(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-10
(54)【発明の名称】切削ホイール用の駆動シャフトの周りのリングギャップを密封するためのシーリングユニットを有するトンネル掘削機
(51)【国際特許分類】
F16J 15/3252 20160101AFI20231002BHJP
F16J 15/16 20060101ALI20231002BHJP
F16J 15/3232 20160101ALI20231002BHJP
E21D 9/06 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
F16J15/3252
F16J15/16 B
F16J15/3232 201
E21D9/06 302Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022574833
(86)(22)【出願日】2021-08-17
(85)【翻訳文提出日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 EP2021072829
(87)【国際公開番号】W WO2022038132
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】202020104813.9
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516300597
【氏名又は名称】ヘーレンクネヒト アクツィエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HERRENKNECHT AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】ブルガー、ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェールマイヤー、ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】イゼーレ、ディートマー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー、フェリックス
【テーマコード(参考)】
2D054
3J006
3J043
【Fターム(参考)】
2D054BA03
2D054BB10
3J006AB02
3J006AE16
3J006AE50
3J043AA16
3J043BA08
3J043CA02
3J043DA09
(57)【要約】
【課題】稼働確実性のある取り扱いにより優れた、トンネル掘削機の駆動シャフトの周りのリングギャップを密封するためのシーリングユニット、並びに所定数のそのようなシーリングユニットを装備したトンネル掘削機を提示する。
【解決手段】シーリングレース(106)とシーリングキャリア(112)の間に構成されているリングギャップ(109)を密封するためのシーリングユニット(115)が、受容領域においてU字状に構成されたシーリングリングホルダ(118)を有し、シーリングリングホルダ(118)の受容領域は、シーリングリング(121)の固定領域(209)を取り囲んでいる。それにより信頼性があり、特にシーリングリング(121)の傾きの危険に対して信頼できるリングギャップ(109)内へのシーリングユニット(115)の挿入が達成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削機の切削ホイール用の駆動シャフト(103)の周りのリングギャップ(109)を密封するためのシーリングユニットであって、
曲げ剛性をもつ材料から成るシーリングリングホルダ(118)を備え、前記シーリングリングホルダ(118)は、少なくとも受容領域において、互いに向き合って位置する2つの側壁部(303、306;703、706;903、906)と、これらの側壁部(303、306;703、706;903、906)の半径方向外側の端部の間に延在する半径方向外側の上壁部(309;709;803、806;909)とを有するようにU字状に構成されており、
曲げ弾性をもつ材料から成るシーリングリング(121)を備え、前記シーリングリング(121)は、固定領域(209)と、少なくとも1つのシールリップ(212)とを有し、
前記固定領域(209)は、前記シーリングリングホルダ(118)の前記側壁部(303、306;703、706;903、906)と前記上壁部(309;709;803、806;909)により取り囲まれていること、
を特徴とするシーリングユニット。
【請求項2】
前記シーリングリングホルダ(118)と前記固定領域(209)は、相互に形状結合式でかみ合う構造部(312、315;318;403;603)を有すること、
を特徴とする、請求項1に記載のシーリングユニット。
【請求項3】
前記シーリングリング(121)又は各シーリングリング(121)は、弛緩状態において、軸方向において、該シーリングリング(121)を保持する前記シーリングリングホルダ(118)の端面部(1106)を越える張出部(1103)を有すること、
を特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のシーリングユニット。
【請求項4】
前記シーリングリング(121)又は各シーリングリング(121)は、リング中空室(1803)を有し、前記リング中空室(1803)は、少なくとも1つの接続流路(1806)を介し、前記シーリングリング(121)の外面部と流体力学的に接続状態にあること、
を特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のシーリングユニット。
【請求項5】
前記シーリングリングホルダ(118)は、通過流路(1809)を有し、前記通過流路(1809)は、前記シーリングリングホルダ(118)を通って延在し、前記接続流路(1806)と流体力学的に接続状態にあること、
を特徴とする、請求項4に記載のシーリングユニット。
【請求項6】
前記シーリングリング(121)は、前記固定領域(209)と前記シールリップ(212)又は各シールリップ(212)との間に、該シールリップ(121)に比べて減少された材料厚をもつ関節領域(215)を有すること、
を特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のシーリングユニット。
【請求項7】
前記固定領域(209)は、プリロードをもって前記シーリングリングホルダ(118)内に配設されていること、
を特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のシーリングユニット。
【請求項8】
前記側壁部(903、906)は、前記上壁部(909)から離れる方向で互いに向かって傾斜されていること、
を特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のシーリングユニット。
【請求項9】
前記シーリングリングホルダ(118)は、第1のシーリングリングホルダ部材(803;912)と第2のシーリングリングホルダ部材(860;915)とを有するように二部材式で構成されていること、及び、これらのシーリングリングホルダ部材(803、806:912、915)は、所定の接続手段(809、918)を介し、取り外し可能に互いに接続可能であること、
を特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のシーリングユニット。
【請求項10】
前記接続手段は、ねじ接続部(809)を含むこと、
を特徴とする、請求項9に記載のシーリングユニット。
【請求項11】
前記接続手段は、少なくとも1つのロック接続部(918)を含むこと、
を特徴とする、請求項9又は請求項10に記載のシーリングユニット。
【請求項12】
トンネル掘削機であって、
切削ホイール用の駆動シャフト(103)を備え、前記駆動シャフト(103)は、リングギャップ(109)の構成のもと、シーリングレース(106)と、前記シーリングレース(106)から半径方向に間隔を置いて配設されたシーリングキャリア(112)とにより取り囲まれており、
請求項1~11のいずれか一項に記載のシーリングユニット(115)を所定数で備え、これらのシーリングユニット(115)は、前記リングギャップ(109)内において軸方向で相前後して密封状態で配設されていること、
を特徴とするトンネル掘削機。
【請求項13】
所定数のブロック組立ボルト(1306)及び/又は個別組立ボルト(1403)が設けられており、これらを介し、所定数のシーリングユニット(115)がブロックごとに及び/又は個々に組立可能であること、
を特徴とする、請求項12に記載のトンネル掘削機。
【請求項14】
少なくとも1つのリング状の密封性試験工具(1603、1703)が設けられており、前記密封性試験工具(1603、1703)は、軸方向外側に配設されたシーリングユニット(115)と圧力密封式で接続状態にもたらすことができること、
を特徴とする、請求項12又は請求項13に記載のトンネル掘削機。
【請求項15】
前記リングギャップ(109)の挿入端部には、楔状に構成されたセンタリング補助部(1003)が配設されていること、
を特徴とする、請求項12~14のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削機の駆動シャフトの周りのリングギャップを密封するためのシーリングユニット、並びにそのようなシーリングユニットを装備したトンネル掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記非特許文献1から、曲げ剛性(曲げ耐性)をもつ材料から成るシーリングリングホルダと、曲げ弾性をもつ材料から成るシーリングリングとを有するシールユニットが公知であり、該シールユニットにおいて、シーリングリングは、シーリングリングホルダの片側で開放した凹部内に配設されている。摩擦結合によるシーリングリングの最終的な固定は、取り付けられた配設状態において、シーリングリングホルダの開放側に隣接して配設された更なるシーリングユニットのシールリングホルダにより行われる。
【0003】
下記特許文献1から、シーリングリングを純粋に摩擦結合で位置固定するためのU字状の受容領域を有するシーリングリングホルダが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】"Difficult Ground Solutions (DGS): New TBM Solutions carve a Path to Success"、D. Hardingによる専門記事、Proceedings of the World Tunnel Congress 2017 - Surface challenges - Underground solutions、ベルゲン、ノルウェー
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の基礎を成す課題は、稼働確実性のある取り扱いにより優れた、トンネル掘削機の駆動シャフトの周りのリングギャップを密封するためのシーリングユニット、並びに所定数のそのようなシーリングユニットを装備したトンネル掘削機を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、請求項1の特徴を有するシーリングユニット、並びに請求項12の特徴を有するトンネル掘削機により解決される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明を実施するための形態について説明する。
【0009】
本発明によるシーリングユニットでは、シーリングリングが固定領域においてシーリングリングホルダにより半径方向外側と軸方向外側で取り囲まれていることにより、各シーリングユニットは、信頼性をもって且つ特にシーリングリングの傾きの危険を伴うことなく、シーリングリングの受容のために設けられ且つトンネル掘削機の駆動シャフトの半径方向外側に設けられたリングギャップ内に挿入される。
【0010】
好ましい一実施形態において、シーリングリングホルダ内のシーリングリングの固定は、形状結合(形状の係合に基づく結合(いわゆるありつぎ結合) Formschluss)及び摩擦結合(摩擦力に基づく結合 Reibschluss)で行われる。それにより規定された形状結合及び摩擦結合が、既に組み立てられたシーリングユニットとして、はめ込みにより与えられている。形状結合と摩擦結合のこの組み合わせは、シーリングリングの事前組立の状態から存在し、稼働時にも維持されている。
【0011】
本発明の目的に適う更なる構成は、従属請求項の対象である。
【0012】
本発明の目的に適う更なる構成と利点は、図面の各図に関する実施例の以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】断面図として、一実施例による所定数のシーリングユニットを備えたトンネル掘削機の駆動シャフトの周りの一領域を示す図である。
【
図2】
図1の図面に比べて詳細化された断面図として、
図1に図示された実施例による所定数のシーリングユニットを示す図である。
【
図3】シーリングリングホルダとシーリングリングにおいて構成されている相互に形状結合式でかみ合う構造部の一実施例を示す図である。
【
図4】シーリングリングホルダとシーリングリングにおいて構成されている相互に形状結合式でかみ合う構造部の一実施例を示す図である。
【
図5】シーリングリングホルダとシーリングリングにおいて構成されている相互に形状結合式でかみ合う構造部の一実施例を示す図である。
【
図6】シーリングリングホルダとシーリングリングにおいて構成されている相互に形状結合式でかみ合う構造部の一実施例を示す図である。
【
図7】シーリングリングホルダとシーリングリングにおいて構成されている相互に形状結合式でかみ合う構造部の一実施例を示す図である。
【
図8】シーリングリングホルダとシーリングリングにおいて構成されている相互に形状結合式でかみ合う構造部の一実施例を示す図である。
【
図9】シーリングリングホルダとシーリングリングにおいて構成されている相互に形状結合式でかみ合う構造部の一実施例を示す図である。
【
図10】
図1に対応する断面図として、組立過程の開始時の一実施例による所定数のシーリングユニットを示す図である。
【
図11】断面図として、シーリングユニットの更なる一構成を示す図である。
【
図12】断面図として、変更形態の組立構成において、
図2による配設状態にならい、
図11に図示された更なる構成による所定数のシーリングユニットを示す図である。
【
図13】断面図として、所定数のブロック組立ボルトを用いた個々のシーリングユニットの組立時の中間状態を示す図である。
【
図14】断面図として、個別固定ねじとブロック組立ボルトを用いて保持されている複数のシーリングユニットの最終組立状態を示す図である。
【
図15】断面図として、ブロック組立ボルト上に押し込む前の状態で、最終組立前に互いに接続された複数のシーリングユニットの一ブロックを示す図である。
【
図16】断面図として、中間組立状態にある2つのシーリングユニットと、圧力試験を実行するための押さえ工具とを示す図である。
【
図17】断面図として、完全に組み立てられた所定数のシーリングユニットと、圧力試験を実行するための押付工具とを示す図である。
【
図18】圧力のない状態で、内部に位置するリング中空室を備えたシーリングリングの更なる一構成を示す図である。
【
図19】圧力が加えられた状態で、内部に位置するリング中空室を備えたシーリングリングの更なる一構成を示す図である。
【実施例】
【0014】
図1は、断面図として、トンネル掘削機の
図1では非図示の切削ホイール用の駆動シャフト103の周りの領域を示している。駆動シャフト103の半径方向外側には、シーリングレース(シーリング軌道部)106が設けられており、シーリングレース106は、半径方向外側で、軸方向において軸方向内側から、即ち(駆動シャフト103を横に見て)
図1の図面では右側から、軸方向外側に向かい、即ち(駆動シャフト103を横に見て)
図1の図面では左側に向かい、延在するリングギャップ(環状ギャップ)109の構成のもと、シーリングキャリア112により取り囲まれている。
【0015】
更に
図1では、一実施例による所定数のシーリングユニット115が図示されており、これらのシーリングユニット115は、後続段落で詳細に説明する組立過程の実行後には、リングギャップ109内において軸方向で互いに隣接して配設されている。
【0016】
各シーリングユニット115は、本質的なコンポーネントとして、
図1に図示された実施例では一部材式で且つ受容領域においてU字状に構成されているシーリングリングホルダ118と、軟弾性(軟エラスチック)材料から成るシーリングリング121とを有し、またシーリングリング121は、後続段落で様々な実施例に基づいて説明されるように、とりわけ組立過程中に、しかしまた規定どおりの使用時においても、専ら対応のシーリングリングホルダ118により、耐傾き性をもって、摩擦結合と形状結合の組み合わせを介して固定されている。
【0017】
図2は、
図1の図面に比べて拡大された断面図として、
図1によるシーリングユニット115の実施例を示しており、この際、
図1の切断面と
図2の切断面は、異なるところに置かれている。
図2から、ここで図示された実施例では、シーリングリングホルダ118が半径方向外側で受容溝部203を有することが見てとれ、受容溝部203内には、軟弾性材料から成り、取付状況において受容溝部203を満たす横断面を有し、リング形状に構成された外側シーリング206が設けられている。外側シーリング206により、連続したシーリングユニット115は、半径方向外側でシーリングキャリア112に対して信頼性をもって密封されている。
【0018】
更に
図2の図面から、シーリングリング121は、比較的大きい(massig)固定領域209と、シールリップ212とを有するように構成されていることが見てとれ、この際、シールリップ212は、目的に適い、関節領域(ジョイント領域)215を介して固定領域209と接続されており、関節領域215は、シールリップ212に比べて減少された材料厚を有する。
【0019】
各シーリングリング121の固定領域209は、シーリングリングホルダ118のU字状に構成された受容領域内に配設されており、それに対し、シールリップ212は、目的に適い、半径方向に所定のプリロード(予負荷・予応力)をもってシーリングレース106の半径方向外面部に接している。
【0020】
目的に適い、軸方向で外側に位置するシーリングリングホルダ118は、それらにより保持されるシーリングリング121とは(軸方向)反対側で、軸方向内側に突出するカウンタノーズ218を有し、カウンタノーズ218は、リングギャップ109内の規定どおりの配設状態において、
図2に図示されているように、隣接するシーリングリング121の固定領域209に下方から係合し、(隣接する)他のシーリングユニット115のこのシーリングリング121を追加的に固定する。
【0021】
更に
図2の図面から、シーリングキャリア112が、軸方向で内側に位置する側で、半径方向内側に張り出すストッパリング221を有することが見てとれ、ストッパリング221は、組立過程中に最初に挿入されたシーリングユニット115のために、即ち
図2の図面では最も右側に位置するシーリングユニット115のために、軸方向のストッパを構成する。ストッパリング221には、後方係合ノーズ224が構成されており、後方係合ノーズ224は、カウンタノーズ218に対応し、ストッパリング221に隣接するシーリングリング121の固定領域209に追加的な固定のために下方から係合する。
【0022】
図2の図面において、ストッパリング221の反対側(軸方向で反対側)には、閉鎖リング227が、半径方向内側に位置する封止リング230とともに図示されており、封止リング230は、リングギャップ109内に挿入された複数のシーリングユニット115を固定するようにリングギャップ109を軸方向で封止する。封止リング230には、同様に後方係合ノーズ233が構成されており、後方係合ノーズ233は、封止リング230に隣接するシーリングリング121の固定領域209に追加的な固定のために下方から係合する。
【0023】
更に
図2の図面から、シーリングリングホルダ118には、それぞれ半径方向に延在する通過構成部(通過穴)236が構成されていることが見てとれ、通過構成部236は、組立過程の完了後のその最終的なポジションに依存し、
図2の図面の配設状態において左側では、供給されるグリース又は適切な媒体をチャンバ(空洞)に提供するために用いられ、
図2の図面の配設状態において中央では、シールリップ212を潤滑するオイル又は適切な媒体をチャンバに提供するために用いられ、そして最後に、
図2の図面で右側の配設位置では、漏れがある場合に他のチャンバからの汚染物や媒体残留物を受容するためのチャンバを提供するように構成されている。
【0024】
それらの通過構成部236は、後続段落で詳細に説明するように、閉鎖圧力及び/又は開放圧力の検査などの圧力試験を実行するために、例えば圧縮空気のような、圧力下にある流体を供給するためにも用いられる。
【0025】
また
図2の図面から、複数のシーリングユニット115の取り付けられた配設状態において、シーリングキャリア112と封止リング230の間の力の流れが、軸方向で互いに隣接するシーリングリングホルダ118を介して生じることを見ることができ、それにより軸方向におけるシーリングリングホルダ118の摺動性に基づいて摩擦損失が生じることは殆どなく、シーリングリングホルダ118を介したプリロード力(予負荷力)の均等な分配が行われる。更に各シーリングリングホルダ118は、各シーリングリングホルダ118により保持されたシーリングリング121に加えられる荷重を吸収し、それによりシーリングリング121の固定領域209にかけられる荷重は、比較的僅かである。
【0026】
図3は、
図1と
図2によるシーリングユニット115の実施例をシーリングリングホルダ118のU字状に構成された受容領域の領域において示している。この受容領域は、
図3による実施例では、互いに向き合って位置する短い側壁部303及び長い側壁部306と、半径方向外側に位置するこれらの側壁部303、306の端部の間に延在する上壁部(デッキ壁部)309とにより構成されている。長い側壁部306には、上壁部309から半径方向に間隔をおいて、軸方向に突出する肩部312が構成されており、肩部312は、シーリングリング121の固定領域209において肩部312に対して相補的に構成された窪み部315に係合する。肩部312と窪み部315は、シーリングリングホルダ118と固定領域209において相互に形状結合式でかみ合う構造部の構成部分である。
【0027】
更なるこの種の構造部は、短い側壁部303の半径方向内側に突出する端部と、この端部に隣接(当接)する固定領域209の縁部リング318とにより構成されている。
【0028】
シーリングリングホルダ118内に固定領域209を特に信頼性をもって固定するためには、固定領域209が受容領域の寸法に比べて弛緩状態においてある程度の過大寸法を有することが目的に適い、それにより受容領域内に固定領域209をはめ込むときには、固定をより良くするある程度のプリロード(予負荷)が固定領域209内に存在することになる。
【0029】
更に
図3の図面から、上壁部309とは(半径方向)反対側の、長い側壁部306の端部には、軸方向で肩部312を越えて突出するストッパノーズ321が構成されていることが見てとれ、ストッパノーズ321には、固定領域209とシールリップ212の間に構成された容積部に圧力が加わる場合に、シールリップ212が当接する。
【0030】
図4は、断面図として、シーリングユニット115の他の一実施例を示しており、この際、
図3に基づいて説明された実施例と、
図4による実施例とにおいて、互いに対応する要素には同じ参照符号が付けられており、これらの要素について以下に詳細な説明は加えないものとする。
図4による実施例は、
図3による実施例と異なり、短い側壁部303において、軸方向で長い側壁部306の方向に突出する後方係合ノーズ403を有し、後方係合ノーズ403は、対応の構造部を構成するとともに、固定領域209と形状結合式で係合することになる。それにより固定領域209の固定は、更に改善されている。
【0031】
図5は、断面図として、シーリングユニット115の他の一実施例を示しており、この際、
図3による実施例と、
図5による実施例とにおいて、互いに対応する要素には同じ参照符号が付けられており、これらの要素について以下に詳細な説明は加えないものとする。
図5による実施例は、受容領域と固定領域209に関し、
図3による実施例とは、長い側壁部306が、この側壁部306の内面部と上壁部309の内面部との間に鋭角を構成するように上壁部309の方向に傾斜されていることにより異なり、この際、
図5による実施例の固定領域209は、受容領域を形状結合式で満たしている。それにより受容領域からのシーリングリング121の固定領域209の意図しない傾きに対する保護機能が改善されている。
【0032】
図6は、断面図として、シーリングユニット115の他の一実施例を示しており、この際、上述の実施例と、
図6による実施例とにおいて、互いに対応する要素には同じ参照符号が付けられており、これらの要素について以下に詳細な説明は加えないものとする。
図6による実施例では、長い側壁部306も、短い側壁部303に構成された後方係合ノーズ403に向き合って位置する後方係合ノーズ603を有する。これらの後方係合ノーズ403、603は、シーリングリング121の固定領域209に構成されたノーズ溝部606、609内に係合する。後方係合ノーズ403、603とノーズ溝部606、609によるそのように構成された相互に形状結合式でかみ合う構造部により、シーリングリング121の固定領域209は、シーリングリングホルダ118の受容領域内で極めて安定して固定される。
【0033】
図7は、断面図として、シーリングユニット115の他の一実施例を示しており、このシーリングユニット115は、シーリングリングホルダ118と、複数のシールリップ212を有するシーリングリング121とを備えるように構成されており、この際、上述の実施例と、
図7による実施例とにおいて、互いに対応する要素には同じ参照符号が付けられており、これらの要素について以下に詳細な説明は加えないものとする。
図7による実施例のシーリングリングホルダ118は、半径方向外側で上壁部709を介して互いに接続されている2つの比較的短い側壁部703、706を有する。これらの側壁部703、706は、上壁部709から離れたそれらの端部において、互いに向かうように指向する爪状の突出部を有し、これらの突出部は、シーリングリング121の固定領域209に構成された爪溝部内に係合する。軸方向で互いに間隔を置いてのみ配設された所定数のシールリップ212を有するようにシーリングリング121を構成することにより、固定領域209への移行領域ではシールリップ212の剛性が比較的高いにもかかわらず、良好な密封機能が得られる。シールリップ212は、それらの自由端部の方向に先細りして斜めに固定領域209から離れていくように延在する。
【0034】
図8は、断面図として、シーリングユニット115の他の一実施例を示しており、
図3による実施例と、
図8による実施例とにおいて、互いに対応する要素には同じ参照符号が付けられており、これらの要素について以下に詳細な説明は加えないものとする。
図8による実施例は、
図3による実施例とは、シーリングリングホルダ118が、第1のシーリングリングホルダ部材803と第2のシーリングリングホルダ部材806を用いた二部材式で構成されていることにより異なっている。これらのシーリングリングホルダ部材803、806は、組み立てられた構成状態において上壁部309を構成し、この領域で接続手段としてのねじ接続部809を介して取り外し可能に互いに固定的に接続されている。それによりねじ接続部809がまだ完全には締め付けられていないときに、シーリングリング121の固定領域209をシーリングリングホルダ118の受容領域内に挿入し、ねじ接続部809の締め付けにより最終的に固定することができる。この実施例は、目的に適い、固定領域209が受容領域に比べて過大寸法を有する場合に使用される。
【0035】
図9は、断面図として、シーリングユニット115の他の一実施例を示しており、この実施例では、2つの等しい長さの側壁部903、906と、これらの側壁903、906をこれらの半径方向外側の端部で接続する上壁部909とから構成されたシーリングリングホルダ118が、第1のシーリングリングホルダ部材912と第2のシーリングリングホルダ部材915とを有するように二部材式で構成されている。これらのシーリングリングホルダ部材912、915は、互いに向かって指向する上壁部所定部分において、接続手段として形状結合式でかみ合うロック接続部918を有するように構成されており、この際、ロック接続部918の弛緩された構成状態において、側壁部903、906は、半径方向内側に向かい、互いに近づくように延在し、それにより横断面で実質的に直方体形状に構成された固定領域209を受容領域内にはめ込むことで、ロック接続部918は、プリロード(予負荷)を受けることになり、プリロードが取り除かれるまで取り外し不能にロックされることになる。
【0036】
シーリングリングホルダ118のU字状の受容領域における摩擦結合及び形状結合の双方を介した固定に基づく組み合わせは、特に、しかしそれだけではないが、特にトンネル掘削機の掘削チャンバ内の圧力が動的に脈動する場合の稼働において、利点を有する。この種の固定方式は、好ましくは、製造コストを低く抑え且つ減少された組立手間と分解手間を提供するために使用される。それに加え、後続段落で詳細に説明するように、1つシーリングユニット115ないし複数のシーリングユニット115の結合体の交換、整備、及び修理を通常の手間で実行することができる。
【0037】
非図示の一実施形態では、シーリングリングホルダ118内のシーリングリング121は、材料結合(材料の接合による結合)により行われる。この種の材料結合は、例えば、シーリングリングホルダ118内にシーリングリング121を接着して入れることにより、又は金属材料から製造されたシーリングリングホルダ118内にシーリングリング121を加硫処理することにより実行することができる。材料結合によるこの種の固定は、特にトンネル掘削機の稼働時に継続的な高周波振動がある場合に目的に適い、それにより比較してみると高い修理手間と修理費用を甘受すべきではあるが、稼働時のシーリングリング121の傾きを比較的信頼性をもって回避することができる。
【0038】
図10は、
図1に対応する断面図として、リングギャップ109が間に構成されているシーリングレース106とシーリングキャリア112から成る装置をシーリングユニット115の組立過程の開始時で示している。
図10の図面では、リングギャップ109の楔状に拡開された挿入側にシーリングユニット115が配置されており、まだ比較的急勾配の状態で置かれているシーリングユニット115のシールリップ212が、挿入方向で半径方向外側に向かって肉厚となる楔状の挿入補助部(センタリング補助部)1003に当接している。既に部分的にシーリングレース106とシーリングキャリア112の間に図示されているこのシーリングユニット115が更に挿入されることで、シールリップ212は、リールリップ212がシーリングレース106の半径方向外面部に接するに至るまで、更に挿入補助部1003上を滑動する。この際、シーリングリングホルダ118の半径方向外面部は、シーリングキャリア112の半径方向内面部に沿って滑動し、この際、シーリングリング121の半径方向外面部は、シーリングリングホルダ118により保護されており、従ってシーリングキャリア112と接触することはない。
【0039】
この際、
図10ではリングギャップ109内に既に部分的に入り込んで図示されたシーリングユニット115は、シールリップ212が押込方向で前方を向くように配置されており、この際、押込過程は、シーリングユニット115が、シーリングリング121の固定領域209に後方から係合するための後方係合ノーズ224を有するように構成されたストッパリング221に当接すると直ちに終了される。引き続き、更なるシーリングユニット115の挿入が、場合により
図10の図面では極めて概要的に図示された組立工具1006を用いてシーリングリングホルダ118の受容領域内にシーリングリング121の固定領域209をはめ込んだ後に行われ、この際、これらの更なるシーリングユニット115は、該当のシールリップ212が挿入方向で後側に配置されているように配置されている。
【0040】
そして組立過程の完了後には、
図1による配設構成が得られる。
【0041】
図11は、断面図として、
図3に基づいて説明されたシーリングユニット115の実施例の更なる一構成を示しており、この際、
図3による実施例と、
図11による更なる構成とにおいて、同じ参照符号の付いた互いに対応する要素については、説明の反復を避けるために、以下に詳細な説明は加えないものとする。
図11による更なる構成において、シーリングリング121は、縁部リング318を有するように構成されており、縁部リング318は、シーリングリング121の弛緩状態において、張出部1103により、軸方向で外側に向かう上壁部309の端面部1106を越えて張り出している。この際、軸方向における張出部1103の寸法は、固定領域209におけるシーリングリング121の弾性に依存し、次のように構成される、即ち上壁部309と固定領域209の形状結合を機能的に損なうことなく、複数のシーリングユニット115の取り付けられた配設状態においてそれぞれの縁部リング318が端面部1106と面一でそろうように構成される。従って張出部1103を構成することにより、隣接するシーリングリングホルダ118は、半径方向で互いに密封される。
【0042】
更にシーリングリングホルダ118は、その半径方向外側に向かって指向する上面部1109において、所定数の外側シーリング受容溝部1112を有し、これらの外側シーリング受容溝部1112には、
図11では非図示のシーリングキャリア112に対してシーリングリングホルダ118を密封するための外側シーリング206(
図2を参照)がはめ込み可能である。
【0043】
図12は、
図2の図面に対応する断面図として、
図11に基づいて説明された更なる構成による所定数のシーリングユニット115を、取り付けられた配設状態において示しており、この際、
図2の図面と
図12の図面に関して説明の反復を避けるために、互いに対応する要素には同じ参照符号が付けられ、これらの要素について以下に部分的に再度の詳細な説明は加えないものとする。
図12の図から、複数のシーリングユニット115が、所定数の個別リング固定ねじ(個別リング固定ねじボルト)1203を介し、
図12の図面で右側に配設された軸方向で内側のシーリングユニット115についてはシーリングキャリア112と接続され、或いは軸方向で外側に位置するシーリングユニット115についてはそれぞれ軸方向でより内側の隣接するシーリングユニット115と接続されていることが見てとれる。軸方向で最も外側のシーリングユニット115は、閉鎖ねじ(閉鎖ねじボルト)1206を用い、
図2による封止リング230に比べて半径方向でより小さく寸法付けられた封止リング230と取り外し可能に接続されており、封止リング230には、軸方向で外側の領域でシーリングキャリア112とシーリングレース106の間の開口部を実質的に完全に覆う閉鎖リング1209が接続されている。
【0044】
閉鎖リング1209は、閉鎖リング固定ねじ(閉鎖リング固定ねじボルト)1212を用いてシーリングキャリア112と接続されており、それにより複数のシーリングユニット115は、今一度結合体として固定されている。閉鎖リング1209自体は、保護のために軸方向外側でカバーリング1215により覆われている。
【0045】
更に
図12から、ストッパリング221に隣接するシーリングユニット115が、シーリングリングホルダ118に配設された半径方向縁部シールリング1218を用い、隣接するシーリングユニット115に対する半径方向の密封部を構成していることが見てとれる。
【0046】
図13は、
図12に対応する断面図として、
図11をもとに変更された更なる一構成による所定数のシーリングユニット115を示しており、この際、
図12の図面と
図13の図面に関して説明の反復を避けるために、互いに対応する要素には同じ参照符号が付けられ、これらの要素について以下に部分的に再度の詳細な説明は加えないものとする。
図13による実施例では、シーリングリングホルダ118内に、軸方向に延在する複数の第1の通過穴1303が構成されており、これらの通過穴1303は、それぞれのシーリングリングホルダ118を横切っている。更に
図13の図から、所定数のブロック組立ボルト1306が設けられており、これらのブロック組立ボルト1306が、一方の端部でストッパリング221内にねじ込まれており、ストッパリング221から離れていくように軸方向に延在していることが見てとれる。
【0047】
図13から見てとれるように、シーリングユニット115は、軸方向外側でブロック組立ボルト1306上に差し込まれ、ストッパリング221に当接するに至るまでないし軸方向でより内側に位置するシーリングユニット115に当接するに至るまで押し込まれる。従って十分に大きく寸法付けられたブロック組立ボルト1306により、複数のシーリングユニット115が個別ねじ固定部を用いることなく互いに固定される。
【0048】
図14は、
図12と
図13に対応する断面図として、
図13による実施例の更なる一構成を示しており、この際、
図13の図面と
図14の図面に関して説明の反復を避けるために、互いに対応する要素には同じ参照符号が付けられ、これらの要素について部分的に再度の詳細な説明は加えないものとする。
図14の図面から、
図13による実施例に比べ、シーリングユニット115による結合体の安定性を高めるために、ブロック組立ボルト1306に加え、個別組立ボルト1403が設けられており、これらの個別組立ボルト1403は、シーリングリングホルダ118内に構成され且つブロック組立ボルト1306のための第1の通過穴1303に対して周方向でずらされて位置する第2の通過穴1406を通って延在し、これらの個別組立ボルト1403を用い、軸方向で隣接するシーリングリングホルダ118がボルト固定可能であることが見てとれ、それによりシーリングユニット115による結合体の安定性を高めるために、隣接するシーリングリングホルダ118を互いに直接的に対として結合させることもできる。
【0049】
図15は、断面図として、
図14に基づいて説明された二組の通過穴1303、1406を有するシーリングユニット115の構成を事前組立状態にあるシーリングユニット115において示しており、この事前組立状態において、複数のシーリングユニット115は、
図15では非図示の個別組立ボルト1403を介し、既に1つの組立ブロックを構成するように互いにボルト固定され、ブロック組立ボルト1306上に押し込められるように準備されている。それによりシーリングレース106とシーリングキャリア112の間に構成されたリングギャップ109の外側で複数のシーリングユニット115の特に効率的な事前組立状態が得られる。
【0050】
本発明によるトンネル掘削機の目的に適う実施形態(複数)では、リング状に構成された密封性試験工具が設けられており、これらについて、以下で詳細に説明する。
【0051】
図16は、
図12に部分的に対応する断面図として、密封性試験工具の一実施例において、リング状に構成された押さえ工具(ダウンホールドツール)1603を示しており、押さえ工具1603は、リングギャップ109内に配置され、工具固定ねじ(工具固定ねじボルト)1606を用い、密封性試験のために、軸方向外側に位置するシーリングリングホルダ118とねじ固定されている。この際、シーリングユニット115の方を向いた押さえ工具1603の端面部は、シーリングリング121の固定領域209の領域において、シーリングリングホルダ118の対応領域のようにカウンタノーズ218を有するように構成されているが、この種のシーリングリングホルダ118と異なり、シーリングレース106に隣接する側でシールリップストッパ1609を有しており、シールリップストッパ1609を用い、シールリップストッパ1609に隣接するシールリップ212が運動に抗して固定可能である。更に
図16の図から、シールリップストッパ1609の領域には、軸方向に関して密封する工具シーリング1612が設けられていることが見てとれる。
【0052】
図16に図示された配設状態において、押さえ工具1603に隣接するシーリングユニット115内に構成された通過構成部236に対し、圧縮空気のような圧力下にある流体を加えることにより、軸方向内側に配設され且つストッパリング221と接続されたシーリングユニット115の開放圧力を検査することができる。
【0053】
図17は、
図12に対応する断面図として、リングギャップ109内に配設された複数のシーリングユニット115の集合体をリング状に構成された他の密封性試験工具としての押付工具1703とともに示している。押付工具1703は、押さえ工具1603のように、工具固定ねじ(工具固定ねじボルト)1606を用い、軸方向外側に位置するシーリングユニット115のシーリングリングホルダ118にねじ固定され、シーリングリング121の固定領域209の領域で固定領域209に後方から係合するためにカウンタノーズ218を有するように構成されている。
【0054】
しかし押さえ工具1603(
図16を参照)と異なり、シーリングレース106に隣接する押付工具1703の領域は、押付工具1703に隣接するシールリップ212の自由端から軸方向で離間されており、それによりこのシールリップ212は、ある程度に至るまで可動である。押付工具1703も、シーリングレース106に隣接する押付工具シーリング1706を介して軸方向に関して密封されている。
【0055】
押付工具1703は、圧力取入開口部1709を有するように構成されており、圧力取入開口部1709は、軸方向で押付工具1703を通って延在し、圧力下にある流体を、軸方向内側に配設されたシーリングリング121と押付工具1703との間に構成された試験リング空間1712内に供給可能である。それにより押付工具1703に隣接するシーリングリング121の機能圧力とも呼ばれる閉鎖圧力が検査可能である。
【0056】
更に各シーリングユニット115は、通過構成部236を有するように構成されているので、軸方向外側で最後に取り付けられた又は軸方向で最も外側に即ち端部側に取り付けられたシーリングユニット115に配置された押付工具1703を用い、最後に取り付けられたシーリングユニット115又は既に取り付けられたシーリングユニット115の結合体で必要とされる閉鎖圧力と開放圧力が守られているか否かについて、様々な圧力構成(圧力コンフィギュレーション)が検査される。
【0057】
図18は、断面図として、シーリングユニット115の更なる一構成を示しており、このシーリングユニット115では、シーリングリング121が、その固定領域209において、目的に適い、周方向に延在するリング中空室1803を有するとともにシールリップ212に向き合った領域で比較的僅かな残材料厚を有するように構成されている。リング中空室1803は、所定数の接続流路1806を介し、流体力学的に固定領域209の外面部と接続状態にある。接続流路1806には、シーリングリングホルダ118内に構成された通過流路1809が接続し、また通過流路1809は、シーリングキャリア112内に構成された流体流路1812と接続状態にある。
【0058】
シーリングユニット115の、ないしシーリングユニット115のための、リング中空室1803と、接続流路1806と、通過流路1809と、流体流路1812とによる流体力学的な接続構造は、該当のシールリップ212の運動特性に作用を及ぼすためにないしシールリップ212の位置に作用を及ぼすために、流体で満たされ、目的に適い、非圧縮性ないし実質的に非圧縮性の流体で満たされている。
【0059】
図18は、圧力のない状態で前記の流体力学的なシステムを示しており、この状態において、リング中空室1803は、比較的小さい静止容積を有する。
【0060】
図19は、リング中空室1803と、接続流路1806と、通過流路1809と、流体流路1812とから成り、圧力下に置かれた流体力学的な接続構造を伴う、
図18による構成を示しており、ここでは、リング中空室1803の容積が、
図18に図示された静止容積に対し、作動容積として、シールリップ212に向き合った固定領域209の領域がシールリップ212の方に突出して前方に膨らんでおり且つ
図19の図面ではシールリップ212に当接するように拡大されている。
【0061】
従って上記の接続構造内を占める圧力に依存し、閉鎖圧力ないし開放圧力の検査を実行することができる。
【0062】
更に前記の接続構造内に適切な圧力を加えることで、シールリップ212を、関節領域215の負荷解除のために制限又は抑制することができる。
【符号の説明】
【0063】
103 駆動シャフト
106 シーリングレース
109 リングギャップ
112 シーリングキャリア
115 シーリングユニット
118 シーリングリングホルダ
121 シーリングリング
203 受容溝部
206 外側シーリング
209 固定領域
212 シールリップ
215 関節領域
218 カウンタノーズ
221 ストッパリング
224 後方係合ノーズ
227 閉鎖リング
230 封止リング
233 後方係合ノーズ
236 通過構成部
303 短い側壁部
306 長い側壁部
309 上壁部
312 肩部
315 窪み部
318 縁部リング
321 ストッパノーズ
403 後方係合ノーズ
603 後方係合ノーズ
606 ノーズ溝部
609 ノーズ溝部
703 側壁部
706 側壁部
709 上壁部
803 第1のシーリングリングホルダ部材
806 第2のシーリングリングホルダ部材
809 ねじ接続部
903 側壁部
906 側壁部
909 上壁部
912 第1のシーリングリングホルダ部材
915 第2のシーリングリングホルダ部材
918 ロック接続部
1003 挿入補助部
1006 組立工具
1103 張出部
1106 端面部
1109 上面部
1112 外側シーリング受容溝部
1203 個別リング固定ねじ
1206 閉鎖ねじ
1209 閉鎖リング
1212 閉鎖リング固定ねじ
1215 カバーリング
1218 半径方向縁部シールリング
1303 第1の通過穴
1306 ブロック組立ボルト
1403 個別組立ボルト
1406 第2の通過穴
1603 押さえ工具
1606 工具固定ねじ
1609 シールリップストッパ
1612 工具シーリング
1703 押付工具
1706 押付工具シーリング
1709 圧力取入開口部
1712 試験リング空間
1803 リング中空室
1806 接続流路
1809 通過流路
1812 流体流路
【手続補正書】
【提出日】2022-03-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削機
であって、
切削ホイール用の駆動シャフト(103)を備え、前記駆動シャフト(103)は、リングギャップ(109)の構成のもと、シーリングレース(106)と、前記シーリングレース(106)から半径方向に間隔を置いて配設されたシーリングキャリア(112)とにより取り囲まれており、
所定数のシーリングユニット(115)を備え、これらのシーリングユニット(115)は、前記リングギャップ(109)内において軸方向で相前後して密封状態で配設されており、
前記シーリングユニット(115)は、
曲げ剛性をもつ材料から成るシーリングリングホルダ(118)を備え、前記シーリングリングホルダ(118)は、少なくとも受容領域において、互いに向き合って位置する2つの側壁部(303、306;703、706;903、906)と、これらの側壁部(303、306;703、706;903、906)の半径方向外側の端部の間に延在する半径方向外側の上壁部(309;709;803、806;909)とを有するようにU字状に構成されており、
曲げ弾性をもつ材料から成るシーリングリング(121)を備え、前記シーリングリング(121)は、固定領域(209)と、少なくとも1つのシールリップ(212)とを有し、
前記固定領域(209)は、前記シーリングリングホルダ(118)の前記側壁部(303、306;703、706;903、906)と前記上壁部(309;709;803、806;909)により取り囲まれて
おり、それによりそれらのシーリングユニット(115)の各シーリングユニット(115)は、前記シーリングリングの傾きの危険を伴うことなく前記リングギャップ(109)内に挿入可能であり、
軸方向で互いに隣接する前記シーリングリングホルダ(118)を介して力の流れが生じ、それにより軸方向における前記シーリングリングホルダ(118)の摺動性に基づいて摩擦損失が生じることは殆どなく、前記シーリングリングホルダ(118)を介したプリロード力の均等な分配が行われ、各シーリングリングホルダ(118)は、各シーリングリングホルダ(118)により保持された前記シーリングリング(121)に加えられる荷重を吸収し、それにより前記シーリングリング(121)の固定領域(209)にかけられる荷重は、比較的僅かであること、
を特徴とする
トンネル掘削機。
【請求項2】
前記シーリングリングホルダ(118)と前記固定領域(209)は、相互に形状結合式でかみ合う構造部(312、315;318;403;603)を有すること、
を特徴とする、請求項1に記載の
トンネル掘削機。
【請求項3】
前記シーリングリング(121)又は各シーリングリング(121)は、弛緩状態において、軸方向において、該シーリングリング(121)を保持する前記シーリングリングホルダ(118)の端面部(1106)を越える張出部(1103)を有すること、
を特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の
トンネル掘削機。
【請求項4】
前記シーリングリング(121)又は各シーリングリング(121)は、リング中空室(1803)を有し、前記リング中空室(1803)は、少なくとも1つの接続流路(1806)を介し、前記シーリングリング(121)の外面部と流体力学的に接続状態にあること、
を特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の
トンネル掘削機。
【請求項5】
前記シーリングリングホルダ(118)は、通過流路(1809)を有し、前記通過流路(1809)は、前記シーリングリングホルダ(118)を通って延在し、前記接続流路(1806)と流体力学的に接続状態にあること、
を特徴とする、請求項4に記載の
トンネル掘削機。
【請求項6】
前記シーリングリング(121)は、前記固定領域(209)と前記シールリップ(212)又は各シールリップ(212)との間に、該シールリップ(121)に比べて減少された材料厚をもつ関節領域(215)を有すること、
を特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の
トンネル掘削機。
【請求項7】
前記固定領域(209)は、プリロードをもって前記シーリングリングホルダ(118)内に配設されていること、
を特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の
トンネル掘削機。
【請求項8】
前記側壁部(903、906)は、前記上壁部(909)から離れる方向で互いに向かって傾斜されていること、
を特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の
トンネル掘削機。
【請求項9】
前記シーリングリングホルダ(118)は、第1のシーリングリングホルダ部材(803;912)と第2のシーリングリングホルダ部材(860;915)とを有するように二部材式で構成されていること、及び、これらのシーリングリングホルダ部材(803、806:912、915)は、所定の接続手段(809、918)を介し、取り外し可能に互いに接続可能であること、
を特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の
トンネル掘削機。
【請求項10】
前記接続手段は、ねじ接続部(809)を含むこと、
を特徴とする、請求項9に記載の
トンネル掘削機。
【請求項11】
前記接続手段は、少なくとも1つのロック接続部(918)を含むこと、
を特徴とする、請求項9又は請求項10に記載の
トンネル掘削機。
【請求項12】
前記シーリングリングホルダ(118)には、通過構成部(236)が構成されており、前記通過構成部(236)は、組立過程の完了後のそのポジションに依存し、供給されるグリース、オイル、又は適切な媒体をチャンバに提供するように、ないし圧力試験を実行するために、圧力下にある流体を供給するように構成されていること、
を特徴とする
、請求項1~11のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項13】
所定数のブロック組立ボルト(1306)及び/又は個別組立ボルト(1403)が設けられており、これらを介し、所定数のシーリングユニット(115)がブロックごとに及び/又は個々に組立可能であること、
を特徴とする、請求項
1~12
のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項14】
少なくとも1つのリング状の密封性試験工具(1603、1703)が設けられており、前記密封性試験工具(1603、1703)は、軸方向外側に配設されたシーリングユニット(115)と圧力密封式で接続状態にもたらすことができること、
を特徴とする、請求項
1~13
のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項15】
前記リングギャップ(109)の挿入端部には、楔状に構成されたセンタリング補助部(1003)が配設されていること、
を特徴とする、請求項
1~14のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第2325530号
【特許文献2】中国特許出願公開第101280847号
【特許文献3】米国特許出願公開第2012/0098209号
【特許文献4】独国特許出願公開第102016208085号
【特許文献5】米国特許第4844255号
【特許文献6】韓国公開特許第20010109702号
【特許文献7】米国特許出願公開第2016/0059950号
【国際調査報告】