例で使用される実験材料およびソース、ならびに実験試薬の調製方法は、以下に具体的にせつめいされる。
【0105】
実験材料および試薬:
Balb/cマウス:Shanghai Lingchang Biotechnology Co., Ltdから購入される。
【0106】
PBMC:Aussells Biotechnology Shanghai Co., Ltd.から購入され、カタログ番号PB004-C。
【0107】
ヒトIL-33-his:IL-33配列のSer112-Thr270(NCBI登録番号は、NP_254274.1である)をE.coli発現担体にクローニングして、発現し、IL-33のC-末端に6×Hisタグを付加して、Ni+アフィニティークロマトグラフィーカラムによる精製を容易にし、そのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:53に示されたとおりである。
【0108】
蟹食猿IL-33-his:sinobiologicalから購入され、カタログ番号90912-CNAE。
【0109】
IL-33-his-biotinタンパク質:Thermo Fisherから購入され、カタログ番号20217、EZ-Link NHS-Biotin Reagentの試薬説明書に従ってIL-33-hisタンパク質をbiotin化する。
【0110】
Rat-Anti-human IL-6:BD Pharmingenから購入され、カタログ番号554543。
【0111】
biotin Rat Anti Human IL-6:BD Pharmingenから購入され、カタログ番号554546。
【0112】
Mouse-Anti-human IFNγ:BD Biosciencesから購入され、カタログ番号551221。
【0113】
biotin mouse-anti-human IFNγ:BD Biosciencesから購入され、カタログ番号554550。
【0114】
ヤギ抗マウスIgG二次抗体:Milliporeから購入され、カタログ番号AP181P。
【0115】
HRP-anti human IgG Fc二次抗体:Sigmaから購入され、カタログ番号A0170。
【0116】
HRP標識のstreptavidin二次抗体:BD Biosciencesから購入され、カタログ番号554066。
【0117】
IL-6キット:Invitrogenから購入され、カタログ番号88-7066-77。
【0118】
IL-8キット:Invitrogenから購入され、カタログ番号BMS204-3TEN
IL-12:Sino Biologicalから購入され、カタログ番号CT011-H08H。
【0119】
ST2-Fcタンパク質:ヒトST2配列(NCBI登録番号は、NP_003847.2である)とヒトIgG1とのFc領域配列を融合させ、真核発現担体PTT5にクローニングし、HEK-293F細胞をトランスフェクトすることにより、融合発現を行い、その後、発現上清を収集し、ProteinAアフィニティークロマトグラフィーカラムによって精製される。ST2-Fcアミノ酸配列は、SEQ ID NO:54に示されたとおりである。
【0120】
TMB:BDから購入され、カタログ番号555214。
【0121】
1%Glutmine(グルタミン)、1%Sodium pyruvate(ピルビン酸ナトリウム)、1%MEM-NEAA(最小必須培地-非必須アミノ酸溶液)、1%Penicillin-streptomycin(ペニシリン-ストレプトマイシン)、β-メルカプトエタノール、20%FBS(ウシ胎児血清):すべてGibco会社から購入される。
【0122】
SAタンパク質:Streptavidin、Sigmaから購入され、カタログ番号85878-1MG。
【0123】
SFM培地:life technologies会社から購入されカタログ番号12045-076。
【0124】
RPMI1640完全培地:Gibcoから購入される。
【0125】
実験機器:
電気融合装置具:BTX会社から購入される。
【0126】
マイクロプレートリーダー:Molecular Devicesから購入され、モデル番号SpectraMax 190。
【0127】
本発明の抗体配列は、次の表に示された通りである。
【表2】
【0128】
実施例1.抗原免疫動物およびハイブリドーマの調製およびスクリーニング
段階1:マウスの抗原免疫
原核の組換え発現ヒトIL-33-hisタンパク質で定期的に腹腔内にBalb/cマウスを免疫する。初日、可溶性ヒトIL-33-hisタンパク質を、フロイントの完全アジュバントで乳化するか、または水溶性アジュバント(quick antibody)で完全に混合した後、Balb/cマウスを腹腔内注射し(ヒトIL-33-his 50μg/マウス)、14日目に、可溶性ヒトIL-33-hisタンパク質をフロイントの不完全アジュバントで乳化するか、または水溶性アジュバント(quick antibody)で完全に混合した後、Balb/cマウスを腹腔内追加免疫し(ヒトIL-33-his 50μg/マウス)、36日目に、前回と同様に可溶性ヒトIL-33-hisタンパク質で動物を追加免疫し(ヒトIL-33-his 50μg/マウス)、3週間後にヒトIL-33-hisを腹腔内注射して活性化し、3~4日後、マウス脾臓を採取して融合実験を行う。
【0129】
段階2:ハイブリドーマの調製およびスクリーニング
マウスの最後のショック免疫から3~4日後、従来のハイブリドーマ技術的解決策を用いて、マウス脾細胞とマウス骨髄腫細胞SP2/0とを電気融合装置によって電気融合する。融合後の細胞を完全培地に均一に懸濁し、完全培地は、即ちRPMI1640とDMEM F12培地とを1:1で混合した後に1%Glutmine(グルタミン)、1%Sodium pyruvate(ピルビン酸ナトリウム)、1%MEM-NEAA(最小必須培地-非必須アミノ酸溶液)、1%Penicillin-streptomycin(ペニシリン-ストレプトマイシン)、50μMβ-メルカプトエタノールおよび20%FBS(ウシ胎児血清)で構成される培地を加え、105個の細胞/100μl/ウェルに従って、合計36枚の96ウェル培養プレートに分割して一晩培養し、翌日、各ウェルに100μl/ウェルの2×HAT含有完全培地を加え、96ウェルプレートの培養液を200μl/ウェル(1×HATを含む)とする。7~12日後、上清を回収し、間接酵素免疫測定法(ELISA)によってヒトIL-33-his結合活性が陽性であるハイブリドーマウェルをスクリーニングする。
【0130】
ここで、間接酵素免疫測定法によってヒトIL-33-his結合活性陽性ハイブリドーマウェルをスクリーニングする方法は、次のとおりである。組換えヒトIL-33-hisタンパク質をコーティング液(50mM炭酸塩コーティング緩衝液、pH9.6)で1μg/mlに希釈し、100μl/ウェルをマイクロタイタープレートに加え、4℃下で一晩コーティングする。PBSTでプレートを3回洗浄し、200μl/ウェルのブロッキング溶液(2%BSA-PBS)を加え、37℃下で1時間静置後にPBSTでプレートを1回洗浄して備蓄する。回収したハイブリドーマ上清を、ブロックしたマイクロタイタープレートに100μl/ウェルで順次加え、37℃下で1時間静置する。PBSTでプレートを3回洗浄し、HRP標識ヤギ抗マウスIgG二次抗体を加え、37℃下で30分間静置し、PBSTでプレートを5回洗浄した後、残った液滴を吸水紙にできるだけパッティング乾かし、各ウェルに100μlのTMBを加え、室温(20±5℃)の暗所に5分間静置し、各ウェルに50μlの2M H2SO4停止液を加えて基質反応を停止させ、マイクロプレートリーダーによって450nmでのOD値を読み取り、被験抗体と標的抗原ヒトIL-33-hisとの結合能を分析する。
【0131】
血清を含む完全培地でスクリーニングによって得られた10のハイブリドーマ細胞株を増幅し、無血清培養液SFM培地に変換するように遠心分離して、細胞密度が1~2×107/mlになるようにし、5%CO2、37℃条件下で2週間培養し、遠心分離によって培養上清を得、Protein Gアフィニティークロマトグラフィーによって精製して、10のマウス由来の抗ヒトIL-33モノクローナル抗体を得る。それぞれ874F7、871G1、864F3、887B9、858D5、868H10、604A8、604A12、646F8、651H2と命名される。
【0132】
実施例2.ヒトIL-33に対するマウス抗体の結合活性のELISA法による測定
間接酵素免疫測定法によってヒトIL-33に対するマウス抗体の結合能を測定する。
【0133】
具体的な方法は、次のとおりである。ビオチン-アビジン(SA)を事前にコーティングし、コーティング液(50mM炭酸塩コーティング緩衝液、pH9.6)で2μg/mlに希釈し、プレートを4℃下で一晩コーティングし、37℃下で5%脱脂粉乳で2時間ブロックする。-80℃で保存して備蓄する。ビオチン化組換えヒトIL-33-hisタンパク質をコーティング液(50mM炭酸塩コーティング緩衝液、pH9.6)で0.5μg/mlに希釈し、100μl/ウェルを事前にコーティングしたSAプレートに37℃下で0.5時間加える。PBSTでプレートを3回洗浄し、1%BSAで勾配希釈した被験抗体をブロックしたマイクロタイタープレートに順次加えて100μl/ウェルとし、37℃下で1時間静置する。PBSTでプレートを3回洗浄し、HRP標識ヤギ抗マウスIgG二次抗体を加え、37℃下で30分間静置し、PBSTでプレートを3回洗浄した後、残った液滴を吸水紙にできるだけパッティング乾かし乾かし、各ウェルに100μlのTMBを加え、室温(20±5℃)の暗所に5分間静置し、各ウェルに50μlの2M H2SO4停止液を加えて基質反応を停止させ、マイクロプレートリーダーによって450nmでのOD値を読み取り、被験抗体と標的抗原ヒトIL-33-hisとの結合能を分析する。
【0134】
結果は、
図1A、1Bに示されるように、抗体は、すべて良好な結合活性を有する。874F7、871G1、864F3、887B9、858D5、868H10抗体のEC50は、それぞれ0.11nM、0.14nM、0.27nM、0.07nM、0.18nM、0.36nMである。604A8、604A12、646F8、651H2抗体のEC50は、それぞれ0.11nM、0.16nM、0.10nM、0.13nMである。
【0135】
実施例3.IL-33へのST2結合をブロックするマウス抗体の活性の測定
ST2は、これまでに発見されたIL-33の唯一の受容体であり、IL-33は、サイトカインとして、ST2シグナル伝達経路に依存してその生理学的機能を発揮し、抗体のブロック活性は、その中和活性を反映することができる。具体的な方法は、次のとおりである。2μg/mlのST2 PBS溶液でプレートを4℃下で一晩コーティングし、PBSTで3回洗浄し、5%脱脂粉乳で37℃下で2時間ブロックし、PBSTで3回洗浄して備蓄し、1%BSAで希釈した20ng/mlのIL-33-his-biotin抗原と1%BSAで勾配希釈した被験抗体1:1とを等量で混合し、37℃下で時間インキュベートし、この混合液を事前にコーティングしたST2プレートに加え、37℃下で1時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄し、1:8000でHRP標識streptavidin二次抗体を加え、37℃下で0.5時間インキュベートし、PBSTでプレートを3回洗浄した後、残った液滴を吸水紙にできるだけパッティング乾かし乾かし、各ウェルに100μlのTMBを加え、室温(20±5℃)の暗所に5分間静置し、各ウェルに50μlの2M H2SO4停止液を加えて基質反応を停止させ、マイクロプレートリーダーによって450nmでのOD値を読み取る。
【0136】
結果は、
図2A、2Bに示されるように、
図2Aに示される抗体874F7、871G1、864F3、887B9、858D5、868H10は、すべて良好なブロック活性を有し、IC50は、それぞれ0.90nM、0.74nM、0.23nM、0.25nM、0.16nM、0.27nMである。
図2Bに示される抗体604A8、604A12、646F8、651H2は、ブロック活性がないか、または非常に弱い。
【0137】
実施例4.HUVEC細胞におけるIL-33誘導性IL-6発現に対するマウス抗体の阻害効果
HUVEC細胞を用いて抗IL-33抗体の生物学的活性を測定する。具体的な方法は、次のとおりである。T75培養フラスコでHUVEC細胞を培養し、HUVEC細胞を第5世代細胞に継代し、T75培養フラスコ中のHUVEC細胞を1×PBSで洗浄し、1mlのトリプシンで10分間消化し、細胞が落ちるのを待ち、10mlの培地で消化を停止させ、計数し、100μl/ウェル、6000個/ウェルでプレーティングする。残りは、T75培養フラスコに培養し続けて凍結保存する。IL-33-hisを培地で20ng/mlに希釈し、被験抗体を40μg/mlから、4倍で8段階希釈し、4ウェルを空白とし、希釈後に抗原および抗体をそれぞれ50μl取って細胞プレートに加え、均一に混合する。即ち、IL-33-hisの最終濃度は、5ng/mlである。混合後に37℃下で12時間~18時間インキュベートする。上清を取ってIL-6の濃度を測定する。測定方法は、IL-6キットの取扱説明書を参照する。次のような式に従ってIL-6抑制率を計算し、且つGraphPad Prism 6ソフトウェアによってフィッティング分析を実行する。
【0138】
抑制率=(ODAgIL-33-OD投与)/(ODAgIL-33-OD空白)×100%。
【0139】
結果は、
図3A、3B、3Cに示されるように、874F7、871G1、864F3、887B9、858D5、868H10、604A8、604A12、651H2の阻害活性のIC50は、それぞれ0.65nM、1.66nM、1.52nM、4.53nM、12.25nM、9.35nM、0.08nM、0.13nM、0.04nMである。さらに、抗体604A8、604A12、651H2の最大抑制率は、比較的に低い。
【0140】
実施例5.HUVEC細胞におけるIL-33誘導性IL-8発現に対するマウス抗体の阻害効果
HUVEC細胞を用いて抗IL-33抗体の生物学的活性を測定する。具体的な方法は、次のとおりである。T75培養フラスコでHUVEC細胞を培養し、HUVEC細胞を第5世代細胞に継代し、T75培養フラスコ中のHUVEC細胞を1×PBSで洗浄し、1mlのトリプシンで10分間消化し、細胞が落ちるのを待ち、10mlの培地で消化を停止させ、計数し、100μl/ウェル、6000個/ウェルでプレーティングする。残りは、T75培養フラスコに培養し続けて凍結保存する。IL-33-hisを培地で20ng/mlに希釈し、被験抗体を40μg/mlから、4倍で8段階希釈し、4ウェルを空白とし、希釈後に抗原および抗体をそれぞれ50μl取って細胞プレートに加え、均一に混合する。即ち、IL-33-hisの最終濃度は、5ng/mlである。混合後に37℃下で12時間~18時間インキュベートする。上清を取ってIL-8の濃度を測定する。測定方法は、IL-8キットの取扱説明書を参照する。次のような式に従ってIL-8抑制率を計算し、且つGraphPad Prism 6ソフトウェアによってフィッティング分析を実行する。
【0141】
抑制率=(ODAgIL-33-OD投与)/( ODAgIL-33-OD空白)×100%。
【0142】
結果は、
図4に示されるように、抗体858D5、868H10の活性は、弱く、抗体874F7、871G1、864F3、887B9のIC50は、それぞれ0.35nM、0.16nM、1.46nM、8.90nMである。
【0143】
実施例6.蟹食猿IL-33抗原に対するマウス抗体の交差活性の測定
間接酵素免疫測定法によって蟹食猿IL-33に対するマウス抗体の結合能を測定する。具体的な方法は、次のとおりである。ビオチン-アビジン(SA)を事前にコーティングし、コーティング液(50mM炭酸塩コーティング緩衝液、pH9.6)で2μg/mlに希釈し、プレートを4℃下で一晩コーティングし、37℃下で5%脱脂粉乳で2時間ブロックする。-80℃で保存して備蓄する。ビオチン化組換え蟹食猿IL-33-hisタンパク質をコーティング液(50mM炭酸塩コーティング緩衝液、pH9.6)で1μg/mlに希釈し、100μl/ウェルを事前にコーティングしたSAプレートに37℃下で0.5時間加える。PBSTでプレートを3回洗浄し、1%BSAで勾配希釈した被験抗体をブロックしたマイクロタイタープレートに順次加えて100μl/ウェルとし、37℃下で1時間静置する。PBSTでプレートを3回洗浄し、HRP標識ヤギ抗マウスIgG二次抗体を加え、37℃下で30分間静置し、PBSTでプレートを3回洗浄した後、残った液滴を吸水紙にできるだけパッティング乾かし乾かし、各ウェルに100μlのTMBを加え、室温(20±5℃)の暗所に5分間静置し、各ウェルに50μlの2M H2SO4停止液を加えて基質反応を停止させ、マイクロプレートリーダーによって450nmでのOD値を読み取り、被験抗体と標的抗原蟹食猿IL-33-hisとの結合能を分析する。
【0144】
結果は、
図5に示されるように、抗体は、すべて蟹食猿IL-33タンパク質に良好に結合することができる。抗体874F7、871G1、864F3、887B9、858D5、868H10、604A8、604A12、646F8、651H2のEC50は、それぞれ0.03nM、0.04nM、0.06nM、0.05nM、0.02nM、0.05nM、0.06nM、0.06nM、0.03nM、0.06nMである。
【0145】
実施例7.マウス抗体のインビボでの中和活性の評価
抗原IL-33を動物に静脈内投与すると、体内の炎症反応に変化が生じ、脾臓細胞の増殖により脾臓の重量増加を引き起こし、この方法は、インビボでのIL-33の中和における抗体薬物の活性を評価するために使用されることができる。具体的な方法は、次のとおりである。雌BALB/Cマウス、体重18-20g、ランダムに六つのグループに分け、各グループに10匹の動物を割り当てる。第1のグループ、通常の対照群、第2のグループ、IL-33-his抗原攻撃群、グループ分け後に2日目から0.4ug/匹IL-33抗原を6日間連続して毎日腹腔内注射し、第3のグループ、864F3治療群、グループ分け当日、864F3抗体5mg/kgを腹腔内注射し、グループ分け後に2日目から0.4ug/匹IL-33抗原を6日間連続して毎日腹腔内注射し、第4のグループ、871G1治療群、グループ分け当日、871G1抗体5mg/kgを腹腔内注射し、グループ分け後に2日目から0.4ug/匹IL-33-his抗原を6日間連続して毎日腹腔内注射し、第5のグループ、874F7治療群、グループ分け当日、874F7抗体5mg/kgを腹腔内注射し、グループ分け後に2日目から0.4ug/匹IL-33抗原を6日間連続して毎日腹腔内注射する。グループ分け後7日目に、動物を秤量し、安楽死させた動物の脾臓の重量を秤量する。
【0146】
実験結果は、
図6に示されるように、PBS対照群の脾臓重量の平均値は、86.9±9.4mgであるが、抗原Ag-IL-33群の体重増加は、195.7±26.9mgと大幅に増加した。864F3、871G1、874F7抗体投与群の脾臓重量の平均値は、それぞれ106.3±24.5mg、77.7±17.5mg、89.9±14.7mgであり、すべて有意な中和活性を有する。
【0147】
実施例8.キメラ抗体の調製
本実施例は、分子生物学の関連する方法によって、ハイブリドーマ864F3、874F7および871G1の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を得、キメラ抗体をさらに構築する。
【0148】
Trizolを介して864F3、874F7および871G1の三つのハイブリドーマ細胞のRNAを抽出し、且つmRNAを逆転写してcDNAを取得し、次にcDNAをテンプレートとして、それぞれマウス抗体の重鎖および軽鎖の縮重プライマー(「Antibody Engineering」Volume 1、Edited by Roland Kontermann and Stefan Dubel、組み合わせたプラ
イマーの配列は、323ページから)を用いてPCRを行い、得られたPCR生成物をシーケンシングし、且つkabatデータベースによって分析し、得られた配列がマウス抗体の可変領域配列であることを確認する。
【0149】
関連する配列の上方は、次のとおりである。
【0150】
864F3は、二つの重鎖可変領域遺伝子配列を有し、完全長は、すべて363bpであり、それぞれ121個のアミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列は、それぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:3に示されたとおりであり、アミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:4に示されたとおりであり、864F3軽鎖可変領域遺伝子配列の完全長は、321bpであり、107個のアミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:5に示されたとおりであり、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:6に示されたとおりである。
【0151】
874F7重鎖可変領域遺伝子配列の完全長は、363bpであり、121個のアミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:7に示されたとおりであり、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:8に示されたとおりであり、874F7軽鎖可変領域遺伝子配列の完全長は、318bpであり、106個のアミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:9に示されたとおりであり、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:10に示されたとおりである。
【0152】
871G1重鎖可変領域遺伝子配列の完全長は、363bpであり、121個のアミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:3に示されたとおりであり、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:4に示されたとおりであり、871G1軽鎖可変領域遺伝子配列の完全長は、318bpであり、106個のアミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:11に示されたとおりであり、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:12に示されたとおりである。
【0153】
三つの好ましいマウス由来の抗IL-33抗体の三つのH-CDRおよび三つのL-CDRの同一性は、比較的に高く、特に、すべてが同一のL-CDR2(SEQ ID No:22)を有する。
【0154】
得られた各ハイブリドーマ重鎖可変領域配列とヒトIgG4定常領域(S228P突然変異を含む)(アミノ酸配列は、SEQ ID NO:13に示されたとおりである)とをスプライシングし、軽鎖可変領域配列とヒトkappa鎖定常領域(アミノ酸配列は、SEQ ID NO:14に示されたとおりである)とをスプライシングし、各キメラ抗体の重鎖および軽鎖をpcDNA3.4発現担体にそれぞれ構築し、HEK-293F細胞にトランスフェクトし、得られた各キメラ抗体をProtein Aによって精製し、SDS-PAGE電気泳動およびSEC-HPLCによって、発現した各抗体の分子量が約150kDであることが判明され、抗体純度>95%であり、定量化し、アリコート化し、-80℃下で凍結保存して備蓄する。
【0155】
実施例9.ELISA法によるヒトIL-33に対する各キメラ抗体の結合活性の測定 SAタンパク質を2μg/mLに希釈し、ELISAプレートを100μL/ウェルでコーティングし、4℃下で一晩コーティングし、PBST(PBSは、0.05%Tween20を含む)で3回洗浄し、PBSで2%BSAを200μL/ウェルに調製し、室温下で2時間ブロックし、PBSTで2回洗浄後、PBSTで調製した1%BSAでIL-33-his-biotinタンパク質を1μg/mLに希釈し、100μL/ウェルをELISAプレートに加え、室温下で1時間インキュベートし、PBSTで調製した1%BSAで3倍勾配に従って各モノクローナル抗体をそれぞれ希釈し、最高濃度は、10μg/mLであり、12勾配に希釈し、ELISAウェルに100μL/ウェルを加え、室温下で1時間インキュベートし、各サンプルについて2個のデュープリケートウェルを並行して行い、PBSTで3回洗浄し、PBSTで調製した1%BSAで適切な比率に従ってHRP-anti human IgG Fc二次抗体を希釈し、ELISAウェルに100μL/ウェルを加え、室温下で1時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄後にTMB発色液を100μL/ウェル加えて、目的の色に発色させ、2M H2SO4を用いて70μL/ウェルで発色反応を停止させ、各反応溶液を均等に振とうし、からマイクロプレートリーダーによってOD450nmを測定し、データを分析し、EC50を計算する。
【0156】
実験結果は、
図7に示されたとおりであり、キメラ抗体864F3-ch2、864F3-ch1、871G1-ch、874F7-chのEC50は、それぞれ0.173nM、0.127nM、0.178nM、0144nMであり、各キメラ抗体がIL-33に対して良好な親和性を有することを示す。
【0157】
実施例10.IL-33に対するST2結合をブロックするキメラ抗体の活性の測定
ELISAコーティング液でST2-Fcタンパク質を1μg/mLに希釈し、ELISAプレートを100μL/ウェルでコーティングし、ウェットボックスに入れ、4℃下で16時間コーティングし、PBSTでELISAプレートを3回洗浄し、次いでPBSで調製した2%BSAで200μL/ウェルを室温下で2時間ブロックし、PBSTで1回洗浄し、パッティング乾かし,余分なブロッキング溶液を除去し、1%BSA PBSTで3倍勾配に従って各モノクローナル抗体をそれぞれ希釈し、最高濃度は、40μg/mLであり、11勾配に希釈し、希釈した抗体と10ng/mlのIL-33-his-biotinタンパク質とを1:1で混合し、均一に混合した後にELISAウェルに100μL/ウェルを加え、室温下で1時間インキュベートし、各濃度について2個のデュープリケートウェルを並行して行い(抗体最高濃度の最終濃度は、20μg/mLであり、IL-33-his-biotinの最終濃度は、5ng/mLである)、結合していないかまたは非特異的に結合した一次抗体を洗い流し、抗体の説明書の要求に従って、抗体希釈液でHRP標識streptavidin二次抗体を適切な濃度に希釈し、ELISAプレートに100μL/ウェルを加え、室温下で1時間インキュベートし、PBSTで5回洗浄し、ELISAプレートを吸水紙上でパッティング乾かし、余分な液体を除去し、TMB発色液100μL/ウェルを加え、適切な深さまで発色させ、70μL/ウェルの2M H2SO4を加えて発色を停止させ、多機能マイクロプレートリーダーによって450nm波長での吸光度を測定し、データを分析する。
【0158】
実験結果は、
図8に示されるように、キメラ抗体874F7-ch、871G1-ch、864F3-ch1、864F3-ch2のIC50は、それぞれ0.634nM、0.853nM、45.245nM、0.580nMであり、各キメラ抗体は、IL-33ブロック型抗体であり、IL-33のその受容体ST2への結合を効果的にブロックすることができ、また、874F7-ch、871G1-chおよび864F3-ch2が好ましいことを示す。
【0159】
実施例11.ヒト化抗体の調製
各候補マウス抗体の軽鎖可変領域および重鎖可変領域のアミノ酸配列を分析し、Kabat規則に従って、マウス抗体の三つの抗原相補性決定領域(CDR)および四つのフレームワーク領域(FR)を決定する。ここで、864F3重鎖の相補性決定領域のアミノ酸配列は、
HCDR1:NYGVH(SEQ ID NO:15)、
HCDR2:VIRAGGSSDYNSALMS(SEQ ID NO:16)、
HCDR3:DHYFSNSYGGSPY(SEQ ID NO:17)または
HCDR1:KYGVH(SEQ ID NO:18)、
HCDR2:VLRAGGTISYNSALMS(SEQ ID NO:19)、
HCDR3:DHYYYSSFGGFAS(SEQ ID NO:20)であり、
軽鎖の相補性決定領域のアミノ酸配列は、
LCDR1:LASQTIATWLA(SEQ ID NO:21)、
LCDR2:AATRLAD(SEQ ID NO:22)および
LCDR3:QQLYNTPYT(SEQ ID NO:23)である。
【0160】
874F7重鎖の相補性決定領域のアミノ酸配列は、
HCDR1:KYGVH(SEQ ID NO:18)、
HCDR2:VLRAGGSTGYNSALMS(SEQ ID NO:24)、
HCDR3:DHYYYSSYGGFVY(SEQ ID NO:25)であり、
軽鎖の相補性決定領域のアミノ酸配列は、
LCDR1:LASQTIGAWLA(SEQ ID NO:26)、
LCDR2:AATRLAD(SEQ ID NO:22)および
LCDR3:QQLDSSPYT(SEQ ID NO:27)である。
【0161】
871G1重鎖の相補性決定領域のアミノ酸配列は、
HCDR1:KYGVH(SEQ ID NO:18)、
HCDR2:VLRAGGTISYNSALMS(SEQ ID NO:19)、
HCDR3:DHYYYSSFGGFAS(SEQ ID NO:20)であり、
軽鎖の相補性決定領域のアミノ酸配列は、
LCDR1:LASQTIGAWLA(SEQ ID NO:26)、
LCDR2:AATRLAD(SEQ ID NO:22)および
LCDR3:QQLNSTPYT(SEQ ID NO:28)である。
【0162】
マウス抗体のCDR配列は、次の表1aに示されたとおりである。
【表3】
【0163】
Germlineデータベースから上記の各マウス抗体の非FR領域に最もよく一致するヒト化テンプレートを選択する。次いでマウス抗体のCDR領域を選択したヒト化テンプレートに移植し、ヒトテンプレートのCDR領域を置き換え、重鎖可変領域は、ヒトIgG4定常領域(S228P突然変異を含む)と組換えられ、軽鎖可変領域は、ヒトkappa鎖定常領域と組換えられ、同時に当該抗体の三次元構造に基づいて、埋め込まれた残基、CDR領域と直接相互作用する残基、および各抗体のVLおよびVHのコンフォメーションに重要な影響を与える残基に対して復帰突然変異を行い、最終的に複数のヒト化抗体を得、各ヒト化抗体およびキメラ抗体に対応する重鎖、軽鎖可変領域および配列は、表1bに示されたとおりである。各ヒト化抗体の重鎖および軽鎖をpcDNA3.4発現担体にそれぞれ構築し、HEK-293F細胞にトランスフェクトし、ProteinAによって精製して各ヒト化抗体を得、SDS-PAGE電気泳動およびSEC-HPLCによって、各抗体の分子量の正しさおよび純度>95%であることを確認する。
【表4】
【0164】
実施例12.ELISA法によるヒトIL-33に対する各ヒト化抗体の結合活性の測定
ELISA法によって、ヒトIL-33に対する上記の各ヒト化抗体の結合親和性を測定し、関連する実験方法は、実施例9を参照する。
【0165】
実験結果は、
図9A~9Dに示されたとおりであり、キメラ抗体864F3-ch2およびヒト化抗体864F3-HuG、864F3-Hu1、864F3-Hu2のEC50は、それぞれ0.169nM、0.760nM、0.249nM、0.181nMであり、キメラ抗体864F3-ch2と比較して、ヒトIL-33に対するヒト化抗体864F3-HuG、864F3-Hu1、864F3-Hu2の親和性の損失は、比較的に多く、キメラ抗体864F3-ch2および864F3-Hu3、864F3-Hu4、864F3-Hu5のEC50は、それぞれ0.124nM、0.138nM、0.135nM、0.146nMであり、キメラ抗体864F3-ch2と比較して、ヒトIL-33に対する864F3-Hu3、864F3-Hu4および864F3-Hu5の親和性は、ほぼ変わらない。
【0166】
キメラ抗体874F7-chおよびヒト化抗体874F7-Hμg、874F7-Hu1、874F7-Hu2のEC50は、それぞれ0.177nM、0.170nM、0.129nM、0.136nMである。キメラ抗体874F7-chと比較して、ヒトIL-33に対するヒト化抗体874F7-Hu1および874F7-Hu2の親和性は、損失が発生しない。
【0167】
キメラ抗体871G1-chおよびヒト化抗体871G1-HuG、871G1-Hu1、871G1-Hu2のEC50は、それぞれ与0.255nM、0.187nM、0.191nM、0.176nMである。キメラ抗体871G1-chと比較して、ヒトIL-33に対するヒト化抗体871G1-Hu1、871G1-Hu2および871G1-HuGの親和性は、損失が発生しない。
【0168】
実施例13.IL-33へのST2結合をブロックするヒト化抗体の活性の測定
ELISA法によって、IL-33およびその受容体ST2の結合に対するブロック効果を測定し、関連する実験方法は、実施例10を参照する。
【0169】
実験結果は、
図10に示されたとおりであり、IL-33およびST2タンパク質の結合に対するヒト化抗体864F3-Hu4、864F3-Hu5、871G1-Hu1、871G1-Hu2、874F7-Hu1、874F7-Hu2のブロック効果のIC50値は、それぞれ0.512nM、0.473nM、0.404nM、0.361nM、0.451nM、0.350nMである。各ヒト化抗体は、すべてIL-33およびST2結合に対するブロック効果を保持することを示す。
【0170】
実施例14.IL-33に対するヒト化モノクローナル抗体の結合動力学の測定
Protein A/Gと共有結合したチップ(GE Healthcareから購入され、カタログ番号BR-1005-30)を使用して各被験抗体を補充し、関連する動作パラメーターは、次のとおりである。抗体濃度は、2μg/mLであり、接触時間は、75秒であり、流速は、10μL/minであり、再生接触時間は、30秒である。HBS-EP pH7.4緩衝液(GE Healthcareから購入され、カタログ番号BR-1006-69)でIL-33-his抗原を希釈し、最高濃度は、50nMであり、0.39nMに2倍希釈し、デュープリケートウェルおよび0濃度ポイントを設定し、再生緩衝液として6M塩酸グアニジン溶液を使用し、次のパラメーターに従ってBiacore 8Kにサンプルう注入し、結合時間は、180sであり、解離時間は、900sであり、流速は、30L/minであり、再生接触時間は、30sである。実行完了
後、Biacore 8K Evaluation Softwareを使用して、「1:1結合動態モデル(binding kinetics model)」に従ってデータを分析し、IL-33に対する各抗体の結合動力学パラメーターを得る。
【0171】
結果は、表2に示されたとおりであり、IL-33に対する各ヒト化抗体の結合定数(ka)、解離定数(kd)および平衡解離定数(KD)は、同程度である。
【表5】
【0172】
実施例15.HUVEC細胞におけるIL-33誘導性IL-6発現に対するヒト化抗体の阻害効果
本実施例は、HUVEC細胞におけるIL-33-hisタンパク質誘導性IL-6発現に対する各ヒト化抗体の阻害效果を測定することにより、各ヒト化抗体の活性を評価する。具体的な実験段階は、次のとおりである。T75培養フラスコ中のHUVEC細胞を消化して計数した後に完全培地に100μL/ウェル、6000細胞/ウェルでプレーティングし、37℃下でインキュベーターで2時間培養した後、細胞が壁に接着してから投与を開始し、完全培地で被験抗体を希釈し、最高濃度は、200nMであり、9勾配に5倍希釈し、陽性空白対照および陰性空白対照を設定し、希釈後に抗体と20ng/mLのIL-33-hisとを1:1の体積で混合する(抗体を細胞に加えた後に最高濃度の最終濃度は、50nMであり、IL-33-hisの最終濃度は、5ng/mLである)。
【0173】
室温下で30分間インキュベートし、100μL抗体/IL-33-his混合液を取って細胞液に加えて穏やかに混合し、37℃のCO2インキュベーターで20時間作用させた後に、遠心分離によって上清を収集して-80℃で保存し、IL-6を測定する。
【0174】
ELISAコーティング液でRat-Anti-human IL-6タンパク質を2.5μg/mLに希釈し、ELISAプレートを100μL/ウェルでコーティングし、ウェットボックスに入れ、4℃下で16時間コーティングし、PBSTでELISAプレートを3回洗浄し、結合していないタンパク質を除去し、ELISAプレートを吸水紙上でパッティング乾かし、余分な液体を除去し、次いでPBSで調製した2%BSAを200μL/ウェルで室温下で1-2時間ブロックし、PBSで調製した1%BSAで3倍勾配に従ってIL-6標準品を希釈し、最高濃度は、30ng/mLである。均一に混合した後にELISAウェルに100μL/ウェルを加え、100μL/ウェルの上記の細胞上清をELISAウェルに加え、室温下で1時間インキュベートし、標準曲線については、各サンプルに二つのデュープリケートウェルを並行して行い、結合していないかまたは非特異的に結合した一次抗体を洗い流し、抗体希釈液でbiotin Rat Anti Human IL-6を1:1000で希釈し、均一に混合した後にELISAウェルに100μL/ウェルを加え、室温下で1時間インキュベートし、結合していないかまたは非特異的に結合した抗体を洗い流し、HRP標識streptavidin二次抗体を適切な濃度に希釈し、ELISAプレートに100μL/ウェルを加え、室温下で1時間インキュベートし、PBSTで5回洗浄し、ELISAプレートを吸水紙上でパッティング乾かし、余分な液体を除去し、TMB発色液を加え、適切な深さまで発色させ、50μL/ウェルの2M H2SO4を加えて発色を停止させ、多機能マイクロプレートリーダーによって450nm波長での吸光度を測定し、データを分析する。
【0175】
実験結果は、
図11に示されたとおりであり、HUVEC細胞におけるIL-33誘導性IL-6発現に対するヒト化抗体864F3-Hu4、864F3-Hu5、871G1-Hu1、871G1-Hu2、874F7-Hu1、874F7-Hu2の阻害効果のIC50値は、それぞれ0.073nM、0.147nM、0.210nM、0.175nM、0.051nM、0.050nMである。各ヒト化抗体は、HUVEC細胞におけるIL-33-hisタンパク質誘導性IL-6分泌を効果的に阻害できることを示し、特に874F7-Hu1および874F7-Hu2の効果が、比較的に優れる。
【0176】
実施例16.IL-33誘導性PBMCからのIFNγ分泌に対するヒト化抗体の阻害効果
本実施例は、IL-33-hisタンパク質誘導性PBMCからのIFNγ分泌に対する各ヒト化抗体の阻害効果を測定して、各ヒト化抗体の活性を評価する。具体的な実験段階は、次のとおりである。新鮮なPBMCを遠心分離によって計数し、PBSで1回洗浄し、RPMI1640完全培地で4×106細胞/Mlに希釈し、96ウェルU型細胞培養プレートにPBMC細胞を加え、各ウェルは、50μL(2×105細胞/ウェル)であり、37℃のインキュベーターで入れて回復し、RPMI1640完全培地で抗体を希釈し、最高濃度は、200nMであり(最終濃度は、50nMである)、3倍勾配に従って希釈し、希釈後に各ウェルに等量の40ng/mLのIL-33-hisを加え(最終濃度は、10ng/mLである)、37℃下で30分間インキュベートし、50μLの40ng/mL完全培地で希釈したIL-12を上記のPBMC細胞培養プレートに加え、次に100μL抗体とIL-33-his混合液とを加え、均等に混合後、37℃の細胞インキュベーターに入れて24時間培養し、細胞培養プレートを500gで5分間遠心分離し、検出のために各ウェルから180μLの上清を採取する。
【0177】
ELISAコーティング液でMouse-Anti-human IFNγ抗体(BD Biosciencesから購入され、カタログ番号551221)を1μg/mLに希釈し、ELISAプレートを100μL/ウェルでコーティングし、ウェットボックスに入れ、4℃下で16時間コーティングし、PBSTでELISAプレートを3回洗浄し、ELISAプレートを吸水紙上でパッティング乾かし、余分な液体を除去し、次いでPBSで調製した2%BSAを200μL/ウェルで室温下で1-2時間ブロックし、PBSTで1回洗浄し、余分なブロッキング溶液を除去し、ELISAプレートをパッティング乾かし、余分な液体を除去し、IFNγ標準品を希釈し、最高濃度は、250ng/mLであり、1/212勾配に希釈し、ELISAウェルに100μL/ウェルを加え、各サンプルに二つのデュープリケートウェルを並行して行い、ELISAプレートに100μLの上記の被験細胞上清を加え、室温下で1時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄し、1%BSA PBSTを1:1000で希釈したbiotin mouse-anti-human IFNγを100μL/ウェル加え(BDから購入され、カタログ番号554550)、室温下で1時間インキュベートし、結合していないかまたは非特異的に結合した抗体を洗い流し、抗体の説明書の要求に従って、1%BSA PBSTでHRP標識Streptavidin(BDから購入され、カタログ番号554066)を適切な濃度に希釈し、ELISAプレートに100μL/ウェルを加え、室温下で1時間インキュベートし、PBSTで5回洗浄し、ELISAプレートを吸水紙上でパッティング乾かし、余分な液体を除去し、TMB発色液100μL/ウェルを加え、適切な深さまで発色させ、50μL/ウェルの2M H2SO4を加えて、発色を停止させ、多機能マイクロプレートリーダーによって450nm波長でのその吸光度を測定し、データを分析する。
【0178】
実験結果は、
図12に示されたとおりであり、IL-33誘導性PBMCからのIFNγ分泌に対するヒト化抗体864F3-Hu4、864F3-Hu5、871G1-Hu1、871G1-Hu2、874F7-Hu1、874F7-Hu2の阻害効果IC50値は、それぞれ1.224nM、0.839nM、1.395nM、1.061nM、0.850nM、1.736nMである。各ヒト化抗体は、IL-33-hisタンパク質誘導性ヒトPBMCからのIFNγ分泌を効果的に阻害し、ここで、874F7-Hu2の活性は、比較的に低い。
【0179】
実施例17.IL-33誘導性NK細胞からのIFNγ分泌に対するヒト化抗体の阻害効果
新鮮なPBMCを遠心分離によって計数した後、Nk Cell Isolation Kit human(Miltenyiから購入され、カタログ番号130-092-657)の説明書に従ってNK細胞を分離する。PBSでNK細胞を2回洗浄後に計数し、1640+10%FBS+1%Glutamax培地で0.8×106細胞/mLに希釈し、ウェルあたり50μLの細胞懸濁液に従って96ウェル細胞培養プレートをプレーティングする。1640+10%FBS+1%Glutamax培地で各抗体を希釈し、最終的な最大効果濃度は、100nMであり、1/4勾配希釈する。希釈後に最終濃度が10ng/mLであるIL-33-hisを各ウェルに加え、37℃の細胞インキュベーターで30分間インキュベートする。次に完全培地で希釈した最終濃度が2ng/mLであるIL-12を上記のNK細胞を含む96ウェル細胞培養プレートに加え、最後に上記の100μLの抗体とIL-33との混合液を加え、37℃の細胞インキュベーターで24時間インキュベートした後、細胞培養上清を収集してIFNγの分泌レベルを測定する。
【0180】
IFNγの検出方法は、実施例16を参照する。実験結果は、
図13に示されたとおりであり、ヒト化抗体864F3-Hu4、864F3-Hu5、871G1-Hu1、871G1-Hu2、874F7-Hu1、874F7-Hu2は、IL-33誘導性NK細胞からのIFNγ分泌に対して阻害効果を有し、IC50値は、それぞれ0.904nM、1.021nM、0.851nM、0.900nM、0.742nM、1.559nMである。
【0181】
実施例18.IL-33誘導性KU812細胞からのIL-5およびIL-13分泌に対するヒト化抗体の阻害効果
対数増殖期の好塩基性白血病細胞KU812を収集し、遠心分離い、計数し、20%FBSを含むIMDM培地(完全培地、Gibcoから購入され、カタログ番号11965-092)で再懸濁し、ウェルあたり20000細胞に従って、96ウェルの細胞培養プレートをプレーティングする。完全培地で各被験抗体を調製し、3倍勾配希釈を投与群とし、各群は、9勾配に段階希釈し、抗体の最高作業濃度は、200μg/mLであり、同時に完全培地でIL-33-hisを調製し、作業濃度は、700ng/mlであり、1:1に従って均等に混合後、上記の96ウェル細胞培養プレートを加え、各ウェルの最終体積は、200μLであり、非投与群を陰性対照として設定し、IL-33のみの追加を単剤対照群と設定し、各濃度に二つのデュープリケートウェルを並行して行い、37℃の細胞インキュベーターで48時間培養し続け、上清を収集してIL-5およびIL-13の分泌量を測定する。
【0182】
ELISAコーティング液でanti-human IL-5(BDから購入され、カタログ番号554488)およびanti-human IL-13(BDから購入され、カタログ番号554570)抗体をそれぞれ5ug/mlに希釈し、ELISAプレートを100μL/ウェルでコーティングし、ウェットボックスに入れ、4℃下で16時間コーティングする。PBSTでELISAプレートを3回洗浄し、結合していない抗原を除去し、ELISAプレートを吸水紙上でパッティング乾かし、余分な液体を除去し、次いでPBSで調製した2%BSAを200μL/ウェルで室温下で1時間ブロックする。
【0183】
PBSTで1回洗浄し、余分なブロッキング溶液洗い流し、ELISAプレートをパッティング乾かし、余分な液体を除去し、PBSTで調製した1%BSAで3倍勾配に従ってhu-IL-5標準品をそれぞれ希釈し、最高濃度は、50ng/mLであり、12勾配に希釈し、ELISAウェルに100μL/ウェルを加え、室温下で1時間インキュベートし、各サンプルに2個のデュープリケートウェルを並行して行う。100μL/ウェルの収集した細胞上清を加える。PBSTで調製した1%BSAで3倍勾配に従ってhu-IL-13標準品をそれぞれ希釈し、最高濃度は、10ng/mLであり、12勾配に希釈し、ELISAウェルに100μL/ウェルを加え、室温下で2時間インキュベートし、各サンプルに2個のデュープリケートウェルを並行して行う。50μL/ウェルの収集した細胞上清を加える。結合していないかまたは非特異的に結合した一次抗体を洗い流し、抗体の説明書の要求に従って、抗体希釈液でBiotin-anti-human-IL-5(BDから購入され、カタログ番号554491)およびBiotin-anti-human-IL-13(BDから購入され、カタログ番号555054)二次抗体を適切な濃度に希釈し、ELISAプレートに100μL/ウェルを加え、室温下で2時間インキュベートする。PBSTで3回洗浄し、ELISAプレートを吸水紙上でパッティング乾かし、余分な液体を除去し、抗体希釈液でHRP標識したStreptavidin(BDから購入され、カタログ番号554066)を適切な濃度に希釈し、ELISAプレートに100μL/ウェルを加え、室温下で30分間インキュベートする。PBSTで3回洗浄し、ELISAプレートを吸水紙上でパッティング乾かし、余分な液体を除去し、TMB発色液100μL/ウェルを加え、適切な深さまで発色させ、50μL/ウェルの2M H2SO4を加えて発色を停止させ、多機能マイクロプレートリーダーによって450nm波長での吸光度を測定し、データを分析する。
【0184】
実験結果は、
図14に示されたとおりであり、ヒト化抗体864F3-Hu4および874F7-Hu1は、IL-33誘導性KU812細胞からのIL-5の分泌を効果的に阻害でき、そのIC50は、それぞれ27.605nMおよび7.828nMである。
【0185】
図15に示されたとおりであり、ヒト化抗体864F3-Hu4および874F7-Hu1も、IL-33誘導性KU812細胞からのIL-13の分泌を効果的に阻害でき、そのIC50は、それぞれ14.745nMおよび5.219nMでT<
実施例19.異なる種のIL-33タンパク質に対するヒト化抗体の交差反応性
実験方法は、実施例14を参照し、ここで、抗原は、それぞれ蟹食猿IL-33タンパク質(Sino biologicalから購入され、カタログ番号90912-CNAE)およびマウスIL-33タンパク質(R&Dから購入され、3626-ML-010/CF)を使用し、同時に対象としてヒトIL-33タンパク質を設定する。実験結果は、表3に示されたとおりであり、864F3-Hu4および874F7-Hu1は、すべて蟹食猿IL-33タンパク質と交差反応を示し、また、各抗体およびヒトIL-33タンパク質の結合特徴と一致する。さらに、864F3-Hu4および874F7-Hu1は、マウスIL-33タンパク質と一定の交差反応を有するが、その親和性は、各抗体のヒトIL-33タンパク質への結合よりも有意に吹くくなる。
【表6】
【0186】
実施例20.ヒト化抗体のインビボでの中和活性評価
具体的な実験段階は、実施例7を参照し、各実験群は、10匹のBALB/Cマウスを有する。
【0187】
図16に示されたとおりであり、結果は、対照群(脾臓重量80.55mg)と比較して、IL-33抗原群の脾臓重量が176.49mgと有意に増加したことを示す。864F3-Hu4、864F3-Hu5、871G1-Hu1、871G1-Hu2、874F7-Hu1および874F7-Hu2抗体投与群の脾臓重量の平均値は、それぞれ78.39mg、86.6mg、92.82mg、98.87mg、75.63mgおよび77.49mgであり、各ヒト化抗体がインビボで有意な中和活性を有することが分かる。
【0188】
実施例21.ヒト化抗体のインビボでの薬力学的活性測定
実験方法は、実施例7を産所水、実験結果は、
図17に示されたとおりであり、ヒトIL-33に腹腔内注射した後、マウスの脾臓肥大(IL-33群)を有意に刺激することができ、脾臓重量は、約194.6mgであり、対照群(ヒトIL-33刺激なし)は、76.1mgであり、それぞれ5mg/kgの864F3-Hu4および874F7-Hu1を1回の治療として投与する場合、マウスの脾臓肥大を効果的に阻害することができ、脾臓重量は、それぞれ65.4mgおよび55.9mgである。
【0189】
上記の実験が終了する場合、各群のマウスを安楽死させ、末梢血中の好酸球およびIL-5のレベルをそれぞれ検出する。
【0190】
上記のマウスの全血の一部を採取して通常のEP管に入れ、4℃下で5時間以上静置して完全に凝固させる。凝固後にEP管を4℃に予冷した遠心分離機に入れて8000rmpで6分間遠心分離する。遠心分離後に血清を取り出し、新しい遠心分離管に入れ、再び4℃に予冷した遠心分離機で8000rmpで6ふんかん遠心分離する。遠心分離後に上清を取り出し、アリコート化し、-80で保存する。BD CBA Mouse Enhanced Sensivity Master Buffer Kit(BD biosciencesから購入され、カタログ番号562246)の説明書の要求に従って、標準品および被験血清サンプルを希釈する。次にMouse IL-5 Enhanced Sensitivity Flex Set(BD biosciencesから購入され、カタログ番号562234)の説明書の要求に従って、各サンプルを処理し、検出パラメーターを設定してフローサイトメーター(BD FACSCelesta)で各サンプルを検出し、GraphPad Prismによって上記で採集したデータを分析し、標準曲線に従って各実験群の血清サンプル中のIL-5含有量を計算する。
【0191】
実験結果は、
図18に示されたとおりであり、対照群(ヒトIL-33刺激なし)と比較して、ヒトIL-33に腹腔内注射した後、マウスの末梢血中のIL-5の分泌(IL-33群)を約78.6倍として有意に刺激することができ、それぞれ5mg/kgの864F3-Hu4および874F7-Hu1を投与して1回治療する場合、マウスの末梢血IL-5の分泌を効果的に阻害することができ、それぞれは、対照群の1.7倍および0.9倍である。
【0192】
上記のマウスの全血の一部を採取してEDTA抗凝固管に入れ、上下に逆にして均等にし、4℃下で静置して備蓄する。10mLの丸底遠心分離管を取り、その中の各管に2μLのmouse Fc blocker(BD biosciencesから購入され、カタログ番号553142)を加える。サンプルごとに50μLの血液サンプルを10mLの遠心分離管に取り、軽くピペッティングして、血液サンプルとblockerとを均等に混合する。氷上に置いて15分間インキュベートする。各遠心分離管に2μLの混合した三つの抗体、即ち0.5μLのCD45.2 Monoclonal Antibody(104)、PerCP-Cyanine5.5(eBioscienceTMから購入され、カタログ番号45-0454-82)、0.5μLのCD170(Siglec F)Monoclonal Antibody(1RNM44N)、PE(eBioscienceTMから購入され、カタログ番号12-1702-82)、および1μLのLy-6G/Ly-6C Monoclonal Antibody(RB6-8C5)、APC-eFluor 780(eBioscienceTMから購入され、カタログ番号47-5931-82)を加え、氷上の暗所で1時間インキュベートする。遠心分離管に500mLの1×Lysing buffer(BD Biosciencesから購入され、カタログ番号555899)を加え、均等に混合し、室温下で赤血球を5分間溶解する。遠心分離管を350gで5分間遠心分離する。上清を捨て、管に3mLの予冷したPBSを加えて細胞を洗浄し、350gで5分間遠心分離する。上清を捨て、管に500μL予冷したフィルター処理したPBSを加え、沈降した細胞を軽る弾く。細胞懸濁液を細胞メッシュでフロー管にろ過し、フローサイトメーターによって各サンプル中の白血球に対する好酸球の比率を分析する。
【0193】
実験結果は、
図19に示されたとおりであり、対照群相比(ヒトIL-33刺激なし)と比較して、ヒトIL-33に腹腔内注射した後、マウスの末梢血中の好酸球の増加(IL-33群)を約10.5倍として有意に刺激することができ、それぞれ5mg/kgの864F3-Hu4および874F7-Hu1を投与して1回治療する場合、マウスの末梢血中のヒトIL-33刺激によって引き起こされる好酸球の増加を効果的に減少させることができ、それぞれは、対照群の1.6倍および1.58倍である。
【0194】
実施例22.IL-33に対するヒト化抗体の結合エピトープの測定
IL-33成熟タンパク質によるアミノ酸配列:
MSITGISPITEYLASLSTYNDQSITFALEDESYEIYVEDLKKDEKKDKVLLSYYESQHPSNESGDGVDGKMLMVTLSPTKDFWLHANNKEHSVELHKCEKPLPDQAFFVLHNMHSNCVSFECKTDPGVFIGVKDNHLALIKVDSSENLCTENILFKLSET(SEQ ID NO:55)(アミノ酸配列は、NP_254274.1の112位のSerから270位のThrまでのNCBIに由来する)、次のような16のポリペプチドを合成してIL-33に対するヒト化抗体の結合エピトープを特徴付け、各ポリペプチドのアミノ酸配列は、表4に示されたとおりであり、そのN-末端では、すべてマーカーをbiotin化する。
【表7】
【0195】
各ポリペプチド断片に対する抗体の結合活性を測定するために、コーティング液(50mMの炭酸塩コーティング緩衝液、pH9.6)でビオチン-アビジン(SA)を2μg/mLに事前に希釈し、100μL/ウェルでELISAプレートを4℃下で一晩コーティングし、PBSTで3回洗浄し、PBSで調製した2%BSAで200μL/ウェルで室温下で2時間ブロックする。PBSTで1回洗浄し、最終濃度が10μg/mLである864F3および874F7を100μL/ウェルでそれぞれ加え、室温下で1時間インキュベートする。PBSTで3回洗浄し、HRP標識ヤギ抗マウスIgG二次抗体を加え、室温下で30分間インキュベートし、PBSTでプレートを3回洗浄した後、残った液滴を吸水紙にできるだけパッティング乾かし乾かし、各ウェルに100μLのTMB発色液を加えて、適切な深さまで発色させ、各ウェルに50μlの2M H2SO4停止液を加えて基質反応を停止させ、マイクロプレートリーダーによって450nmでのOD値を読み取り、被験抗体と各ポリペプチド断片との結合能を分析する。実験結果は、表5に示されたとおりであり、874F7は、Pep6に有意に結合できるが、他のペプチドには結合できないことが分かる。
【表8】
【0196】
上記の実験結果に基づき、874F7-Hu1とマウスIL-33タンパク質との結合Kd値は、3.32×10-8であり、上記のIL-33成熟タンパク質のアミノ酸配列に従って選択する。
【0197】
「KKDEKKDKVLLSYYESQHPSNESGDGVDGK」領域(SEQ ID NO:55の41位-70位)は、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)によるアラニンスキャニング部位特異的突然変異がかけられ、次に原核の発現および精製が行われ、次のようなアミノ酸部位突然変異のIL-33突然変異体タンパク質をそれぞれ取得する。
【0198】
K41A、K42A、D43A、E44A、K45A、K46A、D47A、K48A、V49A、L50A、L51A、S52A、Y53A、Y54A、E55A、S56A、Q57A、H58A、P59A、S60A、N61A、E62A、S63A、D65A、V67A、D68A、K70A
次に実施例9の実験方法を参照して、874F7-Hu1に対する上記の各突然変異体タンパク質の親和性をそれぞれ測定し、同時に任意の突然変異のないIL-33タンパク質(WT-1、WT-2、WT-3、WT-4)を対照として設定する。
【0199】
代表的な実験結果は、それぞれ
図20-
図23および表6に示されたとおりであり、WTと比較して、K45、V49、L50、D65の突然変異後、874F7-Hu1とIL-33との親和性が大幅に低下したことが分かり、25倍以上低下し、S60、S52の突然変異後、874F7-Hu1とIL-33との親和性が大幅に低下したことが分かり、10-25倍低下し、K48、L51、Y53、E55の突然変異後、874F7-Hu1とIL-33との親和性が一定に低下し、2.5-10倍低下する。これは、874F7-Hu1とIL-33との結合に影響を与える重要な部位が主にK45、V49、D65、L50であり、その次がS60、S52であり、その後がK48、L51、Y53、E55であることも示す。
【0200】
IL-33結晶の3D構造図(PDB:2KLLにより)における上記の各部位の位置は、
図24に示されたとおりであり、これも、874F7-Hu1とIL-33との結合エピトープが上記の重要なアミノ酸部位を含む線形および空間エピトープであることをさらに示す。
【表9】
【0201】
本発明で言及されたすべての文書は、あたかも各文書が個別に参照として引用されたかのように、本出願における参照として引用される。さらに、本発明の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態も、本出願の添付の請求範囲によって定義される範囲に含まれる。
【配列表】
【国際調査報告】