(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-10
(54)【発明の名称】燃料電池で金属ナノ粒子を使用してアンモニアを合成する方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1213 20160101AFI20231002BHJP
C25B 1/27 20210101ALI20231002BHJP
C25B 13/04 20210101ALI20231002BHJP
C25B 11/052 20210101ALI20231002BHJP
C25B 11/031 20210101ALI20231002BHJP
C01C 1/04 20060101ALI20231002BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20231002BHJP
H01M 8/1246 20160101ALI20231002BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20231002BHJP
H01M 4/92 20060101ALI20231002BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20231002BHJP
C25B 13/07 20210101ALI20231002BHJP
C25B 11/081 20210101ALI20231002BHJP
【FI】
H01M8/1213
C25B1/27
C25B13/04 301
C25B11/052
C25B11/031
C01C1/04 D
H01M8/12 101
H01M8/1246
H01M4/86 U
H01M4/92
H01M4/90 M
H01M4/86 T
C25B13/07
C25B11/081
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501251
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 US2021040483
(87)【国際公開番号】W WO2022010877
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(71)【出願人】
【識別番号】523006136
【氏名又は名称】コリア アドバンスト インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カティカネニ、サイ ピー
(72)【発明者】
【氏名】イ、クンホ
(72)【発明者】
【氏名】イ、カンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ぺ、ジュンミョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ウチョル
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4K011AA11
4K011AA24
4K011DA11
4K021AB25
4K021DB43
4K021DB53
5H018AA06
5H018EE03
5H018EE04
5H126AA02
5H126AA06
5H126BB06
(57)【要約】
本開示の実施形態によれば、固体酸化物燃料電池は、カソード、アノード、およびアノードとカソードとの間に配された固体酸化物電解質を含む。アノードは多孔性足場を含み、多孔性足場は、多孔性足場の1つまたは複数の表面上に配された1つまたは複数の金属ナノ粒子を有する固体酸化物を含む。多孔性足場および固体酸化物電解質は、La0.8Sr0.2Ga0.83Mg0.17O2.815(LSGM)から形成され、金属ナノ粒子は、白金、ニッケル、金、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。当該燃料電池を使用してアンモニアを合成する方法も記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード、アノード、および前記アノードと前記カソードとの間に配された固体酸化物電解質を含む固体酸化物燃料電池であって、
前記固体酸化物電解質が、La
0.8Sr
0.2Ga
0.83Mg
0.17O
2.815(LSGM)を含み;かつ
前記アノードが多孔性足場を含み、前記多孔性足場が、LSGMと、前記多孔性足場の表面に配された1つまたは複数の金属ナノ粒子とを含み、前記金属ナノ粒子が、白金、ニッケル、金、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、
固体酸化物燃料電池。
【請求項2】
前記カソードが多孔性足場を含み、前記多孔性足場が、LSGMと、前記多孔性足場の表面に配された1つまたは複数の金属ナノ粒子とを含み、前記金属ナノ粒子が、白金、ニッケル、金、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項3】
前記カソードが多孔性足場を含み、前記多孔性足場が、前記多孔性足場の1つまたは複数の表面に配された金属系触媒を有する固体酸化物を含む、請求項1記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項4】
前記カソードが、La
1-xSr
xMnO
3(LSM)を浸透させたLa
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3(LSCF)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項5】
燃料電池においてアンモニアを生成する方法であって、
水素イオンを生成するために、電子を取り除くことにより燃料電池のアノードで水素ガスをイオン化する工程であり、前記燃料電池が、カソード、前記アノード、および前記アノードと前記カソードとの間のプロトン伝導性電解質を含み、ここで
前記プロトン伝導性電解質が、La
0.8Sr
0.2Ga
0.83Mg
0.17O
2.815(LSGM)を含み;かつ
前記アノードが多孔性足場を含み、前記多孔性足場が、LSGMと、前記多孔性足場の表面に配された1つまたは複数の金属ナノ粒子とを含み、前記金属ナノ粒子が、白金、ニッケル、金、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される工程;
前記水素イオンを、前記プロトン伝導性電解質を介して前記カソードに送る工程;
前記電子を前記アノードから前記カソードに送る工程;および
窒素ガスを前記カソードに送る工程であり、前記水素イオンと前記窒素ガスが反応してアンモニアを生成する工程
を含む方法。
【請求項6】
前記カソードが多孔性足場を含み、前記多孔性足場が、LSGMと、前記多孔性足場の表面に配された1つまたは複数の金属ナノ粒子とを含み、前記金属ナノ粒子が、白金、ニッケル、金、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記カソードが多孔性足場を含み、前記多孔性足場が、前記多孔性足場の1つまたは複数の表面に配された金属系触媒を有する固体酸化物を含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記カソードが、La
1-xSr
xMnO
3(LSM)を浸透させたLa
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3(LSCF)を含む、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記電子を前記アノードから前記カソードに送る工程が、前記電子を前記アノードから電子回路を通して前記カソードに送ることを含む、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2020年7月6日に出願された米国仮特許出願第63/048,262号の優先権を主張し、その内容全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に記載される実施形態は、概して、アンモニアを合成する方法に関し、より具体的には、金属ナノ粒子を含む燃料電池を使用してアンモニアを合成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
水素は、温室効果ガス(GHG)排出の主成分である二酸化炭素(CO2)を含まないため、エネルギー源として研究されてきた。しかし、水素は、重量エネルギー密度が低く、液化温度が低いため取り扱いが困難である。種々の水素担体が研究されており、その最も有望なものの1つはアンモニアである。特に、アンモニアは、室温での液化圧力が低く、効率的に保存および輸送することができる。さらに、アンモニアは、CO2を含まず、他の液体有機水素担体と比較して、17重量%高い重量水素容量を有する。
【0004】
空気中の窒素からアンモニアを大量生産する主要な工業プロセスはハーバー・ボッシュ法であり、これは、以下の反応にしたがい、鉄系不均一触媒を用いて高温高圧でガス状の水素および窒素を結合させることによってガス状アンモニアを生成する。
N2(g)+3H2(g)→2NH3(g)
【0005】
この酸化還元反応は、アノードと電解質との間の界面分極を増加させることによって、電池劣化や電解質のクラッキングさえも引き起こしかねない。また、水蒸気改質を介してアンモニアを合成する工業プロセスでは、相当量のCO2が発生する。
【発明の概要】
【0006】
上記に基づいて、固体酸化物燃料電池において二酸化炭素(CO2)なしでアンモニアを生成するアプローチが望まれ得る。本明細書に記載される種々の実施形態は、これらのニーズを満たすものであり、アンモニアと固体酸化物燃料電池(SOFC)を合成し、それを実行するための方法を対象とする。実施形態では、固体酸化物燃料電池は、カソード、アノード、およびアノードとカソードとの間に配された固体酸化物電解質を含む。アノードは多孔性足場(porous scaffold)を含み、多孔性足場は、多孔性足場の1つまたは複数の表面に配された1つまたは複数の金属ナノ粒子を有する固体酸化物を含む。多孔性足場および固体酸化物電解質は、La0.8Sr0.2Ga0.83Mg0.17O2.815(LSGM)から形成され、金属ナノ粒子は、白金、ニッケル、金、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0007】
本開示の一実施形態によれば、燃料電池においてアンモニアを生成する方法は、水素イオンを生成するために、電子を取り除くことにより燃料電池のアノードで水素ガスをイオン化する工程を含む。燃料電池は、カソード、アノード、およびアノードとカソードの間のプロトン伝導性電解質を含む。アノードは、多孔性足場と、多孔性足場の表面に配された1つまたは複数の金属ナノ粒子とを含む。プロトン伝導性電解質および多孔性足場は、La0.8Sr0.2Ga0.83Mg0.17O2.815(LSGM)を含み、金属ナノ粒子は、白金、ニッケル、金、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。当該方法は、水素イオンを、プロトン伝導性電解質を介してカソードに送り、電子をアノードからカソードに送り、そして窒素ガスをカソードに送ることをさらに含み、ここで、水素イオンと窒素ガスは反応してアンモニアを生成する。
【0008】
これらおよび他の実施形態は、以下の詳細な説明に加えて、添付の図面でより詳細に説明される。添付の図面は、種々の実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれて、本明細書の一部を構成する。図面は、本明細書に記載される種々の実施形態を例示し、その記載とともに、特許請求される主題の原理および操作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0009】
ここで図面の例示的な例を参照する。
【0010】
【
図1】本明細書に示されて説明される1つまたは複数の実施形態による、固体酸化物燃料電池の単一セルの電気化学的性能を評価するための、固体酸化物燃料電池の単一セルを搭載した例示的な固体酸化物燃料電池の測定装置(rig)の図である。
【
図2】本明細書に示されて説明される1つまたは複数の実施形態による、固体酸化物燃料電池の単一セルの電気化学的性能を評価するための、固体酸化物燃料電池の単一セルを搭載した例示的な固体酸化物燃料電池の測定装置の別の図である。
【
図3A】本明細書に示されて説明される1つまたは複数の実施形態による、パラジウムを浸透させたLGSM足場の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図3B】本明細書に示されて説明される1つまたは複数の実施形態による、ニッケルを浸透させたLGSM足場の走査型顕微鏡(SEM)画像である。
【
図3C】本明細書に示されて説明される1つまたは複数の実施形態による、コバルトを浸透させたLGSM足場の走査型顕微鏡(SEM)画像である。
【
図3D】本明細書に示されて説明される1つまたは複数の実施形態による、銅を浸透させたLGSM足場の走査型顕微鏡(SEM)画像である。
【
図3E】本明細書に示されて説明される1つまたは複数の実施形態による、銀を浸透させたLGSM足場の走査型顕微鏡(SEM)画像である。
【
図4A】本明細書に示されて説明される1つまたは複数の実施形態による、10mMのニッケルを浸透させたLGSM足場のSEM画像である。
【
図4B】本明細書に示されて説明される1つまたは複数の実施形態による、50mMのニッケルを浸透させたLGSM足場のSEM画像である。
【
図5A】本明細書に示されて説明される1つまたは複数の実施形態による、第1の流路設計についての流路流れ設計シミュレーションの結果として生じる圧力勾配を示すグラフである。
【
図5B】本明細書に示されて説明される1つまたは複数の実施形態による、第2の流路設計についての流路流れ設計シミュレーションの結果として生じる圧力勾配を示すグラフである。
【
図5C】本明細書に示されて説明される1つまたは複数の実施形態による、ジグザグ設計を有する流路についての流路流れ設計シミュレーションの結果として生じる圧力勾配を示すグラフである。
【
図6】本明細書に示されて説明される1つまたは複数の実施形態による、サンプルA~FのNH
3収率(Y軸;×10
-12mol/cm
2*s)のグラフである。
【
図7】比較電極を使用した、および本明細書に示されて説明される1つまたは複数の実施形態による電極を使用した、電気化学インピーダンス分光法測定の結果を示すグラフである。
【
図8】比較電極を使用した、および本明細書に示されて説明される1つまたは複数の実施形態による電極を使用した、モデル化された等価回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本出願の具体的な実施形態がここで説明される。しかし、本開示は、種々の形態で具現化され得、本開示に明記される実施形態に限定されるように解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が網羅的かつ完全なものになるように提供され、主題の範囲を当業者に十分に伝えるものである。
【0012】
図1は、固体酸化物燃料電池(SOFC)測定装置の例であって、SOFC単一セル100を搭載し、そのSOFCセル100の電気化学的性能を評価するための例を示す図である。SOFCセル100は、アノード102、電解質104、およびカソード106を含む。
【0013】
種々の実施形態では、アノード102は多孔性足場の形態である。本明細書で使用されるように、「多孔性」という用語は、ガスの流れおよび金属触媒の浸透を許容する1つまたは複数の細孔を含む構造を意味する。種々の実施形態の多孔性足場は固体酸化物である。実施形態では、固体酸化物は、たとえば、La0.8Sr0.2Ga0.83Mg0.17O2.815(LSGM)、BaZr0.9Y0.1O3-δ(BZY)、BaCe0.6Zr0.2Y0.2O3-δ(BCZY)、Ce0.9Gd0.1O1.95(GDC)、Sm0.2Ce0.8O1.9(SDC)、La0.75Sr0.25Cr0.50Mn0.50O3(LCSM)、PrBaMn2O5+δ(PMBO)、またはそれらの組み合わせであり得る。実施形態では、アノード102は、La0.8Sr0.2Ga0.83Mg0.17O2.815(LSGM)である。種々の実施形態では、多孔性足場は、足場構造内に1つまたは複数のナノスケールの高度な金属触媒を含む。
【0014】
たとえば、アノード102はまた、多孔性足場の1つまたは複数の表面に配された金属系触媒を含む。実施形態では、金属系触媒は、多孔性足場の表面下または表面内に少なくとも部分的に埋め込まれている。たとえば、ナノスケールの触媒(たとえば、LCSF、LST、LSCM、PMBOなど)は、足場構造の作製後に足場構造に触媒を浸透させることによって足場構造内に埋め込むことができる。したがって、ナノスケールの触媒の凝集を回避することができ、触媒の高い表面積によってペロブスカイト材料の使用にもかかわらず、高性能を得ることができる。
【0015】
種々の実施形態では、金属系触媒は金属または金属酸化物であり得る。触媒としての使用に適した金属には、たとえば、ニッケル、白金、金、またはそれらの組み合わせが含まれる。実施形態では、金属系触媒は、たとえば、1nm~100nm、または10nm~100nmのナノサイズの粒子、すなわちナノ粒子の形態にある。理論に束縛されるものではないが、ナノサイズの触媒粒子を足場に浸透させることで、三相境界(TPB)の長さを延長することにより、高い電気化学的性能および耐久性を達成することができると考えられる。特に、足場の多くの表面に沿った触媒の分散によって、SOFCの電気化学反応のための多くの反応部位が提供される。
【0016】
電解質104は、アノード102とカソード106との間に挟まれた高密度の固体酸化物を含むプロトン伝導性固体酸化物電解質である。本明細書で使用されるように、「高密度の」電解質は、酸素および水素が通過することができない、および2つのガスを完全に分離する電解質である。固体酸化物電解質は、たとえば、La0.8Sr0.2Ga0.83Mg0.17O2.815(LSGM)、BaZr0.9Y0.1O3-δ(BZY)、BaCe0.6Zr0.2Y0.2O3-δ(BCZY)、Ce0.9Gd0.1O1.95(GDC)、Sm0.2Ce0.8O1.9(SDC)、またはそれらの組み合わせを含み得る。実施形態では、固体酸化物電解質の固体酸化物は、アノードの多孔性足場に含まれるものと同じ固体酸化物である。
【0017】
種々の実施形態では、カソード106は、たとえばペロブスカイト材料、たとえばランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)系のペロブスカイトを含む。他の例示的なカソード組成物は、Srドープランタンフェライト(LSF)材料およびSrドープランタンフェロコバルト鋼(LSCF)材料を含む。実施形態では、カソードは、La1-xSrxMnO3(LSM)を浸透させたLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3(LSCF)を含む。実施形態では、カソード106は、多孔性足場の1つまたは複数の表面に配された金属触媒を含む多孔性足場を含む。そのような実施形態では、金属触媒は、アノード102の構造に関して上記した通りであり得る。
【0018】
操作時に、
図1および2に示されるように、水素供給部が水素ガス(H
2)を系に流入させる。H
2ガスがアノードに接触すると、電子(e
-)を取り除くことによって水素はイオン化される。アノードによる水素ガスのイオン化は以下の反応に従って進行する。
H
2→2H
++2e
-
【0019】
水素イオン(H+)は、固体酸化物電解質を通ってカソードに移動し、そこで窒素ガス(N2)および電子(e-)と反応して、以下の反応に従ってNH3を生成する。
N2+6H++6e-→2NH3
電子(e-)は、アノードから電子回路に流れ、カソードに戻り、そこで窒素ガス(N2)を還元するために使用される。電子回路は、電子の流れを使用してデバイスを給電する。
【0020】
種々の実施形態では、足場は、ペーストが基材の上部に印刷されるスクリーン印刷法によって作られる。ペーストは、足場材料をインキビヒクルと混合することによって作られる。インキビヒクルは、種々の実施形態では、アルファ-テルピネオール、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、フタル酸ジブチル、ポリエチレングリコールから構成される。印刷後、ペーストは、乾燥され、1000℃~1250℃の高温で焼結されて、足場を形成する。その後、触媒前駆体溶液(硝酸塩またはクエン酸塩など)が、足場に浸透され、500℃で焼成される。触媒の量が足場の重量の25~30重量%に達するまで浸透が繰り返される。
【0021】
一態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、固体酸化物燃料電池は、カソード、アノード、およびアノードとカソードとの間に配された固体酸化物電解質を含む。固体酸化物電解質は、La0.8Sr0.2Ga0.83Mg0.17O2.815(LSGM)を含む。アノードは多孔性足場を含み、多孔性足場は、LSGMと、多孔性足場の表面に配された1つまたは複数の金属ナノ粒子とを含む。金属ナノ粒子は、白金、ニッケル、金、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0022】
第2の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、カソードは多孔性足場を含み、多孔性足場は、LSGMと、多孔性足場の表面に配された1つまたは複数の金属ナノ粒子とを含む。金属ナノ粒子は、白金、ニッケル、金、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0023】
第3の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、カソードは多孔性足場を含み、多孔性足場は、多孔性足場の1つまたは複数の表面に配された金属系触媒を有する固体酸化物を含む。
【0024】
第4の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、カソードは、La1-xSrxMnO3(LSM)を浸透させたLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3(LSCF)を含む。
【0025】
第5の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、燃料電池においてアンモニアを生成する方法は、水素イオンを生成するために、電子を取り除くことにより燃料電池のアノードで水素ガスをイオン化する工程であり、その燃料電池が、カソード、アノード、およびアノードとカソードとの間のプロトン伝導性電解質を含む、工程;水素イオンをプロトン伝導性電解質を通してカソードに送る工程;電子をアノードからカソードに送る工程;および窒素ガスをカソードに送る工程であり、水素イオンと窒素ガスが反応してアンモニアを生成する、工程を含む。燃料電池において、プロトン伝導性電解質はLa0.8Sr0.2Ga0.83Mg0.17O2.815(LSGM)を含み、アノードは多孔性足場を含み、多孔性足場は、LSGMと、多孔性足場の表面に配された1つまたは複数の金属ナノ粒子とを含み、金属ナノ粒子は、白金、ニッケル、金、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0026】
第6の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、カソードは多孔性足場を含み、多孔性足場は、LSGMと、多孔性足場の表面に配された1つまたは複数の金属ナノ粒子とを含む。金属ナノ粒子は、白金、ニッケル、金、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0027】
第7の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、カソードは多孔性足場を含み、多孔性足場は、多孔性足場の1つまたは複数の表面に配された金属系触媒を有する固体酸化物を含む。
【0028】
第8の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、カソードは、La1-xSrxMnO3(LSM)を浸透させたLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3(LSCF)を含む。
【0029】
第9の態様によれば、単独で、または任意の他の態様と組み合わせて、電子をアノードからカソードに送る工程は、電子をアノードから電子回路に通してカソードに送ることを含む。
【実施例】
【0030】
以下の実施例は、本開示の特徴を例示するが、本開示の範囲を限定するように意図されたものではない。
【0031】
実施例1
種々の触媒の電気化学的活性を比較するために、プロトン伝導性を有する電解質を使用して、固体酸化物燃料電池を形成した。具体的には、24時間ボールミルによってLGSM粉末と1~3重量%の適切な結合剤系(ポリビニルアルコール)を混合することによって、電解質支持体を作製した。その後、混合物を完全に乾燥するまで(少なくとも1時間)、100℃~200℃の温度で乾燥させ、100μmの篩を用いて分けた。3グラム(3g)の粉末を、10MPaの圧力でディスクペレットにペレット化した。ペレットを4時間1450℃で焼結した。
【0032】
白金、金、および銀のペーストを使用してセルを形成した。金属ペーストを、LGSMペレットの両側に厚さ約10μmでスクリーン印刷した。白金ペーストおよび金ペーストを1時間930℃で硬化させ、銀ペーストを1時間850℃で硬化させた。結果として得た各セルを、金属冶具を用いて600℃および1.6ボルト(V)で、カソード側で生成されるアンモニアの捕捉を調べた。金属冶具の酸化を防ぐため、Crofer 22 APUを使用して、ポテンショスタットと作製されたセルとの間の電気接続、およびアンモニアの捕捉をもたらした。生成したアンモニアの濃度を、カソード治具の排気側に接続されたアンモニア3L検出管(ガステック社(Gastec Co. Ltd.)から入手可能)を使用して検出した。
【0033】
最も速い生成速度は、銀電極表面上で、1.30×10-10mol/cm2*sの値であった。白金電極上のアンモニアの生成速度は銀電極のおよそ半分であり、金はごくわずかな量のアンモニアを示した。これらの結果は、銀がプロトンの選択的還元を助けてアンモニアを生成する一方で、白金がアンモニアの生成よりもむしろカソード上の水素の発生を促進することを示唆した以前の研究を確証するものであった。
【0034】
実施例2
電極の表面積および対応する生成速度を増加させるために、足場構造の電極を導入した。特に、金属ナノ粒子をLSGM足場に分散させるために2つの方法を使用した。第1の方法では、直接足場上に金属前駆体を浸透させることによって、金属ナノ粒子を合成した。第2の方法では、非常に小さく(約10nm~約30nm)均一なサイズのナノ粒子を、コロイド法によって予め合成し、溶液の形態でLSGM足場上に分散させた。
【0035】
第1の方法(「分散法」)では、固定濃度(20mM)の金属前駆体(たとえば、金属の硝酸塩またはクエン酸塩)をさまざまな溶媒(イソプロピルアルコール、脱イオン水、およびエタノール)に溶解することによって、溶液混合物を調製した。その後、固定体積(100μL~200μL)の溶液を、LSGM足場上に滴下、分散させ、毛管作用によって前駆体を足場に自然に吸収させた。分散後、処理済みの足場を、30分間、500℃で熱処理プロセスにさらして有機物を除去した。
【0036】
第2の方法では、カチオン表面を使用する水性系のコロイド合成によって白金ナノ粒子を合成した。CnTAB(n=10、12、14、16、または18)をカチオン界面活性剤として使用し、白金をK2PtCl4前駆体として提供して、ナノ粒子前駆体(CnTA)2PtBr4を形成した。NaBH4を前駆体に加え、混合物を24時間、50℃でインキュベートした。その後、インキュベーションプロセスの間に生成されたH2を20分間排気して、白金ナノ粒子を生成した。投入した界面活性剤と前駆体との間のクーロン相互作用によって、サイズと形状を調整可能な白金ナノ粒子を合成した。合成されると、粒子を、水とナノ粒子の混合溶液の形態でLSGM足場上に均一に噴霧した。
【0037】
銀、銅、コバルト、ニッケル、パラジウム、および白金などの遷移金属を試験した。白金ナノ粒子をコロイド合成によって作製した一方で、他の金属のナノ粒子は上記の分散法によって作製した。一度に滴下した溶液の体積、滴下の総数、熱処理の温度と時間、および足場表面の前処理を含む、種々実験的に制御可能な変数で足場の表面を解析することによって、金属ナノ粒子の形態および分散を確認した。特に、前駆体溶液の濃度がより低くかつ体積がより少ないほど、より小さくかつ十分に分散したナノ粒子が形成される。また、温度は焼成を可能にするのに十分高くなければならないが、ナノ粒子が粗大化しないように十分低くなければならない。
【0038】
各金属の最終的な熱処理条件は、各金属の酸化物形態の融点に応じて異なって進行するが、金属を同じ熱力学的環境下で合成した。20nm~30nmのサイズの範囲の均一に分散したパラジウム(
図3A)、銀(
図3E)、およびニッケル(
図3B)のナノ粒子を、LSGM足場の表面でSEMを使用して観察した。特に、
図3Bに示されるように、多数のニッケルナノ粒子を足場全体で非常に均一に合成した。しかし、銅(
図3D)およびコバルト(
図3C)は、十分に分散したナノ粒子というよりもむしろ、金属層または足場でコーティングされた隔離された粒子の形態で観察された。
図3Fでは、他の場合よりもさらに小さい白金ナノ粒子をコロイド合成によって合成し、分散させたが、埋め込まれたナノ粒子の数は少なかった。したがって、コロイド合成は、浸透法によって埋め込まれる触媒と同じ量埋め込むために、より多くの工程を必要とする。
【0039】
実施例3
ナノ粒子の分布は、足場に分散された触媒の量が変化した場合にのみ視覚的に区別され、経験的に決定された初期溶液の濃度および量は、いくつかの金属の均一な分散を達成するのに適していた。特に、分散量を変化させることに関する試験を金属の各々に対して行なったが、本明細書においては、代表例としてニッケルが使用される。
【0040】
本実施例では、ニッケル溶液の濃度を10mM~50mMまで変化させ、LGSM足場に浸透させるために使用した。10mMおよび50mMで浸透させた足場のSEM画像を
図4A~4Dに示す。具体的には、
図4Aおよび4Bは、それぞれ、10mMおよび50mMの濃度の溶液でのNiを浸透させたLGSM足場のSEM画像であり、一方、
図4Cおよび4Dは、より大きな倍率の対応するSEM画像である。特に、核の量は液滴の量とともに著しく増加し、各粒子のサイズは、より高い濃度の溶液(50mM;
図4Bおよび4D)で処理したサンプルと比較して、より低い濃度の溶液(10mM;
図4Aおよび4C)で処理したサンプルにおいてより大きかった。
【0041】
実施例4
ANSYSソフトウェアを使用した流路の流路流れ設計シミュレーションを使用して、電極の形態学的効果を排除するための研究を行った。特に、流路の設計を評価して、電極の一方の側から他方の側への高い圧力勾配を有する設計を特定したが、この高い圧力勾配は、拡散力を促進すると考えられている。シミュレーションの結果を
図5A~5Cに示す。シミュレーションでは、流路の設計をジグザグ型の設計に変更し(
図5C)、これにより、アンモニアの生成速度が最大で5.21×10
-10mol/cm
2*sまで向上した。
【0042】
図5Bに示される流路の設計は実験的には試験しなかった。しかし、ジグザグ型の設計(
図5C)は、30cm
3/minの流速で供給された純粋な窒素に関して、
図5Aに示される流路設計と比較して、より良好な生成速度を示した。特に、シミュレーション結果は、ガス流の駆動力である、電極に向かう圧力勾配を示している。
図5Cの流路のジグザグ設計は、供給ガスの動的流れを示すこの値の高くかつ広い範囲を示している。
【0043】
実施例5
非対称燃料電池構成も試験した。特に、アノードおよびカソード各々の材料を変更した。NH
3収率を、金アノードと金カソード(サンプルA)、白金アノードと白金カソード(サンプルB)、銀アノードと銀カソード(サンプルC、D、およびE)、および白金アノードと銀浸透LGSMカソード(サンプルF)を有するサンプルについて測定し、結果を
図6に示す。サンプルA、B、およびCは1.6Vの電圧を使用し、サンプルD、E、およびFは2Vの電圧を使用した。サンプルEは、流路がジグザグ構成になるように流路の改変を含んだ一方で、サンプルA、B、C、D、およびFは、
図5Aの流路構成を使用した。
【0044】
図6に示されるように、収率が燃料電池の改変と共に向上し、白金アノードと銀浸透LGSMカソードを含む燃料電池(サンプルF)のアンモニアの生成速度は2.03×10
-9mol/cm
2*sであり、これは、同様の材料を使用して得られた基準値(Ag-Pd|LGSM|Ag-Pd;2.37×10
-9mol/cm
2*s)に匹敵する。
【0045】
実施例6
電気化学インピーダンス分光法(EIS)を、単純な薄膜銀電極(比較)と銀浸透LSGM足場(本発明)を使用して実施した。その後、これらの調製したサンプルをEISにかけた。
図7は、X軸上のインピーダンス測定の実部(Z’)およびY軸上のインピーダンス測定の虚部(Z’’)のナイキストプロットを提供する。浸透電極を採用することによって、アンモニア合成を意図した条件下での電気化学的特性が改善される。
【0046】
3つの半円を示したこのデータの注意深い解析から、等価回路をモデル化した。その結果を
図8に示す。等価回路は、直列の3つの抵抗器(R1、R2、およびR3)を含み、R2およびR3は各々、定位相要素(それぞれCPE1およびCPE2)と並列になっている。R1は、ナイキストプロットのX軸との切片に対応している。R2は、第1の半円に隣接するより小さな半円に対応している。R3は、ナイキストプロットの残りの部分に対応している。
【0047】
図8に示されるように、電磁誘導抵抗は、銀薄膜電極(350オーム)よりも、銀浸透LSGM電極(122オーム)を使用する場合に、65.1%減少する。
【0048】
詳細におよび具体的な実施形態を参照することによって本開示の主題を説明しているが、本明細書に付随する図面の各々に特定の要素が例示されている場合であっても、本開示に記載されるさまざまな詳細は、これらの詳細が本開示に記載される種々の実施形態の必須構成要素である要素に関連することを含蓄するものと解釈されるべきではないことが留意される。むしろ、添付の請求項は、本開示の幅および本開示に記載される種々の実施形態の対応する範囲の唯一の提示として解釈されるべきである。さらに、添付の請求項の範囲から逸脱することなく、改変および変形が可能であることが明らかになる。
【0049】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が他に明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0050】
本開示を説明および定義する目的で、「約」という用語は、本開示では、任意の定量的比較、値、測定、または他の表現に起因し得る固有の不確実性の程度を表すように利用されることが留意される。「約」という用語はまた、本開示では、問題の主題の基本的な機能に変化をもたらすことなく、定量的表現が言及された参照から変化し得る程度を表すように利用される。
【0051】
本開示および添付の請求項で使用されるように、「含む(comprise)」、「有する(has)」、および「含める(include)」という単語、ならびにそれらのすべての文法的変形は、各々、追加の要素または工程を除外しないオープンで非限定的な意味を有するように意図されている。
【0052】
さらに、「本質的にからなる(consisting essentially of)」という用語は、本開示では、本開示の(1つまたは複数の)基本的および新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない定量値を指すように使用される。たとえば、特定の化学成分または化学成分の群から「本質的になる(consisting essentially)」化学流は、その特定の化学成分または化学成分の群を少なくとも約99.5%含むことを意味すると理解されるべきである。
【0053】
ある特性に割り当てられた任意の2つの定量値が、その特性の範囲を構成し得、所与の特性のすべての言及された定量値から形成される範囲のすべての組み合わせが、本開示において企図されることが理解されるべきである。
【0054】
本開示で使用されるように、「第1の」および「第2の」などの用語は、恣意的に割り当てられ、単に2つまたはそれ以上の例または構成要素を区別するように意図されている。「第1の」および「第2の」という単語が、他の目的を果たさず、構成要素の名称または記述の一部ではなく、構成要素の相対的な場所、位置、または順序を必ずしも定義するものでもないことを理解されたい。さらに、「第1の」および「第2の」という用語の単なる使用が、任意の「第3の」構成要素が存在することを必要としないが、その可能性が本開示の範囲の下で企図されることを理解されたい。
【国際調査報告】