(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-10
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池の差し迫っている破損の検出
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20231002BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20231002BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231002BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20231002BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20231002BHJP
【FI】
H01M10/48 Z
H01M50/204 401D
H02J7/00 S
H02H7/18
H02J7/02 F
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022549914
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 US2021018879
(87)【国際公開番号】W WO2021168327
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522329227
【氏名又は名称】セリヌス ラブス インク
【氏名又は名称原語表記】Serinus Labs, Inc.
【住所又は居所原語表記】1400 Shattuck Ave #215, Berkeley, CA94709 USA
(71)【出願人】
【識別番号】512249180
【氏名又は名称】カリフォルニア大学
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
【住所又は居所原語表記】1111, Franklin Street, 12th Floor, Oakland, CA, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100139044
【氏名又は名称】笹野 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】ハベイ アリ
(72)【発明者】
【氏名】ファハド ホセイン モハマド
【テーマコード(参考)】
5G053
5G503
5H030
5H040
【Fターム(参考)】
5G053AA14
5G053BA06
5G053EA01
5G053EC03
5G503AA01
5G503BA03
5G503BA04
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503CB13
5G503CC02
5G503DA04
5G503DA07
5G503FA19
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA01
5H030AS20
5H030FF31
5H040AA36
5H040AT02
5H040DD26
(57)【要約】
リチウムイオン電池の破損が差し迫っていることを検出するように構成されたバッテリー管理システムが、センサアレイ・マイクロチップを含む。マイクロチップは、リチウムイオン電池によって放出される複数種類の特定のガスを化学的に検知するように構成された複数のケイ素化学的感受性電界効果トランジスタ(CS-FET)を含む。バッテリー管理システムはまた、リチウムイオン電池によって放出されるガスの検出量を指し示すCS-FETデータの少なくとも1つから受けるように構成されたセル監視ユニット(CMU)を備える。CMUはまた、放出ガスの検出量を指し示すデータと、CMU内にプログラム済みの該放出ガスの所定の閾値量とを比較するように構成されている。CMUはさらに、放出ガスの検出量が該放出ガスの所定の閾値量を超えている時にリチウムイオン電池の破損が差し迫っていることを示す信号をトリガするように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池の破損が差し迫っていることを検出するように構成されたバッテリー管理システムにおいて、
上記リチウムイオン電池によって放出される複数種類の特定のガスを検出するように構成された複数のケイ素化学的感受性電界効果トランジスタ(CS-FETs)を含むセンサアレイ・マイクロチップと、
上記センサアレイ・マイクロチップと動作可能に通信するセル監視ユニット(CMU)と、
を備え、
上記セル監視ユニットは、
上記リチウムイオン電池によって放出されるガスの検出量を指し示すCS-FETsデータのうちの少なくとも1つを受け、
上記放出されるガスの検出量を指し示すデータと、上記CMU内にプログラム済みの該放出されるガスの所定の閾値量とを比較し、さらには、
上記放出されるガスの検出量が該放出されるガスの所定の閾値量を超えている時にリチウムイオン電池の破損が差し迫っていることを指し示す信号をトリガするように構成されている、
バッテリー管理システム。
【請求項2】
上記CMUはさらに、
上記リチウムイオン電池が充電器に接続されている時であるかを判断し、
上記放出されるガスの検出量が該放出されるガスのそれぞれの所定の閾値量を超えていることに応答して充電器から上記リチウムイオン電池を電気的に切断するように構成されている、請求項1に記載のバッテリー管理システム。
【請求項3】
上記CMUはさらに、
上記リチウムイオン電池が電気的負荷に接続されている時であるかを判断し、
上記放出されるガスの検出量が該放出されるガスのそれぞれの所定の閾値量を超えていることに応答して上記電気的負荷から上記リチウムイオン電池を切断するように構成されている、請求項1に記載のバッテリー管理システム。
【請求項4】
該バッテリー管理システムは、
漏電火災を消火するように構成された鎮火システムをさらに備え、
上記CMUはさらに、上記放出されるガスの検出量が該放出されるガスのそれぞれの所定の閾値量を超えていることに応答して上記鎮火システムを起動させるように構成されている、請求項1に記載のバッテリー管理システム。
【請求項5】
上記CS-FETsは、センサアレイ・マイクロチップ上において単一の平面内に並べられるように配置されており、該CS-FETsの各々は、上記リチウムイオン電池によって放出される複数種類のガスのうちの1つを検出するように構成されている、請求項1に記載のバッテリー管理システム。
【請求項6】
上記リチウムイオン電池によって放出される検出ガスの各々が、水素(H
2)、二酸化炭素(CO
2)、一酸化炭素(CO)及びエチレン(C
2H
4)を含むリストから選択されたものである、請求項5に記載のバッテリー管理システム。
【請求項7】
上記CMU内にプログラム済みの所定の閾値量は、H
2についての10ppm、CO
2についての500ppm、COについての10ppm及びC
2H
4についての10ppmのうちから選択されたものである、請求項6に記載のバッテリー管理システム。
【請求項8】
上記リチウムイオン電池が、個別のバッテリーモジュール内に配置された複数のリチウムイオン電池を有するマルチセル充電式エネルギ保存システム(RESS)の一部であり、上記センサアレイ・マイクロチップはRESS内において個別のバッテリーモジュールに近接する位置に配置されており、上記センサアレイ・マイクロチップは、上記リチウムイオン電池によって放出される複数種類の特定のガスをモジュールレベルで検出するように構成されている、請求項1に記載のバッテリー管理システム。
【請求項9】
上記リチウムイオン電池は、上記ガスを排出するように構成された排気ポートを有するハウジングを含み、上記センサアレイ・マイクロチップは、上記排気ポートに近接する位置に配置されている、請求項1に記載のバッテリー管理システム。
【請求項10】
上記ハウジングは、ポーチ、角柱形のケーシング及び円筒形のケーシングのうちの1つとして構成されている、請求項9に記載のバッテリー管理システム。
【請求項11】
リチウムイオン電池のオペレーションを管理するとともにリチウムイオン電池の破損が差し迫っていることを検出する方法であって、
該方法は、
上記リチウムイオン電池によって放出される複数種類の特定のガスを検出するように構成された複数のケイ素化学的感受性電界効果トランジスタ(CS-FETs)を有するセンサアレイ・マイクロチップ上に配置されたケイ素化学的感受性電界効果トランジスタ(CS-FET)を介して、上記リチウムイオン電池によって放出される複数種類の特定のガスのうちの少なくとも1つを検出するステップと、
上記CS-FETと動作可能に通信するセル監視ユニット(CMU)を介して、上記リチウムイオン電池によって放出されるガスの検出量を指し示すデータを上記CS-FETから受けるステップと、
上記CMUを介して、上記放出されるガスの検出量を指し示すデータと、上記CMU内にプログラム済みの該放出されるガスの所定の閾値量とを比較するステップと、
上記CMUを介して、上記放出されるガスの検出量が該放出されるガスの所定の閾値量を超えている時に上記リチウムイオン電池の破損が差し迫っていることを指し示す信号をトリガするステップと、
を含む方法。
【請求項12】
上記CMUを介して、上記リチウムイオン電池が充電器に接続されている時であるかを判断するステップと、
上記CMUを介して、上記放出されるガスの検出量が該放出されるガスのそれぞれの所定の閾値量を超えていることに応答して上記充電器から上記リチウムイオン電池を電気的に切断するステップと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記CMUを介して、上記リチウムイオン電池が電気的負荷に接続されている時であるかを判断するステップと、
上記CMUを介して、上記放出されるガスの検出量が該放出されるガスのそれぞれの所定の閾値量を超えていることに応答して上記電気的負荷から上記リチウムイオン電池を切断するステップと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
上記CMUを介して、上記放出されるガスの検出量が該放出されるガスのそれぞれの所定の閾値量を超えていることに応答して鎮火システムを起動させるステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
上記CS-FETsは、上記センサアレイ上において単一の平面内に並べられるように配置されており、
上記リチウムイオン電池によって放出される複数種類の特定のガスのうちの少なくとも1つを検出するステップは、上記CS-FETsの各々を介して、上記リチウムイオン電池によって放出される複数種類のガスのうちの1つを検出することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
上記リチウムイオン電池によって放出され検出されるガスの各々が、水素(H
2)、二酸化炭素(CO
2)、一酸化炭素(CO)及びエチレン(C
2H
4)を含むリストから選択されたものである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記CMU内にプログラム済みの所定の閾値量は、H
2についての10ppm、CO
2についての500ppm、COについての10ppm及びC
2H
4についての10ppmのうちから選択されたものである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記リチウムイオン電池は、個別のバッテリーモジュール内に配置された複数のリチウムイオン電池を有するマルチセル充電式エネルギ保存システム(RESS)の一部であり、
上記センサアレイ・マイクロチップは、上記RESS内において個別のバッテリーモジュールに近接する位置に配置されており、さらには、
上記リチウムイオン電池によって放出される複数種類の特定のガスのうちの少なくとも1つを検出するステップは、上記リチウムイオン電池によって放出される複数種類の特定のガスをモジュールレベルで検出することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
上記リチウムイオン電池は、上記ガスを排出するように構成された排気ポートを有するハウジングを含み、上記センサアレイ・マイクロチップは上記排気ポートに近接する位置に配置されている、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
上記ハウジングは、ポーチ、角柱形のケーシング及び円筒形のケーシングのうちの少なくとも1つとして構成されている、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、リチウムイオン電池に破損が差し迫っていることを検出するシステム及び方法に関する。
【0002】
なお、本願は2020年2月20日に出願された米国特許出願第62/979,322号明細書の優先権の利益を主張するものであり、その明細書の全体が本願の参照となる。
【背景技術】
【0003】
電気エネルギ保存(ストレージ)又はバッテリーのシステムないしアレイが、複数の互いに比較的近接した電池を含み得る。複数の電池が、バッテリーのスタックつまりモジュールとなるように組み立てられ、さらに複数のバッテリーモジュールがバッテリーパックとなるように組み立てられ得る。電池は一次電池と二次電池とに大別され得る。一次電池(使い捨て電池ともいう)は、使い切られるまで使用されるものであり、使い切られると、単に新品の電池と交換される。二次電池(より一般的には、充電池)は、当該電池が繰り返し充電され再利用されることを可能にする特定の高エネルギ化学を採用しているので、使い捨て電池と比較して、経済的であり、環境への負担が小さく、取扱いが容易という利点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
充電式電池は、玩具、消費者用電子デバイス、及びモータ式車両のような様々な物品に電力を与えるために使用され得る。リチウムイオン電池のような充電式電池並びに外部ファクタの特定の化学反応に起因して、極端な場合には、相当量の熱エネルギを発生するような内部反応速度となり、その結果、熱的イベントが起こり得る。充電式電池内の内部反応が加速することに伴って、そのような電池の多くが、惨事を招く恐れのある電池の破損の前兆としてガスを放出する。充電式電池の安全性は、モータ式車両、航空用途及び、スマートフォンやラップトップのような消費者用電子デバイス等の広範囲に適用されることに伴い相当に懸念されている。安全性について特に懸念されるのは、電動式乗り物の分野においてである。その理由は、急速充電が可能でかつ走行距離の長い乗り物への需要が伸びており、それとともに当該乗り物の内部に使われる電池の個数も増えているからである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
リチウムイオン電池の破損が差し迫っていることを検出するように構成されたバッテリー管理システムが、センサアレイ・マイクロチップを含む。マイクロチップは、リチウムイオン電池によって放出される複数種類の特定のガスを検出するように構成された複数のケイ素化学的感受性電界効果トランジスタ(CS-FETs)を含む。バッテリー管理システムはまた、リチウムイオン電池によって放出されるガスの検出量を指し示すCS-FETsデータの少なくとも1つから受けるように構成されたセル監視ユニット(CMU)を含む。CMUはまた、放出ガスの検出量を指し示すデータと、CMU内にプログラムされている該放出ガスの所定の閾値量とを比較するように構成されている。CMUはさらに、放出ガスの検出量が該放出ガスの所定の閾値量を超えている時にリチウムイオン電池の破損が差し迫っていることを指し示す信号をトリガするように構成されている。
【0006】
CMUはさらに、リチウムイオン電池が充電器(バッテリーチャージャ)に接続されている時であるかを判断するように構成され得る。そのような実施例において、CMUはさらに、放出ガスの検出量が該放出ガスのそれぞれの所定の閾値量を超えていることに応答して充電器からリチウムイオン電池を電気的に切断するように構成され得る。
【0007】
CMUはまた、リチウムイオン電池が電気的負荷に接続されている時であるかを判断するように構成され得る。CMUはさらに、放出ガスの検出量が該放出ガスのそれぞれの所定の閾値を超えていることに応答して電気的負荷からリチウムイオン電池を切断するように構成され得る。
【0008】
バッテリー管理システムはさらに、漏電による火災を消火するように構成された鎮火システムを含み得る。そのような実施例において、CMUはさらに、放出ガスの検出量が該放出ガスの所定の閾値量を超えていることに応答して鎮火システムを起動させるように構成され得る。
【0009】
CS-FETsは、センサアレイ・マイクロチップ上において単一の平面内で並ぶように配置され得る。さらには、CS-FETsの各々が、リチウムイオン電池によって放出される複数種類のガスのうちの1つを検出するように構成され得る。
【0010】
リチウムイオン電池によって放出され検出されるべきガスの各々が、水素(H2)、二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)及びエチレン(C2H4)を含むリストから選択されたものであり得る。さらには、CMU内にプログラムされている所定の閾値量は、H2についての10ppm、CO2についての500ppm、COについての10ppm及びC2H4についての10ppmから選択されたものであり得る。
【0011】
リチウムイオン電池は、個別のバッテリーモジュール内に配置された複数のリチウムイオン電池を備えるマルチセル充電式エネルギ保存システム(RESS)の一部であり得る。このような実施例において、センサアレイ・マイクロチップは、RESS内において個別のバッテリーモジュールに近接する位置に配置され得る。さらには、センサアレイ・マイクロチップは、リチウムイオン電池によって放出される複数種類の特定のガスをモジュールレベルで検出するように構成され得る。
【0012】
リチウムイオン電池は、ガスを排出するように構成された排気ポートを有するハウジングを含み得る。そのような実施例において、センサアレイ・マイクロチップは排気ポートに近接する位置に配置され得る。
【0013】
リチウムイオン電池のハウジングは、ポーチ、角柱形のケーシング及び円筒形のケーシングのうちの1つとして構成され得る。
【0014】
上述したバッテリー管理システムを使ってリチウムイオン電池のオペレーションを管理するとともにリチウムイオン電池の破損が差し迫っていることを検出する方法についても開示する。
【0015】
本教示の上述した特徴と利点及び他の特徴と利点は、添付の図及び添付の特許請求の範囲を参照しつつ、本開示を実施するための以下の詳細な(1つ又は複数の)実施形態の説明及び(1つ又は複数の)最良の形態を読むことにより容易に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】センサアレイ・マイクロチップを備えるバッテリー管理システム(BMS)に接続された充電式リチウムイオン(Li-ion)電池を有するマルチセル充電式エネルギ保存システム(RESS)の回路ダイヤグラムであって、本開示によるケイ素化学的感受性電界効果トランジスタ(CS-FETs)を使って、電池が放出する複数種類の特定のガスを検出することを示している。
【
図2】
図1に示したリチウムイオン電池の3つの実施形態を概略的に示す側面図。
【
図3】典型的なリチウムイオン電池の放出するガスの量が電池を破損させるまでを時刻の関数として示すデータプロット。
【
図4】
図1に示した個別のマイクロチップの上面を概略的に示す図であり、本開示によるマイクロヒータ及び温度センサとともに複数のCS-FETsを示している。
【
図5】
図4に示したマイクロチップの断面を概略的に示す図であり、詳しくは、本開示による個別のCS-FETsの一つを示している。
【
図6】
図1~
図5に示したBMSを使ってリチウムイオン電池のオペレーションを管理するとともにリチウムイオン電池の破損が差し迫っていることを検出する方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、マルチセル充電式エネルギ保存システム(RESS)10を示す。RESS10は個別のバッテリーモジュール12を含み、そのバッテリーモジュール12の各々が1つ又は複数のリチウムイオン電池14を有する(
図2を参照)。RESS10は、電気的負荷へ給電する電気エネルギをもたらす発熱性の電気化学反応を用いて、電気エネルギを発生させ保存するように構成されている。複数のリチウムイオン(Li-ion)電池14を有するバッテリーモジュール12内に、その複数の電池が配置され、つまり直列若しくは並列に接続されている。そして、複数のこのようなモジュール12は、RESS10の一部としてバッテリーパック内に配置され得る。4つのモジュール12-1,12-2,12-3,12-4が図示されているが、RESS10がもっと多数のこのようなバッテリーモジュールを備える場合もある。
図1に示したようなリチウムイオン電池14を有する一般的な型式のRESS10は、様々な製品例えば電動式乗り物及び、スマートフォンやラップトップのような消費者用の電子デバイスに電力を供給するために使用され得る。
【0018】
図2は、リチウムイオン電池14の3つの実施形態を示す。本実施例の各々におけるリチウムイオン電池14が、それぞれの陰極つまりアノード、陽極つまりカソードとともに、バッテリーの電解質、(1つ又は複数の)ガスケットなどを取り囲むように構成されたハウジングを含む。詳しくは、
図2に示した3つの電池14のそれぞれのハウジングとして、概ね硬質の金属製コンテナとして構成された円筒形のケーシング16Aと、比較的柔軟な積層材料からなるコンテナとして構成されたポーチ16Bと、剛性を有しかつ平行六面体の形状に形成されたコンテナとして構成された角柱形のケーシンク16Cとがある。本実施例の各々におけるハウジング16が、リチウムイオン電池14によって放出されたガスを排出するように構成された開口や煙突のような排出口18を含み得る。円筒形のケーシング16Aを備える電池14は、排出用の開口や煙突として構成された専用の排出口18を有し得る。その一方で、ポーチ16B若しくは角柱形のケーシング16Cのいずれかを備える電池14は、通気性のないものである。そのようなポーチ又は角柱形の形状の電池においては、ハウジング16のシーリングに不備があって小さな容量で電池が作動し始める場合に、微量ガスが検出されやすい。
【0019】
再び
図1を参照すると、RESS10は、バッテリー管理システム(BMS)20に作動可能に接続されている。BMS20は、RESS10のオペレーションを調節するように特にはリチウムイオン電池14の不具合と差し迫っている破損を検出するように構成されている。換言すれば、BMS20はリチウムイオン電池14の破損の早期検出並びにその破損に関する警報(報知)の発出を実行するように設計されかつ構成されている。高い内部反応速度が生じているときに、リチウムイオン電池14は相当な量の熱エネルギを発生させ得るが、これに起因して熱が上昇し続けるイベントと、不可逆的な電池の破損が生じる恐れがある。この「熱が上昇し続けるイベント」との語句は概して、バッテリーシステム内で制御不能な程にまで熱が上昇し続けることを意味する。熱が上昇し続けるイベントの発生時に、バッテリーシステム又は電池内での熱の発生量が熱の消散量を超えると、更に温度が上昇する。熱が上昇し続けるイベントは概して、電池内におけるショート(短絡)、不適切な電池の使用、物理的な誤用、製造上の欠陥、又は極端な外界温度に電池が暴露されること等の様々な条件によって誘発される。
【0020】
電池14のようなリチウム電池は、不可逆的に破損してしまう前の熱的な連鎖反応が生じているときに、水素(H
2)、二酸化炭素(CO
2)、一酸化炭素(CO)、エチレン(C
2H
4)のようなガスを放出ないし排出することが知られている。
図3に示されるグラフ(時刻をX軸に、電池が放出した特定のガスの量をY軸に示す)において、リチウムイオン電池14を破損させるほどの該電池の放出するガスの量が曲線Gによって表されている。曲線Gによって示されるガスの放出量の上昇は、3つの典型的なカテゴリつまりステージに分割され得る。ステージ1において、放出ガスの量は微量(ガス)として認識され得る。ステージ2において、放出ガスの量は中程度のものとして認識され、概して視認可能な煙を伴うものである。ステージ3において、放出ガスの量は相当に多いつまり大量であると認識され、概して熱が上昇し続けることや電池が破損することを伴うほどのものであり、短期的には視認可能な火災や爆発を伴うものである。
【0021】
再び
図1を参照すると、BMS20は、チップ(SoC)ないしマイクロチップ22(
図1、
図2、
図4及び
図5を参照)上に1つ又は複数のマルチガスセンサアレイシステムを含む。
図2に示されるように、各マイクロチップ22は、いずれかの実施例のリチウムイオン電池14における排出口18に近接する位置に配置され得る。上述したように、リチウムイオン電池14は、個別のバッテリーモジュール12内に配置された複数の互いに類似するリチウムイオン電池14を有するRESS10の一部であり得る。従って、そのような実施例において、BMS20は、例えば
図2に示したように、各電池14に対して1つのマイクロチップとなるように複数のマイクロチップ22を含み得る。或いは
図1に示したように、マイクロチップ22の各々が、リチウムイオン電池14によって放出される複数種類の特定のガスをモジュールレベルで検出するために、例えば、それぞれのモジュールの排出口12-1,12-2,12-3,12-4に近接する位置に或いは内側に配置されるように、個別のバッテリーモジュール12-1,12-2,12-3,12-4について中央寄りに或いは内側に配置され得る。換言すれば、そのような実施例においては、特定のバッテリーモジュール12内に配置された1つ又は複数のリチウムイオン電池14によって放出されるガスを各マイクロチップ22が検出するように構成されている。
【0022】
図4及び
図5に示されるように、マイクロチップ22は、複数のケイ素化学的感受性電界効果トランジスタ(CS-FETs)を含む。CS-FETs24は、(1つ又は複数の)リチウムイオン電池14によって放出される複数種類の化学的に特異的なガスの機能的に相当な量を検出するように構成されている。個別のCS-FETs24の各々が、リチウムイオン電池14によって放出される複数種類のガスのうちの1つを検出するように構成されている。
図4においてエレメント24-1,24-2,24-3及び24-4として示した特定のナノ材料の触媒エレメントによって、個別のCS-FETs24の各々が他のCS-FETsから区別されている。
図4に示した線5-5に沿って切り出された断面を示す
図5は特に、マイクロチップ22上に実装された個別のセンサ24-4の断面を概略的に示している。単一のCS-FET24内において、ナノ材料の触媒エレメント24-1,24-2,24-3及び24-4のいずれもが、放出されるガスと相互作用する。それぞれのナノ材料の触媒エレメント24-1,24-2,24-3及び24-4が(C
2H
4ガスを検出するための)白金、(COガスを検出するための)パラジウム-白金のような金属から構成される場合もあれば、(H
2ガスを検出するための)ニッケル-パラジウム及び(CO
2ガスを検出するための)金-銅のような金属混合物から構成される場合もある。各ナノ材料の触媒エレメントの厚さは1nm~10nmの範囲内に収まり得る。
【0023】
図5に示されるように、マイクロチップ22は、それぞれのナノ材料の触媒エレメント24-1,24-2,24-3及び24-4を支持するシリコントランジスタ体22Aを含む。さらに図示されているように、シリコントランジスタ体22Aは、複数のソース端子22-1(各ナノ材料の触媒エレメント24-1,24-2,24-3及び24-4用のものが接地されている)を支持する局在化されたシリコンアイランドを形成している。シリコントランジスタ体22Aは、複数のドレイン端子22-2も支持しており、これらの端子22-2の各々が、デジタルの又はアナログのコンバータ(図示せず)を介して、それぞれのナノ材料の触媒エレメント24-1,24-2,24-3及び24-4を電源に接続している。ナノ材料の触媒エレメント24-1,24-2,24-3及び24-4は互いに電気的に隔離されているとともに、電源に直接接続されてはいない。詳しくは、各ナノ材料の触媒24-1,24-2,24-3及び24-4は、特定のガスと(当該触媒の特異的な材料特性の効果で他のガスによって干渉されることなく)相互作用し、その特定のガスを検出するように構成されている。
【0024】
シリコントランジスタ体22Aに内蔵されている各CS-FET24は、シリコン電子トランジスタと機能的に類似している。電子トランジスタは概して、3つの電極つまりソース電極、ゲート電極及びドレイン電極を有する。ソース電極はトランジスタに電荷を供給する。ドレイン電極は電荷つまり電子を収集し或いは流出させる。ドレイン-ソース間に電圧が加えられると、電荷が概ねソース電極からドレイン電極まで流れるようになる。ゲート電極の役割は、電荷のその流れを制御することであり、その流れはゲートに加えられる電圧の大きさによって調節される。
【0025】
各CS-FET24のオペレーションは、ソース電極からドレイン電極までの電荷の流れが特定のゲート電極と特異的なガスとの間の相互作用によって(ゲートに一定の電圧が与えられるのではなく)制御されること以外、上述した電子トランジスタと同様である。さらに詳しくは、各CS-FET24において、それぞれのナノ材料の触媒24-1,24-2,24-3及び24-4は、電源に接続されていないゲート電極として作動する。特異的なガスと特定のナノ材料の触媒が化学的に相互作用すると、そのナノ材料の触媒に「仕事関数変化」として一般に説明される現象が誘導される。生じた仕事関数変化は、ソースからドレインへの電荷の流れを変化させ、これにより放出ガスの検出が可能となる。
【0026】
特異的なガスと、特定のナノ材料の触媒24-1,24-2,24-3又は24-4との相互作用によって、シリコントランジスタ体22A内においてそれぞれのソース端子からそれぞれのドレイン端子まで流れる電流が変調ないし変化する。マイクロチップ22は追加的に(1つ又は複数の)マイクロヒータ28、(1つ又は複数の)温度センサ30を含み、これらの各々は、個別のCS-FETs24の周辺を取り囲むように配置されている。マイクロヒータ28と温度センサ30には2つの目的がある。(1)周囲環境に対して一定のマイクロチップの温度を維持することと、(2)周囲湿度の干渉を最小限に抑えることである。マイクロヒータ28及び温度センサ30は、タングステン、金-チタン又は50~500nmの範囲内の厚さを有するポリシリコンから構成され得る。
図4に示した平面5-5に沿って切り出された断面を示す
図5に示されているように、マイクロチップ22は、マイクロヒータの熱損失と、全体的なマイクロチップ電力消費とを最小限に抑えるように構成された凹状のキャビティ31を含み得る。
【0027】
図4にさらに示されるように、個別のCS-FETs24は、センサアレイ・マイクロチップ22上において単一の平面内で並ぶように配置され得る。特には、個別のCS-FETs24は互いに対してほぼ並列に配置される。複数のナノ材料の触媒24-1,24-2,24-3,24-4の各々が、リチウムイオン電池14によって放出される複数種類のガスのうちの1つに対して感受性を有しすなわち検出するように構成されている。具体的には、個別のナノ材料の触媒24-1,24-2,24-3,24-4が、水素、二酸化炭素、一酸化炭素及びエチレンのような放出ガスを順不同で検出するように構成され得る。4つの個別のナノ材料の触媒24-1,24-2,24-3,24-4が示されているが、もっと少数の又はもっと多数の(
図4において、占有されていない2つの追加のセンサスペースによって示されている)個別のナノ材料の触媒を備えるマイクロチップ22の構成をとる場合もある。
【0028】
図1をさらに参照すると、BMS20はまた、CS-FETs24と協働するセル監視ユニット(CMU)32を含む。CMU32は、バッテリーモジュール12のオペレーションを管理するように構成されたバッテリーコントローラネットワーク(図示せず)の一部であり得る。様々な通信機能、プロセス機能及び管理機能のうちで、CMU32は、(1つ又は複数の)リチウムイオン電池14によって放出される少なくとも1つのガスの検出量ないし検出レベルを指し示すデータ35をCS-FETs24から受けるように構成されており、すなわち構築されプログラムされている。マイクロチップ22によって生じるデータ信号35は最初に、アナログ又はデジタルのコンバータ(図示せず)へ送信され、その後、CMU32まで送られる。CS-FETs24の各々によって送信される、データ35を指し示す信号は、
図3に示されるガスの放出において、或いは特定の放出ガスの具体的な検出量に応じて、判然と区別された複数のステージつまりステージ1、ステージ2及びステージ3を代表し得る。検出されかつCMU32まで送信される量が、放出ガスの量の増加に関する3つのステージにどう対応するのかを示すように、
図3の曲線G上に、送信されたデータ35が重ね合わせ表示されている。
【0029】
CS-FETs24を含むマイクロチップ22は、(
図1に示されるように)特定のCMU32に物理的な有線で接続される場合もあれば、CMUとワイヤレス通信する場合もある。ワイヤレス通信を有効にするために、CMU32は、マイクロチップ22からデータ35を受けるためのアンテナ32-1を含み得る。この目的のために、各マイクロチップには、それぞれのアンテナ(図示せず)も設けられ得る。バッテリーモジュール12の必須の管理を支持するために、CMU32は具体的には、プロセッサと、有形の不揮発性のメモリを含み、このメモリ内には、BMS20のオペレーション用にプログラムされた指令が含まれている。このメモリは、コンピュータ読取可能データ又はプロセスの指令をもたらすことに寄与する適切な記憶メディアであり得る。そのような記憶メディアは、非揮発性メディアや揮発性メディア(これらに限定されない)等の様々な型式をとり得る。
【0030】
CMU32用の非揮発性メディアとしては、例えば、光学的ないし磁気的ディスク、及び他の永久的なメモリがある。揮発性メディアとしては、例えば、メインメモリを構成し得るダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)がある。CMU32内にプログラム済みの指令は、同軸ケーブル、銅線、光ファイバなどの(コンピュータのプロセッサに結合されたシステムバスからなる有線を含む)1つ又は複数の伝送媒体によって送信される場合もあれば、ワイヤレス接続によって送信される場合もある。CMU32のメモリとしてはまた、柔軟なディスク、硬質なディスク、磁気テープ、他の磁気媒体、CD-ROM、DVD、他の光学媒体などがある。CMU32は、高速クロック、必須のアナログ-デジタル(A/D)変換回路及び/又はデジタル-アナログ(D/A)変換回路、入力/出力の回路及びデバイス(I/O)並びに、適切な信号調整回路及び/又はバッファ回路のような他の必須のコンピュータハードウェアを有するように、構成され或いは装備され得る。これにより、CMU32によって要求され或いはアクセス可能な、符号34で概略的に示されている(1つ又は複数の)アルゴリズムはCMU32のメモリ内に格納され、BMS20のオペレーションを容易にするために自動的に実行され得る。具体的には、(1つ又は複数の)アルゴリズム34がインベントリ・モードを含み、このインベントリ・モードは、所定の時間間隔でもってCS-FETs24を監視し且つ/或いはCS-FETsに問合せすることで、CS-FETsとの通信に実際に使われているラインと、該CS-FETsのオペレーションとを点検するように構成され得る。
【0031】
詳しくは、CMU32はまた、受信した放出ガスのデータ35と、該放出ガスのそれぞれの所定の閾値量38とを比較するように構成されている。該放出ガスの所定の閾値量38は、電池14のような代表的なリチウムイオン電池についての試験に基づいて経験的に決められることもあり、CMU32内にプログラムされている。CMU32はさらに、リチウムイオン電池によって放出される(1種類又は複数種類の)放出ガスの(1つ又は複数の)検出量が該放出ガスの所定の閾値量38を超えている時に電池の損傷と熱の急上昇の前兆(予測因子)つまり(1つ又は複数の)リチウムイオン電池14に破損が差し迫っていることを指示する信号40をトリガするように構成されている。CMU32内にプログラムされているそれぞれの所定の閾値量38は、個別のリチウムイオン電池14ごとに、H
2について10ppm(parts per million)、CO
2について500ppm、COについて10ppm及びC
2H
4について10ppmであり得る。
図1に示したBMS20の実施例において、CMU2内にプログラム済みのそれぞれの所定の閾値量38は、特定のバッテリーモジュール12内におけるリチウムイオン電池14の具体的な個数に応じて調節され得る。いずれの実施例においても、CMU32は、複数種類の放出ガスのうちの少なくとも1つの検出量が対応する閾値量38を超えている時に信号40をトリガし得る。
【0032】
信号40は、聴覚的及び/又は視覚的なセンサ信号ないしアラート(報知)であり得る。例えば、信号40は、高デシベル及び/又は高周波数のアラームのような聴覚的インジケータであり得る。信号40はまた、不具合インジケータ光(MIL)のような視覚的インジケータである場合もあり、その場合、生ずるデジタル不具合コードがCMU32のメモリ内に格納されている。CMU32のメモリ内に格納されているデジタル不具合コードは、権限ある技術者によって呼び出され、或いはITクラウドサーバ42(
図1を参照)のようなデータベースを含む中央権限まで通信され得る。図示したように、ITクラウドサーバ42は、CMU32から離間して配置され、例えばアンテナ32-1を介して及び/又はRESS10を使ってCMU32とワイヤレス通信し、これによって中央システムへのアクセス及び管理が可能となる。そのような実施例において、外部のITクラウドサーバ42は、RESS10(個々のCMUはCMU32と同様である)のようなマルチセル充電式エネルギ保存システムのネットワークを監視するBMS20の一部である。それぞれのCMUとITクラウドサーバ42との間に要求される通信が、セルラー基地局に短い待ち時間で滞在するクラウドエッジによって促進されるワイヤレスローカルエリアネットワーク(Wi-Fi)を介する或いは地球周回軌道衛星(図示せず)を介するセル方式である場合もある。
【0033】
CMU32は、特定のリチウムイオン電池14が充電器44に電気的に接続されている時(つまり、そこから電荷の流れを受けている時)であるかを検出するように構成され得る。CMU32はさらに、当該電池によって放出される(1種類又は複数種類の)ガスの、データ35によって表される検出量が、(1種類又は複数種類の)該放出されるガスの(1つ又は複数の)所定の閾値量38を超えていることに応答して、充電器44からリチウムイオン電池14を電気的に切断するように構成され得る。CMU32は、信号40をトリガすること又は設定することに対して同時に或いは応答して充電器44から切断するように構成され得る。充電器44から切断することは、リチウムイオン電池14に該充電器を接続している回路内のスイッチ46を開くことによって実現され得る。
【0034】
CMU32はさらに、リチウムイオン電池14が電気的負荷48(例えば、暖房、換気、及び空気調整(HVAC)システム又は牽引モータ(図示せず)のような乗り物サブシステム)に接続されている時であるかを検出するように構成され得る。RESS10は、特にはモータ式車両に採用されている場合に、高電圧BUS50(
図1を参照)を介して電気的負荷48及びCMU32に接続され得る。そのような実施例において、CMU32はさらに、リチウムイオン電池によって放出される(1種類又は複数種類の)ガスの、データ35によって表される検出量が、(1種類又は複数種類の)該放出されるガスの(1つ又は複数の)所定の閾値量38を超えていることに応答して、電気的負荷48からリチウムイオン電池14を切断するように構成され得る。電気的負荷48から切断することは、リチウムイオン電池14に該負荷を接続している回路内でスイッチ52を開くことによって実現され得る。充電器44から切断することに関して上述した状況と同様に、CMU32は信号40をトリガすること又は設定することと同時に或いはそれに応答して、電気的負荷48から切断するように構成され得る。
【0035】
BMS20はまた、漏電火災を消火するように構成された鎮火システム54を含み得る。鎮火システム54としては、例えば、個別のスプリンクラーユニット(図示せず)に接続された流体配給ポンプシステムへ適切な圧力と流量を与える給水システム若しくは発泡体供給システムを備えるスプリンクラーシステムがある。他の例における鎮火システム54では、漏電火災を消火し、再発火を防ぎ、バッテリー筐体の爆発のリスクを低減する高圧不活性ガスと超微細エアロゾル粒子を自動的に分配するように構成されたキャニスタを適宜設けて利用し得る。CMU32は、リチウムイオン電池14によって放出される(1種類又は複数種類の)ガスの検出量が(1種類又は複数種類の)当該ガスの(1つ又は複数の)所定の閾値量38を超えていることに応答して鎮火システム54を起動させるように構成され得る。
【0036】
全体的に、リチウムイオン電池14から放出されるガスを検出し、リチウムイオン電池の破損が生じた場合に早期の報知を実現するために、CS-FETs24を有するマルチガスセンサアレイ・マイクロチップ22が使用され得る。本開示のBMS20内に組み込まれたマルチガスセンサアレイ・マイクロチップ22は、既存のガス検知技術と比較して、リチウムイオン電池14に不具合が差し迫っていることを検出することについて鋭敏な感受性とコストパフォーマンスの良いアプローチをもたらす。CMU32内にプログラムされている開示のアプローチを採用することにより、個別のリチウムイオン電池14及びリチウムイオン電池モジュール12の安全性を向上させ、惨事を招きかねないリチウムイオン電池の破損、火災及び爆発を防ぐように保護することを容易にすることができる。
【0037】
図6に、BMS20を介して、(1つ又は複数の)リチウムイオン電池14のオペレーションを管理するとともに破損が差し迫っていることを検出する方法100が示されており、この方法について、
図1~5に示した構造を参照しつつ以下に説明する。方法100はフレーム102において、マイクロチップ22上に配置されたCS-FET(s)24を介して、(1つ又は複数の)リチウムイオン電池14によって放出される複数種類の特定のガスのうちの少なくとも1つを検出することで開始する。フレーム102に続いて、方法はフレーム104へ進む。フレーム104において、方法は、CS-FET(s)24からCMU32を介して、少なくとも1つのリチウムイオン電池14によって放出される(1種類又は複数種類の)ガスの検出量を指し示すデータ35を受けることを含む。そして方法はフレーム104からフレーム106へ進み、フレーム106において、方法は、CMU32を介して、放出ガスの検出量を指し示すデータ35と、CMU内にプログラム済みの該放出ガスのそれぞれの所定の閾値量38とを比較することを含む。
図1~5に関して説明したように、CMU32内にプログラム済みの所定の閾値量38は、H
2についての10ppm、CO
2についての500ppm、COについての10ppm及びC
2H
4についての10ppmのうちから選択されたものであり得る。
【0038】
フレーム106の後、方法はフレーム108へ進む。フレーム108において、方法は、CMU32を介して、(1つ又は複数の)リチウムイオン電池14によって放出される特定のガスの、データ35によって表される検出量が、該放出されるガスのそれぞれの所定の閾値量38を超えている時に、(1つ又は複数の)リチウムイオン電池14の破損が差し迫っていることを指し示す信号40をトリガすることを含む。方法はフレーム108に続いて、フレーム110へ進む。フレーム110において、方法は、CMU32を介して、(1つ又は複数の)リチウムイオン電池14が充電器44に接続されそこから電流が流れている時であるかを判断し或いは検出することを含み得る。リチウムイオン電池14が充電器44に接続されていると判断された後、方法はフレーム112へ進む。フレーム112において、方法は、CMU32を介して、放出ガスの検出量がそれぞれの所定の閾値量38を超えていることに応答して充電器44から(1つ又は複数の)リチウムイオン電池14を電気的に切断することを含み得る。
【0039】
代替的にフレーム108又は112のいずれかに続いて、方法はフレーム114へ進む。フレーム114において、方法は、CMU32を介して、(1つ又は複数の)リチウムイオン電池14が電気的負荷48に接続されている時であるかを判断し或いは検出することを含み得る。(1つ又は複数の)リチウムイオン電池14が電気的負荷48に接続されていると判断された後、方法はフレーム116へ進み得る。フレーム116において、方法は、CMU32を介して、放出ガスの検出量がそれぞれの所定の閾値量38を超えていることに応答して電気的負荷48から(1つ又は複数の)リチウムイオン電池14を電気的に切断することを含み得る。フレーム108,112又は116のいずれかに続いて、方法はフレーム118へ進み得る。フレーム118において、方法は、CMU32を介して、放出ガスの検出量がそれぞれの所定の閾値量38を超えていることに応答して鎮火システム54を起動させることを含み得る。
【0040】
これまでの説明から理解されるように、方法100は、(1つ又は複数の)当該リチウムイオン電池14の破損が差し迫っていることを検出するため、さらにはそのような状況が確認された場合にアラートを発出するために(1つ又は複数の)リチウムイオン電池14を継続的に監視することを可能にする。加えて、方法100は、そのような破損が差し迫っていることが確認された場合に、(1つ又は複数の)当該電池14の充放電を制限し、さらには鎮火を起動させることを可能にする。その結果、フレーム108,112,116又は118のいずれかに続いて、方法は一周りしてフレーム104へ戻り、BMS20を介して、(1つ又は複数の)リチウムイオン電池14を監視し続けるとともに、CS-FETs24を介して、(1つ又は複数の)リチウムイオン電池14によって放出されるガスを検出し続ける。方法は、代替的にフレーム120を含む場合もある。
【0041】
各図面ないし図についての詳細な説明は本開示を補足して説明するものであり、本開示の範囲は特許請求の範囲のみによって画定される。クレームされた開示内容を実行するためのいくつかの最良の実施形態及び他の実施形態のいくつかを発明の詳細な説明に記載したが、添付の特許請求の範囲に画定された本開示を実行するための代替的な設計及び実施形態が存在する。さらには、各図に示される実施形態又は、本明細書において言及した様々な実施形態の特性は、必ずしも互いに独立した実施形態として理解されるべきものではなく、ある実施形態における複数の例のうちの1つにおいて説明された特性が、他の実施形態からの1つ又は複数の他の望ましい特性と結合されることにより、文言上でも図面でも説明されていない他の実施形態が生じ得る。従って、そのような他の実施形態も添付の特許請求の範囲のフレームワーク内に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池の破損が差し迫っていることを検出するように構成されたバッテリー管理システムにおいて、
上記リチウムイオン電池によって放出される複数種類の特定のガスを検出するように構成された複数のケイ素化学的感受性電界効果トランジスタ(CS-FETs)を含むセンサアレイ・マイクロチップ
であって、CS-FETsの各々が、リチウムイオン電池によって放出される複数種類のガスのうちの1つを検出するように構成されている、センサアレイ・マイクロチップと、
上記センサアレイ・マイクロチップと動作可能に通信するセル監視ユニット(CMU)と、
を備え、
上記セル監視ユニットは、
上記リチウムイオン電池によって放出されるガスの検出量を指し示すCS-FETsデータのうちの少なくとも1つを受け、
上記放出されるガスの検出量を指し示すデータと、上記CMU内にプログラム済みの該放出されるガスの所定の閾値量とを比較し、さらには、
上記放出されるガスの検出量が該放出されるガスの所定の閾値量を超えている時にリチウムイオン電池の破損が差し迫っていることを指し示す信号をトリガするように構成されている、
バッテリー管理システム。
【請求項2】
上記CMUはさらに、
上記リチウムイオン電池が充電器に接続されている時であるかを判断し、
上記放出されるガスの検出量が該放出されるガスのそれぞれの所定の閾値量を超えていることに応答して上記充電器から上記リチウムイオン電池を電気的に切断するように構成されている、請求項1に記載のバッテリー管理システム。
【請求項3】
上記CMUはさらに、
上記リチウムイオン電池が電気的負荷に接続されている時であるかを判断し、
上記放出されるガスの検出量が該放出されるガスのそれぞれの所定の閾値量を超えていることに応答して上記電気的負荷から上記リチウムイオン電池を切断するように構成されている、請求項1に記載のバッテリー管理システム。
【請求項4】
該バッテリー管理システムは、
漏電火災を消火するように構成された鎮火システムをさらに備え、
上記CMUはさらに、上記放出されるガスの検出量が該放出されるガスのそれぞれの所定の閾値量を超えていることに応答して上記鎮火システムを起動させるように構成されている、請求項1に記載のバッテリー管理システム。
【請求項5】
上記CS-FETsは、センサアレイ・マイクロチップ上において単一の平面内で並ぶように配置されて
いる、請求項1に記載のバッテリー管理システム。
【請求項6】
上記リチウムイオン電池によって放出される検出ガスの各々が、水素(H
2)、二酸化炭素(CO
2)、一酸化炭素(CO)及びエチレン(C
2H
4)を含むリストから選択されたものである、請求項5に記載のバッテリー管理システム。
【請求項7】
上記CMU内にプログラム済みの所定の閾値量は、H
2についての10ppm、CO
2についての500ppm、COについての10ppm及びC
2H
4についての10ppmのうちから選択されたものである、請求項6に記載のバッテリー管理システム。
【請求項8】
上記リチウムイオン電池が、個別のバッテリーモジュール内に配置された複数のリチウムイオン電池を有するマルチセル充電式エネルギ保存システム(RESS)の一部であり、上記センサアレイ・マイクロチップはRESS内において個別のバッテリーモジュールに近接する位置に配置されており、上記センサアレイ・マイクロチップは、上記リチウムイオン電池によって放出される複数種類の特定のガスをモジュールレベルで検出するように構成されている、請求項1に記載のバッテリー管理システム。
【請求項9】
上記リチウムイオン電池は、上記ガスを排出するように構成された排気ポートを有するハウジングを含み、上記センサアレイ・マイクロチップは、上記排気ポートに近接する位置に配置されている、請求項1に記載のバッテリー管理システム。
【請求項10】
上記ハウジングは、ポーチ、角柱形のケーシング及び円筒形のケーシングのうちの1つとして構成されている、請求項9に記載のバッテリー管理システム。
【請求項11】
リチウムイオン電池のオペレーションを管理するとともにリチウムイオン電池の破損が差し迫っていることを検出する方法であって、
該方法は、
センサアレイ・マイクロチップ上に配置された
複数のケイ素化学的感受性電界効果トランジスタ(CS-FET
s)
のうちの少なくとも1つを介して、上記リチウムイオン電池によって放出され
るガスを検出するステップ
であって、上記複数のCS-FETsの各々が上記リチウムイオン電池によって放出される複数種類の特定のガスのうちの1つを検出するように構成されている、検出するステップと、
上記CS-FETと動作可能に通信するセル監視ユニット(CMU)を介して、上記リチウムイオン電池によって放出されるガスの検出量を指し示すデータを上記CS-FETから受けるステップと、
上記CMUを介して、上記放出されるガスの検出量を指し示すデータと、上記CMU内にプログラム済みの該放出されるガスの所定の閾値量とを比較するステップと、
上記CMUを介して、上記放出されるガスの検出量が該放出されるガスの所定の閾値量を超えている時に上記リチウムイオン電池の破損が差し迫っていることを指し示す信号をトリガするステップと、
を含む方法。
【請求項12】
上記CMUを介して、上記リチウムイオン電池が充電器に接続されている時であるかを判断するステップと、
上記CMUを介して、上記放出されるガスの検出量が該放出されるガスのそれぞれの所定の閾値量を超えていることに応答して上記充電器から上記リチウムイオン電池を電気的に切断するステップと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記CMUを介して、上記リチウムイオン電池が電気的負荷に接続されている時であるかを判断するステップと、
上記CMUを介して、上記放出されるガスの検出量が該放出されるガスのそれぞれの所定の閾値量を超えていることに応答して上記電気的負荷から上記リチウムイオン電池を切断するステップと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
上記CMUを介して、上記放出されるガスの検出量が該放出されるガスのそれぞれの所定の閾値量を超えていることに応答して鎮火システムを起動させるステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
上記CS-FETsは、上記センサアレイ上において単一の平面内で並ぶように配置されて
いる、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
上記リチウムイオン電池によって放出され検出されるガスの各々が、水素(H
2)、二酸化炭素(CO
2)、一酸化炭素(CO)及びエチレン(C
2H
4)を含むリストから選択されたものである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記CMU内にプログラム済みの所定の閾値量は、H
2についての10ppm、CO
2についての500ppm、COについての10ppm及びC
2H
4についての10ppmのうちから選択されたものである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記リチウムイオン電池は、個別のバッテリーモジュール内に配置された複数のリチウムイオン電池を有するマルチセル充電式エネルギ保存システム(RESS)の一部であり、
上記センサアレイ・マイクロチップは、上記RESS内において個別のバッテリーモジュールに近接する位置に配置されており、さらには、
上記リチウムイオン電池によって放出される複数種類の特定のガスのうちの少なくとも1つを検出するステップは、上記リチウムイオン電池によって放出される複数種類の特定のガスをモジュールレベルで検出することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
上記リチウムイオン電池は、上記ガスを排出するように構成された排気ポートを有するハウジングを含み、上記センサアレイ・マイクロチップは上記排気ポートに近接する位置に配置されている、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
上記ハウジングは、ポーチ、角柱形のケーシング及び円筒形のケーシングのうちの少なくとも1つとして構成されている、請求項19に記載の方法。
【国際調査報告】