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特表2023-542441冶金残留物から銀濃縮物を生成するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-10
(54)【発明の名称】冶金残留物から銀濃縮物を生成するための方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 11/00 20060101AFI20231002BHJP
   C22B 3/04 20060101ALI20231002BHJP
   C22B 3/06 20060101ALI20231002BHJP
   C22B 3/12 20060101ALI20231002BHJP
   C22B 3/08 20060101ALI20231002BHJP
   C22B 15/00 20060101ALI20231002BHJP
   C22B 13/00 20060101ALI20231002BHJP
   C22B 61/00 20060101ALI20231002BHJP
   C22B 30/02 20060101ALI20231002BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20231002BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20231002BHJP
   C22B 3/10 20060101ALI20231002BHJP
   C22B 3/16 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
C22B11/00 101
C22B3/04
C22B3/06
C22B3/12
C22B3/08
C22B15/00 105
C22B13/00 101
C22B61/00
C22B30/02
C22B7/00 Z
C22B3/44 101A
C22B3/10
C22B3/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509099
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(85)【翻訳文提出日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 IB2020056900
(87)【国際公開番号】W WO2022018491
(87)【国際公開日】2022-01-27
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521276009
【氏名又は名称】エコメタレス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】アクーニャ ゴイコレア,マルセロ グスタボ
(72)【発明者】
【氏名】ペソア コンテ,リカルド ミゲル
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA01
4K001AA09
4K001AA10
4K001AA20
4K001AA21
4K001AA23
4K001DB02
4K001DB03
4K001DB04
4K001DB08
4K001DB11
4K001DB13
4K001DB17
4K001DB23
(57)【要約】
冶金残留物から、特に、銅、鉄、鉛、シリコン、銀、およびアンチモンを含んでおり、随意にヒ素およびビスマスなどの元素を含みうる残留物から、銀濃縮物を生成するための方法は、(i)上記冶金残留物を第1の酸性溶液を用いて銅リーチングして、銅および鉄に富み、随意にヒ素に富む第1のリーチング溶液と、銅および鉄が低減しており、随意にヒ素が低減しており、かつ、鉛とゲルマニウムと銀とシリコンとに富む含有分を有する第1の被リーチングスラッジと、を得ること、(ii)カルボン酸塩の第1の溶液を用いて上記第1の被リーチングスラッジをリーチングして、鉛が欠乏した第2の被リーチングスラッジと、鉛に富む第2のリーチング溶液と、を得ること、(iii)塩基を添加してアルカリ性リーチング溶液を生成し、上記第2の被リーチングスラッジをアルカリ性リーチングして、シリコンが低減した含有分を有する第3の被リーチングスラッジと、シリコンに富み、随意にヒ素に富む第3のリーチング溶液と、を得ること、(iv)塩化物環境において酸性溶液を使用し、上記第3の被リーチングスラッジを塩化水素リーチングして、最終処理のための第4の被リーチングスラッジと、銀、銅、鉛、および鉄に富み、随意にヒ素に富む第4のリーチング溶液と、を得ること、(v)銀、銅、および鉄に富み、随意にヒ素に富む上記第4のリーチング溶液から、中和スラリーを用いて銀析出させ、塩化物に富む第5の溶液と、鉄、銅、鉛、および銀に富み、随意にヒ素に富む第1の析出固体と、を得ること、(vi)鉄、銅、鉛、および鉄に富み、随意にヒ素に富む上記第1の析出固体を、硫酸溶液を用いてリーチングして、銅および鉄に富み、随意にヒ素に富む第6のリーチング溶液と、第1の銀・鉛濃縮物と、を生成すること、および、(vii)上記第1の銀濃縮物を、第2のカルボン酸塩溶液を用いてリーチングして、第7のリーチング溶液と、第2の銀濃縮物と、を生成すること、を含んでいる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冶金残留物から、特に、銅、鉄、鉛、シリコン、銀、およびアンチモンを含んでおり、随意にヒ素およびビスマスなどの元素を含みうる残留物から、銀濃縮物を生成するための方法であって、
i.上記冶金残留物を第1の酸性溶液を用いて銅リーチングして、
銅および鉄に富み、随意にヒ素に富む第1のリーチング溶液と、
銅および鉄が低減しており、随意にヒ素が低減しており、かつ、鉛とゲルマニウムと銀とシリコンとに富む含有分を有する第1の被リーチングスラッジと、を得ること、
ii.上記第1の被リーチングスラッジを、カルボン酸塩の第1の溶液を用いてリーチングして、
鉛が欠乏した第2の被リーチングスラッジと、
鉛に富む第2のリーチング溶液と、を得ること、
iii.塩基を添加してアルカリ性リーチング溶液を生成し、上記第2の被リーチングスラッジをアルカリ性リーチングして、
シリコンが低減した含有分を有する第3の被リーチングスラッジと、
シリコンに富み、随意にヒ素に富む第3のリーチング溶液と、を得ること、
iv.塩化物環境において酸性溶液を使用し、上記第3の被リーチングスラッジを塩化水素リーチングして、
最終処理のための第4の被リーチングスラッジと、
銀、銅、鉛、および鉄に富み、随意にヒ素に富む第4のリーチング溶液と、を得ること、
v.銀、銅、および鉄に富み、随意にヒ素に富む上記第4のリーチング溶液から、中和スラリーを用いて銀析出させ、
塩化物に富む第5の溶液と、
鉄、銅、鉛、および銀に富み、随意にヒ素に富む第1の析出固体と、を得ること、
vi.鉄、銅、鉛、および鉄に富み、随意にヒ素に富む上記第1の析出固体を、硫酸溶液を用いてリーチングして、
銅および鉄に富み、随意にヒ素に富む第6のリーチング溶液と、
第1の銀・鉛濃縮物と、を生成すること、および、
vii.上記第1の銀濃縮物を、第2のカルボン酸塩溶液を用いてリーチングして、
第7のリーチング溶液と、
第2の銀濃縮物と、を生成すること、
を含んでいる、方法。
【請求項2】
処理される上記冶金残留物は、金属製錬プロセスによって得られる粉末である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
銅製錬プロセスによって得られる上記粉末は、製錬粉末である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記冶金残留物は、銅リーチングプロセスに供されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
上記冶金残留物は、硫酸を用いたリーチングに供されている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
処理される上記冶金残留物は、鉱物種アングルサイト、コベルリン、CuOFe形態のキュプロスピネル、ZnOFe形態の亜鉛スピネル、マグネタイト、酸化鉄(III)、ピライト、スコロダイト、ムコバイト、カオリナイト、および、硫酸鉛(II)を含んでいる、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
上記冶金残留物に含まれる銅は、硫酸銅、カルコシン、コベルリン、および、CuOFe形態のキュプロスピネルとして存在している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記冶金残留物に含まれるシリコンは、ムスコバイトおよびカオリナイトとして存在している、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
上記冶金残留物に含まれる鉛は、硫酸鉛(II)、ガレナ、または、酸化鉛(II)として存在している、請求項1から7、または、1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
上記鉛のうちの少なくとも95%は、硫酸鉛(II)として見出される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第1のH2硫酸溶液は、硫酸、および/または、精製廃液を含みうる、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(i)は、硫酸濃度150~300g/Lにおいて実行される、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(i)は、温度50~130℃において実行される、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(i)は、3~12時間という期間に亘り実行される、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(i)は、固体濃度5~20%w/wにおいて実行される、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(ii)のリーチングにおけるカルボン酸塩は、クエン酸ナトリウムである、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(ii)において、クエン酸ナトリウム溶液は、クエン酸ナトリウムのモル濃度0.5~1Mを有している、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(ii)において、上記第1の被リーチングスラッジは、質量比1:9にて、クエン酸ナトリウム溶液に供給される、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(ii)は、温度20~60℃において実行される、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(ii)は、1~23時間という滞留時間に亘り実行される、請求項1から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(ii)は、pH5.3~8.8において実行される、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(ii)において、pHを調整するためにクエン酸が添加される、請求項1から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(ii)におけるpH調整は、600および900g/Lのクエン酸溶液を用いて実行される、請求項1から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(iv)におけるリーチングに使用される塩基は、Mg(OH)、KOH、またはNaOHの内から選択される、請求項1から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(iii)において添加される塩基は、アルカリ性リーチング溶液の全質量に対して、比率5~10%w/wにて添加される、請求項1から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(iii)におけるリーチング反応は、温度90~140℃において実行される、請求項1から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(iii)におけるリーチング反応は、1~6時間という滞留時間に亘り実行される、請求項1から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
ステップ(iv)におけるリーチングに使用される酸は、塩酸である、請求項1から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
ステップ(iv)において、塩酸が濃度50~140g/Lにて供給される、請求項1から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
ステップ(iv)において、塩化物塩の添加によって上記塩化物環境を増加させる、請求項1から29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
ステップ(iv)において、塩化マグネシウムの添加によって上記塩化物環境を増加させる、請求項1から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
ステップ(iv)において、塩化物が濃度140~240g/Lにて供給される、請求項1から31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(iv)は、pH-1.5~-0.25にて、好ましくは、pH-0.75~-0.65の範囲内にて実行される、請求項1から32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
ステップ(iv)は、温度40~95℃において実行される、請求項1から33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
銀析出のステップ(v)における上記中和スラリーは、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、石灰、ドロマイト石灰、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、または酸化マグネシウムの内から選択される、請求項1から34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
銀析出のステップ(vi)における上記中和スラリーは、酸化マグネシウムスラリーである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
ステップ(v)は、温度50~95℃において実行される、請求項1から36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
ステップ(v)において添加される上記中和スラリーは、pHが3~7に達するまで供給される、請求項1から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
ステップ(v)は、0.5~3時間という滞留時間を有している、請求項1から38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
ステップ(v)における、塩化物に富む上記第5の溶液は、塩化マグネシウムの結晶化プロセスへと送出される、請求項1から39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
ステップ(v)における、塩化物に富む上記第5の溶液を、銀析出のステップ(iv)に再循環させる、請求項1から40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
ステップ(vi)における硫酸溶液は、硫酸濃度60~275g/Lを有している、請求項1から41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
ステップ(vi)における硫酸溶液は、酸性度が60~275g/Lに調整されており、かつ、銅および鉄に富み、随意にヒ素およびビスマスに富む、ステップ(i)における上記第1のリーチング溶液である、請求項1から42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
銀析出物をリーチングするステップ(vi)は、温度50~95℃において実行される、請求項1から43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
上記第1の銀濃縮物をリーチングするステップ(vii)におけるカルボン酸塩は、好ましくはクエン酸ナトリウムである、請求項1から44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
ステップ(vii)におけるクエン酸ナトリウム濃度は、0.5~1Mである、請求項1から45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
上記第1の銀濃縮物をリーチングするステップ(vii)は、温度25~70℃において実行される、請求項1から46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
上記第1の銀濃縮物をリーチングするステップ(vii)は、固体含有分5~10%にて実行される、請求項1から47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
上記第1の銀濃縮物をリーチングするステップ(vii)は、1~6時間に亘り実行される、請求項1から48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
ステップ(vii)における上記第7のリーチング溶液を、ステップ(ii)におけるリーチングに再循環させる、請求項1から49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
上記第2の銀濃縮物は、アンチモン酸銀によって構成されている、請求項1から50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
上記第2の銀濃縮物は、アンチモン酸銀およびアンチモン酸鉛によって構成されている、請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
銅に富む上記第1のリーチング溶液は、製錬粉末の銅リーチングプロセスへと送出される、請求項1から52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
銅に富む上記第1のリーチング溶液は、ヒ素除去プロセスへと送出される、請求項1から53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
上記ヒ素除去プロセスは、砒酸鉄の生成を意図するものの内から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
上記ヒ素除去プロセスは、スコロダイト生成プロセスである、請求項54および/または55に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[本発明の分野]
本発明は、冶金残留物から、特に、銅、鉄、鉛、シリコン、および銀を含んでおり、かつ、随意にヒ素、アンチモン、およびビスマスなどの元素(成分)を含みうる残留物から、銀濃縮物を生成するための方法(手順)に関する。
【0002】
より具体的な態様では、冶金残留物は、金属製錬プロセスから得られた粉末である。
【0003】
さらに具体的な態様では、冶金残留物は、銅製錬プロセスから得られた粉末である。
【0004】
さらに具体的な態様では、冶金残留物(または、特に製錬粉末)は、硫酸リーチングなどのリーチング(浸出)プロセスに既に供されている材料を意図している。
【0005】
本開示では、事前のリーチングプロセスに供された冶金残留物が、スラッジとして考慮されている。
【0006】
[最新技術]
<銅リーチング>
スラッジ中の銅は、CuFe形態のフェライトおよび/またはスピネルなどの種、亜鉛としてのZnFe、および、鉄の関連部分、すなわちFeFeによって主に構成されている。B.S.Boyanovらによる研究(World Academy of Science, Engineering and Technology, Vol 9, 2015, 1592-1598)に記載されている通り、これらの種のリーチングは、温度、酸濃度、および滞留時間に基づいている。B.S.Boyanovらは、亜鉛、銅、およびカドミウムの合成フェライトリーチングについての研究を実行し、上述の各変数を評価した。この研究の結果は、高温および高酸性濃度において、フェライトがHClおよびHSOにより良好に溶解することを示している。
【0007】
高酸性濃度では、銅リーチングは、リーチング温度に対する漸近的挙動を有することが観察されている。すなわち、硫黄媒体中において60分の反応時間が経過すると、温度85~90℃において90%を超える銅リーチング収率に達する。
【0008】
<鉛のリーチングおよび析出>
2011年における世界の鉛消費量は、1000万トンを超えており、そのうち約80%が鉛蓄電池の製造用であった。これらの蓄電池は、Pb、PbO、およびPbSOの形態における鉛量を含んでいる。鉛を回収する最も伝統的な方法は、還元剤(例:炭素粉末、鉄スクラップ、およびシュウ酸ナトリウム)の添加によって特徴付けられる高温冶金法である。この操作は、1000℃を超える温度のオーブン内において実行される。HeらのMinerals 7, no. 6 (2017): 93に示されている通り、このことは、エネルギープロセスの高い需要を招く。
【0009】
一方、鉛を回収するための湿式冶金法は、より低い温度、かつ、より低いエネルギー消費における動作を可能とする。次いで、湿式冶金法では、環境に有害なガスである二酸化硫黄が生成されない。湿式冶金法は、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウムなどの脱硫剤を使用する。これらのプロセスの目的は、不溶性塩を形成するために、硫酸塩イオンを他のアニオン(陰イオン)と交換することである。クエン酸鉛などの鉛塩は、一旦回収されると、酸化鉛を生成するために焼成されうる(Zarate-Gutierrez and Lapidus, Hydrometallurgy 144 (2014): 124-128)。
【0010】
<クエン酸塩を用いた脱硫>
クエン酸塩を使用する特定のケースにおいて、クエン酸およびクエン酸ナトリウムの混合物は、硫酸鉛のリーチングおよび後続するクエン酸鉛の結晶化のために有益である。
【0011】
<クエン酸塩溶液中における鉛リーチング>
20℃におけるアングルサイトの溶解度積定数は、6.31・10-7である。このことは、PbSOの溶解度がかなり低下していることを示している。しかしながら、クエン酸塩濃縮溶液の存在下では、鉛は一連の可溶性錯体を形成する。0.12MのPb2+を有する溶液中には、4.6~11.5のpH範囲において、非常に多様なクエン酸塩錯体種が存在する。4.6より低いpHでは、硫酸鉛の存在が支配的である。その一方、11.5より高いpHでは、水酸化鉛の存在が支配的である。
【0012】
HeらのMinerals 7, no. 6 (2017): 93は、35℃において650g/Lクエン酸ナトリウムを添加することにより、硫酸鉛対水の重量比が1:10であるペーストについての鉛リーチングを研究した。これらの条件は、60分の反応時間が経過すると、99%を超える硫酸鉛を、クエン酸鉛に変換することを可能にした。クエン酸ナトリウム濃度300g/Lにおける95℃までの温度上昇は、60分の反応時間が経過した後に、99%近くの効率を達成することを可能にした。しかしながら、クエン酸を混合物に導入した場合、クエン酸鉛の生成の低下が観察された。クエン酸鉛を生成するための最適pHは、6~7の範囲内であった。クエン酸およびアンモニウム剤を用いたpH5.5では、酸および鉛蓄電池から高い鉛リーチング効率も得られる。5.2~5.5のpH範囲内では、クエン酸鉛三水和物([Pb(C]・[3HO])の存在が、主な種として報告された。8~10というより高いpH範囲内では、クエン酸塩としての鉛回収率が、水酸化鉛の形成に起因してより低くなる。鉛残留物がPbOおよびPbOなどの酸化物に富む場合、クエン酸対酸化鉛(II)および(IV)のモル比1:1および4:1にて、20℃において15~60分のリーチングが実行される。この場合、99重量%より高いリーチング効率に達し、主な種としてPb(C)・HOが得られる(SonmezおよびKumar,Hydrometallurgy 95, no. 1-2 (2009), 82-86)。
【0013】
パルプ密度は、クエン酸塩溶液を用いた鉛リーチングのための別の重要なパラメータである。10~50g/Lのアングルサイトパルプの範囲内において、600rpmおよび25℃にて、クエン酸ナトリウム溶液1M、pH7のリーチング液について、パルプ濃度10g/Lにおいて、90~94%というより高いレベルの鉛抽出に至った。より高いパルプ濃度では、抽出された鉛量はより少なかった。
【0014】
それゆえ、湿式冶金脱硫プロセスは、鉛ペーストの高密度に起因して、リアクタ(反応器)内の鉛ペースト中のクエン酸イオンの拡散による影響を受ける。このため、システムにおける質量移動(物質移動)を最大化するリアクタをデザインすることが重要である。
【0015】
クエン酸を用いた、鉛廃棄物からの鉛回収に基づく技術が、ケンブリッジエンタープライズリミテッドによって開発されている(WO2008056125A1)。基本的には、この技術は、酸化鉛(II)、酸化鉛(IV)、および硫酸鉛を含む鉛残留物を、クエン酸溶液を用いて処理することを含む。あるいは、当該鉛残留物は、1.4~6の範囲に亘るpHにて、クエン酸ナトリウムと組み合わせて処理されてもよい。最終的に、酸化鉛(IV)リーチング反応を加速させてクエン酸鉛を生成するために、塩基性環境内において、還元剤としての過酸化水素を添加することが可能である(SonmezおよびKumar,Hydrometallurgy 95, no. 1-2 (2009), 82-86)。
【0016】
リーチングに必要とされるpHが5.33~8.8に亘るという点において、本発明は、上記特許(WO2008056125A1)とは異なる。本発明では、好ましくは7に等しいpHが使用される。さらに、本発明は、炭酸ナトリウムを用いた析出ステップ後に得られたクエン酸塩溶液を再循環させて、硫酸リーチングステップからの産出冶金残留物(アウトプット冶金残留物)を再度リーチングすることを提示する。
【0017】
<アルカリ性リーチング>
Mufakhirらは、IOP Conf. Series: Materials Science and Engineering 285 (2017) 012003において、フェロニッケル取得プロセスにより得られたスラグからの、水酸化ナトリウムの存在下におけるシリコンリーチングを研究した。スラグがNaOH濃度6~14mol/L、固体含有分5~25%w/w、および温度25~110℃において評価された場合のアルカリ性リーチングでは、シリコンリーチングの最大収率31%という結果が示されている。本願の発明の目的において、銅リーチングおよび鉛リーチングを最大化するための方法が開示されている。当該方法は、スラッジ中に存在するCuおよびPbを除去し、続いてアルカリ性リーチングに進むという目的のもとに、硫酸リーチングおよびクエン酸リーチングのステップを含む。初期的な段階(ステップ)においてCu、Fe、およびPbを除去することにより、スラッジを化学的に改変することができるとともに、本願において得られた結果に示される通り、リーチングに対してより脆弱なシリコン種が残される。
【0018】
<塩酸リーチング>
特許US7329396には、ラテライトニッケル鉱物などの酸化物質の貴金属をリーチングするためのプロセスが記載されている。当該プロセスは、カチオン塩(例:塩化マグネシウム)および塩酸を含むリキシビアントを用いて鉱物をリーチングするステップを含む。(リーチング操作から得られるものなど)追加の酸化剤または金属塩化物が添加されてもよい。一実施形態では、当該プロセスは、(i)リキシビアントを用いて鉱物をリーチングするステップと、(ii)第1の固液分離において、金属鉱物に富んだ浸出液の値を分離するステップと、(iii)こうして得られた金属に富んだ浸出液の値を酸化および中和するステップと、(iv)2回目の固液分離において、こうして得られた浸出液から、塩化マグネシウム溶液を分離するステップと、を含む、貴金属鉱物の回収を含む。別の実施形態においては、リキシビアント溶液が塩素マグネシウム溶液から再生される。さらに別の実施形態においては、リーチング溶液の再生は、塩化マグネシウム溶液から酸化マグネシウムを生成するためのステップを含む。
【0019】
本発明と特許出願US7329396との差異は、当該特許出願は、ヘマタイトを析出させるために、0.4を超える好ましいpHを指摘していることにある。本発明の場合においては、溶液中に第二鉄イオンを得る目的のもとに、低pH、好ましくはpH-0.25未満において作業することが有利である。このことは、溶融粉末リーチングプロセスなどの他のリーチングプロセスにおける、リーチング溶液の使用に、有利に作用する。さらに、本発明においては、銀対鉄の濃度比率が0.01g Ag/g Feに達するたびに、水酸化鉄の析出は、完全に不利となる。結果として、水酸化鉄の析出は、当該溶液の銀をドラッグしうる(引き出しうる)。
【0020】
特許出願CA2820631A1は、多くの異なる金属を含む複数の材料を処理するために効率的でありうるプロセスに関する。浸出液および固体を得るために、これらの材料は、HClを用いてリーチングされてもよい。次いで、浸出液および固体は互いに分離され、第1浸出金属が分離されてよい。次いで、第2金属が、浸出液から分離されてよい。第1金属および第2金属は、それぞれが実質的に浸出液から分離されてよい。このことは、浸出液温度を制御すること、pHを調整すること、および、浸出液をHClとさらに反応させること、などによって実行されてよい。金属塩化物の形態にて回収されうる金属は、最終的に、対応する金属酸化物へと変換されうる。従って、HClの回収が可能である。アルミニウム、鉄、亜鉛、銅、金、銀、モリブデン、コバルト、マグネシウム、リチウム、マンガン、ニッケル、パラジウム、白金、トリウム、リン、ウラン、チタン、希土類および希金属元素の内から、複数の金属が選択されてよい。
【0021】
本発明と特許出願CA2820631A1との差異は、前者は銀リーチングを効率的に実行するために、90℃を超える温度を要しないが、後者は125℃を超える温度を要することにある。さらに、アルミニウムを含む材料のリーチングは、塩酸濃度18%を起点に実行されるが、本発明においては、必要となる塩酸濃度は、140g/L未満(または11%w/w未満)である。
【0022】
[図面の説明]
図1は、本発明によって開示された方法のプロセスダイアグラムを示す。
【0023】
[本発明の説明]
広い一態様では、本発明は、冶金残留物から、特に、銅、鉄、鉛、シリコン、銀、およびアンチモンを含む残留物(当該残留物は、ヒ素およびビスマスなどの元素を随意に含みうる)から、銀濃縮物を生成するための方法について説明している。当該方法は、
-ステップ(I):上記冶金残留物(1)を、第1の酸性溶液(2)を用いて銅リーチングして、
銅および鉄に富み、随意にヒ素およびビスマスに富む第1のリーチング溶液(3)と、
銅および鉄が低減しており、随意にヒ素が低減しており、かつ、鉛とシリコンとに富む含有分を有する第1の被リーチングスラッジ(4)と、を得ること、
-ステップ(II):上記第1の被リーチングスラッジ(4)を、カルボン酸塩の第1の溶液(5)を用いてリーチングして、
鉛が欠乏した第2の被リーチングスラッジ(6)と、
鉛に富む第2のリーチング溶液(7)と、を得ること、
-ステップ(III):塩基を添加してアルカリ性リーチング溶液(8)を生成し、上記第2の被リーチングスラッジ(6)をアルカリ性リーチングして、
シリコンが低減した含有分を有する第3の被リーチングスラッジ(9)と、
シリコンに富み、随意にヒ素に富む第3のリーチング溶液(10)と、を得ること、
-ステップ(iv):塩化物環境において酸性溶液(11)を使用し、上記第3の被リーチングスラッジ(9)を銀リーチングして、
最終処理のための第4の被リーチングスラッジ(12)と、
銀、銅、鉛、および鉄に富み、随意にヒ素に富む第4のリーチング溶液(13)と、を得ること、
-ステップ(v):銀、銅、および鉄に富み、随意にヒ素に富む上記第4のリーチング溶液(13)から、中和スラリー(14)を用いて銀析出させ、
塩化物に富む第5の溶液(15)と、
鉄、銅、鉛、および銀に富み、随意にヒ素に富む第1の析出固体(16)と、を得ること、
-ステップ(vi):鉄、銅、鉛、および鉄に富み、随意にヒ素に富む上記第1の析出固体(16)を、硫酸溶液(17)を用いてリーチングして、
銅および鉄に富み、随意にヒ素に富む第6のリーチング溶液(16)と、
第1の銀・鉛濃縮物(第1の銀および鉛の濃縮物)(19)と、を生成すること、および、
-ステップ(vii):上記第1の銀濃縮物(19)を、第2のカルボン酸塩溶液(20)を用いてリーチングして、
第7のリーチング溶液(21)と、
第2の銀濃縮物(22)と、を生成すること、
を含んでいる。
【0024】
1つの好ましいオプションでは、処理される上記冶金残留物は、金属製錬プロセスによって得られる粉末である。
【0025】
さらに好ましいオプションでは、銅製錬プロセスによって得られる上記粉末は、製錬粉末である。
【0026】
より一層好ましいオプションでは、上記冶金残留物は、銅リーチングプロセスに供されている。
【0027】
より一層好ましいオプションでは、上記冶金残留物は、硫酸を用いたリーチングに供されている。
【0028】
1つの好ましいオプションでは、処理される上記冶金残留物は、鉱物種アングルサイト(ミネラル種アングルサイト)、コベルリン、CuOFe形態のキュプロスピネル、ZnOFe形態の亜鉛スピネル、マグネタイト、酸化鉄(III)、ピライト、スコロダイト、ムコバイト、カオリナイト、および、硫酸鉛(II)を含んでいる。
【0029】
より一層好ましいオプションでは、上記冶金残留物に含まれる銅は、硫酸銅、カルコシン、コベルリン、および、CuOFe形態のキュプロスピネルとして存在している。
【0030】
より一層好ましいオプションでは、上記冶金残留物に含まれる銅は、CuOFe形態のキュプロスピネルの形態にて、少なくとも50%存在している。
【0031】
1つの好ましいオプションでは、上記冶金残留物に含まれるシリコンは、ムスコバイトおよびカオリナイトとして存在している。
【0032】
別の好ましいオプションでは、上記冶金残留物に含まれる鉛は、硫酸鉛(II)、ガレナ、または、酸化鉛(II)として存在している。
【0033】
より一層好ましいオプションでは、上記鉛のうちの少なくとも95%は、硫酸鉛(II)として見出される。
【0034】
1つの好ましいオプションでは、第1のH2SO4溶液は、硫酸、および/または、精製廃液を含みうる。
【0035】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(i)は、硫酸濃度150~300g/Lにおいて実行され、より好ましくは硫酸濃度250g/Lにおいて実行される。
【0036】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(i)は、温度50~130℃において実行され、より好ましくは温度85℃において実行される。
【0037】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(i)は、3~12時間という期間に亘り実行され、より好ましくは6時間という滞留時間に亘り実行される。
【0038】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(i)は、固体濃度5~20%w/wにおいて実行され、より好ましくは固体濃度15%w/wにおいて実行される。
【0039】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(ii)のリーチングにおけるカルボン酸塩は、クエン酸ナトリウムである。
【0040】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(ii)において、クエン酸ナトリウム溶液は、クエン酸ナトリウムのモル濃度0.5~1Mを有している。
【0041】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(ii)において、上記第1の被リーチングスラッジは、質量比1:9にて、クエン酸ナトリウム溶液に供給される。
【0042】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(ii)は、温度20~60℃において実行され、より好ましくは温度40℃において実行される。
【0043】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(ii)は、1~23時間という滞留時間に亘り実行される。
【0044】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(ii)は、pH5.3~8.8において実行され、より好ましくはpH7.0において実行される。
【0045】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(ii)において、カルボン酸塩に対応する酸が、pHを調節するために添加される。
【0046】
より一層好ましいオプションでは、ステップ(ii)において、pHを調整するためにクエン酸が添加される。
【0047】
より一層好ましいオプションでは、ステップ(ii)におけるpH調整は、600~900g/Lのクエン酸溶液を用いて実行される。
【0048】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iii)におけるリーチングに使用される塩基は、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、または水酸化ナトリウムの内から選択されてよい。
【0049】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iii)において添加される塩基は、アルカリ性リーチング溶液の全質量に対して、比率5~10%w/wにて添加され、より好ましくは、アルカリ性リーチング溶液の全質量に対して、比率6.0%w/wにて添加される。
【0050】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iii)におけるリーチング反応は、温度70~150℃において実行され、より好ましくは温度130℃において実行される。
【0051】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iii)におけるリーチング反応は、1~12時間という滞留時間に亘り実行され、より好ましくは3時間という滞留時間に亘り実行される。
【0052】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iv)におけるリーチングに使用される酸は、塩酸である。
【0053】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iv)において、塩酸が濃度50~140g/Lにて供給される。
【0054】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(v)において、塩化物塩の添加によって上記塩化物環境を増加させる。
【0055】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iv)において、塩化マグネシウムの添加によって上記塩化物環境を増加させる。
【0056】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iv)において、塩化物が濃度140~240g/Lにて供給される。
【0057】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iv)は、pH-1.5~0にて実行され、好ましくはpH-0.73~-0.65の範囲内にて実行される。
【0058】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iv)は、温度40~95℃において実行される。
【0059】
1つの好ましいオプションでは、銀析出のステップ(v)における上記中和スラリーは、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、石灰、ドロマイト石灰、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、または酸化マグネシウムの内から選択される。
【0060】
より一層好ましいオプションでは、銀析出のステップ(vi)における上記中和スラリーは、酸化マグネシウムスラリーである。
【0061】
別の好ましいオプションでは、ステップ(v)は、温度50~95℃において実行される。
【0062】
別の好ましいオプションでは、ステップ(v)において添加される上記中和スラリーは、pHが3~7に達するまで供給される。
【0063】
別の好ましいオプションでは、ステップ(v)は、0.5~3時間という滞留時間を有している。
【0064】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(v)における、塩化物に富む上記第5の溶液は、塩化マグネシウムの結晶化プロセスへと送出される。
【0065】
別の好ましいオプションでは、ステップ(v)における、塩化物に富む上記第5の溶液を、銀析出のステップ(iv)に再循環させる。
【0066】
別の好ましいオプションでは、ステップ(vi)における硫酸溶液は、硫酸濃度60~275g/Lを有している。
【0067】
別の好ましいオプションでは、ステップ(vi)における硫酸溶液は、製錬粉末の硫酸リーチング溶液である。
【0068】
別の好ましいオプションでは、ステップ(vi)における硫酸溶液は、酸性度が60~275g/Lに調整されており、かつ、銅および鉄に富み、随意にヒ素およびビスマスに富む、ステップ(i)における上記第1のリーチング溶液である。
【0069】
1つの好ましいオプションでは、上記銀析出物をリーチングするステップ(vi)は、温度50~95℃において実行される。
【0070】
1つの好ましいオプションでは、上記第1の銀濃縮物をリーチングするステップ(vii)におけるカルボン酸塩は、好ましくはクエン酸ナトリウムである。
【0071】
より一層好ましいオプションでは、クエン酸ナトリウム濃度は、0.5~1Mである。
【0072】
1つの好ましいオプションでは、上記第1の銀濃縮物をリーチングするステップ(vii)は、温度25~90℃において実行される。
【0073】
1つの好ましいオプションでは、上記第1の銀濃縮物をリーチングするステップ(vii)は、固体含有分5~10%にて実行される。
【0074】
1つの好ましいオプションでは、上記第1の銀濃縮物をリーチングするステップ(vii)は、1~6時間に亘り実行される。
【0075】
1つの好ましいオプションでは、上記第7のリーチング溶液を、ステップ(ii)におけるリーチングに再循環させる。
【0076】
1つの好ましいオプションでは、上記第2の銀濃縮物は、アンチモン酸銀によって構成されている。
【0077】
より一層好ましいオプションでは、上記第2の銀濃縮物は、アンチモン酸銀およびアンチモン酸鉛によって構成されている。
【0078】
1つの好ましいオプションでは、銅に富む上記第1のリーチング溶液は、製錬粉末の銅リーチングプロセスへと送出される。
【0079】
1つの好ましいオプションでは、銅および鉄に富み、随意にヒ素に富む第上記6のリーチング溶液は、製錬粉末の銅リーチングプロセスへと送出される。
【0080】
1つの好ましいオプションでは、銅に富む上記第1のリーチング溶液は、ヒ素除去プロセスへと送出される。
【0081】
1つの好ましいオプションでは、銅および鉄に富み、随意にヒ素に富む第上記6のリーチング溶液(16)は、ヒ素除去プロセスへと送出される。
【0082】
1つの好ましいオプションでは、上記ヒ素除去プロセスは、砒酸鉄の生成を意図するものの内から選択される。
【0083】
より一層好ましいオプションでは、上記ヒ素除去プロセスは、スコロダイト生成プロセスである。
【0084】
[適用例]
以下の実施例は、本発明の実施形態として考慮されるべきであり、これらは、いかなる場合においても、当該実施形態を限定するものとして考慮されるべきではない。当該実施形態に対して実行されうる様々な適応(変更)は、本発明によってクレームされている主題の範囲内に含まれているからである。
【0085】
[硫酸リーチング]
<実施例1~7>
SO濃度が150~250g/Lである硫酸溶液を、2.550~2.850g調製(作成)した。当該溶液を、5Lのガラスリアクタ内に配置した。予め銅リーチングプロセスに供されたスラッジを、固体含有分5~10%w/wまで添加した。表1には、当該スラッジの鉱物学的特性(ミネラロジー)が示されている。85℃にて、3~6時間に亘り300rpmにてリアクタを撹拌した。反応時間が終了した後、ブフナーシステムによってパルプを濾過した。表2には、結果が示されている。
【表1】

【表2】
【0086】
<実施例8~10>
250g/LのHSO溶液を2,550g調製した。当該溶液を、4Lのオートクレーブ内に配置した。予め銅リーチングプロセスに供されたスラッジを、固体含有分15%w/wまで添加した。130℃にて、1~6時間に亘り300rpmにてリアクタを撹拌した。反応時間が終了した後、ブフナーシステムによってパルプを濾過した。表3には、結果が示されている。
【表3】
【0087】
<実施例11>
精製廃液溶解液を調製した(表4)。当該溶液について、HSO濃度を250g/Lに調整した。当該溶液を、5Lのガラスリアクタ内に配置した。予め銅リーチングプロセスに供されたスラッジ450gを添加し、固体含有分15%w/wのパルプを生成した。85℃にて、6時間に亘り300rpmにてリアクタを撹拌した。反応時間が終了した後、ブフナーシステムによってパルプを濾過した。結果は、Cuリーチング収率72.0%、Feリーチング収率62.0%、Asリーチング収率71.5%、Znリーチング収率57.0%、および質量損失(質量欠損)38.5%を示した。
【表4】
【0088】
[クエン酸リーチング]
<実施例12>
水40Lを用いて溶液を調製した。当該溶液にクエン酸ナトリウム14kgを添加し、かつ、800g/Lのクエン酸溶液を用いてpHを7.0に調整した。試液(反応液)が溶解した後、6kgの被リーチングスラッジを、実施例3に従い添加した。ヘッドスラッジは、15.4%のPb含有分を有する。20℃にてリーチングを実行し、9時間に亘り1,000rpmにて撹拌した。94%のPbリーチング効率が得られた。このようにして、1.19%のPb含有分を有し、質量が24%減少した被リーチングスラッジが得られた。
【0089】
<実施例13~19>
pH5.3~8.8である濃度323~368g/Lのクエン酸ナトリウムとともに、水2Lを用いて、溶液を調製した。800g/Lのクエン酸溶液を用いてpHを調整した。試液が溶解した後、スラッジ1g当たりクエン酸ナトリウム1.2~2.3gの割合にて、実施例3に従って処理されたスラッジを添加する。ヘッドスラッジは、15.0~15.1%のPb含有分を有する。30~60℃にてリーチングを実行し、2~4時間に亘り500~700rpmにて撹拌した。表5には、結果が示されている。
【表5】
【0090】
[アルカリ性リーチング]
<実施例20~28>
濃度5.4~8.7%w/wの水酸化ナトリウム溶液と、5.0~7.0%w/wの固体含有分を有する銅リーチングおよび鉛リーチング連続プロセスに供された被リーチングスラッジとを用いて、パルプを調製した。パルプを4Lオートクレーブ内に配置し、1~6時間に亘り、600rpmにて、温度100~140℃まで加温した。リーチング時間が満了した後、パルプを冷却し、ブフナーシステムにて濾過した。表6には、結果が示されている。
【表6】
【0091】
<実施例29~30>
水6.230mLに、水酸化ナトリウム420gと、銅リーチングおよび鉛リーチング連続プロセスに供された被リーチングスラッジ350gとを添加して、パルプを調製した。これにより、6.0%w/wのNaOHおよび5.0%w/wの固体分の濃度が得られた。パルプを10Lのガラスリアクタ内に配置し、1~6時間に亘り、90℃まで加温し、かつ、900rpmにて撹拌した。リーチング時間が満了した後、パルプを冷却し、ブフナーシステムにて濾過した。
【表7】
【0092】
[塩酸リーチング]
<実施例31~38>
HCl濃度54~160g/L、かつ、塩化物濃度140~237g/Lの溶液を調製した。塩化マグネシウムを加えることにより塩化物濃度を高めた。当該溶液に、硫酸リーチングプロセスおよびクエン酸リーチングプロセスに供されたスラッジ180gを添加した。その一方で、当該スラッジは実施例31~37に記載の通り、硫酸リーチングプロセス、クエン酸リーチングプロセス、およびアルカリリーチングプロセスに供された。パルプを5Lのガラスリアクタに供給し、90℃にて加熱し、6時間に亘り一定に攪拌し続けた。パルプ試験が終了した後、パルプをブフナーシステムにて濾過した。これらの試験の結果は、表8に示されている。
【表8】
【0093】
結果は、アルカリ性リーチングステップを含む銅リーチングに対する明確な寄与を示している。このことは、全体的なプロセスにおける銅リーチング収率を増加させることを可能にする。この観察は、ステップiiに由来するスラッジのマトリックス中にクリソコラが存在することによって説明される。これらは、ステップiiにおいて、シリコン除去塩基を添加することによって効果的に改変され、本明細書中に示されている結果において認識される通り、ステップ4におけるアルカリ性攻撃に対して銅をより脆弱なままとする。
【0094】
塩酸リーチング試験の最終残留物を、TCLPおよびSPLPプロトコルに従って安定性試験に供した。これにより、規格によって許容される値を下回って放出される、カドミウム、ヒ素、および鉛の値が得られた。
【0095】
<実施例39>
塩化マグネシウム濃度300g/Lを有する銀析出溶液を、塩化マグネシウム500g/Lに達するように前記ブロスを濃縮するまで、蒸発プロセスに供した。前記蒸発溶液358mL、濃塩酸385mL、および水94mLを、5Lのリアクタ内において、実施例1~28に記載されている連続リーチングプロセスに供されたスラッジ274gに添加した。リアクタを90℃にて加熱し、6時間に亘り一定に攪拌し続けた。パルプ試験が終了した後、パルプをブフナーシステムにて濾過した。結果は、銀リーチング収率86%、鉄リーチング収率95%、銅リーチング収率94%を示した。被リーチング鉄の少なくとも98%は、2価鉄イオンであった。
【0096】
[銀析出物]
<実施例40~46>
塩酸リーチング試験から得られたPLS450gを、600mL析出フラスコ内の508mg/LのAgを用いて得て、当該PLSを25~80℃において加温した。銀リーチング溶液の中和は、15体積%の酸化マグネシウムスラリーを用いて、3~6の範囲のpHに至るまで、実行された。続いて、パルプを45μmのフィルタ紙によって濾過した。
【表9】
【0097】
[銀濃縮物]
<実施例47~49>
3,950g/トンのAgを有する銀析出物50gを、600mL析出フラスコ内に入れ、硫酸を添加して、60~257g/LのHSOを得た。マグネットバーを用いてパルプを撹拌し、当該パルプを5時間に亘り温度60℃に供した。パルプリーチング時間が満了した後、パルプを45μmの紙によって濾過した。
【表10】
【0098】
<実施例50~51>
20mlのガラスリアクタ内に4,598g/トンの銀析出物1,700gを入れ、当該ガラスリアクタ内に275g/LのHSO溶液を15,300g加えた。パルプを25~80℃に保ち、450rpmにて5時間に亘り機械的に撹拌した。リーチング時間が満了した後、パルプをフィルタペーパーN°42にて濾過した。
【表11】
【0099】
[銀濃縮物の洗浄]
<実施例52~55>
銀濃縮物中の鉛の量の増加により、クエン酸ナトリウムを用いて銀濃縮物リーチング試験を行った。5Lのガラスリアクタ内に、銀析出リーチング試験から得られた銀濃縮物120g、および、クエン酸を用いて調整したpH7、0.5~1Mのクエン酸ナトリウム溶液を添加した。パルプを20~70℃に保ち、700rpmにて3時間に亘り撹拌した。鉛リーチング収率は、80~82に亘っていた。結果は、このステップでは銀リーチングが生じないことを示している。Sbリーチング収率は、7~10%に亘っていた。
【表12】
【0100】
銀濃縮生成物に対して実行されたQuemscan分析は、本発明の各実施例における、アンチモン酸銀およびアンチモン酸鉛などの化合物の存在を明らかにした。
【図面の簡単な説明】
【0101】
図1】本発明によって開示された方法のプロセスダイアグラムを示す。
図1
【国際調査報告】