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特表2023-542447代謝の健康を改善するための細菌株を含む組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-10
(54)【発明の名称】代謝の健康を改善するための細菌株を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20231002BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20231002BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20231002BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20231002BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20231002BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20231002BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20231002BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20231002BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20231002BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20231002BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231002BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231002BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231002BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20231002BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20231002BHJP
   A61K 35/741 20150101ALI20231002BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20231002BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A23L33/135
A61K9/19
A61K9/48
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/16
A61P3/04
A61P3/10
A61P3/06
A61P1/16
A61P9/00
A61P43/00 105
A61K35/74 C
A61K35/12
A61K35/741
C12N15/31
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560316
(86)(22)【出願日】2021-04-05
(85)【翻訳文提出日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 US2021025730
(87)【国際公開番号】W WO2021203083
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/004,617
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
2.SUPPOCIRE
(71)【出願人】
【識別番号】513207806
【氏名又は名称】デュポン ニュートリション バイオサイエンシス エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(72)【発明者】
【氏名】シュタール、バフィ、エル
(72)【発明者】
【氏名】フォーステン、ソフィア
(72)【発明者】
【氏名】ハッセルワンダ―、オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ヒバード、アシュレー、アン
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン、ヘンリク、マックス
(72)【発明者】
【氏名】ケイン、ヘレネー、エム エー
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒェ-ソク
(72)【発明者】
【氏名】クマール、リテシュ
(72)【発明者】
【氏名】オウハンド、アーサー
(72)【発明者】
【氏名】ラシンカンガス、ピア、トゥーリッキ
(72)【発明者】
【氏名】ルヴィエール、ピエール、イー
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ション
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB07
4B018LE01
4B018LE02
4B018MD85
4B018ME03
4B018ME14
4B018MF05
4B018MF06
4B065AA01X
4B065AC20
4B065BD08
4B065BD09
4B065BD10
4B065CA41
4B065CA44
4C076AA29
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC11
4C076CC21
4C076CC40
4C076FF70
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC54
4C087BC55
4C087CA09
4C087CA10
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA41
4C087MA43
4C087MA44
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZA70
4C087ZA75
4C087ZC01
4C087ZC33
4C087ZC35
(57)【要約】
【解決手段】
本明細書で提供されるのは、特に、細菌の1つ又は複数の生物学的に純粋な株を含む組成物並びに1種又は複数の肥満関連障害の処置及び/又は予防を、それを必要とする対象において行うためにこの組成物を製造及び使用する方法である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)の生物学的に純粋な株;(b)インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)の生物学的に純粋な株;(c)番号DSM 33457でGerman Collection of Microorganisms and Cell Cultures(DSM)に寄託されているプレボテラ・コプリ(Prevotella copri)の16SリボソームRNA配列に対して少なくとも97.0%の配列類似性を示す16SリボソームRNA配列を有する細菌株;及び/又は(d)アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の生物学的に純粋な株であって、前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)ではない、生物学的に純粋な株の少なくとも1つ又は複数を含む組成物。
【請求項2】
前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)と、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)との間の全ゲノム平均ヌクレオチド同一性(gANI)は、約95%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)番号DSM 33458でDSMに寄託されているE.エリゲンス(E.eligens)の16SリボソームRNA配列に対して少なくとも97.0%の配列類似性を示す16SリボソームRNA配列を有する細菌株;及び/又は(b)番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)の16SリボソームRNA配列に対して少なくとも97.0%の配列類似性を示す16SリボソームRNA配列を有する細菌株を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(a)番号DSM 33458でDSMに寄託されているE.エリゲンス(E.eligens)株若しくは番号DSM 33458でDSMに寄託されているE.エリゲンス(E.eligens)株の同定特性の全てを有する生存株;(b)番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)株若しくは番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)株の同定特性の全てを有する生存株;(c)番号DSM 33457でDSMに寄託されているP.コプリ(P.copri)株若しくは番号DSM 33457でDSMに寄託されているP.コプリ(P.copri)株の同定特性の全てを有する生存株;及び/又は(d)番号DSM 33459でDSMに寄託されているアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)若しくは番号DSM 33459でDSMに寄託されているアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の同定特性の全てを有する生存株を、(A)単独で;且つ/又は(b)前記株の1つ又は複数に由来する培養上清と組み合わせてのいずれかで含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(b)インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)の生物学的に純粋な株;及び(d)アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の生物学的に純粋な株であって、前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)ではない、生物学的に純粋な株を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
(b)番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)の16SリボソームRNA配列に対して少なくとも97.0%の配列類似性を示す16SリボソームRNA配列を有する細菌株を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)と、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)との間の全ゲノム平均ヌクレオチド同一性(gANI)は、約95%未満である、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
(b)番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)株又は番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)株の同定特性の全てを有する生存株;及び(d)番号DSM 33459でDSMに寄託されているアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)又は番号DSM 33459でDSMに寄託されているアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の同定特性の全てを有する生存株を含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
(a)ユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)の生物学的に純粋な株;(b)インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)の生物学的に純粋な株;(c)番号DSM 33457でGerman Collection of Microorganisms and Cell Cultures(DSM)に寄託されているプレボテラ・コプリ(Prevotella copri)の16SリボソームRNA配列に対して少なくとも97.0%の配列類似性を示す16SリボソームRNA配列を有する細菌株;及び/又は(d)アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の生物学的に純粋な株であって、前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)ではない、生物学的に純粋な株の少なくとも1つ又は複数に由来する単離された細菌細胞外小胞(EV)を含む組成物。
【請求項10】
(a)、(b)、(c)及び/又は(d)に由来する1種又は複数の細菌をさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)と、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)との間の全ゲノム平均ヌクレオチド同一性(gANI)は、約95%未満である、請求項9又は10に記載の組成物。
【請求項12】
(a)番号DSM 33458でDSMに寄託されているE.エリゲンス(E.eligens)の16SリボソームRNA配列に対して少なくとも97.0%の配列類似性を示す16SリボソームRNA配列を有する細菌株に由来するEV;及び/又は(b)番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)の16SリボソームRNA配列に対して少なくとも97.0%の配列類似性を示す16SリボソームRNA配列を有する細菌株に由来するEVを含む、請求項9~11のいずれか一項に記載に組成物。
【請求項13】
(a)番号DSM 33458でDSMに寄託されているE.エリゲンス(E.eligens)株若しくは番号DSM 33458でDSMに寄託されているE.エリゲンス(E.eligens)株の同定特性の全てを有する生存株に由来するEV;(b)番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)株若しくは番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)株の同定特性の全てを有する生存株に由来するEV;(c)番号DSM 33457でDSMに寄託されているP.コプリ(P.copri)株若しくは番号DSM 33457でDSMに寄託されているP.コプリ(P.copri)株の同定特性の全てを有する生存株に由来するEV;及び/又は(d)番号DSM 33459でDSMに寄託されているアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)若しくは番号DSM 33459でDSMに寄託されているアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の同定特性の全てを有する生存株に由来するEVを、(A)単独で;且つ/又は(b)前記株の1つ又は複数に由来する培養上清と組み合わせてのいずれかで含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
(b)インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)の生物学的に純粋な株に由来するEV;及び(d)アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の生物学的に純粋な株に由来するEVであって、前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)ではない、EVを含む、請求項9又は10に記載の組成物。
【請求項15】
(b)番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)の16SリボソームRNA配列に対して少なくとも97.0%の配列類似性を示す16SリボソームRNA配列を有する細菌株に由来するEVを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)と、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)との間の全ゲノム平均ヌクレオチド同一性(gANI)は、約95%未満である、請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項17】
(b)番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)株又は番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)株の同定特性の全てを有する生存株に由来するEV;及び(d)番号DSM 33459でDSMに寄託されているアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)又は番号DSM 33459でDSMに寄託されているアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の同定特性の全てを有する生存株に由来するEVを含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の組成物。経口投与のために製剤化される、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
凍結乾燥又は凍結乾燥される、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
カプセル化又はコーティングされる、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
食品、食品成分、栄養補助食品又は医薬品である、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
少なくとも約1×10CFU/g組成物~少なくとも約1×1012CFU/g組成物の細菌は、前記組成物中に存在する、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
プロバイオティクスである、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
低温殺菌又は熱処理されている、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
医薬組成物であり、且つ少なくとも1種の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤をさらに含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物を含む錠剤、持続放出カプセル、持続放出顆粒、粉末、サシェ又はグミ。
【請求項26】
(a)(i)請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物;又は(ii)請求項25に記載の錠剤、持続放出カプセル、持続放出顆粒、粉末、サシェ若しくはグミと、b)対象への投与に関する指示書とを含むキット。
【請求項27】
1種又は複数の肥満関連障害の処置及び/又は予防を、それを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物又は請求項25に記載の錠剤、持続放出カプセル、持続放出顆粒、粉末、サシェ若しくはグミの治療上有効な量を投与することを含む方法。
【請求項28】
前記肥満関連障害は、肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン欠乏関連障害、インスリン抵抗性関連障害、耐糖能障害、脂質代謝異常、非アルコール性脂肪性肝疾患、脂肪肝、レプチン抵抗性、レジスチンレベルの低下及び/又は循環器疾患からなる群から選択される1種又は複数の障害である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
組成物を製造する方法であって、インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)の生物学的に純粋な株と、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の生物学的に純粋な株であって、前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)ではない、生物学的に純粋な株とを組み合わせることを含む方法。
【請求項30】
組成物を製造する方法であって、インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)の生物学的に純粋な株と、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の生物学的に純粋な株であって、前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)ではない、生物学的に純粋な株とから細胞外小胞(EV)を得て、且つそれらを組み合わせることを含む方法。
【請求項31】
前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)と、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)との間の全ゲノム平均ヌクレオチド同一性(gANI)は、約95%未満である、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記I.マシリエンシス(I.massiliensis)は、番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)の16SリボソームRNA配列に対して少なくとも97.0%の配列類似性を示す16SリボソームRNA配列を含む、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記I.マシリエンシス(I.massiliensis)は、番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)株又は番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)株の同定特性の全てを有する生存株を含み;前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、番号DSM 33459でDSMに寄託されているアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)又は番号DSM 33459でDSMに寄託されているアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の同定特性の全てを有する生存株を含む、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物を凍結して揚げるか又は凍結乾燥させることをさらに含む、請求項29~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
1種又は複数の肥満関連障害の予防及び/又は処置を、それを必要とする対象において行う際に使用するための組成物であって、前記対象に対する、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物又は請求項25に記載の錠剤、持続放出カプセル、持続放出顆粒、粉末、サシェ若しくはグミを含む組成物。
【請求項36】
前記肥満関連障害は、肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン欠乏関連障害、インスリン抵抗性関連障害、耐糖能障害、脂質代謝異常、非アルコール性脂肪性肝疾患、脂肪肝、レプチン抵抗性、レジスチンレベルの低下及び/又は循環器疾患からなる群から選択される1種又は複数の障害である、請求項35に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月3日に出願された米国仮特許出願第63/004,617号明細書に対する優先権を主張し、この開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書で提供されるのは、特に、対象における代謝の健康を改善するのに有用な細菌組成物並びにこの細菌組成物を製造及び使用する方法である。
【背景技術】
【0003】
ヒトの消化管は、微生物の複雑で多様な生態系を含む。腸内細菌は、共生生物であるだけでなく、その宿主との共生的な共進化も遂げる。腸内微生物叢と宿主との間の相互作用は、複雑である。有益な腸内細菌には、多数の重要な機能があり、宿主の様々な生理学的機能に直接的又は間接的に影響を及ぼし、例えば宿主に栄養を提供し、腸内病原体により引き起こされる感染を予防し、且つ正常な免疫応答を調節する。微生物叢組成の不均衡により、宿主中で様々な疾病状態が引き起こされることが確立されている。従って、宿主の健康状態を維持及び改善するために、腸内微生物叢を改変して、生態系の好ましい均衡及び消化管中に存在する微生物の活性を達成、回復及び維持することが必要である。
【0004】
第一世代のプロバイオティクスは、ラクトバチルス(Lactobacillus)属及びビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に主に由来する生存微生物であり、これは、消化管の微量成分であるか又は乳製品スターター培養物としての使用に由来することが多い。従来、第一世代のプロバイオティクスは、腸及び免疫の健康を主に目的としている。B.ラクティス(B.lactis)B420等の一部は、代謝の健康に関しても有益な活性(例えば、体脂肪量の減少並びに血糖及びインスリンのある程度の改善)を示すことが分かっている。しかしながら、現在の第一世代のプロバイオティクスは、グルコース及びインスリンの代謝に関して最適な解決策を提供するとは思われず、即ち2型糖尿病、糖尿病予備軍又はメタボリックシンドロームの潜在的な処置又は予防薬として最適な解決を提供するとは思われない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、必要なのは、代謝的に健康な個体の消化管中での自然発生に基づいて同定される、代謝の健康を維持及び最適化し、且つ疾患を予防する能力に基づいて選択されているさらなる微生物である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示される主題は、これらの必要に対処し、且つさらなる利点も提供する。
【0007】
本明細書で提供されるのは、特に、細菌の1つ又は複数の生物学的に純粋な株を含む組成物並びに1種又は複数の肥満関連障害(例えば、限定されないが、肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン欠乏関連障害、インスリン抵抗性関連障害、耐糖能障害、脂質代謝異常、非アルコール性脂肪性肝疾患、脂肪肝、レプチン抵抗性、レジスチンレベルの低下及び/又は循環器疾患)の処置及び/又は予防を、それを必要とする対象において行うためにこの組成物を製造及び使用する方法である。
【0008】
従って、一部の態様では、本明細書で提供されるのは、(a)ユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)の生物学的に純粋な株;(b)インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)の生物学的に純粋な株;(c)番号DSM 33457でGerman Collection of Microorganisms and Cell Cultures(DSM)に寄託されているプレボテラ・コプリ(Prevotella copri)の16SリボソームRNA配列に対して少なくとも97.0%の配列類似性を示す16SリボソームRNA配列を有する細菌株;及び/又は(d)アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の生物学的に純粋な株であって、前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)ではない、生物学的に純粋な株の少なくとも1つ又は複数を含む組成物である。一部の実施形態では、前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)と、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)との間の全ゲノム平均ヌクレオチド同一性(gANI)は、約95%未満である。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成物は、(a)番号DSM 33458でDSMに寄託されているE.エリゲンス(E.eligens)の16SリボソームRNA配列に対して少なくとも97.0%の配列類似性を示す16SリボソームRNA配列を有する細菌株;及び/又は(b)番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)の16SリボソームRNA配列に対して少なくとも97.0%の配列類似性を示す16SリボソームRNA配列を有する細菌株を含む。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成物は、(a)番号DSM 33458でDSMに寄託されているE.エリゲンス(E.eligens)株若しくは番号DSM 33458でDSMに寄託されているE.エリゲンス(E.eligens)株の同定特性の全てを有する生存株;(b)番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)株若しくは番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)株の同定特性の全てを有する生存株;(c)番号DSM 33457でDSMに寄託されているP.コプリ(P.copri)株若しくは番号DSM 33457でDSMに寄託されているP.コプリ(P.copri)株の同定特性の全てを有する生存株;及び/又は(d)番号DSM 33459でDSMに寄託されているアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)若しくは番号DSM 33459でDSMに寄託されているアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の同定特性の全てを有する生存株を、(A)単独で;且つ/又は(b)これらの株の1つ又は複数に由来する培養上清と組み合わせてのいずれかで含む。一部の実施形態では、この組成物は、(b)インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)の生物学的に純粋な株;及び(d)アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の生物学的に純粋な株であって、前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)ではない、生物学的に純粋な株を含む。一部の実施形態では、この組成物は、(b)番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)の16SリボソームRNA配列に対して少なくとも97.0%の配列類似性を示す16SリボソームRNA配列を有する細菌株を含む。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)と、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)との間の全ゲノム平均ヌクレオチド同一性(gANI)は、約95%未満である。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成物は、(b)番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)株又は番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)株の同定特性の全てを有する生存株;及び(d)番号DSM 33459でDSMに寄託されているアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)又は番号DSM 33459でDSMに寄託されているアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の同定特性の全てを有する生存株を含む。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成物は、経口投与のために製剤化される。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成物は、凍結乾燥(lyophilized)又は凍結乾燥(freeze dried)される。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成物は、カプセル化又はコーティングされる。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成物は、食品、食品成分、栄養補助食品又は医薬品である。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、少なくとも約1×10CFU/g組成物~少なくとも約1×1012CFU/g組成物の細菌は、この組成物中に存在する。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成物は、プロバイオティクスである。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成物は、低温殺菌又は熱処理されている。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成物は、医薬組成物であり、且つ少なくとも1種の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤をさらに含む。
【0009】
さらなる態様では、本明細書で提供されるのは、(a)ユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)の生物学的に純粋な株;(b)インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)の生物学的に純粋な株;(c)番号DSM 33457でGerman Collection of Microorganisms and Cell Cultures(DSM)に寄託されているプレボテラ・コプリ(Prevotella copri)の16SリボソームRNA配列に対して少なくとも97.0%の配列類似性を示す16SリボソームRNA配列を有する細菌株;及び/又は(d)アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の生物学的に純粋な株であって、前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)ではない、生物学的に純粋な株の少なくとも1つ又は複数に由来する単離された細菌細胞外小胞(EV)を含む組成物である。一部の実施形態では、この組成物は、(a)、(b)、(c)及び/又は(d)に由来する1種又は複数の細菌をさらに含む。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)と、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)との間の全ゲノム平均ヌクレオチド同一性(gANI)は、約95%未満である。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成物は、(a)番号DSM 33458でDSMに寄託されているE.エリゲンス(E.eligens)の16SリボソームRNA配列に対して少なくとも97.0%の配列類似性を示す16SリボソームRNA配列を有する細菌株に由来するEV;及び/又は(b)番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)の16SリボソームRNA配列に対して少なくとも97.0%の配列類似性を示す16SリボソームRNA配列を有する細菌株に由来するEVを含む。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成物は、(a)番号DSM 33458でDSMに寄託されているE.エリゲンス(E.eligens)株若しくは番号DSM 33458でDSMに寄託されているE.エリゲンス(E.eligens)株の同定特性の全てを有する生存株に由来するEV;(b)番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)株若しくは番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)株の同定特性の全てを有する生存株に由来するEV;(c)番号DSM 33457でDSMに寄託されているP.コプリ(P.copri)株若しくは番号DSM 33457でDSMに寄託されているP.コプリ(P.copri)株の同定特性の全てを有する生存株に由来するEV;及び/又は(d)番号DSM 33459でDSMに寄託されているアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)若しくは番号DSM 33459でDSMに寄託されているアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の同定特性の全てを有する生存株に由来するEVを、(A)単独で;且つ/又は(b)これらの株の1つ又は複数に由来する培養上清と組み合わせてのいずれかで含む。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成物は、(b)インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)の生物学的に純粋な株に由来するEV;及び(d)アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の生物学的に純粋な株に由来するEVであって、前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)ではない、EVを含む。一部の実施形態では、この組成物は、(b)番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)の16SリボソームRNA配列に対して少なくとも97.0%の配列類似性を示す16SリボソームRNA配列を有する細菌株に由来するEVを含む。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)と、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)との間の全ゲノム平均ヌクレオチド同一性(gANI)は、約95%未満である。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成物は、(b)番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)株又は番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)株の同定特性の全てを有する生存株に由来するEV;及び(d)番号DSM 33459でDSMに寄託されているアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)又は番号DSM 33459でDSMに寄託されているアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の同定特性の全てを有する生存株に由来するEVを含む。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成物は、経口投与のために製剤化される。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成物は、凍結乾燥(lyophilized)又は凍結乾燥(freeze dried)される。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成物は、カプセル化又はコーティングされる。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成物は、食品、食品成分、栄養補助食品又は医薬品である。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、少なくとも約1×10CFU/g組成物~少なくとも約1×1012CFU/g組成物の細菌は、この組成物中に存在する。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成物は、プロバイオティクスである。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成物は、低温殺菌又は熱処理されている。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この組成部は、医薬組成物であり、且つ少なくとも1種の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤をさらに含む。
【0010】
他の態様では、本明細書で提供されるのは、本明細書で開示される組成物(例えば、プロバイオティクス組成物)のいずれかを含む錠剤、持続放出カプセル、持続放出顆粒、粉末、サシェ又はグミである。
【0011】
さらなる態様では、本明細書で提供されるのは、(a)(i)本明細書で開示される組成物(例えば、プロバイオティクス組成物)のいずれか;又は(ii)本明細書で開示される錠剤、持続放出カプセル、持続放出顆粒、粉末、サシェ若しくはグミと、b)対象への投与に関する指示書とを含むキットである。
【0012】
さらに別の態様では、本明細書で提供されるのは、1種又は複数の肥満関連障害の処置及び/又は予防を、それを必要とする対象において行う方法であって、この対象に、本明細書で開示される組成物のいずれか又は本明細書で開示される錠剤、持続放出カプセル、持続放出顆粒、粉末、サシェ若しくはグミのいずれかの治療上有効な量を投与することを含む方法である。一部の実施形態では、この肥満関連障害は、肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン欠乏関連障害、インスリン抵抗性関連障害、耐糖能障害、脂質代謝異常、非アルコール性脂肪性肝疾患、脂肪肝、レプチン抵抗性、レジスチンレベルの低下及び/又は循環器疾患からなる群から選択される1種又は複数の障害である。
【0013】
追加の態様では、本明細書で提供されるのは、組成物を製造する方法であって、インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)の生物学的に純粋な株と、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の生物学的に純粋な株であって、前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)ではない、生物学的に純粋な株とを組み合わせることを含む方法である。一部の実施形態では、前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)と、(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又は(ii)アッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)との間の全ゲノム平均ヌクレオチド同一性(gANI)は、約95%未満である。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、I.マシリエンシス(I.massiliensis)は、番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)の16SリボソームRNA配列に対して少なくとも97.0%の配列類似性を示す16SリボソームRNA配列を含む。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、I.マシリエンシス(I.massiliensis)は、番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)株又は番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)株の同定特性の全てを有する生存株を含み;アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、番号DSM 33459でDSMに寄託されているアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)又は番号DSM 33459でDSMに寄託されているアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の同定特性の全てを有する生存株を含む。本明細書で開示される実施形態のいずれかの一部の実施形態では、この方法は、この組成物を凍結乾燥(freeze drying)させるか又は凍結乾燥(lypohilizing)させることをさらに含む。
【0014】
他の態様では、本明細書で提供されるのは、1種又は複数の肥満関連障害の予防及び/又は処置を、それを必要とする対象において行う際に使用するための組成物であって、この対象に対する、本明細書で開示される組成物(例えば、プロバイオティクス組成物)のいずれか又は本明細書で開示される錠剤、持続放出カプセル、持続放出顆粒、粉末、サシェ若しくはグミのいずれかを含む組成物である。一部の実施形態では、この肥満関連障害は、肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン欠乏関連障害、インスリン抵抗性関連障害、耐糖能障害、脂質代謝異常、非アルコール性脂肪性肝疾患、脂肪肝、レプチン抵抗性、レジスチンレベルの低下及び/又は循環器疾患からなる群から選択される1種又は複数の障害である。他の態様では、本明細書で提供されるのは、糖尿病、炎症、酸化ストレス、神経外傷及び神経変性疾患、オピオイド嗜癖、気分障害、認知障害及び癌の処置及び/又は予防のために腸内でアグマチンを産生するための供給源を提供する方法であって、対象に、本明細書で開示される組成物(例えば、プロバイオティクス組成物)のいずれか又は本明細書で開示される錠剤、持続放出カプセル、持続放出顆粒、粉末、サシェ若しくはグミのいずれかを投与することを含む方法である。
【0015】
本明細書で説明される態様及び実施形態のそれぞれは、この実施形態又は態様に関連して明示的又は明確に除外されない限り、組み合わせて使用され得る。
【0016】
本明細書全体を通して、様々な特許、特許出願及び他のタイプの刊行物(例えば、雑誌の記事、電子データサービス実体等)が参照される。本明細書で引用される全ての特許、特許出願及び他の刊行物の開示は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】肥満体の前糖尿病者と比較した、痩せた健康体で測定された差次的に豊富な糞便の16S rRNA操作的分類単位(OTU)と、スピアマンの相関係数解析を使用する臨床代謝マーカーへの対応する関連とを示す。
図1B】痩せた健常者と、肥満体の前糖尿病者(高いBMI、インスリン及びグルコース)とを比較する臨床研究から同定されたインテスティニモナス(Intestinimonas)、プレボテラ(Prevotella)、ユウバクテリウム(Eubacterium)及びアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)と分類学的に定義されたOTUを示し、代謝の健康との明らかな関係を示す。
【0018】
図2】AF3360009株と、Ouwerkerk et al.,2016に含まれていたウェルコミクロビウム綱(Verrucomicrobiae)の株とからなる系統樹を示す。この樹を1000個のブートストラップによる近隣結合法により再構築した。数字は、ブートストラップ値を表す。凡例のバーは、5%配列相違を示す。クラミディア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)をアウトグループとして使用した。
【0019】
図3】AF3360009株の走査型電子顕微鏡写真を示す。YCFA(右側)と比較して、YCFA及びムチンで増殖させた場合(左側)、この株は、楕円形であるか又は細長く、フィラメント様構造を有する。
【0020】
図4】DIOマウスモデルにおけるインスリンレベルに対するユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)、インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)、プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)及びインテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)+アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の効果を示すグラフを示す。
【0021】
図5】DIOマウスモデルにおけるレプチンレベルに対するユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)、インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)、プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)及びインテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)+アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の効果を示すグラフを示す。
【0022】
図6A】DIOマウスモデルにおける耐糖能に対するユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)、インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)、プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)及びインテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)+アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の効果を示すグラフを示す。
図6B】DIOマウスモデルにおける耐糖能に対するユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)、インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)、プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)及びインテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)+アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の効果を示すグラフを示す。
【0023】
図7】DIOマウスモデルにおけるコレステロールレベルに対するユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)、インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)、プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)及びインテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)+アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の効果を示すグラフを示す。
【0024】
図8】DIOマウスモデルにおけるレジスチンレベルに対するユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)、インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)、プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)及びインテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)+アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の効果を示すグラフを示す。
【0025】
図9】A.ムシニフィラ(A.muciniphila)、A.グリカニフィリア(A.glycaniphilia)及びAF3360009株の公的に利用可能なゲノムを比較するアッケルマンシア属(Akkermansia)gANI樹状図を示す。
【0026】
図10】DIOモデルにおける体重に対するインテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)及びアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)(凍結、低温殺菌及び凍結乾燥)の効果を示す。
【0027】
図11】体脂肪重量に対するインテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)及びアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)(凍結、低温殺菌及び凍結乾燥)の効果を示す。
【0028】
図12】肝臓重量に対するインテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)及びアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)(凍結、低温殺菌及び凍結乾燥)の効果を示す。
【0029】
図13】DIOモデルにおけるインスリンレベルに対するインテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)及びアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)(凍結、低温殺菌及び凍結乾燥)の効果を示す。
【0030】
図14】HOMA-IRによるインスリン抵抗性の測定を示す。
【0031】
図15】DIOモデルにおけるレプチンレベルに対するインテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)及びアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)(凍結、低温殺菌及び凍結乾燥)の効果を示す。
【0032】
図16】DIOモデルにおけるプラスミノーゲン活性化因子阻害因子1(PAI1)レベルに対するインテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)及びアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)(凍結、低温殺菌及び凍結乾燥)の効果を示す。
【0033】
図17】DIOモデルにおけるレジスチンレベルに対するインテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)及びアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)(凍結、低温殺菌及び凍結乾燥)の効果を示す。
【0034】
図18】アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)及びI.マシリエンシス(I.massiliensis)によるSCFAの産生を示す。
【0035】
図19】アグマチンのCE-TOFMS相対ピーク面積のサンプル比較を示す。
【0036】
図20】アッケルマンシア属(Akkermansia)株による細胞外ATPの除去を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
これまでの多くの研究から、プロバイオティック細菌(例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)属及びビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の細菌)は、有益な腸内細菌コロニーの増殖を補助することが分かっているが、特定の有益なプロバイオティック株は、宿主の代謝経路をよりよい方向に変え得るとも思われる。微生物は、炭水化物及び脂質の代謝に影響を及ぼし且つ腸及び全身の両方の炎症プロセスを調節する生理活性物質を産生する。そのため、肥満及び肥満関連障害の制御に有効な栄養補助食品及びプロバイオティック食品を特定することへの関心が高まっている。
【0038】
本出願の発明者らは、驚くべきことに、一般的に使用されるプロバイオティクスであるラクトバチルス(Lactobacillus)及びビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)以外の微生物が、腸の代謝を成功裏に変え得ること及び肥満に関連する状態を寛解させ得ることを発見している。この有益な微生物は、標準体重の健常者の消化器系中で富化されていること及び1種又は複数の肥満関連障害に罹患している個体では欠乏していることの両方が判明した。ヒトでの肥満をモデル化したマウスの食餌へのこの有益な微生物の1種又は複数の補充により、肥満に関連する否定的な状態に関連する1つ又は複数の測定基準の実質的な改善が見られた。
【0039】
I.定義
本明細書で使用される場合、「微生物(microorganism)」又は「微生物(microbe)」は、細菌、真菌、ウイルス、原生動物及び他の微生物又は微視的生物を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「プロバイオティクス」は、動物により消費される(即ち動物飼料として又は動物飼料の成分として消費される)組成物であって、適切な量で投与された場合に対象に健康上の利益を付与する、生存能力がある(即ち生存している)微生物(即ち生存可能且つ増殖可能である微生物)を含む組成物を指す(全体が参照により本明細書に組み込まれるHill et al.2014 Nature Revs Gastro&Hep 11,506-514を参照されたい)。プロバイオティクスは、本明細書で説明される微生物株のいずれかの1つ又は複数(例えば、1、2、3又は4つのいずれか)を含み得る。プロバイオティクスは、例えば、低温殺菌又は熱処理より死滅している細菌組成物とは区別される。本明細書で開示される方法の特定の実施形態では、1種又は複数の代謝障害の処置のための、生存能力がない細菌組成物の投与も企図される。
【0041】
細菌「株」は、本明細書で使用される場合、成長又は増殖した場合に遺伝的に変化しないままである細菌を指す。同一細菌の多様性も包含される。
【0042】
「少なくとも1種の株」は、単一株を意味するが、微生物の少なくとも2種の株を含む株の混合物も意味する。「少なくとも2種の株の混合物」は、2、3、4、5、6種又はより多くの株の混合物を意味する。株の混合物の一部の実施形態では、割合は、1%~99%で変化し得る。混合物が2種超の株を含む場合、これらの株は、この混合物中に実質的に等しい割合で存在し得るか又は異なる割合で存在し得る。
【0043】
本開示の目的のために、「生物学的に純粋な株」は、株であって、この株の複製を妨げるのに十分な量か又は通常の細菌学的技法により検出可能であるのに十分な量で他の細菌株を含まない株を意味する。「単離された」は、本明細書で説明される生物及び培養物に関連して使用される場合、生物学的に純粋な株のみならず、天然に見られるものと異なる形で増殖されるか又は維持される生物の任意の培養物も包含する。一部の実施形態では、この株は、ユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)株、インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)株、プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)株及び/又はアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)株の変異体、バリアント又は誘導体であり、このアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、ユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)、インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)、プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)及び/又はアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)によりもたらされる利益に相当する利益ももたらすA.ムシニフィラ(A.muciniphila)又はA.グリカニフィリア(A.glycaniphilia)ではなく、このアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、A.ムシニフィラ(A.muciniphila)又はA.グリカニフィリア(A.glycaniphilia)ではない。一部の実施形態では、この株は、ユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)株、インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)株、プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)株及び/又はアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)株であって、このアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、A.ムシニフィラ(A.muciniphila)又はA.グリカニフィリア(A.glycaniphilia)ではない、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)株の同定特性(identifying characteristics)の全てを有する株である。さらに、個々の株(ユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)、インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)、プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)及び/若しくはアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)、ここで、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、A.ムシニフィラ(A.muciniphila)又はA.グリカニフィリア(A.glycaniphilia)ではない)又はこれらの株の任意の組合せも、本明細書で説明される利益の1つ又は複数をもたらし得る。他の微生物株、担体、添加剤、酵素等の添加によっても、対象における1種又は複数の代謝状態の1種又は複数の利益又は改善がもたらされ、且つ実質的に異なる細菌株が構成されないことも明らかであろう。
【0044】
「16S rRNA」又は「16SリボソームRNA」という用語は、原核生物のリボソームの小サブユニットを構成するrRNAを意味する。細菌では、この配列を利用して、操作的分類単位を同定して特徴付け得る。
【0045】
「配列同一性」又は「配列類似性」という用語は、本明細書で使用される場合、2つのポリヌクレオチド配列(即ち候補配列及び参照配列)がこの候補配列の全長にわたり同一である(即ち配列同一性100%)か又は類似している(即ちヌクレオチド対ヌクレオチド基準で類似している)ことを意味する。候補配列と参照配列との比較において、これらの2つの配列を最適にアラインメントした場合、候補配列は、参照配列(付加も欠失も含まない)と比較して付加又は欠失(即ちギャップ)を含み得る。配列同一性を求めるための配列の最適なアラインメントを、当技術分野で既知のあらゆる公的に利用可能なローカルアラインメントアルゴリズム(例えば、ALIGN若しくはMegalign(DNASTAR))を使用して行い得るか、又は精査により行い得る。
【0046】
「配列同一性(%)」又は「配列類似性(%)」という用語は、参照配列に関して本明細書で使用される場合、配列同一性%が最大になるように、必要に応じてギャップを挿入して配列を最適にアラインメントさせた後の、参照ポリヌクレオチド配列中の残基と同一である、候補配列中のヌクレオチド残基の百分率と定義される。
【0047】
本明細書で使用される場合、「対象」又は「患者」という用語は、哺乳動物(例えばヒト)を意味する。一部の実施形態では、対象は、関連する疾患、障害又は状態に罹患しており、これらの疾患、障害又は状態として下記が挙げられるが、これらに限定されない:1種又は複数の代謝障害、例えば肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン欠乏関連障害、インスリン抵抗性関連障害、耐糖能障害、脂質代謝異常、非アルコール性脂肪性肝疾患、脂肪肝、レプチン抵抗性、レジスチンレベルの低下及び/又は循環器疾患。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害又は状態に罹患しやすい。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害又は状態の1種又は複数の症状又は特性を示す。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害又は状態のいかなる症状も特性も示さない。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害又は状態に対する感受性又はこれらのリスクの1種又は複数の特徴的な特性を有する者である。一部の実施形態では、対象は、患者である。一部の実施形態では、対象は、診断及び/又は治療が施され、且つ/又は施されている個体である。
【0048】
本明細書で使用される場合、「予防する」、「予防すること」、「予防」及びこれらの文法的変化形は、障害又は状態(例えば、1種若しくは複数の代謝障害、例えば、肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン欠乏関連障害、インスリン抵抗性関連障害、耐糖能障害、脂質代謝異常、非アルコール性脂肪性肝疾患、脂肪肝、レプチン抵抗性、レジスチンレベルの低下及び/又は循環器疾患)並びに/又はその付随する症状の1つ若しくは複数の発症又は再発を部分的に又は完全に遅延させるか又は妨げる方法を指すか、対象が障害若しくは状態を獲得するか若しくは再獲得することを禁止することを指すか、又は対象が障害若しくは状態若しくはその付随する症状の1つ若しくは複数を獲得するか若しくは再獲得するリスクを低減させることを指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、特定の特色、特性、特徴、生物学的プロセス又は現象に関する「低減すること」という用語は、その特定の特色、特性、特徴、生物学的プロセス又は現象の減少を指す。この特色、特性、特徴、生物学的プロセス又は現象は、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%又は100%を超えて減少し得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、「投与する」又は「投与すること」は、例えば、給餌するか又は経口摂取させることにより、1種又は複数の微生物株を含む1種又は複数の組成物を対象に導入する行為を意味する。この1種又は複数の微生物株を含む組成物をまた、1回又は複数回の用量でも投与し得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、「有効な量」は、対象における1つ又は複数の測定基準を改善するための、1種又は複数の微生物株を含む組成物の量を意味する。対象の1つ又は複数の測定基準の改善(例えば、限定されないが、肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン欠乏関連障害、インスリン抵抗性関連障害、耐糖能障害、脂質代謝異常、非アルコール性脂肪性肝疾患、脂肪肝、レプチン抵抗性、レジスチンレベルの低下及び/又は循環器疾患のいずれかの処置及び/又は予防)を、本明細書で説明されるように測定し得るか、又は当技術分野で既知の他の方法により測定し得る。
【0052】
本明細書では、特定の範囲は、「約」という用語に先行される数値で示される。「約」という用語は、本明細書では、この用語が先行する正確な数並びにこの用語が先行する数に近いか又は近似する数に関するリテラルサポートを提供するために使用される。ある数が、具体的に列挙された数に近いか又は近似的であるかどうかの判定では、列挙されていない近いか又は近似的な数は、この数が示されている文脈において、具体的に列挙された数の実質的な等価を提供する数であり得る。例えば、ある数値に関して、「約」という用語は、この用語が文脈において別途明確に定義されない限り、この数値の-10%~+10%の範囲を指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、別途文脈が明記しない限り、複数の言及を含む。
【0054】
さらに、特許請求の範囲が任意の任意選択的な要素を排除するように記載され得ることにもさらに留意されたい。そのため、この記載は、特許請求の範囲の要素の列挙又は「消極的な」限定の使用に関連して「のみ」、「唯一の」及び同類のもののような排他的な用語を使用するための先行する根拠として機能することが意図される。
【0055】
「~から本質的になる」という用語は、本明細書で使用される場合、この用語の後の成分が、総組成物の30重量%未満であり且つこの成分の作用又は活性に寄与も干渉もしない総量の他の既知の成分の存在下で存在する組成物を指すことにも留意されたい。
【0056】
さらに、「含む」という用語は、本明細書で使用される場合、「含む」という用語の後の成分を含むが、これに限定されないことを意味することに留意されたい。「含む」という用語の後の成分は、必要であるか又は必須であるが、この成分を含む組成物は、他の非必須の又は任意選択的な成分をさらに含み得る。
【0057】
「からなる」という用語は、本明細書で使用される場合、「からなる」という用語の後の成分を含み且つこの成分に限定されることを意味することにも留意されたい。従って、「からなる」という用語の後の成分は、必要とされているか又は必須であり、この組成物中には、他の成分は、存在しない。
【0058】
本明細書全体を通して与えられる全ての数値の上限が、全てのより低い数値の限界を、あたかもそのようなより低い数値の限界が本明細書で明示されたかのように含むことが意図される。本明細書全体を通して与えられる全ての数値の下限は、全てのより高い数値の限界を、あたかもそのようなより高い数値の限界が本明細書で明示されたかのように含むであろう。本明細書全体を通して与えられる全ての数値範囲は、そのようなより広い数値範囲内に入る全てのより狭い数値範囲を、あたかもそのようなより狭い数値範囲が全て本明細書で明示されたかのように含むであろう。
【0059】
別途本明細書で定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0060】
用語の他の定義が、本明細書全体を通して出現する場合がある。
【0061】
II.組成物
A.株
本明細書で開示される、有益な微生物含有組成物を、生理的ストレス(疾患状態、代謝状態等)の期間中の対象への投与のための栄養補助食品、食品添加物及び治療薬として使用し得るか、又は疾患を予防するための及び健康な腸代謝を促進するための日常の栄養レジメンの一部として使用し得る。プロバイオティクスは、生存能力がある微生物を含むこの組成物に使用され得る別の用語である。「生存能力がある微生物」という用語は、代謝的に活性であるか又は分化する能力がある微生物を意味する。一部の実施形態では、本明細書で開示される有益な微生物含有組成物として、生存能力があるプロバイオティクス製品が挙げられ、且つ/又は特定の実施形態では、生存能力がない細菌を含む組成物(例えば、熱処理又は低温殺菌された組成物)が挙げられる。
【0062】
本明細書で提供される株として、ユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)の生物学的に純粋な株、インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)の生物学的に純粋な株;プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)の生物学的に純粋な株及びアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の生物学的に純粋な株であって、前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila);又はアッケルマンシア・グリカニフィリア(Akkermansia glycaniphilia)ではない、純粋な株が挙げられる。
【0063】
E.エリゲンス(E.eligens)株、I.マシリエンシス(I.massiliensis)株、P.コプリ(P.copri)株及びアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、それぞれGerman Collection of Microorganisms and Cell Cultures GmbH(DSM),Inhoffenstraβe 7B,38124 Braunschweig,GERMANYに2020年3月4日に寄託されており、アクセッション番号DSM 33458、DSM 33460、DSM 33457及びDSM 33459が付与された。この寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の規定に基づいて行われた。本明細書で提供される1種又は複数の株を、非限定的な一実施形態においてプロバイオティクスとして使用し得る。
【0064】
本微生物含有組成物(例えばプロバイオティクス組成物)として、ユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)の1種又は複数の株(例えば、約1、2、3、4、5、6、7若しくは8種又はより多くの株のいずれか;例えばE.エリゲンス(E.eligens)株DSM 33458)を含む組成物が挙げられ得る。E.エリゲンス(E.eligens)は、硬い細胞壁を特徴とする、ユウバクテリウム科(Eubacteriaceae)のグラム陽性菌である。この有益な微生物含有組成物として、E.エリゲンス(E.eligens)の1種又は複数の株と、I.マシリエンシス(I.massiliensis)、P.コプリ(P.copri)及び/又はアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の1種又は複数の株(例えば、約1、2、3、4、5、6、7若しくは8種又はより多くの株のいずれか)とを含む組成物がさらに挙げられ得る。
【0065】
本微生物含有組成物(例えば、プロバイオティクス組成物)として、インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)の1種又は複数の株(例えば、約1、2、3、4、5、6、7若しくは8種又はより多くの株のいずれか;例えばI.マシリエンシス(I.massiliensis)株DSM 33460)を含む組成物が挙げられ得る。I.マシリエンシス(I.massiliensis)は、胞子形成活性を有しない、平均直径が0.5μmであり長さが1.8μmである非運動性のグラム陰性桿菌である(Durand et al.,2017,New Microbes New Infect.,15:1-2)。この有益な微生物含有組成物として、I.マシリエンシス(I.massiliensis)の1種又は複数の株と、E.エリゲンス(E.eligens)、P.コプリ(P.copri)及び/又はアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の1種又は複数の株(例えば、約1、2、3、4、5、6、7若しくは8種又はより多くの株のいずれか)とを含む組成物がさらに挙げられ得る。一部の実施形態では、この有益な微生物含有組成物は、I.マシリエンシス(I.massiliensis)と、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)(例えば、A.ムシニフィラ(A.muciniphila)又はA.グリカニフィリア(A.glycaniphilia)ではないアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)、例えば、アッケルマンシア属(Akkermansia)株DSM 33459)との両方を含む。加えて、一緒に培養されるか又は投与される場合、1種又は複数のI.マシリエンシス(I.massiliensis)株(例えば、I.マシリエンシス(I.massiliensis)株DSM 33460)及び1種又は複数のアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)(例えば、アッケルマンシア属(Akkermansia.)株DSM 33459)は、個別に培養されたI.マシリエンシス(I.massiliensis)株(例えば、I.マシリエンシス(I.massiliensis)株DSM 33460)及びアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)(例えば、アッケルマンシア属(Akkermansia)株DSM 33459)株が欠いている1種又は複数の生理的な又は代謝的な特性を示す。これらの特性として下記が挙げられ得るが、これらに限定されない:産生される有機酸の量及び/若しくは種類の変化、代謝プロファイルの変化並びに/又は細菌が一緒に培養される培地の組成の変化。
【0066】
本微生物含有組成物(例えば、プロバイオティクス組成物)として、プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)の1種又は複数の株(例えば、約1、2、3、4、5、6、7若しくは8種又はより多くの株のいずれか、例えばP.コプリ(P.copri)株DSM 33457)を含む組成物が挙げられ得る。P.コプリ(P.copri)は、通常は腸内で見つかるグラム陰性菌である。この有益な微生物含有組成物として、P.コプリ(P.copri)の1種又は複数の株と、I.マシリエンシス(I.massiliensis)、E.エリゲンス(E.eligens)及び/又はアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の1種又は複数の株(例えば、約1、2、3、4、5、6、7若しくは8種又はより多くの株のいずれか)とを含む組成物がさらに挙げられ得る。
【0067】
本微生物含有組成物(例えば、プロバイオティクス組成物)として、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の1種又は複数の株(例えば、約1、2、3、4、5、6、7若しくは8種又はより多くの株のいずれか)であって、このアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、A.ムシニフィラ(A.muciniphila);又はA.グリカニフィリア(A.glycaniphilia)ではない、株(例えば、アッケルマンシア属(Akkermansia)株DSM 33459)を含む組成物が挙げられる。2016年まで、この属には、単一の既知の種(即ちA.ムシニフィラ(A.muciniphila))が含まれていた。この年に、腸管内ムチン分解菌の一種であるアッケルマンシア・グリカンフィラ(Akkermansia glycanphila)が、アミメニシキヘビの糞便から初めて単離された(Ouworkerk,et al.,2016,International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology.66(11):4614-4620)。下記でより詳細に説明するように、理論に拘束されないが、本発明者らは、95%同一の種境界カットオフを下回る、単離されたアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)と、A.ムシニフィラ(A.muciniphila)及びA.グリカンフィラ(Akkermansia glycanphila)との間の全ゲノム平均ヌクレオチド同一性(gANI)に基づいて、アッケルマンシア属(Akkermansia)の新種を同定したと考えている(Goris,et al.,2007,Int J Syst Evol Microbiol,57,81-91.)。一部の実施形態では、本明細書で開示される微生物含有組成物のアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)(例えば、アッケルマンシア属(Akkermansia)株DSM 33459)は、A.ムシニフィラ(A.muciniphila)のゲノムと比較して、gANIが95%未満であり、例えば、約94%、93%、92%、91%、90%、89%又は88%(例えば87.58%)のいずれかである。別の実施形態では、本明細書で開示される微生物含有組成物のアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)(例えば、アッケルマンシア属(Akkermansia)株DSM 33459)は、A.グリカンフィラ(A.glycanphila)のゲノムと比較して、gANIが95%未満であり、例えば、約94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%又は71%(例えば70.17%)のいずれかである。本有益な微生物含有組成物として、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の1種又は複数の株と、I.マシリエンシス(I.massiliensis)、E.エリゲンス(E.eligens)及び/又はP.コプリ(P.copri)の1種又は複数の株(例えば、約1、2、3、4、5、6、7若しくは8種又はより多くの株のいずれか)とを含む組成物がさらに挙げられ得る。
【0068】
本明細書で開示される微生物含有組成物(例えばプロバイオティクス組成物)は、配列番号1を含む16SリボソームRNA配列に対して少なくとも約97.0%の配列類似性(例えば、約97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%又は100%の配列類似性のいずれか)を示す16SリボソームRNA配列を有する1種又は複数のE.エリゲンス(E.eligens)株を含み得る。この有益な微生物含有組成物(例えばプロバイオティクス組成物)は、配列番号2を含む16SリボソームRNA配列に対して少なくとも約97.0%の配列類似性(例えば、約97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%又は100%の配列類似性のいずれか)を示す16SリボソームRNA配列を有する1種又は複数のI.マシリエンシス(I.massiliensis)株を含み得る。この有益な微生物含有組成物(例えばプロバイオティクス組成物)は、配列番号3を含む16SリボソームRNA配列に対して少なくとも約97.0%の配列類似性(例えば、約97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%又は100%の配列類似性のいずれか)を示す16SリボソームRNA配列を有する1種又は複数のP.コプリ(P.copri)株を含み得る。
【0069】
本明細書で開示される微生物含有組成物(例えばプロバイオティクス組成物)は、1種若しくは複数のユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)株(例えば、E.エリゲンス(E.eligens)株DSM 33458)、1種若しくは複数のインテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)株(例えば、I.マシリエンシス(I.massiliensis)株DSM 33460)、1種若しくは複数のアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)株であって、このアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、A.ムシニフィラ(A.muciniphila)又はA.グリカニフィリア(A.glycaniphilia)ではない、株(例えば、アッケルマンシア属(Akkermansia)株DSM 33459)及び/又は1種若しくは複数のプレボテラ・コプリ(Prevotella copri)株(例えば、P.コプリ(P.copri)株DSM 33457)(即ち、この組成物は、これらの株に由来する実際の細菌(生存能力があるか又は生存能力がない)を含む)並びに/又はこれらの株の(個々での又は共培養での)培養に由来する1種又は複数の培養上清を含み得る。
【0070】
B.製剤
一般的に、本明細書で開示される微生物含有組成物(例えばプロバイオティクス組成物)は、1種又は複数の細菌株等の細菌を含む。本発明の一部の実施形態では、この組成物は、凍結乾燥(freeze-dried)形態又は凍結乾燥(lyophilized)形態で製剤化される。例えば、この微生物含有組成物は、本明細書で開示される細菌株を含む顆粒又はゼラチンカプセル(例えば、硬質ゼラチンカプセル)を構成し得る。
【0071】
一部の実施形態では、本明細書で開示される微生物含有組成物は、凍結乾燥細菌を含む。細菌の凍結乾燥は、当技術分野で十分に確立された手順である。代わりに、この微生物含有組成物は、生きている活性な細菌の培養物を含み得る。
【0072】
一部の実施形態では、本明細書で開示される微生物含有組成物のいずれかは、腸への本細菌株の送達を可能にするためにカプセル化される。カプセル化により、この組成物は、例えば、化学的刺激又は物理的刺激(例えば、圧力、酵素活性又はpHの変化により引き起こされ得る物理的崩壊)による破壊による、標的位置での送達までの崩壊から保護される。任意の適切なカプセル化方法を使用し得る。例示的なカプセル化技術として、多孔質マトリックスス内への封入、固体担体表面上での付着又は吸着、凝集剤又は架橋剤による自己凝集及び多孔質膜又はマイクロカプセル内への機械的格納が挙げられる。
【0073】
本明細書で開示される微生物含有組成物を経口で投与し得、且つこの組成物は、錠剤、カプセル剤又は散剤の形態であり得る。インビボでの送達並びに/又は部分的な若しくは全体的な定着及び生存を改善するために、酸素捕捉剤及びプレバイオティクス基質として、他の成分(例えば、ビタミンC又はミネラル)が含まれ得る。代わりに、本明細書で開示される微生物含有組成物(例えば、プロバイオティクス組成物)を食品若しくは栄養製品(例えば、乳若しくはホエイベースの発酵乳製品)として経口投与し得るか、又は医薬製品として経口投与し得る。
【0074】
本明細書で開示される微生物含有組成物をプロバイオティクスとして製剤化し得る。代わりに、本明細書で開示される微生物含有組成物を、生存能力がない細菌組成物(例えば、低温殺菌又は熱処理された細菌組成物)として製剤化し得る。
【0075】
本明細書で開示される微生物含有組成物は、本明細書で開示される細菌株の治療上有効な量を含む。細菌株の治療上有効な量は、患者に対して有益な効果を発揮するのに十分である。細菌株の治療上有効な量は、対象の腸への送達及び/又はこの腸の部分的な若しくは全体的な定着をもたらすのに十分であり得る。
【0076】
例えば、成人に関する本細菌の好適な1日用量は、約1×10~約1×1011コロニー形成単位(CPU)であり得、例えば、約1×10~約1×1010CPUであり得;別の例では、約1×10~約1×1010GPUであり得;別の例では、約1×10~約1×1011CPUであり得;別の例では、約1×10~約1×1010CPUであり得;別の例では、約1×10~約1×1011CPUであり得る。特定の実施形態では、本細菌の用量は、1日当たり少なくとも10個の細胞であり、例えば、1日当たり少なくとも1010個、少なくとも1011個又は少なくとも1012個の細胞である。
【0077】
特定の実施形態では、本微生物含有組成物は、この組成物の重量に関して約1×10~約1×1011CFU/gの量で本細菌株を含み、例えば、約1×10~約1×1010CFU/gで含む。用量は、例えば、1g、3g、5g及び10gであり得る。
【0078】
特定の実施形態では、本細菌株の量は、本組成物の重量に関するグラム当たり約1×10~約1×1011コロニー形成単位である。
【0079】
特定の実施形態では、本明細書で開示される微生物含有組成物のいずれかを500mg~1000mg、600mg~900mg、700mg~800mg、500mg~750mg又は750mg~1000mgの用量で投与する。特定の実施形態では、本明細書で開示される微生物含有組成物のいずれか中の凍結乾燥細菌を500mg~100mg、600mg~900mg、700mg~800mg、500mg~750mg又は750mg~1000mgの用量で投与する。
【0080】
典型的には、プロバイオティクスは、少なくとも1種の好適なプレバイオティクス化合物と任意選択的に組み合わされる。プレバイオティクス化合物は、通常、上部消化化管中で分解されないか又は吸収されない非消化性炭水化物(例えば、オリゴ糖若しくは多糖又は糖アルコール)である。既知のプレバイオティクスとして、イヌリン及びトランスガラクトオリゴ糖等の市販品が挙げられる。
【0081】
特定の実施形態では、本明細書で開示されるプロバイオティクス組成物は、この組成物の全重量に関して約1~約30重量%(例えば、約5~20重量%)の量でプレバイオティクス化合物を含むように製剤化される。炭水化物は、下記からなる群から選択され得る:フラクトオリゴ糖(即ちFOS)、短鎖フラクトオリゴ糖、インスリン、イソマルトオリゴ糖、ペクチン、キシロオリゴ糖(即ちXOS)、キトサンオリゴ糖(即ちCOS)、ヒトミルクオリゴ糖、ベータ-グルカン、変性アラビアガム及び難消化性デンプン、ポリデキストロース、D-タガトース、アカシア繊維、イナゴマメ、カラスムギ並びに柑橘類繊維。一態様では、本プレバイオティクスは、短鎖フラクトオリゴ糖(簡略化のために、本明細書では下記においてFOSs-c.cと示す)であり、前記FOSs-c.cは、一般的にテンサイ糖の変換により得られ且つ3つのグルコース分子が結合しているサッカロース分子を含む消化不能の炭水化物である。一部の実施形態では、本明細書で開示されるプレバイオティクスのいずれかを、ラクトバチルス(Lactobacillus)属及びビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属(例えば、B.ラクティス(B.lactis)B420)に由来する追加のプロバイオティクスと共に製剤化し得る。
【0082】
本明細書で開示される微生物含有組成物は、薬学的に許容される賦形剤又は担体をさらに含み得る。治療での使用に許容される担体又は希釈剤は、薬学分野で公知である。好適な担体の例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトール及び同類のもの。好適な希釈剤の例として、エタノール、グリセロール及び水が挙げられるが、これらに限定されない。医薬用担体、賦形剤又は希釈剤の選択は、意図された投与経路及び標準的な医薬慣習を考慮して選択され得る。本医薬組成物は、担体、賦形剤若しくは希釈剤として、又はこれらに加えて、任意の好適な結合剤、潤滑剤、懸濁剤、コーティング剤(例えば、小腸若しくは大腸に到達するまで溶解若しくは分解しない胃耐性腸溶性コーティング剤)若しくは可溶化剤を含み得る。好適な結合剤の例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:デンプン、ゼラチン、天然糖、例えばグルコース、無水ラクトース、自由流動ラクトース、ベータ-ラクトース、トウモロコシ甘味料、天然ガム及び合成ガム、例えば、アカシア、トラガカント又はアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース並びにポリエチレングリコール。好適な潤滑剤の例として、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム及び同類のものが挙げられるが、これらに限定されない。本医薬組成物中には、保存料、安定剤、色素、さらには香味料が提供され得る。保存料の例として、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられるが、これらに限定されない。酸化防止剤及び懸濁剤も使用し得る。
【0083】
本明細書で開示される微生物含有組成物を食品として製剤化し得る。例えば、食品は、例えば栄養補助食品において、本発明の治療効果に加えて栄養面での利益を提供し得る。同様に、本発明の組成物の食味を増強するか、又は医薬組成物よりもむしろ一般的な食品に類似させることによってこの組成物をより魅力的に消費させるように食品を製剤化し得る。特定の実施形態では、本微生物含有組成物は、乳ベースの製品として製剤化される。「乳ベースの製品」という用語は、本明細書で使用される場合、脂質含有量が様々なあらゆる液体又は半固体の乳ベース又はホエイベースの製品を意味する。乳ベースの製品は、例えば、下記であり得る:牛乳、ヤギ乳、ヒツジ乳、脱脂乳、全乳、いかなる加工も行うことなく粉乳及びホエイから還元された乳又は加工品、例えばヨーグルト、凝乳、カード、酸乳、酸全乳、バター乳及び他の酸乳製品。別の重要な群として、乳飲料、例えばホエイ飲料、発酵乳、練乳、幼児又は乳児用ミルク;フレーバーミルク、アイスクリーム;砂糖菓子等の乳含有食品が挙げられる。
【0084】
特定の実施形態では、本明細書で開示される微生物含有組成物は、単一の細菌株又は細菌種を含み、いかなる他の細菌株又は細菌種も含まない。そのような組成物は、他の細菌株又は細菌種の微少量又は生物学的に無関係な量のみを含み得る。そのような組成物は、他の生物種が実質的に存在しいてない培養物であり得る。特定の実施形態では、本発明の組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16種の細菌株又は細菌種からなる。特定の実施形態では、この組成物は、1~10種(例えば1~5種)の細菌株又は細菌種からなる。
【0085】
本明細書で開示される方法に従った使用のための微生物含有組成物は、販売承認を必要とする場合も又は必要としない場合もある。
【0086】
場合により、凍結乾燥細菌株を投与前に再構成する。場合により、この再構成は、本明細書で説明される希釈剤の使用による。
【0087】
本明細書で開示される微生物含有組成物は、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体を含み得る。
【0088】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、本明細書で開示される細菌株;及び薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤を含む医薬組成物であって、この細菌株は、それを必要とする対象に投与され場合に疾患を処置するのに十分な量で存在し、この障害は、肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン欠乏関連障害、インスリン抵抗性関連障害、耐糖能障害、脂質代謝異常、非アルコール性脂肪性肝疾患、脂肪肝、レプチン抵抗性、レジスチンレベルの低下及び/又は循環器疾患からなる群から選択される、医薬組成物である。
【0089】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール及びソルビトールからなる群から選択さされる担体を含む医薬組成物を提供する。
【0090】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、エタノール、グリセロール及び水からなる群から選択される希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0091】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、デンプン、ゼラチン、グルコース、無水ラクトース、自由流動ラクトース、ベータ-ラクトース、トウモロコシ甘味料、アカシア、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及び塩化ナトリウムからなる群から選択される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0092】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、保存料、酸化防止剤及び安定剤の少なくとも1つをさらに含む医薬組成物を提供する。
【0093】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、安息香酸ナトリウム、ソルビン鎖及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルからなる群から選択される保存料を含む医薬組成物を提供する。
【0094】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、前記細菌株は、凍結乾燥される、医薬組成物を提供する。
【0095】
特定の実施形態では、上記の医薬組成物であって、約4℃又は約25℃で密封容器中に保存され、及びこの容器は、50%相対湿度の雰囲気中に置かれる場合、コロニー形成単位で測定された場合の細菌株の少なくとも80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%又は10%が少なくとも約1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、1.5年、2年、2.5年又は3年の期間後に残存する、医薬組成物である。
【0096】
本明細書で開示される細菌株を、実施例セクションで説明されるか又は当技術分野で公知のもの等の標準的な微生物学的技法を使用して培養し得る。
【0097】
追加の実施形態では、本明細書で開示される細菌株の1つ又は複数を、細菌細胞外小胞(EV)を含む組成物(例えば医薬組成物)として製剤化し得る。本明細書で使用される場合、「細胞外小胞」又は「EV」という用語は、細菌脂質と、ナノ粒子に含まれる細菌タンパク質、及び/又は細菌核酸、及び/又は炭水化物部分とを含む、細菌に由来する組成物を指す。このEVは、1、2、3、4、5、10種又は10種超の異なる脂質種を含み得る。EVは、1、2、3、4、5、10種又は10種超の異なるタンパク質種を含み得る。EVは、1、2、3、4、5、10種又は10種超の異なる核酸種を含み得る。EVは、1、2、3、4、5、10種又は10種超の異なる炭水化物種を含み得る。本明細書で使用される場合、「精製されたEV組成物」又は「EV組成物」という用語は、原料中に見出される少なくとも1種の関連物質から分離される(例えば、少なくとも1種の他の細菌成分から分離される)EVを含む調製物を指すか、又はこの調製物を製造するために使用される任意のプロセスにおいて、このEVに関連する任意の物質から分離されるEVを含む調製物を指す。この用語は、有意に富化又は濃縮されている組成物も指す。一部の実施形態では、EVは、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、100倍、1000倍、10,000倍又は10,000倍超で濃縮される。
【0098】
本明細書で説明されるEVを、当技術分野で既知の任意の方法を使用して調製し得る。一部の実施形態では、EVを、EV精製工程を行うことなく調製する。例えば、一部の実施形態では、本明細書で説明されるEVを含む細菌を、細菌EVをインタクトのまま残す方法を使用して死滅させ、得られた細菌成分(例えばEV)を、本明細書で説明される方法及び組成物で使用する。一部の実施形態では、この細菌を、抗生物質を使用して(例えば、本明細書で説明される抗生物質を使用して)死滅させる。一部の実施形態では、この細菌を、UV照射を使用して死滅させる。一部の実施形態では、本明細書で説明されるEVを1種又は複数の他の細菌成分から精製する。細菌からEVを精製する方法は、当技術分野で既知である。一部の実施形態では、EVを、S.Bin Park,et al.PLoS ONE.6(3):el7629(2011)又はG.Norheim,et al.PLoS ONE.10(9):e0134353(2015)(これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で説明される方法を使用して細菌培養物から調製する。一部の実施形態では、本細菌を高い光学密度まで培養し、次いで遠心分離して細菌をペレット化する(例えば、4℃での30分にわたる10,000×g)。一部の実施形態では、次いで培養上清をフィルタに通して、インタクトな細菌細胞を除外する(例えば0.22μmフィルタ)。一部の実施形態では、ろ過された上清を遠心分離して、細菌EVをペレット化する(例えば、4℃での1~3時間にわたる100,000~150,000×g)。一部の実施形態では、得られたEVペレットを(例えばPBS中で)再懸濁させ、再懸濁したEVをスクロース勾配(例えば、30~60%の不連続スクロース勾配)にアプライし、続いて遠心分離(例えば、4℃での20時間にわたる200,000×g)することにより、EVをさらに精製する。EVバンドを回収し、(例えばPBSで)洗浄し、遠心分離して、EVをペレット化し得る(例えば、4℃での3時間にわたる150,000×g)。精製されたEVを、使用まで例えば-80℃で保存し得る。一部の実施形態では、DNアーゼ及び/又はプロテイナーゼKによる処理により、EVをさらに精製する。
【0099】
例えば、一部の実施形態では、本明細書で開示される細菌の培養物を4℃において20~40分にわたり11,000×gで遠心分離して、細菌をペレット化し得る。培養上清を0.22μmフィルタに通して、インタクトな細菌細胞を除外し得る。次いで、ろ過された上清を、硫酸アンモニウム沈殿、超遠心分離又はろ過が挙げられ得るが、これらに限定されない方法を使用して濃縮し得る。例えば、硫酸アンモニウム沈殿の場合、ろ過された上清に、4℃で撹拌しつつ、1.5~3Mの硫酸アンモニウムを緩やかに添加し得る。沈殿物を8~48時間にわたり4℃でインキュベートし得、次いで4℃において20~40分にわたり11,000×gで遠心分離し得る。得られたペレットは、細菌EVと他の残屑とを含む。
【0100】
超遠心分離を使用して、ろ過された上清を4℃において1~16時間にわたり100,000~200,000×gで遠心分離し得る。この遠心分離のペレットは、細菌EVと他の残屑とを含む。一部の実施形態では、ろ過技法を使用して(例えば、Amicon Ultraスピンフィルタを使用するか又は接線フローろ過により)、上清を、分子量が50又は100kDaを超える種が保持されるようにろ過し得る。
【0101】
代わりに、バイオリアクタを交互接線フロー(ATF)システム(例えば、RepligenのXCell ATF)に接続することにより、増殖中において連続的に又は増殖中において選択された時点で細菌培養物からEVを得ることができる。このATFシステムにより、バイオリアクタ中にインタクトな細胞(0.22μm超)が保持され、より小さい成分(例えば、EV、遊離タンパク質)をフィルタに通して回収することが可能である。例えば、このシステムを、次いで0.22μm未満のろ液が100kDaの第2のフィルタを通過するように構成し得、これにより、0.22μm~100kDaのEV等の種を回収することが可能となり、且つ100KDaと比べて小さい種をバイオリアクタ中にポンプで戻すことが可能となる。代わりに、このシステムを、培養物の増殖中にバイオリアクタ中の培地を補充及び/又は変更することが可能となるように構成し得る。この方法により回収されたEVを、ろ過された上清に関して上記で説明されるような超遠心分離又はろ過によりさらに精製及び/又はさらに濃縮し得る。
【0102】
スクロース勾配又はOptiprep勾配の使用が挙げられ得るが、これらに限定されない方法を使用して、サイズベースのカラムクロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー及び勾配超遠心分離により、本明細書で提供される方法により得られたEVをさらに精製し得る。簡潔に説明すると、硫酸アンモニウム沈殿又は超遠心分離を使用して、ろ過された上清を濃縮した場合、スクロース勾配法を使用して、ペレットを60%スクロース、30mM Tris、pH8.0に再懸濁させる。ろ過を使用して、ろ過された上清を濃縮した場合、Amicon Ultraカラムを使用して、濃縮液を60%スクロース30mM Tris、pH8.0に緩衝液交換する。サンプルを35~60%の不連続スクロース勾配にアプライし、4℃において3~24時間にわたり200,000×gで遠心分離する。簡潔に説明すると、硫酸アンモニウム沈殿又は超遠心分離を使用して、ろ過された上清を濃縮した場合、Optiprep勾配法を使用して、ペレットをPBS中の35% Optiprep中に再懸濁させる。一部の実施形態では、ろ過を使用して、ろ過された上清を濃縮した場合、60% Optiprepを使用して、濃縮液を35% Optipreの最終濃度まで希釈する。サンプルを35~60%の不連続スクロース勾配にアプライし、4℃において3~24時間にわたり200,000×gで遠心分離する。
【0103】
一部の実施形態では、EV調製物の無菌性及び単離を確認するために、EVを、試験する細菌の通常の培養に使用される寒天培地上に連続希釈し、通常の条件を使用してインキュベートする。非無菌調製物を0.22μmフィルタに通して、インタクトな細胞を除外する。純度をさらに高めるために、単離されたEVをDNアーゼ又はプロテイナーゼKで処理し得る。
【0104】
III.方法
A.疾患を処置又は予防する方法
本明細書でさらに提供されるのは、肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン欠乏関連障害、インスリン抵抗性関連障害、耐糖能障害、脂質代謝異常、非アルコール性脂肪性肝疾患、脂肪肝、レプチン抵抗性、レジスチンレベルの低下及び/又は循環器疾患を含む1種又は複数の肥満関連障害の処置及び/又は予防を、それを必要とする対象において行う方法であって、本明細書で開示される微生物含有及び/又はEV含有組成物のいずれかの治療上有効な量をこの対象に投与することを含む方法である。
【0105】
肥満度指数(BMI)(身長(メートル)の2乗で除算された体重(キログラム)として算出される)は、太りすぎ及び/又は肥満の最も一般的に受け入れられている測定値である。成人では、25を超えるBMIは太りすぎと見なされ、肥満は、30以上のBMIと定義され、35以上のBMIは、重篤の併存症と見なされ、40以上のBMIは、病的な肥満と見なされる。本発明の目的のために、「肥満」は、30以上のBMIを意味するものとする。
【0106】
5例の太りすぎの人の1例は、「メタボリックシンドローム」に罹患している。メタボリックシンドロームは、米国で最も急速に増加している肥満関連の健康問題の1つであり、肥満、高血圧、脂質レベルの異常及び高血糖等の一群の健康問題を特徴とする。疾病管理予防センター(CDC)によれば、メタボリックシンドロームは、米国人口のほぼ4分の1(22%)、即ち推定で4700万人が罹患している。メタボリックシンドロームは、糖尿病、心臓病及び脳卒中等のより重篤な健康問題を患者が発症するリスクを高める可能性がある。
【0107】
太りすぎの人及び肥満の人は、心臓病の発症率が高く、そのため、健康な肥満度指数を維持している人と比べて、心臓発作、うっ血性心不全、心臓突然死、狭心症及び心拍異常の犠牲となる頻度が高くなる。肥満は、血中脂質レベルに悪影響を及ぼし、この血中脂質レベルは、肥満患者中では上昇し、そのため、トリグリセリドレベルが上昇し、且つHDLとしても既知である高密度リポタンパク質が減少することから、心臓病のリスクを高めることが多い。体脂肪が過剰な量である人は、血中のHDLコレステロールレベルがより低いだけでなく、トリグリセリドのレベルと、LDL又は「悪玉コレステロール」としても既知である低密度リポタンパク質のレベルとがより高くなる。この組合せは、アテローム硬化性心臓病の発症に最適な条件を作り出す。
【0108】
太りすぎであるか又は肥満であると、高血圧を発症するリスクが上昇する。高血圧(hypertension)又は高血圧(high blood pressure)は、心臓発作、脳卒中及び腎不全のリスクを大幅に上昇させる。実際には、血圧は、体重の増加に伴い上昇する。たとえ10ポンドでも減少すると、血圧を下げることができ、体重減少が最も効果的なのは、太りすぎである者及び既に高血圧である者である。
【0109】
肥満は、糖尿病の発症に関連する。糖尿病の最も一般的な形態である2型糖尿病の人の80パーセント超は、肥満であるか又は太りすぎである。2型糖尿病は、膵臓によるインスリンの産生が損なわれている場合に、又は体内の組織及び臓器中がインスリン抵抗性の状態で発症する。肥満により、インスリンの血糖(グルコース)をコントロールする能力が低下すると、血糖値を調節するために身体がインスリンを過剰産生し始めることから、糖尿病を発症するリスクが上昇する。時間が経つにつれて、身体は、もはや血糖値を正常な範囲内に保つことができなくなる。最終的に、健康的な血糖バランスを達成することができなくなり、2型糖尿病が発症する。さらに、肥満は、インスリン抵抗性及び耐糖能障害を増加させることにより、2型糖尿病の管理及び処置を複雑にし、この増加により、この疾患の薬物処置の効果が低下する。多くの場合、正常範囲までの体重の減少により、血糖が正常化し、インスリン感受性が回復する。
【0110】
特に西側諸国では、小児肥満も大きい公衆衛生上の問題である。2~18歳の小児は、BMIが95パーセンタイルよりも高い場合に肥満と見なされる。有病率の減少を目標とする政策にもかかわらず、小児肥満は、過去30年間に小児で2倍を超えており、青年で3倍を超えている。成人と同様に、小児期の肥満は、高血圧、脂質異常症(脂質代謝の異常)、慢性炎症、血液凝固傾向の増加、内皮機能障害及び高インスリン血症を引き起こす。循環器疾患の危険因子のこのクラスター化は、5歳という幼い子供で確認されている。
【0111】
本明細書で開示される方法は、肥満関連障害の予防、阻害及び処置を対象とする。「肥満関連障害」は、本明細書で使用される場合、下記を含むが、これらに限定されない:肥満、望ましくない体重増加及び過食障害(例えば、過食、過食症、強迫性の食事又は食欲コントロールの欠如、これらのそれぞれは、任意選択的に、望ましくない体重増加又は肥満につながる可能性がある)、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン欠乏関連障害、インスリン抵抗性関連障害、耐糖能障害、脂質代謝異常、非アルコール性脂肪性肝疾患、脂肪肝、レプチン抵抗性、レジスチンレベルの低下及び/又は循環器疾患。「肥満」及び「肥満の」は、本明細書で使用される場合、世界保健機関により定義されたクラスI肥満、クラスII肥満、クラスIII肥満及び肥満予備軍(例えば、「太りすぎ」である)を指す。
【0112】
体脂肪の減少は、対象(例えば、肥満関連障害等の肥満と関連する合併症と診断された対象)において、様々な一次的な及び/又は二次的な利益をもたらすことが期待され、この利益として、例えば下記が挙げられる:(例えば、II型糖尿病と診断された対象における)インスリン応答性の増加又は耐糖能障害の減少;血圧上昇の抑制;コレステロールレベル、及び/又はLDL、及び/又はVLDLの上昇の抑制;循環器疾患(例えば、虚血性心疾患、動脈血管疾患、狭心症、心筋梗塞及び/又は脳卒中)、偏頭痛、うっ血性心不全、深部静脈血栓症、肺塞栓症、胆石、胃食道逆流症、閉塞性睡眠時無呼吸、肥満低換気症候群、喘息、痛風、運動性の低下、腰痛、勃起不全、尿失禁、肝傷害(例えば、脂肪性肝疾患、肝硬変、アルコール性肝硬変、エンドトキシン媒介性肝傷害)、慢性腎不全、レプチン抵抗性及びレジスチンレベルの上昇の抑制(又はリスク若しくは進行の低下)。
【0113】
別の実施形態では、本開示は、本明細書で開示される微生物含有及び/又はEV含有組成物(例えばプロバイオティクス組成物)のいずれかの有効な量を対象に投与して、肥満を減少させることを含む方法に関する。一部の実施形態では、対象の肥満は、本明細書で開示される微生物含有及び/又はEV含有組成物の1つ又は複数を投与していない肥満対象と比較して、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%(これらのパーセンテージの間にある全ての値を含む)のいずれか減少する。肥満の減少をBMIの低下等の当技術分野で既知の任意の方法により測定し得る。
【0114】
別の実施形態では、本開示は、本明細書で開示される微生物含有及び/又はEV含有組成物(例えば、プロバイオティクス組成物)のいずれかの有効な量を対象に投与して、メタボリックシンドローム、糖尿病(例えば、II型糖尿病)、インスリン抵抗性及び/又は耐糖能障害の1つ又は複数を減少させることを含む方法に関する。一部の実施形態では、メタボリックシンドローム、糖尿病(例えばII型糖尿病)、インスリン抵抗性及び/又は耐糖能障害の1つ又は複数の割合は、本明細書で開示される微生物含有及び/又はEV含有組成物の1つ又は複数を投与していない、これらの状態の1つ又は複数と診断された対象と比較して、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%(これらのパーセンテージ間にある全ての値を含む)のいずれか減少する。メタボリックシンドローム、糖尿病(例えばII型糖尿病)、インスリン抵抗性及び/又は耐糖能障害の1つ又は複数の減少を、血糖測定及びA1Cの決定等、当技術分野で既知の任意の手段により決定し得る。
【0115】
別の実施形態では、本開示は、本明細書で開示される微生物含有及び/又はEV含有組成物(例えば、プロバイオティクス組成物)のいずれかの有効な量を対象に投与して、1種又は複数の肝障害(例えば、限定されないが、脂質代謝異常、非アルコール性脂肪性肝疾患及び/又は脂肪肝)を処置することを含む方法に関する。一部の実施形態では、肝障害の発症率は、本明細書で開示される微生物含有及び/又はEV含有組成物の1つ又は複数を投与していない、肝障害を有する対象と比較して、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%(これらのパーセンテージの間にある全ての値を含む)のいずれか減少する。1種又は複数の肝障害の減少を当技術分野で既知の任意の手段により決定し得る。
【0116】
別の実施形態では、本開示は、本明細書で開示される微生物含有及び/又はEV含有組成物(例えば、プロバイオティクス組成物)のいずれかの有効な量を対象に投与して、レプチン抵抗性及び/又はレジスチンレベルの低下を処置することを含む方法に関する。一部の実施形態では、本明細書で開示される微生物含有及び/又はEV含有組成物の1つ又は複数を投与していない、レプチン抵抗性及び/又はレジスチンレベルの低下を有する対象と比較して、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、105%又は110%(これらのパーセンテージ間にある全ての値を含む)のいずれかレプチン抵抗性が減少し、及び/又はレジスチンレベルが上昇する。レプチン抵抗性及び/又はレジスチンレベルの低下を当技術分野で既知の任意の手段により決定し得る。
【0117】
別の実施形態では、本開示は、本明細書で開示される微生物含有及び/又はEV含有組成物(例えば、プロバイオティクス組成物)のいずれかの有効な量を対象に投与して、循環器疾患と関連する1種又は複数の障害(例えば、限定されないが、虚血性心疾患、動脈血管疾患、狭心症、心筋梗塞及び/又は脳卒中)を処置することを含む方法に関する。一部の実施形態では、循環器疾患と関連する1種又は複数の障害の発症率は、本明細書で開示される微生物含有及び/又はEV含有組成物の1つ又は複数を投与していない、循環器疾患と関連する1種又は複数の障害を有する対象と比較して、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%(これらのパーセンテージ間にある全ての値を含む)のいずれか減少する。循環器疾患と関連する1種又は複数の障害の減少を当技術分野で既知の任意の手段により決定し得る。
【0118】
さらに別の実施形態では、対象に投与される本明細書で開示される微生物含有及び/又はEV含有組成物(例えばプロバイオティクス組成物)のいずれかは、配列番号1を含む16SリボソームRNA配列に対して少なくとも約97.0%の配列類似性(例えば、約97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%又は100%の配列類似性のいずれか)を示す16SリボソームRNA配列を有する1種又は複数のE.エリゲンス(E.eligens)株を含む。この有益な微生物含有及び/又はEV含有組成物(例えばプロバイオティクス組成物)は、配列番号2を含む16SリボソームRNA配列に対して少なくとも約97.0%の配列類似性(例えば、約97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%又は100%の配列類似性のいずれか)を示す16SリボソームRNA配列を有する1種又は複数のI.マシリエンシス(I.massiliensis)株を含み得る。この有益な微生物含有及び/又はEV含有組成物(例えばプロバイオティクス組成物)は、配列番号3を含む16SリボソームRNA配列に対して少なくとも約97.0%の配列類似性(例えば、約97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%又は100%の配列類似性のいずれか)を示す16SリボソームRNA配列を有する1種又は複数のP.コプリ(P.copri)株を含み得る。
【0119】
一部の実施形態では、1種又は複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7又は8種)のE.エリゲンス(E.eligens)、I.マシリエンシス(I.massiliensis)、P.コプリ(P.copri)及びアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の株を少なくとも約1×10CFU/対象/日~少なくとも約1×1012CFU/対象/日の割合で対象に投与し、例えば、約1×10CFU/対象/日、1×10CFU/対象/日、1×10CFU/対象/日、1×10CFU/対象/日、1×10CFU/対象/日、1×10CFU/対象/日、1×1010CFU/対象/日、1×1011CFU/対象/日又は1×1012CFU/対象/日(これらの量の間にある全ての値を含む)のいずれかの割合で対象に投与する。
【0120】
B.微生物組成物を調製する方法
同様に本明細書で提供されるのは、微生物含有及び/又はEV含有組成物(例えばプロバイオティクス組成物)を調製する方法であって、インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)の生物学的に純粋な株と、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の生物学的に純粋な株であって、前記アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、A.ムシニフィラ(A.muciniphila)又はA.グリカニフィリア(A.glycaniphilia)ではない、生物学的に純粋な株とを組み合わせることを含む方法である。アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)であり、他の既知のアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)と少なくとも95%異なる全ゲノム平均ヌクレオチド同一性(gANI)である。I.マシリエンシス(I.massiliensis)は、番号DSM 33460でDSMに寄託されているI.マシリエンシス(I.massiliensis)の16SリボソームRNA配列に対して少なくとも97.0%の配列類似性(例えば、約97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%又は100%の配列類似性のいずれか)を示す16SリボソームRNA配列を含み得る。
【0121】
加えて、この組成物を調製する方法は、この微生物組成物を凍結乾燥させる(lyophilizing)か又は凍結乾燥させる(freeze drying)ことをさらに含み得る。この方法は、貯蔵又は輸送のために、この飼料添加剤組成物を包装するさらなる工程を追加で含み得る。
【0122】
C.投与
好ましくは、本明細書で開示される微生物含有及び/又はEV含有組成物を、本発明の細菌株の腸への送達及び/又は部分的な若しくは全体的な定着を可能にするために消化管に投与する。一般的に、本発明の組成物を経口投与するが、直腸投与するか、鼻腔内投与するか、又は頬経路若しくは舌下経路により投与し得る。
【0123】
特定の実施形態では、本明細書で開示される微生物含有及び/又はEV含有組成物を泡状物質、スプレー又はゲルとして投与し得る。
【0124】
特定の実施形態では、本明細書で開示される本発明の微生物含有及び/又はEV含有組成物を肛門座薬等の座薬として投与し得、例えばカカオ脂(カカオバター)、合成硬質脂肪(例えば、サポシール(suppocire)、ウィテップゾール(witepsol))、グリセロ-ゼラチン、ポリエチレングリコール又は石鹸グリセリン組成物の形態で投与し得る。
【0125】
特定の実施形態では、本明細書で開示される微生物含有及び/又はEV含有組成物を、チューブ(例えば、経鼻胃管、経口胃管、胃管、空腸瘻管(J管)、経皮内視鏡的胃瘻造設(PEG))又はポート(例えば、疲れた胃、空腸へのアクセスを可能にする胸壁ポート及び他の好適なアクセスポート)を介して消化管に投与する。
【0126】
本明細書で開示される微生物含有及び/又はEV含有組成物を1回投与し得るか、又は処置レジメンの一部として逐次的に投与し得る。特定の実施形態では、本発明の組成物を毎日投与する。
【0127】
本発明の特定の実施形態では、本明細書で開示される方法に従う、本明細書で開示される微生物含有及び/又はEV含有組成物による処置は、対象の腸内微生物叢の評価を伴う。本発明の株の送達及び/又はこの株の部分的な若しくは全体的な定着が達成されず、その結果、有効性が観察されない場合、処置を繰り返し得、送達及び/又は部分的な若しくは全体的な定着が成功して有効性が観察される場合、処置を停止し得る。特定の実施形態では、本発明の組成物を妊娠中の動物(例えば、ヒト等の哺乳動物)に投与して、子宮内の及び/又は出生後の子供にある状態が発症することを予防し得る。
【0128】
本発明の組成物を、ヒストンデアセチラーゼ活性により媒介される疾患若しくは状態と診断されている患者に投与し得るか、又はヒストンデアセチラーゼ活性により媒介される疾患若しくは状態のリスクがあると特定される患者に投与し得る。この組成物を、健康な患者におけるヒストンデアセチラーゼ活性により媒介される疾患又は状態の発症を予防するための予防的手段としても投与し得る。
【0129】
本明細書で開示される微生物含有及び/又はEV含有組成物を、腸内微生物叢が異常であると特定される対象に投与し得る。例えば、この患者は、ユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)、インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)、プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)及び/又はアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)であって、A.ムシニフィラ(A.muciniphila)又はA.グリカニフィリア(A.glycaniphilia)ではないアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の定着が減少しているか又は欠如している場合がある。
【0130】
本明細書で開示される微生物含有及び/又はEV含有組成物を栄養補助食品等の食品として投与し得る。
【0131】
一般的に、本明細書で開示される微生物含有及び/又はEV含有組成物は、ヒト対象の処置用であるが、単胃動物(例えば、家禽、ブタ、ネコ、イヌ、ウマ若しくはウサギ)又は多胃動物(例えば、反芻動物)を含む動物を処置するために使用され得る。本発明の組成物は、動物の成長及び能力を増強するのに有用であり得る。動物に投与される場合、強制経口投与を使用し得る。
【0132】
IV.キット
本明細書でさらに提供されるのは、本明細書で開示される微生物株内の1種若しくは複数及び/又はこの微生物株の1種若しくは複数に由来するEVを含むキットである。このキットは、1種又は複数の肥満関連障害の処置又は予防のために対象に投与するための、適切な貯蔵、維持及び使用に関する指示と一緒に、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)であって、A.ムシニフィラ(A.muciniphila)又はA.グリカニフィリア(A.glycaniphilia)ではないアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)(例えば、アッケルマンシア属(Akkermansia)株DSM 33459)、E.エリゲンス(E.eligens)株(例えば、E.エリゲンス(E.eligens)株DSM 33458)、I.マシリエンシス(I.massiliensis)株(例えば、I.マシリエンシス(I.massiliensis)株DSM 33460)及び/又はP.コプリ(P.copri)株(例えば、P.コプリ(P.copri)株DSM 33457)等の、本明細書で提供される微生物株の1種又は複数(例えば、1、2、3若しくは4種のいずれか)の株及び/又はこの微生物株の1種若しくは複数に由来するEVを含み得る。一実施形態では、このキットは、アッケルマンシア属(Akkermansia)株DSM 33459と、I.マシリエンシス(I.massiliensis)株DSM 33460とを含み得る。
【0133】
下記の実施例を参照することにより本発明をさらに理解し得るが、この実施例は、説明のために提供され、限定することを意図するものではない。
[実施例]
【実施例1】
【0134】
株の単離
インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)の単離:全臨床糞便サンプルの16S群衆解析により決定した、インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)の集団がより多い臨床糞便シンプルを富化プロトコルに使用し、全ての作業を嫌気条件下で実施した。サンプルをBasal Bicarbonate Buffered Mediumで1:100に希釈し、播種済培地の合計25mlを50mlのガラスバイアルに密封した。バイアルを37℃において嫌気条件下でインキュベートした。培養物約5mlを4本(DNA抽出のための2本及び株単離のための2本)のチューブに毎日分注した。この富化の開始後4、5、6、7、8及び11日目に、サンプルを採取した。各日のサンプルからDANを抽出し、16S群衆解析配列決定を実施して、細菌集団を決定した。11日目のサンプルが、インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)の割合が最高であると決定し、従って、11日目の株単離用サンプルの1つを使用して希釈し、Basal Bicarbonate Buffer培地寒天プレート上に蒔いた。Basal Bicarbonate Buffered Media:0.53g/Lのリン酸ナトリウム、二塩基性、0.41g/Lのリン酸カリウム、一塩基性、0.3g/Lの塩化アンモニウム、0.11g/Lの塩化カルシウム、0.1g/Lの硫酸マグネシウム七水和物、0.3g/Lの塩化ナトリウム、4g/Lの炭酸水素ナトリウム、0.48g/Lの硫化ナトリウム水和物、5×Wolfeの微量ミネラル(Wolfe’s trace minerals)、1×標準ビタミン溶液、80mMの乳酸塩、80mMの酢酸塩。
【0135】
プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)の単離:プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)株を、希釈した糞便をBHIB寒天プレート上に直接蒔き、24時間にわたり嫌気的にインキュベートすることにより単離した。BHIB:10%の羊血液が補充されているブレインハートインフュージョン寒天(市販品、BD 221843)。液体ブロスでの増殖のためにBHISを使用する。BHIS:酵母抽出物、ビタミンK1及びヘミンが補充されているブレインハートインフュージョン。
【0136】
アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の単離:アッケルマンシア属(Akkermansia)株を、10g/Lでムチンを含むYCFA培地上に、希釈した糞便を直接蒔くことにより、臨床糞便サンプルから単離した。
【0137】
ユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)の単離:E.エリゲンス(E.eligens)株を、希釈した糞便をBHIB寒天プレート上に直接蒔き、24時間にわたり嫌気的にインキュベートすることにより単離した。BHIB:10%の羊血液が補充されているブレインハートインフュージョン寒天(市販品、BD 221843)。液体ブロスでの増殖のためにBHISを使用する。BHIS:酵母抽出物、ビタミンK1及びヘミンが補充されているブレインハートインフュージョン。
【0138】
ゲノム配列決定:全ての株のゲノム配列を同一の方法により得た。株をBHIB又はYCFAのいずれかの寒天プレート上で増殖させた。寒天を取り出さないように注意しながら、大きいループを使用してこの寒天プレートから増殖物を取り出した。増殖物の量に基づいて、DNA抽出のために処理するウェルの数を決定した。1つのウェルの場合、増殖物を、DNA抽出キットで用いられる第1の溶液であるPowerMag Bead Solution 750μlに再懸濁させた。複数のウェルにまで広がるのに十分に増殖していた場合、追加の量を使用した。細胞を再懸濁させ、再懸濁した細胞を所望の数のウェルに分注した。その後、キットの説明書を使用してDNA抽出プロトコルを行う。溶出に関して、より高いDNA濃度を得るために、1つのウェル当たりに利用する溶出緩衝液をわずかに少なくした。DNA抽出の完了後、同様のウェルをまとめた。InvitrogenのQuant-It PicoGreen DSDNA Assayキットを使用して、DNA濃度を決定した。
【0139】
健康なドナーの糞便サンプルから候補を単離し、全ゲノム配列決定により同定した。統計解析(例えば、相関解析値(インスリン、BMI、グルコース、DXATotFAT)、存在率及びこの候補を持つ痩せたサンプルの数)による順位付けを実施した。相関解析及び単離の可用性に基づいて、候補を選択した。この候補の4つをさらなる研究に選択した(図1A及び図1B)。
【実施例2】
【0140】
アッケルマンシア属(Akkermansia)の新種の同定
別途明記されない限り、全ての作業を、N2/CO2/H2(85/10/5%)の混合ガスを使用する嫌気性チャンバー中で実施した。
【0141】
AF33600009株は、一般的な単離ラウンドに続く2回目の単離ラウンド中に単離され、標的は、上位候補のいずれかであった。この単離ラウンドのために選択した臨床サンプルは、既に解析した16S群衆解析に基づいて、上位候補の存在量がより高いことが示された。この株を糞便サンプルF015V3から単離した。このラウンドで使用される単離方法は、10g/Lでムチンを含むYCFA培地に対する選択であった。
【0142】
単離ラウンドで使用されるアリコートを、最終グリセロール濃度が25%となるようにグリセロールと混合したサンプルF015V3からの糞便で予め作製した。このアリコートを、必要となるまで-80℃で保存した。冷凍庫から1つのアリコートを取り出し、嫌気性チャンバーに入れ、約10分にわたり室温で解凍した。別途明記されない限り、全ての作業を嫌気性チャンバー中で実施した。測定部分を取り出し、ムチンを含まないYCFAブロスで連続的に希釈した。オムニトレイ中において、アリコート100μlをYCFA+ムチン寒天上に10-4、10-5及び10-6希釈で蒔いた。細菌細胞を、約12個の無菌ガラスビーズを使用して広げて、寒天表面上に均一に希釈アリコートを広げた。プレートを、嫌気性環境を作り出すための小袋付きの嫌気性ボックス中において、約72時間にわたり37℃でインキュベートした。
【0143】
脱酸素した増殖培地(YCFA+10g/Lのムチン)を1つのウェル当たり350μlで1mlのディープウェルプレート中に分注した。単一コロニーを選び取り、1つのウェル当たり1つのコロニーで、予め分注した培地が入ったプレートに播種した。プレートを、ガス交換を可能にする通気性のカバーで覆った。プレートを約216時間にわたり37℃でインキュベートした。培養物を、96ウェルヘッドIntegraピペッタを使用して穏やかに混合した。16S PCR分析のために採取した培養物のアリコート及び残りの培養物を、最終グリセロール濃度が25%となるように、無菌の脱酸素した50%のグリセロール+1g/LのL-システインと混合した。これらの培養物を適切な長期貯蔵バイルにピペットで移し、-80℃で保存した。
【0144】
16S同定:PCRのための細胞培養物のアリコートを滅菌水で約1:100に希釈した。この水希釈液を16S PCR反応でのテンプレートとして使用した。16S遺伝子を増幅させるために使用するPCRプライマーは、下記であった:8F:AGA GTT TGA TYM TGG CTC及び1492R:CGG TTA CCT TGT TAC GAC TT。PCR反応条件及びサーモサイクラの設定は、ポリメラーゼQ5に関する標準であった。16S PCR反応のアリコートをゲル上で泳動させて、予想されるサイズの16S PCR産物の存在を確認した。16S PCR反応のアリコートを、ExoSAP-IT Express for PCR Cleanup Kitを使用して酵素精製した。次いで、このサンプルを、外部のサードパーティベンダーを使用するサンガー配列決定に送った。16Sサンガー配列決定に最も多く使用する16Cプライマーは、515F:GTG CCA GCM GCC GCG GTA Aであった。
【0145】
次いで、この16S配列を上位候補のリストの16Sアンプリコン配列と比較した。この結果から、最も適合する候補は、アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)であることが明らかとなった。所望の株を含むウェルに対応するバイアルを冷凍庫から取り出し、嫌気性チャンバーに入れて、このバイアルから、冷凍培養物のごく一部を取り出して、YCFA+10g/Lのムチン寒天プレート上に画線し得るようにした。このプレートを、冷凍ストックを作製し且つDNAを抽出するのに十分に増殖するまで、小袋付きの嫌気性ボックス中において37℃でインキュベートした。
【0146】
AF33600009株のゲノム:使用するDNA抽出キットは、Qiagen MagAttract(登録商標)PowerSoil(登録商標)DNA KF(King Fisher)Kitであった。画線したばかりの増殖物をYCFA+10g/Lのムチン寒天プレートからこすり取り、細胞をDNA抽出キットの第1の溶液に再懸濁させた。細胞を緩やかにピペッティングすることにより、細胞の塊を壊すように緩やかに再懸濁させた。この細胞懸濁液をPowerMag Bead Plateの複数のウェルに均一に分散させた。ウェルの数を細胞懸濁液中の細胞の量及び密度により決定した。次いで、製造業者のプロトコルに従ってDNAを抽出した。DNA抽出の完了後、同様のウェルをまとめての1つのDANサンプルにし、Invitrogen Quant-iT PicoGreen dsDNA定量キットを使用してDNA濃度を決定した。次いで、DNAを全ゲノム配列決定に送った。
【0147】
配列決定ライブラリをNextera Flexキット(Illumina)で調製し、対をなす読み取り2×150ntでMiSeq(Illumina)により配列決定した。ゲノム配列決定データを、インハウスのパイプラインを使用してアセンブルした。簡潔に説明すると、読み取りを品質に基づいてフィルタリングしてトリミングし、次いでBFC(Li,2015)を使用して補正した。補正された読み取りを、kmer長オプションが「31,55,77,99,121」であるSPAdesアセンブラ(Bankevich et al.,2012)を使用してアセンブルした。このアセンブリをPilon(Walker et al.,2014)で補正した。アセンブリ後、オープンリーディングフレーム(ORF)を予測し、Prokka(Seemann,2014)により注釈を付けた。16S rRNA遺伝子をBarrnapにより予測し、RDPペアワイズアラインメントツール(Fish et al.,2013)を使用して最も近い種を同定した。
【0148】
AF33600009株のドラフトゲノムは、331,405bpのN50及び125xカバレージの31個のコンティグで構成される。ゲノムサイズは、3.19Mbであり、下記の他の2種のアッケルマンシア属(Akkermansia)種のタイプ株のゲノムサイズと比べて大きい:A.ムシニフィラ(A.muciniphila)Muc(2.66Mbp)及びA.グリカニフィリア(A.glycaniphilia)Pyt(3.07Mb)。このゲノムDNAのG+C含有量は、57.7%である。現在、アッケルマンシア属(Akkermansia)ではわずか2つの種が既知であることから、これら3種の株と、A.グリカニフィリア(A.glycaniphilia)を説明する刊行物(Ouwerkerk et al.,2016)に含まれるウェルコミクロビウム綱(Verrucomicrobiae)のいくつかの株とで、系統樹を再構築した。
【0149】
この系統樹解析から、AF33600009株は、アッケルマンシア属(Akkermansia)のメンバーであり、A.ムシニフィラ(A.muciniphila)Mucは、その近縁種であることが示される(図2)。AF33600009株とA.ムシニフィラ(A.muciniphila)Mucとの間の全ゲノム平均ヌクレオチド同一性(gANI)は、87.58%であり、AF33600009株とA.グリカニフィリア(A.glycaniphilia)Pytとの間はわずか70.17%である。95%の種境界カットオフ(Goris et al.,2007)未満のgANI値に基づいて、AF33600009株は、アッケルマンシア属(Akkermansia)内の新種と提案される。
【0150】
2種のA.グリカニフィリア(A.glycaniphilia)の公的に利用可能なゲノム及びAF33600009株のゲノムと一緒に、A.ムシニフィラ(A.muciniphila)タイプ株ゲノムGCF_000020225.1に最も近い多くの公的に利用可能なゲノムを使用して、アッケルマンシア属(Akkermansia)gANI樹状図を作成した(図9)。A.ムシニフィラ(A.muciniphila)からの全てのゲノムは、一緒にクラスター化し、2種のA.グリカニフィリア(A.glycaniphilia)の公的に利用可能なゲノムは、一緒にクラスター化し、AF3360009は、他の2種とは異なる別個のクラスターを形成した。
【0151】
細胞の脂肪酸の脂肪酸メチルエステル(FAME)分析(Welch,1991.Applications of cellular fatty-acid analysis.Clin.Microbiol.Rev.4:422-438)をMicrobial ID Inc(DE,USA)により実施し、この分析では、AF33600009株及びA.ムシニフィラ(A.muciniphila)ATCC株BAA835から、BHIAで増殖させて同定のための脂肪酸メチルエステルを抽出することにより、標準サンプルを調製した。次いで、サンプルを分析のためのガスクロマトグラフにロードする。Sherlock(登録商標)パターン認識ソフトウェアを使用して、サンプルのFAMEプロファイルを作成した。次いで、サンプルを比較して類似性を決定した。表1に示されるように、FAMEプロファイルは、AF3360009株とATCC株BAA835との間で有意差を示した。
【表1】
【0152】
AF33600009株の細胞は、楕円形であるか又は細長かった。細胞を、ムチンを含む培地で増殖させた場合に細長さをより観察した。YCFAのみと比較して、YCFA+ムチン培地で増殖させた場合、細胞がより多く凝集してより多くのフィラメントを形成した(図3)。
【実施例3】
【0153】
候補の有効性を評価するためのマウスモデル
下記の候補の有効性を評価するために、食事性肥満(DIO)マウスモデルを用いた:実施例2で説明されるユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens);インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis);プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)及びアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)。
【0154】
E.エリゲンス(E.eligens);I.マシリエンシス(I.massiliensis)、P.コプリ(P.copri)及びアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)をDIOマウスモデルにおける代謝障害の改善での有効性に関して評価した。動物実験のために、群1の動物を到着時にPMI Nutrition International Certified Rodent Chow No.5 CR4で維持した。群2~9の動物をResearch Diet D12492で維持した。動物を、適切な寝具が入ったポリカボネート製ケージで単独飼育した。動物を、-1日目の測定値に基づいて、体重及び非絶食血糖に関して有意差のないコホートを生成するような方法で、試験-1日目に、表2で言及される処置群に分配した。
【表2】
【0155】
試験物ユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)、インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)、プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)及びインテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)+アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)を毎日調製し、製剤化後1時間以内に投与した。ビヒクル(群2)を1~36日目に強制経口投与により1日1回投与した。各動物への用量体積は、100μlであった。試験物(群2~7)を1~36日目に強制経口投与により1日1回投与した。各動物の用量体積は、100μlであった。各用量を、強制経口カニューレが取り付けられたシリンジを使用して投与した。
【0156】
コントロール物(群8)を1~36日目に1日1回の肩甲骨間部への皮下注射により、該当する動物に投与した。各動物の用量体積は、直近の体重測定値に基づいていた。各用量を、区画された領域内でシリンジ/ニードルを使用して投与した。投与の初日を1日目とした。
【0157】
試験パラメータに含まれているのは、死亡率/瀕死率のチェック、毎日の観察、体重測定値、摂食量、糞便サンプル、血糖測定値、経口ブドウ糖負荷試験、qNMR評価、サイトカイン評価及び臨床化学パラメータであった。投与期間中の指定の時点及び安楽死予定日において、バイオマーカー評価のために血液サンプルを採取した。
【0158】
様々な群のマウスから得られた血清中のインスリンレベルを測定した。インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)強制経口投与群は、ビヒクルコントロールと比較してインスリンレベルの12%の低下を示した。プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)及びインテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)+アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の強制経口投与群は、それぞれインスリンレベルの50%、50%及び64%の改善を示した(図4)。
【0159】
様々な群のマウスから得られた血清中のレプチンレベルを測定した。ユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)強制経口投与群は、ビヒクルコントロールと比較してインスリンレベルの21%の低下を示した。プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)及びインテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)+アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の強制経口投与群は、それぞれレプチンレベルの20%、15%及び25%の改善を示した(図5)。
【0160】
2時間の絶食後、全てのマウスに、2.0g/kgのグルコース(10mL/kg)を腹腔内投与した。血糖を、グルコース用量に関連して、下記の時間に、携帯型血糖値測定器を使用して、尾部の切れ目よりチェックした:0(グルコース用量前)、15、30、60、90及び120分。プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)及びインテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)+アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の強制経口投与群は、それぞれ耐糖能の9.5%、10%及び8.5%の改善を示した(図6A及び図6B)。
【0161】
様々な群のマウスから得られた血清中のコレステロールレベルを測定した。アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)強制経口投与群は、コレステロールレベルの11%の改善を示した(図7)。
【0162】
様々な群のマウスから得られた血清中のレジスチンレベルを測定した。ユウバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)強制経口投与群は、ビヒクルコントロールと比較してレジスチンレベルの19%の低下を示した。プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)及びインテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)+アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の強制経口投与群は、インスリンレベルの14%、11%及び14%の改善を示した(図8)。
【実施例4】
【0163】
製剤を評価するためのマウスモデル
インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)及びアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)(冷凍、低温殺菌及び凍結乾燥)をDIOマウスモデルにおける代謝障害の改善での有効性に関して評価した。動物実験のために、群1の動物を到着時にPMI Nutrition International Certified Rodent Chow No.5 CR4で維持した。群2~7の動物をResearch Diet D12492で維持した。動物を、適切な寝具が入ったポリカボネート製ケージで単独飼育した。動物を、-1日目の測定値に基づいて、体重及び非絶食血糖に関して有意差のないコホートを生成するような方法で、試験-1日目に、表3で言及される処置群に分配した。
【表3】
【0164】
試験物インテスティニモナス・マシリエンシス(Intestinimonas massiliensis)及びアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)(冷凍、低温殺菌及び凍結乾燥)を毎日調製し、製剤化後1時間以内に投与した。ビヒクル(群2)を1~84日目に強制経口投与により1日1回投与した。各動物への用量体積は、100μlであった。試験物(群2~6)を1~84日目に強制経口投与により1日1回投与した。各動物への用量体積は、100μlであった。各用量を、強制経口カニューレが取り付けられたシリンジを使用して投与した。
【0165】
コントロール物(群7)を1~84日目に1日1回の肩甲骨間部への皮下注射により、該当する動物に投与した。各動物の用量体積は、直近の体重測定値に基づいていた。各用量を、区画された領域内でシリンジ/ニードルを使用して投与した。投与の初日を1日目とした。
【0166】
試験パラメータに含まれているのは、死亡率/瀕死率のチェック、毎日の観察、体重測定値、摂食量、糞便サンプル、血糖測定値、qNMR評価及び臨床化学パラメータであった。
【0167】
この試験中、体重を毎週測定した。図10に示すように、ビヒクルコントロールは、固形飼料のみの群と比較して体重の有意の増加を示した。冷凍形態のアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)を投与した群は、43日目~84日目に、体重の9%~14%の改善を示した。
【0168】
qNMR(Bruker NMR LF90II)により、身体組成分析を行った。身体組成を試験の開始時(-2日目及び-1日目)並びに終了時(83日目及び84日目)に決定した。図11に示すように、ビヒクルコントロールは、固形飼料のみの群と比較して動物の有意な脂肪蓄積を示した。冷凍形態のアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)を投与した群は、コントロールと比較して25%低い脂肪蓄積を示した。凍結乾燥形態のアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)及び低温殺菌形態のアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)も低い脂肪蓄積を示した(それぞれ5.5%及び5%)。
【0169】
試験終了時(84日目)に、肝臓重量を決定した。図12に示すように、ビヒクルコントロールは、固形飼料のみの群と比較して、動物の肝臓重量の増加を示した。冷凍形態のアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)を投与した群は、コントロールと比較して37%低い脂肪蓄積を示した。
【0170】
様々な群のマウスから得られた血清中のインスリンレベルを測定した。測定をこの試験中に2週間毎に1回行った。この試験中に得られた値に基づいて、曲線下面積を算出した。図13に示すように、ビヒクルコントロールは、固形飼料と比較して動物のインスリンレベルの上昇を示した。I.マシリエンシス(I.massiliensis)を投与した群は、コントロールと比較してインスリンレベルの17%の低下を示しており、冷凍形態のアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)を投与した群は、コントロールと比較してインスリンレベルの22%の低下を示した。凍結乾燥形態のアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)及び低温殺菌形態のアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)も、インスリンレベルの低下を示した(それぞれ5%及び17%)。
【0171】
インスリン抵抗性をHOMA-IRで測定した。空腹時のグルコース及びインスリンのレベルに基づいて測定を行った。この試験中に得られた値に基づいて、曲線下面積を算出した。図14に示すように、ビヒクルコントロールは、固形飼料と比較して動物のインスリン抵抗性の増加を示した。I.マシリエンシス(I.massiliensis)を投与した群は、コントロールと比較してインスリンレベルの10%の低下を示しており、冷凍形態のアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)を投与した群は、コントロールと比較してインスリンレベルの20%の低下を示した。低温殺菌形態のアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)も、インスリンレベルの12%の低下を示した。
【0172】
様々な群のマウスから得られた血清中のレプチンレベルを測定した。図15に示すように、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)(低温殺菌形態)強制経口投与群は、レプチンレベルの21%の改善を示した。凍結乾燥形態のアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)も、レプチンレベルの低下を示した(7%)。
【0173】
様々な群のマウスから得られた血清中のPAI1レベルを測定した。図16に示すように、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)(冷凍形態)強制経口投与群は、PAI1レベルの15%の改善を示した。アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)(低温殺菌形態)は、PAI1レベルの8%の改善を示した。
【0174】
様々な群のマウスから得られた血清中のレジスチンレベルを測定した。図17に示すように、I.マシリエンシス(I.massiliensis)強制経口投与群は、ビヒクルコントロールと比較して、レジスチンレベルの16%の低下を示した。凍結乾燥形態のアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)、低温殺菌されたアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)及び凍結乾燥形態のアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、それぞれレジスチンレベルの31%、17%及び32%の改善を示した。
【0175】
アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)及びI.マシリエンシス(I.massiliensis)によるSCFAの産生を、72時間わたりRCM中で細菌を増殖させることにより分析した。上清を回収し、ろ過し、HPLCによりSCFAを検出した。培地中で、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、プロピオン酸塩の産生を示しており、I.マシリエンシス(I.massiliensis)は、酪酸塩の産生を示した(図18)。プロピオン酸塩及び酪酸塩は両方とも、宿主の代謝の健康を調節するのに重要な役割割りを果たすことが分かっている(Chambers et al 2018,Rios-Covian et al 2016)。
【0176】
このモデルでは、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)(凍結形態)は、体重、脂肪蓄積、肝臓重量、インスリン抵抗性及びレジスチンレベルの有意な改善を示した。低温殺菌形態のアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、同様の活性を示したがあまり顕著ではなく、このことから、生菌の投与が好ましい可能性があることが示唆される。アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、凍結乾燥形態で投与された場合、冷凍形態と同様の効果ではなかったが、依然としてレジスチンレベル及びレプチンレベルの改善を示し、且つ脂肪蓄積及びインスリンレベルのある程度の改善を示した。理論に拘束されないが、凍結乾燥形態がそれほど有効でなかった理由は、この形態で投与された際の細胞の不十分な水和時間に起因すると思われる。マウスでの過渡的な時間は3~4時間であることから、このモデルでは、凍結乾燥形態は、同一の有効性を得るための十分な水和及び転写活性には十分でなかった可能性がある。
【実施例5】
【0177】
アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)株AF3360009の代謝分析
YCFAC培地中で増殖させた、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)株の代謝能力と、アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)タイプ株BAA835の代謝能力との比較の場合。YCFAC培地に、1%一晩培養物を播種し、24時間の増殖後に上清を回収した。細胞を5分にわたる10,000rpmでの遠心分離により分離し、次いで0.2μMフィルタでろ過した。
【0178】
細胞フリー上清を採取し、CE-TOF-MSで分析した。カチオン性条件:サンプルを、Agilent CE-TOF System(Agilent Technologies Inc.,Santa Clara,CA,USA)により、融合シリカキャピラリ(i.d.50μm×0cm)に、50mbar、10秒を使用して注入した。カチオン性緩衝溶液(1Mのギ酸)を使用しており、CE電圧は30kVであった。ポジティブモード質量分析計条件:MSキャピラリ電圧:4.0V、ESI陽イオン化モード、m/z範囲50~1000。アニオン性条件:サンプルを、Agilent CE-TOF System(Agilent Technologies Inc.)により、融合シリカキャピラリ(i.d.50μm×0cm)に、50mbar、22秒を使用して注入した。アニオン性緩衝溶液(50mMの酢酸アンモニウム pH7.5)を使用しており、CE電圧は30kVであった。ネガティブモード質量分析計条件:MSキャピラリ電圧:3.5V、ESI陰イオン化モード、m/z範囲50~1000。
【0179】
代謝物アグマチン(N-(4-アミノブチル)グアニジン)をm/z 131.130m.uにおいて保持時間4.23分でのカチオン性モードで検出し、既知の標準物質に対して同定を実施した。報告される量は、ピーク面積である。
【0180】
アグマチンは、酵素アルギニンデカルボキシラーゼEC4.1.1.19により、アルギニンから代謝される(Piletz et al 2013、Taksande et al 2016)。図19に示すように、アグマチンのレベルは、アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)ATCC BAA 835(2.4E10-5)及びYCFAC増殖培地(4.0E10-5)と比較して、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)(8.7E10-5)で高い。2種の株の間の測定された差違と、培地レベルとから、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、アルギニンからアグマチンを産生しているが、アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)ATCC BAA835は、アグマチンを消費していることが示されている。
【0181】
細胞外ATPは、炎症を誘発することが分かっている(Cauwels et al 2014)。アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)及びアッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)BAA835を、増殖培地からATPを除去する能力に関して評価した。ムチン(10g/l)を含むYCFAC培地に、1%一晩培養物を播種し、1mMのATPを添加した。播種直後及び8時間の増殖後に、上清を回収した。ATPレベルを、標準的な技法を使用して測定した。細胞を5分にわたる10,000rpmでの遠心分離により分離し、次いで0.2μMフィルタでろ過した。細胞フリー上清を採取し、ATPレベルに関して分析した。
【0182】
ATP量を、時間0(図20A)及び8時間の増殖後(図20B)において、アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)ATCC BAA 835に関する上清中で検出した。同様に、時間0(図20C)及び8時間の増殖後(図20D)において、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)からの上清中のATPを推定した。アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)は、A.ムシニフィラ(A.muciniphila)ATCC BAA 835と比較して効率的にATPを除去し得た。
【0183】
全ゲノム比較を使用すると、ビタミンB12の合成に関与する酵素機構をコードする可能性があるオペロンは、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)に存在し、A.ムシニフィラ(A.muciniphila)ATCC BAA 835タイプ株には存在しない(表4)。この重要な補酵素を合成する能力から、このタイプ株と比較して、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)のより広い代謝能力が示唆される。
【表4】
【0184】
参考文献
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【0185】
配列
【化1】
【化2】
【化3】
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図14-1】
図14-2】
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【国際調査報告】