(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-06
(54)【発明の名称】熱分解、逆水性ガスシフト反応、および発酵による芳香族化合物およびエタノールの生産
(51)【国際特許分類】
C10G 69/04 20060101AFI20230929BHJP
C10K 3/02 20060101ALI20230929BHJP
C10G 47/00 20060101ALI20230929BHJP
C10G 45/64 20060101ALI20230929BHJP
C10G 21/00 20060101ALI20230929BHJP
C10G 11/05 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
C10G69/04
C10K3/02
C10G47/00
C10G45/64
C10G21/00
C10G11/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519211
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(85)【翻訳文提出日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2021075177
(87)【国際公開番号】W WO2022069211
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】ジョリ ジャン-フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】フーニェ フレデリック
【テーマコード(参考)】
4H060
4H129
【Fターム(参考)】
4H060BB14
4H129AA03
4H129CA04
4H129CA06
4H129CA12
4H129CA25
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4H129KB02
4H129KC13X
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4H129KD23X
4H129MA01
4H129MA03
4H129MA04
4H129MA07
4H129MA09
4H129MA13
4H129MB03A
4H129MB05B
4H129MB19C
4H129NA27
(57)【要約】
開示されているのは、芳香族化合物の供給原料を転化するためのデバイスおよび方法であり、供給原料は、特に、分画トレイン(4~7)、キシレン分離ユニット(10)および異性化ユニット(11)によって処理され、熱分解ユニット(13)は、第2の炭化水素原料を処理し、供給原料に給送する熱分解流出物を生じさせ、CO、CO2およびH2を含んでいる熱分解ガスを生成する;逆水性ガスシフト反応RWGSセクション(50)は、熱分解ガスを処理し、COおよび水を富化したRWGSガスを生じさせる;発酵反応セクション(52)は、COおよび水を富化したRWGSガスを処理し、エタノールを生じさせる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族化合物を含んでいる第1の炭化水素供給原料の転化のためのデバイスであって、以下を含む、デバイス:
- 第1の炭化水素供給原料(2)から少なくとも1つの含ベンゼン留分(22)、少なくとも1つの含トルエン留分(23)およびキシレンおよびエチルベンゼンを含んでいる少なくとも1つの留分(24)を抽出するのに適した分画トレイン(4)~(7);
- キシレン分離ユニット(10);キシレンおよびエチルベンゼンを含んでいる留分(24)を処理し、パラキシレンを含んでいるエキストラクト(39)と、オルトキシレン、メタキシレンおよびエチルベンゼンを含んでいるラフィネート(40)とを生じさせるのに適している;
- 異性化ユニット(11);ラフィネート(40)を処理し、分画トレイン(4)~(7)に送られるパラキシレンを富化した異性化物(42)を生じさせるのに適している;
- 熱分解ユニット(13);第2の炭化水素供給原料(30)を処理し、6~10個の炭素原子を有する炭化水素化合物を含んでおり、少なくとも部分的に、第1の炭化水素供給原料(2)に給送する少なくとも1つの熱分解流出物(31)と、CO、CO
2およびH
2を少なくとも含んでいる熱分解ガス(32)とを生じさせるのに適している;
- 逆水性ガスシフトRWGS反応セクション(50);熱分解ガス(32)を処理し、COおよび水を富化したRWGSガス(51)を生じさせるのに適している;
- 発酵反応セクション(52);COおよび水を富化したRWGSガス(51)を処理し、エタノールを生じさせるのに適している。
【請求項2】
エタノールを処理し、エチレンを生じさせるのに適したエタノール脱水ユニットを含む、請求項1に記載の転化デバイス。
【請求項3】
発酵反応セクション(52)は、発酵出口において存在するCO
2をRWGS反応セクション(50)の入口にリサイクルするのに適している、請求項1または2に記載の転化デバイス。
【請求項4】
熱分解ガス(32)にH
2の供給を提供するための補給ライン(34)をさらに含む、請求項1~3のいずれか1つに記載の転化デバイス。
【請求項5】
分画トレイン(4)~(7)は、第1の炭化水素供給原料(2)からC9-C10モノ芳香族化合物留分(25)を抽出するのに適している、請求項1~4のいずれか1つに記載の転化デバイス。
【請求項6】
含トルエン留分(23)と共にC9-C10モノ芳香族化合物留分(25)を処理し、分画トレイン(4)~(7)に送られるキシレンを生じさせるのに適したトランスアルキル化ユニット(8)をさらに含む、請求項5に記載の転化デバイス。
【請求項7】
選択的水素化分解ユニット(9)をさらに含み、該選択的水素化分解ユニット(9)は、以下のことに適している、請求項6に記載の転化デバイス:
- C9-C10モノ芳香族化合物留分(25)を処理すること;および
- トランスアルキル化ユニット(8)に送られるメチル置換型芳香族化合物を富化した水素化分解流出物(46)を生じさせること。
【請求項8】
含トルエン留分(23)を少なくとも部分的に処理し、異性化ユニット(11)にリサイクルされるキシレン富化留分を生じさせるのに適した不均化ユニットをさらに含む、請求項1~7のいずれか1つに記載の転化デバイス。
【請求項9】
芳香族化合物を含んでいる第1の炭化水素供給原料の転化の方法であって、以下の工程を含む方法:
- 分画トレイン(4)~(7)において第1の炭化水素供給原料(2)を分画する工程;少なくとも1つの含ベンゼン留分(22)、少なくとも1つの含トルエン留分(23)、およびキシレンおよびエチルベンゼンを含んでいる少なくとも1つの留分(24)を抽出する;
- キシレン分離ユニット(10)において、キシレンおよびエチルベンゼンを含んでいる留分(24)を分離し、パラキシレンを含んでいるエキストラクト(39)ならびにオルトキシレン、メタキシレンおよびエチルベンゼンを含んでいるラフィネート(40)を生じさせる工程;
- 異性化ユニット(11)においてラフィネート(40)を異性化し、パラキシレンを富化した異性化物(42)を生じさせる工程;
- パラキシレンを富化した異性化物(42)を分画トレイン(4)~(7)に送る工程;
- 熱分解ユニット(13)において第2の炭化水素供給原料(30)を処理して、第1の炭化水素供給原料(2)に少なくとも部分的に給送する、6~10個の炭素原子を有する炭化水素化合物を含んでいる少なくとも1つの熱分解流出物(31)を生じさせ、かつ、CO、CO
2およびH
2を少なくとも含んでいる熱分解ガス(32)を生じさせる工程;
- RWGS反応セクション(50)において熱分解ガス(32)を処理して、COおよび水を富化したRWGSガス(51)を生じさせる工程;
- 発酵反応セクション(52)においてCOおよび水を富化したRWGSガス(51)を少なくとも部分的に処理して、エタノールを生じさせる工程。
【請求項10】
発酵出口において存在するCO
2をRWGS反応セクション(50)の入口にリサイクルする工程を含む、請求項9に記載の転化方法。
【請求項11】
補給ライン(34)によって熱分解ガス(32)にH
2の供給を提供する工程をさらに含む、請求項9または10に記載の転化方法。
【請求項12】
熱分解ユニット(13)は、以下の操作条件の少なくとも1つ下に用いられる少なくとも1個のリアクタ-を含む、請求項9~11のいずれか1つに記載の転化方法:
- 絶対圧力:0.1~0.5MPa、HSV:0.01~10h
-1、好ましくは0.01~5h
-1、大いに好ましくは0.1~3h
-1;HSVは、供給原料の容積流量対用いられる触媒の容積の比である;
- 温度:400℃~1000℃、好ましくは400℃~650℃、好ましくは450℃~600℃、好ましくは450℃~590℃;
- ZSM-5、フェリエライト、ゼオライトベータ、ゼオライトY、モルデナイト、ZSM-23、ZSM-57、EU-1およびZSM-11から選ばれる少なくとも1種のゼオライトを含み、好ましくはそれらから構成されるゼオライト触媒;好ましくは、触媒は、ZSM-5のみを含む触媒である。
【請求項13】
RWGS反応セクション(50)は、以下の操作条件の少なくとも1つ下に用いられる少なくとも1個のリアクタ-を含む、請求項9~12のいずれか1つに記載の転化方法:
- 温度:400℃~800℃、優先的には500℃~800℃、さらにより優先的には650℃~750℃;
- 圧力:0.1~10MPa、優先的には0.1~5MPa、より優先的には0.1~2.5MPa;
- リアクタ-の入口におけるガスの空間速度:5000~20000mL/g
cata/h;
- 鉄またはアルカリ金属をベースとする触媒。
【請求項14】
発酵反応セクション(52)は、以下の操作条件の少なくとも1つ下に用いられる少なくとも1個のリアクタ-を含む、請求項9~13のいずれか1つに記載の転化方法:
- COおよび/またはCO
2/H
2の対を代謝してエタノールを生じさせる能力がある微生物の存在;
- pH:3~9;
- 増殖温度:20℃~80℃;
- レドックス電位:-450mV超;
- 圧力:0.1~0.4MPa。
【請求項15】
請求項9~14のいずれか1つに記載の転化方法であって、異性化ユニット(11)は、気相異性化ゾーンおよび/または液相異性化ゾーンを含み、
気相異性化ゾーンは、以下:
- 温度:300℃超;
- 圧力:4.0MPa未満;
- 毎時空間速度:10h
-1未満;
- 水素対炭化水素のモル比:10未満;
- 開口部が10または12個の酸素原子の環によって画定されるチャネルを有する少なくとも1種のゼオライトと、両端を含めて0.1重量%~0.3重量%の含有率の少なくとも1種の第VIII族金属とを含んでいる触媒の存在中
の操作条件の少なくとも1つ下に用いられ、
液相異性化ゾーンは、以下:
- 温度:300℃未満;
- 圧力:4MPa未満;
- 毎時空間速度:10h
-1未満;
- 開口部が10または12個の酸素原子の環によって画定されるチャネルを有する少なくとも1種のゼオライトを含んでいる触媒の存在中
の操作条件の少なくとも1つ下に用いられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油化学工業のための芳香族化合物(ベンゼン、トルエンおよびキシレン、すなわちBTX)およびエタノールの生産に関する。より具体的には、本発明の目的は、炭化水素化合物、好ましくはバイオマスの熱分解の方法によって、熱分解のCOおよびCO2副生物の転化によって芳香族化合物およびエタノールを生産することができることにあり、それ故に、全ての炭素、特に生物由来の炭素をアップグレードすることが可能である。
【0002】
アロマティクス・コンプレクス(または芳香族化合物の転化のためのデバイス)は、C6~C10+供給原料と言われる6個から10個以上の炭素原子から主に組成された供給原料を給送されるデバイスである。種々の芳香族化合物源がアロマティクス・コンプレクスに導入されてよく、最も普及しているものはナフサの接触改質の方法から得られる。
【0003】
アロマティクス・コンプレクスの範囲内で、芳香族化合物源が何であれ、ベンゼンおよびアルキル芳香族化合物(例えば、トルエン、パラキシレン、オルトキシレン)がそれから抽出され、それから、所望の中間体に転化される。目当ての生成物は、メチル基0個(ベンゼン)、1個(トルエン)または2個(キシレン)を有する芳香族化合物、特に、キシレンのうち、最も多大な市場価値を有するパラキシレンである。
【0004】
炭化水素化合物の熱分解の方法により、芳香族化合物が生じるが、沢山のCOおよびCO2も転化副生物として生じる。熱分解が触媒的である場合、熱分解リアクタ-中で用いられた触媒上に存在するコークの燃焼によっても、有意な量のCO2が生じる。
【背景技術】
【0005】
現在まで、アロマティクス・コンプレクスにより、ベンゼン、任意にトルエン、およびキシレン(多くの場合にはパラキシレン、場合によってはオルトキシレン)を生じさせることが可能となる。アロマティクス・コンプレクスは、一般的には、次の機能のうちの少なくとも1つを示す少なくとも1個の触媒ユニットを持つ:
- A8化合物と表記される、8つの炭素原子を含有している芳香族化合物の異性化;オルトキシレン、メタキシレンおよびエチルベンゼンをパラキシレンに転化することが可能となる;
- トランスアルキル化;トルエン(および任意にベンゼン)ならびにトリメチルベンゼンおよびテトラメチルベンゼンなどのA9+化合物の混合物からキシレンを生じさせることが可能となる;ならびに、
- トルエンの不均化;ベンゼンおよびキシレンを生じさせることを可能にする。
【0006】
芳香族ループにより、吸着または結晶化による分離によって高純度パラキシレンを生じさせることが可能となり、その操作は、従来技術から周知である。この「C8芳香族ループ」は、「キシレン塔」として知られている蒸留塔における重質化合物(すなわちC9+化合物)の除去の工程を包含する。この塔からの塔頂流れは、C8芳香族異性体(すなわちA8異性体)を含有しており、続いて、パラキシレンの分離の方法に送られる。これは、非常に一般的には、エキストラクトおよびラフィネートを生じさせる擬似移動床(simulated moving bed:SMB)吸着による分離の方法、またはパラキシレンフラクションが混合物の構成成分の残りから結晶の形態で単離される結晶化方法である。
【0007】
エキストラクトは、パラキシレンを含有しており、このものは、続いて、蒸留されて、高純度のパラキシレンを得るようにする。ラフィネートは、メタキシレン、オルトキシレンおよびエチルベンゼンに豊富であり、このものは、接触異性化ユニットにおいて処理され、これにより、キシレン(オルト-、メタ-、パラ-キシレン)の割合が事実上熱力学的平衡にありかつエチルベンゼンの量が低減したC8芳香族化合物の混合物が復元する。この混合物は、フレッシュな供給原料と共に「キシレン塔」に再送される。
【0008】
ベンゼンおよびパラキシレンを生じさせるアロマティクス・コンプレクスは、非常に優勢には、石油または天然ガスに由来する供給原料を給送される。これらのコンプレクスにより、生物由来の芳香族化合物を生じさせることまたはエタノールを共生成させることは可能とならない。別のチャレンジは、COおよびCO2の形態の炭素、特に生物由来の炭素を高付加価値の化合物にアップグレードすることにある。本発明の目的は、これらの欠点を克服することにある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の概要)
上記の文脈において、本発明の説明の第1の目的は、従来技術の課題を克服し、芳香族化合物が炭化水素化合物の熱分解によって生じさせられる場合に、(例えば全ての)熱分解セクションの副生物であるCOおよびCO2をエタノールに転化することを可能にする石油化学工業のための芳香族化合物の生産のためのデバイスおよび方法を提供することにある。熱分解方法の触媒上に存在するコークの燃焼に由来するCO2も、有利には、エタノールに転化されてよい。熱分解されるべき供給原料中に存在する全ての炭素は、このように、芳香族化合物およびエタノールにアップグレードされる。
【0010】
特に、本発明は、炭化水素化合物の熱分解の副生物であるCOおよびCO2をエタノールに転化することを可能にする1個または複数個のユニットの提供に基づく。
【0011】
具体的には、本発明の目的は、CO2をCOに少なくとも部分的に転化し、CO富化ガスをこのようにして得るための逆水性ガスシフト(reverse water gas shift:RWGS)ユニット、次にCOのエタノールへの発酵のためのユニットを加えることからなってよい。発酵ユニットの出口において存在するCO2は、逆水性ガスシフトユニットの入口にリサイクルされ、それゆえにCO2の完全な転化を可能にする。
【0012】
第1の態様によると、前述の目的は、他の利点とともに、芳香族化合物を含んでいる第1の炭化水素供給原料を転化するためのデバイスによって得られ、以下を含んでいる:
- 少なくとも1つの含ベンゼン留分、少なくとも1つの含トルエン留分および少なくとも1つの含キシレン・エチルベンゼン留分を第1の炭化水素供給原料から抽出することに適した分画トレイン;
- キシレンおよびエチルベンゼンを含んでいる留分を処理し、かつ、パラキシレンを含んでいるエキストラクトならびにオルトキシレン、メタキシレンおよびエチルベンゼンを含んでいるラフィネートを生じさせるのに適したキシレンの分離のためのユニット;
- ラフィネートを処理し、かつ、パラキシレンを富化した異性化物を生じさせるのに適した異性化ユニット;異性化物は、分画トレインに送られる;
- 第2の炭化水素供給原料を処理し、6~10個の炭素原子を有する炭化水素化合物を含んでいる少なくとも1つの熱分解流出物を生じさせ、かつ、CO、CO2およびH2を少なくとも含んでいる熱分解ガスを生じさせるのに適した熱分解ユニット;熱分解流出物は、第1の炭化水素供給原料に少なくとも部分的に給送する;
- 熱分解ガスを処理し、かつ、COおよび水を富化したRWGSガスを生じさせるのに適した逆水性ガスシフトRWGS反応セクション;
- COおよび水を富化したRWGSガスを処理し、かつ、エタノールを生じさせるのに適した発酵反応セクション。
【0013】
本発明の利点の1つは、特に、分離工程なしに、CO、CO2、H2OおよびH2からなる混合物を含有しているRWGSから得られた流出物を(例えばその全体として)、エタノールを生じさせるための発酵反応セクションに直接的に送ることができることにある。1つまたは複数の実施形態によると、このようにして生じたエタノールは、種々の形態、例えば(例えばエタノールの脱水後に)エチレンの形態でアップグレードされ得る。1つまたは複数の実施形態によると、ベンゼン、例えばアロマティクス・コンプレクスに由来するベンゼンは、エチレンとの反応によってエチルベンゼンに転化される。得られたエチルベンゼンは、有利には、異性化ユニットに送られて、追加のキシレンを形成し得る。1つまたは複数の実施形態によると、エチレンは、より長いオレフィン(ブテン、ヘキセン、オクテン)にオリゴマー化される。生物由来のポリマーを得るための用途のためのモノマーを得ることがこのようにして可能である。
【0014】
1つまたは複数の実施形態によると、発酵反応セクションは、発酵出口において存在するCO2をRWGS反応セクションの入口にリサイクルするのに適している。
【0015】
1つまたは複数の実施形態によると、デバイスは、熱分解ガスにH2の供給を提供するための補給ラインをさらに含む。
【0016】
1つまたは複数の実施形態によると、分画トレインは、C9-C10モノ芳香族化合物留分を第1の炭化水素供給原料から抽出するのに適している。
【0017】
1つまたは複数の実施形態によると、デバイスは、C9-C10モノ芳香族化合物留分を含トルエン留分とともに処理し、かつ、分画トレインに送られるキシレンを生じさせるのに適したトランスアルキル化ユニットをさらに含む。
【0018】
1つまたは複数の実施形態によると、デバイスは、選択的水素化分解ユニットをさらに含み:該デバイスは、以下に適している:
- C9-C10モノ芳香族化合物留分を処理すること;および
- トランスアルキル化ユニットに送られるメチル置換芳香族化合物を富化した水素化分解流出物を生じさせること。
【0019】
1つまたは複数の実施形態によると、デバイスは、少なくとも一部の含トルエン留分を処理し、かつ、異性化ユニットにリサイクルされるキシレン富化留分を生じさせるのに適した不均化ユニットをさらに含む。
【0020】
第2の態様によると、上述の目的、さらには他の利点は、芳香族化合物を含んでいる第1の炭化水素供給原料を転化するための方法であって、以下の工程を含んでいる方法によって得られる:
- 分画トレインにおいて第1の炭化水素供給原料を分画して、少なくとも1つの含ベンゼン留分、少なくとも1つの含トルエン留分、および少なくとも1つの含キシレン・エチルベンゼン留分を抽出する工程;
- キシレンの分離のためのユニットにおいてキシレンおよびエチルベンゼンを含んでいる留分を分離し、かつ、パラキシレンを含んでいるエキストラクトならびにオルトキシレン、メタキシレンおよびエチルベンゼンを含んでいるラフィネートを生じさせる工程;
- 異性化ユニットにおいてラフィネートを異性化し、かつ、パラキシレン富化異性化物を生じさせる工程;
- パラキシレン富化異性化物を分画トレインに送る工程;
- 熱分解ユニットにおいて第2の炭化水素供給原料を処理して、6~10個の炭素原子を有する炭化水素化合物を含んでいる少なくとも1つの熱分解流出物を生じさせ、これを第1の炭化水素供給原料に少なくとも部分的に給送し、かつ、CO、CO2およびH2を少なくとも含んでいる熱分解ガスを生じさせる工程;
- RWGS反応セクションにおいて熱分解ガスを処理して、COおよび水を富化したRWGSガスを生じさせる工程;
- 発酵反応セクションにおいてCOおよび水を富化した少なくとも一部のRWGSガスを処理して、エタノールを生じさせる工程。
【0021】
1つまたは複数の実施形態によると、本方法は、発酵出口において存在するCO2をRWGS反応セクションの入口にリサイクルする工程を含む。
【0022】
1つまたは複数の実施形態によると、本方法は、補給ラインによって熱分解ガスにH2の供給を提供する工程をさらに含む。
【0023】
1つまたは複数の実施形態によると、熱分解ユニットは、以下の操作条件のうちの少なくとも1つ下に用いられる少なくとも1個のリアクタ-を含む:
- 絶対圧力:0.1~0.5MPa、およびHSV0.01~10h-1、好ましくは0.01~5h-1、大いに好ましくは0.1~3h-1(HSVは、供給原料の容積流量対用いられる触媒の容積の比である);
- 温度:400℃~1000℃、好ましくは400℃~650℃、好ましくは450℃~600℃、好ましくは450℃~590℃;
- ゼオライト触媒;ZSM-5、フェリエライト、ゼオライトベータ、ゼオライトY、モルデナイト、ZSM-23、ZSM-57、EU-1およびZSM-11から選ばれる少なくとも1種のゼオライトを含み、好ましくは、それらから構成され、好ましくは、触媒は、ZSM-5のみを含む触媒である。
【0024】
1つまたは複数の実施形態によると、RWGS反応セクションは、以下の操作条件のうちの少なくとも1つ下に用いられる少なくとも1個のリアクタ-を含む:
- 温度:400℃~800℃、優先的には500℃~800℃、さらにより優先的には650℃~750℃;
- 圧力:0.1~10MPa、優先的には0.1~5MPa、より優先的には0.1~2.5MPa;
- リアクタ-の入口におけるガスの空間速度:5000~20000mL/gcata/h;
- 鉄またはアルカリ金属(例えばカリウム)をベースとする触媒。
【0025】
1つまたは複数の実施形態によると、発酵反応セクションは、以下の操作条件のうちの少なくとも1つ下に用いられる少なくとも1個のリアクタ-を含む:
- COおよび/またはCO2/H2の対を代謝させてエタノールを生じさせる能力がある微生物の存在;
- pH:3~9;
- 増殖温度:20℃~80℃;
- 還元電位:-450mV超;
- 圧力:0.1~0.4MPa。
【0026】
1つまたは複数の実施形態によると、異性化ユニットは、気相異性化ゾーンおよび/または液相異性化ゾーンを含み、
気相異性化ゾーンは、以下の操作条件のうちの少なくとも1つ下に用いられる:
- 温度:300℃超;
- 圧力:4.0MPa未満;
- 空間速度:10h-1未満;
- 水素対炭化水素のモル比:10未満;
- 少なくとも1種のゼオライトと、0.1重量%~0.3重量%(両端値を含む)の含有率の第VIII族からの少なくとも1種の金属とを含んでいる触媒の存在中;ゼオライトが示すチャネルの開口部は、10または12個の酸素原子を有する環によって画定される;
液相異性化ゾーンは、以下の操作条件のうちの少なくとも1つ下に用いられる:
- 温度:300℃未満;
- 圧力:4MPa未満;
- 空間速度:10h-1未満;
- 少なくとも1種のゼオライトを含んでいる触媒の存在中;ゼオライトが示すチャネルの開口部は、10または12個の酸素原子を有する環によって画定される。
【0027】
第1の態様および第2の態様による実施形態は、上述の態様によるデバイスおよび方法の他の特徴および利点とともに、もっぱら例証として限定なしに与えられる以下に続く記載を読むことによって、かつ以下の図面を参照することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】芳香族化合物の生産を増加させることを可能にする本発明による方法の概略図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施形態の説明)
第1の態様によるデバイスおよび第2の態様による方法の実施形態がここで詳細に説明されることになる。以下の詳細な説明において、デバイスのより深い理解を提供するために、数々の具体的な詳細が開示される。しかしながら、デバイスは、これらの具体的な詳細なしに実施され得ることが当業者に明らかであろう。他のケースにおいて、説明を不必要に複雑化することを回避するために、周知の特徴は詳細に説明されなかった。
【0030】
本特許出願において、用語「含む(to comprise)」は、「包含する(to include)」および「含有する(to contain)」と同義であり(同じことを意味し)、包括的またはオープンであり、申し立てられていない他の要素を排除しない。用語「含む」は、排他的かつクローズドな用語「からなる(to consist)」を包含することが理解される。さらに、本記載において、本質的にまたはもっぱら化合物Aを含んでいる流出物は、最低80重量%または最低90重量%、好ましくは最低95重量%、大いに好ましくは少なくとも99重量%の化合物Aを含んでいる流出物に対応する。
【0031】
本発明は、パラキシレン、ベンゼンおよびエタノールを生じさせることを可能にする一連のユニット操作を含んでいるデバイスおよび方法として定義されてよい。この一連のユニット操作により、全てのCOおよびCO2副生物を転化することが可能となる。
【0032】
本発明によるデバイスおよび方法は、ベンゼンおよびパラキシレンを生じさせるために当業者に知られている触媒ユニットおよび分離ユニットをそれらが含みかつ用いることを特徴とする。これらのユニットはアロマティクス・コンプレクスにおいて一般に遭遇される。
【0033】
本発明の特徴の1つは、エタノールを生じさせる、炭化水素化合物の熱分解のためのユニットの副生物であるCOおよびCO2の使用として要約され得る。
【0034】
有利には、RWGS反応によるCO2のCOへの転化のための反応セクションと、RWGSユニットを出るCOおよび水を富化したガス中に存在するCOのエタノールへの発酵のための反応セクションとの組み合わせにより、熱分解ユニットのCOおよびCO2の副生物の全てをエタノールにアップグレードすること、それ故に炭化水素化合物からの芳香族化合物およびエタノールの共生成を得ることが可能となる。
【0035】
図1を参照すると、1つまたは複数の実施形態によると、芳香族化合物の転化のためのデバイスは:以下を含む:
- 任意の供給原料分離ユニット(1);アロマティクス・コンプレクスの第1の炭化水素供給原料(2)を、7個以下の炭素原子を有する炭化水素留分(C7-)と8個以上の炭素原子を有する芳香族化合物留分(A8+)とに分離する;
- 供給原料分離ユニット(1)と、分画トレイン(4)~(7)との間の任意の芳香族化合物抽出ユニット(3);コンプレクスの供給原料のC7-留分のベンゼンおよびトルエンから脂肪族化合物を分離する;
- 任意の芳香族化合物抽出ユニット(3)の下流の分画トレイン(4)~(7);他の芳香族化合物からベンゼン、トルエンおよびキシレンを抽出することを可能にする;
- 任意のトランスアルキル化ユニット(8);トルエン(および場合によってはベンゼン)およびメチルアルキルベンゼン、例えばトリメチルベンゼンをキシレンに転化する-有利には、このユニットは、テトラメチルベンゼンも処理することができる;
- 任意の選択的水素化分解ユニット(9);9および10個の炭素原子を有する芳香族化合物を含んでいる留分を処理し、かつ、メチル置換型芳香族化合物を富化した水素化分解流出物を生じさせるのに適している;
- 水素化分解流出物を分離するための任意の分離ユニット(不図示);選択的水素化分解ユニット(9)の(例えば直接的に)下流に位置し、複数の液体流出物留分を生じさせる;
- キシレン分離ユニット(10)(例えば、モレキュラーシーブおよびトルエンなどの脱着剤を用いる結晶化または擬似移動床のタイプのもの);キシレンおよびエチルベンゼンからパラキシレンを単離することを可能にする;
- キシレン分離ユニット(10)からの流出物として得られるラフィネートの異性化のためのユニット(11);特にオルトキシレン、メタキシレンおよびエチルベンゼンをパラキシレンに転化する;
- 任意の安定化塔(12);アロマティクス・コンプレクスからのより揮発性の種(例えばC5-種)、特にトランスアルキル化ユニット(8)および/または異性化ユニット(11)からの流出物を除去することを特に可能にする;
- 熱分解ユニット(好ましくは接触熱分解ユニット)(13);第2の炭化水素供給原料(30)を処理し、アロマティクス・コンプレクスの第1の炭化水素供給原料(2)に少なくとも部分的に給送する、少なくとも1つの熱分解流出物(31)、CO、CO
2およびH
2を含んでいる熱分解ガス(32)、ならびに副生物(33)(主に中間留分から組成され、これらは、水素化処理および/または水素化クラッキングの後に、ジェット燃料、ディーゼル燃料または舶用燃料の形態でアップグレードされることができるであろう)を生じさせる;
- 第1の任意の補給ライン(34);H
2の供給を提供し、かつ、熱分解ガス(32)のH
2/CO比を調節する;
- RWGS反応セクション(50);熱分解ユニット(13)に由来する熱分解ガス(32)を処理し、熱分解ガス(32)と比較してCOおよび水を富化した(それゆえにCO
2およびH
2が枯渇した)RWGSガス(51)を生じさせる;
- 発酵反応セクション(52);COおよび水を富化したRWGSガス(51)を処理し、RWGSガス(51)と比較してエタノールを富化した発酵流出物(53)を生じさせる;
- 任意の脱水ユニット(不図示);発酵流出物(53)のエタノールをエチレンに脱水する;
- 任意のアルキル化反応セクション(不図示);含ベンゼン留分(22)を前記エチレンにより少なくとも部分的にアルキル化し、エチルベンゼン富化留分(場合によっては異性化ユニット(11)に送られる)を生じさせる。
【0036】
図1を参照すると、供給原料分離ユニット(1)は、アロマティクス・コンプレクスの第1の炭化水素供給原料(2)を処理して、ベンゼンおよびトルエンを特に含有する7個以下の炭素原子を有する化合物(C7-)を(例えば本質的に)含んでいる塔頂留分(16)と、キシレン塔(6)に送られる8個以上の炭素原子を有する芳香族化合物(A8+)を(例えば本質的に)含んでいる塔底留分(17)とを分離する。1つまたは複数の実施形態によると、供給原料分離ユニット(1)は、最低90重量%、好ましくは最低95重量%、大いに好ましくは最低99重量%のトルエンを含んでいる第1のトルエン留分(18)も分離する。1つまたは複数の実施形態によると、第1のトルエン留分(18)は、ベンゼン塔ともまた言われる芳香族化合物の蒸留のための第1の塔(4)および/またはトルエン塔ともまた言われる芳香族化合物の蒸留のための第2の塔(5)に送られる。
【0037】
1つまたは複数の実施形態によると、第1の炭化水素供給原料(2)は、炭素数が6から10個の炭素原子に及ぶ分子を主に(すなわち>50重量%)含有している炭化水素留分である。この供給原料は、10個よりも多くの炭素原子を有する分子および/または5個の炭素原子を有する分子も含有し得る。
【0038】
アロマティクス・コンプレクスの第1の炭化水素供給原料(2)は、芳香族化合物に豊富であり(例えば>50重量%)、好ましくは最低20重量%のベンゼン、優先的には最低30重量%、大いに好ましくは最低40重量%のベンゼンを含有する。第1の炭化水素供給原料(2)は、ナフサの接触改質によって生じ得るか、またはクラッキング(例えば、スチームクラッキング、接触クラッキング)ユニットもしくはアルキル芳香族化合物を生じさせるための任意の他の手段の生成物であり得る。
【0039】
1つまたは複数の実施形態によると、第1の炭化水素供給原料(2)は、少なくとも部分的に、さらには完全に生物由来である。1つまたは複数の実施形態によると、第1の炭化水素供給原料(2)は、リグノセルロース系バイオマス転化方法に(本質的に)由来する。例えば、リグノセルロース系バイオマスの転化によって生じさせられた流出物は、第1の炭化水素供給原料(2)の要求される仕様に合うように処理されて、アロマティクス・コンプレクスと適合する硫黄ベース、窒素ベースおよび酸素ベースの元素の含有率を示し得る。
【0040】
1つまたは複数の実施形態によると、アロマティクス・コンプレクスの第1の炭化水素供給原料(2)は、供給原料の全重量に相対して最低25重量%、好ましくは最低30重量%、大いに好ましくは最低35重量%の、熱分解ユニット(13)に由来する熱分解流出物(31)を含み、残部は、芳香族系およびパラフィン系の化合物(例えば接触改質ユニットに由良する)の非生物由来の混合物を含む(好ましくはそれからなる)。1つまたは複数の実施形態によると、アロマティクス・コンプレクスの第1の炭化水素供給原料(2)は、最低80重量%、好ましくは最低90重量%、大いに好ましくは最低95重量%の、熱分解ユニット(13)に由来する熱分解流出物(31)を含む。1つまたは複数の実施形態によると、アロマティクス・コンプレクスの第1の炭化水素供給原料(2)は、熱分解ユニット(13)に由来する熱分解流出物(31)からなる。
【0041】
1つまたは複数の実施形態によると、第1の炭化水素供給原料(2)は、10重量ppm未満、好ましくは5重量ppm未満、大いに好ましくは1重量ppm未満の元素窒素、および/または10重量ppm未満、好ましくは5重量ppm未満、大いに好ましくは1重量ppm未満の元素硫黄、および/または100重量ppm未満、好ましくは50重量ppm未満、大いに好ましくは10重量ppm未満の元素酸素を含む。
【0042】
供給原料分離ユニット(1)からの塔頂留分(16)は、場合によっては、下記に定義されることになる安定化塔(12)からの塔底生成物(ベンゼンおよびトルエン)と混合されて、芳香族化合物抽出ユニット(3)に送られ、C6-C7脂肪族種を含んでいる流出物(19)を抽出し、アロマティクス・コンプレクスからの共生成物として取り出される。芳香族化合物抽出ユニット(3)からのエキストラクトと言われる芳香族留分(20)(本質的にはベンゼンおよびトルエン)は、場合によっては、下記に定義されることになるトランスアルキル化ユニット(8)からの重質フラクション(21)と混合されて、ベンゼン塔(4)に送られる。1つまたは複数の実施形態によると、芳香族留分(20)は、C6-C7(例えば本質的に)芳香族炭化水素供給原料(A6-A7)である。
【0043】
1つまたは複数の実施形態によると、分画トレインは、芳香族化合物の蒸留のための塔(4)、(5)、(6)および(7)を含み、以下の5種の留分を分離することを可能にする:
- ベンゼンを(例えば本質的に)含んでいる留分(22);
- トルエンを(例えば本質的に)含んでいる留分(23);
- キシレンおよびエチルベンゼンを(例えば本質的に)含んでいる留分(24);
- 9および10個の炭素原子を有する芳香族化合物を(例えば本質的に)含んでいる留分(25);
- 最も揮発性の種が10個の炭素原子を有する芳香族化合物である芳香族化合物を(例えば本質的に)含んでいる留分(26)。
【0044】
ベンゼン塔(4)は、以下のことに適している:C6-C10(例えば本質的に)芳香族炭化水素供給原料(A6+)である芳香族留分(20)を処理する;塔頂において、アロマティクス・コンプレクスの出口における所望の生成物の1つであってよいベンゼンを含んでいる留分(22)を生じさせる;および塔底においてC7-C10(例えば本質的に)芳香族流出物(27)(A7+)を生じさせる。
【0045】
トルエン塔(5)は、以下のことに適している:ベンゼン塔(4)からの塔底生成物であるC7-C10芳香族流出物(27)(A7+)を処理する;塔頂において、トランスアルキル化ユニット(8)に送られる、含トルエン留分(23)を生じさせる;および塔底においてC8-C10(例えば本質的に)芳香族流出物(28)(A8+)を生じさせる。
【0046】
キシレン塔とも言われる芳香族化合物の蒸留のための第3の塔(6)は、以下のことに適している:アロマティクス・コンプレクスの供給原料の8個以上の炭素原子を有する芳香族留分(17)(A8+)と、場合による、トルエン塔からの塔底流出物(28)とを処理する;塔頂において、キシレン分離ユニット(10)に送られるキシレンおよびエチルベンゼンを含んでいる留分(24)を生じさせる;ならびに塔底においてC9-C10芳香族化合物を(例えば本質的に)含んでいる流出物(29)(A9+)を生じさせる。
【0047】
重質芳香族化合物塔とも言われる芳香族化合物の蒸留のための第4の塔(7)は、任意であり、以下のことに適している:キシレン塔からの塔底流出物(29)を処理する;塔頂において、C9-C10モノ芳香族化合物を含んでいるフラクション(25)を生じさせる;および塔底において、最も揮発性の種が10個の炭素原子を有する芳香族化合物である芳香族化合物を(例えば本質的に)含んでいる留分(26)(A10+)を生じさせる。好ましくは、塔底留分(26)は、C11+化合物を含む。
【0048】
トランスアルキル化ユニット(8)において、C9-C10モノ芳香族化合物を含んでいるフラクション(25)(および/または下記のメチル置換型芳香族化合物を富化した水素化分解流出物)は、トルエン塔(5)の塔頂に由来する含トルエン留分(23)と混合され、トランスアルキル化ユニット(8)の反応セクションに給送して、メチル基の不足を有する芳香族化合物(トルエン)と過剰なメチル基を有する芳香族化合物(例えば、トリおよびテトラメチルベンゼン)とのトランスアルキル化によってキシレンを生じさせる。1つまたは複数の実施形態によると、トランスアルキル化ユニット(8)は、例えば過剰なメチル基が観察される場合に、パラキシレンの生成のためにベンゼンを給送される(
図1に表されていないライン)。1つまたは複数の実施形態によると、トランスアルキル化ユニット(8)は、キシレン塔からの塔底流出物(29)を直接的に処理する。
【0049】
1つまたは複数の実施形態によると、トランスアルキル化ユニット(8)は、以下の操作条件のうちの少なくとも1つ下に用いられるのに適した少なくとも1個の第1トランスアルキル化リアクタ-を含む:
- 温度:200℃~600℃、優先的には350℃~550℃、さらにより優先的には380℃~500℃;
- 圧力:2~10MPa、優先的には2~6MPa、より優先的には2~4MPa;
- WWH:0.5~5h-1、優先的には1~4h-1、より優先的には2~3h-1。
【0050】
1つまたは複数の実施形態によると、第1トランスアルキル化リアクタ-は、ゼオライト、例えばZSM-5を含んでいる触媒の存在中で操作される。1つまたは複数の実施形態によると、第2トランスアルキル化リアクタ-は、固定床タイプのものである。
【0051】
1つまたは複数の実施形態によると、トランスアルキル化ユニット(8)の反応セクションからの流出物は、トランスアルキル化ユニット(8)の前記反応セクションの下流の第1分離塔(不表示)において分離される。ベンゼンおよびより揮発性の種の少なくとも一部を含んでいる留分(38)(C6-)は、第1分離塔の塔頂において抽出され、任意の安定化塔(12)に送られる。安定化塔(12)により、より揮発性の種(例えばC5-)をアロマティクス・コンプレクスから除去することが特に可能となる。(例えば本質的に)少なくとも7個の炭素原子を有する芳香族化合物を含んでいる第1分離塔からの流出物の重質フラクション(21)(A7+)は、場合によっては、分画トレイン(4)~(7)に、例えばベンゼン塔(4)にリサイクルされる。
【0052】
キシレンおよびエチルベンゼンを含んでいる留分(24)は、キシレン分離ユニット(10)において処理されて、パラキシレンを含んでいるフラクションまたはエキストラクト(39)およびラフィネート(40)を生じさせる。エキストラクト(39)は、続いて、例えば、抽出塔と、その次の、トルエンが脱着剤として用いられる場合には追加のトルエン塔(これらは図示されない)とによって蒸留されて(例えば、分離ならば、SMB吸着による)、主生成物として取り出される高純度のパラキシレンを得ることができる。キシレン分離ユニット(10)からのラフィネート(40)は、(例えば本質的に)オルトキシレン、メタキシレンおよびエチルベンゼンを含み、異性化ユニット(11)に給送する。
【0053】
1つまたは複数の実施形態によると、キシレン分離ユニット(10)は、最低90重量%、好ましくは最低95重量%、大いに好ましくは最低99重量%のトルエンを含んでいる第2トルエン留分(41)も分離する。トルエン留分(41)は、例えば、キシレン分離ユニット(10)が「擬似移動床」吸着ユニットを含む場合に、脱着剤として用いられるトルエンの一部であり得る。1つまたは複数の実施形態によると、第2トルエン留分(41)は、トランスアルキル化ユニット(8)に送られる。
【0054】
異性化ユニット(11)の異性化反応セクションにおいて、パラキシレンの異性体は異性化される一方で、エチルベンゼンは、例えば、主にパラキシレンを生じさせることが望まれるならば、異性化されてC8芳香族化合物の混合物を与え得る;ならびに/または例えばパラキシレンおよびベンゼンの両方を生じさせることが望まれるならば脱アルキルされてベンゼンを生じさせ得る。1つまたは複数の実施形態によると、異性化反応セクションからの流出物は、第2分離塔(不図示)に送られて、塔底において、好ましくはキシレン塔(6)にリサイクルされるパラキシレンを富化した異性化物(42)を生じさせる;塔頂において、例えばベンゼンおよびより揮発性の種の少なくとも一部を含んでいる留分(38)と共に任意の安定化塔(12)に送られる7個以下の炭素原子を有する化合物(C7-)を含んでいる炭化水素留分(43)を生じさせる。
【0055】
1つまたは複数の実施形態によると、異性化ユニット(11)は、上に列記されている特許に記載されている通り、液相で働く第1異性化ゾーンおよび/または気相で働く第2異性化ゾーンを含む。1つまたは複数の実施形態によると、異性化ユニット(11)は、液相で働く第1異性化ゾーンおよび気相で働く第2異性化ゾーンを含む。1つまたは複数の実施形態によると、ラフィネート(40)の第1部分が液相異性化ユニットに送られ、第1異性化物を得て直接的にかつ少なくとも部分的に分離ユニット(10)に給送し、ラフィネート(40)の第2部分が気相異性化ユニットに送られて、異性化物を得て、キシレン塔(6)に送られる。
【0056】
1つまたは複数の実施形態によると、気相異性化ゾーンは、以下の操作条件のうちの少なくとも1つ下に用いられるのに適している:
- 温度:300℃超、好ましくは350℃~480℃;
- 圧力:4.0MPa未満、好ましくは0.5~2.0MPa;
- 毎時空間速度:10h-1(時間当たりかつ容積(リットル)当たり10リットル)未満、好ましくは0.5h-1~6h-1;
- 水素対炭化水素のモル比:10未満、好ましくは3~6;
- 触媒の存在中;触媒は、少なくとも1種のゼオライトと、第VIII族からの少なくとも1種の金属とを含み、ゼオライトは、チャネルを示し、チャネルの開口部は、10または12個の酸素原子を有する環(10MRまたは12MR)によって画定され、金属(還元された形態)の含有率は、0.1重量%~0.3重量%であり、両限界を含む。
【0057】
1つまたは複数の実施形態によると、液相異性化ゾーンは、以下の操作条件のうちの少なくとも1つ下に用いられるのに適している:
- 温度:300℃未満、好ましくは200℃~260℃;
- 圧力:4MPa未満、好ましくは2~3MPa;
- 毎時空間速度(HSV):10h-1(時間当たりかつ容積(リットル)当たり10リットル)未満、好ましくは2~4h-1;
- 触媒の存在中;触媒は、少なくとも1種のゼオライトを含み、ゼオライトは、チャネルを示し、チャネルの開口部は、10または12個の酸素原子を有する環(10MRまたは12MR)によって画定され、優先的には、触媒は、少なくとも1種のゼオライトを含み、該ゼオライトは、チャネルを示し、チャネルの開口部は、10個の酸素原子を有する環(10MR)によって画定され、よりなおさら好ましくは、触媒は、ZSM-5タイプのゼオライトを含む。
【0058】
用語HSVは、充填される触媒の体積に対する、毎時の注入される炭化水素供給原料の容積に対応する。
【0059】
1つまたは複数の実施形態によると、任意の安定化塔(12)は:塔底において、供給原料分離ユニット(1)および/または芳香族化合物抽出ユニット(3)の入口に任意にリサイクルされる(例えば本質的に)ベンゼンおよびトルエンを含んでいる安定化された留分(44)を;塔頂において、アロマティクス・コンプレクスから除去される、より揮発性の種(例えばC5-)の留分(45)を生じさせる。
【0060】
1つまたは複数の実施形態によると、選択的水素化分解ユニット(9)は:
- 9および10個の炭素原子を有するモノ芳香族化合物(25)を処理する;ならびに
- メチル置換芳香族化合物を富化した水素化分解流出物(46)を生じさせる
のに適している。
【0061】
具体的には、選択的水素化分解ユニット(9)は、ベンゼン環に結合された少なくとも2個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基(エチル、プロピル、ブチル、イソプロピルなどの基)を1つ以上のメチル基、つまり単一のCH3基から形成される基に転化することによって、9~10個の炭素原子を有する芳香族化合物(25)を処理するのに適切であり得る。選択的水素化分解ユニット(9)の大きな利点は、異性化ユニット(11)の供給原料中のCH3基の含有率を増大させ、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピルなどの基の含有率を低下させて、前記異性化ユニット(11)におけるキシレン、特にパラキシレンの生成速度を高くすることにある。
【0062】
1つまたは複数の実施形態によると、選択的水素化分解ユニット(9)は、以下の操作条件のうちの少なくとも1つ下に用いられるのに適した少なくとも1個の水素化分解リアクタ-を含む:
- 温度:300℃~550℃、優先的には350℃~500℃、さらにより優先的には370℃~450℃;
- 圧力:0.1~3MPa、優先的には0.2~2MPa、より優先的には0.2~1MPa;
- H2/HC(炭化水素供給原料)のモル比:1~10、優先的には1.5~6;
- WWH:0.1~50h-1(例えば、0.5~50h-1)、優先的には0.5~30h-1(例えば、1~30h-1)、より優先的には1~20h-1(例えば、2~20h-1、5~20h-1)。
【0063】
1つまたは複数の実施形態によると、水素化分解リアクタ-は、触媒の存在中で操作され、当該触媒は、周期表の第VIII族からの少なくとも1種の金属、好ましくはニッケルおよび/またはコバルトを、多孔質担体上に堆積されて含んでおり、多孔質担体は、構造化されたまたはされていない多孔性を有する少なくとも1種の結晶質または非結晶質の耐熱性酸化物を含んでいる。1つまたは複数の実施形態によると、第VIII族からの金属は、ニッケルである。プロモータ(第VIB族、第VIIB族、第VIII族、第IB族または第IIB族)の存在も可能である。触媒は、耐熱性酸化物(例えば、アルミナまたはシリカ)上に担持され、場合によっては、塩基によって処理されてそれを中和する。
【0064】
1つまたは複数の実施形態によると、水素化分解リアクタ-は、固定床タイプのものであり、触媒担体は、押出物状の形態にある。1つまたは複数の実施形態によると、水素化分解リアクタ-は、移動床タイプのものであり、触媒担体は、およそ球形ビーズ状の形態にある。移動床は、重力流床として定義され得、例えば、石油の接触改質において遭遇されるものである。
【0065】
1つまたは複数の実施形態によると、第2炭化水素供給原料(30)は、炭化水素化合物の混合物であり、元素の酸素の含有率、前記供給原料の全重量に相対して、1重量%超、優先的には3重量%超、大いに優先的には5重量%超を少なくとも有する。1つまたは複数の実施形態によると、第2炭化水素供給原料(30)は、リグノセルロース系バイオマス、またはセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンによって形成される群から選ばれるリグノセルロース系バイオマスの1つ以上の構成成分を含み、またはそれらからなる。
【0066】
リグノセルロース系バイオマスは、木材、農業廃棄物または植物廃棄物からなる場合がある。リグノセルロース系バイオマス材料の他の限定しない例は、農業残渣(麦わら、コーンストーバーなど)、林業残渣(初回間伐からの生成物)、林業生成物、専用の作物(短伐期低木林)、食品加工産業からの残渣、有機家庭ごみ、木工所からの廃棄物、建築産業からの廃木材、再生または非再生紙である。
【0067】
リグノセルロース系バイオマスは、製紙産業の副生物、例えばクラフトリグニン、または製紙用パルプの製造から生じる黒液からも得られる場合がある。
【0068】
リグノセルロース系バイオマスは、有利には、本発明による方法にそれが導入される前に少なくとも1回の前処理工程を経る場合がある。好ましくは、バイオマスは、望みの粒子サイズが得られるまで粉砕されかつ乾燥させられる。0.3~0.5mmの粒子径を示す供給原料が有利には得られ得る。典型的には、熱分解されるべきリグノセルロース系バイオマスの粒子のサイズは、1mmスクリーンを通過するために十分な粒子サイズから30mmスクリーンを通過するために十分な粒子サイズまでである。
【0069】
1つまたは複数の実施形態によると、第2炭化水素供給原料(30)が固体(例えば、バイオマスタイプの供給原料)である場合に、熱分解されるべき第2炭化水素供給原料(30)は、有利には、空気式同伴または輸送コンパートメントに充填され、同伴流体によって熱分解リアクタ-に同伴される。好ましくは、用いられる同伴流体は、ガス状窒素である。しかしながら、他の非酸化性の同伴流体が用いられ得ることも想定される。好ましくは、本方法の間に生じた熱分解ガスの一部は、リサイクルされ、同伴流体として用いられてよい。前記熱分解ガスは、主に、非凝縮性ガス流出物からなり、一酸化炭素(CO)および二酸化炭素(CO2)を少なくとも含み、有利には、2~4個の炭素原子を含んでいる軽質オレフィンも含む。このようにして、熱分解を実施するコストは、かなり低減させられ得る。第2炭化水素供給原料(30)は、フィードホッパーまたは適切な量で同伴コンパートメントに前記供給原料を搬送することを可能にする別のデバイスに充填されてよい。このようにして、一定量の供給原料が同伴コンパートメントに送達される。
【0070】
同伴流体は、有利には、第2炭化水素供給原料(30)を同伴コンパートメントから給送管を通じて熱分解リアクタ-に輸送する。
【0071】
典型的には、給送管は、それが熱分解リアクタ-に入る前に、第2炭化水素供給原料(30)の温度を要求されるレベルに維持するために冷却される。給送管は、典型的には空冷式または液冷式のジャケットで菅をジャケットすることによって冷却され得る。しかしながら、給送管が冷却されないことも想定される。
【0072】
1つまたは複数の実施形態によると、熱分解ユニット(13)は、以下に列記される操作条件のうちの少なくとも1つ下に用いられるのに適した少なくとも1個の熱分解リアクタ-(例えば流動床熱分解リアクタ-)を含む。
【0073】
1つまたは複数の実施形態によると、熱分解工程が実施される際の温度は、400℃~1000℃、好ましくは400℃~650℃、好ましくは450℃~600℃、好ましくは450℃~590℃である。特に、触媒再生工程に由来する高温の再生触媒の使用により、リアクタ-の温度範囲を提供することが可能となる場合がある。
【0074】
熱分解工程が実施される際の絶対圧力はまた、有利には、0.1~0.5MPaであり、その際のHSVは、0.01~10h-1、好ましくは0.01~5h-1、大いに好ましくは0.1~3h-1である。HSVは、供給原料の容積流量対用いられる触媒の体積の比である。
【0075】
1つまたは複数の実施形態によると、熱分解工程は触媒的であり、触媒の存在中で実施される。好ましくは、前記工程は、ゼオライト触媒の存在中で操作し、ゼオライト触媒は、ZSM-5、フェリエライト、ゼオライトベータ、ゼオライトY、モルデナイト、ZSM-23、ZSM-57、EU-1およびZSM-11から選ばれる少なくとも1種のゼオライトを含み、好ましくはそれらからなり、好ましくは、触媒は、ZSM-5のみを含んでいる触媒である。触媒的熱分解工程に使用される触媒に用いられるゼオライトは、有利には、金属をドープされる場合があり、金属は、好ましくは、鉄、ガリウム、亜鉛およびランタンから選ばれる。
【0076】
これらの条件下に、第2炭化水素供給原料(30)は、第1に、リアクタ-において、この工程において熱キャリアとして作用する、再生器に由来する高温の触媒と接触させるに至る際に急速な熱分解を経ることになる。この熱分解から生じるガスは、続いて触媒上で反応することになり、この触媒は、この時に、望みの化学中間体を生じさせる反応を触媒することを可能にする触媒の役割を実行する。
【0077】
熱分解ユニット(13)において、第2炭化水素供給原料(30)は、特に、少なくとも部分的に、炭素数が6~10個の炭素原子に及ぶ炭化水素化合物を含んでいる熱分解流出物(31)、熱分解ガス(32)および副生物(33)に転化される。熱分解流出物(31)は、アロマティクス・コンプレクスの第1炭化水素供給原料(2)に給送する。熱分解ユニット(13)はCO、CO2およびH2を含んでいる熱分解ガス(32)ならびに副生物(33)も生じさせる。
【0078】
熱分解工程の終わりに得られた生成物は、有利には、BTXを含んでいるガス状流出物の形態で回収される。
【0079】
熱分解工程の終わりに得られた生成物を含んでいる前記ガス状流出物は、次いで、有利には、分画セクションに送られ、以下の留分を少なくとも分離する:
- 非凝縮性ガスのガス状フラクション;一酸化炭素(CO)および二酸化炭素(CO2)を少なくとも含んでいる、
- BTXと言われる液体留分;炭化水素化合物を含んでおり、その炭素数は、6~10個の炭素原子に及ぶ、
- 液体留分;主に、9個超の多数の炭素原子を有する化合物、すなわち、最低50重量%のC9+化合物を含んでいる、ならびに
- 水。
【0080】
非凝縮性ガスの前記ガス状フラクションは、有利には、2~4個の炭素原子を含んでいる軽質オレフィンも含む場合がある。
【0081】
「チャー」と通常言われるコーキングされた触媒は、未転化の第2炭化水素供給原料とともに、有利には、リアクタ-から抜き出され、好ましくは、ストリッパーに送られ、吸着されている可能性のある炭化水素を除去し、そのために、再生器中のそれらの燃焼を防止する。これは、水蒸気、不活性ガス、例えば、窒素から選ばれる少なくとも1つのガスおよび熱分解工程に由来するガス状流出物の分画から得られた非凝縮性ガスのガス状フラクションの一部と接触することにより行われる。
【0082】
前記コーキングされた触媒および未転化の第2炭化水素供給原料は、場合によってはストリッピングされ、有利には、再生器に送られ、そこで、コークおよびチャーは、空気または酸素の添加によって燃やされ、こうして、再生触媒およびCO2リッチな燃焼ガスを生じさせる。
【0083】
1つまたは複数の実施形態によると、再生触媒は、有利には、熱分解工程のリアクタ-にリサイクルされて、別のサイクルを経る。
【0084】
有利には、本発明による方法の熱分解工程により、得られた反応生成物の全重量に相対して最低10重量%、好ましくは最低15重量%の芳香族化合物の生成が可能となり、選択性は、BTXについて最低65%、好ましくは最低70%である。
【0085】
本方法は、このように、少なくとも1つのBTX留分(熱分解流出物(31))と、一酸化炭素および二酸化炭素を少なくとも含んでいる非凝縮性ガスの少なくとも1つのガス状フラクション(熱分解ガス(32))とを生じさせる少なくとも1回の熱分解工程を含む。
【0086】
本方法により、BTX留分に加えて、「C9+留分」と言われる主に芳香族であるより重質の液体フラクションを得ることも可能となる。これは、有利には、本発明による方法に対して外部の方法においてアップグレードされてよい。
【0087】
好ましくは、非凝縮性ガスのガス状フラクションの少なくとも一部は、好ましくはコンプレッサを介して、熱分解工程のリアクタ-にリサイクルされる。このガス流れは、次いで、前記リアクタ-への供給原料の同伴のための流体として機能する。このケースでは、前記ガス状リサイクル流出物のパージは、好ましくは前記コンプレッサの上流または下流のいずれかで好適に実施される。
【0088】
1つまたは複数の実施形態によると、熱分解流出物(31)は、炭素数が6~10個の炭素原子に及ぶ分子を主に(すなわち>50重量%)含有している炭化水素留分である。この熱分解流出物(31)は、10個超の炭素原子を有する分子および/または5個の炭素原子を有する分子も含有し得る。熱分解流出物(31)は芳香族化合物に豊富であり(例えば>50重量%)、好ましくは最低20重量%のベンゼン、優先的には最低30重量%、大いに好ましくは最低40重量%のベンゼンを含有する。1つまたは複数の実施形態によると、熱分解流出物(31)は、上記の第1炭化水素供給原料(2)の要求される仕様に合うように処理され、アロマティクス・コンプレクスと適合する硫黄ベース、窒素ベースおよび酸素ベースの元素の含有率を示す。
【0089】
1つまたは複数の実施形態によると、熱分解ガス(32)は、非凝縮性ガスのガス状フラクションの少なくとも一部分を含み、好ましくは、少なくとも一部のCO2リッチ燃焼ガスを含む。1つまたは複数の実施形態によると、熱分解ユニット(13)によって生じた熱分解ガス(32)は、水素、COおよびCO2を主に(例えば、最低50重量%を含む)含有している混合物を含む。1つまたは複数の実施形態によると、熱分解ガス(32)は、最低20重量%のCO、好ましくは最低30重量%のCO、大いに好ましくは最低40重量%のCO(例えば、最低50重量%のCO)を含む。1つまたは複数の実施形態によると、熱分解ガス(32)は、最低0.2重量%のH2、好ましくは最低0.5重量%のH2、大いに好ましくは最低0.8重量%のH2を含む。1つまたは複数の実施形態によると、熱分解ガス(32)は、熱分解ユニット(13)の出口において、最低20重量%のCO2を含有する。1つまたは複数の実施形態によると、熱分解ガス(32)は、熱分解ユニット(13)の出口において、約30重量%(例えば、±10重量%)のCO2を含有する。1つまたは複数の実施形態によると、熱分解ガス(32)は、メタン、エチレンおよびプロピレン(例えば、10重量%未満)を含有し、ならびにエタン、プロパンおよび水(例えば、3重量%未満)も含有する。
【0090】
1つまたは複数の実施形態によると、副生物(33)は、主として、多かれ少なかれアルキル化されたジ-およびトリ芳香族化合物からなるC9+フラクションを含む。このフラクションは、例えば直接的にバンカー燃料としてアップグレードされ得るか、または水素化処理および/または水素化クラッキングを経て、その特性を改善し、およびそれをジェット燃料もしくはディーゼル燃料にアップグレードすることができる。
【0091】
1つまたは複数の実施形態によると、任意の補給ライン(34)によって給送されるH2の供給が熱分解ガス(32)に加えられ、その結果、熱分解ガス(32)のH2/CO2モル比は、RWGS反応セクション(50)の入口において、1~10、好ましくは1~8、大いに好ましくは1~5である。熱分解ガス(32)の水素含有率は、好ましくは、水素の添加によって改変され、RWGS反応:CO2+H2→CO+H2Oの化学量論を少なくとも達成するようにする。
【0092】
RWGS反応セクション(50)において、熱分解ガス(32)は、場合によっては、H2の供給によって富化されて、COおよび水を富化した(それ故にCO2およびH2が枯渇した)RWGSガス(51)に少なくとも部分的に転化される。具体的には、RWGS反応は、COおよび水を形成するCO2およびH2の反応に対応する。
【0093】
RWGS反応は、当業者に周知である;例えばJournal of CO2 Utilization, vol. 21 (2017) p. 423-428を参照のこと。1つまたは複数の実施形態によると、RWGS反応セクション(50)は、以下の操作条件のうちの少なくとも1つ下に操作されるのに適している:
- 温度:400℃~800℃、優先的には500℃~800℃、さらにより優先的には650℃~750℃;
- 圧力:0.1~10MPa、優先的には0.1~5MPa、より優先的には0.1~2.5MPa;
- リアクタ-の入口におけるガスの空間速度:5000~20000mL/gcata/h。
【0094】
1つまたは複数の実施形態によると、RWGS反応セクション(50)において用いられる触媒は、鉄またはアルカリ金属(例えばカリウム)をベースとする触媒からなるリストから選ばれる。1つまたは複数の実施形態によると、RWGS反応のための触媒は、Fe/Al2O3、Fe-Cu/Al2O3、Fe-Cs/Al2O3およびCsをドープしたCuO-Fe2O3をベースとする触媒からなるリストから選ばれる。CO2の転化率70重量%が、上記の操作条件により普通に得られる。
【0095】
1つまたは複数の実施形態によると、RWGS反応セクション(50)は、流動床または固定床としての操作に適している。
【0096】
1つまたは複数の実施形態によると、RWGS反応セクション(50)は、CO、CO2およびH2Oの混合物中に最低48重量%のCO、好ましくは最低54重量%のCO、大いに好ましくは最低63重量%のCOを含んでいるRWGSガス(51)を生じさせるのに適している。
【0097】
1つまたは複数の実施形態によると、追加の専用のユニットにおいて熱分解ガス(32)および/またはRWGSガス(51)を処理することは必要ではない。
【0098】
1つまたは複数の実施形態によると、熱分解ガス(32)および/またはRWGSガス(51)は、発酵反応セクション(52)においてエタノールに転化される前に精製され得る。合成ガスの精製は、硫黄含有および窒素含有の化合物、ハロゲン、重金属、ならびに遷移金属を除くことを目標とする。合成ガスの精製のための主な技術は:吸着、吸収、触媒反応である。
【0099】
異なる精製方法は、当業者に周知である;参照がなされてよいのは、例えば:Oil & Gas Science and Technology - Rev. IFP Energies nouvelles, Vol. 68 (2013), No. 4およびApplied Energy, Vol. 237 (2019), p. 227-240である。
【0100】
本発明によると、本方法は、RWGS工程に由来する(好ましくは全ての)COおよび水を富化したRWGSガス(51)を発酵工程に送り、エタノールを含んでいる液体発酵流れを生じさせる工程を含む。
【0101】
好ましくは、COおよび水を富化したRWGSガスは、48重量%~63重量%、好ましくは54重量%~63重量%の含有率の一酸化炭素(CO)を含み、百分率は、前記RWGSガスの全重量に相対する重量百分率として表される。
【0102】
発酵工程は、有利には、酢酸生成株としても知られている少なくとも1種の微生物の存在中で行われる。
【0103】
本文の残りの部分を通して、用語「発酵」、「発酵工程」、または「発酵反応」は、H2、COおよび/またはCO2ガスの転化に関し、発酵微生物の増殖期と、この微生物による目当ての分子、例えば、アルコール、酸、アルコール酸および/またはカルボン酸の産生期との両方を包含する。
【0104】
実際のところ、唯一の炭素源としてのガス状基質、例えば、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)および/または水素(H2)で増殖する特定の微生物の能力が1903年に発見された。多数の嫌気性生物、より具体的には「酢酸生成」生物は、COおよび/またはCO2/H2対を代謝して目当ての種々の最終分子、例えば、アセタート、ブチラート、エタノールおよび/またはn-ブタノールを生じさせるこの能力を有する。
【0105】
この発酵方法を行う能力がある微生物は、主にクロストリジウム属から得られるが、他の微生物、例えばアセトバクター、ブチリバクテリウム、デスルフォバクテリウム、ムーレラ、オキソバクターまたはユーバクテリアの属からのものが、この発酵方法を行うために用いられてもよい。
【0106】
したがって、微生物は、発酵工程において望みの生成物の生成に至るように選ばれる。発酵生成物は、例えばアルコールおよび酸を包含する場合がある。
【0107】
例えば、種々の特許に、合成ガスから出発して目当ての上述の生成物を生じさせる能力がある菌株が記載されている。クロストリジウム属の酢酸生成菌株のうち、言及がなされてよいのは、特許US 5 173 429であり、Clostridium ljungdahliiの菌株(ATCC49587)が記載されており、これは、エタノールおよびアセタートを生じさせる。同じ種の他の菌株が文献WO 2000/68407、EP 117 309ならびに特許US 5 173 429、US 5 593 886およびUS 6 368 819、WO 1998/00558およびWO 2002/08438に記載されている。クロストリジウムの特定の菌株、例えば、文献WO 2007/117 157およびWO 2009/151 342に記載されているClostridium autoethanogenumの菌株(DSM 10061およびDSM 19630)、特許US 7 704 723に記載されているClostridium ragsdalei(P11、ATCC-BAA-622)、またはほか、特許出願US 2007/0 276 447に記載されているClostridium carboxidivoransの菌株(ATCC-PTA-7827)は、それら自体でも、ガス(H2、COおよび/またはCO2)から出発して発酵によって目当ての分子を生じさせる能力がある。
【0108】
本発明による方法の発酵工程において用いられる前記酢酸生成菌株(1種または複数種)または微生物(1種または複数種)は、好ましくは、以下の微生物から選ばれる:Acetogenium kivui、Acetoanaerobium noterae、Acetobacterium woodii、Alkalibaculum bacchi CP11(ATCC BAA-1772)、Blautia producta、Butyribacterium methylotrophicum、Caldanaerobacter subterraneus、Caldanaerobacter subterraneus pacificus、Carboxydothermus hydrogenoformans、Clostridium aceticum、Clostridium acetobutylicum、Clostridium acetobutylicum P262(DSMZ(ドイツ)からのDSM 19630)、Clostridium autoethanogenum(DSMZ(ドイツ)からのDSM 19630)、Clostridium autoethanogenum(DSMZ(ドイツ)からのDSM 10061)、Clostridium autoethanogenum(DSMZ(ドイツ)からのDSM 23693)、Clostridium autoethanogenum(DSMZ(ドイツ)からのDSM 24138)、Clostridium carboxidivorans P7(ATCC PTA-7827)、Clostridium coskatii(ATCC PTA-10522)、Clostridium drakei、Clostridium ljungdahlii PETC(ATCC 49587)、Clostridium ljungdahlii ERI2(ATCC 55380)、Clostridium ljungdahlii C-01(ATCC 55988)、Clostridium ljungdahlii O-52(ATCC 55889)、Clostridium magnum、Clostridium pasteurianum(DSMZ(ドイツ)からのDSM 525)、Clostridium ragsdalei P11(ATCC BAA-622)、Clostridium scatologenes、Clostridium thermoaceticum、Clostridium ultunense、Desulfotomaculum kuznetsovii、Eubacterium limosum、Geobacter sulfurreducens、Methanosarcina acetivorans、Methanosarcina Barkeri、Moorrella thermoacetica、Moorrella thermoautotrophica、Oxobacter pfennigii、Peptostreptococcus productus、Ruminococcus productus、Thermoanaerobacter kivui、およびそれらの混合物。
【0109】
さらに、H2、CO(別様にはカルボキシドトローフとして知られている)、および/またはCO2を炭素源として同化する能力がある他の微生物が本発明の発酵工程に用いられてもよいことが理解されるべきである。前述の微生物の全ては、嫌気性である、すなわち酸素の存在中で増殖する能力がないと言われている。しかしながら、大腸菌の種に属する微生物などの好気性微生物が用いられてもよい。例えば、COの同化を担う酵素をコードする遺伝子(重要な代謝中間体:アセチルCoAから出発してイソプロパノールなどの目当ての分子を生じさせるためのウッド-リュングダール代謝経路の遺伝子(特許出願WO 2010/071 697およびWO 2009/094 485を参照のこと)を発現するように遺伝子改変されている菌株を生じさせることが可能であることが研究により実証されている。イソプロパノールを生じさせるために他の遺伝子改変された微生物、例えば微生物C. ljungdahliiが記載されている(US 2012/0 252 083を参照のこと)。
【0110】
好適な実施形態において、微生物は、エタノールおよび/またはアセタート産生のClostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium aceticum、Moorella thermoacetica、Acetobacterium woodiiおよびAlkalibaculum bacchi、2,3-ブタンジオール産生のClostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahliiおよびC. ragsdaleiおよびブチラートおよびブタノール産生のClostridium carboxidivorans、Clostridium drakei、Clostridium scatologenesまたはButyribacterium methylotrophicuから選ばれる。
【0111】
2種以上の微生物の混合物を含む培養物が用いられてもよい。
【0112】
発酵工程は、有利には、好気的にまたは嫌気的に、好ましくは嫌気的に行われてよい。
【0113】
発酵工程は、有利には、1個または複数個のリアクタ-または「バイオリアクター」において行われる。
【0114】
用語「バイオリアクタ-」は、1個または複数個のタンクまたは管型リアクターからなる発酵デバイスを含み、CSTRもしくはContinuous Stirred Tank Reactor連続撹拌タンクリアクター、ICRもしくはImmobilized Cell Reactor:固定化セルリアクター、TBRもしくはTrickle Bed Reactor:トリクルベッドリアクタータイプのデバイス、ガスリフトタイプの発酵器、気泡塔、もしくはメンブレンリアクター、例えば、HFMBRもしくはHollow Fibre Membrane Bio-Reactor:メンブレンリアクターシステム、スタティックミキサ、または気-液接触のための任意の他の適切なデバイスを含む。
【0115】
好ましくは、前記発酵リアクター(1個または複数個)の培養培地中のCOおよび/またはCO2の要求される濃度は、少なくとも2.5mmol/LのCOおよび/またはCO2である。
【0116】
発酵工程のための供給原料として用いられるRWGSリアクタ-に由来するCOおよび水を富化し、かつ、CO、CO2およびH2Oを含有する前記RWGSガスは、基質の形態で発酵リアクター(1個または複数個)に搬送され、この基質は、有利には、48重量%~63重量%、好ましくは54重量%~63重量%の含有率のCO、および16重量%~31重量%、好ましくは16重量%~24重量%の含有率のH2Oを含有し、百分率は、前記RWGSガスの全重量に相対する重量百分率として表される。
【0117】
好適な実施形態によると、発酵工程は、メインのリアクターに接種するのに十分な量の細胞を提供する酢酸生成菌株の増殖の連鎖を含み、前記増殖の連鎖は、以下を含んでいる:i)第1の増殖リアクター内での酢酸生成菌株の接種により、より大きな体積を有する第2の増殖リアクタ-に最小密度の生存細胞が提供される、およびii)第2のリアクタ-内で前記酢酸生成菌株を増殖させて、体積の点で最も大きい第3の増殖リアクタ-に接種するのに適した細胞密度を提供する。必要ならば、増殖の連鎖は、より多数の増殖リアクタ-を含んでよい。
【0118】
発酵工程は、発酵方法が至適である、すなわち目当ての分子が多量に生じる生産工程も含む。特許請求されているような少なくとも1種の酸素化された化合物を含んでいる流れは、したがって、前記生産工程において生じる。
【0119】
好ましくは、増殖工程は、微生物の増殖のための1個または複数個のリアクタ-において実施されてよく、これらのリアクタ-の全ては、微生物培養物の移動を可能にするように接続される。
【0120】
発酵方法が行われる1個または複数個の「生産」リアクタ-も使用される。
【0121】
微生物または酢酸生成菌株は、一般的に、生産リアクタ-に接種するための至適な細胞密度が得られるまで培養される。接種物のこのレベルは、0.5%から75%まで変動する場合があり、これにより、増殖リアクタ-よりも大きい生産リアクタ-を有することが可能となる。それ故に、増殖リアクタ-は、いくつかの他のより大きい生産リアクタ-に播種するために用いられ得る。
【0122】
発酵工程が増殖工程および生産工程を含む場合、COおよび水を富化したRWGSガスは、有利には、発酵工程において生産工程のリアクタ-のレベルで導入されてよい。
【0123】
増殖工程において微生物を増殖させるための少なくとも1種の追加の炭素含有基質が、有利には、CO富化RWGSガスとの組み合わせで用いられ得る。前記炭素含有基質は、有利には、n種の単糖、例えば、グルコース、フルクトース、もしくはキシロース、多糖、例えば、デンプン、スクロース、ラクトース、またはセルロース、代謝中間体、例えば、ピルベート、または本方法に用いられる微生物によって同化され得る当業者に知られている任意の他の炭素含有基質から選択されてよい。前記炭素含有基質は、これらの炭素含有基質の2種以上の混合物であってもよい。
【0124】
操作条件のコントロールも発酵工程の実行を至適化するために必要である。例として、Loweら(Microbiological Review, 1993, 57: 451-509)またはHenstraら(Current Opinion in Biotechnology 2007, 18:200-206)は、発酵方法において用いられ得る微生物を増殖させるための温度およびpHの点で至適な操作条件を要約している。pHは、本方法において用いられる微生物の発酵活性にとって最も重要なファクターの1つである。好ましくは、前記発酵工程が行われる際のpHは、3~9、好ましくは4~8、より好ましくは5~7.5である。
【0125】
温度も発酵を改善するための重要なパラメータであるのは、微生物活性および基質として用いられるガスの溶解度の両方に対する影響力をそれが有しているからである。温度のチョイスは、用いられる微生物に依存し、所定の菌株は穏やかな温度条件下に(中温菌と呼ばれる菌株)、他のものは、高温条件下に(好熱性微生物)増殖する能力がある。好ましくは、前記発酵工程は、20℃~80℃の増殖温度で行われる。好ましくは、前記発酵工程は、中温菌について20℃~40℃、好ましくは25℃~35℃、好熱性株について40℃~80℃、好ましくは50℃~60℃の増殖温度で行われる。
【0126】
酸化還元電位(「レドックス」電位としても知られている)も発酵方法においてコントロールされるべき重要なパラメータである。レドックス電位は、好ましくは、-450mV超、好ましくは、-150~-250mVである。
【0127】
前記発酵工程は、さらに有利には、0.1~0.4MPaの圧力で行われる。
【0128】
発酵工程の栄養培地または培地は、有利には、発酵工程のレドックス電位をコントロールすることによって発酵方法の性能を改善するために少なくとも1種の還元剤を含有する場合がある。
【0129】
栄養培地は、ミネラル、ビタミン、金属補因子、またはガスを目的の生成物に転化するための経路に関与する金属酵素に特異的な金属を含んでもよい。唯一の炭素源(1種または複数種)としてCOおよび/またはCO2を用いるエタノールの発酵に適した嫌気性の栄養培地は、当業者に知られている。例えば、適した培地は、特許US 5 173 429およびUS 5 593 886およびWO 02/08438、WO 2007/115 157およびWO 2008/115 080または出版物J.R. Phillips et al. (Bioresource Technology 190 (2015) 114-121)に記載されている。
【0130】
栄養培地の組成は、基質(COおよびCO2)を目的の分子に効率的に転化できるものでなければならない。基質のこの転化は、有利には、最低5%であり、それは99%まで、好ましくは10%~90%、好ましくは40%~70%までの範囲であってよい。
【0131】
栄養培地は、少なくとも1種の窒素源、1種または複数種のリン源および1種または複数種のカリウム源を含有する場合がある。栄養培地は、これらの3種の化合物の1種またはこれらの3種のあらゆる組み合わせを含む場合があり、重要な態様において、培地は、3種の化合物の全てを含まなければならない。窒素源は、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、およびそれらの混合物から選ばれてよい。リン源は、リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸カリウム、およびそれらの混合物から選ばれてよい。カリウム源は、塩化カリウム、リン酸カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、およびそれらの混合物から選ばれてよい。
【0132】
栄養培地は、1種または複数種の金属、例えば、鉄、タングステン、ニッケル、コバルトまたはマグネシウム;および/または硫黄;および/またはチアミンを含む場合もある。培地は、これらの構成要素のいずれか1種またはあらゆる組み合わせを含んでもよく、重要な態様において、それは、これらの構成要素の全てを含む。鉄源は、塩化第一鉄、硫酸第一鉄およびそれらの混合物から選ばれてよい。タングステン源は、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸カリウムおよびそれらの混合物から選ばれてよい。ニッケル源は、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、およびそれらの混合物からなる群から選ばれるニッケル源を包含してよい。コバルト源は、塩化コバルト、フッ化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルトおよびそれらの混合物から選ばれてよい。マグネシウム源は、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、およびそれらの混合物から選ばれてよい。硫黄源は、システイン、硫化ナトリウム、およびそれらの混合物を含んでよい。
【0133】
発酵工程は、有利には、特許出願WO 2007/117 157、WO 2008/115 080、US 6 340 581、US 6 136 577、US 5 593 886、US 5 807 722に記載されているように行われてもよい。
【0134】
先に言及された通り、この発酵工程を行うための至適な操作条件は、用いられる微生物(1種または複数種)に部分的に依存する。コントロールされるべき最も重要なパラメータは、圧力、温度、ガスおよび液体の流量、培地のpH、レドックス電位、撹拌スピードおよび接種材料のレベルである。液相中のガス状基質の含有率が制限的ではないことを保証することも必要である。適切な操作条件の例は、特許WO 02/08438、WO 07/117 157およびWO 08/115 080に記載されている。H2とガス状基質COおよびCO2との間の比は、発酵微生物によって生じたアルコールの性質をコントロールするように大きくてもよい。特許出願WO 12/131 627において、例えば、水素のレベルに応じて、エタノールのみ、またはH2の割合(%)が(体積で)20%よりも下であるならばエタノールおよび2,3-ブタンジオールのどちらかを生じさせることが可能であることが記載されている。生産リアクタ-に給送するパージガスの典型的な組成により、有利には、Clostridium autoethanogenumによって2,3-ブタンジオールおよびエタノールを生じさせることが可能となるであろう。
【0135】
好ましくは、発酵は、常圧よりも上の圧力で行われるべきである。増大した圧力を使用することによって、液相へのガスの移動の速度を実質的に増大させることが可能であり、微生物によって炭素源としてそれは同化される。この操作により、特に、バイオリアクタ-における保持時間(バイオリアクタ-内の液体の体積を流入ガスの流量で除算したものとして定義される)を短縮することと、それゆえに発酵方法のより良好な生産性(生産の日あたりかつ容積(リットル)当たりの生じた目的の分子のグラム数として定義される)とが可能となる。生産性改善の例は、特許WO 02/08438に記載されている。
【0136】
本発明によると、前記発酵工程は、エタノールを含んでいる液体発酵流れを生じさせる。1つまたは複数の実施形態によると、液体発酵流れは、液体発酵流れ(例えば、エタノール液体発酵流れとしての例えば蒸留による濃縮の後)の全重量に相対して、最低80重量%、好ましくは最低90重量%、大いに好ましくは最低95重量%のエタノールを含む。
【0137】
1つまたは複数の実施形態によると、発酵工程によって生じた液体発酵流れは、栄養培地、目的の分子(アルコール、アルコール酸、酸)、すなわち下記の酸素化された化合物の流れおよび細菌細胞を含有してもよい。
【0138】
1つまたは複数の実施形態によると、液体発酵流れは、エタノールと、2~6個の炭素原子を含有しているアルコール、2~4個の炭素原子を含有しているジオール、2~4個の炭素原子を含有しているアルコール酸、2~6個の炭素原子を含有しているカルボン酸、2~12個の炭素原子を含有しているアルデヒドおよび2~12個の炭素原子を含有しているエステルから単独でまたは混合物として選ばれる少なくとも1種の他の酸素化化合物とを含む。
【0139】
1つまたは複数の実施形態によると、2~6個の炭素原子を含有しているアルコールは、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールおよびヘキサノールから選ばれ、2~4個の炭素原子を含有しているジオールは、2,3-ブチレングリコール(2,3-ブタンジオール)から選ばれ、2~4個の炭素原子を含有しているアルコール酸は、好ましくは、乳酸であり、2~6個の炭素原子を含有しているカルボン酸は、酢酸、酪酸およびヘキサン酸から選ばれ、2~12個の炭素原子を含有しているアルデヒドは、エタナール、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、3-メチルブタナール、ヘキサナール、フルフラールおよびグリオキサールから単独でまたは混合物として選ばれ、2~12個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子を含有しているエステルは、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロパン酸メチル、ブタン酸メチル、ペンタン酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルおよび酪酸ブチルから単独でまたは混合物として選ばれる。
【0140】
1つまたは複数の実施形態によると、液体発酵流れは、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、酢酸、酪酸、ヘキサン酸、乳酸および2,3-ブチレングリコール(2,3-ブタンジオール)から単独でまたは混合物として選ばれる少なくとも1種の酸素化化合物を含む。
【0141】
前記発酵工程に給送する供給原料の組成が十分な量の水素を含んでいないケースにおいて、有利には、水素補給が、任意に、前記工程に導入されてよい。H2に乏しい基質の使用は、重要な酸の生産に至る。実際のところ、先に言及された通り、追加の水素供給により、発酵培地に存在するCOのアルコールへの転化を改善すること(BertschおよびMullerの平衡方程式(Biotechnol. Biofuels (2015) 8: 210に従う)およびCO2の転化を促進することが可能となる。
【0142】
補給水素は、有利には、水素を生じさせるためのあらゆる方法、例えば、水蒸気改質方法または接触改質方法、水の電気分解、アルカンの脱水素から得られてよく、その水素純度は、通常、75容積%~99.9容積%である。この補給水素は、ライン(34)によって搬送される。
【0143】
1つまたは複数の実施形態によると、発酵反応セクション(52)の出口において、CO2はライン(54)を介してRWGS反応セクション(50)の入口にリサイクルされ、かつ/または、生じた水は、少なくとも部分的に、ライン(55)を介してパージされる。
【0144】
それ故に、RWGS反応セクション(50)と、その次の発酵セクション(52)との組み合わせにより、熱分解セクション(13)の全てのCOおよびCO2副生物を転化しながら、エタノールと芳香族化合物との共生成が可能となる。
【0145】
1つまたは複数の実施形態によると、エチレンへの発酵流出物(53)のエタノールは、エタノールをエチレンに脱水するのに適した任意の脱水ユニット(図示されていない)に送られる。
【0146】
1つまたは複数の実施形態によると、脱水ユニットは、以下の操作条件の少なくとも1つ下に用いられるのに適した少なくとも1個の脱水リアクタ-(例えば、少なくとも1個の固定床を含んでいる断熱リアクタ-)を含む:
- 第1の床における供給原料の入口温度;350℃~500℃;
- 第1の床における供給原料の入口圧力:0.2~1.3MPa;
- 最後の床からの流出物の出口温度:270℃~420℃、好ましくは300℃~410℃;
- 最後の床からの流出物の出口圧力:0.1~1.1MPa;
- 脱水触媒の存在;
- WWH:0.1~20h-1、好ましくは0.5~15h-1。
【0147】
1つまたは複数の実施形態によると、脱水触媒は、無定形酸触媒またはゼオライト酸触媒であり、例えば、ゼオライトは、8、10または12個の酸素原子を含有している細孔開口部(8MR、10MRまたは12MR)を少なくとも有する。好ましくは、前記ゼオライト脱水触媒は、MFI、MEL、FAU、MOR、FER、SAPO、TON、CHA、EUOおよびBEAの骨格型から選ばれる骨格型を有している少なくとも1種のゼオライトを含む。好ましくは、前記ゼオライト脱水触媒は、MFI骨格型のゼオライト、好ましくはZSM-5ゼオライトを含む。
【0148】
1つまたは複数の実施形態によると、含ベンゼン留分(22)のベンゼンは、少なくとも部分的に、任意のアルキル化反応セクション(図示されていない)において、エチレンによってエチルベンゼンにアルキル化されて、エチルベンゼン富化留分を生じさせる。1つまたは複数の実施形態によると、アルキル化反応セクションは、以下の操作条件の少なくとも1つ下に用いられるのに適した少なくとも1個のアルキル化リアクタ-(例えば固定床リアクタ-)を含む:
- 温度:20℃~400℃、優先的には150℃~400℃、さらにより優先的には220℃~300℃;
- 圧力:1~10MPa、優先的には2~7MPa、より優先的には3~5MPa;
- ベンゼン/エチレンのモル比:2~10、優先的には4~8;
- WWH:0.5~50h-1、優先的には1~10h-1、より優先的には1.5~3h-1;
- ゼオライト(例えば、任意に脱アルミニウムしたYゼオライト)を含んでいる触媒の存在中。
【0149】
1つまたは複数の実施形態によると、エチルベンゼン富化留分は、分画ユニットに送られ、エチルベンゼン留分、ベンゼン留分、および場合による1つまたは複数のポリエチルベンゼン留分を生じさせる。ベンゼン留分は、例えば、少なくとも部分的に、アルキル化反応セクションにリサイクルされ得る。1つまたは複数の実施形態によると、エチルベンゼン留分は、異性化ユニット(11)に給送する。この様式で、供給原料中に当初から存在しているおよびアルキル化反応セクションにおけるアルキル化によって生じた全てのエチルベンゼンは、異性化ユニット(11)およびキシレン分離ユニット(10)を含有している芳香族ループにおいて導入され、パラキシレンに転化される。
【0150】
本特許出願において、化学元素の族は、既定ではCAS分類に従って与えられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics、出版元CRC Press、編集長D. R. Lide、第81版、2000-2001)。例えば、CAS分類に従う第VIII族は、新IUPAC分類に従うカラム8、9および10からの金属に対応する;CAS分類に従う第VIb族は、新IUPAC分類に従うカラム6からの金属に対応する。
【0151】
(実施例)
(参照デバイスの実施例)
接触熱分解による転化をベースとするリグノセルロース系バイオマスの転化の方法から生じた芳香族化合物の混合物を含んでいる供給原料の転化のための参照デバイスの実施例の使用がなされる。
【0152】
参照デバイスの実施例は、
図1に表されているデバイスに類似しているが、例外として、トランスアルキル化ユニット(8)が不均化ユニットに置き換えられている。さらに、参照デバイスの実施例は、以下のユニットを使用しない:
- 重質芳香族化合物塔(7);
- 選択的水素化分解ユニット(9);
- 安定化塔(12);
- RWGS反応セクション(50);
- 発酵反応セクション(52);
処理されるべき供給原料の前記芳香族化合物の流量は、参照デバイスの入口において、以下の通りである:
- ベンゼン:2.63t/h;
- トルエン:5.64t/h;
- エチルベンゼン:0.15t/h;および
- キシレン:3.56t/h。
すなわち、トータルで11.98t/hの芳香族化合物。
【0153】
さらに、熱分解反応セクションは、COおよびCO2を生じさせ、これらは他の化学的な化合物に転化されない。生じたCOの流量は、22.25t/hであり、CO2の流量は、15.99t/hである。
【0154】
熱分解触媒上に存在するコークの燃焼により、ガス状流出物が生じ、これはCO2に豊富に含み、67t/hのCO2に対応する。
【0155】
参照デバイスにおいて、トルエンの全ては、不均化ユニットによってベンゼンおよびキシレンに転化される。供給原料のキシレンおよび不均化によって生じたキシレンは、異性化されてパラキシレンを与え、これは、擬似移動床吸着ユニットによって、異性化ユニットの出口において熱力学的平衡にあるキシレン混合物から分離される。この一連のユニット操作により、最良のケース(各ユニット操作について100%の選択性を仮定する)において、以下の化合物を生じさせることが可能となる:
- ベンゼン:5.02t/h;
- パラキシレン:6.96t/h
- トータルの芳香族化合物:11.98t/h。
【0156】
(本発明に合致するデバイスの実施例)
本発明に合致するデバイスの実施例により、ベンゼンおよびパラキシレンならびにエタノールを生じさせることを増大させる一方で同時に、参照デバイスの実施例からCOおよびCO2の形態で失われる全ての生物を原料とした炭素をアップグレードさせることが可能となる。
【0157】
参照デバイスのスキームに相対して、RWGS反応セクション(50)、発酵反応セクション(52)、ライン(54)を介したRWGS反応セクション(50)の入口への発酵反応セクション(52)の出口におけるCO2のリサイクルを、特に加える。エタノールは、ライン(53)を介して生じる。
【0158】
CO、CO2および水素を含有している、接触熱分解ユニット(13)から得られた熱分解ガス(32)を、補給水素と共にRWGS反応セクション(50)にライン(34)を介して導入する。RWGS反応セクション(50)の出口において、RWGSガス(51)を、発酵反応セクション(52)に導入する。発酵反応セクション(52)の出口において、CO2を、RWGS反応セクション(50)の入口にリサイクルさせ、生じた水を、ライン(55)を介してパージする。発酵によって生じたエタノールは、ライン(53)を介して抽出する。
【0159】
この方法によるCOおよびCO2の転化は完全である。形成された水は、有利には、バイオマス前処理操作のために熱分解ユニット(13)の上流で用いられてよい。
【0160】
発酵により、このように、61.52t/hのエタノールを生じさせることが可能となる。
【0161】
【0162】
表1に、本発明による実施により、11.98t/hの芳香族化合物および61.52t/hのエタノールを生じさせることが可能となることが示される。COおよびCO2中に存在する全ての炭素は、このように、エタノールの形態でアップグレードされる。
【0163】
58.12t/hに等しい量の水も生じ、熱分解ユニットの上流でバイオマス前処理工程において用いられてよい。
【国際調査報告】