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特表2023-542442冶金残留物から有益な元素をリーチングするための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-10
(54)【発明の名称】冶金残留物から有益な元素をリーチングするための方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 3/06 20060101AFI20231002BHJP
   C22B 3/08 20060101ALI20231002BHJP
   C22B 15/00 20060101ALI20231002BHJP
   C22B 13/00 20060101ALI20231002BHJP
   C22B 30/04 20060101ALI20231002BHJP
   C22B 30/06 20060101ALI20231002BHJP
   C22B 30/02 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
C22B3/06
C22B3/08
C22B15/00 105
C22B13/00 101
C22B30/04
C22B30/06
C22B30/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509100
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(85)【翻訳文提出日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 IB2020056894
(87)【国際公開番号】W WO2022018489
(87)【国際公開日】2022-01-27
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521276009
【氏名又は名称】エコメタレス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】アクーニャ ゴイコレア,マルセロ グスタボ
(72)【発明者】
【氏名】ペソア コンテ,リカルド ミゲル
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA03
4K001AA05
4K001AA09
4K001AA10
4K001AA20
4K001AA21
4K001AA23
4K001BA16
4K001BA24
4K001DB02
4K001DB03
4K001DB04
4K001DB08
4K001DB23
(57)【要約】
銅リーチングプロセスに供されており、かつ、銅、鉄、鉛、シリコンを含み、随意にヒ素、アンチモン、およびビスマスを含む、製錬粉末の冶金残留物から、銅および鉛をリーチングするための方法は、(i)上記冶金残留物を第1の酸性溶液を用いて銅リーチングして、銅および鉄に富み、随意にヒ素、アンチモン、およびビスマスに富む第1のリーチング溶液と、銅および鉄が低減しており、随意にヒ素が低減しており、かつ、鉛とシリコンとに富む含有分を有する第1の被リーチングスラッジと、を得ること、(ii)上記第1の被リーチングスラッジをカルボン酸塩の第1の溶液を用いてリーチングして、鉛が欠乏した第2の被リーチングスラッジと、鉛に富む第2のリーチング溶液と、を得ること、(iii)鉛に富む上記第2のリーチング溶液に第1の塩基を添加することによる析出によって、第1の鉛濃縮物と、鉛が欠乏した第1の析出溶液と、を得ること、(iv)第2の塩基を添加してアルカリ性リーチング溶液を生成し、上記第2の被リーチングスラッジをアルカリ性リーチングして、シリコンが低減した含有分を有する第3の被リーチングスラッジと、シリコンに富み、随意にヒ素に富む第3のリーチング溶液と、を得ること、(v)塩化物環境において酸性溶液を使用し、上記第3の被リーチングスラッジを塩化水素リーチングして、最終処理のための第4の被リーチングスラッジと、銅、鉛、および鉄に富み、随意にヒ素に富む第4のリーチング溶液と、を得ること、(vi)、(vii)銅、鉛、および鉄に富み、随意にヒ素に富む上記第4のリーチング溶液から、中和スラリーを用いて金属析出させ、塩化物に富む第5の溶液と、鉄、銅、および鉛に富み、随意にヒ素に富む第1の析出固体と、を生成すること、および、(vii)鉄、銅、および鉄に富み、随意にヒ素に富む上記第1の析出固体を、硫酸溶液を用いてリーチングして、銅および鉄に富み、随意にヒ素に富む第6のリーチング溶液と、第2の鉛濃縮物と、を生成することを含んでいる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅リーチングプロセスに供されており、かつ、銅、鉄、鉛、シリコンを含み、随意にヒ素、アンチモン、およびビスマスを含む、製錬粉末の冶金残留物から、銅および鉛をリーチングするための方法であって、
i.上記冶金残留物を第1の酸性溶液を用いて銅リーチングして、
銅および鉄に富み、随意にヒ素、アンチモン、およびビスマスに富む第1のリーチング溶液と、
銅および鉄が低減しており、随意にヒ素が低減しており、かつ、鉛とシリコンとに富む含有分を有する第1の被リーチングスラッジと、を得ること、
ii.上記第1の被リーチングスラッジを、カルボン酸塩の第1の溶液を用いてリーチングして、
鉛が欠乏した第2の被リーチングスラッジと、
鉛に富む第2のリーチング溶液と、を得ること、
iii.鉛に富む上記第2のリーチング溶液に第1の塩基を添加することによる析出によって、
第1の鉛濃縮物と、
鉛が欠乏した第1の析出溶液と、を得ること、
iv.第2の塩基を添加してアルカリ性リーチング溶液を生成し、上記第2の被リーチングスラッジをアルカリ性リーチングして、
シリコンが低減した含有分を有する第3の被リーチングスラッジと、
シリコンに富み、随意にヒ素に富む第3のリーチング溶液と、を得ること、
v.塩化物環境において酸性溶液を使用し、上記第3の被リーチングスラッジを塩化水素リーチングして、
最終処理のための第4の被リーチングスラッジと、
銅、鉛、および鉄に富み、随意にヒ素に富む第4のリーチング溶液と、を得ること、
vi.銅、鉛、および鉄に富み、随意にヒ素に富む上記第4のリーチング溶液から、中和スラリーを用いて金属析出させ、
塩化物に富む第5の溶液と、
鉄、銅、および鉛に富み、随意にヒ素に富む第1の析出固体と、を生成すること、および、
vii.鉄、銅、および鉄に富み、随意にヒ素に富む上記第1の析出固体を、硫酸溶液を用いてリーチングして、
銅および鉄に富み、随意にヒ素に富む第6のリーチング溶液と、
第2の鉛濃縮物と、を生成すること、
を含んでいる、方法。
【請求項2】
処理される上記冶金残留物は、金属製錬プロセスによって得られる粉末である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
銅製錬プロセスによって得られる上記粉末は、製錬粉末である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記冶金残留物は、銅リーチングプロセスに供されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記冶金残留物は、HSOを用いたリーチングに供されている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
処理される上記冶金残留物は、鉱物種アングルサイト、コベルリン、CuOFe形態のキュプロスピネル、ZnOFe形態の亜鉛スピネル、マグネタイト、酸化鉄(III)、ピライト、スコロダイト、ムコバイト、カオリナイト、および、硫酸鉛(II)を含んでいる、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
上記冶金残留物に含まれる銅は、硫酸銅、カルコシン、コベルリン、および、CuOFe形態のキュプロスピネルとして存在している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記冶金残留物に含まれるシリコンは、ムスコバイトおよびカオリナイトとして存在している、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
上記冶金残留物に含まれる鉛は、硫酸鉛(II)、ガレナ、または、酸化鉛(II)として存在している、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
上記鉛のうちの少なくとも95%は、硫酸鉛(II)として見出される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第1のHSO溶液は、HSO、および/または、精製廃液を含みうる、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(i)は、HSO濃度150~300g/Lにおいて実行される、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(i)は、温度50~130℃において実行される、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(i)は、3~12時間という期間に亘り実行される、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(i)は、固体濃度5~20%w/wにおいて実行される、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(ii)のリーチングにおけるカルボン酸塩は、クエン酸ナトリウムである、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(ii)において、クエン酸ナトリウム溶液は、クエン酸ナトリウムのモル濃度0.5~1Mを有している、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(ii)において、上記第1の被リーチングスラッジは、質量比1:9にて、クエン酸ナトリウム溶液に供給される、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(ii)は、温度20~60℃において実行される、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(ii)は、1~23時間という滞留時間に亘り実行される、請求項1から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(ii)は、pH5.3~8.8において実行される、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(ii)において、pHを調整するためにクエン酸が添加される、請求項1から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(ii)におけるpH調整は、600および900g/Lのクエン酸溶液を用いて実行される、請求項1から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(ii)に対して添加される上記第1の塩基は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、または炭酸マグネシウムの内から選択される炭酸塩である、請求項1から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(ii)に対して添加される上記第1の塩基は、炭酸ナトリウムである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(ii)に対して添加される炭酸ナトリウムは、上記第3のリーチング溶液中の鉛濃度に対して、化学量論比1:1にて使用される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(iii)において、析出反応が温度20~90℃において実行される、請求項1から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
ステップ(iii)において、析出反応が0.5~1時間に亘り実行される、請求項1から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
ステップ(iii)において、析出反応がpH6~9において実行される、請求項1から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
ステップ(iii)において、pH調整が、水酸化ナトリウムなどの中和剤を用いて実行される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ステップ(iii)における上記第1の析出溶液をステップ(ii)に再循環させて、ステップ(i)における上記第1の被リーチングスラッジをリーチングする、請求項1から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
上記第1の鉛濃縮物の一部を、シードとして作用させるために、ステップ(iii)に再循環させる、請求項1から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
再循環させられる上記第1の鉛濃縮物の一部は、上記第1の析出固体の合計の30%に相当する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
ステップ(iii)への、鉛が欠乏した上記第1の析出溶液のリサイクル率が90%である、請求項1から33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
ステップ(ii)に再循環させられる、鉛が欠乏した上記第1の析出溶液が、クエン酸ナトリウムのさらなる投与を必要とする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
上記溶液を調製するために使用される水に対して0.35:1の質量比でのクエン酸ナトリウムのさらなる投与が、上記第2の被リーチングスラッジの量に対して10%w/wになるように、パルプの固形含有分に応じて調整される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
ステップ(ii)に再循環させられる、鉛が欠乏した上記第1の析出溶液が、7.0へのpH調整を必要とする、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
ステップ(ii)におけるpH調整は、600~900g/Lのクエン酸溶液を用いて実行される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ステップ(ii)から得られる、鉛が欠乏した上記第1の析出溶液が、硫酸ナトリウムを除去するステップを必要としない、請求項35から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
上記第1の鉛濃縮物は、炭酸鉛である、請求項1から39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
ステップ(iv)におけるリーチングに使用される上記第2の塩基は、Mg(OH)、KOH、またはNaOHの内から選択される、請求項1から40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
ステップ(iv)において添加される上記第2の塩基は、上記アルカリ性リーチング溶液の全質量に対して、5~10%w/wの割合にて添加される、請求項1から41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
ステップ(iv)において添加される上記第2の塩基は、上記アルカリ性リーチング溶液の全質量に対して、6.0%w/wの割合にて添加される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
ステップ(iv)におけるリーチング反応が、温度90~140℃において実行される、請求項1から43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
ステップ(iv)におけるリーチング反応が、1~6時間という滞留時間に亘り実行される、請求項1から44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
ステップ(v)におけるリーチングに使用される酸は、HClである、請求項1から45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
ステップ(v)において、HClが濃度50~140g/Lにて供給される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ステップ(v)において、塩化物塩の添加によって上記塩化物環境を増加させる、請求項1から47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
ステップ(v)において、塩化マグネシウムの添加によって上記塩化物環境を増加させる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
ステップ(v)において、塩化物が濃度140~240g/Lにて供給される、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
ステップ(v)は、pH-1.5~-0.25にて、好ましくは、pH-0.75~-0.65の範囲内にて実行される、請求項1から50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
ステップ(v)は、温度40~95℃において実行される、請求項1から51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
金属析出のステップ(vi)における上記中和スラリーは、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、石灰、ドロマイト石灰、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、または酸化マグネシウムの内から選択される、請求項1から52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
ステップ(vi)は、温度50~95℃において実行される、請求項1から53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
ステップ(vi)において添加される上記中和スラリーは、pHが3~7に達するまで供給される、請求項1から53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
ステップ(vi)は、0.5~3時間という滞留時間を有している、請求項1から55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
ステップ(vi)における、塩化物に富む上記第5の溶液は、塩化マグネシウムの結晶化プロセスへと送出される、請求項1から56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
ステップ(vi)における、塩化物に富む上記第5の溶液を、銀析出の第4のステップに再循環させる、請求項1から57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
ステップ(vii)における硫酸溶液は、硫酸濃度60~275g/Lを有している、請求項1から58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
ステップ(vii)における硫酸溶液は、酸性度が60~275g/Lに調整されており、かつ、銅および鉄に富み、随意にヒ素およびビスマスに富む、ステップ(i)における上記第1のリーチング溶液である、請求項1から59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
ステップ(vii)における硫酸溶液は、製錬粉末の硫酸リーチング溶液である、請求項1から60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
ステップ(vii)における硫酸溶液は、銅および鉄に富み、随意にヒ素およびビスマスに富む、ステップ(i)における上記第1のリーチング溶液である、請求項1から61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
鉄、銅、および鉛に富み、随意にヒ素に富む第1の析出固体をリーチングするステップ(vii)は、温度50~95℃において実行される、請求項1から62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
上記第2の鉛濃縮物が、ステップ(ii)に再循環させられる、請求項1から63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
銅に富む上記第1のリーチング溶液は、製錬粉末の銅リーチングプロセスへと送出される、請求項1から64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
銅に富む上記第1のリーチング溶液は、ヒ素除去プロセスへと送出される、請求項1から65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
上記ヒ素除去プロセスは、砒酸鉄の生成を意図するものの内から選択される、請求項1から66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
上記ヒ素除去プロセスは、スコロダイト生成プロセスである、請求項67に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[本発明の分野]
本発明は、冶金残留物から有益な元素(成分)をリーチング(浸出)するための方法に関する。特に、本発明は、銅および鉛などの元素の回収に焦点を当て、鉄、ヒ素、アンチモン、ビスマス、銀、およびゲルマニウムなどの元素のリーチングを任意に企図することが可能である方法(手順)に関する。
【0002】
より具体的な態様においては、本発明はTCLP(Total charact1eristic leaching procedure)およびSPLP(Synthetic precipitation leaching procedure)ハザードアッセイに従って、安定な残留物である最終残留物を生成するために、冶金残留物から有益な元素をリーチングするための方法に関する。
【0003】
本発明の別の変形においては、冶金残留物から鉛濃縮物を得るための方法が開示されており、より一層好ましい態様においては、当該冶金残留物は、炭酸鉛に対応する。
【0004】
より具体的な態様では、冶金残留物は、金属製錬プロセスから得られた粉末である。
【0005】
さらに具体的な態様では、冶金残留物は、銅製錬プロセスから得られた粉末である。
【0006】
さらに具体的な態様では、冶金残留物(または、特に製錬粉末)は、硫酸リーチングなどのリーチングプロセスに既に供されている材料を意図している。
【0007】
本明細書では、事前のリーチングプロセスに供された冶金残留物が、スラッジとして考慮されている。
【0008】
[最新技術]
<銅リーチング>
スラッジ中の銅は、CuFe形態のフェライトおよび/またはスピネルなどの種、亜鉛としてのZnFe、および、鉄の関連部分、すなわちFeFeによって主に構成されている。B.S.Boyanovらによる研究(World Academy of Science, Engineering and Technology, Vol 9, 2015, 1592-1598)に記載されている通り、これらの種のリーチングは、温度、酸濃度、および滞留時間に基づいている。B.S.Boyanovらは、亜鉛、銅、およびカドミウムの合成フェライトリーチングについての研究を実行し、上述の各変数を評価した。この研究の結果は、高温および高酸性濃度において、フェライトがHClおよびHSOにより良好に溶解することを示している。
【0009】
高酸性濃度では、銅リーチングは、リーチング温度に対する漸近的挙動を有することが観察されている。すなわち、硫黄媒体中において60分の反応時間が経過すると、温度85~90℃において90%を超える銅リーチング収率に達する。
【0010】
<鉛のリーチングおよび析出>
2011年における世界の鉛消費量は、1000万トンを超えており、そのうち約80%が鉛蓄電池の製造用であった。これらの蓄電池は、Pb、PbO、およびPbSOの形態における鉛量を含んでいる。鉛を回収する最も伝統的な方法は、還元剤(例:炭素粉末、鉄スクラップ、およびシュウ酸ナトリウム)の添加によって特徴付けられる高温冶金法である。この操作は、1000℃を超える温度のオーブン内において実行される。HeらのMinerals 7, no. 6 (2017): 93に示されている通り、このことは、エネルギープロセスの高い需要を招く。
【0011】
一方、鉛を回収するための湿式冶金法は、より低い温度、かつ、より低いエネルギー消費における動作を可能とする。次いで、湿式冶金法では、環境に有害なガスである二酸化硫黄が生成されない。湿式冶金法は、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウムなどの脱硫剤を使用する。これらのプロセスの目的は、不溶性塩を形成するために、硫酸塩イオンを他のアニオン(陰イオン)と交換することである。クエン酸鉛などの鉛塩は、一旦回収されると、酸化鉛を生成するために焼成されうる(Zarate-Gutierrez and Lapidus, Hydrometallurgy 144 (2014): 124-128)。
【0012】
<クエン酸塩を用いた脱硫>
クエン酸塩を使用する特定のケースにおいて、クエン酸およびクエン酸ナトリウムの混合物は、硫酸鉛のリーチングおよび後続するクエン酸鉛の結晶化のために有益である。
【0013】
<クエン酸塩溶液中における鉛リーチング>
20℃におけるアングルサイトの溶解度積定数は、6.31・10-7である。このことは、PbSOの溶解度がかなり低下していることを示している。しかしながら、クエン酸塩濃縮溶液の存在下では、鉛は一連の可溶性錯体を形成する。0.12MのPb2+を有する溶液中には、4.6~11.5のpH範囲において、非常に多様なクエン酸塩錯体種が存在する。4.6より低いpHでは、硫酸鉛の存在が支配的である。その一方、11.5より高いpHでは、水酸化鉛の存在が支配的である。
【0014】
HeらのMinerals 7, no. 6 (2017): 93は、35℃において650g/Lクエン酸ナトリウムを添加することにより、硫酸鉛対水の重量比が1:10であるペーストについての鉛リーチングを研究した。これらの条件は、60分の反応時間が経過すると、99%を超える硫酸鉛を、クエン酸鉛に変換することを可能にした。クエン酸ナトリウム濃度300g/Lにおける95℃までの温度上昇は、60分の反応時間が経過した後に、99%近くの効率を達成することを可能にした。しかしながら、クエン酸を混合物に導入した場合、クエン酸鉛の生成の低下が観察された。クエン酸鉛を生成するための最適pHは、6~7の範囲内であった。クエン酸およびアンモニウム剤を用いたpH5.5では、酸および鉛蓄電池から高い鉛リーチング効率も得られる。5.2~5.5のpH範囲内では、クエン酸鉛三水和物([Pb(C]・[3HO])の存在が、主な種として報告された。8~10というより高いpH範囲内では、クエン酸塩としての鉛回収率が、水酸化鉛の形成に起因してより低くなる。鉛残留物がPbOおよびPbOなどの酸化物に富む場合、クエン酸対酸化鉛(II)および(IV)のモル比1:1および4:1にて、20℃において15~60分のリーチングが実行される。この場合、99重量%より高いリーチング効率に達し、主な種としてPb(C)・HOが得られる(SonmezおよびKumar,Hydrometallurgy 95, no. 1-2 (2009), 82-86)。
【0015】
パルプ密度は、クエン酸塩溶液を用いた鉛リーチングのための別の重要なパラメータである。10~50g/Lのアングルサイトパルプの範囲内において、600rpmおよび25℃にて、クエン酸ナトリウム溶液1M、pH7のリーチング液について、パルプ濃度10g/Lにおいて、90~94%というより高いレベルの鉛抽出に至った。より高いパルプ濃度では、抽出された鉛量はより少なかった。
【0016】
それゆえ、湿式冶金脱硫プロセスは、鉛ペーストの高密度に起因して、リアクタ(反応器)内の鉛ペースト中のクエン酸イオンの拡散による影響を受ける。このため、システムにおける質量移動を最大化するリアクタをデザインすることが重要である。
【0017】
クエン酸を用いた、鉛廃棄物からの鉛回収に基づく技術が、ケンブリッジエンタープライズリミテッドによって開発されている(WO2008056125A1)。基本的には、この技術は、酸化鉛(II)、酸化鉛(IV)、および硫酸鉛を含む鉛残留物を、クエン酸溶液を用いて処理することを含む。あるいは、当該鉛残留物は、1.4~6の範囲に亘るpHにて、クエン酸ナトリウムと組み合わせて処理されてもよい。最終的に、酸化鉛(IV)リーチング反応を加速させてクエン酸鉛を生成するために、塩基性環境内において、還元剤としての過酸化水素を添加することが可能である(SonmezおよびKumar,Hydrometallurgy 95, no. 1-2 (2009), 82-86)。
【0018】
リーチングに必要とされるpHが5.33~8.8に亘るという点において、本発明は、上記特許(WO2008056125A1)とは異なる。本発明では、好ましくは7に等しいpHが使用される。さらに、本発明は、炭酸ナトリウムを用いた析出ステップ後に得られたクエン酸塩溶液を再循環させて、硫酸リーチングステップからの産出冶金残留物(アウトプット冶金残留物)を再度リーチングすることを提示する。
【0019】
<クエン酸鉛の結晶化>
他方、クエン酸鉛を結晶化させる場合、温度変化およびクエン酸とクエン酸ナトリウムとの間のモル関係変化の両方が、有効な選択肢である。クエン酸ナトリウムに対するクエン酸のモル比がゼロに等しい場合、75℃を超える温度においては、濾液中に観察される鉛の量はより少なくなる。このことは、クエン酸鉛の析出量がより大きいことを示唆している。一方、75℃未満の初期温度においては、濾液中に観察される鉛の量はより多くなる。このことは、より少ない割合の鉛が結晶化されたことを示唆している。実際、75℃を超えて温度の差分が増大することは、クエン酸鉛の結晶化に有利である(US83233373)。
【0020】
クエン酸鉛の結晶化を改善するための別の手法は、クエン酸ナトリウムに対するクエン酸のモル比を増加させることである。例えば、初期結晶化温度が35℃であり、クエン酸ナトリウムに対するクエン酸のモル比が0.92である場合、0.42%の鉛のみが濾液中に存在しており、残りの99%を超える画分が結晶化した。20℃において、酸と鉛蓄電池ペーストとの比を1:5、反応時間8時間にて、クエン酸ナトリウムに対するクエン酸のモル比1.7:1を用いると、クエン酸鉛中の鉛の98%を変換することができる。リーチングステップにおけるコストの低減および効率の改善の目的のもとに、鉛ペーストを溶解するために酢酸を使用することが提案されている。結果として、クエン酸ナトリウムに対するクエン酸の比率の増加(酸性化)と共に溶液を冷却することは、結晶化効率を増加させ、99%を超えるクエン酸鉛回収率を達成するために有効であることが観察されている(US83233373)。
【0021】
<炭酸ナトリウム沈殿>
文献において報告されている、炭酸ナトリウムを用いた析出プロセスの大部分は、鉛蓄電池処理に基づいている。
【0022】
特許出願AU2009350377A1には、酢酸塩の存在下において酸化鉛をHSOに溶解させることにより、当該塩中に水溶性硫酸鉛を得て、続いて同一のカチオンの炭酸塩または水酸化物を添加して炭酸鉛/オキシ炭酸鉛、酸化鉛、または水酸化鉛を析出させることによって、鉛蓄電池電解質ペーストに含まれる鉛を回収する方法が開示されている。このプロセスは、新たなフレッシュ(新鮮)な電解質ペーストが溶解されるように、鉛析出ステップから得られた酢酸塩を含有する溶液を、再循環させることを要求する。水酸化ナトリウムを用いた析出は、83℃において実行される。但し、炭酸ナトリウムを用いた析出をどのように実行すべきかについては、具体的な詳細は存在していない。クエン酸塩が鉛リーチングに使用されるという点において、本願は、上記発明とは異なる。さらに、飽和限界を下回る硫酸塩濃度を維持することを可能にするパージが企図されるごとに、硫酸塩除去ステップを要しないという点においても、本願は、上記発明とは異なる。
【0023】
特許US8568670には、ビスマス精製プロセスにより得られるスラグから、炭酸鉛を製造する方法が開示されている。当該方法において、塩化ナトリウムを用いてスラグがリーチングされ、塩化鉛が得られる。反応の化学量論的要求の2~3倍の添加量において、重炭酸アンモニウムを含有する溶液に添加されるように、当該塩化鉛は濾過および中和される。これにより、1~2時間に亘り、pHを8~11に調整することによって、炭酸鉛を析出させることができる。鉛リーチングに塩化物塩が使用されないという点において、本発明は、上記出願とは異なる。さらに、pH7~8の炭酸ナトリウムを用いて析出が実行される。当該炭酸ナトリウムは、事前の塩化鉛析出ステップを要することなく、鉛リーチング溶液に直接的に添加される。
【0024】
特許US5.545.805は、硬度に寄与する成分(例:カルシウムおよびマグネシウム)を含有する物質に対する、鉛固定化のための方法をクレームしている。当該方法においては、硬度に寄与する金属を炭酸塩と反応させ、ポリプロトン酸オキシアニオンを添加するために、鉛を含む物質が、十分な量のアルカリ金属と結合した炭酸塩に接触させられる。炭酸塩は、基本的には、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムである。そして、ポリプロトン酸オキシアニオンは、当該オキシアニオンのオキソ塩として鉛を析出させるために、リン酸塩、ホウ酸塩、セレン酸塩、ヒ酸塩、クロム酸塩または硫酸塩の内から選択される。特に、当該方法では、オキソサルトが炭酸塩であってもよく、その場合、炭酸鉛が析出するであろうことも、説明されている。上記出願における実施例では、析出時に観察されるpHは、約12.3に達する。鉛リーチングにポリプロトン酸オキソアニオンを必要としない点において、本発明は、上記特許出願とは異なる。
【0025】
特許出願WO2005007904A1には、硫酸塩濃度に対して0.1~10%過剰のモル比にて、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、または炭酸カリウムと接触させ、かつ、ラナーカイトの可溶化物質と接触させることにより、結果として得られる、酸化鉛残留物、オキシ硫酸塩残留物、および硫酸塩残留物を含有する、鉛蓄電池破損の固体混合物を脱硫する方法が開示されている。ラナーカイトの可溶化物質としては、クエン酸およびクエン酸塩が言及されている。溶媒に対する炭酸塩のモル比は、1~2.75である。プロセスにおいては、鉛残留物が上述の可溶化物質の作用によって脱硫され、続いて、炭酸塩の作用によって鉛が析出する。当該方法においては、好ましくは60~100℃において、プロセスが実行される。本発明は、想定されるパージが炭酸鉛の析出に影響を及ぼさない飽和点を下回るあるレベルに、硫酸塩のレベルを維持するたびに、溶液の硫酸塩含有量に基づいて鉛を析出させるために必要な化学量論的量を超える量の炭酸鉛の添加を要しないという点において、上記出願とは異なる。
【0026】
<アルカリ性リーチング>
Mufakhirらは、IOP Conf. Series: Materials Science and Engineering 285 (2017) 012003において、フェロニッケル取得プロセスにより得られたスラグからの、水酸化ナトリウムの存在下におけるシリコンリーチングを検討した。スラグがNaOH濃度6~14mol/L、固体含有分5~25%w/w、および温度25~110℃において評価された場合のアルカリ性リーチングでは、シリコンリーチングの最大収率31%という結果が示されている。本願の発明の目的において、銅リーチングおよび鉛リーチングを最大化するための方法が開示されている。当該方法は、スラッジ中に存在するCuおよびPbを除去し、続いてアルカリ性リーチングに進むという目的のもとに、硫酸リーチングおよびクエン酸リーチングのステップを含む。初期的な段階(ステップ)においてCu、Fe、およびPbを除去することにより、スラッジを化学的に改変することができるとともに、本願において得られた結果に示される通り、リーチングに対してより脆弱なシリコン種が残される。
【0027】
<塩酸リーチング>
特許US7329396には、ラテライトニッケル鉱物などの酸化物質の貴金属をリーチングするためのプロセスが記載されている。当該プロセスは、カチオン塩(例:塩化マグネシウム)およびHClを含むリキシビアントを用いて鉱物をリーチングするステップを含む。(リーチング操作から得られるものなど)追加の酸化剤または金属塩化物が添加されてもよい。一実施形態では、当該プロセスは、(i)リキシビアントを用いて鉱物をリーチングするステップと、(ii)第1の固液分離において、金属鉱物に富んだ浸出液の値を分離するステップと、(iii)こうして得られた金属に富んだ浸出液の値を酸化および中和するステップと、(iv)2回目の固液分離において、こうして得られた浸出液から、塩化マグネシウム溶液を分離するステップと、を含む、貴金属鉱物の回収を含む。別の実施形態においては、リキシビアント溶液が塩素マグネシウム溶液から再生される。さらに別の実施形態においては、リーチング溶液の再生は、塩化マグネシウム溶液から酸化マグネシウムを生成するためのステップを含む。
【0028】
本発明と特許出願US7329396との差異は、当該特許出願は、ヘマタイトを析出させるために、0.4を超える好ましいpHを指摘していることにある。本発明の場合においては、溶液中に第二鉄イオンを得る目的のもとに、低pH、好ましくはpH-0.25未満において作業することが有利である。このことは、溶融粉末リーチングプロセスなどの他のリーチングプロセスにおける、リーチング溶液の使用に、有利に作用する。さらに、本発明においては、銀対鉄の濃度比率が0.01g Ag/g Feに達するたびに、水酸化鉄の析出は、完全に不利となる。結果として、水酸化鉄の析出は、当該溶液の銀をドラッグしうる(引き出しうる)。
【0029】
特許出願CA2820631A1は、多くの異なる金属を含む複数の材料を処理するために効率的でありうるプロセスに関する。浸出液および固体を得るために、これらの材料は、HClを用いてリーチングされてもよい。次いで、浸出液および固体は互いに分離され、第1浸出金属が分離されてよい。次いで、第2金属が、浸出液から分離されてよい。第1金属および第2金属は、それぞれが実質的に浸出液から分離されてよい。このことは、浸出液温度を制御すること、pHを調整すること、および、浸出液をHClとさらに反応させること、などによって実行されてよい。金属塩化物の形態にて回収されうる金属は、最終的に、対応する金属酸化物へと変換されうる。従って、HClの回収が可能である。アルミニウム、鉄、亜鉛、銅、金、銀、モリブデン、コバルト、マグネシウム、リチウム、マンガン、ニッケル、パラジウム、白金、トリウム、リン、ウラン、チタン、希土類および希金属元素の内から、複数の金属が選択されてよい。
【0030】
本発明と特許出願CA2820631A1との差異は、前者は金属リーチングを効率的に実行するために、90℃を超える温度を要しないが、後者は125℃を超える温度を要することにある。さらに、アルミニウムを含む材料のリーチングは、HCl濃度18%を起点に実行されるが、本発明においては、必要となるHCl濃度は、140g/L未満(または11%w/w未満)である。
【0031】
[図面の説明]
図1は、本発明によって開示された方法のプロセスダイアグラムを示す。
【0032】
図2は、適用例において得られた鉛濃縮物のX線回析スペクトルを示す。
【0033】
図3は、適用例において得られた鉛濃縮物のラマンスペクトルを示す。
【0034】
[本発明の説明]
広い一態様では、本発明は、銅リーチングプロセスに供されており、かつ、銅、鉄、鉛、およびシリコンを含み、随意にヒ素、アンチモン、およびビスマスを含む、製錬粉末の冶金残留物から、銅および鉛をリーチングするための方法について説明している。当該方法は、銅および鉛の回収率を最大化する。
【0035】
別の好ましいオプションでは、本発明は、銅および鉛をリーチングするための方法と、銅リーチングプロセスに供されており、かつ、銅、鉄、鉛、およびシリコンを含み、随意にヒ素、アンチモン、銀、およびゲルマニウムを含む製錬粉末の冶金残留物と、について説明している。当該方法は、アルミノシリケートによって主に構成される最終的な残留物を残し、TCLPアッセイに従うハザードアッセイに供される。
【0036】
別の好ましいオプションでは、本発明は、銅リーチングプロセスに供されており、かつ、銅、鉄、鉛、およびシリコンを含み、随意にヒ素、アンチモン、ビスマス、銀、およびゲルマニウムを含む製錬粉末の冶金残留物の鉛濃縮物を得るための方法について説明している。
【0037】
本発明の方法は、以下のステップを含む:
-ステップ(i):上記冶金残留物(1)を第1の酸性リーチング溶液(2)を用いて銅リーチングして、
銅および鉄に富み、随意にヒ素、アンチモン、およびビスマスに富む第1のリーチング溶液(3)と、
銅および鉄が低減しており、随意にヒ素が低減しており、かつ、鉛とシリコンとに富む含有分を有する第1の被リーチングスラッジ(4)と、を得ること、
-ステップ(ii):上記第1の被リーチングスラッジ(4)を、カルボン酸塩の第1の溶液(5)を用いてリーチングして、
鉛が欠乏した第2の被リーチングスラッジ(6)と、
鉛に富む第2のリーチング溶液(7)と、を得ること、
-ステップ(iii):鉛に富む上記第2のリーチング溶液(7)に第1の塩基(8)を添加することによる析出によって、
第1の鉛濃縮物(9)と、
鉛が欠乏した第1の析出溶液(10)と、を得ること、
-ステップ(iv):第2の塩基(11)を添加してアルカリ性リーチング溶液を生成し、上記第2の被リーチングスラッジ(6)をアルカリ性リーチングして、
シリコンが低減した含有分を有する第3の被リーチングスラッジ(12)と、
シリコンに富み、随意にヒ素に富む第3のリーチング溶液(13)と、を得ること、
-ステップ(v):塩化物環境において酸性溶液(14)を使用し、上記第3の被リーチングスラッジ(12)を塩化水素リーチングして、
最終処理のための第4の被リーチングスラッジ(15)と、
銅、鉛、および鉄に富み、随意にヒ素に富む第4のリーチング溶液(16)と、を得ること、
-ステップ(vi):銅、鉛、および鉄に富み、随意にヒ素に富む上記第4のリーチング溶液(16)から、中和スラリー(17)を用いて金属析出させ、
塩化物に富む第5の溶液(18)と、
鉄、銅、および鉛に富み、随意にヒ素に富む第1の析出固体(19)と、を生成すること、および、
-ステップ(vii):鉄、銅、および鉄に富み、随意にヒ素に富む上記第1の析出固体(19)を、硫酸溶液(20)を用いてリーチングして、
銅および鉄に富み、随意にヒ素に富む第6のリーチング溶液(21)と、
第2の鉛濃縮物(22)と、を生成すること、
を含んでいる、方法。
【0038】
1つの好ましいオプションでは、処理される上記冶金残留物は、金属製錬プロセスによって得られる粉末である。
【0039】
さらに好ましいオプションでは、銅製錬プロセスによって得られる上記粉末は、製錬粉末である。
【0040】
より一層好ましいオプションでは、上記冶金残留物は、銅リーチングプロセスに供されている。
【0041】
より一層好ましいオプションでは、上記冶金残留物は、HSOを用いたリーチングに供されている。
【0042】
1つの好ましいオプションでは、処理される上記冶金残留物は、鉱物種アングルサイト(ミネラルアングルサイト)、コベルリン、CuOFe形態のキュプロスピネル、ZnOFe形態の亜鉛スピネル、マグネタイト、酸化鉄(III)、ピライト、スコロダイト、ムコバイト、カオリナイト、および、硫酸鉛(II)を含んでいる。
【0043】
より一層好ましいオプションでは、上記冶金残留物に含まれる銅は、硫酸銅、カルコシン、コベルリン、および、CuOFe形態のキュプロスピネルとして存在している。
【0044】
より一層好ましいオプションでは、上記冶金残留物に含まれる銅のうちの少なくとも50%は、CuOFe形態のキュプロスピネルとして存在している。
【0045】
1つの好ましいオプションでは、上記冶金残留物に含まれるシリコンは、ムスコバイトおよびカオリナイトとして存在している。
【0046】
別の好ましいオプションでは、上記冶金残留物に含まれる鉛は、硫酸鉛(II)、ガレナ、または、酸化鉛(II)として存在している。
【0047】
より一層好ましいオプションでは、上記鉛のうちの少なくとも95%は、硫酸鉛(II)として見出される。
【0048】
1つの好ましいオプションでは、第1のH2SO4溶液は、HSO、および/または、精製廃液を含みうる。
【0049】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(i)は、HSO濃度150~300g/Lにおいて実行され、より好ましくはHSO濃度250g/Lにおいて実行される。
【0050】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(i)は、温度50~130℃において実行され、より好ましくは温度85℃において実行される。
【0051】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(i)は、3~12時間という期間に亘り実行され、より好ましくは6時間という滞留時間に亘り実行される。
【0052】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(i)は、固体濃度5~20%w/wにおいて実行され、より好ましくは固体濃度15%w/wにおいて実行される。
【0053】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(ii)のリーチングにおけるカルボン酸塩は、クエン酸ナトリウムである。
【0054】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(ii)において、クエン酸ナトリウム溶液は、クエン酸ナトリウムのモル濃度0.5~1Mを有している。
【0055】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(ii)において、上記第1の被リーチングスラッジは、質量比1:9にてクエン酸ナトリウム溶液に供給される。
【0056】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(ii)は、温度20~60℃において実行される、より好ましくは温度40℃において実行される。
【0057】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(ii)は、1~23時間という滞留時間に亘り実行される。
【0058】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(ii)は、pH5.3~8.8において実行され、より好ましくはpH7.0において実行される。
【0059】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(ii)において、pHを調整するために、上記カルボン酸塩に対応する酸が添加される。
【0060】
より一層好ましいオプションでは、ステップ(ii)において、pHを調整するためにクエン酸が添加される。
【0061】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(ii)に対して添加される上記第1の塩基は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、または炭酸マグネシウムの内から選択される炭酸塩である。
【0062】
より一層好ましいオプションでは、ステップ(iii)に対して添加される上記第1の塩基は、炭酸ナトリウムである。
【0063】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iii)に対して添加される炭酸ナトリウムは、上記第3のリーチング溶液中の鉛濃度に対して、化学量論比1:1にて使用される。
【0064】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iii)において、析出反応が温度20~90℃において実行され、より好ましくは温度70℃において実行される。
【0065】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iii)において、析出反応が0.5~6時間に亘り実行される。
【0066】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(ii)において、析出反応がpH6~9において実行され、より好ましくはpH7.5において実行される。
【0067】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iii)において、pH調整は、カルシウムおよび/またはマグネシウムベースの溶液に硬度を与える中和剤を考慮することなく、水酸化ナトリウムなどの中和剤を用いて実行される。
【0068】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iii)における上記第1の析出溶液をステップ(ii)に再循環させて、ステップ(i)における上記第1の被リーチングスラッジをリーチングする。
【0069】
1つの好ましいオプションでは、上記第1の鉛濃縮物の一部を、シードとして作用させるために、ステップ(iii)に再循環させる。
【0070】
より一層好ましいオプションでは、再循環させられる上記第1の鉛濃縮物の一部は、上記第1の析出固体の合計の30%に相当する。
【0071】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iii)への、鉛が欠乏した上記第1の析出溶液のリサイクル率が90%である。
【0072】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(ii)に再循環させられる、鉛が欠乏した上記第1の析出溶液が、クエン酸ナトリウムの投与を必要とする。
【0073】
1つの好ましいオプションでは、クエン酸ナトリウムの投与は、上記溶液を調製するために使用される水に対して0.35:1の質量比にてクエン酸ナトリウムを含有する溶液であり、上記第2の被リーチングスラッジに対して10%w/wの固体分を有するパルプを得るように添加される。
【0074】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(ii)に再循環させられる、鉛が欠乏した上記第1の析出溶液が、7.0へのpH調整を必要とする。
【0075】
より一層好ましいオプションでは、ステップ(ii)におけるpH調整は、600~900g/Lのクエン酸溶液を用いて実行される。
【0076】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(ii)から得られる、鉛が欠乏した上記第1の析出溶液は、硫酸ナトリウムを除去するステップを必要としない。
【0077】
1つの好ましいオプションでは、上記第1の鉛濃縮物は、炭酸鉛である。
【0078】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iv)におけるリーチングに使用される上記第2の塩基は、Mg(OH)、KOH、またはNaOHの内から選択される。
【0079】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iv)において添加される上記第2の塩基は、上記アルカリ性リーチング溶液の全質量に対して、5~10%w/wの割合にて添加され、より好ましくは6.0%w/wの割合にて添加される。
【0080】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iv)におけるリーチング反応は、温度70~150℃において実行され、より好ましくは温度130℃において実行される。
【0081】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iv)におけるリーチング反応は、1~12時間という滞留時間に亘り実行され、より好ましくは3時間という滞留時間に亘り実行される。
【0082】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(iv)におけるリーチングに使用される酸は、HClである。
【0083】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(v)において、HClが濃度50~140g/Lにて供給される。
【0084】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(v)において、塩化物塩が添加される。
【0085】
より一層好ましいオプションでは、ステップ(v)において、塩化マグネシウムの添加によって上記塩化物環境を増加させる。
【0086】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(v)において、塩化物濃度が140~240g/Lの範囲内となるように、塩化物塩が供給される。
【0087】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(v)は、pH-1.5~-0.25にて実行され、好ましくはpH-0.73~-0.65の範囲内にて実行される。
【0088】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(v)は、温度40~95℃において実行される。
【0089】
1つの好ましいオプションでは、金属析出のステップ(vi)における上記中和スラリーは、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、石灰、ドロマイト石灰、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、または酸化マグネシウムの内から選択される。
【0090】
より一層好ましいオプションでは、金属析出のステップ(vi)における上記中和スラリーは、酸化マグネシウムスラリーである。
【0091】
別の好ましいオプションでは、ステップ(vi)は、温度50~95℃において実行される。
【0092】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(vi)において添加される上記中和スラリーは、pHが3~7に達するまで供給される。
【0093】
別の好ましいオプションでは、ステップ(vi)は、0.5~3時間という滞留時間を有している。
【0094】
1つの好ましいオプションでは、ステップ(vi)における、塩化物に富む上記第5の溶液は、塩化マグネシウムの結晶化プロセスへと送出される。
【0095】
別の好ましいオプションでは、ステップ(vi)における、塩化物に富む上記第5の溶液を、銀析出の第4のステップに再循環させる。
【0096】
別の好ましいオプションでは、ステップ(vii)における硫酸溶液は、硫酸濃度60~275g/Lを有している。
【0097】
別の好ましいオプションでは、ステップ(vii)における硫酸溶液は、製錬粉末の硫酸リーチング溶液である。
【0098】
別の好ましいオプションでは、ステップ(vii)における硫酸溶液は、酸性度が60~275g/Lに調整されており、かつ、銅および鉄に富み、随意にヒ素およびビスマスに富む、ステップ(i)における上記第1のリーチング溶液である。
【0099】
1つの好ましいオプションでは、鉄、銅、および鉛に富み、随意にヒ素に富む第1の析出固体をリーチングするステップ(vii)は、温度50~95℃において実行される。
【0100】
1つの好ましいオプションでは、上記第2の鉛濃縮物が、ステップ(ii)に再循環させられる。
【0101】
1つの好ましいオプションでは、銅に富む上記第1のリーチング溶液は、製錬粉末の銅リーチングプロセスに送出される。
【0102】
1つの好ましいオプションでは、銅に富む上記第1のリーチング溶液は、ヒ素除去プロセスへと送出される。
【0103】
1つの好ましいオプションでは、銅および鉄に富み、随意にヒ素に富む第6のリーチング溶液は、製錬粉末の銅リーチングプロセスへと送出される。
【0104】
1つの好ましいオプションでは、銅および鉄に富み、随意にヒ素に富む第6のリーチング溶液は、ヒ素除去プロセスに送出される。
【0105】
1つの好ましいオプションでは、上記ヒ素除去プロセスは、砒酸鉄の生成を意図するものの内から選択される。
【0106】
より一層好ましいオプションでは、上記ヒ素除去プロセスは、スコロダイト生成プロセスである。
【0107】
[適用例]
以下の実施例は、本発明の実施形態として考慮されるべきであり、これらは、いかなる場合においても、当該実施形態を限定するものとして考慮されるべきではない。当該実施形態に対して実行されうる様々な適応(変更)は、本発明によってクレームされている主題の範囲内に含まれているからである。
【0108】
[硫酸リーチング]
<実施例1~7>
SO濃度が150~250g/Lである硫酸溶液を、2.550~2.850g調製(作成)した。当該溶液を、5Lのガラスリアクタ内に配置した。予め銅リーチングプロセスに供されたスラッジを、固体含有分5~10%w/wまで添加した。表1には、当該スラッジの鉱物学的組成(ミネラロジー)が示されている。85℃にて、3~6時間に亘り300rpmにてリアクタを撹拌した。反応時間が終了した後、ブフナーシステムによってパルプを濾過した。表2には、結果が示されている。
【表1】

【表2】
【0109】
<実施例8~10>
250g/LのHSO溶液を2,550g調製した。当該溶液を、4Lのオートクレーブ内に配置した。予め銅リーチングプロセスに供されたスラッジを、固体含有分15%w/wまで添加した。130℃にて、1~6時間に亘り300rpmにてリアクタを撹拌した。反応時間が終了した後、ブフナーシステムによってパルプを濾過した。表3には、結果が示されている。
【表3】
【0110】
<実施例11>
精製廃液溶解液を調製した(表4)。当該溶液について、HSO濃度を250g/Lに調整した。当該溶液を、5Lのガラスリアクタ内に配置した。予め銅リーチングプロセスに供されたスラッジ450gを添加し、固体含有分15%w/wのパルプを生成した。85℃にて、6時間に亘り300rpmにてリアクタを撹拌した。反応時間が終了した後、ブフナーシステムによってパルプを濾過した。結果は、Cuリーチング収率72.0%、Feリーチング収率62.0%、Asリーチング収率71.5%、Znリーチング収率57.0%、および質量損失(質量欠損)38.5%を示した。
【表4】
【0111】
[クエン酸リーチング]
<実施例12>
水40Lを用いて溶液を調製した。当該溶液にクエン酸ナトリウム14kgを添加し、かつ、800g/Lのクエン酸溶液を用いてpHを7.0に調整した。試液(反応液)が溶解した後、被リーチングスラッジ6kgを、実施例3に従い添加した。ヘッドスラッジは、15.4%のPb含有分を有する。20℃にてリーチングを実行し、9時間に亘り1,000rpmにて撹拌した。94%のPbリーチング効率が得られた。このようにして、1.19%のPb含有分を有し、質量が24%減少した被リーチングスラッジが得られた。
【0112】
<実施例13~19>
pH5.3~8.8である濃度323~368g/Lのクエン酸ナトリウムとともに、水2Lを用いて、溶液を調製した。800g/Lのクエン酸溶液を用いてpHを調整した。試液が溶解した後、スラッジ1g当たりクエン酸ナトリウム1.2~2.3gの割合にて、実施例3に従って処理されたスラッジを添加する。ヘッドスラッジは、15.0~15.1%のPb含有分を有する。30~60℃にてリーチングを実行し、2~4時間に亘り500~700rpmにて撹拌した。表5には、結果が示されている。
【表5】
【0113】
[鉛析出]
<実施例20~25>
鉛リーチング溶液447mLを、Pb濃度15.8g/Lにて採取した。400g/LのNaOH溶液を添加して、pHを7.0~8.0の範囲に調整した。リーチング溶液中には、Pbの量と等モル量の炭酸ナトリウムが存在する。析出は、温度40~70℃の温度において1時間に亘り実行された。
【表6】
【0114】
<実施例26>
水4.7Lを用いて溶液を調製した。当該溶液にクエン酸ナトリウム1,633gを添加し、800g/Lのクエン酸溶液を用いてpHを7.0に調整した。試液が溶解した後、700gの被リーチングスラッジを実施例3に従って添加した。ヘッドスラッジは17.4%のPb含有分を有する。リーチングを40℃において実行し、700rpmにて3時間に亘り撹拌した。続いて、パルプを濾過した。炭酸鉛の析出を実行するために、濾過溶液(濾過された溶液)を使用した。400g/LのNaOH溶液を用いて、溶液のpHを7.5に調整した。次いで、等モル量の炭酸ナトリウムを添加した。析出は、1時間に亘り実行された。次いで、パルプを濾過した。その一方、析出ステップにおける濾過溶液の90%を、フレッシュなスラッジのリーチングに使用した。第2のリーチングサイクルのために、クエン酸ナトリウム溶液を、0.35:1に等しい比率にてクエン酸ナトリウムと水とをフレッシュに添加して、パルプの固形分をスラッジ含有分に対して10%w/wに調整した。さらに、800g/Lのクエン酸溶液を用いて、溶液のpHを7.0に調整した。リーチングpHが調整された後、第2のPbリーチングサイクルが実行された。次いで、実施例18の冒頭部に記載されている通りの析出条件に従って、第2のPb析出サイクルが実行された。析出ステップにおける濾過溶液の再循環を、合計15サイクルが完了するまで繰り返した。最後の5サイクルでは、析出ステップにおけるシード(種)として、炭酸鉛の析出固体を使用した。平均リーチング効率は94%であった。Pb含有分が平均1.33%の被リーチング固体が得られた。析出ステップにおいて、76%のPb含有分を有するPb析出物が得られた。硫酸塩含有分は、最大値96g/Lに達した。当該値は、最後の5回の試験サイクルに亘り一定に維持された。異なるリーチングサイクルの実行時に濃縮された他の検体(分析対象物)は、4g/Lに達したFe、1.5g/Lに達したBi、および、1.5g/Lに達したKであった。試験においてより顕著にリーチングされた成分はBiであり、平均リーチング率は66%であった。Cu、Fe、Ag、Ge、Sb、As、Si、AlおよびKは、無視しうるリーチング効率を有する。この文脈において、半連続試験は、得られた濃度がリーチングに影響を与えない度に、硫酸ナトリウムを除去するためのステップを必要としなかった。析出固体に対してDRX分析を実行した。DRX分析は、水酸化ナトリウムに関連した炭酸鉛(NaPb(COOH)の存在を示した。次に、ラマン分析を実行した。ラマン分析は、635.6cm-1および1011.9cm-1に2つのピーク(炭酸鉛に対応)を示した。
【0115】
[アルカリ性リーチング]
<実施例27~35>
濃度5.4~8.7%w/wの水酸化ナトリウム溶液と、5.0~7.0%w/wの固形含有分を有する硫酸リーチングおよびクエンリーチング連続プロセスに供された被リーチングスラッジとを用いて、パルプを調製した。パルプを4Lオートクレーブ内に配置し、1~6時間に亘り、600rpmにて、温度100~140℃で加温した。リーチング時間が満了した後、パルプを冷却し、ブフナーシステムにて濾過した。表7には、結果が示されている。
【表7】
【0116】
<実施例36~37>
水6.230mLに、水酸化ナトリウム420gと、銅リーチングおよび鉛リーチング連続プロセスに供された被リーチングスラッジ350gとを添加して、パルプを調製した。これにより、6.0%w/wのNaOHおよび5.0%w/wの固体分の濃度が得られた。パルプを10Lのガラスリアクタ内に配置し、1~6時間に亘り、90℃で加温し、かつ、900rpmにて撹拌した。リーチング時間が満了した後、パルプを冷却し、ブフナーシステムにて濾過した。
【表8】
【0117】
[塩酸リーチング]
<実施例38~45>
HCl濃度54~160g/L、かつ、塩化物濃度140~237g/Lの溶液を調製した。塩化マグネシウム六水和物を添加することにより塩化物濃度を高めた。当該溶液に、硫酸リーチングプロセスおよびクエン酸リーチングプロセスに供されたスラッジ180gを添加した。その一方で、当該スラッジは実施例31~37に記載の通り、硫酸リーチングプロセス、クエン酸リーチングプロセス、およびアルカリリーチングプロセスに供された。パルプを5Lのガラスリアクタに供給し、90℃にて加熱し、6時間に亘り一定に攪拌し続けた。パルプ試験が終了した後、パルプをブフナーシステムにて濾過した。これらの試験の結果は、表9に示されている。
【表9】
【0118】
結果は、アルカリ性リーチングステップを含む銅リーチングに対する明確な寄与を示している。このことは、全体的なプロセスにおける銅リーチング収率を増加させることを可能にする。この観察は、ステップiiに由来するスラッジのマトリックス中にクリソコラが存在することによって説明される。これらは、ステップiiにおいて、シリコン除去塩基を添加することによって効果的に改変され、本明細書中に示されている結果において認識される通り、ステップ(v)におけるアルカリ性攻撃に対して銅をより脆弱なままとする。
【0119】
塩酸リーチング試験の最終残留物を、TCLPおよびSPLPプロトコルに従って安定性試験に供した。これにより、規格によって許容される値を下回って放出される、カドミウム、ヒ素、および鉛の値が得られた。
【0120】
[金属析出]
<実施例46~52>
塩酸リーチング試験から得られたPLS450gを、600mL析出フラスコ内において得て、当該PLSを25~80℃において加温した。塩酸リーチング溶液の中和は、15体積%の酸化マグネシウムスラリーを用いて、3~6の範囲のpHに至るまで、実行された。続いて、パルプを45μmのフィルタ紙によって濾過した。
【表10】
【0121】
[鉛濃縮物]
<実施例53~55>
17.1%Fe、1.3%Cu、かつ0.44%Pbの含有分を有する金属析出物50gを、600mL析出フラスコ内に入れ、硫酸を添加して、60~257g/LのHSOを得た。マグネットバーを用いてパルプを撹拌し、当該パルプを5時間に亘り温度60℃に供した。パルプリーチング時間が満了した後、パルプを45μmの紙によって濾過した。
【表11】
【0122】
<実施例56~57>
17.1%Fe、1.3%Cu、かつ0.44%Pbの含有分を有する析出物1.700gを、20mLのガラスリアクタ内に入れ、当該ガラスリアクタ内に275g/LのHSO溶液15,300gを加えた。パルプを25~80℃に維持し、450rpmにて5時間に亘り機械的に撹拌した。リーチング時間が満了した後、パルプをフィルタペーパーN°42にて濾過した。
【表12】
【0123】
[鉛濃縮物のクエン酸リーチング]
<実施例58~61>
鉛濃縮物をクエン酸リーチングステップに再循環させた。5Lのガラスリアクタ内に、金属析出物リーチング試験から得られた鉛濃縮物120gと、クエン酸を用いて調整されたpH7のクエン酸ナトリウム溶液0.5~1Mとを添加した。パルプを20~70℃に維持し、700rpmにて3時間に亘り撹拌した。鉛リーチング収率は、80~82%に亘っていた。
【表13】
【図面の簡単な説明】
【0124】
図1】本発明によって開示された方法のプロセスダイアグラムを示す。
図2】適用例において得られた鉛濃縮物のX線回析スペクトルを示す。
図3】適用例において得られた鉛濃縮物のラマンスペクトルを示す。
図1
図2
図3
【国際調査報告】